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特表2024-526740メルトブローン不織布を含む濾材およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】メルトブローン不織布を含む濾材およびその使用
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20240711BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240711BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20240711BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20240711BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B32B5/26
D04H3/14
D04H3/007
B01D39/16 E
A41D13/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501726
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022068606
(87)【国際公開番号】W WO2023285211
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021207504.5
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511183515
【氏名又は名称】ネーナー・ゲッスナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グラボット,サイモン
【テーマコード(参考)】
3B211
4D019
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3B211CA02
3B211CC03
3B211CE01
4D019AA01
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB03
4D019BB04
4D019BB10
4D019BC01
4D019BD01
4D019CB04
4D019CB06
4D019DA02
4D019DA03
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK12
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AK45
4F100AK45B
4F100AK46
4F100AK46B
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AK57
4F100AK57C
4F100AK73
4F100AK73A
4F100AK74
4F100AK74A
4F100AL01
4F100AL01B
4F100AL09
4F100AL09A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG11
4F100DG11C
4F100DG15
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DG15C
4F100GB56
4F100JB16
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JD14
4F100JK02
4F100JK08
4L047AA14
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB10
4L047CA01
4L047CB08
4L047CB10
4L047CC03
4L047CC12
(57)【要約】
本発明は、I)第1の不織のメルトブローンレイヤーを含む濾材であって、メルトブローン不織布が、a)少なくとも1種のスチレンを含有する熱可塑性エラストマー、およびb)少なくとも1種のポリオレフィンを含む、濾材に関する。本発明は、コーヒーフィルター、圧縮空気フィルターおよびフェイスマスクのための濾材の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)メルトブローン不織布の第1の層
を含む濾材であって、前記メルトブローン不織布が、
a)少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)少なくとも1種のポリオレフィン
を含む、濾材。
【請求項2】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンまたはポリエチレンのいずれかである、請求項1または2に記載の濾材。
【請求項4】
前記メルトブローン不織布が、15μm未満の平均直径(d)を有する繊維を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の濾材。
【請求項5】
前記メルトブローン不織布の第1の層の透気度が、50~2000l/msである、請求項1~4のいずれか1項に記載の濾材。
【請求項6】
前記メルトブローン不織布の第1の層が、
a)1~99重量%の少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)1~99重量%の少なくとも1種のポリオレフィン
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の濾材。
【請求項7】
II)不織布または織布の第2の層
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の濾材。
【請求項8】
前記第2の層の前記不織布または織布が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオレフィン(PO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)またはこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから形成される、請求項7に記載の濾材。
【請求項9】
III)不織布または織布の第3の層を含み、前記第1の層、前記第2の層および前記第3の層が、1層ずつ重ねて配置される、請求項7または8に記載の濾材。
【請求項10】
コーヒーフィルターのための、好ましくはコーヒーカプセル用フィルターのための、請求項1~6のいずれか1項に記載の濾材の使用。
【請求項11】
圧縮空気フィルターのための、請求項1~9のいずれか1項に記載の濾材の使用。
【請求項12】
フェイスマスクのための、請求項1~9のいずれか1項に記載の濾材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
I)メルトブローン不織布の第1の層
を含む濾材であって、メルトブローン不織布が、
a)少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)少なくとも1種のポリオレフィン
を含む、濾材、ならびにコーヒーフィルター、特にコーヒーカプセル用フィルター、圧縮空気フィルターまたはフェイスマスクのための前記濾材の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
固体不純物、例えば塵粒子を液体および気体から除去するために、基本的に2つの異なるタイプの濾材(フィルター媒体)がある。
【0003】
第1のタイプはデプス濾材(デプスフィルター媒体)であり、これは、詰まる前に最大量の塵を吸収し蓄積することができるように構成されている。そのような濾材は、理想的には非対称構造を有し、それは、孔径および繊維径が、流れ方向に見てどこまでも小さくなって行くことを意味する。これの効果は、大きい塵粒子はデプス濾材の最上レイヤーに優先的に付着し蓄積され、一方小さい塵粒子は、さらに奥に浸透した後に、それらも付着するという点である。濾材の深さ全体にわたるこの塵粒子の分布により、蓄積された塵粒子を通る液体または気体の流れが酷く妨げられるほど濾材が詰まる前に、比較的多量の塵が蓄積されることが可能になる。このようなフィルターは汚れを落とすことができず、規定された圧力差に到達した後、取り外して処分しなければならない。
【0004】
第2のタイプはサーフェス濾材(サーフェスフィルター媒体)である。この濾材の場合、流れ方向の第1の濾過レイヤーは、最小の孔径および繊維径を有する。次のレイヤーは通常、より開いた孔を有し、繊維がより太い。それは主に第1の濾過レイヤーの担体として役立ち、濾材全体に必要な機械的強度および剛性を付与する。すべての塵粒子は、それらが大きいか小さいかにかかわらず、理想的には第1のレイヤーに付着し、濾材の中に浸透しない。
【0005】
結果として、経時で濾材の表面に塵のケークが形成され、それが液体または気体の流れを際限なく妨げる。塵ケークは濾材の表面にかなり緩く載るため、比較的容易に再度汚れを落とすこともできる。汚れ落としは、理想的には、軽い叩き、振盪、洗浄、圧力パルスまたは逆洗のいずれかによって行われる。逆洗の場合および圧力パルスの場合、濾材は、元来の流れ方向と逆方向に、クリーンな液体またはクリーンな気体に短時間曝される。これが濾材の表面から塵ケークを引き離し、このようにして汚れが落ちた濾材は次の濾過サイクルの準備が整う。逆洗の場合、これは長時間にわたり比較的低流速の洗浄液で行われ、一方、圧力パルスの場合、洗浄液は強力な短パルスにおいて適用される。
【0006】
表面濾過用の濾材は、単層または多層のいずれかの構造である。単層サーフェス濾材は、例えば、流入側に流出側より小さい孔を有する濾紙、または片面を緻密化したニードルフェルトもしくはスパンボンド不織布である。片面を緻密化したスパンボンド不織布は、例として文献DE10039245A1に記載されている。単層の濾材は、片側の表面の緻密化にもかかわらず、緻密化した側に依然として比較的大きい孔を有し、かなり粗い塵にのみ適する。もっと微細な塵粒子は濾材に深く浸透し、二度と汚れを落とすことはできない。結果として、濾材または濾材を含むフィルター要素は、比較的短時間後に詰まり、交換されなければならない。
【0007】
フィルターの性能を評価するために、例えば、有効寿命が基準として導入された。フィルター要素の有効寿命または他の寿命は、フィルター要素の初回使用時から規定された最大圧力差に到達するまでに経過する時間である。フィルター要素の濾過面積が大きいほど、およびその表面特性が理由でフィルター要素の塵蓄積能が良好であるほど、有効寿命は長くなる。
【0008】
細塵、例えば色粉末、粉砕した樹脂またはセメントなどを付着させるために、少なくとも2層構造を有する濾材が使用される。膜、ナノファイバーレイヤーまたはメルトブローンレイヤーのいずれかが、高い機械的強度および剛性を有する担体に、濾過層として適用される。濾過層は、流れ方向に見て第1の層である。
【0009】
メルトブローンレイヤーを有する濾材の一例は、独国公開明細書DE4443158A1に記載されている。このような濾材の利点は、コストが比較的低いことである。しかしながら、ここでの不利点は、メルトブローンレイヤーの機械的強度があまり高くないことである。
【0010】
メルトブローン不織布の濾材としての使用は、ずっと以前から公知である。メルトブローン処理は、例えば、A.van Wente、「Superfine Thermoplastic Fibers」、Industrial Engineering Chemistry、48巻、1342~1346頁に詳細に記載されている。この処理により、0.3~15μmの直径を有する実質的に連続した繊維を製造することが可能である。繊維径が小さいほど、および繊維の密度が互いに対して高いほど、細塵を気体および液体から分離するメルトブローン不織布の適性がより良好になる。しかし、残念ながら、繊維の機械的強度も繊維径とともに低下する。このように製造されたメルトブローン不織布に機械的ストレスがかかる場合は常に、例えば後のフィルター要素の製造中に、濾材の表面にわたって、または濾材の折り畳みの中で指が擦れると、一部の繊維は破損し、デンドライトが形成される。デンドライトとは、メルトブローン不織布の表面から10°~90°の角度で突出する、長さの異なる裂かれたメルトブローン繊維を意味する。濾材は通常、フィルター要素の製造において折り畳まれるため、デンドライトは流入側のそうでない空いた空間に突出することになる。メルトブローン不織布の表面からのデンドライトの突出は、メルトブローン不織布が静電気的に帯電することができる場合に増加する。メルトブローン不織布から作製されたそのような濾材を有するフィルター要素は、短時間後でさえ詰まる傾向があり、フィルター要素が交換されなければならないという結果になる。
【0011】
DE4443158A1およびDE10039245A1に記載されているように、カレンダーを用いて熱的表面緻密化を行うことによって、機械的強度および表面平滑性を改善することが可能である。しかし、メルトブローン不織布の機械的強度を明確に高める表面緻密化は、同時に、空隙率および透気度に悪影響を及ぼす。さらに、熱的緻密化は、追加の処理工程となる。DE4443158A1は、メルトブローン不織布は、耐摩耗性および耐精錬性を高めるために、単独でまたは担体と一緒に、結合剤で団結させることができることも開示している。しかしこの方法はやはり濾材の透気度に悪影響を及ぼし、さらなるコストのかかる方法の工程となる。
【0012】
対応する濾材の生成のための様々な方法が当業者に公知である。特にメルトブローン法およびスパンボンド法は、多種多様のポリマーから不織布を製造するのに適している。
【0013】
原料の正確な選択により、様々な性質を有する不織布を実現することが可能である。例えば、とりわけ、かなりの間様々な用途に使用されてきた弾性不織布が存在し得る。そのような不織布に最もよく使用されるポリマーは、熱可塑性ポリウレタンであり、これは良好な安定性および調節可能な弾性などの多くの利点を有する。加えて、TPA(熱可塑性ポリアミドエラストマー)およびTPC(熱可塑性コポリエステルエラストマー)のメルトスパン不織布に関する刊行物が既にある。
【0014】
TPU(熱可塑性ポリウレタン)のメルトブローン不織布の不利点は、食品分野での適性が限定されることである。鎖分解および加水分解により、芳香族第一級アミンが生じる可能性があり、その一部はヒトに対して発癌性がある。
【0015】
TPUのメルトブローン不織布のさらなる不利点は、この不織布が静電気的に帯電することができないことである。しかし、様々な用途、例えばフェイスマスクなどには帯電不織布が有利である。
【発明の概要】
【0016】
これらの理由のため、従来技術から公知の不利点を少なくとも一部軽減する、改善された濾材を提供することが本発明の目的であった。
【0017】
この目的は、
I)メルトブローン不織布の第1の層
を含む濾材であって、メルトブローン不織布が、
a)少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)少なくとも1種のポリオレフィン
を含む、濾材によって実現される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において「メルトブローン不織布」は、濾材の製造のための当業者に公知のメルトブローン法、すなわち、溶融ポリマーが高温気体流中に高速で押し出され、それにより溶融ポリマーが繊維に変換される方法によって製造することができるすべての不織布を意味する。
【0019】
本明細書において「濾材」という用語は、濾過、すなわち濾材の介在の助けにより、1つの物質を、固体、液体および気体などの別の物質から分離する機械的または物理的方法の処理のために使用することができる任意のデバイスを指す。
【0020】
第1、第2および第3の層(レイヤー)のレイヤーの厚さおよび濾材全体の厚さは、DIN EN ISO9073-2:1997-02により、0.5kPaの圧力下における厚さである。
【0021】
熱可塑性エラストマー(TPE)は、室温で従来のエラストマーと同等の挙動を有するポリマーまたはポリマー混合物であるが、熱を供給すると可塑的に変形することができ、したがって熱可塑特性を示す。熱可塑性エラストマーは、硬質相および軟質相を規則的に含有し、硬質相は熱可塑性の加工性に関与し、軟質相は弾性特性に関与する。
【0022】
熱可塑性スチレンエラストマー(TPS)は、TPEの中で最もゴム様であり、優れた可撓性および弾性で注目に値する。ポリスチレン(PS)を硬質セグメントとして、製品のバリエーションは、軟質セグメントの材料の違いに基づいて、SBS(S:スチレン、B:ブタジエン)、SIS(I:イソプレン)およびその水素化バリエーション、SEBS(E:エチレン、B:ブチレン)ならびにSEPS(P:プロピレン)に分類される。SEBSおよびSEPSは、優れた熱安定性および耐候安定性を有する。これらは、成形性、可撓性および機械的強度間の均衡が良好であるため、多くの用途において使用される。
【0023】
ブロックコポリマー、例えばスチレンブロックコポリマー(SBC)においては、一分子内に硬質相および軟質相がある。
【0024】
本発明は、メルトブローン不織布、好ましくはTPSをベースとする弾性メルトブローン不織布を記載し、TPSはすなわち、スチレンブロックコポリマーをベースとする熱可塑性エラストマーであり、これはポリオレフィンとの混合物に加工することができる。このようなポリマーのオレフィン構造は、芳香族アミンの放出を不可能にし、加水分解する傾向が低いため、さらに食品用途における使用に良好な適性がある。
【0025】
好ましいスチレンブロックコポリマーは、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)およびこれらの混合物からなる群から選択される。特に優先されるのはSEBS、SISおよびSBSである。
【0026】
熱可塑性エラストマーはTPSと呼ばれ、例えば、SBSまたはSEBSをベースとする混合物である。事実、SBSまたはSEBSという用語は、これらが実際に原料である場合、この構成成分を記載するために頻繁に使用される。構成成分をSBSまたはSEBSとして記載すると、構成成分の一般的な性能レベルおよび性質に関して知らしめることが可能になる。
【0027】
SBSは、硬質セグメントおよび軟質セグメントを有する二相性のブロックコポリマーをベースとする。スチレンの末端ブロックは熱可塑特性を確保し、ブタジエンの中間ブロックはエラストマーの性質を確保する。
【0028】
SBSは、水素化されている場合、ブタジエン構成成分中のC=C結合の脱離が中間ブロック中にエチレンおよびブチレンを作出するため、SEBSになる。SEBSは、熱安定性、機械的性質および化学的安定性が改善されていることで注目に値する。SEBS系の構成成分は、技術的熱可塑性樹脂に接着する。PPに接着する場合、SBSまたはSEBSのいずれかを使用することが可能である。
【0029】
SEPS、すなわちスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンは、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン(SEPS)としても知られ、加硫されずにゴムのように挙動する熱可塑性エラストマー(TPE)である。SEPSは、きわめて可撓性があり、優れた熱安定性およびUV安定性を有し、加工が容易である。それは、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)の選択的部分水素化によって製造され、その水素化は、熱安定性、耐候性および耐油性を高め、SEPSを蒸気による滅菌に対応できるようにする。しかしながら、水素化はまた、機械効率を低減し、ポリマーのコストを増大させる。SEPSエラストマーは、その性能を高めるために他のポリマーと混合されることが多い。
【0030】
特に適切なスチレンブロックコポリマーは、スチレン/共役ジエン/スチレンのトリブロックコポリマー、その水素化誘導体またはこれらの混合物である。共役ジエンは、典型的にはブタジエンおよびイソプレンから選択される。
【0031】
本発明に従って適切なスチレンブロックコポリマーは、好ましくは少なくとも25重量%のスチレン、より好ましくは25~65重量%のスチレン、特に好ましくは35重量%~60重量%、特に40重量%~60重量%のスチレン、および75重量%まで、より好ましくは75重量%~35重量%、特に好ましくは65重量%~40重量%、特に60重量%~40重量%の共役ジエンを含有する。57重量%の高スチレン含量を有するポリスチレンブロックコポリマーが、例えば、Kraton(商標)A1535Hの商品名で入手可能である。
【0032】
ポリオレフィンは、好ましくは熱可塑性の結晶性ポリオレフィンホモポリマーおよびコポリマーを含む。適切なポリオレフィンは、好ましくは2~8個の炭素原子を有するオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにそのようなオレフィンと(メタ)アクリレートおよび/または酢酸ビニルとのコポリマーである。
【0033】
メルトブローン不織布中に存在するポリオレフィンは、より好ましくは、熱可塑性ポリオレフィンである。
【0034】
熱可塑性ポリオレフィンは、単独でまたは混合物として使用することができる。好ましい熱可塑性ポリオレフィンは、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)であり、ここでポリプロピレンとは、プロピレンと、約1重量%~約20重量%のエチレンなどの他のオレフィンまたは4~16個の炭素原子を有するα-オレフィンおよびこれらの混合物とのホモポリマーおよびコポリマーの両方を意味する。ポリプロピレンは、高結晶質の、アイソタクチックまたはシンジオタクチックポリプロピレンとすることができる。
【0035】
ポリオレフィンは、より好ましくは、ポリプロピレンまたはポリエチレンのいずれかである。
【0036】
優先されるのは、メルトブローン不織布の第1の層が、
a)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは21~80重量%の少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~79重量%の少なくとも1種のポリオレフィン
を含む濾材である。
【0037】
特に優先されるのは、メルトブローン不織布の第1の層が、
a)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは21~80重量%の少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~79重量%の少なくとも1種のポリオレフィン
からなる濾材である。
【0038】
優先されるのは、メルトブローン不織布の第1の層が、
a)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは21~80重量%の少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~79重量%のポリプロピレン
を含む濾材である。
【0039】
特に優先されるのは、メルトブローン不織布の第1の層が、
a)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは21~80重量%の少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)1~99重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~79重量%のポリプロピレン
からなる濾材である。
【0040】
スチレン系熱可塑性エラストマーのポリオレフィンに対する比は、好ましくは1/99~99/1、より好ましくは10/90~90/10、より好ましくは10/90~80/20、より好ましくは20/80~80/20、より好ましくは40/60~80/20、特に好ましくは60/40~70/30である。スチレン系熱可塑性エラストマーの割合が高いほど、メルトブローン不織布はより柔らかく、弾性が大きくなる。ポリオレフィンの割合が高いほど、メルトブローン不織布はより硬く、メルトブローン不織布を静電気的に帯電させることがより容易になる。したがって、当業者は、スチレン系熱可塑性エラストマーのポリオレフィンに対する比を、所望の使用のために相応に調整することができる。
【0041】
本発明に従って使用されるスチレン系熱可塑性エラストマーおよび/または使用されるポリオレフィンは、特に非吸湿性の添加剤をさらに含んでもよい。そのような添加剤の例は、充填剤、例えば無機充填剤、例えば炭酸カルシウム、クレイ、二酸化ケイ素、タルクおよび二酸化チタン;接着促進剤;殺生物剤;防曇剤;結合剤、発泡剤および起泡剤;分散剤;防火および防炎剤ならびに煙抑制剤;耐衝撃性改良剤;架橋剤;滑沢剤;マイカ;顔料、着色料および染料;追加の加工助剤;分離剤;シラン、チタネートおよびジルコネート;滑沢剤および粘着防止剤;安定化剤;ステアレート;紫外線吸収剤;粘度調節剤;ワックス;ならびにこれらの組合せである。
【0042】
本発明のメルトブローン不織布は、好ましくは15μm未満の平均直径(d)、より好ましくは1μm≦d<10μm、より好ましくは1μm≦d≦8μmの平均直径(d)を有する繊維を含む。フェイスマスクにおける使用には、1μm≦d<4μmの平均直径(d)が特に適している。このことから推論できるように、規定された繊維径(繊維直径)を有するメルトブローン不織布は、DIN EN14683:2019-10によるタイプI、IIおよびIIRのフェイスマスクまたはDIN EN149:2009-08によるFFP1、FFP2およびFFP3の規格を満たすことができ、フェイスマスクにおける本発明の濾過レイヤーの使用を可能にする。
【0043】
本発明において、「平均直径」と「直径」とは区別される。平均直径からは特定の直径を有する微細繊維の量に関して何ら情報が得られないため、この違いは重要である。
【0044】
メルトブローン不織布の第1の層は、好ましくはDIN EN ISO9073-2:1997-02により、0.5kPaの圧力下で0.20mmを超える厚さを有する。より好ましくは、不織布の層の厚さは、0.30~1.20mm、特に0.40~1.00mmである。
【0045】
メルトブローン不織布の第1の層の単位面積質量は、好ましくは15g/m~400g/mの間、より好ましくは20g/m~300g/mの間である。25~200g/mの間の範囲が特に好ましい。
【0046】
メルトブローン不織布の第1の層の透気度は、好ましくは200Paで50~2000l/ms、より好ましくは200~1500l/msである。フェイスマスクにおける使用には、100~700l/msの間の範囲が特に適している。圧縮空気フィルターにおける使用では、50~500l/msの間の透気度が特に適している。コーヒーフィルターおよびコーヒーカプセル用フィルターにおける使用では、700~1500l/msの間の透気度が特に適している。
【0047】
メルトブローン不織布の第1の層の縦方向(MD)の引張強さは、好ましくは5~100N/5cmである。
【0048】
メルトブローン不織布の第1の層の横方向(CD)の引張強さは、好ましくは5~80N/5cmである。
【0049】
メルトブローン不織布の第1の層の縦方向(MD)の破断点伸びは、好ましくは100~500%であり、特に好ましいのは、150~400%の範囲および300~500%の範囲である。
【0050】
メルトブローン不織布の第1の層の横方向(CD)の破断点伸びは、好ましくは100~500%であり、特に好ましいのは、150~400%の範囲および300~500%の範囲である。
【0051】
60bar/分での耐水浸透性は、好ましくは10~60mbar、より好ましくは15~50mbarである。
【0052】
メルトブローン不織布は、好ましくは唯一の層として製造され、不織布または異なる織物製品もしくは織布の第2の層との組合せが可能である。この第2の層は、好ましくはDIN EN ISO9073-2:1997-02により、0.5kPaの圧力下で0.50mm未満の厚さを有する。第2の層の厚さは、より好ましくは0.10~0.40mm、特に0.10~0.35mmである。
【0053】
第2の層は、不織布または織布からなり、優先されるのは、ポリプロピレン、ポリエステルまたは弾性熱可塑性ポリマーからなるスパンボンド不織布またはカード式不織布を使用することである。
【0054】
「不織布」とは、繊維から製造され、様々な方法で団結された布地である。不織布は、何ら制限なく繊維から製造されるが、必ずしも織布用繊維を用いる必要はない。
【0055】
「織物製品(繊維製品)(Textile Produkte)」または「織布(Textilien)」とは、織布用原料(天然繊維または合成繊維)および非織布用原料から形成される線形の二次元または三次元構造である。不織布と区別して、「織布(Textil)」という用語は、本発明において二次元の材料に使用され、その主な構成要素は、織布用繊維、すなわち、織布製造方法において加工することができ、特に紡績可能な、糸の形状に加工される繊維である。織布用繊維は紡績可能であるため、織物製品と不織布との間の織り方向の意味における主な違いは、したがって、織布はその基材も一方向の織物からなるものであり、すべての補強用の糸も同様に一方向を向いていることである。
【0056】
第2の層の単位面積質量は、好ましくは10g/m~120g/m、より好ましくは12g/m~90g/mである。
【0057】
第2の層は、任意の既知の方法を使用して製造することができる。優先されるのは、化学的におよび/または熱的におよび/または機械的に団結されていてもよい不織布を使用することである。
【0058】
第2の層は、好ましくは、ポリプロピレン、ポリエステルまたは弾性の熱可塑性ポリマーからなる群から選択されるポリマーから形成されている。第2の層は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオレフィン(PO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)またはこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから形成される。
【0059】
第2の層は、好ましくは、ポリアミド(PA)を含むかまたはそれからなるポリマーから形成されている。ポリアミド(PA)の少なくとも一部は、好ましくは熱可塑性ポリアミド(TPA)である。ポリアミド(PA)は、好ましくは熱可塑性ポリアミド(TPA)である。ポリアミド(PA)は、好ましくは熱可塑性ポリアミドエラストマーである。
【0060】
第2の層は、好ましくは、熱可塑性コポリエステル(TPC)を含むかまたはそれからなるポリマーから形成される。熱可塑性コポリエステル(TPC)は、好ましくは熱可塑性コポリエステルエラストマーである。
【0061】
第2の層は、好ましくは、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)を含むかまたはそれからなるポリマーから形成される。熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)は、好ましくは熱可塑性スチレンエラストマーである。
【0062】
「熱可塑性」とは、本明細書において、特定の温度範囲内で容易に変形可能であり、この作動が可逆的であるポリマーの挙動を意味するものと理解される。
【0063】
「エラストマー」または「弾性ポリマー」とは、本明細書において、例えば引張応力下および圧縮応力下で弾性的に変形可能であり、使用温度より低いガラス転移点を有する、寸法安定性のあるポリマーを意味するものと理解される。
【0064】
より好ましくは、第2の層は、ポリプロピレン、ポリエステルまたは弾性の熱可塑性ポリマーの不織布または織布を含んでもよく、またはこれらからなるものでもよい。
【0065】
より好ましくは、第2の層は、ポリプロピレン、ポリエステルまたは弾性の熱可塑性ポリマーのスパンボンド不織布を含んでもよく、またはそれからなるものでもよい。最も好ましくは、第2の層は、ポリプロピレン、ポリエステルまたは弾性の熱可塑性ポリマーからなるスパンボンド不織布である。最も好ましくは、第2の層は、ポリプロピレンまたはポリエステルで構成されるスパンボンド不織布を含んでもよく、またはそれからなるものでもよい。
【0066】
より好ましくは、第2の層は、ポリプロピレン、ポリエステルまたは弾性の熱可塑性ポリマーで構成されるカード式不織布を含んでもよく、またはそれからなるものでもよい。最も好ましくは、第2の層は、ポリプロピレン、ポリエステルまたは弾性の熱可塑性ポリマーからなるカード式不織布である。最も好ましくは、第2の層は、ポリプロピレンまたはポリエステルで構成されるカード式不織布を含んでもよく、またはそれからなるものでもよい。
【0067】
第1の層および第2の層は、好ましくは同一であり、すなわち、第1の層および第2の層の両方が、好ましくは、少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマーおよび少なくとも1種のポリオレフィンを含むメルトブローン不織布を含む。より好ましくは、第1の層および第2の層の両方において、スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)およびこれらの混合物からなる群から選択され、ポリオレフィンは、ポリプロピレンまたはポリエチレンである。
【0068】
メルトブローン不織布で構成される第1の層、および第2の層とは別に、濾材は、追加として第3の層を、好ましくは保護層として含んでもよい。濾材は、好ましくは、不織布または織布で構成される第3の層を含み、第1の層、第2の層および第3の層は、1層ずつ重ねて配置される。
【0069】
第3の層に適したポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオレフィン(PO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)またはこれらの混合物である。
【0070】
第3の層は、好ましくは、ポリアミド(PA)を含むかまたはそれからなるポリマーから形成される。好ましくは、ポリアミド(PA)の少なくとも一部は熱可塑性ポリアミド(TPA)である。ポリアミド(PA)は、好ましくは熱可塑性ポリアミド(TPA)である。ポリアミド(PA)は、好ましくは熱可塑性ポリアミドエラストマーである。
【0071】
第3の層は、好ましくは、熱可塑性コポリエステル(TPC)を含むかまたはそれからなるポリマーから形成される。熱可塑性コポリエステル(TPC)は、好ましくは熱可塑性コポリエステルエラストマーである。
【0072】
第3の層は、好ましくは、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)を含むかまたはそれからなるポリマーから形成される。熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)は、好ましくは熱可塑性スチレンエラストマーである。
【0073】
第3の層は、不織布方法または織布方法のいずれかによって製造することができる。優先されるのは、スパンボンド法による製造である。
【0074】
より好ましくは、第3の層は、ポリプロピレンまたはポリエステルで構成される不織布または織布を含んでもよく、またはこれらからなるものでもよい。
【0075】
最も好ましくは、第3の層は、ポリプロピレンまたはポリエステルで構成されるスパンボンド不織布を含んでもよく、またはそれからなるものでもよい。
【0076】
第1の層、第2の層および第3の層は、好ましくは同一であり、すなわち、第1の層、第2の層および第3の層は、好ましくは、すべてが、少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマーおよび少なくとも1種のポリオレフィンを含むメルトブローン不織布を含む。より好ましくは、第1の層、第2の層および第3の層のすべてにおいて、スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)およびこれらの混合物からなる群から選択され、ポリオレフィンは、ポリプロピレンまたはポリエチレンである。
【0077】
第3の層における繊維の平均直径(d)は、好ましくは2μm≦d≦50μm、より好ましくは5μm≦d≦40μm、きわめて好ましくは10μm≦d≦30μmである。
【0078】
第3の層は、好ましくは、8g/m~100g/m、より好ましくは10g/m~50g/mの単位面積質量を有する。
【0079】
濾材の製造のために、メルトブローン不織布で構成される第1の層は、不織布または織布で構成される第2の層に接着させることができる。この目的のため、当業者に公知の任意の方法、例えばニードリング法、ウォータージェットニードリング法、熱的方法(すなわちカレンダー団結および超音波団結)および化学的方法(すなわち接着剤による団結)を使用することが可能である。
【0080】
メルトブローン不織布で構成される第1の層は、好ましくは、不織布または織布で構成される第2の層に、スポットカレンダリングによって接着される。
【0081】
第3の層は、好ましくは同様に、第2の層にスポットカレンダリングによって接着されてもよく、または接着されずに配置されてもよい。
【0082】
加えて、メルトブローン不織布で構成される第1の層は、帯電メルトブローン不織布とすることができる。繊維の静電気的帯電は、濾過効率を高めることができる。これは、特にフェイスマスクとしての濾材の使用に有利である。コロナ帯電、ハイドロ帯電(hydrocharging)または水などの極性液体による帯電、および摩擦帯電、またはこれらの組合せは、公知の帯電方法である。コロナ帯電は、帯電濾材の大量生産に最もよく使用される方法である。
【0083】
「コロナ帯電」という用語は、本明細書において、非導電性ポリマー材料の繊維がACおよび/またはDCコロナ帯電装置に曝露され、それにより繊維が帯電する、帯電不織布を製造する方法に関する。
【0084】
「水による帯電」という用語は、「ハイドロ帯電」とも呼ばれ、本明細書において、繊維が水ミストに曝露され、それにより電荷が繊維に加えられる、帯電不織布を製造する方法に関する。その処理は、繊維の形成の直後または不織布が繊維から形成された後のいずれかに行うことができる。
【0085】
メルトブローン不織布の第1の層を静電気的に帯電させて、帯電メルトブローン不織布の第1の層を含む濾材、および食品分野への良好な適性をこのようにして得るという可能性は、静電気的に帯電することができないTPUから作製されたメルトブローン不織布に勝るさらなる利点である。したがって、本発明による帯電メルトブローン不織布の第1の層を含む濾材は、フェイスマスクにおける使用に特に適している。
【0086】
メルトブローン不織布の第1の層の追加の利点は撥水性であり、これは高い耐水浸透性によって表される。メルトブローン不織布で構成される第1の層の60mbar/分での耐水浸透性は、好ましくは15~100mbar、より好ましくは20~60mbarの範囲にある。
【0087】
濾材は、好ましくは、コーヒーフィルターに、特にコーヒーカプセル用フィルターに使用される。コーヒーフィルターとしての使用の場合、濾材は、好ましくは、メルトブローン不織布で構成される第1の層のみを含む単層濾材である。
【0088】
濾材は、好ましくは圧縮空気フィルターに使用される。圧縮空気フィルターとしての使用の場合、濾材は、好ましくは、メルトブローン不織布の第1の層に加えて、不織布または織布の第2の層および任意選択により不織布または織布の第3の層を含む、多層濾材、特に2層または3層の濾材である。
【0089】
濾材は、好ましくはフェイスマスクに使用される。フェイスマスクとしての使用の場合、濾材は、好ましくは、メルトブローン不織布の第1の層に加えて、不織布または織布の第2の層および任意選択により不織布または織布の第3の層を含む、多層濾材、特に2層または3層の濾材である。加えて、第1の層は、フェイスマスクに使用される場合、好ましくは帯電メルトブローン不織布の層である。メルトブローン不織布は、好ましくはコロナ帯電によって、または水による帯電によって帯電される。
【0090】
試験方法
DIN EN29073-1:1992-08による単位面積質量。
【0091】
DIN EN ISO9073-2:1997-02による、0.5kPaの圧力下での厚さ。
【0092】
DIN EN ISO9237:1995-12による、測定面積20cmおよび圧力差200Paでの透気度。
【0093】
DIN EN29073-3:1992-08による、ストリップ幅(50mm、クランプ長さ(clamped length)100mmおよび速度100mm/分での引張強さ(MDおよびCD)。
【0094】
DIN EN29073-3:1992-08による、ストリップ幅50mm、クランプ長さ100mmおよび速度100mm/分での破断点伸び(MDおよびCD)。
【0095】
DIN EN ISO811:2018-08による、速度60mbar/分での耐水浸透性。
【0096】
呼吸抵抗および透過性は、EN143:2007-02により、パラフィン油を試験用エアロゾルとして、空気流速95l/分、試料サイズ100cmおよび測定時間210秒で測定した。任意の適切なデバイス、例えばLorenzフェイスマスク試験台などを使用することができる。
【0097】
繊維径
i.測定の原理
走査型電子顕微鏡を使用して、規定の拡大率で画像を記録する。自動ソフトウェアを用いてこれらを分析する。繊維の交差点を含み、このため繊維径を示さない測定部位は、手作業で除去する。繊維束は全体で繊維とみなされる。
【0098】
ii.装置
例えば、付随のFibermetric V2.1ソフトウェアを備えるPhenom Fei走査型電子顕微鏡。任意の適切な機器および任意の適切なソフトウェアを使用することが可能である。
【0099】
iii.試験の実行
a.試料のスパッタ被覆
b.光学画像によるランダムな画像化;このようにして見出された部位は、SEMにより1000倍に変更して画像化される。
c.ワンクリック法による繊維径の決定;各繊維が一回含まれなければならない。
d.平均値および繊維径の分布は、Fibermetricによって得られたデータを用いてExcelにより評価される。
少なくとも100の繊維が評価される。
直径<1.00μmの繊維のパーセンテージが同様に記録される。
e.誤差/標準偏差
標準偏差も見積もられる。
【実施例
【0100】
以下は、メルトブローン不織布の第1の層からなる本発明の濾材の実施例の説明である。
ポリマー:65%SEBS、35%PP
【0101】
【表1】
【0102】
実施例1および2に記載されている濾材は、フェイスマスクに使用することができる。
【0103】
実施例3に記載されている濾材は、コーヒーフィルターとして、特にコーヒーカプセル用フィルターとして使用することができる。
【0104】
実施例4に記載されている濾材は、圧縮空気フィルターに使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)メルトブローン不織布の第1の層
を含む濾材であって、前記メルトブローン不織布が、
a)少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)少なくとも1種のポリオレフィン
を含む、濾材。
【請求項2】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンまたはポリエチレンのいずれかである、請求項1または2に記載の濾材。
【請求項4】
前記メルトブローン不織布が、15μm未満の平均直径(d)を有する繊維を含む、請求項1または2に記載の濾材。
【請求項5】
前記メルトブローン不織布の第1の層の透気度が、50~2000l/msである、請求項1または2に記載の濾材。
【請求項6】
前記メルトブローン不織布の第1の層が、
a)1~99重量%の少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマー、および
b)1~99重量%の少なくとも1種のポリオレフィン
を含む、請求項1または2に記載の濾材。
【請求項7】
II)不織布または織布の第2の層
を含む、請求項1または2に記載の濾材。
【請求項8】
前記第2の層の前記不織布または織布が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオレフィン(PO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPC)、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)またはこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから形成される、請求項7に記載の濾材。
【請求項9】
III)不織布または織布の第3の層を含み、前記第1の層、前記第2の層および前記第3の層が、1層ずつ重ねて配置される、請求項7に記載の濾材。
【請求項10】
コーヒーフィルターのための、好ましくはコーヒーカプセル用フィルターのための、請求項1または2に記載の濾材の使用。
【請求項11】
圧縮空気フィルターのための、請求項1または2に記載の濾材の使用。
【請求項12】
フェイスマスクのための、請求項1または2に記載の濾材の使用。
【国際調査報告】