(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】自律自動車へエレクトロニックホライズンを提供する方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20240711BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240711BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240711BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01C21/26 B
G08G1/0969
G09B29/00 C
G09B29/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501744
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022067324
(87)【国際公開番号】W WO2023285107
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021207515.0
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ラニン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ユエルゲ,カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】カンフェンケル,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】イェンチュ,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】フォイヒター,ビルフリート
(72)【発明者】
【氏名】フォーグラー,ベンヤミン
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC08
2C032HC21
2C032HD21
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC06
2F129DD21
2F129EE02
2F129EE05
2F129EE14
2F129EE78
2F129HH12
5H181AA01
5H181FF05
5H181FF21
5H181FF22
5H181FF32
5H181FF39
(57)【要約】
自律自動車にエレクトロニックホライズンを提供するコンピュータ実装方法(10)は、以下の方法ステップ(1、2)を含む。第1の方法ステップ(1)において、デジタル地図の地図データが処理される方法ステップ。第2の方法ステップ(2)において、前記自律自動車の位置が特定され、前記処理された地図データ(3)に基づいて、前記自律自動車の前方にある地図要素の位置依存プレビューが生成され、これによりエレクトロニックホライズンが提供される方法ステップ。前記第2の方法ステップ(2)が、所定の実行時間(6)内で、前記デジタル地図データの処理に要する処理時間(5)とは無関係に行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律自動車にエレクトロニックホライズンを提供するコンピュータ実装方法(10)であって、
- 第1の方法ステップ(1)において、デジタル地図の地図データが処理される方法ステップ(1)と、
- 第2の方法ステップ(2)において、前記自律自動車の位置が特定され、前記処理された地図データ(3)に基づいて、前記自律自動車の前方にある地図要素の位置依存プレビューが生成され、これによりエレクトロニックホライズンが提供される方法ステップ(2)と、を備え、
前記第2の方法ステップ(2)が、所定の実行時間(6)内で、前記デジタル地図データの処理に要する処理時間(5)とは無関係に行われる、
方法(10)。
【請求項2】
前記エレクトロニックホライズンの生成前に、前記デジタル地図が最新かどうかチェックされる、請求項1に記載の方法(10)。
【請求項3】
前記デジタル地図の処理が、前記デジタル地図の変換を含み、
前記デジタル地図が、クラス構造を有するように変換される、
請求項1または2に記載の方法(10)。
【請求項4】
前記デジタル地図の処理が、前記デジタル地図の変換を含み、
前記デジタル地図が、経路に基づく構造を有するように変換される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項5】
前記エレクトロニックホライズンの生成は、
- 最も可能性の高い経路および複数のサブ経路からなるホライズングラフを生成するステップ(23)と、
- 前記ホライズングラフの領域内にある地図エレメントのデータをデータパケットに統合することで、前記エレクトロニックホライズンを生成するステップ(24)と、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項6】
前記第2の方法ステップ(2)において処理された地図データがない場合、または前記エレクトロニックホライズンの提供が必要ない場合、代替地図データが提供され、
前記第2の方法ステップ(2)に類似した前記代替地図データの処理は、前記実行時間(6)内で、前記デジタル地図データの処理に必要な前記処理時間(5)とは無関係に行われる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項7】
前記第2の方法ステップ(2)が監視される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項8】
前記第1の方法ステップ(1)においてハードウェアおよび/またはソフトウェアのロックステップ方法が使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項9】
前記自律自動車の位置特定は、前記自律自動車の測定位置が前記デジタル地図上の場所に割り当てられるマップマッチングを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項10】
前記第2の方法ステップ(2)が周期的に繰り返される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項11】
コンピュータ上で実行されると、前記コンピュータに請求項1~10のいずれか一項に記載の方法(10)を実行させる命令(32)を含む、コンピュータプログラム製品(31)。
【請求項12】
請求項11に記載の前記コンピュータプログラム製品(31)が記憶されている、機械可読記憶媒体(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律自動車にエレクトロニックホライズンを提供するコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のナビゲーションの範囲でデジタル地図データを処理すること、および/または別の運転者支援システムに提供することは、従来から知られている。ここで、通常、自動車の制御は運転者の責任であり、かつ/または、デジタル地図データとは無関係に動作する関連システムの一部によって実現されるため、機能安全性の側面についての要件は存在しない。セーフティクリティカルな機能のプログラムフローを監視するために、機能性の周期的処理に関連する保護メカニズムが基本的に知られている。既知のシステムおよび方法は、機能の時間決定的な処理を前提としている。
【0003】
デジタル地図データの自動車への提供は、いわゆるエレクトロニックホライズンの形態で車両に提供される。エレクトロニックホライズンは、自動車の前方に存在する地図要素の位置依存プレビューである。ナビゲーションシステムでは、例えば、デジタル地図からの地名が目的地入力に使用され、道路トポロジーがルート計算に使用され、道路ジオメトリがルートと自動車周辺環境のグラフィック表示に使用される。運転支援システムでは、例えば、自動速度制御のためにデジタル地図からの勾配や制限速度が使用される。以下では、運転支援システムとは、ナビゲーションシステムとして構成できるか、ナビゲーションシステムを含むシステムであると理解する。
【0004】
デジタル地図データに基づいて生成されたエレクトロニックホライズンからの情報は、自律自動車のセンサからの環境データと同様に、自律自動車の自動制御の範囲で使用することができる。しかし、処理対象の情報は、通常、地図に基づく運転支援システムで使用される情報を超える。高度に自動化された運転には、例えば、自動車の縦方向および横方向の誘導が含まれる。また、機能安全性の要件も同様に、地図に基づく運転支援システムよりも高くなるが、これは、運転者が相当するシステムを継続的に監視する必要がなくなるためである。
【0005】
したがって、地図情報は、例えば光学センサで可能なよりもはるかに高度なプレビューで車両センサを補足する。制限要因は、使用される情報の最新性である。光学センサからの環境モデルがミリ秒単位で更新されるのに対し、最新の従来技術によるデジタル地図データは、データ供給者による処理が必要である。
【0006】
したがって、高度に自動化された運転のためのエレクトロニックホライズンの提供には、一定の要件が適用される。例えば、ISO26262規格に準拠した機能安全性の要件がある。また、エレクトロニックホライズンを後続の運転機能に提供することについてのリアルタイム要件があるが、これは、セーフティクリティカルな機能は、大幅に制限された時間内にしか誤作動できないためである。潜在的なエラーを認識するためには、処理を、時間的に細かく監視する必要がある。
【0007】
デジタル地図データが組み込みシステムで処理される場合、デジタル地図データは定期的にパーティショニングされる。分割は地理的に規定され、例えばグローバルタイルグリッドという形で規定される。様々な分割に属するデータ量は、一般的に同じサイズの分割において大きさが異なる。これは、現実の地図要素が異なる密度で、交通インフラ要素の異なる密度に従って配置されていることによるものである。例えば、道路や交差点の数が多い人口密集地の分割は、人口が少ない地域の同じサイズの分割よりもかなり多くの地図要素を含む。したがって、個々の分割を処理する際に、決定的な時間挙動を前提とすることはできない。
【0008】
このため、リアルタイム要求を伴う安全性関連ソフトウェアで地図データを処理する際に問題が生じる。エレクトロニックホライズンの可用性に明確な最小要件がない場合の解決策が提案される。これは、安全性目標がいわゆる「フェイルサイレント」、すなわち、ある機能が望ましい方法で実行されるか、実行されないかのいずれかである場合に可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、自律自動車にエレクトロニックホライズンを提供する改良された方法を提供することである。この課題は、それぞれの独立形式請求項の特徴を有する、エレクトロニックホライズンを提供するコンピュータ実装方法によって解決される。有利な改善構成は、従属請求項にそれぞれ記載されている。また、コンピュータプログラム製品および機械可読記憶媒体が記載される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
自律自動車にエレクトロニックホライズンを提供するコンピュータ実装方法は、以下の方法ステップを含む。第1の方法ステップでは、デジタル地図の地図データが処理される。第2の方法ステップでは、自律自動車の位置が特定され、処理された地図データに基づいて、自律自動車の前方にある地図要素の位置依存プレビューが生成され、これによりエレクトロニックホライズンが提供される。第2の方法ステップは、所定の実行時間内で、デジタル地図データの処理に要する処理時間とは無関係に行われる。
【0011】
本方法は、自律自動車の交通の分野では、状況が複雑であるため、既知の監視方法は適用できないという考えに基づいており、そのため、デジタル地図データの処理は2つの実行スレッド(英語:threads)に分割される。第1のスレッドは第1の方法ステップに代表され、第2のスレッドは第2の方法ステップに代表される。
【0012】
第1のスレッドでは、まずデジタル地図データを処理し、その後第2のスレッドに提供される。第1のスレッドは、状況に応じて様々な範囲のデジタル地図データを処理する必要があるため、イベント制御型であり、時間非決定的である。したがって、第1のスレッドでは、デジタル地図データの時間的に予測不可能な処理が行われる。第2のスレッドでは、デジタル地図データと自律自動車の位置から、エレクトロニックホライズンの提供が実施される。第2のスレッドでは、個々のステップが所定の実行時間内、すなわち時間決定的な方法で、所定の時間グリッド内で実行される。言い換えれば、第2のスレッドはタイムスライス制御されて構成されている。第1のスレッドはリアルタイム要件を満たすことができる。このために、実行時間をミリ秒の範囲の値に設定する必要がある。一方で、第1のスレッドの処理時間は、数秒から数分の範囲にすることができる。しかしながら、第1のスレッドの処理時間も、第2のスレッドの実行時間も、指定された値および/または値の範囲に限定されるものではない。むしろ、この種の指定は、例示的な基準値として理解されるべきである。
【0013】
第2の方法ステップは、所定の実行時間内で、デジタル地図データの処理に必要な処理時間とは無関係に行われるため、方法の決定的部分は、非決定的部分の実行時間とは無関係である。有利には、この巧みな機能性分割により、自律自動車走行において十分な安全性を達成することができる。説明した2つのスレッドに分割することで、計算量の多い地図の前処理に比べて、時間的に重要な機能を優先させることが可能になる。
【0014】
一実施形態では、エレクトロニックホライズンの生成前に、デジタル地図が最新かどうかチェックされる。例えば、第2のスレッドの実行時間よりも長い時間グリッドで、エレクトロニックホライズンで使用されるデジタル地図データが最新かどうか監視される。これによって、有利には、例えば自律自動車のリアルタイム制御の範囲において、デジタル地図の最新性要件を考慮することができる。
【0015】
エレクトロニックホライズンの正しい生成と、生成されたエレクトロニックホライズンの最新性は、場合によってセーフティクリティカルな要件を満たす必要があり、すなわち、誤った実行を認識および/または回避する必要がある。誤った実行は、例えば、機能の時間的または論理的処理のエラーによって引き起こされる可能性がある。例えば、プロセッシングユニット(CPU)が十分な精度でクロックされていない可能性がある。しかし、論理的かつ時間的プログラムフロー(英語:Program Flow Check、PFC)におけるエラーは、その時間非決定的な挙動のため、第1のスレッドでは検出されない。エレクトロニックホライズンの生成は、デジタル地図データの時間的前処理とは無関係であり、デジタル地図の更新は、第2の方法ステップまたは第2のスレッドで行われるため、有利には、処理ユニットのクロッキングが不十分であることによるエレクトロニックホライズンのエラー生成を回避することができる。
【0016】
一実施形態では、デジタル地図の処理は、デジタル地図の変換を含む。デジタル地図は、クラス構造を有するように変換される。有利には、デジタル地図はそれによって、エレクトロニックホライズンの生成に適したフォーマットを有する。
【0017】
一実施形態では、デジタル地図の処理は、デジタル地図の変換を含む。デジタル地図は、経路に基づく構造を有するように変換される。有利には、経路に基づく構造により、第2の方法ステップでホライズングラフを生成することが可能になる。
【0018】
一実施形態では、エレクトロニックホライズンの生成は、以下のステップを含む。最も可能性の高い経路および複数のサブ経路からなるホライズングラフを生成する。ホライズングラフの領域内にある地図エレメントのデータをデータパケットに統合することで、エレクトロニックホライズンを生成する。有利には、これにより、ホライズングラフの領域にあるデジタル地図の関連要素のみが、エレクトロニックホライズンの生成に使用される。
【0019】
一実施形態では、第2の方法ステップにおいて処理された地図データがない場合、またはエレクトロニックホライズンの提供が必要ない場合、代替地図データが提供される。第2の方法ステップに類似した代替地図データの処理は、実行時間内で、デジタル地図データの処理に必要な処理時間とは無関係に行われる。例えば、車両が渋滞中であり、エレクトロニックホライズンを今のところ拡張する必要がない場合など、エレクトロニックホライズンを生成する必要がない、または生成できない状況がある。本方法のこの変形例では、有利には、エレクトロニックホライズンを生成できない、または生成する必要がない場合でも、エラーのないエレクトロニックホライズンを提供できるかどうか、すなわち第2のステップの処理が所望通りに行われるかどうかを確認することが保証される。あるいは、例えば安全なスイッチオフによって、安全な状態をもたらすことができる。代替地図データは、進行中のデータ処理中に時間決定的に提供される。
【0020】
一実施形態では、第2の方法ステップが監視される。すなわち、監視手段は第2のスレッドのみに適用される。ここでは、例えばPFCを行うことができる。代替的または追加的に、いわゆる故障検出(ウォッチドッグ)を使用してもよい。監視は、有利には、実行時間が遵守されない場合、および/または、時間および/または論理フローが遵守されない場合に、安全な状態を取れることを保証する。有利には、これにより、方法はリアルタイム要件を満たすことができる。この場合、第2のスレッドのリアルタイム実行は、適切なリアルタイム対応オペレーティングシステムを前提とする。第1のスレッドは、リアルタイム対応オペレーティングシステムを前提としない。ただし、両方のスレッドが同じプロセスで実行される場合は、同じオペレーティングシステム上で実行される。監視手段は、代替地図データの処理にも適用できる。
【0021】
一実施形態では、第1の方法ステップにおいて、ハードウェアおよび/またはソフトウェアのロックステップ方法が使用される。第1のスレッドの場合、第1のスレッドは時間非決定的であるため、論理的かつ時間的なフローに関するエラーを検出することは不可能である。第1のスレッドにおける潜在的エラーとは、プログラムカウンタのロジックが誤作動することである。このようなエラーの検出は、有利には、ロックステップと呼ばれるメカニズムによって保証される。コンピュータ技術の分野、特にプロセッサやマイクロコントローラの分野では、ロックステップという用語は、マルチコアプロセッサのCPUコアなど、複数の同一または類似のユニットを使用することによって実現される、ハードウェアのエラー検出方法を表す。
【0022】
一実施形態では、自律自動車の位置特定は、自律自動車の測定位置がデジタル地図上の場所に割り当てられるマップマッチングを含む。一実施形態では、自律自動車は、エレクトロニックホライズンに基づいて制御される。
【0023】
一実施形態では、第2の方法ステップは周期的に繰り返される。有利には、エレクトロニックホライズンは周期的に更新される。
コンピュータプログラム製品は、コンピュータ上で実行されると、コンピュータに実施形態の1つに係る方法を実行させる命令を含む。コンピュータプログラム製品は、例えば、機械可読記憶媒体に記憶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下に、自律自動車用のエレクトロニックホライズンを提供する方法について、概略図を用いて詳述する。
【
図1】自律自動車両にエレクトロニックホライズンを提供する方法。
【
図2】
図1の方法を実行するためのコンピュータプログラム製品を備えた機械可読記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、自律自動車にエレクトロニックホライズンを提供するコンピュータ実装方法10を概略的に示す。
第1のスレッドを表す方法10の第1の方法ステップ1において、デジタル地図からの地図データが処理される。地図データは、最初に受信することができ、例えば、ナビゲーションデータ標準(NDSフォーマット)で利用可能である。NDSフォーマットは、ナビゲーションシステムにおける地図データに基づく標準化フォーマットであり、自動車業界からの品質要求に基づいて、自動車メーカとサプライヤが共同で開発したものである。ただし、地図データは別のフォーマットでも利用可能である。
【0026】
第1の方法ステップ1は、複数のステップ11、12、13、14を含んでよい。第1の方法ステップ1は、処理時間5内に実行される。処理時間5は、地図データの範囲に依存する。第1の任意ステップ11では、地図データをパースしてもよい。パースとは、データを分解し、さらなる処理に適した形式に変換することである。第2の任意ステップ12では、デジタル地図がクラス構造を有するように、デジタル地図が変換される。第3の任意ステップ13では、デジタル地図が経路に基づく構造を有するように、デジタル地図が変換される。場合によって生じ得る地図データのタイル分割は、例えば、第2のステップ12と第3のステップ13との間で解決することができる。また、第3のステップ13の前に、例えば、地図データの一部のみをホライズン生成に使用するかどうかを決定してもよく、この場合、第3のステップ13では、地図データの該当部分のみが変換される。第4の任意ステップ14では、処理された地図データ3にタイムスタンプ4を付与してもよく、これによりデジタル地図の最新性をチェックすることができる。しかし、デジタル地図は、例えば、デジタル地図が受信された時点でタイムスタンプ4を付与してもよい。代替的に、デジタル地図は、デジタル地図プロバイダによって既にタイムスタンプ4が付与されている場合もある。これらの選択肢のいずれにおいても、第4のステップ14は省略される。
【0027】
第1の方法ステップ1の後、第1の任意ステップ21において、デジタル地図または処理された地図データが最新かどうかをチェックしてもよい。第1のステップ21は、例えば、第2のスレッドの実行時間6よりも大きい時間間隔で行ってもよく、これはリアルタイム要件によって設定することができる。タイムスタンプ4は、第1のステップ21において使用される。
図1の方法10の図示された実施形態では、第4のステップ14において処理された地図データに付与された、処理された地図データ3のタイムスタンプ4が使用される。タイムスタンプ4は、地図データが最新であった時刻t
1に関する情報を含む。図示の例では、時刻t
1は、処理された地図データ3にタイムスタンプ4が付与された時刻に相当する。時刻t
1がシステム時刻t
0から、例えば分単位である、予め定義された時間Δtだけずれているかどうかがチェックされる。ずれている場合、地図データまたはデジタル地図はもはや最新ではないとみなされる。この場合、地図データはエレクトロニックホライズンの生成に使用されない。地図データが最新でないことは、例えば、地図提供サービスが利用できないことや、地図提供サービスと方法10を実行するシステムとの間の通信回線に障害があることによって引き起こされる。したがって、地図データの利用可能性は、第2のスレッドをトリガするイベントである。最新性を保証するためには、用途に応じて要求される地図提供サービスへの接続が必要である。
【0028】
タイムスタンプ4による地図データのカバーは完全であり、すなわち、デジタル地図の一部が別々に処理される場合、それぞれ固有のタイムスタンプ4が付与される。最新性のチェックは、第1のスレッドでの処理後、第2のスレッドで実行される。例えば、タイムスタンプはタイル分割ごとに1回与えられ、タイル分割に含まれるすべての地図要素に適用される。経路に基づく構造を有する非分割化データモデルに移行する場合、複数のタイル分割からの地図エレメントが統合され、複数のタイムスタンプ4が有効となる可能性がある。この場合、例えば、最も古いタイムスタンプ4の最新性を保証するために、最も古いタイムスタンプ4を使用してもよい。
【0029】
第2のスレッドを表す第2の方法ステップ2は、複数のステップ22、23、24、25を含んでよい。第2の方法ステップ2は、所定の処理時間6内に行われる。第2のステップ22では、自律自動車の位置が特定される。ここでは、例えばマップマッチング法を使用することができるが、これは必須ではない。第3および第4のステップ23、24では、エレクトロニックホライズンが生成される。第3のステップ23ではグラフジェネレータを用いてホライズングラフが生成され、第4のステップ24ではエレクトロニックホライズンが生成され、これによりエレクトロニックホライズンが提供される。グラフは、グラフ理論では、経路の集合とノードの集合によるオブジェクトを記述する抽象的な構造である。ホライズングラフは、最も可能性の高い経路と、複数のサブ経路を有する。経路は道路網に沿って延伸する。グラフジェネレータは、自律自動車の特定された位置の前の領域にある道路網の区分を決定し、その区分に基づいてホライズングラフを決定する。したがって、ホライズングラフは経路の区分のみを含む。ホライズングラフに関連する道路網の区分は、方法10または第2の方法ステップ2を周期的に繰り返すことによって更新することができる。エレクトロニックホライズンは、ホライズングラフの領域にある地図エレメントのデータをデータパケットに統合することで生成される。データパケットはプロトコルデータユニット(PDUs)とも呼ばれる。PDUsはバス上のメッセージに統合してもよい。第5の任意ステップ25では、エレクトロニックホライズンが出力される。エレクトロニックホライズンは、例えば、自動運転用途の標準化されたデータ交換プロトコルであるADASISフォーマット(Advanced Driver Assistance Systems)で出力することができる。エレクトロニックホライズンは、その後、自律自動車の自動制御のために利用可能となる。
【0030】
本方法10は、地図データの処理を2つのスレッドに分割するという考えに基づく。非決定的な時間挙動を有する第1のスレッドでは、地図データの処理が実現され、地図データが第2のスレッドで利用可能となる。第2のスレッドではエレクトロニックホライズンが生成される。第2のスレッドは時間決定的な挙動を有し、追加で監視されている場合にリアルタイム要件を満たすことができる。監視のために、例えば第2のスレッドのプログラムフローをチェックしてもよい(PFC)。代替的に、監視のためにウォッチドッグを使用してもよい。
図1は、第2のスレッドを監視するためにPFC7を使用する場合を例示的に示す。この場合、第2の方法ステップ2の個々のステップ22、23、24、25が監視される。また、
図1に示すように、デジタル地図や処理された地図データ3の最新性チェックが行われたかどうかを監視してもよい。このような監視手段は、第1のスレッドには適用できない。この場合、既に上で説明したように、ロックステップ方法が考えられる。第1のスレッドのプログラムフローが外部入力の影響を受けないようにすることで、第1のスレッドのプログラムフローにおける系統的エラーを防止することができる。
【0031】
処理済みの地図データがない場合、またはエレクトロニックホライズンを提供する必要がない場合、代替方法ステップ8を使用して、実行時間6内で、デジタル地図データの処理に必要な処理時間5とは無関係に、第2の方法ステップ2に類似して、提供された代替地図データを処理してもよい。任意選択的に、代替地図データの処理を監視してもよい。
図1は、このために行われるPFC7を例示的に示しているが、代替的または追加的に、ウォッチドッグを使用してもよい。
【0032】
図2は、機械可読記憶媒体30を概略的に示す。機械可読記憶媒体30には、コンピュータプログラム製品31が記憶されている。コンピュータプログラム製品31は、コンピュータ上で実行されると、コンピュータに
図1に係る方法10を実行させる命令32を含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律自動車にエレクトロニックホライズンを提供するコンピュータ実装方法(10)であって、
- 第1の方法ステップ(1)において、デジタル地図の地図データが処理される方法ステップ(1)と、
- 第2の方法ステップ(2)において、前記自律自動車の位置が特定され、前記処理された地図データ(3)に基づいて、前記自律自動車の前方にある地図要素の位置依存プレビューが生成され、これによりエレクトロニックホライズンが提供される方法ステップ(2)と、を備え、
前記第2の方法ステップ(2)が、所定の実行時間(6)内で、前記デジタル地図データの処理に要する処理時間(5)とは無関係に行われる、
方法(10)。
【請求項2】
前記エレクトロニックホライズンの生成前に、前記デジタル地図が最新かどうかチェックされる、請求項1に記載の方法(10)。
【請求項3】
前記デジタル地図の処理が、前記デジタル地図の変換を含み、
前記デジタル地図が、クラス構造を有するように変換される、
請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項4】
前記デジタル地図の処理が、前記デジタル地図の変換を含み、
前記デジタル地図が、経路に基づく構造を有するように変換される、
請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項5】
前記エレクトロニックホライズンの生成は、
- 最も可能性の高い経路および複数のサブ経路からなるホライズングラフを生成するステップ(23)と、
- 前記ホライズングラフの領域内にある地図エレメントのデータをデータパケットに統合することで、前記エレクトロニックホライズンを生成するステップ(24)と、
を含む、請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項6】
前記第2の方法ステップ(2)において処理された地図データがない場合、または前記エレクトロニックホライズンの提供が必要ない場合、代替地図データが提供され、
前記第2の方法ステップ(2)に類似した前記代替地図データの処理は、前記実行時間(6)内で、前記デジタル地図データの処理に必要な前記処理時間(5)とは無関係に行われる、
請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項7】
前記第2の方法ステップ(2)が監視される、請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項8】
前記第1の方法ステップ(1)においてハードウェアおよび/またはソフトウェアのロックステップ方法が使用される、請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項9】
前記自律自動車の位置特定は、前記自律自動車の測定位置が前記デジタル地図上の場所に割り当てられるマップマッチングを含む、請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項10】
前記第2の方法ステップ(2)が周期的に繰り返される、請求項
1に記載の方法(10)。
【請求項11】
コンピュータ上で実行されると、前記コンピュータに請求項
1に記載の方法(10)を実行させる命令(32)を含む、コンピュータプログラム製品(31)。
【請求項12】
請求項11に記載の前記コンピュータプログラム製品(31)が記憶されている、機械可読記憶媒体(30)。
【国際調査報告】