(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】非天然アミノ酸及びその使用、それを含有する組換えタンパク質、並びに組換えタンパク質コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07C 271/22 20060101AFI20240711BHJP
C07K 14/61 20060101ALI20240711BHJP
C07C 271/54 20060101ALI20240711BHJP
C07C 235/12 20060101ALI20240711BHJP
C07C 237/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C07C271/22 CSP
C07K14/61 ZNA
C07C271/54
C07C235/12
C07C237/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503678
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2021109276
(87)【国際公開番号】W WO2023004686
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524024074
【氏名又は名称】ノヴォコデックス バイオファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イェ チェンハオ
(72)【発明者】
【氏名】シア ガン
(72)【発明者】
【氏名】フオ ペンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ディン ウェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ロンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ リン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘン シン
(72)【発明者】
【氏名】チュー ジンジン
(72)【発明者】
【氏名】イン ユエビン
(72)【発明者】
【氏名】リャン シュエジュン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H045
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006RA16
4H006RB04
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA31
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本発明では、式(I)で表される構造を有する化合物又はその鏡像異性体である非天然アミノ酸が提供されている。また、前記非天然アミノ酸の使用が提供されている。さらに、前記非天然アミノ酸を含有する組換えタンパク質及び前記組換えタンパク質から製造されたタンパク質コンジュゲートが提供されている。前記非天然アミノ酸は、製造が簡便で、安全性が良好で、タンパク質に挿入された場合に失活しにくく、カップリング部分との結合率が高く、得られたコンジュゲートの安定性もより高い、前記非天然アミノ酸は、多くの分野、特に組換えタンパク質又は組換えタンパク質コンジュゲートの製造に適用することができる。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造を有する化合物又はその鏡像異性体であり、
【化1】
式中、X及びZは夫々独立に、置換され若しくは置換されないC0~C20の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH
2-は任意的に-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-S(O)-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、Yは-C(O)-、-S(O)-又は-CH
2-を示し、Aは置換され若しくは置換されないC6~C20のアリール基を示し、
前記X、Z及びAが夫々独立に置換された基を示す場合、置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロ基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数である、
ことを特徴とする非天然アミノ酸。
【請求項2】
前記置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、C4~C10ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数であり、
好ましくは、前記X及びZは夫々独立に、C0~C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、好ましくはC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH2-は任意的に-O-、-S-、-NH-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、より好ましくは、前記XとZは同時にC0アルキレン基ではなく、及び/又は、
前記Aは置換され若しくは置換されないC6~C10アリール基を示し、より好ましくは、前記Aは置換され若しくは置換されないフェニル基又はナフチル基を示す、
ことを特徴とする請求項1に記載の非天然アミノ酸。
【請求項3】
前記非天然アミノ酸は、式(I-1)で表される構造を有する化合物であり、
【化2】
式中、前記X、Z及びAは夫々独立に請求項1又は2で定義されたものであり、
好ましくは、前記非天然アミノ酸は、式(I-2)で表される構造を有する化合物であり、
【化3】
式中、前記Xは請求項1又は2で定義されたものであり、
R
1、R
2は夫々独立に、水素、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、又はC4~C10ヘテロアリール基を示す、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の非天然アミノ酸。
【請求項4】
前記非天然アミノ酸は、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)、又は式(I-6)で表される構造を有する化合物であり、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
式中、X’はC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、好ましくはC0~C4の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH
2-は任意的に-O-及び/又は-NH-に置換可能であり、
前記R
1、R
2は夫々独立に請求項3で定義されたものである、
ことを特徴とする請求項3に記載の非天然アミノ酸。
【請求項5】
前記非天然アミノ酸は、下記の何れか1つで表される構造を有する化合物である、
【化8】
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の非天然アミノ酸。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の非天然アミノ酸の組換えタンパク質又は組換えタンパク質コンジュゲートの製造における使用であって、
好ましくは、前記組換えタンパク質は組換えヒト成長ホルモンであり、若しくは、好ましくは、前記組換えタンパク質コンジュゲートは組換えヒト成長ホルモンとポリエチレングリコールのコンジュゲートである、前記の使用。
【請求項7】
アミノ酸配列の少なくとも1つの部位に請求項1乃至5の何れか一項に記載の非天然アミノ酸が配列されている、ことを特徴とする組換えタンパク質。
【請求項8】
請求項7に記載の組換えタンパク質中の非天然アミノ酸のカルボニル末端基と「NH
2-O-」末端基含有カップリング部分がオキシム結合を形成することにより形成される、ことを特徴とする組換えタンパク質コンジュゲート。
【請求項9】
前記組換えタンパク質は組換えヒト成長ホルモンであり、前記「NH
2-O-」末端基含有カップリング部分は「NH
2-O-」末端基含有ポリエチレングリコールであり、好ましくは、分子量が10~100KDのポリエチレングリコールであり、
より好ましくは、前記組換えヒト成長ホルモンのアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示す通りであり、
さらに好ましくは、前記アミノ酸配列SEQ ID NO:1に対応する107位には請求項1乃至5の何れか一項に記載の非天然アミノ酸が配列されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の組換えタンパク質コンジュゲート。
【請求項10】
請求項9に記載の組換えタンパク質コンジュゲートの、内因性成長ホルモンの分泌不足による成長発達障害治療用薬物、ターナー症候群による成長発達障害治療用薬物又は成人成長ホルモン欠乏症治療用薬物の製造における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物製薬分野に関し、具体的には、非天然アミノ酸、前記非天然アミノ酸を含有する組換えタンパク質、及び前記組換えタンパク質のコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質に特殊な基を含有する非天然アミノ酸を導入することにより、多種の科学研究及び製品開発応用を実現することができ、例えば、タンパク質に感光性非天然アミノ酸を導入したり、非天然アミノ酸に特殊なマークを付与したりすることで、タンパク質間の相互作用の研究を容易にすることができる。また例えば、酵素活性や酵素の安定性が高くなったり、酵素の効率的な固定化が容易になったりするように、非天然アミノ酸を用いて酵素の配向を改変させる。さらに例えば、通常の宿主では非天然アミノ酸の挿入が不可であるという特徴を利用して、安全な生菌又は生ウイルスワクチンを製造することができる。コドン拡張技術による非天然アミノ酸のタンパク質への導入に関する1つの重要な使用として、タンパク質を部位特異的に修飾することでタンパク質の機能、安定性、半減期などの特徴を変化させ、且つ新規な生物薬の開発に用いることが可能である。現在、PEGが部位特異的にカップリングされた組換えヒト成長ホルモンによる長い効果を持つ組換えタンパク質の製造や、小分子毒素が部位特異的にカップリングされたモノクローナル抗体による抗体カップリング薬物の開発などの一連の成果がある。このことから分かるように、非天然アミノ酸は非常に重要な作用及び非常に広範な適用分野を有する。
【0003】
従来の技術(例えばCN102838671B、CN106146663A、J.Am.Chem.Soc.2009,131,8720など)では非天然アミノ酸Lys-azidoが開示され、その構造式は以下の通りであった。
【0004】
【化1】
Lys-azidoの末端にあるアジド構造(-N
3)は、アルキン含有構造(例えばBCN、即ち
【化2】
)で修飾した担体薬物(例えばPEGなど)と化学的に結合してコンジュゲートを形成することができ(例えば中国特許CN103153927B)、高い特異的選択性を有する。しかしながら、このようなカップリング法と化学修飾法では、高コストのアルキン類構造を導入しなければならず、しかも、使用当量が大きい場合にのみ、許容可能な薬物-抗体カップリング比率が得られるので、該当する生産コストが増やし、生産プロセスも複雑で、生産条件が厳しい。
【0005】
したがって、アミノ酸の種類及び使用を拡大するために、構造が新規で、製造が簡便で、コストが安い非天然アミノ酸を開発することは期待されている。
【発明の概要】
【0006】
従来の技術に存在する上記の欠点を解消するために、本発明の1つの目的は、非天然アミノ酸を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、前記非天然アミノ酸の使用を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、組換えタンパク質及び組換えタンパク質コンジュゲートを提供することにある。
【0009】
本発明で提供される非天然アミノ酸は、式(I)で表される構造を有する化合物又はその鏡像異性体であり、
【化3】
式中、X及びZは夫々独立に、置換され若しくは置換されないC0~C20の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH
2-は任意的に-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-S(O)-から選ばれた1つ又は複数に置換可能であり、Yは-C(O)-、-S(O)-又は-CH
2-を示し、Aは置換され若しくは置換されないC6~C20のアリール基を示し、
前記X、Z及びAが夫々独立に置換された基を示す場合、置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基(sulfonyl)、スルフィニル基(sulfinyl)、シクロアルキル基、ヘテロシクロ基、アリール基、ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数である。
【0010】
実施例11に示すように、本発明の発明者は、コストが暴騰し、生産プロセスが複雑であることに加えて、Lys-azidoの末端にあるアジド構造(-N
3)はタンパク質に挿入された際にアミノ構造(-NH
2)に還元されやすいため、カップリング活性が失われやすく、よって、この還元反応によって製造過程中の収率が低下してしまうことを見出した。
【化4】
【0011】
本発明で提供される非天然アミノ酸は、その末端に活性反応基としてカルボニル基が導入されたものであり、構造が新規で、製造が簡便であるだけでなく、カップリング条件が温和で、生産コストが低く、タンパク質配列に挿入された場合に構造の変化が発生しにくいため、反応活性が失われにくい。本発明で提供される非天然アミノ酸は、末端基カルボニル基に結合されたアリール基も含有したものであり、アリール基の導入によって、得られたコンジュゲートの安定性がより強くなり、低いpH条件下でもコンジュゲートが分解しにくい。また、本発明で提供される非天然アミノ酸は、所定の鎖長のアルキレン基も含有したものであり、化合物の柔軟性が良好で、多種のコンジュゲートを形成することがより一層容易になる。
【0012】
本発明で提供される非天然アミノ酸では、「C0~Cn」はC0~C1、C0~C2、…C0~Cnを含み、それがC0を示す場合、この基が存在しないことを意味しており、その両端にあるC原子が直接連結して結合になっている。例を挙げて説明すると、前記「C0~C6」基とは、該当する部分に0~6個の炭素原子を含有し、即ち、基が存在しなく、1個の炭素原子含有、2個の炭素原子含有、3個の炭素原子含有、4個の炭素原子含有、5個の炭素原子含有、又は6個の炭素原子含有を指す。前記「C6~C10」基とは、該当する部分に6~10個の炭素原子を含有し、即ち、6個の炭素原子含有、7個の炭素原子含有、8個の炭素原子含有、9個の炭素原子含有、又は10個の炭素原子含有を指す。
【0013】
本発明に係る非天然アミノ酸では、「アリール基」とは、1個又は2個の環を含有する炭素環式芳香族系を指し、ここでかかる環は縮合様式で一緒に連結され得る。「アリール基」は、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基の芳香族基などの単環式又は二環式のアリール基を含む。アリール基は、好ましくはC6~C10アリール基、より好ましくはフェニル基、ナフチル基、最も好ましくはフェニル基である。
【0014】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記置換基は、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、C4~C10ヘテロアリール基から選ばれた1つ又は複数である。
【0015】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記X及びZは夫々独立に、C0~C10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH2-は任意的に-O-、-S-、-NH-から選ばれた1つ又は複数に置換可能である。本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、前記X及びZは夫々独立に、C0~C6の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH2-は任意的に-O-、-S-、-NH-から選ばれた1つ又は複数に置換可能である。本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、前記XとZは同時にC0アルキレン基ではなく、言い換えれば、X基とZ基は共に存在しないことが許可されない。
【0016】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記Aは置換され若しくは置換されないC6~C10アリール基を示し、より好ましくは、前記Aは置換され若しくは置換されないフェニル基又はナフチル基を示す。
【0017】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記非天然アミノ酸は、式(I-1)で表される構造を有する化合物であり、
【化5】
式中、前記X、Z及びAは夫々独立に上述した技術案のうちの何れか1項で定義されたものである。
【0018】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記非天然アミノ酸は、式(I-2)で表される構造を有する化合物であり、
【化6】
式中、前記Xは上述した技術案のうちの何れか1項で定義されたものであり、
R
1、R
2は夫々独立に、水素、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基、アシル基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、C3~C8シクロアルキル基、C3~C8ヘテロシクロ基、C6~C20アリール基、又はC4~C10ヘテロアリール基を示す。
【0019】
本発明による幾つかの比較的好ましい実施形態では、前記非天然アミノ酸は、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)、又は式(I-6)で表される構造を有する化合物であり、
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
式中、X’はC0~C6の直鎖アルキレン基を示し、より好ましくはC0~C4の直鎖アルキレン基を示し、そのうちの1つ又は複数の-CH
2-は任意的に-O-及び/又は-NH-に置換可能であり、
前記R
1、R
2は夫々独立に上述した技術案のうちの何れか1項で定義されたものである。
【0020】
本発明で提供される非天然アミノ酸は、光学的に純粋な鏡像異性体及びラセミ体を含む。
【0021】
本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、本発明で提供される非天然アミノ酸は、下記の何れか1つで表される構造を有する化合物である。
【化11】
【0022】
本発明ではさらに、上述した技術案のうちの何れか1項に記載された非天然アミノ酸の組換えタンパク質又は組換えタンパク質コンジュゲートの製造における使用が提供されている。
【0023】
本発明に係る使用では、組換えタンパク質は、上述した技術案のうちの何れか1項に記載された非天然アミノ酸が当分野でよく見られる任意の種類のタンパク質に任意の部位、任意の数で挿入されて得られた組換えタンパク質である。組換えタンパク質コンジュゲートは、得られた任意の組換えタンパク質が当分野でよく見られるカップリング部分とカップリングして得られたコンジュゲートであり、ここで、カップリング部分は、ポリマー(例えば任意分子量を持つポリエチレングリコール)、タンパク質、ポリペプチド、又は小分子薬物から選ばれた1つ又は複数を含むが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、組換えタンパク質は組換えヒト成長ホルモンであり、組換えタンパク質コンジュゲートは組換えヒト成長ホルモンとポリエチレングリコールのコンジュゲートである。
【0025】
本発明ではさらに、アミノ酸配列の少なくとも1つの部位に上述した技術案のうちの何れか1項に記載された非天然アミノ酸が配列されている組換えタンパク質が提供されている。
【0026】
さらに、前記組換えタンパク質は、式(II)で表される構造を有し、
【化12】
式(II)中、Dは上述した技術案のうちの何れか1項に記載された非天然アミノ酸からアミノカルボン酸部分が除去された残基を示し、P
1、P
2はそれぞれ、前記非天然アミノ酸中のアミノ基とカルボキシル基の前記アミノ酸配列における連結部分を示す。
【0027】
本発明で提供される組換えタンパク質は、当分野でよく見られる製造方法によって製造できるものであり、例えば、遺伝子コドン拡張技術を用いて非天然アミノ酸を含有する組換えタンパク質のクローニング及び発現を実現することができる。
【0028】
本発明で提供される組換えタンパク質は、上述した技術案のうちの何れか1項に記載された非天然アミノ酸が当分野でよく見られる任意の種類のタンパク質に任意の部位、任意の数で挿入されて得られた組換えタンパク質、例えば組換えヒト成長ホルモンである。
【0029】
本発明ではさらに、上述した技術案のうちの何れか1項に記載された組換えタンパク質中の非天然アミノ酸のカルボニル末端基と「NH2-O-」末端基含有カップリング部分がオキシム結合を形成することにより形成される組換えタンパク質コンジュゲートが提供されている。
【0030】
さらに、前記組換えタンパク質コンジュゲートは、式(III)で表される構造を有するものであり、
【化13】
式(III)中、D’は上述した技術案のうちの何れか1項に記載された組換えタンパク質から非天然アミノ酸のカルボニル末端基部分が除去された残基を示し、D”はカップリング部分から「NH
2-O-」末端基が除去された残基を示す。
【0031】
本発明で提供される組換えタンパク質コンジュゲートでは、カップリング部分は、ポリマー(例えば任意分子量を持つポリエチレングリコール)、タンパク質、ポリペプチド、又は小分子薬物から選ばれた1つ又は複数を含む。異なる種類のカップリング部分は単独で組換えタンパク質とカップリングしてもよいし、異なる種類のカップリング部分は連結してから組換えタンパク質とカップリングしてもよい。
【0032】
本発明による幾つかの好ましい実施形態では、前記組換えタンパク質は組換えヒト成長ホルモンであり、前記「NH2-O-」末端基含有カップリング部分は「NH2-O-」末端基含有ポリエチレングリコールである。
【0033】
本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、「NH2-O-」末端基含有ポリエチレングリコールは、下記の構造式を有する。
【0034】
【化14】
ここで、「NH
2-O-」末端基含有ポリエチレングリコールの分子量は、10~100KDであり、約10KD、約20KD、約30KD、約40KD、約50KD、約60KD、約70KD、約80KD、約90KD、約100KDなどの分子量値又は任意に組み合わせた分子量範囲を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、「NH
2-O-」末端基含有ポリエチレングリコールの分子量は20~50KDである。
【0035】
本発明による幾つかのより好ましい実施形態では、前記組換えヒト成長ホルモンのアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示す通りであり、さらに好ましくは、前記アミノ酸配列SEQ ID NO:1に対応する107位には上述した技術案のうちの何れか1項に記載された非天然アミノ酸が配列されている。
【0036】
組換えタンパク質が組換えヒト成長ホルモンである場合、本発明ではさらに、上述した技術案のうちの何れか1項に記載された組換えタンパク質コンジュゲートの、内因性成長ホルモンの分泌不足による成長発達障害治療用薬物、ターナー症候群による成長発達障害治療用薬物又は成人成長ホルモン欠乏症治療用薬物の製造における用途が提供されている。
【0037】
本発明で提供される技術案は、下記の利点を有する。
【0038】
(1)本発明で提供される非天然アミノ酸は、その構造にカルボニル末端基及びそれに連結されたアリール基が導入されたものであり、現在のアジド末端基を持つ非天然アミノ酸(例えばLys-azido)に比べ、製造がより簡便で、安全性がより良好で、タンパク質に挿入された時に失活しにくく、カップリング部分との結合率がより高く、得られたコンジュゲートの安定性もより高い。
【0039】
(2)本発明で提供される非天然アミノ酸は、アミノ酸誘導体として、それ自体がアミノ酸の特性を有することができ、それによってアミノ酸の潜在的な種類が多くなっており、アミノ酸誘導体として多くの分野、特に組換えタンパク質又は組換えタンパク質コンジュゲートの製造に適用することができる。
【0040】
(3)本発明で提供される非天然アミノ酸は、原核発現系及び真核発現系中で成功識別されてタンパク質に挿入され、さらに特定の部位に非天然アミノ酸を含有するタンパク質を生成することができ、それによって、異なる理化学的特性、生化学的活性を有する組換えタンパク質を形成することができ、タンパク質の種類及び潜在的な使用範囲が広くなっている。また、本発明の非天然アミノ酸は、タンパク質中で発現効率が高く、実用性がより良好である。
【0041】
(4)本発明で提供される組換えタンパク質は、本発明の非天然アミノ酸を含有したものであり、それが含有する末端活性基カルボニル基によってタンパク質コンジュゲート(又はカップリング体)が容易に形成でき、例えば、ポリエチレングリコールコンジュゲート、ポリエチレングリコール-活性薬物コンジュゲートなどが挙げられる。これらのタンパク質コンジュゲートは、性能が改良されたため、多種の改良済み生物活性(例えば抗腫瘍活性)を有するものである。
【0042】
(5)本発明ではさらに、新規なタンパク質コンジュゲートプラットフォームが提供され、タンパク質に含有されている新規な非天然アミノ酸及びそれに連結されたカップリング部分によって、多種のタンパク質、多種のカップリング部分の結合を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施例8における組換えヒト成長ホルモン発現プラスミドpET21-rhGH107のプロファイルである。
【
図2】実施例8で得られた異なる種類の非天然アミノ酸が添加された発酵生成物のSDS-PAGE電気泳動図であり、図中の各レーンはそれぞれ下記のことを示す:レーン1:タンパク質分子量マーカー、レーン2:野生型組換えヒト成長ホルモン、レーン3:NBOKが投与された組換えヒト成長ホルモン発現物、レーン4:NPAKが投与された組換えヒト成長ホルモン発現物、レーン5:NBPKが投与された組換えヒト成長ホルモン発現物、レーン6:NBGKが投与された組換えヒト成長ホルモン発現物、レーン7:NPOKが投与された組換えヒト成長ホルモン発現物、レーン8:NPOK-2が投与された組換えヒト成長ホルモン発現物、レーン9:NBGK-2が投与された組換えヒト成長ホルモン発現物、レーン10:非天然アミノ酸が一切添加されない組換えヒト成長ホルモン発現物。
【
図3】実施例8における非天然アミノ酸を含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物のSDS-PAGE電気泳動図であり、図中の各レーンはそれぞれ下記のことを示す:レーン1:分子量マーカー、レーン2:野生型組換えヒト成長ホルモン、レーン3:NBOKを含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物、レーン4:NPAKを含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物、レーン5:NBPKを含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物、レーン6:NBGKを含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物、レーン7:NPOKを含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物、レーン8:NPOK-2を含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物。
【
図4】実施例8における精製済みのPEGがカップリングされた組換えヒト成長ホルモンのSDS-PAGE電気泳動図であり、図中の各レーンはそれぞれ下記のことを示す:レーン1:分子量マーカー、レーン2:組換えヒト成長ホルモン標準品、レーン3:NPOKを含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物、レーン4:NBOKを含有する組換えヒト成長ホルモンとPEGのカップリング生成物。
【
図5A】実施例8における細胞活性グラフであり、その中で、
図5Aは中国食品医薬品検定研究院からのrhGH標準品の細胞活性グラフである。
【
図5B】
図5Bは賽増(登録商標)(Jintropin、一般名称:注射用組換えヒト成長ホルモン)の細胞活性グラフである。
【
図5C】
図5Cは金賽増(登録商標)(一般名称:ポリエチレングリコール組換えヒト成長ホルモン注射液)の細胞活性グラフである。
【
図5D】
図5DはrhGH(NPOK)の細胞活性グラフである。
【
図5E】
図5EはPEG-rhGH(NPOK)の細胞活性グラフである。
【
図5F】
図5FはrhGH(NBOK)の細胞活性グラフである。
【
図5G】
図5GはPEG-rhGH(NBOK)の細胞活性グラフである。
【
図6】実施例9におけるCHO細胞への非天然アミノ酸挿入の瞬時発現を示す蛍光顕微鏡画像である。
【
図7】実施例10における発現プラスミドpCDNA3.1-Trastuzumab-UAG142のプロファイルである。
【
図8A】実施例10におけるNBPK含有トラスツズマブ(Trastuzumab)、NBOK含有トラスツズマブ、及びNPOK-2含有トラスツズマブに毒素がカップリングされた後のHIC-HPLCスペクトルである。
【
図8B】実施例10におけるNBPK含有トラスツズマブ(Trastuzumab)、NBOK含有トラスツズマブ、及びNPOK-2含有トラスツズマブに毒素がカップリングされた後のHIC-HPLCスペクトルである。
【
図8C】実施例10におけるNBPK含有トラスツズマブ(Trastuzumab)、NBOK含有トラスツズマブ、及びNPOK-2含有トラスツズマブに毒素がカップリングされた後のHIC-HPLCスペクトルである。
【
図9】実施例10におけるNBOK含有トラスツズマブとDM1で修飾したNBOK含有トラスツズマブのそれぞれによるBT-474細胞への抑制効果を示す図である。
【
図10A】実施例11における140位がLys-azidoに突然変異したrhGH及び140位がNBOKに突然変異したrhGHの質量スペクトル図である。
【
図10B】実施例11における140位がLys-azidoに突然変異したrhGH及び140位がNBOKに突然変異したrhGHの質量スペクトル図である。
【
図11A】実施例11における140位がLys-azidoに突然変異したrhGH及び140位がNBOKに突然変異したrhGHのそれぞれと30KD PEGとのカップリング過程のSDS-PAGE電気泳動図である。
図11A中の各レーンはそれぞれ下記のことを示す:レーン1:分子量マーカー、レーン2:野生型組換えヒト成長ホルモン、レーン3:rhGH-Lys-azido-140、レーン4:rhGH-Lys-azido-140と30KD BCN-PEGが1:15(モル比であり、以下では同じ)で72時間カップリング反応した生成物、レーン5:rhGH-Lys-azido-140と30KD BCN-PEGが1:25で72時間カップリング反応した生成物。
【
図11B】
図11B中の各レーンはそれぞれ下記のことを示す。レーン1:分子量マーカー、レーン2:rhGH-NBOK-140、レーン3:rhGH-NBOK-140と30KD BCN-PEGが1:15で6時間カップリング反応した生成物、レーン4:rhGH-NBOK-140と30KD BCN-PEGが1:15で9時間カップリング反応した生成物、レーン5:rhGH-NBOK-140と30KD BCN-PEGが1:15で12時間カップリング反応した生成物、レーン6:rhGH-NBOK-140と30KD BCN-PEGが1:15で24時間カップリング反応した生成物、レーン7:rhGH-NBOK-140と30KD BCN-PEGが1:15で48時間カップリング反応した生成物。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の技術案について具体的な実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0045】
本発明の実施例で使用される試薬又は原料は、特に説明しない限り、市販品である。
【0046】
実施例1:非天然アミノ酸NBOKの製造
NBOKの構造式は、以下に示す通りであった。
【0047】
【0048】
【0049】
a)反応フラスコに、p-メチルアセトフェノン(4.0mL、30.0mmol)を加え、溶媒DCM(50.0mL)を加え、NBS(6.41g、36.0mmol)及びBPO(0.05g、0.3mmol)を加え、得られた混合物を80℃で24時間還流した後、容器を氷水に入れて冷却し、固体を析出させ、固体をろ過除去し、飽和Na2CO3で3回洗浄し、DCMで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物1-1(5.46g、収率85%)を獲得し、粗生成物1-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0050】
b)反応フラスコに、生成物1-1(2.73g、12.80mmol)を加え、溶媒ジオキサン(40mL)及び水(40mL)を加え、さらに炭酸カルシウム(7.68g、76.8mmol)を加え、得られた混合物を105℃で24時間還流した後、室温に冷却させ、固体をろ過除去し、DCMで3回抽出し、有機相を合併し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=3:1)により精製した後、生成物1-2(1.80g、収率94%)を獲得した。
【0051】
c)二口型反応フラスコに、p-ニトロフェニルクロロホルメート(2.90g、14.4mmol)を加え、溶媒DCM(10.0mL)を加え、0℃に降温し、生成物1-2(1.80g、12.0mmol)及びピリジン(1.2mL、14.4mmol)を加え、室温で18時間撹拌した後、反応液に飽和炭酸ナトリウム溶液(10mL)を加え、DCM(50mL)で3回抽出し、有機相を合併し、水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=5:1)により精製した後、生成物1-3(3.14g、収率83%)を獲得した。
【0052】
d)反応フラスコに、生成物1-3(1.26g、4.0mmol)及びFmoc-Lys-OH塩酸塩(1.40g、3.33mmol)を加え、溶媒ジオキサン(15mL)及び水(5mL)を加え、さらにトリエチルアミン(1.2mL、8.3mmol)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた後、1M HCl溶液を適量で加え、DCMで抽出し、減圧濃縮した後、粗生成物1-4を獲得し、粗生成物1-4を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0053】
e)反応フラスコ中で、生成物1-4(1.10g、0.19mmol)をDCM(10mL)に溶解させ、ジエチルアミン(5.0mL)を加え、室温で6時間反応させ、生成物を析出させ、ろ過後にDCMで3回ビーティングしたと、目的生成物NBOK(1-5、817mg、2段階収率63%)を獲得した。
【0054】
1H-NMR(400MHz,重水)δ8.04(d,J=8.4Hz,2H),7.55(d,J=8.0Hz,2H),5.21(s,2H),3.74(t,J=6.0Hz,1H),3.17(t,J=6.4Hz,2H),2.70(s,3H),1.95-1.83(m,2H),1.62-1.52(m,2H),1.47-1.35(m,2H).
【0055】
実施例2:非天然アミノ酸NPAKの製造
NPAKの構造式は、以下に示す通りであった。
【0056】
【0057】
【0058】
a)反応フラスコに、p-クロロアセトフェノン(1.00g、6.47mmol)を加え、窒素雰囲気下、マロン酸ジエチル(6.84g、47.70mmol)、KHCO3(0.97g、9.70mmol)及びK2CO3(1.34g、9.70mmol)を加え、さらにPd(dba)2(0.019g、0.030mmol)及びP(t-Bu)3HBF4(0.021g、0.071mmol)を加え、加えが完了した後、窒素保護を置換し、160℃に昇温して40時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、反応液に水(30mL)を加え、EAで3回抽出し、有機相を合併し、水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、0~5℃で減圧濃縮し、無色透明液体を獲得し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=10:1)により精製した後、生成物2-1(0.80g、収率60%)を獲得した。
【0059】
b)反応フラスコに、LiOH(0.30g、11.64mmol)及び水(5.0mL)を加え、エタノール(10mL)を加え、生成物2-1(0.80g、3.88mmol)を加え、室温で2時間撹拌した後、TLC検査で反応が完全になったら、反応液に2M HCl溶液を加えてpHを1~2に調節し、EAで3回抽出し、有機相を合併し、水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、生成物2-2(0.5g、収率72%)を獲得した。
【0060】
c)反応フラスコに、生成物2-2(0.20g、1.12mmol)を加え、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS、0.19g、1.68mmol)、DIPEA(0.07g、0.56mmol)、DCM(2.0mL)をこの順に加えた。0~5℃に降温した後、DCC(0.23g、1.12mmol)とDCM(2.0mL)の溶液を加え、2時間保温しながら反応させた。室温に昇温して一晩撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、ろ過し、DCMで洗浄し、母液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=5:1)により精製した後、生成物2-3(0.19g、収率62%)を獲得した。
【0061】
d)反応フラスコに、生成物2-3(0.10g、0.36mmol)を加え、トリエチルアミン(0.04g、0.36mmol)、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(0.13 g、0.36mmol)、ジオキサン(2.0mL)及び水(2.0mL)をこの順に加え、室温で18時間撹拌しながら反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、EAで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH=15:1)により精製した後、油状の液体生成物2-4(0.03g、収率61%)を獲得した。
【0062】
e)反応フラスコに、生成物2-4(0.08g、0.15mmol)、DCM(1.0mL)及びピペリジン(0.04g、0.47mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、石油エーテル(5mL)で1時間ビーティングし、ろ過し、得られたろ過ケーキを石油エーテル(5mL)で1時間ビーティングし、ろ過し、得られたろ過ケーキをエタノールで4回繰り返しビーティングして残留ピペリジンを除去し、最終的にオフホワイト固体2-5(0.02g、収率43%)を獲得した。
【0063】
1H-NMR(400MHz,重水)δ7.85(d,J=8.2Hz,2H),7.33(d,J=8.2Hz,2H),3.94(t,J=6.3Hz,1H),3.56(s,2H),3.12(t,J=6.8Hz,2H),2.54(s,3H),1.80-1.70(m,2H),1.54-1.45(m,2H),1.40-1.224(m,2H).
【0064】
実施例3:非天然アミノ酸NBPKの製造
NBPKの構造式は、以下に示す通りであった。
【0065】
【0066】
【0067】
a)反応フラスコに、p-メチルアセトフェノン(4.0mL、30.0mmol)を加え、溶媒DCM(50.0mL)を加え、NBS(6.41g、36.0mmol)及びBPO(0.05g、0.3mmol)を加え、得られた混合物を80℃で24時間還流した。TLC検査で反応が完全になったら、容器を氷水に入れて冷却し、固体を析出させ、固体をろ過除去し、飽和Na2CO3で3回洗浄し、DCMで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物3-1(5.46g、収率85%)を獲得し、粗生成物3-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0068】
b)反応フラスコに、NaH(0.58g、14.64mmol、60%)を加え、乾燥溶媒THF(20mL)を加え、氷浴冷却下、エチレングリコール(6.7mL、122.0mmol)をゆっくり加え、室温条件下で1時間撹拌した。次いで、生成物3-1(2.60g、12.2mmol)を加え、70℃で48時間加熱還流して完全に反応させた。氷浴冷却下、飽和NH4Clをゆっくり滴下してNaHを急冷し、水で洗浄し、EtOAcで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=2:1)により精製した後、生成物3-2(1.39g、収率59%)を獲得した。
【0069】
c)反応フラスコに、生成物3-2(1.39g、7.2mmol)を加え、溶媒DCM(10mL)を加え、氷浴冷却下、p-ニトロフェニルクロロホルメート(1.74g、8.64mmol)及びピリジン(0.7mL、8.64mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、水を加えて洗浄し、EtOAcで3回抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:PE:EA=3:1)により精製した後、生成物3-3(2.27g、収率88%)を獲得した。
【0070】
d)反応フラスコに、生成物3-3(2.27g、6.32mmol)を加え、溶媒ジオキサン(16mL)及び水(4mL)を加え、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(2.13g、5.27mmol)を加え、さらにトリエチルアミン(1.85mL、13.2 mmol)を加え、室温で18時間撹拌して完全に反応させた。1M HClを適量で加えてpHを2程度に調節し、酢酸エチルで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物3-4を獲得し、粗生成物3-4を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0071】
e)反応フラスコ中で、前の工程で獲得した生成物3-4をDCM(10 mL)に溶解させ、ジエチルアミン(5mL)を加え、室温で6時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:H2O=40:10:1)により精製した後、白色固体生成物(3-5、0.95 g、2段階収率49%)を獲得した。
【0072】
1H-NMR(400MHz,重水)δ8.04(d,J=8.0Hz,2H),7.56(d,J=8.0Hz,2H),4.72(s,2H),4.25(s,2H),3.81(s,2H),3.74(t,J=6.0Hz,1H),3.16-3.08(m,2H),2.70(s,3H),1.97-1.79(m,2H),1.60-1.48(m,2H),1.48-1.35(m,2H).
【0073】
実施例4:非天然アミノ酸NPOKの製造
NPOKの構造式は、以下に示す通りであった。
【0074】
【0075】
【0076】
a)反応フラスコに、トリホスゲン(Triphosgene)(BTC、2.18 g、7.35mmol)を加え、溶媒THF(10.0mL)を加え、氷浴冷却下、p-ヒドロキシアセトフェノン(2.0g、14.7mmol)及びピリジン(1.5mL、17.64mmol)を加え、得られた混合物を室温で24時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、水を適量で加え、EtOAcで3回抽出し、有機相を合併した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物4-1(1.20g)を獲得し、粗生成物4-1をそのまま次の工程に使用した。
【0077】
b)反応フラスコに、Boc-リジン(1.1g、5.0mmol)を加え、溶媒DCM(10.0mL)を加え、生成物4-1(1.20g)及びトリエチルアミン(2mL、15mmol)を加えた。室温で24時間撹拌し、TLC検査で反応が完全になったら、1MHClを適量で加えてpHを弱酸性に調節し、DCMで3回抽出し、有機相を合併した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH=5:1)により、生成物4-2(1.70g、収率84%)を獲得した。
【0078】
c)反応フラスコに、生成物4-2(1.70g、4.2mmol)を加え、溶媒DCM(5mL)を加え、トリフルオロ酢酸(5mL)を加え、得られた混合物を室温で1時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、そのまま減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:H2O=40:10:1)により、生成物4-3(1.19g、収率92%)を獲得した。
【0079】
1H-NMR(400MHz,重水)δ8.09(d,J=8.6Hz,2H),7.31(d,J=8.6Hz,2H),3.78(t,J=6.0Hz,1H),3.27(t,J=6.8Hz,2H),2.70(s,3H),1.98-1.87(m,2H),1.72-1.60(m,2H),1.55-1.43(m,2H).
【0080】
実施例5:非天然アミノ酸NBGKの製造
NBGKの構造式は、以下に示す通りであった。
【0081】
【0082】
【0083】
a)反応フラスコに、p-メチルアセトフェノン(8.0mL、60.0mmol)を加え、溶媒DCM(80.0mL)を加え、NBS(12.82g、72.0mmol)及びBPO(145mg、0.6mmol)を加え、得られた混合物を90℃で24時間還流した。TLC検査で反応が完全になったら、容器を氷水に入れて冷却し、固体を析出させ、固体をろ過除去し、飽和Na2CO3で3回洗浄し、DCMで3回抽出し、有機相を合併した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した後、粗生成物5-1(11.12g、収率87%)を獲得し、粗生成物5-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0084】
b)反応フラスコ中で、4ÅのMS(14g)及びLiOH(1.45g、34.54mmol)をDMF(70mL)で溶解させ、室温で20分間撹拌した後、グリシンメチルエステル塩酸塩(2.0g、15.7mmol)を加え、さらに45分間撹拌した後、生成物5-1(4.0g、18.8mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。TLC検査で反応が完全になったら、固体をろ過除去し、得られたろ過ケーキをEAで洗浄し、得られた濾液を水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した後に、粗生成物5-2を獲得し、そのまま次の工程に使用した。
【0085】
c)反応フラスコ中で、前の工程で獲得した生成物5-2をジオキサン(20mL)に溶解させ、1MNaOHをゆっくり滴下し、2時間反応させた後、TLC検査で加水分解反応が完了して生成物5-3が得られた。飽和NaHCO3を20mL加えた後、ジオキサン(10mL)に溶解したFmoc-OSuをゆっくり加え、室温で一晩撹拌し、TLC検査で反応が完全になったら、1M HClで弱酸性に調節し、EAで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH=10:1)により、生成物5-4(3.60g、収率89%)を獲得した。
【0086】
d)反応フラスコに、生成物5-3(3.60g、8.0mmol)、NBS(1.10g、9.6mmol)、EDCI(1.85g、9.6mmol)を加え、溶媒DCM(50mL)を加え、得られた混合物を室温で18時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮した後、生成物5-5(3.20g、収率75%)を獲得した。
【0087】
e)反応フラスコに、生成物5-5(3.20g、6.0mmol)を加え、溶媒ジオキサン(40mL)及び水(10mL)を加え、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(3.0g、7.2mmol)を加え、さらにトリエチルアミン(2.0mL、15.0mmol)を加え、室温で18時間撹拌して完全に反応させた。1M HClを適量で加えてpHを2程度に調節し、EAで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:AcOH=20:1:0.5)により、生成物5-5(3.50g、収率75%)を獲得した。
【0088】
f)反応フラスコ中で、生成物5-5をDCM(20mL)に溶解させ、ジエチルアミン(20mL)を加え、室温で6時間反応させた。TLC検査で反応が完全になったら、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:H2O=30:10:1)により、最終生成物として白色粉末5-7(0.55g、収率37%)を獲得した。
【0089】
1H-NMR(400MHz,重水)δ7.98(d,J=8.2Hz,2H),7.50(d,J=8.2Hz,2H),3.84(s,2H),3.71(s,1H),3.31(s,2H),3.17(t,J=6.9Hz,2H),2.67(s,3H),1.97-1.73(m,2H),1.58-1.45(m,2H),1.44-1.27(m,2H).
【0090】
実施例6:非天然アミノ酸NPOK-2の製造
NPOK-2の構造式は、以下に示す通りであった。
【0091】
【0092】
【0093】
a)反応フラスコに、p-アセチルフェノール(2.05g、15.0mmol)及びブロモ酢酸(2.50g、18.0mmol)を加え、さらにNaOH(1.20g、30mmol)の水溶液(6mL)を加えた。得られた混合物を100℃で24時間還流して完全に反応させた。反応を室温に冷却し、1M塩酸を加えて酸性に調整し、固体を析出させ、ろ過した後、白色粗生成物6-1(3.32g、収率113%)を獲得し、粗生成物6-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0094】
b)反応フラスコ中で、前の工程で獲得した粗生成物6-1(3.32g、17.0mmol)をDCM(50mL)に溶解させ、NHS(2.35g、20.4mmol)及びEDCI(3.90g、20.4mmol)を加えた。得られた混合物を常温で18時間撹拌して完全に反応させた。DCMで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。さらにカラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:AcOH=20:1:0.5)により精製した後、生成物6-2(1.67 g、収率38%)を獲得した。
【0095】
c)反応フラスコに、生成物6-2(1.67g、5.7mmol)を加え、溶媒ジオキサン(20mL)及び水(50mL)を加え、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(1.9g、4.8mmol)を加え、さらにトリエチルアミン(1.7mL、12.0mmol)を加え、室温で18時間撹拌して完全に反応させ、1M HClを適量で加えてpHを2程度に調節し、EAで抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。得られた粗生成物6-3をDCM(10mL)に直接溶解させ、ジエチルアミン(5mL)を加えた。得られた混合物を常温で18時間撹拌して完全に反応させた。減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:DCM:MeOH:H2O=40:10:1)により精製した後、最終生成物6-4(709mg、2段階収率39%)を獲得した。
【0096】
1H-NMR(400MHz,重水)δ7.91(d,J=8.8Hz,2H),6.98(d,J=8.8Hz,2H),4.60(s,2H),3.59(t,J=6.4Hz,1H),3.19(t,J=6.8Hz,2H),2.52(s,3H),1.87-1.65(m,2H),1.56-1.40(m,2H),1.35-1.15(m,2H).
【0097】
実施例7:非天然アミノ酸NBGK-2の製造
NBGK-2の構造式は、以下に示す通りであった。
【0098】
【0099】
【0100】
a)反応フラスコに、ブロモ酢酸(2.10g、15.0mmol)とNaOH(0.80g、20mmol)の水溶液(10mL)を加え、10分間撹拌した。次いで、p-アセトアニリド(1.40g、10.0mmol)を加え、得られた混合物を100℃で18時間還流して完全に反応させた。反応を室温に冷却し、ろ過し、水で洗浄し、白色粗生成物7-1(1.30g、収率67%)を獲得し、粗生成物7-1を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0101】
b)反応フラスコに、生成物7-1(1.30g、6.7mmol)とNaHCO3(1.70g、20.1mmol)の水溶液(20mL)を加えた。さらにFmoc-OSu(2.80g、8.1mmol)とDMF(20mL)を加えた。得られた混合物を60℃で18時間撹拌して完全に反応させた。室温に冷却し、EAで抽出した。1M塩酸で残留水相のpHを2程度に調節してから、EAで抽出し、有機相を獲得した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。生成物7-2を獲得し、粗生成物7-2を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0102】
c)反応フラスコに、前の工程で獲得した生成物7-2(約6.7mmol)、NHS(0.90g、8.0mmol)及びEDCI(1.50g、8.0mmol)をDMF(50mL)に溶解させた。反応混合物を室温で24時間撹拌して完全に反応させた。水を加え、DCMで抽出し、有機相を獲得した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。生成物7-3を獲得し、粗生成物7-3を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0103】
d)反応フラスコに、前の工程で獲得した生成物7-3(約6.7mmol)、Fmoc-Lys-OH塩酸塩(2.30g、5.6mmol)及びトリエチルアミン(2.0mL、14.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌して完全に反応させた。続いて、1M塩酸でpHを2程度に調節し、EAで抽出した。無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。生成物7-4を獲得し、粗生成物7-4を精製せずそのまま次の工程に使用した。
【0104】
e)反応フラスコに、前の工程で獲得した生成物7-4を加えた。溶媒DCM(20mL)及びジエチルアミン(10mL)を加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌して完全に反応させた。先ず減圧濃縮し、アセトニトリル(50mL)を加えて再び溶解させ、その後に減圧濃縮し、操作を3回繰り返して余分なジエチルアミンを除去した。DCMを加えて2回ビーティングした後、最終生成物7-5(1.65g、総収率51%)を獲得した。
【0105】
1H-NMR(400MHz,重水)δ7.71(d,J=8.8Hz,2H),6.51(d,J=8.8Hz,2H),3.80(s,2H),3.53(t,J=6.8Hz,1H),3.09(t,J=6.8Hz,2H),2.39(s,3H),1.73-1.60(m,2H),1.42-1.33(m,2H),1.25-1.14(m,2H).
【0106】
実施例8
実施例1~7で製造されたNPOK、NPAK、NBOK、NBPK、NBGK、NPOK-2、NBGK-2を用いて原核発現系で組換えヒト成長ホルモンを製造し、PEGが部位特異的にカップリングされたコンジュゲートを製造した。
【0107】
(1)ヘルパープラスミドの獲得
ヘルパープラスミドpSupAR-MbPylRSは、プラスミド保存機構Addgeneより購入されたもの(品番#91705)であり、該プラスミドは、大腸菌中でピロリシン由来非天然アミノ酸を特異的に識別するtRNAとtRNA合成酵素を発現することができ、37.5mg/Lクロラムフェニコールが添加されたLB培地で振とうフラスコ培養した後に抽出したことによりヘルパープラスミドが得られる。
【0108】
(2)読み枠内に終止コドンを含有する組換えヒト成長ホルモン発現プラスミドの構築
米国国立生物工学情報センターのデータベースからホモ・サピエンス成長ホルモン(アミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示す通りである)のコード遺伝子のmRNA配列を獲得し、それから翻訳したタンパク質のC末端に6個のヒスチジン精製タグを付加するとともに、SEQ ID NO:1の107位のアミノ酸コドンをアンバーコドン(TAG)に変更させ、さらに全遺伝子合成によって該完全なDNA配列を合成して組換えヒト成長ホルモンの遺伝子配列(SEQ ID NO:2)を獲得した。
【0109】
ホモ・サピエンス成長ホルモンのアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)は、以下の通りであった。
【0110】
【0111】
組換えヒト成長ホルモンの遺伝子配列(SEQ ID NO:2)は、以下の通りであった。
【0112】
【0113】
さらに、サブクローニングによって、組換えヒト成長ホルモンの遺伝子配列(SEQ ID NO:2)をpET21a(Novagen社製、品番#69740-3)のNde IとXho Iとの2つの酵素切断部位の間にクローニングして、発現プラスミドpET21-rhGH107を獲得し、配列を測定した結果、予想配列と一致したことが判明した。pET21-rhGH107は、107位のアミノ酸コドンがアンバーコドンに置換された組換えヒト成長ホルモンを発現することができ、該タンパク質のC末端に6個のヒスチジン精製タグがある。組換えヒト成長ホルモン発現プラスミドpET21-rhGH107のプロファイルを
図1に示した。
【0114】
(3)目的発現菌株の獲得
上記のヘルパープラスミドpSupAR-MbPylRSと発現プラスミドpET21-rhGH107を大腸菌OrigamiB(DE3)(Novagen社製、品番#70911-3)コンピテント細胞に同時形質転換し、100mg/Lアンピシリン及び37.5 mg/Lクロラムフェニコールを含有するLB培地でスクリーニングして得られた二重抵抗性菌株は即ち組換えヒト成長ホルモン発現菌株であった。
【0115】
(4)非天然アミノ酸が挿入された組換えタンパク質の発現
スクリーニングして得られた組換えヒト成長ホルモン発現菌株を、8組の2×YT培地(16g/L酵母抽出物、10g/Lトリプトン、5g/L NaCl、100mg/Lアンピシリン及び37.5mg/Lクロラムフェニコールを含有するもの)に接種し、37℃で菌液のOD600が2.0±0.2に達するまで培養し、8組の菌液のそれぞれにIPTG(終濃度1mM)及びアラビノース(終濃度0.2%)を添加し、さらに1組目の菌液にNBOK(終濃度1mM)を添加し、2組目の菌液にNPAK(終濃度1mM)を添加し、3組目の菌液にNBPK(終濃度1mM)を添加し、4組目の菌液にNBGK(終濃度1mM)を添加し、5組目の菌液にNPOK(終濃度1mM)を添加し、6組目の菌液にNPOK-2(終濃度1mM)を添加し、7組目の菌液にNBGK-2(終濃度1mM)を添加し、8組目の菌液に非天然アミノ酸を添加せず、それを陰性対照として用いた。37℃で誘導発現培養を5~6時間行った後に各培養液を1ml取って10,000rpmで1分間遠心分離し、PBSでOD600が10に達するまで再懸濁させ、各菌懸濁液を取ってSDS-PAGE電気泳動を行い、各菌株のSDS-PAGE電気泳動図を
図2に示した。
図2の結果から明らかなように、発現菌株は7種の非天然アミノ酸がそれぞれ添加された場合、目的タンパク質を発現することができる。
【0116】
(5)非天然アミノ酸が挿入された組換えタンパク質の精製
上記の誘導発現後の各菌液を10,000rpmで5分間遠心分離した後、沈殿物を取り、1/20細胞成長体積のNTA緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.9、0.5M NaCl、10%グリセロール)及び終濃度1mMのPMSFを加え、超音波ホモジェネート処理によって細胞を破砕させ、10,000rpmで20分間遠心分離し、上清を取り、Ni-NTAクロマトグラフィーカラムによってHisタグ付き目的タンパク質を吸着し、さらに溶離液NTA緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.9、0.5M NaCl、10%グリセロール、250mMイミダゾール)で溶離させ、純度が約90%の目的タンパク質(即ち非天然アミノ酸が挿入された組換えタンパク質)サンプルを獲得した。各サンプルを10Kの硝酸セルロース透析バッグに置き、pH7.0のPBS緩衝液中で一晩透析し(タンパク質溶液1ml当たり200ml透析液に対応)、液交換を1回行い、透析済みタンパク質溶液を収集し、SDS-PAGEによってタンパク質の濃度を測定した。
【0117】
(6)非天然アミノ酸が挿入された組換えタンパク質とPEGとのカップリング反応
【化29】
合成ルートは、上記の通りであった(但し、R
1からR
2への方向はアミノ酸配列のN末端からC末端への方向である)。
【0118】
30KDのアミノオキシPEGがオキシム化反応によって非天然アミノ酸の挿入された組換えタンパク質にカップリングされたことを例とすると、カップリング反応の操作は以下の通りであった:カップリング反応前、上記のように得られた目的タンパク質をpH7.0のPBS緩衝液で0.5mg/mlに調節し、1:15(組換えタンパク質とアミノオキシPEGのモル比)で30KDのアミノオキシPEG固体(北京鍵凱科技有限公司より購入)を加え、十分に揺動して溶解させ、澄明な透明溶液を獲得し、さらに反応液を密封し、恒温振とう台(25℃、100rpm)で揺動しながら反応させた。48時間経過後にSDS-PAGEを用いてカップリング状況を分析し、
図3を参照できる。
図3の結果から明らかなように、6種の目的タンパク質の何れにも30KD PEGがカップリングされたことが判明し、なお、上記7種の非天然アミノ酸が目的タンパク質に挿入されたことがさらに判明した。非天然アミノ酸が挿入された組換えタンパク質とPEGのカップリング生成物を「PEG-rhGH」と略記した。
【0119】
(7)PEG-rhGHの精製
カップリング済みPEG-rhGHを、Butyl HP疎水性クロマトグラフィーカラムにより分離精製し(ローディング緩衝液:50mM NaH
2PO
4・2H
2O、0.8M(NH
4)
2SO
4、pH8.5;溶離緩衝液:20mM Tris-HCl、pH8.5、40倍カラム体積で勾配溶離を行う)、電気泳動の純レベル(>95%)に達した純品PEG-rhGHを獲得した。NPOK含有PEG-rhGH及びNBOK含有PEG-rhGHを例に説明すると、その電気泳動図を
図4に示した。
【0120】
本発明の非天然アミノ酸を含有する他のPEG-rhGHは同様に精製後に電気泳動の純レベルに達した。
【0121】
(8)PEG-rhGHの活性分析
具体的な過程は以下の通りであった:HEK293-GHR細胞(細胞株由来は中国特許2020112649827を参照)を、0.1mg/mLハイグロマイシンB(生工生物工程(上海)股分有限公司(Sangon biotech)製、品番A600230-0001)、0.75mg/mL G418(生工生物工程(上海)股分有限公司製、品番A600958-0005)、10%ウシ胎児血清(Gibco社製、10099141)を含有するDMEM(Gibco社製、品番11995040)培地を用いて、37°C、5% CO
2条件下で十分な量まで培養し、黒色96ウェル細胞培養プレート(Corning社製、品番3904)にHEK 293-GHR細胞を1ウェル当たり9×10
4個接種し、90μL/ウェルとし、37℃、5% CO
2条件下で16時間飢餓培養した。rhGH標準品(中国食品医薬品検定研究院、略記すると「中検院」から購入)、NPOK含有rhGH(即ちrhGH(NPOK))、PEGでNPOKが修飾されたPEG-rhGH(即ちPEG-rhGH(NPOK))、NBOK含有PEG-rhGH(即ちrhGH(NBOK))、PEGでNBOKが修飾されたPEG-rhGH(即ちPEG-rhGH(NBOK))、市販のrhGH医薬品である賽増(登録商標)(長春金賽薬業有限責任公司製)、市販のPEG-rhGH医薬品である金賽増(登録商標)(長春金賽薬業有限責任公司製)サンプルに対して勾配希釈を行い、合計9段階の濃度とし、37℃、5% CO
2条件下で4時間培養した。ONE-Glo
TM(Promega社製、品番E6120)検出試薬を1ウェル当たり50μL加え、酵素標識器での化学発光値を読み取った。サンプル濃度と酵素標識器の読み取り値により曲線をフィッティングして、EC50を算出した。その結果を
図5A~
図5G及び表1に示した。その結果から明らかなように、カップリング反応前、各部位の細胞活性は中検院からのrhGH標準品と一致した。カップリング反応後、細胞活性は標準品の約25%~50%まで低下し、その生物学的活性の変化規律は市販のPEG-rhGHと一致した。
【0122】
本発明の非天然アミノ酸を含有する他のPEG-rhGHは、カップリング後の細胞活性も標準品の約25%~50%まで低下し、生物学的活性の変化規律も市販のPEG-rhGHと一致した。
【0123】
【0124】
実施例9
実施例1~7で製造された非天然アミノ酸NPOK、NPAK、NBOK、NBPK、NBGK、NPOK-2、NBGK-2を用いて真核発現系で組換えGFPタンパク質を製造した。
【0125】
(1)ヘルパープラスミドの獲得
ヘルパープラスミドpCMV-MbPylRSは、プラスミド保存機構addgeneより購入されたもの(品番#91706)であり、このプラスミドは、哺乳動物細胞における、ピロリシン由来非天然アミノ酸を特異的に識別するアミノアシルtRNA合成酵素、及びそれに対応するtRNAをコードする(アンバーコドンUAGを識別する)ものであった。
【0126】
(2)遺伝子読み枠内にアンバーコドンを含有する緑色蛍光タンパク質発現ベクターの構築
精製タグ付き野生型緑色蛍光タンパク質(その遺伝子コード配列はSEQ ID NO:3に示す通りであった)を発現する発現ベクターを点突然変異させ、読み枠における40位のアミノ酸コドンがアンバーコドンに突然変異した発現プラスミドpEGFP40を獲得し、その完全な配列はSEQ ID NO:4に示す通りであった。
【0127】
精製タグ付き野生型緑色蛍光タンパク質の遺伝子配列(SEQ ID NO:3)は、以下の通りであった。
【0128】
【0129】
発現プラスミドpEGFP40の遺伝子配列(SEQ ID NO:4)は、以下の通りであった。
【0130】
【0131】
(3)非天然アミノ酸が挿入された組換えGFPタンパク質の発現
米国タイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection、ATCC)より中国ハムスター卵巣細胞CHO-K1(品番#CCL-61-ATC)を購入し、10%ウシ胎児血清を含有するRPMI 1640培地を用いて壁着培養を行った。上記の工程で獲得したヘルパープラスミドpCMV-MbPylRS及び緑色蛍光タンパク質発現プラスミドpEGFP40を抽出し、lipo2000トランスフェクション試薬(invitrogen社製、品番#12566014)を用い、その取扱書に従って瞬時トランスフェクションを行い、(細胞を50,000個の細胞/ウェルの接種量で24ウェルプレートに接種し、合計8個のウェルとし、接種して24時間培養した後にトランスフェクションを行い、1ウェル当たり500ngのプラスミドとした)、トランスフェクションと同時に1個目のウェルにNPOK(終濃度1mM)、2個目のウェルにNPAK(終濃度1mM)、3個目のウェルにNBOK(終濃度1mM)を添加し、4個目のウェルにNBPK(終濃度1mM)を添加し、5個目のウェルにNBGK(終濃度1mM)を添加し、6個目のウェルにNPOK-2(終濃度1mM)を添加し、7個目のウェルにNBGK-2(終濃度1mM)を添加し、8個目のウェルに非天然アミノ酸を添加せず、それを陰性対照として用いた。CO
2培養箱で48時間静置培養した後、蛍光顕微鏡下で細胞を観察した結果、1個目~7個目のウェルでは緑色蛍光が明らかに存在することが判明し(
図6を参照)、このことから明らかなように、非天然アミノ酸が緑色蛍光タンパク質に挿入されて完全な緑色蛍光タンパク質が得られ、蛍光タンパク質の機能が影響されることがない。
【0132】
実施例10
実施例1~7で製造されたNPOK、NPAK、NBOK、NBPK、NBGK、NPOK-2、NBGK-2を用いて真核発現系で非天然アミノ酸含有抗HER2モノクローナル抗体を発現し、毒素とのコンジュゲートを製造した。
【0133】
(1)ヘルパープラスミドの獲得
ヘルパープラスミドpCMV-MbPylRSは、プラスミド保存機構addgeneより購入されたもの(品番#91706)であり、このプラスミドは、哺乳動物細胞における、ピロリシン由来非天然アミノ酸を特異的に識別するアミノアシルtRNA合成酵素、及びそれに対応するtRNAをコードする(アンバーコドンUAGを識別する)ものであった。
【0134】
(2)遺伝子読み枠内にアンバーコドンを含有する抗HER2抗体(トラスツズマブ)発現ベクターの構築
全遺伝子合成によって、トラスツズマブをコードする重鎖及び軽鎖DNA(対応するアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:6である)を合成し、真核発現ベクターpCDNA3.1+にサブクローニングし、得られた発現ベクターを点突然変異させ、重鎖の読み枠における142位のアミノ酸コドンがアンバーコドンに突然変異した発現プラスミドpCDNA3.1-Trastuzumab-UAG142を獲得した。そのプロファイルは
図7に示す通り、その完全な配列はSEQ ID NO:7に示す通りであった。
【0135】
トラスツズマブの重鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO:5)は、以下の通りであった。
【0136】
【0137】
トラスツズマブの軽鎖アミノ酸配列(SEQ ID NO:6)は、以下の通りであった。
【0138】
【0139】
発現プラスミドpCDNA3.1-Trastuzumab-UAG142の遺伝子配列(SEQ ID NO:7)は、以下の通りであった。
【0140】
【0141】
(3)非天然アミノ酸の挿入
浮遊馴化したHEK293細胞を用い、0.3×105/mLの密度でWayne293TM培地(Quacell Biotechnology社製、品番A21501)に接種し、1L振とうフラスコを用い、充填液量を240mLとし、120rpm、5% CO2、湿度80%の条件下で振とう培養し、細胞密度が約1×106/mLに達した時にトランスフェクションを行い、工程(1)及び工程(2)で説明したヘルパープラスミドpCMV-MbPylRS及び発現プラスミドpCDNA3.1-Trastuzumab-UAG142を抽出し、エンドトキシンを除去してスタンドバイ状態に進んだ。各振とうフラスコ毎にトランスフェクションを行う際に、発現プラスミド及びヘルパープラスミドをそれぞれ120μg用い、プラスミドを遠心分離管中に加え、1×PBS緩衝液で7.2mLに希釈させ、さらに、別の遠心分離管中にPEIトランスフェクション試薬(ポリエチレンイミン、Polyethyleneimine)を720μg加え、1×PBS緩衝液を加えて7.2mLに希釈させ、均一混合後、2つの遠心分離管をそれぞれ5分間静置した後、2つの遠心分離管中の液体を軽く均一混合してから10分間静置し、得られたものを1L振とうフラスコ中の240mLの細胞懸濁液に合計14.4mLゆっくり滴下し、滴下過程中に絶えず軽く揺動し、120rpm、5% CO2、湿度80%の条件下で4時間振とう培養した後、終濃度1mMの非天然アミノ酸を添加し、続いて、120rpm、5% CO2、湿度80%の条件下で5日間振とう培養した後、抗体を精製するための細胞培養上清を獲得した。
【0142】
(4)精製
Hi Trap Protein Aを用いた1ml予充填カラムによって、細胞培養上清を精製した。溶離緩衝液:100mmol/Lグリシン、200mmol/L酢酸塩、pH3.5によって、非天然アミノ酸が挿入された精製済みトラスツズマブを獲得した。
【0143】
(5)カップリング
合成ルート(NBOKを例に)は、以下の通りであった。
【0144】
【化30】
オキシム化反応によって、アミノオキシ末端基を含有する毒素(DM1-PEG-ONH
2)と、精製して得られた非天然アミノ酸が挿入されたトラスツズマブ(但し、R
1からR
2への方向はアミノ酸配列のN末端からC末端への方向である)を部位特異的にカップリングしたことで、モノクローナル抗体-毒素コンジュゲートを獲得した。
【0145】
DM1-PEG-ONH2の製造過程は、以下の通りであった。
【0146】
【化31】
カップリング過程の具体的な操作は、以下の通りであった:精製して得られた非天然アミノ酸が挿入されたトラスツズマブとDM1-PEG-ONH
2をモル比1:15で混合して清澄に溶解させ、その次に、10M酢酸を用いてpHを4.0に調節し、振とう台で揺動振とうし(25℃、200rpm)、48時間経過後、サンプリングし、疎水性クロマトグラフィー原理によるHPLC(HIC-HPLC)を用いてトラスツズマブの反応状況を測定した。その結果、
図8A~8Cに示すように、93.0%のNBPK含有トラスツズマブは毒素で修飾したもの、93.0%のNBOK含有トラスツズマブは毒素で修飾したもの、87.4%のNPOK-2含有トラスツズマブは毒素で修飾したものである。トラスツズマブのカップリング比率=100%-カップリング反応が発生しない余剰原料の割合。
【0147】
カップリングして得られたモノクローナル抗体-毒素コンジュゲートを50kDa限外ろ過遠心分離管に通過させて液交換を行って、反応が発生しない毒素原料を除去し、置換緩衝液を20mMヒスチジン緩衝液(pH6.5)とした。
【0148】
HIC-HPLCの分析条件は以下の通りであった。
【0149】
移動相A(2M硫酸アンモニウム、75mM K2HPO4、pH7.2±0.2)、
移動相B(75mM K2HPO4、25%イソプロパノール、pH7.2±0.2)。
【0150】
【0151】
(6)活性の分析
BT-474細胞株(ATCCより購入、品番HTB-20)を用いてサンプルによる細胞増殖への抑制作用を測定した。
【0152】
具体的な過程は以下の通りであった:BT-474細胞を、10%ウシ胎児血清(Gibco社製、品番10099141)を含有するATCC Hybri-Care Medium(ATCCより購入、品番46-X)培地を用いて、37°C、5% CO
2条件下で十分な量まで培養し、96ウェル細胞培養プレート(Corning社製、品番3599)にBT-474細胞を1ウェル当たり1.5×10
4個接種し(溶媒対照ウェルを含む)、ブランク対照ウェルに細胞を含有しない培地を加え、80μL/ウェルとした。NBOK含有トラスツズマブ及びDM1で修飾したNBOK含有トラスツズマブを、17μg/mLから0.13μg/mLまで勾配希釈させ、合計8段階の濃度とし、希釈度ごとに2つの重複ウェルがあった。希釈済みサンプルをBT-474細胞が接種された培養プレートに移し、1ウェル当たり10μLとし、溶媒対照ウェル及びブランク対照ウェルに培地を10μL加え、37℃、5% CO
2条件下で培養した。第5日にCCK-8(碧雲天社製、品番C0043)検出試薬を1ウェル当たり10μL加え、37℃、5% CO
2条件下で6時間発色させ、酵素標識器の450nm波長での光密度値を読み取った。次の式によって、被検サンプルの抑制率(Growth inhibition)を算出した:抑制率(%)=(OD化合物-ODブランク対照)/(OD溶媒対照-ODブランク対照)×100%。Excelで異なる濃度の化合物の抑制率を算出してから、GraphPad Prism 7ソフトウェアを用いて抑制グラフを作成し、IC50を算出した。その結果を
図9に示した。その結果から明らかなように、DM1で修飾したNBOK含有トラスツズマブはNBOK含有トラスツズマブに比べ、IC50が約3倍低くなり、腫瘍殺傷効果が顕著に向上した。
【0153】
(7)DM1で修飾した非天然アミノ酸含有トラスツズマブの安定性考察
カップリングして得られたモノクローナル抗体-毒素コンジュゲートを50kDa限外ろ過遠心分離管(Millipore社製、品番UFC905024#)に通過させて液交換を行って、反応が発生しない毒素原料を除去した。置換緩衝液を20mMヒスチジン緩衝液(pH6.0)とした。タンパク質溶液を3部に分け、1Mクエン酸溶液又は1 M Tris溶液でそれぞれをpH4.0、pH6.0、pH8.0に調節し、25℃水浴中に置き、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間のそれぞれにサンプリングし、HIC-HPLCによる検出を行い(検出条件は同上)、その結果を表2に示した。
【0154】
【0155】
表2の結果から明らかなように、本発明で提供されるDM1で修飾した非天然アミノ酸含有トラスツズマブでは、形成されたオキシム結合が低pH下でも比較的に安定であった。
【0156】
実施例11:Lys-azidoの活性基還元現象
(1)高分解能質量スペクトルによる生成物分子量の分析
文献(宋礼華など、生物学雑誌、16(1):6-8、1999)による分泌型成長ホルモン発現法を参考にし、文献で提供されるシグナルペプチド配列に基づき、発現ベクターのrhGHのN末端にOmpAシグナルペプチドのコード配列を添加し、実施例8におけるヘルパープラスミドpSupAR-MbPylRSと合わせることで、K140コドンがアンバーコドン(TAG)に突然変異したrhGHのOrigamiB(DE3)発現菌株を構築し、発酵過程中にLys-azidoを添加することで、140位がLys-azidoに突然変異した天然rhGHを発現し、その番号がrhGH-Lys-azido-140であり、なお、発酵過程中にNBOKを添加することで、140位がNBOKに突然変異した天然rhGHを発現し、その番号がrhGH-NBOK-140であり、上記の参考文献による精製手段を参考にして精製を行った。rhGH-Lys-azido-140とrhGH-NBOK-140について液体クロマトグラフィーと質量分析法(高分解能質量分析計:XevoG2-XS Q-Tof、Waters社製;超高速液体クロマトグラフィー:UPLC(Acquity UPLC I-Class)、Waters社製)によって完全な分子量の分析を行った。
【0157】
図10Aに示すように、rhGH-Lys-azido-140サンプルには理論分子量(22265Da)よりも26Da小さい成分が現れ、この成分は推断によりLys-azidoの末端にあるアジド構造(-N
3)が(-NH
2)に還元された生成物であり、このことから明らかなように、現在よく使われている非天然アミノ酸Lys-azidoはタンパク質に挿入された時にアジド基が不安定で、還元されて還元生成物を形成しやすいため、カップリング活性が失われやすい。
図10Bに示すように、rhGH-NBOK-140サンプルには割合の高い不純物が現れておらず、このことから明らかなように、Lys-azidoに比べ、NBOKより製造された組換えタンパク質生成物がより安定であった。
【0158】
(2)カップリング効率の比較
【化32】
上記の反応ルートに示すように、Click反応によって、30KD BCN-PEG(中国特許CN112279906Aを参考にして自製したもの)とrhGH-Lys-azido-140を部位特異的にカップリングした(但し、R
1からR
2への方向はアミノ酸配列のN末端からC末端への方向である)。上記のように得られた目的タンパク質をpH7.0のPBS緩衝液で0.5mg/mlに調節し、それぞれ1:15、1:25(組換えタンパク質と30KD BCN-PEGのモル比)でBCN-PEG固体をrhGH-Lys-azido溶液中に投入し、十分に揺動して溶解させ、澄明な透明溶液を獲得し、さらに反応液を密封し、恒温振とう台(25℃、70rpm)で揺動しながら反応させた。所定の時間経過したごとに、サンプリングし、SDS-PAGEを用いて反応結果を測定し、72時間経過後に反応を停止させ、その転化率は約50%~70%であった。その反応結果は
図11Aに示す通りであった。
【0159】
実施例8を参照にして、オキシム化反応によって、30KDのアミノオキシ基PEGとrhGH-NBOK-140を部位特異的にカップリングした。所定の時間経過したごとに、サンプリングし、SDS-PAGEを用いて反応結果を測定し、48時間経過後に反応を停止させ、その転化率は約90%であった。その反応結果は
図11Bに示す通りであった。
【0160】
高分解能質量スペクトルによる分子量測定結果を結合すれば、Lys-azidoの還元によって、生成物がBCN-PEGとカップリングできず、さらにカップリング率が低下したと判断することができる。一方、本発明の非天然アミノ酸を含有する組換えタンパク質はLys-azidoを含有する組換えタンパク質に比べ、PEGとカップリングした場合の転化率が明らかに高くなり、しかも反応時間も明らかに短縮され、それ故、反応効率が著しく向上した。
【0161】
特に限定されない限り、本発明で使用される用語は何れも、当業者が一般的に理解する意味を持つものである。
【0162】
本発明で記述される実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。当業者であれば、本発明の範囲内で種々の他の代替、変更、改良を行うことができ、それ故、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、請求項のみによって限定されるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】