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特表2024-526759光学特性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】光学特性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240711BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240711BHJP
   C08G 65/28 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L71/02
C08G65/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501947
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 KR2022010289
(87)【国際公開番号】W WO2023287223
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093026
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515261354
【氏名又は名称】サムヤン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jongno 33-gil,Jongno-gu,Seoul,110-725 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】アン,テ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,サム ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ド ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソク ウ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002CG001
4J002CH022
4J002GN00
4J005AA12
4J005BB02
(57)【要約】
本発明は、光学特性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品に関し、さらに詳しくは、ベース樹脂としてポリカーボネート及び可塑剤成分としてバイオマス由来物質であるアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物を含み、光学特性及び加工性に優れるとともに、引張強度などの機械的特性及び耐熱性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂としてポリカーボネート樹脂;及び
可塑剤成分としてアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物;
を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂が、熱可塑性芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アンヒドロ糖アルコールが、イソソルビドである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール又はそれらの組み合わせである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアルキレングリコールの分子量が、500~5000g/molである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物が、下記式(2)
H-[X]-[O-A-O]-[X’]-H (2)
(式中、[O-A-O]は、アンヒドロ糖アルコールの両末端ヒドロキシ基から水素原子を除いたアンヒドロ糖アルコール由来の部分であり、
H-[X]は、独立して、H-[O-アルキレン]であり、
[X’]-Hは、独立して、[アルキレン-O]-Hであり、
p及びqは、それぞれ独立して、2~15の整数を表す。)で示されるものである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物が、下記式(3)
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数2~8の直鎖状又は炭素数3~8の分岐状アルキレン基を表し、
m及びnは、それぞれ独立して、2~15の整数を表す。)で示されるものである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物を、熱可塑性樹脂組成物の全量100重量部に対して、0.06重量部~2.49重量部の量で含む請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品。
【請求項10】
ライトガイドである請求項9に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びこれを含む成形品に関し、さらに詳しくは、ベース樹脂としてポリカーボネート及び可塑剤成分としてバイオマス由来物質であるアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物を含み、光学特性及び加工性に優れるとともに、引張強度などの機械的特性及び耐熱性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプなどに使用されるライトガイド(light-guide)、各種電子装置の照明部品、筐体などを均一な厚みで製造するためには、メルトインデックスの高い樹脂が必要であると同時に、優れた透過率、低い黄色度指数特性、良好な耐衝撃性などを有する樹脂が必要である。また、近年、環境への配慮が重要視されるようになり、前記の物性を同時に満たし、透明性を向上させた樹脂の開発が求められていた。
【0003】
特許文献1は、ポリカーボネート及びイソソルビドのカルボン酸エステルを含有し、レオルロジと光学特性が改善された組成物が開示されているが、開示された材料は厚さ4mm水準での透過率が89%しかなく、またYI値が2を超えるため、ライトガイドとして使用するには不十分な物性を有している。
また、特許文献2には、環境にやさしく、バイオマス由来物質含量が高く、色、成形加工性、耐熱性及び耐衝撃性などの物性のバランスに優れた[ポリ(イソソルビドカーボネートと芳香族カーボネート-芳香族カーボネート)]-[ポリカーボネート]ブロック共重合体を開示しているが、開示された材料は、光学特性を向上させるなどライトガイドとして使用するための物性を実現することを目的としたものでない。
【0004】
従って、前記既存技術の問題を解決するために、環境にやさしく、高い透過率、低い黄色度指数を有し、成形性、引張強度などの機械的特性及び耐熱性にも優れ、特にライトガイド用途に好適な樹脂組成物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第10-2234098号
【特許文献2】韓国特許第10-1608411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決するものであり、環境に優しく、従来のポリカーボネート樹脂組成物に比べて、優れた光学特性(すなわち、高い透過率及び低い黄色度指数)及び加工性を有するとともに、引張強度などの機械的特性及び耐熱性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品(特に、ライトガイド)を提供することを技術的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一側面は、ベース樹脂としてポリカーボネート樹脂;及び可塑剤成分としてアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物;を含む、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の側面は、本発明による熱可塑性樹脂組成物を含む成形品、好ましくはライトガイドを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、環境にやさしく、従来のポリカーボネート樹脂組成物に比べて、優れた光学特性(すなわち、高い透過率及び低い黄色度指数)及び加工性を有するとともに、引張強度などの機械的特性及び耐熱性にも優れることから、これを含む成形品は各種産業分野における光学的用途に好適に使用することができ、特に、ライトガイド(より具体的には、自動車用ライトガイド、さらに具体的には、自動車のヘッドランプ用ライトガイド)としての用途に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ベース樹脂としてポリカーボネート樹脂;及び可塑剤成分としてアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物;を含む。
【0012】
(1)ベース樹脂:ポリカーボネート樹脂
本発明の熱可塑性樹脂組成物にベース樹脂として含まれるポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂であればよいが、本発明の技術思想を実現できる限り、その種類は特に限定されない。従来からこの分野で使用されている熱可塑性芳香族ポリカーボネート樹脂であればいずれも使用可能である。
【0013】
一実施形態において、前記芳香族ポリカーボネート樹脂は、2価フェノール、カーボネート前駆体及び分子量調節剤から製造することができる。
【0014】
前記2価フェノール類は、芳香族ポリカーボネート樹脂を構成するモノマーの1つであり、下記式(1)
【化1】
(式中、Xは、官能基を有さない直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基;又はスルファイド基、エーテル基、スルホキシド基、スルホン基、ケトン基、ナフチル基及びイソブチルフェニル基からなる群から選択される1つ以上の官能基を含む直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基(例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基、又は炭素数3~10の分岐状若しくは環状のアルキレン基)を表し、
1及びR2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子(例えば、Cl又はBr)、又は直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基(例えば、炭素数1~20(より具体的には1~10)の直鎖状のアルキル基、炭素数3~20(より具体的には3~10)の分岐状のアルキル基、又は炭素数3~20(より具体的には3~6)のリング状アルキル基)を表し、
n及びmは、独立して、0~4の整数を表す。)で示される化合物であってもよい。
【0015】
前記2価フェノール類の非限定的な例としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-(4-イソブチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-ナフチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)などが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。
【0016】
前記カーボネート前駆体は、芳香族ポリカーボネート樹脂を構成する他のモノマーであり、その非限定的な例としては、カルボニルクロリド(ホスゲン)、カルボニルブロミド、ビスハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートなどが挙げられ、好ましくはカルボニルクロリド(ホスゲン)が挙げられる。
【0017】
前記分子量調節剤としては、従来公知の化合物、すなわち、熱可塑性芳香族ポリカーボネート樹脂製造に用いられるモノマーと同等の単官能性化合物を使用することができる。前記分子量調節剤の非限定的な例としては、フェノールをベースとする誘導体(例えば、p-イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)、p-クミル(cumyl)フェノール、p-イソオクチルフェノール、p-イソノニルフェノールなど)、脂肪族アルコール類などが挙げられる。好ましくは、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)が挙げられる。
【0018】
このような2価フェノール類、カーボネート前駆体及び分子量調節剤から製造される芳香族ポリカーボネート樹脂としては、例えば、直鎖状ポリカーボネート樹脂、分岐状ポリカーボネート樹脂、コポリカーボネート樹脂及びポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられ、本発明ではこれらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
一実施形態において、前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv、25℃塩化メチレン溶液中で測定)は、15,000~40,000であってもよく、より具体的には17,000~30,000、より具体的には20,000~30,000であってもよい。前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が15,000未満であると、衝撃強度、引張強度などの機械的物性が低下することがある。逆に、前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が40,000を超えると、溶液粘度の上昇で樹脂の加工に問題が生じることがある。
【0020】
一実施形態において、本発明の熱可塑性樹脂組成物の全量100重量部に対して、前記ポリカーボネートベース樹脂の量は、例えば、15重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、45重量部以上、50重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、80重量部以上又は90重量部以上であってもよく、99.9重量部以下、99.8重量部以下、99.7重量部以下、99.6重量部以下、99.5重量部以下、99.4重量部以下、99.3重量部以下、99.2重量部以下、99.1重量部以下又は99重量部以下であってもよい。
【0021】
(2)可塑剤成分:アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物
本発明の熱可塑性樹脂組成物に可塑剤成分として含まれるアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物は、アンヒドロ糖アルコールの末端ヒドロキシ基にポリアルキレングリコール置換基が結合した形態を有する化合物である。
【0022】
アンヒドロ糖アルコールは、天然物由来の水素化糖の脱水反応により製造することができる。水素化糖(「糖アルコール」ともいう)は、糖類が有する還元性末端基に水素を付加して得られる化合物を意味するものである。一般に、HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここで、nは2~5の整数)の式を有し、炭素数に応じて、テトリトール、ペンチトール、ヘキシトール及びヘプチトール(それぞれ、炭素数4、5、6及び7)に分類される。その中で、炭素数6のヘキシトールには、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールなどが含まれており、ソルビトールとマンニトールは特に効用性が大きな物質である。
【0023】
前記アンヒドロ糖アルコールとしては、モノアンヒドロ糖アルコール、ジアンヒドロ糖アルコール又はこれらの混合物であってもよく、特に限定しないが、ジアンヒドロ糖アルコールを使用することができる。
【0024】
モノアンヒドロ糖アルコールは、水素化糖の内部から1つの水分子を除いたアンヒドロ糖アルコールであり、分子内に4つのヒドロキシ基を有するテトラオール(tetraol)の形態を有する。本発明において、前記モノアンヒドロ糖アルコールの種類は特に限定されず、好ましくはモノアンヒドロ糖ヘキシトールであってもよく、より具体的には1,4-アンヒドロヘキシトール、3,6-アンヒドロヘキシトール、2,5-アンヒドロヘキシトール、1,5-アンヒドロヘキシトール、2,6-アンヒドロヘキシトール又はこれらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0025】
ジアンヒドロ糖アルコールは、水素化糖の内部から2つの水分子を除いたアンヒドロ糖アルコールであり、分子内に2つのヒドロキシ基を有するジオール(diol)の形態を有し、デンプン由来のヘキシトールを用いて製造することができる。ジアンヒドロ糖アルコールは、再生可能な天然資源を原料とする環境にやさしい物質であるため、古くから注目され、その製造に関する研究が進められてきていた。以前から大いなる関心と共にその製造方法に関する研究が続けられている。そのようなジアンヒドロ糖アルコールの中でも、ソルビトールから製造されるイソソルビドは、現在最も工業的応用範囲が広い。
【0026】
本発明において、前記ジアンヒドロ糖アルコールの種類は特に限定されないが、好ましくはジアンヒドロヘキシトールであってもよく、より具体的には1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであってもよい。前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド又はそれらの2つ以上の混合物であってもよい。
本発明の好ましい一実施形態において、前記アンヒドロ糖アルコールは、イソソルビドであってもよい。
【0027】
一実施形態において、前記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0028】
一実施形態において、前記ポリアルキレングリコールの分子量(重量平均分子量)は500~5000g/molであってもよく、より具体的には1000~4000g/molであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
一実施形態において、前記アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物は下記式(2)
H-[X]-[O-A-O]-[X’]-H (2)
(式中、[O-A-O]は、アンヒドロ糖アルコールの両末端ヒドロキシ基から水素原子を除いたアンヒドロ糖アルコール由来の部分であり、H-[X]は、独立して、H-[O-アルキレン]であり、[X’]-Hは、独立して、[アルキレン-O]-Hであり、p及びqは、それぞれ独立して、2~15の整数を表す。)で示すことができる。
より具体的には、前記式(2)において、
アンヒドロ糖アルコールはイソソルビドであってもよく、
また、前記アルキレンは、炭素数2~8の直鎖状又は炭素数3~8の分岐状アルキレンであってもよく、より具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン又はそれらの組み合わせであってもよく、
p及びqは、それぞれ独立して、2~12の整数を表してもよい。
【0030】
一実施形態において、前記アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物は、下記式(3)
【化2】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数2~8の直鎖状又は炭素数3~8の分岐状アルキレン基を表し、m及びnは、それぞれ独立して、2~15の整数を表す。)で示される化合物であってもよい。
より具体的には、前記式(3)において、
1及びR2は、それぞれ独立して、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基又はブチレン基を表し、好ましくはR1及びR2は同一であり、
m及びnは、それぞれ独立して、2~12の整数を表す。
【0031】
一実施形態において、前記アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物は、例えば、以下の反応スキームに示すように、触媒(例えば、塩基触媒)の存在下、アンヒドロ糖アルコールの両末端又は片末端(好ましくは両末端)のヒドロキシ基とアルキレンオキシドを反応させて、アンヒドロ糖アルコールの両末端又は片末端(好ましくは両末端)のヒドロキシ基の水素がアルキレンオキシドの開環形態であるヒドロキシアルキル基で置換された形態を有する化合物として得ることができる。
<反応スキーム>
【化3】
【0032】
一実施形態において、前記アルキレンオキシドは、炭素数2~8の直鎖状又は炭素数3~8の分岐状アルキレンオキシドであってもよく、より具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0033】
一実施形態において、アンヒドロ糖アルコールは、アルキレンオキシドとの反応前に酸成分で処理されてもよく、酸成分で処理されたアンヒドロ糖アルコールとアルキレンオキシドとの反応は、例えば、加圧(例えば、3MPa以上加圧)可能な高圧反応器中で、塩基触媒(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物又は水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物)の存在下、高温(例えば、100℃~180℃、又は120℃~160℃)で、例えば、1時間~8時間又は2時間~4時間で行うことができるが、これに限定されるものではない。アンヒドロ糖アルコールとアルキレンオキシドの反応モル比は、例えば、1モル以上、2モル以上又は3モル以上であってもよく、また、30モル以下、20モル以下、15モル以下又は12モル以下であってもよく、例えば、1モル~30モル、好ましくは2~20モルを、より好ましくは3~15モルであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
一実施形態において、本発明の熱可塑性樹脂組成物の全量100重量部に対して、可塑剤成分として前記アンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物が、例えば、0.06重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、0.9重量部以上又は1重量部以上の量で含まれてもよく、また、2.49重量部以下、2.45重量部以下、2.4重量部以下、2.35重量部以下、2.3重量部以下、2.25重量部以下、2.2重量部以下、2.15重量部以下、2.1重量部以下、2.05重量部以下又は2重量部以下の量で含まれてもよい。
熱可塑性樹脂組成物の全量100重量部中のアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物含量が0.06重量部未満であると、透過率が低下し、黄色度指数が上昇して高い透過率が実現できないことがあり、逆に、その含量が2.49重量部を超えると、組成物中の可塑剤が結晶化して光学特性が低下することがある。
【0035】
(3)任意の添加剤
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記成分以外にも本発明の目的を達成できる範囲内で必要に応じてその他の添加剤が追加することができる。
前記その他の添加剤の種類及び含量は、種々目的に応じて当業者によって容易に選択することができる。一実施形態において、無機充填剤、潤滑剤、酸化防止剤、光安定剤、加水分解安定剤、離型剤、着色剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、磁性付与剤、架橋剤、抗菌剤、加工助剤、耐摩耗剤及びカップリング剤を単独で又は2種以上を混合して組成物に添加することができる。
【0036】
前記酸化防止剤としては、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系又はアミン系の酸化防止剤を用いることができ、前記離型剤としては、含フッ素重合体、シリコーン油、ステアリン酸の金属塩、モンタン酸の金属塩、モンタン酸エステルワックス又はポリエチレンワックスを用いることができる。
また、前記紫外線安定剤としては、ベンゾフェノン又はベンゾトリアゾール及びアミン系の紫外線安定剤を用いることができ、前記着色剤としては、染料又は顔料を用いることができる。
【0037】
また、その他の添加剤は、市販されている一般的なものを使用することができる。その他の添加剤の含量は特に限定されず、本発明の熱可塑性樹脂組成物の全量100重量部に対して、1~5重量部、より具体的には2~5重量部であってもよい。 ただし、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、バイオマス由来物質であるアンヒドロ糖アルコールを利用するので環境にやさしく、従来のポリカーボネート樹脂組成物に比べて優れた光学特性(すなわち、高い透過率及び低い黄色度指数)及び加工性を有するとともに、引張強度などの機械的特性及び耐熱性にも優れていることから、これを含む成形品は各種産業における光学的用途に好適に使用することができる。特に、ライトガイド(より具体的には自動車用ライトガイド、さらに具体的には自動車のヘッドランプ用ライトガイド)としての用途に極めて好適に使用することができる。
【0039】
したがって、本発明の他の側面によれば、前記本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品が提供される。
前記成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の押出成形品又は射出成形品であってもよい。
好ましい一実施形態において、前記成形品はライトガイドであってもよい。
【0040】
以下の実施例及び比較例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例
【0041】
実施例及び比較例で使用された成分は以下の通りである。
(A)ポリカーボネート樹脂:サムヤン社製の3017 PJ
(B)ポリカーボネート樹脂:ロッテケミカル社製の1600R
(C)[ポリ(イソソルビドカーボネート-芳香族カーボネート)]-[ポリカーボネート]ブロック共重合体(韓国特許第10-1608411号に開示された方法により製造された共重合体)
(D)ポリエチレングリコール(PEG)
(D-1)PEG-1000(分子量:1000g/mol)
(D-2)PEG-2000(分子量:2000g/mol)
(D-3)PEG-4000(分子量:4000g/mol)
(E)ポリプロピレングリコール(PPG)
(E-1)PPG-1000(分子量:1000g/mol)
(E-2)PPG-2000(分子量:2000g/mol)
(E-3)PPG-4000(分子量:4000g/mol)
(F)ポリブチレングリコール(PBG)
(F-1)PBG-1000(分子量:1000g/mol)
(F-2)PBG-2000(分子量:2000g/mol)
(F-3)PBG-4000(分子量:4000g/mol)
(G)ポリ(エチレンアジペート)(AD2000)(分子量:8000g/mol)
(H)イソソルビドの脂肪酸ジエステル(ID37、Roquette Pierre社製)
(I)イソソルビドのポリエチレングリコール付加物
(I-1)EI-1000(ポリエチレングリコールの分子量:1000g/mol)
(I-2)EI-2000(ポリエチレングリコールの分子量:2000g/mol)
(I-3)EI-4000(ポリエチレングリコールの分子量:4000g/mol)
(J)イソソルビドのポリプロピレングリコール付加物
(J-1)PI-1000(ポリプロピレングリコールの分子量:1000g/mol)
(J-2)PI-2000(ポリプロピレングリコールの分子量:2000g/mol)
(J-3)PI-4000(ポリプロピレングリコールの分子量:4000g/mol)
(K)イソソルビドのポリブチレングリコール付加物
(K-1)BI-1000(ポリブチレングリコールの分子量:1000g/mol)
(K-2)BI-2000(ポリブチレングリコールの分子量:2000g/mol)
(K-3)BI-4000(ポリブチレングリコールの分子量:4000g/mol)
前記イソソルビドのポリアルキレングリコール付加物は、酸処理したイソソルビドと対応するアルキレンオキシドを、触媒としてKOHの存在下、100℃~140℃で付加反応させ、生成物を冷却、ろ過し、イオン交換樹脂を用いて精製する方法で製造された。
【0042】
下記表1に示す各実施例及び比較例の成分及び含量で樹脂組成物を製造した後、L/D=48、Φ=25mmの二軸溶融混練押出機を使用して、溶融温度240~260℃、スクリュー回転数150rpm、第1ベント圧力約-600mmHg及び自給式の速度20kg/hの条件下で押出成形した。押出されたストランドを水中で冷却した後、回転カッターで切断してペレットを製造した。
【0043】
製造されたペレットを80℃~100℃で4時間熱風乾燥した後、250℃~280℃のシリンダ温度と80℃の成形温度で射出成形して、試片を製造した。製造された各試片の物性を以下に説明する方法で測定し、その結果を下記表1に示した。
製造された各試片の物性は下記の方法で測定、評価した。
(1)引張強度:ASTM D638に基づいて評価した。
(2)屈曲強度及び弾性率:ASTM D790に基づいて評価した。
(3)衝撃強度:ASTM D256(厚さ1/8インチ、ノッチ-アイゾット)に基づいて評価した。
(4)熱変形温度:ASTM D648に基づき、18.6kg/cm2の荷重で評価した。
(5)メルトインデックス:ASTM D1238に基づき、300℃の温度及び1.2kgfの荷重条件で測定した。
(6)透過率:BYK社製のGardneri Haze Meterを使用して、四角形試片(90×80×6.4mm)をASTM D1003に基づいて、透過率(%)値を測定した。
(7)YI(黄色度指数):X-rite社製の分光側色計CI 7800SEを使用して、四角形試片(90×80×6.4mm)のYI値を測定した。
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】
【0044】
前記表1に示すように、本発明による実施例1-1~3-5の場合、いずれも優れた光学特性(すなわち、高い透過率及び低い黄色度指数)及び優れた加工性(高いメルトインデックス)を有するとともに、引張強度、屈曲強度、屈曲弾性率及び衝撃強度などの機械的特性及び耐熱性にも優れ、バランスのとれた物性を確保することができた。
【0045】
具体的には、本発明の光学特性に優れたポリカーボネート組成物である実施例1-1~3-5は、自動車ライトガイドとして使用するのに好適な機械的物性と光学特性を維持しており、特に、実施例3-4及び3-5の組成物は、このような用途の部品に非常に適した光学特性を示し、自動車ヘッドランプライトガイドとして使用可能な機械的物性及び光学特性が向上していることが確認できた。
【0046】
しかし、比較例の場合には、前記測定及び評価項目のうち1つ以上が不良であった。即ち、可塑剤成分としてアンヒドロ糖アルコールのポリアルキレングリコール付加物を使用しない場合、即ち、単純なポリアルキレングリコールを使用した比較例1-1~3-5、ポリ(エチレンアジペート)を使用した比較例4-1、及びイソソルビドの脂肪酸ジエステルを使用した比較例4-2では、剛性を付与する脂環式官能基が存在しないために機械的特性が低下したり、樹脂との相溶性を付与するポリアルキレングリコールがないために光学特性が非常に悪かったりすることが確認できた。
【国際調査報告】