IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マクロジェニクス,インコーポレーテッドの特許一覧

特表2024-526773B7‐H3抗体の医薬組成物及びその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】B7‐H3抗体の医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240711BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/26
A61K39/395 M
A61K39/395 N
A61K39/395 W
A61K39/395 Y
A61K47/02
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502056
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022073462
(87)【国際公開番号】W WO2023288173
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/222,750
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】サンパスクマール,クリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】バーク,スティーブン,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオヤン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD41Z
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF12
4C076FF14
4C076FF61
4C076FF65
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、保管及び投与のための、抗ヒトB7‐H3(「hB7‐H3」)抗体(「エノブリツズマブ(enoblituzumab)」)及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は、上記医薬組成物を含む容器及びキットを提供する。本発明は更に、エノブリツズマブを含有する上記医薬組成物、容器、及びキットの、癌の治療、及び特定の態様ではB7‐H3を発現する癌の治療のための使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ;
b)酢酸塩;
c)スクロース;
d)ポリソルベート80(「PS80」);及び
e)水
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記酢酸塩は約5mM~約30mMの濃度で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記酢酸塩は酢酸ナトリウムを含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物は:
a)約5mM~約30mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.0~約6.0である;又は
b)約8mM~約24mMの酢酸塩、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.4~約5.6である;又は
c)約16mM~約24mMの酢酸塩、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.3~約5.3である;又は
d)約8mM~約12mMの酢酸塩、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.5~約5.5である;又は
e)約10mMの酢酸塩、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.6~約5.5である;又は
f)約20mMの酢酸塩、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.4~約5.2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記酢酸塩は、約0.1mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.6mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記エノブリツズマブの濃度は5mg/mL~約60mg/mLである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記酢酸塩は、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.60mg/mL~約1.2mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記酢酸塩は、約0.18mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記酢酸塩は、約0.27mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.74mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記エノブリツズマブの濃度は約90mg/mL~約200mg/mLである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記酢酸塩は、約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸と約1.2mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~5又は10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記酢酸塩は、約0.52mg/mLの濃度の氷酢酸と約1.5mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、請求項1~5又は10~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記スクロースの前記濃度は約90mg/mLである、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記PS80の前記濃度は約0.1mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物のpHは約4.6~約5.5である、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物のpHは約4.4~約5.2である、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.7~約5.5である、請求項1~7又は12~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.6~約5.4である、請求項1~7又は12~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、前記組成物のpHは約4.4~約5.2である、請求項1~4、9~14、又は16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物は抗酸化剤を含まない、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約36か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約48か月の貯蔵寿命を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物の重量オスモル濃度は約200~約400mOsm/kg・HOである、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記組成物の重量オスモル濃度は約260~約360mOsm/kg・HOである、請求項1~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記組成物は、前記エノブリツズマブの単量体純度を、約25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、請求項1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物は、前記エノブリツズマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、請求項1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記組成物は、前記エノブリツズマブの不均質性プロファイルを、25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、請求項1~28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記組成物は、前記エノブリツズマブの不均質性プロファイルを、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、請求項1~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記水は滅菌された非発熱性蒸留水である、請求項1~30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記組成物は滅菌されている、請求項1~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、容器。
【請求項34】
前記容器は約10mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約250mgのエノブリツズマブ;
b)約10mMの酢酸ナトリウム
c)約900mgのスクロース;
d)約1mgのPS80;及び
e)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.6~約5.5である、請求項33に記載の容器。
【請求項35】
前記容器は約10mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約250mgのエノブリツズマブ;
b)約1.8mgの氷酢酸
c)約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約900mgのスクロース;
e)約1mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.7~約5.5である、請求項33に記載の容器。
【請求項36】
前記容器は約10mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約250mgのエノブリツズマブ;
b)約2.7mgの氷酢酸;
c)約7.4mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約900mgのスクロース;
e)約1mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.6~約5.4である、請求項33に記載の容器。
【請求項37】
前記容器は約10mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約1,200mgのエノブリツズマブ;
b)約20mMの酢酸ナトリウム;
c)約900mgのスクロース;
d)約1mgのPS80;及び
e)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.4~約5.2である、請求項33に記載の容器。
【請求項38】
前記容器は約10mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約1,200mgのエノブリツズマブ;
b)約5.2mgの氷酢酸;
c)約15mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約900mgのスクロース;
e)約1mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.4~約5.2である、請求項33に記載の容器。
【請求項39】
前記容器は約17mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約425mgのエノブリツズマブ;
b)約10mM;
c)約1530mgのスクロース;
d)約1.7mgのPS80;及び
e)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.6~約5.4である、請求項33に記載の容器。
【請求項40】
前記容器は約17mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約425mgのエノブリツズマブ;
b)約3.06mgの氷酢酸;
c)約16.15mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約1530mgのスクロース;
e)約1.7mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.7~約5.5である、請求項33に記載の容器。
【請求項41】
前記容器は約17mLの体積の前記医薬組成物を含み、
前記体積は:
a)約425mgのエノブリツズマブ;
b)約4.59mgの氷酢酸;
c)約12.58mgの酢酸ナトリウム三水和物;
d)約1530mgのスクロース;
e)約1.7mgのPS80;及び
f)水
を含み、
前記組成物のpHは約4.6~約5.4である、請求項33に記載の容器。
【請求項42】
請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項33~41のいずれか1項に記載の容器を含む、密封パッケージ。
【請求項43】
請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項33~41のいずれか1項に記載の容器、又は請求項42に記載の密封パッケージを含み、任意に、前記医薬品を必要とする被験者に前記医薬品を投与するための説明書を更に含む、キット。
【請求項44】
請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物、又は請求項33~41のいずれか1項に記載の容器、又は請求項43に記載のキットを含み、任意に、前記医薬品を必要とする被験者に前記医薬品を投与するための説明書を更に含む、密封パッケージ。
【請求項45】
請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項33~41のいずれか1項に記載の容器、請求項42若しくは44に記載の密封パッケージ、又は請求項43若しくは44に記載のキットを用いて、エノブリツズマブを必要とする被験者にエノブリツズマブを投与するステップを含む、癌を治療する方法。
【請求項46】
前記方法は:
a)前記医薬組成物を、0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを含む容器内で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)前記容器を反転させて、希釈された前記溶液を混合するステップ;及び
c)前記投薬用溶液を内包した前記容器を、前記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記容器は、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグ又はシリンジである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記容器は、D5Wを内包したIVバッグ又はシリンジである、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
治療を必要とする被験者の癌の治療のための薬剤を製造するための、請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項50】
治療を必要とする被験者の癌の治療のための、請求項1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項33~41のいずれか1項に記載の容器、請求項42若しくは44に記載の密封パッケージ、又は請求項43若しくは44に記載のキットの使用。
【請求項51】
前記使用は:
a)前記医薬組成物を、0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを含む容器内で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)前記容器を反転させて、希釈された前記溶液を混合するステップ;及び
c)前記投薬用溶液を内包した前記容器を、前記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む、請求項49又は50に記載の使用。
【請求項52】
前記容器は、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグ又はシリンジである、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記容器は、D5Wを内包したIVバッグ又はシリンジである、請求項51に記載の使用。
【請求項54】
前記投薬用溶液は、前記エノブリツズマブの単量体純度を約25℃で約6時間にわたって、又は約2℃~約8℃で約24時間にわたって維持する、請求項45~48のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~53のいずれか1項に記載の使用。
【請求項55】
前記投与は少なくとも約30分にわたるIV注入によるものである、請求項45~48若しくは54のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~54のいずれか1項に記載の使用。
【請求項56】
前記投与は少なくとも約60分にわたるIV注入によるものである、請求項45~48若しくは54のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~54のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
前記投与は少なくとも約120分にわたるIV注入によるものである、請求項45~48若しくは54のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~54のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
前記医薬組成物を希釈して約6mg/kg~約15mg/kgの体重ベース治療用量を得る、請求項45~48若しくは54~57のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
前記医薬組成物を希釈して約15mg/kgの体重ベース治療用量を得る、請求項45~48若しくは54~58のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
前記投薬用溶液の前記投与は3週間毎に1回である、請求項45~48若しくは54~59のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~59のいずれか1項に記載の使用。
【請求項61】
前記癌はB7‐H3を発現する、請求項45~48若しくは54~60のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~60のいずれか1項に記載の使用。
【請求項62】
前記癌は:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、肛門管扁平上皮癌(SCAC)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌、HER2乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、HPV関連子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎明細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌、選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、POLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢癌、胆管癌(bile duct cancer)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、膠芽腫、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、白血病、急性骨髄性白血病、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌、肝細胞癌(HCC)、リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、髄芽腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫、中皮咽頭癌、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、小児期の小円形青色細胞腫瘍、神経芽腫、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される、請求項45~48若しくは54~61のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~61のいずれか1項に記載の使用。
【請求項63】
前記癌は、肛門癌、膀胱癌、乳癌、胆管癌(bile duct cancer)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌(gastric cancer)、GEJ癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、及び尿路上皮癌である、請求項61若しくは62に記載の方法、又は請求項61若しくは62に記載の使用。
【請求項64】
前記肛門癌はSCACである、請求項62若しくは63に記載の方法、又は請求項62若しくは63に記載の使用。
【請求項65】
前記肺癌はNSCLCである、請求項62若しくは63に記載の方法、又は請求項62若しくは63に記載の使用。
【請求項66】
前記乳癌はTNBCである、請求項62若しくは63に記載の方法、又は請求項62若しくは63に記載の使用。
【請求項67】
前記皮膚癌は黒色腫又はメルケル細胞癌である、請求項62若しくは63に記載の方法、又は請求項62若しくは63に記載の使用。
【請求項68】
前記頭頸部癌はSCCHNである、請求項62若しくは63に記載の方法、又は請求項62若しくは63に記載の使用。
【請求項69】
前記前立腺癌はmCRPCである、請求項62若しくは63に記載の方法、又は請求項62若しくは63に記載の使用。
【請求項70】
前記癌は尿路上皮癌である、請求項62若しくは63に記載の方法、又は請求項62若しくは63に記載の使用。
【請求項71】
前記被験者はヒト被験者である、請求項45~48若しくは54~70のいずれか1項に記載の方法、又は請求項49~70のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許出願第63/222,750号(2021年7月16日出願;係属中)に対する優先権を主張するものであり、上記出願は参照によりその全体が本出願に援用される。
【0002】
配列表の参照
本出願は、連邦規則法典第37巻第1.821節以下による1つ以上の配列表を含み、これらの配列表は、コンピュータ可読媒体(ファイル名:1301_0169PCT_TW.xml、2022年6月2日作成、サイズ:4,307バイト)において開示されており、上記ファイルは、参照によりその全体が本出願に援用される。
【0003】
技術分野
本発明は、保管及び投与のための、抗ヒトB7‐H3(「hB7‐H3」)抗体(「エノブリツズマブ(enoblituzumab)」)及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は更に、上記医薬組成物を含む容器及びキットを提供する。本発明は更に、エノブリツズマブを含有する上記医薬組成物、容器、及びキットの、癌の治療、及び特定の態様ではB7‐H3を発現する癌の治療のための使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
B7‐H3(「CD276」としても公知)は、抗原提示細胞上で発現され、特定されていない1つ以上の受容体と結合してT細胞の共阻害を仲介する。更にB7‐H3は、未知の1つ以上の受容体との相互作用を介して、NK細胞及び骨芽細胞に対する阻害剤となる(非特許文献1)。B7‐H3は多様な癌細胞(例えば神経芽腫、胃癌(gastric cancer)、卵巣癌、非小細胞肺癌等)上で発現される(例えば非特許文献2を参照)。免疫系の阻害におけるB7‐H3の役割、及びヒト腫瘍上でのB7‐H3の発現の増加は、この分子が癌の治療のための治療標的として機能する可能性があることを示唆している。抗hB7‐H3抗体、及びB7‐H3発現を調節する他の分子を用いて、腫瘍を治療すること、及び/又は免疫応答を上方調節することが報告されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,802,091号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hofmeyer, K. et al. (2008) “The Contrasting Role Of B7-H3,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 105(30):10277-10278
【非特許文献2】Modak, S., et al. (2001) “monoclonal antibody 8H9 targets a novel cell surface antigen expressed by a wide spectrum of human solid tumors,” Cancer Res 61:4048-54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ある態様では、本発明は、低レベルのB7‐H3を発現する腫瘍を有する患者又は他の治療に失敗した患者を含む、B7‐H3を発現する腫瘍を有する患者のための、医薬組成物を提供する。本発明は更に、エノブリツズマブを含む医薬組成物を提供する。本発明は更に、上記医薬組成物及び上記医薬組成物を内包する医薬キットの、例えば治療有効量又は予防有効量のエノブリツズマブによる癌の治療、及び特定の態様ではB7‐H3を発現する癌の治療のための使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、比較的低い濃度(例えば約5mg/mL~約60mg/mL)及び比較的高い濃度(例えば約60mg/mL~約200mg/mL)を含む広い濃度範囲である約5mg/mL~約200mg/mLにわたって、エノブリツズマブの安定性を維持する、医薬組成物を提供する。本発明は更に、エノブリツズマブ、酢酸塩、スクロース、ポリソルベート80(「PS80」)、及び水を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明は、上記酢酸塩の濃度が約5mM~約30mMである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記酢酸塩が酢酸ナトリウムを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は、上記酢酸塩が氷酢酸及び酢酸ナトリウムを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0010】
本発明は、上記組成物が:
a)約5mM~約30mMの酢酸塩、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.0~約6.0である;又は
b)約8mM~約24mMの酢酸塩、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.4~約5.6である;又は
c)約16mM~約24mMの酢酸塩、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.3~約5.3である;又は
d)約8mM~約12mMの酢酸塩、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.5~約5.5である;又は
e)約10mMの酢酸塩、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.6~約5.5である;又は
f)約20mMの酢酸塩、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.4~約5.2である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0011】
本発明は、上記酢酸塩が約0.1mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.6mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0012】
本発明は、上記エノブリツズマブの濃度が約5mg/mL~約60mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記エノブリツズマブの濃度が約20mg/mL~約30mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記エノブリツズマブの濃度が約25mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0013】
本発明は、上記酢酸塩が約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.60mg/mL~約1.2mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記酢酸塩が約0.18mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記酢酸塩が約0.27mg/mLの濃度の氷酢酸と約0.74mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0014】
本発明は、上記エノブリツズマブの濃度が約90mg/mL~約200mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記エノブリツズマブの濃度が約120mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0015】
本発明は、上記酢酸塩が約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸と約1.2mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記酢酸塩が約0.52mg/mLの濃度の氷酢酸と約1.5mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0016】
本発明は、上記スクロースが約50mg/mL~約130mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記スクロースが約72mg/mL~約108mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記スクロースの上記濃度が約90mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0017】
本発明は、上記PS80が約0.05mg/mL~約0.6mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記PS80が約0.08mg/mL~約0.15mg/mLの濃度で存在する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記PS80の上記濃度が約0.1mg/mLである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0018】
本発明は、上記組成物のpHが約4.6~約5.5である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記組成物のpHが約4.4~約5.2である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0019】
本発明は、上記組成物が、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.7~約5.5である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0020】
本発明は、上記組成物が、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.6~約5.4である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0021】
本発明は、上記組成物が、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHが約4.4~約5.2である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0022】
本発明は、上記組成物が抗酸化剤を含まない、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0023】
本発明は、上記組成物が約2℃~約8℃で少なくとも約18か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記組成物が約2℃~約8℃で少なくとも約24か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記組成物が約2℃~約8℃で少なくとも約36か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記組成物が約2℃~約8℃で少なくとも約48か月の貯蔵寿命を有する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0024】
本発明は、上記組成物の重量オスモル濃度が約200~約400mOsm/kg・HOである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記組成物の重量オスモル濃度が約260~約360mOsm/kg・HOである、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0025】
本発明は、上記組成物が上記エノブリツズマブの単量体純度を約25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記組成物が上記エノブリツズマブの単量体純度を約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0026】
本発明は、上記組成物が上記エノブリツズマブの不均質性プロファイルを25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。本発明は更に、上記組成物が上記エノブリツズマブの不均質性プロファイルを約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0027】
本発明は、上記水が滅菌された非発熱性蒸留水である、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0028】
本発明は、上記組成物が滅菌されている、上述の医薬組成物の実施形態を提供する。
【0029】
本発明は、本明細書で開示される医薬組成物のいずれかを含む容器を提供する。本発明は更に、上記容器が約5mLの体積、約10mLの体積、約15mLの体積、約17mLの体積、又は約20mLの体積の上記医薬組成物を含む、上記容器を提供する。
【0030】
本発明は、上記容器が約10mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約250mgのエノブリツズマブ;(b)約10mMの酢酸ナトリウム;(c)約900mgのスクロース;(d)約1mgのPS80;及び(e)水を含み;上記組成物のpHが約4.6~約5.5である、上記容器を提供する。
【0031】
本発明は、上記容器が約10mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約250mgのエノブリツズマブ;(b)約1.8mgの氷酢酸;(c)約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約900mgのスクロース;(e)約1mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.7~約5.5である、上記容器を提供する。
【0032】
本発明は、上記容器が約10mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約250mgのエノブリツズマブ;(b)約2.7mgの氷酢酸;(c)約7.4mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約900mgのスクロース;(e)約1mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.6~約5.4である、上記容器を提供する。
【0033】
本発明は、上記容器が約10mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約1,200mgのエノブリツズマブ;(b)約20mMの酢酸ナトリウム;(c)約900mgのスクロース;(d)約1mgのPS80;及び(e)水を含み;上記組成物のpHが約4.4~約5.2である、上記容器を提供する。
【0034】
本発明は、上記容器が約10mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約1,200mgのエノブリツズマブ;(b)約5.2mgの氷酢酸;(c)約15mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約900mgのスクロース;(e)約1mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.4~約5.2である、上記容器を提供する。
【0035】
本発明は、上記容器が約17mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約425mgのエノブリツズマブ;(b)約10mM;(c)約1530mgのスクロース;(d)約1.7mgのPS80;及び(e)水を含み;上記組成物のpHが約4.6~約5.4である、上記容器を提供する。
【0036】
本発明は、上記容器が約17mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約425mgのエノブリツズマブ;(b)約3.06mgの氷酢酸;(c)約16.15mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約1530mgのスクロース;(e)約1.7mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.7~約5.5である、上記容器を提供する。
【0037】
本発明は、上記容器が約17mLの体積の上記医薬組成物を含み、上記体積が:(a)約425mgのエノブリツズマブ;(b)約4.59mgの氷酢酸;(c)約12.58mgの酢酸ナトリウム三水和物;(d)約1530mgのスクロース;(e)約1.7mgのPS80;及び(f)水を含み;上記組成物のpHが約4.6~約5.4である、上記容器を提供する。
【0038】
本発明は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、又は本明細書で開示される容器のいずれかを含む、密封パッケージを提供する。
【0039】
本発明は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、又は本明細書で開示される密封パッケージのいずれかを含み、また任意に、必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書を更に含む、キットを提供する。
【0040】
本発明は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかを含み、また任意に、それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書を更に含む、密封パッケージを提供する。
【0041】
本発明は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、又は本明細書で開示される容器のいずれか、又は本明細書で開示される密封パッケージのいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかを用いて、それを必要とする被験者にエノブリツズマブを投与するステップを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0042】
本開示は更に、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、本明細書で開示される密封パッケージのいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかを用いて、それを必要とする被験者にレチファンリマブを投与するステップを含む、癌を治療する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを含む容器内で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0043】
本発明は、上記容器が、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグ又はシリンジである、上記方法の実施形態を提供する。
【0044】
本発明は、上記容器が、D5Wを内包したIVバッグ又はシリンジである、上記方法の実施形態を提供する。
【0045】
本発明は更に、それを必要とする被験者の癌の治療のための薬剤を製造するための、本明細書で開示される医薬組成物のいずれかの使用を提供する。
【0046】
本発明は更に、それを必要とする被験者の癌の治療のための、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、又は本明細書で開示される容器のいずれか、又は本明細書で開示される密封パッケージのいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかの使用を提供する。
【0047】
本発明は更に、それを必要とする被験者の癌の治療のための、本明細書で開示される医薬組成物のいずれか、本明細書で開示される容器のいずれか、本明細書で開示される密封パッケージのいずれか、又は本明細書で開示されるキットのいずれかの使用を提供し、上記使用は:
a)上記医薬組成物を、0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを含む容器内で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0048】
本発明は、上記容器が、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグ又はシリンジである、上記使用の実施形態を提供する。
【0049】
本発明は、上記容器が、D5Wを内包したIVバッグ又はシリンジである、上記使用の実施形態を提供する。
【0050】
本発明は、上記投薬用溶液が上記エノブリツズマブの単量体純度を約25℃で約6時間にわたって又は約2℃~約8℃で約24時間にわたって維持する、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0051】
本発明は、上記投与が少なくとも約30分にわたるIV注入によるものである、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。本発明は更に、上記投与が少なくとも約60分にわたる連続注入によるものである、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。本発明は更に、上記投与が少なくとも約120分にわたるIV注入によるものである、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0052】
本発明は、上記医薬組成物を希釈して約6mg/kg~約15mg/kgの体重ベース治療用量を得る、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0053】
本発明は、上記医薬組成物を希釈して約15mg/kgの体重ベース治療用量を得る、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0054】
本発明は、上記投薬用溶液の前記投与が3週間毎に1回である、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0055】
本発明は、上記癌がB7‐H3を発現する、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0056】
本発明は、上記癌が:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌、肛門管扁平上皮癌(SCAC)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌、HER2+乳癌、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、頸動脈小体腫瘍、子宮頸癌、HPV関連子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎明細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌、選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、POLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢癌、胆管癌(bile duct cancer)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、膠芽腫、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、白血病、急性骨髄性白血病、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌、肝細胞癌(HCC)、リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、髄芽腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫、中皮咽頭癌、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、小児期の小円形青色細胞腫瘍、神経芽腫、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0057】
本発明は、上記癌が、肛門癌、膀胱癌、乳癌、胆管癌(bile duct cancer)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌(gastric cancer)、GEJ癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、及び尿路上皮癌である、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【0058】
本発明は、上記肛門癌がSCACであり、上記肺癌がNSCLCであり、上記乳癌がTNBCであり、上記皮膚癌が黒色腫又はメルケル細胞癌であり、上記頭頸部癌がSCCHNであり、上記前立腺癌がmCRPCである、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。本発明は、上記被験者がヒト被験者である、本開示の方法又は使用の実施形態を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、保管及び投与のための、抗ヒトB7‐H3(「hB7‐H3」)抗体(「エノブリツズマブ」)及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は更に、上記医薬組成物を含む容器及びキットを提供する。本発明は更に、エノブリツズマブを含有する上記医薬組成物、容器、及びキットの、例えば治療有効量又は予防有効量のエノブリツズマブによる癌の治療、及び特定の態様ではB7‐H3を発現する癌の治療のための使用を提供する。
【0060】
I.エノブリツズマブ
エノブリツズマブ(エノブリツズマブとしても公知;CAS登録番号1353485‐38‐7、例えば米国特許第8,802,093号を参照)は、B7‐H3に結合して強化されたADCC活性を仲介する、Fc最適化モノクローナル抗体である。エノブリツズマブは、ADCC活性を強化するためのL235V、F243L、R292P、Y300L、及びP396L置換を含むヒトIgG1 Fc領域を含有し、ここでIgG重鎖の残基の番号付与は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, NH1, MD (1991)におけるEUインデックスの番号付与であり、ヒトIgG1 EU抗体の番号付与を指す。エノブリツズマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を以下に提示する(WHO Drug Information 2016, Recommended INN: List 76, 30(3)):496)。Kabatによって定義されるCDRには下線が付されている。
【0061】
エノブリツズマブの重鎖のアミノ酸配列は(配列番号1)である(CDRH残基は太字下線付きで示されており、定常領域は二重下線を付して示されており、Fc領域の置換は太字二重下線付きで示されている):
【0062】
エノブリツズマブの軽鎖のアミノ酸配列は(配列番号2)である(CDRL残基は太字下線付きで示されており、定常領域は二重下線を付して示されている):
【0063】
II.医薬組成物
本発明の医薬組成物はエノブリツズマブ、緩衝剤、及び安定剤を含み、本明細書中で「エノブリツズマブ組成物」又は「エノブリツズマブ製剤(drug product:DP)組成物」とも呼ばれる。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「約(about)」は当業者によって理解されるものであり、この語句が使用される文脈に応じてある程度変動する。当業者にとって明らかでなく、また本明細書中で別途定義されてもいない、この語句の使用がある場合、この語句が使用される文脈を考慮して、「約」は特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味する。
【0065】
本明細書中で使用される場合、単数形「ある(a、an)」及び「上記(the)」は、文脈上明らかな別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。従って例えば、「ある」成分への言及は、文脈上明らかな別段の指示がない限り、2つ以上のそのような成分を有する態様を含む。また、単語「又は(or)」が先行する「…のいずれか(either)」(又は「or」が明確に排他的なものであることを示す同様の表現、例えば「x又はyのうちの一方のみ(only one of x or y)」等)を伴わずに使用されている場合、この単語は包括的なものであるものと解釈されるものとする(例えば「x又はy(x or y)」はx又はyのうちの一方又は両方を意味する)。
【0066】
用語「及び/又は(and/or)」もまた、包括的なものであるものと解釈されるものとする(例えば「x及び/又はy(x and/or y)」はx又はyのうちの一方又は両方を意味する)。「及び/又は」又は「又は」が3つ以上の項目のグループに対して接続詞として使用されている場合、該グループは、1つの項目のみ、全ての項目、又は項目のいずれの組み合わせ若しくはいずれの個数の項目を含むものと解釈されるものとする。更に、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、「…を有する(have、having)」、「…を含む(include、including)」といった用語は、用語「…を含む/備える(comprise、comprising)と同義であるものと解釈されるものとする。「及び/又は」の節によって具体的に特定された要素以外に、上記具体的に特定された要素と関連した又は関連しない要素が任意に存在してもよい。非限定的な例として、「X及び/又はY」への言及は、ある実施形態ではXのみ(任意にY以外の要素も含む)を指すことができ;いくつかの実施形態ではYのみ(任意にX以外の要素も含む)を指すことができ;更なるいくつかの実施形態ではX及びYの両方(任意に他の要素も含む)を指すことができる。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「酢酸塩(acetate)」は、医薬組成物の酢酸塩成分を指す。例えば酢酸塩成分は、酢酸、酢酸塩、及び/又は酢酸緩衝液から構成され得る。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「水性(aqueous)」は、水を含有する溶液を指す。
【0069】
本明細書中で使用される場合、用語「安定している(stable)」は、エノブリツズマブが保管時にその物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性、及び/又はその生物学的活性を実質的に保持していることを指す。
【0070】
用語「貯蔵寿命(shelf-life)」は、物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性、及び/又は生物学的活性が実質的に保持された状態で医薬組成物を保存できる期間を指す。
【0071】
当業者には理解されるように、特に書面による説明を提供するという観点からのあらゆる目的のために、本明細書で開示される全ての範囲は、端点を含むそのあらゆる可能な部分範囲及び部分範囲の組み合わせも包含する。従って、開示される全ての範囲は、あらゆる部分範囲、又は各範囲が包摂するあらゆる個々の値を包含し、またこれらが記載された特許請求の範囲に対するサポートを提供するものと理解されるものとする。例えば、1~10という範囲が記載されている場合、これは、最小値1と最大値10との間の、及び/又は最小値1と最大値10とを含む、あらゆる部分範囲又は個々の値;即ち1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わる全ての部分範囲(例えば5.5~10、2.34~3.56等)、又は1~10のいずれの値(例えば3、5.8、9.9994等)を含み、またこれらが記載された特許請求の範囲に対するサポートを提供するものとみなされるものとする。
【0072】
列挙されるいずれの範囲は、該範囲が少なくとも2個、3個、4個、5個、10個等に等しく分割されることを十分に説明し、またそれを可能にするものと容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書中で議論される各範囲は、下位の1/3、中間の1/3、上位の1/3等に容易に分割できる。これもまた当業者には理解されるように、「最大…/…まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「…超/…より大きい(greater than)」、「…未満(less than)」といった全ての表現は、記載されている数を含み、本明細書中で議論されるように後で部分範囲に分割できるような範囲を指す。更に、当業者には理解されるように、ある範囲は個々の数を含む。従って例えば、1~3個の層を有するグループは、1、2、又は3個の層を有するグループを指す。同様に、1~5個の層を有するグループは、1、2、3、4、又は5個の層を有するグループを指す。
【0073】
本明細書中で例示的なものとして開示される実施形態は、本明細書中で具体的に開示されていないいずれの1つ以上の要素、1つ以上の制限が存在しない状態で、適切に実施できる。従って、例えば用語「…を含む/備える(comprising)」、「…を含む(including)」、「…を含有する/包含する(containing)」等は、開放的かつ非制限的な意味で理解されるものとする。更に、本明細書中で採用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、これらの用語及び表現の使用には、図示及び説明されている特徴のいかなる均等物又はその一部分を除外する意図はなく、請求対象の技術の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。更に、句「…本質的にからなる(consisting essentially of)」は、具体的に記載されている要素と、請求対象の技術の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素とを含むものとして理解される。句「…からなる(consisting of)」は、明記されていないいかなる要素も除外する。
【0074】
参照により援用されるテキストに内包される定義は、本開示中の定義と矛盾する限りにおいて、除外される。
【0075】
本開示は、保管時に、エノブリツズマブの物理的及び化学的安定性、並びにその薬学的活性及び/又は生物学的活性を実質的に保持する、医薬組成物を提供する。一実施形態では、本開示の医薬組成物の保管中に、エノブリツズマブの物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性及び/又は生物学的活性の約90%以上、約80%以上、約70%以上、又は約60%以上が保持される。一実施形態では、貯蔵寿命の期間中に、エノブリツズマブの物理的安定性、化学的安定性、薬学的活性及び/又は生物学的活性の約90%以上、約85%以上、約80%以上、約75%以上、約70%以上、約65%以上、又は約60%以上が保持される。医薬組成物の貯蔵寿命は一般に、上記組成物中で分子が安定している期間に基づいて選択される。
【0076】
一実施形態では、本発明の医薬組成物の貯蔵寿命は、約25℃で少なくとも約1か月、約25℃で少なくとも約2か月、約25℃で少なくとも約3か月、約25℃で少なくとも約4か月、約25℃で少なくとも約6か月、2~8℃で少なくとも約6か月、2~8℃で少なくとも約12か月、2~8℃で少なくとも約18か月、2~8℃で少なくとも約24か月、2~8℃で少なくとも約30か月、2~8℃で少なくとも約36か月、2~8℃で少なくとも約48か月、又は2~8℃で約48か月超である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の貯蔵寿命は、約25℃で少なくとも約6か月である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の貯蔵寿命は、2~8℃で少なくとも約24か月である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の貯蔵寿命は、2~8℃で少なくとも約36か月である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の貯蔵寿命は、2~8℃で少なくとも約48か月である。
【0077】
物理的及び化学的安定性の1つの尺度は、本発明の医薬組成物中の、又は本発明の投薬用溶液中の、エノブリツズマブの単量体純度である。エノブリツズマブの単量体純度は、このような組成物若しくは溶液中の、予想される分子量を有するタンパク質(単量体エノブリツズマブ)、単量体より高い分子量を有する種(HMW種)、及び/又は単量体より低い分子量を有する種(LMW種)の量を、いずれの好適な方法で評価することによって決定できる。従って、単量体純度の損失は、指示された期間の後の、予想される分子量を有するタンパク質(単量体エノブリツズマブ)の損失、並びに/又はHMW及び/若しくはLMW種の蓄積を決定することによって測定できる。特定の実施形態では、各種(単量体、HMW、及びLMW)の百分率(%)は、総タンパク質の百分率(%)として計算される。一実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。一実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約6%以下である。一実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約5%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約4%未満である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約3%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、指示された期間にわたって、約2%以下である。特定の実施形態では、本発明の組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのHMW及び/又はLMW種は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(size exclusion high performance liquid chromatography:SE‐HPLC)によって測定される。このような一実施形態では、各種の百分率(%)は、SE‐HPLC種ピーク(即ち単量体、HMW、LMW)の面積を全てのピークの合計、即ち総タンパク質の百分率(%)で除算したものとして計算される。
【0078】
他の実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度は、約25℃で少なくとも約1か月、約25℃で少なくとも約2か月、約25℃で少なくとも約3か月、約25℃で少なくとも約4か月、約25℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約12か月、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月、約2℃~約8℃で少なくとも約30か月、約2℃~約8℃で少なくとも約36か月、少なくとも約48か月、又は約2℃~約8℃で約48か月超にわたって維持される。一実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度は、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度は、約2℃~約8℃で約36か月以上にわたって維持される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度は、約2℃~約8℃で約48か月にわたって維持される。
【0079】
安定性の別の尺度は、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブの電荷不均質性プロファイルの安定性である。タンパク質組成物は、等電点(pI)が異なる様々なバリアントを含み得る。このようなバリアントは、チャージバリアントと呼ばれる。従って、上記不均質性プロファイルは、主電荷ピーク(main charge peak:MCP)、酸性バリアント(acidic variant:AV)、及び塩基性バリアント(basic variant:BV)をいずれの好適な方法で測定することによって決定できる。例えば、本発明のエノブリツズマブ組成物はMCP、AV、及びBV成分を含むことができ、不均質性プロファイルの変化は、指示された時間後の、MCPの損失、並びに/又はAV及び/若しくはBVの蓄積を決定することによって測定できる。一実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。一実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約15%以下、又は約10%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約7%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約6%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCPの減少は、指示された期間にわたって、約5%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約7%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約6%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのAVの増加は、指示された期間にわたって、約5%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約4%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約3%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのBVの増加は、指示された期間にわたって、約2%以下である。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCP、AV、及びBVは、イオン交換高速液体クロマトグラフィ(ion exchange high performance liquid chromatography:IE‐HPLC)によって測定される。特定の実施形態では、発明の医薬組成物又は本発明の投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCP、AV、及びBVは、キャピラリ等電点電気泳動(capillary isoelectric focusing:cIEF)によって測定される。
【0080】
他の実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの不均質性プロファイルは、約25℃で少なくとも約1か月、約25℃で少なくとも約2か月、約25℃で少なくとも約3か月、約25℃で少なくとも約4か月、約25℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約6か月、約2℃~約8℃で少なくとも約12か月、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月、約2℃~約8℃で少なくとも約30か月、約2~約8℃で少なくとも約36か月、少なくとも約48か月、又は約2℃~約8℃で約48か月超にわたって維持される。一実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの不均質性プロファイルは、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの不均質性プロファイルは、約2℃~約8℃で約36か月以上にわたって維持される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物中のエノブリツズマブの不均質性プロファイルは、約2℃~約8℃で約48か月にわたって維持される。
【0081】
A.エノブリツズマブ組成物
本発明の医薬組成物(即ちエノブリツズマブ組成物)の成分は、例えば活性剤活性作用剤の量を示すバイアル、アンプル、又はサシェ等の気密容器中の液体組成物として、単位剤形に混合した状態で供給できる。一実施形態では、本発明の医薬組成物は液体状の溶液として供給される。このような液体状の溶液は、投与の準備ができるまで、元の容器内で約2℃~約8℃で保管できるが、このような液体状の溶液は、投与前の短期間、室温(約25℃)で保管することもできる。
【0082】
本発明のエノブリツズマブ組成物を注入によって投与する特定の実施形態では、上記組成物を、例えば滅菌された0.9%の塩化ナトリウム(例えば生理食塩水)を内包するシリンジ、容器、バッグ、又は注入ボトルを用いて吐出できる。本発明のエノブリツズマブ組成物を注射によって投与する特定の実施形態では、本明細書中で詳述されるように投与前に成分を混合できるよう、0.9%の塩化ナトリウムを提供できる。このようなエノブリツズマブ組成物は、予防有効量又は治療有効量のエノブリツズマブを含むことができる。
【0083】
本発明のエノブリツズマブ組成物を注入によって投与する特定の実施形態では、上記組成物を、例えば滅菌された水中の5%のデキストロース(「D5W」)を内包するシリンジ、容器、バッグ、又は注入ボトルを用いて吐出できる。本開示のエノブリツズマブ組成物を注射によって投与する特定の実施形態では、本明細書中で詳述されるように投与前に成分を混合できるよう、D5Wを提供できる。このようなエノブリツズマブ組成物は、予防有効量又は治療有効量のエノブリツズマブを含むことができる。
【0084】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブ、酢酸塩、スクロース、PS80、及び水を含む。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は抗酸化剤(例えばメチオニン)を含まない。
【0085】
酢酸塩成分は、酢酸及び酢酸塩から構成できる。許容可能な酢酸塩としては、限定するものではないが:酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、及び酢酸亜鉛が挙げられる。一実施形態では、上記酢酸塩は、氷酢酸及び酢酸ナトリウムを含む。
【0086】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約5mg/mL~約200mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約5mg/mL~約60mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約20mg/mL~約130mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約20mg/mL~約40mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約60mg/mL~約130mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約85mg/mL~約105mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約115mg/mL~約125mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約135mg/mL~約155mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約165mg/mL~約175mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約185mg/mL~約200mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約60mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約90mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約120mg/mLの濃度のエノブリツズマブを含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約10mg/mL、約22mg/mL、約27mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約80mg/mL、約100mg/mL、約150mg/mL等のエノブリツズマブ濃度も考えられる。
【0087】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は約5mM~約30mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は約5mM~約25mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は約8mM~約24mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は約7.5mM~約15mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は約8mM~約12mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は約9mM~約11mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、本発明の医薬組成物は約16mM~約24mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、本発明の医薬組成物は約18mM~約22mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は約10mMの酢酸塩を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は約20mMの酢酸塩を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約8mM、約14mM、約18mM等の酢酸塩濃度も考えられる。一実施形態では、本発明の組成物中の酢酸塩は、氷酢酸並びに酢酸ナトリウム(例えば無水酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム一水和物、及び/又は酢酸ナトリウム三水和物)を含む。酢酸ナトリウム一水和物及び/又は無水酢酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム三水和物を氷酢酸と併用することによって、所望の酢酸塩濃度を得ることができることが理解される。本明細書中で提供されているように、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、及び酢酸亜鉛を含むがこれらに限定されない別の形態の酢酸塩を、酢酸ナトリウムの代わりに酢酸緩衝液中で使用できる。
【0088】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.05mg/mL~約0.8mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.1mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.23mg/mL~約0.30mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.45mg/mL~約0.57mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.18mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.27mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.52mg/mLの濃度の氷酢酸を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約0.08mg/mL、0.15mg/mL、0.25mg/mL等の氷酢酸濃度も考えられる。
【0089】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.50mg/mL~約2.0mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.6mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.6mg/mL~約1.2mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.66mg/mL~約0.81mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約1.2mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約1.35mg/mL~約1.65mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.74mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約1.5mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約0.9mg/mL、約1.2mg/mL、約1.7mg/mL等の酢酸ナトリウム三水和物濃度も考えられる。
【0090】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.05mg/mL~約0.8mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.50mg/mL~約2.0mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.1mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.6mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.6mg/mL~約1.2mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.16mg/mL~約0.20mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.86mg/mL~約1.1mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.23mg/mL~約0.30mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.66mg/mL~約0.81mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの濃度の氷酢酸と、約1.2mg/mL~約1.8mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.45mg/mL~約0.57mg/mLの濃度の氷酢酸と、約1.35mg/mL~約1.65mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.27mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.74mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.18mg/mLの濃度の氷酢酸と、約0.95mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.52mg/mLの濃度の氷酢酸と、約1.5mg/mLの濃度の酢酸ナトリウム三水和物とを含む。
【0091】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約50mg/mL~約130mg/mLの濃度のスクロースを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約72mg/mL~約108mg/mLの濃度のスクロースを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約76mg/mL~約104mg/mLの濃度のスクロースを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約80mg/mL~約100mg/mLの濃度のスクロースを含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約90mg/mLの濃度のスクロースを含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約85mg/mL、約87mg/mL、約92mg/mL等のスクロース濃度も考えられる。
【0092】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.08mg/mL~約0.53mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.08mg/mL~約0.2mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.08mg/mL~約0.12mg/mLの濃度のPS80を含む。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約0.1mg/mLの濃度のPS80を含む。これらの値のうちのいずれかの間、例えば約0.09mg/mL、約0.11mg/mL、約0.13mg/mL等のPS80濃度も考えられる。
【0093】
一実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.0~約6.0である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.4~約5.6である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.3~約5.3である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.5~約5.5である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.7~約5.5(即ち約5.1±0.4)である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.6~約5.4(即ち約5.0±0.4)である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.4~約5.2(即ち約4.8±0.4)である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約4.8である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約5.0である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物のpHは約5.1である。これらの値のうちのいずれかの間のpH量、例えば約4.7のpH、約4.9のpH、約5.3のpH、又は約5.5のpH等も考えられる。
【0094】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約5mM~約30mMの酢酸ナトリウム、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.0である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約8mM~約24mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.6である。
【0095】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約20mg/mL~約40mg/mLのエノブリツズマブ、約7.5mM~約15mMの酢酸ナトリウム、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.0である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約20mg/mL~約40mg/mLのエノブリツズマブ、約8mM~約12mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのエノブリツズマブ、約9mM~約11mMの酢酸ナトリウム、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.5である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。
【0096】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約60mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約16mM~約24mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.3~約5.3である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約60mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約18mM~約22mMの酢酸ナトリウム、約76mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約90mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。
【0097】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約0.05mg/mL~約0.8mg/mLの氷酢酸、約0.5mg/mL~約2.0mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.0である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約0.1mg/mL~約0.65mg/mLの氷酢酸、約0.6mg/mL~約1.8mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.6である。
【0098】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのエノブリツズマブ、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの氷酢酸、約0.6mg/mL~約1.2mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのエノブリツズマブ、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの氷酢酸、約0.6mg/mL~約1.2mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.7~約5.5である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.4である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。
【0099】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約60mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの氷酢酸、約1.2mg/mL~約1.8mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.3~約5.3である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約90mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの氷酢酸、約1.2mg/mL~約1.8mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.3~約5.3である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。
【0100】
一実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.7~約5.5である。別の実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約5.1である。
【0101】
別の実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.6~約5.4である。別の実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約5.0である。
【0102】
一実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.8である。
【0103】
別の実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.8である。
【0104】
一実施形態では、約5mLの本発明の医薬組成物は、約125mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約450mgのスクロース、約0.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.5である。別の実施形態では、約5mLの本発明の医薬組成物は、約125mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約450mgのスクロース、約0.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約5mLの本発明の医薬組成物は、約125mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約450mgのスクロース、約0.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。
【0105】
一実施形態では、約5mLの本発明の医薬組成物は、約125mgのエノブリツズマブ、約0.9mgの氷酢酸、約4.75mgの酢酸ナトリウム三水和物、約450mgのスクロース、約0.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.7~約5.5である。別の実施形態では、約5mLの本発明の医薬組成物は、約125mgのエノブリツズマブ、約0.9mgの氷酢酸、約4.75mgの酢酸ナトリウム三水和物、約450mgのスクロース、約0.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約5mLの本発明の医薬組成物は、約125mgのエノブリツズマブ、約0.9mgの氷酢酸、約4.75mgの酢酸ナトリウム三水和物、約450mgのスクロース、約0.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.4である。一実施形態では、約5mLの本発明の医薬組成物は、約125mgのエノブリツズマブ、約1.35mgの氷酢酸、約3.7mgの酢酸ナトリウム三水和物、約450mgのスクロース、約0.5mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。
【0106】
一実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約250mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.5である。別の実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約250mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約250mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。
【0107】
一実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約250mgのエノブリツズマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.7~約5.5である。別の実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約250mgのエノブリツズマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約250mgのエノブリツズマブ、約1.8mgの氷酢酸、約9.5mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.4である。一実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約250mgのエノブリツズマブ、約2.7mgの氷酢酸、約7.4mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。
【0108】
ある代替実施形態では、約17mLの本発明の医薬組成物は、約425mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム三水和物、約1530mgのスクロース、約1.7mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.5である。別の代替実施形態では、約17mLの本発明の医薬組成物は、約425mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム三水和物、約1530mgのスクロース、約1.7mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の代替実施形態では、約17mLの本発明の医薬組成物は、約425mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム三水和物、約1530mgのスクロース、約1.7mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。
【0109】
別の代替実施形態では、約17mLの本発明の医薬組成物は、約425mgのエノブリツズマブ、約3.06mgの氷酢酸、約16.15mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1530mgのスクロース、約1.7mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.7~約5.5である。別の代替実施形態では、約17mLの本発明の医薬組成物は、約425mgのエノブリツズマブ、約3.06mgの氷酢酸、約16.15mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1530mgのスクロース、約1.7mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の代替実施形態では、約17mLの本発明の医薬組成物は、約425mgのエノブリツズマブ、約4.59mgの氷酢酸、約12.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1530mgのスクロース、約1.7mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.4である。別の代替実施形態では、約17mLの本発明の医薬組成物は、約425mgのエノブリツズマブ、約4.59mgの氷酢酸、約12.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1530mgのスクロース、約1.7mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。
【0110】
一実施形態では、約20mLの本発明の医薬組成物は、約500mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.5である。別の実施形態では、約20mLの本発明の医薬組成物は、約500mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約20mLの本発明の医薬組成物は、約500mgのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。
【0111】
一実施形態では、約20mLの本発明の医薬組成物は、約500mgのエノブリツズマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.7~約5.5である。別の実施形態では、約20mLの本発明の医薬組成物は、約500mgのエノブリツズマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、約20mLの本発明の医薬組成物は、約500mgのエノブリツズマブ、約3.6mgの氷酢酸、約19mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.4である。一実施形態では、約20mLの本発明の医薬組成物は、約500mgのエノブリツズマブ、約5.4mgの氷酢酸、約14.8mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1800mgのスクロース、約2mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。
【0112】
一実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約1,200mgのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約1,200mgのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。一実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約1,200mgのエノブリツズマブ、約5.2mgの氷酢酸、約15mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、約10mLの本発明の医薬組成物は、約1,200mgのエノブリツズマブ、約5.2mgの氷酢酸、約15mgの酢酸ナトリウム三水和物、約900mgのスクロース、約1mgのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。
【0113】
一実施形態では、本発明の医薬組成物の重量オスモル濃度は約200~約400mOsm/kg・HOである。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の重量オスモル濃度は約225~約375mOsm/kgである。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の重量オスモル濃度は約250~約360mOsm/kgである。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の重量オスモル濃度は約260~約340mOsm/kg・HOである。
【0114】
特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は滅菌されている。一実施形態では、本開示の医薬組成物は非発熱性である。本開示は更に、上記水が滅菌された非発熱性の蒸留水である、上記医薬組成物、密封パッケージ、又はキットの実施形態を提供する。別の実施形態では、本開示の密封パッケージ、キット、又は医薬組成物中の上記水は、注射用水(Water for Injection)、USP、又はこれらと同等のものである。
【0115】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25℃で少なくとも約3か月にわたって安定している。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの単量体純度を、約25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約3か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約3か月で約3%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの電荷不均質性プロファイルを、約25℃で少なくとも約3か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの主電荷ピーク(MCP)の減少は、約25℃において、約3か月で約20%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約25℃において、約3か月で約20%以下である。
【0116】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約25℃で少なくとも約6か月にわたって安定している。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの単量体純度を、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、25℃において、約6か月で約6%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約6か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約25℃において、約6か月で約3%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの電荷不均質性プロファイルを、約25℃で少なくとも約6か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約25℃において、約6か月で約20%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約25℃において、約6か月で約20%以下である。
【0117】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって安定している。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約18か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約18か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約18か月で約3%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの電荷不均質性プロファイルを、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約18か月で約10%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約18か月で約9%以下である。別の実施形態では、医薬組成物中又は投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約18か月で約7%以下である。別の実施形態では、医薬組成物中又は投薬用溶液中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約18か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約18か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約18か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約18か月で約3%以下である。
【0118】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月にわたって安定している。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約24か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約24か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約24か月で約3%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの電荷不均質性プロファイルを、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約24か月で約10%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約24か月で約9%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約24か月で約7%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約24か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約24か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約24か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約24か月で約3%以下である。
【0119】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約2℃~約8℃で約36か月にわたって安定している。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で約36か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約36か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約36か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約36か月で約3%以下である。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの電荷不均質性プロファイルを、約2℃~約8℃で少なくとも約36か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約36か月で約10%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約36か月で約9%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約36か月で約7%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約36か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約36か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約36か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約36か月で約3%以下である。
【0120】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約2℃~約8℃で約48か月にわたって安定している。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、エノブリツズマブの単量体純度を、約2℃~約8℃で約48か月にわたって維持する。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約48か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約48か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブの単量体純度の損失は、約2℃~約8℃において、約48か月で約3%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約48か月で約10%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約48か月で約9%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約48か月で約7%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのMCPの減少は、約2℃~約8℃において、約48か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約48か月で約5%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約48か月で約4%以下である。別の実施形態では、上記医薬組成物中のエノブリツズマブのAVの増加は、約2℃~約8℃において、約48か月で約3%以下である。
【0121】
III.容器及びキット
本発明は、本発明の医薬組成物を含む容器も提供する。本発明は更に、本発明の医薬組成物を内包した1つ以上の容器を含む、医薬パック又はキットを提供する。一実施形態では、上記容器はバイアル(例えば単回用量バイアル)である。一実施形態では、本発明の上記医薬パック又はキットは、バイアル(例えば単回用量バイアル)を内包する。別の実施形態では、上記医薬パック又はキットは、2個以上のバイアルを内包する。
【0122】
一実施形態では、上記容器(例えばバイアル)は約5mL~約20mLの本発明の医薬組成物を内包する。一実施形態では、上記容器(例えばバイアル)は、エノブリツズマブの濃度が容器1個あたり約25mg/mLとなるように、約125mgのエノブリツズマブを含む約5mLの本発明の医薬組成物を内包する。別の実施形態では、上記容器(例えばバイアル)は、エノブリツズマブの濃度が容器1個あたり約25mg/mLとなるように、約250mgのエノブリツズマブを含む約10mLの本発明の医薬組成物を内包する。別の実施形態では、上記容器(例えばバイアル)は、エノブリツズマブの濃度が容器1個あたり約120mg/mLとなるように、約1,200mgのエノブリツズマブを含む約10mLの本発明の医薬組成物を内包する。別の実施形態では、上記容器(例えばバイアル)は、エノブリツズマブの濃度が容器1個あたり約25mg/mLとなるように、約425mgのエノブリツズマブを含む約17mLの本発明の医薬組成物を内包する。別の実施形態では、上記容器(例えばバイアル)は、エノブリツズマブの濃度が容器1個あたり約25mg/mLとなるように、約500mgのエノブリツズマブを含む約20mLの本発明の医薬組成物を内包する。上記容器(例えばバイアル)は、用量の送達のため、最大約5mL(125mg)、最大約10mL(250mg又は1,200mg)、最大約17mL(425mg)、及び最大約20mL(500mg)のエノブリツズマブを取り出すために十分な体積を保証するために、過剰体積の本発明の上記医薬組成物を含んでもよいことが理解される。
【0123】
更に、疾患の治療に有用な1つ以上の他の予防剤又は治療剤も、本発明の医薬パック又はキットに含めることができる。任意に、このような1つ以上の容器は、医薬製品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知と関連するものとすることができ、上記通知は、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売の機関による承認を反映したものである。任意に、エノブリツズマブ組成物を含む投薬用溶液の調製及び投与のための1つ以上の指示及び/又は使用説明が記載された製品ラベルが、1つ以上の上記容器に関連付けられる。
【0124】
本発明は、上述の方法で使用できる、本発明の医薬組成物(即ちエノブリツズマブ組成物)を含むキットを提供する。上記キットでは、本発明の医薬組成物(即ちエノブリツズマブ組成物)は一般に、例えばアンプル、バイアル、サシェ、又は他の好適な容器といったの気密容器中に包装され、上記容器には典型的には、その中に内包された成分の量が示されている。上記容器は、ガラス、樹脂、プラスチック、又は他の好適な材料といった、薬学的に許容可能ないずれの材料で形成できる。一実施形態では、上記容器はボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、上記容器は単回用量5mL USPタイプIボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、この5mL容器は、5mLの体積中に約125mgのエノブリツズマブを含有する。一実施形態では、上記容器はボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、上記容器は、単回用量10mL USPタイプIボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、この10mL容器は、10mLの体積中に約250mgのエノブリツズマブを含有する。別の実施形態では、上記容器は単回用量20mL USPタイプIボロシリケートガラス製バイアルである。別の実施形態では、この20mL容器は、17mLの体積中に約425mgのエノブリツズマブを含有する。別の実施形態では、この20mL容器は、20mLの体積中に約500mgのエノブリツズマブを含有する。一実施形態では、上記容器は無菌的に充填される。一実施形態では、上記キットを構成する本発明の医薬組成物は、液体状の溶液として供給される。このような液体状の溶液は、投与の準備ができるまで、元の容器内で約2℃~約8℃で保管できる。しかしながら、このような溶液は、短期間にわたって室温(約25℃)で保管することもできる。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約18か月の貯蔵寿命を有する。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約24か月の貯蔵寿命を有する。一実施形態では、上記医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約36か月の貯蔵寿命を有する。一実施形態では、上記医薬組成物は、約2℃~約8℃で少なくとも約48か月の貯蔵寿命を有する。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、25℃で少なくとも約3か月の貯蔵寿命を有する。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、25℃で少なくとも約6か月の貯蔵寿命を有する。上記キットは更に、1つ以上の容器内に、癌の治療に使用できる1つ以上の他の予防及び/若しくは治療剤を、例えば予防有効量若しくは治療有効量で含むことができ;並びに/又は上記キットは更に、癌に関連する1つ以上の癌抗原に結合する1つ以上の抗体、例えば細胞傷害性抗体を含むことができる。特定の実施形態では、上記他の予防又は治療剤は化学療法剤である。他の実施形態では、上記予防又は治療剤は生物療法剤又はホルモン療法剤である。
【0125】
従って本発明は:
a)本明細書に記載されている医薬組成物を含む容器;
b)任意に、それを必要とする被験者に上記医薬組成物を投与するための説明書
を含む、キットを提供する。
【0126】
一実施形態では、上記容器は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約5mM~約30mMの酢酸ナトリウム、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含む医薬組成物を含むことができ、上記組成物のpHは約4.0~約6.0である。一実施形態では、上記容器は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約8mM~約24mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含む医薬組成物を含むことができ、上記組成物のpHは約4.4~約5.6である。
【0127】
一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約20mg/mL~約40mg/mLのエノブリツズマブ、約7.5mM~約15mMの酢酸ナトリウム、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.0である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約20mg/mL~約40mg/mLのエノブリツズマブ、約8mM~約12mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのエノブリツズマブ、約9mM~約11mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.6~約5.5である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.1である。別の実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約10mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約5.0である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約60mg/mL~約130mg/mLのエノブリツズマブ、約16mM~約24mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.3~約5.3である。
【0128】
一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約60mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約18mM~約22mMの酢酸ナトリウム、約72mg/mL~約104mg/mLのスクロース、約0.08mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約20mMの酢酸ナトリウム、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.8である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約0.05mg/mL~約0.8mg/mLの氷酢酸、約0.5mg/mL~約2.0mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約50mg/mL~約130mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.0~約6.0である。
【0129】
一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約5mg/mL~約200mg/mLのエノブリツズマブ、約0.1mg/mL~約0.65mg/mLの氷酢酸、約0.6mg/mL~約1.8mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.6mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.4~約5.6である。一実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約20mg/mL~約30mg/mLのエノブリツズマブ、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの氷酢酸、約0.6mg/mL~約1.2mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。
【0130】
別の実施形態では、上記容器は医薬組成物を含むことができ、上記組成物は、約22.5mg/mL~約27.5mg/mLのエノブリツズマブ、約0.1mg/mL~約0.35mg/mLの氷酢酸、約0.6mg/mL~約1.2mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含み、上記組成物のpHは約4.5~約5.5である。一実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約5.4~約5.7である。別の実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.18mg/mLの氷酢酸、約0.95mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約5.1である。一実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.6~約5.4である。別の実施形態では、上記容器は、約25mg/mLのエノブリツズマブ、約0.27mg/mLの氷酢酸、約0.74mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約5.0である。一実施形態では、上記容器は、約60mg/mL~約130mg/mLのエノブリツズマブ、約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの氷酢酸、1.2mg/mL~約1.8mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.3~約5.3である。一実施形態では、上記容器は、約90mg/mL~約130mg/mLのエノブリツズマブ、約0.4mg/mL~約0.65mg/mLの氷酢酸、約1.2mg/mL~約1.8mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約72mg/mL~約108mg/mLのスクロース、約0.05mg/mL~約0.2mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.3~約5.3である。
【0131】
一実施形態では、上記容器は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.4~約5.2である。別の実施形態では、上記容器は、約120mg/mLのエノブリツズマブ、約0.52mg/mLの氷酢酸、約1.5mg/mLの酢酸ナトリウム三水和物、約90mg/mLのスクロース、約0.1mg/mLのPS80、及び水を含むことができ、上記組成物のpHは約4.8である。
【0132】
本発明の上記組成物、容器、密封パッケージ、及びキット中の水は、滅菌された非発熱性の蒸留水とすることができ、注射用水、USP、又ははこれらと同等のものとすることができる。
【0133】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージは、説明資料を含むことができる。本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、提供される医薬組成物を、同一の医薬キット若しくは密封パッケージで又は別個の医薬キット若しくは別個の密封パッケージで提供され得る追加の作用剤と組み合わせて投与するように指示する場合がある。上記説明資料は、提供される医薬組成物を、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、又はそれより高い若しくは低い頻度で、規則的な又は不規則な間隔で投与するように指示できる。上記説明資料は、提供される医薬組成物の1つの容器が、約25mg/mL(例えば125mg/5mL、250mg/10mL、425mg/17mL、若しくは500mg/20mL)、又は約120mg/mL(例えば1,200mg/10mL)のエノブリツズマブを含むように指示できる。上記説明資料は、約6mg/kg、約10mg/kg、又は約15mg/kgの体重ベース治療用量で投与するように指示できる。上記説明資料は、提供される医薬組成物を、投与前に(例えば0.9%の塩化ナトリウム又はD5W中で)希釈するように指示できる。本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、このような情報のいずれのセットを組み合わせることができる(例えば上記説明資料は、エノブリツズマブ医薬組成物を0.9%の塩化ナトリウム又はD5W中で希釈して、約6mg/kg、約10mg/kg、又は約15mg/kgの体重ベース治療用量で投与するように、及び上記用量を、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回、又はそれより高い若しくは低い頻度で、規則的な又は不規則な間隔で投与するように、指示できる)。上記説明資料は、含まれる医薬組成物の投与の様式に関して、例えば上記医薬組成物を静脈内(IV)注入によって投与するように指示できる。本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記投与の持続時間又はタイミングに関して、例えば含まれる医薬組成物を、約30分にわたる、約60分にわたる、又は120分にわたる、又はそれより長い若しくは短い持続時間にわたる静脈内(IV)注入によって投与するように指示できる。ラインを洗い流すために、最大10分の追加の注入時間(即ち合計130分)が許可される。
【0134】
一実施形態では、本発明の医薬キットの説明資料は、上記医薬組成物を0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して投薬用溶液を得るように指示する。別の実施形態では、本発明の医薬キットの説明資料は、提供される上記医薬組成物をD5W中で希釈して投薬用溶液を得るように指示する。
【0135】
一実施形態では、本発明の密封パッケージの説明資料は、上記医薬組成物を0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して投薬用溶液を得るように指示する。別の実施形態では、本発明の密封パッケージの説明資料は、提供される上記医薬組成物をD5W中で希釈して投薬用溶液を得るように指示する。
【0136】
一実施形態では、本発明の医薬キットの説明資料は、本発明の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、容器内において、0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0137】
一実施形態では、本発明の密封パッケージの説明資料は、本発明の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、容器内において、0.9%の塩化ナトリウム中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0138】
一実施形態では、上記本発明の投薬用溶液の投与は、約30分~約120分、約30分、約60分、又は約120分の期間にわたる静脈内(IV)注入によるものである。
【0139】
一実施形態では、本発明の医薬キットの説明資料は、本発明の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、容器内においてD5W中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0140】
一実施形態では、本発明の密封パッケージの説明資料は、本発明の医薬組成物を、それを必要とする被験者に投与する方法を提供し、上記方法は:
a)上記医薬組成物を、容器内においてD5W中で希釈して、投薬用溶液を得るステップ;
b)上記容器を反転させて、希釈された上記溶液を混合するステップ;及び
c)上記投薬用溶液を内包した上記容器を、上記被験者への投与のためのデバイスに取り付けるステップ
を含む。
【0141】
一実施形態では、上記容器は、0.9%の塩化ナトリウムを内包したIVバッグである。別の実施形態では、上記容器は、D5Wを内包したIVバッグである。別の実施形態では、上記容器は、0.9%の塩化ナトリウムを内包したシリンジである。別の実施形態では、上記容器は、D5Wを内包したシリンジである。
【0142】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、投薬用溶液中のエノブリツズマブの、約6mg/kg~約15mg/kgの体重ベース治療用量が得られるように希釈される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、投薬用溶液中のエノブリツズマブの、約6mg/kgの体重ベース治療用量が得られるように希釈される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、投薬用溶液中のエノブリツズマブの、約10mg/kgの体重ベース治療用量が得られるように希釈される。別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、投薬用溶液中のエノブリツズマブの、約15mg/kgの体重ベース治療用量が得られるように希釈される。
【0143】
本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、含まれる医薬組成物の適切な又は望ましい用途に関して、例えば提供される医薬組成物を癌の治療のために、例えば予防有効量又は治療有効量で投与するように、指示できる。一実施形態では、上記癌は:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌(肛門管扁平上皮癌(SCAC)を含む)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌(HER2+乳癌、又はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む)、頸動脈球腫瘍、子宮頸癌(HPV関連子宮頸癌を含む)、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎明細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌(選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、及び/又はPOLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌を含む)、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢癌又は胆管癌(bile duct cancer)(胆管癌(cholangiocarcinoma)、胆管癌(bile duct cancer)を含む)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、膠芽腫、頭頸部癌(頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、白血病(急性骨髄性白血病を含む)、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌(肝細胞癌(HCC)を含む)、リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む)、髄芽腫、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫(中皮咽頭癌を含む)、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌(転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を含む)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、小児期の小円形青色細胞腫瘍(神経芽腫、及び横紋筋肉腫を含む)、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される。
【0144】
本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を:肛門癌、膀胱癌、乳癌、胆管癌(bile duct cancer)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌(gastric cancer)、GEJ癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、及び尿路上皮癌からなる群から選択される癌に対して投与するよう指示できる。
【0145】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を肛門癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記肛門癌はSCACである。
【0146】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を肺癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記肺癌はNSCLCである。
【0147】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を乳癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記乳癌はTNBCである。
【0148】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を皮膚癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記皮膚癌は黒色腫である。別の実施形態では、上記皮膚癌はメルケル細胞癌である。
【0149】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を頭頸部癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記頭頸部癌はSCCHNである。
【0150】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を前立腺癌の治療のために投与するよう指示する。別の実施形態では、上記前立腺癌はmCRPCである。
【0151】
一実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を尿路上皮癌の治療のために投与するよう指示する。
【0152】
以上の実施形態のいずれかにおいて、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を上述のような癌の治療のために投与するよう指示でき、上記癌は転移性癌である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を上述のような癌の治療のために投与するよう指示でき、上記癌は原発性癌である。
【0153】
本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を上述のような癌の治療のために、上記癌の別の治療の前、間、又は後に投与するように指示できる。このような実施形態のうちの特定のものにおいて、上記説明資料は、上記医薬組成物を、上述のような癌の治療のための術前補助療法として投与するように指示できる。このような実施形態のうちの他のものにおいて、上記説明資料は、上記医薬組成物を、上述のような癌の治療のための補助療法として投与するように指示できる。このような実施形態のうちの他のものにおいて、上記説明資料は、上記医薬組成物を、上述のような癌の治療のための併用療法の構成要素として投与するように指示できる。
【0154】
本発明の医薬キット又は本発明の密封パッケージに含まれる説明資料は、医薬組成物を、B7‐H3を発現する上述のような癌の治療のために投与するように指示できる。説明資料は更に、特定のアッセイ又は発現測定、例えば免疫組織化学によるB7‐H3の発現の測定を指定できる。説明資料は更に、このようなB7‐H3発現スコアを、規制当局によって使用が承認された(例えばFDAによって承認された)試験によって決定するよう、指定できる。
【0155】
IV.投与方法
本発明の医薬組成物は、治療有効量又は予防有効量のエノブリツズマブを、被験者に投与することによる、疾患、障害又は感染症に関連する1つ以上の症状の治療、予防及び改善のために提供できる。一実施形態では、上記医薬組成物は、いずれの好適な方法によって決定されるように、実質的に精製される(即ち上記組成物の効果を制限する、又は望ましくない副作用を生成する物質を実質的に含まない)。別の実施形態では、被験者は、非霊長類(例えばウシ属、ウマ科、ネコ科、イヌ科、げっ歯類等)又は霊長類(例えばカニクイザル等のサル、ヒト等)といった哺乳類を含む動物である。一実施形態では、被験者はヒトである。用語「被験者(subject)」と「患者(patient)」とは、本明細書中では相互交換可能なものとして使用される。
【0156】
本明細書中で使用される場合、癌の治療に使用する際の本発明の医薬組成物のエノブリツズマブの「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、癌の進行を遅らせることができる;体液(例えば血液、末梢細胞若しくはリンパ液)、組織、又は器官中の癌細胞の個数を削減できる(細胞傷害性);癌細胞の個数を比較的一定に維持できる(細胞増殖抑制性);腫瘍サイズを低下させる、転移を阻害する、腫瘍の成長を阻害する、及び/又は癌の症状のうちの1つ以上を緩和することができる、量である。本開示の医薬組成物の配合に使用するためのエノブリツズマブの治療有効量は、本明細書中で提供されており、並びに/又は例えば医療専門家によって、治療対象の癌の種類、送達経路、年齢、体重、被験者の症状の重症度、及び被験者の応答パターンを考慮して決定できる。本明細書中で使用される場合、癌の予防に使用する際の本開示の医薬組成物のエノブリツズマブの「予防有効量(prophylactically effective amount)」は、癌の発生若しくは再発を防止できる、又は癌の発生若しくは再発のリスクを低減できる量である。本明細書中で使用される場合、本開示の医薬組成物、容器、密封パッケージ、キット、又は方法による癌の治療は、例えば、治療有効量又は予防有効量のエノブリツズマブを、それを必要とする被験者に投与するステップを含むことができる。
【0157】
本発明の医薬組成物(即ちエノブリツズマブ組成物)を投与する方法としては、限定するものではないが、非経口投与(例えば静脈内)が挙げられる。別の実施形態では、本発明の医薬組成物(即ちエノブリツズマブ組成物)は、静脈内投与される。本発明の医薬組成物は:代謝拮抗化学療法剤(ペメトレキセドを含む)、白金ベースの化学療法剤(例えばシスプラチン及びカルボプラチンを含む)、並びにタキサンベースの化学療法剤(例えばパクリタキセル及びナブパクリタキセルを含む)を含むがこれらに限定されない化学療法剤;癌抗原又はT細胞等の免疫細胞上の抗原に結合するものを含む抗体及び抗体様分子を含むがこれらに限定されない生物製剤といった、他の薬学的活性剤と共に投与され得る。このような癌抗原としては、限定するものではないが、5T4、CD19、CD20、CD51、CD123、DR5、EGFR、EpCam、GD2、gpA33、HER2、PD‐L1、ROR‐1、TAG‐72、及び/又はVEGFR2が挙げられる。免疫細胞上の上述のような抗原としては、限定するものではないが、CTLA‐4、LAG‐3、及びPD‐1が挙げられる。上述のような癌抗原又は免疫細胞上の抗原に結合する多数の抗体及び抗体様分子は既に記述されており、限定するものではないが、ベバシズマブ、セツキシマブ、エノブリツズマブ、フロテツズマブ、マルゲツキシマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、レチファンリマブ、リツキシマブ、テボテリマブ、トラスツズマブ等が挙げられる。
【0158】
一実施形態では、本発明の医薬組成物(即ちエノブリツズマブ組成物)の量は、被験者に治療有効量又は予防有効量のエノブリツズマブを提供するための、エノブリツズマブの体重ベース用量を用いて決定される。用語「体重ベース用量(weight-based dose)」は、本明細書中で使用される場合、患者の単位体重あたりの、投与されるエノブリツズマブの個別量、例えば被験者の体重1キログラムあたりのエノブリツズマブのミリグラム数(mg/kg体重;本明細書では「mg/kg」と略される)を指す。計算された用量は、ベースライン時の被験者の体重に基づいて投与される。典型的には、ベースライン又は確立されたプラトー体重からの、体重の有意な(例えば少なくともプラス又はマイナス約10%以上の)変化により、用量の再計算が促されることになる。単一又は複数の投薬量が投与され得る。
【0159】
特定の実施形態では、エノブリツズマブは、それを必要とする被験者に、約6mg/kg~約15mg/kgの体重ベース用量で投与される。特定の実施形態では、エノブリツズマブは、それを必要とする被験者に、約6mg/kgの用量で投与される。特定の実施形態では、エノブリツズマブは、それを必要とする被験者に、約10mg/kgの用量で投与される。特定の実施形態では、エノブリツズマブは、それを必要とする被験者に、約15mg/kgの用量で投与される。体重ベースの用量に関して、用語「約」は、記載されている用量の±10%の範囲を指すことが意図されているため、例えば約15mg/kgの用量は、13.5mg/kg、16.5mg/kg、又は13.5mg/kg~16.5mg/kgとなる。
【0160】
1用量の本発明の医薬組成物(即ち1用量のエノブリツズマブ組成物)は、少なくとも2用量、少なくとも4用量、少なくとも6用量、少なくとも12用量、又は少なくとも24用量、又は24用量より多い用量を包含するために十分な期間(治療経過)にわたって、周期的な間隔で被験者に投与できる。このような、ある期間にわたる周期的な間隔での本発明の医薬組成物の投与は、1回の「治療経過(course of treatment)」とみなすことができる。例えばある投薬量を、2週間に1回(「Q2W」)、3週間に1回(「Q3W」)、4週間に1回(「Q4W」)、又はそれより短い若しくは長い期間にわたって、投与してよい。このような周期的な投与を、ある期間にわたって、例えば約1~約52週間又は52週間超にわたって継続してよい。このような治療経過は、より短い様々な間隔、例えば2~8週間の、本明細書ではそれぞれ「サイクル(cycle)」と呼ばれる複数の増分に分割でき、その間に、設定された数の用量が投与される。投与の用量及び/又は頻度は、各サイクル中において同一であっても異なっていてもよい。被験者の効果的な治療に必要な投薬及びタイミングに影響し得る因子としては、例えば被験者の疾患若しくは障害の重篤度、処方、送達経路、過去の治療、総合的な健康状態、及び/又は年齢、並びに被験者の体内の他の疾患の存在が挙げられる。更に、治療有効量のエノブリツズマブを用いた被験者の治療は、単一の治療、又は一連の複数の治療を含むことができる。
【0161】
「投薬レジメン(dosing regimen)」は、被験者に1つ以上の所定の周期性で、所定の頻度(又は複数のこのような頻度のセット)で、所定の用量(又は複数のこのような用量のセット)が投与される、投薬量の投与である。本発明のある投薬レジメンは、約3mg/kgの用量でQ3Wでの、被験者に対する本発明のエノブリツズマブ組成物の投与を含む。本発明の別の投薬レジメンは、約6mg/kgの用量でQ3Wでの、被験者に対する本発明のエノブリツズマブ組成物の投与を含む。本発明の別の投薬レジメンは、約10mg/kgの用量でQ3Wでの、被験者に対する本発明のエノブリツズマブ組成物の投与を含む。本発明の別の投薬レジメンは、約15mg/kgの用量でQ3Wでの、本発明のエノブリツズマブ組成物の投与を含む。
【0162】
本発明の特定の実施形態では、被験者に対する上記医薬組成物の投与が、所定の頻度若しくは周期性で又はこのような予定された間隔の約1~3日以内に行われることが、具体的に企図され、従って投与は、予定投薬日の1~3日前、1~3日後、又は予定投薬日に、例えば3週間(±3日)に1回、行われる。このような実施形態では、上記エノブリツズマブ組成物は、注入ポンプによってシリンジで被験者に投与される。特定の実施形態では、上記エノブリツズマブ組成物は、少なくとも1か月以上、少なくとも3か月以上、少なくとも4か月、少なくとも6か月以上、又は少なくとも12か月、又は12か月超の持続時間にわたって、本発明の投薬レジメンのうちのいずれかに従って、シリンジポンプ注入によって投与される。特定の実施形態では、上記エノブリツズマブ組成物はIV注入によって投与される。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、連続静脈内注入であっても不連続な静脈内注入であってもよいIV注入によって、投与される。特定の実施形態では、上記エノブリツズマブ組成物は、少なくとも1か月以上、少なくとも3か月以上、少なくとも4か月、少なくとも6か月以上、又は少なくとも12か月、又は12か月超の持続時間(即ち治療経過)にわたって、上述の投薬レジメンのうちのいずれかに従って、IV注入によって投与される。少なくとも6か月以上の、又は少なくとも12か月若しくは12か月超にわたる、又は例えば疾患若しくは管理が不可能な毒性の寛解までの、治療期間が観察される。特定の実施形態では、治療は、疾患の寛解後、ある期間にわたって継続される。特定の実施形態では、治療は、病気、有害事象等によって中断される場合があり、このような病気、有害事象等の解決、軽減、又は改善時に再開される。
【0163】
本発明の方法の特定の実施形態では、本発明の医薬組成物(即ちエノブリツズマブ組成物)は、注入ポンプによる投与のために、好適な希釈剤、例えば0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを含むシリンジ内で希釈される。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、IV注入による投与のために、好適な希釈剤、例えば0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを含む注入バッグ内で希釈される。注入反応又はアレルギー反応が発生する可能性があるため、このような注入反応の予防のための前投薬を利用でき、また抗体の投与中にアナフィラキシーに対する予防措置を講じることができる。
【0164】
V.医薬組成物を含む投薬用溶液の投与
医薬組成物(本発明のエノブリツズマブ組成物等)を含む投薬用溶液は、例えば重力による、又は静的注入ポンプを用いた、静脈内投与に特に好適である。本発明のエノブリツズマブ組成物を0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wと組み合わせることによって、エノブリツズマブ投薬用溶液を得ることができる。特定の実施形態では、治療用投薬量の投与は、少なくとも約30分又は少なくとも約60分にわたる。特定の実施形態では、治療用投薬量の投与は、少なくとも約120分にわたる。
【0165】
いくつかの実施形態では、約6mg/kg~約15mg/kgの体重ベース用量が、患者又は被験者に投与される。一実施形態では、約6mg/kg、約10mg/kg、又は約15mg/kgの体重ベース用量が、患者又は被験者に投与される。他の実施形態では、約6mg/kg~約15mg/kgの体重ベース用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約6mg/kgの体重ベース用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約10mg/kgの体重ベース用量がQ3Wで投与される。他の実施形態では、約15mg/kgの体重ベース用量がQ3Wで投与される。
【0166】
別の実施形態では、上述のような用量の投与は、少なくとも約30分にわたる、又は少なくとも約120分にわたるIV注入によるものである。別の実施形態では、上述のような用量の投与は、少なくとも約30分にわたる、又は少なくとも約90分にわたるIV注入によるものである。別の実施形態では、上述のような用量の投与は、少なくとも約30分にわたる、又は少なくとも約60分にわたるIV注入によるものである。別の実施形態では、エノブリツズマブ投薬用溶液の投与は、少なくとも約30分にわたるIV注入によるものである。別の実施形態では、エノブリツズマブ投薬用溶液の投与は、少なくとも約60分にわたるIV注入によるものである。別の実施形態では、エノブリツズマブ投薬用溶液の投与は、少なくとも約120分にわたるIV注入によるものである。
【0167】
投薬用溶液を形成するために、医薬組成物(即ち本発明のエノブリツズマブ組成物)を、例えば0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを内包したIVバッグ(公称容積100mL又は250mL)等の容器に加えることができる。別の実施形態では、本発明の医薬組成物を、0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを内包したシリンジ(公称容積20mL)等の容器に加えてもよい。一実施形態では、本発明の医薬組成物を、0.9%の塩化ナトリウム又はD5Wを内包した容器に加える前に、優しくかき混ぜる。一実施形態では、上記容器はIVバッグである。一実施形態では、上記IVバッグは、ポリ塩化ビニル(PVC)製バッグ、ポリオレフィンコポリマー(ポリプロピレン及びポリエチレン)製バッグ、フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル(DEHP)含有PVC製バッグ、ポリアミドコーティングされたポリオレフィン製バッグ、又はエチレン酢酸ビニル(EVA)製バッグである。別の実施形態では、上記容器はシリンジである。一実施形態では、上記シリンジはポリプロピレン製シリンジである。一実施形態では、投与中にインラインフィルタを使用する。一実施形態では、上記フィルタの細孔径は0.2μm、5μm、又は15μmである。一実施形態では、細孔径0.2μmのインラインフィルタが使用される。一実施形態では、上記フィルタは、ポリフッ化ビニリデン又は酢酸セルロース製フィルタである。一実施形態では、上記フィルタはポリエーテルスルホン(PES)製フィルタである。いくつかの実施形態では、所望の体積の本発明の医薬組成物を上記IVバッグ又はシリンジに加え、例えば優しく反転させて、投薬用溶液を混合できる。
【0168】
一実施形態では、調製された上記投薬用溶液はすぐに使用される。別の実施形態では、調製された上記投薬用溶液は、25℃で最大約4時間にわたって、又は約2℃~約8℃で最大約24時間にわたって保管される。別の実施形態では、約2℃~約8℃で最大約24時間にわたって保管された、調製された上記投薬用溶液は、投与前に、約30~約60分の平衡期間にわたって室温で保管される。
【0169】
VI.本発明の組成物の使用
本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、及びキットは、癌の治療のための、及び特定の実施形態ではB7‐H3を発現する癌の治療のための方法において、例えば治療有効量又は予防有効量で使用できる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、癌の治療のために、それを必要とする被験者に本発明の医薬組成物を、例えば治療有効量又は予防有効量で投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットを用いて治療される癌は:副腎癌、エイズ関連癌、胞巣状軟部肉腫、肛門癌(肛門管扁平上皮癌(SCAC)を含む)、膀胱癌、骨癌、脳及び脊髄癌、乳癌(HER2乳癌、又はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む)、頸動脈球腫瘍、子宮頸癌(HPV関連子宮頸癌を含む)、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎明細胞癌、明細胞癌、結腸癌、結腸直腸癌、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、子宮内膜癌(選択されていない子宮内膜癌、MSI‐high子宮内膜癌、dMMR子宮内膜癌、及び/又はPOLEエキソヌクレアーゼドメイン変異ポジティブ子宮内膜癌を含む)、ユーイング肉腫、骨格外粘液型軟骨肉腫、胆嚢癌又は胆管癌(bile duct cancer)(胆管癌(cholangiocarcinoma)、胆管癌(bile duct cancer)を含む)、胃癌(gastric cancer)、食道胃接合部(GEJ)癌、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、膠芽腫、頭頸部癌(頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む)、血液悪性腫瘍、肝細胞癌、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、白血病(急性骨髄性白血病を含む)、脂肪肉腫/悪性脂肪腫性腫瘍、肝臓癌(肝細胞癌(HCC)を含む)、リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)を含む)、髄芽腫、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫(中皮咽頭癌を含む)、多発性内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌(転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を含む)、後部ブドウ膜黒色腫、腎転移癌、ラブドイド腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、小児期の小円形青色細胞腫瘍(神経芽腫、及び横紋筋肉腫を含む)、軟組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌(stomach cancer)、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿路上皮癌、並びに子宮癌からなる群から選択される。本発明の医薬キットに含まれる説明資料は、上記医薬組成物を:肛門癌、膀胱癌、乳癌、胆管癌(bile duct cancer)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胃癌(gastric cancer)、GEJ癌、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、及び尿路上皮癌からなる群から選択される癌に対して投与するよう指示できる。
【0170】
一実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、肛門癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記肛門癌はSCACである。
【0171】
一実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、肺癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記肺癌はNSCLCである。
【0172】
一実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、皮膚癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記皮膚癌は黒色腫である。別の実施形態では、上記皮膚癌はメルケル細胞癌である。
【0173】
一実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、頭頸部癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記頭頸部癌はSCCHNである。
【0174】
一実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、前立腺癌の治療のために使用される。別の実施形態では、上記前立腺癌はmCRPCである。
【0175】
一実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、尿路上皮癌の治療のために使用される。
【0176】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、上述のような癌の治療のために使用され、ここで上記癌は転移性癌である。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、上述のような癌の治療のために使用され、ここで上記癌は転移性癌である。
【0177】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、上述のような癌の治療のための術前補助療法として使用される。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、上述のような癌の治療のための補助療法として使用される。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、上述のような癌の治療のための併用療法の構成要素として使用される。
【0178】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物、容器、密封パッケージ、又はキットは、上述のような癌の治療のために使用され、ここで上記癌はB7‐H3を発現する。
【実施例
【0179】
これまで本発明を概説してきたが、本発明は、以下の実施例を参照することによって更に容易に理解されるだろう。これらの実施例は例示として提供されており、特段の記載がない限り、本発明を限定することを意図したものではない。
【0180】
実施例1
エノブリツズマブを含有する医薬組成物の開発
エノブリツズマブを含んだ安定した抗酸化剤非含有医薬組成物(「エノブリツズマブ製剤(DP)組成物」)を、バイアル内の液体組成物として調製した。
【0181】
1.1.例示的なエノブリツズマブDP組成物の目標製品プロファイル
250mg又は425mgバイアルのための例示的なエノブリツズマブDP組成物の目標製品プロファイルを以下の表1に示す。
【0182】
【表1】
【0183】
1.2.10mMの酢酸塩中のエノブリツズマブ製剤(DP)組成物の開発
最初にエノブリツズマブを、多くのIgG1抗体にとって許容可能な製剤である、pH6.1の10mMのリン酸ナトリウム中で、0.15MのNaCl及び0.05mg/mLのポリソルベート80(PS80)(PBS‐T)に配合した。しかしながらこの条件は、このエノブリツズマブ濃縮物を冷蔵(2~8℃)した場合に、濁った外観をもたらした。緩衝液、pH、賦形剤、及び界面活性剤の、2~8℃の製剤の外観に対する影響を決定するために、様々なタンパク質濃度(21.1mg/mL~39.4mg/mL;表2に示されている)を試験した。
【0184】
【表2】
【0185】
エノブリツズマブの安定性を、スクロース、塩化ナトリウム、及びポリソルベート80(PS80)の存在下で、pH5.1(10mMの酢酸緩衝液)と、pH5.5(10mMの酢酸緩衝液)と、pH6.1(10mMのリン酸緩衝液)との間で比較した。表2に示されているように、pHを低下させること、及び/又はNaClを排除することによって、エノブリツズマブの可溶特性の改善が得られた。更に、pH5.1及びpH6.1におけるダイアフィルトレーション中の流束速度は、pH5.1条件について大幅に高い交換効率を示した。ダイアフィルトレーションの流束の差は、pH5.1におけるエノブリツズマブの高い可溶性と一致するものであった。pH5.1の10mMの酢酸ナトリウムの存在下の、ダイアフィルトレーション後のエノブリツズマブ濃縮物を更に評価することにより、その適合性及び分子安定性が確立され、単量体含有量には観察可能な変化は生じなかった。この製剤により、0.2μm膜で容易にろ過できる透明な抗体溶液が得られた。タンパク質溶液の撹拌によって誘発されることがある目に見えない粒子の形成を抑制するために、0.1mg/mLのPS80を、ろ過後のエノブリツズマブに加えた。従ってこの実施例では、pH5.1の10mMの酢酸ナトリウム緩衝液(3mM氷酢酸、7mMの酢酸ナトリウム)と、0.1mg/mLのPS80とが、更なる開発のための製剤緩衝液として選択された。
【0186】
1.2.1.賦形剤の評価
更に、保管(例えば冷蔵庫保管又は凍結保管)時のエノブリツズマブの安定性を強化できる賦形剤を特定するための研究を実施した。10mMの酢酸ナトリウム及び0.1mg/mLのPS‐80を含有するpH5.1の、又は10mMのリン酸ナトリウム及び0.1mg/mLのPS‐80を含有するpH6.1のエノブリツズマブ製剤を、様々な賦形剤の添加によって更に製剤した。1個のpH6.1の製剤及びpH5.1の他の7個の製剤を、スクロース、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、リシン、グルタミン、及びNaClの組み合わせを添加することによって調製し、重量オスモル濃度が略等しい混合物を得た。これらの製剤のエノブリツズマブ製品安定性を、異なる複数の保管温度、室温での撹拌応力、及び凍結解凍条件下で評価した。試験された8個のエノブリツズマブ製剤を表3に示し、研究の結果を以下に提供する。
【0187】
1.2.2.外観の評価
まず、選択された賦形剤の影響を、2~8℃における混合物の外観によって評価した。pH5.1(酢酸塩)又はpH6.1(リン酸塩)のエノブリツズマブの溶液は、50mMのNaCl、50mMのアルギニン、及び3%のスクロースの添加によって曇った(表3の#5、#6を参照)。塩基性アミノ酸と3~6%のスクロースとの他の組み合わせもまた、混合後にかすんだままであった(表3の#3、#7、#8を参照)。透明な外観は、塩非含有かつアルギニン非含有の条件についてしか達成されなかった(表3の#1、#2、#4を参照)。
【0188】
【表3】
【0189】
1.2.3.凍結解凍研究
pH5.1の7個の例示的な製剤及びpH6.1の1つの例示的な製剤中のエノブリツズマブの安定性に対する、5サイクルにわたる80℃での凍結及び25℃での解凍の影響を評価するために、凍結/解凍研究を実施した。試料を、最初に、並びに1サイクル及び5サイクル後に、外観と、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(「SE‐HPLC」)による%凝集物とについて、分析した。pH5.1のトレハロースを含有するもの(#2)、及びpH5.1のスクロース‐リシン‐NaClの組み合わせを含有するもの(#7)が、凍結解凍を繰り返した後でわずかに高いレベルの凝集物形成を示したことを除いて、凍結保護は全ての製剤について同様である。9%スクロース製剤は、試験した8個の製剤の中で、外観及び凝集物に対する凍結解凍保護の両方において最も高い適合性を有していた2つの製剤のうちの一方である。分析結果は表3にまとめられている。
【0190】
得られた結果は、凍結/解凍後に塩化ナトリウムの存在下で有意に多くの目に見えない粒子が形成されることを示している。凍結/解凍研究から、9%(90mg/mL)スクロース、0.01%(0.1mg/mL)PS80、10mM酢酸塩、pH5.1が、エノブリツズマブに関して、例示的な製剤の中で最も安定していた。
【0191】
1.2.4.凝集物研究
続いて、表3に示されているように、ガラスバイアル内のエノブリツズマブについて、37℃という上昇させた保管温度で加速安定性研究を実施した。これらの条件は、凝集物の形成及び断片化の速度を人工的に高め、これは、添加された賦形剤の潜在的な安定化特性を区別するのに役立つ可能性がある。アルギニン‐スクロースの組み合わせ(#3)、及び4個のNaCl含有製剤(#5、#6、#7、#8)は、高温でエノブリツズマブを不安定化させるようであった。重量オスモル濃度が等しい他の製剤に対して9%スクロース(#1)を加えると、外観及び安定性について一貫した改善が達成された。従って凝集物研究により、9%のスクロース及び0.1mg/mLのPS80を含有する、pH5.1の10mMの酢酸ナトリウムで構成された製剤が、エノブリツズマブに関して、例示的な製剤の中で最も安定していることも確認された。
【0192】
1.3.20mMの酢酸塩中のエノブリツズマブ製剤(DP)組成物の開発
追加の例示的な製剤、特にエノブリツズマブ濃度が60mg/mL以上である抗酸化剤非含有酢酸塩製剤を評価するために、研究を実施した。
【0193】
1.3.1.pHシフト分析
この研究のために、pHが3.7~5.0である20mMの酢酸ナトリウム緩衝液を選択して、60mg/mLという比較的高い濃度でのpHシフトを評価した。簡潔に述べると、透析カセットを用いて、製剤前のエノブリツズマブを、開始pHが3.7、4.3、4.5、4.8、又は5.0である20mMの製剤緩衝液へと緩衝液交換した。次に、得られた材料を60mg/mLまで濃縮し、スクロース(最終9%)及びPS80(最終0.1%)を加えた。pH、タンパク質濃度(Solo‐VPE)、及びSE‐HPLCによるパーセント高分子量種(%HMWS)を測定して、各製剤のpHシフト及び凝集物レベルを評価した。結果を表4に示す。
【0194】
【表4】
【0195】
全ての製剤は、標的製剤への緩衝液交換後にpHシフトを有することが観察された。pHシフトは、開始緩衝液のpHが分子pIである8.65から離れているほど顕著である。pH3.7で開始されるpH緩衝液に対する0.8pH単位のシフトが、pH4.5の製剤をもたらすことが観察された。pH5.0の開始pH緩衝液を使用する場合には、pHシフトが0.2まで低減され、これは最終製剤において5.2のpHをもたらす。4.5という比較的低いpHの20mMの酢酸ナトリウム緩衝液中で製剤された、60mg/mL超のエノブリツズマブは、2.0%という最高の%HMWSを有するpH5.2の製剤条件と比較して、1.7%という最低の%HMWSを有していた。この%HMWSに関する結果は、凝集物形成にはわずかなpH依存性があることを示しており、pHが低い製剤では低い%HMWSが観察された。
【0196】
pHシフト効果が観察されるのは、画像化キャピラリ等電点電気泳動(imaged capillary isoelectric focusing:iCIEF)によって決定されるように、エノブリツズマブがpH8.65のpIを有する高度に帯電した抗体であるためである。この研究は、エノブリツズマブの製剤、特に高濃度の製剤が、pHのシフトを受けやすいことを実証するものであった。pHシフトは、pHの上昇と共に漸減した。また、低pH条件で低い%凝集物が観察されたことから、凝集物の形成はpHに部分的に依存する。従って、最適なpHをより良好に達成及び維持できる、比較的高い緩衝液濃度(例えば20mM)を使用することで、高濃度エノブリツズマブ製剤の長期安定性が向上する。
【0197】
1.3.2.加速及びストレス下熱研究
凍結保管条件(-60℃~-80℃)、通常の保管条件(2~8℃)、加速保管条件(23~27℃)、及びストレス下保管条件(38~42℃)下で、更なる例示的なエノブリツズマブ製剤中のエノブリツズマブの安定性を監視するために、短期安定性研究を実施した。60mg/mLのエノブリツズマブを含む2個の20mM酢酸塩高濃度製剤、及び25mg/mLのエノブリツズマブを含む1個の10mMの酢酸塩低濃度製剤を、この研究で評価した。製剤の成分、目標タンパク質濃度、及びpHを、表5で提供する。上記エノブリツズマブ製剤を調製し、0.22μMのSterileFlip(PVDF)フィルタを用いて除菌ろ過した後、滅菌された2mLのUSP Type 1ガラスバイアルに充填した。各バイアルに無菌条件下で栓及び蓋をした。バイアルを、凍結(-60℃~-80℃)、通常(2~8℃)、加速(23~27℃)、及びストレス下(38~42℃)保管条件下で保管した。エノブリツズマブの製品品質を、目視検査、タンパク質濃度(UV280nm、Solo‐VPE分光光度計を使用)、pH、重量オスモル濃度、目に見えない微粒子(光遮蔽、HIAC、選択された時点)、%高分子量種(%HMW)(SE‐HPLC)、及び電荷バリアント分布(IE‐HPLC)を用いて評価した。時点及び保管条件を含む安定性研究のマトリックスが、表6にまとめられている。
【0198】
【表5】
【0199】
【表6】
【0200】
安定性研究の結果が表7~表15にまとめられている。3個の製剤は全て、透明で淡黄色であり、目に見える異物及びタンパク質性粒子を基本的に含まないことが観察された。タンパク質濃度、T=0で測定されたpH及び重量オスモル濃度を表7に示す。pH5の10mMの酢酸ナトリウム中で製剤された濃度25mg/mLのエノブリツズマブ(10A50‐25)は、最長6ヶ月にわたり、全ての保管条件について%HMW種の上昇を示さなかった。pH4.8(20A48‐60)及び5.1(20A51‐60)の、20mMの酢酸ナトリウム中で製剤された、より高い60mg/mLという濃度のエノブリツズマブは、最長6ヶ月にわたって凍結条件(-70±10℃)及び通常の保管条件(5±3℃)下で保管した場合に、%HMW種の上昇を示さなかった(表8及び表9)。加速(25±2℃)、及びストレス下(40±2℃)条件下では、高濃度(60mg/mL)製剤について%HMW種の多少の上昇が観察された(表10及び表11)。pH4.8の高濃度製剤(20A48‐60)は、pH5.1の高濃度製剤(20A51‐50)に比べて、わずかに低い%HMW種形成を示した。pH4.8の高濃度製剤は、25±2℃において3か月後に0.3%(1.1%から1.4%へ)の上昇、及び40±2℃において4週間後に0.4%(1.1%から1.5%へ)の上昇を示した。これに比べて、pH5.1の高濃度製剤は、同じ保管条件において、それぞれ0.4%(1.1%から1.5%へ)及び0.6%(1.1%から1.7%へ)の上昇を示した。
【0201】
6か月の保管中、3個の製剤全てについて、電荷バリアントの分布の傾向は同様であった。凍結(-70±10℃)及び推奨(5±3℃)保管条件で最長6か月にわたって保管した場合、パーセント主電荷ピーク(%MCP)の有意な変化は観察されなかった(表12及び表13)。しかしながら%MCPは、25±2℃の保管条件下で3か月後に約32%から約24%まで低下し(表14)、40±2℃のストレス下保管条件下で4週間後に約32%から約16%まで低下した(表15)。この低下は、酸性バリアント(AV)及び塩基性バリアント(BV)両方の増加を伴っていた。この電荷バリアントのデータは、分解傾向に対するpH又は濃度の依存性を示していない。
【0202】
【表7】
【0203】
【表8】
【0204】
【表9】
【0205】
【表10】
【0206】
【表11】
【0207】
【表12】
【0208】
【表13】
【0209】
【表14】
【0210】
【表15】
【0211】
要約すると、この短期安定性研究は、3個の例示的なエノブリツズマブ製剤の全ての、凍結保管条件(-60℃~-80℃)及び2~8℃の保管条件の両方における安定性を実証しており、SE‐HPLCによる分子量分布、及びIE‐HPLCによる電荷バリアント分布の両方について、6か月の保管後に、製品品質に有意な変化が生じなかった。この研究の結果は、高濃度製剤(60mg/mL、20mMの酢酸ナトリウム緩衝液、9%のスクロース、及び0.01%のPS80)が、加速(25±2℃)及びストレス下(40±2℃)条件において、%HMWS形成速度に基づいて、pH5.1の場合に比べてpH4.8で製剤した場合に、安定性がわずかに高いことを示している。電荷バリアント分布は、加速(25±2℃)及びストレス下(40±2℃)条件において濃度又はpH依存性の分解がないことを示した。
【0212】
1.4.製剤開発の概要
以上の製剤開発研究は、エノブリツズマブが凍結保管条件(-60℃~-80℃)及び通常の保管条件(2~8℃)の両方において安定しており、10mM酢酸塩製剤(25mg/mLのエノブリツズマブ、10mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、及び0.01%のPS80、pH5.1±0.4)並びに20mM酢酸塩製剤(60mg/mL、20mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、及び0.01%のPS80、pH4.8±0.4)で製剤した場合に、SE‐HPLCによる分子量分布、及びIE‐HPLCによる電荷バリアント分布の両方について、6か月の保管後に、製品品質に有意な変化が生じなかったことを実証している。
【0213】
これらの研究は、既に記述されている他の抗体組成物とは対照的に、スクロース及びPS80を含みpHが4.4~5.5の酢酸緩衝液である約10mM~約20mMの酢酸塩中で、抗酸化剤(例えばヒスチジン、メチオニン)を使用することなく、エノブリツズマブを配合できることも実証している。特にこれらの研究は、高濃度エノブリツズマブDP組成物のための液体製剤としての、20mMの酢酸塩、スクロース、及びPS80(例えば20mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、及び0.01%のPS80、pH4.8±0.4)の使用をサポートするものである。以下で更に詳細に提供されるように、高濃度エノブリツズマブ製剤に対して更なる研究も実施した。これらの製剤開発研究に基づいて、最初のDP組成物(25mg/mLのエノブリツズマブ、10mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、及び0.01%のPS80、pH5.1±0.4)を定義した(本明細書では「エノブリツズマブDP1」と呼ぶ)。更に、第2のDP組成物(25mg/mLのエノブリツズマブ、10mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、及び0.01%のPS80、pH5.0±0.4)を定義した(本明細書では「エノブリツズマブDP2」と呼ぶ)。
【0214】
1.5.エノブリツズマブDP1組成物の供給方法
選択されたエノブリツズマブDP1及びDP2組成物の成分を、それぞれ以下の表16A及び16Bに示す。エノブリツズマブDP1及びDP2組成物は、10mL又は20mLのType 1ボロシリケートバイアル中で、表16A~16Bに示されているように供給された:250mg/10mL(10mLバイアル)又は425mg/17mL(20mLバイアル)。DP1(表16A)及びDP2(表16B)組成物はいずれも、25mg/mLのエノブリツズマブ、10mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、及び0.01%のPS80を含むが、異なるイオン濃度、及びわずかに異なる目標pHを有する。DP2製剤は、正しい目標pHである5.0が達成され、長期にわたって安定して維持されることを保証する。
【0215】
【表16】
【0216】
【表17】
【0217】
エノブリツズマブDP1及びDP2組成物を、滅菌された緩衝水溶液として提供し、20mmのFluroTec(登録商標)及びB2‐40でコーティング済みのブチルゴム栓で蓋をされた、USP及びPh.Eur.に適合するType Iボロシリケート10mL(250mg/バイアル)又は20mL(425mg/バイアル)ガラスバイアルに入れた。各バイアルの公称内容量は10mL又は17mLであった。各バイアルに、0.6mLだけ過剰な量の液体を充填した。過剰な充填は、用量の送達のための10mL(250mg)及び17mL(425mg)のエノブリツズマブを引き出すために十分な体積を確保するために、含めたものである。目標充填体積、送達可能な体積、及びバイアル/シリンジのホールドアップ体積を、抽出可能体積の試験によって決定した。エノブリツズマブDP1及びDP2組成物は、透明からわずかに乳白色の、無色から淡黄色又は淡褐色の溶液である。多少のタンパク質性エノブリツズマブ粒子が存在する場合がある。この節で説明したように供給されたエノブリツズマブDP組成物を、以下で説明される投与適合性研究、並びに長期安定性及び加速安定性研究で使用した。
【0218】
実施例2
エノブリツズマブDP1組成物のIV投与適合性研究
エノブリツズマブDP1組成物は、単回用量バイアルで利用可能であり、生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム注射剤、USP)中で希釈した後で静脈内(IV)注入として投与される。希釈は、投与したい量に基づいて計算され、例えば体重ベース用量の場合、上記量の計算には患者の体重及び用量を用いる。0.01mg/kg~15mg/kgという広範な用量に対応するために、適合性を試験した。
【0219】
2.1.エノブリツズマブDP1を用いた使用時適合性研究の概要
注入を準備するために、エノブリツズマブDP1の溶液の希釈を、生理食塩水を内包したシリンジ又はIV投与バッグ内で実施する。注入溶液は、市販のIVポンプ及びIV投与配管セットを用いて、用量について準備された0.9%塩化ナトリウムIVバッグ又はシリンジから、患者に投与される。以下で更に詳述されるように、安定性及び適合性研究は、用量について準備されたエノブリツズマブの希釈及び25℃で最長24時間の保管、並びに120分のIV注入期間にわたる、ろ過されていない及びろ過されたIV注入セットを用いたエノブリツズマブのIV注入によって実施した。
【0220】
最初の適合性研究では、エノブリツズマブDP組成物を、臨床で一般的に使用されるものと同じ組成、即ちポリプロピレンのシリンジ、又は臨床で一般的に使用されるものと同じ組成、即ちポリオレフィンのIVバッグ内で希釈し、これらを25℃に保持した。試験シリンジの希釈スキームはブラケットアプローチに従うものであり、2用量(0.0450mg/mL及び5.59mg/mL)を、小口径のIV延長セットを備えた20mLポリプロピレンシリンジで試験し、これらは低用量濃度と高用量濃度を表すものである。試験IVバッグの希釈スキームはブラケットアプローチに従うものであり複数の薬物濃度(0.0270mg/mL、0.135mg/mL、及び5.59mg/mL)を、標準IV投与セットを備えたポリオレフィンIVバッグ(50mL及び250mLサイズ)で試験し、これらは高用量及び低用量エノブリツズマブ濃度を表すものである。ブラケットアプローチの概要、及び使用した材料を、表17に示す。
【0221】
【表18】
【0222】
サイズ排除クロマトグラフィ(SE‐HPLC)、及びUV分光光度法によるタンパク質濃度回収によって評価されたように、エノブリツズマブの構造的完全性は、あらゆる条件及び時点で維持された。これらの研究は、ポリプロピレンシリンジ及びポリオレフィンIVバッグ内の0.9%の塩化ナトリウム中に希釈した場合の、エノブリツズマブの安定性及びその臨床投与への適合性をサポートするものである。
【0223】
2.2.ポリプロピレンシリンジ及び小口径IV延長セットを用いた、エノブリツズマブDP1組成物の使用時適合性の評価
20mLポリプロピレンシリンジ内でのエノブリツズマブの適合性及び安定性の評価のために、2つの試験濃度のエノブリツズマブのそれぞれを複数のシリンジ内で調製し、25℃でインキュベートした。
【0224】
2.2.1.研究の設計
生理食塩水を内包した20mLポリプロピレンシリンジ内で、エノブリツズマブを生理食塩水で0.045mg/mL及び5.59mg/mLの濃度に希釈した(表15)。次にシリンジを0、4、8、及び24時間にわたって25℃に保持した。ポリプロピレンシリンジに曝露されない対照試料を並行して調製し、0、4、8、及び24時間にわたって2~8℃に保持した。用量調製の完了時(T=0)、並びに各時点(4、8、及び24時間)において、各シリンジから試料を回収した。各時点について、分析のために2つのシリンジから試料を取り出した。各シリンジは単一の時点のためだけに使用した。
【0225】
(20mLシリンジと共に使用される)小口径IV延長セットを通過する間のエノブリツズマブの適合性及び安定性を評価するために、2つの試験濃度のエノブリツズマブそれぞれを、4つの20mLシリンジ内で調製し、4~6時間にわたって25℃でインキュベートした。次に、各濃度のシリンジのうち2つの内容物を、IV延長セット研究のための対照試料として取り出した。残ったシリンジを小口径IV延長セットに取り付け、シリンジポンプを用いて、120分の期間にわたって内容物を延長セットに通した。1つのシリンジの全内容物を単一の容器に回収し、分析した。各濃度について2つの投与セットを分析した。
【0226】
2.2.2.結果
これらの研究の結果は、ポリプロピレンシリンジ内での最長24時間のインキュベーション、又はこれに小口径IV延長セットの通過を伴うものについて、試験された全てのグループに関してタンパク質回収(IgG濃度)並びに外観及びサイズ分布(SE‐HPLC)の有意な変化が観察されなかったことを実証している。20mLシリンジ内での最長24時間のインキュベーション後、又はIV延長セットの通過後の、エノブリツズマブの回収は、97.2%以上であり、IgG単量体の相対量(%単量体)、凝集物の相対量(%HMW)、又は断片の相対量、クリッピングされた抗体形態の相対量、及び遊離した軽鎖又は重鎖の相対量(%LMW)は有意に変化しなかった。
【0227】
ポリプロピレンシリンジ及び小口径IV延長セット使用し、投与用混合物として生理食塩水を用いた、使用時適合性研究の代表的な結果を、表18及び表19に示す。示されている各時点(0、4、8、及び24時間)において、分析のために2つのシリンジから試料を取り出した。これら2つのシリンジそれぞれに関する個々の結果が示されている。各シリンジは単一の時点のためだけに使用され、タンパク質濃度(IgG%回収)及び構造的完全性(SE‐HPLCによる)に関して分析された。
【0228】
【表19】
【0229】
【表20】
【0230】
表18及び表19で使用される脚注:
a IgG%回収は、試験物品の測定されたIgG濃度を、関連する参照値で除算したものとして計算される。対照試料に関する参照値は、理論上の試験濃度であった。T=0、T=4、T=8、及びT=24時間の試料、又はIV配管後の試料の参照値は、2つの対照試料の平均測定値であった。
b %単量体は、SE‐HPLC単量体ピークの面積を全てのピークの合計で除算したものとして計算される。各試験試料の%単量体は、同じ用量レベルの対象試料と比較する必要がある。
c %HMW‐二量体及び更に大きな形態を含む高分子量種は、IgG単量体よりも見かけの分子量が大きい全てのSE‐HPLCピークの合計を、全てのピークの合計で除算したものとして計算される。各試料の%HMWは、同じ用量レベルの対象試料と比較される。
d LMW‐低分子量;IgG単量体よりも見かけの分子量が小さい種であり、抗体断片、及び結合していない重鎖又は軽鎖を含む。%LMWは、IgG単量体よりも見かけの分子量が小さい全てのSE‐HPLCピークの合計を、全てのピークの合計で除算したものとして計算される。各試料の%LMWは、同じ用量レベルの対象試料と比較される。
【0231】
2.3.ポリオレフィンIVバッグ及び標準IV投与セットを用いた、エノブリツズマブDP組成物の使用時適合性の評価
ポリオレフィンIVバッグ内のエノブリツズマブDP1組成物の適合性及び安定性の評価のために、50mL及び250mLのIVバッグを、それぞれに低濃度及び高濃度のエノブリツズマブDP1組成物(表16A)を用いて準備し、25℃でインキュベートした。
【0232】
2.3.1.研究の設計
生理食塩水(50mL又は250mL)を内包したポリオレフィンIVバッグ内で、エノブリツズマブDP1組成物を3つの濃度(0.027mg/mL、0.135mg/mL、及び5.59mg/mL)に希釈した。別々の日(研究1及び研究2)に、各サイズ及び濃度につき2つの試験バッグを準備した。次にIVバッグを0、4、8、及び24時間にわたって25℃に保持した。対照試料を並行して調製し、0、4、8、及び24時間にわたって2~8℃に保持した。各時点において、分析のために各IVバッグから試料を取り出した。
【0233】
IVバッグで試験された低濃度は、推定される低用量である6.75mgに基づくものであったが、これは、45kgの臨床被験者が0.15mg/kgの用量レベルを投与されるのに相当する。試験された低濃度はそれぞれ、250mLのIVバッグで0.0270mg/mL、及び50mLのIVバッグで0.135mg/mLであった。試験された高濃度は、推定される高用量である1800mgに基づくものであったが、これは、120kgの臨床被験者が15mg/kgの用量レベルを投与されるのに相当する。この用量は250mLのIVバッグで試験され、最終濃度5.59mg/mLを得た(250mLの生理食塩水を内包したIVバッグに、25mg/mLの製剤を72.0mL加えた)。この5.59mg/mLという濃度は、50mLのIVバッグの上限濃度としても試験された。
【0234】
標準IV配管セットを通した注入のシミュレーションは、IVバッグ内での希釈済みエノブリツズマブDP組成物の4~6時間のインキュベートの完了後に、配管セットをIVバッグに取り付けることによって、達成された。注入のシミュレーションの開始時に、対照試料(5mL)をIVバッグから直接取り出し、残った注入溶液を、約120分にわたって配管セットに通した。1つのIVバッグの内容物を単一の試料容器に回収し、分析した。上記3つの濃度それぞれを2回、ろ過なし及びろ過済み(滅菌された非発熱性低タンパク質結合性ポリエーテルスルホン(PES)0.2μMインラインフィルタ)の両方のIV投与セットを用いて、別々の日(研究1及び研究2)に試験した。
【0235】
2.3.2.結果
これらの研究の結果は、ポリオレフィンIVバッグ内の生理食塩水中での最長24時間のインキュベーション、又はこれに標準IV延長セットの通過を伴うものについて、試験された全てのグループに関してタンパク質回収(IgG濃度)並びに外観及びサイズ分布(SE‐HPLC)の有意な変化が観察されなかったことを実証している。IVバッグ内での最長24時間のインキュベーション後、又はIV延長セットの通過(ろ過なし若しくはろ過済み;120分間)後の、エノブリツズマブの回収は、それぞれ85.9%以上及び95.2%以上であり、IgG単量体の相対量(%単量体)、凝集物の相対量(%HMW)、又は断片の相対量、クリッピングされた抗体形態の相対量、及び遊離した軽鎖又は重鎖の相対量(%LMW)は有意に変化しなかった。
【0236】
ポリオレフィンIVバッグ及び標準IV延長セット使用し、投与用混合物として生理食塩水を用いた、使用時適合性研究の代表的な結果を、表20~22に示す。示されている各時点(0、4、8、及び24時間)において、分析のためにIVバッグから試料を取り出した。各研究(研究1及び研究2)の中で、各試験濃度で単一のバッグを準備し、そこから、T=0、4、8、及び24時間について試料を取り出した。各試料は単一の時点のためだけに使用され、タンパク質濃度(IgG%回収)及び構造的完全性(SE‐HPLCによる)に関して分析された。
【0237】
【表21】
【0238】
【表22】
【0239】
【表23】
【0240】
表20~22で使用される脚注:
a IgG%回収は、試験物品の測定されたIgG濃度を、関連する参照値で除算したものとして計算される。対照試料に関する参照値は、理論上の試験濃度であった。T=0、T=4、T=8、及びT=24時間の試料、又はIV配管後の試料の参照値は、同じ研究(1又は2)からの対照試料の測定値であった。
b %単量体は、SE‐HPLC単量体ピークの面積を全てのピークの合計で除算したものとして計算される。各試験試料の%単量体は、同じ用量レベルの対象試料と比較する必要がある。
c %HMW‐二量体及び更に大きな形態を含む高分子量種は、IgG単量体よりも見かけの分子量が大きい全てのSE‐HPLCピークの合計を、全てのピークの合計で除算したものとして計算される。各試料の%凝集物は、同じ用量レベルの対象試料と比較する必要がある。
d LMW‐低分子量;IgG単量体よりも見かけの分子量が小さい種であり、抗体断片、及び結合していない重鎖又は軽鎖を含む。%LMWは、IgG単量体よりも見かけの分子量が小さい全てのSE‐HPLCピークの合計を、全てのピークの合計で除算したものとして計算される。各試料の%LMWは、同じ用量レベルの対象試料と比較する必要がある。
【0241】
2.3.3.エノブリツズマブDP組成物の適合性研究の結論
エノブリツズマブDP1組成物は、20mLポリプロピレンシリンジ内の生理食塩水溶液と0.05~5.6mg/mLの濃度範囲で、及びポリオレフィンIVバッグ内の生理食塩水溶液と0.03~5.6mg/mLの濃度で、適合性を有することが示された。またエノブリツズマブDP組成物は、小口径IV延長セット及び標準IV投与セットと適合性を有することも示された。これらの結果は、120分のエノブリツズマブIV溶液投与時間、並びに室温で最長6時間、及び2~8℃で24時間にわたるIVバッグ調製物の保管をサポートするものである。更にこれらの結果は、エノブリツズマブの静脈内注入のための0.2μMインラインPESフィルタの使用をサポートするものである。
【0242】
実施例3
エノブリツズマブDP1組成物の長期安定性及び加速安定性研究
栓をした10mL又は20mLガラスバイアル内での、エノブリツズマブDP1組成物の長期安定性及び加速安定性研究を実施した。2~8℃という推奨条件で最長48か月保管されたエノブリツズマブDP1組成物、及び23~27℃という加速条件で最長6か月保管されたエノブリツズマブDP1組成物に関して、安定性を評価した。
【0243】
3.1.実験計画
実施された試験の概要、並びに2~8℃及び23~27℃の保管条件で一般的に評価した間隔を、それぞれ表23A及び23Bに提示する。これらの研究は、エノブリツズマブDP1組成物の17個の異なるロットに対して実施された。研究の大半は直立させたバイアルを用いて実施され、少なくとも1回は反転されたバイアルを用いて実施された。
【0244】
【表24】
【0245】
【表25】
【0246】
表23A~23Bで使用される略語:CE‐SDS=ドデシル硫酸ナトリウムの存在下でのキャピラリ電気泳動;SE‐HPLC=サイズ排除高速液体クロマトグラフィ;SDS‐PAGE=ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動;IE‐HPLC=イオン交換高速液体クロマトグラフィ;NS=スケジューリングされていない(この時点では分析が必要ないことを示す)。
【0247】
3.2.結果
2~8℃で48か月、及び25℃で6か月保管されたエノブリツズマブDP組成物の代表的なロットに関する全ての試験の結果を、それぞれ表24A~24B、及び表25に示す。アッセイの効力、純度、並びにタンパク質安定性(単量体並びに酸性及び塩基性バリアント)に関する更なる詳細を、以下の概要において提示する。
【0248】
【表26】
【0249】
【表27】
【0250】
【表28】
【0251】
表24A~24B及び表25で使用される略語:Mono=単量体、HMW=高分子量種、LMW=低分子量種;MCP=主電荷ピーク、AV=酸性バリアント、BV=塩基性バリアント;SO=わずかに乳白色;PY=淡黄色;C=透明;FNP=目に見える異物粒子を基本的に含まない;FPP=目に見えるタンパク質性粒子を基本的に含まない;CPP=目に見えるタンパク質性粒子を含有する;P=粒子;NS=スケジューリングされていない、この時点では分析が必要ないことを示す;NA=技術的エラーのためデータ未取得;NG=成長なし。
【0252】
調査したエノブリツズマブDP1組成物の全てのロットに関する安定性データは、意図した2~8℃の長期保管条件で36~48か月にわたって、目に見えない微粒子を除いて許容限界以内であった。目に見えない微粒子(P≧2μm及びP≧10μm)は一部のロットで増加し、この増加は2~8℃の保管の12か月目付近から始まった。監視された他のパラメータについては、分析手順の変動性を超えた更なる変化は観察されなかった。
【0253】
25±2℃の加速保管条件では、調査した全てのロットは6か月にわたって許容限界以内であった。効力(B7‐H3結合)、及びSE‐HPLCによる純度について、わずかな低減が観察された。加速条件下における効力及び純度のこれらの変化は、タンパク質に関して予測されていないものではなく、これらの結果は十分に許容限界内であった。IE‐HPLCによる均質性は、代表的なロットを含む一部のロットにおいて、単量体純度の中程度の低下、及び酸性バリアントの中程度の増加を示した。酸性バリアントは主に脱アミド産物を含有する。監視された他のいずれのパラメータについては、分析手順の変動性を超えた変化は観察されず、これにより、エノブリツズマブDP1組成物の堅牢な安定性が実証された。
【0254】
3.3.安定性に関する結論
複数のロットのエノブリツズマブDP1組成物の安定性を示すための方法から得られた定量的データの以上の分析は、2~8℃の推奨保管条件における少なくとも24か月の貯蔵寿命をサポートするものである。表24A~24B及び表25に示されている代表的な安定性データは、定性的及び半定量的又は非定量的な他のあらゆる試験も、少なくとも24か月にわたって許容限界以内に留まったことを示しており、少なくとも約36~少なくとも約48か月を上限とする少なくとも約24か月の貯蔵寿命をサポートするものである。
【0255】
実施例4
高濃度のエノブリツズマブを含有する医薬組成物に関する安定性研究
液体組成物中に高濃度のエノブリツズマブを含んだ、安定した抗酸化剤非含有医薬組成物を調製した。エノブリツズマブを、pH4.8で、20mMの酢酸ナトリウム、9%のスクロース、及び0.01%のPS80中で、60mg/mL又は120mg/mLの濃度で製剤した(Ac60、Ac120)。更にエノブリツズマブを、pH5.4で、20mMのヒスチジン塩酸塩(ヒスチジン‐HCl)、9%のスクロース、0.01%のPS80中で、120mg/mLの濃度で製剤し(His120)、外観及び安定性に対するヒスチジンの影響を検査した。
【0256】
4.1.外観の評価
高濃度のエノブリツズマブ、酢酸塩、及びヒスチジン‐HCl緩衝液、並びにpH(4.8及び5.4)の影響を、2~8℃及び25℃において、混合物の外観によって評価した。これらの研究の結果を表26及び表27に示す。エノブリツズマブの製品品質を、目視検査及び目に見えない微粒子によって評価した。酢酸緩衝液中で製剤された60mg/mLのエノブリツズマブ(Ac60)、及び酢酸緩衝液中で製剤された120mg/mLのエノブリツズマブ(Ac120)又はヒスチジン‐HCl緩衝液中で製剤された120mg/mLのエノブリツズマブ(His120)について、2~8℃で最長3か月の保管後に、透明な外観が達成された(表26)。ヒスチジン‐HCl製剤は、25℃で1か月の保管後に、酢酸塩製剤よりも強い乳白色となった(表27)。この研究における目視での観察は、低pHの酢酸緩衝液がエノブリツズマブにとって良好な液体製剤であることを示している。
【0257】
【表29】
【0258】
【表30】
【0259】
4.2.短期安定性研究
通常の保管条件(2~8℃)、加速保管条件(25℃)、及びストレス下保管条件(40±2℃)下で、高濃度エノブリツズマブ製剤中のエノブリツズマブの安定性を監視するために、短期安定性研究を実施した。エノブリツズマブの製品品質を、%高分子量種(%HMW)(SE‐HPLC)、及び電荷バリアント分布(IE‐HPLC)を用いて評価した。この安定性研究の結果が表28~33にまとめられている。2~8℃で保管された試料に関する分子量分析(表28)は、%単量体が3か月で約0.6~0.9%低下することを示した。%単量体の約2.4~3.0%の低下が、25℃の加速保管条件(表29)で観察された。%単量体のより大きな低下が、40℃のストレス下保管条件(表30)で観察された。2~8℃で保管された試料に関する単量体のパーセントの差は、SECによって示されるように、pH4.8の60mg/mL及び120mg/mLの酢酸塩製剤と、pH5.4の120mg/mLのヒスチジン製剤との間で、有意なものではなかった。
【0260】
【表31】
【0261】
【表32】
【0262】
【表33】
【0263】
2~8℃、25℃、及び40℃で保管された各製剤に関する電荷バリアント分布を、それぞれ表31、32、及び33に示す。全体として、%主電荷ピークの変化は、2~8℃の通常の保管条件では有意なものではない。25℃の加速保管条件下では、120mg/mLの濃度において、%主電荷ピークは約3.5%~4.5%低下した。40℃のストレス下保管条件下では、%主電荷ピークのより大きな低下が観察された。酸性バリアント(AV)の%及び塩基性バリアント(BV)の%については、試験したいずれの条件(2~8℃、25℃、及び40℃)においても、明確な傾向は観察されなかった。
【0264】
【表34】
【0265】
【表35】
【0266】
【表36】
【0267】
要約すると、以上の短期安定性研究は、pH4.8で9%のスクロース及び0.1%のPS80を伴う20mMの酢酸緩衝液中で製剤された場合に、エノブリツズマブが60mg/mL及び120mg/mLという高濃度において安定していることを実証しており、SE‐HPLCによる分子量分布、及びIE‐HPLCによる電荷バリアント分布の両方について、3か月の通常の保管条件(2~8℃)及び加速保管条件(25℃)下での保管後に、製品品質に有意な変化が生じなかった。
【0268】
実施例5
材料及び方法
5.1.A280によるタンパク質濃度
エノブリツズマブのタンパク質濃度は、UV分光光度計を用いて又はSoloVPEシステム(C Technologies, Inc.製のSoloVPE可変光路長UVシステム)によって、キュベット内の試料の吸光度を測定することによって決定した。
【0269】
キュベット法に関して、タンパク質濃度は以下の式を用いて計算した:
タンパク質濃度(mg/mL)=[(補正されたA280)/ε]×DF
ここでεは吸光係数であり、DFは試料調製物の希釈計数(Dilution Factor)である。
【0270】
SoloVPEシステムは、ランベルト・ベールの法則と、複数の光路長で実施された280nmでの吸光度測定の線形回帰から得られる傾きとに基づく、傾斜分光法(Slope Spectroscopy method)を採用している。タンパク質濃度は、以下のスロープ分光法の式を用いて計算した:
タンパク質濃度(mg/mL)=c=M/ε
ここでcは濃度であり、Mは回帰直線の傾きであり、εはエノブリツズマブのアミノ酸配列に基づいて計算された吸光係数[1.43(mg/mL)-1cm-1]である。
【0271】
5.2.HIAC液中粒子計数による、目に見えない微粒子
USP<788>及びPh.Eur.2.9.19に記載されている方法を用いて、製剤中の目に見えない微粒子状物質を検出、サイズ決定、及び計数した。光遮蔽センサを用いた電子液中粒子計数システムを採用する。粒子は、光遮蔽センサ(HIAC)を用いた電子液中粒子計数システムを用いて、2μm以上(特性決定情報のみ)、10μm以上、及び25μm以上の3つのサイズ範囲で計数される。製剤の10個のバイアル(10mL/バイアル)を分析用にプールする。
【0272】
5.3.外観
外観は、USP<1>、Ph.Eur.2.2.2、及びPh.Eur.2.9.20に従って、最小強度要件を満たす可視光の下で、白色及び黒色の両方の背景の前で、目視で評価した。試料のアリコートを透明なガラスバイアル内で評価した。検査された属性としては、溶液の色、及び溶液の透明さが挙げられる。着色の程度は、Ph.Eur.で認定された色標準を用いて決定した。透明さの程度は、Ph.Eur.で認定された参照懸濁液標準を用いて決定した。
【0273】
5.4.pH試験
溶液のpHは、公定法[USP<791>、Ph.Eur.2.2.3]に従って、較正されたpHメータを用いて電位差測定によって測定した。試料を試験する前に、認定されたpH標準を用いてpHメータを3点較正し、この3点較正は、pH7の緩衝液標準から始まり、次にpH4緩衝液標準、そしてpH10緩衝液標準へと進むものであった。較正に続いて、pH5及びpH8の2つの認定されたpH緩衝液を用いて、システムの好適性をチェックした。
【0274】
5.5.サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE‐HPLC)による単量体純度
製品の純度の尺度として、及び不純物、特にIgG凝集物を測定するために、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE‐HPLC)を使用した。アッセイは、IgG単量体ピークの同一性及びシステムの好適性に関する対照試料として、エノブリツズマブ参照標準を含む。試料をSE‐HPLCカラムに注入し、リン酸ナトリウム/硫酸ナトリウム緩衝液を用いて均一濃度で溶出させる。溶出したタンパク質は、280nmの紫外(UV)吸光度を用いて検出した。報告可能な結果は、(全てのピークから賦形剤のピークを除いたものと比較した)製品の単量体ピークの面積パーセントとして計算される、製品純度であった。また、IgG単量体よりも見かけの分子量が大きい全ての種(高分子量種、又はHMWと呼ばれる)の合計パーセント、二量体(HMW種の潜在的な一成分)のパーセント、及びIgG単量体よりも見かけの分子量が小さい全ての種(低分子量種、又はLMWと呼ばれる)の合計パーセントも報告された。
【0275】
5.6.IE‐HPLCによる電荷不均質性及び同一性
エノブリツズマブの電荷不均質性及び同一性は、イオン交換高速液体クロマトグラフィ(IE‐HPLC)によって評価した。アッセイは、同一性及びシステムの好適性に関する対照試料として、エノブリツズマブ参照標準を含む。試料をThermo WCX‐10カラム又は同等のものに注入し、一定のpHで塩勾配を用いて溶出させる。溶出したタンパク質は、280nmの紫外(UV)吸光度を用いて検出した。報告可能な結果は、主ピーク%面積(検出された全てのピークから緩衝液/賦形剤のピークを除いたパーセント)、並びに全ての酸性バリアント(AV;又はAPG、即ち酸性ピーク群(acidic peak group):主ピークの前に溶出するピーク)の合計%面積、及び全ての塩基性バリアント(BV;又はBPG、即ち塩基性ピーク群(basic peak group):主ピークの後に溶出するピーク)の合計%面積であった。
【0276】
5.7.cIEFによる電荷不均質性及び同一性
あるいは、エノブリツズマブの電荷不均質性及び同一性は、キャピラリ等電点電気泳動(cIEF)によって評価できる。例えばcIEFは、Alcott 720NVオートサンプラーを備えたiCE3システム(ProteinSimple)を用いて実施できる。このような分析のために、両性担体及びpIマーカーを含有する、エノブリツズマブ参照標準及び試験物品試料が調製され、分析のためにキャピラリカートリッジに装入される。キャピラリの各端部の電解質タンクには、陽極液及び陰極液が充填される。電圧が印加され、試料は試料のpIに集中させられる。カメラは、頻繁な一定の間隔で(例えば30秒ごとに)、キャピラリカラム全体のUV光吸収画像を撮影し、上述の集中ステップのリアルタイムでの監視を可能にする。その結果としての分離パターン画像をキャプチャし、クロマトグラフィデータシステム・ソフトウェアで分析する。試験物品の電気泳動プロファイルを、参照標準の電気泳動プロファイルと比較する。このアッセイの報告可能な結果は、二重の調製物の、平均主電荷ピーク%面積、平均酸性バリアント%面積、及び平均塩基性バリアント%面積である。
【0277】
必要に応じて同一性を確認するために、所与の試料セット内で、試験物品の主ピークのpIは、エノブリツズマブ参照標準の主ピークのpIの0.5pI単位以内である必要があり、また試験物品のプロファイルは参照標準のものに定性的に匹敵するものである必要がある。
【0278】
5.8還元型及び非還元型のCE‐SDS及びLDSによる純度
還元型及び非還元型のドデシル硫酸ナトリウムキャピラリ電気泳動(CE‐SDS)又はラウリル硫酸ナトリウムキャピラリ電気泳動(CE‐LDS)は、製品の純度に関する定量的情報、並びに不純物、付加物、製品断片、及び共有結合種の性質に関する定性的情報を提供する。還元法のための試料を、還元剤である2‐メルカプトエタノール(βME)を含有するSDS試料緩衝液中で加熱することによって変性させ、還元した。続いて試料を、Sciex PA800/PA800 Plusキャピラリ電気泳動システム(旧名Beckman Coulter及びAB Sciex)を用いて電気泳動させた。試験物品及び参照標準試料をキャピラリカートリッジに装入し、製品純度をUV検出(220nm)によって測定する。試験物品に関する報告可能な結果は、重鎖及び軽鎖に対応する速度補正されたピーク面積の相対パーセンテージの合計として定義される、%純度であり、これは最も近い0.1%まで記録された。非還元法については、試料を還元せず、還元された試料と同様に分析を実施した。%純度は、プロファイル上で観察された無傷のIgG分子のピークの下の面積として定義された。
【0279】
5.9.非還元型SDS‐PAGEによる純度
非還元型ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS‐PAGE)は、製品の純度に関する定量的情報、並びに不純物、付加物、製品断片、及び共有結合種の性質に関する定性的情報を提供する。試料を、還元剤を含まないSDS‐PAGE試料緩衝液と混合した。続いて試料を、ポリアクリルアミド勾配ゲルを用いて電気泳動させた。2つの濃度の試料を電気泳動用のゲルに装入した:「低」装入量は定量に使用され、「高」装入量は試験物品と参照標準との定性的比較に使用された。各試験物品は単一のゲル上で個別に分析され、各ゲルは、低及び高装入量のエノブリツズマブ参照標準も含有していた。電気泳動の完了後、クマシーブルー染料を用いてゲルを染色し、続いて脱色した。デジタルイメージャ及び濃度測定ソフトウェアを用いて、染色されたゲルをスキャン及び分析した。全可視帯域の総面積に対する各可視帯域の面積%を計算した。報告可能な結果は、無傷の単量体IgGを表す全帯域の面積パーセントの(「低」装入量レーン内の)合計として定義される、製品純度であった。ある帯域の面積パーセントは、全可視帯域の総面積に対して計算された。
【0280】
5.10.B7‐H3結合ELISAによる効力
B7‐H3に対するエノブリツズマブの結合活性を定量する間接的な酵素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)を用いて、効力を評価した。組み換えヒトB7‐H3で固相(96ウェルアッセイプレート)をコーティングした。エノブリツズマブ試料を、固定化したB7‐H3に結合させた。試験物品及びエノブリツズマブ参照標準の希釈系列をこの方法で試験して、用量応答曲線を生成した。続いてアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase:AP)結合抗ヒトκ抗体を加え、エノブリツズマブとB7‐H3との複合体に結合させた。結合したAP結合抗体の定量を、リン酸4‐メチルウンベリフェリル(4‐MUP)基質の添加によって達成した。AP結合抗体による、添加された4‐MUP基質の脱リン酸化によって、蛍光安定性の高い産物である4‐メチルウンベリフェロンが得られ、これを、蛍光マイクロプレートリーダを用いて測定する。蛍光信号のレベルは、捕捉されたエノブリツズマブの量に比例していた。データを4パラメータモデルに当てはめて、蛍光信号をエノブリツズマブ濃度の関数として記述した。報告可能な結果、即ちエノブリツズマブ参照標準と比較した試験物品の効力を、以下の式を用いて計算した:
相対効力=100%×EC50B7‐H3参照標準/EC50試験物品
【0281】
5.11.FcgRIIIa結合ELISAによる効力及び同一性
CD16aとも呼ばれるFcγレポーターサブタイプIIIa(FcγRIIIa)に対するエノブリツズマブの結合活性を定量する、間接的な競合する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて、Fcドメインの効力を評価した。FcγRIIIaに対するエノブリツズマブ試験物品Fcの結合の定量を、上記結合の、ビオチン標識エノブリツズマブ競合試料(エノブリツズマブ‐Bt)の結合と競合する能力によって測定した。このアッセイを実施するために、可溶性組み換えヒトFcγRIIIaで固相(96ウェルアッセイプレート)をコーティングした。一定濃度のエノブリツズマブ‐Bt中のエノブリツズマブ試験物品の希釈系列を、固定化したFcγRIIIaに結合させた。試験物品及びエノブリツズマブ参照標準の希釈系列を、同一のアッセイプレート上でこの方法で分析して、用量応答曲線を生成した。結合したエノブリツズマブ‐Btの検出を、ストレプトアビジンと結合したアルカリホスファターゼ(ストレプトアビジン‐AP)の添加と、これに続く比色分析用AP基質とによって達成した。色信号の強度(吸光度)を、マイクロプレートリーダを用いて測定した。色信号のレベルは、結合したエノブリツズマブ‐Btの量に比例していた。データを4パラメータモデルに当てはめて、吸光度信号をエノブリツズマブ濃度の関数として記述した。報告可能な結果、即ちエノブリツズマブ参照標準と比較した試験物品の効力を、以下の式を用いて計算した:
相対効力=100%×EC50エノブリツズマブ参照標準/EC50試験物品
【0282】
5.12.重量オスモル濃度
重量オスモル濃度を、総覧[USP<785>、Ph.Eur.2.2.35]で定義されている方法を用いて、凝固点降下浸透圧計で測定した。各測定の較正には、NISTトレーサブル標準を使用した。NISTトレーサブル標準を測定することにより、試験物品の測定前にシステムの好適性を判断した。
【0283】
5.13.無菌性
無菌性を、USP<71>及びPh.Eur.2.6.1に定義されている方法を用いて試験した。
【0284】
本明細書において言及されている全ての公刊物及び特許は、個々の公刊物又は特許出願それぞれの全体が参照により本明細書に援用されていることが具体的かつ独立に指示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用されている。
【0285】
本開示は、本出願で説明された特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかなように、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び変形を行うことができる。本開示中に列挙されているものに加えて、本開示の範囲内で機能的に同等の方法及び組成物が、以上の説明から当業者には明らかになるだろう。このような修正及び変形は、本開示の範囲及び/又は添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。本開示は特定の方法、化合物、又は組成物に限定される、当然ながら変化し得ることを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図したものではないことも理解されたい。
【配列表】
2024526773000001.xml
【国際調査報告】