(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】改善された外科用振動鋸刃
(51)【国際特許分類】
A61B 17/14 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
A61B17/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503579
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022071197
(87)【国際公開番号】W WO2023006878
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518374468
【氏名又は名称】キュオン アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Kyon AG
【住所又は居所原語表記】Hardturmstrasse 103, 8005 Zuerich, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】テピック スロボダン
(72)【発明者】
【氏名】ヒッツ レト
(72)【発明者】
【氏名】ブレシナ シュテフェン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
(57)【要約】
本発明は、発熱を抑えて骨切り術を行うための、改善された外科用器具を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動骨鋸刃であって、
前記鋸刃の歯(1、2)の少なくとも一部に、5~10度の範囲内のすくい角(12、20)を有する
振動骨鋸刃。
【請求項2】
請求項1に記載された振動骨鋸刃であって、
前記鋸刃の歯(1、2)の少なくとも一部に、具体的には5~15度の範囲内の、より具体的には約10度の正の逃げ角(15)を有する
振動骨鋸刃。
【請求項3】
請求項1または2に記載された振動骨鋸刃であって、
前記歯は全て、同じ方向に切断するように向けられる
振動骨鋸刃。
【請求項4】
請求項1または2に記載された振動骨鋸刃であって、
前記歯は、反対方向に切断するように向けられ、好ましくは前記歯の約半数が各方向に切断する状態である
振動骨鋸刃。
【請求項5】
請求項1または2に記載された振動骨鋸刃であって、
前記歯は、両方向に切断するように形作られる
振動骨鋸刃。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載された振動骨鋸刃であって、
医療用に適合する
振動骨鋸刃。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された振動骨鋸刃であって、
前記鋸刃は、滅菌されており、包装されてもよい
振動骨鋸刃。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載された振動骨鋸刃であって、
前記鋸刃は、TPLO手順において使用するための円筒形切断に適合する、円筒形である
振動骨鋸刃。
【請求項9】
請求項1~8に記載された振動骨鋸刃であって、
球形のドーム鋸刃を有する
振動骨鋸刃。
【請求項10】
請求項1~8に記載された振動骨鋸刃であって、
前記鋸刃は、平らなまたは平面状の鋸刃である
振動骨鋸刃。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載された鋸刃および駆動ユニットを備える、
振動骨鋸。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載された振動鋸刃を用いて骨を切断するステップを含む、
ヒトまたは獣医学において骨手術を行う方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脛骨高平部水平化骨切り術(Tibial Plateau Leveling Osteotomy)(TPLO)などの骨切り術を行う際に有用な外科用鋸刃であって、鋸歯の形状を改善することで、骨を切断することにより発生する熱を減少させ、切断速度を向上させる、外科用鋸刃に関連する。同じ設計の改善は、他の、より一般的に使用される平らな外科用振動鋸にも適用されうる。
【背景技術】
【0002】
ヒトの膝関節における前十字靭帯(anterior cruciate ligament)(ACL)は、イヌの後膝関節(stifle)においては前十字靭帯(cranial cruciate ligament)(CrCL)と一般に呼ばれるが、外傷により断裂することが多い。また未だ原因不明の変性過程を経て故障することも、特にイヌにおいて多い。
【0003】
ヒトの整形外科における標準的な手順では、故障したACLを、患者自身の膝蓋腱の一部またはハムストリングから切除した筋膜および腱の一部から作製されたACL同種移植片または自家移植片で置き換える。この手順の結果、短期的に膝は安定するが、長期的な膝の性能は満足なものではないことが多い。おおよそ、手順後15年以内に75~90%の症例で、その関節の変性性関節炎(degenerative arthritis)が発生する。
【0004】
イヌにおける標準的な手術には、被膜外縫合糸の装着(placement of an extra-capsular suture)またはいくつかの形状修正の外科的手法のうち1つの実施を含む。被膜外手順においては、縫合糸は関節の外、通常は外側(ガイソク、lateral side)に装着され、CrCLの機能を近似する。縫合糸を適用する意図は、関節の周囲で線維化が起こるのを待つ間、数週間その関節に安定性を与えることである。この線維化が、その後長期的な安定性を与えるはずである。しかしながら、被膜外縫合糸手法は決まって失敗に終わる。その関節の変性性関節炎は、1年ほど後には例外ではなく原則となる。
【0005】
イヌのCrCLを、解剖的に配置された関節内の人工靭帯により置き換える試みもまた、材料、アンカーデザイン、および外科的手法の長年の研究開発にもかかわらず、一般に失敗してきた。
【0006】
外科的な形状修正手法においては、後膝関節を安定させるために、脛骨が切断され、脛骨および/または関節の形状を変更するようにその一部が再配置される。さまざまな手法が使用されてきており、脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO;米国特許第4,677,973号およびSlocum and Slocum, Vet. Clin. North Am.23:777-795, 1993参照)、脛骨頭側楔状閉鎖型骨切り術(closing wedge osteotomy、CWO;Slocum and Devine, J. Am. Vet. Med. Assoc. 184:564-569, 1984)、および脛骨粗面前進術(tibial tuberosity advancement、TTA;Tepic et al., Biomechanics Of The Stifle Joint, in Proceedings of the 1st World Orthopaedic Veterinary Congress, Munich, Germany, pp. 189-190. 2002;EP 2854677 B1、Tepic and Hopmans参照)を含む。イヌにおいて使用される外科的アプローチのうち、TTAは病的状態がより少なく回復がより早いことに関連すると思われ、また関節に即効性および耐久性のある安定性も与える(Boudrieau, Vet Surg., 38(1):1-22, 2009)。臨床的受容性という点で10年以上の優位性があるTPLOは、最も一般的に使用される形状修正手順である。
【0007】
しかしながら、これら全ての手法で手術合併症は少なくない。最も一般的なのは、大腿骨と脛骨の間の過度の超生理学的運動によって引き起こされる、内側(ナイソク、medial)半月板への術後損傷である。特別な板およびネジによるTPLOの固定が失敗することは比較的まれであるが、失敗した場合、ほとんど常に近位部であり、骨切り部の近位に良い骨の手がかり(purchase)がないため、再度の手順による治療は非常に困難である。骨切り部をまたぐ骨の治癒は、外科用刃によって引き起こされる熱壊死により、傷つけられうる。骨切り術中の塩類溶液による冷却は必須であるが、部分的にしか効果がない。熱壊死の一般的な徴候は、切り口に沿って硬化骨が現れることである。過剰な温度により死んだ骨は、死骨細胞および毛細血管が残した空隙を全てミネラルが埋めるため、密度の増加を示す。この区域の血液供給が不足すると、骨切り部をまたぐ治癒を妨げ、骨感染のリスクもまた増加する。手術中またはその後の、血行性散布による死骨の細菌汚染は、いずれも血液灌流を必要とする免疫応答または薬理学的介入がないため、臨床的に関連する感染症につながりうる。
【0008】
TTAの骨切り術は平らな振動刃により行われ、切り口をより制御できる状態で、および塩類溶液による冷却がより効果的な状態で行われうるにもかかわらず、このことは全てTTAにも当てはまる。
【0009】
これらの整形外科的手順のほとんどは選択的である一方、感染率は外科的に治療された骨折においてよりも高いようである。これは確かに予想外のことである - 骨折は非常に多様で、損傷した組織の量もより多く、手術時間も平均してより長くなるため。
【0010】
本発明の目的は、現在の整形外科的手順に関連する欠点を克服し、それにより組織および/または骨への損傷を減少させ、感染によって引き起こされる合併症を減少させ、治癒を改善することであった。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一態様は、鋸刃の歯の少なくとも一部に、-5~20度の範囲内のすくい角を有する振動骨鋸刃に関連する。ある実施形態において、すくい角は、鋸刃の歯の少なくとも一部で0~15度の範囲内であり、具体的には鋸刃の歯の少なくとも一部で5~10度の範囲内である。ある実施形態において、すくい角は、鋸刃の歯の全てで上記の範囲内である。
【0012】
本発明の文脈における「振動骨鋸刃(oscillating bone saw blade)」という用語は、振動運動に適合する鋸刃を指す。本発明の鋸刃は、整形外科的手順中に、例えば脛骨を切断することを含む手順、例えば獣医学におけるTPLO手順中に、骨を切断するのに適合する。具体的な実施形態において、鋸刃は、イヌの整形外科的手順を行うのに適合する。さらに具体的な実施形態において、鋸刃は、円筒形切断に、具体的にはTPLO手順における円筒形切断に適合する。
【0013】
ある実施形態において、振動骨鋸刃は、鋸刃の歯の少なくとも一部に、例えば5~15度の、好ましくは約10度の正の逃げ角を有する。ある実施形態において、解放角(release angle)は、全ての鋸刃の歯で上記の範囲内である。
【0014】
ある実施形態において、振動骨鋸刃は、全てが同じ方向に切断するように向けられる歯を有する。さらなる実施形態において、振動骨鋸刃は、反対方向に切断するように向けられる歯を有し、好ましくは歯の約半数が各方向に切断する状態である。なおさらなる実施形態において、振動骨鋸刃は、両方向に切断するように形作られる歯を有する。
【0015】
ある実施形態において、振動骨鋸刃は、球形を有するドーム鋸刃である。さらなる実施形態において、振動骨鋸刃は、平らなまたは平面状の鋸刃である。
【0016】
振動骨鋸刃は、典型的には金属、例えばステンレス鋼で作られる。典型的には、鋸刃は滅菌されており、医療手順における使用に適するように滅菌包装されてもよい。
【0017】
振動骨鋸刃の長さは、典型的には約2cm~約10cmである。
【0018】
振動骨鋸刃の歯の数は、鋸刃の切断幅に依存する。鋸刃の幅は、典型的には約0.5cm~約2cmである。
【0019】
鋸刃の2つの歯の間の距離は、典型的には約0.5mm~約3mm、具体的には約0.7mm~約2mm、より具体的には約1mm~約1.5mmである。
【0020】
歯先から歯元までの深さは、典型的には約0.3mm~1.5mmである。
【0021】
円筒形切断のための鋸の半径は、典型的には約9mm~約33mmまで3mm刻みで与えられる。TPLO手順のための最も一般的な半径は、21mmおよび24mmである。
【0022】
本発明の振動骨鋸刃は、駆動ユニットに取り付けられうる。駆動ユニットは、動力源、例えば電池、充電器、電源および/または電気接続、または圧縮空気を備えうる。ある実施形態において、鋸刃は、約30ワット~約300ワットの電力を用いて操作するように適合する。
【0023】
ある実施形態において、駆動ユニットの振動の全振幅は、約4~8度、具体的には約6度である。
【0024】
本発明のさらなる態様は、上述の振動鋸刃および駆動ユニットを備える振動骨鋸である。鋸は、外科的手順、具体的には整形外科的手順、例えば脛骨を切断することを含む手順、例えば獣医学におけるTPLO手順を行うのに適合する。
【0025】
本発明のさらなる態様は、上述の振動鋸刃を用いて骨を切断するステップを含む、ヒトまたは獣医学において骨手術を行う方法である。
【0026】
本発明は、性能が改善した外科用器具を提供し、これにより、獣医およびヒト患者において年間何十万件も行われる整形外科的手順において、より良い臨床結果につながるはずである。イヌにおける十字靱帯疾患に対するTPLOまたはTTAによる矯正骨切り術の件数は、年間200000件のオーダーである。合併症発生率は比較的低いとはいえ、感染または治癒遅延に関連する罹患に苦しむ症例の数は非常に多く、獣医療専門家およびイヌの飼い主が、十字靱帯欠損の問題を解決するのにあまり効果的でない侵襲性のより低い縫合手法の代わりに形状修正手順を選択することに、消極的であることの一因となっている。イヌにおける十字靭帯断裂に対して行われる全ての治療のうち80~90%は、縫合手法が占める。
【0027】
TPLO骨切り術を行うために、スローカム氏(Slocum)は、振動解剖鋸を採用し、その後修正した。スローカム氏およびde Soutter Medical Companyは、現在もTPLO施術者により最もよく使用される型である、軸方向に位置合わせした動力鋸および刃を開発した。スローカム氏のバイラジアル(bi-radial)鋸刃は、軸方向に位置合わせした振動モーターユニットまたは振動アダプター付きパワードリルと併用される、様々な一定厚さの刃に置き換えられた。本発明者らが知る全ての場合において、切断歯の基本的形状は変わっていない。両方向の切断では、すくい角が20~30度の範囲内の負となり、結果として歯先が尖り、従って逃げ角が定義されない。
【0028】
しかしながら、これらの基本的形状パラメータの鋸を用いて骨に切り込むのは、非常に効率が悪く、結果として高熱が生じる。実際、この動作は骨に切り込むよりは、むしろ骨を砕くのに近い。骨の破片は、前進する鋸歯の下に残る骨内に押し込まれる。この形状の歯では、金属などの硬い材料に切り込むことはできない。この形状の鋸歯は、木材を除去することができ、大工仕事でのちょっとした切断作業に使用される振動刃に一般に使用される。
【0029】
本発明は、産業用途からの知識を外科用振動鋸に、具体的にはTPLO鋸に適用するが、より広く平面骨切り術のための平らな振動鋸刃にも適用する。骨に有害な動力散逸を減らして切断することに加えて、一方向性の切断作用はもう一つの重要な利点をもたらす。
【0030】
従来の振動鋸刃により生じる前後の反力は、切断の力を打ち消すために動力ユニットの大きな慣性を必要とする。動力ユニットは、質量(慣性)の小さい高効率の電気または空気圧モーターを用いて作製されうるが、それらは刃の動きと反対方向に振動するため効率が落ちる。動力ユニットを保持する外科医の手は、手と動力ユニットとの間の結合が皮膚およびその下の筋肉の極めて非線形な剛性の影響を受けるため、振動運動に対して大きな抵抗を生ずることができない。振動する動力ユニットが生ずる小さな変位--わずか数度の回転--では、手の組織の剛性は非常に低く、外科医の手および腕が別の場合では与えられる慣性の恩恵を与えられない。しかしながら、鋸が一方向に動く場合にのみ骨に切り込むならば、動力ユニットは手の組織をより高い剛性の範囲内に追いやり、その結果動力ユニットの振動に対してさらなる抵抗を与え、鋸刃の振幅は理論的な範囲により近づくよう増加する。
【0031】
切断される骨についても同様である。骨はほとんどが軟部組織により支持され、関節で他の骨と結合しており、それらは全て小さな変位に対して高いコンプライアンスである。骨の慣性はまた、直線寸法の3乗に反比例して減少するため、振動鋸を用いて小さな骨を切断することはさらに困難となる。
【0032】
一方向にのみ切断する鋸を使用すると、周囲の軟部組織によってより硬く支持されるように骨を押し、同様に動力ユニットのハンドピースも操作者の手と反対方向に押す。これにより、慣性モーメントがより小さく、従って重量がより小さい動力ユニットを、エンジニアはより自由に設計することができる。また非対称サイクルを有する振動機構を設計することも可能で、その場合、戻り行程、アイドル行程は、切断行程よりも速く動作する。これにより、一方向にのみ切断するという不利を部分的に相殺しうる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】関連する角度を有する鋸刃の歯の形状を示す。
【
図2】写真は、獣医外科用器具の主要ブランド供給者からの2つのTPLO刃の、最新式の歯の形状を示す。
【
図3】本発明に従ったTPLO鋸刃の歯の基本的形状を示す。
【
図4】骨片の除去が改善された、本発明に従った鋸刃の歯を示す。
【
図5】骨片の除去を改善するための別の手段を有する、本発明に従った鋸刃の歯を示す。
【
図6】鋸歯の詳細とともに平面状の振動鋸刃の透視図を示す。
【
図7】両方向に切断する正のすくい角を有する鋸歯を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
鋸歯の基本的形状は、4つのパラメータによって規定される(
図1)。歯1から歯2までの距離10、歯先から歯元までの深さ11、歯の切断前部13と切断される材料の表面14の法線との間のすくい角12、および切断歯の背部と表面14との間の逃げ角15である。歯元16および切断歯の裏側17は、鋸の機能にはあまり影響しないが、鋸の故障を引き起こしうる過度の応力集中を引き起こすことなく、切断片の体積をできるだけ多く許容するように形作られるべきである。
図1に示されるのは正のすくい角12であり、これにより材料の小片18が、歯の間の体積内に持ち上げられる。切断時の鋸の移動方向は、矢印3により示される。
【0035】
獣医学市場には多くのTPLO鋸があり--主要ブランドのうちの2つが、
図2の写真に示される。両方とも
図2に示されるように負のすくい角を有し、両方とも先が尖っており、従って逃げ角は定義されていない。
図2の刃(a)のすくい角は約-25度であり;
図2の刃(b)のすくい角は約-20度である。本発明者らの知る限りでは、全てのTPLO鋸はこれらと同じ幾何学的特徴を有しており、特許および特許出願にはこれらと異なるものは見当たらない(D. Barclay Slocum、US 4,955,888;Zsigmond Szanto、EP 2214571 B1、2016;Chrisopher G. Sidebotham, et al.、US 10,702,283 B2、2020)。Szantoは、TPLO手順およびいくつかの他の整形外科的用途にも使用されうる、球状またはドーム骨切り術のための振動鋸刃を開示する。
【0036】
本発明のTPLO刃のための鋸歯は、好ましくは、正のすくい角20(
図3)および正の逃げ角21を有する。より積極的でない切断を希望する場合は、小さな負のすくい角が使用されうる。すくい角の範囲は-5~20度、好ましくは0~15度、最も好ましくは5~10度である。逃げ角は5~15度、好ましくは約10度である。歯から歯までの距離または間隔22は、刃の半径に依存するが、どのような場合でも、駆動ユニットの振動の振幅よりも小さくなければならない。例えば、駆動ユニットの振動の全振幅が6度であり、鋸の半径が24mmである場合、歯の間隔は24×6.28×6/360=2.5mmよりも小さくなければならず、駆動ユニットと操作者との間の、骨と患者の身体の残りの部分との間の柔順な結合、および骨および駆動ユニットの両方の限られた慣性により、理論的な振動の振幅が常に減少することを考慮すると、好ましくはその約半分である。
【0037】
骨に鋸刃を効果的に使用するには、そうしないと歯の間の体積内を埋めてしまい刃が骨内により深く進むのを妨げる骨片を除去するために、鋸の切り口から歯を出し入れする動きを繰り返す必要がある。歯の間の自由体積から小片を横向きに出すことも、同じ利点がある。
図4に示されるのは、これを実現する1つの手段である。歯の元を斜めに切断し、小片を横に押し出す。
【0038】
図5では、歯の切断面が横向きに傾斜しているため、小片も横向きに移動する。この角度は、図のように歯ごとに左右交互に変えることができる。
【0039】
歯ごとに交互に鋸の平面から歯を押し出すことにより、または歯から離れる方向に鋸刃をより薄くすることにより、切り口の幅を鋸の元の厚さよりも広くすることもまた、通例である。外科用鋸には、後者の方法が好ましい。
【0040】
TPLO鋸に適用されたこれらの知識は全て、平面状の振動骨鋸にも適用されうる(
図6)。
【0041】
図7は、鋸歯が正のすくい角で作製されるが、矢印23で示される両方向に切断するように作製される、2つの実施形態を示す。実施形態(a)では、歯の約半数が各方向に切断するように作製するのが好ましい。実施形態(b)では、各歯は、歯の両側で正のすくい角20で両方向に切断するように作製される。逃げ角21についても同様である。
【0042】
TPLO鋸刃および平面状の振動刃についての、本発明の少なくとも1の実施形態を開示してきたが、当業者であれば変形が理解されるであろう。そのような適合、修正、および改善は、本発明の一部とみなされる。
【国際調査報告】