(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】KIF18A阻害剤化合物の塩及び固体状形態
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240711BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240711BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20240711BHJP
【FI】
A61K31/506
C07D401/04
A61P43/00 111
A61P35/00
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/6851 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503546
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022037928
(87)【国際公開番号】W WO2023004075
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チャン
(72)【発明者】
【氏名】アガーワル,プラシャント
(72)【発明者】
【氏名】ロゼリ,アンドレアス アール.
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒュンスー
(72)【発明者】
【氏名】フローン,マイケル ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QQ58
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書において開示されるのは、遊離塩基化合物2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)-N-[2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル]-4-[(2-ヒドロキシエタンスルホニル)アミノ]ベンズアミド(化合物A)の塩、結晶無水形態、水和物、溶媒和物または共結晶;調製方法、医薬品組成物、及びモータータンパク質キネシンファミリーメンバー18A(KIF18A)阻害によって媒介される疾患の治療方法であって、該疾患ががんまたは腫瘍を含む新生物疾患である方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学構造を有する化合物Aの塩、水和物、溶媒和物または共結晶:
【化1】
または結晶無水形態を含む化合物Aの固体形態、その塩、溶媒和物、または共結晶。
【請求項2】
塩酸塩(化合物A-HCl)、メシル酸塩(化合物A-MsA)、トシル酸塩(化合物A-TsA)、硫酸塩(化合物A-硫酸塩)、可変水和物(化合物A-可変水和物)テトラヒドロフラン溶媒和物(化合物A-THF)、エタノール溶媒和物(化合物A-エタノール)、1-プロパノール溶媒和物(化合物A-1-プロパノール)、イソプロピルアルコール溶媒和物(化合物A-IPA)メタノール溶媒和物(化合物A-メタノール)、酢酸イソプロピル溶媒和物(化合物A-IPAc)、アセトン溶媒和物(化合物A-アセトン)、シクロペンチルメチルエーテル溶媒和物(化合物A-CPME)ジオキサン溶媒和物(化合物A-ジオキサン)、酢酸エチル溶媒和物(化合物A-EtOAc)、アセトニトリル溶媒和物(化合物A-MeCN)、メチルtert-ブチルエーテル溶媒和物(化合物A-MTBE)トルエン溶媒和物(化合物A-トルエン)、ドデシル硫酸塩(化合物A-ドデシル硫酸塩)、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物(化合物A-DMF-水和物)、ジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物(化合物A-DMAC)、モノベシル酸塩水和物(化合物A-ベシル酸塩-水和物)、カフェイン共結晶(化合物A-カフェイン)、クエン酸共結晶(化合物A-クエン酸)、サッカリン共結晶(化合物A-サッカリン)、L-酒石酸共結晶(化合物A-L-酒石酸)、もしくは尿素共結晶(化合物A-尿素);またはそれらの固体形態から選択される、請求項1に記載の塩、水和物、溶媒和物または共結晶。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物A-HClの固体形態。
【請求項4】
結晶形態1であり、固体状態の
19F NMRのピークが-91及び-103±0.5ppmにあることを特徴とする、請求項3に記載の化合物A-HClの固体形態。
【請求項5】
CuKα放射線を用いたXRPDパターンのピークが7.5、16.9、及び20.2±0.2°2θにあることをさらに特徴とする、請求項4に記載の化合物A-HClの結晶形態形1。
【請求項6】
CuKα放射線を用いたXRPDパターンのピークが12.8、18.2、22.7、23.6、24.8及び26.1±0.2°2θにあることをさらに特徴とする、請求項5に記載の化合物A-HClの結晶形態1。
【請求項7】
CuKα放射線を用いたXRPDパターンのピークが10.9、14.5、15.7、15.9、19.8、20.6、21.6、23.2、26.1及び26.8±0.2°2θにあることをさらに特徴とする、請求項6に記載の化合物A-HClの結晶形態1。
【請求項8】
実質的に
図1に示すようなXRPDパターンを有する、請求項4から7のいずれか1項に記載の化合物A-HClの結晶形態1。
【請求項9】
示差走査熱量測定により測定される場合に、268.5℃から274.5℃に吸熱転移を有する、請求項4から8のいずれか1項に記載の化合物A-HClの結晶形態1。
【請求項10】
吸熱転移が271.5℃±3℃である、請求項9に記載の化合物A-HClの結晶形態1。
【請求項11】
実質的に
図2に示すような熱重量分析(TGA)を有する、請求項10に記載の化合物A-HClの結晶形態1。
【請求項12】
実質的に
図5に示すような単結晶構造を有する、請求項4から11のいずれか1項に記載の化合物A-HClの結晶形態1。
【請求項13】
下記の構造:
【化2】
を有する、請求項2に記載の化合物Aの塩酸塩。
【請求項14】
請求項2から12のいずれか1項に記載の化合物A-HClの固体形態、または請求項13に記載の化合物AのHCl塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物。
【請求項15】
KIF18A阻害によって媒介される疾患に罹患している対象を治療する方法であって、それを必要としている対象に、薬学的有効量の請求項14に記載の医薬品組成物を投与することを含む前記方法。
【請求項16】
前記KIF18Aの阻害によって媒介される疾患が、卵巣癌、乳癌、肺癌、または子宮内膜癌から選択されるがんである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、不活性化されたTP53遺伝子に対して陽性、及び/または不活性化されたRb遺伝子、(ii)増幅されたCCNE1遺伝子もしくは過剰発現されたCCNE1遺伝子産物、(iii)不活性化されたBRCA遺伝子、または(iv)それらの組み合わせのうちの少なくとも1つに対して陽性である細胞を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項2に記載の化合物A-HCl塩またはその固体形態の調製方法であって、塩酸、化合物A及び適切な溶媒を組み合わせて、前記化合物A-HClまたはその固体形態を形成することを含む前記方法。
【請求項20】
前記適切な溶媒が、アセトニトリル/水、アセトニトリル/1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン/水、N-メチル-2-ピロリドン/エタノールまたはアセトン/水から選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書には、本明細書と同時に提出され、以下のように特定されるST.26形式のコンピュータ読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列リストが、参照によりその全体が組み込まれる:“A-2832-WO01-SEC_FromUS-PSP_Seq_Listing_ST26_072122b”という名称の137KBのXML形式ファイルであり、2022年7月21日に作成された。
【0002】
本開示は、遊離塩基化合物2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)-N-[2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル]-4-[(2-ヒドロキシエタンスルホニル)アミノ]ベンズアミド(化合物A)の塩、水和物、溶媒和物もしくは共結晶;または結晶無水形態を含む化合物Aの固体形態、その塩、水和物、溶媒和物もしくは共結晶;調製方法、医薬品組成物、及びモータータンパク質キネシンファミリーメンバー18A(KIF18A)阻害によって媒介される疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
遊離塩基化合物2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)-N-[2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル]-4-[(2-ヒドロキシエタンスルホニル)アミノ]ベンズアミド(化合物A)は、モータータンパク質キネシンファミリーメンバー18A(KIF18A)の阻害剤として有用である。
【化1】
【0004】
キネシン類は、細胞分裂、ならびに細胞内小胞及び小器官の輸送に重要な役割を果たす分子モーターである。有糸分裂キネシンは、紡錘体集合、染色体分離、中心体分離、及び動態のいくつかの態様で役割を果たしている。ヒトのキネシンは、いわゆる「モータードメイン」内の配列相同性に基づいて14のサブファミリーに分類される。このドメインのATPアーゼ活性は、微小管(MT)に沿って一方向に動く原動力となる。これらのタンパク質の非運動性ドメインは、カーゴ結合を担う。「カーゴ」は、様々な膜性細胞小器官、シグナル伝達足場システム、及び染色体のいずれか1つを含み得る。キネシンはATP加水分解のエネルギーを使って、極性微小管に沿ってカーゴを移動させる。従って、キネシンはしばしば「プラス末端」または「マイナス末端」指向性モーターと呼ばれる。
【0005】
KIF18A遺伝子はキネシン-8サブファミリーに属し、プラス末端指向性モーターである。KIF18Aは動原体微小管のプラス末端の動態に影響を与え、染色体の正しい位置決めと紡錘体の張力を制御していると考えられている。ヒトKIF18Aの欠失は、HeLa子宮頸癌細胞において、より長い紡錘体、中期における染色体振動の増加、及び有糸分裂紡錘体集合チェックポイントの活性化をもたらす。KIF18Aはがん治療のための実行可能な標的であると思われる。KIF18Aは、結腸癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、膀胱癌、頭部癌、頸部癌、子宮頸癌、及び卵巣癌を含むがこれらに限定されない様々ながんで過剰発現している。さらに、KIF18Aの遺伝子欠失もしくはノックダウン、または阻害は、がん細胞株中において、有糸分裂紡錘体装置に影響を及ぼす。特に、KIF18Aの阻害は、中間期における有糸分裂スリップ後に、アポトーシスを介した有糸分裂中の細胞死を促進し得る既知の脆弱性である、有糸分裂細胞停止、有糸分裂カタストロフ、または多極性により駆動される致命性もしくは死を誘導することが見出されている。
【0006】
ヒトKIF18A遺伝子配列、ヒトKIF18A mRNA配列、及びコードされたKIF18Aタンパク質は、それぞれ配列番号12、13及び11として本明細書に提供される。
【0007】
化合物A、ならびにそれを製造する代表的な方法は、国際特許出願公開第WO2020/132648号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、化合物Aの安定な塩、水和物、溶媒和物、または共結晶が、化合物Aの固体形態(結晶性無水化合物Aまたは非晶質化合物Aを含む)と共に、化合物Aの安定な塩、水和物、溶媒和物、または共結晶が特に化合物Aの商業的医薬製造のために所望される。
【発明の概要】
【0008】
1つの態様において、本明細書に開示されるのは、以下に示す構造を有する化合物Aの塩、水和物、溶媒和物もしくは共結晶、
【化2】
(この化学名は、2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)-N-[2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル]-4-[(2-ヒドロキシエタンスルホニル)アミノ]ベンズアミドであるか、またはN-(2-(4,4-ジフルオロピペリジン-1-イル)-6-メチルピリミジン-4-イル)-4-((2-ヒドロキシエチル)スルホンアミド)-2-(6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-イル)ベンズアミドとしても知られている)、または化合物Aの固体形態(結晶無水化合物Aまたは非晶質化合物Aを含む)、あるいはその塩、水和物、溶媒和物もしくは共結晶である。
【0009】
別の態様において、本明細書に開示されるのは、結晶無水形態を含む化合物Aの固体形態、化合物Aの塩、水和物、溶媒和物、または共結晶である。固体形態は、結晶形態または非晶質形態であり得る。
【0010】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるのは、塩酸塩(化合物A-HCl)、メシル酸塩(化合物A-MsA)、トシル酸塩(化合物A-TsA)、硫酸塩(化合物A-硫酸塩)、可変水和物(化合物A-可変水和物)テトラヒドロフラン溶媒和物(化合物A-THF)、エタノール溶媒和物(化合物A-エタノール)、1-プロパノール溶媒和物(化合物A-1-プロパノール)、イソプロピルアルコール溶媒和物(化合物A-IPA)メタノール溶媒和物(化合物A-メタノール)、酢酸イソプロピル溶媒和物(化合物A-IPAc)、アセトン溶媒和物(化合物A-アセトン)、シクロペンチルメチルエーテル溶媒和物(化合物A-CPME)ジオキサン溶媒和物(化合物A-ジオキサン)、酢酸エチル溶媒和物(化合物A-EtOAc)、アセトニトリル溶媒和物(化合物A-MeCN)、メチルtert-ブチルエーテル溶媒和物(化合物A-MTBE)トルエン溶媒和物(化合物A-トルエン)、ドデシル硫酸塩(化合物A-ドデシル硫酸塩)、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物(化合物A-DMF-水和物)、ジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物(化合物A-DMAC)、モノベシル酸塩水和物(化合物A-ベシル酸塩-水和物)、カフェイン共結晶(化合物A-カフェイン)、クエン酸共結晶(化合物A-クエン酸)、サッカリン共結晶(化合物A-サッカリン)、L-酒石酸共結晶(化合物A-L-酒石酸)、もしくは尿素共結晶(化合物A-尿素);またはそれらの固体形態から選択される、請求項1の塩、無水物、水和物、溶媒和物、または共結晶である。
【0011】
実施形態1において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aの塩酸塩を提供する。
【化3】
【0012】
実施形態1aにおいて、本発明は、化合物A-HClの固体形態を提供する。副実施形態において、固体形態は結晶形態1(化合物A-HCl-形態1)である。別の副実施形態では、固体形態は結晶形態2(化合物A-HCl-形態2)である。
【0013】
実施形態1bにおいて、本発明は、固相の19F NMRピークが-91及び-103ppmであることを特徴とする、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0014】
実施形態1cにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いた粉末X線回折(XRPD)パターンピーク7.5、16.9、及び20.2±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0015】
実施形態1dにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いた粉末X線回折(XRPD)パターンピーク12.8、18.2、22.7、23.6、24.8及び26.1±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0016】
実施形態1eにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いた粉末X線回折(XRPD)パターンピーク10.9、14.5、15.7、15.9、19.8、20.6、21.6、23.2、26.1及び26.8±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0017】
実施形態1fにおいて、本発明は、実質的に
図1に示すようなXRPDパターンを有する、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0018】
実施形態1gにおいて、本発明は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、268.5℃~274.5℃に吸熱転移を有する、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0019】
実施形態1hにおいて、本発明は、吸熱転移が271.5℃±3℃である結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0020】
実施形態1iにおいて、本発明は、実質的に
図2に示すような熱重量分析(TGA)を有する、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0021】
実施形態1jにおいて、本発明は、実質的に
図5に示すような単結晶構造を有する、結晶性化合物A-HCl-形態1を提供する。
【0022】
実施形態2において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aのメシル酸塩を提供する。
【化4】
【0023】
実施形態2aにおいて、本発明は、化合物A-MsAの固体形態を提供する。副実施形態において、固体形態は、結晶形態1(化合物A-MsA-形態1)である。別の副実施形態では、固体形態は結晶形態2(化合物A-MsA-形態2)である。
【0024】
実施形態2bにおいて、本発明は、固相の19F NMRピークが-95.2及び-103.2±0.5ppmであることを特徴とする、結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。スピニングサイドバンドは(*)で示す。
【0025】
実施形態2cにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いた粉末X線回折(XRPD)パターンピーク7.0、16.5、及び23.9±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。
【0026】
実施形態2dにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いたXRPDパターンピーク12.6、15.7、17.4、18.5、20.0及び21.0±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。
【0027】
実施形態2eにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いたXRPDパターンピーク5.8、11.8、13.5、15.3、16.1、18.0、20.6、25.2、28.0及び30.5±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。
【0028】
実施形態2fにおいて、本発明は、実質的に
図10に示すようなXRPDパターンを有する、結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。
【0029】
実施形態2gにおいて、本発明は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、247℃~253℃に吸熱転移を有する、結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。
【0030】
実施形態2hにおいて、本発明は、吸熱転移が250℃±3℃である結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。
【0031】
実施形態2iにおいて、本発明は、実質的に
図11に示すような熱重量分析(TGA)を有する、結晶性化合物A-MsA-形態1を提供する。
【0032】
実施形態3において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aのトシル酸塩を提供する。
【化5】
【0033】
実施形態3aにおいて、本発明は、化合物A-TsAの固体形態を提供する。副実施形態において、固体形態は、結晶形態1(化合物A-TsA-形態1)である。別の副実施形態において、固体形態は結晶形態2(化合物A-TsA-形態2)である。副実施形態において、固体形態は結晶形態3(化合物A-TsA-形態3)である。別の副実施形態では、固体形態は結晶形態4(化合物A-TsA-形態4)である。別の副実施形態では、固体形態は結晶形態5(化合物A-TsA-形態5)である。さらに別の副実施形態では、固体形態は、ジトシル酸塩結晶形態6(化合物A-DiTsA-形態6)である。
【0034】
実施形態3bにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いた粉末X線回折(XRPD)パターンピーク6.2、14.7、及び23.5±0.2°2θによって特徴付けられる、結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0035】
実施形態3cにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いたXRPDパターンピーク10.5、12.4、14.2、19.1、21.5及び29.0±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0036】
実施形態3dにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いたXRPDパターンピーク15.5、16.5、17.7、18.3、18.6、20.1、20.8、24.1、及び25.3±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0037】
実施形態3eにおいて、本発明は、実質的に
図24aに示すようなXRPDパターンを有する結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0038】
実施形態3fにおいて、本発明は、実質的に
図24bに示すような単結晶構造を有する結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0039】
実施形態3gにおいて、本発明は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、250℃~256℃に吸熱転移を有する、結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0040】
実施形態3hにおいて、本発明は、吸熱転移が253℃±3℃である結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0041】
実施形態3iにおいて、本発明は、実質的に
図25に示すような熱重量分析(TGA)を有する結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。
【0042】
実施形態3jにおいて、本発明は、実質的に
図26に示されるように、固相の
19F NMRピークが-96.93及び-101.60±0.5ppmであることを特徴とする、結晶性化合物A-TsA-形態4を提供する。スピニングサイドバンドは(*)で示す。
【0043】
実施形態4において、本発明は、化合物Aの固体形態を提供する。副実施形態において、固体形態は、非晶質形態(化合物A-非晶質)である。別の副実施形態では、固体形態は結晶性化合物A-形態1(化合物A-形態1)である。
【0044】
実施形態4aにおいて、本発明は、実質的に
図33に示すようなXRPDパターンを有する化合物A-非晶質を提供する。
【0045】
実施形態4bにおいて、本発明は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、融解開始が88℃~94℃である化合物A-非晶質を提供する。副実施形態において、化合物A-非晶質は、91℃±3℃に融解開始を有する。副実施形態では、化合物A-非晶質は、実質的に
図34に示すようなDSCサーモグラフパターンを有する。
【0046】
実施形態4cにおいて、本発明は、実質的に
図35に示すような熱重量分析(TGA)を有する化合物A-非晶質を提供する。
【0047】
実施形態4dにおいて、本発明は、実質的に
図52に示すような熱重量分析(TGA)を有する結晶性化合物A-形態1を提供する。
【0048】
実施形態5において、本発明は、以下のような構造を有する化合物Aの硫酸塩を提供する。
【化6】
【0049】
実施形態5aにおいて、本発明は、化合物A-硫酸塩の固体形態を提供する。副実施形態において、固体形態は結晶形態1(化合物A-硫酸塩-形態1)である。別の副実施形態において、化合物A-硫酸塩-形態1は、実質的に
図30に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-硫酸塩-形態1は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、261℃~267℃に吸熱転移を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-硫酸塩-形態1は、264℃±3℃に吸熱転移を有する。さらに別の副実施形態では、化合物A-硫酸塩-形態1は、実質的に
図31に示すような熱重量分析(TGA)を有する。
【0050】
実施形態6において、本発明は、以下に示すような構造を有する化合物Aの水和物を提供する:
【化7】
(式中、nは0.5~2の範囲の数、またはそれらの変数(混合物)である。nの値は、種々の調製方法及び/または保存条件から結果として変化し得る。)
【0051】
実施形態6aにおいて、本発明は、化合物A-水和物の固体形態を提供する。
【0052】
実施形態6bにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いた粉末X線回折(XRPD)パターンピーク13.9、16.2、及び19.6±0.2°2θによって特徴付けられる、化合物A-可変-水和物-形態2を提供する。
【0053】
実施形態6cにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いたXRPDパターンピーク3.5、17.4、18.4、18.7、20.0、20.2、22.6、22.9、27.5、及び30.8±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、化合物A-可変-水和物-形態2を提供する。
【0054】
実施形態6dにおいて、本発明は、CuKα放射線を用いたXRPDパターンピーク3.5、10.1、11.2、13.9、16.2、18.2、19.2、23.2、及び26.0±0.2°2θによってさらに特徴付けられる、化合物A-可変-水和物-形態2を提供する。
【0055】
実施形態6eにおいて、本発明は、実質的に
図36に示すようなXRPDパターンを有する化合物A-可変水和物-形態2を提供する。
【0056】
実施形態6fにおいて、本発明は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、48℃~54℃に脱水開始を、そして136℃の融点を有する化合物A-可変-水和物-形態2を提供する。副実施形態では、化合物A-可変-水和物-形態2は、実質的に
図37に示すようなDSCサーモグラフパターンを有する。
【0057】
実施形態6gにおいて、本発明は、51℃±3℃に吸熱転移を有する化合物A-可変-水和物-形態2を提供する。
【0058】
実施形態6hにおいて、本発明は、実質的に
図38に示すような熱重量分析(TGA)を有する化合物A-可変-水和物-形態2を提供する。
【0059】
実施形態7において、本発明は、化合物Aの結晶無水形態(化合物A-無水)を提供する。
【0060】
実施形態7aにおいて、固体形態は、結晶無水形態3(化合物A-無水-形態3)である。副実施形態において、化合物A-無水-形態3は、実質的に
図40に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-無水-形態3は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、193.5℃~199.5℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態では、化合物A-無水-形態3は、196.5℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態では、化合物A-無水-形態3は、実質的に
図42に示すような動的蒸気収着(DVS)を有する。
【0061】
実施形態7bにおいて、固体形態は、結晶無水形態4(化合物A-無水-形態4)である。副実施形態において、化合物A-無水-形態4は、実質的に
図43に示すようなXRPDパターンを有する。
【0062】
実施形態7cにおいて、固体形態は、結晶無水形態5(化合物A-無水-形態5)である。副実施形態において、化合物A-無水-形態5は、実質的に
図44に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-無水-形態5は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、188.5℃~194.5℃に、実質的に
図45に示すような融解開始を有する。さらに別の副実施形態では、化合物A-無水-形態5は、191.5℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-無水-形態5は、実質的に
図46に示すような動的蒸気収着(DVS)を有し、これは無水形態5が化合物A-一水和物に再水和したことを示した。
【0063】
実施形態7dにおいて、固体形態は、結晶無水形態6(化合物A-無水-形態6)である。副実施形態において、化合物A-無水-形態6は、実質的に
図47に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-無水-形態6は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、183.4℃~189.4℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態では、化合物A-無水-形態6は、186.4℃±3℃に融解開始を有する。
【0064】
実施形態7eにおいて、固体形態は、結晶無水形態7(化合物A-無水-形態7)である。副実施形態において、化合物A-無水-形態7は、実質的に
図49に示すようなXRPDパターンを有する。
【0065】
実施形態7fにおいて、固体形態は、結晶無水形態8(化合物A-無水-形態8)である。副実施形態において、化合物A-無水-形態8は、実質的に
図50に示すようなXRPDパターンを有する。
【0066】
実施形態8において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aのテトラヒドロフラン(THF)溶媒和物を提供する。
【化8】
【0067】
実施形態8aにおいて、本発明は、化合物A-THFの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-THFは、実質的に
図53に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-THFは、示差走査熱量測定によって測定されるとき、188.5℃~194.5℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-THFは、191.5℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-THFは、実質的に
図54に示すような熱重量分析(TGA)を有する。
【0068】
実施形態9において、本発明は、化合物Aのエタノール溶媒和物を提供する。実施形態9aにおいて、本発明は、化合物A-エタノールの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-エタノールは、実質的に
図55に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-エタノールは、示差走査熱量測定によって測定されるとき、162.6℃~168.6℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-エタノールは、165.6℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-エタノールは、実質的に
図56に示すような熱重量分析(TGA)を有する。
【0069】
実施形態10において、本発明は、1-プロパノール溶媒和物(化合物A-1-プロパノール)を提供する。実施形態10aにおいて、本発明は、化合物A-1-プロパノールの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-1-プロパノールは、実質的に
図58に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-1-プロパノールは、示差走査熱量測定によって測定されるとき、191.2℃~197.2℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-1-プロパノールは、194.2℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-1-プロパノールは、実質的に
図59に示すような熱重量分析(TGA)を有する。
【0070】
実施形態11において、本発明は、化合物Aのイソプロピルアルコール溶媒和物(化合物A-IPA)を提供する。実施形態11aにおいて、本発明は、化合物A-IPAの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-IPAは、実質的に
図60に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-IPAは、示差走査熱量測定によって測定されるとき、155.7℃~161.7℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-IPAは158.7℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-IPAは、実質的に
図61に示すような熱重量分析(TGA)を有する。
【0071】
実施形態12において、本発明は、化合物Aのメタノール溶媒和物(化合物A-メタノール)を提供する。実施形態12aにおいて、本発明は、化合物A-メタノールの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-メタノールは、実質的に
図62に示すようなXRPDパターンを有する。
【0072】
実施形態13において、本発明は、化合物Aの酢酸イソプロピル溶媒和物(化合物A-IPAc)を提供する。実施形態13aにおいて、本発明は、化合物A-IPAcの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-IPAcは、実質的に
図63に示すようなXRPDパターンを有する。
【0073】
実施形態14において、本発明は、化合物Aのアセトン溶媒和物(化合物A-アセトン)を提供する。実施形態14aにおいて、本発明は、化合物A-アセトンの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-アセトンは、実質的に
図64に示すようなXRPDパターンを有する。
【0074】
実施形態15において、本発明は、化合物Aのシクロペンチルメチルエーテル溶媒和物(化合物A-CPME)を提供する。実施形態15aにおいて、本発明は、化合物A-CPMEの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-CPMEは、実質的に
図65に示すようなXRPDパターンを有する。
【0075】
実施形態16において、本発明は、化合物Aのジオキサン溶媒和物(化合物A-ジオキサン)を提供する。実施形態16aにおいて、本発明は、化合物A-ジオキサンの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-ジオキサンは、実質的に
図66に示すようなXRPDパターンを有する。
【0076】
実施形態17において、本発明は、化合物Aの酢酸エチル溶媒和物(化合物A-EtOAc)を提供する。実施形態17aにおいて、本発明は、化合物A-EtOAcの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-EtOAcは、実質的に
図67に示すようなXRPDパターンを有する。
【0077】
実施形態18において、本発明は、化合物Aのアセトニトリル溶媒和物(化合物A-MeCN)を提供する。実施形態18aにおいて、本発明は、化合物A-MeCNの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-MeCNは、実質的に
図68に示すようなXRPDパターンを有する。
【0078】
実施形態19において、本発明は、化合物Aのメチルtert-ブチルエーテル溶媒和物(化合物A-MTBE)を提供する。実施形態19aにおいて、本発明は、化合物A-MTBEの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-MTBEは、実質的に
図69に示すようなXRPDパターンを有する。
【0079】
実施形態20において、本発明は、化合物Aのトルエン溶媒和物(化合物A-トルエン)を提供する。実施形態20aにおいて、本発明は、化合物A-トルエンの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-トルエンは、実質的に
図70に示すようなXRPDパターンを有する。
【0080】
実施形態21において、本発明は、化合物Aのドデシル硫酸塩(化合物A-ドデシル硫酸塩)を提供する。実施形態21aにおいて、本発明は、ドデシル硫酸塩(化合物A-ドデシル硫酸塩)の固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-ドデシル硫酸塩は、実質的に
図71に示すようなXRPDパターンを有する。
【0081】
実施形態22において、本発明は、化合物Aのジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物(化合物A-DMF-水和物)を提供する。実施形態22aにおいて、本発明は、化合物A-DMF-水和物の固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-DMF-水和物は、実質的に
図73に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-DMF-水和物は、示差走査熱量測定によって測定されるとき、104.8℃~110.8℃に融解開始温度を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-DMF-水和物は、107.8℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-DMF-水和物は、実質的に
図74に示すようなDSCパターンを有する。
【0082】
実施形態23において、本発明は、化合物Aのジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物(化合物A-DMAC)を提供する。実施形態23aにおいて、本発明は、化合物A-DMACの固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-DMACは、実質的に
図75に示すようなXRPDパターンを有する。別の副実施形態において、化合物A-DMACは、示差走査熱量測定によって測定されるとき、147℃~153℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-DMACは、150℃±3℃に融解開始を有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-DMACは、実質的に
図76に示すようなDSCパターンを有する。
【0083】
実施形態24において、本発明は、化合物Aのモノベシル酸塩水和物(化合物A-ベシル酸塩-水和物)を提供する。実施形態24aにおいて、本発明は、化合物A-ベシル酸塩-水和物の固体形態を提供する。実施形態24bにおいて、本発明は、化合物A-ベシル酸塩-水和物形態1の固体形態を提供する。副実施形態において、化合物A-ベシル酸塩-水和物形態1は、実質的に
図77に示すようなXRPDパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-ベシル酸塩-水和物形態1は、実質的に
図78に示すようなDSCパターンを有する。
【0084】
実施形態25において、本発明は、化合物Aのカフェイン共結晶(化合物A-カフェイン)を提供する。実施形態25aにおいて、本発明は、化合物A-カフェインの固体形態を提供する。実施形態25bにおいて、化合物A-カフェインの固体形態は、結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1である。副実施形態において、化合物A-カフェイン共結晶形態1は、実質的に
図79に示すようなXRPDパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-カフェイン共結晶形態1は、実質的に
図80に示すようなDSCパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-カフェイン共結晶形態1は、実質的に
図81に示すようなDVSパターンを有する。
【0085】
実施形態26において、本発明は、化合物Aのクエン酸共結晶(化合物A-クエン酸)を提供する。実施形態26aにおいて、本発明は、化合物A-クエン酸の固体形態を提供する。実施形態26bにおいて、化合物A-クエン酸の固体形態は、結晶性の化合物A-クエン酸共結晶形態1である。副実施形態において、化合物A-クエン酸共結晶形態1は、実質的に
図82に示すようなXRPDパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-クエン酸共結晶形態1は、実質的に
図83に示すようなDSCパターンを有する。
【0086】
実施形態26cにおいて、化合物A-クエン酸の固体形態は、結晶性化合物Aクエン酸共結晶形態2である。副実施形態において、化合物A-クエン酸共結晶形態2は、実質的に
図84に示すようなXRPDパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-クエン酸共結晶形態2は、実質的に
図85に示すようなDSC及びTGAパターンを有する。
【0087】
実施形態27において、本発明は、化合物Aのサッカリン共結晶(化合物A-サッカリン)を提供する。実施形態27aにおいて、本発明は、化合物A-サッカリンの固体形態を提供する。実施形態27bにおいて、化合物A-サッカリンの固体形態は、結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1である。副実施形態において、化合物A-サッカリン共結晶形態1は、実質的に
図86に示すようなXRPDパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-サッカリン共結晶形態1は、実質的に
図87に示すようなDSCパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-サッカリン共結晶形態1は、実質的に
図88に示すようなDVSパターンを有する。
【0088】
実施形態28において、本発明は、L-酒石酸共結晶(化合物A-L-酒石酸)を提供する。実施形態28aにおいて、本発明は、化合物A-L-酒石酸の固体形態を提供する。実施形態28bにおいて、化合物A-L-酒石酸の固体形態は、結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1である。副実施形態において、化合物A-L-酒石酸共結晶形態1は、実質的に
図89に示すようなXRPDパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-L-酒石酸共結晶形態1は、実質的に
図90に示すようなDSCパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-L-酒石酸共結晶形態1は、実質的に
図91に示すようなDVSパターンを有する。
【0089】
実施形態29において、本発明は、尿素共結晶(化合物A-尿素)を提供する。実施形態29aにおいて、本発明は、化合物A-尿素の固体形態を提供する。実施形態29bにおいて、化合物A-尿素の固体形態は、結晶性化合物A-尿素共結晶形態1である。副実施形態において、化合物A-尿素共結晶形態1は、実質的に
図92に示すようなXRPDパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-尿素共結晶形態1は、実質的に
図93に示すようなDSCパターンを有する。さらに別の副実施形態において、化合物A-尿素共結晶形態1は、実質的に
図94に示すようなDVSパターンを有する。
【0090】
実施形態30において、本発明は、化合物Aの塩、水和物、溶媒和物、もしくは共結晶;または化合物Aの固体形態、その塩、水和物、溶媒和物、もしくは共結晶を含む医薬品組成物を提供する。
【0091】
実施形態30aにおいて、本発明は、化合物Aの固体形態、化合物Aの塩、水和物、溶媒和物、または共結晶を含む医薬品組成物を提供する。副実施形態において、固体形態は結晶性または非晶質である。副実施形態において、固体形態は結晶性化合物A-形態1である。別の副実施形態において、固体形態は、結晶無水形態3、4、5、6、7、または8を含む、無水化合物Aの結晶形態である。
【0092】
実施形態30bにおいて、本発明は、塩酸塩(化合物A-HCl)、メシル酸塩(化合物A-MsA)、トシル酸塩(化合物A-TsA)、硫酸塩(化合物A-硫酸塩)、可変水和物(化合物A-可変水和物)テトラヒドロフラン溶媒和物(化合物A-THF)、エタノール溶媒和物(化合物A-エタノール)、1-プロパノール溶媒和物(化合物A-1-プロパノール)、イソプロピルアルコール溶媒和物(化合物A-IPA)メタノール溶媒和物(化合物A-メタノール)、酢酸イソプロピル溶媒和物(化合物A-IPAc)、アセトン溶媒和物(化合物A-アセトン)、シクロペンチルメチルエーテル溶媒和物(化合物A-CPME)ジオキサン溶媒和物(化合物A-ジオキサン)、酢酸エチル溶媒和物(化合物A-EtOAc)、アセトニトリル溶媒和物(化合物A-MeCN)、メチルtert-ブチルエーテル溶媒和物(化合物A-MTBE)トルエン溶媒和物(化合物A-トルエン)、ドデシル硫酸塩(化合物A-ドデシル硫酸塩)、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物(化合物A-DMF-水和物)、ジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物(化合物A-DMAC)、モノベシル酸塩水和物(化合物A-ベシル酸塩-水和物)、カフェイン共結晶(化合物A-カフェイン)、クエン酸共結晶(化合物A-クエン酸)、サッカリン共結晶(化合物A-サッカリン)、L-酒石酸共結晶(化合物A-L-酒石酸)、もしくは尿素共結晶(化合物A-尿素);またはそれらの固体形態から選択される、化合物Aの塩、水和物、溶媒和物、または共結晶を含む医薬品組成物を提供する。
【0093】
実施形態30cにおいて、本発明は、実施形態1a~1jのいずれかまたはその副実施形態のいずれかの化合物A-HClの固体形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物A-HClの固体形態は、実質的に
図1に示すようなXRPDパターンを有する化合物A-HClの結晶形態1である。
【0094】
実施形態30dにおいて、本発明は、実施形態2a~2jのいずれかまたはその副実施形態のいずれかの化合物A-MsAの固体形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物A-MsAの固体形態は、実質的に
図10に示すようなXRPDパターンを有する化合物A-MsAの結晶形態1である。
【0095】
実施形態30eにおいて、本発明は、実施形態3a~3jのいずれかまたはその副実施形態のいずれかの化合物A-TsAの固体形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物A-TsAの固体形態は、実質的に
図20に示すようなXRPDパターンを有する化合物A-TsAの結晶形態4である。
【0096】
実施形態30fにおいて、本発明は、実施形態6a~6eのいずれかまたはその副実施形態のいずれかの化合物A-可変水和物の固体形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物A-可変水和物は、実質的に
図36に示すようなXRPDパターンを有する化合物A-可変水和物形態2である。
【0097】
実施形態30gにおいて、本発明は、化合物Aの結晶無水形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物Aの結晶無水形態は、実質的に
図40、43、44、47、49、または50のいずれか1つに示すようなXRPDパターンを有する。
【0098】
実施形態30hにおいて、本発明は、化合物A-クエン酸共結晶形態1の固体形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物A-クエン酸共結晶形態1は、実質的に
図82に示すようなXRPDパターンを有する。
【0099】
実施形態30iにおいて、本発明は、化合物A-クエン酸共結晶形態2の固体形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物A-クエン酸共結晶形態2は、実質的に
図84に示すようなXRPDパターンを有する。
【0100】
実施形態30jにおいて、本発明は、化合物A-ドデシル硫酸塩の固体形態、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物を提供する。好ましくは、化合物A-ドデシル硫酸塩は、実質的に
図71に示すようなXRPDパターンを有する。
【0101】
実施形態31において、本発明は、KIF18A阻害によって媒介される疾患に罹患している対象を治療する方法であって、それを必要としている対象に、薬学的有効量の実施形態30~30jのいずれか1つに記載の医薬品組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0102】
実施形態31aにおいて、本発明は、KIF18A阻害によって媒介される該疾患が新生物疾患である、実施形態31に記載の方法を提供する。副実施形態において、新生物疾患は、がんまたは腫瘍である。さらなる副実施形態において、がんは、卵巣癌、乳癌、肺癌、または子宮内膜癌である。さらなる副実施形態において、卵巣癌は、高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)であり、任意に、転移性、または切除不能なHGSOCである。さらなる副実施形態において、HGSOCは白金耐性HGSOCであるか、またはHGSOCが白金含有レジメン中もしくはその6ヶ月以内に進行した。さらなる副実施形態において、がんは原発性腹膜癌及び/または卵管癌である。さらなる副実施形態において、乳癌はトリプルネガティブ乳癌である。さらなる副実施形態において、子宮内膜癌は漿液性子宮内膜癌である。さらなる副実施形態において、漿液性子宮内膜癌は、転移性または再発性の漿液性子宮内膜癌である。さらなる副実施形態において、漿液性子宮内膜癌は、再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性である。さらなる副実施形態において、漿液性子宮内膜癌は、再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性である。さらなる副実施形態において、肺癌は非小細胞肺癌である。さらなる副実施形態において、腫瘍は進行固形腫瘍である。さらなる副実施形態において、腫瘍は切除不能、転移性及び/または非局所性である。さらなる副実施形態において、腫瘍は、再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性である。
【0103】
実施形態31bにおいて、本発明は、実施形態31、31a、またはそれらの任意の副実施形態に記載の方法であって、対象は、再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性である方法を提供する。副実施形態において、全身的化学療法は、タキサン、ゲムシタビン、またはドキソルビシンを含む。さらなる副実施形態において、全身的化学療法は、シスプラチン、カルボプラチン、またはレバンチニブを含む。
【0104】
実施形態31cにおいて、本発明は、実施形態31、31a、31b、またはそれらの任意の副実施形態に記載の方法であって、がんまたは腫瘍が、不活性化されたTP53遺伝子に対して陽性、及び/または不活性化されたRb遺伝子、(ii)増幅されたCCNE1遺伝子もしくは過剰発現されたCCNE1遺伝子産物、(iii)不活性化されたBRCA遺伝子、または(iv)それらの組み合わせのうちの少なくとも1つに対して陽性である細胞を含む方法を提供する。
【0105】
実施形態31dにおいて、本発明は、実施形態31、31a、31b、31c、またはそれらの任意の副実施形態の方法であって、対象が成人ヒトである方法を提供する。
【0106】
実施形態32において、本発明は、実施形態1~1jのいずれか、またはその副実施形態のいずれかの化合物A-HClを調製する方法であって、塩酸、化合物A、及び適切な溶媒を組み合わせて、化合物A-HCl塩またはその固体形態を形成することを含む方法を提供する。副実施形態において、適切な溶媒は、アセトニトリル/水、アセトニトリル/1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン/水、N-メチル-2-ピロリドン/エタノール、またはアセトン/水から選択される。
【0107】
実施形態33において、本発明は、実施形態2~2jのいずれか、またはその副実施形態のいずれかの化合物A-MsAを調製する方法であって、メタンスルホン酸、化合物A、及び適切な溶媒を組み合わせて、化合物A-MsA塩またはその固体形態を形成することを含む方法を提供する。副実施形態において、適切な溶媒はアセトニトリルまたは酢酸エチルから選択される。
【0108】
実施形態34において、本発明は、実施形態3~3iのいずれか、またはその副実施形態のいずれかの化合物A-TsAを調製するための方法であって、p-トルエンスルホン酸、化合物A、及び適切な溶媒を組み合わせて、化合物A-TsA塩またはその固体形態を形成することを含む方法を提供する。副実施形態において、適切な溶媒は、エタノールまたはイソプロパノールから選択される。
【0109】
実施形態35において、本発明は、実施形態6b~6hのいずれか、またはその副実施形態のいずれかの化合物A-可変-水和物-形態2の固体形態を調製するための方法であって、(a)水と、化合物A-メタノール溶媒和物形態1及び化合物A-エタノール溶媒和物形態1の混合物とを組み合わせて、化合物A-可変-水和物-形態2を形成すること、または(b)化合物Aをアルコール溶媒中で組み合わせ、次いで水処理、ろ過、及び高温で乾燥することによってアルコール溶媒を除去することを含む方法を提供する。副実施形態において、アルコール溶媒はメタノールとエタノールの混合物である。別の副実施形態において、高温は50℃である。
【0110】
実施形態36において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aの塩酸塩を提供する。
【化9】
【0111】
実施形態37において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aのメシル酸塩を提供する。
【化10】
【0112】
実施形態38において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aのトシル酸塩を提供する。
【化11】
【0113】
実施形態39において、本発明は、以下に示す構造を有する化合物Aの水和物を提供する。
【化12】
(式中、nは0.5から2の範囲である)。
【0114】
別段の定めがない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。方法及び材料は、本開示で使用するために本明細書に記載されているが、当該技術分野で公知の他の適切な方法及び材料を使用することもできる。材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース項目、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾がある場合は、定義を含めて本明細書が優先する。
【0115】
さらなる態様及び利点は、図面と併せて以下の詳細な説明を検討することにより、当業者には明らかであろう。本開示は例示であり、本発明を本明細書に記載される特定の実施形態に限定することを意図するものではないことを理解した上で、以下の説明には特定の実施形態が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】結晶性化合物A-HCl形態1の粉末X線回折(「XRPD」)パターンを示す。
【
図2】結晶性化合物A-HCl形態1の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフと熱重量分析(TGA)を示す。
【
図3】結晶性化合物A-HCl形態1の動的蒸気収着(DVS)プロファイルを示す。
【
図4】結晶性化合物A-HCl形態1の固体状態
19F NMRを示す。
【
図5】結晶性化合物A-HCl形態1の単結晶X線結晶構造を示す。
【
図6】化合物A-無水-形態3、化合物A-可変-水和物形態2、化合物A-HCl形態1、及び化合物A-非晶質形態の粉末溶解を示す。
【
図7】結晶性化合物A-HCl形態2のXRPDパターンを示す。
【
図8】結晶性化合物A-HCl形態2のDSCサーモグラフを示す。
【
図9】化合物A-HClの非晶質形態の変調DSCを示す。
【
図10】結晶性化合物A-MsA形態1のXRPDパターンを示す。
【
図11】結晶性化合物A-MsA形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図12】結晶性化合物A-MsA形態1のDVS吸湿プロファイルを示す。
【
図13】結晶性化合物A-MsA形態1の固体状態
19F NMRを示す。
【
図14】結晶性化合物A-MsA形態2のXRPDパターンを示す。
【
図15】結晶性化合物A-MsA形態2のDSCサーモグラフを示す。
【
図16】結晶性化合物A-MsA形態2のTGAを示す。
【
図17】結晶性化合物A-TsA形態1のXRPDパターンを示す。
【
図18】結晶性化合物A-TsA形態1の可変温度X線回折(VTXRD)を示し、180℃以上で再結晶し、新たな結晶性化合物A-TsA形態5を形成していることを示す。
【
図19】結晶性化合物A-TsA形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図20】結晶性化合物A-TsA形態2のXRPDパターンを示す。
【
図21】結晶性化合物A-TsA形態2のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図22】結晶性化合物A-TsA形態3のXRPDパターンを示す。
【
図23】結晶性化合物A-TsA形態3のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図24A】結晶性化合物A-TsA形態4のXRPDパターンを示す。
【
図24B】結晶性化合物A-TsA形態4の単結晶X線結晶構造を示す。
【
図25】結晶性化合物A-TsA形態4のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図26】結晶性化合物A-TsA形態4の固体
19F NMRを示す。
【
図27】結晶性化合物A-TsA形態5のXRPDパターンを示す。
【
図28】結晶性化合物A-DiTsA形態6のXRPDパターンを示す。
【
図29】化合物A-HCl塩形態1、化合物A-メシル酸塩形態1、及び化合物A-トシル酸塩形態4の、絶食模擬小腸液(FaSSIF)中における粉末溶解及び速度論的溶解度を示す。
【
図30】結晶性化合物A-硫酸塩形態1のXRPDパターンを示す。
【
図31】結晶性化合物A-硫酸塩形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図32】結晶性化合物A-硫酸塩形態1のDVSを示す。
【
図33】化合物A-非晶質形態のXRPDパターンを示す。
【
図34】化合物A-非晶質形態のガラス転移温度(Tg)が91℃であることを示すDSCサーモグラフを示す。
【
図35】100℃を下回る温度で化合物Aの非晶質形態から約1.05%の水の重量減少を示すTGA-IRを示す。
【
図36】結晶性化合物A-可変水和物形態2のXRPDパターンを示す。
【
図37】結晶性化合物A-可変水和物形態2のDSCサーモグラフを示す。
【
図38】結晶性化合物A-可変水和物形態2のTGAを示す。
【
図39】結晶性化合物A-可変水和物形態2のDVS吸湿プロファイルを示す。
【
図40】結晶性化合物A-無水形態3のXRPDパターンを示す。
【
図41】結晶性化合物A-無水形態3のDSCサーモグラフを示す。
【
図42】結晶性化合物A-無水形態3のDVSプロファイルを示す。
【
図43】結晶性化合物A-無水形態4のXRPDパターンを示す。
【
図44】結晶性化合物A-無水形態5のXRPDパターンを示す。
【
図45】結晶性化合物A-無水形態5のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図46】無水形態5が化合物A-一水和物に再水和する、結晶性化合物A-無水形態5のDVSプロファイルを示す。
【
図47】結晶性化合物A-無水形態6のXRPDパターンを示す。
【
図48】結晶性化合物A-無水形態6のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図49】結晶性化合物A-無水形態7のXRPDパターンを示す。
【
図50】結晶性化合物A-無水形態8のXRPDパターンを示す。
【
図51】結晶性化合物A-無水形態8のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図52】結晶性化合物A形態1のXRPDパターンを示す。
【
図53】結晶性化合物A-THF溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図54】結晶性化合物A-THF溶媒和物のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図55】結晶性化合物A-エタノール溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図56】結晶性化合物A-エタノール溶媒和物のTGAを示す。
【
図57】結晶性化合物A-エタノール溶媒和物のDSCサーモグラフである。
【
図58】結晶性化合物A-1-プロパノール溶媒和物のXRPDパターンを示す
【
図59】結晶性化合物A-1-プロパノール溶媒和物のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図60】結晶性化合物A-イソプロピルアルコール(IPA)溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図61】結晶性化合物A-IPA溶媒和物のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図62】結晶性化合物A-メタノール溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図63】結晶性化合物A-酢酸イソプロピル(IPAc)溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図64】結晶性化合物A-アセトン溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図65】結晶性化合物A-シクロペンチルメチルエーテル(CPME)溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図66】結晶性化合物A-ジオキサン溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図67】結晶性化合物A-酢酸エチル(EtOAc)溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図68】結晶性化合物A-アセトニトリル(MeCN)溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図69】結晶性化合物A-メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図70】結晶性化合物A-トルエン溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図71】結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図72】結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩溶媒和物のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図73】結晶性化合物A-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物のXRPDパターンを示す。
【
図74】結晶性化合物A-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物のDSCサーモグラフを示す。
【
図75】結晶性化合物A-ジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【
図76】結晶性化合物A-ジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物のDSCサーモグラフである。
【
図77】結晶性化合物A-モノベシル酸塩水和物形態1のXRPDパターンを示す。
【
図78】結晶性化合物A-モノベシル酸塩水和物形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図79】結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1のXRPDパターンを示す。
【
図80】結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図81】結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1のDVSプロファイルを示す。
【
図82】結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態1のXRPDパターンを示す。
【
図83】結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図84】結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態2のXRPDパターンを示す。
【
図85】結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態2のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図86】結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1のXRPDパターンを示す。
【
図87】結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図88】結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1のDVSプロファイルを示す。
【
図89】結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1のXRPDパターンを示す。
【
図90】結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図91】結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1のDVSプロファイルを示す。
【
図92】結晶性化合物A-尿素共結晶形態1のXRPDパターンを示す。
【
図93】結晶性化合物A-尿素共結晶形態1のDSCサーモグラフとTGAを示す。
【
図94】結晶性化合物A-尿素共結晶形態1のDVSプロファイルを示す。
【
図95】化合物A-HCl形態1、化合物A-無水形態3及び化合物A-非晶質の、イヌの交差PK試験を示す
【発明を実施するための形態】
【0117】
本明細書に提供されるのは、化合物Aの塩、水和物、溶媒和物もしくは共結晶;化合物Aの固体形態、その塩、水和物、溶媒和物もしくは共結晶;その医薬品組成物;及びがんに罹患している対象を治療する方法であって、治療有効量の医薬品組成物を対象に投与することを含む方法である。
【0118】
化合物AはKIF18A阻害剤であり、様々な態様において、約0.071μMのKIF18A ATPアーゼIC50を有する。KIF18A遺伝子はキネシン-8サブファミリーに属し、プラス末端指向性モーターである。KIF18Aは動原体微小管のプラス末端の動態に影響を与え、染色体の正しい位置決めと紡錘体の張力を制御していると考えられている。ヒトKIF18Aの欠失は、HeLa子宮頸癌細胞において、より長い紡錘体、中期における染色体振動の増加、及び有糸分裂紡錘体集合チェックポイントの活性化をもたらす(MI Mayr et al,Current Biology 17,488-98,2007)。KIF18Aは、結腸癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、膀胱癌、頭部癌、頸部癌、子宮頸癌、及び卵巣癌を含むがこれらに限定されない様々ながんで過剰発現している。KIF18Aの過剰発現は、姉妹染色分体変動を弱め、その結果、堅固な中期板が生じる。KIF18AノックアウトマウスにおけるかまたはKIF18Agcd2/gcd2マウス(モータードメインにおけるミスセンス突然変異(R308K))における変異原性エチルメタンスルホナート(EMS)処理によるKIF18Aモーター機能の不活性化の結果、明らかな精巣萎縮及び生殖不能を除き主要臓器において肉眼的異常がない生存可能なマウスが得られる(J Stumpff et al Developmental Cell.2008;14:252-262;J Stumpff et al Developmental Cell.2012;22:1017-1029;XS Liu et al.Genes & Cancer.2010;1:26-39;CL Fonseca et al J Cell Biol.2019;1-16;A Czechanski et al Developmental Biology.2015;402:253-262.O Rath,F Kozielski.Nature Reviews Cancer.2012;12:527-539)。正常なヒト及びマウスのKIF18A欠失体細胞は、有糸分裂進行は比較的正常であるが染色体整列が正確ではない細胞分裂を完了し、その結果、正常な核型を有する娘細胞が生じ、有糸分裂からの出口におけるいくつかの欠陥が正常細胞のサブセットで認められ、その結果、より遅い増殖において微小核形成が起こる(CL Fonseca et al J Cell Biol.2019;1-16)。これらの遺伝学的試験は、正常な生殖細胞及び体細胞は染色体整列のための要件に対する依存性が異なることを示唆し、KIF18Aは、正常な正倍数性体細胞分裂においては不要であり得ることを示す(XS Liu et al Genes & Cancer.2010;1:26-39;A Czechanski et al Developmental Biology.2015;402:253-262)。正常なヒト組織において、KIF18Aの発現は、活発に周期を回す細胞がある組織で上昇しており、精巣で発現が最大である(GTEx Portal,GTEx Portal,J Lonsdale et al Nature Genetics.2013:29;45:580)。様々な態様において、化合物AはATPアーゼ活性を阻害する。例えば、化合物AはMT-ATPアーゼ活性を阻害し、基底ATPアーゼ活性は阻害しない。
【0119】
本明細書で開示される化合物は、本明細書において、化学構造及び/または化学名によって同定される。化学構造と化学名が矛盾する場合、化学構造が化合物の正体を決定する。
【0120】
本明細書において、分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性について範囲が使用される場合、その範囲及び特定の実施形態のすべての組み合わせ及び副次的組み合わせが含まれることが意図される。
【0121】
本明細書で使用する場合、破線と太字の結合(すなわち
【化13】
及び
【化14】
)で描かれた1つ以上の立体中心を含む化学構造は、化学構造中に存在する立体中心(複数可)の絶対立体化学を示すことを意味する。本明細書で使用する場合、単純な線で記号化された結合は立体選好を示さない。別段の相反する記載のない限り、絶対的または相対的な立体化学を示さずに本明細書で例示する1つ以上の立体中心を含む化学構造は、化合物のすべての可能な立体異性体(例えば、ジアステレオマー、エナンチオマー)及びそれらの混合物を包含する。単一の太線または破線、及び少なくとも1つの付加的な単純な線を有する構造は、すべての可能なジアステレオマーの単一のエナンチオマー系列を包含する。
【0122】
「約」という用語は、実験誤差による変動を説明することを意図している。本明細書で報告されるすべての測定値は、明示的に別段の記載がない限り、この用語が明示的に使用されているか否かにかかわらず、「約」という用語によって修飾されると理解される。本明細書で使用される単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかにそうでないと判断される場合を除き、複数の参照対象を含む。
【0123】
「化合物」という用語は、本明細書で使用する場合、描かれている構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位体を含むことを意図している。本明細書において、1つの特定の互変異性体として名称または構造により特定される化合物は、別段の定めがない限り、他の互変異性体も含むことを意図している。
【0124】
「水和物」という用語は、水と化合物の相互作用によって形成される化学的実体を指し、例えば半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを含む。水和物は、本明細書で使用する場合、可変量の水、通常0.5~2個の水分子、例えば化合物A分子あたり0.5、1、1.5、または2個の水分子を有することができ、「可変水和物」と呼ばれる。水分子の数は、様々な調製方法及び水和物形態の保存条件によって変化し得る。
【0125】
「固体形態」及び「物理的形態」という用語は、特定の結晶形態または非晶質形態が参照されない限り、例えば、多形体、擬多形体、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形体(無水物を含む)、配座多形体、及び非晶質形態を含む、化合物のすべての結晶形態及び非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含むことを意図している。
【0126】
「共結晶」という用語は、本明細書で使用する場合、中性分子成分と化合物Aが、結晶格子中で、しばしば水素結合を含む非共有結合性相互作用によって結合された結晶性複合体を指す。共結晶の例としては、カフェイン共結晶(化合物A-カフェイン)、クエン酸共結晶(化合物A-クエン酸)、サッカリン共結晶(化合物A-サッカリン)、L-酒石酸共結晶(化合物A-L-酒石酸)、または尿素共結晶(化合物A-尿素)が挙げられる。
【0127】
「ガラス転移温度」とは、非晶質の固体形態が、温度が上昇するにつれて、硬くて比較的脆い「ガラス状」の状態から、粘性またはゴム状の状態へと徐々に可逆的に転移する温度範囲を指す。
【0128】
化合物Aの塩、水和物、溶媒和物、共結晶;ならびに結晶無水形態を含む化合物Aの固体形態、その塩、溶媒和物、及び共結晶の単離と精製
化合物Aは、弱塩基性pKa値3.9及び弱酸性pKa値7.3を有するイオン化可能な官能基を有する。大量処理で手動の多形体スクリーニングから、本発明者らは、様々な化合物Aの塩、水和物、溶媒和物、共結晶;ならびに結晶無水形態を含む化合物Aの固体形態、その塩、水和物、溶媒和物、及び共結晶を生成した。乾燥によるエタノール溶媒和物の脱溶媒により、比較的安定な化合物A-水和物-形態2を生成した。これは25℃で脱水し始め、溶解度は非常に低かった。化合物A-THF溶媒和物の脱溶媒和により、無水-化合物-A-形態3を生成した。これは水性媒体中または水分の取り込みにより速やかに化合物A水和物-形態2に変質した。化合物Aの遊離塩基形態の固相状態の特性、及びそれらの溶媒和物を形成する傾向に基づき、本発明者らは、医薬開発のための原薬のスケールアップ及び結晶化に適する場合がある、様々な化合物Aの塩、水和物、溶媒和物及び共結晶を生成した。
【0129】
大量処理で手動の塩スクリーニングから、様々な対イオン及び溶媒が試験され、化合物Aの結晶性塩及び溶媒和物を生成した。硫酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩を含む様々な化合物Aの塩、水和物、溶媒和物が、複数の多形体で形成された。さらに溶解度及び安定性試験を行った結果、化合物A-HCl塩形態1が、許容可能な溶解度及び安定性プロファイル、改善された生物薬剤学的特性、及び良好な結晶化プロセスを有することから、さらなる評価のために優先された。化合物A-HCl塩形態1の多形体スクリーニングでは、384の結晶化条件から合計126の結晶試料を回収した。そのうち90試料のXRPDパターンはHCl塩形態1のそれと同じであった。その他は、化合物Aの不均化体または化合物Aの溶媒和物を含む場合がある。化合物A-HCl塩の多形体スクリーニングは、化合物A-HCl-形態1が最も熱力学的に安定な形態であることを明らかにした。複数の化合物Aの共結晶、例えば、クエン酸、酒石酸、カフェイン及び尿素の共結晶も、共結晶スクリーニングから生成された。
【0130】
結晶性化合物A-塩酸塩形態1(化合物A-HCl塩形態1)
また、本明細書では、結晶性の化合物A-HCl塩形態1が提供される。結晶性化合物A-HCl塩形態1は、実施例に記載のようにして得られる固体状態の
19F NMRが、-91及び-103±0.5ppmにピークを有することによって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、実質的に
図4に示すような固体状態
19F NMRを有する。ここで、「実質的に」とは、報告されたピークが±0.5ppm変動し得ることを意味する。
【0131】
結晶性化合物A-HCl塩形態1は、実施例に記載されているように得られるCuKα放射を使用した粉末X線回折パターンが、7.5、16.9、及び20.2±0.2°2θにピークを有することによってさらに特徴付けることができる。結晶性化合物A-HCl形態1は、任意に、CuKα放射線を用いた粉末X線回折パターンが、12.8、18.2、22.7、23.6、24.8及び26.1±0.2°2θに追加のピークを有することによってさらに特徴付けられ得る。結晶性化合物A-HCl形態1は、任意に、CuKα放射線を用いた粉末X線回折パターンが、10.9、14.5、15.7、15.9、19.8、20.6、21.6、23.2、26.1及び26.8±0.2°2θに追加のピークを有することによってさらに特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、実質的に
図1に示すような粉末X線回折パターンを有するが、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが±0.2°変動し得ることを意味する。当業者であれば、XRPDの分野では、スペクトルの相対的なピークの高さは試料調製や装置の形状などのいくつかの要因に依存するが、ピークの位置は実験の詳細には比較的影響されないことを知っている。
【0132】
結晶性化合物A-HCl塩形態1について、実施例に記載したように示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、271.5℃±3℃で吸熱転移を示した。従って、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、開始点が268.5℃~274.5℃の転移吸熱を有するDSCサーモグラフによって特徴付けられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、
図2に示すようなDSCによって特徴付けられる。
【0133】
結晶性化合物A-HCl塩形態1はまた、熱重量分析(TGA)によって特徴付けることができる。従って、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、268.3℃~273.7℃の開始温度で約4%重量が減少することによって特徴付けられ得る。例えば、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、約271℃まで、約4%の重量減少によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、実質的に
図2に示すような熱重量分析を有し、ここで「実質的に」とは、報告されたTGAの特徴が約4%重量減少の±1%だけ変動し得ることを意味する。
【0134】
結晶性化合物A-HCl塩形態1は、吸湿プロファイルによって特徴付けることができる。例えば、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-HCl塩形態1は、95%RHによる0.5%未満の重量増加を示す、
図3に示すような吸湿プロファイル(DVS)によって特徴付けられる。
【0135】
結晶性化合物A-HCl塩形態1は、実質的に
図5、または実施例に示すような単結晶構造によってさらに特徴付けられる。
【0136】
本明細書においてさらに提供されるのは、本明細書に記載の結晶性化合物A-HCl塩形態1及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物である。
【0137】
結晶性化合物A-メシル酸塩形態1(化合物A-MsA塩形態1)
また、本明細書では、結晶性の化合物A-MsA塩形態1が提供される。結晶性化合物A-MsA塩形態1は、実施例に記載のようにして得られる固体状態の
19F NMRが、-95.2及び-103.2±0.5ppmにピークを有することによって特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、実質的に
図13に示すような固体状態
19F NMRを有する。ここで、「実質的に」とは、報告されたピークが±0.5ppm変動し得ることを意味する。
【0138】
結晶性化合物A-MsA塩形態1は、実施例に記載されているように得られるCuKα放射を使用した粉末X線回折パターンが、7.0、16.5及び23.9±0.2°2θにピークを有することによってさらに特徴付けることができる。結晶性化合物A-MsA塩形態1は、任意に、CuKα放射線を用いた粉末X線回折パターンが、12.6、15.7、17.4、18.5、20.0及び21.0±0.2°2θに追加のピークを有することによってさらに特徴付けられ得る。結晶性化合物A-MsA塩形態1は、任意に、CuKα放射線を用いた粉末X線回折パターンが、5.8、11.8、13.5、15.3、16.1、18.0、20.6、25.2、28.0及び30.5±0.2°2θに追加のピークを有することによってさらに特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、実質的に
図10に示すような粉末X線回折パターンを有するが、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが±0.2°変動し得ることを意味する。当業者であれば、XRPDの分野では、スペクトルの相対的なピークの高さは試料調製や装置の形状などのいくつかの要因に依存するが、ピークの位置は実験の詳細には比較的影響されないことを知っている。
【0139】
結晶性化合物A-MsA塩形態1について、実施例に記載したように示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、250℃±3℃で吸熱転移を示す。従って、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、開始点が247℃~253℃の転移吸熱を有するDSCサーモグラフによって特徴付けられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、
図11に示すようなDSCによって特徴付けられる。
【0140】
結晶性化合物A-MsA塩形態1はまた、熱重量分析(TGA)によって特徴付けられ得る。従って、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、247℃~253℃の開始温度で約0.2%重量が減少することによって特徴付けられ得る。例えば、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、約250℃まで、約0.2%の重量減少によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、実質的に
図11に示すような熱重量分析を有し、ここで「実質的に」とは、報告されたTGAの特徴が0.2%重量減少の±1%だけ変動し得ることを意味する。
【0141】
結晶性化合物A-MsA塩形態1は、吸湿プロファイルによって特徴付けることができる。例えば、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-MsA塩形態1は、95%RHによる1.2%未満の重量増加を示す、
図12に示すような吸湿プロファイルによって特徴付けられる。
【0142】
本明細書においてさらに提供されるのは、本明細書に記載の結晶性化合物A-MsA塩形態1及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物である。
【0143】
結晶性化合物A-トシル酸塩形態1(化合物-A-TsA形態4)
また、本明細書において、結晶性の化合物A-TsA塩形態4が提供される。結晶性化合物A-TsA塩形態4は、実施例に記載されているように得られるCuKα放射を使用した粉末X線回折パターンが、6.2、14.7及び23.5±0.2°2θにピークを有することによってさらに特徴付けることができる。結晶性化合物A-TsA塩形態4は、任意に、CuKα放射線を用いた粉末X線回折パターンが、10.5、12.4、14.2、19.1、21.5及び29.0±0.2°2θに追加のピークを有することによってさらに特徴付けられ得る。結晶性化合物A-TsA塩形態4は、任意に、CuKα放射線を用いた粉末X線回折パターンが、15.5、16.5、17.7、18.3、18.6、20.1、20.8、24.1、及び25.3±0.2°2θに追加のピークを有することによってさらに特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-TsA塩形態4は、実質的に
図24aに示すような粉末X線回折パターンを有し、ここで「実質的に」とは、報告されたピークが±0.2°変動し得ることを意味する。当業者であれば、XRPDの分野では、スペクトルの相対的なピークの高さは試料調製や装置の形状などのいくつかの要因に依存するが、ピークの位置は実験の詳細には比較的影響されないことを知っている。
【0144】
結晶性化合物A-TsA塩形態4は、実質的に
図24bに示すような、または実施例に規定されるような単結晶構造によってさらに特徴付けられる。
【0145】
結晶性化合物A-TsA塩形態4について、実施例に記載したように示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフを得た。DSC曲線は、253℃±3℃で吸熱転移を示した。従って、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-TsA塩形態4は、開始点が250℃~256℃の転移吸熱を有するDSCサーモグラフによって特徴付けられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-TsA塩形態4は、
図25に示すように、DSCによって特徴付けられる。
【0146】
結晶性化合物A-TsA塩形態4はまた、熱重量分析(TGA)によって特徴付けることができる。従って、結晶性化合物A-TsA塩形態4は、250℃~256℃の開始温度で、約0.07%重量が減少することによって特徴付けられ得る。例えば、結晶性化合物A-TsA塩形態4は、約253℃まで、約0.07%の重量減少によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、結晶性化合物A-TsA塩形態4は、実質的に
図25に描写されるような熱重量分析を有し、ここで「実質的に」とは、報告されたTGAの特徴が0.07%重量減少の±1%だけ変動し得ることを意味する。
【0147】
結晶性化合物A-TsA塩形態4はまた、実質的に
図26に示すように、固体状態の
19F NMRが-96.93及び-101.60ppmにピークを有する。ここで、「実質的に」とは、報告されたピークが±0.5ppm変動し得ることを意味する。
【0148】
本明細書においてさらに提供されるのは、本明細書に記載の結晶性化合物A-HCl塩形態4及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物である。
【0149】
医薬品組成物
上記の実施形態及びその副実施形態のいずれかに記載されるような化合物Aは、医薬品製剤(互換的に、組成物とも称される)を提供するために、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることができる。賦形剤は希釈剤または担体であり得る。製剤は、投与された薬剤の物理的状態、安定性、生体内放出速度、及び生体内クリアランス速度に影響を及ぼし得る。「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与した場合に有害、アレルギー性、または他の思いも寄らない反応を生じない分子実体及び組成物を指す。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」とは、あらゆるすべての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するこのような賦形剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が治療用組成物と不適合である場合を除き、治療用組成物におけるその使用が考えられる。補足的な活性成分もまた、組成物に組み込むことができる。代表的な実施形態において、製剤は、コーンシロップ固形分、高オレイン酸ベニバナ油、ヤシ油、大豆油、L-ロイシン、三塩基性リン酸カルシウム、L-チロシン、L-プロリン、酢酸L-リジン、DATEM(乳化剤)、L-グルタミン、L-バリン、二塩基性リン酸カリウム、L-イソロイシン、L-アルギニン、L-アラニン、グリシン、L-アスパラギン一水和物、L-セリン、クエン酸カリウム、L-スレオニン、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、L-ヒスチジン、L-メチオニン、アスコルビン酸、炭酸カルシウム、L-グルタミン酸、L-シスチン二塩酸塩、L-トリプトファン、L-アスパラギン酸、塩化コリン、タウリン、m-イノシトール、硫酸第一鉄、パルミチン酸アスコルビル、硫酸亜鉛、L-カルニチン、酢酸α-トコフェロール、塩化ナトリウム、ナイアシンアミド、トコフェロール混合物、パントテン酸カルシウム、硫酸銅(II)、チアミンクロリド塩酸塩、パルミチン酸ビタミンA、硫酸マンガン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、β-カロテン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、セレン酸ナトリウム、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ビタミンD3、及びシアノコバラミンを含む場合がある。
【0150】
経口投与のためには、化合物Aを、当該技術分野で周知の担体のような、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせることにより、適切な組成物を製剤化する場合がある。このような賦形剤及び担体は、化合物Aを、治療すべき患者による経口摂取のために、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。経口用の医薬品製剤は、化合物Aに固体の賦形剤を添加し、任意に、得られた混合物を粉砕し、所望により、適当な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣錠の核を得ることにより調達することができる。適切な賦形剤としては、例えば、充填剤及びセルロース製剤が挙げられる。所望により、崩壊剤を加えることもできる。薬学的に許容される成分は、様々な種類の製剤について周知であり、例えば、結合剤(例えば、天然ポリマーまたは合成ポリマー)、滑沢剤、界面活性剤、甘味剤及び香味剤、コーティング材料、保存剤、染料、増粘剤、補助薬、抗菌剤、抗酸化剤、及び様々な製剤種のための担体であり得る。
【0151】
治療上有効な量の化合物Aを経口投与する場合、組成物は通常、固形剤(例えば、錠剤、カプセル、丸薬、粉末、トローチ)または液剤(例えば、水性懸濁液、溶液、エリキシル剤、シロップ)の形態である。
【0152】
錠剤の形態で投与する場合、組成物はさらに、ゼラチンまたは補助薬などの機能性固体及び/または固体担体を含むことができる。
【0153】
液体または懸濁液の形態で投与する場合、機能性液体及び/または水、石油、動物もしくは植物由来の油などの液体担体を添加することができる。組成物の液体形態は、生理的食塩水、糖アルコール溶液、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコールをさらに含むことができる。考えられる1つの実施形態において、液体担体は非水性または実質的に非水性である。液体形態での投与のために、組成物は、投与直前に溶解または懸濁するための速溶性固体製剤として供給され得る。
【0154】
吸入による投与の場合、化合物Aは、適切な推進剤を使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。加圧エアロゾルの実施形態において、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。吸入器または気腹器で使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物の粉末混合物と、ラクトースまたはデンプンのような適切な粉末基材とを含むように処方することができる。
【0155】
特に、化合物Aは、デンプンまたはラクトースなどの賦形剤を含む錠剤の形態で、あるいは単独でまたは賦形剤と混合してカプセル剤または膣剤で、あるいは香味剤または着色剤を含むエリキシル剤または懸濁液の形態で、経口、頬側、または舌下に投与することができる。このような液体製剤は、懸濁化剤などの薬学的に許容される添加剤を用いて調製することができる。
【0156】
安全性
いくつかの態様において、本方法は、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩を、化合物Aまたはその塩による治療中に用量制限毒性(DLT)を引き起こさない量で投与することを含む。任意に、対象は、治療期間中、化合物Aの治療に関連するDLTを示さない。様々な実施態様において、対象は、治療期間中、化合物Aの治療に関連するいかなるグレード3またはグレード4の有害事象も示さない。様々な実施態様において、治療期間は、少なくとも2週間または少なくとも1ヶ月(それ以上でない場合)、例えば、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年、1.5年、2年である。
【0157】
代表的な態様において、本方法は、化合物A治療の前、治療中または治療後に対象の全血球数をモニタリングすることをさらに含む。様々な態様において、全血球数は、赤血球、白血球、血小板、及び好中球のうちの1つまたは複数の数の計数を含む。任意に、全血球数はヘマトクリット及び/またはヘモグロビンの測定を含む。代表的な態様では、モニタリングは週に1回、約2ヶ月間行われる。様々な態様において、対象の血小板数は、化合物A治療中、血液1μLあたり約100,000より多い。
【0158】
代表的な実施形態において、本開示の方法は、新生物疾患の細胞に対して、有利に高度に特異的である。様々な態様において、化合物Aは、対象中の正常体細胞に対する毒性をほとんど伴わずに、新生物疾患を効果的に治療し、腫瘍退縮を誘導もしくは向上させ、腫瘍もしくはがんの増殖を減少させ、または腫瘍もしくはがん細胞の死を誘導もしくは増加させる。様々な態様において、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩は、対象における正常な体細胞の増殖を実質的に減少させることなく、新生物疾患を治療し、腫瘍退縮を誘導もしくは向上させ、腫瘍もしくは癌の増殖を減少させ、及び/または腫瘍もしくはがん細胞の死を誘導もしくは増加させるのに有効な量で投与される。代表的な実施態様において、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩は、正常な体細胞のアポトーシスを実質的に増加させることなく、新生物疾患を治療し、腫瘍退縮を誘導もしくは向上させ、腫瘍もしくは癌の増殖を減少させ、または腫瘍もしくはがん細胞の死を誘導もしくは増加させるのに有効な量で投与される。本明細書で使用する場合、細胞に関する用語「正常」とは、腫瘍性でなく、及び/または疾患性でない細胞を意味する。様々な態様において、正常体細胞はヒト骨髄単核細胞またはT細胞である。様々な実施態様において、正常体細胞は、TP53MUTとして遺伝学的に特徴付けられないか、またはTP53WTとして遺伝学的に特徴付けられる。様々な態様において、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩は、正常体細胞のアポトーシスに25%以下の増加を引き起こす。様々な態様において、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩は、対象における正常な体細胞の増殖の25%以下の減少を引き起こす。任意に、正常体細胞のアポトーシスの増加または正常体細胞の増殖の減少は、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である。
【0159】
タキサンの主な副作用は骨髄抑制、主に好中球減少であり、他の副作用には末梢浮腫、及び神経毒性(末梢神経障害)が含まれる。代表的な態様において、本開示の方法は、タキサン系抗がん剤で治療された患者に観察されるこれらの副作用のいずれも引き起こすことなく対象の新生物疾患を治療するか、またはそのような副作用がタキサン系抗がん剤で治療された患者に観察されるものと比較して重篤度が軽減される中で新生物疾患を治療する。
【0160】
治療有効性
本明細書で使用する場合、「治療する」という用語ならびにそれに関連する語は、必ずしも100%または完全な治療を暗示するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識する治療の程度は様々である。この点において、本開示の新生物疾患を治療する方法は、任意の量または任意のレベルの治療を提供し得る。さらに、本開示の方法によって提供される治療は、治療される新生物疾患の1つ以上の状態または症状もしくは徴候の治療を含み得る。また、本開示の方法によって提供される治療は、新生物疾患の進行を遅らせることを包含し得る。例えば、本方法は、T細胞活性または新生物疾患に対する免疫応答を増強すること、腫瘍もしくはがんの増殖もしくは腫瘍量を減少させること、腫瘍細胞の転移を減少させること、腫瘍細胞もしくはがん細胞の細胞死を増加させること、または腫瘍退縮を増加させることなどにより、新生物疾患を治療し得る。上記に従って、本明細書において提供されるのは、対象において腫瘍増殖、腫瘍体積、または腫瘍量を減少させるか、または腫瘍退縮を増加させる方法である。代表的な実施形態において、本方法は、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「治療する」、「治療すること」及び「治療」という用語は、治療、予防的(prophylactic)治療、及び予防的(preventative)治療を含むがこれらに限定されない治療を指す。予防的(prophylactic)治療は、一般に、障害の発症を完全に予防するか、または個体における障害の前臨床的に明らかな段階の発症を遅延させるかのいずれかを構成する。
【0161】
様々な態様において、本方法は、新生物疾患の発症もしくは再発を遅延させる方法、または転移の発生もしくは発症を遅延させる方法によって治療する。様々な態様において、方法は、対象の生存を増加させる方法で治療する。代表的な実施態様において、発症もしくは再発または発生は、少なくとも1日、2日、4日、6日、8日、10日、15日、30日、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、またはそれ以上遅延される。
【0162】
様々な態様において、本開示の方法によって提供される治療は、固形腫瘍における奏功評価基準(RECIST)または他の同様の基準による治療奏功を提供する。RECISTは、米国国立がん研究所、カナダ国立がん研究所臨床試験グループ、及び欧州がん研究治療機構によって共同作成された、腫瘍及び/またはがん細胞の進行、安定化、または応答性を評価するための一連の基準である。RECISTによると、特定の腫瘍は評価(例えば臨床試験)の開始時に測定され、薬剤による治療後の比較のためのベースラインを提供する。腫瘍の奏功評価及び評価基準は、Eisenhauer et.al.,Eur J Cancer 45:228-247(2009)及びLitiere et.al.,Journal of Clinical Oncology 37(13):1102-1110(2019)DOI:10.1200/JCO.18.01100に公表されている。様々な実施態様において、本開示の方法によって提供される治療は、以下のように、修正RECIST腫瘍奏功評価による治療奏功を提供する:
【表1】
【表2】
【0163】
様々な実施態様において、対象は、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩による治療後に、少なくとも安定疾患(SD)を示す。様々な態様において、対象は、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩による治療後に、少なくとも部分奏功(PR)を示す。対象は、様々な態様において、ベースラインと比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%のがん抗原125(CA125)レベルの低下を示す。代表的な実施態様では、対象は、化合物Aによる治療後少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%の腫瘍体積の減少を示す。
【0164】
新生物疾患
本明細書で使用する場合、「新生物疾患」という用語は、腫瘍の増殖を引き起こす任意の状態を指す。代表的な態様において、腫瘍は良性腫瘍である。代表的な態様において、腫瘍は悪性腫瘍である。様々な態様において、新生物疾患は腫瘍またはがんである。様々な態様におけるがんは、急性リンパ球癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、肛門、肛門管もしくは肛門直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢もしくは胸膜の癌、鼻、鼻腔もしくは中耳の癌、口腔の癌、陰門の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、卵膜、腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌(例えば腎細胞癌腫(RCC))、小腸癌、軟組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、または膀胱癌である。特定の態様において、がんは、頭頸部癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、食道癌、膵臓癌、胃腸癌、胃癌、乳癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、膠芽細胞腫、膀胱癌、肺癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、または細気管支肺胞癌腫である。特定の実施形態において、腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頸部癌、腎癌、トリプルネガティブ乳癌、または胃癌である。代表的な態様において、対象は腫瘍(例えば、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、またはリンパ性悪性腫瘍)を有し、医薬品組成物は、対象の腫瘍を治療するのに有効な量で対象に投与される。他の代表的な態様において、腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、頭頸部癌、腎癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、結腸癌、前立腺癌、胃癌、リンパ腫または白血病であり、医薬品組成物は、対象において腫瘍を治療するのに有効な量で対象に投与される。
【0165】
本明細書で使用する場合、「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には、無制御の細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか、または記述する。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、肉腫、芽細胞腫、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮細胞癌、肺癌、膵臓癌、子宮頸癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌及び頭頸部癌、卵巣癌及び子宮内膜癌が挙げられる。本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、いかなる特定の形態の疾患にも限定されないが、本発明の方法は、制御されていないレベルのKIF18Aを伴うか、または哺乳動物における適切な染色体分離及び生存のためにKIF18Aに依存することが見出されたがんに対して特に有効であると考えられる。
【0166】
様々な態様において、がんは転移性であるか、腫瘍は切除不能であるか、またはそれらの組み合わせである。様々な実施態様において、がんは染色体不安定性の異数性がんである。様々な態様において、新生物疾患(例えば、がんまたは腫瘍)は、不活性化TP53遺伝子について陽性、及び/または(i)不活性化Rb1遺伝子、(ii)増幅されたCCNE1遺伝子、CCNE1遺伝子の遺伝子コピー数増加、またはCCNE1遺伝子産物の過剰発現、(iii)不活性化BRCA遺伝子、または(iv)それらの組み合わせの少なくとも1つについて陽性である細胞を含む。様々な態様において、新生物疾患は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、非ルミナル乳癌(例えば基底様間葉系)、または高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)である。様々な態様において、新生物疾患は、CDK4/6阻害剤による治療に耐性であるか、または感受性がない(不感受性である)。様々な態様において、新生物疾患は、CDK4/6阻害剤による治療に対して耐性であるか、または感受性がなく(不感受性であり)、Rb1プロフィシェントである(対Rb1欠失)。様々な態様では、新生物疾患は、KIF18A阻害剤による治療に対して耐性がある。様々な態様において、新生物疾患はKIF18A阻害剤による治療に対して耐性があり、Rb1欠失(対Rb1プロフィシェント)である。
【0167】
代表的な態様において、新生物疾患は乳癌であり、任意に、ルミナル乳癌またはTNBCである。様々な態様において、乳癌は、(a)組織学的または細胞学的に、転移性または局所的再発性のエストロゲン受容体(ER)陰性(例えば、免疫組織化学[IHC]により<1%)であると確認され、(b)プロゲステロン受容体(PR)陰性(例えば<1%IHC)であり、及び(c)ヒト上皮増殖因子受容体2(Her2)陰性(ASCO/CAP定義に従い、蛍光インシトゥハイブリダイゼーション[FISH]陰性、IHCにより0もしくは1+、またはIHC2+及びFISH陰性のいずれか)である。代表的な態様において、新生物疾患は、転移設定における少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して再発及び/または難治性であるか、または新生物疾患に対して臨床的利益を提供することが知られている既存の療法(複数可)に対して不耐性である。代表的な実施態様では、がんは免疫チェックポイント阻害剤で治療されたことがある。様々な実施態様において、乳癌はホルモン受容体(HR)陽性及び/またはHER2陰性である。様々な態様において、乳癌は進行性乳癌及び/または転移性乳癌である。様々な態様において、乳癌は、内分泌療法後に進行したHR+/HER2-進行性乳癌または転移性乳癌である。いくつかの態様において、乳癌は、以前がんが転移/増殖した後に内分泌療法及び化学療法で治療されたことがある、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の進行性または転移性乳癌である。様々な実施態様において、がんは、ホルモン療法(Arimidex(化学名:アナストロゾール)、Aromasin(化学名:エキセメスタン)及びFemara(化学名:レトロゾール)で治療されたことがない、HR+/HER2-進行性または転移性乳癌である。様々な実施態様において、乳癌は、ホルモン療法で治療された後に増殖したHR+/HER2-進行性または転移性乳癌である。様々な実施態様において、乳癌はHER2陽性乳癌であり、表2のHER2陽性乳がん細胞に類似するものを含むが、これらに限定されない。任意に、乳癌はHER2陽性、エストロゲン受容体(ER)陰性乳癌である。様々な態様において、新生物疾患は卵巣癌であり、任意に、高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)である。任意に、卵巣癌は白金耐性のHGSOCである。代表的な態様において、卵巣癌は原発性腹膜癌または卵管癌である。様々な態様において、新生物疾患は転移性または切除不能なHGSOCであり、白金含有レジメン中またはその6ヶ月以内の進行として定義される白金耐性を伴う。様々な態様において、卵巣癌は白金耐性再発治療で治療されたことがあるか、または治療中である。様々な態様において、新生物疾患は漿液性子宮内膜癌である。任意に、新生物疾患は転移性または再発性の漿液性子宮内膜癌である。様々な実施態様において、子宮内膜癌は、再発したもの、及び/または転移性/再発性の設定における少なくとも1ラインの全身療法に対して難治性であるか、または新生物疾患に対して臨床的利益を提供することが知られている既存の療法(複数可)に対して不耐性である。様々な実施態様において、新生物疾患は、切除不能であり、再発したもの、及び/または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性または不耐性である、進行性または転移性の固形腫瘍である。任意に、進行性または転移性固形腫瘍はTP53MUTである。
【0168】
様々な態様において、がんは卵巣癌、乳癌、または子宮内膜癌である。様々な態様において、卵巣癌は、明細胞卵巣癌または高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)であり、任意に、転移性または切除不能なHGSOCである。任意に、HGSOCは白金耐性HGSOCであるか、またはHGSOCが白金含有レジメン中またはその6ヶ月以内に進行したものである。様々な実施態様において、がんは原発性腹膜癌及び/または卵管癌である。代表的な実施態様では、乳癌はトリプルネガティブ乳癌である。いくつかの態様において、対象は再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性である。任意に、全身的化学療法は、タキサン、ゲムシタビン、またはドキソルビシンを含む。種々の実施態様において、子宮内膜癌は漿液性子宮内膜癌であり、任意に、転移性、または再発性の漿液性子宮内膜癌である。特定の態様において、漿液性子宮内膜癌は、再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法、例えば、シスプラチン、カルボプラチンまたはレバンチニブに対して難治性である。
【0169】
様々な態様において、腫瘍は進行した固形腫瘍である。腫瘍は、様々な実施態様において、切除不可能、転移性、及び/または非局在性である。代表的な態様において、腫瘍は、再発したか、または少なくとも1ラインの全身的化学療法に対して難治性である。
【0170】
様々な実施態様において、新生物疾患は1つ以上の薬剤による治療に対して耐性がある。様々な態様において、新生物疾患は、1つ以上の薬物での治療に対する感受性低下を示す。任意に、新生物疾患は多剤耐性の新生物疾患である。代表的な実施態様において、(例えば、新生物疾患の)腫瘍またはがん細胞は、多剤耐性腫瘍またはがん細胞であり、及び/または多剤耐性1(MDR-1)遺伝子及び/またはその遺伝子産物の発現増加を示す。代表的な実施態様において、(例えば、新生物疾患の)腫瘍細胞またはがん細胞は、MDR-1遺伝子によりコードされるP-糖タンパク質(P-gp)の発現上昇を示す。様々な態様において、新生物疾患は、抗有糸分裂阻害剤またはアントラサイクリン抗生物質、任意に、パクリタキセルまたはドキソルビシンによる治療に対する感受性低下または耐性を示す。様々な態様において、(例えば、新生物疾患の)腫瘍またはがん細胞は、チューブリン遺伝子における突然変異、チューブリンの過剰発現、チューブリン増幅及び/またはアイソタイプスイッチしたチューブリン発現を示す。様々な態様において、α-またはβ-チューブリンにおける突然変異は、微小管上の正しい場所へのタキサンの結合を阻害し、それによりタキサンが無効になる。代表的な態様において、新生物疾患は、白金剤アントラサイクリン、標的化された治療(例えばTKI、PARP阻害剤)のいずれか1つ以上による治療に対する感受性の低下または耐性を示す。
【0171】
様々な態様において、新生物疾患は、1つ以上の全ゲノム重複または全ゲノム倍加(WGD)事象を含むがんである。がんの文脈におけるWGDは、Lens and Hemdema,Nature Reviews Cancer 19:32-45(2019);Ganem et.al.,Current Opinion in Genetics & Development 17,157-162、及びDavoli et.al.,Annual Review of Cell and Developmental Biology 27,585-610で議論されている。
【0172】
不活性化された遺伝子、増幅された遺伝子及び発現レベル
本明細書で使用する場合、遺伝子に関して「不活性化された」という用語は、遺伝子または遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能の低下または喪失を指す。遺伝子の不活性化は、1つ以上の既知の機序によって引き起こされ得る。例えば、遺伝子の不活性化は、対応する野生型遺伝子、RNA、またはタンパク質と比較した、DNA配列、RNA配列、またはタンパク質配列の変異(例えば、欠失を含む)によって引き起こされ得るか、遺伝子のDNA配列に何の変化も伴わないエピジェネティックな変異によって引き起こされ得る。
【0173】
様々な態様において、がんの細胞は、遺伝子または遺伝子によりコードされる遺伝子産物における変異または異常を含み、この変異または異常は対応する野生型遺伝子または遺伝子産物と比較したものであり、変動の存在は、遺伝子のサイレンシング、遺伝子もしくは遺伝子によりコードされる遺伝子産物の発現の低下もしくは喪失、遺伝子もしくは遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能の低下もしくは喪失またはそれらの組み合わせにつながるか、またはそれと関連する。様々な実施態様において、遺伝子産物はRNA転写物またはタンパク質である。様々な実施態様において、変異は、少なくとも、遺伝子または遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能の低下または喪失をもたらす。様々な実施態様において、変異は、少なくとも、TP53遺伝子またはTP53遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能の低下または喪失をもたらす。様々な実施態様において、変異は、少なくとも、Rb1遺伝子またはRb1遺伝子によってコードされる遺伝子産物の機能の低下または喪失をもたらす。様々な実施態様において、変異は、少なくとも、BRCA遺伝子またはBRCA遺伝子によってコードされる遺伝子産物の機能の低下または喪失をもたらす。
【0174】
遺伝子における変異は、遺伝子内のどこに存在してもよく、例えば、イントロンもしくはエクソン内、5’-非翻訳領域(5’-UTR)内、または3’-非翻訳領域(3’-UTR)内に存在し得る。変異は、遺伝子によってコードされる転写産物(例えば、RNA転写産物、一次転写産物、プレmRNA、mRNA)内、もしくはその任意の部分に存在し得るか、または遺伝子によってコードされるタンパク質内、もしくはその任意の部分に存在し得る。
【0175】
様々な態様において、変異は、対応する野生型遺伝子、RNAまたはタンパク質と比較した、DNA配列、RNA配列またはタンパク質配列における相違である。様々な態様において、不活性化された遺伝子は、遺伝子のヌクレオチド配列を分析すること、遺伝子によってコードされるRNAのヌクレオチド配列を分析すること、または遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を分析して、試料の遺伝子の配列を、遺伝子、RNAまたはタンパク質の対応する野生型ヒト配列と比較することによって検出される。代表的な態様において、変異は、対応する野生型遺伝子、RNA、またはタンパク質と比較した、DNA配列またはRNA配列における1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、または置換、タンパク質配列における1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、または置換を含む。代表的な態様において、変異は、DNA、RNAまたはタンパク質の遺伝子コピー数増加または増幅を結果として生じ得る、対応する野生型の遺伝子、RNAまたはタンパク質と比較した、DNA配列またはRNA配列における1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入または置換、タンパク質配列における1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入または置換を含む。様々な態様において、がんの細胞は、遺伝子における遺伝子突然変異を含む。様々な態様において、がんの細胞は、遺伝子における遺伝子突然変異、または遺伝子におけるヌクレオチドの欠失を含む。代表的な実施態様において、遺伝子突然変異は、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、挿入、欠失、重複、フレームシフト突然変異、短縮化、または反復拡張である。様々な実施態様において、不活性化TP53遺伝子は突然変異、欠失、または短縮化を含み、不活性化Rb1遺伝子は突然変異、欠失、または短縮化を含み、及び/または不活性化されたBRCA遺伝子は突然変異、欠失、または短縮化を含む。本明細書で使用する場合、「BRCA遺伝子」という用語は、BRCA1またはBRCA2遺伝子を指す。代表的な実施態様において、BRCA遺伝子はBRCA1である。代表的な態様において、BRCA遺伝子はBRCA2である。
【0176】
様々な実施態様において、変動は、エピジェネティックであり、遺伝子のDNA配列の変化を何も含まない。代表的な態様において、不活性化された遺伝子は、エピジェネティックにサイレンシングされ、任意に、DNAまたはヒストンタンパク質の共有結合修飾を含む。DNAの共有結合修飾は、例えばシトシンメチル化またはヒドロキシメチル化であり得る。ヒストンタンパク質の共有結合修飾は、例えばリジンアセチル化、リジンもしくはアルギニンメチル化、セリンもしくはスレオニンリン酸化、またはリジンユビキチン化もしくはSUMO化であり得る。遺伝子サイレンシングの機序は転写または翻訳中に起こり得る。遺伝子サイレンシングの代表的な機序としては、DNAメチル化、ヒストン修飾、及びRNA干渉(RNAi)が挙げられるが、これらに限定されない。様々な態様において、不活性化された遺伝子は、エピジェネティックにサイレンシングされたプロモーターを有する、エピジェネティックにサイレンシングされた遺伝子である。任意に、不活性化されたTP53遺伝子は、エピジェネティックにサイレンシングされたTP53プロモーターを有するか、または不活性化されたRb1遺伝子は、エピジェネティックにサイレンシングされたRb1プロモーターを有するか、または不活性化されたBRCA遺伝子は、エピジェネティックにサイレンシングされたBRCAプロモーターを有する。エピジェネティックなサイレンシングについてアッセイするための適切な技術としては、クロマチン免疫沈降(ChIP-on chip、ChIP-Seq)蛍光インシトゥハイブリダイゼーション(FISH)、メチル化感受性制限酵素、DNAアデニンメチルトランスフェラーゼ同定(DamID)、及びバイサルファイトシーケンシングが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Verma et.al.,Cancer Epidemiology,Biomarkers,and Prevention 23:223-233(2014)を参照のこと。
【0177】
様々な態様において、不活性化された遺伝子は、ウイルス誘導型遺伝子サイレンシング(VIGS)により不活性化される。様々な実施態様において、不活性化されたTP53遺伝子は、ウイルスタンパク質、例えばヒトパピローマウイルス(HPV)E6タンパク質により不活性化される。任意に、HPV E6タンパク質は、TP53遺伝子によりコードされるp53タンパク質と相互作用し、p53タンパク質を不活性にする。様々な実施態様において、不活性化されたRb1遺伝子は、ウイルスタンパク質、例えばHPV E7タンパク質により不活性化される。任意に、HPV E7タンパク質は、Rb1遺伝子によりコードされるRbタンパク質と相互作用し、Rbタンパク質を不活性にする。このようなサイレンシング方式は当技術分野で公知である。例えば、Jiang and Milner,Oncogene 21:6041-6048(2002)を参照のこと。
【0178】
本開示の方法の様々な実施形態において、がんの細胞は、遺伝子増幅、例えばCCNE1増幅、または遺伝子のコピー数の増加、例えば遺伝子の遺伝子コピー数増加を含む。様々な実施態様において、がんの細胞は、DNAまたはRNAに基づく技術(遺伝子発現分析[比較ゲノムハイブリダイゼーション、RNAに基づくハイブリダイゼーション]、NGS、PCRまたはサザンブロット)によって、または分子細胞遺伝学的技術(遺伝子特異的プローブを用いたFISH2、CISH(発色インシトゥハイブリダイゼーション)によって検出することができる遺伝子コピー数増加または増幅された遺伝子を含む。様々な態様において、遺伝子増幅または遺伝子コピー数増加を検出するために、競合的または定量的PCR、cDNAマイクロアレイに対するゲノムハイブリダイゼーション、及びRNAに対する遺伝子プローブのハイブリダイゼーション及び定量を行う。例えば、Harlow and Stewart,Genome Res 3:163-168(1993);Heiskanen et.al.,Cancer Res 60(4):799-802(2000)を参照のこと。様々な実施態様において、がんの細胞は、MDM2遺伝子の遺伝子コピー数増加もしくは増幅、及び/またはFBXW7遺伝子の遺伝子コピー数増加もしくは増幅もしくは突然変異を含む。代表的な態様において、がんの細胞は、MDM2遺伝子の遺伝子コピー数増加または増幅、及びp53タンパク質レベルの低下を含む。代表的な態様において、がんの細胞は、FBXW7遺伝子の突然変異、及びCCNE1遺伝子によりコードされる遺伝子産物の過剰発現を含む。次世代シーケンシング(NGS)もまた、遺伝子コピー数増加もしくは減少または遺伝子増幅を検出するための方法として使用される場合があり、それによって遺伝子領域がシーケンシングされ、シーケンシングリードが他の遺伝子と比較され、目的の遺伝子の増減が推測される。
【0179】
代表的な態様において、不活性化されたTP53遺伝子は、(i)TP53遺伝子突然変異、欠失、短縮化及び/またはエピジェネックにサイレンシングされたTP53プロモーターを含むか、(ii)ウイルスタンパク質によるかまたはMDM2遺伝子の遺伝子増幅を介して不活性化されるか、または(iii)それらの組み合わせである。任意に、ウイルスタンパク質は、ヒトパピローマウイルス(HPV)E6タンパク質である。代表的な態様において、不活性化されたRb1遺伝子は、(i)Rb1遺伝子突然変異、欠失、短縮化及び/またはエピジェネックにサイレンシングされたRb1プロモーターを含むか、(ii)ウイルスタンパク質により不活性化されるか、または(iii)それらの組み合わせである。任意に、ウイルスタンパク質は、ヒトパピローマウイルス(HPV)E7タンパク質である。代表的な態様において、不活性化されたBRCA遺伝子は、(i)BRCA遺伝子突然変異、欠失、短縮化及び/またはエピジェネックにサイレンシングされたBRCAプロモーターを含む。任意に、BRCA遺伝子はBRCA1遺伝子である。あるいは、BRCA遺伝子はBRCA2遺伝子である。
【0180】
様々な態様において、不活性化されたTP53遺伝子、不活性化されたRb1遺伝子、CCNE1遺伝子コピー数増加または増幅、及び/または不活性化されたBRCA遺伝子は、新生物疾患(例えばがん)の生殖系列細胞に存在する。様々な態様において、不活性化されたTP53遺伝子、不活性化されたRb1遺伝子、CCNE1遺伝子コピー数増加または増幅、及び/または不活性化されたBRCA遺伝子は、新生物疾患(例えばがん)の生殖系列細胞に存在し、新生物疾患(例えばがん)の体細胞には存在しない。任意に、新生物疾患の体細胞突然変異ゆえに、新生物疾患の体細胞は、野生型の遺伝子型に復帰しており、従って不活性化されたTP53遺伝子、不活性化されたRb1遺伝子、CCNE1遺伝子コピー数増加または増幅、及び/または不活性化されたBRCA遺伝子を示さないが、新生物疾患の生殖系列細胞は依然として、不活性化されたTP53遺伝子、不活性化されたRb1遺伝子、CCNE1遺伝子コピー数増加または増幅、及び/または不活性化されたBRCA遺伝子を示す。例えば、新生物疾患は、PARP阻害剤耐性のがんであり得、がんの生殖系列細胞のみが不活性化されたBRCA1遺伝子を有し、一方でそのがんの体細胞はBRCA1コード領域及び機能の回復を示す。
【0181】
細胞遺伝学的方法及び/または分子的方法が、不活性化されたかまたは増幅された遺伝子または遺伝子コピー数増加、例えば不活性化されたTP53遺伝子、不活性化されたRb1遺伝子、増幅されたCCNE1遺伝子または不活性化されたBRCA遺伝子の存在を検出するために使用することができる。代表的な態様では、直接的なDNAシーケンシング、DNAハイブリダイゼーション及び/または制限酵素消化が使用される。任意に、細胞遺伝学的方法は、核型分析、蛍光インシトゥハイブリダイゼーション(FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、またはそれらの組み合わせを含む。様々な実施態様において、分子学的方法は、制限断片長多型(RFLP)、増幅抵抗性突然変異系(ARMS)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、マルチプレックスライゲーション依存的プローブ増幅(MLPA)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、一本鎖高次構造多型(SSCP)、ヘテロ二本鎖分析、ミスマッチの化学切断(CCM)、タンパク質短縮化試験(PTT)、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)、またはそれらの組み合わせを含む。任意に、PCRはマルチプレックスPCR、ネステッドPCR、RT-PCRまたはリアルタイム定量PCRである。様々な態様において、TP53遺伝子、Rb1遺伝子、CCNE1遺伝子、及び/またはBRCA遺伝子によってコードされるRNAまたはタンパク質の発現レベルがアッセイされる。様々な態様では、ARMS、FISH、IHC、またはNGSが採用される。このような技術は、Su et al.,J Experimental Clin Cancer Research 36:121(2017)及びHe et al.,Blood 127(24):3004-3014(2016)に記載されている。様々な実施態様では、全エクソームシーケンシングまたは全ゲノムシーケンシングが使用される。代表的な態様では、アッセイは液体生検を含む。液体生検は、当技術分野で詳細に記載されている。例えば、Poulet et al.,Acta Cytol 63(6):449-455(2019)、Chen and Zhao,Hum Genomics 13(1):34(2019)を参照のこと。
【0182】
様々な態様では、遺伝子コピー数増加または増幅は、遺伝子によりコードされる遺伝子産物(例えばRNA及び/またはタンパク質)の過剰発現またはレベルの上昇につながる。RNA及び/またはタンパク質レベルの上昇を検出する方法は当技術分野で公知である。代表的な態様では、CCNE1遺伝子の遺伝子コピー数増加または増幅は、CCNE1遺伝子によりコードされる遺伝子産物の過剰発現またはレベル上昇につながる。代表的な態様では、CCNE1遺伝子産物の過剰発現は、FBXW7遺伝子における突然変異により引き起こされる。様々な態様では、試料は、CCNE1遺伝子産物の過剰発現及びFBXW7遺伝子における突然変異について陽性である。
【0183】
核酸(例えば遺伝子、RNA、mRNA)の発現レベルを決定する適切な方法は、当該技術分野で公知であり、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)(例えば定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR))、RNAseq、ナノストリング及びノーザンブロッティングが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子発現を測定するための技術は、例えば、遺伝子チップを使用するかもしくは使用しない遺伝子発現アッセイ、またはOnken et.al.,J Molec Diag 12(4):461-468(2010)及びKirby et.al.,Adv Clin Chem 44:247-292(2007)に記載されている遺伝子発現マイクロアレイも含む。Affymetrix遺伝子チップ及びRNAチップ及び遺伝子発現アッセイキット(例えば、Applied Biosystems(商標)TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイ)も、ThermoFisher Scientific(Waltham,MA)、及びNanostring(Geiss et.al.,Nature Biotechnology 26:317-325(2008))などの会社から市販されている。タンパク質の発現レベルを決定する適切な方法は当技術分野で公知であり、免疫アッセイ(例えば、ウエスタンブロッティング、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学アッセイ)、またはビーズに基づく多重アッセイ、例えば、Djoba Siawaya JF,Roberts T,Babb C,Black G,Golakai HJ,Stanley K, et al.(2008)An Evaluation of Commercial Fluorescent Bead-Based Luminex Cytokine Assays.PLoS ONE 3(7):e2535に記載のものを含む。系統的な同定であるプロテオミクス解析及び特定の生物学的系のタンパク質の定量は公知である。この目的のためには、一般的に質量分析が用いられる。
【0184】
代表的な態様において、本方法は、相補的DNA(cDNA)のレベルを該遺伝子によりコードされるRNAに基づいて測定することを含む。簡潔に述べると、本方法は、試料から(例えば試料の腫瘍細胞(複数可)から)RNAを抽出または単離すること、及び試料から単離されるRNAに基づいてcDNAを合成することを含む。あるいは、またはさらに、いくつかの態様では、発現レベルの測定は、試料からRNAを単離し、RNAから相補的DNA(cDNA)を生成させ、cDNAを増幅し、遺伝子発現マイクロアレイに対してcDNAをハイブリダイゼーションすることを含む。従って、いくつかの態様では、発現レベルの測定は、試料からRNAを単離し、RNA-SeqによりRNAを定量することを含む。代替的またはさらなる態様では、発現レベルは、免疫組織化学アッセイを介して決定される。代表的な態様では、発現レベルの測定は、TP53、Rb1、BRCAもしくはCCNE1、またはその遺伝子産物、またはそれらの組み合わせに対する結合剤と試料を接触させることを含む。いくつかの態様において、結合剤は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの態様において、結合剤は、TP53、Rb1、BRCAもしくはCCNE1、またはそのRNA転写産物、またはその相補体に特異的な核酸プローブである。
【0185】
TP53、Rb1、BRCAもしくはCCNE1、またはその遺伝子産物の発現レベルを対象から得られた試料から測定したら、測定された発現レベルを参照レベルと比較し、ハウスキーピング遺伝子に対して正規化し、数学的に変換し得る。代表的な実施態様では、TP53、Rb1、BRCAもしくはCCNE1、またはその遺伝子産物の測定された発現レベルをセンタリングし、スケーリングする。生物学的データをセンタリングし、スケーリングする適切な技術は当該技術分野で公知である。例えば、van den Berg et.al.,BMC Genomics 7:142(2006)を参照のこと。
【0186】
野生型TP53、Rb1、CCNE1及びBRCA遺伝子、ならびにこれらの遺伝子によりコードされるRNA及びタンパク質は、当技術分野で公知である。それぞれの代表的な配列は、National Center for Biotechnology Information (NCBI)のウェブサイトで入手可能であり、本明細書と共に提出された配列リストで提供される。
【表3】
【0187】
がんの細胞は、(a)不活性化されたTP53遺伝子、及び/または(b)(i)不活性化されたRb1遺伝子、(ii)増幅されたCCNE1遺伝子、CCNE1遺伝子の遺伝子コピー数増加またはCCNE1遺伝子産物の過剰発現、(iii)不活性化されたBRCA遺伝子、または(iv)それらの組み合わせのうち少なくとも1つについて、「陽性」または「陰性」として同定され得る。本明細書で使用する場合、試料に関連した「陽性」という用語は、不活性化されたTP53遺伝子、及び/または(b)(i)不活性化されたRb1遺伝子、(ii)増幅されたCCNE1遺伝子、CCNE1遺伝子の遺伝子コピー数増加またはCCNE1遺伝子産物の過剰発現、(iii)不活性化されたBRCA遺伝子、または(iv)それらの組み合わせのうち、少なくとも1つが試料中に存在することを意味する。本明細書で使用する場合、試料に関連した「陰性」という用語は、不活性化されたTP53遺伝子、及び/または(b)(i)不活性化されたRb1遺伝子、(ii)増幅されたCCNE1遺伝子、CCNE1遺伝子の遺伝子コピー数増加またはCCNE1遺伝子産物の過剰発現、(iii)不活性化されたBRCA遺伝子、または(iv)それらの組み合わせのうち、少なくとも1つが試料中に存在しない、例えば、試料が不活性化TP53遺伝子を有しない、及び/または(b)(i)不活性化されたRb1遺伝子、(ii)増幅されたCCNE1遺伝子、CCNE1遺伝子の遺伝子コピー数増加またはCCNE1遺伝子産物の過剰発現、(iii)不活性化されたBRCA遺伝子、または(iv)それらの組み合わせのうちの少なくとも1つが試料中に存在することを意味する。
【0188】
対象
本開示の代表的な実施形態において、対象は、マウス及びハムスターなどの齧歯目の哺乳動物、及びウサギなどの兎形目の哺乳動物、ネコ科の動物(ネコ)及びイヌ科の動物(イヌ)を含む食肉目の哺乳動物、ウシ亜科動物(ウシ)及びイノシシ科の動物(ブタ)を含む偶蹄目の哺乳動物、またはウマ科の動物(ウマ)を含む奇蹄目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない哺乳動物である。いくつかの態様では、哺乳動物は、霊長目の動物、Ceboid科の動物、もしくはSimoid科の動物(サル)、または真猿亜目(ヒト及び類人猿)の哺乳動物である。いくつかの態様において、哺乳動物はヒトである。様々な態様において、対象は、新生物疾患、例えば、本明細書に記載されるもののいずれか1つを有する。本明細書で使用する場合、「患者」、「対象」、または「哺乳動物」という用語は、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、及びネコを含む任意の「患者」、「対象」、または「哺乳動物」を指す。本発明の1つの実施形態において、哺乳動物はヒトである。様々な態様において、対象は成人のヒトである。任意に、対象は、少なくとも1つの化学療法剤による前治療を受けている。
【0189】
代表的な態様では、対象は、転移がん、切除不可能な腫瘍またはこれらの組み合わせを含むがんを有する。様々な態様では、がんまたは腫瘍は、CDK4/6阻害剤での処置に対する耐性または感受性低下を示すか、または示したことがある。代表的な態様では、対象は、乳癌、任意にルミナル乳癌またはトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を有する。様々な態様では、乳癌は、(a)組織学的または細胞学的に、転移性または局所的再発性のエストロゲン受容体(ER)陰性(例えば免疫組織化学[IHC]により<1%)であると確認され、(b)プロゲステロン受容体(PR)陰性(例えば<1%IHC)であり、及び(c)ヒト上皮増殖因子受容体2(Her2)陰性(ASCO/CAP定義に従い、蛍光インシトゥハイブリダイゼーション[FISH]陰性、IHCにより0もしくは1+、またはIHC2+及びFISH陰性のいずれか)である。代表的な態様では、対象は、再発性であり、及び/または転移性の設定において少なくとも1ラインの全身的な化学療法に対して難治性または、それらの状態に対して臨床的な有益性を提供することが知られている既存の治療(複数可)に不耐性である。代表的な実施態様では、対象は、免疫チェックポイント阻害剤に以前に曝露されている。様々な実施態様では、乳癌は、ホルモン受容体(HR)陽性、及び/またはHER2陰性である。様々な態様では、乳癌は、進行性乳癌及び/または転移性乳癌である。様々な態様では、対象は、内分泌療法を受けた後に進行したHR+/HER2-進行性または転移性乳癌を有する。いくつかの態様では、対象は、過去にがんが拡散/転移した後に内分泌療法及び化学療法で治療された、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行性または転移性乳癌の患者である。様々な実施態様では、対象は、閉経後の女性において過去にホルモン療法(Arimidex(化学名:アナストロゾール)、Aromasin(化学名:エキセメスタン)及びFemara(化学名:レトロゾール)で処置されたことがないHR+/HER2-進行性または転移性乳癌を有する。様々な実施態様では、対象は、ホルモン療法での処置後に成長したHR+/HER2-の進行性または転移性乳癌の閉経後の女性である。特定の態様では、対象は、HR+、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陰性の進行性または転移性乳癌を患う閉経前/閉経期または閉経後の女性であり、内分泌に基づく治療を受けたことがある。任意に、対象は、HR+、HER2-の進行性または転移性乳癌の閉経後の女性であり、初回の内分泌に基づく治療を受けたか、または内分泌療法での処置時に疾患進行がある。様々な態様では、対象は、卵巣癌、任意に高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)を有する。任意に、卵巣癌は、白金耐性のHGSOCである。代表的な態様では、対象は、原発性の腹膜癌及び/または卵管癌を有する。様々な態様では、対象は、白金含有レジメンの期間中、またはその6ヶ月以内に進行性として定義される白金耐性がある、転移性または切除不能HGSOCの組織学的にまたは細胞学的に確定された診断を有する。様々な態様では、対象は、卵巣癌を有し、白金耐性再発治療を受けたことがあるか、または受けている。様々な態様では、対象は漿液性子宮内膜癌を有する。任意に、対象は、転移性または再発性の漿液性子宮内膜癌の組織学的にまたは細胞学的に確定された診断を有する。様々な実施態様では、対象は、再発性であるか及び/または転移性/再発性の状況において少なくとも1ラインの全身療法に対して難治性であるか、またはそれらの状態に対して臨床的な有益性をもたらすことが知られている既存の治療(複数可)に不耐性である。様々な実施態様では、対象は、切除不能であり、再発性であり、及び/または少なくとも1ラインの全身療法に対して難治性であるかまたは不耐性である、進行性または転移性の固形腫瘍を有する。任意に、進行性または転移性固形腫瘍はTP53MUTである。
【0190】
代表的な態様において、次のいずれも有さない:(a)活動性の脳転移、(b)原発性中枢神経系(CNS)腫瘍、血液悪性腫瘍またはリンパ腫、(c)制御されていない胸水貯留、心膜液貯留、または腹水、(d)経口投薬ができない原因となる胃腸(GI)管疾患。
【0191】
対象の選択と治療結果
いくつかの実施形態において、開示された方法において化合物Aによって治療される対象は、1つまたは複数の先行する全身性がん治療を受けた者である(例えば、化合物Aは第二選択または第三選択治療である)。先行する全身性がん療法は、がんの種類及び病期を指定した治療として規制当局(例えば、FDAまたはEMA)によって承認された任意の療法であり得る。場合によっては、先行する全身がん治療は、規制当局によってまだ承認されていないが、臨床試験中のがん治療である。対象が以前に全身性がん治療を受けたことがある場合、場合によっては、その対象は、本明細書で開示する化合物Aを用いる治療を開始する前に、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、または少なくとも6ヶ月間、何の全身性がん治療も受けていない。
【0192】
治療を受けている対象は、治療期間中、有害事象(AE)についてモニターされる。治療関連AEは、治療薬に関連するAEである。治療出現AEとは、対象が治療中に発症する有害事象で、治療開始前には存在しなかったものである。場合によっては、治療出現AEは治療自体に関連しないか、または関連しないと疑われる。AEは5つのグレードのうちの1つで特徴付けられ、グレード1は軽度のAE、グレード2は中等度のAE、グレード3は重度のAE、グレード4は生命を脅かす、または障害を与えるAE、グレード5はAEに関連した死亡である。場合によっては、対象は、いかなる治療に関連するグレード3のAEも示さない。場合によっては、対象はいかなるグレード3のAEも示さない。場合によっては、対象は、いかなる治療に関連するグレード4のAEも示さない。場合によっては、対象はいかなるグレード4のAEも示さない。様々な態様において、対象は、化合物Aの投与後、少なくとも1ヶ月間、または少なくとも3ヶ月間、治療に関連するグレード3またはグレード4のAEを示さない。
【0193】
様々な場合において、本明細書に開示される方法において化合物Aで治療される対象は、投与された用量において何らの用量制限毒性(DLT)も示さない。DLTとは、化合物Aの最初の治療サイクル(1日目から21日目)中に発生し、薬剤との関係が否定できない、以下に列挙する基準を満たす任意のAEをいう。AEの等級付けはCTCAE version 5.0のガイドラインに基づく。DLT評価のためのAE:血液学的毒性:発熱性好中球減少症;好中球減少性感染症;グレード4の好中球減少症;7日超のグレード3以上の血小板減少症;グレード2以上の出血を伴うグレード3の血小板減少症;グレード4の血小板減少症;グレード4の貧血、グレード4以上の非血液学的毒性、嘔吐または下痢;グレード3の下痢、または最適な医療支援にもかかわらず3日超続くグレード3の嘔吐;最適な医療支援にもかかわらず3日以上続くグレード3以上の吐き気;その他の任意のグレード3以上のAE。
【0194】
様々な実施態様において、開示された方法の対象は、治療に対する奏功を示す。場合によっては、対象は化合物Aの投与により少なくとも安定疾患(SD)を示す。場合によっては、対象は化合物Aの投与により少なくとも部分奏功(PR)を示す。対象の奏功は、例えば、Eisenhauer et al.,Eur J Cancer,45:228-247(2009)で議論されているように、RECIST1.1で定義されている基準によって評価される。完全奏功(CR)とは、すべての標的病変が消失し、任意の病理学的リンパ節の短軸が10mm未満に縮小していることである。部分奏功(PR)とは、ベースラインの病変径の合計を基準として、標的病変の病変径の合計が少なくとも30%減少することである。進行性疾患とは、対象病変の直径の合計が少なくとも20%増加することであり、試験中の最小の合計(もしそれが試験における最小の合計なら、ベースラインの合計も含む)を基準とし、20%の相対的増加に加え、少なくとも5mmの絶対的増加がなければならない。安定疾患は、PRに適格な十分な縮小でもPDに適格な十分な増大でもない。病勢制御状態とは、患者が安定疾患と部分奏功を交互に示す可能性のある状態をいう。腫瘍の大きさはX線検査で測定することができる。
【0195】
他の実施形態
本明細書においてさらに提供されるのは、塩酸塩(化合物A-HCl)、メシル酸塩(化合物A-MsA)、トシル酸塩(化合物A-TsA)、硫酸塩(化合物A-硫酸塩)、可変水和物(化合物A-可変水和物)、テトラヒドロフラン溶媒和物(化合物A-THF)、エタノール溶媒和物(化合物A-エタノール)、1-プロパノール溶媒和物(化合物A-1-プロパノール)、イソプロピルアルコール溶媒和物(化合物A-IPA)、メタノール溶媒和物(化合物A-メタノール)酢酸イソプロピル溶媒和物(化合物A-IPAc)、アセトン溶媒和物(化合物A-アセトン)、シクロペンチルメチルエーテル溶媒和物(化合物A-CPME)、ジオキサン溶媒和物(化合物A-ジオキサン)、酢酸エチル溶媒和物(化合物A-EtOAc)、アセトニトリル溶媒和物(化合物A-MeCN)、メチルtert-ブチルエーテル溶媒和物(化合物A-MTBE)、トルエン溶媒和物(化合物A-トルエン)ドデシル硫酸塩(化合物A-ドデシル硫酸塩)、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物(化合物A-DMF-水和物)、ジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物(化合物A-DMAC)、モノベシル酸塩水和物(化合物A-ベシル酸塩-水和物)、カフェイン共結晶(化合物A-カフェイン)、クエン酸共結晶(化合物A-クエン酸)、サッカリン共結晶(化合物A-サッカリン)、L-酒石酸共結晶(化合物A-L-酒石酸)、または尿素共結晶(化合物A-尿素)から選択される、本明細書の図及び実施例におけるXRPD、DSC、TGA、吸湿(DVS)のいずれかによって特徴付けられるような、化合物Aの任意の塩、水和物、溶媒和物または共結晶の任意の非晶質または結晶形態;及び化合物Aの塩、溶媒和物または共結晶のいずれか、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬品組成物である。
【0196】
様々な実施形態において、有機溶媒は、エーテル溶媒、非極性溶媒、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。場合によっては、有機溶媒はエーテル溶媒であり得る。適切なエーテル溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。実施形態において、エーテル溶媒は、THFまたは2-メチルテトラヒドロフランであり得る。場合によっては、有機溶媒は非極性溶媒であり得る。適切な非極性溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、キシレン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。実施形態において、非極性溶媒は、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。実施形態において、有機溶媒は、THF、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、1,4-ジオキサン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、有機溶媒はTHFである。
【0197】
本開示は、その詳細な説明と併せて読まれるが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲の範囲内により定義される本開示の範囲を例示することを意図したものであり、限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。例えば、実施例1~45に示すように。
【実施例】
【0198】
以下の実施例は説明のために提供されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0199】
材料及び方法
市販の試薬は、特に指定がない限り、さらに精製せずにそのまま使用する。1.0MのMeI THF溶液は重量で調製した。バッチ及びフロー化学装置(反応器、チューブ、ポンプ、接続部、継手)は市販のものを使用した。
【0200】
以下の合成方法のための出発物質(化合物A)の合成は、2019年12月20日に出願され、2020年7月30日にU.S.2020-0239441として公開された米国非仮特許出願第16/724,119号に開示されている。出発物質、中間体、及び反応の最終生成物は、所望により、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むがこれらに限定されない従来の技術を用いて単離及び精製される場合がある。このような物質は、物理定数やスペクトルデータを含む従来の手段を用いて特性評価される場合がある。
【0201】
異なる指定がない限り、本明細書に記載の反応は、大気圧及び約-78℃~約150℃、または約0℃~約50℃、または約15℃~約25℃の範囲の温度で行われる。
【0202】
PANalytical X’Pert PRO MPD回折計-透過幾何学
異なる指定がない限り、XRPDパターンはPANalytical X’Pert PRO MPD回折計を用い、Optix長尺細焦点線源で生成したCu放射線を入射ビームとして収集した。CuKα X線を、試料を通して検出器に集光するために、楕円勾配をつけた多層膜ミラーを使用した。分析に先立ち、Si 111のピーク位置を確認するためにシリコン試料(NIST SRM 640f)を分析した。試料の標本を3μm厚のフィルムで挟み、透過幾何学において分析した。空気から発生するバックグラウンドを最小化するために、ビームストップと短い散乱散防止エクステンションを使用した。軸方向発散によるブロードニングを最小限に抑えるため、入射ビームと回折ビームにはソーラスリットを使用した。回折パターンは、試料から240mmの位置に設置した走査型位置敏感型検出器(X’Celerator)とData Collectorソフトウェアv.5.5を使用して収集した(ただし受領した材料を除く。それらにはData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用した)。各パターンのデータ取得パラメータは、本レポートのデータセクションの画像の上に表示されている。
【0203】
PANalytical X’Pert PRO MPD回折計-反射幾何学
異なる指定がない限り、XRPDパターンは、PANalytical X’Pert PRO MPD回折計を用い、長尺の細焦点光源とニッケルフィルターを用いて生成したCuKα線入射ビームを用いて収集した。回折計は対称Bragg-Brentano幾何学を用いて構成した。データはData Collectorソフトウェアv.2.2bを用いて収集し、解析した。分析に先立ち、シリコン試料(NIST SRM 640f)を分析し、Si 111ピークの観測位置がNIST認定位置と一致していることを確認した。試料の標本はニッケル被覆した銅ウェルに充填した。空気から発生するバックグラウンドを最小化するために、散乱防止スリット(SS)を使用した。軸方向発散によるブロードニングを最小限に抑えるため、入射ビームと回折ビームにはソーラスリットを使用した。回折パターンは、試料から240mmの位置に設置された走査型位置敏感型検出器(X’Celerator)とData Collectorソフトウェアv.2.2bを用いて収集した。発散スリット(DS)と入射ビーム散乱防止スリット(SS)を含む各パターンのデータ取得パラメータは、本レポートのデータセクションの画像の上に表示されている。
【0204】
粉末X線回折(XRPD)データは、RTMS検出器付きPANalytical X’Pert PRO X線回折システムで取得した。試料は周囲温度で、CuKα線(1.541874Å)を用い、45kV、40mAで、ステップサイズ0.0334°、1ステップあたりの時間50秒で、5°から45°(2θ)まで連続モードでスキャンした。
【0205】
XRPD指数付けは、米国特許第8,576,985号に記載のSSCI独自のソフトウェアTRIADS(商標)を使用して行った。
【0206】
示差走査熱量測定(DSC)は、Mettler-Toledo DSC3+示差走査熱量計を用いて行った。タウラグの調整は、インジウム、スズ、亜鉛で行う。温度とエンタルピーは、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、亜鉛で調整される。その後、その調整は、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、亜鉛を用いて検証される。試料を密閉されたアルミニウム製DSCパンに入れ、重量を正確に記録した。パンの蓋は装置に貫通され、そして分析のためにDSCセルに挿入された。試料パンとして構成された秤量アルミニウムパンは、セルの基準側に置かれた。
【0207】
あるいは、示差走査熱量測定(DSC)分析も、TA InstrumentsのQ及びDiscoveryシリーズ熱量計を用い、50ml/分の乾燥窒素下、アルミニウムパン中で、25℃から250℃まで、そして350℃まで、10℃/分で行った。
【0208】
熱重量分析(TGA)及びTGA/DSC組み合わせ分析は、Mettler-Toledo TGA/DSC3+分析計を用いて実施した。温度とエンタルピーの調整は、インジウム、スズ、亜鉛を用いて行い、次いでインジウムで検証した。天秤はシュウ酸カルシウムで検証した。試料はアルミニウム製の開放型パンに入れた。パンは密閉され、蓋に穴が開けられ、そしてTG炉に挿入された。試料パンとして構成された秤量済みアルミニウムパンを基準台に置いた。炉は窒素下で加熱した。
【0209】
熱重量分析(TGA)は、TA InstrumentsのQ及びDiscoveryシリーズ分析計を用い、プラチナパン中で、25ml/分の乾燥窒素下、周囲温度から、250℃から350℃の間まで、10℃/分で行った。
【0210】
水分収着データは、VTI SGA 100対称蒸気収着分析装置を用いて収集した。白金パンに約5mgから10mgの試料を入れた。吸湿性は、5%RHから95%RHまで、5%RH刻みで評価した。吸着及び脱着サイクルのデータを収集した。平衡基準は、10分間で0.001%の重量変化とし、最大平衡時間は180分とした。
【0211】
溶液プロトンNMRスペクトルは、Spectral Data Services of Champaign(SSCI),ILにより、Varian UNITYINOVA-400分光計を用いて25℃で取得された。試料はDMSO-d6に溶解させた。場合によっては、重水素化DMSOまたはメタノールを用いて、Agilent DD2-400分光計による溶液NMRスペクトルも、SSCIで取得した。
【0212】
19F SSNMRデータは、600Mhz(1H)で動作するBruker DSX分光計で収集された。スピニング周波数14kHzで動作する4mmH/F/Xスピニングプローブをすべての実験に使用した。HPDECプログラムを10秒のリサイクル遅延で使用し、テフロン(登録商標)を基準とした。2.5μsの1H90°パルスと5μsの19F90°パルスを使用した。デカップリングはspinal64シーケンスを用いて行った。信号の平均化のために256のトランジェントを取得した。データはTopspin 3.0ソフトウェアで処理した。
【0213】
実施例1:結晶性化合物A-HCl形態1
化合物A-HCl形態1の結晶化は、化合物Aを塩酸でインシトゥプロトン化した後、複数の溶媒系で達成することができる。当初、化合物A-HCl形態1は、1当量の塩酸をアセトニトリル/水90/10中、周囲条件でスラリー化することにより調製された。その後、アセトニトリル/1,4-ジオキサン系で化合物Aを高温の塩酸で処理する無水プロセスを使用した(表1、エントリーNo.1)。異なる塩酸源を用いた代替反応晶析プロセスを、NMP/EtOH、THF/水、及びアセトン/水中で開発した(表1、エントリーNo.2~5)。アセトン/水が最終的な晶析系として選択されたのは、原薬の純度が一貫して高く、ICHガイドラインの制限値に従って残留溶媒量をコントロールできたためである。これらのバッチの特性評価結果を表1にまとめた。
【0214】
【0215】
化合物Aを30容量のアセトンに溶解した後、仕上げろ過し、5容量の水と2.0当量の塩酸(2.5容量の1.5N塩酸水溶液)を周囲温度で加えた。結晶化とスラリー熟成のための最終的な溶媒組成は80/20(v/v)アセトン/水であり、それは化合物A(すなわち約18mg/mL)と化合物A-HCl形態1(すなわち約8mg/mL)の両方に対して適切な溶解度を提供し、結晶成長と不純物排除を達成した。プロセスはシードされずに行われ、結晶成長は化合物A溶液に塩酸を添加する間に起こる。最終スラリーは周囲温度で10時間熟成され、そして湿式粉砕の前に10℃に冷却された。10℃で粉砕物を単離し、次いで8容量のアセトンでろ過ケーキを洗浄した。材料は40℃で真空乾燥した。THF/水とアセトン/水の両方で湿式粉砕実験を行ったところ、表2に概要するように、指定された目標範囲まで粒子径が減少し、XRPD、固体NMR及びDSCによる形状純度は95%以上であった。
【0216】
【0217】
粉末X線回折:粉末X線回折データは、RTMS検出器付きPANalytical X’Pert PRO X線回折システムで取得した。試料はCuKα線(1.54Å)を用い、45kV、40mAで5°から45°(2θ)まで、ステップサイズ0.0334°で連続モードにより走査した。入射ビーム路には、0.02radのソーラスリット、15mmのマスク、4°の固定散乱防止スリット、プログラム可能な発散スリットが装備されていた。回折ビームには、0.02radソーラスリット、プログラム可能な散乱防止スリット、0.02mmニッケルフィルターが装備されていた。試料は低バックグラウンド試料ホルダーに準備され、回転時間2秒の回転台に設置された。温度可変試験では、試料は平板試料ホルダーに準備され、TTK-450温度制御台に置かれた。湿度可変試験では、モジュール式湿度発生装置(ProUmid)を用いてTHC湿度試料チャンバの雰囲気を制御した。結晶性化合物A-HCl形態1材のXRPDパターンを
図1に、XRPDピークを表3に示す。
【0218】
【0219】
【0220】
熱分析:示差走査熱量測定(DSC)は、TA Instruments Q1000/2000熱量計を用い、50ml/分の流量の乾燥窒素下、アルミニウム製Tzeroパン中で行った。熱重量分析(TGA)は、TA Instruments Q500分析計を用い、60ml/分の乾燥窒素下、白金パン中で行った。結晶性化合物A-HCl形態1のDSC及びTGAを
図2に示す。結晶性化合物A-HCl形態1の典型的なDSC及びTGAは、融解開始温度が271.5℃であり、融解及び分解前に約4%の重量減少があることを示した。
【0221】
動的蒸気収着(DVS):水分収着データは、Surface Measurement Systems DVSAdvantage装置を用いて収集した。平衡基準は、10分間で±0.001%の重量変化とし、最大平衡時間は360分とした。結晶性化合物A-HCl形態1の水分収着プロファイルを
図3に示す。結晶性化合物A-HCl形態1の典型的なDVSは、95%RHで約0.5%未満の重量増加を示した。
【0222】
単結晶データ:結晶性化合物A-HCl形態1の単結晶は、過剰の塩酸を加えることによって、DMF、DMACまたはNMPから室温で成長された。化合物A-HCl形態1の単結晶構造決定には、単一、無色の針状結晶を用いた。データ収集のために選んだ標本は、おおよその寸法が0.29×0.08×0.06mm
3の針であった。この結晶をパラトンオイルを塗ったナイロンループに取り付け、Bruker APEX-II CCD回折計で測定した。データ収集中、結晶は安定なT=173(2)Kに保たれた。構造はOlex2(Dolomanov et al.,2009)をグラフィカルインターフェースとして用い、Intrinsic Phasing解法を用いたShelXT(Sheldrick,G.M.(2015).Acta Cryst.A71,3-8)構造解法プログラムで解いた。モデルは、最小二乗法を用いて、ShelXL(Sheldrick,Acta Cryst.A64 2008,112-122)のバージョン2018/3により精密化した。表5に結晶性化合物A-HCl形態1の結晶学的データ概要を示す。X線結晶構造決定から得られた結晶性化合物A-HCl形態1の分子構造を
図5に示す。
【0223】
【0224】
実施例2:結晶性化合物A-HCl形態2
結晶性化合物A-HCl形態2は、90/10アセトン/水溶媒中、1当量のHClを用いた高処理スラリー条件下で生成した。この準安定形態は融点が低く、スケールアップも再現もできなかった。
【0225】
粉末X線回折:結晶性化合物A-HCl形態2材のXRPDパターンを
図7に示す。
【0226】
熱分析:結晶性化合物A-HCl形態2のDSCを
図8に示す。結晶性化合物A-HCl形態2の典型的なDSCは、113.2℃に融解開始を示した。
【0227】
実施例3:非晶質化合物A-HCl
非晶質化合物A-HClは、メタノール溶液からロータリーエバポレーションで蒸発させて単離され、幅広なピーク(複数可)を持つX線非晶質を示した。ガラス転移温度(T
g)は、変調DSC分析(MDSC)に示すように、124℃であった(
図9)。この化合物は、165°Cから180°Cで加熱すると、結晶性化合物A-HCl形態1に変化した。この化合物は、水で応力を加えると、結晶性化合物A-HCl形態1及び化合物A水和物形態2に変化した。
【0228】
実施例4:結晶性化合物A-MsA形態1
結晶性化合物A-MsA形態1は、1モル当量のメタンスルホン酸と化合物Aをアセトニトリル中、周囲条件でスラリー化することにより調製された。グラムレベルは、オーバーヘッドスターラーを備えたMettler Toledo EasyMax制御型実験室反応器中で、60℃で3gの化合物Aを酢酸エチル(30ml)に溶解することにより、より大規模に調製した。1モル当量のメタンスルホン酸(350μl)を加え沈殿が観察された。スラリーを60℃で8時間熟成し、そして0.1℃/分で20℃まで冷却した。20℃で一晩熟成後、真空ろ過により固体を単離した。ウェットケーキを酢酸エチル(15ml)で洗浄した。XRPD分析は、ウェットケーキが化合物A-MsA形態1であったことを示した。その後、ウェットケーキを周囲温度で4日間真空乾燥し、特性評価を行った。収率は89%である。
【0229】
粉末X線回折:結晶性化合物A-MsA形態1材のXRPDパターンを
図10に示し、XRPDピークを表6に示す。
【0230】
【0231】
結晶性化合物A-MsA形態1の指数付け溶液:XRPD指数付けは、XRPDパターンの情報を抽出し、解釈を助けるために使用できる方法である。XRPD指数付けとは、XRPDパターン中の1組のピークの原因となる結晶成分の結晶学的単位セルのサイズ、形状、対称性を決定するプロセスである。結晶性化合物A-MsA形態1をCu-Kα放射線で採取し、指数付けの結果を以下の表7にまとめた。
【0232】
【0233】
熱分析:結晶性化合物A-MsA形態1のDSC及びTGAを
図11に示す。結晶性化合物A-MsA形態1の典型的なDSCは、250℃に融解開始を示した。結晶性化合物A-MsA形態1のTGAは、分解前に0.2%の重量減少を示した。
【0234】
吸湿性分析:結晶性化合物A-MsA形態1の吸湿性プロファイルを
図12に示す。結晶性化合物A-MsA形態1の典型的なDVSは、95%RHで約1.2%の重量増加を示した。
【0235】
実施例5:結晶性化合物A-MsA形態2
結晶性化合物A-MsA形態2は、1当量のMsAと化合物Aを90/10のTHF/水(v/v)溶媒中、周囲条件でスラリー化することにより調製した。
【0236】
粉末X線回折:結晶性化合物A-MsA形態2材のXRPDパターンを
図14に示す。
【0237】
熱分析:結晶性化合物A-MsA形態2のDSCを
図15に示す。結晶性化合物A-MsA形態2の典型的なDSCは、38.0°Cに融解開始、及び177.1°Cに吸熱現象の開始を示した。結晶性化合物A-MsA形態2のTGAは、分解前に約0.3%の重量減少を示した(
図16参照)。
【0238】
実施例6:結晶性化合物A-TsA形態1及び形態5
p-トルエンスルホン酸1モル当量と化合物Aをアセトニトリル中、周囲条件でスラリー化し、結晶性化合物A-TsA形態1を調製した。
【0239】
粉末X線回折:結晶性化合物A-TsA形態1材のXRPDパターンを
図17に示す。
【0240】
結晶性化合物A-TsA形態1の可変温度X線回折(VTXRD)は、≧180℃の温度における再結晶を示し、新しい結晶形態は結晶性化合物A-TsA形態5と命名された。VTXRDパターンを
図18に示す。
【0241】
熱分析:結晶性化合物A-TsA形態1のDSC及びTGAパターンを
図19に示す。結晶性化合物A-TsA形態1の典型的なDSCは、193.9℃と258.4℃に吸熱現象の開始を示した。結晶性化合物A-TsA形態1のTGAは、分解前に約0.07%の重量減少を示した。
【0242】
実施例7:結晶性化合物A-TsA形態3
結晶性化合物A-TsA形態3は、1モル当量のp-トルエンスルホン酸と化合物Aを90/10のEtOH/水(v/v)中、周囲条件でスラリー化することにより調製した。
【0243】
粉末X線回折:結晶性化合物A-TsA形態3のXRPDパターンを
図22に示す。
【0244】
熱分析:結晶性化合物A-TsA形態3のDSC及びTGAパターンを
図23に示す。結晶性化合物A-TsA形態3の典型的なDSCは、161.0℃と248.9℃に吸熱現象の開始を示した。結晶性化合物A-TsA形態3のTGAは、分解前に約0.48%の重量減少を示した。
【0245】
実施例8:結晶性化合物A-TsA形態4
結晶性化合物A-TsA形態4は、1モル当量のp-トルエンスルホン酸と化合物AをEtOH中、周囲条件でスラリー化することにより調製した。あるいは、この化合物は、化合物A-TsA形態1を95℃から103℃の温度で1日間、次いで107℃から109℃の温度で3日間、または150℃から170℃の温度で1日間真空乾燥することによっても生成された。
【0246】
化合物A-TsA塩形態4のスケールアップは、TSA塩形態1の化合物A-イソプロパノール溶媒和物の脱溶媒によって調製した。手順は、3.5gの化合物Aと1モル当量のp-トルエンスルホン酸(1.08g)をイソプロパノール(60ml)中、オーバーヘッドスターラー付きのMettler Toledo EasyMax制御型実験室反応器で、60℃で撹拌した。スラリーを60℃で1日間撹拌した後、0.1℃/分で20℃まで冷却した。真空ろ過により固体を単離し、イソプロパノール(10ml)で2回洗浄した。XRPD分析は、この物質はトシル酸塩形態1と少量の遊離形態のイソプロパノール溶媒和物の混合物であることを示した。反応を完了させるため、固体をイソプロパノール(30ml)中、約0.15モル当量のp-トルエンスルホン酸(0.21g)と共に周囲温度で4日間再スラリー化した。真空ろ過により固体を単離し、イソプロパノール(10ml)で2回洗浄した。XRPD分析は、固形物はトシル酸塩形態1で構成されているが、未だに痕跡量の遊離形態のイソプロパノール溶媒和物を含んでいることを示した。固形物をイソプロパノール(50ml)中0.25モル当量のp-トルエンスルホン酸(0.34g)と60℃で再スラリー化した。1日間撹拌した後、真空ろ過により固体を単離した。ウェットケーキをイソプロパノール(15ml)で洗浄し、XRPDで分析した。XRPDパターンは化合物A-TsA塩形態1及び少量の化合物A-TsA塩形態4と一致した。この物質を145℃で真空乾燥すると、XRPDによる化合物A-TsA塩形態4に完全に変換された。結晶性化合物A-TsA塩形態4材のXRPDパターンを
図24aに示し、XRPDピークを表7に示す。
【0247】
【0248】
単結晶データ:表8に、結晶性化合物A-TsA形態4の結晶学的データの概要を示す。X線結晶構造決定から見出された結晶性化合物A-TsA形態4の分子構造を
図24bに示す。
【0249】
【0250】
熱分析:結晶性化合物A-TsA形態4のDSC及びTGAパターンを
図25に示す。結晶性化合物A-TsA形態4の典型的なDSCは、253℃に融解開始を示した。結晶性化合物A-TsA形態4のTGAは、分解前に0.145%の重量減少を示した。
【0251】
固体NMR:結晶性化合物A-TsA形態4の固体
19F NMRスペクトルを
図26に示す。-96.93及び-101.60ppmに2つのピークが認められる。
【0252】
実施例9:結晶性化合物A-TsA形態5
結晶性化合物A-TsA形態5は、結晶性化合物A-TsA形態1を180℃超に加熱して調製した。
【0253】
【0254】
実施例10:結晶性化合物A-DiTsA形態6
結晶性化合物A-DiTsA形態6は、アセトニトリル中で、2モル当量のp-トルエンスルホン酸と化合物Aを高処理量設定でスラリー化することにより調製された。この化合物のスケールアップの試みは成功しなかった。
【0255】
【0256】
実施例11:結晶性化合物A-硫酸塩形態1
結晶性化合物A-硫酸塩形態1は、1当量の硫酸と化合物Aをアセトニトリル中、周囲条件でスラリー化することにより調製した。
【0257】
【0258】
熱分析:結晶性化合物A-硫酸塩形態1のDSC及びTGAを
図31に示す。結晶性化合物A-硫酸塩形態1の典型的なDSCは、182.3℃及び263.7℃に吸熱現象の開始を示した。結晶性化合物A-硫酸塩形態1のTGAは、分解前に6.47%の重量減少を示した。
【0259】
吸湿性分析:結晶性化合物A-硫酸塩形態1の吸湿性プロファイルを
図32に示す。結晶性化合物A-硫酸塩形態1の動的蒸気収着(DVS)は、硫酸塩が90%RHで潮解することを示唆している。
【0260】
実施例12:非晶質化合物A
非晶質化合物Aは、化合物A-可変水和物形態2(実施例13参照)1.99gをアセトン100mLに溶解し、振とうして黄色溶液を形成することにより調製した。次いで、この溶液を入口温度54℃、出口温度54℃、吸引器95%、乾燥空気流量0.55kg/分、ノズル空気6.0sL/分、ノズル冷却20℃の条件下で、噴霧速度2mL/分で噴霧乾燥した。非晶質生成物を回収し、真空オーブン下で40℃、-10barの圧力で2.5時間乾燥させ、残留アセトンを除去した。
【0261】
粉末X線回折:非晶質化合物AのXRPDパターンを
図33に示す。
【0262】
熱分析:非晶質化合物AのDSCを
図38に示す。非晶質化合物Aの典型的なDSCは、91℃のガラス転移温度(T
g)を示した。非晶質化合物AのTGA-IRを
図34に示す。非晶質化合物AのTGA-IRは、
図35に示すように、100℃より低い温度で1.05%の水分子の重量減少を示した。
【0263】
実施例13:化合物A-可変水和物形態2
化合物A-メタノール形態1と化合物A-エタノール形態1生成物の混合物を水中で24時間スラリー化することにより、化合物A-可変水和物形態2を調製した。その後、生成物をろ過し、風乾した。
【0264】
あるいは、化合物Aをメタノールとエタノールの混合溶媒中で混合することにより、化合物A-可変水和物形態2を調製した。化合物Aはまず化合物A-メタノール及び化合物A-エタノール溶媒和物混合物を形成し、次いでこれを水中でスラリー化し、化合物A-可変水和物形態2生成物への変換を開始した。完全な変換を達成するために、化合物A-可変水和物形態2生成物をろ過し、高温(例えば50℃)で一晩乾燥させて、残存する有機溶媒をすべて除去した。
【0265】
粉末X線回折:化合物A-可変水和物形態2のXRPDパターンを
図36に示し、XRPDピークを表9に示す。
【0266】
【0267】
熱分析:化合物A-可変水和物形態2のDSCを
図37に示す。化合物A-可変水和物形態2の典型的なDSCは、51℃の脱水開始と136℃の融点を示した。化合物A-可変水和物形態2のTGAを38に示す。化合物A-可変水和物形態2のTGAは、100℃より低い温度で水分子の2.0%の重量減少を示した。
【0268】
吸湿性分析:化合物A-可変水和物形態2の吸湿性プロファイルを
図39に示す。化合物A-可変水和物形態2の動的蒸気収着(DVS)は、95%RHで約3.4%の重量増加を示した。
【0269】
実施例14:無水化合物A形態3
無水化合物A形態3は、化合物A-THF溶媒和物を150℃に加熱し、3分間保持した後、室温で平衡化することで得た。
【0270】
粉末X線回折:無水化合物A形態3のXRPDパターンを
図40に示す。
【0271】
熱分析:無水化合物A形態3のDSCを
図41に示す。無水化合物A形態3の典型的なDSCは、196.5℃に融解開始を示した。
【0272】
吸湿性分析:無水化合物A形態3の吸湿性プロファイルを
図42に示す。無水化合物A形態3の動的蒸気収着(DVS)は、95%RHで約1.5%の重量増加を示した。
【0273】
実施例15:無水化合物A形態4
無水化合物A形態4は、無水化合物A形態3と化合物A-可変水和物形態2(実施例13)をヘプタン中で、40℃で5日間スラリー化することにより得た。
【0274】
粉末X線回折:無水化合物A形態4のXRPDパターンを
図43に示す。
【0275】
実施例16:無水化合物A形態5
無水化合物A形態5は、無水化合物A形態3と化合物A-可変水和物形態2(実施例13)の混合物350mgを、18mLのヘプタン中で、70℃の温度で1日間スラリー化することにより得た。その後、固体をホットプレートから取り出し、ろ過し、5mLのヘプタンで洗浄した;次いで、一晩窒素を吹き込みながら乾燥させた。
【0276】
粉末X線回折:無水化合物A形態5のXRPDパターンを
図44に示す。
【0277】
熱分析:無水化合物A形態5のDSC及びTGAパターンを
図45に示す。無水化合物A形態5の典型的なDSCは、136.5℃に融解開始を示した。無水化合物A形態5のTGAは0.17%の重量減少を示した。
【0278】
吸湿性分析:無水化合物A形態5の吸湿性プロファイルを
図46に示す。無水化合物A形態5の動的蒸気収着(DVS)は、化合物が化合物A-可変水和物形態2(実施例13)に再水和したことを示した。
【0279】
実施例17:無水化合物A形態6
無水化合物A形態3と化合物A-可変水和物形態2(実施例13)の混合物を、ヘプタン中で、80℃の温度で一晩スラリー化することにより、無水化合物A形態6を得た。
【0280】
粉末X線回折:無水化合物A形態6のXRPDパターンを
図47に示す。
【0281】
熱分析:無水化合物A形態6のDSC及びTGAを
図48に示す。無水化合物A形態6の典型的なDSCは、186.4℃に融解開始を示した。無水化合物A形態6のTGAは、0.38%の重量減少を示した。
【0282】
実施例18:無水化合物A形態7
無水化合物A形態7は、無水化合物A形態3と化合物A-可変水和物形態2(実施例13)をヘプタン中で、70℃の温度で3日間スラリー化することにより得た。
【0283】
粉末X線回折:無水化合物A形態7のXRPDパターンを
図49に示す。
【0284】
実施例19:無水化合物A形態8
無水化合物A形態8は、無水化合物A形態3と化合物A-可変水和物形態2(実施例13)をトルエン中で、50℃の温度で3日間スラリー化することにより得た。
【0285】
粉末X線回折:無水化合物A形態8のXRPDパターンを
図50に示す。
【0286】
熱分析:無水化合物A形態8のDSC及びTGAを
図51に示す。無水化合物A形態8の典型的なDSCは156.3℃と185.9℃に融解開始を示した。無水化合物A形態8のTGAは0.73%の重量減少を示した。
【0287】
実施例20:結晶性化合物A形態1
結晶性化合物A形態1を得るために、化合物Aを、予め充填したRedi Sepカラム(12g)、及び溶離液としてヘキサン中20%~100%EtOHを用いたコンビフラッシュ(combi-flash)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その後、所望の生成物を含む画分を減圧下で濃縮し、残渣をアセニトリル/水溶媒混合物に溶解し、凍結乾燥した。
【0288】
粉末X線回折:結晶性化合物A形態1のXRPDパターンを
図52に示す。
【0289】
実施例21:結晶性化合物A-THF溶媒和物
結晶性化合物A-THF溶媒和物は、化合物Aを様々な溶媒、すなわちa)50mg/mLのTHF溶液、b)50-50THF/水混合溶媒、c)50-50THF/メタノール混合溶媒、またはd)50-25-25THF-NMP-水混合溶媒中でスラリー化することにより調製した。
【0290】
粉末X線回折:結晶性化合物A-THF溶媒和物のXRPDパターンを
図53に示す。
【0291】
熱分析:結晶性化合物A-THF溶媒和物のDSC及びTGAを
図54に示す。結晶性化合物A-THF溶媒和物の典型的なDSCは、122.6℃の融解開始と191.5℃の脱溶媒開始を示した。結晶性化合物A-THF溶媒和物のTGAは、THF分子1モル当量の脱溶媒吸熱に相当する11.4%の重量減少を示した。
【0292】
単結晶データ:表10は、結晶性化合物A-THF溶媒和物の結晶学的データの概要である。
【0293】
【0294】
実施例22:結晶性化合物A-エタノール溶媒和物
結晶性の化合物A-エタノール溶媒和物は、化合物Aをエタノール中でスラリー化することにより調製した。
【0295】
粉末X線回折:結晶性化合物A-エタノール溶媒和物のXRPDパターンを
図55に示す。
【0296】
熱分析:結晶性化合物A-エタノール溶媒和物のTGAを
図56に示す。結晶性化合物A-エタノール溶媒和物のTGAは、1モル当量のエタノール分子の損失に相当する7.58%の重量減少を示した。結晶性化合物A-エタノール溶媒和物のDSCを
図57に示す。結晶性化合物A-エタノール溶媒和物の典型的なDSCは、131.8°C、165.6°C、及び198.1°Cに吸熱現象の開始を示した。
【0297】
実施例23:結晶性化合物A-プロパノール溶媒和物
結晶性の化合物A-プロパノール溶媒和物は、化合物Aを1-プロパノール中でスラリー化することで調製した。
【0298】
粉末X線回折:結晶性化合物A-プロパノール溶媒和物のXRPDパターンを
図58に示す。
【0299】
熱分析:結晶性化合物A-プロパノール溶媒和物のTGA及びDSCを
図59に示す。結晶性化合物A-プロパノール溶媒和物のTGAは、1-プロパノール分子の1モル当量の損失に対応する9.95%の重量減少を示した。結晶性化合物A-プロパノール溶媒和物の典型的なDSCは、112.2℃及び194.2℃の融解開始を示した。
【0300】
実施例24:結晶性化合物A-イソプロピルアルコール(IPA)溶媒和物
結晶性の化合物A-IPA溶媒和物は、化合物Aを50-50の1-プロパノール/水混合物中でスラリー化することにより調製した。
【0301】
粉末X線回折:結晶性化合物A-IPA溶媒和物のXRPDパターンを
図60に示す。
【0302】
熱分析:結晶性化合物A-IPA溶媒和物のTGA及びDSCを
図61に示す。結晶性化合物A-IPA溶媒和物のTGAは、1モル当量のイソプロピルアルコール分子の損失に相当する8.5%の重量減少を示した。結晶性化合物A-IPA溶媒和物の典型的なDSCは、114.6℃;158.7℃;及び194.9℃に吸熱現象の開始を示した。
【0303】
実施例25:結晶性化合物A-メタノール溶媒和物
結晶性化合物A-メタノール溶媒和物は、化合物Aをメタノール中でスラリー化することにより調製した。
【0304】
粉末X線回折:結晶性化合物A-メタノール溶媒和物のXRPDパターンを
図62に示す。
【0305】
実施例26:結晶性化合物A-酢酸イソプロピル(IPAc)溶媒和物
結晶性の化合物A-IPAc溶媒和物は、化合物Aを酢酸イソプロピル中でスラリー化することにより調製した。
【0306】
粉末X線回折:結晶性化合物A-IPAc溶媒和物のXRPDパターンを
図63に示す。
【0307】
実施例27:結晶性化合物A-アセトン溶媒和物
結晶性の化合物A-アセトン溶媒和物は、化合物Aをアセトン中でスラリー化することにより調製した。
【0308】
粉末X線回折:結晶性化合物A-アセトン溶媒和物のXRPDパターンを
図64に示す。
【0309】
実施例28:結晶性化合物A-シクロペンチルメチルエーテル(CPME)溶媒和物
化合物Aをシクロペンチルメチルエーテル中でスラリー化することにより、結晶性化合物A-CPME溶媒和物を調製した。
【0310】
粉末X線回折:結晶性化合物A-CPME溶媒和物のXRPDパターンを
図65に示す。
【0311】
実施例29:結晶性化合物A-ジオキサン溶媒和物
結晶性の化合物A-ジオキサン溶媒和物は、化合物Aをジオキサン中でスラリー化することにより調製した。
【0312】
粉末X線回折:結晶性化合物A-ジオキサン溶媒和物のXRPDパターンを
図66に示す。
【0313】
実施例30:結晶性化合物A-酢酸エチル(EtOAc)溶媒和物
結晶性の化合物A-EtOAc溶媒和物は、化合物Aを酢酸エチル中でスラリー化することにより調製した。
【0314】
粉末X線回折:結晶性化合物A-EtOAc溶媒和物のXRPDパターンを
図67に示す。
【0315】
実施例31:結晶性化合物A-アセトニトリル(MeCN)溶媒和物
結晶性の化合物A-MeCN溶媒和物は、化合物Aをアセトニトリル中でスラリー化することにより調製した。
【0316】
粉末X線回折:結晶性化合物A-MeCN溶媒和物のXRPDパターンを
図68に示す。
【0317】
実施例32:結晶性化合物A-メチルtertブチルエーテル(MTBE)溶媒和物
化合物Aをメチルtert-ブチルエーテル中でスラリー化することにより、結晶性の化合物A-MTBE溶媒和物を調製した。
【0318】
粉末X線回折:結晶性化合物A-CMTBE溶媒和物のXRPDパターンを
図69に示す。
【0319】
実施例33:結晶性化合物A-トルエン溶媒和物
結晶性の化合物A-トルエン溶媒和物は、化合物Aをトルエン中で、25℃で18時間スラリー化することにより調製した。
【0320】
粉末X線回折:結晶性化合物A-トルエン溶媒和物のXRPDパターンを
図70に示す。
【0321】
実施例34:結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩
結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩は、化合物A-HCl100mgを0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中、0.01N HClありまたはなしで、37℃で3時間スラリー化することにより調製した。その後、固体を取り出してろ過し、1mLの脱イオン水で洗浄し、一晩窒素を吹き込みながら乾燥させた。新しい結晶形態が得られ、溶液NMR分析からAPI:ドデシル硫酸の比率は1:1であることが示され、アッセイにより化合物Aの含量が69%であることが確認され、これは1当量のドデシル硫酸と相関した。
【0322】
粉末X線回折:結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩のXRPDパターンを
図71に示す。
【0323】
熱分析:結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩のTGAとDSCを
図72に示す。結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩のTGAは21.1%の重量減少を示した。結晶性化合物A-ドデシル硫酸塩の典型的なDSCは、75.8°Cの融解開始温度と174.8°Cの分解を示した。
【0324】
実施例35:結晶性化合物A-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒和物水和物
化合物A-HCl形態1をDMF溶媒に溶解し、結晶性化合物A-DMF溶媒和物水和物を調製した。その後、この溶液をろ過し、溶液中に残存する固体粒子を除去した。透明な溶液をヒュームフード内で、室温でゆっくりと溶媒を蒸発させた。1週間後に単結晶を観察した。
【0325】
粉末X線回折:結晶性化合物A-DMF溶媒和物水和物のXRPDパターンを
図73に示す。
【0326】
熱分析:結晶性化合物A-DMF溶媒和物水和物のDSCを
図74に示す。結晶性化合物A-DMF溶媒和物水和物の典型的なDSCは、107.8℃に融解開始を示した。
【0327】
単結晶データ:提供された結晶の結晶構造では、DMF分子は無秩序であることが示され、水分子が0.25の部分占有率を改善した。DMF分子は化合物Aに水素結合していないことが示された。表11に結晶性化合物A-DMF溶媒和物水和物の結晶学的データの概要を示す。
【0328】
【0329】
実施例36:結晶性化合物A-ジメチルアセトアミド(DMAC)溶媒和物
化合物A-HCl形態1をDMAC溶媒に溶解し、結晶性化合物A-DMAC溶媒和物を調製した。次いで、この溶液をろ過し、溶液中に残存する固体粒子を除去した。透明な溶液をヒュームフード内で、室温でゆっくりと溶媒を蒸発させた。1週間後に単結晶を観察した。
【0330】
粉末X線回折:結晶性化合物A-DMAC溶媒和物のXRPDパターンを
図75に示す。
【0331】
熱分析:結晶性化合物A-DMAC溶媒和物のDSCを
図76に示す。結晶性化合物A-DMAC溶媒和物の典型的なDSCは、約150℃に融解開始を示した。
【0332】
単結晶データ:提供された結晶の結晶構造において、DMAC分子は無秩序であることが示された。しかし、DMAC分子は依然として化合物Aに水素結合していることが示された。表12は、結晶性化合物A-DMAC溶媒和物の結晶学的データの概要である。
【0333】
【0334】
実施例37:結晶性化合物A-モノベシル酸塩水和物形態1
化合物A92.6mgとベンゼンスルホン酸29.3mgをメタノール溶媒1mLに溶解し、結晶性化合物A-モノベシル酸塩水和物形態1を調製した。次いで、この溶液を60℃で1日間撹拌した。スラリーが生じ、真空ろ過により固体を単離した。固形物を1時間風乾した後、分析した。
【0335】
粉末X線回折:結晶性化合物A-モノベシル酸塩水和物形態1のXRPDパターンを
図77に示す。
【0336】
熱分析:結晶性化合物A-モノベシル酸塩水和物形態1のDSC及びTGAを
図78に示す。融解開始温度は約230.8℃であった。結晶性化合物A-モノベシル酸塩水和物形態1のTGAは、142.3°Cまで約1.3%の重量減少を示した。
【0337】
実施例38:結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1
化合物A:カフェインの1:1モル比を用いて、アセトニトリル中で70℃から5℃まで徐冷する実験により、化合物A-カフェイン共結晶形態1を調製した。得られた生成物には、カフェイン共結晶形態1と混合された残りの化合物A出発物質が含まれており、さらに同定されなかった他の不純物も含まれていた。次いで、得られた生成物を、窒素気流下、DSC炉で混合物を167℃まで加熱することによりさらに精製し、純粋な化合物A-カフェイン共結晶形態1を形成した。
【0338】
粉末X線回折:結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1のXRPDパターンを
図79に示す。結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1の単結晶構造データを以下の表13に示す。
【0339】
【0340】
熱分析:結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1のDSC及びTGAパターンを
図80に示す。DSCは、約169.5℃に融解開始を示した。結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1のTGAは、135.3℃まで約0.39%の重量減少を示した。
【0341】
吸湿性分析:結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1の吸湿性プロファイルを
図81に示す。結晶性化合物A-カフェイン共結晶形態1の動的蒸気収着(DVS)は、約95%RHで0.20%を下回る重量増加を示した。
【0342】
実施例39:結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態1
化合物A:クエン酸モル比1:1を用い、酢酸エチル中で70℃から5℃まで徐冷する実験により、結晶性の化合物A-クエン酸共結晶体1を得た。
【0343】
粉末X線回折:結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態1のXRPDパターンを
図82に示す。結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態1は、Cu-Kα放射線で収集され、指数付け結果を以下の表14に示す。
【0344】
【0345】
熱分析:結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態1のDSC及びTGAを
図83に示す。融解開始温度は約107.7℃であることが示された。結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態1のTGAは、140.2°Cまで約6.3%の重量減少0.8mgを示した。
【0346】
実施例40:結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態2
結晶性化合物A-クエン酸共結晶体2は、化合物Aとクエン酸のモル比を1:2として、アセトニトリル中で70℃から冷蔵庫の温度まで徐冷する実験によって得られた。この試料を初めにオイルアウトし、5℃で3日間撹拌してオフホワイトの沈殿物を生成した。
【0347】
粉末X線回折:結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態2のXRPDパターンを
図84に示す。結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態2は、Cu-Kα放射線で収集され、指数付け結果を以下の表15に示す。
【0348】
【0349】
熱分析:結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態2のDSC及びTGAパターンを
図85に示す。DSCは、約93.8℃の吸熱開始を示した。結晶性化合物A-クエン酸共結晶形態2のTGAは、135.3°Cまで約5.3%の重量減少0.6mgを示した。
【0350】
実施例41:結晶性化合物A-サッカリン-共結晶形態1
結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1は、化合物Aとサッカリンのモル比を1:1として、アセトニトリル中で70℃から5℃まで徐冷する実験によって調製した。
【0351】
粉末X線回折:結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1のXRPDパターンを
図86に示す。結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1は、Cu-Kα放射線で収集され、指数付け結果を以下の表16に示す。
【0352】
【0353】
熱分析:結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1のDSC及びTGAを
図87に示す。DSCは約177.0℃に融解開始を示した。結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1のTGAは、100.2°Cまで0.3mg、約2.2%の重量減少を示した。
【0354】
吸湿性データ:結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1の吸湿性プロファイルを
図88に示す。結晶性化合物A-サッカリン共結晶形態1の動的蒸気収着(DVS)は、95%RHで約0.3%の重量増加を示した。
【0355】
実施例42:結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1
結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1は、化合物AとL-酒石酸のモル比1:1を使用して、アセトニトリル中で70℃から5℃まで徐冷する実験により調製した。
【0356】
粉末X線回折:結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1のXRPDパターンを
図89に示す。結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1は、Cu-Kα放射線で収集され、指数付け結果を以下の表17に示す。
【0357】
【0358】
熱分析:結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1のDSC及びTGAを
図90に示す。DSCは約157.0℃の融解開始を示した。結晶性化合物A-酒石酸共結晶形態1のTGAは、140.2℃まで0.2mg、約2.5%の重量減少を示した。
【0359】
吸湿性データ:結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1の吸湿性プロファイルを
図91に示す。結晶性化合物A-L-酒石酸共結晶形態1の動的蒸気収着は、95%RHで約4.75%の重量増加を示した。
【0360】
実施例43:結晶性化合物A-尿素共結晶形態1
結晶性化合物A-尿素共結晶形態1は、アセトニトリル中で、化合物Aと尿素のモル比2:1を使用して、70℃から-15℃~-25℃の冷凍庫温度まで徐冷する実験によって調製した。
【0361】
粉末X線回折:結晶性化合物A-尿素共結晶形態1のXRPDパターンを
図92に示す。結晶性化合物A-尿素共結晶形態1は、Cu-Kα放射線で収集され、指数付け結果を以下の表18に示す。
【0362】
【0363】
熱分析:結晶性化合物A-尿素共結晶形態1のDSC及びTGAを
図93に示す。DSCは、約106.4℃の第1の吸熱開始と約156.8℃の第2の吸熱開始を示した。結晶性化合物A-尿素共結晶形態1のTGAは、155.2℃まで0.5mg、約4.5%の重量減少を示した。
【0364】
吸湿性データ:結晶性化合物A-尿素共結晶形態1の吸湿性プロファイルを
図94に示す。結晶性化合物A-尿素共結晶形態1の動的蒸気収着(DVS)は、95%RHで40%未満の重量増加を示した。
【0365】
溶解度、粉末溶解(PD)及び固有溶解速度(IDR)試験
実施例44:非塩化合物Aの各種形態と比較した化合物A-HCl形態1のPD及びIDR試験
各種形態の化合物A及び化合物A-HCl形態1の溶解度を、絶食状態模擬胃液(FaSSGF)、絶食状態模擬腸液(FaSSIF)、摂食状態模擬腸液(FeSSIF)及び水中で測定した。粉末溶解測定試験の結果は、結晶性化合物A-HCl形態1は、化合物A-可変水和物形態2または化合物A-無水形態3よりも速い溶解性を示したが、非晶質化合物Aよりも遅い溶解性を示した。溶解度とIDRのデータをそれぞれ表19と表20に示す。このデータは、結晶性化合物A-HCl形態1が、ここで試験したどの形態よりも溶解性及びIDRに優れていることを示している。
【0366】
【0367】
【0368】
実施例45:生物学的データ
化合物A-HCl形態1、化合物A-無水形態3及び非晶質化合物Aのイヌ交差PK試験。
合計3頭の雄犬が最初に試験に割り当てられた。すべての動物は投与前少なくとも8時間絶食させ、血液試料採取の最初の4時間まで絶食させた(該当する場合は、4時間の採取間隔で最後の血液試料採取後30分以内に餌を戻した)。
【0369】
各動物は、以下の試験設計表に概説されているように、化合物Aを含む適切な試験品溶液の経口強制飼養用量(PO)を受けた。経口強制飼養投与溶液は、投与中絶えず撹拌した。強制飼養チューブは、投与後(強制飼養チューブを取り外す前)に約10mLの水道水で洗浄した。各フェーズの投与間に最低10日間の休薬期間を設けた。
【0370】
【0371】
イヌPK交差試験の結果を表22に示す。
図95に示すように、化合物A-HCl形態1は非晶質化合物A形態よりも低い曝露量を示した。しかしながら、化合物A-HCl形態1は化合物A-無水形態3と比較して約2倍の曝露量を示し、これは化合物A-無水形態3よりも高い溶解性を示唆した。
【0372】
【0373】
実施例46:化合物A-MsA及びA1-TsAと比較した化合物A-HCl形態1のPD及びIDR試験
化合物A-HCl形態1、化合物A-MsA形態1及び化合物A-TsA形態4の溶解度を、pH6.5の摂食状態模擬腸液(FeSSIF)で測定した。
【0374】
3つの塩とも、FaSSIF中の化合物Aよりも高い速度論的溶解性を示し、溶解速度も速かった。トシル酸塩(A-TsAまたはA-TSA)塩形態4の溶解速度は、塩酸塩形態1よりも良好なメシル酸塩(A-MsAまたはA-MSA)塩形態1よりも良好である。3つの塩はすべて遊離塩基に変換することができるが、FaSSIF中で過飽和状態をしばらく維持することから、医薬品の剤形に使用した場合、生体内で良好な吸収が期待できることが示された。溶解度試験結果のデータを表23に示す。
【0375】
【0376】
前述の説明は、理解を明確にするためだけになされたものであり、本発明の範囲内での変更は当業者には明らかであろうから、そこから不必要な制限を理解すべきではない。
【0377】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、「含む(comprise)」という語及び「含む(comprises)」や「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、他の任意の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を排除することを意味しないと理解される。
【0378】
本明細書全体を通して、組成物が成分または材料を含むと記載されている場合、別段の記載がない限り、組成物はまた、記載された成分または材料の任意の組み合わせから本質的に構成され得るか、またはそれらから構成され得ることが企図される。同様に、方法が記載される場合、方法もまた、別段の記載がない限り、記載されたステップの任意の組み合わせから本質的に構成され得るか、またはそれらから構成され得ることが企図される。本明細書に例示的に開示された本発明は、好適には、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素またはステップがない場合にも実施することができる。
【0379】
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載され図示された個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、任意の他のいくつかの実施形態の特徴から容易に分離することができるか、または任意の他のいくつかの実施形態の特徴と容易に組み合わせることができる個別の構成要素及び特徴を有する。任意の記載された方法は、記載された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施され得る。
【0380】
本明細書に開示される方法及びその個々のステップの実施は、手動で、及び/または電子機器の補助もしくは電子機器によって提供される自動化の助けを受けて実行することができる。特定の実施形態を参照してプロセスを説明してきたが、当業者であれば、方法に関連する行為を実行する他の方法を使用してもよいことを容易に理解するであろう。例えば、別段の記載がない限り、様々なステップの順序は、方法の範囲または精神から逸脱することなく変更することができる。さらに、個々のステップのいくつかを組み合わせたり、省略したり、追加のステップにさらに細分化したりすることもできる。
【0381】
本明細書の開示の文脈における(特に特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」及び「the」という用語ならびに類似の指示対象の使用は、別段の指示がない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈される。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書中で別段の指定がない限り、範囲内にあるそれぞれ別々の値及びそれぞれの終点を個々に言及する速記法としての役割を果たすことが単に意図され、本明細書中であたかも個々に記載されるように、それぞれ別々の値及び終点が本明細書に組み込まれる。本明細書中で提供されるありとあらゆる実施例または代表的な言語(例えば、「など」)の使用は、本開示をより明らかにすることが意図されているもので、別段の記載のない限り、本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を本開示の実施に必須として示していると解釈されるべきではない。
【0382】
本明細書で引用したすべての特許、刊行物及び参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれた特許、刊行物及び参考文献との間に矛盾がある場合は、本開示が優先されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】