(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】角形の基板からコーティングを除去するための装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502110
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 EP2022069938
(87)【国際公開番号】W WO2023285689
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021118379.0
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022117344.5
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016921
【氏名又は名称】オサイアリス インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Osiris International GmbH
【住所又は居所原語表記】Josef-Schuettler-Strasse 2, 78224 Singen Hohentwiel, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】プリミン ムフラー
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA02
5F157AA12
5F157AA64
5F157AB90
5F157BB23
5F157BB33
5F157BB37
5F157BB42
5F157BB52
5F157BB53
5F157CF42
(57)【要約】
コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)と移動装置(5)とによって、角形の基板(2)からコーティングを除去するための装置では、コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)は、基板(2)の基板長手方向縁部(4.1,4.2,4.3,4.4)に沿って作業軌道でガイド可能であることが求められている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)と移動装置(5)とによって、角形の基板(2)からコーティングを除去するための装置において、
前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)は、前記基板(2)の基板長手方向縁部(4.1,4.2,4.3,4.4)に沿って作業軌道でガイド可能であることを特徴とする、装置。
【請求項2】
移動装置(5)は、前記基板(2)の別の基板長手方向縁部(4.1,4.2,4.3,4.4)を前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)の前記作業軌道に作用接続し、前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)と前記移動装置(5)とはOR回路を有することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
別のコーティング除去ヘッド(3.1,3.2)を備えた別の作業軌道が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)と別の前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)とは、互いに同方向にまたは逆方向にガイド可能であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
ブラケット(7)が設けられており、前記ブラケット(7)はガス押出し部(8)を有することを特徴とする、請求項1から4までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項6】
前記ブラケット(7)は、作業位置で前記基板(2)の、前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)とは反対側に配置されていることを特徴とする、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記ブラケット(7)は、前記ガス押出し部(8)を安定化空気流用に有し、前記ガス押出し部(8)は、ガスが前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)とは反対の側で前記基板(2)に沿って流れるように構成されていることを特徴とする、請求項5または6記載の装置。
【請求項8】
各々のコーティング除去ヘッド(3.1,3.2)は2つ以上のノズル(9)を有することを特徴とする、請求項1から7までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項9】
センサ監視装置が設けられていることを特徴とする、請求項1から8までの少なくとも1項記載の装置。
【請求項10】
コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)と移動装置(5)とによって、角形の基板からコーティングを除去するための方法において、
前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)を前記基板(2)の基板長手方向縁部(4.1,4.2,4.3,4.4)に沿って作業軌道で移動させることを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記移動装置(5)は、前記基板(2)の別の基板長手方向縁部(4.1,4.2,4.3,4.4)を前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)の前記作業軌道に作用接続し、前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)と前記移動装置(5)とはOR回路を介して接続されていることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記基板(2)の別の基板長手方向縁部(4.1,4.2,4.3,4.4)を別のコーティング除去ヘッド(3.1,3.2)の別の作業軌道に作用接続することを特徴とする、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)と前記別のコーティング除去ヘッド(3.1,3.2)とを互いに同方向にまたは逆方向にガイドすることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ブラケット(7)のガス押出し部(8)の安定化空気流を前記コーティング除去ヘッド(3.1,3.2)とは反対の側で前記基板(2)に沿って流して、前記基板(2)を安定化させることを特徴とする、請求項10から13までの少なくとも1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の装置およびそのための方法に関する。
【0002】
背景技術
このような装置は、すでに多種多様な形態および構成で公知であり、一般に使用されている。例えば独国特許出願公開第102012103330号明細書には、基板からコーティングを除去するための装置が開示されている。
【0003】
例えばウェーハまたはボードのような基板は、種々様々な使用または処理ステップのためにコーティングされる。多くの場合、このコーティングは基板の表面全体にわたって行われている。しかしながら、特定の使用例では、基板の縁領域をコーティングなしにする必要がある。通常、基板の一部だけを、しかも、極めて均一にコーティングすることは極めて手間を要する。したがって、まず、基板全体をコーティングし、次いで、予め決められた縁領域におけるコーティングを再び除去することが一般的である。
【0004】
円形の基板におけるコーティングの除去は、比較的簡単である。好ましくは、ノズルが、特定の間隔をおいて除去すべき縁領域に向けられ、次いで、基板がノズルの下で回動する間、ノズルを介して吐出される溶剤を用いてコーティングが除去される。このことは、コーティング除去時の速度に対する要求が高められた場合でも可能である。
【0005】
しかしながら、例えば長方形、正方形または三角形の基板のような角形の基板では、このようにコーティングを高速で除去することはほとんど不可能である。
【0006】
さらに、基板上のコーティングは種々異なる層から構成されていることがあり、これらの層は、それぞれ異なる溶解性を有しているか、またはエッチングを用いてしか除去することができないことさえある。ただ1つのノズルで種々異なる層を除去することは簡単に行うことができない。
【0007】
発明の課題
本発明の課題は、従来技術に基づく欠点を克服することである。特に、あらゆる形状の基板のコーティングを迅速に除去することができる装置を提供することが求められている。この場合、時間の節約に加えて、コーティング除去のクオリティが少なくとも不変であることを達成することが求められている。この場合には、基板のコーティング除去が1分未満で可能となり、基板の上面および/または下面における種々異なるレジスト層および/または金属層を除去することができることが求められているという設定がある。
【0008】
課題の解決手段
課題は、請求項1および請求項10に記載した特徴によって解決される。
【0009】
角形の基板からコーティングを除去するための本発明に係る装置および方法は、光起電力体またはコンピュータチップ製造の分野で基板から、いわゆるフォトレジストおよび/または金属を除去するために役立つ。これらの両方の分野に装置および方法は制限されるものではないが、特にこれらの分野のために設計されている。基板からコーティングを除去するというのは、基板の上面および/または下面からコーティングを除去することを意味している。コーティング除去の概念は、レジスト除去および層またはレジストまたは金属またはこれに類するものの除去を意味するその他の用語も含んでいる。
【0010】
本発明に係る装置および方法では、相応のノズルを有する、いわゆるコーティング除去ヘッドが使用される。更なる処理を実施することができるようにするために、基板の縁領域において除去する必要がある塗布されるフォトレジストおよび/または塗布される金属は、通常、液体でまたは金属の場合には電気めっきまたは蒸着によって支持プレートに塗布され、乾燥プロセス後に固い表面を形成する。コーティング除去ヘッドで使用される溶媒および/またはエッチング媒体は、通常、除去すべきコーティングに適合させられる。
【0011】
コーティングを除去するための本発明に係る装置は、特に角形の基板および完全に真円ではないウェーハ(フラット)からコーティングを除去するために必要になる。このような基板は、例えば2000mm×2000mmのサイズを有していることがある。しかしながら、他のサイズも考えられる。しかし、当然ながら、円形の基板も本発明で使用することができる。本発明では、装置はコーティング除去ヘッドと移動装置とを有している。角形の基板というのは、真円ではない基板のことを意味している。角形の基板は、例えば丸く面取りされた角隅縁部を備えた基本的に四角形の基板が存在している場合にも与えられている。
【0012】
コーティング除去ヘッドはノズルを有しており、このノズルによって、溶媒および/またはエッチング媒体が1つの作業位置で基板に塗布される。各々の媒体は、基板に存在するレジストまたは金属、つまり、コーティングを除去するために働く。特に、角形の基板の縁領域からレジストおよび/または金属が均一に除去されることが求められている。
【0013】
特に好ましくは、溶媒および/またはエッチング媒体は、真っ直ぐにまたは噴流状に吐出されることが望ましい。ノズルの使用によって、ノズルを基板の縁部にどの程度近づけてまたは基板の縁部からどの程度離してガイドするかにより、除去すべき領域の幅を規定することができるという利点が得られる。好ましくは縁部から±20μmの範囲で離されることが望ましい。さらに、コーティングの除去が基板の損傷なしに可能であることが有利である。さらに、溶媒および/またはエッチング媒体と噴流の圧力との適切な選択によって、コーティングを完全に除去することができることが有利である。
【0014】
典型的な実施例では、ノズルは、媒体噴流が窒素噴流内でガイドされ、その後、除去すべきコーティングに衝突するように、媒体噴流を吐出するために適している。これによって、媒体噴流が極めて安定し、マイクロスパッタが導出される利点が得られる。これによって、基板におけるコーティング領域の除去がさらに正確になる。
【0015】
コーティング除去ヘッドは、基板の基板長手方向縁部に沿って作業軌道でガイド可能である。これに関連して、ガイド可能とは、コーティング除去ヘッドが第1の方向で往復運動可能であることを意味している。
【0016】
現在の従来技術では、コーティング除去ヘッドは静的に配置されており、通常、円形の基板が、コーティング除去ヘッドの下でかつ/また上で回転するように保持されており、これによって、基板の縁領域からコーティングを除去することができる。この方法は、角形の基板からコーティングを除去する場合には意味がない。なぜならば、この方法では、常に角隅領域だけはコーティング除去されるが、基板長手方向縁部のコーティングは除去されないからである。
【0017】
さらに、移動装置が設けられており、移動装置とコーティング除去ヘッドとは、OR回路で互いに接続されている。コーティング除去ヘッドが作業するようにガイドされるか、または基板の別の基板長手方向縁部がコーティング除去ヘッドの作業軌道に作用接続されるように、移動装置が基板を回動させる。
【0018】
移動装置をコーティング除去ヘッドの前進運動と後退運動との間にも作動させることができることが特定されていてよい。したがって、前進運動時に第1の基板長手方向縁部からコーティングを除去することができる。そして、移動装置が別の基板長手方向縁部をコーティング除去ヘッドの作業軌道に作用接続すると、別の基板長手方向縁部からコーティングを除去するために、コーティング除去ヘッドの後退運動を使用することができる。しかしながら、レジストおよび/または金属に応じて、移動装置が基板の別の基板長手方向縁部をコーティング除去ヘッドの作業軌道に作用接続する前にコーティング除去ヘッドの往復運動を終了させることも可能である。
【0019】
効率をさらに高めるために、別のコーティング除去ヘッドを備えた別の作業軌道が装置に設けられていることも可能である。効率をさらに高めることができることは有利である。
【0020】
コーティング除去ヘッドと別のコーティング除去ヘッドとが同時に作動することも有利である。こうして、互いに反対側の基板長手方向縁部にそれぞれ等しく同時に負荷がかかるようになり、このことは、一般的に、基板の安定化を簡単にし、基板のアライメントのための時間を半減させる。
【0021】
付加的に、コーティング除去ヘッドと別のコーティング除去ヘッドとが、互いに同方向にまたは逆方向にガイド可能であることが特定されていてよい。同方向には、両方のコーティング除去ヘッドが互いに並行して同一の往復運動を実施することを意味している。逆方向には、一方のコーティング除去ヘッドが前進運動を実施している間、別のコーティング除去ヘッドは後退運動を実施していることを意味している。このような構成では、装置における構造を省スペースで配置することができることが有利である。両方のコーティング除去ヘッドの供給ラインは、逆向きに作動するコーティング除去ヘッドの場合、供給ラインが装置の狭いハウジング内で互いに妨害し合うリスクをより少なくする。
【0022】
さらに、ブラケットが装置に設けられていてよい。ブラケットは、ガス押出し部が設けられているように構成されている。ガス押出し部は、空気流出部もしくは空気流出ノズルとして構成されている。作業位置において、ブラケットは、それぞれ対応するコーティング除去ヘッドとは反対の側で、コーティングを除去すべき基板に沿って滑動する。薄い基板では、反対側でブラケットによって安定化が行われていないと、基板が変形してしまう。そのために、ブラケットはガス押出し部を有している。ガス押出し部は安定化空気流を形成する。つまるところ、ガス押出し部は、ブラケットに設けられている空気流出部であり、コーティング除去ヘッドとは反対側で基板に沿ってガスを流し、これによって、基板を安定化させるように構成されている空気流出部である。
【0023】
薄いとは、基板が1mm未満の厚さを有していてよいことを意味している。当然ながら、本発明は、基板が1mm未満の厚さを有することに限定されるものではない。なぜならば、基板が数mmの厚さを有していてもよいからである。
【0024】
さらに、各々のコーティング除去ヘッドに2つ以上のノズルが使用されることも可能である。こうして、有利には、基板からコーティングを除去するための作業時間を短縮することができる。さらに、それぞれ異なるノズルを通して、種々異なる溶媒、エッチング媒体、水および/またはガスまたはガス混合物を吐出することもでき、これらは、基板上のコーティングに場合により存在する種々異なる層を、それぞれ異なる形態で溶解する、水洗浄するまたは乾燥させることができる。
【0025】
この場合には、コーティング除去ヘッドの往復運動に、種々異なる溶媒および/またはエッチング媒体を備えたそれぞれ異なるノズルを使用する可能性も考慮すべきである。例えば、コーティング除去ヘッドの前進運動時に第1のノズルが第1の溶媒/エッチング媒体を吐出し、次いで、後退運動時に別のノズルが別の溶媒/エッチング媒体を吐出し、コーティング除去ヘッドの新たな前進運動時に第3のノズルが第3の溶媒/エッチング媒体を吐出する等々といったことが可能である。当然ながら、コーティング除去ヘッドの前進運動時および/または後退運動時にだけ、全てのノズルが種々異なる溶媒/エッチング媒体を吐出することも考慮すべきである。ただし、このような形態はあまり実用的ではないと思われる。
【0026】
典型的な実施例では、装置はさらに吸引装置を備えている。これによって、基板から飛び跳ねる溶媒および/またはエッチング媒体が環境もしくはプロセス環境に到達せず、吸い込まれ、場合により処理され、状況によっては再使用され得るという利点が得られる。吸引装置の別の利点としては、基板から除去されたコーティングを吸い込むことができ、コーティングがプロセス環境に到達することがないということがある。そのために、吸引装置は、好ましくはフードを備えている。結果として、フードは、周囲に飛び散る溶媒および/またはエッチング媒体および/または溶解されたコーティングに対する付加的な保護装置として働く。
【0027】
さらに、センサ監視装置が設けられている。作業工程のクオリティ確保におけるセンサ監視装置である。
【0028】
付加的に、角形の基板からコーティングを除去するための本発明に係る方法が請求される。本発明の方法でも同様に、コーティング除去ヘッドと移動装置とを使用し、コーティング除去ヘッドを基板の基板長手方向縁部に沿って作業軌道でガイドし、次いで、移動装置は、基板の別の基板長手方向縁部をコーティング除去ヘッドの作業軌道に作用接続する。そのために、コーティング除去ヘッドと移動装置とはOR回路を有している。つまり、コーティング除去ヘッドが作動させられるかまたは移動装置が作動させられる。コーティング除去ヘッドが前進運動時にコーティング除去を行うことは排除されていない。次いで、移動装置が、基板を90°回動させることによって基板の別の基板長手方向縁部をコーティング除去ヘッドの作業軌道にもたらすことができる。その後、さらに、後退運動時に別の基板長手方向縁部のコーティングが除去される。こうすることでも、例えば効率をさらに高めることができる。
【0029】
本発明に係る方法でも、同時に基板の別の基板長手方向縁部を別の作業軌道によって処理してコーティングを除去する、別のコーティング除去ヘッドを使用することができる。この場合、コーティング除去ヘッドと別のコーティング除去ヘッドとが同時に作業すると有利である。つまり、このとき、コーティング除去ヘッドはその作業軌道を走行し、別のコーティング除去ヘッドはその固有の別の作業軌道を走行する。
【0030】
さらに、コーティング除去ヘッドと別のコーティング除去ヘッドとは、互いに同方向にまたは逆方向にガイドされる。同方向とは、コーティング除去ヘッドと別のコーティング除去ヘッドとが互いに並行して相並んで1つの方向に運動させられることを意味している。逆方向とは、例えば、一方のコーティング除去ヘッドが前進運動を実施し、そのとき、同時に別のコーティング除去ヘッドが後退運動を実施することを意味している。同時にまたは同じ時間にとは、本発明の範囲内では、僅かな時間的な遅延が含まれている場合もあることを意味している。ほとんど感じ取ることのできない時間窓における時間的な遅延は、同時または同期と見なすことができる。同じことは、両方のコーティング除去ヘッドが互いに異なる速度で走行し、各々の作業軌道の始点または終点に同時に到達する場合にも云える。
【0031】
基板の上面および下面における基板もしくは基板縁部のコーティング除去を相前後して実施することも、同時に実施することも、同様に可能である。
【0032】
コーティング除去工程中もしくは作業工程中もしくは作業位置中には、基板の反対側でブラケットが走行する。このブラケットは、それぞれ対応するコーティング除去ヘッドに物理的に結合されているか、または装置の一部としてコーティング除去ヘッドから独立して作業位置において基板の反対側で一緒に走行し、コーティング除去ヘッドの平面に対して常に基板長手方向縁部の、基板の反対側でちょうとコーティング除去ヘッドによって処理される部分に沿って片面にガスまたはガス混合物を流す。このことは、こうすると、基板もしくは基板長手方向縁部の、ちょうどコーティングが除去される領域が安定化するので、有利である。
【0033】
本実施例では、1つまたは2つのコーティング除去ヘッドの使用を想定して記載してある。しかしながら、3つ以上のコーティング除去ヘッドを設けることも本発明に含まれていると見なすべきである。例えば3つまたは4つのコーティング除去ヘッドまたは5つ以上の長手方向側縁部を備えた基板では5つ以上のコーティング除去ヘッドが設けられていてよい。このような構成では、これらのコーティング除去ヘッドが、その往復運動に関して互いに邪魔にならないように切り換えられなければならない。
【0034】
さらに、本発明によって、特にABFコーティング(味の素ビルドアップフィルム)または他の樹脂状のコーティングを備えた四角形の基板からの縁部コーティング除去が可能であることが求められている。そのために、例えばABFコーティングを備えた四角形の基板が供給される。この基板は、プラスチックフィルム(ABFではPET製)で、このプラスチックフィルムがコーティングをほぼ全面的に覆うように接着されている。フィルムの外側では、一般的に数mmの縁部がフィルムを有しておらず、フィルムによって覆われていない。例えばABFによってコーティングされた領域にフィルムを接着することによって、ABFの一部が外向きに押圧され、これによって、フィルムの下で膨らむ。この余剰のコーティング材料は除去しなければならない。
【0035】
以下のプロセスステップが、縁部におけるこの残留コーティングを除去するために役立つ:
- 低い圧力で溶媒(ABFの場合には、例えばMEK=メチルエチルケトン:ブタノン)を塗布することによって、コーティングを軟化させる。
- 軟化段階後、溶解されているものの、粘液状でべとつくコーティング材料を、ファンノズルによる高圧噴流によって除去することができ、これによって、フィルムの下にはもはやコーティングしか残らない。
【0036】
この方法では、低圧ノズルと高圧ノズルとが1つのノズルヘッド内にまとめられる。第1ステップでは、単に低圧ノズルだけがオンに切り換えられ、溶媒が溶解のために塗布される。次いで、約15秒(ABFの場合)の待機時間後、高圧ファンノズルを用いた第2のスループットでコーティングが除去される。コーティング材料および層厚さに応じて、作用時間を変化させることができる。この方法でも、基板の上面および下面のコーティングを同時に除去することを行うことができる。
【0037】
本発明の更なる利点、特徴および詳細は、以下の好適な実施例の説明から図面に基づき明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】角形の基板からコーティングを除去するための装置の概略的な平面図である。
【0039】
実施例
図1および
図2には、角形の基板2からコーティングを除去するための装置1が示してある。コーティング除去は、基板2の表面から、本実施例では特に基板2の縁領域12からのコーティング、特にフォトレジストおよび/または金属の除去を含んでいる。
【0040】
可能な基板の例は、正方形のウェーハ、長方形のウェーハ、多角形のウェーハ、薄膜プレート、ボードまたはこれに類するものである。
【0041】
装置1は、本実施例では2つのコーティング除去ヘッド3.1,3.2を有しており、両方のコーティング除去ヘッド3.1,3.2は、基板2の基板長手方向縁部4.1;4.2に沿って各々の作業軌道で矢印10,11に沿ってガイドすることができる。つまり、コーティング除去ヘッド3.1,3.2は、X方向およびY方向で矢印10,11に沿って走行可能である。しかしながら、さらに、Z方向におけるコーティング除去ヘッド3.1,3.2の走行可能性が与えられていると好ましいこともある。こうして、コーティング除去ヘッド3.1;3.2と基板2の表面との間の間隔を調整することができるものの、コーティング除去ヘッド3.1;3.2と各々の基板長手方向縁部4.1;4.2との間の間隔も調整することができる。コーティング除去ヘッド3.1,3.2の調整可能性もしくは走行可能性は調整装置(図示せず)によって行われる。
【0042】
装置1は、さらに、基板2を保持し、位置決めし、かつ/またはアライメントするための移動装置5を有している。移動装置5は、
図1に破線で示してある。移動装置5は、本実施例では基板2を矢印6の方向で90°回動させることができ、これによって、基板2の別の基板長手方向縁部4.3;4.4をコーティング除去ヘッド3.1;3.2の作業軌道に作用接続することができる。
【0043】
コーティング除去ヘッド3.1;3.2および移動装置5は、OR回路(図示せず)を有している。OR回路によって、コーティング除去ヘッド3.1,3.2がその作業軌道で基板長手方向縁部4.1;4.2または4.3;4.4に沿ってガイドされるか、または移動装置5が基板2を回動させる。これによって、個々の要素が互いに干渉し合うことがなくなる。
【0044】
さらに、両方のコーティング除去ヘッド3.1,3.2が、好ましくは逆向きの方向で作用する。しかしながら、本発明の範囲内には、同方向での両方のコーティング除去ヘッド3.1,3.2の運動も含まれていてよい。しかしながら、このような運動は、基板2が十分に大きく、各々の基板長手方向縁部に沿って各々のコーティング除去ヘッド3.1,3.2のために十分なスペースが残っているような場合にしか可能でない。
【0045】
装置1はさらにブラケット7を有しており、ブラケット7は、作業位置でそれぞれ基板2の、コーティング除去ヘッド3.1;3.2とは反対側に配置されている。ブラケット7は基板2用のガス押出し部8を備えている。このガス押出し部8を介して安定化空気流が基板2の方向にもたらされる。通常、基板2は極めて薄く(最大1mm未満)形成されていることがあるので、基板が大きな面積を有している場合には、処理の過程で湾曲したり、下方に向かって弛んだりすることがあり得る。このようになると、コーティングを除去すべき領域が凹凸を有することが発生してしまう。このことを阻止するために、ガス押出し部8を介して安定化流が基板2の方向に吐出される。これによって、ガス押出し部8を介して、基板2の、コーティング除去ヘッド3.1;3.2の反対側に沿って安定化空気流が流れ、ひいては、基板2が安定化され、平らに引っ張られ、その結果、基板2の均一なコーティング除去を行うことができる。
【0046】
コーティング除去のために、各々のコーティング除去ヘッド3.1,3.2は、2つ以上のノズル9、好ましくは5~6つのノズル9を有している。
【0047】
さらに、装置1は、センサ監視装置(図示せず)、好ましくはクオリティ確保用のセンサ監視装置を有している。
【0048】
次に、
図1および
図2を参照しながら本発明に係る装置の機能について説明する。
【0049】
コーティングを除去すべき基板2は移動装置5に配置され、サクションカップ(図示せず)を介して保持される。2つのコーティング除去ヘッド3.1,3.2が、互いに反対側に位置している2つの基板長手方向縁部4.1,4.2のところに、基板長手方向縁部4.1;4.2に対して予め決められた間隔をおいて位置決めされ、つまり、2つのコーティング除去ヘッド3.1,3.2が、一方では互いに対角線上に配置されている。他方、コーティング除去ヘッド3.1,3.2のノズル9は、基板2の表面に対して、特に基板2の、コーティングを除去すべき領域に対して予め決められた間隔をおいて配置されなければならない。
【0050】
同時に、ガス押出し部8を備えたブラケット7は、僅かな間隔をおいて基板の下に、もしくは基板2の、コーティング除去ヘッド3.1,3.2とは反対側に位置決めされる。このことは、安定化空気流がガス押出し部8から直接、基板2の縁領域12の互いに反対側の安定化すべき領域に流れることができるように行われる。ガス押出し部8と基板2との間の僅かな間隙を通って、空気は極めて迅速に流れる。両方の要素の間における静圧は低下する。これによって、基板2の下側には、上側よりも少ない圧力が作用する。したがって、基板2は、上側のより大きな周囲圧力によって下方に向かって押圧される。
【0051】
移動装置5上への基板2の位置決めと、基板長手方向縁部4.1,4.2へのコーティング除去ヘッド3.1,3.2の位置決めとが行われると、コーティング除去ヘッド3.1,3.2はその作業軌道で基板長手方向縁部4.1,4.2に沿って走行させられ、つまり、本実施例ではそれぞれ逆向きの方向、つまり、各々の基板長手方向縁部4.1;4.2の、
図1に関連して示した遠位端の方向に走行させられる。
【0052】
コーティング除去ヘッド3.1,3.2がその作業軌道で基板長手方向縁部4.1;4.2に沿ってガイドされる間、同時に、ブラケット7もガス押出し部8を含めて均一に基板2の下で一緒にガイドされ、これによって、基板2に沿った流れを発生させることができ、ひいては、基板2をコーティング除去工程中に均一に平らに保つことができる。もし基板2が傾いていたり、湾曲していたりすると、コーティングを均一にかつ所望の領域で除去することができなくなってしまう。さらに、湾曲している基板も問題である。なぜならば、場合により基板から過度に多くの材料が除去されるか、または過度に少ない材料しか除去されない恐れがあるからである。つまり、基板2のレベリングは、基板長手方向縁部4.1,4.2に沿ったコーティング除去ヘッド3.1,3.2の走行と同時に行われ、結果として、コーティング除去と同時に行われる。
【0053】
さらに、コーティング除去ヘッド3.1,3.2がその作業軌道で基板長手方向縁部4.1,4.2に沿って走行させられる間、ノズル9を介して、基板表面に存在するコーティングの構造に応じて、1種以上の溶媒および/またはエッチング媒体が噴霧される。そのために、ノズル9は、媒体ポンプ(図示せず)と溶媒リザーバもしくはエッチング媒体リザーバ(図示せず)に接続されている。媒体ポンプは、溶媒および/またはエッチング媒体を(低い)圧力下で吐出するのに好適である。同時に、溶媒および/またはエッチング媒体は、好ましくは真っ直ぐまたは噴流状にも吐出される。そのために、ノズル9は、好ましくは圧縮空気源または窒素源(図示せず)に接続されている。溶媒および/またはエッチング媒体と圧縮空気/窒素噴流とを吐出できるようにするために、ノズル9は、互いに内外にガイドされた2つの吐出管(図示せず)を有していてよい。好ましくは、内側の管から溶媒および/またはエッチング媒体が真っ直ぐまたは噴流状に圧力下で吐出される。このとき、外側の管からは圧縮空気噴流または窒素噴流が吐出される。こうして、コーティングが基板長手方向縁部4.1,4.2に沿って溶解されて除去される。
【0054】
溶媒としては、適切な溶剤、エッチング媒体または研磨作用を有する小さな粒子を使用することができる。
【0055】
溶媒および/またはエッチング媒体によって除去されたコーティングおよび/または溶媒および/またはエッチング媒体自体は、基板2が損傷しないように基板2から遠ざけられなければならない。そのために、フード(図示せず)を備えた吸引装置13が設けられており、この吸引装置13は、管路(図示せず)を介して負圧源(図示せず)に接続されている。フードは、溶媒および/またはエッチング媒体が周囲に飛び散らないようにするための付加的な保護装置として働く。
【0056】
コーティング除去ヘッド3.1,3.2が基板長手方向縁部4.1;4.2の各々の遠位端に達し、これらの基板長手方向縁部4.1,4.2に対するコーティング除去工程を終了すると、コーティング除去ヘッド3.1,3.2は作業軌道でその出発位置に戻される。次いで、移動装置5が基板2を90°回動させ、基板2の別の基板長手方向縁部4.3,4.4を別のコーティング除去ヘッドの別の作業軌道に作用接続し、前述した工程が繰り返される。OR回路に基づき、コーティング除去ヘッド3.1,3.2または移動装置5が作動する。上述したこれらのステップは、基板2の全ての所望の縁部および/または辺が処理され、完全にまたは少なくとも所望のレベルまでコーティング除去されるまで繰り返される。
【0057】
本発明の1つの好適な実施例だけを記載しかつ図示したが、当然ながら、当業者は、本発明の本質および範囲を逸脱することなしに多数の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 装置
2 基板
3 コーティング除去ヘッド
4 基板長手方向縁部
5 移動装置
6 矢印
7 ブラケット
8 ガス押出し部
9 ノズル
10 矢印
11 矢印
12 縁領域
13 吸引装置
【国際調査報告】