IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダクセム ジーエムビーエイチの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240711BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20240711BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240711BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240711BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240711BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240711BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/14
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/00 Z
C09D7/20
C09D5/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501190
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 DE2022100475
(87)【国際公開番号】W WO2023284911
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021117979.3
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524011111
【氏名又は名称】ダクセム ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブレガ,エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】フレゴネーゼ,ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ハウゾエル,クラウディア エム.
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA021
4J038CG001
4J038DB001
4J038EA011
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038MA09
4J038MA10
4J038NA05
4J038PA06
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、抗菌および抗ウイルス特性を有するコーティング配合物に関する。殺生物活性は、イソチアゾリノン誘導体との銀イオンの予期せぬ相乗効果により達成され、これは本配合物中の殺生物剤の含有量を減らすこと/より効率的かつより素早い殺生物効果を達成することを可能にする。本配合物は、処理された基板上への本コーティングの均一分布を決定するために添加される蛍光成分も含む。本発明の一変形は、スプレーすることにより利用可能なコーティング配合物に関し、かつ溶媒/共溶媒および発泡剤を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌薬として銀イオンおよびイソチアゾリノン誘導体を含むコーティング配合物。
【請求項2】
前記銀イオンおよび前記イソチアゾリノン誘導体は液体マトリックス中に均一に分散されており、それらの総濃度は前記マトリックスの10%w/w以下である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
元素状態の銀として計算される銀:前記イソチアゾリノン誘導体の重量比は、約1:50~50:1、より好ましくは1:10~10:1であることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記銀イオンの濃度は0.02重量%~8重量%、好ましくは0.05重量%~6重量%、より好ましくは0.10%~5%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記銀イオンは銀塩である、請求項1~4の1つ以上に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
銀イオンはギ酸銀、酢酸銀、シュウ酸銀、マロン酸銀、安息香酸銀およびフタル酸銀などのカルボン酸銀、フッ化銀、塩化銀、臭化銀、リン酸銀、リン酸銀ガラス、ヨウ化銀など、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、上記のいずれかの任意の組み合わせから生成される、請求項1~5の1つ以上に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記銀イオンは銀金属粒子である、請求項1~4の1つ以上に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記イソチアゾリノン誘導体の濃度は0.01重量%~4重量%、好ましくは0.010重量%~1重量%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記イソチアゾリノン誘導体は、2-n-オクチル-4-イソチアゾリノン-3-オン、2-オクチル-イソチアゾノール-3-オン、2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オン、N-ブチル-1,2-ベンジイソチアゾリン-3-オンおよび2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-3-イソチアゾリン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-エチル-3-イソチアゾリン、2-プロピル-3-イソチアゾリン、2-イソプロピル-3-イソチアゾリン、2-ブチル-3-イソチアゾリン(ここではブチルは、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルであってもよい)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンジイソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンジイソチアゾリン-3-オン、塩、5-クロロ-2-メチル-3-イソチアゾリン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンまたは4,5-ジクロロ-2-(n-オクチル)-4-イソチアゾリン-3-オンおよび/またはそれらの塩である、請求項1および7に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
水の含有量は0.5%~65%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記濃度は0%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
硝酸銅は安定化剤として使用される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記硝酸銅の濃度は0.01重量/重量%~4重量/重量%、好ましくは0.010%wt~2.0%wtである、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
蛍光分子を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
蛍光分子は、フルオロールグリーンゴールド(Fluorol green Gold)、2-Dui1 ASP、4-ジメチルアミノ-4-ニトロスチルベン、カルボキシナフトフルオレセイン、亜鉛テトラメシチルポルフィリン、QpyMe2、マグネシウムテトラフェニルポルフィリン、9-シアノアントラセンおよびクマリン6からなる群から選択される、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記蛍光分子の濃度は約0.005%~1%、より好ましくは0.03%~0.5%である、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、THF、ヒドロフラン、鉱油、キシレン、トルエン、アセトン、ジエチレングリコール、ブタノン、1~12個のC原子を有するアルカノールとのアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記増粘剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、澱粉、澱粉エーテル、疎水化ヒドロキシエチルセルロース、疎水化メチルヒドロキシエチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチル澱粉、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタンガム、メチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸誘導体、ポリウレタン、ニトロ系、アルキド系、エポキシ、ポリエステル、ビニル、シリコーンまたは上記の任意の混合物などの会合性増粘剤を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
二酸化チタンを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
前記二酸化チタンはその光触媒活性結晶形である、請求項16に記載のコーティング組成物。
【請求項21】
前記二酸化チタンの濃度は約0.3~5%、より好ましくは0.3%~1.5%である、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項22】
基板において初期濃度の0.1%未満のAgイオンの浸出を示す、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項23】
エアロゾルペンキとして使用するのに適しており、かつ溶媒または溶媒および噴射剤を含有する、請求項1に記載のコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、抗菌および抗ウイルス特性を特徴とする液体コーティング組成物である。殺生物性能は、殺生物量であって対費用効果が高い量の銀化合物によって与えられ、その抗菌および抗ウイルス効力は、予期せぬことであるが最小量であって対費用効果が高い量のイソチアゾリノン誘導体を添加することにより相乗的にさらに高められる。
【0002】
本コーティング組成物は、基板に塗布されると耐引掻特徴も与える。
【0003】
さらに、同コーティング組成物は塗布された場合に、殺生物成分を時間と共に環境中に著しく浸出させない。
【0004】
本コーティング組成物は、紫外線に曝露された(活性化された)場合に殺生物特性をさらに高めるためにTiO(アナターゼ)を含んでいてもよい。
【0005】
また本コーティング組成物は、特に400nm~760nmの範囲で蛍光発光を有する成分を含み、この特徴は単純なUVランプでの照射により、処理された基板上での本コーティングの均一分布を決定するためのものである。
【背景技術】
【0006】
抗菌コーティングの需要は絶えず増加している。それは、人口の都市化レベルの上昇および病原性ウイルスおよび細菌において起きる絶えず続く遺伝子突然変異によって引き起こされる。
【0007】
抗生物質耐性菌株、すなわちサルモネラ菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびリステリア菌の増加は、特に臨床医学に関して言えば深刻な世界的問題である。またCovid-19によって引き起こされた最近のパンデミックは、ウイルス感染を防ぐための効率的な方法および手段を有することがいかに重要であるかを示した。
【0008】
さらに、ペンキおよびワニスは多くの場合に微生物の作用に対して不十分な抵抗性を有することは周知である。エナメルおよび住宅用ペンキなどのこれらのコーティング組成物のいくつかは、それらの樹脂結合剤として乾性油、含油樹脂ワニスまたはアルキド樹脂を含有しており、これらは真菌および細菌による攻撃を受け、次いでこれらの菌は増殖し、このようにして感染のリスクを高める可能性がある。
【0009】
さらに、2020年初期に広がったパンデミックでは、医師らはスーパー細菌感染の増加を引き起こす可能性のある方法で反応せざるを得なかった。実際に、パンデミック中の最後の年の前半では、Covid-19に罹患している入院患者の半分以上に抗生物質が与えられたことが報告されている。また最近では、発表された研究[1]から、コロナウイルスに関連する入院患者の52%が少なくとも1種の抗生物質の処方を受け、かつその症例の36%が多剤処方を受けたことが分かっている。それにより、過剰処方に関連する薬物耐性(スーパー細菌)の拡散に関する新たな懸念が生じる。それは、ヒトからヒトへの感染を減らすためにウイルスおよび細菌との接触に曝される可能性がある表面のために、効率的かつ使用が容易な抗菌コーティングがこれまで以上に現在必要とされているまさに理由の1つである。
【0010】
別の問題は、表面を抗菌コーティングで処理するプロセスが基板のいくつかの箇所をコーティングされないままにして汚染に曝す可能性があるという事実によって提起される。それは、環境条件に関連する摩耗作用または機械的摩耗にも起因し得る。この課題は、コーティングされておらず、従って細菌および/またはウイルス汚染に曝されているいくつかの箇所をタイミングよく特定することである。
【0011】
現在のところコーティング産業は、そのセクター全体を特徴づけるために使用される経済的採算性を維持するために、配合コストを可能な限り抑えるために極度の圧力下にあるということに言及すべきである。
【0012】
言い換えると、当該市場および科学界は、市場で入手可能な現在の選択肢よりも使用が容易かつ有効であり、かつより良好なコスト構造を有するコーティング溶液を常に探している。
【発明の概要】
【0013】
本発明は銀イオンの殺生物特性に関するものであるが、それに限定されない。銀およびその誘導体のいくつかの抗菌特徴は何世紀にもわたって知られている[2]。実際にそれは19世紀以降であって1940年代における初の現代の抗生物質の発見および開発まで、細菌感染症を治療するために医学で広く使用されてきた。
【0014】
硝酸銀は新生児の眼の感染を治療するために点眼薬に使用されてきた。硝酸銀および塩化銀は、スティック形態では疣贅を治療するために、ローション剤では病変部を治療するために使用されてきた。またアンモニアと組み合わせた硝酸銀は、抗菌歯科用保護剤として使用されてきた。酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ピクリン酸塩およびメチレンビスナフタレンスルホン酸塩などのいくつかの他の銀塩は、目薬、創傷のための粉末薬、収斂剤および消毒薬、膣トリコモナス症およびカンジダ症の治療ならびに火傷、静脈瘤性潰瘍および褥瘡の治療などの異なる治療用組成物に用途を見出してきた。
【0015】
銀タンパク質複合体は、クリーム、ローション剤および軟膏などの製剤でも広く使用されてきた。スルホンアミド誘導体であるスルファジアジン銀は、クリームおよびローション剤として火傷ならびに急性および慢性創傷の治療に成功してきた。しかし病院環境においてスルファジアジンに対する耐性を獲得する微生物についての報告があり、従ってその広範な使用が制限されてきた。
【0016】
微生物を死滅させる銀塩の正確な作用様式はまだ確立されておらず、積極的な研究課題のままであるが、銀イオンが細胞成分(タンパク質、膜、DNA)と反応し、特に微生物完全性および生化学的機能に対する有害作用を有するが哺乳類細胞に対して比較的最小の毒性で細胞のDNAおよびRNA部分と素早く反応することが知られている。
【0017】
銀イオンは反応性の一重項酸素種を生成し、これにより過酸化水素の形成を引き起こすことにより細胞を間接的に損傷する可能性があるということも科学的に評価されている[3]。
【0018】
さらに、メタリックシルバーは薄膜、ナノ粒子またはコロイド銀のどの形態であるかに関わらず有効な抗菌物質であることも確認されている。リン酸銀、ノルフロキサシン酸銀および硝酸銀などの化合物は、おそらく最もよく知られている有効な銀系抗菌物質である。
【0019】
銀イオンの殺生物特徴に関する多くの研究および科学論文にも関わらず、銀が特定の条件下で有効でないことが研究から分かっている。関連文献は、損なわれた抗菌作用を決定することができる3つの主な条件を報告している。
【0020】
例えば銀塩は、カルボン酸、チオール、フェノール、アミン、ホスフェートおよびハロゲン化化合物などの様々な有機分子に特定の強さで結合する[4]。しかし結合後に、銀イオンは殺生物活性のためにもはや利用可能でない。
【0021】
特定の細菌によって獲得され、かつ結合タンパク質、すなわち銀イオンに結合する鞭毛タンパク質[6]の存在に関連づけられた銀耐性[5]も報告されている。
【0022】
この場合、銀耐性はどんな遺伝的変化も伴わずに進化する。すなわち、ナノ粒子コロイドの安定性を低下させ、かつ従って細菌DNAへのフリーラジカル損傷を防止することによりそれらの抗菌活性を排除するために、表現型の変化のみが必要とされる。
【0023】
この場合、その耐性機構は、過去に提案されたような界面活性剤またはポリマーを用いた銀ナノ粒子のさらなる安定化によって克服することはできない。
【0024】
さらに、銀イオンが説得力を有し得ないほぼ明らかな第3の理由はその濃度にある。実際に、高度に感染している環境は高濃度のイオンを必要とし、場合によっては、市場で入手可能なその溶液は低すぎる濃度を有するため、殺生物活性になり得ない。
【0025】
科学者らは、銀イオンの無効性を回避するための方法を見出した。例えばJampani,Hanuman,B.[7]からの特許出願は、抗菌効力に対する耐性を制御または防止する抗菌組成物を報告した。この組成物は、内因性または獲得性の細菌耐性を阻止する抗酸化剤と組み合わせた抗菌薬を含む。
【0026】
銀イオン耐性の問題は、耐性阻害剤として機能する特定の物質を使用することにより、何人かの他の発明者ら[8]によっても取り組まれている。理論によって拘束されることを望むものではないが、これらの物質は、細胞壁を横切って銀イオンの輸送を促進し、かつ細胞にとって必要不可欠なイオンポンプ機構を妨害することができると考えられている。さらに詳細には、当該耐性阻害剤は、微生物の膜の透過性を修正すること、例えば物理的妨害により、あるいは膜中に存在するリン脂質の種類および性質を修正することにより機能する。最もよく使用されている耐性阻害剤のうち、イオノフォアモネンシンおよび他のカルボン酸イオノフォア(例えばサリノマイシンおよびラサロシド)に言及すべきである。さらにジヒドロピリジン、ベンゾイルピロールおよびマイトトキシンなどのカルシウムチャネル活性化剤が有効であり得る。またホスホリパーゼA2およびトリアシルグリセロールヒドロラーゼなどの酵素およびカチオン性ペプチドCAP18は、銀イオンに対する細胞耐性を制御することができる[9]。
【0027】
先に言ったように、科学文献は銀イオンの存在により殺生物活性を有する多くのコーティング配合物を報告している。しかし、塗布されたコーティングによる銀イオンの浸出の可能性に関しては、ほとんど記載されてきていない。
【0028】
環境における殺生物剤の浸出を防止するための1つの方法は、ゾルゲル技術を使用することにより銀イオンをガラス状マトリックス中に組み込むことによるものである。一例がDe Xian Wangらの特許出願[10]にあり、これはTiOも含有するシリカゾル中への金属イオンの分散を開示しており、次いでこのゾルをコーティングとして塗布し、かつ焼結させて抗菌特徴を有するガラス状透明コーティングを得る。
【0029】
しかし提案されている解決法の欠点は、炉における煩わしい加熱処理を必要とするという点であり、これにより、基板上のコーティングを焼結することができない、すなわち一般にはどんな熱も加えることができない多くのセクターでのその適用が妨げられている。
【0030】
本発明が属する技術分野の当業者であれば、コーティングの配合者が大抵の場合に直面する別の大きな問題は、配合コストを下げる必要性であることを分かっている。この点に関して、その目的を果たすための方法は、非常に多くの場合にコーティング配合物中の最も高価な成分である銀含有量を可能な限り殺生物以下のレベルまで減らし、かつ銀性能のための効力増強剤として機能する分子を添加することであろう。
【0031】
この特許出願の発明者らが知る限りでは、細菌および真菌に対する殺生物活性のための効力増強剤の例は非常に少なく、ウイルスに対する殺生物剤の相乗効果について記載しているものはない。興味深い例は、Thomas Zahnの特許出願[11]であり、これはイソチアゾリノン誘導体および第四級アンモニウム塩の相乗効果について記載している。
【0032】
さらに、I.Sok Hwang[12]は、科学論文において銀ナノ粒子の殺生物性能に対する抗生物質の相乗効果について記載している。言及すべき別の興味深い特許出願は、Downey Angela Bridgetら[13]からのものであり、これは、2-n-オクチル-3-イソチアゾリノンの殺生物性能に対する2-メチル-3-イソチアゾリノンの相乗効果およびその逆を開示している。しかし、この特許出願は特定のコーティング配合物に関するものではない。
【0033】
David Oppongは米国特許出願[14]において、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)とヨードプロパルギル化合物(ヨードプロピニル化合物)との組み合わせである相乗的な殺生物組成物を開示している。例えば3-ヨードプロパルギル-N-ブチルカルバマートは、1つのそのような化合物として言及されている。
【0034】
他の場所では、Dagmar Antoni-Zimmermann[15]は、2-メチルイソチアゾリノン-3-オンの殺生物性能がポリヘキサメチレンビグアニド、N-ヒドロキシメチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、塩化ベンザルコニウム、ピリチオンなどの比較的少量の殺生物剤の添加により高められる相乗的な殺生物組成物を報告している。しかしこの特許出願は、銀イオンまたはナノ粒子を含む上で言及されている殺生物剤のいずれの組み合わせについても記載していない。
【0035】
さらにこの特許出願は、殺生物性能を高めるためにTiOを含有するコーティング組成物にも関する。いくつかの研究は、抗菌コーティングにおけるTiOの使用を報告しているが、その発明者らが知る限りでは、これらのコーティングはいずれもウイルスに対して有効であることは主張されたことはない。1985年以来[16]、アナターゼ結晶形(ルチルは活性でない)を有するTiO粒子は光励起によって活性化され、それにより価電子帯から伝導帯に移動する電子を生成し、価電子帯において正孔ともいう電子不足を生じさせることが知られている。それによりヒドロキシルラジカル、過酸化水素およびスーパーオキシドイオンなどの反応性の一重項酸素種が生成される。
【0036】
そのようなイオンは、細菌細胞膜内でのリン脂質およびリポ多糖の過酸化および妨害により細菌および他の微生物を標的にする。
【0037】
この特許出願は、蛍光分子を含有するコーティング組成物にも関する。コーティングにおける蛍光分子の使用はよく知られており、既に報告されている。Dainippon Toryo社によって出願された特許出願[17]には、白色の下層として全体的に形成されていないとしても処理された基板にブリリアントカラーを与える蛍光成分を含むペンキについて記載されている。しかしこの特許出願の発明者らは、具体的に抗菌コーティング中に含められる蛍光分子の使用について記載しているどんな先行技術も発見していなかった。
【0038】
コーティングは摩擦、厳しい環境条件または気候条件により、時間と共に徐々に消えていく可能性がある。従って、コーティングが透明である場合に抗菌コーティングの品質の正確かつ容易な監視を有することは、特に医療環境において極めて重要である。
【0039】
本出願は蛍光分子を使用することを提案しており、その存在は340nm~440nmの範囲の発光スペクトルを有する単純なランプにより検出することができる。この場合、電磁スペクトル(380~760nm)の可視部分における蛍光スポットの出現は、コーティングがまだ基板上にあるという確認であり、従って処理された表面はなお抗菌活性である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の発明者らは、殺生物特性を有し、かつ銀イオンを含有するコーティング配合物について記載している多数の特許出願が存在することを認めている。しかし本明細書において提案されているコーティング組成物は銀イオンを有し、その抗菌特性はイソチアゾリノン誘導体である別の成分を添加することにより高められる。
【0041】
より詳細には、本発明によれば驚くべきことに、マトリックス中の銀濃度が極めて低く、かつ妥当かつ十分な殺生物活性未満である場合であっても、イソチアゾリノン誘導体が酵母、細菌およびウイルスに関する銀イオンの殺生物性能を高めることを見出した。
【0042】
さらに本発明者らは驚くべきことに、抗菌成分の組み合わせが本コーティングの抗引掻特性を高めることも発見した。理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、その機械的特性に関する予期せぬ利点は、安定かつ堅牢なネットワークの形成をもたらす2種類の殺生物剤の架橋特性の組み合わせによるものであると考えている。このネットワークの形成は、厳しい条件下であっても銀イオンの低い浸出にも寄与し、これは本コーティングのより良好な耐久性と言い換えられる。
【0043】
本発明では、銀は銀元素(すなわちAg)またはより高い酸化状態の銀イオン(すなわちAg1+)として本コーティング組成物に組み込まれており、銀溶液として提供される。この銀化合物粒子は、5μm超のD90と共に、150ナノメートル~6000ナノメートル、好ましくは500~3000ナノメートル、より好ましくは約1500~2500ナノメートルの粒径を有する。
【0044】
銀化合物の好適な例としては、ギ酸銀、酢酸銀、シュウ酸銀、マロン酸銀、安息香酸銀およびフタル酸銀などのカルボン酸銀、フッ化銀、塩化銀、臭化銀、リン酸銀、ヨウ化銀など、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀、上記のいずれかの任意の組み合わせが挙げられる。市販の銀化合物としては、限定されるものではないが、Sanitizedという商品名で販売されているSanitized AG社製のリン酸銀ガラス、The Dow Chemical Company社製のSilvadur TM 900、Silvadur 930、Silvadur 961およびSilvadur ET、ならびにIrgaguardという商品名で販売されているBASF社製の銀誘導体が挙げられる。
【0045】
本コーティング組成物中の銀含有量は、0.01%w/w~10.0%w/w、好ましくは0.05%~8%w/w、より好ましくは約0.1%~4%w/wの範囲である。
【0046】
先に言ったように、好ましい銀性能向上剤はイソチアゾリノン誘導体であり、ここではイソチアゾリノン誘導体はイソチアゾール核を含有するあらゆる化合物を意味する。特に本発明は、2-n-オクチル-4-イソチアゾリノン-3-オン、2-オクチル-イソチアゾノール-3-オン、2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オン、N-ブチル-1,2-ベンジイソチアゾリン-3-オンおよび2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オンなどの少なくとも1種のハロゲン非含有イソチアゾリノンおよび/またはそれらの塩の使用に関する。
【0047】
イソチアゾリノン誘導体は、安定化剤として安定化量の銅(II)イオンを含有していてもよい。本コーティング配合物中のイソチアゾリノンの含有量は、0.01%~2%w/w、好ましくは0.1%~0.4%w/w、より好ましくは0.2%~0.35%w/wの範囲である。
【0048】
本コーティング配合物は、本コーティングの殺生物特徴を向上させるためにTiO(アナターゼ)も含有していてもよい。TiO(アナターゼ)の好適な例としては、限定されるものではないが、Crystal Global社製のVLP 7000、CristalACTiV(商標)PC500およびEVONIK Degussa Industries社製のAeroxide(登録商標)P25が挙げられる。
【0049】
本コーティング組成物中のTiOの含有量は、0.01%w/w~5.0%w/w、好ましくは0.05%~2%w/w、より好ましくは約0.10%~1.5%w/wの範囲である。
【0050】
本コーティング組成物は非水性であっても水性であってもよく、それは水のようであっても粘性であってもよい。貯蔵中の銀粒子の沈殿を回避し、かつ基板への溶液の塗布をより容易にするために粘度が必要とされる場合がある。水系コーティング組成物は80mPas超、好ましくは200mPas超の粘度を有する。その粘度はBrookfield RTVを用い、スピンドル20またはスピンドル15および25℃で測定した。
【0051】
非水性配合物すなわち溶媒系はエアロゾルに適しており、それは有機溶媒、樹脂、顔料(有色コーティングの場合)、合体剤すなわち膜形成溶媒、乾燥剤、増粘剤、界面活性剤、皮張り防止剤、可塑剤、マルテンサイト剤、防食剤、色分かれ防止剤、銀化合物、イソチアゾリノンおよび噴射剤を含有する。大部分の市販の溶媒系エアロゾル配合物は、噴射剤ガスとして低分子量炭化水素の混合物を含有しており、同溶液は本発明の実現に寄与した。最も一般には、プロパンおよびイソブタンの混合物が使用される。
【0052】
エアロゾルすなわち液体噴射剤として、エチレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸酪酸セルロース、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエーテル、酢酸ブチルおよびジメチルエーテル(DME)に言及すべきである。後者の2つはヒトに対してより低い毒性プロファイルおよび形成剤と同じ性能を有するため好ましい。本配合物は典型的には、本配合物に添加される約20%~約50%w/w、好ましくは約20%~約30%w/wの噴射剤を含む。
【0053】
噴射剤を当該混合物に添加するための方法は以下のとおりであってもよい。当該混合物を缶の中に導入した後、この容器を真空にし、噴射剤をただ注入し、次いでこの缶を密閉する。
【0054】
本コーティング組成物は、低い極性を特徴とするTPOおよびPPのような表面への接着を向上させるための接着促進剤も含んでいてもよく、Eastman社製のAP-550(25%w/wのキシレン)のような接着促進剤を使用することが望ましい。
【0055】
溶媒系コーティングは、当該コーティングを傾斜面および特に垂直面に塗布した場合に垂れる、すなわち流れ落ちる傾向を有することに留意されたい。これは、当該コーティングの揮発性有機化合物(VOC)含有量を減らす必要性により益々重要になりつつあるハイソリッドコーティング配合物の場合に特に当てはまる。
【0056】
従って、コーティングの垂れる傾向を減らすレオロジー改質剤が明らかに必要である。
【0057】
理想的には、そのようなレオロジー改質剤は、本コーティングが塗布後に垂れるのを阻止するための低剪断力条件下での高い粘度、および本コーティングの塗布中にフローおよびレベリングを可能にするための高剪断下での低い粘度などの、本コーティングに構造的特性を与えるものでなければならない。
【0058】
その塗布に適した樹脂としては、特にシリコーン変性アルキド、アクリレートおよびエポキシ、ニトロセルロース、ポリエステルおよびビニルエステルが挙げられる。樹脂のいくつかの例としてはアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレートまたは多官能性アクリレートが挙げられ、それらは架橋性基を構成し、かつラジカル重合により重合させる。シリコーン変性樹脂の例は、Reichhold Chemicals社およびThe Dow Chemical社によって提供されているようなものである。製品としてはDupont社製のElvacite、BASF社製のAcronalのような純粋なアクリル系製品が挙げられる。
【0059】
他の好適なポリマーレオロジー改質剤としては、限定されるものではないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フュームドシリカ、沈降シリカおよび上記のいずれかの任意の組み合わせが挙げられる。好ましいレオロジー改質剤はポリアクリレートおよびヒドロキシプロピルセルロースである。本組成物は典型的には、約0.05%~約5%w/w、好ましくは約0.1%~約1%w/wのポリマーレオロジー改質剤を含む。
【0060】
高含有量の有機溶媒を有する配合物の場合、本コーティング配合物はシリコン流体、水性ワックスエマルション、パラフィンオイル、パラフィンワックスおよび上記の任意の組み合わせなどの蒸発遅延剤を含んでいてもよい。
【0061】
大抵の場合、界面活性剤または界面活性剤の混合物は可溶化剤/乳化剤として必要とされ、最終製品の貯蔵中の相分離も防止する。本出願で考察される界面活性剤は、The Dow Chemical社製のTriton X-15(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、Sasol社製のNovelusion 333、Chemours社製のCapstone FS-31などの非イオン性界面活性剤である。
【0062】
他の乳化剤としては、限定されるものではないが、フッ素化アルキルエステル、ポリエトキシ化モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ポリソルベート、上記のいずれかの任意の組み合わせが挙げられる。本組成物は典型的には、約0.1%~約7%w/w、好ましくは約0.1%~約2%w/wの界面活性剤または乳化剤を含む。
【0063】
本コーティング配合物は有機溶媒を含有していてもよい。好適な溶媒のリストは、ヘキサン、ヘプタン、THF、ヒドロフラン、鉱油、キシレン、トルエン、アセトン、ジエチレングリコール、ブタノン、1~12個のC原子を有するアルカノールとのアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸のビニルエステル、長鎖脂肪酸のビニルエステルを含む。
【0064】
本コーティング組成物は、当該混合物の安定性を向上させるための芳香族炭化水素共溶媒も含んでいてもよく、それにより本組成物の貯蔵寿命を延ばす。芳香族炭化水素共溶媒は1種以上の芳香族炭化水素溶媒の混合物であってもよい。
【0065】
好適な芳香族炭化水素共溶媒としては、限定されるものではないが、Exxon社製のAromatic 200Nd、メタフェノキシベンジルアルコール、キシレンおよび上記のいずれかの任意の組み合わせが挙げられる。本組成物は典型的には、約0.5~約40%w/w、好ましくは約1%~約20%w/w、より好ましくは1%~5%w/wの芳香族炭化水素共溶媒を含む。
【0066】
本コーティング組成物は0.3%(w/w)~60%w/wの固形分を有する。
【0067】
水性配合物の場合、本コーティング配合物をポリアクリレートまたは誘導体などのよく使用される増粘剤、または多糖、例えばキサンタンガムまたはセルロース誘導体をベースとする増粘剤によって増粘させた。水性コーティング配合物は疎水性オリゴマーで変性された会合性増粘剤を有していてもよい。この場合、本コーティング配合物は、垂直面にスプレー塗布される金属コーティングなどの高いずり減粘レオロジープロファイルおよび高い耐垂れ性を必要とする工業的用途に適している。
【0068】
本発明に適した会合性増粘剤のうち、本発明者らは、許容される耐垂れ性と相まってペンキに与えられる良好なフローおよびレベリングが得られたポリエチレンオキシドウレタンベースの会合性増粘剤(HEUR)を試験した。
【0069】
本発明は、塩基性ポリマーとして、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、澱粉、澱粉エーテル、特にヒドロキシエチル澱粉、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンタンガム、メチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルヒドロキシプロピルセルロース、上記セルロース誘導体の混合エーテルおよびそれらの混合物を含む他の会合性増粘剤の使用も考察する。
【0070】
特に好ましいのは、疎水化ヒドロキシエチルセルロース、疎水化メチルヒドロキシエチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ポリエチレングリコール、特に疎水性物質でエンドキャップされたポリエチレングリコールである。好ましいのは、ドデシルおよびセチル変性ポリマー、例えばポリエチレンオキシドである。好ましい増粘剤が、例えばAcqualonによって出願された特許出願[13、14]に開示されている。さらに澱粉およびその誘導体は、本発明に従って有利に使用することができる会合性増粘剤である。
【0071】
増粘剤含有量は、0.05%~5.0w/w、好ましくは0.075~3.5wt%、より好ましくは0.1%~3.0%w/wであることが意図されている。
【0072】
本コーティング配合物は、アルカリ土類金属酸化物などの好適な鉱質充填剤を含有していてもよい。また炭酸カルシウム、苦灰石および/または霰石などの炭酸塩充填剤も本発明の水系コーティング組成物を用いる場合に好ましい。そのような充填剤の機能は、配合コストを下げ、かつ/または粘度を高め、かつ耐垂れ性を与えることである。
【0073】
一般に、本コーティング配合物は無色であって有色であってもよく、後者の場合には好適な顔料を含めることができる。
【0074】
好適な顔料は、二酸化チタン(ルチル)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化コバルト、コバルトおよびアルミニウムの混合酸化物、例えばコバルトブルー、フタロシアニン顔料、スピネル顔料、例えばニッケルおよび亜鉛を含むコバルトのスピネルならびに銅、亜鉛およびマンガンを含む鉄およびクロムをベースとするスピネル、ニッケルおよびチタン酸クロム、マンガンチタン(ルチル)、混合ルチル相、バナジン酸ビスマス、群青および希土類のスルフィドである。
【0075】
好ましい顔料は、例えば二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、すす、酸化鉄、酸化クロム、コバルトブルー、バライト、チタン酸ニッケル、フタロシアニン顔料、スピネル顔料および/またはチタン酸クロムを含む。
【0076】
無機顔料の含有量は、0.005%~3.0%w/w、好ましくは0.075%~1.5%w/wであることが意図されている。
【0077】
有機顔料も好適であり、そのリストは、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、ジアゾ濃縮顔料、アントラキノン顔料、アントラピリミジン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、フラバントロン顔料、インダンスロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、イソビオラントロン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料、ピラントロン顔料、ピラゾロチナゾロン(pyrazolochinazolone)顔料、チオインジゴ顔料、トリアリールカルボニウム顔料およびそれらの混合物を含む。
【0078】
有機有色顔料のうち、例えばC.I.顔料ブルー15、C.I.顔料ブルー15:1、C.I.顔料ブルー15:2、C.I.顔料ブルー15:3、C.I.顔料ブルー15:4、C.I.顔料ブルー15:6、C.I顔料ブルー16、C.I.顔料グリーン7、C.I.顔料グリーン36、C.I.顔料オレンジ36、C.I.顔料オレンジ43、C.I.顔料オレンジ73、C.I.顔料レッド122、C.I.顔料レッド168、C.I.顔料レッド179、C.I.顔料レッド188、C.I.顔料レッド254、C.I.顔料レッド264、C.I.顔料レッド282、C.I.顔料バイオレット19、C.I.顔料バイオレット23、顔料イエロー74、顔料イエロー83、顔料イエロー97、C.I.顔料イエロー110、C.I.顔料イエロー138、C.I.顔料イエロー154またはこれらの顔料の任意の混合物を使用することができる。
【0079】
有機顔料の含有量は、0.005%~3.0%w/w、好ましくは0.075%~1.5%w/wであることが意図されている。
【0080】
本発明は、約500ナノメートル未満の波長を有する光を吸収し、かつ目的の400~760nmのスペクトルの可視部分で蛍光を発する少なくとも1種の蛍光添加剤を含むコーティング組成物にも関する。
【0081】
好適な分子は限定されるものではないが、フルオロールグリーンゴールド(Fluorol green Gold)、2-Dui1 ASP、4-ジメチルアミノ-4-ニトロスチルベン、9-シアノアントラセン、カルボキシナフトフルオレセイン、亜鉛テトラメシチルポルフィリン、QpyMe2、マグネシウムテトラフェニルポルフィリンおよびクマリン6である。
【0082】
基板へのコーティングの塗布の均一性を確認するために、リスト化されている蛍光分子に適したランプを使用する。従って、本発明者らは、以下のランプ:Phoseon FJ100 365、Phoseon FJ100 385、Phoseon FJ100 395および Phoseon FJ100 405を採用した。
【0083】
細菌および真菌に対する殺生物効力
銀粒子殺生物性能に対するイソチアゾリノンの相乗効果を定量化するために、本発明者らは以下の試験を開発した。
【0084】
6種類の単純なコーティング配合物+対照配合物を開発し、次いでアルミニウム金属プレートに塗布した。最初に高剪断ミキサー(TDS Contiミキサー型)を用いてカルボキシメチルセルロースを水に分散させることにより、当該コーティング溶液を調製した。次いで、イソチアゾリノンおよびリン酸銀を添加し、この分散系を20分間撹拌しながら維持する。
【0085】
四角形のアルミニウムプレート(長さ5cm、幅5cmおよび厚さ0.1cm)への浸漬コーティング(0.3cm/sの速度で浸漬)により、当該コーティング溶液の塗布を行う。次いで、当該プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0086】
次いで当該プレートの抗菌特徴をISO試験方法22196に従い、以下の細菌種:
・黄色ブドウ球菌:ATCC 6538P、CIP 53.156、DSM 346、NBRC 12732、NCIB 8625、および
・大腸菌:ATCC 8739、CIP 53.126、DSM 1576、NBRC 3972、NCIB 8545
を用いて試験した。
【0087】
この試験のための手順は以下のとおりであった。
【0088】
最初に、細菌を含有する薄い液膜(1.25×10CFU/cm)を試験試料(5cm×5cm)に直接塗布する。次いで乾燥を回避するために、ホイル(4cm×4cm、ストマッカーバッグ(Stomacher Bag)を適用する。接種直後に、超音波およびボルテックス装置を用いて参照試料からの細菌を当該試料および封入ホイル表面から分離し、生存可能な微生物の数(CFU:コロニー形成単位)を決定する(t0値)。次に、さらなるセットの参照試料に抗菌処理を施し、次いで湿気のある環境下37℃で液膜および封入ホイル中で細菌と共にインキュベートする。少なくとも24時間後に、超音波およびボルテックス装置を用いて細菌を試料表面から分離し、生存可能な微生物の数を決定する(t24値)。
【0089】
AおよびDは銀のみと配合し、配合物BおよびEはイソチアゾリノンのみを有し、配合物CおよびFは両方の殺生物剤を有する。配合物Fの場合、イソチアゾリノンおよび銀の含有量は、殺生物効力閾値をはるかに下回っている。
【表1】
【0090】
試験結果:
【表2】
【0091】
これらの結果は、これらの2つの成分すなわちリン酸銀および2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オンの組み合わせが、コーティングされたプレートの抗菌および抗真菌性能を相乗的かつ驚くべき程に高めることを明らかに示している。より詳細には、この表は、0.5%w/w以内の銀濃度は殺生物活性の閾値未満であるが、その性能は少量のイソチアゾリノン誘導体の添加により殺生物レベルまで強く高められることを示している。
【0092】
必要とされる相乗的に適切な量は特定の生物および特定の用途によって異なり、かつ日常的な実験法により容易に決定できることは当業者には明白であろう。さらに、相乗的に有効な量を使用することにより、実質的により少量の各殺生物剤の使用が可能になる。実際に、非常に低い濃度(0.025%w/w)であっても2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オンはリン酸銀の性能を高める。
【0093】
ウイルスに対する殺生物効力
配合物A、B、CおよびGをアルミニウム基板上でコロナウイルスに対してさらに試験した。
【0094】
これらの試験は試験方法ISO 21702に従い、ウシのコロナウイルスおよびVero E6細胞を用いて行った。これらの被験物を先に記載したように、ディップコーターを用いてコーティングされた矩形のアルミニウムプレート(5cmの長さ、5cmの幅および0.1cmの厚さ)上に塗布した。次いで当該プレートを室温で24時間乾燥させた。4種類の被験物がそれぞれコーティングされたものとコーティングされていない対照を準備した。当該接種は、被験面および対照面に塗布された400μlのウイルス懸濁液からなる。室温での24時間の接触時間後に、ウイルス懸濁液をコーティングされた被験物およびコーティングされていない被験物から回収し、ウシのコロナウイルスに対する試験をBSL-2条件下で行った。
【0095】
被験物の抗ウイルス活性は、G配合物(殺生物剤を含まないコーティングされた被験物)と比較して計算し、2回の独立した実験において2回行った。
【0096】
試験結果:
【表3】
【0097】
これらの結果は、イソチアゾリノンとリン酸銀との組み合わせがウイルスに対して相乗的に働き、配合物Fの場合のように非常に低い濃度であっても殺生物効果が存在することを示している。
【0098】
次に、以下の非限定的な実施例により本発明を例示する。
【実施例
【0099】
実施例1
銀およびイソチアゾリノンを有する水系
不透明
【表4】
【0100】
最初に高剪断ミキサー(TDS Contiラボミキサー型)を用いてカルボキシメチルセルロースを水に分散させることにより、当該コーティング溶液を調製した。次いでイソチアゾリノン、泡止め剤、非イオン性界面活性剤および鉱油を添加し、この分散系を強く撹拌しながら維持する。次いで5分後に固形成分を当該溶液に分散させ、次いでこれを撹拌しながらさらに20分間維持する。
【0101】
矩形のポリカーボネートプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)への浸漬コーティング(浸漬速度:0.3cm/s)により、当該コーティング溶液の塗布を行う。次いで、当該プレートを室温で7時間乾燥させた。
【0102】
感圧接着テープを膜の中に作られた100個の部分からなる格子上に貼って除去することによって当該基板へのコーティングフィルムの接着を評価することにより、当該コーティングの接着を評価した。
【0103】
この実験は試験方法JIS K5400に従って行った。その試験結果に関して、「合格」は当該コーティング上に損傷が観察されなかったことを意味し、逆に「不合格」は少なくとも1つの部分が損傷されていたことを意味する。
【0104】
当該コーティング配合物で処理された基板の硬度は鉛筆硬度を用いて決定し、適用した方法はASTM D3363-20である。
【0105】
これらの結果は、当該コーティング配合物が当該基板への予期せぬ構造抵抗すなわち機械抵抗を与え、かつその支持材料への優れた接着を有することを示している。
【表5】
【0106】
実施例2
イソチアゾリノンおよび銀を含む水系
透明
【表6】
【0107】
最初に高剪断ミキサー(TDS Contiラボミキサー型)を用いてカルボキシメチルセルロースを水に分散させることにより、当該コーティング溶液を調製した。次いでイソチアゾリノン、泡止め剤、非イオン性界面活性剤、鉱油を添加し、次いでこの分散系を強く撹拌しながら維持した。次いで5分後にリン酸銀ガラスを当該溶液に分散させ、次いでこれを撹拌しながらさらに20分間維持する。
【0108】
矩形のポリカーボネートプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)への浸漬コーティング(浸漬速度:0.3cm/s)により、当該コーティング溶液の塗布を行う。次いで、当該プレートを室温で7時間乾燥させた。
【0109】
感圧接着テープを膜の中に作られた100個の部分からなる格子上に貼って除去することによって当該基板へのコーティングフィルムの接着を評価することにより、当該コーティングの接着を評価した。
【0110】
この実験は試験方法JIS K5400に従って行った。その試験結果に関して、「合格」は当該コーティング上に損傷が観察されなかったことを意味し、逆に「不合格」は少なくとも1つの部分が損傷されていたことを意味する。
【0111】
当該コーティング配合物で処理された基板の硬度は鉛筆硬度を用いて決定し、適用した方法はASTM D3363-20である。
【0112】
これらの結果は、当該コーティング配合物が当該基板への予期せぬ構造抵抗すなわち機械抵抗およびその支持材料への優れた接着を与えることを示している。
【表7】
【0113】
本発明の別の実施形態は殺生物剤に関し、より具体的には本出願に記載されているコーティング配合物で処理された基板からの銀イオンに関する低浸出特性の決定に関する。
【0114】
評価のために必要とされる重要な入力パラメータは浸出率であり、これはいくつかの国々では活性物質および殺生物製品の認可のために必要とされるデータセットの一部である。しかし、コーティングされた表面を特性評価するためのパラメータとしての浸出率の重要性にも関わらず、それらの使用期間中に殺生物製品の材料への適用のほとんどでは、浸出率を計算するために利用可能な浸出試験または適当な方法の統一されたセットは存在しない。
【0115】
本特許出願の発明者らは、以下の手順を使用することを決定した。
【0116】
アルミニウムプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)を先に記載されている手順に従って浸漬コーティングにより実施例3に係るコーティング配合物でコーティングした。プレート(5)を室温で2日間乾燥させ、次いで処理し、沸騰している塩水(1Lの水当たり50gのNaCl)の中に5時間放置した。
【0117】
この塩溶液を冷却し、滴定して、浸出の証拠となる銀イオンの存在を決定した。特に銀含有量は、滴定液としてチオシアン酸カリウムKSCNを用いる沈殿滴定により決定する。この滴定は、複合リング電極および次いでMettler Toledo Excellence T5 17滴定装置により監視した。認められた銀濃度は当該装置の検出閾値をちょうど超えており、これは1ppm超であることを意味し、これは本コーティングが非常に厳しい条件下であっても実質的に非浸出性の殺生物剤であることを意味している。
【0118】
実施例3
イソチアゾリノンおよびリン酸銀を含む溶媒系
透明
【表8】
【0119】
最初に結合剤(アクリル系/ビニル結合剤)を分散剤と一緒に混合し、かつ次いで酢酸n-ブチル、アセトン、2-メトキシエトキシ-1-メチルエチルアセテート、キシレンおよびブタノンを適度に撹拌しながら反応器の中に添加することにより、当該コーティング溶液を調製した。最後の最後で、ジエチレングリコールおよび2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オンを当該溶液にゆっくりと添加し、リン酸銀を激しく撹拌しながら添加する。
【0120】
矩形のポリカーボネートプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)への浸漬コーティング(浸漬速度:0.3cm/s)により、当該コーティング溶液の塗布を行う。次いで、当該プレートを室温で7時間乾燥させた。
【0121】
実施例4
イソチアゾリノンおよびリン酸銀を含む溶媒系
透明
【表9】
【0122】
最初に結合剤(アクリル系)を分散剤と一緒に混合し、かつ次いで酢酸n-ブチル、アセトン、エチル-エトキシプロピオネート、キシレンおよびブタノンを適度に撹拌しながら反応器の中に添加することにより、当該コーティング溶液を調製した。最後の最後で、ジエチレングリコールおよび2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オンを当該溶液にゆっくりと添加し、次いでリン酸銀を激しく撹拌しながら添加する。
【0123】
矩形のポリカーボネートプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)への浸漬コーティング(浸漬速度:0.3cm/s)により、当該コーティング溶液の塗布を行う。次いで、当該プレートを室温で7時間乾燥させた。
【0124】
実施例5
イソチアゾリノンおよびリン酸銀を含む溶媒系
透明
【表10】
【0125】
最初に酢酸n-ブチル、アセトン、2-メトキシエトキシ-1-メチルエチルアセテート、キシレンおよびブタノンを適度に撹拌しながら反応器の中で混合することにより、当該コーティング溶液を調製した。最後の最後で、ジエチレングリコールおよび2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オンを当該溶液にゆっくりと添加し、リン酸銀を激しく撹拌しながら添加する。
【0126】
矩形のポリカーボネートプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)への浸漬コーティング(浸漬速度:0.3cm/s)により、当該コーティング溶液の塗布を行う。次いで、当該プレートを室温で7時間乾燥させた。
【0127】
感圧接着テープを膜の中に作られた100個の部分からなる格子上に貼って除去することによって当該基板へのコーティングフィルムの接着を評価することにより、当該コーティングの接着を評価した。
【0128】
この実験は試験方法JIS K5400に従って行った。その試験結果に関して、「合格」は当該コーティング上に損傷が観察されなかったことを意味し、逆に「不合格」は少なくとも1つの部分が損傷されていたことを意味する。
【0129】
当該コーティング配合物で処理された基板の硬度は鉛筆硬度を用いて決定し、適用した方法はASTM D3363-20である。
【0130】
これらの結果は、当該コーティング配合物が当該基板への予期せぬ構造抵抗すなわち機械抵抗を与え、かつその支持材料への優れた接着を有することを示している。
【表11】
【0131】
実施例6
イソチアゾリノンおよび銀を含む水系
防水特性および弾性を有する
【表12】
【0132】
最初に増粘剤を水に添加し、次いでアンモニアを一滴ずつ添加することにより、当該コーティング溶液を調製した。pH9に達したら、全ての他の成分を激しく撹拌しながら添加する。最初に固形成分を添加し、その後にMPG、泡止め剤および湿潤剤を添加する。
【0133】
実施例7
イソチアゾリノンおよび銀を含む水系
弾性
【表13】
【0134】
最初に高剪断ミキサー(TDS Contiラボミキサー型)を用いてポリアミンを水に分散させることにより、当該コーティング溶液を調製した。その後に、イソチアゾリノン、共湿潤剤、共溶媒、泡止め剤、ジェミニ界面活性剤、鉱油を添加し、次いでこの分散系を撹拌しながら維持する。次いで5分後にリン酸銀を当該溶液に分散させ、次いでさらに20分間撹拌しながら維持する。
【0135】
実施例8
イソチアゾリノンおよび銀を含む水系
弾性、TiOを含む、透明
【表14】
【0136】
最初に高剪断ミキサー(TDS Contiラボミキサー型)を用いてポリアミドを水に分散させることにより、当該コーティング溶液を調製した。その後に、イソチアゾリノン、共湿潤剤、共溶媒、泡止め剤、ジェミニ界面活性剤、鉱油を添加し、この分散系を撹拌しながら維持する。5分後に、二酸化チタンおよびリン酸銀を当該溶液に分散させ、これを20分間撹拌しながら維持する。
【0137】
実施例9
イソチアゾリノンおよび銀を含む水系
弾性、9-シアノアントラセン(蛍光)を含む
【表15】
【0138】
最初に高剪断ミキサー(TDS Contiラボミキサー型)を用いてポリアミンを水に分散させることにより、当該コーティング溶液を調製した。その後に、イソチアゾリノン、共湿潤剤、共溶媒、泡止め剤、ジェミニ界面活性剤、鉱油を添加し、次いでこの分散系を撹拌しながら維持する。次いで5分後に、二酸化チタン、リン酸銀および9-シアノアントラセン溶液を当該溶液に分散させ、次いでこれを撹拌しながらさらに20分間維持する。
【0139】
実施例10
イソチアゾリノンおよびリン酸銀を含む溶媒系
透明
【表16】
【0140】
最初に結合剤(アクリル系)を分散剤と一緒に混合し、次いで酢酸n-ブチル、アセトン、エチル-エトキシプロピオネート、2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート、キシレンおよびブタノンを適度に撹拌しながら反応器の中に添加することにより、当該コーティング溶液を調製した。最後の最後で、消泡剤、ジエチレングリコールおよび2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オンを当該溶液にゆっくりと添加し、次いでリン酸銀ガラスを激しく撹拌しながら添加する。
【0141】
矩形のポリカーボネートプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)への浸漬コーティング(浸漬速度:0.3cm/s)により、当該コーティング溶液の塗布を行う。次いで、当該プレートを室温で7時間乾燥させた。
【0142】
実施例11
イソチアゾリノンおよびリン酸銀を含む溶媒系
透明、蛍光ポルフィリンを含む
【表17】
【0143】
最初にエポキシ樹脂、酢酸n-ブチル、メトキシエトキシ-1-メチルエチルアセテート、キシレンおよびブタノンを反応器の中で適度に撹拌しながら混合することにより、当該コーティング溶液を調製した。次いでこの溶液に、ジエチレングリコール、マグネシウムテトラフェニルポルフィリン、2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オンをゆっくりと添加し、最後の最後でリン酸銀を強く撹拌しながら添加する。
【0144】
実施例6および実施例7に係るコーティング配合物を、浸漬コーティング(浸漬速度:0.3cm/s)により矩形のアルミニウムプレート(10cmの長さ、15cmの幅および0.5cmの厚さ)に塗布した。次いで当該プレートを室温で4時間乾燥させた。
【0145】
蛍光効果を確認するために、コーティングされた基板を360~430nmの波長領域の光を発するブルーランプ(Phoseon J100)で照射し、コーティングされた基板は、9-シアノアントラセンおよびマグネシウムテトラフェニルポルフィリンの発光スペクトルにより光の発色を示した。

【国際調査報告】