(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】吹き付けミネラルウールを含む物品
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4218 20120101AFI20240711BHJP
D06M 13/328 20060101ALI20240711BHJP
D06M 13/463 20060101ALI20240711BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20240711BHJP
F16L 59/04 20060101ALI20240711BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20240711BHJP
E04B 1/78 20060101ALI20240711BHJP
E04B 1/88 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
D04H1/4218
D06M13/328
D06M13/463
D06M15/53
F16L59/04
E04B1/86 A
E04B1/78 Z
E04B1/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503431
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 FR2022051460
(87)【国際公開番号】W WO2023002136
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アモーリー ロニー
(72)【発明者】
【氏名】アレクシア ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】エロディ ペロ
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーヌ トゥルモン
【テーマコード(参考)】
2E001
3H036
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DF02
2E001GA29
2E001HA32
2E001HA33
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB24
3H036AC06
3H036AE08
4L033AA09
4L033AB07
4L033AC06
4L033BA46
4L033BA86
4L033CA48
4L047AA01
4L047AA05
4L047AA29
4L047AB02
4L047CB03
4L047CB06
(57)【要約】
本発明は、ミネラルウールを含む熱遮断遮断物品に関し、ミネラルウールは、ミネラル繊維を含み、繊維が、度数分布による中央値の繊維長が2mm以下であり、数の集団のうち少なくとも10%が、厳密に1.5mmより大きく、優先的には厳密に2.0mmより大きい繊維長を有するような、繊維長集団分布を有し、物品が、少なくとも1種の添加剤を含み、物品が、0.4%~1.2%、特には0.6%~1%の添加剤の合計の重量パーセントを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱遮断かつ/又は音響遮断物品であって、グラスウールを含み、前記グラスウールが、ミネラル繊維を含み、かつ吹き付けられるのに適しており、前記物品が、以下の特徴:
- 前記繊維が、度数分布において中央値である繊維長が2mm以下であり、集団のうち数で少なくとも10%が、厳密に1.5mmより大きく、優先的には厳密に2.0mmより大きい繊維長を有するような、繊維長集団分布を有すること、
- 前記物品が、少なくとも1種の添加剤を含み、前記物品が、0.4%~1.2%、特には0.6%~1%、優先的には0.7%~0.9%である、1種又は複数の前記添加剤の合計の重量パーセントを有すること、
を有する、物品。
【請求項2】
前記物品が、100kg・m
-3~180kg・m
-3、特には140kg・m
-3~160kg・m
-3の密度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
1種又は複数の前記添加剤が、防塵添加剤、疎水化添加剤、帯電防止添加剤、及び染料から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の物品。
【請求項4】
1種又は複数の前記添加剤が、帯電防止添加剤を含み、前記帯電防止添加剤の重量パーセントが、0.01%~0.30%、特には0.02%~0.20%、優先的には0.05%~0.15%である、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
1種又は複数の前記添加剤が、帯電防止添加剤を含み、前記帯電防止添加剤が、第3級アンモニウム、第4級アンモニウム、及びポリエチレングリコールから選択される、請求項3又は請求項4に記載の物品。
【請求項6】
1種又は複数の前記添加剤が、疎水化添加剤を含み、前記疎水化添加剤の重量パーセントが、0.05%~0.4%である、請求項3~5のいずれか1項に記載の物品。
【請求項7】
前記繊維の、繊維の数による平均長さが、0.5mm~1.5mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の物品。
【請求項8】
前記繊維の体積加重中央径が、5μm~15μm、特には6μm~12μm、優先的には7μm~10μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の物品。
【請求項9】
繊維の数による前記中央値である繊維長が、300μm~700μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の物品。
【請求項10】
吹き付けられた後に、0.45W・kg・K
-1・m
-4~0.8W・kg・K
-1・m
-4、特には0.5W・kg・K
-1・m
-4~0.75W・kg・K
-1・m
-4である熱性能係数χを有することができる、請求項1~9のいずれか1項に記載の物品。
【請求項11】
前記グラスウールが、4L/min~9L/minのマイクロネアを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の物品。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の物品を吹き付けることによって得られる熱遮断かつ/又は音響遮断コーティングであって、前記コーティングが、0.45W・kg・K
-1・m
-4~0.8W・kg・K
-1・m
-4、特には0.5W・kg・K
-1・m
-4~0.75W・kg・K
-1・m
-4である、熱性能係数χを有する、熱遮断かつ/又は音響遮断コーティング。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の物品を吹き付けることによって得られる熱遮断かつ/又は音響遮断コーティングであって、前記コーティングが、5kg/m
3~18kg/m
3、特には7kg/m
3~12kg/m
3である、吹き付け密度を有する、熱遮断かつ/又は音響遮断コーティング。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の物品を吹き付けることによって得られる熱遮断かつ/又は音響遮断コーティングであって、前記コーティングが、35mW・m
-1・K
-1~55mW・m
-1・K
-1、特には40mW・m
-1・K
-1~52mW・m
-1・K
-1、優先的には43mW・m
-1・K
-1~49mW・m
-1・K
-1である、熱伝導性を有する、熱遮断かつ/又は音響遮断コーティング。
【請求項15】
建築物のバリアの熱遮断及び/又は音響遮断のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き付けられるミネラルウール、好ましくはグラスウールを含む、熱遮断かつ/又は音響遮断物品、並びにそのような物品の吹き付けによって得られるコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物のバリア、例えば壁、床、又は地面などを、吹き付けグラスウールをバリアに接触して堆積させることによって、熱的かつ/又は音響的に遮断することが知られている。袋内に圧縮されているグラスウールは、袋の開封の際に第1膨張を受ける。その後、グラスウールは、例えばカーダーを有する、グラスウールを吹き付けるように構成されている装置内に導入され、そこでグラスウールは第2膨張を受ける。その後、グラスウールは機械から遮断されるバリアまで、空気圧導管内において運ばれる。この方法は、不規則な形状を有するバリアをグラスウールで覆うことを可能にする。また、この方法は、グラスウールの製造から使用までの間の、グラスウールの体積を減少させることを可能にする。
【0003】
しかしながら、バリア上にグラスウールを堆積させる際、グラスウールのかなりの部分が、周囲雰囲気中に飛散しうる。大気中に飛散した部分は、グラスウール「ダスト」として認定される。このダストは、グラスウールの吹き付けの際の、使用者の快適性の問題を有する。
【0004】
グラスウールに鉱油(ミネラルオイル)を添加することによって、グラスウールの吹き付けの際に出るダストの量を減らし、このようにして使用者の快適性を高めることが知られている。
【0005】
しかしながら、グラスウール内への鉱油の添加は、吹き付けグラスウールの熱伝導性λにおける上昇を引き起こし、これは、吹き付けグラスウールの熱性能及び/又は音響性能を低下させる。
【0006】
この目的のために、米国特許出願公開第2017/0198472号明細書には、鉱油重量パーセントが先行技術と比較して低減された、グラスウールが記載されている。米国特許出願公開第2017/0198472号明細書に記載されたミネラルウールの鉱油重量パーセントは、ミネラルウールの全質量のうち0.1%~0.6%である。
【0007】
しかしながら、米国特許出願公開第2017/0198472号明細書によって記載されたグラスウールは、バリア上に設置されている所定の密度のグラスウールに関して高い熱伝導性を有する。さらに、記載されているグラスウールは、その吹き付けの際に周囲雰囲気中に、多量のダストの飛散を引き起こす。したがって、所定の設置されているグラスウール密度に関する低い熱伝導性、及び使用者に対する高い設置快適性の、両方を有するグラスウールを生成する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、公知のミネラルウールの熱伝導率以下の熱伝導率を有する一方で、使用者による物品の設置の際に放出されるダストの量を最小限に抑える、熱遮断かつ/又は音響遮断物品を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、ミネラルウールを含む熱遮断かつ/又は音響遮断物品によって本発明の範囲内で達成され、ミネラルウールは、ミネラル繊維を含み、吹き付けられるのに適しており、以下の通りである:
- 繊維が、度数分布による中央値の繊維長が2mm以下であり、集団のうち数で少なくとも10%が、厳密に1.5mmより大きく、特には厳密に2.0mmより大きく、優先的には厳密に2.5mmより大きい繊維長を有するような、繊維長集団分布を有し、
- 物品が、少なくとも1種の添加剤を含み、この物品が、0.4%~1.2%、特には0.6%~1%、好ましくは0.7%~0.9%である、1種又は複数の添加剤の合計の重量パーセントを有する。
【0010】
本発明は、有利には、個別に、又は任意のそれらの技術的にありうる組み合わせで、以下の特徴によって完成される:
- 度数分布による中央値の繊維長が、1.5mm以下、好ましくは1mm以下であり、
- ミネラルウールが、グラスウールであり、
- 物品が、100kg・m-3~180kg・m-3、特には120kg・m-3~160kg・m-3、優先的には140kg・m-3~160kg・m-3の密度を有し、
- 1種又は複数の添加剤が、防塵添加剤、疎水化添加剤、帯電防止添加剤、及び染料から選択される少なくとも1種の添加剤を含み、
- 1種又は複数の添加剤が、帯電防止剤を含み、帯電防止剤の重量パーセントが、0.01%~0.30%、特には0.02%~0.20%、優先的には0.05%~0.15%であり、
- 1種又は複数の添加剤が、帯電防止剤を含み、帯電防止剤が、第3級アンモニウム、第4級アンモニウム、及びポリエチレングリコールから選択され、
- 1種又は複数の添加剤が、疎水性添加剤を含み、疎水性添加剤の重量パーセントが、0.05%~0.4%であり、
- 繊維の数による、繊維の平均長さが、0.5mm~1.5mmであり、
- 繊維の体積加重中央径が、5μm~15μm、特には6μm~12μm、優先的には7μm~10μmであり、
- 数において中央値である繊維長が、300μm~700μmであり、
- 物品が、吹き付けられた後、0.45W・kg-1・m-4~0.8W・kg・K-1・m-4、特には0.5W・kg・K-1・m-4~0.75W・kg・K-1・m-4である熱性能係数χを有することができ、
- ミネラルウールは、4L/min~9L/minであるマイクロネアを有する。
【0011】
本発明の別の態様は、本発明の一実施形態による物品を吹き付けることによって得られる熱遮断及び/又は音響遮断コーティングであり、このコーティングは、有利には、0.45W・kg・K-1・m-4~0.8W・kg・K-1・m-4、特には0.5W・kg・K-1・m-4~0.75W・kg・K-1・m-4である熱性能係数χを有する。
【0012】
有利には、コーティングは、5kg/m3~18kg/m3、特には7kg/m3~12kg/m3である密度を有する。
【0013】
有利には、コーティングは、35mW・m-1・K-1~55mW・m-1・K-1、特には40mW・m-1・K-1~52mW・m-1・K-1、優先的には43mW・m-1・K-1~49mW・m-1・K-1である熱伝導性を有する。
【0014】
本発明の別の態様は、建築物のバリアの熱遮断及び/又は音響遮断のための、本発明の一実施形態による物品の使用である。
【0015】
図の説明
【0016】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。これは、純粋に例示的かつ非限定的であり、添付の図面と併せて読まれるべきである:
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】-
図1は、本発明の一実施形態による物品の繊維長の集団分布を示す。
【
図2】-
図2は、本発明の一実施形態による遮断物品を生成するための設備を概略的に示す、
【
図3】-
図3は、本発明の一実施形態による物品のミネラル繊維の積算平均電荷を示す。
【
図4】-
図4は、全ての添加剤の重量パーセント及び繊維長分布による、コーティングの消費量における変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
全ての図において、同様の要素には、同一の参照番号を付している。
【0019】
定義
【0020】
「熱性能係数χ」とは、W・m-1・K-1で表される、熱伝導性λと、kg/m3で表される、吹き付けられたときの本発明の一実施形態による物品の密度ρとの積を意味する。熱性能係数χは、公知の様式において、所定の熱抵抗Rをバリア上で得るために吹き付けるミネラルウールの量を代表する。このようにして、ミネラルウールの熱性能は、所定の熱抵抗Rと熱性能係数χとの積によって決定されうる。
【0021】
ミネラルウールの「吹き付け」とは、EN 14064-1:2007規格によって定義されるような吹き付けを意味し、優先的にはEN 14064-1:2007規格の附属書C.2.1を参照し、「Cahier Technique 8,Confection des eprouvettes d’essais pour les produits en vrac, Indice de revision C,date de mise en application:01/07/2019,ACERMI」によって定義されるような吹き付けを意味する。
【0022】
熱伝導性は、EN 14064-1:2007規格を参照し、「Cahier Technique 8,Confection des eprouvettes d’essais pour les produits en vrac,Indice de revision C,date de mise en applicatio:01/07/2019,ACERMI」において定義される測定法に従って、測定される。
【0023】
ミネラルウールの「密度」とは、ミネラルウールで完全に充填された容器内で測定されるミネラルウールの質量を、容器の体積で除した値を意味する。ミネラルウールの輸送用の袋内に梱包されたミネラルウールの場合、ミネラルウールの密度は、袋内のミネラルウールの質量と袋の体積との比に等しい。吹き付けミネラルウールの場合、吹き付けミネラルウールの密度の測定は、EN 14064-1:2007規格の附属書C.2.1を参照し、「Cahier Technique 8,Confection des eprouvettes d’essais pour les produits en vrac, Indice de revision C,date de mise en application:01/07/2019,ACERMI」において定義される。
【0024】
本出願において、ミネラルウール繊維の繊度は、5gの下で、それらのマイクロネアの値によって決定される。マイクロネア測定は、「繊度指数」とも呼ばれ、繊維の比表面積を代表し、サイジングされていないマットから抽出された所定量の繊維が所定圧力の気体(一般的には空気又は窒素)にさらされるときの、空気力学的圧力降下を測定することを含む。この測定は、ミネラル繊維生成ユニットにおける標準的な実践であり、それは標準化されており(DIN 53941又はASTM D 1448規格)、「マイクロネアテスター」と呼ばれるものを用いる。マイクロネアの測定方法は、国際公開第2003/098209号にも記載されている。
【0025】
発明の詳細な説明
【0026】
熱遮断/音響遮断物品の一般構造
【0027】
本発明の一態様は、ミネラルウールを含む熱遮断かつ/又は音響遮断物品である。好ましくは、ミネラルウールは、グラスウールである。ミネラルウールはミネラル繊維を含む。グラスウールは、公知の様式において、ガラス繊維を含む。ミネラル繊維は、無機原料、好ましくはガラス、石、及び/又はスラグの溶融によって、生成される。ミネラルウールは、吹き付けられるのに適している。
【0028】
好ましくは、ミネラル繊維は、以下を有するガラスを溶融することによって生成されうる:
- 50%~75%、好ましくは60%~70%であるSiO2の重量パ-セント、及び/又は、
- 10%~25%、好ましくは10%~20%であるNa2Oの重量パ-セント、及び/又は、
- 5%~15%、好ましくは5%~10%であるCaOの重量パ-セント、及び/又は、
- 1%~10%、好ましくは2%~5%であるMgOの重量パ-セント、及び/又は、
- 5%~20%である、CaOの重量パ-セント及びMgOの重量パ-セントの合計、及び/又は、
- 0%~10%、特には2%~8%、好ましくは3%~6%、より好ましくは3.5%~5%であるB2O3の重量パ-セント、及び/又は、
- 0%~8%、好ましくは1%~6%であるAl2O3、及び/又は、
- 0%~5%、好ましくは0.5%~2%であるK2Oの重量パ-セント、及び/又は、
- 12%~20%である、Na2Oの重量パーセント及びK2Oの重量パーセントの合計。
【0029】
図1を参照すると、繊維が、度数分布による中央値の繊維長が2mm以下であり、特には1.5mm以下であり、優先的には1mm未満であるような繊維長の集団分布を有する。追加的には、集団のうち数で少なくとも10%が、厳密に1.5mmより大きく、特には厳密に2.0mmより大きく、優先的には厳密に2.5mmより大きい繊維長を有する。
【0030】
物品は、少なくとも1種の添加剤を含む。物品は、0.4%~1.2%、特には0.6%~1%、優先的には0.7%~0.9%である、1種又は複数の添加剤の合計の重量パーセントを有する。
【0031】
本発明者は、このようにして、遮断物品の熱伝導性を最小化することが、上述した添加剤のパーセントを、短繊維と長繊維の両方の割合を多く有する上述した繊維長分布と組み合わせることによって、遮断物品の吹き付けの際のダストの放出を抑えつつ、可能であることを発見した。
【0032】
好ましくは、遮断物品は、0.1%未満のバインダー重量パーセントを有しうる。特には、遮断物品は、バインダーを含まなくてよく、ゼロのバインダー重量パーセントを有しうる。しかしながら、特には、物品が、バインダーを含むグラスウールをリサイクルすることによって製造される場合には、痕跡量のバインダーが存在しうる。
【0033】
図4を参照すると、熱遮断コーティングの消費量は、上記で定義した範囲内に含まれる全ての添加剤の重量パーセントを有する物品を選択することによって、かつ上記で定義したような繊維長集団分布を選択することによって、相乗的な様式で低減されうる。消費量は、点(a)に対応するコーティングの消費量に対するパーセンテージとして表される。点(a)は、添加剤の合計の重量パーセントが、1.6%に等しいコーティングを示し、これにおいて、集団のうち繊維の数で厳密に10%未満が、1.5mm超である長さを有する。点(b)は、添加剤の合計の重量パーセントが、0.8%に等しいコーティングを示し、これにおいて、集団のうち繊維の数で厳密に10%未満が、1.5mm超である長さを有する。点(c)は、添加剤の合計含有量が1.6重量%であるコーティングを示し、これにおいて、繊維は、度数分布による中央値の繊維長が、2mm以下であるような繊維長集団分布を有し、これにおいて、集団のうち数で少なくとも10%が、厳密に1.5mm超である繊維長を有する。点(d)は、0.8%に等しい添加剤の合計の重量%を有する、本発明の一実施形態によるコーティングを示し、これにおいて、繊維は、度数分布による中央値の繊維長が、2mm以下であるような繊維長集団分布を有し、これにおいて、集団のうち数で少なくとも10%が、厳密に1.5mm超である繊維長を有する。
【0034】
遮断物品の製造
【0035】
図2を参照すると、遮断物品を生成するための設備は、繊維化ユニットを有してよく、ここでミネラル繊維が生成される。繊維化ユニットは、垂直軸Xに沿って回転するように構成されている遠心分離装置1を有しうる。遠心分離装置1は、周縁ストリップを有する。周縁ストリップは、複数のオリフィスによって貫通されており、これを通って溶融原料が遠心分離装置の内部から流れてよく、溶融原料のフィラメントを形成する。
【0036】
繊維化ユニットはまた、バーナー2を含みうる。バーナー2は、環状の形状を有してよく、制御された温度の気体流をオリフィスの出口にもたらすように配置されうる。バーナー2は、オリフィスから出たフィラメントを延伸させることを可能にし、それによってミネラル繊維を形成する。環状インダクター3は、遠心分離装置の下方に配置されうる。環状インダクター3は、遠心分離装置1の下方部、特にはスピナーを加熱することを可能にする。このようにして、ミネラル繊維のウェブ4が形成される。ミネラル繊維を受け取るためのベルト5は、遠心分離装置1の下に配置されうる。
【0037】
バーナー2は、バーナー2の出口におけるガスジェットの温度が1300℃~1500℃、好ましくは約1400℃になるように構成される。ガスジェットを駆動する、バーナー2の圧力変化は、繊維の繊度を制御することを可能にする:比較的低いバーナー圧力2は、比較的大きい繊維直径をもたらしうる。
【0038】
本発明者は、生成される全てのミネラル繊維の中の長いミネラル繊維の割合を、上述した割合で、オリフィスの出口においてバーナー2によってフィラメントに伝達される運動量を公知の運動量に対して減少させることによって、著しく増加させることが可能であることを発見した。したがって、バーナー2の圧力は、400mmCE~800mmCE、特には400mmCE~450mmCEでもたらされる(1mmCE=9.81Paであることに留意されたい)。
【0039】
回転速度は、毎分1600回転~毎分3000回転、特には毎分2400回転~毎分3000回転でありうる。
【0040】
遠心分離装置1の回転の際の、オリフィスの接線速度は、50m/秒~80m/秒、好ましくは57m/秒~75m/秒でありうる。このようにして、厳密に1.5mmより大きい、優先的には厳密に2.0mmより大きい長さを有する繊維の割合を、物品の繊維の集団において増加させることが可能である。実際、繊維の長さは、オリフィスの出口から繊維に供給される運動量を増加させることによって、増加されうる。しかしながら、バーナーによって繊維に供給される運動量は、バーナーの下流で、流体の乱流によって押し流される繊維が経験する機械的応力に付随しうる。これらの応力は、繊維の破断につながりうる。このように、オリフィスの接線速度は、繊維に十分な運動量を提供する一方で、乱流環境において繊維が経験する機械的応力を低減することを可能にする。
【0041】
スピナーオリフィス1個当たりの、1日の繊維生産量は、1日当たりに各オリフィスを通過する溶融材料のスループットに等しい。スピナーオリフィス1個当たりの、1日の繊維生産量は、0.30kg/日~0.8kg/日、特には0.4kg/日~0.7kg/日でありうる。
【0042】
好ましくは、オリフィス1個当たりの繊維生産量は、0.40kg/日未満でありうる。このようにして、比較的高い生産量で生成された繊維に関して、繊維の直径を減少させることが可能であり、したがって、オリフィスの出口においてバーナー2によってフィラメントに伝達される運動量の減少の影響を相殺することが可能である。
【0043】
遠心分離装置2のスピナーは、例えばスピナーの直径が600mmに等しい場合、少なくとも30,000個のオリフィスを有しうる。好ましくは、遠心分離装置2のスピナーは、例えばスピナーの直径が400mmに等しい場合、少なくとも36,000個のオリフィスを有しうる。このように、一定の総生産量に対して、オリフィス1個当たりの生産量は、微細繊維を生成するために十分に小さく、それによって、オリフィスの出口においてフィラメントに対するバーナー2の運動量の伝達の減少の影響を相殺する。
【0044】
遠心分離装置2のスピナーは、50mm~800mm、優先的には400mm~600mmである直径を有する。遠心分離装置2の生産量は、スピナーの直径によって変化する。
【0045】
オリフィスは、スピナーのドリリングストリップ(穿孔ストリップ)にわたって形成され、分布している。ドリリングストリップの高さは、遠心分離装置の回転軸Xの方向に沿って、好ましくは35mm未満である。オリフィスの直径は、0.5~1.1mmである。
【0046】
隣接するオリフィスの中心間の距離は、0.8mm~2mmでありうる。この距離は、10%未満、好ましくは3%未満で変化しうる。隣接するオリフィスの中心間の距離は、スピナーの下方部に向いた方向において減少しうる。
【0047】
そして、製造方法は、ベルト5上のミネラル繊維を回収する工程を含みうる。回収工程に続いて、製造方法は、繊維を粉砕する工程、次いで繊維を圧縮する工程を含みうる。粉砕工程は、本発明の一実施形態による物品を得るように実施されうる。
【0048】
ミネラルウールの構造及び幾何学的形状
【0049】
繊維の体積加重中央径は、5μm~15μm、特には6μm~12μm、優先的には7μm~10μmでありうる。このようにして、遮断物品は、上述の長さ分布を形成することを可能にしつつ、公知の遮断物品の熱伝導性よりも小さい熱伝導性を有しうる。実際、小さすぎる中央径は、最長繊維の破損により、長さ分布における長繊維の割合の減少を促進しうる。本発明の一実施形態による物品の繊維の中央径の範囲は、物品の低い熱伝導性を保持しつつ、繊維の過度の破損を回避することを可能にする。
【0050】
繊維の数による、平均繊維長は、0.5mm~1.5mmでありうる。繊維の数による、中央値の繊維長は、300μm~700μmである。遮断物品は、4L/min~9L/minのマイクロネアを有することができる。
【0051】
繊維の直径及び長さを、基材上に繊維を堆積させ、次いで堆積させた繊維を顕微鏡で撮像することによって測定しうる。物品又はコーティングの試料を、ピンセットを用いて採取しうる。典型的には、物品又はコーティングのうち10~30mgを取り除きうる。測定される繊維の数は、1000本超、特には2000本超、好ましくは5000本超である。次に、試料の繊維を溶媒中に分散させうる。溶媒は、蒸留水及びグリセリンの混合物を、例えば500:1の割合で、含んでよく、かつ/又は界面活性剤を含みうる。試料は、30分~2時間にわたって、実験室用攪拌機を用いて攪拌され、その結果、溶媒中に繊維が分散される。次に、繊維の分散液を、蒸留水中で1:3~1:20の比で希釈する。次に、希釈した繊維の分散液を、基材上、例えばペトリ皿の底の上に堆積させる。次いで、分散液中に含まれる繊維を、倍率が例えば20倍、40倍、若しくは90倍に等しい対物レンズを提供された顕微鏡によって、又は繊維の長さを評価するのに十分な解像度で繊維を観察することを可能にする、任意のその他のイメージングシステム(カメラ、スキャナー)によって、撮像する。次に画像処理が行われる。各画像において、数ピクセル未満のピクセルクラスター、又は偏心率が0.5未満であるピクセルクラスター、すなわちほぼ円形の粒子は、無視される。次にワイヤーフレームを各画像に適用し、それによって、繊維の中央軸を得る。そして最後に、スコア関数を用いて、2つの繊維セグメントが同じ繊維に属する確率を評価する。スコア関数は、閾値化工程の際に繊維セグメントに分割された繊維を再構成するためにも用いられる。
【0052】
添加剤
【0053】
本発明の全ての実施形態において、物品は、0.4%~1.2%、特には0.6%~1%、優先的には0.7%~0.9%である、1種又は複数の添加剤の合計の重量パーセントを有する。このようにして、上述のように、かつ記載した繊維長分布と組み合わせて、物品の熱遮断を最大化する一方で、物品の設置の際のダストの放出を抑えることが可能である。実際、通常有機化合物を含む、添加剤は、物品を通しての熱伝達を促進し、このようにして、吹き付け物品によって与えられる熱遮断特性を低下させる。本願明細書において、1種又は複数の添加剤の合計の重量パーセントとは、物品のうちの全添加剤を意味すると理解される。異なる性質を有する添加剤である、全添加剤の重量パーセントは、各添加剤の重量パーセントを一度だけ合計することによって計算される。1種又は複数の添加剤の合計の重量パーセントというこの定義は、添加剤が複数の機能を有することから除外するものではない。機能は、少なくとも、防塵機能、疎水化機能、帯電防止機能、及び染料機能の中から選択されうる。所定の機能を有する1種又は複数の添加剤の重量パーセントは、この所定の機能を有する各添加剤の重量パーセントを合計することによって計算される。この定義は、第1機能及び第2機能の両方を有する、第1添加剤の重量パーセントが、第1機能を有する1種又は複数の添加剤の重量パーセント、及び第2機能を有する1種又は複数の添加剤の重量パーセントの両方で合計されることを妨げるものではない。
【0054】
1種又は複数の添加剤は、任意の種類のものでありうる。1種又は複数の添加剤は、優先的には、防塵添加剤、疎水化添加剤、帯電防止添加剤、及び染料から選択される。
【0055】
熱遮断物品は、帯電防止添加剤を含みうる。帯電防止添加剤の重量パーセントは、0.01%~0.30%、特には0.02%~0.20%、優先的には0.05%~0.15%でありうる。
【0056】
帯電防止添加剤は、少なくとも第3級アンモニウム、第4級アンモニウム、及びポリエチレングリコールから選択されうる。好ましくは、帯電防止添加剤は、ポリエチレングリコール、並びに第3級アンモニウム及び第4級アンモニウムから選択される少なくとも1種の化合物を含む。第3級アンモニウム及び第4級アンモニウムの合計重量パーセントは、0.01%~0.25%、特には0.01%~0.05%でありうる。ポリエチレングリコールの重量パーセントは、0.03%~0.20%、特には0.05%~0.10%でありうる。
【0057】
帯電防止添加剤を、先述したミネラル繊維のウェブ4を形成する工程に続いて、かつ/又は繊維を粉砕する工程に続いて、例えば空気圧経路における繊維の輸送の際に、製造されたミネラル繊維のマット4上に噴霧しうる。帯電防止添加剤は、吹き付けミネラルウールのミネラル繊維の静電荷の値を増加させることを可能にする。このようにして、遮断されるバリア上に吹き付けられる物品によって得られるコーティングの堆積の際に、ミネラル繊維が使用者の衣服に付着しない。
図3を参照すると、吹き付けミネラルウールの静電荷の測定を、吹き付け物品が遮断されるバリアに運ばれる導管の出口において、移動式静電センサー(例えば、Keyence SK-050モデルのセンサー)を配置することによって実施しうる。このセンサーは、吹き付け物品が搬送される経路の近くで、吹き付け物品が経路を通過する時に測定される電位と、吹き付け物品が経路を通過しない時に、同じ場所で測定される電位との電位差ΔVを測定する。測定された電位差は、経路を通る繊維の平均電荷に比例し、同じ方向において変化する。センサーを、例えば、吹き付けミネラルウールを遮断されるバリア上に堆積させるために用いられる、空気圧導管の出口において配置しうる。
【0058】
物品の吹き付けミネラル繊維の平均電荷は、ゼロ又はプラスでありうる。実際、本発明者は、吹き付け繊維の平均電荷がゼロ又はプラスであることが、使用者の衣服に対する物品の帯電防止効果を観察するのに十分な条件であることを発見した。「平均電荷」とは、物品の吹き付けの際に測定されたミネラル繊維の電荷の平均を指す。
図3は、相対湿度(HR)レベルの関数としての繊維の平均電荷を示す。
【0059】
熱遮断物品は、帯電防止添加剤を含みうる。添加剤は、ミネラルウール中に堆積されるとき、それが、遮断物品が疎水性を有することを可能にする場合、「疎水性」であると言われる。疎水性添加剤を、先述したミネラル繊維のウェブ4を形成する工程に続いて生成されたミネラル繊維のウェブ4上に噴霧しうる。疎水化添加剤の重量パーセントは、0.05%~0.4%、好ましくは0.1%~0.2%でありうる。疎水化添加剤は、シリコーン、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)でありうる。
【0060】
熱遮断物品は、防塵添加剤を含みうる。防塵添加剤を、先述したミネラル繊維のウェブ4を形成する工程に続いて、かつ/又は繊維を粉砕する工程に続いて、例えば空気圧経路における繊維の輸送の際に、生成されたミネラル繊維のマット4上に噴霧しうる。防塵添加剤は、吹き付けられるウールの吹き付けの際にダストの形成を減少させ、このようにして、使用者の快適性を高め、かつミネラル繊維が使用者の気道内に侵入しないようにすることを可能にする。防塵添加剤は、油、特には植物由来の油及び/又は鉱物由来の油を含みうる。好ましくは、防塵添加剤の重量パーセントは、物品が、0.4%~1.2%である1種又は複数の添加剤の合計の重量パーセントを有するように、帯電防止添加剤の重量パーセントが、0.01%~0.30%であるように、かつ疎水化添加剤の重量パーセントが、0.05%~0.4%であるように、決定されうる。好ましくは、防塵添加剤の重量パーセントは、0.34%~1.14%である。
【0061】
遮断物品の巨視的特性、熱特性、及び消費特性
【0062】
上述した物品の製造方法の最後において、特には繊維を圧縮する工程の後、物品は、物品を吹き付けることによって得られるコーティングの密度よりも大きい密度を有する。密度は、100kg・m-3~180kg・m-3、特には120kg・m-3~160kg・m-3、優先的には140kg・m-3~160kg・m-3でありうる。この密度は、梱包された物品の密度でありうる。したがって、等しい体積の場合、梱包したときに他の公知の物品よりも物品を軽くしうる。一例として、ロックウールから得られる公知の物品は、200kg・m-3超の密度を有する。このようにして、建設現場への物品の運搬を容易にすることが可能である。
【0063】
本発明の別の態様は、本発明の一実施形態による物品を吹き付けることによって得られる、熱遮断かつ/又は音響遮断コーティングである。
【0064】
コーティング、及び間接的に物品を、建物のバリアの熱遮断及び/又は音響遮断に用いうる。バリアは、壁、床、及び地面から選択されうる。バリアは、物品を吹き付けることによってコーティングを堆積させることによって遮断されうる。
【0065】
好ましくは、コーティングは、0.45W・kg・K-1・m-4~0.8W・kg・K-1・m-4、特には0.5W・kg・K-1・m-4~0.75W・kg・K-1・m-4である熱性能係数χを有する。このようにして、特には吹き付け前の物品の特性によって、使用者が予め規定した耐熱性を有するコーティングを設置するための物品の消費、及び物品の吹き付けの際に排出されるダストの排出の両方を、抑えることが可能である。コーティングは、35mW・m-1・K-1~55mW・m-1・K-1、特には40mW・m-1・K-1~52mW・m-1・K-1、優先的には43mW・m-1・K-1~49mW・m-1・K-1である熱伝導性を有しうる。加えて、好ましくは先に定義した熱伝導性と組み合わせて、コーティングは、5kg/m3~18kg/m3、特には7kg/m3~12kg/m3である吹き付け密度を有しうる。
【国際調査報告】