IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウニべルシタ デッリ ストゥーディ デ メッシーナの特許一覧 ▶ アルマ マーテル ステューディオラム − ウニヴェルスィタ ディ ボローニャの特許一覧

<>
  • 特表-標的ゲノムを検出するための方法 図1
  • 特表-標的ゲノムを検出するための方法 図2
  • 特表-標的ゲノムを検出するための方法 図3
  • 特表-標的ゲノムを検出するための方法 図4
  • 特表-標的ゲノムを検出するための方法 図5
  • 特表-標的ゲノムを検出するための方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】標的ゲノムを検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6825 20180101AFI20240711BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20240711BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20240711BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20240711BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20240711BHJP
【FI】
C12Q1/6825 Z
G01N21/76
C12Q1/6888 Z ZNA
C12Q1/70
C12Q1/6834 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502479
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 IT2022050195
(87)【国際公開番号】W WO2023286095
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021000018422
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524019988
【氏名又は名称】ウニべルシタ デッリ ストゥーディ デ メッシーナ
(71)【出願人】
【識別番号】510023160
【氏名又は名称】アルマ マーテル ステューディオラム - ウニヴェルスィタ ディ ボローニャ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コノチ、サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ラムパッゾ、エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティ、ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】パオルッキ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ザヌト、アレッサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】プロディ、ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ペトラリア、サルヴァトーレ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR39
4B063QR55
4B063QR66
4B063QR84
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、ゲノム分子の核酸の検出によって、迅速かつ高感度なゲノム分子検出を可能にする方法に関する。具体的には、この方法は、電気化学発光(ECL)ベースの超高感度検出で誘導体化された電極表面上の高分子遺伝的標的の協調ハイブリダイゼーションプロセスを組み合わせる。この方法は、いかなる増幅も伴わずに標的ゲノムを直接検出することを可能にする。したがって、本発明の方法は、増幅なしのアプローチ、特にPCRなしのアプローチと考えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物を検出するためのECLに基づく方法であって、前記分析物が生物の標的全ゲノムであり、
a)前記全ゲノムを含有する前記試料を、電極の表面に固定された少なくとも2つの一本鎖核酸プローブと接触させる工程であって、前記少なくとも2つの一本鎖核酸プローブの各々が、前記標的全ゲノムの対応する部分に相補的である、接触させる工程、
b)ECL活性ルミノフォアを添加する工程であって、前記ECL活性ルミノフォアがECLインターカレート性ルミノフォアである、添加する工程、
c)前記ECL活性ルミノフォアによって生成された発光シグナルを決定する工程、
を含み、前記標的全ゲノムが、DNAゲノム又はRNAゲノムから選択される、方法。
【請求項2】
前記標的全ゲノムが、一本鎖(ss-)又は二本鎖(ds-)であり得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一本鎖核酸プローブが、DNA、RNA又はPNAである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一本鎖核酸プローブが、表面リンカーによって固定化されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記表面リンカーが、HS-(CH-(式中、nは6~18である)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ECL活性ルミノフォアが、Ru(II)、Ir(III)、Re(I)又はOs(II)配位錯体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的全ゲノムが二本鎖ゲノムである場合、前記少なくとも2つの一本鎖核酸プローブのうちの少なくとも1つが、前記二本鎖標的全ゲノムの平行鎖の一部に相補的であり、前記少なくとも2つの一本鎖核酸プローブのうちの少なくとも1つは、前記二本鎖標的全ゲノムの逆平行鎖の一部に相補的である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的全ゲノムが、ウイルス若しくは細菌の核酸、又は寄生生物、真核細胞全ゲノムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス核酸が、B型肝炎ウイルス(HBV)のものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記標的全ゲノムがHBVのものである場合、前記少なくとも2つの一本鎖核酸プローブにおいて、少なくとも1つの配列が配列番号1(GGTGAGTGATTGGAGGTT)の配列であり、少なくとも1つの配列が配列番号2(CACATCAGGATTCCTAGG)の配列である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
リンカーが、前記配列番号1(GGTGAGTGATTGGAGGTT)及び配列番号2(CACATCAGGATTCCTAGG)と共に使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リンカーが、HS-(CH-である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ECL活性ルミノフォアが、dppz配位子、1,10-フェナントロリン、キノキサリノ[2,3-f][1,10]フェナントロリンを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ECL活性ルミノフォアが、Ru(bpy)dppz]2+又は[Ru(phen)dppz]2+phen=1,10-フェナントロリン、bpy=2,2’-ビピリジン、dppz=ジピリド[3,2-a:2’,3’-c]フェナジンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記発光が、犠牲共反応物を用いて電気化学的に生成される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記共反応物が、Kである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記共反応物が、第三級アミンであるか、又はトリ-n-プロピルアミン若しくは2-(ジブチルアミノ)エタノール)オキサラート及び過酸化水素である、請求項16に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム分子の核酸の検出によって、迅速かつ高感度なゲノム分子検出を可能にする方法に関する。具体的には、この方法は、特定のプローブで誘導体化され、電気化学発光(ECL)ベースの超高感度検出と組み合わされた電極表面上の高分子遺伝的標的の協調ハイブリダイゼーションプロセスを組み合わせる。この方法は、いかなる分析物増幅もなく標的ゲノムを直接検出することを可能にする。したがって、本発明の方法は、増幅なしのアプローチ、特にPCRなしのアプローチと考えることができる。
【背景技術】
【0002】
核酸(DNA及びRNA)の分子分析は、今日、早期かつ正確な診断、個別化治療、及び予防スクリーニングのために多くの医療分野で重要である。これは、世界中で2200万人を超える人々に80万人を超える死者をもたらしたCOVID-19のパンデミック感染後に明らかになったように、感染症の分野において特に重要である。この緊急性は、一般に、これらの疾患が人口の健康に壊滅的に影響を与える状態、特に感染症が全乳児死亡の半数以上の死亡及び罹患の原因である発展途上国で特に明白である。
【0003】
これに関連して、分子分析は、伝統的な実験室の方法(細菌培養物又は抗体検出)に関して関連する臨床上の利点を提供し、はるかに速く(細菌培養物の場合は数日であるのに対して数時間である)、特異的であり(遺伝子型の検出を可能にする)、高感度であり(試料中の病原体の数コピーの検出を達成する)、正確である(微生物(DNA)の「存在」だけでなくその活力度(mRNA)も検出することができる)。しかしながら、分子的方法は、本質的に非常に面倒であり(いくつかの分析実験室工程を含む)、高価であり(試料あたり約20~80ドル)、結果として、現在は専門の集中型検査室でのみ行われている周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅を必要とする。したがって、現在の分子PCRに基づく方法は、確立され統合された方法論であるが、競争力のあるコスト(試験当たり数ドル)で患者の近くの熟練していない人員が使用するのには適していない。これは、ヒトの健康のための分子分析の可能性を事実上制限するその大規模な使用のための強い制限を表す。この証拠として、迅速な感染管理及び予防のためのCOVIDの大規模でリアルタイムの診断の現在の困難がある(分子分析には少なくとも1日かかる)。したがって、迅速かつ高感度の病原体検出を可能にする新しい分子的方法の開発は、分子診断分野における大きな進歩である。
【0004】
したがって、LoD(10コピーの標的/反応)の感度の高い要件を満たすことができ、標識の試料前処理を必要としない、増幅なしのアプローチ、特にPCRなしのアプローチが必要とされているが、これは、特に標的濃度が細菌又はウイルスのコピー数が少ないほど低い可能性がある感染性疾患の場合には非常に困難である。
【発明の概要】
【0005】
本発明によって対処される技術的課題は、直接的、迅速かつ高感度の病原体分子検出を可能にする、増幅なしのアプローチ、特にPCRなしのアプローチに基づく検出方法を提供することである。
【0006】
このような課題は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の方法によって解決され、添付の特許請求の範囲の規定は本明細書の不可欠な部分である。
【0007】
本出願人は、ここで、その核酸の検出によって、迅速かつ高感度な全ゲノム分子検出を可能にする新しい分子的方法を見出した。具体的には、この方法は、特定のプローブで誘導体化され、電気化学発光(ECL)ベースの超高感度検出と組み合わされた電極表面上の高分子遺伝的標的全体の協調ハイブリダイゼーションプロセスを組み合わせる。この方法は、分析物増幅することなく、生物の標的全ゲノム、特に病原体ゲノムを直接検出することを可能にする。したがって、本発明の方法は、増幅なしのアプローチ、特にPCRなしのアプローチと考えることができる。具体的には、これは、ECL電極表面に固定された相補的なss-オリゴプローブ、特にDNA、RNA又はPNAによる標的全ゲノムの表面協調ハイブリダイゼーション(SCH)の組み合わせに基づいていた。実際、これらのプローブは、標的全ゲノムの特定の配列部分を認識するように設計されている。このようにして、それらは標的ゲノムとの同時ハイブリダイゼーションを保証することができる(2つのプローブ間の配列ギャップを維持することができる)。ハイブリダイゼーション時に、標的の全ゲノムは、ゲノムの2つの相補的フィラメントに独立してハイブリダイズし、それを電極表面に固定して超分子複合体を形成する表面プローブによって認識される。
【0008】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、請求項1に記載の方法に関する。
【0009】
有利には、本発明の方法は、非常に高感度であり、LoD(10コピーの標的/反応物)の要件を満たすことができる。本発明の方法はまた、携帯可能で低コストのデバイスに容易に一体化させることができ、したがって診断スクリーニングのための大量使用を可能にする。したがって、安価な診療現場での検査(PoCT)の作成が可能になる。さらに、本発明の方法は、前処理及び標識化を必要としない。
【0010】
本発明による方法のさらなる特徴及び利点は、本発明の実施形態の説明から明らかであり、これは例示的であるが限定的ではない目的として意図される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】超分子錯体形成に基づく分子認識の作成のための実験手順。(a)特異的プローブ及びチオールの金電極表面への固定化(b)ds-DNA HBVの認識及び超分子錯体形成(c)[Ru(phen)dppz]2+のインターカレーション及びHBV定量(d)協調ハイブリダイゼーションのためのP1及びP2プローブ設計。
【0012】
図2】ECL強度対異なる濃度の合成ゲノムHBVの可能性;(a)0~10000cps/ml(b)PBS 0.1M及び50mM K中のECL強度対Log HBV濃度。走査速度0.3V/sでのAg/AgCl基準電極に対するP1及びP2形成を伴う作動Au電極。750VのPMTバイアス。
【0013】
図3】較正プロット分析及びHBVゲノムの濃度に対する電極の応答の依存性(標準偏差は±0.075~0.321)。PBS 0.1M中、14μMのインターカレートした[Ru(phen)dppz]2+及び50mMのK。走査速度0.3V/sでのAg/AgCl基準電極に対するP1及びP2形成を伴う作動Au電極。750VのPMTバイアス。
【0014】
図4】抽出されたHBVゲノムの異なる濃度に対するECL強度対電位。(a)0~10000cps/ml(b)PBS 0.1M、14μMインターカレートした[Ru(phen)dppz]2+及び50mM K中のLog(cps/mlで表されるHBV濃度)の較正曲線。走査速度0.3V/sでのAg/AgCl基準電極に対するP1及びP2形成を伴う作動Au電極。750VのPMTバイアス。
【0015】
図5】3つの電極タイプのEISに関する図S1として例部分に示されている図を報告する。
【0016】
図6図S2及び図S3として例部分に示されている図を報告する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の範囲に関して、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される以下の定義が提供される。
【0018】
本発明の方法は、電気化学的刺激によって誘発される発光現象に基づく分析技術である電気化学発光(ECL)に基づく。特に、ECL共反応体機構では、ルミノフォアの励起状態は、ルミノフォアのラジカルと電気化学的酸化又は還元によって生成された共反応物の反応性中間体との間の反応を通して生成される。特に、本発明の方法は、電極表面に固定された特異的プローブを用いた形成及びECLルミノフォアを介した検出によるゲノム分子の分子認識に基づく。インターカレーションがその存在によって促進される場合、ECLシグナルは標的の存在下で増加する。
【0019】
本発明の目的は、試料中の分析物を検出するためのECLに基づく方法であって、分析物が生物の標的全ゲノムであり、
【0020】
a)全ゲノムを含有する試料を少なくとも2つの一本鎖核酸プローブと接触させる工程であって、少なくとも2つの一本鎖核酸プローブの各々が当該標的全ゲノムの対応する部分に相補的である、接触させる工程、
【0021】
b)ECL活性ルミノフォアを添加する工程であって、当該ECL活性ルミノフォアがECLインターカレート性ルミノフォアである、添加する工程、
【0022】
c)当該ECL活性ルミノフォアによって生成された発光シグナルを決定する工程、を含み、
【0023】
当該標的全ゲノムが、DNA又はRNAゲノムから選択される、方法である。
【0024】
好ましい態様によれば、標的全ゲノムは、一本鎖(ss-)又は二本鎖(ds-)であり得る。
【0025】
好ましい態様によれば、一本鎖核酸プローブは、DNA、RNA又はPNAである。
【0026】
好ましい態様によれば、一本鎖核酸プローブは6~18残基プローブである。
【0027】
好ましい態様によれば、一本鎖核酸プローブは、表面リンカーによって固定化される。
【0028】
好ましい態様によれば、標的全ゲノムが二本鎖ゲノムである場合、少なくとも2つの一本鎖核酸プローブのうちの少なくとも1つは、二本鎖標的全ゲノムの平行鎖の一部に相補的であり、少なくとも2つの一本鎖核酸プローブのうちの少なくとも1つは、二本鎖標的全ゲノムの逆平行鎖の一部に相補的である。好ましくは、二本鎖標的全ゲノムは、ds-DNAである。
【0029】
好ましい態様によれば、ss-核酸プローブとしても示され得る一本鎖核酸プローブに関して、それらは好ましくは一本鎖核酸オリゴプローブ(ss-核酸オリゴプローブ)である。
【0030】
上記のように、本発明の方法は、生物の標的全ゲノムを検出することを可能にする。好ましくは、当該生物は微生物、更により好ましくはウイルス又は細菌である。
【0031】
好ましい態様によれば、標的全ゲノムは、ウイルス又は細菌ゲノムである。好ましくは、標的全ゲノムは、ウイルス又は細菌、寄生生物、真核細胞全ゲノムである。
【0032】
一般に、一本鎖核酸プローブの数は、標的全ゲノムの種類に基づいて適宜調整することができる。
【0033】
さらに、本発明の方法の選択性は、標的ゲノム全体に応じて選択的に選択することができる一本鎖核酸プローブに依存する。
【0034】
本明細書で意図されるように、生物の標的全ゲノム(本明細書では単に標的全ゲノムとしても示される)という用語は、生物の標的全ゲノム、標的完全ゲノム、又は標的全ゲノムと同じ意味を有する。
【0035】
好ましい態様では、標的二本鎖核酸はウイルス核酸であり、より好ましくはウイルス核酸はB型肝炎ウイルス(HBV)のものである。標的全ゲノムがHBVのものである場合、少なくとも2つの一本鎖核酸プローブは、少なくとも1つの配列が配列番号1(GGTGAGTGATTGGAGGTT)の配列であり、少なくとも1つの配列が配列番号2(CACATCAGGATTCCTAGG)の配列である。好ましくはリンカーを使用することができ、より好ましくはリンカーはHS-(CH-である。好ましい態様によれば、リンカーは、当該配列番号1(GGTGAGTGATTGGAGGTT)及び配列番号2(CACATCAGGATTCCTAGG)の配列と共に使用され、好ましくは当該リンカーはHS-(CH6-である。
【0036】
好ましい態様によれば、工程a)の一本鎖核酸プローブは2つである。好ましくは、当該2つの一本鎖核酸プローブは、配列番号1(GGTGAGTGATTGGAGGTT)及び配列番号2(CACATCAGGATTCCTAGG)の配列を有する。
【0037】
好ましい態様によれば、電極は、金電極である。このような電極は、小型化されていることが好ましい。
【0038】
本発明のECLに基づく方法は、表面の全標的ゲノム固定化と、DNAの溝にインターカレートするECL-インターカレート性ルミノフォアによるECL伝達との組み合わせに基づく診断及び定量化を可能にする。
【0039】
したがって、ECLインターカレート性ルミノフォアはインターカレート剤であり、その発光寿命及び量子収率の並外れた環境感度を示す。ECL活性分子(あるいは、ECL活性ルミノフォア又はECL活性物質として示される)は、好ましくはRu(II)、Ir(III)、Re(I)又はOs(II)錯体、より好ましくはRu(II)錯体である。好ましくは、ECL活性ルミノフォアは、Ru(II)、Ir(III)、Re(I)又はOs(II)配位錯体である。
【0040】
好ましい態様によれば、ECL活性ルミノフォアはdppz配位子を有する。好ましくは、ECL活性ルミノフォアは、dppz配位子(dppz=ジピリド[3,2-a:2’、3’-c]フェナジン)、好ましくはRu(bpy)dppz]2+又は[Ru(phen)dppz]2+(phen=1,10-フェナントロリン、bpy=2,2’-ビピリジン)を有するRu(II)錯体である。他の好ましい配位子は、1,10フェナントロリン;キノキサリノ[2,3-f][1,10]フェナントロリンである。好ましくは、ECL活性ルミノフォアは、Ru(II)-又はOs(II)-錯体である。
【0041】
好ましい態様によれば、ECL共反応物は、酸化又は還元後にECLシグナルを生成するための反応性ラジカルを生成することができる犠牲試薬である。ECL共反応物は、好ましくはKである。他の好ましい共反応物は、第三級アミン、オキサラート(例えば、2-(ジブチルアミノ)エタノール))及び過酸化水素である。
【0042】
【0043】
化学物質及び材料
【0044】
使用した試薬は全て分析グレードのものであった。異なる濃度(0.1M及び0.01M)及び異なるpH(5.5、6.5、7.4、8.5)のリン酸緩衝液(PBS)、過硫酸カリウム(K)>99%、硫酸(HSO)98%、ヘキサシアノ鉄(III)カリウム(K[Fe(CN)-3/-4)及びエタノール(CO)100%をSigma-Aldrichから購入し、Gibco(登録商標)によって製造されたウシ胎児血清(FBS)100%をThermoFisher Scientificから購入した。[Ru(phen)dppz]2+を前述のように合成し、6-メルカプト-1-ヘキサノール(C14OS)>97%はFlukaから購入した。B型肝炎ウイルス(HBV)クローン完全ゲノム(HBVクローン分析試料)を、Clonit(参照番号05960467)から購入し、これはプラスミドPBR322ベクター(3.8kbps)に挿入されたHBVゲノム(3.2kbps)である。これは、TE(Tris 10mM、EDTA 1mM、pH=8)溶液中で提供される。結核菌(Micobacterium Tuberculosis)(MTB)クローン完全ゲノムをClonit(ref 05960564)から入手し、これは系の選択性を試験するためにaTE(Tris 10mM、EDTA 1mM、pH=8)溶液中に提供された。相補的P1プローブ(HS-(CH2)6-GGTGAGTGATTGGAGGTT)及びP2プローブ(HS-(CH)6-CACATCAGGATTCCTAGG)を、MWG(ドイツ)から購入した。ヒト血液からのHBVゲノム抽出(抽出された実際のHBVゲノム試料)を、使用説明書に従って、Qiagen QIAamp DNA Mini Kit(参照51306)を使用して行った。
【0045】
装置及び測定
【0046】
全てのECL及び電気化学測定は、作用電極(WE)としてAu電極(CH機器101)、対極(CE)としてPtワイヤ、及び基準電極(RE)としてAg/AgCl(飽和KCl)電極を有する単一区画3電極テフロン(登録商標)セルを使用して、ポテンショスタット(PGSTAT302N、Metrohm)を用いて行った。ECLシグナルを、暗箱の内部で、電気化学セルから一定の高さに配置された光電子増倍管(PMT、Hamamatsu R928)を用いて測定した。ポテンショスタットDACモジュールへの外部トリガー接続を使用して、トランスインピーダンスアンプ(Hamamatsu C6271)を有する高電圧電源ソケットアセンブリを使用してPMTに750Vを供給した。ポテンショスタットのADCモジュールを用いて増幅PMT出力シグナルを収集することによって、光/電流/電圧曲線を記録した。ECLスペクトルは、SEC2000 Spectra system UV-可視分光光度計(ALS Co.Ltd.、日本)によって収集した。ただし、電気化学技術として、走査速度0.3V/sで、本発明者らのシステムにおいて負電位を印加するサイクリックボルタンメトリーを使用した。電気化学インピーダンス分光法(EIS)には、5.0mM(K[Fe(CN)-3/-4)を含有するPBS 0.1M、pH 5.5の緩衝溶液を使用した。全てのEIS測定は周波数0.1MHz~1Hzの範囲で行われており、したがって電流範囲は1mAで同等に保たれている。最後に、開回路電位(Eocp)の値は、測定全体を通して同じ0.228Vであった。
【0047】
HBV DNAセンサの製作
【0048】
金電極を、鏡面を得るために0.3μm及び0.05μmのアルミナスラリーで研磨し、次いで50:50エタノール及び脱イオン水で5分間超音波処理することによって洗浄した。さらに、金電極を電気化学的に洗浄し、0.5M HSO溶液中で-1~1Vの間で10サイクルの周期的電位走査を行った。最後に金電極をArガスで乾燥した。次に、pH7.4のPBS 0.01Mの緩衝液を調製し、P1及びP2チオール5’末端プローブを10μMの濃度で溶解し、Au-S化学に従って表面に固定化した。この溶液に金電極を浸漬し、室温(RT)条件で4時間保持した。ただし、金電極の表面を数滴のPBS 0.01M、pH7.4で洗浄した。続いて、P1特異的プローブとP2特異的プローブとの間のギャップを充填する等のために、10μMのC14OSを含むpH7.4のPBS 0.01Mの溶液を使用して一晩のブロッキング手順を行った(図1a)。このようにして、HBVのds-DNAを付加する超分子錯体形成を行うAu電極/P1P2表面を改質することがより容易になった。ブロッキング修飾後、異なる濃度のds-DNA HBV(1~10000cps/ml)をpH5.5のPBS 0.01Mで調製し、このようにして、全ての電極をチャンバ内で50℃にてこれらの溶液に浸漬する。超分子錯体形成の達成は、この工程の3時間後に達成された(図1b)。しかしながら、ds-DNAの溝内に[Ru(phen)dppz]2+をインターカレーションするために、14μM [Ru(phen)dppz]2+のストック溶液をpH5.5のPBS 0.01Mで調製した。インターカレーションが完了するまで、電極を[Ru(phen)dppz]2+に2時間浸漬したままにした。記載された手順の後、HBV DNAセンサをすぐに使用することができた(図1c)。
【0049】
分析試験手順
【0050】
P1及びP2プローブで誘導体化した金電極をpH7.4のPBS 0.01Mを用いて洗浄し、既知濃度のHBVクローンの溶液に50℃のチャンバ内で4時間浸漬した。次いで、超分子錯体形成が達成され、金電極をpH5.5のPBS 0.01Mで洗浄した。pHの酸価は、ds-DNAの-G及び-C基をプロトン化し(超分子複合体三重鎖DNA形成を促進する)、P1プローブ及びP2プローブとHBVのds-DNAとの間の結合をより強くする。最後に、[Ru(phen)dppz]2+14μMを含むpH5.5のPBS 0.01Mの溶液を調製し、金電極を2時間浸漬した。ハイブリダイズしたDNAの溝に[Ru(phen)dppz]2+をインターカレーションした後、Au電極はECL手順の準備ができていた。分析的に、出発クローン溶液(106コピー)を脱イオン水で希釈することによって、HBVゲノム試料(1、5、10、100、1000、10000コピー/反応)を調製した。ただし、実試料分析には、出発クローン溶液(2000コピー)を脱イオン水で希釈することによって調製したヒト血液(50-100-250-500-750-1000コピー/反応)から抽出したHBVゲノム合成クローンを使用した。最後に、FBS等の生物学的流体を使用し、実試料を使用するECL実験については、上記と同じ実験手順に従う。異なる部分は、生体液及び抽出されたHBVゲノムの異なる濃度における分析のためのPBSの代わりのFBSの使用である。
【0051】
実験結果に関するコメント
【0052】
本発明の方法は、増幅することなく、標的ゲノム、特に病原体ゲノム、より具体的にはHBVゲノムを直接検出することを可能にする。HBV検出を特に参照すると、具体的には、この方法は、ECL電極表面に固定された2つの相補的なs-オリゴプローブによる二本鎖HBVゲノム(ds-DNAゲノム)の表面協調ハイブリダイゼーション(SCH)の組み合わせに基づいていた。2つのオリゴプローブ(P1及びP2)は、ds標的ゲノムの単一フィラメントの一部と相補的であるように設計された。これらのプローブは、同じ標的二本鎖ゲノムの平行鎖及び逆平行鎖の両方の特異的配列を認識するように設計されている。このようにして、それらはゲノム標的の2本の鎖との同時ハイブリダイゼーションを保証することができ、2つのプローブ間の138bpsの配列ギャップが図1dに示されるように維持された。この配列ギャップは、プローブとゲノムとの間の分子認識プロセス中の立体障害を最小限に抑えるために重要である。ハイブリダイゼーション時に、標的の全ゲノムは、ゲノムの2つの相補的フィラメントに独立してハイブリダイズし、それを電極表面に固定して超分子複合体-DNA標的-プローブ構造を形成する表面プローブによって認識される。分析試料及びヒト血液から抽出された実試料の両方からのHBVゲノムの検出。また、ECL活性複合体(ルミノフォア)として、dppz配位子を有するルテニウム(II)錯体等の特定のECLインターカレート性分子であるルテニウム化合物([Ru(phen)dppz]2+)を用い、その発光寿命及び量子収率の並外れた環境感度を示す。
【0053】
改質電極の特性評価
【0054】
この研究の第1の部分は、P1及びP2プローブの効果的な固定のための金電極の表面の化学処理の最適化に焦点を当てた。ECLバイオセンシングに使用した電極の表面を、電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって特性評価した。図S1は、5mM(K[Fe(CN)-3/-4)の固有の電極で収集したEISのナイキストプロットを示す。等価回路系(図S1の挿入図)を使用して、実験的EIS結果を適合させた。この回路は、電解質のオーミック抵抗(R1)、ワールブルグインピーダンス(Wd2)、電荷移動抵抗(R2)、及び二重層容量(Q2)を含む。フィッティングは、選択された回路で実証されるように、シミュレートされた線(ドット)が実験インピーダンスデータ(実線)と良好に一致することを示している。図S1には、4.7kΩ・cm-2(線a)の値を有する低い電荷電子移動抵抗を示す裸金電極が示されている。プローブの固定化後、それは、プローブの良好な安定性を与えると同時に、二重層の抵抗を増加させるためのブロッキング工程を作り出す。[4]この工程の後、改質金電極をEIS技術を用いて新たに分析した。しかしながら、P1及びP2 DNAプローブの金電極への固定化による電極表面の抵抗は、新たな値R2を有する。図S1に示されているように、負に帯電したDNAとレドックスメディエータとの間の静電反発力の結果である可能性がある8.8kΩcm-2(線b)に増加した。さらに、ブロッキング手順及び電極の表面へのチオールの堆積の後、R2(12.6kΩcm)の値はこの場合も増加する。これは、電子移動を妨げるチオールによって作り出されたという二重層効果の結果である(線c)。さらに、いずれの場合も、表1に示すように、より多くの分子が金電極の表面に堆積する限り、二重層容量Q2の値は増加する。最後に、HBVのゲノムが電極表面のプローブによって認識されると、超分子複合体DNA標的-プローブ形成が作り出される。[Ru(phen)dppz]2+錯体の付加は、分子のπ-πストーキング性のためにds-DNA溝へのインターカレーションを可能にする。実際、Ru(II)及びOs(II)とのdppz錯体は、水中でわずかに発光するだけであるが、ds-DNAをインターカレートすると高度に発光する。
【表1】
【0055】
分析性能
【0056】
HBVの合成ds-ゲノムの実試料を用いてさらなる試験を行った。反応あたり106cpsの開始濃度を有するこの試料を希釈して、それぞれ反応あたり0-1-5-10-100-1000-10000cpsの最終DNA量の試験溶液濃度を得た。提案された方法の感度を評価するために、ECL強度をHBV濃度の関数として検出する。電気化学実験は、反応あたり標準濃度1000cpsを使用して、3電極セル(詳細は実験部を参照)で行った。この分析性能では、Kの使用が重要であり、例えばラジカルの生成にとって重要な因子である。この場合、本発明者らは、ECL強度4.93±0.32 a.u.の本発明者らの系の正の応答を得る(図2)。ペルオキシジサルフェート(式1)及び[Ru(phen)dppz]2+(式2)の還元が起こり得、したがって、式3~5によって概説される一連のプロセスが可能になる。ペルオキシジサルフェートは、電極で直接(式1)又は[Ru(phen)dppz]2+(式4)の媒介のいずれかによって還元され、硫酸アニオンラジカルを生成する。以下の仮説に沿って、強いECLシグナルは、HBVの合成ゲノムの異なる濃度ごとにECL強度の最大値を得る第1のスキャンにおいて陰性電位が掃引されたときにのみ観察された。式1~5は、Kが負電位-0.80V対Ag/AgCl基準電極で共反応物として使用される場合の生成の可能な経路[Ru(phen)dppz]2+*を要約している。[Ru(phen)dppz]/S 2-系のECL強度は S 2-濃度(50mM)及び14μMの[Ru(phen)dppz]2+の関数であることが分かったため、この組み合わせを使用して、HBVの合成ゲノムを認定することを達成した。この結果は、過硫酸イオンが[Ru(phen)dppz]2+の有効な共反応物であり、励起された[Ru(phen)dppz]2+*の優れたクエンチャーであるという事実に起因する。
2-+e->SO ・-+SO42-
(1)
[Ru(phen)dppz]2++e-->[Ru(phen)2dppz]
(2)
[Ru(phen)dppz]+SO 2-->[Ru(phen)dppz]2++SO ・-+SO 2-
(3)
[Ru(phen)dppz]+SO ・-->[Ru(phen)dppz]2+*+SO 2-
(4)
[Ru(phen)dppz]2+*->[Ru(phen)dppz]2++hν
(5)
【0057】
本発明の系に影響を及ぼし得る二次因子のさらなる調査のために、超分子錯体形成のハイブリダイゼーションに2つの異なるpHを使用してpH効果を調査した。pHは、あらゆる種類の共試薬におけるECLシグナルの増強に影響を及ぼし得る。4つの異なるpH値を使用したこの場合も、同じ濃度のHBV合成ゲノム(反応あたり100cps)に対するECLシグナルが変化した(図S3)。pH<7.4では、より多くのHの存在が、SO ・-種の生成等の本発明者らの系における化学バランスをそれほど効果的にすることはできない。一方、pH>7.4の場合、特異的なP1プローブ及びP2プローブによるHBV合成ゲノムの認識は金電極の表面で行うことができないため、この効果はECLシグナル値の劇的な減少をもたらす。最後に、全てのECL実験についてpH7.4を使用した(例えば、ECL強度のより高い値が観察される)。図2で観察されるように、本発明者らはこの実験プロセスを繰り返し、反応当たり1000cpsよりも高い/低い濃度も使用して電気化学的応答を測定する。いずれの場合も、本発明者らは、ds-DNA濃度に比例する異なるECL強度を観察する。PMTによって検出されるECL強度は、K(共試薬)と[Ru(phen)dppz]2+(ルミノフォア)との間の還元反応に由来する。式1~5には、発光を生成するための可能な経路が記載されている。CV-ECL技術で保持された濃度の範囲は、反応あたり0~1000cpsであった。図2に示される反応あたり1000cpsの最大ECL値(濃い青色線)は、図2に示される最小値(反応あたり5cps)(赤色線)0.41±0.08 a.uの代わりである。これらの結果のいずれの場合も、実験は3回を超えて繰り返されており、各測定の再現性が試験されている。
【0058】
選択性
【0059】
提案されたシステムの選択性を評価するために、3つの異なる濃度(10-100-1000cps/反応)で非特異的標的である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)合成クローンを用いてバイオセンサを試験した。結果は、本発明者らの化学的戦略がプローブとHBV合成ゲノムとの間の超分子錯体形成にのみ独特であることを証明している。したがって、MTBの場合、ECLシグナル応答はない(図S2a~c)。一方、ds-HBVゲノムの場合のECLシグナル応答は完全に観察され、例えば、それは2つの平行及び逆平行の相補的P1プローブ及びP2プローブによって捕捉される。最後の場合、[Ru(phen)dppz]2+をインターカレートし、金電極の改質表面におけるHBVの存在を定量することができる(図S2d)。
【0060】
実験変数の最適化
【0061】
提案された系の分析ECL応答を評価した。本発明者らの方法の感度を評価するために、ECL強度を対数ds-HBV濃度の関数として調べた。
【0062】
検知能力の評価について、上記最適条件で検出限界(LoD)を測定した。検量線を、ECL強度及び対数ds-HBV濃度の変化をプロットすることによって確立した。反応あたり5cps~反応あたり10000cpsの良好な線形範囲が得られ、相関係数は0.987である。LoD(S/N=3.3)は、値が反応あたり2.7cpsである較正プロット(図3)を使用して計算されており、PCR法よりも37倍効率的かつ高感度であるため、本発明者らの方法の感度を確認するものである。
【0063】
生物学的流体への適用
【0064】
HBVの測定のための改質金電極の適用性のためにウシ胎児血清(FBS)を使用した。この分析については、実験セクションで説明したのと同じ実験手順に従ったが、主な違いは、三重鎖形成がPBS緩衝液の代わりにFBS溶液中で行われたことである。しかしながら、HBV濃度の3つの異なる合成ゲノム(反応あたり100-1000-10000cps)が、ECL技術を使用して試験されている。FBSでの本発明者らの測定は全て、大きなECL応答を有し、PBS溶液中のds-HBVゲノムの定量に関する本発明者らの理論に従う(図S4)。結果は、82.7~104.1%の範囲の実際の標準偏差(RSD)でHBVの満足のいく回収を示し(表2)、したがって、生物学的流体における提案された電気化学的DNAセンサの効率的な適用性が確認される。
【表2】
【0065】
実試料分析
【0066】
この実験手順を、HBVゲノムの検証及び定量化のため行った。P1プローブとP2プローブの組み合わせは、同じ標的ゲノムの平行鎖と逆平行鎖の両方で特定の遺伝子配列を認識するように適切に設計された。提案された改質金電極の適用性及び有効性を、抽出されたHBV試料の決定に評価した。実試料分析をCV技術を用いて行い、ECL応答を得て、ここで、記載の設定及び前処理プロトコルを用いて測定を行った。
【0067】
実試料対照は、図2等の同じ濃度範囲で完了している。抽出されたHBVゲノムの場合、分析試料のECL強度値は常に合成のものよりも低い。抽出された試料は、3300bpsに相当するHBVゲノムのサイズを有するいかなるベクターも含まない。しかしながら、分析試料HBVクローンは、7144bpsの最終環状構造に相当するプラスミドPBR322ベクター(3.8kbps)にクローニングされたゲノム(3.3kbps)からなる。この差は、合成HBVゲノムの溝内の[Ru(phen)dppz]2+の最も高いインターカレーションに対応する。ECL強度は、HBVの抽出されたクローンの場合には11倍低く、これはより低いレドックスシグナルのために起こる。図4aによれば、様々な濃度(0~1000cps/ml)で所有される非常に高いECL強度のために、HBVのds-DNAの存在を検証することができる。本発明者らのシステムの電気化学反応(還元)は、図2でも観察される同じ負電位(-0.80V)で起こる。ECL曲線は、式(1-5)に記載されているように、K及び[Ru(phen)dppz]2+の還元の結果である。抽出されたHBVゲノムは、検知能力について研究及び評価されており、検出限界(LoD)は、上述の最適条件下で測定された。検量線を、ECL強度の変化と対数ds-HBV濃度との間のプロットによって確立した。反応あたり50cps~反応あたり10000cpsの良好な線形範囲が得られ、相関係数0.973である。LoD(S/N=3.3)は、値が反応あたり60cpsである較正プロット(図4b)を使用して計算されており、PCR法の代わりに1.7倍効率的かつ高感度であるため、本発明者らの方法の感度を確認するものである。一般に、HBVのこれら2つの異なるゲノムのECL応答は、2つの異なるLoD間の比較によって達成されている。合成HBVゲノムの場合、本発明者らは、上記のように約2.7cps/mlのLoDを得た。一方、抽出されたHBVゲノムを決定するためのLoDは、同じ経路を使用して、約60cps/mlである。これらの2つのLoD値間のこの大きな差は、HBV ds-DNAの溝内にインターカレートされた異なる量の[Ru(phen)dppz]2+を示す。HBV DNAの長さは、ECL強度の重要な中断を有する。
【0068】
上記の例は、本発明の表示として提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】