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特表2024-526678電気機械的パーキングブレーキを迅速に解除するためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電気機械的パーキングブレーキを迅速に解除するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240711BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60T13/74 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501095
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 FR2022051311
(87)【国際公開番号】W WO2023281187
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】2107424
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517271212
【氏名又は名称】ヒタチ アステモ フランス
【氏名又は名称原語表記】Hitachi Astemo France
【住所又は居所原語表記】126 Rue de Stalingrad, 93700 Drancy, France
(71)【出願人】
【識別番号】523360832
【氏名又は名称】ヒタチ アステモ ハイルブロン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ASTEMO HEILBRONN GmbH
【住所又は居所原語表記】2 Theresienstrasse 74072 HEILBRONN Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・サッソ
(72)【発明者】
【氏名】マクシム・デマンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイチャオ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・パトラオ・カルケイジョ
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB25
3D048CC05
3D048CC49
3D048HH18
3D048QQ11
3D048RR06
3D048RR13
3D246BA02
3D246DA02
3D246GA04
3D246GA21
3D246GC11
3D246HA38A
3D246HA41A
3D246HA44A
3D246HC07
3D246JB04
3D246JB05
3D246JB27
3D246JB43
3D246LA13Z
3D246LA15Z
(57)【要約】
電気機械的パーキングブレーキの解除は、制御モータに提供される電流の強度(I)の変化、または、この強度から導出される関数を測定することによって制御され、また、この強度の安定化の後に、決定された持続期間(Δt)のみにわたってブレーキの解除を延長することによって制御され、ブレーキアクチュエータのアイドルトラベルを不必要に増加させないように、かつ、延在する制御の持続期間を不必要に延長しないようになっている。決定された持続期間(Δt)は、ブレーキにおける温度および油圧圧力にも依存している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のブレーキ(7)の電気機械的アクチュエータの電気モータ(18)を制御することを意図したモータ制御ユニット(9)であって、
- 前記ブレーキ(7)を解除するためのコマンドを含む、電流のコマンドを前記電気モータ(18)に供給するモジュール(19)と;
- 前記解除コマンドの間に前記電気モータに供給される前記電流の強度(I)の連続的な測定のためのモジュール(20)と;
- 前記電流の前記強度を連続的に測定するための前記モジュール(20)およびコマンドを供給するための前記モジュール(19)に接続されている決定モジュール(23)であって、前記解除コマンドのそれぞれの間に、前記電流の前記強度の連続的な値を評価し、前記電流の前記強度の安定化を観測し、前記安定化が観測された後に前記電流を供給することを停止するように設計されている、決定モジュール(23)と
を含み、
- 前記制御ユニットは、前記ブレーキ(7)の中に存在している温度(θ)および油圧圧力(P)を表す温度および油圧圧力の測定を連続的にそれぞれ行う温度センサー(21)および油圧圧力センサー(22)を含み、
- 前記決定モジュール(23)は、前記温度センサー(21)および前記油圧圧力センサー(22)に接続されており、
- 前記決定モジュールは、前記安定化が観測された後の前記電流の供給の延長の所与の持続期間(Δt)を決定するように配置されており、前記所与の持続期間(Δt)は、前記温度センサー(21)および前記油圧圧力センサー(22)の測定値に依存していることを特徴とする、モータ制御ユニット(9)。
【請求項2】
前記所与の持続期間(Δt)は、安定化の間に取得される前記電流の前記強度の安定化(I0)の程度にも依存していることを特徴とする、請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項3】
前記所与の持続期間(Δt)は、解除終了時トラベル(Δl)と安全解除トラベル(l2+l3)を前記ブレーキに適用するために決定され、前記解除終了時トラベル(Δl)は、前記油圧圧力(P)の線形関数(L100、L200、L300)によって取得され、前記安全解除トラベル(l2+l3)は固定されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のモータ制御ユニット。
【請求項4】
前記電流の前記強度の時間的なドリフトを計算するように設計されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御ユニット。
【請求項5】
前記測定モジュールによって取得される前記電流の強度の関数によって、所与の閾値が超えられたことを検出することによって前記安定化を観測するように設計されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ制御ユニット。
【請求項6】
前記電流の強度の前記関数は、前記時間的なドリフトの絶対値であることを特徴とする、請求項4または5に記載のモータ制御ユニット。
【請求項7】
前記電流の強度の前記関数は、前記電流の前記強度であることを特徴とする、請求項5に記載のモータ制御ユニット。
【請求項8】
車両のための電気機械的パーキングブレーキデバイスであって、前記車両のホイール(4)に関連付けられる前記ブレーキ(7)と、前記ブレーキのアクチュエータ(8)と、前記アクチュエータを動かすための前記電気モータ(18)と、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気モータの前記モータ制御ユニット(9)とを含む、電気機械的パーキングブレーキデバイス。
【請求項9】
請求項8に記載のパーキングブレーキデバイスを含むことを特徴とする、自動車。
【請求項10】
ブレーキのアクチュエータを制御する電気モータに供給される、前記ブレーキをクランプおよび解除するための電流コマンドによって電気機械的な車両ブレーキを制御するための方法であって、前記解除コマンドの間の前記電流の強度値を連続的に測定するステップと、前記ブレーキにおける温度(θ)を表す温度を連続的に測定するステップと、および、前記ブレーキにおける油圧圧力(P)を表す油圧圧力を連続的に測定するステップと、前記値の安定化が観測されるとすぐに、所与の持続期間(Δt)の後に前記解除コマンドを中断するステップとを含み、前記所与の持続期間(Δt)は、前記温度の測定値、前記油圧圧力の測定値、および、電流安定化値(I0)の測定値に依存している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電気機械的パーキングブレーキを迅速に解除するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両は、その制御が手動ではないパーキングブレーキ、とりわけ、電気機械的ブレーキを装備している。そのようなブレーキは、電気モータによって駆動される機械的アクチュエータを備えている。車両の運転者は、典型的に、クランプ状態と解除状態との間でブレーキを切り替えるボタンを押圧することによって、ブレーキを制御する。状態を変化させるためのコマンドが運転者によってなされると、このコマンドを感知するモータ制御ユニットは、事前定義された戦略にしたがってブレーキのアクチュエータに作用する。そして、ブレーキが、クランプ力または圧力を測定することを可能にすることとなるセンサーを有していない場合、ブレーキの解除を要求するための通常の戦略は、電気モータに電気的なコマンドを送達することにあり、電気的なコマンドの持続期間は、ブレーキの初期状態および解除の状況がどのようなものであっても、コマンドの終了時にブレーキが完全に解除されることを保証するのに十分である。
【0003】
しかし、コマンドのこの持続期間は、大部分の状況において過度であり、運転者によって長いと感じられる。
【0004】
したがって、本発明の目的は、可能な限り、ブレーキの完全な解除を保証しながら、電気的なコマンドの発行に基づくアクチュエータコマンド戦略(解除戦略)に依然として依存しながら、車両の使用し易さを改善するために、解除のこの持続期間を低減させることである。
【0005】
本発明は、パーキングおよび緊急ブレーキングが電気モータによって提供されるのに対して、そのサービスブレーキングが油圧的に提供されるブレーキングシステムに主に適用されるが、それのみに適用されるものではない。
【0006】
文献米国特許出願公開第2016/032399A1号は、車両のための電気機械的パーキングブレーキデバイスであって、電気機械的パーキングブレーキデバイスは、車両のホイールに関連付けられるブレーキと、ブレーキのアクチュエータと、アクチュエータを動かすための電気モータと、電気モータのモータ制御ユニットとを含み、モータ制御ユニットは、
- ブレーキを解除するためのコマンドを含む、コマンドを電気モータに供給するためのモジュール
を含み、
また、モータ制御ユニットは、
- 解除コマンドの間に電気モータに供給される電流の強度を連続的に測定するためのモジュールと;
- 電流の強度を連続的に測定するためのモジュールおよびコマンドを供給するためのモジュールに接続されている決定モジュールであって、解除コマンドのそれぞれの間に、電流の前記強度の連続的な値を評価することによって、電流の前記強度の安定化を観測することによって、および安定化が観測された後に電流を供給することを停止することによって動作する、決定モジュールと
を含む、電気機械的パーキングブレーキデバイスに関する。
【0007】
この文献において、すべての状況下においてブレーキの効果的な解除を保証するために、電流の安定化が検出された後に、パッドの追加的なオープニングトラベル(opening travel)が適用される。しかし、このオープニングは、一般的に、正確に取得され得ないようであり、それは、必要と判断される値よりも小さくなるリスクがあるようである。本発明者らは、電流の安定化(パッドの解除の開始と一致すると想定される)が、ブレーキの状態にしたがって、および、とりわけ、その温度にしたがって、および、運転者によって実施される油圧ブレーキングの可能な適用にしたがって、前もって起こることが多いということを実際に見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/032399A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、制御ユニットが、ブレーキの中に存在している温度および油圧圧力を表す温度および油圧圧力の測定を連続的にそれぞれ行う温度センサーおよび油圧圧力センサーを含み、
- 決定モジュールは、温度センサーおよび油圧圧力センサーに接続されており、
- 決定モジュールは、安定化が観測された後の電流の供給の延長の所与の持続期間を決定するように配置されており、所与の持続期間は、温度センサーおよび油圧圧力センサーの測定値に依存しているという点において、上記の文献から距離を置いている。
【0010】
次いで、解除の延長の持続期間は、ブレーキの十分な(しかし、決して過度ではない)解除を保証することを可能にする精度で決定される。先行文献のより初歩的な方法は、この結果を取得することを可能にしない。その理由は、それが解除の瞬間におけるブレーキの状態を考慮に入れていないからである。
【0011】
所与の持続期間が、安定化の間に取得される電流の強度の安定化の程度にも依存している場合には、確実な解除のために必要な延長の持続期間の推定の精度がさらに増加される。
【0012】
実際には、延長の持続期間は、解除終了時トラベル(end-of-release travel)(Δl)と安全解除トラベル(l2+l3)をブレーキに適用するために決定されることが可能であり、解除終了時トラベル(Δl)は、一般的に、油圧圧力の線形関数によって取得され、安全解除トラベル(l2+l3)は固定されている。
【0013】
本発明の別の態様は、車両のための電気機械的パーキングブレーキデバイスであって、車両のホイールに関連付けられる前記ブレーキと、ブレーキのアクチュエータと、アクチュエータを動かすための前記電気モータと、上記による電気モータのモータ制御ユニットとを含む、電気機械的パーキングブレーキデバイスである。
【0014】
本発明の別の態様は、上記によるパーキングブレーキデバイスを備えた自動車である。
【0015】
本発明の別の態様は、ブレーキのアクチュエータを制御する電気モータに供給される、ブレーキをクランプおよび解除するための電流コマンドによって電気機械的な車両ブレーキを制御するための方法であって、解除コマンドの間の電流の強度値を連続的に測定するステップと、ブレーキにおける温度を表す温度を連続的に測定するステップと、および、ブレーキにおける油圧圧力を表す油圧圧力を連続的に測定するステップと、前記値の安定化が観測されるとすぐに、所与の持続期間の後に解除コマンドを中断するステップとを含み、所与の持続期間は、温度の測定値、油圧圧力の測定値、および、電流安定化値の測定値に依存している、方法である。
【0016】
本発明の特定の随意的であるが有利な特徴によれば、
- モータ制御ユニットは、電流の前記強度の時間的なドリフトを計算するように設計されている;
- モータ制御ユニットは、測定モジュールによって取得される関数によって、所与の閾値が超えられたことを検出することによって安定化を観測するように設計されている;
- 関数は、前記時間的なドリフトの絶対値である;
- 関数は、電流の強度である。
【0017】
本発明は、以下の図の詳細な説明によって、そのさまざまな態様、特徴、および利点において説明されることとなり、図は、純粋に例示のために与えられたその特定の実施形態を図示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】自動車を概略的に示す図である。
図2】分解図で電気機械的ブレーキを図示する図である。
図3】前記ブレーキのモータ制御ユニットを図示する図である。
図4】ブレーキを解除するステップを図示する図である。
図5】ブレーキを制御する電流のためのコマンドを図示する図である。
図6】どのようにブレーキの解除の持続期間が調節されるかを図示する図である。
図7】本方法のダイアグラムである。
図8】ブレーキの状態にしたがって戦略を補正する関数を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、自動車1を示しており、自動車1は、前車軸3の上に2つの駆動用および操舵用の前輪2を装備しており、後車軸5の上に2つの非駆動用および非操舵用の後輪4を装備している。前輪2のそれぞれは、運転者によって直接的に作動されるメインサービスブレーキを装備しており、後輪4のそれぞれは、下記に詳細に説明されているブレーキ7を装備しており、それは、それをパーキングおよび緊急ブレーキとして働かせることができるアクチュエータ8に関連付けられている。2つのブレーキ7のアクチュエータ8は、車両1の特定のパラメーターおよびその駆動状態に関係するさまざまな項目の情報にしたがって、1つの同じモータ制御ユニット9によって制御される。モータ制御ユニット9は、緊急ブレーキングが必要になったときに、または、パーキングが必要とされるときに、アクティブになる。
【0020】
図2は、分解図における表現で、ブレーキ7の公知の非限定的な実施形態を概略的に図示している。ブレーキ7は、円筒状に形状決めされたハウジング12に接合されたキャリパー11を含む。また、それは、ギヤードモータ60も含み、ギヤードモータ60のフランジ61は、スクリュー(ここでは示されていない)によってハウジング12の後面においてフランジ62に接合されている。このギヤードモータ60は、電気モータ18と、前記電気モータ18の回転の速度を低減させるギヤとを含有している。ハウジング12は、シリンダーと称される油圧キャビティー13を含み、それは、前方に向けて(図2において右側に)開口しており、可動パッド(図示せず)を担持するピストン14がスライドする。ブレーキングは、キャリパー11の前方端部に位置付けされている固定パッドに向けて可動パッドを移動させるために、および、これらのパッド間で後輪4のディスクをグリップするために、ピストン14を前方にスライドさせることによって実施される。ピストン14のこの移動は、ブレーキ7がサービスブレーキとして働いているときに、車両が駆動されている間に油圧キャビティー13の中に油圧圧力を印加することによって取得される。この圧力は、ピストン41の後面に及ぼされ、ピストン41を前方に押し出す。しかし、ブレーキ7がパーキングブレーキとしてまたは緊急ブレーキとして制御される場合には、ブレーキングは、モータ制御ユニット9によって課される戦略にしたがって電気モータ18を使用することによって実施される。電気モータ18は、ギヤードモータ60のギヤを移動させ、それは、油圧キャビティー13の中に延在するスクリュー15を回す。スクリュー15は、ナット16と係合しており、次いで、ピストン14の後面が、ナット16に当接している。スクリュー15の回転は、ナット16およびピストン14の並進に変換され、それは、電気モータ18の作動の持続期間にしたがって移動する。ここで考えられるアクチュエータ8は、とりわけ、ギヤードモータ60、ひいては、その電気モータ18を含み、また、スクリュー15およびナット16から構成されるシステム17を含む。
【0021】
本発明は、これら以外の車両およびブレーキにも使用されることが可能である。
【0022】
図3は、モータ制御ユニット9をより詳細に図示している。それは、コマンド供給モジュール19と、測定モジュール20と、決定モデル23とを含み、コマンド供給モジュール19は、車両1の中に存在しているバッテリーまたは他のエネルギーの供給源に接続されている間に電気モータ18にコマンドを供給し、決定モデル23は、コマンド供給モジュール19および測定モジュール20を接続しており、決定モデル23は、コマンドの持続期間を調節するために、測定モジュール20の出力信号を使用する。測定モジュール20および決定モデル23は、本発明の特徴である。測定モデル20は、電気モータ18および前記エネルギー供給源がその上に据え付けられている電気回路の中の電流の強度を測定する。また、デバイスは、温度センサー21によってブレーキ7の温度を連続的に測定するための、および、油圧圧力22を連続的に測定するための手段を含む。温度センサー21は、有利には、ブレーキパッド7のうちの1つの可能な限り近くに設置され、その温度を最良に減衰させるようになっており、油圧圧力センサー22は、油圧キャビティー13の中の圧力を直接的に測定することが可能であり、または、ここで示されているように、ブレーキペダル6における作用を受ける油圧回路10の別の部分(たとえば、マスターシリンダーなど)の中の圧力を測定することによって、ブレーキ7の中の油圧圧力を推定することが可能である。温度センサー21および油圧圧力センサー22は、測定モジュール20のように、それらの測定値を決定モデル23に供給する。
【0023】
図4は、公知の戦略にしたがった、スクリュー-ナットシステム17のナット16の並進移動にしたがってクランプ状態からブレーキ7を解除するステップを図示するダイアグラムである。この移動は、3つのデフレクション(deflection)に分解されることが可能である。(長さl1の)第1のデフレクションは、スクリュー-ナットシステム17の有用なトラベルに対応しており、その部分の解除の開始を結果として生じさせると想定される。(長さl2の)第2のデフレクションは、それはブレーキの解除に理論的には不必要であるが追加されなければならず、それは、ブレーキ7のパッド間にグリップされたディスクをクリアされたままにする役割を果たすスクリュー-ナットシステム17のアイドルストロークに対応している。第3のデフレクションl3も、ブレーキ7の構築および動作の不確実性にもかかわらず、必要とされるアイドルストロークが実際に取得されることを保証するために追加されなければならない。実際の例によれば、デフレクションは、l1=0.94mm、l2=0.35mm、およびl3=0.05mmの値をそれぞれ有しており、次いで、合計デフレクションは、1.34mmに等しい。すべてのこれらのデフレクションは、公知の戦略において不変である。安全またはその後のブレーキ7の正しい動作の理由のために課されるデフレクションl2およびl3が、合計デフレクションにおいて重要な役割を担うということが理解され得る。ブレーキ7のパッドの解除のために必要なデフレクションは、現実にはほとんど常にl1よりも小さいということ、および、l1は、解除の開始時には必ずしも存在しないブレーキ7の極端なクランピングから計算される値であるので、それは、それよりもはるかに小さいことも多いということが付け加えられなければならない。しかし、公知の方法のコマンドは、主に、この合計デフレクション(l1+l2+l3)を課すために計算された均一な持続期間を有している。
【0024】
クランプ状態からブレーキ7の解除のための電気的なコマンドの実験的な形態が、図5の上部に示されており、それは、電気モータ18を含む電気回路を通過する電流の強度Iを時間tの関数として示しており、この図5の下部は、アクチュエータ8に関して取得される対応するデフレクションを示している。コマンドは、開始ピーク24、減少部分25、および平坦な部分26を連続的に含み、平坦な部分26では、電流は、低い強度において均一である(アイドル電流)。高い電流の強度における開始ピーク24は、メカニズムの中のクリアランスの取り込みに主に起因する過渡状態に対応しており、減少部分25は、ブレーキ7の漸進的な解除に対応しており、平坦な部分26は、ブレーキ7が完全に解除されたときのアクチュエータ8の残留力によるトラベル(または、アイドルストローク)に対応している。減少部分25および平坦な部分26において、強度Iは、電気モータ18によって印加される力に比例しており、それは、アクチュエータ8を移動させるために必要である。
【0025】
本発明によれば、解除の間のブレーキ7のアクチュエータの合計デフレクション(または、ナット16の並進)は、(l1'+l2+l3)(図6)に等しくならなければならず、ここで、l1'は、パッドの解除のために厳密に必要なデフレクションに対応しており、したがって、l1'≦l1であり、一方では、l2およびl3は、変化しないままである。l'1は、l1よりもはるかに小さくなっていることが可能であり、たとえば、述べられている例では、おおよそ0.6mmであるということが強調されなければならない。
【0026】
これは、測定モジュール20を追加することによって実現され、測定モジュール20は、電気モータ18に供給される電流の強度Iを測定し、その出力信号(決定モデル23に供給される)は、図5にしたがった関数である。平坦な部分26が到達されるときに、決定モデル23は、必要な合計トラベル(l'1+l2+l3)だけを達成することを可能にする電流の印加の延長の持続期間Δtを計算する。平坦な部分26を検出することは、電流の安定化を検出することになる。検出基準は、有利には、電流の強度Iの時間的ドリフト(dI/dt)の絶対値によって決定される閾値のゼロに向かう交差であることが可能であり、他の安定化基準も想定されることが可能である(たとえば、電流の強度Iの値の閾値のゼロに向かう交差など)。
【0027】
また、図5は、公知の戦略の効果を破線で図示している。電気的なコマンドは、アイドルストロークと同様に、Δt後に延長され、最後にデフレクション(l1+l2+l3)を取得するようになっている。
【0028】
延長の持続期間Δtを決定するための方法は、本発明の本質的な態様であり、下記に詳述されることとなる。安定化値I0における電流の安定化は、一般的に、現実には、パッドの解除の開始と一致していない。
【0029】
図7は、本方法の主なステップを図示している。ステップE1は、運転者によってブレーキを解除するためのコマンドを適用することにある。ステップE2において、モータ制御ユニット9がアクティブになり、コマンド供給モジュール19は、電気モータ18にコマンドを供給し、測定モジュール20は、コマンドの電流の強度Iを測定し始める。決定ユニット23は、ステップE3において、強度Iの変化、または、それに相関し計算される時間的な関数の変化を連続的に観察する。それが、この関数が安定化したということを結論付ける場合には(ステップE4)、とりわけ、その関数が所与の閾値を超える場合には(たとえば、dI/dt<5A/s)、それは、電気的なコマンドが所与の持続期間Δtのみにわたって延長されるように命令し、次いでコマンドが停止するべきであるということを命令する(ステップE9)。そうでなければ、プログラムは、ステップE3に戻る。
【0030】
これは、ステップE4とステップE9との間に行われるステップE5、E6、E7、およびE8の間に、どのように延長の持続期間Δtが推定されるかということであり、E5、E6、およびE7に関して同時にまたは連続的に、
- ブレーキ7における温度θが、温度センサー21によって測定される(ステップE5);
- ブレーキ7における油圧圧力Pが、油圧圧力センサー22によって測定される(ステップE6);および、
- 電流の安定化値I0も測定される(ステップE7)。
【0031】
すでに述べられているように、温度測定および圧力測定は、ブレーキ7において直接的に(または、その近傍において)行われることが可能であり、次いで、随意的に、補正の対象であることが可能である。変形例では、E5において、温度θの値が推定される。
【0032】
本発明者らは、電気モータ18の電流の安定化が、現実には、ブレーキ7が高温であるときにパッドの実際の解除の少し前に到達するということ、または、運転者がブレーキペダル6を踏むことによって油圧圧力がブレーキ7に印加されるということを見出した。これは、デフレクションl'1は、これらの状況の下で電流の安定化の瞬間において(平坦な部分26の開始時において)終了していないということ、ならびに、安全トラベルl2およびl3に加えて、クランピング終了時トラベルΔlを印加することも必要であり、ブレーキ7に関する事前のテスト、ならびに、温度θおよび油圧圧力Pの測定値を通して事前にそれを知ることが可能であるということ意味している。換言すれば、その供給電流の安定化の後の電気モータ18の動作の延長の持続期間Δtは、本発明において適応的または可変的になり、また、パッドの解除の後の安全トラベル(l2+l3)を不変の値に維持するために、ブレーキ7のパッドの対応する分離トラベルも同様である。
【0033】
したがって、決定モデル23は、関数(たとえば、図8のものなど)を含有しており、それは、解除終了時トラベルΔlを油圧圧力Pおよび温度θの関数として表現している(ここで、L100、L200、およびL300は、ブレーキ7に関して100℃、200℃、および300℃の温度にそれぞれ相当する)。油圧圧力Pは、バールで表現されており、クランピング終了時トラベルΔlは、ミリメートルで表現されている。これらの関数は、等しい温度において、適度なブレーキングが印加されるとすぐにおおよそ線形であり(Δl=aP+b、ここで、aおよびbは、固定係数である)、ブレーキングが存在しないときにゼロに向かう傾向がある(P≒0に関してΔl≒0)。
【0034】
最後に、延長の持続期間Δtは、一般的に、適用されることとなるトラベル終了(Δl+l2+l3)に依存するだけでなく、安定化値I0が到達されたときの電気モータ18の回転の速度にも依存する。強度の関数としてのこの速度は、予備的なテストによって決定されることも可能である。
【0035】
したがって、本発明は、より短い解除の持続期間(通常の条件下において、公知の方法よりもおおよそ3分の1少ない)を提供し、機器および消費されるエネルギーの節約を提供し、また、アイドルストロークの短縮に起因するより迅速なブレーキの再クランプも提供し、それは、パーキングブレーキが駆動の間に特定の緊急状況の下で補助ブレーキとしての役割も果たさなければならない場合には、高く評価される(これは、より確実になる)。
【符号の説明】
【0036】
1 自動車
2 前輪
3 前車軸
4 後輪
5 後車軸
6 ブレーキペダル
7 ブレーキ
8 アクチュエータ
9 モータ制御ユニット
10 油圧回路
11 キャリパー
12 ハウジング
13 油圧キャビティー
14 ピストン
15 スクリュー
16 ナット
17 スクリュー-ナットシステム
18 電気モータ
19 コマンド供給モジュール
21 温度センサー
22 油圧圧力センサー
20 測定モジュール
23 決定モジュール
24 開始ピーク
25 減少部分
26 平坦な部分
60 ギヤードモータ
61 フランジ
62 フランジ
I 電流の強度
I0 電流安定化値
t 時間
dI/dt 強度の微分
l1 課されるブレーキ解除デフレクション
l1' 有用なブレーキ解除デフレクション
l2 アクチュエータの第1の追加的なデフレクション
l3 アクチュエータの第1の追加的なデフレクション
Δl パッドの解除のトラベル終了
θ 温度
P 油圧圧力
Δt 電流コマンドの延長の持続期間
E1 運転者コマンド
E2 コマンドの供給および強度の測定
E3 強度関数の変化
E4 安定化
E5 温度測定
E6 油圧圧力測定
E7 安定化された強度の測定
E8 延長の持続期間の決定
E9 延長が決定され、次いで、コマンドの停止
L100、L200、L300 トラベル終了時解除の関数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】