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特表2024-526692ケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって形成されるケイ素含有膜
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  • 特表-ケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって形成されるケイ素含有膜 図1
  • 特表-ケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって形成されるケイ素含有膜 図2
  • 特表-ケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって形成されるケイ素含有膜 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって形成されるケイ素含有膜
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20240711BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240711BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20240711BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240711BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240711BHJP
   C07F 7/10 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/455
C23C16/18
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C07F7/10 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501184
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 KR2022010713
(87)【国際公開番号】W WO2023003398
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097389
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514183215
【氏名又は名称】ユーピー ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ビョン クァン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン シク
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ダ ソム
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP03
4H049VQ35
4H049VR11
4H049VR22
4H049VR51
4H049VR52
4H049VU24
4H049VU36
4K030AA06
4K030AA11
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4K030AA17
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4K030HA01
4K030JA01
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4K030LA15
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5F045AA06
5F045AA15
5F045AB06
5F045AB31
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5F045AC09
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5F045AC12
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5F045AD10
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5F045AE21
5F045AF01
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5F045BB19
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5F045EE02
5F045EE19
5F045HA01
5F045HA16
5F058BA06
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5F058BB01
5F058BB06
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5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF37
5F058BH02
(57)【要約】
本発明は、ケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって形成されるケイ素含有膜に関する。本発明のケイ素含有膜を形成するための方法は、特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ケイ素含有酸化物膜又はケイ素含有複合金属酸化物膜を含むケイ素含有膜を、600℃以上の高温で効率的に形成すること、所望の膜の厚さ及び組成を有するように、ケイ素含有膜を制御すること、並びに複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジ及び均一性を有するケイ素含有膜を形成することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、化学的気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)によって、ケイ素含有膜を基材に堆積させることを含む、ケイ素含有膜を形成するための方法であって、
前記ケイ素含有膜が、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記堆積が600℃以上の温度で行われる、ケイ素含有膜を形成するための方法。
【化1】

[式1中、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、及び直鎖又は分枝状C~Cアルキル基からなる群から選択され、
13~R17は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、ただし、R13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R15~R17のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【請求項2】
前記ケイ素前駆体化合物が、下記式によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】
【請求項3】
前記堆積が、600℃~850℃の温度範囲において行われる、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項4】
前記堆積が、ケイ素含有膜を形成するための前記組成物を使用して原子層堆積(ALD)によって行われる場合、600℃~850℃の温度範囲において、1.5~3.0Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)を有する、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項5】
前記堆積中に、水蒸気(HO)、酸素(O)、酸素プラズマ(Oプラズマ)、酸化窒素(NO、NO)、酸化窒素プラズマ(NOプラズマ)、硝酸酸素(N)、過酸化水素(H)、及びオゾン(O)からなる群から選択される少なくとも1つが使用される、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項6】
前記ケイ素含有膜が、1nm~500nmの厚さ範囲内に形成される、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項7】
前記ケイ素含有膜が、1以上のアスペクト比及び1μm以下の幅を有する少なくとも1つの凹凸を有する基材上に形成される、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項8】
バブリング法、液体送達システム(LDS)法、蒸気流制御(VFC)法、及びバイパス法からなる群から選択される少なくとも1つの方法を使用して、前記ケイ素前駆体化合物を反応チャンバに供給することを含む、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項9】
前記ケイ素前駆体化合物を反応チャンバに供給することが、搬送ガス又は希釈ガスを使用して、室温~150℃の温度範囲、且つ0.1~10Torrで行われる、請求項8に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項10】
前記堆積中に、熱エネルギー若しくはプラズマが使用されるか、又は、バイアスが前記基材に適用される、請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法。
【請求項11】
式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物であって、
600℃以上の温度で、化学的気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)によって、ケイ素含有膜を堆積させるために使用され、
前記ケイ素含有膜が、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含む、組成物。
【化15】

[式1中、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、及び直鎖又は分枝状C~Cアルキル基からなる群から選択され、
13~R17は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、ただし、R13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R15~R17のうちの少なくとも1つは水素ではない。]
【請求項12】
前記ケイ素前駆体化合物が、下記式によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項11に記載のケイ素含有膜を形成するための組成物。
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】
【請求項13】
請求項1に記載のケイ素含有膜を形成するための方法によって形成される、ケイ素含有膜。
【請求項14】
下記式1によって表される収縮率(S750)が5.0%以下である、請求項13に記載のケイ素含有膜。
収縮率(S750、%)=(A-B)/A×100 (式1)
[式1中、Aは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Bは、750℃でALDによって形成され、アルゴン(Ar)雰囲気中に750℃で60分にわたって静置された後の、前記ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。]
【請求項15】
750℃における堆積によって500Åの厚さに形成され、
前記ケイ素含有膜が、1%希釈フッ化水素酸のエッチング溶液に曝露された前後に、前記ケイ素含有膜の厚さが楕円偏光計を用いて測定される場合、下記式2によって表される前記ケイ素前駆体化合物のウェットエッチング速度(Å/s)が、4.0Å/s以下である、請求項13に記載のケイ素含有膜。
ウェットエッチング速度(Å/s)=エッチング厚さ変化(ΔE,Å)/30s (式2)
[式2中、エッチング厚さ変化(ΔE)は、下記式2-1によって表される。]
エッチング厚さ変化(ΔE,Å)=E-E (式2-1)
[式2-1中、Eは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Eは、750℃でALDによって形成され、1%希釈HF溶液中で30秒にわたってエッチングされた後の、前記ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって調製されるケイ素含有膜に関する。より詳細には、特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、600℃以上の高温でケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって調製されるケイ素含有膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素含有膜は、DRAM、フラッシュメモリ、抵抗変化型メモリ(ReRAM)又は相変化メモリ(PCRAM)等の半導体はもちろん、論理装置等の非半導体装置を駆動するために不可欠の薄膜の1つである。
【0003】
ケイ素含有膜として、ケイ素含有酸化物膜は堆積速度が高いが、ケイ素含有窒化物膜は堆積速度が遅い。様々な用途のために、所望の位置のみに選択的に堆積させることができるケイ素含有膜が求められている。
【0004】
また、メモリ分野及び非メモリ分野において、高アスペクト比、三次元構造等の複雑な形状を有する製品が様々に開発されるについて、様々な応用分野に対するプロセス温度に好適であり、高ステップ比の問題を克服することができる、原子層堆積(ALD)に使用することが可能な、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物が求められている。
【0005】
特に、装置の高集積化及び小型化によって生じ得るステップ比の問題を克服するために、自己制御的な膜成長特性を示すことが重要である。
【0006】
そのため、600℃以上の高温で自己制御的な膜成長特性を有し、ALDに好適であり、均一で緻密な膜を形成することができ、応力に耐性がある特性を有する、ケイ素前駆体化合物を含む薄膜を形成するための組成物を開発すること、及びその組成物を使用したケイ素含有膜を形成するための方法を開発することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許第10-0734393号
【発明の開示】
【技術的課題】
【0008】
本発明の目的は、特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、600℃以上の高温でケイ素含有膜を形成するための方法、及び、その方法によって調製されるケイ素含有膜を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を提供することである。
【0010】
しかしながら、本発明によって解決される課題は、上記で言及したものに限定されず、言及していない他の課題は、以下の記載から当業者には明らかに理解されるであろう。
【課題に対する解決】
【0011】
本発明は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、化学的気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)によって、ケイ素含有膜を基材に堆積させることを含む、ケイ素含有膜を形成するための方法であって、ケイ素含有膜が、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含み、堆積が600℃以上の温度で行われる、方法を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
式1中、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、及び直鎖又は分枝状C~Cアルキル基からなる群から選択され、
13~R17は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、ただし、R13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R15~R17のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0014】
また、本発明は、上記式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含み、600℃以上の温度で、化学的気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)によってケイ素含有膜を堆積させるために使用される、ケイ素含有膜を形成するための組成物であって、ケイ素含有膜が、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含む、組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、ケイ素含有膜を形成するための方法によって形成される、ケイ素含有膜を提供する。
【発明の有利な効果】
【0016】
本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための方法は、特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、600℃以上の高温で、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含むケイ素含有膜を、効率的に形成することができる。この方法によれば、所望の膜厚さ及び組成を正確に制御することができ、複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジで均一なケイ素含有膜を形成することができる。
【0017】
特に、本発明のケイ素含有膜を形成するための方法は、例えば、メモリ装置、論理装置、表示装置、及び有機発光ダイオード(OLED)装置の水分浸透バリア等の様々な分野に適用することができる。膜堆積中に600℃以上の高温で、所望の厚さを有する膜を得ることができるため、優れた膜特性及びカバレッジを要する電子装置に、非常に効果的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1~5及び8、並びに比較例1のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ケイ素含有膜を堆積させた場合の、600℃~850℃の温度に対する、ケイ素含有酸化物膜の堆積特性を示すグラフである。
図2】本発明の実施例1~5及び比較例1のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、750℃の温度で堆積させたケイ素含有酸化物膜の二次イオン質量分析法(SIMS)の結果を示すグラフである。
図3】本発明の実施例2及び比較例1のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、750℃でパターン化ウェハに堆積させることによるステップカバレッジを確認する、透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を詳細に記載する。
【0020】
本発明の利点及び特性、並びにこれらを達成する方法は、以下に記載する実施形態を参照することで明らかとなる。しかしながら、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されず、様々な異なる形態で具体化され得る。これらの実施形態は、本発明の開示が徹底的且つ包括的であり、本開示の範囲を当業者に充分に伝達するように提供される。本発明は、特許請求の範囲のみによって定義される。
【0021】
また、本明細書において、要素が別の要素「上(on)」に形成されると言及される場合、ある要素が別の要素「上」に直接形成されることだけでなく、他の要素(複数可)がそれらの間に介在していることも意味する。
【0022】
本明細書において、別段の指示がない限り、ある部分がある要素を「含む(comprising)」と称される場合、その部分は、他の要素を除外するのではなく、他の部分も含んでもよいことを理解されるべきである。
【0023】
別段の指示がない限り、ここで使用される成分及び反応条件等の数量に関するすべての数及び表現は、「約」という用語によって修飾されているものと理解されるべきである。
【0024】
本明細書において、別段の特定がない限り、「膜」及び「薄膜」という用語のそれぞれは、「膜」と「薄膜」との両方を表す。
【0025】
本明細書において、「アルキル」又は「アルキル基」という用語は、直鎖又は分枝状アルキル基と、その可能なすべての異性体とを範囲に含む。例えば、アルキル又はアルキル基は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、ノルマルプロピル基(Pr)、イソプロピル基(Pr)、ノルマルブチル基(Bu)、イソブチル基(Bu)、tert-ブチル基(tert-Bu、Bu)及びsec-ブチル基(secBu)等だけでなく、その異性体等も範囲に含むが、アルキル又はアルキル基はこれらに限定されない。
【0026】
[ケイ素含有膜を形成するための方法]
本発明の実施形態によれば、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、化学的気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)によって、ケイ素含有膜を基材に堆積させるステップを含む、ケイ素含有膜を形成するための方法であって、ケイ素含有膜が、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含み、堆積が600℃以上の温度で行われる、方法が提供され得る。
【0027】
【化2】
【0028】
式1中、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、及び直鎖又は分枝状C~Cアルキル基からなる群から選択され、
13~R17は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、ただし、R13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R15~R17のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0029】
本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための方法によれば、式1によって表される特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、600℃以上の高温で、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含むケイ素含有膜を、効率的に形成することができる。この方法によれば、所望の膜厚さ及び組成を正確に制御することができ、複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジで均一なケイ素含有膜を形成することができる。
【0030】
特に、本発明のケイ素含有膜を形成するための方法は、例えば、メモリ装置、論理装置、表示装置、及び有機発光ダイオード(OLED)装置の水分浸透バリア等の様々な分野に適用することができ、膜堆積中に600℃以上の高温で、所望の厚さの膜を得ることができるという、技術的意義を有する。
【0031】
詳細には、ケイ素含有膜を形成するための方法では、ケイ素含有膜の形成は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、基材(基板)にケイ素含有膜を堆積させるステップを含み得る。
【0032】
基材は、ケイ素半導体ウェハ、化合物半導体ウェハ、及びプラスチック基材(PI、PET、又はPES)であってもよいが、これらに限定されない。また、穴又は溝を有する基材を使用してもよく、大きな表面積を有する多孔質基材を使用してもよい。
【0033】
特に、数ナノメートル(nm)~数マイクロメートル(μm)の厚さを有するケイ素含有膜を、600℃以上、詳細には600℃~850℃の温度範囲において、表面にパターン(溝)を有する基材上、多孔質基材上、又はプラスチック基材上でも、均一に形成することができる。基材上に均一な厚さを有するケイ素含有膜を形成すること、1以上、例えば、約1~50以上のアスペクト比、及び1μm以下、例えば、約1μm~10nm以下の幅を有する、微細パターン(溝)の最も深い表面及び微細な凹凸(溝)の上面を覆うことという、優れた効果を生じることができる。例えば、ケイ素含有膜は、1以上のアスペクト比及び1μm以下の幅を有する少なくとも1つの凹凸を有する基材上に形成され得る。
【0034】
ケイ素含有膜の堆積方法は、任意の方法及び本発明が属する技術分野で公知の機器を使用してもよく、必要な場合、1種又は複数の追加の反応物質ガス等を使用して行ってもよい。
【0035】
ケイ素含有膜の堆積方法は、CVD、例えば、有機金属気相成長(MOCVD)又はALDによって行ってもよい。MOCVD又はALDは、当技術分野において公知の堆積機器、堆積条件及び反応性ガスを使用して行うことができる。
【0036】
詳細には、基材を反応チャンバに収容し、次いで、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、搬送ガス又は希釈ガスを使用して基材上に搬送し、600℃以上、詳細には600℃~850℃の堆積温度でケイ素含有膜を堆積させる。
【0037】
ここで、上記範囲の堆積温度によって、メモリ装置、論理装置、及び表示装置に適用されるようになる。プロセス温度は幅広いため、様々な分野に適用することができる。特に、応力に耐性があり、高温で緻密な膜を形成することができる、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用するため、上記堆積温度範囲で容易に堆積を行うことができる。
【0038】
また、搬送ガス又は希釈ガスとして、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、及び水素(H)からなる群から選択される少なくとも1種の混合ガスを使用することが好ましい。
【0039】
また、ケイ素前駆体化合物を反応チャンバに送達する方法は、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、搬送ガス又は希釈ガスを使用して強制的に揮発させるバブリング法、室温で組成物を液相に供給して、蒸発器を通じて揮発させるための液体送達システム(LDS)法、蒸気圧を使用して前駆体を直接供給するための蒸気流制御(VFC)法、及び加熱によって揮発させるためのバイパス法からなる群から選択される少なくとも1つの方法であり得る。
【0040】
例えば、蒸気圧が高い場合、蒸気流制御法が使用され得る。蒸気圧が低い場合、容器を加熱することによって揮発させるバイパス法、又はアルゴン(Ar)若しくは窒素(N)ガスを使用したバブリング法を使用して、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、反応チャンバに供給してもよい。
【0041】
より詳細には、送達方法はバブリング法又はバイパス法を含み、バブリング法は、搬送ガス又は希釈ガスを使用して、室温~150℃の温度範囲、且つ0.1Torr~10Torrで行ってもよく、バイパス法は、0.1Torr~1.5Torrの蒸気圧を使用して、室温~100℃の温度範囲で行ってもよい。例えば、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物の、反応チャンバへの供給は、搬送ガス又は希釈ガスを使用して、室温~100℃の温度範囲、且つ0.1Torr~10Torrで行われ得る。
【0042】
また、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を揮発させるために、例えば、アルゴン(Ar)又は窒素(N)ガスが搬送のために使用されてもよく、堆積中に熱エネルギー又はプラズマが使用されてもよく、バイアスが基材に適用されてもよい。
【0043】
一方、ケイ素含有膜を形成する方法によれば、ケイ素含有酸化物膜又はケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有膜を堆積させるために、堆積中に、水蒸気(HO)、酸素(O)、酸素プラズマ(Oプラズマ)、酸化窒素(NO、NO)、酸化窒素プラズマ(NOプラズマ)、硝酸酸素(oxygen nitrate)(N)、過酸化水素(H)、及びオゾン(O)からなる群から選択される少なくとも1つが使用され得る。
【0044】
ケイ素含有酸化物膜又はケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有膜は、例えば、HfSiO、ZrSiO、TiSiO、HfAlO、ZrAlSiO、TiAlSiO、ZrHfSiO、ZrHfAlSiO、SiC、SiCO、及びSiONからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。ここで、xは1~3であり得る。
【0045】
また、ケイ素含有窒化物膜又はケイ素含有複合金属窒化物膜からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素含有膜は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用することによって形成され得る。
【0046】
詳細には、ケイ素含有窒化物膜又はケイ素含有複合金属窒化物膜を堆積させるために、堆積中に、アンモニア(NH)、アンモニアプラズマ(HNプラズマ)、ヒドラジン(N)、及び窒素プラズマ(Nプラズマ)からなる群から選択される少なくとも1つが使用され得る。
【0047】
ケイ素含有窒化物膜又はケイ素含有複合金属窒化物膜は、例えば、HfSiN、ZrSiN、TiSiN、AlSiN、HfAlSiN、ZrAlSiN、TiAlSiN、HfZrAlSiN、HfZrTiSiN、TiAlSiN、SiCN、SiOCN、及びSiBNからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。ここで、xは1~3であり得る。
【0048】
上記式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を、以下に詳細に記載する。
【0049】
[ケイ素含有膜を形成するための組成物]
本発明は、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を提供する。
【0050】
詳細には、ケイ素含有酸化物膜を形成するための組成物は、上記式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含み、600℃以上の温度で、化学的気相成長(CVD)又は原子層堆積(ALD)によってケイ素含有膜を堆積させるために使用することができ、ケイ素含有膜は、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0051】
本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための組成物は、式1によって表される特定の構造を有するケイ素前駆体化合物を含むため、複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジを有する均一なケイ素含有膜、詳細にはケイ素含有酸化物膜を形成することができる。
【0052】
特に、上記式1は、様々なタイプのアミン及びアルキル基がSiに結合した構造、特に、様々なタイプの結合の中のR13-Si-R14におけるR13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではない構造を有するため、600℃~850℃の高温においても、安定な膜を形成するのに非常に有利である。
【0053】
すなわち、式1によって表されるケイ素前駆体化合物では、第1に、上記構造における-NR1112によって表されるアミンは、優れた表面反応性を有し、ケイ素含有酸化物膜を形成するのに有利である。第2に、上記構造において、R13-Si-R14によって表される部分のR13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではない、すなわち、R13及びR14のうちの少なくとも1つは、アルキル基又はアルケニル基を有することにより、好ましくは、R13及びR14のうちの少なくとも1つはアルキル基を有することにより、SiとCとの熱的に安定な結合によって、高温でケイ素前駆体が急速に分解せず、安定な膜を形成することができ、これにより高温でケイ素含有膜の特性を要する三次元NANDフラッシュメモリプロセスに好適であり得る。第3に、構造が3個のSi元素を含み、SiO ALDにおいて、従来公知のケイ素前駆体化合物よりも著しく大きなGPCを有し、これにより高温で緻密なSiO膜が形成される、三次元NANDフラッシュメモリプロセスに好適であり得る。
【0054】
詳細には、式1において、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素、及び直鎖又は分枝状C~Cアルキル基からなる群から選択され、R13~R17は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、ただし、R13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R15~R17のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0055】
ケイ素前駆体化合物は、次式1-1~1-25によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0056】
【化3】
【0057】
【化4】
【0058】
【化5】
【0059】
【化6】
【0060】
【化7】
【0061】
【化8】
【0062】
【化9】
【0063】
【化10】
【0064】
【化11】
【0065】
【化12】
【0066】
【化13】
【0067】
【化14】
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
【化18】
【0072】
【化19】
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】
【化22】
【0076】
【化23】
【0077】
【化24】
【0078】
【化25】
【0079】
【化26】
【0080】
【化27】
【0081】
本発明の別の実施形態によれば、ケイ素含有酸化物膜を形成するための組成物に含まれるケイ素前駆体化合物は、式1-aによって表される化合物であり得る。
【0082】
【化28】
【0083】
式1-a中、
11及びR12は、それぞれ独立して、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基であり、
13~R17は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、
ただし、R11及びR12のうちの少なくとも1つはメチル基ではなく、R13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではなく、R15~R17のうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0084】
詳細には、ケイ素前駆体化合物は、上記式1-2~1-5、1-7、1-8、1-10、1-11、1-13~1-20、及び1-22~1-25によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0085】
すなわち、ケイ素前駆体化合物は、下記式によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0086】
【化29】
【0087】
【化30】
【0088】
【化31】
【0089】
【化32】
【0090】
【化33】
【0091】
【化34】
【0092】
【化35】
【0093】
【化36】
【0094】
【化37】
【0095】
【化38】
【0096】
本発明の実施形態によれば、堆積が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって行われる場合、600℃~850℃の温度範囲において、1.5~3.0Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(サイクルあたりの成長量)(GPC)を有し得る。
【0097】
詳細には、堆積が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって行われる場合、600℃~850℃の温度範囲、例えば、800℃において、例えば、1.5~2.5Å/サイクル、1.7~2.5Å/サイクル、又は1.75~2.25Å/サイクルのALDガス供給の成膜速度(GPC)値を達成することができる。
【0098】
ケイ素含有膜が、本発明の実施形態によるケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して形成される場合、所望の膜厚さ及び所望のケイ素含有量を達成し、表面にパターン(溝)を有する基材、多孔質基材、プラスチック基材又は三次元構造の複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジ及び均一な厚さを有する膜が形成されるように組成物を制御することができ、これによって、高品質のケイ素含有膜を提供することができる。
【0099】
さらに、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含むケイ素含有膜に加えて、ケイ素含有窒化物膜、ケイ素含有炭化物膜及びケイ素含有複合金属膜からなる群から選択される少なくとも1つを、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したCVD又はALDによって、基材上に効率的に形成することができる。
【0100】
特に、本発明の実施形態によれば、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含むケイ素含有膜が、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したALDによって基材上に形成される場合、所望の厚さを有する膜を、600℃以上の高温において、均一な厚さで得ることができ、高温における膜の収縮率及びエッチング速度が小さく、不純物が少ない高品質の純粋なケイ素含有膜を形成することができるという、大きな利点がある。
【0101】
[ケイ素前駆体化合物を調製するための方法]
一方、式1によって表されるケイ素前駆体化合物は、様々な方法によって調製され得る。
【0102】
本発明の実施形態によるケイ素前駆体化合物(式1)を調製するための方法は、式Aによって表されるアルキルジシラザン金属塩を、式Bによって表される二ハロゲン化ケイ素前駆体化合物及び式Cによって表される、ジアルキルアミン又はジアルキルアミン金属塩とのハロゲン化物-アミン置換反応に供することを含む。
【0103】
【化39】
【0104】
反応スキーム1中、
は、アルカリ金属及びLi又はNaであり、
15~R17は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、ただし、R15~R17のうちの少なくとも1つは水素ではなく、
及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン元素及びCl、Br又はIであり、
13及びR14は、それぞれ独立して、水素、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基、及び直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基からなる群から選択され、ただし、R13及びR14のうちの少なくとも1つは水素ではなく、
11及びR12は、それぞれ独立して、水素、又は直鎖若しくは分枝状C~Cアルキル基であり、
は、水素、Li、及びNaからなる群から選択される。
【0105】
上記反応スキーム1を参照すると、0.5~2モルの二ハロゲン化ケイ素前駆体化合物(式B)を、低温(約-30℃~-5℃)のアルキルジシラザン金属塩(式A)に加え、ケイ素前駆体化合物(式1)をハロゲン化物とアミンとの第1の置換反応に供する。その後、1~3モルのジアルキルアミン又はジアルキルアミン金属塩(式C)を、低温(約-30℃~-5℃)の得られたものに加えて、ハロゲン化物とアミンとの第2の置換反応を行う。次に、反応生成物に含まれる、金属ハロゲン化物塩又はジアルキルアミンハロゲン化物塩の形態の反応副生成物を、濾紙を通して除去して(得られたものを精製してもよい)、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を得る。
【0106】
ここで、反応スキーム1におけるR13-Si-R14の構造中、R13及びR14がそれぞれアルキル基である場合、ハロゲン化物とアミンとの間の置換反応の速度は、比較的遅いことがある。このような場合、反応温度が高いほど、置換反応がより容易に行われることがあり、より有利であり得る。
【0107】
第1及び第2のハロゲン化物-アミン置換反応は、0℃~30℃、詳細には20℃~30℃、例えば、室温の溶媒中で、2~30時間にわたって行われ得る。
【0108】
また、溶媒は、5~8個の炭素原子を有するアルカン、トルエン、エーテル、テトラヒドロフラン、及びモノ-~テトラ-エチレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される1つ又は複数を含んでもよい。
【0109】
本発明の実施形態によれば、ケイ素前駆体化合物を使用して、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物が得られ得る。
【0110】
[ケイ素含有膜]
本発明の実施形態によれば、ケイ素含有膜を形成するための方法によって形成される、ケイ素含有膜が提供される。
【0111】
ケイ素含有膜は、数ナノメートル(nm)~数マイクロメートル(μm)の厚さを有してもよく、適用目的に応じて、様々に適用され得る。詳細には、ケイ素含有膜は、1nm~500nmの厚さ範囲内に形成され得る。
【0112】
ケイ素含有膜は、基材(基板)上に形成され得る。
【0113】
基材は、上記のとおりである。
【0114】
ケイ素含有膜は、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0115】
さらに、ケイ素含有酸化物膜及びケイ素含有複合金属酸化物膜からなる群から選択される少なくとも1つを含むケイ素含有膜に加えて、ケイ素含有窒化物膜、ケイ素含有炭化物膜、及びケイ素含有複合金属膜からなる群から選択される少なくとも1つを、式1によって表されるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、効率的に形成することができる。
【0116】
また、ケイ素含有膜は、優れた熱安定性を有する、ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用することによって調製されるため、ケイ素含有膜は、600℃以上、例えば、600℃~850℃の高温においても小さな収縮率と、低いウェットエッチング速度(Å/s)とを有することを特徴とする。
【0117】
詳細には、ケイ素含有膜は、次の式1によって表される、5.0%以下の収縮率(S750)を有し得る。
収縮率(S750、%)=(A-B)/A×100 (式1)
【0118】
式1中、Aは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Bは、750℃でALDによって形成され、アルゴン(Ar)雰囲気中に750℃で60分にわたって静置された後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0119】
式1によって表されるケイ素含有膜の収縮率(S750)は、例えば、4.8%以下、4.5%以下、4.4%以下、4.0%以下、3.9%以下、3.8%以下、3.5%以下、3.3%以下、3.2%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下又は1.0%以下であり得る。
【0120】
ケイ素含有膜が、上記範囲を満足する収縮率(S750)を有する場合、均一で緻密なケイ素含有膜を形成するのに有利であり得る。
【0121】
一方、ケイ素含有膜が、750℃における堆積によって500Åの厚さに形成される場合、且つケイ素含有膜を、1%希釈フッ化水素酸のエッチング溶液に曝露した前後に、ケイ素含有膜の厚さを、楕円偏光計を用いて測定する場合、次の式2によって表されるケイ素前駆体化合物のウェットエッチング速度(Å/s)は、4.0Å/s以下であり得る。
ウェットエッチング速度(Å/s)=エッチング厚さ変化(ΔE,Å)/30s (式2)
【0122】
エッチング厚さ変化(ΔE)は、次の式2-1によって表され得る。
エッチング厚さ変化(ΔE,Å)=E-E (式2-1)
【0123】
式2-1中、Eは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Eは、750℃でALDによって形成され、1%希釈HF溶液中で30秒にわたってエッチングされた後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0124】
式2中、「s」は秒を意味する。
【0125】
式2によって表されるケイ素含有膜のウェットエッチング速度(Å/s)は、例えば、3.8Å/s以下、3.5Å/s以下、3.2Å/s以下、3.0Å/s以下、2.8Å/s以下、2.5Å/s以下、2.45Å/s以下、2.4Å/s以下、2.2Å/s以下、2.1Å/s以下、2.0Å/s以下、1.5Å/s以下、1.0Å/s以下、0.5Å/s以下、0.1Å/s以下、0.05Å/s以下又は0.03Å/s以下であり得る。詳細には、式2によって表されるケイ素含有膜のウェットエッチング速度(Å/s)は、3.8Å/s~0.5Å/s、3.5Å/s~0.5Å/s、3.0Å/s~1.0Å/s、2.5Å/s~1.0Å/s、又は2.1Å/s~1.0Å/sであり得る。
【0126】
ケイ素含有膜が、上記範囲を満足するウェットエッチング速度(Å/s)を有する場合、均一で緻密なケイ素含有膜を形成するのに有利であり得る。
【0127】
また、ケイ素含有膜は、ステップカバレッジに非常に優れることがある。
【0128】
詳細には、ケイ素含有膜を、図3に示すようなステップ付き穴パターンを有する基材に堆積させ、次いで、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して分析する場合、ケイ素含有膜は、例えば、80%以上、例えば、82%以上、例えば、85%以上、例えば、90%以上、例えば、92%以上、例えば、93%以上、例えば、95%以上、又は例えば、96%以上のステップカバレッジ(%)を有する。
【0129】
ケイ素含有膜が、上記範囲を満足するステップカバレッジ(%)を有する場合、高ステップ比及び精密な厚さ制御が可能であり、様々な半導体装置、例えば、DRAM及び3D NANDフラッシュメモリを製造するために有利に使用することができる。
【実施例
【0130】
以下に、実施例を参照しながら、本発明を詳細に記載する。以下の実施例は、本発明の説明のためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0131】
<実施例1>ジメチルアミノ-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([{(CHN}Si(CH{N(SiHMe}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化40】
【0132】
約118.69g(2.5M、約0.426モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、2リットル丸底フラスコ中で、約1,000mlの無水ヘキサンと混合した。約61.99g(約0.465モル)のテトラメチルジシラザン(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)を、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。このようにして形成した-20℃~-10℃のリチウム(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)塩に、約50g(約0.387モル)のジクロロジメチルシランをゆっくりと加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。4時間後、約41.91g(約0.930モル)のジメチルアミンを、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。反応が完了したら、反応中に形成した塩を濾過によって除去し、減圧下で溶媒及び揮発性副反応物質を除去して、59.97g(収率約66%)のジメチルアミノ-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[{(CHN}Si(CH{N(SiHMe}]を、式1-1によって表される無色液体化合物として得て、膜を形成するための組成物に使用した。
【0133】
沸点:10Torrにおいて72℃(760Torrにおいて194.5℃)
H-NMR(C):δ0.221(Si-CH ,s,6H),δ0.249,0.241(N-Si-CH ,d,12H),δ2.424(N-CH ,s,6H),δ4.700(N-Si-H,m,2H)
【0134】
<実施例2>エチルメチルアミノ-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([{(CHCH)(CH)N}Si(CH{N(SiHMe}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化41】
【0135】
約62.6g(収率約65%)のエチルメチルアミノ-(テトラメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[{(CHCH)(CH)N}Si(CH{N(SiHMe}]を、式1-2によって表される無色液体化合物として、ジメチルアミンの代わりにエチルメチルアミンを使用したこと以外は実施例1と同じ方法で得て、これを膜形成のための組成物に使用した。
【0136】
沸点:10Torrにおいて76℃(760Torrにおいて199.4℃)
H-NMR(C):δ0.235(Si-CH ,s,6H),δ0.257,0.248(N-Si-CH ,d,12H),δ0.981(N-CH-CH ,t,3H)δ2.425(N-CH ,s,3H),δ2.774,2.756(N-CH -CH,q,2H),δ4.722(N-Si-H,m,2H)
【0137】
<実施例3>エチルメチルアミノ-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([{(CHCH)(CH)N}Si(CH{N(SiMe}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化42】
【0138】
約71.81g(収率約67%)のエチルメチルアミノ-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[{(CHCH)(CH)N}Si(CH{N(SiMe}]を、式1-4によって表される無色液体化合物として、テトラメチルジシラザン(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)の代わりにヘキサメチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)を使用したこと、及びジメチルアミンの代わりにエチルメチルアミンを使用したこと以外は実施例1と同じ方法で得て、これを膜形成のための組成物に使用した。
【0139】
沸点:0.3Torrにおいて35℃(760Torrにおいて216.3℃)
H-NMR(C):δ0.236(Si-CH ,s,6H),δ0.273(N-Si-CH ,s,18H),δ0.968(N-CH-CH ,t,3H),δ2.366(N-CH ,s,3H),δ2.722,2.704(N-CH -CH,q,2H)
【0140】
<実施例4>ジエチルアミノ-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン([{(CHCHN}Si(CH{N(SiMe}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化43】
【0141】
118.69g(2.5M、0.426モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、3リットル丸底フラスコ中で、約500mlの無水ヘキサンと混合した。約75.03g(約0.465モル)のヘキサメチルジシラザン(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)を、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。約50g(約0.387モル)のジクロロジメチルシランを、このようにして形成した-20℃~-10℃のリチウム(1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン)塩溶液にゆっくりと加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。
【0142】
約118.69g(2.5M、約0.426モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、1リットル丸底フラスコ中で、約500mlの無水ヘキサンと混合した。約34g(約0.465モル)のジエチルアミンを、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。このようにして形成したリチウム(ジエチルアミン)塩溶液を、約-20℃で3リットル丸底フラスコに加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。反応が完了したら、反応中に形成した塩を濾過によって除去し、減圧下で溶媒及び揮発性副反応物質を除去して、約79.95g(収率約71%)のジエチルアミノ-(ヘキサメチルジシリル)アミノ-ジメチルシラン[{(CHCHN}Si(CH{N(SiMe}]を、式1-5によって表される無色液体化合物として得て、膜を形成するための組成物に使用した。
【0143】
沸点:0.3Torrにおいて45℃(760Torrにおいて230.4℃)
H-NMR(C):δ0.262(Si-CH ,s,6H),δ0.283(N-Si-CH ,s,18H),δ0.976(N-CH-CH ,t,6H),δ2.806,2.788(N-CH -CH,q,4H)
【0144】
<実施例5>N,N-ビス(ジメチルシリル)-1,1-ジメチルシランジアミン([(HN)Si(CH{N(SiHMe}])、及び、それを含むシリコーン含有膜を形成するための組成物の調製
【化44】
【0145】
約118.69g(2.5M、約0.426モル)のn-ブチルリチウムヘキサン溶液(n-ヘキサン中n-BuLi)を、3リットル丸底フラスコ中で、約1,000mlの無水ヘキサンと混合した。約61.99g(約0.465モル)のテトラメチルジシラザン(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)を、約-20℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。このようにして形成した-20℃~-10℃のリチウム(1,1,3,3-テトラメチルジシラザン)塩に、約50g(約0.387モル)のジクロロジメチルシランをゆっくりと加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、4時間撹拌した。4時間後、約32.99g(約1.937モル)のアンモニアガスを、約-78℃の反応系に加え、次いで、撹拌しながら温度を徐々に室温まで上昇させた後、17時間撹拌した。反応が完了したら、反応中に形成した塩を濾過によって除去し、減圧下で溶媒及び揮発性副反応物質を除去して、62.40g(収率約78%)のN,N-ビス(ジメチルシリル)-1,1-ジメチルシランジアミン[(HN)Si(CH{N(SiHMe}]を、式1-12によって表される無色液体化合物として得て、膜を形成するための組成物に使用した。
【0146】
沸点:10Torrにおいて54℃(760Torrにおいて172.3℃)
H-NMR(C):δ0.202(Si-CH ,s,6H),δ0.269,0.261(N-Si-CH ,d,12H),δ0.373(NH ,m,2H),δ4.768(N-Si-H,m,2H)
【0147】
比較例1
トリス(ジメチルアミド)シラン(3DMAS又はTDMAS)[SiH(NMe](UP Chemical Co.,Ltd.製)を使用した。
【0148】
試験実施例
<試験実施例1>高温における、ケイ素前駆体化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物の堆積特性の分析
実施例及び比較例のケイ素前駆体化合物のそれぞれを含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物と、反応ガスとしてのオゾン(O)とを使用して、ALDによってケイ素含有膜を形成した。
【0149】
まず、ケイ素基材を、硫酸(HSO)と過酸化水素(H)とが4:1の比で混合されているピラニア溶液に、10分にわたって浸漬した後、取り出した。次いで、希釈水性HF溶液に2分にわたって浸漬して、新規の表面を形成した。次いで、ケイ素含有酸化物膜を、ALDによってケイ素基材上に形成した。
【0150】
ケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を、ステンレス鋼で作製された容器に入れた。アルゴン(Ar)キャリアガスを約200sccmの流量で流して、膜を形成するための組成物をガス状態で、室温の反応チャンバに供給し、このとき、反応器のプロセス圧力を4Torrに設定した。
【0151】
各ケイ素含有酸化物膜の堆積特性を確認するため、ガス供給サイクルを100回繰り返した。このサイクルでは、膜を形成するための組成物を、ガス状態で約3秒にわたって供給し;アルゴン(Ar)ガスを約10秒にわたって供給して、反応器内に残存する膜を形成するための組成物(ガス)を除去し;オゾン(O)を反応ガスとして約5秒にわたって供給し;アルゴン(Ar)ガスを約10秒にわたって供給して、反応器内に残存するオゾン(O)を除去した。
【0152】
実施例及び比較例の方法によって調製したケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して形成した、各酸化物膜の厚さを、楕円偏光計(M-2000,J.A.Woollam)を使用して測定した。
【0153】
その後、測定された厚さをガス供給サイクルの数(100回)で除算して、ALDガス供給の成膜速度(GPC)を計算した。
【0154】
詳細には、600℃~850℃の温度(プロセス温度)に対するALDガス供給の成膜速度(GPC)を測定した。結果を図1及び表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
表1及び図1から分かるように、600℃以上の高温でALDを行う場合は、比較例1のシリコーン化合物を含むシリコーン含有膜を形成するための組成物を使用した場合と比較して、600℃~850℃の比較的高温におけるGPCが一定であった。
【0157】
詳細には、比較例1のケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、約700℃から上昇した。対照的に、実施例1、2、3、4及び5のそれぞれのケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した場合、ALDガス供給の成膜速度(GPC)は、800℃~850℃の高温においても一定であった。上記から、本発明の実施例のシリコーン化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物は、600℃~850℃の高温で一定のGPCを達成し、自己制御的な膜成長特性を示し、したがって、高温におけるALDプロセスに好適な前駆体であることが確認された。
【0158】
<試験実施例2>高温で堆積させたケイ素含有酸化物膜の物理的特性の分析
実施例1、2、3、4及び5並びに比較例1のそれぞれのケイ素化合物を含む、ケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、ALDガス供給サイクルを調整しながら、同じ厚さを有するSiO膜を、平坦なウェハ上に750℃で形成した。物理的及び化学的特性を分析した。
【0159】
詳細には、SiO膜の収縮率とウェットエッチング速度(WER、Å/s)を測定した。SiO膜の厚さを、楕円偏光計(M-2000,J.A.Woollam)を用いて測定した。
【0160】
表2に示す、ALDガス供給サイクルを調整することによって、750℃で平坦なウェハ上に形成した、約100Åの初期厚さを有するケイ素含有膜(SiO膜)の厚さを、アルゴン(Ar)雰囲気中、750℃で60分アニーリングしたケイ素含有膜(SiO膜)の厚さと比較して、式1による収縮率を計算した。
収縮率(S750、%)=(A-B)/A×100 (式1)
【0161】
式1中、Aは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Bは、750℃でALDによって形成され、アルゴン(Ar)雰囲気中に750℃で60分にわたって静置された後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0162】
結果を表2に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
上記表2から分かるように、実施例1、2、3、4及び5のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜(SiO膜)の収縮率は、それぞれ、3.87%、3.39%、2.71%、4.40%及び3.98%であった。対照的に、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜の収縮率は、6.40%であった。以上のように、実施例1、2、3、4及び5のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜は、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜よりも、小さな収縮率を有していた。
【0165】
一方、下記の表4に示す、ALDガス供給サイクルを調整することによって、750℃で平坦なウェハ上に形成した、約500Åの初期厚さを有するケイ素含有膜(SiO膜)を、1%希釈HF溶液中で30秒にわたってエッチングした。厚さの変化を測定して、式2によってウェットエッチング速度(WER、Å/s)を計算した。
ウェットエッチング速度(Å/s)=エッチング厚さ変化(ΔE,Å)/30s (式2)
【0166】
エッチング厚さ変化(ΔE)は、式2-1によって表され得る。
エッチング厚さ変化(ΔE,Å)=E-E (式2-1)
【0167】
式2-1中、Eは、750℃でALDによって形成されたケイ素含有膜の初期厚さ(Å)であり、Eは、750℃でALDによって形成され、1%希釈HF溶液中で30秒にわたってエッチングされた後の、ケイ素含有膜の厚さ(Å)である。
【0168】
式2中、「s」は秒を意味する。
【0169】
結果を表3に示す。
【0170】
【表3】
【0171】
上記表3から分かるように、実施例2、3及び4のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜(SiO膜)のウェットエッチング速度は、それぞれ、2.45Å/s、2.45Å/s及び2.07Å/sであった。対照的に、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜のウェットエッチング速度は、2.90Å/sであった。実施例2、3及び4のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜は、減少した。
【0172】
一方、ケイ素含有酸化物層内の不純物を確認するため、ケイ素含有酸化物膜について、二次イオン質量分析法(SIMS)を行った。
【0173】
図2は、本発明の実施例1、2、3、4及び5並びに比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して、750℃の温度で堆積させた、ケイ素含有酸化物膜の二次イオン質量分析法(SIMS)の結果を示すグラフである。
【0174】
実施例1、2、3、4及び5並びに比較例1のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物層内の不純物を確認するため、約100Åの厚さに堆積させたケイ素含有酸化物膜を、SIMSによって炭素(C)含有量について分析した。
【0175】
結果として、炭素含有量は、比較例1と比較して、実施例1では約80%、実施例2では約81%、実施例3では約76%、実施例4では約81%、実施例5では約83%、低減しており、100カウント未満の炭素含有量を有する、純粋なケイ素含有酸化物膜が形成されたことを示している。
【0176】
図3は、750℃で、本発明の実施例2及び比較例1のそれぞれのケイ素含有膜を堆積させるための組成物と、オゾンとを使用したALDによって、深いパターンを有するウェハ上に形成された、ケイ素含有酸化物膜の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。表4は、図3に示す部分において測定した、ケイ素含有酸化物膜の厚さを示す。
【0177】
【表4】
【0178】
表4から分かるように、実施例2及び比較例1のそれぞれのケイ素含有膜を形成するための組成物を、ステップを有する基材に堆積させ、次いで、TEMを使用して分析した場合、実施例2のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜のステップカバレッジは、93.4%であり、一方で、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させた、ケイ素含有酸化物膜のステップカバレッジは、78.1%であった。実施例2のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜は、比較例1のケイ素含有膜を形成するための組成物を使用して堆積させたケイ素含有酸化物膜と比較して、顕著に優れたステップカバレッジを有していた。
【0179】
要するに、本発明の実施形態によるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した、ケイ素含有膜を形成するための方法によれば、ALDによって容易にケイ素含有膜を堆積させること、膜の厚さ及び組成を正確に制御すること、並びに複雑な形状を有する基材上でも、優れたカバレッジで均一な膜を形成することができた。
【0180】
特に、本発明によるケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用した、ケイ素含有膜を形成するための方法によれば、堆積中に、600℃~850℃の高温でも、所望の厚さの膜を得ることができる。このようにして得たケイ素含有酸化物膜は、比較例1のケイ素前駆体化合物を含むケイ素含有膜を形成するための組成物を使用したケイ素含有酸化物膜と比較して、著しく改善された物理的特性、例えば、ステップカバレッジ、収縮率及びウェットエッチング速度を有していた。
図1
図2
図3
【国際調査報告】