(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】高速閉ループビーム電流制御を備えたマルチビーム粒子顕微鏡を動作させる方法、コンピュータプログラム製品およびマルチビーム粒子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
H01J 37/04 20060101AFI20240711BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20240711BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240711BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01J37/04 A
H01J37/09 Z
H01J37/28 B
H01J37/147 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503588
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022025312
(87)【国際公開番号】W WO2023001402
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021118561.0
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー インゴ
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ベーンケ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ ハンス
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101DD25
5C101DD38
5C101DD40
5C101EE03
5C101EE13
5C101EE15
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE23
5C101EE33
5C101EE43
5C101EE47
5C101EE49
5C101EE51
5C101EE53
5C101EE59
5C101EE69
5C101GG15
5C101GG37
5C101HH03
5C101HH04
5C101HH05
5C101HH21
5C101HH26
5C101HH66
5C101JJ06
(57)【要約】
複数の個別荷電粒子ビームを使用して動作するマルチビーム粒子顕微鏡を動作させる方法であって、ビーム電流を測定するステップと、公称ビーム電流からの測定ビーム電流のずれを決定するステップと、決定されたずれをドリフト成分と高周波成分とに分解するステップと、第1の閉ループビーム電流制御手段を用いてビーム電流の高周波成分を制御するステップ、および/または、閉ループビーム電流制御手段とは異なる手段を使用してマルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える高周波成分の影響を補償するステップとを含む、方法。ビーム発生システムにおいてエクストラクタとアノードとの間に配置された静電制御レンズを、第1の閉ループビーム電流制御手段として使用することができ、その結果、ビーム発生システムのエクストラクタ電圧を適応化する必要がない。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別荷電粒子ビームを使用して動作するマルチビーム粒子顕微鏡を動作させる方法であって、
ビーム電流を測定するステップと、
公称ビーム電流からの前記測定されたビーム電流のずれを決定するステップと、
前記決定されたずれをドリフト成分と高周波成分とに分解するステップと、
第1の閉ループビーム電流制御手段を用いて前記ビーム電流の前記高周波成分を制御するステップ、および/または、閉ループビーム電流制御手段とは異なる手段を使用して前記マルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える前記高周波成分の影響を補償するステップとを含む、
方法。
【請求項2】
第2の閉ループビーム電流制御手段を用いて前記ビーム電流の前記ドリフト成分を制御するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーム電流を測定するステップは、像記録手順中の前記個別粒子ビームのビーム電流全体の測定を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビーム電流を測定するステップは、像記録手順中の選択された位置におけるマルチアパーチャアレイにおける電流測定を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチアパーチャアレイに入射したビームコーンの半径および/または位置ずれを決定するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電流を測定するための3つのセンサーが、前記マルチアパーチャアレイの上側に、特に三角形の形態で、特に正三角形の形態で、前記複数のアパーチャの外側の周囲に配置される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の閉ループビーム電流制御手段を用いて前記ビーム電流の前記高周波成分を制御するステップは、
前記マルチアパーチャアレイの照射を高周波方式で調整するステップを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の閉ループビーム電流制御手段は、集光レンズシステムの領域における静電双偏向器を含み、および/または、
前記第1の閉ループビーム電流制御手段は、静電集光レンズを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の閉ループビーム電流制御手段は、前記マルチビーム粒子顕微鏡のビーム発生システムのエクストラクタ電極とアノードとの間に配置された静電制御レンズを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記マルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える前記高周波成分の影響を補償するステップは、
前記公称ビーム電流からの前記ビーム電流の高周波ずれに基づいて前記マルチビーム粒子顕微鏡の検出システムを駆動するステップを含み、前記公称ビーム電流からの前記ビーム電流の高周波ずれに基づいて前記検出システムのゲインおよび/またはオフセットの高周波調整が行われる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記検出システムの調整が、すべてのチャンネルについて大域的に、または個別粒子ビームの個別チャネルについて個別に実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える前記高周波成分の影響を補償するステップは、
前記複数の個別粒子ビームがサンプルの表面の上を走査する走査速度を調整するステップを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記測定されたビーム電流値をログ記録するステップをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ビーム発生システムの先端部の残存耐用期間を推定するステップ、および/または、前記先端部の必要な交換を開始させるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法を実施するためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムであって、前記エクストラクタ電極と前記アノードとの間に配置された静電制御レンズをさらに含むビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有し、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成されたマルチビーム発生器と、
前記マルチビーム発生器の前記マルチアパーチャアレイにおける第1のビーム電流測定手段と、
前記発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム発生器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記静電制御レンズの駆動、特に高周波駆動のために構成される、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項17】
前記第1の粒子光学ビーム経路において、前記マルチビーム発生器の下流かつ前記ビームスイッチの上流に配置されたマルチビーム偏向デバイスと、
第2のビーム電流測定手段を有するビームストップであって、前記第1の粒子光学ビーム経路において前記対物レンズの上流に、クロスオーバー面と同じ高さに配置されたビームストップと、を含み、
前記コントローラは、前記第1の個別粒子ビームが前記ビームストップに実質的に入射し、したがって対物面には入射しないように、前記マルチビーム偏向デバイスを用いて前記第1の個別粒子ビームをまとめて一時的に偏向させるように構成される、請求項16に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項18】
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記静電制御レンズの高周波駆動のために構成される、請求項17に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項19】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムであって、前記エクストラクタ電極と前記アノードとの間に配置された静電制御レンズをさらに含む、ビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有し、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成された、マルチビーム発生器と、
前記個別粒子ビームのビーム電流全体を測定するように構成された第2のビーム電流測定手段と、
前記発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム発生器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第2のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記静電制御レンズの駆動、特に高周波駆動のために構成される、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項20】
前記検出システムは、第3の視野を形成する複数の検出領域を有し、前記第2の視野から発する前記第2の個別粒子ビームは前記第3の視野上に結像され、
前記コントローラは、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく前記検出システムのゲインおよび/またはオフセットの調整、特に高周波調整のために構成される、請求項16~19のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項21】
前記検出システムの前記検出領域は個別に駆動される、請求項20に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項22】
前記検出システムの前記検出領域は大域的に駆動される、請求項20に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項23】
前記第1の個別粒子ビームをまとめて偏向させ、サンプル表面の上でこれらをまとめて走査するように構成された、一括走査偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記走査偏向器を駆動するために、かつ、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく前記一括走査偏向器の走査速度の調整のために構成される、請求項16~22のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項24】
前記ビーム発生システムと前記マルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムをさらに含み、
前記コントローラは、第1および/または第2のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記集光レンズシステムの駆動のために構成される、請求項16~23のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項25】
特に、前記集光レンズシステムの前記領域における静電双偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段によるビーム電流測定に基づく前記双偏向器の駆動、特に高周波駆動のために構成される、請求項24に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項26】
前記コントローラは、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記エクストラクタ電極の低周波駆動のために構成される、請求項16~25のいずれか1項に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般には、本発明は、複数の個別粒子ビームを使用して動作するマルチビーム粒子顕微鏡に関する。具体的には、本発明は、マルチビーム粒子顕微鏡における閉ループビーム電流制御の方法、関連するコンピュータプログラム製品および関連するマルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体コンポーネントなど、ますます微細化し、複雑化する微細構造体の絶え間ない進歩に伴い、微細構造体を製造するための平面製造技術、および微細寸法を検査するための検査システムを、開発し、最適化する必要が生じている。たとえば、半導体コンポーネントの開発および製造は、テストウエハの設計のモニタリングを必要とし、平面製造技術は、高いスループットを有する信頼性のある製造のためのプロセス最適化を必要とする。また、リバースエンジニアリングのためと、半導体コンポーネントの顧客固有の個別構成のための、半導体ウエハの分析の最近の需要がある。したがって、ウエハ上の微細構造体を高い精度で調べるために高スループットで使用することができる検査手段が必要である。
【0003】
半導体コンポーネントの製造で使用される典型的なシリコンウエハは、最大300mmの直径を有する。各ウエハは、最大800mm2のサイズの30~60個の反復領域(「ダイ」)に細分される。半導体装置は、複数の半導体構造体を含み、それらは平面集積技術によってウエハの表面上に層を成して製造される。半導体ウエハは、典型的には製造プロセスに起因する平らな表面を有する。この場合、集積半導体構造体の構造体サイズは、数μmから、限界寸法(critical dimension(CD))である5nmにわたるが、構造体寸法は近い将来にさらに微小化するであろう。将来は、構造体サイズまたは限界寸法(CD)は、3nm未満、たとえば2nm、またはさらに1nm未満にまでになると予想される。上記の微小構造体サイズの場合、限界寸法のサイズの欠陥は、きわめて広い面積において迅速に特定される必要がある。いくつかの用途の場合、検査デバイスによって提供される測定の精度の仕様要件は、たとえば2桁または1桁さらに高い。たとえば、半導体フィーチャの幅は、1nm未満、たとえば0.3nmまたはさらに微細な精度で測定される必要があり、半導体構造体の相対位置は、1nm未満、たとえば0.3nmまたはさらに微細な重ね合わせ精度で決定される必要がある。
【0004】
MSEMすなわちマルチビーム走査電子顕微鏡は、荷電粒子システム(荷電粒子顕微鏡(CPM))の分野における比較的新しい進歩の結果である。たとえば、米国特許公報第7244949B2号および米国特許出願公開第2019/0355544号でマルチビーム走査電子顕微鏡が開示されている。マルチビーム電子顕微鏡またはMSEMの場合、視野またはラスターに配置された複数の個別電子ビームがサンプルに同時に照射される。たとえば、4~10000本の個別電子ビームを一次照射として与えることができ、各個別電子ビームは隣接個別電子ビームから1~200マイクロメートルのピッチで離隔されている。たとえば、MSEMは約100本の分離した個別電子ビーム(「ビームレット(beamlets)」)を有し、これらはたとえば六角形ラスター状に配置され、個別電子ビームは約10μmの距離で離隔されている。検査対象サンプルの表面に複数の荷電個別粒子ビーム(charged individual particle beams)(一次ビーム)が共通の広視野光学系、特に共通の対物レンズを用いて、その都度、個別に集束される。たとえば、サンプルは、可動ステージ上で組み立てられるウエハホルダーに固定された半導体ウエハとすることができる。荷電一次個別粒子ビームによるウエハ表面の照射中、相互作用生成物、たとえば二次電子または後方散乱電子が、ウエハの表面から発する。そのそれぞれの出発点が、その都度、複数の一次個別粒子ビームがその上で集束されるサンプル上の場所に対応する。相互作用生成物の量およびエネルギーは、特に、ウエハ表面の材料組成とトポグラフィに依存する。相互作用生成物は、複数の二次個別粒子ビーム(二次ビーム)を形成し、これらが共通の対物レンズによって集められ、マルチビーム検査システムの投影結像システムの結果として、検出面に配置された検出器に入射する。検出器は、それぞれが複数の検出画素を含む複数の検出領域を含み、検出器は二次個別粒子ビームのそれぞれの強度分布を捉える。このプロセスにおいてたとえば100μm×100μmの像視野(image field)が得られる。
【0005】
従来技術のマルチビーム電子顕微鏡は、一連の静電素子と磁気素子とを含む。複数の荷電個別粒子ビームの焦点位置と非点収差を適応化するために、静電素子と磁気素子との少なくとも一部が調整される。従来技術の荷電粒子によるマルチビームシステムは、さらに、一次または二次荷電個別粒子ビームの少なくとも1つのクロスオーバー面を含む。また、従来技術のシステムは、調整をより容易にするための検出システムを含む。従来技術のマルチビーム粒子顕微鏡(multi-beam particle microscope)は、サンプル表面の像視野を取得するために複数の一次個別ビームを用いてサンプル表面の領域を一括走査するための少なくとも1つのビーム偏向器(「偏向スキャナー」)を含む。マルチビーム電子顕微鏡とそれを動作させる方法に関するさらなる詳細は、2020年5月28日に出願された出願番号102020206739.2のドイツ国特許出願に記載されており、その開示は全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0006】
結像品質の要求が高まるにつれて、結像(image)のために使用されるマルチビーム粒子顕微鏡に対する要求も高まる。高品質の記録をするために、安定した動作パラメータがきわめて重要である。これらのうちの1つは、サンプル表面を走査するために使用される個別粒子ビームのビーム電流強度である。
【0007】
個別粒子ビームの均一なビーム電流強度のためには、粒子ビーム源の放射特性、より厳密には全使用放射角度にわたる放射特性の均一性が重要である。比較的大きな放射角度を使用する場合、粒子源、たとえば熱電界放出(TFE)源の放射特性は全体にわたって均一ではなくなる。したがって、対応する粒子ビームシステムにおける第1のマルチアパーチャプレートにおける放射照度も全体にわたって均一ではなくなり、異なる個別ビームにおける電流密度に比較的大きなばらつきがある。しかし、マルチ粒子検査システムの場合、多像視野のすべての個別像視野が同等数の粒子または電子で走査されるように、典型的には数パーセント未満、さらには1パーセント未満である様々な個別ビーム間の電流強度のわずかなばらつきしかないことがシステム要件である。たとえば、これは、ほぼ同じ明るさを有する個別像を得るための前提条件である。個別の像の得られる分解能も個別ビーム電流に依存する。
【0008】
個別粒子ビームのビーム電流の個別調整には複数の選択肢がある。これに関する1つの選択肢は、ドイツ国公開特許第102018007652A1号で開示されており、その開示は全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0009】
粒子源の放射特性は時間の経過によっても徐々に変化し、ドリフト挙動を示すことがある。たとえば、元々供給源によって放射された粒子ビームがその方向を変化させることがある。この方向の低速変化を補正または補償するための粒子光学コンポーネントの使用が知られている。
【0010】
また、粒子源または先端部は経年劣化する可能性があり、たとえば明るさが低下する可能性がある。像の明るさは、さらに、供給源の明るさまたは輝度と相関する。供給源の明るさが低下した場合、これは像の明るさにも当てはまる。この問題の1つの解決策は、低下した明るさを補償するために、検出システムのゲインを大きくすることである。しかし、これは検出器における信号対ノイズ比(SNR)を変化させ、不利な状況では、これは上記信号対ノイズ比の低下を生じさせ、像の得られるコントラストが低下し、したがってこの解決策には条件付きの適合性しかない。
【0011】
したがって、ビーム発生システム(beam generating system)自体の調整が従来一般的であり、従来技術によるとエクストラクタ電極(extractor electrode)に印加される電圧が変更される。しかし、新たに調整されたビーム発生システムが十分に一定した放出特性を再び示すには、エクストラクタ電流のそのような変更の後、数日かかることがあり、最初に先端部を再び「バーンイン(burn in)」する必要がある。
【0012】
要約すると、供給源の放射特性の低速変化は、従来技術における閉ループ制御によって補償可能であるが、高速または高周波変化は補償不可能である。
【0013】
米国特許出願公開第2020/0312619号は、マルチアパーチャアレイにおけるビーム電流測定に基づくマルチビーム粒子顕微鏡におけるビームパラメータの補正を開示している。この場合、ビーム発生システムは、エクストラクタ電圧または加速電圧を調整することによって制御される。ビームマイグレーションも回避することができる。しかし、これは常に、発生するドリフトの低速補正に関係する。
【0014】
L.H Veneklasenらの“Oxygen-Processed Field Emission Source”,Journal of Applied Physics 43(1972),S.1600~1604は、固有の先端部を開示しており、そのエネルギーの広がりとフリッカノイズを調べている。
【0015】
ドイツ国特許公開第102019008249B3号は、マルチビーム偏向デバイス(multi-beam deflection device)とビームストップ(beam stop)とを含む粒子ビームシステム、粒子ビームシステムを動作させる方法、および関連するコンピュータプログラム製品を開示している。ビームストップは、粒子ビーム直径が縮小されるかまたは最小である場所と同じ高さに第1の粒子光学ビーム経路において配置され、ビーム電流全体を測定するために使用可能である。これは固有のカップとして具現化可能である。
【0016】
ドイツ国特許第60034559T2号は、互いに異なるビーム限定アパーチャを有するマルチ電子ビームリソグラフィ装置を開示している。
【0017】
欧州特許出願第2088614A1号は、標準検出器自体をビーム電流測定のために使用するか、または検出器上または検出器付近に追加で設けられた検出要素を使用する、単一ビーム粒子顕微鏡のビーム電流キャリブレーションシステムを開示している。先端部から残骸を除去するためのフラッシュ洗浄が扱われており、エクストラクタ電圧またはサプレッサ電圧を変化させることによるその結果として発生する電流変化の標準補償が扱われている。
【発明の概要】
【0018】
したがって、本発明の目的は、マルチビーム粒子顕微鏡における改良型閉ループ電流制御方法を提供することである。特に、この方法は、高速または高周波補正を容易にすることになる。この場合、エクストラクタ電流の迅速な再調整が回避されるべきである。
【0019】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0020】
本特許出願は、2021年7月19日に出願されたドイツ国特許出願第102021118561.0号の優先権を主張し、参照によりその開示の全体が本特許出願に組み込まれる。
【0021】
本発明の第1の態様によると、本発明は、複数の個別荷電粒子ビーム(individual charged particle beams)を使用して動作するマルチビーム粒子顕微鏡を動作させる方法であって、ビーム電流を測定するステップと、
公称ビーム電流(nominal beam current)からの測定されたビーム電流のずれ(deviation)を決定するステップと、
決定されたずれをドリフト成分と高周波成分(high-frequency component)とに分解するステップと、
第1の閉ループビーム電流制御手段を用いてビーム電流の高周波成分を制御するステップ、および/または、閉ループビーム電流制御手段とは異なる手段を使用してマルチビーム粒子顕微鏡の記録品質(recording quality)に与える高周波成分の影響(effect)を補償するステップとを含む、方法に関する。当然ながら、ビーム電流のドリフト成分は任意により、第2の閉ループビーム電流制御手段を用いて制御することができる。
【0022】
個別荷電粒子ビームは、たとえば、電子、陽電子、ミューオンもしくはイオン、またはその他の荷電粒子とすることができる。
【0023】
本発明によると、ビーム電流が測定され、測定されたビーム電流の公称ビーム電流からのずれが決定される。公称ビーム電流は、既知であるかまたは指定される。この場合、これはすべての個別粒子ビームを合わせた公称ビーム電流全体に関するものであってもよいが、これは、個別粒子ビームのそれぞれの公称ビーム電流またはビームコーン(beam cone)の特定の部分の公称ビーム電流に関するものであってもよい。好ましくは、公称ビーム電流は、ビーム電流全体(全体ビーム電流)が最小値を下回ってはならないように定義される。また、好ましくは、各個別粒子ビームはビーム電流の少なくとも1つの所定の値を下回ってはならない。また、公称ビーム電流(個別ビーム電流および/または全体ビーム電流)のそれぞれの許容最大値を定義することも可能である。ビーム電流がより包括的に測定されるほど(個別ビーム電流、ビームスポットの特定区分、定義された位置における定義された領域上の電流および/または全体ビーム電流)、または、ビーム電流のより包括的なデータが入手可能になるにつれて、公称ビーム電流からのビーム電流の決定されたずれをより精密にドリフト成分と高周波成分に分解することができる。数値演算から本質的に知られる方法またはアルゴリズムが分解のために使用され、たとえば、関連プログラムコードをマルチビーム粒子顕微鏡のコントローラに組み込むことができる。
【0024】
通常、ビーム電流のドリフト成分は、時間の経過とともに連続的に変化する。ドリフト成分には通常、突然の急上昇も変化もない。この場合、ビーム電流のドリフト成分は比較的長期間にわたって、たとえば数日、数週間またはさらに数か月にわたって徐々に(低周波で、または準静的に)変化するに過ぎない。たとえば、任意により中断もある、像記録時間全体にわたって、たとえばサンプルを記録するための連続動作時間中に測定された電流のプロファイルに低速変化が見られる場合(当然ながら、この場合、高速変化も追加的に見られることがある)、ドリフトと呼ぶことができる。像記録は、比較的長時間にわたって中断される場合があり(たとえば、夜間またはメンテナンス作業中の先端部の動作停止)、ビーム電流は再起動後に、たとえば翌日に異なる開始点を有することがあるが、再び時間の経過とともに低速傾向がある場合がある。
【0025】
それに対して、公称ビーム電流からのビーム電流ずれ(beam current deviation)の高周波成分は、たとえばマルチビーム粒子顕微鏡を使用した進行中の測定中に、たとえば数分または数時間以内に(たとえば、その範囲内に特定の積分時間にわたり個別ビーム1本ごとの二次電子が検出され、強度信号として使用される「フレーム」の測定中、すなわち、像記録中に)比較的速く変化する。たとえば、個別記録のための像記録時間中に(その場合、個別記録はマルチビーム像の完全なセットからなる)、または複数の個別記録からなる領域の像記録時間中に、高速の高周波変化が発生する場合がある。ビーム電流の公称値を断続的に上回り、断続的に下回る高周波ずれ(high-frequency deviation)は、高周波成分によく起こる。それにもかかわらずプロセス中にはビーム電流の最小値に達しないことがなく、変動が平均値付近であることが好ましい。ドリフト成分と比較して、ビーム電流における高周波変化は比較的速く発生する。たとえば、高周波変化はドリフトに起因する低周波変化よりも少なくとも500倍または1000倍またはさらには10000倍も高速である。
【0026】
本発明によると、ビーム電流の高周波成分が第1の閉ループビーム電流制御手段を用いて制御され、および/または、高周波成分がマルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える影響が閉ループビーム電流制御手段とは異なる手段を使用して補償される。しかし、ビーム電流における高周波変動は、両方の場合において補償することができる。第1の場合、これは閉ループビーム電流制御手段とビーム電流の高周波成分の真の閉ループ制御とによって実施可能であり、第2の場合、これは、代わりに高周波ビーム電流変動の負の効果を保証することによって実施可能である。両方の場合についていくつかの実施選択肢があり、これらについては以下で詳述する。
【0027】
任意により、ビーム電流のドリフト成分も、第2の閉ループビーム電流制御手段を用いて制御可能である。この場合、第1の閉ループビーム電流制御手段と第2の閉ループビーム電流制御手段の両方を1つの部分または多くの部分で設けることができる。第1の閉ループビーム電流制御手段は第2閉ループビーム電流制御手段とは異なることが好ましいが、第1と第2の閉ループビーム電流制御手段は同一であってもよい。この場合に注目すべきことは、ビーム電流の高周波で高速の閉ループビーム電流制御が通常、低速の閉ループビーム電流制御とは異なる技術的手段を必要することである。原則的に、従来技術で以前に使用されていた手段は、ドリフト成分の補正を可能にするが、高周波成分の補正は可能にしない。逆に、高周波補正は、ビーム電流のドリフト成分が同様に特定の技術的手段を用いて補正可能または制御可能となるように、原則的に、より低速で行われてもよい。本特許出願の範囲内で、「閉ループ制御」という用語は、制御工学の従来の意味で使用されており、すなわち、機能原理は、電流値を制御する閉ループ制御デバイス、またはコントローラ、またはこの場合閉ループビーム電流制御手段の、入力に対する測定電流値の負のフィードバックである。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によると、ビーム電流の測定は、像記録手順(image recording procedure)中の個別粒子ビームの全体ビーム電流の測定を含む。個別粒子ビームのビーム電流の測定は、マルチビーム粒子顕微鏡の場合に、たとえばファラデーカップまたはファラデーカップのアレイを使用して従来から行われているものであり、この測定デバイスはサンプルではなく対物面に導入される。しかし、この測定プロセスは、像記録手順の外部で実施され、比較的低速であり、各測定手順に30分以上を要することが多い。しかし、本発明によると、ビーム電流は像記録手順中に全体ビーム電流として測定されるようになる。これは、進行中の記録中に測定されることを意味する。たとえば、像記録の範囲内のラインジャンプ中、または像変化(1つの多像視野から次の多像視野への変化)中に、個別粒子ビーム全体をマルチビーム偏向デバイスを用いて偏向またはブランキングし、ビーム電流測定手段によりビームストップに向けることができる。たとえば、回転対称カップの形態のそのようなビームストップを、マルチビーム粒子顕微鏡の粒子光学ビーム経路において対物レンズの前にクロスオーバー面と同じ高さに配置することができる。ビーム電流測定手段をその中に組み込むかまたは接続することができる。これに関する詳細は、ドイツ国特許第102019008249B3号から収集することができ、その開示の全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によると、ビーム電流の測定は、像記録手順中に選択位置でのマルチアパーチャアレイにおける電流測定を含む。したがって、この測定方式では像記録手順を中断する必要がなく、代わりに言わばビーム電流を片手間に測定することができる。マルチアパーチャアレイは、好ましくは、マルチビーム粒子顕微鏡の粒子光学ビーム経路において集光レンズシステム(condenser lens system)の下流に第1のマルチアパーチャアレイとして配置される。このマルチアパーチャアレイは、好ましくは、第1の荷電粒子ビームを複数の個別荷電粒子ビームに分割するアレイである。この場合、マルチアパーチャアレイは、好ましくは、微小光学系と呼ばれるものの構成要素であり、この微小光学系は好ましくは一連の複数のマルチアパーチャプレートまたはマルチアパーチャアレイからなるかまたはそれを含む。この文脈において、良好な像品質のために、粒子供給源または先端部から発する第1の荷電粒子ビームは、マルチアパーチャアレイ上に均一に、特に、可能な限り垂直に入射する必要があり、マルチアパーチャアレイを可能な限り均一にまたは中心に位置するように照射する必要もある。その場合、マルチアパーチャアレイを通過する個別粒子ビームのビーム電流が、個別粒子ビームにおいて十分に均一であるように保証することが可能である。均一な照射は、マルチアパーチャアレイへの第1の荷電粒子ビームのテレセントリック入射の場合だけでなく、発散入射または収束入射の場合、および中心ビーム軸がマルチアパーチャアレイの表面に対して垂直に位置合わせされる場合はどのような場合であっても実現可能である。ここで、マルチアパーチャアレイにおける開口は好ましくは円形であるが、他の形状を有してもよい。好ましくは、マルチアパーチャアレイにおける開口は規則的配置(regular arrangement)、たとえば矩形、正方形または六角形の配置を有する。六角形配置の場合、好ましくは3n(n-1)+1個の開口が設けられ、ここでnは任意の自然数である。
【0030】
マルチアパーチャアレイにおける電流測定の実施は、センサーシステムの使用を必要とし、センサーシステムは異なる実現形態を有することができる。この場合、マルチアパーチャプレートまたはアレイの開口に個別のセンサーを割り当てることができるが、これは必須ではない。きわめて巧みな解決策は、ビーム電流を測定するためのセンサーシステムをマルチアパーチャアレイ全体の開口の周囲に配置することである。このようにすることで、個別粒子ビームの形成が妨げられず、それにもかかわらずビーム電流に関する貴重な情報を入手することができる。本発明の好ましい実施形態によると、マルチアパーチャアレイはその上側に、過剰な電子を吸収し、放電する接地金属層を有する。それぞれのセンサーの位置における入射電子流を測定する1つまたは複数のそれぞれ接地されたセンサーを、この金属層の上方に配置することができる。また、金属層自体を構造化し、セグメントごとに、またはこの構造化に基づく空間分解能でビーム電流を測定することも可能である。この測定システムは、たとえば移動可能なステージと、たとえばその上のファラデーカップとを使用して個別粒子ビームを測定することにより、キャリブレーションすることができる。他の実施形態変形や較正方法も考えられる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によると、電流を測定するための3つのセンサーが、マルチアパーチャアレイの上側に、特に三角形の形態で、特に正三角形の形態で、複数のアパーチャの外側の周囲に配置される。3つのセンサーは、厳密に3つのセンサー、あるいは少なくとも3つのセンサーとすることができる。工夫された配置または配置が幾何形状の場合、3つのセンサーは、ビーム電流に関して、およびマルチアパーチャアレイに入射する照射ビームコーンの位置に関しても結論を導き出すことを可能にするのに十分である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によると、方法は、マルチアパーチャアレイに入射するビームコーンの半径および/または位置ずれ(displacement)を決定するステップをさらに含む。入射ビームコーンの光軸は、マルチアパーチャアレイの均一な中央照射の場合、マルチアパーチャアレイの中点に対応し、マルチビーム粒子顕微鏡の光軸も通常この中点を通過する。この場合、ビーム電流は通常、ビームコーン内で回転対称に分散され、すなわち、光軸またはマルチアパーチャアレイの中点を中心としたこれらのセンサーの回転対称配置の場合、センサーが同じビーム電流を測定することにもなるように、半径方向に勾配がある。それに対して、入射ビームコーンの軸が光軸の中心に対して相対的に、またはマルチアパーチャアレイの中点に対して相対的に位置ずれしている場合、センサーによって異なるビーム電流値が測定される。この位置ずれは測定ビーム電流値から、正確には絶対値についてと方向について決定することができる。この位置ずれは、適切な閉ループビーム電流制御手段を用いて補正することができ、したがってビーム電流をマルチアパーチャアレイの個別位置において調整することもできる。この補正または閉ループ制御は高周波でも実施可能であり、これについては以下で詳述する。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の閉ループビーム電流制御手段を用いたビーム電流の高周波成分の制御は、高周波方式(high-frequency manner)でマルチアパーチャアレイの照射を調整するステップを含む。この場合、マルチアパーチャアレイの照射は、好ましくは中心に位置決めされ、および/または、ビーム電流自体が調整される。ビーム電流は、入射ビームコーンを高周波方式で広げるかまたは縮小することによって調整される。このために、さらにいくつかの例示の実施形態がある。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の閉ループビーム電流制御手段は、集光レンズシステムの領域に静電双偏向器(electrostatic double deflector)を含む。この場合、集光レンズシステムは、1つ、2つ、3つまたはそれより多くの集光レンズを含むことができる。集光レンズは磁気レンズとすることができるが、静電レンズであってもよい。集光レンズシステムの領域における静電双偏向器は、集光レンズシステムによって生成されたビームコーンが平行にオフセットされることを可能にし、したがってマルチアパーチャアレイの照射の位置/中心位置決めの調整を可能にする。従来提供されている磁気偏向器とは異なり、静電双偏向器は迅速に駆動可能であり、マルチビーム粒子顕微鏡における閉ループビーム電流制御のための高速フィードバックループに適している。
【0035】
本発明の追加または別の実施形態によると、第1の閉ループビーム電流制御手段は、静電集光レンズ(electrostatic condenser lens)を含む。静電集光レンズは、磁気集光レンズより迅速に駆動可能であり、したがって同様にマルチビーム粒子顕微鏡における高速フィードバックおよび閉ループビーム電流制御に適している。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によると、第1の閉ループビーム電流制御手段は、マルチビーム粒子顕微鏡のビーム発生システムのエクストラクタ電極とビーム発生システムのアノードとの間に配置された静電制御レンズ(electrostatic control lens)を含む。原則として、したがってビーム発生システムはさらなる介在高速電極を備える。これは、電圧が印加されるレンズまたは単純なプレートとすることができる。静電制御レンズは、好ましくは、マルチアパーチャアレイに入射する第1のビームコーンの直径の両方向(より狭いかまたはより広い方向)の高速変更を容易にするためにバイアスされる。静電制御レンズによって引き起こされるマルチアパーチャアレイに入射するビームコーンの直径の変化は、ごくわずかに過ぎないが、ビーム電流の微調整を容易にする。この実施形態のさらなる利点は、ビーム生成システムの領域における電圧の変更があるが、この変更はエクストラクタ電極においては実施されず、加速電圧自体を変更する必要もないことである。技術的な観点からは、エクストラクタ電極とアノードとの間において数ミリメートルの空間が得られ、そこに静電制御レンズまたは制御電極を配置することができる。
【0037】
したがって、第1の閉ループビーム電流制御手段には複数の実施形態変形があり、これらの実施形態変形は全部または一部を互いに組み合わせることができる。他の実施形態変形も可能である。
【0038】
第1の閉ループビーム電流制御手段を用いたビーム電流の高周波成分の閉ループビーム電流制御に加えて、またはそれに代えて、閉ループビーム電流制御手段とは異なる手段を使用して、本発明により、高周波成分がマルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える影響を補償することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、公称ビーム電流からのビーム電流の高周波ずれに基づいてマルチビーム粒子顕微鏡の検出システムが駆動され、公称ビーム電流からのビーム電流の高周波ずれに基づいて検出システムのゲインおよび/またはオフセットの高周波調整が行われる。このようにして、検出システムを用いて得られる像の明るさおよび/またはコントラストを調整することができる。この場合、検出システムは、すべてのチャネル(全検出領域)について大域的に、または個別粒子ビームの個別チャネル(個別検出領域)について個別に調整することができる。
【0040】
この場合、検出システムのゲインおよび/またはオフセットの調整は、明るさおよび/またはコントラストの調整を引き起こす。この調整選択肢の結果として、マルチビーム粒子顕微鏡の二次経路におけるすべての個別粒子ビームまたは単一の個別粒子ビームのビーム電流の高速変動を補償することができる。この実施形態変形による閉ループビーム電流制御原理は、検出システムを用いて生成される像の明るさおよび/またはコントラストに与えるビーム電流変化の影響が原則として既知であることに基づく。この関係がわかっていることは、ビーム電流変動の対応する補正または補償を容易にする。本発明のこの実施形態変形では、ビーム電流ずれの高周波成分における影響の補償に加えて、ビーム電流のドリフトを補正することも有利である。ビーム電流のドリフトを同時に制御することにより、検出システムが最適範囲内で動作することと、検出システムにおけるノイズが過度に増大しないこととを同時に保証する。検出器調整および明るさとコントラストとの関係と、検出システムのゲインとオフセットの調整のさらなる詳細については、ドイツ国特許出願公開第102018007455号から収集することができ、参照によりその開示全体が本特許出願に組み込まれる。
【0041】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、マルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える高周波成分の影響の補償は、複数の個別粒子ビームがサンプルの表面を走査する走査速度を調整するステップを含む。走査速度を調整することによって、第1の個別粒子ビームがそれぞれ、特定の場所に、より長期間またはより短期間とどまり、あるいはそれぞれの画素をより長期間またはより短期間、走査する。このようにして、検出可能なより多くの二次粒子がサンプル表面から発する。したがって、検出システムに入射する第2の個別粒子ビームのビーム電流は、このようにして最終的に変動する。この変動はすべての個別粒子ビームで一様であることが好ましい。たとえば、走査速度は走査装置のクロック周波数を変更することによって調整することができる。この場合、公称ビーム電流からのビーム電流の測定された高周波ずれに基づく、特に全体ビーム電流の測定された高周波ずれに基づく、クロック周波数の典型的な変化は、この場合、公称クロック周波数の最大約±10%であるが、±15%あるいはわずか±5%も考えられ、それぞれの場合において区間境界が含まれる。原則として、走査速度は記録されるラインごとに調整可能である。しかし、たとえば像視野変化(mFOV間の変化)の場合、1組のラインについてのみ設定を適応化することも可能である。
【0042】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、方法は、測定ビーム電流値をログ記録する(logging)ステップをさらに含む。この場合、それぞれの時点における測定ビーム電流値が入力されるログが生成される。値の捕捉が完全であるほど、ビーム電流のドリフト補正と高周波補正の両方をより精密に実施することができるため、すべての入手可能なビーム電流値をかなり全般的にこのログに収集することができる。
【0043】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、方法は、ビーム発生システムの先端部の残存耐用期間(residual service life)を推定すること、および/または、先端部の必要な交換を開始させることを含む。先端部の残存耐用期間は、ログ記録されたビーム電流値からアルゴリズムによって推定することができる。これは、本発明人らの調査により、原則的に、先端部の耐用期間にわたってビーム電流値がどのように進展するかが明らかになったためである。先端部を交換する必要がある時期は、動作時間数あるいは動作中のエラー状態、さらに、周囲温度、発生した真空、動作時間中の電圧変動または電圧変化など、他の動作パラメータにも依存する。したがって、同じ製造/仕様の場合であっても、使用先端部が互いに異なるため、交換時期も先端部ごとに異なる。比較的新しい先端部の場合、先端部によって発生するビームコーンの外側領域におけるビーム電流は内側領域におけるよりもわずかに大きい。この関係は、特定の先端部半径を有する先端部の放射挙動に由来し、すなわちその幾何形状に由来する。内側と外側のビーム電流の分布またはビーム電流密度の相違は、先端部が古くなるにつれて等化する。この均一化の増大が検出された場合、それによって先端部の交換が差し迫っていることを推測することができる。観察されるドリフトについても、エクストラクタ電極の電圧を再調整することが可能である。この場合、原則的に耐用期間にわたって引き出し電圧を最初に徐々に増加させる必要がある。しかし、障害の直前には、先端部が、引き出し電圧を下方制御する必要があるほど高いビーム電流を供給する。したがって、このドリフト反転は近い将来に先端部交換が必要になることを示す標識とみなすことができる。
【0044】
アルゴリズムから明らかになるビーム発生システムの先端部の残存耐用期間をマルチビーム粒子顕微鏡上に表示するか、またはその残存耐用期間を出力ユニットに表示することができる。また、先端部交換の目的で、マルチビーム粒子顕微鏡のメンテナンスを自動的に要求すること、または先端部を自動的に発注することも可能である。
【0045】
本発明の第2の態様によると、本発明は、複数の実施形態変形において上述した方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品に関する。この場合、プログラムコードは、1つまたは複数の部分コードに細分することができる。
【0046】
本発明の第3の態様によると、本発明はマルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源と、エクストラクタ電極と、アノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成され、エクストラクタ電極とアノードとの間に配置された静電制御レンズをさらに含むビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有し、第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野(first field)を生成するように構成されたマルチビーム発生器(multi-beam generator)と、
マルチビーム発生器のマルチアパーチャアレイにおける第1のビーム電流測定手段と、
第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置(incidence location)においてサンプルに当たるように、生成された第1の個別粒子ビームをサンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
第2の視野内の入射位置から発する第2の個別粒子ビームを検出システム上に結像(image)するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
第1と第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズ(particle optical objective lens)と、
第1の粒子光学ビーム経路においてマルチビーム発生器と対物レンズとの間に配置され、第2の粒子光学ビーム経路において対物レンズと検出システムとの間に配置された、ビームスイッチと、
ビーム発生システムと、粒子光学対物レンズと、第1の粒子光学ユニットと、第2の粒子光学ユニットと、検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
コントローラが、第1のビーム電流測定手段による電流測定に基づく静電制御レンズの駆動、特に高周波駆動のために構成される、マルチビーム粒子顕微鏡に関する。
【0047】
本発明によるマルチビーム粒子顕微鏡は、マルチビーム粒子顕微鏡を動作させる上述の方法を実施するのに適している。この場合、ビーム電流は、マルチビーム発生器のマルチアパーチャアレイにおいて第1のビーム電流測定手段を用いて測定することができる。この場合、第1のビーム電流測定手段は、マルチアパーチャアレイの上側で電流を測定するための複数のセンサー、特に、厳密に3つのセンサーまたは3つより多くのセンサーを含むことができる。本発明の特に好ましい実施形態によると、厳密に3つのセンサーが三角形の形態で、特に正三角形の形態で、マルチアパーチャアレイの複数のアパーチャの外側の周囲に配置される。方法に関連して上述したように、ビーム電流自体と、マルチアパーチャアレイへの入射時の第1の荷電粒子ビームの位置合わせの両方を、この配置を用いて決定することができる。この場合、静電制御レンズの高周波駆動がビーム電流を制御し、したがって、公称ビーム電流からのビーム電流の高周波ずれを補正することができる。別の実施形態変形によると、第1のビーム電流測定手段の代わりに、ビーム電流の測定のために個別粒子ビームの全体ビーム電流を測定する第2のビーム電流測定手段を使用することができ、コントローラを、第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく静電制御レンズの駆動、特に高周波駆動のために構成することができる。第2のビーム電流制御手段の例については以下で詳述する。静電集光レンズは、電圧が印加された中央の円形開口を有する単純なプレートの形態とすることができる。その場合、ビーム発生システムの残りのプレートまたは電極との相互作用から、このプレートのレンズ効果が生じる。コントローラは、適切なフィードバックのために構成される。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によると、マルチビーム粒子顕微鏡はさらに、
第1の粒子光学ビーム経路において、マルチビーム発生器の下流かつビームスイッチの上流に配置されたマルチビーム偏向デバイスと、
第2のビーム電流測定手段を有するビームストップであって、第1の粒子光学ビーム経路において対物レンズの上流に、クロスオーバー面と同じ高さに配置されたビームストップと、を含み、
コントローラが、第1の個別粒子ビームがビームストップに実質的に入射し、したがって対物面には入射しないように、マルチビーム偏向デバイスを用いて第1の個別粒子ビームをまとめて一時的に偏向させるように構成される。ビームストップとマルチビーム偏向デバイスのこのような配置は、上記で引用した、本出願に組み込まれるドイツ国特許公開第102019008249B3号からすでに知られている。この特許公開は特に、ラインジャンプの場合、または像ジャンプの場合に、標的を定めて複数の個別粒子ビームがその中に偏向される中央通過開口を有する回転対称カップを開示しており、カップは第2のビーム電流測定手段を含むことができるかまたはそれに接続することができる。このようにして、本提示の構成を用いて像記録手順中にビーム電流強度(全体ビーム電流)を決定することができる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によると、コントローラは、第1のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく静電制御レンズの高周波駆動のために構成される。しかし、これに加えて、またはこれに代えて、マルチビーム粒子顕微鏡全体の記録品質を向上させるために、第2のビーム電流測定手段を用いて測定されたビーム電流に基づいてマルチビーム粒子顕微鏡の異なる粒子光学コンポーネントまたは異なるコンポーネントをも駆動することも可能である。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によると、検出システムは、第3の視野を形成する複数の検出領域を有し、第2の視野から発する第2の個別粒子ビームが第3の視野に結像(image)される。また、コントローラは、第2のビーム電流測定手段を用いたビーム電流測定に基づく検出システムのゲインおよび/またはオフセットの調整、特に高周波調整のために構成される。したがって、このフィードバックループは、記録品質に与える高周波成分の影響の補償を目的としている。個別の像視野または多像視野全体の明るさおよび/またはコントラストを設定することが可能であり、すなわち、検出システムの検出領域を個別に駆動することができ、あるいは大域的に駆動することができる。
【0051】
検出システムは、1つの検出器または同じ種類もしくは異なる種類の複数の検出器を含むことができる。検出システムは、たとえば、1つまたは複数の粒子検出器を含むかそれらで構成することができる。粒子検出器はさらに、1つの部分または多くの部分で形成することができる。しかし、検出システムにおいて、1つまたは複数の粒子検出器と光検出器とを互いに結合するか、または直列に接続することも可能である。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によると、検出システムは、粒子検出器と、その下流に接続された複数の光検出器とを含む。具体的には、粒子検出器は複数の検出領域を有するシンチレータプレートを含むことができる。この場合、粒子検出器の検出領域への相互作用生成物の投影が、適切な粒子光学ユニットを用いて行われる。この場合、粒子検出器によって放出された光信号が、粒子検出器のそれぞれの検出領域に割り当てられた光検出器(検出チャネル)まで適切な方式で通過する。たとえば、粒子検出器の検出領域によって放射された光を対応する光学ユニットを介して光ファイバ内に結合することができ、さらにこのファイバは実際の光検出器に接続される。光検出器は、たとえば光電子増倍管、光ダイオード、アバランシェ光ダイオード、またはその他の種類の適切な光検出器を含む。
【0053】
検出システムの別の実施形態変形によると、検出システムは粒子検出器を含むが光検出器は含まない。この場合、光子を介した遠回りをせずに、たとえば粒子が半導体の空乏層内に投入され、それによってこの場合も電子なだれを開始させることができることによって、粒子を直接検出することが可能である。これは、ビームごとに少なくとも1つの独立した変換ユニットを含む、それに対応して構築された半導体検出器を必要とする。
【0054】
原則的に、検出システムのゲインは、入力の量によって生成される出力の量を規定する。具体的には、ゲインは、入力に含まれる第1の粒子種(入)の粒子の数に対して相対的な、出力に含まれる第2の粒子種(出)の粒子の数を示す。アバランシェ光ダイオードの場合、入力は光子によって形成され、出力は電子である。同じことが、すべての他の検出器、DED(「直接電子検出」)、PMT(「光電子増倍管」)などについても同様に定義され得る。また、電気信号への変換(出力抵抗器における電流または電圧降下)を行う多くの検出器は、後置増幅器を有し、そのゲインも同様に調整することができる。
【0055】
また、オフセットは、一次粒子が到達しない場合に出力信号のレベルがどれだけ高いかを示す。これは、一般に、電圧加算器を用いて下流電子回路において解消される。したがって、最終的に、漏れ電流などが、これらのシステムを用いて補償される。オフセットとゲインは一般に互いに独立していない。
【0056】
上述のように、公称ビーム電流からの高周波ずれに基づく影響を補償する目的で検出システムの高周波再調整がある場合、ビーム電流のドリフトも同時に補正すれば有利である。これにより、検出システムが動作するダイナミックレンジが最適なままであることと、ノイズの過剰な増大がないこととが保証される。
【0057】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、マルチビーム粒子顕微鏡は、さらに、第1の個別粒子ビームをまとめて偏向させ、それらをサンプル表面にわたってまとめて走査するように構成された、一括走査偏向器(collective scan deflector)を含む。この場合、コントローラは、走査偏向器の駆動のためと、第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく一括走査偏向器の走査速度の調整のために構成される。したがって、この実施形態変形では、制御されるのは第1の個別粒子ビームのビーム電流自体ではなく、代わりに、個別画素に入射するサンプル上の電流全体の補正がある。より低いビーム電流は、より低速の走査速度によって補償することができ、より高いビーム電流は、より高速の走査速度によって補償することができる。これは、少なくとも特定の範囲内で当てはまる。公称走査速度からのずれは、好ましくは、±12%、±10%または±5%以下である。この場合、走査速度はすべての個別粒子ビームについて同じである。特に、プロセス中に走査速度の高周波調整を行うことができる。たとえば、一括走査される多像視野(mFOV)ごとまたはさらにラインごとに、走査速度を実質的に瞬時に調整することが可能である。しかし、複数の多像視野の記録について走査速度を一定に保つことも可能である。
【0058】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、マルチビーム粒子顕微鏡は、さらに、ビーム発生システムとマルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムを含む。この場合、コントローラは、第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく集光レンズシステムの駆動のために構成される。たとえば、集光レンズシステムは、厳密に2つの磁気レンズまたは少なくとも2つの磁気レンズを含む。これらのレンズのうちのいずれが励磁されるかに応じて、またはこれらのレンズがいかに強力にそれぞれ励磁されるかに応じて、マルチアパーチャアレイの照射を設定することが可能である。また、ビーム電流強度も調整される。磁気レンズを備えた集光レンズシステムの場合、集光レンズシステムの駆動は通常、発生して印加電圧に対抗する自己誘導によるためと、発生するヒステリシス効果によるために、低速でのみ変更可能である。したがって、集光レンズシステムは好ましくは準静的または低周波式に駆動される。しかし、集光レンズシステムは、1つまたは複数の静電レンズも有してもよい。静電レンズは、より迅速に駆動可能であり、集光レンズシステムは、原則的に、高周波ビーム電流適応化または照射適応化にも適する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態によると、マルチビーム粒子顕微鏡は、さらに、特に、集光レンズシステムの領域内に静電双偏向器を含む。この場合、コントローラは、特に、第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく双偏向器の高周波駆動のために構成される。双偏向器を用いて、第1の荷電粒子をマルチビーム発生器のマルチアパーチャアレイに中心に位置づけられた方式で向けるために、第1の荷電粒子ビームのビームコーンの平行オフセットを行うことが可能である。特に、マルチアパーチャアレイにおける第1のビーム電流測定手段を使用したビーム電流測定が、第1の荷電粒子ビームのビームコーンが、マルチアパーチャアレイの中心軸に対して、またはシステム全体の光軸に対して相対的にオフセットしているか否かを判定することを可能にする。このオフセットは補正することができる。この補正は瞬時であり、したがって高周波で可能であるが、原則として、集光レンズシステムまたはシステム全体の十分に正確な調整をも得るために、あるいはドリフト補正を行うために、双偏向器を準静的に駆動することも可能である。
【0060】
本発明のさらなる好ましい実施形態によると、コントローラは、第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づくエクストラクタ電極の低周波駆動のために構成される。したがって、これは、高速制御には関係がないが、ドリフト補正に関係する。エクストラクタ電極の駆動が変わった後、粒子源またはビーム発生システムの先端部が新たな状況に適応し、「バーンイン」するまで、ある程度の時間、たとえば約2~3日を要することが経験からわかっている。
【0061】
本発明の第1~第3の態様による上述の実施形態変形は、結果として技術的矛盾が生じない限り、全部または部分を互いに組み合わせることができる。
【0062】
この文脈では、本発明は、添付図面を参照すればさらによくわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】マルチビーム粒子顕微鏡(MSEM)を示す概略図である。
【
図2】マルチアパーチャアレイへの入射時の照射ビームのビームコーンの調整を示す概略図である。
【
図3】マルチアパーチャアレイへの入射時の電流密度ばらつきを有する照射スポットを示す概略図である。
【
図4】六角形状に配置された複数の個別粒子ビームのビーム電流強度を示す概略図である。
【
図5】異なる直径を有するビームコーンによって照射されるマルチアパーチャアレイの上側の第1のビーム電流測定手段を示す概略図である。
【
図6】マルチアパーチャアレイ上のビームコーンの位置ずれを示す概略図である。
【
図7】エクストラクタ電極とアノードとの間に静電制御レンズを有する、高周波閉ループビーム電流制御に適したビーム発生システムを示す概略図である。
【
図8】集光レンズシステムの領域内の静電双偏向器であって、ビームオフセットの高周波補正に適した静電双偏向器を示す概略図である。
【
図9】コントローラを用いて駆動される閉ループビーム電流制御手段と補償器とを有するマルチビーム粒子顕微鏡を概略的に示す図である。
【
図10】マルチビーム粒子顕微鏡を動作させるための本発明による方法のフローチャートを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、複数の粒子ビームを使用するマルチビーム粒子顕微鏡1の形態の粒子ビームシステム1の概略図である。粒子ビームシステム1は、物体から発し、その後検出される相互作用生成物、たとえば二次電子をそこで発生するために、検査対象物体に当たる複数の粒子ビームを発生する。粒子ビームシステム1は、複数の位置5において物体7の表面に入射し、そこで互いから空間的に分離した複数の電子ビームスポット、またはスポットを発生させる、複数の一次粒子ビーム3を使用する、走査電子顕微鏡(SEM)型である。検査対象物体7は、任意の希望する種類、たとえば半導体ウエハまたは生体サンプルとすることができ、微小要素などの配列を含むことができる。物体7の表面は、対物レンズシステム100の対物レンズ102の第1の面101(対物面)に配置される。
【0065】
図1の拡大抜粋
図I1に、第1の面101に形成された入射位置5の正方形視野103を有する対物面101の平面図を示す。
図1で、入射位置の数は、5×5視野103を形成する25である。入射位置の数25は、簡略化された図のために選択された数である。実際には、ビームの数、したがって入射位置の数は、たとえば20×30、100×100など、それより大幅に大きい数を選択することができる。
【0066】
図の実施形態では、入射位置5の視野103は、隣接する入射位置間の一定したピッチP1を有する実質的に正方形である。ピッチP1の値の例は、1マイクロメートル、10マイクロメートルおよび40マイクロメートルである。しかし、たとえば視野103は六方対称など、他の対称形状を有することも可能である。
【0067】
第1の面101内に成形されるビームスポットの直径は微小とすることができる。この直径の値の例は、1ナノメートル、5ナノメートル、10ナノメートル、100ナノメートルおよび200ナノメートルである。ビームスポット5を成形するための粒子ビーム3の集束は、対物レンズシステム100によって行われる。
【0068】
物体に当たる一次粒子は、物体7の表面から、または第1の面101から発する、相互作用生成物、たとえば二次電子、後方散乱電子、またはその他の理由により動きが逆転した一次粒子を発生する。物体7の表面から発する相互作用生成物は、二次粒子ビーム9を形成するように対物レンズ102によって成形される。粒子ビームシステム1は、複数の二次粒子ビーム9を検出器システム200に誘導するための粒子ビーム経路11を提供する。検出器システム200は、二次粒子ビーム9を粒子マルチ検出器209に向けるための投影レンズ205を備えた粒子光学ユニットを含む。
【0069】
図1の抜粋
図I2に、二次粒子ビーム9が位置213に入射する粒子マルチ検出器209の個別検出領域が位置する面211の平面図を示す。入射位置213は、互いからの規則的なピッチP2を有する視野217内にある。ピッチP2の値の例は、10マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルである。
【0070】
一次粒子ビーム3は、少なくとも1つの粒子源301(たとえば電子源)と、少なくとも1つのコリメーションレンズ303と、マルチアパーチャ配列305と、視野レンズ307とを含むビーム発生装置300で生成される。粒子源301は、発散粒子ビーム309を生成し、これが、マルチアパーチャ配列305を照射するビーム311を成形するためにコリメーションレンズ303によってコリメートされるかまたは少なくとも実質的にコリメートされる。
【0071】
図1の抜粋
図I3に、マルチアパーチャ配列305の平面図を示す。マルチアパーチャ配列305は、中に形成された複数の開口またはアパーチャ315を有するマルチアパーチャプレート313を含む。開口315の中点317が、対物面101においてビームスポット5によって形成される視野103に結像(image)される視野319内に配置される。アパーチャ315の中点318間のピッチP3は、5マイクロメートル、100マイクロメートルおよび200マイクロメートルの値の例を有することができる。アパーチャ315の直径Dは、アパーチャの中点間のピッチP3より小さい。直径Dの値の例は、0.2×P3、0.4×P3および0.8×P3である。
【0072】
照射粒子ビーム311の粒子がアパーチャ315を通過し、粒子ビーム3を形成する。プレート313に当たる照射ビーム311の粒子は、プレート313によって吸収され、粒子ビーム3の形成に寄与しない。
【0073】
印加静電界により、マルチアパーチャ配列305が粒子ビーム3のそれぞれを、面325内にビーム焦点323形成されるように集束させる。あるいは、ビーム焦点323は仮想とすることができる。ビーム焦点323の直径は、たとえば10ナノメートル、100ナノメートルおよび1マイクロメートルとすることができる。
【0074】
視野レンズ307と対物レンズ102は、入射位置5またはビームスポットの視野103がそこで生じるように、ビーム焦点323が形成される面325を第1の面101上に結像(image)するための第1の結像粒子光学ユニットを提供する。物体7の表面が第1の面に配置された場合、ビームスポットがそれに対応して対物表面上に形成される。
【0075】
対物レンズ102および投影レンズ配列205は、第1の面101を検出面211上に結像(image)するための第2の結像粒子光学ユニットを提供する。したがって対物レンズ102は、第1と第2の両方の粒子光学ユニットの一部であるレンズであり、一方、視野レンズ307は第1の粒子光学ユニットにのみ属し、投影レンズ205は第2の粒子光学ユニットにのみ属する。
【0076】
第1の粒子光学ユニットのビーム経路においてマルチアパーチャ配列305と対物レンズシステム100との間にビームスイッチ400が配置されている。ビームスイッチ400は、対物レンズシステム100と検出器システム200との間のビーム経路における第2の光学ユニットの一部でもある。
【0077】
このようなマルチビーム粒子ビームシステムおよびその中で使用される、たとえば粒子源、マルチアパーチャプレートおよびレンズなどのコンポーネントに関するさらなる情報は、国際特許出願WO2005/024881A2、WO2007/028595A2、WO2007/028596A1、WO2011/124352A1ならびにWO2007/060017A2、およびドイツ国特許出願公開第102013016113号ならびに第102013014976号から得ることができ、その開示はその全範囲が参照により本出願に組み込まれる。
【0078】
図2に、マルチアパーチャアレイ313への入射時の照射ビーム311のビームコーンの調整の概略図を示す。ビームコーンを調整することによって個別粒子ビーム3ごとのビーム電流を調整することができる。最初に、供給源301によって粒子または発散粒子ビーム309が放射される。発散粒子ビーム309は、この実施例では2つの集光レンズ303.1および303.2を含むコリメーションレンズシステムまたは集光レンズシステム303を通過する。
図2は、ここでは集光レンズシステム303の2つの異なる設定を示している。第1の設定では、集光レンズ303.1が起動され、集光レンズ303.2が停止される。その結果、発散粒子ビーム309の粒子が集光レンズ303.1においてコリメートされ、直径d1を有する照射粒子ビーム311.1としてマルチアパーチャアレイ313に当たる。第2の場合、集光レンズ303.1が停止され、集光レンズ303.2が起動される。したがって、発散粒子ビーム309は、さらに広がり、直径d2を有する照射粒子ビーム311.2がマルチアパーチャプレート313に入射するように第2の集光レンズ303.1においてのみコリメートされる。マルチアパーチャアレイ313に入射する粒子の数は両方の場合で同じであるが、密度が異なる。したがって、開口315(図示せず)を有するマルチアパーチャアレイ313がトラバースされるときに、照射スポットの直径に依存する異なるビーム電流強度を有する個別粒子ビーム3が形成される。
【0079】
図の実施例では、集光レンズ303.1および303.2はそれぞれの場合において磁気レンズである。しかし、磁気レンズの一方または両方を静電集光レンズに置き換えることも可能である。また、集光レンズシステム303全体における集光レンズの数を変更すること、すなわち、1つのレンズのみを設けること、あるいは3つ以上のレンズを設けることも可能である。また、照射ビーム311の調整のために1つまたは複数の偏向器を設けることができる。これらの調整手段および集光レンズの種類は、照射スポットをどれだけ迅速に調整することができるかに影響を与える。これについては、本特許出願の範囲内において以下で詳述する。まず、ここで例示することは、異なる照射スポットが使用される場合に個別粒子ビームの異なるビーム電流がどのようにして生じるかということである。
【0080】
図3に、マルチアパーチャアレイ313への入射時の電流密度変動を有する照射スポットの概略図を示す。最初に、
図3aに照射粒子ビーム311の断面における電流密度を示す。ビーム電流密度値は、この断面内でわずかに異なっている。このばらつきは、実質的に、粒子源301または粒子源301の先端部340の幾何形状によって生じる。この場合、図の実施例におけるビーム311の外側領域351が、より内側に位置する領域352、353および354よりも高い電流密度を有する。電流密度は中央領域354で最も低い。異なる電流または電流密度は
図3aで異なるパターン/塗り潰しによって示されており、より暗い塗り潰しはより多くの電流を示す。当然ながら、外側から内側への移行は連続的とすることができ、
図3aのくっきりした同心円状の輪は、原理を明確に示すためにのみ用いている。
【0081】
図3bは、マルチアパーチャプレート313への入射時のビーム311を示している。この実施例では、マルチアパーチャプレート313は、図の実施例では六角形状に配置された19個の開口315を有する。この六角形配置は、破線を使用して描かれた六角形316によってさらに明確に示されている。したがって、粒子ビーム311の粒子は様々な開口315を通過するようになり、個別粒子ビーム3が形成される。粒子ビーム311の残りの粒子はプレート313に入射する。プレート313は通常、入射電荷が放電されるように接地される。これは電流を測定するためにも利用することができる(以下参照)。
【0082】
図3bから、開口315のうちの一部の開口を他の開口を通るよりもより多くの荷電粒子またはより高い電流が通ることが明らかである。開口315.1は外側領域に位置し、したがって比較的多くの荷電粒子が通過し、形成される個別粒子ビームはわずかにより高い電流密度を有する。開口315.2はビームコーン311の中心にわずかにより近く配置され、それを通る粒子電流は開口315.1の場合よりもわずかに低い。開口315.3は中心に位置し、他のすべてのビーム電流よりも低いビーム電流が通る。
【0083】
図4に、六角形状に配置された複数の個別粒子ビーム3のビーム電流強度の概略図を示す。ビーム電流強度の
図360内の19本の個別粒子ビーム3のそれぞれにフィールドが割り当てられており、フィールドには図の例において番号が付けられている。この場合、
図4の図は像視野を示しておらず、測定ビーム電流強度の図のみを示している。これらの電流強度は、従来の手段、たとえば移動可能なサンプルステージ(ステージ)上に配置された、たとえばファラデーカップによって測定することができる。このような従来の測定は、比較的長時間かかり、個々の測定に約30分を要する。
図4のパターン塗り潰しの様々なグレースケール値は、この場合も様々なビーム電流強度を示し、より暗い塗り潰しはより明るい塗り潰しよりも高いビーム電流強度を表す。
【0084】
原則として、各個別粒子ビーム3のビーム電流強度は、よく知られているかまたはきわめて正確に測定可能である。マルチビーム粒子顕微鏡による記録のために、各個別粒子ビーム3が十分なビーム電流を確実に供給するようにすることが必要であり、すなわち、ビーム電流は特定の限界を下回ってはならない。たとえば、各個別粒子ビームについて、少なくとも500pAまたは600pA、たとえば少なくとも560pA、少なくとも570pAまたは少なくとも580pAの個別ビーム電流を要求することが可能である。また、公称ビーム電流を許容範囲として定義することも可能である。原則として、これは、最小ビーム電流に加えて、または平均ビーム電流に加えて、個別ビーム電流の均一度を要求する。この場合、最大ビーム電流値と最小ビーム電流値との差は特定の最大値のみを有してもよい。たとえば、範囲全体、すなわち差は、10pA以下であり得る。均一度を、パーセント値の形態で指定することもできる。たとえば、均一度は、均一度[%]=(最大値-最小値)/平均値×0.5×100のように定義することができる。他の定義も可能であり、適正である。
【0085】
また、全体ビーム電流を測定することも可能である。このために、個別粒子ビーム3を個別に測定する必要はなく、たとえばすべての個別粒子ビームが同じ位置に対して/同じ検出器上でブランキングされるときに、すべての個別粒子ビームについて全体ビーム電流を同時に決定することも可能である(
図9に関する説明参照)。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によると、マルチアパーチャアレイ313はその上側に、過剰な電子を吸収し、放電する接地金属層を有する。それぞれのセンサーの位置における入射電子流を測定する1つまたは複数のそれぞれ接地されたセンサー370を、この金属層の上方に配置することができる。金属層自体を構造化し、ビーム電流を区分ごとに、またはこの構造化に基づく空間分解能で測定することも可能である。この測定システムは、たとえば移動可能ステージと、たとえばその上のファラデーカップとを使用して測定される個別粒子ビーム3に基づいてキャリブレーションすることができる。他の実施形態変形およびキャリブレーション方法も考えられる。
【0087】
図5に、マルチアパーチャアレイ313の上側の第1のビーム電流測定手段370の概略図を示し、マルチアパーチャアレイ313は異なる直径を有するビームコーン311によって照射される。図の実施例では、マルチアパーチャアレイ313は、91個の個別粒子ビーム3を発生するための合計91個の穴を有する。この場合も、開口315の配列は六角形である。開口315の六角形配列の外側の周囲には、第1のビーム電流測定手段370が配置され、第1のビーム電流測定手段370は図の例では3つの部分からなる図を有する。第1のビーム電流測定手段370は、マルチアパーチャアレイ313の上側に3つのセンサー370.1、370.2および370.3を含む。3つのセンサー370.1、370.2および370.3は、複数のアパーチャの外側の周囲に正三角形の形態で配置されている。この幾何学的配置は、少数のセンサーを使用しながら、マルチアパーチャアレイ313に入射する照射粒子ビーム311の広がりと位置に関する多くの情報を得ることを可能にする。
図5に示す例では、照射粒子ビーム311のビームコーンが、マルチアパーチャプレート313に当たり、照射スポットの中点Mは、開口1が位置するマルチアパーチャアレイ313の中点Pと同じである。マルチアパーチャプレート313への照射粒子ビーム311の中心に位置づけられた入射の場合、適切な対称形の等間隔に離隔した配置であれば、すべてのセンサー370.1、370.2および370.3に同じ強度の電流が当たる。たとえばキャリブレーションの結果として電流強度の特性または勾配がビームコーン全体においてわかっている場合、照射粒子ビーム311の照射スポットの半径r1または直径d1は、測定電流強度から決定することができる。
図5aと
図5bは、照射スポットのサイズが異なり、照射スポットは
図5bにおいてより大きく、
図5aのようにわずか半径r1ではなく半径r2を有する。
図5bによるセンサー370.1、370.2および370.3によって測定された電流強度は、センサーのそれぞれで同じであるが、
図5aの場合よりも絶対値が低い。
【0088】
図6bに、
図5とは異なり、マルチアパーチャアレイ313への照射粒子ビーム311の中心に位置決めされていない入射を示す。
図6bは、むしろ中心からずれた入射または入射時の位置ずれVを示している。
図6aでは、ビームスポットの中点Mとマルチアパーチャアレイ313の中点Pとが空間的に一致している。
図6bでは、
図6aと比較して半径r1が変化しないままであるビームスポットの中点Mが、マルチアパーチャアレイ313の中点Pに対して相対的に位置ずれしている。この位置ずれVが
図6bでも同様に描かれている。したがって、センサー370.1、370.2および370.3は、それぞれ異なる電流強度を測定することになる。この場合、測定値の相互からのそれぞれのずれは、事前に行われたキャリブレーションに基づく位置ずれに関して推定を行うことを可能にする特徴的パターンを形成する。
【0089】
以上、異なるビーム電流がどのようにして生じるかについて説明し、異なる種類のビーム測定について説明したので、以下ではビーム電流変動の補正に重点を移す。この文脈で、
図7に、補正のための追加の静電要素を有するビーム発生システム301を示す。図の実施例では、ビーム発生システム301は以下のように構築されている。ビーム発生システム301は、サプレッサ電極341によって側部円筒面状に囲まれた先端部340を含み、サプレッサ電極341は先端部から側方に電子が出るのを抑制する役割を果たす。たとえば、先端部340は、数アンペアの加熱電流強度で動作させられる熱電界放出器とすることができる。先端部340を基準とした数百ボルトの電圧がサプレッサ341に印加される。先端部340を基準とした数キロボルトの電圧が、先端部340から距離を隔てて配置されたエクストラクタ電極342に印加される。この場合、先端部340とエクストラクタ342との間の距離は、典型的には数百マイクロメートル、たとえば200μmまたは400μmである。アノード343が典型的には先端部340の1センチメートル真下に配置される。先端部340とアノード343との間の加速電位は数万キロボルト、たとえば25kV、30kVまたは35kVである。ここまでは、ビーム発生システム301はすでに知られているビーム発生システムに対応する。しかし、エクストラクタ342とアノード343との間の静電制御電極344の配置は新規である。これら2つの要素間には、数ミリメートル、たとえば6mm、8mmまたは10mmの空間があり、これはエクストラクタ342とアノード343との間にさらなる電極を空間的に配置するのに十分である。最も単純な場合では、静電制御レンズ344を単純なプレートとして設けることができ、それに適切な電圧が印加される。すると、近接する静電界と連動してレンズ効果が現れる。
【0090】
図7に示す実施例では、集光レンズシステム303のうちの集光レンズ303.1のみが励磁され、第2の集光レンズ203.2は停止されるが、これは異なっていてもよい。図の実施例では、照射粒子ビーム311はマルチアパーチャアレイ313にテレセントリックに当たる。これで静電制御レンズ344の高速または高周波駆動が可能になり、その結果、マルチアパーチャアレイ313への入射時にビームスポットの直径にわずかな変動がある。
図7は、発散粒子ビーム309の、または照射粒子ビーム311の、2つの異なるビーム経路を示している。前者の場合、マルチアパーチャアレイ313への入射時に形成される照射スポットは直径d1を有し、一方、後者の場合は直径d2を有し、したがってわずかにより大きい範囲に拡大される。
【0091】
この場合、照射スポットの直径を変化させる原理は、
図2~
図6の文脈ですでに詳述したものと同じであるが、照射スポットのサイズを変更するために使用される手段が異なる。この場合、従来の手段の代わりに静電高速制御レンズ344が使用される。この場合、静電制御レンズ344は、特に高速な電圧変化を実現するために、好ましくは正または負にバイアスされる。たとえば、アノード343の電位とエクストラクタ342の電位との間の電位とすることができ、範囲の上下限も含まれる。電極の幾何形状に基づいて特定の電位を選定することができる。
【0092】
たとえば、ここでたとえばビーム電流の
図5および
図6によるセンサーシステムなどの第1のビーム電流測定手段を使用してマルチアパーチャアレイ313の上側で測定が行われる場合、閉ループビーム電流制御のために静電制御レンズ344を励起するため、たとえば静電制御レンズ344に特定の電圧を印加するために、この測定に基づいてマルチビーム粒子顕微鏡1のコントローラ10を用いて適切な制御信号を発生することができる。このフィードバックループは、きわめて高速であり、このようにしてマルチビーム粒子顕微鏡1の動作中に微小光学系またはマルチアパーチャアレイ313の一定した照射を得ることができる。
【0093】
特に、マルチビーム粒子顕微鏡1を使用した像記録手順中のビーム電流ずれの高周波成分を、静電制御レンズ344を用いて制御することができる。この場合、ビーム発生システム301において高周波閉ループ制御が実施されるが、加速電圧全体を適応化する必要もエクストラクタ電圧を変更する必要もない。これにより、エクストラクタ電圧の変更の場合とは異なり、再度バーンインする必要がない先端部340の概ね一定した動作が保証される。
【0094】
図8に、閉ループビーム電流制御手段のさらなる設計選択肢を示す。
図8は、光軸105に沿って移動し、ビーム発生システム301を用いて発生させた発散粒子ビーム309の放射線を示す。この放射線は、第1の集光レンズ303.1と第2の集光レンズ303.2とを有する集光レンズシステム33を通過する。図の実施例ではそれぞれの集光レンズは磁気レンズである。構成要素345および346を備えた静電双偏向器が、集光レンズシステム303の領域に配置されている。図の実施例では、粒子光学ビーム経路に対して、構成要素345は第1の集光レンズ303.1の下流にあり、構成要素346は第2の集光レンズ303.2の下流にある。しかし、集光レンズシステム303の領域における双偏向器の他の配置も可能であり、たとえば、粒子光学ビーム経路に対して両方の構成要素345、346を第2の集光レンズ303.2の下流に配置することができる。
【0095】
ビーム311は、双偏向器を用いて平行にオフセットさせることができる。マルチアパーチャアレイ313に入射すると、ビーム311はベクトルVだけ光軸105を基準にして相対的にオフセットされる。この場合、静電双偏向器345、346は、迅速に駆動することができ、マルチアパーチャアレイ313が照射されるときのオフセットの高周波補正に適している。さらに、双偏向器345、346は、第1のビーム電流測定手段を用いて測定された、たとえばマルチアパーチャプレート313の表面においてセンサー370を用いて測定された、電流値に基づいて駆動することができる。このフィードバックループは、像記録手順中に高速閉ループ電流制御のためにも使用することができる。
【0096】
また、集光レンズ303の一方を静電集光レンズ303として形成することができる。この静電集光レンズ303も、結果としてマルチアパーチャプレート313への入射時に照射スポットの直径dを変化させるために、迅速に準瞬時に駆動することができる。この場合も、駆動は、電流測定に基づくフィードバックループの形態で実施可能であり、これは、たとえばマルチアパーチャアレイ313の上側のセンサー370を用いて決定されている。
【0097】
図9に、コントローラ10を用いて駆動される、閉ループビーム電流制御手段と補償器とを有するマルチビーム粒子顕微鏡1を概略的に示す。この場合、コントローラ10は、1つの部分または多数の部分で形成可能であり、マルチビーム粒子顕微鏡1全体が原則としてコントローラ10を用いて制御可能である。特に、コントローラ10は、ビーム発生システム301と、第1の粒子光学ユニット、第2の粒子光学ユニットおよび検出システム200のコンポーネントと、明示的に図示されている場合もされていない場合もあるマルチビーム粒子顕微鏡1のさらなるコンポーネントとを制御する。
図9の概略図では、本発明の文脈で最も重要な制御要素および態様のみが、選択された粒子光学コンポーネントへの接続線によって表されている。特に、マルチビーム粒子顕微鏡1は、記載されている実施形態変形におけるマルチビーム粒子顕微鏡1を動作させるための本発明による方法を実施するのに適している。
【0098】
最初に、様々なビーム電流測定手段を用いてビーム電流が測定され、測定値がコントローラ10に送信される。図の実施例では、微小光学系の上側、特に、マルチアパーチャアレイ313の上側に、第1のビーム電流測定手段が配置される。この場合、これはたとえば
図5および
図6に示すように1つまたは複数のセンサー370とすることができる。さらに、図の実施例ではビームストップ111上に配置されるかまたはそれに割り当てられたセンサーを用いて全体ビーム電流が測定される。この場合、個別粒子ビーム3を、第1の粒子光学ビーム経路において対物レンズ102の上流に、クロスオーバー面と同じ高さに配置されたビームストップ111までステアリングするために、マルチビーム偏向器390が使用される。特に、コントローラ10は、サンプル表面上を走査するときのラインジャンプ時または像ジャンプ時に第1の個別粒子ビーム3をビームストップ111内に向けるように構成することができる。したがって、像記録手順時に全体ビーム電流を測定することができる。測定されたビーム電流値はさらに、コントローラ10に送信される。ビーム電流の測定値から、事前定義された公称ビーム電流からのずれが決定される。このずれは、コントローラ10で実施されるアルゴリズムを用いてドリフト成分と高周波成分とに分解される。これでビーム電流のドリフト成分とビーム電流の高周波成分の両方を、閉ループビーム電流制御手段を用いて制御または補償することができる。
【0099】
マルチビーム粒子顕微鏡1のコンポーネントは、ビーム電流の静的設定のため、またはドリフト補正のために、それ自体知られている方式で駆動される。これには、ビーム発生システム301におけるエクストラクタ電圧の調整と、集光レンズシステム303の駆動も含まれる。
図9に追加して図示されている偏向器304が、微小光学系306への入射時に照射ビーム311を静的に調整する機能を果たす。しかし、マルチビーム粒子顕微鏡1は、ビーム電流を制御する目的で高周波駆動するためのさらなるコンポーネントおよび制御要素を含む。
【0100】
コントローラ10によってフィードバックループを用いて駆動される静電制御電極344(
図9には図示せず)が、ビーム発生システム301の構成要素として設けられている。これに加えて、またはこれに代えて、集光レンズシステム303の集光レンズが高速静電集光レンズとして設計可能であり、同様に迅速に駆動可能である。その結果、微小光学系306に入射するビームの直径を迅速に補正することができる。
【0101】
照射スポットの横方向オフセットの高速補正のために、集光レンズシステム303において1つまたは複数の静電偏向器、特にたとえば
図8に示すような静電双偏向器を、追加してまたは代替として設けてもよい。これらの偏向器も同様に、測定電流値に基づくフィードバック信号を用いて駆動することができる。
【0102】
上述のような高速閉ループビーム電流制御に加えて、またはそれに代えて、
図9に示すマルチビーム粒子顕微鏡1においてさらなる制御ループが実施される。たとえば、走査偏向器110の走査速度を測定ビーム電流に基づいて適応化することができる。たとえば、その時点において測定されたビーム電流値に基づいて、最大約10%または最大約5%または最大約1%だけ公称走査速度から逸脱可能である。走査速度を上昇させると、サンプル上の特定の領域/画素に入射するビーム電流が減少し、一方、走査速度を低下させるとそこに入射するビーム電流が増大する。
【0103】
上記に加えて、または上記に代えて、測定ビーム電流に基づいて検出システム200を駆動することも可能であり、コントローラ10が検出システム200のゲインおよび/またはオフセットの高周波調整のために使用される。この場合、検出システム200は、すべての検出領域またはチャネルについて大域的に、または個別二次粒子ビーム9の個別チャネル/検出領域について個別に、調整可能である。さらなる詳細については、本発明の説明に関して上記で示した説明(概要部分および図面部分)で言及している。
【0104】
図10に、この場合もマルチビーム粒子顕微鏡1を動作させるための本発明による方法のフローチャートを概略的に示す。方法ステップS1で、ビーム電流が測定される。この場合、ビーム電流として好ましいのは、たとえばセンサーシステムを含む共通ビームストップ111を用いて、たとえばマルチアパーチャアレイ313の表面において所定の領域または個別粒子ビーム3について決定可能であり、および/または、すべての個別粒子ビーム3についてまとめて決定可能な、その時点のビーム電流である。
【0105】
さらなる方法ステップS2で、測定ビーム電流の公称ビーム電流からのずれが決定される。たとえば、公称ビーム電流は、最小ビーム電流とすることができるが、許容ビーム電流の区間も設けられてもよく、公称ビーム電流を定義する際に様々なビーム電流の均一性について要求されることも可能である。
【0106】
さらなる方法ステップS3で、決定されたずれがドリフト成分と高周波成分とに分解される。ビーム電流のドリフト成分は通常、時間の経過とともに、したがって比較的長期間にわたり、たとえば数日、数週またはさらに数か月にわたり、連続的に変化する。それに対して高周波成分は、数秒、数分または数時間以内、たとえばマルチビーム粒子顕微鏡1を使用した進行中の測定/像記録中に、比較的急速に変化する。ビーム電流中の高周波変化は、ドリフト成分と比較して、比較的急速に発生し、たとえば、ドリフトに起因する低周波変化の少なくとも500倍または1000倍またはさらには10000倍、速い。
【0107】
さらなる方法ステップS4で、ビーム電流の高周波成分が、第1の閉ループビーム電流制御手段を用いて制御される。このような高周波閉ループ制御の複数の実施形態について、
図9に関連してすでに説明している。たとえば、ビーム発生システム301の静電制御レンズ344を閉ループビーム電流制御要素として使用することができる。静電集光レンズ303の高速駆動も可能である。集光レンズシステム303における高速静電偏向器、特に静電双偏向器を用いて、横方向オフセットを準瞬時に補償することができる。
【0108】
また、方法ステップS7で、任意により、第2の閉ループビーム電流制御手段を用いてビーム電流のドリフト成分を制御してもよい。第2の閉ループビーム電流制御手段は、第1の閉ループビーム電流制御手段と同一とすることができるが、第1の閉ループビーム電流制御手段と同一でないことが好ましい。たとえば、ドリフトを補償するために磁気集光レンズを準静的に駆動することができる。
【0109】
閉ループビーム電流制御に加えて、またはそれに代えて、特に高周波ビーム電流補正に加えて、またはそれに代えて、マルチビーム粒子顕微鏡1の記録品質に与える高周波ビーム電流変化の影響を補正するためにさらなる手段をとることができる。
【0110】
方法ステップS5によると、公称ビーム電流からのビーム電流のずれに基づいてマルチビーム粒子顕微鏡1の検出システム200が駆動され、公称ビーム電流からのビーム電流の高周波ずれに基づいて検出システム200のゲインおよび/またはオフセットの高周波調整が行われる。この場合、検出システム205はすべての検出チャネルについて大域的に、または二次個別粒子ビーム9の個別検出チャネルについて個別に調整可能である。
【0111】
上記に加えて、または上記に代えて、方法ステップS6で、複数の個別粒子ビーム3がサンプル7の表面を走査する走査速度を調整することができる。サンプル7上の1画素当たりのビーム電流を、走査速度を上昇させることによってフィードバックループにおいて減少させることができ、一方、走査速度を低下させることによってビーム電流を増大させることができる。
【0112】
図10に記載の方法は、好ましくはコンピュータ実施方法であり、したがって、マルチビーム粒子顕微鏡1のコンピュータまたはコントローラ10に組み込み可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 マルチビーム粒子顕微鏡
3 一次粒子ビーム(個別粒子ビーム)
5 ビームスポット、入射位置
7 物体
9 二次粒子ビーム
10 コンピュータシステム、コントローラ
11 二次粒子ビーム経路
13 一次粒子ビーム経路
25 サンプル表面、ウエハ表面
100 対物レンズシステム
101 対物面
102 対物レンズ
103 視野
105 マルチビーム粒子顕微鏡の光軸
108 クロスオーバー
110 一括走査偏向器
111 第2の電流測定手段を備えたビームストップ
200 検出器システム
205 投影レンズ
207 検出領域
208 調整用の偏向器
209 粒子マルチ検出器
211 検出面
212 クロスオーバー
213 入射位置
214 アパーチャフィルタ
215 検出領域
216 能動要素
217 視野
218 偏向器システム
220 マルチアパーチャ補正器、個別偏向器アレイ
222 一括偏向システム、アンチスキャン
300 ビーム発生装置
301 粒子源、ビーム発生システム
303 コリメーションレンズシステム
304 偏向器
305 マルチアパーチャ配列
306 微小光学系
307 視野レンズ
308 視野レンズ
309 発散粒子ビーム
311 照射粒子ビーム
313 マルチアパーチャプレート、マルチアパーチャアレイ
315 マルチアパーチャプレートの開口
316 六角形
317 開口の中点
319 視野
323 ビーム焦点
325 中間像面
326 視野レンズシステム
340 先端部
341 サプレッサ
342 エクストラクタ電極
343 アノード
344 静電制御電極
345 偏向器
346 偏向器
351 領域
352 領域
353 領域
354 領域
360 ビーム電流強度図
370 第1のビーム電流測定手段
390 マルチビーム偏向器
400 ビームスイッチ
420 磁気要素
500 サンプルステージ
503 サンプル用電圧源
d1 ビームコーン直径
d2 ビームコーン直径
r ビームコーン半径
M ビームスポット中点
P マルチアパーチャプレート中点、マルチアパーチャアレイ中点
V ビームコーン中点とマルチアパーチャアレイ中点との位置ずれ
S1 ビーム電流を測定する
S2 ビーム電流のずれを決定する
S3 ドリフト成分と高周波成分への分解を行う
S4 高周波成分を制御する
S5 検出器を調整する
S6 走査速度を調整する
S7 ドリフト成分を制御する
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別荷電粒子ビームを使用して動作するマルチビーム粒子顕微鏡を動作させる方法であって、
ビーム電流を測定するステップと、
公称ビーム電流からの前記測定されたビーム電流のずれを決定するステップと、
前記決定されたずれをドリフト成分と高周波成分とに分解するステップと、
第1の閉ループビーム電流制御手段を用いて前記ビーム電流の前記高周波成分を制御するステップ、および/または、閉ループビーム電流制御手段とは異なる手段を使用して前記マルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える前記高周波成分の影響を補償するステップとを含む、
方法。
【請求項2】
第2の閉ループビーム電流制御手段を用いて前記ビーム電流の前記ドリフト成分を制御するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーム電流を測定するステップは、像記録手順中の前記個別粒子ビームのビーム電流全体の測定を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビーム電流を測定するステップは、像記録手順中の選択された位置におけるマルチアパーチャアレイにおける電流測定を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記マルチアパーチャアレイに入射したビームコーンの半径および/または位置ずれを決定するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電流を測定するための3つのセンサーが、前記マルチアパーチャアレイの上側に、特に三角形の形態で、特に正三角形の形態で、前記複数のアパーチャの外側の周囲に配置される、請求項4
に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の閉ループビーム電流制御手段を用いて前記ビーム電流の前記高周波成分を制御するステップは、
前記マルチアパーチャアレイの照射を高周波方式で調整するステップを含む、請求項4
に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の閉ループビーム電流制御手段は、集光レンズシステムの領域における静電双偏向器を含み、および/または、
前記第1の閉ループビーム電流制御手段は、静電集光レンズを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の閉ループビーム電流制御手段は、前記マルチビーム粒子顕微鏡のビーム発生システムのエクストラクタ電極とアノードとの間に配置された静電制御レンズを含む、請求項7
に記載の方法。
【請求項10】
前記マルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える前記高周波成分の影響を補償するステップは、
前記公称ビーム電流からの前記ビーム電流の高周波ずれに基づいて前記マルチビーム粒子顕微鏡の検出システムを駆動するステップを含み、前記公称ビーム電流からの前記ビーム電流の高周波ずれに基づいて前記検出システムのゲインおよび/またはオフセットの高周波調整が行われる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記検出システムの調整が、すべてのチャンネルについて大域的に、または個別粒子ビームの個別チャネルについて個別に実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マルチビーム粒子顕微鏡の記録品質に与える前記高周波成分の影響を補償するステップは、
前記複数の個別粒子ビームがサンプルの表面の上を走査する走査速度を調整するステップを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記測定されたビーム電流値をログ記録するステップをさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記ビーム発生システムの先端部の残存耐用期間を推定するステップ、および/または、前記先端部の必要な交換を開始させるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1または2に記載の方法を実施するためのプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムであって、前記エクストラクタ電極と前記アノードとの間に配置された静電制御レンズをさらに含むビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有し、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成されたマルチビーム発生器と、
前記マルチビーム発生器の前記マルチアパーチャアレイにおける第1のビーム電流測定手段と、
前記発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム発生器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記静電制御レンズの駆動、特に高周波駆動のために構成される、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項17】
前記第1の粒子光学ビーム経路において、前記マルチビーム発生器の下流かつ前記ビームスイッチの上流に配置されたマルチビーム偏向デバイスと、
第2のビーム電流測定手段を有するビームストップであって、前記第1の粒子光学ビーム経路において前記対物レンズの上流に、クロスオーバー面と同じ高さに配置されたビームストップと、を含み、
前記コントローラは、前記第1の個別粒子ビームが前記ビームストップに実質的に入射し、したがって対物面には入射しないように、前記マルチビーム偏向デバイスを用いて前記第1の個別粒子ビームをまとめて一時的に偏向させるように構成される、請求項16に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項18】
前記コントローラは、前記第1のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記静電制御レンズの高周波駆動のために構成される、請求項17に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項19】
マルチビーム粒子顕微鏡であって、
粒子源とエクストラクタ電極とアノードとを含み、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成されたビーム発生システムであって、前記エクストラクタ電極と前記アノードとの間に配置された静電制御レンズをさらに含む、ビーム発生システムと、
マルチアパーチャアレイを有し、前記第1の荷電粒子ビームから複数の第1の個別荷電粒子ビームの第1の視野を生成するように構成された、マルチビーム発生器と、
前記個別粒子ビームのビーム電流全体を測定するように構成された第2のビーム電流測定手段と、
前記発生した第1の個別粒子ビームが、第2の視野を形成する入射位置においてサンプルに当たるように、前記第1の個別粒子ビームを前記サンプルに向けるように構成された、第1の粒子光学ビーム経路を有する第1の粒子光学ユニットと、
検出システムと、
前記第2の視野内の前記入射位置から発する第2の個別粒子ビームを前記検出システム上に結像するように構成された、第2の粒子光学ビーム経路を有する第2の粒子光学ユニットと、
前記第1と前記第2の両方の個別粒子ビームが通過する粒子光学対物レンズと、
前記マルチビーム発生器と前記対物レンズとの間の前記第1の粒子光学ビーム経路に配置され、前記対物レンズと前記検出システムとの間の前記第2の粒子光学ビーム経路に配置された、ビームスイッチと、
前記ビーム発生システムと、前記粒子光学対物レンズと、前記第1の粒子光学ユニットと、前記第2の粒子光学ユニットと、前記検出システムとを制御するように構成されたコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記第2のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記静電制御レンズの駆動、特に高周波駆動のために構成される、
マルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項20】
前記検出システムは、第3の視野を形成する複数の検出領域を有し、前記第2の視野から発する前記第2の個別粒子ビームは前記第3の視野上に結像され、
前記コントローラは、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく前記検出システムのゲインおよび/またはオフセットの調整、特に高周波調整のために構成される、
請求項16または19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項21】
前記検出システムの前記検出領域は個別に駆動される、請求項20に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項22】
前記検出システムの前記検出領域は大域的に駆動される、請求項20に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項23】
前記第1の個別粒子ビームをまとめて偏向させ、サンプル表面の上でこれらをまとめて走査するように構成された、一括走査偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記走査偏向器を駆動するために、かつ、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段を用いた電流測定に基づく前記一括走査偏向器の走査速度の調整のために構成される、
請求項16または19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項24】
前記ビーム発生システムと前記マルチビーム発生器との間に配置された集光レンズシステムをさらに含み、
前記コントローラは、第1および/または第2のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記集光レンズシステムの駆動のために構成される、
請求項16または19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項25】
特に、前記集光レンズシステムの前記領域における静電双偏向器をさらに含み、
前記コントローラは、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段によるビーム電流測定に基づく前記双偏向器の駆動、特に高周波駆動のために構成される、請求項24に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【請求項26】
前記コントローラは、前記第1および/または第2のビーム電流測定手段による電流測定に基づく前記エクストラクタ電極の低周波駆動のために構成される、
請求項16または19に記載のマルチビーム粒子顕微鏡。
【国際調査報告】