(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】可逆的なポリオール及びこれを含む生成物
(51)【国際特許分類】
C07D 491/18 20060101AFI20240711BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240711BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240711BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240711BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07D491/18 CSP
C08G18/32 018
C08L101/00
C08L75/04
C09J175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503408
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2022056797
(87)【国際公開番号】W WO2023002449
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523354897
【氏名又は名称】カーギル・バイオインダストリアル・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CARGILL BIOINDUSTRIAL UK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】フォーヘル、ヴァウター
(72)【発明者】
【氏名】スミッツ、アンジェラ レオナルダ マリア
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BG02X
4J002CF00X
4J002CK02W
4J002CK02X
4J002CL00X
4J002GH00
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4J034BA05
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4J034JA01
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4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QB11
4J034QC03
4J034RA08
4J040EF001
4J040MA02
(57)【要約】
本発明は、Diels Alderポリオール(DAポリオール)、DAポリオールを含むポリマー組成物、及びコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材としてDAポリオールを含むポリマー組成物の使用に関する。より詳細には、Diels Alderポリオールは、a)DA/rDA反応が可能なDiels-Alder単位、及びb)二量体脂肪残基を含み、DAポリオールは、ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はカルボキシル基から選択される少なくとも2つの官能基を必ず含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) DA/rDA反応が可能なDiels-Alder単位、及び
b) 二量体脂肪残基、
を含む、Diels Alderポリオール(DAポリオール)であって、
前記DAポリオールが、ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はカルボキシル基から選択される少なくとも2つの官能基を必ず含有する、Diels Alderポリオール。
【請求項2】
前記少なくとも2つの官能基が、ヒドロキシル基である、請求項1に記載のDAポリオール。
【請求項3】
前記DA単位が、DA/rDA反応が可能なジエン及び求ジエン体によってもたらされ得る、請求項1又は2に記載のDAポリオール。
【請求項4】
前記ジエンが、フラン又はフラン誘導体である、請求項3に記載のDAポリオール。
【請求項5】
前記求ジエン体が、マレイミド又はアクリレートである、請求項3又は4に記載のDAポリオール。
【請求項6】
前記DAポリオールの前記二量体脂肪残基が、二量体二酸残基、二量体ジオール残基、二量体ジアミン残基及び/又は二量体ジイソシアネート残基から誘導される、請求項1~5のいずれかに記載のDAポリオール。
【請求項7】
前記DAポリオールの前記二量体脂肪残基が、C20~C60の炭素原子の総数を含有する、請求項1~6のいずれかに記載のDAポリオール。
【請求項8】
前記DAポリオールの総重量に基づいて10~80重量%の二量体脂肪残基を含む、請求項1~7のいずれかに記載のDAポリオール。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のDAポリオールを含む、ポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、ポリウレタン、ポリエステル、(コ)ポリアミド、エポキシ、ポリカーボネート、ポリアクリレート及びそれらの組合せ又はそれらの混合ポリマーを含む、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記ポリマー組成物が、前記DAポリオール及びイソシアネートを含む、請求項9又は10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
使用されるNCO:OH比が、好ましくは、0.8~3:1の範囲であるポリウレタンポリマーである、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が、5重量%~30重量%のNCOの範囲のイソシアネート含有率(ASTM2572に準拠して測定)を有する、請求項11又は12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
使用したNCO:OH比が1:1であり、前記ポリマー組成物が、0重量%のNCOのイソシアネート含有率(ASTM2572に準拠して測定)を有する、ウレタンポリマーである、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記ポリマー組成物が、バインダポリマーを更に含む、請求項9~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記バインダポリマーが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド及びそれらのコポリマーから選択される、請求項15に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記ポリマー組成物が少なくとも1種のポリオールを更に含む、請求項9~16のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記ポリマー組成物が、少なくとも1種の二量体ベースのポリエステルを更に含む、請求項9~17のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記ポリマー組成物が鎖延長剤を更に含む、請求項9~18のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記ポリマー組成物が、顔料、色素、レオロジー改質剤、充填剤、触媒、安定剤、乳化剤、分散剤及び他の界面活性剤から選択される、1種以上の任意の添加物を含む、請求項9~19のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
請求項1~8のいずれか一項に記載のDAポリオールをイソシアネートと反応させて、ポリウレタンポリマーを形成することを含む、ポリウレタンポリマーの作製方法。
【請求項22】
請求項1~8のいずれか一項に記載のDAポリオールを含む、若しくは請求項9~20のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む、コーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材。
【請求項23】
請求項22に記載のコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材を含む、再利用可能な製品。
【請求項24】
付加製造(AM)プロセスにおける、請求項1~8のいずれか一項に記載のDAポリオールの使用、又は請求項9~20のいずれか一項に記載のポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2021年7月23日出願の、英国特許出願第2110601.8号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、Diels Alderポリオール(DAポリオール)、DAポリオールを含むポリマー組成物、及びコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材としてDAポリオールを含むポリマー組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタンは、イソシアネートとアルコール(OH)反応剤との間で形成されるウレタン結合から形成される、広範かつ多用途のクラスのポリマーである。通常、イソシアネートとアルコール反応剤のどちらも、ポリマー形成を確実にするために2以上の官能価を有する。したがって、アルコールは、多くの場合、ポリオールと呼ばれ、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含有する。ポリウレタンの特性は、例えば、異なるポリオール及び/又はイソシアネートを選択することによって、ポリウレタンの所期の使用に対する必要性に応じて、ある程度「調節」され得る。更に、ポリウレタンは、剛性及び耐薬品性を増大することができる尿素結合を含むことができる。ポリウレタンは、発泡体断熱材、自動車シート、塗料コーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー、複合材及び耐摩耗性コーティング剤などの幅広い用途に使用されてきた。ポリオールはまた、例えば、ポリエステル、(コ)ポリアミド及びポリアクリレートなどの異なるポリマー系において使用される。
【0004】
Diels-Alder反応(DA)化学は周知であり、関連する逆Diels-Alder反応(rDA)もまた可能であることが知られている。この結果、Diels-Alder反応は可逆的であり得るか、又はDA/rDAという順序の反応が達成され得る。いくつかのrDA反応は、室温において自発的に起こることが知られているが、他のものは、熱的又は化学的活性化を必要とすることが知られている。
【0005】
最も使用される一対のDA反応剤の1つは、フランとマレイミドとの組合せであり、これを以下に示す:
【0006】
【0007】
「Thermal-Driven Self-Healing and Recyclable Waterborne Polyurethane Films Based on Reversible Covalent Interaction」(ACS Sustainable Chem.Eng.2018,6,14490~14500)では、ポリマー鎖、特に水性ポリウレタンポリマーへの配合に好適なDAジオールが提供されている。DAジオールにより、熱的に可逆的なDA/rDA官能性(上に示されているフラン及びマレイミドDA単位に基づく)が調製されたポリウレタンに導入される。DAジオールの存在は、ポリマーの表面自己修復を促進する、熱的に誘発される可逆的な動的共有結合を達成すると教示されている。
【0008】
世界中の資源及び原料が一層乏しくなり、消費者がますます環境を意識するのに伴い、製品の再利用、修理及び循環に対する関心が高まっている。
【0009】
円形製品を設計する場合、選択肢の1つは、すべての構成要素が一緒に再利用され得るよう、すべての製品構成要素を同じタイプの材料から作製することである。一方、性能面の理由のため、製品において異なる機能を実現するために、異なる材料が依然として使用される必要があることがある。製品中のいくつかの構成要素を接合する必要があるとき、接着剤が利用され得る。したがって、最終製品(携帯電話、電化製品、自動車部品など)の性能の制約又は複雑さのために、単一タイプの材料選択肢が製品の循環の達成に実現可能でない場合、製品内の接着剤の剥離は、最終製品を異なる材料タイプに分解するための解決策を提供することができる。例えば、1つの方法は、例えば水性接着剤又はホットメルトを使用して、再利用プロセスにおいて溶解又は剥離及び切り離しをすることができる接着剤を設計することである。代替的な方法は、例えば、誘発時に剥離するような接着剤を設計することである。いくつかの技術及び誘発が可能であり、誘発は、既存の再利用プロセス又は更なる外部誘発の一部であってもよい。本発明は、誘発を受けると剥離する(とりわけ)接着剤を提供することに関する。
【0010】
同様に、コーティングを基材から切り離して、純粋な材料流の再利用のために異なる材料を分離することができる。また、複合材樹脂は、強化繊維材料から切り離され、潜在的に繊維を再使用する、及び樹脂を再利用することができる。
【0011】
更に、複雑な製品を修理するために、修理又は交換を必要とするこのような製品の特定の部分を切り離すことが有利であり得る。これは、製品全体の廃棄を阻止し、寿命を延ばすことによって廃棄物を低減する。本発明の可逆的技術によって、修理可能性に向けた設計が可能となる。
【0012】
さまざまなポリマータイプに基づく接着剤が、利用可能である。良好な接着剤は、良好な機械的特性及び基材への接着性を有していなければならない。しかし、特性が良好であると考えられる点は、所期の最終使用及び基材材料に基づいて異なり得る。したがって、非常に多くの異なる接着性ポリマー配合物が入手可能である。ポリウレタンは、さまざまな極性及び接着強度、さまざまな架橋密度及び結晶化度レベルを有する、軟質接着剤から硬質接着剤まで設計する柔軟性を備える多用途な化学的性質をもたらす。ポリウレタン接着剤は、木材、金属及びプラスチックを含む幅広い基材を結合することができる。したがって、ポリウレタンポリマー接着剤は、非常に広範囲の用途における使用が見出され得る。しかし、ポリウレタンポリマー接着剤の現行の使用には欠点がある。ボルトで一緒に保持された2つの異なる基材は、再使用又は再利用のために、ねじを緩めて分離することができるが、接着剤は、通常、その耐用年数の終了時に基材から容易に取り外すことができない。したがって、ポリマー接着剤の使用は、接着された基材の再利用性を非常に制限する。強力であることと使用後に依然として剥離可能であることの両方である接着剤を提供することは、基材、特に多層材料及び多材料構造体の一部である基材の再使用及び再利用率にとって非常に有益であると思われる。同様の再使用の容易さ及び再利用の利点は、ポリウレタンコーティング剤に関しても有用となり得、この場合、コーティング剤は、これが接着又は接合する表面に塗布される。通常、ポリウレタンコーティング用組成物は、表面保護及び/又は表面装飾コーティングを実現することができ、これを基材に塗布し、乾燥又は硬化させて、連続的な保護及び/又は装飾層を形成することができる。このようなコーティング剤は、金属、木材、プラスチック及びプラスターを含む幅広い基材に塗布することができる。形成されたフィルムの重要な特性には、硬度及び耐水性(すなわち、耐加水分解性)が挙げられる。
【0013】
同様の再利用の利点及び再使用の容易さは、複合材及び複合材構造体にも高い価値があると思われる。そのような複合材において、典型的な繊維は、ガラス、炭素及びアラミド、又はバインダ樹脂を強化するために使用される亜麻若しくは竹のような天然繊維である。バインダ樹脂は、好適には、例えば、ポリウレタン、エポキシ及びポリエステルなどのポリマーである。複合材は、再利用のために溶融することができず(熱可塑性ではないため)、廃棄物処理が困難である熱硬化系バインダ樹脂と共に大型構造体に使用されることが多い。したがって、強化繊維及びバインダ樹脂が再使用及び/又は再利用のために容易に分離することができる複合材の提供が望ましい。
【0014】
ポリウレタンエラストマーは、ある形状にキャスト成形されることが多く、とりわけ、架橋構造体は、再使用又は再利用することができない。更に、構造に亀裂を生じさせる損傷又は経年劣化は材料の破損を引き起こす。したがって、一層容易に再使用、修理及び/又は再利用することができるエラストマーを提供する必要性が存在する。
【0015】
更に、塗布されたコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材から基材を損傷することなく容易に剥離することができる基材は、基材の再使用及び再利用の容易性を向上させる。したがって、基材の表面から容易に剥離され得るコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー及び/又は複合材を提供する必要性が存在する。更に、このようなコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー及び複合材は、自己修復特性を実現することによって基材の耐久性を補助することができるか、又は需要に応じた剥離を伴う循環及び複合材/部品、特に多層材料及び多材料構造体の一部であるものの再利用性を補助することができる。
【0016】
理想的には、接着剤を可逆的にするために、接着剤のポリマー構造は、ある特定の刺激が適用されると、「解体する」こと又は剥離することが可能となるべきである。接着剤は、一般に、2つの基材の間に設けられることがあるので、溶媒又は紫外光による到達が困難なことがある。したがって、剥離を誘導するための最も便利な刺激は、本質的に熱であり得る。したがって、接着性ポリマー中に存在する熱に誘発されるDA/rDA反応は、ポリマー接着剤、特にポリウレタンポリマー接着剤に好都合な接合/剥離機能を導入する好適な手段を提供して、接着剤の除去の容易さ並びに再使用及び再利用の改善を可能にする。しかし、上記のフラン及びマレイミドに基づくDAジオールは、ポリウレタンポリマーにいったん配合されると、接着剤としての使用に好適な物理特性及び機械特性をポリマーにもたらさないことが見出された。
【0017】
本発明は、二量体脂肪残基を含むDAポリオールを提供する。DAポリオール中の脂肪二量体残基の存在は、コーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー及び複合材に望ましい再利用利益及び再使用の容易さを可能にする特性を備えるDAポリオールから調製されたポリウレタンポリマーをもたらし、特に、接着されたコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材の基材からの剥離が、基材及び/又はコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材の再利用及び再使用を補助することができる。更に、DAポリオールから調製されたポリウレタン中の二量体脂肪残基を含むDAポリオールの存在により、望ましい固有の自己修復特性がやはり実現され得、これは、製品が再利用又は再使用される前に、製品の耐用年数(特に、コーティング、エラストマー及び複合材)の延長を達成するために望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、以下:
a)DA/rDA反応が可能なDiels-Alder単位、及び
b)二量体脂肪残基、を含むDiels Alderポリオール(DAポリオール(olyol))が提供される。
【0019】
更に、本発明のDAポリオールを含むポリマー組成物、より具体的には当該DAポリオールを含むポリウレタンポリマー組成物が提供される。
【0020】
したがって、本発明はまた、第1の態様のDAポリオールをイソシアネートと反応させてポリウレタンポリマーを形成することを含む、ポリウレタンポリマーの作製方法を提供する。
【0021】
更に、本発明の代替的な実施形態によれば、DAポリオール又はポリウレタンポリマー組成物を含むコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材が提供される。
【0022】
本明細書中で使用される任意の上限若しくは下限の量又は範囲の限界は、独立して、組み合わせられ得ることが理解される。
【0023】
置換基中の炭素原子の数(例えば、「C1~C6」)を記載する場合、その数は、任意の分岐基中に存在する任意のものを含む、置換基中に存在する炭素原子の総数を指すことが理解されるであろう。
【0024】
本発明のDAポリオール又はポリウレタンを生成するために使用され得る化学物質の多くは、天然源から得られる。そのような化学物質は、典型的には、それらの天然起源に起因する化学種の混合物を含む。このような混合物が存在するため、本明細書で定義されるさまざまなパラメータは平均値であってもよく、整数でなくてもよい。
【0025】
分子又は分子の一部に関して本明細書で使用される「官能価」という用語は、その分子又は分子の一部における官能基の数を指す。「官能基」は、化学反応に関与し得る分子中の基を指す。例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基及びアミン基はすべて官能基の例である。例えば、二酸(2個のカルボン酸基を有する)及びジオール(2個のヒドロキシル基を有する)は、両方とも2の官能価を有し、三酸及びトリオールは、両方とも3の官能価を有する。
【0026】
本明細書で使用される「二量体脂肪残基」という用語は、別段の定義がないかぎり、二量体脂肪酸(二量体脂肪二酸とも呼ばれる)の残基、又は二量体脂肪ジオール若しくは二量体脂肪ジアミンなどの二量体脂肪酸誘導体の残基を指す。
【0027】
「ポリオール」という用語は、当該技術分野において周知であり、1個より多いヒドロキシル基を含む分子を指す。「活性水素」という用語は、ポリオールのヒドロキシル基の一部として存在する水素原子を指す。
【0028】
DAポリオール
したがって、本発明は、以下:
Diels Alderポリオール(DAポリオール)であって、
a)DA/rDA反応が可能なDiels-Alder単位、及び
b)二量体脂肪残基、
を含む、Diels Alderポリオール(DAポリオール)を含むDiels Alderポリオール(DAポリオール)を提供する。
【0029】
DAポリオールは、イソシアネートと反応してポリウレタンを形成することを可能にする少なくとも2つの官能基を必ず含有する。好ましくは、少なくとも2つの官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はカルボキシル基から選択される。好ましくは、少なくとも2つの官能基はヒドロキシル基である。
【0030】
好適には、DAポリオールは、ジオール、トリオール、テトロール、ペントール又はヘキソールであってもよい。好ましくは、DAポリオールは、ジオール、トリオール又はテトロールであり、より好ましくは、ジオール又はトリオールである。最も好ましくは、DAポリオールは、ジオールである。
【0031】
当業者によって理解されるとおり、DA/rDA反応は、ジエンと求ジエン体との[4+2]環化付加の可逆反応を含み、したがって、本発明のDiels-Alder単位(DA単位)は、このようなジエン及び求ジエン体によってもたらされる。
【0032】
好ましくは、Diels-Alder反応は、熱的に可逆的なDA/rDA反応が可能である。好ましくは、rDA反応は、40℃~125℃、より好ましくは55℃~120℃、最も好ましくは75℃~110℃の温度で起こり、この温度範囲内では、DA単位を含有するポリウレタンを剥離させて、その結果、ポリウレタンを接着された基材から除去することができるが、温度は、ポリマーの残りの部分又はポリマーがその所期の使用のために適用され得る任意の基材を変性させるほど高くない。DA反応は、rDA反応温度よりもいくらか低い温度で起こり、本発明の場合、好ましくはDA反応は、20℃~80℃の温度で起こり、より好ましくは、DA反応は40℃~80℃の温度で起こり、ほとんどのDA反応は、60℃~80℃の温度で起こることを理解すべきである。理想的には、DAポリオールのそれぞれのDA反応温度とrDA反応温度との間に5°超、好ましくは10°超の温度差が存在し、この温度差は、DA単位が安定であり、rDA反応が意図されたときにのみ起こることを確実にする。
【0033】
好適には、DA単位は、DA/rDA反応が可能な任意のジエン及び求ジエン体によって提供され得る。ジエンは、線状又は環状のいずれか一方であってもよく、好ましくは、ジエンは環状であり、最も好ましくはジエンは、フラン又はフラン誘導体である。好ましくは、ジエンは、ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はカルボキシル基から選択される少なくとも1つの官能基を含み、より好ましくは、ジエンはフランであり、フランはヒドロキシル基、アミノ基又はカルボキシル基を含み、最も好ましくは、ジエンはフランであり、フランはヒドロキシル基を含む。DA単位は、フラン及びマレイミド又はフラン及びアクリレートによって、好ましくは提供され得る。しかし、DA単位は、代替として、イミン及び求ジエン体によって得られるアザ-DA単位、又はジエン及びアルデヒドによって得られるオキソ-DA単位によって提供され得る。DA単位がフラン及びアクリレートによって提供される場合、アクリレートは、好ましくはメタクリレートであり、最も好ましくはジ(メタ)アクリレートである。より好ましくは、DA単位は、フラン及びマレイミドによって提供され、最も好ましくはフラン及びビスマレイミドによって提供される。好適なフランとしては、例えば、フルフリルアルコール、又はフラン(官能性ヒドロキシル基を提供するため)若しくはフルフリルアミン(官能性アミノ基を提供するため)及び/若しくはフロ酸(官能性カルボキシル基を提供するため)で末端キャップされたポリオールなどのフラン誘導体を挙げることができる。望ましくは、フラン成分は、植物油に由来する再生可能なバイオベースの化合物によって提供され得る。
【0034】
好適には、本発明のDAポリオールは、少なくとも1つのDA単位及び二量体脂肪残基を含む。DA単位内で、1つのポリオールがジエン上に存在し、1つのポリオールが求ジエン体上に存在してもよい。この結果、DA反応が、これらの2つの異なるポリオール間で起こる。代替的に、DAポリオールは、2つのDA単位及び二量体脂肪残基を含んでもよく、この実施形態では、構造的に、二量体脂肪残基は、2つのDA単位の間に設けられている。ポリウレタンポリマーにいったん組み込まれると、DAポリオール内の2つの共有DA結合の存在によりかなり大きな強度がもたらされる。これは、接着剤における適用に特に有利となり得る。
【0035】
DAポリオールの二量体脂肪残基は、二量体二酸残基、二量体ジオール残基、二量体ジアミン残基及び/又は二量体ジイソシアネート残基から好適に誘導され得る。より好ましくは、二量体脂肪残基は、二量体二酸残基、二量体ジオール残基及び/又は二量体ジアミン残基から誘導される。特に好ましくは、二量体脂肪残基は、二量体ジアミン残基から誘導される。
【0036】
好ましくは、DAポリオールの二量体脂肪残基は、C20~C60、より好ましくはC24~C48、特にC28~C44、とりわけC36の総数の炭素原子を含有する。好適な二量体脂肪残基は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸及びエライジン酸の二量化生成物を含む、二量体脂肪酸から誘導されてもよい。天然の脂肪及び油、例えばヒマワリ油、ダイズ油、オリーブ油、ナタネ油、綿実油及びトール油の加水分解で得られる不飽和脂肪酸混合物の二量化生成物も使用することができる。二量体脂肪酸は、当分野において公知の、二量体脂肪ジオール、又は代替として、二量体脂肪ジアミンに変換され得る。二量体脂肪ジアミンは、本発明において特に好ましく、以前のCrodaから商標名「Priamine 1074」及び「Priamine 1075」で入手可能である。
【0037】
上記のとおり、好適には、本発明において、DAポリオールは、フラン及びマレイミドによってもたらされるDA単位によって好ましくはもたらされるか、又は代替として、DAポリオールは、フラン及びアクリレートによってもたらされる。これらの場合、二量体脂肪残基は、DA単位のフラン又はマレイミド又はアクリレートの部分に存在することができる。例えば、二量体は、二量体ジ(メタ)アクリレート、又はフランで末端キャップされた二量体ベースのポリオール、又は二量体ベースのマレイミドの一部として存在してもよい。これは、二量体脂肪残基がDA単位構成部分の1つに既に存在しているために、DAポリオールを最初に形成するために必要な反応工程の数が減少するので、DAポリオール単位を製造する際の使用が容易になる。したがって、DAポリオールは、二量体ベースのメタクリレート(好ましくは、ジ(メタ)アクリレート)をフラン(又はフルフリルアルコールなどのフラン誘導体)と反応させることによって得ることができるか、又は代替として、DAポリオールは、フラン誘導体で末端キャップされた二量体ベースのポリオール(フラン基を得るため)をメタクリレートと反応させることによって得ることができ、好適なメタクリレートとしては、アクリル酸及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。しかし、最も好ましくは、DAポリオールは、フルフリルアルコールを、二量体脂肪ジアミンから誘導されるビスマレイミド(すなわち、二量体ベースのビスマレイミド)と反応させることによって得ることが可能であり、又は代替的に、DAポリオールは、好ましくは、フラン誘導体で末端キャップした二量体ベースのポリオール(フラン基を得るため)をマレイミドと反応させることによって得られる。
【0038】
代替的に又は更に、二量体ベースのポリオールは、フラン誘導体で末端キャップされてもよく(フラン基を得るため)、これを次にマレイミドと反応させる。ここで、上記の脂肪二量体残基によってもたらされる炭素鎖は、2つのフラン基の間で得られ、この場合、フラン基は、マレイミドの窒素含有環に結合している(DA単位を確立するため)。マレイミドは、末端OH基を有する脂肪族又は芳香族炭素鎖を含有してもよい。炭素鎖長は、本発明に必須ではない。好適なマレイミド反応剤は、例えば、末端OH基をもたらすN-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド又はPEG末端マレイミドであってもよい。
【0039】
上に示唆されるとおり、脂肪二量体残基は、好ましくは、再生可能な供給源及び/又はバイオベースの供給源に由来してもよい。好ましくは、脂肪二量体残基及びDA単位のどちらも、再生可能な供給源及び/又はバイオベースの供給源に由来する。DAポリオール中のバイオベース含有量のレベルは、14C放射性炭素年代測定法を使用して、試料のバイオベース含有物又は再生可能な炭素含有物を判定するための標準分析方法として、ASTM D6866によって判定可能であり得る。ASTM D6866により、バイオベースの原料に由来する炭素と、化石ベースの原料から誘導される炭素とが区別される。この基準を使用して、再生可能供給源からの炭素の百分率を、試料中の全炭素から計算することができる。好ましくは、DAポリオールは、少なくとも25%のバイオベース含有物、より好ましくは少なくとも40%のバイオベース含有物、最も好ましくは少なくとも60%のバイオベース含有物を含む。より多くのバイオベース化学原料が利用可能になるにつれて、一層高いレベルのバイオベースの含有物が達成され得ると考えられる。
【0040】
好ましくは、DAポリオールは、DAポリオールの総重量に対して、10~80重量%の二量体脂肪残基を含み、より好ましくは、DAポリオールは、15重量%~70重量%の二量体脂肪残基を含み、最も好ましくは、DAポリオールは、20重量%~60重量%の二量体脂肪残基を含む。
【0041】
更に、上記のDAポリオールを含むポリマー組成物が提供される。好適なポリマー組成物としては、ポリウレタン、ポリエステル、(コ)ポリアミド、エポキシ、ポリカーボネート、ポリアクリレート及び異なるポリマータイプの組合せを挙げることができる。異なるタイプのポリマーを含有する混合ポリマー組成物を作製することができるが、依然として、上記の少なくともいくつかのDAポリオールが存在することにより、可逆的材料がもたらされる。このような混合ポリマー組成物は、より多くのポリマーのうちの2種の組合せ又は混合物からなる、可逆的結合及び共有結合の組合せからなることができる(すなわち、相互貫入ポリマーネットワークか、又は1つのポリマーに両方のタイプの結合を構築させることによる)。
【0042】
好ましくは、ポリマー組成物は、上記のDAポリオール及びイソシアネートを含む。ポリマー組成物は、イソシアネートとDAポリオールとの混合物であってもよい。好ましくは、ポリマー組成物は、DAポリオールとイソシアネートとの反応から形成されるポリウレタンを含む。
【0043】
イソシアネートとDAポリオールとの混合物を含むポリマー組成物は、イソシアネートがポリオールよりも過剰に使用される場合、「プレポリマー」と考えることができ、本明細書では、便宜上、このように呼ばれる。
【0044】
イソシアネート及びDAポリオールを反応させてポリウレタンを形成してもよく、この反応は、任意の好適な手段によって、例えば、高温による硬化によって、又は開始剤触媒の導入によって、又は湿気硬化によって引き起こされてもよい。より具体的には、DAポリオール及びイソシアネートは、高温で反応(硬化)されてもよく、当該高温は、好ましくは50℃~80℃の範囲、より好ましくは60℃~75℃の範囲とすることができる。そのような硬化温度は、好ましくは、関連するDAポリオールrDA反応温度未満であるべきである。好適には、イソシアネートとDAポリオールとを直接反応させてもよく、又は代替として、それらを事前混合して、均一な混合物を形成させて、次に、その後に反応させてもよい。代替的に、ポリウレタンを形成するための湿気硬化は、この硬化方法が、DAポリオールのrDA温度よりも十分に低い熱硬化温度の選択に伴うなんらかの問題を回避するので、好ましいことがある。したがって、本発明は、有利なことに周囲硬化系を実現することができる。
【0045】
反応したポリウレタンポリマーにおいて、使用されるNCO:OH比は、好ましくは0.8~3:1の範囲であるが、使用される比は、ポリマーが1成分系(1K)又は2成分系(2K)で形成されるかどうかに大きく依存する。したがって、1K系の場合、使用されるNCO:OH比は、好ましくは1~3:1、より好ましくは1.2~2.5:1、特に1.5~2:1の範囲であるが、2K系の場合、使用されるNCO:OH比は、好ましくは0.8~1.2:1、より好ましくは0.9~1.1:1、最も好ましくは1~1.03:1の範囲である。
【0046】
ポリマー組成物は、5重量%~30重量%、より好ましくは10重量%~23重量%、特に15重量%~20重量%、とりわけ18重量%~19重量%のNCOの範囲のイソシアネート含有率(ASTM2572に準拠して測定)を好ましくは有することができる。
【0047】
イソシアネートは、少なくとも2の官能価を有する少なくとも1種のイソシアネートを好ましくは含む。
【0048】
イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、脂環式又は芳香族イソシアネートであってもよい。一部の実施形態において、イソシアネートは、好ましくは脂肪族イソシアネートである。しかし、一部の代替実施形態では、好ましくは、イソシアネートは芳香族イソシアネートとすることができる。一層とりわけ、ポリマー組成物がコーティングに利用される場合、脂肪族イソシアネートが好ましく、ポリマー組成物が接着剤、エラストマー及び/又は複合材に利用される場合、芳香族イソシアネートが好ましい。これは、脂肪族イソシアネートは、芳香族イソシアネートに比べると、高い熱安定性及び光安定性を有するが、芳香族イソシアネートは、脂肪族イソシアネートに比べると、高い反応性及び強度を有するのが理由である。
【0049】
好適には、ポリマー組成物は、イソシアネート、ポリイソシアネート、ジイソシアネート又はトリイソシアネートのうちの1種以上から選択されるイソシアネートを含んでもよい。このようなイソシアネートモノマーは、単独で又はそれらの混合物として使用されてもよい。好ましくは、ポリマー組成物の1種以上のイソシアネートはジイソシアネートである。
【0050】
好適なイソシアネートは、以下、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)エチレンジイソシアネート、1,2-ジイソシアナトプロパン、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,4-ブチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4-メチレンビス-(シクロヘキシルイソシアネート)及びイソホロンジイソシアネートのうちの1種以上から、トルエンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3-ジクロロ-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート又はそれらの修飾化合物から選択することができる。したがって、好適な芳香族イソシアネートは、以下:トルエンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3-ジクロロ-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート又はそれらの修飾化合物のうちの1種以上から選択されてもよく、それらのウレトンイミン修飾化合物が特に好ましいことがある。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートが好ましいことがあり、この実施形態は、ポリマー組成物がコーティング用組成物をもたらすよう使用される場合にとりわけ好ましい。
【0052】
更に、又は代替的に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が特に好ましい例である。好ましい一実施形態では、(MDI)が単独で使用され、代替的な実施形態では、そのウレトンイミン修飾化合物などのMDIとウレトンイミン修飾4,4’-ジフェニルメタジイソシアネート(修飾MDI)との混合物が好ましくは使用される。この実施形態は、ポリマー組成物が接着剤をもたらすために使用される場合、とりわけ好ましい。
【0053】
このような脂肪族ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートのビウレット、アロホネート及び/又はイソシアヌレートも同様に使用に好適である。本発明で使用するのに好ましいものは、ポリイソシアネート、とりわけヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートである。最も好ましいものは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートである。この実施形態は、ポリマー組成物がコーティングをもたらすために使用される場合にとりわけ好ましく、更にとりわけ特別なコーティングは、ビウレット及びイソシアヌレートを利用することができる。
【0054】
DAポリオールを含むポリマー組成物は、より複雑なポリマー樹脂又はバインダ系に好ましくは配合されてもよい。この場合、本発明のポリマー組成物は、1種以上の追加のポリマーと更に混合される、及び/又は反応させる。本発明のこのような実施形態では、追加のポリマーをバインダポリマーと呼ぶことが好都合である。したがって、ポリマー組成物は、バインダポリマーを含んでもよい。
【0055】
好ましくは、バインダポリマーは、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド及びそれらのコポリマーから選択される。バインダポリウレタンポリマーは、(メタ)アクリルポリマーポリオール、アクリルウレタンポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール又はポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0056】
より好ましくは、バインダポリマーは、ヒドロキシル官能性ポリオールから作製されるポリウレタンバインダであり、最も好ましくは、バインダポリマーポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有する。ヒドロキシル官能性バインダは、通常、ゲル透過クロマトグラフィーによって求めると、約500~50,000、好ましくは約1,000~10,000の数平均分子量(Mn)、約20~300mg KOH/g、好ましくは30~250mg KOH/gのポリマーのヒドロキシル価、0~150mg KOH/g、好ましくは0~100mg KOH/gのポリマーの酸価(固体基準)、及び100gのポリマー(固体)あたり5~450、好ましくは20~300ミリ当量のスルホン酸及び/又はカルボキシル基の含有量を通常、有するべきである。このようなヒドロキシル官能性バインダポリオールは、当然ながら、公知の市販源から得ることができ、この場合、これらは、本発明において使用する前に前処理をほとんど必要としないので、溶媒系市販製品を使用することが好ましい。言及され得るこのような市販の樹脂の例は、Desmophen(商標)A 450 BA、Desmophen A 450 BA/X、Desmophen 800、Desmophen 1200及びDesmophen 670(すべて、Covestroから入手可能)、Albodur(商標)912、Aldodur903、Albodur941(すべて、Alberdingk-Boleyから入手可能)及びSynthalat1633、Synthalat1653及びSynthalat A333(すべて、Synthopolから入手可能)である。任意で、ポリマー組成物のバインダポリマーは、イソシアネート基と反応することが可能な2つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の更なるポリオールポリマーを含有してもよい。これらの任意の更なるポリマーポリオールは、好ましくは、実質的に直鎖状であり、300~20,000の範囲、好ましくは500~2,500の範囲の分子量を有する。好ましいポリオールポリマーは、平均2個から多くとも4つのヒドロキシル基を含有する、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアミド及び/又はポリエステルアミドである。このようなポリマーポリオールの存在は、ポリマー組成物から調製又は形成される最終生成物の特性を改変する。本発明の特に好ましい一実施形態では、前述のイソシアネートの少なくとも1種を前述のポリエステルの少なくとも1種と反応させて、当該プレポリマーを形成する。続いて、このプレポリマーは、本発明のDAポリオールと反応させて目的のポリマー組成物を形成する。一緒に混合されて反応し、プレポリマーを形成するイソシアネート対ポリエステル出発材料の比は、好ましくは、重量基準で、20~80:20~80、より好ましくは35~75:25~65、特に、45~70:30~55及びとりわけ55~65:35~45の範囲である。イソシアネートは、イソシアネート末端プレポリマー及び十分な未反応イソシアネートを含有する反応混合物が得られるよう、ポリエステルのヒドロキシル基含有量に対してモル過剰で、好ましくは使用される。この結果、後で、鎖延長剤(以下に更に記載する)を添加することによって、追加のイソシアネートを添加する必要なく、本発明のポリウレタンポリマーを形成する反応をもたらすことができる。任意で、ポリマー組成物は、少なくとも1種のポリオールを更に含んでもよい。2つのヒドロキシル基しか存在しない場合には、当該ポリオールはジオールであると考えることもできるが、このポリオールは上記のDAポリオールとは異なる。少なくとも1種のポリオールは、ポリウレタンポリマーにおいて有用であることが当業者に公知の任意のポリオールから選択されてもよい。好適には、少なくとも1種のポリオールは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリカプロラクトンポリオールから選択されてもよい。ポリエーテルポリオールは、最終ポリマーの低温用途に特に好適であり、それらは低粘度(40~15,000mPa s)を有しており、費用は比較的低いが、酸素の存在下で熱に曝露されると分解しやすい。ポリエステルポリオールは、ポリエーテルポリオールと比べ、光分解及び熱分解に対して一層良好な耐性をもたらすが、それらの加水分解安定性はより低い。ポリウレタンポリマー接着剤の場合、ポリエステルポリオールを含ませると、一部の基材への接着剤の湿潤及び接着が増強されることがあり、それらはまた、弾性率、強度及び剛性に関する良好な機械的特性を示し、したがって、本発明のポリマー組成物にポリエステルポリオールを含ませることが特に好ましいことがある。ポリカーボネートポリオールは、加水分解及び酸化に対して非常に安定であり、有利な弾性率並びに引張強度及び剪断強度の両方を実現することができる。ポリカプロラクトンポリオールは、一般に、特別な高性能クラスのポリエステルポリオールと考えられており、それらはまた、非常に良好な引裂強度特性及び切断強度特性を実現するが、一部の用途に対しては、不都合な伸び特性をもたらすと一般に考えられている。更に又は代替的に、ポリマー組成物は、少なくとも1種の二量体ベースのポリエステルポリオールを更に含んでもよい。少なくとも1種の二量体ベースのポリエステルポリオールを含ませると、上記の慣用的なポリエステルポリオールに対して、加水分解安定性の改善及び一層高い可撓性を実現することができる。利用され得るこのような市販の樹脂の例は、Priplast 1838及びPriplast 3192(Crodaから入手可能)である。任意で、ポリマー組成物は、鎖延長剤成分を更に含んでもよい。鎖延長剤は、鎖延長剤組成物の形態であってもよい。好適な鎖延長剤は、当該分野において公知である。鎖延長剤組成物は、例えば、鎖延長剤、及びポリマー組成物に導入することが望ましいことがある、他の添加物(発泡剤、及び/又はウレタン触媒、及び/又は顔料、及び/又は充填剤、及び/又は発泡剤など)との単純な予備混合によって好ましくは調製される。ポリウレタンを形成するために、少なくとも1種のポリオール(上記)を鎖延長剤と一緒に添加して、他のポリマー組成物成分と反応させてもよい。ポリマーを形成するために使用される鎖延長剤又は鎖延長剤組成物は、好適には、2つ以上の活性水素基を含み、例えば、鎖延長剤又は鎖延長剤組成物は、ポリオールを含む。好ましくは、鎖延長剤又は鎖延長剤組成物は、2つ以上の活性水素基を有する低分子化合物、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンチレングリコール、メチルペンタンジオール、イソソルビド(及び他のイソヘキシド)、1,6-ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒドロキノンエーテルアルコキシレート、レゾルシノールエーテルアルコキシレート、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール及びデキストロースなどのポリオール;二量体脂肪ジオール;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びイソホロンジアミンなどの脂肪族多価アミン;メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、メチレンビス(ジプロピルアニリン)、ジエチル-トルエンジアミン、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエートなどの芳香族多価アミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びジイソプロパノールアミンのアルカノールアミンを含む。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、鎖延長剤は、特に1~10個、とりわけ3~5個の範囲の炭素原子を含む脂肪族直鎖炭素鎖を有する、ポリオール、より好ましくはジオールである。好ましいジオールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール及び1,5-ペンチレングリコールが挙げられる。1,4-ブチレングリコールが特に好ましい。
【0058】
追加のヒドロキシル官能基の存在により、DAポリオール含有ポリマーの特性が改変され、ポリマーの物理的特性をその所期使用のために、より良好に「調整」することができ、例えば、DAポリオールと鎖延長剤ポリオールの両方、又は少なくとも1種の更なるポリオールが存在すると、ポリマーへの接着特性の改善をもたらし、ポリマーをその所期の使用に特に適したものにすることができる。当業者によって理解されるとおり、鎖延長剤として使用するのに好適なポリオールは、2つのイソシアネートモノマー間に短い連結基を形成して、一層硬く、弾性の低いポリマーセグメントをもたらすことが可能な短鎖ポリオールである一方、当該少なくとも1種のポリオールとして使用するのに好適なポリオールは、鎖長がより長く、ポリマーの可動性を増大させて、より柔らかいセグメント及びより高い弾性特性をポリマーに付与する。
【0059】
望ましくは、ポリマー組成物は、1種以上の任意の添加物を含んでもよい。これらの添加物は、顔料、色素、レオロジー改質剤、充填剤、触媒、安定剤、乳化剤、分散剤及び他の界面活性剤から選択することができる。上記のバインダポリマーに加え、任意の添加物が、好ましくは、存在してもよく、所期最終使用又はポリマー組成物によって製造される製品に応じて当業者によって選択されてもよい。
【0060】
顔料添加物は、有機であってもよく、又は無機であってもよい。有機顔料の例は、アゾ顔料、フタロシアニン、キナクリドンである。無機顔料の例は、酸化鉄顔料、二酸化チタン及びカーボンブラックである。
【0061】
色素の例は、アゾ、アジン、アントラキノン、アクリジン、シアニン、オキサジン、ポリメチン、チアジン及びトリアリールメタン色素である。これらの色素は、塩基性又は陽イオン性色素、金属錯体、反応性、酸性、硫黄、結合性色素又は直接染料として使用することができる。
【0062】
好適な触媒としては、イソシアネートとポリオールとの反応を促進してポリウレタンを形成する、公知のポリウレタン触媒が挙げられる。例としては、二価及び四価スズの化合物、より詳細には二価スズのジカルボン酸塩、並びにジカルボン酸ジアルキルスズ及びジアルキルスズジアルコキシレートが挙げられる。具体例としては、ジラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、二酢酸ジオクチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、オクチル酸スズ(II)、スズ(II)フェノレート、並びに二価及び四価スズのアセチルアセトネートが挙げられる。更に、第三級アミン又はアミジンもまた、単独で、又は前述のスズ化合物と組み合わせてのどちらか一方で使用されてもよい。好適なアミンの例としては、テトラメチルブタンジアミン、ビス-(ジメチルアミノエチル)-エーテル、1,4-ジアザビシクロオクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ-(5.4.0)-ウンデカン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル、ジメチルピペラジン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0063】
好適な安定剤には、ポリウレタンの粘度をその製造、貯蔵及び適用中に安定化させる物質が含まれ、単官能性カルボン酸塩化物、単官能性高反応性イソシアネート及び非腐食性無機酸が挙げられる。このような安定剤の例は、塩化ベンゾイル、トルエンスルホニルイソシアネート、リン酸又は亜リン酸である。更に、好適な加水分解安定剤としては、例えば、カルボジイミドタイプのものが挙げられる。酸化防止剤又はUV吸収剤である安定剤もまた、使用されてもよい。このような安定剤の例は、HALS立体障害アミン光安定剤、水素供与性酸化防止剤(立体障害フェノール及び第二級芳香族アミンなど)、ベンゾフラノン、オキサニリド、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール及びUV吸収性顔料である。
【0064】
好適な界面活性剤には、ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール修飾ジメチルポリシロキサン及びアルキレングリコール修飾ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン界面活性剤、並びに脂肪酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩及びスルホン酸塩などの陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0065】
好ましくは、いくつかの用途又は最終使用のため、ポリマー組成物は、2成分(2K)ポリウレタン樹脂系として提供される。これは、ポリマー組成物がコーティング用組成物を生成するために利用される場合に特に好ましい。当該2Kポリウレタン系において、本発明のDAポリオール及びバインダポリマーは、樹脂系の第1の成分を提供することができ、ポリイソシアネートは、樹脂系の第2の成分を提供することができる。この実施形態では、1種以上の任意の添加物が、第1又は第2の成分のいずれか一方において提供されてもよい。そのような2K系は、ポリマー組成物を含むか又はそれからなるコーティング及びキャストエラストマー又は複合材の調製に特に好ましい。したがって、本発明は、本明細書に記載されているポリマー組成物を含む、したがって好ましくは上記のDAポリオール、バインダポリマー及びポリイソシアネートを含むコーティング又はキャストエラストマー又は複合材組成物を、好ましくは提供することができる。
【0066】
したがって、本発明はまた、第1の態様のDAポリオールをイソシアネートと反応させてポリウレタンポリマーを形成することを含む、ポリウレタンポリマーの作製方法を提供する。本発明のDAポリオールは、ポリウレタンポリマーを製造する従来の方法における使用に好適である。
【0067】
本発明によるポリマー組成物は、幅広い範囲の用途において有用性を見出すことができ、ポリマー中のDAポリオールの存在により、上で示唆したように、修理、再利用、再使用の容易さ、及び製品の循環に関する利点が実現される。更に、本発明のポリマー組成物は、フィラメントの熱溶解積層法(FDM)、粉末の選択的レーザ焼結(SLS)又は液体のステレオリソグラフィー(SLA)などの付加製造(AM)プロセスにおいて特定の有用を見出すことができる。ポリマー組成物中にDAポリオール物質が存在することにより、ポリマー組成物は、DAポリオール物質を含まないポリマー組成物の場合に達成されると思われるよりも低い温度において、軟化及び流動することが可能となる。これによって、より低い動作温度の使用が可能になり、費用及びエネルギーの節約をもたらす。更に、付加層製造プロセスにおいてより低い動作温度を使用すると、最終製品の熱反り又はプリントベッドからの剥離に伴う問題を克服することができる。更に又は代替的に、DAポリオールが存在すると、(DAポリオールの非存在下で)流動性を確実にするために必要な温度では、通常、分解されると思われるポリマーを使用する付加層製造プロセスが可能になり得、より広い範囲のポリマーが、例えば、3D印刷技法において利用されることが可能となる。
【0068】
更に、又は代替的に、上記のDAポリオール又はポリマー組成物(DAポリオールを含む)を含むコーティング剤、接着剤、シーラント、エラストマー又は複合材が提供される。本発明の特定の好ましい実施形態によれば、上記のDAポリオールを含むか、又は上記のポリマー組成物(DAポリオールを含む)を含む接着剤が提供される。接着剤に関する好ましい特徴は、ポリマー組成物の好ましい特徴の説明に関連して上記に提示される。
【0069】
本発明による接着剤は、それが接着する基材に塗布されてもよく、より具体的には、本発明の接着剤は、基材の2つ以上の層の間に塗布されてもよい。この場合、基材層は、性質が類似していてもよく、又は類似していなくてもよい。基材への接着剤の塗布は、スプレー、ブラシ、ローラー、ペイントミット、及び当分野において公知の他のものを含む任意の数の技法によって提供されてもよい。多数の基材が接着剤の塗布に好適であり、好適には、基材は、金属、特に鋼及びアルミニウム、木材及び/又はプラスチックから選択されてもよい。同様に、本発明のDAポリオールを含む結合樹脂を含む複合材は、繊維強化材に施用及び接着されてもよく、これもやはり、本発明の特に好ましい実施形態であり得る。
【0070】
接着性ポリマー中に熱可逆的rDA結合を有するDAポリオールを利用する利点は、DAポリオールが、接着された基材からの接着剤若しくは複合材の剥離、分離された基材の再接合(再使用のため)、及び/又は既に接着された基材からの分離後に接着剤若しくは複合材を再架橋することによる接着剤若しくは複合材自体の再利用、及び/又はポリマーの剥離及び分離による複合繊維の再利用を可能にすることである。
【0071】
本発明の特定の好ましい代替実施形態によれば、上記のDAポリオール又は上記のポリマー組成物(当該DAポリオールを含む)を含むコーティング剤が提供される。コーティング剤に関する好ましい特徴は、ポリマー組成物の好ましい特徴の説明に関連して上記に提示される。
【0072】
コーティング剤はすべて、コーティング用組成物の総重量に対して、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、特に少なくとも5重量%、望ましくは少なくとも10重量%のポリイソシアネートを含んでもよい。コーティング剤はすべて、コーティング剤の総重量に対して、最大でも50重量%、好ましくは最大でも40重量%、特に最大でも30重量%のポリイソシアネートを含んでもよい。
【0073】
硬化前のコーティング用組成物の固体部分中の遊離ヒドロキシル基に対する遊離イソシアネート基のモル比(NCO/OH比)は、少なくとも0.7、好ましくは少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも0.9、特に少なくとも1であってもよい。NCO/OH比は、最大でも3、好ましくは最大でも2.5、より好ましくは最大でも2、特に最大で1.8であってよい。NCO/OH比が一層高いと、硬化したコーティング剤への硬度及び/又は耐薬品性の改善を実現し得る。
【0074】
コーティング剤は、DIN EN ISO3251に準拠して、コーティング用組成物の総重量に対して、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、特に少なくとも40重量%の総固体含有率を有してもよい。コーティング剤は、コーティング剤の総重量に対して、最大でも80重量%、好ましくは最大でも70重量%、より好ましくは最大でも65重量%、特に最大でも60重量%の総固体含有率を有することができる。代替的に、コーティング剤は、溶媒量が少ない場合から無溶媒までと考えることができ、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99~100%の総固体含有率を有する。
【0075】
コーティング剤はすべて、コーティング剤の総重量に対して、少なくとも10重量%の水、好ましくは少なくとも20重量%の水、特に少なくとも30重量%の水を含んでもよい。コーティング剤はすべて、コーティング用組成物の総重量に対して、最大でも90重量%の水、好ましくは最大でも80重量%の水、特に最大でも70重量%の水を含むことがある。
【0076】
コーティング剤は、1種以上の添加物、とりわけ、着色用添加物、例えば顔料及び/又は色素を好ましくは含んでもよい。
【0077】
ポリオールは、仕上げ塗装であってもよい。コーティング剤は透明又は実質的に透明であってよく、好ましくは、コーティング用組成物は透明である。コーティング剤は、着色用添加物を含まなくてもよく、例えば、顔料及び/又は色素を含まなくてもよい。
【0078】
本発明によるコーティング剤は、基材に塗布することができる。基材へのコーティング剤の塗布は、スプレー、ブラシ、ローラー、ペイントミット、及び当分野において公知の他のものを含む任意の数の技法によって提供されてもよい。多数の基材がコーティング剤の施用に好適である。コーティングされることになる基材は、金属、特に鋼及びアルミニウム、木材、レンガ、コンクリート及びプラスチックから選択されてもよい。基材は、外壁、内壁又は床であってもよい。コーティングポリマー中に熱可逆的rDA結合を有するDAポリオールを利用する利点は、DAポリオールが、コーティング剤が接着した基材からのコーティングの剥離、分離した基材の再接合(再使用のため)、及び/又はコーティング剤が既に接着した基材の表面から分離した後にコーティングポリマーを再架橋することによるコーティングポリマー自体の再利用が可能になることである。
【0079】
好適には、コーティング剤は、基材上にプライマーコーティングとして塗布されてもよい。オーバーコート又はトップコートなどの更なるコーティング層が、プライマーコーティングの上に塗布されてもよい。更に又は代替的に、本発明のコーティング用組成物は、トップコートとして施用されてもよい。コーティング剤は、塗料又はラッカー、好ましくは塗料として提供されてもよい。
【0080】
本発明の特定の好ましい代替実施形態によれば、上記のDAポリオール又は上記のポリマー組成物(当該DAポリオールを含む)を含むエラストマーが提供される。エラストマーに関する好ましい特徴は、ポリマー組成物の好ましい特徴の説明に関連して上記に提示される。好ましくは、エラストマーは、2K系から作製されるキャストポリマーから形成されるキャストエラストマーである。しかし、エラストマーポリマーを形成する1K法が代替法として利用されてもよく、これは、本発明のDAポリオールを含む熱可塑性ポリウレタン(TPU)から形成されるエラストマーを提供するのに特に好適である。
【0081】
本発明の特定の好ましい代替実施形態によれば、上記のDAポリオール、又は上記のポリマー組成物(当該DAポリオールを含む)を含む複合材が提供される。複合材に関する好ましい特徴は、ポリマー組成物の好ましい特徴の説明に関連して上記に提示される。好ましくは、複合材は、繊維強化複合材である。
【0082】
本明細書に記載される特徴のすべては、任意の組合せで、上述の態様のいずれかと組み合わされてもよい。
【実施例】
【0083】
本発明は、以下の非限定例によって例示される。
【0084】
本明細書に記載されている、すべての試験手順及び物理パラメータは、本明細書において特に明記しないかぎり、又は参照された試験方法及び手順において特に明記しないかぎり、大気圧及び室温(すなわち、約20℃)及び50%の相対湿度において求められたことが理解されよう。同様に、部及び百分率はすべて、特に示さないかぎり、重量基準である。
【0085】
実施例において使用される物質は、以下のとおり特定される:BMI- ビスマレイミド樹脂689- 非水素化二量体ジアミン主鎖を含有する液状ビスマレイミド(以前のDesigner Molecules Inc)FA- フルフリルアルコール(以前のSigma Aldrich)PC- ポリカーボネートポリオール(ジオール)(以前のAsahi Kasei chemicals)、(ポリマー)4,4-MDI混合物であるDesmodur(商標)VK10L- ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアンテ(diisocyante)と高級官能性ホモログの異性体(PMDI)との混合物(以前のCovestro AG)PP-Pripol(商標)2043-100%バイオベースの二量体ジオール(以前のCroda)SH-CroHeal(商標)1000- ポリウレタンポリマー中での固有の自己修復を促進させるのに好適なポリオール(以前のCroda)。
【0086】
実施例1-DAポリオールの調製
本発明による二量体脂肪残基を含有するDAポリオールを、以下のように調製した:BMIを500mLの4つ口丸底フラスコ中で秤量し、窒素雰囲気下で50℃に加熱した。FAをBMIに徐々に添加して、DAポリオールを形成した(DA反応が起こる)。DA反応のC-C結合形成は発熱反応であり、80℃への温度上昇を引き起こした。この80℃の温度に到達すると、更なる温度上昇を避けるために、除熱し、フラスコを冷水浴に入れた。FAを完全に添加した後、温度を70℃で7時間、維持した。反応剤及び得られたDAポリオールを1H NMRによって分析して、60MHzにおいて、クロロホルム中でMagritek Spinsolve 60炭素分光計を利用して、合成したDAポリオールを同定した。反応が完了したことを確認するために、試料を2時間ごとに採取して分析した。得られた1H NMRスペクトルは、最終DAポリオール実施例材料中に保持された二量体材料が存在することを明確に示した。8週間の古い試料で得られた1H NMRスペクトルにより、DAポリオール生成物が経時的に安定であること、すなわちrDA反応を受けなかったことが示された。
【0087】
実施例2-接着性ポリマーの調製
上で調製したDAポリオールを利用してさまざまなポリウレタンポリマーを調製し、接着性ポリマーとして使用するためのその適合性及び利点を確認した。以下の表1は、以下に続く実施例において使用される反応剤の更なる詳細を提示する。
【0088】
【0089】
調製した各実施例について、イソシアネート及びポリオール*反応剤を1:1のNCO:OH比で混合した。異なる実施例において使用した反応剤を、以下の表2に提示する。各実施例において、各反応剤の使用したグラム(g)単位の正確な量は、表3に見ることができる。
【0090】
【表2】
*ここで、便宜上、ポリオールtoは、実施例1のDAポリオール及び更なるポリオール反応剤(PC、PP、SH)を指す。
【0091】
【0092】
上で概説したポリウレタンポリマーは、均質な混合物が得られるまで、DAポリオール及びポリオール(関連する場合)を混合することによって調製した。次に、ポリオール*をイソシアネートと混合して、接着性ポリマー試料を形成した。
【0093】
硬化は、15kgの荷重下、室温(RT)で行った。ポリオールとしてPPのみをベースとするポリウレタンポリマー(PU-PP)は十分に硬化しなかったが、1週間後、この試料は室温において依然として軟質であったことに留意すべきである。ポリマー硬化は、PP/DAポリオール混合物を使用する配合物の場合、問題にはならなかった。
【0094】
実施例3-接着性ポリマーの試験
DAポリオールを含有する試料のすべてを100℃~130℃の加熱プロファイルに曝露させて、どの温度においてrDA反応が起こり、ポリマー試料が剥離し始めたかを確認した。120℃の温度は、DAポリオールを含有する、最も軟化したポリウレタンをもたらしたが、参照物(PU-PC)は固体状態のままであった。したがって、120℃は、実施例1のDAポリオールについてrDA反応が起こる温度を表すと考えられる。
【0095】
3a)重ね剪断試験
重ね剪断試験(方法ISO4587)を使用して、接着剤を2つの基材プレートの間に置き、力を印加してプレートを分離することによって、接着性ポリマー試料のin situ強度を決定することができる。すなわち、分離は、接着した系が破壊すると起こり、i)破壊が粘着層全体にわたる凝集破壊(CF)、ii)接着剤が少なくとも片側で基材表面から分離する接着破壊(AF)、又はiii)接着剤が強すぎて接着剤ではなく基材が損傷する基材破壊(SF)の3つのタイプの破壊を区別することができる。
【0096】
接着剤は、接着強度(ΔS)が約3MPaである場合に良好であると考えられ、これより高い値は、非常に良好な接着剤であることを示す。観察される接着強度が1MPa未満である場合、そのポリマーは良好な接着剤ではない。一方、ポリマー剥離に関すると、低い接着強度が好まれ、目標は、0に近い接着強度である。したがって、本発明の場合、目標は、室温において良好な接着強度を有し、熱処理後(すなわち、rDA反応が開始された後)に可能なかぎり低い接着強度を有する接着性ポリマーを提供することである。
【0097】
したがって、熱処理後の接着強度は、少なくとも1MPa未満、好ましくは0.5MPa未満であるべきである。使用時には、接着強度が0の場合に起こり得る、非常に突然のものではなく、接着した材料を徐々に分離することができるように、小さな強度(0~0.5MPa)を保持することが好都合なことがある。最終的に、工業用途の前に、添加物を接着剤に添加して、要求されるレベルまで特性を更に高めることができる。
【0098】
本試料の剥離接着強度を評価するために、重ね剪断試料を120℃で1時間加熱した。
【0099】
以下に詳述するとおり、異なる基材プレートを用いて重ね剪断試験を行った。
【0100】
アルミニウム基材
アルミニウム基材上の各配合物に関する平均接着強度を表4に示しており、25×25mmの面積を有する単一の重ね継手を有するアルミニウム基材上の各配合物の重ね剪断試験によって測定された、(接着剤を剥離するための)熱処理の前後の接着強度(AS)及び破壊タイプ、並びに表4の最後の列は、接着強度の低下率を示す。
【0101】
【表4】
注:接着剤強度(AS)、凝集破壊(CF)、接着破壊(AF)、基材破壊(SF)。
【0102】
DAポリオール、PU-DAだけを含有する試料は、硬く、非常に脆くなり、0.9MPaの低い接着強度をもたらした。破壊は、接着破壊(AF)によって引き起こされる。
【0103】
試料PU-PCは、許容される接着強度(3.0MPa)及び接着破壊を示した。材料は固体であったが、依然として弾性であった。熱処理後、接着強度は、加熱時の材料の軟化及び弾性の喪失に起因してほぼ50%低下するが、依然として1.0MPaを超えており(すなわち、ポリマーは依然としてある程度の接着性がある)、したがって、接着性ポリマーは、接着剤又は基材の除去及び再使用を容易にする物理的特性を有していない。
【0104】
PCポリオールとDAポリオールとの比を50/50重量%のブレンドまで増加させると、室温での接着強度の増大が観察される。この配合物の破壊は凝集性であり、このことは、DAポリオールの添加によって、PU-PC試料の粘着が改善されることを意味する。各ポリオールの質の組合せは、5.7MPaの総接着強度をもたらす。更に、接着強度は熱処理後に完全に崩壊する。
【0105】
PPを含有する試料に関すると、このポリオールは、2.2の官能価を有している、これは2の官能価を有するPC-ポリオールよりも高い架橋密度をもたらす。PP及びイソシアネートのみで作製した試料PU-ppは、上記で議論した、不十分な硬化によって引き起こされた低い接着強度を有する(試料は、1週間後に柔らかいままであった)。
【0106】
室温での重ね剪断試験の間に、試料PU-ppDA25及びPU-ppDA50の両方のアルミニウム基材の変形が破壊時に起こり、接着剤によって引き起こされる強い剪断応力下で接合端部が湾曲した。熱処理後の接着強度の低下率は、PU-PCDA配合物に匹敵する。それにもかかわらず、可逆的DA系は可逆的であり、異なるポリオールと組み合わせて再現可能であることが示される。
【0107】
DAポリオールとSH-ポリオールを組み合わせると、室温で非常に良好な接着強度を有し、熱処理時に0に近い接着強度を有するという点で、可逆接着剤の場合の優れた特性が達成される。
【0108】
エポキシガラス基材
選択したポリマー試料をガラス強化エポキシ基材(エポキシガラス基材とも呼ばれる)上で試験し、接着剤の潜在的な多様性を示した。これらの結果が表5に示されており、25×25mmの面積を有する単一の重ね継手を有するエポキシ基材の間に適用した各試料の重ね剪断試験によって測定された、熱処理の前後の接着強度及び破壊タイプである。表の最後の列は、試験した試料の接着強度の低下率を示す。
【0109】
【0110】
試料PU-ppDA25及びPU-ppDA50は、それぞれ4.0MPa及び5.1MPaという良好な接着強度を有し、PCベースの試料よりもエポキシ基材上でわずかに良好に機能した。熱処理すると、両方の試料の接着強度は91%低下し、1MPaをはるかに下回る接着強度がもたらされ、低強度での基材の剥離が可能になった。これらの試料は、再利用又は再使用を可能にするためにエポキシ基材から容易に除去することができる良好な接着性ポリマーをもたらす。
【0111】
基材の再接合
熱処理後に分離された、上で試験したエポキシ基材試料上のPU-PC及びPU-PCDA50を、続いて再接合し、試料の再利用性を実証した。基材を、硬化中と同じ設定で互いの上に戻して置き、この試料を60℃のオーブンに入れた。異なる設定に関する、さまざまなパラメータ、時間、荷重及び休止日を、以下の表6に見ることができる。
【0112】
【0113】
再接合したエポキシ基材試料に、上記の重ね剪断試験を施した。予想とおり、PU-PC試料は、この試料が可逆的DA/rDA基を含まなかったので、以前に剥離したエポキシガラス基材の再接合を示さなかった。一方、試料PU-PCDA50は、その元の強度のほとんど25%まで接着強度が回復したことを示し、これは、PUの再接合、したがって再利用が可能であることを示す。
【0114】
実施例4-代替的なDAポリオールの調製
実施例4a
本発明による二量体脂肪残基を含有する代替DAポリオールは、例えば、幅広い範囲のジオール及び酸を利用して調製することができる。
a) 二量体酸(Pripol1006)及び1,6-ヘキサンジオール
b) 二量体酸及びモノエチレングリコール
c) 二量体ジオール(Pripol2033)及びアジピン酸、又は
d) 二量体ジオール及びコハク酸。
【0115】
これらの場合、DAポリオールは、同定されたジオールと酸とを約220℃で段階的に混合することによって作製する。OH及び/又は酸価をモニタリングして、反応の完了(すなわち、OH価110及び酸価<1mgKOH/g)を追跡する。次に、この反応混合物を120℃まで冷却する。続いて、フルフリルアルコール(171℃の沸点)を添加し、混合物を再び加熱して反応を完了させる。フルフリルアルコールは、第1の工程において調製されたポリオールを末端キャップする。次に、モノマレイミド、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド(R2)をポリオールに添加し、60℃~80℃で5~8時間、撹拌することによって、所望のDAポリオールを作製することができる。
【0116】
実施例4b
同様のフルフリルアルコールで末端キャップされた物質は、以下を利用することによって調製することができる:
e) フルフリルアルコールで末端キャップする前に6-マレイミドヘキサン酸と反応させたC36二量体を含有するポリオール。
f) フルフリルアルコールで末端キャップする前に4-(マレインイミド)フェニルイソシアネートと反応させたC36ジオール。
【0117】
実施例4c
更に代替調製方法は、ビスマレイミドをフルフリルアルコールと60℃~80℃の温度で5~8時間反応させることを含む。次に、OH末端付加物を(任意で)ジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)と60℃で3時間反応させた後、続いてC36二量体ジオールを添加し、60℃で3時間、撹拌してもよい。この実施例では、DAポリオールの二量体部分を最終プロセス工程として導入する。
【0118】
実施例4d
更なる代替調製方法は、二量体成分が導入されている間にDA単位のrDA反応が起こらないように、DAポリオールの調製が好適なほどの低温で達成されることが可能となる酵素の利用を含む。この場合、DA単位は、ビスマレイミド(脂肪族又は芳香族のいずれか)をフルフリルアルコールと60℃~80℃で5~8時間、反応させることによって調製することができる。続いて、酵素であるカンジダ・アントラクチア(Candida Antarctica)リパーゼ-B(CAL-B)(全モノマーの10重量%)及びジフェニルエーテル(全モノマーの200重量%)をOH末端DA単位に添加し、これをC36二酸又はジエステル(すなわち、二酸のメチルエステル又はエチルエステル)のいずれかと反応させた。これを窒素下、80℃で反応させた。1時間後、反応混合物が均一になると、温度をゆっくりと95℃まで昇温させ、この温度を3時間、維持し、続いて圧力を低下させて反応を完了し、最終DAポリオールを得た。分子量に応じて、最終的なDAポリオールをクロロホルムに溶解し、ろ過して酵素を除去し、冷メタノール中で沈殿させることができる。
【国際調査報告】