IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2024-526728複数の発光部品を製造する方法および部品
<>
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図1
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図2
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図3
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図4
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図5
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図6
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図7
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図8
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図9
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図10
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図11
  • 特表-複数の発光部品を製造する方法および部品 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】複数の発光部品を製造する方法および部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20240711BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240711BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L21/56 F
B29C43/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501628
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022069892
(87)【国際公開番号】W WO2023285669
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021118490.8
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ツィッツルスペルガー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲブール トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーナー ヘルベルト
【テーマコード(参考)】
4F204
5F061
5F142
【Fターム(参考)】
4F204AA33
4F204AA39
4F204AB03
4F204AD19
4F204AH37
4F204AM28
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB17
4F204FN11
4F204FN17
5F061AA04
5F061BA01
5F061CA12
5F061FA01
5F142AA52
5F142BA24
5F142CA03
5F142CB11
5F142CD18
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG15
5F142CG42
5F142DA14
5F142FA14
5F142FA16
(57)【要約】
本発明は、それぞれが少なくとも1つの発光半導体素子(2)を有する複数の発光部品(1)を製造する方法であって、複数の半導体素子(2)をそれぞれ基板(3)に配置、固定および配線する工程と、半導体素子(2)の間の中間空間にフィラー(8)を導入する工程と、基板(3)を、基板(3)に固定された半導体素子(2)およびフィラー(8)と共に金型(9)のキャビティ(12)に導入する工程と、金型(9)のキャビティ(12)に負圧を生成する工程と、フィラー(8)にマトリックス材料(14)を導入する工程と、マトリックス材料(14)を硬化させる工程と、基板(3)を発光部品(1)と共に成形する工程と、部品(1)を個別化する工程と、を包含する方法に関する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも1つの発光半導体素子(2)を有する複数の発光部品(1)を製造する方法であって、
a)複数の半導体素子(2)をそれぞれ基板(3)に配置、固定および配線する工程と、
b)任意的に、前記基板(3)を接着剤層(7)によって補助キャリア(6)に固定する工程と、
c)前記半導体素子(2)の間の中間空間にフィラー(8)を導入する工程と、
d)前記基板(3)を、前記基板(3)に固定された前記半導体素子(2)および前記フィラー(8)と共に金型(9)のキャビティ(12)に導入する工程と、
e)前記金型(9)の前記キャビティ(12)に負圧を生成する工程と、
f)前記フィラー(8)にマトリックス材料(14)を導入する工程と、
g)前記マトリックス材料(14)を硬化させる工程と、
h)前記基板(3)を前記発光部品(1)と共に成形する工程と、
i)前記部品(1)を個別化する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記フィラー(8)が流動可能である、および/またはフィラーとマトリックス材料とが相次いで導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィラーを導入する前記工程は、揮発性溶媒および前記フィラーを含む懸濁液が導入されることにより行われ、前記揮発性溶媒は、企図されたフィラー量が導入されるまで蒸発する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラー(8)が、球状SiO2粒子、TiO2、AlN、Al2O3、BNから選択される少なくとも1種類の物質を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フィラー(8)が予め定められたサイズ分布を有し、特に所望の充填度が前記予め定められたサイズ分布に依存する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
中間空間への前記フィラー(8)の導入は数回にわたって、特に異なるサイズ分布を有するフィラーを用いて行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マトリックス材料(14)がシリコーンおよび/またはエポキシ樹脂を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法工程d)において、前記半導体素子(2)が、特にPDMS(13)からなる弾性パンチによって覆われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
方法工程c)の前に、前記発光半導体素子(3)の領域がマスキング(15)される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
方法工程c)において、前記フィラー(8)がシーブ構造(15)を介してドクターブレード塗布される、および/または刷毛塗りされる、および/または振り落とされる、および/またはまき散らされる、および/または注ぎ込まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
方法工程c)の後に、過剰なフィラー(8)が取り除かれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
方法工程c)の後に、揺動により前記フィラー(8)が緻密化および/または分散される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記フィラーを導入する前記工程および/または前記揺動の前記工程が繰り返される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法工程f)において、前記金型(9)が水平面に対して約90°の角度で配置される、または、
方法工程f)において、前記金型(9)が180°回転される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金型(9)が、前記マトリックス材料(14)を導入するための入口(18)と前記負圧を生成するための出口(19)とを含み、任意的に、前記入口(18)と前記出口(19)とが前記金型の同じ側、特に前記キャリアの同じ側に配置されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金型(9)は、前記出口(19)への前記マトリックス材料(14)の流出を防ぐ手段(24)を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記手段(24)が、前記出口(19)の領域に配置されたプラスチックまたはセラミックからなるフィルタストリップまたはフィルタブロックである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記補助キャリア(6)および前記接着剤層(7)が通路(25)を有し、前記金型(9)において前記通路(25)に対応する複数の前記出口(19)によって前記フィラー(8)に負圧が生成される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
複数のフィルタ要素が設けられ、前記複数のフィルタ要素はそれぞれ前記通路(25)の上に配置され、前記複数のフィルタ要素は、任意的に、前記マトリックス材料の硬化後に前記部品の一部となる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金型(9)が複数の入口(18)を含み、前記複数の入口を介して前記フィラーにマトリックス材料(14)が導入される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記入口の数が出口の数とは異なる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
基板(3)に配置された少なくとも1つの発光半導体素子(2)を有する発光部品(1)であって、前記発光半導体素子(2)は、マトリックス材料(14)に埋め込まれたフィラー(8)によって少なくとも領域的に取り囲まれ、前記マトリックス材料における前記フィラーの充填度が70%より大きく、特に80%~98%の範囲にあり、前記マトリックス材料内の前記フィラー(8)が、前記部品に沿って一方向に延びるフィラー勾配を有する、部品。
【請求項23】
前記フィラー(8)が流動可能である、請求項22に記載の部品。
【請求項24】
前記フィラー(8)が、球状SiO2粒子、TiO2、AlN、Al2O3、BNから選択される少なくとも1種類の物質を含有する、請求項22または23に記載の部品。
【請求項25】
前記フィラー(8)がサイズ分布を含み、前記充填度が実質的に前記サイズ分布に依存する、請求項22~24のいずれか一項に記載の部品。
【請求項26】
前記マトリックス材料(14)がシリコーンおよび/またはエポキシ樹脂を含有する、請求項22~25のいずれか一項に記載の部品。
【請求項27】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって、キャビティ(12)を包囲する、および互いに分離可能である上型板(11)と下型板(10)とを有する金型(9)を備え、前記金型(9)が、マトリックス材料(14)を導入可能な少なくとも1つの入口開口部(18)と、前記キャビティ(12)を排気可能な少なくとも1つの出口開口部(19)とを有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、特許文献1の優先権を主張し、その開示内容は参照によってその全体が本出願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、それぞれが少なくとも1つの発光半導体素子を有する複数の発光部品を製造する方法、この方法により製造される発光部品、ならびに方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
真空射出成形(VIM)は、従来技術による半導体部品の封止では、充填されていない材料または部分的に充填された材料(射出成形コンパウンド)を用いて行うことができる。充填されていない材料は高い熱膨張係数を有する(coefficient of thermal expansion;CTE)。高CTEは、基板の大きい反りおよび信頼性の問題、層間剥離、ワイヤ接点およびチップの浮き上がりにつながる可能性がある。しかし、フィラーを充填すると、CTEは低下するが、それと同時に粘度が大きく上昇する。したがって、充填度がより高くなると半導体部品の完全で良好な封止が可能でなくなるため、実際に達成することができる高いフィラー度(Fuellstoff grad)は約90重量%までである。それに加えて、粘度が高いとボンディングワイヤが剥ぎ取られるか、または部品が損傷するリスクが高くなる。
【0004】
これまで、高CTEにもとづく反り返りの問題は、硬質のキャリアシステム、小形基板、および機械的な負荷軽減カットまたは負荷軽減構造(Entlasutungs-Schnitten oder-Struktur)の使用によって解決される。(CTEを適合させた)高いフィラー含有量を有する材料を使用できるようにするために、これまでは、たいてい、圧入成形法(トランスファ成形)が利用された。この方法では、金型を密閉するため、および金型にモールドコンパウンド(Mold compound)を充填するために大きい力が必要である。このことは基板の材料の選択、更には個々の部品および複合体(Verbund)/パネル(Nutzen)の具体的なレイアウトを著しく制限する。それに加えて、通常、後処理も必要である(例えば不都合なモールドブリードおよびフラッシュを除去するためのデフラッシュ工程など。このことは、更なる機械的負荷、および場合によってはパネルの事前損傷と結びついている。この方法でもフィラー含有量およびフィラー自体の性状、例えばフィラー粒子のサイズなどが制限され、すなわち粒子が小さいほど、金型を充填する際のモールドコンパウンドの粘度が高くなる。オプトエレクトロニクス部品では、光学特性に関しては小さい充填粒子が有利であることが多い。充填粒子は導光体として機能し、より大きい充填粒子は、より低いコントラストにつながり得る。一般に、より小さい粒子が所望されることが多いが、CTEにマイナスの影響を及ぼす可能性があるため、充填粒子とマトリックス材料の重量割合の妥協を可能な限りせずに行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第DE102021118490.8号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎をなす課題の1つは、前述の欠点を回避する方法、部品および方法を実施するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1に記載の発光部品の製造方法、および請求項18に記載の部品、および請求項24に記載の方法を実施するための装置によって解決される。提案される原理の好ましい実施形態、改良形態または発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
上記課題は、特に、それぞれが少なくとも1つの発光半導体素子を有する複数の発光部品を製造する方法であって、複数の半導体素子をそれぞれ基板に配置、固定、および配線する工程を包含する方法によって解決される。次の工程において、必要な場合には、任意的に基板を接着剤層によって補助キャリアに固定することができる。このことは、基板が貫通部または穴を有するか、または両側をポッティング(vergiessen)すべき場合に合目的的である。
【0009】
続いて、半導体素子間の中間空間にフィラーが導入される。方法は、更に、基板を、この基板に固定された半導体素子およびフィラーと共に金型のキャビティに導入するいくつかの工程を包含する。この工程は、フィラーを導入する工程と取り替えることもできる。
【0010】
次に、金型のキャビティに負圧が生成され、フィラーにマトリックス材料が導入される。負圧によって、希薄な液体のマトリックス材料がフィラーとの間のキャビティに完全に分散する。マトリックス材料が硬化され、補助キャリアが発光部品と共に成形される。続いて、いくつかの態様において、部品を個別化することができる。
【0011】
したがって、提案される原理によれば、フィラーとマトリックス材料は2つの別々の工程で型に導入される。このことは、非常に高いフィラー含有量を可能にし、フィラーの粒子サイズの選択の際の制限が少なく、型締力(Schliesskraefte)と充填圧力がかなり小さくなる。特に、フィラーの適切なサイズ分布では、80%~98%の範囲、特に80%より大きいか、または85%より大きい、および85%~93%の範囲の充填度を達成することができる。更に、後から詳しく説明されるように、基板および/または部品の境界におけるマトリックス材料の層間剥離も低減することができる。様々に異なるフィラーの使用と全く同様に、より良い、かつその場所での必要性に適合した充填度の分布が可能である。別々の工程に分けることにより、半導体本体および配線の特殊性に応じることができる高いフレキシビリティが可能になる。
【0012】
フィラーは、殊に、流動可能(rieselfaehig)であり、いくつかの態様において、球状SiO2粒子、TiO2、AlN、Al2O3、BNから選択される少なくとも1種類の物質を含むことができる。「流動可能」という用語は、粒子が互いに付着せず、いくつかの態様において、平滑で丸いか、または丸みが付けられていると理解されるべきである。全体として、周囲の材料のCTEに適合させる必要がある場合には組み合わせを使用することもできる。光学的および機械的特性を最適化するために、コーティングされた粒子も有利である。本発明の一実施形態では、フィラーは様々な大きさの粒子、または代替的に実質的に同じ大きさの粒子を含有する。この場合、充填されるキャビティに良好に適合するサイズ分布を選択することができる。それに加えて、いくつかの態様において、粒子のサイズの分布を所望の充填度に適合させることが企図される。例えば、充填度がより高い場合には、より小さい粒子サイズを使用することができる。本発明の一発展形態では、マトリックス材料および/またはフィラーにおいてナノ粒子(TiO2、カーボンブラック)の使用が行われる。
【0013】
いくつかの実施形態では、マトリックス材料は、提案される原理によれば、シリコーンおよび/またはエポキシ樹脂を含有する。
【0014】
提案される原理のいくつかの態様において、半導体部品は、方法工程b)において、離型フォイル(例えばETFE、PET)によって固定され、そのことが、特に光出射面を汚れから守る。成形設備自体において、このフォイルはエンドレスロールとして提供され、1回の成形ごとに更に先へ搬送される。他のフォイルを使用することもできる。代替的に、光出射面をフォトレジストなどで覆うことができ、このようにして汚れまたは損傷が回避される。成形プロセス後、このフォトレジストを再び除去することができる。他の実施形態では、付与された粒子を発光部品の表面を粗面化するために的確に使用することも可能である。このことは、例えば後述される刷毛塗り(Aufbuersten)、またはドクターブレード塗布(Aufrakeln)によって行うことができる。
【0015】
提案される原理による一実施形態では、方法工程c)において、発光半導体部品の領域がマスキングされる。
【0016】
提案される原理によるいくつかの実施形態では、方法工程c)において、フィラーがシーブ構造を介してドクターブレード塗布および/または刷毛塗りされる(aufgepinselt)。代替的に、フィラーは振り落とされる(aufgeruettelt)、および/またはまき散らされる(gestrahlt)、および/または注ぎ込まれる(geschuettet)。いくつかの態様において、フィラーを定量供給(dispensed)することもできる。その後、提案される原理のいくつかの態様において、方法工程c)の後に過剰なフィラーを取り除くことができる。
【0017】
いくつかの態様は、粒子を詰め込みに取り組むものである。上述のように、粒子は、ほぼ同じ大きさ(またはかなり狭いサイズ分布)、しかし更に比較的大きい、および広いサイズ分布を有することもできる。サイズ分布は、充填される空間の構造に、また所望の充填度に依存し得る。詰め込む間中、具体的プロセスとは関係なく、それぞれの分布を有する混合物を処理することができる。それによって、詰め込まれた状態でも埋まった空間のサイズ分布がほぼ同じであることを保証できる。しかしいくつかの態様において、異なるサイズの粒子を相次いで充填することも可能である。それによって層を形成することができ、個々の層間には、後から更に説明されるいくつかの工程によって明確な境界面、しかし更に、より幅の広い境界移行部が得られる。その場合、このような積み重なり(Schuettung)は、垂直の境界面と水平の境界面の両方をもたらすことができる。それに対応して、このような部品は、フィラーサイズまたはフィラー材料の大きい勾配(starker Gradient)または急上昇(Sprung)が存在する境界面を示す。
【0018】
いくつかの態様において、基板の、半導体部品とは反対側に別のフィラー材料を使用すること、または部品を有する基板の側とは別のフィラー度を企図することができる。フィラー材料のサイズ分布が様々に異なってもよい。
【0019】
提案される原理のいくつかの態様において、使用される材料に生じ得る膨張係数の相違を補償するために異なった分布が使用される。例えば、基板のいくつかの領域において、半導体本体、または半導体本体の配線の周りの領域とは別のサイズ分布または別の充填度を使用することができる。同様に、様々な材料をフィラーとして使用することもできる。したがって、このように形成された部品は、充填度、材料、または他のパラメータの勾配の点で特徴的である。
【0020】
方法工程c)の後、フィラーを揺動によって緻密化(verdichtet)および/または分散させることができる。この場合、そのような揺動は、強度および継続時間に応じてサイズ分布の変化ももたらすことに注意を払わなければならない。一般に、比較的長い振り動かし(schuetteln)の後には比較的大きい粒子が上に「浮き上がる」のに対して、比較的小さい粒子は下に沈む。このプロセスは、例えば充填時に不均一な粒子サイズ分布が使用されることにより、後続の揺動プロセスにおいてこの不均一な粒子サイズ分布を再び補償するために的確に利用することができる。提案される原理のいくつかの態様において、部品の発光表面を解放するためにも揺動を使用することができる。工程b)およびc)を、均一な充填を保証するために数回にわたって繰り返すことができる。これは、例えば、フィラーの部分量のみが充填され、続いて、揺動によって中間空間に均一に分散させる場合に必要であり得る。
【0021】
キャビティに導入する工程d)において、上側、すなわち半導体部品を有する側を弾性パンチまたは覆いによって覆うことができる。これは、第1にフィラーの流出を防ぐ。パンチまたは覆いは弾性であり、例えばPDMSなどのプラスチックからなるべきである。このプラスチックには、透明であるため、その中に詰め込まれた樹脂を光で硬化させることができるという利点がある。後から生成される負圧によって、特に部品の上側に密な閉鎖(dichter Abschluss)が生じ、そこにはマトリックス材料が到達しないため、限られた程度の押圧または加圧が必要とされるにすぎない。覆った後に、均一なフィラー分散を達成するために、もう一度振り動かすか、または構造を回転させることもできる。
【0022】
提案される原理の別の態様は、更には、マトリックス材料を導入する工程と、前置された、またはそれと結びついた負圧を生成する工程に関するものである。
【0023】
大きく急速な圧力勾配は、粒子の不都合な再分布につながる可能性があり、最悪の場合、フィラーがその位置から移動し、ガス出口を塞ぐ。したがって、いくつかの態様において、必要な負圧の生成を急激にではなく、適度な速度で行うことが合目的であり得る。この場合、速度は、金型のジオメトリ、ガス出口の円周、金型に存在する部品の形状および種類、そして更に粒子サイズもしくは分布に依存し得る。いくつかの態様において、特別な気体透過膜またはシーブを設けることができ、これらはガス出口に、またはガス出口の前に配置され、それによりガス出口および負圧ラインへのフィラーの移動を防ぐ。この膜またはシーブは、成形が完成した状態において部品にとどまることができる。
【0024】
負圧は、弁または類似の措置によって制御することができる。いくつかの態様において、負圧の生成中に生成され、同時にマトリックス材料が導入される。したがって、これらの形態において、ガスをポンプで排出する(Abpumpen)ことによって、マトリックス材料がフィラーの中間空間に吸い込まれる。提案される原理のいくつかの別の態様において、マトリックス材料が供給される前に、負圧が少なくとも部分的に生成される。このようにして、マトリックス材料の流れをより良く制御することができる。いくつかの態様において、最初に、例えば圧力が10mbarより小さく、特に1mbarより小さくなるまで、多量のガスを除去することが合目的的である。一般に、圧力は、0.1mbarから50mbarであり得る。それによって、アクセスし難い位置にあるガスポケット(Gastaschen)が形成されないことが保証される。
【0025】
これに関連して、マトリックス材料の導入中、例えば連続的にポンプで排出することによって負圧を維持することも可能である。これらのすべての態様において、マトリックス材料の量を弁または他の措置によって、例えば入口の形状によっても制御することができる。負圧は最大でもそれぞれの空気圧、すなわち約1000mbarであり得るので、それより大きい圧力差はあり得ず、それによって、低粘度のマトリックス材料を供給する場合、ワイヤまたは半導体部品の損傷の危険が少なくなる。高圧下での加圧と比較すると、これはここに提案される原理の重要な利点である。
【0026】
提案される原理のいくつかの態様において、入口においてマトリックス材料に圧力が加えられることにより、マトリックス材料を追加的に中間空間にポンプで注入することができる。いくつかの態様において、これは入口への供給部を有するリザーバが、充填されるべき領域よりも高い位置にあることにより静水圧によって成し遂げることができる。高さを適合させるか、もしくは材料量もしくは制御可能な圧力逃し部(Druckentlastung)を制御することによって、静水圧を調整することができる。いくつかの態様において、静水圧を負圧による導入プロセスの補助として使用することが企図されている。いくつかの態様において、静水圧を、制御された繊細な圧力印加によって実現することもでき、それによりプロセス実施において追加の自由度が開かれる。いくつかの実施形態において、静水圧は時間的に制御される。したがって、例えば、第1の導入または供給後の数時間後に初めて、特に、場合によって存在する部分負圧(Partialunterdruck)がマトリックス材料を引き続き導入するのに十分でなくなった場合に静水圧を高めることができる。
【0027】
本発明の一実施形態では、金型は、マトリックス材料を導入するための入口と、負圧を生成するための出口とを含む。入口は、補助キャリアを通り、そして必要な場合は、基板の領域を通ることもできる。
【0028】
覆うことにより、および負圧の生成前もしくは後に、基板もしくはアセンブリ全体を回転させることができ、それによりフィラーが充填されたか、もしくはマトリックス材料で満たされた空間が実質的に垂直に延びる。この場合、材料入口とガス出口は、用途に応じて上または下に位置することができる。したがって、いくつかの態様において、ガス出口を最下点に設けること、およびそれにより重力および毛管力を補助するように作用させることが有意義であり得る。ここで言及しておきたいのは、そのような場合、回転によってフィラーが「下へ」落下し、上端において低い充填度を示すことがないようにするために、フィラーは、存在する中空空間を可能な限り完全に満たさなければならないということである。しかしながら、この効果を、これが所望の充填度を生成するために合目的と思われる場合には利用することもできる。
【0029】
したがって、いくつかの態様において、方法工程f)において、金型が水平面に対して約90°の角度で配置される。本発明の一実施形態では、金型は、出口へのマトリックス材料の流出を防ぐ手段を含み、この手段は、出口の領域に配置されている、特にプラスチックまたはセラミックからなるフィルタストリップまたはフィルタブロックである。それによってマトリックス材料が出口を塞ぐことが防がれる。この場合、この手段を上述の膜またはシーブに加えて、あるいは膜またはシーブに代えて配置することができる。
【0030】
本発明の一実施形態では、補助キャリアおよび接着剤層が通路を有し、金型において通路に対応する複数のガス出口によって、フィラーに負圧が生成される。この場合、基板が実質的に水平に位置し、マトリックス材料が通路を通って入り、そこで分散し、対応するガス出口を介して部分的に再び出て行き、そこでリザーバで受け止められることを企図することができる。
【0031】
提案される原理のいくつかの実施形態において、金型が複数の入口を含み、これらの入口を介してマトリックス材料がフィラーに導入される。それに加えて、複数の出口を設けることもできる。いくつかの態様において、マトリックス材料のための入口と出口とを互いにずらして配置することが合目的的である。いくつかの態様において、入口の数は、出口の数とは異なる、特により大きくすることができる。入口を円周に関して出口よりも大きく形成することを企図することもできる。このようにして、より良い分散が達成される。
【0032】
いくつかの別の態様は、発光部品に関するものである。提案される原理のいくつかの態様において、この発光部品は、基板に配置された少なくとも1つの発光半導体素子を含み、この発光半導体素子は、マトリックス材料に埋め込まれたフィラーによって少なくとも領域的に取り囲まれている。フィラーとマトリックス材料との組み合わせは、簡単にするために、モールドとも呼ばれる。フィラーは、殊に流動可能であり、本発明の一実施形態では、球状SiO2粒子、TiO2、AlN、BNから選択される少なくとも1種類の物質を含有する。この場合、モールドの充填度は、92%より大きく、特に95%より大きい範囲であり、例えば95%~98%である。
【0033】
提案される原理のいくつかの態様において、導入されるフィラーは、その粒子に関してサイズ分布を含み、それによって充填度を広い範囲にわたって調整することができる。これに関連して、充填度が比較的高い場合、すなわち95%を超える場合、とりわけ、より小さい粒子の数がより大きい粒子よりも多くなる。
【0034】
いくつかの別の態様において、フィラーは、実質的に統一的な粒子サイズを有する。様々な実施形態において、粒子をマトリックス材料、殊にシリコーンおよび/またはエポキシ樹脂に埋め込むことができる。いくつかの態様において、本明細書において提案される有利な方法にもとづいて、フィラーは、充填度勾配、または更に粒子サイズに関する勾配を示す。したがって、部品のモールドは、一方向に増加する充填度勾配を有することができ、より高い充填度は、より小さい平均粒子サイズによって特徴付けることができる。いくつかの別の態様において、モールドは、フィラーに関して境界面を含むことができ、すなわちモールドを第1の充填度を有する、したがって第1のCTEを有する第1の領域と、第2の充填度および第2のCTEを有する少なくとも1つの第2の領域とに細分することができる。
【0035】
更に別の観点では、部品は膜またはシーブ、あるいは膜またはシーブの一部を含み、これらはモールドに埋め込まれている。これらをとりわけ基板の片側に配置することができ、開口部を基板キャリアによって覆うことができる。いくつかの態様において、このような膜残留物またはシーブ残留物は、部品の切断縁または個別化縁にも存在し得る。真空射出成形を用いる提案される方法によって、閉じ込められたガスポケットまたはモールド密度が低い領域がほとんど回避される部品が提供される。それに対応して、いくつかの態様において、部品は、実質的にガスポケットがなく、隙間のない一貫したモールドを有することができる。
【0036】
冒頭で述べた課題は、本発明による方法を実施するための装置であって、キャビティを包囲する、および互いに分離可能である上型板と下型板とを有する金型を備え、金型が、マトリックス材料を導入できる少なくとも1つの入口開口部と、キャビティを排気できる少なくとも1つの出口開口部とを有する装置によっても解決される。
【0037】
提案される原理の上記で開示された態様において、発光またはオプトエレクトロニクス半導体部品の特徴が利用される。しかしここで、その場合、本発明はそのような具体的な部品の使用に限定されないことを強調しておきたい。むしろ、提案される方法により、一般に半導体部品、コンポーネントまたはチップを樹脂封止する(umgiessen)ことが可能であり、意図もされている。
【0038】
以下、本発明の実施例を添付の図面をもとにして詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】提案される原理のいくつかの態様を明確にするための実施例の第1の概略図である。
図2】提案される原理のいくつかの態様を明確にするための実施例の第2の概略図である。
図3】提案される原理のいくつかの態様によるフィラーの付与の実施例を示す図である。
図4】提案される方法において使用することができるフィラーの可能な構造の概略図である。
図5】いくつかの態様を明確にするための、ステンシル(Schablone)を除去した後のフィラーの導入の別の概略図である。
図6】半導体部品が取り付けられた支持基板の中間空間に導入されたフィラーの一例の図である。
図7】提案される原理のいくつかの態様による金型のキャビティにおける負圧の生成、およびフィラーへのマトリックス材料の導入の実施例を示す図である。
図8】金型のキャビティにおける負圧の生成、およびフィラーへのマトリックス材料の導入の代替的実施例の別の概略図である。
図9】提案される方法の様々な観点を説明するためのいくつかの方法工程の実施の別の実施例である。
図10】提案される方法の様々な観点を説明するためのいくつかの方法工程の実施の別の実施例である。
図11】いくつかの方法工程の実施の別の実施例である。
図12】いくつかの方法工程の実施の別の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、それぞれが発光ダイオードまたはレーザダイオードの形の発光半導体素子2を含む複数の発光部品1を示す。第1の方法工程a)において、半導体素子2がそれぞれ基板3、ここではQFNリードフレームに配置され、変換体4が取り付けられ、ワイヤコンタクト5に電気的に接触される。次の方法工程b)において、半導体素子が基板の形状と形態に応じて補助キャリア6に組み付けられ、例えば接着剤層7によって、一例として粘着フォイルまたはラミネートフォイルによって一時的に固定される。フォイル7は、温度に依存する粘着性を有することができ、それにより完成した部品を加熱によって容易に再び取り外すことができる。補助キャリア6を用いた配置によって十分な安定性が保証される。それに加えて、ここに断面図で示されるように、装着済み(bestueckt)基板3(セラミック、PCB、リードフレームなど)が開口部または貫通部を有することができる。したがって、基板の下面が載る補助キャリアによってキャビティが作り出され、後からの方法工程において、このキャビティを埋めることができる。このようにして、基板もモールドによって取り囲まれ、それにより基板は複数の側から保護される。
【0041】
次の方法工程c)において、流動可能な形のフィラー8が基板3に付与される。フィラーは、ガラス粒子またはSIO2粒子を含み、これらの粒子は、まずは丸いが、用途や生産に応じて別の形状を有することもできる。TiO2、AlN、BNなどの他のフィラーも適している。フィラーが色または導電性などの更なる特性を有すべき場合、フィラーを適切に選択するか、またはこれらの特性を有する別の粒子を追加的に加えることができる。この場合、別の粒子は類似のCTE特性を有することができるか、もしくは別の粒子は、CTEを決定する際に考慮されなければならない。
【0042】
この実施例では、半導体素子2および基板3のすべての中間空間が完全に埋められる。用途に応じて、フィラーは、密な球充填を達成するために様々な大きさの粒子からなるか、または代替的に、非常に均質な層を達成し、それにより粒子分離が生じないようにするために同じ大きさの粒子からなる。適切なサイズ分布の使用によって、半導体部品間に比較的大きい中間空間を残すことなく充填度も調整することができる。
【0043】
それに続く方法工程d)において、図2に示されるように、補助キャリア6がその上に配置された半導体素子2およびフィラー8と共に、金型9の2つの型板10、11の間のキャビティ12内に配置され、半導体素子2が、例えばPDMS13の形のエラストマによって固定され、かつ覆われ、それにより、例えば変換体4の表面が保護されている。トランスファ成形とは異なり、VIMは格段に低い圧力で行われるため、エラストマの使用は有意義であるとともに十分である。それに加えて、PDMSは光、特にUV光に対して透過性であり、それにより、更に後述されるマトリックス材料の露光と硬化を、覆いを除去する必要なしに行うことができるため、PDMSの使用は有意義である。調整板28は、補助キャリア6を金型6内に所望のように配置および固定することを可能にする。
【0044】
次の方法工程e)において、明確にするために図面に示されない金型のキャビティ12に負圧が生成され、次いで、方法工程f)において、前もって詰め込まれたフィラー8の粒子床に、例えばシリコーン、エポキシドなどの液体マトリックス材料14が加えられる。これについて後述されるように、マトリックス材料は様々な方法で導入することができる。マトリックス材料は希薄な液体であり、すなわち低い粘度を有するにすぎず、それにより、これはフィラーにまだ残っている中間空間にも侵入し、中間空間が充填され得る。
【0045】
方法工程g)において、マトリックス材料14の硬化が行われ、次いで、方法工程h)において、発光部品1と共に補助キャリア6の成形が行われ、方法工程i)において、部品1の個別化が行われる。前述した方法工程間で更なる加工工程を行うことができる。
【0046】
図3は、方法工程c)におけるフィラーの付与の概略図を示す。まず、方法工程c1)において、補助キャリア6の装着済みの側にステンシル15またはシーブが置かれ、それにより変換体4の光出射面が覆われる。シーブには、半導体素子2の方を向いた側にエラストマ29、例えば粘着フォイルを取り付けることができる。
【0047】
次に、工程c2)において、フィラー8が付与され、方法工程c3)において、刷毛16またはドクターブレードなどを用いて、これがステンシル15上を送り方向Vに動くことにより分散される。そのために、ステンシル15には開口部17があり、フィラーは、これらの開口部を通って半導体素子2の間の中間空間に流れ込むことができる。
【0048】
図4は、半導体素子2の間の中間空間に導入後のフィラーの構造の概略図を示す。フィラーは、球、中空球などとしての粒子Pを有することができる。粒子Pのサイズ分布によって充填度を調整することができる。したがって、その限りで、図3に示される工程を様々に異なる大きさのフィラーを用いて繰り返すこともでき、それにより、場合によっては充填度または粒子のサイズ分布に勾配が生じる。この勾配は、垂直および水平の両方に存在することができ、後者は、例えば、様々に異なるフィラーが空間的に様々に配置される場合に、後からドクターブレード塗布される(Rakeln)か、または取り除かれると様々な領域に置かれることになる。
【0049】
代替的に、粒子は実質的に同じサイズを有することができる。図3に示されるこの変形形態に代えて、ステンシルを載せた後に(またはこのようなものなしでも)フィラーを定量供給することもできる。特に、発光部品が使用されず、それにより発光面の損傷のリスクがない場合には、簡単に注ぎ込むことも考えられる。当然のことながら、ステンシルを、中間空間にフィラーを詰め込むための別の措置と組み合わせることもできる。
【0050】
図5に示されるように、ここでステンシル15が除去され、その場合、フィラー8は半導体素子2の間に不均一に分散されており、中間空間が完全には埋められていない。したがって、図示される丘状部が発光面および変換体4を越えてわずかに突き出す。それでも、この実施形態では、このようにして導入されるプラスチックの全体量は、残されたキャビティをプラスチックが満たし、それと同時に、使用されるサイズ分布にわたって所望の充填度をもたらすように選択されている。
【0051】
次に、図6に示されるように、補助キャリアが揺動され、それにより、それ自体流動可能なフィラー8が半導体素子2の間の中間空間に均一に分散される。
【0052】
図7は、金型9のキャビティ12に負圧を生成する方法工程e)、およびフィラー8にマトリックス材料14を導入する方法工程f)の概略図を示す。金型9が垂直に配置され、それにより重力が補助キャリア6と平行に作用する。金型9は、マトリックス材料14を導入するための下入口18と負圧を生成するための上出口19とを含む。それに加えて、出口は、任意に形成された吸引ポンプであり得る圧縮機20に空気圧的に接続されている。押し寄せるマトリックス材料14から圧縮機20を保護するために、圧縮機20の下流にオーバーフロー21が配置されており、このオーバーフローは、概略図に示されるように、垂直に配置された管または収集容器である。下入口18は充填管22に接続されており、この充填管はリザーバ容器23に接続され、リザーバ容器の充填高さは距離hの分だけ出口19よりも高い。それによって、フィラー8で満たされた金型9のキャビティにマトリックス材料14を充填する、および埋め込む場合に静水圧が生じ、出口19における静水圧の最小値は高さhによって決まる。
【0053】
フィラー8が密に詰め込まれているため、充填が困難になる。この理由から、マトリックス材料を導入するために、並行して複数の力が使用される。まず、負圧または真空力であり、これらはポンプ20によって生成される。フィラーの粒子の間の毛管力が更に加わる。高低差hにより静水力が調整され、ここでは、場合によっては圧力調整を適合させるために、図示されない弁を追加的に使用することができる。このようにして、突発的な圧力上昇または流入するマトリックス材料によってフィラーが再度ずれ動くことを防ぐことができる。任意的に、充填プロセスを補助するために、液体マトリックス材料14に追加的な圧力印加を行うことができる。
【0054】
図8は、金型9のキャビティ12に負圧を生成する方法工程e)、およびフィラー8にマトリックス材料14を導入する方法工程f)の代替的実施形態の概略図を示す。ここでは金型9が水平に配置され、入口18と出口19が、ここでは同じ高さに位置する。それに加えて、導入された基板およびフィラーと共に金型が回転される。この動作には、フィラーが変換体材料およびPDMSパンチ13の方向にもう一度落下するという利点がある。すなわち、フィラーがPDMSパンチ上に集まる。パンチにおける分散が均一でない場合には、密度は、とりわけ基板の領域でより低く、それにより、後からのプロセスにおいて、そこではマトリックス材料がより多く堆積する。その場合、そこではCTEが局所的に大きくなりはするが、層間剥離を引き起こすことなく、これらの力を受けるのに適した基板の構造を形成することができる。
【0055】
この場合も真空を補助する作用をするように、リザーバ容器23に正圧または負圧を印加することができる。金型9において、出口19の前にフィルタ要素24が配置され、このフィルタ要素は、膜、フィルタ紙、目の細かいシーブ、プラスチックガーゼ、セラミックフリットなどであり、ストリップまたはブロックとして補助キャリア6に貼着されている。このフィルタ要素は、発生する真空によってフィラーの粒子がポンプの方向に動かされることを防ぐ。その一方で、マトリックス材料が出口に達した場合に、このマトリックス材料による粒子の移送が防がれる。したがって、フィラーは完全に中間空間にとどまる。いくつかの実施形態では、要素24は液密であるが、気体透過性に形成され、それにより出口への越流または流入も低減もしくは阻止される。それによって、PDMSパンチ13において(図2を参照)出口が汚れずに済み、大がかりな清掃をすることなく何度も使用できる。
【0056】
図9および図10は、方法工程c)~f)の別の実施例を示す。図9は、フィラー8を導入し、揺動によってフィラーを分散した後の装着済みの補助キャリアの断面図を示す。図10は、フィラー充填物を排気する際の金型9に配置された装着済みの、およびフィラー8が取り付けられた補助キャリア6の概略図を示す。いくつかの、またはすべての基板3の間、あるいは基板3における空所の領域において補助キャリア6および接着剤層7に通路25が配置されている。通路25は、空気透過性フィルタまたはシーブ26で覆われており、それにより、これらの通路は図示されるように基板3の要素間に位置する。
【0057】
フィルタ26は、液体マトリックス材料14および流動可能なフィラー8に対して不透過性である。これらの通路25は、充填材料8が詰め込まれた領域を容易に、かつより迅速に排気することを可能にする。それに加えて、金型9の型板のうちの一方10に、その面にわたって複数の出口開口部19が分散して配置され、図示されない空気圧ラインと、1つまたは複数の圧縮機の吸込側とに接続されている。それに対応して、他方の型板11には、マトリックス材料14を導入するための複数の入口18が配置されている。
【0058】
型板11における入口の数は出口開口部19の数より小さく、それに加えて、通路25も、そのサイズに関して格段により小さい。しかしそれによって、均一な負圧と吸引動作ももたらされ、それによりマトリックス材料は、特に、これらの通路25の近くの基板3および粘着フォイルの小さい領域および中間空間にも到達することができる。膜は、マトリックス材料の硬化後に部品の一部となり、それによって、これを、個別化の後にこの膜によって直接確認することさえできる。この実施例では、フィルタ要素26が個別化され、通路の上にのみ配置されている。しかし一貫したフォイルを提供することも可能であり得るし、または膜は粘着フォイル7の一部である。
【0059】
図11および図12は、方法工程c)~f)の別の代替的実施例を示す。補助キャリア6は、ここでは図1をもとにして説明された補助キャリア1に相当し、すなわち通路25を有していない。上型板11は、前述した実施例でのように、マトリックス材料14を導入するための複数の入口18を有する。金型の排気は、前述の実施例とは異なり、水平に配置された矢印27で示されるように横から行われる。
【0060】
それに加えて、この実施例では、導入されたフィラーが様々なサイズの粒子と、それに続く揺動動作とによる様々な充填工程によって生成された粒子サイズ勾配を示す。
【符号の説明】
【0061】
1 発光部品
2 発光半導体素子
3 基板
4 変換体
5 ワイヤコンタクト
6 補助キャリア
7 接着剤層
8 フィラー
9 金型
10 下型板
11 上型板
12 下型板と上型板との間のキャビティ
13 粘着フォイル
14 マトリックス材料
15 ステンシル
16 ブラシ
17 ステンシルの開口部
18 入口
19 出口
20 圧縮機
21 オーバーフロー
22 充填管
23 リザーバ容器
24 フィルタ要素
25 通路
26 フィルタ
27 矢印
28 調整板
29 エラストマ
V 送り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも1つの発光半導体素子(2)を有する複数の発光部品(1)を製造する方法であって、
a)複数の半導体素子(2)をそれぞれ基板(3)に配置、固定および配線する工程と、
b)任意的に、前記基板(3)を接着剤層(7)によって補助キャリア(6)に固定する工程と、
c)前記半導体素子(2)の間の中間空間にフィラー(8)を導入する工程と、
d)前記基板(3)を、前記基板(3)に固定された前記半導体素子(2)および前記フィラー(8)と共に金型(9)のキャビティ(12)に導入する工程と、
e)前記金型(9)の前記キャビティ(12)に負圧を生成する工程と、
f)前記フィラー(8)にマトリックス材料(14)を導入する工程と、
g)前記マトリックス材料(14)を硬化させる工程と、
h)前記基板(3)を前記発光部品(1)と共に成形する工程と、
i)前記部品(1)を個別化する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記フィラー(8)が流動可能である、および/またはフィラーとマトリックス材料とが相次いで導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィラーを導入する前記工程は、揮発性溶媒および前記フィラーを含む懸濁液が導入されることにより行われ、前記揮発性溶媒は、企図されたフィラー量が導入されるまで蒸発する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラー(8)が、球状SiO2粒子、TiO2、AlN、Al2O3、BNから選択される少なくとも1種類の物質を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フィラー(8)が予め定められたサイズ分布を有し、特に所望の充填度が前記予め定められたサイズ分布に依存する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
中間空間への前記フィラー(8)の導入は数回にわたって、特に異なるサイズ分布を有するフィラーを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マトリックス材料(14)がシリコーンおよび/またはエポキシ樹脂を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
方法工程d)において、前記半導体素子(2)が、特にPDMS(13)からなる弾性パンチによって覆われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
方法工程c)の前に、前記発光半導体素子(3)の領域がマスキング(15)される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
方法工程c)において、前記フィラー(8)がシーブ構造(15)を介してドクターブレード塗布される、および/または刷毛塗りされる、および/または振り落とされる、および/またはまき散らされる、および/または注ぎ込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
方法工程c)の後に、過剰なフィラー(8)が取り除かれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
方法工程c)の後に、揺動により前記フィラー(8)が緻密化および/または分散される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記フィラーを導入する前記工程および/または前記揺動の前記工程が繰り返される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
方法工程f)において、前記金型(9)が水平面に対して約90°の角度で配置される、または、
方法工程f)において、前記金型(9)が180°回転される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記金型(9)が、前記マトリックス材料(14)を導入するための入口(18)と前記負圧を生成するための出口(19)とを含み、任意的に、前記入口(18)と前記出口(19)とが前記金型の同じ側、特に前記キャリアの同じ側に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記金型(9)は、前記出口(19)への前記マトリックス材料(14)の流出を防ぐ手段(24)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記手段(24)が、前記出口(19)の領域に配置されたプラスチックまたはセラミックからなるフィルタストリップまたはフィルタブロックである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記補助キャリア(6)および前記接着剤層(7)が通路(25)を有し、前記金型(9)において前記通路(25)に対応する複数の出口(19)によって前記フィラー(8)に負圧が生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
複数のフィルタ要素が設けられ、前記複数のフィルタ要素はそれぞれ前記通路(25)の上に配置され、前記複数のフィルタ要素は、任意的に、前記マトリックス材料の硬化後に前記部品の一部となる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金型(9)が複数の入口(18)を含み、前記複数の入口を介して前記フィラーにマトリックス材料(14)が導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記入口の数が出口の数とは異なる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
基板(3)に配置された少なくとも1つの発光半導体素子(2)を有する発光部品(1)であって、前記発光半導体素子(2)は、マトリックス材料(14)に埋め込まれたフィラー(8)によって少なくとも領域的に取り囲まれ、前記マトリックス材料における前記フィラーの充填度が70%より大きく、特に80%~98%の範囲にあり、前記マトリックス材料内の前記フィラー(8)が、前記部品に沿って一方向に延びる粒子サイズ勾配を有する粒子を有する、部品。
【請求項23】
前記フィラー(8)が流動可能である、請求項22に記載の部品。
【請求項24】
前記フィラー(8)が、球状SiO2粒子、TiO2、AlN、Al2O3、BNから選択される少なくとも1種類の物質を含有する、請求項22または23に記載の部品。
【請求項25】
前記フィラー(8)がサイズ分布を含み、前記充填度が実質的に前記サイズ分布に依存する、請求項22に記載の部品。
【請求項26】
前記マトリックス材料(14)がシリコーンおよび/またはエポキシ樹脂を含有する、請求項22に記載の部品。
【請求項27】
請求項1に記載の方法を実施するための装置であって、キャビティ(12)を包囲する、および互いに分離可能である上型板(11)と下型板(10)とを有する金型(9)を備え、前記金型(9)が、マトリックス材料(14)を導入可能な少なくとも1つの入口開口部(18)と、前記キャビティ(12)を排気可能な少なくとも1つの出口開口部(19)とを有する、装置。
【国際調査報告】