IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中石化安全工程研究院有限公司の特許一覧

特表2024-526873水素ガス漏洩検知材料、その製造方法及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】水素ガス漏洩検知材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20240711BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20240711BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N31/00 C
G01N31/22 121A
G01M3/20 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503503
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 CN2022093814
(87)【国際公開番号】W WO2023020052
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110955315.1
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522396333
【氏名又は名称】中石化安全工程研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楊哲
(72)【発明者】
【氏名】劉歡
(72)【発明者】
【氏名】王林
(72)【発明者】
【氏名】陶彬
(72)【発明者】
【氏名】張健中
(72)【発明者】
【氏名】劉方銘
(72)【発明者】
【氏名】王振中
(72)【発明者】
【氏名】趙▲ウェン▼晴
(72)【発明者】
【氏名】丁莉麗
(72)【発明者】
【氏名】高劍
【テーマコード(参考)】
2G042
2G067
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BB02
2G042CA01
2G042CB01
2G042DA03
2G042DA08
2G067AA02
2G067AA26
2G067BB15
2G067BB22
2G067CC04
2G067DD10
2G067EE08
(57)【要約】
本発明は、水素ガス漏洩検知材料、その製造方法及び使用を開示する。変色基材と活性成分とを含む水素ガス漏洩検知材料において、変色基材は、複数のナノロッドの束からなるナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンであり、活性成分は貴金属ナノ粒子であり、水素ガスに対する還元開始温度が100℃以下である、水素ガス漏洩検知材料。該水素ガス漏洩検知材料は、様々な条件の水素ガスに対して高い感度を有し、色の変化が顕著で、変色応答時間が短い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変色基材と活性成分とを含む水素ガス漏洩検知材料であって、
前記変色基材は、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンであり、前記活性成分は、貴金属ナノ粒子であり、水素ガスに対する還元開始温度が100℃以下である、水素ガス漏洩検知材料。
【請求項2】
前記ナノロッドは、直径が1~10nmであり、前記ナノロッド束は、長さ500~1000nm、直径50~100nmであり、前記ナノロッド束は、20本以上のナノロッドを含み、前記ナノロッド束のアスペクト比が5~20である、請求項1に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項3】
前記六方相三酸化タングステンは、(002)、(100)及び(001)を主な露出結晶面として有し、XRD特徴回折ピークの強度は、I(002)=0.9-1.1×I(100)、I(002)=1.2-2×I(001)の条件を満たし、I(002)は(002)結晶面の特徴回折ピークの強度であり、I(100)は(100)結晶面の特徴回折ピークの強度であり、I(001)は、(001)結晶面の回折ピークの強度である、請求項1又は2に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項4】
硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記六方相三酸化タングステンは、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であり、
好ましくは、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が50%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が70%以上であり、
好ましくは、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が67%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が72%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項5】
前記貴金属ナノ粒子は、白金ナノ粒子、パラジウムナノ粒子、ロジウムナノ粒子、金ナノ粒子のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、白金ナノ粒子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項6】
前記貴金属ナノ粒子の変色基材上への分散度が70%以上、好ましくは75%以上、好ましくは80%以上であり、
好ましくは、前記貴金属ナノ粒子の平均サイズが5nm以下、好ましくは2nm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項7】
水素ガス漏洩検知材料の全質量を基準にして、前記貴金属ナノ粒子の含有量が0.1~1.5wt.%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項8】
水素ガスに対する還元開始温度が80℃以下、好ましくは60℃以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項9】
硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が40%以上、好ましくは45%以上であり、
好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が45%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が49%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項10】
前記水素ガス漏洩検知材料を濃度10vol.%の水素ガスと60s接触させて検出試料を得て、
前記試料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率変化の差が20%以上であり、
好ましくは、前記試料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率変化の差が22%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率変化の差が30%以上である、請求項9に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項11】
純水素ガスに対する変色応答時間が2s以下、濃度10vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、濃度4vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が10s以下、濃度2vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が13s以下、濃度1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が15s以下、濃度0.5vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が25s以下、濃度0.1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が50s以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項12】
室温における流速500mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が2.5s以下、流速400mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が3s以下、流速300mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が4s以下、流速200mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、流速100mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が8s以下、流速50ml/minの水素ガスに対する変色応答時間が10s以下、流速20mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が20s以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項13】
濃度10vol.%の-25℃の水素ガスに対する変色応答時間が27s以下、-15℃の水素ガスに対する変色応答時間が15s以下、-5℃の水素ガスに対する変色応答時間が13s以下、5℃の水素ガスに対する変色応答時間が8s以下、15℃の水素ガスに対する変色応答時間が6.5s以下、25℃の水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、35℃の水素ガスに対する変色応答時間が4s以下、45℃の水素ガスに対する変色応答時間が3s以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料の製造方法であって、
(i)貴金属前駆体、三酸化タングステン及び脱イオン水を第1混合にかけて、固液混合物を得るステップと、
(ii)有機液相還元試薬と前記固液混合物とを第2混合にかけて、反応混合物を得るステップと、
(iii)前記反応混合物を有機液相還元するステップと、を含み、
前記三酸化タングステンは、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンである、製造方法。
【請求項15】
前記貴金属前駆体の添加量が、前記三酸化タングステンの添加量の0.2~5wt.%、好ましくは0.5~2wt.%であり、及び/又は
前記有機液相還元試薬の添加量が、前記三酸化タングステンの添加量の1.5~12倍である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記貴金属前駆体は、貴金属の可溶性塩であり、好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム、金のうちの少なくとも1種の可溶性塩であり、より好ましくは、塩化白金酸カリウム、硝酸白金、塩化白金酸、塩化第1白金酸ナトリウム、テトラニトロ白金酸カリウム、塩化白金酸アンモニウム、塩化第1白金酸カリウムのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、前記有機液相還元試薬は、有機アルコール及び/又は第1有機酸であり、前記第1有機酸は、アスコルビン酸、シュウ酸、クエン酸のうちの少なくとも1種であり、前記有機アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、前記有機液相還元試薬は、有機アルコールと第1有機酸との組成物であり、前記有機アルコールと第1有機酸との質量比が1:0.1~5である、請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
ステップ(iii)において、前記有機液相還元の条件は、還元温度105~180℃、好ましくは115~160℃、還元時間0.5~8h、好ましくは1.5~6hを含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
水素を含有する還元性ガスの漏洩検知製品における、請求項1~13のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料の使用。
【請求項19】
前記水素を含有する還元性ガスの漏洩検知製品は水素ガス漏洩検知製品である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記水素ガス漏洩検知製品は、水素ガス漏洩検知センサ、水素ガス漏洩検知テープ、水素ガス漏洩検知塗料、水素ガス漏洩検知デバイス、水素ガス漏洩検知フィルム、水素ガス漏洩検知インクのうちの少なくとも1種である、請求項18又は19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]。
【0002】
本願は、2021年08月19日に提出された中国特許出願202110955315.1の利益を主張しており、当該出願の内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
[技術分野]。
【0003】
本発明は、ガス感受性材料の技術分野に関し、具体的には、水素ガス漏洩検知材料、その製造方法及び使用を開示する。
[背景技術]。
【0004】
水素ガスは、クリーンで、環境にやさしく、再生可能で、エネルギー変換効率が高いなど、多くの優位性を持ち、21世紀の「究極のエネルギー」と呼ばれ、車用エネルギー供給、エネルギー貯蔵などの分野で応用の将来性が極めて期待できる。水素エネルギーの上記の優位性から、米国、日本、EUなどの先進国や地域は、次々と水素エネルギー発展国家戦略を制定し、水素エネルギーを未来のエネルギー構造の重要な構成部分として、その発展に取り込んでいる。
【0005】
しかし、水素エネルギーの安全性は常に水素エネルギー産業を発展させるための必須の基礎と重要な前提である。水素ガスは、分子が小さくて、材料を貫通して漏洩が発生しやすく、しかも、無色無臭で、漏洩が発生した場合にも人体が感知することができず、また、その爆発範囲が広く(4~75%)、最低点火エネルギーが低い(0.02mJ)。そのため、水素ガス漏洩の迅速かつ有効な検知は、水素ガス漏洩がより深刻な水素爆発事故に発展するのを避けるカギである。現在、水素ガスが一部の無機又は有機材料と反応して変色することで水素ガス漏洩を指示することは、水素ガス漏洩の迅速かつ効果的な高カバレッジ検知を実現するための有望な技術経路である。
【0006】
三酸化タングステンは一般的なガスクロミック材料であり、一部のガス、特に水素ガス、硫化水素、アンモニア、エタノールなどの水素を含有する還元性ガスと接触すると、可逆的/不可逆的に色が変化する。三酸化タングステンは、そのガスクロミック特性に基づいて、水素ガス、硫化水素などのガス漏洩を検知する材料によく使用される。三酸化タングステンは、典型的な多相化合物であり、温度の変化に伴い、低温単斜相、三斜相、室温単斜相、正方相などの結晶相が現れるし、六方相という準安定結晶相もある。六方相三酸化タングステンには六元結晶内の細孔構造があり、H、Liなどのイオンを自由に出し入れすることができるため(High surface area tunnels in hexagonal WO3, Nano Lett. 2015, 15, 7, 4834-4838)、水素ガス漏洩検知に対して優れた性能がある。三酸化タングステンのナノ構造の制御合成については、一部研究が研究者により行われている。
【0007】
従来技術では、三酸化タングステンに貴金属を導入することにより、水素ガス漏洩を迅速に指示することができる水素ガス漏洩材料を製造していた。
【0008】
CN112279302Aは、水熱法により貴金属をドープした単斜晶結晶構造の三酸化タングステンが製造されている。しかし、この方法により製造された三酸化タングステンは、結晶相が、より優れた物理化学的活性を示す六方相ではなく、単斜晶相であり、また、三酸化タングステン上での貴金属の分散状況や水素感受性変色性も開示されていない。
【0009】
CN101318704Aは、タングステン酸ナトリウムを塩酸と反応させた後、遠心分離し、硫酸カリウム溶液中で水熱反応させることにより、六方相構造を有する三酸化タングステンナノワイヤーを製造し、さらに電気水素センサに加工する、電気水素ガス漏洩検知材料の製造方法を開示する。この特許は、主に、三酸化タングステンの電気的性能を利用して水素ガス漏洩を検知するもので、化学的変色を利用して水素ガス漏洩を示す検知をどのように実現するかを認識していないので、この特許で開示された三酸化タングステンナノワイヤーは、実際の応用において漏洩水素ガスに遭遇した場合、色の変化が顕著ではない。
【0010】
CN110132502Aは、水素ガスと変色反応しない基材である不活性物質と、前記不活性物質の表面に付着して水素ガスと反応し得る金属酸化物と、前記金属酸化物に付着した金属ナノ粒子とを含み、水素ガスと接触した際に明瞭に識別できる迅速な色変化が可能であり、応答速度が速く、高感度であることを特徴とする、水素ガスの存在を色変化により示すことができる活性材料を提供する。しかし、この方法は、金属酸化物の結晶相、ミクロモフォロジーなどを限定しておらず、共沈殿の方法を用いて金属ナノ粒子を金属酸化物表面に付着させるため、金属ナノ粒子が金属酸化物表面に凝集しやすい。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]。
【0011】
本発明の目的は、三酸化タングステンを変色基材とする従来技術の水素ガス漏洩検知材料に存在する問題、例えば、室温での変色速度が遅い、変色前後の色のコントラストが顕著ではないなどを解決し、様々な運転条件で水素ガス漏洩を迅速かつ高感度に検知することができる検知材料及びその製造方法を提供することである。
[課題を解決するための手段]。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、
変色基材と活性成分とを含む水素ガス漏洩検知材料であって、
前記変色基材は、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンであり、
前記活性成分は、貴金属ナノ粒子であり、
水素ガスに対する還元開始温度が100℃以下である、水素ガス漏洩検知材料を提供する。
【0013】
本発明の第2態様は、
水素ガス漏洩検知材料の製造方法であって、
(i)貴金属前駆体、三酸化タングステン及び脱イオン水を第1混合にかけて、固液混合物を得るステップと、
(ii)有機液相還元試薬と前記固液混合物とを第2混合にかけて、反応混合物を得るステップと、
(iii)前記反応混合物を有機液相還元するステップと、を含み、
前記三酸化タングステンは、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンである、製造方法を提供する。
【0014】
本発明の第3態様は、水素を含有する還元性ガス漏洩検知製品における上記水素ガス漏洩検知材料の使用を提供する。
[発明の効果]。
【0015】
上記の技術的解決手段によって、本発明によって得られる有益な効果は以下のとおりである。
1.本発明の水素ガス漏洩検知材料に使用される六方相三酸化タングステンは、その六元結晶内の細孔構造が陽子、水素ガスなどの小分子の輸送に適した特性を持っているだけでなく、吸着解離後の活発な水素の輸送に対して良好な促進作用を持っており、しかも、独特なナノロッド束のミクロ構造が水素ガス及び解離した水素原子に拡散や輸送の経路を提供している。本発明は、六元結晶内の細孔構造とナノロッド束のミクロ構造とを効果的に組み合わせることで、変色速度を大幅に速め、変色時間を大幅に短縮させる。
2.ナノロッド束のミクロ構造を有する三酸化タングステンは、貴金属ナノ粒子を非常に均一に分散させるのに有効な担体構造を提供し、好ましくは、貴金属ナノ粒子の分散度が70%以上であり、貴金属ナノ粒子のサイズが最小で2nmであるため、水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料の還元開始温度を60℃以下に下げることができる。また、この構造を有する三酸化タングステンは、白色であり、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が50%以上、好ましくは65%以上であり、製造された水素ガス漏洩検知材料は、水素ガス導入前後の色の変化を観察するのにより有利である。
3.本発明者らは、研究を行った結果、上記のミクロ構造(ナノロッド束)を特徴とする三酸化タングステンを用いて製造された水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに対してより高い感度を持ち、同じ条件下では、他のミクロ構造の三酸化タングステンを用いた検知材料よりも、変色応答時間が短く、色の変化がより明らかであることがわかった。
4.本発明の水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに遭遇すると、反射率が著しく変化し、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率変化の差が20%以上であり、酸化タングステンを変色基材とした既存の水素ガス漏洩検知材料と比較して、淡色の不活性基材の材料を使用することなく、明らかな色の変化が得られ、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率変化の差が22%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率変化の差が30%以上となり、視覚的に顕著な注意喚起効果を有する。室温での純水素ガスに対する変色応答時間が2s以下であり、H濃度1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が15s以下であり、変色時間が大幅に短縮され、水素ガス漏洩部位の迅速な発見に寄与する。
5.本発明の水素ガス漏洩検知材料は、様々な温度、濃度、流速の水素ガスに対して、変色応答時間が短く、様々な水素ガス漏洩検知場面に適用することができる。
6.本発明の水素ガス漏洩検知材料の製造方法として、有機液相還元方法が使用され、有機試薬のタイプと反応温度を制御することによって、貴金属前駆体をゆっくり還元することで、それによって、無機還元試薬と高温気相プロセスによる貴金属の急速な還元や高温プロセスによる凝集が回避され、高度に分散した貴金属ナノ粒子が得られ、より優れたガス感受性変色特性が発揮される。
[図面の簡単な説明]。
【0016】
図1]実施例1で製造された三酸化タングステンA1、及び実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1のXRDパターンである。ここで、1は水素ガス漏洩検知材料B1のXRDパターンであり、2は三酸化タングステンA1のXRDパターンである。
図2]実施例1で製造された三酸化タングステンA1、及び実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1のTPR分析結果である。ここで、1は変色基材である三酸化タングステンのTPR分析結果であり、2は水素ガス漏洩検知材料のTPR分析結果である。
図3]実施例1で製造された三酸化タングステンA1のSEM像である。
図4]実施例1で製造された三酸化タングステンA1のTEM像である。
図5]実施例1で製造された三酸化タングステンA1のHRTEM像である。
図6]実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1のHRTEM像である。
図7]実施例4で製造した水素ガス漏洩検知材料B1のEDS元素分布図であり、ここで、AはTEM像であり、Bはタングステン元素の分布図であり、Cは酸素元素の分布図であり、Dは白金元素の分布図であり、タングステン、酸素、白金の3元素は高度に均一に分散しており、白金の凝集は検出されていないことが分かる。
図8]実施例1で製造された三酸化タングステンA1の反射スペクトル、及び室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で導入する前後の実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の反射スペクトルであり、1は実施例1で製造された三酸化タングステンA1の反射スペクトルであり、2は水素ガス導入前の水素ガス漏洩検知材料B1の反射スペクトルであり、3は水素ガス導入60s後の水素ガス漏洩検知材料B1の反射スペクトルである。
図9]実施例1で製造された三酸化タングステンA1の写真、及び室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で導入する前後の実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の写真比較図であり、ここで、Aは三酸化タングステンA1の写真であり、Bは水素ガス導入前の水素ガス漏洩検知材料であり、Cは水素ガス導入60s後の水素ガス漏洩検知材料であり、色が濃紺である。
図10]実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の反射率の、H濃度10vol.%の水素ガス導入時間に応じた変化図(水素ガスの流速100mL/min、室温)であり、Aは波長700nmの光に対する反射率の、水素ガス導入時間に応じた変化図であり、Bは波長475nmの光に対する反射率の、水素ガス導入時間に応じた変化図である。
図11]実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の、様々なH濃度の水素ガスに対する変色応答時間(流速200mL/min、室温)である。
図12]実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の、様々な流速の水素ガスに対する変色応答時間(H濃度10vol.%、室温)である。
図13]実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の、様々なガス温度の水素ガスに対する変色応答時間(流速200mL/min、H濃度10vol.%)である。
図14]比較例1及び比較例2で製造された三酸化タングステンDA1及びDA2のXRDパターンであり、1は三酸化タングステンDA1のXRDパターンであり、2は三酸化タングステンDA2のXRDパターンである。
図15]比較例1で製造された三酸化タングステンDA1のSEM像である。
図16]比較例2で製造された三酸化タングステンDA2のSEM像である。
図17]比較例3で製造された水素ガス漏洩検知材料DB1のTPR分析結果である。
図18]水素ガスを導入する前後の比較例6で製造された水素ガス漏洩検知材料DB4の写真である。Aは水素ガス導入前の水素ガス漏洩検知材料であり、色が黄色であり、Bは、室温で10vol.%の水素ガスを200mL/minの流速で導入15min(900s)後の水素ガス漏洩検知材料であり、色が黄色である。
[発明を実施するための形態]。
【0017】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、この正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0018】
本発明の第1態様は、
変色基材と活性成分とを含む水素ガス漏洩検知材料であって、
前記変色基材は、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンであり、
前記活性成分は、貴金属ナノ粒子であり、
水素ガスに対する還元開始温度が100℃以下である、水素ガス漏洩検知材料を提供する。
【0019】
本発明では、「水素ガスに対する還元開始温度」とは、TPR分析において明らかな水素消費ピークが出現したときの開始温度であり、化学吸着装置により得られる。水素ガスに対する還元開始温度が低いほど、水素ガス漏洩検知材料の還元性能が向上する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、前記ナノロッドは、直径が1~10nmであり、前記ナノロッド束は、長さ500~1000nm、直径50~100nmであり、前記ナノロッド束は、20本以上のナノロッドを含み、前記ナノロッド束のアスペクト比が5~20である。
【0021】
本発明では、前記六方相三酸化タングステンのミクロ構造は走査型電子顕微鏡、高倍率透過型電子顕微鏡分析及び観察により得られる。
【0022】
本発明では、前記三酸化タングステンの結晶相である六方相はXRD回折パターンから得られる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、前記六方相三酸化タングステンは、(002)、(100)及び(001)を主な露出結晶面として有し、XRD特徴回折ピークの強度は、I(002)=0.9-1.1×I(100)、I(002)=1.2-2×I(001)の条件を満たし、I(002)は(002)結晶面の特徴回折ピークの強度であり、I(100)は(100)結晶面の特徴回折ピークの強度であり、I(001)は、(001)結晶面の回折ピークの強度である。
【0024】
本発明では、特に断らない限り、前記XRD回折パターンはX線回折計により得られたものである。
【0025】
本発明者らは、研究を行った結果、結晶面の露出の程度が形成された三酸化タングステンの構造、性能と関係があることを見出した。上記回折ピークの強度の条件を満たす三酸化タングステンを変色基材とすることにより、製造された水素感受性変色材料は、水素に曝された場合に変色が速く、様々な濃度、温度、流速の水素ガスに対して感度がより高い。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記六方相三酸化タングステンは、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長範囲の可視光に対する反射率が、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。例えば、400~750nmの波長範囲の全波長の光に対するある六方相三酸化タングステンの反射率のうち、波長400nmの光に対する反射率が50%と最も低く、波長700nmの光に対する反射率が70%と最も高い場合、当該六方相三酸化タングステンは、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が50~70%である。
【0027】
なお、ある波長範囲の光に対する反射率がある値以上である場合、当該値は、その波長範囲の全波長の光に対する反射率のうちの最も低い値である。例えば、400~750nmの波長範囲の全波長の光に対するある六方相三酸化タングステンの反射率のうち、波長400nmの光に対する反射率が50%と最も低い場合、当該六方相三酸化タングステンは、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が50%以上である。同様に、ある波長範囲の光に対する反射率がある値以下である場合、当該値は、その波長範囲の全波長の光に対する反射率のうち最も高い値である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長領域の青色光に対する反射率が50%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が70%以上である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長領域の青色光に対する反射率が67%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が72%以上である。
【0029】
本発明では、特に断らない限り、前記反射率は、分光器により硫酸バリウムの反射率を100%として測定したものである。本発明では、特に断らない限り、前記「可視光」とは、400~750nmの波長範囲の光を意味し、前記「青色光」とは、400~500nmの波長範囲の光を意味し、前記「赤色光」とは、600nm~750nmの波長範囲の光を意味する。
【0030】
本発明では、前記反射率とは、入射光束に対する、可視光に対する反射光束の百分率を意味する。反射率と色とその濃淡には対応関係があり、可視光に対する反射率が高いほど色が薄い。ある波長範囲の光に対する反射率が高いほど、観測された色のうちその波長範囲に対応する色の占める割合が高い。本発明では、前記「青色」とは、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が30~37%であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が20~30%であるものを意味する。本発明では、前記「濃紺」とは、400~500nmの波長範囲の光に対する反射率が15~29%であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が1~15%であるものを意味する。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、前記貴金属ナノ粒子は、白金ナノ粒子、パラジウムナノ粒子、ロジウムナノ粒子、金ナノ粒子のうちの少なくとも1種であり、好ましくは白金ナノ粒子である。
【0032】
本発明では、前記貴金属ナノ粒子は前記変色基材上に高度に分散している。本発明のいくつかの実施形態では、前記貴金属ナノ粒子の変色基材上への分散度が70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。好ましくは、前記貴金属ナノ粒子の変色基材上への分散度は、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、前記貴金属ナノ粒子の平均サイズが5nm以下、好ましくは2nm以下である。
【0034】
本発明では、貴金属ナノ粒子の平均サイズは高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)とエネルギー分光分析装置(ESD)を組み合わせて分析することにより得られる。
【0035】
本発明では、前記分散度とは、貴金属ナノ粒子の変色基材上での分散性を意味し、定量的な水素パルス化学反応法により測定される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、前記水素ガス漏洩検知材料の全質量を基準にして、前記貴金属ナノ粒子の含有量が0.1~1.5wt.%である。
【0037】
好ましくは、前記水素ガス漏洩検知材料の全質量を基準にして、前記貴金属ナノ粒子の含有量は、0.1wt.%、0.2wt.%、0.3wt.%、0.4wt.%、0.5wt.%、0.6wt.%、0.7wt.%、0.8wt.%、0.9wt.%、1wt.%、1.1wt.%、1.2wt.%、1.3wt.%、1.4wt.%、1.5wt.%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0038】
本発明では、前記貴金属ナノ粒子の含有量は蛍光X線法により検出される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、前記水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに対する還元開始温度が80℃以下、好ましくは60℃以下である。好ましくは、前記水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに対する還元開始温度が、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃、15℃、10℃のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。さらに好ましくは、前記水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに対する還元開始温度が50℃以下、より好ましくは43℃以下である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が40%以上、好ましくは45%以上である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が45%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が49%以上である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~500nmの波長領域の青色光に対する反射率が、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0042】
本発明では、前記H濃度とは、室温でのH/Arの混合ガス中、HとArの総体積に占めるHの百分率を指す。水素ガスの濃度が異なるとは、H濃度の異なるH/Arの混合ガスを指し、その逆も同様である。
【0043】
本発明では、前記「室温」とは、「25℃」を意味する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態では、前記水素ガス漏洩検知材料を濃度10vol.%の水素ガスと60s接触させて、検出試料を得る。ここで、前記水素ガスを導入する条件は、室温、流速100mL/minである。本発明のいくつかの実施形態では、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記検出試料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が30%以下である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記検出試料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記検出試料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が30%以下であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が20%以下である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記検出試料は、400~500nmの波長領域の青色光に対する反射率が、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%のいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%のいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。また、前記検出試料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率の最低値と、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率の最高値との差が5%以上である。
【0046】
本発明では、ガスクロミック試験装置と原位置試験システム(CN202110955330.6は該当装置とシステムを記載しており、その全内容は本発明に組み込まれる)を用いて、検出試料を得て、検出試料の反射率を測定することができ、測定方法は以下のとおりである。密閉ガスビンの中(直径10cm、厚さ5cm)に直径2cm、厚さ1cmのサンプルタンクを設置し、水素ガス漏洩検知材料をサンプルタンクに置き、平らに研磨した後、室温で濃度10vol.%の水素ガスを導入して60s接触させ、検出試料を得て、分光計を利用して変色過程に対してリアルタイム試験を行い、検出試料の反射率データを得る。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、前記検出試料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率変化の差が20%以上である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記検出試料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率変化の差が、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%のいずれかの値、又は上記これらのいずれか2つの値からなる範囲内の値であってもよい。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、前記検出試料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率変化の差が22%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率変化の差が30%以上である。好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記検出試料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率変化の差が、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つからなる範囲の値であってもよく、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率変化の差が、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0049】
本発明では、前記反射率変化の差とは、水素ガス漏洩検知材料の水素ガス導入前の反射率と水素ガス導入後の反射率との差である。具体的には、水素ガス漏洩検知材料の水素ガス導入前の反射率と水素ガス導入後の反射率との差は、水素ガス漏洩検知材料の水素ガス導入前後の同一波長の光に対する反射率の差である。なお、ある波長範囲の光に対する水素ガス漏洩検知材料の反射率変化の差の最低値は、水素ガス漏洩検知材料のその波長範囲の光に対する水素ガス導入前後の反射率の差の最低値である。例えば、ある水素ガス漏洩検知材料が、水素ガス導入前に、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が50~60%であり、450nmの波長の光に対する反射率が55%であり、水素ガス導入後に、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が20~30%であり、450nmの波長の光に対する反射率が30%である場合、当該水素ガス漏洩検知材料の450nmの波長の光に対する反射率変化の差は25%であり、当該材料は、波長450nmの光に対する反射率変化の差が、400~500nmの波長範囲の他の波長の光に対する反射率変化の差よりも低い場合、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が25%以上である。本発明のいくつかの実施形態では、前記水素ガス漏洩検知材料は、純水素ガスに対する変色応答時間が2s以下、濃度10vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、濃度4vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が10s以下、濃度2vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が13s以下、濃度1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が15s以下、濃度0.5vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が25s以下、濃度0.1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が50s以下である。ここで、上記変色応答時間の検出条件は、室温で水素ガスの流速が200mL/minである。好ましくは、前記水素ガス漏洩検知材料は、純水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2sのいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、濃度10vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、濃度4vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、濃度2vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10s、10.5s、11s、11.5s、12s、12.5s、13sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、濃度1vol.%の水素に対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10s、10.5s、11s、11.5s、12s、12.5s、13s、13.5s、14s、14.5s、15sであってもよく、濃度0.5vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10s、10.5s、11s、11.5s、12s、12.5s、13s、13.5s、14s、14.5s、15s、15.5s、16s、16.5s、17s、17.5s、18s、18.5s、19s、19.5s、20s、20.5s、21s、21.5s、22s、22.5s、23s、23.5s、24s、24.5s、25sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、濃度0.1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、6s、7s、8s、9s、10s、11s、12s、13s、14s、15s、16s、17s、18s、19s、20s、21s、22s、23s、24s、25s、26s、27s、28s、29s、30s、31s、32s、33s、34s、35s、36s、37s、38s、39s、40s、41s、42s、43s、44s、45s、46s、47s、48s、49s、50sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0050】
本発明では、前記「変色応答時間」とは、水素ガス漏洩検知材料が水素ガスを導入すると、色が顕著に変化し、波長700nmの光に対応する反射率変化の差が10%に達するまでに要する時間をいう。
【0051】
本発明では、ガスクロミック試験装置と原位置試験システム(CN202110955330.6は当該装置とシステムを記載しており、その全内容は本発明に組み込まれる)を用いて、前記水素ガス漏洩検知材料の変色応答時間を測定することができ、測定方法は以下の通りである。密閉ガスビンの中(直径10cm、厚さ5cm)に直径2cm、厚さ1cmのサンプルタンクを設置し、水素ガス漏洩検知材料をサンプルタンクに置き、平らに研磨した後、特定条件の水素ガスを導入し、分光計を利用して変色過程に対してリアルタイム試験を行い、即ち、水素ガス導入前及び導入中の水素ガス漏洩検知材料の反射スペクトルデータをリアルタイムに記録し、更に変色応答時間、即ち、波長700nmの光に対する水素ガス漏洩検知材料の反射率変化の差が10%に達するまでに要する時間を得る。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、前記水素ガス漏洩検知材料は、室温における流速500mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が2.5s以下、流速400mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が3s以下、流速300mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が4s以下、流速200mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、流速100mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が8s以下、流速50ml/minの水素ガスに対する変色応答時間が10s以下、流速20mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が20s以下である。ここで、上記変色応答時間の検出条件は、室温で水素ガス濃度が10vol.%である。好ましくは、前記水素ガス漏洩検知材料は、室温における流速500mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、流速400mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、流速300mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、流速200mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、流速100mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、流速50mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、流速20mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10s、10.5s、11s、11.5s、12s、12.5s、13s、13.5s、14s、14.5s、15s、15.5s、16s、16.5s、17s、17.5s、18s、18.5s、19s、19.5s、20sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態では、前記水素ガス漏洩検知材料は、濃度10vol.%の-25℃の水素ガスに対する変色応答時間が27s以下、-15℃の水素ガスに対する変色応答時間が15s以下、-5℃の水素ガスに対する変色応答時間が13s以下、5℃の水素ガスに対する変色応答時間が8s以下、15℃の水素ガスに対する変色応答時間が、6.5s以下、25℃の水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、35℃の水素ガスに対する変色応答時間が4s以下、45℃の水素ガスに対する変色応答時間が3s以下である。ここで、上記の変色応答時間の検出条件は、水素ガスの流速が200mL/min、水素ガスの濃度が10vol.%である。好ましくは、前記水素ガス漏洩検知材料は、濃度10vol.%の-25℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10s、10.5s、11s、11.5s、12s、12.5s、13s、13.5s、14s、14.5s、15s、15.5s、16s、16.5s、17s、17.5s、18s、18.5s、19s、19.5s、20s、20.5s、21s、21.5s、22s、22.5s、23s、23.5s、24s、24.5s、25s、25.5s、26s、26.5s、27sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、-15℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10s、10.5s、11s、11.5s、12s、12.5s、13s、13.5s、14s、14.5s、15sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、-5℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8s、8.5s、9s、9.5s、10s、10.5s、11s、11.5s、12s、12.5s、13sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、5℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5s、7s、7.5s、8sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、15℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5s、5.5s、6s、6.5sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、25℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4s、4.5s、5sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、35℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3s、3.5s、4sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよく、45℃の水素ガスに対する変色応答時間が、0.5s、1s、1.5s、2s、2.5s、3sのいずれかの値又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0054】
本発明の第2態様は、上記の水素ガス漏洩検知材料の製造方法であって、
(i)貴金属前駆体、三酸化タングステン及び脱イオン水を第1混合にかけて、固液混合物を得るステップと、
(ii)有機液相還元試薬と前記固液混合物とを第2混合にかけて、反応混合物を得るステップと、
(iii)前記反応混合物を有機液相還元するステップと、を含み、
前記三酸化タングステンは、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンである、製造方法を提供する。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、前記貴金属前駆体の添加量が、前記三酸化タングステンの添加量の0.2~5wt.%、好ましくは0.5~2wt.%である。
【0056】
本発明者らは、研究を行った結果、貴金属前駆体の添加量が前記三酸化タングステンの添加量の5wt.%を超えると、製造された水素ガス漏洩検出材料の貴金属の分散度が低下するが、貴金属前駆体の添加量が前記三酸化タングステンの添加量の0.5~2wt.%である場合、製造された水素ガス漏洩検出材料は、貴金属の分散度が70%超と高く、水素感受性変色特性に優れていることを見出した。
【0057】
好ましくは、前記貴金属前駆体の添加量は、貴金属換算で、前記三酸化タングステンの添加量の0.5wt.%、0.6wt.%、0.7wt.%、0.8wt.%、0.9wt.%、1wt.%、1.5wt.%、2wt.%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0058】
本発明では、脱イオン水の添加量は、前記固液混合物中の固形分が5~70wt.%であれば、特に限定されない。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、前記有機液相還元試薬の添加質量は、前記三酸化タングステンの添加質量の1.5~12倍である。
【0060】
好ましくは、前記有機液相還元試薬の添加質量は、前記三酸化タングステンの添加質量の1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、7倍、10倍、12倍のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、前記貴金属前駆体は、貴金属可溶性塩である。好ましくは、前記貴金属可溶性塩は、白金、パラジウム、ロジウム、金などの貴金属のうちの少なくとも1種の可溶性塩である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、前記貴金属可溶性塩は白金の可溶性塩であり、例えば、塩化白金酸カリウム、硝酸白金、塩化白金酸、塩化第1白金酸ナトリウム、テトラニトロ白金酸カリウム、塩化白金酸アンモニウム、塩化第1白金酸カリウムなどの少なくとも1種であってもよい。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態において、前記有機液相還元試薬は、有機アルコール及び/又は第1有機酸であり、前記第1有機酸は、アスコルビン酸、シュウ酸、クエン酸のうちの少なくとも1種であり、前記有機アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールのうちの少なくとも1種である。
【0064】
水素ガス漏洩検知材料において、三酸化タングステン上での前記貴金属ナノ粒子の分散度を高めることにより、水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料の還元開始温度を低下させるのに有利である。本発明者らは、研究を行った結果、前記有機液相還元試薬が有機アルコールと第1有機酸との組成物である場合、製造される水素ガス漏洩検知材料中の貴金属の分散度がより高くなり、水素ガスに対する還元開始温度がより低くなることを見出した。したがって、好ましくは、前記有機液相還元試薬は、有機アルコールと第1有機酸との組成物であり、前記有機アルコールと第1有機酸との質量比が、1:0.1~5、好ましくは1:0.1~0.3である。
【0065】
本発明では、貴金属前駆体、三酸化タングステン及び脱イオン水を完全に混合できる限り、第1混合の方式及び時間に限定はない。好ましくは、前記第2混合は、方式が撹拌であり、時間が10~30minである。
【0066】
本発明では、有機液相試薬と固液混合物とを完全に混合できる限り、第2混合の方式及び時間に限定はない。好ましくは、前記第2混合は、方式が撹拌であり、時間が10~30minである。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、前記有機液相還元の条件は、還元温度105~180℃、好ましくは115~160℃、還元時間0.5~8h、好ましくは1.5~6hを含む。
【0068】
本発明では、本発明者らは、還元温度が105℃を下回ると、還元反応速度が低すぎ、深刻な場合は還元反応が起こらず、三酸化タングステンへの金属ナノ粒子の堆積を実現できず、還元温度が180℃を超えると、金属可溶性塩中の金属の還元速度が速すぎ、三酸化タングステン表面に金属ナノ粒子が凝集し、製造された水素ガス漏洩検知材料の金属ナノ粒子は、粒径が大きく、分散度が悪く、検知感度が低下することを見出した。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(iii)において、前記有機液相還元後、遠心分離処理、洗浄処理、及び乾燥処理をさらに含む。本発明のいくつかの実施形態では、前記洗浄処理は、脱イオン水及び無水エタノールによる洗浄である。本発明では、洗浄回数に限定はなく、洗浄液のpHが6.5~7.5であればよい。
【0070】
好ましくは、乾燥処理の条件は、温度が60~110℃、時間が4~36hである。さらに好ましくは、前記乾燥処理の条件は、温度が80~105℃、時間が8~24hである。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態では、前記三酸化タングステンの製造方法において、
(1)タングステン塩溶液に無機酸、有機添加剤、構造指向剤を混合して混合溶液を得る。
(2)前記混合溶液を水熱反応釜内で水熱反応させる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態では、前記タングステン塩溶液中に含まれるタングステン塩は、アンモニウム根を含まないタングステン塩である。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、前記有機添加剤と無機酸との合計モル数に対する前記タングステン塩のモル数のモル比は0.1~4:1、好ましくは0.2~3:1である。
【0074】
好ましくは、前記有機添加剤と無機酸との合計モル数に対する前記タングステン塩のモル数のモル比は、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、2:1、3:1のいずれかの比、又は上記いずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0075】
本発明では、前記タングステン塩を溶解することができる限り、タングステン塩溶液の溶媒及びその体積に限定はない。好ましくは、前記タングステン塩溶液の溶媒は脱イオン水であることが好ましい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、前記有機添加剤のモル数は、有機添加剤と無機酸との合計モル数の1~95%である。
【0077】
好ましくは、有機添加剤と無機酸との合計モル数に対する前記有機添加剤のモル数の値は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%のいずれかの値、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0078】
本発明では、前記「有機添加剤と無機酸との合計モル数」とは、有機添加剤のモル数と無機酸のモル数との和であり、前記「有機添加剤のモル数」とは、有機添加剤のモル数である。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、前記タングステン塩と構造指向剤との質量比は0.1~4:1、好ましくは0.2~3:1である。
【0080】
好ましくは、前記タングステン塩と構造指向剤との質量比は、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.5:1、2:1、2.1:1、2.3:1、2.5:1、2.7:1、2.9:1、3:1のうちのいずれかの比、又はこれらのいずれか2つの値からなる範囲の値であってもよい。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、前記無機酸は、塩酸、硝酸、硫酸のうちの少なくとも1種である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、前記有機添加剤は、有機酸塩及び/又は第2有機酸である。好ましくは、前記有機酸塩は、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸ナトリウムのうちの少なくとも1種であり、前記第2有機酸は、クエン酸、シュウ酸のうちの少なくとも1種である。
【0083】
本発明では、前記構造指向剤は、無機構造指向剤であり、好ましくは、IA族金属元素の塩化塩、硫酸塩、硝酸塩のうちの少なくとも1種であり、より好ましくは、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムのうちの少なくとも1種である。
【0084】
本発明者らは、研究を行った結果、メタタングステン酸アンモニウムなどのアンモニウム根を含有するタングステン塩を使用した場合、製造された三酸化タングステンは上記の規則的なナノロッド束構造を有しておらず、色が濃いことを意外に見出した。したがって、本発明では、前記タングステン塩は、アンモニウム根を含まないタングステン塩であり、好ましくは、タングステン酸ナトリウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸カリウムのうちの少なくとも1種である。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態では、前記水熱反応は、温度140~240℃、好ましくは150~220℃、時間1~48h、好ましくは4~30hである。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(1)において、前記混合は、まず、前記無機酸をタングステン塩溶液に加え、次に、前記有機添加剤及び構造指向剤を加えることである。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(2)において、前記水熱反応後に、遠心分離処理、洗浄処理、及び乾燥処理をさらに含む。
【0088】
好ましくは、前記洗浄処理は、脱イオン水及び無水エタノールによる洗浄である。
【0089】
好ましくは、前記乾燥処理の条件は、温度が60~120℃、時間が2~26hである。
【0090】
本発明の第3態様は、水素を含有する還元性ガスの漏洩検知製品における、上記の水素ガス漏洩検知材料の使用を提供する。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、水素ガス漏洩検知センサ、水素ガス漏洩検知テープ、水素ガス漏洩検知デバイス、水素ガス漏洩検知フィルム、水素ガス漏洩検知インク等を含むが、これらに限定されない、水素ガス漏洩検知製品における水素ガス漏洩検知材料の使用を提供する。
【0092】
本発明の前記水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスの他に、硫化水素、アンモニアガス、エタノールなどの水素原子を含む還元性ガス漏洩検知製品にも適用される。
【0093】
以下、実施例を用いて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
以下の実施例及び比較例で使用される実験方法は、特に断らない限り、いずれも従来の方法である。下記の実施例及び比較例に使用される原料や試薬などは、特に断らない限り、市販品として入手可能である。室温は「25℃」のことである。
【0095】
下記の実施例及び比較例では、
前記希塩酸は濃塩酸、希硫酸は濃硫酸、希硝酸は濃硝酸を脱イオン水で希釈して得られる。その中で、濃塩酸は国薬試薬公司から購入し、濃度は37%である。濃硫酸は国薬試薬有限公司から購入し、濃度は98%である。濃硝酸は国薬試薬有限公司から購入し、濃度は65%である。
前記「白金種」とは、単体、酸化物などの白金元素を含有する種をいう。
前記H濃度とは、室温でのH/Arの混合ガス中、HとArの総体積に占めるHの百分率を指す。水素ガスの濃度が異なるとは、H濃度の異なるH/Arの混合ガスを指し、その逆も同様である。
前記XRD回折パターンは、型番X’Pert Pro MPDのオランダのPanalytical社製のX線回折装置により試験を行って得られたものである。
SEM像は走査型電子顕微鏡で得られたものであり、走査型電子顕微鏡は日本の日立社から購入した型番S-4800のものである。
TEM、HRTEM像は、高倍率透過型電子顕微鏡により得られ、元素分布図は日本のJEOL社から購入した型番JEM-2100の高倍率透過型電子顕微鏡付属の分光分析装置(ESD)により得られたものである。
分散度は、定量的な水素パルス化学反応試験により得られ、使用した機器は米国のマイクロメリティクス・インスツルメンツ社から購入した型番HP2950の高圧化学吸着装置である。試験において、まず、水素ガス漏洩検知材料を50mL/minのH/Ar混合ガス中で最高温度400℃まで還元し、次に、不活性雰囲気下で室温まで降温し、最後に、所定量(0.5mL)のH/Ar混合ガスを連続してパルス的に導入し、水素消費量を計器独自のアルゴリズムにより計算して、分散度を得る。ここで、前記H/Ar混合ガス中の水素ガス濃度は10vol.%である。不活性雰囲気はArガスである。
TPR分析は水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料の還元開始温度を説明するために用いられ、米国のマイクロメリティクス・インスツルメンツ社から購入した型番2950HPの化学吸着装置によって得られる。ここで、水素ガスに対する還元開始温度は、最初の明らかな水素消費ピークが出現したときの開始温度である。
水素ガス漏洩検知材料中の貴金属ナノ粒子の含有量は蛍光X線分析法により検出され、型番はドイツBruker社製S8型である。
反射スペクトル及び反射率は、スペクトロメーターにより取得し、型番は米国のオーシャンオプティクス社製QE Pro型で、検出条件は、硫酸バリウムの反射率を100%とする。
以下の検出において、ガスクロミック試験装置と原位置試験システム(CN202110955330.6は当該装置とシステムを記載しており、その全内容は本発明に組み込まれる)を用いて検出を行い、その方法は以下の通りである。密閉ガスビンの中(直径10cm、厚さ5cm)に直径2cm、厚さ1cmのサンプルタンクを設置し、測定対象の水素ガス漏洩検知材料をサンプルタンクの中に置き、平らに研磨した後、実験要求に従って特定条件の水素ガスを導入し、分光器と高速カメラを利用して変色過程に対してリアルタイム試験を行い、即ち、水素ガス導入前及び導入中の水素ガス漏洩検知材料の反射スペクトル、水素ガス漏洩検知材料の色変化データをリアルタイムで記録し、以下の対応する分析を行う。
1.特定条件の水素ガスを特定時間導入し、水素ガス導入前後の水素ガス漏洩検知材料の反射スペクトルと色を比較して分析し、水素ガス導入前後の水素ガス漏洩検知材料の反射率の変化を具現化する。
2.水素ガス漏洩検知とは、様々なH濃度、温度、流速の水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料の変色応答時間を指し、水素ガス漏洩検知材料の検知感度を具現化する。ここで、変色応答時間とは、水素ガス導入後の水素ガス漏洩検知材料に色が顕著に変化し、波長700nmに対応する光に対する反射率変化の差が10%に達するまでに要する時間をいう。
水素ガス漏洩検知材料の検知効果は、水素ガス導入前後の色変化及び400~750nmの範囲の可視光に対する反射率変化の差によって反映され、色、反射率変化の差が大きいほど、水素ガス漏洩検知材料の水素ガス漏洩検知効果が高いことが分かった。
実施例1。
【0096】
(1)タングステン酸ナトリウム、シュウ酸、及び硫酸ナトリウムを所定量秤量し、濃度2.5Mの希塩酸を計量し、具体的に秤量した量、計量した量を表1に示す。
(2)脱イオン水50mLにタングステン酸ナトリウムを溶解してタングステン酸ナトリウム溶液を調製し、タングステン酸ナトリウム溶液に希塩酸を3ml/minの添加速度で加えて、25min撹拌した。希塩酸の添加が完了した後、上記混合溶液にシュウ酸と硫酸ナトリウムを加えて、さらに30min撹拌した。
(3)撹拌した溶液を、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、160℃で12h水熱反応させ、室温まで自然冷却した。
(4)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7になるまで複数回洗浄し、100℃のオーブンに入れて12h乾燥し、三酸化タングステンA1を得た。
実施例1で得られた三酸化タングステンA1の結晶相、ミクロトポグラフィー及び反射スペクトルの分析を行い、関連する結果を図1図3~5及び表2に示す。
図1は三酸化タングステンA1のXRD分析であり、標準カード(JCPDS 33-1387)と比較した結果、三酸化タングステンA1の結晶相は六方晶であることが分かった。また、28°付近の2θにおける回折ピークは(002)結晶面に帰属し、22°付近の2θにおける回折ピークは(100)結晶面に帰属し、14°付近の2θにおける回折ピークは(001)結晶面に帰属する。上記3つの特徴的な回折ピークの相対強度は、I(002)=1.07×I(100)=1.87×I(001)の条件を満たす。
図3図4図5は、それぞれ、三酸化タングステンA1のSEM分析、TEM分析、及びHRTEM分析である。図3に示すように、三酸化タングステンA1のミクロトポグラフィーは、直径約8nmのナノロッドが複数本粘着され、堆積されたナノロッド束のミクロ構造である。図4に示すように、三酸化タングステンのミクロトポグラフィーは、複数本のナノロッドが堆積されたナノロッド束であり、ナノロッド束は、長さが約900nm、直径が約80nmであり、1本のナノロッドの直径は約8nmであり、ナノロッド束のアスペクト比は11.25である
図8及び図9に示すように、三酸化タングステンA1は白色であり、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が68~86%である。
実施例2。
【0097】
(1)リンタングステン酸、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び硫酸リチウムを所定量秤量し、濃度0.5Mの希硫酸を所定量計量し、具体的に秤量した量、計量した量を表1に示す。
(2)脱イオン水20mLにリンタングステン酸を溶解してリンタングステン酸溶液を調製し、リンタングステン酸溶液に濃度0.5Mの希硫酸を7ml/minの添加速度で加えて、20min撹拌した。希硫酸の添加が完了した後、上記系にセチルベンゼンスルホン酸ナトリウムと硫酸リチウムを加えて、さらに25min撹拌し、混合溶液を得た。
(3)混合溶液を、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、180℃で20h水熱反応させ、室温まで自然冷却した。
(4)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7になるまで複数回洗浄し、100℃のオーブンに入れて9h乾燥し、三酸化タングステンA2を得た。
三酸化タングステンA2の結晶相は六方相であり、28°付近の2θにおける回折ピークは(002)結晶面に帰属し、22°付近の2θにおける回折ピークは(100)結晶面に帰属し、14°付近の2θにおける回折ピークは(001)結晶面に帰属する。その回折ピークの相対強度は、I(002)=0.95×I(100)=1.35×I(001)を満たす。
三酸化タングステンA2のSEM分析、TEM分析、及びHRTEM分析により、三酸化タングステンA2のミクロトポグラフィーは、直径約6nmのナノロッドが多数本堆積されたナノロッド束であり、ナノロッド束は、長さが約800nm、直径が約60nmであり、ナノロッド束のアスペクト比は13.33であることが分かった。
三酸化タングステンA3について色分析及び反射分光分析をしたところ、三酸化タングステンA2の色、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率の範囲、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率の範囲、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率の範囲を表2に示す。
実施例3。
【0098】
(1)リンタングステン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及び硫酸水素カリウムを所定量秤量し、濃度3.5Mの希硫酸を所定量計量し、具体的に秤量した量、計量した量を表1に示す。
(2)脱イオン水65mLにリンタングステン酸ナトリウムを溶解してリンタングステン酸ナトリウム溶液を調製し、リンタングステン酸ナトリウム溶液に濃度3.5Mの希硫酸を0.8mL/minの添加速度で加えて、22min撹拌した。希硫酸の添加が完了した後、上記系にセチルベンゼンスルホン酸ナトリウムと硫酸水素カリウムを加えて、さらに35min撹拌し、混合溶液を得た。
(3)混合溶液を内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、150℃で22h水熱反応させ、自然に室温まで冷却した。
(4)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7になるまで複数回洗浄し、85℃のオーブンに入れて25h乾燥し、三酸化タングステンA3を得た。
三酸化タングステンA3の結晶相は六方晶であり、また、28°付近の2θにおける回折ピークは(002)結晶面に帰属し、22付近の2θにおける回折ピークは(100)結晶面に帰属し、14付近の2θにおける回折ピークは(001)結晶面に帰属する。その回折ピークの相対強度は、I(002)=1.02×I(100)=1.55×I(001)の条件を満たす。
三酸化タングステンA3のSEM分析、TEM分析、及びHRTEM分析により、三酸化タングステンA3のミクロトポグラフィーは、直径約5nmのナノロッドが複数本堆積されたナノロッド束であり、ナノロッド束は、長さが約650nm、直径が約55nmであり、ナノロッド束のアスペクト比は11.82であることがわかった
三酸化タングステンA3について色分析及び反射分光分析をしたところ、三酸化タングステンA3の色、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率の範囲、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率の範囲、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率の範囲を表2に示す。
比較例1。
【0099】
希硫酸を加えていない以外、比較例1は、実施例3と同様の製造方法であった。
三酸化タングステンDA1を得た。
比較例1で得られた三酸化タングステンDA1について結晶相、ミクロトポグラフィー及び反射分光分析をした結果を図14図15図16及び表2に示す。図14は、比較例1及び比較例2で製造された三酸化タングステンDA1及びDA2のXRDパターンであり、図14に示すように、三酸化タングステンDA1の結晶相は、六方相に加えて、他の不純物の回折ピークがあり、つまり、この生成物は混合結晶相である。図15は三酸化タングステンDA1のSEM分析結果である。図15に示すように、この結晶相は、ナノプレートを主とする不規則なモフォロジーである。三酸化タングステンDA1について反射分光分析をしたところ、波長470nmの光に対する反射率が35%、波長700nmの光に対する反射率が22%、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が21~35%であった。
三酸化タングステンDA1の色、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率の範囲、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率の範囲、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率の範囲を表2に示す。
比較例2。
【0100】
(1)メタタングステン酸アンモニウム、クエン酸、及び硝酸リチウムを所定量秤量し、濃度1.2Mの希硝酸を所定量計量し、具体的に秤量した量、計量した量を表1に示す。
(2)脱イオン水50mLにメタタングステン酸アンモニウムを溶解してメタタングステン酸アンモニウム溶液を調製し、メタタングステン酸アンモニウム溶液に濃度1.2Mの希硝酸を4ml/minの添加速度で加えて、20min撹拌した。希硝酸の添加が完了した後、上記系にクエン酸と硝酸リチウムを加えて、さらに20min撹拌し、混合溶液を得た。
(3)混合溶液を、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、200℃で9h水熱反応させ、室温まで自然冷却した。
(4)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7になるまで複数回洗浄し、90℃のオーブンに入れて16h乾燥し、三酸化タングステンDA2を得た。
三酸化タングステンDA2について結晶相、ミクロトポグラフィー及び反射分光分析をした結果を図14図17、表2に示す。図14は、比較例1及び比較例2で製造された三酸化タングステンDA1及びDA2のXRDパターンである。図14に示すように、三酸化タングステンDA2の結晶相は六方相であり、JCPDSカード番号は35~1001であり、実施例A1の六方相とは異なる亜相である。図16は三酸化タングステンDA1のSEM分析結果である。図16に示すように、三酸化タングステンDA2は、長さ200~1000nm、幅100~300nmのナノロッドを主としたミクロトポグラフィーであり、ナノロッドにナノ粒子がいくつか付着している。
三酸化タングステンDA2は青色であり、三酸化タングステンDA2の反射スペクトルから、波長435nmの光に対する反射率が32%、波長700nmの光に対する反射率が28%、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が26~36%であることが示された。
三酸化タングステンDA2の色、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率を表2に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
注:1-タングステン塩:(有機添加剤と無機酸との合計)のモル比
2-有機添加剤と無機酸との合計モル数に占める有機添加剤の割合(%)
3-タングステン塩:構造指向剤の質量比
【0103】
【表2】
【0104】
表2より、実施例1~3で製造された三酸化タングステンは、ミクロトポグラフィーがナノロッド束であり、結晶相が六方相であり、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率がいずれも50%を超え、観察された色が白色でされる。一方、比較例1及び比較例2で製造された三酸化タングステンは、ミクロトポグラフィーがナノロッド束ではなく、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が40%未満であり、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率がいずれも30~37%の範囲内であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率がいずれも20~30%の範囲内であり、観察された色が青色であることが分かった。
実施例4。
【0105】
(1)三酸化タングステンA13g、塩化白金酸0.03gを正確に秤量し、塩化白金酸の添加量を三酸化タングステン添加量の1wt.%とし、脱イオン水50mLに加えて、10min撹拌し、固液混合物を得た。
(2)アスコルビン酸7.5gを秤量し、アスコルビン酸の添加質量を酸化タングステンの添加質量の2.5倍とした。固液混合物に加えて、さらに20min撹拌した後、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、150℃で5h反応させ、自然に室温まで冷却した、
(3)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7になるまで複数回洗浄し、85℃のオーブンに入れて12h乾燥し、水素ガス漏洩検知材料B1を得た。
水素ガス漏洩検知材料B1について蛍光X線分析を行った結果、水素ガス漏洩検知材料上の白金ナノ粒子の含有量は0.35wt.%であった。
実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料についてXRD分析、TPR分析、SAED分析、HRTEM分析をした結果を図1図2図6図7に示す。
図1は水素ガス漏洩検知材料B1のXRD分析結果を示し、1は水素ガス漏洩検知材料B1のXRD分析結果、2は三酸化タングステンA1のXRD分析結果である。標準カードJCPDS No.33-1387と比較すると、すべてのピークはその変色基材である三酸化タングステンA1に帰属し、白金種に帰属する回折ピークは検出されなかったことが分かった。これは、白金種のナノサイズが小さく、XRD分析の検出下限(2~5nm)を超えていることを示唆した。
図2は水素ガス漏洩検知材料B1のTPR分析結果を示し、三酸化タングステンA1は350℃以下でH吸着解離能力がなく、その明らかな水素消費ピークが現れる温度は490℃であり、水素ガス漏洩検知材料B1では、明らかな水素消費ピークが現れる温度は72℃であり、明らかな水素消費ピークが現れる開始温度は46℃であり、46℃で水素に対して吸着解離能力を持っていることを示唆し、すなわち、水素ガスに対する還元開始温度は46℃であり、50℃以下まで低下している。これは、水素ガス漏洩検知材料B1が顕著な低温還元性能を持っていることを示しており、そのため、低温、さらには室温での水素吸着解離及び水素感受性変色反応の実現に役立つ。
図6は水素ガス漏洩検知材料B1のHRTEM像を示し、水素ガス漏洩検知材料B1は、ミクロ構造が三酸化タングステンA1のミクロ構造と同じで、元のナノチューブ束のミクロ構造を維持していることがわかり、貴金属導入により三酸化タングステンの元のミクロ形態が変わらず、貴金属ナノ粒子が高度に分散し、明らかな粒子凝集が発生していないことが示唆された。
図7は水素ガス漏洩検知材料B1の元素分布図を示し、金属白金が三酸化タングステンA1上に非常に均一に分散しており、白金ナノ粒子サイズが2nm未満であることが分かった。
室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入し、水素ガス導入前後の水素ガス漏洩検知材料B1について反射分光分析及び色分析を行った結果を図8~9に示す。図8の線2と線3は、それぞれ、水素ガス漏洩材料B1の水素ガス導入前後の反射スペクトルを示し、図9B及び図9Cは、それぞれ、水素ガス漏洩検知材料B1の水素ガス導入前後の写真比較図である。図8から、水素ガス漏洩検知材料B1は、水素ガス導入前に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が高く、45~56%の範囲であり、400~500nmの範囲の可視光に対する反射率が45%以上であり、600~750nmの範囲の可視光に対する反射率が55%以上であり、図9Bの水素ガス漏洩検知材料B1の灰白色と一致していることが分かった。濃度10vol.%の水素ガスを60s導入すると、水素ガス漏洩検知材料B1の反射率は大幅に低下し、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率は4.9~27%であり、このうち、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率は22~27%と高くなるが、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率は4.9~9%と低くなり、すなわち、水素ガス導入後の水素ガス漏洩検知材料B1は、反射光が青色光を主としており、濃紺となる。また、図8から、水素ガス漏洩検知材料B1では、H導入前後では、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率変化の差の最低値は40%よりも大きく、水素ガス導入前後の顕著な色変化に対応することが分かった。図9に示すように、水素ガス漏洩検知材料B1は、H導入前に灰白色で、H導入後に濃紺で、色のコントラストが顕著である。水素ガス漏洩検知材料B1に室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流量で導入する過程において、水素ガス漏洩検知材料B1の反射スペクトルをリアルタイムで検出し、波長475nmと700nmの光に対する材料B1の反射率の経時変化をプロットしたものを図10に示す。図10から、水素ガス漏洩検知材料B1では、水素ガス5s導入後、波長475nmの光に対する反射率は53.8%から53.2%に低下し、反射率変化の差は0.6%であり、波長700nmの光に対する反射率は56%から47.7%に低下し、反射率変化の差は8.3%であり、すなわち、水素ガス漏洩検知材料B1は、水素ガス導入後、赤色光に対する反射率低下よりも青色光に対する反射率低下が遅く、青色光を多く反射していることが分かり、材料の色が青色に変化していることが示唆された。また、水素ガス漏洩検知材料の水素ガス導入後の波長700nmの光に対する反射率変化の差が10%(反射率が56%から46%に低下)に達するまでに約6.6sかかり、つまり、6.6s後に顕著な色変化が観測できた。
水素ガス漏洩検知材料B1の分散度を分析した結果、三酸化タングステン上の金属白金の分散度は76%であった。
水素ガス漏洩検知材料B1について水素ガス漏洩検知を実施し、具体的な結果を図11~13及び表3~5に示す。
1.図11は、室温における流速200mL/minの各H濃度の水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料B1の変色応答時間の検出結果である。図11に示すように、純Hに対して、水素ガス漏洩検知材料の変色応答時間は2s未満であり、H濃度4vol.%では、水素ガス漏洩検知材料の変色応答時間は8s未満であり、H濃度1vol.%では、水素ガス漏洩検知材料の変色応答時間は15s未満であり、H濃度0.1vol.%では、水素ガス漏洩検知材料の変色応答時間は約35sであった。
2.図12は、室温でのH濃度10vol.%、様々な流速の水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料B1の変色応答時間である。図12に示すように、水素ガス漏洩検知材料B1の変色応答時間は、流速500mL/minでは3s未満であり、流速200mL/minでは5s未満である。
3.図13は、流速200mL/min、H濃度10vol.%の様々なガス温度の水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料B1の変色応答時間である。図13に示すように、水素ガス漏洩検知材料B1の変色応答時間は、-25℃の水素ガスでは約25s、5℃の水素ガスでは8s未満、25℃の水素ガスでは5s未満である。
上記の水素ガス漏洩検知試験の結果から、水素ガス漏洩検知材料B1は、様々な条件の水素ガスに対して高い感度を有し、室温では変色速度が速く、低温でも変色応答時間が1minを超えないほど、秒単位の高速応答を達成していることが分かった。
実施例5。
【0106】
(1)三酸化タングステンA2 4.5g、硝酸白金 0.07gを正確に秤量し、硝酸白金の添加量を三酸化タングステンの添加量の1.5wt.%とし、脱イオン水50mLに加えて、10min撹拌し、固液混合物を得た。
(2)純エチレングリコール12mLを計量し、エチレングリコールの添加質量を酸化タングステンの添加質量の3倍とした。エチレングリコールを固液混合物に加えて、さらに20min撹拌した後、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、155℃で4h反応させ、室温まで自然冷却して、反応生成物を得た、
(3)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7.0となるまで複数回洗浄し、70℃のオーブンに入れて24h乾燥し、水素ガス漏洩検知材料B2を得た。
水素ガス漏洩検知材料B2について蛍光X線分析を行った結果、水素ガス漏洩検知材料上の白金ナノ粒子の含有量は0.9wt.%であった。
水素ガス漏洩検知材料B2のHRTEM像から、そのミクロ構造は、三酸化タングステンA2のミクロ構造と同様で、元のナノロッド束のミクロ構造を維持していることが分かった。
水素ガス漏洩検知材料B2のXRD分析により、水素ガス漏洩検知材料B2のすべてのピークは変色基材である三酸化タングステンA2に帰属し、白金種に帰属する回折ピークは検出されなかったことが分かった。これは、白金種のナノサイズが小さく、XRD分析の検出下限(2~5nm)を超えていることを示唆した。
水素ガス漏洩検知材料B2の元素分布図分析により、三酸化タングステンA2上に金属白金が非常に均一に分散しており、白金ナノ粒子のサイズが2nm未満である。
水素ガス漏洩検知材料B2に水素ガスを導入する前に、水素ガス漏洩検知材料B2について反射スペクトル検出分析を行ったところ、水素ガス漏洩検知材料B2の反射スペクトルは、実施例4の図8の線2と類似していることが観察された。水素ガス漏洩検知材料B2は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が45~52%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が45%以上、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が50%以上であった。
室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入したときの水素ガス漏洩検知材料B2の反射スペクトル検出分析を行ったところ、実施例4の図8の線3と類似している反射スペクトルが観測され、水素ガス漏洩検知材料B2は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が5~26%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が22~26%、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が5~9%であった。H導入前後に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、600~700nmの範囲の赤色光に対する反射率変化の差の最低値は42%よりも大きい。
水素ガス漏洩検知材料B2の水素ガス導入前後の色を観察して分析したところ、水素ガス漏洩検知材料B1の水素ガス導入前後の色と類似していることが観察された。
水素ガス漏洩検知材料B2のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の一部の結果を表6に示す。
水素ガス漏洩検知材料B2について水素ガス漏洩検知を実施し、具体的には、
1.室温における流速200mL/minの様々なH濃度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表3に示す。
2.室温でのH濃度10vol.%、様々な流速の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表4に示す。
3.流速200mL/min、H濃度10vol.%の様々なガス温度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表5に示す。
実施例6。
【0107】
(1)三酸化タングステンA1 6.2g、及び塩化白金酸0.04gを正確に秤量し、塩化白金酸の添加量を三酸化タングステンの添加量の0.65wt.%とし、脱イオン水55mLに加えて、10min撹拌し、固液混合物を得た。
(2)純エチレングリコール22mLを計量し、エチレングリコールの添加質量を酸化タングステンの添加質量の3.9倍とした。固液混合物に加えて、さらに20min撹拌し、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、135℃で3.2h反応させ、室温まで自然冷却し、反応生成物を得た、
(3)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7.0となるまで複数回洗浄し、70℃のオーブンに入れて24h乾燥し、水素ガス漏洩検知材料B3を得た。
水素ガス漏洩検知材料B3について蛍光X線分析を行った結果、水素ガス漏洩検知材料上の白金ナノ粒子の含有量は0.24wt.%であった。
水素ガス漏洩検知材料B3のHRTEM像から、そのミクロ構造は、三酸化タングステンA1のミクロ構造と同様で、元のナノロッド束のミクロ構造を維持していることが分かった。
水素ガス漏洩検知材料B3のXRD分析により、水素ガス漏洩検知材料B3のすべてのピークは変色基材である三酸化タングステンA1に帰属し、白金種に帰属する回折ピークは検出されなかったことが分かった。これは、白金種のナノサイズが小さく、XRD分析の検出下限(2~5nm)を超えていることを示唆した。
水素ガス漏洩検知材料B3の元素分布図分析により、三酸化タングステンA1上に金属白金が非常に均一に分散しており、白金ナノ粒子のサイズが2nm未満である。
水素ガス漏洩検知材料B3に水素ガスを導入する前に、水素ガス漏洩検知材料B3について反射スペクトル検出分析を行ったところ、水素ガス漏洩検知材料B3の反射スペクトルは、実施例4の図8の線2と類似していることが観察された。水素ガス漏洩検知材料B3は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が46~56%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が46%以上、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が55%以上であった。
室温でHガス濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入したときの水素ガス漏洩検知材料B3の反射スペクトル検出分析を行ったところ、実施例4の図8の線3と類似している反射スペクトルが観測され、水素ガス漏洩検知材料B3は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が5~26%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が21~26%、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が5~10%であった。H導入前後に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率変化の差の最低値は23%よりも大きく、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率変化の差の最低値は23%よりも大きく、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率変化の差の最低値は36%よりも大きい。
水素ガス漏洩検知材料B3の水素ガス導入前後の色を観察すると、水素ガス漏洩検知材料B1の水素ガス導入前後の色と類似した色が観察された。
水素ガス漏洩検知材料B3のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の一部の結果を表6に示す。
水素ガス漏洩検知材料B3について水素ガス漏洩検知を実施し、具体的には、
1.室温における流速200mL/minの様々なH濃度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表3に示す。
2.室温でのH濃度10vol.%、様々な流速の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表4に示す。
3.流速200mL/min、H濃度10vol.%の様々なガス温度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表5に示す。
実施例7。
【0108】
(1)三酸化タングステンA1 5.7g、及び硝酸白金0.068gを正確に秤量し、硝酸白金の添加量を三酸化タングステンの添加量の1.2wt.%とし、脱イオン水50mLに加えて、10min撹拌し、固液混合物を得た。
(2)アスコルビン酸15.5gを計量し、アスコルビン酸の添加質量を酸化タングステンの添加質量の2.7倍とした。固液混合物に加えて、さらに20min撹拌した後、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、125℃で5.5h反応させ、自然に室温まで冷却した、
(3)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7.0となるまで複数回洗浄し、70℃のオーブンに入れて24h乾燥し、水素ガス漏洩検知材料B4を得た。
水素ガス漏洩検知材料B4について蛍光X線分析を行った結果、水素ガス漏洩検知材料上の白金ナノ粒子の含有量は0.62wt.%である。
水素ガス漏洩検知材料B4のHRTEM像から、そのミクロ構造は、三酸化タングステンA1のミクロ構造と同様で、元のナノロッド束のミクロ構造を維持していることが分かった。
水素ガス漏洩検知材料B4のXRD分析により、水素ガス漏洩検知材料B4のすべてのピークは変色基材である三酸化タングステンA1に帰属し、白金種に帰属する回折ピークは検出されなかったことが分かった。これは、白金種のナノサイズが小さく、XRD分析の検出下限(2~5nm)を超えていることを示唆した。
水素ガス漏洩検知材料B4の元素分布図分析により、三酸化タングステンA1上に金属白金が非常に均一に分散しており、白金ナノ粒子のサイズが2nm未満である。
水素ガス漏洩検知材料B4に水素ガスを導入する前に、水素ガス漏洩検知材料B4の反射スペクトル検出分析を行ったところ、水素ガス漏洩検知材料B4の反射スペクトルは、実施例4の図8の線2と類似していることが観察された。水素ガス漏洩検知材料B4は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が45~55%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が45%以上、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が54%以上であった。
室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入したときの水素ガス漏洩検知材料B4の反射スペクトル検出分析を行った、実施例4の図8の線3と類似している反射スペクトルが観測され、水素ガス漏洩検知材料B4は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が4.5~26%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が20~26%、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が4.5~9%であった。H導入前後に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率変化の差の最低値は36%よりも大きい。
水素ガス漏洩検知材料B4の水素ガス導入前後の色を観察して分析したところ、水素ガス漏洩検知材料B1の水素ガス導入前後の色と類似していることが観察された。
水素ガス漏洩検知材料B4のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の一部の結果を表6に示す。
水素ガス漏洩検知材料B4について水素ガス漏洩検知を実施し、具体的には、
1.室温での流速200mL/minの様々なH濃度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表3に示す。
2.室温でのH濃度10vol.%、様々な流速の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表4に示す。
3.流速200mL/min、H濃度10vol.%の様々なガス温度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表5に示す。
実施例8。
【0109】
(1)三酸化タングステンA1 3g、及び塩化白金酸 0.045gを正確に秤量し、塩化白金酸の添加量を三酸化タングステンの添加量の1.5wt.%とし、脱イオン水50mLに加えて、10min撹拌し、固液混合物を得た。
(2)アスコルビン酸1.5gと純エチレングリコール(エチレングリコールとアスコルビン酸の質量比は1:0.23)6mlを計量し、固液混合物に加えて、さらに20min撹拌した後、内張りがポリテトラフルオロエチレン、シースがステンレス鋼の水熱反応釜に移送し、締め付けた後、140℃で5h反応させ、自然に室温まで冷却した。
(3)反応生成物を遠心分離した後、脱イオン水と無水エタノールを用いて、洗浄液のpHが6.5~7になるまで複数回洗浄し、85℃のオーブンに入れて12h乾燥し、水素ガス漏洩検知材料B5を得た。
水素ガス漏洩検知材料B5について蛍光X線分析を行った結果、水素ガス漏洩検知材料上の白金ナノ粒子の含有量は0.97wt.%であった。
水素ガス漏洩検知材料B5のHRTEM画像から、そのミクロ構造は、三酸化タングステンA1のミクロ構造と同様で、元のナノロッド束のミクロ構造を維持していることが分かった。
水素ガス漏洩検知材料B5のXRD分析により、水素ガス漏洩検知材料B5のすべてのピークは変色基材である三酸化タングステンA1に帰属し、白金種に帰属する回折ピークは検出されなかったことが分かった。これは、白金種のナノサイズが小さく、XRD分析の検出下限(2~5nm)を超えていることを示唆した。
水素ガス漏洩検知材料B5の元素分布図分析により、三酸化タングステンA1上に金属白金が非常に均一に分散しており、白金ナノ粒子のサイズが2nm未満である。
水素ガス漏洩検知材料B5に水素ガスを導入する前に、水素ガス漏洩検知材料B5の反射スペクトル検出分析を行ったところ、水素ガス漏洩検知材料B5の反射スペクトルは、実施例4の図8の線2と類似していることが観察された。水素ガス漏洩検知材料B5は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が46~53%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が46%以上、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が52%以上である。
室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入したときの水素ガス漏洩検知材料B5の反射スペクトル検出分析を行ったところ、実施例4の図8の線3と類似している反射スペクトルが観測され、水素ガス漏洩検知材料B5は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が4.5~26%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が20~26%、600~700nmの範囲の赤色光に対する反射率が4.5~9%であった。H導入前後に、400~750nmの範囲における可視光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、600~750nmの範囲における赤色光に対する反射率変化の差の最低値は38%よりも大きい。
水素ガス漏洩検知材料B5の水素ガス導入前後の色を観察して分析したところ、水素ガス漏洩検知材料B1の水素ガス導入前後の色と類似していることが観察された。
水素ガス漏洩検知材料B5のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の一部の結果を表6に示す。
水素ガス漏洩検知材料B5について水素ガス漏洩検知を実施し、具体的には、
1.室温における流速200mL/minの様々なH濃度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表3に示す。
2.室温でのH濃度10vol.%、様々な流速の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表4に示す。
3.流速200mL/min、H濃度10vol.%の様々なガス温度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表5に示す。
実施例9。
【0110】
硝酸白金の添加量が三酸化タングステンの添加量の2.5wt.%である以外、製造方法は実施例7と同様であった。水素ガス漏洩検知材料B6を製造した。
水素ガス漏洩検知材料B6について蛍光X線分析を行った結果、水素ガス漏洩検知材料上の白金ナノ粒子の含有量は1.2wt.%である。
水素ガス漏洩検知材料B6のHRTEM像から、そのミクロ構造は、三酸化タングステンA1のミクロ構造と同様で、元のナノロッド束のミクロ構造を維持していることが分かった。
水素ガス漏洩検知材料B6のXRD分析により、水素ガス漏洩検知材料B6のすべてのピークは変色基材である三酸化タングステンA1に帰属し、白金種に帰属する回折ピークは検出されなかったことが分かった。これは。白金種のナノサイズが小さく、XRD分析の検出下限(2~5nm)を超えていることを示唆した。
水素ガス漏洩検知材料B6の元素分布図分析により、三酸化タングステンA1上に金属白金が非常に均一に分散しており、白金ナノ粒子のサイズが2nm未満であった。
水素ガス漏洩検知材料B6に水素ガスを導入する前に、水素ガス漏洩検知材料B6の反射スペクトル検出分析を行ったところ、水素ガス漏洩検知材料B6の反射スペクトルは、実施例4の図8の線2と類似していることが観察された。水素ガス漏洩検知材料B6は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が45~52%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が45%以上、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が49%以上であった。
室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入したときの水素ガス漏洩検知材料B6の反射スペクトルを検知して分析したところ、実施例4の図8の線3と類似している反射スペクトルが観測され、水素ガス漏洩検知材料B6は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が4~25%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が19~25%、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が4~8%であった。H導入前後に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率変化の差の最低値は22%よりも大きく、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率変化の差の最低値は35%よりも大きい。
水素ガス漏洩検知材料B6の水素ガス導入前後の色を観察して分析したところ、水素ガス漏洩検知材料B1の水素ガス導入前後の色と類似していることが観察された。
水素ガス漏洩検知材料B6のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の一部の結果を表6に示す。
水素ガス漏洩検知材料B6に対して水素ガス漏洩検知を実施する。具体的には:
1.室温における流速200mL/minの様々なH濃度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表3に示す。
2.室温でのH濃度10vol.%、様々な流速の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表4に示す。
3.流速200mL/min、H濃度10vol.%の様々なガス温度の水素ガスに対する変色応答時間の検出結果を表5に示す。
比較例3。
【0111】
製造方法では、三酸化タングステンDA2を変色基材として用いた以外、他の条件が実施例4と同様にして、水素ガス漏洩検知材料DB1を製造した。
水素ガス漏洩検知材料DB1の水素ガス導入前に、水素ガス漏洩検知材料DB1の反射スペクトルを検知して分析したところ、水素ガス漏洩検知材料B1は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が24~35%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が35%以下、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が27%以下であることが観察された。室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入したときの水素ガス漏洩検知材料DB1の反射分光分析を行ったところ、水素ガス漏洩検知材料DB1は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が22~31%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が26~31%、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が22~25%である。水素ガス漏洩検知材料DB1では、H導入前後に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率変化の差の最高値は、7%未満であり、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率変化の差の最高値は、7%未満であり、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率変化の差の最高値は、2%未満であり、反射率の変化が顕著ではない。
水素ガス漏洩検知材料DB1のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の一部の結果を図17及び表6に示す。図17に示すように、水素ガスに対する水素ガス漏洩検知材料DB1の還元開始温度は250℃である。
水素ガス漏洩検知材料DB1について水素ガス漏洩検知を実施し、関連結果を表3、表4、表5に示す。
比較例4。
【0112】
還元試薬を加えなかった以外、製造方法は実施例5と同様であった。水素ガス漏洩検知比較材DB2を製造した。
水素ガス漏洩検知材料DB2について色分析を行った。その結果、還元試薬が添加されていないので、得られた水素ガス漏洩検知材料DB2は、変色基材A2と実質的に色が一致する。室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入した場合、水素ガス漏洩検知材料DB2は、水素ガス導入前と比較して、色が変化しなかった。水素ガス漏洩検知材料DB2のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の結果を表6に示す。
水素ガス漏洩検知材料DB2について水素ガス漏洩検知を実施、関連結果を表3、図4図5に示す。
比較例5。
【0113】
ステップ(2)において、純エチレングリコール12mLを秤量、エチレングリコールの添加質量を酸化タングステンの添加質量の3倍とした以外、製造方法は実施例5と同様であった。(1)の溶液にエチレングリコールを加えて、20min撹拌した後、室温で4h放置した。水素ガス漏洩検知材料DB3を製造した。
水素ガス漏洩検知材料DB2について色分析を行った。加熱操作が行われていないので、室温で4h放置して得られた水素ガス漏洩検知材料DB3は、変色基材A2とほぼ色が一致する。室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で60s導入した場合、水素ガス漏洩検知材料DB3は、水素ガス導入前と比較して、色が変化しなかった。
水素ガス漏洩検知材料DB3のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の結果を表6に示す。
水素ガス漏洩検知材料DB3について水素ガス漏洩検知を実施し、関連結果を表3、表4、表5に示す。
比較例6。
【0114】
市販の三酸化タングステン(国薬試薬公司から購入、分析的に純粋な試薬、結晶相は単斜相)を用いて水素ガス漏洩検知材料DB4を得た以外、製造方法は実施例5と同様であった。
水素ガス漏洩検知材料DB4のTPR分析の結果、分散度分析の結果及び水素ガス漏洩検知の一部の結果を表6及び図18に示す。
水素ガス漏洩検知材料DB4(水素ガス導入前のもの)の反射スペクトルを検知して分析した。その結果、水素ガス漏洩検知材料DB4は、水素ガス導入前に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が27~34%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が34%以下、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が28%以下であった。室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で900s導入した場合、水素ガス漏洩検知材料DB4は、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率が25~33%、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率が29~33%、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率が25~27%である。水素ガス漏洩検知材料では、H導入前後に、400~750nmの範囲の可視光に対する反射率変化の差の最大値は5%未満であり、400~500nmの範囲の青色光に対する反射率変化の差の最大値は5%未満であり、600~750nmの範囲の赤色光に対する反射率変化の差の最大値は3%未満である。図18は水素ガス漏洩検知材料DB4の水素ガス導入前後の色比較図である。室温でH濃度10vol.%を200mL/minの流量で900s導入した後、水素ガス導入前後の水素ガス漏洩検出材料DB1について関連分析を行った(反射率変化の差<10%)。水素ガス漏洩検知材料DB1は、H導入前に黄色、H導入前に黄色で、色の変化が顕著ではないことが分かった。
水素ガス漏洩検知材料DB4について水素ガス漏洩検知を実施し、関連結果を表3、表4、表5に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
注:*水素ガスに対する還元開始温度
**濃度4vol.%の水素ガスに対する変色応答時間(室温、流速200mL/min)
***濃度1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間(室温、流速200mL/min)。
【0120】
表6より、実施例4~9で製造された水素ガス漏洩検知材料B1~B6上の白金ナノ粒子は三酸化タングステン上に高度に分散しており、白金ナノ粒子の分散度は70%以上であり、水素ガス漏洩検知材料がより良好な水素ガス吸着解離活性、特に低温水素ガス吸着解離活性を発揮するのに寄与し、水素ガスに対する還元開始温度(℃)はいずれも60℃未満であり、H濃度4vol.%の水素ガスに対する変色応答時間は10s以下であり、H濃度1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間は15s以下であり、いずれも比較例3~6で製造された水素ガス漏洩検知材料DB1~DB4の変色応答時間よりもはるかに短く、それによって、水素ガス漏洩検知材料B1~B6が水素ガスに対して高い感度を有することが証明された。これにより、本発明の方法により製造された水素ガス漏洩検知材料は、様々な水素ガス濃度に対する変色時間を大幅に短縮させた。
【0121】
実施例4及び図8図9から分かるように、本発明で製造された水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに接触する前後の反射率変化の差が大きく、色の差が明らかであり、本発明の水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに対して高い応答効率を有し、人の目による水素ガス漏洩部位の識別に有利であることを示唆した。また、図11~13、表3~5から分かるように、本発明で製造された水素ガス漏洩検知材料は、様々な水素ガス濃度、流速、温度の水素ガスに対して、変色応答時間が短く、低水素ガス濃度(0.1vol.%まで低い)又は高流速(500mL/minまで高い)又は低温(-25℃まで低い)の条件下でも変色応答時間が1minを超えない。
【0122】
実施例4、比較例3、図2図8図9図17から分かるように、ナノロッド束構造を備えた六方相三酸化タングステンを変色基材として用いて製造された水素ガス漏洩検知材料は、水素ガスに対する還元開始温度がより低く、様々な温度の水素ガスに対してより感度が高い。
【0123】
表6から分かるように、貴金属の添加量が好ましくは0.5~2wt.%の範囲であると、製造された水素ガス漏洩検知材料では、貴金属の分散度は70%を超えて高く、水素ガスに対する還元開始温度が低く、水素感受性変色特性に優れていた。
【0124】
実施例4及び実施例8から分かるように、有機液相還元試薬が有機アルコールと第1有機酸との組み合わせである場合、製造された水素ガス漏洩検知材料中の貴金属ナノ粒子の分散度はより高く(80%以上)、水素ガスに対する還元開始温度はより低く(43℃以下)、水素ガス漏洩検知材料の検知感度はより良好である。
【0125】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術構想の範囲内では、本発明の技術的解決手段について、各技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることを含め、複数の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせは、同様に本発明の開示内容と見なすべきであり、いずれも本発明の特許範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1】実施例1で製造された三酸化タングステンA1、及び実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1のXRDパターンである。ここで、1は水素ガス漏洩検知材料B1のXRDパターンであり、2は三酸化タングステンA1のXRDパターンである。
図2】実施例1で製造された三酸化タングステンA1、及び実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1のTPR分析結果である。ここで、1は変色基材である三酸化タングステンのTPR分析結果であり、2は水素ガス漏洩検知材料のTPR分析結果である。
図3】実施例1で製造された三酸化タングステンA1のSEM像である。
図4】実施例1で製造された三酸化タングステンA1のTEM像である。
図5】実施例1で製造された三酸化タングステンA1のHRTEM像である。
図6】実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1のHRTEM像である。
図7】実施例4で製造した水素ガス漏洩検知材料B1のEDS元素分布図であり、ここで、AはTEM像であり、Bはタングステン元素の分布図であり、Cは酸素元素の分布図であり、Dは白金元素の分布図であり、タングステン、酸素、白金の3元素は高度に均一に分散しており、白金の凝集は検出されていないことが分かる。
図8】実施例1で製造された三酸化タングステンA1の反射スペクトル、及び室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で導入する前後の実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の反射スペクトルであり、1は実施例1で製造された三酸化タングステンA1の反射スペクトルであり、2は水素ガス導入前の水素ガス漏洩検知材料B1の反射スペクトルであり、3は水素ガス導入60s後の水素ガス漏洩検知材料B1の反射スペクトルである。
図9】実施例1で製造された三酸化タングステンA1の写真、及び室温でH濃度10vol.%の水素ガスを100mL/minの流速で導入する前後の実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の写真比較図であり、ここで、Aは三酸化タングステンA1の写真であり、Bは水素ガス導入前の水素ガス漏洩検知材料であり、Cは水素ガス導入60s後の水素ガス漏洩検知材料であり、色が濃紺である。
図10】実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の反射率の、H濃度10vol.%の水素ガス導入時間に応じた変化図(水素ガスの流速100mL/min、室温)であり、Aは波長700nmの光に対する反射率の、水素ガス導入時間に応じた変化図であり、Bは波長475nmの光に対する反射率の、水素ガス導入時間に応じた変化図である。
図11】実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の、様々なH濃度の水素ガスに対する変色応答時間(流速200mL/min、室温)である。
図12】実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の、様々な流速の水素ガスに対する変色応答時間(H濃度10vol.%、室温)である。
図13】実施例4で製造された水素ガス漏洩検知材料B1の、様々なガス温度の水素ガスに対する変色応答時間(流速200mL/min、H濃度10vol.%)である。
図14】比較例1及び比較例2で製造された三酸化タングステンDA1及びDA2のXRDパターンであり、1は三酸化タングステンDA1のXRDパターンであり、2は三酸化タングステンDA2のXRDパターンである。
図15】比較例1で製造された三酸化タングステンDA1のSEM像である。
図16】比較例2で製造された三酸化タングステンDA2のSEM像である。
図17】比較例3で製造された水素ガス漏洩検知材料DB1のTPR分析結果である。
図18】水素ガスを導入する前後の比較例6で製造された水素ガス漏洩検知材料DB4の写真である。Aは水素ガス導入前の水素ガス漏洩検知材料であり、色が黄色であり、Bは、室温で10vol.%の水素ガスを200mL/minの流速で導入15min(900s)後の水素ガス漏洩検知材料であり、色が黄色である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7(A)】
図7(B)】
図7(C)】
図7(D)】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変色基材と活性成分とを含む水素ガス漏洩検知材料であって、
前記変色基材は、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンであり、前記活性成分は、貴金属ナノ粒子であり、水素ガスに対する還元開始温度が100℃以下である、水素ガス漏洩検知材料。
【請求項2】
前記ナノロッドは、直径が1~10nmであり、前記ナノロッド束は、長さ500~1000nm、直径50~100nmであり、前記ナノロッド束は、20本以上のナノロッドを含み、前記ナノロッド束のアスペクト比が5~20である、請求項1に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項3】
前記六方相三酸化タングステンは、(002)、(100)及び(001)を主な露出結晶面として有し、XRD特徴回折ピークの強度は、I(002)=0.9-1.1×I(100)、I(002)=1.2-2×I(001)の条件を満たし、I(002)は(002)結晶面の特徴回折ピークの強度であり、I(100)は(100)結晶面の特徴回折ピークの強度であり、I(001)は、(001)結晶面の回折ピークの強度である、請求項1に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項4】
硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記六方相三酸化タングステンは、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であり、
好ましくは、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が50%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が70%以上であり、
好ましくは、前記六方相三酸化タングステンは、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が67%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が72%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項5】
前記貴金属ナノ粒子は、白金ナノ粒子、パラジウムナノ粒子、ロジウムナノ粒子、金ナノ粒子のうちの少なくとも1種であり、好ましくは、白金ナノ粒子である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項6】
前記貴金属ナノ粒子の変色基材上への分散度が70%以上、好ましくは75%以上、好ましくは80%以上であり、
好ましくは、前記貴金属ナノ粒子の平均サイズが5nm以下、好ましくは2nm以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項7】
水素ガス漏洩検知材料の全質量を基準にして、前記貴金属ナノ粒子の含有量が0.1~1.5wt.%である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項8】
水素ガスに対する還元開始温度が80℃以下、好ましくは60℃以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項9】
硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率が40%以上、好ましくは45%以上であり、
好ましくは、硫酸バリウムの反射率を100%としたときに、分光器で測定した場合、前記水素ガス漏洩検知材料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率が45%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率が49%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項10】
前記水素ガス漏洩検知材料を濃度10vol.%の水素ガスと60s接触させて検出試料を得て、
前記試料は、400~750nmの波長範囲の可視光に対する反射率変化の差が20%以上であり、
好ましくは、前記試料は、400~500nmの波長範囲の青色光に対する反射率変化の差が22%以上であり、600~750nmの波長範囲の赤色光に対する反射率変化の差が30%以上である、請求項9に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項11】
純水素ガスに対する変色応答時間が2s以下、濃度10vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、濃度4vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が10s以下、濃度2vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が13s以下、濃度1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が15s以下、濃度0.5vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が25s以下、濃度0.1vol.%の水素ガスに対する変色応答時間が50s以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項12】
室温における流速500mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が2.5s以下、流速400mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が3s以下、流速300mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が4s以下、流速200mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、流速100mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が8s以下、流速50ml/minの水素ガスに対する変色応答時間が10s以下、流速20mL/minの水素ガスに対する変色応答時間が20s以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項13】
濃度10vol.%の-25℃の水素ガスに対する変色応答時間が27s以下、-15℃の水素ガスに対する変色応答時間が15s以下、-5℃の水素ガスに対する変色応答時間が13s以下、5℃の水素ガスに対する変色応答時間が8s以下、15℃の水素ガスに対する変色応答時間が6.5s以下、25℃の水素ガスに対する変色応答時間が5s以下、35℃の水素ガスに対する変色応答時間が4s以下、45℃の水素ガスに対する変色応答時間が3s以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料の製造方法であって、
(i)貴金属前駆体、三酸化タングステン及び脱イオン水を第1混合にかけて、固液混合物を得るステップと、
(ii)有機液相還元試薬と前記固液混合物とを第2混合にかけて、反応混合物を得るステップと、
(iii)前記反応混合物を有機液相還元するステップと、を含み、
前記三酸化タングステンは、複数のナノロッドの束が堆積されたナノロッド束のミクロ構造を有する六方相三酸化タングステンである、製造方法。
【請求項15】
前記貴金属前駆体の添加量が、前記三酸化タングステンの添加量の0.2~5wt.%、好ましくは0.5~2wt.%であり、及び/又は
前記有機液相還元試薬の添加量が、前記三酸化タングステンの添加量の1.5~12倍である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記貴金属前駆体は、貴金属の可溶性塩であり、好ましくは、白金、パラジウム、ロジウム、金のうちの少なくとも1種の可溶性塩であり、より好ましくは、塩化白金酸カリウム、硝酸白金、塩化白金酸、塩化第1白金酸ナトリウム、テトラニトロ白金酸カリウム、塩化白金酸アンモニウム、塩化第1白金酸カリウムのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、前記有機液相還元試薬は、有機アルコール及び/又は第1有機酸であり、前記第1有機酸は、アスコルビン酸、シュウ酸、クエン酸のうちの少なくとも1種であり、前記有機アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、前記有機液相還元試薬は、有機アルコールと第1有機酸との組成物であり、前記有機アルコールと第1有機酸との質量比が1:0.1~5である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
ステップ(iii)において、前記有機液相還元の条件は、還元温度105~180℃、好ましくは115~160℃、還元時間0.5~8h、好ましくは1.5~6hを含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
水素を含有する還元性ガスの漏洩検知製品における、請求項1~3のいずれか1項に記載の水素ガス漏洩検知材料の使用。
【請求項19】
前記水素を含有する還元性ガスの漏洩検知製品は水素ガス漏洩検知製品である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記水素ガス漏洩検知製品は、水素ガス漏洩検知センサ、水素ガス漏洩検知テープ、水素ガス漏洩検知塗料、水素ガス漏洩検知デバイス、水素ガス漏洩検知フィルム、水素ガス漏洩検知インクのうちの少なくとも1種である、請求項19に記載の使用。
【国際調査報告】