(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】CD8結合ポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240711BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240711BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240711BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240711BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240711BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20240711BHJP
C07K 14/56 20060101ALI20240711BHJP
C07K 14/565 20060101ALI20240711BHJP
C07K 14/57 20060101ALI20240711BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240711BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240711BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240711BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240711BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240711BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240711BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240711BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240711BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240711BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K14/55
C07K14/56
C07K14/565
C07K14/57
C07K19/00
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12Q1/02
A61K39/395 N
A61K38/20
A61P37/04
A61P35/00
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503351
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022073877
(87)【国際公開番号】W WO2023004304
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514199744
【氏名又は名称】インヒブルクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティマー ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】クラゴ ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】スルツマイアー フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラスコン ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】エッケルマン ブレンダン ピー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
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4H045FA74
4H045GA23
4H045GA25
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書では、CD8に結合するVHH含有ポリペプチドが提供される。VHH含有ポリペプチドの使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD8に結合し、配列番号3、配列番号73、又は配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号4、配列番号12、配列番号14、配列番号22、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、又は配列番号80のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号5、配列番号16、又は配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を含む少なくとも1つのVHHドメインを含むポリペプチド。
【請求項2】
少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5;配列番号3、配列番号12、及び配列番号5;配列番号3、配列番号14、及び配列番号5;配列番号3、配列番号4、及び配列番号16;配列番号3、配列番号4、及び配列番号18;配列番号3、配列番号22、及び配列番号5;配列番号3、配列番号14、及び配列番号18;配列番号3、配列番号27、及び配列番号5;配列番号3、配列番号29、及び配列番号5;配列番号3、配列番号31、及び配列番号5;配列番号73、配列番号14、及び配列番号18;配列番号74、配列番号14、及び配列番号18;配列番号3、配列番号75、及び配列番号18;配列番号3、配列番号76、及び配列番号18;配列番号3、配列番号77、及び配列番号18;配列番号3、配列番号78、及び配列番号18;配列番号3、配列番号79、及び配列番号18;又は配列番号3、配列番号80及び配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ含むCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号78のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
少なくとも1つのVHHドメイン又は各VHHドメインは、ヒト化されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号2、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、又は配列番号100のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、又は配列番号100のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号92又は配列番号100のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
2つのVHHドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
3つのVHHドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
免疫細胞活性化サイトカインを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記免疫細胞活性化サイトカインは、CD8に結合するVHHドメインのN末端又はC末端に融合している、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記免疫細胞活性化サイトカインは、IL-2、IL-15、IL-7、IL-6、IL-12、IFNα、IFNβ、若しくはIFNγ、又はそれらの弱毒化型若しくは改変型である、請求項10又は11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
Fc領域を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記Fc領域は、配列番号32~配列番号70、及び配列番号101~配列番号111から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
免疫細胞活性化サイトカインを含む、請求項13又は14に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記免疫細胞活性化サイトカインは、IL-2、IL-15、IL-7、IL-6、IL-12、IFNα、IFNβ、若しくはIFNγ、又はそれらの弱毒化型若しくは改変型である、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記免疫細胞活性化サイトカインは、前記Fc領域のC末端に融合している、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
CD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
Lag3、CTLA4、TGFBR1、TGFBR2、Fas、TNFR2、PD1、PDL1、又はTIM3に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、請求項18に記載のポリペプチド。
【請求項20】
TGFBR1、TGFBR2、Fas、TNFR2、1-92-LFA-3、5T4、α4インテグリン、αVインテグリン、α4β1インテグリン、α4β7インテグリン、AGR2、抗ルイスY、アペリンJ受容体、APRIL、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BAFF、BCMA、BTLA、補体C5、C-242、CA9、CA19-9、(ルイスa)、炭酸脱水酵素9、CD2、CD3、CD6、CD9、CD11a、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD27、CD28、CD30、CD33、CD38、CD39、CD40、CD40L、CD41、CD44、CD44v6、CD47、CD51、CD52、CD56、CD64、CD70、CD71、CD73、CD74、CD80、CD81、CD86、CD95、CD117、CD123、CD125、CD132、(IL-2RG)、CD133、CD137、CD138、CD166、CD172A、CD248、CDH6、CEACAM5(CEA)、CEACAM6(NCA-90)、クローディン3、クローディン4、cMet、コラーゲン、Cripto、CSFR、CSFR-1、CTLA4、CTGF、CXCL10、CXCL13、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CYR61、DL44、DLK1、DLL3、DLL4、DPP-4、DSG1、EDA、EDB、EGFR、EGFRviii、エンドセリンB受容体(ETBR)、ENPP3、EpCAM、EPHA2、EPHB2、ERBB3、RSVのFタンパク質、FAP、FcRH5、FGF-2、FGF8、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT-3、葉酸受容体α(FRα)、GAL3ST1、G-CSF、G-CSFR、GD2、GITR、GLUT1、GLUT4、GM-CSF、GM-CSFR、GP IIb/IIIa受容体、Gp130、GPIIB/IIIA、GPNMB、GPRC5D、GRP78、HAVCAR1、HER2/neu、HER3、HER4、HGF、hGH、HVEM、ヒアルロニダーゼ、ICOS、IFNα、IFNβ、IFNγ、IgE、IgE受容体(FceRI)、IGF、IGF1R、IL1B、IL1R、IL2、IL11、IL12、IL12p40、IL-12R、IL-12Rβ1、IL13、IL13R、IL15、IL17、IL18、IL21、IL23、IL23R、IL27/IL27R(wsx1)、IL29、IL-31R、IL31/IL31R、IL2R、IL4、IL4R、IL6、IL6R、インスリン受容体、Jaggedリガンド、Jagged 1、Jagged 2、KISS1-R、LAG-3、LIF-R、ルイスX、LIGHT、LRP4、LRRC26、Ly6G6D、LyPD1、MCSP、メソテリン、MICA、MICB、MRP4、MUC1、ムチン16(MUC16、CA-125)、Na/K ATPアーゼ、NGF、ニカストリン、Notch受容体、Notch 1、Notch 2、Notch 3、Notch 4、NOV、OSM-R、OX-40、PAR2、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGFRα、PDGFRβ、PD-1、PD-L1、PD-L2、ホスファチジルセリン、P1GF、PSCA、PSMA、PSGR、RAAG12、RAGE、SLC44A4、スフィンゴシン-1-リン酸、STEAP1、STEAP2、TAG-72、TAPA1、TEM-8、TGFβ、TIGIT、TIM-3、TLR2、TLR4、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TMEM31、TNFα、TNFR、TNFRS12A、TRAIL-R1、TRAIL-R2、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、TRK-A、TRK-B、TROP-2、uPAR、VAP1、VCAM-1、VEGF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、VISTA、WISP-1、WISP-2、又はWISP-3に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、請求項18又は19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
CD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインは、VHHドメインである、請求項18~20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
CD8以外の抗原に結合する各抗原結合ドメインは、VHHドメインである、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
CD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
CD8以外の抗原に結合する各抗原結合ドメインは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項23に記載のポリペプチド。
【請求項25】
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む複合体であって、前記第1のポリペプチドは、請求項13~24のいずれか一項に記載のポリペプチドであり、前記第1のポリペプチドは、第1のFc領域を含み、前記第2のポリペプチドは、第2のFc領域を含み、前記第1のFc領域及び前記第2のFc領域は、同じか又は異なる、複合体。
【請求項26】
前記第2のポリペプチドは、CD8に結合する少なくとも1つのVHHドメイン、少なくとも1つの免疫細胞活性化サイトカイン、及び/又はCD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、請求項25に記載の複合体。
【請求項27】
CD8以外の抗原に結合する前記抗原結合ドメインが重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む場合、前記重鎖可変領域は、前記第2のFc領域を含む重鎖定常領域に融合する、請求項26に記載の複合体。
【請求項28】
前記第1のFc領域は、ノブ突然変異を含み、前記第2のFc領域は、ホール突然変異を含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項29】
前記第1のFc領域は、T366W突然変異を含み、前記第2のFc領域は、T366S、L368A、及びY407V突然変異を含む、請求項28に記載の複合体。
【請求項30】
前記第2のFc領域は、H435R又はH435K突然変異を含む、請求項29に記載の複合体。
【請求項31】
前記ポリペプチドは、生理学的条件下で二量体であるか、又は前記複合体は、生理学的条件下で形成される、請求項13~30のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体。
【請求項32】
前記CD8は、ヒトCD8である、請求項1~31のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体。
【請求項33】
前記ヒトCD8は、配列番号1の配列を含む、請求項32に記載のポリペプチド又は複合体。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体と、細胞傷害性物質とを含む免疫複合体。
【請求項35】
前記細胞傷害性物質は、カリケアマイシン、アウリスタチン、ドラスタチン、ツブリシン、メイタンシノイド、クリプトフィシン、ズオカルマイシン、エスペラミシン、ピロロベンゾジアゼピン、及びエンジイン抗生物質から選択される、請求項34に記載の免疫複合体。
【請求項36】
請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド若しくは複合体、又は請求項34若しくは35に記載の免疫複合体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項37】
請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体をコードする単離された核酸。
【請求項38】
請求項37に記載の核酸を含むベクター。
【請求項39】
請求項37に記載の核酸又は請求項38に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項40】
請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体を発現する宿主細胞。
【請求項41】
請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体を生産する方法であって、前記ポリペプチド又は複合体の発現に適した条件下で請求項39又は40に記載の宿主細胞をインキュベートすることを含む、方法。
【請求項42】
前記ポリペプチド又は複合体を単離することを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
CD8
+T細胞の増殖を増加させる方法であって、T細胞を請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体と接触させることを含む、方法。
【請求項44】
前記CD8
+T細胞は、in vitroで存在する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記CD8
+T細胞は、in vivoで存在する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
癌を治療する方法であって、癌を伴う被験体に請求項1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド若しくは複合体、又は請求項36に記載の医薬組成物を薬学的有効量、投与することを含む、方法。
【請求項47】
前記癌は、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、胃腸癌、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、外陰癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、並びに慢性骨髄芽球性白血病から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
追加の療法剤を投与することを更に含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記追加の療法剤は、抗癌剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記抗癌剤は、化学療法剤、抗癌生物製剤、放射線療法薬、CAR-T療法薬、及び腫瘍溶解性ウイルスから選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記追加の療法剤は、抗癌生物製剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記抗癌生物製剤は、PD-1及び/又はPD-L1を阻害する作用物質である、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記抗癌生物製剤は、VISTA、gpNMB、B7H3、B7H4、HHLA2、CTLA4、又はTIGITを阻害する作用物質である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記抗癌剤は、抗体である、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記抗癌生物製剤は、サイトカインである、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記抗癌剤は、CAR-T療法薬である、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記抗癌剤は、腫瘍溶解性ウイルスである、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
腫瘍切除及び/又は放射線療法を更に含む、請求項46~57のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年7月20日付で出願された米国仮出願第63/223,786号及び2021年12月10日付で出願された米国仮出願第63/288,111号の優先権の利益を主張し、その全体があらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、CD8結合ポリペプチド、及びCD8結合ポリペプチドを使用してCD8の生物学的活性を調節する方法に関する。そのような方法には、限定されるものではないが、癌を治療する方法が含まれる。幾つかの実施の形態においては、CD8結合ポリペプチドは、CD8結合ポリペプチドと、CD8以外の抗原に結合するポリペプチドとを含む融合ポリペプチドである。
【背景技術】
【0003】
CD8は、細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞)、更にはナチュラルキラー細胞、γδT細胞、皮質胸腺細胞、及び樹状細胞のサブセットを含むリンパ系の他の細胞の表面上に発現される膜貫通糖タンパク質である。CD8は、典型的には、CD8α鎖及びCD8β鎖から構成されるヘテロ二量体であるが、状況によってはCD8αホモ二量体として存在することがある。細胞傷害性T細胞では、CD8は、T細胞受容体(TCR)の補助受容体として作用し、抗原認識及びT細胞活性化を増強する。細胞傷害性T細胞の活性化は、TCRと、クラスI主要組織適合複合体(MHC)タンパク質に結合したペプチド抗原との相互作用によって支配される。CD8は、クラスI MHCタンパク質の不変領域に結合することによって、TCR/ペプチド-MHC相互作用の安定化を助長する。CD8はまた、CD8αの細胞質ドメインにLckを動員することによってTCRシグナル伝達を増強し、T細胞活性化シグナルを増幅するカスケードをもたらす。
【0004】
T細胞の活性化は、IL-2、IL-15、IL-7、IL-6、IL-12、IFNα、IFNβ、及びIFNγ等の他の分子によっても制御される。活性化T細胞自体によって合成及び分泌されるサイトカインインターロイキン-2(IL-2)は、ヘルパーT細胞の分化を調節し、ナチュラルキラー細胞の細胞溶解活性を増強し、CD8+T細胞の生成を制御する多面的サイトカインである。IL-2は、T細胞表面上の3つのサブユニット(IL-2α、IL-2β、及びγc)から構成される高親和性受容体に結合する。IL-2受容体複合体を介したシグナル伝達は、T細胞の細胞分裂を進行させ、活性化T細胞のクローン性増殖を推進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
活性化分子をCD8+T細胞に特異的に標的化し、細胞傷害性T細胞応答の効力及び選択性を増大させることができるCD8結合ポリペプチドが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
CD8結合ポリペプチド、及びCD8結合ポリペプチドを使用して、例えば癌を治療する方法が本明細書で提供される。幾つかの実施の形態においては、CD8結合ポリペプチドは、1つ以上の付加的な結合ドメイン及び/又はサイトカイン配列を含む。或る特定の番号付けされた実施の形態を以下に提示する。
【0007】
実施の形態1 CD8に結合し、配列番号3、配列番号73、又は配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号4、配列番号12、配列番号14、配列番号22、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、又は配列番号80のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号5、配列番号16、又は配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を含む少なくとも1つのVHHドメインを含むポリペプチド。
【0008】
実施の形態2 少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5;配列番号3、配列番号12、及び配列番号5;配列番号3、配列番号14、及び配列番号5;配列番号3、配列番号4、及び配列番号16;配列番号3、配列番号4、及び配列番号18;配列番号3、配列番号22、及び配列番号5;配列番号3、配列番号14、及び配列番号18;配列番号3、配列番号27、及び配列番号5;配列番号3、配列番号29、及び配列番号5;配列番号3、配列番号31、及び配列番号5;配列番号73、配列番号14、及び配列番号18;配列番号74、配列番号14、及び配列番号18;配列番号3、配列番号75、及び配列番号18;配列番号3、配列番号76、及び配列番号18;配列番号3、配列番号77、及び配列番号18;配列番号3、配列番号78、及び配列番号18;配列番号3、配列番号79、及び配列番号18;又は配列番号3、配列番号80及び配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ含むCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、実施の形態1に記載のポリペプチド。
【0009】
実施の形態3 少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号78のアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、実施の形態1又は2に記載のポリペプチド。
【0010】
実施の形態4 少なくとも1つのVHHドメイン又は各VHHドメインは、ヒト化されている、実施の形態1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0011】
実施の形態5 少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号2、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、又は配列番号100のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む、実施の形態1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0012】
実施の形態6 少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、又は配列番号99、又は配列番号100のアミノ酸配列を含む、実施の形態1~5のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0013】
実施の形態7 少なくとも1つのVHHドメインは、配列番号92又は配列番号100のアミノ酸配列を含む、実施の形態1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0014】
実施の形態8 2つのVHHドメインを含む、実施の形態1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0015】
実施の形態9 3つのVHHドメインを含む、実施の形態1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0016】
実施の形態10 免疫細胞活性化サイトカインを含む、実施の形態1~9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0017】
実施の形態11 前記免疫細胞活性化サイトカインは、CD8に結合するVHHドメインのN末端又はC末端に融合している、実施の形態10に記載のポリペプチド。
【0018】
実施の形態12 前記免疫細胞活性化サイトカインは、IL-2、IL-15、IL-7、IL-6、IL-12、IFNα、IFNβ、若しくはIFNγ、又はそれらの弱毒化型若しくは改変型である、実施の形態10又は11に記載のポリペプチド。
【0019】
実施の形態13 Fc領域を含む、実施の形態1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0020】
実施の形態14 前記Fc領域は、配列番号32~配列番号70、又は配列番号101~配列番号111から選択されるアミノ酸配列を含む、実施の形態13に記載のポリペプチド。
【0021】
実施の形態15 免疫細胞活性化サイトカインを含む、実施の形態13又は14に記載のポリペプチド。
【0022】
実施の形態16 前記免疫細胞活性化サイトカインは、IL-2、IL-15、IL-7、IL-6、IL-12、IFNα、IFNβ、若しくはIFNγ、又はそれらの弱毒化型若しくは改変型である、実施の形態15に記載のポリペプチド。
【0023】
実施の形態17 前記免疫細胞活性化サイトカインは、前記Fc領域のC末端に融合している、実施の形態16に記載のポリペプチド。
【0024】
実施の形態18 CD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、実施の形態1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0025】
実施の形態19 Lag3、CTLA4、TGFBR1、TGFBR2、Fas、TNFR2、PD1、PDL1、又はTIM3に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、実施の形態18に記載のポリペプチド。
【0026】
実施の形態20 TGFBR1、TGFBR2、Fas、TNFR2、1-92-LFA-3、5T4、α4インテグリン、αVインテグリン、α4β1インテグリン、α4β7インテグリン、AGR2、抗ルイスY、アペリンJ受容体、APRIL、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BAFF、BCMA、BTLA、補体C5、C-242、CA9、CA19-9、(ルイスa)、炭酸脱水酵素9、CD2、CD3、CD6、CD9、CD11a、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD27、CD28、CD30、CD33、CD38、CD39、CD40、CD40L、CD41、CD44、CD44v6、CD47、CD51、CD52、CD56、CD64、CD70、CD71、CD73、CD74、CD80、CD81、CD86、CD95、CD117、CD123、CD125、CD132、(IL-2RG)、CD133、CD137、CD138、CD166、CD172A、CD248、CDH6、CEACAM5(CEA)、CEACAM6(NCA-90)、クローディン3、クローディン4、cMet、コラーゲン、Cripto、CSFR、CSFR-1、CTLA4、CTGF、CXCL10、CXCL13、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CYR61、DL44、DLK1、DLL3、DLL4、DPP-4、DSG1、EDA、EDB、EGFR、EGFRviii、エンドセリンB受容体(ETBR)、ENPP3、EpCAM、EPHA2、EPHB2、ERBB3、RSVのFタンパク質、FAP、FcRH5、FGF-2、FGF8、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT-3、葉酸受容体α(FRα)、GAL3ST1、G-CSF、G-CSFR、GD2、GITR、GLUT1、GLUT4、GM-CSF、GM-CSFR、GP IIb/IIIa受容体、Gp130、GPIIB/IIIA、GPNMB、GPRC5D、GRP78、HAVCAR1、HER2/neu、HER3、HER4、HGF、hGH、HVEM、ヒアルロニダーゼ、ICOS、IFNα、IFNβ、IFNγ、IgE、IgE受容体(FceRI)、IGF、IGF1R、IL1B、IL1R、IL2、IL11、IL12、IL12p40、IL-12R、IL-12Rβ1、IL13、IL13R、IL15、IL17、IL18、IL21、IL23、IL23R、IL27/IL27R(wsx1)、IL29、IL-31R、IL31/IL31R、IL2R、IL4、IL4R、IL6、IL6R、インスリン受容体、Jaggedリガンド、Jagged 1、Jagged 2、KISS1-R、LAG-3、LIF-R、ルイスX、LIGHT、LRP4、LRRC26、Ly6G6D、LyPD1、MCSP、メソテリン、MICA、MICB、MRP4、MUC1、ムチン16(MUC16、CA-125)、Na/K ATPアーゼ、NGF、ニカストリン、Notch受容体、Notch 1、Notch 2、Notch 3、Notch 4、NOV、OSM-R、OX-40、PAR2、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGFRα、PDGFRβ、PD-1、PD-L1、PD-L2、ホスファチジルセリン、P1GF、PSCA、PSMA、PSGR、RAAG12、RAGE、SLC44A4、スフィンゴシン-1-リン酸、STEAP1、STEAP2、TAG-72、TAPA1、TEM-8、TGFβ、TIGIT、TIM-3、TLR2、TLR4、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TMEM31、TNFα、TNFR、TNFRS12A、TRAIL-R1、TRAIL-R2、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、TRK-A、TRK-B、TROP-2、uPAR、VAP1、VCAM-1、VEGF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、VISTA、WISP-1、WISP-2、又はWISP-3に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、実施の形態18又は19に記載のポリペプチド。
【0027】
実施の形態21 CD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインは、VHHドメインである、実施の形態18~20のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0028】
実施の形態22 CD8以外の抗原に結合する各抗原結合ドメインは、VHHドメインである、実施の形態21に記載のポリペプチド。
【0029】
実施の形態23 CD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、実施の形態18~21のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【0030】
実施の形態24 CD8以外の抗原に結合する各抗原結合ドメインは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、実施の形態23に記載のポリペプチド。
【0031】
実施の形態25 第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含む複合体であって、前記第1のポリペプチドは、実施の形態13~24のいずれか一項に記載のポリペプチドであり、前記第1のポリペプチドは、第1のFc領域を含み、前記第2のポリペプチドは、第2のFc領域を含み、前記第1のFc領域及び前記第2のFc領域は、同じか又は異なる、複合体。
【0032】
実施の形態26 前記第2のポリペプチドは、CD8に結合する少なくとも1つのVHHドメイン、少なくとも1つの免疫細胞活性化サイトカイン、及び/又はCD8以外の抗原に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む、実施の形態25に記載の複合体。
【0033】
実施の形態27 CD8以外の抗原に結合する前記抗原結合ドメインが重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む場合、前記重鎖可変領域は、前記第2のFc領域を含む重鎖定常領域に融合する、実施の形態26に記載の複合体。
【0034】
実施の形態28 前記第1のFc領域は、ノブ突然変異を含み、前記第2のFc領域は、ホール突然変異を含む、実施の形態25~27のいずれか一項に記載の複合体。
【0035】
実施の形態29 前記第1のFc領域は、T366W突然変異を含み、前記第2のFc領域は、T366S、L368A、及びY407V突然変異を含む、実施の形態28に記載の複合体。
【0036】
実施の形態30 前記第2のFc領域は、H435R又はH435K突然変異を含む、実施の形態29に記載の複合体。
【0037】
実施の形態31 前記ポリペプチドは、生理学的条件下で二量体であるか、又は前記複合体は、生理学的条件下で形成される、実施の形態13~30のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体。
【0038】
実施の形態32 前記CD8は、ヒトCD8である、実施の形態1~31のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体。
【0039】
実施の形態33 前記ヒトCD8は、配列番号1の配列を含む、実施の形態32に記載のポリペプチド又は複合体。
【0040】
実施の形態34 実施の形態1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体と、細胞傷害性物質とを含む免疫複合体。
【0041】
実施の形態35 前記細胞傷害性物質は、カリケアマイシン、アウリスタチン、ドラスタチン、ツブリシン、メイタンシノイド、クリプトフィシン、ズオカルマイシン、エスペラミシン、ピロロベンゾジアゼピン、及びエンジイン抗生物質から選択される、実施の形態34に記載の免疫複合体。
【0042】
実施の形態36 実施の形態1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド若しくは複合体、又は実施の形態34若しくは35に記載の免疫複合体と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【0043】
実施の形態37 実施の形態1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体をコードする単離された核酸。
【0044】
実施の形態38 実施の形態37に記載の核酸を含むベクター。
【0045】
実施の形態39 実施の形態37に記載の核酸又は実施の形態38に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0046】
実施の形態40 実施の形態1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体を発現する宿主細胞。
【0047】
実施の形態41 実施の形態1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体を生産する方法であって、前記ポリペプチド又は複合体の発現に適した条件下で実施の形態38又は39に記載の宿主細胞をインキュベートすることを含む、方法。
【0048】
実施の形態42 前記ポリペプチド又は複合体を単離することを更に含む、実施の形態41に記載の方法。
【0049】
実施の形態43 CD8+T細胞の増殖を増加させる方法であって、T細胞を実施の形態1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド又は複合体と接触させることを含む、方法。
【0050】
実施の形態44 前記CD8+T細胞は、in vitroで存在する、実施の形態43に記載の方法。
【0051】
実施の形態45 前記CD8+T細胞は、in vivoで存在する、実施の形態43に記載の方法。
【0052】
実施の形態46 癌を治療する方法であって、癌を伴う被験体に実施の形態1~33のいずれか一項に記載のポリペプチド若しくは複合体、又は実施の形態36に記載の医薬組成物を薬学的有効量、投与することを含む、方法。
【0053】
実施の形態47 前記癌は、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、胃腸癌、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、外陰癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、並びに慢性骨髄芽球性白血病から選択される、実施の形態46に記載の方法。
【0054】
実施の形態48 追加の療法剤を投与することを更に含む、実施の形態46又は47に記載の方法。
【0055】
実施の形態49 前記追加の療法剤は、抗癌剤である、実施の形態48に記載の方法。
【0056】
実施の形態50 前記抗癌剤は、化学療法剤、抗癌生物製剤、放射線療法薬、CAR-T療法薬、及び腫瘍溶解性ウイルスから選択される、実施の形態49に記載の方法。
【0057】
実施の形態51 前記追加の療法剤は、抗癌生物製剤である、実施の形態48に記載の方法。
【0058】
実施の形態52 前記抗癌生物製剤は、PD-1及び/又はPD-L1を阻害する作用物質である、実施の形態51に記載の方法。
【0059】
実施の形態53 前記抗癌生物製剤は、VISTA、gpNMB、B7H3、B7H4、HHLA2、CTLA4、又はTIGITを阻害する作用物質である、実施の形態51に記載の方法。
【0060】
実施の形態54 前記抗癌剤は、抗体である、実施の形態49のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
実施の形態55 前記抗癌生物製剤は、サイトカインである、実施の形態51に記載の方法。
【0062】
実施の形態56 前記抗癌剤は、CAR-T療法薬である、実施の形態49に記載の方法。
【0063】
実施の形態57 前記抗癌剤は、腫瘍溶解性ウイルスである、実施の形態49に記載の方法。
【0064】
実施の形態58 腫瘍切除及び/又は放射線療法を更に含む、実施の形態46~57のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、フローサイトメトリーによって評価した、VHH-hIgG1-Fc融合タンパク質としてフォーマットされたCD8a標的化sdAbの結合を示す図である。
図1Aは、単離ヒトT細胞への結合を示す。
図1Bは、CD8aネガティブコントロールとしてのHEK293FS細胞への結合を示す。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、フローサイトメトリーによって評価した、VHH-hIgG1-Fc融合タンパク質としてフォーマットされたCD8a標的化sdAbの結合を示す図である。
図2Aは、単離ヒトT細胞への結合を示す。
図2Bは、CD8aネガティブコントロールとしてのHEK293FS細胞への結合を示す。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、フローサイトメトリーによって評価した、VHH-hIgG1-Fc融合タンパク質としてフォーマットされたCD8a標的化sdAbの結合を示す図である。
図3Aは、ヒトCD8a-FL細胞(完全長CD8aを発現する)への結合を示す。
図3Bは、カニクイザルCD8a-FL細胞に対する結合を示す。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、フローサイトメトリーによって評価した、VHH-hIgG1-Fc融合タンパク質としてフォーマットされたCD8a標的化sdAbの結合を示す図である。
図4Aは、単離ヒトCD3+CD4-T細胞への結合を示す。
図4Bは、単離カニクイザルCD3+CD4-末梢血単核細胞(PBMC)への結合を示す。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、フローサイトメトリーによって評価した、融合タンパク質CD8a-hzB7v15 xELL-Fcの結合を示す図である。
図5Aは、ヒトCD3+CD4-Leuko 29 T細胞への結合を示す。
図5Bは、カニクイザルCD3+CD4-CD16-T細胞への結合を示す。
【
図6】
図6A~
図6Cは、IL-2レポーター細胞上での野生型IL-2、及びCD8a-hzB7v15と弱毒化IL-2とを含むCD8a標的化VHH-hIgG1融合タンパク質のIL-2活性を示す図である。
図6Aは、CD8を発現しないレポーター細胞上でのIL-2活性を示す。
図6Bは、CD8を発現するIL-2レポーター細胞上でのIL-2活性を示す。
図6Cは、CD8を発現するIL-2レポーター細胞上での野生型IL-2、CD8a-hzB7v31と弱毒化IL-2突然変異体とを含む融合タンパク質、及び同じ突然変異を含む標的化されていない弱毒化IL-2突然変異体の活性を示す。
【
図7】CD8a-hzB7v15と弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質の単回投与後のカニクイザルの末梢血における細胞増加を示す図である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、フローサイトメトリーによって評価した、VHH-ホモ二量体Fc融合タンパク質、又は弱毒化IL-2突然変異体を含むVHH-ノブインホールFc融合タンパク質としてフォーマットされたCD8a標的化sdAbの結合を示す図である。
図8Aは、完全長ヒトCD8a(CD8a-FL)でトランスフェクションしたHEK293F細胞への結合を示す。
図8Bは、完全長ヒトCD8b(CD8b-FL)でトランスフェクションしたHEK293F細胞への結合を示す。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、フローサイトメトリーによって評価した、VHH-ホモ二量体Fc融合タンパク質、又は弱毒化IL-2突然変異体を含むVHH-ノブインホールFc融合タンパク質としてフォーマットされたCD8a標的化sdAbの結合を示す図である。
図9Aは、ヒト全血から富化した汎T細胞内のCD8 T細胞への結合を示す。
図9Bは、ヒト全血から富化した汎T細胞内のCD4 T細胞への結合の欠如を示す。
【
図11】
図11A及び
図11Bは、ヒトドナーの末梢血内のSTAT5シグナル伝達細胞集団を示す図である。ヒト全血から富化した汎T細胞内のCD8 T細胞(
図11A、
図11C)又は制御性T細胞(Treg、
図11B)又はCD4 T細胞(
図11D)におけるリン酸化STAT5(pSTAT5)のレベル(
図11A及び
図11B)又はpSTAT5を発現する細胞の割合(
図11C及び
図11D)を示す。CD8a-hzB7v31又はCD8aB7v41と、Fc領域と、突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質;CD8a-hzB7v31とFc領域とを含む融合タンパク質(IL-2なし);標的化されていないVHHと、Fc領域と、弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質;又は野生型IL-2で細胞を処理した。
【
図12】
図12A~
図12Cは、CD8a-hzB7v31と、Fc領域と、突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質;CD8a-hzB7v31とFc領域とを含む融合タンパク質(IL-2なし);標的化されていないVHHと、Fc領域と、弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質;又は野生型IL-2でex vivo処理した、ヒト腫瘍試料からの解離腫瘍細胞調製物(2つの頭頸部又は腎癌の症例及び1つの結腸癌の症例、
図12A及び
図12B)又は健常血液ドナーからのPBMC(
図12C)内のCD8 T細胞(
図12A及び
図12C)又はCD4 T細胞(
図12B)の増加を示す図である。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、カニクイザルにおけるCD8a-hzB7v15と、Fc領域と、突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質の単回投与(1mg/kg)の活性を示す図である。
図13Aは、投与7日後の細胞数のベースラインに対する倍率変化として或る特定のPBMC亜集団の増加を示す。
図13Bは、投与前(ベースライン)及び投与7日後のこれらの亜集団におけるKi67+細胞のパーセンテージを示す。
【
図14】
図14A及び
図14Bは、A431類表皮癌細胞に対する富化し、予め刺激したCD8 T細胞(
図14A)の細胞傷害活性又はPBMCの抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)(
図14B)を示す図である。細胞を指定のようにCD8a-hzB7v31と、Fc領域と、弱毒化IL-2突然変異体とを含む融合タンパク質;標的化されていないVHHと、Fc領域と、弱毒化IL-2突然変異体とを含む融合タンパク質;又は野生型IL-2で処理した。CD8 T細胞又はPBMCは、指定の異なるエフェクター対標的細胞比(20:1、10:1又は5:1)で添加した。EGFR特異的治療用抗体セツキシマブを
図14Bの細胞培養に添加した。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本明細書に示される実施形態は、CD8結合ポリペプチド、及び、例えば、癌を治療する様々な方法におけるそれらの使用に関する。
【0067】
定義及び様々な実施形態
本明細書に使用されるセクションの見出しは編成のみを目的とし、記載される主題を限定すると解釈されるものではない。
【0068】
特許出願、特許公報、及びGenbankアクセッション番号を含む本明細書で引用される全ての参考文献は、各個別の参考文献が、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすと具体的かつ個別に示されているかのように、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0069】
本明細書に記載又は参照される技術及び手順は、一般に十分に理解されており、通常、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY (F. M. Ausubel, et al. eds., (2003))、the series METHODS IN ENZYMOLOGY (Academic Press, Inc.)、PCR 2: A PRACTICAL APPROACH (M. J. MacPherson, B. D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995))、Harlow and Lane, eds. (1988) ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL、及びANIMAL CELL CULTURE (R. I. Freshney, ed. (1987))、Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984)、Methods in Molecular Biology, Humana Press、Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press、Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed., 1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press、Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell eds., 1993-8) J. Wiley and Sons、Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987)、PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994)、Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al. eds., 1991)、Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999)、Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997)、Antibodies (P. Finch, 1997)、Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989)、Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000)、Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999)、The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)、及びCancer: Principles and Practice of Oncology (V. T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)並びにそれらの最新版に記載される広く利用されている方法論等の当業者による慣例的な方法論を用いて使用される。
【0070】
別段の規定がない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈により別段の要求がない限り、又は明白に特段の指示がない限り、単数名辞は複数を含み、複数名辞は単数を含むものとする。様々な出典又は参考文献の間での定義の矛盾については、本明細書に示される定義が優先される。
【0071】
一般に、免疫グロブリン重鎖における残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)でのようなEUインデックスの番号付けである。「KabatでのようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0072】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、「からなる(consisting)」実施形態及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」実施形態を含むと理解される。本明細書で使用される場合に、単数形("a", "an", and "the")は、特段の指示がない限り複数の参照を含む。本明細書での「又は」という用語の使用は、選択肢が互いに排他的であることを意味すると解釈されない。
【0073】
本出願では、「又は」の使用は、明白に特段の指定がない限り又は当業者によって理解されない限り、「及び/又は」を意味する。多項従属請求項の文脈では、「又は」の使用は、2項以上の先行する独立請求項又は従属請求項を引用する。
【0074】
「参照試料」、「参照細胞」、又は「参照組織」という語句は、少なくとも1つの未知の特徴を有する試料との比較として使用され得る少なくとも1つの既知の特徴を有する試料を示す。幾つかの実施形態においては、参照試料は、陽性又は陰性の指標として使用され得る。参照試料を使用することで、未知の特徴を有する試料中に存在するタンパク質及び/又はmRNAのレベルに対して、例えば、健康な組織中に存在するタンパク質及び/又はmRNAのレベルを確立することができる。幾つかの実施形態においては、参照試料は、同じ被験体に由来するが、試験される部分とは異なる被験体の部分に由来する試料である。幾つかの実施形態においては、参照試料は、癌を取り囲む又は癌に隣接する組織領域に由来する試料である。幾つかの実施形態においては、参照試料は、試験される被験体に由来するものではなく、対象の障害(例えば、特定の癌又はCD8関連障害)を有する又は有しないことが既知の被験体に由来する試料である。幾つかの実施形態においては、参照試料は、同じ被験体に由来するものであるが、被験体が癌を発症する前の時点での試料である。幾つかの実施形態においては、参照試料は、同じ被験体又は異なる被験体からの良性癌試料に由来する試料である。比較のために陰性参照試料が使用される場合に、陰性参照試料における対象の分子の発現レベル又は量は、当業者が本開示を考慮して、該分子が存在しない及び/又は低いレベルの該分子が存在することを認識するレベルを示す。比較のために陽性参照試料が使用される場合に、陽性参照試料における対象の分子の発現レベル又は量は、当業者が本開示を考慮して、或るレベルの該分子が存在することを認識するレベルを示す。
【0075】
療法剤の投与から恩恵を受ける又は療法剤の投与に応答するという文脈において本明細書で使用される「便益」、「臨床的便益」、「応答性」、及び「治療的応答性」という用語は、様々なエンドポイント、例えば、減速及び完全な停止を含む疾患進行の或る程度の抑止、疾患エピソード及び/又は症状の数の減少、病変サイズの縮小、隣接する末梢器官及び/又は末梢組織内への疾患細胞浸潤の抑止(すなわち、減少、減速、又は完全な停止)、病気蔓延の抑止(すなわち、減少、減速、又は完全な停止)、障害に関連する1つ以上の症状の或る程度の軽減、治療後の無病提示、例えば無増悪生存期間の長さの増加、全生存期間の延長、より高い奏効率、及び/又は治療後の所与の時点での死亡率の低下を評価することによって推し量ることができる。「非応答性」又は「応答しない」被験体又は癌は、「応答する」という上記の条件を満たさないものである。
【0076】
「核酸分子」、「核酸」、及び「ポリヌクレオチド」という用語は、区別なく使用され、ヌクレオチドのポリマーを指し得る。そのようなヌクレオチドのポリマーは、天然及び/又は非天然のヌクレオチドを含み、限定されるものではないが、DNA、RNA、及びPNAを含み得る。「核酸配列」は、核酸分子又はポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドの線状配列を指す。
【0077】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために区別なく使用され、最小の長さに限定されない。そのようなアミノ酸残基のポリマーは、天然又は非天然のアミノ酸残基を含み、限定されるものではないが、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体、及び多量体を含み得る。この定義には、完全長タンパク質及びその断片の両方が含まれる。これらの用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化等を含む。さらに、本開示の目的で、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加、及び置換等の修飾(一般に性質について保存的)を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発によるような意図的なものであり得る、又はタンパク質を産生する宿主の突然変異若しくはPCR増幅によるエラーによるような偶発的なものであり得る。幾つかの実施形態においては、ポリペプチドは、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの「複合体」である。
【0078】
「CD8a」又は「CD8」という用語は、本明細書において区別なく使用され、細胞内でのCD8前駆体のプロセシングから生ずるあらゆる天然の成熟CD8を指す。この用語は、特段の指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト及びカニクイザル又はアカゲザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物起源からのCD8を含む。この用語はまた、スプライス変異体又はアレル変異体等のCD8の天然に存在する変異体を含む。非限定的な例示的な成熟ヒトCD8アミノ酸配列は、例えば、NCBIアクセッション番号NP_001369627.1に示されている。配列番号1を参照されたい。
【0079】
抗原又はエピトープに「特異的に結合する」という用語は、当該技術分野で十分に理解されている用語であり、そのような特異的な結合を決定する方法も当該技術分野で十分に知られている。別の細胞又は物質と反応又は会合するよりも特定の細胞又は物質とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間及び/又はより高い親和性で反応又は会合する場合に、分子は「特異的な結合」又は「優先的な結合」を示すと言及される。シングルドメイン抗体(sdAb)又はVHH含有ポリペプチドは、他の物質に結合するよりも高い親和性、アビディティーで、より容易に、及び/又はより長い持続時間で結合する場合に、標的に「特異的に結合」又は「優先的に結合」する。例えば、CD8エピトープに特異的に又は優先的に結合するsdAb又はVHH含有ポリペプチドは、他のCD8エピトープ又は非CD8エピトープに結合するよりも高い親和性、アビディティーで、より容易に、及び/又はより長い持続時間でこのエピトープに結合するsdAb又はVHH含有ポリペプチドである。また、この定義を解釈することにより、例えば、第1の標的に特異的又は優先的に結合するsdAb又はVHH含有ポリペプチドが、第2の標的に特異的又は優先的に結合し得る又は結合し得ないことも理解される。したがって、「特異的な結合」又は「優先的な結合」は、排他的な結合を(含み得るものの)必ずしも必要としない。一般に、必ずしもそうとは限らないが、結合への言及は優先的な結合を意味する。「特異性」は、結合性タンパク質が抗原に選択的に結合する能力を指す。
【0080】
「抑止」又は「抑止する」という用語は、任意の表現型特徴の減少若しくは停止、又はその特徴の発生率、程度、若しくは可能性の減少若しくは停止を指す。「低減する」又は「抑止する」とは、参照と比較して、活性、機能、及び/又は量を減少させる、低減する、又は停止することである。幾つかの実施形態においては、「低減する」又は「抑止する」とは、10%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施形態においては、「低減する」又は「抑止する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施形態においては、「低減する」又は「抑止する」とは、75%、85%、90%、95%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。幾つかの実施形態においては、上記の量は、或る期間にわたって、同じ期間にわたるコントロールに対して抑止又は減少される。
【0081】
本明細書で使用される場合に、「直接抑止」という用語及び類似の用語は、抗体濃度の増加が抑止の増大をもたらす抑止プロファイルを指す。幾つかの実施形態においては、或る特定の濃度の後に、最大抑止に達し、抑止プロファイルがプラトーになる。最大抑止は100%の抑止である必要はなく、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%であってもよい。
【0082】
本明細書で使用される場合に、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば、sdAb又はVHH含有ポリペプチド)が結合する標的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、又は脂質等の抗原)上の部位を指す。エピトープは、しばしば、アミノ酸、ポリペプチド、又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面編成物を含み、特定の三次元構造的特徴及び特定の電荷特徴を有する。エピトープは、標的分子の連続残基及び/又は並置された非連続残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)の両方から形成され得る。連続残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)から形成されるエピトープは、通常、変性溶剤への曝露で保持されるが、三次フォールディングにより形成されるエピトープは、通常、変性溶剤による処理で失われる。エピトープは、限定されるものではないが、少なくとも3個、少なくとも5個、又は8個~10個の残基(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)を含み得る。幾つかの実施形態においては、エピトープは、20残基(例えば、アミノ酸又はヌクレオチド)未満、15残基未満、又は12残基未満の長さである。2つの抗体は、それらが抗原に対して競合的結合を示す場合に、抗原内の同じエピトープに結合し得る。幾つかの実施形態においては、エピトープは、抗原結合分子上のCDR残基との或る特定の最小距離によって特定され得る。幾つかの実施形態においては、エピトープは、上記距離によって特定され得て、抗原結合分子の残基と抗原残基との間の結合(例えば、水素結合)に関与するそれらの残基に更に限定され得る。エピトープは、様々なスキャンによっても同様に特定され得る。例えば、アラニンスキャン又はアルギニンスキャンは、抗原結合分子が相互作用し得る1つ以上の残基を示すことができる。明示的に示されない限り、エピトープとしての残基のセットは、特定の抗原結合分子に対するエピトープの一部であることから他の残基を除外するものではない。むしろ、そのようなセットの存在は、最小のエピトープの列(又は種類のセット)を示す。したがって、幾つかの実施形態においては、エピトープとして特定された残基のセットは、抗原上のエピトープについての残基の排他的リストではなく、抗原に関連する最小のエピトープを示す。
【0083】
「非線状エピトープ」又は「立体構造エピトープ」は、エピトープに特異的な抗原結合分子が結合する抗原性タンパク質内の非連続的なポリペプチド、アミノ酸及び/又は糖を含む。幾つかの実施形態においては、少なくとも1つの残基がエピトープの他の示された残基と非連続的であるが、1つ以上の残基が他の残基と連続的である場合もある。
【0084】
「線状エピトープ」は、エピトープに特異的な抗原結合分子が結合する抗原性タンパク質内の連続的なポリペプチド、アミノ酸及び/又は糖を含む。幾つかの実施形態においては、線状エピトープ内の残基の全てが、抗原結合分子によって直接的に結合される(又は結合に関与する)必要があるわけではないことに留意されたい。幾つかの実施形態においては、線状エピトープは、事実上線状エピトープの配列からなるペプチドによる免疫化に由来し得る、又はタンパク質の残部から相対的に分離されたタンパク質の構造区間に由来し得る(こうして、抗原結合分子は、少なくとも主として、まさにその配列区間と相互作用し得る)。
【0085】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、限定されるものではないが、慣例的な抗体(典型的には、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含む)、シングルドメイン抗体(sdAb、少なくとも1つのVHHドメイン及びFc領域を含む)、VHH含有ポリペプチド(少なくとも1つのVHHドメインを含むポリペプチド)、及び所望の抗原結合活性を示す限り上述のいずれかのフラグメントを含む抗体様抗原結合ドメインを含む様々なポリペプチドを包含する。幾つかの実施形態においては、抗体は二量体化ドメインを含む。そのような二量体化ドメインとしては、限定されるものではないが、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3を含み、CH1は典型的には、軽鎖定常ドメインCLと対をなす一方で、ヒンジは二量体化を介在する)及びFc領域(ヒンジ、CH2、及びCH3を含み、ヒンジは二量体化を介在する)が挙げられる。
【0086】
抗体という用語には、限定されるものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びラクダ(ラマを含む)、サメ、マウス、ヒト、カニクイザル等の様々な種の抗体も含まれる。
【0087】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原に結合するのに十分な抗体の部分を指す。幾つかの実施形態においては、慣例的な抗体の抗原結合ドメインは、3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを含む。したがって、幾つかの実施形態においては、抗原結合ドメインは、CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3と、抗原への結合を維持するのに必要とされるFR1及び/又はFR4の任意の部分とを含む重鎖可変領域、並びにCDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3と、抗原への結合を維持するのに必要とされるFR1及び/又はFR4の任意の部分とを含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態においては、sdAb又はVHH含有ポリペプチドの抗原結合ドメインは、VHHドメインの3つのCDRを含む。したがって、幾つかの実施形態においては、sdAb又はVHH含有ポリペプチドの抗原結合ドメインは、CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3と、抗原への結合を維持するのに必要とされるFR1及び/又はFR4の任意の部分とを含むVHHドメインを含む。
【0088】
本明細書で使用される「VHH」又は「VHHドメイン」又は「VHH抗原結合ドメイン」という用語は、ラクダ抗体又はサメ抗体等のシングルドメイン抗体の抗原結合部分を指す。幾つかの実施形態においては、VHHは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4と表される3つのCDRと4つのフレームワーク領域とを含む。幾つかの実施形態においては、VHHは、VHHが実質的に抗原結合及び特異性を維持する限り、部分的なFR1及び/又はFR4のみを含むように又はそれらのフレームワーク領域の一方若しくは両方を欠くように、N末端又はC末端で切断されていてもよい。
【0089】
「シングルドメイン抗体」及び「sdAb」という用語は、軽鎖及びFc領域を有しないVHHドメイン等の少なくとも1つの単量体ドメインを含む抗体を指すために、本明細書において区別なく使用される。幾つかの実施形態においては、sdAbは、それぞれのポリペプチドが少なくとも1つのVHHドメイン及びFc領域を含む2つのポリペプチドの二量体である。本明細書で使用される場合に、「シングルドメイン抗体」及び「sdAb」という用語は、多重VHHドメインを含むポリペプチド、例えば、構造VHH1-VHH2-Fc又はVHH1-VHH2-VHH3-Fcを有し、ここで、VHH1、VHH2、及びVHH3が同じか又は異なる場合があるポリペプチドを包含する。
【0090】
「VHH含有ポリペプチド」という用語は、少なくとも1つのVHHドメインを含むポリペプチドを指す。幾つかの実施形態においては、VHHポリペプチドは、2つ、3つ、又は4つ以上のVHHドメインを含み、ここで、各VHHドメインは、同じ又は異なっていてもよい。幾つかの実施形態においては、VHH含有ポリペプチドは、Fc領域を含む。幾つかのそのような実施形態においては、VHH含有ポリペプチドは、sdAbと称され得る。さらに、幾つかのそのような実施形態においては、VHHポリペプチドは、二量体を形成し得る。sdAbとも称されるVHH含有ポリペプチドの非限定的な構造としては、VHH1-Fc、VHH1-VHH2-Fc、及びVHH1-VHH2-VHH3-Fcが挙げられ、ここで、VHH1、VHH2、及びVHH3は、同じ又は異なっていてもよい。そのような構造の幾つかの実施形態においては、或るVHHは、リンカーによって別のVHHに連結され得る、又は或るVHHは、リンカーによってFcに連結され得る。幾つかのそのような実施形態においては、リンカーは、1個~20個のアミノ酸、好ましくは、主にグリシン及び任意にセリンから構成される1個~20個のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態においては、リンカーは、Gly-Gly-Gly-Gly(配列番号112)、Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser(配列番号113)、及び/又はGly-Gly-Ser-Ser-Gly-Ser(配列番号114)を含む。幾つかの実施形態においては、VHH含有ポリペプチドがFcを含む場合に、それは二量体を形成する。したがって、構造VHH1-VHH2-Fcは、それが二量体を形成する場合に、四価であるとみなされる(すなわち、二量体は4つのVHHドメインを有する)。同様に、構造VHH1-VHH2-VHH3-Fcは、それが二量体を形成する場合に、六価であるとみなされる(すなわち、二量体は6つのVHHドメインを有する)。
【0091】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団の抗体(sdAb又はVHH含有ポリペプチドを含む)を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対する抗体である。したがって、モノクローナル抗体の試料は、抗原上の同じエピトープに結合することができる。「モノクローナル」という修飾成句は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の性質を示し、何らかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, 1975, Nature 256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得る、又は米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法によって作製され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty et al., 1990, Nature 348:552-554に記載される技術を使用して作製されたファージライブラリーから単離され得る。
【0092】
「CDR」という用語は、少なくとも1つの当業者に対する特定様式によって定義される相補性決定領域を示す。幾つかの実施形態においては、CDRは、Chothia番号付けスキーム、Kabat番号付けスキーム、KabatとChothiaとの組合せ、AbM定義、及び/又は接触定義(contact definition)のいずれかに従って定義され得る。VHHは、CDR1、CDR2、及びCDR3と表される3つのCDRを含む。幾つかの実施形態においては、CDRは、AbM定義に従って定義される。
【0093】
本明細書で使用される「重鎖定常領域」という用語は、少なくとも3つの重鎖定常ドメイン、すなわち、CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3を含む領域を指す。当然ながら、ドメイン内の機能を変えない欠失及び改変は、特段の指定がない限り、「重鎖定常領域」という用語の範囲内に含まれる。非限定的な例示的な重鎖定常領域としては、γ、δ、及びαが挙げられる。非限定的な例示的な重鎖定常領域としては、ε及びμも挙げられる。それぞれの重鎖定常領域は、1つの抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体である。さらに、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。或る特定のアイソタイプは、更にサブクラスに細分化され得る。例えば、IgG抗体としては、限定されるものではないが、IgG1(γ1定常領域を含む)抗体、IgG2(γ2定常領域を含む)抗体、IgG3(γ3定常領域を含む)抗体、及びIgG4(γ4定常領域を含む)抗体が挙げられ、IgA抗体としては、限定されるものではないが、IgA1(α1定常領域を含む)抗体及びIgA2(α2定常領域を含む)抗体が挙げられ、IgM抗体としては、限定されるものではないが、IgM1及びIgM2が挙げられる。
【0094】
本明細書で使用される「Fc領域」は、CH2及びCH3を含む重鎖定常領域の一部を指す。幾つかの実施形態においては、Fc領域は、ヒンジ、CH2、及びCH3を含む。様々な実施形態において、Fc領域がヒンジを含む場合に、ヒンジは、2つのFc含有ポリペプチド間の二量体化を介在する。Fc領域は、本明細書で論じられる任意の抗体重鎖定常領域アイソタイプのものであり得る。幾つかの実施形態においては、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。幾つかの実施形態においては、Fc領域がヒンジを含む場合に、ヒンジは、Fc領域と同じアイソタイプである。幾つかの実施形態においては、IgG4ヒンジは、S228P安定化突然変異を含む。
【0095】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」は、本明細書で論じられるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来するアクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むことができる、又はアミノ酸配列の変化を含み得る。幾つかの実施形態においては、アミノ酸の変化の数は、VHH等の単一の抗原結合ドメイン内の全てのヒトフレームワークにわたって10個未満、又は9個未満、又は8個未満、又は7個未満、又は6個未満、又は5個未満、又は4個未満、又は3個未満である。
【0096】
「親和性」は、分子(例えば、sdAb等の抗体又はVHH含有ポリペプチド)の単一の結合部位及びその結合相手(例えば、抗原)の間の非共有結合的相互作用の合計の強さを指す。分子Xのその相手Yに対する親和性又は見かけの親和性は、一般に、それぞれ解離定数(KD)又はKD(見かけ)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されている方法を含む、当該技術分野で既知の通常の方法(例えば、ELISA KD、KinExA、フローサイトメトリー、及び/又は表面プラズモン共鳴デバイス等)によって測定され得る。このような方法としては、限定されるものではないが、BIAcore(商標)、Octet(商標)、又はフローサイトメトリーを要する方法が挙げられる。
【0097】
本明細書で使用される「KD」という用語は、抗原結合分子/抗原相互作用の平衡解離定数を指す。本明細書で「KD」という用語が使用される場合に、それには、KD及びKD(見かけ)が含まれる。
【0098】
幾つかの実施形態においては、抗原結合分子のKDは、フローサイトメトリーによって、抗原発現細胞系統を使用し、各抗体濃度で測定された平均蛍光を非線形1サイト結合方程式(graphpad社のPrism Software)にフィッティングして測定される。幾つかのそのような実施形態においては、KDはKD(見かけ)である。
【0099】
「生物学的活性」という用語は、分子の任意の1つ以上の生物学的特性(in vivoで見られるように天然に存在するか、又は組換え手段によって提供される若しくは可能となるかどうか)を指す。生物学的特性としては、限定されるものではないが、リガンドの結合、細胞増殖(T細胞増殖等)の誘導又は増加、及びサイトカインの発現の誘導又は増加が挙げられる。
【0100】
「アゴニスト」抗体又は「活性化」抗体は、標的抗原の生物学的活性を増加及び/又は活性化する抗体である。幾つかの実施形態においては、アゴニスト抗体は、抗原に結合し、その生物学的活性を少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%以上増加させる。
【0101】
「アンタゴニスト」抗体、「ブロッキング」抗体、又は「中和」抗体は、標的抗原の生物学的活性を抑止、低下及び/又は不活性化する抗体である。幾つかの実施形態においては、中和抗体は、抗原に結合し、その生物学的活性を少なくとも約20%、40%、60%、80%、85%、90%、95%、99%以上低下させる。
【0102】
「親和性成熟」sdAb又はVHH含有ポリペプチドは、sdAb又はVHH含有ポリペプチドの抗原に対する親和性に改善をもたらす改変を有しない親sdAb又はVHH含有ポリペプチドと比較して1つ以上のCDRに1つ以上のそのような改変を有するsdAb又はVHH含有ポリペプチドを指す。
【0103】
本明細書で使用される「ヒト化VHH」は、1つ以上のフレームワーク領域が実質的にヒトフレームワーク領域で置き換えられたVHHを指す。幾つかの場合には、ヒト免疫グロブリンの或る特定のフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化VHHは、当初のVHHにもヒトフレームワーク配列にも見られないが、sdAb又はVHH含有ポリペプチドの性能を更に改良及び最適化するために含まれる残基を含み得る。幾つかの実施形態においては、ヒト化sdAb又はVHH含有ポリペプチドは、ヒトFc領域を含む。理解されるように、ヒト化配列は、その一次配列によって特定され得て、必ずしも抗体が作製された過程を示すわけではない。
【0104】
「エフェクター陽性Fc領域」は、天然配列のFc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」としては、Fc受容体結合、Clq結合及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、並びにB細胞活性化等が挙げられる。このようなエフェクター機能は、一般に、Fc領域を結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせることを要し、様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0105】
「天然配列のFc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域としては、天然配列のヒトIgG1 Fc領域(非Aアロタイプ及びAアロタイプ)、天然配列のヒトIgG2 Fc領域、天然配列のヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列のヒトIgG4 Fc領域、並びにそれらの天然に存在する変異体が挙げられる。
【0106】
「変異型Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により天然配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、「変異型Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により天然配列のFc領域のアミノ酸配列とは異なるが、天然配列のFc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を保持するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、変異型Fc領域は、天然配列のFc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して、天然配列のFc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、少なくとも1個のアミノ酸置換、例えば、約1個~約10個のアミノ酸置換、好ましくは、約1個~約5個のアミノ酸置換を有する。幾つかの実施形態においては、本明細書の変異型Fc領域は、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性、それらと少なくとも約90%の配列同一性、それらと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0107】
「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載している。幾つかの実施形態においては、FcγRは、天然のヒトFcRである。幾つかの実施形態においては、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRIサブクラス、FcγRIIサブクラス、及びFcγRIIIサブクラスの受容体であって、これらの受容体のアレル変異体及び選択的スプライシングされた形態を含む受容体を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは同様のアミノ酸配列を有するが、主にその細胞質ドメインが異なる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含む(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照されたい)。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)、Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994)、及びde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)でレビューされている。将来特定されるものを含む他のFcRは、本明細書では「FcR」という用語によって包含される。例えば、「Fc受容体」又は「FcR」という用語はまた、胎児性受容体FcRnを含み、これは、母体のIgGの胎児への移動(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))及び免疫グロブリンの恒常性の調節の役割を担う。FcRnへの結合を測定する方法は既知である(例えば、Ghetie and Ward, Immunol. Today 18(12):592-598 (1997)、Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997)、Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004)、国際公開第2004/92219号(Hintonら)を参照されたい)。
【0108】
本明細書で使用される「実質的に同様」又は「実質的に同じ」という用語は、当業者が2つ以上の値の間の差を、上記値によって測定される生物学的特徴の文脈内で生物学的意義及び/又は統計学的有意性が殆どない又は全くないとみなすような、2つ以上の数値の間の十分に高度な類似性を示す。幾つかの実施形態においては、2つ以上の実質的に同様の値は、5%、10%、15%、20%、25%、又は50%のいずれか1つの概数以下だけ異なる。
【0109】
ポリペプチド「変異体」とは、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後に、配列同一性の部分として保存的置換を一切考慮せずに、天然配列のポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのような変異体としては、例えば、ポリペプチドのN末端又はC末端で1つ以上のアミノ酸残基が付加又は欠失されているポリペプチドが挙げられる。幾つかの実施形態においては、変異体は、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する。幾つかの実施形態においては、変異体は、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有する。幾つかの実施形態においては、変異体は、天然配列のポリペプチドと少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0110】
本明細書で使用される場合に、ペプチド配列、ポリペプチド配列、又は抗体配列に関する「パーセント(%)のアミノ酸配列同一性」及び「ホモロジー」は、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの配列同一性を達成した後に、配列同一性の部分として保存的置換を一切考慮せずに、特定のペプチド配列又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントのアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMEGALIGN(商標)(DNASTAR社)ソフトウェア等の公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技能の範囲内である様々な方法で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0111】
アミノ酸置換には、限定されるものではないが、ポリペプチド中の或るアミノ酸を別のアミノ酸により置き換えることが含まれ得る。例示的な置換を表1に示す。アミノ酸置換を対象の抗体に導入し、産物を所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングすることができる。
【0112】
【0113】
共通の側鎖特性に従ってアミノ酸をグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0114】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0115】
「ベクター」という用語は、宿主細胞内で増殖され得る、クローニングされたポリヌクレオチド(単数又は複数)を含むように操作することができるポリヌクレオチドを記載するために使用される。ベクターは、以下のエレメントのうちの1つ以上を含み得る:複製起点、対象のポリペプチドの発現を調節する1つ以上の調節配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー等)、及び/又は1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子及び比色アッセイで使用することができる遺伝子、例えば、β-ガラクトシダーゼ等)。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞において対象のポリペプチドを発現するために使用されるベクターを指す。
【0116】
「宿主細胞」は、ベクター又は単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであり得る又はレシピエントであった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞であり得る。例示的な真核細胞としては、霊長類動物細胞又は非霊長類動物細胞等の哺乳動物細胞、酵母等の真菌細胞、植物細胞、及び昆虫細胞が挙げられる。非限定的な例示的な哺乳動物細胞としては、限定されるものではないが、NSO細胞、PER.C6(商標)細胞(Crucell社)、並びに293細胞及びCHO細胞、並びにそれらの派生物、例えば293-6E細胞、CHO-DG44細胞、CHO-K1細胞、CHO-S細胞、及びCHO-DS細胞が挙げられる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれるが、自然突然変異、偶発突然変異、又は意図的突然変異のため、子孫は必ずしも当初の親細胞と完全に同一(形態又はゲノムDNA相補において)であるとは限らない。宿主細胞には、本明細書で提供されるポリヌクレオチド(複数の場合もある)と共にin vivoでトランスフェクションされた細胞も含まれる。
【0117】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、典型的に天然に一緒に見出される又は一緒に産生される成分の少なくとも幾つかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それを産生した細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合に、「単離された」と称される。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合に、ポリペプチドを含む上清を、それを産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」とみなされる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的に天然に見られるより大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合に、ゲノムDNA又はミトコンドリアDNA等)の一部ではない場合に、又は例えば、RNAポリヌクレオチドの場合に、それを産生した細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合に、「単離された」と称される。したがって、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と称され得る。
【0118】
「個体」及び「被験体」という用語は、動物、例えば哺乳動物を指すために本明細書では区別なく使用される。幾つかの実施形態においては、限定されるものではないが、ヒト、齧歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳動物実験動物、哺乳動物家畜、哺乳動物競技用動物(sport animals)、及び哺乳動物ペットを含む哺乳動物を治療する方法が提供される。幾つかの例では、「個体」又は「被験体」は、疾患又は障害の治療を必要とする個体又は被験体を指す。幾つかの実施形態においては、治療を受ける被験体は、被験体が治療に関連する障害を有する又は障害を患う十分なリスクがあると特定されたことを表す患者であり得る。
【0119】
本明細書で使用される「疾患」又は「障害」は、治療が必要とされる及び/又は所望される状態を指す。
【0120】
「腫瘍細胞」、「癌細胞」、「癌」、「腫瘍」、及び/又は「新生物」という用語は、特段の指定がない限り、本明細書では区別なく使用され、身体器官及び系の正常な機能を妨げる制御不能な増殖及び/又は異常な細胞生存の増加及び/又はアポトーシスの阻害を示す細胞(又は複数の細胞)を指す。この定義には、良性及び悪性の癌、ポリープ、過形成、並びに潜伏腫瘍又は微小転移が含まれる。
【0121】
「癌」及び「腫瘍」という用語は、固形癌及び血液癌/リンパ腺癌を包含するとともに、異形成等の悪性腫瘍、前悪性腫瘍、及び良性腫瘍も包含する。例示的な癌としては、限定されるものではないが、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌(胃腸癌を含む)、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌)、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌(唇、舌、口、及び咽頭)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、外陰癌、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHLを含む)、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、並びにその他の癌腫及び肉腫、並びに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連する浮腫等)及びメイグス症候群に関連する異常血管増殖が挙げられる。
【0122】
本明細書で使用される「非腫瘍細胞」という用語は、正常な細胞又は組織を指す。例示的な非腫瘍細胞としては、限定されるものではないが、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、上皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、間質性腎臓細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、骨芽細胞、及び乳房、骨格筋、膵臓、胃、卵巣、小腸、胎盤、子宮、精巣、腎臓、肺、心臓、脳、肝臓、前立腺、結腸、リンパ器官、骨に位置する細胞、及び骨由来の間葉系幹細胞が挙げられる。本明細書で使用される「末梢に位置する細胞又は組織」という用語は、腫瘍細胞の近く及び/又は腫瘍微小環境内に位置しない非腫瘍細胞を指す。
【0123】
本明細書で使用される「腫瘍微小環境内の細胞又は組織」という用語は、腫瘍細胞を取り囲む及び/又は腫瘍細胞に栄養を与える細胞、分子、細胞外マトリックス及び/又は血管を指す。例示的な腫瘍微小環境内の細胞又は組織としては、限定されるものではないが、腫瘍血管系、腫瘍浸潤リンパ球、線維芽細網細胞、内皮前駆細胞(EPC)、癌関連線維芽細胞、周皮細胞、他の間質細胞、細胞外マトリックス(ECM)の成分、樹状細胞、抗原提示細胞、T細胞、制御性T細胞(Treg細胞)、マクロファージ、好中球、骨髄由来抑制細胞(MDSC)及び腫瘍の近位に位置する他の免疫細胞が挙げられる。腫瘍細胞及び/又は腫瘍微小環境内に位置する細胞/組織を特定する方法は、本明細書で以下に記載されるように当該技術分野で十分に知られている。
【0124】
幾つかの実施形態においては、「増加」又は「減少」は、それぞれ、統計学的に有意な増加又は減少を指す。当業者に明らかであるように、「調節」はまた、試験作用物質が存在することを除き同じ条件と比較した、標的又は抗原のそのリガンド、結合相手、ホモ多量体形若しくはヘテロ多量体形へと会合する相手又は基質の1つ以上に対する親和性、アビディティー、特異性及び/又は選択性の変化(増加又は減少のいずれかであり得る)を引き起こすこと、標的又は抗原が存在する培地又は環境における1つ以上の条件(pH、イオン強度、補因子の存在等)に対する標的又は抗原の感受性の変化(増加又は減少のいずれかであり得る)を引き起こすこと、及び/又は細胞増殖若しくはサイトカイン産生を含み得る。これは、関与する標的に応じて、それ自体が既知の又は本明細書に記載される任意の適切な方法で及び/又は任意の適切なアッセイを使用して決定され得る。
【0125】
本明細書で使用される場合に、「免疫応答」は、疾患(例えば、癌又は癌転移)の発症を抑止若しくは未然防止する又はその症状を改善するのに十分である細胞性免疫応答及び/又は体液性免疫応答を包含することが意図される。「免疫応答」は、自然免疫系及び適応免疫系の両方の側面を包含し得る。
【0126】
本明細書で使用される場合に、「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るための手法である。本明細書で使用される「治療」は、ヒトを含む哺乳動物における疾患用の療法薬の任意の投与又は適用を対象とする。本開示の目的では、有益な又は所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の進展(例えば、転移、例えば肺又はリンパ節への転移)の未然防止又は遅延、疾患の再発の未然防止又は遅延、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善、疾患又は疾患の進行の抑止、疾患又はその進行の抑止又は減速、その発達の阻止、及び寛解(部分的でも全体的でも)のいずれか1つ以上が挙げられる。「治療」には、増殖性疾患の病理学的結果の軽減も含まれる。本明細書で提供される方法は、治療のこれらの側面のいずれか1つ以上を企図している。上記に従って、治療という用語は、障害の全ての側面を100パーセント除去する必要はない。
【0127】
「改善」とは、療法剤を投与しない場合と比べて、1つ以上の症状が軽減又は向上することを意味する。「改善」には、症状の持続期間が短縮又は減少することも含まれる。
【0128】
「抗癌剤」という用語は、本明細書では、その最も広い意味で、1つ以上の癌の治療に使用される作用物質を指すために使用される。そのような作用物質の例示的なクラスとしては、限定されるものではないが、化学療法剤、抗癌生物製剤(サイトカイン、受容体細胞外ドメイン-Fc融合物、及び抗体等)、放射線療法薬、CAR-T療法薬、治療用オリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNA等)、及び腫瘍溶解性ウイルスが挙げられる。
【0129】
「生体試料」という用語は、生きている生き物又はかつて生きていた生き物からの或る量の物質を意味する。そのような物質としては、限定されるものではないが、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、羊水、滑液、内皮細胞、白血球、単球、他の細胞、器官、組織、骨髄、リンパ節、及び脾臓が挙げられる。
【0130】
「コントロール」又は「参照」という用語は、分析物を含まないことが既知の組成物(「ネガティブコントロール」)又は分析物を含むことが既知の組成物(「ポジティブコントロール」)を指す。ポジティブコントロールは、既知の濃度の分析物を含み得る。
【0131】
本明細書で使用される場合に、「疾患の発症を遅延させる」とは、疾患(癌等)の発症を遅らせる、妨げる、減速させる、遅滞させる、安定化させる、抑制する、及び/又は引き延ばすことを意味する。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療される個体に応じて、様々な長さの時間となり得る。当業者に明らかであるように、十分な又は大幅な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で未然防止を包含し得る。例えば、転移の発生等の末期癌を遅延させることができる。
【0132】
本明細書で使用される「未然防止」は、疾患の素因を有し得るが、まだ疾患と診断されていない被験体における疾患の発生又は再発に対する予防をもたらすことを含む。特段の指示がない限り、「低減する」、「抑止する」、又は「未然防止する」という用語は、全期間にわたる完全な未然防止を示すのではなく又は必要とするのではなく、測定される期間だけにわたる未然防止を示す又は必要とする。
【0133】
物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストが個体において所望の応答を誘発する能力等の要因によって変動し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な作用が物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの任意の有毒作用又は有害作用を上回る量である。治療有効量は、1回以上の投与で送達され得る。治療有効量は、必要な投与量で必要な時間にわたって、所望の治療的結果及び/又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0134】
「医薬製剤」及び「医薬組成物」という用語は、区別なく使用され、有効成分(複数の場合もある)の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であり、製剤を投与する被験体に対して許容不可能なほど有毒な追加の成分を含まない調製物を指す。そのような製剤は滅菌され得る。
【0135】
「薬学的に許容可能な担体」は、被験体に投与するための「医薬組成物」を一緒に含む療法剤とともに使用される当該技術分野において慣用の非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、又は担体を指す。薬学的に許容可能な担体は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、製剤の他の成分と適合性がある。薬学的に許容可能な担体は、使用される製剤にとって適切である。
【0136】
1つ以上の更なる療法剤と「組み合わせて」の投与には、同時(併用)投与及び任意の順序での連続投与が含まれる。
【0137】
「併用して」という用語は、本明細書では、2つ以上の療法剤の投与であって、投与の少なくとも一部が時間的に重複する、又は1つの療法剤の投与が他の療法剤の投与に対して短い期間に含まれる、又は両方の療法剤の治療効果が少なくとも或る期間にわたり重複する、投与を指すために使用される。
【0138】
「連続的に」という用語は、本明細書では、2つ以上の療法剤の投与であって、時間的に重複しない、又は療法剤の治療効果が重複しない、投与を指すために使用される。
【0139】
本明細書で使用される場合に、「~と組み合わせて」は、或る治療法の施与に別の治療法を加えることを指す。したがって、「~と組み合わせて」は、或る治療法を、個体に他の治療法を施す前、その間、又はその後に施すことを指す。
【0140】
「添付文書」という用語は、治療製品の市販パッケージに通例含まれる使用説明書であって、そのような治療製品の使用に関する指示、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む、使用説明書を指すために使用される。
【0141】
「製造品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患若しくは障害(例えば、癌)の治療用の医薬、又は本明細書に記載されるバイオマーカーを特異的に検出するプローブを含む任意の製造物(例えば、パッケージ又は容器)又はキットである。幾つかの実施形態においては、製造物又はキットは、本明細書に記載される方法を実施するユニットとして宣伝、配送、又は販売される。
【0142】
「標識」及び「検出可能な標識」という用語は、例えば、抗体又は抗原に結合されて、特異的結合ペアのメンバー間の反応(例えば、結合)を検出可能にする部分を意味する。特異的結合ペアの標識されたメンバーは、「検出可能に標識された」と称される。したがって、「標識された結合性タンパク質」という用語は、結合性タンパク質の特定をもたらす標識が組み込まれたタンパク質を指す。幾つかの実施形態においては、標識は、視覚的に又は機器的手段により検出可能なシグナルを生成し得る検出可能なマーカー、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組み込み又はマーキングされたアビジン(例えば、蛍光マーカー又は光学的方法若しくは比色法により検出され得る酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出され得るビオチニル部のポリペプチドへの結合である。ポリペプチドの標識の例としては、限定されるものではないが、放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、又は153Sm)、色素原、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される予め決められたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、及びガドリニウムキレート等の磁性剤が挙げられる。イムノアッセイに通常使用される標識の代表的な例としては、光を発する部分、例えば、アクリジニウム化合物、及び蛍光を発する部分、例えば、フルオレセインが挙げられる。この点について、その部分自体は検出可能に標識されていない場合もあるが、更に別の部分と反応すると検出可能になり得る。
【0143】
例示的なCD8結合ポリペプチド
アンタゴニストCD8結合ポリペプチドが本明細書で提供される。様々な実施形態において、CD8結合ポリペプチドは、CD8に結合する少なくとも1つのVHHドメインを含む。幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、CD8に結合する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つのVHHドメインを含む。幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、CD8に結合する1つ、2つ、3つ、又は4つのVHHドメインを含む。そのようなCD8結合ポリペプチドは、CD8以外の1つ以上の標的タンパク質に結合する1つ以上の付加的な抗原結合ドメイン(例えば、VHHドメイン)を含んでいてもよく、及び/又はサイトカイン配列等の1つ以上の付加的なポリペプチド配列を含んでいてもよい。
【0144】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、CD8に結合する少なくとも1つのVHHドメインとFc領域とを含む。幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、CD8に結合する1つ、2つ、3つ、又は4つのVHHドメインとFc領域とを含む。幾つかの実施形態においては、Fc領域は、生理学的条件でCD8結合ポリペプチドの二量体化を介在し、こうして二量体が形成されることにより、CD8結合部位の数が2倍となる。例えば、CD8に結合する3つのVHHドメインとFc領域とを含むCD8結合ポリペプチドは、単量体としては三価であるが、生理学的条件では、Fc領域が二量体化を介在することができ、こうしてCD8結合ポリペプチドは、そのような条件下で六価の二量体として存在する。
【0145】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、少なくとも2つのVHHドメインを含み、ここで、第1のVHHドメインは、CD8の第1のエピトープに結合し、第2のVHHドメインは、CD8の第2のエピトープに結合する。CD8結合ポリペプチドが、CD8の第1のエピトープに結合するVHHドメインと、CD8の第2のエピトープに結合するVHHドメインとを含む場合に、CD8結合ポリペプチドは、「二重エピトープ性」又は「二重特異性」と称され得る。
【0146】
CD8結合ポリペプチド
様々な実施形態において、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号3、配列番号73、及び配列番号74から選択されるCDR1配列と、配列番号4、配列番号12、配列番号14、配列番号22、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、及び配列番号80から選択されるCDR2配列と、配列番号5、配列番号16、及び配列番号18から選択されるCDR3とを含む。様々な実施形態において、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5;配列番号3、配列番号12、及び配列番号5;配列番号3、配列番号14、及び配列番号5;配列番号3、配列番号4、及び配列番号16;配列番号3、配列番号4、及び配列番号18;配列番号3、配列番号22、及び配列番号5;配列番号3、配列番号14、及び配列番号18;配列番号3、配列番号27、及び配列番号5;配列番号3、配列番号29、及び配列番号5;配列番号3、配列番号31、及び配列番号5;配列番号73、配列番号14、及び配列番号18;配列番号74、配列番号14、及び配列番号18;配列番号3、配列番号75、及び配列番号18;配列番号3、配列番号76、及び配列番号18;配列番号3、配列番号77、及び配列番号18;配列番号3、配列番号78、及び配列番号18;配列番号3、配列番号79、及び配列番号18;並びに配列番号3、配列番号80、及び配列番号18から選択されるCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列を含む。様々な実施形態において、VHHドメインは、ヒト化されている。
【0147】
幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号2、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、及び配列番号100から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号2、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、及び配列番号100から選択されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号2、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28及び配列番号30から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、残基XXは存在しない。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号2、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、残基XXはGly-Glyである。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号2、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、及び配列番号99から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで、VHHドメインは、突然変異K117D、K117E、又はK117Rを含む。
【0148】
幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号3のCDR1配列と、配列番号14のCDR2配列と、配列番号18のCDR3とを含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号3のCDR1配列と、配列番号78のCDR2配列と、配列番号18のCDR3とを含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号92又は配列番号100のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号92のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインは、配列番号100のアミノ酸配列を含む。
【0149】
様々な実施形態において、CD8結合ポリペプチドは、CD8に結合する1つ、2つ、3つ、又は4つのVHHドメインを含む。
【0150】
幾つかの実施形態においては、CD8に結合するVHHドメインはヒト化され得る。ヒト化抗体(sdAb又はVHH含有ポリペプチド等)は、治療分子として有用である。それというのも、ヒト化抗体は、抗体療法薬に対する免疫応答をもたらして療法薬の有効性を低下させ得る非ヒト抗体に対するヒト免疫応答を低減又は排除するからである。一般に、ヒト化抗体は、CDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。幾つかの実施形態においては、ヒト化抗体における幾つかのFR残基は、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の元となる抗体)からの対応する残基で置換される。
【0151】
ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson, (2008) Front. Biosci. 13: 1619-1633においてレビューされており、例えば、Riechmann et al., (1988) Nature 332:323-329、Queen et al., (1989) Proc. Natl Acad. Sci. USA 86: 10029-10033、米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号、及び米国特許第7,087,409号、Kashmiri et al., (2005) Methods 36:25-34、Padlan, (1991) Mol. Immunol. 28:489-498(「リサーフェイシング(resurfacing)」を記載している)、Dall'Acqua et al., (2005) Methods 36:43-60(「FRシャッフリング(FR shuffling)」を記載している)、並びにOsbourn et al., (2005) Methods 36:61-68及びKlimka et al., (2000) Br. J. Cancer, 83:252-260(FRシャッフリングに対する「ガイド選択(guided selection)」アプローチを記載している)で更に記載されている。
【0152】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、限定されるものではないが、「ベストフィット(best-fit)」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al. (1993) J. Immunol. 151 :2296を参照されたい)、重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285、及びPresta et al. (1993) J. Immunol, 151:2623を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, (2008) Front. Biosci. 13:1619-1633を参照されたい)、及びFRライブラリーのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al., (1997) J. Biol. Chem. 272: 10678-10684、及びRosok et al., (1996) J. Biol. Chem. 271 :22611-22618を参照されたい)が挙げられる。典型的には、VHHのFR領域をヒトFR領域と置き換えることで、ヒト化VHHが作製される。幾つかの実施形態においては、ヒトFRの或る特定のFR残基を置き換えることで、ヒト化VHHの1つ以上の特性が改善される。そのような置き換えられた残基を有するVHHドメインも、本明細書では更に「ヒト化」と称される。
【0153】
様々な実施形態において、CD8結合ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域であるか、又はヒトFc領域に由来する。
【0154】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、IgG1 E233、L234、及びL235に対応する3つのアミノ酸欠失を下部ヒンジに含み、本明細書で「Fc xELL」と称される。Fc xELLポリペプチドはFcγRと結合しないため、「エフェクターサイレント」又は「エフェクターヌル」と称されるが、幾つかの実施形態においては、xELL Fc領域はFcRnに結合するため、半減期の延長及びFcRn媒介性リサイクリング(FcRn mediated recycling)と関連したトランスサイトーシスを伴う。
【0155】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、突然変異M252Y及びM428Vを含み、本明細書で「Fc-YV」と称される。幾つかの実施形態においては、そのような突然変異は、エンドソームの酸性pH(6.5近く)でFcRnへの結合を増強するのに対し、中性pH(約7.2)では検出可能な結合が失われることから、FcRn媒介性リサイクリングの増強及び半減期の延長が可能となる。
【0156】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、ヘテロ二量体化のために設計された突然変異を含み、本明細書において「ノブ」及び「ホール」と称される。幾つかの実施形態においては、「ノブ」Fc領域は、突然変異T366Wを含む。幾つかの実施形態においては、「ホール」Fc領域は、突然変異T366S、L368A、及びY407Vを含む。幾つかの実施形態においては、ヘテロ二量体化に使用されるFc領域は、ヘテロ二量体Fcペアの第1のメンバー上の突然変異S354C等の追加の突然変異を含み、この突然変異は、ヘテロ二量体Fcペアの第2のメンバー上の対応する突然変異Y349Cと非対称ジスルフィドを形成する。幾つかの実施形態においては、ヘテロ二量体Fcペアの一方のメンバーは、修飾H435R又はH435Kを含むことで、FcRn結合を維持しつつプロテインAの結合を妨げる。幾つかの実施形態においては、ヘテロ二量体Fcペアの一方のメンバーは、修飾H435R又はH435Kを含むのに対して、ヘテロ二量体Fcペアの第2のメンバーは、H435で修飾されていない。様々な実施形態において、ホールFc領域は、修飾H435R又はH435Kを含むが(修飾がH435Rである場合に、場合によっては「ホール-R」と称される)、ノブFc領域はそれを含まない。幾つかの場合には、ホール-R突然変異は、存在し得るホモ二量体ホールFc領域に対するヘテロ二量体の精製を改善する。
【0157】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドに含まれるFc領域は、ヒトFc領域に由来し、C末端リジン残基を欠く(ΔK447)。
【0158】
CD8結合ポリペプチドで使用され得る非限定的な例示的なFc領域としては、配列番号32~配列番号70、及び配列番号101~配列番号111のアミノ酸配列を含むFc領域が挙げられる。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、配列番号33、配列番号36~配列番号52、配列番号68~配列番号70、及び配列番号101~配列番号111から選択されるアミノ酸配列を含むFc領域を含む。
【0159】
CD8結合ポリペプチドの例示的な活性
様々な実施形態において、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、in vitro及び/又はin vivoでCD8+細胞を刺激する。in vitro及び/又はin vivoでのCD8+細胞の刺激又は活性は、幾つかの実施形態においては、本明細書の実施例に示される方法を使用して決定され得る。
【0160】
幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、免疫細胞活性化サイトカイン、又はCD8以外の抗原に結合し、CD8+T細胞を刺激する抗原結合ドメインを含む。幾つかの実施形態においては、免疫細胞活性化サイトカイン、又はCD8以外の抗原に結合する抗原結合ドメインのCD8+刺激活性は、単独で使用する場合よりも増加し、及び/又はCD8結合VHHに融合した場合に、より特異的に細胞傷害性T細胞に標的化される。幾つかの実施形態においては、免疫細胞活性化サイトカイン、又はCD8以外の抗原に結合する抗原結合ドメインの毒性は、CD8+T細胞に特異的に標的化することによって減少する。
【0161】
幾つかの実施形態においては、本明細書で提供される免疫細胞活性化サイトカイン、又はCD8以外の抗原に結合する抗原結合ドメインを含むCD8結合ポリペプチドは、in vitro及び/又はin vivoでのT細胞増殖を増加させる。
【0162】
幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、本明細書で提供されるCD8結合VHHと免疫細胞活性化サイトカインとを含む。幾つかのそのような実施形態において、免疫細胞活性化サイトカインは、IL-2、IL-15、IL-7、IL-6、IL-12、IFNα、IFNβ、又はIFNγである。幾つかのそのような実施形態において、免疫細胞活性化サイトカインは、野生型免疫細胞活性化サイトカインである。幾つかの実施形態においては、免疫細胞活性化サイトカインは、野生型サイトカインの活性と比べて免疫細胞活性化サイトカインの活性を弱める突然変異を含む。幾つかの実施形態においては、免疫細胞活性化サイトカインを含むCD8結合ポリペプチドは、in vivoでCD8+T細胞の活性化及び増殖を刺激する。幾つかの実施形態においては、免疫細胞活性化サイトカインを含むCD8結合ポリペプチドは、癌を治療する方法に使用される。
【0163】
活性化CD8+T細胞の増殖の増加は、例えば、本明細書の実施例に示される方法等の当該技術分野における任意の方法によって決定され得る。非限定的な例示的なアッセイは以下の通りである。CD8+T細胞を1人以上の健康なヒトドナーから分離することができる。T細胞は、CellTrace Violet(CTV)で染色し、抗CD3抗体で活性化し、本明細書で提供されるポリペプチドと接触させた後に、FACSで分析する。CTV染色の喪失は増殖を示す。幾つかの実施形態においては、CD8+T細胞の増殖の増加は、例えば、異なる健康なヒトドナーから分離されたCD8+T細胞の増殖を測定することによって、一連の実験又はプールされたT細胞からの平均として決定される。幾つかの実施形態においては、CD8+T細胞の増殖の増加は、少なくとも5人若しくは少なくとも10人の異なる健康なドナーからのT細胞を使用して実施される実験からの、又は少なくとも5人若しくは少なくとも10人の異なる健康なドナーからのT細胞のプールからの平均として決定される。
【0164】
幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、CD8結合VHHと、CD8以外の抗原に結合する抗原結合ドメインとを含む。幾つかのそのような実施形態において、抗原は、Lag3、CTLA4、TGFBR1、TGFBR2、Fas、TNFR2、PD1、PDL1、又はTIM3である。幾つかの実施形態において、抗原は、1-92-LFA-3、5T4、α4インテグリン、αVインテグリン、α4β1インテグリン、α4β7インテグリン、AGR2、抗ルイスY、アペリンJ受容体、APRIL、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BAFF、BCMA、BTLA、補体C5、C-242、CA9、CA19-9、(ルイスa)、炭酸脱水酵素9、CD2、CD3、CD6、CD9、CD11a、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD27、CD28、CD30、CD33、CD38、CD39、CD40、CD40L、CD41、CD44、CD44v6、CD47、CD51、CD52、CD56、CD64、CD70、CD71、CD73、CD74、CD80、CD81、CD86、CD95、CD117、CD123、CD125、CD132、(IL-2RG)、CD133、CD137、CD138、CD166、CD172A、CD248、CDH6、CEACAM5(CEA)、CEACAM6(NCA-90)、クローディン3、クローディン4、cMet、コラーゲン、Cripto、CSFR、CSFR-1、CTLA4、CTGF、CXCL10、CXCL13、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CYR61、DL44、DLK1、DLL3、DLL4、DPP-4、DSG1、EDA、EDB、EGFR、EGFRviii、エンドセリンB受容体(ETBR)、ENPP3、EpCAM、EPHA2、EPHB2、ERBB3、RSVのFタンパク質、FAP、FcRH5、FGF-2、FGF8、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT-3、葉酸受容体α(FRα)、GAL3ST1、G-CSF、G-CSFR、GD2、GITR、GLUT1、GLUT4、GM-CSF、GM-CSFR、GP IIb/IIIa受容体、Gp130、GPIIB/IIIA、GPNMB、GPRC5D、GRP78、HAVCAR1、HER2/neu、HER3、HER4、HGF、hGH、HVEM、ヒアルロニダーゼ、ICOS、IFNα、IFNβ、IFNγ、IgE、IgE受容体(FceRI)、IGF、IGF1R、IL1B、IL1R、IL2、IL11、IL12、IL12p40、IL-12R、IL-12Rβ1、IL13、IL13R、IL15、IL17、IL18、IL21、IL23、IL23R、IL27/IL27R(wsx1)、IL29、IL-31R、IL31/IL31R、IL2R、IL4、IL4R、IL6、IL6R、インスリン受容体、Jaggedリガンド、Jagged 1、Jagged 2、KISS1-R、LAG-3、LIF-R、ルイスX、LIGHT、LRP4、LRRC26、Ly6G6D、LyPD1、MCSP、メソテリン、MICA、MICB、MRP4、MUC1、ムチン16(MUC16、CA-125)、Na/K ATPアーゼ、NGF、ニカストリン、Notch受容体、Notch 1、Notch 2、Notch 3、Notch 4、NOV、OSM-R、OX-40、PAR2、PDGF-AA、PDGF-BB、PDGFRα、PDGFRβ、PD-1、PD-L1、PD-L2、ホスファチジルセリン、P1GF、PSCA、PSMA、PSGR、RAAG12、RAGE、SLC44A4、スフィンゴシン-1-リン酸、STEAP1、STEAP2、TAG-72、TAPA1、TEM-8、TGFβ、TIGIT、TIM-3、TLR2、TLR4、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TMEM31、TNFα、TNFR、TNFRS12A、TRAIL-R1、TRAIL-R2、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、TRK-A、TRK-B、TROP-2、uPAR、VAP1、VCAM-1、VEGF、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、VISTA、WISP-1、WISP-2、又はWISP-3である。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、CD8結合VHHと、腫瘍細胞抗原に結合する抗原結合ドメインとを含む。
【0165】
ポリペプチドの発現及び産生
CD8結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子が提供される。幾つかの実施形態において、核酸分子はまた、CD8結合ポリペプチドの分泌を指示するリーダー配列もコードすることができ、そのリーダー配列は、典型的には、これが分泌されたポリペプチド中に存在しないように切断される。リーダー配列は、天然の重鎖(又はVHH)リーダー配列であり得る、又は別の異種リーダー配列であり得る。
【0166】
核酸分子は、当該技術分野で慣用の組換えDNA技術を使用して構築され得る。幾つかの実施形態においては、核酸分子は、選択された宿主細胞における発現に適した発現ベクターである。
【0167】
本明細書に記載されるCD8結合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターが提供される。そのようなベクターとしては、限定されるものではないが、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター等が挙げられる。幾つかの実施形態においては、CHO細胞若しくはCHO由来細胞等の所望の細胞型、又はNSO細胞におけるポリペプチドの発現のために最適化されたベクターが選択される。例示的なそのようなベクターは、例えば、Running Deer et al., Biotechnol. Prog. 20:880-889 (2004)に記載されている。
【0168】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、細菌細胞等の原核細胞において、又は真菌細胞(酵母等)、植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞等の真核細胞において発現され得る。そのような発現は、例えば、当該技術分野で既知の手順に従って実施され得る。ポリペプチドの発現に使用され得る例示的な真核細胞としては、限定されるものではないが、COS7細胞を含むCOS細胞、293-6E細胞を含む293細胞、CHO-S、DG44、Lec13 CHO細胞及びFUT8 CHO細胞を含むCHO細胞、PER.C6(商標)細胞(Crucell社)、並びにNSO細胞が挙げられる。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、酵母において発現され得る。例えば、米国特許出願公開第2006/0270045号を参照されたい。幾つかの実施形態においては、特定の真核宿主細胞は、ポリペプチドに対して所望の翻訳後修飾を行うその能力に基づいて選択される。例えば、幾つかの実施形態においては、CHO細胞は、293細胞で産生される同じポリペプチドよりも高レベルのシアリル化を有するポリペプチドを産生する。
【0169】
所望の宿主細胞への1つ以上の核酸(ベクター等)の導入は、限定されるものではないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染等を含むあらゆる方法によって達成され得る。非限定的な例示的な方法は、例えばSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)に記載されている。核酸は、任意の適切な方法に従って、所望の宿主細胞に一過的又は安定的にトランスフェクションされ得る。
【0170】
本明細書に記載される核酸又はベクターのいずれかを含む宿主細胞も提供される。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されるCD8結合ポリペプチドを発現する宿主細胞が提供される。宿主細胞で発現されたCD8結合ポリペプチドは、任意の適切な方法によって精製され得る。そのような方法としては、限定されるものではないが、親和性マトリックス又は疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用が挙げられる。適切なアフィニティーリガンドとしては、ROR1 ECD及びFc領域に結合する作用物質が挙げられる。例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、又は抗体アフィニティーカラムを使用して、Fc領域に結合することで、Fc領域を含むCD8結合ポリペプチドを精製することができる。疎水性相互作用クロマトグラフィー、例えば、ブチルカラム又はフェニルカラムもまた、抗体等の幾つかのポリペプチドを精製するのに適切であり得る。イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー)もまた、抗体等の幾つかのポリペプチドを精製するのに適切であり得る。混合モードクロマトグラフィー(例えば、逆相/陰イオン交換、逆相/陽イオン交換、親水性相互作用/陰イオン交換、親水性相互作用/陽イオン交換等)も、抗体等の幾つかのポリペプチドを精製するのに適切であり得る。ポリペプチドを精製する多くの方法が当該技術分野で知られている。
【0171】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、無細胞系において産生される。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al., Methods Mol. Biol. 498: 229-44 (2009)、Spirin, Trends Biotechnol. 22: 538-45 (2004)、Endo et al., Biotechnol. Adv. 21: 695-713 (2003)に記載されている。
【0172】
幾つかの実施形態においては、上記の方法によって作製されたCD8結合ポリペプチドが提供される。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、宿主細胞において作製される。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、無細胞系において作製される。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは精製される。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドを含む細胞培養培地が提供される。
【0173】
幾つかの実施形態においては、上記の方法によって作製された抗体を含む組成物が提供される。幾つかの実施形態においては、該組成物は、宿主細胞において作製されたCD8結合ポリペプチドを含む。幾つかの実施形態においては、該組成物は、無細胞系において作製されたCD8結合ポリペプチドを含む。幾つかの実施形態においては、該組成物は、精製されたCD8結合ポリペプチドを含む。
【0174】
CD8結合ポリペプチドを使用して疾患を治療する例示的な方法
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドを投与することを含む、個体における疾患を治療する方法が提供される。このような疾患としては、T細胞、例えばCD8+T細胞の増殖及び活性化の増加から恩恵を受けるあらゆる疾患が挙げられる。幾つかの実施形態においては、個体における癌を治療する方法が提供される。幾つかの実施形態においては、癌を治療する方法は、CD8結合VHHと、免疫細胞活性化サイトカイン、又はCD8以外の腫瘍細胞抗原に結合する抗原結合ドメインとを含むCD8結合ポリペプチドを投与することにより、CD8+T細胞の増殖及び/又は活性化を増加させることを含む。
【0175】
上記方法は、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドを有効量、個体に投与することを含む。そのような治療方法は、ヒト又は動物における治療方法であり得る。幾つかの実施形態においては、ヒトを治療する方法が提供される。本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドを使用して治療することができる非限定的な例示的な癌としては、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌、絨毛癌、結腸直腸癌、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌、胃腸癌、膠芽腫、肝癌、肝細胞癌、上皮内新生物、腎臓癌又は腎癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸癌、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃部癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮又は子宮内膜癌、泌尿器系癌、並びに外陰癌、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非分割細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞白血病、並びに慢性骨髄芽球性白血病が挙げられる。
【0176】
CD8結合ポリペプチドは、必要に応じて被験体に投与され得る。投与の頻度の決定は、治療される病態、治療される被験体の年齢、治療される病態の重症度、治療される被験体の全般的健康状態等の考慮に基づいて、主治医等の当業者によって行われ得る。幾つかの実施形態においては、有効用量のCD8結合ポリペプチドが被験体に1回以上投与される。幾つかの実施形態においては、有効用量のCD8結合ポリペプチドが、被験体に毎日、週に2回、毎週、2週間ごとに、月に1回等で投与される。有効用量のCD8結合ポリペプチドが被験体に少なくとも1回投与される。幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドの有効用量は、少なくとも1ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年間にわたる複数回を含む複数回で投与され得る。
【0177】
幾つかの実施形態においては、医薬組成物は、癌を治療する(癌の予防を含む)及び/又はT細胞増殖を増加させるのに有効な量で投与される。治療有効量は、典型的には、治療される被験体の体重、その被験体の身体的状態若しくは健康状態、治療される病態の広範さ、又は治療される被験体の年齢に依存する。一般に、抗体は、用量当たり約0.05mg/kg(体重)~約100mg/kg(体重)の範囲の量で投与され得る。
【0178】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドは、限定されるものではないが、静脈内、動脈内、非経口、腹腔内、又は皮下を含む様々な経路によってin vivoで投与され得る。意図される用途に応じて、適切な製剤及び投与経路を選択することができる。
【0179】
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドを使用する治療的処置は、T細胞の増殖及び/又は活性化を増加させることによって、及び/又はCD8+T細胞を癌細胞に接触させることによって達成される。幾つかの実施形態においては、T細胞の増殖及び/又は活性化の増加は、癌の成長を抑止する。
【0180】
医薬組成物
幾つかの実施形態においては、CD8結合ポリペプチドを含む組成物は、多種多様な薬学的に許容可能な担体を含む製剤で提供される(例えば、Gennaro, Remington: The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons: Drugfacts Plus, 20th ed. (2003)、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th ed., Lippencott Williams and Wilkins (2004)、Kibbe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd ed., Pharmaceutical Press (2000)を参照されたい)。賦形剤、アジュバント、及び希釈剤を含む様々な薬学的に許容可能な担体が利用可能である。さらに、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤等の様々な薬学的に許容可能な補助物質も利用可能である。非限定的な例示的な担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0181】
幾つかの実施形態においては、医薬組成物は、少なくとも10mg/mLの濃度でCD8結合ポリペプチドを含む。
【0182】
併用療法
CD8結合ポリペプチドは、単独で又は他の抗癌剤等の他の治療方式と組み合わせて投与され得る。CD8結合ポリペプチドは、他の治療方式の前、実質的にそれと同時に、又はその後に供給され得る(すなわち、同時に又は連続的に)。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される治療方法は、放射線療法、化学療法、ワクチン接種、標的腫瘍療法、CAR-T療法、腫瘍溶解性ウイルス療法、癌免疫療法、サイトカイン療法、外科的切除、クロマチン修飾、切除、冷却療法、腫瘍標的に対するアンチセンス剤、腫瘍標的に対するsiRNA剤、腫瘍標的に対するマイクロRNA剤若しくは抗癌剤/抗腫瘍剤、又は抗体、サイトカイン若しくは受容体細胞外ドメイン-Fc融合物等の生物製剤を施すことを更に含み得る。
【0183】
幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、第2の療法剤、例えば、PD-1又はPD-L1療法薬と同時に与えられる。PD-1/PD-L1療法薬の例としては、ニボルマブ(BMS)、ピディリズマブ(CureTech、CT-011)、ペンブロリズマブ(Merck)、デュルバルマブ(Medimmune/AstraZeneca)、アテゾリズマブ(Genentech/Roche)、アベルマブ(Pfizer)、AMP-224(Amplimmune)、BMS-936559、AMP-514(Amplimmune)、MDX-1105(Merck)、TSR-042(Tesaro/AnaptysBio、ANB-011)、STI-A1010(Sorrento Therapeutics)、STI-A1110(Sorrento Therapeutics)、及びプログラム死-1(PD-1)又はプログラム死リガンド1(PD-L1)に対する他の作用物質が挙げられる。
【0184】
幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、免疫刺激剤、例えば腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバー又はB7ファミリーのメンバーのアゴニストと同時に与えられる。免疫刺激性TNFRSFメンバーの非限定的な例としては、OX40、GITR、41BB、CD27、及びHVEMが挙げられる。B7ファミリーメンバーの非限定的な例としては、CD28及びICOSが挙げられる。したがって、幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、OX40、GITR、41BB、CD27、HVEM、CD28、及び/又はICOSのアゴニスト、例えばアゴニスト抗体と同時に与えられる。
【0185】
幾つかの実施形態においては、本明細書で提供されるCD8結合ポリペプチドは、CAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法薬、腫瘍溶解性ウイルス療法薬、サイトカイン療法薬、及び/又はVISTA、gpNMB、B7H3、B7H4、HHLA2、CTLA4、TIGIT等の他のチェックポイント分子を標的とする作用物質と同時に与えられる。
【0186】
診断及び治療の非限定的な例示的な方法
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される方法は、被験体及び/又は被験体(例えば、癌患者)からの検体を評価するのに有用である。幾つかの実施形態においては、評価は、診断、予後診断、及び/又は治療への奏効のうちの1つ以上である。
【0187】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される方法は、タンパク質の存在、非存在、又はレベルを評価することを含む。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される方法は、核酸の存在、非存在、又は発現のレベルを評価することを含む。これらの測定に本明細書に記載される組成物を使用することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される方法は、腫瘍の検体又は腫瘍から培養された細胞を、本明細書に記載される療法剤と接触させることを含む。
【0188】
幾つかの実施形態においては、評価により、治療(本明細書に記載される抗体による治療を含む)が指示され得る。幾つかの実施形態においては、評価により、切除後の補助療法を使用する又は差し控えることが指示され得る。補助治療とも呼ばれる補助療法は、一次治療、主治療、又は初回治療に加えてなされる治療である。非限定的な例として、補助療法は、全ての検出可能な疾患が取り除かれたが、潜在疾患のため再燃の統計的リスクが残っている場合に、通常は手術後になされる追加の治療であり得る。幾つかの実施形態においては、上記抗体は、癌の治療における補助療法薬として使用される。幾つかの実施形態においては、上記抗体は、癌の治療における単独補助療法薬として使用される。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される抗体は、癌の治療における補助療法薬としては差し控えられる。例えば、患者が本明細書に記載される抗体に応答する可能性が低い又は最小限の応答しか有しない場合に、生活の質のために、及び無効な化学療法による不必要な毒性を避けるために、治療を施さなくてもよい。このような場合に、緩和ケアが使用される場合がある。
【0189】
幾つかの実施形態においては、切除前に術前補助療法薬として上記分子が投与される。幾つかの実施形態においては、術前補助療法薬は、任意の手術の前に腫瘍を縮小及び/又はダウングレードする療法薬を指す。幾つかの実施形態においては、術前補助療法薬は、手術前に癌患者に投与される化学療法薬を意味する。幾つかの実施形態においては、術前補助療法薬は、手術前に癌患者に投与される抗体を意味する。術前補助化学療法薬が通常考慮される癌型としては、例えば、乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、及び肺癌が挙げられる。幾つかの実施形態においては、上記抗体は、癌の治療における術前補助療法薬として使用される。幾つかの実施形態においては、その使用は切除前である。
【0190】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される方法で企図される腫瘍微小環境は、腫瘍血管系、腫瘍浸潤リンパ球、線維芽細網細胞、内皮前駆細胞(EPC)、癌関連線維芽細胞、周皮細胞、他の間質細胞、細胞外マトリックス(ECM)の成分、樹状細胞、抗原提示細胞、T細胞、制御性T細胞、マクロファージ、好中球、及び腫瘍の近位に位置する他の免疫細胞の1つ以上である。
【0191】
キット
本明細書に記載されるCD8結合ポリペプチドのいずれか及び適切な包装を含む製造品及びキットも提供される。幾つかの実施形態においては、本発明は、(i)CD8結合ポリペプチドと、(ii)該キットを使用してCD8結合ポリペプチドを個体に投与するための使用説明書とを備えるキットを含む。
【0192】
本明細書に記載される組成物に適切な包装は、当該技術分野で知られており、例えば、バイアル(例えば、密封バイアル)、容器、アンプル、ボトル、広口瓶、フレキシブルな包装(例えば、密封マイラー又はプラスチックバッグ)等が含まれる。これらの製造品は、更に滅菌及び/又は密封され得る。本明細書に記載される組成物を含む単位剤形も提供される。これらの単位剤形は、単回又は多回単位剤形で適切な包装内で保存され得て、更に滅菌及び密封もされ得る。本発明のキットに提供される使用説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に書かれた指示であるが、機械可読の指示(例えば、磁気記憶ディスク又は光学記憶ディスクに保持された指示)も許容可能である。抗体の使用に関する使用説明書は一般に、意図された治療又は工業的使用のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。キットは、個々の適切な治療を選択することの説明を更に含み得る。
【0193】
容器は、単位用量、バルク包装(例えば、多回用量包装)又はサブユニット用量であり得る。例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月以上のいずれかの概数の期間等の長期間にわたって個体に効果的な治療をもたらすのに十分な用量の本明細書に開示される分子を含むキットも提供され得る。キットはまた、多回単位用量の分子及び使用説明書を含むことができ、薬局、例えば、病院薬局及び調剤薬局での保存及び使用に十分な量で包装され得る。幾つかの実施形態においては、キットは、再構成、再懸濁、又は再水和することで、一般的に抗体の安定な水性懸濁液を形成することができる乾燥(例えば、凍結乾燥)組成物を含む。
【実施例】
【0194】
以下で論じられる実施例は、本発明を純粋に例示することが意図され、決して本発明を限定するとみなされるべきではない。これらの実施例は、以下の実験が、実施された全て又は唯一の実験であることを表すとは意図されない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して正確さを保証するための努力がなされたが、幾らかの実験誤差及び偏差が考慮に入れられるべきである。特段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧であるか又は近大気圧である。
【0195】
実施例1:CD8a結合VHHドメインの開発
ヒトCD8aを標的とするシングルドメイン抗体を、ラマFcに融合したヒトCD8aの細胞外ドメイン(配列番号72)でラマを免疫化することによって生成した。特異的な抗CD8a抗体価の発現後に、ラマ末梢血単核細胞(PBMC)を免疫化動物の血液500mLから単離し、Qiagen RNeasy Maxi Kitを用いて全mRNAを単離し、続いてThermo Superscript IV Reverse Transcriptase及びオリゴdTプライミングを用いてファーストストランドcDNAに変換した。cDNAを鋳型として用いたPCRによってVHH配列を特異的に増幅し、VHH-Fc-AGA2融合タンパク質として酵母表面提示ベクターにクローニングした。FcはヒトIgG1 Fc(配列番号32)、又は場合によっては、エフェクター機能が低下した変異体IgG1 Fcであった(例えば、Fc xELL;配列番号33)。
【0196】
VHH-Fc-AGA2融合タンパク質を提示する酵母ライブラリーを、磁気ビーズ単離に続く蛍光活性化細胞選別(FACS)により、CD8a ECDの組換え型を用いて富化した。選別された酵母をプレートアウトし、単離したコロニーを96ウェルブロックに採取し、表面提示されたVHH-Fcからの発現を培地への分泌に切り替える培地中で成長させた。96ウェルの酵母分泌培養物からの上清を、CD8aで一過的にトランスフェクションした293F細胞(CD8a陽性)又はトランスフェクションしていない293F細胞(CD8a陰性)に適用し、洗浄し、フルオロフォア標識抗ヒトIgG1 Fc二次抗体で処理し、96ウェルフローサイトメトリーによって分析した。
【0197】
CD8a陽性細胞に結合し、CD8a陰性細胞に結合しないVHHをコードする核酸配列を、ヒトFc xELLコード領域とインフレームで哺乳動物発現ベクターにクローニングし、ポリエチレンイミンを用いたHEK293 Freestyle細胞(293F細胞)又はCHO細胞における一過性トランスフェクションにより発現させた。3日~7日後に上清を回収し、分泌された組換えタンパク質をプロテインAクロマトグラフィーによって精製し、280nmでの吸光度及び吸光係数から濃度を算出した。
【0198】
CD8aに結合する1つのVHHドメイン(クローンB7)をヒト化した。簡潔に述べると、ヒト重鎖フレームワークをベースとしてB7の様々なヒト化型を作製した。或る特定のアミノ酸をドナーアミノ酸へと復帰突然変異させ、或る特定の突然変異を、例えばその結合特性についてCDRにおいて試験した。B7のアミノ酸配列及び様々なヒト化された形態は、以下に提示される或る特定の配列の表に示される。B7 VHH(配列番号2)及びヒト化型hzB7v1~hzB7v18(配列番号6~配列番号30)の配列が、C末端に任意のGly-Gly(GG)リンカー(或る特定の配列の表においてXXで表される)を含み得ることに留意されたい。加えて、開示されるVHHドメインのいずれかの残基117(K117)のリジンがアスパラギン酸(K117D)、グルタミン酸(K117E)、又はアルギニン(K117R)で置換されていてもよいことが示される。hzB7v41と命名されたヒト化VHH(配列番号100)は、K117R置換を含む(或る特定の配列の表において太字及び下線で示す)。
【0199】
CD8a VHH-hIgG1-FcとしてフォーマットされたCD8a結合ポリペプチドの結合を、単離ヒトCD8+T細胞でフローサイトメトリーによって評価した。単離T細胞をFACSバッファー(PBS、1%BSA、0.1%NaN
3、pH7.4)中、1ウェル当たり30000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。トランスフェクションしていないHEK293F細胞をCD8aネガティブコントロールとして使用し、別のプレートに1ウェル当たり30000個の細胞でプレーティングした。次いで、試験ポリペプチドを最終濃度1000nMの2倍に希釈し、3倍、4倍、及び5倍の段階希釈を行った。ポリペプチドを含まないFACSバッファーを二次抗体のみのコントロールとして使用した。ポリペプチド希釈物を等容量の細胞に添加し、アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。1ウェル当たり150μLのFACSバッファーで2回洗浄した後、結合を検出するために2000倍希釈した蛍光標識抗ヒトFc抗体と、対比染色として100倍希釈した蛍光標識抗CD4抗体(クローンOKT4)とを含むFACSバッファーに細胞を再懸濁した。アッセイプレートを4℃で20分間インキュベートした。1ウェル当たり150μLのFACSバッファーで更に1回洗浄した後、結合したポリペプチドをCD4-細胞でフローサイトメトリーによって検出した。CD8a結合は、この集団において647nmでの蛍光中央値として測定した。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。フローサイトメトリー検出は、IntellicytのiQue Plusで行った。得られた最大結合(Bmax)値及び結合親和性(K
d)を表2及び表3に示し、結合曲線を
図1A及び
図1B並びに
図2A及び
図2Bに示す。より高いBmax値は、一般により遅いオフレートを示し、同様に、より低いBmax値は、より速いオフレートを示す。
【0200】
【0201】
【0202】
図1A及び
図2A、並びに上記の表に示されるように、試験したCD8結合ポリペプチドは0.2nM未満、殆どの場合は0.1nM未満の親和性でヒトCD8+T細胞に結合した。
図1B及び
図2Bに示されるように、親B7-xELL-Fcを除く全ての試験したポリペプチドが、293コントロール細胞に対して有意な結合を示さず、B7-xELL-Fcは、CD8+T細胞への結合と比較して2000倍超低い親和性でコントロール細胞に結合した。これらの結果から、CD8a結合ポリペプチドがCD8に特異的に結合することが実証された。
【0203】
実施例2:ヒト及びカニクイザルCD8へのCD8結合ポリペプチドの結合
上記の親ポリペプチド及び2つのヒト化CD8a結合ポリペプチドの結合を、トランスフェクションしたHEK293F細胞でフローサイトメトリーによって評価した。HEK293F細胞を、完全長ヒト又はカニクイザルCD8aに続いてIRES及びGFPをコードするプラスミドで一過的にトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞をFACSバッファー(PBS、1%BSA、0.1%NaN
3、pH7.4)中、1ウェル当たり30000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。次いで、試験ポリペプチドを最終濃度500nMの2倍に希釈し、3倍、4倍、及び5倍の段階希釈を行った。ポリペプチドを含まないFACSバッファーを二次抗体のみのコントロールとして使用した。試験ポリペプチドを等容量の細胞に添加し、アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。1ウェル当たり150μLのFACSバッファーで2回洗浄した後、2000倍希釈した蛍光標識抗ヒトFc抗体を含むFACSバッファーに細胞を再懸濁した。アッセイプレートを4℃で20分間インキュベートした。150μLのFACSバッファーで更に1回洗浄した後、結合したポリペプチドをフローサイトメトリーによって検出した。フローサイトメトリー検出は、IntellicytのiQue Plusで行った。CD8a発現トランスフェクション細胞をGFP陽性としてゲーティングし、ポリペプチド結合を647nmでの蛍光中央値として測定した。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。結果を表4及び表5、並びに
図3A及び
図3Bに示す。
【0204】
【0205】
【0206】
図3A及び表4に示されるように、試験したCD8結合ポリペプチドは、ヒトCD8aを発現するトランスフェクションHEK293F細胞に0.6nM未満の親和性で結合した。
図3B及び表5に示されるように、試験したCD8結合ポリペプチドは、カニクイザルCD8aを発現するHEK293F細胞に0.1nM未満の親和性で結合した。
【0207】
実施例3:CD8結合ポリペプチドは、ヒト及びカニクイザル免疫細胞に結合する
上記の親ポリペプチド及び2つのヒト化CD8a結合ポリペプチドの結合を、単離ヒトT細胞及び単離カニクイザルPBMCでフローサイトメトリーによって評価した。単離細胞をFACSバッファー(PBS、1%BSA、0.1%NaN
3、pH7.4)中、カニクイザルPBMCについては1ウェル当たり200000個の細胞、ヒトT細胞については1ウェル当たり50000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。次いで、試験ポリペプチドを最終濃度250nMの2倍に希釈し、4倍の段階希釈を行った。FACSバッファー単独を二次抗体のみのコントロールとして使用した。ポリペプチド希釈物を等容量の細胞に添加し、アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。1ウェル当たり150μLのFACSバッファーで2回洗浄した後、CD8a結合を検出するために1000倍希釈した蛍光標識抗ヒト抗体、及び40倍希釈した蛍光標識抗CD3抗体(クローンSP34.2)、及び100倍希釈した抗CD4抗体(クローンOKT4)を含むFACSバッファーに細胞を再懸濁した。アッセイプレートを4℃で20分間インキュベートした。150μLのFACSバッファーで更に1回洗浄した後、CD8a結合をCD3+CD4-細胞でフローサイトメトリーによって検出した。結合は、これらの細胞集団において647nmでの平均蛍光として測定した。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。フローサイトメトリー検出は、ACEA BiosciencesのNovocyte-Quanteonフローサイトメーターで行った。結果を表6及び表7、並びに
図4A及び
図4Bに示す。
【0208】
【0209】
【0210】
図4A及び表6に示されるように、試験したCD8結合ポリペプチドは、ヒトCD3+CD4-T細胞に0.1nM未満の親和性で結合した。
図4B及び表7に示されるように、試験したCD8結合ポリペプチドは、カニクイザルCD3+CD4-細胞に0.08nM未満の親和性で結合した。
【0211】
CD8a結合ポリペプチドhzB7v15-xELL-Fcの結合を、ヒトleukopak T細胞及びカニクイザルPBMCでフローサイトメトリーによって評価した。leukopak T細胞をCTL anti-aggregate wash解凍液で解凍し、96ウェルU型底アッセイプレートにプレーティングした。細胞を400×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。hzB7v15-xELL-Fcを200nMの初期濃度から10ウェルにわたって3倍段階希釈した。FACSバッファーを非結合コントロールとして使用し、プレートを4℃で30分間インキュベートした。アッセイプレートを400×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を1回洗浄し、染色パネル(抗CD3抗体クローンOKT3-BV605(1:200)、抗CD4抗体クローンOKT4-BV785(1:200)、及び蛍光標識抗ヒトFc抗体(1:500))に4℃で30分間再懸濁した。アッセイプレートを400×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を150μLのFACSバッファーで洗浄し、70μLのFACSバッファーで再懸濁して、Novocyteフローサイトメーターで読み取った。結果を下記表8及び
図5Aに示す。
【0212】
カニクイザルPBMCをCTL anti-aggregate wash解凍液で解凍し、96ウェルU型底アッセイプレートに1ウェル当たり500000個の細胞でプレーティングした。細胞を400×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。Alexa Fluor 647化学標識hzB7v15-xELL-Fc(AF647-hzB7v15-xELL-Fc)を30nMの初期アッセイ濃度から10ウェルにわたって3倍段階希釈した。FACSバッファーを非結合コントロールとして使用し、プレートを4℃で20分間インキュベートした。アッセイプレートを400×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を150μLのPBSバッファーで洗浄し、40μLのFACSバッファーで再懸濁し、FACSバッファー中の10μLのBV染色バッファー(Brilliant Stain Buffer Plus;BD Biosciences)、及び50μLの抗体混合物(抗CD3抗体クローンSP34-BV421(1:25)、抗CD4抗体クローンOKT4-BV785(1:100)、及び抗CD16抗体クローン3G8-PE(1:100))を細胞に添加した。細胞を4℃で20分間染色した。アッセイプレートを400×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を150μLのFACSバッファーで洗浄し、70μLのFACSバッファーで再懸濁して、Novocyteフローサイトメーターで読み取った。結果を下記表9及び
図5Bに示す。
【0213】
【0214】
【0215】
図5A及び表8に示されるように、hzB7v15-xELL-Fcは、ヒトCD3+CD4-T細胞に0.1nM未満の親和性で結合した。
図5B及び表9に示されるように、hzB7v15-xELL-Fcは、カニクイザルCD3+CD4-CD16-細胞に0.06nM未満の親和性で結合した。
【0216】
実施例4:弱毒化IL-2のCD8a標的化は、活性を回復させる
CD8a結合VHH hzB7v15又はVHH hzB7v31ドメインと、Fc領域と、Fc領域のC末端に融合した弱毒化IL-2とを含むポリペプチドのCD8a標的化IL-2活性をIL-2レポーター細胞において評価した。融合タンパク質は二量体であり、ノブFc領域に融合したVHH hzB7v15ドメイン又はVHH hzB7v31ドメインと、弱毒化IL-2と、ホールFc領域に融合したVHH hzB7v15ドメイン又はVHH hzB7v31ドメインとを含んでいた。したがって、二量体融合タンパク質は、2つのCD8a結合VHHドメイン、2つのFc領域、及び1つの弱毒化IL-2を含んでいた。HEK-Blue IL2レポーター細胞又はCD8a発現HEK-Blue IL2レポーター細胞を分離し、50mLコニカルチューブに移し、400×gで5分間ペレット化し、新鮮な予め温めたアッセイ培地(DMEM+4.5g/Lグルコース、2mM L-グルタミン+10%熱不活性化FBS+100U/mLペニシリン+100μg/mLストレプトマイシン+100μg/mL normocin)に0.5×106細胞/mlの密度で再懸濁した。ポリペプチド希釈系列をアッセイ培地中で最終濃度の2倍に調製し、1ウェル当たり100μL添加した。100μL中50000個の細胞を平底96ウェル組織培養処理プレートの各ウェルに添加した。プレートをCO2インキュベーターにて37℃で20時間インキュベートした。Quanti-Blue溶液を製造業者の指示に従って調製した(水に再懸濁し、水浴内で30分間かけて37℃に温める)。アッセイプレートを400×gで5分間遠沈した。100μLの上清を新たな平底96ウェル組織培養プレートに移し、100μL/ウェルのQuanti-Blue溶液を添加し、5%CO2インキュベーターにて37℃で1時間~2時間インキュベートした。吸光度をEMaxプレートリーダーにて650nmで読み取った。
【0217】
図6Aに示されるように、弱毒化IL-2を含むCD8a標的化ポリペプチドは、CD8aを発現しない細胞で、標的化されていないVHHドメインと野生型IL-2とを含むポリペプチドよりも有意に低い活性を示した。
図6B及び
図6Cに示されるように、CD8aを発現する細胞においては、CD8a結合VHHと弱毒化IL-2とを含むポリペプチドは、標的化されていないVHHドメインと野生型IL-2とを含むポリペプチドと同様に、強いIL-2活性を示した。標的化されていないVHHドメインと弱毒化IL-2とを含むポリペプチドは、CD8a発現レポーター細胞で有意に低い活性を示した。これらの結果から、このレポーターアッセイにおいては、およそ0.01nM~1nMの広い濃度範囲でIL-2活性をCD8a発現細胞に特異的に標的化し得ることが示される。
【0218】
実施例5:CD8a結合VHHと弱毒化IL-2とを含むポリペプチドによって誘導されるT細胞増殖
CD8a結合VHH hzB7v15のC末端に融合した弱毒化IL-2を含む融合タンパク質のCD8+T細胞増加に対する影響を非ヒト霊長類において試験した。カニクイザルに0.3mg/kgの融合タンパク質を静脈内ボーラス注射した。融合タンパク質投与の前及び7日後に研究動物から全血試料を採取した。各時点の末梢血単核細胞(PBMC)を、Lymphoprep(商標)にて密度遠心分離を用いて単離し、細胞を蛍光標識細胞型特異的抗体の組合せで染色した。T細胞は、CD4又はCD8aを発現し、B細胞マーカーCD20を発現しないCD3+細胞として分類された。制御性T細胞(「Treg」)は、CD25も発現し、CD127のレベルが低下したCD4+T細胞として定義された。CD4+通常T細胞(「CD4+Tcon」)は、CD25を発現せず、正常レベルのCD127を有するCD4+T細胞として定義された。NK細胞は、NKG2Aを発現する非T及び非B細胞として定義された。CD20陽性染色集団は、B細胞として分類された。各PBMC亜集団の絶対細胞数を、フローサイトメトリーを用いて決定し、投与7日後の絶対細胞数を投与前のベースライン数で除算することによって倍率増加を算出した。
【0219】
図7に示されるように、0.3mg/kgのCD8標的化弱毒化IL-2の単回投与は、CD8+T細胞の5.6倍の増加及びNK細胞の2.8倍の増加をもたらしたが、Treg、CD4+通常T細胞、及びB細胞を含むCD8-細胞集団には有意な影響を及ぼさなかった。また、CD8+T細胞数の増加は、T細胞全体の3.2倍の増加をもたらし、全PBMC数は、投与前の細胞数より2.7倍増加した。これらのデータから、CD8a標的化弱毒化IL-2がin vivoでCD8+細胞集団の細胞増殖を特異的に誘導することが示される。
【0220】
実施例6:293F細胞上に発現されたヒトCD8鎖へのCD8a結合ポリペプチドの結合
ヒト化CD8a結合VHHドメインと、Fc領域と、或る特定のポリペプチドにおいては、Fc領域のC末端に融合した突然変異型弱毒化IL-2とを含むポリペプチドの結合を、ヒトCD8a鎖又はCD8b鎖をコードするプラスミドで一過的にトランスフェクションしたHEK293F細胞においてフローサイトメトリーによって評価した。「KiH」と表示される複合体又はポリペプチドは、指定のCD8a結合VHHドメインが各Fc領域のN末端に融合し、突然変異体IL-2が「ノブ」Fc領域のみのC末端に融合したノブインホールヘテロ二量体Fc領域を含む。「KiH」と表示されていない複合体又はポリペプチドは、生理学的条件下でホモ二量体を形成する。トランスフェクションした細胞をFACSバッファー(PBS、1%BSA、0.1%NaN
3、pH7.4)中、1ウェル当たり50000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。次いで、試験ポリペプチドを最終濃度500nMの2倍に希釈し、6倍の段階希釈を行った。ポリペプチドを含まないFACSバッファーを二次抗体のみのコントロールとして使用した。試験ポリペプチドを等容量の細胞に添加し、アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。1ウェル当たり150μLのFACSバッファーで2回洗浄した後、CD8結合を検出するために1000倍希釈した蛍光標識抗ヒトFc抗体を含むFACSバッファーに細胞を再懸濁した。アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。150μLのFACSバッファーで更に1回洗浄した後、CD8に結合したポリペプチドを、トランスフェクションマーカーであるシトリンに陽性の細胞でフローサイトメトリーによって検出した。結合は、これらの細胞集団において647nmでの平均蛍光強度(MFI)として測定した。フローサイトメトリー検出は、IntelliCytのiQue Screener Plusで行った。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。結果を表10、並びに
図8A及び
図8Bに示す。
【0221】
【0222】
図8A及び表10に示されるように、試験したCD8a結合ポリペプチドは、低ナノモル範囲の親和性でヒトCD8aに結合した。
図8Bから、ポリペプチドが低いないし無視し得る親和性でヒトCD8bに結合したことが示される。
【0223】
実施例7:T細胞へのCD8a結合ポリペプチドの結合
ヒト化CD8a結合VHHドメインと、Fc領域と、或る特定のポリペプチドにおいては、Fc領域のC末端に融合した突然変異型弱毒化IL-2とを含むポリペプチドの結合を、単離ヒトT細胞においてフローサイトメトリーによって評価した。「KiH」と表示される複合体又はポリペプチドは、指定のCD8a結合VHHドメインが各Fc領域のN末端に融合し、突然変異体IL-2が「ノブ」Fc領域のみのC末端に融合したノブインホールヘテロ二量体Fc領域を含む。「KiH」と表示されていない複合体又はポリペプチドは、生理学的条件下でホモ二量体を形成する。単離細胞をFACSバッファー(PBS、1%BSA、0.1%NaN
3、pH7.4)中、1ウェル当たり50000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。次いで、試験ポリペプチドを最終濃度200nMの2倍に希釈し、5倍の段階希釈を行った。ポリペプチドを含まないFACSバッファーを二次抗体のみのコントロールとして使用した。試験ポリペプチドを等容量の細胞に添加し、アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。1ウェル当たり150μLのFACSバッファーで2回洗浄した後、CD8a結合を検出するために1000倍希釈した蛍光標識抗ヒトIgG抗体と、蛍光標識抗CD4抗体(クローンOKT4、1:200)とを含むFACSバッファーに細胞を再懸濁した。生細胞と死細胞とを区別するためにヨウ化プロピジウム(PI)を1:2000で添加した。アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。150μLのFACSバッファーで更に1回洗浄した後、CD8aに結合したポリペプチドをPI-CD4-細胞及びPI-CD4+細胞でフローサイトメトリーによって検出した。結合は、これらの細胞集団において647nmでの平均蛍光強度(MFI)として測定した。フローサイトメトリー検出は、ACEA BiosciencesのNovocyte-Quanteonフローサイトメーターで行った。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。結果を表11、並びに
図9A及び
図9Bに示す。
【0224】
【0225】
図9A及び表11に示されるように、試験したCD8a結合ポリペプチドは、低ナノモルないしサブナノモルの範囲の親和性でヒトCD8 T細胞に結合した。
図9Bから、ポリペプチドがヒトCD4 T細胞に結合しなかったことが示される。
【0226】
実施例8:ヒト及びカニクイザルCD8aへのCD8a結合ポリペプチドの結合
xELL fc領域に融合したヒト化CD8a結合VHHドメインを含む4つのポリペプチドの結合を、単離ヒトT細胞及び単離ヒト又はカニクイザル末梢血単核細胞(PBMC)でフローサイトメトリーによって評価した。単離細胞をFACSバッファー(PBS、1%BSA、0.1%NaN
3、pH7.4)中、カニクイザルPBMCについては1ウェル当たり200000個の細胞、ヒトT細胞については1ウェル当たり100000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。次いで、試験ポリペプチドを最終濃度25nM又は50nMの2倍に希釈し、3倍又は5倍の段階希釈物を調製した。FACSバッファー単独を二次抗体のみのコントロールとして使用した。ポリペプチド希釈物を等容量の細胞に添加し、アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。1ウェル当たり150μLのFACSバッファーで2回洗浄した後、CD8a結合を検出するために1000倍希釈した蛍光標識抗ヒトIgG抗体と、蛍光標識抗CD3抗体(クローンSP34.2、1:50、PBMC調製のためのみ)と、蛍光標識抗CD4抗体(クローンOKT4、1:100)とを含むFACSバッファーに細胞を再懸濁した。生細胞と死細胞とを区別するためにヨウ化プロピジウム(PI)を1:2000で添加した。アッセイプレートを4℃で30分間インキュベートした。150μLのFACSバッファーで更に1回洗浄した後、CD8a結合をPI-(CD3+)CD4-細胞でフローサイトメトリーによって検出した。結合は、これらの細胞集団において647nmでの平均蛍光強度(MFI)として測定した。フローサイトメトリー検出は、ACEA BiosciencesのNovocyte-Quanteonフローサイトメーターで行った。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。結果を表12及び表13、並びに
図10A~
図10Dに示す。
【0227】
【0228】
【0229】
図10A及び
図10E、並びに表12に示されるように、試験したCD8a結合ポリペプチドは、0.1nM以下の親和性でヒトCD8 T細胞に結合した。
図10B及び
図10Fから、これらのポリペプチドがヒトCD4 T細胞に結合しなかったことが示される。
図10C及び表13に示されるように、試験したCD8a結合ポリペプチドは、0.04nM未満の親和性でカニクイザルCD8 T細胞に結合した。
図10D及び
図10Hから、ポリペプチドがカニクイザルCD4 T細胞に結合しなかったことが示される。
【0230】
実施例9:CD8a結合VHHと弱毒化IL-2とを含むポリペプチドによって誘導される特異的IL-2シグナル伝達
CD8結合VHHドメイン(hzB7v31、配列番号92、又はhzB7v41、配列番号100)と、Fc領域と、Fc領域のC末端に融合した突然変異体弱毒化IL-2とを含むポリペプチドのCD8a標的化IL-2活性をpSTAT5アッセイにおいて評価した。コントロールタンパク質には、CD8a結合VHHドメイン及びFc領域を含むが、IL-2を含まないポリペプチド、非標的化VHHと、Fc領域と、突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質、並びに野生型IL-2が含まれていた。リン酸化STAT5(pSTAT5)のレベル又はpSTAT5を発現する細胞の割合の増加は、IL-2受容体連結及びシグナル伝達の近接読み出し値として細胞内フローサイトメトリーによって測定した。富化ヒトT細胞を完全増殖培地(RPMI、10%FBS、1%anti-anti)中、1ウェル当たり500000個の細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。次いで、試験ポリペプチドを最終濃度200nM又は50nMの2倍に希釈し、4倍の段階希釈を行った。段階希釈物を細胞に添加し、37℃で15分間インキュベートした。次いで、細胞を100μLのCytofix固定バッファー(BD)中にて4℃で30分間固定した。次いで、細胞を200μLのFACSバッファー中で1回洗浄し、Perm buffer III(BD Phosflow)中にて4℃で30分間透過処理した。透過処理した細胞を1倍Permeabilization Buffer(eBioscience)中で合計3回洗浄した後、CD4(OKT4、1:100)、CD3(SP34-2、1:50)、FoxP3(236A/E7、1:40)、pSTAT5(SRBCZX、1:70)、CD25(M-A251、1:500)及びCD8(RPA-T8、1:4000)に対する蛍光標識抗体を含有する1倍Permeabilization Buffer中にて4℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を150μLのFACSバッファーで洗浄し、ACEA BiosciencesのNovocyte-Quanteonフローサイトメーターを用いて分析した。IL-2シグナル伝達は、中央蛍光強度、又はCD8 T細胞(CD3+CD8+)若しくは制御性T細胞(Treg、CD3+CD4+FoxP3+)上のpSTAT5を検出する蛍光標識抗体で染色された陽性細胞の割合の増加によって定量化した。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。
【0231】
図11A及び
図11Cに示されるように、CD8a結合VHH hzB7v31又はVHH hzB7v41ドメインと、Fc領域と、Fc領域のC末端に融合した突然変異体弱毒化IL-2とを含む試験したポリペプチドは、0.03nM未満のEC
50で濃度依存的にpSTAT5のレベルの増加又はpSTAT5陽性CD8 T細胞の割合の増加を誘導した。野生型IL-2(非標的化)は、およそ1.6nMのEC
50で約50倍低い活性を示した。また、野生型IL2は、およそ2.5pMのEC
50でTregにおいてIL-2受容体シグナル伝達を誘導したが、Treg pSTAT5又はpSTAT5陽性CD4 T細胞の割合の検出可能な増加は、CD8a標的化弱毒化IL-2によって誘導されなかった(
図11A~
図11D)。CD8a-hzB7v31を含み、IL-2を含まないポリペプチドも、標的化されていないVHHと、Fc領域と、突然変異体弱毒化IL-2とを含むポリペプチドも、試験した細胞型のいずれにおいてもpSTAT5レベルの検出可能な増加を誘導せず、弱毒化IL-2がIL-2受容体シグナル伝達活性を誘導するために細胞への標的化を必要とすることが示された(
図11A~
図11D)。
【0232】
実施例10:CD8a結合VHHと弱毒化IL-2とを含むポリペプチドによって誘導されるヒト腫瘍浸潤T細胞及び健常ドナーT細胞のT細胞増殖
CD8a結合VHH hzB7v31ドメインと、Fc領域と、Fc領域のC末端に融合した突然変異体弱毒化IL-2とを含むポリペプチドの活性を、ヒト癌患者からの解離腫瘍細胞(DTC)試料又は健常ヒトドナー血液からのPBMCを用いた増殖アッセイにおいて更に評価した。DTC単細胞懸濁液を頭頸部、腎臓又は結腸の腫瘍の生検からヒト腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)を用いて生成した。次いで、DTC又はPBMCを製造業者の推奨プロトコルに従って増殖色素CellTrace Violet(Thermo)で標識した。10nMの試験ポリペプチド又は200nMの濃度から開始した試験ポリペプチドの5倍希釈物を添加した完全増殖培地(RPMI、10%FBS、1%anti-anti)中で細胞をインキュベートした。コントロールタンパク質には、VHH-hIgG1-xELL FcとしてフォーマットされたCD8a-hzB7v31を含むポリペプチド、非標的化VHH-hIgG1-xELL Fcと、突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質、及び野生型IL-2が含まれていた。培養6日後又は7日後に、細胞亜集団をCD3(Hit3、1:100)、CD4(OKT4、1:200)、CD8(RPA-T8、1:200)、及びCD45(HI30、1:100)に対する蛍光タグ付き抗体、並びに生細胞と死細胞とを区別するためにヨウ化プロピジウム(PI、1:2000)で標識した。T細胞は、CD4又はCD8aのいずれかを発現するCD45+CD3+PI-細胞として分類された。これらのT細胞亜集団の細胞数を6日目又は7日目にフローサイトメトリーを用いて定量した。フローサイトメトリー検出は、ACEA BiosciencesのNovocyte-Quanteonフローサイトメーターで行った。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。CD8a-hzB7v31-Fc-xELLで処理した試料に対して細胞数を正規化し、IL-2を含まず、細胞増殖を引き起こさないコントロールポリペプチドに対する細胞数の倍率増加を決定した。パーセント増殖は、親非分裂細胞ピークよりも低いCellTrace Violet蛍光強度を有する細胞のパーセントを定量化することによって決定した。
【0233】
図12A及び
図12Cに示されるように、CD8a結合VHH hzB7v31ドメインと、Fc領域と、Fc領域のC末端に融合した突然変異体弱毒化IL-2とを含む試験したポリペプチドは、解離腫瘍試料及び健常PBMCにおいてCD8 T細胞の増殖を誘導した。また、野生型IL2は、CD8(
図12A及び
図12C)及びCD4(
図12B)の両方のT細胞の増殖を誘導したが、CD8a標的化突然変異体弱毒化IL-2は、CD4 T細胞の増殖を誘導しなかった。CD8a-hzB7v31を含み、IL-2を含まないポリペプチドも、標的化されていないVHHと、Fc領域と、突然変異体弱毒化IL-2とを含むポリペプチドも、CD8又はCD4 T細胞の増殖の検出可能な増加を誘導せず、弱毒化IL-2が増殖等のIL-2受容体シグナル伝達活性を誘導するために細胞への標的化を必要とすることが示された。
【0234】
実施例11:CD8a結合VHHと弱毒化IL-2とを含むポリペプチドによって誘導されるカニクイザルPBMC亜集団の細胞増加
CD8a結合VHH hzB7v15と、xELL P329Gと、ノブインホールヘテロ二量体Fc領域と、「ノブ」FcのC末端に融合した弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質のin vivo細胞増加に対する影響を非ヒト霊長類において試験した。カニクイザルに1.0mg/kgの融合タンパク質を静脈内ボーラス注射した。融合タンパク質投与の前及び7日後に研究動物から全血試料を採取した。各時点のPBMCを、Lymphoprep(商標)にて密度遠心分離を用いて単離し、細胞を蛍光標識細胞型特異的抗体の組合せで染色した。T細胞は、CD4又はCD8aを発現し、B細胞マーカーCD20を発現しないCD3+細胞として分類された。制御性T細胞(「Treg」)は、CD25も発現し、CD127のレベルが低下したCD4+T細胞として定義された。CD4+通常T細胞(「CD4+Tcon」)は、CD25を発現せず、正常レベルのCD127を有するCD4+T細胞として定義された。NK細胞は、NKG2Aを発現する非T及び非B細胞として定義され、CD16には陽性又は陰性のいずれかであった。CD20陽性染色集団は、B細胞として分類された。各PBMC亜集団の絶対細胞数を、フローサイトメトリーを用いて決定し、投与7日後の絶対細胞数を投与前のベースライン数で除算することによって倍率増加を算出した。Ki67発現を、上記のPBMC亜集団において付加的な固定、透過処理及び染色工程を用いて測定した。簡潔に述べると、細胞を細胞表面マーカーについて蛍光標識細胞型特異的抗体の組合せで染色した後、FoxP3 Transcription Factor Staining Buffer Set(eBioscience)を用いて固定し、透過処理した。次いで、FoxP3及びKi67を特異的蛍光標識抗体で検出した。T細胞は、CD4又はCD8aを発現し、NK細胞マーカーNKG2Aを発現しないCD3+細胞として分類された。制御性T細胞(「Treg」)は、CD25及びFoxP3も発現するCD4+T細胞として定義された。CD4+通常T細胞(「CD4+Tcon」)は、CD25又はFoxP3を発現しないCD4+T細胞として定義された。NK細胞は、NKG2Aを発現する非Tとして定義され、CD16には陽性又は陰性のいずれかであった。フローサイトメトリー検出は、ACEA BiosciencesのNovocyte-Quanteonフローサイトメーターで行った。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いてデータをプロットし、分析した。7日目の全血1mL当たりの細胞数をベースライン(投与前)の全血1mL当たりの細胞数で除算することによって倍率変化を算出した。
【0235】
図13Aに示されるように、1mg/kgのCD8a標的化弱毒化IL-2の単回投与は、CD8 T細胞の5倍の増加、並びにCD8a発現CD16+又はCD16-NK細胞のそれぞれ3.9倍及び4.7倍の増加をもたらした。Treg、CD4+通常T細胞及びB細胞を含むCD8a陰性細胞集団の数は、投与前の採血と7日目との間に有意に増加しなかった。
図13Bから、in vivoでのCD8a発現細胞集団の特異的な増加が増殖マーカーKi67の特異的な増加を伴っていたことが示される。Ki67+増殖CD8 T細胞の割合は、ベースラインの6%から7日目の58%まで増加し、CD16+及びCD16-NK細胞集団は、同じ時間枠で40%~53%のKi67+細胞の平均増加を示した。Treg及びCD4+通常T細胞を含むCD8a陰性細胞集団内のKi67+集団の割合は変化しなかった。これらのデータから、CD8a標的化弱毒化IL-2がCD8a陽性細胞集団の細胞増殖をin vivoで特異的に誘導したことが示される。
【0236】
実施例12:CD8a結合VHHと弱毒化IL-2とを含むポリペプチドによって誘導されるCD8 T細胞の細胞傷害活性及びヒト癌細胞に対する抗体依存性細胞傷害作用の増強
CD8a結合VHH hzB7v31ドメインと、xELLノブインホールヘテロ二量体Fc領域と、「ノブ」Fc領域のC末端に融合した弱毒化IL-2とを含む融合体の活性を、富化CD8 T細胞を用いた腫瘍細胞死滅アッセイ及びセツキシマブと組み合わせた抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)アッセイにおいて更に評価した。コントロールタンパク質には、非標的化VHH-hIgG1-xELL Fcと突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質、及び野生型IL-2が含まれていた。CD8 T細胞死滅アッセイについては、健常ヒトドナー血液からのPBMCをCD8 T細胞の単離に使用し、野生型IL-2からの付加的なサイトカイン支持、又はCD8a結合VHH hzB7v31-hIgG1-xELL Fcと、突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質(それぞれ1nM)の存在下又は非存在下において、培養プレート上に1μg/mLでコーティングしたCD3に対する抗体(クローン:OKT3)で富化細胞を3日間刺激した。標的細胞死滅アッセイの当日に、A431細胞をCYTO-ID red長期細胞トレーサー(Enzo)で標識した後、100μL中1ウェル当たり4000個の細胞で96ウェル平底プレートにプレーティングし、4時間接着させた。予め刺激したCD8 T細胞をPBS中で1回洗浄し、標識A431標的細胞に指定の異なるエフェクター対標的細胞比(20:1、10:1及び5:1)で添加した。Caspase-3/7 Green Dye(Sartorius)を各ウェルに添加して細胞死を検出した。Incucyteイメージャーを用いてCaspase-3/7及びCYTO-ID redの重なりを定量化することにより、20時間後にA431の死滅を決定した。
【0237】
ADCCアッセイについては、A431細胞をCYTO-ID red長期細胞トレーサー(Enzo)で標識した後、100μL中1ウェル当たり10000個の細胞で96ウェル平底プレートにプレーティングし、4時間接着させた。ヒトPBMCを解凍し、フローサイトメトリーによってNK細胞頻度について試験した。各ウェルに対し、25μLの培地について最終希釈率2000倍のIncucyte(商標) Caspase-3/7 Green Dye for Apoptosis(Sartorius)25μL、又は25μLの培地について最終濃度20nMのADCC抗体セツキシマブ、最終濃度1nMの野生型組換えIL-2、又は最終濃度1nMのIL-2変異体融合ポリペプチド、及びA431細胞1個当たり10個又は5個のNK細胞の濃度に調整したヒトPBMC 25μLとした。細胞を室温で10分間沈降させた後、プレートをイメージングのために37℃のIncucyteイメージャーに入れた。Caspase-3/7及びCYTO-ID redの重なりを定量化することにより、15時間後にA431の死滅を決定し、最大死滅を20nMセツキシマブによって規定した。GraphPad Prism分析ソフトウェアを用いて全てのデータをプロットし、分析した。
【0238】
図14A及び
図14Bに示されるように、CD8a結合VHH hzB7v31ドメインと、Fc領域と、Fc領域のC末端に融合した突然変異体弱毒化IL-2とを含む試験したポリペプチドは、異なるエフェクター対標的細胞比でCD8 T細胞の相対細胞毒性を増強し(
図14A)、最適以下のエフェクター対標的細胞比では、EGFR陽性A431標的細胞に対するPBMCのセツキシマブ駆動ADCC活性の改善を助長した(
図14B)。CD8 T細胞による活性の程度は、野生型IL-2で観察された活性よりも3倍~4倍高かったが、ADCCアッセイにおいては同等であった。非標的化VHH-hIgG1-xELL Fcと突然変異体弱毒化IL-2とを含む融合タンパク質は、より低いエフェクター対標的細胞比のADCC活性を改善することができず、弱毒化IL-2がIL-2受容体シグナル伝達活性及び増強された細胞毒性を誘導するためにエフェクター細胞への標的化を必要とすることが示された。
【0239】
本開示は、本発明の趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。したがって、上述の実施形態は、全ての点で例示としてみなされるべきであって、本開示を限定するものとはみなされない。したがって、本開示の範囲は、上述の詳細な説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示されるため、特許請求の範囲の意味及び均等の範囲内にある全ての変更は、本明細書に含まれることが意図される。
【0240】
【配列表】
【国際調査報告】