(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】超微細磁性ナノワイヤー内の磁化不均一性の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 27/83 20060101AFI20240711BHJP
G01R 33/24 20060101ALI20240711BHJP
G01R 33/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N27/83
G01R33/24
G01R33/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501514
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 IB2022056427
(87)【国際公開番号】W WO2023285966
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522488524
【氏名又は名称】キューナミ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】マレティンスキー・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ハイ
(72)【発明者】
【氏名】ファヴァーロ・デ・オリヴェイラ・フェリペ
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AA08
2G017BA15
2G017BA18
2G017CA08
2G017CA10
2G017CB03
2G017CB23
2G053AA11
2G053AB22
2G053BA02
2G053BA13
2G053CA01
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】スピントロニクス装置の弱点を特定することで信頼性の向上につなげる。
【解決手段】本発明は、ナノメートルの断面寸法を持つ単一の長手方向に異方性の磁性試料構造中のナノ欠陥に起因する1つ以上の磁気的不均一性を非摂動的に検出する方法に関する。単一のスピン欠陥を持つ固体格子を使って異方性磁性試料構造の磁力計測評価を行い、試料構造中の微小欠陥及び不整合に関する定量的情報を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノメートルの断面寸法、好ましくは、1nmから500nmのナノメートル断面寸法を持つ長手方向に異方性の磁性試料構造中のナノ欠陥に起因する1つ以上の磁気的不均一性を非摂動的に検出する方法であって、
a)固体格子センサーの頂点に1つの単一スピン欠陥(NV)がある、ダイヤモンド材料の前記固体格子センサー(5)の検出面を、前記磁性試料構造に近いところにある第1走査位置に、移動可能に位置決めするステップと、
b)照射された1スピン欠陥が磁性試料構造の磁場に曝されたときにゼーマンシフトを検出するように、連続的に又は1つ以上のパルスで光放射(L)及びマイクロ波磁場を、前記1スピン欠陥(NV)に適用することによって、前記1スピン欠陥(NV)を照射するステップと、
c)前記1スピン欠陥(NV)がある前記固体格子センサー(5)からフォトルミネッセンス(PL)出力信号を検出するステップと、
d)前記磁性試料構造上の磁場空間分布に関する定量的情報を得るように、前記磁性試料構造の長さの少なくとも一部にわたって、一連の走査位置でステップa)からc)を実行する際に、前記磁性試料構造の表面を走査するステップと
を備える、磁気的不均一性を非摂動的に検出する方法。
【請求項2】
前記スピン欠陥(NV)は、ダイヤモンド格子中の窒素空孔(NV)の点欠陥である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ダイヤモンドの前記センサーは単結晶ダイヤモンドセンサーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁性試料構造の走査された部分に沿って磁化分布の検出された不均一性をマッピングするステップを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記走査位置における磁場強度が、その走査位置におけるPL出力信号の強度に関係している、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
光検出磁気共鳴(ODMR)スペクトルが各走査位置で記録される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
磁場強度が、記録されたODMRスペクトルの共鳴ピークの分離に基づいて決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
幾何学的、化学量論的、又は化学組成の不整合と、結晶性又はアモルファス性の欠陥との少なくとも一方といった、局所的な不整合及び欠陥との少なくとも一方を、特定することと定量化することとの少なくとも一方を行うのに、検出された磁場分布の不均一性が、選択的には予め定めたデータのセットに基づいて使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記予め定めたデータは、経験的データ、例えば、同等又は実質的に同じ磁性試料構造の過去の計測から得られたデータに基づいている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記固体格子センサーの検出面は、試料表面から100nmを超えずに、又は50nmを超えずに、又は20nmを超えずに、好ましくは10nmを超えずに、又は1nmを超えずに配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記スピン欠陥は、好ましくは前記固体格子センサーの前記検出面から100nm以下、50nm以下、20nm以下、理想的には10nm以下に位置する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記固体格子センサーは、10μT/√Hz以下、又は5μT/√Hz以下、好ましくは2.5μT/√Hz以下の検出感度を持つ、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記磁性試料構造は、単一の容易軸を持つ一軸試料構造であり、磁化が前記磁性試料構造の単一の容易軸に沿って整列されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記磁性試料構造は、その主軸に垂直な少なくとも1つの最大横寸法が50nm未満、又は30nm未満、好ましくは10nm未満である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記磁性試料構造は、強磁性体、反強磁性体、半導体又は常磁性試料構造である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記磁性試料構造はナノワイヤー又はナノチューブである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
キャリア基板上に配置された、又はキャリア基板に埋め込まれた複数のナノワイヤーを走査するように構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピントロニクス装置で使用されるスイッチング素子の構造的完全性を定量化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピントロニクス装置の開発の成功は、ロジック及びメモリ動作を実行するための磁気スイッチング素子の利用可能性の上に成り立っている。磁性ナノワイヤー(NWs)は、信頼性が高く、設計の柔軟性、大面積製造のための複数の選択肢、及び形状や異方性によってワイヤーの磁気特性を調整するための代替戦略を提供すると考えられているため、不可欠なビルディングブロックである。
【0003】
スピントロニクス装置における用途に、NWsは通常、例えばシリコンや二酸化ケイ素(SiO2)のキャリア材料上にパターニングされる。このようなNW組立体では、基板の幅1ミリメートル(mm)あたり3,000から20,000本のNWなど、多数のナノワイヤーを高密度に配置できる。NWsは通常、キャリア材料の面積に均一に分布している。スピントロニクス装置用のスイッチング組立体は、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)製造プロセスのゲートスペーサに類似したサブトラクティブパターニングによって作製できる。
【0004】
パターン化された磁性ナノワイヤーは、ドメインウォール(DW)の高速伝搬と、成長し続けるスピントロニクス装置の高記憶密度に最適な媒体である。ロジックとメモリの両方の用途に有効なNWベースの装置は、高速スイッチング速度、優れたスケーラビリティ、及び低消費電力動作を提供する。最も重要なことは、NWsは、双安定な磁気配置、単一の磁気容易軸、ワイヤー形状や異方性を変えることで調整可能な特性を得るのに便利なアーキテクチャであるということである。
【0005】
重要なことは、ワイヤーの全長に沿った大きな一軸磁気異方性、すなわち形状異方性は、DWが意図的に注入されない限り、ナノワイヤーがワイヤーの全長に沿って迷走磁場を発生させるはずのない単一の磁区を持つことを示唆していることである。DWは、例えば、ナノワイヤーに沿った交流消磁や、ナノワイヤーに垂直なサブテスラ磁場の適用によって人為的に導入可能である。このような理由から、ナノワイヤー、特に幅が10ナノメートル(nm)以下の超微細NWsは、一般に、高密度データと計算の分野における新たなデバイスコンセプトの統合のフロントランナーとして考えられている。
【0006】
DWの位置操作によるメモリやロジック機能の動的スイッチング装置の工学技術と制御に、長年研究が集中してきた。その際、スピントロニクスの関係者の組織(コミュニティ)は、磁気欠陥及び局所的な不均一性が、NWsベースの装置の電気的又は磁気的スイッチングに大きな影響を与えること、ひいてはこれらの装置の性能及び信頼性に大きな影響を与えることを明確に認識してきた。
【0007】
これらの研究により、DW操作に基づく新しい装置への道が開かれた一方で、個々の欠陥の局所的な検出、(大面積にわたる)微弱磁場分布の非摂動的な特性評価、及び3次元(3D)磁場配向の再構成は、今日のコミュニティにとって依然として重要な課題である。
【0008】
スピントロニクス技術の進歩に伴い、NWsの工学技術及び製造は継続的に最適化されてきた。最先端のNWsは、一般に、浮遊磁場がなく、ワイヤーに沿って単一の磁区を持つ均質なものであると認識されている。
【0009】
磁気スイッチング素子の完全性は、スピントロニクス装置のロジック及びメモリ動作の信頼性と有効性の基本であることから、磁気力顕微鏡(MFM)のような技術を使って、NWsの想定される磁気的均一性が広範囲にわたって研究されてきた。現在のところ、MFM計測によってNWのナノ欠陥又は不整合が確認されていないことから、最先端のNWsにはほとんど欠陥がないと考えられている。このような欠陥は、ワイヤーに沿った磁化や材料分布の不均一性によって発生する浮遊磁場を生じさせる。
【0010】
この10年間で、ダイヤモンドの固体欠陥、すなわち窒素空孔(NV)中心を利用した走査プローブ顕微鏡法は、従来の試料の熱的特性だけでなく磁気的特性もナノメートル領域の空間分解能でマッピングできるようになり、大きな進歩を遂げた。現在、最初の商用システムが利用可能になっている。
【0011】
例えば、特許文献1は、ダイヤモンドナノピラーであるアウトカップリング構造と、センシングアウトカップリング構造の頂点に位置するスピン欠陥とを持つダイヤモンドセンシングプローブを開示している。
【0012】
特許文献2には、スピン欠陥を持つマイクロスケールのプローブに基づくセンサー装置が開示されている。このセンサー装置は、スピン欠陥から500マイクロメートル未満の距離に配置されたマイクロ波アンテナをさらに備えている。
【0013】
近年、NWsの作製はより洗練され、信頼性が高まっていて、その結果、工業的要件を満たし、スピントロニクスの用途に適した装置が得られるようになった。製造技術の進歩は、信頼性の高い性能を得るためには構造的及び化学的均質性が極めて重要である、断面寸法がますます小さくなる微細化されたNWsの需要の高まりに応えるために、ますます重要になっている。
【0014】
MFM評価に基づくとともに、SEM及びTEM評価に基づき、最先端技術に従って製造されたNW、例えば、非特許文献1に開示されているようなNWsは、DWの伝搬と、メモリ及びロジック機能との少なくとも一方に必要な動的スイッチングに影響を与える可能性のある欠陥がないことが確認されている。
【0015】
MFM画像はNWsに意図的に注入されたDWを識別できたが非特許文献2といった先行研究では、ドメイン自体は均質に見えた。実際、これらの研究は、NWの形状異方性がその磁気配置を決定することを発見し、NWの単一磁区状態を確認した。
【0016】
非特許文献3は、ドメインウォールホッピングを画像化し制御するための走査型NV中心顕微鏡(単一NV中心)の使用を開示している。研究対象とした磁性試料構造は、1.5μm幅のTa/CoFeB/MgOの縞模様(ストライプ)を持つ垂直磁化極細ストライプである。短い磁場パルスを適用することにより、これらの構造にDWを導入した。本研究で撮像した試料構造にはナノ欠陥は検出されなかった。
【0017】
上述の方法では検出できなかったかもしれない、パターン化されたNWs中の仮想的なナノ欠陥は、これらの方法で検出できるような浮遊磁場を生じさせるほど重大なものではないと予想される。
【0018】
この分野での心強い進歩にもかかわらず、スピントロニクス装置は、広範囲の基本的な磁気現象に影響されることが示されていて、その一部は本質的に確率的であるため、その制御、観察、物理解析に大きな課題を突きつけている。
【0019】
今日、データ処理速度の高速化とデータ保存能力の向上に対するニーズが高まっていて、スピントロニクス装置の拡張性、信頼性、品質に大きな圧力がかかっている。技術への要求が高まるにつれ、これらの装置の製造において品質管理が重要な課題となる。そのため、スピントロニクス装置の信頼性や性能に影響を与える可能性のある潜在的な弱点を検出して定量化する信頼性の高い方法が、必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2014/051886号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3376245号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】S. Dutta et al., “Sub-100 nm2 Cobalt Interconnects,“ in IEEE Electron Device Letters, vol. 39, no. 5, pp. 731-734, May 2018, doi: 10.1109/LED.2018.2821923
【非特許文献2】Berganza E. et al., 2017, Nature Scientific Reports 7: 11576 | DOI:10.1038/s41598-017-11902-w; and Gartside J. C. et al., 2016, Nature Scientific Reports, 6: 32864 | DOI: 10.1038/srep32864
【非特許文献3】Tetienne J.-P. et al., 2014, Science, vol. 344, no.6190, p. 1366-1369 | DOI:10.1126/science.1248459
【非特許文献4】T. Hingant, et al. Phys. Rev. Applied 4, 014003 (2015), https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.4.014003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、スピントロニクス装置の信頼性を向上させることにある。特に、本発明は、スピントロニクス装置の信頼性と性能との少なくとも一方に悪影響を及ぼし得るスピントロニクス装置の潜在的な弱点を特定することに着手した。
【0023】
本発明のもう一つの目的は、スピントロニクス素子の品質管理を向上させるのに適した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明では、これらの目的は、添付の特許請求の範囲、特に独立請求項の目的によって達成される。
【0025】
特に、この目的は、ナノメートル(nm)の断面寸法を持つ長手方向に異方性の磁性試料構造におけるナノ欠陥に起因する1つ以上の磁気不均一性を非摂動的に検出する方法を提供することによって達成される。この方法は、
a)固体格子センサーの頂点に1つの単一スピン欠陥(NV)がある、ダイヤモンド材料の前記固体格子センサー(5)の検出面を、前記磁性試料構造に近いところにある第1走査位置に、移動可能に位置決めするステップと、
b)照射された1スピン欠陥が磁性試料構造の磁場に曝されたときにゼーマンシフトを検出するように、連続的に又は1つ以上のパルスで光放射(L)及びマイクロ波磁場を、前記1スピン欠陥(NV)に適用することによって、前記1スピン欠陥(NV)を照射するステップと、
c)前記1スピン欠陥(NV)がある前記固体格子センサー(5)からフォトルミネッセンス(PL)出力信号を検出するステップと、
d)前記磁性試料構造上の磁場空間分布に関する定量的情報を得るように、前記磁性試料構造の長さの少なくとも一部にわたって、一連の走査位置でステップa)からc)を実行する際に、前記磁性試料構造の表面を走査するステップと
を備える。
【0026】
異方性の磁性試料構造の長さに沿った最も広い断面のナノメートル寸法は、その長さに沿って1nmから500nm、好ましくは1nmから50nmの範囲で構成される。
【0027】
長手方向に異方性の磁性試料構造は、好ましくはナノワイヤーである。
【0028】
本明細書で使用する「ナノワイヤー」という用語は、その長さに沿って1nmから500nm、又は1nmから50nmの断面寸法を持つワイヤーを指す。構造体の長手方向の寸法は、ワイヤーの最も幅の広い断面寸法よりも少なくとも100倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも10倍大きい。ワイヤーの断面寸法は、好ましくは、ワイヤーの長さにわたって10%を超えて、又は20%を超えて、又は50%を超えて、又は100%を超えて変化しないことが望ましい。
【0029】
試料構造の異方性エネルギーは、好ましくは、試料構造の形状異方性によって大きく支配される。したがって、試料構造の異方性は、好ましくは形状誘起異方性である。
【0030】
好ましくは、カラーセンター(色中心)とも呼ばれるスピン欠陥は、ダイヤモンド格子中の窒素空孔(NV)の点欠陥である。
【0031】
注目すべきは、一般的な理解にもかかわらず、また合理的な予想に反して、本方法は異方性磁性試料構造の磁場分布における不均一性を検出可能である。このような磁性試料構造の磁化における欠陥の検出は予想外であり、MFMのような当該技術分野で使用されている従来の方法では検出不可能な仮説的な欠陥は、これらの構造の表面付近の大きな磁気異方性分布を克服するには常に不十分であると推定されてきたからである。
【0032】
既知のものに関して、本発明は、ナノワイヤーには浮遊磁場を生じさせる局所的なナノ欠陥がないという一般に受け入れられている理解を克服するため、最先端技術に新たな洞察をもたらすという有利点を提供する。本明細書で使用する「ナノ欠陥」という用語は、50nmを超えない、20nmを超えない、好ましくは10nmを超えない、又は5nmを超えない最大横断寸法を持つ、構造欠陥と化学組成の不均一性との少なくとも一方を意味する。
【0033】
本発明は、これに反する確かな証拠を提供する。本発明は、これまで無欠陥と推定されていたナノ構造、特にナノワイヤーが、実際にはこれまで特定されることのなかった微小な欠陥を含んでいる可能性があることを実証している。これらの欠陥が、異方性ナノ構造の性能と品質に与える影響を評価し、相関させることが初めて可能になった。また、このような欠陥の特定は、NWsの挙動を記述し予測する数理モデルを改良する上でも重要である。したがって、本発明は最先端技術に大きく貢献するものである。
【0034】
さらに、これらのナノ欠陥は、ナノスケールの空間精度で特定及び局在化できるようになり、個々のNWsの局所的な品質を決定できるようになった。この方法は非摂動的かつ非破壊的であるため、NWsの完全性に影響を与えたり、組成に干渉したりすることなく、NWsの欠陥及び不均一性を計測可能である。個々の構造の品質に関する情報は、品質管理と保証工程との少なくとも一方における判断の基礎となる。
【0035】
一実施形態では、この方法は、磁性試料構造の走査部分に沿って磁場分布の検出された不均一性をマッピングするさらなるステップを備える。したがって、試料構造と化学組成との少なくとも一方における個々の欠陥を局在化できる。さらに、欠陥の望ましくない蓄積といった特定の属性を持つ試料構造の特定の部分を特定可能である。好ましい実施形態では、本方法は、異方性試料構造の磁化における30%以下、好ましくは20%以下、又は10%以下の局所的変動を検出可能である。この範囲の局所変化の検出は、100nm未満、例えば50nmから60nmの間の空間分解能を持ち、10μT/√Hz以下、又は5μT/√Hz以下、好ましくは2.5μT/√Hz以下の検出感度を持つ検出システムが使用される場合に可能である。高い空間分解能は、固体格子センサーの検出面から100nm以下、50nm以下、20nm以下、理想的には10nm以下のスピン欠陥の位置を特定することで達成される。
【0036】
このような変動は、構造的欠陥のほか、NWsの化学組成の局所的な変動の結果であるかもしれない。
【0037】
任意の走査位置における磁場強度は、磁場強度に関連するPL出力信号に基づいて計算してよい。この関係は比例関係であってもよい。
【0038】
走査位置における完全な磁場分布を決定するために、光学的に検出された磁気共鳴(ODMR)スペクトルを記録してよい。この目的のために、センサーの頂点のスピン欠陥は、例えば1GHzから10GHz、好ましくは2.5GHzから3.5GHzの範囲の周波数のマイクロ波フィールドで操作される。
【0039】
この実施形態では、走査位置における磁場強度は、適用するマイクロ波周波数を掃引し、NV中心から放出される光子を計数することによって生成されるODMRスペクトルの共鳴頂点を特定することに基づいて決定してよい。PL出力信号の頂点間の分離距離は、走査位置における試料の磁場強度に比例する。
【0040】
好ましくは、固体格子センサーは、各位置で、例えば全磁場分布走査といった走査を実行する試料の幅を横切る一連の後続の走査位置を通って移動される。その後、固体格子センサーは試料構造の長さに沿った走査位置に移動され、各位置でさらなる走査を行う。このようにして、交差掃引走査の各位置で受信した情報を組み立て、試料の走査部分の長さを包含する連続した交差掃引走査を組み立てることによって、表面の完全な走査を得られる。
【0041】
走査は、試料構造体を横切って試料構造体に沿って移動する1つのセンサーによって実行されてもよい。走査はまた、複数のセンサーによって実行されてもよく、これらのセンサーは、異なる位置で試料を走査してもよい。複数のセンサーは、それぞれの走査を同時に行ってもよい。代替的に、又は追加的に、複数のセンサーはそれぞれの走査を順次行ってもよい。
【0042】
特定された磁場分布の不均一性は、局所的な不整合又はナノ欠陥の特定と定量化との少なくとも一方に使われる。このような不整合は、例えば、不整合な形状、例えば、途切れ、粗さ、形状変形、縁であることがある。欠陥は、例えば、結晶性の局所的な変化、構造の点欠陥、非晶質領域の欠陥、固有組成の欠陥、又は化学的欠陥のことがある。
【0043】
磁場分布内に特定された不均一性は、DWに起因する場合もある。特定された不均一性は、磁性試料構造における異なる磁気モーメント間の遷移に関連する可能性がある。また、NW方向に平行な磁化の様々な回転を伴う、渦と、横方向のDWとの少なくとも一方に関連する場合もある。
【0044】
可能な1実施形態では、欠陥の定量的性質と定性的性質との少なくとも一方に関する情報は、計測された磁気的不均一性を所定のデータと比較することによって得られる。
【0045】
定量的性質は、試料構造の一部において検出された不均一性の、量と周期性との少なくとも一方に関係する。定量性はまた、磁気的不均一性の大きさや重大性にも関係する。
【0046】
定性的な性質は、根本的な欠陥の特徴的な性質に関係する。定性的評価は、例えば、基本的な構造欠陥と不均一な化学組成との少なくとも一方と、DWとを識別可能である。
【0047】
所定のデータは、例えば経験的データ、例えば同等又は実質的に同じ磁性試料構造の過去の計測から得られたデータに基づいてよい。
【0048】
加えて、又は代替的に、ワイヤーの欠陥と不整合を解釈と特徴付けとの少なくとも一方を行うために、所定のデータをモデル化するべくシミュレーションを実行してよい。
【0049】
また、DWの存在によって磁化対称性がいつ自然に破れるかを予測するために、予め定めたデータとシミュレーションとの少なくとも一方を使ってよい。
【0050】
異方性試料構造に沿った浮遊磁場の検出には、100nm以下、又は50nm、又は20nm以下、理想的には10nm以下といったナノメートル範囲の空間分解能が望ましい。
【0051】
この空間分解能の達成には、スピン欠陥と試料表面との間の距離が磁力計の空間分解能を決定するので、スピン欠陥と試料表面の間の距離は、固体格子センサーの検出表面、その結果試料の表面に可能な限り近くあるべきである。空間分解能は、スピン欠陥と試料表面の間の距離が長くなるにつれて低下する。
【0052】
このため、スピン欠陥は固体格子センサーの検出面から100nm以下、50nm以下、20nm以下、理想的には10nm以下に配置することが好ましい。
【0053】
固体格子センサーの検出面を、試料表面から100nm以下、又は50nm以下、又は20nm以下、好ましくは10nm以下、又は1nm以下の距離に配置することが、さらに好ましい。
【0054】
好適な固体格子センサーは、例えば単結晶ダイヤモンドセンサーである。単結晶ダイヤモンドで作られたセンサーの製造は再現性が高い。NV中心は10nm以下の精度で作成できるため、これらのセンサーによる計測は極めて信頼性が高い。単結晶ダイヤモンドセンサーはまた、特にナノダイヤモンドを原子間力顕微鏡(AFM)の先端に取り付けたセンサーに比べて、より堅牢で予測可能である。ナノダイヤモンドをAFMの先端に取り付ける場合、ナノダイヤモンドの配向を十分に制御できないので、計測データの後処理が困難になる。この欠点は、単結晶ダイヤモンド構造のセンサーを提供することによっても克服される。
【0055】
好ましくは、固体格子センサーは、磁性試料構造の不均一性から生じるサブmT範囲の浮遊磁場の非摂動検出に適している。
【0056】
好適な固体格子センサーは、ナノスケールのアウトカップリング構造、好ましくは、ナノピラー(柱)又はコーン(円錐)の自由端に向かって先細になるナノコーンであって、その頂点の近傍に単一のスピン欠陥を持つアウトカップリング構造を備えてよい。
【0057】
好適な固体格子センサーは、センサーの自由端に向かって先細になる切り詰められた円錐形又はピラミッド形を持つマイクロスケールの容積を持つセンサーであってもよい。このセンサーは、例えば、200nmから500nmの最大横断寸法持ち得る。この円錐形又は角錐形のセンサーは、例えば、センサーの高さに対して2°から45°の間、好ましくは5°から15°の間の側壁傾斜角を持ってよい。
【0058】
好適な固体格子センサー、又はセンサーのアウトカップリング構造は、最大横断寸法が500nm以下、又は200nm以下、又は100nm以下、又は50nm以下、又は20nm以下の平坦な頂点を備えてよい。
【0059】
センサーは、丸みを帯びた頂点を備えてもよい。センサーは、100nm未満、又は10nm未満、又は1nm未満の曲率半径を持つ鋭利な頂点を備えてよい。
【0060】
有利には、異方性試料構造の磁気計測は、周囲条件で実施してよい。
【0061】
本明細書で開示する方法は、単一の磁化容易軸を持つ一軸性試料構造の磁場分布の計測や浮遊磁場の検出に適している。これらの磁性試料構造では、磁化は単一の容易軸に沿って整列している。
【0062】
本明細書に記載の方法は、主軸に垂直な最大横寸法が50nm未満、又は30nm未満、好ましくは10nm未満の試料構造の磁性特性評価に特に適している。
【0063】
このような試料構造は、例えば、ナノワイヤー又はナノチューブであってもよい。ナノワイヤー又はナノチューブは、キャリア基板上にパターニングしてよい。
【0064】
本明細書に記載の方法は、強磁性体、又は反強磁性体、又は半導電体、又は常磁性体である試料構造を計測するように構成してよい。
【0065】
本明細書に記載の方法は、試料構造の材料又は化学組成に特に限定されない。試料構造は、例えばアモルファス材料で構成されていてもよい。試料構造体は金属製であってもよい。試料構造体は合金であってもよい。試料構造はまた、生物学的試料構造、例えば常磁性試料構造であってもよい。
【0066】
本方法はさらに、例えば磁性主構造のサブユニットであってもよい、直線的に整列した磁性試料構造における磁気的不均一性を検出するように構成してもよい。
【0067】
本発明で開示する方法は、ナノメートル断面寸法を持つ長手方向に異方性の磁性試料構造の性質に特に限定されない。
【0068】
本明細書に示す方法は、磁性縦型ナノ構造におけるナノ欠陥の存在を検出するのに適している。さらに、これらのナノ欠陥の定量的特性と定性的特性との少なくとも一方の評価に適している。
【0069】
この方法は、例えば、NWの内部間隙、飽和磁化の変動と、NW軸方向に垂直な粒界との少なくとも一方を検出するのに使ってよい。また、この方法は、NWsに沿った磁化の局所的な揺らぎを引き起こす可能性のある他の物理的又は化学的欠陥の検出に使ってよい。
【0070】
さらに、本発明の方法は、NW方向に平行な磁化の様々な回転を伴う、渦壁及び横断壁を含む様々なタイプのDWによって誘起される微視的な磁気効果を検出するのにも適している。本発明は、このような微視的な(微弱な)磁気欠陥を直接プロービングする方法を提供し、出現しつつあるスピントロニクス装置の多くにおいて、これまでにない高精度かつ定量的な精度でスピン輸送を制御し、調整する道を開くものである。
【0071】
本発明の例示的な実施形態が、本明細書に開示され、以下の図面によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1A】
図1A及び
図1Bは、NWアレイを計測する窒素空孔磁気計測(SNVM)セットアップの可能な実施形態の概略図であり、
図1Aは、走査システムが一定の周波数シフトモードで動作していることを示す。
【
図1B】
図1A及び
図1Bは、NWアレイを計測する窒素空孔磁気計測(SNVM)セットアップの可能な実施形態の概略図であり、
図1Bは、高さ一定モードで動作する走査システムを示す。
【
図2A】
図2A及び
図2Bは、検出された欠陥がクロスハッチングされた領域として描かれたNWの2つの異なる断面図の概略図であり、
図2Aは側面図である。
【
図2B】
図2A及び
図2Bは、検出された欠陥がクロスハッチングされた領域として描かれたNWの2つの異なる断面図の概略図であり、
図2Bは上面図である。
【
図3A】
図3Aは、ダイヤモンド中の負に帯電したNV中心のさまざまなエネルギー準位の模式図であり、連続マイクロ波励起下での基底状態又は蛍光明段状態m
s=0から蛍光暗段状態m
s=+/-1への遷移が、波打った矢印で示されている。
【
図3B】
図3Bは、本研究で使用した単一走査型NV中心の光学的に検出された磁気共鳴スペクトルであり、直流検出感度は2.3±0.2μT/√Hzである。
【
図3C】
図3Cは、BNV=0.2mTの磁気成分に対応するiso-Bモードにおける、6個の平行CoFeBのNWsを持つキャリア基板のSNVM/原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【
図3D】
図3Dと
図3Eは、
図3Cと同じキャリア基板の同じ部分を-1mTから1mTの電界範囲でフルBモードで撮像したSNVM/AFM画像の異なるプロットを示し、
図3Dは表面プロットである。
【
図3E】
図3Dと
図3Eは、
図3Cと同じキャリア基板の同じ部分を-1mTから1mTの電界範囲でフルBモードで撮像したSNVM/AFM画像の異なるプロットを示し、
図3Eは、同じSNVM/AFM画像の等高線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明の一実施形態では、研究対象の試料は、非特許文献1に記載されている、断面積が約120nm2、ワイヤー幅が6nm、ワイヤー長がミリメートル範囲のCoFeBのNWsのアレイである。当該NWsは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)製造プロセスからゲートスペーサーの概念を借用することにより、サブトラクティブ法のパターニングによって作製された。CoFeBを犠牲SiO2の線の側壁に選択的にエッチングすることで、標準的なリソグラフィ技術を使用して、大面積にわたって究極のNWs寸法を達成するための経路を形成した。
【0074】
パターン化されたCoFeBのNWsのアモルファス性は、走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型顕微鏡(TEM)イメージング(図示せず)によって確認された。
【0075】
本発明は、前の段落で説明した磁性NWsで実施したが、本発明がこれらの特定のNWsに限定されず、ナノメートル断面を持つ他の長手方向に異方性の磁性試料構造も好適な試料構造であることは、当業者には明らかであろう。
【0076】
図1Aは、考えられるキャリア構造2上に配置されたNWsの概略3D図を示す。キャリア構造2は、例えば、SiO
2の層が堆積されたシリコンで作られてもよい。キャリア構造は、好ましくは互いに平行な複数の犠牲線21から構成される場合があり、そのような線21の2つが
図1A及び
図1Bに描かれている。NWs1は、これらの犠牲線21の側壁にエッチングされる。
【0077】
NWsの他の配置も可能であり、本発明は、キャリア基板上のNWsの特定の種類の配置に限定されない。また、NWsは、キャリア基板に埋め込むことも、キャリア基板上に配置され得るマトリクス層内に埋め込んでもよい。
【0078】
パターニングされたNWsの寸法は、断面走査透過電子顕微鏡(STEM)によって決定された。NWsの幅は6nm±0.5nmであり、NWsの断面積は120±5nm2であった。犠牲SiO2の線21の幅は500 4nmを下回った。横方向のNWを持つ犠牲ラインは、キャリア基板が断面幅1ミリメートル(mm)当たり3000から5000個のNWsを含むように平行に配置された。ライン上に配置されたNWs1の磁場との干渉を避けるために、犠牲ライン21が非磁性であることが重要である。
【0079】
上記のNWアレイ上の個々のNWの面内磁化を評価した。NWアレイは、振動試料磁気計測によって計測されたヒステリシスループによって観察されるように、各線に沿った面内磁化を示した(データは示していない)。
【0080】
同程度の長さの約4000個のNWsが平行に配置されたミリメートル幅のキャリア構造上の磁化ループが計測され、その領域上に一様に分布して、FirstOrderReversalCurves法(FORC)を用いて分析された。
【0081】
FORC法は、nmからバルクサイズまでの磁性体の集合体におけるスイッチングプロセスを研究するための統計的アプローチとして知られている。
【0082】
これらの分析により、NWアレイにおけるスイッチング磁場と相互作用磁場の両方の分布がかなり狭いことが明らかになり、NWsは類似した個々のスイッチング磁場を有する磁気的に均一なものであることが示唆されたが、一方、ゼロを中心とする狭い相互作用磁場分布が検出され、ワイヤー間の磁気相互作用がほとんどないことが示された。一方、ゼロを中心とするタイトな相互作用磁場分布が検出されたことから、ワイヤー間の磁気相互作用はほとんどないことが示された。
計測では、個々のNWsにおける不均一性やナノ欠陥の存在は検出できなかった。
【0083】
しかしながら、不均一性は本発明によって提示された方法によって検出された。本発明の可能な実験セットアップの概略図を
図1A及び
図1Bに示す。固体格子プローブ、本実施例ではダイヤモンドの先端5を持つダイヤモンドプローブは、NWアレイの表面から距離dNVに配置された単一のNV欠陥NVから構成される。
【0084】
磁気的画像化(イメージング)を、周囲条件下で動作する市販のSNVM(Qnami(登録商標)、商品名ProteusQ、会社名QnamiAG)を用いて実施した。単一NV欠陥を頂点に持つ市販のダイヤモンドの先端(Qnami(登録商標)、商品名Quantilever MX)は、周波数変調ベースのAFM(FM-AFM)を可能にするために石英音叉を内蔵していて、NWアレイの上方で走査される。振幅変調AFM(AM-AFM)又は接触モードAFMのような他の制御方法又はモードも適していて、AFMスキャンを制御するために使用してよい。本発明は、特定のAFM制御方法に特に限定されるものではない。
【0085】
NV中心の方位は、極角θNV(θNV=57.1°±2.5°と設定した。)と方位角φNV(φNV=270.3°±0.9°と設定した。)によって特徴付けられた。
【0086】
本発明の一観点では、
図1Aに描かれているように、試料又はNWアレイの走査は、一定力モードとも呼ばれる一定の周波数シフトオードで実行される。走査中にNWアレイを横切ってプローブのダイヤモンドの先端5に含まれているNV欠陥の移動は、破線Mとして示される。このモードでは、試料又はNWアレイの表面形状に追従して所定の領域が走査され、音叉の周波数シフトはその所定のレベル(大きさ、程度)と同じになる。予め定義されたレベルは、走査プローブシステムのzフィードバックのフィードバック信号である。言い換えると、NV欠陥と試料又はNWアレイの表面との間の距離d
NVは一定に維持される。
【0087】
この発明の別の観点では、試料又はNWアレイの走査は、一定高さモードで実行される。このモードでは、NV欠陥は走査中、
図1Bに示す破線Mに従う。試料構造又はアレイを横切るNV欠陥の移動は、試料表面の平均勾配に平行な平面であるが、予め定義されたスキャン領域の最高点より低くなることはない。このモードではZフィードバックは必要ない。オープンループとして実行してもよい。
【0088】
図2A及び
図2Bは、局所的な磁化の不整合を生じさせるナノ欠陥10を持つNWの断面を概略的に示している。2つの異なる断面図が、
図1A及び
図1Bで定義された直交座標と共に示されている。欠陥10はNW方向に沿って幅δdを持つ。NWの高さh
NWと幅ω
NWは、NWsの断面積を定義する。欠陥領域10は、NWの欠陥のない領域と比較して、高い又は低い局所磁化を持つ。欠陥の形状はランダムであり、ほとんどの場合不規則である。欠陥の形状は、特定の幾何学的形状に限定されるものではない。本方法では、欠陥のサイズとおおよその形状を決定できるが、NWs中のナノ欠陥の正確な等高線の決定はできない。
【0089】
プローブのダイヤモンドの先端5における負電荷を帯びたNV欠陥の基底状態は、
図3Aに描かれているように、磁気サブレベル|m
s=0〉及び|m
s=±1〉からなるスピン三重項状態であり、ここでm
sはNV量子化軸に沿った磁気量子数を意味する。マイクロ波連続励起下での蛍光明状態m
s=0から蛍光暗状m
s=+/-1への遷移は、
図3Bに示す光検出磁気共鳴(ODMR)スペクトルによってプローブできる。
【0090】
外部磁場がない場合、状態|m
s=±1〉は縮退し、|m
s=0〉からD
0=2.87GHzの分裂を示す。NV軸に沿って外部磁場を適用するとサブ単位|m
s=±1〉の2γ
NVB
NVに比例するゼーマン分裂が誘発され、γ
NV=28GHz/Tはジャイロ磁気比、B
NVはNV量子化軸に投影された検出磁場である。本研究では、
図1A及び
図1Bに示す515nmの緑色レーザーLでNVスピンを初期化し、その赤色発光PL信号を、共焦点顕微鏡モジュールを介して光学的に読み出した。この装置により、蛍光輝度|m
s=0〉基底状態への初期化後のNV欠陥のODMRを光学的に検出できる。
【0091】
近接場マイクロ波は、プローブのセンサー先端のNV中心まで0.5mm以下、好ましくは0.1mmを超えない距離に置かれ、|m
s=0〉から|m
s=±1〉遷移のいずれかと共鳴して基底状態のスピン集団を駆動し、より蛍光の少ない|m
s=±1〉基底状態にポピュレーションを供給する。近接場マイクロ波の周波数掃引にわたる積分PL信号の図である
図3Bに示すように、ポピュレーションのシフトは、約24%のODMRコントラストで、NV蛍光の著しい低下をもたらした。
【0092】
図3Bの図に示すように、2つの光学的に検出されたODMR共鳴ディップ間のマイクロ波周波数f
MWの差は、したがって、Δυ=2γ
NVB
NVの単純な関係を介して、自己較正された方法でBNVの直接的な定量的計測をもたらす。ここで、γ
NV=(g
e・μ
B)/h
~28MHz.mT
-1は、還元NVジャイロ磁気比である。ODMRスペクトルのフィッティングにより、2.3±0.2μT/√Hzの直流磁気感度が確認された。
【0093】
計測された磁場の符号を決定するために、NV欠陥軸に沿って約1mTのバイアス磁場Bbを適用した。探針と試料の相互作用のため、探針と試料の距離zNVを一定にするために、走査中のzフィードバックとして音叉周波数シフト(本研究の全ての計測でΔf=5Hz)を使用した。NV中央のセンサーと試料表面間の距離は、一様に磁化された強磁性ストリップの縁の上で較正処理により、zNV=59.7±1.8nmに較正された。
【0094】
NVスピンセンサー先端と試料表面との間のNV中心-試料間(又はNV飛翔高さ)距離較正は、例えばCoFeBからなる均一に磁化された強磁性薄膜ストリップの上方(下方)縁の上方に発生する浮遊磁場をマッピングすることによって推測された。この較正ステップでは、剪断力モードで動作する石英音叉型センサーに組み込まれたダイヤモンドの先端によって運ばれたNV欠陥が、定義された厚さの超薄型垂直磁化較正試料の上方距離dを飛んだ。
【0095】
較正は、非常に幅の広いCoFeB帯片(ストリップ)(x方向に沿って幅20μm、y方向に沿って長さ200μm)のアップステップ側とダウンステップ側の両方で行った。計測されたBNVの輪郭は、幅20μmの[Ta/CoFeB(~1nm)/MgO/Ta]較正ストリップの2つの縁を横切ってNV欠陥を走査しながら記録された。次に、非特許文献4に記載されている既知の方法を用いて、実験データを当てはめることにより距離dを抽出した。
【0096】
磁場分布の予備的な迅速な特性評価は、特定のマイクロ波周波数f
MWに共振する等磁場の等高線を画像化すること(以下、「iso-B」モードと呼ぶ)によっても可能であり、この場合、画素の滞留時間は20ms以下である。試料NWsのiso-BモードでのSVNM画像を
図3Cに示す。
【0097】
この画像化モードでは、磁性試料を走査し、固定周波数fisoのマイクロ波磁場を適用しながら、NV欠陥のPL強度を監視した。電子スピン遷移が選択されたマイクロ波周波数と共鳴しているとき、PL画像は暗い等高線を示す。
【0098】
図3D及び
図3Eでは、画像の下に示されたローマ数字IからVIは、アレイ上の6つのNWsの位置を示す。
【0099】
図3Cに示すiso-Bモード画像は、B
NV=0.2mTの磁気成分に対応する。グレースケールはPL出力信号をキロカウント/秒(kcps)で示す。6つのNWsの長さに沿って、またその周囲にある暗い、主に丸みを帯びた等高線は、NV軸に沿って計測された0.2mTの同じ磁場に対応する。
【0100】
図3Cに示すiso-BのPL画像では、CoFeBのNWsに沿って暗線が見られる。これらの線は、プラズモニック消光効果の結果である。プラズモニック消光効果は当技術分野で知られている。
図3Cの暗線の上には、NWsに沿って丸い形状の「リング」の特徴が識別できる。これらのリングの特徴は、NWの両側に配置されている場合もあれば、試料の2つの異なる方向で、それぞれNWの主軸又はその近くに集中している場合もある。リングの特徴は、NWの空間的な方向に対するNVの方向に関連している。
【0101】
完全な磁場B
NV分布を決定するために、磁場の完全な走査を行うべく例えばODMRスペクトルを走査中の各位置又は画素で記録してよい(以下「フルB」モードと呼ぶ)。本研究では、試料NWsのフルBモードSNVM/AFM画像を描いた
図3D及び
図3Eに示すように、妥当なS/N比を確保するため、全てのフルBモード画像において4.5秒の画素積分時間を使用した。しかし、この撮像時間は比較的長く、全ての用途に適しているとも望ましいとも限らない。
【0102】
図3D及び
図3Eは、
図3Cのiso-Bモードで走査した同じ領域のフルB走査を示す。画像は2μmx2μmの領域に対応している。走査した磁場範囲は-1mTから1mTである。このプロットでは、走査された範囲における局所的な浮遊磁場の密度と形状が、異なる灰色の濃淡で示されている。
【0103】
図Dは、走査された画素の磁化をグレースケールで示す、画像化された領域の表面プロットである。
【0104】
図3Eは、等高線プロットで示された同じ画像に対応する。
【0105】
この研究で行われたSNVMの計測は、NVの向きが異なる複数の異なる単一のNVチップを用いて繰り返された。さらに、NVプローブに対する試料の向きも、異なる実験間で変化させた。これらの異なるセットアップの結果は、全体を通して一貫している。
【0106】
NWsの構造中のナノ欠陥に起因する浮遊磁場を検出するSNVM/AFMの結果における予期せぬ観察結果は、その後、TEM画像に基づく形態データに従ってCoFeBのNWsの形状をモデル化したSNVM画像シミュレーションの数値解析によって確認された(図示せず)。
【0107】
この研究の一部として行われたTEM計測では、ワイヤーに欠陥が存在する可能性が示された。しかし、予想される欠陥は、NWに沿った幅で10nmから100nmの範囲であった。
【0108】
現在の技術水準に基づくと、この範囲の欠陥は今日までNWの磁場に影響を及ぼすとは予想されていなかった。これらのシミュレーションにより、SNVM/AFMで計測された検出された磁気的不均一性は、NWsの幾何学的不整合及び化学的不均一性といったナノ欠陥に関連していることが確認された。
【0109】
本発明は、最先端のナノワイヤーが実際に複数のナノ欠陥を含んでいる可能性があり、これらのナノ欠陥がSNVMで計測できる微弱な浮遊磁場を引き起こすという新たな知見に到達した。磁場の局所的な変化は、例えば、粗さ、途切れ、縁、形状の変形のような一貫性のないナノワイヤー形状と、アモルファス領域の、局所的な結晶性の変化、点欠陥のような欠陥性とに起因する。
【0110】
明らかに、一般的な原理として、NWアレイ上のNWs密度の増加と、個々のNWsのナノ欠陥によって引き起こされる局所的な浮遊磁場の低強度の組み合わせは、NWアレイ内の欠陥をマッピングする複雑さを増す。
【0111】
このような背景から、本方法を用いることにより、計測されたNWにおいて相対的に高密度の弱い磁気的不均一性を検出することが可能であったことは注目に値する。ワイヤーの磁気不均一性は、iso-Bモードだけでなく、フルBモードでも検出できた。これらの研究結果から、関連する磁場分布に関する定量的な情報が得られた。
【0112】
さらに、磁気不均一性の原因となる欠陥の性質に関する定性的な情報も、数値解析とモデリングに基づいて決定可能である。シミュレーションデータを使ってSNVM計測値を解釈することで、欠陥や不整合の定量的特徴付けと、定性的特徴付けとの少なくとも一方を行えることを示せるだろう。
【0113】
実験的SNVMデータとシミュレーションSNVM画像との組み合わせは、超スケール磁気装置における磁気特性の微弱な変化を決定するための本発明の前例のない能力を追加する。
【0114】
これまで、磁性縦型ナノ構造における微妙な磁気欠陥は、ほとんど検出されてこなかった。本発明は、積極的なスケールのスピントロニクス装置用の新規磁性材料の定量分析のための明確な道筋を示している。
【0115】
本明細書に記載された現在の実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかであることが理解されるべきである。このような変更及び修正は、本発明から逸脱することなく行い得る。これらの実施形態及び修正が特許請求の範囲から逸脱しない範囲において、それらも本明細書に開示された発明に含まれることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状誘起異方性を有しかつ1nmから500nm
又は1nmから50nmの
最大ナノメートル断面寸法を持つ
、長手方
向磁性試料構造中のナノ欠陥に起因する1つ以上の磁気的不均一性を非摂動的に検出する方法であって、
a)固体格子センサーの頂点に1つの単一スピン欠陥(NV)がある、ダイヤモンド材料の前記固体格子センサー(5)の検出面を、前記磁性試料構造に近いところにある第1走査位置に、移動可能に位置決めするステップと、
b)照射された1スピン欠陥が磁性試料構造の磁場に曝されたときにゼーマンシフトを検出するように、連続的に又は1つ以上のパルスで光放射(L)及びマイクロ波磁場を、前記1スピン欠陥(NV)に適用することによって、前記1スピン欠陥(NV)を照射するステップと、
c)前記1スピン欠陥(NV)がある前記固体格子センサー(5)からフォトルミネッセンス(PL)出力信号を検出するステップと、
d)前記磁性試料構造上の磁場空間分布に関する定量的情報を得るように、前記磁性試料構造の長さの少なくとも一部にわたって、一連の走査位置でステップa)からc)を実行する際に、前記磁性試料構造の表面を走査するステップと
を備える、磁気的不均一性を非摂動的に検出する方法。
【請求項2】
前記スピン欠陥(NV)は、ダイヤモンド格子中の窒素空孔(NV)の点欠陥である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ダイヤモンドの前記センサーは単結晶ダイヤモンドセンサーである、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記磁性試料構造の走査された部分に沿って磁化分布の検出された不均一性をマッピングするステップを備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記走査位置における磁場強度が、その走査位置におけるPL出力信号の強度に関係している、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
光検出磁気共鳴(ODMR)スペクトルが
、複数の走査位置の各走査位置で記録され
、
磁場強度が、記録されたODMRスペクトルの共鳴ピークの分離に基づいて決定される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
幾何学的、化学量論的、又は化学組成の不整合と、結晶性又はアモルファス性の欠陥との少なくとも一方といった、局所的な不整合及び欠陥との少なくとも一方を、特定することと定量化することとの少なくとも一方を行うのに、検出された磁場分布の不均一性が、選択的には予め定めたデータのセットに基づいて使用される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記検出された磁場分布の不均一性は、1セットの予め定めたデータに基づいていて、前記予め定めたデータは、経験的データ、例えば、同等又は実質的に同じ磁性試料構造の過去の計測から得られたデータ
である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記固体格子センサーの検出面は、試料表面から100nmを超えずに、又は50nmを超えずに、又は20nmを超えずに、好ましくは10nmを超えずに、又は1nmを超えずに配置される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記スピン欠陥は
、前記固体格子センサーの前記検出面から100nm以下、50nm以下、20nm以下、理想的には10nm以下に位置する、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記固体格子センサーは、10μT/√Hz以下、又は5μT/√Hz以下、好ましくは2.5μT/√Hz以下の検出感度を持つ、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記磁性試料構造は、単一の容易軸を持つ一軸試料構造であり、磁化が前記磁性試料構造の単一の容易軸に沿って整列されている、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記磁性試料構造は、その主軸に垂直な少なくとも1つの最大横寸法が50nm未満、又は30nm未満、好ましくは10nm未満である、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記磁性試料構造はナノワイヤー
、ナノチューブ
、もしくはキャリア基板に配置された又は埋め込まれた複数のナノワイヤーである、請求項
1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
試料構造の異方性エネルギーは、試料構造の形状異方性によって大きく支配される。したがって、試料構造の異方性は、形状誘起異方性である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
本明細書に記載された現在の実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかであることが理解されるべきである。このような変更及び修正は、本発明から逸脱することなく行い得る。これらの実施形態及び修正が特許請求の範囲から逸脱しない範囲において、それらも本明細書に開示された発明に含まれることが意図される。
本願は例えば次の観点を提供する。
[観点1]
ナノメートルの断面寸法、好ましくは、1nmから500nmのナノメートル断面寸法を持つ長手方向に異方性の磁性試料構造中のナノ欠陥に起因する1つ以上の磁気的不均一性を非摂動的に検出する方法であって、
a)固体格子センサーの頂点に1つの単一スピン欠陥(NV)がある、ダイヤモンド材料の前記固体格子センサー(5)の検出面を、前記磁性試料構造に近いところにある第1走査位置に、移動可能に位置決めするステップと、
b)照射された1スピン欠陥が磁性試料構造の磁場に曝されたときにゼーマンシフトを検出するように、連続的に又は1つ以上のパルスで光放射(L)及びマイクロ波磁場を、前記1スピン欠陥(NV)に適用することによって、前記1スピン欠陥(NV)を照射するステップと、
c)前記1スピン欠陥(NV)がある前記固体格子センサー(5)からフォトルミネッセンス(PL)出力信号を検出するステップと、
d)前記磁性試料構造上の磁場空間分布に関する定量的情報を得るように、前記磁性試料構造の長さの少なくとも一部にわたって、一連の走査位置でステップa)からc)を実行する際に、前記磁性試料構造の表面を走査するステップと
を備える、磁気的不均一性を非摂動的に検出する方法。
[観点2]
前記スピン欠陥(NV)は、ダイヤモンド格子中の窒素空孔(NV)の点欠陥である、観点1に記載の方法。
[観点3]
ダイヤモンドの前記センサーは単結晶ダイヤモンドセンサーである、観点1又は2に記載の方法。
[観点4]
前記磁性試料構造の走査された部分に沿って磁化分布の検出された不均一性をマッピングするステップを備える、観点1から3のいずれか一つに記載の方法。
[観点5]
前記走査位置における磁場強度が、その走査位置におけるPL出力信号の強度に関係している、観点1から4のいずれか一つに記載の方法。
[観点6]
光検出磁気共鳴(ODMR)スペクトルが各走査位置で記録される、観点1から5のいずれか一つに記載の方法。
[観点7]
磁場強度が、記録されたODMRスペクトルの共鳴ピークの分離に基づいて決定される、観点6に記載の方法。
[観点8]
幾何学的、化学量論的、又は化学組成の不整合と、結晶性又はアモルファス性の欠陥との少なくとも一方といった、局所的な不整合及び欠陥との少なくとも一方を、特定することと定量化することとの少なくとも一方を行うのに、検出された磁場分布の不均一性が、選択的には予め定めたデータのセットに基づいて使用される、観点1から7のいずれか一つに記載の方法。
[観点9]
前記予め定めたデータは、経験的データ、例えば、同等又は実質的に同じ磁性試料構造の過去の計測から得られたデータに基づいている、観点8に記載の方法。
[観点10]
前記固体格子センサーの検出面は、試料表面から100nmを超えずに、又は50nmを超えずに、又は20nmを超えずに、好ましくは10nmを超えずに、又は1nmを超えずに配置される、観点1から9のいずれか一つに記載の方法。
[観点11]
前記スピン欠陥は、好ましくは前記固体格子センサーの前記検出面から100nm以下、50nm以下、20nm以下、理想的には10nm以下に位置する、観点1から10のいずれか一つに記載の方法。
[観点12]
前記固体格子センサーは、10μT/√Hz以下、又は5μT/√Hz以下、好ましくは2.5μT/√Hz以下の検出感度を持つ、観点1から11のいずれか一つに記載の方法。
[観点13]
前記磁性試料構造は、単一の容易軸を持つ一軸試料構造であり、磁化が前記磁性試料構造の単一の容易軸に沿って整列されている、観点1から12のいずれか一つに記載の方法。
[観点14]
前記磁性試料構造は、その主軸に垂直な少なくとも1つの最大横寸法が50nm未満、又は30nm未満、好ましくは10nm未満である、観点1から13のいずれか一つに記載の方法。
[観点15]
前記磁性試料構造は、強磁性体、反強磁性体、半導体又は常磁性試料構造である、観点1から14のいずれか一つに記載の方法。
[観点16]
前記磁性試料構造はナノワイヤー又はナノチューブである、観点1から15のいずれか一つに記載の方法。
[観点17]
キャリア基板上に配置された、又はキャリア基板に埋め込まれた複数のナノワイヤーを走査するように構成されている、観点1から16のいずれか一つに記載の方法。
【国際調査報告】