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特表2024-526813高活性乾式改質触媒およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】高活性乾式改質触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/755 20060101AFI20240711BHJP
   B01J 35/56 20240101ALI20240711BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240711BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240711BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240711BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B01J23/755 M
B01J35/56 301Z
B01J37/08
B01J37/03 B
B01J37/02 101Z
C01B3/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502513
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2022009732
(87)【国際公開番号】W WO2023003225
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0095780
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082458
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522318173
【氏名又は名称】ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TOTALENERGIES PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】103,Dokgot-2-ro, Daesan-eup, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31900, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カン ソン ボン
(72)【発明者】
【氏名】ミン ヘ ヒョン
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA05
4G140EC02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA21C
4G169BA37
4G169BA38
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BE08C
4G169CB02
4G169CB07
4G169CB81
4G169CC21
4G169CC25
4G169DA05
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EB11
4G169EB18Y
4G169EC04Y
4G169EC08Y
4G169EC14Y
4G169EC25
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB78
4G169FC04
4G169FC07
(57)【要約】
高い活性度と長期安定性を有する乾式改質触媒および乾式改質触媒の製造方法が開示される。ミセル形態のゾル-ゲル反応用触媒の界面でゾル-ゲル反応が行われ、ポアを有するシリカ粒子が形成される。また、シリカのゲル状態で溶解度の差を用いてシリカの空隙またはポア内にニッケルまたはニッケル酸化物の触媒粒子が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にポアが形成された3次元網状構造のシリカと、
前記ポア内に形成され、ポアより小さい直径で形成されたメタン改質用触媒粒子と、を含む乾式改質触媒。
【請求項2】
前記触媒粒子は、ニッケルまたはニッケル酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の乾式改質触媒。
【請求項3】
前記触媒粒子のニッケル原子は、前記シリカの酸素原子と共有結合を形成することを特徴とする請求項2に記載の乾式改質触媒。
【請求項4】
前記触媒粒子は、前記ニッケル-酸素の共有結合を成長のシードとして析出して形成されたことを特徴とする請求項3に記載の乾式改質触媒。
【請求項5】
前記触媒粒子は、オレイン酸によって粒子サイズが調節されることを特徴とする請求項1に記載の乾式改質触媒。
【請求項6】
前記乾式改質触媒は、750℃以上でCOとCHが80%以上の転換率を有することを特徴とする請求項1に記載の乾式改質触媒。
【請求項7】
前記乾式改質触媒は、700℃以上でCOとCHの転換率の差が10%未満であることを特徴とする請求項6に記載の乾式改質触媒。
【請求項8】
前記乾式改質触媒は、供給ガスがCOおよびCH、工程温度800℃および供給ガスのガス時間空間速度250L・gcat・h-1の条件下で500時間まで90%以上の転換率を有することを特徴とする請求項1に記載の乾式改質触媒。
【請求項9】
前記乾式改質触媒は、500時間までH/COの割合を0.95以上に維持することを特徴とする請求項8に記載の乾式改質触媒。
【請求項10】
ゾル-ゲル反応用触媒、ニッケル前駆体および水を混合し、前記ゾル-ゲル反応用触媒が滴またはミセル形態で浮遊する第1前駆体溶液を準備する段階と、
前記第1前駆体溶液にシラン前駆体溶液を投入し、網状構造のシリカ粒子が形成されたシリカ溶液を形成する段階と、
前記シリカ溶液から水を除去し、シリカゲルを形成する段階と、
前記シリカゲルに第2前駆体溶液を滴加し、ニッケル粒子が前記網状構造のシリカ粒子内に形成されたニッケル-シリカ溶液を形成する段階と、を含む乾式改質触媒の製造方法。
【請求項11】
前記ゾル-ゲル反応用触媒は、オレイン酸を含むことを特徴とする請求項10に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項12】
前記第1前駆体溶液を準備する段階は、
前記ゾル-ゲル反応用触媒および前記ニッケル前駆体を混合し、予備前駆体溶液を形成する段階と、
前記水を前記予備前駆体溶液に混合し、前記水の中に浮遊する前記ゾル-ゲル反応用触媒の滴またはミセルを形成する段階と、を含むことを特徴とする請求項10に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項13】
前記シラン前駆体溶液は、シラン前駆体およびシランカップリング剤を有することを特徴とする請求項10に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項14】
前記シラン前駆体または前記シランカップリング剤は、前記ミセル形態のゾル-ゲル反応用触媒の界面でゾル-ゲル反応によって前記網状構造のシリカ粒子を形成することを特徴とする請求項13に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項15】
前記シラン前駆体または前記シランカップリング剤の加水分解によって生成されるシラノール基は、前記第1前駆体溶液のニッケルイオンまたはニッケル前駆体と結合してSi-O-Ni構造を形成し、酸素元素とニッケル元素間の共有結合は、前記ニッケル粒子の成長のシードとして作用することを特徴とする請求項14に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項16】
前記第2前駆体溶液は、水に前記ニッケル前駆体が溶解したものであり、前記シリカゲル内のニッケル濃度より低いニッケル濃度を有することを特徴とする請求項10に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項17】
前記第2前駆体溶液は、水に前記ニッケル前駆体が溶解したものであり、前記第1前駆体溶液のニッケル濃度より高いニッケル濃度を有することを特徴とする請求項10に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項18】
前記ニッケル粒子の形成時に、前記ゾル-ゲル反応用触媒は、前記ニッケル粒子のサイズを調節することを特徴とする請求項10に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項19】
前記ニッケル-シリカ溶液を形成する段階後に、
前記ニッケル-シリカ溶液の水を蒸発して乾燥して、粉末を得る段階と、
前記粉末を600℃~900℃で大気雰囲気で焼成する段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【請求項20】
前記焼成を通じて前記ニッケル粒子の少なくとも一部は、ニッケル酸化物で形成されることを特徴とする請求項19に記載の乾式改質触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式改質触媒およびその製造方法に関し、より詳細には、長期安定性が確保された高活性乾式改質触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素の濃度が高くなると、様々な問題が発生するので、二酸化炭素を他の物質に転換する研究が盛んに行われている。これらのうち、メタンの乾式改質反応は、二酸化炭素とメタンとを触媒の存在下で高温で反応させることによって、水素と一酸化炭素を生成する反応である。前記反応によって生成された合成ガスは、様々な化学物質や炭化水素を合成する反応に応用できるので、付加価値が非常に高いことが知られている。しかしながら、メタンの乾式改質反応は、触媒の不安定性と低い活性のため、実用化されていない。
【0003】
乾式改質反応における触媒の不安定性の原因は、600℃以上の高温での反応によって触媒が気化して消失するためである。
また、長期使用時に活性度が低下するところ、これは、高温で触媒金属の凝集により失活が加速したり、触媒に炭素沈積(carbon deposition)が起こることに起因する。または、他の被毒物質による被毒によって触媒の活性部位(active site)が減少することに起因する。
【0004】
商用化されたまたは商用化が検討されるNi触媒の場合、炭素沈積を防止するために、Ni表面の活性点の少なくとも一部を硫黄で封鎖する工程が開発されているが、これは、別途の高価な金属前駆体が要求されたり、他の添加物が要求されるなど複雑な工程を要求する。それにもかかわらず、乾式改質反応に使用されるNi触媒は、低い活性および長期安定性が問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が達成しようとする第1技術的課題は、3次元シリカマトリックス内に金属酸化物結合を通じて触媒粒子が固定化された乾式改質触媒を提供することにある。
また、本発明が達成しようとする第2技術的課題は、前記第1技術的課題を達成するための乾式改質触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の第1技術的課題を達成するための本発明は、内部にポアが形成された3次元網状構造のシリカと、前記ポア内に形成され、ポアより小さい直径で形成されたメタン改質用触媒粒子と、を含む乾式改質触媒を提供する。
【0007】
上記の第2技術的課題を達成するための本発明は、ゾル-ゲル反応用触媒、ニッケル前駆体および水を混合し、前記ゾル-ゲル反応用触媒が滴またはミセル形態で浮遊する第1前駆体溶液を準備する段階と、前記第1前駆体溶液にシラン前駆体溶液を投入し、網状構造のシリカ粒子が形成されたシリカ溶液を形成する段階と、前記シリカ溶液から水を除去し、シリカゲルを形成する段階と、前記シリカゲルに第2前駆体溶液を滴加し、ニッケル粒子が前記網状構造のシリカ粒子内に形成されたニッケル-シリカ溶液を形成する段階と、を含む乾式改質触媒の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記の本発明によれば、メタンの乾式改質のための触媒粒子が形成される。触媒粒子は、シリカ内部に形成され、ナノサイズのポア内に形成される。合成工程でゾル-ゲル反応によって生成されるシリカの酸素原子には、前駆体から供給されるニッケル原子が共有結合する。また、後の工程でニッケル-酸素の共有結合部位にニッケルが溶解度の差によって析出する。また、焼結工程が進行すると、ニッケル金属は、表面で一部が酸化することがあり、ニッケルまたはニッケル酸化物の触媒粒子を形成する。比較的高い密度を有し、かつ一定のポアサイズを有するシリカ内部のポア内に形成された触媒粒子によってメタンの乾式改質反応で長期安定性を確保し、高い転換率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の乾式改質触媒の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図2図2は、本発明の製造例1による乾式改質触媒を示すイメージである。
図3図3は、本発明の製造例1による乾式改質触媒のTEMイメージおよびEDXイメージである。
図4図4は、図2に示された乾式改質触媒においてニッケルまたはニッケル酸化物のサイズを示す分布図である。
図5図5は、比較製造例1の粉末相を示すイメージである。
図6図6は、本発明の製造例1および比較製造例1による乾式改質触媒のXRDパターンを示すグラフである。
図7図7は、比較製造例2の粉末相を示すイメージである。
図8図8は、比較製造例3の粉末相を示すイメージである。
図9図9は、図8に示された粉末相においてニッケルまたはニッケル酸化物のサイズ分布を示すグラフである。
図10図10は、比較製造例4の粉末相を示すイメージである。
図11図11は、本発明の測定例1によって製造例1および比較製造例1の転換率を測定したグラフである。
図12図12は、本発明の測定例2による乾式改質触媒の長期安定性テスト結果を示すグラフである。
図13図13は、本発明の測定例2による乾式改質触媒の長期安定性テスト結果を示すTEMイメージである。
図14図14は、本発明の測定例3による乾式改質触媒の熱重量分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物~代替物を含むものと理解すべきである。各図面を説明しつつ類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。
【0011】
別段の定義がない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の門脈上有する意味と一致する意味を有すると解すべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味と解しない。
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
実施形態
図1は、本発明の乾式改質触媒の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0013】
図1を参照すると、ゾル-ゲル反応用触媒、ニッケル前駆体および水を混合した第1前駆体溶液を用意する(S100)。第1前駆体溶液は、ゾル-ゲル反応用触媒が水内で滴またはミセル(micelle)形態で存在するナノエマルジョンまたはマイクロエマルジョンである。ただし、前記ニッケル前駆体は、ゾル-ゲル反応用触媒の液滴または滴内に分散して分布したり、水内に分布していてもよい。
【0014】
前記ゾル-ゲル反応用触媒は、疎水性の特性を有し、シリケートのゾル-ゲル反応用触媒の物性を有することが好ましい。また、前記ゾル-ゲル反応用触媒は、金属の結晶成長を調節できる有機リガンドに使用できる物質であることがより好ましい。例えば、前記ゾル-ゲル反応用触媒としてオレイン酸が使用できる。
【0015】
また、ニッケル前駆体としては、Ni(NO・6HOが使用されることが好ましく、水は、脱イオン水であることが好ましい。
まず、ゾル-ゲル反応用触媒とニッケル前駆体を混合し、150℃~250℃で1分~3分間撹拌し、予備前駆体溶液を製造する。混合時の温度が150℃未満の場合、ゾル-ゲル反応用触媒内にニッケル前駆体が均一に分散せず、またはNiイオンが十分に形成されない。また、混合時の温度が250℃を上回る場合、高い温度によってゾル-ゲル反応用触媒の揮発量が増加する問題が生ずる。
【0016】
予備前駆体溶液を含む容器は、60℃~90℃の湯煎に投入され、予備前駆体溶液に水が供給される。前記水は、脱イオン水であることが好ましい。水は、予備前駆体溶液の撹拌中に供給されることが好ましい。これを通じて、疎水性の特徴を有するゾル-ゲル反応用触媒は、微細液滴またはミセルの形態で水の中に浮遊し、第1前駆体溶液が形成される。微細液滴またはミセルは、疎水性のゾル-ゲル反応用触媒で構成され、ミセル内にニッケルイオンまたはニッケル前駆体が分散する。また、ナノエマルジョンまたはマイクロエマルジョンの水内にも、ニッケルイオンまたはニッケル前駆体が分散していてもよい。
【0017】
次に、第1前駆体溶液にシラン前駆体溶液を投入することによって、3次元網状構造を有するシリカが形成され、水を含む溶液内で3次元網状構造のシリカ粒子が形成されたシリカ溶液を製造する(S200)。3次元網状構造のシリカは、ゾル-ゲル反応によって形成され、ゾル-ゲル反応のためにシラン前駆体溶液をあらかじめ用意する。
【0018】
前記シラン前駆体溶液は、シラン前駆体およびシランカップリング剤を有する。
シラン前駆体は、ゾル-ゲル反応によって3次元網状構造のシリカを主導的に形成する。このために、シラン前駆体は、中心金属としてシリコン(Si)を有し、シリコンと共有結合を形成するアルコキシ基OR(Rはアルキル基)を有する必要がある。前記シラン前駆体としては、TEOS(tetraethyl orthosilicate)、MTMS(methyltrimethoxysilane)またはTMOS(tetramethyl orthosilicate)があり、TEOSであることが好ましい。
【0019】
また、シランカップリング剤は、中心金属としてシリコンが配置され、シリコンと共有結合を形成するアルコキシ基を有する必要があり、中心金属に結合する他の反応基で金属または有機分子と結合できる構造を有する必要がある。シランカップリング剤は、ニッケル金属と化学的に結合したり、シラン前駆体との相溶化を向上させ、シラン前駆体と化学的に結合する。
【0020】
したがって、シランカップリング剤によってシラン前駆体は、比較的均一な分布を有し、3次元網状構造のシリカで形成されてもよい。シランカップリング剤としては、APTES(amonipropyl triethoxysilane)が好ましい。
【0021】
シラン前駆体溶液を第1前駆体溶液内に投入すると、ゾル-ゲル反応用触媒の界面でゾル-ゲル反応が起こる。前記ゾル-ゲル反応は、加水分解反応および縮合重合反応と説明される。
【0022】
シラン前駆体溶液のシラン前駆体またはシランカップリング剤がゾル-ゲル反応用触媒の界面と接する場合、下記の加水分解反応および縮合重合反応が起こる。シラン前駆体またはシランカップリング剤は、アルコキシシリル基Si-OR(Rはアルキル基)を有するので、下記の反応式によってゾル-ゲル反応が起こる。
【0023】
[反応式1]
-Si-OR+HO→-Si-OH+ROH
[反応式2]
-Si-OR+HO-Si-→-Si-O-Si-+ROH
[反応式3]
-Si-OH+HO-Si→-Si-O-Si-+H
前記反応式1は、加水分解反応であり、反応式2および3は、縮合重合反応を示す。
【0024】
シランカップリング剤が有する相溶性によりゾル-ゲル反応によって形成される3次元網状構造は、比較的均一な分布を有する空隙を形成し、ミセル形態のゾル-ゲル反応用触媒によって形成されるシリカ粒子は、マイクロサイズを有する。
【0025】
また、前記反応式1の加水分解で生成されるシラン前駆体またはシランカップリング剤のシラノール基Si-OHは、第1前駆体溶液内のニッケルイオンまたはニッケル前駆体と結合し、Si-O-Ni構造を形成することができる。酸素元素とニッケル元素の結合は、共有結合と理解され、酸素に結合したニッケル金属は、後でニッケル金属の析出および成長過程でシードとして作用することができる。
【0026】
したがって、形成されたシリカ溶液では、3次元網状構造のシリカ粒子が形成され、マイクロサイズのシリカ粒子内に微細な空隙が形成された状態である。
前記シリカ溶液を80℃で約12時間維持する場合、水が除去され、シリカゲルが形成される(S300)。前記シリカゲル内には、ニッケルがSi-O-Niに結合することができ、シリカの網状構造内にランダムに分布することができる。
【0027】
次に、前記シリカゲルに第2前駆体溶液を滴加し、ニッケル-シリカ溶液を形成する(S400)。前記第2前駆体溶液は、第1前駆体溶液よりも高いニッケル前駆体の濃度を有する。前記第2前駆体溶液は、水を溶媒としてニッケル前駆体としてNi(NO・6HOが使用される。特に、第2前駆体溶液は、シリカゲル内に分布したニッケルの濃度より高くてもよく、ニッケルイオンは、シリカゲル内に移動する。
【0028】
第2前駆体溶液が滴加されることにより、シリカゲルは、ゾル状態に変わり、溶解度の差によってニッケル-シリカ溶液内にニッケル金属の凝集および析出が起こる。すなわち、シリカゲル内で分布したニッケルイオン等は、これよりも高いニッケルの濃度を有する第2前駆体溶液が滴加されると、ゲル状態からゾル状態に変わり、ゾル状態内で均一なニッケルの溶解度を維持するために、シリカゲル内のニッケルは、シリカ内に粒子として析出する。ただし、凝集および析出は、シリカ粒子の3次元網状構造内の空隙またはポア内に形成され、シラン前駆体またはシランカップリング剤のシラノール基Si-OHと結合してSi-O-Ni結合を形成することができ、シリカ溶液内に既形成されたSi-O-Ni結合に凝集または析出し、ニッケル金属の単結晶または多結晶を形成することができる。
【0029】
ただし、前駆体溶液内にシラノール基などが残留することがあるので、凝集または析出するニッケル金属内に酸素原子が結合し、Ni-O結合が内部的に形成されることもできる。
【0030】
また、ニッケル金属の析出時に、ゾル-ゲル反応用触媒であるオレイン酸は、析出するニッケル金属が成長を調節する調節因子として作用する。したがって、オレイン酸の濃度または投入量を調節し、析出するニッケル金属のサイズを調節することができる。
【0031】
上記の過程を通じて、3次元網状構造のシリカ内に共有結合等の化学的結合が行われたニッケルナノ粒子が形成される。
次に、ニッケル-シリカ溶液から溶媒としての水を蒸発または乾燥して、粉末相を得、粉末を600℃~900℃で大気雰囲気で焼成し、乾式改質触媒を得る(S500)。形成された乾式改質触媒は、粉末相であり、3次元網状構造のシリカ粒子内にニッケルナノ粒子のニッケル原子またはニッケル酸化物ナノ粒子のニッケル原子がシリカ粒子の酸素原子と共有結合を形成する。また、大気雰囲気での焼成を通じてニッケル粒子の一部が酸化することができ、酸化によってニッケル酸化物を形成することができる。これは、焼成工程の時間および雰囲気ガスの種類によって変わることができる変数であるから、本発明において生成される触媒粒子は、ニッケルまたはニッケル酸化物に該当する。
【0032】
製造例1
ゾル-ゲル反応用触媒であるオレイン酸2mmolとニッケル前駆体であるNi(NO)・6HO 0.2094g(0.7mmol)を混合し、予備前駆体溶液を形成する。予備前駆体溶液に対して200℃で2分間撹拌することによって、ニッケル前駆体が溶解する。次に、予備前駆体溶液に70mlの脱イオン水を供給し、3分間撹拌する。脱イオン水の供給および撹拌時に予備前駆体溶液は、湯煎で80℃で加熱する。これを通じて、第1前駆体溶液が形成される。形成された第1前駆体溶液は、脱イオン水内に緑色の微細液滴またはミセルが分散した形態を有する。ミセル内にニッケルイオンまたはニッケル前駆体が分散した状態である。
【0033】
次に、シラン前駆体として7.35g(35mmol)のTEOSを使用し、シランカップリング剤として1.341g(6mmol)のAPTESを使用してシラン前駆体溶液を形成する。形成されたシラン前駆体溶液を第1前駆体溶液に投入することによって、シリカ溶液が形成される。シリカ溶液から薄い白色かつ網状構造を有するシリカの合成が観察される。シリカ溶液は、80℃の湯煎で12時間攪拌され、シリカゲルとして形成される。
【0034】
次に、シリラカゲルに第2前駆体溶液を滴加する。第2前駆体溶液は、6mlの脱イオン水にNi(NO)・6HO 0.419g(1.4mmol)を混合して形成される。第2前駆体溶液を滴加しつつ、80℃の湯煎で12時間撹拌する。その後、乾燥過程を通じて粉末相を得る。形成された粉末相を800℃で焼成し、乾式改質触媒を製造する。
【0035】
比較製造例1
市販のヒュームドシリカ(fumed silica)を購入した。その後、購入したシリカ2.4gをNi(NO)・6HO溶液に浸漬し、前駆体溶液は、10wt%のニッケルに該当するように量を調節する。浸漬後、800℃で焼成し、網状構造のシリカ上にニッケルまたはニッケル酸化物をコートする。
【0036】
比較製造例2
前記製造例1と同一工程を用いて粉末相を形成するものの、ゾル-ゲル反応用触媒であるオレイン酸を投入しなかった。
【0037】
比較製造例3
前記製造例1と同一工程を用いて粉末相を形成するものの、シラン前駆体であるTEOSの投入を省略した。
【0038】
比較製造例4
前記製造例1と同一工程を用いて粉末相を形成するものの、シランカップリング剤であるAPTESの投入を省略した。
【0039】
図2は、本発明の製造例1による乾式改質触媒を示すイメージである。
図2を参照すると、200nmのスケールバーを用いたイメージでは、3次元網状構造のシリカの形成が確認される。また、シリカの網状構造内の空隙にニッケルまたはニッケル酸化物が形成されたことが確認される。濃い球形のイメージは、3次元網状構造内にニッケルまたはニッケル酸化物が形成されたものであり、シリカ内部に形成された理由によって鮮明なイメージで現れなかった。ただし、10nmのスケールバーを用いたイメージでは、3次元網状構造のシリカ空隙内にニッケルまたはニッケル酸化物の形成が確認される。形成されたニッケルまたはニッケル酸化物は、略球形の形状を有し、シリカ内部に均一に分布したことが確認される。
【0040】
図3は、本発明の製造例1による乾式改質触媒のTEMイメージおよびEDXイメージである。
図3を参照すると、乾式改質触媒としてニッケル、酸素およびシリコンの存在が確認される。特に、酸素およびシリコンは、多量分布し、これは、シリカを形成することが分かる。また、ニッケルおよび酸素の分布は、ニッケルが金属で存在したり、ニッケル酸化物形態で存在することが分かる。
【0041】
図4は、図2に示された乾式改質触媒においてニッケルまたはニッケル酸化物のサイズを示す分布図である。
図4を参照すると、球形のニッケルまたはニッケル酸化物の平均サイズは、2nmであり、0.8nm~3.6nmのサイズ分布を示す。分布曲線は、正規分布の様相を有する。
【0042】
図5は、比較製造例1の粉末相を示すイメージである。
図5を参照すると、シリカの表面上にニッケルまたはニッケル酸化物の結晶が大きいサイズで形成されたことが確認される。すなわち、10nm以上のサイズを有する析出物がシリカの表面上にコートされた形態で現れる。
【0043】
これを図2と比較すると、本発明の乾式改質触媒は、シリカの網状構造内に均一に分布し、網状構造内の空隙を埋め込む形態で形成されるのに対し、図5の乾式改質触媒は、シリカの表面上に平面状に存在することが確認される。
【0044】
図6は、本発明の製造例1および比較製造例1による乾式改質触媒のXRDパターンを示すグラフである。
図6を参照すると、製造例1の乾式改質触媒は、NiESで表記され、比較製造例1の乾式改質触媒は、IMPで表記される。製造例1の触媒は、ニッケル酸化物に該当するピークの強度が、比較製造例1に比べて低くなったことが確認される。これは、シリカ内にニッケル酸化物が均一に分布すると解される。また、ニッケル金属は、非常に小さいサイズによってXRDグラフ上に観察されないと推定される。
【0045】
図7は、比較製造例2の粉末相を示すイメージである。
図7を参照すると、オレイン酸が投入されていない粉末相では、シリカの合成が観察されず、針状の形態を有する未知の物体が確認される。これは、オレイン酸がシリカ形成のためのゾル-ゲル反応用触媒として作用するところ、オレイン酸が投入されなかった場合、ゾル-ゲル反応が円滑に誘導されない現象に起因する。
【0046】
図8は、比較製造例3の粉末相を示すイメージである。
図8を参照すると、シリカ前駆体であるTEOSが投入されていない粉末相では、シリカの網状構造が観察されない。また、非常に低い濃度または密度で若干のシリカが形成され、ニッケルまたはニッケル酸化物は、板状で不規則に形成されることが分かる。形成された板状の粒子は、比較的大きいサイズを有する。
【0047】
図9は、図8に示された粉末相においてニッケルまたはニッケル酸化物のサイズ分布を示すグラフである。
図9を参照すると、粒子のサイズ分布は、正規分布を示さず、不規則な様相を示す。特に、図4に比べて平均粒子サイズは、非常に増加したことが分かり、25nmおよび80nmで平均粒子サイズが分布する。すなわち、不規則に略2個以上の正規分布が現れる。これは、シリカ前駆体が使用されていない状態でシランカップリング剤だけで網状構造のシリカが形成されないことを意味する。ただし、シランカップリング剤のアルコキシ基によって一部の不完全なシリカが形成されることがあり、シリカの内部または表面上に緻密でなく、サイズの変動幅が大きい粒子が形成される。
【0048】
図10は、比較製造例4の粉末相を示すイメージである。
図10を参照すると、シランカップリング剤であるAPTESが投入されていない粉末は、シリカ自体が非常に不規則な様相を有する。また、シリカ内部のポアまたは網状構造内部の気孔の分布も不均一である。したがって、シリカ上に形成されるニッケルまたはニッケル酸化物の形状およびサイズも、不規則であることが分かる。
【0049】
これは、シランカップリング剤が不在の状態で合成されるシリカの相溶性が低下し、シリカの酸素元素とニッケル金属との共有結合が円滑に行われないことに起因する。
測定例1
本発明の製造例1によって製造された乾式改質触媒および比較製造例1によって製造された乾式改質触媒に対するガス改質性能を調査する。供給ガスは、COおよびCHであり、工程温度は、500℃~850℃である。分当り10℃ずつ工程温度を上昇させ、1.5時間分析する。それぞれの温度による転換率が測定される。供給ガスのガス時間空間速度(Gas Hourly Space Velocity,GHSV)は、250L・gcat・h-1である。
【0050】
図11は、本発明の測定例1によって製造例1および比較製造例1の転換率を測定したグラフである。
図11を参照すると、IMPは、比較製造例1の乾式改質触媒の使用を表示し、NiESは、製造例1の乾式改質触媒の使用を表示する。
【0051】
比較製造例1の場合、工程温度が増加するほど転換率が上昇する。ただし、850℃まで上昇したとき、最大60%未満の転換率を示す。また、COの転換率がCHの転換率を上回る。メタンの乾式改質反応は、下記の反応式4で説明する。
【0052】
[反応式4]
CH+CO→2H+2CO
前記反応式4において、正常な反応では、COとCHの転換率が同一でなければならないが、IMPを乾式改質触媒として使用した場合、COが供給ガスから急速に転換されることが明らかになる。これは、説明できない他の副反応によってCOの相当量が反応式4を経ることなく他の反応で消滅すると推定される。
【0053】
製造例1のNiESを乾式改質触媒として使用した場合、工程温度が上昇するほど転換率も上昇する。IMPに比べて非常に高い転換率を示し、750℃以上でCOとCHが80%以上の転換率を示す。これは、IMPに比べて30%以上上昇した値である。また、COとCHがほぼ同じ転換率を示す。これは、NiES乾式改質触媒は、反応式4が他の副反応が最小化された状態で進行されることを示す。特に、700℃以上でCOとCHの転換率の差は、10%未満であることが確認される。
【0054】
測定例2
図12は、本発明の測定例2による乾式改質触媒の長期安定性テスト結果を示すグラフである。
【0055】
図12を参照すると、本発明の製造例1によって製造された乾式改質触媒および比較製造例1によって製造された乾式改質触媒の長期安定性をテストする。供給ガスは、COおよびCHであり、工程温度は、800℃である。供給ガスのガス時間空間速度(Gas Hourly Space Velocity,GHSV)は、250L・gcat・h-1である。前記条件で500時間までの転換率および生成物であるCOとHの割合を測定する。
【0056】
まず、図12のグラフ(a)において、青色は、COの転換率を示し、赤色は、CHの転換率を示す。本発明の乾式改質触媒は、500時間まで進行されても90%以上の転換率を示す。しかしながら、比較製造例1のIMP乾式改質触媒は、COの転換率がCHの転換率より高い現象が現れ、時間が経過するほど触媒として性能を発揮せず、触媒の被毒などの理由で不活性化状態に進入する。特に、約50時間後にCOおよびCHが全く転換または改質されなかった。
【0057】
また、図12のグラフ(b)を参照すると、COとHのモル比を測定する。本発明のNiES乾式改質触媒では、500時間まで0.95以上であり、1に近いH/COを示す。しかしながら、ニッケルまたはニッケル酸化物がシリカ上にコートされたIMP乾式改質触媒は、時間が経過するほどH/COが減少し、50時間以上では、改質動作が全く行われなかった。
【0058】
図13は、本発明の測定例2による乾式改質触媒の長期安定性テスト結果を示すTEMイメージである。
図13のイメージ(a)を参照すると、IMP乾式改質触媒は、改質工程に投入する前のイメージにおいてシリカ構造上に板状でニッケルまたはニッケル酸化物が板状でコートされたことが確認される。また、図12の条件で31時間メタンの改質反応(dry reforming of methane,DRM)が行われた後、ニッケルまたはニッケル酸化物の粒子は、シリカ表面を移動して相互凝集し、粒子のサイズが大きくなったことが確認される。また、最右側では、800℃の高温工程によって炭素が触媒粒子の上部に沈積し、触媒の活性部位が遮断されたことが確認される。これを通じて、従来のIMP乾式改質触媒は、長期改質反応によって活性部位が遮断され、触媒粒子の相互凝集によって触媒の活性部位面積が減少する現象が観察される。
【0059】
図13のイメージ(b)を参照すると、製造例1によって製造された本発明の乾式改質触媒は、網状構造のシリカ内部空間に触媒ナノ粒子が均一に分散して形成されたことが確認される。また、メタンの改質反応が800℃で500時間行われた後のイメージを見ると、高温工程であるにもかかわらず、粒子の拡散または凝集によって触媒粒子の凝集現象に現れず、炭素の沈積による触媒の不活性化が進行されないことが確認される。
【0060】
前記の効果は、本発明の触媒ナノ粒子が3次元網状構造のシリカ内部で酸素元素とニッケルの間の共有結合を形成し、内部のポアまたは空隙内で形成されることに起因する。
測定例3
図14は、本発明の測定例3による乾式改質触媒の熱重量分析結果を示すグラフである。
【0061】
図14を参照すると、製造例1の乾式改質触媒NiESは、800℃まで昇温しても重量損失が現れない。すなわち、高い工程温度でも触媒粒子がシリカから離脱したり、凝集過程で分解される現象が現れないことを示す。また、炭素の沈積による熱分解も観察されない。
【0062】
しかしながら、比較製造例1の乾式改質触媒IMPでは、工程温度500℃以上で持続的な重量減少が観察される。前記温度でニッケルまたはニッケル酸化物が蒸発したり熱分解しないと推測される。それにもかかわらず、重量減少が発生することは、シリカ表面上に形成された触媒粒子が粗大化することにより、触媒粒子がシリカ表面から離脱したり除去されたと推測される。また、約720℃以上の工程温度でこれ以上の重量減少が起こらないところ、これは、シリカ表面上の触媒粒子の凝集による粗大化が完了し、触媒粒子の表面に炭素の沈積が起こり、活性部位がこれ以上存在しない安定化した不活性部位が形成されたことに起因する。
【0063】
上記の測定例を通じて、本発明の乾式改質触媒は、3次元網状構造を有するシリカのポア(pore)内部にニッケルまたはニッケル酸化物の触媒粒子が形成されたことが確認される。触媒粒子のニッケル原子は、シリカの酸素原子と共有結合を形成し、触媒粒子は、シリカ内部のポア内に形成され、他のポアに移動し、触媒粒子が粗大化しない。特に、本発明の製造法によって形成される網状構造を有するシリカは、内部に一定のサイズと均一に分布したポアを有することができる。これは、第1前駆体溶液においてゾル-ゲル反応用触媒が微細液滴またはミセルで形成されることに起因する。すなわち、ゾル-ゲル反応用触媒が互いにミセルに分離され、比較的均一なサイズを有することにより、シリカの形成のためのゾル-ゲル反応も、ミセルを中心に相互均一性をもって形成される。したがって、網状構造のシリカポア内に形成された触媒粒子は、シリカ内部まで均一な分布で形成されることができ、改質反応において触媒粒子の凝集や、被毒現象なしに長期安定性を確保することができる。
【0064】
下記の表1は、製造例1および比較製造例において提供されるシリカの表面積、ポア体積および平均ポア直径を測定した値を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
前記表1において、比較製造例4のシリカが非常に高い表面積を示す。これは、シランカップリング剤が投入されていない場合のシリカであり、シリカのゾル-ゲル反応でシラン前駆体とゾル-ゲル反応用触媒等との相溶性が低下し、均一な混合が行われず、シラン前駆体だけでゾル-ゲル反応が起こったことに起因する。したがって、比較製造例4のシリカは、平均ポア直径も最も大きく現れた。
【0067】
ポア体積を見ると、比較製造例2が最も大きい値を示す。比較製造例2では、ゾル-ゲル反応用触媒が使用されないので、触媒を収容するための網状構造のシリカが正確に形成されない。したがって、緻密な構造のシリカは、観察されず、非常に大きいポア体積を有するシリカが現れる。
【0068】
本発明のシリカは、ナノサイズの平均ポア直径を有し、非常に小さいポア体積を有する。すなわち、ナノサイズのポアが形成され、且つ、ポアの体積は、小さい値を有するので、ポア内に形成された触媒粒子が高温で拡散したり凝集する現象が遮断される。また、大きい表面積によってナノサイズの活性部位が多量で生成され、触媒の性能および長期安定性を確保する。
【0069】
また、本発明の触媒粒子は、ポア内部に形成されることにより、ポアより小さい平均直径を有することが確認される。これは、ニッケル金属の析出時に、ニッケル金属のサイズを調節するオレイン酸の介入または最終的な焼結工程でニッケル金属の収縮によるものである。特に、ゾル-ゲル反応用触媒であり、ニッケル金属の成長調節因子として作用するオレイン酸は、投入量または濃度に応じてニッケル金属の析出動作時に、ニッケル金属のサイズを調節することができる。したがって、必要に応じて、触媒粒子は、シリカのポアを充填することができ、ポアより小さい直径でポア内部に形成することができる。特にポアより小さい直径で形成した触媒粒子は、ポア内部で転換が要求される供給ガスとの接触面積を増加させ、長期安定性を確保する。
【0070】
上記の本発明では、メタンの乾式改質反応に使用されるニッケルまたはニッケル酸化物触媒が開示される。触媒粒子は、シリカ内部にも形成され、ナノサイズのポア内に形成される。合成工程でゾル-ゲル反応によって生成されるシリカの酸素原子には、前駆体から供給されるニッケル原子が共有結合される。また、後の工程でニッケル-酸素の共有結合部位にニッケルは、溶解度の差によって析出する。また、焼結工程が進行すると、ニッケル金属は、表面で一部が酸化することがあり、ニッケルまたはニッケル酸化物の触媒粒子を形成する。比較的高い密度を有して一定のポアサイズを有するシリカ内部に触媒粒子が形成される。形成された触媒粒子は、ポアより小さいサイズを有するので、ポアと触媒粒子の間に一定の離隔空間が形成される。したがって、メタンガスと触媒粒子間の接触面積が増加し、メタンの乾式改質反応で長期安定性を確保し、高い転換率を維持することができる。
図1
【図
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】