(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】BCL阻害剤のリポソーム製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20240711BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240711BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240711BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240711BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K47/28
A61K47/34
A61K47/24
A61K47/20
A61K47/04
A61K47/12
A61K31/496
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K47/26
A61K9/06
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502204
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022037371
(87)【国際公開番号】W WO2023288100
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507250966
【氏名又は名称】セレーター ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ターディ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ワン,レオン
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ,シャム マドゥスダン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】レグロス,フィリペ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076CC27
4C076DD24
4C076DD43
4C076DD55
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4C076DD70
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4C076FF70
4C084AA19
4C084MA24
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4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC50
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA24
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、B細胞リンパ腫(Bcl)タンパク質阻害剤を含むリポソーム、そのようなリポソームを含む組成物、及び過剰増殖性障害を治療するためにそのような製剤を使用する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームを含むリポソーム組成物であって、前記リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの前記内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、前記リポソーム組成物。
【請求項2】
前記第1の脂質がポリマーコンジュゲート脂質である、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項3】
前記第1の脂質が、1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)、1,2-ジパルミトイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される、請求項1または2に記載のリポソーム組成物。
【請求項4】
前記第1の脂質がDSG-PEG2000である、請求項3に記載のリポソーム組成物。
【請求項5】
前記脂質二重層が第2の脂質をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項6】
前記第2の脂質がリン脂質である、請求項5に記載のリポソーム組成物。
【請求項7】
前記第2の脂質が、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)またはジヒドロスフィンゴミエリン(DHSM)である、請求項5または6に記載のリポソーム組成物。
【請求項8】
前記第1の脂質が第1のリン脂質である、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項9】
前記第1の脂質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、請求項8に記載のリポソーム組成物。
【請求項10】
前記第2の脂質が第2のリン脂質である、請求項9に記載のリポソーム組成物。
【請求項11】
前記第2の脂質がジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)である、請求項10に記載のリポソーム組成物。
【請求項12】
前記内部媒体が水性内部媒体である、請求項1~11のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項13】
前記水性内部媒体が酸性水性内部媒体である、請求項12に記載のリポソーム組成物。
【請求項14】
前記内部媒体が追加の溶媒をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項15】
前記追加の溶媒が有機溶媒である、請求項14に記載のリポソーム組成物。
【請求項16】
前記追加の溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項14または15に記載のリポソーム組成物。
【請求項17】
前記第1の装填助剤がイオン性装填助剤である、請求項1~16のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項18】
前記第1の装填助剤が、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項19】
前記第1の装填助剤が硫酸アンモニウム(AS)である、請求項1~18のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項20】
前記第1の装填助剤がスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)である、請求項1~18のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項21】
前記内部媒体が第2の装填助剤をさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項22】
前記第2の装填助剤がイオン性装填助剤である、請求項21に記載のリポソーム組成物。
【請求項23】
前記第2の装填助剤が、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項21または22に記載のリポソーム組成物。
【請求項24】
前記第1の装填助剤がスクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)であり、前記第2の装填助剤がクエン酸ナトリウムである、請求項21~23のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項25】
前記第1のステロールがコレステロールまたはβ-シトステロールである、請求項1~24のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項26】
前記Bcl阻害剤がBcl-2阻害剤である、請求項1~25のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項27】
前記Bcl阻害剤がBcl-X
L阻害剤である、請求項1~25のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項28】
前記Bcl阻害剤がBcl-2/Bcl-X
L二重阻害剤である、請求項1~27のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項29】
前記Bcl阻害剤が、式(I)の化合物:
【化1】
またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中:
Vは、
【化2】
であり;
Wは、Hまたは
【化3】
であり;
Xは、
【化4】
であり;
Yは、-NO
2または-SO
2CF
3であり;
Zは、
【化5】
からなる群から選択される、請求項1~28のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項30】
前記Bcl阻害剤が、
【化6】
ベネトクラクス(ABT-199)、ナビトクラクス(ABT-263)、メシル酸オバトクラクス(GX15-070)、サブトクラクス、TW-37、(R)-(-)-ゴシポール酢酸、HA14-1、BH3模倣体、及びオブリメルセンからなる群から選択される、請求項1~28のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項31】
追加の治療剤をさらに含む、請求項1~30のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項32】
前記追加の治療剤が前記リポソームに封入されている、請求項31に記載のリポソーム組成物。
【請求項33】
前記追加の治療剤が-6~12の間のcLogPを有する、請求項32に記載のリポソーム組成物。
【請求項34】
前記追加の治療剤がプロトン化することができ、そのプロトン化形態が約-6~約12の間のpK
aを有する、請求項32に記載のリポソーム組成物。
【請求項35】
前記追加の治療剤が抗悪性腫瘍剤である、請求項32に記載のリポソーム組成物。
【請求項36】
前記追加の治療剤が、アルキル化剤、抗血管新生剤、代謝拮抗剤、アポトーシス誘導剤、細胞周期阻害剤、細胞周期制御阻害剤、チェックポイント阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、DNA傷害剤、DNA修復阻害剤、ミトコンドリア毒、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、シグナル伝達阻害剤、転写阻害剤、Bcl阻害剤、PARP阻害剤、PI3K阻害剤、HSP90阻害剤、JAK阻害剤、ATR阻害剤、HDAC阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、BTK阻害剤、アルキル化剤、SMO阻害剤、抗チューブリン剤、MEK阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、RAF阻害剤、BRAF阻害剤、またはプロテアソーム阻害剤から選択される、請求項32に記載のリポソーム組成物。
【請求項37】
前記リポソームが約50nm~約250nmの間の平均直径を有する、請求項1~36のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項38】
前記1つ以上のリポソームが分散楳中に懸濁されている、請求項1~37のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項39】
前記分散楳がデキストロース水溶液である、請求項38に記載のリポソーム組成物。
【請求項40】
前記リポソーム組成物が約0.001~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する、請求項1~39のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか1項に記載のリポソーム組成物と、前記1つ以上のリポソームの外部に存在する治療剤とを含む、医薬組成物。
【請求項42】
治療有効量のBcl阻害剤を送達するための方法であって、対象に請求項1~40のいずれか1項に記載のリポソーム組成物または請求項41に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
過剰増殖性障害を治療するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項1~40のいずれか1項に記載のリポソーム組成物または請求項41に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項44】
前記過剰増殖性障害が血液がんである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記血液がんが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、及びリンパ腫からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記血液がんが、急性骨髄性白血病(AML)または慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
治療有効量のBcl阻害剤の投与に関連する血小板減少症の発生率または重症度を低減させるための方法であって、対象に請求項1~40のいずれか1項に記載のリポソーム組成物または請求項41に記載の医薬組成物を投与することを含み;
前記リポソーム組成物中の前記Bcl阻害剤を投与することによって被る前記血小板減少症の発生率または重症度が、非リポソーム形態の前記Bcl阻害剤を投与することによって被る前記血小板減少症の発生率または重症度よりも低く;
前記リポソーム組成物中の前記Bcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときの前記Bcl阻害剤の治療有効量と等しい、
前記方法。
【請求項48】
リポソームであって、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの前記内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、前記リポソーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月16日に出願された米国仮特許出願第63/222,887号の優先権利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で提供されるのは、B細胞リンパ腫(Bcl)タンパク質阻害剤を含むリポソーム、そのようなリポソームを含む組成物、及び過剰増殖性障害を治療するためにそのような製剤を使用する方法である。
【背景技術】
【0003】
アポトーシスは、すべての生物種の組織のホメオスタシスのために不可欠な生物学的過程として認識されている。特に哺乳動物では、初期の胚発生を調節することが示されている。後年では、細胞死は、潜在的に危険な細胞(例えば、がん性欠陥を有する細胞)が除去されるデフォルト機構である。幾つかのアポトーシス経路が明らかにされているが、最も重要なもののひとつにB細胞リンパ腫2(Bcl-2)ファミリーのタンパク質が関与しており、これらはアポトーシスのミトコンドリア(「内在性」とも呼ばれる)経路の鍵となる調節因子である。Danial,N.N.and Korsmeyer,S.J.Cell(2004)116,205-219を参照されたい。プログラム細胞死の中心調節因子であるBcl-2タンパク質ファミリーのメンバーに対するがん標的治療研究が報告されている。例えば、アポトーシス促進タンパク質(Bax、Bad、Bid、Bim、Bik、Puma、Noxaなど)と抗アポトーシスタンパク質(Bcl-2ファミリー:Bcl-2、Bcl-XL、Mcl-1など)との相互作用は、細胞の生存及び死にある役割を果たしていると考えられている。
【0004】
Bcl-2は、血液がんでの優れた標的であり、一方、Bcl-XLは、固形腫瘍での標的であると考えられている。また、観察される血小板減少症は、Bcl-XLの阻害によって引き起こされると推測された(Cell,2007,128,1173-1186)。アポトーシスを阻害するBcl-2ファミリーメンバーは、がんにおいて過剰発現され、腫瘍形成に寄与する。Bcl-2発現は、がん療法に対する耐性及び生存率の減少と強く相関している。Bcl-2ファミリーのタンパク質は、各タンパク質が幾つの相同性ドメインを含有するか、及びその生物学的活性(すなわち、それがアポトーシス促進機能を有するか、それとも抗アポトーシス機能を有するか)に応じて、3つのサブファミリーにさらに分類することができる。第1のサブグループは、4つの相同性ドメインすべて、すなわち、BH1、BH2、BH3、及びBH4を有するタンパク質を含有する。それらの一般的な作用は、抗アポトーシス作用、つまり、細胞死プロセスの開始から細胞を保護することである。例えば、Bcl-2、Bcl-XL、及びMcl-1などのタンパク質は、この第1のサブグループのメンバーである。
【0005】
単一の薬剤としてまたは併用療法(例えば、化学療法及び/または放射線療法と組み合わせて)の一部として、がんの治療のためにBcl-2ファミリー阻害剤化合物(例えば、Bcl-2及びBcl-XLの両方の阻害剤)を送達する療法の開発に対する必要性が依然として存在する。特に、用量制限的な血小板減少症を伴わず(例えば、対象への投与後に血小板数の高さが許容できる程度であること)、腫瘍溶解症候群または他の許容できない副作用を誘発することのない、治療的に有効なBcl-2ファミリー阻害剤組成物の必要性が依然として存在する。
【0006】
リポソームは、水性コアを取り囲む少なくとも1つの脂質二重層を有する閉鎖小胞である。リポソーム内空間及び脂質層(複数可)は、薬物、化粧品、診断試薬、遺伝物質、及び生物活性化合物を含めた多種多様な物質を捕捉することができる。非毒性脂質がリポソームの基礎として働くので、リポソームは一般に低毒性を呈する。低毒性は、薬剤の血漿循環寿命を延ばすリポソームの能力と相まって、リポソームを薬学的に活性な薬剤を送達するのに特に有用なビヒクルにする。多くの場合、リポソームによって送達される薬物は、毒性の低減と共に優れた臨床的有効性をもたらす。
【0007】
親油性及び程度は低いものの両親媒性の官能性化合物の受動的装填(passive loading)は、それらが脂質二重層中とリポソーム内(内部)水性媒体中の両方に分配されるので、親水性官能性化合物よりも幾分効率的である。しかしながら、受動的装填を使用すると、最終的な官能性化合物対脂質比及び封入効率は一般的に低くなる。リポソーム中の薬物の濃度は、周囲の液体の濃度に等しく、内部水性媒体中に捕捉されていない薬物は、封入後に洗い流される。さらに、二重層中に装填された薬物は、リポソームが対象に注入されると非常に速くリポソームから放出される。患者における薬物の持続放出のためには、薬物がリポソームの内部に封入されていることが好ましい。
【0008】
ある特定の親水性または両親媒性化合物は、膜貫通pH勾配またはイオン勾配を用いて予め形成されたリポソーム中に装填することができる(D.Zucker et al.,Journal of Controlled Release(2009)139:73-80)。この技法は、能動的装填(active loading)またはリモート装填(remote loading)と呼ばれる。能動的装填に適した化合物は、リポソーム膜を通して拡散できる非荷電形態から、そうすることができない荷電形態に変化させることが可能でなければならない。典型的には、官能性化合物は、内側が低く/外側が高いpH勾配またはイオン勾配を有するように調製されたリポソームの懸濁液にそれを添加することによって装填される。能動的装填を介して、高い官能性化合物対脂質質量比及び高い装填効率(最大100%)を達成することができる。例は、抗がん剤ドキソルビシン、ダウノルビシン、及びビンクリスチンの能動的装填である(P.R.Cullis et al.,Biochimica et Biophysica Acta,(1997)1331:187-211、及びその中の参考文献)。
【0009】
疎水性薬物は、主に、受動的装填/アセンブリ機構を介する膜インターカレーションを通してリポソーム中に装填することが可能であると考えられている。Wasanらは、リポソーム二重層中に難溶性薬剤を移行させるためのミセルの使用の説明において、「疎水性属性を有する薬剤は脂質二重層にインターカレートすることができ、これは薬剤を予め形成されたリポソームに添加することによって達成することができる」と述べている(US2009/0028931)。しかしながら、そのような装填は、疎水性薬物が脂質二重層に会合するまたは脂質二重層中に捕捉されることに依存し、薬物はリポソームから容易に漏出して、in vivoでの滞留性不足及び望ましい薬物動態未満となる可能性がある。
【0010】
薬物がその溶解限界を超えて沈殿物の形態である条件下での、リポソーム中への難溶性薬物のリモート装填は、予期せぬ出来事である。D.Zucker et al.,Journal of Controlled Release(2009)139:73-80は、「疎水性分子は凝集する可能性があり、これらの凝集体は、リポソーム膜を通る透過性が低い。よって、非極性/極性表面積比が>2.31であるとき(Zucker et al.Journal of Controlled Release(2009)139:73-80の
図4参照)、可溶性の非荷電分子のみがリポソームに入ることができるため、高装填を達成するためには、薬物が妥当な溶解度(>1.9mM)を有することが必要である。」と述べている。(D.Zucker et al.,Journal of Controlled Release(2009)139:73-80)。
【0011】
最近になってようやく、リポソームの水性コアに沈殿物からの難水溶性薬剤を能動的装填するための方法が開発された。例えば、Szoka et al.WO2014121211、及びLi et al.,Pharmaceutics(2019),11,465を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US2009/0028931
【特許文献2】WO2014121211
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Danial,N.N.and Korsmeyer,S.J.Cell(2004)116,205-219
【非特許文献2】Cell,2007,128,1173-1186
【非特許文献3】D.Zucker et al.,Journal of Controlled Release(2009)139:73-80
【非特許文献4】P.R.Cullis et al.,Biochimica et Biophysica Acta,(1997)1331:187-211
【非特許文献5】Li et al.,Pharmaceutics(2019),11,465
【発明の概要】
【0014】
本開示は、有効量のBcl阻害剤を投与するための組成物及び方法であって、前記Bcl阻害剤を封入しているリポソームを使用する組成物及び方法に関する。
【0015】
一態様において、提供するのは、リポソームを含むリポソーム組成物であって、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤(loading aid)を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、リポソーム組成物である。
【0016】
別の態様において、提供するのは、リポソームと、リポソームの外部に存在する治療剤とを含むリポソーム組成物であって、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、リポソーム組成物である。
【0017】
別の態様において、提供するのは、治療有効量のBcl阻害剤を送達するための方法であって、対象にリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0018】
別の態様において、提供するのは、過剰増殖性障害を治療するための方法であって、対象にリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0019】
別の態様において、提供するのは、治療有効量の非リポソーム形態のBcl阻害剤の投与に関連する血小板減少症を低減させるための方法であって、対象にリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0020】
幾つかの実施形態において、第1の脂質は、ポリマーコンジュゲート脂質である。例えば、幾つかの実施形態において、第1の脂質は、1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DSG-PEG2000など)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DMG-PEG2000など)、1,2-ジパルミトイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DPG-PEG2000など)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)(DSPE-PEG2000など)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の脂質は、DSG-PEG2000である。
【0021】
幾つかの実施形態において、脂質二重層は、第2の脂質をさらに含む。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、リン脂質である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)、または卵スフィンゴミエリンである。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)または水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、卵スフィンゴミエリンである。
【0022】
幾つかの実施形態において、内部媒体は、水性内部媒体である。幾つかの実施形態において、水性内部媒体は、酸性水性内部媒体である。幾つかの実施形態において、内部媒体は、追加の溶媒をさらに含む。幾つかの実施形態において、追加の溶媒は、有機溶媒である。幾つかの実施形態において、追加の溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0023】
幾つかの実施形態において第1の装填助剤は、イオン性装填助剤である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)である。
【0024】
幾つかの実施形態において、内部媒体は、第2の装填助剤をさらに含む。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、イオン性装填助剤である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0025】
幾つかの実施形態において、第1の装填助剤はスクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)であり、第2の装填助剤はクエン酸ナトリウムである。
【0026】
幾つかの実施形態において、第1のステロールは、コレステロールまたはβ-シトステロールである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】様々なリポソーム製剤を使用した化合物2の正規化血漿中濃度の経時的変化を、遊離薬物の使用と比較して示す。
【
図1B】本開示の例示的リポソーム製剤を使用した化合物2の正規化血漿中濃度の経時的変化を、以前に公開された方法に従って調製されたリポソーム製剤の使用と比較して、また遊離薬物の使用と比較して示す。
【
図2A】様々なリポソーム製剤を使用した化合物9の正規化血漿中濃度の経時的変化を示す。
【
図2B】本開示の例示的リポソーム製剤を使用した化合物9の正規化血漿中濃度の経時的変化を、以前に公開された方法に従って調製されたリポソーム製剤の使用と比較して、また遊離薬物の使用と比較して示す。
【
図3A】様々な用量の遊離薬物、またはリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む様々な用量のリポソーム製剤の投与後の平均血小板数の経時的変化を比較する。
【
図3B】様々な用量の遊離薬物、またはリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む様々な用量のリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図4A】様々な用量の遊離化合物9の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図4B】リポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む様々な用量のリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図5A】様々なリポソーム製剤を使用した化合物9(Bcl-22B)の正規化血漿中濃度の経時的変化を示す。
【
図5B】様々なリポソーム製剤を使用した化合物9(Bcl-22B)の薬物対脂質比の経時的変化を示す。
【
図6A】異なる脂質組成のリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含むリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図6B】様々な量のPEG-DSGを含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含むリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図6C】様々な量のPEG-DMGを含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含むリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図6D】1%PEG-DMGまたは1%PEG-DSGを含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含むリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図6E】0.5%PEG-DSGまたは0.5%PEG-DMGを含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含むリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図7A】低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む1mg/kgで投薬されたリポソーム製剤、または0.1mg/kgの遊離薬物の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図7B】低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む2mg/kgで投薬されたリポソーム製剤、または0.2mg/kg遊離薬物の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図7C】低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む3mg/kgで投薬されたリポソーム製剤、または0.3mg/kgの遊離薬物の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図7D】低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む2mg/kgで投薬されたリポソーム製剤、または0.1mg/kgの遊離薬物の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図7E】3mg/kgで投薬されたDHSM:コレステロール:PEG(53:45:2)及び化合物9(「22B」)(薬物:脂質比0.1)を含むリポソーム、3mg/kgで投薬されたDSPC:コレステロール:PEG(57:38:5.6)及び化合物9(「22B」)(薬物:脂質比0.1)を含むリポソーム、または3mg/kgで投薬された遊離薬物の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図7F】リポソームの内部媒体に封入された化合物7を含む様々な用量で投薬されたリポソーム製剤、または遊離薬物の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図7G】DSPCを含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物2を含むリポソーム製剤、または遊離薬物の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【
図8】酸洗浄ステップを用いてまたは用いずに調製された本開示の例示的リポソーム製剤を使用した化合物7の正規化血漿中濃度の経時的変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記、及び他の科学用語または術後は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有するものとする。幾つかの場合において、一般的に理解される意味を有する用語は、明確さ及び/または即座の参照のために本明細書で定義されるが、本明細書におけるそのような定義の包含は、当技術分野において一般的に理解されるものとの実質的な相違を表すと必ずしも解釈されるべきではない。本明細書において説明または参照される技法及び手順の多くは、当業者による従来の方法論を使用して十分に理解され、一般的に用いられる。適宜、市販のキット及び試薬の使用を含む手順は、別段の記載のない限り、一般的に、製造業者によって定義されるプロトコル及び/またはパラメータに従って実施される。本明細書で言及されるすべての特許、出願、公開出願、及び他の刊行物は、それらの全体が参照により組み込まれる。本節に記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、公開出願、及び他の刊行物に記載される定義に反するか、または他の形で矛盾する場合、本節に記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる定義よりも優先される。
【0029】
定義
本明細書で使用する場合、「a」、「an」などの用語の使用は、別段の明示のない限り、1つ以上を指す。
【0030】
本明細書における値またはパラメータについて「約」と言及することは、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(及び説明する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含む。
【0031】
「治療剤」または「薬物」という用語は、本明細書で使用される場合、薬学的用途を含めた種々の治療用途に使用される化学部分を指す。
【0032】
「薬学的に許容される塩」という用語は、非毒性であることが知られており、医薬文献において一般的に使用される、本明細書における化合物のいずれかの塩を指す。幾つかの実施形態において、化合物の薬学的に許容される塩は、本明細書に記載の化合物の生物学的効果を保持し、生物学的またはそれ以外の面で望ましくないものではない。薬学的に許容される塩の例は、Berge et al.,Pharmaceutical Salts,J.Pharmaceutical Sciences,January 1977,66(1),1-19に見出すことができる。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸を用いて形成することができる。塩を誘導することができる無機酸として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸が挙げられる。酸を誘導することができる有機酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ステアリン酸、及びサリチル酸が挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基及び有機塩基を用いて形成することができる。塩を誘導することができる無機塩基として、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、及びアルミニウムが挙げられる。塩を誘導することができる有機塩基として、例えば、第一級、第二級、及び第三級アミン;天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン;環状アミン;ならびに塩基性イオン交換樹脂が挙げられる。有機塩基の例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンが挙げられる。幾つかの実施形態において、薬学的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩から選択される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、鳥、または魚などの動物を指す。幾つかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。哺乳動物として、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、及びヒトが挙げられる。幾つかの実施形態において、対象は、ヒト、例えば、治療、観察、または実験の対象となってきたか、またはそうなるであろうヒトである。
【0034】
「治療有効量」または「有効量」という用語は、本明細書に定義される通りの治療を必要とする対象に投与されたときに、そのような治療に影響を及ぼすのに十分な、本明細書に開示及び/または記載される化合物の量を指す。治療有効量は、例えば、治療されている対象及び疾患状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、特定の化合物、従うべき投薬レジメン、投与のタイミング、投与の様式に応じて変動することとなるが、これらのすべては、当業者であれば容易に決定することができる。治療有効量は、実験的に、例えば、化学的実体の血中濃度をアッセイすることによって、または理論的に、バイオアベイラビリティを計算することによって確認することができる。
【0035】
「治療」(及び関連する用語、例えば、「治療する」、「治療される」、「治療すること」)は、疾患もしくは障害を予防すること(すなわち、疾患もしくは障害の臨床症状を発症させないようにすること);疾患もしくは障害を阻害すること;疾患もしくは障害の臨床症状の発症を遅くするもしくは抑止すること;及び/または疾患もしくは障害を軽減すること(すなわち、臨床症状を軽減もしくは退行させるようにすること)のうちの1つ以上を含む。この用語は、疾患または障害が既に対象によって経験されている状況、及び疾患または障害が現在経験されていないが生じることが予想される状況を包含する。この用語は、状態または障害の完全な及び部分的な低減または予防、ならびに疾患または障害の臨床症状の完全なまたは部分的な低減の両方を網羅する。よって、本明細書に記載及び/または開示される化合物は、既存の疾患もしくは障害の悪化を防止し、疾患もしくは障害の管理を援助し、または疾患もしくは障害を低減もしくは排除し得る。予防的な様式で使用される場合、本明細書に開示及び/または記載される化合物は、疾患もしくは障害の発症を防止し得るか、または発症するおそれのある疾患もしくは障害の程度を低下させ得る。
【0036】
一態様において、提供するのは、リポソームを含むリポソーム組成物であって、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、リポソーム組成物である。
【0037】
別の態様において、提供するのは、リポソームと、リポソームの外部に存在する治療剤とを含むリポソーム組成物であって、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、リポソーム組成物である。
【0038】
別の態様において、提供するのは、治療有効量のBcl阻害剤を送達するための方法であって、対象にリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0039】
別の態様において、提供するのは、過剰増殖性障害を治療するための方法であって、対象にリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0040】
別の態様において、提供するのは、治療有効量の非リポソーム形態のBcl阻害剤の投与に関連する血小板減少症を低減させるための方法であって、対象にリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、リポソームが、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0041】
別の態様において、提供するのは、治療効果を達成するために対象に投与されるBcl阻害剤の総用量を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
治療効果を達成するのに必要なリポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときに同じ治療効果を達成するのに必要なBcl阻害剤の総量より少ない、
方法である。
【0042】
別の態様において、提供するのは、過剰増殖性障害における治療効果を達成するために対象に投与されるBcl阻害剤の総用量を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
治療効果を達成するのに必要なリポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときに同じ治療効果を達成するのに必要なBcl阻害剤の総量より少ない、
方法である。
【0043】
別の態様において、提供するのは、それを必要とする対象に投与されるBcl阻害剤への曝露の対象間変動性を低減させるための方法であって、前記対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
投与されるリポソーム組成物中のBcl阻害剤への曝露の対象間変動性が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤への曝露の対象間変動性よりも小さく;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0044】
別の態様において、提供するのは、対象におけるBcl阻害剤の半減期を増加させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中で投与されたときのBcl阻害剤の半減期が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の半減期よりも長い、
方法である。
【0045】
別の態様において、提供するのは、対象におけるBcl阻害剤の投薬回数を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中で投与されるBcl阻害剤の投薬回数が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の投薬回数よりも少なく;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0046】
別の態様において、提供するのは、治療有効量のBcl阻害剤の投与に関連する1つ以上の有害事象の発生率または重症度を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤を投与することによって被る前記1つ以上の有害事象の発症率または重症度が、非リポソーム形態でBcl阻害剤を投与することによって被る前記1つ以上の有害事象の発症率又は重症度よりも低く;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0047】
一態様において、提供するのは、リポソームであって、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤、第1の溶媒、及び第2の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、リポソームである。
【0048】
別の態様において、提供するのは、1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物であって、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、リポソーム組成物である。
【0049】
別の態様において、提供するのは、1つ以上のリポソームと、1つ以上のリポソームの外部に存在する治療剤とを含む医薬組成物であって、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、医薬組成物である。
【0050】
別の態様において、提供するのは、治療有効量のBcl阻害剤を対象に送達するための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0051】
別の態様において、提供するのは、それを必要とする対象における過剰増殖性障害を治療するための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0052】
別の態様において、提供するのは、治療有効量のBcl阻害剤の投与に関連する血小板減少症の発生率または重症度を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤を投与することによって被る血小板減少症の発生率または重症度が、非リポソーム形態のBcl阻害剤を投与することによって被る血小板減少症の発生率または重症度よりも低く;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0053】
別の態様において、提供するのは、治療効果を達成するために対象に投与されるBcl阻害剤の総用量を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を対象に投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み、
治療効果を達成するのに必要なリポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときに同じ治療効果を達成するのに必要なBcl阻害剤の総量より少ない、
方法である。
【0054】
別の態様において、提供するのは、過剰増殖性障害における治療効果を達成するために対象に投与されるBcl阻害剤の総用量を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み、
治療効果を達成するのに必要なリポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときに同じ治療効果を達成するのに必要なBcl阻害剤の総量より少ない、
方法である。
【0055】
別の態様において、提供するのは、それを必要とする対象に投与されるBcl阻害剤への曝露の対象間変動性を低減させるための方法であって、前記対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
投与されるリポソーム組成物中のBcl阻害剤への曝露の対象間変動性が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤への曝露の対象間変動性よりも小さく;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0056】
別の態様において、提供するのは、対象におけるBcl阻害剤の半減期を増加させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を対象に投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中で投与されたときのBcl阻害剤の半減期が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の半減期よりも長い、
方法である。
【0057】
別の態様において、提供するのは、対象におけるBcl阻害剤の投薬回数を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中で投与されるBcl阻害剤の投薬回数が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の投薬回数よりも少なく;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0058】
別の態様において、提供するのは、治療有効量のBcl阻害剤の投与に関連する1つ以上の有害事象の発生率または重症度を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤を投与することによって被る前記1つ以上の有害事象の発症率または重症度が、非リポソーム形態でBcl阻害剤を投与することによって被る前記1つ以上の有害事象の発症率又は重症度よりも低く;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0059】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、第1の脂質は、ポリマーコンジュゲート脂質である。幾つかの実施形態において、ポリマーコンジュゲート脂質は、1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DSG-PEG2000など)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DMG-PEG2000など)、1,2-ジパルミトイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DPG-PEG2000など)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)(DSPE-PEG2000など)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、ポリマーコンジュゲート脂質は、1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)または1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)である。幾つかの実施形態において、ポリマーコンジュゲート脂質は、1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)である。幾つかの実施形態において、ポリマーコンジュゲート脂質は、DSG-PEG2000である。幾つかの実施形態において、脂質二重層は、第2の脂質をさらに含む。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、リン脂質である。幾つかの実施形態において、リン脂質は、ホスファチジルコリン、スフィンゴ脂質、及び水素化スフィンゴ脂質からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、スフィンゴミエリンである。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)、または卵スフィンゴミエリンである。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)または水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、卵スフィンゴミエリンである。
【0060】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、第1の脂質は、第1のリン脂質である。幾つかの実施形態において、リン脂質は、ホスファチジルコリン、スフィンゴ脂質、及び水素化スフィンゴ脂質からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である。幾つかの実施形態において、第1の脂質は、スフィンゴミエリンである。幾つかの実施形態において、第1の脂質は、水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)である。幾つかの実施形態において、脂質二重層は、第2の脂質をさらに含む。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、第2のリン脂質である。幾つかの実施形態において、第2のリン脂質は、ホスファチジルコリン、スフィンゴ脂質、及び水素化スフィンゴ脂質からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)である。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、スフィンゴミエリンである。幾つかの実施形態において、第2の脂質は、水素化スフィンゴミエリン(ジヒドロスフィンゴミエリン)である。
【0061】
幾つかの実施形態において、脂質二重層は、ジヒドロスフィンゴミエリン(DHSM)、コレステロール、及びDSG-PEG2000を含む。幾つかの実施形態において、脂質二重層は、約53:45:2のモル比でDHSM/コレステロール/DSG-PEG2000を含む。幾つかの実施形態において、脂質二重層は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール、及びDSG-PEG2000を含む。幾つかの実施形態において、脂質二重層は、約57:38:5.6のモル比でDSPC/コレステロール/DSG-PEG2000を含む。
【0062】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、第1の溶媒は、水性溶媒である。幾つかの実施形態において、水性溶媒は、酸性水性溶媒である。
【0063】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、内部媒体は、第2の溶媒をさらに含む。幾つかの実施形態において、第2の溶媒は、有機溶媒である。幾つかの実施形態において、有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒である。幾つかの実施形態において、第2の溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0064】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、イオン性装填助剤である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸塩、スクロースオクタ硫酸塩、またはクエン酸塩である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、クエン酸ナトリウムである。幾つかの実施形態において、内部媒体は、第2の装填助剤をさらに含む。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、イオン性装填助剤である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸塩、スクロースオクタ硫酸塩、またはクエン酸塩である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、クエン酸ナトリウムである。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤はスクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)であり、第2の装填助剤はクエン酸ナトリウムである。
【0065】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、第1のステロールは、コレステロール、コレステロール誘導体、または植物ステロール(β-シトステロールなど)である。幾つかの実施形態において、第1のステロールは、コレステロールである。幾つかの実施形態において、第1のステロールは、β-シトステロールである。
【0066】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、Bcl-2阻害剤、Bcl-X
L阻害剤、及びBcl-2/Bcl-X
L二重阻害剤からなる群から選択される。すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、Bcl-2阻害剤である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、Bcl-X
L阻害剤である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、Bcl-2/Bcl-X
L二重阻害剤である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、式(I)の化合物:
【化1】
またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中:
Vは、
【化2】
であり;
Wは、Hまたは
【化3】
であり;
Xは、
【化4】
であり;
Yは、-NO
2または-SO
2CF
3であり;
Zは、
【化5】
からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化6】
、ベネトクラクス(ABT-199)、ナビトクラクス(ABT-263)、メシル酸オバトクラクス(GX15-070)、サブトクラクス、TW-37、(R)-(-)-ゴシポール酢酸、HA14-1、BH3模倣体、及びオブリメルセンからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化7】
ベネトクラクス(ABT-199)、及びナビトクラクス(ABT-263)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化8】
ベネトクラクス(ABT-199)、及びナビトクラクス(ABT-263)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化9】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化10】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化11】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化12】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化13】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、ベネトクラクスである。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、ナビトクラクスである。
【0067】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、リポソームは、追加の治療剤をさらに含む。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、疎水性治療剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、親水性治療剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、リポソームに封入される。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、リポソームの外部に存在する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2超のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-6~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-6~約0の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-3~約0の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約0~約2の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-1~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約3~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-6~約-1の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-1~約3の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2~約4の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2~約8の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約4~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約4~約8の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約8~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約10~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2超のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約3~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約6~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約8~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約3の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約3~約6の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約6~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約3~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約6の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2~約4の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約4~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約4~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約8~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約10~約12の間のpKaを有する。
【0068】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、抗悪性腫瘍剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、アルキル化剤、抗血管新生剤、代謝拮抗剤、アポトーシス誘導剤、細胞周期阻害剤、細胞周期制御阻害剤、チェックポイント阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、DNA傷害剤、DNA修復阻害剤、ミトコンドリア毒、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、シグナル伝達阻害剤、転写阻害剤、Bcl阻害剤、PARP阻害剤、PI3K阻害剤、HSP90阻害剤、JAK阻害剤、ATR阻害剤、HDAC阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、BTK阻害剤、アルキル化剤、SMO阻害剤、抗チューブリン剤、MEK阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、RAF阻害剤、BRAF阻害剤、またはプロテアソーム阻害剤から選択される。
【0069】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、上記のもののような第2のBcl阻害剤である。
【0070】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、HSP90阻害剤である。幾つかの実施形態において、HSP90阻害剤は、ルミネスピブである。
【0071】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、アルキル化剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ベンダムスチン及びクロラムブシルからなる群から選択されるアルキル化剤である。
【0072】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、抗チューブリン剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ビンクリスチン、ビノレルビン、及びドセタキセルからなる群から選択される抗チューブリン剤である。
【0073】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ATR阻害剤である。
【0074】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、RAF阻害剤である。幾つかの実施形態において、RAF阻害剤は、ダブラフェニブである。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、BRAF阻害剤である。幾つかの実施形態において、BRAF阻害剤は、ベムラフェニブである。
【0075】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、BTK阻害剤である。幾つかの実施形態において、BTK阻害剤は、イブルチニブである。
【0076】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、HDAC阻害剤である。幾つかの実施形態において、HDAC阻害剤は、パノビノスタットである。
【0077】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、JAK阻害剤である。幾つかの実施形態において、JAK阻害剤は、ルキソリチニブである。
【0078】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、MEK阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、セルメチニブ及びコビメチニブからなる群から選択されるMEK阻害剤である。
【0079】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、PARP阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、タラゾパリブ、ニラパリブ、及びルカパリブからなる群から選択されるPARP阻害剤である。
【0080】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、PI3K阻害剤である。幾つかの実施形態において、PI3K阻害剤は、イデラリシブである。
【0081】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロテアソーム阻害剤である。幾つかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、カルフィルゾミブである。
【0082】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、SMO阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ソニデジブ及びビスモデギブからなる群から選択されるSMO阻害剤である。
【0083】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ブリガチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、ポナチニブ、ソラフェニブ、オシメルチニブ、レゴラフェニブ、ボスチニブ、クリゾチニブ、バンデタニブ、ニロチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、ダサチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブからなる群から選択されるチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0084】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、トポイソメラーゼI阻害剤である。幾つかの実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤は、イリノテカンである。
【0085】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、上記のもののようなBcl阻害剤である。
【0086】
すべての前述の態様の幾つかの態様において、リポソームは、約50nm~約250nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約50nm~約150nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約50nm~約120nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約50nm~約100nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約80nmの平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約80nm~約150nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約120nmの平均直径を有する。
【0087】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、分散媒をさらに含む。幾つかの実施形態において、1つ以上のリポソームは、分散媒中に懸濁されている。幾つかの実施形態において、分散媒は、薬学的に許容される溶液である。幾つかの実施形態において、分散媒は、デキストロース水溶液である。幾つかの実施形態において、分散媒は、スクロース水溶液である。幾つかの実施形態において、分散媒は、生理食塩水である。幾つかの実施形態において、分散媒は、緩衝液をさらに含む。幾つかの実施形態において、緩衝液は、HEPES緩衝液である。幾つかの実施形態において、緩衝液は、PBS緩衝液である。幾つかの実施形態において、緩衝液は、Tris緩衝液である。幾つかの実施形態において、緩衝液は、MES緩衝液である。
【0088】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.3の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.1の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.1~約0.3の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.1~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.3~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。
【0089】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、1つ以上のリポソームの外部に治療剤をさらに含む。
【0090】
リポソーム及びリポソーム組成物
リポソームは、内部区画を包み込む1つ以上の脂質二重層を含む。これらのリポソームは、多層、二層、または単層小胞であり得る。単層リポソーム(単層小胞または「ULV」としても知られる)は、単一の内部水性区画を包み込み、小型単層小胞(SUV)または大型単層小胞(LUV)のいずれかに分類される。LUV及びSUVのサイズは、それぞれ約50~500nm及び20~50nmの範囲である。二層リポソームは2つの脂質膜を有し、内側の膜が単一の内部水性区画を取り囲み、第2の、より大きな外側の膜が内側の膜を取り囲み、よって第2の内部水性区画を作り出す。
【0091】
幾つかの実施形態において、リポソームは、約20nm~約500nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約50nm~約250nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約80nm~約250nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約50nm~約150nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約80nm~約150nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約50nm~約120nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約80nm~約120nmの間の平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約50nm、約80nm、約100nm、約120nm、約150nm、または約250nmの平均直径を有する。幾つかの実施形態において、リポソームは、約80nmの平均直径を有する。
【0092】
リポソーム組成物中のリポソームの粒度分布の維持は、粒度プロファイルを得ることによって実験的に評価されてもよい。準弾性光散乱によって決定される粒度分布は、典型的には、リポソームの平均直径を示すヒストグラムとして提示される。当技術分野で最も一般的に使用される有意な粒度分布測定は、D10、D90、D99、または標準偏差もしくは多分散性指数(PDI)である。「D99」値は、リポソームの99%が、言及されたサイズ未満または言及されたサイズ超であることを示す。これは、例えば、上限または下限サイズのいずれかを除外することが重要である場合に特に有用である。例えば、ある特定の実施形態において、平均直径が200nmを超えるリポソームが存在しないことが確実であることが望ましい。
【0093】
幾つかの実施形態において、リポソーム組成物中のリポソームの粒度分布は、多分散性指数(PDI)を使用して定量化される。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.4の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.3の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.005~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.005~約0.4の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.005~約0.3の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.2の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.001~約0.1の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.005~約0.2の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.005~約0.1の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.01~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.01~約0.4の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.01~約0.2の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.01~約0.1の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.1~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.1~約0.3の間の多分散性指数(PDI)を有する。幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、約0.3~約0.5の間の多分散性指数(PDI)を有する。
【0094】
幾つかの実施形態において、リポソーム組成物は、分散媒をさらに含んでもよい。幾つかの実施形態において、1つ以上のリポソームは、分散媒中に懸濁されている。幾つかの実施形態において、分散媒は、薬学的に許容される溶液である。幾つかの実施形態において、分散媒は、デキストロース水溶液である。幾つかの実施形態において、分散媒は、スクロース水溶液である。幾つかの実施形態において、分散媒は、生理食塩水である。幾つかの実施形態において、分散媒は、緩衝液をさらに含む。幾つかの実施形態において、緩衝液は、HEPES緩衝液である。幾つかの実施形態において、緩衝液は、PBS緩衝液である。幾つかの実施形態において、緩衝液は、Tris緩衝液である。幾つかの実施形態において、緩衝液は、MES緩衝液である。
【0095】
治療剤
幾つかの実施形態において、それに提供されるリポソーム及びリポソーム組成物は、リポソームに封入された治療剤を含む。幾つかの実施形態において、それに提供されるリポソーム及びリポソーム組成物は、リポソームに封入された疎水性治療剤を含む。
【0096】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、Bcl-2阻害剤である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、Bcl-X
L阻害剤である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、Bcl-2/Bcl-X
L二重阻害剤である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、式(I)の化合物:
【化14】
またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容される塩であり、式中:
Vは、
【化15】
であり;
Wは、Hまたは
【化16】
であり;
Xは、
【化17】
であり;
Yは、-NO
2または-SO
2CF
3であり;
Zは、
【化18】
からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Vは、
【化19】
である。幾つかの実施形態において、Vは、
【化20】
である。
【0097】
幾つかの実施形態において、Wは、Hである。幾つかの実施形態において、Wは、
【化21】
である。幾つかの実施形態において、Xは、
【化22】
である。幾つかの実施形態において、Xは、
【化23】
である。幾つかの実施形態において、Yは、-NO
2である。幾つかの実施形態において、Yは、-SO
2CF
3である。
【0098】
幾つかの実施形態において、Zは、
【化24】
である。幾つかの実施形態において、Zは、
【化25】
である。幾つかの実施形態において、Zは、
【化26】
である。幾つかの実施形態において、Zは、
【化27】
である。幾つかの実施形態において、Zは、
【化28】
である。幾つかの実施形態において、Zは、
【化29】
である。幾つかの実施形態において、Zは、
【化30】
である。幾つかの実施形態において、Zは、
【化31】
である。
【0099】
幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化32-1】
【化32-2】
【化32-3】
【化32-4】
ベネトクラクス(ABT-199)、ナビトクラクス(ABT-263)、メシル酸オバトクラクス(GX15-070)、サブトクラクス、TW-37、(R)-(-)-ゴシポール酢酸、HA14-1、BH3模倣体、及びオブリメルセンからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化33】
ベネトクラクス(ABT-199)、ナビトクラクス(ABT-263)、メシル酸オバトクラクス(GX15-070)、サブトクラクス、TW-37、(R)-(-)-ゴシポール酢酸、HA14-1、BH3模倣体、及びオブリメルセンからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化34】
ベネトクラクス(ABT-199)、ナビトクラクス(ABT-263)、メシル酸オバトクラクス(GX15-070)、サブトクラクス、TW-37、(R)-(-)-ゴシポール酢酸、HA14-1、BH3模倣体、及びオブリメルセンからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化35】
ベネトクラクス(ABT-199)、及びナビトクラクス(ABT-263)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化36】
ベネトクラクス(ABT-199)、及びナビトクラクス(ABT-263)からなる群から選択される。
幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化37】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化38】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化39】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化40】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化41】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化42】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化43】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化44】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化45】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化46】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化47】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化48】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化49】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化50】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化51】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化52】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化53】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化54】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化55】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化56】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化57】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化58】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化59】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化60】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化61】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化62】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化63】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、
【化64】
である。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、ベネトクラクスである。幾つかの実施形態において、Bcl阻害剤は、ナビトクラクスである。
【0100】
幾つかの実施形態において、それに提供されるリポソーム組成物は、追加の治療剤を含む。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、疎水性治療剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、親水性治療剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、リポソームに封入される。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、リポソームの外部に存在する。すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、リポソームは、追加の治療剤をさらに含む。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、リポソームに封入される。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、リポソームの外部に存在する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2超のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-6~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-6~約0の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-3~約0の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約0~約2の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-1~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約3~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-6~約-1の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約-1~約3の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2~約4の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約2~約8の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約4~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約4~約8の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約8~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、約10~約12の間のcLogPを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2超のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約3~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約6~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約8~約11の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約3の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約3~約6の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約6~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約3~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約-6~約6の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約2~約4の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約4~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約4~約8の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約8~約12の間のpKaを有する。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロトン化することができ、そのプロトン化形態は、約10~約12の間のpKaを有する。
【0101】
すべての前述の態様の幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、抗悪性腫瘍剤である。追加の治療剤は、アルキル化剤、抗血管新生剤、代謝拮抗剤、アポトーシス誘導剤、細胞周期阻害剤、細胞周期制御阻害剤、チェックポイント阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、DNA傷害剤、DNA修復阻害剤、ミトコンドリア毒、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、シグナル伝達阻害剤、転写阻害剤、Bcl阻害剤、PARP阻害剤、PI3K阻害剤、HSP90阻害剤、JAK阻害剤、ATR阻害剤、HDAC阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ阻害剤、BTK阻害剤、アルキル化剤、SMO阻害剤、抗チューブリン剤、MEK阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、RAF阻害剤、BRAF阻害剤、またはプロテアソーム阻害剤から選択される。
【0102】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、上記のもののようなBcl阻害剤である。
【0103】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、HSP90阻害剤である。幾つかの実施形態において、HSP90阻害剤は、ルミネスピブである。
【0104】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、アルキル化剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ベンダムスチン及びクロラムブシルからなる群から選択されるアルキル化剤である。
【0105】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、抗チューブリン剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ビンクリスチン、ビノレルビン、及びドセタキセルからなる群から選択される抗チューブリン剤である。
【0106】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ATR阻害剤である。
【0107】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、RAF阻害剤である。幾つかの実施形態において、RAF阻害剤は、ダブラフェニブである。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、BRAF阻害剤である。幾つかの実施形態において、BRAF阻害剤は、ベムラフェニブである。
【0108】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、BTK阻害剤である。幾つかの実施形態において、BTK阻害剤は、イブルチニブである。
【0109】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、HDAC阻害剤である。幾つかの実施形態において、HDAC阻害剤は、パノビノスタットである。
【0110】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、JAK阻害剤である。幾つかの実施形態において、JAK阻害剤は、ルキソリチニブである。
【0111】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、MEK阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、セルメチニブ及びコビメチニブからなる群から選択されるMEK阻害剤である。
【0112】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、PARP阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、タラゾパリブ、ニラパリブ、及びルカパリブからなる群から選択されるPARP阻害剤である。
【0113】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、PI3K阻害剤である。幾つかの実施形態において、PI3K阻害剤は、イデラリシブである。
【0114】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、プロテアソーム阻害剤である。幾つかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、カルフィルゾミブである。
【0115】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、SMO阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ソニデジブ及びビスモデギブからなる群から選択されるSMO阻害剤である。
【0116】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、ブリガチニブ、レンバチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、ポナチニブ、ソラフェニブ、オシメルチニブ、レゴラフェニブ、ボスチニブ、クリゾチニブ、バンデタニブ、ニロチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、ダサチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブからなる群から選択されるチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0117】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、トポイソメラーゼI阻害剤である。幾つかの実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤は、イリノテカンである。
【0118】
幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、上記のもののようなBcl阻害剤である。幾つかの実施形態において、追加の治療剤は、抗悪性腫瘍剤である。適切な抗悪性腫瘍剤は、非限定的な例として、以下のものである:
「シグナル伝達阻害剤」、これは、がん細胞の増殖または分裂を引き起こすシグナルを妨害または防止するものである;
「細胞傷害剤」;
「細胞周期阻害剤」または「細胞周期制御阻害剤」、これは、正常な細胞周期(細胞の起源となる有糸分裂から、それを娘細胞に分裂させる有糸分裂後の事象までの細胞の寿命)を通した細胞の進行を妨害するものである;
「チェックポイント阻害剤」、これは、細胞周期チェックポイント、例えば、S/G2チェックポイント、G2/Mチェックポイント、及びG1/Sチェックポイントの正常な機能を妨害するものであり、例えば、S/G2またはG2/Mチェックポイント阻害剤、例えば、ブレオマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン;G1/初期Sチェックポイント阻害剤;ならびにG2/Mチェックポイント阻害剤である;
「トポイソメラーゼ阻害剤」、これは、DNAの複製及び転写に必要な酵素であるトポイソメラーゼIまたはIIの活性を妨害するものであり、例えば、カンプトテシン、イリノテカン及びトポテカンである;
「受容体型チロシンキナーゼ阻害剤」、これは、チロシンキナーゼ活性を有する増殖因子受容体の活性を妨害するものであり、例えば、ゲニステイン、トラスツズマブ、ZD1839である;
「アポトーシス誘導剤」、これは、プログラム細胞死を促進するものである;
「代謝拮抗剤」、例えば、シチジン類似体、例えば、シタラビン、5-アザシチジン、及びゲムシタビン(2’,2’-ジフルオロデオキシシチジン)、またはヒドロキシ尿素であり、これらは、必須代謝産物に酷似しており、したがってそれに関与する生理学的反応を妨害するものである;
「テロメラーゼ阻害剤」、これは、テロメア長を延ばし、細胞の寿命及びその複製能力を延ばす酵素であるテロメラーゼの活性を妨害するものである;
「サイクリン依存性キナーゼ阻害剤」、これは、ヒストン、細胞骨格タンパク質、転写因子、腫瘍抑制遺伝子などの細胞タンパク質のリン酸化を通して細胞周期の異なる期の間の主要な段階を制御するサイクリン依存性キナーゼを妨害するものである;
「DNA傷害剤」、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、マイトマイシンC、ミトキサントロンである;
「DNA修復阻害剤」、これには、5-フルオロウラシル(5-FU)またはFUDR、ゲムシタビン、及びメトトレキセートが含まれる;
「免疫調節剤」、これは、免疫系を刺激又は抑制し、体が、がん、感染、または他の疾患と闘うのを助けることができるものであり、例えば、モノクローナル抗体、サイトカイン、及びワクチンなどの特異的免疫調節剤は、免疫系の特定の部分に影響を及ぼし、BCG及びレバミゾールなどの非特異的免疫調節剤は、一般的な様式で免疫系に影響を及ぼす;
「抗血管新生剤」、これは、腫瘍増殖中に生じる新しい血管の生成または既存の血管の成長を妨害するものである;ならびに
「ミトコンドリア毒」、これは、ミトコンドリア呼吸鎖機能を直接的又は間接的に撹乱するものである。
【0119】
薬剤のうちの1つ以上の作用機構は、わかっていない場合も、または不正確に特定されている場合もある。
【0120】
他の抗悪性腫瘍剤として、パクリタキセル、エトポシド化合物、カンプトテシン化合物、イダルビシン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アドリアマイシン、マイトマイシン、アンサマイトシン、ブレオマイシン、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトポリリジン、ビンクリスチン、ブスルファン、クロラムブシル、メルファラン、メルカプトプリン、ミトタン、塩酸プロカルバジン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、アミノグルテチミド、リン酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、酢酸ロイプロリド、酢酸メゲストロール、タモキシフェンクエン酸塩、テストラクトン、トリロスタン、アムサクリン、アスパラギナーゼ、インターフェロン、テニポシド、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ブレオマイシン、メトトレキサート、バルルビシン、カルゼレシン、パクリタキセル、タキソタン、カンプトテシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、シスプラチン、5フルオロウラシル、メトトレキサート;抗炎症剤、例えば、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン(flubiprofen)、ジクロフェナク(dichlofenac)、ピロキシカム、テノキシカム、ナプロキセン、アスピリン、及びアセトアミノフェン;性ホルモン、例えば、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロン(progestone)、エストラジオール;降圧剤、例えば、カプトプリル、ラミプリル、テラゾシン、ミノキシジル、及びプラゾシン(parazosin);制吐剤、例えば、オンダンセトロン及びグラニセトロン;抗生物質、例えば、メトロニダゾール及びフシジン酸;シクロスポリン;プロスタグランジン;ビフェニルジメチルジカルボン酸、カルボプラチン;抗真菌剤、例えば、イトラコナゾール、ケトコナゾール、及びアムホテリシン;ステロイド、例えば、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、及びベタメタゾン;シクロスポリン、ならびに機能的に等価な類似体、誘導体、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0121】
リポソーム及びリポソーム組成物を作製するための方法
リポソームは、「Liposomes:Rational Design」(A.S.Janoff,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY)に記載されるように、または当業者が精通する追加の技法によって調製することができる。適切なリポソームとして、大型単層小胞(LUV)、多層小胞(MLV)、小型単層小胞(SUV)、及び嵌合融合(interdigitating fusion)リポソームが挙げられる。
【0122】
脂質
リポソームは、治療用脂質を含有してもよく、その例として、エーテル脂質、ホスファチジン酸、ホスホネート、セラミド及びセラミド類似体、スフィンゴシン及びスフィンゴシン類似体、ならびにセリン含有脂質が挙げられる。リポソームはまた、ホスファチジルコリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン脂質、ホスファチジルセリン脂質、及びホスファチジルグリセロール脂質などのリン脂質を含有してもよい。リポソームは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などのホスファチジルコリン脂質を含有するように調製されてもよい。リン脂質は、ホスファチジルコリン、スフィンゴ脂質、及び水素化スフィンゴ脂質からなる群から選択されてもよい。例えば、リン脂質は、卵ホスファチジルコリン(卵PC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、卵スフィンゴミエリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリンナトリウム塩(DSPS-Na)、2-オレオイル-1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(POPS)、及び2-オレオイル-1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリンナトリウム塩(POPS-Na)であってもよい。
【0123】
リポソームは、表面安定化親水性ポリマー脂質コンジュゲートを用いて調製されてもよい。親水性ポリマー脂質コンジュゲートは、ポリマー部分と脂質部分とを含む。ポリマー部分は、PEG部分であり得る。脂質部分は、リン脂質ベースであり得る。リン脂質は、ホスファチジルコリン、スフィンゴ脂質、及び水素化スフィンゴ脂質からなる群から選択されてもよい。例えば、リン脂質は、卵ホスファチジルコリン(卵PC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、卵スフィンゴミエリン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DSPS)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリンナトリウム塩(DSPS-Na)、2-オレオイル-1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(POPS)、及び2-オレオイル-1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリンナトリウム塩(POPS-Na)であってもよい。例示的なポリマー脂質コンジュゲートは、1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DSG-PEG2000またはDSG-PEG1000など)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DMG-PEG2000またはDMG-PEG1000など)、1,2-ジパルミトイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール)(DPG-PEG2000またはDPG-PEG1000など)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリ(エチレングリコール)(DSPE-PEG2000またはDSPE-PEG1000など)、N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)]}(C16PEG2000セラミドなど)、PEG誘導体化コレステロール(mPEGコレステロールなど)、スフィンゴミエリン、またはジヒドロスフィンゴミエリンであってもよい。ポリマー脂質コンジュゲートのポリマー部分の平均分子量は、約1000g/mol~約5000g/molで変動してもよい。ポリマー脂質コンジュゲートのポリマー部分の平均分子量は、約1000g/mol~約2000g/molで変動してもよい。ポリマー脂質コンジュゲートのポリマー部分の平均分子量は、約1000g/molであってもよい。ポリマー脂質コンジュゲートのポリマー部分の平均分子量は、約2000g/molであってもよい。ポリマー脂質コンジュゲートのポリマー部分の平均分子量は、約5000g/molであってもよい。
【0124】
ホスファチジルグリセロール(PG)及びホスファチジルイノシトール(PI)などの負に荷電した脂質の組み込みをリポソーム製剤に追加して、担体の循環寿命を延ばすこともできる。これらの脂質は、表面安定化剤として親水性ポリマー脂質コンジュゲートに代えて用いられてもよく、または親水性ポリマー脂質コンジュゲートと組み合わせて用いられてもよい。
【0125】
ステロール
リポソームは、ステロール、例えば、コレステロール、コレステロール誘導体、または植物ステロール(β-シトステロールなど)も含有してもよい。
【0126】
リポソームに装填するための方法
リポソームに活性剤を封入するために、様々な方法を利用することができる。「封入(encapsulation)」には、薬剤とリポソームとの共有結合または非共有結合が含まれる。例えば、これは、薬剤とリポソームの外層(1層または複数)との相互作用、またはリポソーム中への薬剤の捕捉、リポソームの異なる部分間で達成される平衡状態によって可能である。よって、薬剤の封入は、脂質成分との共有結合もしくは非共有結合を通したリポソームの二重層との相互作用による薬剤の会合、またはリポソームの水性内部中への捕捉によるもの、または内部水性相と二重層との間の平衡におけるものであり得る。「装填(loading)」とは、1つ以上の薬剤を送達ビヒクルに封入する行為を指す。
【0127】
治療剤の組み合わせが模索されるとき、所望の組み合わせの封入は、別々の送達ビヒクルへの封入または同じ送達ビヒクルへの封入のいずれかによって達成することができることが、当業者には明らかであろう。別々のリポソームへの封入が所望される場合、各リポソームの脂質組成を全く異なるものにして、協調した薬物動態が可能であるようにしてもよい。ビヒクルの組成を変えることによって、封入された薬物の放出速度を適合させて、所望の比率の薬物を腫瘍部位に送達することが可能になるようにすることができる。放出速度を変える手段には、薬物滞留性を向上させるために小胞形成脂質のアシル鎖長を増加させること、リポソーム膜から外に出たPEGなどの表面グラフト親水性ポリマーの交換を制御すること、及び膜にステロールなどの膜硬化剤(membrane-rigidifying agent)を組み入れることが含まれる。第1及び第2の薬物が特定の薬物比で投与されることが所望され、第2の薬物が第1の薬物のリポソーム組成物中にあまり保持されないならば、向上した薬物動態は、第2の薬物を第2のリポソーム組成物に封入することによって達成することができることが、当業者には明らかであるはずである。代替的に、2つ以上の薬剤が同じリポソームに封入されてもよい。
【0128】
封入のための技法は、送達ビヒクルの性質及び封入しようとする治療剤の性質に応じて異なる。例えば、治療剤は、受動的装填法と能動的装填法の両方を使用してリポソームに装填してもよい。リポソームに活性剤を封入する受動的方法は、該薬剤をリポソームの調製中に封入することを含む。これとして、Bangham,et al.(J.Mol.Biol.(1965)12:238)によって記載される受動的捕捉法が挙げられる。この技法は、押出し時に大型単層小胞(LUV)または小型単層小胞(SUV)に変換することができる多層小胞(MLV)の形成をもたらす。受動的封入の別の適切な方法として、Deamer and Bangham(Biochim.Biophys.Acta(1976)443:629)によって記載されるエーテル注入技法、及びSzoka and Paphadjopolos(P.N.A.S.(1978)75:4194)によって記載される逆相蒸発技法が挙げられる。加えて、受動的封入の別の適切な方法は、リポソームの形成後の受動的平衡化を含む。この方法は、予め形成されたリポソームを、変化させたまたは非周囲(温度、圧力などに基づく)条件下でインキュベートすること、及び治療剤をリポソームの外部に添加することを含む。治療剤は、次いでリポソーム膜を通してリポソームの内部で平衡化する。次いで、リポソームを周囲条件に戻し、存在する場合には、封入されていない治療剤を、透析または別の適切な方法を介して除去する。
【0129】
封入の能動的方法として、米国特許第5,616,341、5,736,155、及び5,785,987号に記載されているpH勾配装填技法、ならびに能動的金属装填が挙げられる。pH勾配装填の一方法は、クエン酸塩を4.0のpHの内部緩衝液及び中性の外部緩衝液として利用するクエン酸塩ベースの装填方法である。リポソームを通したpH勾配を確立及び維持するために用いられる他の方法は、リポソーム膜に挿入し、プロトンと交換して膜を通してイオンを輸送することができるイオノフォアの使用を含む(米国特許第5,837,282号参照)。遷移金属を利用して、イオノフォアの非存在下で錯体形成を介してリポソーム中への薬物の取り込みを駆動する別の技法も使用されてもよい。この技法は、薬物の取り込みを駆動するのに、pH勾配の確立ではなく薬物-金属錯体の形成に依存する。
【0130】
難水溶性化合物の好ましい封入方法は当業者に公知であり、例えば、米国特許第9,737,485、10,507,182、及び10,722,467号に記載されている。そのような方法では、封入しようとする薬剤を装填溶媒に溶解させ、得られた溶液を装填助剤を含むリポソームの懸濁液に添加して、装填しようとする薬剤を非結晶質固体として含む混合物を得るか、または装填しようとする薬剤を非結晶質固体形態として用意し、それを装填助剤を含むリポソームの懸濁液に添加する。難水溶性化合物の他の好ましい封入方法は、Li et al.,Pharmaceutics(2019),11,465に記載されている。
【0131】
2つ以上の封入薬剤を含有するリポソーム製剤を調製するために、受動的及び能動的捕捉法を合わせて行うこともできる。
【0132】
装填助剤
幾つかの実施形態において、装填助剤は、イオン性装填助剤であってもよい。幾つかの実施形態において、装填助剤は、硫酸塩、スクロースオクタ硫酸塩、またはクエン酸塩である。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムなど、またはそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、クエン酸ナトリウムなど、またはそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)である。幾つかの実施形態において、装填助剤は、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)である。幾つかの実施形態において、装填助剤は、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)である。幾つかの実施形態において、装填助剤は、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)である。幾つかの実施形態において、装填助剤は、クエン酸ナトリウムである。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤が使用される。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、イオン性装填助剤である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸塩、スクロースオクタ硫酸塩、またはクエン酸塩である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、クエン酸アンモニウム、及びクエン酸ナトリウムなど、またはそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、クエン酸ナトリウムなど、またはそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、硫酸アンモニウム(AS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)である。幾つかの実施形態において、第2の装填助剤は、クエン酸ナトリウムである。幾つかの実施形態において、第1の装填助剤はスクロースオクタ硫酸カリウム(KSOS)であり、第2の装填助剤はクエン酸ナトリウムである。
【0133】
装填溶媒
幾つかの実施形態において、装填溶媒は、有機溶媒である。幾つかの実施形態において、有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒である。幾つかの実施形態において、装填溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0134】
使用方法
提供するのはまた、治療有効量のBcl阻害剤を送達するための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を対象に投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0135】
提供するのはまた、過剰増殖性障害を治療するための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含む、方法である。
【0136】
幾つかの実施形態において、過剰増殖性障害は、がんである。幾つかの実施形態において、過剰増殖性障害は、固形がんまたは血液がんである。幾つかの実施形態において、過剰増殖性障害は、固形がんである。幾つかの実施形態において、固形がんは、結腸直腸癌または小細胞肺癌である。幾つかの実施形態において、固形がんは、結腸直腸癌である。幾つかの実施形態において、固形がんは、小細胞肺癌である。幾つかの実施形態において、過剰増殖性障害は、血液がんである。幾つかの実施形態において、血液がんは、多発性骨髄腫(MM)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、T細胞前リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性新生物(MPN)、及びリンパ腫からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、血液がんは、多発性骨髄腫(MM)である。幾つかの実施形態において、血液がんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。幾つかの実施形態において、血液がんは、急性骨髄性白血病(AML)である。幾つかの実施形態において、血液がんは、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)である。幾つかの実施形態において、血液がんは、T細胞前リンパ球性白血病である。幾つかの実施形態において、血液がんは、慢性リンパ球性白血病(CLL)である。幾つかの実施形態において、血液がんは、慢性骨髄性白血病(CML)である。幾つかの実施形態において、血液がんは、骨髄増殖性新生物(MPN)である。幾つかの実施形態において、血液がんは、リンパ腫である。幾つかの実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。幾つかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、皮膚B細胞リンパ腫(CBCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及び濾胞性リンパ腫(FL)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、皮膚B細胞リンパ腫(CBCL)である。幾つかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。幾つかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、マントル細胞リンパ腫(MCL)である。幾つかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。幾つかの実施形態において、非ホジキンリンパ腫(NHL)は、濾胞性リンパ腫(FL)である。
【0137】
提供するのはまた、治療有効量のBcl阻害剤の投与に関連する血小板減少症の発生率または重症度を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を対象に投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤を投与することによって被る血小板減少症の発生率または重症度が、非リポソーム形態のBcl阻害剤を投与することによって被る血小板減少症の発生率または重症度よりも低く;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0138】
提供するのはまた、治療効果を達成するために対象に投与されるBcl阻害剤の総用量を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
治療効果を達成するのに必要なリポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときに同じ治療効果を達成するのに必要なBcl阻害剤の総量より少ない、
方法である。
【0139】
提供するのはまた、過剰増殖性障害における治療効果を達成するために対象に投与されるBcl阻害剤の総用量を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
治療効果を達成するのに必要なリポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときに同じ治療効果を達成するのに必要なBcl阻害剤の総量より少ない、
方法である。
【0140】
提供するのはまた、それを必要とする対象に投与されるBcl阻害剤への曝露の対象間変動性を低減させるための方法であって、前記対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
投与されるリポソーム組成物中のBcl阻害剤への曝露の対象間変動性が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤への曝露の対象間変動性よりも小さく;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0141】
提供するのはまた、対象におけるBcl阻害剤の半減期を増加させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中で投与されたときのBcl阻害剤の半減期が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の半減期よりも長い、
方法である。
【0142】
提供するのはまた、対象におけるBcl阻害剤の投薬回数を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中で投与されるBcl阻害剤の投薬回数が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の投薬回数よりも少なく;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0143】
提供するのはまた、治療有効量のBcl阻害剤の投与に関連する1つ以上の有害事象の発生率または重症度を低減させるための方法であって、対象に1つ以上のリポソームを含むリポソーム組成物を投与することを含み、1つ以上のリポソームの各々が、
(a)第1の脂質及び第1のステロールを含む脂質二重層;
(b)第1の装填助剤及び第1の溶媒を含む内部媒体;ならびに
(c)前記リポソームの内部媒体に封入されたBcl阻害剤
を含み;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤を投与することによって被る前記1つ以上の有害事象の発症率または重症度が、非リポソーム形態でBcl阻害剤を投与することによって被る前記1つ以上の有害事象の発症率又は重症度よりも低く;
リポソーム組成物中のBcl阻害剤の総量が、非リポソーム形態で投与されたときのBcl阻害剤の治療有効量と等しい、
方法である。
【0144】
本発明の組成物は、ヒトを含めた温血動物だけでなく、家畜及び/または鳥類の種にも投与されてもよい。医薬組成物に加えて、獣医学的使用に適した製剤を調製し、対象に適した様式で投与してもよい。好ましい獣医学的対象として、哺乳動物種、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、及び家禽が挙げられる。対象として、実験動物、例えば、特に、ラット、ウサギ、マウス、及びモルモットも挙げられてもよい。ヒトの病気の治療の場合、適格な医師が、確立されたプロトコルを使用して、投与の用量、スケジュール、及び経路に関して、本発明の組成物がどのように利用されるべきかを決定することになろう。本発明の送達ビヒクル組成物に封入された薬剤が対象の健常組織に対して毒性の低減を呈するのであれば、そのような用途は、用量の漸増を利用することもできる。
【0145】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、非経口的に、すなわち、動脈内、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内に投与される。より好ましくは、医薬組成物は、ボーラス注入によって静脈内または腹腔内に投与される。例えば、Rahman,et al.、米国特許第3,993,754号;Sears、米国特許第4,145,410号;Papahadjopoulos,et al.、米国特許第4,235,871号;Schneider、米国特許第4,224,179号;Lenk,et al.、米国特許第4,522,803号;及びFountain,et al.、米国特許第4,588,578号を参照されたい。
【0146】
他の方法では、本発明の医薬調製物は、組織へ調製物を直接適用することによって標的組織と接触させることができる。適用は、局所的、「開放的」、または「閉鎖的」処置によって行うことができる。「局所的」とは、皮膚、中咽頭、外耳道などの環境に曝露された組織への医薬調製物の直接適用を意味する。「開放的」処置は、患者の皮膚を切開すること、及び医薬調製物が適用される下層組織を直接可視化することを含む処置である。これは一般に、肺にアクセスするための開胸術、腹部内臓にアクセスするための腹式開腹術、または標的組織への他の直接的な外科的アプローチなどの外科的処置によって遂行される。「閉鎖的」処置は、内部標的組織を直接可視化しないが、皮膚の小さな傷を通して器具を挿入することによってアクセスする侵襲的処置である。例えば、調製物は、針洗浄(needle lavage)によって腹膜に投与されてもよい。同様に、医薬調製物は、脊髄の脊髄麻酔またはメトリザミド(metrazamide)画像化に一般的に実施されるように、腰椎穿刺し、続いて患者を適切にポジショニングし、その間に注入することによって、髄膜または脊髄に投与されてもよい。代替的に、調製物は、内視鏡装置を通して投与されてもよい。
【0147】
本発明の送達ビヒクルを含む医薬組成物は、標準的な技法に従って調製され、安定性を高めるための糖タンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどを含む、水、緩衝水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロースなどを含んでもよい。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌されてもよい。得られた水溶液は、使用のために包装されてもよく、または無菌条件下で濾過され、凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌水溶液と合わされる。本組成物は、生理的条件に近づけることが必要とされる場合、薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含有してもよい。加えて、送達ビヒクル懸濁液は、保管中のフリーラジカル及び脂質過酸化損傷に対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでもよい。α-トコフェロールなどの親油性フリーラジカル失活剤、及びフェリオキサミンなどの水溶性鉄特異的キレート剤が適切である。
【0148】
医薬製剤中の送達ビヒクルの濃度は、約0.05重量%未満から、通常は約2~5重量%または少なくとも約2~5重量%から、10~30重量%程度までなど広く変動し得、選択される特定の投与様式に従って、主に、液体容量、粘度などによって選択されることになる。例えば、濃度は、治療に関連する添加液を少なくするために増加されてもよい。代替的に、刺激性脂質からなる送達ビヒクルを低濃度に希釈して、投与部位での炎症を軽減させてもよい。診断の場合は、投与される送達ビヒクルの量は、使用される特定のラベル、診断される疾患状態、及び臨床医の判断に依存することとなる。
【0149】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、静脈内投与される。送達ビヒクル製剤の投薬量は、薬物対脂質の比率、ならびに患者の年齢、体重、及び状態に基づいた投与医師の意見に依存することとなる。
【0150】
医薬組成物に加えて、獣医学的使用に適した製剤を調製し、対象に適した様式で投与してもよい。好ましい獣医学的対象として、哺乳動物種、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、及び家禽が挙げられる。対象として、実験動物、例えば、特に、ラット、ウサギ、マウス、及びモルモットも挙げられてもよい。
【0151】
2つ以上の活性剤を含有する単一の組成物が含まれる場合、本質的に上記の手順に従う。薬剤が別々の送達ビヒクル組成物で投与される場合、投与は、所望の比率が維持されるように時間を合わせるべきである。典型的には、これは、計算された割合で組成物を同時に投与することによって遂行することができる。
【0152】
キット
本発明の組成物中の治療剤は、各治療剤が適切な送達ビヒクルと安定に会合している個々の組成物中で別々に製剤化されてもよい。これらの組成物は、投与される治療剤の比率が治療の標的で維持されるように送達ビヒクルの薬物動態が協調する限り、対象に別々に投与することができる。よって、別々の容器中に、少なくとも第1の治療剤と安定に会合した送達ビヒクルを含む第1の組成物、及び第2の容器中に、少なくとも1つの第2の治療剤と安定に会合した送達ビヒクルを含む第2の組成物を含むキットを構築することが有用である。それらの容器を、次いでキットに包装することができる。
【0153】
キットは、対象への組成物の投与様式に関する使用説明書も含み、それは、少なくとも投与される各組成物の量の比率の説明を含む。代替的に、または追加的に、キットは、各容器中の組成物の量が予め測定されて一方の容器の内容物と他方の内容物との組み合わせが正しい比率を表すように構築される。代替的に、または追加的に、容器は、可視の目盛りに従って適切な量の分配を可能にする計量目盛りで印を付けてもよい。容器は、それ自体が投与に使用可能であってもよく、例えば、キットは、別々のシリンジ中に適切な量の各組成物を含有してもよいであろう。予め製剤化された正しい比率の治療剤を含む製剤も、このように包装して、キットに予め包装された注射器から製剤が直接投与されるようにしてもよい。
【実施例】
【0154】
以下の実施例は、本発明の幾つかの実施形態を例示説明する。以下の実施例及び調製物は、当業者がより明確に理解し、本発明のこれらの及び他の実施形態を実施することを可能にするために提供するものである。それらは、本発明の範囲を限定するものとして考えられるべきではなく、単にそれらの例示的かつ代表的なものとして考えられるべきである。
【0155】
実施例1.リポソーム製剤化の一般的手順
薬物化合物を含有するリポソームは、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、またはスクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、またはクエン酸アンモニウムを装填助剤として含有するDSPC/コレステロール/PEG-DSGリポソームに薬物化合物をリモート装填することによって生成した。
【0156】
A.装填助剤の調製
250mM硫酸アンモニウムの装填助剤溶液は、250mMの標的濃度に到達するように固体の硫酸アンモニウムを脱イオン(DI)水に溶解させてによって調製した。これによって、5.2のpHを有する溶液が得られた。この溶液を、0.2μmの膜を通してろ過した。
【0157】
300mMクエン酸アンモニウムの装填助剤溶液は、300mMの目標濃度に到達するように固体のクエン酸アンモニウム二塩基性をDI水に溶解させることによって調製した。これによって、4.9のpHを有する溶液が得られた。この溶液を、0.2μmの膜を通してろ過した。
【0158】
0.5~1.0Nトリエチルアミン-SOSの装填助剤溶液は、カリウムSOSから調製した。少量のバッチについては、5gのカリウムSOSを12mLのDI水に65℃で溶解させ、ガラス繊維膜でろ過した。次いで、温かい溶液を、3M HClで前処理した約30mLの充填50W-X8ビーズを含有するDowexカラムの上部に負荷し、DI水で完全に洗浄した。枯渇後、DI水を負荷してSOS溶液を溶出した。カラムの底部に接続されたフロー導電率計を通して、150mS/cm超の導電率を有する溶出液の画分を収集した。得られたH-SOS溶液を、pHが6.5±0.5に達するまでトリエチルアミンで直ちに滴定した。トリメチルアミン-SOS溶液を、0.2μmの膜でろ過した。SOS濃度は、ICP-OES(5800 VDV、Agilent)での硫黄元素分析によって決定した。ろ過した溶液は4℃で保管した。
【0159】
0.5~1.0NアンモニウムSOSの装填助剤は、溶出したH-SOS溶液を濃縮アンモニアで直ちに滴定して6.5±0.5の目標pHに到達させたことを除いて、上記と同様にして調製した。
【0160】
0.5~1.0NトリエタノールアミンのSOS装填助剤溶液は、溶出したH-SOS溶液をトリエタノールアミンで直ちに滴定して6.5±0.5の目標pHに到達させたことを除いて、上記と同様にして調製した。
【0161】
すべてのSOS溶液の調製は、比例的に25~100倍にスケールアップすることができる。
【0162】
B.脂質発泡体の調製及びリポソームの押出
DSPC、コレステロール、及びポリマーコンジュゲート脂質を計量し、密閉したガラスバイアルまたはボトル中でクロロホルムに溶解させた。
【0163】
濃縮脂質の粘性クロロホルム溶液を形成する際に、真空にして脂質発泡体を数秒で生成した。クロロホルムは、Buchi真空ポンプシステム(V-512、Buchi)に脂質発泡体を入れて加熱するかまたは周囲温度で一晩置くことによって完全に除去した。乾燥させた発泡体は、直ちに使用しないのであれば-20℃で保管した。
【0164】
脂質発泡体は、水浴中で65℃に予熱した装填助剤の水溶液を添加することによって水和させた。加熱した溶液を脂質発泡体に添加した。20~30秒のサイクルでボルテックスし、続いて2~3分間加熱することによって多層小胞(MLV)を作製した。
【0165】
使用する装填助剤に応じて、250mM硫酸アンモニウムを、300mMクエン酸アンモニウム、または0.5~1Nトリエチルアミン-SOS、または0.5~1Nアンモニウム-SOS、または0.5~1Nトリエタノールアミン-SOSに置き換えることができる。
【0166】
65℃に維持された10mLジャケット付きリポソーム押出機(LIPEX(登録商標))を使用して、200nmの PCTE(ポリカーボネートトラックエッチング)膜を通して20~100 psiでMLVを1回押出した。次いで、得られたMLVを、65℃に維持された10mLジャケット付きリポソーム押出機を使用して、100nmのPCTE膜を通して50~200psiで7回押出した。リポソーム製剤が低温での取り扱い及び保管を必要とするならば、装填助剤及び凍結保護物質としてのショ糖を用いてリポソームを押出すことができる。
【0167】
小規模の容量(すなわち<20ml)の場合、250mM硫酸アンモニウムまたは300mMクエン酸アンモニウムを含有する押出されたリポソームは、Sephadex G25カラム(PD-10カラム、Cytiva)に1mL/8.3mLのベッドボリューム比で負荷し、リポソーム溶出画分を<50μS/cmの導電率で収集することによって、緩衝液を9%w/vデキストロースに交換し、それによって封入されていない装填助剤を除去した。
【0168】
小規模の容量の場合、0.5~1Nトリエチルアミン-SOS、または0.5~1Nアンモニウム-SOS、または0.5~1Nトリエタノールアミン-SOSを含有する押出されたリポソームは、Sepharose CL4Bカラムに1mL/10mLのベッドボリューム比で負荷し、リポソーム溶出画分を<20μS/cmの導電率で収集することによって、緩衝液を9~18%w/vデキストロース(浸透圧のバランスを取るための装填助剤の規定濃度に依存する)に交換し、それによって封入されていない装填助剤を除去した。
【0169】
より大きな規模の容量の場合、250mM硫酸アンモニウム、または300mMクエン酸アンモニウム、または0.5~1Nトリエチルアミン-SOS、または0.5~1Nアンモニウム-SOS、または0.5~1Nトリエタノールアミン-SOSを含有する押出されたリポソームは、100kDaのMWCO Hydrosart PES膜でのタンジェンシャルフローろ過(Sartorius Slice 200)を使用して、緩衝液を9~18%w/vデキストロースの18容量交換で交換した。
【0170】
C.リポソームへの薬物化合物の封入
薬物化合物を20~100mg/mLの濃度でDMSOに溶解させ、調製したリポソームに撹拌しながら滴加し、65℃に加熱して、溶液中の最終薬物濃度が0.2~6.0mg/mLの範囲内となり、最終D/L比が0.1~0.8mol/molの範囲内となるようにした。最終有機溶媒濃度は2~30%の間であった。
【0171】
リポソーム中への薬物の装填が容易になるように、試料を65℃または室温で絶えず撹拌しながらインキュベートした。装填後、試料を氷浴上で冷却した。
【0172】
D.薬物を装填したリポソームの精製
製剤の精製は、100~300kのMWCO(Hydrosart、Sartorius)PES膜を備えたタンジェンシャルフローろ過(Slice 200、Sartorius)を使用して実施した。製剤を最初に50mLに濃縮し、次いで、封入されていない薬物を除去するために、装填手順中と同様の濃度の酸性化(0.01M HClまたはMeSO3H)デキストロースの12~24容量交換で精製した。その後、製剤を5%デキストロースの別の12容量交換で精製した。代替的に、リポソーム製剤の低温保管が必要とされるならば、デキストロースの代わりにショ糖を使用してもよい。最後に、製剤を10~20mg/mlの脂質に濃縮し、収集し、0.22μmのPESシリンジフィルターを通してろ過した。
【0173】
実施例2.化合物9のリポソームへの製剤化
化合物9を含有するリポソームは、硫酸アンモニウム(AS)、スクロースオクタ硫酸アンモニウム(NH4SOS)、スクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEASOS)、スクロースオクタ硫酸トリエタノールアンモニウム(TEA(OH)SOS)、またはクエン酸アンモニウムを装填助剤として含有するDSPC/コレステロール/PEG-DSG(モル比3:2:0.3)リポソームにリモート装填することによって生成した。
【0174】
A.装填助剤の調製
装填助剤溶液は、実施例1に記載したように調製した。
【0175】
B.脂質発泡体の調製及びリポソームの押出
DSPC/コレステロール/PEG-DSG(モル比3:2:0.3)を計量し、密閉したガラスバイアルまたはボトル中で、約60℃の熱を使用して、脂質1g/クロロホルム1mLの濃度でクロロホルムに溶解させた。
【0176】
濃縮脂質の粘性クロロホルム溶液を形成する際に、真空にして脂質発泡体を数秒で生成した。クロロホルムは、Buchi真空ポンプシステム(V-512、Buchi)に脂質発泡体を入れて0.5時間加熱するかまたは周囲温度で一晩置くことによって完全に除去した。乾燥させた発泡体は、直ちに使用しないのであれば-20℃で保管した。
【0177】
脂質発泡体は、水浴中で65℃に予熱した250mM硫酸アンモニウムの水溶液を添加することによって水和させた。加熱した溶液は、脂質50mg/250mM硫酸アンモニウム溶液1mLの濃度で脂質発泡体に添加した。20~30秒のサイクルでボルテックスし、続いて2~3分間加熱することによって多層小胞(MLV)を作製した。
【0178】
使用する装填助剤に応じて、250mM硫酸アンモニウムを、300mMクエン酸アンモニウム、または0.5~1Nトリエチルアミン-SOS、または0.5~1Nアンモニウム-SOS、または0.5~1Nトリエタノールアミン-SOSに置き換えることができる。
【0179】
65℃に維持された10mLジャケット付きリポソーム押出機(LIPEX(登録商標))を使用して、200nmのPCTE(ポリカーボネートトラックエッチング)膜を通して20~100psiでMLVを1回押出した。次いで、得られたMLVを、65℃に維持された10mLジャケット付きリポソーム押出機を使用して、100nmのPCTE膜を通して50~200psiで7回押出した。リポソーム製剤が低温での取り扱い及び保管を必要とするならば、装填助剤及び凍結保護物質としてのショ糖を用いてリポソームを押出すことができる。
【0180】
押出されたリポソームは、0.9%生理食塩水を希釈剤として使用する動的光散乱(Malvern Nano ZS)によって測定したときに、平均流体力学的直径が110nm+/-20nmであった。
【0181】
小規模の容量(すなわち<20ml)の場合、250mM硫酸アンモニウムまたは300mMクエン酸アンモニウムを含有する押出されたリポソームは、Sephadex G25カラム(PD-10カラム、Cytiva)に1 mL/8.3mLのベッドボリューム比で負荷し、リポソーム溶出画分を<50μS/cmの導電率で収集することによって、緩衝液を9%w/vデキストロースに交換し、それによって封入されていない装填助剤を除去した。
【0182】
小規模の容量の場合、0.5~1Nトリエチルアミン-SOS、または0.5~1Nアンモニウム-SOS、または0.5~1Nトリエタノールアミン-SOSを含有する押出されたリポソームは、Sepharose CL4Bカラムに1mL/10mLのベッドボリューム比で負荷し、リポソーム溶出画分を<20μS/cmの導電率で収集することによって、緩衝液を9~18%w/vデキストロース(浸透圧のバランスを取るための装填助剤の規定濃度に依存する)に交換し、それによって封入されていない装填助剤を除去した。
【0183】
より大きな規模の容量の場合、250mM硫酸アンモニウム、または300mMクエン酸アンモニウム、または0.5~1Nトリエチルアミン-SOS、または0.5~1Nアンモニウム-SOS、または0.5~1Nトリエタノールアミン-SOSを含有する押出されたリポソームは、100kDaのMWCO Hydrosart PES膜でのタンジェンシャルフローろ過(Sartorius Slice 200)を使用して、緩衝液を9~18%w/vデキストロースの18容量交換で交換した。
【0184】
C.リポソームへの化合物9の封入
250mM硫酸アンモニウムが装填助剤の場合、化合物9を20~100mg/mLの濃度でDMSOに溶解させ、調製したリポソームに撹拌しながら滴加し、65℃に加熱して、溶液中の最終薬物濃度が0.2~0.8mg/mLの範囲内となり、最終D/L比が0.1~0.8mol/molの範囲内となるようにした。最終DMSO濃度は2~30%の間であった。
【0185】
リポソーム中への薬物の装填が容易になるように、試料を65℃で45分間絶えず撹拌しながらインキュベートした。装填後、試料を氷浴上で冷却した。
【0186】
D.化合物9を装填したリポソームの精製
製剤の精製は、100~300kのMWCO(Hydrosart、Sartorius)PES膜を備えたタンジェンシャルフローろ過(Slice 200、Sartorius)を使用して実施した。製剤を最初に50mLに濃縮し、次いで、封入されていない薬物を除去するために、装填手順中と同様の濃度の酸性化(0.01M HClまたはMeSO3H)デキストロースの12~24容量交換で精製した。その後、製剤を5%デキストロースの別の12容量交換で精製した。代替的に、リポソーム製剤の低温保管が必要とされるならば、デキストロースの代わりにショ糖を使用してもよい。最後に、製剤を10~20mg/mlの脂質に濃縮し、収集し、0.22μmのPESシリンジフィルターを通してろ過した。
【0187】
実施例3:薬物及び脂質のアッセイ
様々な薬物を含有するリポソームの製剤を、実施例1及び2に記載したように調製した。脂質含有量は、リン脂質C及びコレステロールアッセイキット(Fujifilm)ならびにUV分光計(Cytation 5、BioTek Instruments Inc.)を使用して分析した。
【0188】
薬物含有量を決定するために、薬物を装填したリポソームを、最初に70%エタノール及び100mM HClを含有する可溶化混合物中に可溶化した。化合物9粉末及び同じ可溶化混合物を用いて検量線を作成した。薬物は、310nmでの吸光度を測定するUV分光計(Cytation 5、BioTek Instruments Inc.)を使用して検出した。
【0189】
薬物収率は、製剤の精製後の薬物回収率である(すなわち、脂質を考慮に入れない)。それは、以下のように計算した:
薬物収量(%)=最終製剤における薬物濃度/対照における薬物濃度*100
【0190】
対照は、同じ製剤であったが、精製しなかった(すなわち、回収率は100%)。
【0191】
封入効率(EE)は、以下のように計算する:
EE(%)=最終製剤における薬物対脂質比/対照における薬物対脂質比*100
【0192】
例えば、薬物対脂質比が0.10(対照)であり、最終製剤が精製後に0.05の薬物対脂質比を提示するならば、EEは50%となる(0.05/0.1*100)。
【0193】
これらの製剤の組成を表1に示す。これらの脂質の特性決定(例えば、封入効率、リポソームサイズ)を以降の表2に提示する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【0194】
実施例4.薬物を装填したリポソームの製剤及び薬物動態特性評価
実験デザイン
雌のB6D2F1/JマウスをJackson Laboratoryから購入し、試験開始の7日前に馴化させた。実験期間中、マウスは、オートクレーブ処理したAllentown換気ケージ中に動物3匹/ケージで収容した。ケージは隔週で交換した。ケージに供給した環境エンリッチメントは、Ancare製のNestlets、Envigo 7097 1/4”トウモロコシ穂軸敷料上のBio-Serv製の透明な着色ポリカーボネートMouse Iglooであった。すべてのエンリッチメントは、ケージをオートクレーブ処理する前にケージに添加した。マウスには、Envigo Teklad Global Rodent Diet 2018を給餌した。このげっ歯類用餌は、ワイヤ蓋のホッパー内に保持し、隔週で交換した。逆浸透水は、Avidity Scienceの自動給水バルブを通して25~50ml/分の流量で供給した。照明の環境制御及び温度、湿度及び空気流のモニタリングは、WatchDogによって行った。動物収容室中の明暗周期は12時間点灯及び12時間消灯に設定した。温度、湿度及び空気流は、BCCRC設備によって維持し、制御した。
【0195】
試験/対照品の保管
すべての試験/対照品(TA/CA)は、すぐに注入できる状態で用意し、2~8℃で保管した。
【0196】
用量の投与
個々のマウスの体重に基づいて、処方された用量(10mg/kg)を動物に投与するのに必要とされる容量を、28G針を用いてマウスに注射した。注射容量は200μL/マウス20gであった。マウスは、静脈注射中に短時間(30秒未満)拘束した。静脈の拡張は、動物を熱ランプ下に1~2分間保持することによって達成した(SOP-AF-018の現行改訂版)。
【0197】
データ収集
薬物動態サンプリング
マウスは個々に計量した。マウスに試験品/対照品を注射し、試験分類表に従って採血した。採血のために、マウスをイソフルラン、続いてCO2吸入で屠殺した(SOP-AF-042)。採血は、心臓穿刺によって行った(SOP-AF-002の現行改訂版)。心臓穿刺のために、最後の呼吸時にマウスを吸入チャンバーから取り出し、25G針での心臓穿刺によっておよそ500μLを採血し、適切なマイクロティナチューブ(K2EDTA)に入れた。試料を1300gで15分間遠心分離することによって血漿を分離し、次いでピペットで取り出し、ラベル付きバイアルに入れた。血漿を-20℃で凍結させ、残りの投薬物質は、試料を出荷するまで約4℃で保管した。
【0198】
薬物血漿中濃度の決定
血漿試料を酸性化メタノールで希釈し、激しくボルテックスした。次いで、血漿/メタノール試料を10000rcfで10分間8℃で遠心分離した。上清をPhenomenex Synergi Fusion-RP 2.5μm 50×3mmカラム上に注入し、10mM酢酸アンモニウム緩衝液及びアセトニトリルの勾配で流した。薬物は、ダイオードアレイ検出器を使用して300nmの波長で検出した。血漿中薬物濃度は、1~40μg/mLの範囲の線形検量線に対して計算した。
【0199】
リポソーム製剤
本明細書に記載の薬物動態試験に使用したすべてのリポソームは、DSPC/コレステロール/PEG化(56/38/5.6mol%)を含んでおり、実施例1~2に従って調製した。
【表3】
【表4】
【0200】
実施例5.化合物2のリポソーム製剤の血漿中安定性の決定
血漿中安定性は、実施例4に記載したように収集された血漿中の様々な時点での化合物2の濃度を測定することによって決定した。すべてのリポソーム製剤は、実施例1~2に記載したようにDSPC/コレステロール/PEG化(56/38/5.6mol%)を含んでいた。製剤1~4は、250mM ASを装填助剤として使用して調製した。製剤5は、500mM ASを装填助剤として使用して調製した。2%DMSOを用いて化合物2を製剤1、4、及び5のリポソーム中に装填した。10%DMSOを用いて化合物2を製剤2及び3のリポソーム中に装填した。
【0201】
図1Aは、様々なリポソーム製剤を使用した化合物2の正規化血漿中濃度の経時的変化を、遊離薬物の使用と比較して示す。
【0202】
図1Bは、本開示の例示的リポソーム製剤を使用した化合物2の正規化血漿中濃度の経時的変化を、以前に公開された方法に従って調製されたリポソーム製剤の使用と比較して、また遊離薬物の使用と比較して示す。「Merrimack」と表示した製剤は、WO2017/123616に記載の手順に従って、TEASOS(0.43N)を装填助剤として使用してDMSOなしで装填された、DSPC/コレステロール/PEG化(56/38/5.6mol%)を含むリポソームを含んでいた。
【0203】
実施例6.化合物9のリポソーム製剤の血漿中安定性の決定
血漿中安定性は、実施例4に記載したように収集された血漿中の様々な時点での化合物9の濃度を測定することによって決定した。すべてのリポソーム製剤は、実施例1~2に記載したように、DSPC/コレステロール/PEG化(56/38/5.6mol%)を含んでいた。製剤1は、250mM ASを装填助剤として使用した。製剤2は、500mM ASを装填助剤として使用した。製剤3は、0.5N TEASOSを装填助剤として使用した。製剤4は、0.5N NH4SOSを装填助剤として使用した。
【0204】
図2Aは、様々なリポソーム製剤を使用した化合物9の正規化血漿中濃度の経時的変化を示す。
【0205】
図2Bは、本開示の例示的リポソーム製剤を使用した化合物9の正規化血漿中濃度の経時的変化を、以前に公開された方法に従って調製されたリポソーム製剤の使用と比較して、また遊離薬物の使用と比較して示す。「Merrimack」と表示した製剤は、WO2017/123616に記載の手順に従って、TEASOS(0.43N)を装填助剤として使用してDMSOなしで装填された、DSPC/コレステロール/PEG化(56/38/5.6mol%)を含むリポソームを含んでいた。
【0206】
実施例7:化合物9の血小板減少活性に及ぼすリポソーム封入の作用
実験デザイン
雌のB6D2F1/JマウスをJackson Laboratoryから購入し、試験開始の7日前に馴化させた。実験期間中、マウスは、オートクレーブ処理したAllentown換気ケージ中に動物3匹/ケージで収容した。ケージは隔週で交換した。ケージに供給した環境エンリッチメントは、Ancare製のNestlets、Envigo 7097 1/4”トウモロコシ穂軸敷料上のBio-Serv製の透明な着色ポリカーボネートMouse Iglooであった。すべてのエンリッチメントは、ケージをオートクレーブ処理する前にケージに添加した。マウスには、Envigo Teklad Global Rodent Diet 2018を給餌した。このげっ歯類用餌は、ワイヤ蓋のホッパー内に保持し、隔週で交換した。逆浸透水は、Avidity Scienceの自動給水バルブを通して25~50ml/分の流量で供給した。照明の環境制御及び温度、湿度及び空気流のモニタリングは、WatchDogによって行った。動物収容室中の明暗周期は12時間点灯及び12時間消灯に設定した。温度、湿度及び空気流は、BCCRC設備によって維持し、制御した。
【0207】
試験/対照品の保管
すべての試験/対照品(TA/CA)は、すぐに注入できる状態で用意し、2~8℃で保管した。
【0208】
用量の投与
個々のマウスの体重に基づいて、処方された用量(10mg/kg)を動物に投与するのに必要とされる容量を、28G針を用いてマウスに注射した。注射容量は200μL/マウス20gであった。マウスは、静脈注射中に短時間(30秒未満)拘束した。静脈の拡張は、動物を熱ランプ下に1~2分間保持することによって達成した(SOP-AF-018の現行改訂版)。
【0209】
データ収集
採血
マウスを計量し、その試験群に無作為に分けた。伏在静脈採血中にマウスをファルコンチューブ内に拘束した。静脈の拡張は、動物を熱ランプ下に1~2分間保持することによって達成し、脚を剃り、イソプロパノールで拭いた。ワセリンを伏在静脈に塗り、閉塞させた。90度の角度で25G針を使用して静脈を貫通させ、50~75μLの血液をMicrovette(登録商標)CB 300 K2 EDTAチューブ内に収集し、EDTAピペットチップで8~10回混合して血餅が確実に存在しないようにし、氷上に置いた。動物をそのケージに戻す前に、静脈を押さえて止血した(SOP-AF-001)。
【0210】
最終採血のために、マウスをイソフルラン、続いてCO2吸入で屠殺した(SOP-AF-042)。採血は、心臓穿刺によって行った(SOP-AF-002の現行改訂版)。心臓穿刺のために、最後の呼吸時にマウスを吸入チャンバーから取り出し、25G針での心臓穿刺によっておよそ500μLを採血し、適切なマイクロティナチューブ(K2EDTA)に入れた。
【0211】
血液学のために、全血をK2 EDTAチューブに入れ、最低でも8~10倍穏やかに反転させた。試料が凝固していないことが確実になるまで試料を反転させ、氷上に置いた。採血から30分以内に試料を全血球数(CBC)分析に送った。CBC分析は、Element HT5上で試料採取から2時間以内に完了した。試料は二重で実行した。20μLの全血を480μLのV-52 D Diluentで希釈し、3分間静置し、Element HT5上で実行した。試料の実行に関する完全な指示については、作業指示書「Element HT5 Auto Hematology Analyzer」を参照されたい。
【0212】
薬物血漿中濃度の決定
血漿試料を酸性化メタノールで希釈し、激しくボルテックスした。次いで、血漿/メタノール試料を10000rcfで10分間8℃で遠心分離した。上清をPhenomenex Synergi Fusion-RP 2.5μm 50×3mmカラム上に注入し、10mM酢酸アンモニウム緩衝液及びアセトニトリルの勾配で流した。薬物は、ダイオードアレイ検出器を使用して300nmの波長で検出した。血漿中薬物濃度は、1~40μg/mLの範囲の線形検量線に対して計算した。
【0213】
リポソーム製剤
本明細書に記載の薬物動態試験に使用したすべてのリポソームは、DPSC/コレステロール/PEG化(56/38/5.6mol%)及び化合物9を含んでおり、実施例1~2に従って調製した。
【0214】
図3Aは、様々な用量の遊離薬物、またはリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む様々な用量のリポソーム製剤の投与後の平均血小板数の経時的変化を比較する。
【0215】
図3Bは、様々な用量の遊離薬物、またはリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む様々な用量のリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【0216】
図4Aは、様々な用量の遊離化合物9の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【0217】
図4Bは、リポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む様々な用量のリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【0218】
実施例8:薬物滞留性に及ぼすリポソーム組成物の作用
実験デザイン
DHSM:コレステロール:PEG 53:45:2(薬物:脂質比0.1)を含むリポソームは、DMSO装填助剤を用いて上記の方法を使用して生成され、90%超の封入効率を示した。DSPC:コレステロール:PEG 57:38:5.6(薬物:脂質比0.1)のリポソームも、DMSO装填助剤を用いて上記の方法を使用して作製され、90%超の封入効率を示した。薬物動態試験及び薬物滞留性試験は、先に記載したように行った。DHSM:ジヒドロスフィンゴミエリン;PEG:1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリ(エチレングリコール-2000)(DSG-PEG2000及びPEG(2000)-ジステアロイルグリセロールとしても知られる)
【0219】
図5Aは、様々なリポソーム製剤を使用した化合物9(Bcl-22B)の正規化血漿中濃度の経時的変化を示す。
【0220】
図5Bは、様々なリポソーム製剤を使用した化合物9(Bcl-22B)の薬物対脂質比の経時的変化を示す。
【0221】
実施例9:血小板減少症に及ぼすリポソームPEGの作用
様々なリポソームを、先に記載した方法と同様の方法を使用して作製した。異なるリポソーム組成物は以下を含む:DSPC/Chol/β-シトステロール/5.6%PEG-DSG;DSPC/Chol/2%PEG-DMG、DSPC/Chol/5.6%PEG-DSG、EPC/Chol/5.6%PEG-DSG、及びDSPC/Chol/5.6%PEG-DSG/TEASOS。化合物9を、先に記載したようにこれらのリポソーム中に装填した。
【0222】
図6Aは、異なる脂質組成のリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含むリポソーム製剤の投与後の正規化された血小板数の経時的変化を比較する。
【0223】
図6Bに示すように、リポソーム中のPEG-DSGの量を下げると、血小板数減少が減少する。
【0224】
図6Cに示すように、リポソーム中のPEG-DMGの量を下げると、血小板数減少が有意に減少した。
【0225】
図6Dのグラフは、1%PEG-DMGを含有するリポソームが、1%PEG-DSGを含有するリポソームよりも多くの量の血小板減少をもたらしたことを示す。
【0226】
図6Eのグラフは、0.5%PEG-DSGを含有するリポソームと0.5%PEG-DMGを含有するリポソームが同様の血小板減少をもたらしたことを示す。
【0227】
実施例10.血小板保護に関する遊離BCL阻害剤対リポソームBCL阻害剤の比較
低用量の硫酸アンモニウム(LAS)及びスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含めた様々な装填助剤を使用してリポソームを生成し、化合物2(11B)、化合物7(11G)、または化合物9(22B)を装填した。血小板保護試験を実行して、これらのリポソーム製剤の作用を対応する遊離薬物(FD)に対して比較した。
図7A~7Gにおいて、以下の通りである。
【0228】
図7Aに示すように、低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む1mg/kgで投薬されたリポソーム製剤は、0.1mg/kgの遊離薬物(FD)と比較したときに、10倍超の量の血小板保護をもたらした。
【0229】
図7Bに示すように、低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む2mg/kgで投薬されたリポソーム製剤は、0.2mg/kgの遊離薬物(FD)と比較したときに、10倍超の量の血小板保護をもたらした。
【0230】
図7Cに示すように、低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含む3mg/kgで投薬されたリポソーム製剤は、0.3mg/kgの遊離薬物と比較したときに、10倍超の量の血小板保護をもたらした。
【0231】
図7Dに示すように、低用量の硫酸アンモニウム(LAS)またはスクロースオクタ硫酸トリエチルアンモニウム(TEA-SOS)を含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物9を含むリポソーム製剤は、遊離薬物と比較したときに、およそ20倍の血小板保護を呈した。
【0232】
図7Eのグラフは、3mg/kgで投薬されたDHSM:コレステロール:PEG(53:45:2)及び化合物9(「22B」)(薬物:脂質比0.1)を含むリポソームが、3mg/kgで投薬されたDSPC:コレステロール:PEG(57:38:5.6)及び化合物9(「22B」)(薬物:脂質比0.1)を含むリポソームと比較して良好な血小板保護を実証することを示す
【0233】
図7Fは、化合物7が試験した用量で十分に耐容性があることを示す。
【0234】
図7Gは、DSPCを含有するリポソームの内部媒体に封入された化合物2を含むリポソーム製剤が、良好な血小板保護を実証することを示す。
【0235】
実施例11.化合物7のリポソーム製剤の血漿中安定性に及ぼす酸洗浄精製の作用
血漿中安定性は、実施例4に記載したように収集された血漿中の様々な時点での化合物7の濃度を測定することによって決定した。両方のリポソーム製剤は、実施例1A及び1Bに記載したように、DSPC/コレステロール/PEG化(59/39/2mol%)を含んでいた。装填助剤は500mM ASであり、D/L比は両方のリポソーム製剤で0.4であった。
【0236】
酸洗浄製剤は、本明細書中に記載の特定のパラメータを用いて、実施例1A及び1Bに一般的に記載した手順に従って精製した。製剤の精製は、100~300kのMWCO(Hydrosart、Sartorius)PES膜を備えたタンジェンシャルフローろ過(Slice 200、Sartorius)を使用して実施した。製剤を最初に50mLに濃縮し、次いで5wt%デキストロ―ス水溶液中10mMメタンスルホン酸の12容量交換で精製した。その後、製剤を5%デキストロースの別の12容量交換で精製した。最後に、製剤を10~20mg/mlの脂質に濃縮し、収集し、0.22μmのPESシリンジフィルターを通してろ過した。
【0237】
非酸洗浄製剤は、100~300kのMWCO(Hydrosart、Sartorius)PES膜を備えたタンジェンシャルフローろ過(Slice 200、Sartorius)を使用して精製した。製剤を最初に50mLに濃縮し、次いで5%デキストロースの12容量交換で精製し、10~20mg/mlの脂質に濃縮し、収集し、0.22μmのPESシリンジフィルターを通してろ過した。
【0238】
図8は、酸洗浄ステップを用いてまたは用いずに調製された本開示の例示的リポソーム製剤を使用した化合物7の正規化血漿中濃度の経時的変化を示す。
図8は、酸洗浄精製ステップがあったリポソームが、酸洗浄精製ステップがなかったリポソームよりも優れた薬物動態特性(例えば、化合物7の方が遅い放出)を呈することを示す。
図8に示すように、酸洗浄精製ステップがなかったリポソームは、最初の時間帯での50%超の薬物損失によって見られるように、薬物のバースト放出をもたらした。対照的に、酸で予め洗浄されたリポソームは、所望される経時的な薬物持続放出を呈した。
【国際調査報告】