(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】がんを処置するためのチェックポイント阻害剤と腫瘍溶解性ウイルスの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20240711BHJP
A61K 39/205 20060101ALI20240711BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20240711BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
A61K39/12
A61K39/205
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K39/395 U
C12N15/86 Z ZNA
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503369
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 US2022073845
(87)【国際公開番号】W WO2023004287
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】522403893
【氏名又は名称】ヴィリアド インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VYRIAD, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】サイダ・ダディ-メームタック
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・モアーズ
(72)【発明者】
【氏名】ギャヴィン・サーストン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085AA35
4C085BA64
4C085BB11
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
(57)【要約】
本開示は、がん患者において腫瘍の増殖を処置または阻害するための、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤の新規な3重組合せ療法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の増殖を処置または阻害する方法であって:
(a)がん患者を選択すること;ならびに
(b)(i)治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスを、(ii)治療有効量のプログラム死1(PD-1)経路阻害剤および(iii)治療有効量の細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA4)阻害剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与すること、を含む方法。
【請求項2】
腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解性ベジクロウイルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍溶解性ベジクロウイルスは腫瘍溶解性水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
VSVは組換えVSVを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
組換えVSVはM51R置換を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
組換えVSVはサイトカインを発現する、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
サイトカインはインターフェロンベータ(IFNb)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
IFNbをコードする核酸配列は、Mウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に位置している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
組換えVSVは、ナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をさらに発現する、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
NISをコードする核酸配列は、Gウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に位置している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
腫瘍溶解性ウイルスはVoyager V1である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤は、同時に患者に投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
1回またはそれ以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスは、1回またはそれ以上の用量のPD-1経路阻害剤および1回またはそれ以上の用量のCTLA4阻害剤と組み合わせて、連続して投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
1回またはそれ以上の用量のCTLA4阻害剤は、単回用量のCTLA4阻害剤を含み、単回用量のCTLA4阻害剤の投与は、2回以上の用量のCTLA4阻害剤を含む組合せ療法を用いるものと匹敵する抗腫瘍効能につながる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗腫瘍効能は、各処置群における平均(mean)もしくは平均(average)腫瘍体積、生存パーセント、腫瘍がない患者の数のまたはこれらの組合せの減少を特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
腫瘍溶解性ウイルスは、10
4~10
14TCID
50、10
4~10
12TCID
50、10
6~10
12TCID
50、10
8~10
14TCID
50、10
8~10
12TCID
50または10
10~10
12TCID
50の1回またはそれ以上の用量として患者に投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
PD-1経路阻害剤は、約0.1mg/kg~約20mg/kg患者体重の1回またはそれ以上の用量で患者に投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
PD-1経路阻害剤は、約1mg~約1000mgの1回またはそれ以上の用量で患者に投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
CTLA4阻害剤は、約0.1mg/kg~約15mg/kg患者体重の1回またはそれ以上の用量で患者に投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
CTLA4阻害剤は、約0.1mg/kg~約15mg/kg患者体重の単回用量で患者に投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
CTLA4阻害剤は、約1mg~約600mgの1回またはそれ以上の用量で患者に投与される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
腫瘍溶解性ウイルスは、患者に腫瘍内または静脈内投与される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤は、患者に静脈内、皮下または腹腔内投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
がんは、副腎腫瘍、胆道がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、癌腫、中枢または末梢神経系組織がん、子宮頸がん、結腸がん、内分泌もしくは神経内分泌がんまたは造血がん、食道がん、線維腫、胃腸がん、神経膠腫、頭頸部がん、リー-フラウメニ腫瘍、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、多発性神経内分泌I型およびII型腫瘍、鼻咽頭がん、口腔がん、中咽頭がん、骨原性肉腫腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、膵島細胞がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、呼吸器がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、気管がん、泌尿生殖器がんならびに子宮がんから選択される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
がんは少なくとも1つの抗PD-1剤または療法を用いた処置に抵抗性である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
PD-1経路阻害剤は、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または抗PD-L2抗体もしくはその抗原結合性フラグメントを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗PD-1抗体は、セミプリマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、MEDI0608、BI754091、PF-06801591、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、JNJ-63723283およびMCLA-134から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号3、4および5のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);ならびに配列番号6、7および8のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項26~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号9と10の重鎖配列と軽鎖配列の対を含む、請求項26~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
抗PD-L1抗体は、REGN3504、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-072、KN035およびCK-301から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
抗PD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
抗PD-L1抗体はREGN3504を含む、請求項26~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
CTLA4阻害剤は、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
抗CTLA4抗体は、イピリムマブ、トレメリムマブおよびREGN4659から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号15、16および17のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);ならびに配列番号18、19および20のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号21と22の重鎖配列と軽鎖配列の対を含む、請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
処置は、腫瘍増殖の遅延、腫瘍細胞数の減少、腫瘍退縮、生存の延長、部分奏効および完全奏効のうちの1つまたはそれ以上から選択される治療効果をもたらす、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
腫瘍増殖は、未処置患者と比較して少なくとも50%阻害される、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
腫瘍増殖は、単独療法として腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤が投与される患者と比較して、少なくとも50%阻害される、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
腫瘍増殖は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤のうちのいずれか2つが投与される患者と比較して、少なくとも50%阻害される、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
さらなる治療用薬剤または療法を患者に施すことをさらに含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
さらなる治療用薬剤または療法は、放射線照射、手術、化学療法剤、がんワクチン、B7-H3阻害剤、B7-H4阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有3(TIM3)阻害剤、ガレクチン9(GAL9)阻害剤、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン(Ig)含有サプレッサー(VISTA)阻害剤、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、カルメット-ゲラン桿菌ワクチン、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、細胞毒、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、IL-15、抗体-薬物コンジュゲート、抗炎症薬ならびにこれらの組合せから選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
腫瘍の増殖を処置または阻害する方法で使用するための、腫瘍溶解性ウイルスとPD-1経路阻害剤とCTLA4阻害剤の組合せであって、方法は:
(a)がん患者を選択すること;ならびに
(b)(i)治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスを、(ii)治療有効量のPD-1経路阻害剤および(iii)治療有効量のCTLA阻害剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与すること、を含む、腫瘍溶解性ウイルスとPD-1経路阻害剤とCTLA4阻害剤の組合せ。
【請求項48】
患者の腫瘍の増殖を処置または阻害するための腫瘍溶解性ウイルスとPD-1経路阻害剤とCTLA4阻害剤の治療有効量の組合せの使用に関して記載される指示書と併せて、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、腫瘍溶解性ウイルスおよびチェックポイント阻害剤、例えば、プログラム死1(PD-1)経路阻害剤および細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA4)阻害剤を用いたがん処置のための組合せ療法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近まで、がん免疫療法は、活性化されたエフェクター細胞の養子移入、関連する抗原に対する免疫化、またはサイトカインなどの非特異的免疫刺激薬剤を与えることによって抗腫瘍免疫応答を増強するアプローチに対してかなりの努力を注いできた。しかし、過去10年間で、特異的な免疫チェックポイント経路阻害剤を開発するための集中的な努力によって、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体の開発を含めて、がんを処置するための新しい免疫療法的アプローチが提供され始めた。
【0003】
PD-1(CD279としても知られる)は、自己免疫、感染に対する免疫および抗腫瘍免疫において重要な役割を果たす。モノクローナル抗体を含めたアンタゴニストによるPD-1の遮断は、がんおよび慢性のウイルス感染症の処置で研究されている。PD-1の遮断はまた、免疫応答を刺激するための有効かつ忍容性に優れたアプローチであり、黒色腫、腎細胞がん(RCC)および非小細胞肺がん(NSCLC)を含めて、ヒトの様々ながんに対して治療的利点が達成されている(非特許文献1;非特許文献2)。
【0004】
CTLA4(CD152としても知られる)は、通常および調節性のT細胞で発現している、I型膜貫通T細胞阻害性チェックポイント受容体である。CTLA4は、刺激性受容体CD28をその共通の天然リガンド、B7-1(CD80)およびB7-2(CD86)に結合させないように打ち負かすことによって、T細胞活性化を消極的に調節する。
【0005】
最初のT細胞活性化は、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合性複合体クラスIまたはII(MHC IまたはMHC II)タンパク質によって提示される特定のペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)を刺激することによって達成される(非特許文献3)。次に、活性化されたTCR複合体は、様々な転写因子、例えば、アクチベータータンパク質1(AP-1)、活性化T細胞核内因子(NFAT)または活性化B細胞の核内因子カッパ軽鎖エンハンサー(Nuclear factor kappa-light-chain-enhancer)(NFカッパB)の発現を調節するプロモーターによって引き起こされるシグナリングイベントのカスケードを惹起する。次いでT細胞応答は、CD28、CTLA4、PD-1、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)または他の分子などのT細胞上で構成的かまたは誘導的かのいずれかで発現している共刺激性または共阻害性受容体の結合を介してさらにモジュレートされる(非特許文献4)。
【0006】
腫瘍溶解性ウイルスもがん処置に期待できる。これらのウイルスは、正常な組織に影響を与えずに、悪性細胞に感染し、悪性細胞で特異的に複製し、悪性細胞を死滅させる。いくつかの腫瘍溶解性ウイルスは、様々な新生物の処置のための臨床評価の進んだ段階に達している。しかし、腫瘍による免疫抑制およびウイルスの早すぎる排除は、弱い腫瘍特異的免疫応答しかもたらさないことが多く、がん治療剤としてのこれらのウイルスの可能性が制限される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sheridan 2012、Nat.Biotechnol.、30:729~730
【非特許文献2】Postowら、2015、J Clin Oncol、33:1974~1982
【非特許文献3】Goldrathら、1999、Nature 402:255~262
【非特許文献4】Sharpeら、2002、Nat.Rev.Immunol.2:116~126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本明細書で開示されるような、腫瘍溶解性ウイルスならびにチェックポイント阻害剤、例えば、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤を含む組合せ療法を含めて、がん処置のためのより有効な療法が強く必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、開示される技術は、腫瘍の増殖を処置または阻害する方法に関し、方法は:(a)がん患者を選択すること;ならびに(b)(i)治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスを、(ii)治療有効量のプログラム死1(PD-1)経路阻害剤および(iii)治療有効量の細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA4)阻害剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与すること、を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解性ベジクロウイルスを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ベジクロウイルスは腫瘍溶解性水疱性口内炎ウイルス(VSV)を含む。いくつかの実施形態では、VSVは組換えVSVを含む。いくつかの実施形態では、組換えVSVは1つまたはそれ以上の突然変異、例えば、M51R置換を含む。いくつかの実施形態では、組換えVSVはサイトカインを発現する。いくつかの実施形態では、組換えVSVは、サイトカインなどの免疫刺激性分子をコードする核酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、サイトカインは、インターフェロンベータ(IFNb)、例えば、ヒトもしくはマウスのIFNbまたはそれらの変異体を含む。いくつかの実施形態では、IFNbをコードする核酸配列はMウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に位置している。
【0011】
いくつかの実施形態では、組換えVSVは、ナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をさらに発現する。いくつかの実施形態では、組換えVSVは、ナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)またはその変異体をコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、NISをコードする核酸配列はGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に位置している。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはVoyager V1である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤は同時に患者に投与される。いくつかの実施形態では、1回またはそれ以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスは、1回またはそれ以上の用量のPD-1経路阻害剤および1回またはそれ以上の用量のCTLA4阻害剤と組み合わせて、連続して投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、PD-1経路阻害剤および/またはCTLA4阻害剤の前または後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1経路阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスおよび/またはCTLA4阻害剤の前または後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスおよび/またはPD-1経路阻害剤の前または後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤のうちの少なくとも1つは、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、週に1回、2週間に1回または3週間に1回患者に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤のある用量が、それぞれ、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の直前の用量の1日~12週間後に患者に投与される。
【0013】
いくつかの実施形態では、1回またはそれ以上の用量のCTLA4阻害剤は単回用量のCTLA4阻害剤を含み、単回用量のCTLA4阻害剤の投与は、2回以上の用量のCTLA4阻害剤を含む組合せ療法を用いるものと匹敵する抗腫瘍効能につながる。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗腫瘍効能は、各処置群における平均(mean)もしくは平均(average)腫瘍体積、生存パーセント、腫瘍がない患者の数またはこれらの組合せの減少を特徴とする。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、104~1014TCID50(50%組織培養感染用量)、104~1012TCID50、106~1012TCID50、108~1014TCID50、108~1012TCID50または1010~1012TCID50の1回またはそれ以上の用量として患者に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1経路阻害剤は、約0.1mg/kg~約20mg/kg患者体重の1回またはそれ以上の用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1経路阻害剤は、約1mg~約1000mgの1回またはそれ以上の用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、約0.1mg/kg~約15mg/kg患者体重の1回またはそれ以上の用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、約0.1mg/kg~約15mg/kg患者体重の単回用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、約1mg~約600mgの1回またはそれ以上の用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、患者に腫瘍内または静脈内投与される。いくつかの実施形態では、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤は、患者に静脈内、皮下または腹腔内投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、がんは、副腎腫瘍、胆道がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、癌腫、中枢または末梢神経系組織がん、子宮頸がん、結腸がん、内分泌もしくは神経内分泌がんまたは造血がん、食道がん、線維腫、胃腸がん、神経膠腫、頭頸部がん、リー-フラウメニ腫瘍、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、多発性神経内分泌I型およびII型腫瘍、鼻咽頭がん、口腔がん、中咽頭がん、骨原性肉腫腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、膵島細胞がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、呼吸器がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、気管がん、泌尿生殖器がんならびに子宮がんから選択される。いくつかの実施形態では、がんは少なくとも1つの抗PD-1剤または療法を用いた処置に抵抗性である。
【0016】
いくつかの実施形態では、PD-1経路阻害剤は、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または抗PD-L2抗体もしくはその抗原結合性フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、セミプリマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、MEDI0608、BI754091、PF-06801591、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、JNJ-63723283およびMCLA-134から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号3、4および5のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);ならびに配列番号6、7および8のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号9と10の重鎖配列と軽鎖配列の対を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、REGN3504、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-072、KN035およびCK-301から選択される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体はREGN3504を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、抗CTLA4抗体は、イピリムマブ、トレメリムマブおよびREGN4659から選択される。いくつかの実施形態では、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号15、16および17のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);ならびに配列番号18、19および20のそれぞれのアミノ酸配列を含む3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。いくつかの実施形態では、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号21と22の重鎖配列と軽鎖配列の対を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、処置は、以下の1つまたはそれ以上から選択される治療効果をもたらす:腫瘍増殖の遅延、腫瘍細胞数の減少、腫瘍退縮、生存の延長、部分奏効および完全奏効。いくつかの実施形態では、腫瘍増殖は、未処置患者と比較して少なくとも50%阻害される。いくつかの実施形態では、腫瘍増殖は、単独療法として腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤が投与される患者と比較して少なくとも50%阻害される。いくつかの実施形態では、腫瘍増殖は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤のうちのいずれか2つが投与される患者と比較して少なくとも50%阻害される。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、さらなる治療用薬剤または療法を患者に施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、さらなる治療用薬剤または療法は、以下から選択される:放射線照射、手術、化学療法剤、がんワクチン、B7-H3阻害剤、B7-H4阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有3(TIM3)阻害剤、ガレクチン9(GAL9)阻害剤、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン(Ig)含有サプレッサー(VISTA)阻害剤、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、カルメット-ゲラン桿菌ワクチン、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、細胞毒、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21、IL-15、抗体-薬物コンジュゲート、抗炎症薬ならびにこれらの組合せ。
【0024】
別の態様では、開示される技術は、腫瘍の増殖を処置または阻害する方法で使用するための、腫瘍溶解性ウイルスとPD-1経路阻害剤とCTLA4阻害剤の組合せに関し、方法は:(a)がん患者を選択すること;ならびに(b)(i)治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスを、(ii)治療有効量のPD-1経路阻害剤および(iii)治療有効量のCTLA阻害剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与すること、を含む。
【0025】
別の態様では、開示される技術は、患者の腫瘍の増殖を処置または阻害するための腫瘍溶解性ウイルスとPD-1経路阻害剤とCTLA4阻害剤の治療有効量の組合せの使用に関して記載される指示書と併せて、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤を含むキットに関する。
【0026】
前述の概要は、本開示のすべての態様を定義することを意図するものではなく、さらなる態様は、他のセクション、例えば、以下の詳細な説明に記載される。文書全体は、統合された開示として関連づけられることが意図され、本明細書に記載の構成の組合せが本文書の同じセンテンスまたはパラグラフまたはセクションにたとえ一緒に見出されないとしても、本明細書に記載の構成のすべての組合せが企図されることを理解されたい。本発明の他の構成および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の実施例は、本開示の特定の実施形態を示すが、本開示の趣旨および範囲内の様々な変更および改変が、この詳細な説明から当業者には明らかになるため、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1に記載されるように、平均150mm
3のMC38腫瘍を有するマウスにおける、抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍溶解性ウイルスVSV-M51R-Flucの腫瘍内送達を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能を示すグラフである。各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示し、実施例1に記載されるように、処置日を矢印で示す。
【
図2】実施例1に記載される各処置群に対する、処置開始後11日目(腫瘍移植後26日目)の個々の腫瘍体積を示すグラフである。
【
図3】実施例1に記載される各処置群に対するカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図4-1】
図4A、4B、4C、4Dおよび4Eは、実施例2に記載されるように、3重組合せの抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍内送達される腫瘍溶解性ウイルスVSV-M51R-GFPの抗腫瘍効能が、わずか1回用量の抗CTLA4 mIgG2a抗体で達成することができることを示す一連の図である。
図4Aは、PBS処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積を示す。
図4Bは、PBS、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体(4回用量)処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積を示す。
図4Cは、VSV、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体(1回用量)処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積を示す。
図4Dは、VSV、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体(2回用量)処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積を示す。
図4Eは、VSV IT、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体(4回用量)処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積を示す。処置日を矢印で示す。TF:腫瘍がない。
【
図5】実施例2に記載される各処置群に対するカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図6】実施例3に記載されるように、3重組合せの抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍溶解性ウイルスVSV-M51R-GFPの抗腫瘍効能が、ウイルスの腫瘍内送達または静脈内送達のいずれかで達成することができることを示すグラフである。各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示す。表5および実施例3に記載されるように処置を施した。
【
図7】実施例3に記載される各処置群に対するカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図8】実施例4に記載されるように、平均150mm
3のMC38腫瘍を有するマウスにおける、抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍溶解性ウイルスVSV-mIFNb-NISの静脈内送達を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能を示すグラフである。各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示す。表7および実施例4に記載されるように処置を施した。
【
図9】実施例4に記載される各処置群に対する、処置開始後10日目の個々の腫瘍体積を示すグラフである。統計的有意性は、ダネットの多重比較事後検定を用いる一元配置ANOVAによって決定した(
**p<0.01、
****p<0.0001)。
【
図10】実施例4に記載される各処置群に対するカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図11】実施例5に記載される各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示すグラフである。処置日を矢印で示す。
【
図12】実施例5に記載される各処置群に対する、処置開始後29日目の個々の腫瘍体積を示すグラフである。
【
図13】実施例5に記載される各処置群に対するカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図14】実施例6に記載される各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示すグラフである。処置日を矢印で示す。
【
図15】実施例6に記載される各処置群に対する、腫瘍移植後後22日目(処置開始後10日日目)の個々の腫瘍体積を示すグラフである。
【
図16】実施例6に記載される各処置群に対するカプラン-マイヤー生存曲線を示すグラフである。
【
図17】実施例7に記載される各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示すグラフである。処置日を矢印で示す。
【
図18】実施例8に記載される各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示すグラフである。処置日を矢印で示す。
【
図19】実施例9に記載される各処置群における腫瘍移植後の複数の時点での平均腫瘍体積(mm
3+/-SEM)を示すグラフである。
【
図20】腫瘍から回収し、2回用量の抗PD-1とともに12日目にVSVを受け、12日目および14日目にa-CTLA4を受けた後17日目に実施例10に記載される各処置群において示される腫瘍抗原またはVSV-NPに一晩再曝露したCD8 TILによって放出されたIFNgの平均スポット形成単位(SFU)を示すグラフである。DMSOおよびPMA/イオノマイシンは、腫瘍移植後の複数の時点における陰性および陽性対照としてそれぞれ働き、処置日を矢印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、腫瘍溶解性ウイルス、プログラム死1(PD-1)経路阻害剤および細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA4)阻害剤の新規な3重組合せ療法が、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤の単独療法または2重組合せ療法のどれよりも腫瘍増殖の阻害において相乗活性を示すという予想外の発見に少なくとも部分的に基づく。本明細書で示されるように、1回用量のCTLA4阻害剤が投与されることを含む開示される3重組合せ療法は、2、3、4回またはそれ以上の用量のCTLA4阻害剤を含む組合せ療法と匹敵する抗腫瘍効能を達成した。さらに、腫瘍溶解性ウイルスの静脈内投与は、該ウイルスの腫瘍内投与と少なくとも同程度に効果的である。したがって、本明細書で開示される3重組合せ療法は、処置関連毒性の危険性を低減した、がん処置のための驚くほど有効な療法に相当する。
【0029】
したがって、一態様では、本開示は、腫瘍の増殖を処置または阻害する方法を提供し、方法は:(a)がん患者を選択すること;ならびに(b)(i)治療有効量の腫瘍溶解性ウイルスを、(ii)治療有効量のPD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1、抗PD-L1もしくは抗PD-L2抗体またはその抗原結合性フラグメント)および(iii)治療有効量のCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント)を組み合わせて、それを必要とする患者に投与すること、を含む。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「患者」は、用語「対象」と互換的に使用することができる。表現「それを必要とする対象」は、がんの1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候を示す、および/またはがんと診断されたヒトまたはヒト以外の哺乳動物を意味する。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、原発性もしくは転移性腫瘍および/または1つもしくはそれ以上の症状もしくは徴候、例えば、限定されないが、リンパ節腫大、腹部の腫れ、胸部の痛み/圧迫感、原因不明の体重減少、発熱、寝汗、持続性疲労、食欲不振、脾臓の腫大、そう痒を有すると診断される。本表現は、毒性副作用がある化学療法の1またはそれ以上のサイクルを受けた患者を含む。いくつかの実施形態では、表現「それを必要とする対象」は、処置を受けたが、その後に、再発または転移したがん患者を含む。例えば、腫瘍退縮につながる1つまたはそれ以上の抗がん剤を用いた処置を受けることができたが、その後、1つまたはそれ以上の抗がん剤に抵抗性のがん(例えば、化学療法抵抗性がん)を再発した患者は、本開示の方法で処置される。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「処置すること」、「処置する」などは、少なくとも1つの症状もしくは徴候の重症度を軽減させるかもしくは低減させること、一時的にもしくは永続的にのいずれかで症状の原因を排除すること、腫瘍増殖を遅延させるかもしくは阻害すること、腫瘍細胞負荷もしくは腫瘍量を低減させること、腫瘍退縮を促進すること、腫瘍の縮小、壊死および/もしくは消失を引き起こすこと、腫瘍の再発を予防すること、転移を予防するかもしくは阻害すること、転移性腫瘍増殖を阻害すること、放射線照射もしくは手術の必要性を排除すること、ならびに/または対象の生存期間を延ばすことを意味する。
【0032】
多くの実施形態では、用語「腫瘍」、「病変」、「腫瘍病変」、「がん」および「悪性腫瘍」は互換的に使用され、1つまたはそれ以上のがん性増殖物を指す。いくつかの実施形態では、がんは、副腎腫瘍、胆道がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、癌腫、中枢または末梢神経系組織がん、子宮頸がん、結腸がん、内分泌もしくは神経内分泌がんまたは造血がん、食道がん、線維腫、胃腸がん、神経膠腫、頭頸部がん、リー-フラウメニ腫瘍、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、多発性神経内分泌I型およびII型腫瘍、鼻咽頭がん、口腔がん、中咽頭がん、骨原性肉腫腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、膵島細胞がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、呼吸器がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、気管がん、泌尿生殖器がんならびに子宮がんから選択される。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、腫瘍の増殖を処置する、遅延させるまたは阻害するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍退縮を促進するための方法を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍細胞負荷を低減させるための、または腫瘍量を低減させるための方法を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、腫瘍の再発を予防するための方法を含む。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、本開示の方法は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)またはCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)を、それらを必要とする対象に投与することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、方法は、1回もしくはそれ以上の用量のPD-1経路阻害剤および/または1回もしくはそれ以上の用量のCTLA4阻害剤の対象への投与の前、後または該投与と同時に、1回またはそれ以上の用量の腫瘍溶解性ウイルスを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、1回またはそれ以上の用量のPD-1経路阻害剤は、1回またはそれ以上の用量のCTLA4阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「と組み合わせて」は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント)およびCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント)の連続的投与または同時投与も含む。例えば、CTLA4阻害剤の「前に」投与される場合、1回またはそれ以上の用量のPD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント)は、1回またはそれ以上の用量のCTLA阻害剤の投与の約12週間、約11週間、約10週間、約9週間、約8週間、約7週間、約6週間、約5週間、約4週間、約3週間、約2週間、約150時間、約100時間、約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分よりも前に投与することができる。
【0037】
CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント)の「後に」投与される場合、PD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント)は、CTLA4阻害剤の投与から約12週間、約11週間、約10週間、約9週間、約8週間、約7週間、約6週間、約5週間、約4週間、約3週間、約2週間、約150時間、約100時間、約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分後に投与することができる。
【0038】
CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント)と「同時の」投与は、PD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント)が、CTLA4阻害剤の投与の10分未満以内(前、後もしくは同時)に別々の投薬量で対象に投与されるか、またはPD-1経路阻害剤とCTLA4阻害剤の両方を含む単一の配合投与製剤として対象に投与されることを意味する。
【0039】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、抗腫瘍療法を施すことをさらに含むことができる。抗腫瘍療法としては、限定されないが、化学療法、放射線照射、手術などの、または本明細書の他の個所に記載されるような従来の抗腫瘍療法が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、処置は、以下の1つまたはそれ以上から選択される治療効果をもたらす:腫瘍増殖の遅延、腫瘍細胞数の減少、腫瘍退縮、生存の延長、部分奏効および完全奏効。いくつかの実施形態では、患者の腫瘍増殖は、未処置患者の腫瘍増殖と比較して、少なくとも10日遅延させられる。いくつかの実施形態では、腫瘍増殖は、未処置患者と比較して、少なくとも20%(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%)阻害される。いくつかの実施形態では、腫瘍増殖は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤が単独療法として投与される患者と比較して、少なくとも20%(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%)阻害される。いくつかの実施形態では、腫瘍増殖は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤のうちの2つが投与される患者と比較して、少なくとも20%(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%)阻害される。
【0041】
腫瘍溶解性ウイルス
腫瘍溶解性ウイルスは、操作されたかまたは天然に進化したがん指向性のウイルスを用いて、処置される患者において腫瘍細胞死を誘発するがん療法である。一般に、複製型腫瘍溶解性ウイルスが投与されると、感染した腫瘍細胞は、後代ウイルスを産生する可能性があり、これによって、破壊的感染が隣接した腫瘍細胞に伝播することが可能になる。ウイルス複製の可能性は、細胞がウイルス感染を感知し、それに応答する能力によって決定される。そのうえ、腫瘍溶解性ウイルスは、骨髄系細胞(マクロファージおよび樹状細胞)を刺激してT細胞刺激を増強するためのアジュバントとして作用することができる、病原体関連分子パターン(PAMP)を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、複製能がある腫瘍溶解性ラブドウイルスである。そのような腫瘍溶解性ラブドウイルスとしては、限定されないが、野生型または遺伝子改変のアラジャス(Arajas)ウイルス、チャンディプラウイルス、コーカルウイルス、イスファハンウイルス、マラバ(Maraba)ウイルス、ピリーウイルス、水疱性口内炎アラゴアスウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、BeAn157575ウイルス、ボテケ(Boteke)ウイルス、カルチャキ(Calchaqui)ウイルス、ウナギウイルスアメリカン、グレーロッジ(Gray Lodge)ウイルス、ジュロナ(Jurona)ウイルス、クラマスウイルス、クワッタ(Kwatta)ウイルス、ラホヤ(La Joya)ウイルス、マルペススプリング(Malpais Spring)ウイルス、エルゴン山コウモリウイルス、ペリネット(Perinet)ウイルス、ツパイ(Tupaia)ウイルス、ファーミントン(Farmington)、バイアグランデ(Bahia Grande)ウイルス、ミュアースプリングス(Muir Springs)ウイルス、リードランチ(Reed Ranch)ウイルス、ハートパークウイルス、フランダースウイルス、カメセ(Kamese)ウイルス、モスケイロ(Mosqueiro)ウイルス、モスリル(Mossuril)ウイルス、バルール(Barur)ウイルス、フクオカウイルス、ケルンキャニオンウイルス、ンコルビソン(Nkolbisson)ウイルス、ル・ダンテック(Le Dantec)ウイルス、キューラリバ(Keuraliba)ウイルス、コネチカットウイルス、ニューミントウイルス(New Minto)、ソーグラス(Sawgrass)ウイルス、チャコ(Chaco)ウイルス、セナ・マドゥレイラ(Sena Madureira)ウイルス、ティンボ(Timbo)ウイルス、アルムピウォー(Almpiwar)ウイルス、アルアク(Aruac)ウイルス、バンゴラン(Bangoran)ウイルス、ビンボ(Bimbo)ウイルス、ビベンスアーム(Bivens Arm)ウイルス、ブルークラブウイルス、チャールビルウイルス、コースタルプレーンズ(Coastal Plains)ウイルス、DakArK7292ウイルス、エントアメーバウイルス、ガルバ(Garba)ウイルス、ゴサス(Gossas)ウイルス、ハンプティドゥー(Humpty Doo)ウイルス、ジョインジャカカ(Joinjakaka)ウイルス、カナマンガラム(Kannamangalam)ウイルス、コロンゴ(Kolongo)ウイルス、クールピニャ(Koolpinyah)ウイルス、コトンカンウイルス、ランジャ(Landjia)ウイルス、マニトバ(Manitoba)ウイルス、マルコ(Marco)ウイルス、ナソウル(Nasoule)ウイルス、ナバロ(Navarro)ウイルス、ヌガイガン(Ngaingan)ウイルス、オーク-ベール(Oak-Vale)ウイルス、オボディアンウイルス、オオイタ(Oita)ウイルス、ウアンゴ(Ouango)ウイルス、パリークリーク(Parry Creek)ウイルス、リオグランデシクリッド(Rio Grande ci chlid)ウイルス、サンジンバ(Sandjimba)ウイルス、シグマウイルス、スリプル(Sripur)ウイルス、スウィートウォーターブランチ(Sweetwater Branch)ウイルス、ティブローガーガン(Tibrogargan)ウイルス、キシブレマ(Xiburema)ウイルス、ヤタ(Yata)ウイルス、ロードアイランド(Rhode Island)ウイルス、アデレードリバー(Adelaide River)ウイルス、ベリマー(Berrimah)ウイルス、キンバリー(Kimberley)ウイルスまたはウシ流行熱ウイルスが挙げられる。
【0043】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、前述のように、ラブドウイルス科のメンバーである。VSVゲノムは、5つの主要なポリペプチド:ヌクレオカプシド(N)ポリペプチド、リンタンパク質(P)ポリペプチド、マトリックス(M)ポリペプチド、糖タンパク質(G)ポリペプチドおよびウイルスポリメラーゼ(L)ポリペプチドをコードするマイナス鎖RNAの単一分子である。
【0044】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは野生型または組換えVSVである。いくつかの実施形態では、組換えVSVは、1つまたはそれ以上の突然変異、例えば、M51R置換(本明細書において、VSV-M51Rとも称される)を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、インターフェロンベータ(IFNb)などの1つまたはそれ以上のサイトカインを発現するように操作することができる。いくつかの実施形態では、IFNb(例えば、インターフェロンベータ-1a)は、ヒトもしくはマウスのIFNbまたはそれらの変異体であってもよい。いくつかの実施形態では、IFNbは、配列番号23もしくは24のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、IFNbをコードする核酸配列はMウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に位置している。そのような位置によって、ウイルスが、非がん性組織において抗ウイルス免疫応答を活性化し、それにより、がん細胞における効率的なウイルス複製を妨げることなく、潜在的なウイルス毒性を軽減させるのに有効な量のIFNbポリペプチドを発現することが可能になる。
【0046】
いくつかの実施形態では、組換えVSVは、ナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)またはその変異体をさらに発現する。いくつかの実施形態では、NISは、配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号25のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NISをコードする核酸配列はGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に位置しており、これにより、NISポリペプチドの適切な発現レベルが可能になる。
【0047】
ある特定の実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、例えば、その内容全体を参照によって本明細書に組み入れるUS9428736に記載されているVoyager V1として当技術分野で既知の組換えVSVである。
【0048】
PD-1経路阻害剤
本明細書に開示される方法は、治療有効量のPD-1経路阻害剤を投与することを含む。本明細書で使用する場合、「PD-1経路阻害剤」は、PD-1の活性または発現を阻害、遮断、抑止または妨害することができる任意の分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1経路阻害剤は、抗体、小分子化合物、核酸、ポリペプチドまたはこれらの機能的フラグメントもしくは変異体であってもよい。適切なPD-1経路阻害剤の非限定例としては、抗PD-1抗体およびその抗原結合性フラグメント、抗PD-L1抗体およびその抗原結合性フラグメントならびに抗PD-L2抗体およびその抗原結合性フラグメントが挙げられる。
【0049】
適切なPD-1経路阻害剤の他の非限定例としては、RNAi分子、例えば、抗PD-1 RNAi分子、抗PD-L1 RNAiおよび抗PD-L2 RNAi、アンチセンス分子、例えば、抗PD-1アンチセンスRNA、抗PD-L1アンチセンスRNAおよび抗PD-L2アンチセンスRNA、ならびにドミナントネガティブタンパク質、例えば、ドミナントネガティブPD-1タンパク質、ドミナントネガティブPD-L1タンパク質およびドミナントネガティブPD-L2タンパク質が挙げられる。前述のPD-1経路阻害剤のいくつかの例は、例えば、US9308236、US10011656およびUS20170290808に記載されており、PD-1経路阻害剤を特定する部分を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続した4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖から構成される免疫グロブリン分子(すなわち、「完全な抗体分子」)、ならびにその多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合性フラグメントを指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)ならびに重鎖定常領域(ドメインCH1、CH2およびCH3から構成される)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「VL」)および軽鎖定常領域(CL)を含む。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在している。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。いくつかの実施形態では、抗体(またはその抗原結合性フラグメント)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然もしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並行(side-by-side)解析に基づいて定義することができる。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、完全な抗体分子の抗原結合性フラグメントも含む。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語、抗体の「抗原結合性フラグメント」、抗体の「抗原結合部分」などは、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されている任意のポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性フラグメントは、例えば、任意の適切な標準的な技法、例えば、タンパク質消化、または抗体の可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現をともなう組換え遺伝子操作技法を使用して、完全な抗体分子から生じ得る。そのようなDNAは既知であり、および/または例えば、商業的供給元、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成することができる。DNAは、例えば、1つもしくはそれ以上の可変および/もしくは定常ドメインを適切な構成に配置するために、またはコドンを導入する、システイン残基を作出する、アミノ酸を修飾する、付加する、もしくは欠失させるなどのために、化学的に、または分子生物学的技法を使用することによって、配列させ、操作することができる。
【0052】
抗原結合性フラグメントの非限定例としては、以下が挙げられる:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチド。他の操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用する場合、表現「抗原結合性フラグメント」内に包含される。
【0053】
抗体の抗原結合性フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであってもよく、1つもしくはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するか、または該フレームワーク配列とインフレームである、少なくとも1つのCDRを概して含む。VLドメインと結合したVHドメインを有する抗原結合性フラグメントでは、VHおよびVLドメインは、任意の適切な配置で、互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は二量体であってもよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含むことができる。あるいは、抗体の抗原結合性フラグメントは、単量体のVHまたはVLドメインを含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含むことができる。本開示の抗体の抗原結合性フラグメント内で見出すことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的構成としては、以下が挙げられる:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CL。上に列挙した例示的構成のうちのいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されるか、または完全もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結される。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメインの間で可動性または半可動性の連結をもたらす、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれ以上)のアミノ酸からなり得る。さらに、本開示の抗体の抗原結合性フラグメントは、互いと、および/または1つもしくはそれ以上の単量体のVHドメインもしくはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合した、上に列挙した可変ドメインおよび定常ドメインの構成のうちのいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または、他の多量体)を含むことができる。
【0055】
本明細書に開示される方法で使用する抗体は、ヒト抗体であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を指す。本開示のヒト抗体は、それにもかかわらず、例えば、CDR、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列にコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含むことができる。しかし、本明細書で使用する場合、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳類種、例えばマウスの生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフト化された抗体を含むことを意図するものではない。
【0056】
本明細書に開示される方法で使用する抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって製造、発現、作出または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現させられた抗体(以下でさらに記載する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下でさらに記載する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287~6295を参照されたい)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列から他のDNA配列へのスプライシングをともなう任意の他の手段によって製造、発現、作出もしくは単離された抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかし、いくつかの実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物が使用される場合、インビボ体細胞突然変異誘発)を受け、それにより、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、該配列に関連しているが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0057】
抗PD-1抗体およびその抗原結合性フラグメント
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法で使用されるPD-1経路阻害剤は、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、抗PD-1抗体)である。用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、生理的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定する方法は当技術分野で周知であり、該方法としては、例えば、平衡透析、表面プラスモン共鳴などが挙げられる。例えば、PD-1に「特異的に結合する」抗体としては、本開示において使用される場合、表面プラスモン共鳴アッセイで測定した場合に、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60未満nM、約50未満nM、約40未満nM、約30未満nM、約20未満nM、約10未満nM、約5未満nM、約4未満nM、約3未満nM、約2未満nM、約1nM未満または約0.5nM未満のKDで、PD-1またはその一部に結合する抗体が挙げられる。しかし、ヒトPD-1に特異的に結合する単離抗体は、他の抗原、例えば、他の(非ヒト)種由来のPD-1分子に交差反応性を有することがある。
【0058】
ある特定の例示的実施形態によれば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、その内容全体を参照によって本明細書に組み入れるUS9987500に記載される抗PD-1抗体のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)および/または相補性決定領域(CDR)を含む。
【0059】
ある特定の例示的実施形態では、本開示の文脈において使用することができる抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0061】
さらに他の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1を含むHCVRおよび配列番号2を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0062】
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む例示的抗体は、セミプリマブ(REGN2810;LIBTAYO(登録商標)としても知られる)として知られる完全ヒト抗PD-1抗体である。
【0063】
ある特定の例示的実施形態によれば、本開示の方法は、セミプリマブまたはその生物学的同等物の使用を含む。本明細書で使用する場合、PD-1経路阻害剤に関する用語「生物学的同等物」は、同様の実験条件下において同じモル用量で単回用量または複数回用量のいずれかで投与された場合に吸収の速度および/または程度が、参照抗体(例えば、セミプリマブ)のものと有意差を示さない医薬的同等物または医薬的代替物である、抗PD-1抗体またはPD-1結合タンパク質またはこれらのフラグメントを指す。本開示の文脈において、用語「生物学的同等物」は、PD-1に結合し、安全性、純度および/または効力に関してセミプリマブと臨床的に意味のある差異がない抗原結合タンパク質を含む。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号1に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するHCVRを含む。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号2に対して(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するLCVRを含む。配列同一性は、当技術分野で既知の方法(例えば、GAP、BESTFITおよびBLAST)によって測定することができる。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性フラグメントは、10個以下のアミノ酸置換を有する配列番号1のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-1またはその抗原結合性フラグメントは、10個以下のアミノ酸置換を有する配列番号2のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0067】
1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体も本開示の範囲内である。例えば、本開示は、例えば、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかに対して10個以下、8個以下、6個以下、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体の使用を含む。
【0068】
本開示の方法の文脈において使用することができる他の抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントとしては、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MEDI0608、ピディリズマブ、BI754091、スパルタリズマブ(PDR001としても知られる)、カムレリズマブ(SHR-1210としても知られる)、JNJ-63723283、MCLA-134として当技術分野で言及され、既知である抗体、または米国特許第6808710号、第7488802号、第8008449号、第8168757号、第8354509号、第8609089号、第8686119号、第8779105号、第8900587および第9987500号、ならびに特許公報WO2006/121168、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体のうちのいずれかが挙げられる。抗PD-1抗体を特定する前述の刊行物のすべての部分を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0069】
本開示の方法の文脈において使用される抗PD-1抗体は、pH依存結合特性を有し得る。例えば、本開示の方法で使用するための抗PD-1抗体は、中性pHと比較して酸性pHで、PD-1への結合の低減を示し得る。あるいは、本開示の抗PD-1抗体は、中性pHと比較して酸性pHで、その抗原への結合の増強を示し得る。表現「酸性pH」は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0またはそれ以下のpH値を含む。本明細書で使用する場合、表現「中性pH」は、約7.0~約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35および7.4のpH値を含む。
【0070】
ある特定の場合では、「中性pHと比較して酸性pHでのPD-1への結合の低減」は、酸性pHでのPD-1への抗体結合のKD値対中性pHでのPD-1への抗体結合のKD値(または逆)の比に換算して表される。例えば、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、抗体またはその抗原結合性フラグメントが約3.0以上の酸性/中性KD比を示す場合、本開示の目的において、「中性pHと比較して酸性pHでのPD-1への結合の低減」を示すと見なすことができる。ある特定の例示的実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性フラグメントに対する酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0またはそれ以上であり得る。
【0071】
pH依存結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHでの特定の抗原への結合の低減(または増強)について抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存特性を有する抗体をもたらすことができる。例えば、抗原結合ドメイン(例えば、CDR内)の1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基と置換することによって、中性pHと比較して酸性pHで抗原結合が低減した抗体を得ることができる。本明細書で使用する場合、表現「酸性pH」は6.0以下のpHを意味する。
【0072】
抗PD-L1抗体およびその抗原結合性フラグメント
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法で使用されるPD-1経路阻害剤は、PD-L1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、抗PD-L1抗体)である。例えば、本開示の文脈において使用される場合、「PD-L1に特異的に結合する」抗体としては、約1×10-8M以下のKD(例えば、KDが小さいほど密接な結合を示す)でPD-L1またはその一部に結合する抗体が挙げられる。「高親和性」抗PD-L1抗体は、表面プラスモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または溶液親和性ELISAによって測定した場合に、少なくとも10-8M、例えば、10-9M、10-10M、10-11Mまたは10-12MのKDとして表されるPD-L1に対する結合親和性を有するmAbを指す。しかし、ヒトPD-L1に特異的に結合する単離抗体は、他の抗原、例えば、他の(非ヒト)種由来のPD-L1分子に交差反応性を有することがある。
【0073】
ある特定の例示的実施形態によれば、抗PD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、その内容全体を参照によって本明細書に組み入れるUS9938345に記載される抗PD-L1抗体のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)および/または相補性決定領域(CDR)を含む。
【0074】
ある特定の例示的実施形態では、本開示の文脈において使用することができる抗PD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号11を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号12を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。配列番号11のHCVRおよび配列番号12のLCVRを含む例示的抗PD-L1抗体はREGN3504である。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号11に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するHCVRを含む。本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号12に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するLCVRを含む。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、10個以下のアミノ酸置換を有する配列番号11のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合性フラグメントは、10個以下のアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0077】
1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体も本開示の範囲内である。例えば、本開示は、例えば、本明細書に開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかに対して10個以下、8個以下、6個以下、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体の使用を含む。
【0078】
本開示の方法の文脈において使用することができる他の抗PD-L1抗体としては、例えば、MDX-1105、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))、アベルマブ(BAVENCIO(商標))、LY3300054、FAZ053、STI-1014、CX-072、KN035(Zhangら、Cell Discovery、3、170004(2017年3月))、CK-301(Gorelikら、American Association for Cancer Research Annual Meeting(AACR)、2016-04-04抄録4606)として当技術分野で言及され、既知の抗体、または米国特許第7943743号、第8217149号、第9402899号、第9624298号および第9938345号、ならびに特許公報WO2007/005874、WO2010/077634、WO2013/181452、WO2013/181634、WO2016/149201、WO2017/034916またはEP3177649に記載される他の抗PD-L1抗体のうちのいずれかが挙げられる。抗PD-L1抗体を特定する前述の刊行物のすべての部分を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0079】
抗PD-L2抗体およびその抗原結合性フラグメント
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法で使用されるPD-1経路阻害剤は、PD-L2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、抗PD-L2抗体)である。例えば、PD-L2に「特異的に結合する」抗体としては、本開示の文脈において使用される場合、約1×10-8M以下のKD(例えば、KDが小さいほど密接な結合を示す)でPD-L2またはその一部に結合する抗体が挙げられる。「高親和性」抗PD-L2抗体は、表面プラスモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または溶液親和性ELISAによって測定した場合に、少なくとも10-8M、例えば、10-9M、10-10M、10-11Mまたは10-12MのKDとして表されるPD-L2に対する結合親和性を有するmAbを指す。しかし、ヒトPD-L2に特異的に結合する単離抗体は、他の抗原、例えば、他の(非ヒト)種由来のPD-L2分子に交差反応性を有することがある。
【0080】
本開示の方法の文脈において使用することができる抗PD-L2抗体としては、例えば、米国特許第8552154号および第10647771号に記載される抗PD-L2抗体が挙げられる。抗PD-L2抗体を特定する前述の刊行物のすべての部分を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0081】
CTLA4阻害剤
本明細書に開示される方法は、治療有効量のCTLA4阻害剤を投与することを含む。本明細書で使用する場合、「CTLA4阻害剤」は、CTLA4の活性または発現を阻害、遮断、抑止または妨害することができる任意の分子を指す。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、抗体、小分子化合物、核酸、ポリペプチドまたはこれらの機能的フラグメントもしくは変異体であってもよい。適切なCTLA4阻害剤の非限定例としては、抗CTLA4抗体およびその抗原結合性フラグメントが挙げられる。適切なCTLA4阻害剤の他の非限定例としては、RNAi分子、例えば、抗CTLA4 RNAi分子およびドミナントネガティブタンパク質、例えば、ドミナントネガティブCTLA4タンパク質が挙げられる。
【0082】
抗CTLA4抗体およびその抗原結合性フラグメント
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法で使用されるCTLA4阻害剤は、CTLA4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、抗CTLA4抗体)である。用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合性フラグメントが、生理的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定する方法は当技術分野で周知であり、該方法としては、例えば、平衡透析、表面プラスモン共鳴などが挙げられる。例えば、CTLA4に「特異的に結合する」抗体としては、本開示の文脈において使用される場合、表面プラスモン共鳴アッセイで測定した場合に、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60未満nM、約50未満nM、約40未満nM、約30未満nM、約20未満nM、約10未満nM、約5未満nM、約4未満nM、約3未満nM、約2未満nM、約1nMまたは約0.5nM未満のKDで、CTLA4抗体またはその一部に結合する抗体が挙げられる。しかし、ヒトCTLA4に特異的に結合する単離抗体は、他の抗原、例えば、他の(非ヒト)種由来のCTLA4分子に交差反応性を有することがある。
【0083】
ある特定の例示的実施形態では、本開示の文脈において使用することができる抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は、配列番号15のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号16のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号17のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号18のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号19のアミノ酸配列を含み;LCDR3は配列番号20のアミノ酸配列を含む。
【0085】
さらに他の実施形態では、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCVRおよび配列番号14のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗CTLA4抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0086】
配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む例示的抗体は、REGN4659として知られる完全ヒト抗CTLA4抗体である。
【0087】
ある特定の例示的実施形態によれば、本開示の方法は、REGN4659またはその生物学的同等物の使用を含む。本明細書で使用する場合、CTLA4阻害剤に関する用語「生物学的同等物」は、同様の実験条件下において同じモル用量で単回用量または複数回用量のいずれかで投与された場合に吸収の速度および/または程度が、参照抗体(例えば、REGN4659)のものと有意差を示さない医薬的同等物または医薬的代替物である、抗CTLA4抗体またはCTLA4結合タンパク質またはこれらのフラグメントを指す。本開示の文脈において、用語「生物学的同等物」は、CTLA4に結合し、安全性、純度および/または効力に関してREGN4659と臨床的に意味のある差異がない抗原結合タンパク質を含む。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトCTLA4またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するHCVRを含む。
【0089】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトCTLA4またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号14のアミノ酸配列に対して(例えば、90%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するLCVRを含む。
【0090】
本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトCTLA4またはその抗原結合性フラグメントは、10個以下のアミノ酸置換を有する配列番号13のアミノ酸配列を含むHCVRを含む。本開示のいくつかの実施形態によれば、抗ヒトCTLA4またはその抗原結合性フラグメントは、10個以下のアミノ酸置換を有する配列番号14のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0091】
1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかの変異体も本開示の範囲内である。例えば、本開示は、例えば、本明細書に開示されるHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のうちのいずれかに対して10個以下、8個以下、6個以下、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する抗PD-L1抗体の使用を含む。
【0092】
本開示の方法の文脈において使用することができる他の抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントとしては、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブとして当技術分野で言及され、既知の抗体、または米国特許第7527969号、第8779098号、第7666424号、第7737258号、第7740845号、第8148154号、第8414892号、第8501471号および第9062110;ならびに特許公報US2013/0078234、US2010/0143245、WO2017062615A2、WO2004/001381およびWO2012/147713に記載される抗CTLA4抗体のうちのいずれかを挙げることができる。抗CTLA4抗体を特定する前述の刊行物のすべての部分を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0093】
医薬組成物および投与
本開示は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤、および/またはCTLA4阻害剤を対象に投与することを含む方法であって、抗体が別々のまたは配合された(単一の)医薬組成物内に含まれる、方法を含む。本開示の医薬組成物は、適切な移入、送達、忍容性などを提供する、適切な担体、賦形剤および他の薬剤とともに製剤化することができる。すべての薬剤師に既知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Paに数多くの適切な製剤を見出すことができる。これらの製剤としては、例えば、粉末剤、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー剤、ワックス、油、脂質、脂質(陽イオン性または陰イオン性)含有小胞(リポフェクチンなど)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト剤、水中油型および油中水型乳剤、カーボワックス乳剤(emulsions carbowax)(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル剤、ならびにカーボワックス含有半固体混合物が挙げられる。Powellら、PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311も参照されたい。
【0094】
様々な送達系が既知であり、本開示の医薬組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム中のカプセル化、マイクロ粒子、マイクロカプセル、突然変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシス(例えば、Wuら、1987、J.Biol.Chem.262:4429~4432を参照されたい)である。投与方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口の経路が挙げられる。組成物は、好都合な任意の経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、他の生理活性物質とともに投与することができる。
【0095】
腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤を含む医薬組成物は、標準的な針およびシリンジを用いて、腫瘍内、皮下または静脈内送達することができる。さらに、皮下送達に関して、ペン型送達装置は、本開示の医薬組成物の送達において容易に適用される。そのようなペン型送達装置は、再使用可能であるかまたは使い捨てであり得る。再使用可能なペン型送達装置は、概して、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物のすべてが投与され、カートリッジが空になると、空カートリッジを容易に廃棄し、医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換することができる。次いで、ペン型送達装置を再使用することができる。使い捨てのペン型送達装置では、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てのペン型送達装置は、装置内のリザーバー中に保持された医薬組成物で予め充填されている。リザーバーが医薬組成物を出して空になると、装置全体が廃棄される。
【0096】
ある特定の状況では、医薬組成物は制御放出系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;例えば、Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Flaを参照されたい。さらに別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的の近くに置くことができるので、全身的用量のごく一部しか必要としない(Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上記、第2巻、115~138頁を参照されたい)。他の制御放出系は、Langer、1990、Science 249:1527~1533による総説で論じられている。
【0097】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内、腫瘍内および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含み得る。これらの注射用調製物は、既知の方法によって製造することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、注射用に従来から使用されている無菌の水性媒体または油性媒体中に上記の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化させることによって、製造することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含む等張液などがあり、これらは、適切な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などと組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが用いられ、これらは、可溶化剤、例えば、ベンジル安息香酸、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用することができる。このようにして製造される注射剤は、好ましくは、適切なアンプル中に充填される。
【0098】
好都合なことに、上記の経口または非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に合うように適合された単位用量の剤形に製造される。単位用量のそのような剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0099】
本開示は、患者の腫瘍の増殖を処置または阻害するための腫瘍溶解性ウイルスとPD-1経路阻害剤とCTLA4阻害剤の治療有効量の組合せの使用に関して記載される指示書と併せて、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤を含むキットも提供する。
【0100】
投与レジメン
本開示の方法は、週に約4回、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、12週間に1回の投薬頻度で、または治療応答が達成される限りより低頻度に、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1、抗PD-L1もしくは抗PD-L2抗体もしくはこれらの抗原結合性フラグメント)またはCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)を対象に投与することを含むことができる。本開示の方法は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤のそれぞれ単回用量を投与することを含むこともできる。
【0101】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤のうちの少なくとも1つは、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、週に1回、2週間に1回または3週間に1回患者に投与される。
【0102】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤は同時に患者に投与される。
【0103】
いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤のうちの2つ以上を対象に連続的に投与することを含むことができる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、PD-1経路阻害剤およびCTLA4阻害剤の前または後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1経路阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスおよびCTLA4阻害剤の前または後に患者に投与される。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、腫瘍溶解性ウイルスおよびPD-1経路阻害剤の前または後に患者に投与される。
【0104】
本明細書で使用する場合、「連続的に投与すること」は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、時間、日、週または月)で区切られた異なる日に対象に投与されることを意味する。本開示は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の単回初回用量、続いて、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の1回またはそれ以上の二次用量、場合により、続いて、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の1回またはそれ以上の三次用量を患者に連続的に投与することを含む方法を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の単回初回用量、続いて、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の1回またはそれ以上の二次用量、場合により、続いて、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤の1回またはそれ以上の三次用量を患者に連続的に投与することをさらに含む。
【0105】
用語「初回用量」、「二次用量」および「三次用量」は、投与の時間的順序を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの初めに投与される用量(「ベースライン用量」とも称される)であり;「二次用量」は初回用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は二次用量の後に投与される用量である。初回、二次および三次用量はすべて、同じ量の腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤を含むことができる。しかし、いくつかの実施形態では、初回、二次および/または三次用量に含まれる量は、処置の過程で互いに異なる(例えば、適宜、上げるまたは下げるに調整される)。いくつかの実施形態では、処置レジメンの初めに1回またはそれ以上(例えば、1、2、3、4または5回)の用量が「負荷用量」として投与され、続いて、より低頻度で投与される後続の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0106】
本開示の例示的一実施形態では、各二次および/または三次用量は、直前の用量の1/2~14(例えば、1/2、1、1 1/2、2、2 1/2、3、3 1/2、4、4 1/2、5、5 1/2、6、6 1/2、7、7 1/2、8、8 1/2、9、9 1/2、10、10 1/2、11、11 1/2、12、12 1/2、13、13 1/2、14、14 1/2またはそれ以上)週間後に投与される。本明細書で使用する場合、フレーズ「直前の用量」は、複数回投与の順序において、介在用量なしの順序におけるすぐ次の用量の投与より前に患者に投与される、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤のある用量を意味する。
【0107】
いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)またはCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)の任意の数の二次および/または三次用量を患者に投与することを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、単回二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、いくつかの実施形態では、単回三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0108】
複数回の二次用量をともなう実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間後に患者に投与することができる。同様に、複数回の三次用量をともなう実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~4週間後に患者に投与することができる。あるいは、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程にわたって変動し得る。投与頻度は、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、処置の過程で医師が調整することもできる。
【0109】
いくつかの実施形態では、1回またはそれ以上の用量の腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤またはCTLA4阻害剤は、「導入用量」として、より高頻度(週に2回、週に1回または2週間に1回)で処置レジメンの初めに投与され、続いて、より低頻度(例えば、4~12週間に1回)で投与される後続の用量(「強化用量」または「維持用量」)が投与される。
【0110】
投薬量
本明細書に開示される方法に従って対象に投与される腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)またはCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合性フラグメント)の量は、概して、治療有効量である。本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」は、未処置の対象、単独療法で処置される対象、または本明細書に開示される3つの治療用薬剤(PD-1経路阻害剤、CTLA4阻害剤および腫瘍溶解性ウイルス)のうちのいずれか2つで処置される対象と比較して、以下のうちの1つまたはそれ以上をもたらす、腫瘍溶解性ウイルス、PD-1経路阻害剤および/またはCTLA4阻害剤の量を意味する:(a)がんの症状もしくは徴候、例えば、腫瘍病変の重症度もしくは持続期間の低減;(b)腫瘍増殖の抑制もしくは腫瘍壊死、腫瘍縮小および/もしくは腫瘍消失の増加;(c)腫瘍増殖および発達の遅延;(d)腫瘍転移の抑制;(e)腫瘍増殖の再発の予防;(f)がんを有する対象の生存の延長;ならびに/または(g)従来の抗がん療法の使用もしくは必要性の低減(例えば、手術の必要性の排除、もしくは化学療法剤もしくは細胞傷害性剤の使用の低減もしくは排除)。
【0111】
いくつかの実施形態では、組合せの腫瘍溶解性ウイルスは、10、100、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014またはそれ以上のウイルス粒子(vp)またはプラーク形成単位(pfu)の1つまたはそれ以上の単位用量として投与することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解性ラブドウイルス(例えば、野生型または遺伝子改変のVSV)であり、106~1014pfu、106~1012pfu、108~1014pfu、108~1012もしくは1010~1012pfuまたはそれらの間の任意の範囲の1つまたはそれ以上の投薬量としてがんを有するヒトに投与される。
【0112】
いくつかの実施形態では、組合せの腫瘍溶解性ウイルスは、10、100、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014またはそれ以上の50%組織培養感染用量(TCID50)の1つまたはそれ以上の単位用量として投与することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解性ラブドウイルス(例えば、野生型または遺伝子改変のVSV)であり、104~1014TCID50、104~1014TCID50、104~1012TCID50、108~1014TCID50、108~1012もしくは1010~1012TCID50またはそれらの間の任意の範囲の1つまたはそれ以上の投薬量としてがんを有するヒトに投与される。
【0113】
いくつかの実施形態では、治療有効量のPD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、例えば、セミプリマブまたはそれらの生物学的同等物)は、抗体約0.05mg~約1500mg、約1mg~約800mg、約5mg~約600mg、約10mg~約550mg、約50mg~約400mg、約75mg~約350mgまたは約100mg~約300mgであり得る。例えば、様々な実施形態では、PD-1経路阻害剤の量は、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、約610mg、約620mg、約630mg、約640mg、約650mg、約660mg、約670mg、約680mg、約690mg、約700mg、約710mg、約720mg、約730mg、約740mg、約750mg、約760mg、約770mg、約780mg、約790mg、約800mg、約810mg、約820mg、約830mg、約840mg、約850mg、約860mg、約870mg、約880mg、約890mg、約900mg、約910mg、約920mg、約930mg、約940mg、約950mg、約960mg、約970mg、約980mg、約990mg、約1000mg、約1010mg、約1020mg、約1030mg、約1040mg、約1050mg、約1060mg、約1070mg、約1080mg、約1090mg、約1200mg、約1210mg、約1220mg、約1230mg、約1240mg、約1250mg、約1260mg、約1270mg、約1280mg、約1290mg、約1300mg、約1310mg、約1320mg、約1330mg、約1340mg、約1350mg、約1360mg、約1370mg、約1380mg、約1390mg、約1400mg、約1410mg、約1420mg、約1430mg、約1440mg、約1450mg、約1460mg、約1470mg、約1480mg、約1490mgまたは約1500mgである。
【0114】
個々の用量に含まれるPD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント)の量は、対象体重のキログラム当たりのミリグラム抗体(すなわち、mg/kg)に換算して表される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法で使用されるPD-1経路阻害剤は、約0.0001~約100mg/kg対象体重の用量で対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、約0.1mg/kg~約20mg/kg患者体重の用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、約1mg/kg~3mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg患者体重の用量のPD-1経路阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメント)の投与を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、各用量は、0.1~10mg/kg対象体重(例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kg)を含む。ある特定の他の実施形態では、各用量は、PD-1経路阻害剤(抗PD-1抗体またはその抗原結合性フラグメントなど)5~1500mg、例えば、PD-1経路阻害剤5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、45mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1550mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mgまたは1500mgを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、治療有効量のCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合性フラグメントまたはその生物学的同等物)は、抗体約0.05mg~約1000mg、約1mg~約800mg、約5mg~約600mg、約10mg~約550mg、約50mg~約400mg、約75mg~約350mg、または約100mg~約300mgであり得る。例えば、様々な実施形態では、CTLA4阻害剤の量は、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、約610mg、約620mg、約630mg、約640mg、約650mg、約660mg、約670mg、約680mg、約690mg、約700mg、約710mg、約720mg、約730mg、約740mg、約750mg、約760mg、約770mg、約780mg、約790mg、約800mg、約810mg、約820mg、約830mg、約840mg、約850mg、約860mg、約870mg、約880mg、約890mg、約900mg、約910mg、約920mg、約930mg、約940mg、約950mg、約960mg、約970mg、約980mg、約990mgまたは約1000mgである。
【0117】
個々の用量に含まれるCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント)の量は、対象体重のキログラム当たりのミリグラム抗体(すなわち、mg/kg)に換算して表すことができる。いくつかの実施形態では、抗CTLA4抗体は、約0.1mg/kg~約20mg/kg患者体重の用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、約1mg/kg~3mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kg患者体重の用量のCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメント)の投与を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、各用量は、0.1~10mg/kg対象体重(例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kg)を含む。ある特定の他の実施形態では、各用量は、CTLA4阻害剤(抗CTLA4抗体またはその抗原結合性フラグメントなど)5~1000mg、例えば、CTLA4阻害剤5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mg、45mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mgまたは1000mgを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、さらなる治療用薬剤または療法を対象に施すことをさらに含む。さらなる治療用薬剤または療法は、抗腫瘍効能を高めるために、1つもしくはそれ以上の療法の毒性作用を低減させるために、および/または1つもしくはそれ以上の療法の投薬量を低減させるために、施すことができる。様々な実施形態では、さらなる治療用薬剤または療法は、以下のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる:放射線照射、手術、がんワクチン、イミキモド、抗ウイルス剤(例えば、シドホビル)、光線力学的療法、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤(例えば、抗LAG3抗体、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)アゴニスト(例えば、抗GITR抗体)、T細胞免疫グロブリンおよびムチン含有3(TIM3)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CD38阻害剤、CD47阻害剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、CD28アクチベーター、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどの「VEGF-Trap」、もしくは抗VEGF抗体もしくはその抗原結合性フラグメント(例えば、ベバシズマブもしくはラニビズマブ)またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブもしくはパゾパニブ))、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体(例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、がん胎児抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異的抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1およびCA19-9)、ワクチン(例えば、カルメット-ゲラン桿菌)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、第2の腫瘍溶解性ウイルス、細胞毒、化学療法剤(例えば、ペメトレキセド、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビンおよびビンクリスチン)、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、サイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-21およびIL-15、抗体薬物コンジュゲート、抗炎症薬、例えば、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、クライオセラピー、抗HPV療法、レーザー療法、HPVを有する細胞の電気手術的切除ならびにこれらの組合せ。
【0120】
いくつかの実施形態では、この方法はさらなる治療用薬剤、例えば、抗がん剤を投与することをさらに含む。本明細書で使用する場合、「抗がん剤」は、限定されないが、細胞毒、ならびに代謝拮抗剤、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質、抗有糸分裂剤、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P’-(DDD))、バイオ医薬品(例えば、抗体およびインターフェロン)および放射性薬剤などの薬剤を含む、がんを処置するのに有用な任意の薬剤を意味する。本明細書で使用する場合、「細胞毒または細胞傷害性剤」は化学療法剤も指し、細胞に有害な任意の薬剤を意味する。例としては、タキソール(パクリタキセル)、テモゾロミド、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、シスプラチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-ジヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにこれらの類似体または相同体が挙げられる。
【0121】
さらなる定義
本開示による組成物および方法の詳細な説明の理解の一助となるために、本開示の様々な態様の明白な開示を容易にするようにいくつかの明確な定義を提供する。別段定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0122】
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物高分子(核酸、抗体、タンパク質もしくはこれらの一部、例えば、ペプチドなど)、または生物材料、例えば、細菌、植物、真菌もしくは動物(特に哺乳類)の細胞もしくは組織から作られる抽出物を表す。そのような薬剤の活性は、対象において局所的または全身的に作用する生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質(または複数の物質)である「治療用薬剤」として該薬剤を適切なものにすることができる。本開示の文脈において、用語「治療用薬剤」は、本明細書に開示されるPD-1経路阻害剤、CTLA4阻害剤または腫瘍溶解性ウイルスのうちのいずれかを指す。
【0123】
本明細書で使用する場合、用語「治療用薬剤」、「治療可能な薬剤」または「処置剤」は互換的に使用され、対象への投与の際に何らかの有益効果を与える、分子または化合物を指す。有益効果としては、診断判定の実施可能性(enablement);疾患、症状、障害または病態の改善;疾患、症状、障害または状態の発症の低減または予防;および概して、疾患、症状、障害または病態を弱めることが挙げられる。
【0124】
本明細書で使用する場合、用語「医薬的に許容可能な」は、組成物の生物活性または特質を抑止せず、かつ比較的無毒である材料、例えば、担体または希釈剤を指し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことも、それが含まれる組成物の成分のうちのいずれかと有害な様式で相互作用することもなく個体に投与することができる。
【0125】
本明細書で使用する場合、用語「医薬的に許容可能な担体」は、その意図された機能を果たすことができるように、対象内でまたは対象に本開示の化合物を運搬または輸送することに関与する、医薬的に許容可能な塩、医薬的に許容可能な材料、組成物または担体、例えば、液体または固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材を含む。典型的には、そのような化合物は、体のある器官または部分から体の別の器官または部分に運搬または輸送される。各塩または担体は、製剤の他の成分と適合性であり、かつ対象に傷害性ではないという意味で「許容可能」でなければならない。医薬的に許容可能な担体として働くことができる材料のいくつかの例としては、以下が挙げられる:糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびショ糖;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末化トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバターおよび座薬用ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含有しない水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液溶液;希釈剤;造粒剤;潤滑剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤;着香剤;芳香剤;防腐剤;抗酸化剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;凝固剤(setting agent);懸濁化剤;界面活性剤;湿潤剤;担体;安定化剤;ならびに医薬製剤で用いられる他の無毒の適合性物質、またはこれらの任意の組合せ。本明細書で使用する場合、「医薬的に許容可能な担体」としては、本開示の1つまたはそれ以上の成分の活性に適合し、対象にとって生理的に許容可能である、ありとあらゆるコーティング、抗菌剤および抗真菌剤ならびに吸収遅延剤なども挙げられる。補足的な活性化合物も組成物中に組み入れることができる。
【0126】
用量は、体重との関連で表されることが多い。したがって、[g、mgまたは他の単位]/kg(または、g、mgなど)として表される用量は、通常、たとえ用語「体重」がはっきりと言及されないとしても、「kg(または、g、mgなど)体重当たりの」[g、mgまたは他の単位]を指す。処置は、様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は、治療用組成物の所定の量を含むと定義される。単位用量は、単回注射として投与される必要はないが、設定期間にわたる持続注入を含むことができる。腫瘍溶解性ウイルスについては、単位用量は、ウイルスコンストラクトについてのプラーク形成単位(pfu)またはウイルス粒子に換算して記載される。単位用量は、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013pfuまたはvpおよびそれ以上に及ぶ。あるいは、ウイルスの種類および達成可能な力価に応じて、1~100、10~50、100~1000、または約1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014もしくは1×1015まで、またはそれ以上の感染性ウイルス粒子(vp)を患者に、または患者の細胞に送達する。あるいは、腫瘍溶解性ウイルスについての単位用量は、TCID50によって表される。「TCID50」は「組織培養感染用量」を指し、播種された細胞培養の所与のバッチの50%に感染するのに必要とされるウイルスの希釈度と定義される。本明細書全体にわたって利用されるスピアマン-カーバー法を含む、当業者に既知の様々な方を使用して、TCID50を計算することができる。スピアマン-カーバー法の説明については、B.W.Mahy & H.0.Kangro、Virology Methods Manual 25~46(1996)を参照されたい。いくつかの実施形態では、単位用量は、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013TCID50およびそれ以上またはこれらの間の任意の範囲に及ぶ。
【0127】
本明細書で使用する場合、用語「疾患」は、概して、すべてが、ヒトもしくは動物の体の、または正常な機能を害するその部分のうちの1つの異常な状態(例えば、がん)を反映するという点において、用語「障害」および(医学的状態と同様の)「状態」と同義であり、これらの用語と互換的に使用されることが意図され、典型的には、際立った兆候と症状によって顕在化され、ヒトまたは動物に寿命または生活の質の低減を引き起こす。
【0128】
本明細書で使用する場合、用語「インビトロ」は、多細胞生物内ではなく、人工の環境、例えば、試験管または反応器、細胞培養などで生じるイベントを指す。
【0129】
本明細書で使用する場合、用語「インビボ」は、多細胞生物、例えば、非ヒト動物内で生じるイベントを指す。
【0130】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈において別段明記しない限り、複数形の意味を含む。
【0131】
本明細書で使用する場合、用語「含む(including)」、「含む(comprising)」、「含む(containing)」または「有する」およびそれらの変形は、特記しない限り、その後に列挙される項目およびそれらの均等物ならびにさらなる主題を包含することを意図する。
【0132】
本明細書で使用する場合、フレーズ「一実施形態では」、「様々な実施形態では」、「いくつかの実施形態では」などは、繰り返して使用される。そのようなフレーズは、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、文脈において別段示さない限り、同じ実施形態を指すこと
がある。
【0133】
本明細書で使用する場合、用語「および/または」または「/」は、この用語が関連する項目のうちのいずれか1つ、項目の任意の組合せ、または項目のすべてを意味する。
【0134】
本明細書で使用する場合、単語「実質的に」は、「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まないことがある。必要に応じて、単語「実質的に」を本開示の定義から省略することがある。
【0135】
本明細書で使用する場合、用語「各」は、項目の集団に関連して使用する場合、集団中の個々の項目を特定することが意図されるが、必ずしも集団中のすべての項目を指すとは限らない。明示的な開示または文脈において、特に明記される場合、例外が生じ得る。
【0136】
本明細書で使用する場合、用語「およそ」または「約」は、1つまたはそれ以上の目的の値に適用される場合、記載される基準値と類似している値を指す。いくつかの実施形態では、用語「およそ」または「約」は、別段の記載がない限りまたは文脈から明らかでない限り、記載される基準値のいずれかの方向(より大きいかまたはより小さい)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下に入る値の範囲を指す(ただし、そのような数が、可能な値の100%を超える場合を除く)。本明細書で別段指示がない限り、用語「約」は、個々の成分、組成物または実施形態の機能性の点から同等である、列挙される範囲に最も近い値、例えば、重量パーセントを含むことが意図される。
【0137】
本明細書で開示されるように、値のいくつかの範囲が提供される。その範囲の上限と下限の間の、文脈において別段明記しない限り下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解されよう。記載された範囲内の任意の記載された値または介在値とその記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在値との間のより小さな各範囲は、本開示内に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、その範囲に含むことができ、または含まないようにすることができ、かつそのより小さな範囲にいずれかの限界値が含まれる、いずれの限界値も含まれない、または両方の限界値が含まれる各範囲も、記載された範囲内の具体的に除外された任意の限界値を条件として、本開示内に包含される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれかまたは両方を除いた範囲も本開示に含まれる。
【0138】
本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言葉(例えば、「などの」)の使用は、本開示をよりよく例示することが単に意図され、特に主張されていない限り、本開示の範囲の制限を課すものではない。本明細書のいかなる言語も、任意の主張されていない要素を本開示の実施に必須であるとして示すものとして解釈されるべきではない。
【0139】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書で別段指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順番で行われる。提供される方法のいずれに関しても、方法の工程は、同時にまたは連続的に行われ得る。方法の工程が連続的に行われる場合、工程は、特記しない限り、任意の順番で行うことができる。方法が工程の組合せを含む場合、本明細書で特記しない限り、工程のありとあらゆる組合せまたは部分的組合せが、本開示の範囲内に包含される。
【0140】
本明細書で引用される各刊行物、特許出願、特許および他の参考文献を、本開示と矛盾しない程度まで、その全体を参照によって組み入れる。本明細書に開示される刊行物は、本開示の出願日より前の開示のためだけに提供される。本明細書のいずれの記載も、先行開示によって本開示がそのような刊行物に先行する権利を与えられないことの承認として解釈されるべきでない。さらに、提供される刊行日は実際の刊行日と異なることがあり、これらを個別に確認する必要があり得る。
【0141】
本明細書に記載の実施例および実施形態は例示目的のためのみであること、ならびにそれらを鑑みて様々な改変または変更が当業者に示唆され、そのような様々な改変または変更が本出願の趣旨および範囲内および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解されよう。
【実施例】
【0142】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物の作製および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載され、本発明者らが自身の発明であると見なすものの範囲を限定することを意図しない。同様に、本開示は、本明細書に記載のいかなる特定の好ましい実施形態にも限定されない。実際に、実施形態の改変および変形は、本明細書を読めば当業者に明らであり得、その趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。使用される数(例えば、量、温度など)について正確性を確実にするように努力したが、いくらかの実験上の誤差および偏差が考慮されるべきである。別段指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25oCであり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【実施例1】
【0143】
平均150mm3のMC38腫瘍を有するマウスにおける、抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍溶解性ウイルスVSV-M51R-Flucの腫瘍内送達を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能
本実施例は、MC38腫瘍が移植された野生型マウスにおける、抗PD-1および抗CTLA4とともに腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)を使用する3重組合せの抗腫瘍効能を記載する。本実施例(および後続の実施例2~3)で使用するVSVは、Mタンパク質中に突然変異(M51R)(Mタンパク質は宿主細胞タンパク質の産生を阻害するが、M51R突然変異は宿主細胞タンパク質の産生を保持する)をコードし、Gウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたホタルルシフェラーゼをコードするのでVSV-M51R-Flucと名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。本実施例(および後続の実施例2~4)で使用する抗PD-1抗体は、抗マウスPD-1ラットIgG2a抗体(Bioxcellのクローン29F1.A12)であり、本実施例(および後続の実施例2~4)で使用する抗CTLA4抗体は抗マウスCTLA4-mIgG2a抗体(クローン9D9)であった。
【0144】
Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにMC38細胞(DMEM100μlに懸濁した3×105個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが150mm3に達したら(これは15日目であった)、マウスを7つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBS50μlに再懸濁した5×105TCID50用量のVSV-M51R-Flucウイルス50μlもしくは対照としてのPBS50μlを腫瘍内注射し、ならびに/または15、19、22および26日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体(mIgG2aおよび/もしくはラットIgG2a)250μgおよび/もしくは抗CTLA4抗体250μgおよび/もしくは抗PD-1抗体250μgを腹腔内注射した。様々な群に対する実験的な投薬および処置プロトコールを表1に示す。
【0145】
【0146】
60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。
【0147】
各群の経時的な平均腫瘍体積は、VSVまたは抗PD-1抗体のいずれかを用いる単独療法が、PBSを用いた処置およびアイソタイプ対照処置群と比較して部分的な腫瘍増殖抑制を示したことを示す(
図1)。処置開始後26日目の個々の腫瘍体積(
図2)を統計解析に使用したのは、これが、すべての群のすべての動物が生きていた、研究の最後の時点であったからである。統計的有意性は、ダネットの多重比較事後検定を用いる一元配置ANOVAによって決定した(
**p<0.01、
****p<0.0001)。抗PD-1抗体またはVSVの単独療法の効能は、統計的有意性に達しなかった。抗CTLA4抗体または抗PD-1抗体とのVSVの組合せの処置は、抗PD-1抗体を用いる単独療法または対照と比較して、より効果的な腫瘍増殖抑制をもたらし、抗PD-1抗体処置群よりも、組合せ処置群において、26日目に統計学的に有意なより小さな腫瘍があった(
図3)。抗CTLの4抗体と抗PD-1抗体の組合せの処置は、すべての他の単一および2重の組合せと比較して、腫瘍増殖において統計学的に有意な低減をもたらし、26日目までに腫瘍がないマウスはいなかった。注目すべきことに、抗CTLA4抗体と抗PD-1抗体との3重組合せVSVの処置は、すべての他の群と比較して、より効果的であり、29日目までにすべてのマウスの腫瘍が排除され、この腫瘍排除は、60日目までの研究の終了まで永続性があった(
図1、2、3)。表2は、各処置群における平均腫瘍体積、生存パーセントおよび腫瘍がないマウスの数を概説する。
【0148】
【0149】
表2に示すように、抗PD-1抗体と抗CTLA4抗体との3重組合せVSVで処置したマウスは、研究の過程において、大きな腫瘍の制御および排除において非常に効果的であり、6匹のマウスのうち6匹が29日目までに腫瘍がなくなった。VSVと組み合わせて、または組み合わせずに、抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体のいずれかで処置したマウスは、研究の26日目で、対照と比較して腫瘍体積のわずかな低減を示した。これに対して、抗PD1抗体と抗CTLA4抗体の2重組合せを用いた処置は、本研究において、対照と比較して、腫瘍体積の低減において有意な効能を示し、5匹のうち1匹のマウスは腫瘍排除を達成したが;これは、抗PD1および抗CTLA4抗体と組み合わせてVSVも送達した場合ほど効果的ではなかった。研究の29日目までに、対照PBS群、抗PD-1群、VSV処置群ではすべてのマウスを排除しなければならず、抗PD-1との2重組合せVSV処置群の6匹のうちの5匹、抗CTLA4との2重組合せVSV群の6匹のうち3匹を排除しなければならず、PD1抗体と抗CTLA4抗体の2重組合せ群、および抗PD-1抗体と抗CTLA4抗体との3重組合せVSVでは、すべてのマウスが依然として生きていた。研究の終わりに、抗PD1抗体と抗CTLA4抗体の2重組合せ群の5匹のうち1匹のマウスのみとあわせて、3重組合せ群のみが腫瘍がないままであり、生存していた。3重組合せ療法の結果として、体重減少の証拠は観察されなかった。
【0150】
まとめると、抗mCTLA4抗体および抗PD-1抗体とのVSVの組合せを用いた処置は、いずれかの抗体および/またはVSVを用いる単独療法または2重療法と比較して、腫瘍増殖の低減およびより長い生存をもたらした。
【実施例2】
【0151】
3重組合せの抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍内送達される腫瘍溶解性ウイルスVSV-M51R-GFPの抗腫瘍効能は、わずか1回用量の抗CTLA4 mIgG2a抗体で達成することができる
本実施例は、MC38腫瘍が移植された野生型マウスにおける、抗PD-1および抗CTLA4とともに腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)を使用する3重組合せにおいて抗腫瘍効能を達成するのに必要な抗CTLA4抗体の用量の数を記載する。本研究で使用するVSVは、Mタンパク質中に突然変異(M51R)(Mタンパク質は宿主細胞タンパク質の産生を阻害するが、M51R突然変異は宿主細胞タンパク質の産生を保持する)をコードし、Gウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたGFPをコードするのでVSV-M51R-GFPと名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにMC38細胞(3×105個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが150mm3に達したら(これは15日目であった)、マウスを5つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した5×108TCID50用量のVSV-M51R-GFPウイルス50μlもしくは対照としてのPBS50μlを腫瘍内注射し、ならびに/または15、18、22および25日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体250μgおよび/もしくは抗PD-1抗体250μg、および/もしくは4回用量(15、18、22および25日目)もしくは1回用量(15日目)もしくは2回用量(15および18日目)のいずれかの様々な投与量の抗CTLA4抗体250μgを腹腔内注射した(表3)。
【0152】
【0153】
60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。
【0154】
表4は、各処置群における平均腫瘍体積、生存パーセントおよび腫瘍がないマウスの数を概説する。抗PD-1抗体およびmIgG2a型式の抗CTLA4抗体との3重組合せVSVの抗腫瘍効能は、1または2または4回用量の抗CTLA4抗体のいずれかを受けた群と非常に類似しており(
図4A、4B、4C、4D、4E)、4回用量群の7匹のマウスのうち5匹(71%)と比較して、1回用量および2回用量群において8匹のマウスのうち6匹(75%)が45日目までに腫瘍がなくなった。60日目までに、4回用量群の71.4%と比較して、1回用量および2回用量群は62.5%のマウスが生存し、腫瘍がなかった(
図5)。これらの結果は、ウイルスおよび最初の用量の抗PD-1抗体と同時に与えたわずか1回用量の抗CTLA4で、抗PD-1抗体と抗CTLA4抗体との3重組合せVSVの強力な抗腫瘍効能を再現することができることを示唆する。
【0155】
【実施例3】
【0156】
3重組合せの抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍溶解性ウイルスVSV-M51R-GFPの抗腫瘍効能は、ウイルスの腫瘍内送達または静脈内送達のいずれかで達成することができる
本実施例は、MC38腫瘍が移植された野生型マウスにおける、抗PD-1および抗CTLA4とともに腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)を使用する3重組合せにおいて抗腫瘍効能を達成するためにウイルスを送達することができる送達経路を記載する。本実施例で使用するVSVは、Mタンパク質中に突然変異(M51R)(Mタンパク質は宿主細胞タンパク質の産生を阻害するが、M51R突然変異は宿主細胞タンパク質の産生を保持する)をコードし、Gウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたGFPをコードするのでVSV-M51R-GFPと名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにMC38細胞(3×105個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが150mm3に達したら(これは15日目であった)、マウスを4処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した5×108TCID50用量のVSV-M51R-GFPウイルス50μlを腫瘍内注射し、もしくはPBSに再懸濁した1×109TCID50用量のVSV-M51R-GFPウイルスもしくは対照としてのPBS200μlを静脈内注射し、ならびに/または15、18、22および25日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体250μgおよび/もしくは抗PD-1抗体250μg、および/もしくは抗CTLA4抗体250μgを腹腔内注射した(表5)。60日目の研究の終了まで腫瘍体積をモニターした。
【0157】
【0158】
表6は、本実験の各処置群における平均腫瘍体積、生存パーセントおよび腫瘍がないマウスの数を概説する。
【0159】
抗PD-1抗体と抗CTLA4抗体との3重組合せVSVの抗腫瘍効能は、腫瘍内に単回用量として、または静脈内に単回用量としてのいずれかとしてVSVを受けた群で非常に強力であり、静脈内送達は、腫瘍内より効果的である傾向があり(
図6)、腫瘍内群の7匹のマウスのうち5匹(71%)と比較して、静脈内投与群において8匹のマウスのうち8匹(100%)が45日目までに腫瘍がなくなった。60日目までに、腫瘍内群の71.4%と比較して、静脈内投与群の100%が生存し、腫瘍がなかった(
図7)。VSVの静脈内送達は、抗PD-1および抗CTLA4の組合せチェックポイント療法を強力に増強し、3重組合せの効能は、ウイルスの腫瘍内送達または静脈内送達のいずれかで達成することができることを示す。
【0160】
【実施例4】
【0161】
平均150mm3のMC38腫瘍を有するマウスにおける、抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍溶解性ウイルスVSV-mIFNb-NISの静脈内送達を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能
本実施例は、MC38腫瘍が移植された野生型マウスにおける、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体とともに静脈内送達される腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)を使用する3重組合せの抗腫瘍効能を記載する。本研究で使用するVSVは、Mウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に挿入されたマウスインターフェロンベータ(IFNb)およびGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をコードする、遺伝的に弱毒化されたウイルスVSV-mIFNb-NIS(またはmVV1)である。
【0162】
Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにMC38細胞(3×105個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが150mm3に達したら(これは15日目であった)、マウスを8つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した1×109TCID50用量のmVV1 200μlもしくは対照としてのPBS200μlの静脈内注射を与え、ならびに/または15、18、21および24日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体(mIgG2aおよび/もしくはラットIgG2a)250μgおよび/もしくは抗CTLA4抗体250μgおよび/もしくは抗PD-1抗体250μgを腹腔内注射した(表7)。60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。
【0163】
【0164】
表8は、各処置群における平均腫瘍体積、生存パーセントおよび腫瘍がないマウスの数を概説する。各群の経時的な平均腫瘍体積は、mVV1または抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体のいずれかを用いる単独療法が、PBSを用いた処置およびアイソタイプ対照処置群と比較して、軽微な腫瘍増殖抑制を示したことを示す(
図8)。処置開始後24日目の個々の腫瘍体積(
図9)を統計解析に使用したのは、これが、すべての群のすべての動物が生きていた、研究の最後の時点であったからである。統計的有意性は、ダネットの多重比較事後検定を用いる一元配置ANOVAによって決定した(
**p<0.01、
****p<0.0001)。抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体またはmVV1の単独療法は、統計的有意性に達せず、mVV1と抗PD-1抗体の組合せも統計的有意性に達しなかった。mVV1と抗CTLA4抗体の組合せの処置は、抗PD-1抗体もしくは抗CTLA4抗体もしくはmVV1を用いる単独療法または対照と比較して、より効果的な腫瘍増殖抑制をもたらした(
図10)。抗CTLA4抗体と抗PD-1抗体の組合せは腫瘍増殖の低減をもたらしたが、すべての他の単一および2重の組合せと比較して、24日目に統計学的に有意な低減をもたらさなかった。注目すべきことに、静脈内送達されるmVV1と抗CTLA4抗体および抗PD-1抗体の3重組合せの処置は、すべての他の群と比較して非常に効果的であり、7匹のマウスのうち2匹は、60日目の研究の終了まで、腫瘍がないままであった(
図8、9、10)。3重組合せ療法の結果として、体重減少の証拠は観察されなかった。まとめると、静脈内送達されるmVV1と抗mCTLA4抗体および抗PD-1抗体の組合せを用いた処置は、いずれかの抗体および/またはmVV1を用いる単独療法または2重療法と比較して、腫瘍増殖の低減および生存の向上をもたらした。
【0165】
【実施例5】
【0166】
3重組合せの抗PD-1、抗CTLA4および腫瘍内送達される腫瘍溶解性ウイルスVSV-M51R-GFPの抗腫瘍効能は、より低用量の抗CTLA4 mIgG2a抗体で達成することができる
本実施例は、MC38腫瘍が移植された野生型マウスにおける、抗PD-1および抗CTLA4とともに腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)を使用する3重組合せにおいて抗腫瘍効能を依然として達成する低減用量の抗CTLA4抗体を記載する。本研究で使用するVSVは、Mタンパク質中に突然変異(M51R)(Mタンパク質は宿主細胞タンパク質の産生を阻害するが、M51R突然変異はタンパク質の産生を保持する)をコードし、Gウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたGFPをコードするのでVSV-M51R-GFPと名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。本研究で使用する抗PD-1抗体はBioxcellのクローン29F1.A12ラットIgG2aであり、使用される抗CTLA4抗体はInvivogenから購入したmIgG2a型式のクローン9D9である。Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにMC38細胞(3×105個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが150mm3に達したら(これは15日目であった)、マウスを4つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した5×108TCID50用量のVSV-M51R-GFPウイルス50μlもしくは対照としてのPBS50μlを腫瘍内注射し、ならびに/または15、18、22および25日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体250μgおよび/もしくは抗マウスPD-1ラットIgG2a抗体(29F1.A12)250μgおよび/もしくは4回用量(15、18、22および25日目)の抗マウスCTLA4-mIgG2a(クローン9D9)250μgもしくは50μgを腹腔内注射した。60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。
【0167】
抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体との3重組合せVSVの抗腫瘍効能は、低用量の抗CTLA4抗体を受けた群で観察され(
図11、12)、高用量群の7匹のマウスのうち5匹(71%)と比較して、8匹のマウスのうち4匹(50%)が45日目までに腫瘍がなくなった。60日目までに、4回用量群の71.4%と比較して、低用量群は50%のマウスが生存し、腫瘍がなかった(
図13)。これらの結果は、抗PD-1抗体と抗CTLA4抗体との3重組合せVSVにおいて投与される抗CTLA4の量を低減させても、依然として抗腫瘍効能を達成することができることを示唆する。
【0168】
【0169】
表9に示すように、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体との3重組合せVSV I.T.(腫瘍内)で処置したマウスは腫瘍増殖の制御において非常に有効であり、7匹のマウスのうち5匹は45日目までに腫瘍がなくなった。5分の1(250μgから50μg)までの抗CTLA4用量の低減は、抗PD-1抗体とともにVSVと組み合わせた場合に、驚くほど有意な抗腫瘍効能を示した。
【実施例6】
【0170】
平均150mm3のMC38腫瘍を有するマウスにおける、抗PD-1、1回用量の抗CTLA4と腫瘍溶解性ウイルスVSV-mIFNb-NISの静脈内送達を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能
本実施例は、MC38腫瘍が移植された野生型マウスにおける、IFNbおよびNISをコードする腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)と抗PD-1および1回用量の抗CTLA4を使用する3重組合せの抗腫瘍効能を記載する。本研究で使用するVSVは、Mウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に挿入されたマウスインターフェロンベータ(IFNb)およびGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をコードするのでVSV-mIFNb-NIS(またはmVV1)と名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。本研究で使用する抗PD-1抗体はBioxcellのクローン29F1.A12ラットIgG2aであり、使用される抗CTLA4抗体はInvivogenのmIgG2a型式のクローン9D9であった。
【0171】
Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにMC38細胞(3×10
5個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L
2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが150mm
3に達したら(これは12日目であった)、マウスを処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した1×10
9TCID
50用量のmVV1 200μlもしくは対照としてのPBS200μlの静脈内注射を与え、ならびに/または12、15、19および22日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体(mIgG2aおよび/もしくはラットIgG2a)250μgおよび/もしくは抗マウスPD-1ラットIgG2a抗体(29F1.A12)250μgおよび/もしくは12もしくは15日目に単回用量もしくは12、15、19および22日目に4回用量としての抗マウスCTLA4-mIgG2a抗体(クローン9D9)250μgを腹腔内注射した。60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。各群の経時的な平均腫瘍体積は、1回用量の抗CTLA4抗体が、mVV1および抗PD-1と組み合わせて投与された場合、4回用量の抗CTLA4を用いた処置と比較して同様の腫瘍増殖抑制を示したことを示す(
図14)。処置開始後22日目の個々の腫瘍体積(
図15)を統計解析に使用したのは、これが、すべての群のすべての動物が生きていた、研究の最後の時点であったからである。統計的有意性は、ダネットの多重比較事後検定を用いる一元配置ANOVAによって決定した(
**p<0.01、
****p<0.0001)。mVV1と1回用量の抗CTLA4抗体の組合せの処置は、4回用量の抗CTLA4抗体と比較して、同等の腫瘍増殖抑制効能をもたらした(
図14、15)。特に、静脈内送達されるmVV1と1回用量の抗CTLA4抗体および抗PD-1抗体の3重組合せの処置は、4回用量のCTLA4を受けた群と同様に生存の延長ももたらした(
図16)。まとめると、静脈内送達されるmVV1と抗PD-1抗体および1回用量の抗mCTLA4抗体の組合せを用いた処置は、4回用量の抗mCTLA4抗体の投与と同様の効能をもたらした。
【0172】
【0173】
【0174】
表11に示すように、抗PD-1抗体および4回用量の抗CTLA4抗体との3重組合せmVV1で処置したマウスは、研究の過程において、大きな腫瘍の制御および排除において非常に効果的であった。ウイルスと同時に与えた抗PD-1抗体および1回用量の抗CTLA4抗体との3重組合せmVV1で処置したマウスは、4回用量と比較して、同様の腫瘍体積の低減を示した。これに対して、1回用量の抗CTLA4抗体をウイルスと抗PD-1の3日後に与えた場合、3重組合せの効能は抑止された。このデータは、mVV1と同時に与えられる1回用量の抗CTLA4、および抗PD-1の連続的投薬を、強い抗腫瘍効能を達成するために使用することができることを示す。
【実施例7】
【0175】
平均150mm3のMC38腫瘍を有するマウスにおける、腫瘍溶解性ウイルスVSV-mIFNb-NISの静脈内送達と同時に投与される抗PD-1、1回用量の抗CTLA4を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能
本実施例は、MC38腫瘍が移植された野生型マウスにおける、IFNbおよびNISをコードする腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)と抗PD-1および1回用量の抗CTLA4を使用する3重組合せの抗腫瘍効能を記載する。本研究で使用するVSVは、Mウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に挿入されたマウスインターフェロンベータ(IFNb)およびGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をコードするのでVSV-mIFNb-NIS(またはmVV1)と名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。本研究で使用する抗PD-1抗体はBioxcellのクローン29F1.A12ラットIgG2aであり、使用される抗CTLA4抗体はInvivogenのmIgG2a型式のクローン9D9であった。
【0176】
Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにMC38細胞(3×10
5個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L
2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが150mm
3に達したら(これは12日目であった)、マウスを4つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した1×10
9TCID
50用量のmVV1 200μlもしくは対照としてのPBS200μlの静脈内注射を与え、ならびに/または12、15、19および22日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体(mIgG2aおよび/もしくはラットIgG2a)250μgおよび/もしくは抗マウスPD-1ラットIgG2a抗体(29F1.A12)250μgおよび/もしくは12もしくは15日目に単回用量としての抗マウスCTLA4-mIgG2a抗体(クローン9D9)250μgを腹腔内注射した。60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。各群の経時的な平均腫瘍体積は、15日目にa-CTLA4を受けた群は、12日目にそれを受けた群と比較して、抗腫瘍制御が低減した(
図17)ので、1回用量の抗CTLA4抗体をウイルスと同時に投与する必要があることを示す。
【0177】
まとめると、静脈内送達されるmVV1とウイルスと同時に投与される抗PD-1抗体および1回用量の抗mCTLA4抗体の組合せを用いた処置は、強い抗腫瘍効能をもたらした。
【実施例8】
【0178】
平均100mm3のB16F10腫瘍を有するマウスにおける、抗PD-1、1回用量の抗CTLA4と腫瘍溶解性ウイルスVSV-mIFNb-NISの静脈内送達を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能
本実施例は、B16F10腫瘍が移植された野生型マウスにおける、IFNbおよびNISをコードする腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)と抗PD-1および1回用量の抗CTLA4を使用する3重組合せの抗腫瘍効能を記載する。本研究で使用するVSVは、Mウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に挿入されたマウスインターフェロンベータ(IFNb)およびGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をコードするのでVSV-mIFNb-NIS(またはmVV1)と名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。本研究で使用する抗PD-1抗体はBioxcellのクローン29F1.A12ラットIgG2aであり、使用される抗CTLA4抗体はInvivogenのmIgG2a型式のクローン9D9であった。
【0179】
Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにB16F10細胞(5×10
5個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L
2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが100mm
3に達したら(これは10日目であった)、マウスを7つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した1×10
9もしくは5×10
7もしくは1×10
7もしくは1×10
6のいずれかのTCID
50用量のmVV1 200μlもしくは対照としてのPBS200μlの静脈内注射を与え、ならびに/または12、15、19および22日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体(mIgG2aおよび/もしくはラットIgG2a)250μgおよび/もしくは抗マウスPD-1ラットIgG2a抗体(29F1.A12)250μgおよび/もしくは10日目に単回用量としての抗マウスCTLA4-mIgG2a抗体(クローン9D9)250μgを腹腔内注射した。60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。各群の経時的な平均腫瘍体積は、1回用量の抗CTLA4抗体が、PBSまたは単剤と比較して、B16F10モデルにおいて強い腫瘍増殖抑制を示したことを示す(
図18)。特に、静脈内送達されるmVV1と1回用量の抗CTLA4抗体および抗PD-1抗体の3重組合せの処置は、ウイルス用量を1×10
9から5×10
7または1×10
7または1×10
6TCID
50に低下させた場合、生存の延長の同様の効能ももたらした(
図18)。
【0180】
まとめると、静脈内送達されるmVV1と抗PD-1抗体および1回用量の抗mCTLA4抗体の組合せを用いた処置は、B16F10抗PD-1抵抗性腫瘍モデルにおいて強い抗腫瘍効能をもたらし、広範囲のウイルス力価が強い組合せ効能を依然として達成することができる。
【0181】
【0182】
【0183】
表13に示すように、B16F10皮下腫瘍モデルを使用して、mVV1または1回用量の抗CTLA4抗体と組み合わせた抗PD-1のいずれかで処置したマウスは、この高障害(high bar)免疫チェックポイント抵抗性腫瘍モデルにおいて、腫瘍増殖に対して非常にわずかな効果しかなかった。しかし、1回用量の抗CTLA4抗体と組み合わせた抗PD-1との3重組合せmVV1は、他の群と比較して抗腫瘍効能を実質的に高めた。本データは、VSVが、チェックポイント抵抗性腫瘍を免疫療法に感受性にすることができることを示す。
【実施例9】
【0184】
平均150mm3のCMT64肺腫瘍を有するマウスにおける、抗PD-1、1回用量の抗CTLA4と腫瘍溶解性ウイルスVSV-mIFNb-NISの静脈内送達を用いた組合せ処置の抗腫瘍効能
本実施例は、抗PD-1処置に抵抗性のCMT64腫瘍を移植された野生型マウスにおける、IFNbおよびNISをコードする腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)と抗PD-1および1回用量の抗CTLA4を使用する3重組合せの抗腫瘍効能を記載する。本研究で使用するVSVは、Mウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に挿入されたマウスインターフェロンベータ(IFNb)およびGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をコードするのでVSV-mIFNb-NIS(またはmVV1)と名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。本研究で使用する抗PD-1抗体はBioxcellのクローン29F1.A12ラットIgG2aであり、使用される抗CTLA4抗体はInvivogenのmIgG2a型式のクローン9D9であった。
【0185】
Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにB16F10細胞(5×10
5個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L
2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが100mm
3に達したら(これは10日目であった)、マウスを4つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した1×10
9TCID
50用量のmVV1もしくは対照としてのPBS200μlの静脈内注射を与え、ならびに/または12、15、19および22日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体(mIgG2aおよび/もしくはラットIgG2a)250μgおよび/もしくは抗マウスPD-1ラットIgG2a抗体(29F1.A12)250μgおよび/もしくは10日目に単回用量としての抗マウスCTLA4-mIgG2a抗体(クローン9D9)50μgを腹腔内注射した。60日目の研究の終了まで、キャリパー測定によって腫瘍体積を週に2回モニターした。各群の経時的な平均腫瘍体積は、1回用量の抗CTLA4抗体が、PBSまたは抗CTLA4をともなう抗PD-1と比較して、CMT64腫瘍モデルにおいて強い腫瘍増殖抑制を示したことを示す(
図19)。
図20は、腫瘍から回収し、2回用量の抗PD-1とともに12日目にVSVを受け、12および14日目にa-CTLA4を受けた後17日目に各処置群において示される腫瘍抗原またはVSV-NPに一晩再曝露したCD8 TILによって放出されたIFNgの平均スポット形成単位(SFU)を示す。DMSOおよびPMA/イオノマイシンは、腫瘍移植後の複数の時点における陰性および陽性対照としてそれぞれ働き、処置日を矢印で示す。
【0186】
まとめると、静脈内送達されるmVV1と抗PD-1抗体および1回用量の抗mCTLA4抗体の組合せを用いた処置は、CMT64抗PD-1抵抗性腫瘍モデルにおいて驚くほど強い抗腫瘍効能をもたらし、これは、この3重組合せの効能を様々な腫瘍状況に適用することができることを示す。
【0187】
【0188】
【0189】
表15に示すように、抗PD-1抗体および1回用量の抗CTLA4抗体との3重組合せmVV1静脈内注射で処置したマウスは、CMT64腫瘍増殖の制御において非常に効果的であった。
【実施例10】
【0190】
平均150mm3のCMT64肺腫瘍を有するマウスにおける抗PD-1、抗CTLA4と腫瘍溶解性ウイルスVSV-mIFNb-NISの静脈内送達の組合せ処置は、幅広いポリクローナル抗腫瘍T細胞応答を引き出す
本実施例は、抗PD-1処置に抵抗性のCMT64腫瘍を移植された野生型マウスにおける、IFNbおよびNISをコードする腫瘍溶解性ウイルスの水疱性口内炎ウイルス(VSV)と抗PD-1および1回用量の抗CTLA4を使用する3重組合せの作用機序を記載する。本研究で使用するVSVは、Mウイルス遺伝子とGウイルス遺伝子の間に挿入されたマウスインターフェロンベータ(IFNb)およびGウイルス遺伝子とLウイルス遺伝子の間に挿入されたナトリウム/ヨウ素共輸送体(NIS)をコードするのでVSV-mIFNb-NIS(またはmVV1)と名付けられた、遺伝的に弱毒化されたウイルスである。本研究で使用する抗PD-1抗体はBioxcellのクローン29F1.A12ラットIgG2aであり、使用される抗CTLA4抗体はInvivogenのmIgG2a型式のクローン9D9であった。
【0191】
Jackson LaboratoriesのC57BL/6系統バックグラウンドマウスにCMT64細胞(5×106個の細胞/マウス)を0日目に皮下移植した。キャリパーを使用して腫瘍を測定し、式(L2×W)/2で腫瘍体積を計算した(式中Lは最小サイズである)。平均腫瘍サイズが100mm3に達したら(これは10日目であった)、マウスを7つの処置群に均等に無作為化した。マウスに、PBSに再懸濁した1×109TCID50用量のmVV1もしくは対照としてのPBS200μlの静脈内注射を与え、ならびに/または10および14日目に、いずれかのアイソタイプ対照抗体(mIgG2aおよび/もしくはラットIgG2a)250μgおよび/もしくは抗マウスPD-1ラットIgG2a抗体(29F1.A12)250μgおよび/もしくは抗マウスCTLA4-mIgG2a抗体(クローン9D9)10μgを腹腔内注射した。17日目に腫瘍を回収した。ウェル当たり10,000個の細胞をプレーティングし、IFNg ELISPOTアッセイのためのそれぞれのペプチド抗原とともに一晩インキュベートすることによって、精製したCD8 TILおよびナイーブ脾細胞を1:1の比で共インキュベートした。VSVを受けた群において、CD8 TILの大きな反応性がVSV-NP抗原に特異的であることが検出された。特に、腫瘍新生抗原の多くは、VSVを受けた群から収集された再曝露CD8 TILにおいてシグナルを誘導しており、抗PD-1および抗CTLA4単独で処置した群について、非常に限られた応答が検出された。a-PD-1およびa-CTLA4との3重組合せVSVは、他の群と比較して大きなポリクローナル抗腫瘍T細胞応答を誘導し、NAIP2およびZHX2などのいくつかの新生抗原反応性は、3重組合せのみで検出された。
【0192】
このデータは、3重組合せの効能が、腫瘍内で機能的であり、抗腫瘍T細胞応答を誘導するポリクローナル抗腫瘍T細胞の生成によって引き起こされることを示す。
【0193】
【0194】
【0195】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な改変が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】