(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用の電子輸送層組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/16 20230101AFI20240711BHJP
H10K 71/13 20230101ALI20240711BHJP
H10K 71/15 20230101ALI20240711BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240711BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20240711BHJP
【FI】
H10K50/16
H10K71/13
H10K71/15
H10K50/15
H10K50/17
H10K50/17 171
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501987
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 KR2022009698
(87)【国際公開番号】W WO2023287098
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0091490
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ソマン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ギュチョル
(72)【発明者】
【氏名】パク・ビョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ギョンナム
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム・チュンレ
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107CC42
3K107CC45
3K107DD75
3K107DD76
3K107DD78
3K107DD84
3K107DD87
3K107FF03
3K107FF09
3K107FF14
3K107GG08
3K107GG28
(57)【要約】
本発明は、金属酸化物ナノ粒子、及び、粘度、極性、及び蒸気圧のうちの1つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒を含み、インクジェット吐出が可能であるインクジェット印刷用の電子輸送層組成物、及びその製造方法、上記組成物から形成される電子輸送層を備える発光素子を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物ナノ粒子、及び、
粘度、極性、及び蒸気圧のうちの1つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒、
を含み、
インクジェット吐出が可能である、インクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項2】
当該組成物は、
20℃での粘度が、1.0~3.0cpsであり、
20℃での蒸気圧が、0.6~45mmHgであり、
接触角が、25~80°であり、
固形分の含有量が、5~30重量%である、請求項1に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項3】
前記少なくとも3種の溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、2-メトキシエタノール、及びブタノールを含む、請求項1に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項4】
前記ジメチルスルホキシド(DMSO)、前記エタノール、前記2-メトキシエタノール、及び前記ブタノールの混合比率は、3~8:1~3:1~2:0~1の体積比である、請求項3に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物ナノ粒子は、Zn含有金属酸化物ナノ粒子である、請求項1に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項6】
前記Zn含有金属酸化物ナノ粒子は、ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属が合金化されたものである、請求項5に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項7】
前記Zn含有金属酸化物ナノ粒子は、ZnMgOである、請求項5に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物ナノ粒子は、表面の一部又は全部に、親水性部分を有する有機リガンドが付着しているものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項9】
前記有機リガンドは、カルボキシル基及びヒドロキシ基から選択される親水性部分を少なくとも2つ以上含む、請求項8に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項10】
前記有機リガンドは、上記金属酸化物ナノ粒子に含まれた金属1モルに対して0.0001~10molの範囲で含まれる、請求項8に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項11】
前記金属酸化物ナノ粒子は、表面の一部又は全部に形成された高分子コート層を含む、請求項1に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物。
【請求項12】
第1の電極、
前記第1の電極と対向するように配置される第2の電極、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される発光層、
前記第1の電極と前記発光層との間に配置される正孔輸送層、及び、
前記発光層と前記第2の電極との間に配置され、請求項1~11のうちのいずれか1項に記載の電子輸送層組成物から形成される電子輸送層、
を含む、発光素子。
【請求項13】
前記電子輸送層は、インクジェット印刷により形成される、請求項12に記載の発光素子。
【請求項14】
前記発光素子は、正孔注入層及び電子注入層のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項12に記載の発光素子。
【請求項15】
亜鉛含有化合物と、ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属含有化合物とが溶媒に溶解された反応溶液に、塩基性物質を添加した後、沈殿させ、金属酸化物ナノ粒子分散液を製造する第1のステップ、及び、
製造された前記金属酸化物ナノ粒子分散液に、粘度、極性、及び蒸気圧のうちの1つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒を投入した後、混合して電子輸送層組成物を製造する第2のステップ、
を含む、請求項1に記載のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物の製造方法。
【請求項16】
前記第1のステップにおける前記金属酸化物ナノ粒子分散液は、有機リガンドをさらに含み、
前記有機リガンドは、前記金属酸化物ナノ粒子分散液100重量%に対して10重量%以下含まれている、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第2のステップで製造された前記電子輸送層組成物は、単量体をさらに含み、
前記単量体は、前記電子輸送層組成物100体積%に対して10体積%以下含まれている、請求項15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物ナノ粒子、及び、粘度、極性、及び蒸気圧のうちの1つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒を含み、インクジェット吐出が可能である、インクジェット印刷用の電子輸送層組成物及びその製造方法、上記組成物から形成される電子輸送層を備える発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット発光素子(QLED)は、量子効率及び色純度が高く、次世代ディスプレイとして注目されている。QLEDを製作する方法として、溶液に基づくスピンコーティング法が主に使用されているが、このようなスピンコーティング法は、大型化及び商用化に弱いため、インクジェット方式に関する研究が多く行われている。インクジェット印刷方式を適用する場合、簡単でかつ安価に工程を行うことが可能となり、商用化及び大型化に一層有利である。
【0003】
近年、インクジェット印刷方式の量子ドット溶液に関する研究が多く行われているが、インクジェット用の電子輸送層(ETL)に関する研究は殆ど行われていない。特に、パターン化された発光層(Emission Layer;EML)上に均一な電子輸送層の薄膜を成膜するためには、インクジェット印刷用の電子輸送層(ETL)組成について更なる研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、現在広く知られているエタノールに基づく電子輸送層組成物では、インクジェット印刷装置による均一な吐出が不可能であることに着目した。
【0005】
本発明は、上述のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の技術的な課題は、特定の物性に調節された少なくとも3種の溶媒を混用することにより、インクジェット印刷により均一な吐出が容易に行われるとともに、吐出されたインクにより均一な成膜が行われる、インクジェット印刷用の電子輸送層組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の技術的な課題は、上述のような電子輸送層組成物を用いてインクジェット印刷法により形成された電子輸送層を備える発光素子を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的及び利点は、後述のような発明の詳細な説明及び特許請求の範囲によって、より明確に説明されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のような技術的課題を達成するため、本発明は、 金属酸化物ナノ粒子、及び、粘度、極性、及び蒸気圧のうちの1つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒を含み、インクジェット吐出が可能である、インクジェット印刷用の電子輸送層組成物を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態において、上記組成物は、20℃での粘度が1.0~3.0cpsであり、20℃での蒸気圧が0.6~45mmHgであり、接触角が25~80°であり、固形分の含有量が5~30wt%であり得る。
【0010】
本発明の一実施形態において、上記少なくとも3種の溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、2-メトキシエタノール、及びブタノールを含むことができる。
本発明の一実施形態において、上記DMSO、エタノール、2-メトキシエタノール、及びブタノールの混合比率は、3~8:1~3:1~2:0~1体積比であり得る。
【0011】
本発明の一実施形態において、上記金属酸化物ナノ粒子は、Zn含有金属酸化物ナノ粒子であり得る。
【0012】
本発明の一実施形態において、上記Zn含有金属酸化物ナノ粒子は、ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属が合金化されたものであり得る。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記Zn含有金属酸化物ナノ粒子は、ZnMgOであり得る。
本発明の一実施形態において、上記金属酸化物ナノ粒子は、表面の一部又は全部に、親水性の部分(moiety)を有する有機リガンドが付着しているものであり得る。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記有機リガンドは、カルボキシル基及びヒドロキシ基から選択される親水性部分を少なくとも2つ以上含むことができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記有機リガンドは、上記金属酸化物ナノ粒子に含まれた亜鉛1モルに対して、0.0001~10molの範囲で含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、上記金属酸化物ナノ粒子は、表面の一部又は全部に形成された高分子コート層を含むことができる。
【0017】
また、本発明は、第1の電極、上記第1の電極と対向するように配置される第2の電極、上記第1の電極と上記第2の電極との間に配置される発光層、上記第1の電極と上記発光層との間に配置される正孔輸送層、及び、上記発光層と上記第2の電極との間に配置され、上述のような電子輸送層組成物から形成される電子輸送層を含む、発光素子を提供する。
【0018】
本発明の一実施形態において、上記電子輸送層は、インクジェット印刷により形成することができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、上記発光素子は、正孔注入層及び電子注入層のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0020】
さらに、本発明は、上述のような電子輸送層組成物の製造方法であって、亜鉛含有化合物と、ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属含有化合物とが溶媒に溶解された反応溶液に、塩基性物質を添加した後、沈殿させ、金属酸化物ナノ粒子分散液を製造する第1のステップ、及び、上記製造された金属酸化物ナノ粒子分散液に、粘度、極性、及び蒸気圧のうちの1つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒を投入した後、混合して電子輸送層組成物を製造する第2のステップを含む、インクジェット印刷用の電子輸送層組成物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態において、上記第1のステップで製造された金属酸化物ナノ粒子分散液は、有機リガンドをさらに含み、上記有機リガンドは、上記金属酸化物ナノ粒子分散液100重量%に対して、10重量%以下で含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、上記第2のステップで製造された電子輸送層組成物は、単量体及び分散剤のうちの少なくとも1つをさらに含み、上記単量体及び分散剤のうちの少なくとも1つは、上記電子輸送層組成物100体積%に対して10体積%以下で含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態によれば、粘度、極性、蒸気圧などの物性が異なる少なくとも3種の溶媒を混用することにより、インクジェット法により均一な吐出が容易に行われるとともに、吐出されたインクにより均一な成膜が行われる、インクジェット印刷用の電子輸送層組成物を提供することができる。
【0024】
また、本発明では、電子輸送層として使用される金属酸化物ナノ粒子の合成時に、所定のリガンド及び単量体(分散剤)を適用することにより、形成される膜の均一性を確保することができる。
【0025】
これにより、本発明の電子輸送層組成物は、インクジェット印刷工程によって、発光素子、具体的には、自発光ディスプレイの作製に有用であるとともに、簡単でかつ安価にインクジェット工程を適用することにより、商用化及び大型化に有利な効果を得ることができる。
【0026】
本発明による効果は、上述した内容によって制限されず、種々の効果が本明細書中に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1で製造されたZnMgOナノ粒子の吸収スペクトルのグラフである。
【
図2】比較例1で製造されたZnMgOナノ粒子の吸収スペクトルのグラフである。
【
図3】実施例1で製造された電子輸送層のインク組成物の吐出形状の表面形状分析のイメージ及びグラフである。
【
図4】実施例3で製造された電子輸送層のインク組成物を用いた吐出インクのイメージ図である。
【
図5】実施例2で製造された電子輸送層のインク組成物中のZnMgOの1ドロップ及び1*5パターン形状を示すイメージ図である。
【
図6】実施例3で製造された電子輸送層のインク組成物中のZnMgOの1ドロップ及び1*5パターン形状を示すイメージ図である。
【
図7】実施例2で製造された電子輸送層のインク組成物を用いて基板上に形成された1ドロップ及び1*5パターン形状を示すイメージ図である。
【
図8】実施例4で製造された電子輸送層のインク組成物中のZnMgOの1ドロップ形状を示すイメージ図である。
【
図9】実施例5で製造された電子輸送層のインク組成物中のZnMgOの1ドロップ形状を示すイメージ図である。
【
図10】実施例6で製造された電子輸送層のインク組成物中のZnMgOの1ドロップ形状を示すイメージ図である。
【
図11】実施例7で製造された電子輸送層のインク組成物中のZnMgOの1ドロップ形状を示すイメージ図である。
【
図12】比較例1で製造された吐出インクを示すイメージ図である。
【
図13】比較例1のワンドットパターンを示すイメージ図である。
【
図14】比較例2のワンドットパターンを示すイメージ図である。
【
図15】実施例1-3及び6-7において電子輸送層組成物を用いて基板上に着弾したインクのCRF(Coffee Ring Factor)結果を示すグラフである。
【
図16】実施例1-3及び6-7において電子輸送層組成物を用いて製作された発光素子の発光効率を示すグラフである。
【
図17】実施例1-3及び6-7において電子輸送層組成物を用いて製作された発光素子の量子効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳述する。
本明細書中に使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、特に断りのない限り、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有する。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、特に定義されない限り、理想的又は過度に解釈されない。
【0029】
また、本明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)と理解されるべきである。また、本明細書の全体において、「上に」又は「上方に」とは、対象部分の上又は下に位置する場合のみならず、その中間に他の部分が存在する場合も含むことを意味し、必ずしも重力方向を基準にして上に位置することを意味するのではない。
【0030】
また、本明細書中において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。
【0031】
また、本明細書中において、「単量体」と「モノマー」とは同じ意味である。本発明において、単量体は、オリゴマー及びポリマーとは区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。
【0032】
本発明は、インクジェット印刷方式により吐出可能であり、かつ素子の特性を実現し得る電子輸送層組成物を提供しようとする。
【0033】
このため、本発明では、インクジェット装置における適正な粘度及び蒸気圧(vapor pressure)を考慮して、吐出可能な少なくとも3種以上の溶媒を選定し、これを所定の比率で混用することでインク組成物の溶媒として使用している。
【0034】
また、金属酸化物ナノ粒子の表面に、所定のリガンド、単量体、又は微細粒子の凝集防止のための分散剤を添加することにより、インクジェットの吐出時において、コーヒーリング効果(Coffee Ring Effect、CRF)が改善され、膜の均一性を確保することができる。
【0035】
これにより、本発明では、インクジェット印刷工程による電子輸送層、及びこれを備える自発光ディスプレイを提供することができる。
【0036】
<インクジェット印刷用の電子輸送層組成物>
本発明の一実施形態に係る電子輸送層組成物は、一般的なインクジェット法により吐出され、電子輸送層(ETL)を形成し得るインク組成物である。
【0037】
一実施形態では、上記組成物は、金属酸化物ナノ粒子、及び、粘度、極性、及び蒸気圧のうちのいずれか一つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒を含み、これらが所定の割合で含まれている。必要に応じて、当該分野で周知の通常の添加剤を少なくとも1種以上含んでもよい。
【0038】
以下、上記電子輸送層組成物の組成について詳述する。
【0039】
金属酸化物ナノ粒子
本発明に係る電子輸送層組成物は、金属酸化物ナノ粒子を含む。
【0040】
上記金属酸化物ナノ粒子としては、当該分野で電子輸送層に使用されるものであれば、制限なく使用することができる。一例として、ドーパント材料として使用される通常の金属酸化物ナノ粒子を使用することができ、例えば、In2S3、CU2S、Ag2S、ZnSe、ZnS、ZnO、ZnTe、ZnSe、TiO2、SnO2、ZnS、又は上記成分のうちの少なくとも1種の元素が添加されたものが挙げられるが、これらに制限されない。
【0041】
具体的には、上記金属酸化物ナノ粒子は、Zn含有金属酸化物ナノ粒子であり、より具体的には、ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属(M)が合金化されたもの[ZnMO(M=Ca、Mg)]であり得る。ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属(M)としては、Ca又はMgである。これらの金属は、イオン半径がZnと類似しているため、応力を生じることなくZnOの格子中に混入し、ZnOのサイズ低減によって、ZnOのバンドギャップを増加させることができる。好ましくは、ZnMgOであり得る。
【0042】
このように、合金によってZnOナノ粒子のバンドギャップを増加させて電子輸送層に適用すると、伝導帯の最低部(Conduction Band Minimum:CBM)準位の上向きへのシフト(upshift)が発生し、量子ドット発光層のCBMと電子輸送層との間のエネルギーの近接性をもたらし、これによって電子エネルギー障壁が低くなり、結果的に量子ドット領域への電子注入が促進される。これにより、合金化されたZnOナノ粒子が含有された電子輸送層を備える発光素子は、ZnOナノ粒子が含有された電子輸送層を備える素子に比べて、輝度及び効率が向上し、より低い駆動電圧でもより高い発光効率を得ることが可能となる。即ち、上述のような電子輸送層を適用する場合は、電子注入障壁を低減させることで、QLEDの駆動電圧低下、効率向上、さらには消費電力低減のような効果が得られる。素子の駆動電圧が低下すると、素子の発熱が減少し、これにより、寿命の増加が予測される。
【0043】
一実施形態では、上記金属酸化物ナノ粒子は、表面の一部又は全部に、親水性部分を有する有機リガンドが付着していてもよい。
【0044】
有機リガンドとしては、当該分野で公知のものを制限なく使用することができ、例えば、C5~C20のアルキルカルボン酸、アルケニルカルボン酸、又はアルキニルカルボン酸、ピリジン(pyridine)、メルカプトアルコール(mercaptoalcohol)、チオール(thiol)、ホスフィン(phosphine)、ホスフィン酸化物(phosphine oxide)、第一級アミン(primary amine)、第二級アミン(secondary amine)、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。具体的には、上記有機リガンドは、カルボキシル基及びヒドロキシ基から選択される親水性部分を少なくとも2つ以上含むことができ、より具体的には、分子構造の両末端に、上記カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基の親水性部分を有するリガンド物質が好ましい。使用可能な有機リガンドとしては、例えば、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)コハク酸〔mono-(2-acryloyloxyethyl)succinate;MAES〕、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)コハク酸エチル〔mono-2-(methacryloyloxy)ethyl succinate;MMES〕、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸〔2-(2-methoxyethoxy)acetic acid;MEAA〕、又はこれらの混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0045】
このような有機リガンドは、金属酸化物ナノ粒子の表面に付着し、インクジェットの吐出時において、CRF(コーヒーリング効果)の改善効果が発現され、これにより、膜の均一性を確保する役割を果たすことができる。ここで、コーヒーリング効果(CRF)とは、蒸発過程の流体力学的効果によってコロイド粒子が周縁部に移動し、粒子の密度分布が不均一になる現象である。即ち、粒子の大きさが小さいほど周縁部に移動しやすく、大きさの小さい粒子が液滴の周縁部に堆積し、相対的に大きな粒子は液滴の中心部に分布する現像である。本発明では、電子輸送層組成物に所定の有機リガンド及び/又は後述の単量体を導入することにより、コーヒーリング効果を最小化し、膜の均一性を最大化することができる。
【0046】
有機リガンドの含有量は、特に制限されず、当該分野で公知の範囲内で適宜調節することができる。分散性と膜の均一性を考慮し、上記金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属、例えば、亜鉛(Zn)1モルに対して、0.0001~10molの範囲であり、具体的には、0.001~5molの範囲であってもよい。
【0047】
一実施形態では、上記金属酸化物ナノ粒子は、表面の一部又は全部に形成された高分子コート層を含むことができる。
【0048】
上記高分子コート層の成分としては、特に制限されず、当該分野で公知の通常の高分子を適用してもよい。例えば、当該分野で公知のアクリル系又はメタクリル系高分子やポリエチレングリコールを制限なく使用して形成することができる。具体的には、分子中の極性官能基を所定の範囲で含む(メタ)アクリル系高分子及び/又は親水性部分を有するポリエチレングリコールを使用することが好ましい。このような官能基は、一部の化学物質との反応を起こすことができ、この反応を用いて金属酸化物ナノ粒子表面への高分子コーティングを誘導してもよい。
【0049】
上記高分子コート層を形成する単量体(単分子)としては、当該分野で公知の通常の(メタ)アクリレートモノマーを使用することができるが、これに制限されない。使用可能な単量体としては、例えば、カプロラクトンアクリレート、オルソフェニルフェノールエトキシアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどの単官能(メタ)アクリレートモノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオレフィングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリルオキシプロパン、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、及びトリクロロデカンジメタノールジアクリレートなどの芳香環を有するジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(エチレンオキシド)変性トリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(プロピレンオキシド)変性トリアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートなどの3官能(メタ)アクリレートモノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(4官能単量体)、又はこれらの混合物などの4官能(メタ)アクリレートモノマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、又はこれらの混合物などの5官能(メタ)アクリレートモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、又はこれらの混合物などの6官能(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0050】
上記高分子コート層が金属酸化物ナノ粒子の表面に形成されることで、インクジェットの吐出時においてコーヒーリング効果(CRF)の改善効果が発現され、膜の均一性を確保することができる。
【0051】
なお、本発明において、電子輸送層を構成する物質として金属酸化物ナノ粒子を主に説明しているが、上述したものに限らず、当該分野で電子輸送層物質として使用可能な有機物、又は有無機合成物を適用することも本発明の範疇に属する。
【0052】
本発明において、上記金属酸化物ナノ粒子の含有量は、特に制限されず、当該分野で公知の範囲内で適宜調節することができる。一例として、当該電子輸送層組成物の全重量(例えば、100重量部)に対して5~30重量部であり、具体的には、10~20重量部であってもよい。
【0053】
溶媒
本発明に係る電子輸送層組成物は、粘度、極性、蒸気圧などの物性が異なる少なくとも3種の溶媒を含む。
【0054】
従来、金属酸化物ナノ粒子、例えば、ZnMgOは、材料の特性上、アルコール系溶媒を分散剤として使用しているが、エタノールを単独で使用する場合、素子の特性が実現されるが、インクジェット吐出が行われないという問題点がある。
【0055】
なお、インクジェット装置の吐出条件は、粘度と蒸気圧とに大別される。粘度が高すぎたり低すぎたりすると、均一な膜が得られなくなり、また、蒸気圧によって吐出程度が決定される。本発明は、インクジェット吐出に適正な粘度と蒸気圧を考慮し、このような物性を満足し得る少なくとも3種の溶媒を選定し、これらの混合比率を所定の範囲に制御することで、電子輸送層のインク組成物の溶媒として構成することを特徴とする。
【0056】
一実施形態では、少なくとも3種の溶媒が含まれた本発明の電子輸送層組成物は、20℃での粘度が1.0~3.0cpsであり、20℃での蒸気圧が0.6~45mmHgであり、接触角が25~80°であり、固形分の含有量が5~30重量%であり得る。より具体的には、1.2~2.0cpsの粘度、1.0~30mmHgの蒸気圧、30~50°の接触角、及び5~25重量%の固形分含有量であってもよい。
【0057】
上述のような粘度、蒸気圧、及び接触角の物性を有する場合は、インクジェット吐出が容易に行われるとともに、吐出されるインクが均一性を有することで、素子の特性が実現され得る。
【0058】
本発明に係る電子輸送層組成物としては、上記のような粘度、蒸気圧、接触角の特性を満足し得るものであれば、上記組成物を構成する少なくとも3種以上の溶媒の具体的成分及び/又はその含有量などに特に制限されない。
【0059】
一実施形態では、上記少なくとも3種の溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、2-メトキシエタノール、及びブタノールが挙げられる。
【0060】
即ち、本発明では、良好な分散性及び粘度を有するジメチルスルホキシド(DMSO)を主溶媒として使用しているが、インクジェット吐出の用途を考慮してDMSO溶媒を単独で使用する場合、濡れ性(wettablity)が低下することがある。一方、濡れ性に優れたエタノールと混合した2種の溶媒は、インクジェット吐出の特性として要求される粘度、接触角の物性のレベルを満たしていない。そこで、本発明では、DMSO溶媒とエタノールを使用し、ここに、アルコール系溶媒のうち、適正な粘度を有する2-メトキシエタノールとブタノールを混用することで、最終的に組成物が上記のような粘度、蒸気圧、接触角の特性を同時に満たすように制御している。一例として、各溶媒の粘度は、DMSO(1.98cps)、エタノール(1.07cps)、2-メトキシエタノール(1.70cps)、ブタノール(2.57cps)であってもよい。また、各溶媒の蒸気圧は、DMSO(0.6mmHg)、エタノール(44.62mmHg)、2-メトキシエタノール(6mmHg)、ブタノール(5.47mmHg)であってもよい。上記3種以上の溶媒を所定の混合比率で構成することにより、1.0~3.0cpsの粘度、25~80°の接触角、及び0.6~45mmHgの蒸気圧の、最適な電子輸送層組成物の構成を得ることができる。
【0061】
本発明による一実施形態において、少なくとも3種の溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を主溶媒として含み、このようなDMSOは、全溶媒100体積%に対して、30体積%以上であるように構成することができる。また、エタノールの含有量は、全溶媒100体積%に対して、10体積%以上であるように構成することができる。また、2-メトキシエタノールの含有量は、全溶媒100体積%に対して、10体積%以上であり、ブタノールは、全溶媒100体積%に対して、0~50体積%の範囲であり得る。なお、全溶媒とは、上記少なくとも3種以上の溶媒の合計体積を意味してもよい。また、上記少なくとも3種の溶媒に、後述する金属酸化物ナノ粒子の分散液に含まれる分散溶媒をさらに含むことを意味してもよい。
【0062】
一実施形態では、上記少なくとも3種の溶媒のうち、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、2-メトキシエタノール、及びブタノールの混合比率は、3~8:1~3:1~2:0~1体積比であり、好ましくは、5:3:1:1体積比であり得る。このとき、DMSOの比率が3未満であれば、インクジェット吐出が不安定であり、アルコール系溶媒の比率が相対的に高くなって、素子特性の方のみが有利になる結果が生じる。また、2-メトキシエタノールとブタノールは、金属酸化物ナノ粒子(ZnMgO)の所定の粘度及び接触角の物性を確保するために添加されるものであり、これらの溶媒の含有比率が1超である場合、粘度が高くなって、インクジェット吐出と素子の実現に悪影響を及ぼすことになる。
【0063】
本発明において、上記少なくとも3種の溶媒の含有量は、特に制限されず、当該分野で公知の範囲内で適宜調節することができる。例えば、当該電子輸送層組成物100重量部中の残部であり、具体的には、70~95重量部であってもよい。
【0064】
添加剤
上述した成分の他に、本発明の電子輸送層組成物は、発明の効果を阻害しない範囲内で、当該分野で公知の少なくとも1種の添加剤を制限なく使用することができる。
【0065】
使用可能な添加剤としては、例えば、光安定化剤、熱安定化剤、光開始促進剤、熱開始促進剤、平滑化剤、強化剤、強粘剤、着色剤、反応性希釈剤、カップリング剤、分散剤、溶剤などが挙げられる。これらは、単独で使用又は2種以上を混用してもよい。このとき、添加剤の含有量は、当該分野で公知の範囲内で適宜調節することができ、特に制限されない。例えば、上記少なくとも1種の添加剤は、当該電子輸送層組成物の全重量を基準にして0.01~5重量部、具体的には、0.01~2重量部であってもよい。
【0066】
本発明に係るインクジェット印刷用の電子輸送層組成物は、上記金属酸化物ナノ粒子、少なくとも3種の溶媒、及び必要に応じて配合されるリガンド、単量体、その他の添加剤を、当該分野で周知の常法に従って混合及び撹拌することで製造することができる。
【0067】
上記電子輸送層組成物を製造する一実施形態としては、例えば、(i)亜鉛含有化合物と、ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属含有化合物とが溶媒に溶解された反応溶液に、塩基性物質を添加した後、沈殿させ、金属酸化物ナノ粒子の分散液を製造する第1のステップと、(ii)上記製造された金属酸化物ナノ粒子の分散液に、粘度、極性、及び蒸気圧のうちのいずれか一つ以上が異なる少なくとも3種の溶媒を投入した後、混合して電子輸送層組成物を製造する第2のステップとを含むことができる。
【0068】
上記第1のステップにおいて、亜鉛含有化合物と金属含有化合物としては、特に制限されず、当該分野で公知のものを制限なく使用することができる。例えば、酢酸亜鉛二水和物(Zn acetate dihydrate)、塩化亜鉛(Zn chloride)、硝酸亜鉛(Zn nitrate)、硫酸亜鉛(Zn sulfate)、酢酸マグネシウム四水和物(Mg acetate tetrahydrate)などを使用することができる。
【0069】
また、塩基性物質としては、特に制限されず、当該分野で公知のものを制限なく使用することができる。例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethyl ammonium hydroxide;TMAH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、及びアミン類(amine)からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
【0070】
上記第1のステップにおいて、金属酸化物ナノ粒子の分散液は、有機リガンドをさらに含むことができる。このとき、有機リガンドの含有量は、上記金属酸化物ナノ粒子の分散液の全重量(例えば、100重量%)に対して、0~10重量%の範囲であり、具体的には、0超~5重量%以下であってよい。
【0071】
また、第1のステップにおいて、金属酸化物ナノ粒子の分散液は、高分子をさらに含むことができる。このような高分子は、当該分野で公知の通常の親水性部分を含むことができ、一例として、カルボキシル基及びヒドロキシ基から選択される親水性部分を少なくとも2つ以上含むことができる。使用可能な高分子としては、例えば、カルボキシル基を有するポリエチレングリコール(PEG)などが挙げられる。上記高分子は、金属酸化物ナノ粒子分散液の全重量(例えば、100重量%)に対して、0~10重量%の範囲で含まれてもよいが、これに制限されない。
【0072】
塩基性物質を添加した後、55~65℃の温度に昇温後、約0.5~2時間、均一な速度で撹拌及び反応してナノ粒子を沈殿させ、溶媒(ソルベント)と非溶媒(ノンソルベント)の特性を用いて金属酸化物ナノ粒子を分離した後、金属酸化物ナノ粒子が均一に分散された分散液を製造してもよい。
【0073】
使用可能な溶媒(ソルベント)としては、例えば、ヘキサン(hexane)、ベンゼン、キシレン(xylene)、トルエン(toluene)、オクタン、クロロホルム(chloroform)、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、シクロヘキサン、ジクロロベンゼンなどが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用又は2種以上を混用してもよい。また、使用可能な非溶媒(ノンソルベント)としては、例えば、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに制限されない。これらは、単独で使用又は2種以上を混用してもよい。
【0074】
上記第2のステップにおいて、上記金属酸化物ナノ粒子と上記少なくとも3種の溶媒との混合比率は、5~30:95~70重量比であり得る。しかし、これに制限されず、当該分野で公知の範囲内で適宜調節することができる。
【0075】
また、混合方法は、特に制限されず、例えば、当該分野で公知の通常のホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロールなどの混合機を使用して行うことができる。
【0076】
上記第2のステップで製造された電子輸送層組成物は、単量体及び分散剤のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。このとき、単量体及び/又は分散剤の含有量は、上記電子輸送層組成物100体積%に対して、0~10体積%の範囲であり、具体的には、0超~5体積%以下であってもよい。
【0077】
上述のように構成される本発明の電子輸送層組成物は、粘度、蒸気圧の特性が最適化されることで優れた作業性と工程性を得ることができ、特に、インクジェットの吐出性、吐出されるインクの形状、基板上に着弾したインクの形状の面において、均一性及び安定性がいずれも確保され、インクジェット印刷方式に有用である。
【0078】
<発光素子>
本発明の一実施形態による発光素子は、上記電子輸送層組成物から形成された電子輸送層を備えるという点で従来の発光素子とは区別される。
【0079】
一実施形態では、上記発光素子は、第1の電極;上記第1の電極と対向するように配置される第2の電極、上記第1の電極と上記第2の電極との間に配置される発光層、上記第1の電極と上記発光層との間に配置される正孔輸送層、及び、上記発光層と上記第2の電極との間に配置され、上記電子輸送層組成物をインクジェット印刷して形成される電子輸送層を含む。必要に応じて、上記発光素子は、正孔注入層及び電子注入層のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0080】
以下、本発明について、量子ドット発光素子(Quantum dot Light Emitting Device)を例にして説明するが、これに制限されず、発光素子は、有機発光素子などの種々の発光素子に適用することができる。
【0081】
第1の電極は、基板上に配置される。このような基板としては、透明でかつ表面が平らなガラス基板又は透明プラスチック基板であり得る。基板は、汚染物質の除去のために、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶媒で超音波洗浄を行い、UVオゾン処理して使用することができる。
【0082】
第1の電極は、陽極として提供される。一例として、陽極は、金属からなり、各透明/不透明の条件に合致する金属酸化物、又はその他の非酸化物の無機物からなってもよい。下部発光のために、第1の電極は、透明なITO、IZO、ITZO、AZOのような透明導電性金属からなってもよい。
【0083】
正孔注入層と正孔輸送層は、第の1電極上に位置している。このような正孔注入層と正孔輸送層は、第1の電極からの正孔注入を容易にし、また、発光層に正孔を受け渡す役割をする。正孔輸送層は、有機物又は無機物の適用が可能であり、有機物の場合は、CBP(4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル)、-NPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1=ナフチル)-1,1’-ビフェニル-4,4”-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)-トリフェニルアミン)、TFB、又はDNTPD(N,N’-ジ(4-(N,N’-ジフェニル-アミノ)フェニル)-N,N’-ジフェニルベンジジン)からなり、無機物の場合は、NiO、又はMoO3の酸化物からなってもよい。一例として、正孔注入層は、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)であってもよい。また、正孔輸送層は、TFBやポリ(9-ビニルカルバゾール)(PVK)などであってもよい。
【0084】
発光層は、正孔輸送層上に位置し、量子ドットが発光層に提供されることになる。一例として、発光層は、溶媒に量子ドットを分散させた後、分散液をコートする溶液工程で正孔輸送層上にコーティングを施した後、上記溶媒を揮発させて形成することができる。上記コーティング方法としては、例えば、ドロップキャスティング(dropcasting)法、スピンコーティング(spin coating)法、ディップコーティング(dip coating)法、スプレーコーティング(spray coating)法、フローコーティング(flow coating)法、スクリーン印刷(screen printing)法、又はインクジェット印刷法などを、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0085】
発光層を構成する量子ドット(QD)は、ナノサイズの半導体物質を意味することもできる。原子が分子を形成し、分子は少数の分子が集まった分子集合体であるクラスターを構成してナノ粒子を形成することになるが、このようなナノ粒子が半導体特性を有する時は量子ドットと称される。上記量子ドットは、外部からエネルギーを受けて浮き状態になると、上記量子ドット自体が該当するエネルギーバンドギャップによるエネルギーを放出することになる。
【0086】
上記のような量子ドットは、均質な(homogeneous)単層構造、コア-シェル(core-shell)型、グラジエント(gradient)構造などのような多層構造、又は、これらの混合構造であってもよい。
【0087】
単層構造の量子ドット(QD)、又は多層構造を構成するコア(core)及び/又は表面(最外殻)を除く複数層のシェル(shell)の成分としては、それぞれ独立して、後述するII-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物、及びこれらの組み合わせから自由に選択可能である。このとき、シェルが複数層である場合、各層は互いに異なる成分、例えば、(準)金属酸化物を含有してもよく、下記で例示する成分から自由に構成することができる。
【0088】
一例において、II-VI族化合物としては、CdO、CdS、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物、並びに、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されてもよい。
【0089】
他の一例において、III-V族化合物としては、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物、並びに、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されてもよい。
【0090】
他の一例において、IV-VI族化合物としては、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される三元素化合物、並びに、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群から選択される四元素化合物からなる群から選択されてもよい。
【0091】
他の一例において、IV族元素としては、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。また、IV族化合物としては、SiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群から選択される二元素化合物であってよい。
【0092】
上述のような二元素化合物、三元素化合物、又は四元素化合物は、均一な濃度で粒子中に存在するか、濃度が部分的に異なる状態になって同一の粒子中に存在してもよい。また、一つの量子ドットが他の量子ドットを包み込んだコア-シェル型の構造を有することもできる。コアとシェルとの界面は、シェルに存在する元素の濃度が中心に行くほど低くなる濃度勾配(グラジエント)を有することができる。
【0093】
量子ドットの形状としては、当該分野で一般的な形状であれば、特に制限されない。例えば、球状、棒(rod)状、ピラミッド型、ディスク(disc)状、マルチアーム(multi-arm)状、又は立方体(cubic)状のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノファイバー、板状ナノ粒子などの形態を有するものを使用することができる。
【0094】
また、量子ドットの大きさは、特に制限されず、当該分野で公知の通常の範囲内で適宜調節することができる。一例として、量子ドットの平均粒径(D50)は、1~20nmであり、具体的には、2~15nmであってもよい。このように量子ドットの粒径が約1~20nmの範囲で制御される場合、希望する色の光を放出することができる。例えば、本発明では、青色発光量子ドットを使用してもよい。具体的には、青色発光量子ドット(QD)としては、Cd系II-VI族QD(例えば、CdZnS、CdZnSSe、CdZnSe、CdS、CdSe)、非Cd系II-VI族QD(例えば、ZnSe、ZnTe、ZnS、HgS)、又は非Cd系III-V族QD(例えば、InP、InGaP、InZnP、GaN、GaAs、GaP)を使用することができる。
【0095】
電子輸送層は、第2の電極からの電子注入を容易にし、発光層に電子を輸送する役割をする。このような電子輸送層は、ZnOのバンドギャップを増加させ得る金属が合金化されたZn含有金属酸化物ナノ粒子を含む。一例として、電子輸送層は、発光層上に上記電子輸送層組成物をインクジェット印刷した後、溶媒を揮発させて形成することができる。本発明の電子輸送層は、電子注入層の役割を兼ねる単層構造を有し、又は別に電子注入層を積層構造として形成することができる。
【0096】
第2の電極は、電子注入/輸送層上に位置し、陰極として提供されてもよい。第2の電極は、金属からなり、各透明/不透明の条件に合致する金属酸化物、又はその他の非酸化物の無機物からなってもよい。特に、第2の電極としては、発光層のLUMO準位で電子の注入が容易に行われるように低い仕事関数を有し、内部反射率に優れた金属類の電極を使用することができ、具体的には、電子注入が容易に行われるように仕事関数の小さい金属、即ち、I、Ca、Ba、Ca/Al、LiF/Ca、LiF/Al、BaF2/Al、BaF2/Ca/Al、Al、Mg、Ag:Mg合金などを使用することができる。
【0097】
以上、本実施形態に係る発光素子が量子ドット発光素子であることについて説明した。しかし、上記とは異なり、発光素子は、種々の発光素子であり得る。一例として、発光素子は、有機発光素子であってもよい。また、本実施例では、電子注入/輸送層が単一の物質からなるものとして説明しているが、これとは異なり、電子注入層と電子輸送層とが別々に提供されてもよい。
【0098】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述する。但し、後述の実施例は、本発明の例示に過ぎないものであり、本発明は、これらの実施例によって限定されない。
【実施例】
【0099】
[実施例1]インクジェット印刷用の電子輸送層組成物の作製
酢酸亜鉛脱水和物(Zinc acetate dehydrate;Zn(OAc)2)と、酢酸マグネシウム四水和物(magnesium acetate tetrahydrate)とを、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)に溶解させた後、塩基性物質である水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethyl ammonium hydroxide;TMAH)を注入し、60℃に加熱し、約1時間反応させた。反応終了後のZnMgO溶液は、ヘキサンとアセトンを添加して粒子の遠心分離を行い、DMSO、エタノール、2-メトキシエタノール、ブタノールの混合比率を5:3:1:1の体積比で投入し、分散させた。上記のようにしてインクジェット印刷を実行し得る実施例1の電子輸送層組成物(ZnMgOナノ粒子分散液)を製造した。
【0100】
[実施例2]リガンドを有するインクジェット印刷用の電子輸送層組成物の作製(1)
酢酸亜鉛脱水和物(Zinc acetate dehydrate;Zn(OAc)2)と、酢酸マグネシウム四水和物(magnesium acetate tetrahydrate)とを、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)に溶解させた後、塩基性物質である水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethyl ammonium hydroxide;TMAH)を注入し、60℃に加熱した。上記反応溶液に、エタノールに5wt%希釈されたモノ(2-アクリロイルオキシエチル)コハク酸(MAES)0.2mlを注入した後、約1時間反応させた。反応終了後のZnMgO溶液は、ヘキサンとアセトンを添加して量子ドット粒子の遠心分離を行い、DMSO、エタノール、2-メトキシエタノール、ブタノールの混合比率を5:3:1:1の体積比で投入し、分散させた。上記のようにしてインクジェット印刷を実行し得る実施例2の電子輸送層組成物を製造した。
【0101】
[実施例3]リガンドを有するインクジェット印刷用の電子輸送層組成物の作製(2)
酢酸亜鉛脱水和物(Zinc acetate dehydrate;Zn(OAc)2)と、酢酸マグネシウム四水和物(magnesium acetate tetrahydrate)とを、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)に溶解させた後、塩基性物質である水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethyl ammonium hydroxide;TMAH)を注入し、60℃に加熱した。上記反応溶液に、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)コハク酸(MAES)0.2mlを注入した後、約1時間反応させた。反応終了後のZnMgO溶液は、ヘキサンとアセトンを添加して粒子の遠心分離を行い、DMSO、エタノール、2-メトキシエタノール、ブタノールを5:3:1:1の体積比で入れ、分散させた。上記のようにしてインクジェット印刷を実行し得る実施例3の電子輸送層組成物を製造した。
【0102】
[実施例4]単量体が添加されたインクジェット印刷用の電子輸送層組成物の作製(1)
電子輸送層の全組成物(ZnMgOナノ粒子分散液)100体積%に対して、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート単量体を1体積%の割合で混合した以外は、上記実施例1と同様にして実施例4のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物を製造した。
【0103】
[実施例5]単量体が添加されたインクジェット印刷用の電子輸送層組成物の作製(2)
電子輸送層の全組成物100体積%に対して、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート単量体を2体積%の割合で混合した以外は、上記実施例1と同様にして実施例5のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物を製造した。
【0104】
[実施例6]単量体が添加されたインクジェット印刷用の電子輸送層組成物の作製(3)
電子輸送層の全組成物100体積%に対して、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート単量体を3体積%の割合で混合した以外は、上記実施例1と同様にして実施例6のインクジェット印刷用の電子輸送層組成物を製造した。
【0105】
[実施例7]高分子コートが施されたインクジェット印刷用の電子輸送層組成物の作製
実施例1の反応溶液に、カルボキシル基を有するポリエチレングリコール(PEG)0.2mlを注入した後、約1時間反応させた。反応終了後のZnMgO:PEG溶液は、遠心分離を行い、DMSO、エタノール、2-メトキシエタノール、ブタノールを5:3:1:1の体積比で入れ、分散させた。上記のようにしてインクジェット印刷を実行し得る実施例7の電子輸送層組成物を製造した。
【0106】
[比較例1]スピンコーティング用の電子輸送層組成物の作製
酢酸亜鉛脱水和物と酢酸マグネシウム四水和物とをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた後、塩基性物質である水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を注入し、60℃に加熱し、約1時間反応させた。反応終了後のZnMgO溶液と、ヘキサンと、アセトンとを1:2:6の体積比で入れ、遠心分離機を用いて溶媒を分離した後、エタノールで分散させ、比較例1の電子輸送層組成物を製造した。
【0107】
[比較例2]リガンドを有するスピンコーティング用の電子輸送層組成物の作製
上記と同様に、Zn(OAc)2、TMAHをそれぞれ溶解し、両物質を反応させる過程でZn(OAc)2:TMAH(60ml)に対して、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)コハク酸(MAES)0.2mlの割合で注入し、60℃に加熱し、約1時間反応させた。反応終了後のZnMgO:MAES溶液は、ヘキサンとアセトンを添加し、遠心分離機を用いて溶媒を分離した後、エタノールを入れ、分散させ、比較例2の電子輸送層組成物を製造した。
【0108】
[実験例1]分光の評価
実施例1及び比較例1で製造された電子輸送層組成物を用いて吸収スペクトルを測定した。
【0109】
図1には、実施例1で合成されたZnMgOナノ粒子の紫外可視吸収スペクトルが示されており、
図2には、比較例1で合成されたZnMgOナノ粒子の紫外可視吸収スペクトルが示されている。
【0110】
図1及び
図2に示されるように、製造されたZnMgOの最大吸収波長は、約330nmであり、紫外領域において広い吸収帯域を有することがわかる。これにより、スピンコーティング用組成物とインクジェット用組成物を使用しても同様な分光特性を示すことが確認された。
【0111】
[実験例2]インクジェット吐出及び形状の評価
実施例1~3及び6~7、比較例1~2において電子輸送層組成物を用いてインクジェット印刷による吐出及び形状の分析を行った。
【0112】
具体的には、製造された各インク組成物を、インクジェット印刷装置(OMNIJET200)を用いて吐出し、このとき、1ドロップの形態及び5ドロップで形成される1*5パターンの形態として吐出した。
【0113】
また、基板上に着弾したインクは、3次元表面形状測定器(NV9000、Zygo社製)を用いて分析し、このとき、コーヒーリング効果(Coffee Ring Effect)の程度を定量化するために下記式1を導入し、その結果を下記表1と
図3~15にそれぞれ示す。
【0114】
[式1]
(式中、H
maxは、パターンの最も厚い厚さであり、H
minは、パターンの最も薄い厚さであり、CRF値は、コーヒーリング効果の程度を意味する。即ち、CRF=1は、コーヒーリングが完全に除去されていることを示す。)
【0115】
【0116】
上記表1に示されるように、比較例1及び2では、インクジェット法による吐出及びパターン形成が不可能であったことがわかる。これに対し、物性の異なる少なくとも3種の溶媒が混用されている本発明の電子輸送層組成物は、一般的なインクジェット印刷装置からの吐出が容易に行われるとともに、吐出されたインク及び基板に着弾したインクの形状がいずれも均一であるという特性を示し、インクジェット印刷法に有用であることが確認された(
図3~
図15を参照)。
【0117】
[実験例3]発光素子の作製及び物性の評価
実施例1~3及び6~7、比較例1及び2において電子輸送層組成物を用いて発光素子を製造し、その物性を評価した。
【0118】
具体的には、酸化インジウムスズ(ITO)基板をイソプロピルアルコールとアセトンで、それぞれ15分間ずつ洗浄した後、60℃のオーブン中で30分間、乾燥させた。乾燥完了後の基板を、20分間、UVオゾン処理した後、PEDOT:PSSをスピンコーティングして正孔注入層(HIL)を形成した。このとき、スピンコーティング条件は、4,500rpm/60秒、熱処理条件は、150℃/20分であった。
【0119】
次に、窒素ガス(N2)雰囲気下、6mg/mlでクロロベンゼンに溶解されているTFB材料を、4,500rpm/30秒の条件で成膜し、15℃/30分間、熱処理して正孔輸送層(HTL)を形成した。
【0120】
その後、発光層(EML)を形成するため、リン化インジウム(InP)に基づく量子ドットをオクタン5mlに分散させた分散液を用いて、スピンコーティング法で3,500rpm/20秒で薄膜を形成した。
【0121】
次に、実施例1~3、6~7及び比較例1~2で製造された電子輸送層組成物を用いてインクジェット法でコーティングして電子輸送層(ETL)を製作した後、真空熱蒸着法によって電極を形成し、発光素子を製造した。
【0122】
上述のような方法により製造された発光素子について、IVL測定装置を用いて素子の効率を評価し、その結果を下記表2及び
図16~17に示す。
【0123】
【0124】
上記表2に示されるように、比較例1及び2の発光素子は、素子を駆動できなかったことがわかる。これに対し、本発明による電子輸送層組成物を用いて形成された電子輸送層を備える実施例1~3及び6~7の発光素子は、低い駆動電圧、優れた発光効率及び外部量子効率(External Quntum Efficiency;EQE)を同時に有することが確認された(
図16及び17を参照)。
【国際調査報告】