(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】正極活物質及び製造方法、正極極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20240711BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501213
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2022099516
(87)【国際公開番号】W WO2023240613
(87)【国際公開日】2023-12-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲蒋▼ 耀
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 欣欣
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼ 楚英
(72)【発明者】
【氏名】徐 波
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 斌
(72)【発明者】
【氏名】袁 天▲賜▼
(72)【発明者】
【氏名】王 志▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 尚▲棟▼
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA08
5H050EA11
5H050EA12
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA10
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本出願は、正極活物質、その製造方法、正極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を提供し、正極活物質は、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含むコアと、コアを被覆する、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7及び/又はMb(P2O7)cを含む第一の被覆層と、第一の被覆層を被覆する、結晶性酸化物M’dOeを含む第二の被覆層と、第二の被覆層を被覆する、炭素を含む第三の被覆層とを含む。本出願の正極活物質は、Li/Mnのアンチサイト欠陥の発生を減少させ、マンガンの溶出を減少させて格子変化率を低減させ、二次電池の容量を向上させ、二次電池のサイクル性能、高温保存性能と安全性能を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア-シェル構造を有する正極活物質であって、コアと、前記コアを被覆するシェルとを含み、
前記コアは、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含み、ここで、前記xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、前記zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、V、Ni、Co、及びMgから選択される一つ又は複数の元素であり、前記Rは、B、Si、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にSi、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、
前記シェルは、前記コアを被覆する第一の被覆層と、前記第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、前記第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、
前記第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7及び/又はM
b(P
2O
7)
cを含み、ここで、前記aは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、前記cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、前記結晶性ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7とM
b(P
2O
7)
cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、
前記第二の被覆層は、結晶性酸化物M’
dO
eを含み、ここで、前記dは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記eは、0よりも大きく且つ5以下であり、前記M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、W、La、及びCeから選択される一つ又は複数の元素であり、さらに選択的にMg、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Zr、及びWから選択される一つ又は複数の元素であり、
前記第三の被覆層は、炭素を含む、正極活物質。
【請求項2】
前記コアにおいて、yと1-yとの比は、1:10~1:1であり、選択的に1:4~1:1である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記コアにおいて、zと1-zとの比は、1:9~1:999であり、選択的に1:499~1:249である、請求項1又は2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記第三の被覆層における炭素は、SP2形態炭素とSP3形態炭素との混合物であり、選択的に、前記SP2形態炭素とSP3形態炭素とのモル比は、0.07~13の範囲内の任意の数値であり、さらに選択的に0.1~10の範囲内の任意の数値であり、さらに選択的に2.0~3.0の範囲内の任意の数値である、請求項1から3のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記第一の被覆層の被覆量は、前記コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に0よりも大きく且つ2重量%以下であり、且つ/又は
前記第二の被覆層の被覆量は、前記コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に2重量%~4重量%であり、且つ/又は
前記第三の被覆層の被覆量は、前記コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に0よりも大きく且つ2重量%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記第一の被覆層の厚さは、2~10nmであり、且つ/又は
前記第二の被覆層の厚さは、3~15nmであり、且つ/又は
前記第三の被覆層の厚さは、5~25nmである、請求項1から5のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.293~0.470nmであり、結晶方向(111)のなす角範囲は、18.00°~32.00°であり、
選択的に、前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.297~0.462nmであり、且つ/又は、
選択的に、前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の結晶方向(111)のなす角範囲は、19.211°~30.846°である、請求項1から6のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項8】
正極活物質の重量を基準として、
マンガン元素の含有量は、10重量%~35重量%の範囲内にあり、選択的に15重量%~30重量%の範囲内にあり、さらに選択的に17重量%~20重量%の範囲内にあり、
リン元素の含有量は、12重量%~25重量%の範囲内にあり、選択的に15重量%~20重量%の範囲内にあり、
選択的に、マンガン元素とリン元素との重量比は、0.90~1.25の範囲内にあり、さらに選択的に0.95~1.20の範囲内にある、請求項1から7のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記正極活物質がリチウムを完全に放出する前後の格子変化率は、50%以下であり、選択的に4%以下であり、さらに選択的に3.8%以下であり、さらに選択的に2.0%~3.8%である、請求項1から8のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記正極活物質のLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度は、5.3%以下であり、選択的に4%以下であり、さらに選択的に2.2%以下であり、さらに選択的に1.5%~2.2%である、請求項1から9のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記正極活物質の3Tでの圧密密度は、1.95g/cm
3以上であり、選択的に2.2g/cm
3以上であり、さらに選択的に2.2g/cm
3以上且つ2.8g/cm
3以下であり、よりさらに選択的に2.2g/cm
3以上且つ2.65g/cm
3以下である、請求項1から10のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記正極活物質の表面酸素の原子価状態は、-1.89以下であり、選択的に-1.90~-1.98である、請求項1から11のいずれか1項に記載の正極活物質。
【請求項13】
正極活物質の製造方法であって、
コア材料を提供するステップであって、前記コア材料は、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含み、ここで、前記xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、前記zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、V、Ni、Co、及びMgから選択される一つ又は複数の元素であり、前記Rは、B、Si、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にSi、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であるステップと、
ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7及び/又はM
b(P
2O
7)
cを含む第一の混合物を提供し、前記コア材料と前記第一の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、第一の被覆層で被覆された材料を得る第一の被覆ステップであって、前記aは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、前記cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、前記ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7とM
b(P
2O
7)
cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、及びAlから選択される一つ又は複数の元素である第一の被覆ステップと、
酸化物M’
dO
eを含む第二の混合物を提供し、前記第一の被覆層で被覆された材料と前記第二の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、二層被覆層で被覆された材料を得る第二の被覆ステップであって、前記dは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記eは、0よりも大きく且つ5以下であり、前記M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbのうちの一つ又は複数の元素であり、選択的にLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、W、La、及びCeから選択される一つ又は複数の元素であり、さらに選択的にMg、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Zr、及びWから選択される一つ又は複数の元素である第二の被覆ステップと、
炭素源を含む第三の混合物を提供し、前記二層被覆層で被覆された材料と前記第三の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、正極活物質を得る第三の被覆ステップとを含み、
前記正極活物質は、コア-シェル構造を有し、コアと、前記コアを被覆するシェルとを含み、前記コアは、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含み、前記シェルは、前記コアを被覆する第一の被覆層と、前記第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、前記第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、前記第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7及び/又はM
b(P
2O
7)
cを含み、前記第二の被覆層は、結晶性酸化物M’
dO
eを含み、前記第三の被覆層は、炭素を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記コア材料を提供するステップは、
マンガン源と、元素Aの源と酸とを混合し、混合物を得るステップ(1)と、
前記ステップ(1)で得られた混合物を、リチウム源、リン源、元素Rの源及び選択的な溶媒と混合し、不活性ガスの保護で焼結し、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含むコア材料を得るステップ(2)とを含み、
選択的に、前記ステップ(1)は、20℃~120℃、さらに選択的に40℃~120℃で行われ、且つ/又は、前記ステップ(1)において、400rpm~700rpmの回転速度で1時間~9時間攪拌して混合し、
選択的に、前記ステップ(2)において、20℃~120℃、選択的に40℃~120℃の温度で1時間~10時間混合する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第一の被覆ステップにおいて、元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒とを混合することで前記第一の混合物を得、且つ/又は、
前記第二の被覆ステップにおいて、元素M’の源と溶媒とを混合することで第二の混合物を得、且つ/又は、
前記第三の被覆ステップにおいて、炭素源と溶媒とを混合することで第三の混合物を得、
選択的に、前記第一の被覆ステップにおいて、前記元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒を室温で1時間~5時間混合し、さらに50℃~120℃に昇温し、この温度を維持して2時間~10時間混合し、上記混合は、いずれもpHが3.5~6.5である条件で行われ、
選択的に、前記第二の被覆ステップにおいて、前記元素M’の源と溶媒とを室温で1時間~10時間混合し、さらに60℃~150℃に昇温し、この温度を維持して2時間~10時間混合する、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記元素Aの源は、元素Aの単体、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数であり、且つ/又は、
前記元素Rの源は、元素Rの無機酸、有機酸、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数である、請求項13から15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第一の被覆ステップにおいて、前記焼結は、650℃~800℃で2時間~8時間行われ、且つ/又は、
前記第二の被覆ステップにおいて、前記焼結は、400℃~750℃で6時間~10時間行われ、且つ/又は、
前記第三の被覆ステップにおいて、前記焼結は、600℃~850℃で6時間~10時間行われる、請求項13から16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
正極極板であって、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は、請求項1から12のいずれか1項に記載の正極活物質又は請求項13から17のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される正極活物質を含み、選択的に、前記正極活物質の前記正極膜層における含有量は、前記正極膜層の総重量を基準として、90重量%~99.5重量%であり、さらに選択的に95重量%~99.5重量%である、正極極板。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか1項に記載の正極活物質又は請求項13から17のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される正極活物質又は請求項18に記載の正極極板を含む、二次電池。
【請求項20】
請求項19に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項21】
請求項20に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項22】
請求項19に記載の二次電池、請求項20に記載の電池モジュール、及び請求項21に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二次電池技術分野に関し、特に正極活物質、正極活物質の製造方法、正極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、二次電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く応用されている。二次電池は、飛躍的な発展を遂げているため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などもより高く要求されている。二次電池の従来の正極活物質として、リン酸マンガンリチウムの充放電中において、Li/Mnのアンチサイト欠陥が発生しやすく、マンガンの溶出が比較的深刻であり、二次電池のグラム容量に影響を与え、二次電池の安全性能とサイクル性能の低下を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のリン酸マンガンリチウム正極活物質が充放電中にLi/Mnのアンチサイト欠陥が発生しやすく、マンガンの溶出が比較的深刻であるという問題を解決することによって、二次電池の容量が低く、安全性能とサイクル性能が悪いなどの問題を解決するための正極活物質、正極活物質の製造方法、正極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本出願の第一の態様は、コア-シェル構造を有する正極活物質を提供し、この正極活物質は、コアと、コアを被覆するシェルとを含み、
コアは、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含み、ここで、xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、V、Ni、CoとMgから選択される一つ又は複数の元素であり、Rは、B、Si、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にSi、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、
シェルは、コアを被覆する第一の被覆層と、第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、ここで、
第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7及び/又はMb(P2O7)cを含み、ここで、aは、0よりも大きく且つ2以下であり、bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7とMb(P2O7)cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、
第二の被覆層は、結晶性酸化物M’dOeを含み、ここで、dは、0よりも大きく且つ2以下であり、eは、0よりも大きく且つ5以下であり、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、W、La、及びCeから選択される一つ又は複数の元素であり、さらに選択的にMg、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Zr、及びWから選択される一つ又は複数の元素であり、
第三の被覆層は、炭素を含む。
【0005】
本出願の発明者は、実際作業において、リン酸マンガンリチウム正極活物質が深い充放電中において、Li/Mnのアンチサイト欠陥が発生しやすく、マンガンの溶出が比較的深刻であることを発見した。溶出されたマンガンは、負極に遷移した後、金属マンガンに還元される。これらの発生した金属マンガンは、「触媒」に相当し、負極表面のSEI膜(solid electrolyte interphase、固体電解質界面膜)の分解を触媒することができ、発生した副生成物の一部は、ガスであり、電池の膨張を引き起こしやすく、二次電池の安全性能に影響を与え、別の部分は、負極表面に堆積し、リチウムイオンが負極に出入りするチャンネルを妨げ、二次電池のインピーダンスを増加させ、電池の動力学的性能とサイクル性能に影響を与える。なお、損失したSEI膜を補うために、電解液と電池内部の活性リチウムが絶えず消費され、二次電池の容量維持率に不可逆的な影響を与える。
【0006】
それによって、本出願人は、リン酸マンガンリチウムのマンガンサイトに元素Aをドーピングし且つリンサイトにR元素をドーピングしてドーピングされたリン酸マンガンリチウムコアを得且つコア表面に順に三層被覆を行うことにより、Li/Mnのアンチサイト欠陥の発生を大幅に減少させ、マンガンの溶出を低減させ、格子変化率を明らかに低減させ、圧密密度を増加させることができ、二次電池に用いられることで二次電池の容量を向上させ、二次電池のサイクル性能、高温保存性能と安全性能を改善できる新型のコア-シェル構造を有する正極活物質を提供することを意外に発見した。ここで、第二の被覆層における結晶性酸化物は、高い構造安定性を備え、表面活性が低いため、第二の被覆層を被覆することによって界面副反応を効果的に減少させることができ、それによって電池の高温サイクルと高温保存などの性能を改善する。
【0007】
本明細書では、結晶性とは、結晶度が50%以上であり、即ち50%~100%であることを意味する。結晶度が50%未満のものをガラス状態と呼ぶ。
【0008】
本出願の結晶性ピロリン酸塩の結晶度は、50%~100%である。一定の結晶度を備えるピロリン酸塩は、ピロリン酸塩被覆層がマンガンの溶出を阻害する能力、界面副反応を減少させる機能を十分に発揮するのに有利であるだけでなく、ピロリン酸塩被覆層と酸化物被覆層をより良く格子整合させることができ、それによって被覆層と被覆層との間の緊密な結合を実現することができる。
【0009】
特に断りのない限り、化学式Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4において、Aが二つ以上の元素である場合、上記のy数値範囲の限定は、Aとなる元素の種類毎の化学量論数の限定だけでなく、Aとなるそれぞれの元素の化学量論数の和の限定でもある。例えば、Aが二つ以上の元素A1、A2……Anである場合、A1、A2……Anのそれぞれの化学量論数y1、y2……ynは、いずれも本出願がyを限定する数値範囲内に入る必要があり、且つy1、y2……ynの和も、この数値範囲内に入る必要がある。類似的に、Rが二つ以上の元素である場合、本出願におけるRの化学量論数の数値範囲の限定も、上記意味を有する。
【0010】
特に断りのない限り、化学式Mb(P2O7)cにおいて、Mが二つ以上の元素である場合、上記のb数値範囲の限定は、Mとなる元素の種類毎の化学量論数の限定だけでなく、Mとなるそれぞれの元素の化学量論数の和の限定でもある。例えば、Mが二つ以上の元素M1、M2……Mnである場合、M1、M2……Mnのそれぞれの化学量論数b1、b2……bnは、いずれも本出願がbを限定する数値範囲内に入る必要があり、且つb1、b2……bnの和も、この数値範囲内に入る必要がある。類似的に、化学式におけるM’dOeにおけるM’が二つ以上の元素である場合、本出願におけるM’の化学量論数dの数値範囲の限定も、上記意味を有する。
【0011】
第一の態様の任意の実施の形態では、第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.293~0.470nmであり、結晶方向(111)のなす角範囲は、18.00°~32.00°であり、
選択的に、前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.297~0.462nmであり、且つ/又は、
選択的に、前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の結晶方向(111)のなす角範囲は、19.211°~30.846°である。
【0012】
本出願の正極活物質における第一の被覆層は、結晶性物質を使用し、それらの格子面間隔となす角範囲が上記範囲内にある。それによって、被覆層における不純物相を効果的に回避することができ、それによって材料のグラム容量を高め、二次電池のサイクル性能とレート性能を高める。
【0013】
第一の態様の任意の実施の形態では、コアにおいて、yと1-yとの比は、1:10~1:1であり、選択的に1:4~1:1である。それによって、二次電池のサイクル性能とレート性能をさらに高める。
【0014】
第一の態様の任意の実施の形態では、コアにおいて、zと1-zとの比は、1:9~1:999であり、選択的に1:499~1:249である。それによって、二次電池のサイクル性能とレート性能をさらに高める。
【0015】
第一の態様の任意の実施の形態では、第三の被覆層における炭素は、SP2形態炭素とSP3形態炭素との混合物であり、選択的に、SP2形態炭素とSP3形態炭素とのモル比は、0.07~13の範囲内の任意の数値であり、さらに選択的に0.1~10の範囲内の任意の数値であり、さらに選択的に2.0~3.0の範囲内の任意の数値である。
【0016】
本出願は、SP2形態炭素とSP3形態炭素とのモル比を上記範囲内に制限することにより、二次電池の総合性能を高めた。
【0017】
第一の態様の任意の実施の形態では、第一の被覆層の被覆量は、コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に0よりも大きく且つ2重量%以下であり、及び/又は
第二の被覆層の被覆量は、コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に2重量%-4重量%であり、及び/又は
第三の被覆層の被覆量は、コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に0よりも大きく且つ2重量%以下である。
【0018】
本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質において、三層被覆層の被覆量は、上記範囲内にあることが好ましく、それによってコアを十分に被覆すると同時に、正極活物質のグラム容量を犠牲にすることなく、二次電池の動力学的性能と安全性能をさらに改善することができる。
【0019】
第一の態様の任意の実施の形態では、第一の被覆層の厚さは、2~10nmである。本出願では、第一の被覆層の厚さ範囲が2~10nmである場合、遷移金属イオンの溶出と遷移をさらに減少させ、二次電池の動力学的性能を高めることができる。
【0020】
第一の態様の任意の実施の形態では、第二の被覆層の厚さは、3~15nmである。第二の被覆層の厚さが3~15nmの範囲内にある場合、第二の被覆層の表面構造が安定しており、電解液との副反応が小さいため、界面副反応を効果的に軽減することができ、それによって二次電池の高温性能を高める。
【0021】
第一の態様の任意の実施の形態では、第三の被覆層の厚さは、5~25nmである。第三の被覆層の厚さ範囲が5~25nmである場合、材料の電子伝導性能を高め且つ正極活物質を用いて製造した電池極板の圧密密度性能を改善することができる。
【0022】
第一の態様の任意の実施の形態では、正極活物質の重量を基準として、
マンガン元素の含有量は、10重量%~35重量%の範囲内にあり、選択的に15重量%~30重量%の範囲内にあり、さらに選択的に17重量%~20重量%の範囲内にあり、
リン元素の含有量は、12重量%~25重量%の範囲内にあり、選択的に15重量%~20重量%の範囲内にあり、
選択的に、マンガン元素とリン元素との重量比は、0.90~1.25の範囲内にあり、さらに選択的に0.95~1.20の範囲内にある。
【0023】
本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質において、マンガン元素の含有量が上記範囲内にある場合、正極活物質の構造安定性と密度を効果的に向上させることができ、それによって二次電池のサイクル、保存と圧密密度などの性能を高め、且つ一定の電圧プラトーの高さを維持することができ、それによって二次電池のエネルギー密度を高める。
【0024】
本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質において、リン元素の含有量が上記範囲内にある場合、正極活物質の電子伝導率を効果的に向上させることができるとともに、正極活物質の構造安定性を向上させることができる。
【0025】
本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質において、マンガン元素とリン元素との重量比が上記範囲内にある場合、遷移金属の溶出を減少させることができ、それによって正極活物質の安定性と二次電池のサイクル及び保存性能を向上させるとともに、一定の放電電圧プラトーの高さを維持することができ、それによって二次電池のエネルギー密度を向上させる。
【0026】
第一の態様の任意の実施の形態では、正極活物質がリチウムを完全に放出する前後の格子変化率は、50%以下であり、選択的に4%以下であり、さらに選択的に3.8%以下であり、さらに選択的に2.0%~3.8%である。
【0027】
本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質は、比較的低いリチウムを放出する前後の格子変化率を実現することができる。そのため、正極活物質を使用することで二次電池のグラム容量とレート性能を改善することができる。
【0028】
第一の態様の任意の実施の形態では、正極活物質のLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度は、5.3%以下であり、選択的に4%以下であり、さらに選択的に2.2%以下であり、さらに選択的に1.5%-2.2%である。Li/Mnのアンチサイト欠陥濃度が上記範囲内にあることで、Li+の伝送を高めるとともに、正極活物質のグラム容量と二次電池のレート性能を高めることができる。
【0029】
第一の態様の任意の実施の形態では、正極活物質の3Tでの圧密密度は、1.95g/cm3以上であり、選択的に2.2g/cm3以上であり、さらに選択的に2.2g/cm3以上且つ2.8g/cm3以下であり、よりさらに選択的に2.2g/cm3以上且つ2.65g/cm3以下である。それによって、圧密密度を向上させ、単位体積当たりの正極活物質の重量が増加し、二次電池の体積エネルギー密度を向上させるのに有利である。
【0030】
第一の態様の任意の実施の形態では、正極活物質の表面酸素の原子価状態は、-1.89以下であり、選択的に-1.90~-1.98である。それによって、上記のように正極活物質の表面酸素の原子価状態を上記範囲内に限定することで、正極材料と電解液との界面副反応を軽減することができ、それによって電池コアのサイクル、高温保存・ガス発生などの性能を改善する。
【0031】
本出願の第二の態様は、正極活物質の製造方法を提供し、この製造方法は、
コア材料を提供するステップであって、コア材料は、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含み、ここで、xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、V、Ni、Co、及びMgから選択される一つ又は複数の元素であり、Rは、B、Si、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にSi、NとSから選択される一つ又は複数の元素であるステップと、
ピロリン酸塩LiaMP2O7及び/又はMb(P2O7)cを含む第一の混合物を提供し、コア材料と第一の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、第一の被覆層で被覆された材料を得る第一の被覆ステップであって、aは、0よりも大きく且つ2以下であり、bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、ピロリン酸塩LiaMP2O7とMb(P2O7)cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、及びAlから選択される一つ又は複数の元素である第一の被覆ステップと、
酸化物M’dOeを含む第二の混合物を提供し、第一の被覆層で被覆された材料と第二の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、二層被覆層で被覆された材料を得る第二の被覆ステップであって、dは、0よりも大きく且つ2以下であり、eは、0よりも大きく且つ5以下であり、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、W、La、及びCeから選択される一つ又は複数の元素であり、さらに選択的にMg、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Zr、及びWから選択される一つ又は複数の元素である第二の被覆ステップと、
炭素源を含む第三の混合物を提供し、二層被覆層で被覆された材料と第三の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、正極活物質を得る第三の被覆ステップとを含み、
ここで、正極活物質は、コア-シェル構造を有し、この正極活物質は、コアと、コアを被覆するシェルとを含み、コアは、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含み、シェルは、コアを被覆する第一の被覆層と、第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7及び/又はMb(P2O7)cを含み、第二の被覆層は、結晶性酸化物M’dOeを含み、第三の被覆層は、炭素を含む。
【0032】
それによって、本出願は、リン酸マンガンリチウムのマンガンサイトに元素Aをドーピングし且つリンサイトにR元素をドーピングしてドーピングされたリン酸マンガンリチウムコアを得且つコア表面に順に三層被覆を行うことにより、Li/Mnのアンチサイト欠陥の発生を大幅に減少させ、マンガンの溶出を低減させ、格子変化率を明らかに低減させ、圧密密度を増加させることができ、二次電池に用いられることで二次電池の容量を向上させ、二次電池のサイクル性能、高温保存性能と安全性能を改善できる新型のコア-シェル構造を有する正極活物質を提供する。
【0033】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、コア材料を提供するステップは、
マンガン源と、元素Aの源と酸とを混合し、混合物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混合物を、リチウム源、リン源、元素Rの源及び選択的な溶媒と混合し、不活性ガスの保護で焼結し、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含むコア材料を得るステップ(2)とを含む。
【0034】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、ステップ(1)は、20℃~120℃、選択的に40℃~120℃で行われ、及び/又は、ステップ(1)において、400~700rpmの回転速度で1~9h攪拌して混合する。
【0035】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、ステップ(2)において、20~120℃、選択的に40~120℃の温度で1~10h混合する。
【0036】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、
第一の被覆ステップにおいて、元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒とを混合することで第一の混合物を得、且つ/又は、
第二の被覆ステップにおいて、元素M’の源と溶媒とを混合することで第二の混合物を得、且つ/又は、
第三の被覆ステップにおいて、炭素源と溶媒とを混合することで第三の混合物を得る。
【0037】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、第一の被覆ステップにおいて、元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒を室温で1~5h混合し、さらに50℃~120℃に昇温し、この温度を維持して2~10h混合し、上記混合は、いずれもpHが3.5~6.5である条件で行われる。
【0038】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、第二の被覆ステップにおいて、元素M’の源と溶媒とを室温で1~10h混合し、さらに60℃~150℃に昇温し、この温度を維持して2~10h混合する。
【0039】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、元素Aの源は、元素Aの単体、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数であり、且つ/又は、
元素Rの源は、元素Rの無機酸、有機酸、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数である。
【0040】
本出願の第二の態様の任意の実施の形態では、第一の被覆ステップにおいて、焼結は、650~800℃で2~8時間行われ、及び/又は、第二の被覆ステップにおいて、焼結は、400~750℃で6~10時間行われ、及び/又は、第三の被覆ステップにおいて、焼結は、600~850℃で6~10時間行われる。
【0041】
本出願の第三の態様は、正極極板を提供し、この正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、正極膜層は、本出願の第一の態様の正極活物質又は本出願の第二の態様の製造方法によって製造される正極活物質を含み、選択的に、正極活物質の正極膜層における含有量は、正極膜層の総重量を基準として、90~99.5重量%であり、さらに選択的に95~99.5重量%である。
【0042】
本出願の第四の態様は、二次電池を提供し、この二次電池は、本出願の第一の態様の正極活物質又は本出願の第二の態様の製造方法によって製造される正極活物質又は本出願の第三の態様の正極極板を含む。
【0043】
本出願の第五の態様は、電池モジュールを提供し、この電池モジュールは、本出願の第四の態様の二次電池を含む。
【0044】
本出願の第六の態様は、電池パックを提供し、この電池パックは、本出願の第五の態様の電池モジュールを含む。
【0045】
本出願の第七の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、本出願の第四の態様の二次電池、本出願の第五の態様の電池モジュールと本出願の第六の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本出願の一実施の形態の三層被覆構造の正極活物質の概略図である。
【
図2】本出願の一実施の形態の二次電池の概略図である。
【
図3】
図2に示す本出願の一実施の形態の二次電池の分解図である。
【
図4】本出願の一実施の形態の電池モジュールの概略図である。
【
図5】本出願の一実施の形態の電池パックの概略図である。
【
図6】
図5に示す本出願の一実施の形態の電池パックの分解図である。
【
図7】本出願の一実施の形態の二次電池を電源として用いる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照しながら、本出願の正極活物質、正極活物質の製造方法、正極極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0048】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定した。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされている場合、60~110と80~120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a~b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書においてすでに「0~5」の間のすべての実数をリストアップしたことを表し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0049】
本出願では「ある値以下」、「ある値以上」の範囲は、ある値を上限又は下限として限定された範囲を表す。
【0050】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施の形態及び選択的な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0051】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0052】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、方法がステップ(a)と(b)を含むことは、方法が順番に行われるステップ(a)と(b)を含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)を含んでもよいことを表す。例えば、言及された方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)がいずれの順序で方法に加えてもよいことを表し、例えば方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0053】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0054】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「又は」は包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0055】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「被覆層」とは、コア上に被覆される物質層であり、物質層は、コアを完全又は部分的に被覆してもよく、「被覆層」は、ただ記述を容易にするために使用され、本発明を制限することを意図していない。
【0056】
特に説明しない場合、本出願では、用語である「被覆層の厚さ」とは、被覆層のコアの半径方向における厚さであり、「被覆層」の用語定義は、上記と同様である。
【0057】
[二次電池]
二次電池とは、充電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池放電後に充電の方式で活物質を活性化させて使用し続けることができる電池である。
【0058】
一般的には、二次電池は、正極極板と、負極極板と、セパレータと、電解液とを含む。電池の充放電中に、活性イオン(例えばリチウムイオン)は、正極極板と負極極板との間を往復して吸蔵と放出する。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすとともに、活性イオンを通過させることができる。電解液は、正極極板と負極極板との間で、主に活性イオンを伝導する役割を果たす。
【0059】
[正極活物質]
本出願は、コア-シェル構造を有する正極活物質を提供し、この正極活物質は、コアと、コアを被覆するシェルとを含み、
コアは、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含み、ここで、xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、V、Ni、Co、及びMgから選択される一つ又は複数の元素であり、Rは、B、Si、N、Sから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にSi、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、
シェルは、コアを被覆する第一の被覆層と、第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、ここで、
第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7及び/又はMb(P2O7)cを含み、ここで、aは、0よりも大きく且つ2以下であり、bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7とMb(P2O7)cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、
第二の被覆層は、結晶性酸化物M’dOeを含み、ここで、dは、0よりも大きく且つ2以下であり、eは、0よりも大きく且つ5以下であり、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、W、La、及びCeから選択される一つ又は複数の元素であり、さらに選択的にMg、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Zr、及びWから選択される一つ又は複数の元素であり、
第三の被覆層は、炭素を含む。
【0060】
本出願の正極活物質は、二次電池のグラム容量、サイクル性能と安全性能を向上させることができる。メカニズムがまだ不明であるが、本出願の正極活物質がコア-シェル構造であると推測され、ここで、リン酸マンガンリチウムコアのマンガンサイトとリンサイトに元素Aと元素Rをそれぞれドーピングすることにより、マンガンの溶出を効果的に減少させ、さらに負極に遷移するマンガンイオンを減少させ、SEI膜の分解により消費される電解液を減少させ、二次電池のサイクル性能と安全性能を向上させることができるだけでなく、Mn-O結合の調整を促進し、リチウムイオン遷移障壁を低減させ、リチウムイオンの遷移を促進し、二次電池のレート性能を向上させることもでき、結晶性ピロリン酸塩を含む第一の被覆層をコアに被覆することにより、マンガンの遷移抵抗をさらに増加させ、その溶出を減少させ、且つ表面の不純物リチウム含有量を減少させ、コアと電解液との接触を減少させることができ、それによって界面副反応を減少させ、ガス発生を減少させ、二次電池の高温保存性能、サイクル性能と安全性能を向上させ、安定性の高い結晶性酸化物被覆層をさらに被覆することにより、正極活物質の表面の界面副反応を効果的に低減させ、二次電池の高温サイクル及び保存性能をさらに改善することができ、さらに炭素層を第三の被覆層として被覆することにより、二次電池の安全性能と動力学的性能をさらに高めることができる。なお、コアにおいて、リン酸マンガンリチウムのマンガンサイトにドーピングされる元素Aは、この材料がリチウムを放出する過程におけるリン酸マンガンリチウムの格子変化率を減少させ、正極材料の構造安定性を向上させ、マンガンの溶出を大幅に減少させて粒子表面の酸素活性を低減させるのにも寄与し、リンサイトにドーピングされる元素Rは、Mn-O結合長の変化のし易さを変えるのにも寄与し、それによって電子伝導性を改善してリチウムイオン遷移障壁を低減させ、リチウムイオンの遷移を促進し、二次電池のレート性能を向上させる。
【0061】
特に断りのない限り、化学式Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4において、Aが二つ以上の元素である場合、上記のy数値範囲の限定は、Aとなる元素の種類毎の化学量論数の限定だけでなく、Aとなるそれぞれの元素の化学量論数の和の限定でもある。例えば、Aが二つ以上の元素A1、A2……Anである場合、A1、A2……Anのそれぞれの化学量論数y1、y2……ynは、いずれも本出願がyを限定する数値範囲内に入る必要があり、且つy1、y2……ynの和も、この数値範囲内に入る必要がある。類似的に、Rが二つ以上の元素である場合、本出願におけるRの化学量論数の数値範囲の限定も、上記意味を有する。
【0062】
いくつかの実施の形態では、AがZn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ、二つ、三つ又は四つの元素である場合、Ayは、Qn1Dn2En3Kn4であり、ここで、n1+n2+n3+n4=yであり、且つn1、n2、n3、n4は、いずれも正数であり且つ同時にゼロではなく、Q、D、E、Kは、それぞれ独立してZn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つであり、選択的に、Q、D、E、Kのうちの少なくとも一つは、Feである。選択的に、n1、n2、n3、n4のうちの一つは、ゼロであり、残りは、ゼロではなく、さらに選択的に、n1、n2、n3、n4のうちの二つは、ゼロであり、残りは、ゼロではなく、さらに選択的に、n1、n2、n3、n4のうちの三つは、ゼロであり、残りは、ゼロではない。コアLi1+xMn1-yAyP1-zRzO4において、マンガンサイトに一つ、二つ、三つ又は四つの上記A元素をドーピングすることは、有利であり、選択的に、一つ、二つ又は三つの上記A元素をドーピングし、なお、リンサイトに一つ又は二つのR元素をドーピングすることは、有利であり、このようにドーピング元素を均一に分布させるのに有利である。
【0063】
いくつかの実施の形態では、x、y、及びzの値は、コア全体を電気的中性に維持するという条件を満たす。
【0064】
コアLi1+xMn1-yAyP1-zRzO4において、xの大きさは、AとRの原子価状態の大きさ及びyとzの大きさの影響を受けて、系全体が電気的中性を呈することを保証する。xの値が小さすぎると、コア系全体のリチウム含有量を低減させ、材料のグラム容量の発揮に影響を与える。y値は、すべてのドーピング元素の総量を制限し、yが小さすぎると、即ちドーピング量が少なすぎると、ドーピング元素は、機能せず、yが0.5を超えると、系におけるMnの含有量が少なくなり、材料の電圧プラトーに影響を与える。R元素は、Pの位置にドーピングされ、P-O四面体が比較的安定であるが、z値が大きすぎると、材料の安定性に影響を与えるため、z値を0.001~0.100に限定する。
【0065】
また、コア系全体が電気的中性を維持することは、正極活物質における欠陥とヘテロ相をできる限り少なくすることを保証することができる。正極活物質に過剰な遷移金属(例えばマンガン)が存在する場合、この材料系自体の構造が比較的安定であり、過剰な遷移金属は、単体の形式で析出されるか、又は格子内部にヘテロ相を形成する可能性が高く、電気的中性を維持することにより、このようなヘテロ相をできる限り少なくすることができる。また、系の電気的中性を保証することは、一部の場合に材料にリチウム空孔を発生させることによって、材料の動力学的性能をより良好にすることもできる。
【0066】
プロセス制御(例えば、様々な源の材料を十分に混合し、粉砕すること)により、各元素が格子において凝集することなく均一に分布することを保証することができる。A元素とR元素をドーピングした後のリン酸マンガンリチウムのXRD図における主な特徴ピーク位置が、ドーピングしていないLiMnPO4と一致していることは、ドーピング過程において不純物相が導入されていないことを示すため、コア性能の改善は、ヘテロ相によるものではなく、主に元素ドーピングによるものである。本出願の発明者は、正極活物質を製造した後、集束イオンビーム(FIBと略称する)によりすでに製造された正極活物質粒子の中間領域を切り取り、透過電子顕微鏡(TEMと略称する)及びX線分光分析(EDSと略称する)により試験を行ったところ、各元素が凝集することなく均一に分布することを発見した。
【0067】
いくつかの実施の形態では、a、bとcの値は、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7又はMb(P2O7)cを電気的中性に維持するという条件を満たす。
【0068】
いくつかの実施の形態では、dとeの値は、結晶性M’dOeを電気的中性に維持するという条件を満たす。
【0069】
いくつかの実施の形態では、結晶性とは、結晶度が50%以上であり、即ち50%~100%であることを意味する。結晶度が50%未満のものをガラス状態と呼ぶ。
【0070】
いくつかの実施の形態では、本出願の結晶性ピロリン酸塩の結晶度は、50%~100%である。一定の結晶度を備えるピロリン酸塩は、ピロリン酸塩被覆層がマンガンの溶出を阻害する能力、界面副反応を減少させる機能を十分に発揮するのに有利であるだけでなく、ピロリン酸塩被覆層と酸化物被覆層をより良く格子整合させることができ、それによっては、被覆層のより緊密な結合を実現することができる。
【0071】
いくつかの実施の形態では、正極活物質の第一の被覆層物質である結晶性ピロリン酸塩の結晶度は、当分野における一般的な技術手段によって試験され、例えば密度法、赤外分光法、示差走査熱量測定法と核磁気共鳴吸収法によって試験されてもよく、例えば、X線回折法によって試験されてもよい。
【0072】
具体的なX線回折法による正極活物質の第一の被覆層結晶性ピロリン酸塩の結晶度の試験方法は、以下のステップを含んでもよい。
【0073】
一定量の正極活物質粉末を取り、X線によって総散乱強度を測定し、それは、空間全体の物質の散乱強度の和であり、サンプルの順序状態とは関係がなく、一次放射線の強度、正極活物質粉末の化学構造、回折に関与する総電子数、即ち質量の多少と関係があるだけであり、そして回折図から結晶性散乱と非結晶性散乱を分離し、結晶度は、散乱の総強度に対する結晶部分散乱の比である。
【0074】
説明すべきこととして、いくつかの実施の形態では、被覆層におけるピロリン酸塩の結晶度は、例えば焼結プロセスのプロセス条件、例えば焼結温度、焼結時間などを調整することにより、調節されることができる。
【0075】
いくつかの実施の形態では、金属イオンがピロリン酸塩で遷移しにくいため、ピロリン酸塩は、第一の被覆層として、ドーピング金属イオンと電解液とを効果的に隔離することができる。結晶性ピロリン酸塩の構造が安定しているため、結晶性ピロリン酸塩の被覆は、遷移金属の溶出を効果的に抑制し、サイクル性能を改善することができる。
【0076】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆層とコアとの間の結合は、ヘテロ結合に類似しており、その結合の強固さは、格子整合程度の制限を受ける。格子不整合が5%以下である場合、格子整合が比較的良く、両方が緊密に結合しやすい。緊密な結合は、後続のサイクル中に、被覆層が脱落しないことを保証することができ、材料の長期安定性を保証するのに有利である。第一の被覆層とコアとの間の結合度の測定は、主にコアと被覆各格子定数との不整合度を計算することによって行われる。本出願では、コアにAとR元素をドーピングしたことは、元素をドーピングしない場合に比べて、コアと第一の被覆層との整合度が改善され、コアとピロリン酸塩被覆層との間をより緊密に結合することができる。
【0077】
結晶性酸化物を第二の被覆層として選択するのは、まず、第一層の被覆物である結晶性ピロリン酸塩との格子整合度が比較的高い(不整合度がわずか3%)ためであり、次に、第二の被覆層である結晶性酸化物自体の安定性がピロリン酸塩よりも優れており、ピロリン酸塩を被覆することは、材料の安定性を向上させるのに有利である。第二の被覆層である結晶性酸化物の構造が非常に安定しているため、結晶性酸化物を用いて被覆することは、正極活物質の表面の界面副反応を効果的に低減させることができ、それによって二次電池の高温サイクル及び保存性能を改善する。第二の被覆層と第一の被覆層との間の格子整合方式などは、上記第一の被覆層とコアとの間の結合状況と似ており、格子不整合が5%以下である場合、格子整合が比較的良く、両方が緊密に結合しやすい。
【0078】
炭素を第三層として被覆する主な原因は、炭素層の電子伝導性が比較的良いことである。二次電池に応用されると電気化学反応が起こり、電子の関与が必要となるため、粒子と粒子との間の電子伝送、及び粒子における異なる位置の電子伝送を増加させるために、導電性能に優れた炭素を用いて被覆することができる。炭素被覆は、正極活物質の導電性能と脱溶媒能力を効果的に改善することができる。
【0079】
図1は、理想的な三層被覆構造の正極活物質の概略図である。図に示すように、最内側の円は、コアを概略的に表し、内側から外側に向かって順に第一の被覆層、第二の被覆層、第三の被覆層である。この図は、各層が完全に被覆されている理想的な状態を表し、実際には、各被覆層は、完全に被覆されてもよく、部分的に被覆されてもよい。
【0080】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.293~0.470nmであり、結晶方向(111)のなす角範囲は、18.00°~32.00°であり、
選択的に、前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.297~0.462nmであり、及び/又は、
選択的に、前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の結晶方向(111)のなす角範囲は、19.211°~30.846°である。
【0081】
第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩に対して、当分野における一般的な技術手段により特徴付けることができ、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により特徴付けることもできる。TEMでは、格子面間隔を試験することによってコアと被覆層とを区別することができる。
【0082】
第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔となす角の具体的な試験方法は、以下のステップを含んでもよい。
【0083】
一定量の被覆された正極活物質サンプル粉末を試験管に取り、試験管に溶媒、例えばアルコールを注入し、十分に攪拌して分散させ、きれいな使い捨てプラスチックストローで適量の上記溶液を採取して300メッシュの銅網に滴下し、この時、一部の粉末は、銅網に残り、銅網をサンプルとともにTEMサンプルキャビティに移して試験を行い、TEM試験の原画を得、原画を保存する。
【0084】
上記TEM試験で得られた原画を回折計ソフトウェアで開き、フーリエ変換して回折パータンを得、回折パータンにおける回折スポットから中心位置までの距離を測定すると、格子面間隔が得られ、なす角は、ブラッグ方程式により算出される。
【0085】
上記格子面間隔となす角範囲内にある結晶性ピロリン酸塩は、リチウムを放出する過程におけるリン酸マンガンリチウムの格子変化率とMnの溶出をより効果的に抑制することができ、それによって二次電池の高温サイクル性能、レート性能、サイクル安定性と高温保管性能を高める。
【0086】
いくつかの実施の形態では、コアにおいて、yと1-yとの比は、1:10~1:1であり、選択的に1:4~1:1である。ここで、yは、Mnサイトにドーピングされる元素Aの化学量論数の和を表す。上記条件を満たしている場合、正極活物質を用いた二次電池のエネルギー密度、レート性能、及びサイクル性能をさらに高めることができる。
【0087】
いくつかの実施の形態では、コアにおいて、zと1-zとの比は、1:9~1:999であり、選択的に1:499~1:249である。ここで、zは、Pサイトにドーピングされる元素Rの化学量論数の和を表す。上記条件を満たしている場合、正極活物質を用いた二次電池のエネルギー密度、レート性能、及びサイクル性能をさらに高めることができる。
【0088】
いくつかの実施の形態では、第三の被覆層における炭素は、SP2形態炭素とSP3形態炭素との混合物であり、選択的に、SP2形態炭素とSP3形態炭素とのモル比は、0.07~13の範囲内の任意の数値であり、さらに選択的に0.1~10の範囲内の任意の数値であり、さらに選択的に2.0~3.0の範囲内の任意の数値である。
【0089】
いくつかの実施の形態では、SP2形態炭素とSP3形態炭素とのモル比は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10、又は上記任意の値の任意の範囲内であってもよい。
【0090】
本出願では、「約」ある数値は、一つの範囲を表し、この数値±10%の範囲を表す。
【0091】
炭素被覆層における炭素の形態を選択することによって、二次電池の総合的な電気的性能を高める。具体的には、SP2形態炭素とSP3形態炭素との混合形態を用いてSP2形態炭素とSP3形態炭素との割合の一定範囲内に制御することにより、良好な導電性を実現することができ、リチウムイオンの通路を保証することもできるため、二次電池機能の実現及びそのサイクル性能に有利である。
【0092】
第三の被覆層炭素のSP2形態とSP3形態との混合比は、焼結条件、例えば焼結温度と焼結時間によって制御することができる。例えば、スクロースを炭素源として第三の被覆層を製造する場合に、スクロースを高温で分解させた後、第二の被覆層上に堆積させながら高温作用で、SP3形態もSP2形態もある炭素被覆層が発生する。SP2形態炭素とSP3形態炭素との割合は、高温分解条件と焼結条件を選択することによって制御することができる。
【0093】
第三の被覆層炭素の構造と特徴は、ラマン(Raman)スペクトルにより測定されることができ、具体的な試験方法は、以下のとおりである。Raman試験のエネルギースペクトルをピーク分割して、Id/Ig(ここで、Idは、SP3形態炭素のピーク強度であり、Igは、SP2形態炭素のピーク強度である)を得ることによって、両方のモル比を確認する。
【0094】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆層の被覆量は、コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に0よりも大きく且つ2重量%以下であり、及び/又は
第二の被覆層の被覆量は、コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に2重量%~4重量%であり、及び/又は
第三の被覆層の被覆量は、コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり、選択的に0よりも大きく且つ5.5重量%以下であり、さらに選択的に0よりも大きく且つ2重量%以下である。
【0095】
本出願では、各層の被覆量は、いずれもゼロではない。
【0096】
本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質において、三層被覆層の被覆量は、上記範囲内にあることが好ましく、それによってコアを十分に被覆すると同時に、正極活物質のグラム容量を犠牲することなく、二次電池の動力学的性能と安全性能をさらに改善することができる。
【0097】
第一の被覆層にとって、被覆量が上記範囲内にあることで、遷移金属の溶出を減少させ、リチウムイオンの順調な遷移を保証することができ、それによって正極活物質のレート性能を向上させる。
【0098】
第二の被覆層にとって、被覆量が上記範囲内にあることで、正極活物質を一定のプラトー電圧に維持し、且つ被覆効果を保証することができる。
【0099】
第三の被覆層にとって、炭素被覆は、主に粒子間の電子伝送を補強する役割を果たすが、構造に大量の非晶質炭素がさらに含まれるため、炭素の密度が比較的低く、被覆量が上記範囲内にあることで、極板の圧密密度を保証することができる。
【0100】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆層の厚さは、2~10nmであり、且つ/又は
第二の被覆層の厚さは、3~15nmであり、且つ/又は
第三の被覆層の厚さは、5~25nmである。
【0101】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆層の厚さは、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm又は約10nm、又は上記任意の値の任意の範囲内であってもよい。
【0102】
いくつかの実施の形態では、第二の被覆層の厚さは、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、又は上記任意の値の任意の範囲内であってもよい。
【0103】
いくつかの実施の形態では、第三層の被覆層の厚さは、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約21nm、約22nm、約23nm、約24nm又は約25nm、又は上記任意の値の任意の範囲内であってもよい。
【0104】
第一の被覆層の厚さ範囲が2~10nmである場合、遷移金属の溶出を効果的に減少させ、二次電池の動力学的性能を保証することができる。
【0105】
第二の被覆層の厚さが3~15nmの範囲内にある場合、第二の被覆層の表面構造が安定しており、電解液との副反応が小さいため、界面副反応を効果的に軽減することができ、それによって二次電池の高温性能を高める。
【0106】
第三の被覆層の厚さ範囲が5~25nmである場合、材料の電子伝導性能を高め且つ正極活物質を用いて製造した電池極板の圧密性能を改善することができる。
【0107】
被覆層の厚さ寸法試験は、主にFIBにより行われ、具体的な方法は、以下のステップを含んでもよい。測定対象となる正極活物質粉末からランダムに単一の粒子を選択し、選択した粒子の中間位置又は中間位置近傍から100nm程度の厚さの薄片を切り取り、そして薄片に対してTEM試験を行い、被覆層の厚さを測定し、3~5箇所を測定し、平均値を取る。
【0108】
いくつかの実施の形態では、正極活物質の重量を基準として、マンガン元素の含有量は、10重量%~35重量%の範囲内にあり、選択的に15重量%~30重量%の範囲内にあり、さらに選択的に17重量%-20重量%の範囲内にあり、リン元素の含有量は、12重量%~25重量%の範囲内にあり、選択的に15重量%~20重量%の範囲内にあり、マンガン元素とリン元素との重量比の範囲は、0.90~1.25であり、選択的に0.95~1.20である。
【0109】
本出願では、正極活物質のコアのみにマンガンが含有される場合に、マンガンの含有量は、コアの含有量に対応してもよい。
【0110】
本出願では、マンガン元素の含有量を上記範囲内に制限することで、正極活物質の比較的高い安定性と密度を保証することができ、それによって二次電池のサイクル、保存、及び圧密などの性能を高めるとともに、一定の電圧プラトーの高さを維持することができ、それによって二次電池のエネルギー密度を高める。
【0111】
本出願では、リン元素の含有量を上記範囲内に制御することで、材料の電子伝導率を効果的に向上させるとともに、材料全体の安定性を高めることができる。
【0112】
本出願では、マンガンとリン含有量との重量比が上記範囲内にある場合、遷移金属マンガンの溶出を効果的に減少させ、正極活物質の安定性とグラム容量を向上させ、二次電池のサイクル性能及び保存性能をさらに高めることができるとともに、材料におけるヘテロ相を減少させ、材料の放電電圧プラトーの高さを維持するのに寄与し、それによって二次電池のエネルギー密度を向上させる。
【0113】
マンガン元素とリン元素の測定は、当分野における一般的な技術手段によって行われることができる。特に、マンガン元素とリン元素の含有量は、材料を希塩酸(濃度10~30%)に溶解し、ICPを用いて溶液の各元素の含有量を試験し、そしてマンガン元素の含有量を測定して換算し、その重量比を得るという方法で測定される。
【0114】
いくつかの実施の形態では、コア-シェル構造を有する正極活物質がリチウムを完全に放出する前後の格子変化率は、50%以下であり、選択的に4%以下であり、さらに選択的に3.8%以下であり、さらに選択的に2.0%~3.8%である。
【0115】
リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)のリチウム放出プロセスは、二相反応である。二相の界面応力は、リチウムを放出する前後の格子変化率の大きさによって決められ、格子変化率が小さいほど、界面応力が小さいほど、Li+伝送が容易になる。そのため、コアの格子変化率の減少は、Li+の伝送能力を補強するのに有利であり、それによって二次電池のレート性能を改善する。本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質は、比較的低いリチウムを放出する前後の格子変化率を実現することができるため、正極活物質を用いて二次電池のレート性能を改善することができる。格子変化率は、当分野における既知の方法、例えばX線回折スペクトル(XRD)によって測定することができる。
【0116】
いくつかの実施の形態では、コア-シェル構造を有する正極活物質のLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度は、5.3%以下であり、選択的に4%以下であり、さらに選択的に2.2%以下であり、さらに選択的に1.5%~2.2%である。
【0117】
本出願のLi/Mnのアンチサイト欠陥とは、LiMnPO4格子において、Li+とMn2+の位置が入れ替わることである。それに応じて、Li/Mnのアンチサイト欠陥濃度とは、Mn2+と入れ替わるLi+のLi+総量に占める百分率である。本出願では、Li/Mnのアンチサイト欠陥濃度は、例えばJIS K 0131-1996に従って試験を行うことができる。
【0118】
本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質は、上記比較的低いLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度を実現することができる。メカニズムがまだ十分に明確ではないが、本出願の発明者の推測によると、LiMnPO4格子において、Li+とMn2+の位置が入れ替わるが、Li+伝送チャンネルが一次元チャンネルであるため、Mn2+がLi+チャンネルにおいて遷移しにくく、さらにLi+の伝送を阻害する。それによって、本出願のコア-シェル構造を有する正極活物質は、Li/Mnのアンチサイト欠陥濃度が比較的低く、上記範囲内にあるため、Mn2+によるLi+の伝送阻害を低減させるとともに、正極活物質のグラム容量の発揮とレート性能を高めることができる。
【0119】
いくつかの実施の形態では、正極活物質の3Tでの圧密密度は、1.95g/cm3以上であり、選択的に2.2g/cm3以上であり、さらに選択的に2.2g/cm3以上且つ2.8g/cm3以下であり、よりさらに選択的に2.2g/cm3以上且つ2.65g/cm3以下である。圧密密度が高いほど、単位体積当たりの活物質の重量が大きくなるため、圧密密度の向上は、電池コアの体積エネルギー密度を向上させるのに有利である。圧密密度は、GB/T 24533-2009に従って測定することができる。
【0120】
いくつかの実施の形態では、正極活物質の表面酸素の原子価状態は、-1.89以下であり、選択的に-1.90~-1.98である。
【0121】
酸素の安定原子価状態は、もともと-2価であり、原子価状態が-2価に近いほど、その電子を得る能力が高く、即ち酸化性が強く、一般的には、その表面原子価状態は、-1.7以下である。本出願の正極活物質の表面酸素の原子価状態が上記範囲内にある場合、正極材料と電解液との界面副反応を軽減することができ、それによって電池コアのサイクル、高温保存・ガス発生などの性能を改善する。
【0122】
表面酸素の原子価状態は、当分野における既知の方法によって測定し、例えば電子エネルギー損失スペクトル(EELS)によって測定することができる。
【0123】
上記範囲内でドーピング元素を選択することにより、ドーピング効果を補強するのに有利であり、一方で、格子変化率をさらに減少させることによって、マンガンの溶出を抑制し、電解液と活性リチウムの消費を減少させ、他方では、表面の酸素活性をさらに低減させ、正極活物質と電解液との界面副反応を減少させるのにも有利であり、それによって二次電池のサイクル性能と高温保管性能を改善する。
【0124】
いくつかの実施の形態では、正極活物質のコアにおいて、xは、-0.005~0.002の範囲内の任意の数値、例えば-0.004、-0.003、-0.002、-0.001、0、0.001、0.002である。
【0125】
いくつかの実施の形態では、正極活物質のコアにおいて、yは、例えば0.001、0.002、0.3、0.35、0.4、0.5であってもよい。
【0126】
いくつかの実施の形態では、正極活物質のコアにおいて、zは、例えば0.001、0.002、0.003、0.005、0.1であってもよい。
【0127】
いくつかの実施の形態では、正極活物質の第二の被覆層において、dは、1~2の範囲内の任意の数値である。
【0128】
いくつかの実施の形態では、正極活物質の第二の被覆層において、eは、1~5の範囲内の任意の数値である。
【0129】
[正極活物質の製造方法]
本出願は、正極活物質の製造方法を提供し、この製造方法は、
コア材料を提供するステップであって、コア材料は、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含み、ここで、xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、V、Ni、Co、及びMgから選択される一つ又は複数の元素であり、Rは、B、Si、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にSi、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であるステップと、
ピロリン酸塩LiaMP2O7及び/又はMb(P2O7)cを含む第一の混合物を提供し、コア材料と第一の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、第一の被覆層で被覆された材料を得る第一の被覆ステップであって、aは、0よりも大きく且つ2以下であり、bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、ピロリン酸塩LiaMP2O7とMb(P2O7)cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、及びAlから選択される一つ又は複数の元素である第一の被覆ステップと、
酸化物M’dOeを含む第二の混合物を提供し、第一の被覆層で被覆された材料と第二の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、二層被覆層で被覆された材料を得る第二の被覆ステップであって、dは、0よりも大きく且つ2以下であり、eは、0よりも大きく且つ5以下であり、M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbから選択される一つ又は複数の元素であり、選択的にLi、Be、B、Na、Mg、Al、Si、P、S、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、W、La、及びCeから選択される一つ又は複数の元素であり、さらに選択的にMg、Al、Si、Ti、V、Ni、Cu、Zr、及びWから選択される一つ又は複数の元素である第二の被覆ステップと、
炭素源を含む第三の混合物を提供し、二層被覆層で被覆された材料と第三の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、正極活物質を得る第三の被覆ステップとを含み、
ここで、正極活物質は、コア-シェル構造を有し、この正極活物質は、コアと、コアを被覆するシェルとを含み、コアは、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含み、シェルは、コアを被覆する第一の被覆層と、第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩LiaMP2O7及び/又はMb(P2O7)cを含み、第二の被覆層は、結晶性酸化物M’dOeを含み、第三の被覆層は、炭素を含む。A、R、M、M’、x、y、z、a、b、c、d、eの定義は、上記と同様である。
【0130】
それによって、本出願は、リン酸マンガンリチウムのマンガンサイトに元素Aをドーピングし且つリンサイトにR元素をドーピングしてドーピングされたリン酸マンガンリチウムコアを得、且つコア表面に順に三層被覆を行うことにより、Li/Mnのアンチサイト欠陥の発生を大幅に減少させ、マンガンの溶出を低減させ、格子変化率を明らかに低減させ、圧密密度を増加させることができ、二次電池に用いられることで二次電池の容量を向上させ、二次電池のサイクル性能、高温保存性能、及び安全性能を改善できる新型のコア-シェル構造を有する正極活物質を提供する。
【0131】
いくつかの実施の形態では、コア材料を提供するステップは、
マンガン源と、元素Aの源と、酸とを混合し、混合物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混合物を、リチウム源、リン源、元素Rの源及び選択的な溶媒と混合し、不活性ガスの保護下で焼結し、Li1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含むコア材料を得るステップ(2)とを含む。AとRの定義は、上記と同様である。
【0132】
いくつかの実施の形態では、ステップ(1)は、20℃~120℃、選択的に40℃~120℃(例えば約30℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃又は約120℃)で行われ、及び/又は、ステップ(1)において、400~700rpmの回転速度で1~9h(選択的に3~7h、例えば約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間又は約9時間)攪拌して混合する。
【0133】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、20~120℃、選択的に40~120℃(例えば約30℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃又は約120℃)の温度で1~10h(例えば約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間又は約12時間)混合する。
【0134】
コア粒子の製造過程における温度と時間が上記範囲内にある場合、製造で得られたコア及びそれによって製造された正極活物質の格子欠陥が少なく、マンガンの溶出を抑制し、正極活物質と電解液との界面副反応を減少させるのに有利であり、それによって二次電池のサイクル性能と安全性能を改善する。
【0135】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、pHが3.5~6である条件で混合し、選択的にpHは、4~6であり、さらに選択的にpHは、4~5である。説明すべきこととして、本出願では、当分野において一般的に使用される方法により、例えば酸又は塩基を添加することによってpHを調節することができる。
【0136】
いくつかの選択的な実施の形態では、ステップ(1)で得られた混合物を濾過し、乾燥し、サンドミルして粒径が50~200nmの元素Aでドーピングされたマンガン塩粒子を得、元素Aでドーピングされたマンガン塩粒子を、ステップ(2)においてリチウム源、リン源、元素Rの源及び選択的な溶媒と混合するために用いる。
【0137】
いくつかの実施の形態では、選択的に、ステップ(2)において、混合物又は元素Aでドーピングされたマンガン塩粒子とリチウム源、リン源とのモル比は、1:0.5~2.1:0.5~2.1であり、選択的に約1:1:1である。
【0138】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)において、不活性ガス又は不活性ガスと水素ガスとの混合雰囲気で、600~950℃で4~10時間焼結し、選択的に、保護雰囲気は、窒素ガス70~90体積%と水素ガス10~30体積%との混合ガスであり、選択的に、焼結は、約650℃、約700℃、約750℃、約800℃、約850℃又は約900℃で約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間又は約10時間焼結してもよく、選択的に、焼結の温度、焼結時間は、上記任意の数値の任意の範囲内であってもよく、コアの結晶度を向上させ、ヘテロ相の生成を減少させ、コアの粒子度を一定に維持することができ、それによって正極活物質のグラム容量、圧密密度を向上させ、レート性能を含む二次電池の全体性能を向上させる。
【0139】
いくつかの選択的な実施の形態では、ステップ(2)で混合された材料を乾燥して粉末材料を得、そして粉末材料を焼結してLi1+xMn1-yAyP1-zRzO4を含むコア材料を得る。
【0140】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆ステップにおいて、元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒とを混合することで第一の混合物を得、且つ/又は、
第二の被覆ステップにおいて、元素M’の源と溶媒とを混合することで第二の混合物を得、且つ/又は、
第三の被覆ステップにおいて、炭素源と溶媒とを混合することで第三の混合物を得る。
【0141】
いくつかの実施の形態では、第一の混合物、第二の混合物、及び第三の混合物は、懸濁液の形態で提供されてもよい。
【0142】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆ステップにおいて、元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒を室温で1~5時間(例えば約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約4.5時間又は約5時間)混合し、さらに50℃~120℃(例えば55℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃又は約120℃)に昇温し、この温度を維持して2~10時間(例えば約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間又は約10時間)混合し、上記混合は、いずれもpHが3.5~6.5(例えば4~6)である条件で行われる。
【0143】
いくつかの実施の形態では、第二の被覆ステップにおいて、元素M’の源と溶媒とを室温で1~10時間(例えば1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間又は約10時間)混合し、さらに60℃~150℃(例えば約65℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃又は約150℃)に昇温し、この温度を維持して2~10時間(例えば約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間又は約10時間)混合する。
【0144】
本出願の製造方法は、材料の由来に対して特に限定せず、ある元素の由来は、この元素の単体、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物又は水素酸化物のうちの一つ又は複数を含んでもよいが、この由来が本出願の製造方法の目的を実現できることを前提とする。
【0145】
いくつかの実施の形態では、元素Aの源は、元素Aの単体、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数であり、且つ/又は、
元素Rの源は、元素Rの無機酸、有機酸、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数である。
【0146】
いくつかの実施の形態では、元素Mの源は、元素Mの単体、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数である。
【0147】
いくつかの実施の形態では、元素M’の源は、元素M’の単体、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数である。
【0148】
元素A、R、M、M’のそれぞれの源の添加量は、目標ドーピング量に依存し、リチウム源、マンガン源、及びリン源の使用量の比は、化学量論比に適合する。
【0149】
本出願では、マンガン源は、当分野における既知のリン酸マンガンリチウムの製造に利用可能なマンガン含有物質であってもよい。例として、マンガン源は、マンガン単体、二酸化マンガン、リン酸マンガン、シュウ酸マンガン、炭酸マンガンから選択される一つ又は複数であってもよい。
【0150】
本出願では、酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ケイ酸、メタケイ酸などの有機酸と有機酸、例えばシュウ酸から選択される一つ又は複数であってもよい。いくつかの実施の形態では、酸は、60重量%以下の濃度の希薄な有機酸である。
【0151】
本出願では、リチウム源は、当分野における既知のリン酸マンガンリチウムの製造に利用可能なリチウム含有物質であってもよい。例として、リチウム源は、炭酸リチウム、水素酸化リチウム、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウムから選択される一つ又は複数である。
【0152】
本出願では、リン源は、当分野における既知のリン酸マンガンリチウムの製造に利用可能な含リン物質であってもよい。例として、リン源は、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、及びリン酸から選択される一つ又は複数である。
【0153】
本出願では、例として、炭素源は、デンプン、スクロース、グルコース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、クエン酸から選択される一つ又は複数である。
【0154】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆ステップにおいて、焼結は、650~800℃(例えば約650℃、約700℃、約750℃又は約800℃)で2~8時間(約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約8時間)行われ、且つ/又は、
第二の被覆ステップにおいて、焼結は、400~750℃(例えば約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、約600℃、約700℃、約750℃)で6~10時間(例えば約6時間、約7時間、約8時間、約9時間又は約10時間)行われ、且つ/又は、
第三の被覆ステップにおいて、焼結は、600~850℃(例えば約600℃、約650℃、約700℃、約750℃、約800℃、約850℃)で6~10時間(例えば約6時間、約7時間、約8時間、約9時間又は約10時間)行われる。
【0155】
上記第一の被覆ステップ、第二の被覆ステップ、第三の被覆ステップにおいて、乾燥は、いずれも80℃~200℃、選択的に80℃~190℃、さらに選択的に120℃~180℃、ひいてはさらに選択的に120℃~170℃、最も好ましくは120℃~160℃の乾燥温度で行われ、乾燥時間は、3~9hであり、選択的に4~8hであり、さらに選択的に5~7hであり、最も好ましくは約6hである。
【0156】
[正極極板]
本出願は、正極極板を提供し、この正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、正極膜層は、前述した正極活物質又は前述した製造方法によって製造される正極活物質を含み、選択的に、正極活物質の正極膜層における含有量は、正極膜層の総重量を基準として、10重量%以上である。
【0157】
いくつかの実施の形態では、正極活物質の正極膜層における含有量は、正極膜層の総重量を基準として、90~99.5重量%である。二次電池が比較的高い容量と比較的良いサイクル性能、高温保存性能、及び安全性能を有することを保証する。
【0158】
いくつかの実施の形態では、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と、高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0159】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、当分野において公知の電池用の他の正極活物質をさらに含んでもよい。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその改質化合物のうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限らず、他の電池正極活物質として使用できる従来材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0160】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。例として、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0161】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0162】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体及び負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極膜層を含み、負極膜層は、負極活物質を含む。
【0163】
例として、負極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方上に設置される。
【0164】
いくつかの実施の形態では、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成される金属層を含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0165】
いくつかの実施の形態では、負極活物質は、当分野において公知の電池用の負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料とチタン酸リチウムなどのうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化合物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限らず、他の電池負極活物質として使用できる従来材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0166】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0167】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0168】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に他の助剤、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などを含む。
【0169】
いくつかの実施の形態では、以下の方式で負極極板を製造することができる。上記負極極板を製造するための成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤といずれの他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させて、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上に塗覆し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、負極極板が得られる。
【0170】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0171】
いくつかの実施の形態では、電解質は、液体であり、且つ電解質塩と溶媒とを含む。
【0172】
いくつかの実施の形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0173】
いくつかの実施の形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。
【0174】
いくつかの実施の形態では、電解液は、さらに選択的に添加剤を含む。例として、添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでもよく、さらに、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池高温又は低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0175】
[セパレータ]
いくつかの実施の形態では、二次電池には、セパレータがさらに含まれる。本出願は、セパレータの種類に対して特に限定せず、任意の公知の良好な化学安定性と機械安定性を有する多孔質構造セパレータを選択してもよい。
【0176】
いくつかの実施の形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニリデンフルオライドのうちの少なくとも一つから選ばれてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限がない。セパレータが多層複合フィルムである時、各層の材料は、同じであってもよく又は異なってもよく、特に制限がない。
【0177】
いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。
【0178】
いくつかの実施の形態では、二次電池は、外装体を含んでもよい。この外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0179】
いくつかの実施の形態では、二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0180】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図2は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0181】
いくつかの実施の形態では、
図3を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とは、囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は、収容キャビティを密閉するように、開口を覆うことができる。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際の需要に応じて選択することができる。
【0182】
いくつかの実施の形態では、二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用と容量に応じて選択することができる。
【0183】
図4は、一例としての電池モジュール4である。
図4を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに締結具によってこれらの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0184】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0185】
いくつかの実施の形態では、上記電池モジュールは、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用と容量に応じて選択することができる。
【0186】
図5と
図6は、一例としての電池パック1である。
図5と
図6を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3に蓋設可能であり、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに配列されてもよい。
【0187】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、電力消費装置の電源として使用されてもよく、電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。電力消費装置は、モバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これに限らない。
【0188】
電力消費装置として、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0189】
図7は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池の高出力と高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0190】
[実施例]
以下、本出願の実施例を説明する。以下に記述される実施例は、例示的であり、本出願を解釈するためにのみ使用され、本出願に対する制限として理解されるべきではない。実施例に具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当分野内の文献に記述された技術又は条件に従って又は製品明細書に従って行う。使用される試薬又は機器は、製造メーカが明記されていない場合、いずれも市購で入手できる通常製品である。
【0191】
本出願の実施例に係わる原材料の由来は、以下のとおりである。
【0192】
【0193】
正極活物質及びそのスラリーの製造
実施例1
ステップS1:Fe、Co、V、及びSを共ドーピングしたシュウ酸マンガンの製造
689.6gの炭酸マンガン、455.27gの炭酸第一鉄、4.65gの硫酸コバルト、4.87gの二塩化バナジウムをミキサに添加して6h十分に混合した。そして得られた混合物を反応釜に移し、且つ5Lの脱イオン水と1260.6gのシュウ酸二水和物を添加し、80℃まで加熱し、500rpmの回転速度で6h十分に攪拌し、均一に混合し、反応終了まで気泡発生なく、Fe、Co、及びVを共ドーピングしたシュウ酸マンガン懸濁液を得た。そして懸濁液を濾過し、120℃で乾燥し、さらにサンドミルし、粒径が100nmのシュウ酸マンガン粒子を得た。
【0194】
ステップS2:コアLi0.997Mn0.60Fe0.393V0.004Co0.003P0.997S0.003O4の製造
(1)で製造されたシュウ酸マンガン1793.1g及び368.3gの炭酸リチウム、1146.6gのリン酸二水素アンモニウム、及び4.9gの希硫酸を取り、それらを20Lの脱イオン水に添加し、十分に攪拌し、80℃で均一に混合して10h反応させ、スラリーを得た。スラリーを噴霧乾燥設備に移して噴霧乾燥造粒し、250℃の温度で乾燥し、粉末材料を得た。保護雰囲気(90%窒素ガスと10%水素ガス)において、700℃で粉末材料をローラーハースキルンで4h焼結し、コア材料を得た。誘導結合プラズマ発光スペクトル(ICP)を用いてコア材料の元素の含有量を検出し、コアの化学式は、上記のように得られた。
【0195】
ステップS3:第一の被覆層懸濁液の製造
Li2FeP2O7溶液の製造:7.4gの炭酸リチウム、11.6gの炭酸第一鉄、23.0gのリン酸二水素アンモニウム、及び12.6gのシュウ酸二水和物を500mlの脱イオン水に溶解し、pHを5に制御し、攪拌し且つ室温で2h反応させて溶液を得、その後にこの溶液を80℃に昇温してこの温度を4h保持し、第一の被覆層懸濁液を得た。
【0196】
ステップS4:第一の被覆層の被覆
ステップS2で得られた、ドーピングした後の1571.9gのリン酸マンガンリチウムコア材料を、ステップS3で得られた第一の被覆層懸濁液(被覆物質含有量は、15.7gである)に添加し、十分に攪拌して6h混合し、均一に混合した後、120℃のオーブンに移して6h乾燥し、そして650℃で6h焼結してピロリン酸塩被覆後の材料を得た。
【0197】
ステップS5:第二の被覆層懸濁液の製造
47.1gのナノメートルオーダーAl2O3(粒径約20nm)を1500mlの脱イオン水に溶解し、2h攪拌し、第二の被覆層懸濁液を得た。
【0198】
ステップS6:第二の被覆層の被覆
ステップS4で得られた1586.8gのピロリン酸塩被覆後の材料を、ステップS5で得られた第二の被覆層懸濁液(被覆物質含有量は、47.1gである)に添加し、十分に攪拌して6h混合し、均一に混合した後、120℃のオーブンに移して6h乾燥し、そして700℃で8h焼結して二層被覆後の材料を得た。
【0199】
ステップS7:第三の被覆層水溶液の製造
37.3gのスクロースを500gの脱イオン水に溶解し、そして攪拌して十分に溶解し、スクロース水溶液を得た。
【0200】
ステップS8:第三の被覆層の被覆
ステップS6で得られた二層被覆の材料1633.9gを、ステップS7で得られたスクロース溶液に添加し、一緒に攪拌して6h混合し、均一に混合した後、150℃のオーブンに移して6h乾燥し、そして700℃で10h焼結して三層被覆後の材料を得た。
【0201】
実施例2~56及び比較例1~17
実施例1に類似する方法で実施例2~56と比較例1~17の正極活物質を製作し、正極活物質の製造における相違点は、表1-6を参照する。
【0202】
ここで、比較例1~2、4~10、及び12は、第一層を被覆していないため、ステップS3~S4がなく、比較例1~11は、第二層を被覆していないため、ステップS5~S6がない。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
正極極板の製造
上記の製造された三層被覆後の正極活物質、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリビニリデンフルオライド(PVDF)を重量比97.0:1.2:1.8でN-メチルピロリドン(NMP)に添加し、攪拌して均一に混合し、正極スラリーを得た。そして正極スラリーを0.280g/1540.25mm2でアルミニウム箔上に均一に塗覆し、乾燥し、冷間プレスを経て、スリットし、正極極板を得た。
【0224】
負極極板の製造
負極活物質である人造黒鉛、導電剤である超伝導カーボンブラック(Super-P)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比95%:1.5%:1.8%:1.7%で脱イオン水に溶解し、十分に攪拌して均一に混合した後に、粘度3000mPa.s、固形分52%の負極スラリーを得、負極スラリーを6μmの負極集電体銅箔上に塗覆し、その後に100℃で4時間焼成して乾燥し、ロールプレスし、圧密密度1.75g/cm3の負極極板を得た。
【0225】
セパレータ
ポリプロピレンフィルムを採用した。
【0226】
電解液の製造
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及び1、2-プロパンジオールカーボネートを体積比1:1:1で混合し、LiPF6を上記溶液に均一に溶解し、電解液を得た。この電解液において、LiPF6の濃度は、1mol/Lである。
【0227】
全電池の製造
上記の得られた正極極板、セパレータ、負極極板を、セパレータが正負極間に位置して隔離の役割を果たすように順番に積層し、捲回してベアセルを得た。ベアセルを外装体に置き、上記電解液を注入してパッケージングし、全電池(以下「フルセル」とも呼ばれる)を得た。
【0228】
ボタン電池の製造
上記の正極極板を負極、電解液と共にボタンセル箱にボタン電池として(以下、「ボタンセル」とも呼ばれる)組み立てた。
【0229】
I.正極活物質の性能試験
1.格子変化率試験方法:
25℃の恒温環境で、正極活物質サンプルをXRD(型番はBruker D8 Discover)に配置し、1°/minでサンプルを試験し、且つ試験データを整理分析し、規格PDFカードを参照して、この時の格子常数a0、b0、c0とv0(a0、b0とc0は、単位格子の各方面における長さの大きさを表し、v0は、単位格子の体積を表し、XRDの仕上げ結果から直接取得可能である)を算出した。
【0230】
上記のボタンセル製造方法を用いて、正極活物質サンプルをボタンセルとして製造し、電流が0.01Cに減少するまで、上記ボタンセルを0.05Cの低レートで充電した。そしてボタンセルにおける正極極板を取り出し、ジメチルカーボネート(DMC)に8時間浸漬した。そして乾燥し、粉体を掻き取り、そのうちの粒径が500nm未満の粒子を選別した。サンプリングして上記試験用新鮮なサンプルと同様な方式でその単位格子の体積v1を算出し、(v0-v1)/v0×100%をそのリチウムを完全に放出する前後の格子変化率(単位格子の体積変化率)とした。
【0231】
2.Li/Mnのアンチサイト欠陥濃度の測定:
「格子変化率測定方法」で試験したXRD結果を標準結晶のPDF(Powder Diffraction File)カードと比較し、Li/Mnのアンチサイト欠陥濃度を得た。具体的には、「格子変化率測定方法」で試験したXRD結果を汎用構造解析システム(GSAS)ソフトウェアに導入し、仕上げ結果を自動的に取得し、その中には、異なる原子の占位状況が含まれ、仕上げ結果を読み取ることでLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度を得た。
【0232】
3.圧密密度の測定:
上記の製造された正極活物質粉末を5g取って圧密専用金型(米国CARVER金型、型番13mm)に入れ、そして金型を圧密密度計に置いた。3Tの圧力を印加し、機器上で、圧力での粉末の厚さ(減圧後の厚さ)を読み取り、ρ=m/vから、圧密密度を算出し、ここで、使用された面積値は、規格の小画像面積1540.25mm2である。
【0233】
4.3C充電定電流比の測定:
25℃の恒温環境で、上記各実施例と比較例で製造された新品のフルセルを5min静置し、1/3Cで2.5Vまで放電した。5min静置し、1/3Cで4.3Vまで充電し、そして4.3Vで電流が0.05mA以下になるまで定電圧充電した。5min静置し、この時の充電容量をC0として記録した。1/3Cで2.5Vまで放電し、5min静置し、さらに3Cで4.3Vまで充電し、5min静置し、この時の充電容量をC1として記録した。3C充電定電流比は、C1/C0×100%である。
【0234】
3C充電定電流比が高いほど、二次電池のレート性能が良いことを示す。
【0235】
5.遷移金属Mn(及びMnサイトにドーピングされたFe)溶出試験:
45℃で80%まで容量が減衰するまでサイクルした上記各実施例と比較例の正極活物質で製造されたフルセルを0.1Cレートでカットオフ電圧2.0Vまで放電した。そして電池を解体し、負極極板を取り出し、負極極板上に30個の単位面積をランダムに取り(1540.25mm2)のウェーハ、Agilent ICP-OES730で誘導結合プラズマ発光スペクトル(ICP)を試験した。ICP結果に基づいてそのうちのFe(正極活物質のMnサイトにFeがドーピングされている場合)とMnの量を計算し、それによってサイクル後のMn(及びMnサイトにドーピングされたFe)の溶出量を計算した。試験規格は、EPA-6010D-2014に準拠している。
【0236】
6.表面酸素の原子価状態の測定:
上記の製造された正極活物質サンプルを5g取って上記ボタンセルの製造方法に従ってボタンセルとして製造した。電流が0.01Cに減少するまで、ボタンセルを0.05Cの低レートで充電した。そしてボタンセルにおける正極極板を取り出し、DMCに置いて8時間浸漬した。そして乾燥し、粉体を掻き取り、そのうちの粒径が500nm未満の粒子を選別した。得られた粒子を電子エネルギー損失分光法(EELS、使用した機器の型番はTalos F200S)で測定し、エネルギー損失端近傍構造(ELNES)を取得し、それは、元素の状態密度とエネルギーレベル分布状況を反映した。状態密度とエネルギーレベル分布から、価電子帯状態密度データを積分して、占有電子数を算出することによって、充電後の表面酸素の原子価状態を推定した。
【0237】
7.正極活物質においてマンガン元素とリン元素の測定:
5gの上記の製造された正極活物質を100mlの逆王水(濃塩酸:濃硝酸=1:3)(濃塩酸濃度~37%、濃硝酸濃度~65%)に溶解し、ICPを用いて溶液の各元素の含有量を試験し、そしてマンガン元素又はリン元素の含有量を測定して換算(マンガン元素又はリン元素の量/正極活物質の量*100%)し、その重量比を得た。
【0238】
8.ボタン電池の初期グラム容量測定方法:
2.5~4.3Vで、上記各実施例と比較例で製造されたボタン電池を0.1Cで4.3Vまで充電し、そして4.3Vで電流が0.05mA以下になるまで定電圧充電し、5min静置し、そして0.1Cで2.0Vまで放電し、この時の放電容量を初期グラム容量とし、D0とした。
【0239】
9.フルセル60℃で30日間保存した電池コア膨張試験:
60℃で、100%充電状態(SOC)の上記各実施例と比較例で製造されたフルセルを保存した。保存前後及び保存中に、SOCをモニタリングするように電池コアの開放電圧(OCV)と交流内部抵抗(IMP)を測定し、且つ電池コアの体積を測定した。ここで、48hごとに保存した後にフルセルを取り出し、1h静置後に開放電圧(OCV)、内部抵抗(IMP)を試験し、且つ室温まで冷却した後に排水法で電池コア体積を測定した。排水法は、まず文字板データを用いて自動的に単位変換する天秤で電池コアの重力F1を単独測定し、そして電池コアを完全に脱イオン水(密度は1g/cm3として知られている)に置き、この時の電池コアの重力F2を測定し、電池コアが受ける浮力F浮がF1-F2であり、そしてアルキメデス原理F浮=ρ×g×V排に基づいて、電池コア体積V=(F1-F2)/(ρ×g)を算出した。
【0240】
OCV、IMP試験の結果から、本実験過程において保存終了まで、すべての実施例の電池は、常に99%以上のSOCを保持していた。
【0241】
30日間保存した後、電池コア体積を測定し、保存前の電池コア体積に対する保存後の電池コア体積の増加率を計算した。
【0242】
10.フル電池の45℃でのサイクル性能試験:
45℃の恒温環境で、2.5~4.3Vで、1Cで4.3Vまで充電し、そして4.3Vで電流≦0.05mAまで定電圧充電し、5min静置し、そして1Cで2.5Vまで放電し、容量をDn(n=0、1、2、……)とした。容量が80%に減衰(fading)するまで、前述プロセスを繰り返し、この時の繰り返し回数を記録し、45℃で80%容量維持率に対応するサイクル数とする。
【0243】
11.格子面間隔となす角試験:
上記の製造された各正極活物質粉末1gを50mLの試験管に取り、且つ試験管質量分率75%のアルコール10mLを注入し、十分に攪拌して30分間分散させ、きれいな使い捨てプラスチックストローで適量の上記溶液を取って300メッシュの銅網に滴下し、この時、一部の粉末は、銅網に残り、銅網をサンプルと共にTEM(Talos F200sg2)サンプルキャビティに移して試験を行い、TEM試験の原画を得、原画フォーマット(xx.dm3)を保存した。
【0244】
上記TEM試験で得られた原画をDigitalMicrographソフトウェアで開き、フーリエ変換(クリック操作後にソフトウェアが自動的に完了)して回折パータンを得、回折パータンにおける回折スポットから中心位置までの距離を測定すると、格子面間隔が得られ、なす角は、ブラッグ方程式により算出された。
【0245】
得られた格子面間隔と該当するなす角データを、その基準値と比較することにより、異なる被覆層の物質及び結晶性を識別することができる。
【0246】
12.被覆層の厚さ試験:
被覆層の厚さ寸法試験は、主にFIBにより、上記の製造された正極活物質の単一の粒子の中間から100nm程度の厚さの薄片を切り取り、そして薄片に対してTEM試験を行い、TEM試験の原画を得、原画フォーマット(xx.dm3)を保存した。
【0247】
上記TEM試験で得られた原画をDigitalMicrographソフトウェアで開き、格子ピッチとなす角情報から、被覆層を識別し、被覆層の厚さを測定した。
【0248】
選択された粒子に対して3箇所の厚さを測定し、平均値を取った。
【0249】
13.第三層の被覆層炭素におけるSP2形態とSP3形態とのモル比の測定:
本試験は、ラマン(Raman)スペクトルにより行われた。Raman試験のエネルギースペクトルをピーク分割して、Id/Igを得、ここで、Idは、SP3形態炭素のピーク強度であり、Igは、SP2形態炭素のピーク強度であり、それによって両方のモル比を確認した。
【0250】
14.コアの化学式及び異なる被覆層の組成の測定:
球面収差計(ACSTEM)を用いて正極活物質の内部ミクロ構造と表面構造を高空間分解能で特徴付け、三次元再構成技術を結び付けて正極活物質のコアの化学式及び異なる被覆層の組成を得た。
【0251】
実施例と比較例の正極活物質の性能試験結果は、以下の表を参照する。
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
表7~8から分かるように、比較例と比べると、本出願の実施例は、より小さい格子変化率、より小さいLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度、より大きな圧密密度、-2価により近い表面酸素の原子価状態、より少ないサイクル後のMnとFeの溶出量及びより良い電池性能、例えばより高いボタンセル容量、より良い高温保存性能、より高い安全性とより良いサイクル性能を実現した。
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
表9から分かるように、リン酸マンガン鉄リチウム(マンガン含有量35%、リン含有量約20%)のマンガンサイトとリンサイトにドーピング及び三層被覆を行うことにより、正極活物質におけるマンガン元素の含有量及びマンガン元素とリン元素の重量含有量比は、明らかに低減し、なお、実施例1-14を比較例3、比較例4、比較例12と比べると、表7から分かるように、正極活物質におけるマンガン元素とリン元素の低減は、マンガン鉄の溶出量を低減させ且つその製造された二次電池の電池性能を高める。
【0263】
II.被覆層焼結方法による正極活物質性能への影響の考察
次の表における実施例と比較例の電池製造は、実施例1に類似しており、相違点は、次の表における方法パラメータを用いる。参照すると、次の表10になる。
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
以上の内容から分かるように、ステップS4の焼結温度範囲が650~800℃であり且つ焼結時間が2~6時間であり、ステップS6の焼結温度が400~600℃であり且つ焼結時間が6~10時間であり、ステップS8の焼結温度が700~800℃であり且つ焼結時間が6~10時間である場合、より小さい格子変化率、より小さいLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度、より少ないマンガン元素と鉄元素の溶出量、より良い3C充電定電流比、より大きな電池容量、より良い電池サイクル性能、より良い高温保存安定性を実現することができる。
【0271】
なお、実施例II-16(ステップS4の焼結温度が750℃であり、焼結時間が4.5時間である)と比べて、実施例II-1(ステップS4の焼結温度が750℃である時且つ焼結時間が4hである時)は、より良い正極活物質性能と電池性能を実現しており、これは、ステップS4の焼結温度が750℃であり又は750℃よりも大きい時、焼結時間を4.5時間未満に制御する必要があることを示す。
【0272】
III.コア製造における反応温度と反応時間による正極活物質性能への影響の考察
次の表における実施例の正極活物質と電池製造は、実施例1に類似しており、正極活物質製造における相違点は、次の表における方法パラメータを参照する。結果も同様に次の表を参照する。
【0273】
【0274】
【0275】
表11から分かるように、ステップS1における反応温度範囲が60~120℃であり、反応時間が2~9時間であり且つステップS2における反応温度範囲が40~120℃であり、反応時間が1~10時間である場合、正極活物質の粉末材料性能(格子変化率、Li/Mnのアンチサイト欠陥濃度、表面酸素の原子価状態、圧密密度)と製造された電池性能(電気容量、高温サイクル性能、高温保存性能)は、いずれもパフォーマンスに優れた。
【0276】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限らない。上記実施の形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到できる様々な変形を加え、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0277】
1電池パック、2上部筐体、3下部筐体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53トップカバーアセンブリ
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア-シェル構造を有する正極活物質であって、コアと、前記コアを被覆するシェルとを含み、
前記コアは、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含み、ここで、前記xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、前記zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり
、前記Rは、B、Si、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素であり
、
前記シェルは、前記コアを被覆する第一の被覆層と、前記第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、前記第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、
前記第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7及び/又はM
b(P
2O
7)
cを含み、ここで、前記aは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、前記cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、前記結晶性ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7とM
b(P
2O
7)
cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素であり
、
前記第二の被覆層は、結晶性酸化物M’
dO
eを含み、ここで、前記dは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記eは、0よりも大きく且つ5以下であり、前記M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbから選択される一つ又は複数の元素であり
、
前記第三の被覆層は、炭素を含む、正極活物質。
【請求項2】
前記コアにおいて、yと1-yとの比は、1:10~1:1で
ある、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記コアにおいて、zと1-zとの比は、1:9~1:999で
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記第三の被覆層における炭素は、SP2形態炭素とSP3形態炭素との混合物であり
、前記SP2形態炭素とSP3形態炭素とのモル比は、0.07~13の範囲内の任意の数値で
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記第一の被覆層の被覆量は、前記コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり
、且つ/又は
前記第二の被覆層の被覆量は、前記コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下であり
、且つ/又は
前記第三の被覆層の被覆量は、前記コアの重量を基準として、0よりも大きく且つ6重量%以下で
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記第一の被覆層の厚さは、2~10nmであり、且つ/又は
前記第二の被覆層の厚さは、3~15nmであり、且つ/又は
前記第三の被覆層の厚さは、5~25nmである、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.293~0.470nmであり、結晶方向(111)のなす角範囲は、18.00°~32.00°であり、
前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の格子面間隔範囲は、0.297~0.462nmであり、且つ/又は、
前記第一の被覆層における結晶性ピロリン酸塩の結晶方向(111)のなす角範囲は、19.211°~30.846°である、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項8】
正極活物質の重量を基準として、
マンガン元素の含有量は、10重量%~35重量%の範囲内にあり
、
リン元素の含有量は、12重量%~25重量%の範囲内にあり
、
マンガン元素とリン元素との重量比は、0.90~1.25の範囲内に
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記正極活物質がリチウムを完全に放出する前後の格子変化率は、50%以下で
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記正極活物質のLi/Mnのアンチサイト欠陥濃度は、5.3%以下で
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記正極活物質の3Tでの圧密密度は、1.95g/cm
3以上で
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記正極活物質の表面酸素の原子価状態は、-1.89以下で
ある、請求項
1に記載の正極活物質。
【請求項13】
正極活物質の製造方法であって、
コア材料を提供するステップであって、前記コア材料は、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含み、ここで、前記xは、-0.100~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記yは、0.001~0.600の範囲内の任意の数値であり、前記zは、0.001~0.100の範囲内の任意の数値であり、前記Aは、Zn、Al、Na、K、Mg、Mo、W、Ti、V、Zr、Fe、Ni、Co、Ga、Sn、Sb、Nb、及びGeから選択される一つ又は複数の元素であり
、前記Rは、B、Si、N、及びSから選択される一つ又は複数の元素で
あるステップと、
ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7及び/又はM
b(P
2O
7)
cを含む第一の混合物を提供し、前記コア材料と前記第一の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、第一の被覆層で被覆された材料を得る第一の被覆ステップであって、前記aは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記bは、1~4の範囲内の任意の数値であり、前記cは、1~3の範囲内の任意の数値であり、前記ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7とM
b(P
2O
7)
cにおけるMは、それぞれ独立してFe、Ni、Mg、Co、Cu、Zn、Ti、Ag、Zr、Nb、及びAlから選択される一つ又は複数の元素で
ある第一の被覆ステップと、
酸化物M’
dO
eを含む第二の混合物を提供し、前記第一の被覆層で被覆された材料と前記第二の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、二層被覆層で被覆された材料を得る第二の被覆ステップであって、前記dは、0よりも大きく且つ2以下であり、前記eは、0よりも大きく且つ5以下であり、前記M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIIA族元素、IVA族元素、ランタン系元素、及びSbのうちの一つ又は複数の元素で
ある第二の被覆ステップと、
炭素源を含む第三の混合物を提供し、前記二層被覆層で被覆された材料と前記第三の混合物とを混合し、乾燥し、焼結し、正極活物質を得る第三の被覆ステップとを含み、
前記正極活物質は、コア-シェル構造を有し、コアと、前記コアを被覆するシェルとを含み、前記コアは、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含み、前記シェルは、前記コアを被覆する第一の被覆層と、前記第一の被覆層を被覆する第二の被覆層と、前記第二の被覆層を被覆する第三の被覆層とを含み、前記第一の被覆層は、結晶性ピロリン酸塩Li
aMP
2O
7及び/又はM
b(P
2O
7)
cを含み、前記第二の被覆層は、結晶性酸化物M’
dO
eを含み、前記第三の被覆層は、炭素を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記コア材料を提供するステップは、
マンガン源と、元素Aの源と酸とを混合し、混合物を得るステップ(1)と、
前記ステップ(1)で得られた混合物を、リチウム源、リン源、元素Rの源及び選択的な溶媒と混合し、不活性ガスの保護で焼結し、Li
1+xMn
1-yA
yP
1-zR
zO
4を含むコア材料を得るステップ(2)とを含み、
前記ステップ(1)は、20℃~120
℃で行われ、且つ/又は、前記ステップ(1)において、400rpm~700rpmの回転速度で1時間~9時間攪拌して混合し、
前記ステップ(2)において、20℃~120
℃の温度で1時間~10時間混合する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第一の被覆ステップにおいて、元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒とを混合することで前記第一の混合物を得、且つ/又は、
前記第二の被覆ステップにおいて、元素M’の源と溶媒とを混合することで第二の混合物を得、且つ/又は、
前記第三の被覆ステップにおいて、炭素源と溶媒とを混合することで第三の混合物を得、
前記第一の被覆ステップにおいて、前記元素Mの源、リン源、酸、選択的なリチウム源と選択的な溶媒を室温で1時間~5時間混合し、さらに50℃~120℃に昇温し、この温度を維持して2時間~10時間混合し、上記混合は、いずれもpHが3.5~6.5である条件で行われ、
前記第二の被覆ステップにおいて、前記元素M’の源と溶媒とを室温で1時間~10時間混合し、さらに60℃~150℃に昇温し、この温度を維持して2時間~10時間混合する、請求項
13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記元素Aの源は、元素Aの単体、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数であり、且つ/又は、
前記元素Rの源は、元素Rの無機酸、有機酸、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、有機酸塩、酸化物、及び水素酸化物から選択される一つ又は複数である、請求項
13に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第一の被覆ステップにおいて、前記焼結は、650℃~800℃で2時間~8時間行われ、且つ/又は、
前記第二の被覆ステップにおいて、前記焼結は、400℃~750℃で6時間~10時間行われ、且つ/又は、
前記第三の被覆ステップにおいて、前記焼結は、600℃~850℃で6時間~10時間行われる、請求項
13に記載の製造方法。
【請求項18】
正極極板であって、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は、請求項
1に記載の正極活物
質を含み
、前記正極活物質の前記正極膜層における含有量は、前記正極膜層の総重量を基準として、90重量%~99.5重量%で
ある、正極極板。
【請求項19】
請求項18に記載の正極極板を含む、二次電池。
【請求項20】
請求項19に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項21】
請求項20に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項22】
請求項19に記載の二次電池、請求項20に記載の電池モジュール、及び請求項21に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0150
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0150】
本出願では、酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ケイ酸、メタケイ酸などの無機酸と有機酸、例えばシュウ酸から選択される一つ又は複数であってもよい。いくつかの実施の形態では、酸は、60重量%以下の濃度の希薄な有機酸である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0192
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0192】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0277
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0277】
1電池パック、2上部筐体、3下部筐体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53カバープレート
【国際調査報告】