(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】パワー半導体デバイスおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240711BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240711BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502186
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022069636
(87)【国際公開番号】W WO2023285549
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,ガウラブ
(72)【発明者】
【氏名】デ-ミキエリス,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ビターレ,ボルフガング・アマデウス
(57)【要約】
少なくとも1つの実施形態では、パワー半導体デバイス(1)は、
-第1の導電型のソース領域(21)および第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域(22)を有する半導体本体(2)であって、ウェル領域(22)がソース領域(21)から直接始まるチャネル領域(220)を含む、半導体本体(2)と、
-半導体本体(2)とゲート電極(31)との間に直接あるゲート絶縁体(4)とを備え、
ゲート電極(4)は、閾値電圧(Vth)がソース領域(21)から離れた第1のセクション(61)において最も高くなるように、チャネル領域(220)に沿って不均一な仕事関数プロファイル(6)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-第1の導電型のソース領域(21)および前記第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域(22)を有する半導体本体(2)であって、前記ウェル領域(22)が前記ソース領域(21)から直接始まるチャネル領域(220)を含み、前記第1の導電型がn導電性であり、前記第2の導電型がp導電性である、半導体本体(2)と、
-前記半導体本体(2)とゲート電極(31)との間に直接あるゲート絶縁体(4)と
を備える、パワー半導体デバイス(1)であって、
-前記ゲート電極(31)が、前記半導体本体内に形成されたトレンチ内に部分的にまたは完全に配置され、
-前記半導体本体(2)が、前記第1の導電型であるドリフト領域(23)をさらに備え、前記ドリフト領域(23)が、前記ゲート絶縁体(4)と直接接触し、前記チャネル領域(220)に直接あり、前記トレンチが前記ドリフト領域(23)内で終端し、
-前記ゲート電極(31)の閾値電圧(V
th)および仕事関数Φ
mが、前記ソース領域(21)から離れた前記チャネル領域(220)の第1のセクション(61)において最大となるように、前記ゲート電極(31)が前記チャネル領域(220)に沿って不均一な仕事関数プロファイル(6)を有する、
パワー半導体デバイス(1)。
【請求項2】
前記半導体本体(2)が、前記ソース領域(21)から離れた前記ウェル領域(22)の側に直接ある前記第1の導電型の強化層(27)をさらに備え、
以下の
-前記チャネル領域(220)に沿って、前記ゲート絶縁体(4)が前記第1のセクション(61)において最も厚くなるように、前記ゲート絶縁体(4)が前記チャネル領域(220)に沿って不均一な厚さプロファイルを有すること、
-前記チャネル領域(220)内のドーピング濃度N
Aが前記第1のセクション(61)において最大になるように、前記チャネル領域(220)が前記ゲート絶縁体(4)に沿って不均一なチャネルドーピングプロファイルを有すること、または
-前記ゲート絶縁体(4)の比誘電率が前記ソース領域(21)から離れた前記チャネル領域(220)の前記第1のセクション(61)において最も低くなるように、前記ゲート絶縁体(4)が前記チャネル領域(220)に沿って不均一なゲート誘電率プロファイルを有すること
のうちの少なくとも1つが真である、
先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項3】
前記チャネル領域(220)に沿った前記ゲート電極(31)の仕事関数差が、少なくとも1.0eVである、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項4】
前記ゲート電極(31)が、前記第1のセクション(61)内の第1の材料(81)と、前記ソース領域(21)に隣接する第2のセクション(64)内の第2の材料(82)とを含み、
前記チャネル領域(220)がp型ドープされている場合、前記第1の材料(81)が前記第2の材料(82)よりも高い仕事関数Φ
mを有し、または前記チャネル領域(22)がn型ドープされた領域である場合、前記第1の材料(81)が前記第2の材料(82)よりも低い仕事関数Φ
mを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項5】
前記第1の材料(81)がpドープポリシリコンであり、前記第2の材料(82)がnドープポリシリコンである、
先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項6】
前記チャネル領域(220)の長さ方向(x)に垂直に、前記ゲート電極(31)が、前記第1の材料(81)または前記第2の材料(82)のいずれかを含む、
請求項4または5のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項7】
前記チャネル領域(220)の長さ方向(x)に垂直に、少なくとも前記第1のセクション(61)内で、前記ゲート電極(31)が前記第1の材料(81)および前記第2の材料(82)を含む、
請求項4および5のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項8】
前記第1のセクション(61)の長さが、前記ゲート絶縁体(4)に沿った前記チャネル領域(220)の全長(L)の少なくとも10%および多くとも40%である、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項9】
前記チャネル領域(220)に沿って、前記ゲート絶縁体(4)の最小厚さが、前記ゲート絶縁体(4)の最大厚さの多くとも70%である、
先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項10】
前記ゲート絶縁体(4)に沿って、前記チャネル領域(220)の最小ドーピング濃度が、前記チャネル領域(220)の最大ドーピング濃度の多くとも50%である、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項11】
前記不均一な厚さプロファイルおよび前記不均一なチャネルドーピングプロファイルのうちの少なくとも1つが、連続的に階段なしで延びる、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項12】
前記不均一な仕事関数プロファイル(6)、ならびに前記不均一な厚さプロファイルおよび前記不均一なチャネルドーピングプロファイルおよび前記不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの階段を有し、
前記不均一な仕事関数プロファイル(6)内の前記階段、ならびに前記不均一な厚さプロファイルおよび前記不均一なチャネルドーピングプロファイルおよび前記不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの少なくとも1つの中の前記階段が、前記チャネル領域(220)に沿って同じ位置に配置される、
請求項2~10のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項13】
前記不均一な仕事関数プロファイル(6)、ならびに前記不均一な厚さプロファイルおよび前記不均一なチャネルドーピングプロファイルおよび前記不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの階段を有し、
前記不均一な仕事関数プロファイル(6)内の前記階段、ならびに前記不均一な厚さプロファイルおよび前記不均一なチャネルドーピングプロファイルおよび前記不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの少なくとも1つの中の前記階段が、前記チャネル領域(220)に沿って異なる位置に配置される、
請求項2~10のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項14】
前記不均一な仕事関数プロファイル(6)、前記不均一な厚さプロファイル、前記不均一なチャネルドーピングプロファイル、または前記不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの少なくとも2つが直線状である、
請求項11に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項15】
前記不均一な仕事関数プロファイル(6)、および前記不均一な厚さプロファイル、前記不均一なチャネルドーピングプロファイル、または前記不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの少なくとも1つが異なる形状で延びる、
請求項1~14のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項16】
-前記ソース領域(21)が、前記ゲート絶縁体(4)および前記チャネル領域(220)と直接接触し、
-前記パワー半導体デバイス(1)が、金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ、MISFET、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ、MOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、IGBT、または逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、RC-IGBTである、
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項17】
先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)を製造するための方法であって、
-半導体基板を設けることと、
-前記半導体基板上に少なくとも1つの半導体層をエピタキシャル成長させることと
を含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の前記パワー半導体デバイス(1)が製造され、
前記半導体基板が、前記ドリフト領域(23)の少なくとも一部を含み、
前記少なくとも1つのエピタキシャル成長半導体層が、前記ウェル領域(22)および前記ソース領域(21)を含む、
先行する請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パワー半導体デバイスが提供される。さらに、そのようなパワー半導体デバイスのための製造方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
文献米国特許第10468407B2号は、平坦でないゲート構造を有するフィン電界効果トランジスタ(FinFET)デバイス構造に言及している。
【0003】
文献米国特許第7141858B2号は、金属相互拡散に基づく二重仕事関数CMOSゲート技術に言及している。
【0004】
文献米国特許第6653698B2号は、二重仕事関数金属ゲートCMOSデバイスの集積化を説明している。
【0005】
文献米国特許出願公開第2016/0064550A1号は、パワーデバイスに言及している。
【0006】
文献米国特許出願公開第2012/025874A1号、米国特許出願公開第2015/0214362A1号、欧州特許第1248300A2号、および米国特許出願公開第2016/0104794A1号は、電子デバイスに言及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の実施形態は、改善された電気的挙動を示すパワー半導体デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、とりわけ、独立請求項に定義されたパワー半導体デバイスおよびそのようなパワー半導体デバイスのための製造方法によって実現される。例示的なさらなる発展形態は、従属請求項の主題を構成する。
【0009】
少なくとも1つの実施形態では、パワー半導体デバイスは、
-第1の導電型のソース領域および第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域を有する半導体本体であって、ウェル領域がソース領域から直接始まるチャネル領域を含む、半導体本体と、
-半導体本体とゲート電極との間に直接あるゲート絶縁体と
を備え、
ゲート電極は、ゲート電極の閾値電圧がソース領域から離れたチャネル領域の第1のセクションにおいて最も高くなるように、チャネル領域に沿って不均一な仕事関数プロファイルを有する。
【0010】
したがって、ソース領域から離れた第1のセクション内のゲート電極の仕事関数Φmは、p型ドープチャネル領域を有するp型ドープウェル領域を有するデバイスの場合最大であり、n型ドープチャネル領域を有するn型ドープウェル領域を有するデバイスの場合最小である。
【0011】
以下では、別段の指示がない限り、仕事関数Φmは、pドープウェル領域、したがってpドープチャネル領域を有するデバイスについて記載されるが、逆に、nドープウェル領域を有するデバイスの場合にも当てはまる。
【0012】
ゲート電極は、ゲート絶縁体によって半導体本体から絶縁されている。
例えば、少なくとも1つのソース領域は、割り当てられたゲート絶縁体と直接接触し、かつ/または割り当てられたチャネル領域に直接存在する。第1の導電型は、例えばn導電型であり、したがって、少なくとも1つのソース領域はnドープされる。
【0013】
少なくとも1つのウェル領域、その結果少なくとも1つのチャネル領域は、第1の導電型とは異なる第2の導電型である。第2の導電型は、例えばp導電型であり、したがって、少なくとも1つのチャネル領域はpドープされる。少なくとも1つのウェル領域および/または少なくとも1つのチャネル領域の最大ドーピング濃度は、少なくとも1つのソース領域の最大ドーピング濃度よりも低いことが可能である。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体は、第1の導電型であり得るドリフト領域もさらに備える。例えば、ドリフト領域は、ゲート絶縁体と直接接触し、かつ/またはチャネル領域に直接存在する。ドリフト領域は、例えば、半導体本体の上面に垂直な方向で、半導体本体のチャネル領域とドレイン領域またはコレクタ領域との間に位置する場合がある。例えば、オプションのトレンチは、ドリフト領域内で終端することができる。
【0015】
オプションとして、半導体本体は強化層を備えることができる。例えば、強化層は、ウェル領域とドリフト領域との間に直接位置し、ドリフト領域よりも高い最大ドーピング濃度を有する場合がある。強化層も、第1の導電型であり得る。強化層は、正孔阻止層として機能することができ、すなわち、Eoffを過度に増加させることなく、ソース側近くのプラズマ濃度を高め、改善されたVce-satをもたらす。さらに、強化層はまた、チャネル領域の長さを制御するのに役立ち、製造プロセスに起因するばらつきを最小化する。
【0016】
例えば、強化層の最大ドーピング濃度は、少なくとも1015cm-3であり、かつ/または多くとも1018cm-3である。代替または追加として、強化層の厚さは、少なくとも1μmおよび/または多くとも5μmである。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ、MISFET、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ、MOSFET、または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、IGBTもしくは逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、RC-IGBTである。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、ウェル領域は、半導体本体の上面からドリフト領域まで延在する。チャネル領域はウェル領域の一部であり、同じドーピング濃度を有することができる。動作中、電子は、ゲート絶縁体に沿ってソース領域からドリフト領域までチャネル領域内を流れる。チャネル領域は、ゲート絶縁体とウェル領域との間の界面に垂直な方向に、例えばナノメートルの範囲で、例示的に1nm~50nmの厚さを有する。
【0019】
例えば、半導体本体は、シリコン、略してSi製である。しかしながら、半導体本体は、代替として、SiC、Ga2O3、またはGaNのようなワイドバンドギャップ半導体材料製であり得る。
【0020】
ゲート絶縁体は、酸化物であり得る任意の絶縁材料から作られる。例えば、ゲート絶縁体は、以下の材料:SiO2、Si3N4、Al2O3、Y2O3、ZrO2、HfO2、La2O3、Ta2O5、TiO2のうちの少なくとも1つから作られる。したがって、ゲート絶縁体はゲート酸化物と呼ばれる場合もある。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスはパワーデバイスである。例えば、パワー半導体デバイスは、少なくとも0.2kVまたは少なくとも0.6kVまたは少なくとも1.2kVの最大電圧向けに構成される。
【0022】
パワー半導体デバイスは、例えば、ハイブリッド自動車またはプラグイン電気自動車において、バッテリまたは燃料電池からの直流電流を電動機用の交流電流に変換する車両内のパワーモジュール向けである。その上、パワー半導体デバイスは、例えば自動車のような車両内のヒューズであり得る。
【0023】
簡略化のために、以下では、ただ1つのチャネル領域および割り当てられた構成要素が言及される。複数のチャネル領域および割り当てられた構成要素が存在する場合、以下に記載される特徴は、ただ1つ、複数、またはすべてのチャネル領域および割り当てられた構成要素に当てはまる場合がある。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、チャネル領域に沿ったゲート電極の仕事関数差は、少なくとも0.7eVであるか、または少なくとも1.0eVであるか、または少なくとも1.1eVである。これは、例えば、ゲート電極がポリシリコンに基づくときに当てはまる。低い仕事関数のためのLi、Zn、Hfのような金属、または高い仕事関数のためのPt、Pd、もしくはAuのような金属も考慮される場合、仕事関数差は、少なくとも1.3eVまたは少なくとも1.4eVであり得る。例えば、仕事関数差は、多くとも2.0eVまたは多くとも1.5eVである。ここで、および以下では、「チャネル領域に沿って」という用語は、パワー半導体デバイスの意図された使用におけるチャネル領域内の電流の方向を指す場合がある。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート電極は、第1のセクション内の第1の材料と、ソース領域に隣接する第2のセクション内の第2の材料とを含む。第1の材料は、pドープウェル領域を有するデバイスの場合は第2の材料よりも高い仕事関数Φmを有し、nドープウェル領域を有するデバイスの場合はその逆である。
【0026】
ゲート電極は、第1のセクションおよび第2のセクションから構成されることが可能である。そうでない場合、チャネル領域に沿って見ると、第1のセクションと第3のセクションとの間に位置する、中間セクションのような少なくとも1つの追加セクションが存在する可能性がある。少なくとも1つの追加セクションが存在する場合、第1の材料および第2の材料の仕事関数とは異なる仕事関数Φmを有する少なくとも1つの追加の材料が存在する可能性がある。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の材料はpドープポリシリコンであり、第2の材料はnドープポリシリコンである。これは、例えば、n型のチャネル領域に当てはまる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1のセクションの長さは、ゲート絶縁体に沿ったチャネル領域の全長の少なくとも5%であるか、または少なくとも10%であるか、または少なくとも15%である。代替または追加として、前記長さは、前記全長の多くとも40%であるか、または多くとも30%であるか、または多くとも25%である。存在する場合、少なくとも1つの追加のセクションに同じことが当てはまる場合がある。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体は、チャネル領域に沿って不均一な厚さプロファイルを有する。例えば、チャネル領域に沿って、ゲート絶縁体は第1のセクションで最も厚く、その結果、第2のセクションで最も薄くなり得る。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、チャネル領域は、ゲート絶縁体に沿って不均一なチャネルドーピングプロファイルを有する。例えば、チャネル領域内のドーピング濃度NAは、第1のセクションで最も大きく、その結果、第2のセクションで最も小さくなり得る。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、不均一な厚さプロファイルならびに不均一なチャネルドーピングプロファイルが存在する。したがって、ゲート電極の仕事関数、ならびにゲート絶縁体の厚さおよびチャネル領域内のドーピング濃度NAは、チャネル領域に沿って変化する場合がある。例えば、チャネル領域内のドーピング濃度NAは、少なくとも0.5μmまたは少なくとも1.5μmの半導体本体の上面からの深さにおいて最大である。前記最大ドーピング濃度NAはまた、ゲート絶縁体に沿って見ると、ソース領域から少なくとも0.5μmまたは少なくとも1.5μmの距離にあり得る。前記最大値は、ウェル領域内に位置する場合がある。したがって、前記最大値は、イオン注入ではなくエピタキシャル成長によって実現される。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体の厚さは、チャネル領域に沿って著しく変化する。これは、例えば、ゲート絶縁体の最小厚さが、ゲート絶縁体の最大厚さの多くとも70%、または多くとも50%であることを意味する。この点において、チャネル領域に沿ったゲート絶縁体のみが関係があり得る。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体に沿って、チャネル領域の最小ドーピング濃度は、チャネル領域の最大ドーピング濃度の多くとも50%であるか、または多くとも20%であるか、または多くとも10%である。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、不均一な厚さプロファイル、不均一なチャネルドーピングプロファイル、および不均一な仕事関数プロファイルのうちの少なくとも1つは、連続的に階段なしで延びる。したがって、少なくとも1つのそれぞれのプロファイルは、微分可能関数によって表されてもよい。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、不均一な厚さプロファイル、不均一なチャネルドーピングプロファイル、および不均一な仕事関数プロファイルのうちの少なくとも1つは、階段状に延びる。したがって、少なくとも1つのそれぞれのプロファイルは、1つまたは複数の階段を含み、微分可能関数によって表されなくてもよい。
【0036】
階段状の不均一な厚さプロファイル、不均一なチャネルドーピングプロファイル、および/または不均一な仕事関数プロファイルは、非階段状の不均一な厚さプロファイル、不均一なチャネルドーピングプロファイル、および/または不均一な仕事関数プロファイルと組み合わされることが可能である。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、不均一な仕事関数プロファイル、ならびに不均一な厚さプロファイルおよび不均一なチャネルドーピングプロファイルのうちの少なくとも1つは、不均一な仕事関数プロファイルと同じように延びる。例えば、不均一な仕事関数プロファイル内の少なくとも1つの階段、ならびに不均一な厚さプロファイルおよび不均一なチャネルドーピングプロファイルのうちの少なくとも1つの中の少なくとも1つの階段は、チャネル領域に沿った同じ位置にある。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート電極は、半導体本体内に形成された少なくとも1つのトレンチ内に部分的または完全に配置される。少なくとも1つのトレンチ、したがって割り当てられたゲート電極は、例えば、半導体本体の上面から離れる方向に、ウェル領域を通ってドリフト領域内に延在する。その結果、ゲート絶縁体も、割り当てられたトレンチ内に部分的または完全に位置する。したがって、パワー半導体デバイスは、トレンチベースのデバイスであり得る。
【0039】
そうでない場合、ゲート電極およびゲート絶縁体は、半導体本体の上面に塗布される。したがって、上面は平面であり得る。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体は、ゲート絶縁体の比誘電率がソース領域から離れたチャネル領域の第1の部分において最も低くなるように、チャネル領域に沿って不均一なゲート誘電率プロファイルを有する。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、不均一な厚さプロファイル、ならびに不均一なチャネルドーピングプロファイルおよび/または不均一なゲート電極仕事関数プロファイルおよび/または不均一なゲート誘電率プロファイルが存在する。すなわち、不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルは、不均一なチャネルドーピングプロファイル、不均一なゲート電極仕事関数プロファイル、もしくは不均一なゲート誘電率プロファイルと組み合わせることができるか、または不均一なチャネルドーピングプロファイル、不均一なゲート電極仕事関数プロファイル、および不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの2つと組み合わせることができるか、または3つの他の不均一なプロファイルすべてと組み合わせることができる。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、例えば、コレクタ-エミッタ飽和電圧Vce-sat、したがってオン状態損失が影響を受けないままであり得る間に、飽和電流および短絡電流の両方が減少するように構成される。これは、不均一な厚さプロファイルおよび不均一なチャネルドーピングプロファイルのうちの少なくとも1つによって任意選択的に支持され、ゲート絶縁体に沿って均一なゲート電極仕事関数プロファイルを有する同様にセットアップされた基準半導体デバイスと比較される、不均一な仕事関数プロファイルの故に当てはまる場合、真である。
【0043】
パワー半導体デバイスを製造するための方法がさらに提供される。方法によって、上述された実施形態の少なくとも1つに関連して示されたように、パワー半導体デバイスが製造される。したがって、パワー半導体デバイスの特徴も方法について開示され、逆もまた同様である。
【0044】
少なくとも1つの実施形態では、パワー半導体デバイスを製造するための方法は、以下のステップを、特に記載された順序で含む。
-半導体基板を設けること、
-半導体基板上に少なくとも1つの半導体層をエピタキシャル成長させること。
【0045】
例えば、半導体基板は、ドリフト領域の少なくとも一部を備える。
例えば、少なくとも1つのエピタキシャル成長半導体層は、ウェル領域およびソース領域を備える。
【0046】
パワー半導体デバイスおよび製造方法は、図面を参照して例示的な実施形態によって、以下でより詳細に説明される。個々の図の中の同じ要素は、同じ参照番号で示されている。しかしながら、要素間の関係は縮尺通りには示されず、むしろ個々の要素は、理解を助けるために誇張して大きく示されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図2】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図3】
図2のパワー半導体デバイスの上面図である。
【
図4】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図5】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図6】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図7】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図8】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図9】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図10】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図11】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図12】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの不均一なドーピングプロファイルおよび不均一な仕事関数プロファイルの概略図である。
【
図13】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの不均一なドーピングプロファイルおよび不均一な仕事関数プロファイルの概略図である。
【
図14】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図15】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図16】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、ウェル領域22に含まれるチャネル領域220内のゲート電極仕事関数プロファイルを除き、本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1の例示的な実施形態に対応する基準半導体デバイス9を示す。パワー半導体デバイス1と同様に、基準半導体デバイス9は、例えばSi製である半導体本体2を備える。
【0049】
半導体本体2はまた、半導体本体2の上面20にソース領域21を備える。トレンチは、ウェル領域22およびソース領域21の両方を貫通する。ソース領域21は、n導電性のような第1の導電型であり、ウェル領域22、その結果、ウェル領域22によって含まれるチャネル領域220は、p導電性のような第2の異なる導電型である。トレンチ内には、電気絶縁ゲート絶縁体4によって半導体本体2から分離されたゲート電極31が存在する。トレンチ、したがってゲート電極31は、半導体本体2のドリフト領域23内で終端する。ドリフト領域23も第1の導電型である。
【0050】
基準半導体デバイス9内で、ゲート電極31は、ウェル領域22に面するゲート電極31の領域において、チャネル領域220全体にわたって一定の仕事関数Φmを有するただ1つの材料からなる。すなわち、ソース領域21から離れてドリフト領域23に向かうチャネル領域220の長さ方向xに沿って、均一な仕事関数プロファイルが存在する。
【0051】
例えば、ゲート絶縁体4に隣接して、ソース領域21とチャネル領域220が直接接する場所、x=0である。例えば、ゲート絶縁体4に隣接して、チャネル領域220とドリフト領域23が直接接する場所、x=Lである。すなわち、Lはチャネル領域220のチャネル長に相当する。チャネル領域220の形状は非常に概略的に描かれているにすぎないことに留意されたい。
【0052】
例えば、xは、半導体層本体2の上面20に対して垂直に延びる。したがって、長さLは、ゲート絶縁体4において直接ソース領域21とドリフト領域23との間の距離に相当する場合がある。したがって、長さLは、第1の導電型の層、すなわちソース領域21とドリフト領域23との間の第2の導電型の層の長さとして定義される場合があり、ドリフト領域23は、図示されていない高いドーピング濃度の強化層および低いドーピング濃度の層を含む場合がある。xは、基準半導体デバイス9の意図された使用における現在の方向として見なされる場合がある。
【0053】
図2および
図3に示されたパワー半導体デバイス1の例示的な実施形態によれば、ゲート電極31は、第1の材料81と第2の材料82とを含む。長さ方向xに沿って、第1の材料81は第2の材料82に直接続く。その結果、ゲート電極31は、チャネル領域220に沿って不均一な仕事関数プロファイルを有する。
【0054】
図2および
図3に記載された半導体パワーデバイス1はnチャネルデバイス、すなわちpドープウェル領域を有するデバイスなので、第1の材料81の仕事関数は第2の材料82の仕事関数よりも高く、それに対応して、nドープウェル領域を有するpチャネルデバイスの場合、第1の材料81の仕事関数は第2の材料82の仕事関数よりも低いはずである。したがって、ソース領域21から離れた第1のセクション61では、不均一な仕事関数プロファイルの最小値が存在する。チャネル領域220の残りは、第2のセクション64と呼ばれる。それぞれ、第1のセクション61内では、第2のセクション64内でも、仕事関数Φ
mは一定である。したがって、チャネル領域220に沿って、ゲート電極31は、それぞれ、第2の材料82および第1の材料81を有する、第2のセクション64および第1のセクション61から構成される場合がある。長さ方向xに垂直な方向において、ゲート電極31は、ただ1つの材料、すなわち、第1の材料81または第2の材料82のいずれかを含むことが可能である。
【0055】
例えば、第1の材料81は、約5.22eVの仕事関数を有するp+ドープポリシリコンである。例えば、第2の材料82は、約4.1eVの仕事関数を有するn+ドープポリシリコンである。シリコンをベースとしているが、これらの第1の材料81および第2の材料82は、金属と呼ばれる場合がある。
【0056】
オプションとして、チャネル領域220に電気的に接触するために、半導体本体2の上面20に少なくとも1つのプラグ25が存在することができる。プラグ25は、プラグ25がウェル領域22よりも深くまたは浅く半導体本体2内に延在することができるように、ウェル領域22とは異なる厚さを有する場合がある。さらに、ソース領域21とプラグ25の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
ソース領域21と少なくとも1つのプラグ25の両方は、例えば、上面20に位置する少なくとも1つのソース電極32によって電気的に接続される場合がある。例示的に、プラグ25は、ウェル領域22またはチャネル領域220よりも高い最大ドーピング濃度を有する。プラグの深さは、ウェル領域22およびチャネル領域220の深さよりも低いか、深いか、または同じであり得る。
【0058】
例えば、パワー半導体デバイス1は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、略してIGBTである。したがって、ウェル領域22から離れたドリフト領域23の側には、第2の導電型のコレクタ領域26も存在する。コレクタ領域26には、コレクタ電極34が存在する。さらに、ドリフト領域23とコレクタ領域26との間に第1の導電型のバッファ領域が存在する可能性がある。バッファ領域のドーピング濃度は、ドリフト領域23のドーピング濃度よりも高い可能性がある。
【0059】
例えば、半導体本体2は、少なくとも部分的にエピタキシャル成長によって製造される。すなわち、半導体本体2のそれぞれの層のドーピング濃度は、成長中に生成される場合があり、成長後に、例えばイオン注入によって生成されない場合がある。これは、例えば、少なくとも強化層27およびウェル領域22に当てはまり、それらは、このようにエピタキシャル成長によってドープすることができる。オプションとして、ドリフト領域23は、部分的または完全に成長基板の一部であり得る。すべての他の例に同じことが当てはまる。
【0060】
上面20の上面図で見ると、ゲート電極31およびゲート絶縁体4を収容するトレンチは引き伸ばされた形状であり得る。ソース領域21、少なくとも1つのプラグ25、ならびにチャネル領域220は、トレンチの両側に対称的に配置される場合がある、
図3参照。
【0061】
例えば、ソース領域21、コレクタ領域26またはドレイン領域24の代わりに、および少なくとも1つのプラグ25の最大ドーピング濃度は、少なくとも1×1018cm-3もしくは少なくとも5×1018cm-3もしくは少なくとも1×1019cm-3および/または多くとも5×1020cm-3もしくは多くとも2×1020cm-3もしくは多くとも1×1020cm-3である。さらに、ウェル領域22、したがってチャネル領域220の最大ドーピング濃度は、少なくとも5×1016cm-3もしくは少なくとも1×1017cm-3および/または多くとも5×1019cm-3もしくは多くとも5×1018cm-3であり得る。例えば、強化層27の最大ドーピング濃度は、少なくとも1015cm-3であり、かつ/または多くとも1018cm-3である。
【0062】
パワー半導体デバイス1の電圧クラスに応じて、ドリフト領域23の最大ドーピング濃度は、少なくとも1×1011cm-3もしくは少なくとも1×1012cm-3もしくは少なくとも1×1013cm-3および/または多くとも1×1017cm-3もしくは多くとも5×1016cm-3もしくは多くとも1×1016cm-3であり得る。
【0063】
図2および
図3では、ソース領域21および少なくとも1つのプラグ25は、ゲート電極31の片側のみに沿って配置され、その結果、ゲート絶縁体4の1つの外側42のみに沿ってチャネル領域220が存在する。しかしながら、ソース領域21ならびに少なくとも1つのプラグ25は、例えば
図9と比較して、ゲート電極31の2つの側面に沿って、または上面図で見ると、すべてゲート電極31の周りに配置することもできる。
【0064】
そうでない場合、
図1に関して同じことが
図2および
図3にも当てはまる場合がある。
不均一な仕事関数プロファイルを有するゲート電極31の背後にある概念が、以下である程度詳細に説明される。
【0065】
パワー半導体デバイス1の場合、例示的には低周波数用途の場合、総電気損失を最小化するために、オン状態損失を可能な限り低くすることが望ましい場合がある。さらに、デバイスの信頼性の観点から、低い短絡電流を有することが有利であり得る。したがって、オン状態損失を最小化し、短絡能力を向上させたパワー半導体デバイス1が望まれる場合がある。
【0066】
しかしながら、例えば、チャネル長Lを減少させるかまたはチャネル幅Wを増加させることによってオン状態電圧降下V
ce-satを低下させるいくつかの手段は、出力特性I
c対V
ceを使用して概略的に示されたように、望ましくないより高い飽和電流I
satをもたらすことが多い、
図4参照。高いI
satは高い短絡電流I
scに直接関係し、パワー半導体デバイス1の短絡能力に悪影響を及ぼす。一方、例えばチャネルドーピング濃度を増加させることによってI
satを低下させるために、パワー半導体デバイス1の閾値電圧V
thを上昇させると、
図5に示されたようにV
ce-satが高くなる。したがって、
図4および
図5は、チャネル領域全体に沿って均一な閾値プロファイルを有するIGBTの典型的な出力特性の概略図であり、
図4では、同じV
thおよび異なるチャネル抵抗の場合であり、
図5では、異なる閾値電圧V
thの場合である。
【0067】
a)チャネル長Lを増加させること、
b)アノードインプラントドーズを低減することによってアノード注入効率を低減すること、
c)トレンチに沿ってソースカバレッジを減少させることによってチャネル幅を低減すること、および
d)セルピッチを増加させることによってチャネル幅を低減すること
などの、短絡電流を低減するための他の技法はまた、望ましくないことに、より高いオン状態損失をもたらす。その上、d)などの技法も、パワー半導体デバイス1の絶縁破壊能力に悪影響を及ぼす可能性がある。短絡電流を低減するためにゲートバイアスを低減することはまた、不安定な動的挙動につながり、さらに、主に用途の要件によって規定されるので、望ましくない場合がある。
【0068】
したがって、従来のMISFETデバイスまたはIGBTデバイスでは、オン状態損失を最小化することと短絡電流を低減することとの間にはトレードオフが存在する。改善された短絡能力を必要とする用途の場合、Vce-satに影響を与えることなく短絡電流Iscを減少させることができることが望ましい場合がある。
【0069】
本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1では、オン状態損失と短絡電流との間のトレードオフは、前者に悪影響を及ぼすことなく後者を改善することによって改善される。他の手法とは異なり、記載された設計は、所与のVce-satに対する飽和電流を低下させるために、ゲート絶縁体4に隣接するチャネル領域220に沿った不均一な閾値電圧プロファイルを特徴とする。
【0070】
本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1において提案された不均一なVthは、チャネル領域220に沿ったゲート電極31の不均一な仕事関数プロファイル6を実装することによって実現される。加えて、記載された概念は、パワーMOSFETまたはIGBTまたは逆導通IGBTなどの一般に任意のMOSデバイスに適用可能であり、平面アーキテクチャとトレンチアーキテクチャの両方との互換性さえある。
【0071】
本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1では、オン状態損失に有害な影響を及ぼすことなく、短絡能力が向上した改良されたMISFET、MOSFET、またはIGBTデバイスが導入される。改善された設計はまた、IGBTの設計制約を緩和し、それぞれのデバイスの短絡能力によって通常制限されるオン状態損失を最小化するために、上述された他の方法を独立して探索する可能性を可能にする。
【0072】
以下では、本明細書に記載された半導体デバイス1の着想に対するいくつかの理論的背景が提示される。
【0073】
基準のロングチャネルMOSデバイスの場合、高Vceでのチャネルピンチオフが出力特性における電流飽和の原因となり、それが最終的に短絡電流を決定することが知られている。チャネルピンチオフ電圧Vpinch-offは、閾値電圧Vthによって決定される。例示的には、印加されたバイアスVceがピンチオフ電圧Vpinch-off≒(Vg-Vth)を超えると、チャネルは、x=Lにおいてそのドレイン端付近でピンチオフを開始する、ここで、Vgは印加されたゲート電圧であり、Lはチャネル長である。そのように印加されたVceにおいて、チャネルに垂直な電圧降下はVthより小さく、したがって、チャネルはドレイン端付近でもはや持続することができない。
【0074】
しかしながら、デバイスのより詳細な理解のために、チャネルピンチオフは、どちらかというと局所的な現象であり、具体的にチャネルのドレイン端付近で起こると考えられるべきである。したがって、より正確には、ピンチオフ点、したがって飽和電流を決定するのは、局所閾値電圧Vth(x)である。これは、チャネル端部、すなわちドリフト領域23付近の第1のセクション61において、Vth(L)を局所的に増加させることによってVpinch-offを低減することが可能であることを意味する。
【0075】
さらに、全体的なチャネル抵抗を保持し、それによってVce-satに影響を与えないようにするために、チャネルの残りの部分でVth(x)を減少させることができる。
【0076】
これは、基準半導体デバイス9を指す曲線がチャネル全体に沿って均一な閾値電圧V
th-1プロファイルを含む
図6に概略的に示されている。一方、パワー半導体デバイス1の曲線は、チャネルに沿った不均一なV
thプロファイルから構成され、V
thは、ピンチオフ点を下げるためにV
th-2(L)>V
th-1となるようにチャネル端部付近、すなわち第1のセクション61内で局所的に上昇し、チャネルの残りでは、全体のチャネル抵抗を同じに保つためにV
th-2’<V
th-1となる。このようにして、
図7の概略出力に示されたように、オン状態損失に影響を及ぼすことなく、飽和電流、それによって短絡電流を大幅に低減することができる。したがって、局所的なV
th変動は、MISFETまたはMOSFETまたはIGBTデバイスの短絡能力を改善するための鍵を保持する。
【0077】
チャネルのVthは、以下の式に示されたような様々な他のMOSセル設計パラメータの関数である。
【0078】
【0079】
ここで、Vthは閾値電圧であり、Vfbはフラットバンド電圧であり、Vfb=(Φm-Φs)であり、ここで、ΦmおよびΦsは、それぞれ、ゲート電極仕事関数および半導体仕事関数である。NAはチャネル本体のドーピングであり、εsは半導体の誘電率であり、Coxはゲート絶縁体容量であり、φBは半導体表面電位であり、
【0080】
【0081】
であり、ここで、kはボルツマン定数であり、Tは温度であり、niは半導体の真性キャリア濃度である。
【0082】
したがって、第1のセクション61内の比較的高いVthを有するチャネルにわたって必要とされる不均一なVthプロファイルは、以下のMOS設計パラメータのうちの1つまたは任意の組合せにおいて不均一性を導入することによって実現することができる。
【0083】
1.本明細書で詳述されたチャネルドーピングプロファイル、NA(x)、
2.ゲート酸化膜厚、Tox(x)、
3.ゲート誘電率、εox(y)、および/または
4.Vfb=(Φm-Φs)なので、ゲート金属仕事関数φm(x)。
【0084】
以下では、ゲート電極仕事関数プロファイルの変化に焦点を合わせているが、前記仕事関数の変化は、当然ながら、変化するゲート絶縁体厚さ、変化するゲート誘電率、および/または変化するチャネルドーピング濃度と組み合わせることができる。
【0085】
Φm(x)の2つ以上の組合せが同じ目的を実現できることに留意されたい。その上、より高いΦm(x)領域およびより低いΦm(x)領域の物理的長さ、すなわち、長さ方向xに沿った第1のセクション61の長ささえ目的に合わせて調整され、製造上の課題を克服することができる。
【0086】
したがって、チャネル領域220に沿ったV
thプロファイルの不均一性は、例えば、
図2に概略的に示されたように、異なる仕事関数を有するゲート電極材料を導入することによって実現することができる。仕事関数Φ
mは、上述されたように、フラットバンド電圧V
fb=(Φ
m-Φ
s)を介してV
thに関係する。したがって、Φ
mのいかなる変化も、V
thの対応する変化を直接もたらす。
【0087】
図8によれば、
図2のように、不均一な仕事関数プロファイルにも階段が存在するが、第1の材料81および第2の材料82は、長さ方向xに垂直な平面界面をもたない。代わりに、界面は、球状またはメニスカス様の形状を有する場合がある。したがって、遷移セクション62が形成される。
【0088】
チャネル全長Lと比較して、長さ方向xに沿った遷移セクション62の長さは小さく、例えば、チャネル全長Lの多くとも2%または多くとも5%になる。同じことがすべての他の例示的な実施形態に当てはまる場合がある。
【0089】
したがって、第1のセクション61と第2のセクション64との間の界面で不均一な仕事関数プロファイルに階段が存在する。しかしながら、前記階段は、テータ関数または単位階段関数に厳密に従う必要はないが、遷移セクション62に起因して正弦波形状の可能性がある。
【0090】
そのような遷移セクション62または複数のそのような遷移セクションは、すべての他の例示的な実施形態において、ゲート電極31の異なる材料の間の界面に存在する可能性もある。例えば、そのような少なくとも1つの遷移セクション62は、ゲート電極31の製造プロセスから生じる場合がある。
【0091】
その上、
図8によれば、上面20において、ウェル領域22は、プラグ25と割り当てられたソース領域21との間に延在する場合がある。断面で見ると、プラグ25および割り当てられたソース領域21は、異なる形状および/または深さを有する場合がある。これらの設計の特徴は、すべての他の例示的な実施形態においても個別にまたは組み合わせて存在することができる。
【0092】
そうでない場合、
図2~
図7に関して同じことが
図8にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0093】
図9のパワー半導体デバイス1において、第1のセクション61には、第1の材料81ならびに第2の材料82が存在する。そこでは、第1の材料81はゲート絶縁体4の隣に位置し、第2の材料82はゲート絶縁体4から離れている。したがって、長さ方向xに垂直に、両方の材料81、82が存在する。第2の材料82はゲート電極31の内部に限定されるので、チャネル領域220での仕事関数Φ
mは、例えば、第1の材料81のみによって決定される。したがって、上面20に垂直な断面で見ると、第1の材料81は、第1のセクション61においてU字形であり得る。第2のセクション64において、より低い仕事関数Φ
mを有する第2の材料82のみが存在する場合がある。したがって、長さ方向xに対して垂直に、第1のセクション220では、ゲート電極31は多層形式であると見なされる場合がある。
【0094】
パワー半導体デバイス1のすべての他の例示的な実施形態において可能であるように、半導体本体2に面するゲート絶縁体4の外側は、少なくともチャネル領域220に沿って平面状であり得る。
【0095】
その上、
図9では、ゲート電極31およびゲート絶縁体4が位置するトレンチは、必ずしもドレイン領域23に面する湾曲した底面をもたないことが示されている。したがって、前記底面は平面であり得、上面20と平行であり得る。同じことがすべての他の例示的な実施形態において可能である。
【0096】
そうでない場合、
図2~
図8に関して同じことが
図9にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0097】
図10によれば、ゲート電極31は、長さ方向xに沿って見ると、第2の材料82と第1の材料81との間に位置する第3の材料83を含む。例えば、パワー半導体デバイス1がpドープウェル領域を有するデバイスである場合、第3の材料83の仕事関数Φ
mは、第2の材料82の仕事関数Φ
mを超えるが、第1の材料81の仕事関数Φ
mよりも小さく、パワー半導体デバイス1がnドープウェル領域を有するデバイスである場合、第3の材料83の仕事関数Φ
mは、第2の材料82の仕事関数Φ
mよりも低いが、第1の材料81の仕事関数Φ
mよりも高い。
【0098】
例えば、すべての材料81、82、83は、異なるドーピングを有するポリシリコンに基づく。そうでない場合、例えば、第3の材料は、Ptのような高い仕事関数Φmを有する金属の可能性がある。
【0099】
材料81、82、83の間には、
図8のように、図示されていない遷移セクションが存在する可能性がある。さらに、中間セクション63および/または第1のセクション61において、ゲート電極31も
図9のように多層形式であり得る。
【0100】
そうでない場合、
図2~
図9に関して同じことが
図10にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0101】
特定の要件に応じて、2.5eV~3.0eVの仕事関数差ΔΦ
mに対応するΔV
th=V
th2-V
th1が望ましい場合がある。これは、n
+ドープポリシリコン向けの4.1eVからp
+ドープポリシリコン向けの約5.22eVまでの範囲の容易に利用可能な実際の仕事関数Φ
mを実現することが困難であり得る。したがって、ゲート電極31に利用可能な材料を使用すると、ΔV
th≒1Vを取得することができ、それは、
図1のような単一の仕事関数ゲート電極と比較して、いくらか改善された短絡電流対オン状態のトレードオフをもたらすはずである。その上、必要な目的を実現するために、より高い仕事関数コントラストを取得するためのゲート電極材料として、異なる金属を検討することもできる。
【0102】
さらに良好な結果のために、不均一な仕事関数プロファイルを使用することは、不均一なドーピングプロファイルまたは不均一なゲート酸化膜厚プロファイルなどの不均一なVthプロファイルを実現するための他の提案された技法と組み合わせることができる。例えば、必要なΔVthは、以下の図に示されたように、第1のセクション61および第2のセクション82におけるゲート絶縁体厚さの変化、チャネルドーピング、およびゲート金属仕事関数の以下の組合せで実現することができる。
【0103】
したがって、
図11では、仕事関数プロファイルだけが不均一な設計ではなく、ゲート絶縁体4の厚さプロファイルも不均一な設計であることが示されている。したがって、ゲート絶縁体4は、ソース領域21から離れた第1のセクション61において最も厚い。したがって、ゲート絶縁体4の厚さは、階段状に変化する場合がある。
【0104】
不均一な仕事関数プロファイルも階段状であり得、ゲート電極31の材料81、82は、ゲート絶縁体4の厚さと同じ長さ方向xに沿った位置で変化する可能性がある。例えば、ゲート絶縁体4の厚さは、第1の材料81と第2の材料82との間の界面でのみ変化する場合がある。
【0105】
オプションとして、第2のセクション64内のゲート絶縁体4の厚さは、50nm以上100nm以下であり、かつ/または、第1のセクション61内のゲート絶縁体4の厚さは、100nm以上240nm以下である。
【0106】
例えば、第2の材料82の仕事関数は4.1eVであり、第1の材料82の仕事関数は5.22eVである。ΔVth≒2.5~3Vを実現するために、ゲート絶縁体4は第2のセクション64内で100nmの厚さを、第1のセクション61内で170nmの厚さを有することができる。
【0107】
図11では、ゲート電極31は
図2と同様に構成される。しかしながら、
図11のパワー半導体デバイス1では、ゲート電極31は、代替として、
図8~
図10および
図14のいずれか1つに示されたように設計される場合がある。
【0108】
そうでない場合、
図2~
図10に関して同じことが
図11にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0109】
図12および
図13では、長さ方向xに沿って、不均一な仕事関数プロファイル6および不均一なチャネルドーピングプロファイル7の両方が適用されることが概略的に示されている。したがって、長方向xに沿って、チャネル領域220内のドーピング濃度N
Aは変化する。前述のパワー半導体デバイス1の場合と同様に、ここではチャネル領域220のみに関心があり、その結果、チャネル領域220の外側のドーピング濃度N
Aは、
図12および
図13では説明されない。したがって、不均一な仕事関数プロファイル6および不均一な厚さプロファイルも、チャネル領域220に沿ってのみ、すなわち、x=0~x=Lに対してのみ考慮される。
【0110】
図12によれば、仕事関数プロファイル6およびチャネルドーピングプロファイル7の両方は階段状に設計され、階段はx=x
Sにおいて両方のプロファイル6、7にある。しかしながら、例えば、仕事関数プロファイル6の階段は、テータ関数または単位階段関数に従うことができ、チャネルドーピングプロファイル7には、遷移セクション62が存在する場合がある。それぞれ、第2のセクション64および第1のセクション61内で、ドーピング濃度N
Aは一定であり得る。
【0111】
例えば、チャネルドーピングプロファイル7に存在する最大ドーピング濃度は、少なくとも5×1016cm-3および多くとも3×1018cm-3であり、かつ/またはチャネルドーピングプロファイル7に存在する最小ドーピング濃度は、多くとも2×1017cm-3もしくは多くとも1×1017cm-3である。最大ドーピング濃度は、第1のセクション61に存在する場合があり、最小ドーピング濃度は、第2のセクション64に存在する場合がある。
【0112】
一例として、第2の材料82の仕事関数は4.1eVであり、第1の材料82の仕事関数は5.22eVである。ΔVth≒2.5~3Vを実現するために、第2のセクション64のドーピング濃度NAは1×1017cm-3であり、第1のセクション61のドーピング濃度NAは2.8×1017cm-3である。
【0113】
図13によれば、チャネルドーピングプロファイル7は直線状である。したがって、チャネルドーピングプロファイル7において、第1のセクション61と第2のセクション64との間に明確に画定された界面または分割線は必要でない。オプションとして、仕事関数プロファイル6は、線形仕事関数の増加が近似されるように複数の階段を有する場合がある。
【0114】
図12および
図13のパワー半導体デバイス1では、当然ながら、
図11のように、ゲート絶縁体4の不均一な厚さプロファイルも存在する可能性がある。ゲート絶縁体4の厚さプロファイルの場合も、
図13のチャネルドーピングプロファイル7のように直線状であることが可能である。その上、異なる形状の不均一な厚さプロファイル、不均一な仕事関数プロファイル、および不均一なチャネルドーピングプロファイルは、互いに組み合わせることができる。
【0115】
そうでない場合、
図2~
図11に関して同じことが
図12および
図13にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0116】
図14では、ゲート絶縁体4の不均一な厚さプロファイルならびに不均一な仕事関数プロファイルが存在し、両方のプロファイルが階段状に構成されることが示されている。しかしながら、プロファイル内の階段は、長さ方向xに沿って異なる位置にある。同じことがすべての他の例示的な実施形態においても可能である。図示されていないオプションとして、例えば、
図12または
図13に示されたように構成された、チャネル領域220内の不均一なチャネルドーピングプロファイルが存在する可能性もある。
【0117】
その上、
図14のパワー半導体デバイス1は、IGBTではなく、MISFETまたはMOSFETであることが示されている。その結果、パワー半導体デバイス1は、コレクタ領域26の代わりにドレイン領域24を備える。したがって、ウェル領域22から離れたドリフト領域23の側にも、第1の導電型であるが、例えば、ドリフト領域23よりも高い最大ドーピング濃度を有するドレイン領域24が存在する。ドレイン領域24には、ドレイン電極33が存在する。
【0118】
もちろん、IGBTのパワー半導体デバイス1のすべてのゲート絶縁体の設計をMOSFETおよびMISFETのパワー半導体デバイス1に適用することができ、逆もまた同様である。
【0119】
そうでない場合、
図2~
図13に関して同じことが
図14にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0120】
図15によれば、パワー半導体デバイス1は平面設計であり、例えば、
図2および
図3のパワー半導体デバイス1のようなトレンチ設計ではない。したがって、上面20は平面であり、ゲート絶縁体4およびゲート電極31は上面20に塗布される。その結果、長さ方向xは、ソース領域21からドリフト領域23まで上面20と平行に延び、上面20に垂直な他の例示的な実施形態とは異なる。
【0121】
図15では、ウェル領域22は、横方向に、すなわち上面20と平行にソース領域21から突出し、ゲート絶縁体4の下に延在する。また、ソース領域21は、ゲート絶縁体4の下に延在する場合があるが、それほどではない。
【0122】
不均一な仕事関数プロファイルならびにオプションとして存在する不均一なチャネルドーピングプロファイルおよび/または不均一な厚さプロファイルの上述された異なる設計のすべては、MISFETまたはMOSFETの場合もIGBTの場合も、
図15の平面概念に同様に適用することができる。したがって、
図2~
図13に関して同じことが
図15にも当てはまる場合がある。
【0123】
その上、
図16では、ゲート絶縁体4が構成される、オプションとして存在する少なくとも2つの異なる材料71、72に起因するゲート絶縁体4の不均一なゲート電極仕事関数プロファイル6だけでなく、不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルおよび不均一なゲート誘電率プロファイルも存在することが示されている。すなわち、ゲート絶縁体4の厚さは、チャネル領域220に沿って変化する。
【0124】
例えば、少なくとも2つの異なる材料71、72に起因するチャネル領域220に沿った比誘電率の差は、少なくとも2.0であるか、または少なくとも3.0であるか、または少なくとも3.5である。代替または追加として、前記差は多くとも50であるか、または多くとも25である。それぞれの比誘電率を比較するとき、室温、すなわち300K、および多くとも1kHzの変動電界の周波数でのそれぞれの材料のテキストブック値が使用される場合がある。
【0125】
例えば、第1のセクション61内の第1の材料71の厚さは、第2のセクション64内の第2の材料72の厚さを超えており、逆もまた同様である。例えば、第1の材料71と第2の材料72との間の厚さの差は、チャネル領域220に沿ったゲート絶縁体4の最大厚さの少なくとも20%または少なくとも40%である。不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルおよび均一なゲート誘電率プロファイルのみが存在する場合、ゲート絶縁体4は単一の材料製であり得る。
【0126】
例えば、第2のセクション64内のゲート絶縁体4の厚さは、50nm以上100nm以下であり、かつ/または、第1のセクション61内のゲート絶縁体4の厚さは、100nm以上240nm以下である。しかしながら、
図16に示された以外に、第1のセクション61内のゲート絶縁体4の厚さは、代替的に第2のセクション64内よりも小さい可能性があり、最大厚さが代わりに第2のセクション64内に存在する可能性がある。
【0127】
したがって、第1のセクション61と第2のセクション64との間の界面で不均一なゲート誘電率プロファイルに階段が存在する、
図16の挿入図参照。
【0128】
不均一なゲート誘電率プロファイルおよび/または不均一なゲート電極仕事関数プロファイル72に加えて、またはその代わりに、不均一なチャネルドーピングプロファイル71が存在する可能性がある。すなわち、ウェル領域22内のドーピング濃度NAは、チャネル領域220に沿って変化する。
【0129】
例えば、不均一なチャネルドーピングプロファイル7に存在する最大ドーピング濃度は、少なくとも5×10
16cm
-3および多くとも5×10
19cm
-3であり、かつ/または不均一なチャネルドーピングプロファイル71に存在する最小ドーピング濃度は、多くとも2×10
17cm
-3もしくは多くとも1×10
17cm
-3である。最大ドーピング濃度は、第1のセクション61に存在する場合があり、最小ドーピング濃度は、第2のセクション64に存在する場合がある。それぞれ、第1のセクション61および第2のセクション64の全体にわたって、ドーピング濃度N
Aは、例えば、ドーピング濃度N
Aが階段状に変化するように一定であり得る。しかしながら、ドーピング濃度N
Aにおける階段は、テータ関数または単位階段関数に正確に従う必要はないが、正弦波形状の階段が存在する可能性がある、
図16の挿入図参照。前記階段は、ゲート絶縁体4の材料71、72が変化する場所にあり得る。
【0130】
不均一なゲート絶縁体厚さプロファイル、不均一なゲート絶縁体誘電率プロファイル、および不均一なチャネルドーピングプロファイル7のうちのそのような少なくとも1つも、すべての他の例示的な実施形態に類似的に存在する可能性がある。
【0131】
そうでない場合、
図2~
図15に関して同じことが
図16にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0132】
図に示された構成要素は、特に指示のない限り、例示的に指定された順序で直接重なって続く。図の中で接触していない構成要素は、例示的に互いに離間している。線が互いに平行に引かれている場合、対応する表面は互いに平行に向けられる場合がある。同様に、特に指示のない限り、描かれた構成要素の互いに対する位置は、図面内で正確に再現される。
【0133】
本明細書に記載されたパワー半導体デバイスは、例示的な実施形態に基づく説明によって限定されない。むしろ、この特徴またはこの組合せ自体が特許請求の範囲または例示的な実施形態において明示的に指定されていない場合でも、パワー半導体デバイスは、任意の新しい特徴、および特許請求の範囲における特徴の任意の組合せを含む特徴の任意の組合せも包含する。
【0134】
本特許出願は、欧州特許出願第21186101.8号の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0135】
参照符号のリスト
1 パワー半導体デバイス
2 半導体本体
20 上面
21 ソース領域
22 チャネル領域
23 ドリフト領域
24 ドレイン領域
25 プラグ
26 コレクタ領域
27 強化層
31 ゲート電極
32 ソース電極
33 ドレイン電極
34 コレクタ電極
4 ゲート絶縁体
6 不均一な仕事関数プロファイル
61 第1のセクション
62 遷移セクション
63 中間セクション
64 第2のセクション
7 不均一なチャネルドーピングプロファイル
71 ゲート絶縁体の第1の材料
72 ゲート絶縁体の第2の材料
81 第1の材料
82 第2の材料
83 第3の材料
9 基準半導体デバイス
L ゲート絶縁体に沿ったチャネル領域の長さ
x チャネル領域に沿った長さ方向
【国際調査報告】