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▶ ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ,アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ ネイビーの特許一覧

特表2024-526887ベネズエラウマ脳炎ウイルスを結合し中和する単一ドメイン抗体
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  • 特表-ベネズエラウマ脳炎ウイルスを結合し中和する単一ドメイン抗体 図1
  • 特表-ベネズエラウマ脳炎ウイルスを結合し中和する単一ドメイン抗体 図2
  • 特表-ベネズエラウマ脳炎ウイルスを結合し中和する単一ドメイン抗体 図3A
  • 特表-ベネズエラウマ脳炎ウイルスを結合し中和する単一ドメイン抗体 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ベネズエラウマ脳炎ウイルスを結合し中和する単一ドメイン抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/08 20060101AFI20240711BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20240711BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07K16/08 ZNA
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P31/14
A61P43/00 171
G01N33/569 L
G01N33/543 501A
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503557
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 US2022035483
(87)【国際公開番号】W WO2023003679
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,642
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517405976
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ,アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ ネイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジニー リン
(72)【発明者】
【氏名】ザベタキス,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン,エレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ジョージ ピー.
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA29
4H045EA52
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)の検出又は処置の何れかのための従来のモノクローナル抗体に対する代替物として働き得る単一ドメイン抗体が本明細書で記載される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~8からなる群から選択されるタンパク質配列を含む、単離された抗体。
【請求項2】
前記タンパク質配列が、ポリペプチドリンカーを介して連結された正確に2個のsdAbを含む、請求項1に記載の単離された抗体。
【請求項3】
CDR1、CDR2、及びCDR3として同定される3個の多様な相補性決定領域(CDR)を含む、単一ドメイン抗体であって、
配列番号1~8からなる群から選択される配列に対して少なくも70%の同一性及び少なくとも75%の前記CDR1、CDR2、及びCDR3領域におけるアミノ酸配列同一性を有する、アミノ酸配列を有し;
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)に対する結合活性を有する、
単一ドメイン抗体。
【請求項4】
ポリペプチドリンカーを介して一緒に連結された2つ以上の請求項3に記載の単一ドメイン抗体を含む、タンパク質。
【請求項5】
さらなる機能性を提供するために別のタンパク質ドメインに連結された、請求項1~4の何れか1項に記載のsdAb。
【請求項6】
ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)を検出する方法であって、
VEEVを含有することが知られているか又は疑われる試料を、それへの抗原結合を可能にする条件下で、結合されているか又は固定されている請求項1~4の何れか1項に記載の抗体と接触させることを含み;
前記試料中のVEEVの少なくとも一部が、前記抗体に結合したままであり、それにより前記試料中のVEEVの存在を示す応答が生じる、
方法。
【請求項7】
前記抗体が、前記接触の前に表面に捕捉される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、レポーターとして使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質配列が、ポリペプチドリンカーを介して連結された正確に2個のsdAbを含む、請求項6~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、患者由来であり、VEEVが前記試料中で検出される場合、VEEV感染に対する適切な処置を前記患者に提供する、請求項6~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、非ヒト動物である、請求項6~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~5の何れか1項と薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬。
【請求項13】
それを必要とする個体に、請求項12に記載の医薬を投与することを含む、処置の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2021年7月22日提出の米国仮出願第63/224,642号明細書の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府により資金援助を受けた研究及び開発
米国政府は、本発明において所有権を有する。ライセンシングの照会は、Office of Technology Transfer,US Naval Research Laboratory,Code 1004,Washington,DC 20375,USA;+1.202.767.7230;techtran@nrl.navy.mil,referencing NC113775を対象とし得る。
【背景技術】
【0003】
トガウイルス科(Togaviridae)のアルファウイルス属のメンバーであるベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)は、ヒト及びウマにおける重要な蚊媒介性病原体である。VEEV感染は主に、中枢神経系及びリンパ系組織を標的とし、ウマにおける重篤な脳炎及び、明白でないか又は亜臨床的な感染~急性脳炎に及ぶ多様なヒト疾患を引き起こす。神経学的疾患は、症例の4~14%において出現する。ウマの流行期中のヒト感染の発生は、最大30%であり得る。小児における脳炎と関連する死亡率は、35%と高い。1995年のベネズエラ及びコロンビアでの大流行は、100,000例前後のヒト症例をもたらし、致死的な脳炎の症例は300例を超えた。さらに、VEEVは、ヒト及び他の動物においてエアロゾル吸入により非常に感染しやすい。
【0004】
VEEVに対して有効であると示された抗ウイルス薬はないと考えられている。治験用の新規薬物VEEVワクチンの2つの形態がヒト及び獣医学での使用について利用可能になった一方で、それらは満足には程遠い。例えば、1回のワクチン接種を受けるレシピエントのおよそ20%は、中和Abを生じず、一方で別の20%は、反応原性を呈し、さらにこのワクチンは野生型に復帰し得る。他のワクチンは、複数回のワクチン接種、周期的なブースト注射を必要とし、いくつかのげっ歯類モデルにおいてエアロゾル負荷試験に対する防御を与えられない。
【0005】
他のアルファウイルスのように、VEEVは、エンベロープウイルスであり、3つの構造タンパク質:ウイルスRNAゲノムを被包するカプシド、及び2つのエンベロープ糖タンパク質、E1及びE2、を有する。E1とE2は、ヘテロ二量体を形成し、これは三量体スパイクとしてウイルスエンベロープから突出する。スパイク上のエピトープは、中和Abの標的である。試験は、ウイルス中和エピトープがE2タンパク質上に主に配置されること、及びE2Cエピトープが中和エピトープの中心であると思われることを示している。マウスモノクローナルAb(mAb)1A4A114は、E2Cに特異的である。このmAbは、毒性VEEVによる致死的な末梢曝露から動物を防御することにおいて有効であることが示されている。しかし、マウスmAbは、ヒトにおける治療剤として重大な欠点を有する。例えば、ヒトでのマウスmAbの使用に付随する問題の1つは、それらが抗マウスAb応答を誘導し得ることである。さらに、マウスmAbの反復投与は、マウスmAbの急速なクリアランス及び、時として致死的であり得るアナフィラキシーを起こし得る。マウスmAbのヒト化は、ヒトにおいてAbの免疫原性を低下させると提言されている。しかし、これらは依然として、製造するのに費用がかかり得る大型の複雑な分子であり、コールドチェーンの維持を要する短い保存可能期間を有する。加えてそれらのサイズのため、これらは、血液脳関門を横断できず、従って脳炎の感染を処置するために効果がなく、かつこれらは、さらなる望ましい特性を持つために遺伝子操作することが困難である。
【0006】
検出での適用のために、多くの免疫アッセイは、認識エレメントとしてマウス、ウサギ、ヤギ又はヒツジ由来のモノクローナル又はポリクローナル抗体(IgG)に依存する。機能的なIgGは、4本のポリペプチド鎖から構成され、2本は同一の重(H)鎖であり、2本は同一の軽(L)鎖であり、ジスルフィド結合により連結される。各抗体は、H及びL鎖からの隣接する可変(V)ドメインの相互作用により形成される2つの抗原結合ドメインを有する。抗原結合面は、6個の相補性決定領域(CDR)から構成され、3個がVH及びVLタンパク質ドメインのそれぞれに存在する。様々なサイズ及び配列のこれらの6個のCDRループの相互作用は、多岐にわたる抗原性標的を認識するためのトポロジーを有する多様化した抗原結合面の形成を可能にする。高感度で特異的であるものの、従来の抗体は、開発に時間及び費用がかかり得、限られた安定性を有する。図1は、IgG並びにクローン化された結合誘導体の略図を示す。最小の抗原結合コンストラクトを形成するためのVH及びVLドメインのみを含む、従来のIgGのクローン化誘導体は、バイオセンサー適用のための認識エレメントとして使用されている。これらの単鎖抗体(scFv)は、細菌において発現され、抗体断片の機能性及び特性を目的に合わせるためにタンパク質工学により修飾され得る。しかし、ScFvはしばしば、親の全長抗体ほど安定でなく、及びちょうど全長抗体のように、これらは、それらの2ドメイン構造のため高温で不可逆的に凝集する。理想的には、抗原結合できる単一ドメイン構造の開発は、加熱時の凝集を回避し、かつ高い環境温度での又は長時間にわたる連続使用のためのバイオセンサーの適用を促進し得る。
【0007】
ラクダ類(即ちラクダ、ラマ)及びサメなどの、ある特定の動物は、抗原結合が単一Vドメインを介して仲介される、重鎖ホモ二量体からなる免疫グロブリンのクラスを保持する。これらのVドメインは、単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ又はVHHとしても知られる)としてクローン化される場合、従来の抗体のおよそ10分の1の大きさの、最小の既知の抗原結合断片(12~15kDa)を含む。これは、それらが、従来の抗体により認識されない、比較的近づきにくいエピトープに到達しかつそれらを認識することを可能にし得る。それらの小さいサイズにもかかわらず、sdAbは、それらの抗原に対する高レベルの特異性及び親和性を示し、かつハプテン及びタンパク質に対するナノモル濃度の親和性を有することが示されている。これらは、化学的変性又は熱変性の後に再度折り畳んで抗原を結合でき、それらが高温への曝露後に抗原を結合する能力を保持することを可能にする。いくつかの試験は、sdAbが本質的に熱安定性であることを見出し、高温での抗原結合を示し、このことは、それらが、冷蔵がしばしば可能でない長期のフィールド適用によく適することを示唆する。sdAbに基づく認識エレメントは、高温での使用及び保管並びにセンサー面の再生の可能性を有する従来の抗体の特異性をもたらすはずである。sdAbの一般的配列は、CDR1、CDR2及びCDR3と呼ばれる3つの多様な相補性決定領域(CDR)、及び4つのより保存されたフレームワーク領域(FR)から構成される。特定のsdAbのエピトープ結合は、主にCDRにより決定され、CDR3が、抗原認識において支配的に寄与する。
【0008】
sdAbはまた、治療適用のためのいくつかの魅力的な特性ももたらす。繰り返しになるが、それらの安定性は、それらを室温で安定にし得、一方で殆どの抗体療法は、冷蔵を必要とする。それらの小さなサイズは、同じ重量のタンパク質がより大きな比活性を有し、かつ組織全体にはるかにより速く拡散することを意味する。そのFcドメインの欠如はまた、免疫応答のFcが介在する効果がVEEV感染の非常に長期の負の影響、即ち多発性関節炎、に寄与すると思われる、VEEV治療薬のケースに対し有益であり得る。
【発明の概要】
【0009】
一実施形態では、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)に対する、単一ドメイン抗体(sdAb)又はナノボディとしても知られるラクダ類重鎖抗体(VHH)の単離された可変ドメインは、配列番号1~8からなる群から選択される配列に対して少なくとも70%の全体的なアミノ酸配列同一性を有し、同時に少なくとも75%のCDR1、CDR2及びCDR3領域におけるアミノ酸配列同一性を有する、アミノ酸配列を含む。
【0010】
第2の実施形態は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される配列と少なくとも71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%の全体的なアミノ酸配列同一性を有する第1の実施形態のsdAbである。
【0011】
第3の実施形態は、CDR1、CDR2及びCDR3領域のそれぞれにおけるアミノ酸配列同一性が75%超、例えば76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%である、第1又は第2の実施形態のsdAbである。
【0012】
さらなる実施形態では、単離された抗体は、ペプチドリンカーにより一緒に連結される上記のsdAbの2つを含む。
【0013】
別の実施形態は、所望の機能を提供するように構成されるさらなるアミノ配列を組み込む上記の実施形態の何れかに従うsdAbを含むポリペプチドである。
【0014】
別の実施形態では、VEEVを検出する方法は、VEEVを含有することが知られているか又は疑われる試料を、結合された又は固定された先行する実施形態の抗体と、それへの抗原結合を可能にする条件下で接触させること;及び未結合の構成成分を除去するために抗体をすすぎ(そこで試料中の何れかのVEEVの少なくとも一部は、その抗体に結合したままである)、それにより必要に応じてさらなる段階後に試料中のVEEVの存在を示す応答を生じさせることを含む。別の態様では、試料は患者由来であり、VEEVが試料中で検出される場合、患者はVEEV感染に対する適切な処置を提供される。
【0015】
また別の実施形態は、薬学的に許容可能な担体と一緒に上記のような1つ以上の抗体を含む医薬である。
【0016】
またさらなる実施形態は、それを必要とする個体に医薬の実施形態を投与することを含む処置の方法である。
【0017】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面付きのこの特許又は特許出願公開のコピーは、必要な料金の要求及び支払時にオフィス(Office)により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、抗体及び組み換え誘導体を示す図である。sdAb以外、示されるものは全て、マルチドメイン性を示す。重鎖可変ドメインは、格子模様で陰影を付けて示され、軽鎖ドメインは、水平な線で薄く陰影を付けられ、定常ドメインは、陰影を付されない。
図2図2は、VEEVを結合するsdAbの配列アライメントを提供する。これらのsdAbは、付番位置97~114にある、それらの相補性決定領域3(CDR3)配列の類似性に基づき、5種類の異なるファミリーに分類される。
図3図3A及び3Bは、プラーク減少中和試験(PRNT)方式でのアッセイからのデータを示し、それぞれ、sdAb及びsdAbのある種の連結された融合物の、VEEVのTC83株による細胞の感染を阻害する能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本発明を詳述する前に、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明する目的のためであり、必ずしも限定することを意図しないことを理解されたい。本明細書中に記載のものと同様の、その改変型の、又は同等の、多くの方法、構造及び材料が、過度の実験を行わずに、本発明の実施において使用され得るものの、本明細書中で、好ましい方法、構造及び材料を記載する。本発明を説明すること及び主張することにおいて、次の用語は、以下で示される定義に従い使用される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、別段明らかに示されない限り、複数に対する言及を排除しない。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙される項目の1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、述べられる数値又は範囲と組み合わせて使用される場合、述べられるものの±10%の範囲内で、述べられる値又は範囲よりも幾分多いか又は少ないことを示す。
【0023】
「対象」は、本明細書中で使用される場合、好ましくは哺乳動物、例えば、ウマ、げっ歯類、例えばマウス、ラット、又は非ヒト霊長類、又はヒトである。
【0024】
概説
本明細書で記載されるのは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)に結合するいくつかの単一ドメイン抗体(sdAb;ナノボディ又はVHHとも呼ばれる)である。これらのsdAbは、治療適用において使用される可能性があり、免疫アッセイにおけるウイルスの検出のためにも使用され得る。
【0025】
sdAbの一般的な配列は、3個の多様な相補性決定領域(CDR)及び4個のより保存的なフレームワーク領域(FR)から構成される。エピトープ結合は、主にCDR3により決定される。
【0026】
実施例
ラマを、死んだベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)を含有したウマワクチン(West Nile Innovator+VEWT)を使用して免疫化した。一連の免疫化後に、ラマの末梢血単核細胞(PBMC)から単離されたトータルRNAを、精製した。このトータルRNAを使用して、ラマ重鎖のみの抗体の可変重鎖ドメインのファージディスプレイライブラリを作製した。
【0027】
抗VEEV sdAbの5つの配列ファミリーを、図2で見られるように、CDR3領域において高い類似度を共有するsdAbの群として定義される配列ファミリーを有して、免疫ファージディスプレイライブラリから選択した。本明細書中で、発明者らは、図2においてアミノ酸残基番号26~35の領域としてCDR1を定義し、番号50~65としてCDR2を定義し、番号97~114としてCDR3を定義する。
【0028】
VEEV特異的な結合物質を、固定化された死んだVEEV(株TC-83)において、バイオパニング手順により単離した。選択された配列を、タンパク質調製のためにサブクローニングした。調製されたsdAbのサブセットを次に、結合アッセイに供し、それらはMagplexアッセイによりTC-83結合について陽性であることが分かった。
【0029】
バイオパニング及び代表的クローンの分析から選択される抗VEEV sdAbの群についての特異的なアミノ酸配列は、本開示の対象である。抗VEEVアミノ酸配列を、次の通り記載する:
【0030】
配列番号1(V2B3)
EVQLQASGGGLVQAGGSLRLSCAASGSIVSINVMAWYRQSPGKERELVAKSSGPFTLYADSVKGRFTISNDAAKNTVDLQMNSLKPEDTAVYYCNAEGLRYPSGTYGPSAVWGQGTQVTVSS
【0031】
配列番号2(V8C3)
EVQLQASGGGLVQAGGSLKVSCAASGRTFSSLAMAWFREAPGNEREFVAAIMWTGDRTHYADFVKGRFTISRDNALNTVSLQMNNLKPADTAVYYCAGAFSFPSQFARDYTYWGQGTQVSVSS
【0032】
配列番号3(V11A1)
DVQLQASGGGSVQAGGSLRLSCVASQNLFEYYTMGWYRQVPGSQRERVALINNGGSNVAGSVEGRFTISKDNAKNSIYLQMNNLKPEDSAVYYCRAFGPADYWGQGTQVTVSS
【0033】
配列番号4(V3G9)
EVQLQASGGGLVQAGGSLKVSCAASGRTFNNLAMAWFREAPENEREFVAAIMWTGDRTHYADFVKGRYTISRDNALNTVSLQMNNLKPADTAVYYCAGAFSFPSQFARDYTYWGQGTQVSVSS
【0034】
配列番号5(V2G5)
EVQLQASGGGLVQAGGSLRLSCAASGSIVSINVMAWYRQSPGKQRELVAKSSGPFTLYADSVKGRFTISNDAAKNTVDLQMNSLKPEDTAVYYCNAEGLRYPSGTYGPSAVWGQGTQVTVSS
【0035】
配列番号6(V2C3)
DVQLQASGGGSVQAGGSLRLSCVASQNLFEYYTMGWYRQVPGSQRERVALINNGGSNVAGSVEGRFTISRDNAKNSIYLQMNNLKPEDSAVYYCRAFGPADYWGQGTQVTVSS
【0036】
配列番号7(V2G1)
DVQLQASGGGLVQAGDSLRLSCAASGRTIKGYAVGWFRQASGKEREFVAVISYFDERADYAHSAEGRFTISRDNAKDTVVLQMNSLKPEDTAVYFCAAGLSESTLPSEYIYWGQGTQVSVSS
【0037】
配列番号8(V3A8)
DVQLQASGGGSVQAGGSLRLSCAASGHSFANYHVAWIRQTPGKECEFVGSASRRDDSTYYADFALGRFIISRDNDINTAYLQMNSLKPEDSAVYYCVAAVMAQTTQGWTTDYDLRGQGTQVTVSS
【0038】
次のような配列番号12を有するコンセンサス配列もまた、図2で示す:
XVQLQASGGGSVQAGGXVQAGXSLXXSCXASXXXXXXXXXXWXRXXXGXXXEXVXXXXXXXXXXXXXAXXXXGRFXISXDXXXXXXXLQMNXLKPXDXAVYXCXXXXXXXXXXXXXXXXXXGQGTQVXVSS
【0039】
sdAbのいくつかを、添加されたsdAbがウイルスによる細胞の感染を防御できるプラーク減少中和試験(PRNT)においてウイルス中和について試験した。2つ組の平均を使用して、50%及び80%プラーク減少中和タイター(PRNT50及びPRNT80)を計算した。図3A中の表1は、PRNTアッセイにおいてVEEVのTC83株を阻害する各sdAbの能力を示す。
【0040】
2つの個別のsdAbがポリペプチドリンカーを介して連結されたものを含むsdAbの遺伝子融合物もまた、調べた。例えば、V2B3と、V3A8fと呼ばれるV3A8の誘導体(配列番号9)を、配列番号13を有するグリシン-セリンに基づくリンカーを介し連結して、V2B3-V3A8f(配列番号10)及びV3A8f-V2B3(配列番号11)を作製した。これらのそれぞれの配列を、以下で提供する。
【0041】
配列番号9(V3A8f)
DVQLQASGGGSVQAGGSLRLSCAASGHSFANYHVAWIRQTPGKEREFVGSASRRDDSTYYADFALGRFIISRDNDINTAYLQMNSLKPEDSAVYYCVAAVMAQTTQGWTTDYDLRGQGTQVTVSS
【0042】
配列番号10(V2B3-V3A8f)
EVQLQASGGGLVQAGGSLRLSCAASGSIVSINVMAWYRQSPGKERELVAKSSGPFTLYADSVKGRFTISNDAAKNTVDLQMNSLKPEDTAVYYCNAEGLRYPSGTYGPSAVWGQGTQVTVSSAAAGGGGSGGGGSGGGGSGSDVQLQASGGGSVQAGGSLRLSCAASGHSFANYHVAWIRQTPGKEREFVGSASRRDDSTYYADFALGRFIISRDNDINTAYLQMNSLKPEDSAVYYCVAAVMAQTTQGWTTDYDLRGQGTQVTVSS
【0043】
配列番号11(V3A8f-V2B3)
DVQLQASGGGSVQAGGSLRLSCAASGHSFANYHVAWIRQTPGKEREFVGSASRRDDSTYYADFALGRFIISRDNDINTAYLQMNSLKPEDSAVYYCVAAVMAQTTQGWTTDYDLRGQGTQVTVSSAAAGGGGSGGGGSGGGGSGSEVQLQASGGGLVQAGGSLRLSCAASGSIVSINVMAWYRQSPGKERELVAKSSGPFTLYADSVKGRFTISNDAAKNTVDLQMNSLKPEDTAVYYCNAEGLRYPSGTYGPSAVWGQGTQVTVSS
【0044】
配列番号13(リンカー):AAAGGGGSGGGGSGGGGSGS
【0045】
いくつかの他の融合物を、同様に作製した。各ケースにおいて、融合物は、上の実施例でのように配列番号13のリンカーにより連結される2つのsdAbを含んだ。CC3 sdAbと呼ばれるsdAbもまた、試験し、それは、共同所有される米国特許第11,028,152号明細書で以前に開示され、次の配列(配列番号14)を有する:
EVQLQASGGGSVQAGGSLRLSCVTSQNLFEYYTMGWYRQVPGSQRERVALINNGGSTVAGSVEGRFTISRDHAKNSVYLQMNYLKPEDSAVYYCRAFGPADYWGQGTQVTVSS
CC3 sdAbは先に、VEEVと関連するアルファウイルスであるチクングニアウイルスに結合するとして同定された。抗VEEVライブラリはCC3に密接に関連する配列を明らかにしたので、試験はこのsdAbも含んだ。
【0046】
図3B中の表2は、単量体sdAb又は2つのsdAbのカクテルと比較した、VEEVのTC83株を中和するこれらの連結された構造物の能力についての比較データを提供する。従って、本開示の態様は、任意選択的にそれらの間にスペーサー配列を伴う、2つ又はそれを超える上記のような個々のペプチド配列の融合物を含む、抗VEEV抗体を含む。
【0047】
さらなる実施形態
これらのsdAb及びそれらの誘導体は診断アッセイにおいて使用され得ることが、予想される。例えば、VEEVを含有することが知られているか又は疑われる試料を、本明細書に記載されるようなタンパク質配列を含む結合された又は固定された抗体と、それへの抗原結合を可能にする条件下で接触させ得る。未結合の構成成分を除去するために抗体―抗原複合体をすすいだ後(ここで、試料中の何れかのVEEVの少なくとも一部は抗体に結合したままである)、試料中のVEEVの存在を示す応答を、サンドイッチ蛍光免疫アッセイの完了についてストレプトアビジン-フィコエリスリンにより認識され得るビオチンをタグ付加された第2の抗VEEV sdAbの添加により、得ることができる。捕捉(結合された又は固定された)及び/又はレポーター(例えばビオチンをタグ付加された)方式の両方での抗体の使用が、企図される。表面プラズモン共鳴、MagPlex蛍光免疫アッセイ、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)などの、当技術分野で公知の多くの代替的なアッセイ方式を、実現し得る。
【0048】
上記の例の変形物が可能である。例えば、同じ又は異なる何れかの2つの個々のsdAbが、ポリペプチドリンカーを介して連結され得る。1つの融合タンパク質として発現される2つを超える、例えば3、4、5個の又はさらに多くのsdAbを一緒に連結することも可能である。
【0049】
ポリペプチドリンカーは、実施例で使用されるものより短くても又は長くてもよく;例えば、リンカーは、1~50の(1及び50を含む)アミノ酸長であり得る。リンカーの長さは、通常の実験によって調整され得る。主にグリシン及びセリンを含むリンカーは、所望されるように機能すると予想される。従って、少なくとも50%のグリシン及び/又はセリンを含むリンカーが企図される。
【0050】
さらに、1つ以上のsdAbが、さらなる機能性を提供するために、別のタンパク質に連結され得る。例えば、sdAbは、検出アッセイにおいて役立つように酵素又は蛍光タンパク質に、及び/又は治療的使用に重要であり得る血清半減期の延長を可能にするタンパク質ドメイン(例えばアルブミン結合ドメイン)に、連結され得る。このような連結は、融合タンパク質(任意選択的に上記のようなリンカーを含む)の発現によって、又は翻訳後連結によって、遂行され得る。
【0051】
また企図されるのは、図2で示されるコンセンサス配列に基づく上記のsdAbのバリアントである。バリアントは、プログラムにより作製され、合成され、当技術分野で公知の技術を使用して結合について試験され得る。
【0052】
ヒトなどの対象への投与のために、1つ以上の抗VEEV抗体及び薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む医薬組成物を、使用し得る。本状況において、用語「薬学的に許容可能な」は、担体又は賦形剤が、使用される投与量及び濃度で、これらが投与される対象において何らかの不要な又は有害な効果を引き起こさないことを意味する。このような薬学的に許容可能な担体及び賦形剤は、当技術分野で周知である。これらは好ましくは、無菌の溶液として処方され投与されるが、凍結乾燥された調製物を利用することも可能であり得る。無菌溶液は、無菌ろ過による又は当技術分野でそれ自身公知の他の方法により調製される。この溶液は次に、凍結乾燥されるか又は医薬投薬容器(pharmaceutical dosage container)中に満たされる。溶液のpHは一般に、pH3.0~9.5、例えばpH5.0~7.5の範囲である。抗VEEV抗体は一般的に、適切な薬学的に許容可能な緩衝液を有する溶液中に存在し、本組成物は、塩も含有し得る。任意選択的に、アルブミンなどの、安定化剤が存在し得る。特定の実施形態では、界面活性剤が、添加される。特定の実施形態では、抗VEEV抗体は、注射用の調製物へと処方され得る。
【0053】
組成物は、対象、例えばヒト対象又はウマ対象に投与され得る。単回投与のための組成物中の抗VEEV抗体の総用量は、特に成体ウマの処置の場合、例えば、約0.01μg~それよりもはるかに多いレベルであり得る(例えば約50グラム)。予想されるヒト投与量は、約100mg~約5グラムの範囲であり得る。推奨用量を決定することは、実験により行われ、当業者にとって通常のものである。
【0054】
本開示による組成物の投与は、標準的な投与経路を使用して行われ得る。非限定的な実施形態は、非経口投与、例えば皮内、筋肉内、皮下、経皮又は粘膜投与など、例えば鼻腔内、口腔などを含む。一実施形態では、組成物は、筋肉内注射により投与される。
【0055】
長所
従来の抗体と比較した場合、sdAbは、小さく、より良好に組織に浸透し、血液脳関門を通過する可能性がより高い。これは、特に脳炎を処置又は予防するための、VEEV感染の処置のための診断及び治療適用に役立ち得る。見かけ上scFvはsdAbと多くの類似点を持つ一方で、scFvは重大な制限を有する:第一に、scFvの作製は、はるかにより困難である;第二に、scFvは、保管時に多量体化及び凝集する傾向があり、放射性標識に対しそれほど安定でない;第三に、scFvは、sdAbのサイズの2倍であり、組織浸透性がより低く、かつ血液脳関門を通過する可能性がより低い。
【0056】
これらの新しい配列は、治療剤として及び検出アッセイにおける潜在的な使用を有する堅固な試薬に相当する。従来の抗体が低温での保管を必要とし、かつ様々な検出プラットフォームで最適に働くように容易に調整できない一方で、堅固な組み換え結合分子であるsdAbは、必要ならば、さらにより熱的に安定であるように改変され得るが、それらは天然に、変性されると再折り畳みできる堅牢な安定性を有し、かつそれらはまた、それらの有用性を促進するために様々な融合ドメインとともに発現され得る。sdAbに基づく融合コンストラクトは、治療試薬の半減期を調整するためにも有利であり得る。
図1
図2
図3A
図3B
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
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【国際調査報告】