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特表2024-526820ACTRIIタンパク質およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ACTRIIタンパク質およびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240711BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240711BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240711BHJP
   C07K 14/71 20060101ALI20240711BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240711BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P9/00
A61P9/12
A61K47/68
A61K47/65
A61K45/00
C07K14/71 ZNA
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502611
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 US2022037479
(87)【国際公開番号】W WO2023003815
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,265
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509125475
【氏名又は名称】アクセルロン ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】デ・オリヴェイラ・ペーナ,ジャネーテ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC11
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084CA18
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA42
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
幾つかの態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減するための組成物および方法、特に、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する投与レジメンに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ActRIIポリペプチドで患者を治療する際の毛細血管拡張症のリスクを低減する方法であって、該方法が、
(i)ActRIIポリペプチドの、1以上の第1用量を、0.3mg/kgの量で3週間に1回、24週間、患者に投与すること、および
(ii)患者が毛細血管拡張症の、1以上の症状または発生リスク因子を示す場合には、ActRIIポリペプチドの、1以上の第2用量を、第1用量の量の少なくとも半分低減した量で、患者に投与すること
を含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
ActRIIポリペプチドで患者を治療する際の毛細血管拡張症のリスクを低減する方法であって、該方法が、
(i)ActRIIポリペプチドの、1以上の用量を、0.3mg/kgの量で3週間に1回、24週間、患者に投与すること、
(ii)患者が毛細血管拡張症の、1以上の症状または発生リスク因子を示す場合には、投与を省略(skip)し、この場合、工程(i)の後の6週間にわたって患者を治療しないこと、
(iii)ActRIIポリペプチドの、1以上の用量を、0.3mg/kgの量で3週間に1回、24週間、患者に投与することを再開すること
を含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
肺動脈性肺高血圧症の治療方法であって、該方法が、
(i)ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および
(ii)患者が治療を要する限り、ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で3週間に1回、患者に投与すること
を含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを、それを要する患者に投与することを含み、
ここで、該ポリペプチドが、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、前記方法。
【請求項4】
ActRIIポリペプチドで患者を治療する際の毛細血管拡張症のリスクを低減する方法であって、該方法が、
(i)ActRIIポリペプチドの、1以上の第1用量を、0.3mg/kgの量で3週間に1回、24週間、患者に投与すること、
(ii)患者が治療を要する限り、ActRIIポリペプチドの、1以上の第2用量を、0.7mg/kgの量で3週間に1回、患者に投与すること、および
(iii)患者が毛細血管拡張症の、1以上の症状または発生リスク因子を示す場合には、症状が改善するまで、ActRIIポリペプチドの、1以上の第3用量を、0.3mg/kgの量で3週間に1回、投与すること
を含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与し、
該ポリペプチドが、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減することを含む、前記方法。
【請求項5】
工程(iii)が、ActRIIポリペプチドの、1以上の用量を、0.3mg/kgの量で3週間に1回、少なくとも24週間、患者に投与することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)と工程(iii)との間の少なくとも2~6週間、ActRIIポリペプチドで患者を治療しない、請求項4記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)と工程(iii)との間の少なくとも3週間、ActRIIポリペプチドで患者を治療しない、請求項4または6記載の方法。
【請求項8】
工程(i)が、第1用量を少なくとも3週間、患者に投与することを含む、請求項4~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(ii)が、第2用量を少なくとも21週間、患者に投与することを含む、請求項4~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)が、第2用量を少なくとも45週間、患者に投与することを含む、請求項4~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
毛細血管拡張症の前記の1以上の症状が、疼痛、掻痒、皮膚上の糸状の赤い跡、皮膚粘膜毛細血管拡張症、胃腸出血、皮膚上の病変、鼻出血、歯肉出血、動静脈奇形、内部毛細血管拡張症および皮膚上の赤色斑点からなる群から選択される、請求項1~2および4~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
毛細血管拡張症の、1以上の症状が、皮膚上の病変を含む、請求項1~2および4~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
毛細血管拡張症の、1以上の症状が、歯肉出血を含む、請求項1~2および4~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
毛細血管拡張症の、1以上の症状が、鼻出血を含む、請求項1~2および4~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
毛細血管拡張症の、1以上の症状が、動静脈奇形を含む、請求項1~2および4~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
毛細血管拡張症の、1以上の症状が、内部毛細血管拡張症を含む、請求項1~2および4~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
動静脈奇形または内部毛細血管拡張症が内臓において生じる、請求項11、15または16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
毛細血管拡張症を発生するリスク因子が、
i.低いBMP9レベル、
ii.低いBMP10レベル、
iii.低いVEGFレベル、
iv.遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)、および
v.結合組織病(膠原病)(CTD)
からなる群から選択される、請求項1~2および4~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
該方法が患者における毛細血管拡張症の重症度を緩和または改善する、請求項1~2および4~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
該方法が患者における毛細血管拡張症の進行を予防する、請求項1~2および4~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
工程(iii)が、毛細血管拡張症がグレード1以下に改善するまで、ActRIIポリペプチドの治療を保留することを含む、請求項2または請求項4記載の方法。
【請求項22】
該方法が毛細血管拡張症の重症度をグレード2からグレード1に改善する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
該方法が毛細血管拡張症の重症度をグレード3からグレード2に改善する、請求項19記載の方法。
【請求項24】
該方法が毛細血管拡張症の重症度をグレード3からグレード1に改善する、請求項19記載の方法。
【請求項25】
該方法がグレード1からグレード2への毛細血管拡張症の進行を予防する、請求項20記載の方法。
【請求項26】
該方法がグレード2からグレード3への毛細血管拡張症の進行を予防する、請求項20記載の方法。
【請求項27】
患者が肺高血圧症の治療のためにActRIIポリペプチドの投与を受けている、請求項1~2および4~26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
患者が肺動脈性肺高血圧症の治療のためにActRIIポリペプチドの投与を受けている、請求項1~2および4~27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
該ポリペプチドが、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
該ポリペプチドが、配列番号1の残基21~135に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~28のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
該ポリペプチドが、配列番号1の残基21~135に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~28のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
ActRIIポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
ActRIIポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~31のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
ActRIIポリペプチドが、免疫グロブリンのFcドメインを更に含む融合タンパク質である、請求項1~33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
免疫グロブリンのFcドメインがIgG1免疫グロブリンのFcドメインである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
Fc融合タンパク質が、ActRIIポリペプチドドメインと免疫グロブリンのFcドメインとの間に位置するリンカードメインを更に含む、請求項34または請求項35記載の方法。
【請求項37】
リンカードメインが、TGGG(配列番号20)、TGGGG(配列番号18)、SGGGG(配列番号19)、GGGGS(配列番号22)、GGG(配列番号16)、GGGG(配列番号17)およびSGGG(配列番号21)からなる群から選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ActRIIポリペプチドが、配列番号23のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
ActRIIポリペプチドが、配列番号40のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~37のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
該ポリペプチドが凍結乾燥後に再構成(reconstituted)される、請求項1~39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
該ポリペプチドが可溶性である、請求項1~40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
該ポリペプチドが、皮下注射を用いて患者に投与される、請求項1~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
該ポリペプチドが、毎週、2週間ごと、3週間ごとおよび4週間ごとからなる群から選択されるスケジュールで患者に投与される、請求項1~42のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
該ポリペプチドが3週間ごとに患者に投与される、請求項1~42のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
該ポリペプチドが4週間ごとに患者に投与される、請求項1~42のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
該ポリペプチドがホモ二量体タンパク質複合体の一部である、請求項1~45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
該ポリペプチドがグリコシル化されている、請求項1~46のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
該ポリペプチドが、チャイニーズハムスター卵巣細胞における発現によって得られるグリコシル化パターンを有する、請求項1~47のいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
ActRIIポリペプチドが、アクチビンA、アクチビンBおよびGDF11からなる群から選択される1以上のリガンドに結合する、請求項1~48のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
ActRIIポリペプチドがアクチビンおよび/またはGDF11に結合する、請求項1~48のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
ActRIIポリペプチドが、BMP10、GDF8およびBMP6からなる群から選択される1以上のリガンドに更に結合する、請求項49または請求項50記載の方法。
【請求項52】
追加的な活性物質および/または支持療法を患者に更に投与することを含む、請求項1~51のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
追加的な活性物質および/または支持療法が、ベータブロッカー、アンジオテンシン変換酵素インヒビター(ACEインヒビター)、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、利尿剤、脂質低下薬、エンドセリンブロッカー、PDE5インヒビター、プロスタサイクリンおよび左心室補助装置(LVAD)からなる群から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
追加的な活性物質および/または支持療法が、プロスタサイクリンおよびその誘導体(例えば、エポプロステノール、トレプロスチニルおよびイロプロスト);プロスタサイクリン受容体アゴニスト(例えば、セレキシパグ);エンドセリン受容体アンタゴニスト(例えば、テリン、アンブリセンタン、マシテンタンおよびボセンタン);カルシウムチャネルブロッカー(例えば、アムロジピン、ジルチアゼムおよびニフェジピン);抗凝固薬(例えば、ワルファリン);利尿薬;酸素療法;心房中隔欠損作成術;肺血栓内膜切除術;ホスホジエステラーゼ5型インヒビター(例えば、シルデナフィルおよびタダラフィル);可溶性グアニル酸シクラーゼのアクチベーター(例えば、シナシグアトおよびリオシグアト);ASK-1インヒビター(例えば、CIIA;SCH79797;GS-4997;MSC2032964A;3H-ナフト[1,2,3-デ]キニリン-2,7-ジオン、NQDI-1;2-チオキソ-チアゾリジン、5-ブロモ-3-(4-オキソ-2-チオキソ-チアゾリジン-5-イリデン)-1,3-ジヒドロ-インドール-2-オン);NF-κBアンタゴニスト(例えば、dh404、CDDO-エポキシド;2.2-ジフルオロプロピオンアミド;C28イミダゾール(CDDO-Im);2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9-ジエン-28-酸(CDDO);3-アセチルオレアノール酸;3-トリフルオロアセチルオレアノール酸;28-メチル-3-アセチルオレアナン;28-メチル-3-トリフルオロアセチルオレアナン;28-メチルオキシオレアノール酸;SZC014;SCZ015;SZC017;オレアノール酸のPEG化誘導体;3-O-(ベータ-D-グルコピラノシル)オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[αL-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸;3-O-[アルファ-L-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;28-O-β-D-グルコピラノシル-オレアノール酸;3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS1);オレアノール酸 3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS2);メチル 3,11-ジオキソオレアン-12-エン-28-オラート(DIOXOL);ZCVI-2;ベンジル 3-デヒドロオキシ-1,2,5-オキサジアゾロ[3’,4’:2,3]オレアノラート);左心室補助装置(LVAD)、ならびに肺および/もしくは心臓移植からなる群から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項55】
患者が、ホスホジエステラーゼ5型インヒビター、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質、プロスタサイクリン受容体アゴニストおよびエンドセリン受容体アンタゴニストからなる群から選択される1以上の物質で治療されている、請求項1~54のいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
前記の1以上の物質が、ボセンタン、シルデナフィル、ベラプロスト、マシテンタン、セレキシパグ、エポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、アンブリセンタンおよびタダラフィルからなる群から選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
該方法が、ホスホジエステラーゼ5型インヒビター、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質、プロスタサイクリン受容体アゴニストおよびエンドセリン受容体アンタゴニストからなる群から選択される1以上の物質の投与を更に含む、請求項1~56のいずれか1項記載の方法。
【請求項58】
前記の1以上の物質が、ボセンタン、シルデナフィル、ベラプロスト、マシテンタン、セレキシパグ、エポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、アンブリセンタンおよびタダラフィルからなる群から選択される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
患者が該ポリペプチドの投与の前に1以上の血管拡張薬で治療されている、請求項1~58のいずれか1項記載の方法。
【請求項60】
該方法が1以上の血管拡張薬の投与を更に含む、請求項1~59のいずれか1項記載の方法。
【請求項61】
前記の1以上の血管拡張薬が、プロスタサイクリン、エポプロステノールおよびシルデナフィルからなる群から選択される、請求項59または請求項60記載の方法。
【請求項62】
血管拡張薬がプロスタサイクリンである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
患者がPAHに対する1以上の療法を受けている、請求項1~62のいずれか1項記載の方法。
【請求項64】
PAHに対する1以上の療法が、プロスタサイクリンおよびその誘導体(例えば、エポプロステノール、トレプロスチニルおよびイロプロスト);プロスタサイクリン受容体アゴニスト(例えば、セレキシパグ);エンドセリン受容体アンタゴニスト(例えば、テリン、アンブリセンタン、マシテンタンおよびボセンタン);カルシウムチャネルブロッカー(例えば、アムロジピン、ジルチアゼムおよびニフェジピン);抗凝固薬(例えば、ワルファリン);利尿薬;酸素療法;心房中隔欠損作成術;肺血栓内膜切除術;ホスホジエステラーゼ5型インヒビター(例えば、シルデナフィルおよびタダラフィル);可溶性グアニル酸シクラーゼのアクチベーター(例えば、シナシグアトおよびリオシグアト);ASK-1インヒビター(例えば、CIIA;SCH79797;GS-4997;MSC2032964A;3H-ナフト[1,2,3-デ]キニリン-2,7-ジオン、NQDI-1;2-チオキソ-チアゾリジン、5-ブロモ-3-(4-オキソ-2-チオキソ-チアゾリジン-5-イリデン)-1,3-ジヒドロ-インドール-2-オン);NF-κBアンタゴニスト(例えば、dh404、CDDO-エポキシド;2.2-ジフルオロプロピオンアミド;C28イミダゾール(CDDO-Im);2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9-ジエン-28-酸(CDDO);3-アセチルオレアノール酸;3-トリフルオロアセチルオレアノール酸;28-メチル-3-アセチルオレアナン;28-メチル-3-トリフルオロアセチルオレアナン;28-メチルオキシオレアノール酸;SZC014;SCZ015;SZC017;オレアノール酸のPEG化誘導体;3-O-(ベータ-D-グルコピラノシル)オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[a-L-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸;3-O-[アルファ-L-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;28-O-β-D-グルコピラノシル-オレアノール酸;3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS1);オレアノール酸 3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS2);メチル 3,11-ジオキソオレアン-12-エン-28-オラート(DIOXOL);ZCVI-2;ベンジル 3-デヒドロオキシ-1,2,5-オキサジアゾロ[3’,4’:2,3]オレアノラート);左心室補助装置(LVAD)、ならびに肺および/もしくは心臓移植からなる群から選択される、請求項63記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は2021年7月19日付出願の米国仮特許出願第63/223,265号(その内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【0002】
分野
本出願は、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法を記載する。本出願はまた、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法であって、該ポリペプチドが、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、前記方法に関する。
【背景技術】
【0003】
毛細血管拡張症は、拡張した細静脈(小さな血管)が皮膚に糸のような赤い線または模様を生じさせる状態を意味する。これらの模様、すなわち毛細血管拡張は多数の条件下で血管作動性物質の放出または活性化によって引き起こされると考えられている。毛細血管拡張症はしばしば良性であるが、それは遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)のような重篤な疾患によっても引き起こされうる。HHT患者では、肝臓のような重要な器官に毛細血管拡張が生じうる。これらの毛細血管拡張の破裂は、生命を脅かす出血を引き起こしうる。
【0004】
毛細血管拡張症は、ALK-1受容体融合タンパク質(ダランテルセプト)、エンドグリン中和抗体(TRC105)および特定のActRIIポリペプチドのような特定の薬物の投与の際に副作用として生じうる(Garber K.Nat Biotechnol.2016;34(5):458-461)。
【0005】
基礎疾患の治療のために1以上のActRIIポリペプチドの投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減するための有効な療法に対する、満たされていない高い需要が存在する。したがって、本開示の目的は、ActRIIポリペプチドの投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクに対する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
概括
特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法を提供し、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および(ii)ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、第3用量の投与を開始し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減する。特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法を提供し、ここで、該ポリペプチドは、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および(ii)ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与することを含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、第3用量の投与を開始し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、第3用量の投与は、ActRIIポリペプチドの用量を0.3mg/kgの量で患者に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、第3用量の投与は、ActRIIポリペプチドの治療を、少なくとも2~6週間、保留する(withhold;見合わせる)ことを含む。幾つかの実施形態においては、第3用量の投与は、ActRIIポリペプチドの治療を、少なくとも3週間、保留することを含む。幾つかの実施形態においては、第1用量を患者に少なくとも3週間投与する。幾つかの実施形態においては、第2用量を少なくとも21週間投与する。幾つかの実施形態においては、第2用量を少なくとも45週間投与する。
【0007】
特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチドで患者を治療する際の毛細血管拡張症のリスクを低減する方法を提供し、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドの、1以上の第1用量を、0.3mg/kgの量で3週間に1回、24週間、患者に投与することを含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の1以上の症状または発生リスク因子を示す場合には、ActRIIポリペプチドの、1以上の第2用量を、第1用量の量の少なくとも半分低減した量で、患者に投与する。
【0008】
特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法を提供し、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドを0.3mg/kgの量で3週間ごとに患者に投与することを含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、ActRIIポリペプチドを0.3mg/kgの量で6週間ごとに患者に投与し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減する。特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法を提供し、ここで、該ポリペプチドは、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドを0.3mg/kgの量で3週間ごとに患者に投与することを含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、ActRIIポリペプチドを0.3mg/kgの量で6週間ごとに患者に投与し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドの治療的有効量は3週間ごとの0.7mg/kgである。
【0009】
特定の態様においては、本開示は、肺動脈性肺高血圧症の治療方法を提供し、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および(ii)患者が治療を要する限り、ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で3週間に1回、患者に投与することを含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを、それを要する患者に投与することを含み、ここで、該ポリペプチドは、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0010】
幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は、疼痛、掻痒、皮膚上の糸状の赤い跡、皮膚粘膜毛細血管拡張症、胃腸出血、皮膚上の病変、鼻出血、歯肉出血、動静脈奇形、内部毛細血管拡張症および皮膚上の赤色斑点からなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は皮膚上の病変を含む。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は歯肉出血を含む。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は鼻出血を含む。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は動静脈奇形を含む。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は内部毛細血管拡張症を含む。幾つかの実施形態においては、動静脈奇形または内部毛細血管拡張症は内臓(例えば、脳、肝臓、肺、脾臓、尿路および脊椎)において生じる。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症を発生するリスク因子は、低いBMP9レベル、低いBMP10レベル、低いVEGFレベル、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)および結合組織病(膠原病)(CTD)からなる群から選択される。
【0011】
幾つかの実施形態においては、リスクの低減は重篤な毛細血管拡張症の軽減または改善を含む。幾つかの実施形態においては、リスクの低減は、毛細血管拡張症の進行を予防することを含む。幾つかの実施形態においては、第3用量は、毛細血管拡張症がグレード1以下に改善するまで、ActRIIポリペプチドの治療を保留することを含む。幾つかの実施形態においては、該方法は、毛細血管拡張症の重症度をグレード2からグレード1に改善する。幾つかの実施形態においては、該方法は毛細血管拡張症の重症度をグレード3からグレード2に改善する。幾つかの実施形態においては、該方法は毛細血管拡張症の重症度をグレード3からグレード1に改善する。幾つかの実施形態においては、該方法はグレード1からグレード2への毛細血管拡張症の進行を予防する。幾つかの実施形態においては、該方法は、グレード2からグレード3への毛細血管拡張症の進行を予防する。幾つかの実施形態においては、患者はPHの治療のためにActRIIポリペプチドの投与を受けている。幾つかの実施形態においては、患者はPAHの治療のためにActRIIポリペプチドの投与を受けている。
【0012】
幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号1の残基21~135に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは、配列番号1の残基21~135に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、免疫グロブリンのFcドメインを更に含む融合タンパク質である。幾つかの実施形態においては、免疫グロブリンのFcドメインはIgG1免疫グロブリンのFcドメインである。幾つかの実施形態においては、Fc融合タンパク質は、ActRIIポリペプチドドメインと免疫グロブリンのFcドメインとの間に位置するリンカードメインを更に含む。幾つかの実施形態においては、リンカードメインは、TGGG(配列番号20)、TGGGG(配列番号18)、SGGGG(配列番号19)、GGGGS(配列番号22)、GGG(配列番号16)、GGGG(配列番号17)およびSGGG(配列番号21)からなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号40のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0013】
幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは凍結乾燥される。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは可溶性である。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは、皮下注射を用いて患者に投与される。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは、毎週、2週間ごと、3週間ごとおよび4週間ごとからなる群から選択されるスケジュールで患者に投与される。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは3週間ごとに患者に投与される。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは4週間ごとに患者に投与される。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドはホモ二量体タンパク質複合体の一部である。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドはグリコシル化されている。幾つかの実施形態においては、該ポリペプチドは、チャイニーズハムスター卵巣細胞における発現によって得られうるグリコシル化パターンを有する。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、アクチビンA、アクチビンBおよびGDF11からなる群から選択される1以上のリガンドに結合する。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドはアクチビンおよび/またはGDF11に結合する。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、BMP10、GDF8およびBMP6からなる群から選択される1以上のリガンドに更に結合する。
【0014】
幾つかの実施形態においては、該方法は、追加的な活性物質および/または支持療法を患者に投与することを更に含む。幾つかの実施形態においては、追加的な活性物質および/または支持療法は、ベータブロッカー、アンジオテンシン変換酵素インヒビター(ACEインヒビター)、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、利尿剤、脂質低下薬、エンドセリンブロッカー、PDE5インヒビター、プロスタサイクリンまたは左心室補助装置(LVAD)からなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、追加的な活性物質および/または支持療法は、以下のものからなる群から選択される:プロスタサイクリンおよびその誘導体(例えば、エポプロステノール、トレプロスチニルおよびイロプロスト);プロスタサイクリン受容体アゴニスト(例えば、セレキシパグ);エンドセリン受容体アンタゴニスト(例えば、テリン、アンブリセンタン、マシテンタンおよびボセンタン);カルシウムチャネルブロッカー(例えば、アムロジピン、ジルチアゼムおよびニフェジピン);抗凝固薬(例えば、ワルファリン);利尿薬;酸素療法;心房中隔欠損作成術;肺血栓内膜切除術;ホスホジエステラーゼ5型インヒビター(例えば、シルデナフィルおよびタダラフィル);可溶性グアニル酸シクラーゼのアクチベーター(例えば、シナシグアトおよびリオシグアト);ASK-1インヒビター(例えば、CIIA;SCH79797;GS-4997;MSC2032964A;3H-ナフト[1,2,3-デ]キニリン-2,7-ジオン、NQDI-1;2-チオキソ-チアゾリジン、5-ブロモ-3-(4-オキソ-2-チオキソ-チアゾリジン-5-イリデン)-1,3-ジヒドロ-インドール-2-オン);NF-κBアンタゴニスト(例えば、dh404、CDDO-エポキシド;2.2-ジフルオロプロピオンアミド;C28イミダゾール(CDDO-Im);2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9-ジエン-28-酸(CDDO);3-アセチルオレアノール酸;3-トリフルオロアセチルオレアノール酸;28-メチル-3-アセチルオレアナン;28-メチル-3-トリフルオロアセチルオレアナン;28-メチルオキシオレアノール酸;SZC014;SCZ015;SZC017;オレアノール酸のPEG化誘導体;3-O-(ベータ-D-グルコピラノシル)オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[αL-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸;3-O-[アルファ-L-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;28-O-β-D-グルコピラノシル-オレアノール酸;3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS1);オレアノール酸 3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS2);メチル 3,11-ジオキソオレアン-12-エン-28-オラート(DIOXOL);ZCVI-2;ベンジル 3-デヒドロオキシ-1,2,5-オキサジアゾロ[3’,4’:2,3]オレアノラート);左心室補助装置(LVAD)、または肺および/もしくは心臓移植。幾つかの実施形態においては、患者は、ホスホジエステラーゼ5型インヒビター、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質、プロスタサイクリン受容体アゴニストおよびエンドセリン受容体アンタゴニストからなる群から選択される1以上の物質で治療されている。幾つかの実施形態においては、前記の1以上の物質は、ボセンタン、シルデナフィル、ベラプロスト、マシテンタン、セレキシパグ、エポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、アンブリセンタンおよびタダラフィルからなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、該方法は、ホスホジエステラーゼ5型インヒビター、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質、プロスタサイクリン受容体アゴニストおよびエンドセリン受容体アンタゴニストからなる群から選択される1以上の物質の投与を更に含む。幾つかの実施形態においては、前記の1以上の物質は、ボセンタン、シルデナフィル、ベラプロスト、マシテンタン、セレキシパグ、エポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、アンブリセンタンおよびタダラフィルからなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、患者は、該ポリペプチドの投与の前に1以上の血管拡張薬で治療されている。幾つかの実施形態においては、該方法は、1以上の血管拡張薬の投与を更に含む。幾つかの実施形態においては、前記の1以上の血管拡張薬は、プロスタサイクリン、エポプロステノールおよびシルデナフィルからなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、血管拡張薬はプロスタサイクリンである。幾つかの実施形態においては、患者はPAHに対する1以上の療法を受けている。幾つかの実施形態においては、PAHに対する1以上の療法は、以下のものからなる群から選択される:プロスタサイクリンおよびその誘導体(例えば、エポプロステノール、トレプロスチニルおよびイロプロスト);プロスタサイクリン受容体アゴニスト(例えば、セレキシパグ);エンドセリン受容体アンタゴニスト(例えば、テリン、アンブリセンタン、マシテンタンおよびボセンタン);カルシウムチャネルブロッカー(例えば、アムロジピン、ジルチアゼムおよびニフェジピン);抗凝固薬(例えば、ワルファリン);利尿薬;酸素療法;心房中隔欠損作成術;肺血栓内膜切除術;ホスホジエステラーゼ5型インヒビター(例えば、シルデナフィルおよびタダラフィル);可溶性グアニル酸シクラーゼのアクチベーター(例えば、シナシグアトおよびリオシグアト);ASK-1インヒビター(例えば、CIIA;SCH79797;GS-4997;MSC2032964A;3H-ナフト[1,2,3-デ]キニリン-2,7-ジオン、NQDI-1;2-チオキソ-チアゾリジン、5-ブロモ-3-(4-オキソ-2-チオキソ-チアゾリジン-5-イリデン)-1,3-ジヒドロ-インドール-2-オン);NF-κBアンタゴニスト(例えば、dh404、CDDO-エポキシド;2.2-ジフルオロプロピオンアミド;C28イミダゾール(CDDO-Im);2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9-ジエン-28-酸(CDDO);3-アセチルオレアノール酸;3-トリフルオロアセチルオレアノール酸;28-メチル-3-アセチルオレアナン;28-メチル-3-トリフルオロアセチルオレアナン;28-メチルオキシオレアノール酸;SZC014;SCZ015;SZC017;オレアノール酸のPEG化誘導体;3-O-(ベータ-D-グルコピラノシル)オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[ベータ-D-グルコピラノシル-(1→2)-ベータ-D-グルコピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;3-O-[a-L-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸;3-O-[アルファ-L-ラムノピラノシル-(1→3)-ベータ-D-グルクロノピラノシル]オレアノール酸 28-O-ベータ-D-グルコピラノシルエステル;28-O-β-D-グルコピラノシル-オレアノール酸;3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS1);オレアノール酸 3-O-β-D-グルコピラノシル(1→3)-β-D-グルコピラノシズロン酸(CS2);メチル 3,11-ジオキソオレアン-12-エン-28-オラート(DIOXOL);ZCVI-2;ベンジル 3-デヒドロオキシ-1,2,5-オキサジアゾロ[3’,4’:2,3]オレアノラート);左心室補助装置(LVAD)、または肺および/もしくは心臓移植。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1はヒトActRIIBの細胞外ドメイン(配列番号31)とヒトActRIIAの細胞外ドメイン(配列番号2)とのアライメントを示し、ここで、複数のActRIIBおよびActRIIA結晶構造の複合解析に基づいてリガンドに直接接触すると本明細書において推定される残基がボックスで示されている。
図2図2は種々の脊椎動物ActRIIAタンパク質およびヒトActRIIA(配列番号6~10および36~38)の多重配列アライメントを示す。
図3図3は、Clustal2.1を使用した場合の、ヒトIgGアイソタイプからのFcドメインの多重配列アライメントを示す。ヒンジ領域は点線の下線で示されている。二重下線は、非対称鎖対合を促進するためにIgG1 Fc(配列番号32)において操作された位置の例、ならびに他のアイソタイプIgG2(配列番号33)、IgG3(配列番号34)およびIgG4(配列番号35)に関する対応位置を示す。
図4A図4Aおよび4Bは、CHO細胞において発現されたActRIIA-hFcの精製を示す。該タンパク質は、サイジングカラム(図4A)およびクーマシー染色SDS-PAGE(図4B)によって可視化されるとおり、単一の明確なピークとして精製される(左レーン:分子量標準;右レーン:ActRIIA-hFc)。
図4B図4Aおよび4Bは、CHO細胞において発現されたActRIIA-hFcの精製を示す。該タンパク質は、サイジングカラム(図4A)およびクーマシー染色SDS-PAGE(図4B)によって可視化されるとおり、単一の明確なピークとして精製される(左レーン:分子量標準;右レーン:ActRIIA-hFc)。
図5A図5Aおよび5Bは、Biacore(商標)アッセイによって測定された場合の、アクチビン(図5A)およびGDF-11(図5B)へのActRIIA-hFcの結合を示す。
図5B図5Aおよび5Bは、Biacore(商標)アッセイによって測定された場合の、アクチビン(図5A)およびGDF-11(図5B)へのActRIIA-hFcの結合を示す。
【0016】
詳細な説明
1.概観
本開示は、本明細書に記載されているActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減するための組成物および方法に関するものであり、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および(ii)ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、第3用量の投与を開始し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減する。
【0017】
特定の実施形態においては、本開示は、肺動脈性肺高血圧症(例えば、機能的クラスIIまたは機能的クラスIII)の治療のためにActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減するための方法を提供し、ここで、肺動脈性肺高血圧症は、本明細書に記載されているActRIIポリペプチドの有効量を、それを要する患者に投与することによって治療される。
【0018】
肺動脈性肺高血圧症[世界保健機関(WHO)グループ1 PH]は、肺動脈の壁における平滑筋細胞の異常増殖および深刻な血管収縮によって特徴付けられる、重篤で進行性の生命を脅かす肺血管系疾患である。肺における血管の激しい収縮は非常に高い肺動脈圧を招く。これらの高圧は、心臓が肺に血液を送り出してそれが酸素化されることを困難にする。PAHを有する患者は極度の息切れに悩まされる。なぜなら、心臓はこれらの高圧に抗して拍出しようとするからである。PAHを有する患者は、典型的には、PVRの有意な増加およびmPAPの持続的上昇を引き起こし、これらは最終的には右心室不全および死を招く。PAHと診断された患者は不良予後および同様に損なわれた生活の質を示し、治療されなかった場合の平均余命は診断時から2~5年である。
【0019】
PAHは、安静時における25mmHgを超える(あるいは、更新されたガイドラインでは20mmHgを超える)平均肺動脈圧および正常な肺動脈毛細血管楔入圧に基づいて診断されうる。PAHは息切れ、めまい、失神および他の症状を引き起こす可能性があり、これらの全ては労作によって悪化する。PAHは、運動耐性の顕著な低下および心不全を伴う重篤な疾患でありうる。PAHの2つの主要タイプには、特発性PAH(例えば、素因が特定されていないPAH)および遺伝性PAH(例えば、BMPR2、ALK1、ENG、SMAD9、CAV1、KCNK3またはEIF2AK4における突然変異に関連するPAH)が含まれる。家族性PAHの症例の70%においては、BMPR2遺伝子に突然変異が存在する。PAHの発生のリスク因子には、PAHの家族歴、薬物および毒素の使用(例えば、メタンフェタミンまたはコカインの使用)、感染症(例えば、HIV感染または住血吸虫症)、肝硬変、先天性心臓異常、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞性疾患、肺毛細血管腫症または結合組織/自己免疫障害(例えば、強皮症またはループス)が含まれる。PAHはカルシウムチャネルブロッカーに対する長期応答者、静脈/毛細血管(PVOD/PCH)関与の明白な特徴および新生児症候群の持続性PHに関連づけられうる。
【0020】
本明細書中で用いられている用語は、一般に、本開示の文脈内および各用語が用いられている具体的な文脈において、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本開示の組成物および方法ならびにそれらの製造および使用方法を説明する際に実施者に追加的な指針を提供するために、後記または本明細書中のどこかで特定の用語を説明する。用語の任意の使用の範囲または意味は、それが用いられている具体的な文脈から明らかとなろう。
【0021】
「配列類似性」なる語は全てのその文法的形態において、共通の進化的起源を共有していてもしていなくてもよい核酸またはアミノ酸配列間の同一性または一致の度合を意味する。
【0022】
参照ポリペプチド(またはヌクレオチド)配列に対する「配列同一性(%)」は、配列をアライメント(整列)させ、配列同一性の一部としていずれの保存的置換をも考慮することなく、最大の配列同一性(%)が得られるように必要に応じてギャップを導入した後、参照ポリペプチド(ヌクレオチド)配列におけるアミノ酸残基(または核酸)と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基(または核酸)の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性(%)を決定するためのアライメントは、当業者の技術の範囲内である種々の方法、例えば、公に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、Clustal OmegaまたはMegaalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成されうる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要ないずれかのアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメーターを決定することが可能である。幾つかの実施形態においては、アミノ酸(核酸)配列同一性(%)の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはGenentech,Inc.によって著され、ソースコードはユーザードキュメントと共に米国著作権局(U.S.Copyright Office)(Washington D.C.,20559)に提出されており、それは米国著作権登録番号(U.S.Copyright Registration No.)TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムはGenentech,Inc.(South San Francisco,Calif.)から公に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされうる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。配列の同一性または相同性を決定するための他のアルゴリズムには、Clustal Omega、LALIGN、FASTA、SIMおよびEMBOSS Needleが含まれる。好ましい実施形態においては、配列同一性を決定するために使用されるアルゴリズムはClustal Omegaである。
【0023】
「刺激する」(「アゴナイズする」)は全てのその文法的形態において、タンパク質および/もしくは遺伝子を(例えば、そのタンパク質の遺伝子発現を活性化もしくは増幅することによって、または不活性タンパク質を、活性状態となるように誘導することによって)活性化するプロセス、またはタンパク質および/もしくは遺伝子の活性を増強するプロセスを意味する。
【0024】
「拮抗する」(「アンタゴナイズ」する)は全てのその文法的形態において、タンパク質および/もしくは遺伝子を(例えば、そのタンパク質の遺伝子発現を阻害もしくは低減することによって、または活性タンパク質を、不活性状態となるように誘導することによって)阻害するプロセス、またはタンパク質および/もしくは遺伝子の活性を低減するプロセスを意味する。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて数値に関して用いる「約」および「およそ」なる語は、当業者に周知であり許容可能な精度の範囲を示す。一般に、そのような精度の範囲は±10%である。あるいは、特に生体系においては、「約」および「およそ」なる語は、所定の値の一桁の倍数以下の値、好ましくは、所定の値の5倍以下、より好ましくは2倍以下の値を意味しうる。
【0026】
本明細書に開示されている数値範囲は、その範囲を定める数値を含む。
【0027】
単数形の用語は、その用語が用いられている文脈が明確に別段の定めをしていない限り、複数の指示対象を含む。単数形の用語ならびに「1以上」および「少なくとも1つ」なる語は本明細書においては互換的に用いられうる。更に、本明細書中で用いる「および/または」は、2以上の特定されている特徴または成分のそれぞれの、その他のものの存在下または非存在下の具体的開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書において「Aおよび/またはB」のような句で用いる「および/または」なる語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むと意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」のような句で用いる「および/または」なる語は以下の態様のそれぞれを含むと意図される:A、BおよびC;A、BまたはC、AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0028】
本明細書の全体にわたり、「含む」なる語または「含み」もしくは「含んで」のような変形は、示されている整数または整数群の包含を意味し、任意の他の整数または整数群の除外を意味しないと理解される。
【0029】
2.ActRIIポリペプチド
特定の態様においては、本開示はActRIIポリペプチドおよびその用途(使用)(例えば、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する)に関する。本明細書中で用いる「ActRII」なる語はII型アクチビン受容体のファミリーを意味する。このファミリーはアクチビン受容体IIA型(ActRIIA)およびアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)を含む。
【0030】
特定の実施形態においては、本開示は、配列番号1、2、3、23、27、30および40のいずれかに記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するActRIIポリペプチドに関する。他の実施形態においては、本開示は、配列番号31に記載されているアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するActRIIポリペプチドに関する。本明細書中で用いる「ActRII」なる語は、アクチビン受容体IIA型(ActRIIA)タンパク質のファミリー、アクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質のファミリー、またはそれらの組合せおよび/もしくは変異体を意味する。ActRIIポリペプチドは任意の種に由来することが可能であり、突然変異誘発または他の修飾によってそのようなActRIIタンパク質から誘導された変異体を含む。本明細書におけるActRIIに対する言及は、現在特定されている形態のいずれか1つに対する言及であると理解される。ActRIIファミリーのメンバーは、一般に、システインに富む領域を含むリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび推定されるセリン/スレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。
【0031】
ActRIIポリペプチドなる語は、ActRIIファミリーメンバーの任意の天然ポリペプチドを含むポリペプチド、および有用な活性を保持するその任意の変異体(突然変異体、断片、融合体およびペプチド模倣形態を含む)を含む。そのような変異体ActRIIポリペプチドの例は本開示の全体にわたって、ならびに国際特許出願公開番号WO 2006/012627、WO 2007/062188、WO 2008/097541、WO 2010/151426およびWO 2011/020045(それらの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。本明細書に記載されている全てのActRII関連ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、特に示されていない限り、以下に示すヒトActRII前駆体タンパク質配列(配列番号1)の番号付けに基づく。
【0032】
標準的なヒトActRII前駆体タンパク質配列は以下のとおりである。
【数1】
【0033】
シグナルペプチドは一本の下線で示されており、細胞外ドメインは太字で示されており、潜在的な内因性N結合グリコシル化部位は二重下線で示されている。
【0034】
プロセシングされた(成熟した)細胞外ヒトActRIIポリペプチド配列は以下のとおりである。
【数2】
【0035】
細胞外ドメインのC末端「尾部」は一本の下線で示されている。「尾部」が欠失している配列(Δ15配列)は以下のとおりである。
【数3】
【0036】
ヒトActRII前駆体タンパク質をコードする核酸配列を、Genbank参照配列NM_001616.4のヌクレオチド159~1700に従い、以下に示す(配列番号4)。シグナル配列は下線で示されている。
【数4】
【0037】
プロセシングされた可溶性(細胞外)ヒトActRIIポリペプチドをコードする核酸配列は以下のとおりである。
【数5】
【0038】
ActRIIは脊椎動物間でよく保存されており、細胞外ドメインの大きな伸長が完全に保存されている。例えば、図2は、種々のActRIIAオーソログと比較した場合のヒトActRIIA細胞外ドメインの多重配列アライメントを示す。ActRIIAに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、これらのアライメントから、正常なActRII-リガンド結合活性に重要であるリガンド結合性ドメイン内の重要なアミノ酸位置を予測することが可能であり、また、正常なActRII-リガンド結合活性を有意に変化させることなく置換に許容性である可能性が高いアミノ酸位置を予測することも可能である。したがって、本明細書に開示されている方法で有用である活性なヒトActRII変異体ポリペプチドは別の脊椎動物ActRIIの配列からの対応位置における1以上のアミノ酸を含むことが可能であり、あるいはヒトまたは他の脊椎動物の配列におけるものに類似した残基を含むことが可能である。
【0039】
ヒトActRIIA細胞外ドメインとヒトActRIIB細胞外ドメインとのアミノ酸配列のアライメントを図1に示す。このアライメントは、ActRIIリガンドに直接接触すると考えられる両方の受容体内のアミノ酸残基を示す。例えば、該複合ActRII構造は、ActRIIA-リガンド結合ポケットが残基F31、N33、N35、K38~T41、E47、Y50、K53~K55、R57、H58、F60、T62、K74、W78~N83、Y85、R87、E92、およびK94~F101によって部分的に定められることを示した。これらの位置では、保存的突然変異が許容されると予想される。
【0040】
限定的なものではないが、以下の例は、活性なActRII変異体を定めるためのこのアプローチを例示する。図2に示されているとおり、ヒト細胞外ドメインにおけるF13はオビス・アリエス(Ovis aries)(ヒツジ)(配列番号7)、ガルス・ガルス(Gallus gallus)(ニワトリ)(配列番号10)、ボス・タウルス(Bos Taurus)(ウシ)(配列番号36)、タイト・アルバ(Tyto alba)(フクロウ)(配列番号37)およびミオティス・ダビディ(Myotis davidii)(コウモリ)のActRIIAにおいてはYであり、このことは、F、WおよびYを含む芳香族残基がこの位置で許容されることを示している。ヒト細胞外ドメインにおけるQ24はボス・タウルス(Bos Taurus)(ウシ)ActRIIAにおいてはRであり、このことは、D、R、K、HおよびEを含む荷電残基がこの位置で許容されることを示している。ヒト細胞外ドメインにおけるS95はガルス・ガルス(Gallus gallus)(ニワトリ)およびタイト・アルバ(Tyto alba)(フクロウ)のActRIIAにおいてはFであり、このことは、この部位が、E、D、K、R、H、S、T、P、G、Yのような極性残基、そしておそらくはL、IまたはFのような疎水性残基を含む多種多様な変化に許容性でありうることを示している。ヒト細胞外ドメインにおけるE52はオビス・アリエス(Ovis aries)(ヒツジ)ActRIIAにおいてはDであり、このことは、DおよびEを含む酸性残基がこの位置において許容されることを示している。ヒト細胞外ドメインにおけるP29は比較的低度に保存されており、オビス・アリエス(Ovis aries)(ヒツジ)ActRIIAにおいてはSとして現れ、ミオティス・ダビディ(Myotis davidii)(コウモリ)ActRIIAにおいてはLとして現れ、したがって、実質的に全てのアミノ酸がこの位置で許容されるはずである。
【0041】
更に、前記のとおり、ActRIIタンパク質は、構造的/機能的特徴の観点から、特にリガンド結合に関して、当技術分野で特徴付けられている[Attisanoら(1992)Cell 68(1):97-108;Greenwaldら(1999)Nature Structural Biology 6(1):18-22;Allendorphら(2006)PNAS 103(20:7643-7648;Thompsonら(2003)The EMBO Journal 22(7):1555-1566;ならびに米国特許第7,709,605号、第7,612,041号および第7,842,663号]。例えば、スリーフィンガー毒素フォールドとして公知である定義性(defining)構造モチーフはI型およびII型受容体によるリガンド結合に重要であり、各単量体受容体の細胞外ドメイン内の種々の位置に位置する保存されたシステイン残基によって形成される[Greenwaldら(1999)Nat Struct Biol 6:18-22;およびHinck(2012)FEBS Lett 586:1860-1870]。本明細書における教示に加えて、これらの参考文献は、1以上の所望の活性(例えば、リガンド結合活性)を保持するActRII変異体の製造方法に関する詳細な指針を提供する。
【0042】
例えば、スリーフィンガー毒素フォールドとして公知である定義性(defining)構造モチーフはI型およびII型受容体によるリガンド結合に重要であり、各単量体受容体の細胞外ドメイン内の種々の位置に位置する保存されたシステイン残基によって形成される[Greenwaldら(1999)Nat Struct Biol 6:18-22;およびHinck(2012)FEBS Lett 586:1860-1870]。したがって、これらの保存されたシステインの最外部によって境界が定められるヒトActRIIのコアリガンド結合ドメインは配列番号1(ActRII前駆体)の位置30~110に対応する。したがって、これらのシステインによって境界が定められるコア配列に隣接する構造的にそれほど秩序だっていないアミノ酸は、リガンド結合を必ずしも変化させることなく、N末端において約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29残基、およびC末端において約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25残基だけ、トランケート(truncate)されうる。例示的なActRII細胞外ドメインのトランケート体には、配列番号2および3が含まれる。
【0043】
したがって、ActRIIの活性部分(例えば、リガンド結合)の一般式は、配列番号1のアミノ酸30~110を含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなるポリペプチドである。したがって、ActRIIポリペプチドは、例えば、配列番号1のアミノ酸21~30のいずれか1つに対応する残基で始まる(例えば、アミノ酸21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つで始まる)、かつ、配列番号1のアミノ酸110~135のいずれか1つに対応する位置で終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つで終わる)、ActRIIの部分に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むこと、または本質的にそれからなること、またはそれからなることが可能である。他の例には、配列番号1の21~30から選択される位置で始まる(例えば、アミノ酸21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つで始まる)、または22~30から選択される位置で始まる(例えば、アミノ酸22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つで始まる)、または23~30から選択される位置で始まる(例えば、アミノ酸23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つで始まる)、または24~30から選択される位置で始まる(例えば、アミノ酸24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つで始まる)、かつ、配列番号1の111~135から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つで終わる)、または112~135から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つで終わる)、または113~135から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つで終わる)、または120~135から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つで終わる)、または130~135から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸130、131、132、133、134または135のいずれか1つで終わる)、または111~134から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または134のいずれか1つで終わる)、または111~133から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132または133のいずれか1つで終わる)、または111~132から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131または132のいずれか1つで終わる)、または111~131から選択される位置で終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130または131のいずれか1つで終わる)構築物が含まれる。これらの範囲内の変異体も想定され、特に、配列番号1の対応部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなるものも想定される。したがって、幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸30~110に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリペプチドを含むこと、または本質的にそれからなること、またはそれからなることが可能である。所望により、ActRIIポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸30~110に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリペプチドであって、リガンド結合ポケット内に1、2、5、10または15個以下の保存的アミノ酸変化を含むポリペプチドを含みうる。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドはホモ二量体タンパク質複合体の一部である。
【0044】
特定の実施形態においては、本開示はActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)(その断片、機能的変異体および修飾形態を含む)およびその使用(例えば、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクの低減)に関する。好ましくは、ActRIIポリペプチドは可溶性である(例えば、ActRIIの細胞外ドメイン)。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは1以上のGDF/BMPリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、GDF3、BMP4、BMP6、BMP10および/またはBMP15]を阻害する(例えば、Smadシグナル伝達)。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは1以上のGDF/BMPリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、GDF3、BMP4、BMP6、BMP10および/またはBMP15]に結合する。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸21~30に対応する残基で始まる(例えば、アミノ酸21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つで始まる)、かつ、アミノ酸110~135のいずれか1つに対応する位置で終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つで終わる)、ActRIIの部分に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなる。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸30~110に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、または本質的にそれからなる。特定の実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸21~135に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、または本質的にそれからなる。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号1、2、3、27、30および40のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、または本質的にそれからなる。
【0045】
幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号23のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、または本質的にそれからなる。幾つかの代替実施形態においては、ActRIIポリペプチド(例えば、配列番号23)はC末端リジンを欠いていてもよい。幾つかの実施形態においては、C末端リシンを欠くActRIIポリペプチドは配列番号40である。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、配列番号40のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、または本質的にそれらからなる。幾つかの実施形態においては、配列番号23のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、または本質的にそれらからなるActRIIポリペプチドを患者に投与する。幾つかの実施形態においては、配列番号40のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる、または本質的にそれらからなるActRIIポリペプチドを患者に投与する。幾つかの実施形態においては、配列番号23と配列番号40との組合せを患者に投与する。
【0046】
特定の態様においては、本開示はActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)に関する。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIトラップ(trap)は、ActRIIBポリペプチド(例えば、「野生型」または未修飾ActRIIポリペプチド)の細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも称される)における1以上の突然変異(例えば、アミノ酸の付加、欠失、置換およびそれらの組合せ)を含む変異体ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)であり、該変異体ActRIIポリペプチドは、対応野生型ActRIIポリペプチドと比較して改変された1以上のリガンド結合活性を有する。好ましい実施形態においては、本開示の変異体ActRIIポリペプチドは、対応野生型ActRIIポリペプチドに類似した少なくとも1つの活性を保持する。例えば、好ましいActRIIポリペプチドはGDF11および/またはGDF8に結合し、それらの機能を阻害する(例えば、拮抗する)。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは更に、GDF/BMP[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、GDF3、BMP4、BMP6、BMP10および/またはBMP15]のリガンドの1以上に結合し、それらを阻害する。したがって、本開示は、1以上のActRIIリガンドに対する改変した結合特異性を有するActRIIポリペプチドを提供する。
【0047】
例示すると、アクチビン(アクチビンAまたはアクチビンB)、特にアクチビンAのような1以上のActRII結合リガンドと比較して、GDF11および/またはGDF8に対する改変リガンド結合ドメインの選択性を増加させる1以上の突然変異が選択されうる。所望により、改変リガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインの比と比較して少なくとも2、5、10、20、50、100または更には1000倍大きい、GDF11および/またはGDF8結合に関するKに対する、アクチビン結合に関するKの比を有する。所望により、改変リガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインと比較して少なくとも2、5、10、20、50、100または更には1000倍大きい、GDF11および/またはGDF8の阻害に関するIC50に対する、アクチビンの阻害に関するIC50の比を有する。所望により、改変リガンド結合ドメインは、アクチビンの阻害に関するIC50より少なくとも2、5、10、20、50、100または更には1000倍低いIC50で、GDF11および/またはGDF8を阻害する。
【0048】
特定の実施形態においては、本開示は、ポリペプチドのグリコシル化を改変するための、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)の特定の突然変異を想定している。そのような突然変異は、O結合またはN結合グリコシル化部位のような1以上のグリコシル化部位を導入または除去するように選択されうる。アスパラギン結合グリコシル化認識部位は、一般に、適切な細胞グリコシル化酵素によって特異的に認識されるトリペプチド配列であるアスパラギン-X-スレオニンまたはアスパラギン-X-セリン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含む。改変はポリペプチドの配列への1以上のセリンまたはスレオニン残基の付加、または該残基による置換によっても行われうる(O-結合グリコシル化部位の場合)。グリコシル化認識部位の第1または第3のアミノ酸位置の一方または両方における種々のアミノ酸置換または欠失(および/または第2の位置におけるアミノ酸欠失)は該修飾トリペプチド配列における非グリコシル化をもたらす。ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は該ポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによるものである。用いられるカップリング法に応じて、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基、例えばシステインのもの;(d)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのもの;(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの;あるいは(f)グルタミンのアミド基に結合しうる。ポリペプチド上に存在する1以上の炭水化物部分の除去は化学的および/または酵素的に達成されうる。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等化合物へのポリペプチドの曝露を含みうる。この処理は、アミノ酸配列を無傷のまま維持する一方で、結合糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)以外のほとんどまたは全ての糖の切断をもたらす。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら[Meth.Enzymol.(1987)138:350]によって記載されているとおり、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを使用することによって達成されうる。ポリペプチドの配列は、使用される発現系のタイプに応じて、必要に応じて調整されうる。なぜなら、哺乳類細胞、酵母細胞、昆虫細胞および植物細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響を受けうる異なるグリコシル化パターンを導入しうるからである。一般に、ヒトにおける使用のための本開示のポリペプチドは、適切なグリコシル化をもたらす哺乳類細胞株、例えばHEK293またはCHO細胞株において発現されうるが、他の哺乳類発現細胞株も同様に有用であると予想される。
【0049】
本開示は更に、突然変異体、特にActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)のコンビナトリアル(組合せ)突然変異体のセットおよびトランケート突然変異体を製造方法を想定している。コンビナトリアル突然変異体のプールは、機能的に活性な(例えば、GDF/BMPリガンドに結合する)ActRII配列を特定するのに特に有用である。そのようなコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、改変した特性、例えば、改変した薬物動態または改変したリガンド結合を有するポリペプチド変異体を製造することでありうる。種々のスクリーニングアッセイを以下に示し、そのようなアッセイは、変異体を評価するために使用されうる。例えば、ActRII変異体は、1以上のGDF/BMPリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、GDF3、BMP4、BMP6、BMP10および/またはBMP15]に結合する能力、ActRIIポリペプチドおよびそのヘテロ多量体へのGDF/BMPリガンドの結合を妨げる能力、ならびに/またはGDF/BMPリガンドによって引き起こされるシグナル伝達を妨げる能力に関してスクリーニングされうる。
【0050】
ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)またはその変異体の活性は、細胞ベースのアッセイまたはインビボアッセイにおいても試験されうる。例えば、肺動脈高血圧症の発病に関与する遺伝子の発現に対するActRIIポリペプチドの効果が評価されうる。これは、必要に応じて、1以上の組換えリガンドタンパク質[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、GDF3、BMP4、BMP6、BMP10および/またはBMP15]の存在下で実施可能であり、ActRIIポリペプチドおよび所望によりGDF/BMPリガンドが製造されるように細胞がトランスフェクトされうる。同様に、ActRIIポリペプチドがマウスまたは他の動物に投与可能であり、肺動脈高血圧症の発病に対する効果が、当技術分野で認められた方法を用いて評価されうる。同様に、ActRIIポリペプチドまたはその変異体の活性が、血液細胞前駆細胞において、これらの細胞の増殖に対する何らかの効果に関して試験可能であり、これは、例えば、本明細書に記載されているアッセイおよび当技術分野において一般的に公知のアッセイによって行われうる。下流シグナル伝達に対する効果をモニターするために、そのような細胞株において、SMAD応答性レポーター遺伝子が使用されうる。
【0051】
参照ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)と比較して増加した選択性または一般に増加した効力を有する、コンビナトリアル由来の変異体が製造されうる。そのような変異体は、組換えDNA構築物から発現される場合、遺伝子治療プロトコールにおいて使用されうる。同様に、突然変異誘発は、対応する未修飾ActRIIポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する変異体を生成しうる。例えば、改変タンパク質は、未修飾ポリペプチドの破壊または不活性化をもたらすタンパク質分解または他の細胞プロセスに対して、より安定またはより不安定にされうる。そのような変異体およびそれらをコードする遺伝子は、ポリペプチドの半減期を調節することによってポリペプチド複合体レベルを変化させるために使用されうる。例えば、短い半減期はより一過性の生物学的効果をもたらすことが可能であり、誘導可能な発現系の一部である場合、細胞内の組換えポリペプチド複合体レベルの、より厳密な制御を可能にしうる。Fc融合タンパク質においては、ActRIIポリペプチドの半減期を改変するために、リンカー(存在する場合)および/またはFc部分において突然変異が施されうる。
【0052】
コンビナトリアルライブラリーは、潜在的なActRIIポリペプチド配列の少なくとも一部をそれぞれが含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって生成されうる。例えば、潜在的なActRIIをコードするヌクレオチド配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、あるいはより大きな融合タンパク質のセット(例えば、ファージディスプレイ用)として発現可能となるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物が、酵素を使用して遺伝子配列に連結されうる。
【0053】
縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的ホモログのライブラリーが作製されうる多数の方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成が自動DNA合成装置において実施可能であり、次いで合成遺伝子は発現用の適切なベクター内に連結されうる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は当技術分野で周知である[Narang,SA(1983)Tetrahedron 39:3;Itakuraら(1981)Recombinant DNA,Proc.3rd Cleveland Sympos.Macromolecules,AG Walton編,Amsterdam:Elsevier pp273-289;Itakuraら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakuraら(1984)Science 198:1056;およびIkeら(1983)Nucleic Acid Res.11:477]。そのような技術は他のタンパク質の定方向進化において使用されている[Scottら,(1990)Science 249:386-390;Robertsら(1992)PNAS USA 89:2429-2433;Devlinら(1990)Science 249:404-406;Cwirlaら,(1990)PNAS USA 87:6378-6382;ならびに米国特許第5,223,409号、第5,198,346号および第5,096,815号]。
【0054】
あるいは、コンビナトリアルライブラリーを作製するために、他の形態の突然変異誘発が利用されうる。例えば、本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)は、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発[Rufら(1994)Biochemistry 33:1565-1572;Wangら(1994)J.Biol.Chem.269:3095-3099;Balintら(1993)Gene 137:109-118;Grodbergら(1993)Eur.J.Biochem.218:597-601;Nagashimaら(1993)J.Biol.Chem.268:2888-2892;Lowmanら(1991)Biochemistry 30:10832-10838;およびCunninghamら(1989)Science 244:1081-1085]、リンカースキャニング突然変異誘発[Gustinら(1993)Virology 193:653-660;およびBrownら(1992)Mol.Cell Biol.12:2644-2652;McKnightら(1982)Science 232:316]、飽和突然変異誘発[Meyersら,(1986)Science 232:613]、PCR突然変異誘発[Leungら(1989)Method Cell Mol Biol 1:11-19]、またはランダム突然変異誘発、例えば化学突然変異誘発[Millerら(1992)A Short Course in Bacterial Genetics,CSHL Press,Cold Spring Harbor,NY;およびGreenerら(1994)Strategies in Mol Biol 7:32-34]を用いて作製され、それらを用いるスクリーニングによってライブラリーから単離されうる。特にコンビナトリアル設定においては、リンカースキャニング突然変異誘発が、ActRIIポリペプチドのトランケート(生物活性)形態を特定するための魅力的な方法である。
【0055】
点突然変異およびトランケートによって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための、ならびに更に言えば、特定の特性を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするための多種多様な技術が当技術分野で公知である。そのような技術は、一般に、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)のコンビナトリアル突然変異誘発によって作製された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適応可能である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための最も広く用いられている技術は、典型的には、複製可能な発現ベクター内に遺伝子ライブラリーをクローニングすること、得られたベクターライブラリーで適切な細胞を形質転換すること、および所望の活性の検出が、検出産物の遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を促進する条件下、コンビナトリアル(組合せ)遺伝子を発現させることを含む。好ましいアッセイには、リガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、GDF3、BMP4、BMP6、BMP10および/またはBMP15]結合アッセイおよび/またはリガンド媒介性細胞シグナル伝達アッセイが含まれる。
【0056】
当業者によって認識されるとおり、本明細書に記載されている突然変異、変異体または修飾のほとんどは、核酸レベルで、または幾つかの場合には翻訳後修飾もしくは化学合成によって作製されうる。そのような技術は当技術分野で周知であり、その一部が本明細書に記載されている。部分的に、本開示は、本明細書に記載されている開示の範囲内で他の変異体ActRIIポリペプチドを作製し使用するための指針として使用されうる、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)の機能的に活性な部分(断片)および変異体を特定する。
【0057】
特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドの機能的に活性な断片は、ActRIIポリペプチドをコードする核酸の対応断片から組換え製造されたポリペプチドをスクリーニングすることによって得られうる。また、断片は、当技術分野で公知の技術、例えば通常のメリフィールド固相f-Mocまたはt-Boc化学を用いて化学合成されうる。断片は(組換えまたは化学合成によって)製造され、ActRII受容体および/または1以上のリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビンA、アクチビンB、GDF3、BMP4、BMP6、BMP10および/またはBMP15]のアンタゴニスト(インヒビター)として機能しうるペプチジル断片を特定するために試験されうる。
【0058】
特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)は、翻訳後修飾を、ActRIIポリペプチドに天然に存在するいずれかのものに加えて更に含みうる。そのような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が含まれるが、これらに限定されるものではない。結果として、ActRIIポリペプチドは、非アミノ酸要素、例えばポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖およびホスファートを含有しうる。リガンドトラップポリペプチドの機能に対するそのような非アミノ酸要素の効果は、他のActRII変異体に関して本明細書に記載されているとおり試験されうる。本開示のポリペプチドが、ポリペプチドの新生形態を切断することによって細胞内で産生される場合、翻訳後プロセシングはタンパク質の適切なフォールディングおよび/または機能にも重要でありうる。種々の細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH-3T3またはHEK293)はそのような翻訳後活性のための特異的な細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、ActRIIポリペプチドの適切な修飾およびプロセシングが保証されるように選択されうる。
【0059】
特定の態様においては、本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)には、ActRIIポリペプチドの少なくとも一部(ドメイン)と1以上の異種部分(ドメイン)とを有する融合タンパク質が含まれる。そのような融合ドメインの周知の例には、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)またはヒト血清アルブミンが含まれるが、これらに限定されるものではない。融合ドメインは、所望の特性を付与するように選択されうる。例えば、幾つかの融合ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的には、グルタチオン、アミラーゼ、およびニッケルまたはコバルト結合樹脂のような、アフィニティクロマトグラフィー用の関連マトリックスが使用される。そのようなマトリックスの多くは、(HIS)(配列番号39)融合パートナーの存在下で有用なPharmacia GST精製系およびQIAexpress(商標)系(Qiagen)のような「キット」形態で入手可能である。もう1つの例として、融合ドメインは、ActRIIポリペプチドの検出を促進するように選択されうる。そのような検出ドメインの例には、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)および「エピトープタグ」(これは、通常、対応する特異的抗体が利用可能である短いペプチド配列である)が含まれる。対応する特異的モノクローナル抗体が容易に利用可能である周知のエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)およびc-mycタグが含まれる。幾つかの場合には、融合ドメインは、例えば第Xa因子またはトロンビンに関するプロテアーゼ切断部位を有し、これは、関連プロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによってそこから組換えタンパク質を遊離することを可能にする。次いで、遊離したタンパク質は後続のクロマトグラフィー分離によって融合ドメインから単離されうる。選択されうる他のタイプの融合ドメインには、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメイン、および例えば免疫グロブリン由来の定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)を含む機能的ドメイン(これは追加的な生物学的機能を付与する)が含まれる。
【0060】
特定の態様においては、本開示のActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)は、ポリペプチドを「安定化」しうる1以上の修飾を含む。「安定化する」は、インビトロ半減期、血清半減期を増加させるあらゆることを意味し、これは該物質の破壊の減少、腎臓によるクリアランスの減少または他の薬物動態効果によるものであるかどうかには無関係である。例えば、そのような修飾はポリペプチドの貯蔵寿命を延長させ、ポリペプチドの循環半減期を延長させ、および/またはポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。そのような安定化修飾には、融合タンパク質(例えば、ActRIIポリペプチドドメインと安定化ドメインとを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、本開示のポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を含む)、および炭水化物部分の修飾(例えば、本開示のポリペプチドからの炭水化物部分の除去を含む)が含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書中で用いる「安定化ドメイン」なる語は、融合タンパク質の場合のような融合ドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)を意味するだけでなく、例えば炭水化物部分のような非タンパク質性修飾、または例えばポリエチレングリコールのような非タンパク質性部分をも含む。特定の好ましい実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、ポリペプチドを安定化させる異種ドメイン(「安定化」ドメイン)、好ましくは、インビボでのポリペプチドの安定性を増強する異種ドメインと融合される。免疫グロブリンの定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)との融合は、望ましい薬物動態学的特性を広範なタンパク質に付与することが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンとの融合も、望ましい特性を付与しうる。
【0061】
ヒトIgG1のFc部分(G1Fc)に使用されうる天然アミノ酸配列の一例を以下に示す(配列番号11)。点線の下線はヒンジ領域を示し、実線の下線は、天然に存在する変異の位置を示す。部分的に、本開示は、配列番号11に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。G1Fcにおける天然に存在する変異には、配列番号11において用いられている番号付け系によれば、E134DおよびM136Lが含まれるであろう。(UniprotP01857を参照されたい)。
【数6】
【0062】
所望により、IgG1 Fcドメインは、Asp-265、リジン322およびAsn-434のような残基に1以上の突然変異を有する。特定の場合においては、これらの突然変異の1以上(例えば、Asp-265突然変異)を有する突然変異体IgG1 Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して低減した、Fcγ受容体への結合能力を有する。他の場合には、これらの突然変異の1以上(例えば、Asn-434突然変異)を有する突然変異Fcドメインは、野生型IgG1 Fcドメインと比較して増強した、MHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)への結合能力を有する。
【0063】
ヒトIgG2(G2Fc)のFc部分に使用されうる天然アミノ酸配列の一例を以下に示す(配列番号12)。点線の下線はヒンジ領域を示し、二重下線は、配列内でデータベースの矛盾が存在する位置を示す(UniProt P01859に準拠)。部分的に、本開示は、配列番号12に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。
【数7】
【0064】
ヒトIgG3のFc部分(G3Fc)に使用されうるアミノ酸配列の2つの例を以下に示す。G3Fcにおけるヒンジ領域は他のFc鎖の最大4倍の長さを有する可能性があり、3つの同一の15残基セグメントおよびそれに先行する類似した17残基のセグメントを含有する。以下に示す第1のG3Fc配列(配列番号13)は、単一の15残基のセグメントからなる短いヒンジ領域を含有し、一方、第2のG3Fc配列(配列番号14)は完全長のヒンジ領域を含有する。いずれの場合においても、点線の下線はヒンジ領域を示し、実線の下線は、UniProt P01859に基づく天然に存在する変異の位置を示す。部分的に、本開示は、配列番号13および14に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、または本質的それからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。
【数8】
【0065】
G3Fcにおける天然に存在する変異(例えば、Uniprot P01860を参照されたい)には、配列番号13において用いられている番号付け系に変換された場合、E68Q、P76L、E79Q、Y81F、D97N、N100D、T124A、S169N、S169del、F221Yが含まれ、本開示は、これらの変異の1以上を含有するG3Fcドメインを含む融合タンパク質を提供する。また、ヒト免疫グロブリンIgG3遺伝子(IGHG3)は、異なるヒンジ長によって特徴付けられる構造多型を示す[Uniprot P01859を参照されたい]。特に、変異体WISはV領域の大部分およびCH1領域の全てを欠いている。それは、ヒンジ領域に通常存在する11位に加えて、7位に追加的な鎖間ジスルフィド結合を有する。変異体ZUCはV領域の大部分、CH1領域の全て、およびヒンジの一部を欠いている。変異体OMMは対立遺伝子形態または別のガンマ鎖サブクラスに相当しうる。本開示は、これらの変異体の1以上を含有するG3Fcドメインを含む追加的な融合タンパク質を提供する。
【0066】
ヒトIgG4のFc部分(G4Fc)に使用されうる天然アミノ酸配列の一例を以下に示す(配列番号15)。点線の下線はヒンジ領域を示す。部分的に、本開示は、配列番号15に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、または本質的それからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。
【数9】
【0067】
Fcドメインにおける種々の操作された突然変異がG1Fc配列(配列番号11)に関して本明細書に示されており、図3におけるG1Fcとのそれらのアライメントから、G2Fc、G3FcおよびG4Fcにおける類似突然変異が誘導されうる。ヒンジの長さが等しくないため、アイソタイプアライメントに基づく類似したFc位置(図3)は、配列番号11、12、13、14および15においては異なるアミノ酸番号を有する。また、ヒンジ、C2およびC3領域からなる免疫グロブリン配列(例えば、配列番号11、12、13、14および15)における与えられたアミノ酸位置は、番号付けがIgG1重鎖定常ドメイン全体(C1、ヒンジ、C2およびC3領域からなる)を含む場合、Uniprotデータベースにおけるのと同じ位置とは異なる番号によって特定されると理解されうる。例えば、ヒトG1Fc配列(配列番号11)、ヒトIgG1重鎖定常ドメイン(Uniprot P01857)およびヒトIgG1重鎖における選択されたC3位置の間の対応は以下のとおりである。
【0068】
【表1】
【0069】
単一細胞株においてFc含有融合ポリペプチド鎖の所望のペア形成を増加させて、許容可能な収率で好ましい非対称融合タンパク質を生成する種々の方法が当技術分野で公知である[Kleinら(2012)mAbs 4:653-663;およびSpiessら(2015)Molecular Immunology 67(2A):95-106]。Fc含有鎖の所望のペア形成を得るための方法には、電荷に基づくペア形成(静電ステアリング)、「ノブ・イントゥ・ホール」立体ペア形成、SEEDbodyペア形成、およびロイシンジッパーに基づくペア形成が含まれるが、これらに限定されるものではない[Ridgwayら(1996)Protein Eng 9:617-621;Merchantら(1998)Nat Biotech 16:677-681;Davisら(2010)Protein Eng Des Sel 23:195-202;Gunasekaranら(2010);285:19637-19646;Wranikら(2012)J Biol Chem 287:43331-43339;US5932448;WO 1993/011162;WO 2009/089004およびWO 2011/034605]。
【0070】
融合タンパク質(例えば、免疫グロブリンFc融合タンパク質)の異なる要素は、所望の機能と合致するいずれかの様態で配置されうると理解される。例えば、ActRIIポリペプチドドメインは異種ドメインのC末端に配置されることが可能であり、あるいは、異種ドメインはActRIIポリペプチドドメインのC末端に配置されることが可能である。ActRIIポリペプチドドメインと異種ドメインとは融合タンパク質において隣接している必要はなく、いずれかのドメインのC末端もしくはN末端またはドメイン間に追加的なドメインまたはアミノ酸配列が含まれてもよい。
【0071】
例えば、ActRII受容体融合タンパク質は、式:A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含みうる。B部分はActRIIポリペプチドドメイン(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)に対応する。A部分およびC部分は、独立して、0個、1個または2個以上のアミノ酸であることが可能であり、A部分およびC部分の両方は、存在する場合には、Bに対して異種である。A部分および/またはC部分はリンカーを介してB部分に結合していてもよい。リンカーは、グリシン残基(例えば、2~10、2~5、2~4、2~3個のグリシン残基)、またはグリシンおよびプロリン残基に富んでいてもよく、例えば、スレオニン/セリンおよびグリシンの単一配列、あるいはスレオニン/セリンおよび/またはグリシンの反復配列、例えば、GGG(配列番号16)、GGGG(配列番号17)、TGGGG(配列番号18)、SGGGG(配列番号19)、TGGG(配列番号20)、SGGG(配列番号21)またはGGGGS(配列番号22)の単体または反復を含有しうる。特定の実施形態においては、ActRII融合タンパク質は、式:A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含み、ここで、Aはリーダー(シグナル)配列であり、BはActRIIポリペプチドドメインからなり、Cは、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製のうちの1以上を増強するポリペプチド部分である。特定の実施形態においては、ActRII融合タンパク質は、式:A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含み、ここで、AはTPAリーダー配列であり、BはActRII受容体ポリペプチドドメインからなり、Cは免疫グロブリンFcドメインである。好ましい融合タンパク質は、配列番号23、27、30および40のいずれか1つに記載されているアミノ酸配列を含む。
【0072】
好ましい実施形態においては、本明細書に記載されている方法に従い使用されるActRIIポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。本明細書中で用いる単離されたタンパク質またはポリペプチドは、その天然環境の成分から分離されたものである。幾つかの実施形態においては、本開示のポリペプチドは、例えば電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)による測定で95%、96%、97%、98%または99%を超える純度まで精製されている。純度の評価方法は当技術分野で周知である[例えば、Flatmanら(2007)J.Chromatogr.B 848:79-87を参照されたい]。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている方法に従い使用されるActRIIポリペプチドは組換えポリペプチドである。
【0073】
本開示のActRIIポリペプチドは、当技術分野で公知である種々の技術によって製造されうる。例えば、本開示のポリペプチドは、標準的なタンパク質化学技術、例えば、Bodansky,M.Principles of Peptide Synthesis,Springer Verlag,Berlin(1993)およびGrant G.A.(編),Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman and Company,New York(1992)に記載されている技術を用いて合成されうる。また、自動ペプチド合成装置が商業的に入手可能である(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいは、本開示のポリペプチド(その断片または変異体を含む)は、当技術分野で周知のとおり、種々の発現系[例えば、大腸菌(E.coli)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、バキュロウイルス]を使用して組換え製造されうる。もう1つの実施形態においては、本開示の修飾または未修飾のポリペプチドは、例えばプロテアーゼ、例えばトリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシンまたはペアード(paired)塩基性アミノ酸変換酵素(PACE)を使用することによる、組換え製造された完全長ActRIIポリペプチドの消化によって製造されうる。コンピュータ分析(例えば、商業的に入手可能なソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用するもの)を用いて、タンパク質分解切断部位を特定することが可能である。あるいは、そのようなポリペプチドは、化学的切断(例えば、臭化シアン、ヒドロキシルアミンなど)を用いて、組換え製造された完全長ActRIIポリペプチドから製造されうる。
【0074】
3.ActRIIポリペプチドをコードする核酸
特定の実施形態においては、本開示は、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)(その断片、機能的変異体および融合タンパク質を含む)をコードする単離されたおよび/または組換え核酸を提供する。
【0075】
本明細書中で用いる単離された核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を意味する。単離された核酸には、核酸分子を通常含有する細胞内に含有される核酸分子が含まれるが、核酸分子は染色体外に、またはその天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0076】
特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドをコードする核酸は、配列番号4、5または28のいずれか1つの変異体である核酸を含むと理解される。変異体ヌクレオチド配列には、1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失(対立遺伝子変異体を含む)の点で異なる配列が含まれ、したがって、配列番号4、5または28のいずれか1つに示されているヌクレオチド配列とは異なるコード配列が含まれる。
【0077】
特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは、配列番号4、5または28のいずれか1つに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である単離されたおよび/または組換え核酸配列によってコードされる。当業者は、配列番号4、5または28に相補的である配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である核酸配列およびそれらの変異体も本開示の範囲内であると理解するであろう。他の実施形態においては、本開示の核酸配列は単離されていること、および/または組換え体であること、および/または異種ヌクレオチド配列と融合していることが可能であり、あるいはDNAライブラリーにおけるものであることが可能である。
【0078】
他の実施形態においては、本開示の核酸は、配列番号4、5もしくは28に示されているヌクレオチド配列、配列番号4、5もしくは28の相補的配列またはそれらの断片に高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列をも含む。前記のとおり、当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更可能であると容易に理解するであろう。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更可能であると容易に理解するであろう。例えば、約45℃で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーションを行い、次いで50℃で2.0×SSCの洗浄を行うことが可能であろう。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃で約2.0×SSCの低いストリンジェンシーから50℃で約0.2×SSCの高いストリンジェンシーまで選択されうる。また、洗浄工程における温度は室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで増加されうる。温度および塩の両方を変化させることも、温度または塩濃度を一定に保ち、もう一方の変数を変化させることも可能である。1つの実施形態においては、本開示は、室温で6×SSCおよびそれに続く室温で2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
【0079】
配列番号4、5または28に記載されている核酸とは遺伝暗号の縮重ゆえに異なる単離された核酸も本開示の範囲内である。例えば、幾つかのアミノ酸は複数のトリプレットによって示される。同一アミノ酸を指定する複数のコドン、すなわち同義語(例えば、CAUとCACとはヒスチジンに関する同義語である)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」突然変異を引き起こしうる。しかし、対象タンパク質のアミノ酸配列における変化を招くDNA配列多型が哺乳類細胞において存在すると予想される。特定のタンパク質をコードする核酸の、1以上のヌクレオチド(ヌクレオチドの最大約3~5%)におけるこれらの変異は、天然対立遺伝子突然変異により、所与の種の個体間に存在しうる、と当業者は理解するであろう。あらゆるそのようなヌクレオチド変異および結果として生じるアミノ酸多型は本開示の範囲内である。
【0080】
特定の実施形態においては、本開示の組換え核酸は発現構築物における1以上の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結されうる。調節ヌクレオチド配列は、一般に、発現に使用される宿主細胞に適したものである。多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節配列が当技術分野で公知であり、種々の宿主細胞において使用されうる。典型的には、1以上の調節ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および転写終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれうるが、これらに限定されるものではない。当技術分野で公知である構成的または誘導性プロモーターが本開示によって想定される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または複数のプロモーターの要素を組合せたハイブリッドプロモーターのいずれかでありうる。発現構築物は、プラスミドのように、エピソーム上で細胞内に存在していてもよく、あるいは発現構築物は染色体内に挿入されていてもよい。幾つかの実施形態においては、発現ベクターは、形質転換宿主細胞の選択を可能にする選択マーカー遺伝子を含有する。選択マーカー遺伝子は当技術分野で周知であり、使用される宿主細胞によって異なりうる。
【0081】
特定の態様においては、本明細書に開示されている主題の核酸は、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結されたActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチドまたはそれらの組合せ)をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供される。調節配列は当技術分野で認識されており、ActRIIポリペプチドの発現を導くように選択される。したがって、調節配列なる語はプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素を含む。例示的な調節配列はGoeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。例えば、DNA配列の発現を制御し、それに作動可能に連結された多種多様な発現調節配列のいずれかが、ActRIIポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用されうる。そのような有用な発現制御配列には、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルス最初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、T7 RNAポリメラーゼによって発現が導かれるT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母α接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系の多面体プロモーター、ならびに原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにそれらの種々の組合せが含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現が望まれるタンパク質のタイプのような要因に左右されうると理解されるべきである。更に、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、およびベクターによってコードされるいずれかの他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現も考慮されるべきである。
【0082】
本開示の組換え核酸は、クローン化遺伝子またはその一部を、原核細胞、真核細胞(酵母、鳥類、昆虫または哺乳類)またはその両方における発現に適したベクター内に連結することによって製造されうる。組換えActRIIポリペプチドの製造のための発現ビヒクルには、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、以下のタイプのプラスミドが含まれる:大腸菌(E.coli)のような原核細胞における発現のためのpBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
【0083】
幾つかの哺乳類発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を促進させる原核生物配列と、真核細胞において発現される1以上の真核生物転写単位との両方を含有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neoおよびpHygに由来するベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳類発現ベクターの例である。これらのベクターの幾つかは、原核細胞と真核細胞との両方おける複製および薬物耐性選択を促進させるために、pBR322のような細菌プラスミド由来の配列で修飾されている。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン-バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)のようなウイルスの誘導体が真核細胞におけるタンパク質の一過性発現に使用されうる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は後記の遺伝子治療送達系の説明において見出されうる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換に使用される種々の方法が当技術分野で周知である。原核細胞および真核細胞の両方のための他の適切な発現系および一般的な組換え法に関しては、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,3rd Ed.,Sambrook,FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)を参照されたい。幾つかの場合には、バキュロウイルス発現系を使用して組換えポリペプチドを発現させることが望ましいかもしれない。そのようなバキュロウイルス発現系の例には、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUW1)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β-galを含有するpBlueBac III)が含まれる。
【0084】
好ましい実施形態においては、ベクターは、例えばPcmv-Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI-neoベクター(Promega,Madison,Wisc.)のように、CHO細胞において対象ActRIIポリペプチドを製造するために設計される。明らかになるとおり、対象遺伝子構築物は、例えば精製用の融合タンパク質または変異体タンパク質を含むタンパク質を製造するために、培養内で増殖させた細胞において対象ActRIIポリペプチドの発現を引き起こさせるために使用されうる。
【0085】
本開示はまた、1以上の対象ActRIIポリペプチドのコード配列を含む組換え遺伝子でトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞でありうる。例えば、本開示のActRIIポリペプチドは、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用)、酵母または哺乳類細胞[例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株]において発現されうる。他の適切な宿主細胞は当業者に公知である。
【0086】
したがって、本開示は更に、対象ActRIIポリペプチドの製造方法に関する。例えば、ActRIIポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞が、ActRIIポリペプチドの発現が生じることを可能にする適切な条件下で培養されうる。該ポリペプチドは分泌され、該ポリペプチドを含有する細胞と培地との混合物から単離されうる。あるいは、ActRIIポリペプチドが細胞質または膜画分に保持され、細胞が回収され、細胞溶解され、タンパク質が単離されうる。細胞培養は宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養のための適切な培地は当技術分野で周知である。イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRIIポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を使用する免疫アフィニティ精製、ならびにActRIIポリペプチドに融合したドメインに結合する物質を使用するアフィニティ精製(例えば、ActRII-Fc融合タンパク質を精製するためにプロテインAカラムが使用されうる)を含む、タンパク質を精製するための当技術分野で公知の技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞またはその両方から対象ポリペプチドが単離されうる。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドは、その精製を促進させるドメインを含有する融合タンパク質である。
【0087】
幾つかの実施形態においては、精製は、例えば以下のものの3つ以上を任意の順序で含む一連のカラムクロマトグラフィー工程によって達成される:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィー。精製はウイルス濾過およびバッファー交換で完了されうる。ActRIIタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された場合には90%超(すなわち、90%を超える)、95%超、96%超、98%超または99%超の純度まで、そしてSDS PAGEによって測定された場合には90%超、95%超、96%超、98%超または99%超の純度まで精製されうる。純度の目標レベルは、哺乳類系、特に非ヒト霊長類、齧歯類(マウス)およびヒトにおいて望ましい結果を達成するのに十分なものであるべきである。
【0088】
もう1つの実施形態においては、組換えActRIIポリペプチドの所望部分のN末端におけるポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列のような精製リーダー配列をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を使用するアフィニティクロマトグラフィーによる発現融合タンパク質の精製を可能にしうる。次いで精製リーダー配列はエンテロキナーゼでの処理によって除去されて、精製されたActRIIポリペプチドが得られうる。例えば、Hochuliら(1987)J.Chromatography 411:177;およびJanknechtら(1991)PNAS USA 88:8972を参照されたい。
【0089】
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的に、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の結合は、連結のための平滑末端またはスタッガー(stagger)末端、適切な末端を得るための制限酵素消化、適宜行われる付着末端のフィリングイン(埋め合わせ)、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素を使用する連結を用いる通常の技術に従い行われる。もう1つの実施形態においては、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む通常の技術によって合成されうる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続する遺伝子断片間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して実施可能であり、次いでそれらはアニーリングに付されて、キメラ遺伝子配列が生成されうる。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,John Wiley & Sons:1992を参照されたい。
【0090】
4.使用方法
部分的に、本開示は、本明細書に記載されているActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法に関するものであり、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および(ii)ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与することを含む投与レジメンでActRIIポリペプチドを投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、第3用量の投与を開始し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、患者は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療のために、本明細書に記載されているActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている。
【0091】
これらの方法は、特に、動物、より詳細にはヒトの治療的処置および予防的処置を目的としている。「対象」、「個体」または「患者」なる語は本明細書の全体を通じて交換可能であり、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味する。これらの用語は哺乳動物、例えばヒト、非ヒト霊長類、実験動物、家畜(ウシ、ブタ、ラクダなどを含む)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、他の家畜など)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の実施形態においては、患者、対象または個体はヒトである。
【0092】
「治療」、「治療する」、「軽減する」などの語は、本明細書において一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するものとして用いられ、治療されている状態の、1以上の臨床合併症の重症度を改善、軽減および/または低減すること(例えば、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクの減少)を意味するものとしても用いられうる。該効果は、疾患、病態もしくはその合併症の発症もしくは再発を完全もしくは部分的に遅らせるという点で予防的あることが可能であり、ならびに/または疾患、病態および/もしくは該疾患もしくは病態に起因する副作用の部分的もしくは完全な治癒という点で治療的であることが可能である。本明細書中で用いる「治療」は、哺乳動物、特にヒトの疾患または病態の任意の治療を含む。本明細書中で用いる、障害または病態を「予防する」治療用物質は、統計サンプルにおいて、未処置の対照サンプルと比較して、処置されたサンプルにおける障害または病態の発生を減少させる、あるいは、未処置の対照サンプルと比較して、疾患または病態の発症を遅らせる化合物を意味する。
【0093】
一般に、本開示に記載されている疾患または病態の治療または予防(例えば、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクの低減)は、本開示の1以上のActRIIポリペプチドを「有効量」で投与することによって達成される。作用物質の有効量は、所望の治療または予防結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を意味する。本開示の作用物質の「治療的有効量」は、個体の病態、年齢、性別および体重ならびに個体において所望の応答を誘発する作用物質の能力のような要因に応じて変動しうる。「予防的有効量」は、所望の予防結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を意味する。
【0094】
特定の態様においては、本開示は、疾患または病態を治療または予防する(例えば、ActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する)ための、1以上の追加的な活性物質または他の支持療法と組合された、ActRIIポリペプチドの使用を想定している。量)。本明細書中で用いる、投与「と組合せて」、投与の「組合せ」、投与「と組合された」または「組合せ」投与は、追加的な活性物質または支持療法(例えば、第2、第3、第4など)が体内で尚も有効である(例えば、複数の化合物が或る期間にわたって患者において同時に有効であり、これはそれらの化合物の相乗効果を含みうる)任意の投与形態を意味する。有効性は、血液、血清または血漿中の作用物質の測定可能な濃度と相関しない可能性がある。例えば、異なる治療用化合物が、同じ製剤において、または別個の製剤において、同時または逐次的に、異なるスケジュールで投与されうる。したがって、そのような治療を受ける対象は、異なる活性物質または療法の組合せ効果から利益を受けうる。本開示の1以上のActRIIポリペプチドは1以上の他の追加的な物質または支持療法(例えば、本明細書に開示されているもの)と同時に、その前にまたはその後に投与されうる。一般に、各活性物質または療法は、その特定の物質に関して決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。レジメンにおいて用いる特定の組合せは、追加的な活性物質もしくは療法との本開示のActRIIポリペプチドの適合性および/または所望の効果を考慮したものとなろう。
【0095】
WHO分類の概要
本明細書に記載されている方法によって治療される肺動脈性肺高血圧症の病態は、世界保健機関(WHO)に従い認識されている病態のいずれか1以上を含みうる。例えば、Simonneau(2019)Eur Respir J:53:1801913を参照されたい。
【0096】
【表2】
【0097】
PAHの分類の臨床上の目的は、PAHに関連する臨床状態を、それらの病態生理学的メカニズム、臨床症状、血行力学的特性および治療戦略に従って特定のサブグループに分類することである。この臨床分類は、前記の特徴に関する新たなデータが入手可能となった場合または追加的な臨床要素が考慮された場合に更新されうる。
【0098】
本明細書中で用いる「肺血流力学的パラメータ」なる語は、心臓および肺血管系を通る血流を説明または評価するために使用される任意のパラメータを意味する。肺血流力学的パラメータの例には、平均肺動脈圧(mPAP)、拡張期肺動脈圧(dPAP)[肺動脈拡張期圧(PADP)としても公知である]、収縮期肺動脈圧(sPAP)[肺動脈収縮期圧(PASP)としても公知である]、平均右房圧(mRAP)、肺毛細管楔入圧(PCWP)[肺動脈楔入圧(PAWP)としても公知である]、肺血管抵抗(PVR)および心拍出量(CO)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
前記の肺血流力学的パラメータの多くは相互に関連している。例えば、PVRは、以下の方程式に従い、mPAP、PCWPおよびCOに関連付けられる。
PVR=(mPAP-PCWP)/CO[ウッド単位]
【0100】
PVRは、左側充満圧の影響の非存在下で肺血管系によって課される流動に対する抵抗を評価するものである。PVRは以下の式によっても評価されうる。
PVR=TPG×80/CO[単位:ダイン-秒-cm-5]またはPVR=(mPAP-PCWP)×80/CO[単位:ダイン-秒-cm-5
【0101】
幾つかの実施形態においては、総周辺抵抗(TPR)は、以下の式を用いて評価されうる。
TPR=mPAP/CO
【0102】
幾つかの実施形態によれば、PHに対する前毛細管肺動脈の寄与はPVRの上昇によって反映されうる。幾つかの実施形態においては、正常PVRは20~130ダイン-秒-cm-5または0.5~1.1ウッド単位である。幾つかの実施形態によれば、上昇したPVRは、2ウッド単位を超える、2.5ウッド単位を超える、3ウッド単位を超える、または3.5ウッド単位を超えるPVRを意味しうる。
【0103】
更にもう1つの例として、mPAPは、以下の方程式に従い、dPAPおよびsPAPに関連付けられる:mPAP=(2/3)dPAP+(1/3)sPAP
【0104】
更に、dPAPおよびsPAPを用い、以下の式を用いて、脈圧(mmHg)が計算されうる:脈圧=sPAP-dPAP
【0105】
脈圧は、以下の方程式を用いて肺動脈コンプライアンスを計算するために用いられうる:肺動脈コンプライアンス(mI.mmHg-1)=一回拍出量/脈圧
【0106】
幾つかの実施形態においては、肺血流力学的パラメータは、例えば右心カテーテル挿入中に、直接測定される。他の実施形態においては、肺血流力学的パラメータは、磁気共鳴画像法(MRI)または心エコー検査のような他の技術によって推定および/または評価される。
【0107】
例示的な肺血流力学的パラメータには、mPAP、PAWPおよびPVRが含まれる。前記の1以上の肺血流力学的パラメータは、例えば右心カテーテル法または心エコー検査の利用のような任意の適切な方法によって測定されうる。PHおよびPAHの種々の血流力学的特性を表2に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
本明細書に記載されているPAHの臨床分類または血流力学的特性および関連診断パラメータは、新たな若しくは既存のデータソースの入手可能性に基づいて、または追加的な臨床要素が考慮された場合に、更新または変更されうる。
【0110】
PAHの特徴
肺動脈性肺高血圧症(WHOグループ1 PH)は、肺動脈の壁における平滑筋細胞の異常増殖および深刻な血管収縮によって特徴付けられる、重篤で進行性の生命を脅かす肺血管系疾患である。肺における血管の激しい収縮は非常に高い肺動脈圧を招く。これらの高圧は、心臓が肺に血液を送り出してそれが酸素化されることを困難にする。PAHを有する患者は極度の息切れに悩まされる。なぜなら、心臓はこれらの高圧に抗して拍出しようとするからである。PAHを有する患者は、典型的には、PVRの有意な増加およびmPAPの持続的上昇を引き起こし、これらは最終的には右心室不全および死を招く。PAHと診断された患者は不良予後および同様に損なわれた生活の質を示し、治療されなかった場合の平均余命は診断時から2~5年である。
【0111】
肺高血圧症の病因には種々の要因が関与しており、それらには、血管リモデリング(すなわち、過形成)に寄与しうる肺細胞の増殖が含まれる。例えば、肺血管リモデリングは、主に、肺高血圧症を有する患者の動脈内皮細胞および平滑筋細胞の増殖によって生じる。種々のサイトカインの過剰発現は肺高血圧症を促進させると考えられている。更に、肺高血圧症は肺動脈平滑細胞および肺内皮細胞の過剰増殖から生じうることが判明している。更に、進行性PAHは、遠位肺細動脈の筋肉化、同心円状内膜肥厚、および増殖内皮細胞による血管内腔の閉塞によって特徴付けられうる。Pietraら,J.Am.Coll.Cardiol.,43:255-325(2004)。
【0112】
PAHは、安静時における25mmHgを超える(あるいは、更新されたガイドラインでは20mmHgを超える)平均肺動脈圧および正常な肺動脈毛細血管楔入圧に基づいて診断されうる。PAHは息切れ、めまい、失神および他の症状を引き起こす可能性があり、これらの全ては労作によって悪化する。PAHは、運動耐性の顕著な低下および心不全を伴う重篤な疾患でありうる。PAHの2つの主要タイプには、特発性PAH(例えば、素因が特定されていないPAH)および遺伝性PAH(例えば、BMPR2、ALK1、ENG、SMAD9、CAV1、KCNK3またはEIF2AK4における突然変異に関連するPAH)が含まれる。家族性PAHの症例の70%においては、BMPR2遺伝子に突然変異が存在する。PAHの発生のリスク因子には、PAHの家族歴、薬物および毒素の使用(例えば、メタンフェタミンまたはコカインの使用)、感染症(例えば、HIV感染または住血吸虫症)、肝硬変、先天性心臓異常、門脈圧亢進症、肺静脈閉塞性疾患、肺毛細血管腫症または結合組織/自己免疫障害(例えば、強皮症またはループス)が含まれる。PAHはカルシウムチャネルブロッカーに対する長期応答者、静脈/毛細血管(PVOD/PCH)関与の明白な特徴および新生児症候群の持続性PHに関連づけられうる。
【0113】
PAHの診断
機能群を含むPAHの診断は、血流力学的基準および他の基準が満たされているかどうかを判断するための包括的なパラメーターセットのレビューを用いて、症状および身体検査に基づいて決定されうる。考慮されうる基準の幾つかには、患者の臨床症状(例えば、息切れ、疲労感、脱力感、狭心症、失神、乾性咳、運動誘発性の吐き気および嘔吐)、心電図(ECG)の結果、胸部X線写真の結果、肺機能検査、動脈血ガス、心エコー検査の結果、換気/灌流肺スキャンの結果、高解像度コンピュータ断層撮影の結果、造影コンピュータ断層撮影の結果、肺血管造影の結果、心臓磁気共鳴画像法、血液検査(例えば、BNPまたはNT-proBNPのようなバイオマーカー)、免疫学、腹部超音波スキャン、右心カテーテル法(RHC)、血管反応性および遺伝子検査が含まれる。例えば、Galie N.ら,Euro Heart J.(2016)37,67-119を参照されたい。
【0114】
幾つかの実施形態においては、PAHの診断を助けるためにバイオマーカーが使用されうる。例えば、幾つかの実施形態においては、バイオマーカーは血管機能不全のマーカー(例えば、不斉ジメチルアルギニン(ADMA)、エンドセリン-1、アンジオポエチンまたはフォンヴィレブランド因子)である。幾つかの実施形態においては、バイオマーカーは炎症のマーカー(C反応性タンパク質、インターロイキン6、ケモカイン)である。幾つかの実施形態においては、バイオマーカーは心筋ストレスのマーカー(例えば、心房性ナトリウム利尿ペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)/NT-proBNPまたはトロポニン)である。幾つかの実施形態においては、バイオマーカーは、低COおよび/または組織低酸素症のマーカー(例えば、pCO2、尿酸、増殖分化因子15(GDF15)またはオステオポンチン)である。幾つかの実施形態においては、バイオマーカーは二次臓器損傷のマーカー(例えば、クレアチニンまたはビリルビン)である。例えば、Galie N.ら,Euro Heart J.(2016)37,67-119を参照されたい。
【0115】
PHの測定
特定の態様においては、本開示は、肺動脈高血圧症(PAH)の治療および/または進行のために治療的ActRIIポリペプチド(例えば、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列)の治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、特発性PAHを有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、遺伝性PAH(例えば、BMPR2、ALK-1、ENG、SMAD9、CAV1およびKCNK3内の1以上の突然変異によるPAH)を有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、未知の突然変異による遺伝性PAHを有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、薬物または毒素によって誘発されたPAHを有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、結合組織病(膠原病)に関連するPAHを有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、HIV感染に関連するPAHを有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、門脈圧亢進症に関連するPAHを有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、住血吸虫症に関連するPAHを有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、カルシウムチャネルブロッカーに対する長期応答者として分類されるPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、静脈/毛細血管(PVOD/PCH)関与の明白な特徴を有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、新生児症候群の持続性肺高血圧症(PH)を有するPAH患者の治療に関する。幾つかの実施形態においては、該方法は、シャント修復の少なくとも1年後に、単純先天性体肺シャントに関連するPAHを有するPAH患者を治療することに関する。
【0116】
機能的クラス
ベースラインにおけるPAHは、例えば肺高血圧症患者における疾患重症度の尺度である世界保健機関(WHO)の機能的クラスによる評価では、軽度、中等度または重度でありうる。WHO機能的クラスは、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)(NYHA)系を適応させたものであり、例えば疾患進行および治療応答のモニターにおいて、活動耐性を定性的に評価するために常套的に用いられている(Rubin(2004)Chest 126:7-10)。WHO系においては、以下の4つの機能的クラスが認められている:機能的クラスI:結果的に生じる身体活動制限を伴わない肺高血圧症;通常の身体活動は、過度の呼吸困難もしくは疲労、胸痛または失神寸前状態を引き起こさない;機能的クラスII:身体活動のわずかな制限を引き起こす肺高血圧症;患者は安静時には快適;通常の身体活動が、過度の呼吸困難もしくは疲労、胸痛または失神寸前状態を引き起こす;機能的クラスIII:身体活動の顕著な制限を引き起こす肺高血圧症;患者は安静時には快適;通常より低い活動が、過度の呼吸困難もしくは疲労、胸痛または失神寸前状態を引き起こす;機能的クラスIV:症状を伴わずにはいかなる身体活動をも行い得ない状態をもたらす肺高血圧症;患者は右心不全の徴候を示す;安静時であっても呼吸困難および/または疲労が生じうる;あらゆる身体活動によって不快感が増大する。
【0117】
PAHに対する公知の治療
PAHに対する公知の治療方法は存在しない。現在の治療方法は、患者の寿命を延長させること、および患者の生活の質を向上させることに重点を置いている。これは、通常、良好な運動能力、良好な右心室機能および低い死亡リスクに関連している(例えば、患者をWHO機能的クラスIまたは機能的クラスIIに導き、および/または維持する)。PAHの現在の治療方法には、血管拡張薬、例えばプロスタサイクリン、エポプロステノールおよびシルデナフィル;エンドセリン受容体アンタゴニスト、例えばボセンタン;カルシウムチャネルブロッカー、例えばアムロジピン、ジルチアゼムおよびニフェジピン;抗凝固薬、例えばワルファリン;利尿薬の投与が含まれうる。また、PAHの治療は、酸素療法、心房中隔欠損作成術、肺血栓内膜切除術ならびに肺および/または心臓移植を用いて行われている。しかし、これらの方法のそれぞれは、有効性の欠如、重篤な副作用、低い患者コンプライアンスおよび高いコストを含みうる1以上の欠点を有する。特定の態様においては、該方法は、PAHを治療するための1以上の追加的な活性物質および/または支持療法(例えば、血管拡張薬、例えばプロスタサイクリン、エポプロステノールおよびシルデナフィル;エンドセリン受容体アンタゴニスト、例えばボセンタン;カルシウムチャネルブロッカー、例えばアムロジピン、ジルチアゼムおよびニフェジピン;抗凝固薬、例えばワルファリン;利尿薬;酸素療法;心房中隔欠損作成術;肺血栓内膜切除術;ならびに肺および/または心臓移植);バルドキソロンメチルまたはその誘導体;オレアノール酸またはその誘導体と組合されたActRIIポリペプチド(例えば、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列)の治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減することに関する。
【0118】
毛細血管拡張症のリスクを低減するための投与レジメン
患者が毛細血管拡張症を患う確率は、ActRIIポリペプチドでの初期治療中に、より高くなりうる。特定の実施形態においては、毛細血管拡張症の症状を予防、改善または低減するための投与レジメンが用いられうる。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは、投与レジメンを用いて投与される。幾つかの実施形態においては、該方法は、本明細書に開示されているActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与レジメンを患者に投与することを含み、投与レジメンは第1期間の該ポリペプチドの0.1mg/kg~1.0mg/kgの第1用量、および次いで第2期間に投与される該ポリペプチドの0.1mg/kg~1.0mg/kgの第2用量を含む。幾つかの実施形態においては、該方法は、本明細書に開示されているActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与レジメンを患者に投与することを含み、投与レジメンは第1期間の該ポリペプチドの0.1mg/kg~1.0mg/kgの第1用量、第2期間に投与される該ポリペプチドの0.1mg/kg~1.0mg/kgの第2用量、および次いで第3期間に投与される該ポリペプチドの0.1mg/kg~1.0mg/kgの第3用量を含む。幾つかの実施形態においては、該方法は、本明細書に開示されているActRIIポリペプチドの治療的有効量の投与レジメンを患者に投与することを含み、投与レジメンは第1期間の該ポリペプチドの0.1mg/kg~1.0mg/kgの第1用量、第2期間に投与される該ポリペプチドの0.1mg/kg~1.0mg/kgの第2用量、およびActRIIポリペプチドでの治療が保留される第3期間の第3用量を含む。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドの第1用量は約0.2mg/kg~約0.4mg/kgの量で患者に投与される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドの第1用量は0.3mg/kgの用量で患者に投与される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドの第2用量は約0.5mg/kg~約0.8mg/kgの量で患者に投与される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドの第2用量は0.7mg/kgの用量で患者に投与される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドの第3用量は約0.2mg/kg~約0.4mg/kgの量で患者に投与される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドの第3用量は0.3mg/kgの用量で患者に投与される。幾つかの実施形態においては、第3用量は、ActRIIポリペプチドの治療を或る期間にわたって保留することを含む。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドでの治療は少なくとも2~6週間保留される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドでの治療は少なくとも3週間保留される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドでの治療は少なくとも6週間保留される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドでの治療は少なくとも9週間保留される。幾つかの実施形態においては、ActRIIポリペプチドでの治療は、ActRIIポリペプチドでの治療が保留された期間の後で再開される。
【0119】
幾つかの実施形態においては、投与レジメンは、ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および次いでActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、投与レジメンは、ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与すること、およびActRIIポリペプチドの第3用量を0.3mg/kgの量で患者に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、投与レジメンは、ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与すること、およびActRIIポリペプチドの治療を少なくとも3週間保留することを含むActRIIポリペプチドの第3用量を患者に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、投与レジメンは、ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、およびActRIIポリペプチドの治療を少なくとも3週間保留することを含むActRIIポリペプチドの第2用量を患者に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、投与レジメンは、ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与すること、ActRIIポリペプチドの治療を少なくとも3週間保留することを含むActRIIポリペプチドの第3用量を患者に投与すること、およびActRIIポリペプチドの第4用量を0.3mg/kgの量で患者に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、第2用量は第1用量を上回る。幾つかの実施形態においては、第1用量は第2用量を上回る。幾つかの実施形態においては、第3用量は第2用量を上回る。幾つかの実施形態においては、第2用量は第3用量を上回る。幾つかの実施形態においては、第3用量は、ActRIIポリペプチドの用量を0.3mg/kgの量で患者に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、第3用量は、ActRIIポリペプチドの治療を少なくとも2~6週間保留することを含む。幾つかの実施形態においては、第2用量は、ActRIIポリペプチドの治療を少なくとも2~6週間保留することを含む。幾つかの実施形態においては、第3用量は、ActRIIポリペプチドの治療を少なくとも3週間保留することを含む。幾つかの実施形態においては、第2用量は、ActRIIポリペプチドの治療を少なくとも3週間保留することを含む。幾つかの実施形態においては、第1期間は少なくとも3週間である。幾つかの実施形態においては、第2期間は少なくとも3週間である。幾つかの実施形態においては、第3期間は少なくとも3週間である。幾つかの実施形態においては、第2期間は少なくとも21週間である。幾つかの実施形態においては、第2期間は少なくとも45週間である。幾つかの実施形態においては、第2期間は第1期間を上回る。幾つかの実施形態においては、第3期間は第1期間を上回る。幾つかの実施形態においては、第3期間は第2期間を上回る。幾つかの実施形態においては、第1用量は患者に少なくとも3週間投与される。幾つかの実施形態においては、第2用量は少なくとも21週間投与される。幾つかの実施形態においては、第2用量は少なくとも45週間投与される。
【0120】
幾つかの実施形態においては、第1用量と第2用量との間の用量変更は、種々の要因(例えば、毛細血管拡張症の症状および/またはリスク因子)を考慮して、主治医によって決定される。幾つかの実施形態においては、第2用量と第3用量との間の用量変更は、種々の要因(例えば、毛細血管拡張症の症状および/またはリスク因子)を考慮して、主治医によって決定される。幾つかの実施形態においては、第3用量と第4用量との間の用量変更は、種々の要因(例えば、毛細血管拡張症の症状および/またはリスク因子)を考慮して、主治医によって決定される。
【0121】
幾つかの実施形態においては、前記の種々の要因には、毛細血管拡張症を発生する、患者のリスク因子が含まれるが、これに限定されるものではない。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症を発生するリスク因子は、低いBMP9レベル、低いBMP10レベル、低いVEGFレベル、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)および結合組織病(CTD)からなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、患者は、ActRIIポリペプチドでの治療の前に、これらのリスク因子のうちの1以上を含む。幾つかの実施形態においては、患者は、ActRIIポリペプチドでの治療中に、これらのリスク因子のうちの1以上を含む。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症を発生するリスク因子は、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)および/または結合組織病(CTD)に関連する1以上の突然変異を含む患者である。幾つかの実施形態においては、HHTに関連する1以上の突然変異は、ENG、ACVRL1、EPHB4、SMAD4、GDF2、BMPR9およびRASA1からなる群から選択される遺伝子における突然変異である。幾つかの実施形態においては、CTDに関連する1以上の突然変異は、ABCC6、ACTA2、ADAMTS2、ADAMTS10、ADAMTSL2、ALDH18A1、ATP6V0A2、ATP7A、B3GALT6、B4GALT7、BGN、C1R、C1S、CBS、CHST14、COL1A1、COL1A2、COL2A1、COL3A1、COL5A1、COL5A2、COL9A1、COL9A2、COL9A3、COL11A1、COL11A2、DSE、EFEMP2(FBLN4)、ELN、FBLN5、FBN1、FBN2、FKBP14、FLCN、FLNA、FOXE3、GORAB、LOX、LTBP4、MED12、MFAP5、MYH11、MYLK、NOTCH1、NOTCH2、PKD1、PKD2、PLOD1、PRDM5、PRKG1、PTDSS1、PYCR1、RIN2、SKI、SLC2A10、SLC39A13、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD6、TAB2、TGFB2、TGFB3、TGFBR1、TGFBR2、TNXBおよびZNF469からなる群から選択される遺伝子における突然変異である。幾つかの実施形態においては、治療前または治療中の患者の症状またはリスク因子の1以上が異常である場合、本明細書に開示されているActRIIポリペプチドの患者の用量は維持される(例えば、0.3mg/kgまたは0.7mg/kgに維持される)。
【0122】
幾つかの実施形態においては、投与レジメンはActRIIポリペプチドの副作用を予防、改善または軽減する。幾つかの実施形態においては、本明細書において提供される投与レジメンによるActRIIポリペプチドの投与は毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、本明細書において提供される投与レジメンによるActRIIポリペプチドの投与は第2期間中の毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、本明細書において提供される投与レジメンによるActRIIポリペプチドの投与は第3期間中の毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、本明細書において提供される投与レジメンによるActRIIポリペプチドの投与は第4期間中の毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、本明細書において提供される投与レジメンによるActRIIポリペプチドの投与は最初の21週間の治療の後の毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、本明細書において提供される投与レジメンによるActRIIポリペプチドの投与は最初の45週間の治療の後の毛細血管拡張症のリスクを低減する。
【0123】
毛細血管拡張症の症状およびリスク因子
毛細血管拡張症は、くも状静脈、ハイフンウェブ、糸状静脈、サンバースト静脈、星状静脈および静脈フレアとしても公知である。毛細血管拡張症は、皮膚に糸のような赤い線または模様を生じさせる拡張した細静脈(小さな血管)を含む。これらの模様、すなわち毛細血管拡張は多数の条件下で血管作動性物質の放出または活性化によって引き起こされると考えられている。毛細血管拡張症の症状には、疼痛、掻痒、皮膚上の糸状の赤い跡、皮膚粘膜毛細血管拡張症、胃腸出血、皮膚上の病変、鼻出血、歯肉出血、動静脈奇形、内部毛細血管拡張症および皮膚上の赤色斑点が含まれる。
【0124】
毛細血管拡張症はしばしば良性であるが、それは遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)のような重篤な疾患によっても引き起こされうる。HHT患者では、肝臓のような重要な器官に毛細血管拡張が生じうる。これらの毛細血管拡張の破裂は、生命を脅かす出血を引き起こしうる。
【0125】
特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチド(例えば、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列)の治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法に関するものであり、該方法は、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、投与レジメンに基づいてActRIIポリペプチドを投与し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減することを含む。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は、疼痛、掻痒、皮膚上の糸状の赤い跡、皮膚粘膜毛細血管拡張症、胃腸出血、皮膚上の病変、鼻出血、歯肉出血、動静脈奇形、内部毛細血管拡張症および皮膚上の赤色斑点からなる群から選択される。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は皮膚上の病変である。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は歯肉出血である。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は鼻出血である。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は動静脈奇形である。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の症状は内部毛細血管拡張症である。幾つかの実施形態においては、動静脈奇形または内部毛細血管拡張症は内臓(例えば、脳、肝臓、肺、脾臓、尿路および脊椎)において生じる。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症を発生するリスク因子は、低いBMP9レベル、低いBMP10レベル、低いVEGFレベル、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)および結合組織病(膠原病)(CTD)からなる群から選択される。
【0126】
特定の実施形態においては、本開示は、本開示の1以上のActRIIポリペプチド(例えば、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列)で治療されている患者または該ポリペプチドで治療される候補である患者を管理するための方法であって、患者における毛細血管拡張症の、1以上の症状またはリスク因子を測定することによる方法を提供する。毛細血管拡張症の前記の1以上の症状および/またはリスク因子は、本開示の1以上のActRIIポリペプチドで治療される候補である患者に対する適切な投与を評価するために、ならびに/または治療中の毛細血管拡張症の症状および/もしくはリスク因子をモニターするために、ならびに/または本開示の1以上のActRIIポリペプチドでの治療中に投与量を調整するかどうかを評価するために、ならびに/または本開示の1以上のActRIIポリペプチドの適切な維持用量を評価するために用いられうる。毛細血管拡張症の症状および/またはリスク因子の1以上が異常である場合、1以上のActRIIポリペプチドの投与が低減され、延期され、または中止されうる。
【0127】
1つの実施形態においては、1以上のActRIIポリペプチドで治療される候補である患者において、毛細血管拡張症の、1以上の症状および/またはリスク因子が異常である場合、本開示の1以上のActRIIポリペプチドの投与の開始は、毛細血管拡張症の症状および/またはリスク因子が自然にまたは治療的介入によって正常または許容レベルに戻るまで、延期される。
【0128】
特定の実施形態においては、1以上のActRIIポリペプチドで治療される候補である患者において、毛細血管拡張症の、1以上の症状および/またはリスク因子が異常である場合、投与の開始は延期されなくてもよい。しかし、本開示の1以上のActRIIポリペプチドの投与量または投与頻度は、本開示の1以上のActRIIポリペプチドの投与に際して生じる毛細血管拡張症のリスクを低減する量に設定されうる。あるいは、毛細血管拡張症のリスクに対処する治療用物質と1以上のActRIIポリペプチドとが組合された治療レジメンが患者のために開発されうる。
【0129】
患者における毛細血管拡張症の重症度
毛細血管拡張症およびその重症度レベルは、種々の分類を用いて説明され、評価されうる。例えば、慢性静脈障害の臨床病因学解剖病態生理学(Clinical-Etiology-Anatomy-Pathophysiology)(CEAP)分類は、重症度が高くなる順に静脈の状態を等級分けしている。CEAPは毛細血管拡張症を最も軽度のカテゴリー(C1)に分類しており、これは、毛細血管拡張症を、内径1mm未満の拡張した皮内細静脈の集合(confluence)として記載している。例えば、以下の表3を参照されたい。
【0130】
【表4】
【0131】
毛細血管拡張症は重症度の特定のグレード(等級)へと更に分類定義されうる。例えば、毛細血管拡張症は静脈の蛇行および隆起の程度および範囲に従い3つのグレードに分類されうる。例えば、Ruckley CVら,European Journal of Vascular and Endovascular Surgery.2008;36(6):719-724を参照されたい。
【0132】
特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチド(例えば、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列)の治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法に関するものであり、ここで、患者は、臨床病因学解剖病態生理学(Clinical-Etiology-Anatomy-Pathophysiology)(CEAP)によって分類されるC1毛細血管拡張症を有する。幾つかの実施形態においては、該方法は、毛細血管拡張症を、CEAPによって分類されるC1からC0まで改善する。
【0133】
特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチド(例えば、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列)の治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法に関するものであり、ここで、患者はグレード1、グレード2またはグレード3の毛細血管拡張症を有する。幾つかの実施形態においては、患者はグレード1の毛細血管拡張症を有する。幾つかの実施形態においては、患者はグレード2の毛細血管拡張症を有する。幾つかの実施形態においては、患者はグレード3の毛細血管拡張症を有する。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症のリスクは、毛細血管拡張症の重症度を低減または改善することによって低減する。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症のグレードを改善することによって、毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、該方法は毛細血管拡張症をグレード2からグレード1に改善する。幾つかの実施形態においては、該方法は毛細血管拡張症をグレード3からグレード2に改善する。幾つかの実施形態においては、該方法は毛細血管拡張症をグレード3からグレード1に改善する。幾つかの実施形態においては、毛細血管拡張症の進行を予防することによって、毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、該方法はグレード1からグレード2への毛細血管拡張症の進行を予防する。幾つかの実施形態においては、該方法はグレード2からグレード3への毛細血管拡張症の進行を予防する。
【0134】
特定の態様においては、本開示は、ActRIIポリペプチド(例えば、配列番号1の残基30~110に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列)の治療的有効量の投与を受けている患者における毛細血管拡張症のリスクを低減する方法に関するものであり、該方法は、(i)ActRIIポリペプチドの第1用量を0.3mg/kgの量で患者に投与すること、および(ii)ActRIIポリペプチドの第2用量を0.7mg/kgの量で患者に投与することを含み、ここで、患者が毛細血管拡張症の症状を示し、または毛細血管拡張症を発生するリスク因子を含む場合には、第3用量の投与を開始し、それによって毛細血管拡張症のリスクを低減する。幾つかの実施形態においては、第3用量は、毛細血管拡張症がグレード1以下に改善するまで、ActRIIポリペプチドの治療を保留することを含む。幾つかの実施形態においては、第3用量は、毛細血管拡張症がグレード2以下に改善するまで、ActRIIポリペプチドの治療を保留することを含む。第3用量は、毛細血管拡張症がグレード3以下に改善するまで、ActRIIポリペプチドの治療を保留することを含む。
【0135】
5.医薬組成物および投与方法
特定の実施形態においては、本開示の治療方法は、組成物を全身的に、またはインプラントもしくはデバイスとして局所的に投与することを含む。本開示における使用のための治療用組成物は、投与される際には、実質的に発熱物質を含有しないまたは発熱物質を含有しない生理的に許容される形態である。前記組成物中に所望により含まれていてもよい、ActRIIポリペプチド以外の治療上有用な物質は、本明細書に開示されている方法において、対象化合物と同時または逐次的に投与されうる。
【0136】
典型的には、本明細書に開示されているタンパク質治療用物質は非経口的に、特に静脈内または皮下に投与される。非経口投与に適した医薬組成物は、1以上のActRIIポリペプチドを、1以上の薬学的に許容される無菌等張性の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション(乳濁液)、または使用直前に無菌注射用溶液もしくは分散液へと再構成(reconstituted)されうる無菌粉末と共に含むことが可能であり、それは抗酸化剤、バッファー、静菌剤、意図される被投与者の血液に対して製剤を等張にする溶質、または懸濁化もしくは増粘剤を含有しうる。本開示の医薬組成物において使用されうる適切な水性担体および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが含まれる。例えば、レシチンのようなコーティング材の使用、分散液の場合には必要粒径の維持、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持されうる。製剤は、単位用量または複数用量の密封容器、例えばアンプルおよびバイアルにおいて提供可能であり、注射用の無菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを使用直前に要するフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵されうる。即時の注射溶液および懸濁液は、本明細書に記載されている種類の無菌性の散剤、顆粒剤および錠剤から調製されうる。
【0137】
組成物および製剤は、所望により、有効成分を含有する1以上の単位剤形を含有しうるパックまたはディスペンサー装置において提供されうる。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔、例えばブリスターパックを含みうる。パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する説明書が付属しうる。
【0138】
更に、組成物は標的組織部位への送達のための形態で注射され、またはカプセル化されうる。特定の実施形態においては、本発明の組成物は、発生中の組織に構造を提供するように1以上の治療用化合物(例えば、ActRIIポリペプチド)を標的組織部位に送達しうる、そして最適には体内に再吸収されうるマトリックスを含みうる。例えば、マトリックスはActRIIポリペプチドの徐放をもたらしうる。そのようなマトリックスは、他の移植医療用途に現在使用されている材料から構成されうる。
【0139】
マトリックス材の選択は生体適合性、生分解性、機械的特性、美的外観および界面特性に基づく。対象組成物の個々の用途が、適切な製剤を定めるであろう。組成物用の潜在的マトリックスは生分解性であり、化学的に定められる硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物でありうる。他の潜在的材料は生分解性であり、生物学的に明確に定められるものであり、例えば骨または真皮のコラーゲンである。他のマトリックスは純粋なタンパク質または細胞外マトリックス成分から構成される。他の潜在的マトリックスは非生分解性であり、化学的に定められるものであり、例えば焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミナートまたは他のセラミックである。マトリックスは、例えばポリ乳酸およびヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンおおよびリン酸三カルシウムのような前記タイプの材料のいずれかの組合せから構成されうる。バイオセラミックスは、例えばカルシウム-アルミナート-ホスファートにおけるように、組成の改変が可能であり、細孔サイズ、粒子サイズ、粒子形状および生分解性を改変するために処理されうる。
【0140】
特定の実施形態においては、本発明の方法は、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(香味基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用するもの)、散剤、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の液体エマルションとして、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ剤(不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアを使用するもの)、および/または洗口剤などとして経口投与可能であり、それぞれは所定量の作用物質を有効成分として含有する。作用物質はボーラス、舐剤またはペースト剤としても投与されうる。
【0141】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)においては、本発明の1以上の治療用化合物が、1以上の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または以下のもののいずれかと混合されうる:(1)増量剤またはエクステンダー、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸;(2)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;(3)保湿剤、例えばグリセロール;(4)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリカートおよび炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;(8)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土;(9)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物;ならびに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物は緩衝化剤をも含みうる。類似タイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセル剤における充填剤としても使用されうる。
【0142】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁剤(懸濁液)、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は、有効成分に加えて、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有しうる。経口組成物は、不活性希釈剤に加えて、補助剤、例えば湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、賦香剤および保存剤をも含みうる。
【0143】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントならびにそれらの混合物を含有しうる。
【0144】
本発明の組成物は、補助剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤をも含有しうる。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含有させることによって保証されうる。また、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含有させることも望ましいかもしれない。また、吸収を遅らせる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含有させることによって、注射可能な医薬形態の持続的吸収がもたらされうる。
【0145】
投与レジメンは、本開示の対象化合物(例えば、ActRIIポリペプチド)の作用を改変する種々の要因を考慮して、主治医によって決定されると理解される。種々の要因には、患者の年齢、性別および食事、疾患の重症度、投与時間および他の臨床要因が含まれるが、これらに限定されるものではない。所望により、投与量は、再構成に使用されるマトリックスのタイプおよび組成物中の化合物のタイプに応じて変動しうる。幾つかの実施形態においては、患者の血液学的パラメータは、患者が正常より高い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベル(例えば、16.0g/dLを超えるヘモグロビンレベルまたは18.0g/dLを超えるヘモグロビンレベル)を有するかどうかを決定するために、定期的な評価によってモニターされうる。幾つかの実施形態においては、正常より高い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを有する患者は、それらのレベルが正常または許容レベルに戻るまで、延期または低減された投与を受けうる。
【0146】
幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.1mg/kg~2.0mg/kgの用量範囲で投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.1mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.2mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.3mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.4mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.5mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.6mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.7mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.8mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは0.9mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.0mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.1mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.2mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.3mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.4mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.5mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.6mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.7mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.8mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1.9mg/kgで投与される。幾つかの実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは2.0mg/kgで投与される。
【0147】
特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1日1回投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは1日2回投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは週1回投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは週2回投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは週3回投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは2週間ごとに投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは3週間ごとに投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは4週間ごとに投与される。特定の実施形態においては、本開示のActRIIポリペプチドは毎月投与される。
【0148】
特定の実施形態においては、本発明はまた、ActRIIポリペプチドのインビボ産生のための遺伝子治療を提供する。そのような治療は、前記の障害を有する細胞または組織内にActRIIポリペプチドのポリヌクレオチド配列を導入することによって、その治療効果を達成するであろう。ActRIIポリペプチドのポリヌクレオチド配列の送達は、組換え発現ベクター、例えばキメラウイルスまたはコロイド分散系を使用して達成されうる。ActRIIポリペプチドのポリヌクレオチド配列の治療用送達には、標的化リポソームの使用が好ましい。
【0149】
本明細書で教示されている遺伝子治療に利用されうる種々のウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、または好ましくはRNAウイルス、例えばレトロウイルスが含まれる。好ましくは、レトロウイルスベクターはマウスまたはトリレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子が挿入されうるレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれるが、これらに限定されるものではない。多数の追加的なレトロウイルスベクターに複数の遺伝子が組み込まれうる。形質導入細胞が特定され作製されうるように、これらのベクターの全ては選択マーカーの遺伝子を導入し、組み込みうる。レトロウイルスベクターは、例えば糖、糖脂質またはタンパク質に結合することによって、標的特異的にされうる。好ましい標的化は、抗体を使用することによって達成される。ActRIIポリペプチドを含有するレトロウイルスベクターの標的特異的送達が可能となるよう、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム内に挿入され、またはウイルスエンベロープに結合されうる、と当業者は認識するであろう。好ましい実施形態においては、ベクターは骨または軟骨に標的化される。
【0150】
あるいは、通常のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、レトロウイルス構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドで組織培養細胞が直接的にトランスフェクトされうる。次いでこれらの細胞は、目的の遺伝子を含有するベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞はレトロウイルスベクターを培地内に放出する。
【0151】
ActRIIポリペプチドのポリヌクレオチドの別の標的化送達系はコロイド分散系である。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに脂質に基づく系、例えば水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームが含まれる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボでの送達ビヒクルとして有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよび無傷ビリオンは水性の内部領域内に封入され、生物学的に活性な形態で細胞に送達されうる(例えば、Fraleyら,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981を参照されたい)。リポソームビヒクルを使用する効率的な遺伝子導入のための方法は当技術分野で公知である。例えば、Manninoら,Biotechniques,6:682,1988を参照されたい。リポソームの組成物は、通常、リン脂質の組合せであり、通常はステロイド、特にコレステロールと組合されたものである。他のリン脂質または他の脂質も使用されうる。リポソームの物理的特性はpH、イオン強度および二価陽イオンの存在に左右される。
【0152】
リポソームの製造に有用な脂質の例には、ホスファチジル化合物、例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドが含まれる。例示的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。リポソームの標的化は、例えば器官特異性、細胞特異性およびオルガネラ特異性に基づくことによっても可能であり、当技術分野で公知である。
【0153】
本開示は、pHを調整するために酸および塩基ならびにpHを狭い範囲内に維持するためのバッファーを含むように変更されうる製剤を提供する。
【0154】
6.実施例
前記開示は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。それらの実施例は本発明の特定の実施形態の単なる例示目的で記載されているに過ぎず、限定的であるとは意図されない。
【0155】
実施例1:ActRIIA-Fc融合タンパク質
ヒトまたはマウスFcドメインに融合したヒトActRIIaの細胞外ドメイン(それらの間に最小リンカーが介在する)を有する可溶性ActRIIA融合タンパク質を構築した。これらの構築物は、それぞれ、ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcと称される。
【0156】
CHO細胞株から精製されたActRIIA-hFcを以下に示す(配列番号23)。
【数10】
【0157】
CHO細胞株から精製された、C末端リジンを欠く追加的なActRIIA-hFcを以下に示す(配列番号40)。
【数11】
【0158】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcタンパク質をCHO細胞株において発現させた。3つの異なるリーダー配列が考慮された。
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号24);
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号25);
(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号:26)。
【0159】
選択された形態はTPAリーダーを使用し、プロセシングされていない以下のアミノ酸配列を有する。
【数12】
【0160】
このポリペプチドは以下の核酸配列によってコードされる。
【数13】
【0161】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcは共に、組換え発現に非常に適していた。図4Aおよび4Bに示されているとおり、タンパク質は単一の明確なタンパク質ピークとして精製された。N末端配列決定は、-ILGRSETQE(配列番号29)の単一配列を示した。精製は、例えば以下のものの3つ以上を任意の順序で含む一連のカラムクロマトグラフィー工程によって達成できた:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィー。精製はウイルス濾過およびバッファー交換で完了できた。ActRIIタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定された場合には98%超(すなわち、98%を超える)の純度まで、そしてSDS PAGEによって測定された場合には95%超の純度まで精製された。
【0162】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcはリガンドに対して高いアフィニティを示した。標準的なアミンカップリング法を用いて、GDF11またはアクチビンAをBiacore(商標)CM5チップ上に固定化した。ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcタンパク質を系にローディングし、結合を測定した。ActRIIA-hFcは5×10-12の解離定数(K)でアクチビンに結合し、9.96×10-9のKでGDF11に結合した。図5Aおよび図5Bを参照されたい。同様の結合アッセイを用いて、ActRIIA-hFcは、例えばアクチビンB、GDF8、BMP6およびBMP10を含む他のTGF-ベータスーパーファミリーリガンドに対して高度ないし中等度のアフィニティを有することが決定された。ActRIIA-mFcも同様の性質を示した。
【0163】
ActRIIA-hFcは薬物動態研究において非常に安定であった。1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのActRIIA-hFcタンパク質をラットに投与し、該タンパク質の血漿レベルを24、48、72、144および168時間の時点で測定した。別の研究において、1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgをラットに投与した。ラットにおいては、ActRIIA-hFcは11~14日の血清半減期を有し、該薬物の循環レベルは2週間後に非常に高かった(1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgの初回投与の場合に、それぞれ、11μg/ml、110μg/mlまたは304μg/ml)。カニクイザルにおいては、血漿半減期は14日より実質的に長く、該薬物の循環レベルは1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgの初回投与の場合に、それぞれ、25μg/ml、304μg/mlまたは1440μg/mlであった。
【0164】
実施例2:ActRIIA-hFcタンパク質の特徴付け
配列番号25の組織プラスミノーゲンリーダー配列を使用して、pAID4ベクター(SV40 ori/エンハンサー、CMVプロモーター)から、ActRIIA-hFc融合タンパク質を、安定にトランスフェクトされたCHO-DUKX B11細胞において発現させた。前記実施例1に記載されているとおりに精製されたタンパク質は配列番号23の配列を有していた。Fc部分は、配列番号23に示されているヒトIgG1 Fc配列である。タンパク質分析は、ActRIIA-hFc融合タンパク質が、ジスルフィド結合を有するホモ二量体として形成されることを示した。
【0165】
CHO細胞において発現された物質は、ヒト293細胞において発現されたActRIIA-hFc融合タンパク質に関して報告されているものより高い、アクチビンBリガンドに対するアフィニティを有する[del Reら(2004)J Biol Chem.279(51):53126-53135を参照されたい]。また、TPAリーダー配列の使用は他のリーダー配列の場合より大量の産生をもたらし、天然リーダーで発現されたActRIIA-Fcとは異なり、高純度のN末端配列を与えた。天然リーダー配列の使用は、ActRIIA-Fcの、2つの主要種(それぞれは、異なるN末端配列を有する)を生成した。
【0166】
実施例3:代替的なActRIIA-Fcタンパク質
本明細書に記載されている方法に従い使用されうる種々のActRIIA変異体が、WO2006/012627(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)(例えば、55~58ページを参照されたい)として公開された国際特許出願に記載されている。別の構築物はC末端尾部(ActRIIAの細胞外ドメインの最後の15アミノ酸)の欠失を有しうる。そのような構築物の配列を以下に示す(Fc部分が下線で示されている)(配列番号30)。
【数14】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【配列表】
2024526820000001.xml
【国際調査報告】