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特表2024-526782車線を走行する自動車及び関連する車両の軌道を制御するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】車線を走行する自動車及び関連する車両の軌道を制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/045 20120101AFI20240711BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20240711BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20240711BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
B60W30/045
B60W40/10
B62D6/00
B62D101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502120
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022069539
(87)【国際公開番号】W WO2023285502
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】FR2107669
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524017168
【氏名又は名称】アンペア エス.ア.エス.
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダヴァン, ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ル コック, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】クイリアード, ラファエル
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA04
3D232DA23
3D232DA33
3D232DA81
3D232DA86
3D232DD17
3D232EA01
3D232EB04
3D232EC34
3D232FF07
3D241BB27
3D241BC02
3D241CC17
(57)【要約】
本発明は、車線中で走行する自動車両の経路をリアルタイムで制御するための方法に関し、この方法は、車線中のコーナーを検出するステップと、次いで、自動車両が前記コーナーに入るときに、
自動車両の移動を特徴づける状態変数に基づいて複数の連続するサンプリング増分の第1の量および第2の量を決定するステップと、
第1の記憶された値および第2の記憶された値を決定するステップであって、前記第1の記憶された値が、現在のサンプリング増分において決定された第1の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第1の量とに依存し、前記第2の記憶された値が、現在のサンプリング増分において決定された第2の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第2の量とに依存する、第1の記憶された値および第2の記憶された値を決定するステップと、
各サンプリング増分について決定された前記第1の記憶された値および第2の記憶された値をメモリに保存するステップと、次いで、自動車両が前記コーナーから出るときに、メモリに保存された前記第1の記憶された値と第2の記憶された値とに応じてアンダーステア勾配の値を決定するステップと、このようにして決定されたアンダーステア勾配の値に基づいて自動車両のためのコマンドを決定するステップとを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車線中で走行する自動車両(1)の経路を制御するための方法であって、
前記車線中のターンを検出するステップと、次いで、前記自動車両(1)が前記ターンに入るときに、
前記自動車両(1)の移動を特徴づける状態変数(Φ、Y)に基づいて複数の連続するサンプリング増分(δt)の第1の量(Φ(δt).Y(δt))および第2の量(Φ(δt).Φ(δt))を決定するステップと、
第1の記憶された値(Φ.Y)および第2の記憶された値(Φ.Φ)を決定するステップであって、前記第1の記憶された値(Φ.Y)が、現在のサンプリング増分について決定された前記第1の量(Φ(δt).Y(δt))と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第1の量との関数であり、前記第2の記憶された値(Φ.Φ)が、前記現在のサンプリング増分について決定された前記第2の量(Φ(δt).Φ(δt))と、前記先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第2の量との関数である、第1の記憶された値(Φ.Y)および第2の記憶された値(Φ.Φ)を決定するステップと、
各サンプリング増分(δt)について決定された前記第1の記憶された値(Φ.Y)および前記第2の記憶された値(Φ.Φ)をメモリに保存するステップと、次いで、前記自動車両(1)が前記ターンから出るときに、
メモリに保存された前記第1の記憶された値(Φ.Y)と前記第2の記憶された値(Φ.Φ)との関数としてアンダーステア勾配(∇SV_δt_act)の値を決定するステップと、
決定された前記アンダーステア勾配(∇SV_δt_act)の前記値に基づいて前記自動車両(1)のためのコマンドを決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の記憶された値(Φ.Y)が、前記現在のサンプリング増分について決定された前記第1の量(Φ(δt).Y(δt))と、前記先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第1の量との合計の関数であり、前記第2の記憶された値(Φ.Φ)が、前記現在のサンプリング増分について決定された前記第2の量(Φ(δt).Φ(δt))と、前記先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第2の量との合計の関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自動車両(1)の前記移動を特徴づける前記状態変数(Φ、Y)が、前記自動車両(1)のホイールの回転角の成分(δFFD)、前記車線の曲率、前記自動車両(1)の移動速度(v)、または前記自動車両(1)のホイールベース(L)の関数である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アンダーステア勾配の前記値を決定する前記ステップが、前記自動車両(1)によってネゴシエートされるターンごとに実行される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アンダーステア勾配の中間値(∇SV_δt_int)を決定するために前記アンダーステア勾配の前記値を補正するステップをさらに含み、前記アンダーステア勾配の前記中間値(∇SV_δt_int)が、決定された前記アンダーステア勾配(∇SV_δt_act)の前記値と所定の値との間の重み付けに基づいて決定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アンダーステア勾配(∇SV_δt_act)の前記値が、前記第1の記憶された値(Φ.Y)と前記第2の記憶された値(Φ.Φ)との間の比に基づいて決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自動車両の第1の加速度値および別の第2の加速度値を決定するステップと、
前記第1の加速度値と前記別の第2の加速度値との間の差を決定するステップと、
決定された前記差が所定のしきい値よりも大きい場合、決定された前記差の関数である補正値に基づいて前記アンダーステア勾配の前記値をさらに補正するステップと
をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ターンの検出が、前記自動車両(1)の前記移動を特徴づけるパラメータに依存し、前記パラメータのうちの少なくともいくつかが、前記自動車両(1)の前輪の角度、前記自動車両(1)のヨー速度、前記自動車両(1)の重心(G)と理想経路との間の横方向オフセット、前記自動車両(1)の横加速度、または前記自動車両(1)の移動速度から選定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の量(Φ(δt).Y(δt))および前記第2の量(Φ(δt).Φ(δt))が、前記自動車両(1)の前記移動を特徴づける状態変数(Φ、Y)の関数として再帰的最小2乗法を使用して決定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記自動車両(1)のための前記コマンドを決定する前記ステップが、前記自動車両(1)のホイールの回転角の成分(δFFD)を決定するサブステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
車線中で走行する自動車両(1)の経路を制御するためのデバイス(10)であって、コンピュータ(12)と、有限個のロケーションを有するデータベースを設けられたメモリ(14)とを備え、前記コンピュータ(12)が、
前記車線中のターンを検出することと、次いで、前記自動車両(1)が前記ターンに入るときに、
前記自動車両(1)の移動を特徴づける状態変数(Φ、Y)に基づいて複数の連続するサンプリング増分(δt)の第1の量(Φ(δt).Y(δt))および第2の量(Φ(δt).Φ(δt))を決定することと、
第1の記憶された値(Φ.Y)および第2の記憶された値(Φ.Φ)を決定することであって、前記第1の記憶された値(Φ.Y)が、現在のサンプリング増分について決定された前記第1の量(Φ(δt).Y(δt))と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第1の量との関数であり、前記第2の記憶された値(Φ.Φ)が、前記現在のサンプリング増分について決定された前記第2の量(Φ(δt).Φ(δt))と、前記先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第2の量との関数である、第1の記憶された値(Φ.Y)および第2の記憶された値(Φ.Φ)を決定することと、
各サンプリング増分(δt)について決定された前記第1の記憶された値(Φ.Y)および前記第2の記憶された値(Φ.Φ)をメモリに保存することと、次いで、前記自動車両(1)が前記ターンから出るときに、
メモリに保存された前記第1の記憶された値(Φ.Y)と前記第2の記憶された値(Φ.Φ)との関数としてアンダーステア勾配(∇SV_δt_act)の値を決定することと、
決定された前記アンダーステア勾配(∇SV_δt_act)の前記値に基づいて前記自動車両(1)のためのコマンドを決定することと
を行うように設計された、デバイス(10)。
【請求項12】
パワートレインと、操縦システムと、前記操縦システムを制御するように適応された請求項11に記載のリアルタイム経路制御のためのデバイス(10)とを含む自動車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、特にターン中に自動車両を車線中に保持するために、自動車両の経路を制御することに関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、車線中で走行する自動車両の経路を制御するための方法およびデバイスに関する。
【0003】
本発明は、この種類の経路制御デバイスを含む自動車両に等しく関する。
【背景技術】
【0004】
自律および半自律自動車両は、ドライバーによる介入なしに一般道路上を走行するように設計される。この目的のために、自動車両は、自動車両と環境とのステータスを特徴づけるデータの収集を可能にする一連のデジタルセンサーを装備している。自動車両はまた、そのデータの分析を可能にするソフトウェアを与えられる。そのソフトウェアは、アルゴリズムを使用して、次いで、自動車両を操縦するためにコマンドを生成する。特に、このソフトウェアは、特に、自動車両を車線の中心に保持するような様式で、支援される操縦システムを制御する制御法を生成するように設計される。この種類の制御法は、従来、レーンセンタリング支援(Lane Centering Assist)(LCA)法と呼ばれる。
【0005】
制御法は、特に、自動車両の操縦可能なホイールの回転角(turning angle)を調整することを可能にする。この回転角は、車線の曲率と、自動車両の速度と、自動車両が曲がる際の自動車両の挙動を定量化する、アンダーステア勾配(understeer gradient)として知られているパラメータとに依存する。アンダーステア勾配は、1m/sの横方向加速度を受ける自動車両についてのホイールに与えられるべき角度として定義され得る。
【0006】
このパラメータは測定可能ではない。その上、このパラメータの変動の範囲はかなり大きく、これは、回転角についての不良設定点につながり、したがって、曲がるときの自動車両の著しいオフセンタリングにつながり得る。
【0007】
特許出願FR3104106号には、アンダーステア勾配を決定する方法が記載されている。その方法は、オーバーステアが観測されるとすぐに、その量を公称値に対して変更することに基づいている。
【0008】
しかしながら、アンダーステア勾配の値に(したがって回転角の値に)大きい影響を及ぼす、自動車両の経路上で遭遇した変化、たとえば自動車両の荷重の変化は、自動車両が移動しているときに瞬時には考慮に入れられない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、自動車両の移動中に遭遇した旋回をリアルタイムで考慮に入れることによって、曲がるときの自動車両の経路の制御を改善することを提案する。
【0010】
本発明によれば、より詳細には、車線中で走行する自動車両の経路を制御するための方法であって、
車線中のターンを検出するステップと、次いで、自動車両が前記ターンに入るときに、
自動車両の移動を特徴づける状態変数に基づいて複数の連続するサンプリング増分の第1の量および第2の量を決定するステップと、
第1の記憶された値および第2の記憶された値を決定するステップであって、前記第1の記憶された値が、現在のサンプリング増分について決定された第1の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第1の量との関数であり、前記第2の記憶された値が、現在のサンプリング増分について決定された第2の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第2の量との関数である、第1の記憶された値および第2の記憶された値を決定するステップと、
各サンプリング増分について決定された前記第1の記憶された値および第2の記憶された値をメモリに保存するステップと、次いで、自動車両が前記ターンから出るときに、
メモリに保存された前記第1の記憶された値と第2の記憶された値との関数としてアンダーステア勾配の値を決定するステップと、
決定されたアンダーステア勾配の値に基づいて自動車両のためのコマンドを決定するステップと
を含む、方法が提案される。
【0011】
したがって、本発明のおかげで、アンダーステア勾配値は、自動車両が移動している間に一定の間隔でリアルタイムで決定される。アンダーステア勾配値は、より詳細には、車線中の自動車両の移動全体にわたってターンごとに決定され、更新される。自動車両経路制御設定点も、したがって、有利にはリアルタイムで調整される。これにより、その場合、経路の突然の変更につながることなしに、自動車両を(ターン中と同様に直線中での)車線の中心にある理想的な経路にできるだけ近づけることが可能になる。これにより、したがって、経路制御変更時の揺動(jolt)を防ぐことによって自動車両の乗員の快適さを保証することが可能になる。
【0012】
本発明は、移動中(たとえば配送中)にそれの荷重配分が変動し得る重量物積載車両またはユーティリティ車両の場合に特に有利に適用できる。アンダーステア勾配は、したがって、これらの荷重変更を考慮に入れ、外部介入なしに、自動車両の移動全体にわたって調整される。
【0013】
別個に、またはすべての技術的に可能な組合せで取られる、本発明による制御方法の他の有利で非限定的な特徴は、次の通りである。
第1の記憶された値が、現在のサンプリング増分について決定された第1の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第1の量との合計の関数であり、第2の記憶された値が、現在のサンプリング増分について決定された第2の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第2の量との合計の関数である。
自動車両の移動を特徴づける状態変数が、自動車両のホイールの回転角の成分、車線の曲率、自動車両の移動速度、または自動車両のホイールベースの関数である。
また、ターンの検出のステップの前に、所定の値に基づいてアンダーステア勾配値を初期化するステップがある。
アンダーステア勾配の値を決定するステップが、自動車両が曲がるターンごとに実行される。
また、アンダーステア勾配の中間値を決定するためにアンダーステア勾配の値を補正するステップであって、アンダーステア勾配の前記中間値が、決定されたアンダーステア勾配の値と所定の値との間の重み付けに基づいて決定される、ステップがある。
アンダーステア勾配の値が、第1の記憶された値と第2の記憶された値との間の比に基づいて決定される。
また、
a)自動車両の第1の加速度値および別の第2の加速度値を決定するステップと、
b)第1の加速度値と別の第2の加速度値との間の差を決定するステップと、
c)決定された差が所定のしきい値よりも大きい場合、決定された前記差の関数である補正値に基づいてアンダーステア勾配の値をさらに補正するステップと、が与えられる。
ターンの検出が、自動車両の移動を特徴づけるパラメータに依存し、パラメータのうちの少なくともいくつかが、自動車両の前輪の角度、自動車両のヨー速度、自動車両の重心と理想的な経路との間の横方向オフセット、自動車両の横加速度、または自動車両の移動速度から選定される。
第1の量および第2の量が、自動車両の移動を特徴づける状態変数の関数として再帰的最小2乗法を使用して決定される。
自動車両のためのコマンドを決定するステップが、自動車両のホイールの回転角の成分を決定するサブステップを含む。
【0014】
本発明はまた、パワートレインと、操縦システムと、操縦システムを制御するように適応された上記で紹介したリアルタイム経路制御のためのデバイスとを備える自動車両に関する。
【0015】
本発明はまた、車線中で走行する自動車両の経路を制御するためのデバイスであって、コンピュータと、有限個のロケーションを有するデータベースを設けられたメモリとを含み、前記コンピュータが、
車線中のターンを検出することと、次いで、自動車両が前記ターンに入るときに、
自動車両の移動を特徴づける状態変数に基づいて複数の連続するサンプリング増分の第1の量および第2の量を決定することと、
第1の記憶された値および第2の記憶された値を決定することであって、前記第1の記憶された値が、現在のサンプリング増分について決定された第1の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第1の量との関数であり、前記第2の記憶された値が、現在のサンプリング増分について決定された第2の量と、先行するサンプリング増分のうちの少なくとも1つについて決定された第2の量との関数である、第1の記憶された値および第2の記憶された値を決定することと、
各サンプリング増分について決定された前記第1の記憶された値および第2の記憶された値をメモリに保存することと、次いで、自動車両が前記ターンから出るときに、
メモリに保存された前記第1の記憶された値と第2の記憶された値との関数としてアンダーステア勾配の値を決定することと、
決定されたアンダーステア勾配の値に基づいて自動車両のためのコマンドを決定することと
を行うように設計された、デバイスに関する。
【0016】
本発明はまた、パワートレインと、操縦システムと、操縦システムを制御するように適応された前に紹介したリアルタイム経路制御のためのデバイスとを含む自動車両に関する。
【0017】
もちろん、本発明の様々な特徴、変形態および実施形態は、それらが非互換または相互排他的でないという条件で、様々な組合せで互いに関連付けられ得る。
【0018】
非限定的な例として与えられる添付の図面を参照しながらの以下の説明では、本発明が何から構成され、本発明がどのように実現され得るかをはっきりと説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】自動車両の一部の概略図を示す図である。
図2】車線中で走行する自動車両に適用される「自転車」モデルの表現である。
図3】自動車両の経路を制御する本発明による方法の例をフローチャートの形態で示す図である。
図4】自動車両の経路を制御する閉ループ方法の機能概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には自動車両1(以下「車両1」とも呼ぶ)が示されている。この自動車両1は、従来、4つのホイール3と、特にドライブトレイン(すなわち、エンジン、および駆動ホイールにエンジントルクを伝達するための手段)を支持するシャシーと、(たとえば操縦カラムを設けられた)操縦システムと、車体(bodywork)要素と、客室要素とを有する。
【0021】
図1に表されているように、車両1はまた、制御ユニット5を含む。制御ユニット5は、コマンドと、車両1の様々な部材の制御とを与える。たとえば、制御ユニット5は、速度センサー、または車両1の前輪の回転角を測定するセンサーなど、車両1中に存在する様々なデジタルセンサーから情報を受信することが可能である。
【0022】
制御ユニット5は、車両1の操縦カラムに結合されたアクチュエータに、たとえば制御設定点を伝えることによって、アクチュエータを等しく制御し得る。制御ユニット5は、この目的のために経路制御デバイス10を含む。経路制御デバイス10は、制御設定点を生成するように適応される。たとえば、自律または半自律車両の場合、経路制御デバイス10は、車両1を配向させるために、または、車両1を車線中に、特にその車線のターン中に維持するために経路制御設定点が生成されることを可能にする。
【0023】
ここで、制御デバイス10はコンピュータ12とメモリ14とを含む。メモリ14はデータベースを含んでいる。コンピュータ12は、プロセッサによって実行されると、以下で説明する方法のコンピュータ12による実行を可能にする命令を含むコンピュータプログラムから構成されるアプリケーションをコンピュータ12のメモリに記憶する。
【0024】
ここで、車両1の経路はいわゆる「自転車」モデルによってモデル化される。図2は、車線中で走行する車両1に適用された「自転車」モデルの表現である。このモデルのコンテキストにおいて、車両1は、フレームと、(自転車で言うところの)2つのホイール、すなわち、操縦可能な前輪3aおよび操縦不可能な後輪3bとによってモデル化されている。
【0025】
以下で導入される式は行列式である。
【0026】
このモデルにおいて考察される変数は以下の通りである。
車両1の重心Gを通る垂直軸の周りでの車両1の回転速度に対応する、車両1の、dψ/dtで示される、ヨー速度、
車両1の長手方向軸と経路に対する接線との間の角度に対応する、ψで示される、方位角、
理想経路Iからの車両1の重心Gの距離にリンクされる、
で示される、車両1の横方向速度、
車両1の重心Gと理想経路Iとの間のオフセットに対応する、yで示される、横方向オフセット、
垂直軸に対する前輪3aの、dδ/dtで示される、回転速度、
前輪3aの、δで示される、角度、すなわち、車両1の前輪3aと長手方向軸との間の角度、および
車両1がその上にあるべき理想経路Iに対する車両1の重心Gのオフセットの時間積分に対応する位置誤差積分、この誤差積分は次式で示される。
∫-ydt
【0027】
車両1は、したがって、次式によって定義される状態ベクトル(以下では「状態データX」)と一般的に呼ばれるものによって表される。
【0028】
「自転車」モデルによれば、車両1の経路の式は次式によって与えられる。
式中、
δreq(単位ラジアン、以下ではradと示される)は、車両1が車線中の理想経路I上に残るかまたは理想経路Iに近づくための、前輪3aの角度設定点(したがって制御設定点)であり、
ρ(単位m-1)は車線の曲率(また「自転車」モデルにおける経路の曲率)であり、
ρは(特に車線の曲率にリンクされる)妨害データを表し、
Aは状態データXとの動的関係を表す。
【0029】
ここで、行列Aは、車両1の前輪および後輪のコーナリングスチフネスの(ニュートン/rad単位で表される)それぞれの係数cおよびcと、車両の重心Gとフロントドライブトレインとの間、および車両1の重心Gとリアドライブトレイン1との間のそれぞれの距離IおよびI(これらの距離は図2に表されている)と、車両1の質量m(単位kg)と、長手方向における車両1の速度v(単位m/s)(以下では車両1の移動速度とも呼ぶ)とに依存する。
【0030】
ホイールのコーナリングスチフネスの係数cおよびcは、当業者によく知られている概念である。たとえば、前輪のコーナリングスチフネスの係数cは、それにより式F=2.cf.αを書くことを可能にし、式中、Fは前輪に対する横方向摺動力であり、αは前輪の回転角である。
【0031】
「自転車」モデルのコンテキストでは、測定値Yも関係Y=C.Xによって状態データXの関数として表され、式中、Cは、車両1中に含まれる様々なデジタルセンサーからの測定値を含むデータである。
【0032】
本発明の残りでは、
車両1に結合された基準系における車両1の加速度の法線成分に対応する(したがって経路に垂直な)、車両1の横方向加速度(lateral acceleration)、および
地面に結合された基準系に対する車両1の移動方向に直角な様式で車両1に作用する加速度に対応する、車両1の横加速度(transverse acceleration)
も定義されている。
【0033】
この「自転車」モデルは、次いで、制御ユニット5に記憶される車両1の経路のための制御法において使用される。たとえば、この制御法は、車両1が直線中を走行しているかまたはターンの一部中を走行している車線の中心に車両1を保持することを可能にする。
【0034】
図4はこの制御法の閉ループ機能概略図を表す。
【0035】
図4において、Xrefは車両1の車線中の車両1の理想経路に対応する。実際には、これは、車両1が走行している車線の中心を通る経路であることが多い。この理想経路は、制御ユニット5が車両1に、達成する(または維持する)ことを要求する経路である。
【0036】
この目的のために、制御法は、ループされるプロセスの形態を取る。図4によれば、車両1の状態、特に車両1の経路は要素22によって与えられる。この要素22は、実際には、制御ユニット5に接続され、制御ユニット5は、前輪のための回転角設定点δreqに適合する、上記で説明した「自転車」モデルからの(状態データXおよび測定データYについての)式を満たすような様式で車両1の経路を制御する。
【0037】
図4に表された機能概略図はまた、観測器要素26の存在を示す。この要素26は、車両1の状態の推定値を供給することを可能にする。実際には、要素26は、車両1中の様々なデジタルセンサーに接続され、したがって、車両1に関するすべての測定値を受信する。
【0038】
要素26はまた、経路制御に関する制御ユニット5によって送信された情報を要素22から受信する。
【0039】
要素26は、次いで、推定されたデータXestを使用して車両1の推定経路を生成する。この目的のために、要素26は、車両1に関する測定値と、それらの測定値から推定された、制御法の定義のために必要な変数とをまとめた、観測データLを生成する。観測データLは車両1の移動速度の関数である。
【0040】
言い換えれば、観測データLは、関係する車両1の移動速度から決定される。推定されたデータXestは、その場合、次式を満たす。
式中、Lは、観測器要素26に関連付けられた利得値である。
【0041】
図4に表されているように、推定されたデータXestは、次いで、理想経路Xrefと比較される。推定された経路と理想経路との間の差は要素20によって処理される。この要素20は、新しい制御設定点、たとえば、前輪の回転角δreqの成分δFBKに関する新しい制御設定点を生成するように適応される。この目的のために、要素20は調整データKsを採用する。前輪の回転角δreqの成分δFBKに関する新しい制御設定点は、推定された経路Xestと理想経路Xrefとの間の差に調整データKsを掛けることによって得られる。新しい制御設定点は、したがって、調整データKsの関数である。この調整データKsは、実際には行列の形態で表される。
【0042】
調整データKsは車両1の速度の関数である。言い換えれば、図4に示されている制御法は調整データKsの異なる値を使用し、これらの値の各々は車両1の移動速度に関連付けられる。
【0043】
関係する移動速度の各々に関連付けられた調整データKsの値は、車両1が設計されるときに決定される。それらの値は、したがって、車両1の使用前に固定される。調整データKsから生成される、前輪の回転角δreqの成分δFBKに関する制御設定点は、したがって、予測と呼ばれる。
【0044】
図4は予想器要素24の存在をも示す。この要素24は、特に、その車線をたどるために必要な前輪の回転角δreqの成分δFFDを評価することによって、車線の曲率を考慮に入れることを可能にする。
【0045】
車両1がターンの中心(
=0、y=0およびdδ/dt=0)にある、永久的レジームにおける「自転車」モデルを記述するために導入された式を使用して、予想器要素24によって決定される前輪の回転角δreqの成分δFFDに関する設定点は、以下の様式で書かれる。
式中、
L(単位m)は車両1のホイールベースであり、
SVは、車両1に固有の、次式によって定義されるアンダーステア勾配である。
式中、MおよびM(単位kg)は、それぞれ車両1のフロントドライブトレインおよびリアドライブトレインに印加される重量である。
【0046】
予想器24はまた、車両1中の様々なデジタルセンサーに接続され、したがって、車両1に関するすべての測定値を受信する。
【0047】
図4が示すように、車両1が、既知の曲率ρを有するターン中で移動するために、操縦ホイールに適用されるべき角度(したがって、ホイールに伝達されるべき角度設定点δreq)は、最終的に、それぞれ観測器要素26および予想器要素24によって決定される2つの成分(δFBKおよびδFFD)に依存する。
δreq=δFBK+δFFD
【0048】
本発明は、したがって、ここでは、車両1が、既知の曲率ρを有するターン中で移動するために、操縦ホイールに適用されるべきこの角度(したがって、ホイールに伝達されるべき角度設定点δreq)を決定することを目的とする。
【0049】
制御デバイス10(およびより一般的には制御ユニット5)のコンピュータ12は、自動車両1の経路を制御するための方法を実行するように適応される。
【0050】
コンピュータ12によって実行される方法は、車線中の、特にターン中の自動車両1の経路をリアルタイムで制御するように適応される。ここで、「リアルタイム」という表現とは、自動車両1が車線を移動しているときに、車両1の経路を一定の間隔で制御することができることを意味する。
【0051】
この目的のために、コンピュータ12は、以下で説明する複数のステップを含む方法を採用する。
【0052】
この方法のコンテキストにおいて採用される一連のステップは、図3にフローチャートの形態で表されている。
【0053】
図3が示すように、本方法は、自動車両1が出発し、車線中で移動し始める、ステップE2において開始する。ここでは、自律車線追従機能がアクティブ化されていると考えられる。
【0054】
この機能をアクティブ化するときに回転角設定点δreqを決定するために、本方法は、所定の値∇SV_initからのアンダーステア勾配値∇SVの初期化のステップE4を含む。この所定の値∇SV_initは、たとえば、メモリ14に記憶されるデフォルト値である。この所定の値∇SV_initは、たとえば、それぞれ車両1のフロントドライブトレインおよびリアドライブトレインに印加される重量MおよびMと、対応するスチフネス係数cおよびcとに依存する。回転角δreqに関する制御ユニット5によって生成される設定点は、この所定の値∇SV_initに基づいて決定される。所定の値∇SV_initは、より詳細には、必要とされる回転角δreqの成分δFFDの決定を可能にする。これと並行して、観測器要素26は、必要とされる回転角δreqの他方の成分δFBKを推定する。始動時の回転角設定点δreqは、したがって、これらの2つの成分を合計することによって得られる。この始動設定点は、次いで、自動車両1の操縦システムに伝達される。
【0055】
本方法は、次いで、ステップE6~E60を進む。これらのステップE6~E60は、車両1が移動しているときにループで実行される。これらのステップは、より詳細には、自動車両1が移動していた時間の複数のサンプリング増分δtの各連続サンプリング増分δtについて実行される。このサンプリング増分δtは、たとえば、10ミリ秒のオーダーである。
【0056】
関係するサンプリング増分δtにおいて、ステップE6中に、コンピュータ12は、車線がターンを含むかどうかを検出する。
【0057】
車線中のターンの存在を検出するために、コンピュータ12は、自動車両1の移動の特性パラメータに関する少なくとも以下の条件を検証する。その移動を特徴づけるこれらのパラメータは、たとえば、前輪の角度、車両1のヨー速度、車両1の横方向速度、車両1の横加速度または横方向オフセットである。代替的に、それは、マップとナビゲーションソフトウェアとからのデータに基づき得る。
【0058】
ここで、ターンは、特に、前輪の角度と車両1のヨー速度と車両1の横方向速度とが同じ符号を有する場合に検出される。ターンの検出のための別の条件は、最小しきい値と最大しきい値との間の横加速度の絶対値に関する。最小しきい値は、たとえば0.84m/sのオーダーである。最大しきい値は、たとえば1.5m/sのオーダーである。
【0059】
ターンは、横方向オフセットが所定の値よりも小さい、たとえば、1mよりも小さい場合にも検出される。
【0060】
ターンは、ヨー速度の時間導関数が、ある時間期間の間に所定の値よりも小さい場合、たとえば、1秒の間に0.05rad/sよりも小さい場合にも検出される。
【0061】
このターン検出は、車両1の移動速度が車両1の最小移動速度しきい値よりも大きく、低速における移動が車線中の自動車両1の一般的な移動挙動をわずかにしか表さない場合にのみ採用される。
【0062】
ステップE6においてターンが検出されない場合、すなわち、車両1が車線の直線部分上を走行している場合、本方法はE8に続く。このステップの間、アンダーステア勾配∇SV_δtの値は一定の値に等しい。この一定の値は、たとえば、メモリ14に記憶された所定の値∇SV_initである。代替的に、この一定の値は、先行するサンプリング増分について決定され、メモリ14のデータベースに記憶されたアンダーステア勾配の値であり得る(この決定については以下で説明する)。
【0063】
図3が示すように、本方法は次いでステップE10を含み、ステップE10の間、(上記で導入された式を使用して)回転角設定点δreq、したがって自動車両1の経路についての制御設定点を決定するために、ステップE8において決定されたアンダーステア勾配∇SV_δtの値が使用される。予想器要素24は、より詳細には、必要とされる回転角δreqの成分δFFDを決定するために、ステップE8において決定されたアンダーステア勾配∇SV_δtの値を使用する。これと並行して、観測器要素26は、必要とされる回転角δreqの他方の成分δFBKを推定する。回転角設定点δreqは、したがって、これらの2つの成分を合計することによって得られる。この設定点は、次いで、自動車両1の操縦システムに伝達される。
【0064】
サンプリング増分は、次いで、次のサンプリング増分のために本方法のステップを実行するために増分される(上記のように、本方法は、車両1が車線中で移動しているときに一定の間隔で実行される)。本方法は、したがって、この後にステップE6に戻る。
【0065】
ステップE6において、車両1がターン中で走行していることをコンピュータ12が検出した場合、車両1は、したがって、検出されたターンを曲がり、本方法はステップE20に続く。
【0066】
このステップの間、コンピュータ12は、車線中で走行する間、自動車両1が、エンジンを始動してから所定の持続時間τappの間に1つの(または複数の)ターン中で走行したかどうかを評価する。言い換えれば、ここで、コンピュータ12は、全体で、少なくとも、本方法のための学習期間を構成するこの所定の持続時間τappの間に、車両がターン中で(1つまたは複数のターン中で)走行したかどうかを決定する。この所定の持続時間τappは、たとえば30秒より大きい、たとえば50秒のオーダーである。
【0067】
これが当てはまらない場合、本方法はステップE22に続き、ステップE22の間、コンピュータ12は、関係するサンプリング増分について、アンダーステア勾配に関連付けられた第1の量Φ(δt).Y(δt)の値および第2の量Φ(δt).Φ(δt)の値を決定する。
【0068】
式(数3)は、より詳細には、自動車両1の車線中での自動車両1の移動を特徴づける状態変数ΦおよびYを伴う、以下の形態に書き直されることができる。
Y(δt)=Φ(δt).Θ(δt)
式中、
Θ(δt)=∇SV、Y(δt)=δreq-ρLおよびΦ(δt)=ρv
【0069】
その場合、以下を書くことによって、アンダーステア勾配を分離することが可能である。
Θ(δt)=(Φ(δt).Φ(δt))-1.(Φ(δt)Y(δt))
式中、…は、行列の転置行列に対応する表記法であり、…-1は行列の逆行列に対応する。
【0070】
実際には、本発明による方法の実行中に、コンピュータ12は、アンダーステア勾配の値を最適化すること、したがって、上記の式を使用して、アンダーステア勾配に関連付けられた第1の量Φ(δt).Y(δt)および第2の量Φ(δt).Φ(δt)を最適化することを求める。
【0071】
ステップE22において、関係するサンプリング増分δtについて、行列Y(δt)およびΦ(δt)、したがって、自動車両1の特性パラメータの測定された瞬時値(車両1中の様々なセンサーによって得られた測定値)から決定される。使用される特性パラメータは、特に、車両1のホイールベース、車線の曲率ρ、および車両1の移動速度vである。たとえば、車線の曲率ρは以下の式から決定されることに留意されたい。
【0072】
このステップの間、使用される回転角の値δreqは、開ループ中で得られ、自動車両1に関係するセンサーによってサンプリング増分δtで測定される値である。
【0073】
第1の量Φ(δt).Y(δt)および第2の量Φ(δt).Φ(δt)は、次いで、再帰的最小2乗法によってサンプリング増分δtについての行列Y(δt)およびΦ(δt)の瞬時値に基づいて決定される。
【0074】
図3が示すように、本方法はステップE24に進む。このステップの間、コンピュータ12は、第1の記憶された値Φ.Yおよび第2の記憶された値Φ.Φをメモリ14のデータベースに記憶する。
【0075】
第1の記憶された値Φ.Yは、(ステップE22において)サンプリング増分δtについて決定された第1の量Φ(δt).Y(δt)の関数であるが、先行するサンプリング増分について決定された第1の量の関数でもある。第2の記憶された値Φ.Φについても同様であり、第2の記憶された値Φ.Φは、(ステップE22において)サンプリング増分δtについて決定された第2の量Φ(δt).Φ(δt)の関数であり、先行するサンプリング増分について決定された第2の量の関数でもある。
【0076】
たとえば、第1の(それぞれ第2の)記憶された値Φ.Y(それぞれΦ.Φ)は、現在のサンプリング増分までのサンプリング増分のすべてについて決定された第1の(それぞれ第2の)量の合計に対応する。
【0077】
この場合、コンピュータ12は、実際には、(それ自体、記憶された先行する第1の値の合計から得られる)先行するサンプリング増分について記憶された第1の記憶された値と、現在のサンプリング増分δtについて決定された第1の量Φ(δt).Y(δt)との総和の結果を記憶する。
【0078】
代替的に、記憶された第1の(それぞれ第2の)値Φ.Yは、現在のサンプリング増分までのサンプリング増分のすべてについて決定された第1の(それぞれ第2の)量の平均に対応し得る。
【0079】
たとえば、また、ここで、自動車両1を始動するときに、第1の量Φ(δt).Y(δt)および第2の量Φ(δt).Φ(δt)は0であることが考えられる。ターン中に第1のサンプリング増分において決定された第1の記憶された値Φ.Yおよび第2の記憶された値Φ.Φは、したがって、ターン中にこの第1のサンプリング増分について決定された行列Y(δt)およびΦ(δt)の瞬時値に直接依存する。
【0080】
本方法は、次いでステップE26に続き、ステップE26の間、コンピュータ12は、自動車両1が、ステップE6において検出されたターンから出たかどうかを決定する。
【0081】
これが当てはまらない場合、すなわち、自動車両1が依然として、ステップE6において検出されたターン中にある場合、本方法はステップE20に戻る。
【0082】
一方、自動車両1が、それがネゴシエートしていたターンから出た場合、本方法はステップE28に続く。これは、したがって、現在、自動車両1が直線中で走行していることを意味する。
【0083】
このステップの間、コンピュータ12は、成分δFFD(したがって回転角δreq設定点)を決定するために使用されるアンダーステア勾配∇SV_δt_actの値を更新する。したがって、ここでは、アンダーステア勾配値は、自動車両1が直線中で(したがって2つの連続するターン間を)走行している場合にのみ更新されることに留意するべきである。アンダーステア勾配値は、有利には、自動車両1が移動している間に、ターンごとに更新される。これにより、特に、ターン中の自動車両1の経路制御設定点の急激な変化を防ぐこと、したがって、車両1の乗員の快適さを保証することが可能になる。
【0084】
ここで、更新されるアンダーステア勾配値∇SV_δt_actは、ステップE24において決定される、したがって、車両1がちょうど出たターン中で決定される、第1の記憶された値Φ.Yのおよび第2の記憶された値Φ.Φの関数である。アンダーステア勾配の更新される値∇SV_δt_actは、より詳細には、第1の記憶された値Φ.Yと第2の記憶された値Φ.Φとの間の比として決定される。
【0085】
しかしながら、ステップE20において、1つまたは複数のターン中の車両1の走行時間が所定の持続時間τappに達していないことが決定されているので、本方法の学習期間は終了していないと考えられる。ステップE28において決定されたアンダーステア勾配の値∇SV_δt_actは、最適とは考えられず、したがって補正されなければならない。
【0086】
この目的のために、ステップE30は、アンダーステア勾配の値の中間値∇SV_δt_intを決定するために、ステップE28において決定されたアンダーステア勾配の値∇SV_δt_actを補正するステップである。このアンダーステア勾配の中間値∇SV_δt_intは、ステップE28において決定されたアンダーステア勾配の値∇SV_δt_actと、初期化ステップE4において使用された所定の値∇SV_initとの間の重み付けに基づいて決定される。言い換えれば、ターンデータがほとんど取得されなかった場合、アンダーステア勾配値推定誤差を制限するために、調整ファクタが適用される。所定の持続時間τappを有する学習期間中のこの調整は、その場合、(車両1の乗員が感じる揺動がない)最も一定で流動的な可能な制御点の生成を可能にするために、アンダーステア勾配値の線形収束および漸進的収束を可能にする。
【0087】
本方法は、次いで、関係するサンプリング増分についての、車両1の第1の加速度値および別の第2の加速度値を決定する、ステップE32に続く。ここで、たとえば、加速度は車両1の横方向加速度であり、別の加速度は車両1の横加速度である。コンピュータ12は、その後、第1の加速度と第2の加速度との間の差を決定する。
【0088】
ステップE34において、この差が所定の加速度しきい値と比較される。この所定の加速度しきい値は、自動車両1に重量物を積む場合に、または(横方向加速度が高いであろう)いわゆる急カーブの場合に観測され得るような、起こり得るアンダーステア勾配推定誤差を識別することを可能にする。ここで、この所定の加速度しきい値は、たとえばマップの形態を取る。このマップは、たとえば、第1の加速度と第2の加速度との間の差が約0.2m/sの所定のしきい値よりも小さい場合は、アンダーステア勾配の中間値∇SV_δt_intに補正が適用されないことを示す。アンダーステア勾配の最終値∇SV_δt_finは、したがって、アンダーステア勾配の中間値∇SV_δt_intに等しい(ステップE36a)。
【0089】
しかしながら、第1の加速度と第2の加速度との間の差が約0.2m/sのこの所定のしきい値よりも大きい場合、アンダーステア勾配の中間値∇SV_δt_intは、この中間値に加算される補正値によって補正される(ステップE36b)。この補正値は、たとえば上述のマップによって与えられる。たとえば、第1の加速度と第2の加速度との間の差が1m/sよりも大きい場合、アンダーステア勾配補正値は1.7×10-3rad.s/mのオーダーである。アンダーステア勾配の最終値∇SV_δt_finは、したがって、アンダーステア勾配の中間値∇SV_δt_intと、それに対して加算される上記の補正値とを合わせたものに、等しくなる。
【0090】
コンピュータ12は、次いで、(補正値によって補正されたかまたは補正されていない)アンダーステア勾配の最終値∇SV_δt_finを使用して、(上記で導入された式を使用して)回転角設定点δreq、したがって自動車両1の経路制御設定点を決定する(ステップE38)。
【0091】
上記で紹介したステップE10について説明した様式と同様の様式で、予想器要素24は、より詳細には、必要とされる回転角δreqの成分FFDを決定するために、ステップE36aまたはE36bにおいて得られたアンダーステア勾配の最終値∇SV_δt_finの値を使用する。これと並行して、観測器要素26は、必要とされる回転角δreqの他の成分δFBKを推定する。回転角δreq設定点は、したがって、これらの2つの成分を合計することによって得られる。この設定点は、次いで、自動車両1の操縦システムに伝達される。
【0092】
サンプリング増分は、次いで、次のサンプリング増分のために本方法のステップを実行するために増分される(上記のように、本方法は、車両1が車線中で移動する際に一定の間隔で実行される)。本方法は、したがって、この後にステップE6に戻る。
【0093】
ステップE20において、車線中で走行している間に、自動車両1が、少なくとも所定の持続時間τappに等しい持続時間中に1つの(または複数の)ターン中を走行したことを、コンピュータ12が決定した場合、本方法はE40に続く。
【0094】
このステップE40の間、コンピュータ12は、データベースの最後の更新以来、1つまたは複数のターン中での走行の総持続時間τtotに達しているかどうかを決定する。
ここで、この総持続時間τtotは50秒よりも大きい。
【0095】
総持続時間τtotは、たとえば、学習期間に対応する所定の持続時間τappに比例する。所定の持続時間τappが50秒である場合、総持続時間τtotは、たとえば100秒である。別の例では、所定の持続時間τappが30秒である場合、総持続時間τtotは70秒である。
【0096】
データベースの最後の更新以来、ターン中での走行の総持続時間τtotに達していない場合、本方法は、それぞれ、上記で説明したステップE22およびE24と同様のステップE42およびE44に続く。ステップE44に続いて、コンピュータ12は、したがって、第1の記憶された値Φ.Yおよび第2の記憶された値Φ.Φをメモリ14のデータベースに記憶し、これらの値は、現在のサンプリング増分δtについて取得された測定値から得られる。
【0097】
上記で説明したE26の場合と同様に、コンピュータ12は、ステップE46において、自動車両1が、ステップE6において検出されたターンを出たかどうかを決定する。
【0098】
これが当てはまらない場合、すなわち、自動車両1が依然として、ステップE6において検出されたターンをネゴシエートしている場合、本方法はステップE20に戻る。
【0099】
一方、自動車両1が、それがネゴシエートしていたターンから出た場合、本方法はステップE48に続く。これは、したがって、自動車両1が現在直線中で走行していることを意味する。
【0100】
このステップE48の間、コンピュータ12は、上記で説明したステップE28と同様の様式で成分δFFDを決定するために使用されるアンダーステア勾配値∇SV_δt_actの値を更新する。
【0101】
図3が示すように、アンダーステア勾配値のこの値が更新されると、本方法は、それぞれ、ステップE32、E34、E36aおよびE36bについて上記で説明した様式と同様の様式で、ステップE48において得られたアンダーステア勾配値∇SV_δt_actの更新された値から、アンダーステア勾配の最終値の決定を可能にする、ステップE50、E52、E54aおよびE54bに続く。
【0102】
次いで、ステップE56において、コンピュータ12は、(上記で説明したステップE38と同様の様式で)(補正値によって補正されたかまたは補正されていない)アンダーステア勾配のこの最終値∇SV_δt_finを使用して、(上記で導入された式を使用して)回転角設定点δreq、したがって自動車両1の経路制御設定点を決定する。
【0103】
サンプリング増分は、次いで、次のサンプリング増分のために本方法のステップを実行するために増分される(上記のように、本方法は、車両1が車線中で移動しているときに、一定の間隔で実行される)。本方法は、したがって、この後にステップE6に戻る。
【0104】
ステップE40において、データベースの最後の更新以来において、ターン中での走行の総持続時間τtotに達していた場合、本方法はステップE60に続き、ステップE60の間に、データベースが更新される。
【0105】
ステップE60の開始において、データベースは、前のサンプリング増分について決定された第1の記憶された値Φ.Yおよび第2の記憶された値Φ.Φを記憶する。
【0106】
ステップE60の間、コンピュータ12は、したがって、第1の記憶された値Φ.Yおよび第2の記憶された値Φ.Φの各々を更新する。
【0107】
実際には、コンピュータ12は、一方では、第1の記憶された値Φ.Y(それぞれ第2の記憶された値Φ.Φ)に比例する第1の中間値(それぞれ第2の中間値)を決定する。適用される比例関係の係数は、たとえば、所定の持続時間τappと総持続時間τtotとの比の関数である。
【0108】
たとえば、所定の持続時間τappが50秒に等しく、総持続時間τtotが100秒に等しい状況では、適用される比例関係の係数は1/2である。第1の中間値(それぞれ第2の中間値)は、したがって、第1の記憶された値Φ.Yの1/2(それぞれ第2の記憶された値Φ.Φの1/2)に等しい。
【0109】
ステップE60において、第1の記憶された値Φ.Yおよび第2の記憶された値Φ.Φは、したがって、各々が第1の中間値および第2の中間値によって(それらを上書きすることによって)それぞれ更新される。ラベル「第1の記憶された値Φ.Y」および「第2の記憶された値Φ.Φ」は、したがって、ステップE60の後に保持される。
【0110】
図3が示すように、本方法は、次いで、ステップE40に戻る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】