(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】レチノイド及びバクチオールのエステルならびにそれらの製剤
(51)【国際特許分類】
C07C 69/608 20060101AFI20240711BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/12 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20240711BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240711BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
C07C 67/03 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07C69/608 CSP
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/04
A61P17/10
A61P17/12
A61P17/14
A61P17/16
A61P17/06
A61P17/08
A61P17/00 101
A61P31/00
A61K31/235
A61Q19/08
A61Q15/00
A61Q5/00
A61K8/37
A61Q19/00
A61P43/00 111
C07C67/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501777
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2022037035
(87)【国際公開番号】W WO2023287931
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516131979
【氏名又は名称】コナゲン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ソイチョウ
(72)【発明者】
【氏名】ユー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ベネガス,マニュエル ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イーシェン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C083AC341
4C083AC342
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC02
4C083CC17
4C083CC31
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C083EE18
4C083EE23
4C083FF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206DB11
4C206DB57
4C206KA01
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4C206MA01
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZA90
4C206ZA91
4C206ZA92
4C206ZB35
4C206ZC41
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB22
4H006AB29
4H006AC48
4H006AD15
4H006BB25
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006KA03
(57)【要約】
本開示は、式(I’)のエステルなど、レチノイド及びバクチオールのエステルを提供する。本開示はまた、エステルを含む組成物及びキット、エステルを生成する方法、エステルを使用する方法(例えば、皮膚疾患を治療または予防するため、皮膚の老化を遅延させるため、皮膚の外観を改善するため、またはレチノイド受容体を調節するため)を提供する。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I’):
【化1】
のエステル、
または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶。
【請求項2】
前記エステルが、式:
【化2】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項1に記載のエステル。
【請求項3】
前記エステルが、式(I):
【化3】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項1に記載のエステル。
【請求項4】
前記エステルが、式:
【化4】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項1に記載のエステル。
【請求項5】
前記エステルが、式:
【化5】
もしくは
【化6】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項1に記載のエステル。
【請求項6】
前記エステルが、式:
【化7】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項1に記載のエステル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエステル、またはその互変異性体もしくは同位体標識化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のエステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を生成する方法であって、前記方法が、第2の反応混合物を、前記エステル、互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、または共結晶を生成するのに十分な第2の持続時間にわたってインキュベートすることを含み、前記第2の反応混合物が:
(a)式(B’):
【化8】
の無水物、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶(式中、Rは置換または非置換のアルキルである);
(b)式(C’):
【化9】
のアルコール、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶;
(c)第2の溶媒;
(d)任意選択で第2の塩基;
(e)任意選択でエステル化触媒;
を含む、前記方法。
【請求項9】
式(B’)が式(B):
【化10】
であり;
式(C’)が式(C):
【化11】
である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(B’)が、式:
【化12】
のものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の反応混合物の(a)の量対前記第2の反応混合物の(b)の量のモル比が、1:0.75~1:1.25(両端を含む)である、請求項8、9、または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の溶媒が、有機溶媒である、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の溶媒が、アセトニトリルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の溶媒が、アセトニトリル、ジオキサン、もしくはテトラヒドロフラン、またはそれらの混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の塩基が、存在する場合、有機塩基である、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の塩基が、存在する場合、トリメチルアミン、トリエチルアミン、もしくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン、またはそれらの混合物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の塩基が存在する場合、前記第2の塩基の量対前記第2の反応混合物の(b)の前記量のモル比が、1:1~5:1(両端を含む)である、請求項8~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記エステル化触媒が、存在する場合、4-ジメチルアミノピリジン、またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項8~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記エステル化触媒が、存在する場合、4-(ピロリジン-1-イル)ピリジン、またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項8~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記エステル化触媒が存在する場合、前記エステル化触媒の量対前記第2の反応混合物の(b)の前記量のモル比が、0.1:1~2:1(両端を含む)である、請求項8~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の反応混合物が実質的に水を含まない、請求項8~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の反応混合物の温度が、0~60℃(両端を含む)である、請求項8~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の持続時間が、10分~1日(両端を含む)である、請求項8~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の反応混合物の(b)から前記エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶への転換率が、10%~99%(両端を含む)である、請求項8~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、前記第2の反応混合物とエタノールアミンまたはその塩とを含む第3の反応混合物を、第3の持続時間にわたってインキュベートすることをさらに含む、請求項8~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
エタノールアミンまたはその塩の量対前記第2の反応混合物の(b)の前記量のモル比が、1:1~100:1(両端を含む)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第3の反応混合物の温度が、0~60℃(両端を含む)である、請求項25~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第3の持続時間が、10分~1日(両端を含む)である、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記第3の反応混合物が実質的に水を含まない、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第3の反応混合物をインキュベートするステップが、前記第2の反応混合物をインキュベートするステップの直後である、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、前記エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を精製することをさらに含む、請求項8~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を精製するステップが、液-液相分離、乾燥、濾過、濃縮、クロマトグラフィー、脱色、もしくは再結晶化、またはそれらの組み合わせを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、第1の反応混合物を、前記第2の反応混合物の(a)を生成するのに十分な第1の持続時間にわたってインキュベートすることをさらに含み、
前記第1の反応混合物が:
(a)式(A1’):
【化13】
の酸、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶;
(b)式(A2):
Cl-C(=O)-O-R
(A2)、
のクロロホルマート、または、その同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶(式中、Rは置換または非置換のアルキルである);
(c)第1の溶媒;
(d)任意選択で第1の塩基;
を含み、
第1の反応混合物をインキュベートするステップが、前記第2の反応混合物をインキュベートする前記ステップの前である、請求項8~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
式(A1’)が、式(A1):
【化14】
である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の反応混合物の(a)が、式:
【化15】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の反応混合物の(a)が、式:
【化16】
もしくは
【化17】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の反応混合物の(a)が、式:
【化18】
もしくは
【化19】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
Rが非置換C
1-6アルキルである、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
Rが、非置換エチルまたは非置換イソブチルである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
Rが、非置換メチル、非置換n-プロピル、または非置換n-ブチルである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の反応混合物の(a)の量対前記第1の反応混合物の(b)の量のモル比が、1:1~1:1.2(両端を含む)である、請求項33~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の溶媒が、有機溶媒である、請求項33~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の溶媒が、テトラヒドロフランである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の溶媒が、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、もしくはジオキサン、またはそれらの混合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の塩基が、存在する場合、有機塩基である、請求項33~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の塩基が、存在する場合、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、またはピリジンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の塩基が存在する場合、前記第1の塩基の量対前記第1の反応混合物の(a)の前記量のモル比が、1:1~5:1(両端を含む)である、請求項33~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の反応混合物の温度が、-20~40℃(両端を含む)である、請求項33~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の持続時間が、10分~1日(両端を含む)である、請求項33~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の反応混合物が実質的に水を含まない、請求項33~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の反応混合物の(a)から前記第2の反応混合物の(a)への転換率が50%~99%(両端を含む)である、請求項33~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記方法が、前記第2の反応混合物の(a)を精製することをさらに含み、前記第2の反応混合物の(a)を精製するステップが、前記第2の反応混合物をインキュベートする前記ステップの前である、請求項33~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の反応混合物の(a)を精製する前記ステップが、
前記第1の反応混合物を非極性有機溶媒と混合することと、
続いて、濾過と
続いて任意選択で濃縮と、
を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記非極性有機溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、もしくは石油エーテル、またはそれらの組み合わせである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第1、第2、及び第3の反応混合物の圧力が約1atmである、請求項8~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
組成物であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載のエステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶と;
任意選択で賦形剤と、
を含む前記組成物。
【請求項57】
前記賦形剤が、存在する場合、化粧品的に許容される賦形剤である、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記賦形剤が、存在する場合、薬学的に許容される賦形剤である、請求項56~57のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
対象への局所投与に適している、請求項56~58のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
前記対象が、ヒトである、請求項56~59のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
請求項8~55のいずれか1項に記載の方法によって生成される、前記エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を含む組成物。
【請求項62】
治療を必要とする対象における皮膚疾患を前記治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の、請求項1~7のいずれか1項に記載のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または請求項56~61のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
予防を必要とする対象における皮膚疾患を前記予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の、請求項1~7のいずれか1項に記載のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または請求項56~61のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項64】
前記皮膚疾患が、棘融解、座瘡、急性熱性好中球性皮膚病、脱毛症、無汗症、萎縮性皮膚疾患、自己免疫性皮膚疾患、ベーレ-スティーブンソン脳回状頭皮症候群、ベーチェット病、水疱、体臭、CEDNIK症候群、カフェオレ斑、凍瘡、無汗症を伴う先天性感覚神経障害、皮膚浮腫、皮膚線維症、皮膚瘻、皮膚リーシュマニア症、皮膚肥満細胞症、ふけ、褥瘡、皮膚弾力線維症、皮膚炎、皮膚筋炎、乾燥皮膚、外胚葉異形成症、エーラース・ダンロス症候群、紅斑、魚類リンパシスチス症、遺伝性皮膚症、グレイブス皮膚症、原田症候群、蹄病、多汗症、魚鱗癬、色素失調症、黄疸、ケロイド、角化症、黒子、苔癬様皮膚病症、エリテマトーデス、疣状狼瘡、MEDNIK症候群、乳腺疾患、線状皮膚欠損を伴う小眼球症、汗疹、粘液症、爪疾患、リポイド類壊死症、腎性全身性線維症、神経皮膚症候群、神経症性擦創、好中球性皮膚症、母斑、職業性皮膚疾患、PAPA症候群、皮膚骨膜肥厚症、脂肪織炎、類乾癬、受動皮膚アナフィラキシー、光線過敏症、粃糠疹、そう痒症、オウム類嘴羽毛病、膿疱性皮膚疾患、亀裂、酒さ、スケールドロップ病、頭皮疾患、傷跡、成人性強皮症、新生児性強皮症、強皮症、脂漏症、重度の皮膚炎、多発性アレルギー及び代謝消耗症候群、皮膚の老化、皮膚付属器疾患、皮膚の色素脱失、皮膚の落屑、皮膚の色素沈着過剰、皮膚の過形成、皮膚の過剰増殖性疾患、皮膚の色素沈着低下、皮膚感染症、皮膚損傷、皮膚刺激、皮膚病変、皮膚壊死、皮膚新生物、皮膚発疹、皮膚線条、皮膚潰瘍、ステロイド誘発性萎縮、汗腺疾患、中毒性表皮壊死症、ウアシンギシュー病、潰瘍、蕁麻疹、黄色腫症、または色素性乾皮症である、請求項61~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記皮膚疾患が、座瘡である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記皮膚疾患が自己免疫性皮膚疾患である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記自己免疫性皮膚疾患が乾癬である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記皮膚疾患が、角化症である、請求項64に記載の前記方法。
【請求項69】
前記角化症がいぼである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記皮膚疾患が、皮膚弾力線維症、乾燥皮膚、脂漏性、酒さ、または黒子である、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
対象の皮膚の老化を遅延させるか、または皮膚の外観を改善する方法であって、請求項1~7のいずれか1項に記載のエステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または請求項56~61のいずれか1項に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項72】
前記有効量が、前記皮膚おける皺、黒子、もしくはいぼまたは皮膚タグを低減するのに有効である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
対象、生体試料、組織、または細胞におけるレチノイド受容体を調節する方法であって、請求項1~7のいずれか1項に記載のエステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または請求項56~61のいずれか1項に記載の組成物の有効量を前記対象に投与するか、または前記生体試料、組織、もしくは細胞と接触させることを含む、前記方法。
【請求項74】
前記レチノイド受容体がレチノイン酸受容体である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記対象がヒトである、請求項61~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記投与が局所投与である、請求項61~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記生体試料、組織、または細胞がインビトロである、請求項73または74に記載の方法。
【請求項78】
キットであって、
請求項1~7のいずれか1項に記載のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または請求項56~61のいずれか1項に記載の組成物と;
任意選択で、前記エステル、互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、共結晶、または組成物を使用するための使用説明書と、
を含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特定のレチノール誘導体(例えば、レチノール、レチニルエステル、及びレチノイン酸エステル)は、スキンケア製品の成分として有用である。国際PCT出願公開第WO1991001301号は、座瘡または乾癬の皮膚を治療するための化合物及び方法を開示する。Mukherjee et al.,Clinical Interventions in Aging,2006,1,327-348は、皮膚老化の治療における化合物を開示する。Xiang et al.,Hunan Daxue Xuebao,Ziran Kexueban,2004,31,6-10は、特定のイソトレチノイン誘導体の合成を開示する。バクチオールは、皮膚老化の徴候を説明する。改良されたスキンケア製品の必要性がある。
【発明の概要】
【0002】
一態様では、本開示は、式(I’):
【化1】
のエステル、
または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を提供する。
【0003】
特定の実施形態では、エステルは、式(I):
【化2】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。
【0004】
特定の実施形態では、エステルは式:
【化3】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。
【0005】
特定の実施形態では、エステルは式:
【化4】
もしくは
【化5】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。
【0006】
特定の実施形態では、エステルは式:
【化6】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。
【0007】
エステル、及びその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、及び共結晶は、レチノイド及びバクチオールから形成され得る。エステルは、皮膚の健康を改善し、及び/または皮膚の老化を低減するのに有用であり得る。エステルは、エステルを形成するレチノイド及びバクチオールよりも有利であり得る。利点は、少なくとも部分的には、エステルがレチノイド部分とバクチオール部分の両方を含むことに起因する。
【0008】
別の態様では、本開示は、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を生成する方法を提供し、この方法は、第2の反応混合物を、エステル、互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、または共結晶を生成するのに十分な第2の持続時間にわたってインキュベートすることを含み、この第2の反応混合物は:
(a)式(B’):
【化7】
の無水物、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶(式中、Rは置換または非置換のアルキルである);
(b)式(C’):
【化8】
のアルコール、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶;
(c)第2の溶媒;
(d)任意選択で第2の塩基;
(e)任意選択でエステル化触媒;
を含む。
【0009】
特定の実施形態では、本方法は、第2の反応混合物とエタノールアミンまたはその塩とを含む第3の反応混合物を、第3の持続時間にわたってインキュベートすることをさらに含む。
【0010】
特定の実施形態では、本方法は、第2の反応混合物の(a)を生成するのに十分な第1の持続時間にわたって、第1の反応混合物をインキュベートすることをさらに含み、
第1の反応混合物は:
(a)式(A1’):
【化9】
の酸、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶;
(b)式(A2):
Cl-C(=O)-O-R
(A2)、
のクロロホルマート、または、その同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶(式中、Rは置換または非置換のアルキルである);
(c)第1の溶媒;
(d)任意選択で第1の塩基;
を含み、第1の反応混合物をインキュベートするステップは、第2の反応混合物をインキュベートするステップの前である。
【0011】
特定の実施形態では、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を生成する方法は、次のスキームに示されるステップを含む:
【化10】
【0012】
特定の実施形態では、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を生成する方法は、次のスキームに示されるステップを含む:
【化11】
。
【0013】
別の態様では、本開示は、
エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶と;
任意選択で賦形剤と、を含む組成物を提供する。
【0014】
別の態様では、本開示は、本方法によって生成される、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を含む組成物を提供する。
【0015】
別の態様では、本開示は、治療を必要とする対象における皮膚疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本開示は、予防を必要とする対象における皮膚疾患を予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本開示は、対象の皮膚の老化を遅延させるか、または皮膚の外観を改善する方法であって、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0018】
別の態様では、本開示は、対象、生体試料、組織、または細胞におけるレチノイド受容体を調節する方法であって、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を対象に投与するか、または生体試料、組織、もしくは細胞と接触させることを含む方法を提供する。
【0019】
別の態様では、本開示は、
エステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物と;
任意選択で、エステル、互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、共結晶、または組成物を使用するための使用説明書と、
を含む、キットを提供する。
【0020】
本発明は、種々の修正及び代替形態を受け入れるが、その具体的な実施形態以下に説明する。しかしながら、本明細書で提供される詳細な説明は、本開示を特定の開示される実施形態に限定することを意図しておらず、逆に、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲内にあるすべての修正物、均等物、及び代替物を包含することに留意されたい。
【0021】
本開示の他の特徴及び利点は、本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明において明らかになるであろう。
【0022】
定義
特定の官能基及び化学用語の定義は、以下でより詳細に説明されている。化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.の見返しの元素周期表、CASバージョンに従って特定され、特定の官能基は一般にそこに記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般原理、ならびに特定の官能基及び反応性については、Thomas Sorrell,Organic Chemistry,University Science Books,Sausalito,1999;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001;Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989;及びCarruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載されている。
【0023】
本明細書に記載の化合物(例えば、エステル)は、1つ以上の不斉中心を含むことができるため、例えばエナンチオマー及び/またはジアステレオマーなどのさまざまな異性体形態で存在することができる。例えば、本明細書に記載の化合物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは幾何異性体の形態であり得るか、またはラセミ混合物及び1つ以上の立体異性体が濃縮された混合物を含む立体異性体の混合物の形態であり得る。異性体は、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、及びキラル塩の形成及び結晶化を含む、当業者に知られている方法によって混合物から単離することができる。または好ましい異性体は、不斉合成によって調製することができる。例えば、Jacques et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962);及びWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照されたい。本開示はさらに、他の異性体を実質的に含まない個々の異性体として、及び代替的に、さまざまな異性体の混合物として、本明細書に記載の化合物を包含する。
【0024】
式中、結合
は、単結合であるが、ここで立体化学は特定されない。
【0025】
別段の記載がない限り、本明細書に示される式は、同位体濃縮原子を含まない化合物、及び同位体濃縮原子を含む化合物も含む。同位体濃縮原子を含む化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツール及び/またはプローブとして有用であり得る。
【0026】
値の範囲(「範囲」)が列挙される場合、その範囲内のそれぞれの値及びサブ範囲を包含することが意図される。範囲は、別段の記載がない限り、範囲の両端における値を含む。例えば、「1~4の間の整数」とは、1、2、3、及び4を指す。例えば、「C1-6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1-6、C1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-5、C2-4、C2-3、C3-6、C3-5、C3-4、C4-6、C4-5、及びC5-6のアルキルを包含することを意図している。
【0027】
「アルキル」は、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基のラジカルを指す(「C1-20アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~12個の炭素原子を有する(「C1-12アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~10個の炭素原子を有する(「C1-10アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1-9アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1-7アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1-5アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、イソプロピル(C3)、n-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、イソ-ブチル(C4)、n-ペンチル(C5)、3-ペンタニル(C5)、アミル(C5)、ネオペンチル(C5)、3-メチル-2-ブタニル(C5)、第三級アミル(C5)、及びn-ヘキシル(C6)が挙げられる。アルキル基の追加の例としては、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)などが挙げられる。別段の定めがない限り、アルキル基のそれぞれの例は、独立して任意選択で置換されている、例えば、非置換(「非置換アルキル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換アルキル」)。特定の実施形態では、アルキル基は、非置換C1-12アルキル(例えば、-CH3(Me)、非置換エチル(Et)、非置換プロピル(Pr、例えば、非置換n-プロピル(n-Pr)、非置換イソプロピル(i-Pr))、非置換ブチル(Bu、例えば、非置換n-ブチル(n-Bu)、非置換tert-ブチル(tert-Buまたはt-Bu)、非置換sec-ブチル(sec-Buまたはs-Bu)、非置換のイソブチル(i-Bu))である。特定の実施形態では、アルキル基は、置換C1-12アルキル(例えば、置換C1-6アルキル、例えば、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2CH2F、-CH2CHF2、-CH2CF3、またはベンジル(Bn))である。アルキルの結合点は、単結合(例えば、-CH3におけるもの)、二重結合(例えば、=CH2におけるもの)または三重結合(例えば、≡CHにおけるもの)であってもよい。=CH2及び≡CHの部分も、アルキルである。
【0028】
いくつかの実施形態では、アルキル基は、1つ以上のハロゲンで置換されている。「ペルハロアルキル」は、本明細書で定義される置換アルキル基であり、ここで、水素原子のすべては、独立して、ハロゲン、例えば、フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードによって置き換えられている。いくつかの実施形態では、アルキル部分は、1~8個の炭素原子を有する(「C1-8ペルハロアルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル部分は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6ペルハロアルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル部分は、1~4個の炭素原子を有する(「C1-4ペルハロアルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル部分は、1~3個の炭素原子を有する(「C1-3ペルハロアルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル部分は、1~2個の炭素原子を有する(「C1-2ペルハロアルキル」)。いくつかの実施形態では、水素原子のすべては、フルオロで置換される。いくつかの実施形態では、水素原子のすべては、クロロで置換される。ペルハロアルキル基の例としては、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CCl3、-CFCl2、-CF2Clなどが挙げられる。
【0029】
「アルケニル」は、2~20個の炭素原子と、1個以上(例えば、原子価が許す限り、2、3、または4個)の炭素-炭素二重結合とを有し、三重結合を有しない直鎖または分岐の炭化水素基のラジカルを指す(「C
2-20アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~10個の炭素原子を有する(「C
2-10アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~9個の炭素原子を有する(「C
2-9アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~8個の炭素原子を有する(「C
2-8アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~7個の炭素原子を有する(「C
2-7アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~6個の炭素原子を有する(「C
2-6アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~5個の炭素原子を有する(「C
2-5アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~4個の炭素原子を有する(「C
2-4アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~3個の炭素原子を有する(「C
2-3アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2個の炭素原子を有する(「C
2アルケニル」)。1つ以上の炭素-炭素二重結合は、内部(例えば2-ブテニル)または末端(例えば1-ブテニル)であり得る。C
2-4アルケニル基の例としては、エテニル(C
2)、1-プロペニル(C
3)、2-プロペニル(C
3)、1-ブテニル(C
4)、2-ブテニル(C
4)、ブタジエニル(C
4)などが挙げられる。C
2-6アルケニル基の例としては、前述のC
2-4アルケニル基、ならびにペンテニル(C
5)、ペンタジエニル(C
5)、ヘキセニル(C
6)などが挙げられる。アルケニルのさらなる例としては、ヘプテニル(C
7)、オクテニル(C
8)、オクタトリエニル(C
8)などが挙げられる。別段の定めがない限り、アルケニル基のそれぞれの例は、独立して任意選択で置換されている、例えば、非置換(「非置換アルケニル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換アルケニル」)。特定の実施形態では、アルケニル基は非置換C
2-10アルケニルである。特定の実施形態では、アルケニル基は置換C
2-10アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が特定されないC=C二重結合(例えば、-CH=CHCH
3または
【化12】
)は、(E)-配置または(Z)-配置であり得る。
【0030】
「アルキニル」は、2~20個の炭素原子と、1個以上(例えば、原子価が許す限り、2、3、または4個)の炭素-炭素三重結合と、任意選択で1つ以上の二重結合と、を有する直鎖または分岐の炭化水素基のラジカルを指す(「C2-20アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~10個の炭素原子を有する(「C2-10アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~9個の炭素原子を有する(「C2-9アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~8個の炭素原子を有する(「C2-8アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~7個の炭素原子を有する(「C2-7アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~5個の炭素原子を有する(「C2-5アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~4個の炭素原子を有する(「C2-4アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、2~3個の炭素原子を有する(「C2-3アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2個の炭素原子を有する(「C2アルキニル」)。1つ以上の炭素-炭素三重結合は、内部(2-ブチニルにおけるものなど)または末端(1-ブチニルにおけるものなど)であることができる。C2-4アルキニル基の例としては、エチニル(C2)、1-プロピニル(C3)、2-プロピニル(C3)、1-ブチニル(C4)、2-ブチニル(C4)などが挙げられる。C2-6アルケニル基の例としては、前述のC2-4アルキニル基、ならびにペンチニル(C5)、ヘキシニル(C6)などが挙げられる。アルキニルのさらなる例としては、ヘプチニル(C7)、オクチニル(C8)などが挙げられる。別段の定めがない限り、アルキニル基のそれぞれの例は、独立して任意選択で置換されている、例えば、非置換(「非置換アルキニル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換アルキニル」)。特定の実施形態では、アルキニル基は非置換C2-10アルキニルである。特定の実施形態では、アルキニル基は置換C2-10アルキニルである。
【0031】
「カルボシクリル」または「炭素環式」は、非芳香族環系に3~13個の環炭素原子(「C3-13カルボシクリル」)を有し、ヘテロ原子を有しない非芳香族環式炭化水素基のラジカルを指す。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は、3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は、3~7個の環炭素原子を有する(「C3-7カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は、3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態では、カルボシクリル基は、5~10個の環炭素原子を有する(「C5-10カルボシクリル」)。例示的なC3-6カルボシクリル基としては、シクロプロピル(C3)、シクロプロペニル(C3)、シクロブチル(C4)、シクロブテニル(C4)、シクロペンチル(C5)、シクロペンテニル(C5)、シクロヘキシル(C6)、シクロヘキセニル(C6)、シクロヘキサジエニル(C6)などが挙げられる。例示的なC3-8カルボシクリル基としては、前述のC3-6カルボシクリル基、ならびにシクロヘプチル(C7)、シクロヘプテニル(C7)、シクロヘプタジエニル(C7)、シクロヘプタトリエニル(C7)、シクロオクチル(C8)、シクロオクテニル(C8)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル(C7)、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(C8)などが挙げられる。例示的なC3-10カルボシクリル基としては、前述のC3-8カルボシクリル基、ならびにシクロノニル(C9)、シクロノネニル(C9)、シクロデシル(C10)、シクロデセニル(C10)、オクタヒドロ-1H-インデニル(C9)、デカヒドロナフタレニル(C10)、スピロ[4.5]デカニル(C10)などが挙げられる。前述の例が示すように、特定の実施形態では、カルボシクリル基は、単環式(「単環式カルボシクリル」)であるか、または二環系(「二環式カルボシクリル」)などの縮合、架橋、もしくはスピロ環系のいずれかである。カルボシクリルは飽和であることができ、飽和カルボシクリルは「シクロアルキル」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、カルボシクリルは、3~10個の環炭素原子を有する単環式飽和カルボシクリル基である(「C3-10シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、5~6個の環炭素原子を有する(「C5-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、5~10個の環炭素原子を有する(「C5-10シクロアルキル」)。C5-6シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル(C5)及びシクロヘキシル(C6)が挙げられる。C3-6シクロアルキル基の例としては、前述のC5-6シクロアルキル基、ならびにシクロプロピル(C3)及びシクロブチル(C4)が挙げられる。C3-8シクロアルキル基の例としては、前述のC3-6シクロアルキル基、ならびにシクロヘプチル(C7)及びシクロオクチル(C8)が挙げられる。別段の定めがない限り、シクロアルキル基のそれぞれの例は、独立して、非置換(「非置換シクロアルキル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換シクロアルキル」)。特定の実施形態では、シクロアルキル基は非置換C3-10シクロアルキルである。特定の実施形態では、シクロアルキル基は置換C3-10シクロアルキルである。カルボシクリルは、部分的に不飽和であってもよい。カルボシクリルは、芳香族でもヘテロ芳香族でもない炭素環系の全環に、0、1またはそれ以上(例えば、原子価が許す限り、2、3または4個)のC=C二重結合を含み得る。炭素環中に1つ以上(例えば、原子価が許す限り、2または3個)のC=C二重結合を含むカルボシクリルは、「シクロアルケニル」と呼ばれる。炭素環中に1つ以上(例えば、原子価が許す限り、2または3個)のC≡C三重結合を含むカルボシクリルは、「シクロアルキニル」と呼ばれる。「カルボシクリル」としてはまた、上記で定義したカルボシクリル環が、結合点がカルボシクリル環上にある1つ以上のアリールまたはヘテロアリール基と縮合している環系も含まれ、そのような場合、炭素数は引き続き炭素環系の炭素数を示す。別段の定めがない限り、カルボシクリル基のそれぞれの例は、独立して任意選択で置換されている、例えば、非置換(「非置換カルボシクリル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換カルボシクリル」)。特定の実施形態では、カルボシクリル基は非置換C3-10カルボシクリルである。特定の実施形態では、カルボシクリル基は置換C3-10カルボシクリルである。特定の実施形態では、カルボシクリルは、置換または非置換、3~7員、及び単環式である。特定の実施形態では、カルボシクリルは、置換または非置換、5~13員、及び二環式である。
【0032】
いくつかの実施形態では、「カルボシクリル」は、3~10個の環炭素原子を有する単環式飽和カルボシクリル基である(「C3-10シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3~8個の環炭素原子を有する(「C3-8シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3~6個の環炭素原子を有する(「C3-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、5~6個の環炭素原子を有する(「C5-6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、5~10個の環炭素原子を有する(「C5-10シクロアルキル」)。C5-6シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル(C5)及びシクロヘキシル(C6)が挙げられる。C3-6シクロアルキル基の例としては、前述のC5-6シクロアルキル基、ならびにシクロプロピル(C3)及びシクロブチル(C4)が挙げられる。C3-8シクロアルキル基の例としては、前述のC3-6シクロアルキル基、ならびにシクロヘプチル(C7)及びシクロオクチル(C8)が挙げられる。別段の定めがない限り、シクロアルキル基のそれぞれの例は、独立して、非置換(「非置換シクロアルキル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換シクロアルキル」)。特定の実施形態では、シクロアルキル基は非置換C3-10シクロアルキルである。特定の実施形態では、シクロアルキル基は置換C3-10シクロアルキルである。特定の実施形態では、カルボシクリルは、その上にオキソ置換を含む。
【0033】
「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する3~13員の非芳香族環系のラジカルを指し、ここでそれぞれのヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「3~13員ヘテロシクリル」)。1つ以上の窒素原子を含むヘテロシクリル基では、原子価が許す限り、結合点は炭素原子または窒素原子であり得る。ヘテロシクリル基は、単環式(「単環式ヘテロシクリル」)、または二環系(「二環式ヘテロシクリル」)などの縮合、架橋、もしくはスピロ環系のいずれかであり得る。ヘテロシクリル環は、飽和していても部分的に不飽和であってもよい。ヘテロシクリルは、芳香族でもヘテロ芳香族でもないヘテロシクリル環系の全環に、0、1またはそれ以上(例えば、原子価が許す限り、2、3または4個)の二重結合を含み得る。ヘテロシクリル二環式環系は、1つまたは両方の環に1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロシクリル」としてはまた、上で定義したヘテロシクリル環が、結合点がカルボシクリルまたはヘテロシクリル環上にある1つ以上のカルボシクリル基と縮合している環系、または上で定義したヘテロシクリル環が、結合点がヘテロシクリル環上にある1つ以上のアリールまたはヘテロアリール基と縮合している環系が挙げられ、そのような場合、環員数は引き続きヘテロシクリル環系の環員数を示す。別段の定めがない限り、ヘテロシクリルのそれぞれの例は、独立して任意選択で置換されている、例えば、非置換(「非置換ヘテロシクリル」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロシクリル」)。特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は、非置換の3~10員ヘテロシクリルである。特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は、置換の3~10員ヘテロシクリルである。特定の実施形態では、ヘテロシクリルは、置換または非置換、3~7員、及び単環式である。特定の実施形態では、ヘテロシクリルは、置換または非置換、5~13員、及び二環式である。特定の実施形態では、ヘテロシクリルは、その上にオキソ置換を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の非芳香環系であり、それぞれのヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員の非芳香環系であり、それぞれのヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員の非芳香環系であり、それぞれのヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態では、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態では、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態では、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。
【0035】
1個のヘテロ原子を含む例示的な3員ヘテロシクリル基としては、アジリジニル、オキシラニル、またはチイラニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な4員ヘテロシクリル基としては、アゼチジニル、オキセタニル、及びチエタニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクリル基としては、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル、及びピロリル-2,5-ジオンが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクリル基としては、ジオキソラニル、オキサスルフラニル、ジスルフラニル、及びオキサゾリジン-2-オンが挙げられる。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロシクリル基としては、トリアゾリニル、オキサジアゾリニル、及びチアジアゾリニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクリル基としては、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピリジニル、及びチアニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクリル基としては、ピペラジニル、モルホリニル、ジチアニル、及びジオキサニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロシクリル基としては、トリアジナニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロシクリル基としては、アゼパニル、オキセパニル、及びチエパニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な8員ヘテロシクリル基としては、アゾカニル、オキセカニル、及びチオカニルが挙げられる。C6アリール環に縮合した例示的な5員ヘテロシクリル基(本明細書では5,6-二環式複素環とも呼ばれる)としては、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリノニルなどが挙げられる。アリール環に縮合した例示的な6員ヘテロシクリル基(本明細書では6,6-二環式複素環とも呼ばれる)としては、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどが挙げられる。
【0036】
「アリール」は、芳香環系にもたらされる6~14個の環炭素原子を有し、ヘテロ原子を有しない単環または多環(例えば、二環または三環)の、4n+2芳香環系(例えば、環状アレイで共有される6、10、または14個のπ電子を有する)のラジカルを意味する(「C6-14アリール」)。いくつかの実施形態では、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「C6アリール」;例えば、フェニル)。いくつかの実施形態では、アリール基は、10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」;例えば、1-ナフチル及び2-ナフチルなどのナフチル)。いくつかの実施形態では、アリール基は、14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」;例えば、アントラシル)。「アリール」としてはまた、上記で定義したアリール環が、ラジカルまたは結合点がアリール環上にある1つ以上のカルボシクリルまたはヘテロシクリル基と縮合している環系も含まれ、そのような場合、炭素原子の数は引き続きアリール環系における炭素原子の数を示す。別段の定めがない限り、アリール基のそれぞれの例は、独立して任意選択で置換されている、例えば、非置換(「非置換アリール」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換アリール」)。特定の実施形態では、アリール基は非置換C6-14アリールである。特定の実施形態では、アリール基は置換C6-14アリールである。
【0037】
「ヘテロアリール」は、芳香環系にもたらされる環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する、5~10員の単環式または二環式の4n+2芳香族環系(例えば、6または10個のπ電子を環状アレイで共有する)のラジカルを指し、それぞれのヘテロ原子は、独立して、窒素、酸素、及び硫黄から選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。1つ以上の窒素原子を含むヘテロアリール基では、原子価が許す限り、結合点は炭素原子または窒素原子であり得る。ヘテロアリール二環式環系は、1つまたは両方の環に1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロアリール」としては、上記で定義したヘテロアリール環が、結合点がヘテロアリール環上にある1つ以上のカルボシクリルまたはヘテロシクリル基と縮合している環系が含まれ、そのような場合、環員数は引き続きヘテロアリール環系の環員数を示す。「ヘテロアリール」としてはまた、上記で定義したヘテロアリール環が、結合点がアリールまたはヘテロアリール環のいずれかの上にある1つ以上のアリール基と縮合している環系が含まれ、そのような場合、環員数は縮合した(アリール/ヘテロアリール)環系の環員数を示す。1つの環がヘテロ原子を含まない二環式ヘテロアリール基(例えば、インドリル、キノリニル、カルバゾリルなど)は、結合点が、いずれの環、例えば、ヘテロ原子を担持する環(例えば、2-インドリル)またはヘテロ原子を含まない環(例えば、5-インドリル)の上であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の芳香環系であり、それぞれのヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員の芳香環系であり、それぞれのヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供される環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員の芳香環系であり、それぞれのヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態では、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。別段の定めがない限り、ヘテロアリール基のそれぞれの例は、独立して任意選択で置換されている、例えば、非置換(「非置換ヘテロアリール」)または1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアリール」)。特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、非置換の5~14員ヘテロアリールである。特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、置換の5~14員ヘテロアリールである。特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、5~6員の単環である。特定の実施形態では、ヘテロアリール基は、8~14員の二環である。
【0039】
1個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としては、ピロリル、フラニル、及びチオフェニルが挙げられる。2つのヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としては、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、及びイソチアゾリルが挙げられる。3個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としては、トリアゾリル、オキサジアゾリル、及びチアジアゾリルが挙げられる。4個のヘテロ原子を含む例示的な5員ヘテロアリール基としては、テトラゾリルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としては、ピリジニルが挙げられる。2個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としては、ピリダジニル、ピリミジニル、及びピラジニルが挙げられる。3個または4個のヘテロ原子を含む例示的な6員ヘテロアリール基としては、それぞれトリアジニル及びテトラジニルが挙げられる。1個のヘテロ原子を含む例示的な7員ヘテロアリール基としては、アゼピニル、オキセピニル、及びチエピニルが挙げられる。例示的な5,6-二環式ヘテロアリール基としては、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニル、及びプリニルが挙げられる。例示的な6,6-二環式ヘテロアリール基としては、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニル、及びキナゾリニルが挙げられる。
【0040】
「部分的に不飽和」は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む基を指す。「部分的に不飽和」という用語は、不飽和の複数の部位を有する環を包含することを意図するが、本明細書で定義されるように、芳香族基(例えば、アリールまたはヘテロアリール基)を含むことを意図しない。同様に、「飽和」は、二重結合または三重結合を含まない、すなわちすべての単結合を含む基を指す。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書で定義される、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールの基は、任意選択で置換されている(例えば、「置換」もしくは「非置換」のアルキル、「置換」もしくは「非置換」のアルケニル、「置換」もしくは「非置換」のアルキニル、「置換」もしくは「非置換」のカルボシクリル、「置換」もしくは「非置換」のヘテロシクリル、「置換」もしくは「非置換」のアリール、または「置換」もしくは「非置換」のヘテロアリール基)。一般に、「置換された」という用語は、「任意選択で」という用語が先行するか否かにかかわらず、基(例えば、炭素または窒素の原子)上に存在する少なくとも1つの水素が、許容される置換基、例えば、置換により、安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離、または他の反応などによる変換を自発的に受けない化合物がもたらされる、置換基で置き換えられることを意味する。別途示されない限り、「置換された」基は、基の1つ以上の置換可能な位置に置換基を有し、任意の所与の構造中の1つを超える位置が置換されている場合、置換基はそれぞれの位置で同じかまたは異なる。「置換(された)」という用語は、有機化合物のすべての許容可能な置換基、安定な化合物の形成をもたらす本明細書に記載の置換基のいずれかによる置換を含むと考えられる。本開示は、安定な化合物に到達するために、あらゆるそのような組み合わせを企図する。本開示の目的で、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たし、安定な部分の形成をもたらす、本明細書に記載の水素置換基及び/または任意の適切な置換基を有し得る。
【0042】
例示的な炭素原子置換基としては、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、-SO2H、-SO3H、-OH、-ORaa、-ON(Rbb)2、-N(Rbb)2、-N(Rbb)3
+X-、-N(ORcc)Rbb、-SH、-SRaa、-SSRcc、-C(=O)Raa、-CO2H、-CHO、-C(ORcc)2、-CO2Raa、-OC(=O)Raa、-OCO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-OC(=O)N(Rbb)2、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCO2Raa、-NRbbC(=O)N(Rbb)2、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRbb)ORaa、-OC(=NRbb)Raa、-OC(=NRbb)ORaa、-C(=NRbb)N(Rbb)2、-OC(=NRbb)N(Rbb)2、-NRbbC(=NRbb)N(Rbb)2、-C(=O)NRbbSO2Raa、-NRbbSO2Raa、-SO2N(Rbb)2、-SO2Raa、-SO2ORaa、-OSO2Raa、-S(=O)Raa、-OS(=O)Raa、-Si(Raa)3、-OSi(Raa)3、-C(=S)N(Rbb)2、-C(=O)SRaa、-C(=S)SRaa、-SC(=S)SRaa、-SC(=O)SRaa、-OC(=O)SRaa、-SC(=O)ORaa、-SC(=O)Raa、-P(=O)(Raa)2、-P(=O)(ORcc)2、-OP(=O)(Raa)2、-OP(=O)(ORcc)2、-P(=O)(N(Rbb)2)2、-OP(=O)(N(Rbb)2)2、-NRbbP(=O)(Raa)2、-NRbbP(=O)(ORcc)2、-NRbbP(=O)(N(Rbb)2)2、-P(Rcc)2、-P(ORcc)2、-P(Rcc)3
+X-、-P(ORcc)3
+X-、-P(Rcc)4、-P(ORcc)4、-OP(Rcc)2、-OP(Rcc)3
+X-、-OP(ORcc)2、-OP(ORcc)3
+X-、-OP(Rcc)4、-OP(ORcc)4、-B(Raa)2、-B(ORcc)2、-BRaa(ORcc)、C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、ヘテロC1-10アルキル、ヘテロC2-10アルケニル、ヘテロC2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、及び5~14員ヘテロアリールが挙げられ、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRdd基で置換され、X-は対イオンであり;
または炭素原子上の2つのジェミナル水素は基=O、=S、=NN(Rbb)2、=NNRbbC(=O)Raa、=NNRbbC(=O)ORaa、=NNRbbS(=O)2Raa、=NRbb、または=NORccで置き換えられており;
Raaのそれぞれは、独立して、C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、ヘテロC1-10アルキル、ヘテロC2-10アルケニル、ヘテロC2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、及び5~14員ヘテロアリールから選択されるか、または2つのRaaが結合して、3~14員ヘテロシクリルまたは5~14員ヘテロアリール環を形成し、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRdd基で置換されており;
Rbbのそれぞれは、独立して、水素、-OH、-ORaa、-N(Rcc)2、-CN、-C(=O)Raa、-C(=O)N(Rcc)2、-CO2Raa、-SO2Raa、-C(=NRcc)ORaa、-C(=NRcc)N(Rcc)2、-SO2N(Rcc)2、-SO2Rcc、-SO2ORcc、-SORaa、-C(=S)N(Rcc)2、-C(=O)SRcc、-C(=S)SRcc、-P(=O)(Raa)2、-P(=O)(ORcc)2、-P(=O)(N(Rcc)2)2、C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、ヘテロC1-10アルキル、ヘテロC2-10アルケニル、ヘテロC2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、及び5~14員ヘテロアリールから選択されるか、または2つのRbb基が結合して、3~14員ヘテロシクリルまたは5~14員ヘテロアリール環を形成し、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRdd基で置換され;X-は対イオンであり;
Rccのそれぞれは、独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、ヘテロC1-10アルキル、ヘテロC2-10アルケニル、ヘテロC2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、及び5~14員ヘテロアリールから選択されるか、または2つのRccが結合して、3~14員ヘテロシクリルまたは5~14員ヘテロアリール環を形成し、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRdd基で置換されており;
Rddのそれぞれは、独立して、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、-SO2H、-SO3H、-OH、-ORee、-ON(Rff)2、-N(Rff)2、-N(Rff)3
+X-、-N(ORee)Rff、-SH、-SRee、-SSRee、-C(=O)Ree、-CO2H、-CO2Ree、-OC(=O)Ree、-OCO2Ree、-C(=O)N(Rff)2、-OC(=O)N(Rff)2、-NRffC(=O)Ree、-NRffCO2Ree、-NRffC(=O)N(Rff)2、-C(=NRff)ORee、-OC(=NRff)Ree、-OC(=NRff)ORee、-C(=NRff)N(Rff)2、-OC(=NRff)N(Rff)2、-NRffC(=NRff)N(Rff)2、-NRffSO2Ree、-SO2N(Rff)2、-SO2Ree、-SO2ORee、-OSO2Ree、-S(=O)Ree、-Si(Ree)3、-OSi(Ree)3、-C(=S)N(Rff)2、-C(=O)SRee、-C(=S)SRee、-SC(=S)SRee、-P(=O)(ORee)2、-P(=O)(Ree)2、-OP(=O)(Ree)2、-OP(=O)(ORee)2、C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヘテロC1-6アルキル、ヘテロC2-6アルケニル、ヘテロC2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~10員ヘテロシクリル、C6-10アリール、5~10員ヘテロアリールから選択され、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRgg基で置換されるか、または、2つのジェミナルRdd置換基が結合して、=Oまたは=Sを形成することができ;X-は対イオンであり;
Reeのそれぞれは、独立して、C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヘテロC1-6アルキル、ヘテロC2-6アルケニル、ヘテロC2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、C6-10アリール、3~10員ヘテロシクリル、及び3~10員ヘテロアリールから選択され、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRgg基で置換されており;
Rffのそれぞれは、独立して、水素、C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヘテロC1-6アルキル、ヘテロC2-6アルケニル、ヘテロC2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~10員ヘテロシクリル、C6-10アリール、及び5~10員ヘテロアリールから選択されるか、または2つのRff基が結合して、3~10員ヘテロシクリルまたは5~10員ヘテロアリール環を形成し、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRgg基で置換されており;
Rggのそれぞれは、独立して、ハロゲン、-CN、-NO2、-N3、-SO2H、-SO3H、-OH、-OC1-6アルキル、-ON(C1-6アルキル)2、-N(C1-6アルキル)2、-N(C1-6アルキル)3
+X-、-NH(C1-6アルキル)2
+X-、-NH2(C1-6アルキル)+X-、-NH3
+X-、-N(OC1-6アルキル)(C1-6アルキル)、-N(OH)(C1-6アルキル)、-NH(OH)、-SH、-SC1-6アルキル、-SS(C1-6アルキル)、-C(=O)(C1-6アルキル)、-CO2H、-CO2(C1-6アルキル)、-OC(=O)(C1-6アルキル)、-OCO2(C1-6アルキル)、-C(=O)NH2、-C(=O)N(C1-6アルキル)2、-OC(=O)NH(C1-6アルキル)、-NHC(=O)(C1-6アルキル)、-N(C1-6アルキル)C(=O)(C1-6アルキル)、-NHCO2(C1-6アルキル)、-NHC(=O)N(C1-6アルキル)2、-NHC(=O)NH(C1-6アルキル)、-NHC(=O)NH2、-C(=NH)O(C1-6アルキル)、-OC(=NH)(C1-6アルキル)、-OC(=NH)OC1-6アルキル、-C(=NH)N(C1-6アルキル)2、-C(=NH)NH(C1-6アルキル)、-C(=NH)NH2、-OC(=NH)N(C1-6アルキル)2、-OC(NH)NH(C1-6アルキル)、-OC(NH)NH2、-NHC(NH)N(C1-6アルキル)2、-NHC(=NH)NH2、-NHSO2(C1-6アルキル)、-SO2N(C1-6アルキル)2、-SO2NH(C1-6アルキル)、-SO2NH2、-SO2C1-6アルキル、-SO2OC1-6アルキル、-OSO2C1-6アルキル、-SOC1-6アルキル、-Si(C1-6アルキル)3、-OSi(C1-6アルキル)3-C(=S)N(C1-6アルキル)2、C(=S)NH(C1-6アルキル)、C(=S)NH2、-C(=O)S(C1-6アルキル)、-C(=S)SC1-6アルキル、-SC(=S)SC1-6アルキル、-P(=O)(OC1-6アルキル)2、-P(=O)(C1-6アルキル)2、-OP(=O)(C1-6アルキル)2、-OP(=O)(OC1-6アルキル)2、C1-6アルキル、C1-6ペルハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヘロC1-6アルキル、ヘテロC2-6アルケニル、ヘテロC2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、C6-10アリール、3~10員ヘテロシクリル、5~10員ヘテロアリールであるか、または2つのジェミナルRgg置換基が結合して=Oまたは=Sを形成でき;X-が対オンである。
【0043】
特定の実施形態では、炭素原子置換基は、独立して、ハロゲン、置換(例えば、1つ以上のハロゲンで置換されている)または、非置換のC1-6アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、-NO2、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-OC(=O)Raa、-OCO2Raa、-OC(=O)N(Rbb)2、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCO2Raa、または-NRbbC(=O)N(Rbb)2である。特定の実施形態では、炭素原子置換基は独立して、ハロゲン、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、-NO2、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-OC(=O)Raa、-OCO2Raa、-OC(=O)N(Rbb)2、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCO2Raa、または-NRbbC(=O)N(Rbb)2であり、式中、Raaは、水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、酸素原子に結合する場合は酸素保護基、または硫黄原子に結合する場合は硫黄保護基(例えば、アセトアミドメチル、t-Bu、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル、2-ピリジンスルフェニル、またはトリフェニルメチル)であり;それぞれのRbbは独立して、水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または窒素保護基である。特定の実施形態では、炭素原子置換基は独立して、ハロゲン、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、または-NO2である。特定の実施形態では、炭素原子置換基は独立して、ハロゲン、置換(例えば、1つ以上のハロゲン部分によって置換)または非置換のC1-6アルキル、-ORaa、-SRaa、-N(Rbb)2、-CN、-SCN、または-NO2であり、式中、Raaは、水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、酸素原子にする場合は酸素保護基、または硫黄原子に結合する場合は硫黄保護基(例えば、アセトアミドメチル、t-Bu、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル、2-ピリジン-スルフェニル、またはトリフェニルメチル);それぞれのRbbは独立して、水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または窒素保護基である。
【0044】
「対イオン」または「陰イオン対イオン」は、電子的中性を維持するために、正に荷電した基に結合した負に荷電した基である。陰イオン対イオンは、一価(すなわち、形式的な負電荷を1つ含む)であってもよい。陰イオン対イオンはまた、二価または三価などの多価(すなわち、1つを超える形式的負電荷を含む)であってもよい。例示的な対イオンとしては、ハライドイオン(例えば、F-、Cl-、Br-、I-)、NO3
-、ClO4
-、OH-、H2PO4
-、HCO3
-
、HSO4
-、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホン酸、エタン-1-スルホン酸-2-スルホン酸など)、カルボン酸イオン(例えば、酢酸、プロパン酸、安息香酸、グリセリン酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸など)、BF4
-、PF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、B[3,5-(CF3)2C6H3]4]-、B(C6F5)4
-、BPh4
-、Al(OC(CF3)3)4
-、及びカルボラン陰イオン(例えば、CB11H12
-または(HCB11Me5Br6)-)が挙げられる。多価であり得る例示的な対イオンとしては、CO3
2-、HPO4
2-、PO4
3-
、B4O7
2-、SO4
2-、S2O3
2-、カルボン酸陰イオン(例えば、酒石酸、クエン酸、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マロン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、ピメリン酸塩、スベラ酸塩、アゼリン酸塩、セバシン酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など)、及びカルボラン類が挙げられる。
【0045】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)、またはヨウ素(ヨード、-I)を指す。
【0046】
窒素原子は、原子価が許す限り、置換されていても置換されていなくてもよく、第一級、第二級、第三級、及び第四級の窒素原子を含む。例示的な窒素原子置換基としては、水素、-OH、-ORaa、-N(Rcc)2、-CN、-C(=O)Raa、-C(=O)N(Rcc)2、-CO2Raa、-SO2Raa、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRcc)ORaa、-C(=NRcc)N(Rcc)2、-SO2N(Rcc)2、-SO2Rcc、-SO2ORcc、-SORaa、-C(=S)N(Rcc)2、-C(=O)SRcc、-C(=S)SRcc、-P(=O)(ORcc)2、-P(=O)(Raa)2、-P(=O)(N(Rcc)2)2、C1-10アルキル、C1-10ペルハロアルキル、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、ヘテロC1-10アルキル、ヘテロC2-10アルケニル、ヘテロC2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、及び5~14員ヘテロアリールが挙げられ、またはN原子に結合した2つのRcc基が結合して3~14員ヘテロシクリルもしくは5~14員ヘテロアリール環を形成し、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRdd基で置換され、Raa、Rbb、Rcc、及びRddは上で定義されるとおりである。
【0047】
特定の実施形態では、窒素原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、または窒素保護基である。特定の実施形態では、窒素原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、または窒素保護基であり、式中、Raaは、水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または、酸素原子に結合する場合は酸素保護基であり;それぞれのRbbは独立して水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または窒素保護基である。特定の実施形態では、窒素原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキルまたは窒素保護基である。
【0048】
特定の実施形態では、窒素原子上に存在する置換基は、窒素保護基(アミノ保護基とも呼ばれる)である。窒素保護基としては、-OH、-ORaa、-N(Rcc)2、-C(=O)Raa、-C(=O)N(Rcc)2、-CO2Raa、-SO2Raa、-C(=NRcc)Raa、-C(=NRcc)ORaa、-C(=NRcc)N(Rcc)2、-SO2N(Rcc)2、-SO2Rcc、-SO2ORcc、-SORaa、-C(=S)N(Rcc)2、-C(=O)SRcc、-C(=S)SRcc、C1-10アルキル(例えば、アラルキル、ヘテロアラルキル)、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、C3-10カルボシクリル、3~14員ヘテロシクリル、C6-14アリール、及び5~14員ヘテロアリール基が挙げられ、それぞれのアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRdd基で置換され;Raa、Rbb、Rcc、及びRddは本明細書で定義されるとおりである。窒素保護基は当該技術分野で周知であり、参照により本明細書に組み込まれる、Protecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley & Sons,1999に詳細に記載されるものを含む。
【0049】
アミド窒素保護基(例えば、-C(=O)Raa)としては、ホルムアミド、アセトアミド、クロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3-フェニルプロパンアミド、ピコリンアミド、3-ピリジルカルボキサミド、N-ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、ベンズアミド、p-フェニルベンズアミド、o-ニトフェニルアセトアミド、o-ニトロフェノキシアセトアミド、アセトアセタミド、(N’-ジチオベンジルオキシアシルアミノ)アセトアミド、3-(p-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、3-(o-ニトロフェニル)プロパンアミド、2-メチル-2-(o-ニトロフェノキシ)プロパンアミド、2-メチル-2-(o-フェニルアゾフェノキシ)プロパンアミド、4-クロロブタンアミド、3-メチル-3-ニトロブタンアミド、o-ニトロシンナミド、N-アセチルメチオニン、o-ニトロベンズアミド、及びo-(ベンゾイルオキシメチル)ベンズアミドが挙げられる。
【0050】
カルバメート窒素保護基(例えば、-C(=O)ORaa)としては、メチルカルバメート、エチルカルバメート、9-フルオレニルメチルカルバメート(Fmoc)、9-(2-スルホ)フルオレニルメチルカルバメート、9-(2,7-ジブロモ)フルオレニルメチルカルバメート、2,7-ジ-t-ブチル-[9-(10,10-ジオキソ-10,10,10,10-テトラヒドロチオキサンチル)]メチルカルバメート(DBD-Tmoc)、4-メトキシフェナシルカルバメート(Phenoc)、2,2,2-トリクロロエチルカルバメート(Troc)、2-トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、2-フェニルエチルカルバメート(hZ)、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエチルカルバメート(Adpoc)、1,1-ジメチル-2-ハロエチルカルバメート、1,1-ジメチル-2,2-ジブロモエチルカルバメート(DB-t-BOC)、1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロロエチルカルバメート(TCBOC)、1-メチル-1-(4-ビフェニリル)エチルカルバメート(Bpoc)、1-(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-1-メチルエチルカルバメート(t-Bumeoc)、2-(2’-及び4’-ピリジル)エチルカルバメート(Pyoc)、2-(N,N-ジシクロヘキシルカルボキサミド)エチルカルバメート、t-ブチルカルバメート(BOC)、1-アダマンチルカルバメート(Adoc)、ビニルカルバメート(Voc)、アリルカルバメート(Alloc)、1-イソプロピルアリルカルバメート(Ipaoc)、シンナミルカルバメート(Coc)、4-ニトロシンナミルカルバメート(Noc)、8-キノリルカルバメート、N-ヒドロキシピペリジニルカルバメート、アルキルジチオカルバメート、ベンジルカルバメート(Cbz)、p-メトキシベンジルカルバメート(Moz)、p-ニトロベンジルカルバメート、p-ブロモベンジルカルバメート、p-クロロベンジルカルバメート、2,4-ジクロロベンジルカルバメート、4-メチルスルフィニルベンジルカルバメート(Msz)、9-アントリルメチルカルバメート、ジフェニルメチルカルバメート、2-メチルチオエチルカルバメート、2-メチルスルホニルエチルカルバメート、2-(p-トルエンスルホニル)エチルカルバメート、[2-(1,3-ジチアニル)]メチルカルバメート(Dmoc)、4-メチルチオフェニルカルバメート(Mtpc)、2,4-ジメチルチオフェニルカルバメート(Bmpc)、2-ホスホニオエチルカルバメート(Peoc)、2-トリフェニルホスホニオイソプロピルカルバメート(Ppoc)、1,1-ジメチル-2-シアノエチルカルバメート、m-クロロ-p-アシルオキシベンジルカルバメート、p-(ジヒドロキシボリル)ベンジルカルバメート、5-ベンズイソオキサゾリルメチルカルバメート、2-(トリフルオロメチル)-6-クロモニルメチルカルバメート(Tcroc)、m-ニトロフェニルカルバメート、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート、o-ニトロベンジルカルバメート、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジルカルバメート、フェニル(o-ニトロフェニル)メチルカルバメート、t-アミルカルバメート、S-ベンジルチオカルバメート、p-シアノベンジルカルバメート、シクロブチルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、シクロペンチルカルバメート、シクロプロピルメチルカルバメート、p-デシルオキシベンジルカルバメート、2,2-ジメトキシアシルビニルカルバメート、o-(N,N-ジメチルカルボキサミド)ベンジルカルバメート、1,1-ジメチル-3-(N,N-ジメチルカルボキサミド)プロピルカルバメート、1,1-ジメチルプロピニルカルバメート、ジ(2-ピリジル)メチルカルバメート、2-フラニルメチルカルバメート、2-ヨードエチルカルバメート、イソボルニルカルバメート、イソブチルカルバメート、イソニコチニルカルバメート、p-(p’-メトキシフェニルアゾ)ベンジルカルバメート、1-メチルシクロブチルカルバメート、1-メチルシクロヘキシルカルバメート、1-メチル-1-シクロプロピルメチルカルバメート、1-メチル-1-(3,5-ジメトキシフェニル)エチルカルバメート、1-メチル-1-(p-フェニルアゾフェニル)エチルカルバメート、1-メチル-1-フェニルエチルカルバメート、1-メチル-1-(4-ピリジル)エチルカルバメート、フェニルカルバメート、p-(フェニルアゾ)ベンジルカルバメート、2,4,6-トリ-t-ブチルフェニルカルバメート、4-(トリメチルアンモニウム)ベンジルカルバメート、及び2,4,6-トリメチルベンジルカルバメートが挙げられる。
【0051】
スルホンアミド窒素保護基(例えば、-S(=O)2Raa)としては、p-トルエンスルホンアミド(Ts)、ベンゼンスルホンアミド、2,3,6-トリメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mtr)、2,4,6-トリメトキシベンゼンスルホンアミド(Mtb)、2,6-ジメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Pme)、2,3,5,6-テトラメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mte)、4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mbs)、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホンアミド(Mts)、2,6-ジメトキシ-4-メチルベンゼンスルホンアミド(iMds)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホンアミド(Pmc)、メタンスルホンアミド(Ms)、β-トリメチルシリルエタンスルホンアミド(SES)、9-アントラセンスルホンアミド、4-(4’,8’-ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルホンアミド(DNMBS)、ベンジルスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド、及びフェナシルスルホンアミドが挙げられる。
【0052】
他の窒素保護基としては、フェノチアジニル-(10)-アシル誘導体、N’-p-トルエンスルホニルアミノアシル誘導体、N’-フェニルアミノチオアシル誘導体、N-ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、N-アセチルメチオニン誘導体、4,5-ジフェニル-3-オキサゾリン-2-オン、N-フタルイミド、N-ジチアスクシンイミド(Dts)、N-2,3-ジフェニルマレイミド、N-2,5-ジメチルピロール、N-1,1,4,4-テトラメチルジシリルアザシクロペンタン付加物(STABASE)、5-置換1,3-ジメチル-1,3,5トリアザシクロヘキサン-2-オン、5-置換1,3-ジベンジル-1,3,5-トリアザシクロヘキサン-2-オン、1-置換3,5-ジニトロ-4-ピリドン、N-メチルアミン、N-アリルアミン、N-[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチルアミン(SEM)、N-3-アセトキシプロピルアミン、N-(1-イソプロピル-4-ニトロ-2-オキソ-3-ピロリン-3-イル)アミン、第四級アンモニウム塩、N-ベンジルアミン、N-ジ(4-メトキシフェニル)メチルアミン、N-5-ジベンゾスベリルアミン、N-トリフェニルメチルアミン(Tr)、N-[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル]アミン(MMTr)、N-9-フェニルフルオレニルアミン(PhF)、N-2,7-ジクロロ-9-フルオレニルメチレンアミン、N-フェロセニルメチルアミノ(Fcm)、N-2-ピコリルアミノN’-オキシド、N-1,1-ジメチルチオメチレンアミン、N-ベンジリデンアミン、N-p-メトキシベンジリデンアミン、N-ジフェニルメチレンアミン、N-[(2-ピリジル)メシチル]メチレンアミン、N-(N’,N’-ジメチルアミノメチレン)アミン、N,N’-イソプロピリデンジアミン、N-p-ニトロベンジリデンアミン、N-サリチリデンアミン、N-5-クロロサリチリデンアミン、N-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)フェニルメチレンアミン、N-シクロヘキシリデンアミン、N-(5,5-ジメチル-3-オキソ-1-シクロヘキセニル)アミン、N-ボラン誘導体、N-ジフェニルボリン酸誘導体、N-[フェニル(ペンタアシルクロム-またはタングステン)アシル]アミン、N-銅キレート、N-亜鉛キレート、N-ニトロアミン、N-ニトロソアミン、アミンN-オキシド、ジフェニルホスフィンアミド(Dpp)、ジメチルチオホスフィンアミド(Mpt)、ジフェニルチオホスフィンアミド(Ppt)、ジアルキルホスホルアミデート、ジベンジルホスホルアミデート、ジフェニルホスホルアミデート、ベンゼンスルフェンアミド、o-ニトロベンゼンスルフェンアミド(Nps)、2,4-ジニトロベンゼンスルフェンアミド、ペンタクロロベンゼンスルフェンアミド、2-ニトロ-4-メトキシベンゼンスルフェンアミド、トリフェニルメチルスルフェンアミド、及び3-ニトロピリジンスルフェンアミド(Npys)が挙げられる。
【0053】
特定の実施形態では、窒素保護基は、Bn、Boc、Cbz、Fmoc、トリフルオロアセチル、トリフェニルメチル、アセチル、またはTsである。
【0054】
特定の実施形態では、酸素原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、または酸素保護基である。特定の実施形態では、酸素原子は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、または酸素保護基であり、式中、Raaは、水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または、酸素原子に結合する場合は酸素保護基であり;それぞれのRbbは独立して水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または窒素保護基である。特定の実施形態では、酸素原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキルまたは酸素保護基である。
【0055】
特定の実施形態では、酸素原子上に存在する置換基は、酸素保護基(本明細書では「ヒドロキシル保護基」とも呼ばれる)である。酸素保護基としては、-Raa、-N(Rbb)2、-C(=O)SRaa、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRbb)ORaa、-C(=NRbb)N(Rbb)2、-S(=O)Raa、-SO2Raa、-Si(Raa)3、-P(Rcc)2、-P(Rcc)3
+X-、-P(ORcc)2、-P(ORcc)3
+X-、-P(=O)(Raa)2、-P(=O)(ORcc)2、及び-P(=O)(N(Rbb)2)2が挙げられ、式中、X-、Raa、Rbb、及びRccは、本明細書で定義されるとおりである。酸素保護基は当該技術分野で周知であり、参照により本明細書に組み込まれる、Protecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley & Sons,1999に詳細に記載されるものを含む。
【0056】
酸素保護基の例としては、メチル、メトキシメチル(MOM)、メチルチオメチル(MTM)、t-ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p-メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、(4-メトキシフェノキシ)メチル(p-AOM)、グアイアコルメチル(GUM)、t-ブトキシメチル、4-ペンテニルオキシメチル(POM)、シロキシメチル、2-メトキシエトキシメチル(MEM)、2,2,2-トリクロロエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEMOR)、テトラヒドロピラニル(THP)、3-ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1-メトキシシクロヘキシル、4-メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、4-メトキシテトラヒドロチオピラニル、4-メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S-ジオキシド、1-[(2-クロロ-4-メチル)フェニル]-4-メトキシピペラジン-4-イル(CTMP)、1,4-ジオキサン-2-イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a-オクタヒドロ-7,8,8-トリメチル-4,7-メタノベンゾフラン-2-イル、1-エトキシエチル、1-(2-クロロエトキシ)エチル、1-メチル-1-メトキシエチル、1-メチル-1-ベンジルオキシエチル、1-メチル-1-ベンジルオキシ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-トリメチルシリルエチル、2-(フェニルセレニル)エチル、t-ブチル、アリル、p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、2,4-ジニトロフェニル、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、p-シアノベンジル、p-フェニルベンジル、2-ピコリル、4-ピコリル、3-メチル-2-ピコリルN-オキシド、ジフェニルメチル、p,p’-ジニトロベンズヒドリル、5-ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α-ナフチルジフェニルメチル、p-メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p-メトキシフェニル)メチル、4-(4’-ブロモフェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチル、4,4’,4”-トリス(4,5-ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4,4’,4”-トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル、4,4’,4”-トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3-(イミダゾール-1-イル)ビス(4’,4”-ジメトキシフェニル)メチル、1,1-ビス(4-メトキシフェニル)-1’-ピレニルメチル、9-アントリル、9-(9-フェニル)キサンテニル、9-(9-フェニル-10-オキソ)アントリル、1,3-ベンゾジスルフラン-2-イル、ベンゾイソチアゾリルS,S-ジオキシド、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルテキシルシリル、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリベンジルシリル、トリ-p-キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル(DPMS)、t-ブチルメトキシフェニルシリル(TBMPS)、ホルメート、ベンゾイルホルメート、アセテート、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、フェノキシアセテート、p-クロロフェノキシアセテート、3-フェニルプロピオネート、4-オキソペンタノエート(レブリネート)、4,4-(エチレンジチオ)ペンタノエート(レブリノイルジチオアセタール)、ピバロエート、アダマントエート、クロトネート、4-メトキシクロトネート、ベンゾエート、p-フェニルベンゾエート、2,4,6-トリメチルベンゾエート(メシトエート)、アルキルメチルカーボネート、9-フルオレニルメチルカーボネート(Fmoc)、アルキルエチルカーボネート、アルキル2,2,2-トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2-(トリメチルシリル)エチルカーボネート(TMSEC)、2-(フェニルスルホニル)エチルカーボネート(Psec)、2-(トリフェニルホスホニオ)エチルカーボネート(Peoc)、アルキルイソブチルカーボネート、アルキルビニルカーボネート、アルキルアリルカーボネート、アルキルp-ニトロフェニルカーボネート、アルキルベンジルカーボネート、アルキルp-メトキシベンジルカーボネート、アルキル3,4-ジメトキシベンジルカーボネート、アルキルo-ニトロベンジルカーボネート、アルキルp-ニトロベンジルカーボネート、アルキルS-ベンジルチオカーボネート、4-エトキシ-1-ナフチルカーボネート、メチルジチオカーボネート、2-ヨードベンゾエート、4-アジドブチレート、4-ニトロ-4-メチルペンタノエート、o-(ジブロモメチル)ベンゾエート、2-ホルミルベンゼンスルホネート、2-(メチルチオメトキシ)エチル、4-(メチルチオメトキシ)ブチレート、2-(メチルチオメトキシメチル)ベンゾエート、2,6-ジクロロ-4-メチルフェノキシアセテート、2,6-ジクロロ-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノキシアセテート、2,4-ビス(1,1-ジメチルプロピル)フェノキシアセテート、クロロジフェニルアセテート、イソブチレート、モノスクシノエート、(E)-2-メチル-2-ブテノエート、o-(メトキシアシル)ベンゾエート、α-ナフトエート、ニトレート、アルキルN,N,N’,N’-テトラメチルホスホロジアミデート、アルキルN-フェニルカルバメート、ボレート、ジメチルホスフィノチオイル、アルキル2,4-ジニトロフェニルスルフェネート、サルフェート、メタンスルホネート(メシレート)、ベンジルスルホネート、及びトシラート(Ts)が挙げられる。
【0057】
特定の実施形態では、酸素保護基は、シリル、TBDPS、TBDMS、TIPS、TES、TMS、MOM、THP、t-Bu、Bn、アリル、アセチル、ピバロイル、またはベンゾイルである。
【0058】
特定の実施形態では、硫黄原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、または硫黄保護基である。特定の実施形態では、硫黄原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、または硫黄保護基であり、式中、Raaは、水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または、酸素原子に結合する場合は酸素保護基であり;それぞれのRbbは独立して水素、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキル、または窒素保護基である。特定の実施形態では、硫黄原子置換基は独立して、置換(例えば、1つ以上のハロゲンによって置換)または非置換のC1-6アルキルまたは硫黄保護基である。
【0059】
特定の実施形態では、硫黄原子上に存在する置換基は、硫黄保護基(「チオール保護基」とも呼ばれる)である。硫黄保護基としては、-Raa、-N(Rbb)2、-C(=O)SRaa、-C(=O)Raa、-CO2Raa、-C(=O)N(Rbb)2、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRbb)ORaa、-C(=NRbb)N(Rbb)2、-S(=O)Raa、-SO2Raa、-Si(Raa)3、-P(Rcc)2、-P(Rcc)3
+X-、-P(ORcc)2、-P(ORcc)3
+X-、-P(=O)(Raa)2、-P(=O)(ORcc)2、及び-P(=O)(N(Rbb)2)2が挙げられ、式中、Raa、Rbb、及びRccは、本明細書で定義されるとおりである。硫黄保護基は当該技術分野で周知であり、参照により本明細書に組み込まれる、Protecting Groups in Organic Synthesis,T.W.Greene and P.G.M.Wuts,3rd edition,John Wiley & Sons,1999に詳細に記載されるものを含む。特定の実施形態では、硫黄保護基は、アセトアミドメチル、t-Bu、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル、2-ピリジン-スルフェニル、またはトリフェニルメチルである。
【0060】
-Rが任意の一価部分である-Rの「分子量」は、分子R-Hの分子量から水素原子の原子量を引くことによって計算される。-L-が任意の二価部分である-L-の「分子量」は、分子H-L-Hの分子量から2つの水素原子の組み合わせた原子量を引くことによって計算される。
【0061】
特定の実施形態では、置換基の分子量は、200g/モル未満、150g/モル未満、100g/モル未満、50g/モル未満、または25g/モル未満である。特定の実施形態では、置換基は、炭素、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、窒素、及び/またはケイ素原子からなる。特定の実施形態では、置換基は、炭素、水素、フッ素、塩素、臭素、及び/またはヨウ素原子からなる。特定の実施形態では、置換基は、炭素、水素、及び/またはフッ素原子からなる。特定の実施形態では、置換基は、1つ以上、2つ以上、または3つ以上の水素結合ドナーを含まない。特定の実施形態では、置換基は、1つ以上、2つ以上、または3つ以上の水素結合アクセプターを含まない。
【0062】
「塩」という用語は、酸と塩基との中和反応から生じるイオン性化合物を指す。塩は、1つ以上の陽イオン(正に帯電したイオン)及び1つ以上の陰イオン(負イオン)から構成され、その結果、塩は、電気的に中性(正味の電荷なし)である。本発明の化合物の塩は、無機または有機の酸及び塩基に由来するものが含まれる。酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸のような有機酸と形成されるか、あるいは、イオン交換などの、当該技術分野において知られている他の方法を用いることによって形成される、アミノ基の塩である。他の塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、馬尿酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、及びN+(C1-4アルキル)4塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。塩としては、ハライド、水酸化物、カルボキシレート、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキル酸スルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアンモニウム、第四級アンモニウム及びアミン陽イオンが挙げられる。
【0063】
「溶媒和物」という用語は、通常加溶媒分解反応によって、溶媒と結合した化合物の形態を指す。この物理的会合は、水素結合を含み得る。従来の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、酢酸、DMSO、THF、ジエチルエーテルなどが挙げられる。提供される化合物は、例えば結晶形態で調製することができ、溶媒和することができる。適切な溶媒和物としては、薬学的に許容される溶媒和物が挙げられ、さらに化学量論的溶媒和物及び非化学量論的溶媒和物の両方が挙げられる。ある場合には、溶媒和物は、例えば1つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれているときに、単離することができるであろう。「溶媒和物」は、溶液相と単離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物としては、水和物、エタノレート、及びメタノレートが挙げられる。
【0064】
「水和物」という用語は、水に結合する化合物を指す。典型的には、化合物の水和物に含まれる水分子の数は、水和物中の化合物分子の数に対して一定の比率になる。したがって、化合物の水和物は、例えば、一般式R・xH2Oによって表すことができ、式中、Rは化合物であり、xは0より大きい数である。所定の化合物は、例えば、一水和物(xが1である)、低級水和物(xが0より大きく1より小さい数、例えば半水和物(R・0.5H2O))、及び多水和物(xが1を超える数である、例えば、二水和物(R・2H2O)及び六水和物(R・6H2O))を含む1種を超える種類の水和物を形成し得る。
【0065】
「互変異性体」という用語は、特定の化合物構造の交換可能な形態であり、水素原子と電子の置換が異なる化合物を指す。したがって、2つの構造は、π電子と原子(通常はH)の移動によって平衡状態にあり得る。例えば、エノールとケトンは、酸または塩基のいずれかで処理すると急速に相互変換されるため、互変異性体である。互変異性の別の例は、酸または塩基で処理することによって同様に形成されるフェニルニトロメタンのアシ型及びニトロ型である。
【0066】
互変異性体は、目的の化合物の最適な化学反応性及び生物学的活性の達成に関連し得る。
【0067】
同じ分子式を有するが、その原子の結合の性質もしくは配列、または空間内におけるその原子の配置が異なる化合物は、「異性体」と称される。空間内におけるその原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。
【0068】
互いに鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有するとき、例えば、化合物が4個の異なる基に結合している場合、1対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴付けることができ、そして、Cahn及びPrelogのR-及びS-配列ルールによって、または分子が偏光面を回転させる方式によって記載され、右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ(+)または(-)異性体)と表される。キラル化合物は、いずれかの個々のエナンチオマーとして、またはその混合物として存在し得る。等比率のエナンチオマーを含有する混合物を「ラセミ混合物」と呼ぶ。
【0069】
「同位体標識化合物」という用語は、誘導体の少なくとも1つの原子が、その天然の存在度を上回って濃縮された(例えば、3~10倍、10~30倍、30~100倍、100~300倍、300~1,000倍、1,000~3,000倍、または3,000~10,000倍上回って濃縮された)少なくとも1つの同位体を含み、一方、化合物のそれぞれの原子が、その天然の存在度に同位体を含むという点で、化合物と構造的にのみ異なる化合物の誘導体を指す。特定の実施形態では、その天然存在度を超えて濃縮された同位体は、2Hである。特定の実施形態では、同位体標識化合物の1、2、3、4、または5個の水素原子のみが、その天然存在度を超える2Hを含む。特定の実施形態では、その天然存在度を超えて濃縮された同位体は、13Cまたは18Oである。特定の実施形態では、同位体標識化合物の1、2、または3個の炭素原子のみが、その天然存在度を超える13Cを含む。特定の実施形態では、同位体標識化合物の1または2個の酸素原子のみが、その天然存在度を超える18Oを含む。
【0070】
「多形体」という用語は、特定の結晶充填配置における化合物(またはその塩、水和物、もしくは溶媒和物)の結晶形を指す。すべての多形体は同じ元素組成を有している。異なる結晶形は、通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学的及び電気的特性、安定性、ならびに溶解度を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、保存温度、及びその他の因子により、1つの結晶形が支配的になる場合がある。化合物のさまざまな多形体は、異なる条件下での結晶化によって調製することができる。
【0071】
「共結晶」という用語は、少なくとも2つの異なる成分(例えば、提供される化合物及び酸)を含む結晶構造を指し、ここで、成分のそれぞれは、独立して、原子、イオン、または分子である。特定の実施形態では、成分はいずれも溶媒ではない。特定の実施形態では、少なくとも1つの成分は溶媒である。提供される化合物と酸との共結晶は、提供される化合物と酸とから形成される塩とは異なる。塩中、提供される化合物は、酸から提供される化合物へのプロトン転移(例えば、完全なプロトン転移)が室温で容易に起こるように、酸と錯化される。しかしながら、共結晶において、提供される化合物は、酸から本明細書において提供される化合物へのプロトン転移が室温で容易に起こらないように、酸と錯化される。特定の実施形態では、共結晶において、酸から提供される化合物へのプロトン転移がない。特定の実施形態では、共結晶において、酸から提供される化合物への部分的なプロトン転移がある。共結晶は、提供される化合物の特性(例えば、溶解性、安定性、及び配合の容易さ)を改善するのに有用であり得る。
【0072】
本明細書に記載の固体形態(例えば、互変異性体、立体異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、及び共結晶)は、それらのすべての組み合わせを含む。例えば、本明細書に記載の化合物の互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、または共結晶は、例えば、本明細書に記載の化合物の互変異性体の同位体標識化合物の塩の溶媒和物の多形体を含む。特定の実施形態では、固体形態は、化粧品として許容される。特定の実施形態では、固体形態は薬学的に許容される。
【0073】
投与が企図される「対象」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢層の男性または女性、例えば、小児対象(例えば、幼児、小児、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢成人))、及び/または他の非ヒト動物、例えば、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル);ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、及び/またはイヌなどの市販の適切な哺乳動物)、ならびに鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/またはシチメンチョウなどの市販の適切な鳥類)が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、対象は哺乳動物である。対象は、発生のどの段階のオスでもメスでもよい。非ヒト動物はトランスジェニック動物であり得る。
【0074】
「生体試料」という用語は、組織試料(組織切片及び組織の針生検など);細胞試料(例えば、細胞学的スメア(パパニコロースメアまたは血液スメアなど)、または顕微解剖によって得られた細胞の試料);生物全体の試料(酵母または細菌の試料など);または細胞画分、断片、もしくはオルガネラ(細胞を溶解し、遠心分離などによってその成分を分離することによって得られるものなど)を含む任意の試料を指す。生体試料の他の例としては、血液、血清、尿、精液、糞便、脳脊髄液、間質液、粘液、涙、汗、膿、生検組織(例えば、外科的生検または針生検によって得られる)、乳頭吸引液、母乳、膣液、唾液、スワブ(頬スワブなど)、または第1の生体試料に由来する生体分子を含む任意の材料が挙げられる。
【0075】
「組成物」及び「配合物」という用語は交換可能に使用される。
【0076】
「投与する」、「投与すること」、または「投与」という用語は、対象に、または対象上に、本明細書に記載の化合物またはその組成物を埋め込む、吸収する、摂取する、注射する、吸入する、または別の方法で導入することを指す。
【0077】
「治療」、「治療する」、及び「治療すること」という用語は、本明細書に記載の疾患の逆転、緩和、発症の遅延、または進行の阻害を指す。いくつかの実施形態では、治療は、疾患の1つ以上の徴候または症状が発現または観察された後に施され得る。他の実施形態では、疾患の徴候または症状がなくても治療を施すことができる。例えば、症状の発症前に(例えば、症状の病歴に照らして、及び/または病原体への曝露に照らして)感受性のある対象に治療を施してもよい。症状が治まった後も、例えば、再発を遅らせる、及び/または予防するために、治療を続けることもできる。治療は、治療的治療(予防または予防的治療を含まない)であり得る。
【0078】
「予防する」、「予防すること」、または「予防」という用語は、疾患を有していない、または有していなかったが、疾患を発症するリスクがある、または疾患を有していたが疾患を有しておらず、疾患が退行するリスクがある対象の予防的治療を指す。特定の実施形態では、対象は、対象の集団の平均的な健康なメンバーよりも、疾患を発症するリスクが高いか、または疾患が退行するリスクが高い。
【0079】
「状態」、「疾患」、及び「障害」という用語は、交換可能に使用される。
【0080】
化合物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な量を指す。化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、治療される状態、投与方法、及び対象の年齢と健康などの因子に応じて変動し得る。特定の実施形態では、有効量は、治療有効量である。特定の実施形態では、有効量は、予防上有効な量である。特定の実施形態では、有効量は、単回用量における化合物の量である。特定の実施形態では、有効量は、複数回用量における化合物の組み合わせた量である。
【0081】
化合物の「治療有効量」は、状態の治療における治療効果を提供するのに、または状態に関連する1つ以上の兆候及び/または症状を遅らせるか最小限に抑えるのに十分な量である。特定の実施形態では、「治療有効量」は、全体的な療法を改善するか、状態の症状、兆候もしくは病因を軽減もしくは回避するか、及び/または別の治療薬の治療効力を増強する量である。
【0082】
化合物の「予防上有効な量」とは、状態または状態に関連する1つ以上の徴候及び/または症状を予防するのに、またはその再発を防ぐのに十分な量である。特定の実施形態では、予防上有効な量は、全体的な予防法を改善する、及び/または別の予防薬の予防効力を増強する量である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
エステル
一態様では、本開示は、式(I’):
【化13】
のエステル、
または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を提供する。
【0084】
特定の実施形態では、エステルは式:
【化14】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。
【0085】
特定の実施形態では、エステルは、式(I):
【化15】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。
【0086】
特定の実施形態では、エステルは、式(1):
【化16】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。特定の実施形態では、エステルは、式(1)のもの、または、その互変異性体、もしくは同位体標識化合物である。特定の実施形態では、エステルは、式(1)のもの、または、その互変異性体である。
【0087】
特定の実施形態では、エステルは、式(2)または(3):
【化17】
もしくは
【化18】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。特定の実施形態では、エステルは、式(2)もしくは(3)のもの、または、その互変異性体、もしくは同位体標識化合物である。特定の実施形態では、エステルは、式(2)もしくは(3)のもの、または、その互変異性体である。
【0088】
特定の実施形態では、エステルは、式(1e)、(2e)、(3e)、(4)、(4e)、(5)、及び(5e)のいずれか1つ:
【化19】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶である。特定の実施形態では、エステルは、式(1e)、(2e)、(3e)、(4)、(4e)、(5)、及び(5e)のいずれか1つのもの、またはその互変異性体、もしくは同位体標識化合物である。特定の実施形態では、エステルは、式(1e)、(2e)、(3e)、(4)、(4e)、(5)、及び(5e)のいずれか1つのもの、またはその互変異性体である。
【0089】
エステルを生成する方法
別の態様では、本開示は、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を生成する方法を提供し、この方法は、第2の反応混合物を、エステル、互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、または共結晶を生成するのに十分な第2の持続時間にわたってインキュベートすることを含み、この第2の反応混合物は:
(a)式(B’):
【化20】
の無水物、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶(式中、Rは置換または非置換のアルキルである);
(b)式(C’):
【化21】
のアルコール、または、その互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶;
(c)第2の溶媒;
(d)任意選択で第2の塩基;
(e)任意選択でエステル化触媒;
を含む。
【0090】
特定の実施形態では、式(B’)は、式(B):
【化22】
であり;
式(C’)は、式(C):
【化23】
である。
【0091】
特定の実施形態では、式(B’)は、式(B)である。
【0092】
特定の実施形態では、式(B’)は式:
【化24】
のものである。
【0093】
特定の実施形態では、式(C’)は:
【化25】
である。
【0094】
特定の実施形態では、式(C’)は式(C)である。
【0095】
特定の実施形態では、式(B’)の無水物、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体もしくは共結晶は、実質的に単一の異性体(例えば、E/Z及び立体異性体)である。特定の実施形態では、式(B’)の無水物、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶は、異性体の混合物(例えば、E/Z異性体、及び/または立体異性体)であり、異性体の混合物中の最も一般的な異性体(例えば、式(A1’)の酸、またはその互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶に対して完全に保持された異性を有する異性体)のモル濃度は、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、90%~99%、または99%~99.9%(両端を含む)である。
【0096】
特定の実施形態では、第2の反応混合物の(a)の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:0.1~1:0.3、1:0.3~1:0.75、1:0.75~1:1、1:1~1:1.25、1:1.25~1:3、または1:3~1:10(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の(a)の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:0.3~1:3(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の(a)の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:0.75~1:1.25(両端を含む)である。
【0097】
特定の実施形態では、第2の溶媒は、実質的に1つの単一溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、2種以上(例えば、3種)の溶媒(例えば、本段落に記載される溶媒)の混合物である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、有機溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、非プロトン溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、エーテル溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、ケトン溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、アルカン溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、アルコール溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、芳香族有機溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、またはp-キシレン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、非芳香族有機溶媒である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、アセトニトリル、ジオキサン、もしくはテトラヒドロフラン、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、第2の溶媒はアセトニトリルである。特定の実施形態では、第1の溶媒は、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、もしくは2-メチルテトラヒドロフラン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第2の溶媒は、無機溶媒である。特定の実施形態では、約1atmにおける第2の溶媒の沸点は、30~50、50~70、70~100、100~130、130~160、または160~200℃(両端を含む)である。
【0098】
特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、有機塩基である。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、モノ-、ジ-、またはトリ-(非置換C1-6アルキル)アミンである。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、トリ-(非置換C1-6-アルキル)アミンである。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、トリメチルアミン、トリエチルアミン、もしくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、環状非芳香族アミンである。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、芳香族アミン(例えば、ピリジン)である。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、無機塩基である。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合Li2CO3、Na2CO3、もしくはK2CO3、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合LiHCO3、NaHCO3、もしくはKHCO3、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第2の塩基は、存在する場合、アンモニア、炭酸アンモニウム、または水酸化アンモニウムである。
【0099】
特定の実施形態では、第2の塩基が存在する場合、第2の塩基の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:1~2:1、2:1~3:1、3:1~5:1、または5:1~10:1(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の塩基が存在する場合、第2の塩基の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:1~5:1(両端を含む)である。
【0100】
特定の実施形態では、エステル化触媒は、存在する場合、Yamaguchiエステル化触媒である。特定の実施形態では、エステル化触媒は、存在する場合、4-ジメチルアミノピリジン、またはその塩もしくは溶媒和物である。特定の実施形態では、エステル化触媒は、存在する場合、4-(ピロリジン-1-イル)ピリジン、またはその塩もしくは溶媒和物である。特定の実施形態では、エステル化触媒は、存在する場合、ピリジン、またはその塩である。
【0101】
特定の実施形態では、エステル化触媒が存在する場合、エステル化触媒の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、0.01:1~0.03:1、0.03:1~0.1:1、0.1:1~0.3:1、0.3:1~1:1、1:1~2:1、または2:1~5:1(両端を含む)である。特定の実施形態では、エステル化触媒が存在する場合、エステル化触媒の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、0.1:1~2:1(両端を含む)である。特定の実施形態では、エステル化触媒が存在する場合、エステル化触媒の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、0.03:1~1:1(両端を含む)である。
【0102】
特定の実施形態では、第2の反応混合物は、水(例えば、H2O、HDO、もしくはD2O、またはそれらの混合物)を実質的に含まない。特定の実施形態では、第2の反応混合物は、95重量%~97重量%、97重量%~99重量%、99重量%~99.9重量%、または99.9重量%~99.99重量%の水を含まない。
【0103】
特定の実施形態では、第2の反応混合物の温度は、-20~0、0~20、20~40、40~60、60~80、または80~100℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の温度は、0~60℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の温度は、20~60℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の温度は、30~60℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の温度は、第2の持続時間にわたって実質的に一定である。
【0104】
特定の実施形態では、第2の持続期間は、1~10分、10~60分、1~3時間、3~6時間、6~12時間、12~24時間、または1~3日(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の持続時間は、10分~1日(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の持続時間は、20分~3時間(両端を含む)である。
【0105】
特定の実施形態では、第2の反応混合物の(b)のエステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶への転換率は、10%~20%、20%~40%、40%~60%、60%~80%、または80%~99%(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の(b)のエステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶への転換率は、10%~99%(両端を含む)である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の(b)のエステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶への転換率は、40%~70%(両端を含む)である。
【0106】
特定の実施形態では、本方法は、第2の反応混合物とエタノールアミンまたはその塩とを含む第3の反応混合物を、第3の持続時間にわたってインキュベートすることをさらに含む。
【0107】
特定の実施形態では、エタノールアミンまたはその塩の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、0.1:1~1:1、1:1~10:1、10:1~100:1、または100:1~1000:1(両端を含む)である。特定の実施形態では、エタノールアミンまたはその塩の量対第2の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:1~100:1(両端を含む)である。
【0108】
特定の実施形態では、第3の反応混合物の温度は、-20~0、0~20、20~40、40~60、60~80、または80~100℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第3の反応混合物の温度は、0~60℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第3の反応混合物の温度は、20~60℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第3の反応混合物の温度は、30~60℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第3の反応混合物の温度は、第3の持続時間にわたって実質的に一定である。
【0109】
特定の実施形態では、第3の持続期間は、1~10分、10~60分、1~3時間、3~6時間、6~12時間、12~24時間、または1~3日(両端を含む)である。特定の実施形態では、第3の持続時間は、10分~1日(両端を含む)である。特定の実施形態では、第3の持続時間は、10分~1.5時間(両端を含む)である。
【0110】
特定の実施形態では、第3の反応混合物は、水(例えば、H2O、HDO、もしくはD2O、またはそれらの混合物)を実質的に含まない。特定の実施形態では、第3の反応混合物は、95重量%~97重量%、97重量%~99重量%、99重量%~99.9重量%、または99.9重量%~99.99重量%の水を含まない。
【0111】
特定の実施形態では、第3の反応混合物をインキュベートするステップは、第2の反応混合物をインキュベートするステップの直後である。
【0112】
特定の実施形態では、本方法は、エステル、または互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、または共結晶を精製することをさらに含む。特定の実施形態では、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を精製するステップは、液-液相分離、乾燥、濾過、濃縮、クロマトグラフィー、脱色、もしくは再結晶化、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、液-液相分離は、有機液相と水相との分離である。特定の実施形態では、乾燥は、固体乾燥剤(例えば、無水Na2SO4、無水MgSO4、無水CaSO4、無水CaCl2、または活性化モレキュラーシーブ)上で有機液相を乾燥することである。特定の実施形態では、濾過は、液相(例えば、有機液相)と固体乾燥剤またはその水和物との混合物を濾過して、固体乾燥剤またはその水和物を除去することである。特定の実施形態では、濃縮は、揮発性物質(例えば、有機溶媒)の一部または実質的に全部を除去するための液相(例えば、有機液相)の濃縮である。特定の実施形態では、濃縮は、1atmより低い圧力下(例えば、0.001~0.01、0.01~0.1、または0.1~1atm(両端を含む))で行われる。特定の実施形態では、濃縮は、0~10、10~20、20~25、25~35、35~50、または50~80℃(両端を含む)の温度下で行われる。特定の実施形態では、クロマトグラフィーは、フラッシュクロマトグラフィー(例えば、順相フラッシュクロマトグラフィー(例えば、シリカゲル上))である。特定の実施形態では、クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(例えば、逆相HPLCまたは順相HPLC)である。特定の実施形態では、脱色は、有機溶媒に再溶解すること、脱色、及び濃縮を含む。特定の実施形態では、脱色は、固体脱色剤(例えば、活性炭)と接触させることを含む。特定の実施形態では、再結晶は、単一溶媒再結晶である。特定の実施形態では、再結晶は、多溶媒(例えば、二溶媒または三溶媒)再結晶である。特定の実施形態では、再結晶は、熱濾過-再結晶である。特定の実施形態では、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を精製するステップは、圧力を低下させること(例えば、1atm未満(例えば、0.001~0.01atm、0.01~0.1atmまたは0.1~1atm(両端を含む))及び/または温度を上昇させること(例えば、25~35℃、35~50℃、または50~80℃の温度(両端を含む)にまで)によって、揮発性物質(例えば、有機溶媒)の一部または実質的にすべてを除去することをさらに含む。
【0113】
特定の実施形態では、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を精製するステップの直前の反応混合物(例えば、第2または第3の反応混合物)において、反応混合物中に存在し、式:
【化26】
の部分を含むすべての化合物において、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶のモル濃度は、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、90%~99%、または99%~99.9%(両端を含む)である。
【0114】
特定の実施形態では、エステルまたはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を精製するステップの直前の反応混合物(例えば、第2または第3の反応混合物)において、エステルまたはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶は、異性体の混合物(例えば、E/Z異性体、及び/または立体異性体)であり、異性体の混合物における最も一般的な異性体(例えば、式(B’)の無水物、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、式(C’)のアルコール、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶に対して完全に保持された異性を有する異性体)のモル濃度は、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、90%~99%、または99%~99.9%である(両端を含む)。
【0115】
特定の実施形態では、本方法は、第2の反応混合物の(a)を生成するのに十分な第1の持続時間にわたって、第1の反応混合物をインキュベートすることをさらに含み、
第1の反応混合物は:
(a)式(A1’):
【化27】
の酸、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶;
(b)式(A2):
Cl-C(=O)-O-R
(A2)、
のクロロホルマート、または、その同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶;
(c)第1の溶媒;
(d)任意選択で第1の塩基;
を含み、第1の反応混合物をインキュベートするステップが、第2の反応混合物をインキュベートするステップの前である。
【0116】
特定の実施形態では、式(A1’)は式(A1):
【化28】
である。
【0117】
特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)は、式:
【化29】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体もしくは共結晶(例えば、その互変異性体、同位体標識化合物、または塩)である。
【0118】
特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)は、式:
【化30】
もしくは
【化31】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体もしくは共結晶(例えば、その互変異性体、同位体標識化合物、または塩)である。
【0119】
特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)は、式:
【化32】
もしくは
【化33】
のもの、または、その互変異性体、同位体標識化合物、塩、溶媒和物、多形体もしくは共結晶(例えば、その互変異性体、同位体標識化合物、または塩)である。
【0120】
特定の実施形態では、Rは、非置換アルキルである。特定の実施形態では、Rは、非置換C1-6アルキルである。特定の実施形態では、Rは、非置換メチルである。特定の実施形態では、Rは、非置換エチルである。特定の実施形態では、Rは、非置換プロピル(例えば、n-Prまたはi-Pr)である。特定の実施形態では、Rは、非置換ブチル(例えば、n-Bu、sec-Bu、i-Bu、またはt-Bu)である。特定の実施形態では、Rは、非置換エチルまたは非置換イソブチルである。特定の実施形態では、Rは、非置換メチル、非置換n-プロピル、または非置換n-ブチルである。特定の実施形態では、Rは、置換アルキル(例えば、1つ以上のハロゲン(例えば、F)で置換されたアルキル)である。特定の実施形態では、Rは、置換C1-6アルキルである。特定の実施形態では、Rは、置換メチル(例えば、フッ素化メチルまたはBn)である。特定の実施形態では、Rは-CF3である。特定の実施形態では、Rは、置換エチル、置換プロピル、または置換ブチルである。
【0121】
特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)の量対第1の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:0.3~1:0.5、1:0.5~1:0.67、1:0.67~1:1、1:1~1:1.2、1:1.2~1:2、1:2~1:3(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)の量対第1の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:1~1:1.2(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)の量対第1の反応混合物の(b)の量のモル比は、1:0.67~1:1(両端を含む)である。
【0122】
特定の実施形態では、第1の溶媒は、実質的に1つの単一溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、2種以上(例えば、3種)の溶媒(例えば、本段落に記載される溶媒)の混合物である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、有機溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、非プロトン溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、エーテル溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、ケトン溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、アルカン溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、アルコール溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、芳香族有機溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、またはp-キシレン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、非芳香族有機溶媒である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、もしくはジオキサン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第1の溶媒はテトラヒドロフランである。特定の実施形態では、第1の溶媒は、メチル、tert-ブチルエーテル、もしくは2-メチルテトラヒドロフラン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、ジエチルエーテル、もしくは酢酸エチル、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第1の溶媒は、無機溶媒である。特定の実施形態では、約1atmにおける第1の溶媒の沸点は、30~50、50~70、70~100、100~130、130~160、または160~200℃(両端を含む)である。
【0123】
特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、有機塩基である。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、モノ-、ジ-、またはトリ-(非置換C1-6-アルキル)アミンである。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、トリ-(非置換C1-6-アルキル)アミンである。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、トリメチルアミン、トリエチルアミン、もしくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、環状非芳香族アミンである。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、芳香族アミン(例えば、ピリジン)である。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、またはピリジンである。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、無機塩基である。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、Li2CO3、Na2CO3、もしくはK2CO3、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、LiHCO3、NaHCO3、もしくはKHCO3、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、第1の塩基は、存在する場合、アンモニア、炭酸アンモニウム、または水酸化アンモニウムである。
【0124】
特定の実施形態では、第1の塩基が存在する場合、第1の塩基の量対第1の反応混合物の(a)の量のモル比は、1:1~2:1、2:1~3:1、3:1~5:1、または5:1~10:1(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の塩基が存在する場合、第1の塩基の量対第1の反応混合物の(a)の量のモル比は、1:1~5:1(両端を含む)である。
【0125】
特定の実施形態では、第1の反応混合物の温度は、-40~-20、-20~0、0~20、20~40、または40~60(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の温度は、-20~40℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の温度は、-20~20℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の温度は、0~5℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の温度は、第1の持続時間にわたって実質的に一定である。
【0126】
特定の実施形態では、第1の持続期間は、1~10分、10~60分、1~3時間、3~6時間、6~12時間、12~24時間、または1~3日(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の持続時間は、10分~1日(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の持続時間は、20分~3時間(両端を含む)である。
【0127】
特定の実施形態では、第1の反応混合物は、水(例えば、H2O、HDO、もしくはD2O、またはそれらの混合物)を実質的に含まない。特定の実施形態では、第1の反応混合物は、95重量%~97重量%、97重量%~99重量%、99重量%~99.9重量%、または99.9重量%~99.99重量%の水を含まない。
【0128】
特定の実施形態では、第1、第2、及び第3の反応混合物の圧力は約1atmである。
【0129】
特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)から第2の反応混合物の(a)への転換率は、10%~20%、20%~40%、40%~60%、60%~80%、または80%~99.9%(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)から第2の反応混合物の(a)への転換率は、10%~99.9%(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)から第2の反応混合物の(a)への転換率は、50%~99.9%(両端を含む)である。特定の実施形態では、第1の反応混合物の(a)から第2の反応混合物の(a)への転換率は、90%~99.9%(両端を含む)である。
【0130】
特定の実施形態では、方法は第2の反応混合物の(a)を精製することをさらに含み、第2の反応混合物の(a)を精製するステップが、第2の反応混合物をインキュベートするステップの前である。特定の実施形態では、第2の反応混合物の(a)を精製するステップは、
第1の反応混合物を非極性有機溶媒と混合することと、
続いて、濾過と
続いて任意選択で濃縮と、
を含む。
【0131】
特定の実施形態では、非極性有機溶媒は、実質的に1つの単一溶媒である。特定の実施形態では、非極性有機溶媒は、2種以上(例えば、3種)の溶媒(例えば、本段落に記載される溶媒)の混合物である。特定の実施形態では、非極性有機溶媒は、アルカン溶媒である。特定の実施形態では、非極性有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、もしくは石油エーテル、またはそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、非極性有機溶媒は、芳香族非極性有機溶媒である。特定の実施形態では、非極性有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、またはp-キシレン、またはそれらの混合物である。特定の実施形態では、約1atmにおける非極性有機溶媒の沸点は、30~50、50~70、70~100、100~130、130~160、または160~200℃(両端を含む)である。特定の実施形態では、濾過は、固相(例えば、第1の塩基の塩、例えば、第1の塩基のHCl塩)を除去するための液相と固相との混合物の濾過である。特定の実施形態では、濃縮は、揮発性物質(例えば、有機溶媒)の一部または実質的に全部を除去するための液相(例えば、有機液相)の濃縮である。特定の実施形態では、濃縮は、1atmより低い圧力下(例えば、0.001~0.01、0.01~0.1、または0.1~1atm(両端を含む))で行われる。特定の実施形態では、濃縮は、0~10、10~20、20~25、25~35、35~50、または50~80℃(両端を含む)の温度下で行われる。特定の実施形態では、本方法は、第2の反応混合物をインキュベートするステップの前に、第2の反応混合物の(a)を精製することをさらに含まない。
【0132】
組成物及びキット
別の態様では、本開示は、
エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶と;
任意選択で賦形剤と、を含む組成物を提供する。
【0133】
特定の実施形態では、賦形剤は、存在する場合、化粧品として許容される賦形剤である。特定の実施形態では、組成物は化粧組成物である。特定の実施形態では、賦形剤は、存在する場合、薬学的に許容される賦形剤である。特定の実施形態では、組成物は医薬組成物である。
【0134】
特定の実施形態では、組成物は、追加の薬剤(例えば、追加の化粧剤、もしくは追加の医薬剤、またはそれらの組み合わせ)をさらに含む。追加の薬剤は、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、または共結晶とは異なる。
【0135】
特定の実施形態では、組成物は、対象への局所(例えば、粉末、軟膏、クリーム、及び/またはドロップによる)投与に適している。特定の実施形態では、組成物は、対象への経口投与に好適である。特定の実施形態では、組成物は、対象への経腸(例えば、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、粘膜、経鼻、頬側、または舌下の投与;気管内点滴、気管支点滴、及び/または吸入による対象への投与;及び/または経口スプレー(oral spray)、鼻スプレー(nasal spray)、及び/またはエアロゾルとしての対象への投与に適している。
【0136】
特定の実施形態では、対象は哺乳動物である。特定の実施形態では、対象はヒトである。特定の実施形態では、対象は2歳以上のヒトである。特定の実施形態では、対象は18歳以上のヒトである。
【0137】
別の態様では、本開示は、本方法によって生成される、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶を含む組成物を提供する。
【0138】
本明細書に記載の組成物は、薬理学の分野で知られている任意の方法によって調製することができる。一般に、そのような調製方法には、本明細書に記載の化合物(すなわち、「活性成分」)を担体または賦形剤、及び/または1つ以上の他の副成分と会合させ、次いで、必要に応じて、及び/または望ましい場合、製品を所望の単回用量単位または複数回用量単位に成形及び/または包装することが含まれる。
【0139】
組成物は、単回単位用量として、及び/または複数の単回単位用量として、大量に調製、包装、及び/または販売することができる。「単位用量」は、所定量の活性成分を含む組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量及び/またはそのような投与量の半分もしくは3分の1などのそのような投与量の便利な画分に等しい。
【0140】
本明細書に記載の組成物における活性成分、賦形剤、及び/または任意のさらなる成分の相対量は、治療される対象の同一性、サイズ、及び/または状態に応じて、ならびにさらに、組成物が投与される経路に応じて変動する。組成物は、0.1%~100%(w/w)の活性成分を含み得る。
【0141】
提供される組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤としては、不活性希釈剤、分散剤、及び/または造粒剤、界面活性剤及び/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、及び/または油が挙げられる。ココアバター及び座薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び芳香剤などの賦形剤も組成物中に存在し得る。
【0142】
例示的な希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0143】
例示的な造粒剤及び/または分散剤としては、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘パルプ、寒天、ベントナイト、セルロース及び木材製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(グリコール酸デンプンナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、第4級アンモニウム化合物、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0144】
例示的な界面活性剤及び/または乳化剤としては、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂肪、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト(ケイ酸アルミニウム)及びVeegum(ケイ酸アルミニウムマグネシウム))、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、及びモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、カルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween(登録商標)60)、ポリオキシエチレンモノオレイン酸ソルビタン(Tween(登録商標)80)、モノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)65)、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)80)、ポリオキシエチレンエステル(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(Myrj(登録商標)45)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、及びSolutol(登録商標))、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij(登録商標)30))、ポリ(ビニルピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic(登録商標)F-68、ポロキサマーP-188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウム、及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0145】
例示的な結合剤としては、デンプン(例えば、コーンスターチ及びデンプンペースト)、ゼラチン、糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然及び合成ゴム(例えば、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュコケの抽出物、パンワールガム、ガッティガム、イサポール殻の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム(Veegum(登録商標))、カラマツアラボガラクタン)、アルギン酸塩、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ワックス、水、アルコール、及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0146】
例示的な防腐剤としては、抗酸化剤、キレート剤、抗菌防腐剤、抗真菌防腐剤、抗原虫防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、及び他の防腐剤が挙げられる。特定の実施形態では、防腐剤は、抗酸化剤である。他の実施形態では、防腐剤は、キレート剤である。
【0147】
例示的な抗酸化剤としては、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0148】
例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩及び水和物(例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸二カリウムなど)、クエン酸及びその塩及び水和物(例えば、クエン酸一水和物)、フマル酸及びその塩及び水和物、リンゴ酸及びその塩及び水和物、リン酸及びその塩及び水和物、ならびに酒石酸及びその塩及び水和物が挙げられる。例示的な抗菌性防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及びチメロサールが挙げられる。
【0149】
例示的な抗真菌防腐剤としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及びソルビン酸が挙げられる。
【0150】
例示的なアルコール防腐剤としては、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、安息香酸ヒドロキシ、及びフェニルエチルアルコールが挙げられる。
【0151】
例示的な酸性防腐剤としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及びフィチン酸が挙げられる。
【0152】
他の防腐剤としては、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant(登録商標)Plus、Phenonip(登録商標)、メチルパラベン、Germall(登録商標)115、Germaben(登録商標)II、Neolone(登録商標)、Kathon(登録商標)、及びEuxyl(登録商標)が挙げられる。
【0153】
例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0154】
例示的な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0155】
例示的な天然油としては、アーモンド、アプリコットカーネル、アボカド、ババス、ベルガモット、ブラックカレントシード、ルリヂサ、ケイド、カモミール、キャノーラ、キャラウェイ、カルナウバ、ヒマシ、シナモン、ココアバター、ココナッツ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ヒョウタン、グレープシード、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツェアクベバ、マカデミアナッツ、ゼニアオイ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パームカーネル、ピーチカーネル、ピーナッツ、ケシの実、パンプキンシード、ナタネ、米ぬか、ローズマリー、ベニバナ、サンダルウッド、サスカナ、サボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、大豆、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、及び小麦胚芽油が挙げられる。例示的な合成油としては、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、ジエチルセバケート、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーンオイル、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0156】
経口及び非経口の投与用の液体剤形としては、薬学的に許容される乳濁液、微乳濁液、溶剤、懸濁液、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、及びそれらの混合物などの可溶化剤及び乳化剤など、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含んでもよい。不活性希釈剤以外に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、及び香料などのアジュバントを含むことができる。非経口投与のための特定の実施形態では、本明細書に記載のコンジュゲートは、Cremophor(登録商標)、アルコール、油、改質油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及びそれらの混合物などの可溶化剤と混合される。
【0157】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用の水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤、及び懸濁剤を使用して、公知の技術に従って製剤化することができる。無菌の滅菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、無菌の注射用溶液、懸濁剤、または乳剤であり得る。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンガー液、U.S.P.、及び等張生理食塩液である。加えて、滅菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として慣習的に使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発性油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注射剤の調製に使用される。
【0158】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通しての濾過により、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散できる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌することができる。
【0159】
薬物の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶性またはアモルファス材料の液体懸濁液を使用することで実現できる。したがって、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、結果として、結晶サイズと結晶形に依存し得る。代替的に、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することにより達成され得る。
【0160】
直腸投与用または膣投与用の組成物は、典型的には、本明細書に記載のコンジュゲートを、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸または膣腔で溶解して有効成分を放出するカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することによって調製できる坐薬である。
【0161】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤が挙げられる。そのような固形形態において、活性化合物は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、及び/または(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸などの充填剤または増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシアゴムなどの結合剤、(c)グリセロールなどの湿潤剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(e)パラフィンなどの溶解遅延剤、(f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(h)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、ならびに(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの滑沢剤と混合される。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含んでもよい。
【0162】
類似した型の固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量のポリエチレングリコール、及び同様物の賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられ得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、及び顆粒剤の固形投薬形態は、薬理学の技術分野において既知の腸溶コーティング及び他のコーティングなどのコーティング及びシェルで調製することができる。それらは、任意選択で乳白剤を含んでもよく、腸管の特定の部分でのみ、または優先的に、任意選択で遅延様式で活性成分(複数可)を放出する組成物であってもよい。使用され得る埋封組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。類似した型の固形組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量のポリエチレングリコール、及び同様物の賦形剤を使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられ得る。
【0163】
活性化合物はまた、上記の1つ以上の賦形剤を有するマイクロ-カプセル化形態であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、及び顆粒剤の固形剤形は、薬学的製剤分野で周知の腸溶コーティング、放出制御コーティング、及び他のコーティングなどのコーティング及びシェルで調製され得る。そのような固体剤形では、活性成分は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1つの不活性な希釈剤と混和され得る。常法に従って、そのような剤形は不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウム及びマイクロ結晶性セルロースなどの錠剤化滑沢剤及び他の錠剤化補助剤を含み得る。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。それらは、任意選択で乳白剤を含んでもよく、腸管の特定の部分でのみ、または優先的に、任意選択で遅延様式で活性成分(複数可)を放出する組成物であってもよい。使用され得るカプセル化剤の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0164】
本明細書に記載の化合物の局所投与及び/または経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、及び/またはパッチが挙げられ得る。一般に、活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体もしくは賦形剤及び/または必要に応じて必要な防腐剤及び/または緩衝液と混和される。さらに、本開示は、経皮パッチの使用を企図しており、これは、身体への活性成分の制御された送達を提供するという追加の利点をしばしば有する。そのような剤形は、例えば、適切な媒体中に有効成分を溶解することによって、及び/または分配することによって、調製することができる。代替的または追加的に、速度制御膜を提供することにより、及び/または活性成分をポリマーマトリックス及び/またはゲルに分散させることにより、速度を制御することができる。
【0165】
本明細書に記載される真皮内組成物の送達において使用するための好適なデバイスとしては、短針デバイスが挙げられる。真皮内組成物は、針の皮膚への効果的な貫通長さを限定するデバイスにより投与され得る。代替的または追加的に、従来の注射器を皮内投与の古典的なマントー法で使用してもよい。液体ジェット注射器及び/または角質層を突き刺して真皮に到達するジェットを生成する針を介して真皮に液体製剤を送達するジェット注射デバイスが適切である。圧縮ガスを使用して粉末形態の化合物を皮膚の外層から真皮まで加速する弾道粉末/粒子送達デバイスが適切である。
【0166】
局所投与に適した製剤としては、リニメント、ローション、クリーム、軟膏及び/またはペーストなどの水中油及び/または油中水エマルジョン、及び/または溶液及び/または懸濁液などの液体及び/または半液体製剤が挙げられる。局所投与可能な製剤は、例えば、約1%~約10%(w/w)の活性成分を含んでもよいが、活性成分の濃度は、溶媒中の活性成分の溶解限度と同じくらい高くてもよい。局所投与用の製剤は、本明細書に記載の1つ以上の追加の成分をさらに含んでもよい。
【0167】
本明細書に記載の組成物は、口腔を介した肺投与に適した製剤で調製、包装、及び/または販売することができる。そのような製剤は、活性成分を含み、約0.5~約7ナノメートル、または約1~約6ナノメートルの範囲の直径を有する乾燥粒子を含むことができる。そのような組成物は、好都合には、噴射剤の流れが粉末を分散するように向けられ得る乾燥粉末リザーバーを含むデバイスを使用するか、及び/または密封容器内の低沸点噴射剤に溶解及び/または懸濁した活性成分を含むデバイスなどの自己推進溶媒/粉末分配容器を使用する投与用の乾燥粉末の形態である。そのような粉末は、重量で少なくとも98%の粒子が0.5ナノメートルを超える直径を有し、数で少なくとも95%の粒子が7ナノメートル未満の直径を有する粒子を含む。代替的に、重量で少なくとも95%の粒子が1ナノメートルを超える直径を有し、数で少なくとも90%の粒子が6ナノメートル未満の直径を有する。乾燥粉末組成物には、砂糖などの固体微粉末希釈剤を含むことができ、単位用量形態で好都合に提供される。
【0168】
低沸点噴射剤としては、一般に、大気圧で沸点が65°F未満の液体噴射剤が挙げられる。一般に、推進剤は組成物の50~99.9%(w/w)を構成してもよく、活性成分は組成物の0.1~20%(w/w)を構成してもよい。噴射剤は、液体非イオン性及び/または固体陰イオン性界面活性剤及び/または固体希釈剤(活性成分を含む粒子と同程度の粒径を有し得る)などの追加成分をさらに含み得る。
【0169】
肺送達用に製剤化された本明細書に記載の組成物は、溶液及び/または懸濁液の液滴の形態で活性成分を提供し得る。そのような製剤は、活性成分を含む、任意選択で滅菌された水性及び/または希釈アルコール溶液及び/または懸濁液として調製、包装、及び/または販売され得、任意の噴霧及び/または噴霧デバイスを使用して好都合に投与され得る。そのような製剤は、サッカリンナトリウムなどの香味剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、及び/またはメチルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含む1つ以上の追加成分をさらに含んでもよい。この投与経路により提供される液滴は、約0.1~約200ナノメートルの範囲の平均直径を有し得る。
【0170】
本明細書で肺送達に有用であると記載されている製剤は、本明細書に記載の組成物の鼻腔内送達に有用である。鼻腔内投与に適した別の製剤は、活性成分を含み、約0.2~500マイクロメートルの平均粒子を有する粗い粉末である。そのような製剤は、鼻孔の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を介して急速に吸入することによって投与される。
【0171】
経鼻投与用の製剤は、例えば、約0.1%(w/w)という少量から約100%(w/w)という多量までの有効成分を含んでもよく、本明細書に記載の1つ以上の追加成分を含んでもよい。本明細書に記載の組成物は、頬側投与用の製剤で調製、包装、及び/または販売することができる。そのような製剤は、例えば、従来の方法を使用して作られた錠剤及び/またはロゼンジの形態であり得、例えば、0.1~20%(w/w)の活性成分を含み得、残りは経口溶解性及び/または分解性組成物、及び任意選択で、本明細書に記載の1つ以上の追加成分を含む。代替的に、口腔投与用の製剤は、活性成分を含む粉末及び/またはエアロゾル化及び/または噴霧化された溶液及び/または懸濁液を含み得る。そのような粉末、エアロゾル化、及び/またはエアロゾル化された製剤は、分散されるとき、約0.1~約200ナノメートルの範囲の平均粒子及び/または液滴サイズを有し、さらに本明細書に記載の1つ以上の追加成分を含んでもよい。
【0172】
本明細書に記載の組成物は、点眼用の製剤で調製、包装、及び/または販売することができる。そのような製剤は、例えば、水性または油性の液体の担体または賦形剤中の活性成分の0.1~1.0%(w/w)溶液及び/または懸濁液を含む点眼薬の形態であってもよい。そのような液滴は、緩衝剤、塩、及び/または本明細書に記載の他の追加の成分のうちの1つ以上をさらに含み得る。有用な他の眼科的に投与可能な製剤には、微結晶形態及び/またはリポソーム製剤中の活性成分を含むものが含まれる。点耳薬及び/または点眼薬はまた、本開示の範囲内であると考えられる。
【0173】
本明細書で提供される組成物の説明は、主にヒトへの投与に適した組成物を対象としているが、そのような組成物は一般にあらゆる種類の動物への投与に適していることが当業者には理解されるであろう。さまざまな動物への投与に適した組成物にするための、ヒトへの投与に適した組成物の改変はよく理解されており、当業者の獣医薬理学者は通常の実験でそのような変更を、設計及び/または実施することができる。
【0174】
本明細書で提供される化合物は、典型的には、投与の容易性及び投与量の均一性のために、単位剤形で製剤化される。しかしながら、本明細書に記載の組成物の毎日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で医師によって決定されることが理解されるであろう。任意の特定の対象または生物についての具体的な治療有効量レベルは、治療される疾患、障害の重症度、使用される活性成分の活性、使用される特定の組成物、対象の年齢、体重、全身状態、性別、及び食事、使用される特定の活性成分の投与の時間、投与経路、及び排出率、治療期間、使用される特定の活性成分と併用してまたは同時に使用される薬物を含めたさまざまな因子、ならびに医学分野で周知の同様の因子に依存するであろう。
【0175】
本明細書で提供される化合物及び組成物は、以下を含む任意の経路によって投与することができる:経腸(例えば、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、皮下、脳室内、経皮、皮間、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、及び/または点滴として)、粘膜、鼻、頬、舌下;気管内注入、気管支注入、及び/または吸入;及び/または経口スプレー、鼻スプレーとして、及び/またはエアロゾル。具体的に考えられる経路は、経口投与、静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)、血液による局所投与及び/またはリンパ供給、及び/または影響を受ける部位への直接投与である。一般に、最も適切な投与経路は、薬剤の性質(例えば、胃腸管の環境におけるその安定性)、及び/または対象の状態(例えば、対象が経口投与に耐えられるかどうか)を含むさまざまな因子に依存するであろう。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物または組成物は、対象の眼への局所投与に適している。
【0176】
有効量を達成するために必要な化合物の正確な量は、例えば、対象の種、年齢、及び全体的な状態、副作用または障害の重症度、特定の化合物の同一性、投与方法などに応じて、対象ごとに異なるであろう。有効量は、単回投与(例えば、単回経口投与)または複数回投与(例えば、複数回経口投与)に含めることができる。特定の実施形態では、複数回用量が対象に投与されるか、または組織もしくは細胞に適用される場合、複数回用量のうちの任意の2つの用量は、異なる量または実質的に同じ量の本明細書に記載の化合物を含む。特定の実施形態では、複数回用量が対象に投与されるか、または組織もしくは細胞に適用される場合、複数用量を対象に投与するか、または複数用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は、は、1日に3回投与、1日に2回投与、1日に1回投与、1日おきに1回投与、3日おきに1回投与、1週間に1回投与、2週間に1回投与、3週間に1回投与、または4週間に1回投与である。特定の実施形態では、複数回用量を対象に投与する頻度、または複数回用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日に1回投与である。特定の実施形態では、複数回用量を対象に投与する頻度、または複数回用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日に2回投与である。特定の実施形態では、複数回用量を対象に投与する頻度、または複数回用量を組織もしくは細胞に適用する頻度は、1日に3回投与である。特定の実施形態では、複数回用量が対象に投与されるか、または組織もしくは細胞に適用される場合、複数回用量の最初の投与と最後の投与との間の期間は、1日間、2日間、4日間、1週間、2週間、3週間、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、6か月間、9か月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、7年間、10年間、15年間、20年間、または対象、組織、もしくは細胞の生涯の間である。特定の実施形態では、複数回投与の最初の投与と最後の投与との間の期間は、3か月間、6か月間、または1年間である。特定の実施形態では、複数回投与の最初の投与と最後の投与との間の期間は、対象、組織、または細胞の生涯の間である。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量(例えば、単回用量、または複数回用量のうちの任意の用量)としては、独立して、本明細書に記載の化合物の、両端を含む、0.1μg~1μg、0.001mg~0.01mg、0.01mg~0.1mg、0.1mg~1mg、1mg~3mg、3mg~10mg、10mg~30mg、30mg~100mg、100mg~300mg、300mg~1,000mg、または1g~10gが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量としては、独立して、本明細書に記載の化合物の、両端を含む、1mg~3mgが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量としては、独立して、本明細書に記載の化合物の、両端を含む、3mg~10mgが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量としては、独立して、本明細書に記載の化合物の、両端を含む、10mg~30mgが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量としては、独立して、本明細書に記載の化合物の、両端を含む、30mg~100mgが挙げられる。
【0177】
本明細書に記載の用量範囲は、提供される組成物を成人に投与するための指針を提供する。例えば、小児または青年に投与される量は、医師または当業者によって決定され得、成人に投与される量よりも低いかまたは同じであり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の用量は、体重が70kgである成体ヒトに対する用量である。
【0178】
本明細書に記載の化合物または組成物は、1つ以上の追加の医薬品(例えば、治療的に、及び/または予防的に活性な薬剤)と組み合わせて投与することができる。化合物または組成物は、それらの活性(例えば、治療を必要とする対象における疾患の治療において、予防を必要とする対象における疾患の予防において、リスクの低減を必要とする対象における疾患の発症のリスクの低減において、及び/または対象または細胞におけるプロテインキナーゼの活性の阻害において、活性(例えば、効力及び/または有効性))を改善し、バイオアベイラビリティを改善し、安全性を改善し、薬物耐性を低下させ、代謝を低下させ、及び/または代謝を調節し、排泄を阻害し、及び/または対象または細胞における分布を改変する、追加の医薬品と組み合わせて投与することができる。使用される治療法が、同じ障害に対して所望の効果を達成し得ること、及び/またはそれは異なる効果を達成し得ることも理解されるであろう。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物と追加の医薬品とを含む本明細書に記載の組成物は、化合物と追加の医薬品とのうちの1つを含むが両方ともを含むのではない、組成物には存在しない相乗効果を示す。
【0179】
化合物または組成物は、化合物または組成物とは異なり、例えば併用療法として有用であり得る1つ以上の追加の医薬品と同時に、その前に、またはそれに続いて投与することができる。医薬品としては、治療活性剤が挙げられる。医薬品としてはまた、予防活性剤も挙げられる。医薬品としては、小さな有機分子、例えば、薬物化合物(例えば、連邦規則集(CFR)で提供されるように米国食品医薬品局によってヒトまたは動物への使用が承認された化合物)、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖類、オリゴ糖、多糖、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチドまたはタンパク質、タンパク質に結合した小分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、ビタミン、及び細胞が挙げられる。特定の実施形態では、追加の医薬品は、疾患(例えば、増殖性疾患、血液疾患、神経疾患、疼痛状態、精神障害、または代謝障害)を治療及び/または予防するのに有用な医薬品である。それぞれの追加の医薬品はその医薬品について決定された用量及び/またはタイムスケジュールで投与されてもよい。追加の医薬品は、互いに、及び/または本明細書に記載の化合物もしくは組成物とともに、単回用量で一緒に投与され得るか、または異なる用量で別々に投与され得る。あるレジメンで使用する特定の組み合わせは、本明細書に記載の化合物と追加の医薬品(複数可)との適合性、及び/または達成されるべき所望の治療効果及び/または予防効果を考慮に入れるであろう。一般に、組み合わせにおける追加の医薬品(複数可)は、それらが個々に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが期待される。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、個別に利用されるレベルよりも低いであろう。
【0180】
追加の医薬品としては、抗増殖剤、抗がん剤、細胞傷害剤、抗血管新生剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、心血管作動薬、コレステロール低下剤、抗糖尿病剤、抗アレルギー剤、避妊剤、及び疼痛緩和剤が挙げられる。特定の実施形態では、追加の医薬品は抗増殖剤である。特定の実施形態では、追加の医薬品は抗がん剤である。特定の実施形態では、追加の医薬品は抗ウイルス剤である。特定の実施形態では、追加の医薬品はプロテインキナーゼの結合剤または阻害剤である。特定の実施形態では、追加の医薬品は、エピジェネティック調節因子または転写の調節因子(例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDAC阻害剤)、リジンメチルトランスフェラーゼ阻害剤)、抗有糸分裂薬(例えば、タキサン及びビンカアルカロイド)、ホルモン受容体調節因子(例えば、エストロゲン受容体調節因子及びアンドロゲン受容体調節因子)、細胞シグナル伝達経路阻害剤(例えば、チロシンプロテインキナーゼ阻害剤)、タンパク質安定性の調節因子(例えば、プロテアソーム阻害剤)、Hsp90阻害剤、グルココルチコイド、全トランス型レチノイン酸、及び分化を促進するその他の薬剤からなる群から選択される。特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、手術、放射線療法、移植(例えば、幹細胞移植、骨髄移植)、免疫療法、及び化学療法を含む抗がん療法と組み合わせて投与することができる。
【0181】
別の態様では、本開示は、
エステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物と;
任意選択で、エステル、互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、共結晶、または組成物を使用するための使用説明書と、
を含む、キットを提供する。
【0182】
特定の実施形態では、キットは、第1の容器を含み、第1の容器は、エステル、またはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を含む。いくつかの実施形態では、このキットは、第2の容器をさらに含む。特定の実施形態では、第2の容器は、使用説明書を含む。特定の実施形態では、使用説明書は、米国食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品局(EMA)などの規制機関によって要求される情報を含む。特定の実施形態では、使用説明書は、処方情報を含む。特定の実施形態では、第2の容器は、第1の容器を含む。いくつかの実施形態では、このキットは、第3の容器をさらに含む。特定の実施形態では、第3の容器は、賦形剤を含む。特定の実施形態では、第3の容器は、追加の薬剤を含む。特定の実施形態では、第2の容器は、第3の容器を含む。特定の実施形態では、第1、第2、及び第3の容器のそれぞれは、独立して、バイアル、アンプル、ボトル、注射器、ディスペンサパッケージ、管、または箱である。
【0183】
使用方法
別の態様では、本開示は、治療を必要とする対象における皮膚疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、有効量は、治療有効量である。
【0184】
別の態様では、本開示は、予防を必要とする対象における皮膚疾患を予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、有効量は、予防上有効な量である。
【0185】
特定の実施形態では、皮膚疾患は、棘融解、座瘡、急性熱性好中球性皮膚病、脱毛症、無汗症、萎縮性皮膚疾患、自己免疫性皮膚疾患、ベーレ-スティーブンソン脳回状頭皮症候群、ベーチェット病、水疱、体臭、CEDNIK症候群、カフェオレ斑、凍瘡、無汗症を伴う先天性感覚神経障害、皮膚浮腫、皮膚線維症、皮膚瘻、皮膚リーシュマニア症、皮膚肥満細胞症、ふけ、褥瘡、皮膚弾力線維症、皮膚炎、皮膚筋炎、乾燥皮膚、外胚葉異形成症、エーラース・ダンロス症候群、紅斑、魚類リンパシスチス症、遺伝性皮膚症、グレイブス皮膚症、原田症候群、蹄病、多汗症、魚鱗癬、色素失調症、黄疸、ケロイド、角化症、黒子、苔癬様皮膚病症、エリテマトーデス、疣状狼瘡、MEDNIK症候群、乳腺疾患、線状皮膚欠損を伴う小眼球症、汗疹、粘液症、爪疾患、リポイド類壊死症、腎性全身性線維症、神経皮膚症候群、神経症性擦創、好中球性皮膚症、母斑、職業性皮膚疾患、PAPA症候群、皮膚骨膜肥厚症、脂肪織炎、類乾癬、受動皮膚アナフィラキシー、光線過敏症、粃糠疹、そう痒症、オウム類嘴羽毛病、膿疱性皮膚疾患、亀裂、酒さ、スケールドロップ病、頭皮疾患、傷跡、成人性強皮症、新生児性強皮症、強皮症、脂漏症、重度の皮膚炎、多発性アレルギー及び代謝消耗症候群、皮膚の老化、皮膚付属器疾患、皮膚の色素脱失、皮膚の落屑、皮膚の色素沈着過剰、皮膚の過形成、皮膚の過剰増殖性疾患、皮膚の色素沈着低下、皮膚感染症、皮膚損傷、皮膚刺激、皮膚病変、皮膚壊死、皮膚新生物、皮膚発疹、皮膚線条、皮膚潰瘍、ステロイド誘発性萎縮、汗腺疾患、中毒性表皮壊死症、ウアシンギシュー病、潰瘍、蕁麻疹、黄色腫症、または色素性乾皮症である。特定の実施形態では、皮膚疾患は座瘡である。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、自己免疫性皮膚疾患である。特定の実施形態では、自己免疫性皮膚疾患は乾癬である。特定の実施形態では、皮膚疾患は角化症である。特定の実施形態では、角化症はいぼである。特定の実施形態では、皮膚疾患は、皮膚弾力線維症、乾燥皮膚、脂漏性、酒さ、または黒子である。
【0186】
別の態様では、本開示は、対象の皮膚の老化を遅延させるか、または皮膚の外観を改善する方法であって、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態では、有効量は、化粧上有効な量である。特定の実施形態では、有効量は、皮膚における皺、黒子、もしくはいぼまたは皮膚タグを低減するのに有効である。
【0187】
別の態様では、本開示は、対象、生体試料、組織、または細胞におけるレチノイド受容体を調節する方法であって、有効量のエステル、もしくはその互変異性体、同位体標識化合物、溶媒和物、多形体、もしくは共結晶、または組成物を対象に投与するか、または生体試料、組織、もしくは細胞と接触させることを含む方法を提供する。特定の実施形態では、レチノイド受容体は、レチノイン酸受容体(例えば、レチノイン酸受容体α、レチノイン酸受容体β、レチノイン酸受容体γ)である。特定の実施形態では、レチノイド受容体は、レチノイン酸受容体関連オーファン受容体である。特定の実施形態では、レチノイド受容体はレチノイドX受容体である。特定の実施形態では、有効量は、対象、生体試料、組織、または細胞におけるレチノイド受容体を活性化するのに有効である。特定の実施形態では、有効量は、対象、生体試料、組織、または細胞におけるレチノイド受容体を阻害するのに有効である。
【0188】
特定の実施形態では、投与は局所投与である。特定の実施形態では、投与は経口投与である。特定の実施形態では、投与は、経腸(例えば、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、粘膜、経鼻、頬側、または舌下の投与;気管内点滴、気管支点滴、及び/または吸入による投与;及び/または経口スプレー、鼻スプレー、及び/またはエアロゾルとしての投与である。
【0189】
特定の実施形態では、生体試料、組織、または細胞は、インビトロである。特定の実施形態では、生体試料、組織、または細胞はインビボであり、生体試料、組織、または細胞はエクスビボである。
【実施例】
【0190】
本明細書に記載の発明をより完全に理解できるように、以下の実施例が記載される。実施例は、本明細書に記載の方法及び使用を例示するために提供され、それらの範囲を限定するものとして、決して解釈されるべきではない。
【0191】
実施例1.式(1)のエステルの合成
レチノイン酸(100mg、0.33mmol)を無水テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した。トリエチルアミン(37mg、0.37mmol)を加え、混合物を5分間撹拌した。テトラヒドロフラン(1ml)中のクロロギ酸イソブチル(50mg、0.37mmol)の溶液を0℃で滴下した。混合物を室温に加温するようにし、1時間撹拌した。ペンタン(10ml)を加え、トリエチルアミン塩酸塩を濾過により回収した。濾液を減圧下で蒸発させた。
【0192】
黄色の残渣を無水アセトニトリル(10ml)に溶解し、バクチオール(50mg、0.20mmol)を加えた。混合物を5分間撹拌した後、トリエチルアミン(37mg、0.37mmol)及び4-ジメチルアミノピリジン(10mg)を加えた。混合物を50℃に加温し、1時間撹拌した。ほとんどの溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチル(20ml)と混合した。酢酸エチル層をブライン(20ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下で蒸発させて粗生成物を得た。粗生成物を、ヘキサン/酢酸エチルを用いるシリカゲルカラムにより精製して、42mgの淡黄色の油状生成物を得た。(分子式:C38H50O2. 精密質量:538.38;m/z: 539.39 (M+1)+, 561.37 (M + Na)+. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ: 1.00 (S, 6 H), 1.17 (s, 3H), 1.42-1.47 (m,4 H),1.53 (s, 3H), 1.53-1.59 (m, 2H), 1.61 (s, 3H),1.67 (s,3H), 1.87-1.93 (m,2H), 1.99 (t, 2H), 2.00 (s,3H), 2.34 (s,3H), 5.00 (d,1H), 5.04 (d,1H), 5.10 (t,1H), 5.90 (dd,1H), 6.07(s,1H), 6.19 (d, 1H), 6.26 (t, 1H), 6.29 (m,2H), 6.33 (d, 1H), 6.51 (d, 1H), 7.06 (d, 2H), 7.16 (dd, 1H), 7.44 (d, 2H).
【0193】
実施例2.式(1)のエステルの合成
レチノイン酸(200mg、0.66mmol)を無水テトラヒドロフラン(10ml)に溶解した。トリエチルアミン(0.2ml)を加え、混合物を5分間撹拌した。テトラヒドロフラン(1ml)中のクロロギ酸エチル(72mg、0.66mmol)の溶液を0℃で滴下した。混合物を室温に加温するようにし、1時間撹拌した。ペンタン(10ml)を加え、トリエチルアミン塩酸塩を濾過により回収した。濾液を減圧下で蒸発させた。
【0194】
黄色の残渣を無水アセトニトリル(10ml)に溶解し、バクチオール(188mg、0.73mmol)を加えた。混合物を5分間撹拌した後、トリエチルアミン(0.2ml)及び4-ジメチルアミノピリジン(50mg)を加えた。混合物を50℃に加温し、1時間撹拌した。エタノールアミン(0.2ml)を加え、混合物を50℃で半時間撹拌した。ほとんどの溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチル(30ml)と混合した。酢酸エチル層を、1.0Nの塩酸溶液(30ml)、ブライン(30ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で蒸発させて粗生成物を得、これをヘキサン/酢酸エチルを用いるシリカゲルカラムにより精製して、258mgの淡黄色の油状生成物を得た。
【0195】
実施例3.式(1)のエステルの合成
レチノイン酸(3.00g、9.99mmol)を無水テトラヒドロフラン(75ml)に溶解した。トリエチルアミン(3ml)を加え、混合物を5分間撹拌した。テトラヒドロフラン(10ml)中のクロロギ酸エチル(1.08g、9.99mmol)の溶液を0℃で滴下した。反応混合物を室温に加温するようにし、2時間撹拌した。ヘキサン(75ml)を加え、トリエチルアミン塩酸塩を濾過により回収した。濾液を減圧下で蒸発させた。
【0196】
黄色の残渣を無水アセトニトリル(75ml)に溶解し、バクチオール(2.82g、10.98mmol)を加えた。混合物を5分間撹拌した後、トリエチルアミン(7.5ml)及び4-ジメチルアミノピリジン(1.25g)を加えた。混合物を50℃に加温し、4時間撹拌した。エタノールアミン(3.0ml)を加え、混合物を50℃で半時間撹拌した。ほとんどの溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチル(100ml)と混合した。酢酸エチル層を、1.0Nの塩酸溶液(100ml)、ブライン(100ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で蒸発させて粗生成物を得、これをヘキサン/酢酸エチルを用いるシリカゲルカラムにより精製して、3.32gの淡黄色の油状生成物を得た。
【0197】
実施例4:レチノイン酸受容体(RAR)に対する式Iのレチノイン酸バクチオール(bakuchoyl retinoate)のアゴニスト活性の分析
方法
アッセイで使用されるレポーター細胞(Indigo Biosciences、カタログ番号IB02201、IB02101、IB00821)は、天然N末端DNA結合ドメイン(DBD)が酵母Gal4 DBDのものと置き換えられたレセプターハイブリッドを発現する。レポーター遺伝子であるホタルルシフェラーゼは、Gal4上流活性化配列(UAS)に機能的に連結される。受容体アッセイを、以下のステップ1~3に記載のように行った。
【0198】
ステップ1:レポーター細胞の懸濁液を細胞回収培地(CRM:チャコールストリップされたFBS含有)中で調製し、100μlのレポーター細胞懸濁液を白色96ウェルアッセイプレートのウェルに分配した。
【0199】
ステップ2:試験及び参照の化合物マスターストックを、最終処理濃度に対するDMSO中の1,000倍濃度の溶液として調製した。この中間ストックを引き続きINDIGO Biosciencesの化合物スクリーニング培地(CSM:チャコールストリップされたFBS含有)に直接希釈し、「2倍濃度」処理培地を生成した。調製したそれぞれの処理培地100μLを、レポーター細胞の懸濁液100μLを予め分配した二重のアッセイウェルに分配し、それによって所望の最終処理濃度を達成した。すべてのアッセイウェル中の残留DMSOの濃度は、試験及び参照の化合物について0.1%であった。アッセイプレートを37℃、5%CO2、及び約70%湿度で23時間インキュベートした。バックグラウンド活性を決定するためにDMSO対照を使用した。レチノイン酸を、そのEC100濃度で用いて、それぞれの受容体の100%活性を示した。レチノールを陽性対照として使用した。
【0200】
ステップ3:インキュベーション期間の後、処理培地を捨て、1ウェル当たり100μL/ウェルのルシフェラーゼ検出試薬を加え、相対発光単位(RLU)で受容体活性を決定した。データ処理:活性化倍率:[平均RLU試験化合物/平均RLU DMSO]。
【0201】
結果
【表1】
表1に示すように、式Iのレチノイン酸バクチオールは、RARα、β、及びγ受容体に対するアゴニスト活性を示した。式Iのレチノイン酸バクチオールは、0.1μm及び0.01μmにおいて、レチノールよりも活性であった。これらのデータは、式Iのレチノイン酸バクチオールがRAR受容体に対する強力なリガンドであることを示唆する。
【0202】
均等物と範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」などの冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、1つ以上を意味し得る。グループの1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または記載は、反対の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、グループの1つ、1つを超える、またはすべてのメンバーが所与の製品またはプロセスに存在、使用、またはさもなくば関連する場合、満たされているとみなされる。本開示は、グループの厳密に1つのメンバーが、所与の製品またはプロセスに存在する、使用される、またはさもなくば関連する実施形態を含む。本開示は、グループの1つを超える、またはすべてのメンバーが、所与の製品またはプロセスに存在する、使用される、またはさもなくば関連する実施形態を含む。
【0203】
さらに、本開示は、列挙された請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の制限、要素、節、記述用語などが別の請求項に導入されるすべての変化形、組み合わせ、及び順列を包含することが理解されるべきである。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同一の基本請求項に従属する任意の他の請求項に見出される1つ以上の制限を含むように修正され得る。要素が、一覧として、例えば、マーカッシュ群形式で提示される場合、要素のそれぞれの亜群も開示され、いずれの要素(複数可)もこの群から除去され得る。一般に、本開示または本開示の態様が、特定の要素及び/または特徴を含むと言及される場合、本開示の特定の実施形態、または本開示の態様は、そのような要素及び/または特徴からなる、または本質的にそれらからなることが理解されるべきである。簡単にするために、これらの実施形態は、本明細書では逐語的に具体的に述べられていない。また、用語「含むこと(comprising)」及び「含むこと(containing)」はオープンであり、追加の要素またはステップの包含を許容することが意図されることを留意されたい。範囲が指定されている場合、端点が含まれている。さらに、別段の指示がない限り、または文脈及び当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、本開示の異なる実施形態で述べられた範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、文脈の別段の定めがない限り、範囲の下限の単位の10分の1までをとることができる。
【0204】
本出願は、さまざまな発行された特許、公開された特許出願、雑誌の記事、及び他の刊行物に言及しており、それらはすべて参照により本明細書に組み込まれている。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、明細書が優先するものとする。さらに、先行技術に含まれる本発明の任意の特定の実施形態は、特許請求の範囲のうちの任意の1つ以上から明示的に除外され得る。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるため、除外が本明細書に明示的に記載されていない場合でも、除外され得る。本開示のいずれの特定の実施形態も、先行技術の存在に関連するか否かに関わらず、いずれの理由であっても、任意の請求項から除外することができる。
【0205】
当業者は、日常的な実験にすぎないものを用いて、本明細書において記載される具体的な実施形態の多くの均等物を認識するか、またはそれを確かめることができるであろう。本明細書に記載の本実施形態の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、添付した特許請求の範囲に記述されるようなものである。当業者は、以下の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、この記載に対するさまざまな変更及び修正を行うことができることを理解するであろう。
【国際調査報告】