(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】架橋性シリル末端ポリマー組成物、および前記組成物を実装して基材を接合するための方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/10 20060101AFI20240711BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240711BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240711BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240711BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C09J201/10
C09J11/08
C09J11/04
C09J11/06
C09J183/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500240
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 FR2022051354
(87)【国際公開番号】W WO2023281216
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マメリ, ファディル
(72)【発明者】
【氏名】ラルーシュ, ラウセーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ボルダ, ジャン-マリー
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF111
4J040EF121
4J040EF131
4J040EF281
4J040EK032
4J040GA31
4J040HA306
4J040JA08
4J040JB02
4J040KA14
4J040KA26
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA42
4J040KA43
4J040LA06
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA15
4J040NA16
4J040NA19
4J040PA30
(57)【要約】
1)
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A);
- 少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 好ましくは疎水性である、少なくとも1種の焼成シリカ(C);
- 少なくとも1種の架橋触媒(D);および
- シルセスキオキサン樹脂(E)
を含む、架橋性接着性組成物。
2)2つの基材の準構造接合のための前記組成物の使用。
3)2つの基材を組み立てるための方法であって、
- 30~130℃の温度に加熱することにより、前記組成物を溶融すること、次いで
- 前記組成物を第1の基材の表面に堆積させること、次いで
- 15℃~200℃の温度で加熱することにより、前記組成物を架橋すること、および前記表面を第2の基材の表面と接触させること
を含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A);
- 少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 少なくとも1種の焼成シリカ(C);
- 少なくとも1種の架橋触媒(D);および
- シルセスキオキサン樹脂(E)
を含むことを特徴とする、架橋性接着性組成物。
【請求項2】
ポリマー(A)が、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種の式(I):
-Si(R
4)
p(OR
5)
3-p (I)
[式中、
- R
4は、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのR
4ラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり;
- R
5は、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのR
5ラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり、2つのOR
5基が同じ環に関与し得る可能性があり;
- pは、0、1、または2に等しい、好ましくは0または1に等しい整数である]の加水分解性基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の接着性組成物。
【請求項3】
焼成シリカ(C)が疎水性であることを特徴とする、請求項1または2に記載の接着性組成物。
【請求項4】
疎水性焼成シリカ(C)が、焼成シリカをポリジメチルシロキサンで処理することによって得られることを特徴とする、請求項3に記載の接着性組成物。
【請求項5】
焼成シリカ(C)が、少なくとも10m
2/g、好ましくは50~400m
2/gの範囲のBET比表面積を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項6】
シルセスキオキサン樹脂(E)が、以下の一般式(V):
[式中、R’
1~R’
8の各々は、互いに独立して、
- 水素原子、
- 直鎖状または分枝状のC
1~C
4アルコキシラジカル、1~30個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカル、2~30個の炭素原子を含むアルケニルラジカル、6~30個の炭素原子を含む芳香族ラジカル、3~30個の炭素原子を含むアリルラジカル、3~30個の炭素原子を含む環状脂肪族ラジカル、および1~30個の炭素原子を含むアシルラジカルからなる群から選択されるラジカル、ならびに
- R’
9およびR’
10が各々、互いに独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分枝状のC1~C4アルキル、直鎖状もしくは分枝状のC1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニル、フェニル、C3~C6アリルラジカル、環状C3~C8脂肪族ラジカル、およびC1~C4アシルラジカルからなる群から選択されるラジアルを表す、-OSiR’
9R’
10基;
から選択される基を表し、ただし、
- R’
1~R’
8基のうちの少なくとも1つのラジカルがC
1~C
4アルコキシラジカルであり;
- R’
1~R’
8ラジカルのうちの少なくとも1つのラジカルがフェニルラジカルである]に相当することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項7】
- 3重量%~90重量%の少なくとも1種のポリマー(A);
- 8重量%~80重量%の少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 1重量%~10重量%の焼成シリカ(C);
- 0.01重量%~10重量%の架橋触媒(D);および
- 0.1重量%~20重量%のシルセスキオキサン樹脂(E)
を含み、これらの重量百分率は、前記組成物の総重量を基準にして示されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項8】
2つの基材の準構造組立てのための、請求項1から7のいずれか一項に記載の架橋性接着性組成物の使用。
【請求項9】
エレクトロニクス、建設、輸送手段の製造の分野における、好ましくは自動車、鉄道、航空宇宙、および造船産業における、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
2つの基材を組み立てるための方法であって、
- 30~130℃の温度で加熱することにより、請求項1から7のいずれか一項に記載の接着性組成物を溶融する工程(i)、次いで
- 前記組成物を第1の基材の表面に堆積させる工程(ii)、次いで
- 以下:
- 15℃~200℃の範囲の温度で加熱することにより、前記組成物を架橋する工程(iii1);および
- 前記表面を第2の基材の表面と接触させる工程(iii2)
を含む工程(iii)
を含む、方法。
【請求項11】
工程(ii)において、組成物をビーズの形態で第1の基材の表面に堆積させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(ii)において、組成物を0.1mm~2cmの厚さを有する層の形態で第1の基材の表面に堆積させることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
架橋する工程(iii1)が15℃~45℃の範囲の温度、好ましくは常温、特に18℃~25℃、特定すると23℃で、周囲湿度の存在下、特に空気1m
3当たり20~60gの水、好ましくは40~60g/m
3の絶対湿度で行われることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
架橋する工程(iii1)が90℃~160℃の範囲の温度で、気体1m
3当たり10~200gの水、好ましくは20~60g/m
3の範囲の絶対湿度の存在下で行われることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか一項に記載の接着性組成物によって接合された少なくとも2つの基材を含む、組立品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマーをベースとする新規架橋性接着性組成物に関する。本発明は、2つの基材を組み立てるための準構造用接着剤としてのその使用にも関する。最後に、本発明は、接着接合によって2つの基材を組み立てるための方法であって、前記組成物を特にビーズの形態で、組み立てる2つの基材の一方の表面に堆積させることを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤は、多種多様な基材の準構造組立てのために、多くの産業分野で使用されている。準構造組立てとは、接着シールが2~8MPaにわたる範囲内のせん断応力に耐えることができる2つの基材の組立てを意味する。
【0003】
例えば自動車の構成において、接着剤は、車向けの装置の様々なアイテムの製造および組立てにおいて、ならびに車室を形成するために車体を仕上げる目的で装置の前記アイテムまたは様々な要素をシャーシに取り付けることにおいても、重要な役割を果たす。したがってこれは、ドア、ルーフ、フロア、トランクの内装トリム、あるいはシートまたはフロントガラスの組立てに関連し得る。フィルター、例えばエアフィルターのような他の要素も、接着剤によってエンジンの近くに取り付けられる。
【0004】
したがって、自動化された生産ラインにおいて、全ての種類の基材を準構造用接着剤によって一緒に組み立てることができ、および/または車の金属シャーシに取り付けることができる。
【0005】
この種類の用途には、ホットメルト接着剤が一般的に使用される。
【0006】
ホットメルト接着剤は、溶媒を含まず、常温で固体または高粘性である接着剤であり、150℃~210℃の範囲の温度で溶融した状態で、取付けおよび/または組立てする基材に適用される。冷却後、接着剤は固体状態に戻り、物理的プロセスの後に、組み立てられる2つの基材を固着する粘着性接着シールをこうして形成する。したがって、前記接着シールは、約2~8MPaにわたる範囲のせん断応力に耐えることができる。ホットメルト接着剤は一般に、熱可塑性ポリマーならびに任意選択で粘着付与樹脂および可塑剤を含む組成物の形態である。
【0007】
組立体を形成する目的で、ホットメルト接着剤はしばしば、第1の基材の表面にビーズの形態で堆積される。このようなビーズは、接続されたダイを通して、あるいは作業者が持つカートリッジから、あるいはリザーバから(組立ラインでのロボット適用の場合)、接着剤を熱間押出しすることによって得られる。このようにして、ビーズは、第1の基材の表面で、第2の基材の表面と組み立てるための所望の場所に正確に配置され得る。ビーズの直径も、接着シールを形成する目的でのコーティングに所望される量に基づいて、例えば2mm~2cmにわたる範囲内で調整され得る。
【0008】
しかしながら、ホットメルト接着剤の欠点は、まさに接着シール中に熱可塑性ポリマーが存在するために、最終組立体およびこの最終組立体を含有する物品において、前記組立体が曝露される温度および応力条件により、前記シールが、組立体の寿命にわたって不十分であると判明し得る耐熱性を有することである。ホットメルト接着剤の別の欠点はまた、上で規定されたように、非常に高いその適用温度である。
【0009】
これは、反応性(または架橋性)ホットメルト接着剤が開発され、準構造組立ての分野および/または自動車構成の分野を含む様々な産業の分野で一般的に実装されている理由である。
【0010】
架橋性ホットメルト接着剤も、常温で固体または高粘性であり、基材に高温で適用される。したがって、冷却後、このような接着剤はその固体形態に戻り、それにより接着シールに初期粘着性が与えられ、これは当分野においてしばしば「グリーン強度」と呼ばれる。加えて、前記シールの粘着性は、周囲の空気中および/または組み立てられる基材の表面に存在する湿度の存在下で生じる化学架橋反応の影響下でかなり強化される。架橋前は、接着シールを構成する組成物は熱可塑性のままであり、再溶融および再固化され得る。架橋後、接着性組成物に含有されるポリマーの鎖は、化学結合によって互いに接続されて三次元ネットワークを形成し、その結果、接着シールはもはや熱可塑性ではなく、不可逆的な固体形態である。
【0011】
したがって、このような架橋接着性組成物は、非反応性ホットメルト接着剤と比較して大幅に改良された最終粘着性および耐熱性を接着シールに与える。
【0012】
反応性ホットメルト接着剤は一般に、HMPUR(ホットメルトポリウレタン)とも呼ばれる、湿度を使用して架橋するポリウレタンホットメルト接着剤である。相当する組成物の反応性部分は、湿度と反応し、ポリマー鎖が尿素結合によって接続されて三次元ネットワークを形成する、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーからなる。イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーは、従来、ジオールを過剰のジイソシアネートと反応させることによって調製されている。これらのHMPURは、ビーズの形態で容易に実装され得、速い架橋速度、架橋後の接着シールの優れた機械的特性、および多種多様な基材への接着性という利点を有する。
【0013】
しかしながら、これらのHMPURは、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの調製において実装され、より揮発性である、かなりの残留量のジイソシアネートが接着性組成物中に存在することに関連する欠点を有する。適用温度範囲(典型的には約90~100℃)において、接着性組成物中に含有される未反応のモノマージイソシアネートはかなりの蒸気圧を有し、気体形態で放出され得る。これらのジイソシアネート蒸気は毒性、特に刺激性であり得、HMPURを実装する工業プロセスにおいて安全対策をとる必要がある。この毒性の問題とは別に、HMPURは架橋反応中に二酸化炭素を放出する。非結晶性接着剤中での二酸化炭素の形成は、架橋を経ている接着シール中での気泡の形成につながり得る。
【0014】
少なくとも1種の加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマーを含む反応性ホットメルト接着性組成物が、HMPURの代替として開発されている。したがって、高含有量の充填剤を有する変性シランポリマー(MSポリマー)をベースとする接着性組成物を挙げることができ、これは、接着剤の分野でよく知られており、多種多様な物体の接着接合による組立てに使用されている。MSポリマーは、主鎖がポリエーテル、例えばポリ(オキシプロピレン)であり、少なくとも1つ、好ましくは2つのシリル(またはアルコキシシラン)末端基を含むポリマーである。
【0015】
したがって、このような接着性組成物から得られる接着シールは、大気湿度または基材の表面に存在する湿度の存在下での、アルコキシシラン末端基を介したポリマー鎖の架橋反応から生じる。したがって、これらのシールは、ポリマー鎖がシロキサン結合によって接続された三次元ポリマーネットワークを含み、その粘着性により、堅固な組立体を得ることが可能になる。これらのシールは、有利に耐温性も有する。
【0016】
さらに、アルコキシシラン末端ポリウレタン(またはポリエーテル)をベースとする接着性組成物が公知であり、特にBostikの3つの特許出願:WO 09/106699、EP2336208、およびWO 2020/128200により記載されている。溶媒または水を含有しないこれらの接着性組成物は、特に、形成される接着シールにより全ての種類の基材に容易に取り付けることができるラベルの製造に有用である自己接着性支持体を作製する目的で、50~150℃の温度で支持体層上にコーティングすることにより実装される。
【0017】
しかしながら、後者の接着性組成物の実装には、ジイソシアネートモノマーとの接触可能性に関連するリスクはないが、準構造用接着剤としてのその使用では、特に大きな垂れのリスクに関連する主な欠点に直面する。
【0018】
実際に、接着剤の架橋が完了していないにもかかわらず、接着剤のビーズが最初に堆積される第1の表面、または基材が接触させられた直後の両方の基材のいずれかが、非水平位置、特に垂直位置にあることが起こり得る。この結果、組立体の2つの基材を接合している前記ビーズまたは前記非架橋接着シールが重力の力に曝される。これは、前記力から生じる応力の作用下で、変形もしくはクリープ、またはさらには垂れ(「スランプ」とも記載される)のリスクの影響を有する。
【0019】
ビーズ(または非架橋接着シール)の形状のこのような変化は、本文書の残りの部分において「垂れ」という一般的な用語で示される。したがって、これにより架橋中に2つの基材間で接着剤の厚さにばらつきが生じる可能性があり、したがって完全な架橋後に得られる最終組立体において2つの基材を強固に接合する接着シールの不均一性、特に寸法の不均一性が生じる可能性がある。接着シールのこの不均一性は、特にその機械的特性に悪影響を与えやすい。
【0020】
したがって、本発明の1つの目的は、アルコキシシラン末端ポリウレタン(またはポリエーテル)をベースとする接着性組成物、特にBostik SAによる上述の出願、WO 2020/128200に記載されている接着性組成物の垂れ(またはクリープ)を制限するおよび/またはなくすことである。
【0021】
さらに、常温での長い架橋時間に起因して、高温条件下および湿度の存在下でこれらの組成物を実装することが一般に必要であり、これは、自動化されたラインで基材を組み立てることが所望される際に、湿度および温度が制御されたチャンバーを用意する必要性につながり得る。
【0022】
したがって、本発明の別の目的は、少なくとも1種の加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマーをベースとする架橋性接着性組成物であって、相対湿度を制御することを必要とせず、および/またはより低い温度、特に50℃未満の温度、さらには常温で行われる架橋反応によって、2つの基材を組み立てることを可能にする架橋性接着性組成物を提案することである。
【0023】
本発明の別の目的は、常温および/または周囲湿度で、より短い時間で架橋する少なくとも1種の加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマーをベースとする、架橋性接着性組成物を提案することである。
【0024】
本発明の別の目的は、架橋によって形成されて2つの基材の組立体をもたらす接着シールが、改良された耐熱性を有することである。
【0025】
本発明の別の目的は、前記接着シールが改良された機械的強度を有することである。
【0026】
本発明の別の目的は、前記接着シールの厚さが、より均一または均一であることである。
【0027】
これらの目的は、以下に記載する接着性組成物、準構造用接着剤としてのその使用、および2つの基剤を組み立てるための方法によって、完全または部分的に達成され得ることが現在見出されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
架橋性接着性組成物:
したがって、第1に本発明は架橋性接着性組成物であって、
- 加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A);
- 少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 少なくとも1種の焼成シリカ(C);および
- 少なくとも1種の架橋触媒(D)
を含むことを特徴とする、架橋性接着性組成物に関する。
【0029】
前記接着性組成物のクリープ(または垂れ)は、特にWO 2020/128200に記載されているアルコキシシラン末端ポリウレタン(またはポリエーテル)をベースとする接着性組成物と比較して、かなり低減されることが現在見出されている。したがって、これは、単位面積当たりの重量が高くても、特にビーズの形態で、第1の基材の表面に前記組成物を堆積させることに有利につながり得、これは、架橋して第2の基材と接触させた後、接着シールが均一であり、かつ均一な厚さを有する組立体につながる。
【0030】
さらに、前記架橋性組成物の架橋時間も、WO 2020/128200の組成物と比較して、常温および周囲湿度で大幅に短縮される。この架橋時間は、温度および湿度が制御されたチャンバーで架橋が行われる場合に有利にさらに短縮され得、これは、例えば組立製造が自動車構成組立ラインで行われる場合に、前記製造の生産性を向上させるのに特に好都合である。
【0031】
加えて、前記接着性組成物は、30℃~130℃、好ましくは90℃~130℃にわたる温度範囲で、換言すれば、ホットメルト接着剤よりも低い適用温度で適用することができる。
【0032】
さらに、架橋性接着性組成物の実装についての上述の利点に加えて、架橋によって形成される三次元ネットワークの存在により、組立体の2つの基材間に形成される接着シールは、先行技術から公知の非反応性ホットメルト接着剤と比較して、大幅に改良された耐熱性を提供する。最後に、WO 2020/128200の組成物と比較して、前記接着シールは、基材に対する粘着性および接着性の改良された特性を有する。これらの特性は、接着シール単独での引張破断応力測定、および組立体で2つの基材を一緒に接合する接着シールでのせん断破断応力測定によって定量化される。
【0033】
ポリマー(A):
本発明の意味において、「加水分解性アルコキシシラン基を含むポリマー(A)」という用語は、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種の式(I):
-Si(R4)p(OR5)3-p (I)
[式中、
- R4は、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのR4ラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり;
- R5は、1~4個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、いくつかのR5ラジカルが存在する場合、これらのラジカルは同一であるか、または異なる可能性があり、2つのOR5基が同じ環に関与し得る可能性があり;
- pは、0、1、または2に等しい、好ましくは0または1に等しい整数である]の加水分解性基を含むポリマーを意味すると理解される。
【0034】
加水分解性アルコキシシラン基は、好ましくは前記ポリマーの末端に位置する。しかしながら、鎖の中間の位置は除外されない。ポリマー(A)は、接着性組成物の適用前に架橋されない。接着性組成物は、その架橋が可能となる条件下で適用される。
【0035】
したがって、ポリマー(A)は、多少粘性のある液体の形態で一般に提供されるシリル変性ポリマーである。好ましくは、ポリマー(A)は、特に23℃において、10~200Pa.sの範囲、好ましくは20~175Pa.sの範囲の粘度を有し、前記粘度は、例えば、23℃および相対湿度50%においてBrookfield型の方法に従って測定される(S28スピンドル)。
【0036】
ポリマー(A)は、好ましくは2種の式(I)の基を含むが、3~6種の式(I)の基を含むこともできる。
【0037】
好ましくは、ポリマー(A)は、500~50 000g/molの範囲、より好ましくは700~20 000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。ポリマーの数平均分子量(Mn)は、当業者に周知の方法、例えばNMRおよびポリスチレン型の標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって計算または測定され得る。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー(A)は、式(II)、(III)、または(IV):
[式中、
- R
4、R
5、およびpは、上記の式(I)中と同じ意味を有し、
- Pは、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、またはケイ素を任意選択で含み、好ましくは100g/mol~48 600g/mol、より特定すると300g/mol~18 600g/mol、あるいは500g/mol~12 600g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状のポリマーラジカルを表し、
- R
1は、芳香族または脂肪族の直鎖状、分枝状、または環状であり得る、5~15個の炭素原子を含む2価の炭化水素ラジカルを表し、
- R
3は、1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む、直鎖状または分枝状の2価のアルキレンラジカルを表し、
- Xは、-NH-、-NR
7-、または-S-から選択される2価のラジカルを表し、
- R
7は、1~20個の炭素原子を含み、1個または複数のヘテロ原子も含み得る、直鎖状または分枝状のアルキルラジカルを表し、
- fは、1~6の範囲、好ましくは2~5、好ましくは2~4、より好ましくは2~3の範囲の整数である]のうちの1つに相当する。
【0039】
好ましくは、式(II)、(III)、および/または(IV)において、Pは、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリオレフィンポリウレタン、ポリアクリレートポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、およびブロックポリエーテル/ポリエステルポリウレタンから非限定的に選択されるポリマーラジカルを表す。
【0040】
例えば、文献EP2468783には、Pがポリウレタン/ポリエステル/ポリエーテルブロックを有するポリマーラジカルを表す式(II)のシリル変性ポリマーが記載されている。
【0041】
一実施形態によれば、シリル変性ポリマーは、シリル変性ポリウレタン、シリル変性ポリエーテル、およびそれらの混合物から選択される。
【0042】
特定の実施形態によれば、シリル変性ポリマー(A)は、式(II’)、(III’)、または(IV’):
[式中、
- R
1、R
3、R
4、R
5、X、R
7、およびpは、上記の式(II)、(III)、および(IV)中と同じ意味を有し、
- R
2は、1個または複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、またはケイ素を任意選択で含み、好ましくは100g/mol~48 600g/mol、より特定すると300g/mol~18 600g/mol、あるいは500g/mol~12 600g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状の2価の炭化水素ラジカルを表し、
- nは0以上の整数である]のうちの1つに相当する。
【0043】
上で規定された式(II’)、(III’)、および(IV’)のシリル変性ポリマーにおいて、R2ラジカルが1個または複数のヘテロ原子を含む場合、前記ヘテロ原子は鎖末端に存在しない。換言すると、シリル変性ポリマーの隣接する酸素原子に結合した2価のR2ラジカルの自由原子価は、それぞれ炭素原子から生じる。したがって、R2ラジカルの主鎖は、両末端において炭素原子で終端し、そして前記炭素原子が自由原子価を有する。
【0044】
一実施形態によれば、シリル変性ポリマー(A)は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリシロキサンポリオール、およびポリオレフィンポリオール、ならびにそれらの混合物から選択されるポリオールから得られ、より好ましくは、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリレートジオール、ポリシロキサンジオール、ポリオレフィンジオール、およびそれらの混合物から選択されるジオールから得られる。上記の式(II’)、(III’)、および(IV’)のポリマーの場合、そのようなジオールは、式HO-R2-OHで表され得、式中、R2は式(II’)、(III’)、または(IV’)中と同じ意味を有する。
【0045】
例えば、式(II’)、(III’)、および(IV’)に存在することができるR
2型のラジカルのうち、以下の2価のラジカルを挙げることができ、下のその式は、2つの自由原子価を示す:
- ポリプロピレングリコールの誘導体:
- ポリエステルジオールの誘導体:
- ポリブタジエンジオールの誘導体:
- ポリアクリレートジオールの誘導体:
- ポリシロキサンジオールの誘導体:
【0046】
上の式において、ラジカルおよび添え字の意味は以下の通りである:
- qは、R2ラジカルの数平均分子量が100g/mol~48 600g/mol、好ましくは300g/mol~18 600g/mol、より好ましくは500g/mol~12 600g/molの範囲となるような整数を表し、
- rおよびsは、R2ラジカルの数平均分子量(Mn)が100g/mol~48 600g/mol、好ましくは300g/mol~18 600g/mol、より好ましくは500g/mol~12 600g/molの範囲となるような、ゼロまたはゼロではない整数を表し、r+sの合計はゼロ以外であると理解され、
- Q1は、好ましくは1~18個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を有する、飽和または不飽和の直鎖状または分枝状の脂肪族または芳香族の2価のアルキレンラジカルを表し、
- Q2は、好ましくは2~36個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の2価のアルキレンラジカルを表し、
- Q3、Q4、Q5、Q6、Q7、およびQ8は、互いに独立して、水素原子、または好ましくは、1~12個の炭素原子、好ましくは2~12個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を有するアルキル、アルケニルもしくは芳香族ラジカルを表す。
【0047】
本発明による組成物の一実施形態によれば、シリル変性ポリマー(A)は、式(II’)、(III’)、および(IV’)に現れるR2ラジカルが、ポリエーテルラジカル、好ましくはポリ(オキシアルキレン)ラジカルを表し、より好ましくはさらに、上に示された式に相当するポリプロピレングリコールから誘導されるラジカルを表すようなものである。
【0048】
一実施形態によれば、R
1は、以下の2価のラジカルのうちの1つから選択され、下のその式は2つの自由原子価を示す:
a)イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導される2価のラジカル:
b)ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)から誘導される2価のラジカル
c)トルエンジイソシアネート(TDI)から誘導される2価のラジカル
d)ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の4,4’および2,4’異性体から誘導される2価のラジカル
e)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導される2価のラジカル
-(CH
2)
6-
f)m-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)から誘導される2価のラジカル。
【0049】
式(II)または(II’)のポリマーは、文献EP2336208およびWO2009/106699に記載された方法に従って得られ得る。当業者であれば、異なる種類のポリオールを使用する場合に、これらの2つの文献に記載された製造方法をどのように適応させるかを知っているであろう。式(II)に相当するポリマーのうち、
- Geniosil(登録商標)STP-E10(Wackerから入手可能):ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、数平均分子量8889g/molを有し、R3はメチル基を表す、ポリエーテル(nは0に等しく、pは1に等しく、R4およびR5はメチル基を表す);
- Geniosil(登録商標)STP-E30(Wackerから入手可能):数平均分子量14 493g/molを有し、ジメトキシ(メチル)シリルメチルカルバメートからなる2つの末端基を有するポリプロピレングリコールであり、すなわち式(II’)において、nは0に等しく;pは1に等しく;R4およびR5はメチル基を表し、R3はメチル基を表す;
- Desmoseal(登録商標)S XP 2636(Bayerから入手可能):トリメトキシ型の2つの基(I)を含み、数平均分子量15 038g/molを有し、R3はn-プロピレン基を表す、ポリウレタン(nは0以外であり、pは0に等しく、R5はメチル基を表す)
を挙げることができる。
【0050】
式(III)または(III’)のポリマーは、例えば文献1829928に記載された方法に従って、ポリエーテルジアリルエーテルのヒドロシリル化によって得られる。式(III)に相当するポリマーのうち、
- ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、14 000~16 000g/molの範囲の数平均分子量を有する、ポリエーテル(pは1に等しく、R4およびR5はメチル基を表す)に相当する、ポリマーMS SAX(登録商標)350(カネカから入手可能);
- ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、16 000~18 000g/molの数平均分子量を有し、R3はエチル基を表す、ポリエーテル(pは1に等しく、R4およびR5はメチル基を表す)に相当する、ポリマーMS SAX(登録商標)260(カネカから入手可能);
- ジメトキシ型の2つの基(I)を含み、約22 000g/molの範囲の数平均分子量を有する、ポリエーテル(pは1に等しく、R4はメチル基を表す)に相当する、ポリマーMS S303H(カネカから入手可能)
を挙げることができる。
【0051】
式(IV)または(IV’)のポリマーは、例えば、ポリオールを1種または複数のジイソシアネートと反応させ、その後アミノシランまたはメルカプトシランと反応させることによって得ることができる。式(IV)または(IV’)のポリマーを調製するための方法は、文献EP2583988に記載されている。当業者であれば、異なる種類のポリオールを使用する場合に、この文献に記載された製造方法をどのように適応させるかを知っているであろう。式(IV)または(IV’)に相当するポリマーのうち、
- Spur+(登録商標)1050MM(Momentiveから入手可能):トリメトキシ型の2つの基(I)を含み、数平均分子量16 393g/molを有し、R3はn-プロピル基を表す、ポリウレタン(nは0以外であり、pは0に等しく、R5はメチル基を表す);
- Spur+(登録商標)Y-19116(Momentiveから入手可能):トリメトキシ型の2つの基(I)を含み、15 000~17 000g/molの範囲の数平均分子量を有し、R3はn-プロピル基を表す、ポリウレタン(nは0以外であり、R5はメチル基を表す)を挙げることができる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、接着性組成物は、式(II)および/もしくは(II’)の少なくとも1種のシリル変性ポリマー(A)、または式(III)および/もしくは(III’)の少なくとも1種のシリル変性ポリマーを含む。
【0053】
本発明の非常に特に好ましい実施態様によれば、ポリマー(A)は、式(II’)のシリル変性ポリマーであり、式中、nは0に等しく、R2はポリエーテル、好ましくはポリ(オキシアルキレン)ジオール、より特定するとさらにはポリプロピレングリコールから誘導される2価のラジカルである。
【0054】
粘着付与樹脂(B):
本発明による架橋性接着性組成物は、少なくとも1種の粘着付与樹脂(B)も含む。
【0055】
前記樹脂は、シリル変性ポリマー(A)と相容性のある任意の樹脂であり得る。
【0056】
「相容性のある粘着付与樹脂」という用語は、ポリマー(A)と50%/50%の割合(特に、重量による)で混合したときに、実質的に均一な混合物を与える粘着付与樹脂を意味すると理解される。
【0057】
樹脂(B)は、
- (i)フリーデル-クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素およびフェノール類の重合によって得られる樹脂;
- (ii)α-メチルスチレンの重合を含む方法によって得られる樹脂であって、前記方法がフェノール類との反応を含むことも可能である、樹脂;
- (iii)天然由来のロジンまたは変性ロジン(例えば、マツのガムから抽出されたロジン、樹木の根から抽出されたウッドロジン、および水素化、二量化、重合、またはモノアルコールもしくはポリオール、例えばグリセロールもしくはペンタエリスリトールでエステル化されたそれらの誘導体);
- (iv)石油画分から生じる約5、9、または10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の水素化、重合、または共重合(芳香族炭化水素との)によって得られる樹脂;
- (v)テルペン樹脂(フリーデル-クラフツ触媒の存在下でのテルペン炭化水素、例えばモノテルペン(またはピネン)の重合から一般に生じる);
- (vi)天然テルペンをベースとする共重合体(例えば、スチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペン、およびビニルトルエン/テルペン);あるいは
- (vii)100℃で100Pa.s未満の粘度を有するアクリル樹脂;
およびさらにはこれらの樹脂の混合物から有利に選択される。
【0058】
このような樹脂は市販されており、上で規定された種類(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の樹脂うち、以下の製品を挙げることができる。
- 種類(i)の樹脂:約870Daの数平均分子量(Mn)を有する、DRTから入手可能なDertophene(登録商標)1510;約630Daに等しい数平均分子量(Mn)を有する、同社から入手可能なDertophene(登録商標)H150;約1200Daの数平均分子量(Mn)を有する、Arizona Chemicalから入手可能なSylvarez(登録商標)TP 95;
- 種類(ii)の樹脂:フェノール類の作用なしでα-メチルスチレンを重合することによって得られる、900Daの数平均分子量(Mn)を有する、Cray Valleyから入手可能なCleartack(登録商標)W100;約1740Daの数平均分子量(Mn)を有し、その生成の方法はフェノール類の添加も含む、これもArizona Chemicalから入手可能なSylvarez(登録商標)510;
- 種類(iii)の樹脂:ロジンとペンタエリスリトールのエステルであり、Arizona Chemicalから入手可能であり、約1700Daの数平均分子量(Mn)を有する、Sylvalite(登録商標)RE 100;
- 種類(iv)の樹脂:約550g/molの数平均分子量(Mn)を有する、Eastmanから入手可能なPicco(登録商標)AR100。
【0059】
好ましい変形形態によれば、樹脂(B)として、種類(i)または(iv)の樹脂から選択される樹脂が使用される。
【0060】
焼成シリカ(C):
焼成シリカ(「ヒュームドシリカ」とも呼ばれる)は、非常に低い見掛け密度を有し、非常に高い比表面積を有する、非常に微細なシリカ粒子(ナノメートルのオーダーのもの)の形態で提供される。焼成シリカは、水素および酸素の存在下で、ケイ素化合物、例えば四塩化ケイ素(それ自体はケイ素と塩素から調製される)を熱分解することによって得られ得る。
【0061】
焼成シリカは、その構成粒子の表面のシラノール(Si-OH)基の存在により、最初は親水性である。このシラノール基を様々な反応物、一般にシリコーン油、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)と反応させることにより、焼成シリカを疎水性にすることができる。
【0062】
好ましくは、焼成シリカ(C)は、疎水性焼成シリカである。
【0063】
一実施形態によれば、疎水性焼成シリカ(C)は、焼成シリカをポリジメチルシロキサンで処理することによって得られる。
【0064】
一実施形態によれば、焼成シリカ(C)は、少なくとも10m2/g、好ましくは50~400m2/g、より好ましくはさらに80~290m2/gの範囲のBET比表面積を有する。BET比表面積は、例えば2010年9月のISO9277規格に従って、Brunauer、Emmett、およびTeller(BET)の方法に基づく吸着等温線を決定することにより、当業者に周知のように測定される。
【0065】
別の実施形態によれば、焼成シリカ(C)は、例えばローラー圧縮機から、または特許EP0280851に記載される方法から、圧縮処理によって得られる。見掛け密度は、1983年8月のISO 787/11規格に従って測定される、タッピングされた見掛け密度の測定によって定量化され、これは概して50~200g/lにわたる範囲内にある。
【0066】
このような焼成シリカ、特に疎水性焼成シリカは、例えばEvonikのAerosil(登録商標)系の製品など、市販されている。
【0067】
疎水性焼成シリカ(C)の例として、Aerosil(登録商標)R202を特に挙げることができ、そのBET比表面積は100±20m2/gであり、そのタッピングされた見掛け密度は約60g/lであり、これはポリジメチルシロキサンで処理することにより疎水性にされている。Aerosil(登録商標)R202の構成粒子は、サイズが約16nmである。
【0068】
架橋触媒(D):
本発明による組成物に使用することができる架橋触媒(D)は、当業者に公知のシラノール縮合用の任意の触媒とすることができる。そのような触媒の例として、有機チタン誘導体、例えばチタンアセチルアセトネート(DuPontからTyzor(登録商標)AA75の名称で市販されている)、有機アルミニウム誘導体、例えばアルミニウムキレート(King IndustriesからK-KAT(登録商標)5218の名称で市販されている)、またはアミン、例えば1,8-ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンすなわちDBUを挙げることができる。
【0069】
シルセスキオキサン樹脂(E):
成分(A)、(B)、(C)、および(D)以外に、本発明による架橋性接着性組成物は、シルセスキオキサン樹脂(E)を任意選択で含むこともできる。
【0070】
本発明の好ましい変形形態によれば、本発明による架橋性接着性組成物は、少なくとも1種のこのようなシルセスキオキサン樹脂を含む。
【0071】
シルセスキオキサン樹脂は、Si-O-Si結合を有する多面体構造またはポリマー構造をとることができる有機ケイ素化合物である。これらは一般に、以下の一般式:
[RSiO3/2]t
[式中、性質が同一であっても異なってもよいRは有機ラジカルを表し、tは、6~12の範囲であり得る整数であり、tは、好ましくは6、8、10、または12に等しい]を有する。
【0072】
一実施形態によれば、シルセスキオキサン(E)は、多面体構造を有する(すなわち、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane)」のPOSS)。
【0073】
好ましくは、シルセスキオキサン樹脂(E)は、以下の一般式(V):
[式中、R’
1~R’
8の各々は、互いに独立して、
- 水素原子、
- 直鎖状または分枝状のC
1~C
4アルコキシラジカル、1~30個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状のアルキルラジカル、2~30個の炭素原子を含むアルケニルラジカル、6~30個の炭素原子を含む芳香族ラジカル、3~30個の炭素原子を含むアリルラジカル、3~30個の炭素原子を含む環状脂肪族ラジカル、および1~30個の炭素原子を含むアシルラジカルからなる群から選択されるラジカル、ならびに
- R’
9およびR’
10が各々、互いに独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分枝状のC1~C4アルキル、直鎖状もしくは分枝状のC1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニル、フェニル、C3~C6アリルラジカル、環状C3~C8脂肪族ラジカル、およびC1~C4アシルラジカルからなる群から選択されるラジカルを表す、-OSiR’
9R’
10基;
ただし:
- R’
1~R’
8ラジカルのうちの少なくとも1つのラジカルはC
1~C
4アルコキシラジカルであり;
- R’
1~R’
8ラジカルのうちの少なくとも1つのラジカルはフェニルラジカルである]に相当する。
【0074】
特に、シルセスキオキサン(E)は、ジメチルメトキシフェニルシロキサン(CAS番号=68957-04-0)である。
【0075】
シルセスキオキサンは、特に特許出願WO2008/107331に記載されている公知の化合物である。一部は市販もされており、例えばDowからDow Corning(登録商標)3074およびDow Corning(登録商標)3037(CAS番号=68957-04-0)の名称で販売されている製品である。
【0076】
他の添加剤:
本発明による架橋性接着性組成物は、吸湿剤、可塑剤、抗酸化剤、顔料、染料、接着促進剤、UV安定剤、難燃性添加剤、およびさらには充填剤、例えばカーボネートベースの充填剤、例えば炭酸カルシウムタイプの充填剤からなる群から選択される1種または複数の添加剤を含むことができる。
【0077】
吸湿剤(または乾燥剤)は、例えば、500g/mol未満の分子量を有する非ポリマー性の加水分解性アルコキシシラン誘導体から、好ましくはトリメトキシシラン誘導体およびトリエトキシシラン誘導体から選択され得る。このような薬剤は、典型的には、組成物が使用される前の保管および輸送中の組成物の貯蔵寿命を延長することができる。例えば、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(例えば、MomentiveからSilquest(登録商標)A-174の商品名で入手可能)、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン(例えば、WackerからGeniosil(登録商標)XL33の名称で入手可能)、ビニルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、またはフェニルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0078】
吸湿剤は、それが存在する場合、本発明による組成物の総重量に対して、例えば0.1重量%~3重量%または1重量%~2重量%を表すことができる。
【0079】
本発明による組成物は、可塑剤も含むことができる。
【0080】
使用することができる可塑剤の例として、接着剤の分野で通例使用される任意の可塑剤、例えば、フタレート、ベンゾエート、トリメチロールプロパンエステル、トリメチロールエタンエステル、トリメチロールメタンエステル、グリセロールエステル、ペンタエリスリトールエステル、ナフテン鉱油、アジペート、シクロヘキサンジカルボキシレート、流動パラフィン、天然油(任意選択でエポキシ化されたもの)、ポリプロピレン、ポリブチレン、水素化ポリイソプレン、およびそれらの混合物を使用してもよい。
【0081】
フタレートのうち、例えば、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソドデシル、フタル酸ジベンジル、またはフタル酸ブチルベンジルを挙げることができる。
【0082】
ベンゾエートのうち、例えば、ネオペンチルグリコールジベンゾエート(例えば、LanxessからUniplex(登録商標)512の名称で入手可能)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(例えば、EastmanからBenzoflex(登録商標)9-88SGの名称で入手可能)、ジエチレングリコールジベンゾエートとジプロピレングリコールジベンゾエートの混合物(例えばKalama ChemicalからK-Flex(登録商標)850 Sの名称で入手可能)、あるいはジエチレングリコールジベンゾエートと、ジプロピレングリコールジベンゾエートと、トリエチレングリコールジベンゾエートとの混合物(例えばEastmanからBenzoflex(登録商標)2088の名称で入手可能)を挙げることができる。
【0083】
ペンタエリスリトールエステルのうち、例えば、ペンタエリスリチルテトラバレレート(例えば、PerstorpからPevalen(商標)の名称で入手可能)を挙げることができる。
【0084】
シクロヘキサンジカルボキシレートのうち、例えば、ジイソノニル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えば、BASF社からHexamoll Dinch(登録商標)の名称で入手可能)および1,4-ビス(2-エチルヘキシル)1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート(例えばConnect ChemicalsからDEHCHの名称で入手可能)を挙げることができる。
【0085】
本発明による組成物中の可塑剤の総含有量は、前記組成物の総重量に対して、0重量%~30重量%、好ましくは1重量%~30重量%、実際にさらには、例えば1重量%~15重量%の範囲とすることができる。
【0086】
本発明による組成物は、抗酸化剤(UV安定剤という用語でも示される)も含むことができる。
【0087】
抗酸化剤は、熱または光の作用により形成されやすい酸素との反応により生じる劣化から組成物を保護するために導入することができる化合物である。これらの化合物は、フリーラジカルを捕獲する一次抗酸化剤を含んでもよい。一次抗酸化剤は、単独で、または他の二次抗酸化剤もしくはUV安定剤と組み合わせて使用され得る。
【0088】
例えば、BASFにより販売されているIrganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)B561、Irganox(登録商標)245、Irganox(登録商標)1076、またはIrgafos(登録商標)168を挙げることができる。
【0089】
本発明による組成物の総重量を基準にして、0.1重量%~3重量%、好ましくは1重量%~3重量%の範囲の抗酸化剤の量が、一般に使用される。
【0090】
一実施形態によれば、本発明による架橋性接着性組成物は、
- 3重量%~90重量%、好ましくは5重量%~80重量%、優先的には10重量%~70重量%、特に20重量%~60重量%、有利には36重量%~56重量%の、加水分解性アルコキシシラン基を含む少なくとも1種のポリマー(A);
- 8重量%~80重量%、特に15重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、優先的には25重量%~70重量%、とりわけ30重量%~60重量%、有利には40重量%~60重量%の少なくとも1種の粘着付与樹脂(B);
- 1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、有利には2重量%~6重量%の焼成シリカ(C);および
- 0.01重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、優先的には0.05重量%~4重量%、有利には0.1重量%~3重量%、特に0.5重量%~2重量%の架橋触媒(D);
を含み、これらの重量百分率は、前記組成物の総重量を基準にして示されている。
【0091】
本発明の好ましい代替態様によれば、架橋性接着性組成物がシルセスキオキサン樹脂(E)を追加的に含む場合、後者の量は、前記組成物の総重量を基準にして、0.1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から20重量%、優先的には2重量%から15重量%、有利には3重量%から12重量%で変化し得る。
【0092】
本発明による架橋性接着性組成物は、
- 空気を排除して、好ましくは不活性雰囲気下で、ポリマー(A)、粘着付与樹脂(B)、および適切な場合には他の任意選択の添加剤を混合して、部分(PA)を形成する工程;次いで
- 架橋触媒(D)と、存在する場合にはシルセスキオキサン樹脂(E)とを混合して、部品(PB)を形成する工程;次いで
- 50℃~180℃、好ましくは100℃~150℃の温度で、均一混合物(PC)が得られるまで、部分(PA)中に焼成シリカ(C)を組み込む工程;ならびに最後に
- (PC)を(PB)と混合する工程を含む方法によって調製され得る。
【0093】
架橋性接着性組成物の使用
本発明は、2つの基材の準構造組立てのための、上で規定された架橋性接着性組成物の使用にも関する。
【0094】
準構造組立てとは、接着シールが2~8MPaにわたる範囲内のせん断応力に耐えることができる2つの基材の組立てを意味する。
【0095】
対象の基材は非常に多様であり、特に、
- 任意選択で塗料(例えば、自動車部門で使用される塗料)でコーティングされた、金属(例えば、アルミニウムまたは鋼鉄)および複合材料;
- 段ボール、布地、皮革、ガラス;
- 熱可塑性ポリマー、例えば
- 任意選択で予備的な表面処理、例えば固定プライマー、プラズマ処理、またはコロナ処理を受けた、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン);
- アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS);
- スチレン-アクリロニトリル(SAN);
- ポリ塩化ビニル(PVC);
- ポリカーボネート;
- ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA);あるいは
- ポリエステル
から選択される。
【0096】
好ましい変形形態によれば、架橋性接着性組成物は、エレクトロニクス、建設、輸送手段の製造の分野において、好ましくは自動車、鉄道、航空宇宙、および造船産業において使用される。架橋性接着性組成物は、多様な気候条件に対するその耐性により、屋外での2つの基材の組立てに使用され得る。
【0097】
組立方法:
本発明は、2つの基材を組み立てるための方法であって、
- 30~130℃の温度に加熱することにより、上で規定された接着性組成物を溶融する工程(i)、次いで
- 前記組成物を第1の基材の表面に堆積させる工程(ii)、次いで
-以下:
- 15℃~200℃の範囲の温度で加熱することにより、前記組成物を架橋する工程(iii1);および
- 前記表面を第2の基材の表面と接触させる工程(iii2)
を含む工程(iii)
を含む、方法にも関する。
【0098】
第1および第2の基材は、異なっていても、同じ化学的性質のものであってもよく、上で規定される通りである。
【0099】
溶融する工程(i)は、ホットメルト接着剤よりも低い、一般に150℃~210℃の温度範囲で有利に行われる。
【0100】
工程(ii)の第1の特に好ましい実施形態によれば、組成物をビーズの形態で堆積させる。このようなビーズの直径は、一般に0.1mm~2cmにわたる範囲内である。このようなビーズは、接続されたダイを通して、あるいは作業者が持つカートリッジから、あるいは組立ラインでのロボット適用の場合にはリザーバから、接着剤を熱間押出しすることによって得ることができる。このような適用は、組成物の使用について上述した産業分野において特に有利である。本発明による架橋性接着性組成物からの垂れの低減、またはさらには解消により、水平面に対して傾いた基材上に前記組成物を前記ビーズ形態で適用すること、および架橋する工程(iii1)の後に、均一な厚さおよび均一な機械的特性を有利に有する接着シールを形成することが有利に可能となる。
【0101】
工程(ii)の第2の実施形態によれば、組成物を、0.1mm~2cm、好ましくは1mm~10mmの厚さを有する層の形態で堆積させる。このような層は、噴霧、押出し(例えば、スロット付きノズルなどのダイで)、コーティング(例えば、ローラーまたはドクターブレードで)により得られ得る。
【0102】
本発明による接着性組成物を架橋する工程(iii1)は、前記組成物を15℃~200℃の範囲の温度で加熱することによって行われる。
【0103】
この実施形態の第1の変形形態によれば、前記工程(iii1)は、15℃~45℃の範囲の温度、好ましくは常温、特に18℃~25℃、特定すると23℃で、周囲湿度の存在下、特に空気1m3当たり20~60gの水、好ましくは40~60g/m3の絶対湿度で行われる。このような架橋条件は、これらによりオーブンの存在を必要としない工業的架橋プロセスを行うことを可能にするので、特に有利である。これらにより、感熱性基材、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、発泡体、または布地から第2の基材を選択することも可能になる。
【0104】
この実施形態の第2の変形形態によれば、前記工程(iii1)は、90℃~160℃、より好ましくは120℃~140℃の範囲の温度で、気体(特に空気)1m3当たり10~200gの水、好ましくは20~60g/m3、さらにより優先的には40~50g/m3の範囲の絶対湿度の存在下で行われる。このような架橋条件は、例えば自動組立ラインに設置された炉(またはチャンバー)で得られる。
【0105】
この架橋する工程(iii1)は、特に、接着性組成物の加水分解性アルコキシシラン末端基を有するポリマー鎖の間に、大気の湿度の作用下で、三次元ポリマーネットワークの形成をもたらすシロキサン型の結合を生成する効果を有する。
【0106】
本発明による組立方法において、工程(i)、(ii)、および(iii)は順次行われる。
【0107】
工程(iii)に含まれる工程(iii1)および(iii2)に関しては、これらを任意の順序で、さらには同時に行うことができる。
【0108】
したがって、工程(iii)の第1の実施形態によれば、組成物を架橋する工程(iii1)は、反応が完了するまで行う。次いで、この後、第2の基材を接触させる(すなわち「貼る」)工程(iii2)が続く。この実施形態は、第2の基材が感熱性基材、例えば上述の感熱性基材から選択される場合に特に有利である。
【0109】
工程(iii)の第2の実施形態によれば、貼る工程(iii2)は、架橋反応がまだ完了していなくても、架橋する工程(iii1)と同時に行われる。この場合、前記架橋反応は、第2の基材を貼った後に継続し、完了する。
【0110】
工程(iii)の第3の実施形態によれば、第2の基材を貼る工程(iii2)を最初に行い、次いで、このようにして接触させた基材の2つの表面間に含まれる接着性組成物を架橋する工程(iii1)が続く。
【0111】
工程(iii)の第4の実施形態によれば、第2の基材を接触させる(すなわち「貼る」)工程(iii2)の前に、組成物を架橋する工程(iii1)を部分的に行う。この場合、前記架橋反応(iii1)は、第2の基材を貼った後に継続し、完了する。
【0112】
最後に、本発明は、架橋状態の上で規定された接着性組成物によって接合された少なくとも2つの基材を含む組立方法に関する。
【0113】
これより本発明を以下の実施例で説明するが、これは単に説明として提示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【実施例】
【0114】
例A(WO2020/128200による比較例):
Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする熱架橋性接着性組成物
A1.組成物の調製
表1の組成物は、まず粘着付与樹脂Picco(登録商標)AR100を減圧下でガラス反応器に導入し、約160℃に加熱することにより調製する。次に、樹脂が完全に溶融したら、Geniosil(登録商標)STP-E30を添加する。
【0115】
混合物を減圧下で15分間撹拌し、次に70℃に冷却する。触媒(K-KAT(登録商標)5218)およびシルセスキオキサンDow Corning(登録商標)3074を次いで導入する。混合物を減圧下で撹拌しながらさらに10分間維持する。
【0116】
A2.垂れの測定:
このようにして調製した組成物を、ハンドガンにより、温度120℃で、直径5mmのビーズの形態でカードベースの基材上に堆積させる。
【0117】
ビーズは垂直の位置で、温度140℃で、50g/m3の絶対湿度の存在下で1分間架橋する。
【0118】
次いで、ビーズが垂れた距離を、その初期位置とその最も遠い最終位置との間で測定する。
【0119】
表された結果を表1に示す。
【0120】
A3.常温での架橋時間の測定:
A1で調製した組成物を、NF T46-002規格に規定されるH2型の試験片に相当する型に充填するように120℃で適用し、その厚さは4mmであり、その中央部は、長さ25mmにわたって4×2mmの長方形断面を有する。
【0121】
前記型を常温(約23℃)で放置し、組成物の挙動を観察する。
【0122】
架橋を完了するのに必要な時間を表1に示す。
【0123】
A4.引張試験による接着シールの破断応力および破断点伸びの測定:
測定の原理は、デバイスの可動ジョーが100mm/分に等しい一定速度で移動する引張試験デバイスで、架橋接着性組成物からなる上で規定したH2型の試験片を引張り、試験片が破断する瞬間にかけられた応力(MPa単位)およびさらに試験片の伸び(%単位)を記録することにある。
【0124】
得られた測定結果を表1に示す。
【0125】
A5.せん断試験を用いたポリプロピレン(PP)支持体上の接着シールの破断応力の測定:
長さ100mm、幅25mm、および厚さ2.5mmの2つの平行六面体PP試験片を使用する。
【0126】
カートリッジに包装した接着性組成物を、直径約5mmのビーズの形態で、120℃で適用し、これは、幅25mmおよび長さ12.5mmの第1の試験片の端部に位置する被覆領域に堆積させる。
【0127】
次に、2つの試験片が互いに重なり、その2つの自由端部が重なり領域に対して対称に位置するように、ウェッジシステムを使用して、第2の試験片の1つの端部を前記領域に押し付け、過剰な接着剤をスパチュラで除去し、重なり領域のビーズを押し潰すことから生じる接着剤層は、厚さが800μmとなる。
【0128】
このようにして得られた組立体で、接着性組成物を標準的な条件下(23℃、および1m3当たり10gの水の絶対湿度の存在下)で24時間放置して架橋する。
【0129】
次に、10mm/分の速度で作動する万能試験機を用い、2つの試験片が分離して組立体が破壊されるまで、組立体をせん断試験に供する。
【0130】
試験を3回繰り返し、組立体の破壊に相当するせん断応力の平均を表1に報告する。
【0131】
A6.接着シールの温度耐性の試験:
A6.1:60g/m2に等しい単位面積当たりの重量で架橋組成物でコーティングされたPET支持体層の事前調製:
厚さ50μm、寸法20cm×40cmのポリエチレンテレフタレート(PET)の長方形シートを支持体層として使用する。
【0132】
A1の箇所で得られた組成物を100℃に近い温度に予熱し、カートリッジに導入し、そこからビーズを押し出し、これをシートの幅に平行にシートの縁部近くに堆積させる。
【0133】
その後、このビーズに含まれる組成物をシートの表面全体に広げ、実質的に一定の厚さの均一な層を得る。これを行うためにフィルムスプレッダー(フィルムアプリケーターとしても公知である)を使用し、シートの1つの縁部から反対側の縁部まで動かす。60g/m2の単位面積当たりの重量に相当する組成物の層をこうして堆積させ、これは、60μmのオーダーのおおよその厚さを表す。
【0134】
こうしてコーティングしたPETシートを次に、組成物の架橋のため、120℃のオーブン内で湿潤雰囲気(絶対湿度50g/m3)下に5分間置き、次いで長方形であり同じ寸法を有するシリコーンフィルムのシートからなる非粘着性保護層(すなわち「剥離ライナー」)上に積層する。
【0135】
得られた3重層を、以下に記載する試験に供する。
【0136】
A6.2:接着シールの125℃における静的せん断強度時間:
架橋接着性組成物からなる接着シールの耐熱性は、前記接着シールが125℃で静的せん断に耐える時間を決定する試験を用いて評価する。この試験には、FINAT No.8の方法を参照する。原理は以下の通りである。
【0137】
長方形のストリップ(25mm×75mm)の形態の試験片を、前で得られた3重層から切り出し、常温(23℃、湿度50%)で24時間保管する。
【0138】
非粘着性保護層の全体を除去した後、接着ストリップの端部に位置する一辺の長さが25mmの正方形部分をガラス板に付ける。
【0139】
こうして得られた試験板を、適当な支持体により、125℃のオーブン中に実質的に垂直に導入し、長さ50mmのストリップの接着により接合していない部分は、板の下に配置する。熱平衡後、ストリップの自由なままである部分を1kgの錘に接続し、デバイス全体を試験期間、常に125℃のオーブン内にあるままにする。
【0140】
この錘の影響下で、ストリップを板に付着させる接着シールは、せん断応力に供される。この応力をより効果的にモニタリングするために、試験板を垂直に対して2°の角度をなすように実際に置く。
【0141】
終了時に、この応力の影響下で接着シールが破損した後、ストリップが板から外れる時間を記録する。
【0142】
時間単位で表された結果を表1に示す。
【0143】
例Bおよび例C:Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする比較接着性組成物
A1の箇所で示した例Aの組成物の調製を繰り返すが、ただし、
- 例Bでは:シルセスキオキサンを導入せず、
- 例Cでは:シルセスキオキサンを導入せず、触媒を添加して次に10分間撹拌した後、Aerosil(登録商標)R202を導入し、再び約10分間撹拌を行う。
【0144】
A2、A3、A4、A5、およびA6の箇所に示す、垂れの測定、常温での架橋時間の測定、ならびにさらに引張試験およびせん断試験を繰り返す。表1に示す結果が得られる。
【0145】
本発明による実施例1および実施例2:Geniosil(登録商標)STP-E30をベースとする常温で架橋可能な接着性組成物
A1の箇所に示す例Aの組成物の調製を繰り返すが、ただし、触媒およびシルセスキオキサンを添加して次に10分間撹拌した後、Aerosil(登録商標)R202を導入し、再び約10分間撹拌を行う。
【0146】
A2、A3、A4、およびA5の箇所に示す、垂れの測定、常温での架橋時間の測定、ならびにさらに引張試験およびせん断試験を繰り返す。表1に示す結果が得られる。
【0147】
以下が観測される。
- 実施例1および実施例2の組成物の垂れは、例Bと比較して大幅に低減されている。加えて、実施例2の組成物の垂れは解消されており、シルセスキオキサン樹脂(E)(例A)または焼成シリカ(C)(例C)の効果と比較して、シルセスキオキサン樹脂(E)と焼成シリカ(C)との組合せの優れた効果が示されている。
- 実施例2では、例Bと比較して、常温での架橋時間がかなり減少している(2分の1未満)。
- 実施例2では、接着シールでの引張破断応力は、例Bと比較して、著しく増加している。しかしながら、シルセスキオキサン樹脂(E)または焼成シリカ(C)を別々に添加すると、破断応力は減少する(例Aおよび例C)。したがって、シルセスキオキサン樹脂(E)と焼成シリカ(C)の組合せの添加で観察される引張破断応力の増加は全く予想外であり、これらの成分の間の相乗効果を示している。
- せん断破断応力を用いて評価した、PP基材の組立てにおける実施例1および実施例2の接着シールの粘着性は、例Aおよび例Bと異なり、準構造用接着剤の典型的なオーダーの大きさである。参照として、Bostik SAから準構造用接着剤としてHM4229の名称で販売されているポリアミドホットメルト接着剤で決定された相当する値は6MPaである。焼成シリカ(C)を伴わないシルセスキオキサン樹脂(E)の添加(例A)は、例Bと比較して、破断応力に影響を及ぼさないことに留意すべきである。したがって、シルセスキオキサン樹脂(E)と焼成シリカ(C)の組合せの添加は、シルセスキオキサン樹脂(E)を伴わずに焼成シリカ(C)を含む組成物(例C)と同じ破断応力をもたらすことが予想される。しかしながら、破断応力はさらに増加し、これらの成分の間の相乗効果を示している。
【0148】
A6.1の箇所に示す自己接着性PET支持体層の調製も繰り返すが、ただし、コーティングされたPETシートを、架橋のために常温および湿度条件(約23℃および絶対湿度10g/m3)下で7時間放置し、その後、非粘着性保護層上に積層する。得られた3重層は、その後、A6.2の箇所に記載した試験に供され、表1に示す結果が得られる。
【0149】
結果は、シルセスキオキサン樹脂(E)の添加(例A)が125℃におけるせん断強度の改良(例Bとの比較)をもたらすのに対し、焼成シリカ(C)の添加(例C)は125℃におけるせん断強度に事実上影響を及ぼさないことを示している。一方、実施例1および実施例2の接着シールでは、例A、例B、および例Cよりもはるかに優れた温度粘着を示す、125℃におけるせん断強度値が観測される。したがって、シルセスキオキサン樹脂(E)と焼成シリカ(C)の組合せの添加により、驚くべきことに、125℃におけるせん断強度を改良することが可能となり、これらの成分は相乗的に作用する。加えて、このような粘着は、例A、例B、および例Cのようにオーブン(または炉)を使用することなく、常温および周囲湿度で有利に得られ得る。
【国際調査報告】