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特表2024-526851モノカルボン酸トランスポーター11の阻害によるがんの細胞治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】モノカルボン酸トランスポーター11の阻害によるがんの細胞治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240711BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240711BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P35/00
A61K38/20
A61K45/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 F
A61P35/02
C12N15/11 Z
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503402
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022037633
(87)【国際公開番号】W WO2023003907
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,453
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デルゴフ, グレッグ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペラルタ, ロナル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA91Y
4B065AA92X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA23
4B065CA31
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA14
4C084MA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087DA31
4C087MA17
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、Slc16a11の発現が低減されたおよび/またはMCT11の活性が低減された改変末梢血単核細胞(PBMC)を含む組成物を提供する。同様に、Slc16a11を標的とするsiRNAおよびgRNAも提供する。がんの処置における本開示の組成物を使用する方法もまた提供する。本発明は、例えば、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である改変末梢血単核細胞(PBMC)であって、1)Slc16a11発現を低減させる作用剤;または2)機能的MCT11の量を低減させる天然に存在しない遺伝子改変を含む改変末梢血単核細胞(PBMC)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である改変末梢血単核細胞(PBMC)であって、
1)Slc16a11発現を低減させる作用剤;または
2)機能的MCT11の量を低減させる天然に存在しない遺伝子改変
を含む改変末梢血単核細胞(PBMC)。
【請求項2】
Slc16a11発現を低減させる前記作用剤を含み、前記作用剤が、Slc16a11に対して特異的な阻害性RNA(RNAi)またはSlc16a11に対して特異的なガイドRNA(gRNA)を含む、請求項1に記載の改変PBMC。
【請求項3】
前記RNAiが、低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子、低分子干渉RNA(siRNA)分子、またはアンチセンスRNA分子である、請求項2に記載の改変PBMC。
【請求項4】
前記作用剤が、
a)Slc16a11遺伝子もしくは転写物に対して特異的な前記RNAiであって、Slc16a11に対して特異的な前記RNAiが、前記Slc16a11遺伝子もしくは転写物の一部との少なくとも90%の相補性を含むRNAi、
b)Slc16a11遺伝子もしくは転写物に対して特異的な前記gRNAであって、Slc16a11に対して特異的な前記gRNAが、前記Slc16a11遺伝子もしくは転写物の一部と少なくとも90%の配列同一性を含むgRNA、または
c)Slc16a11遺伝子もしくは転写物に対して特異的な前記gRNAであって、Slc16a11に対して特異的な前記gRNAが、前記Slc16a11遺伝子もしくは転写物の一部と少なくとも90%の配列同一性を含むgRNA、およびCasヌクレアーゼ
をコードする異種核酸分子を含む、請求項2または3に記載の改変PBMC。
【請求項5】
前記異種核酸をコードする発現ベクターを含む、請求項4に記載の改変PBMC。
【請求項6】
c)前記Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的な前記gRNAおよび前記Casヌクレアーゼを含み、前記Casヌクレアーゼが、Cas9、dCas9、Cas13d、またはdCas13dヌクレアーゼである、請求項4または5に記載の改変PBMC。
【請求項7】
前記遺伝子改変が、Slc16a11の発現を低減させる、および/またはMCT11の活性を低減させる、Slc16a11の点変異、部分的欠失、完全な欠失、または挿入である、請求項1に記載の改変PBMC。
【請求項8】
T細胞である、請求項1~7のいずれか一項に記載の改変PBMC。
【請求項9】
前記T細胞が、CD8+ T細胞またはCD3+ T細胞である、請求項8に記載の改変PBMC。
【請求項10】
前記T細胞が、治療的T細胞である、請求項8または請求項9に記載の改変PBMC。
【請求項11】
前記T細胞が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、請求項8~10のいずれか一項に記載の改変PBMC。
【請求項12】
前記T細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体(TCR)を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の改変PBMC。
【請求項13】
前記T細胞が、腫瘍特異的抗原に対して反応性である、請求項8~12のいずれか一項に記載の改変PBMC。
【請求項14】
前記腫瘍特異的抗原が、CD19、CD20、BCMA、MUC1、PSA、CEA、HER1、HER2、TRP-2、EpCAM、GPC3、メソテリン1(MSLN)、またはEGFRの1つまたは複数である、請求項13に記載の改変PBMC。
【請求項15】
前記T細胞が疲弊T細胞である、請求項8~14のいずれか一項に記載の改変PBMC。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の改変PBMCを生成する方法であって、前記作用剤、または天然に存在しない遺伝子改変をPBMCに導入し、それによって、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である前記改変PBMCを生成することを含む、方法。
【請求項17】
前記PBMCがT細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記改変PBMCを、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン15(IL-15)、またはその組合せと共にインキュベートすることをさらに含む、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記改変PBMCが、腫瘍特異的抗原に対して反応性である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍特異的抗原が、CD19、CD20、BCMA、MUC1、PSA、CEA、HER1、HER2、TRP-2、EpCAM、GPC3、メソテリン1(MSLN)、およびEGFRの1つまたは複数である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
Slc16a11の発現の低減、MCT11の活性の低減、または両方が、前記T細胞のエフェクター機能を増加させる、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
Slc16a11の発現の低減、MCT11の活性の低減、または両方が、前記T細胞の疲弊を低減させる、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である前記改変PBMCを選択すること、および
必要に応じて、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である前記選択された改変PBMCを対象に導入すること
をさらに含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記選択するステップが、フローサイトメトリー、パニング、または磁気分離の使用を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象ががんを有する、請求項23~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~15のいずれか一項に記載の改変PBMC、または請求項16~25のいずれか一項に記載の方法によって生成された改変PBMC;および
薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物。
【請求項27】
静脈内製剤である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
対象におけるがんまたは腫瘍を処置するための方法であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の改変PBMCの治療有効量、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法によって生成された改変PBMCの治療有効量、または請求項26もしくは27に記載の医薬組成物の治療有効量を、がんまたは前記腫瘍を有する前記対象に投与し、それによって前記がんまたは前記腫瘍を処置することを含む方法。
【請求項29】
前記改変PBMCが、前記対象に対して自家である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記改変PBMCが、前記対象に対して同種異系である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
IL-2、IL-7、および/またはIL-15の治療有効量を前記対象に投与することをさらに含む、請求項23~25、または28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
手術、放射線照射、化学療法、生物療法、または免疫療法の1つまたは複数によって前記対象を処置することをさらに含む、請求項23~25、または28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
チェックポイント阻害剤、T細胞アゴニスト抗体、腫瘍溶解ウイルス、または養子細胞移入(ACT)免疫療法の1つまたは複数の治療有効量を前記対象に投与することをさらに含む、請求項23~25または28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
非改変リンパ球が、前記改変PBMCの投与前に前記対象において枯渇される、請求項23~25または28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記がんまたは腫瘍が、白血病、結腸直腸がん、黒色腫、子宮頸がん、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、乳がん、膵臓がん、腎細胞癌、前立腺がん、または頭頸部がんである、請求項25または28~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年7月19日に出願された米国仮出願第63/223,453号の利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、免疫療法、特にT細胞疲弊を防止または低減する組成物および方法、ならびにがんを処置するまたは免疫療法を改善するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
プログラム細胞死1(PD-1)受容体は、成熟細胞傷害性Tリンパ球上で主に発現されるチェックポイント受容体である。がん細胞はしばしば、PD-1リガンド、例えばPD-L1およびPD-L2を発現し、がん様細胞の免疫寛容をもたらす。ある特定のがん治療は、PD-1またはそのリガンドを標的として免疫寛容を低減させ、それによってがん様細胞のT細胞媒介除去を増加させる。しかし、このいわゆるPD-1遮断に応答するのは患者のわずかなサブセットに過ぎない。有効性を制限する潜在的因子は、T細胞疲弊の発生であり、これはT細胞が機能障害状態へと分化した代替の結末である。疲弊は、T細胞が腫瘍細胞を標的とする能力、または免疫療法に応答する能力を制限する。このように、T細胞のエフェクター機能を増加させることまたは疲弊に対する抵抗性を増加させることは、様々ながん免疫療法、例えばPD-1遮断に対する患者の応答を改善するために有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
MCT11は、輸送タンパク質である。MCT11は、ここでは終末疲弊T細胞、特に腫瘍に浸潤する終末疲弊T細胞の表面上に存在することが示される。MCT11の発現を減少させると、T細胞疲弊の発生を遅らせることが示され(in shown)、これは抗腫瘍機能性を保持するために役立つ。このように、MCT11活性は、T細胞疲弊に寄与し得る。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、MCT11は、モノカルボキシレート、例えば乳酸を輸送し得る。このように、乳酸(または別のMCT11基質)のMCT11媒介取り込みは、T細胞の抗腫瘍機能を低減し得る。これらの知見に基づいて、がんの処置、例えば免疫療法に使用されるPBMCまたはT細胞におけるT細胞疲弊を低減または防止するために、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方であるPBMC、例えばT細胞を生成する方法を提供する。
【0005】
本明細書において、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である改変末梢血単核細胞(PBMC)を提供する。一部の実施形態では、改変PBMCは、Slc16a11発現を低減させる作用剤、例えば、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的な阻害性RNA(RNAi)またはガイドRNA(gRNA)を含む。一部の例では、RNAiは、shRNA、siRNA、またはアンチセンスRNAである。一部の実施形態では、改変PBMCは、機能的なMCT11の量を低減させるSlc16a11の天然に存在しない遺伝子改変を含む。一部の例では、遺伝子改変は、Slc16a11の発現を低減させるおよび/またはMCT11の活性を低減させる、Slc16a11遺伝子における点変異、部分的欠失、完全な欠失、または挿入である。
【0006】
一部の実施形態では、改変PBMCは、T細胞、例えば、CD8+ T細胞またはCD3+ T細胞である。一部の例では、T細胞は、腫瘍特異的抗原、例えば、CD19、CD20、BCMA、MUC1、PSA、CEA、HER1、HER2、TRP-2、EpCAM、GPC3、メソテリン1(MSLN)、またはEGFRに対して反応性である。さらなる例では、T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であり、および/またはT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)もしくは操作されたT細胞受容体(TCR)を発現する。一部の例では、T細胞は、疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む)である。
【0007】
本開示の改変PBMCは、例えばがん免疫療法を改善するために、またはin vivoでがんもしくは腫瘍を処置するために有用である。
【0008】
同様に本明細書において、例えば、Slc16a11発現を低減させる作用剤、または機能的MCT11を低減させる天然に存在しない遺伝子改変をPBMCに導入し、それによって、Slc16a11の発現が低減されたおよび/またはMCT11の活性が低減された改変PBMCを生成することによって、本明細書に開示される改変PBMCを生成する方法も提供される。一部の例では、そのような方法は、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、またはその両方である改変PBMCを選択すること(例えば、そのような細胞を、Slc16a11の発現が低減されていない、MCT11の活性が低減されていない、またはその両方である細胞から精製または単離すること)をさらに含む。一部の例では、そのような方法は、ex vivoで実施される。一部の例では、そのような選択方法は、フローサイトメトリー、パニング、または磁気分離を使用して実施される。本開示の方法は、一部の例では、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、またはその両方である選択された改変PBMCを、対象、例えばSlc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、またはその両方である選択された改変PBMCによって処置されるがんを有する対象に導入することをさらに含む。
【0009】
同様に本明細書において、本明細書に開示される改変PBMCを、がん(または腫瘍)を有するおよび/または免疫療法を受けている対象に投与し、それによってがん(または腫瘍)を処置するまたは免疫療法を増強することによって、がん(または腫瘍)を処置するまたはがん免疫療法を増強する方法も提供される。一部の例では、対象は、がん免疫療法、例えばチェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1または抗PD-L1モノクローナル抗体療法を受けている、または受ける予定である。一部の例では、対象は、改変PBMCの前、後、または実質的に同時にMCT(例えば、MCT11)の低分子阻害剤を投与される。
【0010】
本開示の前述および他の目的および特色は、添付の図面を参照して進行する以下の詳細な説明からより明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、「前駆体様」または「終末疲弊」T細胞の典型的な表現型を示す。
図2A-B】図2A~2Cは、MCT11が、マウスおよびヒトの疲弊T細胞において上方調節されていることを示す。図2Aは、RNA-seqのためのLN CD8およびTIL CD8細胞のFACS選別(左)を示し、MCT11が疲弊T細胞(PD1hiTim3)において上方調節されていること(右)を示す。図2Bは、黒色腫(MEL)または頭頸部がん(HNSCC)患者からのヒトPBMC、PD1/TIM3およびPD1/TIM3細胞のMCT11染色を示す。ヒト腫瘍生検試料を、CD8、PD-1、Tim-3、およびMCT11に対する抗体によって染色し、フローサイトメトリーによって分析した。図2Bは、疲弊(PD-1+Tim3+)への進行の関数としてのMCT11の染色を示す。図2Cは、C56/BL6JマウスのMC38(腺癌)またはMEER(頭頸部がん)モデルからの疲弊または非疲弊腫瘍浸潤リンパ球(TIL)におけるMCT11表面発現を示す。
図2C】同上。
図3図3A~3Bは、表記の細胞タイプのRNA-seqからのSlc16a11の塩基100万個あたりの転写物(TPM)を示す。MCT11は、疲弊T細胞、特に腫瘍に浸潤する疲弊T細胞(TIL)の表面上に発現(上方調節)される(図3A)。図3Bは、公開されているデータから生成され、Slc16a11が、腫瘍浸潤性疲弊T細胞に対して特異的であることを確認する。
図4図4は、疲弊T細胞が乳酸を特異的に取り込むことを示す。実験設計の概略図を上部に示し、下のグラフは、各表記の細胞タイプに関して乳酸と共に30分間インキュベーション後の乳酸の取り込みを示す。
図5図5は、MCT11阻害T細胞(Slc16a11に対して特異的なshRNAによる処置による)が、抗腫瘍機能を保持しているが(上)、MCT11過剰発現(Slc16a11を発現するベクターによる処置による)は、マウスモデルにおいてT細胞疲弊を促進する(下)ことを示す。
図6A-B】図6A~Dは、MCT11(Slc16a11)の条件的欠失を有するマウスが、より小さい腫瘍体積、ならびにT細胞浸潤の増加、およびT細胞機能の増加を有することを示す。図6Aは、実験の設定を示す。図6Bは、腫瘍体積を示す。図6Cは、疲弊T細胞区画内でのT細胞浸潤(パーセント生存CD8+細胞)の増加およびT細胞機能の増加(再刺激後のサイトカイン産生によって測定)を示す。図6Dは、MCT11 mAbがMCT11の条件的欠失を有するマウスにおいて疲弊T細胞(Texh)細胞を染色しないことを示す。
図6C】同上。
図6D】同上。
図7図7は、OT-1 OVA特異的T細胞におけるSlc16a11のCRISPR/Cas9媒介欠失が、マウスモデルにおいて単回用量後に優れた治療的細胞(腫瘍面積の減少)を生成したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配列表
核酸およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822に定義されるように、ヌクレオチド塩基に関する標準的な文字略記、およびアミノ酸に関する3文字表記で示される。各核酸配列の1つの鎖のみを示すが、表示された鎖に対する何らかの参照によって、相補鎖が含まれると理解される。RNAが、DNAとしてコードされる場合、「U」は「T」に置き換えられ、逆にDNAがRNAとして発現される場合、「T」は「U」に置き換えられることが理解される。
【0013】
配列表は、2022年7月18日に作成された16,384バイトのXMLファイル、「Sequence.xml」として提出され、これは参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表において:
配列番号1:ヒトMCT11の例示的なアミノ酸配列
【化1】
配列番号2:ヒトSLC16A11 mRNAをコードする例示的な核酸配列
【化2-1】
【化2-2】
配列番号3:ヒトSLC16A11についての例示的なガイドRNA(gRNA)標的化配列
CGGGGGUCCGGCGGGCUGGG
配列番号4:ヒトSLC16A11を標的とする例示的なshRNA
【化3】
配列番号5:マウスMCT11の例示的なアミノ酸配列
【化4】
配列番号6:マウスSlc16a11 mRNAをコードする例示的な核酸配列
【化5-1】
【化5-2】
配列番号7:マウスSlc16a11についての例示的なガイドRNA(gRNA)標的化配列
CGCCCCCUUCUAGGCCCAGU
配列番号8:マウスSlc16a11を標的とする例示的なshRNA
UGGCUUGGUCUUCUCGGCUUU
【0014】
詳細な説明
特に注記していない限り、技術用語は、通常の使用に従って使用される。分子生物学における多くの一般的な用語の定義は、Krebs et al. (eds.), Lewin's genes XII, published by Jones & Bartlett Learning, 2017;The Encyclopedia of Molecular Biology, published by Blackwell Science Ltd., 1994;およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995;ならびに他の類似の参考文献に見出され得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、本文が明らかにそれ以外であることを示していない限り、単数形ならびに複数形の両方を指す。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。このように、「核酸分子を含むこと(comprising)」とは、他のエレメントを除外することなく「核酸分子を含むこと(including)」を意味する。核酸に関して与えられたあらゆる全ての塩基サイズは、近似値であり、特に示していない限り説明目的のために提供されることがさらに理解される。本明細書の記載と類似または同等の多くの方法および材料を使用することができるが、特定の好適な方法および材料を以下に説明する。矛盾する場合は、用語の説明を含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法、および例は、単なる例証であり、限定的であることを意図しない。
【0016】
本開示の様々な実施形態の精査を容易にするために、以下に特定の用語の説明を提供する。
【0017】
約:本文がそれ以外であることを示していない限り、「約」は、参照値のプラスまたはマイナス5%を指す。例えば、「約」100は、95~105を指す。
【0018】
投与:対象に作用剤、例えば改変PBMCを、任意の有効な経路によって提供または与えること。投与は局所または全身であり得る。例示的な投与経路としては、これらに限定されないが、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、前立腺内、髄腔内、骨内、および静脈内)、経口、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣、および吸入経路が挙げられる。一部の例では、本明細書に提供される改変PBMC(例えば、T細胞)は、静脈内注射によって投与される。
【0019】
養子細胞移入(ACT)療法:改変(例えば、腫瘍抗原を認識するように改変)されている、および/またはin vitro(またはex vivo)で増大させているT細胞が、投与することを必要とする患者に投与される、あるタイプの免疫療法。ACT療法のためのT細胞は、患者自身のT細胞またはドナーからのT細胞であり得る。ACT療法は、例えば、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)、操作されたT細胞受容体(TCR)、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法を含む。ACT療法はまた、時に養子細胞療法、細胞養子免疫療法、またはT細胞移入療法とも呼ばれる。
【0020】
がん:異常なまたは制御されない細胞成長によって特徴付けられる悪性腫瘍。がんにしばしば関連する他の特色は、転移、隣接する細胞の正常な機能の妨害、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、および炎症応答または免疫応答の抑制または悪化、周囲または遠位の組織または臓器、例えばリンパ節への侵入等を含む。「転移疾患」は、元の腫瘍部位を離れて、例えば、血流またはリンパ系を介して体の他の部分へと遊走するがん細胞を指す。
【0021】
Cas9:原核細胞ウイルスに対するCRISPR-Cas免疫防御に関与する(that that participates in)RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ酵素。Cas9は、二重らせんの各鎖に対して1つずつの、2つの活性切断部位(HNHおよびRuvC)を有する。このように、Cas9タンパク質を使用して、適切なガイドRNAと組み合わせてDNAを編集することができる。Cas9配列は公開されている。例えば、GenBank(登録商標)受託番号CP012045.1のヌクレオチド796693..800799、およびCP014139.1のヌクレオチド1100046..1104152は、例示的なCas9核酸を開示し、GenBank(登録商標)受託番号NP_269215.1、AMA70685.1、およびAKP81606.1は、例示的なCas9タンパク質を開示している。
【0022】
エンドヌクレアーゼ活性が低減されているかまたは消失したがなおもdsDNAに結合する触媒的に不活性な(非活性化または不活性型)Cas9(dCas9)タンパク質もまた、本開示に包含される。一部の例では、dCas9は、RuvCおよびHNHヌクレアーゼドメインに1つまたは複数の変異、例えば以下の点変異:D10A、E762A、D839A、H840A、N854A、N863A、およびD986Aの1つまたは複数を含む。例示的なdCas9配列は、D10AおよびH840A置換の両方を含む。一例では、dCas9タンパク質は、変異D10A、H840A、D839A、およびN863Aを有する(例えば、Esvelt et al., Nat. Meth. 10:1116-21, 2013を参照されたい)。例示的なdCas9配列は、GenBank(登録商標)受託番号AKA60242.1およびKR011748.1に提供される。
【0023】
Cas13d:RNAを切断するかまたはRNAに結合することができるRNAガイドRNAエンドヌクレアーゼ酵素。Cas13dタンパク質は、特定の二次構造を有するsgRNAに存在するダイレクトリピート(DR)配列を特異的に認識する。Cas13dタンパク質は、1つまたは2つのHEPNドメインを含む。天然のHEPNドメインは、配列RXXXXHを含み、Xは任意のアミノ酸である。触媒的に不活性な、または「不活性型」Cas13d(dCas13d)は、変異したHEPNドメイン(複数可)を含み、このようにRNAを切断することができないが、sgRNAをプロセシングすることができ、これもまた、本開示に包含される。dCas13dは、選択的スプライシングを操作するためにプレmRNAのシスエレメントへと標的化され得る。例示的な天然およびバリアントCas13dタンパク質配列は、WO2019/040664、US10,876,101、およびUS10,392,616に提供される。
【0024】
一例では、全長の(非トランケート型)Cas13dタンパク質は、870~1080アミノ酸長の間である。一例では、Cas13dタンパク質は、Clostridiales目の細菌のゲノム配列またはメタゲノム配列に由来する。一例では、Cas13dタンパク質の対応するDR配列は、Cas13d gRNAを含む分子におけるスペーサー配列の5’末端に位置する。一例では、Cas13d sgRNAにおけるDR配列は、非プロセシングCas13dガイドアレイ転写物におけるDR配列と比較して5’末端でトランケートされる(例えば、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、例えば1~3ヌクレオチド、3~6ヌクレオチド、5~7ヌクレオチド、または5~10ヌクレオチドトランケートされる)。一例では、Cas13d gRNAにおけるDR配列は、Cas13dタンパク質によって5’末端で5~7ヌクレオチドトランケートされる。一例では、Cas13dタンパク質は、スペーサー-標的二重鎖の3’末端でA、U、G、またはCリボヌクレオチドのいずれかに挟まれ、5’末端でA、U、G、またはCリボヌクレオチドのいずれかに挟まれる標的RNAを切断することができる。
【0025】
チェックポイント阻害剤(またはチェックポイント遮断):チェックポイントタンパク質を標的とする治療剤。チェックポイントタンパク質は、過活動免疫応答または自己免疫を防止するために役立ち、時にT細胞ががん様細胞を除去する能力を制限し得る。チェックポイントが遮断されると(例えば、PD-1遮断)、T細胞は、がん様細胞をより良好に標的とし殺滅することができる。T細胞またはがん様細胞において見出されるチェックポイントタンパク質の例は、PD-1/PD-L1/PD-L2、およびCTLA-4/B7-1/B7-2を含む。
【0026】
例示的なチェックポイント阻害剤としては、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、アテゾリズマブ(Tencentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、パルボシクリブ(Ibrance(登録商標))、リボシクリブ(Kisquali(登録商標))、ピディリズマブ、アベルマブ、およびアベマシクリブ(Verzenio(登録商標))が挙げられる。さらなる例は、Qiu et al., Journal of the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology, 126(3):450-464, 2018;Visconti et al., J Exp Clin Cancer Res. 35(1): 153, 2016;およびMills et al. Cancer Res. 77(23): 6489-6498, 2017に提供される。
【0027】
キメラ抗原受容体(CAR):免疫エフェクター細胞上に任意の特異性を移植する人工の操作されたT細胞受容体。典型的に、これらの受容体は、T細胞にモノクローナル抗体の特異性を移植するために使用され、それらのコード配列の移入はベクターによって促進される。このように、抗原に「特異的に結合する」または「特異的」であるCARは、高い親和性で抗原に結合し、他の無関係な抗原に有意に結合しないCARである。養子細胞移入を使用して、CARは、がんを処置するために有用であり得る。例えば、T細胞(患者またはドナーから得られた)は、それらが患者の特定のがんに対して特異的な受容体を発現するように改変されている。次に、がん細胞を認識して殺滅することができる改変T細胞を、患者に導入する。一部の例では、本明細書に開示される改変PBMCは、CARを発現する。
【0028】
第1世代CARは、典型的に、内因性TCRからのシグナルの一次伝達物質であるCD3ζ鎖からの細胞内ドメインを含んだ。第2世代CARは、様々な共刺激性タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)からの細胞内シグナル伝達ドメインをCARの細胞質テールに付加し、T細胞に追加のシグナルを提供した。第3世代CARは、効力を増加させるために、複数のシグナル伝達ドメイン、例えばCD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40を組み合わせる。多重特異性CARは、各々が異なる抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに結合する少なくとも2つの抗原結合ドメイン(例えば、scFvおよび/または単一ドメイン抗体)で構成される単一のCAR分子である(例えば、US2018/0230225を参照されたい)。例えば、二重特異性CARは、各々が異なる抗原に結合する2つの抗原結合ドメインを有する単一のCAR分子を指す。バイシストロン性のCARは、各々が、異なる抗原に結合する抗原結合部分を含有する2つの完全なCAR分子を指す。一部の例では、バイシストロン性CAR構築物は、切断リンカーによって連結される2つの完全なCAR分子を発現する。二重特異性またはバイシストロン性CARを発現するT細胞は、結合部分が向けられる抗原の両方を発現する細胞に結合することができる(例えば、Qin et al., Blood 130:810, 2017;およびWO/2018/213337を参照されたい)。これらのCARのいずれも、本明細書に記載される方法によって使用することができる。
【0029】
相補性:核酸が、従来のワトソンクリック塩基対形成または他の非従来タイプのいずれかによって、別の核酸配列と水素結合(複数可)を形成する能力。パーセント相補性は、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソンクリック塩基対形成)を形成することができる核酸分子中の残基のパーセンテージ(例えば、10個中5、6、7、8、9、および10個はそれぞれ、50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補的である)を示す。
【0030】
一部の実施形態では、本開示の核酸分子(例えば、本開示のgRNAまたはRNAi)は、標的核酸とハイブリダイズし、このように核酸分子は、標的配列と相補的である。例えば、一部の例では、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なRNAiまたはgRNAは、標的遺伝子、例えばSlc16a11の固有の部分と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%相補的である。一部の例では、標的配列は、少なくとも10連続ヌクレオチド、例えば、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40連続ヌクレオチドである。さらなる例では、標的配列は、10~50連続ヌクレオチド、例えば、12~40、12~30、12~20、12~15、15~30、15~20、20~30、または20~40連続ヌクレオチドである。一部の例では、標的化配列は、Slc16a11遺伝子または転写物における約20ヌクレオチド長の配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%相補的である。
【0031】
対照:参照標準。一部の実施形態では、対照は、陰性対照である。他の実施形態では、対照は陽性対照である。一部の例では、好適な対照は、歴史的対照または標準的な参照値もしくは値の範囲(例えば、以前に試験した対照試料、例えば既知の予後もしくは転帰を有する疾患もしくは状態、例えばがんと診断された患者の群、またはベースラインもしくは正常値を表す試料の群)である。一部の例では、対照は、作用剤(例えば、本開示の改変PBMC)による処置を受けていないもしくは代替処置を受けている対象、または作用剤による処置の前の対象のベースライン読み取り値であり得る。
【0032】
試験試料と対照の間の差は、増加であり得るか、または逆に減少であり得る。差は、定性的な差または定量的な差、例えば統計学的に有意な差であり得る。一部の例では、差は、対照と比較した増加、例えば少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、または少なくとも約500%の増加である。他の例では、差は、対照と比較した減少、例えば少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または少なくとも約100%の減少である。
【0033】
CRISPR/Cas9系:外来遺伝子エレメント、例えばプラスミドおよびファージに対する抵抗性を付与し、ある形態の獲得免疫を提供する原核細胞免疫系。内因性の系では、トランス活性化crRNA(tracrRNA)は、CRISPR RNA(crRNA)として公知の別のRNA分子のリピート配列とハイブリダイズして、Cas9エンドヌクレアーゼに結合する固有の二重RNAハイブリッド構造を形成し、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を形成する。crRNAは、CRISPR/Cas9 RNP複合体を標的へとガイドする、標的遺伝子と相補的な標的化配列を含有する。次に、Cas9は、標的遺伝子において二本鎖DNA切断を誘導する。CRISPR/Cas9系を使用して、例えばSlc16a11などの標的遺伝子を標的にして該標的遺伝子における二本鎖DNA切断を誘導することによって、遺伝子発現を減少させることができる。同様に、CRISPR/Cas13系を使用してRNAを切断することができる。
【0034】
有効量:有益なまたは所望の結果を引き起こすために十分である作用剤(例えば、改変PBMC、RNAi、gRNA、または本明細書に開示される他の組成物)の量。有効量(治療有効量とも呼ばれる)は、処置される対象および疾患状態、対象の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与様式などの1つまたは複数に応じて変化し得るが、これらは当業者によって容易に決定することができる。有益な治療効果は、診断の決定を可能にすること;疾患、症状、障害、または病態の回復;疾患、症状、障害、または状態の発症を低減または防止すること;および一般的に疾患、症状、障害、または病態に対抗することを含み得る。
【0035】
一実施形態では、治療剤(例えば、本明細書に開示される改変PBMC)の「有効量」は、腫瘍の体積/サイズ、腫瘍の重量、転移の数、転移の体積/サイズ、転移の重量、またはその組合せを、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%(好適な対照、例えば治療剤を投与していない対照と比較して)低減させるために十分な量である。一実施形態では、治療剤(例えば、本明細書に開示されるgRNAまたはsiRNA)の「有効量」は、標的(例えば、MCT11)の活性または発現を、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには100%低減させるために十分な量である(好適な対照、例えば治療剤を投与する前の発現または活性と比較して)。一部の例では、これらの効果の組合せが達成される。
【0036】
ガイドRNA(gRNA):標的核酸配列、例えば標的DNA(例えば、ゲノム配列)または標的RNA配列にCRISPR/Casリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を向かわせるCRISPR/Cas系のRNA構成要素。gRNA分子は、(1)標的核酸との配列相補性を有する部分(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の配列相補性)、および(2)Casヌクレアーゼに結合する二次構造を有する部分を含む。そのような部分は、同じ分子(例えば、sgRNA:crRNAおよびtracrRNAを組み合わせて単一のRNA転写物にする合成キメラ)の一部であってもよく、または2つもしくはそれより多くの個別の分子(例えば、crRNAおよびtracrRNAが個別のRNA転写物である2部のgRNA)に分割してもよい。単純にするために、両方のタイプの分子を、本明細書においてgRNAと呼ぶ。
【0037】
CRISPR/Cas系を使用するゲノム編集のための多くの技術が記載されている。簡単に説明すると、gRNAは、Cas DNAヌクレアーゼ(そのようなCas9)を標的遺伝子(DNA)に向ける。次に、Cas9は、標的部位で二本鎖切断を導入する。破壊変異を、切断DNAの非相同末端結合を通して導入することができる。Cas9をまた使用して、例えば個別の部位を標的とする2つのgRNAを使用して、このように、2つの切断部位の間の介在配列の欠失を引き起こすことによってより大きいDNA断片を欠失させることができる。標的部位に対して相同性を有するDNA鋳型をまた付加して、相同組換えDNA修復機構を使用して挿入を導入することができる。
【0038】
RNA編集では、gRNAは、Cas RNAヌクレアーゼ(そのようなCas13d)を標的RNAに向ける。1つのそのような例では、gRNAは、例えばCas13a、Cas13c、およびCas 13dヌクレアーゼの場合、5’から3’に(1)ダイレクトリピート(DR)領域を含有するcrRNA、および(2)スペーサーを含む。一例では、DRの約36ヌクレオチドの後に約28~32ヌクレオチドのスペーサー配列を含む。別のそのような例では、gRNAは、例えばCas13bヌクレアーゼの場合、5’から3’に、(1)スペーサー、および(2)DR領域を含有するcrRNAを含む。一部の例では、gRNAは、Cas RNAヌクレアーゼまたは他のRNaseにより、より短い「成熟」型へとプロセシング(トランケート/改変)される。DRは、Cas RNAヌクレアーゼタンパク質とgRNAの間の相互作用を容易にする二次構造を含有するsgRNAの定常部分である。スペーサー部分は、gRNAの可変部分であり、標的RNA配列とハイブリダイズする(および一部の例では標的RNA配列を編集する)ように設計された配列を含む。一部の例では、全長のスペーサーは、約28~32ヌクレオチド(例えば、30~32ヌクレオチド)長であるが、成熟(プロセシングされた)スペーサーは、約14~30ヌクレオチドである。
【0039】
gRNAの標的化部分を改変して、目的の任意のDNAまたはRNA配列の標的化を容易にすることができる。(CRISPR-Cas9 Structures and Mechanisms. Fuguo Jiang and Jennifer A. Doudna, Annual Review of Biophysics, 46:1, 505-529 (2017)を参照されたい)。標的に対して「特異的」であるgRNAは、標的に結合し、他の無関係な配列と有意にハイブリダイズしないように標的配列との十分な相補性を有する。gRNAの標的化配列は、典型的に約20ヌクレオチド、例えば、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、または約25ヌクレオチドである。標的化配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアライメントアルゴリズムを使用して最適に整列させた場合、約50%もしくはそれより高い、約60%もしくはそれより高い、約75%もしくはそれより高い、約80%もしくはそれより高い、約85%もしくはそれより高い、約90%もしくはそれより高い、約95%もしくはそれより高い、約97.5%もしくはそれより高い、約98%もしくはそれより高い、約99%もしくはそれより高い、またはそれより高い。一部の実施形態では、相補性の程度は100%である。最適なアライメントは、配列を整列させるための任意の好適なアルゴリズムの使用によって決定され得、その非限定的な例としては、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで入手可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで入手可能)が挙げられる。一部の例では、標的化配列は、Slc16a11遺伝子または転写物における約20ヌクレオチド長の連続するアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%相補的である。
【0040】
免疫療法:疾患、例えばがんを処置するために免疫系を刺激または抑制する作用剤を使用する療法。がん免疫療法の一部の例としては、免疫チェックポイント阻害剤、養子細胞移入(ACT)免疫療法、抗体、ワクチン、および免疫系モジュレーターが挙げられる。特定の非限定的な例としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、およびイピリムマブが挙げられる。
【0041】
増加または減少:対照値(例えば、治療剤なしを表す値)からの量のそれぞれ、正または負の変化。増加は、対照値と比較して正の変化、例えば少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、または少なくとも500%の増加である。減少は、対照値と比較して負の変化、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の減少である。一部の例では、増加または減少は、好適な対照と比較して統計学的に有意である。
【0042】
遺伝子(例えば、Slc16a11)または遺伝子産物(例えば、MCT11)の発現または活性を減少させる作用剤(例えば、本明細書に開示されるSlc16a11に対して特異的なRNAiまたはgRNA)は、細胞もしくは組織(例えば、PBMC)における遺伝子によってコードされるmRNAもしくは機能的産物のレベルを低減させる、または遺伝子産物の1つもしくは複数の活性を低減させる(除去するまたは阻害することを含む)化合物である。一部の実施形態では、Slc16a11の発現は、対照、例えば無処置対象または細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、またはさらには100%低減される。逆に、遺伝子または遺伝子産物の発現または活性を増加させる作用剤は、細胞もしくは組織における遺伝子によってコードされるmRNAもしくはタンパク質産物のレベルを増加させる、または遺伝子産物の1つもしくは複数の活性を増加させる化合物である。
【0043】
一部の実施形態では、作用剤(例えば、本明細書に開示されるSlc16a11に対して特異的なRNAiまたはgRNA)、または天然に存在しない遺伝子改変は、それがPBMCに存在する場合、PBMC(例えば、T細胞)の活性を増加または減少させることができる。例えば、一部の実施形態では、PBMCは、T細胞であり、作用剤(例えば、本明細書に開示されるSlc16a11に対して特異的なRNAiまたはgRNA)または遺伝子改変(本明細書に開示されるように、Slc16a11の発現を低減させる点変異、部分的欠失、完全な欠失、または挿入)は、好適な対照(例えば、処置前の測定値または無処置対照群との比較)と比較してT細胞疲弊を、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%低減させる。T細胞疲弊の減少は、例えば、好適な対照と比較した、乳酸取り込みの減少、PD-1もしくはTim3の発現の減少、サイトカイン産生(例えば、INF-γ、TNFα、またはIL-2)の増加、細胞傷害活性の増加(例えば、腫瘍特異的標的化または殺滅の増加)、またはT細胞エフェクター活性の別の指標を測定することによって測定することができる。一部の例では、これらの効果の組合せが達成される。
【0044】
一部の実施形態では、作用剤(例えば、本明細書に開示されるSlc16a11に対して特異的なRNAiまたはgRNA)または遺伝子改変(本明細書に開示されるように、Slc16a11の発現を低減させる点変異、部分的欠失、完全な欠失、または挿入)は、PBMCの活性または機能を増加させる。例えば、一部の例では、PBMCはT細胞であり、作用剤は、好適な対照(例えば、処置前の測定値または無処置対照群との比較)と比較して、T細胞の活性またはエフェクター機能を少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、または少なくとも500%増加させることができる。T細胞のエフェクター機能の増加は、例えば、好適な対照と比較した、乳酸取り込みの減少、PD-1もしくはTim3の発現の減少、サイトカイン産生(例えば、INF-γ、TNFα、またはIL-2)の増加、細胞増殖の増加(in vitroまたはin vivoでの増大)、または細胞傷害活性の増加(例えば、腫瘍特異的標的化または殺滅の増加)によって、あるいはエフェクター機能の別の指標によって測定することができる。一部の例では、これらの効果の組合せが達成される。
【0045】
単離された:「単離された」生物学的構成要素(例えば、細胞、PBMC、核酸、タンパク質)は、構成要素が存在する生物の細胞または組織、例えば他の細胞(例えば、RBC)、染色体および染色体外DNAおよびRNA、ならびにタンパク質中の他の生物学的構成要素から実質的に分離されている、それとは別に産生されている、または精製されている。「単離」されている核酸およびタンパク質は、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質を含む。用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質ならびに化学合成された核酸およびタンパク質も包含する。例えば、患者の血液、腫瘍、または他の試料から単離されたPBMCまたはTILは、少なくとも50%純粋、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより高く純粋である。
【0046】
作動可能に連結された:第1の核酸配列が、第2の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている(例えば、本明細書に開示されるsiRNAまたはgRNAをコードする異種核酸配列の発現を駆動するプロモーター)。一般的に、作動可能に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合は、同じ読み取り枠に存在する。
【0047】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1):免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、T細胞およびプロB細胞において発現される細胞表面受容体。PD-1は、2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合する。ヒト型は、268アミノ酸の1型膜貫通タンパク質である。PD-1は、T細胞活性を抑制し、T細胞疲弊を媒介する阻害性受容体である。PD-1配列は、例えばGenBank(登録商標)配列データベースで公開されている(例えば、受託番号NP_005009.2(成熟ペプチドは、アミノ酸21~288である)、CAA48113.1、NP_001301026.1(成熟ペプチドは、アミノ酸25~288である)、およびCAA48113.1(成熟ペプチドは、アミノ酸21~288である)は、例示的なPD-1タンパク質配列を提供し、受託番号L27440.1、NM_005018.2、X67914.1、AB898677.1、およびEU295528.2は、例示的なPD-1核酸配列を提供する)。
【0048】
薬学的に許容される担体:本発明において有用な薬学的に許容される担体は通常通りである。Remington's Pharmaceutical Sciences, 23rd Edition, Academic Press, Elsevier, (2020)は、治療剤、例えば本明細書に開示される改変PBMCの薬学的送達にとって好適な組成物および製剤を記載している。
【0049】
一般的に、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例として、非経口製剤は通常、薬学的および生理学的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、5%ヒト血清アルブミン、グリセロールなどを媒体として含む注射可能流体を含む。生理的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、少量の、非毒性の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム、またはモノラウリン酸ソルビタンを含有し得る。補助活性化合物もまた、組成物に組み入れることができる。
【0050】
プロモーター:核酸の転写を指示する一群の核酸制御配列。プロモーターは、転写の開始部位付近に必要な核酸配列、例えばポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントを含む。プロモーターはまた、必要に応じて転写開始部位から数千塩基対もの位置に存在し得る遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含む。
【0051】
プロモーターの例としては、これらに限定されないが、SV40プロモーター、CMVエンハンサー-プロモーター、CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーター、EF1aプロモーター、またはPGKプロモーターが挙げられる。一例では、gRNAの発現は、ポリメラーゼIIIプロモーター、例えばU6またはH1、例えばヒトまたはマウスU6またはH1プロモーターによって駆動される。構成的および誘導性プロモーターの両方が含まれる(例えば、Bitter et al., Methods in Enzymology 153:516-544, 1987を参照されたい)。同様に、プロモーター依存的遺伝子発現を、細胞タイプ特異的、組織特異的に制御可能にするため、または外部シグナルもしくは作用剤によって誘導可能にするために十分であるそれらのプロモーターエレメントも含まれる;そのようなエレメントは、遺伝子の5’または3’領域に位置し得る。組換えDNAまたは合成技術によって産生されたプロモーターもまた使用して、核酸配列の転写を用意することができる。
【0052】
防止する:状態を防止することは、状態の完全な発生を低減する、遅らせる、または阻害すること、例えばT細胞の疲弊T細胞への進行を防止する、低減する、または遅らせることを指す。一例では、Slc16a11発現を低減させる作用剤、または機能的MCT11の量を低減させる天然に存在しない遺伝子改変は、PBMC、そのようなT細胞、例えばCARまたはTCRに存在する場合、細胞が疲弊する可能性を防止もしくは低減する(例えば、T細胞がプログラム細胞死1を過剰発現する(PD1hi)および/もしくはT細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン含有タンパク質3陽性となる(TIM3)可能性を防止もしくは低減する、または細胞の疲弊状態への進行を遅らせ得る。一部の例では、本開示の改変PBMC、例えば改変T細胞は疲弊しない。一部の例では、本開示の改変PBMC、例えば改変T細胞は、非改変PBMCまたはT細胞と比較して疲弊の低減、例えば少なくとも10%(least 10%)、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%の低減を示す。一部の例では、本開示の改変PBMC、例えば改変T細胞は、非改変PBMCまたはT細胞と比較して、疲弊へのより遅い進行、例えば疲弊までの日数の少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の増加を示す。
【0053】
RNA干渉または干渉RNA(RNAi):細胞およびウイルス遺伝子を含む遺伝子の発現を阻害する細胞プロセス。RNAiは、RNA転写物の配列特異的低減をもたらす、二本鎖RNA様オリゴヌクレオチドの導入を伴うアンチセンス媒介遺伝子サイレンシングの形態である。RNAi経路を通して遺伝子発現を阻害するRNA分子は、siRNA、miRNA、gRNA、およびshRNAを含み得る。一例では、RNAiは、Slc16a11に対して特異的であり、Slc16a11核酸分子と特異的にハイブリダイズすることができる。
【0054】
配列同一性:アミノ酸またはヌクレオチド配列間の類似性は、配列間の類似性に関して表記されるか、そうでなければ配列同一性と呼ばれる。配列同一性はしばしば、パーセンテージ同一性(または類似性または相同性)に関して測定される。パーセンテージが高ければ、2つの配列はより類似である。ポリペプチド(またはヌクレオチド配列)のホモログは、標準的な方法を使用して整列させた場合に、比較的高い程度の配列同一性を有する。
【0055】
比較のための配列のアライメントの方法は記載されている。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482, 1981;Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970;Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444, 1988;Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988;Higgins and Sharp, CABIOS 5:151, 1989;Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988;およびPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994は、配列アライメント方法および相同性計算の詳細な検討事項を提示している。
【0056】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxに関連して使用するために、National Center for Biotechnology Information(NCBI、Bethesda、MD)およびインターネットを含むいくつかの起源から入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明は、インターネット上のNCBIウェブサイトで利用可能である。
【0057】
低分子ヘアピンRNA(shRNA):堅固なヘアピンターンを作製し、RNAi経路を介して遺伝子発現を沈黙させるために使用することができるRNAの配列。shRNAヘアピン構造は、細胞機構によってsiRNAへと切断される。標的配列(例えば、Slc16a11)に対して「特異的」であるshRNAは、それが標的に結合し、他の無関係な配列と有意にハイブリダイズしないように標的配列との十分な相補性を有する。
【0058】
溶質担体ファミリー16メンバー11(Slc16a11)およびモノカルボン酸トランスポーター11(MCT11):Slc16a11は、MCT11タンパク質をコードする遺伝子である。MCT11は、モノカルボキシレート、例えば乳酸を輸送し得る最近特徴付けられた輸送タンパク質である。配列番号1は、MCT11の例示的なアミノ酸配列を開示する。配列番号2は、Slc16a11の例示的な核酸配列を開示する。MCT11/Slc16a11の配列は公開されており、例えばUniProt受託番号Q8NCK7を参照されたく、GenBank受託番号KJ900348.1、NM_153081.3、NM_153357.3、およびNM_001370549.1は、例示的なSlc16a11核酸配列を提供し、GenBank受託番号NP_001357478.1、NP_694721.2およびNP_001099267.2は、例示的なMCT11タンパク質配列を提供する。一例では、MCT11タンパク質は、配列番号1、GenBank受託番号NP_001357478.1、NP_694721.2、もしくはNP_001099267.2、またはUniProt受託番号Q8NCK7の配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。一例では、Slc16a11核酸分子は、配列番号2、GenBank受託番号KJ900348.1、NM_153081.3、NM_153357.3、もしくはNM_001370549.1、またはUniProt受託番号Q8NCK7の配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0059】
低分子干渉RNA(siRNA):RNAi経路を通して遺伝子発現をモジュレートする二本鎖核酸分子。siRNA分子は、一般的に15~40ヌクレオチド長、例えば20~30または20~25ヌクレオチド長であり、0~5(例えば、2)ヌクレオチドのオーバーハングが各3’末端に存在する。しかし、siRNAはまた、平滑末端でもあり得る。一般的にsiRNA分子の1つの鎖は、標的核酸、例えば標的mRNAと少なくとも部分的に相補的である。siRNAはまた、「低分子阻害性RNA」とも呼ばれる。標的配列(例えば、Slc16a11)に対して「特異的」であるsiRNAは、それが標的に結合し、他の無関係な配列と有意にハイブリダイズしないように標的配列との十分な相補性を有する。
【0060】
低分子阻害剤:典型的に、約1000ダルトン未満、または一部の実施形態では、約500ダルトン未満の分子量を有する分子であって、標的分子(例えば、MCT11)の活性を何らかの測定可能な程度にモジュレートすることが可能である分子。一部の例では、低分子阻害剤は、MCT阻害剤(例えば、7ACC1、AR-C155858、UK5099、SR13800、CHC、AR-C141990塩酸塩、AZD3965、またはBAY8002)である。
【0061】
対象:脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばヒト。哺乳動物は、これらに限定されないが、ネズミ、サル、ヒト、農場動物、競技用動物、およびペットを含む。一実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物対象、例えば猿または他の非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシである。一部の例では、対象は、本明細書に開示される改変PBMCを使用して処置することができるがん(または腫瘍)を有する。一部の例では、対象は、実験動物/生物、例えばマウス、ウサギ、またはラットである。
【0062】
T細胞アゴニスト:T細胞を活性化して抗腫瘍機能を促進する免疫療法。非限定的な例としては、ウレルマブおよびウトミルマブが挙げられる。
【0063】
T細胞:免疫応答の重要なメディエーターである白血球(リンパ球)。T細胞は、これらに限定されないが、CD3 T細胞、CD4 T細胞、およびCD8 T細胞を含む。CD4 T細胞は、「表面抗原分類4」(CD4)としても公知であるその表面上のマーカーを有する免疫細胞である。これらの細胞は、ヘルパーT細胞としても公知であり、抗体応答ならびにキラーT細胞応答を含む免疫応答を調整するために役立つ。CD8 T細胞は、「表面抗原分類8」(CD8)マーカーを有する。一部の例では、CD8 T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。CD3+ T細胞は、「表面抗原分類3」(CD3)マーカー、すなわちT3複合体としても歴史的に公知である多量体タンパク質複合体を有する。
【0064】
活性化T細胞は、細胞増殖の増加、および/または1つもしくは複数のサイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ、またはTNFα)の発現または分泌の増加によって検出することができる。CD8 T細胞の活性化はまた、抗原に応答する細胞溶解活性の増加によっても検出することができる。「疲弊T細胞」は、がんの環境で一般的に見出される機能障害T細胞(低応答性)である。T細胞疲弊は、エフェクター機能の進行性の喪失(例えば、IL-2、TNF-α、およびIFN-γ産生の喪失)ならびに阻害性受容体、例えばPD-1、T細胞免疫グロブリンドメイン-ムチンドメイン含有タンパク質3(Tim-3)、CTLA-4、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、およびCD160の持続的発現によって特徴付けられる。一部の例では、疲弊T細胞は、CD3 T細胞またはCD8 T細胞である。一部の例では、疲弊T細胞は、終末疲弊T細胞(疲弊した最終分化T細胞)である。終末疲弊T細胞は、Tim3を発現し、他のT細胞(Tim3 PD-1hi T細胞)と比較してPD-1の高い永続的発現を有する。Tim3および/またはPD-1hiであるT細胞は、FACs解析、例えばT細胞集団のFACs解析によって決定され得る。一部の例では、終末疲弊T細胞はMCT11を発現する。T細胞疲弊の可能性がある原因は、慢性的な活性化または持続的な抗原刺激である。一部の例では、改変PBMCは、疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む)である。
【0065】
「治療的T細胞」は、治療、例えば免疫療法(例えば、がん免疫療法)に使用されるT細胞である。治療的T細胞は、特定の疾患、例えばがんまたは免疫疾患の処置のために対象に投与される。一部の例では、治療的T細胞は、標的細胞、例えばがん様細胞を認識および殺滅し、それによって疾患、例えばがんを処置する。治療的T細胞は、対象に対して自家または同種異系であり得る。一部の例では、治療的T細胞は、養子細胞移入(ACT)免疫療法に使用されるT細胞である。さらなる例では、治療的T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)もしくは操作されたT細胞受容体(TCR)を発現し、および/または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0066】
T細胞受容体(TCR):主要組織適合抗原複合体(MHC)分子に結合したペプチドとして抗原の断片の認識に関与するTリンパ球(またはT細胞)の表面上に見出される受容体。TCRは、2つの異なるタンパク質鎖で構成される。ヒトでは、T細胞の95%において、TCRは、アルファ(α)およびベータ(β)鎖からなるが、T細胞の5%では、TCRはガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖からなる。この比率は、個体発生の間および疾患状況、ならびに異なる種において変化する。TCRが、抗原ペプチドおよびMHC(ペプチド/MHC)に係合すると、Tリンパ球は、シグナル伝達、すなわち関連する酵素、共受容体、専門のアダプター分子、および活性化または放出された転写因子によって媒介される一連の生化学事象を通して活性化される。一例では、TCRは、組換えTCR、例えばACT療法のためのTCR操作T細胞において使用されるTCRである。
【0067】
治療剤:対象に投与すると何らかの有益な効果を付与する1つまたは複数の分子または化合物を指す。有益な治療効果は、診断の決定を可能にすること;疾患、症状、障害、または病態の回復;疾患、症状、障害、または状態の発症を低減または防止すること;および一般的に疾患、症状、障害、または病態に対抗することを含み得る。
【0068】
形質転換された:形質転換細胞は、その中に核酸分子が分子生物学技術によって導入されている細胞(例えば、PBMC、例えば、T細胞)である。本明細書で使用される場合、形質転換されたという用語など(例えば、形質転換、トランスフェクション、形質導入等)は、ウイルスベクター、プラスミドベクター、核酸-タンパク質複合体(例えば、リボヌクレオタンパク質)、またはネイキッド核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)を含む、核酸分子がそのような細胞に導入され得る全ての技術を包含する。
【0069】
例示的な形質転換方法としては、化学的方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション)、物理的方法(例えば、電気穿孔、マイクロインジェクション、粒子衝突)、融合(例えば、リポソーム)、リポフェクション、ヌクレオフェクション、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、DNA-タンパク質複合体、ウイルスエンベロープ/カプシド-DNA複合体)、粒子銃加速器(遺伝子銃)、およびウイルス、例えば組換えウイルスによる生物学的感染(Wolff, J. A., ed, Gene Therapeutics, Birkhauser, Boston, USA (1994))が挙げられる。レトロウイルスによる感染の場合、感染するレトロウイルス粒子は、標的細胞によって吸収され、レトロウイルスRNAゲノムの逆転写および得られたプロウイルスの細胞DNAへの組み込みをもたらす。
【0070】
処置すること、処置、および治療:任意の客観的または主観的パラメーター、例えば症状の軽減、寛解、減少、または状態を患者により認容性にすること、悪化もしくは低下速度を遅らせること、悪化の最終ポイントの衰弱性を弱めること、対象の身体もしくは精神の幸福を改善すること、または生存期間を延長することを含む、傷害、病理、または状態の減弱または回復における任意の成功または成功の指標。処置は、身体検査、血液、および他の臨床検査の結果などを含む、客観的または主観的パラメーターによって評価され得る。一部の例では、本開示の方法による処置は、腫瘍および/または転移の数、体積、および/または重量の減少をもたらす。
【0071】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL):腫瘍組織に侵入するリンパ球。例えば、腫瘍試料内に見出されるT細胞。ACT療法において、TIL療法は一般的に、患者の腫瘍からTILを単離すること、培養中でTILを活性化および増大させること、ならびに次に患者に再灌流することを伴う。一部の例では、本明細書に開示される改変PBMCはTILである。
【0072】
腫瘍、新形成、または悪性疾患:新生物は、過度の細胞分裂に起因する組織または細胞の異常な成長である。新生物の成長は、腫瘍を生じ得る。個体における腫瘍の量は、「腫瘍量」であり、これは、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる。「非がん様組織」は、悪性新生物が形成されたが、新生物の特徴的な病理を有しない同じ臓器に由来する組織である。一般的に、非がん様組織は組織学的に正常に見える。「正常組織」は、がんにもその臓器の別の疾患または障害にも罹患していない臓器からの組織である。「がんを有しない」対象は、その臓器のがんと診断されておらず、検出可能ながんを有しない。
【0073】
本開示の改変PBMCを使用して処置することができる例示的な腫瘍、例えばがんとしては、固形腫瘍、例えば乳癌(例えば、小葉癌および乳管癌、例えばトリプルネガティブ乳がん)、肉腫、肺の癌(例えば、非小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌、および腺癌)、肺の中皮腫、結腸直腸腺癌、胃癌、前立腺腺癌、卵巣癌(例えば、漿液性嚢胞腺癌および粘液性嚢胞腺癌)、卵巣胚細胞腫瘍、精巣癌および胚細胞腫瘍、膵腺癌、胆管腺癌、肝細胞癌、膀胱癌(例として、移行上皮癌、腺癌、および扁平上皮癌を含む)、腎細胞腺癌、子宮内膜癌(例えば、腺癌およびミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)を含む)、子宮頸内膜、子宮頸外膜、および膣の癌(例えば、それらの各々の腺癌および扁平上皮癌)、皮膚の腫瘍(例えば、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、皮膚付属器腫瘍、カポジ肉腫、皮膚リンパ腫、皮膚付属器の腫瘍ならびに様々なタイプの肉腫およびメルケル細胞癌)、食道癌、鼻咽頭および中咽頭の癌(それらの扁平上皮癌および腺癌を含む)、唾液腺癌、脳および中枢神経系の腫瘍(例えば、グリア起源、ニューロン起源、および髄膜起源の腫瘍を含む)、末梢神経の腫瘍、軟部組織肉腫、ならびに骨および軟骨の肉腫、頭頸部扁平上皮癌、ならびにリンパ腫瘍(B細胞およびT細胞悪性リンパ腫を含む)が挙げられる。一例では、腫瘍は黒色腫である。一例では、腫瘍は頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、例えば、HPV陽性HNSCCである。
【0074】
本開示の改変PBMCはまた、液性腫瘍、例えばリンパ、白血球の腫瘍、または白血病の他のタイプを処置するためにも使用することができる。特定の例では、処置される腫瘍は、血液の腫瘍、例えば白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、および成人T細胞白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、または骨髄腫である。
【0075】
ベクター:宿主細胞に導入され(例えば、トランスフェクションまたは形質転換によって)、それによって形質転換宿主細胞(例えば、形質転換PBMC)を産生することができる核酸分子。組換えDNAベクターは、組換えDNAを有するベクターである。ベクターは、宿主細胞においてそれが複製することを許容する核酸配列、例えば複製開始点を含み得る。ベクターはまた、1つまたは複数の選択可能マーカー遺伝子および他の遺伝子エレメントも含み得る。ウイルスベクター(例えば、AVV)は、1つまたは複数のウイルスに由来する少なくとも一部の核酸配列を有する組換え核酸ベクターである。複製欠損ウイルスベクターは、少なくとも1つの複製に不可欠な遺伝子機能の欠如により、複製にとって必要なウイルスゲノムの1つまたは複数の領域の相補を必要とするベクターである。
【0076】
概説
免疫療法、中でも注目すべきはチェックポイント受容体の遮断ならびに操作された腫瘍特異的T細胞の治療のための使用により、がんの処置の模範は変化している。しかし、これらのモダリティの有効性を制限する潜在的要因は、T細胞疲弊の発生、すなわちT細胞のより機能障害状態への代替的分化である。疲弊は、T細胞が免疫療法に応答する能力を制限する。疲弊したT細胞はまた、それらの機能を制限する別個の代謝プロファイルも有する。例えば、それらは、グルコースに関する競合が不良であり、新規ミトコンドリアの生成を抑制する。しかし、これらの細胞は、腫瘍微小環境において存続し、このためにこれらの細胞を支持するある特定の代謝経路または代謝物が、抗腫瘍機能を妨害し得る。
【0077】
本明細書において、終末疲弊T細胞は、MCT11発現を特異的に上方調節することが示される。終末疲弊T細胞はまた、モノカルボキシレート、例えば乳酸を特異的に取り込むことができる。このことは、MCT11トランスポーターが、終末疲弊T細胞に対する栄養の流れの提供において役割を有することを示している。腫瘍を有するマウスに移入された腫瘍特異的T細胞におけるMCT11活性の欠如は、T細胞機能の増加および疲弊の減少をもたらした。さらに、腫瘍特異的T細胞におけるMCT11の過剰発現は、疲弊した機能障害表現型の発生を加速させた。このように、いかなる特定の理論にも拘束されないが、MCT11は、おそらく、疲弊T細胞のエフェクター機能を制限し得る乳酸の取り込みを支持する。このように、T細胞におけるMCT11機能または発現を低減または除去することを使用して、エフェクター活性を増加させるおよび/またはT細胞疲弊を減少させる、例えばがん治療において使用されるT細胞の疲弊を防止することができる。このように、一部の例では、MCT11発現および/または活性が低減または除去された本開示の改変T細胞を、ex vivoで生成し、T細胞が疲弊する能力を防止または遅らせ、改変細胞は、免疫療法のためにがんを有する対象に投与され得る。そのような治療におけるPBMC、例えば治療的T細胞の使用は、より強力な免疫応答およびより良好ながんの処置を提供することができる。
【0078】
I. RNAiおよびgRNA
本明細書において、Slc16a11(SLC16A11)に対して特異的な干渉RNA(RNAi)またはガイド核酸(gRNA)を開示する。RNAiまたはgRNAは、Slc16a11核酸分子、例えば遺伝子または転写物を標的として、Slc16a11の発現を低減させる。一部の例では、RNAiまたはgRNAは、細胞、例えばPBMC、T細胞、または疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む)に導入される。一部の例では、RNAiまたはgRNA分子は、例えばオリゴヌクレオチドとして細胞に直接導入される。一部の例では、RNAiまたは(of)gRNA分子は、細胞に導入されたベクターから発現される。ガイドRNAが発現される(例えば、発現カセットまたはベクターから)例では、ガイドRNAは、DNAとしてコードされ得る。
【0079】
一部の実施形態では、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なRNAiを使用して、Slc16a11の発現を低減または阻害する。Slc16a11に対するRNAiの特異性により、Slc16a11 DNAまたはRNAとのRNAi分子のハイブリダイゼーションが可能となり、それによってSlc16a11発現を低減または阻害する。RNAiは、総称的に、転写および/または翻訳を阻害することによって遺伝子の発現を阻害する細胞プロセスを指す。RNAi経路を通して遺伝子発現を阻害する分子は、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA、およびshRNAを含む。一部の例では、Slc16a11に対して特異的なRNAiは、Slc16a11遺伝子または転写物の固有の(例えば、RNAiが導入される細胞または生物のゲノムにはどこにも見出されない)連続部分(例えば、配列番号2の一部分)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%相補的である配列を含む。一部の例では、Slc16a11に対して特異的なRNAiは、Slc16a11遺伝子または転写物の固有の連続部分(例えば、配列番号2の一部分)と少なくとも90%相補的(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%相補的)である配列からなる。
【0080】
特定の非限定的な例では、RNAiは、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なshRNAである。shRNAを設計する方法が記載されており、例えばその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Moore et al. (2010) Short Hairpin RNA (shRNA): Design, Delivery, and Assessment of Gene Knockdown, Methods Mol. Biol., 629:141-158を参照されたい。一部の例では、shRNAは、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列の固有の連続部分に対して特異的である。一部の例では、shRNAは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する配列の固有の連続部分に対して特異的である。
【0081】
一部の例では、shRNAは、配列番号4のヌクレオチド5~25と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する標的化配列を含む。一部の例では、shRNAは、配列番号4のヌクレオチド5~25と少なくとも95%の配列同一性を有する標的化配列を含む。一部の例では、shRNAは、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。例えば、shRNAは、配列番号4と少なくとも95%の配列同一性を有し得る。一部の例では、shRNAは、配列番号4を含むかまたはからなる。
【0082】
他の例では、RNAiは、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なsiRNAであり、例えばsiRNAは、配列番号2の固有の連続部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列に対して特異的である。例えば、siRNAは、配列番号2の固有の連続部分と少なくとも95%の配列同一性を有する配列に対して特異的であり得る。
【0083】
一部の実施形態では、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なgRNAを使用して、Slc16a11の発現を低減または阻害する。例えば、CRISPR/Cas方法を、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なgRNAと共に使用して、Slc16a11の発現を低減または阻害することができる。Slc16a11に対するgRNAの特異性を、Casヌクレアーゼまたは不活性型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9、dCas9、dCas13d、またはCas13d)と組み合わせると、Slc16a11 DNAまたはRNAとのgRNA分子のハイブリダイゼーションを可能にし、それによってSlc16a11を編集し(例えば、それを変異させ、例えばそれをノックダウンまたはノックアウトして)、その発現を低減または阻害する。一部の例では、Casヌクレアーゼ(または不活性型Casヌクレアーゼ)配列は、宿主細胞における発現に関してコドン最適化されている。一部の例では、gRNA分子およびCasヌクレアーゼは、宿主細胞(例えば、PBMC、T細胞、または疲弊T細胞)に導入されたベクターから発現される。一部の例では、gRNA分子およびCasヌクレアーゼを含有するRNP複合体は、細胞(例えば、PBMC、T細胞、または疲弊T細胞)に導入される。一部の例では、gRNAは、例えばオリゴヌクレオチドとして細胞に導入される。
【0084】
一部の例では、gRNAは、Slc16a11(SLC16A11)遺伝子または転写物に対して特異的である。例えば、gRNAは、配列番号2の固有の連続部分と70%(at 70%)、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列に対して特異的である。一部の例では、gRNAは、配列番号2の固有の連続部分と少なくとも90%の配列同一性を有する配列に対して特異的である。一部の例では、gRNAは、例えば、配列番号2の固有の連続部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である標的化配列を有することによって、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的な標的化配列(時にスペーサーと呼ばれる)を含む。gRNAの標的化配列は、典型的に約20ヌクレオチド、例えば、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、または約25ヌクレオチドである。特定の非限定的な例では、標的化配列は約20ヌクレオチドである。標的化配列とその対応する標的配列の間の相補性の程度は、好適なアライメントアルゴリズムを使用して最適に整列させた場合、約50%もしくはそれより高い、約60%もしくはそれより高い、約75%もしくはそれより高い、約80%もしくはそれより高い、約85%もしくはそれより高い、約90%もしくはそれより高い、約95%もしくはそれより高い、約97.5%もしくはそれより高い、約98%もしくはそれより高い、約99%もしくはそれより高い、またはそれより高い。一部の実施形態では、相補性の程度は、約100%である。最適なアライメントは、配列を整列させるための任意の好適なアルゴリズムの使用によって決定され得、その非限定的な例としては、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで入手可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで入手可能)が挙げられる。一部の例では、標的化配列は、Slc16a11遺伝子または転写物における約20ヌクレオチド長の固有の連続するアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%相補的である。
【0085】
一部の例では、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なgRNAは、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する連続配列を含む。一部の例では、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なgRNAは、配列番号3を含む。一部の例では、gRNAの標的化配列部分は、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。一部の例では、gRNAの標的化配列部分は、配列番号3を含むかまたはからなる。
【0086】
一部の例では、gRNAは、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なsgRNAである。一部の例では、sgRNAは、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する連続配列を含む。一部の例では、sgRNAは配列番号3を含む。一部の例では、sgRNAの標的化配列部分は、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。一部の例では、sgRNAの標的化配列部分は、配列番号3を含むかまたはからなる。
【0087】
gRNAを設計して適切な標的化配列を決定する方法は記載されている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hanna and Doench (2020) Design and analysis of CRISPR-Cas experiments, Nature Biotechnology, 38:813-823(2020)を参照されたい)。様々な操作様式に関して最適なgRNAを設計するための、およびそのような実験の結果を解析するためのリソースを含む多数のソフトウェアツールを使用して、CRISPR-Cas実験を設計および分析することができる。検証されたgRNAのオンラインデータベースもまた容易に入手可能である(addgene.org/crispr/reference/grna-sequence/およびgenscript.com/gRNA-database.htmlを参照されたい)。
【0088】
II. 核酸および発現ベクター
RNAi、gRNA、および/またはCasタンパク質をコードする核酸(例えば、異種核酸または単離された核酸分子、例えば、DNA、cDNA、RNA(例えば、mRNA))もまた、本明細書において提供される。核酸は、本明細書に提供される本開示の配列、当技術分野で利用可能な配列、および遺伝子コードを使用して容易に産生することができる。
【0089】
本開示の核酸配列の縮重バリアントもまた、開示される。コード配列におけるサイレント変異は、遺伝子コードの縮重(すなわち、冗長性)に起因し、それによって1つより多くのコドンが同じアミノ酸残基をコードし得る。このように、例えばロイシンは、CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、またはTTGによってコードされ得る;セリンは、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、またはAGCによってコードされ得る;アスパラギンは、AATまたはAACによってコードされ得る;アスパラギン酸は、GATまたはGACによってコードされ得る;システインは、TGTまたはTGCによってコードされ得る;アラニンは、GCT、GCC、GCA、またはGCGによってコードされ得る;グルタミンは、CAAまたはCAGによってコードされ得る;チロシンは、TATまたはTACによってコードされ得る;およびイソロイシンは、ATT、ATC、またはATAによってコードされ得る。
【0090】
特定の種に関するコドン優先性およびコドン使用表を使用して、その特定の種のコドン使用優先性を利用するタンパク質産物、例えばCas9をコードする単離された核酸分子を操作することができる。例えば、核酸を、目的の特定の生物(例えば、改変されるPBMCの起源生物、または核酸を投与される生物)が優先的に使用するコドンを有するように設計することができる。一部の例では、核酸は、ヒトでの発現に関してコドン最適化される。このように、一部の例では、Casヌクレアーゼ(または不活性型ヌクレアーゼ)配列は、ヒトPBMC(例えば、T細胞、疲弊T細胞)における発現に関してコドン最適化される。
【0091】
本開示の核酸は、例えば、適切な配列のクローニングを含む任意の好適な方法によって、または標準的な方法による直接化学合成によって調製することができる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。これを、相補配列とのハイブリダイゼーション、または鋳型として一本鎖を使用するDNAポリメラーゼによる重合によって二本鎖DNAに変換することができる。
【0092】
核酸配列は、例えば、適切な配列のクローニングを含む任意の好適な方法を使用して、またはNarang et al., Meth. Enzymol. 68:90-99, 1979のホスホトリエステル方法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109-151, 1979のホスホジエステル方法;Beaucage et al., Tetra. Lett. 22:1859-1862, 1981のジエチルホスホラミダイト方法;Beaucage & Caruthers, Tetra. Letts. 22(20):1859-1862, 1981によって記載され、例えば、Needham-VanDevanter et al., Nucl. Acids Res. 12:6159-6168, 1984に記載される自動シンセサイザーを使用する固相ホスホラミダイトトリエステル方法;および米国特許第4,458,066号の固相支持法などの方法による直接化学合成によって調製することができる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。これを、相補配列とのハイブリダイゼーション、または鋳型として一本鎖を使用するDNAポリメラーゼによる重合によって二本鎖DNAに変換することができる。当業者は、DNAの化学合成が一般的に約100塩基の配列に限定されるが、より短い配列のライゲーションによってより長い配列が得られ得ることを認識するであろう。
【0093】
本開示の核酸は、クローニング技術によって調製することができる。適切なクローニングおよびシーケンシング技術の例は、例えばGreen and Sambrook (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2012)およびAusubel et al. (Eds.)(Current Protocols in Molecular Biology, New York: John Wiley and Sons、補遺を含む)に見出され得る。核酸はまた、増幅法によっても調製することができる。増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自家持続配列複製系(3SR)、およびQβレプリカーゼ増幅系(QB)を含む。広く多様なクローニングおよびin vitro増幅方法論が当業者に公知である。
【0094】
一部の実施形態では、本開示の核酸は、宿主、または特に標的細胞(例えば、PBMC、T細胞、または疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む))における発現のために発現ベクター(例えば、ウイルスベクター、プラスミド、または他の媒体)に含まれる。一部の例では、発現ベクターは、本開示の核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。例えば、プロモーターを、RNAi、gRNA、またはCasヌクレアーゼ(または不活性型ヌクレアーゼ)に作動可能に連結して、その発現を駆動することができる。一部の例では、ベクターは、Casヌクレアーゼ(または不活性型ヌクレアーゼ)およびgRNAの両方をコードする。追加の発現制御配列、例えば1つまたは複数のエンハンサー、転写および/または翻訳ターミネーター、ならびに開始配列もまた、発現ベクターに含めることができる。一部の実施形態では、本開示の核酸は、ウイルスベクターに含まれる。使用することができる例示的なウイルスベクターとしては、これらに限定されないが、ポリオーマ、SV40、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、HSVおよびEBVを含むヘルペスウイルス、シンドビスウイルス、アルファウイルス、ならびに鳥類、ネズミ、およびヒト起源のレトロウイルスが挙げられる。バキュロウイルス(Autographa californica多核多角体病ウイルス;AcMNPV)ベクターもまた、使用することができる。他の好適なベクターは、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、レンチウイルスベクター、アルファウイルスベクター、およびポリオウイルスベクターを含む。特定の例示的なベクターは、ポックスウイルスベクター、例えばワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、および高度弱毒化ワクシニアウイルス(MVA)、アデノウイルス、バキュロウイルスなどである。使用されるポックスウイルスは、オルソポックス、スイポックス、アビポックス、およびカプリポックスウイルスを含む。オルソポックスは、ワクシニア、エクトロメリア、およびラクーンポックスを含む。使用されるオルソポックスの一例は、ワクシニアである。アビポックスは、鶏痘、カナリア痘、および鳩痘を含む。カプリポックスは、ヤギ痘およびヒツジ痘を含む。一例では、スイポックスは、豚痘である。使用することができる他のウイルスベクターは、他のDNAウイルス、例えばヘルペスウイルスおよびアデノウイルス、ならびにRNAウイルス、例えばレトロウイルスおよびポリオを含む。細胞(例えば、PBMC、T細胞、または疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む))における発現および複製が可能な生物学的に機能的なウイルスおよびプラスミドDNAベクターは、公知であり、当業者は、好適なベクターを同定することができる。一部の例では、ベクターは、選択可能マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ピューロマイシン)またはレポーター遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP))を含む。他の例では、選択可能マーカーおよび/またはレポーターは、ベクターに含まれない。
【0095】
本開示の核酸を、DNA移入によって宿主細胞に導入することができ(例えば、オリゴヌクレオチド)、または好適な宿主細胞に導入および発現させることができる(例えば、発現カセットまたはベクター)。一部の例では、発現産物は、RNA(例えば、siRNAまたはgRNA)であり、他の例では、発現産物は、タンパク質(例えば、Cas9)である。細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞はPBMC(例えば、T細胞または疲弊T細胞)である。一過性または安定な移入方法を使用することができる。一過性の移入は、外来核酸がごく一過性に存在することを示す(例えば、一定期間後に分解する、宿主細胞によって除去される、またはそうでなければ安定に複製されない)。安定な移入は、外来核酸が、宿主において持続的に維持されることを示す。
【0096】
本開示の核酸の最適な発現を得るために、発現カセットは、例えば転写を指示するための強いプロモーターを含有することができ、翻訳開始のためのリボソーム結合部位(例えば、配列内リボソーム結合配列)、および転写/翻訳ターミネーターを使用することができる。E.coliにおける発現のために、プロモーター、例えば、T7、trp、lac、またはラムダプロモーター、リボソーム結合部位、および好ましくは転写終結シグナルを使用することができる。真核細胞、例えばPBMCの場合、制御配列は、例えば免疫グロブリン遺伝子、HTLV、SV40、またはサイトメガロウイルスに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサー、ならびにポリアデニル化配列を含み得、スプライスドナーおよび/またはアクセプター配列(例えば、CMVおよび/またはHTLVスプライスアクセプターおよびドナー配列)をさらに含み得る。追加の機能性エレメントは、これらに限定されないが、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、ならびに核酸配列の適切な転写およびその後の翻訳にとって必要な他の任意の配列を含む。
【0097】
本開示の核酸またはベクターは、任意の好適な方法(例えば、形質転換)によって宿主細胞に導入することができる。多数の形質転換法:例えば、化学的方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション)、物理的方法(例えば、電気穿孔、マイクロインジェクション、粒子衝突)、融合(例えば、リポソーム)、リポフェクション、ヌクレオフェクション、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、DNA-タンパク質複合体、ウイルスエンベロープ/カプシド-DNA複合体)、粒子銃加速器(遺伝子銃)、およびウイルス、例えば組換えウイルスによる生物学的感染(Wolff, J. A., ed, Gene Therapeutics, Birkhauser, Boston, USA (1994))が公知である。レトロウイルスによる感染の場合、感染するレトロウイルス粒子は、標的細胞によって吸収され、それによってレトロウイルスRNAゲノムの逆転写および得られたプロウイルスの細胞DNAへの組み込みをもたらす。形質転換に成功した細胞を、ベクターが含有する遺伝子、例えばamp、gpt、neo、およびhyg遺伝子によって付与される抗生物質に対する耐性によって選択することができる。一部の例では、本開示の核酸(例えば、gRNA)は、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体(例えば、gRNA-Cas複合体)に組み込まれる。RNPは、形質転換、例えばヌクレオフェクションによって宿主細胞に導入することができる。
【0098】
コードされる産物の生物活性を減損させることなく、本開示の核酸に改変を行うことができる。例えば、標的化分子のクローニング、発現、または融合タンパク質への組み込みを容易にするための改変を行うことができる。そのような改変は、例えば終止コドン、慣習的に位置決めした制限部位を作り出すための配列、および開始部位を提供するためにアミノ末端でのメチオニン、または精製ステップを助けるために追加のアミノ酸(例えば、ポリHis)を付加するための配列を含む。
【0099】
III. 改変PBMC
本明細書において、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である改変末梢血単核細胞(PBMC)を提供する。一部の例では、Slc16a11の発現は、好適な対照(例えば、改変前のPBMC)と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも100%低減される。一部の例では、MCT11の活性は、好適な対照(例えば、改変前のPBMC)と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%低減される。活性を低減させることは、例えばモノカルボキシレート(例えば、乳酸)の改変PBMCへの輸送を低減させることによって、MCT11の任意の測定可能な生物機能を低減させることを含む。一部の例では、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である改変PBMCは、好適な対照(例えば、非改変PBMC)と比較してエフェクター活性(例えば、抗腫瘍)が増加している。一部の例では、改変PBMCはT細胞であり、T細胞は、好適な対照(例えば、非改変PBMC)と比較してT細胞疲弊に対する抵抗性が増加している。
【0100】
改変PBMCは、追加の改変をさらに含み得、例えば、PBMCは、キメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体(TCR)を発現するかまたはそうでなければ含有し得る。
【0101】
一部の例では、改変PBMCは、T細胞、例えばCD8+またはCD3+T細胞である。T細胞は、腫瘍特異的抗原、例えば、CD19、CD20、BCMA、MUC1、PSA、CEA、HER1、HER2、TRP-2、EpCAM、GPC3、メソテリン1(MSLN)、またはEGFRに対して反応性であり得る。一部の例では、T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。一部の例では、T細胞は、治療的T細胞であるか、または治療的T細胞として、例えばACT療法として使用される。一部の例では、T細胞は、疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む)である。疲弊T細胞は、エフェクター機能の進行的喪失(例えば、IL-2、TNF-α、およびIFN-γ産生の喪失)、ならびに阻害性受容体、例えばPD-1、T細胞免疫グロブリンドメイン-ムチンドメイン含有タンパク質3(Tim-3)、CTLA-4、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、およびCD160の持続的発現によって特徴付けられる機能障害T細胞である。一部の例では、疲弊T細胞は、プログラム細胞死1の高い永続的発現(PD1hi)を有し、T細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン含有タンパク質3に関して陽性である(TIM3)終末疲弊T細胞である。
【0102】
一部の実施形態では、改変PBMCは、Slc16a11発現を低減させる作用剤、例えばSlc16a11遺伝子もしくは転写物に対して特異的な本開示の阻害性RNA(RNAi)、またはSlc16a11遺伝子もしくは転写物に対して特異的な1つもしくは複数のガイドRNA(gRNA)(例えば、Casヌクレアーゼまたは不活性型Casヌクレアーゼ、例えば、RNPと組み合わせて)の1つまたは複数を含む。
【0103】
一部の例では、Slc16a11発現を低減させる作用剤は、Slc16a11に対して特異的な本開示の阻害性RNA(RNAi)、例えば、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、またはアンチセンスRNAの1つまたは複数である。特定の非限定的な例では、RNAiは、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なshRNAであり、例えば、siRNAは、配列番号2と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を含む配列に対して特異的である。一部の例では、shRNAは、配列番号2の固有の連続部分に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列に対して特異的である。一部の例では、shRNAは、配列番号4と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。例えば、shRNAは、配列番号4と少なくとも90%の配列同一性を有し得る。一部の例では、shRNAは、配列番号4からなるかまたは含む。
【0104】
一部の例では、作用剤は、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的な本開示のgRNAであり、例えばgRNAは、配列番号2と70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列に対して特異的である。例えば、gRNAは、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有する配列に対して特異的であり得る。一部の例では、gRNAは、例えば配列番号2の固有の連続部分と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である標的化配列を有することによって、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的な標的化配列を含む。
【0105】
一部の例では、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なgRNAは、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する連続配列を含む。一部の例では、Slc16a11遺伝子または転写物に対して特異的なgRNAは、配列番号3を含む。一部の例では、gRNAの標的化配列部分は、配列番号3と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。一部の例では、標的化配列は、配列番号3を含むかまたはからなる。一部の例では、改変PBMCは、本開示のgRNAおよびCasヌクレアーゼ、例えば、Cas9、dCas9、dCas13d、またはCas13dを含むRNP複合体を含む。
【0106】
一部の例では、改変PBMCは、RNAi(例えば、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)またはgRNAをコードする本開示の核酸の1つまたは複数をコードする異種核酸分子を含む。RNAiまたはgRNAは、DNA(例えば、DNAベクターにコードされる)としてコードされ得るが、RNAとして発現され得る。一部の例では、異種核酸分子は、Slc16a11に対して特異的な本開示のgRNAおよびCasヌクレアーゼ(または不活性型Casヌクレアーゼ)をコードする。特定の例では、CasヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。他の例では、CasヌクレアーゼはCas13dヌクレアーゼである。
【0107】
一部の実施形態では、改変PBMCは、RNAiまたはgRNAをコードする本開示のベクターを含む。このように、一部の例では、改変PBMCは、RNAiまたはgRNAを発現する。gRNAを使用する場合、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9、dCas9、dCas13d、またはCas13d)をまた、同じまたは異なるベクターにコードして、例えば改変PBMCにおいて、Casヌクレアーゼ(または不活性型Casヌクレアーゼ)およびSlc16a11に対して特異的な1つまたは複数のgRNAを共発現させることができる。一部の例では、gRNAは、スペーサー配列およびDR配列(例えば、DR-スペーサー-DR-スペーサー)を含み、CasヌクレアーゼはCas13dであり、Slc16a11 RNAは編集されている。一部の例では、gRNAは、crRNAおよびtracrRNA(2つの個別の分子、または1つの融合分子、例えば、sgRNAのいずれかとして発現される)を含み、CasヌクレアーゼはCas9である。一部の例では、ベクターは、Slc16a11に対して特異的な2つまたはそれより多くのgRNAを含むカセットを含み、2つまたはそれより多くのgRNAは、同じまたは異なる標的化配列を有する(例えば、Slc16a11の2つの異なる領域を標的とし得る)。
【0108】
核酸またはベクターは、PBMC(例えば、T細胞)に一過性または安定に導入され得る。特定の非限定的な例では、ベクターは、改変PBMCに安定に導入され、それによって改変PBMCにおいてRNAiまたはgRNAの安定な発現をもたらす。一部の例では、RNAiまたはgRNAをコードする核酸は、ベクターにおいて細胞特異的プロモーター(例えば、T細胞特異的プロモーター)に作動可能に連結される。RNAiまたはgRNAの発現は構成的または誘導性であり得る。例示的なプロモーターとしては、NFAT、EF1a、PGK、U6、またはH1が挙げられる。一例では、gRNAは、U6またはH1プロモーターから発現される。一例では、Casヌクレアーゼ(または不活性型Casヌクレアーゼ)は、CMVプロモーターから発現される。
【0109】
一部の実施形態では、改変PBMCは、機能的MCT11の量を低減させる天然に存在しない遺伝子改変を含む。機能的MCT11を低減させることは、改変PBMCにおいてSlc16a11発現を減少させる(例えば、Slc16a11遺伝子または転写物の転写または翻訳を減少させる)遺伝子改変を含む。一部の例では、遺伝子改変は、Slc16a11遺伝子の天然に存在しない遺伝子改変である。他の例では、遺伝子改変は、Slc16a11の調節エレメント(例えば、プロモーター、応答エレメント、エンハンサー、転写因子、またはSlc16a11の発現に影響を及ぼす他の調節因子)の天然に存在しない遺伝子改変である。調節エレメントは、シス作用またはトランス作用であり得る。
【0110】
一部の例では、天然に存在しない遺伝子改変は、改変PBMCにおいて機能的なMCT11の量を低減させる改変である。例えば、遺伝子改変は、機能障害MCT11の産生をもたらし得る。一部の例では、遺伝子改変は、不安定なMCT11の産生をもたらし、それによって機能的MCT11の蓄積が低減される。遺伝子改変は、MCT11の量の減少をもたらす任意の天然に存在しない改変であり得る。遺伝子改変の非限定的な例としては、点変異、部分的欠失、完全な欠失、または挿入が挙げられる。
【0111】
一部の実施形態では、改変PMBCは、MCTの阻害剤、例えば低分子阻害剤を含む。一部の例では、MCTの低分子阻害剤は、7ACC1、AR-C155858、UK5099、SR13800、CHC、AR-C141990塩酸塩、AZD3965、またはBAY8002の1つまたは複数である。特定の非限定的な例では、改変PBMCは、MCT11の低分子阻害剤を含む。
【0112】
改変PBMCを生成する方法
本明細書において、作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤をPBMCに導入し、それによってSlc16a11の発現が低減された、および/またはMCT11の活性が低減された改変PBMCを生成することによって、本開示の改変PBMCを生成する方法もまた提供される。一部の実施形態では、PBMCは、作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤を導入する前の対象から得られる。PBMCは、例えば、対象の血液試料、例えば静脈血試料から採取または単離することができる。PBMCを単離するためのいくつかの技術、例えば密度遠心分離(Ficollアプローチ)、細胞調製チューブ(CPT)による単離、またはSepMate(商標)チューブによる単離が公知である。一部の例では、アフェレーシス(aphersis)または白血球アフェレーシスを使用してPBMCを採取する。赤血球の混入を、例えば試料の顕微鏡解析によって評価することができる。フローサイトメトリー技術(例えば、FACS)を使用して単離されたPBMC集団の組成を評価し、例えば単球(例えば、CD14)、T細胞(例えば、CD3、CD8、CD4)、B細胞(例えば、CD20)、またはNK細胞(例えば、CD56)を同定することができる。FACS技術をまた使用して、PBMCから特定の細胞タイプを富化または枯渇する(例えば、CD14、CD3、CD8、CD4、CD28、CD20、CD56、またはその組合せを富化または枯渇する)こともできる。
【0113】
一部の例では、T細胞は、PBMC試料から単離されるか、またはPBMC試料は、T細胞に関して富化され、例えばCD3またはCD8 T細胞に関して単離または富化される。一部の例では、試料は、負の選択によって、例えば試料から望まない細胞タイプ(例えば、T細胞以外の細胞タイプ、および/またはナイーブもしくはメモリーT細胞)を選択および除去することによって富化される。一部の例では、FACSを使用して特定のPBMCを富化する、例えばT細胞(例えば、CD3またはCD8陽性T細胞)を富化する。FACSをまた使用して、疲弊T細胞、もしくは特に終末疲弊T細胞(PD-1hi、TIM3)が、PBMC試料に存在するかどうかを評価する、またはPBMC試料を選別して疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む)を富化する、もしくは逆に疲弊T細胞を除去することもできる。PBMCの抗原応答性は、サイトカイン、例えば、IFNγ、IL-1β、IL-6、IL-8、およびTNFαの放出を測定することによって評価することができる。
【0114】
一部の例では、PBMCは、処置される対象、例えばがんを有する対象から得られる。他の例では、PBMCは、ドナー対象、例えばがんを有しない対象から得られる。一部の例では、疲弊T細胞は、腫瘍生検または試料(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)から得られる。
【0115】
一部の例では、作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤は、ex vivoでPBMCに導入される。そのような例では、そのような方法は、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である改変PBMCを選択すること(例えば、Slc16a11の発現が低減されていない、MCT11の活性が低減されていない、または両方である細胞からそのような細胞を精製または単離すること)をさらに含み得る。そのような方法はまた、T細胞、例えばCD3+またはCD8+であるT細胞である改変PBMCを選択することをさらに含み得る。例示的な選択方法は、フローサイトメトリー、パニング、または磁気分離を使用することを含む。本開示の方法は、一部の例では、Slc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である選択された改変PBMCを対象、例えばSlc16a11の発現が低減された、MCT11の活性が低減された、または両方である選択された改変PBMCによって処置されるべきがんを有する対象に導入することをさらに含む。
【0116】
一部の例では、作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤は、対象に投与され、および作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤は、PBMC(例えば、T細胞または疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む))にin vivoで導入される。
【0117】
一部の実施形態では、改変PBMCを生成する方法は、阻害剤、作用剤、または天然に存在しない遺伝子改変を導入する前に、PBMCまたは細胞タイプ(例えば、T細胞、疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む))を、例えば試料(例えば、腫瘍生検、血液、T細胞集団)から選択することをさらに含む。一部の例では、選択されたPBMCは、腫瘍特異的抗原、例えばCD19、CD20、BCMA、MUC1、PSA、CEA、HER1、HER2、TRP-2、EpCAM、GPC3、メソテリン1(MSLN)、またはEGFRの1つまたは複数に対して反応性である。一部の例では、選択されたPBMCはT細胞である。一部の例では、T細胞はCD8+またはCD3+である。一部の例では、T細胞は、養子細胞移入(ACT)療法のT細胞であり、例えば選択された疲弊T細胞は、腫瘍抗原に対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体(TCR)を含み得る。さらなる例では、選択されたPBMCは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。一部の例では、T細胞は、疲弊T細胞、例えばプログラム細胞死1を高度に発現し(PD1hi)、T細胞免疫グロブリン-ムチンドメイン含有タンパク質3に関して陽性である(TIM3)終末疲弊T細胞である。
【0118】
一部の例では、作用剤(RNAiまたはgRNA)または阻害剤(例えば、低分子阻害剤)は、例えばPBMCを、作用剤または阻害剤と接触させることによって導入され、それによって改変PBMCを生成する。他の例では、阻害剤または作用剤は、PBMCに、阻害剤もしくは作用剤をコードする本開示の核酸分子、または本開示の核酸分子をコードするベクターをトランスフェクトするか、またはPBMCをそれらによって形質転換することによって導入され、それによって改変PBMCを生成する。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトする方法は、本明細書に記載され、化学的方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション)、物理的方法(例えば、電気穿孔、マイクロインジェクション、粒子衝突)、融合(例えば、リポソーム)、ヌクレオフェクション、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、DNA-タンパク質複合体、ウイルスエンベロープ/カプシド-DNA複合体)、およびウイルス、例えば組換えウイルスによる生物学的感染を含み得る。レトロウイルスによる感染の場合、感染性のレトロウイルス粒子は、標的細胞によって吸収され、レトロウイルスRNAゲノムの逆転写および得られたプロウイルスの細胞DNAへの組み込みをもたらす。一部の例では、gRNAおよびCasヌクレアーゼまたは不活性型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはCas13d)を含むリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を、PBMCに直接導入する。RNP複合体を宿主細胞に導入する方法は記載されている。例えば、PBMCに、RNPをヌクレオフェクトすることができる。一部の例では、PBMCに、RNPを電気穿孔によってトランスフェクトする(例えば、Seki and Rutz, (2018) J Exp Med. 215(3): 985-997を参照されたい)。一部の例では、脂質含有オリゴアミノアミド(lipo-OAA)を、RNP複合体の細胞内送達の担体として使用する(例えば、Kuhn et al. (2020) Bioconjugate Chem. 31(3):729-742を参照されたい)。
【0119】
特定の非限定的な例では、導入される作用剤は、shRNAであり、shRNAは、shRNAをコードするウイルスベクターによる感染を通してPBMCに導入される。ウイルスベクターによる導入は、shRNAの安定な組み込みおよび標的化遺伝子の長期ノックダウンを可能にする。別の特定の非限定的な例では、導入される作用剤は、siRNAであり、siRNAは、トランスフェクションが可能な宿主細胞の細胞質に導入される。
【0120】
一部の実施形態では、天然に存在しない遺伝子改変がPBMCに導入される。遺伝子改変は、Slc16a11の発現の減少またはMCT11の活性の低減をもたらす任意の天然に存在しない改変であり得る。遺伝子改変の非限定的な例としては、点変異、部分的欠失、完全な欠失、または挿入が挙げられる。一部の例では、遺伝子改変は、Slc16a11遺伝子の標的化ゲノム編集技術、例えばCRISPR/Cas、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALEN改変によって誘導される。ゲノム編集方法は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Nemudryi et al. (2014) Acta Naturae; 6(3): 19-40において以前に記載されている。一部の例では、遺伝子改変は、Slc16a11発現を、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%低減させる。一部の例では、遺伝子改変は、MCT11活性を、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%低減させる。一部の例では、遺伝子改変は、MCT11の乳酸輸送活性を、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%低減させる。
【0121】
一部の実施形態では、改変PBMCは、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン7(IL-7)、およびインターロイキン15(IL-15)からなる群から選択される少なくとも1つのサイトカインと共にインキュベートされる。
【0122】
一部の実施形態では、作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤を導入することは、改変PBMCにおけるMCT11の活性を、好適な対照(例えば、非改変PBMC)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%低減させる。一部の例では、遺伝子改変は、MCT11の乳酸輸送活性を、好適な対照と比較して例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%低減させる。一部の例では、作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤を導入することは、MCT11のタンパク質レベルを、好適な対照と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%またはそれより大きく低減させる。一部の例では、作用剤、天然に存在しない遺伝子改変、または阻害剤を導入することは、MCT11の活性を、好適な対照と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%またはそれより大きく低減させる。活性を低減させることは、例えば、モノカルボキシレート(例えば、乳酸)の改変PBMCへの輸送を低減させることによって、MCT11の任意の測定可能な生物機能を低減させることを含む。
【0123】
一部の実施形態では、PBMCにおけるSlc16a11の発現またはMCT11の活性の減少は、エフェクター機能を増加させる、疲弊を低減させる、疲弊に対する抵抗性を増加させる、またはその組合せである。一部の例では、PBMCはT細胞であり、PBMCにおけるSlc16a11の発現またはMCT11の活性の減少は、T細胞のエフェクター機能を増加させる、T細胞の疲弊を低減させる、または両方である。さらなる例では、PBMCはT細胞であり、PBMCにおけるSlc16a11の発現またはMCT11の活性の減少は、T細胞疲弊に対する抵抗性を増加させる。一部の例では、本開示の改変PBMC、例えば改変T細胞は疲弊しない(例えば、PD1hiおよびTIM3にはならない)。一部の例では、本開示の改変PBMC、例えば改変T細胞は、より遅い速度で疲弊するようになり、例えば疲弊細胞(例えば、PD1hiおよびTIM3)へと進行する日数は、例えば、天然のMCT11発現/活性を有するPBMC/T細胞と比較して少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%増加する。一部の例では、本開示の改変PBMC、例えば、改変T細胞は、例えば、天然のMCT11発現/活性を有するPBMC/T細胞と比較してより少ない疲弊細胞(例えば、PD1hiおよびTIM3)、例えば、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%低減された疲弊細胞を有する改変PBMCの集団、例えば改変T細胞集団をもたらす。
【0124】
IV. 医薬組成物
本明細書において、がんを処置するため、または免疫療法に対する応答を増加させるために有用な医薬組成物も開示する。一部の例では、医薬組成物は、(1)Slc16a11に対して特異的な本開示のRNAi、Slc16a11に対して特異的な1つもしくは複数のgRNA、RNAiもしくはgRNAをコードする核酸もしくはベクター、阻害剤(例えば、MCT11阻害剤)、または改変PBMCの1つまたは複数;および(2)薬学的に許容される担体を含む。特定の非限定的な例では、医薬組成物は、改変PBMCおよび薬学的に許容される担体を含む。
【0125】
一部の例では、医薬組成物は、(1)Slc16a11に対して特異的なRNAi、Slc16a11に対して特異的なgRNA、RNAiもしくはgRNAをコードする核酸もしくはベクター、MCT11阻害剤、または改変PBMCの1つまたは複数;(2)がん免疫療法;および(3)薬学的に許容される担体を含む。一部の例では、がん免疫療法は、ACT療法(例えば、CAR-T、TCR、TIL)、モノクローナル抗体(例えば、抗PD-1、抗EGFR、抗CTLA4)、T細胞アゴニスト抗体、または腫瘍溶解ウイルスである。特定の非限定的な例では、医薬組成物は、改変PBMC、抗体がん免疫療法、および薬学的に許容される担体を含む。別の非限定的な例では、医薬組成物は、Slc16a11に対して特異的なRNAi、Slc16a11に対して特異的なgRNA、RNAiもしくはgRNAをコードする核酸もしくはベクターの1つまたは複数;ACT免疫療法(例えば、CAR-T、TCR、TIL);および薬学的に許容される担体を含む。
【0126】
「薬学的に許容される担体」は、医薬投与に適合するあらゆる全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 23rd Edition, Academic Press, Elsevier, (2020)を参照されたい)。そのような担体または希釈剤の例としては、これらに限定されないが、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、平衡塩類溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームおよび非水性媒体、例えば固定油もまた、使用してもよい。補助活性化合物もまた、組成物に組み入れることができる。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 23rd Edition, Academic Press, Elsevier, (2020)に提供される方法を含む。一部の例では、医薬組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【0127】
V. がんを処置する方法
本明細書において、本開示の組成物(Slc16a11に対して特異的なRNAi、Slc16a11に対して特異的なgRNA、およびCasヌクレアーゼもしくは不活性型Casヌクレアーゼ(RNP複合体として投与され得る)、RNAiもしくはgRNAをコードする核酸もしくはベクター(一部の例では、ベクターはまた、CasヌクレアーゼまたはCas不活性型ヌクレアーゼも発現する)、MCT11阻害剤、改変PBMC、または本明細書に開示される医薬組成物(以降、集合的に「組成物」と呼ぶ))の有効量を対象に投与することによって、がんまたは腫瘍を処置する、対象におけるがんまたは腫瘍を処置する方法もまた開示される。特定の非限定的な例では、投与される組成物は、本明細書に開示される改変PBMCの有効量である。一部の例では、PBMCは、対象から採取され、本明細書に開示されるようにex vivoで改変された後、改変細胞を対象に導入する。一部の例では、PBMCは、例えば本明細書に提供される治療分子(例えば、Slc16a11に対して特異的なRNAi、Slc16a11に対して特異的なgRNA)を対象に導入することによって、in vivoで改変される。
【0128】
同様に本明細書において、本開示の組成物の有効量を投与し、それによって免疫療法に対する応答を増加させることによって、対象における免疫療法に対する応答を増加させる方法も開示される。特定の非限定的な例では、方法は、対象における免疫療法に対する応答を増加させる方法であり、組成物は、RNAiもしくはgRNAをコードする本開示のベクター、またはMCT11阻害剤である。
【0129】
一部の例では、対象は腫瘍またはがんを有する。一部の例では、対象は、固形腫瘍またはがん、例えば乳癌(例えば、小葉癌および乳管癌、例えばトリプルネガティブ乳がん)、肉腫、肺の癌(例えば、非小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌、および腺癌)、肺の中皮腫、結腸直腸腺癌、胃癌、前立腺腺癌、卵巣癌(例えば、漿液性嚢胞腺癌および粘液性嚢胞腺癌)、卵巣胚細胞腫瘍、精巣癌および胚細胞腫瘍、膵腺癌、胆管腺癌、肝細胞癌、膀胱癌(例として、移行上皮癌、腺癌、および扁平上皮癌を含む)、腎細胞腺癌、子宮内膜癌(例えば、腺癌およびミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)を含む)、子宮頸内膜、子宮頸外膜、および膣の癌(例えば、それらの各々の腺癌および扁平上皮癌)、皮膚の腫瘍(例えば、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、皮膚付属器腫瘍、カポジ肉腫、皮膚リンパ腫、皮膚付属器の腫瘍ならびに様々なタイプの肉腫およびメルケル細胞癌)、食道癌、鼻咽頭および中咽頭の癌(それらの扁平上皮癌および腺癌を含む)、唾液腺癌、脳および中枢神経系の腫瘍(例えば、グリア起源、ニューロン起源、および髄膜起源の腫瘍を含む)、末梢神経の腫瘍、軟部組織肉腫ならびに骨および軟骨の肉腫、頭頸部扁平上皮癌(例えば、HPV陽性HNSCC)、ならびにリンパ腫瘍(B細胞およびT細胞悪性リンパ腫を含む)を有する。
【0130】
一部の例では、対象は、血液の腫瘍またはがん、例えばリンパ、白血球、または他のタイプの白血病を有する。特定の例では、処置される腫瘍は、血液の腫瘍、例えば白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病(HCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、大顆粒リンパ球性白血病、および成人T細胞白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)、または骨髄腫である。
【0131】
非限定的な例では、対象は、白血病、結腸直腸がん、子宮頸がん、肺がん、膀胱がん、頭頸部がん、膵臓がん、膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、乳がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞癌、肉腫、または副腎癌を有する。別の非限定的な例では、対象は黒色腫を有する。
【0132】
一部の実施形態では、対象は、免疫療法、例えばPD-1、PD-L1、CTLA-4、CDK4、および/またはCDK6を標的とするチェックポイント阻害剤を受けている、受けた、または受ける予定である。例示的なチェックポイント阻害剤としては、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、パルボシクリブ、リボシクリブ、およびアベマシクリブが挙げられる。一部の例では、組成物の有効量は、免疫療法(例えば、チェックポイント阻害剤またはACT)に対する対象の応答を増加させる量、例えば免疫療法と共に投与した場合に、免疫療法(または組成物)単独の投与と比較してがんまたは腫瘍の処置においてより有効である量である。一部の例では、有効量は、免疫療法と共に投与した場合に相乗的である量、例えばがんの1つまたは複数の徴候または症状を相乗的に防止する、処置する、低減する、および/または回復させる量である。
【0133】
一部の例では、組成物の有効量は、対象におけるがんの1つまたは複数の徴候または症状を防止する、処置する、低減させる、および/または回復させるために十分な量である。例えば、同じ対象についてのベースライン測定値または好適な対照と比較して、対象における腫瘍サイズまたは腫瘍量を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%低減させるために十分な量。一部の例では、有効量は、対象における転移を阻害または遅らせるのに十分な量である。例えば、同じ対象についてのベースライン測定値または好適な対照と比較して、対象における腫瘍の拡散を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%減少させることによる。一部の例では、有効量は、対象の余命を、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも400%、またはそれより大きく増加させる量である。他の例では、有効量は、同じ対象についてのベースライン測定値または他の好適な対照と比較して、対象における腫瘍密度を、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%低減させるために十分な量である。好適な対照の非限定的な例は、無処置対象または組成物を受けていない対象(例えば、他の作用剤または代替治療を受けている対象)を含む。さらなる例では、有効量は、好適な対照と比較して、腫瘍細胞を標的として除去する、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらには100%除去するために十分な量である。
【0134】
一部の例では、方法は、対象における標的組織または細胞、例えばPBMC、T細胞、または疲弊T細胞(終末疲弊T細胞を含む))において、Slc16a11の発現またはMCT11の活性を低減させる。一部の例では、Slc16a11の発現またはMCT11の活性は、好適な対照(例えば、無処置対象または処置前の同じ対象のベースライン読み取り値)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%減少する。一部の例では、方法は、MCT11(または機能的MCT11)のタンパク質レベルを、好適な対照(例えば、無処置対象または処置前の同じ対象のベースライン読み取り値)と比較して、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%低減させる。一部の例では、方法は、Slc16a11の発現またはmRNA転写物の蓄積を、好適な対照(例えば、無処置対象または処置前の同じ対象のベースライン読み取り値)と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%低減させる。
【0135】
一部の例では、Slc16a11の発現またはMCT11の活性を減少させることは、T細胞エフェクター機能を増加させるかまたはT細胞疲弊を減少させる。一部の例では、Slc16a11の発現またはMCT11の活性を減少させることは、T細胞疲弊を低減させる(防止または阻害することを含む)またはT細胞疲弊に対する抵抗性を増加させる(T細胞疲弊を防止または阻害することを含む)。一部の例では、対象においてT細胞応答を増加させるまたはT細胞疲弊を低減させることは、対象における免疫療法に対する応答を増加させる。
【0136】
特定の非限定的な例では、方法は、改変PBMCおよび薬学的に許容される担体を対象に投与することを含む。本開示のPBMCが投与される場合、組成物は、改変PBMC約10~1012個(例えば、細胞約10~10個、細胞約10~10個、細胞約10~1012個、細胞約10~1012個、または細胞約10~1010個)を含む。例えば、組成物は、改変PBMC約10~1010個(例えば、細胞約10、10、10、10、10、10、または1010個/kg)が対象に投与されるように調製され得る。一部の例では、細胞約1010個/kgが対象に投与される。特定の例では、組成物は、改変PBMC少なくとも10、10、10、10、10、10、または1010個を含む。特定の非限定的な例では、改変PBMC約10~1010個が対象に投与される。適切な用量は、対象、処置されるがん、処置の履歴、腫瘍量およびタイプ、疾患の臨床ステージおよびグレード、対象の全身健康、ならびに他の要因などの要因に基づいて熟練した臨床医によって決定され得る。一部の例では、対象は、改変PBMCの前、後、または実質的に同時にMCT(例えば、MCT11)の低分子阻害剤を投与される。
【0137】
一部の例では、非改変リンパ球を、本開示の組成物を投与する前に対象において枯渇させる。一部の例では、対象はまた、例えば、本開示の改変PBMCの生存および/もしくは成長を支持するために、1つもしくは複数のサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、および/またはIL-12)、ならびに/または組み合わせて対象に投与される追加のACT療法も投与される。特定の非限定的な例では、IL-2、IL-7、およびIL-15の少なくとも1つもまた、対象に投与される。サイトカイン(複数可)は、組成物の前、後、または実質的に同時に投与される。特定の例では、少なくとも1つのサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、および/またはIL-15)は、例えば組成物と同時に投与される。一部の例では、改変PBMCは、がんを有する対象における腫瘍特異的抗原に対して反応性である。一部の例では、抗原は、CD19、CD20、BCMA、MUC1、PSA、CEA、HER1、HER2、TRP-2、EpCAM、GPC3、メソテリン1(MSLN)、またはEGFRの1つまたは複数である。
【0138】
本開示の組成物のいずれかの投与は、局所または全身であり得る。例示的な投与経路としては、これらに限定されないが、経口、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内)、舌下、直腸、経皮(例えば、外用)、鼻腔内、膣、および吸入経路が挙げられる。一部の例では、作用剤は、腫瘍にもしくは腫瘍の近傍に注射もしくは注入される(局所投与)、または腹腔に投与される。適切な投与経路は、対象、処置される状態、および他の要因などの要因に基づいて熟練した臨床医によって決定され得る。
【0139】
組成物の複数用量を対象に投与することができる。例えば、組成物は、毎日、2日毎、週に2回、毎週、隔週、3週間毎、毎月、またはそれより少ない頻度で投与することができる。熟練した臨床医は、対象、処置される状態、以前の処置の履歴、および他の要因に基づいて投与スケジュールを選択することができる。
【0140】
一部の例では、対象は、組成物に加えて処置、例えば手術、放射線療法、化学療法、生物療法、免疫療法、または他の治療剤の1つまたは複数を受ける。例示的な化学療法剤としては、(これらに限定されないが)アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、またはクロラムブシル)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えばカルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、またはダカルバジン);代謝拮抗剤、例えば葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート)、ピリミジンアナログ(例えば、5-FUまたはシタラビン)、およびプリンアナログ、例えばメルカプトプリンもしくはチオグアニン;または天然物、例えばビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビンデシン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドまたはテニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、またはマイトマイシン(mitocycin)C)、および酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)が挙げられる。追加の作用剤は、白金配座錯体(例えば、シス-ジアミン-ジクロロ白金II、シスプラチンとしても公知である)、置換ウレア(例えば、ヒドロキシウレア)、メチルヒドラジン誘導体(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質(adrenocrotical)抑制剤(例えば、ミトタンおよびアミノグルテチミド);ホルモンおよびアンタゴニスト、例えば、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、プロゲスチン(例えば、ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、およびメゲストロール(magestrol)酢酸エステル)、エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン)、およびアンドロゲン(例えば、テストステロンプロピオン酸エステル(proprionate)およびフルオキシメステロン)を含む。最も一般的に使用される化学療法薬の例としては、アドリアマイシン、メルファラン(Alkeran(登録商標))Ara-C(シタラビン)、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、ダウノルビシン、ダカルバジン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル(または他のタキサン、例えばドセタキセル)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP-16が挙げられるが、新規薬物としては、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、イリノテカン(CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))イマチニブ(STI-571)、トポテカン(Hycamtin(登録商標))、カペシタビン、イブリツモマブ(Zevalin(登録商標))、およびカルシトリオールが挙げられる。熟練した臨床医は、対象、処置されるがん、処置の履歴、および他の要因などの要因に応じて、対象に関して適切な追加の治療を選択することができる(本明細書に記載の治療または他の現行の治療から)。
【0141】
一部の例では、対象は、追加の治療剤、例えば、モノクローナル抗体がん免疫療法(例えば、抗CTLA-4、抗PD1、または抗PDL1)、T細胞アゴニスト抗体、腫瘍溶解ウイルス、養子細胞移入(ACT)療法、またはその2つもしくはそれより多くの任意の組合せを投与される。追加の治療剤の投与は、本開示の組成物の投与の前、後、または実質的に同時であり得る。一部の例では、追加の治療剤は、細胞周期阻害剤またはチェックポイント阻害剤である。一部の例では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、CDK4、および/またはCDK6を標的とする。例示的な阻害剤としては、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、パルボシクリブ、リボシクリブ、およびアベマシクリブが挙げられる。
【0142】
一部の例では、対象は、ACT療法、例えばキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞、操作されたTCR T細胞、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を投与される。一部の例では、対象は、組成物の有効量およびACT療法を投与され、組成物の有効量は、ACTの有効性を増加させる(例えば、ACT療法単独と比較してがん様細胞の除去を増加させる)量である。
【0143】
追加の治療剤は、本開示の組成物と実質的に同時に投与され得る。一部の例では、追加の治療剤は、組成物の投与の前に、例えば、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも12日、少なくとも14日、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1か月、またはそれよりも前に投与される。追加の治療剤の複数用量を、対象に、例えば毎日2回、毎日1回、2日毎、週に2回、毎週、隔週、3週間毎、毎月、またはそれより少ない頻度で投与してもよい。熟練した臨床医は、対象、処置される状態、以前の処置の履歴、腫瘍量およびタイプ、疾患の臨床ステージおよびグレード、ならびに対象の全身健康、ならびに他の要因に基づいて投与スケジュールを選択することができる。
【0144】
VI. キット
同様に、本開示の方法と共に使用することができる組成物およびキットも提供する。一部の例では、組成物またはキットは、Slc16a11に対して特異的なRNAi、Slc16a11に対して特異的なgRNA、RNAiまたはgRNAをコードする核酸またはベクター、MCT11阻害剤、および改変PBMCの1つまたは複数を、例えば薬学的に許容される担体と共に含む。一部の例では、キットは、Slc16a11に対して特異的な1つまたは複数のgRNAおよびCasヌクレアーゼまたはCas不活性型ヌクレアーゼ(RNP複合体であり得る)を含む。特定の非限定的な例では、キットは、Slc16a11に対して特異的な1つまたは複数のgRNAをコードするベクターを含み、ベクターは、CasヌクレアーゼまたはCas不活性型ヌクレアーゼをさらにコードし得る。一部の例では、キットは、Slc16a11に対して特異的な本開示のRNAiの1つまたは複数を含む。さらなる例では、キットは、本開示の改変PBMCを含む。
【0145】
キットは、追加の試薬、例えば抗CD3、抗CD28、IL-2、およびIL-15の1つまたは複数を含み得る。一部の例では、試薬は、個別の容器に存在する。一例では、抗CD3および抗CD28は、同じ容器に存在し、例えばビーズ上に存在してもよい。一部の例では、キットは、トランスフェクション試薬、培養培地、抗生物質、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-15、およびIL-7)の1つまたは複数をさらに含み、必要に応じてそのような試薬は、個別の容器に存在する。一部の例では、キットまたは組成物は、PBMCをex vivoで培養または増大させることができる培地、例えばAIM V(登録商標)培地を含む。
【実施例
【0146】
(実施例1)
材料および方法
本実施例は、以下の実施例において考察されるデータを生成するために使用した材料および方法を提供する。
【0147】
RNA-seq
C57/BL6マウスに、B16黒色腫を移植した。腫瘍がいずれかの方向に7mmに達すると、リンパ節および腫瘍を採取して処理し、CD8 T細胞を、リンパ節(LN)および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)からのCD44、PD-1、およびTim-3発現に基づいて選別した。RNA-seqを、以下の区画から単離した細胞1,000個について実施した:LN CD44hi、TIL PD-1lo、TIL PD-1mid、TIL PD-1hi、およびTIL PD-1hiTim3。LNおよびTILからのCD4 T細胞を、個別の実験から配列決定した。RNAを、Clontech SMARTer(登録商標)キットを使用して細胞1000個の細胞溶解物から調製し、Illumina NextSEQ(登録商標)において配列決定した。マウスゲノム(mm9アセンブリ)と整列させた後、TPMを計算した。Slc16a11(MCT11をコードする)のプロット100万個あたりの転写物(TPM)を示す(図3A)。
【0148】
乳酸の取り込み
C57/BL6マウスに、上記のようにB16黒色腫を移植し、TIL調製物を作製した。TILに、pH感受性色素であるpHrodo(登録商標)Redをロードし、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中でインキュベートした。乳酸を30分間パルスし、pHの変化を、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Watson et al. (2021) Nature, 591: 645-651に記載されるように、フローサイトメトリーによって測定した。
【0149】
機能獲得および機能喪失変異体
OT-I(OVA特異的)Thy1.1+コンジェニックT細胞を、同起源のペプチドおよび脾細胞によって一晩活性化した後、T細胞に、Slc16a11を標的とするshRNA構築物をレトロウイルスによって形質導入し、次に、これをB16-OVA腫瘍を有するコンジェニックに不一致の(Thy1.2+)宿主に移入した。8日後、TILを採取して、最終分化の読み取りとしてPD-1およびTim-3に関して染色した。個別のTIL調製物はまた、ブレフェルディンAの存在下、OVAペプチドによって一晩再刺激した後、サイトカイン産生を測定するためにIFN-γおよびTNFαに関して細胞内染色した。
【0150】
MCT11(Slc16a11)の条件的ノックアウト
Slc16a11(MCT11)の条件的ノックアウトマウスを生成した(MCT11COIN×CD4cre)。野生型マウスまたはMCT11条件的ノックアウト(MCT11COIN×CD4cre)マウスにB16腫瘍細胞を接種した。腫瘍の成長を追跡した。T細胞浸潤(腫瘍面積あたりのパーセント生存CD8+細胞)および再刺激後のサイトカイン産生もまた、記録した。
【0151】
Cas9-gRNAヌクレオフェクション
OT-I T細胞を、TCR-Tgマウスから単離し、Lonza 4D-Nucleofector(登録商標)を使用して、Slc16a11を標的とするCas9:gRNAリボヌクレオタンパク質複合体(配列番号7のgRNA)をヌクレオフェクトした。次に、細胞を、抗CD3/CD28によって活性化し、組換えIL-2を使用してin vitroで治療量まで増大させた。これと並行して、宿主マウスにB16-OVA細胞を接種した。腫瘍が直径3mmに達すると、それらを増大させたT細胞(細胞10個/マウス)によって処置した。腫瘍サイズを、腫瘍がいずれかの方向に15mmに達するまで、または実験30日後まで毎週3回測定した。
【0152】
(実施例2)
疲弊T細胞におけるMCT11の発見
RNA-seqおよび代謝プロファイリングを使用して、終末疲弊T細胞(がんの環境で一般的な機能障害T細胞)が、MCT11(Slc16a11によってコードされる)と呼ばれる新規栄養トランスポーターを高度に発現することが見出された(図3Aおよび3B)。MCT11は、おそらくモノカルボキシレート、短鎖炭素源、例えば、乳酸、ピルベートおよび短鎖脂肪酸を輸送する。ヒトおよびマウスの疲弊T細胞におけるMCT11の上方調節を、フローサイトメトリーおよびRNA-Seqによって確認した(図2A~2Cおよび図3A~3Bを参照されたい)。さらに、終末疲弊T細胞は、モノカルボキシレート、例えば乳酸を特異的に取り込むことが確認された(図4)。しかし、MCT11は、慢性ウイルス感染によって誘導された疲弊T細胞の表面には発現されない。これらの知見は、MCT11が、終末疲弊T細胞に栄養の流入を提供するうえで重要であり得ることを示唆している。
【0153】
(実施例3)
MCT11機能獲得および機能喪失
MCT11がノックダウンされているT細胞は、完全に疲弊へと進行せず(PD1hiであるが、Tim-3ではない)、ペプチド刺激に応答してより多くのIFNγおよびTNFαを産生した(図5)。コンパニオン実験において、OT-I T細胞に、Slc16a11をコードするレトロウイルス過剰発現ベクターを形質導入した。それらのT細胞は、疲弊(PD1hiTim3)へと急速に進行し、不良なサイトカイン産生を実証した(図5)。このように、腫瘍を有するマウスに移入した腫瘍特異的T細胞におけるMCT11の欠失は、T細胞機能の増加および疲弊の減少をもたらしたのに対し、腫瘍特異的T細胞におけるMCT11の過剰発現は、疲弊した機能障害表現型の発生を加速させた。
【0154】
腫瘍の成長およびT細胞機能を、T細胞(MCT11COIN×CD4cre)にMCT11(Slc16a11)の条件的欠失を有するマウスにおいて調べた。野生型(WT)マウスおよびMCT11COIN×CD4creマウスに、B16黒色腫を接種した(図6A)。MCT11COIN×CD4creマウスは、WTと比較してより小さい腫瘍体積(図6B)、T細胞浸潤の増加、およびT細胞機能の増加(再刺激後のサイトカイン産生によって測定したときに)(図6C)を有した。MCT11ノックアウトを、抗体染色によって確認した;MCT11 mAbは、MCT11の条件的欠失を有するマウスにおいて疲弊T細胞を染色しなかった(図6D)。
【0155】
(実施例4)
Slc16a11のCRISPR/Cas9媒介欠失
OT-I OVA特異的T細胞に、Cas9:gRNAリボヌクレオタンパク質複合体をヌクレオフェクトして、Slc16a11を欠失させた。MCT11ノックアウトT細胞(MCT11 KO OT-I)を移入したマウスは、いずれかの対照(T細胞なしの対照、または対照OT-I細胞によって処置した)より小さい腫瘍面積を有した(図7)。このように、MCT11 KO T細胞は、わずか1回の投与後で優れた治療的細胞であり、リンパ枯渇または補助的IL-2を示した。
【0156】
(実施例5)
細胞治療の改善
本実施例では、Slc16a11を、養子細胞移入(ACT)療法で使用されるT細胞から機能的に欠失させる。機能的欠失は、例えばT細胞におけるSlc16a11発現を低減させるためにCRISPR/Cas系またはRNAi(例えば、siRNA二重鎖またはshRNAベクター)を使用することによって達成することができる。一例では、Cas9またはdCas9を使用して、T細胞におけるSlc16a11遺伝子を標的とする/編集する。別の例では、Cas13d、dCas13d、またはRNAiを使用して、T細胞におけるSlc16a11 RNAを標的とする/低減する。
【0157】
一例では、CRISPR/Cas(例えば、Cas9、dCas9、dCas13d、またはCas13)またはRNAiを使用して、末梢血単核細胞(PBMC)由来T細胞においてSlc16a11を機能的に欠失させる(例えば、遺伝子を標的化/編集する、またはmRNAを標的化/低減する)。得られたSlc16a11 KO T細胞を活性化し、腫瘍関連抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)をコードするベクターを形質導入する。例示的な腫瘍標的としては、これらに限定されないが、CD19、BCMA、メソテリン、およびMUC1が挙げられる。腫瘍関連抗原を発現する腫瘍を有する対象に、がんまたは腫瘍を処置するためにSlc16a11 KO CAR-T細胞の治療有効量を投与する。
【0158】
別の例では、CRISPR-Cas9またはRNAiを使用して、がんを有する患者から単離されている、例えば患者の腫瘍生検から単離されている腫瘍浸潤リンパ球(TIL)T細胞においてSlc16a11を機能的に欠失させる。Slc16a11 KO TIL T細胞を、IL-2によって増大させた後、がんまたは腫瘍を処置するために治療有効量を患者に投与する。なお別の例では、CRISPR-Cas9またはRNAiを使用してT細胞受容体(TCR)操作T細胞(例えば、NY-ESO-1)においてSlc16a11を機能的に欠失させる。Slc16a11 KO TCR T細胞の治療有効量を、がんまたは腫瘍の処置を必要とする患者に投与する。
【0159】
本開示の原理が適用され得る多くの起こり得る実施形態を考慮して、例証される実施形態は、本開示の単なる例に過ぎず、本発明の範囲を制限すると解釈してはならないと認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および精神内に入る全てを本発明者らの発明として特許請求する。
図1
図2A-B】
図2C
図3
図4
図5
図6A-B】
図6C
図6D
図7
【配列表】
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【国際調査報告】