IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーオーピー エルエルシーの特許一覧

特表2024-526698オレフィンが増加し、塩化物及び金属が減少した再生ポリマーからの熱分解油並びにその生成方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】オレフィンが増加し、塩化物及び金属が減少した再生ポリマーからの熱分解油並びにその生成方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20240711BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501211
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022073777
(87)【国際公開番号】W WO2023288302
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/222,157
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/858,007
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ボッツァーノ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】アンデルレ、クリストファー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】フィヒトル、グレゴリー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】スン、ピン
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA27
4F401AB10
4F401BA02
4F401BA06
4F401CA67
4F401CA70
4F401CB01
4F401DA12
4F401FA07Z
4H129AA01
4H129BA05
4H129BB03
4H129BC07
4H129NA01
4H129NA26
(57)【要約】
塩化物及び金属などの汚染物質のレベルが低い熱分解油が生成される。使用されるプロセスは、水素化処理装置を使用しないが、代わりに、ポリ塩化ビニル、及び金属を含む非プラスチックを対象とする前処理セクションと、最初にプラスチックを溶融し、発生したHClガスを除去する第2の塩化物除去工程と、の両方を有する。吸着剤は、塩化物及び金属含有量を許容可能なレベルまで研磨するために使用される。熱分解油は、36~56重量%などのかなりのオレフィン含有量を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20重量%よりも多いオレフィン及び0.5~20重量ppmのハロゲン及び0.5~15重量ppmの全微量元素含有量を含む、熱分解油組成物。
【請求項2】
様々なパラフィン化合物及びより少量の芳香族化合物を更に含む、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項3】
20~80重量%の前記オレフィンを含む、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項4】
精製プロセス若しくは石油化学プロセスにおいて、又は精製プロセスと石油化学プロセスとの組み合わせにおいて、更なる処理をせずとも使用するのに好適である、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項5】
前記微量元素が、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、及び鉄から選択され、前記ハロゲンが、塩化物含有分子、フッ化物含有分子、及び臭化物含有分子を含む、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項6】
36~56重量%のオレフィン、17~45重量%のパラフィン、及び重量%の芳香族化合物を含む、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項7】
0.5~10重量ppmの塩化物及び0.5~10重量ppmの前記全微量金属元素を含む、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項8】
0.5~10重量%のポリ塩化ビニルを含む再生プラスチック組成物に由来する、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項9】
再生プラスチック供給物ストリームから熱分解油組成物を作製するプロセスであって、前記再生プラスチック供給物ストリームを熱分解プロセスに送って、20重量%よりも多いオレフィン及び0.5~20ppmのハロゲン及び0.5~10ppmの全微量元素を含む前記熱分解油組成物を生成することを含む、プロセス。
【請求項10】
前記熱分解油組成物が、更なる処理をせずとも精製所又は石油化学反応器において供給物として使用するのに好適である、請求項15に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の記載)
本出願は、2021年7月15日に出願された米国仮出願第63/222,157号の優先権を主張するものであり、当該米国仮出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明の分野は、再生ポリマーからの、オレフィンが豊富で低不純物の熱分解油の生成である。より具体的には、本発明は、汚染物質を除去するための水素化処理工程を使用しない熱分解油の生成に関する。
【0003】
本発明は、下流ユニットの供給物及び汚染物質要件に合わせるために再生ポリマー熱分解油(recycled polymer pyrolysis oil、RPPO)を水素化処理することを必要とすることなく、塩化物及び金属のレベルの低減などの重要な汚染物質含有量、及びオレフィン含有量の保持に関して、下流のアップグレーディングユニット(水蒸気分解装置、他の石油化学製品、又は精製ユニット)での使用に適した再生ポリマー熱分解油RPPOをもたらす。
【背景技術】
【0004】
混合プラスチック廃棄物は、主に、使用済みプラスチック廃棄物の路上廃棄物回収(curbside waste collection)に由来する。混合プラスチック廃棄物はまた、特定の産業現場からももたらされる(例えば、広範囲の組成を有する建設廃棄物、包装廃棄物、及び農業廃棄物)。廃棄物再生施設は、再生可能なプラスチックを回収するための一連の選別工程を適用する。いくつかの貴重なプラスチックタイプは、機械的再生のための供給物として回収される。回収された混合プラスチックストリームの残りは、典型的には、紙、金属、ごみ、及び有機廃棄物などの様々な非プラスチック汚染物質を含有する。回収されたプラスチックストリームは、重合プロセスからのポリ塩化ビニル又は他のハロゲン含有種を含有し得る。
【0005】
一部の汚染物質は除去することが困難なために、回収された混合プラスチックストリームは、機械的再生への供給物として使用するのに好適でない場合があり、埋立て又は焼却に送られることが多い。熱分解プロセスなどのケミカル再生は、ポリマーの再生循環性を維持するためのモノマーを作製するために、使用済みプラスチック廃棄物ストリームを燃料又はより好ましくは石油化学原料に更に変換するのに好適である。熱分解プロセスは、典型的には、空気を含まない雰囲気及びより高い温度条件、例えば、350℃~900℃で行われる。欧州特許第3186556(B1)号は、ミキサー及び接触器を備えた熱分解装置を開示している。プラスチック熱分解にはいくつかの例がある。
【0006】
生熱分解油は、典型的には、パラフィン、オレフィン、及び芳香族炭化水素を含有する。熱分解油炭化水素タイプへの供給物組成の影響は、多くの調査研究の焦点であり、詳細な分析特徴付けを通して広く理解されている。廃ポリマーの熱分解は、不対電子又はクロスサイトを自由に移動するラジカルによる典型的な炭素-炭素結合切断を含むフリーラジカル反応の連鎖により、様々なオレフィン系炭化水素を生成することが多い。これは、オレフィン分子、及び分解反応を継続する新しいラジカルをもたらすベータ開裂として知られている。この現象の重要性は、特に廃ポリマーがポリプロピレン及びポリエテンを含有する場合、通常オレフィンが熱分解油生成物に含まれることである。
【0007】
典型的には、生熱分解油は、ヘテロ原子分子を含有する。最も一般的な汚染物質は、ハロゲンである。ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride、PVC)は、廃ポリマーの混合物中に見出されることが多い。PVCの完全な機械的分離は、最も洗練された技術を使用したとしても非現実的である。加えて、ハロゲン含有化学物質は、重合プロセスにおいて難燃剤として一般的に使用される。その結果、塩素、臭素、及びフッ素を含むハロゲンは、全てのハロゲンが未熱分解残留物又は非凝縮性水素ハロゲンガスのいずれかを通して放出され得るわけではないため、熱分解生成物中に一般に見出される。気相の化合物。熱分解油中に含有されるハロゲンは、下流の処理、例えば、供給原料として廃ポリマー由来熱分解油を使用する水蒸気分解装置における油の価値を低下させる。例えば、塩化物レベルが反応器冶金の限界を超えると、冶金は深刻な損傷を受ける場合がある。加えて、他の汚染物質、例えば、微量金属及びケイ素が存在する可能性が高い。
【0008】
プラスチック循環性は、廃プラスチックから許容可能な質の熱分解油を生成することを必要とする。熱分解油中の塩化物は、応力腐食割れによる冶金学的問題を引き起こすことが知られている。プラスチックのためのほとんどの熱分解技術は、オレフィンを水素化脱塩素及び水素化する浄化工程として、下流ユニットにおけるアップグレーディングのために熱分解油を調製するための水素化処理工程を適用する。得られた熱分解油は、処理後の従来の石油生成物と同様である。
【0009】
本発明は、新規な熱分解油組成物を、水素化処理をせずに、下流プロセスユニットへの供給原料として直接生成するためのものである。微量汚染物質を除去するために非常に軽い処理を受けただけの熱分解油は、水素化処理されている熱分解油と比較して、炭化水素種に関してほとんど変わっていない。したがって、本発明の対象である熱分解油は、かなりの量のオレフィンを含有するが、ハロゲン及び金属のような他の微量汚染物質は非常に低レベルである。水素化処理された他の熱分解油は、パラフィンを作製するためにそれらのオレフィンが飽和させられているため、この組成物は本発明の主題である熱分解油とは異なる。本発明者らの検査結果は、大部分がモノオレフィンであるオレフィンを示し、これは、下流の処理工程においてパラフィンと同様に挙動する。本熱分解油は、ハロゲン及び微量金属が十分に除去されている。この熱分解油は、流動接触分解(fluid catalytic cracking、FCC)ユニット又は水蒸気分解ユニットを含むがこれらに限定されない下流の石油化学製品又は精製プロセスユニットへの直接の供給原料として使用されるのに好適である。
【0010】
プロセス設計の観点から、下流プロセスユニットに好適である特性を有するRPPOを調製することは、水素化処理装置を必要としないが、その代わりに、下流プロセスユニットにおける供給物組成要件を満たすのに十分に低い塩化物及び金属含有量を有するRPPOを生成するための様々な処理工程で達成することができる。熱分解油は、循環経済においてプラスチック生成物を生成するために使用される分子を生成するのに必要なだけ処理されるだけである。
【0011】
ビジネス上の利点は、処理工程の数が減少し、資本及び事業経費の両方に関してRPPOのより効率的な調製をもたらし、他の熱分解油と比較して生成者にとって競合的利点をもたらすことである。例えば、再生規模のための大きさの典型的な水素化処理ユニットは、5000万~1億ドルほどの費用がかかる可能性があり、高い温度及び圧力での運転と共に水素の供給を必要とし、かなりの資本及び事業経費を必要し、これらのほとんど全ては本明細書では回避される。
【発明の概要】
【0012】
すぐに使用できる熱分解油は、熱分解ユニットから生成されたパラフィン、オレフィン、及び芳香族化合物からなる。本発明に従う熱分解油を構成する炭化水素種は、熱分解反応工程後に大部分が無傷のままであり、熱分解反応において自然に生成されるオレフィン、パラフィン、及び他の炭化水素種を保存する。水素化処理などのRPPOの過剰な浄化工程が回避され、処理コスト及び資本経費が低減される。熱分解油は、通常、浄化工程が行われた後でさえ、ppmレベルで微量のハロゲン及び微量金属を含有する。比較すると、本発明の対象であるすぐに使用できる熱分解油は、ハロゲン及び微量金属などの汚染物質が少ないパラフィン及びオレフィンが豊富であるものとして最もよく説明される。すぐに使用できる熱分解油は、下流の石油化学又は精製プロセスユニットに供給原料として直接適用される、熱分解プラントからの最終生成物である。熱分解油組成物は、非常に低い汚染物質レベルを有するパラフィン及びオレフィンが豊富な油が存在することを示す驚くべき臨床試験結果に起因して新規であり、これは、他のプロセスユニットの中でも、FCC又はストリーム分解ユニットにおける主生成物収率に関して、従来の石油由来原料と同等に挙動する。
【0013】
すぐに使用できる熱分解油を生成するという目的を達成するためのいくつかの方式が存在し得る。本開示で説明される1つの方法は、一連のプロセス工程によるものである。非プラスチック汚染物質(ある金属、紙、木材、及びゴムを含む)を適度に低いレベルに処理するために、前処理が必要である。前処理工程では、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)などの酸素含有プラスチックが主な汚染物質とみなされる。PVCはまた、事前選別の対象であるが、熱分解ユニット内の下流の複数のプロセス工程も塩化物除去の効率を高めるのに役立ち得るので、PVCの完全な除去は必要ではない。
【0014】
本プロセスは、熱分解反応器に導入される前にプラスチック供給物の溶融温度を制御することによる塩化物除去工程を含み得る。溶融タンクでは、塩化水素(hydrogen chloride、HC1)が発生し、システムから除去され、更に、混合プラスチックの塩化物含有量を低減する。熱分解反応器を通して混合プラスチックストリームを処理した後、流出物ストリームは、水蒸気分解装置又はFCCプロセスユニットなどの下流の石油化学又は精製プロセスユニットにとって許容可能なレベルまで、反応又は除去工程を通して塩化物及び微量金属を除去するように処理される。本発明のプロセスは、水素化処理をせずとも低い金属及び塩化物レベルを達成し、競合する廃プラスチック熱分解プロセスと比較して、数百万ドルの資本及び運用経費を節約する。塩化物及び微量金属の許容レベルは、数百万分率であるが、多くても10ppm(parts per million)未満である。
【0015】
本発明の別の態様では、熱分解油は、RPPOが、高いオレフィン含有量を有すると同時に、他の汚染物質の含有量が非常に低いという点で、熱分解油について以前に達成できていない特性を有する。特に、少なくとも20重量%より多いオレフィン、10ppmw未満の塩化物、及び10ppmw未満の無機分子が存在する。好ましい実施形態では、36~56重量%のオレフィン、17~28重量%のパラフィン、及び14~20重量%の芳香族化合物が存在する。
【0016】
別の実施形態において、新規な熱分解油組成物は、PVC及び他のプラスチック材料を含む混合プラスチック廃棄物ストリームを利用するプロセスによって提供される。このプロセスは、混合プラスチックストリームを前処理工程に送って、あらゆるPET及びPVCを部分的に除去し、プラスチック廃棄物ストリーム中のプラスチックを細断することと、次いで、プラスチックの液体混合物を生成するのに十分な温度で溶融反応器中でプラスチックを溶融することと、を含む、プラスチックの液体混合物は、熱分解反応器に送られて、凝縮物形態の熱分解油を生成する。次いで、熱分解油は、固定床反応器を通して送られて、固体吸着剤又は非水素環境中の反応物によって塩化物及び塩化物含有材料を除去して、清浄な熱分解油ストリームを生成し得る。塩化物種を除去するのに有効である任意の吸着剤を使用し得るが、固体吸着剤は、塩化物種を選択的に吸収するか又は塩化物種と反応するが、オレフィン分子を含む熱分解油中の炭化水素分子に対して不活性なままである、ケイ酸塩アルミナ担体に含浸された1つ以上の活性金属種からなり得る。残留塩化物レベルは10ppmwに減少し、無機分子は10ppmwに減少し、オレフィン含有量は>20%wtに減少する。熱分解油は、プラスチック廃棄物ストリーム組成に応じて20~80%wtのオレフィン分子からなる。清浄な熱分解油は、オレフィンの最小転化率を維持する。一実施形態において、混合プラスチックストリームは、混合プラスチックストリーム中に最大10重量%のPVCを有し、プラスチックの液体混合物中に最大2%wtのPVCを有する。清浄な熱分解油ストリームは、流動接触分解(FCC)プロセス若しくは水蒸気分解プロセスにおいて、ブレンド成分として、又はFCC、水蒸気分解をエンドユーザが決定した場所での他のプロセス技術と共に含む他のプロセス技術からのストリームとの組み合わせとして、又はFCC若しくはストリーム分解を含んでも含まなくてもよいいくつかの他の下流処理可能性として使用し得る。本発明の重要な利点は、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、鉄、及び様々な他のものを含む結合金属種の10ppmw未満の金属元素からなる清浄な熱分解油の生成である。溶融反応器は、280℃(536°F)~330℃(626°F)の温度で動作され、熱分解反応器は、380℃(716°F)~450℃(842°F)の温度で動作され、吸着床は、100℃(212°F)~300℃(482°F)の温度で動作される。混合プラスチックストリームは、供給物供給からの最大10重量%のPVC及び液体混合物中に最大3%wtのPVCを有し得る。
【0017】
定義
本明細書で使用される場合、用語「反応器」は、供給物ポリマーのための滞留時間を提供する熱分解容器を意味する。溶融タンク反応器は、混合プラスチック供給物の大部分が物理的溶融を経て粘性液体になるときに、混合プラスチック供給物の一部分のみが熱分解される反応器である。主な熱分解反応器のタイプが上で紹介されており、対流熱伝達を使用するウェルミックスド(well-mixed)タイプの反応器は、炉又はスクリュー押出機によって提供される間接的な伝導性加熱器伝達に勝る利点を有する。ウェルミックスド反応器では、液体空間全体にわたって確立された均一な温度分布が見られる。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「混合プラスチック供給物」は、2つ以上のポリマーが供給物中に存在することを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「生成物」は、熱分解反応後の質量ストリームの一部分を意味する。生成物は、更なる処理を必要とする中間生成物、及び利益のために販売され得る市場性のある価値を有する、プロセスの最後の最後に回収される最終生成物として広くなり得る。これは、主要な利益のある生成物を目指すときの副産物とは対照的である。現在の文脈において、熱分解反応は、溶融供給物の5~10%wtの炭化水素ガスを含有する残留ガス状生成物、室内条件に凝縮された場合に70~90重量%の収率の液体、液体及び固体の混合物としての反応器排出物に由来する2~15%wtの残留物を生成する。炭化水素ガス及び残留物は、副生成物である。凝縮時に回収された液体は、更なる処理を必要とする中間生成物である。汚染物質を含まず、下流の顧客にとって市場性のある価値を有する、処理後の液体生成物は、最終生成物である。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「残留物」は、プロセス工程後に残る部分を意味する。現在の文脈において、残留物は、具体的には、主生成物よりも、下流の用途に対して相対的に低い有益な使用を有する液体及び固体の混合物としてプロセスの境界を離れるストリームである。この文脈において、残留副生成物は、チャー及び無機残留物を含有し得る。チャーは、主生成物を作製する際の必然的な副生成物である。チャーを減少させるように反応戦略を適用することができるが、チャーを排除することはできない。特定のプラスチック組成物は、別のものよりも多い量のチャーを生じさせる。電子機器廃棄物由来のPVC、PET、PS又はアクリロニトリルブタジエンスチレンなどの硬質プラスチック及び芳香族分子含有プラスチック化合物は、同等の処理条件でポリエチレン及びポリプロピレンよりも多くのチャーを作り出す傾向があることが知られている。無機残留物は、ポリマー製造プロセス中に導入される層状添加剤に由来する。一例は、MgO、CaO、及びLi2Oベースのガラス繊維種である。別の例は、導電性プラスチックを形成する場合の亜鉛、鉛又はカドミウムベースの金属充填剤である。金属又はアルカリ金属は、最終的に固体形態の残留物ストリームとなる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「質」熱分解生成物の質という用語は、熱分解生成物を下流の用途に多かれ少なかれ好適にする多くの化学組成物を指す。混合プラスチック熱分解の一般的な目的は、精製所又は石油化学プラントなどの下流の顧客プラントにおいて使用され得る生成物を作り出すことである。炭化水素含有量は、熱分解油の質の重要な尺度である。特に、本発明に関連する重要な質尺度は、ハロゲン含有量である。ハロゲン元素の中では、塩化物イオンが最も問題となる。塩化物含有量は、有機形式又は無機形式のいずれかにおいて、冶金腐食(metallurgy corrosion)をもたらす傾向がある。別の重要な質尺度は、微量金属の量である。ポリマー製造プロセス中に導入された層状添加剤からの微量金属は、大部分が反応器残留物中に存在し、それらのごくわずかな部分が生熱分解油生成物中に終わる。微量金属をppmレベルまで除去するためには、ディープクリーニングが必要である。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「部分」は、主要なストリームと比較して組成のいかなる変化も伴わずに主要なストリームから採取又は分離される量又は部分を意味する。更に、用語「部分」は、取り出された部分又は分離された部分を複数の部分に分割することを含み、各部分は、主要なストリームと比較して同じ組成を保持する。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「ユニット」は、1つ以上の設備機器及び/又は1つ以上のサブユニットを含む領域を指すことができる。設備機器としては、1つ以上の反応器又は反応容器、加熱器、分離器、ドラム、交換器、パイプ、ポンプ、圧縮機、及びコントローラが挙げられ得る。加えて、反応器、乾燥機、又は容器などの設備機器は、1つ以上のユニット又はサブユニットを更に含むことができる。
【0024】
用語「連通」は、列挙された構成要素間で材料の流れが動作可能に許容されることを意味する。
【0025】
用語「下流連通」は、下流連通において対象に流れる材料の少なくとも一部分が、連通する物体から動作可能に流れることができることを意味する。
【0026】
用語「上流連通」は、上流連通において対象から流れる材料の少なくとも一部分が、連通する物体に動作可能に流れることができることを意味する。
【0027】
用語「直接連通」又は「直接に」は、上流構成要素からの流れが、物理的分画(physical fractionation)又は化学変換による組成変化を受けることなく下流構成要素に入ることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の「発明を実施するための形態」は、本質的に単なる例示であり、様々な実施形態又はこれらの用途及び使用を限定することを意図するものではない。更に、前述の背景技術又は以下の詳細な説明で提示される、いずれの理論によっても制約されることは意図していない。
【0029】
熱分解油は、非水素化生成/非水素化処理プロセスを使用して効率的に浄化されて、下流プロセスユニットに直接供給される好適な供給原料を生成することができる。驚くべきことに、得られた熱分解油組成物は、油が、下流プロセスユニットにおいて良好な収率及び競争力のある質をもたらすための効率的な供給物として役立つことを証明する。
【0030】
混合廃プラスチックからの熱分解油は一般によく知られている。廃プラスチックストリームの質が従来の機械的再生に十分でない場合、好ましくは熱分解プロセスに供給することができる。熱分解のプロセス化学は、広範囲の炭化水素化合物を形成するフリーラジカル分解反応の連鎖を経ることがよく知られている。フリーラジカル分解反応は複雑であるが、ラジカル開始、ベータ切断、水素利用可能性に応じた分子内又は分子外経路のいずれかを介した水素移動、及び停止反応など、いくつかの基本的なカテゴリーに分類される。
【0031】
主要なポリマーの熱分解からの生成物組成は比較的よく理解されている。ポリエチレンは、ランダム開始を経て、一連のベータ切断反応からオレフィンを形成する傾向がある。水素利用可能性は、分子内又は分子外の組み合わせであり得、したがって生成物は、広範囲の炭素数を含有することが多く、大部分はパラフィンであり、オレフィン及びいくつかの芳香族化合物がそれに続く。ラジカルによる炭素-炭素結合切断がオレフィン及び別の新しいラジカルをもたらす場合、オレフィンの形成は、フリーラジカル分解に固有である。少量の芳香族化合物は、水素利用可能性がない場合に形成され、熱力学的に安定な生成物を形成するための手段として芳香族化をもたらす。ポリプロピレンも同様に熱分解反応を経るが、独特の違いを有する。ラジカル電子は、分子内部の水素を引き抜きながら三級炭素位置に沿って移動し、様々な炭素長を有するプロピレンオリゴマーを形成することが多いが、炭素数分布に関して連続性が低い傾向がある。結果として、ポリプロピレン熱分解は、主に1つの二重結合を有するプロピレンオリゴマーを形成する。オレフィンの主鎖は、ポリエチレンからの分岐が少ないか又はポリプロピレン熱分解からのプロピレンオリゴマーのように3の倍数で等間隔の炭素数を有するかのいずれかの連続的な広範囲の炭素分布を特徴とする。しかしながら、類似点は、ポリエチレン又はポリプロピレンポリマーのいずれかに由来するオレフィンが、アルファ位の鎖の末端に1つの二重結合を有するモノオレフィンが豊富であることである。
【0032】
PVC熱分解はC-Cl結合から始まり、水素移動は主に内部水素を引き抜いてガス状HClを形成することによる。熱分解油生成物の混合物が、下流の反応器に移動するとき、HClは、オレフィンと反応し、塩化アルキルを形成する可能性が高い。HClのごく一部分もまた、熱分解油へのその溶解性のために下流に運ばれ得る。無機HCl及び有機塩化物は、熱分解油中の汚染物質と考えられる。
【0033】
ポリスチレン及びPETなどの他の主要なポリマーもまた、それぞれ、スチレンオリゴマー及びナフテン酸を生成することが知られている。
【0034】
現代のプラスチック商品は、ポリマー特性を向上させるための様々な添加剤を有する。マイカ粉末及び炭酸カルシウムは、機械的特性を向上させるための一般に知られている添加剤である。PVC自体を含むいくつかのハロゲン、又はフッ素及び臭素は、一般的な難燃添加剤である。他の添加剤は、他の用途の中でも、光安定性、抗酸化剤、及び熱安定性などの様々な機能性として機能する。このような添加剤は、最終的に熱分解油生成物中の汚染物質となる可能性がある。塩素、フッ素、臭素及び微量金属が熱分解油中に含有される場合、それらを十分に低いレベルまで洗浄除去するための必要性がある。
【0035】
廃ポリマー熱分解分野における多くの開示は、プロセス及び特殊装置のみに焦点を当てており、例は、欧州特許第3186556(B1)号、米国特許出願公開第20140114098(A1)号、及び米国特許出願公開第20170283706(A1)号である。生熱分解油は、その根本的な質の問題のために直接使用することができない。顧客が、汚染物質に対する要求があまり厳しくない燃焼又はバーナーにおける代替燃料として生熱分解油を使用するという懸念は少ない。しかしながら、石油精製所又は石油化学プラント所有者-運営者は、塩化物及び微量金属に対するより厳しい制限を必要とする。熱分解油中の高レベルの塩化物は、下流プロセスが熱分解油を供給原料として使用することを妨げ得る。下流に送られた熱分解油中の微量金属は、金属ガードベッド触媒などの標的汚染物質除去を介して下流プロセスにおいて除去されるか、又は場合によっては、金属は、全ての下流プロセスを通過し、最終生成物となる可能性があるかのいずれかである。[0035]いくつかの精製及び石油化学プロセスは、オレフィンを汚染物質として分類する。分子内部の二重結合は、最終生成物への低い転化率をもたらす複雑な反応、及びコークス形成をもたらす副反応に関与することが知られている。しかしながら、単一の二重結合は、特にアルファ炭素位置では、同様の炭素数のパラフィンと同様に分解する傾向がある。アルファ炭素位置の二重結合は、他の可能な下流プロセスの中でも、FCC又は水蒸気分解などの分解プロセスの最終生成物の収率に直接寄与することができる。
【0036】
最も一般的な生熱分解油処理は、水素化処理によって行われる。緩やかな水素化処理条件下では、水素化脱塩素及びオレフィン飽和の両方が起こる。水素化脱塩素化は周知であり、水素化機構によってハロゲン、例えば有機ハロゲンのほぼ完全な除去を達成することができる。本開示によれば、水素化処理条件は、ハロゲン及びオレフィンを同時に除去する。多くの熱分解技術が、熱分解ユニットの下流に水素化処理プロセスを適用して実施される。塩化物が除去されるとき、オレフィンの飽和は、完全ではないにしても、有意である。
【0037】
本発明は、廃プラスチック熱分解プロセス後に、オレフィン飽和又はオレフィンの他の除去を最小限に抑えながら、油流出物のオレフィン含有量を維持する必要があることを教示する。加えて、熱分解油は、一連の下流プロセスによって使用される独特の組成物であるようにするために、0~10ppmwの塩化物、好ましくは0~5ppmwの総微量金属まで浄化される必要がある。
【0038】
廃ポリマー由来熱分解油からのオレフィン分子は、主にモノオレフィン及びアルファオレフィンである。特に水素化処理などの高価なプロセスによる、生熱分解油からのオレフィンの更なる除去は、経済的意味をなさず、回避されるべきである。
【0039】
本明細書で生成される組成物の利点を実証する目的で、FCC及び水蒸気分解による下流熱分解油アップグレーディング、並びにそれらの供給物仕様が、供給原料としての熱分解油の価値を最大化するために熱分解油中の汚染物質レベルの注意深い管理をどのように必要とするかの2つの実施例を提供する。
【0040】
流動接触分解(FCC)は、高い分解温度及び酸性固体触媒を、減圧軽油、コーカー軽油、又は残渣油などの石油系原料に適用する。FCCは、ガソリン及びプロピレンの主生成物、並びに軽質サイクル油などの副生成物への良好な選択性を有する。プロピレンが回収されると、それはポリプロピレンの構成単位になる。アルファ-オレフィンが豊富な熱分解油が、FCC条件で分解される場合、通常のFCC供給原料と比較して、特にプロピレン収率に関して驚くほど良好な結果を提供することが見出されている。FCCユニットは、塩化物及び微量金属含有量に対して低い耐性を有し、例えば、全原料油に対して<約2ppm又は原料混合成分に対して<約10ppmである。廃プラスチック熱分解油を含む任意の原料混合成分中の塩化物及び微量金属のディープクリーニングが必要とされる。
【0041】
水蒸気分解(steam cracking、SC)プロセスは、石油化学製造のための様々な軽質オレフィン及びブタジエン生成物を生成するためのナフサ原料を処理するために一般的に使用される。エチレンは、ポリエチレンの構成単位である特に高価値の生成物である。SCユニットは、塩化物及び微量金属含有量に対して低い耐性を有し、例えば、全油に対して<約1ppm又は原料混合成分に対して<約10ppmである。塩化物及び微量金属に対するディープクリーニングが必要である。AICHE Spring Meeting 2020で発表された技術論文は、いかなる浄化をせずとも廃プラスチック由来の生熱分解油が、同一のパイロットプラント条件で従来の軽質ナフサに匹敵するエチレン収率をもたらすことを示した。この開示によれば、熱分解油中のオレフィンは最もよく保存され、一方、ハロゲン及び微量金属は十分に低いレベルまで最もよく除去される。廃ポリプロピレン及びポリエテンのような廃プラスチックに由来する熱分解油中のパラフィンと共にオレフィンは、非常に価値のある供給原料である。
【0042】
本開示によれば、FCC、水蒸気分解、及びその他を含む典型的な下流プロセスに供給される、完成した熱分解油組成物は、生熱分解プロセスから生成されるようなオレフィン、パラフィン、及び芳香族分子の混合物であり得、生熱分解油中のその質量含有量に対して、各クラスの後熱分解工程による質量消失が<10%wt又は好ましくは質量消失が<2%wtである。完成した熱分解油は、ハロゲン及び微量金属レベルが各々<10ppmまで下がるように、熱分解反応器の下流で処理される。本発明者らが知る限り、本発明の対象である熱分解油組成物及び下流プロセスユニットにおけるその直接使用は、先行技術のいずれにも教示されていない。本明細書に記載される組成物を用いて熱分解油を生成するためのプロセスは、多くの詳細において異なり得る。本開示は、記載された油組成物を生成し得る1つのプロセスを教示するだけである。本発明の油組成物を生成するための方法は、本明細書に教示されるプロセスを超えてもよい。
【0043】
第1の工程は、混合プラスチックストリームの前処理を含む。上述したように、非プラスチック汚染物質は、炭素が豊富な、水素欠乏の残留物の生成に寄与し、熱分解プロセスにおける操作上の困難性をもたらし得る。したがって、前処理プロセスは、非プラスチック汚染物質を可能な限り排除するように設計し得る。非プラスチック汚染物質の中で、紙及びボール紙は、一般に、急速に移動する空気の流れを使用して、そのような汚染物質を、通過する廃棄物ストリームから排出する空気分離技術を使用して除去される。鉄金属は、磁石によって取り出され、アルミニウム缶のような非鉄金属は、渦電流デバイスによる電流力によって取り出すことができる。
【0044】
プラスチック廃棄物の更なる選別のために、現代の選別技術は、個々のポリマータイプを識別し、それに応じてそれらを選別するように設計された「指紋」選別機を通して標的選択又は排除が達成され得るレベルまで進歩している。近赤外選別は、プラスチック表面のポリマータイプを検出し、圧縮空気ジェットを使用してコンベヤベルトからプラスチックを持ち上げて積極的に拾い上げるか、又は消極的に拒絶する。電磁選別及びロボット選別が、より高度な選別のために使用される。また、PETが青色に見えるのに対して、PVC品目はUV光に曝露されると黄色又は緑色である、紫外線を使用する手動プロセスなどの、主にPETを対象とする選別技術が存在する。PET熱分解から形成される酸素化物は、低い価値を有し、熱分解プロセスにおいて操作上の問題を引き起こし、生成物熱分解油が所望よりも弱い酸性度を有する原因となるので、PETを除去することが重要である。バルクPVCを選別工程から除去する。
【0045】
選別されたプラスチックが豊富なストリームは、第1の反応器が溶融反応器であり、第2の反応器が主反応器である、2段階熱分解プロセスで処理し得る。第1の工程は、溶融反応器における選択的脱ハロゲン化のための低温領域を対象とする。PVC脱塩素及び他の脱ハロゲン化は、他のポリマー分解よりもはるかに低い温度で起こる。第1段階溶融反応器熱分解反応は、スクリューフィーダを有する反応器、ロータリキルン反応器、撹拌によるか又は液体運動量による混合を有する反応器などの様々な反応器タイプを用いて達成し得る。プラスチック熱分解反応は、吸熱性であるため、全ての反応熱は、バーナー、交換器、又は熱入力を提供する熱統合プロセスフローによって提供されなければならない。脱ハロゲン化条件は、例えば、270℃(518°F)~350℃(662°F)、又は好ましくは300℃(572°F)~330℃(627°F)の温度範囲にあり得る。第1段階溶融反応器の圧力、滞留時間、及び窒素掃引速度は、ガス状水素-ハロゲン離脱に影響を与える。例えば、第1段階溶融反応器は、0.069MPa(ゲージ)(10psig)~1.38MPa(ゲージ)(200psig)の圧力及び0.1時間-1~2時間-1の液空間速度で動作され、1.7Nm/m(10scf/bbl)~170Nm/mプラスチック溶融物(1,000scf/bbl)の専用窒素掃引速度で窒素雰囲気下で動作され得る。第1段階溶融反応器プロセスは、2つの生成物ストリーム、すなわち、脱塩素及び他の脱ハロゲン化反応からのハロゲンが富化された塔頂ガスストリームと、主に溶融プラスチックを含有する液体ストリームとを生成する。
【0046】
熱分解の第2段階は、第1段階溶融反応器から来る溶融プラスチックが熱的に熱分解されるような条件の厳しさを増大させる。第2段階熱分解は、スクリューフィーダを有する反応器、ロータリキルン反応器、撹拌によるか又は液体運動量による混合を有する反応器などの様々な反応器タイプを適用し得る。プラスチック熱分解反応は、吸熱性であるため、全ての反応熱は、バーナー、交換器、又は熱入力を提供する熱統合プロセスフローによって提供されなければならない。第2段階熱分解条件は、300℃(572°F)~550℃(1022°F)、又は好ましくは380℃(716°F)~450℃(842°F)の温度、0.069MPa(ゲージ)(10psig)~1.38MPa(ゲージ)(200psig)、又は好ましくは0.138MPa(ゲージ)(20psig)~0.345MPa(ゲージ)(50psig)の圧力、0.1時間-1~2時間-1、又はより好ましくは0.2時間-1~0.5時間-1の新たな溶融供給物の液空間速度で、動作され得る。第2段階プロセスは、2つの生成物ストリーム、すなわち、入ってくる溶融プラスチックの熱分解から生じる炭化水素種が富化された蒸気生成物を含有する塔頂ガスストリームと、未転化ポリマー、無機金属、及び炭素質コークスを含有する残留物として一般に特徴付けられる液体ストリームと、を生成する。
【0047】
主熱分解反応器からの蒸気生成物は、主生成物ストリームであり、高温プロセスストリームと低温プロセスストリームとの間の交換器の集合、冷却媒体を有する急冷塔、又は分留塔、ストリッピング塔、若しくは非直接接触空気冷却を含む一連の冷却及び分離ユニット操作による複数の凝縮工程を必要とする。凝縮の目的は、冷却時に非凝縮性ガス副生成物から分離する主液体生成物ストリームを回収することである。非凝縮性ガス生成物は、典型的には5個未満の炭素原子を有する軽質炭化水素種を含有する。主熱分解反応器からのガス状生成物ストリーム中にいくらかの残留未転化ハロゲンが残っている可能性がある。第2段階主反応器で形成された水素-ハロゲン種は、非凝縮性ガス生成物ストリーム中に濃縮される。非凝縮性ストリーム全体は、酸化装置に送られて、無害な流出物ストリームに変換されるか、又は内部エネルギー回収のために燃焼されるかのいずれかである。
【0048】
主液体凝縮物は、オレフィン、パラフィン、及び芳香族分子を含有する生熱分解生成物である。プロセスのフロントエンドでのPET処理が、系からほとんどの酸素含有ポリマーを既に除去しているはずであっても、それは残留する少量の酸素含有分子も含有し得る。オレフィンは、熱分解ユニットへの混合廃プラスチックの組成に応じて、プラスチック熱分解の典型的な生成物である。混合廃プラスチック供給物中のポリプロピレンは、生熱分解油凝縮物中にポリエチレンよりも高いオレフィン含有量をもたらす。ポリエチレンは、約20~50%wtのオレフィンを生成する一方、ポリプロピレンは、40~90%wtのオレフィンを生成する。ポリエチレン及びポリプロピレンの両方からのオレフィンは、主に1つの二重結合、すなわちモノオレフィンを含有する。二重結合は、常にではないが、アルファ炭素位置に位置することが多い。ジオレフィンは、希少であり、微量しか存在しない。オレフィンは、当業者に知られている典型的な水素化処理条件下で容易に水素化される。生熱分解油凝縮物中のオレフィンは、水素又は水素化処理触媒と接触させないことによって最もよく保存され得る。水素化処理条件は、66℃(151°F)~426℃(800°F)、又は316℃(600°F)~418℃(785°F)、又は343℃(650°F)~399℃(750°F)の反応温度、1.4MPa(ゲージ)(200psig)~8.2MPa(ゲージ)(1200psig)の水素分圧、0.25 1/時間(ゲージ)~10 1/時間の液空間速度を含み得る。好適な水素化生成触媒は、典型的には、アルミナなどの高表面積担体材料上の、少なくとも1つの第VIII族金属、又は鉄、コバルト及びニッケル、又はニッケル及び/若しくはコバルト、並びにモリブデン及びタングステンなどの少なくとも1つの第VI族金属からなる。熱分解油中のオレフィンの保存は、本開示の重要な教示である。
【0049】
本開示によれば、軽質後処理精製工程(水素化処理又は水素化を含まない工程)は、ハロゲン汚染物質を熱分解油から除去するように、新たに生成された生熱分解油凝縮物を反応性吸着剤又は非反応性吸着剤と接触させることによって適用される。本開示によれば、好適な固体は、理想的には、酸素イオンを含有するアルカリ性酸化物などの塩基性固体である。アルカリ土類酸化物は、おそらく最初に有機塩化物の分解を介して塩化物種を反応又は化学吸着させ、続いて塩化水素を反応又は化学吸着させる。アルカリ土類酸化物は、MgO、CaO、BaO、及びNaOなどであり得る。FeO、CuO、NiO、及びMnOなどの他の金属酸化物も同様の機能性を有し得る。
【0050】
ハロゲン精製は、好ましくは、固定床装置によって行われる。ハロゲンは、塩基性固体を使用して含有され、使用済みの薬剤は、最終的な処分のために送られる。より好ましくは、精製システムは、例えば、精製ユニットの1つの列が使用されたときに、リードラグ能力を有し、ユニットの別の列がストリームにもたらされたときに、オフにされ、処分される。
【0051】
しかしながら、本開示によれば、実際的な意味において、全ての供給原料の質、例えば熱分解への供給物中の塩化物含有量が、下流プロセスユニットへの供給物として必要とされる質を達成するために、上に列挙された塩基性固体剤のいずれか1つを接触させることによって処理されることができるわけではない。下流ユニットに要求される質に関しては、ハロゲン及び微量金属が各々10ppm未満であることが典型的に要求される。熱分解油中の塩化物が1~2%wtを超える場合、非常に高い程度の脱ハロゲン化を達成する必要がある。
【0052】
本開示によれば、容量要件に起因して、全ての天然に存在するハロゲン及び金属除去剤が同程度に作用するわけではない。適切な担体上の活性化ハロゲン及び金属除去剤は、精製反応器の容積又はサイズを最小化するために必要とされる可能性が高い。活性化された精製剤は、より好ましくは、分散された担体に含浸される。分散された担体は、精製剤の最大限の使用を可能にするのに十分な表面積を提供する。この開示によれば、ハロゲン保持能力は、経済的に実現可能であるために、ある特定の閾値よりも大きい必要がある。
【0053】
先に説明したように、精製工程の主な目的は、熱分解油中のハロゲンを許容可能なレベルまで減少させることである。しかしながら、精製反応器の適切な設計は、ハロゲン除去に加えて、熱分解油からの微量金属の除去をもたらすことができる。とりわけ、マイカ(SiO)、又はCaCO、又はFeなどの上に示した例を有する微量金属は、大部分が、細かく粉砕された無機物の形態で添加される。熱分解油中のそれらの存在も無機形式である。本開示によれば、熱分解油中に存在する金属の無機性は、水素化脱金属の必要性を排除する。これは、金属がほとんど、有機状態、例えば金属ポルフィリン構造で存在する石油由来油の脱金属とは対照的である。ハロゲン除去のために使用される、設計された床装填設計を有する同じ精製床は、やはり水素化処理を必要とせずに、熱分解油から微量無機金属を除去するために驚くほど良好に機能する。
【実施例
【0054】
熱分解油生成物の例を以下に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、この説明は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0057】
本発明の第1の実施形態は、20重量%よりも多いオレフィン、0.5~20重量ppmのハロゲン、及び0.5~15重量ppmの全微量元素含有量を含む熱分解油組成物である。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、様々なパラフィン化合物及びより少量の芳香族化合物を更に含んでいる、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、20~80重量%の当該オレフィンを含んでいる、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、精製プロセス又は石油化学プロセスにおいて、更なる処理をせずとも使用するのに好適である、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、精製プロセス又は石油化学プロセスとの組み合わせにおいて、更なる処理をせずとも使用するのに好適である、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、微量元素が、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、及び鉄から選択される、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、ハロゲンが、塩化物含有分子、フッ化物含有分子、及び臭化物含有分子を含む、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、36~56重量%のオレフィンを含んでいる、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、17~45重量%のパラフィンを含んでいる、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、14~20重量%の芳香族化合物を含んでいる、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、0.5~10重量ppmの塩化物を含んでいる、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、0.5~10重量ppmの当該全微量金属元素を含む、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、0.5~10重量%のポリ塩化ビニルを含む再生プラスチック組成物に由来する、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、再生プラスチック組成物が、0.2~2重量%のポリ塩化ビニルを含む、本段落の先行実施形態から本段落の第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【0058】
本発明の第2の実施形態は、再生プラスチック供給物ストリームから熱分解油組成物を作製するプロセスであって、再生プラスチック供給物ストリームを熱分解プロセスに送って、20重量%よりも多いオレフィン及び0.5~20ppmのハロゲン及び0.5~10ppmの全微量元素を含む当該熱分解油組成物を生成することを含む、プロセスである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、更なる処理をせずとも、精製所又は石油化学反応器において供給物として使用するのに好適である、本段落の先行実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解油組成物が、36~56重量%のオレフィン17~40重量%のパラフィン、及び14~20重量%の芳香族化合物を含む、本段落の先行実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、微量元素が、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、及び鉄から選択される、本段落の先行実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、ハロゲンが、塩化物含有分子、フッ化物含有分子、及び臭化物含有分子を含む、本段落の先行実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、再生プラスチック供給物ストリームが、0.2~10重量%のポリ塩化ビニルを含む、本段落の先行実施形態から本段落の第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20重量%よりも多いオレフィン及び0.5~20重量ppmのハロゲン及び0.5~15重量ppmの全微量元素含有量を含む、熱分解油組成物。
【請求項2】
精製プロセス若しくは石油化学プロセスにおいて、又は精製プロセスと石油化学プロセスとの組み合わせにおいて、更なる処理をせずとも使用するのに好適である、請求項1に記載の熱分解油組成物。
【請求項3】
再生プラスチック供給物ストリームから熱分解油組成物を作製するプロセスであって、前記再生プラスチック供給物ストリームを熱分解プロセスに送って、20重量%よりも多いオレフィン及び0.5~20ppmのハロゲン及び0.5~10ppmの全微量元素を含む前記熱分解油組成物を生成することを含む、プロセス。
【国際調査報告】