(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】膜付きガラスおよび合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240711BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240711BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240711BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C03C27/12 L
C03C27/12 N
B60J1/00 H
B32B9/00 A
B32B17/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503679
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 CN2022141381
(87)【国際公開番号】W WO2023116878
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111588348.3
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524024144
【氏名又は名称】福建省万達汽車玻璃工業有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN WANDA AUTOMOBILE GLASS INDUSTRY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Fuyao Industrial Zone I, Fuqing Fuzhou, Fujian 350300, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】魯 岳▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】張 燦忠
(72)【発明者】
【氏名】何 偉龍
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA05E
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4F100YY00D
4F100YY00E
4G061AA03
4G061AA20
4G061AA26
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4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA09
(57)【要約】
本発明は、膜付きガラスおよび合わせガラスを提供し、膜付きガラスは、第1のガラス基板と、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層とを含む。低放射層が、第1のガラス基板の一方の表面に堆積され、少なくとも1つの透明導電性酸化物層を含み、金属吸収層が、前記低放射層に堆積され、反射低減層が前記金属吸収層に堆積されている。本発明は、製造プロセスが簡単で、放射率が低く、可視光反射率が低く、色が中性であり、且つ建築と自動車ガラスの分野に利用可能な低放射ガラスを提供し、本願の膜付きガラスを有する合わせガラスは、放射率値、可視光反射率がいずれも低減され、且つ低放射層付きの合わせガラスの内面に美しい色が付いている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜付きガラスにおいて、
第1のガラス基板と、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層とを含み、
前記低放射層が、前記第1のガラス基板の一方の表面に堆積され、少なくとも1つの透明導電性酸化物層を含み、
前記金属吸収層が、前記低放射層に堆積され、
前記反射低減層が、前記金属吸収層に堆積されている、
ことを特徴とする膜付きガラス。
【請求項2】
前記低放射層の厚さは、100nm~500nmであり、放射率値は、0.3未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項3】
前記透明導電性酸化物層は、ITO層、ATO層、AZO層またはFTO層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項4】
前記反射低減層は、少なくとも1つの高屈折率層および少なくとも1つの低屈折率層を含み、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に積層され、前記高屈折率層の屈折率が1.7~2.3であり、低屈折率層の屈折率が1.4~1.7である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項5】
前記高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、
前記低屈折率層の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、または、Mg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物である、
ことを特徴とする請求項4に記載の膜付きガラス。
【請求項6】
前記高屈折率層の厚さは、10~70nmであり、前記低屈折率層の厚さは、20~150nmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の膜付きガラス。
【請求項7】
前記金属吸収層は、380~780nmの波長範囲内の少なくとも一部の可視光を吸収するためのものであり、前記金属吸収層の厚さは、3.5~10nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項8】
前記金属吸収層は、前記低放射層と直接接触し、前記金属吸収層の材料は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siから選択された少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項9】
前記低放射層と前記第1のガラス基板の一方の表面との間に最内バリア層がさらに堆積され、前記最内バリア層の厚さは、3nm以上であり、前記最内バリア層の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Al、Zr、B、Tiから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項10】
前記膜付きガラスは、前記反射低減層に堆積される最外バリア層をさらに含み、前記最外バリア層の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、前記最外バリア層の厚さは、30nm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項11】
前記第1のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項12】
車両に取り付け可能な合わせガラスにおいて、
請求項1~11のいずれか1項に記載の膜付きガラスと、第2のガラス基板と、接着層と、を含み、前記第2のガラス基板は、接着層を介して前記第1のガラス基板の他方の表面に接着され、前記膜付きガラスは、車両の内部に位置し、
前記合わせガラスの可視光透過率は、20%以下であり、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、6%以下である、
ことを特徴とする合わせガラス。
【請求項13】
車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、2%以下である、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項14】
前記第1のガラス基板および/または前記第2のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項15】
前記第1のガラス基板および/または前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記透明ガラスの可視光透過率は、70%よりも大きい、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項16】
前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記第2のガラス基板の前記接着層に近い表面に赤外線反射膜が設けられており、前記赤外線反射膜は、少なくとも1つの銀層または銀合金層を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項17】
前記接着層は、着色樹脂層であり、前記着色樹脂層の可視光透過率は、30%以下である、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項18】
車両の内部から測定した前記合わせガラスの色Lab値において、a値は、-6~3であり、b値は、-12~0である、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項19】
前記接着層は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVBである、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項20】
前記膜付きガラスと前記第2のガラス基板との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜またはEC調光薄膜である、
ことを特徴とする請求項12に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス成膜の技術に関し、特に自動車ウィンドウのガラス成膜の技術に関し、具体的には、膜付きガラスおよび合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車のガラス断熱技術は、ますます注目されており、自動車のフロントガラスに一層または複数層のナノオーダーの金属薄膜をメッキすることによって外部熱を反射することによって、自動車の運転中に外部熱の侵入(夏)または車内熱の流出(冬)を遮断する作用を実現する。特に、自動車のパノラマルーフガラスは、面積が広いため、冬に車内温度が最も車外に放射されやすくなったり、熱伝導により車内保温効果が悪くなったりするため、車内温度の外部への熱伝導や放射を減少させ、一定の保温作用を果たすように、特にルーフガラス、特に車内表面に近い表面に一層の断熱コーティングを配置する必要がある。
【0003】
現在、よく見られる一般的なプロセス方法は、ガラス表面に透明導電性酸化物層(TCO層)をメッキする方法であり、例えば、化学気相成長(CVD)法を採用してフロート法生産ラインでフッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティング層をメッキしたガラスをルーフガラスの内面基板とし、且つFTO層がガラスと車内空気との接触面に位置し、その利点は、FTOコーティング層が強い機械的性能および耐環境性能を有することであり、欠点は、FTOコーティング層の反射率が高く、通常10%よりも大きく、且つルーフガラスの透過率が通常低く、反射率が高くなると、一定のミラー効果が生じて乗客の乗り心地にある程度影響してしまうことである。
【0004】
TCOコーティングの高い反射率を低減する問題を解決するために、TCO層上に反射低減層を配置することが一般的であり、もしより低い反射率が要求される場合、多層の複雑な反射低減膜の層構造を必要とするが、4層または4層以上の反射低減層の製造プロセスにおいて、意図せずガラス製造のコストおよびプロセス難度が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術における少なくとも1つの欠陥を克服するために、本発明は、膜付きガラスおよび合わせガラスを提供することによって、製造プロセスが簡単で、放射率が低く、可視光反射率が低く、色が中性であり、且つ建築と自動車ガラスの分野に利用可能な低放射ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、本発明は、膜付きガラスにおいて、第1のガラス基板と、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層とを含み、
前記低放射層が、前記第1のガラス基板の一方の表面に堆積され、少なくとも1つの透明導電性酸化物層(TCO層)を含み、
前記金属吸収層が、前記低放射層に堆積され、
前記反射低減層が、前記金属吸収層に堆積されている、膜付きガラスを提供する。
【0007】
本発明の実施例において、前記低放射層の厚さは、100nm~500nmであり、放射率値は、0.3未満である。
【0008】
本発明の実施例において、前記透明導電性酸化物層は、インジウムドープ酸化スズ(ITO)膜層、ATO膜層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)膜層またはFTO膜層である。
【0009】
本発明の実施例において、前記反射低減層は、少なくとも1つの高屈折率層および少なくとも1つの低屈折率層を含み、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に積層され、前記高屈折率層の屈折率が1.7~2.3であり、低屈折率層の屈折率が1.4~1.7である。
【0010】
本発明の実施例において、前記高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、
前記低屈折率層の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Mg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物である。
【0011】
本発明の実施例において、前記高屈折率層の厚さは、10~70nmであり、前記低屈折率層の厚さは、20~150nmである。
【0012】
本発明の実施例において、前記金属吸収層は、380~780nmの波長範囲内の少なくとも一部の可視光を吸収するためのものであり、前記金属吸収層の厚さは、3.5~10nmである。
【0013】
本発明の実施例において、前記金属吸収層は、前記低放射層と直接接触し、前記金属吸収層の材料は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siから選択された少なくとも1種である。
【0014】
本発明の実施例において、前記低放射層と前記第1のガラス基板の一方の表面との間に最内バリア層がさらに堆積され、前記最内バリア層の厚さは、3nm以上であり、前記最内バリア層の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Al、Zr、B、Tiから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物である。
【0015】
本発明の実施例において、前記膜付きガラスは、前記反射低減層に堆積される最外バリア層をさらに含み、前記最外バリア層の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、前記最外バリア層の厚さは、30nm以下である。
【0016】
本発明の実施例において、前記第1のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0017】
さらに、本発明は、車両に取り付け可能な合わせガラスにおいて、前記の膜付きガラスと、第2のガラス基板と、接着層とを含み、前記第2のガラス基板は、接着層を介して前記第1のガラス基板の他方の表面に接着され、前記膜付きガラスは、車両の内部に位置し、
前記合わせガラスの可視光透過率は、20%以下であり、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、6%以下である、合わせガラスをさらに提供する。
【0018】
本発明の実施例において、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、2%以下である。
【0019】
本発明の実施例において、前記第1のガラス基板および/または前記第2のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0020】
本発明の実施例において、前記第1のガラス基板および/または前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記透明ガラスの可視光透過率は、70%よりも大きい。
【0021】
本発明の実施例において、前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記第2のガラス基板の前記接着層に近い表面に赤外線反射膜が設けられており、前記赤外線反射膜は、少なくとも1つの銀層または銀合金層を含む。
【0022】
本発明の実施例において、前記接着層は、着色樹脂層であり、前記着色樹脂層の可視光透過率は、30%以下である。
【0023】
本発明の実施例において、車両の内部から測定した前記合わせガラスの色標準(Lab)値にいて、a値は、-6~3であり、b値は、-12~0である。
【0024】
本発明の実施例において、前記接着層は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVBである。
【0025】
本発明の実施例において、前記膜付きガラスと前記第2のガラス基板との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜またはEC調光薄膜である。
【0026】
本発明の提供される膜付きガラスは、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層とを有し、その低放射層は、ガラスから室内への熱放射を効果的に低減させると同時に、室内から外への熱放射を阻止し、室内の熱の損失を減少させ、一定の保温作用を果たすことができ、低放射層と反射低減層との間に金属吸収層を配置することで、合わせガラスによる車内ガラス基板の反射率に対する要求をさらに低減させ、最外バリア層は、膜層の全体的な機械的性能および熱安定性のより一層の向上に有利であり、それにより、製造プロセスが簡単で、放射率が低く、可視光反射率が低く、色が中性であり、且つ建築と自動車ガラスの分野に利用可能な低放射ガラスを提供することができ、本願の膜付きガラスを有する合わせガラスは、放射率値、可視光反射率がいずれも低減され、且つ低放射層付きの合わせガラスの内面に美しい色が付いている。
【0027】
本発明の上記およびその他の目的、特徴および利点をより明確に理解しやすくするために、以下、特に好ましい実施例を挙げ、添付の図面に合わせて詳細に説明する。
【0028】
本発明の実施例または従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明に使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を費やさず、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の提供される膜付きガラスの構造概略図
【
図2】本発明の提供される低放射層付きの合わせガラスの構造概略図
【
図3】本発明の提供される別の低放射層付きの合わせガラスの構造概略図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を費やさずに取得した他の全ての実施例は、本発明の権利範囲に属する。
【0031】
本発明は、製造プロセスが簡単で、放射率が低く、可視光反射率が低く、色が中性であり、且つ建築と自動車ガラスの分野に利用可能な膜付きガラスおよび当該膜付きガラスから形成される合わせガラスを提供し、当該膜付きガラスと合わせガラスは、低放射ガラスとして用いられ、特に自動車サンルーフ製品に適用される。
【0032】
図1に示すように、本発明の提供される膜付きガラスは、
第1のガラス基板2と、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、を含み、
前記低放射層4が、第1のガラス基板2の一方の表面に堆積され、少なくとも一つの透明導電性酸化物層を含み、
金属吸収層5が前記低放射層4に堆積され、
反射低減層6が金属吸収層5に堆積されている。
【0033】
本発明の提供される膜付きガラスにおいて、第1のガラス基板の表面における低放射層4は、ガラスからの熱放射を効果的に低減し、保温作用を果たすことができる。低放射層4と反射低減層6との間に金属吸収層5を配置することで、ガラスの反射率をさらに低減させる。
【0034】
本発明の提供される膜付きガラスは、自動車の窓ガラスとして車両に取り付け可能であり、これにより、本発明は、膜付きガラスと、第2のガラス基板と、接着層とを含む合わせガラスをさらに提供し、
ここで、膜付きガラスは、第1のガラス基板と、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層と、を含み、
前記低放射層が、前記第1のガラス基板の一方の表面に堆積され、少なくとも一つの透明導電性酸化物層を含み、
前記金属吸収層が前記低放射層に堆積され、
前記反射低減層が金属吸収層に堆積され、
第2のガラス基板は、接着層を介して第1のガラス基板の他方の表面に接着され、膜付きガラスは、車両の内部に位置し、
合わせガラスの可視光透過率は、20%以下であり、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、6%以下である。
【0035】
本発明の提供される合わせガラスは、低放射層付きの自動車サンルーフの合わせガラスとすることができ、
図2に示すように、本発明に係る一実施例の提供される合わせガラスは、第2のガラス基板1と、第1のガラス基板2と、2枚の基板の間の接着層3とを含み、第1のガラス基板2の上には、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、最外バリア層7とを含む。ここで、第2のガラス基板1は、外ガラス基板とされ、第1のガラス基板2は、内ガラス基板とされる。
【0036】
本発明の実施例において、膜付きガラスは、第1のガラス基板2と、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、を含み、低放射層4が、第1のガラス基板2の一方の表面に堆積され、少なくとも一つの透明導電性酸化物層を含み、金属吸収層5が前記低放射層4に堆積され、反射低減層6が金属吸収層5に堆積されている。
【0037】
図2に示すように、膜付きガラスの第1のガラス基板2の一方の表面には、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、最外バリア層7がこの順に設けられている。
【0038】
本発明の実施例において、ガラス基板は、無色透明または色付きの低透過率のケイ酸塩、ホウ酸塩ガラス基板または高分子有機ガラス基板、例えばPC、PMMAなどであってもよい。
【0039】
さらに、第1のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0040】
本発明の実施例において、前記の低放射層4は、ITO、ATO、AZOまたはFTOなどのTCO透明導電膜層であり、その厚さが100nm以上である。
【0041】
具体的には、本発明の一実施例において、低放射層4は、厚さが100nm~500nmであり、放射率値が0.3未満である。
【0042】
さらに、前記の金属吸収層5は、可視光に対して一定の吸収特性を有し、380~780nmの波長範囲内の少なくとも一部の可視光を吸収するためのものである。
【0043】
金属吸収層5の材料は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siから選択された少なくとも1種である。
【0044】
金属吸収層5は、厚さが10nm以下であり、具体的には、金属吸収層5の厚さは、3.5~10nmであり、好ましくは、金属吸収層5の厚さは、5nm以下である。さらに、反射低減層6は、少なくとも高、低屈折率層の2層の膜の積層された膜積層構造であってもよく、即ち、反射低減層6は、少なくとも1つの高屈折率層6.1と少なくとも1つの低屈折率層6.2とを含み、高屈折率層6.1と低屈折率層6.2とが交互に積層されている。
【0045】
前記の高屈折率層6.1の屈折率は、n≧1.7であり、具体的には、高屈折率層6.1の屈折率は、1.7~2.3であり、高屈折率層6.1は、酸化物または窒化物であり、高屈折率層6.1の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、高屈折率層6.1の厚さは、10~70nmである。
【0046】
低屈折率層6.2の屈折率は、n<1.7であり、具体的には、低屈折率層6.2の屈折率は、1.4~1.7であり、低屈折率層6.2の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、またはMg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物であり、低屈折率層6.2の厚さは、20~150nmである。
【0047】
本発明の実施例において、膜付きガラスは、反射低減層6に堆積される最外バリア層7をさらに含み、最外バリア層7の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、最外バリア層7の厚さは、30nm以下であり、好ましい最外バリア層7の厚さは、0~15nmである。
【0048】
図3に示すように、本発明の実施例において、膜付きガラスの低放射層4と第1のガラス基板2の一方の表面との間に最内バリア層8がさらに堆積され、最内バリア層8の厚さは、3nm以上であり、具体的には、最内バリア層8の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Al、Zr、B、Tiから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物である。
【0049】
本発明の実施例において、膜付きガラスの第1のガラス基板は、着色ガラスであり、該着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0050】
本発明の実施例により提供される合わせガラスは、車両に取り付け可能であり、膜付きガラスは、車両の内部に位置し、第2のガラス基板1が接着層3を介して第1のガラス基板2の他方の表面に接着される。さらに、接着層3は、無色透明または色付きの低透過率の高分子ポリマー層、例えばPVB、PU、EVA、SGPなどであってもよい。
【0051】
本発明の一実施例において、前記接着層3は、着色樹脂層であり、前記着色樹脂層の可視光透過率は、30%以下である。
【0052】
本発明の一実施例において、車両の内部から測定した合わせガラスの可視光反射率は、6%以下であり、具体的には、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは2%以下である。
【0053】
本発明の一実施例において、第1のガラス基板2および/または第2のガラス基板1は、着色ガラスであり、着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0054】
本発明の一実施例において、第1のガラス基板2および/または第2のガラス基板1は、透明ガラスであり、透明ガラスの可視光透過率は、70%よりも大きい。
【0055】
本発明の一実施例において、車両の内部から測定した前記合わせガラスの色Lab値において、a値は、-6~3であり、b値は、-12~0である。
【0056】
本発明の一実施例において、前記接着層3は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVBである。
【0057】
本発明の一実施例において、前記膜付きガラスと前記第2のガラス基板1との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜またはEC調光薄膜である。
【0058】
さらに、前記の低放射層4付きのサンルーフ合わせガラスの可視光透過率は、Tl≦50%であり、好ましくは可視光透過率がTl≦20%であり、より好ましくは可視光透過率がTl≦10%である。
【0059】
さらに、前記の低放射層4付きの合わせガラスのサンルーフの車内表面の可視光反射率である車内に近い表面の可視光反射率は、R2≦6%であり、好ましくは可視光反射率がR2≦4%であり、より好ましくは可視光反射率がR2≦2%である。
【0060】
さらに、前記の低放射層4のシート抵抗は、R≦40Ω/m2であり、好ましいシート抵抗は、R≦30Ω/m2であり、より好ましいシート抵抗は、R≦20Ω/m2である。
【0061】
さらに、前記の低放射層4の放射率値は、E≦0.4であり、好ましい低放射層4の放射率値は、E≦0.3であり、より好ましい低放射層4の放射率値は、E≦0.2である。
【0062】
以下、具体的な実施例に合わせて本発明の内容をさらに説明する。
【0063】
本実施例により提供される合わせガラスは、自動車の窓として用いられ、本発明の実施例において、前記「外ガラス基板」とは、合わせガラスにおける車外空気面に隣接するガラス基板、即ち、前記の第2のガラス基板を指し、「内ガラス基板」とは、合わせガラスにおける車内空気面に隣接するガラス基板、即ち、前記の第1のガラス基板を指し、「ガラス基板の外面」とは、ガラスと空気面とが接触する界面を指し、「ガラス基板の内面」とは、ガラスと接着層とが接触する界面を指す。
【0064】
図2に示すように、本発明の実施例に記載の低放射層付き合わせガラスは、外ガラス基板1を含み、前記外ガラス基板1は、透明ガラスであってもよく、前記透明ガラスの可視光透過率が70%以上であり、サンルーフ合わせガラスの断熱能力をさらに向上させ、サンルーフ合わせガラスの総太陽エネルギー透過率を低減させるために、好ましくは、前記外ガラス基板1の接着層3に近い表面に赤外線反射膜が堆積され、前記赤外線反射膜は、少なくとも1つの銀層または銀合金層を含み、例えば、2つの銀層または銀合金層、3つの銀層または銀合金層、4つの銀層または銀合金層を含み、前記赤外線反射膜は、太陽光における赤外線を反射するために用いられ、より好ましくは、透明ガラスの可視光透過率は、90%以上である。
【0065】
接着層3は、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間に位置し、内ガラス基板2の外面には、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、最外バリア層7とがこの順に配置され、前記の最外バリア層7は、即ちガラス面から最も離れた膜層である。
【0066】
合わせガラスの光線調節のニーズを満たして、異なる場面のニーズに適応するようにするために、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜、EC調光薄膜などが挙げられる。
【0067】
本発明に記載の接着層3は、無色透明または色付きの低透過率の有機高分子ポリマー層、例えばPVB、PU、EVA、SGPなどであってもよく、サンルーフ合わせガラスについて、その透過率が低いと、接着層3の可視光透過率は、通常0~30%である。
【0068】
本発明の実施例において、前記の低放射層4は、赤外線放射に対して反射または吸収作用を有すると同時に、可視光透過率の高い特徴を有し、通常、TCO膜層であり、ITO、ATO、AZO、FTOなどの材料であってもよい。
【0069】
前記の低放射層4は、PVDまたはCVD法により内ガラス基板2の外面に塗布され、該表面において、本発明の低放射層4は、ガラスから室内への熱放射を効果的に低減させると同時に、室内から外部への熱放射を阻止し、室内の熱の損失を減少させ、一定の保温作用を果たすことができる。
【0070】
本発明の実施例に係る低放射層4の厚さは、少なくとも100nm以上であるが、ガラスに低い放射率値を付与するために、例えば、放射率値<0.3、さらに<0.2である場合、低放射層4の厚さをできるだけ増加させる必要があり、しかし、低放射層4の厚さが増加するにつれて、その可視光の反射率もそれに伴って増加し、ひいては>10%となり、また、色などの光学指標もそれに伴って変化し、さらに中性色からずれてしまうことがある。一方、自動車ガラスに対して、高い反射率と深い色は、乗客の不快感を招いて、車両の美観に影響してしまうため、許容されないこととなる。低放射層4の反射率をさらに低減させ、色を調整するために、本発明は、低放射層4上に金属吸収層5と反射低減層6とをこの順に堆積する。
【0071】
本発明の実施例における反射低減層6は、通常の反射率を低減させる膜層であり、一般的に2層または2層以上の高/低屈折率交互の膜積層構造であり、高屈折率は、n1≧1.7、通常、1.7~2.3であり、低屈折率は、n2<1.7、通常、1.4~1.7である。
【0072】
本発明の実施例において、高/低屈折率層の材料が限定されておらず、本発明の実施例において、高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物、例えば、ZnSnO、TiO、NbOなどであり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物、例えば、Si3N4、SiAlN、SiZrNなどであり、低屈折率層の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、またはMg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物である。
【0073】
本発明における反射低減層6は、マグネトロンスパッタリング法によりメッキ膜を行うことが好ましく、特に、生産コストを低減するために、本発明の実施例における反射低減層6は、2層の高低屈折率層が交互堆積された膜層構造を採用することが好ましく、すなわち、反射低減層6は、交互に設置された膜層構造である高屈折率層6.1と低屈折率層6.2とを含み、高屈折率層6.1の厚さは、10~70nmであり、好ましくは10~50nmであり、低屈折率層6.2の厚さは、20~150nmであり、好ましくは30~110nmである。
【0074】
合わせガラスによる車内の反射率に対する要求をさらに低減するために、本発明の実施例において、低放射層4と反射低減層6との間に一層の金属吸収層5が堆積されており、前記の金属吸収層5は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siなどの1種または複数種の合金の組み合わせを含んでもよく、金属吸収層5は、可視光に対して一定の吸収および反射特性を有し、その厚さが厚すぎないほうがよく、厚さが厚い金属吸収層5の場合、可視光に対する反射率が明らかに増加するためである。このため、本発明の実施例において、前記の金属吸収層5は、その厚さが10nm以下であり、好ましくは5nm以下である。
【0075】
本発明の実施例に記載の低放射層4を含むガラスは、強化処理または熱曲げ処理されてもよく、処理温度は、500~700℃であるとよい。低放射層4の熱処理の安定性をさらに向上させるために、本発明の実施例において、反射低減層6上に最外バリア層7がさらに一層堆積されており、前記の最外バリア層7の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、好ましくは、AlまたはZrがドープされた窒化ケイ素層、例えば、Si3N4、SiAlN、SiZrNなどであり、前記の最外バリア層7は、膜層全体の機械的特性および熱安定性をさらに向上させることに有利であるが、厚い最外バリア層7の場合、反射低減層6の反射低減効果に影響を与え、膜層の反射率の低減に不利であるため、最外バリア層7の厚さは、30nmいかであり、好ましくは15nm以下である。
【0076】
以上の方法により、本発明の提供される前記低放射層4付きの合わせガラスは、その放射率値<0.3であり、前記低放射層4付きの合わせガラスの内面の可視光反射率<4%(0度角でのテスト)であり、前記低放射層4付きの合わせガラスの内面に、例えばa値-6~3、b値0~-12のような美しい色が付いている。
【0077】
(具体的な実施例)
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。以下のいくつかの異なる膜層構造の低放射層付きの合わせガラスを選択して比較試験を行った。
【0078】
(比較例1~4および実施例1)
比較例1は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、10nmのSi3N4の最内バリア層、120nmのITO低放射層、35nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1および成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0079】
比較例2は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、8nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、5nmのNiCrの金属吸収層、35nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0080】
比較例3は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、8nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、9nmのNiCrの金属吸収層、35nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0081】
比較例4は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、5nmのSi3N4の最内バリア層、118nmのITO低放射層、8nmのSi3N4の高屈折率層、180nmのSiO2の低屈折率層がこの順に堆積され、Si3N4の高屈折率層とSiO2の低屈折率層は、2層構造の反射低減層を構成し、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0082】
実施例1は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、8nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、11nmのSi3N4の高屈折率層、46nmのSiO2の低屈折率層、10nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0083】
比較例1~4および実施例1の膜層堆積後に得られた膜付きガラスおよび合わせガラスについて、可視光反射率、車内側反射色および放射率等の測定を行い、測定結果を表1に示す。表1は比較例1~4および実施例1の膜付きガラスおよび合わせガラスの測定結果である。
【0084】
【0085】
表1から分かるように、比較例1のITO膜層に金属吸収層および反射低減層が堆積されておらず、膜付きガラスの可視光反射率が10%よりも大きく、灰色PVBを組み合わせて合わせガラスを形成した後でも、合わせガラスの可視光反射率が依然として6%よりも大きく、自動車ルーフガラスの鏡面反射を除去するというニーズを満たすことができない。
【0086】
比較例2と比較例3のITO膜層に異なる厚さの金属吸収層が堆積されているが、反射低減層が堆積されておらず、膜付きガラスの可視光反射率が6%よりも大きく、且つ灰色PVBを組み合わせて合わせガラスを形成した後、合わせガラスの可視光反射率が6%未満であるが、依然として5%よりも大きく、さらに金属吸収層の厚さの増加につれて可視光反射率もそれに伴って高くなり、反射色が中性色からますますずれ、外観色が視覚外観を良好にするというニーズを満たすことができない。
【0087】
比較例4のITO膜層に反射低減層が堆積されているが、金属吸収層が堆積されておらず、膜付きガラスの可視光反射率が6%よりも大きく、灰色PVBを組み合わせて合わせガラスを形成した後、合わせガラスの可視光反射率が3%未満で、且つ反射色も中性色であるが、反射低減層の厚さが実施例1の約2~3倍であり、マグネトロンスパッタリングの膜層堆積時間が延長され、生産コストの低減に不利である。
【0088】
実施例1は、比較例1~4と比べて、適切な厚さの金属吸収層と反射低減層を堆積することによって、高い生産効率および低コストで、膜付きガラスの可視光反射率が4%未満であり、合わせガラスの可視光反射率が2%未満であり、且つ反射色が中性色であることを実現することができる。
【0089】
(実施例2~6)
実施例2は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、5nmのSi3N4の最内バリア層、160nmのITO低放射層、4nmのNiCrの金属吸収層、23nmのSi3N4の高屈折率層、60nmのSiO2の低屈折率層、5nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0090】
実施例3は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、9nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、20nmのZnSnOxの高屈折率層、60nmのSiO2の低屈折率層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0091】
実施例4は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、9nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、24nmのZnSnOxの高屈折率層、55nmのSiO2の低屈折率層、8nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0092】
実施例5:低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、10nmのSi3N4の最内バリア層、280nmのAZO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、24nmのSi3N4の高屈折率層、58nmのSiO2の低屈折率層、9nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0093】
実施例6は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの灰色ガラス(グレーガラス、可視光透過率が40%)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、10nmのSi3N4の最内バリア層、120nmのITO低放射層、7.5nmのNiCrの金属吸収層、38nmのTiOxの高屈折率層、64nmのSiO2の低屈折率層、9nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVB接着層を介して接着されている。
【0094】
実施例1の膜層堆積後に得られた膜付きガラスおよび合わせガラスについて、可視光反射率、車内側反射色および放射率等の測定を行い、測定結果を表2に示す。表2は実施例1の膜付きガラスおよび合わせガラスの測定結果である。
【0095】
【0096】
表2から分かるように、実施例3においてZnSnOx層を高屈折率層として利用し、かつ、最外バリア層が設けられず、Si3N4層を高屈折率層として用いる場合に比べて、膜付きガラスが熱処理された後の膜層のシート抵抗が高くなるため、前記反射低減層における高屈折率層は、Siを含む窒化物層または酸窒化物層であることが好ましく、膜層の熱処理安定性の向上に有利である。
【0097】
実施例4は、実施例3と比べて、ZnSnOx層を高屈折率層として利用し、最外バリア層が増設され、熱処理後の膜層のシート抵抗の低減に有利である。
【0098】
実施例2と実施例5とは、厚いITO膜層またはAZO膜層を利用したが、金属吸収層と反射低減層とが同時に設けられ、依然として、膜付きガラスの可視光反射率が4%未満であり、合わせガラスの可視光反射率が3%未満または2%未満であり、且つ反射色が中性色であることを実現することができる。
【0099】
実施例6は、グレーガラスと透明PVBの製品の組み合わせを利用し、金属吸収層と反射低減層とが同時に設けられることで、膜付きガラスの可視光反射率が4%未満で、合わせガラスの可視光反射率が3%未満で、且つ反射色が中性色であることを実現することができる。
【0100】
以上、本発明に記載の具体的な実施例について説明したが、本発明は、以上に説明した具体的な実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の技術的な要点に基づいて行われるいかなる改良、均等な修正および置換等は、いずれも本発明の権利範囲に属する。以上に挙げられた実施例は、いずれも膜付きガラスおよび合わせガラスの構造組成を説明したが、膜付きガラスおよび合わせガラスの具体的な製造プロセスおよびパラメータは、いずれも説明されておらず、これらの説明されていない部分は、いずれも当業者によく知られているものであるため、説明されていない部分は、本願の権利範囲に影響しないことが理解される。
【符号の説明】
【0101】
1 外ガラス基板(第2のガラス基板)
2 内ガラス基板(第1のガラス基板)
3 接着層
4 低放射層
5 金属吸収層
6 反射低減層
6.1 高屈折率層
6.2 低屈折率層
7 最外バリア層
8 最内バリア層
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜付きガラスにおいて、
第1のガラス基板と、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層とを含み、
前記低放射層が、前記第1のガラス基板の一方の表面に堆積され、少なくとも1つの透明導電性酸化物層を含み、
前記透明導電性酸化物層が、ITO層、ATO層、AZO層またはFTO層であり、
前記金属吸収層が、前記低放射層に堆積され、
前記反射低減層が、前記金属吸収層に堆積されている、
ことを特徴とする膜付きガラス。
【請求項2】
前記低放射層の厚さは、100nm~500nmであり、放射率値は、0.3未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項3】
前記反射低減層は、少なくとも1つの高屈折率層および少なくとも1つの低屈折率層を含み、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に積層され、前記高屈折率層の屈折率が1.7
以上であり、低屈折率層の屈折率
が1.7未満であ
り、
前記高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、
前記低屈折率層の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、または、Mg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物であり、
前記高屈折率層の厚さは、10~70nmであり、前記低屈折率層の厚さは、20~150nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項4】
前記金属吸収層は、380~780nmの波長範囲内の少なくとも一部の可視光を吸収するためのものであり、前記金属吸収層の厚さは、3.5~10nmであ
り、
より望ましくは、5nm以下であり、
前記金属吸収層は、前記低放射層と直接接触し、前記金属吸収層の材料は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siから選択された少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項5】
前記低放射層と前記第1のガラス基板の一方の表面との間に最内バリア層がさらに堆積され、前記最内バリア層の厚さは、3nm以上であり、前記最内バリア層の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Al、Zr、B、Tiから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項6】
前記膜付きガラスは、前記反射低減層に堆積される最外バリア層をさらに含み、前記最外バリア層の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、前記最外バリア層の厚さは、30nm以下であ
り、
より望ましくは、15nm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項7】
前記第1のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下であ
り、
又は、
前記第1のガラス基板は、透明ガラスであり、前記透明ガラスの可視光透過率は、70%よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項8】
前記反射低減層は、一つの高屈折率層と一つの低屈折率層を含む積層構造を有し、前記高屈折率層の厚さは、10~50nmであり、前記低屈折率層の厚さは、30~110nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の膜付きガラス。
【請求項9】
前記高屈折率層は、Siを含む窒化物層または酸窒化物層である、
ことを特徴とする請求項8に記載の膜付きガラス。
【請求項10】
車両に取り付け可能な合わせガラスにおいて、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の膜付きガラスと、第2のガラス基板と、接着層と、を含み、前記第2のガラス基板は、接着層を介して前記第1のガラス基板の他方の表面に接着され、前記膜付きガラスは、車両の内部に位置し、
前記合わせガラスの可視光透過率は、20%以下であり、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、6%以下であ
り、
より望ましくは、4%以下であり、一層望ましくは、3%以下である、
ことを特徴とする合わせガラス。
【請求項11】
前記第2のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下であ
り、
又は、
前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記透明ガラスの可視光透過率は、70%よりも大きい、
ことを特徴とする請求項
10に記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記第2のガラス基板の前記接着層に近い表面に赤外線反射膜が設けられており、前記赤外線反射膜は、少なくとも1つの銀層または銀合金層を含む、
ことを特徴とする請求項
10に記載の合わせガラス。
【請求項13】
前記接着層は、着色樹脂層であり、前記着色樹脂層の可視光透過率は、30%以下であ
り、
又は、
前記接着層は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVBである、
ことを特徴とする請求項
10に記載の合わせガラス。
【請求項14】
車両の内部から測定した前記合わせガラスの色Lab値において、a値は、-6~3であり、b値は、-12~0である、
ことを特徴とする請求項
10に記載の合わせガラス。
【請求項15】
前記膜付きガラスと前記第2のガラス基板との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜またはEC調光薄膜である、
ことを特徴とする請求項
10に記載の合わせガラス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス成膜の技術に関し、特に自動車ウィンドウのガラス成膜の技術に関し、具体的には、膜付きガラスおよび合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車のガラス断熱技術は、ますます注目されており、自動車のフロントガラスに一層または複数層のナノオーダーの金属薄膜をメッキすることによって外部熱を反射することによって、自動車の運転中に外部熱の侵入(夏)または車内熱の流出(冬)を遮断する作用を実現する。特に、自動車のパノラマルーフガラスは、面積が広いため、冬に車内温度が最も車外に放射されやすくなったり、熱伝導により車内保温効果が悪くなったりするため、車内温度の外部への熱伝導や放射を減少させ、一定の保温作用を果たすように、特にルーフガラス、特に車内表面に近い表面に一層の断熱コーティングを配置する必要がある。
【0003】
現在、よく見られる一般的なプロセス方法は、ガラス表面に透明導電性酸化物層(TCO層)をメッキする方法であり、例えば、化学気相成長(CVD)法を採用してフロート法生産ラインでフッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティング層をメッキしたガラスをルーフガラスの内面基板とし、且つFTO層がガラスと車内空気との接触面に位置し、その利点は、FTOコーティング層が強い機械的性能および耐環境性能を有することであり、欠点は、FTOコーティング層の反射率が高く、通常10%よりも大きく、且つルーフガラスの透過率が通常低く、反射率が高くなると、一定のミラー効果が生じて乗客の乗り心地にある程度影響してしまうことである。
【0004】
TCOコーティングの高い反射率を低減する問題を解決するために、TCO層上に反射低減層を配置することが一般的であり、もしより低い反射率が要求される場合、多層の複雑な反射低減膜の層構造を必要とするが、4層または4層以上の反射低減層の製造プロセスにおいて、意図せずガラス製造のコストおよびプロセス難度が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術における少なくとも1つの欠陥を克服するために、本発明は、膜付きガラスおよび合わせガラスを提供することによって、製造プロセスが簡単で、放射率が低く、可視光反射率が低く、色が中性であり、且つ建築と自動車ガラスの分野に利用可能な低放射ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、本発明は、膜付きガラスにおいて、第1のガラス基板と、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層とを含み、
前記低放射層が、前記第1のガラス基板の一方の表面に堆積され、少なくとも1つの透明導電性酸化物層(TCO層)を含み、
前記金属吸収層が、前記低放射層に堆積され、
前記反射低減層が、前記金属吸収層に堆積されている、膜付きガラスを提供する。
【0007】
本発明の実施例において、前記低放射層の厚さは、100nm~500nmであり、放射率値は、0.3未満である。
【0008】
本発明の実施例において、前記透明導電性酸化物層は、インジウムドープ酸化スズ(ITO)層、ATO層、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)層またはフッ素ドープ酸化スズ(FTO)層である。
【0009】
本発明の実施例において、前記反射低減層は、少なくとも1つの高屈折率層および少なくとも1つの低屈折率層を含み、前記高屈折率層と前記低屈折率層とが交互に積層され、前記高屈折率層の屈折率が1.7~2.3であり、低屈折率層の屈折率が1.4~1.7である。
【0010】
本発明の実施例において、前記高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、
前記低屈折率層の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Mg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物である。
【0011】
本発明の実施例において、前記高屈折率層の厚さは、10~70nmであり、前記低屈折率層の厚さは、20~150nmである。
【0012】
本発明の実施例において、前記金属吸収層は、380~780nmの波長範囲内の少なくとも一部の可視光を吸収するためのものであり、前記金属吸収層の厚さは、3.5~10nmである。
【0013】
本発明の実施例において、前記金属吸収層は、前記低放射層と直接接触し、前記金属吸収層の材料は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siから選択された少なくとも1種である。
【0014】
本発明の実施例において、前記低放射層と前記第1のガラス基板の一方の表面との間に最内バリア層がさらに堆積され、前記最内バリア層の厚さは、3nm以上であり、前記最内バリア層の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Al、Zr、B、Tiから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物である。
【0015】
本発明の実施例において、前記膜付きガラスは、前記反射低減層に堆積される最外バリア層をさらに含み、前記最外バリア層の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、前記最外バリア層の厚さは、30nm以下である。
【0016】
本発明の実施例において、前記第1のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0017】
さらに、本発明は、車両に取り付け可能な合わせガラスにおいて、前記の膜付きガラスと、第2のガラス基板と、接着層とを含み、前記第2のガラス基板は、接着層を介して前記第1のガラス基板の他方の表面に接着され、前記膜付きガラスは、車両の内部に位置し、
前記合わせガラスの可視光透過率は、20%以下であり、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、6%以下である、合わせガラスをさらに提供する。
【0018】
本発明の実施例において、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、2%以下である。
【0019】
本発明の実施例において、前記第1のガラス基板および/または前記第2のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0020】
本発明の実施例において、前記第1のガラス基板および/または前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記透明ガラスの可視光透過率は、70%よりも大きい。
【0021】
本発明の実施例において、前記第2のガラス基板は、透明ガラスであり、前記第2のガラス基板の前記接着層に近い表面に赤外線反射膜が設けられており、前記赤外線反射膜は、少なくとも1つの銀層または銀合金層を含む。
【0022】
本発明の実施例において、前記接着層は、着色樹脂層であり、前記着色樹脂層の可視光透過率は、30%以下である。
【0023】
本発明の実施例において、車両の内部から測定した前記合わせガラスの色標準(Lab)値にいて、a値は、-6~3であり、b値は、-12~0である。
【0024】
本発明の実施例において、前記接着層は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVBである。
【0025】
本発明の実施例において、前記膜付きガラスと前記第2のガラス基板との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜またはEC調光薄膜である。
【0026】
本発明の提供される膜付きガラスは、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層とを有し、その低放射層は、ガラスから室内への熱放射を効果的に低減させると同時に、室内から外への熱放射を阻止し、室内の熱の損失を減少させ、一定の保温作用を果たすことができ、低放射層と反射低減層との間に金属吸収層を配置することで、合わせガラスによる車内ガラス基板の反射率に対する要求をさらに低減させ、最外バリア層は、層の全体的な機械的性能および熱安定性のより一層の向上に有利であり、それにより、製造プロセスが簡単で、放射率が低く、可視光反射率が低く、色が中性であり、且つ建築と自動車ガラスの分野に利用可能な低放射ガラスを提供することができ、本願の膜付きガラスを有する合わせガラスは、放射率値、可視光反射率がいずれも低減され、且つ低放射層付きの合わせガラスの内面に美しい色が付いている。
【0027】
本発明の上記およびその他の目的、特徴および利点をより明確に理解しやすくするために、以下、特に好ましい実施例を挙げ、添付の図面に合わせて詳細に説明する。
【0028】
本発明の実施例または従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明に使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を費やさず、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の提供される膜付きガラスの構造概略図
【
図2】本発明の提供される低放射層付きの合わせガラスの構造概略図
【
図3】本発明の提供される別の低放射層付きの合わせガラスの構造概略図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を費やさずに取得した他の全ての実施例は、本発明の権利範囲に属する。
【0031】
本発明は、製造プロセスが簡単で、放射率が低く、可視光反射率が低く、色が中性であり、且つ建築と自動車ガラスの分野に利用可能な膜付きガラスおよび当該膜付きガラスから形成される合わせガラスを提供し、当該膜付きガラスと合わせガラスは、低放射ガラスとして用いられ、特に自動車サンルーフ製品に適用される。
【0032】
図1に示すように、本発明の提供される膜付きガラスは、
第1のガラス基板2と、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、を含み、
前記低放射層4が、第1のガラス基板2の一方の表面に堆積され、少なくとも一つの透明導電性酸化物層を含み、
金属吸収層5が前記低放射層4に堆積され、
反射低減層6が金属吸収層5に堆積されている。
【0033】
本発明の提供される膜付きガラスにおいて、第1のガラス基板の表面における低放射層4は、ガラスからの熱放射を効果的に低減し、保温作用を果たすことができる。低放射層4と反射低減層6との間に金属吸収層5を配置することで、ガラスの反射率をさらに低減させる。
【0034】
本発明の提供される膜付きガラスは、自動車の窓ガラスとして車両に取り付け可能であり、これにより、本発明は、膜付きガラスと、第2のガラス基板と、接着層とを含む合わせガラスをさらに提供し、
ここで、膜付きガラスは、第1のガラス基板と、低放射層と、金属吸収層と、反射低減層と、を含み、
前記低放射層が、前記第1のガラス基板の一方の表面に堆積され、少なくとも一つの透明導電性酸化物層を含み、
前記金属吸収層が前記低放射層に堆積され、
前記反射低減層が金属吸収層に堆積され、
第2のガラス基板は、接着層を介して第1のガラス基板の他方の表面に接着され、膜付きガラスは、車両の内部に位置し、
合わせガラスの可視光透過率は、20%以下であり、車両の内部から測定した前記合わせガラスの可視光反射率は、6%以下である。
【0035】
本発明の提供される合わせガラスは、低放射層付きの自動車サンルーフの合わせガラスとすることができ、
図2に示すように、本発明に係る一実施例の提供される合わせガラスは、第2のガラス基板1と、第1のガラス基板2と、2枚の基板の間の接着層3とを含み、第1のガラス基板2の上には、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、最外バリア層7とを含む。ここで、第2のガラス基板1は、外ガラス基板とされ、第1のガラス基板2は、内ガラス基板とされる。
【0036】
本発明の実施例において、膜付きガラスは、第1のガラス基板2と、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、を含み、低放射層4が、第1のガラス基板2の一方の表面に堆積され、少なくとも一つの透明導電性酸化物層を含み、金属吸収層5が前記低放射層4に堆積され、反射低減層6が金属吸収層5に堆積されている。
【0037】
図2に示すように、膜付きガラスの第1のガラス基板2の一方の表面には、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、最外バリア層7がこの順に設けられている。
【0038】
本発明の実施例において、ガラス基板は、無色透明または色付きの低可視光透過率のものであり、ケイ酸塩基板、ホウ酸塩ガラス基板または高分子有機ガラス基板であり、高分子有機ガラス基板として、例えばPC、PMMAなどであってもよい。
【0039】
さらに、第1のガラス基板は、着色ガラスであり、前記着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0040】
本発明の実施例において、前記の低放射層4は、ITO、ATO、AZOまたはFTOなどのTCO透明導電層であり、その厚さが100nm以上である。
【0041】
具体的には、本発明の一実施例において、低放射層4は、厚さが100nm~500nmであり、放射率値が0.3未満である。
【0042】
さらに、前記の金属吸収層5は、可視光に対して一定の吸収特性を有し、380~780nmの波長範囲内の少なくとも一部の可視光を吸収するためのものである。
【0043】
金属吸収層5の材料は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siから選択された少なくとも1種である。
【0044】
金属吸収層5は、厚さが10nm以下であり、具体的には、金属吸収層5の厚さは、3.5~10nmであり、好ましくは、金属吸収層5の厚さは、5nm以下である。さらに、反射低減層6は、少なくとも高、低屈折率層の2層積層された積層構造であってもよく、即ち、反射低減層6は、少なくとも1つの高屈折率層6.1と少なくとも1つの低屈折率層6.2とを含み、高屈折率層6.1と低屈折率層6.2とが交互に積層されている。
【0045】
前記の高屈折率層6.1の屈折率は、n≧1.7であり、具体的には、高屈折率層6.1の屈折率は、1.7~2.3であり、高屈折率層6.1は、酸化物または窒化物であり、高屈折率層6.1の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、高屈折率層6.1の厚さは、10~70nmである。
【0046】
低屈折率層6.2の屈折率は、n<1.7であり、具体的には、低屈折率層6.2の屈折率は、1.4~1.7であり、低屈折率層6.2の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、またはMg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物であり、低屈折率層6.2の厚さは、20~150nmである。
【0047】
本発明の実施例において、膜付きガラスは、反射低減層6に堆積される最外バリア層7をさらに含み、最外バリア層7の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、最外バリア層7の厚さは、30nm以下であり、好ましい最外バリア層7の厚さは、0~15nmである。
【0048】
図3に示すように、本発明の実施例において、膜付きガラスの低放射層4と第1のガラス基板2の一方の表面との間に最内バリア層8がさらに堆積され、最内バリア層8の厚さは、3nm以上であり、具体的には、最内バリア層8の材料は、Zn、Sn、Ti、Si、Al、Nb、Zr、Ni、Mg、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、あるいは、Si、Al、Zr、B、Tiから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物である。
【0049】
本発明の実施例において、膜付きガラスの第1のガラス基板は、着色ガラスであり、該着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0050】
本発明の実施例により提供される合わせガラスは、車両に取り付け可能であり、膜付きガラスは、車両の内部に位置し、第2のガラス基板1が接着層3を介して第1のガラス基板2の他方の表面に接着される。さらに、接着層3は、無色透明または色付きの低可視光透過率の高分子ポリマー層であり、前記高分子ポリマー層は、例えばPVB、PU、EVA、SGPなどであってもよい。
【0051】
本発明の一実施例において、前記接着層3は、着色樹脂層であり、前記着色樹脂層の可視光透過率は、30%以下である。
【0052】
本発明の一実施例において、車両の内部から測定した合わせガラスの可視光反射率は、6%以下であり、具体的には、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは2%以下である。
【0053】
本発明の一実施例において、第1のガラス基板2および/または第2のガラス基板1は、着色ガラスであり、着色ガラスの可視光透過率は、50%以下である。
【0054】
本発明の一実施例において、第1のガラス基板2および/または第2のガラス基板1は、透明ガラスであり、透明ガラスの可視光透過率は、70%よりも大きい。
【0055】
本発明の一実施例において、車両の内部から測定した前記合わせガラスの色Lab値において、a値は、-6~3であり、b値は、-12~0である。
【0056】
本発明の一実施例において、前記接着層3は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVBである。
【0057】
本発明の一実施例において、前記膜付きガラスと前記第2のガラス基板1との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜またはEC調光薄膜である。
【0058】
さらに、前記の低放射層4付きのサンルーフ合わせガラスの可視光透過率は、Tl≦50%であり、好ましくは可視光透過率がTl≦20%であり、より好ましくは可視光透過率がTl≦10%である。
【0059】
さらに、前記の低放射層4付きの合わせガラスのサンルーフの車内表面の可視光反射率である車内に近い表面の可視光反射率は、R2≦6%であり、好ましくは可視光反射率がR2≦4%であり、より好ましくは可視光反射率がR2≦2%である。
【0060】
さらに、前記の低放射層4のシート抵抗は、R≦40Ω/m2であり、好ましいシート抵抗は、R≦30Ω/m2であり、より好ましいシート抵抗は、R≦20Ω/m2である。
【0061】
さらに、前記の低放射層4の放射率値は、E≦0.4であり、好ましい低放射層4の放射率値は、E≦0.3であり、より好ましい低放射層4の放射率値は、E≦0.2である。
【0062】
以下、具体的な実施例に合わせて本発明の内容をさらに説明する。
【0063】
本実施例により提供される合わせガラスは、自動車の窓として用いられ、本発明の実施例において、前記「外ガラス基板」とは、合わせガラスにおける車外空気面に隣接するガラス基板、即ち、前記の第2のガラス基板を指し、「内ガラス基板」とは、合わせガラスにおける車内空気面に隣接するガラス基板、即ち、前記の第1のガラス基板を指し、「ガラス基板の外面」とは、ガラスと空気面とが接触する界面を指し、「ガラス基板の内面」とは、ガラスと接着層とが接触する界面を指す。
【0064】
図2に示すように、本発明の実施例に記載の低放射層付き合わせガラスは、外ガラス基板1を含み、前記外ガラス基板1は、透明ガラスであってもよく、前記透明ガラスの可視光透過率が70%以上であり、サンルーフ合わせガラスの断熱能力をさらに向上させ、サンルーフ合わせガラスの総太陽エネルギー透過率を低減させるために、好ましくは、前記外ガラス基板1の接着層3に近い表面に赤外線反射膜が堆積され、前記赤外線反射膜は、少なくとも1つの銀層または銀合金層を含み、例えば、2つの銀層または銀合金層、3つの銀層または銀合金層、4つの銀層または銀合金層を含み、前記赤外線反射膜は、太陽光における赤外線を反射するために用いられ、より好ましくは、透明ガラスの可視光透過率は、90%以上である。
【0065】
接着層3は、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間に位置し、内ガラス基板2の外面には、低放射層4と、金属吸収層5と、反射低減層6と、最外バリア層7とがこの順に配置され、前記の最外バリア層7は、即ちガラス面から最も離れた層である。
【0066】
合わせガラスの光線調節のニーズを満たして、異なる場面のニーズに適応するようにするために、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間に調光素子がさらに設けられており、前記調光素子は、PDLC調光薄膜、SPD調光薄膜、EC調光薄膜などが挙げられる。
【0067】
本発明に記載の接着層3は、無色透明または色付きの低可視光透過率の有機高分子ポリマー層であり、前記有機高分子ポリマー層は、例えばPVB、PU、EVA、SGPなどであってもよく、サンルーフ合わせガラスについて、その透過率が低いと、接着層3の可視光透過率は、通常0~30%である。
【0068】
本発明の実施例において、前記の低放射層4は、赤外線放射に対して反射または吸収作用を有すると同時に、可視光透過率の高い特徴を有し、通常、TCO層であり、ITO、ATO、AZO、FTOなどの材料であってもよい。
【0069】
前記の低放射層4は、PVDまたはCVD法により内ガラス基板2の外面に塗布され、該表面において、本発明の低放射層4は、ガラスから室内への熱放射を効果的に低減させると同時に、室内から外部への熱放射を阻止し、室内の熱の損失を減少させ、一定の保温作用を果たすことができる。
【0070】
本発明の実施例に係る低放射層4の厚さは、少なくとも100nm以上であるが、ガラスに低い放射率値を付与するために、例えば、放射率値<0.3、さらに<0.2である場合、低放射層4の厚さをできるだけ増加させる必要があり、しかし、低放射層4の厚さが増加するにつれて、その可視光の反射率もそれに伴って増加し、ひいては>10%となり、また、色などの光学指標もそれに伴って変化し、さらに中性色からずれてしまうことがある。一方、自動車ガラスに対して、高い反射率と深い色は、乗客の不快感を招いて、車両の美観に影響してしまうため、許容されないこととなる。低放射層4の反射率をさらに低減させ、色を調整するために、本発明は、低放射層4上に金属吸収層5と反射低減層6とをこの順に堆積する。
【0071】
本発明の実施例における反射低減層6は、通常の反射率を低減させる層であり、一般的に2層または2層以上の高/低屈折率交互の積層構造であり、高屈折率は、n1≧1.7、通常、1.7~2.3であり、低屈折率は、n2<1.7、通常、1.4~1.7である。
【0072】
本発明の実施例において、高/低屈折率層の材料が限定されておらず、本発明の実施例において、高屈折率層の材料は、Zn、Sn、Nb、Ti、Ni、Cr、Taから選択された少なくとも1種の元素の酸化物、例えば、ZnSnO、TiO、NbOなどであり、あるいは、Si、Zr、Alから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物、例えば、Si3N4、SiAlN、SiZrNなどであり、低屈折率層の材料は、Si、Al、Bから選択された少なくとも1種の元素の酸化物であり、またはMg、Al、Baから選択された少なくとも1種の元素のフッ化物である。
【0073】
本発明における反射低減層6は、マグネトロンスパッタリング法によりメッキ膜を行うことが好ましく、特に、生産コストを低減するために、本発明の実施例における反射低減層6は、2層の高低屈折率層が交互堆積された積層構造を採用することが好ましく、すなわち、反射低減層6は、交互に設置された積層構造である一つの高屈折率層6.1と一つの低屈折率層6.2とを含み、高屈折率層6.1の厚さは、10~70nmであり、好ましくは10~50nmであり、低屈折率層6.2の厚さは、20~150nmであり、好ましくは30~110nmである。
【0074】
合わせガラスによる車内の反射率に対する要求をさらに低減するために、本発明の実施例において、低放射層4と反射低減層6との間に一層の金属吸収層5が堆積されており、前記の金属吸収層5は、Ni、Cr、Ti、Nb、Mo、Siなどの1種または複数種の合金の組み合わせを含んでもよく、金属吸収層5は、可視光に対して一定の吸収および反射特性を有し、その厚さが厚すぎないほうがよく、厚さが厚い金属吸収層5の場合、可視光に対する反射率が明らかに増加するためである。このため、本発明の実施例において、前記の金属吸収層5は、その厚さが10nm以下であり、好ましくは5nm以下である。
【0075】
本発明の実施例に記載の低放射層4を含むガラスは、強化処理または熱曲げ処理されてもよく、処理温度は、500~700℃であるとよい。低放射層4の熱処理の安定性をさらに向上させるために、本発明の実施例において、反射低減層6上に最外バリア層7がさらに一層堆積されており、前記の最外バリア層7の材料は、Si、Al、Zr、Ti、B、Niから選択された少なくとも1種の元素の窒化物または酸窒化物であり、好ましくは、AlまたはZrがドープされた窒化ケイ素層、例えば、Si3N4、SiAlN、SiZrNなどであり、前記の最外バリア層7は、層全体の機械的特性および熱安定性をさらに向上させることに有利であるが、厚い最外バリア層7の場合、反射低減層6の反射低減効果に影響を与え、層の反射率の低減に不利であるため、最外バリア層7の厚さは、30nmいかであり、好ましくは15nm以下である。
【0076】
以上の方法により、本発明の提供される前記低放射層4付きの合わせガラスは、その放射率値<0.3であり、前記低放射層4付きの合わせガラスの内面の可視光反射率<4%(0度角でのテスト)であり、前記低放射層4付きの合わせガラスの内面に、例えばa値-6~3、b値0~-12のような美しい色が付いている。
【0077】
(具体的な実施例)
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。以下のいくつかの異なる積層構造の低放射層付きの合わせガラスを選択して比較試験を行った。
【0078】
(比較例1~4および実施例1)
比較例1は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、10nmのSi3N4の最内バリア層、120nmのITO低放射層、35nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1および成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0079】
比較例2は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、8nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、5nmのNiCrの金属吸収層、35nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0080】
比較例3は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、8nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、9nmのNiCrの金属吸収層、35nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0081】
比較例4は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、5nmのSi3N4の最内バリア層、118nmのITO低放射層、8nmのSi3N4の高屈折率層、180nmのSiO2の低屈折率層がこの順に堆積され、Si3N4の高屈折率層とSiO2の低屈折率層は、2層構造の反射低減層を構成し、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0082】
実施例1は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、8nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、11nmのSi3N4の高屈折率層、46nmのSiO2の低屈折率層、10nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0083】
比較例1~4および実施例1の層堆積後に得られた膜付きガラスおよび合わせガラスについて、可視光反射率、車内側反射色および放射率等の測定を行い、測定結果を表1に示す。表1は比較例1~4および実施例1の膜付きガラスおよび合わせガラスの測定結果である。
【0084】
【0085】
表1から分かるように、比較例1のITO層に金属吸収層および反射低減層が堆積されておらず、膜付きガラスの可視光反射率が10%よりも大きく、灰色PVBを組み合わせて合わせガラスを形成した後でも、合わせガラスの可視光反射率が依然として6%よりも大きく、自動車ルーフガラスの鏡面反射を除去するというニーズを満たすことができない。
【0086】
比較例2と比較例3のITO層に異なる厚さの金属吸収層が堆積されているが、反射低減層が堆積されておらず、膜付きガラスの可視光反射率が6%よりも大きく、且つ灰色PVBを組み合わせて合わせガラスを形成した後、合わせガラスの可視光反射率が6%未満であるが、依然として5%よりも大きく、さらに金属吸収層の厚さの増加につれて可視光反射率もそれに伴って高くなり、反射色が中性色からますますずれ、外観色が視覚外観を良好にするというニーズを満たすことができない。
【0087】
比較例4のITO層に反射低減層が堆積されているが、金属吸収層が堆積されておらず、膜付きガラスの可視光反射率が6%よりも大きく、灰色PVBを組み合わせて合わせガラスを形成した後、合わせガラスの可視光反射率が3%未満で、且つ反射色も中性色であるが、反射低減層の厚さが実施例1の約2~3倍であり、マグネトロンスパッタリングの層堆積時間が延長され、生産コストの低減に不利である。
【0088】
実施例1は、比較例1~4と比べて、適切な厚さの金属吸収層と反射低減層を堆積することによって、高い生産効率および低コストで、膜付きガラスの可視光反射率が4%未満であり、合わせガラスの可視光反射率が2%未満であり、且つ反射色が中性色であることを実現することができる。
【0089】
(実施例2~6)
実施例2は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、5nmのSi3N4の最内バリア層、160nmのITO低放射層、4nmのNiCrの金属吸収層、23nmのSi3N4の高屈折率層、60nmのSiO2の低屈折率層、5nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0090】
実施例3は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、9nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、20nmのZnSnOxの高屈折率層、60nmのSiO2の低屈折率層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0091】
実施例4は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、9nmのSi3N4の最内バリア層、130nmのITO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、24nmのZnSnOxの高屈折率層、55nmのSiO2の低屈折率層、8nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0092】
実施例5:低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの透明ガラス(ホワイトガラス)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、10nmのSi3N4の最内バリア層、280nmのAZO低放射層、3.5nmのNiCrの金属吸収層、24nmのSi3N4の高屈折率層、58nmのSiO2の低屈折率層、9nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が10±2%の灰色PVB接着層を介して接着されている。
【0093】
実施例6は、低放射層付きのサンルーフ合わせガラスであって、外ガラス基板1と内ガラス基板2は、いずれも2.1mmの灰色ガラス(グレーガラス、可視光透過率が40%)であり、内ガラス基板2の内面には、マグネトロンスパッタリング法により、10nmのSi3N4の最内バリア層、120nmのITO低放射層、7.5nmのNiCrの金属吸収層、38nmのTiOxの高屈折率層、64nmのSiO2の低屈折率層、9nmのSi3N4の最外バリア層がこの順に堆積され、外ガラス基板1と成膜堆積後の内ガラス基板2は、いずれも550℃~650℃の熱曲げ処理を経たものであり、外ガラス基板1と内ガラス基板2との間は、可視光透過率が90%よりも大きい透明PVB接着層を介して接着されている。
【0094】
実施例2~6の層堆積後に得られた膜付きガラスおよび合わせガラスについて、可視光反射率、車内側反射色および放射率等の測定を行い、測定結果を表2に示す。表2は実施例2~6の膜付きガラスおよび合わせガラスの測定結果である。
【0095】
【0096】
表2から分かるように、実施例3においてZnSnOx層を高屈折率層として利用し、かつ、最外バリア層が設けられず、Si3N4層を高屈折率層として用いる場合に比べて、膜付きガラスが熱処理された後の層のシート抵抗が高くなるため、前記反射低減層における高屈折率層は、Siを含む窒化物層または酸窒化物層であることが好ましく、層の熱処理安定性の向上に有利である。
【0097】
実施例4は、実施例3と比べて、ZnSnOx層を高屈折率層として利用し、最外バリア層が増設され、熱処理後の層のシート抵抗の低減に有利である。
【0098】
実施例2と実施例5とは、厚いITO層またはAZO層を利用したが、金属吸収層と反射低減層とが同時に設けられ、依然として、膜付きガラスの可視光反射率が4%未満であり、合わせガラスの可視光反射率が3%未満または2%未満であり、且つ反射色が中性色であることを実現することができる。
【0099】
実施例6は、グレーガラスと透明PVBの製品の組み合わせを利用し、金属吸収層と反射低減層とが同時に設けられることで、膜付きガラスの可視光反射率が4%未満で、合わせガラスの可視光反射率が3%未満で、且つ反射色が中性色であることを実現することができる。
【0100】
以上、本発明に記載の具体的な実施例について説明したが、本発明は、以上に説明した具体的な実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の技術的な要点に基づいて行われるいかなる改良、均等な修正および置換等は、いずれも本発明の権利範囲に属する。以上に挙げられた実施例は、いずれも膜付きガラスおよび合わせガラスの構造組成を説明したが、膜付きガラスおよび合わせガラスの具体的な製造プロセスおよびパラメータは、いずれも説明されておらず、これらの説明されていない部分は、いずれも当業者によく知られているものであるため、説明されていない部分は、本願の権利範囲に影響しないことが理解される。
【符号の説明】
【0101】
1 外ガラス基板(第2のガラス基板)
2 内ガラス基板(第1のガラス基板)
3 接着層
4 低放射層
5 金属吸収層
6 反射低減層
6.1 高屈折率層
6.2 低屈折率層
7 最外バリア層
8 最内バリア層
【国際調査報告】