(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】分子を中心とした集束光ビームの連続移動による単数化蛍光色素分子の局在化
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
G01N21/64 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502637
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2021070852
(87)【国際公開番号】W WO2023006176
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年3月15日にネイチャー・パブリッシング・グループが発行するネイチャーフォトニクスの第15巻、第5号、第361-366頁にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】509289113
【氏名又は名称】マックスプランク-ゲセルシャフト・ツール・フェーデルング・デル・ヴィッセンシャフテン・エー・ファウ
(74)【代理人】
【識別番号】110004015
【氏名又は名称】弁理士法人IPmarche
(72)【発明者】
【氏名】マルセル ロイテネガー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ウェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック フォン デア エムデ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ヴェー. ヘル
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043AA04
2G043DA05
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA05
2G043HA07
2G043HA09
2G043KA09
2G043LA03
2G043MA01
(57)【要約】
単数化蛍光色素分子の分子位置を判定するために、蛍光励起光と蛍光影響光とを含む光ビームの整形・集束を行い、蛍光影響光の中心強度最小値を有する光強度分布を形成する。中心強度最小値は、推定位置(34)を中心として繰り返し延在するトラック(31)に沿って連続的に移動する。蛍光励起光の励起により単数化蛍光色素分子が放出する蛍光の個別光子の位置合わせを行い、位置合わせを行われた個別光子のそれぞれの励起に対して中心強度最小値の強度最小位置を記録する。それに応じて、トラックがそれを中心として延在する推定位置(34)を記録された強度最小位置に基づいて更新し、推定位置(34)を中心とするトラック(31)の延在は減少させ、蛍光影響光の有効度は増加させる。
【代表図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(11)における単数化蛍光色素分子の分子位置を判定する方法であって、
蛍光励起光(4)と蛍光影響光と、を含む光ビーム(3)を提供し、前記蛍光影響光は前記蛍光励起光(4)の励起波長よりも長いSTED波長を有するSTED光(5)であり、
前記光ビーム(3)の整形・集束を行うことで、前記蛍光抑制光(5)の中心強度最小値(39)を有する光強度分布(38)を形成し、
前記中心強度最小値(39)が前記単数化蛍光色素分子の推定位置(34)を中心として繰り返し延在するトラック(31)に沿って連続的に移動するように、前記物体(11)に対して前記光強度分布(38)を連続的にシフトし、
前記蛍光励起光(4)の励起により前記単数化蛍光色素分子が放出する蛍光(40)の複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行い、
位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子の励起に対する前記中心強度最小値(39)の強度最小位置を記録し、
更には、位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子に応じて、
記録済みの前記強度最小位置に基づき、前記トラックがそれを中心として延在する前記推定位置(34)を更新し、
前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在を減少させ、及び/または前記STED光の有効度に影響を及ぼす蛍光を増加させ、
前記STED波長は、前記単数化蛍光色素分子の蛍光発光ピークが最大ピーク強度の少なくとも25%を依然として有する波長に設定されるか、或いは該波長まで連続的に低減されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記STED波長は、前記単数化蛍光色素分子の前記蛍光発光ピークが最大ピーク強度の少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%を依然として有する波長に設定されるか、或いは該波長まで連続的に低減されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の個別光子の位置合わせを行う前に、前記蛍光(40)にノッチフィルタリングまたはエッジフィルタリングを施して前記STED波長の光を抑制し、及び/または、前記STED光をパルスで照射して前記複数の個別光子の位置合わせをゲート制御することで、前記STED光の各パルスの後に放出される光子を選択することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記蛍光影響光の蛍光影響有効度は、
前記STED光の強度が増加する時、及び/または、
前記STED光の有効蛍光影響断面が、好ましくはそのSTED波長の減少により増大する時、及び/または、
前記STED光のパルスと前記蛍光励起光(4)のパルスの経時連続が変動する時、増加することを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
物体(11)における単数化蛍光色素分子の分子位置を判定する方法であって、
蛍光励起光(4)と蛍光影響光と、を含む光ビーム(3)を提供し、前記蛍光影響光は前記蛍光励起光(4)と同一であるか、或いは、前記蛍光影響光は、前記蛍光励起光(4)に加えて提供される蛍光抑制光(5)であり、
前記光ビーム(3)の整形・集束を行うことで、前記蛍光影響光の中心強度最小値(39)を有する光強度分布(38)を形成し、
前記中心強度最小値(39)が前記単数化蛍光色素分子の推定位置(34)を中心として繰り返し延在するトラック(31)に沿って連続的に移動するように、前記物体(11)に対して前記光強度分布(38)を連続的にシフトし、
前記蛍光励起光(4)の励起により前記単数化蛍光色素分子が放出する蛍光(40)の複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行い、
位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子の励起に対する前記中心強度最小値(39)の強度最小位置を記録し、
更には、位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子に応じて、
記録済みの前記強度最小位置に基づき、前記トラックがそれを中心として延在する前記推定位置(34)を更新し、
前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在を減少させ、及び/または前記蛍光影響光の有効度に影響を及ぼす蛍光を増加させ、
前記蛍光影響光の蛍光影響有効度は、前記蛍光影響光のパルスと前記蛍光励起光(4)のパルスの経時連続が変動することで増加することを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記蛍光影響光と前記蛍光励起光(4)の強度を一定に保つことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記蛍光影響光は蛍光抑制光(5)、特にSTED光であり、前記蛍光影響光のパルスは前記蛍光色素分子の蛍光寿命より短く、前記励起光のパルスよりは長いことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光(40)の光子の位置合わせをゲート制御して、各蛍光影響光パルスの後に放出される光子を選択し、それぞれの完全な蛍光影響光パルスをまだ経験していない前記蛍光色素分子からの光子を遮断することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記トラック(31)は、3つの空間次元すべてにおいて、前記単数化蛍光色素分子の推定位置(34)を中心として延在することを特徴とする、請求項5~8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
物体(11)における単数化蛍光色素分子の分子位置を判定する方法であって、
蛍光励起光(4)と蛍光影響光と、を含む光ビーム(3)を提供し、前記蛍光影響光は前記蛍光励起光(4)と同一であるか、或いは、前記蛍光影響光は、前記蛍光励起光(4)に加えて提供される蛍光抑制光(5)であり、
前記光ビーム(3)の整形・集束を行うことで、前記蛍光影響光の中心強度最小値(39)を有する光強度分布(38)を形成し、
前記中心強度最小値(39)が前記単数化蛍光色素分子の推定位置(34)を中心として繰り返し延在するトラック(31)に沿って連続的に移動するように、前記物体(11)に対して前記光強度分布(38)を連続的にシフトし、
前記蛍光励起光(4)の励起により前記単数化蛍光色素分子が放出する蛍光(40)の複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行い、
位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子の励起に対する前記中心強度最小値(39)の強度最小位置を記録し、
位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子に応じて、
記録済みの前記強度最小位置に基づき、前記トラックがそれを中心として延在する前記推定位置(34)を更新し、
前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在を減少させ、及び/または前記蛍光影響光の有効度に影響を及ぼす蛍光を増加させることを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記蛍光影響光の蛍光影響有効度は、
前記蛍光影響光の強度が増加する時、及び/または、
前記蛍光影響光の有効蛍光影響断面が、好ましくはその波長成分の変化により増大する時、及び/または、
前記蛍光影響光のパルスと前記蛍光励起光(4)のパルスの経時連続が変動する時、増加することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記トラックがそれを中心として延在する前記推定位置は、記録済みの前記強度最小位置に基づいて更新し、
前記蛍光影響光が前記蛍光励起光(4)と同一である場合は、前記推定位置(34)は、記録済みの前記強度最小位置から遠ざかるように、或いは、
前記蛍光抑制光(5)が前記蛍光励起光(4)に加えて提供された場合、前記推定位置(34)は、記録済みの前記強度最小位置に向かって、
前記推定位置(34)と記録済みの前記強度最小位置との間の距離における所定の距離部分だけシフトされ、前記距離部分は、3%~33%の範囲、好ましくは10%~20%の範囲にあることを特徴とする、請求項1~11のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在は、1%~10%、好ましくは2%~5%の範囲にある延在部分だけ減少し、前記蛍光影響光の前記蛍光影響有効度が増加することにより、前記光強度分布の有効励起点広がり関数の拡張がそれに応じて、好ましくは前記延在部分だけ減少することを特徴とする、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在は、所定の最小延在量に達するまで減少し、及び/または、前記蛍光影響光の前記蛍光影響有効度は、所定の最大蛍光影響有効度に達するまで増加することを特徴とする、請求項1~13のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記推定位置(34)の更新と前記トラック(31)の延在の減少、及び/または前記蛍光影響光の前記蛍光影響光有効度の増加にかかわらず、前記トラック(31)に沿った前記中心強度最小値(39)の移動は、位置合わせ済みの個別光子に渡って継続されることを特徴とする、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記単数化蛍光色素分子の前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在の繰り返し率は、前記個別光子の位置合わせを行う光子率の少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%であることを特徴とする、請求項1~15のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
位置合わせ済みの個別光子を示す信号は、前記単数化蛍光色素分子の前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在の繰り返し率の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍のサンプルレートにサンプリングされることを特徴とする、請求項1~16のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記トラック(31)は、3つの空間次元すべてにおいて、前記単数化蛍光色素分子の推定位置(34)を中心として延在し、3つの空間次元における前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在は、好ましくは、3つの空間次元における前記光強度分布(39)の有効励起点広がり関数(41)の拡張を反映することを特徴とする、請求項1~17のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の個別光子のうち、連続する2つの個別光子に対する応答の間に、
前記トラック(31)は、前記光ビームが集束する焦点面におけるx半軸及びy半軸、並びに、前記光ビーム(3)が沿って前記焦点面に集束するz方向におけるz半軸を有する楕円体の表面上を走り、
前記トラック(31)は、好ましくは、前記トラック(31)が前記焦点面において回転する軸を中心として回転するz回転周波数より高くないxy回転周波数で前記z方向を中心として回転し、前記軸はz回転周波数で回転することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の個別光子のうち、連続する2つの個別光子に対する応答の間に、前記トラック(31)はリサジュー曲線に沿って走り、前記リサジュー曲線は、前記推定位置(34)を通過することが好ましいことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
位置合わせ済みの光子に対する応答がない場合、前記トラック(31)は閉ループになることを特徴とする、請求項1~20のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記光ビーム(3)の整形・集束を行うことで、前記蛍光影響光の中心強度最小値を有する光強度分布を形成することに先だって、
中心強度最大値を有する励起限定光強度分布を形成するように、前記蛍光抑制光のビームを集束させ、
前記物体に対して前記励起限定光強度分布を連続的にシフトし、
光検出器アレイを用いた前記蛍光励起光の励起により前記単数化蛍光色素分子から放出される蛍光の予備的な複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行い、前記光検出器アレイは、前記中心強度最大値で放出された前記蛍光が該光検出器アレイ上に結像される分布に対する空間的分解を行い、
位置合わせ済みの予備的な複数の個別光子の各々の個別光子の励起に対する前記中心強度最大値の強度最大位置と、検出器アレイの位置合わせ位置とを記録し、
位置合わせ済みの予備的な複数の個別光子に対して記録された前記強度最大位置と、前記検出器アレイの位置合わせ位置とから開始すべき前記推定位置(34)を判定することを特徴とする、請求項1~21のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記単数化蛍光色素分子の分子位置が判定されると、別の蛍光色素分子を単数化し、前記物体における他の単数化蛍光色素分子の分子位置を更に判定することを特徴とする、請求項1~22のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
物体(11)における単数化蛍光色素分子の分子位置を判定するためのレーザー走査型顕微鏡(1)であって、
蛍光励起光(4)と蛍光影響光と、を含む光ビーム(3)を提供するように構成され、前記蛍光影響光は前記蛍光励起光(4)と同一であるか、或いは、前記蛍光励起光に加えて提供される、光源(2)と、
前記光ビーム(3)の整形・集束を行うことで、前記蛍光影響抑制光の中心強度最小値を有する光強度分布を形成するように構成された、ビーム整形器(6、7)及び対物レンズ(8)と、
前記中心強度最小値が前記単数化分子の推定位置(34)を中心として繰り返し延在するトラックに沿って連続的に移動するように、前記物体に対して前記光強度分布を連続的にシフトするように構成されたスキャナ(9、10)と、
前記蛍光励起光(4)の励起により前記単数化蛍光色素分子が放出する蛍光(40)の複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行うように構成された検出器(12)と、
位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子の励起に対する前記中心強度最小値(39)の強度最小位置を記録するように構成されたコントローラ(13)と、を含み、
前記コントローラ(13)は更に、位置合わせ済みの複数の個別光子の各々の個別光子に応じて、
記録済みの前記強度最小位置に基づき、前記トラック(31)がそれを中心として延在する前記推定位置(34)を更新し、
前記推定位置(34)を中心とする前記トラック(31)の延在を減少させ、及び/または前記蛍光影響光の有効度に影響を及ぼす蛍光を増加させるように構成され、
請求項1~23のうちいずれか一項に記載の方法を以って以上を行う、レーザー走査型顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体における単数化蛍光色素分子の分子位置を判定する方法に関する。より具体的には、本発明は、独立請求項1の前文に記載の特徴を含む方法に関する。更に本発明は、物体における単数化蛍光分子の分子位置を決定するためのレーザー走査型顕微鏡に関する。より具体的には、本発明は、独立請求項15の前文に記載の特徴を含むレーザー走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
米国登録特許第10,900,901号は、ルミネッセンス光を放出する励起光により励起し得る単数化分子のサンプル中のn空間次元における位置を判定する高空間分解能の方法を開示している。単数化分子を含む予備的な局所領域が判定される。励起光は、零点と、n個の空間方向のそれぞれの両辺で零点に隣接する強度増加領域を有する強度分布でサンプルに照射される。まず、零点を予備的局所領域の既知の辺の予備位置に配置する。次に、零点の現在位置を、別々ながら準同時に位置合わせを行われたルミネッセンス光の光子に応じて、n個の空間次元の各々における予備局所領域内に順次シフトし、零点を現在位置の間を繰り返し移動させる。各零点の位置は、ルミネッセンス光のm個の光子が零点の現在位置に位置合わせをされ次第、シフトされる。mは非常に小さく、時には1まで下げられる。零点の位置を連続的にシフトすると、励起光の最大強度を増加させることができる。零点の位置を移動させることで、サンプル中の分子の実際の位置までの距離が縮められる。励起光の最大強度を増加させると、減少した距離は、単数化分子からのルミネッセンス光の異なる強度のより高い帯域幅にわたって新たに分布される。単数化分子の位置の判定を始めたとき、単数化分子を含むサンプルのより大きい領域を、励起光のガウス強度分布、即ち、励起光の単純な集束ビームを用いて、円形またはらせん状のトラックに沿った空間次元にそれぞれにおいて走査することができる。次いで、トラック上のルミネッセンス光の強度の推移から、単数化分子の位置を推定する。
【0003】
国際公開特許第2020/064108号は、対物レンズの焦点領域にて光強度分布の整形・シフトを行う方法及び装置を開示している。コヒーレント入力光の複数の離散部分は、対物レンズの瞳の複数の非同一瞳領域に向けられる。対物レンズの焦点領域における光強度分布は、強度最大値で囲まれた局所強度最小値を示すように形成される。コヒーレント入力光の複数の離散部分のうちの少なくとも2つの部分は、対物レンズの光軸を中心とする円に沿って局所強度最小値を移動させる別の電気光学変調器によって、位相や振幅のうちの少なくとも1つに対して個別に変調される。焦点領域に存在する単一蛍光色素分子から放出される光子が検出される。検出された光子ごとに、焦点領域内の局所強度最小値の位置に位置合わせが行われる。位置合わせをされた位置の平均位置を算出し、焦点領域内の単一蛍光色素分子の位置として取得する。
【0004】
ウェーバーらの「MINSTED fluorescence localization and nanoscopy」(Nat. Phot.、2021、https://doi.org/10.1038/s41566-021-00774-2)は、分子スケールまでの空間精度と分解能を実現する、誘導放出抑制(STED)系蛍光局在化及び超解像顕微鏡の概念を開示している。STEDドーナツの最小強度、つまりSTED最小点は、側面における蛍光色素の局在化のための可動基準座標として機能する。同一位置に配置された励起ビームとSTEDビームは、任意の半径で蛍光色素分子の推定位置を中心として125kHzの回転周波数で円を描く。推定位置と半径は、光子が検出されるたびに更新される。半径は、使用されるSTED顕微鏡の有効点広がり関数(E-PSF)の回折限界直径の半分を始点とする。推定位置はシフトされ、各光子が検出された後、半径の一部が減少する。さらに、STED強度は増加し、E-PSFの直径は縮小される。従って、最大強度が徐々に高くなり、E-PSFの傾きが急になっても、それにかかわらず、蛍光色素分子は常に中程度のSTED強度を維持する。蛍光色素を拡大すると、蛍光色素分子の位置を判定する際の精度が向上する。MINSTEDは高精度の実現も可能ではあるが、高強度のSTED光が非常に狭い局所領域に繰り返し照射されると、実際に得られる精度が熱に影響を受けて劣化する恐れがある。文献によると、パルス励起光の波長は635nm、同じくパルスSTED光のSTED波長は775nmである。Atto647N蛍光色素分子の場合、蛍光発光ピークの最大ピーク強度は約660nmであり、STED波長は発光ピークの遠赤色端にある。残りのピーク強度は最大ピーク強度の約10%に当たる。
【発明の目的】
【0005】
本発明の目的は、物体における単数化蛍光色素分子の分子位置をより高い精度で、かつ蛍光色素分子から放出される光子の量を最小限に抑えて判定する方法とレーザー走査型顕微鏡を提供し、それによって蛍光色素分子に対する光化学的ストレス及び/または分子を含む物体に対する光熱的ストレスを最小限に抑えることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、独立請求項1、5、10に記載の特徴を含む方法、並びに、請求項24に記載の特徴を含むレーザー走査型顕微鏡によって達成することができる。
【0007】
これらの方法の好ましい実施形態については、従属請求項で定義されるとおりである。
【発明の詳細な説明】
【0008】
本発明は、物体における単数化蛍光色素分子の分子位置を判定する方法に関する。
【0009】
単数化蛍光色素分子は、区別できない蛍光を発せるよう、同じ励起光によって励起され得る他の蛍光分子から空間的に分離されている。分子位置を判定すべき蛍光色素分子は、例えば物体における蛍光分子の濃度が低いため、自然に単数化される可能性がある。或いは、隣接する蛍光色素分子の漂白や一時的なスイッチオフによって、または隣接する蛍光色素分子を暗状態のままに放置して単一蛍光色素分子のみをスイッチオンにすることによって、蛍光色素分子を能動的に単数化することもできる。当業者に周知の方法として、蛍光色素分子を単数化する方法、並びに、測定体積内に実際に単数化分子が1つだけ存在するか否かを確認する方法が挙げられる。
【0010】
励起光のみを含む本発明の実施形態の場合、単数化蛍光色素分子から隣接する蛍光色素分子までの最小距離として適切な距離は、励起光の波長のオーダーに当たる。蛍光抑制光を更に含む本発明の実施形態では、より短い距離が適切である可能性がある。一般に、単数化蛍光色素分子から隣接する蛍光色素分子までの適切な距離は、隣接する蛍光色素分子が、位置を判定すべき単数化蛍光色素分子が放出する蛍光と別けて位置合わせを行うことのできない蛍光を放出するために励起されないことを確実にしなければならない。
【0011】
本発明による方法は、蛍光励起光及び蛍光影響光を含む光ビームを提供するステップを含む。蛍光影響光は蛍光励起光と同一であってもよく、或いは、蛍光影響光は、蛍光励起光に加えて提供される蛍光抑制光であってもよい。追加の蛍光抑制光は、例えば、励起光により励起された蛍光色素分子を、自発的に蛍光を放出できるようになる前に、励起状態から基底状態に戻すことにより、蛍光色素分子の蛍光に影響を及ぼすSTED(誘導放出抑制)光であってもよい。
【0012】
本発明による方法は、光ビームの整形・集束を行うことで、蛍光抑制光の中心強度最小値を有する光強度分布を形成するステップを更に含む。更に、本発明による方法は、中心強度最小値が単数化蛍光色素分子の推定位置を中心として繰り返し延在するトラックに沿って連続的に移動するように、物体に対して光強度分布を連続的にシフトするステップを含む。トラックは推定位置を中心として繰り返し延在する。この場合、トラックは推定位置を取り囲んでもよく、またはその周りを回ってもよい。ただし、トラックは推定位置を中心とし、一定距離を置いて周回せずともよい。具体的には、トラックは推定位置に一時的に近づいてもよく、なお一層、推定位置を通過してもよい。しかしながら、トラックにまたがる、またはトラックに取り囲まれる領域全体は、単数化蛍光色素分子の分子位置が判定されるすべての空間次元における推定位置を中心として延在することになる。
【0013】
本発明による方法は、蛍光励起光の励起により単数化蛍光色素分子が放出する蛍光の複数の個別光子に対して位置合わせを行い、位置合わせをされた複数の個別光子のそれぞれの励起に対して中心強度最小値の強度最小位置を記録するステップを更に含む。従って、判定対象の分子位置に関する情報を、出来るだけ多く、位置合わせ済みのそれぞれの個別光子から引き出せる。
【0014】
位置合わせを行われた複数の個別光子のそれぞれに応じて、トラックがそれを中心として走る推定位置を記録された強度最小位置に基づいて更新し、推定位置を中心とするトラックの延在は減少させ、及び/または蛍光影響光の蛍光影響有効度は増加させる。
【0015】
蛍光影響光が蛍光励起光と同一である場合、推定位置は記録済みの強度最小位置から遠ざかるように移動する。蛍光影響光が蛍光抑制光である場合、推定位置は記録済みの強度最小位置に向かって移動する。新しい推定位置は、適当な確率で、以前の推定位置よりも実際の分子の位置に近づく。従って、トラックの延在、つまり、トラックによって囲まれた推定位置を中心とする領域の延在が減少し得る。同時に、或いはその代わりに、蛍光影響光の蛍光影響有効度が増加し得る。本発明による方法で形成される光強度分布は蛍光影響光の中心強度最小値を有するため、蛍光影響光の強度は中心強度最小値までの距離が増すにつれて増加する。蛍光影響効果の増加は、蛍光影響光の強度の増加による効果が強化されることを意味する。
【0016】
一般に、蛍光影響光の蛍光影響有効度を高める方法としては、さまざまなものがある。例えば、蛍光影響光の強度を高めてもよい。よって、蛍光影響光の有効度につき、蛍光影響光の相対的な有効度、即ち蛍光影響光の強度で割った効果の尺度に必ずしも係る必要はなく、蛍光影響光の絶対的な有効度や効果に関してもよい。その代わり、或いはそれに加え、光影響光の蛍光影響有効度が増加してもよく、この場合、蛍光影響光の有効蛍光影響断面が増大する。これは、例えば、蛍光影響光の波長や波長組成を変更することによって達成することができる。
【0017】
蛍光影響光の波長や波長組成が変動すると、場合によっては光学設定での色収差に注意する必要がある。一般に、蛍光影響光の有効蛍光影響断面が最大となる蛍光影響光の波長や波長組成を有するように、光学設定を調整すべきである。従って、光学設定は通常、蛍光影響光の最小波長に合わせて微調整しなければならない。
【0018】
また、その代わり、或いはそれに加え、蛍光影響光のパルスと蛍光励起光のパルスの経時連続が変動する時がある。このような変動は、蛍光影響光及び蛍光励起光の強度を一定に維持している場合であっても、蛍光影響有効度に大きな影響を及ぼす可能性がある。これは、蛍光影響光が蛍光励起光である場合と、蛍光影響光が蛍光抑制光である場合の両方に当てはまる。蛍光影響光及び蛍光励起光の強度を一定に維持しながら蛍光影響光のパルスと蛍光励起光のパルスの経時連続のみを変化させることで、物体に照射され吸収される光力を一定に保つ。従って、例えば、蛍光影響有効度の増加は、熱効果の増加を伴わない。蛍光影響光の蛍光影響効果を高めるという概念は、蛍光影響光が蛍光抑制光である場合に特に有効である。更に、蛍光抑制光パルスは、蛍光色素分子の蛍光寿命よりただ長くても短くてもいけない。むしろ、ずっと長く、つまり、励起光パルスより少なくとも3倍、5倍、或いは10倍以上長くしなければならない。蛍光の光子の検出をゲート制御して、各蛍光抑制光パルスの後に放出される光子のみを選択し、完全な蛍光影響光パルスをまだ経験していない蛍光色素分子からの信号を遮断してもよい。蛍光抑制光パルス後の検出時間ゲートを維持し、励起をシフトすると、蛍光検出が最大化される。
【0019】
熱効果を一定に保つという上記の概念は、トラックが、3つの空間次元すべてにおける単数化蛍光色素分子の分子位置を決定するために、3つの空間次元すべてにおいて、単数化蛍光色素分子の推定位置を中心として延在する本発明の実施形態を実装する際に特に役立つ。
【0020】
要約すると、本発明による方法では、すべての光子を使用して、蛍光色素分子の推定位置を更新し、推定位置の更新を全て用いて、推定位置を中心とするトラックを強化し、及び/または、中心強度最小値の周りにおける蛍光影響光の効果を増大する。これらを組み合わせることで、分子の位置を数ナノメートル~約1ナノメートルの高精度で、かつ迅速に判定することができる。
【0021】
STEDによる蛍光抑制は通常、STED光による蛍光色素の直接励起を回避し、励起波長とSTED波長に囲まれた検出スペクトルを最大化するために、蛍光色素の発光スペクトルの遠赤端にあるSTED波長で行われる。誘導放出断面が小さいため、発光スペクトルの遠赤端でのSTEDは効率が低く、高いSTEM電力を必要とする。そのため、上記のような深刻な熱問題が生じてしまうことがある。
【0022】
STED光を用いる本発明による方法では、STED波長は、単数化蛍光色素分子の蛍光発光ピークが最大ピーク強度の少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%を依然として有する波長に設定されるか、或いは該波長まで連続的に低減される。STED光の蛍光影響有効度を高めるためにSTED波長が連続的に減少する場合、これらの基準の少なくとも1つを満たす波長で始めてもよい。
【0023】
STED光を使用する本発明による方法は、単数化蛍光色素分子を高いSTED強度に晒さない。更に、STED光の中心強度最小値を取り囲むSTED光強度の最大値領域には、他の蛍光色素分子は存在しない。従って、蛍光色素分子のピーク発光に非常に近いSTED波長を選択することができる。言い換えれば、本発明による方法は、誘導放出断面を増大させることができ、故に、所与の有効PSF FWHMに必要なSTEDパワーを低下させられる。本発明による方法では、STED電力を約1桁だけ低減すると、上述の深刻な熱問題を回避するには十分であり、また、本発明による方法の潜在的な精度を最大限に実現できる。
【0024】
複数の個別光子の位置合わせをする前に、蛍光にエッジフィルタリング、より好ましくはノッチフィルタリングをかけ、STED波長光を抑制すると、蛍光色素分子の発光ピーク中のSTED波長は、位置合わせステップにて著しいバックグラウンドを生成しない。STED光にSTED波長の狭い帯域幅を与えた場合、蛍光のノッチフィルタリングは、STED波長光の抑制に特に効果を発揮する。STED光がパルスで照射される場合、複数の個別光子の位置合わせに対してゲート制御を行い、STED光の各パルス後に放出される光子を選択してもよく、これにより、位置合わせステップにおいてSTED光によるバックグラウンドをさらに抑制することができる。しかしながら、一般に、STED光は連続波(cw)として照射されてもよい。具体的に、STED波長が連続的に低減される本発明の実施形態は、周波数同調型cwレーザが市販されているため、cw STED光を使用して実装することができる。
【0025】
本発明による方法では、トラックがそれを中心として延在する推定位置は、記録された強度最小位置に基づいて更新されてもよく、推定位置は、蛍光影響光が蛍光励起光であるか追加の蛍光抑制光であるかに応じて、さる方向において、推定位置と記録された強度最小位置との間の距離の所定の距離部分だけシフトされる。この距離は3%~33%の範囲となる。好ましくは、距離部分は10%~20%の範囲であり、すなわち約15%である。距離部分が小さければ、推定位置は分子位置に向かってゆっくりとシフトするため、特定の精度で分子位置を判定するにはより多くの光子の位置合わせを行う必要がある。距離部分が大きければ、推定位置のシフトはより速くなるが、推定位置が異なる方向や反対方向から分子位置を繰り返し通過する恐れがある。
【0026】
本発明による方法では、推定位置を中心とするトラックの延在は、1%~10%の範囲、好ましくは2%~5%の範囲にある延在部分だけ減少してもよい。従って、推定位置を中心とするトラックの延在部分が減少するステップは、位置合わせをされた光子ごとに推定位置がシフトされるステップよりも、少なくともいくらか小さい。
【0027】
蛍光影響光の蛍光影響有効度を特に増大させ、光強度分布の有効励起点広がり関数及び/または位置合わせをされた蛍光の有効点広がり関数の拡張が、それに応じて、すなわち好ましくは延在部分だけ低減されてもよい。従って、推定位置を中心とするトラックの延在と光強度分布の有効励起点広がり関数は、光子ごとに同期してスケールダウンされる。蛍光影響光が蛍光励起光である場合、光強度分布の有効励起点広がり関数は、蛍光励起光の中心強度最小値の点広がり関数となる。蛍光影響光が追加の蛍光抑制光である場合、光強度分布の有効励起点広がり関数は、蛍光抑制光の点広がり関数によって変形された蛍光励起光の中心強度最大値の点広がり関数となる。つまり、蛍光抑制光の中心強度最小値に近い狭いスポットまたはピークに閉じ込められる。
【0028】
本発明による方法では、推定位置を中心とするトラックの延在は、所定の最小延在量に達するまで減少し、及び/または、蛍光影響光の蛍光影響有効度は、所定の最大蛍光影響有効度に達するまで増加する。推定位置を中心とするトラックの延在は、分子位置を判定した精度と相関関係にある。従って、所定の最小延在に達するということは、分子位置を判定する際に所定の精度に達することを意味する。蛍光色素分子に対する光化学的ストレス及び/または分子を含む物体やサンプルに対する光熱的ストレスのため、及び/または、利用可能な蛍光影響光の光力が制限的であるため、所定の最大蛍光影響有効度を超えることはできない、できたとしてもその必要がまるでないと思われる。
【0029】
本発明による方法では、推定位置の更新とトラックの延在の減少、及び/または蛍光影響光の強度の増加にかかわらず、トラックに沿った中心強度最小値の移動は、位置合わせ済みの個別光子に渡って継続され得る。これは、推定位置が段階的に更新されることを意味せず、また、トラックの延在が段階的に減少することを意味するわけでもない。特に、中心強度最小値をトラックに沿って素早く移動させると、推定位置、つまりトラックで取り囲まれた領域の中心とトラックの延在部分、またはトラックで採り囲まれた領域の段階的な変動がまったく不可能となる、或いは少なくとも非常に複雑となるため、メリットがない。これは蛍光影響光の有効度の増大にも当てはまる。
【0030】
本発明による方法では、トラックが延在する、或いはトラックに沿って移動する中心強度最小値が単数化蛍光色素分子の推定位置を中心として移動する繰り返し率は、個別光子の位置合わせを行う光子率の少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%である。これは、推定位置を中心とするトラックのループごとに、平均して2つ以下、好ましくは1つ以下の光子の位置合わせが行われることを意味する。従って、個別光子の位置と中心強度最小値の最小位置の強度は、トラックに沿って明確に分離される。同様の目的で、位置合わせ済みの個別光子を示す信号は、中心強度最小値が移動する、または単数化蛍光色素分子の推定位置を中心とするトラックが延在する繰り返し率の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍のサンプルレートにサンプリングされてもよい。トラックが推定位置を中心として延在する繰り返し率の100倍に当たるサンプルレートは、中心強度最小値の記録済みの強度最小位置の角度分解能、つまり360°/100=3.6°にほぼ対応する。
【0031】
本発明による方法では、トラックは、3つの空間次元すべてにおいて、単数化蛍光色素分子の推定位置を中心として延在してもよい。3つの空間次元すべてにおいて、推定位置を中心とするトラックの延在は、3つの空間次元における光強度分布の有効励起点広がり関数の拡張を反映することが好ましい。さらにより好ましくは、推定位置を中心とするトラックの延在部分は、信号変化と信号強度の比が最大となる有効励起点広がり関数の表面積を反映する。
【0032】
実際の面で、複数の個別光子のうち、連続する2つの個別光子に対する応答の間に、トラックは、光ビームが集束する焦点面におけるx半軸及びy半軸、並びに、光ビームが沿って焦点面に集束するz方向におけるz半軸を有する楕円体の表面上を走ってもよい。x半軸とy半軸は同じ長さであってもよく、z半軸はx半軸及びy半軸よりも長くてもよい。トラックは、z回転周波数で焦点面内にて回転する軸を中心としてトラックが回転するz回転周波数よりも高くないxy回転周波数でz方向を中心として回転してもよい。推定位置の周りの領域を長時間省略せず、z方向を中心とする軸方向サイクル、並びに焦点面内で回転する軸を中心とする横方向のサイクルの約数回ごとにトラックを略繰り返すように、z回転周波数とxy回転周波数の非整数比を小さくする方が望ましい。
【0033】
或いは、トラックは、複数の個別光子のうち、連続する2つの個別光子に対する応答の間に、好ましくは推定位置を通り抜けるリサジュー曲線に沿って走ってもよい。x、y、z方向の回転周波数またはパルス周波数同士の適度かつ合理的な比率を以って、推定位置を中心とするサンプリングの密度とバランスを十分に保つ一方、リサジュー曲線の繰り返し周期を短縮する。リサジュー曲線が推定位置を通過するか、少なくとも推定位置を中心とするトラック全体の延在線上にある内部点を通過すると、位置合わせ済みの少数の光子に基づいて判定される分子位置の不確実性が低減する。これは、蛍光影響光が蛍光励起光と同一である場合に特に当てはまる。
【0034】
いずれの場合も、位置合わせ済みの光子に対する応答がなければ、トラックは推定位置を中心とする閉ループになり得る。
【0035】
蛍光影響光の中心強度最小値を有する光強度分布を形成するように光ビームを整形かつ集束する前に、蛍光励起光のビームを集束して、中心強度最大値を有する励起限定光強度分布を形成してもよい。励起限定光強度分布は、物体に対して連続的にシフトしてもよい。光検出器アレイを用いた蛍光励起光の励起により単数化蛍光色素分子から放出される蛍光の予備的な複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行ってもよい。光検出器アレイは、中心強度最大値で放出された蛍光が該光検出器アレイ上に結像されるエアリーディスクに対する空間的分解を行う。検出器アレイの位置合わせ位置及び中心強度最大値の強度最大位置は、位置合わせ済みの予備的な複数の個別光子における各個別光子の励起に対して記録される。次いで、検出器アレイの位置合わせ位置と、位置合わせ済みの予備的な複数の個別光子について記録された強度最大位置とから、開始すべき推定位置を判定する。エアリーディスク内の個別光子の位置合わせの空間的分解は、本発明による方法の核心ステップを実行する際に開始すべき推定位置に関する追加情報を取得するためものである。
【0036】
本発明による方法は、多くの蛍光色素分子の位置を一つずつ判定するために用いられる。単数化蛍光色素分子の分子位置が判定されると、別の蛍光色素分子を単数化するか、及び/または、進ませることで、物体における他の単数化蛍光色素分子の分子位置を更に判定してもよい。
【0037】
本発明による、物体における単数化蛍光色素分子の分子位置を判定するためのレーザー走査型顕微鏡は、蛍光励起光及び蛍光影響光を含む光ビームを提供するように構成された光源を備える。蛍光影響光は、蛍光励起光と同一であってもよいし、蛍光励起光に加えて提供されてもよい。レーザー走査型顕微鏡のビーム整形器及び対物レンズは、光ビームの整形・集束を行うことで、蛍光抑制光の中心強度最小値を有する光強度分布を形成するように構成されている。レーザー走査型顕微鏡のスキャナは、中心強度最小値が単数化分子の推定位置を中心として繰り返し延在するトラックに沿って連続的に移動するように、物体に対して光強度分布を連続的にシフトするように構成されている。レーザー走査型顕微鏡の検出器は、蛍光励起光の励起により単数化蛍光色素分子が放出する蛍光の個別光子に対して位置合わせを行うように構成されている。レーザー走査型顕微鏡のコントローラは、位置合わせをされた個別光子のそれぞれの励起に対して中心強度最小値の強度最小位置を記録するように構成されている。コントローラは更に、本発明による方法によって、位置合わせを行われた複数の個別光子のそれぞれに応じて、トラックがそれを中心として走る推定位置を記録された強度最小位置に基づいて更新し、推定位置を中心とするトラックの寸法は減少させ、及び/または蛍光影響光の有効度は増加させるように構成されている。
【0038】
レーザー走査型顕微鏡の任意の要素が「~に構成された」という表現を用いて定義される場合、一般に、この定義は、レーザー走査型顕微鏡のそれぞれの構成品が、定義された機能を達成するように構成され、レーザー走査型顕微鏡内に配置されることを含む。
【0039】
本発明は、特許請求の範囲、明細書、図面から展開することができる。
【0040】
明細書の冒頭で述べた特徴やその組み合わせの利点は一例にすぎず、本発明による実施形態が必ずこれらの利点を押さえる必要はなく、代替されてもよく、または、累積してもよい。
【0041】
原出願や特許の保護の範囲ではなく、開示内容の場合、その他の特徴については、図面、特に図示された設計や1つの構成要素に対する複数の構成要素の寸法、相対的な配置、それらの機能的な関係からも読み取ることができる。本発明の様々な実施形態の特徴を組み合わせることや、請求項の選択された参照とは独立した異なる請求項の特徴を組み合わせることも可能で、当業者への動機づけもされている。これは、別の図面に図示される、または説明の際に言及される特徴にも係る。これらの特徴は、様々な請求項の特徴と組み合わせてもよい。更に、本発明の更なる実施形態は特許請求の範囲に記載された特徴を有しなくてもよいが、その代わりに、特許請求の範囲の独立請求項には適用されないものとする。
【0042】
特許請求の範囲と明細書が具体的な数字を言及した場合、副詞「少なくとも」を明示的に使用せずとも、正確な数字は勿論、それより大きな数字をも網羅するものと理解されるべきである。例えば、光ビームを提供する光源について言及する場合、光ビームを提供する光源が1つのみであってもよく、或いは、光源が2つ以上あってもよいと理解されるべきである。追加の特徴が特許請求の範囲に列挙された特徴に追加されてもよく、或いは、これらの特徴がそれぞれの方法やレーザー走査型顕微鏡の唯一の特徴であってもよい。
【0043】
特許請求の範囲に含まれる参照符号は、特許請求の範囲によって保護される事項の範囲を限定するものではない。請求対象発明に理解しやすくすることが、参照番号の唯一の役割である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以下では、本発明を、図示された好ましい実施形態を以って、更に具体的に説明する。
【
図1】本発明による方法の第1実施形態を実施するために構成された、本発明によるレーザー走査型顕微鏡の第1実施形態を簡略化した光学セットアップ
【
図2】
図1に図示された光学セットアップの電気光学偏向器サブシステム
【
図3】
図1に示す光学セットアップで光源として機能するファイバー増幅器を含むレーザー光源の概要
【
図4】(A)本発明による方法の第1実施形態で用いられる典型的な横方向ドーナツ焦点の形成、(B)典型的な軸方向ドーナツ焦点の形成
【
図6】本発明による方法の第1実施形態の主要部分を実装する、側面内で蛍光分子を局在化するように構成された、本発明によるレーザー走査型顕微鏡1の第2実施形態の簡略化した光学セットアップ
【
図7】本発明による方法の第2及び第3実施形態を実施するために構成された、本発明によるレーザー走査型顕微鏡の第3実施形態を簡略化した光学セットアップ
【
図8】本発明による方法の第2実施形態の第1変形例において蛍光色素分子の推定位置を中心として延在する、ω
xyとω
zの比が2:1である極軌道トラック
【
図9】本発明による方法の第2実施形態の第2変形例において蛍光色素分子の推定位置を中心として延在する、ω
xyとω
zの比が5:3である極軌道トラック
【
図10】本発明による方法の第2実施形態の第3変形例において蛍光色素分子の推定位置を中心として延在する、ω
xyとω
zの比が10:7である極軌道トラック
【
図11】本発明による方法の第3実施形態において、ω
x、ω
y、ω
zの比が4:3:2であるリサジュー曲線。蛍光色素分子の推定位置を中心とするトラックは該曲線に沿って走る。
【
図12】本発明による方法の第4実施形態において、ω
x、ω
y、ω
zの比が5:4:3である別のリサジュー曲線。蛍光色素分子の推定位置を中心とするトラックは該曲線に沿って走る。
【
図13】本発明による方法の更なる実施形態を実施するために構成された、本発明によるレーザー走査型顕微鏡の更なる実施形態を簡略化した光学セットアップ
【
図14】(A)(B)(C)蛍光抑制光パルス及び蛍光励起光パルスの経時連続が変動することによって、蛍光抑制光の蛍光影響有効度を増大させる方法
【
図15】本発明による方法の一実施形態のステップを示すフローチャート
【実施形態の説明】
【0045】
物体における単数化蛍光色素分子の分子位置を決定する方法において、蛍光励起光を含む光ビームで物体をサンプリングし、略円形の軌道またはトラック上で連続高周波サンプリングを行う。また、蛍光色素分子からの蛍光の各光子に対する蛍光色素分子の推定位置の即時更新により、標的位置精度に必要な信号を大幅に低減することができるようになる。
【0046】
固定蛍光色素分子を→r
pに配置するとしよう。K個のサンプリング位置→r
k(k={1,2,…,K})で→n=(n
1,n
2,…,n
K)個の光子イベントを観測できる確率Pr{→n|→r
p}は、顕微鏡の点広がり関数PSF(→r)が与えられた場合にこれらの検出値を観測できる可能性によって決められる。サンプリング間隔τ
kと準同時サンプリング条件を適用すると、サンプリング位置→r
kでの検出値の割合p
kは次のように求められる。
【0047】
→r0を最初の推定位置、つまり分子位置→rpの初期推定値とする。サンプリングパターンは→C0=→r0を中心とし、周期的軌道→S(t)=→Ci+Ri→s(t)からなる。ここで、iは分子検出値の列挙、Riはスケーリング係数、→s(t)は軌道上の周期的な偏位を意味する。例えば、Riは半径、→s(t)=(cos(ωt),sin(ωt))は回転周波数ω=2πfと走査周波数fを有する単位円である。
【0048】
走査波数が平均検出率よりもはるかに高い場合、準同時サンプリングが行われ、任意の走査位置で次の光子を検出する確率は式(1)によりpkとなる。各光子検出の直後、中心は→rpに近づき、走査軌道は現在の位置特定の不確実性に合わせて調整される。i番目の光子が検出された走査位置→Siの方向に中心位置を分数αだけ移動することで更新が行われ、→Ci=(1-α)→Ci-1+α→Si=→Ci-1+αRi-1→si-1が成立する。従って、中心→Ciは、蛍光色素分子の現在位置推定値の平滑化代用値となる。振幅|α|≦1は指数フィルタの特性定数を定義し、その符号はPSF中心に近づくときの信号の増加または減少を反映する。光ビームに追加の蛍光抑制光が含まれる場合には増加し、光ビームに蛍光励起光のみが含まれる場合には減少する。小さな|α|は中心を段階的に更新し、徐々に収束する。大きな|α|は中心を→rpに向かって急速に移動させるが、暗カウントと背景のため、迷走する傾向がある。PSFの最大値の約半分で走査を行う場合、0.1<|α|<0.3の範囲は通常、大きなオーバーシュート無しで迅速な収束を実現し、0.15<|α|<0.2の範囲は悪条件下でも堅牢な収束を示す。
【0049】
平均検出率が走査周波数に接近する、またはそれを超過する場合、中心位置は走査位置を継続的に追跡し、|α|を減少させることでその偏位を減衰できる追跡曲線が生成される。重要なのは、特定の走査位置の方向に更新が偏ってしまうため、光子検出時に走査軌道を中断してサイクルの開始にリセットしてはいけないことである。
【0050】
→Siは、有効PSFの強度中心→S(ti)によって定義される、i番目に検出された光子のある起源である可能性があるものとして理解される。センサーが複数の素子や検出器で構成されている場合、各素子または検出器jは、それ自体の有効PSFの強度中心によって定義される独自の軌道→Sj(t)沿って最も感度が高くなる。j番目の素子または検出器がi番目の光子を検出した場合、中心はこの素子または検出器の走査位置→Sj,i= →Sj(ti)の方向に移動し、→Ci=(1-α)→Ci-1+α→Sj,iが成立される。
【0051】
すべての光子検出の高級分析を帰納的に行ってもよい。特に、分子位置の最尤推定では、積分走査軌道→S(t)とそのPSF(t)を考慮して、検出された光子と予想される信号を一致させることができる。走査軌道が連続的に変化するため、完全な分析は多大な計算リソースを必要とするが、蛍光色素分子の断続的な点滅や動きも考慮を入れてもよい。分子の近傍の準同時サンプリングにより、静止した蛍光色素分子の位置を特定するための簡略化された推定器を以下に示す。
【0052】
分子の位置は、座標軸x,y,zにそった重みのX
i
-2、Y
i
-2、Z
i
-2を持つ中心の→C
i=(C
xi,C
yi,C
zi)の加重平均によって推定する。ここでX
i、Y
i、Z
iはそれぞれ、蛍光励起光のみを使用した検索範囲R
i、またはこれらの軸に沿った追加の蛍光抑制光を使用したPSFのFWHM
iである。
【0053】
検出値に重み付けをする代わりに、蛍光色素分子上のスパイラルイン中の最初のm個の検出を完全に破棄し、最も閉じ込められた範囲での検出値のみについて中心位置を平均してもよい。
【0054】
蛍光色素分子の近傍でほぼバランスの取れたサンプリングが行われた場合、分子位置は、位置→S
iに配置されたPSFを積分して、その位置の確率分布の代用値を取得することで推定する。蛍光色素分子は、この分布の最大値で見つかる可能性が最も高い。
【0055】
当該アプローチにおいて、検出値からの確率分布をサンプリング確率分布で除算することにより、サンプリングの不均衡まで考慮できるようになる。
【0056】
側面での位置特定は、電気光学偏向器(EOD)など、数PSF FWHMの範囲にわたって数100kHzの繰り返し率で走査を行うビームスキャナによってサポートされる。ウェーバーらの「MINSTED fluorescence localization and nanoscopy」(Nat. Phot.、2021、https://doi.org/10.1038/s41566-021-00774-2)は、分子の推定位置を中心として125kHzの繰り返し率で旋回することにより、側面内での局在化に関する該概念を実証している。ビーム偏向は、EODドライバとその入力信号の変化率の制限によって平滑化され、走査軌道またはトラックが円形になるが、指令された位置に対して真のビーム位置の遅延が生じる。検出された光子にビーム位置の位置合わせを行うときに、当該遅延を考慮に入れる。
【0057】
高速スキャナではビームに対する任意の位置決めができず、或いは、走査範囲が非常に限られているため、光軸に沿った位置特定は依然として困難である。例えば、数100kHzでの共鳴軸走査は音響光学レンズ(AOL)によって実現できるが、これは走査を正弦波軌道に強制し、走査軌道を分子位置の中心に置くことができない。或いは、電気光学レンズは高速任意軸走査を特徴としているが、その範囲は被写界深度(DOF)程度の非常に限られた範囲に限られる。
【0058】
複数のスキャナの利点を組み合わせることにより、蛍光色素分子を三次元で連続的に追跡して位置特定することができる。例えば、AOLは高速軸サンプリングを特徴としてもよく、EODは高速な横方向サンプリングを特徴としてもよく、可変ミラーは、数PSF FWHMの範囲でサンプリング軌道の軸方向及び横方向の中心を特徴付けてもよく、ガルバノミラースキャナは、より広いスキャン範囲を提供してもよく、及び/またはステージスキャンにより、サンプルや物体を広範囲に配置してもよい。EODの偏光感度により、中心位置のみに対して逆走査を行い、現在の位置推定値から信号を収集することが有利な場合がある。この部分的な逆走査により、サンプリング位置が検出PSFの周辺にある場合、最初の粗位置特定中の検出効率が低下する。ただし、サンプリングパターンは位置特定中に閉じ込められるため、検出効率の損失は僅かにとどまる。
【0059】
蛍光色素分子の局在化または位置決定は、ドーナツ形状の励起PSF、つまりMINFLUXのように蛍光励起光のみを使用して実行することも、MINSTEDのように追加の蛍光抑制光によって閉じ込められる励起PSFを使用して実行することもできる。これは、周囲の背景を軽減するのに役立つ。以下では、閉じ込めとは、蛍光励起光のみのドーナツ型励起PSF、または追加の蛍光抑制光によって有効励起PSFをシャープにするドーナツ型STED PSFを指す。
【0060】
サンプリング軌道に沿って、サンプリングPSFの形状とサイズが変化してもよい。一方向の局在化中に、サンプリングPSFと直交面内の分子位置の間の位置ずれの影響を軽減するために、直交方向に沿って限られた閉じ込め効果を有するサンプリングPSFを適用することが有利な場合がある。例えば、横方向の位置特定は、軸方向の閉じ込めがないか、または弱いことを特徴とする横方向のドーナツに依存し、一方、軸方向の検出は、横方向の閉じ込めがないか、または弱いことを特徴とする軸方向のドーナツに依存してもよい。特に、軸方向に閉じ込められたPSFは、蛍光色素分子の上下の位置がサンプリングされる場合に適用されるが、横方向に閉じ込められたPSFは、蛍光色素分子の左右前後の位置がサンプリングされる場合に適用される。
【0061】
方向jの不確実性σjはLj/√Njスケールされる。ここで、LjはPSF FWHMと走査範囲Rによって定義される特性長、Njは方向jのサンプリング点から検出された光子の数である。等方性局在化または位置の不確実性はNj∝Lj
2よって得られる。これは、方向jのサンプリング期間及び/またはサンプリングPSF強度を調整することによって達成され得る。
【0062】
以下では、本発明の方法の実施形態、並びに、本発明によるレーザー走査型顕微鏡の対応する実施形態の光学セットアップについて説明する。光学セットアップは、蛍光励起光に加えて蛍光抑制光またはSTED光を含む光ビームの使用を示す。蛍光励起光のみの光ビームを使用する場合、図示の光学セットアップでは、蛍光抑制光またはSTED光のビーム経路に沿って光ビームを供給できる。
【0063】
ここで図面をより詳細に参照すると、
図1に示されるレーザー走査型顕微鏡1の実施形態は、蛍光励起光4と、蛍光抑制光5として追加のSTED光とを含む光ビーム3を提供する光源2を備える。光源2は、別々の励起光源52と蛍光抑制光源53とを含む。ビーム整形器6、7及び対物レンズ8は、光ビーム3の整形・集束を行うことで、蛍光抑制光5の中心強度最小値を有する光強度分布を形成するように構成されている。スキャナ9、10は、物体11における分子位置を判定すべき単数化分子の推定位置を中心として繰り返し延在するトラックに沿って連続的に移動するように、物体11に対して光強度分布を連続的にシフトすることを目的とする。検出器12は、蛍光励起光4による励起により単数化分子によって放出される蛍光40の複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行う。コントローラ13は、検出器によって位置合わせをされた個別光子の励起に対する中心強度最小値の強度最小位置を記録する。
【0064】
より具体的には、励起光4及び蛍光影響光5の2対の部分ビームは、対物レンズのサンプル空間8においてEODスキャナ9として機能するスキャナ9によって側面に、AOLとして機能スキャナ10によって光軸に沿って別々に向けられる。渦プレートとして機能するビーム整形器6と、トップハットプレートとして機能するビーム整形器7とは、蛍光影響光5の部分ビームに必要な位相プロファイルをインプリントする。ダイクロイックミラー14、15は部分ビームの対を結合する。偏光ビームスプリッタ16は、2つのビーム経路を結合する。リレーレンズ17、18は、EODスキャナ9及びAOLスキャナ10の瞳を可変ミラー19上に結像する。リレーレンズ20、21とミラー22からなる別のリレーシステムは、対物開口23内に瞳及び可変ミラー19を結像する。1/4波長位相差板24は、直線レーザービーム偏光を円偏光に変える。物体11から放出された蛍光40の光子は、ダイクロイックミラー25で反射され、レンズ26及びピンホール27で空間的にフィルタリングされ、単一光子検出APDとして機能する検出器12によって個別に検出される。
【0065】
図2は、
図1のスキャナ9の電気光学偏向器サブシステムを示しており、これは横方向xy面での走査のために設けられている。入射直線偏光レーザービームは、第1のEOD28によって第1軸に沿って偏向される。次に、ビームの偏光は、ビームが第2軸に沿って第2のEOD30によって偏向できるように、半波長位相差板29を用いて90°回転される。レンズ31、32は、第1のEOD28の見かけの偏向面を第2のEOD30の見かけの偏向面に結像する。
図1、
図6、
図7では、このサブシステムはEODスキャナ9と共通の偏向面によって簡略化されている。
【0066】
図3は、ファイバ増幅器54を含み、完全に標準部品で作られた安価なパルス蛍光抑制光源53の概要を図示する。ファイバ増幅器54は、2つのファイバ結合レンズ56、57と2つのダイクロイックミラー58、59との間に配置された、ドープシングルモードまたはダブルクラッドファイバ55を備える。ドープファイバ55は、後端からダイクロイックミラー58を介してレーザーダイオード60によってポンピングされ、その前端または出力端から偏光ビームスプリッタ63及びダイクロイックミラー59を介して2つのレーザーダイオード61、62によってポンピングされる。更なるレーザーダイオード64はシードレーザーとして機能する。高周波ドライバボード65(概略的に示す)は、レーザーダイオード64に短い電流パルスを供給して、パルス幅1~2nsのレーザー光を生成する。これらの短いレーザーパルスは、効果的な蛍光抑制には弱すぎる可能性がある。この場合、パルスがドープファイバ55内で増幅されてしまう。例えば、プラセオジムドープファイバ55は、約450nmの励起波長の青色光でレーザーダイオード60~62によって励起されると、約490~492nm、604~606nm、636~638nmの波長で高いゲインを得られる。レーザーダイオード61、62は偏光を放出するので、偏光ビームスプリッタ63のような偏光ビームスプリッタを使用してそれらのレーザービームを結合することによってポンプパワーを2倍にすることができる。ダイクロイックミラー58、59はポンプ光を反射し、レーザーダイオード64からのシード光と増幅された出力、すなわち蛍光抑制光5を透過する。
図3に示すパルス蛍光抑制光源53は、レーザー走査型顕微鏡1のすべての実施形態で使用することができる。同じ設計を励起光源52及び連続波蛍光抑制光源53にも使用することができる。
【0067】
図4Aは、横方向に閉じ込められたPSFが位相渦プレートビーム整形器6によって生成され、オブジェクト11における横方向のドーナツプロファイル、すなわち光軸またはz軸に沿って延在する中心強度最小値39を有する光強度分布38を作成する方式を図示している。このPSFは、EODスキャナ9によって、蛍光色素分子の近くの周期的軌道、好ましくは分子の推定位置34を中心とする略円形または楕円形の軌道で横方向に走査される(
図5を参照)。
図4Bは、軸方向に閉じ込められたPSFが位相トップハットプレートビーム整形器7によって生成され、物体11における軸方向のドーナツプロファイル、すなわち光軸またはz方向に沿って延在する強度最大値によって囲まれた中心強度最小値39を有する光強度分布38を作成する方式を図示している。このPSFは、分子の推定位置34付近の正弦軌道上でAOLスキャナ10によって軸方向に走査される(
図5を参照)。2つのビームは、直交する偏光で別々の経路に設定され、
図1の偏光ビームスプリッタ16によって結合される。可変ミラー19は、物体11内のすべてのPSFの中心位置を制御する。偏光ビームスプリッタ16と可変ミラー19との間のダイクロイックミラー25は、蛍光色素分子から蛍光40の光子を抽出し、それらを検出器12に向ける。検出経路内の共焦点ピンホール17は、焦点が合っていない光子を排除する。
【0068】
軸方向に閉じ込められたPSFは連続的に上下に走査されるが、好ましくは選択された点の近く、例えば走査範囲の端近くのみに点灯される(
図5を参照)。横方向に閉じ込められたPSFは、横方向の平面内のトラック31に沿って周回され、好ましくは軸方向走査の残りの間隔中にのみ点灯される。これにより、蛍光色素分子の推定位置34は、交互の間隔で横方向及び軸方向に更新される。好ましくは、横方向走査ω
xy≫ω
zは、軸方向走査の中断中に少なくとも横方向全周期を走査する。トラック31内の中心位置は、軸方向走査の短い間隔中にサンプリングされ、全方向の位置特定に使用され得る。この実施形態では、横方向及び軸方向のビーム走査は分離されており、すべてのサンプリング軌道は正弦波であってもよい。従って、両方のビーム走査は、スキャナの最高周波数で共鳴して生成されてもよい。共振周波数を超えると減衰が強化され、より少ないサイクルで走査範囲を変動させるようになる。
【0069】
図6に示すレーザー走査型顕微鏡1の実施形態は、励起光4と蛍光影響光5の部分ビームの第2の対を備えておらず、ビーム整形器7はトップハットプレートであり、
図4Bに従って軸方向に閉じ込められたPSFを持っている。従って、軸方向に閉じ込められたPSFを上下にスキャンするオプションはない。
図4Aによる横方向に閉じ込められたPSFのみが生成され、側面における蛍光抑制光による局在化のために、
図5に従ってトラック31を中心として一周する。それにかかわらず、レーザー走査型顕微鏡1は、ビームの偏光が直交する2つの励起経路を組み込んでいる。追加された経路では、蛍光励起光4はガルボスキャナ66のガルバノミラーによって偏向され、回折限界の解像度で広い視野を走査する。もう一方の経路は、
図1の横方向に閉じ込められたPSFを形成するための励起光4と蛍光影響光5の部分ビームの経路に相当し、蛍光励起光と抑制光はEODスキャナ9によって偏向され、小さな視野内で蛍光色素分子の検索と位置特定を行う。2つの経路は、偏光ビームスプリッタ16によってサンプル11に向かって併合される。狭い視野において、レーザー走査型顕微鏡1は、蛍光色素分子から放出され、2つの経路のいずれかに沿って到来するすべての偏光方向の蛍光40を検出し、検出効率を最大化する。EODスキャナ9を通る経路に沿って来る蛍光40は完全に逆走査される。一方、ガルバノスキャナ66を通る経路に沿って来る蛍光40は、検流計がEODの周波数で動作しないため、蛍光色素分子の推定位置についてのみ逆走査を行うことができる。検出器12の前で、2つの経路に沿って来る蛍光40の2つの部分は、更なる偏光ビームスプリッタ67によって併合される。EODスキャナ9における半波長位相差板68及び半波長位相差板29(
図2参照)は、偏光ビームスプリッタ16と67の間の蛍光40の一部の偏光を適切に回転させることができる。時間ゲート検出の場合、両方の経路の光路長を光遅延69によって一致させることができる。
【0070】
図7に示すレーザー走査型顕微鏡1の実施形態では、照明は、AOLスキャナ10及びEODスキャナ9によってサンプル内の3次元すべてで高速に走査される。リレーレンズ17、18は、EODスキャナ9の瞳を可変ミラー19上に結像する。リレーレンズ21、22とミラー22からなる別のリレーシステムは、対物開口23内に瞳及び可変ミラー19を結像する。1/4波長位相差板24は、直線レーザビーム偏光を円偏光に変える。放出された光子は、ダイクロイックミラー25によって反射され、レンズ26及びピンホール27によって空間的にフィルタリングされ、APD検出器12によって検出される。光軸に沿って走査するときにビーム直径の小さな変動が許容できない場合、追加の中継システムがAOLスキャナ10の瞳をEODスキャナ9の瞳に結像してもよい(図示せず)。
【0071】
図7に示すレーザー走査型顕微鏡1の実施形態は、横方向位置決め用のEODスキャナ9と軸方向位置決め用のAOLスキャナ10との組み合わせによって、サンプリングPSFを3次元で迅速に走査するために使用することができる。可変ミラー19は、高速ビームスキャナによって小さな偏位のみが提供される必要があるときに、走査パターンの中心を蛍光色素分子の推定位置34に位置決めすることができる。
【0072】
蛍光色素分子を中心とする周期的軌道またはトラック31は、地球の衛星の軌道に似ていてもよい。典型的なPSFは側面では略等方性であるが、光軸に沿ってより細長いため、等方性の位置特定では、横方向の位置よりも光軸に沿った位置をより徹底的にサンプリングする必要がある。従って、極衛星軌道に似た周期的軌道は、軸点に最も頻繁に遭遇するため有利である。
【0073】
例えば、AOLスキャナ10の周波数f
AOLが回転周波数ω
z=2πf
AOLを定義し、横方向の偏位が軸方向の偏位と同期しているとする。次に、光軸を含む任意の平面内で、走査は楕円上を走る。側面でのサンプリングを完了するには、横方向の偏位は回転周波数ω
xy=2πf
EODで軸を中心として回転する。従って、走査軌道→s(t)は楕円面上を走り、側面に半軸XとY、光軸に沿って半軸Zを持つ。
【0074】
これらのスキャン軌道は楕円体の内部を決してサンプリングしないため、追加の蛍光抑制光を使用する場合など、中心最大値を特徴とするPSFによる位置特定に適している。励起光のみを使用する場合、高速スキャナをバイパスする専用ビームと2つのビームを切り替えることによって中心をサンプリングできる。
【0075】
蛍光色素分子の明るさの変動の影響を最小限に抑えるために、短い間隔ですべての側面から分子位置のバランスのとれたサンプリングを達成するように回転周波数を選択する必要がある。一方で、ω
xy≪ω
zは軸を中心とする回転が遅すぎるため、軌道は一度に1つの横方向のみをサンプリングし、直交する横方向はずっと後でサンプリングされる。一方、回転周波数の整数比が小さいと、共通期間が短く、明確なサンプリング点がほとんどないサンプリング軌道が生成され、これも不均衡なサンプリングにつながり得る。例えば、ω
xy=2ω
zの場合、分子位置の永続的に傾斜したサンプリングが行われてしまう(
図8を参照)。
【0076】
サンプリング軌道またはトラック31が、蛍光色素分子の周囲の領域を長時間省略することなく、軸方向及び横方向のサイクルの約数回ごとに略繰り返すように、回転周波数の非整数比を小さく選択することが望ましい。例えば、3ω
xy=5ω
zは1.5軸サイクルごとに横位置をサンプリングするが、3軸サイクルごとの楕円体表面のサンプリングは粗いままである(
図9を参照)。一方、7ω
xy=10ω
zは約2.3軸サイクルごとに横位置のみをサンプリングするが、7軸サイクルごとにはるかに密に楕円体表面をカバーする(
図10を参照)。
【0077】
図6~
図8において、トラック31は、その横方向及び軸方向の偏位に対して正規化されている。トラックの開始点32と軸方向の交点33は点でマークされている。
【0078】
本発明による方法の別の実施形態では、
図7の光学セットアップを使用して実施することができ、光ビームは蛍光励起光4のみからなる。従って、サンプリングPSFはもっぱら軸方向のドーナツ形状に依存することになる。サンプリングPSFは、高速スキャナによって正弦波軌道上にて3次元で走査される。可変ミラーは、高速ビームスキャナによって小さな偏位のみが提供される必要があるときに、走査パターンの中心を蛍光色素の推定位置に位置決めすることができる。
【0079】
各走査方向に固有の周波数を利用して、リサジュー曲線に沿って走る3次元トラック31上で分子位置をサンプリングすることができる。例えば、次の走査軌道は中心から始まり、3つの走査軸に沿って半周期の最小公倍数ごとに中心に戻る。
【0080】
リサジュー曲線は、2X×2Y×2Zボックスの内部をサンプリングする。走査周波数間の非整数比が小さいと、長い繰り返し期間を犠牲にして高密度のサンプリングが得られる。走査周波数同士の比率を適度且つ合理的な比率により、サンプリングの密度とバランスを十分に保ちながら、繰り返し周期を短縮する。例えば、2ω
x=3ω
y=4ω
zは、x走査の6サイクルごとにパターンを繰り返す(
図11を参照)。ω
x=2ω
y=3ω
zと同じであるが、方向のバランスがより良い。一方、3ω
x=4ω
y=5ω
zはx走査の20サイクルごとにのみ繰り返される(
図12を参照)。リサジュー曲線形状のトラック31は、内部点もサンプリングされるため、励起光のみを使用する場合により有利になる。
【0081】
図9~
図10において、トラック31は、その横方向及び軸方向の偏位に対してまた正規化されている。
【0082】
図13に示すレーザー走査型顕微鏡1の実施形態では、可変ミラー19は、スキャンのために物体11内の焦点をシフトさせるスキャナとして使用される。レンズ20、21とミラー22からなるリレーシステムは、対物開口23内に可変ミラー19を結像する。サンプル中の単数化蛍光色素分子によって放出された光子は、ダイクロイックミラー25によって反射され、レンズ26及びピンホール27によって空間的にフィルタリングされ、APD単一光子検出器12によって検出される。更なるレンズ35は、光ビーム3の部分ビームをコリメートする。色渦プレート36は、STEDまたは蛍光抑制光5の部分ビームを変化させず保ちながら、励起光4の部分ビームに螺旋位相をインプリントする。空間光変調器37は、偏光変換器36によって放射状偏光に変換される蛍光抑制光5の直線偏光部分ビームにトップハット位相をインプリントする。蛍光抑制光5の直交偏光部分ビームと励起光4の部分ビームの波面は空間光変調器37によって変化されず、両方のビームは色渦プレート36によって接線偏光に変換される。色渦プレート36はS波板であってもよい。
【0083】
この実施形態では、サンプリングPSF、即ち中心強度最小値39を有する光強度分布38は、DE102018127891B3に従って、軸方向及び横方向の閉じ込めの比が調整可能な3次元ドーナツ形状PSFに依存する。このサンプリングPSFは、可変ミラー19によって3次元で走査されてもよい。このアプローチは、無駄のない実装と、走査頻度の低下を犠牲にした完全逆走査検出を特徴としている。
【0084】
図14A、14B、14Cは、蛍光抑制光5のパルス及び蛍光励起光4のパルスの経時連続が変動することによって、蛍光影響光として使用されるSTEDまたは蛍光抑制光5の蛍光抑制効果を高める方法について図示する。これは、従来のMINSTED法にも適用できる。
【0085】
励起光4と蛍光抑制光5の両方を使用して連続的に小さい検索範囲で蛍光色素分子の位置を特定するには、有効PSF FWHMを絞り込むために蛍光影響有効度を同時に増加させる必要がある。蛍光抑制光5によるこの閉じ込めは、かなりの蛍光抑制光力を伴い、サンプルまたは物体11、カバースライド、光学系や浸漬液を加熱し得る。光力の変化による急激な温度変化は、照明経路内の光学材料の屈折率を変化させ、サンプルの見かけの変位を引き起こすため、問題が生じてしまう。液浸液の温度変化は特に重要である。サンプル位置の閉ループ安定化は通常、これらの見かけのサンプル変位をキャンセルするには遅すぎる。
【0086】
幸いなことに、STEDまたは蛍光抑制光5の蛍光抑制効果は、励起光とSTEDパルスの間の遅延を変更することによって、一定のSTEDまたは蛍光抑制光力に調整できる。例えば、励起光パルスがSTEDまたは蛍光抑制光パルスの直後にタイミングが設定されている場合(
図14Aを参照)、STEDまたは抑制効果が回避され、回折限界の有効PSFが得られる。一方、励起光パルスがSTEDまたは蛍光抑制光パルスの直前にタイミングが設定されている場合(
図14Cを参照)、抑制効果は最大となり、最も閉じ込められた有効PSFが得られる。STEDまたは蛍光抑制光パルスの持続時間内で励起光パルスのタイミングを調整することにより(
図14Bを参照)、抑制効率を調整し、それによって有効PSF FWHMを調整することができる。このアプローチは、持続時間τ
STEDが蛍光寿命τ
flよりはやや短いが、励起光パルスの持続時間τ
exよりはるかに長い、STEDまたは蛍光抑制光パルスによって実装され得る。つまりτ
ex≪τ
STED<τ
flの関係が成立される。蛍光40の検出は、STEDまたは蛍光抑制光パルスの後に検出される光子のみを選択するようにゲート制御を行うことで、完全なSTEDまたは蛍光抑制光パルスをまだ経験していない蛍光色素からの信号を遮断することができる。STEDまたは蛍光抑制光パルスの後の検出時間ゲートを維持し、励起をシフトすると、蛍光検出が最大化される。
【0087】
STEDによる蛍光抑制は通常、STED光による蛍光色素の直接励起を回避し、励起波長とSTED波長に囲まれた検出スペクトルを最大化するために、蛍光色素の発光スペクトルの遠赤端にある波長で行われる。誘導放出断面が小さいため、発光スペクトルの遠赤端でのSTEDは効率が低く、高いSTEM電力を必要とする。そのため、上記のような熱問題が生じてしまうことがある。
【0088】
幸いなことに、蛍光抑制光を使用する本発明による方法は、蛍光色素を高いSTED強度に晒さない。従って、STED波長を蛍光色素のピーク発光に近づけることができる。言い換えれば、本発明による方法は、誘導放出断面を増大させることができ、それによって、所与の有効PSF FWHMに必要なSTEDパワーを低下させられる。約1桁だけ削減すれば、熱問題を回避するには十分である。
【0089】
STED波長は、蛍光色素分子の局在化中に減少し得る。この場合、蛍光抑制効果は、波長が蛍光色素分子の発光スペクトルのレッドテールから発光最大値に向かって連続的にブルーシフトすると増大し、これによりSTEDパワーを一定に保つことが可能になる。アクロマティックビームシェイパーと光学系は、すべての波長に対して望ましいSTED焦点を生成することができる。残留色収差の影響は、最高の蛍光抑制効果で最終的な位置特定のためのSTED焦点を完璧にすることによって最小限に抑えられる。
【0090】
更に、加熱用の別個の近赤外線または赤外線ビームを用いて可変照明パワーによる加熱の変動を補償することにより、光学系および照明経路内の液浸液の温度変動を最小限に抑えることができる。全体的な加熱が一定に保たれるように、照明ビームと加熱ビームの出力のバランスがとれていなければならない。
【0091】
図15のフローチャートに示される本発明の方法の実施形態は、物体11内の隣接する蛍光色素分子から蛍光色素分子を単数化するステップ42から始まり、その結果、単数化分子は、蛍光40の放出のために個別に効果的に励起され、その光子は後続のステップで位置合わせを行われる。物体11内の蛍光色素分子がすでに単数化されている場合、ステップ42は必須ではない。次に、単数化分子を探索するステップ43において、中心強度最大値を有する励起限定光強度分布を形成するように、蛍光抑制光のビームを集束させる。励起限定光強度分布は、物体11に対して連続的にシフトする。光検出器アレイを用いた蛍光励起光の励起により単数化蛍光色素分子から放出される蛍光の予備的な複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行い、光検出器アレイは、中心強度最大値で放出された蛍光が該光検出器アレイ上に結像される分布に対する空間的分解を行う。位置合わせ済みの個別光子の各々の励起に対する中心強度最大値の強度最大位置と、検出器アレイの位置合わせ位置とを記録する。推定位置34を判定するステップ44において、位置合わせ済みの予備的な複数の個別光子に対して記録された強度最大位置と、検出器アレイの位置合わせ位置とから開始すべき推定位置34を判定する。光ビーム3の整形・集束を行うステップ45において、蛍光励起光4と蛍光影響光5とを含む光ビーム3を提供して、その整形・集束を行い、蛍光抑制光の中心強度最小値を有する光強度分布を形成する。中心強度最小値を連続的に移動させるステップ46において、中心強度最小値39が単数化蛍光色素分子の推定位置34を中心として繰り返し延在するトラック31に沿って連続的に移動するように、物体11に対して光強度分布38を連続的にシフトする。位置合わせを行うステップ47において、蛍光励起光4による励起により単数化分子によって放出される蛍光40の複数の個別光子に対して別々に位置合わせを行う。更に、中心強度最小値39の強度最小位置が、位置合わせをされた個別光子の励起ごとに記録される。更新を行うステップ48において、位置合わせを行われた複数の個別光子のそれぞれに応じて、トラックがそれを中心として延在する推定位置34を記録された強度最小位置に基づいて更新し、推定位置34を中心とするトラック31の延在は減少させ、及び/または蛍光影響光の有効度は増加させる。分子位置が所望の精度ですでに決定されているか否か(または、蛍光色素分子が蛍光の放出を停止しているか否か)に関するクエリ49の結果に応じて、物体11内の別の蛍光団分子を単数化すべく、ステップ47及び48がループ50で繰り返させる、或いは、当該方法を、ループ51においてステップ42で再開させる(または、ステップ43及び44に従って、物体11内のすでに単数化された別の蛍光色素分子を検索して直接探す)。
【参照符号の説明】
【0092】
1 レーザー走査型顕微鏡
2 光源
3 ビーム
4 励起光
5 抑制光
6 ビーム整形器
7 ビーム整形器
8 対物レンズ
9 EODスキャナ
10 AOLスキャナ
11 物体
12 検出器
13 コントローラ
14 ダイクロイックミラー
15 ダイクロイックミラー
16 偏光ビームスプリッタ
17 リレーレンズ
18 リレーレンズ
19 可変ミラー
20 リレーレンズ
21 リレーレンズ
22 ミラー
23 対物開口
24 1/4波長位相差板
25 ダイクロイックミラー
26 レンズ
27 ピンホール
28 EOD
29 半波長位相差板
30 EOD
31 トラック
32 トラック31の開始点
33 軸方向の交点
34 推定位置
35 レンズ
36 色渦プレート
37 空間光変調器
38 光強度分布
39 中心強度最小値
40 蛍光
41 有効励起点広がり関数
42 蛍光色素分子を単数化するステップ
43 単数化蛍光色素分子を探索するステップ
44 推定位置を判定するステップ
45 整形・集束を行うステップ
46 中心強度最小値39を連続的に移動させるステップ
47 個別光子の位置合わせを行うステップ
48 更新を行うステップ
49 クエリ
50 ループ
51 ループ
52 励起光源
53 蛍光光源
54 ファイバ増幅器
55 ファイバ
56 ファイバ結合レンズ
57 ファイバ結合レンズ
58 ダイクロイックミラー
59 ダイクロイックミラー
60 レーザーダイオード
61 レーザーダイオード
62 レーザーダイオード
63 ビームスプリッタ
64 シードレーザー
65 信号生成器
66 ガルボスキャナ
67 偏光ビームスプリッタ
68 半波長位相差板
69 光遅延
【国際調査報告】