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特表2024-526856コンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読データ記憶媒体、制御ユニット、システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】コンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読データ記憶媒体、制御ユニット、システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/397 20210101AFI20240711BHJP
   A61B 5/366 20210101ALI20240711BHJP
   A61B 5/395 20210101ALI20240711BHJP
   A61N 1/28 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61B5/397
A61B5/366
A61B5/395
A61N1/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503416
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022070278
(87)【国際公開番号】W WO2023001859
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】21306024.7
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523343961
【氏名又は名称】サークル セーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランセスキ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】チーリー,ベルトラン
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053GG10
4C127AA02
4C127AA04
4C127DD03
4C127GG16
4C127HH06
(57)【要約】
【課題】横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するためのコンピュータ実装方法を提供する。
【解決手段】本開示は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するためのコンピュータ実装方法に関する。本方法は、横隔膜CMAP信号をリアルタイムで受信することを含む。本方法は、CMAP信号の特性のベースライン値を計算することを含む。特性は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す。本方法は、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す、特性の閾値を決定することを含む。閾値を決定することは、ベースライン値をシフトすることを含む。本方法は、ECG信号をリアルタイムで受信することを含む。本方法は、ECG信号におけるQRS群を検出することと、CMAP信号を監視することと、特性のリアルタイム値を計算することと、リアルタイム値を閾値と比較することと、閾値を超えた際に警報を出力することと、をリアルタイムで繰り返すことを含む。特性のリアルタイム値は、QRS群とは非同期である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するためのコンピュータ実装方法であって、
ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位(CMAP)信号をリアルタイムで受信し、
前記CMAP信号の特性であって、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す前記特性のベースライン値を計算し、
前記特性の閾値であって、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す前記特性の値の境界を表す前記閾値を決定し、前記閾値の決定には、前記ベースライン値をシフトすることが含まれ、
前記ヒト患者の心電図(ECG)信号をリアルタイムで受信し、
リアルタイムで、
-前記ECG信号におけるQRS群を検出し、
-前記CMAP信号を監視し、
-前記QRS群とは非同期である、前記特性のリアルタイム値を計算し、
-前記リアルタイム値を前記閾値と比較し、
-前記閾値を超えた際に警報を出力する
ことを繰り返す
ことを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
検出したQRS群に同期する横隔膜反応を破棄することを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
横隔神経刺激を指令することをさらに含み、
前記QRS群の発生を検出してから所定時間後に、前記横隔神経刺激の発生に対する横隔膜反応が次の前記QRS群の発生前に開始および終了するように、前記横隔神経刺激の発生を開始させる
請求項1または請求項2記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記特性のリアルタイム値は、前記横隔神経刺激の複数回の発生に対する前記特性の平均である、
請求項1~請求項3のいずれか一項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記特性のリアルタイム値は、前記横隔神経刺激の所定回数の連続発生に対する前記特性の平均である、
請求項4記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記所定回数は、5以下である、
請求項5記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記特性のリアルタイム値の計算は、前記横隔神経刺激の発生から所定時間後に開始し、前記横隔神経刺激の前記発生後の所定期間にわたって持続する前記CMAP信号の部分に対して各々実行される1つ以上のCMAP測定値を計算することを含む、
請求項1~請求項6のいずれか一項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記所定時間は、3msを超えるおよび/もしくは50ms未満であり、かつ/または、
前記所定期間は、50msを超えるおよび/もしくは150ms未満である、
請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記特性は、
-前記CMAP信号の連続する2つのピーク間の振幅差、もしくは、
-等電位線と、前記CMAP信号の2つの連続するピークを表す曲線の部分との間の面積であり、かつ/または、
前記閾値は、
25%を超えるおよび/もしくは35%未満の前記ベースライン値の低下に対応し、かつ/または、
前記CMAP信号は、1つ以上の表面電極および/もしくは1つ以上の血管内電極から受信される、
請求項1~請求項8のいずれか一項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記ECG信号における前記QRS群の検出、前記CMAP信号の監視、前記QRS群と非同期である前記特性のリアルタイム値の計算、前記リアルタイム値と前記閾値との比較、および前記閾値超過時の前記警報の出力のリアルタイムでの前記繰り返しは、前記横隔神経刺激が安定している際に行われてもよい、
請求項1~請求項9のいずれか一項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記横隔神経刺激は、前記患者に送達される一連の電気パルスで構成され、
前記横隔神経は、期間中のそれぞれのパルスにおいて、前記パルスから生じるそれぞれの電気エネルギーを受け、
前記それぞれのパルスにおいて前記横隔神経が受ける前記それぞれの電気エネルギーは、電気エネルギー閾値以上であり、
前記電気エネルギー閾値は、安静時の前記患者から横隔神経刺激に対する横隔膜反応を引き起こすのに十分な最小電気エネルギー以上である、
請求項1~請求項10のいずれか一項記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記電気エネルギー閾値は、最大上刺激エネルギーに対応する電気エネルギー値以上である、
請求項11記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか一項記載のコンピュータ実装方法を実行するための命令を含む、
コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13記載のコンピュータプログラムを記録した
コンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項15】
請求項13記載のコンピュータプログラムを記録したメモリに接続されたプロセッサを備える、
制御ユニット。
【請求項16】
請求項15記載の制御ユニットと、
前記CMAP信号を測定するように構成された第1の複数の電極、
前記ECG信号を測定するように構成された第2の複数の電極、
横隔神経刺激システム、および/または、
冷凍アブレーションカテーテルと、
を備える、システム。
【請求項17】
前記第1の複数の電極は、1つ以上の表面電極および/または1つ以上の血管内電極を含む、
請求項16記載のシステム。
【請求項18】
前記閾値を超えた際に視覚警報を出力するためのディスプレイ、および/または、
前記閾値を超えた際に音響警報を出力するための放音装置、
をさらに備える、請求項16または請求項17記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応の監視、および/または横隔神経刺激、および/または冷凍アブレーションのための方法、制御ユニット、システム、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動は、よく見られる不整脈である。治療法の選択肢の1つに、低侵襲処置による心房細動のアブレーションがある。心房細動アブレーションは心臓アブレーションの一種で、心臓内の組織に傷をつけたり破壊したりすることによって、不整脈の原因となる誤った電気信号を遮断するものである。心房細動を治療するために、4本の肺静脈すべてを、例えばこれらの肺静脈口を取り囲むような円周状の病変を形成することによって隔離してもよい。低侵襲心臓アブレーション技術の中で、心臓冷凍アブレーションは電気生理学の専門家の間で支持を集めている処置である。冷凍アブレーション技術は、冷凍アブレーションカテーテル、ほとんどの場合はクライオバルーンカテーテル(すなわち、低温バルーンカテーテル)を用いて組織を低温で「焼く」ことによって、心臓の肺静脈を電気的に隔離するものである。
【0003】
冷凍アブレーション技術で最も一般的な合併症は、右横隔神経と肺静脈が近接していること、および静脈の入口にある冷凍バルーンの残りの部分によってこの入口が変形し、横隔神経に接近することにより生じる右横隔神経の損傷によって引き起こされる右横隔膜麻痺(「横隔神経麻痺」とも呼ばれる)である。このような損傷は冷凍アブレーション処置中に系統的に発生するものではないが、それでも無視できない数の患者に影響を与えている。そして、損傷はほとんどの場合回復可能ではあるが、損傷を受けた患者の比較的多くは翌日も依然として影響が残り、一部の患者では自然治癒するまで横隔膜麻痺が比較的長期間続くことがあり、時には永久に続くこともある。
【0004】
下記非特許文献1には、冷凍アブレーションによる右横隔神経の損傷の概要、ならびにこのような損傷を軽減するための技術およびこのような技術に関連する問題について記載されている。広く普及し、同論文で検討されている技術の1つは、冷凍アブレーション処置中に上大静脈のレベルで右横隔神経を電気刺激することである。横隔神経は右横隔膜ドームの筋収縮を制御するものであるので、この技術は、右横隔膜ドームを強く収縮させる。この技術はさらに、電気刺激によって誘発される収縮反応を監視し、それに基づいて対処することを含む。
【0005】
図1は、このような横隔神経刺激技術を実行するための従来技術の態様を示す図である。同図は、心臓の解剖学的断面Hの一例を左側に、それに対応する医用画像Iを右側に示し、右横隔神経PNを電気刺激するための電気生理学カテーテル10の位置を例示している。刺激カテーテル10は、大腿静脈を通して導入され、その遠位端14が上大静脈VC内に配置されて、横隔神経PNを刺激する。刺激カテーテル10は、その遠位端14に複数(例えば4つ)の電極11を備える。電極11は、上大静脈内(心臓の上方)に、横隔神経PNに可能な限り近接し、かつ対向するように配置される。刺激カテーテル10は、一般的に使用されている市販のカテーテルである、直線型4極カテーテルであってもよい。操作者は、電極11を配置し、バイポーラモードで2つの電極を作動させて横隔神経を刺激する。操作者は、電気刺激によって引き起こされる右横隔膜の収縮を観察する。これにより、操作者は右横隔神経の損傷の可能性を評価しやすくなる。このような評価を行うことにより、操作者は合併症の可能性を減らすための臨床的判断を下すことができる。
【0006】
横隔神経刺激に対する筋反応を評価するための現在の解決策は、そのほとんどが操作者(例えば医療専門家)による腹部の触診に基づいている。横隔膜収縮の勢いの低下を操作者が感知した場合、または収縮が消失した場合、横隔神経が損傷していることを意味し、冷凍アブレーションは緊急停止される。このように、これらの解決策は主観的であり、比較的精度が低い。さらに、これらの解決策は右横隔膜麻痺を回避できるものではなく、むしろ、麻痺が発生したとの診断を確立するものである。
【0007】
他の解決策としては、専用のシステムによって、横隔神経刺激に対する反応としてヒト患者の横隔膜複合筋活動電位(CMAP)信号を監視することが挙げられる。これにより、信号を客観的に分析し、異常な状況に対処することができる。しかし、存在するこれらの解決策も、精度に欠けているように見える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Contemporary analysis of phrenic nerve injuries following cryoballoon-based pulmonary vein isolation: A single-centre experience with the systematic use of compound motor action potential monitoring”,Anwar,O.et.al.,2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような背景から、横隔神経刺激に対する横隔膜反応、特に冷凍アブレーション中の横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための改善策が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するためのコンピュータ実装方法が提供される。本方法は、ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位(CMAP)信号をリアルタイムで受信することを含む。本方法はさらに、ヒト患者の心臓活動に関連するデータ(例えば生理学的データ)をリアルタイムで受信することを含む。本方法はまた、CMAP信号をリアルタイムで分析することを含む。本方法は、CMAP信号の分析が患者の心臓活動に起因する潜在的な干渉の影響を受けないか、またはほとんど受けないような態様で、心臓活動に関連するデータに基づいて行われる(例えば、分析が当該データに基づいて行われる)。
【0011】
心臓活動に関連するデータは、患者のECG信号であってもよい。
【0012】
本方法は、ECG信号におけるQRS群を検出することを含んでもよい。そして、本方法は、CMAP信号の分析が検出したQRS群に起因する潜在的な干渉の影響を受けないか、またはほとんど受けないような態様で、検出したQRS群を考慮に入れてもよい。
【0013】
本方法は、発生が近い横隔膜麻痺の評価および/または防止を可能にする出力を提供することを含んでもよい。例えば、出力は、以下のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせで構成されてもよい。
-横隔膜麻痺の発生が近いことを示す警報、例えば視覚警報および/または音響警報、ならびに/または、
-CMAP信号に関連するデータの表示、例えば、CMAP信号に関連する曲線(例えばCMAP信号自体の曲線またはCMAP信号の特性のリアルタイム値の曲線)の表示、任意の態様として、(例えば曲線を表示している画面と同じ画面上に、例えば重畳させて)CMAP信号またはその特性の値のベースライン値を(例えば曲線または単一の表示値の形で)表示すること、および/もしくは、(例えば曲線を表示している画面と同じ画面上に、例えば重畳させて)CMAP信号またはその特性の閾値を(例えば曲線または単一の表示値の形で)表示することを伴う表示、ならびに/または、
-冷凍アブレーションを行う施術者が自由に使えるツール(例えばペダルまたはフットスイッチ)に対して指令する信号、任意の態様として、冷凍アブレーションを停止すべきであることを施術者に警報するためにツールの警報機構に対して指令する(例えばツールを振動させる)信号、および/もしくは、(例えば回路をスイッチオフすることによって)冷凍アブレーションの自動停止を指令する信号。
【0014】
CMAP信号を分析することは、リアルタイムで、CMAP信号に関連する閾値の超過(通過)を検出することをさらに含んでよい。例えば、出力は閾値の超過時に提供されてもよく、閾値を超えることは、横隔膜麻痺の発生が近い恐れがあることを示す。閾値は、CMAP信号に関連するベースライン値をシフトしたものに対応してもよい。
【0015】
一態様によれば、本方法は、ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位(CMAP)信号をリアルタイムで受信することを含む。本方法はさらに、CMAP信号の特性のベースライン値を計算することを含む。特性は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す。本方法は、特性の閾値を決定することをさらに含む。閾値は、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す。閾値を決定することは、ベースライン値をシフトすることを含む。本方法はさらに、ヒト患者の心電図(ECG)信号をリアルタイムで受信することを含む。本方法はさらに、ECG信号におけるQRS群を検出することと、CMAP信号を監視することと、特性のリアルタイム値を計算することと、リアルタイム値を閾値と比較することと、閾値を超えたときに警報を出力することと、をリアルタイムで繰り返すことを含む。特性のリアルタイム値は、QRS群とは非同期である。
【0016】
本方法は、以下のうちの1つ以上を含んでもよい。
-本方法は、検出したQRS群に同期する横隔膜反応を破棄することを含み、
-本方法は、横隔神経刺激を指令することをさらに含み、本方法は、QRS群の発生を検出してから所定時間後に、横隔神経刺激の発生に対する横隔膜反応が次のQRS群の発生前に開始および終了するように、横隔神経刺激の発生を開始させることを含み、
-特性のリアルタイム値は、横隔神経刺激の複数回の発生に対する特性の平均であり、
-特性のリアルタイム値は、横隔神経刺激の所定回数の連続発生に対する特性の平均であり、
-所定回数は、5以下であり、
-特性のリアルタイム値を計算することは、横隔神経刺激の発生から所定時間後に開始し、横隔神経刺激の発生後の所定期間にわたって持続するCMAP信号の部分(一部)に対して各々実行される1つ以上のCMAP測定値を計算することを含み、
-所定時間は、3msより長いおよび/もしくは50ms未満であり、
-所定期間は、50msより長いおよび/もしくは150ms未満であり、
-特性は、CMAP信号の連続する2つのピーク間の振幅差であり、もしくは、特性は、等電位線と、CMAP信号の2つの連続するピークを表す曲線の部分との間の面積(エリア)であり、
-閾値は、25%より大きいおよび/もしくは35%未満のベースライン値の低下に対応し、かつ/または、
-CMAP信号は、1つ以上の表面電極および/もしくは1つ以上の血管内電極から受信される。
【0017】
さらに、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0018】
さらに、本コンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0019】
さらに、本コンピュータプログラムを記録したメモリに接続されたプロセッサを備える、制御ユニットが提供される。
【0020】
さらに、本制御ユニットと、本制御ユニットを収容するハウジングとを備える装置が提供される。本装置は、CMAP信号を測定するように構成された第1の複数の電極を接続するための第1の電気的インタフェースと、ECG信号を測定するように構成された第2の複数の電極を接続するための第2の電気的インタフェースとをさらに備えてもよい。
【0021】
さらに、システムが提供される。本システムは、本制御ユニットまたは本装置と、CMAP信号を測定するように構成された第1の複数の電極、ECG信号を測定するように構成された第2の複数の電極、横隔神経刺激システム、および/または、冷凍アブレーションカテーテルと、を備える。
【0022】
本システムは、以下のうちの1つ以上を含んでもよい。
-第1の複数の電極は、1つ以上の表面電極および/もしくは1つ以上の血管内電極を含み、
-本システムは、閾値を超えたときに視覚警報を出力するためのディスプレイをさらに備え、かつ/または、
-本システムは、閾値を超えたしたときに音響警報を出力するための放音装置をさらに備える。
【0023】
さらに、横隔神経刺激方法が提供される。本横隔神経刺激方法は、横隔神経刺激を実行することを含む。本横隔神経刺激方法は、横隔神経刺激を実行しながら、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための本方法を実行することにより、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視することをさらに含む。
【0024】
さらに、冷凍アブレーション方法が提供される。本冷凍アブレーション方法は、ヒト患者の左心房内に冷凍アブレーションカテーテルを導入することを含む。本冷凍アブレーション方法は、冷凍アブレーションを実行することをさらに含む。本冷凍アブレーション方法は、冷凍アブレーションを実行しながら、本横隔神経刺激方法を繰り返すことをさらに含む。本冷凍アブレーション方法は、閾値の超過時に警報が出力された場合に、冷凍アブレーションを一時停止し、その後、冷凍アブレーションを再開することをさらに含んでもよい。
以下に、添付図面を参照して、非限定的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来技術における横隔神経刺激技術の態様を示す図である。
図2】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図3】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図4】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図5】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図6】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図7】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図8】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図9】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図10】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
図11】方法、制御ユニット、およびシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
前述したように、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するためのコンピュータ実装方法が提案される。本方法は、ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位(CMAP)信号をリアルタイムで受信することを含む。本方法は、CMAP信号の特性のベースライン値を計算することをさらに含む。特性は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す。本方法は、特性の閾値を決定することをさらに含む。閾値は、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す。閾値を決定することは、ベースライン値をシフトすることを含む。本方法は、ヒト患者の心電図(ECG)信号をリアルタイムで受信することをさらに含む。本方法はさらに、ECG信号におけるQRS群を検出することと、CMAP信号を監視することと、特性のリアルタイム値を計算することと、リアルタイム値を閾値と比較することと、閾値を超えたときに警報を出力することと、をリアルタイムで繰り返すことをさらに含む。特性のリアルタイム値は、QRS群とは非同期である。このような監視方法は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応の監視についての改善策となる。
【0027】
特に、本監視方法は、CMAP信号の特性の客観的なリアルタイム値の計算に基づいて、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を客観的に監視することができる。したがって、本監視方法は、例えば冷凍アブレーション中の横隔神経刺激に対する横隔膜反応を客観的に観察することを可能にする。そのために、本監視方法は、ヒト患者のCMAP信号およびECG信号をリアルタイムで受信することを含む。本監視方法はまた、CMAP信号の特性のベースライン値を計算することを含む。特性は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す。本監視方法はまた、ベースライン値をシフトすることにより、特性の閾値を決定する。閾値は、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す。ここで、本監視方法は、リアルタイムで繰り返しかつ連続的に(例えば一定の時間間隔で)、特性のリアルタイム値を(例えば自動的に)計算し、これを(例えば自動的に)閾値と比較する。これにより、本監視方法は、CMAPを表す客観的な値をリアルタイムで客観的に計算し、閾値の超過をリアルタイムで(すなわち、特性のリアルタイム値の計算によって)検出し、その場合に警報を(例えば自動的に)出力する。言い換えれば、本監視方法は、特性のリアルタイム値が閾値を超えたことを示す警報(例えば視覚警報および/または音響警報)をリアルタイムで出力することができ、これにより、横隔膜麻痺の発生が近いことを客観的に示すことができる。冷凍アブレーション中に警報が出力されることにより、冷凍アブレーションを一時停止して横隔神経への損傷を回避し、その後(すなわち、以降のタイミングで、例えば横隔膜反応が正常に戻ったとき、および/または警報が停止したときに)冷凍アブレーションを再開することができる。このようにして、本監視方法は、冷凍アブレーションを行う外科医に対して、リアルタイムで自動的かつ客観的な支援を(例えばリアルタイムの横隔膜筋電図の形で)提供することができ、横隔膜麻痺の発生が近い恐れがあることをリアルタイムで警告することができる。これにより、外科医は、触診によって横隔膜麻痺発生の可能性を自分で確認する必要なく、冷凍アブレーションに集中することができる。これは、本監視方法がCMAP信号の分析を通じて自動的にこれを行い、麻痺が発生する可能性がある場合にリアルタイムで警報を出力するからである。つまり、本監視方法は、横隔膜麻痺の客観的かつ早期の発見・予防法となる。
【0028】
さらに、本監視方法により計算される特性のリアルタイム値は、本方法によりECG信号においてリアルタイムで検出されるQRS群とは非同期である。言い換えれば、本監視方法では、CMAP信号をリアルタイムで監視し、これを用いて、ECG信号において検出したQRS群と非同期となるように特性のリアルタイム値を計算する。さらに言い換えれば、本監視方法は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応に対応するCMAP信号の部分(一部)であって、QRS群の発生に対応するECG信号のいずれの部分とも同期していないCMAP信号の部分のみを用いて、特性のリアルタイム値を計算する。これにより、本監視方法は、特性のリアルタイム値の計算において、心臓電気活動に対応するQRS群の干渉を回避することができる。これにより、本監視方法は、ECG信号のQRS群の干渉による妨害のない、横隔膜反応(すなわち、特性)の正確なリアルタイム測定値を提供するという点で、横隔神経刺激に対する横隔膜反応の監視についての改善策となる。この正確さにより、横隔膜反応のリアルタイム監視が改善される。特に冷凍アブレーション中に、冷凍アブレーションを行う外科医が発生の近い横隔膜麻痺を特に正確に制御できるようになる。
【0029】
また、本監視方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム、当該コンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読データ記憶媒体、および、当該コンピュータプログラムを記録したメモリに接続されたプロセッサを含む制御ユニットが提供される。これにより、制御ユニットは、本監視方法を実行することにより、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するように構成されたコンピュータシステムを形成する。したがって、制御ユニットは、本監視方法を実行することにより、横隔神経刺激に対する横隔膜反応をリアルタイムで(例えば自動的に)監視する装置を構成する。したがって、制御ユニットは、冷凍アブレーション中に外科医が発生の近い横隔膜麻痺を制御できるようにすることにより、外科医を支援するツールを形成する。
【0030】
制御ユニットは、CMAP信号を測定するように構成された第1の複数の電極、ECG信号を測定するように構成された第2の複数の電極、横隔神経刺激システム、および/または冷凍アブレーションカテーテル(例えばクライオバルーンカテーテル)のうちのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせも備えるシステムに含まれてもよい。この横隔神経刺激システムは、横隔神経刺激カテーテルを備えてもよい。横隔神経刺激カテーテルは、例えば、図1に示すようなものであってもよい。あるいは、横隔神経刺激カテーテルは、パッチなどの横隔神経刺激システムの他の手段と協働して横隔神経刺激を実行するように構成されてもよい。横隔神経刺激システムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願21305287.1に開示されるようなものであってもよい。第1の複数の電極は、1つ以上の表面電極および/または1つ以上の血管内電極(例えば肝静脈内電極)を含んでもよい。システムは、閾値を超えたときに視覚警報を出力するためのディスプレイ、および/または、閾値を超えたときに音響警報を出力するための放音装置をさらに備えてもよい。ディスプレイおよび/または放音装置は、システムに接続される電気生理学的監視記録装置の一部であってもよい。
【0031】
制御ユニットは、制御ユニットを収容するハウジングを含む装置として提供されてもよい。この装置は、第1の複数の電極、第2の複数の電極、横隔神経刺激カテーテル、および/または、冷凍アブレーションカテーテルをさらに備える。第1の複数の電極および/または第2の複数の電極は、ハウジングから脱着した状態で提供されてもよく、例えばハウジングに設けられた1つ以上の電気的インタフェースを介して制御ユニットに接続されるように構成されてもよい。あるいは、第1の複数の電極および/または第2の複数の電極は、例えばハウジングに設けられた1つ以上の電気的インタフェースを介して制御ユニットに着脱自在または非着脱自在に接続済みの状態で提供されてもよい。ハウジングは、前述のディスプレイおよび/または放音装置を含む電気生理学的監視記録装置に接続されるように構成されてもよい。これにより、ハウジング内の制御ユニットが、CMAP信号を記録装置に送信してもよい。例えば、ハウジングは、ハウジングを電気生理学的監視記録装置に接続するように構成された1つ以上の追加の電気的インタフェースを備えてもよい。
【0032】
本監視方法は、横隔神経刺激中、例えば冷凍アブレーション中に用いられてもよい。その点で、横隔神経刺激方法および冷凍アブレーション方法も提案される。これらをそれぞれ、「刺激方法」および「冷凍アブレーション方法」と呼ぶ場合がある。
【0033】
本刺激方法は、(任意の公知の横隔神経刺激方法、例えば図1を参照して説明した方法、または先に引用した欧州特許出願21305287.1に開示された横隔神経刺激方法によって)横隔神経刺激を実行することと、横隔神経刺激を実行しながら、本監視方法を実行することによって横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視することと、を含む。
【0034】
本冷凍アブレーション方法は、ヒト患者の左心房内に冷凍アブレーションカテーテルを導入することと、冷凍アブレーションを実行することと、冷凍アブレーションを実行しながら本刺激方法を繰り返すことと、閾値の超過に伴って警報が出力された場合に、冷凍アブレーションを一時停止し、その後(例えば、横隔膜反応が正常、一例を挙げれば横隔膜反応が正常振幅の90%または100%に戻ったとき、および/または、警報が終了したときに)冷凍アブレーションを再開することと、を含む。
【0035】
次に、本監視方法についてさらに説明する。
【0036】
本監視方法は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための方法である。言い換えれば、本監視方法は、横隔神経刺激プロセスの実行中に実行され、刺激に対する横隔膜反応を監視する。横隔神経刺激プロセスは、例えば所定の頻度で複数回の横隔神経刺激、例えば1分間に40~100回の刺激、例えば1分間に60回の刺激またはその程度の回数の刺激を発生させることを含んでもよい(すなわち、本監視方法が実行されている間に実行される)。
【0037】
本監視方法はコンピュータで実装され、方法ステップは、本監視方法を実行するコンピュータシステムである制御ユニットによって実行される。これは、本監視方法のステップ(または実質的にすべてのステップ)が制御ユニットによって実行されることを意味する。したがって、本監視方法のステップは制御ユニットによって、場合によっては完全に自動的に実行されるか(例えば、すべての方法ステップが制御ユニットによって自動的に実行されてもよい)、または半自動的に実行される。特に、検出、監視、計算、比較、および出力をリアルタイムで繰り返すステップは、自動的に実行されてもよい(言い換えれば、リアルタイムの検出、監視、計算、比較、および出力が自動的に繰り返し実行される)。実施形態において、本監視方法の少なくとも一部のステップは、制御ユニットまたは制御ユニットを収容するハウジングとのユーザインタラクションを通じて開始されてもよい。必要とされる制御ユニットとのユーザインタラクションのレベルは、想定される自動化のレベルに応じたものであって、ユーザの希望を実現する必要性との間でバランスを取ったものであってもよい。実施形態において、このレベルはユーザによって定義されてもよいし、かつ/または事前に定義されてもよい。
【0038】
制御ユニットは、本監視方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムを記録したメモリに接続されたプロセッサを備えてもよい。また、メモリはデータベースを記憶してもよい。メモリは、このような記憶用に適合された任意のハードウェアであり、場合によっては、複数の物理的に別個の部分(例えば1つはプログラム用であり、場合によっては、1つはデータベース用)で構成される。また、プロセッサは、閾値を超えた場合に視覚警報を出力するためのディスプレイ(例えばグラフィカルユーザインタフェース:GUI)に接続されてもよい。これに加えて、またはこれに代えて、プロセッサは、閾値を超えた場合に音響警報を出力するための放音装置(例えばスピーカ)に接続されてもよい。
【0039】
図2は、制御ユニットの一例の概略図である。より具体的には、図2は、制御ユニット20を収容するハウジング26の概略図である。制御ユニット20は、メモリ220に接続されたCPU(中央処理装置)200を備える。メモリ220は、本監視方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムを記録している。図2に示すように、ハウジング26には電気的インタフェース22,24が設けられている。電気的インタフェース22,24は、制御ユニット20に接続されている。第1の電気的インタフェース22は、CMAP信号を測定/取得するように構成された1つ以上の電極に接続されるように構成される。第2の電気的インタフェース24は、ECG信号を測定/取得するように構成された1つ以上の電極に接続されるように構成される。なお、図2には示していないが、ハウジング26は、閾値を超えた場合に視覚警報を出力するためのディスプレイおよび/または閾値を超えた場合に音響警報を出力するための放音装置に接続されるように構成された1つ以上の他の電気的インタフェースを備えてもよい。当該他の電気的インタフェースは、例えば、当該ディスプレイおよび/または放音装置を含む電気生理学的監視記録装置に接続されるように構成されてもよい。あるいは、ハウジング26は、このようなディスプレイおよび/または放音装置を直接備えてもよい。
【0040】
コンピュータプログラムは、制御ユニットなどのコンピュータによって実行可能な命令であって、上記システムに本監視方法を実行させるための手段を含む命令を含んでもよい。プログラムは、システムのメモリを含む任意のデータ記憶媒体に記録可能であってもよい。プログラムは、例えば、デジタル電子回路にて実装されてもよいし、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせにて実装されてもよい。プログラムは装置として、例えば、プログラマブルプロセッサが実行するために機械可読記憶装置内に有形に具体化された製品として実装されてもよい。方法ステップは、命令のプログラムを実行し、入力データを操作して出力を生成することによって本監視方法の機能を実行するプログラマブルプロセッサによって実行されてもよい。したがって、プロセッサは、データ記憶システム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置との間でデータおよび命令を送受信するようにプログラム可能かつこれらに接続されてもよい。アプリケーションプログラムは、高レベルの手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語にて実装されてもよいし、必要に応じてアセンブリ言語または機械語にて実装されてもよい。いずれの場合も、言語はコンパイル言語であってもよいし、インタプリタ言語であってもよい。プログラムは、完全インストールプログラムであってもよいし、更新プログラムであってもよい。いずれの場合も、システム上でプログラムを適用することにより、本監視方法を実行するための命令が発生する。
【0041】
本監視方法は、ヒト患者のCMAP信号をリアルタイムで受信することを含む。横隔膜CMAP信号は、第1の複数の電極から受信され、かつこれらによって測定されてもよい。第1の複数の電極は、1つ以上の表面電極および/または1つ以上の血管内電極(例えば、肝静脈内電極)を含んでもよい。1つ以上の表面電極により、CMAP信号を簡便に測定することができる。1つ以上の血管内電極は、より高精度にCMAP信号を測定するための解決策である。したがって、本監視方法は、第1の複数の電極によって、ヒト患者の横隔膜CMAP信号をリアルタイムで測定することと、測定した横隔膜CMAP信号をリアルタイムで受信する制御ユニットにリアルタイムで送信することと、を含んでもよい。CMAP信号は、横隔神経刺激に対する横隔膜の筋運動反応を捉えた信号である。CMAPの概念は周知である。CMAP信号のリアルタイム受信は、本方法の実行中に連続的に行われてもよい。
【0042】
次に、CMAP信号の測定とその測定例について説明する。
【0043】
前述したように、CMAP信号は1つ以上の表面電極、例えば2つの表面電極によって測定されてもよい。これは、2つの電極(例えば標準的なECG電極)を肋骨縁部に配置し、2つの電極間のバイポーラモードで信号を測定することにより行われてもよい。この測定法はセットアップが簡単であり、かつ非侵襲的である。このようにCMAP信号を測定すると、信号が丸みを帯びた形状になりやすく、その振幅変調をリアルタイムで評価することが困難になるため、リアルタイムでの視覚的解釈が困難になる場合がある。しかし、本監視方法は、CMAPの特性のリアルタイム値を客観的に計算することにより、この困難を克服している。さらに、表面電極はCMAP信号だけでなくECGも測定するが、ECGの振幅は平均してCMAPの振幅と等しい場合があるため、CMAPと、ECGにおけるQRS群との間に同期性がある場合、CMAPの分析が困難になる可能性がある。しかし、CMAPの特性のリアルタイム値はECGにおけるQRS群とは非同期であるため、本方法はこの困難も克服している。
【0044】
図3は、CMAP信号測定の一例を示す図である。この例では、2つの表面電極30,32を用いて測定が行われる。図3は、これらの皮膚電極の配置の一例を示している。
【0045】
図4は、この例に従って測定されたCMAP信号を示す図である。上側の曲線40は、右手首と左手首との間の双極導出(「DI導出」または「導出I」と呼ばれる場合もある)で測定されたECGに対応する。他の導出法を用いてECGを測定してもよく、図4に示した方法は一例にすぎない。それ自体公知であるように、ECGの測定に最大12種類の導出法(双極性6種類、単極性6種類)を用いて、心臓電気活動についてその数だけの異なる視点を提供してもよい。DI導出は、それ自体公知であるように、右から左に進むすべてのベクトルに対応する。下側の曲線42は、測定されたCMAPに対応する。時間イベント400、402、404、406は、心臓電気活動、特にQRS群(心室の脱分極に対応)に対応する。時間イベント420、422、424はCMAP電位(ピークを含む)に対応し、それぞれ刺激アーチファクトが先行する。図4から分かるように、QRS群の発生400、402、404、406によってCMAP信号42が乱れ、信号が一時的にその等電位線(すなわち、CMAP信号を表す曲線の中心がその上下に位置する水平線)から離れている。
【0046】
あるいは、CMAP信号は、肝静脈内(例えば、測定に最も効果的であるため、横隔膜に可能な限り最も近い、可能な限り後方の位置)に配置された4極電気生理学的カテーテルによって測定されてもよい。静脈は施術者が選択してもよい。カテーテルの配置は簡単であり、非外傷かつ無痛である。これにより、尖った様相を呈して測定しやすい、解釈が容易なCMAPが得られる。この測定方法により、ECGの視覚的影響が軽減される。しかし、QRSとCMAPとの間に同期性がある場合、CMAPの振幅が変調される場合がある。先に説明したように、本監視方法では、特性のリアルタイム値がECGのQRS群とは非同期となるように計算されることにより、この困難を克服している。
【0047】
図5は、冷凍アブレーション中に行われるこのような測定方法の一例を示す図である。図5に示すように、上部カテーテル50(6つの電極を備える)は上大静脈内に配置されて、右横隔神経を刺激する。中央カテーテル52は、右肺静脈内に配置されたクライオバルーンである。下部カテーテル54(4つの電極を備える)は、肝静脈内に配置される。図6は、このような方法により測定されたCMAP信号の一例を示す図である。上側の曲線60は、ECG信号を示している。下側の曲線62は、カテーテル54によって測定されたCMAP信号を示している。時間イベント600、602、604は、QRS群に対応する。時間イベント620、622、624は、CMAP電位(ピークを含む)に対応し、それぞれ刺激アーチファクトが先行する。図6から分かるように、QRS群の発生600、602、604によってCMAP信号42が乱れ、信号が一時的にその等電位線から離れている。
【0048】
図7は、肝静脈内のカテーテルと表面電極の両方によるCMAP信号の同時測定の一例を示す図である。上側の曲線70,72は、ECG信号に対応する。曲線74は、表面電極によって測定されたCMAP信号に対応する。曲線76は、肝カテーテルによって測定されたCMAP信号に対応する。円780、782、784、786は、測定されたQRS群と同期しているCMAP信号の部分(一部)を示している。これにより、QRS群とCMAP信号との同期性がCMAP信号にどのように影響し、信号が一時的に等電位線から離れるかを示している。円788、790は、CMAP電位(ピークを含む)を示している。図7に示すように、ECGに対するCMAPの振幅比は、肝測定の場合にさらに大きくなり、その解釈がより容易になる。
【0049】
図8は、表面電極(上側の曲線)と肝カテーテル(下側の曲線)による同時測定の他の例を示す図である。
【0050】
図9は、QRSとCMAP電位の同時発生の一例を示した図であり、QRSとCMAPとの同期性を示している。上側の曲線は表面電極による測定に対応し、下側の曲線は肝カテーテルによる測定に対応している。上側の曲線において、第1の時間イベント90は刺激アーチファクトであり、その後にQRSと同時であるCMAP電位が続く。第2の時間イベント92はQRSであり、その最後の部分にCMAP電位を含む。両イベントに関して、表面電極によって測定されたCMAPの振幅をそのまま特定することは困難であるか、または不可能でさえある。この例では、肝CMAPは解釈可能であるが、実際には、QRSと同時である場合にはそうでないことが多い。先に説明したように、本方法はこれらの困難を克服している。
【0051】
本監視方法は、CMAP信号の特性のベースライン値を計算することを含む。ベースライン値は、CMAP信号の特性の基準値であり、例えば標準的な状態(例えば冷凍アブレーションの開始前など、患者の安静時)におけるヒト患者の特性の値である。
【0052】
CMAP信号の特性とは、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表すCMAP信号のいずれかの属性または特徴である。特性は例えば、CMAP信号の属性であって、特性に基づく横隔膜反応強度の分析を可能にする態様でCMAP信号の変動を捕捉するものであってもよい。特性は、横隔神経刺激に対する横隔膜反応に実質的に対応するCMAP信号のいずれかの部分に応じたものである。例えば、CMAP信号の当該部分に対応する時間間隔は、実質的に、反応の時間間隔、または反応の重要な部分および/もしくは関連する部分(例えば、反応の電位)の時間間隔である。これにより、横隔膜反応に対応しないCMAP信号の部分、例えば、反応またはその重要な部分の時間間隔に重なるだけで対応しない時間間隔に対応する部分などが除外される。本方法は、特性のリアルタイム値を繰り返し計算する。すなわち、本方法は、横隔膜反応にそれぞれ対応するCMAP信号の複数の部分について、特性の値をリアルタイムで繰り返し計算する。この計算は、横隔膜反応の各発生について、反応に対応するCMAP信号の部分を各発生について使用することによって、リアルタイム値を計算することを含んでもよい。これに加えて、またはこれに代えて、この計算は、反応の複数の発生について、これらの発生に対応するCMAP信号の部分を使用することによって、特性の平均値を計算することを含んでもよい。以下で詳述するように、横隔膜反応に実質的に対応するCMAP信号の部分は、場合によっては、QRS群の発生に同期していることもある。このような場合、この部分については特性の値は計算されず、よって、この部分に対応する横隔膜反応は破棄される。
【0053】
特性は、例えばCMAP信号の2つの連続するピーク間の振幅であってもよい。連続する2つのピークは、CMAP電位のボトムピークおよびトップピークであってもよい。例えば、刺激の開始などのイベント時に、CMAP信号はその等電位線を離れ、次いでボトムピークに達し、次いでトップピークに達し(または、電極の極性などに応じてその逆の場合もある)、その後等電位線に戻る(特に、後述の図11に図示)。連続する2つのピークは、2つのピーク間の時間間隔に対応するCMAP信号の部分(一部)、すなわちCMAP電位を規定する。そして、これに基づいて(例えば、実質的にこの部分についてCMAP測定値を計算することによって)特性のリアルタイム値が計算されてもよい。言い換えれば、特性は、実質的に横隔膜反応に対応するこの部分に応じたものであってもよい。この部分において、CMAP信号はCMAP電位を形成する。あるいは、特性は、CMAP信号の連続する2つのピークを表す曲線部分と等電位線との間の面積であってもよい。このような場合、本監視方法は、CMAP信号を表す曲線を処理して、この曲線および等電位線よりも下の面積(この曲線と等電位線との間の面積)を計算してもよい(ここで、曲線が等電位線よりも上であろうと下であろうと、面積は常に正の値として、例えば曲線から等電位線までの距離の積分値として計算される)。ここで、時間間隔は、第1のピークの開始点から開始し、第2のピークの終了点で終了してもよい。例えば、面積は、第1の面積と第2の面積との和として計算されてもよい。ここでの第1の面積とは、等電位線と、第1のピークを形成する曲線の第1のサブ部分(すなわち、第1のサブ部分は、曲線が等電位線から離れる位置から開始し、曲線が等電位線に再び合流する位置で終了する)との間の面積を示す。また、ここでの第2の面積とは、等電位線と、第1のピークに連続する第2のピークを形成する第2のサブ部分(すなわち、第2のサブ部分は、第1のサブ部分が終了する位置(ここで、曲線は実際には等電位線を横切る)から開始し、曲線が等電位線に再び合流する位置で終了する)との間の面積を示す。第1および第2のピークは連続し、CMAP電位を形成する。
【0054】
ベースライン値の計算は、例えば患者の安静時(例えば冷凍アブレーションの開始前)において、本方法の開始時に、すなわち最初のステップとして行われてもよい。例えば、ベースライン値の計算は、制御ユニットの起動(後述)直後に行われてもよく、例えば、制御ユニットを収容するハウジングのボタン(例えば「REF」ボタン)を押下することによって自動的に開始されてもよい。ベースライン値は、監視を良好な条件で行うために、0.3mVより大きい信号値に対応してもよい。本監視方法は、良好な監視条件を確保するために、ベースライン値が0.3mVを超え、かつ不安定さがない場合にのみ、CMAP信号の監視を開始してもよい。「不安定さ」とは、CMAP信号またはCMAP信号の特性における望ましくない変動を意味し、ある刺激から次の刺激で特性が10%を超える、例えば30%を超える変動をすることなどを意味する。このような不安定性さは、CMAP測定の不安定さおよび/または横隔神経刺激の不安定さに起因する場合がある。このような変動は、CMAP信号の測定に用いられる測定方法に起因する場合があり、測定方法は、その品質が例えば時間と共に変動する場合がある。横隔膜麻痺の発生が近い可能性がある場合とは逆に、この不安定さによって、CMAP信号の増減、すなわちランダムな変動が示される場合がある。むしろ、横隔膜麻痺の発生が近いことは、CMAP信号が連続的に減少し、例えば一定時間(例えば10秒~20秒)内に一定量(例えば30%)低下することによって示される場合がある。その一方で、横隔膜麻痺の発生は、CMAP信号の消失に対応する。本監視方法は、CMAP信号を監視する前に、CMAP信号を監視する条件(安定性および/または0.3mVを超えるベースライン値)が満たされたことを示す指示(例えば視覚および/または音響)を出力してもよい。
【0055】
本方法は、特性の閾値を決定することをさらに含む。閾値の決定は、例えば患者の安静時(例えば冷凍アブレーションの開始前)において、本方法の開始時に、すなわち最初のステップ(ベースライン値の計算も含む)として行われてもよい。閾値の決定は、計算されたベースライン値に基づいて行われ、ベースライン値をシフトすることを含む。「シフトする」とは、閾値が、ベースライン値から一定量(例えばベースライン値の一定パーセンテージ)減算または加算した値に等しいことを意味する。例えば、閾値の決定は、計算したベースライン値に対して所定量の低下(例えばパーセンテージで、例えば25%~35%の間、例えば30%)を決定することを含んでもよい。閾値は、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す。すなわち、特性の値がこの境界を通過した場合は、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す(すなわち、表す)。境界は、下限境界であってもよい。すなわち、特性の値がこの境界よりも低い場合は、麻痺の発生が近いことを示す。例えば、閾値はベースライン値の最大低下量に対応してもよく、特性の値がこの最大低下量よりも低い場合、麻痺の発生が近いことを示す。あるいは、境界は上限境界であってもよく、特性の値がこの境界よりも高い場合、麻痺の発生が近いことを示す。これは例えば、特性が、下限境界を境界とする別の特性の逆数に応じたものである場合に当てはまる。
【0056】
実施形態において、閾値は、例えばベースライン値の25%を超えるおよび/または35%未満の低下、例えば30%に等しい低下に対応する。「ベースライン値のx%の低下」とは、閾値が、ベースライン値からベースライン値のx%(x%は低下)を減算した値に等しいことを意味する。例えば、「閾値=(1-x%)×ベースライン」である(x%は低下であり、パーセンテージ)。実施形態において、x%は25%~35%の間の値からなり、例えばx%=30%である。25%を超える低下により、偽陽性を回避することができる(すなわち、横隔膜麻痺の発生が近いと誤検出することを避けることができる)。低下が35%未満であれば、発生の近い横隔膜麻痺を適時に(例えば不可避的に発生する前に)検出することができる。30%(例えば±1%)の低下とすることは、感度と特異度の最適な妥協点である。ベースライン値の30%(例えば±1%)の低下は、腹部触診では感知できず、30%の低下から実際の麻痺までの時間は平均して約30秒である。これにより、30%(例えば±1%)の閾値によって、手では(例えば医療専門家でさえも)検出できない、発生の近い横隔膜麻痺を適時に検出することができる。30%の閾値を超過したことで警報が出力されたときに冷凍アブレーションを停止することにより、麻痺のリスクを回避または大幅に低減することができ、その場合、CMAPは1分足らずでその値の100%を回復する。
【0057】
本監視方法は、ヒト患者のECG信号をリアルタイムで受信することをさらに含む。ECG信号は、第2の複数の電極から受信され、かつこれらによって測定されてもよい。したがって、本監視方法は、第2の複数の電極によって、ヒト患者のECG信号をリアルタイムで測定することと、測定したECG信号をリアルタイムで受信する制御ユニットにリアルタイムで送信することと、を含んでもよい。ECG信号のリアルタイム受信は、本方法の実行中に連続的に行われてもよい。
【0058】
本監視方法は、リアルタイムで(例えば、繰り返し連続的に、CMAP信号およびECG信号を受信しながら)、
-ECG信号におけるQRS群を検出(すなわち、信号におけるQRSの発生を検出する)し、
-CMAP信号を監視し、
-QRS群とは非同期である、特性のリアルタイム値を計算し、
-リアルタイム値を閾値と比較し、
-閾値を超過したときに警報を出力する、
ことを繰り返すことをさらに含む。
【0059】
ECG信号におけるQRS群の検出は、このような検出用に設計された任意の公知の方法によって行われてもよい。ECGにおけるQRS群の検出は、当技術分野において周知である。図10は、QRS群の概念を示す図である。図10に示すように、ECGは、心房の脱分極に対応するP波、心室の脱分極に対応するQRS波、および心室の再分極に対応するT波という複数の波で構成される。ECGでは、QRSの振幅がより大きいため、CMAPの監視に最も影響する。それ自体公知であるように、QRSの各発生は、所与の時間長(患者によって異なり、異なる患者の間で異なる場合がある)を有するECG信号の部分(一部)に対応する。この時間長は、所与の開始時間および所与の終了時間を有する。開始時間は、ECG信号がその等電位線から離れる時間であり、終了時間は、ECG信号がその等電位線に戻る時間である。QRSの時間長は、60ms~200msの間、一般的には(すなわち、標準的な患者全般では)60ms~100msの間であってもよい。
【0060】
CMAP信号の監視は、このような監視用に設計された任意の公知の方法によって行われてもよい。
【0061】
特性のリアルタイム値の計算は、特性のリアルタイム値がQRS群と非同期となるように行われる。言い換えれば、本方法は、特性のリアルタイム値を繰り返し連続的に評価するものであり、各評価が、CMAP信号のうちQRS群が発生しないそれぞれの(場合によっては不連続な)部分(すなわち、それぞれの部分を規定する時間間隔または複数の時間間隔中にQRS群が実質的に発生しない)のみに基づく方法である。
【0062】
したがって、「非同期」とは、前述したように横隔膜反応にそれぞれ対応するが、それぞれがQRS群のいずれの発生にも対応しない(すなわち、QRS群のいずれの発生からも分離/区別される)CMAP信号の部分について、特性のリアルタイム値が計算されることを意味する。前述したように特性がそれに応じて決定されるこのような部分は、QRS群と非同期であるCMAP信号の部分である。したがって、QRS群と非同期であるCMAP信号の部分は、QRS発生に対応するいずれの時間間隔とも重ならない時間間隔に対応するCMAP信号の部分である。逆に、CMAP信号のある部分が、QRS発生に対応する時間間隔に重なる時間間隔(すなわち、QRS発生の開始時間から開始し、QRS発生の終了時間で終了する時間間隔)に対応している場合、CMAP信号の当該部分はQRS群に同期している。したがって、QRS群と非同期であるCMAP信号の部分は、QRS発生に対応するいずれの時間間隔からも実質的に外側の時間間隔に対応する。したがって、「QRS群と非同期である特性のリアルタイム値」は、「横隔膜反応に対応する時間間隔であって、QRS発生に対応するいずれの時間間隔にも重ならない時間間隔にそれぞれ対応するCMAP信号の部分について計算される特性のリアルタイム値」と同義である。
【0063】
本監視方法は、検出したQRS群に同期する横隔膜反応を破棄することを含んでもよい。言い換えれば、この場合、QRS群に同期する横隔膜反応に対応するCMAP信号の部分は、特性のリアルタイム値の計算に使用されない(すなわち、これらの部分について計算は行われない)。すなわち、これらの反応は、特性のリアルタイム値を計算する上で本方法では考慮されない。さらに言い換えれば、本方法は、(例えばQRS群発生の検出時に)QRS群に同期するCMAP信号の部分を識別し、この部分に基づいて特性のリアルタイム値を計算することを回避してもよい。これにより、特性のリアルタイム値の計算におけるQRSの干渉を回避することができる。
【0064】
上記に加えて、または上記に代えて、本監視方法は、横隔神経刺激を指令することをさらに含んでもよい。このような場合、本監視方法は、QRS群の発生を検出してから所定時間後に横隔神経刺激の発生を開始させることを含み、ここで、開始させた横隔神経刺激(誘発された横隔神経刺激)の発生に対する横隔膜反応が、次のQRS群の発生前に開始および終了するようにする。QRS発生の検出後の所定時間は、QRS発生の終了時点からの所定時間であってもよい。あるいは、QRS発生の検出後の所定時間は、QRS発生の開始時点からの所定時間であってもよい。所定時間は、500ms未満であってもよく、例えば10ms~500msの間、例えば200msに等しくてもよい。これにより、横隔神経刺激に対する横隔膜反応のすべてまたは少なくともかなりの部分が、QRS群のいずれの発生とも非同期であるCMAP信号の部分に対応し得る。これにより、横隔膜反応がこのようにQRS群と非同期であるため、特性のリアルタイム値がQRS群と非同期であることを確実にすることができる。
【0065】
特性のリアルタイム値がQRS群と非同期であることを確実にするための代替的な方法として、検出したQRS群に同期する横隔膜反応を破棄する代わりに、QRS群の発生を検出してから所定時間後に横隔神経刺激の発生を開始させてもよい。あるいは、QRS群の発生を検出してから所定時間後に横隔神経刺激の発生を開始させることと、検出したQRS群に同期する横隔膜反応を破棄することとの両方を行ってもよい。これにより、監視の安全性がさらに向上する。すなわち、特性のリアルタイム値がQRS群と非同期であることをより確実にすることができる。
【0066】
特性のリアルタイム値は、横隔神経刺激の複数回の発生に対する特性の平均(例えば移動平均)であってもよい。言い換えれば、本方法は、例えば監視中に連続的にリアルタイムで、横隔神経刺激のそれぞれの発生に対する複数の特性の値を計算し、同じく連続的にリアルタイムで、これらの複数の値の平均としてリアルタイム値を計算してもよい。さらに言い換えれば、この場合、リアルタイム値は、横隔神経刺激のそれぞれの発生に対する特性のリアルタイム値のリアルタイム平均(例えば移動平均)である。特性のリアルタイム値は、所定回数の横隔神経刺激の連続発生に対する特性の平均であってもよく、所定回数は例えば5以下であり、例えば2、3、4または5に等しい。
【0067】
特性の平均を使用することにより、QRS群との同期性に対するロバスト性が向上し、また横隔神経刺激が不安定な可能性がありながらも、リアルタイム値を効率的に計算することができる。言い換えれば、平均化することにより、不安定な可能性がある刺激に対して監視をロバストにすることができる。欧州特許出願21305287.1に開示された横隔神経刺激のシステムおよび方法によって達成されるような安定した横隔神経刺激の場合には、所定の発生回数が少なくても十分な場合がある(例えば2回または3回)。このような場合、横隔膜反応は非常に信頼性が高く、大きなウィンドウにわたって平均化する必要はない。これにより、より高い「リアルタイム性」、すなわちより高い応答性が可能になる。「安定」とは、刺激を行う血管内電極のわずかな動きが刺激に影響しないことを意味する。
【0068】
特性のリアルタイム値を計算することは、横隔神経刺激の発生から所定時間後に開始し、横隔神経刺激の発生後の所定期間にわたって持続するCMAP信号の部分に対して各々実行される1つ以上のCMAP測定値を計算することを含んでもよい。この部分は、前述したように、刺激によって得られるCMAP電位の2つの連続するピーク間の時間間隔に実質的に対応するか、またはこのようなCMAP電位の2つの連続するピークをちょうどカバーするものであってもよい。各測定値は、CMAP信号の2つの連続するピーク(例えば前述したように、上側ピークおよびトップピーク)間の振幅差の測定値であってもよいし、等電位線とCMAP信号を表す曲線との間の面積の測定値であってもよい。本方法は、各測定値を用いて、例えば前述したように測定値の平均を取ることにより、特性のリアルタイム値を計算してもよい。横隔神経刺激の発生後の所定時間は、刺激の時間ウィンドウに対応し、横隔神経刺激の発生後の所定期間は、刺激の時間ウィンドウに続くCMAP分析の時間ウィンドウに対応する。これにより、リアルタイム値の計算に用いられるCMAPの各測定値は、CMAP信号における刺激アーチファクトによって妨害されないCMAP信号の時間ウィンドウに対応する。所定時間は、3msを超えるおよび/または50ms未満であってもよく、例えば10ms~20msの間であってもよい。これに加えて、またはこれに代えて、所定期間は、50msを超えるおよび/または150ms未満であってもよく、例えば50ms~100msの間(例えば100msに等しい)であってもよい。
【0069】
図11は、CMAP信号を表す曲線114~116上の所定時間および所定期間を示す図である。図11において、曲線114は、表面電極によって測定されたCMAP信号を表す曲線であり、曲線116は、肝カテーテルによって測定されたCMAP信号を表す曲線である。時間間隔110は、刺激アーチファクトに対応する。時間間隔112は、CMAPの測定時間に対応する。測定時間は、所定時間110の後、刺激によって生じるCMAP電位の第1のピーク(例えば、ボトムピーク)から実質的に開始し、期間112にわたって持続する。CMAP測定値は、CMAP信号の2つの連続するピーク118,119(例えば図11に示すCMAP電位のボトムピーク118およびトップピーク119)間の振幅であってもよいし、第1のピーク118の面積(すなわち、ピーク118に対応する時間間隔における曲線116と等電位線117との間の面積)と第2のピーク119の面積(すなわち、ピーク119に対応する時間間隔における曲線116と等電位線117との間の面積)との和であってもよい。ここで、両面積は正の値として計算される。
【0070】
リアルタイム値を閾値と比較することは、リアルタイム値と閾値とのいずれの比較であってもよく、例えば、リアルタイム値と閾値との差および/または比率の評価であってもよい。比較は、例えば、リアルタイム値と閾値との比率が(例えば厳密に)1よりも小さいかどうか、かつ/または、リアルタイム値と閾値との差が(例えば厳密に)負であるかどうかを評価することを含んでもよい。
【0071】
次に、閾値を超過した場合、本監視方法は警報を出力する。すなわち、比較の結果、リアルタイム値が閾値よりも低い場合に、警報が出力される。警報は、閾値を超過したことを示すものであればいずれであってもよく、例えば音響警報であってもよい。この場合、警報を出力することは、制御ユニットに接続された放音装置に警報を出力する指示を送信し、放音装置によって音響警報を発することを含む。これに加えて、またはこれに代えて(すなわち、音響警報に加えて、または音響警報の代わりに)、警報は視覚警報であってもよい。この場合、警報を出力することは、制御ユニットに接続されたディスプレイに警報を出力する指示を送信し、ディスプレイによって視覚警報を表示することを含む。
【0072】
本監視方法は、本方法の最初のステップとして、例えば制御ユニットを収容するハウジングのボタン(例えば「ON」ボタン)を押下することにより、制御ユニットの電源を入れるかまたは起動することを含んでもよい。起動後、制御ユニットは、CMAP信号およびECG信号の(例えば制御ユニットが動作停止されるまで連続的な)受信を開始する。これについては後述する。本監視方法は、全体を通じて、例えば規則的な時間ステップで(例えば毎分40~100回の(例えば毎分60回に等しい)頻度で)、右横隔神経を刺激することを含んでもよい。
【0073】
本監視方法は、例えば自動的かつリアルタイムの繰り返しを実行する前に、CMAP信号が監視に適切な状態にあることを確認することを含んでもよい。これにより、本監視方法のロバスト性および精度が向上する。本監視方法は、CMAP信号がまだ監視に適切な状態にないことを、例えば視覚表示および/または音響表示の形で出力してもよい。この確認は、第1の複数の電極によって測定されたCMAP信号を(例えば測定信号の受信時に)、例えば5Hz~150Hzの間の周波数でフィルタリングすることを含んでよい。これに加えて、またはこれに代えて、この確認は、ベースライン値よりも10%大きい信号に対応するCMAP信号の部分、および/またはCMAP信号の急激な変動(例えば20%を超える低下)に対応する部分を破棄することを含んでもよい。これは、横隔神経刺激が不安定であることを示している場合がある。これらの部分を破棄することに加えて、またはこれに代えて、本監視方法は、横隔神経刺激が不安定であることを、例えば視覚表示および/または音響表示の形で出力することを含んでもよい。
【0074】
ECG信号におけるQRS群の検出、CMAP信号の監視、QRS群と非同期である特性のリアルタイム値の計算、リアルタイム値と閾値との比較、および閾値超過時の警報出力をリアルタイムで繰り返すことは、横隔神経刺激が安定しているとき(すなわち、ヒト患者に行われる横隔神経刺激が安定している間)に行われてもよい。言い換えれば、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための本方法は、
ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位信号をリアルタイムで受信し、
CMAP信号の特性であって、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す特性のベースライン値を計算し、
特性の閾値であって、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す閾値を決定し、当該閾値の決定には、ベースライン値をシフトすることが含まれ、
ヒト患者の心電図信号をリアルタイムで受信し、
横隔神経刺激が安定している場合(すなわち、横隔神経刺激が安定している期間中に)に、リアルタイムで、
-ECG信号におけるQRS群を検出し、
-CMAP信号を監視し、
-QRS群とは非同期である、特性のリアルタイム値を計算し、
-リアルタイム値を閾値と比較し、
-閾値を超過したときに警報を出力する、
ことを繰り返す
ことを含んでもよい。
【0075】
横隔神経刺激がこのように安定していることにより、本方法は、横隔神経刺激の不安定さに起因して警報を出力する可能性が低い。その結果、本方法は、このような不安定さにより特性のリアルタイム値が変化し、そのために比較の結果誤った結論に至ることにより、横隔膜麻痺の発生が近いと誤検出する可能性が低い。
【0076】
一実施形態において、横隔神経刺激は、電気パルス用のエネルギーを提供するエネルギー源に接続された1つ以上の血管内電極および/または1つ以上の表面電極を用いて患者に送達される一連の電気パルスで構成されてもよい。各パルスにおいて、横隔神経はパルスから生じるそれぞれの電気エネルギーを受ける。刺激は、所与の期間にわたってこの期間中の各パルスにおいて横隔神経が各パルスについて受けるそれぞれの電気エネルギーが電気エネルギー閾値以上となる(すなわち、閾値は固定である。すなわち、すべてのパルスについて同じである)ように安定していてもよい。電気エネルギー閾値は、安静時(すなわち、冷凍アブレーション前)の患者から横隔神経刺激に対する正常な横隔膜反応を引き起こすのに十分な最小電気エネルギー以上であってもよい。
【0077】
言い換えれば、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための本方法は、電気パルス用のエネルギーを提供するエネルギー源に接続された1つ以上の血管内電極および/または1つ以上の表面電極を用いて横隔神経に送達される一連の電気パルスで構成される横隔神経刺激が(本方法の一部として、または本方法とは別に)ヒト患者に対して行われている間に、
ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位信号をリアルタイムで受信し、
CMAP信号の特性であって、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す特性のベースライン値を計算し、
特性の閾値であって、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す閾値を決定し、当該閾値の決定には、ベースライン値をシフトすることを含み、
ヒト患者の心電図信号をリアルタイムで受信し、
所与の期間中に、かつ、横隔神経刺激が、当該所与の期間にわたってこの期間中の各パルスにおいて横隔神経が各パルスについて受けるそれぞれの電気エネルギーが前述の電気エネルギー閾値よりも大きくなるほどである(言い換えれば、横隔神経刺激が当該閾値までで安定している)場合に、リアルタイムで、
-ECG信号におけるQRS群を検出し、
-CMAP信号を監視し、
-QRS群とは非同期である、特性のリアルタイム値を計算し、
-リアルタイム値を閾値と比較し、
-閾値を超過したときに警報を出力する、
ことを繰り返す
ことを含んでもよい。
【0078】
上述した実施形態の一例において、電気エネルギー閾値は、最大上刺激エネルギーに対応する(例えば等しい)電気エネルギー値以上である。神経の刺激閾値は、単一の軸索を活性化させるための最小エネルギーとして定義し得るが、神経内で軸索によって異なる場合がある。神経の最大上反応とは、神経のすべての軸索線維が活性化された状態である。横隔神経の場合、最大上反応により、可能な限り最も重要な(すなわち、最大の)CMAP反応/信号が生じる。最大上刺激エネルギーは、このような例において、この最も重要なCMAP反応を得るために必要な電気エネルギー値に対応する(例えば等しい)。
【0079】
横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための方法について詳述してきた。
【0080】
変形例では、CMAP信号を分析することは、受信ECG信号または患者の心臓リズムに関する他のデータに基づいて、任意の代替的な方法で(例えば、ベースライン値、特性、および/もしくは閾値の計算なしに、かつ/または閾値との比較なしに)CMAP信号を分析することを含む。CMAP信号の分析は、例えば、CMAP信号に基づいて刺激の大域的な安定性指標を評価することによって、かつ/または、CMAP信号およびこれらの同期部分を検出するECG信号の並行監視(例えば同一画面上での共通表示)を実行することによって、QRS群に同期するCMAP信号の部分を考慮する(例えば破棄する)任意の態様でCMAP信号を処理してもよい。本方法は、分析に基づいて麻痺の発生が近いことを検出したときに、分析に基づいて警報を出力してもよい。
【0081】
変形例では、本方法は、CMAP分析および/または閾値通過の検出に基づいて警報を出力しない。その代わりに、本方法は、CMAP信号および/または分析結果をいずれの態様で処理してもよく、例えば、麻痺の発生が近いことが検出された際に冷凍アブレーションを自動的に停止してもよい。さらなる代替として、本方法は、CMAP信号またはその特性および閾値を(例えば同時に、例えば重畳させて)表示し、冷凍アブレーションを行う施術者がこれらを見ることができるようにしてもよい。
【0082】
変形例では、閾値は計算されず、リアルタイム値と閾値との比較および警報の出力は行われない。このような場合、本方法は、単に分析結果(例えばCMAP信号またはその特性の表示)を出力してもよく、施術者はその出力に基づいて冷凍アブレーションを停止すべきタイミングを知ることができる。
【0083】
変形例では、本方法は、ECG信号ではないヒト患者の心臓リズムに関するデータを受信する。本方法は、ECG信号の代わりに、ヒト患者の心臓リズムに関する他のデータ(例えば生理学的データ)を受信してもよく、当該他のデータは、前述の実施形態または変形例におけるECG信号と置き換えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するためのコンピュータ実装方法であって、
ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位(CMAP)信号をリアルタイムで受信し、
前記CMAP信号の特性であって、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す前記特性のベースライン値を計算し、
前記特性の閾値であって、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す前記特性の値の境界を表す前記閾値を決定し、前記閾値の決定には、前記ベースライン値をシフトすることが含まれ
アルタイムで
前記CMAP信号を監視し、
-前記ヒト患者のQRS群とは非同期である、前記特性のリアルタイム値を計算し、
-前記リアルタイム値を前記閾値と比較し、
-前記閾値を超えた際に警報を出力する
ことを繰り返す
ことを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
RS群に同期する横隔膜反応を破棄することを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
横隔神経刺激を指令することをさらに含み、
前記QRS群の発生を検出してから所定時間後に、前記横隔神経刺激の発生に対する横隔膜反応が次の前記QRS群の発生前に開始および終了するように、前記横隔神経刺激の発生を開始させる
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記特性のリアルタイム値は、前記横隔神経刺激の複数回の発生に対する前記特性の平均である、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記特性のリアルタイム値は、前記横隔神経刺激の所定回数の連続発生に対する前記特性の平均である、
請求項4記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記所定回数は、5以下である、
請求項5記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記特性のリアルタイム値の計算は、前記横隔神経刺激の発生から所定時間後に開始し、前記横隔神経刺激の前記発生後の所定期間にわたって持続する前記CMAP信号の部分に対して各々実行される1つ以上のCMAP測定値を計算することを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記所定時間は、3msを超えるおよび/もしくは50ms未満であり、かつ/または、
前記所定期間は、50msを超えるおよび/もしくは150ms未満である、
請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記特性は、
-前記CMAP信号の連続する2つのピーク間の振幅差、もしくは、
-等電位線と、前記CMAP信号の2つの連続するピークを表す曲線の部分との間の面積であり、かつ/または、
前記閾値は、
25%を超えるおよび/もしくは35%未満の前記ベースライン値の低下に対応し、かつ/または、
前記CMAP信号は、1つ以上の表面電極および/もしくは1つ以上の血管内電極から受信される、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
アルタイムでの前記繰り返しは、前記横隔神経刺激が安定している際に行われ
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記横隔神経刺激は、前記患者に送達される一連の電気パルスで構成され、
前記横隔神経は、期間中のそれぞれのパルスにおいて、前記パルスから生じるそれぞれの電気エネルギーを受け、
前記それぞれのパルスにおいて前記横隔神経が受ける前記それぞれの電気エネルギーは、電気エネルギー閾値以上であり、
前記電気エネルギー閾値は、安静時の前記患者から横隔神経刺激に対する横隔膜反応を引き起こすのに十分な最小電気エネルギー以上である、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記電気エネルギー閾値は、最大上刺激エネルギーに対応する電気エネルギー値以上である、
請求項11記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記ヒト患者の心電図(ECG)信号をリアルタイムで受信し、
前記ECG信号におけるQRS群のリアルタイムでの検出をさらに繰り返す
ことをさらに含み、
前記特性のリアルタイム値が非同期である前記ヒト患者の前記QRS群は、前記ECG信号において検出される前記QRS群である、
請求項1記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
請求項1~請求項1のいずれか一項記載のコンピュータ実装方法を実行するための命令を含む、
コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータプログラムを記録した
コンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項16】
請求項14記載のコンピュータプログラムを記録したメモリに接続されたプロセッサを備える、
制御ユニット。
【請求項17】
請求項1記載の制御ユニットと、
前記CMAP信号を測定するように構成された複数の電極
隔神経刺激システム、および/または、
冷凍アブレーションカテーテルと、
を備える、システム。
【請求項18】
記複数の電極は、1つ以上の表面電極および/または1つ以上の血管内電極を含む、
請求項1記載のシステム。
【請求項19】
前記閾値を超えた際に視覚警報を出力するためのディスプレイ、および/または、
前記閾値を超えた際に音響警報を出力するための放音装置、
をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
前記ECG信号を測定するためのさらなる複数の電極をさらに備える、
請求項17記載のシステム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
特性のリアルタイム値を計算することは、横隔神経刺激の発生から所定時間後に開始し、横隔神経刺激の発生後の所定期間にわたって持続するCMAP信号の部分に対して各々実行される1つ以上のCMAP測定値を計算することを含んでもよい。この部分は、前述したように、刺激によって得られるCMAP電位の2つの連続するピーク間の時間間隔に実質的に対応するか、またはこのようなCMAP電位の2つの連続するピークをちょうどカバーするものであってもよい。各測定値は、CMAP信号の2つの連続するピーク(例えば前述したように、ボトムピークおよびトップピーク)間の振幅差の測定値であってもよいし、等電位線とCMAP信号を表す曲線との間の面積の測定値であってもよい。本方法は、各測定値を用いて、例えば前述したように測定値の平均を取ることにより、特性のリアルタイム値を計算してもよい。横隔神経刺激の発生後の所定時間は、刺激の時間ウィンドウに対応し、横隔神経刺激の発生後の所定期間は、刺激の時間ウィンドウに続くCMAP分析の時間ウィンドウに対応する。これにより、リアルタイム値の計算に用いられるCMAPの各測定値は、CMAP信号における刺激アーチファクトによって妨害されないCMAP信号の時間ウィンドウに対応する。所定時間は、3msを超えるおよび/または50ms未満であってもよく、例えば10ms~20msの間であってもよい。これに加えて、またはこれに代えて、所定期間は、50msを超えるおよび/または150ms未満であってもよく、例えば50ms~100msの間(例えば100msに等しい)であってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
言い換えれば、横隔神経刺激に対する横隔膜反応を監視するための本方法は、電気パルス用のエネルギーを提供するエネルギー源に接続された1つ以上の血管内電極および/または1つ以上の表面電極を用いて横隔神経に送達される一連の電気パルスで構成される横隔神経刺激が(本方法の一部として、または本方法とは別に)ヒト患者に対して行われている間に、
ヒト患者の横隔膜複合筋活動電位信号をリアルタイムで受信し、
CMAP信号の特性であって、横隔神経刺激に対する横隔膜反応強度を表す特性のベースライン値を計算し、
特性の閾値であって、横隔膜麻痺の発生が近いことを示す特性の値の境界を表す閾値を決定し、当該閾値の決定には、ベースライン値をシフトすることを含み、
ヒト患者の心電図信号をリアルタイムで受信し、
所与の期間中に、かつ、横隔神経刺激が、当該所与の期間にわたってこの期間中の各パルスにおいて横隔神経が各パルスについて受けるそれぞれの電気エネルギーが前述の電気エネルギー閾値よりも大きくなるように安定している(言い換えれば、横隔神経刺激が当該閾値までで安定している)場合に、リアルタイムで、
-ECG信号におけるQRS群を検出し、
-CMAP信号を監視し、
-QRS群とは非同期である、特性のリアルタイム値を計算し、
-リアルタイム値を閾値と比較し、
-閾値を超過したときに警報を出力する、
ことを繰り返す
ことを含んでもよい。
【国際調査報告】