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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】乳成分を含まないチョコレート
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/44 20060101AFI20240711BHJP
   A23G 1/48 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A23G1/44
A23G1/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502050
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022069832
(87)【国際公開番号】W WO2023285643
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】BE2021/5555
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505090469
【氏名又は名称】プラトス ナームローズ フェノートサップ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】オイマン・ペルコツ,セナ
(72)【発明者】
【氏名】デベルトランド,アガセ
(72)【発明者】
【氏名】パレイト,ブラム
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG03
4B014GG06
4B014GG13
4B014GG14
4B014GK03
4B014GL07
4B014GL10
(57)【要約】
本発明は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を含むミルクタイプまたはホワイトタイプのヴィーガンチョコレートを提供し、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は少なくとも40.0%(w/w乾燥物質(DM))である。本明細書に教示されるミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを調製する方法、本明細書に教示されるチョコレートを含むベーカリーまたは菓子製品、このようなベーカリーまたは菓子製品を調製する方法、ならびにチョコレートの調理法における1つまたは複数の乳成分の代替物としての少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分および場合により1つまたは複数の増量剤の使用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を含むミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートであって、チョコレートがヴィーガンであることを特徴とし、チョコレートが、2.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含み、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量が少なくとも40.0%(w/w乾燥物質(DM))であるチョコレート。
【請求項2】
ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量が少なくとも60.0%(w/wDM)である、請求項1に記載のチョコレート。
【請求項3】
ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量が少なくとも8.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10.0%(w/wDM)である、請求項1または2に記載のチョコレート。
【請求項4】
ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量とヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量の比が少なくとも0.10、好ましくは少なくとも0.15である、請求項2または3に記載のチョコレート。
【請求項5】
1つまたは複数の増量剤をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のチョコレート。
【請求項6】
チョコレートが、3.0から10.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のチョコレート。
【請求項7】
チョコレートが、5.0から25.0%(w/w)の間の、好ましくは10.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分と1つまたは複数の増量剤の組合せを含む、請求項5または6に記載のチョコレート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のチョコレートを含むベーカリーまたは菓子製品。
【請求項9】
ミルクタイプまたはホワイトタイプのヴィーガンチョコレートを調製する方法であって、
(i)少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含む溶融チョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合する工程、または
(ii)少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含むチョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合すると同時に、チョコレート原料を溶融する工程
を含み、それによってミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを得、チョコレートが、2.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含む、方法。
【請求項10】
ミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートをリファイニングする工程、コンチングする工程および/またはテンパリングする工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のチョコレートがベーカリーまたは菓子製品へのコーティングおよび/またはフィリングとして適用される、請求項8に記載のベーカリーまたは菓子製品を調製する方法。
【請求項12】
ヴィーガンチョコレートの調理法における1つまたは複数の乳成分の完全なまたは部分的な代替物としての、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分および場合により1つまたは複数の増量剤の使用であって、チョコレートが、2.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含む、使用。
【請求項13】
ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量が少なくとも60.0%(w/wDM)であり、かつ/またはヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量が少なくとも8.0%(w/wDM)である、請求項9もしくは10に記載の方法または請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレートの分野に関する。より具体的には、本発明は、1つまたは複数の乳原料が植物ベースの原料によって部分的にまたは完全に置き換えられた、純チョコレート(real chocolate)またはコンパウンドチョコレート/コンパウンドコーティングなどの、乳製品が少ないまたは乳製品を含まないミルクチョコレートまたはホワイトチョコレートの代替物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のチョコレート市場は、2019年には443.5億USDとなっており、2027年には613.4億USDまで拡大することが予想される。チョコレートは、安らぎおよび楽しみを求める消費者によって、多くの異なる場面で消費される。
【0003】
しかし、一部の消費者は製品が美味しいという見込みではもはや満足しない。これらの消費者は、健康的で、環境に優しく、動物実験を行っていない(すなわち、動物福祉とつながりがある)製品を望んでいる。ここ数年で植物ベースの食事が拡大したのは、このような状況においてである。この植物ベースの食事は、主に果物、野菜、マメ科植物、マメ、ナッツおよび種子を食べることに重点を置く。植物ベースの食事は、ベジタリアン、ペスカタリアンおよびフレキシタリアン(flexitarian)などの動物ベースの製品の消費を減らしたいすべての人々も含むので、植物ベースの食事をヴィーガン食のみにまとめることは短絡的であろう。2020年には、5人に1人が、彼らの食事から動物ベースの製品を減らし、または断った。昨今の危機によって、人々の食における健康、安全性および持続可能性に対する意識がさらに高まった。
【0004】
このような状況においては、チョコレート市場も例外ではない。実際に、ミルク(純)チョコレートおよびホワイト(純)チョコレート、ならびにコンパウンドチョコレートも、粉乳またはホエイ粉末などのミルク成分を含有する。したがって、新たな植物ベースのチョコレートを売り出す傾向が高まっている。
【0005】
いくつかの植物ベースのチョコレートは、アーモンド粉末、エンバク粉末、ココナツ粉末またはヘーゼルナッツ粉末などの目立つ味を有するミルク代替物を使用する。これらのミルク代替物はミルクの味には似ていないが、新たな、かつ代替的な風味をもたらす。多くの場合、これらの風味はかなり強く、本来のチョコレートの味を隠し、または変えることがあり、これらのチョコレートを幅広い用途に適さないものにする。また、ミルク原料は風味をもたらすこと以外の役割も果たすので、製品の食感も影響される。さらに、上記の植物ベースの代替物に関する1つの重要な問題は、グルテン、ココナツまたはナッツなどのアレルゲンが存在することである。
【0006】
アレルゲンを含まない植物ベースのチョコレートは、通常、米粉末のベースまたは米粉のベースを用いて作成される。これらのチョコレートに関する主な問題は、味と食感である。これらのチョコレートの味は、甘いが特別な特徴または心地よい味わい(notes)がないと描写される場合がある。これらのチョコレートの食感には、消費者がミルクチョコレートまたはホワイトチョコレートにおいて評価する(十分な)クリーミーさが欠けている(ことが多い)が、これはチョコレート代替物には認めない。
【0007】
US10,555,543B2は、とりわけミルクチョコレート中の乳タンパク質を置き換えるためのエンドウタンパク質の使用を開示する。しかし、その配合には、チョコレートの味および食感を保つための無水乳脂肪の存在が必要であるので、このチョコレートはヴィーガンではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来技術は、素晴らしい味、心地よい食感およびアレルゲンの非存在を兼ね備えたヴィーガンチョコレートのための十分な解決法を提供しない。したがって、新たなチョコレートタイプの製品が今もなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分を使用することによって、素晴らしい味、心地よい食感を有し、アレルゲンを含まない、乳製品を含まないチョコレートまたは乳製品が少ないチョコレートを得ることが可能になることを驚くべきことに見出した。例えば、本発明者らは、チョコレートの調理法におけるヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の使用が、チョコレート代替物として十分に評価されるナッツのようでクリーミーな味わいをもたらすことを見出した。これらの特徴(ナッツのようでクリーミー)によって、チョコレート代替物の官能的知覚が、ダークチョコレート(カカオがより強く、苦味のある味わいまたは酸味のある味わい)によってもたらされる知覚とは異なるミルクチョコレートに近くなる(ミルクチョコレートを連想させる(milk chocolate associations))。本発明者らによって使用されるヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、チョコレート本来の味を隠さないか、または変えない。その上、この画分によって、乳製品ベースのミルクチョコレートのすべての特質を持つミルク風ヴィーガンチョコレートを得ることが可能になる。さらに、この画分は、本発明のチョコレートを幅広い用途に適したものにする。その上、本発明者らは、8.0%(w/wDM)未満の脂肪含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を使用する場合よりも、少なくとも8.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10.0%(w/wDM)の脂肪含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分が使用される場合の方が、さらにいっそう美味しい乳製品を含まないチョコレートまたは乳製品が少ないチョコレートが得られる可能性があることを明らかにした。
【0010】
その一方で、チョコレートの調理法における1つまたは複数の乳原料の代替物として、エンドウタンパク質、レンズマメタンパク質、米タンパク質またはエンバクタンパク質を使用しても、これらのタンパク質のいくつかが少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量および/または少なくとも8.0%(w/wDM)の脂肪含有量を有していたにもかかわらず、素晴らしい味および心地よい食感を有し、アレルゲンを含まないヴィーガンチョコレートをもたらさなかった。
【0011】
加えて、チョコレートの1つまたは複数の乳原料が本明細書に定義する増量剤のみによって置き換えられた場合(ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の非存在下で)、得られたチョコレートは甘くつまらない味を有し、ミルクチョコレートを連想させなかった。
【0012】
したがって、第1の態様は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を含むミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを提供し、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は少なくとも40.0%(w/wDM)である。
【0013】
さらなる態様は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を含むミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを提供し、チョコレートはヴィーガンであることを特徴とし、チョコレートは、2.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含み、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は少なくとも40.0%(w/w乾燥物質(DM))である。特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は、少なくとも60.0%(w/wDM)である。
【0014】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量は、少なくとも8.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10.0%(w/wDM)である。
【0015】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量とヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量の比は、少なくとも0.10、好ましくは少なくとも0.15である。
【0016】
特定の実施形態において、チョコレートはヴィーガンである。
特定の実施形態において、チョコレートは1つまたは複数の増量剤をさらに含む。
特定の実施形態において、チョコレートは2.0から20.0%(w/w)の間の、好ましくは3.0から10.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含む。
【0017】
特定の実施形態において、チョコレートは、5.0から25.0%(w/w)の間の、好ましくは10.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分と1つまたは複数の増量剤の組合せを含む。
【0018】
さらなる態様は、本明細書に教示されるチョコレートを含むベーカリーまたは菓子製品を提供する。
さらなる態様は、ミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを調製する方法であって、
(i)少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含む溶融チョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合する工程、または
(ii)少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含むチョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合すると同時に、チョコレート原料を溶融する工程
を含み、それによってミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを得る、方法を提供する。
【0019】
さらなる態様は、ミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを調製する方法であって、
(i)少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含む溶融チョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合する工程、または
(ii)少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含むチョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合すると同時に、チョコレート原料を溶融する工程
を含み、それによってミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを得、チョコレートが、2.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含む、方法を提供する。
【0020】
特定の実施形態において、方法は、ミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートをリファイニングする工程、コンチングする工程および/またはテンパリングする工程をさらに含む。
【0021】
さらなる態様は、本明細書に教示されるベーカリー製品または菓子製品を調製する方法を提供し、本明細書に教示されるチョコレートは、ベーカリーまたは菓子製品へのコーティングおよび/またはフィリングとして適用される。
【0022】
さらなる態様は、チョコレートの調理法における1つまたは複数の乳成分の完全なまたは部分的な代替物としての、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分および場合により1つまたは複数の増量剤の使用を提供する。
【0023】
さらなる態様は、ヴィーガンチョコレートの調理法における1つまたは複数の乳成分の完全なまたは部分的な代替物としての、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分および場合により1つまたは複数の増量剤の使用を提供し、チョコレートは、2.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子タンパク質を含む。
【0024】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は少なくとも60.0%(w/wDM)であり、かつ/またはヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量は少なくとも8.0%(w/wDM)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明において使用する本方法および装置を記載する前に、本発明は記載される特定の方法、成分、または装置に限定されず、当然ながら方法、成分および装置は変わってもよいことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとなるため、本明細書において使用する用語は、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書において使用するすべての技術用語および化学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実践または試験において、本明細書に記載されるものに類似または相当する任意の方法および材料が使用され得るが、好ましい方法および材料をこれから記載する。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈において別段明らかに示さない限り、単数形および複数形の両方を含む。
本明細書では、「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」および「からなる(comprised of)」という用語は、「含むこと(including)」、「含む(includes)」または「含有すること(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的または非限定的であり、追加の、記載されていないメンバー、要素または方法工程を除外しない。本記載では、特定の特長、部分または工程を「含む(comprises)」製品またはプロセスを指す場合、これは他の特長、部分または工程もまた存在し得る可能性を指すが、列挙した特長、部分または工程のみを含有する実施形態を指すこともある。「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」および「からなる(comprised of)」という用語は、「からなること(consisting of)」という用語も含む。
【0028】
数字の範囲を用いた数値の列挙は、これらの範囲のすべての値および端数、ならびに引用された端点を含む。
パラメーター、量、期間などの測定可能な値を指す場合に使用するような「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、変動が本明細書に開示する本発明に適用される限りにおいて、特定の値のおよび特定の値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動を含むことが意図される。「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語が指す値自体も開示されていることを理解されたい。
【0029】
本明細書全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関して記載される特定の特長、構造または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通じる様々な場所で、「一実施形態において」または「実施形態において」という語句が出ることは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指していないが、指すこともある。さらに、特定の特長、構造または特徴は、本開示から当業者には明らかとなるように、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法に組み合わされてもよい。さらに、当業者によって理解されるように、本明細書に記載されるいくつかの実施形態には、他の実施形態には含まれる他の特長を含まない、いくつかの特長を含むが、異なる実施形態の特長の組合せは、本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求されるいずれの実施形態も、任意の組合せで使用され得る。
【0030】
本発明者らは、チョコレート、好ましくはミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートの配合において特定のタイプのタンパク質源を使用することによって、素晴らしい味および食感を有し、アレルゲンを含まない可能性がある、乳製品が少ないまたは乳製品を含まない、好ましくは乳製品を含まないチョコレートを得ることが可能になることを驚くべきことに見出した。より詳細には、本発明者らは、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分を使用することによって、チョコレート代替物として十分に評価されるナッツのようでクリーミーな味わいを有する乳製品を含まないチョコレート(または乳製品が少ないチョコレート)を得ることが可能になることを明らかにした。その一方で、チョコレートの調理法における1つまたは複数の乳原料の代替物として、ヒヨコマメ粉(例えば、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有しない通常のヒヨコマメ粉)、エンドウタンパク質、レンズマメタンパク質、米タンパク質またはエンバクタンパク質などの他のタイプのタンパク質源を使用しても、素晴らしい味および心地よい食感を有し、アレルゲンを含まないヴィーガンチョコレートをもたらさなかった。
【0031】
その上、本発明者らは、8.0%(w/wDM)未満(それぞれ、または10.0%(w/wDM)未満)の脂肪含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を使用する場合よりも、少なくとも8.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10.0%(w/wDM)の脂肪含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分が使用される場合の方が、より美味しい乳製品を含まないチョコレートが得られる可能性があることを明らかにした。より詳細には、本発明者らは、8.0%(w/wDM)未満(それぞれ、または10.0%(w/wDM)未満)の脂肪含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を含むチョコレートタイプ製品よりも、得られたチョコレートタイプ製品の方が、口にクリーミーな感覚をもたらし、ナッツのような味および/または風味を有し、ミルクチョコレートを連想させながらも、わずかに苦味が少ないことを見出した。
【0032】
したがって、第1の態様は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を含むチョコレートを提供し、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は、少なくとも40.0%(w/wDM)である。
【0033】
特定の実施形態において、チョコレートは、ミルクタイプまたはホワイトタイプの純チョコレートまたはコンパウンドチョコレート、好ましくはミルクタイプの純チョコレートまたはミルクタイプのコンパウンドチョコレートである。
【0034】
本発明の文脈において、「ミルクタイプのチョコレート」および「ホワイトタイプのチョコレート」という用語は、本明細書で定義した通り、それぞれミルクチョコレートおよびホワイトチョコレートと同じ組成を有するチョコレートを指すが、乳製品の量は減らされているか、または乳製品はないので、したがって厳密に言えば(sensus stricto)ミルクチョコレートまたはホワイトチョコレートではないが、例えばチョコレート代替物である。本発明において、乳製品の量の減少、または乳製品の非存在は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分および場合により1つまたは複数の増量剤の存在によって補い、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は、少なくとも40.0%(w/w乾燥物質(DM))である。
【0035】
本発明の文脈において、「チョコレート」という用語は、「純チョコレート」および「チョコレート類似品(コンパウンドチョコレートともいう)」の両方を指す。本明細書では、「純チョコレート」という用語は、当技術分野で公知のその一般的な意味を有し、人が飲食することを意図したカカオ製品およびチョコレート製品に関する欧州議会および理事会のEC directive 2000/36/EC(2000年6月23日の指令)、FDA連邦規則基準第21編第163部カカオ製品またはチョコレートを定義した世界中の他の地域の法律などでダークチョコレート、ミルクチョコレートまたはホワイトチョコレートに与えられる定義に対応している。本明細書では、チョコレートとは、カカオ製品および砂糖(またはポリオール、繊維、希少糖などの砂糖代替物)から得られる、35.0%(w/w)以上の全乾燥カカオ固形分、18.0%(w/w)のココアバターおよび14.0%(w/w)の乾燥無脂カカオ固形分を含む製品を指す。本明細書では、純チョコレートという用語は、35.0%(w/w)以上の全乾燥カカオ固形分を含み、31.0%(w/w)以上のココアバターおよび2.50%(w/w)以上の乾燥無脂カカオ固形分を含む「クーベルチュールチョコレート」も含む。本明細書では、「ミルクチョコレート」という用語は、当技術分野で公知のその一般的な意味を有し、好ましくはカカオ製品、砂糖(または上記の砂糖代替物)およびミルクまたはミルク製品から得られる、25.0%(w/w)以上の全乾燥カカオ固形分、2.50%(w/w)の乾燥無脂カカオ固形分、12.0%(w/w)の乾燥ミルク固形分、3.39%(w/w)の乳脂肪および25.0%(w/w)の全脂肪を含む製品と定義される。
【0036】
本明細書では、「ホワイトチョコレート」という用語は、当技術分野で公知のその一般的な意味を有し、好ましくはココアバター、ミルクまたはミルク製品および砂糖(または上記の砂糖代替物)から得られる、20.0%(w/w)以上のココアバターおよびその3.50%(w/w)以上が乳脂肪である14.0%(w/w)の乾燥ミルク固形分を含む製品と定義される。
【0037】
特定の実施形態において、チョコレートは、5.0%(w/w)未満、4.0%(w/w)未満、3.0%(w/w)未満、2.0%(w/w)未満、1.0%(w/w)未満、0.5%(w/w)未満、または0.1%(w/w)未満の水を含む。
【0038】
加えて、乳化剤および香味料成分(例えばバニラ)などの任意成分をこれらのチョコレートに添加することが可能である。
チョコレート類似品は、硬いか、軟らかいかまたは液体であり得るダークチョコレート製品、ミルクチョコレート製品またはホワイトチョコレート製品である。それらのチョコレート類似品は、植物性脂肪からなる脂肪相(通常28.0から50.0%(w/w)の間)ならびに砂糖および/または砂糖代替物を含む乾燥相(通常30.0から50.0%(w/w)の間)を含む。それらのチョコレート類似品は、粉乳または粉乳代替物、ココアパウダーまたはココアパウダー代替物(チョコレート類似品のタイプ、ミルクまたはダークかによって通常5.0から25.0%(w/w)の間、ミルクチョコレート類似品は通常5.0から15.0%(w/w)の間)、乳化剤および/または様々な香味料を含んでいてもよい。それらのチョコレート類似品は、砂糖の部分的な代わりまたは全体の代わりとして、砂糖代替物も含有していてもよい。これらのチョコレート類似品は、通常ボールミルリファイナーを使用して加工されるが、3ロール/5ロールまたはリファイナーコンチェ(refiner conches)などの他のリファイニングプロセスも可能である。これらのチョコレート類似品は、パティスリー製品のための成形物からフィリングまで、ベーカリーのための具材(inclusions)から生地の香味料まで、多様な用途に使用することができる。チョコレート類似品の非限定的な例は、硬いダークコンパウンドチョコレート、硬いミルクコンパウンドチョコレートおよび硬いホワイトコンパウンドチョコレート、軟らかいダークコンパウンドチョコレート、軟らかいミルクコンパウンドチョコレートおよび軟らかいホワイトコンパウンドチョコレート、ならびにダークココアベースの脂肪フィリング、ミルクココアベースの脂肪フィリングおよびホワイトココアベースの脂肪フィリングである。
【0039】
特定の実施形態において、チョコレートは乳製品を含まない。特定の実施形態において、チョコレートはヴィーガンである。本発明の文脈において、「ヴィーガンチョコレート」という用語は、いかなる動物由来の原料を、より詳細には乳製品/乳原料を含まないチョコレートを指す。「ヴィーガン」という用語は、「乳製品を含まない」、「動物質を含まない」または「植物ベース」などの他の表現を含むが、それだけに限定されない。
【0040】
本発明の文脈において、「ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分」という用語は、グラム、ベンガルグラム、ガルバンゾ、ガルバンゾマメまたはエジプトマメとしても知られるヒヨコマメの種子またはヒヨコマメから得られる単離されたおよび/または濃縮されたタンパク質リッチ製品を指す。特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は、タンパク質リッチ画分が由来するヒヨコマメ種子のタンパク質含有量よりも、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%高い。ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を得る方法は、当技術分野では公知であり、例えば、種子の脱皮、種子の機械的破砕(湿式製粉または乾式製粉、すりつぶすことなど)、空気分級、電気分離、デンプン抽出、繊維抽出、アルカリ処理および/または酸処理によるタンパク質可溶化、発酵によるタンパク質可溶化、酵素処理、pH中和、タンパク質の等電点凝集、熱処理、濃縮(濾過、遠心分離など)ならびに乾燥(凍結乾燥、流動層乾燥など)などの加工工程が含まれる。
【0041】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、ヒヨコマメ種子全体(すなわち、少なくとも種皮および子葉を含む)または脱皮されたヒヨコマメ種子(すなわち、種皮を含まない)に由来する。
【0042】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子はCicer arietinum種の種子である。
ヒヨコマメ種子は、Desi、Kabuli、Amethyst、Flipper、Kyabra、Jimbour、Moti、PBA HatTRick、またはYorkerなどの当技術分野で公知の任意のヒヨコマメ種子の品種でもよい。
【0043】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子は、発芽させて(sprouted)いないヒヨコマメ種子または発芽して(germinated)いないヒヨコマメ種子である。
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分は、完全にヒヨコマメ種子に由来する。特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、加工助剤、添加されたタンパク質、添加されたビタミン、添加された砂糖などのいかなる添加成分(例えば、もともとヒヨコマメ種子内に存在していなかった成分および/または外部から添加される成分)を実質的に含まないか、または0.10%(w/w)未満、好ましくは0.010%未満、より好ましくは0.0%含む。
【0044】
ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、少なくとも40.0%(w/w乾燥物質(DM))、少なくとも45.0%(w/wDM)、少なくとも50.0%(w/wDM)、少なくとも55.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)、より好ましくは少なくとも66.0%(w/wDM)、少なくとも67.0%(w/wDM)、少なくとも68.0%(w/wDM)または少なくとも69.0%などの少なくとも65.0%(w/wDM)、さらにより好ましくは少なくとも71.0%(w/wDM)などの少なくとも70.0%(w/wDM)のタンパク質を含む。つまり、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、少なくとも40.0%(w/wDM)、少なくとも45.0%(w/wDM)、少なくとも50.0%(w/wDM)、少なくとも55.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)、より好ましくは少なくとも66.0%(w/wDM)、少なくとも67.0%(w/wDM)、少なくとも68.0%(w/wDM)または少なくとも69.0%などの少なくとも65.0%(w/wDM)、さらにより好ましくは少なくとも71.0%(w/wDM)などの少なくとも70.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有する。特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は、40.0%(w/wDM)から99.0%(w/wDM)の間、40.0%(w/wDM)から95.0%(w/wDM)の間、60.0%(w/wDM)から99.0%(w/wDM)の間、70.0%(w/wDM)から99.0%(w/wDM)の間、60.0%(w/wDM)から95.0%(w/wDM)の間、70.0%(w/wDM)から95.0%(w/wDM)の間、60.0%(w/wDM)から90.0%(w/wDM)の間、60.0%(w/wDM)から80.0%(w/wDM)の間または65.0%から(w/wDM)から80.0%(w/wDM)の間である。
【0045】
タンパク質含有量は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の全乾燥物質(DM)の重量%として示される(これは、本明細書では、「%w/wDM」と言われることがある)。
【0046】
ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定され得る。
ヒヨコマメ粉は、通常、約24.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有する。したがって、特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分は、ヒヨコマメ粉ではない。本明細書では、「ヒヨコマメ粉」という用語は、ヒヨコマメ種子全体または脱皮されたヒヨコマメ種子をすりつぶすことによって得られる粉末を指す。粉は、部分的にまたは全体的に製粉されたヒヨコマメの子実を含む。
【0047】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分は、ヒヨコマメ粉から生じてもよく、またはヒヨコマメ粉に由来してもよい。
【0048】
特定の実施形態において、チョコレートは、ヒヨコマメ粉を含まない。
特定の実施形態において、チョコレートは、ヒヨコマメ種子全体(すなわち、砕かれていない(unfragmented))または脱皮されたヒヨコマメ種子全体(すなわち、砕かれていない)を含まない。
【0049】
特定の実施形態において、チョコレートは、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分以外のいかなるヒヨコマメ種子成分または細片も含まない。
【0050】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分は、脱苦味工程を包含する方法によって得られるものではない。例えば、特定の実施形態において、サポニンまたは疎水性ペプチドなどの他の反栄養素などの苦い味を有する化学成分は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から意図的に取り除かれることはない。
【0051】
一部の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分は、チョコレートの調理法において、粉末、好ましくは乾燥粉末として含まれる。特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分の水分含有量は、多くても12.0%(w/w)、多くても10.0%(w/w)、多くても8.0%(w/w)、多くても6.0%(w/w)、多くても5.0%(w/w)、多くても4.0%(w/w)、多くても3.0%(w/w)、多くても2.0%(w/w)、多くても1.0%(w/w)または多くても0.50%(w/w)である。
【0052】
したがって、特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分は、チョコレート全体に均一に分散されている。
【0053】
一部の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分は、少なくとも8.0%(w/wDM)、少なくとも9.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10.0%(w/wDM)の脂肪を含む。つまり、特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量は、少なくとも8.0%(w/wDM)、少なくとも9.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10.0%(w/wDM)である。脂肪含有量は、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の全乾燥物質の重量%として示される(これは、本明細書では、「%w/wDM」と言われることがある)。
【0054】
一部の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分の脂肪含有量と、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量の比(すなわち、脂肪含有量:タンパク質含有量)は、少なくとも0.10、または少なくとも0.15、好ましくは0.10から0.30の間、より好ましくは0.15から0.25の間である。つまり、一部の実施形態において、本明細書に教示されるチョコレートにおけるヒヨコマメ種子の脂肪含有量とヒヨコマメ種子のタンパク質含有量の比は、少なくとも0.10または少なくとも0.15、好ましくは0.10から0.30の間、より好ましくは0.15から0.25の間である。特定の実施形態において、(i)ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量は、少なくとも8.0%(w/wDM)、少なくとも9.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10.0%(w/wDM)であり、(ii)ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は、少なくとも40.0%(w/wDM)、少なくとも45.0%(w/wDM)、少なくとも50.0%(w/wDM)、少なくとも55.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)、より好ましくは少なくとも66.0%(w/wDM)、少なくとも67.0%(w/wDM)、少なくとも68.0%(w/wDM)または69.0%(w/wDM)などの少なくとも65.0%(w/wDM)、さらにより好ましくは少なくとも70.0%(w/wDM)である。ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、少なくとも10.0%(w/wDM)の脂肪含有量および少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有することが好ましい。ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、少なくとも10.0%(w/wDM)の脂肪含有量および少なくとも65.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有することがより好ましい。ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分は、少なくとも10.0%(w/wDM)の脂肪含有量および少なくとも70.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有することがさらにより好ましい。
【0055】
好ましい実施形態において、チョコレートは、2.0から20.0%(w/w)の間の、2.0から10.0%(w/w)の間の、または3.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分から生じるヒヨコマメ種子のタンパク質、好ましくは3.0から10.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分から生じるヒヨコマメ種子のタンパク質を含む。当業者は、予備的なタンパク質抽出、消化(部分的な、完全な、酵素的ななど)をして、またはしないで、ウエスタンブロット法、ELISA、SDS-PAGE、HPLCまたは質量分析などだがそれだけに限定されない一般の技術を使用することによって、組成中のヒヨコマメのタンパク質を同定する(および定量化する)方法を知っている。
【0056】
本発明者らは、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分単独か、または1つもしくは複数の増量剤と組み合わせたヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のいずれかを、チョコレートの調理法における1つまたは複数の乳成分(すなわち、1つまたは複数の乳原料)の代替物として(例えば、1:1重量ベースで)使用できることを驚くべきことに見出した。したがって、特定の実施形態において、チョコレートの調理法における乳成分の重量パーセントは、同じ重量パーセントのヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分単独、または1つもしくは複数の増量剤と組み合わせたヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分によって完全に置き換えられてもよい。
【0057】
したがって、特定の実施形態において、チョコレートは1つまたは複数の増量剤をさらに含む。
本発明の文脈において、「増量剤」という用語は、食品の有用性または機能性を損なわないが、食品の体積または食品の重量を増大させる食品原料を指す。特定の実施形態において、増量剤は、食品の嵩のみを増大させ、その栄養価には影響を及ぼさない。増量剤は、食品に添加されたとき、機能性(例えば、味、食感、色)がないか、または少ないことが好ましい。より詳細には、本発明において、増量剤は、甘味、色、口当たり、食感、風味および/またはチョコレートの味に対して影響を及ぼさないか、または影響が少ない。増量剤は、目立たない味を有し、および/またはチョコレートの味を変化させない(alter)/変えない(modify)ことが好ましい。増量剤の例としては、コムギ、トウモロコシ、および/または米などだがそれだけに限定されない植物種子の画分または誘導体がある。植物種子のこのような画分または誘導体の例としては、小麦粉、デンプン、マルトデキストリンおよび(グルコース)シロップがある。適切な増量剤の他の例としては、イヌリン、オリゴフルクトース、繊維、ポリオールが挙げられる。好ましい増量剤は、小麦粉、デンプン、マルトデキストリン、(乾燥)グルコースシロップおよびこれらの混合物である。より好ましい増量剤は、(乾燥)グルコースシロップ、または小麦粉、デンプンおよび(乾燥)グルコースシロップの混合物であり、好ましくは米からの増量剤である。さらにより好ましい増量剤は、(乾燥)グルコースシロップ、好ましくは(乾燥)米(グルコース)シロップである。
【0058】
特定の実施形態において、1つまたは複数の増量剤は、ヒヨコマメ粉ではない。
ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分またはヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分と1つもしくは複数の増量剤の組合せは、チョコレートの調理法における、好ましくはミルクチョコレートまたはホワイトチョコレートの調理法における粉乳などの、1つまたは複数の乳成分(すなわち、1つまたは複数の乳原料)の完全なまたは部分的な代替物、好ましくはチョコレートのすべての乳成分の代替物として働くことがある。
【0059】
特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分の量と増量剤の量の和は、非ヴィーガンのミルクタイプのチョコレートまたは非ヴィーガンのホワイトタイプのチョコレートに使用される非ヴィーガン(乳製品)原料の量と等しい。
【0060】
粉乳などの乳成分は、通常5.0から25.0%(w/w)の間の量でミルクタイプのチョコレートまたはホワイトタイプのチョコレートに含まれる。したがって、特定の実施形態において、チョコレートは、少なくとも5.0%(w/w)、少なくとも10.0%(w/w)、好ましくは5.0から20.0%(w/w)の間または10.0から25.0%(w/w)の間などの5.0から25.0%(w/w)の間の、より好ましくは10.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分またはヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分と1つまたは複数の増量剤の組合せを含む。
【0061】
特定の実施形態において、チョコレートがヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分と1つまたは複数の増量剤の組合せを含む場合、チョコレートは、少なくとも2.0%(w/w)、少なくとも3.0%(w/w)、少なくとも4.0%(w/w)、少なくとも5.0%(w/w)、または少なくとも6.0%(w/w)のヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分を含む。
【0062】
特定の実施形態において、チョコレートにおける(i)1つまたは複数の乳成分(例えば、粉乳の量)の量と(ii)ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分と場合により1つまたは複数の増量剤の量の和は、少なくとも5.0%(w/w)、少なくとも10.0%(w/w)、好ましくは5.0から20.0%(w/w)の間または10.0から25.0%(w/w)の間などの5.0から25.0%(w/w)の間、より好ましくは10.0から20.0%(w/w)の間である。
【0063】
特定の実施形態において、チョコレートは、ココナツ繊維、乾燥ココナツ、ココナツ粉末、ココナツ油、ココナツバター、ココナツミルク、ココナツクリーム、ココナツネクター、ココナツ片、およびこれらの任意の組合せなどのココナツ成分を含まない。
【0064】
特定の実施形態において、チョコレートは、ヒヨコマメ種子以外のマメ科植物由来のタンパク質リッチ画分を含まない。特定の実施形態において、チョコレートは、豆腐/ダイズ粉末、乾燥非乳製品粉乳(例えば、ナッツベースのミルク、穀物ベース(grain based)のミルク、穀草類ベース(cereal based)のミルクおよび任意の組合せ)、ヒヨコマメ以外のマメ科植物の乾燥タンパク質画分、穀物の乾燥タンパク質画分およびこれらの任意の組合せより選択される非乳製品のヴィーガン源の乾燥粉末などのヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分とは異なる非乳製品のヴィーガン源の乾燥粉末を含まない。当業者は、本実施形態がチョコレートに関するものなので、ココアパウダーまたは他のココア成分が非乳製品のヴィーガン源の乾燥粉末としてみなされるべきではないことを理解するであろう。特定の実施形態において、チョコレートは、ココアパウダーに加え、ヒヨコマメ種子以外のマメ科植物由来のタンパク質リッチ画分を含まない。
【0065】
本明細書に教示されるチョコレートは、当技術分野で公知の任意の方法によって調製され得る。
本明細書に教示されるミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを得る方法が、チョコレートを製造するための当技術分野で公知の方法およびプロセスと比較して適合を必要としないことは特に有利である。チョコレートを製造するための適切な方法およびプロセスは、S.T.Beckett編「Industrial chocolate manufacture and use」Blackwell Publishing Ltd.、2009という書籍の中において見出すことができる。
【0066】
さらなる態様は、本明細書に教示されるチョコレート、好ましくは本明細書に教示されるミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを調製する方法を提供する。
通常、チョコレートは、チョコレートの調理法の原料を混合することおよび場合により予めすりつぶすことによって製造される。次に、混合物は、通常リファイニングされ、調理法がココアバターまたは他の脂肪を含むかどうかによって、場合によりコンチングおよびテンパリングを行う。最後に、製品は冷却され、場合により成形される。
【0067】
混合は、均一なペーストを得るために、ミキサーなどの当技術分野における任意の手段によって原料を一緒に組み合わせることを含み得る。適切なミキサーには、バッチミキサー、縦型バッチミキサー、水平型バッチミキサー、連続式ミキサーが含まれる。混合工程は、手動でも行われ得る。例えば、ミキサーは、キッチンロボット、ホバートミキサー(Hobart mixer)、またはステファンミキサー(Stephan mixer)でもよい。ミキサーは、温度調節を有することが好ましい。
【0068】
特定の実施形態において、本明細書に教示されるチョコレートなどのチョコレート、好ましくはミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを調製する方法は、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含む溶融チョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合する工程を含み、それによってチョコレートを得る。
【0069】
特定の実施形態において、本明細書に教示されるチョコレートなどのチョコレート、好ましくはミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを調製する方法は、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分、カカオマスおよびココアバターを含むチョコレート原料、ならびに場合により1つまたは複数の増量剤を混合すると同時に、チョコレート原料を溶融する工程を含み、それによってチョコレートを得る。
【0070】
溶融は、約45.0℃などの40.0℃から50.0℃の間の温度で行われ得る。
特定の実施形態において、本明細書に教示されるチョコレートなどのチョコレート、好ましくはミルクタイプまたはホワイトタイプのチョコレートを調製する方法は、
- 5.0から20.0%(w/w)の間または10.0から25.0%(w/w)の間などの5.0%から25.0%(w/w)の間の、より好ましくは10.0から20.0%(w/w)の間の、ヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)画分および場合により1つまたは複数の増量剤と、
- カカオマスと、
- ココアバターと、
- 砂糖および/または甘味料と、
- 場合により香味料成分および/またはレシチンと
を混合すると同時に、チョコレート原料を溶融する工程を含み、それによってチョコレートを得る。
【0071】
砂糖はまた、砂糖を混合物に添加する前に、砂糖ミルを使用するなど、予めリファイニングされ得る。
特定の実施形態において、方法は、チョコレートをリファイニングする工程、コンチングする工程および/またはテンパリングする工程をさらに含む。
【0072】
混合およびリファイニングは、何種類かの装置を使用して行われ得る。最も一般的なものは、ボールミル、多重ロールリファイナーおよびコンチェリファイナーである。1つのまたは別の道具の選択は、混合物の所望の粒度(fineness)ならびにチョコレートの所望のタイプによる。当技術分野で公知の代替となる装置も使用され得る。好ましい実施形態において、原料は、3ロールまたは5ロールなどの多重ロールリファイナーでリファイニングされる。別の実施形態において、原料混合物は、15~30、好ましくは約20μmの粒度にリファイニングされる。
【0073】
本明細書に教示されるチョコレートを調製する方法において、リファイニングされた原料混合物は、場合によりコンチングされる。混合と加熱の組合せであるコンチングによって、チョコレートの豊かな芳香の可能性を引き出すことが可能になり、一方で一部のあまり評価されない酸性化合物および水分を最終的に取り除く。コンチングのパラメーターは、チョコレートの所望のタイプにより、当業者には公知である。一部の実施形態において、本明細書に教示されるチョコレートを調製する方法は、コンチング工程を含む。
【0074】
テンパリング工程時に、液化した混合物は冷却され、脂肪相の最適結晶化、その結果としてチョコレートの最適な光沢、スナップ性および保存可能期間の安定性を得るために正確な温度曲線を受けて固化される。テンパリングは、ココアバターなどの特定の脂肪が使用される場合には、特に必要とされる。正確な温度曲線は、チョコレートのタイプにより、当業者によって容易に測定される。
【0075】
場合により、プロセスの終わりに、チョコレートは、製品に特定の重量および/または形を与えるために成形され得る。
本発明のチョコレートは、乳原料を含有する通常のミルクチョコレートまたは通常のホワイトチョコレートなどのようなものとして消費され得る。本明細書に教示されるチョコレートの他の用途は、食品をコーティング、被覆または充填するためのその使用を含む。
【0076】
本明細書に教示されるチョコレートの使用の非限定的な例は、
- チョコレートバー、チョコレートバーク、チョコレートスプレッド、チョコレート飲料、チョコレートでコーティングされたマシュマロ、プラリネシェルおよぎプラリネフィリングを含むチョコレートおよび製菓用途と、
- ブリオッシュ、ロールパン、パネトーネ、およびクロワッサンなどのベーカリー用途のためのフィリング、コーティングおよび具材と、
- ケーキ、ブラウニー、クッキー、シリアルバー、およびデニッシュペストリーなどのパティスリー用途のためのフィリング、コーティング、具材およびガナッシュと
である。
【0077】
したがって、さらなる態様は、本明細書に教示されるチョコレートを含むベーカリーまたは菓子製品を提供する。
ベーカリーまたは菓子製品は、チョコレートバー、チョコレートバーク、チョコレートスプレッド、プラリネ、ベーカリー用途またはパティスリー用途のためのフィリング、ベーカリー用途またはパティスリー用途のためのコーティング、ベーカリー用途またはパティスリー用途のためのガナッシュ、またはベーカリー用途もしくはパティスリー用途のための具材などの、当技術分野で公知のいずれのベーカリーまたは菓子製品でもよい。
【0078】
本明細書に別途記載されるように、本発明者らは、チョコレートの調理法においてヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の使用が、チョコレート代替物として十分に評価されるナッツのようでクリーミーな味わいをもたらすことを見出した。これらの特徴(ナッツのようでクリーミー)によって、チョコレート代替物の官能的知覚が、ダークチョコレート(カカオがより強く、苦味のある味わいまたは酸味のある味わい)によってもたらされる知覚とは異なるミルクチョコレートに近くなる(ミルクチョコレートを連想させる)。したがって、特定の実施形態において、チョコレートの乳画分などの動物に由来する画分は、タンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)ヒヨコマメ種子画分および場合により1つまたは複数の増量剤によって置き換えられる。
【0079】
特定の実施形態において、チョコレートの動物/乳画分は、タンパク質リッチ(すなわち、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量)ヒヨコマメ種子画分および場合により1つまたは複数の増量剤によって1対1で置き換えられる。
【0080】
さらなる態様は、本明細書に教示されるベーカリーまたは菓子製品などのベーカリーまたは菓子製品を調製する方法を提供し、本明細書に教示されるチョコレートは、ベーカリーまたは菓子製品へのコーティングおよび/またはフィリングとして適用される。
【0081】
さらなる態様は、チョコレートの調理法、好ましくはミルクチョコレートの調理法またはホワイトチョコレートの調理法における1つまたは複数の乳成分(すなわち、1つまたは複数の乳原料)の完全なまたは部分的な、好ましくは完全な代替物としての、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分および場合により1つまたは複数の増量剤の使用を提供する。特定の実施形態において、少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分および場合により1つまたは複数の増量剤は、チョコレートの調理法、好ましくはミルクチョコレートの調理法またはホワイトチョコレートの調理法における少なくとも10.0%(w/w)、少なくとも20.0%(w/w)、少なくとも30.0%(w/w)、少なくとも40.0%(w/w)、少なくとも50.0%(w/w)、少なくとも60.0%(w/w)、少なくとも70.0%(w/w)、少なくとも80.0%(w/w)、少なくとも95.0%(w/w)などの少なくとも90.0%(w/w)、少なくとも96.0%(w/w)、少なくとも97.0%(w/w)、少なくとも98.0%(w/w)または少なくとも99.0%(w/w)、好ましくは100.0%(w/w)の1つまたは複数の乳成分を置き換える。
【0082】
本明細書に教示されるチョコレートのヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量および脂肪含有量は、本明細書に別途記載されるようなものであってもよい。特定の実施形態において、ヒヨコマメ種子のタンパク質リッチ画分のタンパク質含有量は少なくとも60.0%(w/wDM)であり、かつ/またはヒヨコマメ種子由来のタンパク質リッチ画分の脂肪含有量は少なくとも8.0%(w/wDM)である。
【0083】
当業者は、本明細書に教示される方法の特定の実施形態は、本明細書に教示される製品および使用にも適用可能であり、逆も同様であることを理解するであろう。
本発明をその特定の実施形態と組み合わせて記載してきたが、上記の説明に照らせば、多くの代替物、修正形態、および変更形態が当業者には明らかであることは明白である。したがって、以下に添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に、すべてのそのような代替物、修正形態、および変更形態を包含することが意図されている。
【0084】
上記の態様および実施形態は、以下の非限定的な例によってさらに支持される。
【実施例
【0085】
実施例1:種子由来のタンパク質リッチ画分の特性
表1は、実施例2~4のチョコレート組成物を調製するために使用したタンパク質源の特性を列挙する。
【0086】
【表1】
【0087】
ヒヨコマメタンパク質1およびヒヨコマメタンパク質2は乾燥粉末であり、それぞれ3%および5%の水分含有量を有し、ヒヨコマメタンパク質の全乾燥物質の重量%として表される場合、ヒヨコマメタンパク質1およびヒヨコマメタンパク質2のタンパク質含有量はそれぞれ約71.23%(w/wDM)および約94.74%(w/wDM)であり、ヒヨコマメタンパク質1およびヒヨコマメタンパク質2の脂肪含有量はそれぞれ約10.31%(w/wDM)および約0.87%(w/wDM)であるということを意味する。
【0088】
実施例2:ボールミルプロセスによって得たヴィーガンミルクタイプのチョコレート
チョコレートを、表2の組成を使用して作成した。
【0089】
【表2】
【0090】
ボールミルプロセス
チョコレート組成物の原料を、ホバートニーダーで40℃で10分間混合し、ボールミル(Duyvis Wiener W1S)に注いだ。その後、混合物が20.0μm程度の粒度に達するまで、混合物をリファイニングした。ついで、チョコレートを、大理石のテーブル上で手でテンパリングし、タブレットに成形した。
【0091】
チョコレートの評価
チョコレートを、チョコレートの味を見て描写するように訓練された専門家の一団によって評価した。以下の記述語を、以下の定義に従って評価した。
- キャラメル:加熱された/調理された砂糖の味および/または風味に相当する。これは、純粋でもよく、またはミルク、コンデンスミルクもしくはクリームと混合してもよい。
- ココア:十分に発酵され、焙煎され、欠点がないカカオ豆の特色をよく示している味および/または風味に相当する。
- クリーミー:口の中にクリームを有している感覚に相当する(口の中で製品が滑らかに溶けること)。
- 粒子が粗い:口の中に砂粒子(「砂っぽい」)またはさらに大きな粒子(「粒子が粗い」)を有している感触に相当する。
- 青々としている:未完熟のエンドウマメのさやの味および/または風味、または草のような感覚、緑葉のような感覚、土のような感覚もしくは苦味のある感覚に相当する。
- ミルクチョコレートを連想させる:乳原料を用いて作成されたチョコレートの味を見たときに知覚される感覚に相当する。
- ミルクのような:新鮮なミルク、調理されたミルク、ヨーグルト、クリームなどの味および/または風味に相当する。
- ナッツのような:ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、アーモンドおよび/またはクルミなどのナッツの味および/または風味に相当する。また、ナッツの皮に関連している渋い感覚も含む。
- ペーストのような:容易に溶けてなくならないペーストを口の中に有している感覚に相当する。
- 甘い:砂糖、ハチミツおよびシロップによってもたらされる甘味に相当する。
【0092】
結果
【0093】
【表3】
【0094】
少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメタンパク質を使用することによって、ミルクチョコレート代替物として十分に評価されるナッツのようでクリーミーな味わいを有するチョコレートを得ることが可能になる。これらの特徴(ナッツのようでクリーミー)によって、官能的知覚が、ダークチョコレート(カカオがより強く、苦味のある味わいまたは酸味のある味わい)によってもたらされる知覚とは異なるミルクチョコレートに近くなる(ミルクチョコレートを連想させる)。さらに、少なくとも40.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも60.0%(w/wDM)のタンパク質含有量、および少なくとも8.0%(w/wDM)、好ましくは少なくとも10%(w/wDM)の脂肪含有量を有するヒヨコマメタンパク質を使用することによって、8.0%(w/wDM)未満の脂肪含有量を有するヒヨコマメタンパク質を使用して調製した類似のチョコレートよりも、味においてさらにいっそう心地よいチョコレートを得ることが可能になる。
【0095】
実施例3:3ロール/コンチングプロセスによって得たヴィーガンミルクタイプのチョコレート
ヴィーガンミルクタイプのチョコレートを、表4の組成を使用して作成した。
【0096】
【表4】
【0097】
3ロールおよびコンチングプロセス
カカオマス、砂糖およびミルク代替物(例えば、場合により増量剤と組み合わせたヒヨコマメタンパク質1、増量剤単独、アーモンド粉末単独、またはココナツ粉末単独)を、ホバートニーダーで40℃程度で10分間一緒に混合した。適切な食感に達するように、ココアバターの一部を添加した。混合物を3ロールリファイナーで20μm程度の粒度にリファイニングし、ついでElkolinoコンチェで50~60℃で3~6時間コンチングした。ついで、チョコレートを残りのココアバターおよびレシチンと液化し、大理石のテーブルの上で手でテンパリングし、タブレットに成形した。
【0098】
チョコレートの評価
官能評価を、実施例2に記載の通り行った。
結果
【0099】
【表5】
【0100】
少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメタンパク質を使用することによって、ミルクチョコレート代替物として十分に評価されるナッツのようでクリーミーな味わいを有するチョコレートを得ることが可能になる。少なくとも40.0%(w/wDM)のタンパク質含有量を有するヒヨコマメタンパク質を含有するチョコレートは、ミルクチョコレートに関連している味の特質を明らかに有しており、強い「非ミルクチョコレート」風味はない。チョコレート3Cに存在する強い芳香の味わいは、ミルクタイプのチョコレートには目立ちすぎる。さらに、この味わいはこれらのチョコレートを一部の用途には適さないものにすることもあり、前述の強い芳香のある味わいは所望の風味の邪魔をする恐れがある(例えば、チョコレートバー、チョコレートガナッシュなどにおいて)。
【0101】
実施例4:ヴィーガンミルクタイプのチョコレート
ミルクタイプのコンパウンドチョコレート(チョコレート類似品)を、表6の組成を使用して作成した。
【0102】
【表6】
【0103】
プロセス
チョコレートを、実施例2に記載の通りボールミルプロセスを使用して調製した。
チョコレートの評価
官能評価を、実施例2に記載の通り行った。
【0104】
結果
【0105】
【表7】
【0106】
実施例5:ヴィーガンホワイトタイプのチョコレート
ホワイトタイプのコンパウンドチョコレート(チョコレート類似品)を、表8の組成を使用して作成した。
【0107】
【表8】
【0108】
プロセス
チョコレートを、実施例2に記載の通りボールミルプロセスを使用して調製した。
チョコレートの評価
官能評価を、実施例2に記載の通り行った。
【0109】
結果
サンプルAを、味がそれほどない甘いコンパウンドコーティングと描写し、その官能特性は主に甘さに頼っていた。サンプルBは、ミルクを含有するホワイトコンパウンドチョコレート参照の楽しみをもたらす心地よいナッツのようでクリーミーな味わいを有する、より多くの特徴を有していた。
【国際調査報告】