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特表2024-526860初代NK細胞内での発現のためのキメラ抗原受容体mRNA分子の生成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】初代NK細胞内での発現のためのキメラ抗原受容体mRNA分子の生成
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240711BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240711BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240711BHJP
   C07K 16/10 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61K48/00
A61K35/17
C07K16/28
C07K16/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503426
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022073727
(87)【国際公開番号】W WO2023004255
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,100
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523333870
【氏名又は名称】イミュニティバイオ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パルヴィーズ,フェレシュテ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規なキメラ抗原(CAR)mRNA分子、この分子を生成する方法及びこの分子で癌を治療する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T7プロモーター、スペーサー配列、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通(TM)ドメイン及び細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、
前記シグナルペプチドは、分化抗原群64(CD64)及び/又はIgG重鎖可変遺伝子(IgGHv)シグナルペプチドを含み;
前記抗原結合ドメインは、分化抗原群19(CD19)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7ホモログ4(B7H4)、SARS-CoV-2スパイク及び分化抗原群30α(CD30α)からなる群から選択される抗原に結合する、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記シグナルペプチドは、配列番号1又は配列番号2を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
CD19に結合する前記抗原結合ドメインは、配列番号4に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項4】
BCMAに結合する前記抗原結合ドメインは、配列番号5又は配列番号6に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項5】
B7H4に結合する前記抗原結合ドメインは、配列番号7に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項6】
SARS-CoV-2スパイクに結合する前記抗原結合ドメインは、配列番号8に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項7】
CD30αに結合する前記抗原結合ドメインは、配列番号57に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項8】
前記ヒンジ領域は、配列番号9を有する分化抗原群28(CD28)ヒンジ領域である、請求項1に記載のCAR。
【請求項9】
前記TMドメインは、配列番号10を有するCD28 TMドメインである、請求項1に記載のCAR。
【請求項10】
前記細胞内ドメインは、共刺激ドメインを含み、配列番号11を有するCD28細胞質ドメインを含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項11】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号12を有する分化抗原群3ζ(CD3ζ)細胞質ドメインを含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項12】
配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号58からなる群から選択されるアミノ酸配列に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項13】
請求項1に記載のCARをコードする核酸構築物。
【請求項14】
配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号59からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項15】
請求項1に記載のCARをコードする発現ベクター。
【請求項16】
配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号42からなる群から選択される核酸配列を有する、請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
T7プロモーター、スペーサー配列、シグナルペプチド配列部分、抗原結合ドメイン配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通(TM)ドメイン配列部分及び細胞内ドメイン配列部分の1つ以上の核酸を含むRNA分子で修飾された修飾初代ナチュラルキラー(NK)細胞であって、
前記シグナルペプチド配列は、分化抗原群64(CD64)及び/又はIgG重鎖可変遺伝子(IgGHv)をコードする配列を含み;
前記抗原結合ドメインは、分化抗原群19(CD19)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7ホモログ4(B7H4)、SARS-CoV-2スパイク及び分化抗原群30α(CD30α)からなる群から選択される抗原に結合する抗原結合部分をコードする配列を含み;
前記核酸配列は、単一のポリヌクレオチドとして互いに作動可能に連結される、修飾初代ナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項18】
前記細胞内ドメイン配列部分は、配列番号11を有するCD28細胞質ドメイン及び/又は配列番号12を有する分化抗原群3ζ(CD3ζ)細胞質ドメインを含む、請求項17に記載の修飾初代NK細胞。
【請求項19】
3’非翻訳領域(3’-UTR)をさらに含む、請求項17に記載の修飾初代NK細胞。
【請求項20】
ポリ-A配列部分をさらに含む、請求項17に記載の修飾初代NK細胞。
【請求項21】
修飾初代CAR-NK細胞を生成する方法であって、初代NK細胞を、請求項13に記載の組み換え核酸構築物でトランスフェクトすることを含む方法。
【請求項22】
癌の治療を、それを必要としている対象において行うための免疫治療の方法であって、治療有効量の、請求項17に記載の遺伝子組み換えNK細胞を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項23】
前記癌は、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、限定されないが、肉腫及び癌腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む固形腫瘍からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
癌の治療に使用するための、請求項17に記載の修飾NK細胞。
【請求項25】
前記癌は、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、限定されないが、肉腫及び癌腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む固形腫瘍からなる群から選択される、請求項24に記載の修飾NK細胞。
【請求項26】
薬剤として使用するための、請求項17に記載の修飾NK細胞。
【請求項27】
請求項17に記載の修飾NK細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2021年7月21日に出願された米国仮特許出願第63/224,100号明細書に対する優先権の利益を主張するものである。米国仮特許出願第63/224,100号明細書の開示全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webによってテキストファイルとして電子的に提出された配列表を含む。「8774-19-PCT」いう名称のXMLファイルは、154000バイトのバイトサイズを有し、2021年7月11日に記録された。XMLファイルに含まれる情報は、米国特許法施行規則(37 CFR)第1.52条(e)(5)に従い、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ナチュラルキラー(NKと略記される)細胞は、自然免疫系の主要なメディエーターである。NK細胞は、事前の感作又はHLA適合を必要とすることなく、異常細胞(癌細胞又はウイルス感染細胞など)を迅速に発見し、破壊することができる。癌を治療するために免疫細胞(NK細胞を含む)を使用することは、最近の新しい傾向である。この新しい治療法は、従来の手術、化学療法及び放射線療法に不応性の腫瘍の治療に有望であると予想される。
【0004】
キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞内シグナル伝達領域に融合された細胞外受容体領域から構成された操作タンパク質である。通常、これらの領域は、異なるタンパク質に由来するが、それらは、デノボで設計することもできる。CAR発現T細胞は、細胞内シグナル伝達ドメインに融合された一本鎖可変フラグメント(scFV)、通常、CD3のζ鎖(CD3ζ)を用いている。さらなる開発は、T細胞活性化を促進するために、CD28及びCD137などの二次共刺激シグナルを含んでいる。CAR構築物は、特にT細胞CD19-CARでも治療されているCD19+ B細胞腫瘍の治療のためのNK-92 CD19-CAR発現の使用でもNK細胞に適用されている。
【0005】
本発明者らは、多くのCAR分子がNK細胞株内で発現され得る一方、それらが初代NK細胞内のDNA又はRNAのいずれとしても発現され得ないことを見出した。ほとんどのCAR技術は、細胞内へのDNA分子の送達のためにウイルスベクターを使用する。ウイルスDNAは、核に侵入し、転写的に活性な部位を優先して宿主ゲノムに統合し得る。本明細書に開示されるように、本発明者らは、NK細胞内のCAR RNA分子の高い発現のための特定のドメイン及び安定化要素の新規な組合せを特定した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
T7プロモーター、スペーサー配列、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通(TM)ドメイン及び細胞内ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、シグナルペプチドは、分化抗原群64(CD64)及び/又はIgG重鎖可変遺伝子(IgGHv)シグナルペプチドを含み;抗原結合ドメインは、分化抗原群19(CD19)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7ホモログ4(B7H4)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイク及び分化抗原群30α(CD30α)からなる群から選択される抗原に結合する、キメラ抗原受容体(CAR)が本明細書に開示される。
【0007】
一態様では、シグナルペプチドは、配列番号1又は配列番号2を含む。
【0008】
一態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインは、配列番号4に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0009】
さらに別の態様では、BCMAに結合する抗原結合ドメインは、配列番号5又は配列番号6に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0010】
さらに別の態様では、B7H4に結合する抗原結合ドメインは、配列番号7に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0011】
一態様では、SARS-CoV-2スパイクに結合する抗原結合ドメインは、配列番号8に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0012】
一態様では、CD30αスパイクに結合する抗原結合ドメインは、配列番号57に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0013】
一態様では、ヒンジ領域は、配列番号9を有する分化抗原群28(CD28)ヒンジ領域である。
【0014】
一態様では、TMドメインは、配列番号10を有するCD28 TMドメインである。
【0015】
一態様では、共刺激ドメインは、配列番号11を有するCD28細胞質ドメインを含む。
【0016】
一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号12を有する分化抗原群3ζ(CD3ζ)細胞質ドメインを含む。
【0017】
さらに別の態様では、CARは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号58からなる群から選択されるアミノ酸配列に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0018】
本明細書に開示されるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸構築物であって、CARの抗原結合ドメインは、分化抗原群19(CD19)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7ホモログ4(B7H4)、SARS-CoV-2スパイク及びCD30αからなる群から選択される抗原に結合する、核酸構築物も本明細書に開示される。一態様では、核酸構築物は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号59からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0019】
本明細書に開示されるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクターであって、CARの抗原結合ドメインは、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7ホモログ4(B7H4)、SARS-CoV-2スパイク及びCD30αからなる群から選択される抗原に結合する、発現ベクターも本明細書に開示される。一態様では、発現ベクターは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号42からなる群から選択される核酸配列を有する。
【0020】
T7プロモーター、スペーサー配列、シグナルペプチド配列部分、抗原結合ドメイン配列部分、ヒンジ領域配列部分、膜貫通(TM)ドメイン配列部分及び細胞内ドメイン配列部分の1つ以上の核酸を含むRNA分子で修飾された初代ナチュラルキラー(NK)細胞であって、シグナルペプチド配列は、分化抗原群64(CD64)及び/又はIgG重鎖可変遺伝子(IgGHv)をコードする配列を含み;抗原結合ドメインは、分化抗原群19(CD19)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7ホモログ4(B7H4)、SARS-CoV-2スパイク及び分化抗原群30α(CD30α)からなる群から選択される抗原に結合する抗原結合部分をコードする配列を含み;核酸配列は、単一のポリヌクレオチドとして互いに作動可能に連結される、初代ナチュラルキラー(NK)細胞が本明細書にさらに開示される。
【0021】
修飾初代NK細胞の一態様では、細胞内ドメイン配列部分は、配列番号11を有するCD28細胞質ドメイン及び/又は配列番号12を有する分化抗原群3ζ(CD3ζ)細胞質ドメインを含む。一態様では、修飾初代NK細胞は、3’-UTRをさらに含む。さらに別の態様では、修飾初代NK細胞は、ポリ-A配列部分をさらに含む。
【0022】
修飾初代CAR-NK細胞を生成する方法であって、初代NK細胞を、本明細書に開示される組み換え核酸構築物でトランスフェクトすることを含む方法も本明細書に開示される。
【0023】
癌の治療を、それを必要としている対象において行うための免疫治療の方法であって、治療有効量の、本明細書に開示される遺伝子組み換えNK細胞を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法も本明細書に開示される。一態様では、癌は、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、限定されないが、肉腫及び癌腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む固形腫瘍からなる群から選択される。
【0024】
癌の治療に使用するための、本明細書に開示される修飾NK細胞も本明細書に開示される。一態様では、癌は、白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒性)白血病、慢性リンパ球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、限定されないが、肉腫及び癌腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む固形腫瘍からなる群から選択される。
【0025】
薬剤として使用するための、本明細書に開示される修飾NK細胞も本明細書に開示される。
【0026】
本明細書に開示される遺伝子組み換えNK細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が本明細書にさらに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ACE2 CAR分子(pNKW97)を生成するための構築物の概略図である。ACE2タンパク質の細胞外ドメインを用いて、CD64シグナルペプチド及び150-bpの長さのポリAテイルを有するCAR分子を生成した。配列番号3を有するスペーサー配列をこの構築物において使用した。
図2A】サイトカイン富化ナチュラルキラー(CENK)細胞内のNKW97-150A(XL53-ACE2-細胞外ドメイン)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpNKW97 RNAでトランスフェクトした。一晩の回復後、ACE2発現を、フローサイトメトリー及びコンジュゲートされたACE2抗体を用いて検出した。アイソタイプ対照を用いて、ACE2抗体の特異性を確認した。示されるように、発現及び細胞生存の両方がこの構築物について非常に良好である。
図2B】サイトカイン富化ナチュラルキラー(CENK)細胞内のNKW97-150A(XL53-ACE2-細胞外ドメイン)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpNKW97 RNAでトランスフェクトした。一晩の回復後、ACE2発現を、フローサイトメトリー及びコンジュゲートされたACE2抗体を用いて検出した。アイソタイプ対照を用いて、ACE2抗体の特異性を確認した。示されるように、発現及び細胞生存の両方がこの構築物について非常に良好である。
図2C】サイトカイン富化ナチュラルキラー(CENK)細胞内のNKW97-150A(XL53-ACE2-細胞外ドメイン)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpNKW97 RNAでトランスフェクトした。一晩の回復後、ACE2発現を、フローサイトメトリー及びコンジュゲートされたACE2抗体を用いて検出した。アイソタイプ対照を用いて、ACE2抗体の特異性を確認した。示されるように、発現及び細胞生存の両方がこの構築物について非常に良好である。
図2D】サイトカイン富化ナチュラルキラー(CENK)細胞内のNKW97-150A(XL53-ACE2-細胞外ドメイン)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpNKW97 RNAでトランスフェクトした。一晩の回復後、ACE2発現を、フローサイトメトリー及びコンジュゲートされたACE2抗体を用いて検出した。アイソタイプ対照を用いて、ACE2抗体の特異性を確認した。示されるように、発現及び細胞生存の両方がこの構築物について非常に良好である。
図3】pNKW97のプラスミドマップを示す。
図4】B7H4抗原(pNKW92-93)を標的としたCAR分子を生成するための2つの構築物の概略図である。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)が異なる2つの形態のモノペプチドB7H4 CARを設計した。配列番号3を有するスペーサー配列をpNKW92構築物において使用し;配列番号60を有するスペーサー配列をpNKW93構築物において使用した。
図5A】CENK細胞におけるCD64又はIgGHv B7H4 VH-VL 105A(NKW92、NKW93)CAR分子の発現を示す。CENK細胞を、pNKW92又はpNKW93 mRNAを用いてエレクトロポレートした。24時間後、B7H4 CAR発現を、フロー及びビオチン化B7H4、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。両方の構築物がB7H4 CARの良好な発現を示す。
図5B】CENK細胞におけるCD64又はIgGHv B7H4 VH-VL 105A(NKW92、NKW93)CAR分子の発現を示す。CENK細胞を、pNKW92又はpNKW93 mRNAを用いてエレクトロポレートした。24時間後、B7H4 CAR発現を、フロー及びビオチン化B7H4、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。両方の構築物がB7H4 CARの良好な発現を示す。
図5C】CENK細胞におけるCD64又はIgGHv B7H4 VH-VL 105A(NKW92、NKW93)CAR分子の発現を示す。CENK細胞を、pNKW92又はpNKW93 mRNAを用いてエレクトロポレートした。24時間後、B7H4 CAR発現を、フロー及びビオチン化B7H4、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。両方の構築物がB7H4 CARの良好な発現を示す。
図5D】CENK細胞におけるCD64又はIgGHv B7H4 VH-VL 105A(NKW92、NKW93)CAR分子の発現を示す。CENK細胞を、pNKW92又はpNKW93 mRNAを用いてエレクトロポレートした。24時間後、B7H4 CAR発現を、フロー及びビオチン化B7H4、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。両方の構築物がB7H4 CARの良好な発現を示す。
図5E】CENK細胞におけるCD64又はIgGHv B7H4 VH-VL 105A(NKW92、NKW93)CAR分子の発現を示す。CENK細胞を、pNKW92又はpNKW93 mRNAを用いてエレクトロポレートした。24時間後、B7H4 CAR発現を、フロー及びビオチン化B7H4、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。両方の構築物がB7H4 CARの良好な発現を示す。
図5F】CENK細胞におけるCD64又はIgGHv B7H4 VH-VL 105A(NKW92、NKW93)CAR分子の発現を示す。CENK細胞を、pNKW92又はpNKW93 mRNAを用いてエレクトロポレートした。24時間後、B7H4 CAR発現を、フロー及びビオチン化B7H4、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。両方の構築物がB7H4 CARの良好な発現を示す。
図6】pNKW92のプラスミドマップを示す。
図7】pNKW93のプラスミドマップを示す。
図8A】BCMA抗原(pNKW88-91)を標的としたCAR分子を生成するための4つの構築物の概略図である。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)並びに可変重鎖及び軽鎖の順序が異なる4つの形態のモノペプチドBCMA CARを設計した。配列番号3を有するスペーサー配列をpNKW89及びpNKW91構築物において使用し;配列番号60を有するスペーサー配列をpNKW88及びpNKW90構築物において使用した。
図8B】BCMA抗原(pNKW88-91)を標的としたCAR分子を生成するための4つの構築物の概略図である。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)並びに可変重鎖及び軽鎖の順序が異なる4つの形態のモノペプチドBCMA CARを設計した。配列番号3を有するスペーサー配列をpNKW89及びpNKW91構築物において使用し;配列番号60を有するスペーサー配列をpNKW88及びpNKW90構築物において使用した。
図9A】CENK細胞におけるBCMA CAR mRNAの発現を示す。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)並びに可変重鎖及び軽鎖の順序が異なる4つの形態のモノシストロン性BCMA CARを設計した。CENK細胞を、各構築物からのmRNAを用いてエレクトロポレートした。CAR BCMA発現を、ビオチン化BCMA、続いてAPCがコンジュゲートされたストレプトアビジン分子を用いて、エレクトロポレーションの24時間後に検出した。示されるように、4つ全ての構築物が高いレベルのBCMA CARを示す。
図9B】CENK細胞におけるBCMA CAR mRNAの発現を示す。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)並びに可変重鎖及び軽鎖の順序が異なる4つの形態のモノシストロン性BCMA CARを設計した。CENK細胞を、各構築物からのmRNAを用いてエレクトロポレートした。CAR BCMA発現を、ビオチン化BCMA、続いてAPCがコンジュゲートされたストレプトアビジン分子を用いて、エレクトロポレーションの24時間後に検出した。示されるように、4つ全ての構築物が高いレベルのBCMA CARを示す。
図9C】CENK細胞におけるBCMA CAR mRNAの発現を示す。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)並びに可変重鎖及び軽鎖の順序が異なる4つの形態のモノシストロン性BCMA CARを設計した。CENK細胞を、各構築物からのmRNAを用いてエレクトロポレートした。CAR BCMA発現を、ビオチン化BCMA、続いてAPCがコンジュゲートされたストレプトアビジン分子を用いて、エレクトロポレーションの24時間後に検出した。示されるように、4つ全ての構築物が高いレベルのBCMA CARを示す。
図9D】CENK細胞におけるBCMA CAR mRNAの発現を示す。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)並びに可変重鎖及び軽鎖の順序が異なる4つの形態のモノシストロン性BCMA CARを設計した。CENK細胞を、各構築物からのmRNAを用いてエレクトロポレートした。CAR BCMA発現を、ビオチン化BCMA、続いてAPCがコンジュゲートされたストレプトアビジン分子を用いて、エレクトロポレーションの24時間後に検出した。示されるように、4つ全ての構築物が高いレベルのBCMA CARを示す。
図9E】CENK細胞におけるBCMA CAR mRNAの発現を示す。シグナルペプチド(CD64又はIgGHv)並びに可変重鎖及び軽鎖の順序が異なる4つの形態のモノシストロン性BCMA CARを設計した。CENK細胞を、各構築物からのmRNAを用いてエレクトロポレートした。CAR BCMA発現を、ビオチン化BCMA、続いてAPCがコンジュゲートされたストレプトアビジン分子を用いて、エレクトロポレーションの24時間後に検出した。示されるように、4つ全ての構築物が高いレベルのBCMA CARを示す。
図10】SUP-B15 BCMA標的及びSUP-B15親細胞におけるCD64-BCMA VL-VH 150A(NKW89)CARでトランスフェクトされたCENK細胞の細胞毒性を示す。CENK細胞を、pNKW89からのmRNAを用いてエレクトロポレートした。24時間後、カルセインAMアッセイを用いて、SUP-B15 BCMA標的及び対照SUP-B15親細胞に対する、CENKでトランスフェクトされた細胞の細胞毒性を試験した。示されるように、NKW89でトランスフェクトされた細胞は、SUP-B15親細胞に対する活性を有さずに、SUP-B15 BCMAに対する特異的な細胞傷害活性を示す。対照の非トランスフェクトCENK細胞は、SUP-B15 BCMA又は親細胞にいずれに対しても細胞傷害活性を示さない。
図11】pNKW88のプラスミドマップを示す。
図12】pNKW89のプラスミドマップを示す。
図13】pNKW90のプラスミドマップを示す。
図14】pNKW91のプラスミドマップを示す。
図15A】トリペプチドCD19 CAR mRNAによるPB-NK細胞のエレクトロポレーションの結果を示す。CD19 CARを安定的に発現する安定した細胞株をCD19 CAR検出のための陽性対照として使用した。GFP及びPDL1 CAR mRNAの両方をエレクトロポレーションのための陽性対照として使用した。示されるように、トリペプチドCARは、PB-NK細胞内のRNA分子としてエレクトロポレーション後に発現されることができない。
図15B】トリペプチドCD19 CAR mRNAによるPB-NK細胞のエレクトロポレーションの結果を示す。CD19 CARを安定的に発現する安定した細胞株をCD19 CAR検出のための陽性対照として使用した。GFP及びPDL1 CAR mRNAの両方をエレクトロポレーションのための陽性対照として使用した。示されるように、トリペプチドCARは、PB-NK細胞内のRNA分子としてエレクトロポレーション後に発現されることができない。
図15C】トリペプチドCD19 CAR mRNAによるPB-NK細胞のエレクトロポレーションの結果を示す。CD19 CARを安定的に発現する安定した細胞株をCD19 CAR検出のための陽性対照として使用した。GFP及びPDL1 CAR mRNAの両方をエレクトロポレーションのための陽性対照として使用した。示されるように、トリペプチドCARは、PB-NK細胞内のRNA分子としてエレクトロポレーション後に発現されることができない。
図16A】トリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた幹メモリーT細胞(Tscm細胞)の結果を示す。Tscm細胞は、3つの異なるエレクトロポレーションプロトコル(増加する電気パルスを用いたE1~E3)を用いてトリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた。示されるように、トリペプチドCARは、メモリーT細胞中のRNA分子としてエレクトロポレーション後に発現されることができない。
図16B】トリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた幹メモリーT細胞(Tscm細胞)の結果を示す。Tscm細胞は、3つの異なるエレクトロポレーションプロトコル(増加する電気パルスを用いたE1~E3)を用いてトリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた。示されるように、トリペプチドCARは、メモリーT細胞中のRNA分子としてエレクトロポレーション後に発現されることができない。
図16C】トリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた幹メモリーT細胞(Tscm細胞)の結果を示す。Tscm細胞は、3つの異なるエレクトロポレーションプロトコル(増加する電気パルスを用いたE1~E3)を用いてトリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた。示されるように、トリペプチドCARは、メモリーT細胞中のRNA分子としてエレクトロポレーション後に発現されることができない。
図16D】トリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた幹メモリーT細胞(Tscm細胞)の結果を示す。Tscm細胞は、3つの異なるエレクトロポレーションプロトコル(増加する電気パルスを用いたE1~E3)を用いてトリペプチドCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートされた。示されるように、トリペプチドCARは、メモリーT細胞中のRNA分子としてエレクトロポレーション後に発現されることができない。
図17】CD19抗原(pNKW87-59)を標的としたCAR分子を生成するための2つの構築物の概略図である。初代NK細胞(本明細書においてPB-NK細胞とも呼ばれる)及び幹メモリーT細胞(Tscm細胞)中のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64又はIgGHvシグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。150ヌクレオチド長のポリAテイルを各分子の末端に付加して、mRNA安定性を改善した。配列番号3を有するスペーサー配列をこれらの構築物において使用した。
図18A】PB-NK細胞におけるCD19 CAR分子の発現を示す。初代NK細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87)又はIgGHv(pNKW59)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAを用いて、PB-NK細胞のエレクトロポレーションのために使用されるインビトロで転写されたmRNA分子を生成した。示されるように、両方の構築物がエレクトロポレーションの24時間後に94%超のCD19 CAR発現を示す。
図18B】PB-NK細胞におけるCD19 CAR分子の発現を示す。初代NK細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87)又はIgGHv(pNKW59)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAを用いて、PB-NK細胞のエレクトロポレーションのために使用されるインビトロで転写されたmRNA分子を生成した。示されるように、両方の構築物がエレクトロポレーションの24時間後に94%超のCD19 CAR発現を示す。
図18C】PB-NK細胞におけるCD19 CAR分子の発現を示す。初代NK細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87)又はIgGHv(pNKW59)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAを用いて、PB-NK細胞のエレクトロポレーションのために使用されるインビトロで転写されたmRNA分子を生成した。示されるように、両方の構築物がエレクトロポレーションの24時間後に94%超のCD19 CAR発現を示す。
図18D】PB-NK細胞におけるCD19 CAR分子の発現を示す。初代NK細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87)又はIgGHv(pNKW59)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAを用いて、PB-NK細胞のエレクトロポレーションのために使用されるインビトロで転写されたmRNA分子を生成した。示されるように、両方の構築物がエレクトロポレーションの24時間後に94%超のCD19 CAR発現を示す。
図18E】PB-NK細胞におけるCD19 CAR分子の発現を示す。初代NK細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87)又はIgGHv(pNKW59)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAを用いて、PB-NK細胞のエレクトロポレーションのために使用されるインビトロで転写されたmRNA分子を生成した。示されるように、両方の構築物がエレクトロポレーションの24時間後に94%超のCD19 CAR発現を示す。
図18F】PB-NK細胞におけるCD19 CAR分子の発現を示す。初代NK細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87)又はIgGHv(pNKW59)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAを用いて、PB-NK細胞のエレクトロポレーションのために使用されるインビトロで転写されたmRNA分子を生成した。示されるように、両方の構築物がエレクトロポレーションの24時間後に94%超のCD19 CAR発現を示す。
図19A-B】mRNAエレクトロポレーション後にCD-19陽性、SUP-B15親標的細胞株におけるCD19 CARでトランスフェクトされたPB-NK細胞の細胞傷害活性を示す。CD19 CARでトランスフェクトされたPB-NK細胞の細胞傷害活性を、CD19陽性(SUP-B15親)及びCD19陰性(SUP-B15変異体)細胞株を用いて、エレクトロポレーションの24時間後に決定した。示されるように、CD64(pNKW87)又はIgGHv(pNKW59)シグナルペプチドのいずれかを有する構築物の両方は、CD19陽性細胞株に対する特異的な細胞毒性を示す。
図20A-B】mRNAトランスフェクション後のメモリー(PB-NK CIML)及び対照(PB-NK)細胞内のCD19 CAR分子の細胞傷害活性を示す。CD19 CARでトランスフェクトされたメモリー(PB-NK CIML)又は対照(PB-NK)細胞の細胞傷害活性を、CD19陽性(SUP-B15親)及びCD19陰性(SUP-B15変異体)細胞株を用いて、エレクトロポレーションの24時間後に決定した。示されるように、CD19-CARでトランスフェクトされたPB-NK CIML細胞は、CD19-CARでトランスフェクトされた対照PB-NK細胞と同等の細胞傷害活性を示す。これは、CIML細胞をCD19陽性腫瘍細胞の特異的な標的化に向けることをさらに促進する。
図21A】CD19 CAR構築物による活性化T細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19 CAR発現のモニタリングの結果を示す。初代リンパ球内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87---図21B及び21C)又はIgGH(pNKW59--図21D及び21E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAは、初代細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。
図21B】CD19 CAR構築物による活性化T細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19 CAR発現のモニタリングの結果を示す。初代リンパ球内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87---図21B及び21C)又はIgGH(pNKW59--図21D及び21E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAは、初代細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。
図21C】CD19 CAR構築物による活性化T細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19 CAR発現のモニタリングの結果を示す。初代リンパ球内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87---図21B及び21C)又はIgGH(pNKW59--図21D及び21E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAは、初代細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。
図21D】CD19 CAR構築物による活性化T細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19 CAR発現のモニタリングの結果を示す。初代リンパ球内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87---図21B及び21C)又はIgGH(pNKW59--図21D及び21E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAは、初代細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。
図21E】CD19 CAR構築物による活性化T細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19 CAR発現のモニタリングの結果を示す。初代リンパ球内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87---図21B及び21C)又はIgGH(pNKW59--図21D及び21E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノペプチドCD19構築物を設計した。鋳型DNAは、初代細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。
図22A】CD19 CAR構築物によるTscm細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19発現のモニタリングの結果を示す。メモリーT細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87-図22B及び22C)又はIgGHv(pNKW59---図22D及び22E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノシストロン性CD19構築物を設計した。鋳型DNAは、Tscm細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。示されるように、両方の構築物は、エレクトロポレーションの72時間後でも高いレベルのCD19 CAR発現を示す。
図22B】CD19 CAR構築物によるTscm細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19発現のモニタリングの結果を示す。メモリーT細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87-図22B及び22C)又はIgGHv(pNKW59---図22D及び22E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノシストロン性CD19構築物を設計した。鋳型DNAは、Tscm細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。示されるように、両方の構築物は、エレクトロポレーションの72時間後でも高いレベルのCD19 CAR発現を示す。
図22C】CD19 CAR構築物によるTscm細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19発現のモニタリングの結果を示す。メモリーT細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87-図22B及び22C)又はIgGHv(pNKW59---図22D及び22E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノシストロン性CD19構築物を設計した。鋳型DNAは、Tscm細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。示されるように、両方の構築物は、エレクトロポレーションの72時間後でも高いレベルのCD19 CAR発現を示す。
図22D】CD19 CAR構築物によるTscm細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19発現のモニタリングの結果を示す。メモリーT細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87-図22B及び22C)又はIgGHv(pNKW59---図22D及び22E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノシストロン性CD19構築物を設計した。鋳型DNAは、Tscm細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。示されるように、両方の構築物は、エレクトロポレーションの72時間後でも高いレベルのCD19 CAR発現を示す。
図22E】CD19 CAR構築物によるTscm細胞のエレクトロポレーションの24~72時間後のCD19発現のモニタリングの結果を示す。メモリーT細胞内のCD19 CAR mRNA分子の発現を改善するために、CD64(pNKW87-図22B及び22C)又はIgGHv(pNKW59---図22D及び22E)シグナルペプチドのいずれかを有するモノシストロン性CD19構築物を設計した。鋳型DNAは、Tscm細胞のエレクトロポレーションのためにさらに使用されるインビトロで転写されたmRNA分子のための鋳型として用いられた。示されるように、両方の構築物は、エレクトロポレーションの72時間後でも高いレベルのCD19 CAR発現を示す。
図23】pNKW59のプラスミドマップを示す。
図24】pNKW87のプラスミドマップを示す。
図25】CD30アルファ(CD30α)抗原(pNKW95)を標的としたCAR分子を生成するための構築物の概略図である。CD64シグナルペプチド及び150-bpの長さのポリAテイルを含有するモノシストロン性CD30α CARを設計した。配列番号3を有するスペーサー配列を構築物において使用した。
図26A】CENK細胞内のα-CD30 CD64-VL-VH CAR(NKW95-150A)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpXL46(短鎖ポリA)又はpNKW95 RNA(150A)でトランスフェクトした。一晩の回復後、CD30α CAR発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化CD30、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。pNKW95構築物は、親pXL46と比較してより多い発現を示す。
図26B】CENK細胞内のα-CD30 CD64-VL-VH CAR(NKW95-150A)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpXL46(短鎖ポリA)又はpNKW95 RNA(150A)でトランスフェクトした。一晩の回復後、CD30α CAR発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化CD30、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。pNKW95構築物は、親pXL46と比較してより多い発現を示す。
図26C】CENK細胞内のα-CD30 CD64-VL-VH CAR(NKW95-150A)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpXL46(短鎖ポリA)又はpNKW95 RNA(150A)でトランスフェクトした。一晩の回復後、CD30α CAR発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化CD30、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。pNKW95構築物は、親pXL46と比較してより多い発現を示す。
図26D】CENK細胞内のα-CD30 CD64-VL-VH CAR(NKW95-150A)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpXL46(短鎖ポリA)又はpNKW95 RNA(150A)でトランスフェクトした。一晩の回復後、CD30α CAR発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化CD30、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。pNKW95構築物は、親pXL46と比較してより多い発現を示す。
図26E】CENK細胞内のα-CD30 CD64-VL-VH CAR(NKW95-150A)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpXL46(短鎖ポリA)又はpNKW95 RNA(150A)でトランスフェクトした。一晩の回復後、CD30α CAR発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化CD30、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。pNKW95構築物は、親pXL46と比較してより多い発現を示す。
図26F】CENK細胞内のα-CD30 CD64-VL-VH CAR(NKW95-150A)の発現を示す。CENK細胞を、エレクトロポレーションを用いてpXL46(短鎖ポリA)又はpNKW95 RNA(150A)でトランスフェクトした。一晩の回復後、CD30α CAR発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化CD30、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。pNKW95構築物は、親pXL46と比較してより多い発現を示す。
図27】pNKW95のプラスミドマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において特に定義されない限り、本出願において使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。一般に、化学、分子生物学、細胞及び癌生物学、免疫学、微生物学、薬理学及びタンパク質及び核酸化学に関連して使用される命名法並びにそれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
【0029】
本出願において示される全ての刊行物、特許及び公開特許出願は、参照により本明細書に具体的に援用される。矛盾する場合、その具体的な定義を含む本明細書が優先される。
【0030】
本明細書に開示されるように、本発明者らは、初代NK細胞内のキメラ抗原mRNA分子の高い発現のための特定のドメイン及び安定化要素の新規な組合せを決定した。特に、本明細書に開示されるように、新規な組合せは、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通(TM)を含む細胞外ドメインを含み、且つ少なくとも1つの共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含む。さらに、CARは、NK細胞内のインビトロで転写されたRNAの最適な発現のための3’非翻訳領域(UTR)における修飾を有する。本発明者らによる初期の結果は、NK細胞株内で容易に発現された多くのCAR分子が、初代NK細胞内のインビトロ転写及びエレクトロポレーション後、最小限の発現を示すか又は発現を示さないことを示した。ほとんどのCAR技術は、細胞内へのDNA分子の送達のためにウイルスベクターを使用する。ウイルスDNAは、核に侵入し、転写的に活性な部位を優先して宿主ゲノムに統合し得る。本明細書に開示されるように、本発明者らは、ゲノムに統合しないmRNA分子を使用し、それによりウイルス遺伝子送達の発癌の可能性に関連するリスクを回避する別の手法を用いた。安全性に加えて、(DNAと比較した際の)本明細書に開示されるCAR mRNA分子を使用する別の利点は、mRNAが細胞質中への侵入時に迅速に翻訳されるために得られるより速い応答である。mRNAの1つの欠点は、それが容易に分解することであるが、本発明者らは、安定化要素を各CAR分子の5’末端に導入することにより、本明細書に開示されるmRNA構築物の半減期を長くすることによってこの欠点に対処した。本明細書に提供される図及び実施例においてさらに実証されるように、本発明者らは、メモリーNK及びT細胞内でCAR mRNAの成功した発現も示した。
【0031】
本明細書に記載されるCAR分子は、限定されないが、CD19、BCMA及びCD30を含む癌表面マーカー並びにチェックポイント阻害剤又は限定されないが、B7H4を含むそれらのリガンドを標的とする。DNA鋳型ベクターは、癌患者における免疫治療のために本明細書に開示される初代NK細胞に送達されるmRNA分子のインビトロ合成のための鋳型として用いられる。インビトロ転写は、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼを用いて、T7プロモーターなどのプロモーターにおいて開始され得る。T7プロモーターは、翻訳開始に必要とされるコザック配列(配列番号45)を含むスペーサー配列(配列番号3又は配列番号60)の上流にある。CD64又はIgGHvタンパク質からの短鎖シグナルペプチド(15-アミノ酸)は、CARタンパク質のN末端を示す。シグナルペプチドは、新生ポリペプチド鎖を細胞質ゾルから小胞体に送達する、細胞質ゾル中のシグナル認識ペプチド(SRP)によって認識される。CAR結合部位は、可変軽鎖及び重鎖ドメインのヘテロ二量体である。2つのドメインは、20アミノ酸(aa)リンカーを介して互いに接続される。分子のヒンジ及びTMドメインは、CD28タンパク質に由来する。ヒンジ領域は、結合ドメインのための移動範囲及び柔軟性を提供する一方、TM領域/ドメインは、正確な膜内挿入を可能にする。細胞内ドメインは、少なくとも1つの共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。共刺激ドメインは、CD28の細胞質ドメインを含む一方、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞質ドメインを含む。共刺激及び細胞内シグナル伝達ドメインは、トランスフェクトされた細胞の細胞傷害活性を促進する細胞内シグナル伝達経路に関与する。本明細書に開示される構築物の3’UTRは、ハツカネズミ(Mus musculus)ヘモグロビンα遺伝子の3’UTRからの94-bp配列であり、その後、150-bpポリA伸長が続き、RNA分子に安定性を与える。3’UTR領域の代替物がCAR構築物において使用され得る。これらとしては、限定されないが、ヒトβグロビンに由来する3’UTR又はNK細胞内で高度に発現される遺伝子に由来する3’UTRが挙げられる。NK細胞内で高度に発現される遺伝子の例としては、限定されないが、NKp46、NKp30、NKp44などの天然細胞毒性受容体(NCR);又はNKG2D及び2B4などの活性化免疫受容体のようなc-レクチンが挙げられる。3’UTR(並びにそれらの代替物)がCAR構築物中に導入され得、mRNA CAR分子の安定性を改善することができる。
【0032】
本明細書に開示される構築物は、特定の癌表面マーカー、チェックポイント阻害剤及び/又はそれらのリガンドに対する高い結合親和性を有する点で新規である。さらに、構築物は、標的細胞に対して促進された細胞傷害活性をもたらすCD28及びCD3ζの細胞質ドメインを含む。構築物は、mRNAベースでもあり、したがって宿主ゲノムへの構築物の統合に関する懸念がない。
【0033】
シグナルペプチドは、CD64及び/又はIgGHvシグナルペプチドを含む。一態様では、シグナルペプチドは、配列番号1又は配列番号2を含む。
【0034】
抗原結合ドメインは、CD19、BCMA、B7H4、SARS-CoV-2スパイク及びCD30αからなる群から選択される抗原に結合する。
【0035】
一態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインは、配列番号4に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0036】
さらに別の態様では、BCMAに結合する抗原結合ドメインは、配列番号5又は配列番号6に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0037】
さらに別の態様では、B7H4に結合する抗原結合ドメインは、配列番号7に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0038】
一態様では、SARS-CoV-2スパイクに結合する抗原結合ドメインは、配列番号8に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0039】
一態様では、CD30αに結合する抗原結合ドメインは、配列番号57に対する少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を含む。
【0040】
一態様では、ヒンジ領域は、配列番号9を有するCD28ヒンジ領域である。
【0041】
一態様では、TMドメインは、配列番号10を有するCD28 TMドメインである。
【0042】
一態様では、共刺激ドメインは、配列番号11を有するCD28細胞質ドメインを含む。さらに別の態様では、共刺激ドメインは、2B4、4-1BB(CD137又はTNFRS9とも呼ばれる)及び/又はOX40を含む。さらにまた、さらなる共刺激ドメインが構築物に付加され得る。構築物内の共刺激ドメインの順序/位置を入れ替える/変化させることも考えられる。
【0043】
一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号12を有するCD3ζ細胞質ドメインを含む。
【0044】
本明細書に開示されるように、CARは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号58からなる群から選択されるアミノ酸配列に対する少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は最大で100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0045】
別の実施形態は、本明細書に開示されるCARをコードする核酸構築物であり、CARは、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域及びTMドメインを含む細胞外ドメインを含み;且つ少なくとも1つの共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含み;シグナルペプチドは、CD64及び/又はIgGHvシグナルペプチドを含み;抗原結合ドメインは、CD19、BCMA、B7H4、SARS-CoV-2スパイク及びCD30α並びにそれらの変異体からなる群から選択される抗原に結合する。一態様では、核酸構築物は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32及び配列番号59からなる群から選択される核酸配列を含む。別の態様では、SARS-CoV-2-抗原は、SARS-CoV-2タンパク質及びその変異体を指す。SARS-CoV-2抗原として又はSARS-CoV-2抗原を生成するために使用され得る好適なSARS-CoV-2タンパク質の例としては、限定されないが、メインプロテアーゼ(鎖A 3C様プロテイナーゼ又は3C様プロテイナーゼとしても知られているMPRO)、SARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質(Nタンパク質)、SARS-CoV-2膜タンパク質(Mタンパク質)、SARS-CoV-2エンベロープタンパク質(Eタンパク質)及びSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)が挙げられる。
【0046】
本明細書に開示される別の実施形態は、本明細書に開示されるCARをコードする発現ベクターであり、CARは、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域及びTMドメインを含む細胞外ドメイン;並びに少なくとも1つの共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含み;シグナルペプチドは、CD64及び/又はIgGHvシグナルペプチドを含み;抗原結合ドメインは、CD19、BCMA、B7H4、SARS-CoV-2スパイク及びCD30αからなる群から選択される抗原に結合する。一態様では、発現ベクターは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42からなる群から選択される核酸配列を有する。
【0047】
本明細書に開示されるさらなる実施形態は、本明細書に開示されるCARを発現する修飾初代NK細胞であり、CARは、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域及びTMドメインを含む細胞外ドメイン;並びに少なくとも1つの共刺激ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含み;シグナルペプチドは、CD64及び/又はIgGHvシグナルペプチドを含み;抗原結合ドメインは、CD19、BCMA、B7H4、SARS-CoV-2スパイク及びCD30αからなる群から選択される抗原に結合する。
【0048】
本明細書に開示される別の実施形態は、遺伝子組み換えNK細胞を作製する方法であって、本明細書に開示される発現ベクターから転写されるCAR mRNA分子を導入する工程を含む方法である。
【0049】
RNA CAR分子の活性を向上させ得る同じ構築物(ビペプチド又はトリペプチドとして)に他のサイトカイン遺伝子を付加することも可能である。このようなサイトカイン遺伝子としては、IL-15が挙げられる。
【0050】
活性を向上させるための、本明細書に開示されるCAR分子への、NKG2Dなどの活性化NK受容体からのドメインの導入も考えられる。NKG2Dは、C型レクチン様受容体のNKG2ファミリーに属する膜貫通タンパクである。
【0051】
本明細書に開示されるさらなる実施形態は、癌の治療を、それを必要としている対象において行うための免疫治療の方法である。本方法は、本明細書に開示される遺伝子組み換えNK細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象に投与することを含む。別の実施形態は、癌を治療するための、本明細書に開示される遺伝子組み換えNK細胞及び薬学的に許容される担体の使用である。
【0052】
別の実施形態は、本明細書に開示される修飾NK細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0053】
本明細書を通して、「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる」などの変化形は、記載される整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)の群の包含を示唆するが、任意の他の整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)の群の除外を示唆していない。
【0054】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上特に明記されない限り、複数を含む。
【0055】
「含む」は、「限定されないが、含む」を意味する。「含む」及び「限定されないが、含む」は、同義的に使用される。
【0056】
「薬学的に許容される担体」は、(本明細書に記載される組成物と一緒に)患者に投与され得、組成物内の活性薬剤の薬理学的活性を損なわない非毒性担体を指す。「賦形剤」は、薬学的に有効な成分ではない、製剤又は組成物中の添加剤を指す。
【0057】
「薬学的に有効な量」は、例えば、疾患(限定されないが、癌を含む)に罹患した患者の全体的な健康の有益な及び/又は望ましい変化をもたらす、患者を治療するのに有効な量を指す。治療することは、限定されないが、細胞を殺滅すること、新しい細胞の増殖を防止すること、患者の生活機能を改善すること、患者の健康を改善すること、疼痛を軽減すること、食欲を改善すること、患者の体重を改善すること及びそれらの任意の組合せを含む。「薬学的に有効な量」は、患者の臨床症状を改善するために必要な量も指す。
【0058】
「ペプチド」及び「ポリペプチド」は、アミノ酸残基から構築されたポリマーを指すために、本明細書において同義語として使用される。本明細書において使用される際の「アミノ酸残基」は、任意の天然アミノ酸(L若しくはD型)、非天然アミノ酸又はアミノ酸模倣体(ペプチドモノマーなど)を指す。
【0059】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列に関して、「同一の」又はパーセント「同一性」は、比較ウインドウ上の最大の一致に対して比較及び整列された場合、同じであるか、又は特定のパーセンテージの同じアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する、2つ以上の配列又は部分配列を指す。本開示の趣旨でのアミノ酸又は核酸配列同一性の程度は、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10に記載されるBLASTアルゴリズムを用いて決定される。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列された場合、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するか又はそれを満たす、クエリー配列中の短いワード長Wを同定することによって高スコアリング配列対(HSPS)を同定する。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-10)。初期近隣ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして機能する。次に、ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加され得る限り、各配列に沿った両方の方向に伸長される。累積スコアは、パラメータM(一致する残基の対についての報酬スコア;常に>0)及びN(不一致の残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて、ヌクレオチド配列について計算される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスが累積スコアを計算するために使用される。各方向におけるワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少する場合に停止され;1つ以上の負のスコアの残基アラインメントの累積のため、累積スコアは、ゼロ以下になるか;又はいずれかの配列の末端に到達する。アミノ酸配列のパーセント同一性を決定するために、BLASTP設定は、ワード長(W)、3;期待値(E)、10;及びBLOSUM62スコアリングマトリックスである。核酸配列の分析については、BLASTNプログラム設定は、ワード長(W)、11;期待値(E)、10;M=5;N=-4;及び両方の鎖の比較である。TBLASTNプログラム(タンパク質配列を使用して、ヌクレオチド配列データベースにクエリーを行う)は、3のワード長(W)、10の期待値(E)及びBLOSUM 62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff&Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照されたい)。
【0060】
パーセント配列同一性を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計的分析も実施する(例えば、Karlin&Altschul(1993)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-87を参照されたい)。最小合計確率(P(N))は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然生じる確率の表示を提供する。例えば、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.01未満である場合、核酸は、参照配列と類似すると考えられる。
【0061】
ポリペプチドの「長さ」は、非ペプチドリンカー及び/又はポリペプチドが含み得る修飾を除く、ポリペプチドを構成する端から端までの連結されたアミノ酸残基の数である。
【0062】
疎水性アミノ酸残基は、主に非極性の化学的特性を有する官能基(「側鎖」)によって特徴付けられる。このような疎水性アミノ酸残基は、天然(L若しくはD型)又は非天然であり得る。代わりに、疎水性アミノ酸残基は、主に非極性の化学的特性を有する側鎖によって特徴付けられるアミノ酸模倣体であり得る。逆に、親水性アミノ酸残基は、主に極性(荷電又は非荷電)の化学的特性を有する側鎖によって特徴付けられる。このような親水性アミノ酸残基は、天然(L若しくはD型)又は非天然であり得る。代わりに、親水性アミノ酸残基は、主に極性(荷電又は非荷電)の化学的特性を有する側鎖によって特徴付けられるアミノ酸模倣体であり得る。好適な非天然アミノ酸残基及びアミノ酸模倣体は、当技術分野で公知である。例えば、Liang et al.(2013)PLoS ONE 8(7):e67844を参照されたい。
【0063】
ほとんどのアミノ酸残基は、疎水性又は親水性のいずれかであると考えられ得るが、いくつかは、その文脈に応じて疎水性又は親水性のいずれかとして挙動し得る。例えば、グリシン、プロリン及びシステインは、その比較的弱い非極性特性により、それぞれ場合により親水性アミノ酸残基として機能することが可能である。逆に、ヒスチジン及びアルギニンは、嵩高のわずかに疎水性の側鎖により、それぞれ場合により疎水性アミノ酸残基として機能することが可能である。
【0064】
特に規定されない限り、本明細書に開示される各実施形態は、単独で又は本明細書におけるいずれか1つ以上の他の実施形態と組み合わせて使用され得る。
【0065】
「トランスフェクション」は、真核細胞内への外来核酸の導入を指す。トランスフェクションは、エレクトロポレーション、ポリマー(ナノ粒子)、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、ポリブレン媒介性トランスフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、原形質融合及びバイオリステック法を含む、当技術分野で公知の様々な手段によって達成され得る。
【0066】
「安定したトランスフェクション」又は「安定的にトランスフェクトされた」は、トランスフェクトされた細胞のゲノム中への外来核酸、DNAの導入及び組み込みを指す。
【0067】
変異体という用語は、参照配列(例えば、SARS-CoV-2タンパク質配列)と類似しているが同一でないアミノ酸配列を有する、タンパク質又はそのフラグメントを指し、変異体タンパク質の活性は、実質的に変化されない。配列のこれらの変化は、自然に発生する変化であり得るか、又はそれらは、当業者に公知の技術の使用によって操作され得る。好適な変化の例としては、限定されないが、アミノ酸の欠失、挿入、置換及びそれらの組合せが挙げられる。
【0068】
アミノ酸は、それらの物理的特性に基づいていくつかのグループに分類され得る。このようなグループの例としては、限定されないが、荷電アミノ酸、非荷電アミノ酸、極性の非荷電アミノ酸及び疎水性アミノ酸が挙げられる。好ましい変異体は、アミノ酸が同じグループからのアミノ酸で置換されるものである。このような置換は、保存的置換と呼ばれる。
【0069】
天然残基は、一般的な側鎖特性に基づいていくつかの種類に分けられ得る:
1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
3)酸性:Asp、Glu;
4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;及び
6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0070】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーと別のクラスのメンバーとの交換を含み得る。
【0071】
方法及び使用は、癌の症状を治療若しくは改善し、且つ/又は個体における癌若しくは腫瘍を治療するためにも提供される。方法及び/又は使用は、対象に、治療有効量の、本明細書に開示される修飾NK細胞又は本明細書に開示される修飾NK細胞を含む組成物を、それを必要としている患者に投与することを含む。投与は、癌を治療するか、対象における腫瘍のサイズを減少させるか、又は対象における癌転移を減少させることが想定される。一実施形態は、癌の治療に使用するための、本明細書に開示される修飾NK細胞である。さらに別の実施形態は、薬剤として使用するための、本明細書に開示される修飾NK細胞である。
【0072】
「癌」という用語は、白血病、癌腫及び肉腫を含む、哺乳動物において見られるあらゆるタイプの癌、新生物又は悪性腫瘍を指す。例示的な癌としては、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、肝臓、腎臓、肺、非小細胞肺、黒色腫、中皮腫、卵巣、肉腫、胃、子宮の癌及び髄芽腫が挙げられる。追加的な例としては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、癌、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱癌、前癌性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、尿生殖路癌、悪性高カルシウム血症、子宮内膜癌、副腎皮質癌、内分泌性及び外分泌性膵臓の新生物並びに前立腺癌が挙げられる。
【0073】
「転移」、「転移性」及び「転移性癌」という用語は、同義的に使用可能であり、1つの器官又は別の非隣接器官又は身体部分からの増殖性疾患又は障害、例えば癌の伝播を指す。癌は、発生部位、例えば乳房において発生し、この部位は、原発腫瘍、例えば原発性乳癌と呼ばれる。原発腫瘍又は発生部位中の一部の癌細胞は、局所において周囲の正常な組織に浸透及び浸潤する能力及び/又はリンパ系又は血管系の壁を貫通して、系を通して身体における他の部位及び組織に循環する能力を獲得する。原発腫瘍の癌細胞から形成される第2の臨床的に検出可能な腫瘍は、転移性又は二次性腫瘍と呼ばれる。癌細胞が転移すると、転移性腫瘍及びその細胞は、原発腫瘍のものと同様であると推定される。したがって、肺癌が乳房に転移する場合、乳房の部位における二次性腫瘍は、異常な乳房細胞ではなく、異常な肺細胞からなる。乳房における二次性腫瘍は、転移性肺癌と呼ばれる。したがって、転移性癌という語句は、対象が原発腫瘍を有するか又は有していた、且つ1つ以上の二次性腫瘍を有する疾患を指す。非転移性癌又は非転移性の癌を有する対象という語句は、対象が原発腫瘍を有するが、1つ以上の二次性腫瘍を有さない疾患を指す。例えば、転移性肺癌は、原発性肺腫瘍を有するか又は原発性肺腫瘍の病歴を有し、且つ第2の場所又は複数の場所、例えば乳房に1つ以上の二次性腫瘍を有する対象の疾患を指す。
【0074】
対象、患者、個体などの用語は、限定であることを意図されず、一般に置き換え可能である。すなわち、患者として記載される個体は、必ずしも所与の疾患を有するわけではなく、単に医師の診察を受けているに過ぎない場合もある。全体を通して使用される際、対象は、脊椎動物、より具体的には哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット及びモルモット)、鳥類、は虫類、両生類、魚類及び任意の他の動物であり得る。この用語は、特定の年齢又は性別を示さない。したがって、雄であるか又は雌であるかにかかわらず、成熟及び新生対象が含まれることが意図される。本明細書において使用される際、患者、個体及び対象は、同義的に使用され得、これらの用語は、限定であることを意図されない。すなわち、患者として記載される個体は、必ずしも所与の疾患を有するわけではなく、単に医師の診察を受けているに過ぎない場合もある。患者又は対象という用語は、ヒト及び動物対象を含む。
【0075】
本明細書における「治療」及び「予防」への言及は、それらの最も広い文脈で考えられるべきである。「治療」は、哺乳動物が完全な回復まで治療されることを必ずしも示唆するわけではない。同様に、「予防」は、対象が病状を最終的に縮小しないことを必ずしも意味するわけではない。「予防」という用語は、特定の病態の発症の重症度を低下させることと考えられ得る。治療法も、既存の病態の重症度又は急性の発作の頻度を低下させ得る。本明細書において使用される際、「治療する」、「治療すること」及び同様の用語は、疾患若しくは病態の症状を安定させること及び/又は軽減することを意味する。ある態様では、本明細書に開示される組成物は、疾患若しくは病態の発生を防止するか、又は治療とは別に病状若しくは疾患を治癒し得る。
【0076】
本明細書に記載される治療用組成物の経路及び投与の頻度並びに投与量は、個体により且つ疾患により変化し、標準的な技術を用いて容易に確立され得る。一般に、医薬組成物は、注射(例えば、皮内、筋肉内、静脈内又は皮下)により、鼻腔内に(例えば、吸入により)丸薬形態(例えば、嚥下、膣内又は直腸内送達用の坐薬)で投与され得る。
【0077】
本明細書に記載されるように、本発明の組成物は、非経口投与に好適である。これらの組成物は、例えば、腹腔内に、静脈内に又は髄腔内に、頭蓋内に、皮内に、筋肉内に、眼内に、髄腔内に、脳内に、鼻腔内に、経粘膜的に、注入により、経口で、直腸内に、静脈内点滴、パッチ及びインプラントを介して、非経口的に、同所的に、皮下に、局所的に、経鼻的に、経口で、舌下に、眼内に、埋め込み可能なデポーにより、ナノ粒子ベースの送達システム、極微針パッチ、ミクロスフェア、ビーズ、浸透圧若しくは機械式ポンプ及び/又は他の機械的な手段を用いて投与され得る。任意選択的に、NK細胞は、非経口的に投与される。任意選択的に、NK細胞は、静脈内に投与される。任意選択的に、NK細胞は、腫瘍周辺に投与される。当業者は、本発明の組成物を投与する方法が、治療される患者の年齢、体重及び身体状態並びに治療される疾患又は病態などの因子に依存し得ることを理解するであろう。したがって、当業者は、患者に最適な投与方法を個別に選択することができるであろう。
【0078】
本明細書に開示される修飾NK細胞は、細胞の絶対数によって対象に投与され得、例えば前記対象に約1000個の細胞/注入~最大で約100億個の細胞/注入、例えば1注入当たり、約、少なくとも約又は多くとも約1×1010、1×10、1×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10個(など)のNK細胞又は数値のいずれか2つの間の任意の範囲(端点を含む)が投与され得る。任意選択的に、1×10~1×1010個の細胞が対象に投与される。任意選択的に、細胞は、1週間以上にわたって週に1回以上投与される。任意選択的に、細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間又はそれを超えて週に1回又は2回投与される。
【0079】
別の実施形態では、総用量は、体表面積のmによっても計算され得る。対象に約1000個の細胞/注入/m~最大で約100億個の細胞/注入/m、例えば1注入当たり、約、少なくとも約又は多くとも約1×1010個/m、1×10個/m、1×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m、1×10個/m、5×10個/m(など)のNK細胞又は数値のいずれか2つの間の任意の範囲(端点を含む)が投与され得る。任意選択的に、1m当たり1×10~1×1010個のNK細胞が対象に投与される。任意選択的に、2×10個/mのNK細胞が対象に投与される。
【0080】
ある実施形態では、NK細胞は、NK細胞及び培地、例えばヒト血清又はその均等物を含む組成物中で投与される。培地は、ヒト血清アルブミン及び/又はヒト血漿を含み得る。任意選択的に、培地は、約1%~約15%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、培地は、約1%~約10%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、培地は、約1%~約5%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、培地は、約2.5%のヒト血清又はヒト血清均等物を含む。任意選択的に、血清は、ヒトAB血清である。任意選択的に、ヒト治療薬に使用するために許容される血清代替物がヒト血清の代わりに使用される。このような血清代替物は、当技術分野で公知であり得る。任意選択的に、NK細胞は、NK細胞及び細胞生存を補助する等張液体溶液を含む組成物中で投与される。任意選択的に、NK細胞は、凍結保存された試料から再構成された組成物中で投与される。
【0081】
本明細書に提供される方法及び使用に従い、有効量又は治療有効量の、本明細書に提供される薬剤の1つ以上が対象に投与される。有効量、治療有効量及び有効な投与量という用語は、同義的に使用される。有効量という用語は、所望の生理反応(例えば、炎症の減少)を発生させるために必要な任意の量として定義される。薬剤を投与するための有効量及びスケジュールは、当業者によって経験的に決定され得る。投与のための投与量範囲は、疾患又は障害の1つ以上の症状に影響を及ぼす(例えば、減少させるか又は遅らせる)所望の効果を発生させるのに十分に多いものである。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの実質的な有害な副作用を引き起こすほど多くすべきではない。一般に、投与量は、年齢、病態、性別、疾患のタイプ、疾患若しくは障害の程度、投与経路又は他の薬剤が治療計画に含まれるかどうかによって異なり、当業者によって決定され得る。投与量は、何らかの禁忌がある場合には個々の医師によって調整され得る。投与量は、変化され得、1つ以上の用量の投与で毎日、1日又は数日間にわたって投与され得る。所与の種類の医薬品のための適切な投与量についての指針が文献に見出され得る。例えば、所与のパラメータについて、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%又は少なくとも100%の増加又は減少を示す。有効性は、「-倍」の増加又は減少としても表され得る。例えば、治療有効量は、対照と比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍又はそれを超える効果を有し得る。正確な用量及び配合は、治療の目的に応じて決まり、公知の技術を用いて当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Editor(2012)及びPickar,Dosage Calculations(1999)を参照されたい)。
【0082】
注射用に好適な組成物は、滅菌注射用溶液の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性である場合)及び滅菌粉末を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物及び植物油を含有する、溶媒又は分散媒であり得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの、組成物における使用によってもたらされ得る。
【0083】
滅菌注射用溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙される様々な他の成分とともに適切な溶媒中に組み込んだ後、例えば、ろ過滅菌又は他の適切な手段による滅菌によって調製される。分散体は、様々な滅菌された有効成分を、塩基性分散媒及び上に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製され得る。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌ろ過された溶液から有効成分に加えて何らかのさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥技術を含む。
【0084】
有効成分が好適に保護される場合、それらは、例えば、不活性希釈剤若しくは吸収可能な可食性担体とともに経口投与され得るか、又はそれは、ハード若しくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入され得るか、又はそれは、錠剤に圧縮され得る。経口の治療用投与の場合、活性化合物は、賦形剤に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用され得る。
【0085】
上記の方法及び使用のいずれかに関連して、組成物は、別の薬物と組み合わせて投与され得る。いずれの場合にも、組成物は、他の薬物の投与前、投与と同時又は投与後に投与され得る。本明細書に記載される方法に従って、2つ以上の化合物又は組成物が1つ以上の他の化合物、例えば公知の化学療法薬、抗ウイルス化合物若しくは分子並びに抗生物質、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、肺炎を治療するための公知の薬物、鎮痛薬(リドカイン若しくはパラセタモールなど)、抗炎症薬(ベタメタゾン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)及び/又は他の好適な薬物と共投与され得る。提供される方法は、放射線療法、外科手術、ホルモン療法及び/又は免疫療法などの他の腫瘍治療とさらに組み合わされ得る。したがって、提供される方法は、1つ以上の追加的な治療剤を対象に投与することをさらに含み得る。好適な追加的な治療剤としては、限定されないが、鎮痛薬、麻酔薬、蘇生薬、コルチコステロイド、抗コリン剤、抗コリンエステラーゼ、抗けいれん薬、抗腫瘍薬、アロステリック阻害剤、アナボリックステロイド、抗リウマチ薬、精神治療薬、ニューロン遮断薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗生物質、抗凝固剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、抗ムスカリン剤、抗抗酸菌薬、抗原虫剤、抗ウイルス剤、ドーパミン作動薬、血液作用薬、免疫剤、ムスカリン作動薬、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、成長因子及びホルモンが挙げられる。薬剤及び投与量の選択は、治療される所与の疾患に基づいて当業者によって容易に決定され得る。任意選択的に、追加的な治療剤は、酢酸オクトレオチド、インターフェロン、ペムブロリズマブ、グルコピラノシル脂質A、カルボプラチン、エトポシド又はそれらの任意の組合せである。
【0086】
一態様では、組成物は、N-803(「ALT-803」とも呼ばれる)とともに投与され得る。一態様では、N-803は、本明細書に開示されるペプチドを含む医薬組成物と一緒に又はそれとは別々に投与され得る。
【0087】
ある実施形態では、追加的な治療用物質は、ウイルス性癌ワクチン、細菌性癌ワクチン、酵母癌ワクチン、抗体、幹細胞移植及び腫瘍標的化サイトカインからなる群から選択され得る。
【0088】
任意選択的に、追加的な治療剤は、化学療法剤である。化学療法治療計画は、1つの化学療法剤又は化学療法剤の組合せの対象への投与を含み得る。化学療法剤としては、限定されないが、アルキル化剤、アントラサイクリン、タキサン、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、ペプチド抗生物質、白金系化合物、レチノイド及びビンカアルカロイド及び誘導体が挙げられる。任意選択的に、化学療法剤は、カルボプラチンである。
【0089】
「共投与」は、同じか若しくは異なる経路を介した同じ製剤中で若しくは2つの異なる製剤中での同時の投与又は同じか若しくは異なる経路による連続投与を表す。「連続」投与は、2つ以上の別個の化合物の投与間の数秒、数分、数時間又は数日の時間差を表す。
【0090】
N-803は、インターロイキン-15(IL-15)スーパーアゴニスト複合体である。前臨床試験において、IL-15は、定着腫瘍に対する強力な抗腫瘍活性を示す。さらに、N-803は、治療用抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性並びに抗PD-1、抗PD-L1及び抗CTLA抗体などのチェックポイント阻害剤の抗腫瘍活性を相乗的に促進し得る(Rhode et al.,Cancer Immunol Res.,2016)。
【0091】
N-803の有用な濃度は、該当する対象に好適な濃度である。当業者は、異なる個体が異なる総量のN-803を必要とし得ることを理解するであろう。ある実施形態では、N-803の量は、薬学的に有効な量である。当業者は、例えば、対象の年齢、体重及び身体状態などの因子に基づいて、対象を治療するために必要な組成物中のN-803の量を決定することができるであろう。N-803の薬学的に有効な量は、約1pgの化合物/kg体重~約20μg/kgの化合物/kg体重;又は約0.1μg/kg~20μg/kg;又は約1μg/kg体重~約1mgの化合物/kg体重又は約1mg/kg体重~約5000mg/kg体重;又は約5mg/kg体重~約4000mg/kg体重又は約10mg/kg体重~約3000mg/kg体重;又は約50mg/kg体重~約2000mg/kg体重;又は約100mg/kg体重~約1000mg/kg体重;又は約150mg/kg体重~約500mg/g体重であり得る。好ましくは、100pk/kg~20μg/kg。他の実施形態では、この用量は、約0.1、.5、1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500又は5000mg/kg体重であり得る。他の実施形態では、用量は、約5mgの化合物/kg体重~約20mgの化合物/kg体重の範囲内であり得る。他の実施形態では、用量は、約8、10、12、14、16又は18mg/kg体重であり得る。
【0092】
薬剤又は組成物の組合せは、併用して(例えば、混合物として)、別々であるが、同時に(例えば、別個の静脈ラインを介して)又は連続して(例えば、1つの薬剤がまず投与された後、第2の薬剤が投与される)のいずれかで投与され得る。したがって、組合せという用語は、2つ以上の薬剤又は組成物の併用、同時又は連続投与を指すために使用される。治療過程は、対象の特定の特性及び選択される治療のタイプに応じて、個別に最良に決定される。本明細書に開示されるものなどの治療は、1日1回、1日2回、隔週で、月に1回又は治療的に有効な任意の適用可能な基準で対象に投与され得る。治療は、単独で又は本明細書に開示されるか若しくは当技術分野で公知の任意の他の治療と組み合わせて投与され得る。追加的な治療は、第1の治療と同時に、異なる時点において又は全く異なる治療スケジュールで(例えば、第1の治療が1日1回であり得る一方、追加的な治療が週に1回である)投与され得る。
【0093】
ある実施形態では、組成物中に1つ以上の賦形剤を含むことが有益であり得る。当業者は、いずれか1つの賦形剤の選択が任意の他の賦形剤の選択に影響を与え得ることを理解するであろう。例えば、特定の賦形剤の選択は、賦形剤の組合せが望ましくない効果を生じ得るため、1つ以上のさらなる賦形剤の使用を除外することがある。当業者は、本明細書に開示される製剤又は組成物に含むべき賦形剤(存在する場合)を実験的に決定することができるであろう。賦形剤は、限定されないが、共溶媒、可溶化剤、緩衝液、pH調整剤、増量剤、界面活性剤、カプセル化剤、等張性調整剤、安定剤、保護剤及び粘度調整剤を含み得る。ある実施形態では、薬学的に許容される担体を含むことが有益であり得る。
【0094】
ある実施形態では、可溶化剤を含むことが有益であり得る。可溶化剤は、本明細書に開示されるペプチド又は賦形剤を含む、製剤又は組成物の成分のいずれかの可溶度を高めるのに有用であり得る。本明細書に記載される可溶化剤は、網羅的なリストを構成することを意図されず、使用され得る例示的な可溶化剤として示されるに過ぎない。特定の実施形態では、可溶化剤としては、限定されないが、エチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン並びにそれらの任意の薬学的に許容される塩及び/又は組合せが挙げられる。
【0095】
pHは、組成物に望ましい特性を与える任意のpHであり得る。望ましい特性は、例えば、ペプチド安定性、他のpHにおける組成物と比較して増加したペプチド保持及び改善されたろ過効率を含み得る。
【0096】
ある実施形態では、等張性調整剤を含むことが有益であり得る。液体組成物の等張性は、例えば、非経口投与によって組成物を患者に投与するとき、重要な考慮事項である。したがって、等張性調整剤は、組成物を投与に好適なものにすることを促進するために使用され得る。等張性調整剤は、当技術分野で周知である。したがって、本明細書に記載される等張性調整剤は、網羅的なリストを構成することを意図されず、使用され得る例示的な等張性調整剤として示されるに過ぎない。等張性調整剤は、イオン性又は非イオン性であり得、限定されないが、無機塩、アミノ酸、炭水化物、糖、糖アルコール及び炭水化物を含み得る。例示的な無機塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムを含み得る。例示的なアミノ酸は、グリシンである。例示的な糖は、グリセロール、プロピレングリコール、グルコース、スクロース、ラクトース及びマンニトールなどの糖アルコールを含み得る。
【0097】
ある実施形態では、安定剤を含むことが有益であり得る。安定剤は、本発明の組成物中のペプチドの安定性を高めるのに役立つ。
【0098】
ある実施形態では、保護剤を含むことが有益であり得る。保護剤は、望ましくない条件(例えば、凍結若しくは凍結乾燥又は酸化によって引き起こされる不安定性)から薬学的に有効な成分(例えば、本明細書に開示されるペプチド)を保護する薬剤である。保護剤は、例えば、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤及び酸化防止剤を含み得る。凍結保護剤は、製剤がその凝固点未満の温度に曝されるとき、医薬品有効成分(例えば、本明細書に開示されるペプチド)の効力の低下を防止するのに有用である。例えば、製剤が静脈内(IV)投与のために希釈前に凍結され得るように、凍結保護剤は、再構成された凍結乾燥製剤に含まれ得る。凍結保護剤は、当技術分野で周知である。したがって、本明細書に記載される凍結保護剤は、網羅的なリストを構成することを意図されず、使用され得る例示的な凍結保護剤として示されるに過ぎない。凍結保護剤としては、限定されないが、溶媒、界面活性剤、カプセル化剤、安定剤、粘度調整剤及びそれらの組合せが挙げられる。凍結保護剤は、例えば、二糖(例えば、スクロース、ラクトース、マルトース及びトレハロース)、ポリオール(例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール及びズルシトール)、グリコール(例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール)を含み得る。
【0099】
凍結乾燥保護剤は、凍結乾燥製剤又は組成物の成分を安定させるのに有用である。例えば、本明細書に開示されるペプチドは、再構成前に凍結乾燥保護剤とともに凍結乾燥され得る。凍結乾燥保護剤は、当技術分野で周知である。したがって、本明細書に記載される凍結乾燥保護剤は、網羅的なリストを構成することを意図されず、使用され得る例示的な凍結乾燥保護剤として示されるに過ぎない。凍結乾燥保護剤としては、限定されないが、溶媒、界面活性剤、カプセル化剤、安定剤、粘度調整剤及びそれらの組合せが挙げられる。例示的な凍結乾燥保護剤は、例えば、糖及びポリオール、トレハロース、スクロース、デキストラン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンであり得、これらは、凍結乾燥保護剤の非限定的な例である。
【0100】
酸化防止剤は、組成物の成分の酸化を防止するのに有用である。酸化は、薬物製品の凝集又は薬物製品の純度若しくはその効力に対する他の有害な影響をもたらし得る。酸化防止剤は、当技術分野で周知である。したがって、本明細書に記載される酸化防止剤は、網羅的なリストを構成することを意図されず、使用され得る例示的な酸化防止剤として示されるに過ぎない。酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸塩、チオール、メタ重亜硫酸塩及びそれらの組合せであり得る。
【0101】
本明細書に記載されるものの変形形態、変更形態及び他の実装形態は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに当業者に想到されるであろう。したがって、後続の特許請求の範囲は、前に記載される例示的な説明のみに限定されるわけではない。
【0102】
本明細書に記載される実施形態のそれぞれは、個々に又は本発明の1つ以上の他の実施形態と組み合わせて組み合わされ得る。
【0103】
当業者は、単なる日常的な実験を用いて、本明細書に記載される化合物、組成物及びその使用方法の多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、本明細書に開示される組成物及び方法の範囲内にあると考えられる。
【0104】
本出願を通して引用される全ての参考文献、特許及び公開特許出願並びにそれらの添付図面の内容は、全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例
【0105】
以下の実施例は、実施形態を作製及び使用する方法の完全な開示及び説明を当業者に提供しようとするものであり、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を限定することを意図されず、以下の実験が行われる全ての又は唯一の実験であることを表すことも意図されない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するように努めたが、いくらかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に示されない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は、摂氏度単位である。標準的な略語が使用される。
【0106】
実施例1:この実施例は、本明細書に開示されるRNA構築物の生成を説明する。本明細書に開示されるCAR構築物をコードするベクターを、PCRフラグメント又は遺伝子ブロックのいずれかのGibsonアセンブリによって生成した。150-ポリAテイルを、操作された制限部位を用いて各CAR分子の3’末端において挿入した。DNAベクターを完全にシーケンシングし、ポリAテイルの長さを決定した。次に、CAR DNAを、SapIを用いて線形化し、消化されたDNAをさらに精製した。RNAを、T7ポリメラーゼを用いて、精製されたDNA鋳型から転写した。次に、RNAを、塩化リチウムを用いて沈殿させ、サイズ及び純度を決定するために電気泳動にかけた。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
実施例2:この実施例は、ACE pNKW97による結果を示す(図1、2A~2D)。ACE2タンパク質の細胞外ドメインを、ヒンジ、TM及びCD28の共刺激ドメイン並びにCD3ζシグナル伝達ドメイン及び150p-Aを含むベクターにクローニングした(図1)。構築物を、SapIを用いて消化し、線形化されたDNAを、mRNA生成のための鋳型として使用した。PBNK細胞を、pNKW97 mRNAを用いてエレクトロポレートした。一晩の回復後、ACE2発現を、フローサイトメトリー及びコンジュゲートされた抗ACE2抗体を用いて検出した。アイソタイプ対照抗体を用いて、ACE2抗体の特異性を確認した(図2A、2C)。非トランスフェクション対照(図2B)は、CENK細胞内のACE2の内因性発現を示さない。しかしながら、エレクトロポレートされたCENK細胞は、>90%のACE2 CAR発現を示す(図2D)。ACE2 CARをコードするベクターが図3に示される。
【0118】
実施例3:この実施例は、pNKW92~93による結果を示す(図4、5A~5F)。CD64又はIgGHシグナルペプチドが前にあるB7H4抗原を標的とするCAR分子を、図4に示されるように設計した。CAR DNAを、SapIを用いて線形化し、mRNAのインビトロ転写のための鋳型として用いた。次に、CENK細胞を、mRNAを用いてエレクトロポレートした。一晩の回復後、B7H4 CARの発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化B7H4、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。検出試薬の特異性についての対照として、ストレプトアビジン-APCのみの染色を、各試料のために使用した。図5A及び5Bに示されるように、非トランスフェクション対照は、B7H4 CARを発現しなかった。他方、pNKW92(CD64シグナルペプチド)及びpNKW93(IgGHvシグナルペプチド)の両方(それぞれ図5C、5D及び5E、5F)は、B7H4 CARの高い発現を示した。B7H4 CARをコードするベクターが図6及び7に示される。
【0119】
実施例4:この実施例は、pNKW88~91による結果を示す(図8A、B、9A~9E、10~14)。BCMA抗原を標的とする4つのCAR分子を、図8A及び8Bに示されるように設計した。CAR DNAを、SapIを用いて線形化し、mRNAのインビトロ転写のための鋳型として用いた。次に、CENK細胞を、mRNAを用いてエレクトロポレートした。一晩の回復後、BCMA CARの発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化BCMA、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。検出試薬の特異性についての対照として、ストレプトアビジン-APCのみの染色を、各試料のために使用した。図9Aに示されるように、非トランスフェクション対照は、BCMA CARを発現しなかった。他方、4つ全ての異なる構築物(図9B~9E)は、高いレベルのBCMA CARを示した。構築物を、BCMAを安定的に発現するSUP-B15細胞株に対する細胞傷害活性について試験した(データは、全ての構築物について示されていない)。図10において、1つのCAR構築物(pNKW89)は、BCMA発現標的細胞株を特異的に溶解させることが示される一方、それは、BCMA陰性親細胞株に対する細胞傷害活性を有していなかった。非トランスフェクション対照は、親SUP-B15又はBCMA発現SUP-B15細胞株のいずれに対しても細胞毒性を有さない。BCMA CARをコードするベクターが図11~14に示される。
【0120】
実施例5:この実施例は、モノペプチドCD19 CARを開発することの論理的根拠を示す。安定したCD19-CAR NK92細胞株を作製するために以前に使用されたトリペプチドCD19 CARを用いて、PB-NK細胞のエレクトロポレーションのためのmRNAを生成した。エレクトロポレーションからの一晩の回復後、CD19 CARを、フローサイトメトリー及びビオチン化抗CAR(F(ab’)2)、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。検出試薬の特異性についての対照として、ストレプトアビジン-APCのみの染色を、各試料のために使用した。図15Aに示されるように、非トランスフェクション陰性対照は、CD19 CARを発現せず、そのとき、陽性対照細胞株は、CD19 CARの高い発現を示した。エレクトロポレーションプロトコルを評価するために、2つの異なるRNA鋳型(GFP及びPDL1)を使用し、それらの両方は、エレクトロポレーションの24時間後、対応するコードされたタンパク質の高い発現を示した(図15B)。トリペプチドCD19 CAR mRNAは、PB-NK細胞内で発現されることができなかった(図15C)。CD19 CAR発現の欠如がPB-NK細胞特異的でないことを確実にするために、メモリーT細胞(Tscm)を、増加する電気パルスを用いて、3つの異なるプロトコルを用いて、同じCD19 CAR mRNAを用いてエレクトロポレートした。非トランスフェクト陰性対照(図16A)もトランスフェクトされたTscm細胞(図16B~D)も、CD19 CARを発現しない。次の工程は、初代NK細胞内のmRNA発現のために最適化されたドメインを用いてモノペプチドCD19 CARを設計することであった。CD19抗原を標的とする2つのCAR分子(それらのシグナルペプチドが異なる)を、図17に示されるように設計した。CAR DNAを、SapIを用いて線形化し、mRNAのインビトロ転写のための鋳型として用いた。次に、PB-NK細胞を、CAR mRNAを用いてエレクトロポレートした。一晩の回復後、CD19 CARを、フローサイトメトリー及びビオチン化CD19、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。検出試薬の特異性についての対照として、ストレプトアビジン-APCのみの染色を、各試料のために使用した。図18A~18Bに示されるように、非トランスフェクション対照は、CD19 CARを発現しない。他方、両方の構築物でトランスフェクトされたPB-NK細胞(図18C、18D及び18E、18F)は、高いレベルのCD19 CARを示した。CAR分子は、CD19抗原を発現するSUP-B15細胞株(親)に対する細胞傷害活性を示し、同じ細胞株のCD19陰性変異体に対して活性を示さなかった(図19A及びB)。メモリーNK細胞(CIML)の使用は、腫瘍微小環境中のNK細胞の生存及び活性を延長させるのに有望である。PB-NK細胞を、16時間にわたってサイトカイン処理(IL12/IL18/N-803)にかけた。サイトカインを除去し、対照及びCIML細胞の両方を、pNKW87 mRNAを用いてエレクトロポレートした。図20A~20Bに示されるように、トランスフェクトされた細胞は、メモリー(図20A)及び対照(図20B)PBNK細胞の両方において、CD19陽性標的細胞のみに対する細胞傷害活性を示す。次に、モノペプチドCD19 CARを、活性化T細胞(Tscmに対する対照)及びTscm細胞内で試験した。この実験について、CD19 CAR発現の安定性も、72時間の期間にわたって試験した。図21B及び21C(pNKW87)及び図21D及び21E(pNKW59)に示されるように、CD19 CARレベルは、活性化T細胞のエレクトロポレーションの72時間後でも高いままである。非トランスフェクション陰性対照(図21A)は、CD19 CAR発現を示さない。同様の安定性試験を、同じCAR RNA分子(図22B及び22C並びに図22D及び22E:それぞれpNKW87及びpNKW59)によるTscm細胞のエレクトロポレーションを用いて行った。結果は、トランスフェクションの72時間後でも、トランスフェクトされたTscm細胞内のCD19 CAR mRNAの高い安定性を示す。非トランスフェクション陰性対照(図22A)は、CD19 CAR発現を示さない。CD19 CARをコードするベクターが図23及び24に示される。
【0121】
実施例6:この実施例は、CD30 pNKW95による結果を示す(図25、26A~26F及び27)。CD30α抗原を標的とするCAR分子を、ヒンジ、TM及びCD28の共刺激ドメイン並びにCD3ζシグナル伝達ドメイン及び150p-Aを含むベクターにおいて設計した(図25)。ベクターを、SapIを用いて消化し、線形化されたDNAを、mRNA生成のための鋳型として使用した。CENK細胞を、pNKW95 mRNAを用いてエレクトロポレートした。一晩の回復後、CD30発現を、フローサイトメトリー及びビオチン化CD30、続いてストレプトアビジン-APCを用いて検出した。ストレプトアビジン-APC染色のみを用いて、検出方法の特異性を確認した。非トランスフェクション対照(図26A、26B)は、CENK細胞内のCD30の内因性発現を示さない。pNKW95が由来する元のプラスミド(pXL46)を、比較に使用した。pXL46は、長鎖ポリAテイルを有さないため、ポリAテイル(50未満のヌクレオチド)を、インビトロ転写中に付加した。図26E、26Fに示されるように、pNK95は、元の構築物(pXL46:図26C、26D)と比較して、より高いCD30 CAR発現を示す。CD30 CARをコードするベクターが図27に示される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図19A-B】
図20A-B】
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図26F
図27
【配列表】
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【国際調査報告】