IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サン-ゴバン ペルフォルマンス プラスティク フランスの特許一覧

特表2024-526648耐雷壁として用いられる編物立体導電性マット
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】耐雷壁として用いられる編物立体導電性マット
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/14 20060101AFI20240711BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20240711BHJP
   D06M 15/513 20060101ALI20240711BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20240711BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20240711BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
D04B21/14 Z
D06M15/55
D06M15/513
D06M15/227
D06M15/59
D02G3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500260
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 FR2022051221
(87)【国際公開番号】W WO2023281180
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107293
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310023106
【氏名又は名称】サン-ゴバン ペルフォルマンス プラスティク フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ デュモン
(72)【発明者】
【氏名】ガエタン マオ
【テーマコード(参考)】
4L002
4L033
4L036
【Fターム(参考)】
4L002AA00
4L002AA05
4L002AB02
4L002BB01
4L002EA00
4L002FA06
4L033AA08
4L033AA09
4L033AB06
4L033AC06
4L033AC15
4L033CA12
4L033CA18
4L033CA45
4L033CA47
4L033CA49
4L033CA50
4L033CA55
4L036MA04
4L036MA33
4L036MA34
4L036UA06
(57)【要約】
本発明は、立体導電性マットであって、電荷をその表面全体にわたって均質に分布させることができる導電性ニットファブリックで形成され、ニットファブリックが少なくとも1本の導電性金属フィラメント糸を有することを特徴とする、立体導電性マット;このようなマット、並びに40~95体積%の熱可塑性ポリマー材料及び/又は熱硬化性ポリマー材料を有する、複合材料;並びに、このような立体導電性マット又はこのような複合材料の、耐雷壁としての使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体導電性マットであって、電荷をその表面全体にわたって均質に分布させることができる導電性編物からなり、前記編物が、少なくとも1本の導電性金属フィラメント糸を有することを特徴とする、立体導電性マット。
【請求項2】
前記少なくとも1本の導電性糸が、銅、青銅、アルミニウム、真鍮、チタン、銀、金、又はそれらの合金でできていることを特徴とする、請求項1に記載のマット。
【請求項3】
前記編物が、単一の金属フィラメント糸、例えば直径0.01~1mmの銅などの単一金属フィラメント糸を有することを特徴とする、請求項2に記載のマット。
【請求項4】
前記導電性編物が、少なくとも1本の導電性一方向性(UD)糸であって、前記電荷を前記UD糸の方向に移動、すなわち放電させることができる、少なくとも1本の導電性一方向性(UD)糸を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のマット。
【請求項5】
1本又は複数の前記導電性(UD)糸が、1種又は複数の金属、例えば銅、青銅、又はアルミニウムなどであることを特徴とする、請求項4に記載のマット。
【請求項6】
前記金属UD糸が、直径0.02~2mmである12本の銅糸の束からなるか、又はそのような束の導電性と同程度の導電性を有することを特徴とする、請求項5に記載のマット。
【請求項7】
前記導電性編物が、少なくとも2つの異なる導電性材料を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のマット。
【請求項8】
前記導電性編物が、0~40体積%の、1本又は複数の補強糸、例えば炭素繊維、ガラス、又はアラミドなどを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のマット。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のマット、並びに40~95体積%の熱可塑性ポリマー材料及び/又は熱硬化性ポリマー材料を有することを特徴とする、複合材料。
【請求項10】
前記ポリマー材料が、100~5体積%の熱可塑性材料及び0~95体積%の熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
熱硬化性ポリマー材料の体積割合が、熱可塑性ポリマー材料の体積割合よりも大きいことを特徴とする、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
補強繊維を、請求項1~8のいずれか1項に記載のマットに組み合わせることによって得られることを特徴とする、請求項9~11のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載のマット、及び1本又は複数の補強糸の、1つ又は複数の編物を、重ね合わせることによって得られることを特徴とする、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
陸上、水上、若しくは空中の乗り物、又は建物、特には列車の車体部分、航空機の機体、若しくは宇宙乗り物の、耐雷壁を構成するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の立体導電性マット、又は請求項9~13のいずれか1項に記載の複合材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐雷性の壁/表面、特には雷にさらされる耐雷性の壁/表面に関する。したがって、それは、例えば、この点で、航空機の機体部分に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材、特にはカーボン/エポキシ複合材の、アルミニウムに対する優位性は、それらの機械的性能及びそれらの軽さによって、今や明らかである。しかしながら、複合材からできている雷暴露部分を作り出すことは、それらの耐落雷性、及び航空機の機体に沿って、例えばその部分を損傷することなく、電荷を分散させるそれらの能力を、確保することを必要とし、一方で、アルミニウムの伝導性は、この機能を果たすのに十分である。
【0003】
この雷保護機能は、一般的にはカーボン/エポキシ複合材において、いくつかの様々な方法で取り扱われ、これは、互いに排他的ではなく、随意に累積される。カーボンは、良好な導体であるが、落雷を受けると損傷し、これは複合材の性能、特には機械的性能を悪化させる。
【0004】
第1方法は、表面層を追加することからなり、これは、下記でできている:例えば、一般的には非常に低い坪量(50~300、特には約80g/m)である、通常「銅メッシュ」(銅/アルミニウム/青銅)と呼ばれているものであって、エキスパンドメタルでできており、穿孔されている箔でできており(特には3M社から入手可能)、電荷を表面全体にわたって均質に分散させることを意図されているもの。
【0005】
第2方法は、幅1~15cmかつ厚さ0.05~1mmの穿孔されていない箔を追加することからなり、これは、銅ファブリックから電荷を集め、かつ航空機の後部のためのものであることを意図されている他の部分にそれらを放電する、機能を有しうる。伝導性層の使用が不可能な場合、例えばレドームの場合のように電波に対して透過性である必要がある場合、箔の形態をとりうるダイバータが用いられる。その箔は、雷を直接引き寄せ、かつ電荷を放電させる、雷導体機能を有する。いくつかの実施形態では、箔は2つの部分間の接合部に配置され、等距離の等電位帯を構成し、ネジは2つの部分間に導電性を生み出す。
【0006】
第3方法は、熱硬化性マトリックス内に、上記で引用した2つの形態のいずれかである導電性成分を有する複合材料を用いることからなる。
【0007】
これらの解決策は満足できるものではない。
【0008】
第1に、ファブリックの使用、特にはポリマー材料を予め含浸させたファブリック(又は「プリプレグ」)の使用が、特に一般的である。これらのファブリックは、従来、直交して配置されている緯糸及び経糸から形成されており、従来は平坦な構造を有する。立体(又は3D、3次元)物品を得るために、ファブリックは、一般的には切断され、モールド内に配置され、これの全体的な形状は、作製される部品の全体的な形状に対応する。そして、ポリマー材料(又は樹脂)は、特には剛性のある部品を得るために、モールド内に注入され、重合する。織物補強材をモールド上にドレープすることは、時間がかかり、困難な作業である。それは、複数の「プリプレグ」層を用いることを要求し、これらは、モールドの形状に応じて、過剰な被覆を避けつつ十分な厚みを確保するために、慎重に切断かつ配置される必要がある。予め含浸されている又は含浸されていない金属ファブリックの切断は、材料の30%に相当しうる物品損失を含む。金属性導電性ファブリックは、部品の形状が3次元であるので、ドレープするのがさらにより困難である。
【0009】
金属ファブリックの複数の部分を縫い合わせて、複雑な表面を作り出しうる:それらの実施は複雑であり、そして繊維の連続性が確保されず、表面全体にわたる電荷の分布の均質性が低下する。
【0010】
一方、穿孔されていない箔の使用は、比較的複雑な切断を要求し、スクラップされなければならない廃棄物の生成を引き起こす。
【0011】
最後に、導電性複合材内に熱硬化性マトリックスを用いることは、複合材が熱エネルギーを吸収し、劣化し、穴を形成する傾向にあるという欠点を有する。
【0012】
米国特許出願公開第2020/290296号明細書には、導電性炭素編物からなる立体導電性マットを記載しているが、これは、耐雷壁を構成するには抵抗が大きすぎる。
【0013】
米国特許第4 755 904明細書には、導電性編物からなる導電性マットを記載している:このマットは平面的であり、非立体的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、雷保護又は耐雷部品であって、この表面が複雑な立体幾何学的形状であってよく、工業的に容易にスケールアップしうる製造及び実施によるものであり、上記のような欠点がない、雷保護又は耐雷部分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、本発明は、立体導電性マット(3次元導電性マット)に関し、これは、その表面全体にわたって電荷を均質に分布させることができる導電性編物からなり、編物が少なくとも1つの導電性金属フィラメント糸を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
導電性編物(導電性ニットファブリック)は、導電性材料でできている少なくとも1つのフィラメント糸(これは、モノフィラメント若しくはマルチフィラメントであってよく、かつ/又は、例えば撚り若しくは巻き付け、若しくは任意の他のテキスタイルプロセスによって、結合されているステープル繊維から形成されてよい)から得られる。本発明の意味において、編物は、1又は複数の編まれた糸を含み、1又は複数の編まれた糸は、それらの形状の観点から、1つ又は複数のメッシュ糸(ループ)、1つ又は複数のフィラー糸(波形)、1つ又は複数のフロート糸からなってよいが、緯糸(一方向性)からなるものでなくてよい。様々な編み技術(特には丸編み又は横編み)が、特には、ステッチのない、一体の2D又は3D部品を形成している編物を得ることを可能にする。技術の観点から、導電性編物を、横編み技術によって得うる:これは、その形状にかかわらず、ファブリックに類似していることによる糸の好ましい方向であり、列を形成している縦方向とは対照的に、横方向は行を形成する。
【0017】
これらの編物構造体は、織物構造体と比較して多くの利点を有する。実際、最初に3D構造体をステッチなしで一体に作製する可能性に加えて、編み(ニッティング)は、適切であれば、ステッチ糸について、単一の糸のスプールから行われうる一方で、ファブリックは、まだ複数の異なるスプールを必要とする。さらに、織物構造体をモールド上にドレープすることは、特には所望の形状が複雑な場合、長時間かつ繊細な作業であるし、数層のファブリックであって、切断される必要があり(物品損失は材料の30%を占めうる)、かつモールドの形状に応じて慎重に配置される必要があり、それによって、重なり過ぎを避けつつ、十分な厚みを確保する、数層のファブリックを用いることを要求し、機械的強度の保持を確保するために局所的に補強部品を追加することを要求する。この保持は、不完全である;なぜなら、繊維が連続していないからである。2D又は3D編みは、複雑な物品を作製することを可能にし、これは、適切であれば、2D又は3D形状で直接ドレープされてよく、得られる物品全体にわたって糸の連続性を確保しうるし、編物は、所望の物品を得るのに適合する形状を既に有し、例えば、柔軟な基材の周囲に、例えばシリコンブラダーなどの周囲に、配置される必要はない。そして、アセンブリ全体をモールド内に配置して、完成物品を得ることを可能にする真空中での圧密化が達成される。
【0018】
さらに、織物構造体は、これらを最も一般的に用いられるポリマー材料(例えばゲル化されたもの)で予め含浸させた場合、繊細に取り扱われる必要もあり、これらの構造体は、保護フィルムを剥がすと粘着性があり、室温では限られた時間でのみ使用可能である。逆に、編みは、適切であれば、導電性の糸又は繊維と混合された、糸又は繊維の形態の熱可塑性ポリマー材料を、一体化することを可能にし、1つ又は複数の導電性材料及びマトリックスの両方を含む、「ドライ」と呼ばれるプリフォーム(最終形態の前の中間的/一時的な形態)を得ることを、可能にする。
【0019】
したがって、本発明の編まれたマット(編物マット、ニットマット)は、有利には、立体複合体を含む、最終部品の形状でできている。本発明は、導電性繊維の実施及び連続性を容易にすることを提供して、導電性及び電荷分布の均質性を向上させる。
【0020】
好ましくは、編物は、少なくとも1本の導電性フィラメント糸、特には1~4本の糸、例えば直径0.1mmである4本の銅糸を有する。
【0021】
そして、好ましくは、少なくとも1本の導電性糸は、金属性、例えば銅、青銅、アルミニウム、真鍮、チタン、銀、金、又はそれらの合金である。
【0022】
そして、好ましくは、編物は、単一の金属フィラメント糸、例えば直径0.01~1mmである銅などを有する。
【0023】
好ましくは、導電性編物は、少なくとも1本の導電性一方向性(UD)糸を有し、これは、UD糸の方向に電荷を移動-放電させることができる。各UD糸は緯糸である。
【0024】
そして、好ましくは、1本又は複数の導電性UD糸は、金属性、例えば銅、青銅、又はアルミニウムなどである。
【0025】
好ましくは、金属UD糸は、直径0.02~2mmである12本の銅糸の束からなるか、又はそのような束の導電性と同程度の導電性を有する。その結果、これらのUD糸は、場合によっては繰り返される、落雷に対応する大量の電荷を放電する能力を有する。
【0026】
興味深い代替案では、導電性編物は、少なくとも2つの異なる導電性材料を含む。
【0027】
別の興味深い代替案では、導電性編物は、0~40体積%の、1本又は複数の補強糸、例えば炭素繊維、ガラス、又はアラミドなどを含む。この補強糸又はこれらの補強糸は、例えば、1本又は複数のメッシュ糸、フィラー糸、及び/若しくはフロート糸、並びに/又は1本又は複数の一方向性糸の形態で編物内に付加された、1本又は複数の緯糸の形態で存在しうる。
【0028】
本発明の別の目的は、複合材料であって、上記のようなマット、及び40~95体積%の熱可塑性ポリマー材料及び/又は熱硬化性ポリマー材料を含むことを特徴とする、複合材料からなる。複合材料(最終物品)は、以下にさらに詳細に説明する複数の構成要素から得られ、この構成要素としては、随意に付加された0~60体積%の熱可塑性ポリマー材料及び/又は熱硬化性ポリマー材料、好ましくは単独で熱可塑性、を含む、上記のマット(中間物品)が挙げられる。ポリマー材料は、熱可塑性のみでありうるし、又は熱硬化性のみでありうる。熱可塑性ポリマー材料は、例えば、1本又は複数のメッシュ糸、フィラー糸、及び/若しくはフロート糸、並びに/又は1本又は複数の一方向性糸の形態で編物内に付加された、1本又は複数の緯糸の形態で、マットの金属ニット構造体内に組み込まれうる。熱可塑性ポリマーの例として、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンサルファイド)(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)でできているものを、単独で、又はそれらのいくつかの混合物若しくは共重合体として、挙げうる。熱硬化性ポリマー材料は、その後の含浸によってマットの導電性編物内に一体化されうる。熱硬化性ポリマー材料としては、ポリウレタン(PU)、エポキシ樹脂、シアネートエステル、フェノール樹脂、不飽和ポリエステルでできているものを、挙げうる。
【0029】
この複合材料において、ポリマー材料は、有利には、100~5体積%の熱可塑性材料、及び0~95体積%の熱硬化性樹脂を含む。金属編物構造体は、導電性並びに電荷の分布及び放電を改善する繊維連続性を有するので、それは、雷に打たれても加熱が少ないし、熱硬化性樹脂を含まず、熱可塑性材料のみでポリマーマトリックスを形成しうる。すでに明示したように、熱可塑性材料を用いないこともありうるが、好ましさの程度が低い。実際、主に熱硬化性であるポリマー材料中の熱可塑性ポリマーの割合が半数以下であることは、ポリマー材料を溶着可能にする。一方で、この熱硬化性材料は、上述のように雷に打たれたときの比較的低い加熱により、穴が比較的開きにくくなる。好ましくは、熱可塑性が、比較的高いガラス転移温度Tgにおいて、熱硬化性樹脂のガラス転移温度よりも比較的高いガラス転移温度、特には120℃超のTgを有する熱可塑性ポリマーを用いることによって、求められ、それによって、ポリマーマトリックスの耐熱性を保証する。
【0030】
熱硬化性ポリマー材料を用いないこともありうる。熱硬化性ポリマーが存在する場合、その体積比率は、好ましくは熱可塑性ポリマー材料のものよりも大きい。
【0031】
好ましくは、本発明の複合材料は、補強繊維を上述の編まれた導電性マットと組み合わせることによって得られる。したがって、補強繊維は、織られた糸、マットの形態で熱可塑性ポリマー材料と関連付けられてよく、随意にそれら自体が熱可塑性ポリマー材料と関連付けられてよく、かつ/又は熱硬化性ポリマー材料に予め含浸されてよい。
【0032】
しかしながら、この実施形態の好ましい変形例では、複合材料は、本発明による編まれた導電性マットと、1本又は複数の補強糸の1つ又は複数の編物とを重ね合わせることによって得られる。また、1本又は複数の補強糸の各編物は、熱可塑性ポリマー材料と予め関連付けられてよく、かつ/又は熱硬化性ポリマー材料で予め含浸されてよい。
【0033】
また、本発明は、陸上、水上、若しくは空中の乗り物、又は建物、特には列車の車体部、飛行機の機体、又は宇宙乗り物の、耐雷壁を構成するための、上述の立体導電性マット又は複合材料の使用に関する。
【0034】
本発明は、以下の実施例に照らしてより良く理解されるであろう。
【実施例
【0035】
比較例1
【0036】
複合材が、電荷を表面全体にわたって均質に分布させることを意図された、80g/mに等しい坪量を有する「銅メッシュ」ファブリック、及び幅10cmかつ厚さ10分の数mmの銅箔であって、銅ファブリックから電荷を集めかつそれらを飛行機の後方に向かって放電させる機能を有する銅箔を、隣り合わせで、加えることによって、次いで、このようにして得られたアセンブリであって、この表面の一部が銅メッシュファブリックからなり、この表面の他の部分が銅箔からなるアセンブリに、エポキシ樹脂を予め含浸させた織物炭素繊維のマットを重ね合わせることによって、作られる。
【0037】
この材料は、ドレープするのが非常に難しく、まして立体的に複雑な形態なのでなおさらである。この材料は、初めて雷に打たれたときに、穴が開き、剥がれた。
【0038】
実施例1
【0039】
導電性編物が、1本又は複数のメッシュ糸、フィラー糸、及び/又はフロート糸であって、それぞれ直径0.1mmの銅糸からなるもの、並びに1本又は複数のメッシュ糸、フィラー糸及び/若しくはフロート糸、及び/又は1本又は複数の一方向性糸の形態で編物に付加された、1本又は複数の緯糸の形態で、金属編物構造体内に一体化された熱可塑性ポリマー材料を用いて、作られる。この編物は、その複雑さにもかかわらず、所望の立体形状に直接作製されている。それは、その伝導性糸/繊維の連続性を有する。
【0040】
この立体導電性編物に、同じ立体形状の1つ又は複数の補強マットが、重ね合わせられ、これは、熱可塑性ポリマー材料に関連付けられた、補強繊維、例えば炭素、ガラス、又はアラミドなどの、織物、マット、又は編物からなる。補強編物の第1の例は、ケブラー(登録商標)(アラミド)及び熱可塑性編物であり、すなわち、一方はアラミドからなり、他方は熱可塑性のものからなる1本又は複数のメッシュ糸、フィラー糸及び/又はフロート糸を有し、ここで、複数の一方向性(UD)カーボン糸及び複数の一方向性UD糸が、緯糸として挿入されている。補強編物の第2の例は、ガラス及び熱可塑性プラスチック編物である。補強編物の第3の例は、カーボン及び熱可塑性プラスチック編物である。
【0041】
複合材料は、所望の任意の立体複雑形状で、単一部品で、繊維の連続性を保ったまま、熱可塑性プラスチックのもののTgより高い温度において焼成し、かつ冷却した後、得られうる。
【0042】
実施例2
【0043】
実施例1の導電性編物は、直径0.2mmの12本の平行な一方向性(UD)銅糸を、編物の緯糸として挿入することによって改良される。この立体導電性編物に、実施例1と同様の織物ファブリック、マット、及び編物を重ね合わせる。
【0044】
実施例3及び実施例4
【0045】
実施例1及び実施例2が、補強編物、マット、及び織物ファブリックに、液状熱硬化性樹脂を、複合材料のうちポリマー材料がそれらの少なくとも40体積%を構成し、過半数である熱硬化性ポリマーと半数以下である熱可塑性ポリマーとに分けられるような量で、予め含浸させることを除いて、再現される。
【0046】
実施例5及び実施例6
【0047】
実施例1及び実施例2が再現されるが、1つ又は複数の補強マットを用いない。これらの代わりに、銅編物における補強機能は、補強繊維、例えば炭素、ガラス、又はアラミドなどからなる、1本又は複数のメッシュ糸、フィラー糸、及び/若しくはフロート糸、並びに/又は緯糸としての1本又は複数の一方向性(UD)糸によって組み込まれる。
【0048】
実施例7及び実施例8
【0049】
実施例5及び実施例6が再現されて、補強銅編物に、液状熱硬化性樹脂を、複合材料のうちポリマー材料がそれらの少なくとも40体積%を構成し、過半数である熱硬化性ポリマーと半数以下である熱可塑性ポリマーとに分けられるような量で、含浸させる。
【0050】
銅編物による表面全体にわたるフィラーの均質な分布は、非常に効果的である:このペイントは、少なくとも4回の落雷にもかかわらず、銅編物を破壊することなく均質に燃焼され、これは、これら落雷の後でも、常に均質に電流を流す。
【0051】
比較的大きな断面及び導電性を有する一方向性銅(UD)糸による電荷の置換/放電機能は、依然として非常に効率的であり、UD糸は、ペイントを燃やすことなく、したがって加熱することなく、電荷を排出するのに十分な伝導性を有する。
【0052】
ファブリック、マット、及び編物の補強繊維/糸によって提供される、機械的機能は、繰り返し落雷を受けても無傷のままであり、衝撃波によって構造的に劣化することがなく、これは非常に頑丈な材料によって吸収され、その材料を貫通することがないのに対し、比較例1の複合材は、最初の落雷時に貫通され、剥がれた。
【国際調査報告】