(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】治療用NK細胞集団
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240711BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240711BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17
A61K39/395 T
A61K31/675
A61K31/7076
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K38/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503353
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022037462
(87)【国際公開番号】W WO2023003809
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501127637
【氏名又は名称】ガミダ セル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロディ トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】ゲフィン ヨーナ
(72)【発明者】
【氏名】パト アヴィアド
(72)【発明者】
【氏名】リフマン ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】コーヘン シェリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
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4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
臨床使用のためにナチュラルキラー(NK)細胞画分を増殖させて凍結保存するための方法が提供される。具体的には、癌及び他の疾患の治療のための細胞移植及び細胞注入用途に利用可能な、増殖させて凍結保存したNK細胞画分を提供する方法及びその使用に関するプロトコルが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有核細胞集団を含むNK細胞画分であって、
前記集団が、少なくとも1.0×10
6個の有核細胞を含み、且つ
前記集団中の細胞の少なくとも約70%が生細胞であり、
さらに、
前記集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
前記集団中の細胞の約0.5%以下がCD3+であり、
前記集団中の細胞の約10%以下がCD19+であり、
前記集団中の細胞の約10%以下がCD14+であり、
前記集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、
前記集団中の細胞の約27%以下がLAG3+であり、
前記集団中の細胞の約32%以下がCD200R+であり、
前記集団中の細胞の約25%以下がCD57+であり、
前記集団中の細胞の少なくとも約10%がCD16+であり、且つ
前記集団中の細胞の少なくとも約10%がCD62L+である、
NK細胞画分。
【請求項2】
前記集団中の細胞の少なくとも約90%がCD56+である、請求項1に記載のNK細胞画分。
【請求項3】
前記集団中の細胞の約90%~約95%がCD56+である、請求項1又は2に記載のNK細胞画分。
【請求項4】
前記集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD3+である、請求項1~3のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項5】
前記集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+/CD3-であり、且つ
前記集団中の細胞の約0.5%以下がCD56-/CD3+である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項6】
前記集団中の細胞の少なくとも約99%がCD56+/CD3-である、請求項1~5のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項7】
前記集団中の細胞の少なくとも約15%がCD62L+である、請求項1~6のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項8】
前記集団中の細胞の約18%~約70%がCD62L+である、請求項1~7のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項9】
前記集団中の細胞の少なくとも約20%がCD16+である、請求項1~8のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項10】
前記集団中の細胞の約20%~約60%がCD16+である、請求項1~9のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項11】
前記集団中の細胞の約1%以下がLAG3+であり、
前記集団中の細胞の約1.5%以下がCD200R+であり、且つ
前記集団中の細胞の約2.5%以下がCD57+である、
請求項1~10のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項12】
前記集団中の細胞の約3%以下がCD56+/LAG3+であり、
前記集団中の細胞の約11%以下がCD56+/CD200R+であり、
前記集団中の細胞の約4%以下がCD56+/CD57+である、
請求項1~11のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項13】
前記集団中の細胞の少なくとも約43%がCD56+/CD16+である、請求項1~12のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項14】
前記集団中の細胞の少なくとも約57%がCD56+/CD16+である、請求項1~13のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項15】
前記集団中の細胞の少なくとも約78%がCD56+/CD62L+である、請求項1~14のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項16】
前記集団中の細胞の約77%以下がNKp80+であり、好ましくは前記集団中の細胞の約15.77%以下がNKp80+である、請求項1~15のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項17】
i)少なくとも約17.5×10
8個の有核細胞、
ii)少なくとも約35×10
8個の有核細胞、
iii)少なくとも約2.5×10
9個の有核細胞、
iv)少なくとも約5×10
9個の有核細胞、
v)少なくとも約1.25×10
7個の有核細胞、
vi)少なくとも約2.5×10
7個の有核細胞、
vii)少なくとも約5×10
7個の有核細胞、又は
viii)少なくとも約1×10
8個の有核細胞
を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項18】
予め凍結し、続いて解凍したものである、請求項1~17のいずれか一項に記載のNK細胞画分。
【請求項19】
i)請求項1~17のいずれか一項に記載のNK細胞画分と、
ii)DMSOと
を含み、DMSOの濃度が約10%v/vである、凍結保存NK細胞画分。
【請求項20】
i)約-80℃で少なくとも約6週間にわたり安定である、及び/又は
ii)約-150℃で少なくとも約12ヵ月にわたり安定である、
請求項18に記載の凍結保存NK細胞画分。
【請求項21】
請求項1~7のいずれか一項に記載のNK細胞画分を調製する方法であって、
(a)対象にとって同種異系のNK細胞とCD3+細胞とを含むアフェレーシス産物を入手することと、
(b)前記アフェレーシス産物をCD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とに分離することと、
(c)前記CD3+細胞画分の細胞を放射線照射によって不活性化することと、
(d)前記CD3枯渇細胞画分を、前記不活性化した照射CD3+細胞画分と共に、細胞増殖可能な条件下でex vivo培養することであって、前記条件が、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドを1.0mM~10mMの量で提供することを含み、
(e)ステップ(d)の6~10日後に、前記CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することにより、増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、
(f)ステップ(d)の14~16日後に、前記CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を回収することと、
(g)ステップ(f)の前記CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を洗浄し、濃縮することと
を含み、それによって前記NK細胞画分を作製する方法。
【請求項22】
前記アフェレーシス産物が、ヒトNK細胞画分及びCD3+細胞画分を含むヒトアフェレーシス産物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記CD3アゴニストが、OKT3である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
細胞増殖を可能にするための前記条件が、
i)約10%(v/v)の濃度のヒト血清
ii)約20ng/mlの濃度のIL-15、
iii)約1μg/mlの濃度のOKT3、
iv)約7.0mMの濃度のニコチンアミド、及び
v)最小必須細胞培養培地を含む栄養素
を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(d)において前記CD3枯渇細胞及び前記照射CD3+細胞が1:1の比で播種される、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(d)の前記培養が、フラスコ内にて、
i)0.30~0.40×10
6個のCD3枯渇細胞/ml及び0.30~0.40×10
6個の照射CD3+細胞/ml、
ii)0.35×10
6個のCD3枯渇細胞/ml及び0.35×10
6個の照射CD3+細胞/ml、
iii)1フラスコ当たり400~900×10
6個のCD3枯渇細胞/ml及び400~900×10
6個の照射CD3+細胞、又は
iv)1フラスコ当たり700×10
6個のCD3枯渇細胞/ml及び700×10
6個の照射CD3+細胞
で実施される、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
NK細胞画分の凍結保存方法であって、
(a)請求項1~17のいずれか一項に記載のNK細胞画分又は請求項21~26のいずれか一項に記載の方法によって作製されたNK細胞画分をDMSO不含凍結保存緩衝液に懸濁することと、
(b)DMSOを10%v/vになるように加えることと、
(c)前記細胞の温度を-120℃に下げることと、
(d)前記凍結保存NK細胞を-120℃以下の温度で貯蔵することと
を含む方法。
【請求項28】
解凍したNK細胞画分の調製方法であって、
(a)請求項19又は20に記載の凍結保存NK細胞画分又は請求項27に記載の方法によって作製された凍結保存NK細胞画分を37℃の水浴中で解凍することと、
(b)ステップ(a)において解凍した前記凍結保存NK細胞画分を注入溶液で希釈することとを含み、
それによって解凍した凍結保存NK細胞画分を作製する方法。
【請求項29】
血液学的疾患の治療を必要としているヒト対象の血液学的疾患を治療する方法であって、
(a)少なくとも1つの抗癌モノクローナル抗体を前記対象に投与することと、
(b)少なくとも1つの免疫抑制剤を前記対象に投与することと、
(c)請求項1~18のいずれか一項に記載のNK細胞画分、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法によって作製されたNK細胞画分、又は請求項28に記載の方法によって作製された解凍したNK細胞画分を投与することと、
(d)IL-2を前記対象に投与することと
を含む方法。
【請求項30】
ステップ(c)が、前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の第1の用量を投与すること、及び2日後に、前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の第2の用量を投与することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(i)前記第1の用量及び前記第2の用量が、各々、少なくとも約1.25×10
7細胞/kgを含み、総用量が2.5×10
7細胞/kgであり、
(ii)前記第1の用量及び前記第2の用量が、各々、少なくとも約2.5×10
7細胞/kgを含み、総用量が少なくとも約5×10
7細胞/kgであり、
(iii)前記NK細胞画分の前記第1の用量及び前記第2の用量が、各々、5×10
7細胞/kgを含み、総用量が1×10
8細胞/kgであり、又は
(iv)前記NK細胞画分の前記第1の用量及び前記第2の用量が、各々、1×10
8細胞/kgを含み、総用量が2×10
8細胞/kgである、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記免疫抑制剤が、化学療法免疫抑制剤、照射又はこれらの任意の組み合わせである、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記血液学的疾患が、血液学的悪性腫瘍である、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記血液学的疾患が、多発性骨髄腫である、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記血液学的疾患が非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、好ましくは前記NHLが、
i)CD20陽性B細胞NHL、
ii)濾胞性リンパ腫(FL)、
iii)高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)、
iv)HGBCL・非特定型(HGBCL、NOS)、
v)縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、又は
vi)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)
である、請求項29~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記NHLが、
a)従来療法が失敗した再発性/難治性疾患、
b)過去に少なくとも2ラインの療法を受けた患者、好ましくは、過去に受けた前記少なくとも2ラインの療法のうちの少なくとも1つが化学療法の投与を含み、且つ過去に受けた前記少なくとも2ラインの療法のうちの少なくとも1つが抗CD20モノクローナル抗体の投与を含む患者のNHL、
c)Lugano効果判定基準により定義されるとおりの測定可能な疾患、
d)FLからHGBCLに形質転換したNLHであって、HGBCLへの形質転換後に対象が既に少なくとも1ラインの療法を受けているNLH
のうちの少なくとも1つである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記血液疾患がNHLであり、且つ前記抗癌モノクローナル抗体がリツキシマブであり、好ましくは前記リツキシマブが約375mg/m
2の用量で少なくとも1回投与され、好ましくはリツキシマブが少なくとも3回投与される、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの抗癌モノクローナル抗体が前記対象に少なくとも3回投与され、好ましくは前記少なくとも1つの抗癌モノクローナル抗体が、
前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約10日前、
前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約3日前、及び
前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の12~16日後
に投与される、請求項29~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの免疫抑制剤が、シクロホスファミド及び/又はフルダラビンを含む、請求項29~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの免疫抑制剤が、シクロホスファミド(400mg/m
2)及びフルダラビン(30mg/m
2)の両方を含み、
前記シクロホスファミドが400mg/m
2の用量で投与され、前記フルダラビンが30mg/m
2の用量で投与され、且つ
前記シクロホスファミド及び前記フルダラビンが、
前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約5日前、
前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約4日前、及び
前記NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約4日前
に投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(d)が、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注後であって、
(i)前記NK細胞画分又は前記解凍したNK細胞画分の初回投与当日、
(ii)前記NK細胞画分又は前記解凍したNK細胞画分の初回投与の2日後、及び
(iii)前記NK細胞画分又は前記解凍したNK細胞画分の初回投与の4日後
の各日に6×10
6単位のIL-2を投与することを含む、請求項29~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年7月18日に出願された米国仮特許出願第63/223,024号に対する優先権、及びその利益を主張するものであり、この内容は全体として参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞の注入は、血液学的悪性腫瘍を含めた癌を有する患者の免疫療法的治療に魅力的な手法に相当する。しかしながら、NK細胞の持続性が短期間であること、及び注入後にそのエフェクター機能が損なわれることにより、有効性は限られている。末梢血単核球に占めるNK細胞の数が不十分であること、及び養子移入したNK細胞がin vivoで増殖する能力、並びに腫瘍微小環境にホーミングしてそこに保持される能力が限られていることが、現在までのところその有効性が限られている一因であるように思われる。従って、当該技術分野では、得られたNK細胞画分がin vivo注入時にホーミング、保持率及び増殖活性の増加を呈する一方で、その殺傷活性は維持されるようにNK細胞を培養して増殖させることに関する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、血液学的悪性腫瘍及び他の(例えば、悪性)病態の治療のための、ナチュラルキラー(NK)細胞を培養する方法、増殖させたNK細胞集団を必要としている対象への投与用の増殖させたNK細胞集団の選択及び臨床セッティングで移植に好適なex vivoで増殖させたNK細胞画分の治療的使用に関する。本発明はまた、増殖させたNK細胞画分を含む組成物及びキットも想定する。
【0004】
本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、且つ集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、集団中の細胞の約0.5%以下がCD3+であり、集団中の細胞の約10%以下がCD19+であり、集団中の細胞の約10%以下がCD14+であり、集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、集団中の細胞の約27%以下がLAG3+であり、集団中の細胞の約32%以下がCD200R+であり、集団中の細胞の約25%以下がCD57+であり、集団中の細胞の少なくとも約10%がCD16+であり、及び集団中の細胞の少なくとも約10%がCD62L+である。
【0005】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約90%がCD56+である。
【0006】
一部の態様において、集団中の細胞の約90%~約95%がCD56+である。
【0007】
一部の態様において、集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD3+である。
【0008】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+/CD3-であり、及び集団中の細胞の約0.5%以下がCD56-/CD3+である。
【0009】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約99%がCD56+/CD3-である。
【0010】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約15%がCD62L+である。
【0011】
一部の態様において、集団中の細胞の約18%~約70%がCD62L+である。
【0012】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約20%がCD16+である。
【0013】
一部の態様において、集団中の細胞の約20%~約60%がCD16+である。
【0014】
一部の態様において、集団中の細胞の約1%以下がLAG3+であり、集団中の細胞の約1.5%以下がCD200R+であり、及び集団中の細胞の約2.5%以下がCD57+である。
【0015】
一部の態様において、集団中の細胞の約3%以下がCD56+/LAG3+であり、集団中の細胞の約11%以下がCD56+/CD200R+であり、及び集団中の細胞の約4%以下がCD56+/CD57+である。
【0016】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約43%がCD56+/CD16+である。
【0017】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約57%がCD56+/CD16+である。
【0018】
一部の態様において、集団中の細胞の少なくとも約78%がCD56+/CD62L+である。
【0019】
一部の態様において、集団中の細胞の約77%以下がNKp80+である。一部の態様において、集団中の細胞の約15.77%以下がNKp80+である。
【0020】
一部の態様において、NK細胞画分は、i)少なくとも約17.5×108個の有核細胞、ii)少なくとも約35×108個の有核細胞、iii)少なくとも約2.5×109個の有核細胞、iv)少なくとも約5×109個の有核細胞、v)少なくとも約1.25×107個の有核細胞、vi)少なくとも約2.5×107個の有核細胞、vii)少なくとも約5×107個の有核細胞、又はviii)少なくとも約1×108個の有核細胞を含む。
【0021】
一部の態様において、NK細胞画分は、予め凍結し、続いて解凍したものである。
【0022】
本開示は、本開示のNK細胞画分とDMSOとを含む凍結保存NK細胞画分を提供し、ここでDMSOの濃度は約10%v/vである。
【0023】
一部の態様において、凍結保存NK細胞画分は、i)約-80℃で少なくとも約6週間にわたり安定、及び/又はii)約-150℃で少なくとも約12ヵ月にわたり安定である。
【0024】
本開示は、NK細胞画分を調製する方法であって、(a)対象にとって同種異系のNK細胞とCD3+細胞とを含むアフェレーシス産物を入手することと、(b)アフェレーシス産物をCD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とに分離することと、(c)CD3+細胞画分の細胞を照射によって不活性化することと、(d)CD3枯渇細胞画分を、不活性化した照射CD3+細胞画分と共に、細胞増殖可能な条件下でex vivo培養することであって、条件が、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドを1.0mM~10mMの量で提供することを含むことと、(e)ステップ(d)の6~10日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することにより、増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、(f)ステップ(d)の14~16日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を回収することと、(g)ステップ(f)のCD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を洗浄し及び濃縮することとを含み、それによってNK細胞画分を作製する方法を提供する。
【0025】
一部の態様において、アフェレーシス産物は、ヒトNK及びCD3+細胞画分を含むヒトアフェレーシス産物である。
【0026】
一部の態様において、CD3アゴニストは、OKT3である。
【0027】
一部の態様において、細胞増殖を可能にするための条件は、i)約10%(v/v)の濃度のヒト血清、ii)約20ng/mlの濃度のIL-15、iii)約1μg/mlの濃度のOKT3、iv)約7.0mMの濃度のニコチンアミド、及びv)最小必須細胞培養培地を含む栄養素を含む。
【0028】
一部の態様において、ステップ(d)においてCD3枯渇細胞及び照射CD3+細胞は、1:1の比で播種される。
【0029】
一部の態様において、ステップ(d)の培養は、フラスコ内にて、i)0.30~0.40×106個のCD3枯渇細胞及び0.30~0.40×106個の照射CD3+細胞/ml、ii)0.35×106個のCD3枯渇細胞及び0.35×106個の照射CD3+細胞/ml、iii)1フラスコ当たり400~900×106個のCD3枯渇細胞及び400~900×106個の照射CD3+細胞、又はiv)1フラスコ当たり700×106個のCD3枯渇細胞及び700×106個の照射CD3+細胞で実施する。
【0030】
本開示は、NK細胞画分の凍結保存方法であって、(a)本開示のNK細胞画分をDMSO不含凍結保存緩衝液に懸濁することと、(b)DMSOを10%v/vになるように加えることと、(c)細胞の温度を-120℃に下げることと、(d)凍結保存NK細胞を-120℃以下の温度で貯蔵することとを含む方法を提供する。
【0031】
本開示は、解凍したNK細胞画分を調製する方法であって、(a)本開示の凍結保存NK細胞画分を37℃の水浴中で解凍することと、(b)ステップ(a)において解凍した凍結保存NK細胞画分を注入溶液で希釈することであって、それによって移植用の解凍した凍結保存NK細胞画分を作製することとを含む方法を提供する。
【0032】
本開示は、血液学的疾患の治療を必要としているヒト対象の血液学的疾患を治療する方法であって、(a)少なくとも1つの抗癌モノクローナル抗体を対象に投与することと、(b)少なくとも1つの免疫抑制剤を対象に投与することと、(c)本開示のNK細胞画分を投与することと、(d)IL-2を対象に投与することとを含む方法を提供する。
【0033】
一部の態様において、ステップ(c)は、NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の第1の用量を投与することと、2日後に、NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の第2の用量を投与することとを含む。
【0034】
一部の態様において:(i)第1の用量及び第2の用量は、各々、少なくとも約1.25×107細胞/kgを含み、総用量が2.5×107細胞/kgである、(ii)第1の用量及び第2の用量は、各々、少なくとも約2.5×107細胞/kgを含み、総用量が少なくとも約5×107細胞/kgである、(iii)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量は、各々、5×107細胞/kgを含み、総用量が1×108細胞/kgである、又は(iv)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量は、各々、1×108細胞/kgを含み、総用量が2×108細胞/kgである。
【0035】
一部の態様において、免疫抑制剤は、化学療法免疫抑制剤、放射線照射又はこれらの任意の組み合わせである。
【0036】
一部の態様において、血液学的疾患は、血液学的悪性腫瘍である。
【0037】
一部の態様において、血液学的疾患は、多発性骨髄腫である。
【0038】
一部の態様において、血液学的疾患は非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、一部の態様において、NHLは、i)CD20陽性B細胞NHL、ii)濾胞性リンパ腫(FL)、iii)高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)、iv)HGBCL・非特定型(HGBCL、NOS)、v)縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、又はvi)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0039】
一部の態様において、NHLは、以下のうちの少なくとも1つを特徴とする:a)従来療法が失敗した再発性/難治性疾患、b)過去に少なくとも2ラインの療法を受けた患者、好ましくは過去に受けた少なくとも2ラインの療法のうちの少なくとも1つは化学療法の投与を含み、且つ過去に受けた少なくとも2ラインの療法のうちの少なくとも1つは抗CD20モノクローナル抗体の投与を含む、c)Lugano効果判定基準により定義されるとおりの測定可能な疾患、及びd)FLからHGBCLに形質転換したNLHであって、HGBLへの形質転換後に対象が既に少なくとも1ラインの療法を受けているNLH。
【0040】
一部の態様において、血液疾患はNHLであり、及び抗癌モノクローナル抗体はリツキシマブであり、好ましくはリツキシマブは約375mg/m2の用量で少なくとも1回投与され、好ましくはリツキシマブは少なくとも3回投与される。
【0041】
一部の態様において、少なくとも1つの抗癌モノクローナル抗体は、対象に少なくとも3回投与され、好ましくは少なくとも1つの抗癌モノクローナル抗体は、NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約10日前;NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約3日前;及びNK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の12~16日後に投与される。
【0042】
一部の態様において、少なくとも1つの免疫抑制剤は、シクロホスファミド及び/又はフルダラビンを含む。
【0043】
一部の態様において、少なくとも1つの免疫抑制剤は、シクロホスファミド(400mg/m2)及びフルダラビン(30mg/m2)の両方を含み、シクロホスファミドは400mg/m2の用量で投与され、フルダラビンは30mg/m2の用量で投与され、且つシクロホスファミド及びフルダラビンは、NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約5日前、NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約4日前、及びNK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の約4日前に投与される。
【0044】
一部の態様において、ステップ(d)は、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注後であって、(i)NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与当日、(ii)NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の2日後、及び(iii)NK細胞画分又は解凍したNK細胞画分の初回投与の4日後の各日に、6×106単位のIL-2を投与することを含む。
【0045】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、NK細胞画分を必要としている対象のためのNK細胞画分を調製する方法であって、
(a)対象にとって同種異系のNK細胞とCD3+細胞とを含むアフェレーシス産物を入手することと、
(b)アフェレーシス産物をCD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とに分離することと、
(c)CD3+細胞画分の細胞を照射によって不活性化することと、
(d)CD3枯渇細胞画分を、不活性化した照射CD3+細胞画分と共に、細胞増殖可能な条件下でex vivo培養することであって、それらの条件が、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドを1.0mM~10mMの量で提供することを含むことと、
(e)ステップ(d)の6~10日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することにより、増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、
(f)ステップ(d)の14~16日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を回収することと、及び
(g)ステップ(f)のCD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を洗浄し及び濃縮すること
を含み、
それによって、対象における移植用の増殖させたNK細胞画分を作製する方法が提供される。
【0046】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の方法により調製されたNK細胞画分が提供される。
【0047】
本発明の一部の実施形態の別の態様によれば、NK細胞画分の凍結保存方法であって、
(a)NK細胞画分のNK細胞をDMSO不含凍結保存緩衝液に懸濁することと、
(b)DMSOを10%v/vになるように加えることと、
(c)細胞の温度を-120℃に下げることと、
(d)凍結保存NK細胞を-120℃未満で貯蔵することと
を含む方法が提供される。
【0048】
本発明の一部の実施形態の他の態様によれば、投与用の凍結保存NK細胞画分の調製方法であって、
(a)凍結保存NK細胞画分を37℃の水浴中で解凍することと、
(b)凍結保存NK細胞画分を注入溶液で希釈することと
を含み、
それによって移植用の解凍した凍結保存NK細胞画分を作製する方法が提供される。
【0049】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、本発明の方法により調製された凍結保存NK細胞画分が提供される。
【0050】
本発明の一部の実施形態によれば、本発明の方法によって作製された投与用の(移植とも称される)解凍した凍結保存NK細胞画分が提供され、この凍結保存NK細胞画分は、本発明の方法によって作製された凍結保存NK細胞画分である。
【0051】
本発明の一部の実施形態によれば、凍結保存NK細胞画分は、総数2.5×108個の細胞/mlを20mlの容積に含む凍結保存バッグである。このように、本発明の一部の実施形態によれば、凍結保存NK細胞画分は、50×108個の細胞を20mlの容積に含む凍結保存バッグである。
【0052】
本発明の一部の実施形態によれば、解凍した凍結保存NK細胞画分の増殖させたCD3枯渇細胞は、5mMのニコチンアミドを含み、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して、照射マウスへの注入後の脾臓及び骨髄における生体内保持率が増加している。
【0053】
本発明の一部の実施形態によれば、移植用の解凍した凍結保存NK細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞;
(b)少なくとも70%の生存率;
(c)注入時、1×106個より少ないCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重;
(d)注入時、5EU以下のエンドトキシン/Kg患者体重;
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0054】
本発明の一部の実施形態によれば、移植用の解凍した凍結保存NK細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞;
(b)少なくとも70%の生存率;
(c)0.5%未満の細胞がCD3+/CD56-である;
(d)0.5エンドトキシンユニット(EU)/mL以下;
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0055】
本発明の一部の実施形態によれば、解凍した凍結保存NK細胞画分は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)凍結保存バッグで提供される。
【0056】
本発明の一部の実施形態によれば、解凍した凍結保存NK細胞画分は、2.5×108細胞/mlを含む。
【0057】
本発明の一部の実施形態によれば、解凍した凍結保存NK細胞画分は、100mlの容積で提供される。
【0058】
本発明の一部の実施形態によれば、アフェレーシス産物は、ヒトNK及びCD3+細胞画分を含むヒトアフェレーシス産物である。
【0059】
本発明の一部の実施形態によれば、血清は、ヒト血清である。
【0060】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞増殖可能な条件は、10%ヒト血清を提供することを含む。
【0061】
本発明の一部の実施形態によれば、IL-15は、20ng/mlのIL-15を含む。
【0062】
本発明の一部の実施形態によれば、CD3アゴニストはOKT3であり、OKT3は1μg/mlのOKT3を含む。
【0063】
本発明の一部の実施形態によれば、ニコチンアミドは、7.0mMのニコチンアミドを含む。
【0064】
本発明の一部の実施形態によれば、栄養素として最小必須細胞培養培地を含む。
【0065】
本発明の一部の実施形態によれば、増殖させたNK細胞画分のNK細胞は、少なくとも40~97%のCD56+/CD3-細胞を含む。
【0066】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞画分を必要としている対象のためのNK細胞画分の調製方法のステップ(e)によって生成された洗浄及び濃縮後の増殖させたNK細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞;
(b)少なくとも70%の生存率;
(c)注入時、1×106個より少ないCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重;
(d)注入時、5EU以下のエンドトキシン/Kg患者体重;
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0067】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞画分を必要としている対象のためのNK細胞画分の調製方法のステップ(e)によって生成された洗浄及び濃縮後の増殖させたNK細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞;
(b)少なくとも70%の生存率;
(c)0.5%未満の細胞がCD3+/CD56-である;
(d)0.5エンドトキシンユニット(EU)/mL以下;
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0068】
本発明の一部の実施形態によれば、注入時のCD3+細胞は、0.5×106個のCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重より少ない。
【0069】
本発明の一部の実施形態によれば、CD3枯渇細胞及び照射CD3+細胞は、1:1の比で播種される。
【0070】
本発明の一部の実施形態によれば、培養は、フラスコ内にて、0.30~0.40×106個のCD3枯渇細胞及び0.30~0.40×106個の照射CD3+細胞/mlで実施する。
【0071】
本発明の一部の実施形態によれば、培養は、フラスコ内にて、0.35×106個のCD3枯渇細胞及び0.35×106個の照射CD3+細胞/mlで実施する。
【0072】
本発明の一部の実施形態によれば、培養は、フラスコ内にて、1フラスコ当たり400~900×106個のCD3枯渇細胞及び400~900×106個の照射CD3+細胞で実施する。
【0073】
本発明の一部の実施形態によれば、培養は、フラスコ内にて、1フラスコ当たり700×106個のCD3枯渇細胞及び700×106個の照射CD3+細胞で実施する。
【0074】
本発明の一部の実施形態によれば、増殖させたCD3枯渇細胞は、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して、CD62Lの発現が増加している。
【0075】
本発明の一部の実施形態によれば、増殖させたCD3枯渇細胞は、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して抗体依存性細胞傷害性が増加している。
【0076】
本発明の一部の実施形態のある態様によれば、血液学的疾患の治療を必要としているヒト対象の血液学的疾患を治療する方法であって、
(a)対象に抗癌モノクローナル抗体を投与することと、
(b)対象に少なくとも1つの免疫抑制剤を投与することと、
(c)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分を、そのようなNK細胞画分を必要としている対象に移植することであって、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分が、1.0mM~10mMの量のCD3+細胞、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドと共にex vivo培養することによって増殖させたものであることと、
(d)対象にIL-2を投与することと
を含み、
それによって対象の血液疾患を治療する方法が提供される。
【0077】
本発明の一部の実施形態によれば、免疫抑制剤は、化学療法免疫抑制剤及び/又は照射である。
【0078】
本発明の一部の実施形態によれば、血液学的疾患は、血液学的悪性腫瘍である。本発明の一部の実施形態によれば、血液学的疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。
【0079】
本発明の一部の実施形態によれば、血液学的疾患は、濾胞性リンパ腫(FL)又は高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)である。本発明の一部の実施形態によれば、血液学的疾患は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。本発明の一部の実施形態によれば、血液学的疾患は、マントル細胞リンパ腫(MCL)である。本発明の一部の実施形態によれば、血液学的疾患は、HGBCL・非特定型(HGBCL、NOS)である。本発明の一部の実施形態によれば、血液学的疾患は、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)である。
【0080】
本発明の一部の実施形態によれば、NHLは、CD20陽性B細胞NHLである。
【0081】
本発明の一部の実施形態によれば、NHLは、以下のうちの少なくとも1つを特徴とする:
(a)従来療法が失敗した再発性/難治性疾患、
(b)過去少なくとも2ラインの療法を受けた患者(それらのうちの少なくとも1つには化学療法が含まれ、それらのうちの少なくとも1つには抗CD20モノクローナル抗体が含まれたもの)のNHL、
c)Lugano効果判定基準により定義されるとおりの測定可能な疾患、
d)FLからHGBCLに形質転換したNHLであって、HGBCLへの形質転換後に対象が既に少なくとも1ラインの療法を受けているNHL。
【0082】
本発明の一部の実施形態によれば、血液学的悪性腫瘍はNHLであり、及び抗癌モノクローナル抗体はリツキシマブ(375mg/m2)である。
【0083】
本発明の一部の実施形態によれば、対象への抗癌モノクローナル抗体の投与は3回実施される。
【0084】
本発明の一部の実施形態によれば、投与は、同種異系の解凍した凍結保存増殖細胞画分の第1の用量を投与し、続いて2日後に同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分の第2の用量を投与することを含む。
【0085】
本発明の一部の実施形態によれば、抗癌抗体の投与は、3回:同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分の第1の用量の10日前、第1の用量の3日前及び第1の用量の12~16日後に実施される。
【0086】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞画分は、対象1kg当たり1×107~5×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含む。
【0087】
本発明の一部の実施形態によれば、細胞画分は、対象1kg当たり2×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含む。
【0088】
本発明の一部の実施形態によれば、第1及び第2の組み合わせの用量は、2×107個/kg~2×108個/kgの総細胞数の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含む。
【0089】
本発明の一部の実施形態によれば、
(a)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量は、各々、対象1kg当たり2.5×107個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含み、総用量が対象1kg当たり5×107個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞であるか、又は
(b)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量は、各々、対象1kg当たり5×107個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含み、総用量が対象1kg当たり1×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞であるか、又は
(c)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量は、各々、1×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含み、総用量が対象1kg当たり2×108個/kgの同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞である。
【0090】
本発明の一部の実施形態によれば、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分は、解凍後4時間以内に対象に投与される。
【0091】
本発明の一部の実施形態によれば、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分は、フィルタ又はポンプを用いない注入によって10cc/kg患者体重/時以下の速度で対象に投与される。
【0092】
本発明の一部の実施形態によれば、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分は、注入、又はポンプによって10cc/kg患者体重/時以下の速度で対象に投与される。
【0093】
本発明の一部の実施形態によれば、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分は、フィルタ又はポンプを用いる注入によって10cc/kg患者体重/時以下の速度で対象に投与される。一部の態様において、フィルタは約170~約260ミクロンの細孔径を有し得る。
【0094】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの免疫抑制剤は、シクロホスファミド及び/又はフルダラビンを含む。
【0095】
本発明の一部の実施形態によれば、
(i)少なくとも1つの免疫抑制剤は、シクロホスファミド(400mg/m2)及びフルダラビン(30mg/m2)の両方を含み;及び
(ii)ここでシクロホスファミド及びフルダラビンは、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注の5日前、4日前及び3日前の各日に投与される。
【0096】
本発明の一部の実施形態によれば、投与(ステップ(d))は、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注後であって、
(i)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注当日、及び
(ii)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注の2日後、及び
(iii)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注の4日後
に6×106単位のIL-2を投与することを含む。
【0097】
本発明の一部の実施形態によれば、本方法は、本方法のいずれかにより調製した移植可能なNK細胞画分を移植することを含む。
【0098】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施又は試験においては、本明細書に記載されるものと同様の又は等価な方法及び材料を用いてもよいが、以下には例示的な方法及び/又は材料を記載する。矛盾が生じる場合、本特許明細書が、定義を含め、優先するものとする。加えて、材料、方法、及び例は例示に過ぎず、必ずしも限定を意図するものではない。本明細書に記載される任意の態様及び/又は実施形態は、本明細書に記載される任意の他の態様及び/又は実施形態と組み合わせることができる。
【0099】
以下の詳細な説明から、添付の図面と併せて考慮するとき、上記及び更なる特徴が一層明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】
図1は、ニコチンアミド無し又は照射フィーダー細胞無しで培養した細胞と比較したときの、本明細書に開示される方法により培養し、凍結保存して、及び解凍した増殖細胞における優れたNK細胞機能の保持率を示すヒストグラムである。細胞は、5mMのNAMでフィーダー無し、5mMのNAMでフィーダー有り又は7mMのNAMでフィーダー有りで培養し、凍結保存した。標識BL2細胞を使用してADCCアッセイを実施した。BL2細胞の殺傷率は、FACSにより、全標識細胞からのヨウ化プロピジウム(PI)陽性(死細胞)の割合として決定した;
【
図2】
図2は、ニコチンアミド無し又は照射フィーダー細胞無しで培養した細胞と比較したときの、本明細書に開示される方法により培養し、凍結保存して、そして解凍した増殖細胞におけるNK細胞効力の亢進を示すヒストグラムである。細胞は、5mMのNAMでフィーダー無し、5mMのNAMでフィーダー有り又は7mMのNAMでフィーダー有りで2週間培養し、凍結保存した。細胞は解凍し、解凍の2時間後にCD62L染色用の試料をサンプリングし、FACSにより分析した。
【
図3】
図3は、本明細書に開示される方法による培養、凍結保存及び解凍がNK細胞免疫チェックポイント受容体に及ぼす有益な効果を示すヒストグラムである。細胞は、NAM無し、及び2.5mMのNAM、5mMのNAM又は7mMのNAM有りで2週間培養した。CD200R染色用の試料をFACSにより分析した。
【
図4】
図4は、本明細書に開示される方法による培養、凍結保存及び解凍が、放射線照射したNSGマウスへの注入後のNK細胞ホーミングに及ぼす有益な効果を示すヒストグラムである。CD3枯渇細胞は、NAM有り又は無しで培養した。NSGマウスは、GDA-201注入並びにIL2及びIL15 IP注射の24時間前に亜致死的に照射した。細胞は解凍し、解凍の2時間後にマウスに注入した。7日後、マウスを回収し、ヒトNK細胞の存在に関してヒトCD45 APC及びCD56 FITC染色により分析した。7AAD色素を用いて死細胞を除外した。
【
図5-1】
図5のAおよびBは、本明細書に開示される方法により培養し、凍結保存して、及び解凍した増殖細胞の生着可能性の亢進を例示するヒストグラムである。細胞は、5mMのNAMでフィーダー無し、5mMのNAMでフィーダー有り又は7mMのNAMでフィーダー有りで培養し、凍結保存した。NSGマウスは、NK注入並びにIL2及びIL15 IP注射の24時間前に亜致死的に照射した。細胞は解凍し、解凍の2時間後にマウスに注入した。3日後、マウスを回収し、ヒトNK細胞の存在に関してヒトCD45 APC及びCD56 FITC染色により分析した。7AAD色素を用いて死細胞を除外した。
図5A:脾臓におけるNKイベントの絶対数。
図5B:骨髄におけるNKの比率。
【
図6-1】
図6のA~Cは、本明細書に開示される方法により培養し、凍結保存して、及び解凍した増殖細胞の投与によるマウス肺癌A549モデルの固形腫瘍容積の低減を示す。細胞は、CD3+フィーダー有りで7mMのNAMと共に培養し、次に、5×10
6個のA549細胞を受けた亜致死的に照射したマウスに抗Her2抗体ハーセプチンと共に又はそれ無しでIV投与した(
図6のA及びB)。NK細胞の投与は腫瘍負荷の低減において明らかに有効であり(
図6のC、C-NK)、抗Her2抗体と組み合わせると相乗的となる(
図6のC、D-NK+Her2)。
【
図7-1】
図7のA~Cは本明細書に開示される方法により培養し、凍結保存して、及び解凍した増殖細胞の反復投与によるマウス肺癌A549モデルの固形腫瘍容積の低減の亢進を示す。細胞は、CD3+フィーダー有りで7mMのNAMと共に培養し、次に、5×10
6個のA549細胞を受けた亜致死的に照射したマウスに抗Her2抗体ハーセプチンと共に又はそれ無しでIV投与した(
図7のA及びB)。NK細胞の複数回投与は腫瘍負荷の低減において明らかに有効性がより高く(
図7のC、C-NK)、抗Her2抗体と組み合わせると強力に相乗的となる(
図6のC、D-NK+Her2)。
【
図8】
図8は、本開示の方法を用いてニコチンアミドの非存在下(NAM0)又は7mMのニコチンアミドの存在下(NAM7)で作製した細胞におけるFACsにより測定したときの様々な細胞表面マーカーの発現を示す一連のグラフである。
【
図9】本開示の方法を用いてニコチンアミドの非存在下(NAM0)又は7mMのニコチンアミドの存在下(NAM7)で作製した細胞におけるFACsにより測定したときの様々な細胞表面マーカーの発現を示す一連の代表的なFACsプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0101】
本発明は、対象への注入による投与(本明細書では移植とも称される)のためCD3枯渇細胞画分からナチュラルキラー(NK)細胞を増殖させる方法に関する発明であり、このNK細胞は、効率的な凍結保存及び解凍が可能であると同時に、ex vivo及び/又はin vivoでの細胞の機能を維持し又は亢進させることができる。一実施形態において、NK細胞を含むアフェレーシス産物のCD3枯渇画分を、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分、NK細胞成長因子及び対応するCD3+画分からの不活性化した細胞と共にex vivo培養すると、ex vivoで増殖させた治療用NK細胞調製物としての使用のためのNK細胞集団の作製が容易になり、この調製物には、凍結保存を経ても優れた生存能力及び機能を保持している、対象への注入に好適なパラメータ(例えば、NK細胞のロバストな増殖と併せたCD3+ T細胞画分の減少)を有する機能性のNK細胞の増殖させた集団が含まれる。具体的にこの点で、本発明を用いると、癌及び他の疾患の治療のための細胞移植及び注入における適用に利用することのできるNK細胞画分並びにその凍結保存及び使用のためのプロトコルを提供し得る。非限定的な適用には、同種異系養子免疫療法並びに増感剤及び他の抗癌モダリティとの併用免疫療法が含まれ得る。
【0102】
添付の説明を参照すると、本発明の原理及び動作を更に良く理解し得る。
【0103】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に解説する前に、本発明は、その適用の点で、以下の説明に示されている詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態の可能性があり、又は様々な方法で実践若しくは実行される可能性がある。
【0104】
ナチュラルキラー(以下「NK」とも略される)細胞は、免疫応答に関与するリンパ系細胞であり、腫瘍細胞に対して自然発生的なMHC非拘束性の細胞傷害活性を呈する。従って、生存NK細胞の数をex vivoで有効に増殖させ、且つその機能及び凍結保存への適合性、並びに注入後における生体内でのリンパ節へのホーミング及びその恒常的増殖の可能性を有効に亢進させる臨床グレードのプロトコルを開発したならば、固形腫瘍、造血器悪性腫瘍などの癌性病態の治療用NK細胞による養子免疫療法の成功を向上させることが可能であろう。
【0105】
本発明は、本明細書に更に詳述するとおり、NK細胞を含むCD3枯渇細胞画分をニコチンアミドと共に、対応するCD3+画分の不活性化した細胞も一緒に、ある一定のニコチンアミド濃度を上回って培養すること、及び更に、増殖させた細胞画分を凍結保存することに基づいた、臨床セッティングにおける、注入による移植に好適な増殖NK細胞画分の調製及び特徴付けに臨床的に適切な条件を提供する。このように、本発明は、その実施形態において、非NK細胞(例えば、CD3+/CD56-)の増殖を最小限に抑えた、機能的に成熟したNK細胞の増殖NK細胞画分の作製に臨床的に適切な培養条件、治療用NK画分及びその選択、凍結保存及び解凍に関する判定基準、並びに癌性疾患、詳細には血液学的悪性腫瘍の治療におけるその使用のための臨床プロトコルを提供する。
【0106】
本開示のNK細胞画分
本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を含む組成物を提供する。
【0107】
一部の態様において、有核細胞集団は、少なくとも約1.0×106個、又は少なくとも約5.0×106個、又は少なくとも約1.0×107個、又は少なくとも約5.0×107個、又は少なくとも約1.0×108個、又は少なくとも約5.0×108個、又は少なくとも約1.0×109個、又は少なくとも約5.0×109個、又は少なくとも約1.0×1010個、又は少なくとも約5.0×1010個、又は少なくとも約1.0×1011個、又は少なくとも約5.0×1011個、又は少なくとも約1.0×1012個、又は少なくとも約5.0×1012個の有核細胞を含み得る。一部の態様において、有核細胞集団は、少なくとも約1.0×106個の細胞を含み得る。一部の態様において、有核細胞集団は、少なくとも約17.5×108個の細胞を含み得る。一部の態様において、有核細胞集団は、少なくとも約35×108個を含み得る。一部の態様において、有核細胞集団は、少なくとも約2.5×109個の細胞を含み得る。一部の態様において、有核細胞集団は、少なくとも約5×109個の細胞を含み得る。
【0108】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%は生細胞である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞である。
【0109】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%がCD56+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+である。
【0110】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約80%~約99%、又は約85%~約95%、又は約90~約95%がCD56+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約90~約95%がCD56+である。
【0111】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%以下、又は約0.2%以下、又は約0.3%以下、又は約0.4%以下、又は約0.5%以下、又は約0.6%以下、又は約0.7%以下、又は約0.8%以下、又は約0.9%以下、又は約1.0%以下がCD3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の0.5%以下がCD3+である。
【0112】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.1%、又は約0.01%~約0.2%、又は約0.01%~約0.3%、又は約0.01%~約0.4%、又は約0.01%~約0.5%、又は約0.01%~約0.6%、又は約0.01%~約0.7%、又は約0.01%~約0.8%、又は約0.01%~約0.9%、又は約0.01%~約1.0% CD3+。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.5%がCD3+である。
【0113】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.5%、又は約0.2%~約0.3%がCD3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD3+である。
【0114】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%がCD56+/CD3-である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+/CD3-である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約99%がCD56+/CD3-である。
【0115】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約80%~約99%、又は約85%~約95%、又は約90~約95%がCD56+/CD3-である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約90~約95%がCD56+/CD3-である。
【0116】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%以下、又は約0.2%以下、又は約0.3%以下、又は約0.4%以下、又は約0.5%以下、又は約0.6%以下、又は約0.7%以下、又は約0.8%以下、又は約0.9%以下、又は約1.0%以下がCD56-/CD3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の0.5%以下がCD56-/CD3+である。
【0117】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.1%、又は約0.01%~約0.2%、又は約0.01%~約0.3%、又は約0.01%~約0.4%、又は約0.01%~約0.5%、又は約0.01%~約0.6%、又は約0.01%~約0.7%、又は約0.01%~約0.8%、又は約0.01%~約0.9%、又は約0.01%~約1.0%がCD56-/CD3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~0.5%がCD56-/CD3+である。
【0118】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.5%、又は約0.2%~約0.3%がCD56-/CD3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.2%~約0.3%がCD56-/CD3+である。
【0119】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%がCD62L+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約10%がCD62L+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約15%がCD62L+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約13%がCD62L+である。
【0120】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約8%~約80%、又は約13%~約75%、又は約18%~約70%がCD62L+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約13%~約88%がCD62L+である。
【0121】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、又は少なくとも約15%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約25%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%がCD16+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約10%がCD16+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約20%がCD16+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも30%がCD16+である。
【0122】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約10%~約70%、又は約15%~約65%、又は約20%~約60%がCD16+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約20%~約60%がCD16+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約30%~約88%がCD16+である。
【0123】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約25%以下がCD19+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD19+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.7%以下がCD19+である。
【0124】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約5%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約25%がCD19+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD19+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.7%がCD19+である。
【0125】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約5%、又は約0.1%~約10%、又は約0.1%~約15%、又は約0.1%~約20%、又は約0.1%~約25%がCD19+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD19+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.7%がCD19+である。
【0126】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約25%以下がCD14+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD14+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.05%以下がCD14+である。
【0127】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約5%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約25%がCD14+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD14+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.05%がCD14+である。
【0128】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約5%、又は約0.1%~約10%、又は約0.1%~約15%、又は約0.1%~約20%、又は約0.1%~約25%がCD14+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD14+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.05%がCD14+である。
【0129】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約44.99%がCD49a+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約45%がCD49a+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約96%がCD49a+である。一部の態様において、少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%がCD49a+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約44%~約96%がCD49a+である。
【0130】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の26.39%以下がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約27%以下がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約76.68%以下がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約76%以下がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約25%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下、又は約45%以下、又は約50%以下、又は約55%以下、又は約60%以下、又は約65%以下、又は約70%以下、又は約75%以下、又は約77%以下、又は約80%以下がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約26%~約77%がNKp80+である。
【0131】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約26.39%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約27%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約76.68%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約76%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約25%、又は約0.01%~約30%、又は約0.01%~約35%、又は約0.01%~約40%、又は約0.01%~約45%、又は約0.01%~約50%、又は約0.01%~約55%、又は約0.01%~約60%、又は約0.01%~約65%、又は約0.01%~約70%、又は約0.01%~約75%、又は約0.01%~約77%、又は約0.01%~約80%がNKp80+である。
【0132】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約26.39%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約27%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約76.68%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約76%がNKp80+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約25%、又は約0.01%~約30%、又は約0.01%~約35%、又は約0.1%~約40%、又は約0.1%~約45%、又は約0.1%~約50%、又は約0.1%~約55%、又は約0.1%~約60%、又は約0.1%~約65%、又は約0.1%~約70%、又は約0.1%~約75%、又は約0.1%~約77%、又は約0.1%~約80%がNKp80+である。
【0133】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.57%以下がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約1%以下がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約2%以下がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約26.89%以下がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約27%以下がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約2.5%以下、又は約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.5%~約27%がLAG3+である。
【0134】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約0.57%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約1%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約2%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約26.89%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約27%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約2.5%、又は約0.01%~約5%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約30%、又は約0.01%~約35%、又は約0.01%~約40%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約10%がLAG3+である。
【0135】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約0.57%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約1%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約2%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約26.89%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約27%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約2.5%、又は約0.1%~約5%、又は約0.1%~約10%、又は約0.1%~約15%、又は約0.1%~約20%、又は約0.1%~約30%、又は約0.1%~約35%、又は約0.1%~約40%がLAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約10%がLAG3+である。
【0136】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約1.03%以下がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約2%以下がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約3.68%以下がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約31.8%以下がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約32%以下がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約2.5%以下、又は約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD200R+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約1%~約32%がCD200R+である。
【0137】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約1.03%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約2%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約3.68%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約31.8%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約32%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約2.5%、又は約0.01%~約5%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約30%、又は約0.01%~約35%、又は約0.01%~約40%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD200R+である。
【0138】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約1.03%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約2%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約3.68%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約31.8%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約32%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約2.5%、又は約0.1%~約5%、又は約0.1%~約10%、又は約0.1%~約15%、又は約0.1%~約20%、又は約0.1%~約30%、又は約0.1%~約35%、又は約0.1%~約40%がCD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD200R+である。
【0139】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約2.05%以下がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約2.5%以下がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約3.6%以下がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約4%以下がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約24.59%以下がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約25%以下がCD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約2.5%以下、又は約5%以下、又は約10%以下、又は約15%以下、又は約20%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下がCD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約10%以下がCD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約2%~約25%がCD57+である。
【0140】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約2.05%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.01%~約2.5%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.01%~約3.6%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.01%~約4%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.01%~約24.59%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.01%~約25%がCD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約2.5%、又は約0.01%~約5%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約30%、又は約0.01%~約35%、又は約0.01%~約40%がCD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD57+である。
【0141】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約2.05%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.1%~約2.5%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.1%~約3.6%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.1%~約4%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.1%~約24.59%がCD57+である。一部の態様において、細胞集団中の細胞の約0.1%~約25%がCD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約2.5%、又は約0.1%~約5%、又は約0.1%~約10%、又は約0.1%~約15%、又は約0.1%~約20%、又は約0.1%~約30%、又は約0.1%~約35%、又は約0.1%~約40%がCD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD57+である。
【0142】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約1%以下、又は約2%以下、又は約3%以下、又は約4%以下、又は約5%以下、又は約6%以下、又は約7%以下、又は約8%以下、又は約9%以下、又は約10%以下、又は約11%以下、又は約12%以下、又は約13%以下、又は約14%以下、又は約15%以下、又は約16%以下、又は約17%以下、又は約18%以下、又は約19%以下、又は約20%以下がCD56+/LAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約3%以下がCD56+/LAG3+である。
【0143】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約1%以下、又は約2%以下、又は約3%以下、又は約4%以下、又は約5%以下、又は約6%以下、又は約7%以下、又は約8%以下、又は約9%以下、又は約10%以下、又は約11%以下、又は約12%以下、又は約13%以下、又は約14%以下、又は約15%以下、又は約16%以下、又は約17%以下、又は約18%以下、又は約19%以下、又は約20%以下がCD56+/CD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約11%以下がCD56+/CD200R+である。
【0144】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約1%以下、又は約2%以下、又は約3%以下、又は約4%以下、又は約5%以下、又は約6%以下、又は約7%以下、又は約8%以下、又は約9%以下、又は約10%以下、又は約11%以下、又は約12%以下、又は約13%以下、又は約14%以下、又は約15%以下、又は約16%以下、又は約17%以下、又は約18%以下、又は約19%以下、又は約20%以下がCD56+/CD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約4%以下がCD56+/CD57+である。
【0145】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約1%、又は約0.01%~約2%、又は約0.01%~約3%、又は約0.01%~約4%、又は約0.01%~約5%、又は約0.01%~約6%、又は約0.01%~約7%、又は約0.01%~約8%、又は約0.01%~約9%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約11%、又は約0.01%~約12%、又は約0.01%~約13%、又は約0.01%~約14%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約16%、又は約0.01%~約17%、又は約0.01%~約18%、又は約0.01%~約19%、又は約0.01%~約20%がCD56+/LAG3+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約3%がCD56+/LAG3+である。
【0146】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約1%、又は約0.01%~約2%、又は約0.01%~約3%、又は約0.01%~約4%、又は約0.01%~約5%、又は約0.01%~約6%、又は約0.01%~約7%、又は約0.01%~約8%、又は約0.01%~約9%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約11%、又は約0.01%~約12%、又は約0.01%~約13%、又は約0.01%~約14%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約16%、又は約0.01%~約17%、又は約0.01%~約18%、又は約0.01%~約19%、又は約0.01%~約20%がCD56+/CD200R+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約11%がCD56+/CD200R+である。
【0147】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約1%、又は約0.01%~約2%、又は約0.01%~約3%、又は約0.01%~約4%、又は約0.01%~約5%、又は約0.01%~約6%、又は約0.01%~約7%、又は約0.01%~約8%、又は約0.01%~約9%、又は約0.01%~約10%、又は約0.01%~約11%、又は約0.01%~約12%、又は約0.01%~約13%、又は約0.01%~約14%、又は約0.01%~約15%、又は約0.01%~約16%、又は約0.01%~約17%、又は約0.01%~約18%、又は約0.01%~約19%、又は約0.01%~約20%がCD56+/CD57+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の約0.01%~約4%がCD56+/CD57+である。
【0148】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約30%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%がCD56+/CD16+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約43%がCD56+/CD16+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約57%がCD56+/CD16+である。
【0149】
一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約30%、又は少なくとも約35%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約45%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約55%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約65%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%がCD56+/CD62L+である。一部の態様において、有核細胞集団中の細胞の少なくとも約78%がCD56+/CD62L+である。
【0150】
前述の表現型パラメータのいずれも、他の前述の表現型パラメータのいずれかと組み合わせることができる。
【0151】
よって、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.5%以下がCD3+であり、
集団中の細胞の約10%以下がCD19+であり、
集団中の細胞の約10%以下がCD14+であり、
集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、
集団中の細胞の約10%以下がLAG3+であり、
集団中の細胞の約20%以下がCD200R+であり、
集団中の細胞の約10%以下がCD57+であり、
集団中の細胞の少なくとも約10%がCD16+であり、及び
集団中の細胞の少なくとも約10%がCD62L+である。
【0152】
よって、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.5%以下がCD3+であり、
集団中の細胞の約1%以下がCD19+であり、
集団中の細胞の約0.05%以下がCD14+であり、
集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、
集団中の細胞の約27%以下がLAG3+であり、
集団中の細胞の約32%以下がCD200R+であり、
集団中の細胞の約25%以下がCD57+であり、
集団中の細胞の少なくとも約30%がCD16+であり、及び
集団中の細胞の少なくとも約13%がCD62L+である。
【0153】
よって、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約0.5%がCD3+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD19+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD14+であり、
集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約10%がLAG3+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約20%がCD200R+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約10%がCD57+であり、
集団中の細胞の少なくとも約10%がCD16+であり、及び
集団中の細胞の少なくとも約10%がCD62L+である。
【0154】
よって、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約0.5%がCD3+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約1%がCD19+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約0.05%がCD14+であり、
集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約27%がLAG3+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約32%がCD200R+であり、
集団中の細胞の約0.01%~約25%がCD57+であり、
集団中の細胞の少なくとも約30%がCD16+であり、及び
集団中の細胞の少なくとも約13%がCD62L+である。
【0155】
よって、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約0.5%がCD3+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD19+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD14+であり、
集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約10%がLAG3+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約20%がCD200R+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約10%がCD57+であり、
集団中の細胞の少なくとも約10%がCD16+であり、及び
集団中の細胞の少なくとも約10%がCD62L+である。
【0156】
よって、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約0.5%がCD3+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約1%がCD19+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約0.05%がCD14+であり、
集団中の細胞の少なくとも約44%がCD49a+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約27%がLAG3+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約32%がCD200R+であり、
集団中の細胞の約0.1%~約25%がCD57+であり、
集団中の細胞の少なくとも約30%がCD16+であり、及び
集団中の細胞の少なくとも約13%がCD62L+である。
【0157】
よって、非限定的な例では、本開示は、有核細胞集団を含むNK細胞画分を提供し、この集団は、少なくとも1.0×106個の有核細胞を含み、集団中の細胞の少なくとも約70%は生細胞であり、ここで、
集団中の細胞の少なくとも約70%がCD56+であり、
集団中の細胞の約0.5%以下がCD3+であり
集団中の細胞の約0%~約1%がCD19+であり、
集団中の細胞の約0%~約0.05%がCD14+であり、
集団中の細胞の約44%~約96%がCD49a+であり、
集団中の細胞の約0.5%~約27%がLAG3+であり、
集団中の細胞の約1%~約32%がCD200R+であり、
集団中の細胞の約2%~約25%がCD57+であり、
集団中の細胞の約30%~約88%がCD16+であり、及び
集団中の細胞の約13%~約88%がCD62L+である。
【0158】
本開示のNK細胞画分の表現型パラメータの組み合わせの他の非限定的な例を表A~表Dに提示する。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
本開示はまた、本明細書に記載されるNK細胞画分のいずれかとDMSOとを含む、凍結保存NK細胞画分も提供する。一部の態様において、DMSOの濃度は、約1%v/v、又は約2%v/v、又は約3%v/v、又は約4%v/v、又は約5%v/v、又は約6%v/v、又は約7%v/v、又は約8%v/v、又は約9%v/v、又は約10%v/v、又は約11%v/v、又は約12%v/v、又は約13%v/v、又は約14%v/v、又は約15%v/vであってもよい。一部の態様において、DMSOの濃度は、約10%v/vであってもよい。
【0164】
一部の態様において、凍結保存NK細胞画分は、少なくとも約6週間、又は少なくとも約1ヵ月、又は少なくとも約2ヵ月、又は少なくとも約3ヵ月、又は少なくとも約4ヵ月、又は少なくとも約5ヵ月、又は少なくとも約6ヵ月、又は少なくとも約7ヵ月、又は少なくとも約9ヵ月、又は少なくとも約10ヵ月、又は少なくとも約11ヵ月、又は少なくとも約12ヵ月にわたって安定していることができる。一部の態様において、凍結保存NK細胞画分は、約-80℃で少なくとも約6週間、約1ヵ月、又は少なくとも約2ヵ月、又は少なくとも約3ヵ月、又は少なくとも約4ヵ月、又は少なくとも約5ヵ月、又は少なくとも約6ヵ月、又は少なくとも約7ヵ月、又は少なくとも約9ヵ月、又は少なくとも約10ヵ月、又は少なくとも約11ヵ月、又は少なくとも約12ヵ月にわたって安定していることができる。一部の態様において、凍結保存NK細胞画分は、約-80℃で少なくとも約6週間にわたって安定していることができる。一部の態様において、凍結保存NK細胞画分は、約-150℃で少なくとも約6週間、約1ヵ月、又は少なくとも約2ヵ月、又は少なくとも約3ヵ月、又は少なくとも約4ヵ月、又は少なくとも約5ヵ月、又は少なくとも約6ヵ月、又は少なくとも約7ヵ月、又は少なくとも約9ヵ月、又は少なくとも約10ヵ月、又は少なくとも約11ヵ月、又は少なくとも約12ヵ月にわたって安定していることができる。一部の態様において、凍結保存NK細胞画分は、約-150℃で少なくとも約12ヵ月にわたって安定していることができる。
【0165】
本開示の効力アッセイ
本開示は、第1の効力アッセイを提供し、このアッセイは、
a)本開示のNK細胞画分及び複数の標的細胞をインキュベートするステップであって、複数の標的細胞が少なくとも1つの増殖染色剤で染色されるステップと、
b)複数の標的細胞における細胞死率を決定するステップと
を含む。
【0166】
第1の効力アッセイの一部の態様において、ステップ(a)のインキュベーション条件は、少なくとも1つの抗癌療法モノクローナル抗体を更に含み得る。
【0167】
第1の効力アッセイの一部の態様において、標的細胞は、K562細胞であってもよい。
【0168】
第1の効力アッセイの一部の態様において、標的細胞は、Raji(CCL-86)細胞であってもよい。
【0169】
第1の効力アッセイの一部の態様において、標的細胞はRaji(CCL-86)細胞であってもよく、及びステップ(a)のインキュベーション条件は、リツキシマブを更に含み得る。一部の態様において、リツキシマブは、約1μg/mlの濃度で存在し得る。
【0170】
当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイのステップ(b)で複数の標的細胞における細胞死率を決定することは、細胞死率を決定するための当該技術分野において公知の任意の標準的な技法を用いて実施することができる。非限定的な例では、複数の標的細胞における細胞死率を決定することは、i)ステップ(a)でインキュベートしたNK細胞画分及び複数の標的細胞を少なくとも1つの生死判別染色剤で染色することと、ii)蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いて複数の標的細胞をNK細胞画分と分離することと、iii)生死判別染色剤を使用して、ステップ(ii)で選別され、そこで分離された複数の標的細胞における細胞死率を決定することとを含み得る。一部の態様において、生死判別染色剤を使用して、ステップ(ii)で選別され、そこで分離された複数の標的細胞における細胞死率を決定することは、増殖染色剤を生死判別染色剤と組み合わせて使用して細胞死率を決定することを更に含む。
【0171】
当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイのステップ(b)で複数の標的細胞における細胞死率を決定することは、細胞死率を決定するための当該技術分野において公知の任意の標準的な技法を用いて実施することができる。非限定的な例では、複数の標的細胞における細胞死率を決定することは、i)ステップ(a)でインキュベートしたNK細胞画分及び複数の標的細胞を少なくとも1つの生死判別染色剤で染色することと、ii)生細胞分析システムを使用して生死判別染色剤を検出し、それによって、ステップ(ii)で選別し、そこで分離した複数の標的細胞における細胞死率を決定することとを含み得る。一部の態様において、生死判別染色剤を使用して、ステップ(ii)で選別し、そこで分離した複数の標的細胞における細胞死率を決定することは、増殖染色剤を生死判別染色剤と組み合わせて使用して細胞死率を決定することを更に含む。
【0172】
一部の態様において、少なくとも1つの増殖染色剤は、カルボキシフルオレセイン二酢酸塩、スクシンイミジルエステル(CFSE)であってもよい。当業者であれば理解するであろうとおり、本明細書に記載される第1の効力アッセイでは、当該技術分野において公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0173】
一部の態様において、少なくとも1つの生死判別染色剤は、Helix NP(商標)ブルー(別名Sytox(商標)ブルー)であってもよい。当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイでは、当該技術分野において公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0174】
一部の態様において、及び当業者であれば理解するであろうとおり、生細胞分析システムは、IncuCyte(登録商標)システムであってもよい。
【0175】
一部の態様において、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるインキュベーションは、約37℃で実施することができる。
【0176】
一部の態様において、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるインキュベーションは、少なくとも約3時間にわたって実施することができる。
【0177】
一部の態様において、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるNK細胞画分中の細胞数と複数の標的細胞中の細胞数との比は、約2.5:1、又は約5:1、又は約10:1であることができる。
【0178】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞の細胞死率が少なくとも約10%であることを特徴とし得る。一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞の細胞死率が少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%であることを特徴とし得る。
【0179】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合であって、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるNK細胞画分中の細胞数と複数の標的細胞中の細胞数との比が約5:1である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞の細胞死率が少なくとも約10%であることを特徴とし得る。一部の態様において、細胞死率は、NK細胞画分を標的細胞と共に約12時間インキュベートした後に測定される。
【0180】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合であって、第1の効力アッセイのステップ(a)におけるNK細胞画分中の細胞数と複数の標的細胞中の細胞数との比が約10:1である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞の細胞死率が少なくとも約10%であることを特徴とし得る。一部の態様において、細胞死率は、NK細胞画分を標的細胞と共に約3時間インキュベートした後に測定される。
【0181】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞の細胞死率が少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%であることを特徴とし得る。
【0182】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞であって、且つステップ(a)のインキュベーション条件がリツキシマブを更に含む場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、標的細胞の細胞死率が少なくとも約10%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%であることを特徴とし得る。
【0183】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイ;及び標的細胞がRaji細胞であって、且つステップ(a)のインキュベーション条件がリツキシマブを更に含む場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、リツキシマブがない場合の標的細胞の細胞死率が、リツキシマブが存在するときの標的細胞の細胞死率よりも低いことを特徴とし得る。
【0184】
本開示は、第2の効力アッセイを提供し、このアッセイは、
a)本開示のNK細胞画分及び複数の標的細胞をインキュベートするステップであって、NK細胞画分が、検出可能標識を含む少なくとも1つの抗CD107α抗体で染色されるステップと、
b)ステップ(a)でインキュベートしたNK細胞画分及び複数の標的細胞を1つ以上のタンパク質輸送阻害薬で処理し、NK細胞画分及び複数の標的細胞を更にインキュベートするステップと、
c)NK細胞画分及び複数の標的細胞を、
少なくとも1つの生死判別染色剤、及び
検出可能標識を含む少なくとも1つの抗CD56抗体
で染色するステップと、
d)NK細胞画分及び複数の標的細胞を固定するステップと、
e)NK細胞画分及び複数の標的細胞を透過処理するステップと、
f)NK細胞画分及び複数の標的細胞を、
i)検出可能標識を含む少なくとも1つの抗IFNγ抗体、及び
ii)検出可能標識を含む少なくとも1つの抗TNFα抗体
で染色するステップと、
g)以下のうちの少なくとも1種:
g1)少なくとも1種の抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1種の抗CD107α抗体でもまた染色される割合(即ち、CD107a+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%)、
g2)少なくとも1種の抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1種の抗IFNγ抗体でもまた染色される割合(即ち、IFNγ+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%)、及び
g3)少なくとも1種の抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1種の抗TNFα抗体でもまた染色される割合(即ちTNFα+/CD56+細胞数÷CD56+細胞数×100%)
を決定するステップ
を含む。
【0185】
第2の効力アッセイの一部の態様において、標的細胞は、K562細胞であってもよい。
【0186】
第2の効力アッセイの一部の態様において、標的細胞は、Raji(CCL-86)細胞であってもよい。
【0187】
第2の効力アッセイの一部の態様において、標的細胞はRaji(CCL-86)細胞であってもよく、ステップ(a)及びステップ(b)のインキュベーション条件は、リツキシマブを更に含み得る。一部の態様において、リツキシマブは、約0.5μg/mlの濃度で存在し得る。
【0188】
一部の態様において、少なくとも1つの生死判別染色剤は、Zombie Violet(商標)生死判別色素であってもよい。当業者であれば理解するであろうとおり、第1の効力アッセイでは、当該技術分野において公知の任意の増殖染色剤を使用することができる。
【0189】
一部の態様において、1つ以上のタンパク質輸送阻害薬は、ブレフェルジン、GolgiStop(商標)タンパク質輸送阻害薬(BD)、ブレフェルジンとGolgiStop(商標)タンパク質輸送阻害薬との組み合わせ、又は当該技術分野において公知の任意の他のタンパク質輸送阻害薬を含み得る。
【0190】
第2の効力アッセイの一部の態様において、ステップ(b)の更なるインキュベーションは、約37℃で実施される。
【0191】
第2の効力アッセイの一部の態様において、ステップ(b)の更なるインキュベーションは、少なくとも約37℃にわたって実施される。
【0192】
当業者であれば理解するであろうとおり、ステップ(g)における(g1)~(g3)の少なくとも1種の決定は、限定はされないが蛍光活性化細胞選別(FACS)を含め、検出可能標識を含む抗体で標識された細胞の割合を決定するための当該技術分野において公知の任意の標準的な技法を用いて実施することができる。
【0193】
第2の効力アッセイの一部の態様において、ステップ(g)は、(g1)~(g3)の各々を決定することを含み得る。
【0194】
第2の効力アッセイの一部の態様において、第2の効力アッセイのステップ(a)におけるNK細胞画分中の細胞数と複数の標的細胞中の細胞数との比は、約1:3であり得る。
【0195】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合に、上記に記載される第2の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でもまた染色される割合が少なくとも10%であることを特徴とし得る。
【0196】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がRaji細胞である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗CD107α抗体でもまた染色される割合が少なくとも4%であることを特徴とし得る。
【0197】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗IFNγ抗体でもまた染色される割合が少なくとも10%であることを特徴とし得る。
【0198】
一部の態様において、本開示のNK細胞画分は、標的細胞がK562細胞である場合に、上記に記載される第1の効力アッセイを用いてNK細胞画分を試験したとき、少なくとも1つの抗CD56抗体で染色される生細胞のうち、少なくとも1つの抗TNFα抗体でもまた染色される割合が少なくとも10%であることを特徴とし得る。
【0199】
このように、本発明のある実施形態の一態様によれば、増殖させたNK細胞画分を必要としている対象のための、増殖させたNK細胞画分を調製する方法であって、
(a)対象にとって同種異系のNK細胞とCD3+細胞とを含むアフェレーシス産物を入手することと、
(b)アフェレーシス産物をCD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とに分離することと、
(c)CD3+細胞画分の細胞を放射線照射によって不活性化することと、
(d)CD3枯渇細胞画分を、不活性化した照射CD3+細胞画分と共に、細胞増殖可能な条件下でex vivo培養することであって、条件が、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドを1.0mM~10mMの量で提供することを含み、
(e)ステップ(d)の6~10日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することにより、増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、
(f)ステップ(d)の14~16日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を回収することと、及び
(g)ステップ(f)のCD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を洗浄し及び濃縮することとを含み、それによって対象への投与用の増殖したNK細胞画分を作製する方法が提供される。
【0200】
本明細書で使用されるとき、ナチュラルキラー(NK)細胞という用語は、自然免疫応答に関与する大型の顆粒リンパ球を指す。機能的には、NK細胞は、パーフォリン、及びグランザイムプロテアーゼを含めた、種々のタンパク質を含有する細胞質顆粒のエキソサイトーシスを介した種々の標的に対する細胞溶解活性を呈する。殺傷は、接触に依存した非貪食過程で惹起され、それに抗原への事前感作は必要ない。ヒトNK細胞は、細胞表面マーカーCD16及びCD56の存在、並びにT細胞受容体(CD3)の欠如を特徴とする。ヒト骨髄由来のNK細胞は、CD2+CD16+CD56+CD3-表現型であって、更にT細胞受容体ゼータ鎖[ゼータ(ζ)-TCR]を持つことを更に特徴とし、多くの場合にNKp46、NKp30又はNKp44を特徴とする。NKT細胞又はCD8NKTなど、非NK細胞は、T細胞及びNK細胞の両方の特徴及び細胞表面マーカーを備えている。一実施形態において、本発明の方法は、細胞集団からの成熟NK細胞のex vivo繁殖に利用される。本明細書で使用されるとき、用語「成熟NK細胞」は、特徴的な表面マーカー及びNK細胞機能を有し、且つ更なる分化の可能性がない、コミットしたNK細胞として定義される。本明細書で使用されるとき、成熟NK細胞としては、限定はされないが、増殖し、且つ多量のサイトカインを産生することのできるCD56bright細胞、ロバストな細胞傷害性を呈するCD56dim細胞、CD56brightCD94high及びCD56dimCD94high細胞が挙げられる。別の実施形態では、NK前駆細胞、又はNK前駆細胞と成熟NK細胞との混合集団を繁殖させる。CD56、CD3、CD94及び他のマーカーの細胞表面発現は、例えば、FACS分析又は免疫組織染色技法により決定することができる。
【0201】
本明細書で使用されるとき、用語「前駆体」は、分裂する能力及び/又は1つ又は複数の成熟エフェクター細胞への分化を起こす能力のある未熟細胞を指す。リンパ球前駆体には、例えば、B細胞、T細胞及びNK系統の成熟細胞を生じさせる能力のある多能性造血幹細胞が含まれる。B細胞系統では(即ち、成熟B細胞を生じさせる発生経路にある)、前駆細胞にはまた、免疫グロブリン遺伝子再構成及び発現を特徴とするプロB細胞及びプレB細胞も含まれる。T及びNK細胞系統では、前駆細胞にはまた、骨髄由来の二分化能T/NK細胞前駆体[例えば、CD34(+)CD45RA(hi)CD7(+)及びCD34(+)CD45RA(hi)Lin(-)CD10(+)細胞]、並びに胸腺内前駆細胞であって、ダブルネガティブ(CD4及びCD8に関して)及びダブルポジティブ胸腺細胞(T細胞系統)を含めたもの並びにコミットしたNK細胞前駆体も含まれる。
【0202】
本発明のNK細胞は、かかる細胞を含む任意の供給源に由来し得る。NK細胞は多くの組織に見られ、例えば、リンパ節、脾臓、肝臓、肺、腸、脱落膜から入手することができ、またiPS細胞又は胚性幹細胞(ESC)からも入手することができる。典型的には、異種リンパ球細胞集団を含有する臍帯血、末梢血、動員末梢血及び骨髄が、研究及び臨床での使用向けのNK細胞を多数提供するために使用されている。具体的な実施形態において、本発明のNK細胞は、アフェレーシス産物又は白血球アフェレーシス産物のNK細胞画分である。
【0203】
アフェレーシスでは、ドナーの全血が血液成分(例えば、血漿、白血球及び赤血球)へと、典型的には遠心によって分離され、選択された成分が操作(例えば、白血球画分の培養)用に抜き取られ、残りはドナーに戻される。アフェレーシスには、体液(例えば、血漿)及び他の血液成分を枯渇させなくても特異的な血液分画(例えば、白血球画分)が多数提供されるという利点がある。アフェレーシスは、体外容積が少なくて済む連続フロー遠心に基づいてもよく、又は数サイクルで成分を分離する血液の間欠フロー遠心に基づいてもよいが、これは典型的にはより多くの時間がかかり、ドナー血の体外容積がより多いことを特徴とする。多くの好適なアフェレーシス装置が市販されている。典型的には、アフェレーシスは、ドナーの末梢血からの血液成分の分離に適用される。
【0204】
本明細書で使用されるとき、用語「アフェレーシス産物」は、アフェレーシスによってドナーの循環血液から収集された細胞を指す。NK細胞の注入を伴う臨床経験では、同種異系NK細胞は、移植片対宿主病(GVHD)の発生率を低く抑えつつ、宿主への生着に成功し得ることが示されている。「対象にとって同種異系のアフェレーシス産物」とは、本明細書で使用されるとき、対象自身以外のドナーから収集された細胞を指す。具体的な実施形態において、1つ又は複数のアフェレーシス産物は、対象にとって同種異系のアフェレーシス産物である。一部の実施形態において、具体的な1人又は複数のドナーが、既知の対象にアフェレーシス産物を提供するため特定されてもよい。他の実施形態において、同種異系アフェレーシス産物は、ドナーの身元を考慮することなく、好適なアフェレーシス産物の「バンク」から選択される。
【0205】
アフェレーシス産物は、一部の態様では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含めたリンパ球、他の有核の白血球、赤血球、及び/又は血小板を含有し、一部の態様では、赤血球及び血小板以外の細胞を含有する。当該技術分野においては、種々のアフェレーシス方法論、例えば、米国特許出願公開第20160184361号明細書、同第20180043082号明細書、同第20170021083号明細書、同第20060116271号明細書、同第20050155932号明細書、同第20050143684号明細書及び同第20030195455号明細書(これらの内容は参照によって援用される)に開示されているものが公知である。
【0206】
一部の実施形態において、ドナーから収集された細胞は洗浄されて、例えば、血漿画分が除去され、さらにそれらの細胞は、続く処理ステップのために適切な緩衝液又は培地に置かれる。一部の実施形態において、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄され、PBS中に再懸濁される。一部の実施形態において、細胞は1つ以上の試薬の存在下で洗浄され、遠心され、及び/又はインキュベートされて、例えば、望ましくない成分が除去され、望ましい成分が濃縮され、特定の試薬に感受性のある細胞が溶解又は除去される。一部の例において、細胞は、密度、接着特性、サイズ、特定の成分に対する感受性及び/又は抵抗性など、1つ以上の特性に基づいて分離される。一部の実施形態において、本方法は、RBC溶解緩衝液(例えば、塩化アンモニウムカリウム(ACK)緩衝液)で赤血球を溶解させること、澄明又は淡紅色になるまで洗浄及び遠心を繰り返すことを含む。
【0207】
このように、本発明の一実施形態の一態様によれば、本方法は、NK細胞を含むCD3枯渇細胞画分を培養することを含み、ここでCD3枯渇細胞画分は、アフェレーシスからのものである。具体的な実施形態において、CD3枯渇細胞画分は、PCS2又はMCS8150 Haemoneticsアフェレーシス機(マサチューセッツ州、ボストン、Haemonetics社)を使用してドナーから入手したアフェレーシスユニットからのものである。特定の実施形態において、CD3枯渇細胞画分は、ドナーの末梢血から入手したアフェレーシスユニットからのものである。ドナーは、アフェレーシスの前に、骨髄及び脾臓など、造血細胞供給源から所望の細胞集団(例えば、リンパ球)を動員することが公知の組成物(例えば、プレリキサホル)で処置されてもよい。
【0208】
増殖させたNK細胞集団は臨床セッティングでの使用(例えば、患者への注入)が意図されるため、本明細書に記載される方法による細胞の選択及び増殖に選ばれるアフェレーシス産物は、臨床グレードのアフェレーシスユニットであることは理解されるであろう。
【0209】
一部の実施形態において、アフェレーシス産物は新鮮な細胞集団であってもよいが、他の実施形態では、細胞は、貯蔵してあったアフェレーシス細胞集団(凍結保存して解凍した細胞など)から培養される。他の実施形態において、細胞は、予め培養してあった細胞集団から培養される。
【0210】
一部の実施形態において、アフェレーシス産物は、CD3-及びCD3+細胞の分離前に、生存率及び細胞表現型が評価される。具体的な実施形態において、アフェレーシス産物の細胞は、少なくとも70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%が生細胞である。一部の実施形態において、細胞生存率は、FACS及び/又はCedex(自動トリパンブルー色素排除アッセイ)により判定される。具体的な実施形態において、アフェレーシス産物の細胞は、90%超が生細胞である。
【0211】
総細胞数、生存率、表現型、効力及び/又は機能の評価は、過程における任意の時点-例えば、CD3枯渇前又は枯渇後、増殖前、播種、培養中の任意の時点、回収、凍結保存前、凍結保存後、貯蔵中、解凍前、解凍中及び/又は解凍後、注入前又は注入後-における細胞集団のいずれに対して行ってもよいことが理解されるであろう。得られたプロファイル(細胞数、生存率、表現型及び/又は機能)は、細胞集団のモニタリングに使用することができ、又は選択若しくは出荷判定基準を特定するために-例えば、細胞集団の選択若しくは除外又は特許請求される方法の任意の時点における調製に、又はプロトコルの修正に(例えば、ユニット中の細胞数によって、プロトコルを次のステップに進めるためにユニットを組み合わせる必要があるかが決まり得る)使用してもよい。
【0212】
特許請求される方法のために評価し得る関連性のあるパラメータとしては、細胞数、細胞生存率(例えば、Cedex、上記を参照)、汚染(例えば、マイコプラズマ、細菌、エンドトキシンレベル)、無菌性、NK関連細胞機能(例えば、細胞殺傷アッセイ、抗体依存性細胞傷害性-ADCC、生着可能性)、表現型(例えば、CD56、CD3、CD16、CD107a、CD62Lなどの細胞マーカー)、効力(CD107a及びCD62L、サイトカイン分泌-例えば、INF-γ、TNF-α、GM-CSF)、外観及び温度が挙げられる。具体的な実施形態において、本発明の方法のステップのいずれかにおける処理の前、処理中、及び/又は処理後の細胞集団を、生存率(例えば、Zombie Violet生死判別色素(Biolegend社)を使用して)を含めた効力に関して、特異抗体によるフローサイトメトリー(FACS)分析又はELISAにより表面マーカーCD107a、CD56及びCD16に関して、並びにINF-γ、TNF-αに関して、及びNK機能に関して(ADCC及び細胞殺傷)、評価することができる。
【0213】
「バフィーコート」又はアフェレーシスユニットなど、リンパ球画分を処理して、特異的な限定された細胞集団を濃縮又は精製又は単離することができる。用語「精製する」及び「単離する」は、絶対的な純粋さを要求するものではなく;むしろ、これらは相対的に見るように意図される。従って、例えば、精製されたリンパ球集団とは、指定された細胞が、かかる細胞がその供給源組織中にあるよりも濃縮されているものである。実質的に純粋なリンパ球の調製物は、その調製物中に存在する総細胞の少なくとも50%を所望の細胞が占めるように濃縮されていてもよい。特定の実施形態において、実質的に純粋な細胞集団は、調製物中の総細胞の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%又はそれ以上を占める。一部の実施形態において、アフェレーシス産物は、CD3-(例えば、CD3-CD56+ NK細胞)及びCD3+細胞(例えば、T細胞及びNKT細胞)の両方を含有する。
【0214】
リンパ球の濃縮及び単離方法は当該技術分野において周知であり、適切な方法は、所望の集団に基づき選択することができる。例えば、一つの手法では、供給源材料が、赤血球を除去することによりリンパ球に関して濃縮される。赤血球は、リンパ球及び他の細胞から密度に基づいて分離される。次には、リンパ球が豊富な画分を選択的に回収することができる。リンパ球及びその前駆体はまた、種々の商業的供給業者から入手可能な標準リンパ球分離液(LSM)など、分離液を使用した遠心によっても濃縮することができる。或いは、リンパ球/前駆体は、様々なアフィニティーベースの手順を用いて濃縮することができる。当該技術分野においては、抗体結合磁気ビーズなど、抗体を介したアフィニティー調製方法が数多く公知である。リンパ球の濃縮はまた、FICOLL-HYPAQUE(商標)及び全リンパ球、T細胞又はNK細胞の濃縮用に配合された他の密度勾配液など、望ましくない細胞のネガティブ選択用の市販の調製物を使用して実施することもできる。
【0215】
本発明の一部の実施形態において、アフェレーシス産物は、CD3枯渇細胞及びCD3含有(CD3+)細胞画分に分離される。血液、骨髄、リンパ球調製物(例えば、アフェレーシスユニット)又は組織試料からCD3-細胞を選択する方法は、当該技術分野において周知である。最も多く用いられているのは、単核球分画、及びCD3+などの非NK細胞の枯渇に基づくプロトコルである。CD34+及びCD133+など、他の細胞型の枯渇もまた実施し得る。2つ以上のプロトコルの組み合わせを用いて、非NK夾雑物から高い純度を有するCD3枯渇細胞集団を提供してもよい。CD3陰性細胞を単離するための市販のキットには、CD3+の枯渇、又は部分的枯渇、又はT細胞を認識して除去する非NK細胞抗体による枯渇を含め、一段階手順及び多段階手順が含まれる。具体的な実施形態において、NK細胞画分は、CD3細胞から免疫磁気選択法により、例えば、CliniMACS T細胞枯渇セット((LS枯渇セット(261-01)、Miltenyi Biotec社を使用して、CliniMACS CD3試薬(Miltenyi 参照番号273-01、Miltenyi Biotech社)を使用して枯渇される。具体的な実施形態において、CD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とは別々に洗浄及び遠心される。
【0216】
一部の実施形態において、CD3枯渇画分は、CD56+CD16+CD3-細胞及び/又はCD56+CD16-CD3-細胞を含む。具体的な実施形態において、CD3枯渇画分は、少なくとも10%のCD56+/CD3-細胞、少なくとも20%のCD56+/CD3-細胞、少なくとも30%のCD56+/CD3-細胞、少なくとも40%のCD56+/CD3-細胞、少なくとも50%のCD56+/CD3-細胞、少なくとも60%のCD56+/CD3-細胞、少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、少なくとも80%のCD56+/CD3-細胞又は少なくとも90%のCD56+/CD3-細胞を含む。一部の実施形態において、CD3枯渇画分は、40%~97%のCD56+/CD3-細胞、30%~90%のCD56+/CD3-細胞、40%~80%のCD56+/CD3-細胞、55~75%のCD56+/CD3-細胞、60%~70%のCD56+/CD3-細胞を含む。一部の実施形態において、CD3枯渇画分は、15%~90%のCD56+/CD3-細胞を含む。一部の実施形態において、CD3枯渇画分は、5%未満、2%未満、1%未満、0.8%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.025%未満のCD3+細胞を含む。
【0217】
表現型に基づいた細胞の選択方法としては、限定はされないが、免疫検出(例えば、ELISA)及びFACS分析が挙げられる。
【0218】
一部の実施形態において、CD3枯渇細胞画分は、非分裂フィーダー細胞など、フィーダー細胞を培養物に加えることによって増殖させる。好適なフィーダー細胞としては、限定はされないが、T細胞、間質細胞、末梢血単核球(PBMC)、線維芽細胞などが挙げられ、これらは、NK細胞培養条件へのその寄与は維持しながらも、培養下でのその増殖を防止するため、放射線照射されているか、又は他の方法で不活性化されている。具体的な実施形態において、アフェレーシス産物のCD3+細胞画分を分離後に不活性化することにより、CD3枯渇細胞の培養用のフィーダー細胞が提供される。一部の態様において、非分裂フィーダー細胞は、γ線又はX線照射CD3+フィーダー細胞を含み得る。照射は、CELLRAD照射器(コネチカット州ノースブランフォード、Precision X-Ray社)など、市販の細胞照射装置のいずれかを用いて実施することができる。一部の実施形態において、CD3+細胞画分の細胞は、細胞分裂を防止するため、約30~50Gyの範囲、130kVのX線で照射される。具体的な実施形態において、CD3+画分は、CELLRAD照射器を使用して、目標線量40Gy、130kV、5mAで照射される。照射後、CD3+細胞画分は、播種に先立って洗浄され、遠心により濃縮され、及び例えば、培養培地に再懸濁されてもよい。CD3+細胞の不活性化は、細胞に培養条件(培地、温度及び水分)を与え、成長又はその欠如をモニタすることによって評価し得る。
【0219】
本発明者らは、NK細胞を含むCD3-細胞画分を非増殖性フィーダー細胞と共に培養すると、一層大きい増殖及び増殖させたNK細胞集団の機能の亢進がもたらされることを見出した。このように、一部の態様において、NK細胞を含むCD3-細胞画分は、不活性化された(例えば、照射された)フィーダー細胞と一緒に培養のために播種される。具体的な実施形態において、NK細胞を含むCD3-細胞画分は、照射したCD3+細胞と共に培養のために播種される。詳細な実施形態において、NK細胞を含むCD3-細胞画分は、同じアフェレーシス産物からの対応するCD3+細胞画分と一緒に培養のために播種される。
【0220】
一部の実施形態において、CD3-細胞及びCD3+細胞は、0.1:1~5:1の範囲のCD3-細胞対CD3+細胞の(数値的な)比で培養のために播種される。一部の実施形態において、播種のためのCD3-対CD3+細胞比は、0.2:1、0.5:1、0.75:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.4:1、1.8:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1又は5:1である。詳細な実施形態において、CD3+細胞は、CD3-画分からの細胞と1:1の比で播種される。
【0221】
本発明の一部の態様において、細胞は、0.20~0.60×106細胞/mlの範囲で播種される。一部の実施形態において、細胞は、0.25×106細胞/ml、0.30×106細胞/ml、0.35×106細胞/ml、0.40×106細胞/ml、0.45×106細胞/ml、0.50×106細胞/ml、0.55×106細胞/ml、又は0.60×106細胞/mlの濃度で播種される。具体的な実施形態において、細胞は、0.30~0.40×106細胞/ml、詳細には、0.35×106細胞/mlの濃度で播種される。具体的な実施形態において、培養のための細胞の播種は、0.35×106個のCD3枯渇細胞及び0.35×106個の照射CD3+細胞/mlで実施する。
【0222】
培養のための細胞は、細胞培養フラスコか、又は他の好適な容器に播種することができる。一部の実施形態において、細胞は、G-Rexフラスコ(ミネソタ州セントポール、WilsonWolf社)などのガス透過性細胞培養フラスコ、詳細にはG-Rexフラスコに播種される。フラスコ容積は、必要に応じて選択し得る-具体的な実施形態において、細胞は、G-Rex500MCSフラスコ、GMPグレードに播種される。
【0223】
一部の実施形態において、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞画分(アフェレーシスユニットの分離から入手される)の容積全体が、培養のため播種される。このように、一部の実施形態において、単一のフラスコを超える播種が必要となる。例えば、培養のための細胞の播種が、0.35×106個のCD3枯渇細胞及び0.35×106個の照射CD3+細胞/mlで、2リットル容積の培地が入ったフラスコを使用して実施するとき、CD3枯渇細胞及び/又はCD3+細胞画分の細胞数が各画分700×106細胞を超える場合、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞画分の容積全体を播種するには、追加のフラスコが必要であることになる。このように、一部の実施形態において、細胞の培養は、フラスコ内にて、1フラスコ当たり400~900×106個のCD3枯渇細胞及び400~900×106個の照射CD3+細胞、詳細には、1フラスコ当たり700×106個のCD3枯渇細胞及び700×106個の照射CD3+細胞で実施する。
【0224】
NK細胞は、ex vivoで短期又は長期培養により培養してもよい。本発明者らは、NK細胞を成長因子及びニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分と共に、短くて7日、又は長ければ3週間にわたって培養することができ、すると、サイトカインと共に、しかしニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分は0.1mM未満で培養した細胞と比較したとき、培養されたNK細胞の亢進した優先的増殖及び/又は機能が生じたことを実証した(国際公開第2011/080740号パンフレットを参照のこと)。臨床試験では、ポジティブ選択によるCD56+/CD3-細胞画分からニコチンアミドと共に14~16日間増殖させた調製したてのハプロタイプが一致するNK細胞をNHL及びMM患者に注入したところ、効率的な生着が起こり、無増悪生存の比率が高まった(Bachanova et al. 2019, Blood, Volume 134, Supplement 1, Page 777を参照のこと)。しかしながら、新鮮な増殖細胞の使用は著しく限られているため、凍結保存及び貯蔵に好適な、増殖させたNK細胞画分の治療的に有利な機能を保持しつつ、一層大幅なex vivoNK細胞増殖を提供することが望ましい。
【0225】
このように、具体的な実施形態において、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞画分は、14~16日の期間にわたって培養される。
【0226】
NK細胞を含むCD3枯渇画分のex vivo培養は、本発明のこの態様によれば、CD3枯渇細胞にex vivoで細胞増殖条件を提供すること、及びCD3枯渇細胞をニコチンアミド部分と共にex vivo培養することにより達成されてもよく、それによってNK細胞集団がex vivoで増殖する。
【0227】
照射CD3+画分と組み合わせるときのCD3枯渇画分の培養は、NK細胞画分の増殖及び機能亢進を目指していること、及び不活性化したCD3+画分は非増殖性であり、本明細書に記載される方法の培養条件下で大きな増殖は起こらないことが理解されるであろう。
【0228】
本明細書で使用されるとき「培養すること」には、NK細胞の維持に必要な化学的及び物理的条件(例えば、温度、ガス)、及び成長因子を提供することが含まれる。一実施形態において、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を培養することには、細胞にNK細胞増殖条件を提供することが含まれる。NK細胞増殖を支持し得る化学的条件の例としては、限定はされないが、緩衝液、栄養素、血清、ビタミン及び抗生物質、並びに典型的には成長(即ち、培養)培地に提供されるサイトカイン及び他の成長因子が挙げられる。詳細な実施形態において、細胞増殖条件は、栄養素、血清及び1つ又は複数のサイトカインを含む。一実施形態において、NK培養培地は、MEMα(イスラエル国、ベイト・ヘメク、BI社)などの最小必須培地(MEM)及び血清を含む。一部の実施形態において、血清は、培養培地中2~20%、5~15%又は5~10%で提供される。具体的な実施形態において、血清は、培養培地中10%で提供されるヒト血清である。詳細な実施形態において、培養培地は、10%ヒトAB型血清(ミズーリ州、セントルイス、Sigma-Aldrich社)を含むMEMαである。本発明での使用に好適な他の培地としては、限定はされないが、Glascow培地(カリフォルニア州カールスバッド、Gibco社)、RPMI培地(ミズーリ州セントルイス、Sigma-Aldrich社)又はDMEM(ミズーリ州セントルイス、Sigma-Aldrich社)が挙げられる。多くの培養培地がビタミン補給剤としてニコチンアミドを含有するが(例えば、MEMα(8.19μMのニコチンアミド)、RPMI(8.19μMのニコチンアミド)、DMEM(32.78μMのニコチンアミド)及びGlascow培地(16.39μMのニコチンアミド))、しかしながら、本発明の方法は、培地の配合に含まれる任意のニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分を補足する外因的に加えるニコチンアミド、又は培地成分濃度を全体的に調整することによって得られるものに関することが注記されるであろう。
【0229】
本発明の一部の実施形態によれば、NK細胞増殖可能な条件下でCD3枯渇細胞及びCD3+細胞画分を培養することは、それらの細胞に栄養素、血清及びサイトカインを提供することを含む。一部の実施形態において、少なくとも1つの成長因子としては、サイトカイン及び/又はケモカインが挙げられる。サイトカイン及び他の成長因子は、典型的には0.5~100ng/ml、又は1.0~80ng/ml、より典型的には5~750ng/ml、更により典型的には5.0~50ng/mlの範囲の濃度で提供され(最高でかかる濃度の10倍が企図されてもよい)、例えば、米国ニュージャージー州ロッキー・ヒルのPerpo Tech,Inc.から市販されている。一実施形態において、細胞増殖可能な条件には、サイトカインインターロイキン15(IL-15)を提供することが含まれる。具体的な実施形態において、CD3枯渇細胞は20ng/mlのIL-15と共に培養する。
【0230】
培養下でのNK細胞増殖の更なる条件には、補助的エネルギー及び窒素供給源としてのグルタミンの提供が含まれる。一部の実施形態において、培養培地は0.5~5mMのグルタミンを含む。詳細な実施形態において、培養培地は2mMのグルタミンを含む。グルタミンは、グルタミンとして提供されても、又は培養下での安定性が高いジペプチドL-アラニン-L-グルタミンとして提供されてもよい。
【0231】
培養培地はまた、典型的には、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン)も含む。一部の実施形態において、培養培地は、ゲンタマイシンを0.01~1.0mg/mlの範囲で含む。詳細な実施形態において、ゲンタマイシンは培養培地に0.05mg/mlが提供される。
【0232】
非増殖性の(例えば、放射線照射された)CD3+細胞と共に培養される細胞では、CD3枯渇細胞画分に有益な成長因子を分泌するようにT細胞を刺激することが望ましい。このように、一部の実施形態において、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞画分は、CD3アゴニストを補給した培養培地に播種される。本発明の方法での使用に好適なCD3アゴニストとしては、とりわけ、OKT-3(別名ムロモナブ-CD3)、mAb 145-2C11、MGA031及びChAglyCD3など、抗CD3モノクローナル-CD3アゴニスト抗体が挙げられる。具体的な実施形態において、CD3アゴニストOKT-3は、播種時点で、0.1~5μg/mlの濃度範囲で提供される。詳細な実施形態において、OKT-3(MACS(登録商標)GMP CD3 pure、Milentyi社170-076-116として入手可能)は、培養培地に播種時点で1μg/mlの濃度で提供される。
【0233】
更に、この点で、新規のサイトカインが絶えず発見され続け、その一部は本発明のNK細胞増殖方法における使用が見出され得ることは理解されるであろう。
【0234】
一実施形態によれば、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞画分は、栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)、CD3アゴニスト及びニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分と共に培養される。本明細書で使用されるとき、用語「ニコチンアミド部分」は、ニコチンアミドを指すとともに、ニコチンアミドに由来する産物、その誘導体、類似体及び代謝産物、例えば、NAD、NADH及びNADPHなど、NK細胞増殖及び/又は活性化を有効且つ優先的に亢進させる能力のあるものも指す。ニコチンアミド誘導体、類似体及び代謝産物は、後述するとおり維持されているNK培養物に加えることによるか、殺傷及び運動性アッセイなどの機能アッセイに加えるか、又は当該技術分野において周知のハイスループットアッセイ用に設計されている自動化されたスクリーニングプロトコルにおいて、培養下でのex vivoNK増殖に対するその効果に関してスクリーニングして評価することができる。
【0235】
本明細書で使用されるとき、語句「ニコチンアミド類似体」は、上述の又は同様のアッセイでニコチンアミドと同様に作用することが公知の任意の分子を指す。ニコチンアミド類似体の代表的な例としては、限定なしに、ベンズアミド、ニコチンチオアミド(ニコチンアミドのチオール類似体)、ニコチン酸及びα-アミノ-3-インドールプロピオン酸を挙げることができる。
【0236】
語句「ニコチンアミド誘導体」は更に、ニコチンアミドそれ自体の、又はニコチンアミドの類似体の任意の構造的誘導体を指す。かかる誘導体の例としては、限定なしに、置換ベンズアミド類、置換ニコチンアミド類及びニコチンチオアミド類並びにN-置換ニコチンアミド類及びニコチンチオアミド類、3-アセチルピリジン及びニコチン酸ナトリウムが挙げられる。本発明の詳細な一実施形態において、ニコチンアミド部分はニコチンアミドである。
【0237】
本発明の一部の実施形態における使用に好適なニコチンアミド又はニコチンアミド部分の濃度は、典型的には、約0.5mM~約50mM、約1.0mM~約25mM、約1.0mM~約25mM、約2.5mM~約10mM、約5.0mM~約10mMの範囲である。ニコチンアミドの例示的な有効濃度は、それらの濃度のニコチンアミドが増殖及びNK細胞機能に及ぼす効果に基づけば、約0.5~約15mM、1.0~10.0mM、典型的には2.5又は5.0mMであってもよい。本発明の一部の実施形態によれば、ニコチンアミドは、約0.5、約0.75、約1.0、約1.25、約1.5、約1.75、約2.0、約2.25、約2.5、約2.75、約3.0、約3.25、約3.5、約3.75、約4.0、約4.25、約4.5、約4.75、約5.0、約5.25、約5.5、約5.75、約6.0、約6.25、約6.5、約6.75、約7.0、約7.25、約7.5、約7.75、約8.0、約8.25、約8.5、約8.75、約9.0、約9.25、約9.5、約9.75、約10.0、約11.0、約12.0、約13.0、約14.0、約15.0、約16.0、約17.0、約18.0及び約20.0mMの範囲(mM)の濃度で提供される。あらゆる有効な中間濃度が企図される。具体的な実施形態において、増殖可能な条件は、1.0~10.0mMのニコチンアミドを含む。更に他の実施形態において、増殖可能な条件は、7.0mMのニコチンアミドを含む。
【0238】
ニコチンアミド及び/又はニコチンアミド部分の好適な濃度は、NK増殖、細胞表現型及び/又は活性の、例えば、細胞培養又は機能(例えば、効力)についての任意のアッセイにより決定することができる。ニコチンアミドの好適な濃度は、培養にそれを用いると、ニコチンアミドが0.1mM未満の、同じNK細胞供給源(例えば、臍帯血、骨髄又は末梢血調製物)から試験した「対照」培養物と比較して、同じアッセイにおいて、及び同様の培養条件下で(ニコチンアミドへの曝露継続期間、ニコチンアミドへの曝露タイミング)、培養下にあるNK細胞の増殖、特異的表現型及び/又は機能が「亢進」する、又はその正味の増加が起こるような濃度である。
【0239】
一部の研究では、栄養素、血清、サイトカイン及びニコチンアミドと共に培養することによってNK細胞をex vivoで増殖させると、培養期間中の培地の補充又は操作が不要になるとされる一方、他の研究は、NK細胞培養の間における種々の間隔を置いた培養培地の補充(「再供給」)を提唱している。本発明の特定の実施形態において、CD3枯渇細胞画分は、培養期間の間に「再供給」される。このように、具体的な実施形態において、CD3枯渇細胞を培養することは、ex vivo培養の開始から6~10日後にCD3枯渇細胞及びCD3+細胞画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することを含む(ステップ「e」を参照のこと)。一部の実施形態において、補給は、ex vivo培養の開始から6~7日後、ex vivo培養の開始から7~8日後、ex vivo培養の開始から8~9日後、ex vivo培養の開始(播種)から9~10日後又はCD3枯渇細胞の培養開始から6~10日後に提供される。一部の実施形態において、補給(又は「再供給」)は、細胞培養物の培地の約30~80%、約40~70%又は約45~55%を除去すること、及びそれを、除去した培地と同じ組成及びレベルの栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)及びニコチンアミドを有する同様の容積(例えば、等容積)の新鮮培地に交換することを含む。一部の実施形態において、補給(又は「再供給」)は、NK細胞画分培養物の培地の約50%を除去すること、及び除去した培地を、同じ組成及びレベルの栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)及びニコチンアミドを有する同様の容積(例えば、等容積)の新鮮培地に交換することを含む。具体的な実施形態において、再供給のために培養培地は除去せず、同じ組成及びレベルの栄養素、血清、サイトカイン(例えば、IL-15)、抗生物質、グルタミン及びニコチンアミドを含む新鮮な培養培地を、培養容積がCD3枯渇細胞培養開始時(「播種」)における元の培養容積のほぼ2倍に達するまで加える。詳細な実施形態において、「再供給」用の培養培地は、CD3受容体アゴニストを含有しない(例えば、OKT-3を欠いている)。
【0240】
NK細胞集団は、種々の方法及び装置を使用して培養することができる。培養機器の選択は、通常は、培養の規模及び目的に基づく。細胞培養のスケールアップには、好ましくは、専用の装置の使用が関わる。大規模な臨床グレードのNK細胞作製用の機器については、例えば、Spanholtz et al.(PLoS ONE 2010;5:e9221)及びSutlu et al.(Cytotherapy 2010, Cytotherapy 12(8):1044-55)に詳説されている。一部の実施形態において、NK細胞画分の培養(例えば、本方法のステップ(b)及び/又は(c))は、フラスコ内にて、1フラスコ当たり100~4000×106細胞の細胞密度で実施する。具体的な実施形態において、NK細胞画分の培養(例えば、ex vivo培養の開始及び/又は「再供給」)は、フラスコ内にて、1フラスコ当たり200~300×106細胞の細胞密度で実施する。特定の実施形態において、フラスコは、G-Rex培養装置(G-Rex 100M又は閉鎖系システムG-Rex MCS、ミネソタ州セントポール、WolfWilson社)など、ガス透過性膜を備えたフラスコである。
【0241】
培養フラスコにおける細胞の密度は、培養の継続期間中、細胞の増殖に伴い増加することが理解されるであろう。このように、細胞の培養は、フラスコ内にて、培養下での増殖の経過中、1フラスコ当たり400~900×106個のCD3枯渇細胞及び400~900×106個の照射CD3+細胞、詳細には、1フラスコ当たり700×106個のCD3枯渇細胞及び700×106個の照射CD3+細胞を播種することにより実施するが、CD3枯渇画分の細胞は、1フラスコ当たり100~4000×106個の細胞、1フラスコ当たり150~3500×106個の細胞、1フラスコ当たり200~4000×106個の細胞、1フラスコ当たり300~4000×106個の細胞、1フラスコ当たり200~3000×106個の細胞、1フラスコ当たり300~2000×106個の細胞、1フラスコ当たり400~1000×106個の細胞、1フラスコ当たり250~800×106個の細胞、1フラスコ当たり100~600×106個の細胞又は1フラスコ当たり150~500×106個の細胞の細胞密度で培養する。具体的な実施形態において、フラスコ内における培養の継続期間中、NK細胞画分のNK細胞は、1フラスコ当たり100~3000×107細胞の細胞密度で培養される。一部の実施形態において、増殖させたCD3枯渇細胞及びCD3+フィーダー細胞の組み合わせ画分中のNK画分の増殖倍数は、元の細胞数の2~15倍の範囲である。具体的な実施形態において、NK細胞の増殖は、増殖サイクルの完了時に細胞の約90%であり、増加倍数は2~10倍である。詳細な実施形態において、増殖する間のNK細胞の増加倍数は、培養前のアフェレーシスユニットにおけるNK細胞数の2~6倍、3~5、4~6又は4~5倍である。
【0242】
NK細胞の培養は、フィーダー細胞又はフィーダー細胞層有りでも又は無しでも実施することができる。本発明者らは、CD3枯渇画分をその不活性化した対応するCD3+画分と一緒に培養すると、増殖させたNK細胞集団の増殖及び機能が亢進することを示している。このように、一実施形態によれば、NK細胞集団の培養は、フィーダー層又はフィーダー細胞有りで実施する。
【0243】
特定の実施形態において、CD3枯渇NK細胞は、CD3枯渇細胞及びCD3+画分細胞培養(ステップ(b))の開始から14~16日後に培養物から回収する。細胞の回収は、接着している細胞を剥離させる(例えば、培養ベッセル表面を「掻き取る」)ことによって手動で、又は細胞回収装置、即ち、自動で細胞をその培養ベッセルから効率的に洗い落して細胞を収集するように設計された装置によって実施してもよい。具体的な実施形態において、増殖させたCD3枯渇NK細胞画分は、細胞回収装置(例えば、Fresenius Kabi社(ドイツ国、ハンブルグ)によるLOVO細胞処理装置)によって培養ベッセルから回収する。
【0244】
一部の実施形態において、増殖させたCD3枯渇NK細胞の(増殖を通じて)濃縮された画分を培養物から回収すると、培養ベッセルからほとんどの、又はほぼ全ての細胞(照射CD3+フィーダー細胞を含む)が取り除かれる。他の実施形態において、回収を2段階以上で実施して、未回収の細胞を後の時点で回収するまで培養下に残しておくことができる。特定の実施形態において、増殖させたCD3枯渇NK細胞含有画分は、増殖させたCD3枯渇NK含有細胞画分の第1の部分を回収すること、及び次に増殖させたCD3枯渇細胞画分の第2の部分を回収することを含む二段階で回収する。二段階の回収は、第1及び第2の部分の回収間に数時間、数日又はそれ以上の間隔を置いて実施することができる。特定の実施形態において、回収することは、ステップ(b)(培養の開始)から約14日後に、増殖させたCD3枯渇NK細胞の第1の部分を回収すること、及び約2日後に、増殖させたCD3枯渇細胞画分の第2の部分を回収することを含む。具体的な実施形態において、第1の部分はex vivo培養の開始から14日後に回収し、第2の部分はex vivo培養の開始から16日後に回収する。
【0245】
特定の実施形態において、第1及び第2の部分はほぼ等しく、即ち、第1の(回収された)部分が、増殖させたCD3枯渇NK細胞画分の約50%を占め、第2の(回収された)部分が、増殖させたCD3枯渇NK細胞画分の残りを占める。
【0246】
具体的な実施形態において、培養ベッセル(例えば、フラスコ)の細胞内容物全体が同じ時点で回収する。一部の実施形態において、細胞は播種後14、又は15若しくは16日目に回収する。
【0247】
増殖させたCD3枯渇細胞及びCD3+フィーダー細胞の組み合わせ集団を更なる使用(例えば、移植(注入)、又は凍結保存)に向けて調製するため、回収した細胞は、培養培地で洗浄し、重要なパラメータに関して評価し、及び更なる処理に好適な濃度に容積を調整する必要がある。
【0248】
回収後、増殖させたCD3枯渇細胞及びCD3+フィーダー細胞の組み合わせ集団は、手動で、又は好ましくは臨床適用向けに、閉鎖系システムを採用する自動化された装置を使用して、洗浄により培養培地を除くことができる。すぐに使用する際には、洗浄した細胞は、注入溶液(本明細書に記載される方法での使用に好適な例示的注入溶液としては、限定はされないが、CSB緩衝液(ワシントン州、ボセル、Biolife Solutions社)、2-8 Cellsius緩衝液(イリノイ州、レイクズーリック、Protide Pharmaceuticals社)及び8%w/vのHSA及び6.8%w/vのデキストラン-40が挙げられる)、生理食塩水又はPlasmaLyte(Baxter Healthcare Ltd)などの他の再構成/注入緩衝液で再構成することができる。本開示の方法の一部の態様において、注入溶液はPlasmaLyteであってもよい。当業者であれば理解するであろうとおり、PlasmaLyteは、5.26g/lの濃度の塩化ナトリウム、0.37g/lの濃度の塩化カリウム、0.30g/lの濃度の塩化マグネシウム六水和物、3.68g/lの濃度の酢酸ナトリウム三水和物及び5.02g/lの濃度のグルコン酸ナトリウムを、約7.4(6.5~8.0の範囲)のpHとして含む。
【0249】
このように、一部の実施形態において、本明細書に記載される方法により調製された、対象への注入に好適な、増殖させたNK細胞を含むCD3枯渇細胞画分が提供される。
【0250】
凍結保存のため、洗浄した細胞は、凍結保存緩衝液で再構成することができる。一部の実施形態において、細胞は、初めにDMSO不含の凍結保存緩衝溶液(例えば、CSB緩衝液、Biolife社)で洗浄されて、再構成される(例えば、懸濁される)。洗浄した細胞は次に、本明細書に詳細に記載される手順によれば、温度を低下させる前に、生存率、機能、効力、無菌性、細胞数などの評価のため試料をサンプリングすることができる。
【0251】
本発明者らは、本明細書に記載される方法のとおりNK細胞をニコチンアミド及びCD3+フィーダー細胞と共に増殖させると、低温貯蔵後の解凍及び治療的使用に好適なその表現型、機能性及び生存率を保持しつつ、効率的に凍結保存できることを示した。
【0252】
このように、本発明の一部の態様によれば、NK細胞画分の凍結保存方法であって、
(a)NK細胞画分のNK細胞をDMSO不含凍結保存緩衝液に懸濁することと、
(b)細胞を4℃で10~30分間冷却することと、
(c)DMSOを10%w/vとなるように加えることと、
(d)細胞の温度を-120℃に下げることと、
(e)凍結保存NK細胞を120℃未満で貯蔵することと
を含む方法が提供される。
【0253】
詳細な実施形態において、凍結保存用のNK細胞画分は、増殖させたNK細胞画分である。具体的な実施形態において、凍結保存用のNK細胞画分は、本明細書に記載される方法により培養し、回収し、洗浄した、CD3枯渇細胞と不活性化されたCD3+フィーダー細胞とを増殖させたNK細胞画分である。
【0254】
このように、本発明の一部の態様によれば、凍結保存NK細胞画分を必要としている対象のための凍結保存NK細胞画分の調製方法であって、
(a)対象にとって同種異系のNK細胞とCD3+細胞とを含むアフェレーシス産物を入手することと、
(b)アフェレーシス産物をCD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とに分離することと、
(c)CD3+細胞画分の細胞を照射によって不活性化することと、
(d)CD3枯渇細胞画分を、不活性化した照射CD3+細胞画分と共に、細胞増殖可能な条件下でex vivo培養することであって、条件が、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドを1.0mM~10mMの量で提供することを含み、
(e)ステップ(d)の6~10日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することにより、増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、
(f)ステップ(d)の14~16日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を回収することと、
(g)ステップ(f)のCD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を洗浄し及び濃縮することと、
(h)ステップ(g)のCD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を凍結して凍結保存することであって、それによって凍結保存NK細胞画分を必要としている対象のための凍結保存NK細胞画分を作製することと
を含む方法が提供される。記載される本方法により調製される凍結保存NK細胞画分は、臨床セッティングでの投与に好適である。
【0255】
凍結するため温度を下げる前に、細胞に好適な凍結保護物質(例えば、ヒト血清アルブミン及び/又はDMSO)を加えて凍結保存緩衝液を完成させる。一部の実施形態において、凍結保存剤溶液は、例えば、少なくとも又は約1~30%のDMSOであるか、又はそれを含有する。一部の実施形態において、細胞は、5%~20%のDMSO溶液又は5%~10%のDMSO溶液など、1.0%~30%のDMSO溶液を含有する凍結保存剤溶液で製剤化される。一部の実施形態において、凍結保存溶液は、凍結保存剤を含め、例えば、10%のDMSOを含有するCSB緩衝液(ワシントン州、ボセル、Biolife Solutions社)、又は他の好適な細胞凍結用培地であるか、又はそれを含有する。
【0256】
一部の実施形態において、処理には、所与の用量又はその画分中に投与のための細胞数を含む単位用量形態の組成物など、所望の濃度又は数となるような細胞の希釈又は濃縮が含まれ得る。一部の実施形態において、処理するステップには容積縮小が含まれてもよく、それによって細胞の濃度を所望のとおりに増加させてもよい。一部の実施形態において、処理するステップには容積追加が含まれてもよく、それによって細胞の濃度を所望のとおりに低下させてもよい。
【0257】
一部の実施形態において、凍結保存のための処理には、ある容積の凍結保存緩衝液を増殖させた細胞に追加すること、又は凍結保存バッグ内で所望の最終容積となるように容積を補充することが含まれる。一部の実施形態において、製剤化緩衝液の容積は、10mL又は約10mL~1000mL、例えば、少なくとも又は約少なくとも又は約又は20mL、30mL、40mL、50mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL又は1000mLである。詳細な実施形態において、凍結保存用の懸濁細胞の容積は、緩衝液を含め、20mLである。
【0258】
一部の実施形態において、増殖させたCD3枯渇細胞及びCD3+フィーダー層細胞は、閉鎖系細胞処理システムの一部として作動可能に連結されたバッグなどの容器に移される。一部の実施形態において、バッグなどの容器は、出力ライン又は出力位置においてシステムに接続される。一部の実施形態において、バッグは、凍結保存バッグ、具体的にはフッ化エチレンプロピレン凍結保存バッグである。種々の好適な凍結保存バッグ、例えば、CryoMACS(登録商標)凍結保存バッグ(Miltenyi Biotech社)又はOriGen凍結保存バッグ(Abacus社)が市販されている。具体的な実施形態において、凍結保存バッグは、CryoMACS凍結保存バッグである。一部の態様において、凍結保存バッグは、250ml凍結保存バッグであってもよい。一部の態様において、凍結保存バッグは、50ml凍結保存バッグであってもよい。
【0259】
一部の実施形態において、細胞処理システムに結び付けられているなどの閉鎖系システムは、シングルポート出口、又は多岐管を備えるマルチポート出口キットを含み、管ラインの各端部がポートに結び付けられ、ポートには、増殖させた細胞組成物を移し替えるために1つ又は複数の容器を接続することができる。一部の態様において、所望の数又は複数の出力容器、例えば、凍結保存バッグは、マルチポート出力のポートの1つ以上、概して2つ以上、例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8つ又はそれ以上などに無菌的に接続することができる。例えば、一部の実施形態において、1つ以上の容器、例えば、バッグは、ポートに取り付けるか、又は全てには満たない数のポートに取り付けることができる。このように、一部の実施形態において、このシステムは、培養して増殖させたCD3枯渇細胞を複数の出力バッグ、及び、必要であれば、対象への移し替えを実施することができる。
【0260】
一部の実施形態において、容器、例えば、バッグの各々は、個々に単位用量の細胞を含む。このように一部の実施形態において、容器の各々は、同じ又はほぼ若しくは実質的に同じ細胞数を含む。一部の実施形態において、単位用量は、5×108個、2.5×108個、1×108個、5×107個、2×106個に等しい又はおよそその総細胞/ml、又は約5×105個未満の総細胞/mlを含む。一部の実施形態において、各バッグ内にある細胞+凍結保存緩衝液の容積は、少なくとも又は約少なくとも20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL又は100mLなど、10mL~100mLである。一部の実施形態において、各単位用量は、20ml容積の凍結保護物質緩衝液(例えば、CSB緩衝液)の中に約2.5×108個の総細胞を含有する。
【0261】
ここで使用されるとき、極低温で凍結するという用語は、試料、例えば、細胞を含有する試料の温度を-80℃~-210℃の温度にまで下げることを意味する。
【0262】
増殖させたCD3枯渇細胞及び照射CD3+フィーダー細胞集団の凍結は、数段階で実施する:初めに、細胞(密封された凍結保存バッグ内にある)の温度を-120℃(マイナス120℃)にまで低下させる。温度の低下は、細胞へのショック及び損傷を防止するため、徐々に実施される。一部の実施形態において、-120℃までの低下は2段階で実施する:例えば、-1℃/分で-60℃まで徐々に凍結した後、続いて目標温度(-120℃)まで、より速く、例えば、-5℃/分で凍結する。次に、凍結保存された細胞を含む凍結した凍結保存バッグが、液体窒素フラスコ(例えば、液体窒素フラスコの気相)、又は-120℃未満、一部の実施形態では-140℃未満又は-150℃以下で貯蔵するための超低温フリーザーなど、凍結保存装置に移し替えられる。
【0263】
一部の実施形態において、温度を徐々に低下させる間に(例えば、-60℃に達する前に)、「スナップ凍結」の中間段階が導入され、これは、温度を素早く急降下させて、次に元に戻して徐々に凍結することを含む。
【0264】
ここで使用されるとき、用語「極低温で貯蔵すること」又は「極低温貯蔵」とは、概して、試料、例えば、細胞を含有する試料を-80℃~-210℃の温度で貯蔵することであって、かかる貯蔵期間後に細胞を解凍することが可能であるような条件で貯蔵することにより、解凍時又は解凍後、試料中にある細胞の少なくとも一部分又はかなりの部分が生細胞のままであり、及び/又はその生物学的機能の少なくとも一部分を保持しているような貯蔵を指す。一態様において、細胞試料は、少なくともある一定の割合、試料中の細胞の20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%又はおよそその割合又はそれより高い割合が生細胞のままであるように解凍することが可能である。
【0265】
このように、一部の実施形態において、本明細書に記載される方法により調製された、投与(例えば、注入による)に好適な、増殖させたNK細胞を含むCD3枯渇細胞画分が提供される。一部の実施形態において、増殖させたNK細胞を含む凍結保存CD3枯渇細胞画分は、0.5×108個の総細胞/ml、1.0×108個の総細胞/ml、1.5×108個の総細胞/ml、2.0×108個の総細胞/ml、2.5×108個の総細胞/ml、3.0×108個の総細胞/ml、3.5×108個の総細胞/ml又は4.0×108個の総細胞/mlを5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、90、100ml又はそれ以上の容積に含むフッ化エチレンプロピレン凍結保存バッグに提供される。一部の実施形態において、凍結保存バッグは、10、20、30、40、50、60、70、80、100又は50~1000、50~500、100~500、50~250mlの範囲の容積であってもよい。具体的な実施形態において、増殖させたNK細胞を含む凍結保存CD枯渇細胞画分は、250又は50mlの凍結保存バッグに提供される。具体的な実施形態において、増殖させたNK細胞を含む凍結保存CD3枯渇細胞画分は、2.5×108個の総細胞/mlを20mlの容積に含むフッ化エチレンプロピレン凍結保存バッグに提供される。
【0266】
貯蔵期間中の生存率、特徴、機能、効力及び細胞密度(数/容積)をモニタするため、凍結保存後の様々な時点で凍結保存画分の一部を解凍し、試料をサンプリングし得ることが理解されるであろう。サンプリングは定期的な間隔(月1回、2ヵ月、6ヵ月、又はそれ以上)で行うことができる。
【0267】
一部の態様において、単一の凍結保存バッグが1回限り解凍される。
【0268】
貯蔵された凍結保存細胞集団の正確な特徴付けを提供するため、凍結保存した単位を後に解凍に選択する際の参照用に、個々の凍結保存画分のパラメータ(効力、汚染物質、無菌性、生存率、外観、表現型、ドナー統計等)が記録されてもよい。
【0269】
細胞は、液体窒素貯蔵タンクの気相中などに、及び1日~12年の貯蔵期間にわたるなどして、上記に記載される実施形態による方法で極低温貯蔵されてもよい。一部の実施形態において、細胞は、12時間、24時間、36時間、又は48時間以上の期間にわたって貯蔵され、又はバンク化される。一部の実施形態において、細胞は、1週間、2週間、3週間、又は4週間以上の期間にわたって貯蔵され、又はバンク化される。一部の実施形態において、細胞は、長期貯蔵又は長期「バンク化」に置かれる。一部の態様において、細胞は、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、25年、30年、35年、40年以上の、又はそれより長い期間にわたって貯蔵される。
【0270】
一部の実施形態において、貯蔵期間後、細胞は解凍される。一部の実施形態において、細胞は、細胞の温度を0℃以上にまで上昇させることにより解凍され、そうすることによって細胞の生物学的機能の少なくとも一部分が回復する。一部の実施形態において、細胞は、細胞の温度を37℃に上昇させることにより解凍され、そうすることによって細胞の生物学的機能の少なくとも一部分が回復する。
【0271】
一部の実施形態において、細胞は、急速に、例えば、細胞を過熱することなく、又は細胞を37℃を上回るなどの高温に曝露することなく、可能な限り急速に解凍される。一部の実施形態において、急速解凍により、細胞が高濃度の凍結保護物質及び/又はDMSOに曝露されることが低減及び/又は防止される。詳細な実施形態において、解凍が起こる速度は、細胞を凍結及び解凍するのに入れる容器、例えば、バイアル及び/又はバッグの特性の影響を受け得る。
【0272】
一部の実施形態において、細胞は、熱ブロック上、乾燥解凍機内、又は水浴中で解凍される。特定の実施形態において、細胞は、熱ブロック上、乾燥解凍機内、又は水浴中では解凍されない。一部の実施形態において、細胞は、室温で解凍される。詳細な実施形態において、細胞は、37℃、35℃、32℃、30℃、29℃、28℃、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、又は15℃、又は15℃以上30℃以下、23℃以上28℃以下、又は24℃以上26℃以下の温度で、およそその温度で、又はその温度未満で解凍される。
【0273】
一部の実施形態において、極低温凍結された細胞は、急速に解凍される。詳細な実施形態において、細胞は、120分、90分、60分、45分、30分、25分、20分、15分、又は10分で、およそその時間で、又はその時間未満で解凍される。一部の実施形態において、細胞は、10分以上60分以下、15分以上45分以下、又は15分以上25分以下で解凍される。詳細な実施形態において、細胞は、20分で、およそその時間で、又はその時間未満で解凍される。
【0274】
一部の実施形態において、細胞は、熱ブロック上、乾燥解凍機内、又は水浴中で解凍される。特定の実施形態において、細胞は、熱ブロック上、乾燥解凍機内、又は水浴中では解凍されない。一部の実施形態において、細胞は、室温で解凍される。具体的な実施形態において、細胞は、室温で2~15分間インキュベートされる。詳細な実施形態において、細胞が入った凍結保存バッグは、室温(例えば、15~25℃)で5分間インキュベートされ、次に37℃の水浴中で解凍するまで-例えば、全ての固体が完全に溶解して溶液になるまで解凍される。
【0275】
特定の実施形態において、解凍した細胞は、投与前又は任意の後続の操作及び/又は処理ステップの前に、静置され、例えば、インキュベート又は培養される。一部の実施形態において、細胞が静置されている間、凍結保護物質、例えば、DMSOは低量及び/又は検出不能な量であるか、又は凍結保護物質は存在しない。詳細な実施形態において、解凍した細胞は、例えば、凍結保護物質及び/又はDMSOを除去するための洗浄ステップの後、又はその直後に静置される。一部の実施形態において、細胞は、5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、18時間、又は24時間にわたって、およそその時間にわたって、又は少なくともその時間にわたって静置される。特定の実施形態において、細胞は、2時間にわたって、およそその時間にわたって、又は少なくともその時間にわたって静置される。
【0276】
解凍した細胞は、任意の好適な注入、緩衝液、生理食塩水、PlasmaLyte等の溶液で再構成することができる。一部の実施形態において、細胞は、徹底的に解凍した後、注入溶液(例えば、PlasmaLyte(登録商標)(Baxter社)又は乳酸加リンゲル溶液)で希釈され、治療に直接使用することが可能にされる。他の実施形態において、細胞は、デキストラン及びヒト血清アルブミン(HSA)を含む溶液で希釈される。
【0277】
詳細な実施形態において、細胞は、解凍後に、PlasmaLyte(Baxter社)などの市販の電解質注入溶液、乳酸加リンゲル溶液などで希釈される。一部の実施形態において、解凍した細胞はPlasmaLyte(Baxter社)により1:4の細胞対希釈剤比で希釈される。一部の実施形態において、20mlの解凍した細胞が80mlのPlasmaLyteで100mlの最終容積となるように希釈される。
【0278】
一部の実施形態において、再構成は閉鎖系システムにおいて実施される。一部の実施形態において、注入溶液は、本発明の方法及び組成物での使用への適合性に関してスクリーニングされる。好適な注入溶液の選択のための例示的な判定基準には、細菌、酵母又はカビの成長がないこと、エンドトキシン含有量が0.5Eu/ml未満であること、及び外観が澄明で、外来性の粒子を含まないことを指示する安全性試験が含まれる。一部の態様において、本開示のNK細胞画分及びNK画分を含む組成物は、約0.5エンドトキシンユニット(EU)/ml以下を含む。
【0279】
本明細書で使用されるとき、用語「繁殖」又は「増殖」は、成長、例えば、細胞成長、及び細胞数の増倍を指す。繁殖及び増殖は、本明細書で使用されるとき、インキュベーション期間中に生じるNK細胞数の増加に関する。NK細胞の表現型を示す細胞のインビトロ又はin vivo繁殖は、例えば、IL-2、エプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様株、RAJI及びK562細胞などによるその刺激に続いて起こる公知の現象である。
【0280】
細胞増殖アッセイは当該技術分野において周知であり、限定はされないが、細胞を低密度で播種して成長させ、コロニーをカウントするクローン原性アッセイ、細胞数を機械的に測定する機械的アッセイ[フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))、ヨウ化プロピジウム]、生細胞数を測定する代謝アッセイ(テトラゾリウム塩、例えば、XTT、MTT等の取込みなど)、成長中の集団のDNA合成を測定する直接的な増殖アッセイ(ブロモデオキシウリジン、チミジン取込みなど)が挙げられる。一実施形態において、本発明に係る有効濃度のニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分と共に培養されるNK細胞集団の細胞増殖は、培養下のCD3枯渇細胞の播種から所定の時間(例えば、約10時間、12時間、約1、2、3、4、5、6、7日、約1、2、3、4、5週間、2ヵ月又はそれ以上)が経った後に測定され、抗CD56及び抗CD3マーカーを使用したFACS分析によって決定されることにより、集団のCD56+CD3-NK細胞画分が同定及び定量化される。NK細胞の増殖は、培養前の元のNK細胞画分と比較したときの、NK細胞の増加倍数(例えば、増殖率又は増殖倍数)として表されてもよい。一部の実施形態において、本発明に係る有効濃度のニコチンアミドに曝露されるNK細胞の集団は、約5、約7、約12、約14、約16、約18、約21、約25、約30日又はそれ以上培養した後に、少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも250倍及び少なくとも500倍又はそれ以上のNK細胞集団の増加倍数を示す。別の実施形態において、有効濃度のニコチンアミドに曝露した、FACS(商標)により決定したときのNK細胞集団の増殖倍数は、同一の条件において0.1mM未満のニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分で培養したNK細胞と比べて少なくとも約1.2倍、約1.3倍、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍大きい。
【0281】
本明細書で使用されるとき、用語「機能」又は「NK細胞機能」は、NK細胞に帰せられる任意の生物学的機能を指す。NK細胞機能の非限定的なリストとしては、例えば、細胞傷害性、アポトーシス誘導、細胞運動性、指向性の遊走、サイトカイン及び他の細胞のシグナル応答、サイトカイン/ケモカイン産生及び分泌、活性化型及び抑制型細胞表面分子のインビトロ発現、移植を受けた宿主における細胞のホーミング及び生着(生体内保持率)、並びにin vivoでの疾患又は疾患過程の変化が挙げられる。一部の実施形態において、ニコチンアミド及び/又は他のニコチンアミド部分への曝露によって亢進するNK細胞機能としては、CD62L表面マーカー、CD107aの発現の上昇、遊走応答の上昇、及びNK細胞の高い細胞傷害活性、並びに注入されたNK細胞のホーミング及び生体内保持率の上昇のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0282】
移植における細胞のホーミング/生着及び保持に重要な、CD62L、CXCR-4、CD49eなどの接着及び遊走分子に関するアッセイは、当該技術分野において周知である。細胞のCD62L発現は、例えば、フローサイトメトリー、免疫検出、定量的cDNA増幅、ハイブリダイゼーションなどによってアッセイし得る。一実施形態では、異なるNK細胞集団におけるCD62L発現が、蛍光タグを付加した特異的抗ヒトCD62Lモノクローナル抗体[例えば、CD62L PE、BioLegend社(米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)のカタログ番号304806]に細胞を曝露し、蛍光活性化細胞選別(FACS)により細胞を選別することによって検出される。
【0283】
細胞遊走アッセイは、当該技術分野において周知である。細胞の遊走は、例えば、トランス遊走アッセイ又はギャップ閉鎖アッセイによってアッセイし得る。2チャンバ技法などのトランス遊走アッセイでは、細胞が障壁(例えば、フィルタ)によって刺激と分離され、開始時からの細胞の損失、障壁への細胞の蓄積、又は両方を特定の間隔でカウントすることにより細胞の遊走が検出される。ギャップ閉鎖アッセイでは、細胞が目に見える間隙の周辺に置かれ(傷を付けた寒天プレート、円の周囲等)、刺激と共にインキュベートされる。刺激に反応した、細胞の運動性によって適用される細胞間の空間の閉鎖が、サイトメトリー、免疫検出、顕微鏡法/形態計測等を用いて可視化される。一実施形態では、SDF(250ng/ml)に応答した異なるNK細胞集団の潜在的遊走能力が、「Transwell」(商標)トランス遊走アッセイにより決定される。
【0284】
輸注又は移植された細胞のホーミング及び生体内保持に関するアッセイは、当該技術分野において周知である。本明細書で使用されるとき、用語「ホーミング」は、輸注又は移植された細胞が宿主標的臓器に到達し、そこで生き残る能力を指す。例えば、NK細胞の標的臓器はリンパ系組織であってもよく、肝細胞の標的臓器は肝実質であってもよく、肺胞細胞の標的臓器は肺実質であってもよい等である。本明細書で使用されるとき、用語「生体内保持」(「生着」としても知られる)とは、輸注又は移植された細胞が標的臓器で増殖し、生存し続ける能力を指す。移植されたNK細胞のホーミング及び生体内保持をアッセイするための動物モデルとしては、限定はされないが、免疫不全小型哺乳類(SCID及びIL2Rγnullマウスなど)が挙げられる。SCID-Huマウスモデルは、ヒト胎児胸腺及び肝組織又は胎児BM組織を移植したC.B-17 scid/scid(SCID)マウスを用いるものであり、移植されたヒトNK細胞の保持及び治療可能性を評価するのに適切なモデルを提供する。移植細胞のホーミング及び生体内保持は、同様にヒト宿主対象で判定されてもよい。一実施形態において、ホーミング及び生体内保持は、照射NOD/SCIDマウスで、例えば、本発明に係る有効濃度のニコチンアミドと共に培養した約15×104個、約15×105個、約15×106個、約15×107個又はそれ以上のヒトNK細胞を輸注し、輸注から所定の時間後に(例えば、輸注から約5時間、10時間、12時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2、3、4、5週間、2、3、4ヵ月又はそれ以上後に)犠牲にしてアッセイされる。マウスの犠牲時、脾臓、骨髄、末梢血、及び他の臓器の試料について、FACSによりヒト特異的Abを使用してヒトNK細胞(CD56+CD45+)の存在に関して評価する。パーセント生体内保持率は、臓器中の細胞のうちドナー表現型(例えば、ヒト細胞についてCD45)を示す割合として表される。具体的な実施形態において、本明細書に記載される方法に従い増殖させて、凍結保存し、及び解凍したNK細胞の生体内保持率は、ニコチンアミド及びCD3+フィーダー層無しで培養したNK細胞と比較したとき、脾臓における保持率が増加している。
【0285】
細胞傷害性(「細胞殺傷」)に関するアッセイは、当該技術分野において周知である。リダイレクト殺傷アッセイにおける使用に好適な標的細胞の例は、癌細胞株、原発性癌細胞 固形腫瘍細胞、白血病細胞、又はウイルス感染細胞である。特に、K562、BL-2、colo250、RAJI(リンパ芽球様バーキットリンパ腫細胞)及び原発性白血病細胞が使用されてもよく、しかし、幾つもの他の細胞型のいずれかを使用することもでき、当該技術分野において周知である(例えば、Sivori et al. (1997) J. Exp. Med. 186: 1129-1136;Vitale et al. (1998) J. Exp. Med. 187: 2065-2072;Pessino et al. (1998) J. Exp. Med. 188: 953-960;Neri et al. (2001) Clin. Diag. Lab. Immun. 8:1131-1135を参照のこと)。細胞殺傷は、細胞生死判別アッセイ(例えば、色素排除、クロム遊離、CFSE)、代謝アッセイ(例えば、テトラゾリウム塩)、及び直接的な観察によりアッセイされる。
【0286】
増殖させたCD3枯渇細胞画分を解凍して希釈した後、その増殖させた画分は、移植における使用の適合性に関して評価することができる。好適な移植可能なNK細胞調製物を選択するための典型的な判定基準としては、CD56+/CD3-細胞の割合、細胞生存率、CD3+細胞画分の量、エンドトキシンの存在、微生物汚染などが挙げられる。注入したNK細胞のホーミング及び保持の成功には、増殖させたNK細胞画分のCD56+、CD3+及びCD56+/CD3-細胞含有量が決定的に重要であり、従って注入を進める際の中心となる判定基準であることが注記されるであろう。このように、詳細な実施形態において、解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、約60%~約90%のCD56+/CD3-細胞、約68%~約85%のCD56+/CD3-細胞、約72%~約82%のCD56+/CD3-細胞及び約76~79%のCD56+/CD3-細胞を特徴とする。一実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、少なくとも60%、少なくとも64%、少なくとも70%、少なくとも74%、少なくとも80%又は少なくとも85%のCD56+/CD3-細胞を特徴とする。更なる実施形態において、本発明の方法によって生成される解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞を特徴とする。CD56及びCD3細胞マーカーによるNK細胞表現型の同定については、上記で詳細に説明した。
【0287】
移植用に意図される細胞画分に同種異系T(CD3+)細胞が存在すると、GVHDのリスクが大いに高まるため、問題になる。このように、臨床使用向けの増殖させたNK細胞画分の適合性に重要なパラメータは、CD3+、及び、詳細には、CD3+/CD56-細胞の量又は比率である。このように、詳細な実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、患者の体重1Kg当たり1.0×105~1.0×106個のCD3+/CD56-細胞を特徴とする。更なる実施形態において、本発明の方法によって生成される解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、患者の体重1Kg当たり7.0×105個より少ないCD3+/CD56-細胞、患者の体重1Kg当たり6.5×105個より少ないCD3+/CD56-細胞、患者の体重1Kg当たり6.0×105個より少ないCD3+/CD56-細胞、患者の体重1Kg当たり5.5×105個より少ないCD3+/CD56-細胞、患者の体重1Kg当たり5.0×105個より少ないCD3+細胞、患者の体重1Kg当たり4.5×105個より少ないCD3+/CD56-細胞、患者の体重1Kg当たり4.0×105個より少ないCD3+/CD56-細胞、患者の体重1Kg当たり3.5×105個より少ないCD3+細胞又は患者の体重1Kg当たり3.0×105個より少ないCD3+CD56-細胞を特徴とする。一実施形態において、本発明の方法によって生成される解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、患者の体重1Kg当たり1×106個より少ないCD3+CD56-細胞を特徴とする。他の実施形態において、本発明の方法によって生成される解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、患者の体重1Kg当たり0.5×106個より少ないCD3+CD56-細胞を特徴とする。患者の体重1Kg当たりで表した、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分のCD3+CD56-分率、分量又は含有量の計算は、患者(即ち対象)に移植された(例えば、注入された)CD3+CD56-細胞の総量に関することが注記されるであろう。本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分におけるCD3+CD56-細胞の分率、分量又は量はまた、CD56+/CD3-細胞とCD3+CD56-細胞との比として、又は本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の容積分率(例えば、CD3+/CD56-細胞/mL)若しくは重量分率(CD3+/CD56-細胞/100g)としても表すことができる。CD3+細胞マーカーの同定については、上記で詳細に説明した。
【0288】
移植用の増殖させたCD3枯渇NK細胞画分の無菌性及び安全性は、とりわけ、エンドトキシン含有量並びに細菌、真菌、ウイルス及びマイコプラズマ汚染の存在をモニタリングすることによって確保される。一部の実施形態において、移植用に選択される増殖させたNK細胞画分は、解凍及び希釈後に5Eu/ml以下のエンドトキシン含有量を有する。一部の実施形態において、移植用の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、解凍及び希釈後に微生物(例えば、グラム陽性微生物)を含まないものとして特徴付けられる。詳細な実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は無菌であり、解凍及び希釈後にマイコプラズマを含まない。
【0289】
一部の実施形態において、増殖させたNK細胞画分は、約50%~約85%の生存率を特徴とする。一部の実施形態において、約55%、約60%、約63%、約65%、約68%、約70%、約75%、約78%、約80%、約82%、約83%、約84%~約85%又はそれ以上の生存率を有する増殖させたNK細胞画分が選択される。更なる実施形態において、ex vivoでの増殖に選択されるNK細胞画分(例えば、CD3枯渇画分)は、少なくとも70%の生細胞を有する。更なる実施形態において、臨床適用に好適な増殖させたNK細胞画分(例えば、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ)は、洗浄及び濃縮後に少なくとも70%が生細胞であることを特徴とする。更なる実施形態において、移植に好適な増殖させたNK細胞画分は、少なくとも85%が生細胞である。
【0290】
本明細書で使用されるとき、用語「生存率」は、生細胞と非生細胞との間の区別を指す。細胞生存率は、形態学的変化によるか、又はある種の色素の排除又は他の取込み若しくは保持から推測される膜透過性及び/又は生理学的状態の変化によって判断し得る。細胞生存率の判定は、限定はされないが、アッセイ(例えば、色素排除、クロム遊離)、代謝アッセイ(例えば、テトラゾリウム塩)、及び直接的な観察を含め、当該技術分野において周知である(Coder, D., Current Protocols in Cytometry, 1997, John Wiley and Sons, Inc., Unit 9.2, 9.2.1-9.2.14)。
【0291】
一部の実施形態において、CD56+/CD3-細胞画分、CD3+細胞画分、生存率、エンドトキシン及び微生物含有量、並びに表現型、NK細胞機能、効力及び外観のパラメータが、細胞培養のための播種前、細胞培養中、回収後、増殖させたCD3枯渇細胞画分の洗浄及び濃縮後、凍結保存後、貯蔵後に採取した試料において、並びに本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分においてモニタされる。一部の実施形態において、試料は、処理前(例えば、100×106細胞)、カラム後(CD3枯渇)、試料培養前(例えば、10×106細胞)、増殖後-洗浄前(例えば、10ml試料)、最終的な増殖させて洗浄し及び濃縮したCD3枯渇細胞産物(10×106細胞)、凍結保存後、貯蔵中、解凍及び希釈後、及び/又は初回注入当日(0日目)及び、必要に応じて、任意の更なる注入の当日、又はこれらの任意の組み合わせにおいて、アフェレーシスユニットのいずれかから抜き取られる。
【0292】
本発明者らは、CD3枯渇細胞をニコチンアミド及び照射CD3+フィーダー細胞と共に培養すると、NK細胞画分のロバストな増殖、並びにNK細胞機能及びホーミング/生着可能性の亢進がもたらされることを示した(実施例1~4を参照のこと)。このように、一部の実施形態において、この増殖させた増殖させたCD3枯渇細胞は、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較したとき、CD62Lの発現が増加している。一部の実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較したとき、CD62Lの発現が増加している。
【0293】
他の実施形態において、増殖させたCD3枯渇細胞は、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して、照射マウスへの注入後の脾臓及び骨髄における生体内保持率が増加している。更なる実施形態において、増殖させたCD3枯渇細胞は、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して、照射マウスへの注入後の脾臓及び骨髄における生体内保持率が増加している、請求項25に記載の解凍した凍結保存NK細胞画分である。
【0294】
このように、具体的な実施形態によれば、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)注入時、1×106個より少ないCD3+CD56-細胞/Kg患者体重、
(d)注入時、5EU以下のエンドトキシン/Kg患者体重、
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0295】
このように、具体的な実施形態によれば、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)0.5%未満の細胞がCD3+/CD56-である、
(d)0.5エンドトキシンユニット(EU)/mL以下、
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0296】
上述の判定基準を満たす増殖させたCD3枯渇細胞画分は、そのような増殖させたCD3枯渇細胞画分を必要としている対象(例えば、患者)への注入に使用することができる。以上に記載される投与用のCD3枯渇細胞画分のex vivo増殖(培養)、選択及び調製方法のいずれか、及びその実施形態の各々は、単独で、又は様々な組み合わせで考慮して、本節及び以下の節に記載されるとおりの増殖させたCD3枯渇細胞画分を投与(例えば、移植、注入)する方法の達成に使用し得る。
【0297】
このように、一部の実施形態において、本明細書に記載される本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分を調製する方法のいずれかにより調製された解凍した凍結保存NK細胞画分が提供される。具体的な実施形態において、解凍した凍結保存のCD3枯渇NK細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)注入時、1×106個より少ないCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重、
(d)注入時、5EU以下のエンドトキシン/Kg患者体重、
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0298】
このように、一部の実施形態において、本明細書に記載される本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分を調製する方法のいずれかにより調製された解凍した凍結保存NK細胞画分が提供される。具体的な実施形態において、解凍した凍結保存CD3枯渇NK細胞画分は、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)0.5%未満の細胞がCD3+/CD56-である、
(d)0.5エンドトキシンユニット(EU)/mL以下、
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする。
【0299】
一部の実施形態において、解凍及び希釈後に、NK細胞画分は、容器(例えば、移植(注入)部位に移し替えるための)で提供される。一部の実施形態において、容器は、培養バッグである。ガス透過性が高くて水分損失が少ない、可撓性且つ光透過性が高い不活性材料で作られている培養バッグが望ましい。具体的な実施形態において、本発明の解凍した凍結保存の及び希釈したCD3枯渇細胞画分を移植可能な増殖させたNK細胞画分は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)培養バッグで提供される。
【0300】
他の実施形態において、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)注入時、5.0×105個未満のCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重、
(d)注入時、5EU以下のエンドトキシン/Kg患者体重、及び
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする移植可能なヒトNK細胞画分が提供される。
【0301】
一部の実施形態において、解凍及び希釈後に、NK細胞画分は、容器(例えば、移植(注入)部位に移し替えるための)に提供される。一部の実施形態において、容器は、培養バッグである。ガス透過性が高くて水分損失が少ない、可撓性且つ光透過性が高い不活性材料で作られている培養バッグが望ましい。具体的な実施形態において、本発明の解凍した凍結保存の及び希釈したCD3枯渇細胞画分を移植可能な増殖させたNK細胞画分は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)培養バッグで提供される。
【0302】
他の実施形態において、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)0.5%未満の細胞がCD3+/CD56-である、
(d)0.5エンドトキシンユニット(EU)/mL以下、
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする移植可能なヒトNK細胞画分が提供される。
【0303】
本発明の増殖させたCD3枯渇細胞画分は、そのような増殖させたCD3枯渇細胞画分を必要としている対象への注入に使用することができる。一部の実施形態において、増殖させたCD3枯渇細胞画分は、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分である。
【0304】
本明細書で使用されるとき、用語「移植」は、細胞療法、養子移入、細胞免疫療法などの文脈では、期待される治療効果を有する細胞の対象への投与、好ましくはそうした細胞の投与を必要としている対象への、例えば、疾患又は病態に関する患者の治療としての投与を指す。かかる細胞療法は、対象の身体への血管の連絡を介した治療用細胞画分の導入を含むため、本明細書で使用されるとき、NK細胞の「移植」及び「投与」は「注入」と等しい。典型的には、治療用細胞画分は対象の静脈内に、例えば、中心静脈カテーテル(例えば、Hickmanカテーテル)を介して注入される。治療用細胞画分の対象への注入速度はポンプによって制御することができ、又は補助なしで、重力によって送り込み、細胞画分と入口カテーテルとの間の高さの差によって調整することができる。一部の実施形態において、増殖させたNK細胞画分は、静脈内に、重力送りにより、1つ又は複数のポンプなしに、及び/又はフィルタなしに移植(注入、投与)される。一部の態様において、増殖させたNK細胞画分は、フィルタを使用して移植(注入/投与)される。一部の態様において、フィルタは約170~約260ミクロンの細孔径を有し得る。
【0305】
一部の実施形態において、移植を必要としている対象は、血液学的疾患に罹患している。一部の実施形態において、対象は、血液学的悪性腫瘍に罹患している。具体的な実施形態において、CD3枯渇増殖NK細胞画分、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分又は本明細書に記載される方法による治療が適応される血液学的悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。詳細には、本発明の細胞画分又は方法による治療が適応される血液学的悪性腫瘍は、限定はされないが、濾胞性白血病(Follicular leukemia)(FL)及び高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)を含めたCD20+発現NHLである。一部の態様において、NHLは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であり得る。一部の態様において、NHLは、マントル細胞リンパ腫(MCL)であり得る。一部の態様において、HGBCLは、HGBCL・非特定型(HGBCL、NOS)であり得る。一部の態様において、NHLは、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)であり得る。
【0306】
このように、一部の実施形態において、血液学的疾患の治療を必要としている対象の血液学的疾患を治療する方法であって、
(a)対象に抗癌モノクローナル抗体を投与することと、
(b)対象に少なくとも1つの免疫抑制剤を投与することと、
(c)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分を、そのようなNK細胞画分を必要としている対象に移植することであって、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分が、1.0mM~10mMの量のCD3+細胞、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドと共にex vivo培養することによって増殖させたものであることと、
(d)IL-2を対象に投与することと
を含み、
それによって対象の血液学的疾患を治療する方法が提供される。
【0307】
本明細書で使用されるとき、「対象」又は「患者」は、任意の哺乳類、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダであり得る。具体的な実施形態において、対象はヒトである。更なる実施形態において、対象はヒトであり、CD3枯渇細胞画分はヒトCD3枯渇細胞画分である。
【0308】
本明細書で使用されるとき、「それを必要としている対象」とは、疾患、障害又は病態を治療し又は改善するために、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の移植、輸注、注入又は植込みの必要性のある対象である。一実施形態において、対象は、血液学的疾患を有する(それと診断されている)か、又はそれに罹患している。一部の実施形態において、血液学的疾患は、細胞増殖性障害である。他の実施形態において、血液学的疾患は、血液学的悪性腫瘍である。
【0309】
本明細書で使用されるとき、用語「~のリスク」又は「~の確率」は、ある出来事が起こる可能性を指す。一部の実施形態において、ある個体において出来事(例えば、腫瘍縮小、反応、無増悪生存など)が起こるリスク又は確率とは、治療を受ける群を、同じ治療を受けない群と比較した比較データから計算されるリスクを指す。一部の実施形態において、増加又は減少したリスク又は確率は、考慮中のアウトカムに関する治療群と対照群との間の差を反映している。一部の実施形態において、特定の出来事又は状態のリスク又は確率の増加又は減少は相対的なものに過ぎず、数値では表されない。
【0310】
本明細書で使用されるとき、用語「細胞増殖性障害」は、細胞の無秩序な成長又は異常な成長、又は両方が、癌性であることも又は癌性でないこともある望ましくない病態又は疾患の発症につながり得る病態を指す。本発明の例示的な細胞増殖性障害には、細胞分裂の調節が解除されている種々の病態が包含される。用語「急速に分裂する細胞」は、本明細書で使用されるとき、同じ組織内の近隣の細胞又は横に並ぶ細胞の間で予想される又は観察される速度を超えるか、又はそれより速い速度で分裂する任意の細胞として定義される。細胞増殖性障害には、前癌又は前癌状態の病態が含まれる。細胞増殖性障害には、癌が含まれる。具体的な実施形態において、本明細書に提供される方法及び細胞組成物は、癌の症状の治療又は改善に使用される。用語「癌」には、固形腫瘍、並びに、血液腫瘍及び/又は悪性腫瘍が含まれる。具体的な実施形態において、血液学的悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)又は多発性骨髄腫(MM)である。
【0311】
本発明の一実施形態の更に別の態様によれば、腫瘍成長の阻害を必要としている対象の腫瘍成長を阻害する方法が提供される。本発明のこの態様に係る方法は、本発明のNK細胞集団の治療有効量を対象に投与することにより実施する。
【0312】
「治療すること」又は「治療」には、限定はされないが、本発明の濃縮された、活性化された、又は培養されたNK細胞組成物又は集団の投与により、疾患の症状、合併症、又は生化学的徴候の発生を予防し又は遅延させること、疾患、病態、又は障害(例えば、癌、転移性癌、又は転移性固形腫瘍)の症状を改善すること又は更なる展開を止める若しくは阻害することが含まれる。治療は、予防的、即ち、補助的であってもよく(疾患の発生を予防し若しくは遅延させるため、又はその臨床症状若しくは亜臨床症状の発現を予防するため)、又は疾患の発現後における症状の治療的な抑制若しくは軽減であってもよい。
【0313】
一実施形態において、NK細胞集団は、固形腫瘍又は悪性腫瘍など、癌の低減若しくは排除、又はその発生若しくは再発の予防に有効な量で投与される。「固形腫瘍の低減若しくは排除又はその発生若しくは再発の予防に有効な量」又は「過剰増殖性障害の低減若しくは排除又はその発生若しくは再発の予防に有効な量」とは、患者検査データ、生存データ、腫瘍マーカーレベルの上昇若しくは抑制、遺伝子プロファイルに基づいた罹患性の低下又は環境因子への曝露量によって測定したときの、腫瘍疾患状態又は過剰増殖性障害の治療後に患者アウトカム又は生存を向上させる治療組成物の量を指す。「腫瘍成長を阻害する」とは、腫瘍のサイズ又は生存率又は細胞数の低減を指す。「癌」、「悪性腫瘍」、「固形腫瘍」又は「過剰増殖性障害」は、同義語として使用され、細胞の無制御な異常増殖、罹患した細胞が局所的に広がるか、又は血流及びリンパ系を通じて身体の他の部位に広がる(即ち、転移する)能力、並びに幾つもの特有の構造的及び/又は分子的特徴のいずれかを特徴とする幾つもの疾患のいずれかを指す。「癌性」又は「悪性細胞」又は「固形腫瘍細胞」は、分化を欠いている、且つ浸潤及び転移能力のある、特異的な構造特性を有する細胞と理解される。「癌」は、癌腫及び肉腫を含め、哺乳類に見られるあらゆる種類の癌又は新生物又は悪性腫瘍を指す。癌の例は、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、脳癌、頭頸部癌、髄芽腫、骨癌、肝癌、結腸癌、泌尿生殖器癌、膀胱癌、尿路癌、腎癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、黒色腫、中皮腫、肉腫である(DeVita, et al., (eds.), 2001, Cancer Principles and Practice of Oncology, 6th. Ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.を参照のことと、この参考文献は、あらゆる目的から全体として参照により本明細書に援用される)。
【0314】
「癌関連」は、核酸及びその発現、若しくはその欠如、又はタンパク質及びそのレベル若しくは活性、若しくはその欠如と、対象細胞における悪性腫瘍の発生との関係を指す。例えば、癌は、健康な正常細胞では発現しないか、又は低レベルで発現する特定の遺伝子の発現に関連し得る。逆に、癌関連遺伝子とは、悪性細胞では(又は形質転換を起こしている細胞では)発現しないもの、又は健康な正常細胞でそれが発現するのと比べて悪性細胞では低いレベルで発現するものであり得る。
【0315】
「過剰増殖性疾患」は、正常組織の成長と比べて細胞が急速に増殖する任意の疾患又は障害を指す。このように、過剰増殖細胞とは、正常細胞と比べて急速に増殖している細胞である。
【0316】
「進行癌」は、原発腫瘍部位にもはや局在していない癌、又は対癌米国合同委員会(AJCC)に基づけばステージIII又はIVである癌を意味する。
【0317】
「良好に忍容される」とは、治療の結果として起こる、治療法の決定に影響を及ぼし得るような健康状態の悪い変化がないことを指す。
【0318】
「転移性」は、免疫不全マウスの乳房脂肪パッド及び/又は循環に注射したとき免疫不全マウスの肺、肝臓、骨又は脳に二次性腫瘍病変を樹立することが可能な腫瘍細胞、例えば、ヒト固形腫瘍又は泌尿生殖器悪性腫瘍を指す。
【0319】
「固形腫瘍」には、限定はされないが、肉腫、黒色腫、癌腫、又は他の固形腫瘍癌が含まれる。「肉腫」は、胎生結合組織のような物質でできた、概して線維状の又は均一な物質に埋もれた密に詰まった細胞で構成される腫瘍を指す。肉腫としては、限定はされないが、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アバーネシー肉腫、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、胞巣状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫、絨毛癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉肉腫、傍骨肉腫、網状赤血球性肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、及び末梢血管拡張性肉腫が挙げられる。
【0320】
「黒色腫」は、皮膚及び他の臓器のメラニン細胞系から生じる腫瘍を指す。黒色腫には、例えば、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング・パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、及び表在拡大型黒色腫が含まれる。
【0321】
「癌腫」は、周囲組織に浸潤し、且つ転移を起こす傾向のある、上皮細胞でできている悪性の新生物を指す。例示的な癌腫としては、例えば、腺房癌、小葉癌、腺嚢胞癌、腺様嚢胞癌、腺様癌、副腎皮質癌、肺胞癌、肺胞上皮癌、基底細胞癌、基底細胞癌、類基底細胞癌、基底扁平細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原性癌、大脳様癌、胆管細胞癌、絨毛癌、膠様癌、面皰癌、子宮体部癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円柱癌、円柱細胞癌、腺管癌、硬膜癌、胎児性癌、脳様癌、類表皮癌、上皮腺癌、外向発育癌、潰瘍癌、線維癌、膠状癌、膠様癌、巨細胞癌、巨大細胞癌、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母組織癌、血様癌、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、硝子状癌、副腎癌、乳児性胎児性癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌、クロムペッヘル癌、クルチッキー細胞癌、大細胞癌、レンズ状癌、レンズ様癌、脂肪腫様癌、リンパ上皮癌、髄様性癌、髄様癌、黒色癌、軟性癌、粘液性癌、粘液分泌癌、粘液細胞癌、粘膜表皮癌、粘膜性癌、粘膜癌、粘液腫性癌、鼻咽腔癌、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、乳頭癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、有棘細胞癌、軟性癌、腎臓の腎細胞癌、予備細胞癌、肉腫性癌、シュナイダー癌、スキルス癌、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、バレイショ状癌、球状細胞癌、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌、数珠様癌、血管拡張性癌、毛細血管拡張性癌、移行上皮癌、結節性癌、結節癌、いぼ状癌、及び絨毛性癌が挙げられる。
【0322】
「白血病」は、造血器官の進行性の悪性疾患を指し、概して、血液及び骨髄における白血球及びその前駆体のゆがんだ増殖及び発達を特徴とする。白血病は、概して、(1)疾患の持続時間及び性質-急性又は慢性、(2)関与する細胞の種類;骨髄系(骨髄性)、リンパ系(リンパ性)、又は単球性、及び(3)血中の異常細胞数の増加又は非増加-白血性又は非白血性(亜白血性)を基準として臨床的に分類される。白血病には、例えば、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血球血症性白血病、好塩基球性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄球性白血病、皮膚白血病、胎児性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリー細胞白血病、血芽球性白血病、血球芽細胞性白血病、組織球性白血病、幹細胞性白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ行性白血病、リンパ性白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞性白血病、プラスマ細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、亜白血性白血病、及び未分化細胞性白血病が含まれる。具体的な実施形態において、血液学的悪性腫瘍は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。
【0323】
更なる癌には、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺腫瘍、原発性脳腫瘍、胃癌、結腸癌、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、泌尿生殖器癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌、及び前立腺癌が含まれる。
【0324】
本発明のこの態様の別の詳細な実施形態において、本方法は、対象への造血細胞移植、造血前駆細胞移植又は造血幹細胞移植と同時に、その後に続いて、又はそれに先立って実施する。更に別の実施形態において、対象は、輸注されたNK細胞のin vivo機能を更に亢進させる増感剤又は増強剤(例えば、プロテアソーム阻害薬、IL-2、IL-15等)で同時に治療されているところである(詳細については、例えば、Childs et alに対する米国特許出願公開第20090104170号明細書を参照のこと)。
【0325】
自己免疫性患者ではNK細胞の数及び機能の減少が観察されており、種々の自己免疫疾患及び病態におけるNK細胞療法の可能性が示唆される(Schleinitz, et al., Immunology 2010; 131:451-58、及びFrench and Yokohama, Arthrit Res Ther 2004;6:8-14を参照のこと)。このように、本発明のなおも別の実施形態では、自己免疫疾患又は病態の治療を必要としている対象の自己免疫疾患又は病態を治療する方法が提供される。本発明のこの態様に係る方法は、本発明のNK細胞集団の治療量を対象に投与することにより実施する。
【0326】
本発明の方法によって治療し得る自己免疫疾患としては、限定はされないが、心血管疾患、リウマチ様疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経学的疾患、筋疾患、腎疾患、生殖に関係する疾患、結合組織疾患及び全身性疾患が挙げられる。
【0327】
自己免疫性心血管疾患の例としては、限定はされないが、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、血栓症、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎症候群、抗第VIII因子自己免疫疾患、壊死性小型血管炎、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、微量免疫型巣状壊死性及び半月体形成性糸球体腎炎、抗リン脂質症候群、抗体誘導性心不全、血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病における心臓自己免疫及び抗ヘルパーTリンパ球自己免疫が挙げられる。
【0328】
自己免疫性リウマチ様疾患の例としては、限定はされないが、関節リウマチ及び強直性脊椎炎が挙げられる。
【0329】
自己免疫性腺疾患の例としては、限定はされないが、膵疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーブス病、甲状腺炎、特発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎及び多腺性自己免疫症候群I型が挙げられる。疾患としては、限定はされないが、膵臓の自己免疫疾患、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、特発性自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、特発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫性抗精子不妊症、自己免疫性前立腺炎及び多腺性自己免疫症候群I型が挙げられる。
【0330】
自己免疫性胃腸疾患の例としては、限定はされないが、慢性炎症性腸疾患、セリアック病、大腸炎、回腸炎及びクローン病が挙げられる。
【0331】
自己免疫性皮膚疾患の例としては、限定はされないが、自己免疫性水疱性皮膚疾患、例えば、限定はされないが、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡及び落葉状天疱瘡などが挙げられる。
【0332】
自己免疫性肝疾患の例としては、限定はされないが、肝炎、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変及び自己免疫性肝炎が挙げられる。
【0333】
自己免疫性神経学的疾患の例としては、限定はされないが、多発性硬化症、アルツハイマー病、重症筋無力症、ニューロパチー、運動ニューロパチー;ギラン・バレー症候群及び自己免疫性ニューロパチー、筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群;傍腫瘍性神経疾患、小脳萎縮症、傍腫瘍性小脳萎縮症及びスティフマン症候群;非傍腫瘍性スティフマン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群及び自己免疫性多腺性内分泌不全症;異常免疫ニューロパチー;後天性神経性筋強直症、先天性多発性関節拘縮症、神経炎、視神経炎及び神経変性疾患が挙げられる。
【0334】
自己免疫性筋疾患の例としては、限定はされないが、筋炎、自己免疫性筋炎及び原発性シェーグレン症候群及び平滑筋自己免疫疾患が挙げられる。
【0335】
自己免疫性腎疾患の例としては、限定はされないが、腎炎及び自己免疫性間質性腎炎が挙げられる。
【0336】
自己免疫生殖に関係する疾患の例としては、限定はされないが、反復胎児消失が挙げられる。
【0337】
自己免疫性結合組織疾患の例としては、限定はされないが、耳疾患、自己免疫性耳疾患及び自己免疫性内耳疾患が挙げられる。
【0338】
自己免疫性全身性疾患の例としては、限定はされないが、全身性エリテマトーデス及び全身性硬化症が挙げられる。
【0339】
本発明の更に別の実施形態では、ウイルス感染症の阻害を必要としている対象のウイルス感染症を阻害する方法が提供される。本発明のこの態様に係る方法は、(a)NK細胞集団を、本明細書に記載されるとおり、NK細胞成長因子、CD3+フィーダー細胞及び有効濃度のニコチンアミドと共にex vivo培養することであって、有効濃度のニコチンアミドが、濃度のニコチンアミドなしに成長因子と共に培養した細胞集団と比較したとき、NK細胞の増殖を亢進させることと、及び(b)治療量の培養したNK細胞を対象に投与することにより実施する。本発明のNK細胞又はNK細胞組成物による治療に好適なウイルス感染症としては、限定はされないが、HIV、リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアウイルス、インフルエンザ及びパラインフルエンザウイルス、肝炎(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、非A非B型等を含む)、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、タイラーウイルス及びHSV-1が挙げられる。本発明のNK細胞又はNK細胞調製物による治療に好適な他の感染性疾患としては、限定はされないが、プラスモディウム、リーシュマニア及びトキソプラズマ感染症などの寄生虫感染症、並びにマイコバクテリア及びリステリア菌などの細菌感染症が挙げられる(ウイルス、細菌及び原虫疾患の治療におけるNK細胞のレビューについては、Zucchini et al., Exp Rev Anti-Infect Ther 2008;6:867-85(この参考文献は、本明細書をもって参照により援用される)を参照のこと)。
【0340】
一部の実施形態において、本発明の方法及び組成物及びキットは、あらゆる年齢層の対象の治療に使用することができる。具体的な実施形態において、対象又は患者は18歳超70歳未満である。
【0341】
一部の実施形態において、それを必要としている対象は、多発性骨髄腫を有し得る。更なる実施形態において、多発性骨髄腫(MM)は、以下の判定基準の少なくとも1つを特徴とする:(a)初回自家幹細胞移植から2~18ヵ月後の間の再発性疾患、(b)同種異系幹細胞移植から少なくとも4ヵ月後の再発性疾患であって、活動性の移植片対宿主病(GVHD)のエビデンスを伴わないもの、(c)プロテアソーム阻害薬及び免疫調節薬(IMiD)を含む療法を少なくとも2ライン経た後の再発性/難治性の疾患、(d)0.5g/dL以上の血清IgG、IgA、IgM又はIgD骨髄腫タンパク質(Mタンパク質)及び(e)200mg/24時間蓄尿以上の尿中Mタンパク質。一部の実施形態において、多発性骨髄腫はまた、0.5g/dL以上の血清IgE骨髄腫タンパク質(Mタンパク質)も特徴とし、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分による細胞療法治療を開始する4週間以上前にプラスマフェレーシスを行っている。一部の実施形態において、それを必要としている対象は、本明細書に記載される判定基準のうちの2つ以上を特徴とする多発性骨髄腫を有する。
【0342】
それを必要としている対象は、非ホジキンリンパ腫(NHL)を有し得る。一部の実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、CD20陽性B細胞NHLであり、ここでCD20発現は、フローサイトメトリー又は免疫組織化学により確認される。更なる実施形態において、NHLは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを特徴とする:(a)従来療法が失敗した再発性/難治性疾患、(b)自家幹細胞移植から少なくとも60日後の再発性疾患、(c)同種異系幹細胞移植から少なくとも4ヵ月後の再発性疾患であって、活動性の移植片対宿主病のエビデンスを伴わないもの、(d)過去に少なくとも2種類の療法を受けていて、少なくとも1つが化学療法であり、少なくとも1つが抗CD20モノクローナル抗体を含む疾患、(e)Lugano効果判定基準により定義されるとおりの測定可能な疾患(脾腫については、脾臓の縦の長さが13cmより大きいことと、測定可能なアデノパチーについては、結節長軸直径が1.5cmより大きいこと(一次元測定))。
【0343】
一部の実施形態において、それを必要としている対象は、本明細書に記載される判定基準のうちの2つ以上を特徴とするNHLを有する。具体的な実施形態において、対象又は患者は、以下を特徴とするNHLに罹患している。
(a)従来療法が失敗した再発性/難治性疾患、
(b)過去少なくとも2ラインの療法(それらのうちの少なくとも1つには化学療法が含まれ、それらのうちの少なくとも1つには抗CD20モノクローナル抗体が含まれた療法)を受けた患者のNHL、
(c)Lugano効果判定基準により定義されるとおりの測定可能な疾患(Cheson et al. 2014, J. Clin Oncol 32(27):3059-3067)、
(d)FLからHGBCLへの形質転換について、HGBCLへの形質転換後に少なくとも1ラインの療法を受けていなければならない。
【0344】
一部の実施形態において、それを必要としている対象は、更に以下の判定基準に従い定義することができる:カルノフスキーパフォーマンススコアが少なくとも60%、及び以下のとおり定義される十分な臓器機能:a.心機能:心エコー図、放射性核種スキャン又は心MRIによる左室駆出率(LVEF)40%以上;b.肺機能:室内気酸素飽和度が少なくとも90%、肺機能検査で年齢予測値の50%以上のFVC及びFEV1、及び予測値の50%以上のcDLCOが実証されることと、c.腎機能:クレアチニンクリアランス試験(コッククロフト・ゴールト式による)が40mL/分以上又はクレアチニンが1.5mg/dL以下、d.肝機能:血清総ビリルビンが施設基準値の上限値の1.5倍以下、肝トランスアミナーゼ(ALT及びAST)が施設正常範囲の上限値の3倍以下;e.血液学:総白血球(WBC)数3000/μL以上、好中球絶対数(ANC)1000/μL以上、血小板数75,000/μL以上及びヘモグロビン8.0g/dL以上(異常の原因が疾患関連の骨髄病変である場合には免除されてもよい)、及びf.カルシウム(多発性骨髄腫患者についてのみ):治療登録前の2週間以内に補正カルシウムが11.5mg/dL未満。
【0345】
一部の実施形態において、適格の対象は、細胞注入前の少なくとも3日間にわたってプレドニゾン又は他の免疫抑制薬による治療を中断可能でなければならない(前処置レジメンの前投薬を除く)。妊娠の可能性がある性的活動のある女性及び妊娠の可能性があるパートナーを持つ男性は、療法中及び療法完了後4ヵ月間にわたって有効な避妊法を使用することに同意することが求められ得る。
【0346】
一部の実施形態において、対象は、以下のいずれかがあれば、治療の検討から除外されることになり得る。
1.高力価のドナー特異的抗HLA抗体(MFI>1000)、
2.活動性の未治療のCNS病変、
3.慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、又は高悪性度リンパ腫(バーキットリンパ腫/リンパ芽球性リンパ腫)、
4.妊娠中又は授乳中、
5.著しいベースラインQT/QTc間隔延長(例えば、500ミリ秒より長いQTc間隔の実証)、
6.サイトカイン療法の心合併症(例えば、心室頻拍、高頻度の異所性心室興奮、又は慢性療法を必要とする上室性頻脈性不整脈)のリスクが増加する可能性のあるクラスII以上のニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)機能分類基準(付録III)又は重篤な心不整脈、
7.免疫抑制療法を必要とする活動性の自己免疫疾患、
8.重症喘息の既往歴があり、現在も慢性薬物療法中である(吸入ステロイド薬のみを必要とする軽度喘息の既往歴は適格である)、
9.スクリーニング胸部X線又は胸部CTスキャンでの新規の又は進行性の肺浸潤[肺の専門家によって研究の許可を与えられる場合は除く。感染症に起因する肺浸潤は、1週間(推定されるか、又は文書に記録されている真菌感染症については4週間)の適切な療法後に安定/改善が(関連する臨床的改善と共に)見られなければならない]、
10.活動性の無制御の細菌、真菌、又はウイルス感染症-過去の感染症は全て、最適な療法後に解消していなければならない、
11.本発明の方法において使用される治療用薬剤のいずれかに対する既知の過敏症、
12.NK細胞画分による治療の開始前14日以内に治験薬を受けたもの。
【0347】
一部の実施形態において、細胞ドナー(例えば、アフェレーシス候補)は、以下の判定基準に従い選択される。
1.12~70歳-最も優先されるべきは年齢(35歳未満)であり、続いてHLA適合性である(ハプロタイプ一致、及び利用可能でなければ、そのときには完全に不適合のドナー)、
2.体重が少なくとも40キログラムである、
3.評価する医療提供者が決定したとき全般的に良好な健康状態、
4.以下のとおり定義される十分な臓器機能:血液学:ヘモグロビン、WBC、血小板が検査正常範囲上限値及び下限値から10%以内(ヘモグロビンについては性別基準)、肝臓:ALTが正常上限値の2倍未満及び腎臓:血清クレアチニンが1.8mg/dL未満、
5.CMV抗体、B型肝炎表面抗原、B型肝炎コア抗体、C型肝炎抗体、HIV PCR、HIV1/2抗体、HTLVA1/2抗体、急速血漿(RPR)トレポネーマ、クルーズトリパノソーマ(T. Cruzi)、NATによるHCV、NATによるHIV及びNATによるWNV(ウエストナイルウイルス)を含む又は現行のパネルに従うドナー感染症スクリーニングパネルを完了している-HIV及び活動性B型肝炎は陰性でなければならない、
6.妊娠中でない-妊娠の可能性がある女性は、アフェレーシスから7日以内の妊娠検査が陰性でなければならない、
7.アフェレーシスを受けることが可能であり、且つ受ける意思がある、
8.自主的な書面による同意がある(ドナーが18歳未満の場合にはアセントフォームを使用する)。
【0348】
一部の実施形態において、それを必要としている対象は、リンパ球枯渇前処置レジームを受ける。具体的な実施形態において、対象は、本発明の組成物の移植又は投与前にリンパ球枯渇前処置レジームに供される。このレジームは、シクロホスファミド、フルダラビン、又は他の化学療法及び/又は免疫抑制療法を含み得る。
【0349】
併用療法
一部の実施形態において、必要としている対象は、本明細書に記載される増殖させたCD3枯渇細胞画分を追加の癌療法と併用して治療される。一部の実施形態において、追加の癌療法には、細胞傷害性薬剤及び/又は非細胞傷害性薬剤が含まれる。「細胞傷害性薬剤」とは、細胞の機能を阻害若しくは予防する及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語には、放射性同位体(例えば、131I、125I、90Y及び186Re)、化学療法薬、及び細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素又は合成毒素などの毒素、又はこれらの断片が含まれることが意図される。非細胞傷害性薬剤とは、細胞の機能を阻害若しくは予防しない及び/又は細胞の破壊を引き起こさない物質を指す。「非細胞傷害性薬剤」には、細胞傷害性となるように活性化させることのできる薬剤が含まれ得る。非細胞傷害性薬剤には、ビーズ、リポソーム、マトリックス又は粒子が含まれ得る(例えば、米国特許出願公開第2003/0028071号明細書及び同第2003/0032995号明細書(これらは参照によって本明細書に援用される)を参照のこと)。かかる薬剤は、本明細書に記載される増殖させたCD3枯渇NK細胞画分組成物とコンジュゲートさせるか、カップリングさせるか、連結させるか、又は会合させてもよい。
【0350】
一部の実施形態において、従来の癌医薬が、本明細書に記載される組成物と共に投与される。ある場合には、必要としている対象は、本明細書に記載される解凍した凍結保存増殖CD3枯渇細胞画分を、標的癌細胞に向けられる1つ以上の追加の薬剤と併用して治療される。極めて好適な薬剤としては、癌細胞の細胞DNAにおけるDNA損傷、例えば、二本鎖切断を促進するような薬剤が挙げられる。当業者に公知の任意の形態のDNA損傷剤を使用することができる。DNA損傷は、典型的には放射線療法及び/又は化学療法によって作り出され得る。DNA損傷剤は、遺伝毒性剤とも称される。本明細書で使用されるとき、「~と併用して」とは、増殖させたCD3枯渇NK細胞画分を対象に1つ以上の追加の療法と並行して投与するか(同時に投与するか、又は別々だがごく近接して投与するかのいずれか)、1つ以上の追加の療法の投与の前に、又はその後に投与することを意味するものとする。
【0351】
放射線療法の例としては、限定なしに、外部放射線療法及び内部放射線療法(小線源照射療法とも呼ばれる)が挙げられる。外部放射線療法のエネルギー源としては、X線、ガンマ線及び粒子ビームが挙げられ、内部放射線に使用されるエネルギー源としては、放射性ヨウ素(ヨウ素125又はヨウ素131)、ストロンチウム89、又はリン、パラジウム、セシウム、インジウム、リン酸、若しくはコバルトの放射性同位体が挙げられる。放射線療法を投与する方法は、当業者に周知である。
【0352】
特に有用であり得るDNA損傷性化学療法薬の例としては、限定なしに:ブスルファン(Myleran)、カルボプラチン(Paraplatin)、カルムスチン(BCNU)、クロラムブシル(Leukeran)、シスプラチン(Platmol)、シクロホスファミド(Cytoxan、Neosar)、ダカルバジン(DTIC-Dome)、イホスファミド(Ifex)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、Mustargen)、メルファラン(Alkeran)、及びプロカルバジン(Matulane)が挙げられる。
【0353】
幾つもの他の化学療法薬もまた、単独又は組み合わせのいずれでも、本明細書に記載される方法に使用し得る。それらとしては、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、非糖含有クロロエチルニトロソウレア類、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラギリン、メグルミンGLA、バルルビシン、カルムスチン及びポリフェプロサン、MMI270、BAY 12-9566、Rasファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメトレキソール、Glamolec、CI-994、TNP-470、Hycamtin/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、Novantrone/ミトキサントロン、Metaret/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH-4556、CS-682、9-AC、AG3340、AG3433、Incel/VX-710、VX-853、ZD0101、ISI641、ODN 698、TA 2516/マルミスタット、BB2516/マルミスタット、CDP 845、D2163、PD183805、DX8951f、Lemonal DP 2202、FK 317、Picibanil/OK-432、AD 32/バルルビシン、Metastron/ストロンチウム誘導体、Temodal/テモゾロミド、Evacet/リポソームドキソルビシン、Yewtaxan/パクリタキセル、Taxol/パクリタキセル、Xeload/カペシタビン、Furtulon/ドキシフルリジン、Cyclopax/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU-077/シスプラチン、HMR 1275/フラボピリドール、CP-358(774)/EGFR、CP-609(754)/Ras癌遺伝子阻害薬、BMS-182751/経口白金剤、UFT(テガフール/ウラシル)、Ergamisol/レバミゾール、エニルウラシル/776C85/5FUエンハンサー、Campto/レバミゾール、Camptosar/イリノテカン、Tumodex/ラルチトレキセド、Leustatin/クラドリビン、Paxex/パクリタキセル、Doxil/リポソームドキソルビシン、Caelyx/リポソームドキソルビシン、Fludara/フルダラビン、Pharmarubicin/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU 79553/ビスナフタルイミド、LU 103793/ドラスタチン、Caetyx/リポソームドキソルビシン、Gemzar/ゲムシタビン、ZD 0473/AnorMED社、YM 116、ヨードシード、CDK4及びCDK2阻害薬、PARP阻害薬、D4809/Dexifosamide、Ifes/Mesnex/イホスファミド、Vumon/テニポシド、Paraplatin/カルボプラチン、Plantinol/シスプラチン、Vepeside/エトポシド、ZD 9331、Taxotere/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサン類似体、ニトロソウレア類、メルファラン及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シタラビンHCl、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エトポシド(VP16-213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5-FU)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ-2a、アルファ-2b、ロイプロリド酢酸塩(LHRH放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(o.p’-DDD)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、タモキシフェンクエン酸塩、チオグアニン、チオテパ、ビンブラスチン硫酸塩、アムサクリン(m-AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル-GAG;メチルグリオキサールビスグアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル-CCNU)、テニポシド(VM-26)、及び硫酸ビンデシンが挙げられるが、そのように限定されるわけではない。
【0354】
加えて、以下の薬剤もまた本発明に有用であり得る:カルボプラチン及びシスプラチンなどのアルキル化剤、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤、カルムスチン(BCNU)などのニトロソウレアアルキル化剤、代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサート、フォリン酸、プリン類似体代謝拮抗薬、メルカプトプリン、ピリミジン類似体代謝拮抗薬、例えば、フルオロウラシル(5-FU)及びゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、ホルモン抗新生物薬、例えば、ゴセレリン、ロイプロリド、及びタモキシフェンなど、天然抗新生物薬、例えば、アルデスロイキン、インターロイキン-2、ドセタキセル、エトポシド(VP-16)、インターフェロンアルファ、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、及びトレチノイン(ATRA)、抗生物質天然抗新生物薬、例えば、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン及びマイトマイシンCを含めたマイトマイシン類、及びビンカアルカロイド天然抗新生物薬、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ヒドロキシウレア、アセトン、アドリアマイシン、イホスファミド、エノシタビン、エピチオスタノール、アクラルビシン、アンシタビン、ニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クロモマイシンA3、抗腫瘍性多糖、抗腫瘍性血小板因子、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、シゾフィラン、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ダカルバジン、チオモシン(thiomosine)、チオテパ、テガフール、ドラスタチン類、ドラスタチン類似体、例えば、アウリスタチン、CPT-11(イリノテカン)、ミトザントロン、ビノレルビン、テニポシド、アミノプテリン、カルボマイシン、エスペラミシン類(例えば、米国特許第4,675,187号明細書(これは参照により本明細書に援用される)を参照のこと)、ネオカルチノスタチン、OK 432、ブレオマイシン、フルツロン、ブロクスウリジン、ブスルファン、Honvan、ペプロマイシン、ベスタチン(Ubenimex(登録商標))、インターフェロン-0、メピチオスタン、ミトブロムトール(mitobromtol)、メルファラン、ラミニンペプチド類、レンチナン、カワラタケ抽出物、テガフール/ウラシル、エストラムスチン(エストロゲン/メクロレタミン)、サリドマイド、及びレナリドマイド(Revlmid(登録商標))。
【0355】
他の好適な化学療法薬としては、プロテアソーム阻害薬が挙げられる。プロテアソーム阻害薬は、タンパク質、特に細胞の維持、成長、分裂、及び細胞死に関与するような短命なタンパク質を分解する細胞複合体であるプロテアソームの作用を遮断する。プロテアソーム阻害薬の例としては、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、ラクタシスチン(カリフォルニア州、サンディエゴ、AG Scientific,Inc)、MG132(ペンシルベニア州、プリマスミーティング、Biomol International社)PS-519、エポネマイシン、エポキソミシン、アクラシノマイシンA、ジペプチドベンズアミド、CVT-63417、及びビニルスルホントリペプチドプロテアソーム阻害薬が挙げられる。
【0356】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法及び細胞画分は、癌免疫療法を含めた1つ以上の他の癌治療と併用して使用される。癌免疫療法は、免疫系を用いて癌を拒絶するものである。大前提は、その疾患に関与する腫瘍細胞を攻撃するよう対象の免疫系を刺激することである。これは、対象の免疫化によるか(その場合、対象自身の免疫系が腫瘍細胞を破壊すべき標的として認識するようになる)、又は抗体など、治療薬の薬物としての投与による(その場合、対象の免疫系が治療用薬剤による腫瘍細胞の破壊のために動員される)。癌免疫療法には、抗体ベースの療法及びサイトカインベースの療法が含まれる。
【0357】
サイトカインベースの癌療法は、対象の免疫応答を調節する1つ以上のサイトカインを利用する。癌治療において有用なサイトカインの非限定的な例としては、インターフェロンアルファ(IFN-アルファ)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びインターロイキン-12(IL-12)が挙げられる。
【0358】
腫瘍標的化及び抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を促進するため、一部の実施形態では、疾患特異的モノクローナル抗体を必要としている対象に、本明細書に記載される増殖させたCD3枯渇NK細胞画分と併用して(例えば、その前、それと同時又はその後に)疾患特異的モノクローナル抗体を投与することができる。
【0359】
本発明の方法及び増殖させたCD3枯渇NK細胞画分及び組成物と一緒に使用するのに好適なモノクローナル抗体の非限定的なリスト、その癌細胞標的及び現在その使用が適応されている特異的疾患の一部を以下の表5に提供する。
【0360】
【0361】
腫瘍標的化及び抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を促進するため、一部の実施形態において、疾患特異的モノクローナル抗体を必要としている対象に疾患特異的モノクローナル抗体を投与することができる。血液学的悪性腫瘍がNHLである場合、1つ以上のNHL特異的モノクローナル抗体(リツキシマブなど)が、そのような抗体を必要としている対象に投与される。本発明の方法に有用なリツキシマブの例示的投薬量は、375mg/対象(患者)の1m2当たりである。具体的な実施形態において、疾患特異的モノクローナル抗体治療は、1つ又は複数のモノクローナル抗体の3用量での投与を含む:NK細胞画分の投与(注入、移植)の10日前に第1の用量、NK細胞画分の投与(注入、移植)の3日前に第2の用量及びNK細胞画分の投与(注入、移植)の11日後に第3の最終用量、及び一部の実施形態において、最終回の(2回目の)NK細胞画分の投与(注入、移植)の約1週間後。特定の実施形態において、疾患特異的モノクローナル抗体は、同種異系の解凍した凍結保存増殖CD3枯渇細胞画分の第1の用量の9~11日前、第1の用量の3日前及び第1の用量の12~16日後に投与される。
【0362】
注入、モノクローナル抗体投与に対する反応及び毒性のモニタリングに関する標準的な指針は、以下である。エロツズマブは、典型的には、デキサメタゾン、ジフェンヒドラミンなどのH1ブロッカー、ラニチジンなどのH2ブロッカー及びアセトアミノフェンを含む前投薬レジメンと一緒に注入開始前に投与される。
【0363】
一部の実施形態において、それを必要としている対象は、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の投与(注入、移植)前に免疫抑制療法の前処置レジメンを受ける。好適な免疫抑制剤としては、限定はされないが、アルキル化剤、プリン類似体、代謝拮抗薬などが挙げられる。一部の免疫抑制剤は、化学療法免疫抑制剤もまた考えられる。具体的な実施形態において、免疫抑制療法は、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与を含む。本発明の方法に有用なシクロホスファミドの例示的投薬量は、400mg/対象(患者)の1m2当たりであり、本発明の方法に有用なフルダラビンの例示的投薬量は、25mg/対象(患者)の1m2当たりである。具体的な実施形態において、シクロホスファミドは、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の投与(移植、注入)の5日前に(IVにより)投与され、フルダラビンは、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の投与(移植、注入)の5日前、4日前及び3日前の各日に(IV)投与される。或いは、フルダラビン及びシクロホスファミド投与は、細胞画分投与を開始する2日前又は3日前に免疫抑制剤の最終回用量が完了するように調整することができる。
【0364】
本発明の方法によれば、一部の実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、そのような細胞画分を必要としている対象に単回用量で、又は複数回用量で投与される。具体的な実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分を投与することは、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の単回用量を投与することを含む。本明細書で使用されるとき、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の「単回用量」とは、単回の治療来院の間における投与を指し、「単回用量」は、各バッグの細胞数(即ちCD56+/CD3-)に応じて、及び各個別の患者/対象の個人的なパラメータ(体重、体表面積)に従い、複数の解凍して希釈した凍結保存増殖CD3枯渇細胞凍結保存バッグの内容物の注入を含み得ることが理解されるであろう。
【0365】
一部の実施形態において、対象(患者)への投与用の本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の総用量は、対象1kg当たり細胞数1×107個~対象1kg当たり細胞数5×108個、対象1kg当たり細胞数2×107個~対象1kg当たり細胞数2×108個、対象1kg当たり細胞数5×107個~2×108個、又は対象1kg当たり細胞数2×107個~5×107個の増殖させた同種異系の解凍したNK細胞を含む。一部の実施形態において、対象(患者)への投与用の本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の総用量は、対象1kg当たり1×107個、5×107個、1×108個又は2×108個の増殖させた同種異系の解凍したNK細胞を含む。具体的な実施形態において、対象(患者)への投与用の本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の総用量は、対象1kg当たりの2×108個の増殖させた同種異系の解凍した凍結保存NK細胞を含む。
【0366】
一部の実施形態において、本発明の同種異系の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、第1及び第2の用量で(例えば、2回の別個の治療来院において、用量間は少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、1週間、2週間又はそれ以上空けて)提供される。
【0367】
一部の実施形態において、第1及び第2の組み合わせ用量は、対象1kg当たり細胞数1×107個~対象1kg当たり細胞数5×108個、対象1kg当たり細胞数2×107個~対象1kg当たり細胞数2×108個、対象1kg当たり細胞数5×107個~2×108個、又は対象1kg当たり細胞数2×107個~5×107個の増殖させた同種異系の解凍したNK細胞を含む。一部の実施形態において、対象(患者)への投与用の本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の第1及び第2の組み合わせ用量は、対象1kg当たり1×107個、5×107個、1×108個又は2×108個の増殖させた同種異系の解凍したNK細胞を含む。具体的な実施形態において、対象(患者)への投与用の本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の第1及び第2の組み合わせ用量は、対象1kg当たり2×108個の増殖させた同種異系の解凍した凍結保存NK細胞を含む。
【0368】
本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の投与は、入院患者又は外来患者手技として実施されてもよい。本明細書に記載されるCD3枯渇NK細胞画分の投与は注入による投与であり、具体的な実施形態では、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、凍結保存CD3枯渇細胞画分の解凍及び希釈から1時間以内、及び解凍して希釈した増殖CD3枯渇細胞画分の最終製品出荷後4時間以内に対象(患者)に注入される。具体的な実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は投与まで室温で維持され、使用前に冷蔵はされない。
【0369】
このように、一部の実施形態において、本発明の解凍して希釈した同種異系の増殖させたCD3枯渇細胞画分は、移植提供後1時間以内及び解凍して希釈した細胞画分の最終製品出荷後4時間以内に対象に投与される。一部の実施形態において、解凍して希釈した増殖CD3枯渇同種異系細胞画分は、フィルタ又はポンプを用いることなく、静脈内注入によって1回の注入当たり15分以上60分以下の時間をかけて対象に投与される。具体的な実施形態において、細胞画分は、10cc/kg患者体重/時以下の速度で投与される。
【0370】
一部の実施形態において、解凍して希釈した増殖CD3枯渇同種異系細胞画分は、ポンプ無し、フィルタ有りで、静脈内注入によって1回の注入当たり15分以上60分以下の時間をかけて対象に投与される。具体的な実施形態において、細胞画分は、10cc/kg患者体重/時以下の速度で投与される。
【0371】
一部の実施形態において、それを必要としている対象は、解凍して希釈した細胞画分の投与後にインターロイキン2(IL-2)の補助レジメンを受ける。
【0372】
一部の実施形態において、IL-2は、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の投与当日、投与日の2日後及び4日後に、6MUの投薬量で(体重が45キログラム未満の患者については、IL-2投薬量は3MU/m2である)皮下(SC)投与される。一部の実施形態において、IL-2は、細胞注入の当日、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分から4時間以上経った後に投与される。特定の実施形態において、最初の2回のIL-2用量は、細胞注入のための入院の一環として投与される。3回目のIL-2投薬量は、外来患者のコンテクストで投与されてもよい。このように、具体的な実施形態において、Il-2投与は、増殖させたCD3枯渇NK細胞の輸注後、
(i)本発明の解凍して希釈した増殖同種異系CD3枯渇細胞画分の輸注当日、及び
(ii)解凍して希釈した増殖同種異系CD3枯渇細胞の輸注の2日後、及び
(iii)解凍して希釈した増殖同種異系CD3枯渇細胞の輸注の4日後
に6×106単位のIL-2を投与することを含む。
【0373】
発熱及び悪寒の強度を低減するため、毎回のIL-2投与前及び投与4時間後に、アセトアミノフェン/パラセタモール500~1000mgのPO及びジフェンヒドラミン25~50mgのPO/IVによる予備投薬が推奨される。
【0374】
更に、患者にグレード3の毒性が認められ、その毒性が48時間以内にグレード2以下に解消する場合、IL-2の投薬を減量した用量(例えば、1平方m当たり2~400万単位)で再開することができる。悪化した場合は、IL-2は中断すべきである。第1又は第2の用量で患者にグレード2以上のIL-2注入関連毒性が認められた場合、IL-2の用量が最長48時間にわたって保持されてもよい。毒性が48時間以内にグレード1以下に解消する場合、IL-2は、与えることを計画した全ての用量で与えてもよいが、残る1つ又は複数の用量の投与は、少なくとも24時間空けるべきである。
【0375】
一部の実施形態において、対象は、以下の一部又は全部を受けることができる。注入補助(例えば、ジフェンヒドラミン又はデクスクロルフェニラミン、ヒドロコルチゾン及びアセトアミノフェン)、補助サイトカイン(例えば、G-CSF)、必要に応じて血液製剤、抗ウイルス薬、抗細菌薬、PCP及び/又は真菌予防薬、CMV、EBV及びHHV6サーベイランス並びに必要に応じてIV免疫グロブリン。
【0376】
一部の実施形態において、対象は、血液学的疾患に対する追加的な治療の一部又は全部を受ける。治療は、免疫抑制治療、化学療法及び放射線療法からなる群から選択される治療であり得る。
【0377】
このように、一部の実施形態において、血液学的疾患の治療を必要としている対象の血液学的疾患を治療する方法であって、
(i)対象にとって同種異系のNK細胞とCD3+細胞とを含むアフェレーシス産物を入手することと、
(ii)アフェレーシス産物をCD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とに分離することと、
(iii)CD3+細胞画分の細胞を照射によって不活性化することと、
(iv)CD3枯渇細胞画分を、不活性化した照射CD3+細胞画分と共に、細胞増殖可能な条件下でex vivo培養することであって、条件が、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドを1.0mM~10mMの量で提供することを含むことと、
(v)ステップ(d)の6~10日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することにより、増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、
(vi)ステップ(d)の14~16日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を回収することと、
(vii)ステップ(vi)のCD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を洗浄し及び濃縮することと、
(viii)(vii)の洗浄し及び濃縮した細胞をDMSO不含凍結保存緩衝液に懸濁することと、
(ix)DMSOを10%v/vになるように加えることと
(x)細胞の温度を-120℃に下げることと、
(xi)凍結保存細胞を-120℃未満で貯蔵することと
によって、凍結保存の増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、
(xii)(xi)の凍結保存細胞画分を37℃の水浴中で解凍することと、
(xiii)(xii)の解凍した細胞画分を注入溶液で希釈することと
によって、移植用の解凍して希釈した凍結保存NK細胞画分を作製することと、
(xiv)対象に抗癌モノクローナル抗体を投与することと、
(xv)対象に少なくとも1つの免疫抑制剤を投与することと、
(xvi)解凍して希釈した凍結保存NK細胞画分(xiii)をそのようなNK細胞画分を必要としている対象に投与することと、
(xix)対象にIL-2を投与することと、
を含み、それによって対象の血液学的疾患を治療する方法が提供される。
【0378】
一部の具体的な実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の移植(投与、注入)に先立ち、細胞移植当日に、その移植を必要としている対象についての、典型的には、理学的検査、CBC、血液化学(例えば、少なくとも血清クレアチニン、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、AST、ALT及びマグネシウム)、バイタルサイン(体重、体温、血圧、脈拍、及び呼吸数)が含まれる安全性評価、並びにRBC及び血小板輸血を含めた、付随する薬物療法の投与が行われる。
【0379】
本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の、そのような細胞画分を必要としている対象への注入は、個別施設の診療上の制限を受けることを条件に、典型的には患者の中心静脈カテーテルを介した注入によって行われる。
【0380】
本発明の血液学的疾患の治療方法は、限定はされないがMM及びNHLを含めた血液学的悪性腫瘍の治療に使用することができる。本明細書で使用されるとき、用語「血液学的疾患を治療する」又は「血液学的悪性腫瘍を治療する」とは、血液学的疾患の症状又は徴候を低減することを指す。一部の実施形態において、血液学的疾患又は血液学的悪性腫瘍の治療は、限定はされないが、時間の経過に伴う症状の低減、臨床パラメータの好転、入院期間の低減及び再発又は死亡リスクの低減により判定される。
【0381】
一部の実施形態において、本明細書に記載される本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分を注入すると、本明細書に記載される方法による培養及び/又は投与を行わないNK細胞の注入と比較したとき、注入したNK細胞の生体内での増殖が成功する確率が増加する。一部の実施形態において、生体内での増殖の成功は、注入後7日目及び14日目に測定される。
【0382】
他の実施形態において、本明細書に記載される本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分を注入すると、本明細書に記載される方法による培養及び/又は投与を行わないNK細胞の注入と比較したとき、対象の末梢血におけるNK細胞の機能が増加する。一部の実施形態において、NK細胞機能を、注入後7日目及び14日目に測定する。
【0383】
本発明の方法の一部の実施形態によれば、本明細書に記載される本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分を注入すると、本明細書に記載される方法による培養及び/又は投与を行わないNK細胞の注入と比較したとき、NK細胞画分の注入後に好ましい疾患応答が得られる確率が増加する。一部の実施形態において、NK細胞機能は、注入後28日目及び1年で測定される。具体的な実施形態において、血液学的悪性腫瘍はNHLであり、NHLの疾患応答の判定基準は、Lugano又は国際作業部会(International Working Group)のNHL効果判定基準に従い判定する(詳細については、Cheson, et al, J Clin Oncol 2014;32:3059-68を参照のこと)。
【0384】
一部の実施形態において、本発明の製品、組成物又はキットは、増殖させたNK細胞画分の移植を必要としている対象への移植に好適な増殖NK細胞画分の投与に関する説明書を更に含む。
【0385】
本発明の製品、組成物又はキットの一部の実施形態において、本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分の移植を必要としている対象への移植に好適な本発明の解凍して希釈したCD3枯渇細胞画分は、少なくとも7×108個の総細胞数の生存NK細胞を含む。一部の実施形態において、解凍して希釈した増殖細胞画分の移植を必要としている対象への移植に好適な解凍して希釈した増殖細胞画分は、少なくとも8×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも10×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも15×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも20×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも25×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも40×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも50×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも60×108個の総細胞数の生存NK細胞、少なくとも80×108個の総細胞数の生存NK細胞又は少なくとも100×108個の総細胞数の生存NK細胞を含む。一部の実施形態において、組成物の各凍結保存バッグは、40~60×108個の範囲の総細胞数の範囲の生存NK細胞を含む。詳細な実施形態において、各凍結保存バッグは、50×108個の総細胞数の生存NK細胞を含む。一部の実施形態において、本組成物、製品又はキットは、各々少なくとも50×108個の総細胞数の生存NK細胞が入った凍結保存バッグを最大で4個含む。
【0386】
本発明の選択された細胞集団は、それ自体、それを入れる培養培地と一緒に、培養培地から単離されて、薬学的に許容可能な担体並びに細胞生着及び/又は臓器機能を促進し得る追加の薬剤(例えば、免疫抑制剤、抗生物質、成長因子)と組み合わせて提供されてもよい。ひいては、本発明の細胞集団は、滅菌生理食塩水及び水性緩衝溶液など、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤中で投与することができる。かかる担体及び希釈剤の使用は、当該技術分野において周知である。
【0387】
本発明の組成物は、必要であれば、FDA承認済みのキット又は製品など、パック又は分注装置の体裁で提供されてもよく、それは、活性成分(例えば、細胞)を含有する1つ以上の単位剤形が入ったものであり得る。パックは、例えば、金属箔又はブリスターパックなどのプラスチック箔を含み得る。パック又は分注装置には、投与に関する説明書が付属し得る。パック又は分注装置にはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する行政機関が定める形式の通知が付属してもよく、この通知は、その形態の組成物をヒト又は動物に投与することが機関によって承認されている旨を反映するものである。かかる通知には、例えば、米国食品医薬品局によって承認された処方薬についての表示又は承認済みの製品添付文書が含まれ得る。薬学的に許容可能な担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、上記に更に詳述したとおり、調製され、適切な容器に入れられ、及び適応される病態の治療に関する表示が付されてもよい。
【0388】
本発明の方法により調製された細胞は、それ自体で、又はそれが好適な担体又は賦形剤と混合されている医薬組成物で対象に投与することができる。
【0389】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」は、本明細書に記載される活性成分のうちの1つ以上が、生理学的に好適な担体及び賦形剤など、他の化学成分と一緒になった調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0390】
以下、語句「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」は、同義的に使用できるものであり、生物に重大な刺激作用を引き起こさない、且つ投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にすることのない担体又は希釈剤を指す。これらの語句には、補助剤も含まれる。
【0391】
本明細書では、用語「賦形剤」は、活性成分の投与を更に容易にするため医薬組成物に加えられる不活性な物質を指す。薬物の製剤化及び投与技法については、最新版の“Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PA(これは本明細書に参照により全て援用される)を参照し得る。
【0392】
本発明における使用のための医薬組成物は、このように、賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用して従来方法で製剤化されてもよく、こうした担体により、医薬品として使用することのできる調製物へと活性成分を処理するのが容易になる。適切な製剤は、選択の投与経路に依存する。
【0393】
注射には、医薬組成物の活性成分は、水溶液中、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水緩衝液など、生理的に適合性のある緩衝液中に製剤化されてもよい。
【0394】
本発明との関連における使用に好適な医薬組成物としては、意図される目的を実現するのに有効な量で活性成分を含有する組成物が挙げられる。より具体的には、「治療有効量」は、障害(例えば、白血病、多発性骨髄腫)の症状を予防し、軽減し、又は改善するのに有効な、又は治療下の対象の生存を延長させるのに有効な活性成分(例えば、増殖させたCD3枯渇NK細胞)の量を意味する。
【0395】
治療有効量の決定は、特に、本明細書に提供される詳説されている開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0396】
本明細書に記載される活性成分の毒性及び治療有効性は、インビトロでの標準的な薬学的手順により、細胞培養又は実験動物で決定することができる。そうしたインビトロ及び細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用向けの投薬量範囲を処方する際に使用することができる。投薬量は、採用される剤形及び利用される投与経路に応じて変わり得る。正確な製剤、投与経路、及び投薬量は、個々の医師が患者の病態を考慮して選択することができる(例えば、Fingl, E. et al. (1975), "The Pharmacological Basis of Therapeutics," Ch. 1, p.1.を参照のこと)。
【0397】
治療しようとする病態の重症度及び反応性に応じて、用量設定は単回投与又は複数回投与となり得る。投与する組成物の量は、当然ながら、治療下の対象、疾患の重症度、投与方法、処方医師の判断等に依存することになる。
【0398】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は±10%を指す。
【0399】
用語「~を含む(comprises)」、「~を含んでいる(comprising)」、「~が含まれる(includes)」、「~が含まれている(including)」、「~を有している(having)」及びこれらの活用変化形は、「~を含むがそれに限定されない」を意味する。
【0400】
用語「~からなる(consisting of)」は、「~を含み、且つそれに限定される」を意味する。
【0401】
用語「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、組成物、方法又は構造が追加の成分、ステップ及び/又はパーツを含み得るが、但し、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的な新規の特徴がそうした追加の成分、ステップ及び/又はパーツによって実質的に変化しない場合に限ることを意味する。
【0402】
本明細書で使用されるとき、単数形「ある(a)」、「ある(an)」及び「その(the)」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形への言及を含む。例えば、用語「ある化合物」又は「少なくとも1つの化合物」には、複数の化合物が、それらの混合物を含め、含まれてもよい。
【0403】
本願全体を通じて、本発明の様々な実施形態が範囲の形式で提示され得る。範囲の形式での記載は単に便宜上で、簡潔にするために過ぎないことが理解されなければならず、それが本発明の範囲に対する柔軟性のない限定であると解釈されてはならない。それに応じて、範囲の記載は、その範囲内にある可能な全ての部分的範囲並びに個々の数値が具体的に開示されたものと見なされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分的範囲、並びにその範囲内にある個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、及び6が具体的に開示されたものと見なされるべきである。これは、範囲の大きさに関係なく適用される。
【0404】
本明細書において数値の範囲が指示される場合は常に、その指示される範囲内にある引用されるあらゆる数(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の指示される数と第2の指示される数との「間の範囲に及んでいる/範囲に及ぶ」、及び第1の指示される数「から」第2の指示される数「までの範囲に及んでいる/範囲に及ぶ」という語句は、本明細書では同義的に使用され、第1及び第2の指示される数並びにそれらの間にある全ての分数及び整数を含むことが意味される。
【0405】
本明細書で使用されるとき、用語「方法」は、限定はされないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学分野の当業者に公知であるか、又はそうした当業者によって公知の様式、手段、技法及び手順から容易に開発されるかのいずれかである様式、手段、技法及び手順を含むがこれらに限定されない、所与の課題を遂行するための様式、手段、技法及び手順を指す。
【0406】
明確にするため、別々の実施形態の文脈で記載されている本発明のある種の特徴が、また単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするため、単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴が、また別々に、又は任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態において好適なものとして提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で記載されるある種の特徴は、それらの要素がなければその実施形態が実施不能となるのでない限り、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0407】
以上に輪郭を示したとおりの、及び以下の特許請求の範囲の節に主張するとおりの本発明の様々な実施形態及び態様について、以下の例に実験的なサポートが見出される。
【0408】
例示的実施形態
実施形態1.NK細胞画分を必要としている対象のためのNK細胞画分を調製する方法であって、
(a)対象にとって同種異系のNK細胞とCD3+細胞とを含むアフェレーシス産物を入手することと、
(b)アフェレーシス産物をCD3枯渇細胞画分とCD3+細胞画分とに分離することと、
(c)CD3+細胞画分の細胞を照射によって不活性化することと、
(d)CD3枯渇細胞画分を、不活性化した照射CD3+細胞画分と共に、細胞増殖可能な条件下でex vivo培養することであって、条件が、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドを1.0mM~10mMの量で提供することを含み、
(e)ステップ(d)の6~10日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分に新鮮な栄養素、血清、IL-15及びニコチンアミドを補給することにより、増殖させたCD3枯渇細胞画分を作製することと、
(f)ステップ(d)の14~16日後に、CD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を回収することと、
(g)ステップ(f)のCD3枯渇細胞及びCD3+細胞の組み合わせ画分を洗浄し及び濃縮することと
を含み、それによって対象における移植用の増殖させたNK細胞画分を作製する方法。
【0409】
実施形態2.アフェレーシス産物が、ヒトNK及びCD3+細胞画分を含むヒトアフェレーシス産物である、実施形態1に記載の方法。
【0410】
実施形態3.血清がヒト血清である、実施形態1に記載の方法。
【0411】
実施形態4.細胞増殖を可能にするための条件が、10%ヒト血清を提供することを含む、実施形態3に記載の方法。
【0412】
実施形態5.IL-15が20ng/mlのIL-15を含む、実施形態1に記載の方法。
【0413】
実施形態6.CD3アゴニストがOKT3である、実施形態1に記載の方法。
【0414】
実施形態7.OKT3が1μg/mlのOKT3を含む、実施形態6に記載の方法。
【0415】
実施形態8.ニコチンアミドが7.0mMのニコチンアミドを含む、実施形態1に記載の方法。
【0416】
実施形態9.栄養素が最小必須細胞培養培地を含む、実施形態1に記載の方法。
【0417】
実施形態10.増殖NK細胞画分のNK細胞が、少なくとも40~97%のCD56+/CD3-細胞を含む、実施形態1に記載の方法。
【0418】
実施形態11.ステップ(e)によって生成された洗浄及び濃縮した、増殖させたNK細胞画分が、以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)注入時、1×106個より少ないCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重、
(d)注入時、5EU以下のエンドトキシン/Kg患者体重、
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0419】
実施形態12.CD3+細胞が、注入時、0.5×106個のCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重より少ない、実施形態11に記載の方法。
【0420】
実施形態13.ステップ(d)においてCD3枯渇細胞及び照射CD3+細胞が1:1の比で播種される、実施形態1に記載の方法。
【0421】
実施形態14.ステップ(d)の培養が、フラスコ内にて、0.30~0.40×106個のCD3枯渇細胞及び0.30~0.40×106個の照射CD3+細胞/mlで実施する、実施形態13に記載の方法。
【0422】
実施形態15.ステップ(d)の培養が、フラスコ内にて、0.35×106個のCD3枯渇細胞及び0.35×106個の照射CD3+細胞/mlで実施する、実施形態13に記載の方法。
【0423】
実施形態16.ステップ(d)の培養が、フラスコ内にて、1フラスコ当たり400~900×106個のCD3枯渇細胞及び400~900×106個の照射CD3+細胞で実施する、実施形態13に記載の方法。
【0424】
実施形態17.ステップ(d)の培養が、フラスコ内にて、1フラスコ当たり700×106個のCD3枯渇細胞及び700×106個の照射CD3+細胞で実施する、実施形態13に記載の方法。
【0425】
実施形態18.増殖させたCD3枯渇細胞が、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して、CD62Lの発現が増加している、実施形態13に記載の方法。
【0426】
実施形態19.増殖させたCD3枯渇細胞が、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して、抗体依存性細胞傷害性が増加している、実施形態13に記載の方法。
【0427】
実施形態20.NK細胞画分の凍結保存方法であって、
(a)NK細胞画分のNK細胞をDMSO不含凍結保存緩衝液に懸濁することと、
(b)DMSOを10%v/vになるように加えることと、
(c)細胞の温度を-120℃に下げることと、
(d)凍結保存NK細胞を-120℃未満で貯蔵することと
を含む方法。
【0428】
実施形態21.実施形態1に記載のとおりに調製されたNK細胞画分。
【0429】
実施形態22.実施形態20に記載のとおりに調製された凍結保存NK細胞画分。
【0430】
実施形態23.2.5×108個の総細胞/mlを20mlの容積に含む凍結保存バッグで提供される、実施形態22に記載の凍結保存NK細胞画分。
【0431】
実施形態24.投与用の凍結保存NK細胞画分の調製方法であって、
(a)凍結保存NK細胞画分を37℃の水浴中で解凍することと、
(b)凍結保存NK細胞画分を注入溶液で希釈することと
を含み、それによって移植用の解凍した凍結保存NK細胞画分を作製する方法。
【0432】
実施形態25.実施形態24に記載の方法によって作製された移植用の解凍した凍結保存NK細胞画分であって、凍結保存NK細胞画分が、実施形態23に記載の凍結保存NK細胞画分である、方法。
【0433】
実施形態26.増殖させたCD3枯渇細胞が、5mMのニコチンアミドを有し、且つCD3+細胞画分のない同一の条件下で増殖させたCD3枯渇細胞と比較して、照射マウスへの注入後の脾臓及び骨髄における生体内保持率が増加している、実施形態25に記載の解凍した凍結保存NK細胞画分。
【0434】
実施形態27.以下のパラメータ:
(a)少なくとも70%のCD56+/CD3-細胞、
(b)少なくとも70%の生存率、
(c)注入時、1×106個より少ないCD3+/CD56-細胞/Kg患者体重、
(d)注入時、5EU以下のエンドトキシン/Kg患者体重、
(e)マイコプラズマなし、及び
(f)無菌
を特徴とする、実施形態25に記載の移植用の解凍した凍結保存NK細胞画分。
【0435】
実施形態28.フッ化エチレンプロピレン(FEP)凍結保存バッグに提供される、実施形態25に記載の解凍した凍結保存NK細胞画分。
【0436】
実施形態29.2.5×108細胞/mlを含む、実施形態28に記載の解凍した凍結保存NK細胞画分。
【0437】
実施形態30.100mlの容積で提供される、実施形態28に記載の解凍した凍結保存NK細胞画分。
【0438】
実施形態31.血液学的疾患の治療を必要としているヒト対象の血液学的疾患を治療する方法であって、
(a)抗癌モノクローナル抗体を対象に投与することと、
(b)少なくとも1つの免疫抑制剤を対象に投与することと、
(c)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分を、そのようなNK細胞画分を必要としている対象に移植することであって、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分が、1.0mM~10mMの量のCD3+細胞、栄養素、血清、IL-15、CD3アゴニスト及びニコチンアミドと共にex vivo培養することによって増殖させたものであることと、
(d)IL-2を対象に投与することと
を含み、それによって対象の血液疾患を治療する方法。
【0439】
実施形態32.免疫抑制剤が化学療法免疫抑制剤及び/又は放射線照射である、実施形態31に記載の方法。
【0440】
実施形態33.血液学的疾患が血液学的悪性腫瘍である、実施形態31に記載の方法。
【0441】
実施形態34.血液学的疾患が非ホジキンリンパ腫(NHL)である、実施形態31に記載の方法。
【0442】
実施形態35.血液学的疾患が濾胞性リンパ腫(FL)又は高悪性度B細胞リンパ腫(HGBCL)である、実施形態34に記載の方法。
【0443】
実施形態36.NHLがCD20陽性B細胞NHLである、実施形態34に記載の方法。
【0444】
実施形態37.NHLが、
(a)従来療法が失敗した再発性/難治性疾患、
(b)過去少なくとも2ラインの療法(それらのうちの少なくとも1つには化学療法が含まれ、それらのうちの少なくとも1つには抗CD20モノクローナル抗体が含まれた)を受けた患者のNHL、
c)Lugano効果判定基準により定義されるとおりの測定可能な疾患、及び
d)FLからHGBCLに形質転換したNLHであって、HGBCLへの形質転換後に対象が既に少なくとも1ラインの療法を受けているNLH
のうちの少なくとも1つを特徴とする、実施形態34に記載の方法。
【0445】
実施形態38.血液学的悪性腫瘍がNHLであり、抗癌モノクローナル抗体がリツキシマブ(375mg/m2)である、実施形態33に記載の方法。
【0446】
実施形態39.ステップ(a)が3回実施される、実施形態31に記載の方法。
【0447】
実施形態40.ステップ(c)が、同種異系の解凍した凍結保存増殖細胞画分の第1の用量を投与し、続いて2日後に同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分の第2の用量を投与することを含む、実施形態31に記載の方法。
【0448】
実施形態41.ステップ(a)が、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分の第1の用量の10日前、第1の用量の3日前、及び第1の用量の12~16日後の3回実施される、実施形態40に記載の方法。
【0449】
実施形態42.細胞画分が、対象1kg当たり1×107~5×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含む、実施形態31に記載の方法。
【0450】
実施形態43.細胞画分が、対象1kg当たり2×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含む、実施形態31に記載の方法。
【0451】
実施形態44.第1及び第2の組み合わせた用量が、2×107個/kg~2×108個/kgの総細胞数の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含む、実施形態41に記載の方法。
【0452】
実施形態45.実施形態40に記載の方法であって、
(a)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量が、各々、対象1kg当たり2.5×107個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含み、総用量が対象1kg当たり5×107個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞である、又は
(b)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量が、各々、対象1kg当たり5×107個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含み、総用量が対象1kg当たり1×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞である、又は
(c)NK細胞画分の第1の用量及び第2の用量が、各々、1×108個の同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞を含み、総用量が対象1kg当たり2×108個/kgの同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞である、方法。
【0453】
実施形態46.同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分が、解凍後4時間以内に対象に投与される、実施形態31に記載の方法。
【0454】
実施形態47.同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞画分が、フィルタ又はポンプを用いない注入によって10cc/kg患者体重/時以下の速度で対象に投与される、実施形態31に記載の方法。
【0455】
実施形態48.少なくとも1つの免疫抑制剤が、シクロホスファミド及び/又はフルダラビンを含む、実施形態31に記載の方法。
【0456】
実施形態49.実施形態48に記載の方法であって、
(i)少なくとも1つの免疫抑制剤が、シクロホスファミド(400mg/m2)及びフルダラビン(30mg/m2)の両方を含み、且つ
(ii)シクロホスファミド及びフルダラビンが、各々、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注の5日前、4日前及び3日前の各日に投与される、方法。
【0457】
実施形態50.ステップ(d)が、同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注後であって、
(i)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注当日、
(ii)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注2日後、及び
(iii)同種異系の解凍した凍結保存増殖NK細胞の輸注4日後
に6×106単位のIL-2を投与することを含む、実施形態31に記載の方法。
【0458】
実施形態51.ステップ(c)が、実施形態24に記載の方法のとおりに調製された移植可能なNK細胞画分を移植することを含む、実施形態31に記載の方法。
【0459】
実施例
ここで以下の例を参照し、これらの例は、上記の説明と併せて、本発明の一部の実施形態を非限定的な形式で例示するものである。
【0460】
概して、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験室手順には、分子的、生化学的、微生物学的及び組換えDNA技法が含まれる。かかる技法については、文献の中で徹底的に説明されている。例えば、"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989);"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994);Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988);Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York;Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号明細書;同第4,683,202号明細書;同第4,801,531号明細書;同第5,192,659号明細書及び同第5,272,057号明細書に示される方法論;"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994);"Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition;"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994);Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照のことと、利用可能なイムノアッセイについては、特許及び科学文献に広範に記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号明細書;同第3,839,153号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,850,578号明細書;同第3,853,987号明細書;同第3,867,517号明細書;同第3,879,262号明細書;同第3,901,654号明細書;同第3,935,074号明細書;同第3,984,533号明細書;同第3,996,345号明細書;同第4,034,074号明細書;同第4,098,876号明細書;同第4,879,219号明細書;同第5,011,771号明細書及び同第5,281,521号明細書;"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984);"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985);"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984);"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986);"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986);"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)及び"Methods in Enzymology" Vol. 1, 2, 317, Academic Press;"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990);Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)を参照のことと、これらは全て、本明細書に完全に示されたかのように参照によって援用される。他の一般的な参考文献も、本文書全体を通じて提供される。それらの中にある手順は、当該技術分野において周知であると考えられ、読者の利便性を考えて提供される。それらの中に含まれる情報は全て、参照により本明細書に援用される。
【実施例1】
【0461】
CD3+フィーダー細胞がex vivoで増殖させたNK細胞の増殖及びインビトロ機能性に及ぼす効果
自家性の照射CD3+細胞画分フィーダー細胞が、不活性化後に、及びOKT3などのCD3アゴニストの存在下で、ex vivoで増殖させて凍結保存して解凍したNK細胞の増殖及び機能に及ぼす効果を判定した。
【0462】
本発明の方法のとおり培養した2週間後にOKT3及びNAMを補給した、不活性化した自家性CD3+細胞をフィーダーとして使用する変法は、増殖倍数の向上につながるため、回収時に入手される生細胞の総数が増加した。NK細胞を標的細胞BL2(バーキットリンパ腫細胞株)と種々の比で組み合わせることにより、殺傷率及びADCCにおける細胞の機能性を判定した。CD枯渇画分を不活性化したCD3+フィーダー細胞と一緒に培養すると、細胞傷害性アッセイでの成績の低下につながったが、これは、細胞をより高いNAM濃度(7mM)で培養することにより部分的に克服された(
図1)。7mMのNAMと共に培養すると、またCD62L発現の増加にもつながった(
図2)。
【0463】
NK細胞は、感染細胞及び悪性形質転換細胞の監視及び排除において決定的に重要な役割を果たす。NK細胞はまた、標的細胞を直接殺傷する能力を有するとともに、IgG抗体のFc部分に結合する膜受容体FcγRIII(CD16)を介してADCCを媒介する能力も有する。
【0464】
NAMが細胞傷害活性に及ぼす影響を試験するため、NK細胞を本発明の方法のとおりにフィーダー有り又は無しで5mM又は7mMのNAMにて2週間培養した。標識BL2細胞を使用してADCCアッセイを実施した。蛍光活性化細胞選別(FACS)分析によれば、NAM単独と共に培養した細胞と比較して、7mMのNAM及びフィーダーと共に培養したNK細胞の細胞傷害活性の増加が示された(
図1)。
【0465】
本開示の方法を用いて培養した後、作製された細胞の表現型をFACSを用いて分析した。結果は
図8及び
図9に示す。
図8及び
図9に示されるとおり、本明細書に記載される作製方法により、ユニークな発現パターンのCD16、CD57、CD62L、NKp80、CD200R、LAG3及びCD56を含め、ユニークな表現型の表面マーカーを有する細胞が作り出された。
【0466】
本明細書に記載される培養方法後に回収された細胞の幾つかのバッチに対し、FACSとCEDEXとの組み合わせを用いて、特定の細胞の細胞表現型、生存率及び増殖倍数の更なる分析を実施した。これらの分析の結果を以下の表I、表IIa及び表IIbに提示する。
【0467】
【0468】
【0469】
【0470】
細胞表現型に加え、上記に記載される細胞バッチの効力を、本明細書に記載される第1及び第2の効力アッセイを用いて測定した。これらの分析の結果を以下の表III及び表IVに提示する。
【0471】
【0472】
【0473】
表3~表5は、本明細書に記載される方法のとおりに培養し、凍結し、及び解凍した、例示的な凍結保存し、解凍したCD3枯渇細胞及び照射CD3+細胞の細胞数、生存率及び表現型特性の判定結果を示す。T=0は、画分を凍結して7±2日後に解凍することに対応する。
【0474】
【0475】
【0476】
【0477】
表6~表8は、本明細書に記載される方法のとおりに培養した、例示的な凍結保存し、解凍したCD3枯渇細胞及び照射CD3+細胞の細胞機能(細胞殺傷及び効力、それぞれ、本明細書に記載される第1の効力アッセイ及び第2の効力アッセイにより測定したとき)の判定結果を示す。T=0は、画分を凍結して7±2日後に解凍することに対応する。
【0478】
【0479】
【0480】
【実施例2】
【0481】
Ex vivoで増殖させたNK細胞の表現型特性に対するNAM及びCD3+フィーダー細胞の効果
免疫チェックポイント受容体CD200R及びプログラム死受容体-1(PD-1)は、そのリガンドを過剰発現する腫瘍細胞により、リンパ球による抗腫瘍活性を抑制するために利用される。ニコチンアミド(NAM)と共に増殖させることがNK細胞における免疫チェックポイント受容体の発現に及ぼす効果を判定した。
【0482】
FACS分析を用いた免疫表現型タイピングによれば、増殖させたNK細胞に発現するCD200Rの発現がNAMによって下方制御されたことが実証された(
図3)。
【実施例3】
【0483】
Ex vivoで増殖させたNK細胞のin vivoでのホーミングに対するNAM及びCD3+フィーダー細胞の効果
培養下での活性化時、NK細胞は、そのin vivoでの輸送、局在化及び増殖といった能力の一部を失い、これはその臨床的有効性に直接影響する。CD3+フィーダー細胞との培養、NAM有り及び無しでの凍結保存及び解凍が、ex vivoで増殖させたNK細胞の保持率及び保持有効性に及ぼす効果を判定した。
【0484】
in vivo保持モデル(脾臓)によれば、本明細書に記載される方法のとおり凍結保存し、解凍した後の、NAM及び照射CD3+フィーダー細胞と共に培養したCD3枯渇培養物からのNK細胞の全体的な保持率が、サイトカインのみで培養した細胞の保持率と比較したとき高かったことが示された(
図4)。
【実施例4】
【0485】
Ex vivoで増殖させたNK細胞のin vivo機能性に対するCD3+フィーダー細胞の効果
CD3+フィーダー細胞との培養、並びに凍結保存及び解凍は、NK細胞機能に効果を及ぼすことが、インビトロで示されている(実施例1を参照のこと)。
【0486】
5mM又は7mMのいずれかのNAMとするフィーダー有り又は無しでのNKの増殖を2つの異なるin vivoアッセイで比較した。保持率アッセイでは、照射したNSGマウス(各群n=6~7匹のマウス)に20×10
6個のヒトNK細胞/マウスをIV注射した。フィーダー及び7mMのNAM有りで増殖させたNK細胞は、脾臓における全体的なNK細胞数で見たとき保持率の増加を示し(
図5A)、3日後に骨髄でNK細胞の割合の増加を示した(
図5B)。
【実施例5】
【0487】
Ex vivoで増殖させて、凍結保存し、及び解凍したCD3枯渇(NK)細胞
CD3+フィーダー細胞との培養、並びに凍結保存及び解凍は、NK細胞機能に効果を及ぼすことが、インビトロで(実施例1を参照のこと)、及びin vivoで(実施例4)示されている。増殖させたNK細胞が腫瘍成長を阻害できる可能性について、A549(ヒト肺腺癌上皮性腫瘍)細胞で判定した。
【0488】
図6及び
図7では、NK細胞投与を抗Her2抗体投与と組み合わせる相乗効果が(NK+AHer2)、最小限のNK細胞投与(9日目及び11日目)(
図6のB及びC)、及び複数回の延長したNK細胞投与(9、12、15、及び18日目)(
図7B及び
図7C)の両方で明らかである。
【0489】
理論によって拘束されることを望むものではないが、まとめて見たとき、本明細書に提示される結果は、CD3枯渇細胞画分におけるNK細胞をニコチンアミド、照射CD+フィーダー細胞、及びCD3アゴニスト(例えば、OKT3)と共に本明細書に記載される方法のとおりにex vivo培養し、記載されるとおり凍結保存して解凍すると、ex vivo及びin vivo機能性が亢進した、凍結及び解凍の負の効果を克服する、且つ癌及び他の疾患の治療における使用に好適な、有効に貯蔵可能な増殖させたNK細胞集団を提供し得ることを実証している。
【国際調査報告】