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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ドライブコントロールする方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20240711BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20240711BHJP
【FI】
B60W10/00 120
B60W10/04
B60W10/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501273
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2022058647
(87)【国際公開番号】W WO2023285006
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021207500.2
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】エルデン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥム,マルコ
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241CA04
3D241CC01
3D241CC08
3D241CE08
3D241DA13Z
3D241DB03Z
3D241DB05Z
3D241DB27Z
3D241DB32Z
(57)【要約】
本発明は、車両(100)の少なくとも1つのホイール(120)のアクチュエータ(490,480)をドライブコントロールする方法であって、所望の加速度(DrvReq)を把握するステップと、車両(100)の車両速度(vGND)を把握するステップと、ホイール(120)のホイール速度(v)を把握するステップと、ホイール速度(v)およびホイール加速度(a)からホイール(120)の状態描写(225)を特定するステップと、状態描写(225)、ホイール(120)のスリップ(s)および所望の加速度(DrvReq)からホイール目標加速度の第1の値(275)を特定するステップと、ホイール速度(v)、ホイール加速度(a)およびスリップ(s)からホイール目標加速度の第2の値(375)を特定するステップであって、第2の値は、少なくとも1つのマトリクス(350)の修正係数の関数である、ステップと、少なくとも1つのホイール(120)のアクチュエータ(480,490)を制御するホイール目標加速度の第3の値(485,495)を特定するステップであって、第3の値(485,495)は、第1の値(275)および第2の値(375)の関数である、ステップと、を含む、車両(100)の少なくとも1つのホイール(120)のアクチュエータ(490,480)をドライブコントロールする方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)の少なくとも1つのホイール(120)のアクチュエータ(490,480)をドライブコントロールする方法であって、
所望の加速度(DrvReq)を把握するステップと、
前記車両(100)の車両速度(vGND)を把握するステップと、
前記ホイール(120)のホイール速度(v)を把握するステップと、
前記ホイール速度(v)およびホイール加速度(a)から前記ホイール(120)の状態描写(225)を特定するステップであって、
前記状態描写(225)は、前記ホイール速度(v)および前記ホイール加速度(a)の関数である静的な描写(226)を包含する、ステップと、
前記状態描写(225)、前記ホイール(120)のスリップ(s)および所望の前記加速度(DrvReq)からホイール目標加速度の第1の値(275)を特定するステップであって、
前記スリップ(s)は、前記ホイール速度(v)および前記車両速度(vGND)の関数である、ステップと、
前記ホイール速度(v)、前記ホイール加速度(a)および前記スリップ(s)から前記ホイール目標加速度の第2の値(375)を特定するステップであって、前記第2の値は、少なくとも1つのマトリクス(350)の修正係数の関数である、ステップと、
少なくとも1つの前記ホイール(120)の前記アクチュエータ(480,490)を制御する前記ホイール目標加速度の第3の値(485,495)を特定するステップであって、前記第3の値(485,495)は、前記第1の値(275)および前記第2の値(375)の関数である、ステップと、
を含む、車両の少なくとも1つのホイールのアクチュエータをドライブコントロールする方法。
【請求項2】
前記ホイール(120)の前記状態描写(225)は、さらに、前記ホイール加速度(a)およびホイールダイナミクス(j)の関数である動的な描写(227)を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホイール(120)の前記状態描写(225)は、さらに、前記ホイールダイナミクス(j)の関数である予測的な描写(228)を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの前記マトリクス(350)の前記修正係数は、上昇するスリップ(s)の順に、かつ上昇するホイール加速度(a)の順に配列されており、ならびに
少なくとも1つの前記マトリクス(350)は、第1の領域(351)を有し、前記第1の領域(351)のエレメントは、ゼロの修正係数を有する、
請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ホイール目標加速度の前記第3の値(485,495)は、前記第1の値(275)および前記第2の値(375)の和の関数である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の値(485,495)は、前記第1の値(275)および前記第2の値(375)の前記和の制限の関数である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらなるステップであって、
少なくとも1つの状況のために前記ホイール目標加速度の前記第3の値(485,495)を把握するステップであって、前記状況は、前記ホイール速度(v)、前記ホイール加速度(a)および任意選択的に前記ホイールダイナミクス(j)を包含する、ステップと、
前記第3の値(485,495)を少なくとも1つの前記マトリクス(350)の対応する前記修正係数と比較するステップと、
前記スリップ(s)が、前記第3の値(485,495)の使用時、少なくとも1つの前記マトリクス(350)の対応する前記修正係数の使用時より小さいとき、前記第3の値(485,495)のアップデートを、少なくとも1つの前記マトリクス(350)の対応する前記エレメント内にエントリするステップと、
を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
車両(100)の少なくとも1つのホイール(120)のアクチュエータ(490,480)をドライブコントロールするドライブコントロール制御部(190)であって、前記ドライブコントロール制御部(190)は、
前記ホイール(120)のホイール速度(v)を把握すべく、かつ任意選択的に、ホイール加速度(a)および/またはホイールダイナミクス(j)を把握すべく、構成されている信号把握ユニット(200)と、
所望の加速度(DrvReq)および前記車両(100)の車両速度(vGND)を把握すべく、構成されている別の把握ユニット(300)と、
ホイール速度(v)およびホイール加速度(a)から前記ホイール(120)の状態描写(225)を特定すべく、構成されている状態特定ユニット(220)と、
前記状態描写(225)、前記ホイール(120)のスリップ(s)および所望の前記加速度(DrvReq)からホイール目標加速度の第1の値(275)を特定すべく、構成されている動作特定ユニット(250)であって、前記スリップ(s)は、前記ホイール速度(v)および前記車両速度(vGND)の関数である、動作特定ユニット(250)と、
修正係数を含む少なくとも1つのマトリクス(350)を有し、かつ前記ホイール目標加速度の第2の値(375)を特定すべく、構成されている修正ユニット(360)と、
少なくとも1つの前記ホイール(120)の前記アクチュエータ(480,490)を、前記第1の値(275)と前記第2の値(375)との結合から制御すべく、構成されているアクチュエータ制御装置(400)と、
を備える、車両の少なくとも1つのホイールのアクチュエータをドライブコントロールするドライブコントロール制御部。
【請求項9】
車両(100)であって、請求項8に記載のドライブコントロール制御部(190)を備える車両。
【請求項10】
プログラムエレメントであって、請求項8に記載のドライブコントロール制御部(190)上で実行されると、前記ドライブコントロール制御部(190)に、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法を実施させるプログラムエレメント。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムエレメントが記憶されているコンピュータ可読な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つのホイールのアクチュエータをドライブコントロールする方法に関する。さらに本発明は、ドライブコントロール制御部、車両、プログラムエレメントおよびコンピュータ可読な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の少なくとも1つのホイールのアクチュエータをドライブコントロールするために、多くの場合、多数のサブシステムが使用され、これらのサブシステムの一貫性のある協働は、サブシステムが組み合わされた後に初めてテストされ、かつ/または最適化され得る。このことは、少なくとも幾つかの場合、かなりの手間あるいはコストを引き起こしてしまうことがある。ゆえに、ドライブコントロールのためのサブシステムの個数を減少させ、かつ必要な機能を、少数の、最良の場合、単一のドライブコントロール制御部にまとめることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、ドライブコントロール制御部であって、これに関係する多数のパラメータを一貫性のある形で考慮するドライブコントロール制御部を提供することである。上記課題は、独立請求項の対象により解決される。本発明の発展形は、従属請求項および以下の説明から看取可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様は、車両の少なくとも1つのホイールのアクチュエータをドライブコントロールする方法であって、
所望の加速度を把握するステップと、
車両の車両速度を把握するステップと、
ホイールのホイール速度を把握するステップと、
ホイール速度およびホイール加速度からホイールの状態描写を特定するステップであって、状態描写は、ホイール速度およびホイール加速度の関数である静的な描写を包含する、ステップと、
状態描写、ホイールのスリップおよび所望の加速度からホイール目標加速度の第1の値を特定するステップであって、スリップは、ホイール速度および車両速度の関数である、ステップと、
ホイール速度、ホイール加速度およびスリップからホイール目標加速度の第2の値を特定するステップであって、第2の値は、少なくとも1つのマトリクスの修正係数の関数である、ステップと、
少なくとも1つのホイールのアクチュエータを制御するホイール目標加速度の第3の値を特定するステップであって、第3の値は、第1の値および第2の値の関数である、ステップと、
を含む、車両の少なくとも1つのホイールのアクチュエータをドライブコントロールする方法に関する。
【0005】
車両は、例えば陸上車両であり得る。車両は、特に乗用車、バン、トラック、オートバイまたは陸上の特殊車両であり得る。車両は、少なくとも一部自動化されて走行する車両であり得る。車両は、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のホイールを有していることがある。1つのホイールとは、シングルホイール、ダブルホイール、例えばトラックまたはオートバイのダブルホイール、および/またはその他の形態の多重ホイールと解してもよい。アクチュエータは、例えばパワートレーン(powertrain)および/またはブレーキを包含し得る。パワートレーンは、内燃機関および/または電気モータを有し得る。パワートレーンは、単独のホイールに作用することもあれば、複数のホイールに作用することもあり、特にアクスルに作用し得る。ブレーキは、単独のホイールに作用することもあれば、複数のホイールに作用することもある。
【0006】
所望の加速度は、例えば、いわゆるアクセルペダル、ジョイスティック、アシスタンスシステム(例えばクルーズコントロール等)により、かつ/またはその他の形態のセンサにより把握され得る。車両の車両速度vGNDは、車両の対地速度である。車両速度は、例えば平均、多数決を介して、かつ/またはその他の方法により少なくとも2つのホイールのホイール速度から、加速度センサ、測位システム、例えばGPS(Global Positioning System)、これらの方法の組み合わせにより、かつ/またはその他の方法により求められ得る。ホイールのホイール速度は、例えば、ホイールに設けられた、かつ/またはホイールが直接結合されているアクスルに設けられた、1つまたは複数のセンサにより求められ得る。ホイール加速度あるいはホイールダイナミクスは、時間に対するホイール速度の1次あるいは2次の導関数である。ホイール加速度および/またはホイールダイナミクスは、算出され、かつ/または1つもしくは複数のセンサにより直接提供され得る。
【0007】
ホイール速度およびホイール加速度からのホイールの状態描写は、ホイール速度およびホイール加速度の関数としての静的な描写を包含する。この関数は、ホイール速度およびホイール加速度の領域の論理的な組み合わせ(例えば「目下のホイール速度は、所望のホイール速度より大きく、かつ目下のホイール加速度は、所望のホイール加速度より大きい」)を包含し得る。この場合、目下のホイール速度あるいは目下のホイール加速度は、例えばホイール速度から、そして所望のホイール速度あるいは所望のホイール加速度は、所望の加速度から求められていてもよい。この状態描写あるいはこの関数は、任意選択的にホイールダイナミクスを考慮してもよい。
【0008】
ドライブコントロールは、ホイール目標加速度、すなわち、アクチュエータに加えられる加速度(または導出される変数、例えばトルク)の特定を包含し得る。ホイール目標加速度は、複数の段階で、かつ/または複数の値の組み合わせにより特定され得る。
【0009】
ホイール目標加速度の第1の値は、定性的な値、例えば、値集合{加速、制動、停止}を包含する値を包含し得る。この定性的な値は、有利には、ホイール目標加速度の特定時の「大まかな」エラーを回避するのに寄与することができ、こうして、ホイール目標加速度の特定の結果としての不安定性を回避するのに寄与することができる。ホイール速度vおよび車両速度vGNDの関数としてのスリップsは、例えば百分率で、かつ/またはm/s単位で規定されていることができる。スリップsは、例えばs=vGND-vの式から特定されていることができる。
【0010】
ホイール目標加速度の第2の値は、定量的な値、例えば「プラス2Nm」、「マイナス0.5Nm」の値を包含し得る。少なくとも1つのマトリクスの修正係数の関数としての第2の値は、例えばマトリクスの1つのエレメントを直接引き継ぎ、重み付けおよび/または別の関数が与えられ、かつ/またはマトリクスの2つの値の間を補間し得る。マトリクスは、単一のマトリクスとして実装されていてもよいし、多数のマトリクスとして実装されていてもよい。例えば、各個々のホイールは、パワートレーンおよびブレーキのための、かつ/もしくは正および負の加速度のための、修正係数を有するそれぞれ1つのマトリクス、ならびに/またはさらなるマトリクスを有し得る。第2の値は、例えば実験的に、シミュレーションにより、エキスパートにより、ニューラルネットワークにより、かつ/またはその他の方法により求められていることができる。第2の値は、車両の稼働時間の間、不変であることもあれば、可変、例えば保守、タイヤ交換、ニューラルネットワークのトレーニングおよび/またはその他の事象もしくはトリガに基づいて可変であることもある。
【0011】
ホイール目標加速度の第3の値は、第1の値および第2の値の関数であり得る。特に第3の値は、第1の値、第2の値から、かつ/またはさらなる値および/もしくは情報から形成され得る。第3の値は、単一値として、かつ/または複合値、例えばパワートレーンとブレーキとのためにそれぞれ1つの値を有する複合値として実装されていることができる。
【0012】
本方法により、有利には、ドライブコントロールの多数の関係するパラメータが、一貫性のある形で考慮される。このことは、ドライブコントロールのテストおよび/または最適化を、より多くの観点で改善、例えばテスト時間、エラー確率、安定性、保守フレンドリ性および/またはその他の観点に関して改善し得る。特に有利であるのは、これにより、潜在的な不安定性が初めから軽減され、またはそれどころか回避され得ることである。さらに本方法により、車両の運転時間の間の、例えばシミュレーションおよび/またはラーニングマシン、例えばニューラルネットワークにおける進歩による、ドライブコントロールの最適化のための基盤が整えられ得る。この場合、特に有利であり得るのは、本方法の多くの実施の形態における変更が、マトリクスにのみ関係し得ることである。
【0013】
幾つかの実施の形態において、ホイールの状態描写は、さらに、ホイール加速度およびホイールダイナミクスの関数である動的な描写を包含する。この場合、動的な描写とは、例えば0.5ms超、1ms超、2ms超、多くの場合には、演算時間あるいはサイクルタイムの倍数である規定された過去時間窓と組み合わされた、静的な実際状態の描写と解すべきである。動的な描写のためのあり得る描写形態は、例えば、
・ホイールの状態描写が、規定された過去時間窓内で、目下、有効な状態画定領域から、例えば目下の状態描写に応じて、離脱していない(「定常状態」);
・ホイールの状態描写が、規定された過去時間窓内で、連続的に、状態画定領域を正の方向で超過していて、かつ目下の状態描写でも、正の方向でのトレンドを示している(「上昇状態&増加信号」);
・ホイールの状態描写が、規定された過去時間窓内で、連続的に、状態画定領域を正の方向で超過しているが、目下の状態描写では、反対方向でのトレンドを示している(「上昇状態&減少信号」);
・ホイールの状態描写が、規定された過去時間窓内で、連続的に、状態画定領域を負の方向で超過していて、かつ目下の状態描写でも、負の方向でのトレンドを示している(「下降状態&減少信号」);
ことを包含し得る。
【0014】
幾つかの実施の形態において、ホイールの状態描写は、さらに、ホイールダイナミクスの関数である予測的な描写を包含する。ホイール予測とは、規定された予測時間窓(未来)と組み合わされた、静的な実際状態の描写と解すべきである。ホイール予測または予測的な描写のためのあり得る描写形態は、例えば、
・ホイールの状態描写が、規定された予測時間窓内で、目下、作用しているダイナミクスでもって、目標領域におそらく当たるであろう(「ターゲットゾーン ヒット」);
・ホイールの状態描写が、規定された予測時間窓内で、目下、作用しているダイナミクスでもって、目標領域をおそらく超過する/上回るであろう(「ターゲットゾーン 横断」);
・ホイールの状態描写が、規定された予測時間窓内で、目下、作用しているダイナミクスでもって、目標領域には当たらないが、傾向としては目標領域の方向に進んでいる(「ターゲットゾーン 非横断、しかし、ターゲットゾーン方向に高い偏差」);
・ホイールの状態描写が、規定された予測時間窓内で、目下、作用しているダイナミクスでもって、目標領域に当たらず、それどころか、まだ、傾向として目標領域から離れている(「ターゲットゾーン 非横断、かつターゲットゾーンから離間方向に高い偏差」);
ことを包含し得る。
【0015】
幾つかの実施の形態において、少なくとも1つのマトリクスの修正係数またはエレメントは、上昇するスリップの順に、かつ上昇するホイール加速度の順に配列されており、ならびに少なくとも1つのマトリクスは、第1の領域を有し、第1の領域のエレメントは、ゼロの修正係数を有する。マトリクスのエレメントは、スリップ値および/またはホイール加速度値の等距離の間隔を有していることができ、かつ/または別の間隔関数を有していることができる。エレメントの「間」の修正係数は、補間可能であってもよい。ゼロの修正係数を有するエレメントは、目標スリップ領域と称呼されることがある。この種のマトリクスの使用は、ドライブコントロールの良好な事後検査可能性および/または変更可能性に寄与し得る。
【0016】
幾つかの実施の形態において、ホイール目標加速度の第3の値は、第1の値および第2の値の和の関数である。例えば第1および第2の値は、妥当性について検査されることができ、かつそれに依存して合算され得る。第1の値が例えば「維持」で、第2の値が「プラス5Nm」である場合、第2の値は、例えば考慮されずにいてもよいし、「緩和関数」にマッピングされてもよい。
【0017】
幾つかの実施の形態において、第3の値は、第1の値および第2の値の和の制限の関数である。この制限は、例えば、合算された目標モーメントが高すぎるとき、例えばパワートレーンにとって高すぎるとき、または例えば、アクスルの他のホイールの目標モーメントとは違いすぎるとき、適用され得る。制限機能は、有利には、不整合を回避し、かつ/またはドライブコントロールの安定性をさらに改善することができる。
【0018】
一実施の形態において、本方法は、さらなるステップであって、
少なくとも1つの状況のために第3の値を把握するステップであって、状況は、ホイール速度、ホイール加速度および任意選択的にホイールダイナミクスを包含する、ステップと、
第3の値を少なくとも1つのマトリクスの対応する修正係数と比較するステップと、
スリップが、第3の値の使用時、少なくとも1つのマトリクスの対応する修正係数の使用時より小さいとき、第3の値を少なくとも1つのマトリクスの対応するエレメント内にエントリするステップと、
を含む。
【0019】
これらのさらなるステップは、例えば運転中に、または中間記憶を伴って、運転休止中に、かつ/もしくは保守の間に実施され得る。ステップは、特に、方法、特にマトリクス解の内在的な柔軟性を利用し得る。これらのステップは、有利には、この車両の個別の実用値の使用によるドライブコントロールの連続的な改善に寄与し得る。
【0020】
一態様は、車両の少なくとも1つのホイールのアクチュエータをドライブコントロールするドライブコントロール制御部に関する。ドライブコントロール制御部は、この場合、ホイールのホイール速度を把握すべく、かつ任意選択的に、ホイール加速度および/またはホイールダイナミクスを把握すべく、構成されている信号把握ユニットを備えている。さらに、所望の加速度および車両の車両速度を把握すべく、構成されている別の把握ユニットを備えている。この別の把握ユニットは、目標信号把握ユニットとも称呼され得る。さらにドライブコントロール制御部は、ホイール速度およびホイール加速度からホイールの状態描写を特定すべく、構成されている状態特定ユニットと、状態描写、ホイールのスリップおよび所望の加速度からホイール目標加速度の第1の値を特定すべく、構成されている動作特定ユニットであって、スリップは、ホイール速度および車両速度の関数である、動作特定ユニットと、を備えている。さらにドライブコントロール制御部は、修正係数を含む少なくとも1つのマトリクスを有し、かつホイール目標加速度の第2の値を特定すべく、構成されている修正ユニットを備えている。第1および第2の値は、少なくとも1つのホイールのアクチュエータを、第1の値と第2の値との結合から制御すべく、構成されているアクチュエータ制御装置へ導かれる。
【0021】
一態様は、車両であって、上述のようなかつ/または以下に説明するようなドライブコントロール制御部を備える車両に関する。
【0022】
一態様は、プログラムエレメントであって、上述のようなかつ/または以下に説明するようなドライブコントロール制御部上で実行されると、ドライブコントロール制御部に、上述のようなかつ/または以下に説明するような方法を実施させるプログラムエレメントに関する。
【0023】
一態様は、上述のようなプログラムエレメントが記憶されているコンピュータ可読な媒体に関する。
【0024】
本発明を改良するさらなる構成について、以下に本発明の好ましい実施例の説明とともに図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施の形態による車両の概略図である。
図2】一実施の形態によるドライブコントロール制御部の概略図である。
図3】一実施の形態によるマトリクスの概略図である。
図4】一実施の形態によるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、一実施の形態による車両100の図を概略的に示している。図示の実施例の車両は、これにより普遍性を制限するものではないが、4つのホイール120を備え、ホイール120は、ブレーキ140を有している。ブレーキ140は、アクチュエータ490により駆動される。例示的な、代替的な一実施の形態において、アクチュエータ490は、例えばブレーキ140の一部であってもよい。別の実施の形態も可能である。車両100は、さらにアクチュエータ480を備え、アクチュエータ480は、例えばパワートレーンの一部であってもよい。車両100は、さらに各ホイール120のホイール速度vのためのセンサ150を備え、センサ150は、例えばホイール120にかつ/またはアクスルに配置されていることができる。センサ150は、さらにホイール加速度aおよび/またはホイールダイナミクスjを提供するものであってもよい。さらに車両は、例えばアクセルペダル、ジョイスティック、アシスタンスシステム(例えばクルーズコントロール)および/またはその他のソースの所望の加速度DrvReqのための1つまたは複数のセンサ160を備えている。加えて車両は、車両100の車両速度vGNDのための1つまたは複数のセンサ170を備えている。センサ150,160,170の信号は、ドライブコントロール制御部190の入力部へ導かれる。ドライブコントロール制御部190の信号485,495は、アクチュエータ480,490へ導かれる。
【0027】
図2は、図1のドライブコントロール制御部190の詳細を概略的に示している。同じ符号は、同じまたは類似のコンポーネントを指している。ホイール120のホイール速度vを把握すべく、かつ任意選択的に、ホイール加速度aおよび/またはホイールダイナミクスjを把握すべく、構成されている信号把握ユニット200は、ホイール120の各々のためのセンサ150から、各ホイール120のホイール速度vの信号205ならびに任意選択的にホイール加速度aおよび/またはホイールダイナミクスjの信号を受ける。信号aおよびjがセンサ150により提供されない場合、これらの信号は、例えば信号把握ユニット200により形成されてもよい。信号v,a,j 215は、状態特定ユニット220に導かれ、状態特定ユニット220は、上記ホイールあるいは各ホイール120の状態描写225をvおよびaから、任意選択的にはjからも、特定すべく、構成されている。
【0028】
センサ150,160,170の信号305は、別の把握ユニット300へ導かれ、この別の把握ユニット300は、(センサ160からの)所望の加速度DrvReqおよび(センサ170からの)車両100の車両速度vGNDを把握すべく、構成されている。スリップsは、把握ユニット300によりかつ/または後置のコンポーネントにより形成され得る。スリップsは、ホイール120の各々のために、ホイール速度vおよび車両速度vGNDの関数として形成され得る。動作特定ユニット250は、ホイール目標加速度の第1の値275を、状態描写225、ホイール120のスリップsおよび所望の加速度DrvReqから特定する。第1の値275は、例えば集合{加速、制動、停止}から選択されていてもよいし、この集合を包含していてもよい。修正ユニット360は、ホイール目標加速度の第2の値375を、ホイール速度v、ホイール加速度aおよびスリップsから特定する。その際、修正ユニット360は、少なくとも1つのマトリクス350を有し、マトリクス350は、修正係数を含んでいる。少なくとも1つのマトリクス350の修正係数は、例えば上昇するスリップsの順に、かつ上昇するホイール加速度aの順に配列されていてもよい。マトリクス350内の「空白」、例えば、ある特定のスリップsに対するかつ/またはある特定のホイール加速度aに対するマトリクス350内のエントリが存在しないときは、例えば補間により「埋められ」てもよい。
【0029】
動作特定ユニット250あるいは修正ユニット360の出力信号275,375は、アクチュエータ制御装置400に導かれる。合算ユニット420は、出力信号275,375の値を合算し、かつ/または各ホイール120のために、出力信号275,375の関数である信号を形成し得る。制限ユニット440は、合算ユニット420の出力信号を制限、例えば機能性および/または妥当性検査により制限し得る。これらの検査のアルゴリズムは、例えばパワートレーン480および/またはブレーキ490,140の最大出力を考慮し得る。これらの検査のアルゴリズムは、例えばホイール120の機能的な関係、例えば(機械式および/または電子式の)差動を考慮し得る。アクチュエータ制御装置400の出力信号485,495は、パワートレーン480あるいはブレーキ490,140に導かれる。
【0030】
ドライブコントロール制御部190は、任意選択的に学習ユニット450を備えていてもよい。この場合、学習ユニット450は、少なくとも1つの状況のために、1つまたは複数の第3の値485,495を把握し得る。この状況は、ホイール速度v、ホイール加速度aおよび任意選択的にホイールダイナミクスjを包含し得る。学習ユニット450は、第3の値485,495を少なくとも1つのマトリクス350の対応する修正係数と比較し得る。さらにスリップsが、第3の値485,495の使用時、少なくとも1つのマトリクス350の対応する修正係数の使用時より小さいとき、第3の値485,495のアップデートが、少なくとも1つのマトリクス350の対応するエレメント内にエントリし得る。これにより学習ユニット450は、この車両100のドライブコントロールの「実際の使用」から学習し、制御をこれにより改善することができる。代替的または付加的に、1つのマトリクス350をアップデートする別の可能性が実装されていてもよい。
【0031】
ドライブコントロール制御部190のコンポーネントは、ハードウェア、ソフトウェアとして、かつ/またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから実現されていてもよい。コンポーネントは、空間的に分配されて、または単一の制御装置内で実現されていてもよい。
【0032】
図3は、一実施の形態によるマトリクス350を概略的に示している。マトリクス350のエレメントは、修正係数を包含し、修正係数は、各1つのホイール120のための第3の値375を形成するのに寄与し得る。少なくとも1つのマトリクス350の修正係数は、上昇するスリップsの順に(例えば水平方向に)、かつ上昇するホイール加速度aの順に(例えば鉛直方向に)配列されている。マトリクス350は、第1の領域351を有していることができ、第1の領域351のエレメントは、ゼロの修正係数を有している。マトリクス350のその他の領域は、例えば以下のように特徴付けられ得る:
領域352:スリップsは、より小さく、ホイール加速度は、約ゼロである;
領域353:スリップsは、より小さく、ホイール加速度は、より大きい;
領域354:スリップsは、約ゼロであり、ホイール加速度は、より大きい;
領域355:スリップsは、より大きく、ホイール加速度は、より大きい;
領域356:スリップsは、より大きく、ホイール加速度は、約ゼロである;
領域357:スリップsは、より大きく、ホイール加速度は、より小さい;
領域358:スリップsは、約ゼロであり、ホイール加速度は、より小さい;
領域359:スリップsは、より小さく、ホイール加速度は、より小さい。
マトリクスのエレメントは、スリップ値および/もしくはホイール加速度値の等距離の間隔を有していることができ、かつ/または別の間隔関数を有していることができる。エレメントの「間」の修正係数は、補間可能であってもよい。
【0033】
図4は、一実施の形態によるフローチャート500を示している。ステップ502において、方法を開始する。ステップ504において、所望の加速度DrvReq(図2参照)を把握する。ステップ506において、車両100の車両速度vGNDを把握する。ステップ508において、ホイール120のホイール速度vを把握する。ステップ504,506,508は、略並行に実施してもよい。
【0034】
ステップ510において、ホイール速度vおよびホイール加速度aからホイール120の状態描写225を特定する。状態描写225は、ホイール速度vおよびホイール加速度aの関数である静的な描写226を包含する。ステップ512において、状態描写225、ホイール120のスリップsおよび所望の加速度DrvReqからホイール目標加速度の第1の値275を特定する。このとき、スリップsは、ホイール速度vおよび車両速度vGNDの関数である。ステップ514において、ホイール速度v、ホイール加速度aおよびスリップsからホイール目標加速度の第2の値375を特定し、このとき、第2の値は、少なくとも1つのマトリクス350の修正係数の関数である。ステップ510,512と、ステップ514とは、略並行に実施してもよい。
【0035】
ステップ516において、少なくとも1つのホイール120のアクチュエータ580,590を制御するホイール目標加速度の第3の値585,595を特定し、このとき、第3の値585,595は、第1の値275および第2の値375の関数である。ステップ502ないし516は、規則的に、例えば周期的に、例えば1ms、2ms、5ms毎に、かつ/または別の周期性もしくはサイクルタイムでもって反復され得る。
【符号の説明】
【0036】
100 車両
120 ホイール
140 ブレーキ
150 センサ
160 センサ
170 センサ
190 ドライブコントロール制御部
200 信号把握ユニット
205 信号
215 信号
220 状態特定ユニット
225 状態描写
226 静的な描写
227 動的な描写
228 予測的な描写
250 動作特定ユニット
275 ホイール目標加速度の第1の値、動作特定ユニットの出力信号
300 別の把握ユニット
305 信号
350 マトリクス
351 第1の領域
352 領域
353 領域
354 領域
355 領域
356 領域
357 領域
358 領域
359 領域
360 修正ユニット
375 ホイール目標加速度の第2の値、修正ユニットの出力信号
400 アクチュエータ制御装置
420 合算ユニット
440 制限ユニット
450 学習ユニット
480 アクチュエータ、パワートレーン
485 ホイール目標加速度の第3の値、ドライブコントロール制御部の信号、アクチュエータ制御装置の出力信号
495 ホイール目標加速度の第3の値、ドライブコントロール制御部の信号、アクチュエータ制御装置の出力信号
490 アクチュエータ、ブレーキ
500 フローチャート
502 ステップ
504 ステップ
506 ステップ
508 ステップ
510 ステップ
512 ステップ
514 ステップ
516 ステップ
a ホイール加速度
DrvReq 所望の加速度
j ホイールダイナミクス
s スリップ
v ホイール速度
GND 車両速度
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】