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特表2024-526685内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20240711BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20240711BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20240711BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20240711BHJP
   C10M 129/76 20060101ALN20240711BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240711BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20240711BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240711BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20240711BHJP
   C10N 40/12 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/56
C10M133/16
C10M139/00 A
C10M129/76
C10N40:25
C10N30:12
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501144
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 US2022073778
(87)【国際公開番号】W WO2023004265
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】17/381,610
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィールド、サミュエル ブルース
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB35C
4H104BE11C
4H104BF03C
4H104BH03A
4H104BJ05C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA06
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA07
4H104PA41
4H104PA42
4H104PA43
4H104PA44
4H104PA45
(57)【要約】
本開示は、少なくとも、潤滑粘度の基油、分散剤、摩擦調整剤、及びホウ素含有化合物を含む、潤滑剤添加剤の混和物を通して鉛腐食を低減するのに有効な潤滑剤組成物を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物で潤滑された内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法であって、窒素源と反応したヒドロカルビル置換されたアシル化剤から得られたヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤と、カルボン酸及び/又はヒドロキシル基を有する窒素不含有機摩擦調整剤と、主要量の潤滑粘度の基油又は基油のブレンドと、を含む潤滑油組成物を前記内燃エンジンに供給することを含み、前記潤滑油組成物が、ホウ酸又はボロン酸から選択されるホウ素含有化合物を含む、方法。
【請求項2】
前記窒素不含有機摩擦調整剤が、アルカノールと反応した脂肪酸から得られたペンダントヒドロキシル基を有し、かつ/あるいは前記ヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤が、前記ホウ素含有化合物とは別のホウ素源からホウ素化され、かつ/あるいは前記ホウ素含有化合物が、構造X-B-(OH)2を有し、式中、Xが、ヒドロキシル基、線状若しくは分岐アルキル基、環状ヒドロカルビル基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせであり、かつ/あるいは前記窒素不含有機摩擦調整剤が、脂肪酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含む、請求項1に記載の内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法。
【請求項3】
前記潤滑油組成物が、各1重量パーセントの前記窒素不含有機摩擦調整剤当たり、前記ホウ素含有化合物によって提供された約250ppm~約350ppmのホウ素を含む、請求項2に記載の内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法。
【請求項4】
前記潤滑油組成物が、ASTM D6594により測定した場合、各1重量パーセントの前記窒素不含有機摩擦調整剤当たり、約500ppm以下の鉛腐食を呈する、請求項3に記載の内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法。
【請求項5】
前記ホウ素含有化合物が、ボロン酸であり、Xが、線状若しくは分岐C1~C10基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせである、請求項2に記載の内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法。
【請求項6】
前記窒素不含有機摩擦調整剤が、オレイン酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含む、請求項2に記載の内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法。
【請求項7】
前記窒素不含有機摩擦調整剤が、モノオレイン酸グリセロールを含む、請求項6に記載の内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法。
【請求項8】
前記潤滑油組成物が、前記ホウ素含有化合物によって提供された約100ppm~約300ppmのホウ素、最大約10重量パーセントの前記ヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤、及び最大約1重量パーセントの前記窒素不含有機摩擦調整剤を含む、請求項1に記載の内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法。
【請求項9】
内燃エンジンにおける鉛腐食を低減するための潤滑油組成物であって、
窒素源と反応したヒドロカルビル置換されたアシル化剤から得られたヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤と、
カルボン酸及び/又はヒドロキシル基を有する窒素不含有機摩擦調整剤と、ホウ酸又はボロン酸から選択されるホウ素含有化合物と、
主要量の潤滑粘度の基油又は基油のブレンドと、を含む、潤滑油組成物。
【請求項10】
前記窒素不含有機摩擦調整剤が、アルカノールと反応した脂肪酸から得られたペンダントヒドロキシル基を有する、請求項9に記載の鉛腐食を低減するための潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物が、各1重量パーセントの前記窒素不含有機摩擦調整剤当たり、前記ホウ素含有化合物によって提供された約250ppm~約350ppmのホウ素を含む、請求項10に記載の鉛腐食を低減するための潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が、ASTM D6594により測定した場合、各1重量パーセントの前記窒素不含有機摩擦調整剤当たり、約500ppm以下の鉛腐食を呈する、請求項11に記載の鉛腐食を低減するための潤滑油組成物。
【請求項13】
前記ヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤が、前記ホウ素含有化合物とは別のホウ素源からホウ素化され、かつ/あるいは前記ホウ素含有化合物が、構造X-B-(OH)2を有し、式中、Xが、ヒドロキシル基、線状若しくは分岐アルキル基、環状ヒドロカルビル基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせであり、かつ/あるいは前記窒素不含有機摩擦調整剤が、脂肪酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含む、請求項9に記載の鉛腐食を低減するための潤滑油組成物。
【請求項14】
前記ホウ素含有化合物が、ボロン酸であり、Xが、線状若しくは分岐C1~C10基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせである、請求項13に記載の鉛腐食を低減するための潤滑油組成物。
【請求項15】
前記潤滑油組成物が、前記ホウ素含有化合物から提供された約100~約300ppmのホウ素、最大約10重量パーセントの前記ヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤、及び最大約1重量パーセントの前記窒素不含有機摩擦調整剤を含む、請求項9に記載の鉛腐食を低減するための潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、潤滑油組成物及びそのための添加剤、並びに鉛腐食を低減するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン又はディーゼル自動車エンジンのモータ油(一般的にエンジン油又はクランクケース油とも称される)として使用することを目的とした潤滑剤は、一般的に、意図される用途に対する特定の性能要件を満たすように、潤滑粘度の基油又は基油のブレンドと1つ以上の添加剤とを含む。現代の業界規格では、そのような油の組成物及び性能に関してますます厳しい要件が課せられており、これにより、多くの場合、潤滑剤配合物に柔軟性を残す余地がほとんどない。潤滑剤製造業者は、様々な業界規格を満たそうと努力しているため、全ての必要な性能及び業界規格をコスト効果的に同時に達成することが課題になる。多くの場合、各用途に対して所望の性能を達成するために様々な添加剤ブレンドが潤滑剤中に含まれるが、多くの場合、1つの性能利益を改善し得る特定の添加剤が潤滑剤の他の必要な利益に悪影響を及ぼすため、多くの場合、複雑な添加剤混合物を用いて性能を改善することは困難である。
【0003】
例えば、摩擦調整剤は、摩擦及び/又は摩耗を低減する潤滑剤の能力を改善するために一般的に使用される潤滑剤添加剤の1つのタイプであり、これは、多くの場合、燃料経済性の改善をもたらす。摩擦調整剤の1つの一般的なタイプは、カルボン酸及び/又はヒドロキシル基を有する、窒素不含有機摩擦調整剤である。そのような摩擦調整剤は、改善された摩擦及び摩耗を提供するのに有益な添加剤であるが、そのような摩擦調整剤はまた、鉛腐食の望ましくない増加に関連付けられる傾向がある。摩擦調整剤の量を増加させると、対応する鉛腐食の増加につながるため、そのような摩擦調整剤による鉛腐食は、摩擦調整剤の処理率に直接関連するようである。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態によれば、潤滑油組成物で潤滑された内燃エンジンにおける鉛腐食を低減する方法が本明細書に記載される。一態様では、本方法は、窒素源と反応したヒドロカルビルで置換されたアシル化剤から得られたヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤と、カルボン酸及び/又はヒドロキシル基を有する窒素不含有機摩擦調整剤と、主要量の潤滑粘度の基油又は基油のブレンドと、を含む潤滑油組成物を内燃エンジンに供給することを含む。潤滑油組成物は、ホウ酸又はボロン酸から選択されるホウ素含有化合物の混和物を含む。
【0005】
他の実施形態では、前の段落の方法は、それらの任意の組み合わせにおいて任意選択的な特徴又はステップと組み合わせることができる。以下のうちの1つ以上を含む、これらの任意選択的な特徴及び/又はステップ:窒素不含有機摩擦調整剤が、アルカノールと反応した脂肪酸から得られたペンダントヒドロキシル基を有し、かつ/あるいは潤滑油組成物が、各1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤当たり、ホウ素含有化合物によって提供された約250ppm~約350ppmのホウ素を含み、かつ/あるいは潤滑油組成物が、ASTM D6594により測定した場合、各1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤当たり、約500ppm以下の鉛腐食を呈し、かつ/あるいはヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤が、ホウ素含有化合物とは別のホウ素源からホウ素化され、かつ/あるいはホウ素含有化合物が、構造X-B-(OH)を有し、式中、Xが、ヒドロキシル基、線状若しくは分岐アルキル基、環状ヒドロカルビル基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせであり、かつ/あるいはホウ素含有化合物が、ボロン酸であり、Xが、線状若しくは分岐C1~C10基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせであり、かつ/あるいは窒素不含有機摩擦調整剤が、脂肪酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含み、かつ/あるいは窒素不含有機摩擦調整剤が、オレイン酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含み、かつ/あるいは窒素不含有機摩擦調整剤が、モノオレイン酸グリセロールを含み、かつ/あるいは潤滑油組成物が、ホウ素含有化合物によって提供された約100ppm~約300ppmのホウ素、最大約10重量パーセントのヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤、及び最大約1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤を含む。
【0006】
別の実施形態又はアプローチでは、内燃エンジンにおける鉛腐食を低減するための潤滑油組成物が本明細書に記載される。この実施形態の態様では、潤滑油組成物は、少なくとも、窒素源と反応したヒドロカルビル置換されたアシル化剤から得られたヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤の混和物と、カルボン酸及び/又はヒドロキシル基を有する窒素不含有機摩擦調整剤と、ホウ酸又はボロン酸から選択されるホウ素含有化合物と、主要量の潤滑粘度の基油又は基油のブレンドと、を含む。
【0007】
他の実施形態では、前の段落の組成物は、それらの任意の組み合わせにおいて任意選択的な特徴又は限定と組み合わせることができる。以下のうちの1つ以上を含む、これらの任意選択的な特徴及び/又は限定:窒素不含有機摩擦調整剤が、アルカノールと反応した脂肪酸から得られたペンダントヒドロキシル基を有し、かつ/あるいは潤滑油組成物が、各1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤当たり、ホウ素含有化合物によって提供された約250ppm~約350ppmのホウ素を含み、かつ/あるいは潤滑油組成物が、ASTM D6594により測定した場合、各1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤当たり、約500ppm以下の鉛腐食を呈し、かつ/あるいはヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤が、ホウ素含有化合物とは別のホウ素源からホウ素化され、かつ/あるいはホウ素含有化合物が、構造X-B-(OH)を有し、式中、Xが、ヒドロキシル基、線状若しくは分岐アルキル基、環状ヒドロカルビル基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせであり、かつ/あるいはホウ素含有化合物が、ボロン酸であり、Xが、線状若しくは分岐C1~C10基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせであり、かつ/あるいは窒素不含有機摩擦調整剤が、脂肪酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含み、かつ/あるいは窒素不含有機摩擦調整剤が、オレイン酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含み、かつ/あるいは窒素不含有機摩擦調整剤が、モノオレイン酸グリセロールを含み、かつ/あるいは潤滑油組成物が、ホウ素含有化合物から提供された約100ppm~約300ppmのホウ素、最大約10重量パーセントのヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤、及び最大約1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤を含み、かつ/あるいは潤滑油組成物が、乗用車モータ油である。
【0008】
なお別の実施形態又はアプローチでは、内燃エンジンにおける鉛腐食を低減するための潤滑油組成物の使用が本明細書に記載される。この実施形態の態様では、潤滑油組成物の使用は、少なくとも、窒素源と反応したヒドロカルビル置換されたアシル化剤から得られたヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤の混和物と、カルボン酸及び/又はヒドロキシル基を有する窒素不含有機摩擦調整剤と、ホウ酸又はボロン酸から選択されるホウ素含有化合物、及び内燃エンジンにおける鉛腐食を低減するための主要量の潤滑粘度の基油又は基油のブレンドを使用することを含む。追加的に、潤滑油組成物の使用はまた、本概要に記載される任意の更なる実施形態を含み得る。
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供される。
【0010】
「油組成物」、「潤滑組成物(lubrication composition)」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、「クランクケース油」、「クランクケース潤滑剤」、「エンジン油」、「エンジン潤滑剤」、「モータ油」、及び「モータ潤滑剤」という用語は、主要量の基油に加えて少量の添加剤組成物を含む最終潤滑生成物を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、「エンジン油添加剤パッケージ」、「エンジン油添加剤濃縮物」、「クランクケース添加剤パッケージ」、「クランクケース添加剤濃縮物」、「モータ油添加剤パッケージ」、「モータ油濃縮物」という用語は、主要量の基油原料混合物を除外する潤滑油組成物の一部を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。添加剤パッケージは、粘度指数向上剤又は流動点降下剤を含み得るか、又は含み得ない。
【0012】
本明細書で使用される場合、「鉛腐食」は、ASTM D6594に準じて実行される評価の過程にわたる潤滑剤の鉛濃度の変化を指す。鉛濃度は、ASTM D5185に準じてICPを介して測定することができる。
【0013】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホネート、カルボキシレート、サリチレート、及び/又はフェネートの金属塩等の金属塩を指す。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「正塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比(metal ratio)」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量対中性塩中の金属の化学当量の比を示すために使用される。正塩又は中性塩では、金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチレート、スルホネート、及び/又はフェノールの塩であってもよい。
【0014】
「アルカリ土類金属」という用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、及びストロンチウムに関し、「アルカリ金属」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」又は「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基から独立して選択され、置換炭化水素置換基は、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビレン置換基」又は「ヒドロカルビレン基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、分子の2つの場所で炭素原子によって分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビレン基は、二価炭化水素置換基から独立して選択され、置換二価炭化水素置換基は、ハロ基、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビレン基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、他に明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0018】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が可溶性、溶解性、混和性、又は油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0019】
本明細書で用いられるような「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される場合、総塩基価(Total Base Number)をmg KOH/gで示すために使用される。
【0020】
本明細書で用いられるような「アルキル」という用語は、約1~約100個の炭素原子の直鎖、分岐、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アルケニル」という用語は、約3~約10個の炭素原子の直線、分岐、環状、及び/又は置換の不飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はこれらに限定されないが、窒素、酸素、及び硫黄を含むヘテロ原子を含むことができる単環式及び多環式の芳香族化合物を指す。
【0021】
本明細書の任意の実施形態の分子量は、Watersから入手されるゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)機器又は類似の機器、及びWaters Empower Software又は類似のソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択的な機器)が提供され得る。GPC操作条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒径5μ、及び細孔径の範囲100~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(polystyrene、PS)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPS標準を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、分子量分布情報を更に提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0022】
本明細書の潤滑剤は、自動車用潤滑剤及び/又はグリース、内燃エンジン油、ハイブリッドエンジン油、電気エンジン潤滑剤、ドライブトレイン潤滑剤、トランスミッション潤滑剤、ギア油、油圧潤滑剤、トラクター油圧流体、金属作動流体、タービンエンジン潤滑剤、定置エンジン潤滑剤、トラクター潤滑剤、オートバイ潤滑剤、パワーステアリング流体、クラッチ流体、車軸流体、湿式ブレーキ流体などといった様々なタイプの潤滑剤における使用のために構成される。好適なエンジンのタイプとしては、重荷重ディーゼル、乗用車、軽荷重ディーゼル、中速ディーゼル、又は船舶用エンジンが挙げられ得るが、これらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料-燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料-燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(compressed natural gas、CNG)燃料エンジン、又はそれらの混合物であってもよい。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであってもよい。ガソリンエンジンは、火花点火エンジンであり得る。内燃エンジンはまた、電力又はバッテリ電源と組み合わせて使用され得る。そのように構成されたエンジンは、通常は、ハイブリッドエンジンとして知られている。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、又はロータリーエンジンであり得る。好適な内燃エンジンとしては、船舶用ディーゼルエンジン(内陸用船舶など)、航空ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、並びにオートバイ、自動車、機関車、及びトラックのエンジンが挙げられる。エンジンをターボチャージャと連結させてもよい。
【0023】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、又は硫酸灰分(ASTM D-874)含有量に関係なく、任意のエンジン潤滑剤に好適であり得る。エンジン油潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下、又は約0.3重量%以下、又は約0.2重量%以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、又は約0.01重量%~約0.3重量%の範囲にあってもよい。リン含有量は、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下、又は約0.085重量%以下、又は約0.08重量%以下、又は更には約0.06重量%以下、約0.055重量%以下、又は約0.05重量%以下であってもよい。一実施形態では、リン含有量は、約50ppm~約1000ppm、又は約325ppm~約850ppmであってもよい。総硫酸灰分含有量は、約2重量%以下、又は約1.5重量%以下、又は約1.1重量%以下、又は約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫酸灰分含有量は、約0.05重量%~約0.9重量%、又は0.1重量%若しくは約0.2重量%~約0.45重量%であってもよい。別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.4重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.08重量%以下であってもよく、かつ硫酸灰分は、約1重量%以下である。更に別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.3重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.05重量%以下であり、かつ硫酸灰分は、約0.8重量%以下であってもよい。
【0024】
更に、本明細書の潤滑剤は、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、PC-11、CF、CF-4、CH-4、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4 Plus、CI-4、API SG、SJ、SL、SM、SN、SN PLUS、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro 5/6、JASO DL-1、Low SAPS、Mid SAPSなどの1つ以上の業界仕様要件、又はDexos1(商標)、Dexos2(商標)、MB-Approval 229.1、229.3、229.5、229.51/229.31、229.52、229.6、229.71、226.5、226.51、228.0/.1、228.2/.3、228.31、228.5、228.51、228.61、VW 501.01、502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、505.01、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、508.88、509.99、BMW Longlife-01、Longlife-01FE、Longlife-04、Longlife-12FE、Longlife-14FE+、Longlife-17FE+、Porsche A40、C30、Peugeot Citroen Automobiles B712290、B712294、B712295、B712296、B712297、B712300、B712302、B712312、B712007、B712008、RenaultRN0700、RN0710、RN0720、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、WSS-M2C913-D、WSS-M2C948-B、WSS-M2C948-A、GM 6094-M、Chrysler MS-6395、Fiat 9.55535G1、G2、M2、N1、N2、Z2、S1、S2、S3、S4、T2、DS1、DSX、GH2、GS1、GSX、CR1、Jaguar Land Rover STJLR.03.5003、STJLR.03.5004、STJLR.03.5005、STJLR.03.5006、STJLR.03.5007、STJLR.51.5122などの元々の機器製造業者の仕様、又は本明細書に記載されていない過去若しくは今後のPCMO又はHDDの仕様を満たすのに好適であり得る。乗用車用モータ油(passenger car motor oil、PCMO)用途のためのいくつかの実施形態では、最終流体中のリンの量は、1000ppm以下、又は900ppm以下、又は800ppm以下である。
【0025】
一実施形態では、潤滑油組成物は、エンジン油であり、潤滑油組成物は、(i)約0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)約0.1重量%以下のリン含有量、及び(iii)約1.5重量%以下の硫酸灰分含有量を有してもよい。
【0026】
一実施形態では、潤滑油組成物は、2ストローク又は4ストロークの船舶用ディーゼル内燃エンジンに好適である。一実施形態では、船舶用ディーゼル燃焼エンジンは、2ストロークエンジンである。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、船舶用エンジンの動力供給に使用される燃料の高硫黄含有量及び船舶に好適なエンジン油に必要な高いTBN(例えば、船舶に好適なエンジン油では約40TBN超)が含まれるがこれらに限定されない1つ以上の理由により、2ストローク又は4ストロークの船舶用ディーゼル内燃エンジンに好適でない。
【0027】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、約1~約5%の硫黄を含有する燃料などの低硫黄燃料を動力源とするエンジンでの使用に好適である。高速道路車両燃料は、約15ppmの硫黄(又は約0.0015%の硫黄)を含有する。
【0028】
本開示の追加の詳細及び利点は、以下の説明に部分的に記載され、かつ/又は本開示の実施によって習得され得る。本開示の詳細及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成し得る。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明が、両方とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】鉛腐食の増加及び摩擦調整剤処理率の対応する増加を示す、先行する非ホウ素化摩擦調整剤の鉛腐食のプロットである。
図2】予ホウ素化摩擦調整剤を有する潤滑剤を、摩擦調整剤、分散剤、及びホウ素含有化合物を含む潤滑剤混和物と比較する鉛腐食のプロットである。
図3】摩擦調整剤を有しない対照潤滑剤と比較した、様々なホウ素含有化合物を使用する異なる潤滑剤混和物からの鉛腐食のプロットである。
図4】本発明の潤滑剤混和物を、先行する非ホウ素化摩擦調整剤と比較する1重量パーセントの摩擦調整剤当たりの鉛腐食のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
エンジン又はクランクケース潤滑剤組成物は、一般的に、火花点火又は圧縮点火エンジンを含む車両に使用されて、摩擦低減及び他の利益を提供する。そのようなエンジンは、乗用車又は大型車用途に使用され、数個用途を挙げると、自動車、トラック、オートバイ、及び/又は機関車/列車の内燃エンジンが挙げられ得、ガソリン、ディーゼル、アルコール、バイオ燃料、圧縮天然ガスなどが挙げられるがこれらに限定されない燃料で動作させてもよい。これらのエンジンには、内燃エンジンと電気若しくはバッテリ電源との両方を含むハイブリッド電気エンジン、及び/又は車両が静止しているときの自動エンジン停止機能を含む高度なハイブリッド若しくは内燃エンジンが含まれてもよい。本明細書の方法及び潤滑剤組成物は、そのようなエンジンの鉛腐食を低減するのに有効である。
【0031】
1つのアプローチ又は実施形態では、本開示は、潤滑油組成物で潤滑された内燃エンジンにおける鉛腐食を低減するのに有効な方法及び組成物を記載する。一態様では、本方法は、少なくとも、(i)窒素源と反応したヒドロカルビル置換されたアシル化剤から得られたヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤と、(ii)カルボン酸及び/又はヒドロキシル基を有し、いくつかのアプローチでは、アルカノールと反応した脂肪酸から得られたペンダントヒドロキシル基を含む窒素不含有機摩擦調整剤と、(iii)主要量の潤滑粘度の基油又は基油のブレンドと、を含む潤滑油組成物又は潤滑剤を内燃エンジンに供給することを含む。潤滑油組成物はまた、ホウ酸又はボロン酸から選択されるホウ素含有化合物を含む。アプローチでは、摩擦調整剤は、ホウ素含有化合物と予反応又は予ホウ素化されないが、スクシンイミド分散剤、摩擦調整剤、及びホウ素含有化合物は、潤滑組成物中に混和される。驚くべきことに、混和された構成成分を有する本明細書の方法の鉛腐食の量は、潤滑剤に添加される前にホウ素含有化合物と予反応させた摩擦調整剤を含む潤滑剤よりも改善される。
【0032】
本明細書の方法は、ヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤と、窒素不含有機摩擦調整剤と、ホウ素含有化合物との混和物を有する潤滑油組成物をエンジンに供給することを含む。したがって、本明細書の混和物の鉛腐食が、予ホウ素化された摩擦調整剤を含む潤滑油組成物よりも良好であることは更により驚くべきことである。
【0033】
成分を見てみると、本明細書の方法及び潤滑組成物は、まず、少なくとも、ヒドロカルビル置換されたアシル化剤を以下でより詳細に考察されるように様々なポリアルキレンポリアミンなどの窒素源と反応させることによって取得可能であるヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤を含む分散剤を含む。
【0034】
アプローチでは、分散剤は、スクシンイミド分散剤、コハク酸エステル分散剤、及び/又はコハク酸エステル-アミド分散剤を含むか、又はそれらからなる群から選択される油溶性無灰分散剤を含んでもよい。アプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、最大約10重量パーセントの本明細書の分散剤、又は約1~約8重量パーセント、及び他のアプローチでは、約2~約6重量パーセント(又はそのような終点内の任意の他の範囲)の分散剤を含んでもよい。
【0035】
ポリアルキレンポリアミンなどの窒素原料と反応したヒドロカルビルジカルボン酸又は無水物は、スクシンイミド分散剤を作製するために使用される。スクシンイミド分散剤及びそれらの調製は、米国特許第7,897,696号及び米国特許第4,234,435号に開示されており、これらは、両方が参照により本明細書に組み込まれる。ヒドロカルビル-ジカルボン酸又はその無水物のヒドロカルビル部分は、ブテンポリマー、例えばイソブチレンのポリマーなどであるがこれらに限定されない、ポリオレフィン系ポリマーから誘導されてもよい。本明細書での使用に好適なポリイソブテンは、従来のポリイソブチレン又は少なくとも約60%、例えば約70%~約90%以上の末端ビニリデン含有量を有する高反応性ポリイソブチレンから形成されたものを含む。好適なポリイソブテンとしては、BF触媒を使用して調製されるものが挙げられ得る。
【0036】
本明細書の分散剤のヒドロカルビル置換基(ポリイソブチレン置換基などの)の数平均分子量は、ポリスチレン(数平均分子量180~約18,000を有する)を較正基準として使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により決定して、例えば約500~約5,000(他のアプローチでは、約1,000~約3,000又は約1,000~約2,000)のように広い範囲にわたって変動してもよい。分散剤中のポリイソブチレン部分は、好ましくは、重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)対数平均分子量(number average molecular weight、Mn)の比により決定した、多分散度とも称される分子量分布(molecular weight distribution、MWD)を有する。Mw/Mnが約2.2未満、好ましくは約2.0未満であるポリマーが最も望ましい。好適なポリイソブチレン置換基は、約1.5~約2.1、又は約1.6~約1.8の多分散度を有する。
【0037】
分散剤のジカルボン酸又は無水物は、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、メサコン酸、エチルマレイン酸、無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など、対応する酸ハライド及びC~C脂肪族エステルを含むカルボン酸系反応物から選択することができる。ヒドロカルビルジカルボン酸又は無水物を作製するために使用される反応混合物中のジカルボン酸又は無水物対ヒドロカルビル部分のモル比は、大きく変化し得る。したがって、モル比は、約5:1~約1:5、例えば、約3:1~約1:3まで変化してもよい。酸又は無水物対ヒドロカルビル部分のモル比は、約1:1~約2:1が特に好適である。ジカルボン酸又は無水物対ヒドロカルビル部分の別の有用なモル比は、約1.3:1~約1.8:1である。
【0038】
多数のポリアルキレンポリアミンのうちのいずれかを、本明細書の潤滑剤の分散剤添加剤を調製するのに使用することができる。非限定的な例示的ポリアミンとしては、重炭酸アミノグアニジン(aminoguanidine bicarbonate、AGBC)、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(pentaethylene hexamine、PEHA)及び重質ポリアミンが挙げられ得る。重質ポリアミンは、TEPA及びPEHAなどの少量のポリアミンオリゴマーを有するが、主に1分子当たり7個以上の窒素原子、2個以上の一級アミンを有するオリゴマーを有し、かつ従来のポリアミン混合物よりも広範囲の分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。典型的に、これらの重質ポリアミンは、1分子当たり平均6.5個の窒素原子を有する。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために使用され得る、追加の非限定的なポリアミンは、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,548,458号において開示される。ヒドロカルビルジカルボン酸又は無水物対ポリアルキレンポリアミンのモル比は、約1:1~約3:1であり得る。
【0039】
一実施形態では、分散剤は、ポリイソブテニル無水コハク酸(polyisobutenyl succinic anhydride、PIBSA)と、ポリアミン、例えば、テトラエチレンペンタアミン又は様々な重ポリアミンなどのポリエチレンアミンとの反応生成物であってもよい。本明細書の分散剤は、約4:3~約1:10の範囲のポリイソブテニル置換無水コハク酸対ポリアミンのモル比を有してもよい。
【0040】
場合によっては、本明細書の分散剤は、潤滑剤に混和される前に、無水マレイン酸又は同様に潤滑剤に混和されるホウ素含有化合物とは異なるホウ素源などの様々な薬剤と任意選択的にホウ酸化、リン酸化、又は後反応させることができる。これらの分散剤は、一般に、少なくとも1つのリン化合物、ホウ素化合物、及び/又は無水マレイン酸と、上記のような少なくとも1つの無灰分散剤との反応生成物である。分散剤が潤滑剤に混合される前にホウ素化される場合、分散剤は、潤滑剤に混和されたホウ素化合物とは異なるホウ素化合物又はホウ素源によってホウ素化される。
【0041】
使用される場合、本明細書の分散剤と予反応させるのに有用な好適なホウ素化合物は、ホウ素含有種を無灰分散剤に導入することができる任意のホウ素化合物又はホウ素化合物の混合物を含む。かかる反応を受けることができる有機又は無機の任意のホウ素化合物を使用することができる。したがって、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、HBFホウ素酸、例えば、ボロン酸(例えば、アルキル-B(OH)、又はアリール-B(OH))、ホウ酸(すなわち、HBO)、四ホウ酸(すなわち、H)、メタホウ酸(すなわち、HBO)、かかるホウ素酸のアンモニウム塩、及びかかるホウ素酸のエステルを使用することができる。三ハロゲン化ホウ素とエーテル、有機酸、無機酸、又は炭化水素との錯体の使用は、ホウ素反応物質を反応混合物に導入する便利な手段である。かかる錯体は知られており、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素-フェノール、三フッ化ホウ素-リン酸、三塩化ホウ素-クロロ酢酸、三臭化ホウ素-ジオキサン及び三フッ化ホウ素-メチルエチルエーテルにより例示される。
【0042】
使用される場合、本明細書の分散剤を形成するための好適なリン化合物としては、リン含有種を無灰分散剤に導入することができるリン化合物又はリン化合物の混合物が挙げられる。このため、かかる反応を受けることができる有機又は無機の任意のリン化合物を使用することができる。したがって、かかる無機リン化合物を、無機リン酸、及びその水和物を含む無機酸化リンとして使用することができる。典型的な有機リン化合物としては、リン酸、チオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、及びテトラチオリン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステルなどのリン酸の完全エステル及び部分エステル;亜リン酸、チオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、及びトリチオ亜リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル;トリヒドロカルビルホスフィンオキシド;トリヒドロカルビルホスフィンスルフィド;モノ-及びジヒドロカルビルホスホネート、(RPO(OR’)(OR”)(式中、R及びR’は、ヒドロカルビルであり、R”は、水素原子又はヒドロカルビル基である)、及びそれらのモノ-、ジ-、並びにトリチオ類似体;モノ-及びジヒドロカルビルホスホナイト、(RP(OR’)(OR”)(式中、R及びR’は、ヒドロカルビルであり、R”は、水素原子又はヒドロカルビル基である)、及びそれらのモノ-並びにジチオ類似体など、が挙げられる。このため、かかる化合物を、例えば、亜リン酸(HPO、H(HPO)と表されることもあり、オルト-亜リン酸又はリン酸と呼ばれることもある)、リン酸(HPO、オルトリン酸と呼ばれることもある)、次リン酸(H)、メタリン酸(HPO)、ピロリン酸(H)、次亜リン酸(HPO、ホスフィン酸と呼ばれることもある)、ピロ亜リン酸(H、ピロホスホン酸と呼ばれることもある)、亜ホスフィン酸(HPO)、トリポリリン酸(H10)、テトラポリリン酸(H13)、トリメタリン酸(H)、三酸化リン、四酸化リン、五酸化リンなどとして使用することができる。ホスホロテトラチオ酸(HPS)、ホスホロモノチオ酸(HPOS)、ホスホロジチオ酸(HPO)、ホスホロトリチオ酸(HPOS)、セスキ硫化リン、七硫化リン、及び五硫化リン(P、P10と称されることもある)などの部分又は全硫黄類似体もまた、本開示のための分散剤の形成に使用することができる。PCl、PBr、POCl、PSClなどのような無機ハロゲン化リン化合物も使用可能である。
【0043】
同様に、有機リン化合物、例えば、リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル(例えば、トリヒドロカルビルホスフェート、ジヒドロカルビルモノアシッドホスフェート、モノヒドロカルビルジアシッドホスフェート、及びこれらの混合物)、亜リン酸のモノ-、ジ-、及びトリエステル(例えば、トリヒドロカルビルホスファイト、ジヒドロカルビル水素ホスファイト、ヒドロカルビル二酸ホスファイト、及びこれらの混合物)、ホスホン酸のエステル(「一級」RP(O)(OR)、及び「二級」RP(O)(OR)の両方)、ホスフィン酸のエステル、ホスホニルハロゲン化物(例えば、RP(O)Cl及びRP(O)Cl)、ハロリン酸塩(例えば、(RO)PCl及び(RO)PCl)、ハロホスファイト(例えば、ROP(O)Cl及び(RO)P(O)Cl)、三級ピロホスフェートエステル(例えば、(RO)P(O)-O-P(O)(OR))、並びに前述の有機リン化合物のうちのいずれかの全硫黄類似体又は部分硫黄類似体などを使用することができ、各ヒドロカルビル基は、最大約100個の炭素原子、好ましくは、最大約50個の炭素原子、より好ましくは、最大約24個の炭素原子、及び最も好ましくは、最大約12個の炭素原子を含む。ハロゲン化ハロホスフィン(例えば、四ハロゲン化ヒドロカルビルリン、三ハロゲン化ジヒドロカルビルリン、及び二ハロゲン化トリヒドロカルビルリン)、及びハロホスフィン(モノハロホスフィン及びジハロホスフィン)も使用可能である。
【0044】
なお他のアプローチでは、本明細書のヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤は、式Iの構造を有してもよく、
【0045】
【化1】
式中、Rが、約350~約5,000の数平均分子量を有するヒドロカルビル置換基(又は、前述のもの)であり、R、R、及びRが、独立して、二価C~C部分であり、R及びRの各々が、独立して、水素、C~Cアルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素と一緒になって、任意選択的に、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と融合した、5員環若しくは6員環を形成し、nが、0~8の整数であり、y及びzが、各々、整数であり、y+z=1である。いくつかのアプローチでは、分散剤はビスス-クシンイミドであり、R及びRは、それらが結合する窒素と一緒になって、式IIのラジカルを形成する
【0046】
【化2】
【0047】
いくつかのアプローチでは、アシル化剤は無水マレイン酸であり、窒素原料は、平均5個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、又はそれらの組み合わせの混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンであり、ヒドロカルビル置換基は、約1000~約2,500の数平均分子量を有する。
【0048】
次に、本明細書の方法及び潤滑組成物は、予ホウ素化されていないか、若しくはホウ素含有化合物と予反応していないカルボン酸基及び/又はヒドロキシルペンダント基を有する窒素不含有機摩擦調整剤を含む。好適な摩擦調整剤としては、金属不含及び窒素不含摩擦調整剤が挙げられ得、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、グリセロールエステル、硫化脂肪族化合物及びオレフィン、ヒマワリ油他の天然に存在する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル若しくは部分エステルなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0049】
好適な摩擦調整剤は、直線鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有し得、飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0050】
いくつかのアプローチでは、摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれ得る。そのような摩擦調整剤は、カルボン酸(又は、脂肪酸)及び無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルのブレンドを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載される。好ましくは、窒素不含有機摩擦調整剤は、アルカノールと反応したC10~C20脂肪酸などの脂肪酸から得られたペンダントヒドロキシル基を有する。他のアプローチでは、窒素不含有機摩擦調整剤は、脂肪酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含む。なお他のアプローチでは、窒素不含有機摩擦調整剤は、オレイン酸のモノ-及びジ-エステルのブレンドを含み、好ましくは、窒素不含有機摩擦調整剤は、主に、モノオレイン酸グリセロールを含む。
【0051】
本明細書の潤滑組成物は、最大約1重量パーセント、他のアプローチでは、約0.1~約1重量パーセント、約0.1~約0.8重量パーセント、約0.2~約0.8重量パーセント、又はその中の任意の他の範囲のそのような摩擦調整剤を含み得る。
【0052】
潤滑油組成物はまた、ホウ素含有化合物の、上で考察された分散剤及び摩擦調整剤との混和物を含む。好ましくは、ホウ素含有化合物は、ホウ酸又は1つ以上のボロン酸から選択されるが、好適なホウ素含有化合物としては、ホウ素含有種を導入するか、又は窒素不含有機摩擦調整剤のカルボキシル基若しくはヒドロキシル基と反応することができる任意のホウ素含有化合物又はホウ素含有化合物の混合物が挙げられ得る。かかる反応を受けることができる有機又は無機の任意のホウ素化合物を使用することができる。したがって、かつ摩擦調整剤に依存して、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、HBFホウ素酸、例えば、ボロン酸(例えば、アルキル-B(OH)、又はアリール-B(OH))、ホウ酸(すなわち、HBO)、四ホウ酸(すなわち、H)、メタホウ酸(すなわち、HBO)、そのようなホウ素酸のアンモニウム塩、及びそのようなホウ素酸のエステルを使用することができる。場合によっては、三ハロゲン化ホウ素の、エーテル、有機酸、無機酸、又は炭化水素との錯体の使用は、ホウ素反応物質を反応混合物に導入する便利な手段である。かかる錯体は知られており、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素-フェノール、三フッ化ホウ素-リン酸、三塩化ホウ素-クロロ酢酸、三臭化ホウ素-ジオキサン及び三フッ化ホウ素-メチルエチルエーテルにより例示される。
【0053】
1つのアプローチでは、ホウ素含有化合物は、構造X-B-(OH)を有してもよく、式中、Xが、ヒドロキシル基、線状若しくは分岐アルキル基、環状ヒドロカルビル基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせである。他のアプローチでは、ホウ素含有化合物は、ボロン酸であり得、Xが、線状若しくは分岐C1~C10基、1つ以上の芳香族基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、又はそれらの組み合わせである。なお他のアプローチでは、ホウ素含有化合物は、ホウ酸、(2-メチルプロピル)ボロン酸、フェニルボロン酸、ナフタレン-1-ボロン酸、4-(ジベンゾフラニル)ボロン酸など、ホウ素含有化合物、又はそれらの混合物であってもよい。
【0054】
アプローチでは、分散剤、摩擦調整剤、及びホウ素含有化合物の混和物は、約100~500rpmのブレンドの穏やかな混合を使用して、約50℃~約100℃(又は、約70℃~約80℃)の温度でブレンドすることによって調製され得る。本明細書の方法及び潤滑油組成物は、ホウ素含有化合物によって提供された(かつ、任意の予ホウ素化された化合物からのホウ素を含まない)約100ppm~約300ppmのホウ素、最大約10重量パーセントのヒドロカルビル置換されたスクシンイミド分散剤(又は、約1~約8重量パーセント)、及び最大約1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤(又は、約0.2~約0.8重量パーセント)を含む。本明細書の混和物は、理論によって限定されることを望むものではないが、組成物中の若しくは使用中に組成物中に形成されたヒドロキシル又は他の酸部分と更に反応するために利用可能であり得る、予備のホウ素又は予備のホウ素含有化合物を含有していてもよい。なお他のアプローチでは、本明細書の方法及び潤滑油組成物は、各1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤当たり、ホウ素含有化合物によって提供された約250ppm~約350ppm(又は、そのような終点内の他の好適な範囲)のホウ素の混和物を含んでもよい。
【0055】
そのようなホウ素と摩擦調整剤との重量関係を含む組成物及び方法では、摩擦調整剤を予反応させず(又は、予ホウ素化させず)、単に一緒に混和するとき、本明細書の方法及び潤滑油組成物は、驚くべきことに、ASTM D6594により測定した場合、各1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤当たり、約500ppm以下の鉛腐食、他のアプローチでは、ASTM D6594により測定した場合、各1重量パーセントの窒素不含有機摩擦調整剤当たり、約400ppm以下の鉛腐食、約300ppm以下の鉛腐食、約200ppm以下の鉛腐食、又は約150ppm以下の鉛腐食を呈する。以下の実施例に示されるように、更により驚くべきことは、本明細書の混和剤の鉛腐食が、多くの場合、予ホウ素化された摩擦調整剤よりも良好であり、かつ場合によっては、驚くべきことに、任意の摩擦調整剤を有しない潤滑剤組成物よりも更により良好であることである。
【0056】
潤滑油組成物
本明細書の方法は、基油又は基油ブレンドの大部分において、上で考察された分散剤、摩擦調整剤、及びホウ素含有化合物を含む潤滑油組成物を内燃エンジンに供給することを含む。上記の添加剤のそのような混和物は、1つ以上の更なる任意選択的な添加剤との組み合わせで、主要量の潤滑粘度の基油ブレンド又は基油ブレンド(以下に記載されるような)と組み合わされて、潤滑油組成物を生成し得る。アプローチでは、潤滑油組成物は、約50重量パーセント以上の基油ブレンド、約60重量パーセント以上、約70重量パーセント以上、又は約80重量パーセント以上~約95重量パーセント以下、約90重量パーセント以下、約85重量パーセント以下の基油ブレンドを含み、そのようなブレンドは以下に更に考察される。
【0057】
基油ブレンド:本明細書の潤滑油組成物中に使用される基油は、潤滑粘度の油であり得、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に指定されているように、グループI~Vにおける基油のうちのいずれかから選択される。5つの基油グループは、以下の通りである。
【0058】
【表1】
【0059】
グループI、グループII、及びグループIIIは、鉱油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有している。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であり得る。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0060】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油ブレンドは、鉱油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0061】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源から誘導されるものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得るか、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0062】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0063】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られた油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油もまた、有用であり得る。
【0064】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンの三量体若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと称される)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0065】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製され得る。
【0066】
潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0067】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数改善剤及び/又は流動点降下剤及び/又は他のトップ処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超であり得る。
【0068】
任意選択的な添加剤:
本明細書の方法及び潤滑油組成物はまた、記述した関係が維持される限り、性能基準を満たすために必要に応じて、上で考察された分散剤、摩擦調整剤、及びホウ素含有化合物と組み合わせたいくつかの任意選択的な添加剤を含んでもよい。それらの任意選択的な添加剤は、以下の段落で説明する。
【0069】
任意選択的な分散剤:潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の追加の分散剤又はそれらの混合物を含んでもよい。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤と知られている。無灰タイプの分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製され得る。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0070】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(pentaethylamine hexamine、PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0071】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7個以上の窒素を含有し、分子当たり2個以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%超(例えば、>32重量%)の総窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の一級アミン基と、を含む。
【0072】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして知られており、TEPA及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が、ポリアミンの主要部分であり、通常約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0073】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素及びより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成し得る。
【0074】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより判定される場合に、約350~約50,000、又は~約5000、又は~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれる場合、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(「highly reactive PIB、HR-PIB」)とも称される。GPCにより判定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0076】
GPCにより判定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。このようなHR-PIBは、市販されているか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。上記の熱エン反応で使用されるとき、HR-PIBは、反応性の増加に起因して、反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0077】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導された少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有し得る。
【0078】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィ技術を使用して判定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載されている。
【0079】
ポリオレフィンの転化率は米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を使用して、有効成分%から算出される。
【0080】
別途明記しない限り、全てのパーセンテージは、重量パーセントであり、全ての分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)により判定される数平均分子量である。
【0081】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導され得る。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。一実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導され得る。
【0082】
好適なクラスの窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に記載されており、かつ/又は市販されている。
【0083】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0084】
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。好適な分散剤はまた、従来の方法により様々な薬剤のうちのいずれかとの反応によって後処理され得る。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
カーボネート及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理により後処理、又は更に後処理され得る。このような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような処理には、以下による処理が含まれる。無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号)、有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、五硫化リン、既に上記したようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号)、カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号)、エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号)、アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、尿素、チオ尿素、又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号)、有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号)、シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号)、ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号)、環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸及びそれに次ぐジイソシアネートの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択的にそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤(glycolating agent)の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。先に言及された特許は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0087】
更に他の実施形態では、任意選択的な分散剤添加剤は、ヒドロカルビル置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤であり得る。アプローチでは、ヒドロカルビル置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導され得、スクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定した場合、約250~約5,000の数平均分子量を有する線状又は分岐ヒドロカルビル基である。
【0088】
いくつかのアプローチでは、分散剤を形成するために使用されるポリアルキレンポリアミンは、以下の式を有し、
【0089】
【化3】
式中、各R及びR’は、独立して、二価C1~C6アルキレンリンカーであり、各R及びRは、独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素原子と一緒に、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と任意選択的に融合した5員環若しくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。他のアプローチでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
任意選択の分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、約0.1~8重量%、又は約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一のタイプ又は任意の所望の比の2つ以上のタイプの分散剤の混合物が使用され得る。
【0091】
酸化防止剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知であり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0092】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含み得、アルキル基は、約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含んでいてもよい。
【0093】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミン及び高分子量フェノールを含み得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得るため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0094】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0095】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、ダイズ油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0096】
別の代替的な実施形態では、酸化防止剤組成物は、上で考察されたフェノール性及び/又はアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノール対アミン対モリブデン含有の比は、(0~2):(0~2):(0~1)である。
【0097】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0098】
耐摩耗剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な追加の耐摩耗剤の例としては、以下に限定されないが、チオリン酸金属;ジアルキルジチオリン酸金属;リン酸エステル若しくはその塩;リン酸エステル;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド;硫化オレフィン;チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、並びにビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなど、チオカルバメート含有化合物;及びそれらの混合物、が挙げられる。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により完全に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであり得る。
【0099】
好適な耐摩耗剤の更なる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラート又はタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有し得、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。
【0100】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在し得る。
【0101】
洗浄剤:潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の中性洗浄剤、低塩基性洗浄剤、又は過塩基性洗浄剤、及びこれらの混合物を含んでもよい。好適な追加の洗浄剤基材としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート(calixarate)、サリキサラート(salixarate)、サリチレート、カルボン酸、リン酸(phosphorus acid)、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸(thiophosphoric acid)、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な清浄剤及びその調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公開により詳細に記載されている。
【0102】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属で塩化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。いくつかの実施形態では、清浄剤は、マグネシウム又はカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、又は10ppm以下などの量で含有し得る。好適な清浄剤には、石油スルホン酸及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ-又はジ-アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が含まれ得る。好適な清浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサラート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸(calcium phosphorus acid)、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサラート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸(magnesium phosphorus acid)、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸(thiophosphoric acid)、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサラート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸(thiophosphoric acid)、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基材及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製され得る。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0104】
潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mgKOH/グラム以上、又は更なる例として、約250mgKOH/グラム以上、若しくは約350mgKOH/グラム以上、若しくは約375mgKOH/グラム以上、若しくは約400mgKOH/グラム以上の総塩基価(total base number、TBN)を有し得る。
【0105】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサラート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸(calcium phosphorus acid)、過塩基性カルシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸(thiophosphoric acid)、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサラート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸(magnesium phosphorus acid)、過塩基性マグネシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸(thiophosphoric acid)、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0106】
過塩基性フェネートカルシウム清浄剤は、全てASTM D-2896の方法により測定される、少なくとも約150mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約400mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約350mgKOH/g、又は約230mgKOH/g~約350mgKOH/gの総塩基価を有する。そのような清浄剤組成物が、不活性希釈剤、例えばプロセス油、通常は鉱油中で形成されるとき、総塩基価は、希釈剤、及び清浄剤組成物に含まれ得る任意の他の材料(例えば、促進剤など)を含む全体組成物の塩基性を反映する。
【0107】
過塩基性清浄剤は、1.1:1から、又は2:1から、又は4:1から、又は5:1から、又は7:1から、又は10:1からの金属対基質比を有し得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、エンジン、又はトランスミッション若しくはギアなどの他の自動車部品内の錆を低減又は防止するのに有効である。清浄剤は、潤滑組成物中に、約0重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約4重量%、又は約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0108】
極圧剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の極圧剤を含有してもよい。油に可溶性である極圧(Extreme Pressure、EP)剤は、硫黄及びクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、並びにリンEP剤を含む。このようなEP剤の例としては、塩素化ワックス、ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、及び硫化Diels-Alder付加物などの有機スルフィド及びポリスルフィド;硫化リンとテルペンチン又はオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトなどのリン酸エステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメート及びバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0109】
追加の摩擦調整剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の追加の摩擦調整剤を含有してもよい。好適な摩擦調整剤には、金属を含有する及び金属を含まない摩擦調整剤が含まれ得、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0110】
好適な摩擦調整剤は、直線鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有し得、飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0111】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれ得る。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載される。
【0112】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含み得る。そのような化合物は、線状、飽和若しくは不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、線状、飽和、不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有し得る。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0113】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載される。
【0114】
追加の摩擦調整剤は、任意選択的に、約0重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約8重量%、又は約0.1重量%~約4重量%などの範囲で存在し得る。
【0115】
モリブデン含有成分:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有してもよい。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィナート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンタート、モリブデンチオキサンタート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物が含まれ得る。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態にあり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェー、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。
【0116】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan 822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan 2000(商標)及びMolyvan 855(商標)などの商品名で、並びにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商品名で販売されている市販の材料、並びにそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381号、米国再発行特許第37,363(E1)号、米国再発行特許第38,929(E1)号、及び米国再発行特許第40,595(E1)号に記載されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブデート、ナトリウムモリブデート、カリウムモリブデート、及び他のアルカリ金属モリブデート、及び他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブデート、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン、又は類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、前述の特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0118】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Mo3SkLnQzの化合物などの三核モリブデン化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、有機基が化合物を油中に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全ての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在し得る。追加の好適なモリブデン化合物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0119】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、又は約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0120】
遷移金属含有化合物:別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物又は半金属であってもよい。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0121】
ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能のうちの2つ以上として機能し得る。ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であり得る。本開示の技術の油溶性材料の調製において使用され得るか、又はそのために使用され得るチタン含有化合物の中には、酸化チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)、チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド、及び他のチタン化合物又は錯体、例えば、限定されないが、チタンフェネート、チタンカルボキシレート、例えばチタン(IV)2-エチル-1,3-ヘキサンジオエート又はチタンシトレート又はチタンオレエート及びチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシドがある。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)及びチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、又は一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸材料との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、及びグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体又はオリゴマー形態でも存在し得る。そのようなチタン材料は、市販されているか、又は当業者に明白である適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体又は液体として室温で存在し得る。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供され得る。
【0122】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製され得る。得られたチタネート-スクシネート中間体は、直接使用され得るか、又は(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル(若しくはアルキル)無水コハク酸及びポリアミン、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、若しくはそれらの混合物との反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤などのいくつかの物質のうちのいずれかと反応され得る。代替的に、チタネート-スクシネート中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール若しくはポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応され得、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用され得るか、又は上述のようにコハク酸分散剤と更に反応され得る。例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応され得る。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤と更に反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成し得る。
【0123】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC~C25カルボン酸との反応生成物であり得る。反応生成物は、以下の式によって表され得、
【0124】
【化4】
式中、nは、2、3、及び4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、又は以下の式によって表され得、
【0125】
【化5】
式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、Rは、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R及びRは、同一若しくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、又はチタン化合物は、以下の式によって表され得、
【0126】
【化6】
式中、xは、0~3の範囲であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R、及びRは、同一若しくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、Rは、H、C~C25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される。
【0127】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0128】
一実施形態において、油溶性チタン化合物は、約0~約3000重量ppmのチタン、又は25~約1500重量ppmのチタン、又は約35~約500重量ppmのチタン、又は約50~約300重量ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0129】
粘度指数改善剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な粘度指数改善剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改善剤は星型ポリマーを含み得、好適な例は米国公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0130】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、粘度指数改善剤に加えて、又は粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0131】
粘度指数改善剤及び/又は分散剤粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%であり得る。
【0132】
他の任意選択の添加剤:他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。本開示に従う任意の潤滑油組成物は、任意選択的に他の性能添加剤を含み得る。他の性能添加剤は、本開示の特定の添加剤に対する追加であり得、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改善剤、清浄剤、無灰TBNブースタ、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有することになる。
【0133】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0134】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0135】
好適な流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0136】
好適な防錆剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用なタイプの酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な防錆剤は、高分子量の有機酸である。防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0137】
一般的に言えば、本明細書の方法及び潤滑油組成物は、以下の表に列挙する範囲の添加剤成分を含み得る。
【0138】
【表2】
【0139】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。完全配合潤滑剤は、その配合物において必要とされる特徴を供給する分散剤/抑制剤パッケージ又はDIパッケージと本明細書で称される添加剤パッケージを慣用的に含有する。
【実施例
【0140】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を例解するものである。これらの実施例並びに本出願の他の箇所において、全ての比率、部、及び百分率は、別段の指示がない限り重量基準である。これらの実施例は、例解のみを目的として提示されており、本明細書で開示される発明の範囲を限定するは意図されないということが意図される。
【0141】
比較例1
増加量のモノオレイン酸グリセロール摩擦調整剤を含む潤滑剤を、ASTM D6594に準じて鉛腐食について評価した。この評価では、約135℃で加熱したときの0~168時間の油中の鉛濃度の量を測定した。鉛の量は、ASTM D5185又は同等の測定を使用してICPを介して測定した。評価した潤滑剤は、同様の量の基油、粘度指数向上剤、スクシンイミド分散剤、耐摩耗添加剤、洗浄剤、及び消泡添加剤を含んでいた。以下の表3及び図1は、摩擦調整剤の処理率が増加するにつれて、鉛腐食も増加することを示す。
【0142】
【表3】
【0143】
実施例1
異なるタイプのホウ素含有化合物を評価して、窒素不含有機摩擦調整剤、この場合には、モノオレイン酸グリセロールのカルボン酸及び/又はヒドロキシル基に関連付けられた鉛腐食を、摩擦調整剤を上記のホウ素含有化合物と予反応させるか、又は単にホウ素含有化合物を摩擦調整剤と70℃の潤滑剤中で他の潤滑剤添加剤とともに混和するかのいずれかによって不動態化させた。比較例1と同じく、評価した潤滑剤はまた、同等量の基油、粘度指数向上剤、スクシンイミド分散剤、耐摩耗添加剤、洗浄剤、及び消泡添加剤を含んでいた。比較例1と同様に、鉛腐食をASTM D6594に準じて測定し、鉛濃度をASTM D5185によって測定した。いずれの場合も、ホウ素含有化合物及びモノオレイン酸グリセロールは等モル百分率であった。驚くべきことに、かつ表4及び5の結果を比較することによって示され、図2に示されるように、摩擦調整剤が他の潤滑剤構成成分と混和する前にホウ素含有組成物と予反応されなかった場合、鉛腐食は同等であり、かつ/又は改善された。
【0144】
【表4】
1重量パーセントのGMO当たりのホウ素は、例えば、174.9ppmのホウ素を0.56%のGMOの処理率で除算して計算され、摩擦調整剤の各1重量パーセントに対して312.3ppmのホウ素のホウ素比を提供する。
**各1重量パーセントのGMO当たりの鉛腐食(ΔPb)は、例えば、70.0ppmの鉛腐食を0.56のGMOの処理率で除算して計算され、各1重量パーセントの摩擦調整剤に対して125.0ppmの鉛腐食比を提供する。
【0145】
【表5】
各1重量パーセントのGMO当たりの鉛腐食(ΔPb)は、例えば、150.3ppmの鉛腐食を0.6%のGMOの処理率で除算して計算され、各1重量パーセントの摩擦調整剤に対して250.4ppmの鉛腐食比を提供する。
【0146】
表4及び図3に示されるように、摩擦調整剤とホウ素含有化合物との混和物は、摩擦調整剤を有しない潤滑剤よりも低い鉛腐食を有する潤滑剤さえもたらし得る。更に、表4及び5の鉛腐食を比較すると、摩擦調整剤とホウ素含有化合物との混和物は、場合によっては、同じホウ素化合物で予ホウ素化された摩擦調整剤を含む潤滑剤よりも改善された鉛腐食を有する潤滑剤さえもたらし得る。図4はまた、本方法及び本発明の混和物が、鉛腐食が摩擦調整剤処理率に大きく依存しない強固な組成物を形成することを実証する。例えば、図4は、本発明の摩擦調整剤処理率が増加するにつれて、本発明の潤滑剤が一貫して低い鉛腐食を維持したが、先行する非ホウ素化摩擦調整剤の鉛腐食は、摩擦調整剤処理率の増加とともに増加する傾向があったことを示す。
【0147】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0148】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0149】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0150】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0151】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0152】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0153】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】