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特表2024-526830電動二輪車用のブレーキアシストシステムを運転するための方法、コントロールユニット、電動二輪車用のブレーキアシストシステム、コンピュータプログラム、およびコンピュータ読み取り可能な媒体
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  • 特表-電動二輪車用のブレーキアシストシステムを運転するための方法、コントロールユニット、電動二輪車用のブレーキアシストシステム、コンピュータプログラム、およびコンピュータ読み取り可能な媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電動二輪車用のブレーキアシストシステムを運転するための方法、コントロールユニット、電動二輪車用のブレーキアシストシステム、コンピュータプログラム、およびコンピュータ読み取り可能な媒体
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20240711BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20240711BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T8/34
B60T8/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502689
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2022066093
(87)【国際公開番号】W WO2023011787
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021208582.2
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クルーク,ジラス
(72)【発明者】
【氏名】モイア,アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246EA05
3D246GB01
3D246GB28
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA28A
3D246HA64A
3D246JA12
3D246LA33Z
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】 電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)を運転するための方法において、該方法は、前記電動二輪車(1)を制動するために必要な全ブレーキトルク(7)を決定すること、前記電動二輪車(1)の電動機(3)によって発生させようとするモータトルク(12)を前記全ブレーキトルク(7)および前記電動二輪車(1)のブレーキ装置(5)によって発生可能な最大ブレーキトルク(11)に依存して決定すること、前記最大ブレーキトルク(11)が生ぜしめられると、前記電動機(3)を駆動制御するための制御指令(13)を生成し、それによって前記モータトルク(12)を前記最大ブレーキトルク(11)と一緒に生成すること、を含有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)を運転するための方法において、
前記電動二輪車(1)を制動するために必要な全ブレーキトルク(7)を決定し、
前記電動二輪車(1)の電動機(3)によって発生させようとするモータトルク(12)を、前記全ブレーキトルク(7)および前記電動二輪車(1)のブレーキ装置(5)によって発生可能な最大ブレーキトルク(11)に依存して決定し、
前記最大ブレーキトルク(11)が生ぜしめられると、前記電動機(3)を駆動制御するための制御指令(13)を生成し、それによって前記モータトルク(12)を前記最大ブレーキトルク(11)と一緒に生成すること、
を含有する、電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)を運転するための方法。
【請求項2】
前記全ブレーキトルク(7)と前記最大ブレーキトルク(11)との差分を形成することによって、前記モータトルク(12)を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電動機(3)によって発生された最大駆動トルク(19)を、大きさに関連して前記最大ブレーキトルク(11)よりも小さくならないようにする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記電動機(3)の実際の回転数を表す測定データ(8)を受信し、この測定データ(8)を評価することによって前記全ブレーキトルク(7)を決定する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
コントロールユニット(6)において、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法を実行するために構成されたプロセッサを含有する、コントロールユニット(6)。
【請求項6】
電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)において、
前記ブレーキアシストシステム(4)が、前記電動二輪車(1)を加速および/または制動させるための電動機(3)と、請求項5記載のコントロールユニット(6)とを含有している、電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)。
【請求項7】
前記電動二輪車(1)を制動させるためのブレーキ装置(5)を含有しており、前記ブレーキ装置(5)は、該ブレーキ装置(5)によって発生可能な最大ブレーキトルク(11)が、大きさに関連して前記電動機(3)によって発生可能な最大駆動トルク(19)よりも大きくならないように、調整されている、請求項6記載のブレーキアシストシステム(4)。
【請求項8】
前記ブレーキ装置(5)が、液圧ブレーキ回路(16)と、該液圧ブレーキ回路(16)内のブレーキ圧を前記最大駆動トルク(19)に相当する値に制限するための少なくとも1つのブレーキ圧バルブ(18)とを含有する、請求項7記載のブレーキアシストシステム(4)。
【請求項9】
コンピュータプログラムにおいて、プロセッサによって前記コンピュータプログラムを実行する際に、該プロセッサに請求項1から4までのいずれか1項記載の方法を実行するように指示する指令を含有する、コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータ読み取り可能な媒体において、請求項9記載のコンピュータプログラムが記憶されている、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動二輪車用のブレーキアシストシステムを運転するための方法に関する。さらに本発明は、この方法を実行するためのコントロールユニット、コンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な媒体、並びにこのようなコントロールユニットを備えたブレーキアシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ABSシステムは、一般的に、ブレーキ圧を制御するための様々な液圧式および電気式の構成要素を含有している。例えば、吸入バルブ、吐出バルブ、リザーブチャンバおよび逆止弁を用いた、非常に簡単なABSシステムが既に実現されている。
【0003】
電動機で駆動される電動二輪車においては、基本的に、電動機をトルク変調のために使用することができる。しかしながら実際には、車両型式または電動機の大きさに応じて、電動機によって生ぜしめられる最大トルクだけではABSの要求を満たすためには不十分であるという問題がある。
【発明の概要】
【0004】
このような背景から、ここに紹介された提案により、独立請求項に記載した電動二輪車用のブレーキアシストシステムを運転するための方法、相応のコントロールユニット、相応のブレーキアシストシステム、相応のコンピュータプログラムおよび相応のコンピュータ読み取り可能な媒体が紹介される。ここに紹介された提案の好適な実施態様および改良は、明細書から得られ、また従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の実施例によれば、電動機による制動機能と電動機によらない制動機能、例えば液圧式の制動機能との組合せによって、電動二輪車を制動することが可能である。このような形式で、例えばブレーキアシストシステムの液圧式の構成要素の数が減らされ得ることによって、電動二輪車のための相応のブレーキアシストシステムが安価に提供され得る。さらに、電動二輪車のブレーキ性能が改善され得る。
【0006】
本発明の第1の態様は、電動二輪車用のブレーキアシストシステムを運転するための、コンピュータにより実行される方法に関する。この方法は、少なくとも次のステップを含有している。電動二輪車を制動するために必要な全ブレーキトルクを決定するステップと、電動二輪車の電動機によって発生させようとするモータトルクを、全ブレーキトルクおよび電動二輪車のブレーキ装置によって発生可能な最大ブレーキトルクに依存して決定するステップと、最大ブレーキトルクが生ぜしめられると、電動機を駆動制御するための制御指令を生成し、それによってモータトルクを最大ブレーキトルクと一緒に生成するステップと、を含有している。
【0007】
「電動二輪車」とは、一般的に、電動機の形の駆動装置または電動機と内燃機関とを組み合わせた形の駆動装置を有する単車または二輪車と解釈されてよい。電動二輪車は、電動スクータ、電動自転車、または2つより多くの車輪を有する自動二輪車に類似した二軸車両、例えば四輪電動自転車であってもよい。
【0008】
モータトルクは、駆動トルクあるいはブレーキトルクまたは回生トルクであってよい。
【0009】
「全ブレーキトルク」とは、例えば電動二輪車の単数若しくは複数の車輪の実際のホイール回転数および/または電動機の実際のモータ回転数に基づいて推定されたブレーキトルクであると解釈されてよい。実際のホイール回転数は、例えば別個のホイール回転数センサによって測定され得る。実際のホイール回転数を実際のモータ回転数から決定することも可能である。この場合、別個のホイール回転数センサは省かれる。
【0010】
全ブレーキトルクは、例えば非常ブレーキまたはフルブレーキ時に、ブレーキ装置の最大ブレーキトルクによってもまた電動機のモータトルクによっても負荷されるホイールのロックが避けられるように、決定されてよい。全ブレーキトルクは、電動二輪車をできだけ迅速かつ安全に制動および/または停止させることができるブレーキトルクとして解釈されてよい。
【0011】
最大の全ブレーキトルクは、例えばブレーキ装置の最大ブレーキトルクと最大の負のモータトルク、つまり電動機の最大ブレーキトルクまたは回生トルクとの合計と同じであってよい。最大の全ブレーキトルクは、電動二輪車をすべての走行状況で迅速かつ安全に停止させることができるように選定されるべきである。
【0012】
電動機およびブレーキ装置を、電動二輪車の単数または複数の同じホイールに、つまり後輪に作用させることが可能である。電動機が後輪を駆動し、ブレーキ装置が前輪または追加的に後輪を制動することも可能である。この場合、例えばブレーキ装置は、前輪用のシングルチャンネルABSシステムとして構成されてよい。この場合、後輪は、もっぱら電動機だけを介して回生モードで制動され得る。
【0013】
ここおよび以下に記載した方法は、ブレーキトルクを意図的に変調させるために電動機を使用することを可能にし、この場合、このブレーキトルクのいわば平均値は、電動機とは無関係にブレーキ装置によって提供される。この平均値は、駆動トルクまたはブレーキトルク若しくは回生トルクが、電動機によって同時にまたは時間的に僅かにずらして生ぜしめられることによって、大きさに関連して縮小または増大され得る。
【0014】
このために、好適にはブレーキ装置の作業ポイントが相応の形式でずらされる、つまりブレーキ装置によって生ぜしめられる最大ブレーキトルク、例えばその最大ブレーキ圧が電動機の最大モータトルクに適切な形式で適合される。例えば、ブレーキ装置は最も簡単な場合、相応のセパレートバルブまたは圧力制限バルブを備えていてよい。このような弁は、非常に簡単に後付け可能である。
【0015】
特に電動スクータにおいては、電動二輪車を迅速にまたは十分に強く制動するためには、電動機のブレーキトルクまたは回生トルクだけでは不十分なことがある。しかしながら好適には、電動機は、ABS制御のために完全に十分である非常に高いダイナミックスでモータトルクに変調を加えることができる。
【0016】
電動機を介して得られる制動作用が、必要な高いブレーキトルクを提供できる追加的な例えば液圧式のブレーキ装置の制動作用と組み合わせられることによって、比較的安価なコストで2つの要求を満たすABS機能性が実現され得る。
【0017】
ブレーキ装置と電動機とが同時に作動されると直ちに、制動時に、当該のホイールに加えられる全ブレーキトルクが、電動機のモータトルクとブレーキ装置のブレーキトルクとの合計として得られる。
【0018】
電動機がブレーキ操作中に正のモータトルクを発生させると、この正のモータトルクはブレーキ装置に抗して作用し、ホイールに作用する全ブレーキトルクを相応に低下させる。ブレーキ装置は、いわばブレーキトルクの平均値を決定し、さらに電動機によって、ホイールに作用する全トルクが概ねこの平均値に変調させられる、つまりこの全トルクから出発して上昇または低下せしめられる。
【0019】
標準的な(液圧式の)ブレーキ装置は、標準的な電動機の最大駆動トルクよりも一般的に著しく大きい最大ブレーキトルクを生ぜしめるので、電動機はフルブレーキ時に通常は、ブレーキ装置によって生ぜしめられたブレーキトルクを完全に相殺することはできない。しかしながら、相応の弁をブレーキ装置に組み込むことによって、一方ではブレーキ装置の制限された最大ブレーキトルクと電動機の最大ブレーキトルクとの合計が、非常ブレーキのために必要な最大の全ブレーキトルクに相当し、他方ではブレーキ装置の制限された最大ブレーキトルクが電動機の最大駆動トルクによって完全に補正可能であるので、この場合、当該のホイールに作用する全回転トルクはゼロに等しいことが保証され得る。
【0020】
つまり、このような形式の制限によって、電動機を用いて全ブレーキトルクを、ABS機能性のために十分であるダイナミックスでゼロと非常ブレーキのために必要な最大ブレーキトルクとの間で変調することが可能である。好適には、このようなABS機能性は、弁の形の一つだけの追加的な構成要素を有する、既存の電気式の駆動モータと既存の(液圧式の)ブレーキ装置との簡単な組合せによって実現され得る。
【0021】
相応の制御論理は、例えば電動二輪車のコントロールユニットに実装され得る。ホイール回転数センサはどうしても必要なものではない。何故ならばホイール回転数は、例えば電動機の内部に場合によっては設けられているホールセンサを用いて電動機のモータ回転数から決定され得るからである。
【0022】
本発明の第2の態様はコントロールユニットに関する。コントロールユニットは、本発明の第1の態様に関する実施例による方法を実行するために構成されたプロセッサを含有する。本発明の第1の態様に関する実施例による方法の特徴は、コントロールユニットの特徴であってもよく、その逆であってもよい。
【0023】
コントロールユニットは、ハードウエアモジュールおよび/またはソフトウエアモジュールを含有していてよい。プロセッサに追加して、コントロールユニットは、メモリー、および周辺機器とデータ通信するためのデータ通信インターフェースを含有していてよい。
【0024】
本発明の第3の態様は、電動二輪車用のブレーキアシストシステムに関する。ブレーキアシストシステムは、電動二輪車を加速および/または制動させるための少なくとも1つの電動機と本発明の第2の態様に関する実施例によるコントロールユニットとを含有している。このようなブレーキアシストシステムは、特に安価に製造することができる。しかも、このようなブレーキアシストシステムは、電動二輪車のブレーキ性能の著しい改善に寄与し得る。したがって、事故は避けられる。
【0025】
本発明の第4の態様は、コンピュータプログラムに関する。このコンピュータプログラムは、プロセッサによってコンピュータプログラムを実行する際に、このプロセッサに本発明の第1の態様に関する実施例による方法を実行するように指示する指令を含有する。
【0026】
本発明の第5の態様は、本発明の第3の態様に関する実施例によるコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。コンピュータ読み取り可能な媒体は、揮発性または不揮発性のデータメモリであってよい。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、ハードディスク、USB記憶機器、RAM、ROM、EPROMまたはフラッシュメモリであってよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、プログラムコードのダウンロードを可能にするデータ通信ネットワーク、例えばインターネットまたはデータクラウド(Cloud)であってよい。
【0027】
本発明の第1の態様に関する実施例による方法の特徴は、コンピュータプログラムおよび/またはコンピュータ読み取り可能な媒体の特徴であってもよく、その逆であってもよい。
【0028】
本発明の実施例のアイデアは、特に以下に記載する考え方および知識に基づいているものとみなされてよい。
【0029】
1実施例によれば、モータトルクは、全ブレーキトルクと最大ブレーキトルクとの差分を形成することによって決定され得る。このような形式で、全ブレーキトルクは特に効果的に決定され得る。
【0030】
1実施例によれば、電動機によって発生された最大駆動トルクが、大きさに関連して最大ブレーキトルクよりも小さくない。これは、ブレーキ装置が最大ブレーキトルクを発生させてそれぞれ制動されたホイールのロックが阻止されるべき時に、特にフルブレーキまたは非常ブレーキの場合に、ブレーキ装置の制動作用が、電動機の制動作用によって場合によっては補正され得るという効果を有している。
【0031】
1実施例によれば、この方法はさらに次のステップ、つまり、電動機の実際の回転数を表す測定データを受信するステップを有している。この測定データの評価によって全ブレーキトルクが決定され得る。測定データは、例えばホールセンサとしての相応の回転数センサによって提供され得る。電動機の測定された相電圧および/または相電流に基づいて、回転数を推定することも可能である。このような形式で、別個のホイール回転数センサの使用は省かれる。ブレーキアシストシステムの製造はさらに安価にされ得る。
【0032】
1実施例によれば、ブレーキアシストシステムはさらに、電動二輪車を制動するためのブレーキ装置を含有している。このブレーキ装置は、このブレーキ装置によって発生可能な最大ブレーキトルクが、大きさに関連して、電動機によって発生可能な最大駆動トルクよりも大きくならないように、調整されていることができる。ブレーキ装置は、例えば液圧式の前輪ブレーキおよび/または後輪ブレーキであってよい。冒頭に述べたように、ブレーキ装置は、例えば吸入バルブ、吐出バルブ、リザーブチャンバおよび逆止弁を含有していてよい。これによって、運転者がブレーキレバーまたはブレーキペダルを操作することにより発生可能なブレーキ圧は、技術的に効果のある形式で、ブレーキ装置の最大ブレーキトルクが電動機の最大駆動トルクによって補正可能であるように制限され得る。
【0033】
1実施例によれば、ブレーキ装置は、液圧ブレーキ回路と、この液圧ブレーキ回路内のブレーキ圧を最大駆動トルクに相当する値に制限するための少なくとも1つのブレーキ圧バルブとを含有する。言い換えれば、液圧ブレーキ回路内の最大ブレーキ圧は、ブレーキ装置の最大ブレーキトルクが大きさに関連して、高くても最大駆動トルクと同じ大きさであるように制限されてよい。ブレーキ圧バルブは、所定のブレーキ圧に達するとマスタシリンダをスレーブシリンダから分離する例えばセパレートバルブであってよい。セパレートバルブは、例えば電動二輪車のコントロールユニットによって液圧ブレーキ回路内の測定された実際のブレーキ圧に依存して駆動制御可能であってよい。これは、最大ブレーキトルクが、例えば路面状態に依存する走行状況に応じて、変えられ得る、という利点を有している。選択的に、ブレーキ圧バルブは、簡単な圧力リミッターバルブとして、例えば逆止弁として、つまり電動機の最大駆動トルクに相当する固定値にブレーキ圧を制限するパッシブな構成部分として構成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の1実施例によるブレーキアシストシステムを備えた電動二輪車を示す図である。
図2図1に示したブレーキアシストシステムのブレーキ装置の詳細図である。
図3図1に示したブレーキアシストシステムのブレーキ装置の作動範囲と電動機の作動範囲とを比較するための線図である
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の好適な実施例を、添付の図面を用いて以下に詳しく説明するが、この場合、図面も明細書も本発明として限定的に解釈されるべきではない。
【0036】
図面は概略的なものであって縮尺通りではない。図面中、同じ符号は同じ特徴または同じ機能を有する特徴を表す。
【0037】
図1は、電動二輪車1、ここでは、その後輪2が電動機3によって駆動される電動スクータを示す。電動機3は、ブレーキアシストシステム4の一部であって、ブレーキアシストシステム4は、電動機3の他に、ブレーキ装置5、ここでは後輪2を制動するための液圧式の後輪ブレーキと、電動機3を駆動制御するためのコントロールユニット6とを含有している。
【0038】
このために、コントロールユニット6は、電動二輪車1を停止するまで制動するのに必要な全ブレーキトルク7を決定する。全ブレーキトルク7は、電動機3のモータ回転数を測定するためのモータ回転数センサ9を用いて提供される例えば測定データ8から、多くの連続的な時間ステップでコントロールユニット6によって、認識されたフルブレーキまたは非常ブレーキ時に算出される。
【0039】
次いで、コントロールユニット6が、ブレーキ装置5により後輪2で生ぜしめられる最大ブレーキトルク11を考慮して全ブレーキトルク7から、ブレーキ装置5に追加して電動機3によって後輪2で生ぜしめられるべきモータトルク12を決定する。
【0040】
最も簡単なケースでは、モータトルク12は全ブレーキトルク7から最大ブレーキトルク11を減算することによって決定され得る。選択的に、全ブレーキトルク7の所定の値においてモータトルク12のための相応の値を、コントロールユニット6に記憶された参照表をから読み出すことが可能である。
【0041】
全ブレーキトルク7に従って、モータトルク12は最大ブレーキトルク11の方向とは逆向きであってよいか、または図1に示されているように、最大ブレーキトルク11と同じ方向に作用してよい。
【0042】
ブレーキ装置5および/または電動機3は、最大の(負の)モータトルク12と最大ブレーキトルク11との合計が、電動二輪車1を制動するために最大限必要である最大の全ブレーキトルク7に相当するように、設計されてよい。
【0043】
追加的にまたは選択的に、ブレーキ装置5および/または電動機3は、最大の(正の)モータトルク12が最大ブレーキトルク11に相当するように、つまり大きさに関連して最大ブレーキトルク11よりも小さくならないように、設計されてよい。それにより、ブレーキ装置5の制動作用を電動機3によって場合によっては相殺することが可能である。
【0044】
最終的に、コントロールユニット6はモータトルク12に基づいて、電動機3を駆動制御するための相応の制御指令13を生成し、それによって、後輪2は、非常ブレーキまたはフルブレーキの際に、最大ブレーキトルク11でも、またモータトルク12およびひいては前もって決定された全ブレーキトルク7でも負荷されるようになる。
【0045】
図2は、ブレーキ装置5の詳細を示す。ブレーキ装置5は、例えば後輪2に相対回動不能に接続された後ろのブレーキディスク14と、液圧ブレーキ回路16を介して電動二輪車1のハンドルに設けられたマスタシリンダ17に流体接続された後ろのブレーキキャリパ15とを含有している。
【0046】
後ろのブレーキキャリパ15とマスタシリンダ17との間で液圧ブレーキ回路16内にブレーキ圧リミッターバルブ18が配置されており、このブレーキ圧リミッターバルブ18を介してブレーキ装置5内の液圧のブレーキ圧が制限される。
【0047】
ブレーキ圧リミッターバルブ18は、液圧のブレーキ圧が、後輪2で後ろのブレーキキャリパ14によって生ぜしめられた最大ブレーキトルク11が大きさに関連して電動機3の最大駆動トルク19とせいぜい同じになる程度の大きさにしかならないように、構成されている。
【0048】
ブレーキ圧リミッターバルブ18は、例えば可変なまたは一定の遮断圧を有する電気式に駆動制御可能なセパレートバルブとして、または逆止弁として構成されてよい。
【0049】
選択的に、ブレーキ装置5は、電動二輪車1の前輪20(図1参照)を制動するための液圧式の前輪ブレーキとして実現されてよいか、または後輪ブレーキに追加してこのような前輪ブレーキを含有していてよい。
【0050】
図3には、2つの制動作用の所望の組合せを得るために、電動機3のモータ作動範囲21と、ブレーキ装置5のブレーキ作動範囲22、つまり必要なABS作動範囲とが、ブレーキ圧リミッターバルブ18を用いて液圧のブレーキ圧を制限することによって、どのように互いに相対的にしゅう動せしめられるかを示す。この場合、それぞれ、縦座標にそれぞれのトルクが示され、横座標に電動二輪車1の速度が示されている。
【0051】
最後に、「有する」、「含有する」等の概念は、その他の構成要素またはステップを除外するものではなく、「一つ」は、複数を除外するものではないことを指摘しておく。請求項の符号は、限定的なものとしてみなされるべきではない。
【符号の説明】
【0052】
1 電動二輪車
2 後輪
3 電動機
4 ブレーキアシストシステム
5 ブレーキ装置
6 コントロールユニット
7 全ブレーキトルク
8 測定データ
9 モータ回転数センサ
11 最大ブレーキトルク
12 モータトルク
13 制御指令
14 後ろのブレーキディスク
15 後ろのブレーキキャリパ
16 液圧ブレーキ回路
17 マスタシリンダ
18 ブレーキ圧リミッターバルブ
19 最大駆動トルク
20 前輪
21 モータ作動範囲
22 ブレーキ作動範囲
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)を運転するための方法において、
前記電動二輪車(1)を制動するために必要な全ブレーキトルク(7)を決定し、
前記電動二輪車(1)の電動機(3)によって発生させようとするモータトルク(12)を、前記全ブレーキトルク(7)および前記電動二輪車(1)のブレーキ装置(5)によって発生可能な最大ブレーキトルク(11)に依存して決定し、
前記最大ブレーキトルク(11)が生ぜしめられると、前記電動機(3)を駆動制御するための制御指令(13)を生成し、それによって前記モータトルク(12)を前記最大ブレーキトルク(11)と一緒に生成すること、
を含有する、電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)を運転するための方法。
【請求項2】
前記全ブレーキトルク(7)と前記最大ブレーキトルク(11)との差分を形成することによって、前記モータトルク(12)を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電動機(3)によって発生された最大駆動トルク(19)を、大きさに関連して前記最大ブレーキトルク(11)よりも小さくならないようにする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記電動機(3)の実際の回転数を表す測定データ(8)を受信し、この測定データ(8)を評価することによって前記全ブレーキトルク(7)を決定する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
コントロールユニット(6)において、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法を実行するために構成されたプロセッサを含有する、コントロールユニット(6)。
【請求項6】
電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)において、
前記ブレーキアシストシステム(4)が、前記電動二輪車(1)を加速および/または制動させるための電動機(3)と、請求項5記載のコントロールユニット(6)とを含有している、電動二輪車(1)用のブレーキアシストシステム(4)。
【請求項7】
前記電動二輪車(1)を制動させるためのブレーキ装置(5)を含有しており、前記ブレーキ装置(5)は、該ブレーキ装置(5)によって発生可能な最大ブレーキトルク(11)が、大きさに関連して前記電動機(3)によって発生可能な最大駆動トルク(19)よりも大きくならないように、調整されている、請求項6記載のブレーキアシストシステム(4)。
【請求項8】
前記ブレーキ装置(5)が、液圧ブレーキ回路(16)と、該液圧ブレーキ回路(16)内のブレーキ圧を前記最大駆動トルク(19)に相当する値に制限するための少なくとも1つのブレーキ圧バルブ(18)とを含有する、請求項7記載のブレーキアシストシステム(4)。
【請求項9】
コンピュータプログラムにおいて、プロセッサによって前記コンピュータプログラムを実行する際に、該プロセッサに請求項1から4までのいずれか1項記載の方法を実行するように指示する指令を含有する、コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータ読み取り可能な媒体において、請求項9記載のコンピュータプログラムが記憶されている、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【国際調査報告】