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特表2024-526877バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法
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  • 特表-バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法 図1
  • 特表-バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法 図2A
  • 特表-バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法 図2B
  • 特表-バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法 図2C
  • 特表-バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法 図3
  • 特表-バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法 図4
  • 特表-バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】バッテリ駆動無線接続デバイスのエネルギ利用を特性評価して監視する方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240711BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240711BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J7/00 X
H02J13/00 301A
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H02J7/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503522
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 US2022033628
(87)【国際公開番号】W WO2023003655
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】17/380,901
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523224589
【氏名又は名称】フローサーブ・プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FLOWSERVE PTE.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リード・スチュアート・ディ.
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AC05
5G064AC09
5G064BA07
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA05
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CA17
5G503CB11
5G503CB13
5G503DA07
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【解決手段】無線センサまたはその他のバッテリ駆動リモート無線デバイスのバッテリを管理する方法は、デバイスの様々な活動およびモードの間のデバイスのエネルギ利用量を事前に特性評価する工程と、デバイスを稼働させる工程と、バッテリ管理以外の目的で取得されたデバイス動作データを機会的に収集する工程と、事前特性評価情報に照らした動作データの解析に従って、バッテリの状態を推定する工程と、を備える。方法は、さらに、推定されたバッテリ状態に従って、バッテリ管理行動(ほぼ消耗した時にバッテリを再充電または交換する行動、ならびに/もしくは、例えば、データ送信、測定、計算、および/または、その他の動的電流イベントの頻度を減らしまたは増やすことによって、バッテリ寿命を延ばすために、デバイスの動作を変更する行動、など)を取る工程を備える。状態推定は、さらに、デバイスに備えられている単純な電流測定回路によって提供された測定値を考慮しうる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリによって作動するリモート無線デバイスを管理する方法であって、
A)前記無線デバイスに関する事前特性評価情報を取得する工程と、前記事前特性評価情報は、前記デバイスの動作を特徴付ける動作段階および/または活動の実質的にすべてを識別し、前記段階および/または活動の各々の間に前記バッテリから引き出されるエネルギの量を決定することを含み、
B)前記無線デバイスを稼働させる工程と、
C)前記無線デバイスの稼働中に、前記無線デバイスの実際の段階および/または活動に関する動作データを受信する工程と、前記動作データは、バッテリ管理に関係のない目的で取得される点で、「機会的」であり、
D)前記事前特性評価情報に照らして前記機会的な動作データを解析する工程と、
E)工程D)の前記解析に従って、前記バッテリの状態を推定する工程と、前記推定された状態は、前記バッテリが最後に再充電または交換されて以来、前記バッテリによって消費された推定総エネルギを含み、
F)前記リモート無線デバイスの動作の期間中に、工程C)からE)を繰り返す工程と、
G)前記バッテリの前記推定された状態に基づいて、バッテリ管理行動を取る工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、リモート無線センサである、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、少なくとも1つのアクティブモードと少なくとも1つのスリープモードとの間で循環するよう構成されており、前記事前特性評価情報は、前記アクティブモードおよびスリープモードの各々について、前記アクティブモードまたはスリープモードのエネルギ利用プロファイルを含む、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記事前特性評価情報は、動的電流イベントに関連するエネルギ利用量を含み、前記動的電流イベント中には、前記リモート無線デバイスの他の動作段階および活動のほとんどの間に前記バッテリから引き出される低い電流量と比べて、前記バッテリから比較的高い電流量が引き出される、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、前記事前特性評価情報は、
前記無線デバイスに関する履歴データと、
同様または同一のバッテリおよび/またはデバイスのバッテリ利用量および/または挙動に関する履歴データと、
前記デバイスが稼働されるまでに経過する推定総バッテリアイドル時間に関する情報と、
工程C)からE)が少なくとも一回実行された後に、工程C)からE)のいずれかに由来する情報を前記事前特性評価情報と組み合わせた情報と、
の内の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法は、さらに、前記事前特性評価情報を解析する工程を備える、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記事前特性評価情報は、前記無線デバイスに関する履歴データを含み、工程D)は、
前記履歴データに従って、バッテリ寿命の統計モデルを構築する工程と、
前記履歴データに従って、バッテリ不動態化の統計モデルを構築する工程と、
前記履歴データを用いて、機械学習/人工知能アルゴリズムをトレーニングする工程と、
の内の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記バッテリ寿命の統計モデル、前記バッテリ不動態化の統計モデル、前記機械学習/人工知能の前記トレーニング、の内の少なくとも1つは、前記機会的な動作データに照らして工程B)の後に、定期的または継続的に更新される、方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の方法であって、工程E)は、前記統計モデルおよび前記機械学習/人工知能アルゴリズムの内の少なくとも1つを前記機会的な動作データに適用する工程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、前記リモート無線デバイスが入ったアクティブ期間およびスリープ期間の持続時間および回数を含む、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、発生した動的電流イベントの回数を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記動的電流イベントは、前記リモート無線デバイスによる無線伝送を含む、方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、無線センサであり、前記動的電流イベントは、前記無線センサによって行われる測定および/または前記無線センサによって実行される計算を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、前記リモート無線デバイスによって無線で再送信された情報の量を含む、方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法であって、前記機会的な動作データの少なくとも一部は、前記ネットワークの管理を支援して取得される、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法であって、前記機会的な動作データの少なくとも一部は、前記無線デバイスのリモート管理に起因して取得される、方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、リモート無線センサであり、前記機会的な動作データの少なくとも一部は、前記リモート無線センサが検知したデータの前記リモート無線センサによる報告に起因して取得される、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、さらに、前記リモート無線デバイスの内部および前記リモート無線デバイスの周囲環境の内の少なくとも1つに関する環境情報を含む、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法であって、前記バッテリが最後に再充電または交換されて以来、前記バッテリによって消費された前記総エネルギを推定することは、さらに、前記リモート無線デバイスに備えられている電流測定回路によって取得された電流測定データに従う、方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法であって、前記バッテリの前記状態を推定する工程は、さらに、前記リモート無線デバイスに備えられている電圧測定回路によって取得された過渡電圧測定値に従って、負荷の印加および/または解放中の前記バッテリ電圧の遷移挙動を解析する工程を含む、方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の方法であって、前記バッテリの前記推定された状態は、さらに、前記バッテリの不動態化の程度の推定を含む、方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法であって、工程F)の前記バッテリ管理行動は、
前記バッテリがほぼ消耗したことを前記エネルギ消費推定が示した場合に、前記バッテリを再充電または交換する行動と、
前記デバイスのエネルギ消費を減らすために、デバイス活動の程度を減らす行動と、
前記バッテリの不動態化を低減するために、前記デバイス活動の程度を増やす行動と、
前記バッテリの過度の冷却を避けるために、前記デバイス活動の程度を増やす行動と、
前記バッテリの過度の加熱を避けるために、前記デバイス活動の程度を減らす行動と、
前記バッテリの過度の冷却または加熱を避けるために、前記無線デバイスに近接しているが独立している温度制御デバイスを調節する行動と、
の内の少なくとも1つを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2021年7月20日出願の米国特許出願第17/380,901号に基づく優先権を主張し、その出願は、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、バッテリ駆動無線デバイスに関し、より具体的には、エネルギ利用量を監視し、残りのバッテリ寿命を推定し、バッテリ管理を最適化し、バッテリ駆動無線デバイスのバッテリ寿命を延ばす方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリ駆動無線接続デバイスは、ポータブル通信デバイス(ポケットベルおよび携帯電話など)、リモートセンシングデバイス、価値のある資産を追跡するデバイス、および、セキュリティ用途(商店の監視および不審な行動の識別など)など、非常に多様な用途のために長く利用されてきた。銀行は、無線押しボタンを従業員向けの非常ボタンにすることができ、小売業者は、すべての建物侵入ポイントに無線の窓センサを設置できる。住宅所有者も、空気中の有毒ガス(一酸化炭素など)を検出するために無線空気センサを利用できる。
【0004】
バッテリ駆動無線センサは、特に、様々なタイプの装置で生じうる現在または将来の問題を予測、検出、および/または、軽減するために利用可能である。例えば、無線ロープセンサは、コンピュータハードウェアの近くの水の存在を検出するために、サーバルームおよびデータセンタで用いられ、水漏れセンサは、配管の故障または冬季に破裂する可能性のあるパイプを検出するために、壁に取り付けられ、振動、温度、ノイズ、圧力、および/または、その他の環境因子を監視する無線センサは、ポンプ、バルブ、および、その他の不可欠な装置の問題および欠陥を検出するために、石油精製所、工場、公共施設、および、その他の大型施設で用いられうる。
【0005】
いくつかの場合、バッテリ駆動無線センサまたはその他のデバイスは、安全性の考慮により一次バッテリ(すなわち、非充電式バッテリ)の利用が充電式バッテリの利用よりも好ましいようなハザード指定エリアに実装される場合がある。石油産業において、無線センサは、時に、油井の「穴の」監視に利用されるため、幅広い範囲の温度および圧力にさらされる。
【0006】
電線から電力を引き出しおよび/または有線で通信する同等の装置の代わりに、無線センサおよび/またはその他の無線デバイスを実装する選択は、設置の容易さが望まれる場合にますます魅力的になっている。施設全体にわたって大規模な電力ネットワークおよび/またはデータネットワークを設置する必要なしに実装できることから、特に、大型施設(大型の工場、公共施設、または、石油精製所など)にわたって設備を監視するために多数の無線センサを設置することが非常に好ましい場合がある。さらに、無線デバイスの設置の容易さにより、ハザードエリアへの設置に理想的でありうる。
【0007】
無線デバイスおよび/またはネットワークの性能を低下させうる過度なデータコリジョンおよび/またはその他の問題を検出するために、無線デバイスのデータ通信パターンおよびその他の活動を監視することが時に重要でありうる。例えば、ネットワークコリジョンおよびその他の不具合による再送信など、無線伝送の長さおよび頻度のログが、無線デバイスによって維持されうる。その後、かかるデータは、無線データ伝送を介したリモートコマンドまたは非定期的なトリガイベントに基づいて、バッテリ換装またはその他の点検イベント中に有線接続を用いてリトリーブされ、もしくは、無線データ伝送を介して定期的にリトリーブされうる。
【0008】
無線センサおよび多くのその他の無線デバイスの有用性は、非常に長い距離にわたる低エネルギかつ低データレートの無線伝送のためのプロトコルを提供するインターネット・オブ・シングス(IoT)への統合、さらに、低電力ワイドネットワーク(LPWAN)プロトコル(LoRaWAN、SigFox、および、NB-IoTなど)の開発によって、大きく増大してきた。バッテリ技術の向上と共に、低電力通信におけるこれらの進歩は、無線バッテリ駆動デバイスのバッテリ寿命の増大に役立ち、それにより、バッテリを再充電または換装しなければならない頻度を減少させた。
【0009】
にもかかわらず、ほとんどのタイプのバッテリ駆動無線デバイスにとって、バッテリ寿命を可能な限り延ばすことが依然として望ましい。この理由から、無線センサおよびその他の無線デバイスは、しばしば、総電力消費量を最小化し、低電力または最小電力の「スリープ期間」と全出力の「アクティブ」期間とを交互に切り替えることによってバッテリ寿命を最大化する。本明細書で用いられているように、「アクティブ」期間という用語は、無線デバイスがタスク(データの収集、検知、測定、計算、および、解釈など)を実行している期間のことを指す。典型的に、アクティブサイクル中、デバイスは、電流およびエネルギの利用のバーストを必要とする「動的電流」イベント(無線ネットワークでメッセージを送信するなど)を経験しうる。「スリープ」期間とは、デバイスのほとんどまたはすべてが、オフにされ、または、意図的に、電力消費が「アクティブ」期間中よりもはるかに低い状態にされた期間のことである。「ウェイク/スリープサイクル」とは、概して、アクティブ期間とそれに続くスリープ期間、または、その逆のことである。
【0010】
また、多くの無線センサおよびその他の無線デバイスも、1または複数の部分的なスリープ「モード」に入る能力を有しており、かかるモードでは、エネルギ利用が大幅に削減されるが、いくつかの低電力活動はまだ実行されうる。例えば、デバイスは、検知デバイスまたは回路に接続されたI/Oピンの監視を可能にする比較的低電力の部分的スリープモードに設定されうる。I/Oピンでの電気閾値の超過が検出されたイベント時に、デバイスは、より低電力の部分的スリープモードから、より多くのエネルギを消費する活動が許容されるより高電力のスリープモードへウェイクしうる。より低電力のスリープモードからより高電力のスリープモードへの移行も、「スリープ」状態から「アクティブ」状態への移行と見なされる。
【0011】
しばしば、無線デバイスのアクティブ期間および/またはスリープ期間の持続時間は可変である。いくつかのケースでは、ウェイク/スリープサイクルのタイミングは、例えば、バッテリ駆動無線センサが異常を検知し、より入念に異常を監視するために実行されるサイクルの順序およびタイプを自動的に変更した場合に、自動的に適合される。他のケースにおいて、動作の変更(データ伝送間隔の変更など)が、エンドユーザによってなされる。無線デバイスのウェイク/スリープサイクルのタイミングが厳密に規定されている場合でも、例えば、各アクティブ期間中に消費されるエネルギの量は、ネットワークコリジョンによるパケットの再送信に起因する動的電流イベントの数の増加があった場合には、変化しうる。これらの理由すべてから、任意の所与の時間にどれだけのエネルギがバッテリに残っているのかをリモートで推定し、デバイスがいつ再充電または交換を必要とする可能性があるのかを予測するのは困難でありうる。
【0012】
すべてのタイプの内のほとんどではないにしても多くの無線デバイスが、何らかの形態のバッテリレベル表示を含む。いくつかのケースでは、バッテリが放電するにつれて数が減少する1セットのバーが表示され、または、残りのバッテリ寿命の数値表示がパーセントで提供される。より大きい施設において、バッテリインジケータを頻繁に直接観察することが便利ではない場合に、バッテリ寿命の表示が、時にリモートで監視されうる。
【0013】
ほとんどのバッテリ駆動無線システムは、バッテリの電圧レベルの測定値に基づいてバッテリ寿命の表示を行う。多くは、バッテリが再充電または交換を必要とする時に警告をトリガしてエンドユーザに通知するために単純な電圧閾値を確立する。しかしながら、このアプローチは、リチウム系およびその他のバッテリ化学物質の平坦な電圧放電プロファイルにより、非常に不正確である。換言すると、バッテリがほぼ完全に放電するまで、バッテリ電圧の変化が最小限である。また、このアプローチは、どれだけの電流が引き出されているのかに応じてバッテリ電圧が典型的には変化する点で、スリープ期間中と対比して、負荷時(すなわち、アクティブ期間中)にはバッテリの性能動向の重要性を無視する。さらに、バッテリがほぼ放電された時にのみ電圧警告が無線センサによって発行される場合、無線センサが完全にシャットダウンする前にバッテリを再充電または交換するのは不便および/または費用が掛かりうる点で、結果としてバッテリ「危機」が起こりうる。それが起こると、測定されたデータが失われうるため、エンドユーザは、バッテリを再充電または交換できるまで無線センサによって監視されている装置の状態に関する情報をそれ以上受信することがない。
【0014】
もちろん、バッテリから引き出されるエネルギを監視するために、さらなる専用回路(電力測定回路など)を無線デバイスに追加できるが、このアプローチは、デバイスのコスト、複雑さ、および、潜在的欠陥モードを増大させ、さらなるバッテリ電力を消費し、さらなるハードウェアをデバイス内に組み込むことができるようにデバイスのサイズを大きくすることを必要とする。
【0015】
したがって、バッテリが完全に消耗する前の都合のよい時にバッテリを換装または交換できることを保証しつつバッテリの全容量を利用できるように、さらなる監視ハードウェアを実装する任意の必要性を最小化または排除しつつ、さらなるエネルギをほとんどまたは全く消費することなしに、無線デバイスのバッテリ利用をリモートで監視し、残りのバッテリ寿命を予測するための信頼性の高い正確な方法が求められている。
【発明の概要】
【0016】
したがって、本発明は、バッテリが完全に消耗する前の都合のよい時にバッテリを換装または交換できることを保証しつつバッテリの全容量を利用できるように、さらなる監視ハードウェアの任意の実装を最小化または完全に回避し、必要とするとしてもほとんど追加のエネルギ消費を必要とすることなしに、無線デバイスのバッテリ状態をリモートで推定し、残りのバッテリ寿命を予測し、バッテリ管理を提供するするための信頼性の高い正確な方法である。
【0017】
より具体的には、本発明は、他の目的ですでに収集されている情報を機会的に利用することによって、バッテリ利用量および残りのバッテリ寿命を推定し、それにより、バッテリ管理の目的で特に実施されるさらなる測定および/または通信の任意の必要性を最小化または排除する。
【0018】
開示されている方法によると、無線デバイスに関する事前特性評価情報が取得される。事前特性評価情報は、無線デバイスの様々な活動モードの各々の間の無線デバイスの電力消費量を含みうる。事前特性評価情報は、さらに、同様または同一のタイプの複数のバッテリまたはデバイスの観察から収集された履歴統計データ(温度、圧力、および/または、その他の環境条件に対するかかるバッテリまたはデバイスの平均感度、バッテリの不動態化挙動、バッテリ化学寿命プロファイル、など)を含みうる。また、履歴データは、デバイスが稼働される前に、どれだけの期間、デバイスが保管されるのか、または、バッテリが利用されないのかなど、無線デバイス自体の履歴に関する情報を含みうる。
【0019】
実施形態において、事前特性評価情報の解析は、さらに、履歴データから導出されたバッテリ寿命の1または複数の統計モデル(例えば、バッテリ寿命を様々な環境内のセンサまたはその他のデバイスの密度と相関させる統計モデル、または、不動態化を環境要因および利用パターンと相関させるモデル)を構築することを含む。様々な実施形態において、事前特性評価情報の解析は、デバイスが稼働している間にデバイスの観察結果を解析する際のその後の利用に向けて、事前特性評価情報を用いて、人工知能/機械学習アルゴリズムをトレーニングすることを含む。
【0020】
デバイスが稼働されると、他の目的で収集されている動作データが、バッテリの最後の再充電または交換以来消費された総電力量を定期的に推定するために、機会的に監視され、解析され、事前特性評価情報と組み合わせて用いられる。実施形態において、動作データの少なくとも一部は、その後の推定で利用するために、事前特性評価情報と組み合わせられる。様々な実施形態において、機会的に監視された動作データの解析は、動作データへの機械学習/AIアルゴリズムの適用を含み、アルゴリズムは、上述の履歴データを用いて、および/または、稼働中のデバイスの観察結果を用いて、「教えられる」。例えば、履歴情報に基づいて、機械学習アルゴリズムは、環境条件、スリープ期間の長さと、バッテリの不動態化挙動との間の相関を検出し、次いで、現在監視されているデバイスの不動態化挙動の予測に役立つように、その相関を適用してよい。
【0021】
本明細書で用いられているように、「監視される動作データ」という用語は、バッテリ寿命監視に関係のない目的で無線デバイスの活動および状態に関して収集されるデータのことである。したがって、バッテリエネルギ消費の推定にもこの情報を利用することを、本明細書では「機会的」と呼ぶ。無線接続されたデバイスの機会的に監視される動作データの例は、実施形態において、
・ウェイクサイクル/スリープサイクルの長さ(任意の部分的なスリープ期間の長さおよびタイプなど)、
・アクティブ期間の長さおよび回数、
・アクティブ期間中の動的電流イベントの回数および持続期間、
・アクティブ期間中に送信されたパケットの数、
・スリープからウェイクへのサイクルの頻度、
・実行された測定の回数、
・実行された計算の回数、
・内部および/または隣接する環境の温度および/または圧力のプロファイル、および、
・負荷の印加および/または解放中のバッテリ電圧の遷移挙動。
【0022】
いくつかの実施形態は、事前特性評価情報および監視された動作データの解析のみに基づいて、電力およびバッテリ寿命の推定値を導出するが、他の実施形態は、単純、低コスト、低プロファイル、かつ、低エネルギの回路(動的電流イベント中に電流を測定して報告できる電流測定回路など)を無線デバイスに実装することによって、これらの推定値をさらに改善する。
【0023】
いくつかの実施形態において、バッテリの電圧を測定する電圧センサが、デバイスに実装され、デバイスは、バッテリ電圧の「始動」負荷(すなわち、アクティブ期間の開始時にバッテリが負荷を受けた直後または、動的電流イベント(無線伝送など)中に起きる電圧の一時的な降下および電圧の回復)を監視および報告する。同様に、実施形態において、デバイスは、例えば、アクティブ期間からスリープ期間への遷移に起因して、エネルギ消費の突然の低下がある時に、バッテリ電圧の挙動を監視および報告する。
【0024】
開示されている方法は、さらに、バッテリ管理を含み、それにより、バッテリのエネルギが使い尽くされる前に、余裕を持って(ただし、過度にならずに)バッテリの再充電または交換をスケジューリングするために、電力およびバッテリ寿命の推定値、ならびに、いくつかの実施形態においては、さらに、予測されたバッテリ不動態化挙動が利用される。いくつかの実施形態において、過剰なエネルギ消費が検出された場合、または、バッテリ寿命を短くする傾向のある環境条件が検出された場合、方法は、さらに、スリープ期間の長さを延ばしおよび/または各アクティブ期間中に必要とされる動的電流イベントの数を減らすことによって、バッテリ電力消費率を減少させることを含む。
【0025】
実施形態において、バッテリ管理は、バッテリの不動態化を管理しないことがバッテリ寿命を短くしうるバッテリ不動態化の問題の最小化を含む。例えば、バッテリからエネルギが引き出される頻度が低すぎる場合、バッテリ内で大きい不動態化層が発生することを許容し、それにより、バッテリが無線センサを動作させるのに十分な動的電力を提供できない可能性がある。これらの実施形態において、事前に特性評価されて機会的に監視されている動作データの解析により、バッテリから電流をより頻繁に引き出す必要があることが示された場合、バッテリ管理は、アクティブ期間の頻度および/または動的電流イベントを増やすことを含みうる。
【0026】
本発明は、バッテリによって作動するリモート無線デバイスを管理する方法である。その方法は、
A)無線デバイスに関する事前特性評価情報を取得する工程であって、事前特性評価情報は、デバイスの動作を特徴付ける動作段階および/または活動の実質的にすべてを識別し、段階および/または活動の各々の間にバッテリから引き出されるエネルギの量を決定することを含む、工程と、
B)無線デバイスを稼働させる工程と、
C)無線デバイスの稼働中に、無線デバイスの実際の段階および/または活動に関する動作データを受信する工程であって、動作データは、バッテリ管理に関係のない目的で取得される点で、「機会的」である、工程と、
D)事前特性評価情報に照らして機会的な動作データを解析する工程と、
E)工程D)の解析に従って、バッテリの状態を推定する工程であって、推定された状態は、バッテリが最後に再充電または交換されて以来、バッテリによって消費された推定総エネルギを含む、工程と、
F)リモート無線デバイスの動作の期間中に、工程C)からE)を繰り返す工程と、
G)バッテリの推定された状態に基づいて、バッテリ管理行動を取る工程と、
を備える。
【0027】
実施形態において、リモート無線デバイスは、リモート無線センサである。
【0028】
上記の実施形態のいずれかにおいて、リモート無線デバイスは、少なくとも1つのアクティブモードと少なくとも1つのスリープモードとの間で循環するよう構成されてもよく、事前特性評価情報は、アクティブモードおよびスリープモードの各々について、アクティブモードまたはスリープモードのエネルギ利用プロファイルを含んでもよい。
【0029】
上記の実施形態のいずれかにおいて、事前特性評価情報は、動的電流イベントに関連するエネルギ利用量を含んでもよく、動的電流イベント中には、リモート無線デバイスの他の動作段階および活動のほとんどの間にバッテリから引き出される低い電流量と比べて、バッテリから比較的高い電流量が引き出される。
【0030】
上記の実施形態のいずれかにおいて、事前特性評価情報は、無線デバイスに関する履歴データと、同様または同一のバッテリおよび/またはデバイスのバッテリ利用量および/または挙動に関する履歴データと、デバイスが稼働されるまでに経過する推定総バッテリアイドル時間に関する情報と、工程C)からE)が少なくとも一回実行された後に、工程C)からE)のいずれかに由来する情報を事前特性評価情報と組み合わせた情報と、の内の少なくとも1つを含んでもよい。
【0031】
上記の実施形態のいずれかにおいて、方法は、さらに、事前特性評価情報を解析する工程を備えてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、事前特性評価情報は、無線デバイスに関する履歴データを含み、工程D)は、履歴データに従って、バッテリ寿命の統計モデルを構築する工程と、履歴データに従って、バッテリ不動態化の統計モデルを構築する工程と、履歴データを用いて、機械学習/人工知能アルゴリズムをトレーニングする工程と、の内の少なくとも1つを含む。
【0032】
これらの実施形態のいくつかにおいて、バッテリ寿命の統計モデル、バッテリ不動態化の統計モデル、機械学習/人工知能のトレーニング、の内の少なくとも1つは、機会的な動作データに照らして工程B)の後に、定期的または継続的に更新される。これらの実施形態のいくつかにおいて、工程E)は、統計モデルおよび機械学習/人工知能アルゴリズムの内の少なくとも1つを機会的な動作データに適用する工程を含んでもよい。
【0033】
上記の実施形態のいずれかにおいて、機会的な動作データは、リモート無線デバイスが入ったアクティブ期間およびスリープ期間の持続時間および回数を含んでもよい。
【0034】
上記の実施形態のいずれかにおいて、機会的な動作データは、発生した動的電流イベントの回数を含んでもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、動的電流イベントは、リモート無線デバイスによる無線伝送を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、リモート無線デバイスは、無線センサであってよく、動的電流イベントは、無線センサによって行われる測定および/または無線センサによって実行される計算を含んでもよい。
【0035】
上記の実施形態のいずれかにおいて、機会的な動作データは、リモート無線デバイスによって無線で再送信された情報の量を含んでもよい。
【0036】
上記の実施形態のいずれかにおいて、機会的な動作データの少なくとも一部は、ネットワークの管理を支援して取得されてよい。
【0037】
上記の実施形態のいずれかにおいて、機会的な動作データの少なくとも一部は、無線デバイスのリモート管理に起因して取得されてよい。
【0038】
上記の実施形態のいずれかにおいて、リモート無線デバイスは、リモート無線センサであってよく、機会的な動作データの少なくとも一部は、リモート無線センサが検知したデータのリモート無線センサによる報告に起因して取得されてよい。
【0039】
上記の実施形態のいずれかにおいて、機会的な動作データは、さらに、リモート無線デバイスの内部およびリモート無線デバイスの周囲環境の内の少なくとも1つに関する環境情報を含んでもよい。
【0040】
上記の実施形態のいずれかにおいて、バッテリが最後に再充電または交換されて以来、バッテリによって消費された総エネルギを推定することは、さらに、リモート無線デバイスに備えられている電流測定回路によって取得された電流測定データに従ってよい。
【0041】
上記の実施形態のいずれかにおいて、バッテリの状態を推定する工程は、さらに、リモート無線デバイスに備えられている電圧測定回路によって取得された過渡電圧測定値に従って、負荷の印加および/または解放中のバッテリ電圧の遷移挙動を解析する工程を含んでよい。
【0042】
上記の実施形態のいずれかにおいて、バッテリの推定された状態は、さらに、バッテリの不動態化の程度の推定を含んでよい。
【0043】
上記の実施形態のいずれかにおいて、工程F)のバッテリ管理行動は、バッテリがほぼ消耗したことをエネルギ消費推定が示した場合に、バッテリを再充電または交換する行動と、デバイスのエネルギ消費を減らすために、デバイス活動の程度を減らす行動と、バッテリの不動態化を低減するために、デバイス活動の程度を増やす行動と、バッテリの過度の冷却を避けるために、デバイス活動の程度を増やす行動と、バッテリの過度の加熱を避けるために、デバイス活動の程度を減らす行動と、バッテリの過度の冷却または加熱を避けるために、無線デバイスに近接しているが独立している温度制御デバイスを調節する行動と、の内の少なくとも1つを含んでよい。
【0044】
さらに別の実施形態において、無線デバイスに近接した環境温度が、特定の最小値よりも低下し、または、特定の最大値よりも上昇していると判定された時に、バッテリ管理は、バッテリの温度を上昇または低下させる手段を取ることを含む。これは、デバイスの活動率を上昇または低下させることによってなされてよく、その結果、デバイス自体によって生成される熱が増大または減少される。いくつかの実施形態において、外部ヒータまたはその他の温度調節器が利用可能である場合、バッテリ管理は、温度調節器を始動させ、もしくは、その加熱率または冷却率を上昇させることを含んでよい。
【0045】
本明細書に記載の特徴および利点は、包括的ではなく、特に、図面、明細書、および、特許請求の範囲を考慮すれば、多くのさらなる特徴および利点が当業者にとって明らかになる。さらに、本明細書で用いられている用語は、主に読みやすさおよび指導的な目的で選択されたものであり、本発明の主題の範囲を限定しないことに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】従来技術のリモート無線デバイスの典型的なアウェイク/スリープサイクルを示す図。
【0047】
図2A】本発明の一実施形態において、本発明の工程を示すフローチャート。
【0048】
図2B】バッテリの総エネルギ利用量を推定する場合に、事前特性評価情報および機会的な動作データがどのように組み合わせられるのかを示す、図2Aの工程のブロック図。
【0049】
図2C図2Bの事前特性評価の一部として実施形態に含まれる工程を示すブロック図。
【0050】
図3】バッテリ利用量の推定に関係のない他の目的で取得される動作データの機会的な収集を示すブロック図。
【0051】
図4】動作データの解析中に実施形態に含まれる工程を示すフローチャート。
【0052】
図5】無線デバイスのバッテリ管理中に実施形態に含まれる工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0053】
したがって、本発明は、バッテリが完全に消耗する前の都合のよい時にバッテリを換装または交換できることを保証しつつバッテリの全容量を利用できるように、さらなる監視ハードウェアの任意の実装を最小化または完全に回避し、必要とするとしてもほとんど追加のエネルギ消費を必要とすることなしに、無線デバイスのバッテリ状態をリモートで推定し、残りのバッテリ寿命を予測し、バッテリ管理を提供するするための信頼性の高い正確な方法である。
【0054】
図2Aおよび図2Bを参照すると、本発明によれば、無線デバイスは、事前に特性評価され200、その後、動作データが機会的に(opportunistically)監視され202、定期的に解析され204、バッテリ管理が実施される206。この処理は、バッテリの寿命の間に定期的に繰り返される。図2Bに示すように、実施形態において、推定206およびバッテリ管理208から得られた情報が、その後の解析204で利用するために、事前特性評価情報と組み合わせられる。
【0055】
図2Cを参照すると、事前特性評価200は、デバイス自体の特性の測定210、例えば、ウェイク期間102中ならびに様々な部分的スリープ期間および完全スリープ期間100中とのエネルギ利用プロファイルを決定することを含みうる。実施形態において、アクティブ期間102中ならびに様々な部分的スリープ期間および完全スリープ期間100中の電力消費が比較的一定である場合、事前特性評価は、アクティブ期間102およびスリープ期間100中の電力消費プロファイルを決定することによって達成される。
【0056】
他の実施形態において、動的電流イベントなど、アクティブ期間102中に実行されうる特定のタスクが識別され、それらのエネルギ消費に関して個々に事前に特性評価される200。例えば、デバイスが測定を行い、計算を実行し、および/または、無線でデータを送信している時のエネルギ利用が事前に特性評価されうる。
【0057】
続けて図2Cを参照すると、デバイス自体の特性の測定210に加えて、事前特性評価は、さらに、環境条件(温度および/または圧力など)に対するかかるバッテリまたはデバイスの平均感度、バッテリの平均不動態化挙動、バッテリ化学寿命プロファイルなど、同様または同一のタイプの複数のバッテリまたはデバイスの以前の観察から収集された履歴統計データを収集して解析すること212を含みうる。また、履歴データは、デバイスが稼働される前に、どれだけの期間、デバイスが保管されるのか、または、バッテリが利用されないのかなど、デバイス自体の履歴に関する情報を含みうる。実施形態において、デバイスの動作に関する進行中のデータが、後の推定で用いるために履歴データと組み合わせられる212。
【0058】
事前特性評価情報の解析は、さらに、履歴データから導出されたバッテリ寿命および/またはバッテリ不動態化の1または複数の統計モデル(例えば、バッテリ寿命を様々な環境内のセンサまたはその他のデバイスの密度と相関させる統計モデル、または、不動態化を環境要因および利用パターンと相関させるモデル)を構築すること214を含みうる。様々な実施形態において、事前特性評価200は、無線デバイスが稼働すると取得される機会的な動作データを解析する際に後で利用するために、履歴データを用いて人工知能/機械学習アルゴリズムをトレーニングすること216を含む。
【0059】
デバイスが稼働されると、本発明は、バッテリの状態を推定する(これは、バッテリの最後の再充電または交換以来消費された総エネルギ、デバイスの不動態化、および、デバイスの残りのバッテリ寿命を推定すること206を含みうる)ために、関係のない目的のためにデバイスからすでに収集されている動作データを機会的に監視し、事前特性評価情報を機会的に監視された動作データと組み合わせる。機会的に監視および推定するこれらの工程は、無制限に繰り返される。
【0060】
本明細書で用いられているように、「監視される動作データ」という用語は、エネルギ消費量および残りのバッテリ寿命を推定することに関係のない目的で無線デバイスの活動および状態に関して収集されるデータのことである。したがって、バッテリエネルギ消費量の推定にもこの情報を利用することを、本明細書では「機会的」と呼ぶ。
【0061】
例えば、図3を参照すると、輻輳およびその他のネットワーク問題に起因する過剰なパケットコリジョンを検出するために、デバイス300によって送信されたパケットの数に関するデータを収集することが、ネットワーク管理302の目的で重要でありうる。この情報は、ネットワークコリジョンに起因する再送信を含む、パケットの送信時にデバイスによって消費されたエネルギの量を推定するために、本発明の実施形態において機会的に利用される306。
【0062】
また、監視される動作データは、デバイス300が意図された目的を実行する時に行われるデバイス監視および管理活動により収集されるデバイス利用情報304を含みうる。例えば、アクティブ期間の頻度および/または持続期間の増加は、監視されている装置の性能の異常または低下が検出されたことを示唆しうるものであり、センサ300によって入念に監視されているので、無線センサ300のアクティブ期間およびスリープ期間をリモートで監視することが重要でありうる。この情報は、アクティブ期間およびスリープ期間中の事前に特性評価されたエネルギ消費量に基づいてエネルギ利用量を推定するために、実施形態において機会的に利用される306。
【0063】
無線センサ300の動作中、データが、典型的には、センサ300によって受信側デバイスへ送信される。メッセージコリジョンがある時、メッセージの再送信が、送信側の無線センサによって実行されてよい。無線センサが、そのアクティブ期間およびスリープ期間の回数および持続期間に関する情報を直接的に提供しない場合、実施形態は、無線センサ300に与えられた命令およびパラメータ(一般に先験的に知られることになる)と組み合わせて、この受信されたデータのこのタイミングに基づいて、アクティブ期間およびスリープ期間の持続期間および回数を推定する。
【0064】
実施形態において、センサから受信側デバイスによって受信されたメッセージの数は、再送信の回数と共に記録され、センサ300によって送信されたメッセージの総数を決定するために、機会的に再検討される。次いで、この推定は、送信されたメッセージあたりの事前に特性評価されたエネルギ消費量と組み合わせて、メッセージ送信によって消費された総エネルギ量を推定するために利用されうる。
【0065】
監視される動作データの他の例は、実行された測定の総回数、および、実行された計算の総回数を含み、それらはすべて、無線送信デバイスによって受信側デバイスに報告された報告センサデータから導出されうる。
【0066】
別の例として、無線デバイスは、無線デバイスの健全性および/または環境を監視する手段として、その内部温度および/または圧力を測定および報告し、デバイスへのダメージを予測および防止するよう構成されてもよい。本方法の実施形態において、これらの測定された温度および/または圧力は、監視される動作データに含められ、推定されるバッテリ状態の精度をさらに高めるために用いられる。
【0067】
様々な実施形態において機会的に監視される無線接続デバイスの動作データの例は、以下を含むが、これらに限定されない。
・ウェイク/スリープサイクルの長さ、
・アクティブ期間の長さおよび回数、
・アクティブ期間中の動的電流イベントの回数および持続期間、
・アクティブ期間中に送信されたメッセージの数、
・スリープからウェイクへのサイクルの頻度、
・実行された測定の回数、
・実行された計算の回数、
・内部および隣接する環境の温度および/または圧力のプロファイル、および、
・負荷の印加および/または解放中のバッテリ電圧の遷移挙動。
【0068】
本発明によると、その後、動作データは、事前特性評価情報を参照して解析される204。図4を参照すると、この解析204は、監視されているデバイスの測定された特性との動作データの直接比較400、事前特性評価200中に収集および解析された履歴データとの動作データの比較402、ならびに/もしくは、動作ータに対する統計モデルおよび/または機械学習/人工知能の適用404、を含みうる。
【0069】
例えば、そのトレーニング中に、機械学習アルゴリズムは、履歴データにおける環境条件、スリープ期間の長さと、バッテリの不動態化挙動との間の相関を明らかにし、または、既存の相関の性能を強化し、次いで、現在監視されているデバイスの不動態化挙動の予測に役立つように、相関または強化を適用してよい。
【0070】
機会的な動作データの解析204の結果として、バッテリ状態(バッテリの総エネルギ利用量、残りのバッテリ寿命、および/または、バッテリ不動態化を含む)が推定されうる。
【0071】
いくつかの実施形態は、事前特性評価情報200および監視された動作データ204のみに基づいて、電力、バッテリ寿命、および、バッテリ不動態化の推定206を行うが、他の実施形態は、特に動的電流イベント中に、電流を測定して報告できる1または複数の単純、低コスト、かつ、低プロファイルの回路(電流測定回路など)をデバイスに実装することによって、これらの推定をさらに改善する。
【0072】
いくつかの実施形態において、バッテリ電圧の「始動」負荷(すなわち、アクティブ期間の開始時にバッテリが負荷を受けた直後または、動的電流イベント(無線伝送など)中に起きる電圧の一時的な降下および電圧の回復)を監視および報告する電圧センサが、デバイスに実装される。同様に、実施形態において、デバイスは、例えば、アクティブ期間からスリープ期間への遷移に起因して、エネルギ消費の突然の低下がある時に、バッテリ電圧の挙動を監視および報告する。
【0073】
図5を参照すると、バッテリ管理208は、バッテリ寿命を延ばすために無線デバイスの活動を減らすこと500を含みうる。例えば、過剰なエネルギ消費が検出された場合510、バッテリ管理208は、例えば、実行しなければならない測定および/または計算の回数、ならびに/もしくは、送信しなければならないデータの量を削減することで、スリープ期間の長さを延ばしおよび/または各アクティブ期間中に必要とされる動的電流イベントの数を減らすことによって、バッテリ消費率を減少させること500を含みうる。
【0074】
同様に、バッテリ管理は、バッテリの不動態化を管理しないことがバッテリ寿命を短くしうる場合512、無線デバイスの活動を増やすこと502を含みうる。例えば、バッテリからエネルギが引き出される頻度が低すぎる場合、バッテリ内で大きい不動態化層が発生することを許容し、それにより、バッテリがデバイスを動作させるのに十分な動的電力を提供できない可能性がある。これらの実施形態において、事前に特性評価されて機会的に監視されている動作データの解析により、バッテリから電流をより頻繁に引き出す必要があること502が示された場合、バッテリ管理は、不動態化を低減するために、アクティブ期間の頻度および/または動的電流イベントを増やすことを含みうる。
【0075】
実施形態において、デバイスが、あまりに冷たくまたは熱くなっている場合514、バッテリ管理は、例えば、より多いまたは少ない熱を生成させるようにデバイスの活動を増大または減少させ、および/または、デバイスと熱連通する外部温度制御デバイス(ヒータまたはクーラなど)を調節することによって、デバイスの温度が特定の最小値より下がりまたは特定の最大値より上がることを防止する手段を取ること504を含む。極端な温度を避けることにより、デバイスは、構成要素の故障からおよび/または過度の不動態化から保護される。
【0076】
また、バッテリ管理は、バッテリ寿命推定を用いて、バッテリがほぼ使い果たされたか否かを判定し516、エネルギが使い尽くされる前に、余裕を持って(ただし、過度にならずに)バッテリの再充電または交換をスケジューリングすること506を含みうる。
【0077】
本発明の実施形態に関するこれまでの記載は、図解および説明を目的としたものである。この提出物のあらゆるページ、および、そのすべての内容は、特徴付けられ、識別され、または、番号付けられても、本願の中での形態または配置に関わりなく、すべての目的に対して本願の実質的部分であると見なされる。本願は、包括的であることも、開示されている正確な形態に本発明を限定することも意図されていない。多くの変形例および変更例が、本開示に照らして可能である。
【0078】
本願は限られた数の形態で示されているが、本発明の範囲は、これらの形態だけに限定されず、様々な変更および変形が可能である。本明細書で提示されている開示は、本発明の範囲内にある特徴のすべての可能な組みあわせを明示的に開示していない。様々な実施形態について本明細書で開示されている特徴は、一般に、交換可能であり、本発明の範囲から逸脱することなく自己矛盾しない任意の組みあわせに組みあわせられることができる。特に、以下の請求項に提示されている限定は、従属請求項が互いに論理的に矛盾しない限り、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の数および任意の順序でそれらに対応する従属請求項と組み合わせられることができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリによって作動するリモート無線デバイスを管理する方法であって、
A)前記無線デバイスに関する事前特性評価情報を取得する工程と、前記事前特性評価情報は、前記デバイスの動作を特徴付ける動作段階および/または活動の実質的にすべてを識別し、前記段階および/または活動の各々の間に前記バッテリから引き出されるエネルギの量を決定することを含み、
B)前記無線デバイスを稼働させる工程と、
C)前記無線デバイスの稼働中に、前記無線デバイスの実際の段階および/または活動に関する動作データを受信する工程と、前記動作データは、バッテリ管理に関係のない目的で取得される点で、「機会的」であり、
D)前記事前特性評価情報に照らして前記機会的な動作データを解析する工程と、
E)工程D)の前記解析に従って、前記バッテリの状態を推定する工程と、前記推定された状態は、前記バッテリが最後に再充電または交換されて以来、前記バッテリによって消費された推定総エネルギを含み、
F)前記リモート無線デバイスの動作の期間中に、工程C)からE)を繰り返す工程と、
G)前記バッテリの前記推定された状態に基づいて、バッテリ管理行動を取る工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、リモート無線センサである、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、少なくとも1つのアクティブモードと少なくとも1つのスリープモードとの間で循環するよう構成されており、前記事前特性評価情報は、前記アクティブモードおよびスリープモードの各々について、前記アクティブモードまたはスリープモードのエネルギ利用プロファイルを含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記事前特性評価情報は、動的電流イベントに関連するエネルギ利用量を含み、前記動的電流イベント中には、前記リモート無線デバイスの他の動作段階および活動のほとんどの間に前記バッテリから引き出される低い電流量と比べて、前記バッテリから比較的高い電流量が引き出される、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記事前特性評価情報は、
前記無線デバイスに関する履歴データと、
同様または同一のバッテリおよび/またはデバイスのバッテリ利用量および/または挙動に関する履歴データと、
前記デバイスが稼働されるまでに経過する推定総バッテリアイドル時間に関する情報と、
工程C)からE)が少なくとも一回実行された後に、工程C)からE)のいずれかに由来する情報を前記事前特性評価情報と組み合わせた情報と、
の内の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記方法は、さらに、前記事前特性評価情報を解析する工程を備える、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記事前特性評価情報は、前記無線デバイスに関する履歴データを含み、工程D)は、
前記履歴データに従って、バッテリ寿命の統計モデルを構築する工程と、
前記履歴データに従って、バッテリ不動態化の統計モデルを構築する工程と、
前記履歴データを用いて、機械学習/人工知能アルゴリズムをトレーニングする工程と、
の内の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記バッテリ寿命の統計モデル、前記バッテリ不動態化の統計モデル、前記機械学習/人工知能の前記トレーニング、の内の少なくとも1つは、前記機会的な動作データに照らして工程B)の後に、定期的または継続的に更新される、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、工程E)は、前記統計モデルおよび前記機械学習/人工知能アルゴリズムの内の少なくとも1つを前記機会的な動作データに適用する工程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、前記リモート無線デバイスが入ったアクティブ期間およびスリープ期間の持続時間および回数を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、発生した動的電流イベントの回数を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記動的電流イベントは、前記リモート無線デバイスによる無線伝送を含む、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、無線センサであり、前記動的電流イベントは、前記無線センサによって行われる測定および/または前記無線センサによって実行される計算を含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、前記リモート無線デバイスによって無線で再送信された情報の量を含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記機会的な動作データの少なくとも一部は、前記ネットワークの管理を支援して取得される、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記機会的な動作データの少なくとも一部は、前記無線デバイスのリモート管理に起因して取得される、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記リモート無線デバイスは、リモート無線センサであり、前記機会的な動作データの少なくとも一部は、前記リモート無線センサが検知したデータの前記リモート無線センサによる報告に起因して取得される、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、前記機会的な動作データは、さらに、前記リモート無線デバイスの内部および前記リモート無線デバイスの周囲環境の内の少なくとも1つに関する環境情報を含む、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、前記バッテリが最後に再充電または交換されて以来、前記バッテリによって消費された前記総エネルギを推定することは、さらに、前記リモート無線デバイスに備えられている電流測定回路によって取得された電流測定データに従う、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、前記バッテリの前記状態を推定する工程は、さらに、前記リモート無線デバイスに備えられている電圧測定回路によって取得された過渡電圧測定値に従って、負荷の印加および/または解放中の前記バッテリ電圧の遷移挙動を解析する工程を含む、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記バッテリの前記推定された状態は、さらに、前記バッテリの不動態化の程度の推定を含む、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、工程F)の前記バッテリ管理行動は、
前記バッテリがほぼ消耗したことを前記エネルギ消費推定が示した場合に、前記バッテリを再充電または交換する行動と、
前記デバイスのエネルギ消費を減らすために、デバイス活動の程度を減らす行動と、
前記バッテリの不動態化を低減するために、前記デバイス活動の程度を増やす行動と、
前記バッテリの過度の冷却を避けるために、前記デバイス活動の程度を増やす行動と、
前記バッテリの過度の加熱を避けるために、前記デバイス活動の程度を減らす行動と、
前記バッテリの過度の冷却または加熱を避けるために、前記無線デバイスに近接しているが独立している温度制御デバイスを調節する行動と、
の内の少なくとも1つを含む、方法。
【国際調査報告】