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特表2024-526914TLR4受容体の新しい合成アゴニスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】TLR4受容体の新しい合成アゴニスト
(51)【国際特許分類】
   C07H 13/06 20060101AFI20240711BHJP
   C07F 9/655 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/7024 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240711BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240711BHJP
   B01J 23/44 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07H13/06 CSP
C07F9/655
A61K31/7024
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P37/04
A61P35/00
A61P37/08
A61P31/00
A61P9/00
A61P3/04
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P37/02
A61P31/12
A61P31/04
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/08
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/19
C07B61/00 300
B01J23/44 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503698
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 IB2022056615
(87)【国際公開番号】W WO2023002354
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021000019544
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102022000006149
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524024823
【氏名又は名称】ウニベルシタ デッリ ストゥディ ディ ミラノ-ビコッカ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ペーリ
(72)【発明者】
【氏名】アレッシオ ロメリオ
(72)【発明者】
【氏名】シモーナ ダマート
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C085
4C086
4G169
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057AA19
4C057AA20
4C057CC03
4C057DD03
4C057GG03
4C057HH03
4C076AA06
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB29
4C076CC01
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C076FF70
4C085AA03
4C085AA38
4C085CC33
4C085DD59
4C085EE01
4C085FF14
4C085FF17
4C085GG01
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA03
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA70
4C086ZB07
4C086ZB09
4C086ZB13
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZB33
4C086ZB35
4G169AA03
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CB02
4H039CA60
4H039CB20
4H050AA02
4H050AB20
4H050AC90
4H050WA13
4H050WA23
4H050WB12
(57)【要約】
本発明は、ヒトToll様受容体4(TLR4)のアゴニスト活性を有する新規合成分子、それらを含む組成物、及び免疫応答を誘導するか、あるいは増大させることが有用である疾患の治療のためのそれらの使用に関する。これらの新規合成分子は、式が単純であること、調製が容易で安価であること、及び物理化学的特性を改変し、他の分子(例えば、タンパク質抗原)と結合するのを可能にするためのさらなる化学処理の可能性のために、他の類似のアゴニストとは異なる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の化合物であって、
【化1】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る任意の置換基、及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基である、化合物。
【請求項2】
鎖は、ヒドロキシル基(OH)、リン酸基(PO 2-)、アジド基(N)、アミン基(NH)、アシル基(O(C=O)R)又はアルキル基(OR)又はグリコシル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R、Rは、互いに異なる、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
、R及びRの少なくとも2つは、同一である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
、R及びRの少なくとも1つは、2位に-OH置換基を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
、R又はRの少なくとも1つは、任意の置換基を含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
=R=R=C1123、及びR=OH、又は
=R=C1327;R=C1123、及びR=OH、又は
=R=R=C19、及びR=OH、又は
=R=R=C1327、及びR=OH、又は
=R=C19;R=C1123、及びR=OH、又は
=R=R=C1123、及びR=PO 2-、又は
=R=R=C19、及びR=PO 2-、又は
=R=R=C1327、及びR=PO 2-、又は
=R=R=C1123、及びR=OC、又は
=R=R=C1123、及びR=O(C=O)C(OH)、又は
=R=R=C1123、及びR=NH
=R=R=C1123、及びR=O(C=O)CCH(CHOH)
=R=R=C1123、及びR=OCH(CHOH)CH(CH)O、
=R=R=C1123、及びR=OCH(CHOH)CH(CHOH)O、
=R=R=C1123、及びR=OCH(CHOH)(CH)O、
である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、式1の化合物のαアノマーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物は、式1の化合物のβアノマーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
TLR4受容体を活性化することによる免疫刺激を必要とするか、あるいは免疫刺激から利益を得る疾患の治療において、有効成分又はアジュバントとして使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記疾患は、がん、アレルギー、感染性疾患、心血管疾患、肥満依存性の代謝性疾患、神経変性、アポトーシス、自己免疫障害、ウイルス感染、細菌感染、自己免疫疾患である、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物からなる、ワクチンアジュバント。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、少なくとも1つの薬学的に許容される担体及び少なくとも1つの薬学的に許容される免疫原性抗原を含む、ワクチン組成物。
【請求項14】
前記化合物は、前記組成物中に存在する唯一のアジュバントである、請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの追加の有効成分をさらに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
経口、非経口、鼻腔、エアロゾル、舌下、直腸、膣内、局所又は全身投与用の形態である、請求項15又は16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
懸濁液、エマルション、軟膏、クリーム、スプレー、顆粒、粉末、溶液、カプセル、丸薬、錠剤、凍結乾燥製剤、トローチ剤、エアロゾル、噴霧又は注射の形態である、請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
TLR4受容体を活性化することによる免疫刺激を必要とするか、あるいは免疫刺激から利益を得る疾患の治療において、有効成分又はアジュバントとして使用するための、請求項15~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記疾患は、がん、アレルギー、感染性疾患、心血管疾患、肥満依存性の代謝性疾患、神経変性、アポトーシス、自己免疫障害、ウイルス感染、細菌感染、自己免疫疾患である、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
式1iの中間体であって、
【化2】
は、飽和C-C15アルキル鎖である、中間体。
【請求項22】
式1iの中間体の調製方法であって、
【化3】
工程
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応による、グルコサミンハイドロクロリドのC位のアミノ基の選択的アシル化、
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応による、C位のヒドロキシル基の選択的シリル化による保護、
を含む、方法。
【請求項23】
式1の化合物の調製方法であって、
【化4】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基であり、
工程:
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応により、グルコサミンハイドロクロリドのC位のアミノ基を選択的にアシル化すること;
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応によって、C位のヒドロキシル基を選択的にシリル化することにより保護して、それによって、請求項22に記載の中間体を得ること;
3)トリエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下におけるアシルクロリドとの反応により、C及びC位のヒドロキシル基を選択的にアシル化すること;
4)トリフラートイミダゾリウムの存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイトとの反応により、C位のヒドロキシル基をリン酸化して、その後にメタクロロ過安息香酸を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続くこと;
5)触媒量の硫酸の存在を介して、C位のシランからヒドロキシル基を脱保護すること;及び
6)パラジウム炭素(Pd/C)によって触媒される水素化を介して、C位のベンジルからホスフェートを脱保護して、任意にC位の任意の置換基上のベンジルを脱保護すること、
を含む、方法。
【請求項24】
工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5i):
5i)トリフラートイミダゾリウムの存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイトとの反応により、C位のヒドロキシル基をリン酸化して、その後にメタクロロ過安息香酸を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続き、前記脱保護工程6)は、C及びC位において実行されること、
結果として生じるR4は、リン酸基(PO 2-)であること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法
【請求項25】
式1の化合物は、
=R=R=C1123及びR=PO 2-又は
=R=R=C19及びR=PO 2-又は
=R=R=C1327及びR=PO 2-
の1つである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5ii):
5ii)適切な縮合剤及び触媒の存在下におけるカルボン酸との反応又は適切な触媒の存在下におけるアシルクロリドとの反応により、C位のヒドロキシ基をアシル化することであって、前記脱保護工程6)は、C位において実行されること、
結果として生じるRは、アシル基であること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記アシル化工程5ii)において、前記適切な縮合剤及び触媒は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5iii):
5iii)適切な活性化剤、触媒及び分子篩の存在下におけるグリコシルクロリド供与体又はグリコシドチオエチル(Set)供与体の反応により、C位のヒドロキシル基をグリコシル化すること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5iv):
5iv)適切な活性化剤、触媒及び分子篩の存在下における安定化アルキルクロリドの反応により、Cのヒドロキシル基をアルキル化すること、
結果として生じるRは、n個のアルキル基であること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記グリコシル化工程5iii)及びアルキル化工程5iv)において、前記適切な活性化剤は、酸化銀(I)又はNIS(N-ヨードスクシンイミド)であって、前記適切な触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸又はHOFox(3,3-ジフルオロオキシインドール)であり、前記適切な分子篩は、水分捕捉剤である、請求項28及び29に記載の方法。
【請求項31】
工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5v)及び工程5vi):
5v)塩基としてのトリエチルアミン及び適当な触媒の存在下におけるトシルクロリドの反応により、C位をトシル化すること、
5vi)テトラブチルアンモニウムヨージドの存在下におけるアジ化ナトリウムとの反応により、C位にアジドを挿入すること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記トシル化工程5v)において、前記適切な触媒は、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5vii)及び工程5viii):
5vii)唯一の活性化剤としてのBi(OTf)の存在下におけるピコロイル基を有するグリコシルクロリド供与体の反応により、C位のヒドロキシル基をグリコシル化すること、
結果として生じるRは、グリコシル基であること、
5viii)Cu(OAc)との反応によりピコロイル基を除去すること、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記アシル化工程3)は、-78℃~0℃の範囲の温度及び0.05~0.2当量の範囲の触媒の量で実行され、それによって、前記式1の化合物のβ-アノマーを獲得して、好ましくは、-20℃の温度及び0.1当量の触媒の量で実行される、請求項24~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記アシル化工程3)は、20℃~50℃の範囲の温度及び2~2.5当量の範囲の触媒の量で実行され、それによって、前記式1の化合物のα-アノマーを獲得して、好ましくは30℃の温度及び2.02当量の触媒の量で実行される、請求項24~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
式1の化合物の合成のための請求項21に記載の中間化合物の使用であって、
【化5】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基である、中間化合物の使用。
【請求項37】
式Xの化合物の調製方法であって、
【化6】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり
は、OHであり、R、R及びRのそれぞれは、C位に-OH置換基を含まず、
工程:
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応により、グルコサミンハイドロクロリドのC2位のアミノ基を選択的にアシル化すること、
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応により、C位のヒドロキシル基を選択的にシリル化することによって保護して、請求項21に記載の式1iの中間体を得ること、
3)トリエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下におけるアシルクロリドとの反応により、C、C及びC位のヒドロキシル基を完全にアシル化すること、
4)酢酸の存在下におけるエチレンジアミンとの反応により、C位を選択的にジアシル化すること、
5)トリフラートイミダゾリウムの存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイトとの反応により、C位のヒドロキシル基をリン酸化して、その後にメタクロロ過安息香酸を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続くこと、
6)触媒量の硫酸の存在を介して、C位のシランからヒドロキシル基を脱保護すること、
7)パラジウム炭素(Pd/C)によって触媒される水素化を介して、C位のベンジルからホスフェートを脱保護して、任意にC位の任意の置換基上のベンジルを脱保護すること、
を含む、方法。
【請求項38】
式Xの化合物の合成のための請求項21に記載の中間化合物の使用であって、
【化7】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、OHであり、R、R及びRのそれぞれは、C位に-OH置換基を含まない、中間化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、ヒトToll様受容体4(TLR4)のアゴニスト活性を有する新規合成分子、それらを含む組成物、及び特に、免疫応答を誘導するか、あるいは増大させることが有用である疾患の治療のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
自然免疫は、病原体及び細胞傷害に対する高等生物の防御の第一線である。これは、特定のタンパク質受容体によって、病原体又は細胞傷害と関連している特定の分子構造(それぞれPAMPs及びDAMPs)を認識することに基づいている。かかる受容体は、パターン認識受容体(PRRs)として知られており、それらの細胞内、細胞質内又は膜上における局在性、及びそれらの機能によって決まる、様々な類型のものであってもよい。
【0003】
最も研究されている受容体は、Toll様受容体(TLR)ファミリーであり、その主な役割は、様々なPAMPsを認識し、炎症を通じて病原体の存在を身体に警告し、感染と闘うために他の免疫細胞を動員して、そのような脅威に対する最も適切で特異的な防御である、獲得免疫を発達させる過程を開始することである。
【0004】
実際に、病原体に対する自然免疫反応は、獲得免疫反応の性質及び強度の両方を決定するに当たり重要であり得る。
【0005】
このような訳で、TLR活性化剤(アゴニスト)の開発は、炎症刺激が治療の観点から有益である場合、薬学的関連性がある:例は、がん免疫治療薬及びワクチンアジュバントである。最初の事例において、炎症促進活性は、腫瘍環境における免疫系の再活性化につながり、腫瘍を破壊し得る(Bhatia S,Miller NJ,Lu Hら、Intratumoral G100,a TLR4 agonist,induces antitumor immune response and tumor regression in patients with Merkel cell carcinoma.Clin Cancer Res.2019;25(4):1185-1195.doi:10.1158/1078-0432.CCR-18-0469)。
【0006】
第二の事例において、現代のワクチンは、もはや不活化病原体全体ではなく、アジュバント化(adjuvation)なしでは正しい炎症反応を刺激することができない、そのサブユニットを使用しているため、炎症促進活性が有利である。現在まで、TLR受容体を結合させて活性化することができる様々な小分子が存在し、それらの一部は、アジュバントとして使用されている:例えば、イミキモド及びレジキモドなどのイミダゾキノリンTLR7/8アゴニスト、並びにPam2CS型TLR2/TLR6アゴニスト及び例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)及びアミノアルキルグルコサミニド-4-ホスフェート(AGP、また、コリクサ化合物、CRXとも称される)などのTLR4アゴニストなど。
【0007】
TLRの間で、TLR4は、高い薬理学的関心のあるものであり:その活性化は、自然免疫及び適応免疫を刺激する最も効率的な方法である。実際に、TLR4は、2つのはっきりと異なる細胞機能機構を示し、これが炎症性サイトカインのより大量かつ不均一な放出につながり、より完全な免疫応答を引き起こす。
【0008】
TLR4の天然アゴニストは、グラム陰性菌の外膜の主成分であるリポ多糖(LPS)である。それは、3つの部分に分けられる:O-抗原と呼ばれる長い多糖鎖、コアと呼ばれる短いオリゴ糖、及び最後に、2つのグルコサミンによって形成され、一般に2つのホスフェート及び変数のアシル鎖が結合している、分子の免疫原性部分である、リピドA(lpd A)。
【0009】
リピドAのアゴニスト活性は、TLR4の共受容体である骨髄分化因子2、すなわち、MD-2への結合親和性(結合する能力)に基づいており、自然免疫細胞、すなわち、マクロファージ及び樹状細胞の表面に(TLR4/MD-2/LPS)複合体の形成を必然的に伴う。
【0010】
LPSによるTLR4受容体の活性化過程は、溶液中の個々のLPS分子又は凝集体が脂質結合タンパク質(LBP)と相互作用することから始まり、LPS分子と複合体を形成する。その後、LPS分子は、LBPから共受容体CD14に移行し、次にCD14はMD-2からLPS分子を移行させる。
【0011】
しかしながら、Lpd Aは、ピコグラムの位数の量でさえ毒性があり、その結果として薬理学的に使用されることはできない(Molinaro A,Holst O,Lorenzo F Diら、Chemistry of lipid a:At the heart of innate immunity.Chem-A Eur J.2015;21(2):500-519.doi:10.1002/chem.201403923)。
【0012】
リピドAに類似した構造を有するが、内毒性(endotoxicity)が弱毒化された合成分子及び天然分子は、毒性作用を排除しながら免疫刺激活性を維持するという視点において、ワクチンアジュバントとして興味深い候補である。
【0013】
モノホスホリルリピドA(MPL)は、C1リン酸基がないことを除けば、リピドAと全く一致する分子である。それほど類似しているにもかかわらず、炎症活性は、天然分子のそれの0.1%だけであり、その薬理学的プロファイルは非常に優れているため、ワクチンアジュバントとしての使用がFDAから認可されている。分子は、現在、サーバリックス及びフェンドリックスのワクチンに使用されている。しかしながら、現在使用されているMPLアジュバントは、天然のLPSから直接製造されるため、化学的に不均一である。
【0014】
さらに、これらの二糖化合物の合成は、非常に長く複雑であり、最終価格が約200eur/mgという結果になる。このような訳で、単糖構造を有するリピドAのアナログをさらに開発し、既知のアナログの有利な特徴が同じであるか、あるいはさらに改良され、好ましくは、より単純な合成経路を通じて得られることは興味深い。
【0015】
当技術分野において知られている単糖構造のリピドAアナログの例は、アミノアルキルアグリコンN-アシレートのユニットとのグリコシド化によって結合した単糖ユニットを含むAGPs(CRXアジュバントとしても知られている、Corixa)と名付けられた合成化合物によって示される。
【0016】
AGPは、TLR4の強力なアゴニストであり、化学的に均一であり、化学合成によって製造される。
【0017】
さらに、TLR4の活性化において有効である、より単純なリピドAのアナログは、リピドAの還元部分又は非還元部分を模倣したモノリン酸化単糖誘導体を含む(以下のスキーム)。
【化1】
【0018】
当該技術分野において知られている化合物の他の例は、C位でリン酸化された、グルコピラノシド骨格(skeleton)、C位の炭素数14の直鎖及びC位の分岐鎖(GLA63において炭素数14+14又はGLA60において炭素数14+12)を含む化合物GLA63及びGLA60(上記のスキーム)によって示される(Motohiro Matsuura,Makoto Kiso and Akira Hasegawa Infect.Immun.1999,67(12),6286-6292)。リピドAを部分的に模倣し、リピドAの生合成前駆体である、単糖リピドXを模倣するこれらの単糖は、マウス及びヒト細胞の両方において、TLR4依存性のサイトカインTNF-α及びIL-6の産生を刺激する活性がある。
【0019】
また、当技術分野において知られている、化合物SDZ MRL 953は、マウスのマクロファージ及び好中性顆粒球において、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)及びTNF-α因子などの炎症性サイトカインの放出を刺激する強力な活性を示し、それに付随して、ガラクトサミンで感作された(-sensitized)マウスにおいて、親エンドトキシン(parent endotoxin)(Salmonella abortus equi)と比較して、少なくとも10の倍数(a factor of at least 10)の毒性の減少を示した。
【0020】
実験的微生物感染モデルにおいて、化合物は、骨髄抑制マウス又は免疫不全マウスに1回又は3回のいずれかを予防投与した場合、高い予防効果を有することを証明した。
【0021】
SDZ MRL 953と50%の反応に達するために有効な用量は、感染因子又は投与経路によって変わる。しかしながら、全ての場合において、得られたEC50は、エンドトキシンであるSalmonella abortus equiで得られたものの約10倍超であった。
【0022】
しかしながら、毒性が低いおかげで、例えば、LD25/ED75として表される、この分子の治療指数は、エンドトキシンと比較して有意に改善され、感染因子及び投与経路に応じて、約5~>500の範囲である。
【0023】
化合物はまた、エンドトキシンに対する耐性を誘導する点でも効率的であることを証明した:化合物の反復投与は、エンドトキシン関連の致死リスクに対する一過性の耐性(≧1週間)を誘導する。
【0024】
また、これらの良好な結果は全て、抗生物質治療がすでに非効率的であることを証明した、大腸菌(Escherichia coli)によって引き起こされた進行性敗血症のモデルにおいても確認された:微生物接種の1日前にSDZ MRL 953を1回投与する前処理は、投与した抗生物質の治癒効果を劇的に増加させた。このような訳で、併用療法で免疫刺激剤の投与量を増加させると、長期生存率が有意に上昇した。
【0025】
動物及びインビボでSDZ MRL 953によって実証された忍容性のために、この化合物は、その後ヒトモデルで試験された。
【0026】
Salmonella abortus equiのエンドトキシンの既知の抗腫瘍活性及びその免疫刺激特性に基づいて、Kianiら(A.Kiani,A.Tschiersch,E.Gaboriau,F.Otto,A.Seiz,H.-P.Knopf,P.Stutz,L.Farber,U.Haus,C.Galanos,R.Mertelsmann,and R.Engelhardt,Blood,1997,1673-1683)は、対照培地を用いて無作為化二重盲検第I相試験を実施し、腫瘍に罹患した患者にSDZ MRL 953を投与して、第一に、その生物学的効果及びそのヒトにおける投与の安全性、第二に、その後のそのエンドトキシン(LPS)添加に対する反応への影響を評価した。
【0027】
SDZ MRL 953の投与は、安全性及び優れた忍容性を証明した。同じSDZ MRL 953は、顆粒球数並びにG-CSF及びインターロイキン-6(IL-6)の血清レベルを上昇させるが、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1b及びIL-8の血清レベルは上昇させない。
【0028】
それ故に、SDZ MRL 953は、3つの関連性のある特徴を有する、すなわち、1)高い忍容性及び低い毒性、2)G-CSF産生を誘導する能力、その結果、3)細胞内の一次防御のグループの増加によって発現する非特異的な免疫抵抗性を刺激する能力。
【0029】
SDZ MRL 953の臨床使用において、これらの良好な結果にもかかわらず、
この分子の作用機序は、まだ分子詳細に研究されていない。
【0030】
SDZ MRL 953の合成は、グルコサミンのコアが純エナンチオマーとして3(R)-ヒドロキシミリスチン酸の鎖をC、C及びC位に結合するという事実のために、複雑である。3-ヒドロキシミリスチン酸は、ラセミ体として市販されているが、純エナンチオマー3(R)-ヒドロキシミリスチン酸は、SDZ MRL 953の合成に使用する前に、ラセミ体から単離される必要がある。
【0031】
WO2019/092572は、トリアシル化モノホスホリルグルコサミンのコア、及び特に、FP112のC位に1つのリン酸基を有する、さらなる化合物のクラスを開示している。
【化2】
【0032】
FP112は、lpd Aの還元末端及びSDZ MRL 953に類似した化合物であるが、3つの完全に飽和した非置換のアシル鎖を有する。この化合物は、光学的に純粋なアシル鎖の生成がその合成に必要ではないため、当該技術分野において知られている化合物よりも合成が著しく容易である。
【0033】
FP112は、多数の炎症性サイトカインの放出を刺激することができるため、優れた薬理学的プロファイルを有しており、そのうち最も注目すべきものは、IL-1α、IL-1β、IL-6、TNF-α及びIFNβである。
【0034】
FP112は、Hek-Blue、Raw-Blue、THP-1細胞を用いて、インビトロで広範囲にわたって試験され、10μMの濃度ですでに低毒性及び良好な炎症促進活性を常に明示した。
【発明の概要】
【0035】
本発明の著者らは、TLR4受容体の有効なアゴニストである、当該技術分野において知られているものとは異なる、トリアシル化モノホスホリルグルコサミンのコアを有する新規化合物のグループを同定した。有利には、前記新規化合物は、興味のある様々な基で官能基化され得るため、当該技術分野において記述されている化合物よりも多用途である。本発明の著者らはまた、当該技術分野において知られている他の化合物の合成方法と同様に、当該技術分野において開示されている方法よりも単純、迅速かつ安価である、前記新規化合物の新たな合成方法も開発した。
【0036】
本発明の著者らは、本明細書において、式1の新規化合物を提供し、
【化3】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、

は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され(be linked by means of a bond)得る、当業者に既知の任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基である。
【0037】
前記化合物は、WO2019/092572において開示された化合物と外見上は類似しているが、同じ化合物と比較していくつかの利点を有する。第一の利点は、式1の化合物の分子構造がそれらをより安定にするという事実によって示される:実際に、リン酸基が有機化学において最良の離脱基の1つであることが知られているが、式1の化合物のC位のリン酸基は、上述した先行技術の化合物中に存在する、Cのリン酸基よりもはるかに安定であることを証明している。
【0038】
一例として、式1の化合物は、脱シリル化反応(FP20合成の反応5及びFP11合成の反応6)においてより安定である。
【0039】
FP112の合成中のCのホスフェートの不安定性は大きな問題であり、ホスフェート分解が温和な条件での操作でも観察され、2つの主要な脱リン酸化副産物を形成した(実験セクションにおいて示される)。その上、FP11の事例において、精製収率(purification yield id)は低くなり、平均すると50%近くになる。
【0040】
FP20において、脱シリル化は、良好な収率で、アノマーホスフェートの切断の問題なしに、90%の収率及びごくわずかな副産物の形成で進行した(proceded with)。
【0041】
第二の利点は、本発明の化合物の化学合成のために提供されるより単純な方法であり、最終化合物を得るために、6つの合成工程しか必要としない:さらに、本発明の方法において、クロマトグラフィーカラムによる精製は、3回で十分であり、それによって、大量の精製溶媒の浪費を避けることができる。その結果として、この合成はより安価であり、それ故に、実験室レベルでより多くの量を合成することも可能であり、過程の工業的拡張可能性も容易にする(easying)。
【0042】
最後に、本発明の化合物の大きな利点は、ベース分子をC位の様々な官能基で修飾できることであり、それによって、前記TLR4アゴニスト及び追加機能を組み合わせることができる分子の提供を可能にする。本発明の新規化合物の異なる構造は、化合物により高い安定性をもたらし、官能基化のためにC位を提供する。FP11において、Cの官能基化は困難である:官能基化のためのほとんどの化学試薬は、脱シリル化の間に起こるのと同様に、Cホスフェートを切断する。FP20化合物及び誘導体については、アノマーホスフェートが欠損しており、Cの官能基化は実行可能である(feaseable)。これにより、当業者は、例えば、その溶解性及び/又は生物学的利用能を増加させることによって、標的特異的置換基を付加することによって、分子を他の官能性置換基と共役させることによってCの官能基を修飾することにより、特定の望ましい活性のための化合物をカスタマイズすることができる。
【0043】
したがって、本発明の目的は:
1.式1の化合物であり、
【化4】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基であり、そして、その;
式1の化合物からなるワクチンアジュバント;
式1の化合物、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、及び少なくとも1つの薬学的に許容される免疫原性抗原を含むワクチン組成物;
式1の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む医薬組成物、
を使用する。
【0044】
式1iの中間体であり、
【化5】
は、飽和C-C15アルキル鎖である。
【0045】
式1iの中間体の調製方法であり、Rが飽和C-C15アルキル鎖であり、
【化6】
下記の工程
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリド(acyl chloride)との反応による、グルコサミンハイドロクロリド(glucosamine hydrochloride)のC位のアミノ基の選択的アシル化、
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応による、C位のヒドロキシル基の選択的シリル化による保護、
を含む。
【0046】
式1の化合物の調製方法であり、
【化7】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基であり、下記の工程:
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応による、グルコサミンハイドロクロリドのC位のアミノ基の選択的アシル化;
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応により、C位のヒドロキシル基を選択的シリル化によって保護して、それによって請求項20に記載の中間体を得ること;
3)トリエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下におけるアシルクロリドとの反応による、C及びC位のヒドロキシル基の選択的アシル化;
4)トリフラートイミダゾリウム(triflate imidazolium)の存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイト(dibenzyl N,N-diisopropylphospharamidite)との反応による、C位のヒドロキシル基のリン酸化、その後にメタクロロ過安息香酸(metachloroperbenzoic acid)を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続くこと;
5)触媒量の硫酸の存在を介した、C位のシランからのヒドロキシル基の脱保護;及び
6)パラジウム炭素(Pd/C)によって触媒される水素化を介した、C位及び任意に、C位のベンジルからのホスフェートの脱保護、
を含む。
【0047】
式Xの化合物の調製方法であり、
【化8】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり
は、OHであり、R、R及びRのそれぞれは、C位に-OH置換基を含まず、
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応による、グルコサミンハイドロクロリドのC2位のアミノ基の選択的アシル化;
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応により、C位のヒドロキシル基を選択的シリル化によって保護して、それによって請求項20に記載の式1iの中間体を得ること;
3)トリエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下におけるアシルクロリドとの反応による、C、C及びC位のヒドロキシル基の完全アシル化;
4)酢酸の存在下におけるエチレンジアミンとの反応による、C位の選択的ジアシル化、
5)トリフラートイミダゾリウムの存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイトとの反応による、C位のヒドロキシル基のリン酸化、その後にメタクロロ過安息香酸を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続くこと;
6)触媒量の硫酸の存在を介した、C位のシランからのヒドロキシル基の脱保護;
7)パラジウム炭素(Pd/C)によって触媒される水素化を介した、C位及び任意に、C位のベンジルからのホスフェートの脱保護。
【0048】
式1の化合物の合成のための請求項22に記載の中間化合物の使用であり、
【化9】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基である。
【0049】
そして、
式Xの化合物の合成のための、本明細書において開示される実施形態のいずれか1つにおいて規定される式1iの中間体の使用であり、
【化10】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、OHであり、R、R及びRのそれぞれは、C位に-OH置換基を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1 TLR4及びTLR2に対するFP化合物の活性。HEK-BlueTM hTLR4(A)及びHEK-BlueTM TLR2(B)細胞は、指示濃度の化合物FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24、MPLA、LPS(100ng/mL)及びPam2CSK4(1ng/mL)で処理され、16~18時間インキュベートされた。結果は、LPS単独(A)又はPam2CSK4(B)での刺激に関しては正規化され、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMの百分率として表現された(処理対未処理:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
【0051】
図2図2 ヒト及びマウスマクロファージに対するFP化合物の活性。THP-1-X BlueTM(A)及びRAW-BlueTM(B)細胞は、指示濃度の化合物FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24、MPLA及びLPS(100ng/mL)で処理され、16~18時間インキュベートされた。結果は、LPS単独での刺激に関しては正規化され、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMの百分率として表現された(処理対未処理:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
【0052】
図3図3 細胞生存率(Cell viability)。マクロファージに分化したTHP-1細胞は、FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24(0.1~50μM)の濃度を上昇させた状態(increasing concentrations)並びにLPS(100ng/mL)で処理された。溶媒の毒性を評価するため、同じ濃度(0.1~50μM)でのビヒクル(DMSO)を加えた。データは、(未処理)コントロールに対して正規化され、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMの百分率として表現された(処理対未処理:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
【0053】
図4図4 細胞生存率(Cell viability)。RAW-Blue細胞は、FP20、FP21、FP22、FP23、及びFP24(0.1、1、10、25、50μM)の濃度を上昇させた状態並びにLPS(100ng/mL)で処理された。溶媒の毒性を評価するために、同じ濃度(0.1、1、10、25、50μM)でのビヒクル(DMSO)を加えた。データは、(未処理)コントロールに対して正規化され、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMの百分率として表現された(処理対未処理:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
【0054】
図5図5 HEK-Blue hTLR4、HEK-Blue Null及びHEK-Blue hTLR2細胞は、指示されたとおりに処理され、18時間インキュベートされた。上清を回収し、SEAPレベルをQUANTI-blue法で定量化した。データは、S-LPS(A、B)、IL-1β(C)又はPAM2CSK4(D)での刺激に対して正規化され、3回の独立した実験の平均百分率±SDとして表現された(処理対未処理:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
【0055】
図6図6 A)アジュバント投与後7日間にわたるマウスの体重(処置につきn=4)。B)プライム免疫化(予防接種後22日目)及びブースター免疫化(19日後)後のアジュバントとしてMPLA、FP112及びFP11を用いる、OVA免疫に対する抗体応答(処置につきn=8)。統計比較のために、各曲線下の面積は、αを0.05とするBrown-Forsythe検定及びウェルチの一元配置分散分析検定によって検査された。
【0056】
図7図7 化合物25(FP11合成における工程6の不純物1)のH NMR、これは6.04ppmでのシグナルの多重度(d)によって、C-1のホスフェートの切断を観察することができる。C-1にホスフェートが存在する場合、H-Pカップリングにより、H-1は、ddの多重度を有する。
【0057】
図8図8 化合物26(FP11合成における工程6の不純物2)のH NMR、これは6.01ppmでのシグナルの多重度(d)によって、C-1のホスフェートの開裂を観察することができる。C-1にホスフェートが存在する場合、H-Pカップリングにより、H-1は、ddの多重度を有する。この事例において、シランもまた、切断されており、0ppm及び0.85ppmでそれらのシグナルを欠いていることよって観察された。
【0058】
図9図9 化合物26(FP11合成における反応6の不純物2)の13C NMR、これは図8において観察された化合物26の構造を確認する。
【0059】
図10図10 ヒトマクロファージに対するFP200ジホスフェート化合物の活性。 分化THP-1-X Blue(商品商標)細胞は、指示濃度の化合物FP11、FP112、FP20、FP200、FP21、MPLA及びLPS(100ng/mL)で処理され、16~18時間インキュベートされた。結果は、LPS単独での刺激に関しては正規化され、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMの百分率として表現された(処理対未処理:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
【0060】
図11図11-ヒトマクロファージに対するFP207の活性 分化THP1-XBlue(商品商標)は、指示濃度のFP20、FP207、MPLA及びLPS(100ng/mL)で処理され、16~18時間インキュベートされた。結果は、LPS単独での刺激に関しては正規化され、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMの百分率として表現された(処理対未処理:P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
【0061】
図12図12-細胞生存率 分化THP1-XBlue(商品商標)細胞は、FP20及びFP207(0.1~25μM)の濃度を上昇させた状態、MPLA並びにLPS(100ng/mL)で処理された。データは、(未処理)コントロールに対して正規化され、少なくとも3回の独立した実験の平均±SEMの百分率として表現された。
【0062】
用語集
本明細書において、「TLR4受容体アゴニスト」という用語は、TLR4受容体に選択的に結合して、前記受容体の立体構造変化を誘導し、次に前記受容体の天然リガンドによって誘導されるものと類似する反応を誘発することにより、細胞内刺激を生成する化合物を示す。TLR4の場合において、アゴニストとして記述されている物質は、共受容体MD-2に結合し、次にTLR4に非共有結合し、それによって、受容体(receptorial)複合体(TLR4/MD-2/アゴニスト)を生成して、細胞表面から核転写因子の活性化及び炎症性サイトカイン(主としてTNF-α及び様々なタイプのインターロイキン)の合成につながるシグナルカスケードを開始する。
【0063】
本明細書において、FP112として同定される化合物は、以下に表される式を有する化合物を指し、
【化11】
=R=R=C=OC1123及びR=Hであり、WO2019/092572においてFP112として開示されている。
【0064】
本明細書において、以下の式1で表されるC中の結合は、有機化学において一般に意図される意味を有し、
【化12】
化合物がα又はβアノマーの立体配座(conformation)のいずれかにあり得るということを示す。
【0065】
本明細書において、以下の式1αで表されるC中の結合は、有機化学において一般に意図される意味を有し、
【化13】
化合物がαアノマーの立体配座にあるということを示す。
【0066】
本明細書において、以下の式1αで表されるC中の結合は、有機化学において一般に意図される意味を有し、
【化14】
化合物がβアノマーの立体配座にあるということを示す。
【0067】
本明細書において、「触媒量」という用語は、触媒効果を得るような化学反応に使用される物質の量又は濃度を意味する。特に、本明細書において、「触媒量」という用語は、「体積/体積濃度の0.5%~1%の範囲」によって置換され得る。
【発明を実施するための形態】
【0068】
発明の詳細な説明
本発明は、式1の化合物に関連しており、
【化15】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る、当業者に既知の任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基である。
【0069】
したがって、本明細書によれば、各アルキル鎖、R、R又はRは、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15アルキル鎖であり得る。
【0070】
本明細書によれば、R、R及びRのそれぞれは、上記で規定されたように、異なるか、あるいは同一のアルキル鎖であり得る。
【0071】
本発明の一実施形態において、R、R及びRの少なくとも2つは同一である。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、前記R、R及びR鎖は、C位上に-OH置換基を含まない。C位のヒドロキシルを欠くことは、有利には、より短く効率的な合成経路を可能にして、それによってヒドロキシル基の様々な保護及び脱保護工程を排除し、合成のコストを低減し、この合成過程を薬剤製造のために拡張可能かつ工業化可能(industrializable)にする。
【0073】
本発明のもう一つの実施態様によれば、前記R、R及びR鎖は、いかなる置換基も含まない。
【0074】
上述したように、C位のR鎖は、TLR4アゴニスト活性が破壊されないという条件で、任意に官能基化された目的の置換基であり得る。
【0075】
非限定的な例によれば、Rは、ヒドロキシル基(OH)、リン酸基(PO 2-)、アジド基(N)、アミン基(NH)、アシル基(O(C=O)R)アルキル基(OR)又はグリコシル基であり得る。
【0076】
位のRが官能基化に適することは、本発明の化合物の極めて有利な特徴である。上述したように、TLR4のアゴニスト機能及び選択されたRの置換基に応じて、任意の目的の他の機能を組み合わせることができる分子を提供することが実際に可能である。例えば、驚いたことに、リン酸基(PO 2-)を用いて溶解性及び生物学的利用能の増加を得ることが可能である。実際に、当技術分野における教示(WO2019/092572)によれば、当該明細書において記述されたアゴニストにおいて2つのリン酸基が存在すると、結果としてTLR4アゴニスト活性が消失した。一方、本発明の新規化合物は、驚くべきことに、第2のリン酸基を有していてもTRL4アゴニスト活性を保持し、それによって化合物自体の溶解性を改善する。当業者に知られているように、溶解性の向上は、化合物の送達、生物学的利用能及びそれを含む組成物の安定性を改善するため、重要な利点である。これ故に、Cに付加的なホスフェートが単純に存在するだけで、医薬組成物又はワクチン組成物の効率を著しく改善し得る。
【0077】
本発明の化合物のCで官能基化が可能であることのもう一つの重要な利点は、ワクチンアジュバントとして使用される場合、抗原又は抗原性エピトープと共役させるか、あるいは別のアジュバントと共役させて、その活性を改善、拡大することも可能であるということである。
【0078】
さらに、化合物は、標的特異的分子と共役して、それによって、好ましい部位への送達を改善し得る。
【0079】
その上、抗腫瘍組成物に使用される場合、本発明の化合物は、その有効性を向上させるために、追加の異なる薬剤と連結させることによって官能基化されることができる。
【0080】
例として、親油性効果を改善するために、水素結合を形成することができる水素原子を含まない置換基を使用すること、又は親油性と反比例している水への溶解度を改善するために、水素結合を形成することができる水素原子の存在を特徴とする置換基を使用することが可能である。
【0081】
として多種多様の置換基を利用する可能性から派生するさらなる利点は、例えば、単純な結合の周りの自由回転を制限する傾向がある置換基を使用することによって派生し得る立体効果であり、それ故に、エネルギー的にアクセス可能な立体配座の数を減少させる。
【0082】
これらの立体配座の中に生理活性のあるものが存在する場合、「補強(stiffening)」効果は、受容体に対する分子の親和性を向上させる。
【0083】
もう一つの重要な例は、C位のリンカーを用いた官能基化によって表される。適切なリンカー(linkers si)の非限定的な例は、ジスルフィド(R-S-S-R’)、ヒドラゾン(R’R’’C=N-NH)、ペプチド又はチオエーテル(R’-S-R’’)又は同様のものによって表される。
【0084】
上述したようなリンカーは、生物学的に活性な抗がんペイロード又は薬剤(本発明の化合物など)に連結された抗体を含む複合分子である抗体薬物複合体(ADC)の調製を可能にし、抗体及び本発明の化合物の間の組み合わせ効果を得ることを可能にする。
【0085】
さらに興味深い例は、Cにグリコシル基を挿入する可能性であり、結果として生じる化合物は、2つの利点を有することになる:親水性グリコシル基の存在による水溶性の向上、及びLPSのコア部分を模倣することによる、理論的により優れた受容体に対する親和性。
【0086】
望ましい特性に応じた適切な置換基は、当業者に知られている。
【0087】
本発明によれば、式1の化合物は、式1αを有するα-アノマー、又は式1βを有するβ-アノマーであってもよい。
【化16】

【化17】
【0088】
いくつかのあり得る非限定的な実施形態によれば、式1の化合物は、式1の化合物のα-アノマー、又はβ-アノマーの形態の化合物から選択されることができ、
=R=R=C1123、及びR=OH、又は
=R=C1327;R=C1123、及びR=OH、又は
=R=R=C19、及びR=OH、又は
=R=R=C1327、及びR=OH、又は
=R=C19;R=C1123、及びR=OH、又は
=R=R=C1123、及びR=PO 2-、又は
=R=R=C19、及びR=PO 2-、又は
=R=R=C1327、及びR=PO 2-、又は
=R=R=C1123、及びR=OC、又は
=R=R=C1123、及びR=O(C=O)C(OH)、又は
=R=R=C1123、及びR=NH
=R=R=C1123、及びR=O(C=O)CCH(CHOH)
=R=R=C1123、及びR=OCH(CHOH)CH(CH)O、
=R=R=C1123、及びR=OCH(CHOH)CH(CHOH)O、
=R=R=C1123、及びR=OCH(CHOH)(CH)O。
【0089】
好ましい実施形態において、化合物は、式1の化合物のβ-アノマーである、例えば:
【0090】
化合物FP20:R=R=R=C1123=OHを有する、
【化18】
【0091】
化合物FP21:R=R=C1327=C1123=OHを有する、
【化19】
【0092】
化合物FP22:R=R=R=C19=OHを有する、
【化20】
【0093】
化合物FP23:R=R=R=C1327=OHを有する、
【化21】
【0094】
化合物FP24:R=R=C19=C1123=OHを有する、
【化22】
【0095】
化合物FP200:R=R=R=C1123=PO 2-を有する、
【化23】
【0096】
化合物FP202:R=R=R=C19=PO 2-を有する、
【化24】
【0097】
化合物FP203:R=R=R=C1327=PO 2-を有する。
【化25】
【0098】
本発明によるさらなる実施形態では、C位に追加の置換基を有する式1の化合物は、下記のものから選択されることができる:
【0099】
化合物FP204:R=R=R=C1123=OCを有する、
【化26】
【0100】
化合物FP205:R=R=R=C1123=O(C=O)C(OH)を有する、
【化27】
【0101】
化合物FP206:R=R=R=C1123=NHを有する、
【化28】
【0102】
化合物FP207:R=R=R=C1123=O(C=O)CCH(CHOH)を有する、
【化29】
【0103】
化合物FP20Rha:R=R=R=C1123=OCH(CHOH)CH(CH)Oを有する、
【化30】
【0104】
化合物FP20Glc:R=R=R=C1123=OCH(CHOH)CH(CHOH)Oを有する、
【化31】
【0105】
化合物FP20Man:R=R=R=C1123=OCH(CHOH)CH(CHOH)Oを有する、
【化32】
【0106】
化合物FP20Gal-α:R=R=R=C1123=OCH(CHOH)CH(CHOH)Oを有する、
【化33】
【0107】
化合物FP20Gal-β:R=R=R=C1123=OCH(CHOH)CH(CHOH)Oを有する、
【化34】
【0108】
化合物FP20Lyx:R=R=R=C1123=OCH(CHOH)CHOを有する。
【化35】
【0109】
式14、15、16又は19を有する本発明の化合物は、Cに結合した糖のアノマー(ジアステレオ異性体)の混合物である。
【0110】
式17又は18を有する本発明の化合物は、それぞれCに結合したグルコースの純粋なα及びβアノマーである。
【0111】
一実施形態において、式2を有する化合物が好ましい。
【0112】
本明細書において、そのような化合物はまた、化合物FP20とも称され、R、R及びRは-C1123であり、Rは-OHである。
【0113】
実施例のセクションにおいて報告されたデータは、前述の化合物の特別で有利な特徴を示す。
【0114】
本明細書によれば、そして得られた実験データに基づいて、記述及び請求された化合物がTLR4受容体の有効なアゴニストであるということは明らかである。「受容体のアゴニスト(agonist of a receptor)」(受容体アゴニスト(receptor agonist))とは、文献において一般に定義されているように、すなわち、内因性リガンドの結合部位において特定の受容体を結合させることができる物質を意味する。したがって、名称が示唆するように、前者は、前記部位との結合を後者と競合する。
【0115】
天然リガンドとの結合後、受容体は、立体構造変化に遭い、細胞レベルでのその生物学的活性を媒介する。アゴニストは、リガンド効果を模倣することができる固有の活性を有する分子である。レセプターに結合すると、内因性リガンドと結合することによって引き起こされるものと同程度の立体構造変化を引き起こす。
【0116】
本明細書の場合において、開示及び請求されている各アゴニストは、TLR4受容体に対して選択的なアゴニストである。
【0117】
本明細書及び特許請求の範囲において規定された式(1)の化合物に観察された技術的特徴を考慮すると、前記化合物は、TLR4受容体の活性化から利益を得る疾患、すなわち、免疫系、特に自然活動(innate activity)の活性化が治療効果又は予防効果を有する疾患の治療における有効成分又はアジュバントとして有用である。
【0118】
それ故に、TLR4受容体の活性化を必要とするか、あるいはTLR4受容体の活性化から利益を得る疾患には、治療又は予防が、TLR4受容体の活性化及び前記受容体の活性化によって引き起こされる自然免疫応答により改善される全ての疾患が含まれる。
【0119】
かかる疾患の非限定的な例は、腫瘍、アレルギー、ウイルス感染などの感染性疾患(infectious diseases)、心血管疾患(cardiovascular diseases)、肥満依存性の代謝性疾患(obesity-dependent metabolic diseases)、神経変性(neuronal degeneration)、アポトーシス、自己免疫障害、細菌感染、自己免疫疾患によって表される。自己免疫疾患は、IBD、クローン病又は関節リウマチによって表される。
【0120】
本明細書において化合物FP20としても同定される式2の化合物は、以下に表される式を有する式FP112の化合物と比較されることができ、
【化36】
=R=R=C=OC1123 R4=Hは、WO2019/092572において開示されており、同じR、R、R及びR置換基を有するが、リン酸基がFP112ではC位上にあり、FP20ではC位上にあるという事実により、当該明細書においてFP112と名付けられる。
【0121】
以下の実施例において簡潔に報告される細胞Hek-Blue、Raw-Blue及びTHP-1を用いてFP112についてインビトロで実施された実験は、10μMの濃度で低毒性及び良好な炎症促進活性(activy)を明示した。さらに、ワクチンアジュバントとしての忍容性及び有効性を試験するためにFP112を用いてインビボで実施された実験は、10μgのFP112の投与による付随的損傷がないこと(no collateral damage)、及びワクチンアジュバントとしての有効性がMPLAのそれに匹敵することを明示した。実施例のセクションにおいて報告されたデータは、Hek-Blue、Raw-Blue及びTHP-1細胞で実施された実験に関して、本発明の化合物の活性が、インビボで細胞毒性がなく、ワクチンアジュバントとして有効であることも証明した、WO2019/092572において開示されたアゴニスト化合物の活性に匹敵するということを示す。
【0122】
その上、先行技術ではCのリン酸基が、本発明ではC位に再配置され、それによって、本発明の化合物ではアルキル鎖をC位よりはむしろCに配置することを可能にして、結果的にCの置換基の活性の向上をもたらすため、本発明の化合物は、WO2019/092572において開示された化合物に関しては改良されている。実際に、WO2019/092572は、当該明細書においてFP111と名付けられた化合物が2つのリン酸基を有するということを実験2において開示しており:C位のもの及びC位のもう一方のものが、HEK-BlueTM hTLR4細胞で実施された試験において、TLR4アゴニストとして完全に不活性であることを証明した。WO2019/092572において、活性がないことは、分子内に2つのホスフェートが存在するためであり、分子内のホスフェートの数は、それらのTLR4アゴニスト活性を維持するために1以下でなければならないということが推測された。
【0123】
驚くべきことに、本発明の著者らは、本出願において開示及び請求される化合物、例として、式7、8及び9の化合物などが、一方がC位及びもう一方がC位に2つのリン酸基を有しており、WO2019/092572に開示された化合物FP111が完全に不活性な結果となるものと同じ試験において、TLR4アゴニスト活性を驚くほどに維持するということを発見した。この知見は予想外であり、トリアシル化モノホスホリルグルコサミンのコアにおけるリン酸基の位置が、かかる化合物の活性を有意に変化させ得るということを実証するため、先行技術と比較した本発明の化合物の関連のある利点を証明する。
【0124】
したがって、本発明はまた、ワクチンアジュバントとして、本明細書又は特許請求の範囲に開示された実施形態のいずれか1つにおける式1の化合物も提供する。
【0125】
ワクチン組成物における免疫応答アジュバントの関連性が知られている。実際に、ワクチンアジュバントは、ワクチンの有効性及びワクチン中に存在する抗原に対する、処置された対象における免疫の発達を実質的に増加させる。
【0126】
したがって、本発明の目的はまた、本明細書若しくは特許請求の範囲のいずれか1つの実施形態において規定されるような式1の化合物又はその混合物を含むワクチン組成物でもある。
【0127】
それ故に、本発明によるワクチン組成物は、上記の実施形態のいずれか1つにおいて、本明細書中に記述されている式1の化合物又はその混合物、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、及び望ましい免疫応答、例えば、免疫原性抗原などを誘導することができる少なくとも1つの抗原化合物を含み得る。
【0128】
適切なワクチン担体は、当業者に知られている。
【0129】
医薬担体は、組成物から長期間にわたって抗原成分(複数可)の放出を補助するように選択されることができる。担体は、水溶性物質又は水不溶性物質を含むことができる。
【0130】
水溶性物質とは、薬物分散の間隙への水の浸潤を制御する役割を果たす物質である。
【0131】
1種の水溶性物質、又は2種以上の水溶性物質の組み合わせが使用されてもよい。
【0132】
水溶性物質は、具体的には、合成ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール)、糖類(例えば、スクロース、マンニトール、グルコース、コンドロイチン硫酸ナトリウム)、多糖類(例えば、デキストラン)、アミノ酸(例えば、グリシン及びアラニン)、無機塩類(例えば、塩化ナトリウム)、有機塩類(例えば、クエン酸ナトリウム)及びタンパク質(例えば、ゼラチン及びコラーゲン並びにそれらの混合物)からなる群の1種以上より選択されることができる。
【0133】
さらに、水溶性物質が、有機溶媒及び水の両方に溶解する両親媒性物質である場合、その溶解度を変化させることによって、例えば、親油性薬物の放出を制御する効果を有する。両親媒性物質には、ポリエチレングリコール又はその誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール又はその誘導体、糖の脂肪酸エステル及びアルキル硫酸ナトリウム(fatty acid ester and sodium alkylsulfate of sugars)、並びにより具体的には、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(polyoxyethylenepolyoxypropylene-glycol)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(polyoxyethylene-polyoxypropylene-glycol)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(polyoxyethylene- polyoxypropylene-glycol)、脂肪酸のショ糖エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、平均分子量が1500より大きいデスオキシコール酸ナトリウム(又はデオキシコール酸ナトリウム(DCA))からなる群より選択される1種以上が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
加えて、水溶性物質は、薬物、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖類又はワクチンとして使用される抗原性物質からなる群の1種以上より選択される物質を含んでもよい。
【0135】
水不溶性担体が存在する場合、薬物分散の間隙への水の浸潤を制御する役割を果たす物質を含むことができる。1種の水不溶性物質、又は2種以上の水不溶性物質の組み合わせが使用されてもよい
【0136】
水不溶性物質は、具体的には、水不溶性アクリレート、メタクリレート及び他のカルボキシポリマーを含む水不溶性ポリマー、樹脂及びラテックス、ワックス、リン脂質を含む脂質並びにリポタンパク質の群の1種以上から選択されることができる。
【0137】
当業者は、医薬組成物又はワクチン組成物において一般に使用される担体及び任意のさらなる賦形剤(eccipients)の量を知っている。
【0138】
一実施形態において、医薬担体は、ワクチン組成物の総重量に基づいて、約1重量%~20重量%、好ましくは約10重量%~20重量%を構成することができる。
【0139】
本発明による組成物は、本明細書において規定及び請求されるような化合物の1つ又はその混合物を含んでもよい。
【0140】
本発明の組成物は、アジュバント及び抗原の単一の混合物の形態、又は成分の同時投与若しくは逐次投与のために異なる混合物の形態で調製されることができる。
【0141】
特定の実施形態において、本発明において記述されている式1の化合物は、ワクチン組成物中に存在する唯一のアジュバントである。
【0142】
本発明はまた、本明細書又は特許請求の範囲において提供される実施形態のいずれか1つに記述されている式1の化合物又はその混合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物にも関連している。
【0143】
組成物は、一又は複数の追加の治療効果のある成分(therapeutically active principle)をさらに含むことができる。
【0144】
前記医薬組成物はまた、複数の有効成分の会合(an association)の形態でも製剤化され得る。
【0145】
本発明の医薬組成物は、本明細書又は特許請求の範囲において提供される実施形態のいずれか1つに記載の式1の一又は複数の化合物を唯一の有効成分として含むことができるか、あるいはまた、抗腫瘍有効成分、キナーゼ阻害剤、細胞毒性化合物のような追加の有効成分及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤も含み得る。
【0146】
医薬組成物は、経口、非経口、鼻腔(nasal)、エアロゾル、舌下、直腸、膣内(vaginal)、局所、静脈内又は全身投与のために処方されることができる。
【0147】
懸濁剤、エマルション、軟膏、クリーム、スプレー、顆粒(granulate)、粉末、溶液、カプセル、丸薬(pill)、錠剤(tablet)、凍結乾燥製剤、トローチ剤、エアロゾル、噴霧(nebulization)、注射又はその他のための適切な従来の担体及び/又は賦形剤は、当業者によって選択され得る。
【0148】
本発明のさらなる目的は、TLR4受容体を活性化することによる免疫刺激を必要とするか、あるいは免疫刺激から利益を得る疾患の治療において、あるいは治療におけるアジュバントとして使用するための、本明細書中に開示される実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物である。
【0149】
TLR4受容体を活性化することによる免疫刺激を必要とするか、あるいは免疫刺激から利益を得る疾患は当技術分野において知られており、がん、アレルギー、感染性疾患、心血管疾患、肥満依存性の代謝性疾患、神経変性、アポトーシス疾患、自己免疫障害、ウイルス感染、細菌感染、自己免疫疾患を含む。自己免疫疾患の例は、IBD、クローン病又は関節リウマチによって表される。
【0150】
本発明によれば、組成物は、1日投与量あたり0.01~50mgの本発明の化合物又はその混合物を含むことができ、例として、体重1Kgあたり0.01~50mgの物質を含むことができる(動物での試験)。
【0151】
本発明はまた、本明細書において規定される式1の化合物の合成及びWO2019/092572の式Xにおいて開示される化合物の合成のための新規な方法を提供しており、
【化37】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、OHであり、R、R及びRのそれぞれは、C位に-OH置換基を含まず、そして式1iの中間体の合成に関して、
【化38】
は飽和C-C15アルキル鎖である。本発明の一実施形態によれば、前記Rは、任意の置換基を含まない。
【0152】
式1の化合物は、WO2019/092572において開示された化合物と同様に、WO2019/092572の化合物及びSDZ MRL953の当技術分野における既知の合成法と比較して、より単純で、工業的に拡張可能な方法で合成することができる。後者は、3つの(R)-3-ヒドロキシミリスチン酸のアシル鎖を挿入する必要がある。光学的に純粋な化合物(R-エナンチオマー)は市販されておらず、ラセミ体混合物のみが市販される。さらに、(R)-3-ヒドロキシミリスチン酸は、糖との縮合反応の前に3位のヒドロキシル基を保護する反応を必要とする。上記で規定された式Xの化合物を合成するためのWO2019/092572において開示された方法は、アシル鎖上に置換基がないため、SDZ MRL953について開示された合成方法に関してはすでに単純化されているが、依然として10工程を含む;クロマトグラフィーカラムによる多数の精製及びいくつかの重要な工程、例えば、低分子量アジドの形成など。その上、WO2019/092572において開示された方法は、極めて低い収率(約8~9%)を有し、このことはプロセス全体を非経済的にする。
【0153】
本発明において提供される化合物は、当技術分野の化合物より優れているとは言わないまでも、当技術分野の化合物に匹敵する生物学的活性を示し、はるかに単純で、工業的に拡張可能な方法で合成され得る。
【0154】
これ故に、本発明の目的は、式1iの中間体の調製方法であり、
【化39】
は飽和C-C15アルキル鎖であり、
下記の工程を含む、
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応による、グルコサミンハイドロクロリドのC位のアミノ基の選択的アシル化、
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応による、C位のヒドロキシル基の選択的シリル化による保護。
【0155】
したがって、本発明はまた、式1iの中間体にも関連しており、
【化40】
は飽和C-C15アルキル鎖である。
【0156】
本発明の一実施形態によれば、前記Rは、いかなる置換基も含まない。
【0157】
さらに、本発明は、任意の上記実施形態及び特許請求の範囲において規定される式1の化合物の調製方法に関連しており、
【化41】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る、当業者に既知の任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基であり、
下記の工程を含む:
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応による、グルコサミンハイドロクロリドのC位のアミノ基の選択的アシル化、
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応により、C位のヒドロキシル基を選択的シリル化によって保護して、前述の実施形態において規定された式1iの中間体を得ること、
3)トリエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下におけるアシルクロリドとの反応による、C及びC位のヒドロキシル基の選択的アシル化、
4)トリフラートイミダゾリウムの存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイトとの反応による、C位のヒドロキシル基のリン酸化、その後にメタクロロ過安息香酸を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続くこと、
5)触媒量の硫酸の存在を介した、C位のシランからのヒドロキシル基の脱保護、
6)パラジウム炭素(Pd/C)によって触媒される水素化を介して、C位のベンジルからホスフェートを脱保護して、任意にC位の任意の置換基上のベンジルを脱保護すること。
【0158】
本方法は、代替的に、上記及び特許請求の範囲に規定されている式1iの中間体から開始して、工程3~6を含むことができる。
【0159】
一実施形態において、上述した合成方法は、工程5)の後かつ工程6)の前に、追加の工程5i)を含むことができる、
5i)トリフラートイミダゾリウムの存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイトとの反応による、C位のヒドロキシル基のリン酸化、その後にメタクロロ過安息香酸を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続くこと、及び
結果として生じるR4は、リン酸基(PO 2-)である。
【0160】
実行すると、この方法は、式1の化合物をもたらして、Rがリン酸基であり、例えば、式7、8及び9の化合物などである。
【0161】
別法として、合成方法は、工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5i)の代わりに、工程5ii)をさらに含んでもよい:
5ii)1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの、適切な縮合剤及び触媒の存在下におけるカルボン酸との反応又はN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの、適切な触媒の存在下におけるアシルクロリドとの反応による、C位のヒドロキシ基のアシル化。
結果として生じるRは、アシル基である。実行すると、この方法は、式1の化合物をもたらして、前記Rがアシル基であり、例えば、式10及び11の化合物などである。
【0162】
好ましい実施形態において、前記適切な縮合剤及び触媒は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)である。
【0163】
別法として、合成方法は、工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5i)及び5ii)の代わりに、工程5iii)をさらに含んでもよい:
5iii)活性化剤としての酸化銀(I)、触媒としてのトリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)及び水分捕捉剤(water scavenger)としての分子篩(molecular sieves)の存在下におけるグリコシルクロリド供与体(a glycosyl chloride donor)の反応による、C位のヒドロキシル基のグリコシル化、
又は
活性化剤としてのNIS(N-ヨードスクシンイミド)及び触媒としてのHOFox(3,3-ジフルオロオキシインドール)及び水分捕捉剤としての分子篩の存在下におけるグリコシルチオエチル(Set)供与体(a glycosyl thioethyl (Set) donor)の反応による、C位のヒドロキシル基のグリコシル化、
結果として生じるRは、グリコシル基である。
【0164】
別法として、合成方法は、工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5i)、5ii)及び5iii)の代わりに、工程5iv)をさらに含んでもよい:
5iv)活性化剤としての酸化銀(I)、触媒としてのトリフルオロメタンスルホン酸及び水分捕捉剤としての分子篩の存在下における安定化アルキルクロリドの反応による、Cのヒドロキシル基のアルキル化、
結果として生じるRは、n個のアルキル基である。
【0165】
別法として、合成方法は、工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5i)、5ii)、5iii)及び5iv)の代わりに、工程5v)及び工程5vi)をさらに含んでいてもよい:
5v)塩基としてのトリエチルアミン及び触媒としてのDMAPの存在下におけるトシルクロリドの反応による、C位のトシル化、
5vi)テトラブチルアンモニウムヨージドの存在下におけるアジ化ナトリウムとの反応による、C位のアジド挿入(azide instertion),
結果として生じるRは、アジド基である。
【0166】
別法として、合成方法は、工程5)の後かつ工程6)の前に、工程5i)、5ii)、5iii)及び5iv)の代わりに、工程5vii)及び工程5viii)をさらに含んでもよい:
5vii)唯一の活性化剤としてのBi(OTf)の存在下におけるピコロイル基(a picoloyl group)を有するグリコシルクロリド供与体の反応による、C位のヒドロキシル基のグリコシル化。
結果として生じるRは、グリコシル基であること。
5viii)Cu(OAc)との反応によるピコロイル基の除去。
【0167】
本明細書によれば、反応1)、3)、5ii)において記述されているアシル化は、化学分野の技術者によって一般に使用される方法に従って実行され得る。例として、アシル化は、アシルクロリド又はカルボン酸を用いて、他の一般的な縮合剤、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの存在下において実行され得る。
【0168】
反応1)及び3)において言及される縮合は、5~15の炭素原子数である、異なる長さのアルキル鎖を用いて実行され、それによって、式1で記述されている分子の異なる誘導体を得ることができる。
【0169】
反応2)で記述されているCの保護は、化学分野における当業者に既知の、最も一般的な技術に従って実施されることができる。前記一般的な技術の1つは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又は炭酸水素ナトリウムなどの種々の非求核塩基及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)のような触媒の存在下におけるシリル化である。
【0170】
反応4)で記述されているCのリン酸化は、化学分野において当業者に既知の、最も一般的な技術、例えば、テトラゾール又は4,5-ジシアノイミダゾールなどであるが、これらに限定されない異なる酸性pH緩衝液の存在下におけるホスファイトの挿入などに従って実行され得る。その後の酸化は、例えば、ジメチルジオキシラン(DMDO)又はtert-ブチルペルオキシド(tBuOOH)などであるが、これらに限定されない穏やかな酸化剤との反応によって実行され得る。
【0171】
反応5)で記述されているCの脱保護は、化学分野における当業者に既知の、最も一般的な技術、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、酢酸(AcOH)又は様々なタイプの酸性樹脂、すなわち、IRA 120 H、IRC 120 H又はDowex(登録商標)50Wの存在下における脱シリル化などに従って実行され得る。
【0172】
本発明による合成プロセスは、式1の化合物を容易で工業的に拡張可能な方法で製造することを可能にする。
【0173】
上記のように、本発明は、上記で規定された式1の化合物のα及びβアノマーの両方を包含する。本発明者らは、驚くべきことに、アシル化工程3の適当な触媒の温度及び量に依存して、α又はβアノマーが得られるということを発見した。
【0174】
したがって、βアノマーが望ましい場合、アシル化工程3)は、-78℃~0℃の範囲の温度で、0.05~0.2当量の範囲のDMAP量を用いて実行される。
【0175】
好ましい実施態様において、βアノマーを合成するために、アシル化工程3は、-20℃で、0.1当量のDMAPを用いて実行される。
【0176】
その一方で、αアノマーが望ましい場合、アシル化工程3)は、20℃~50℃の範囲の温度で、2当量~2.5当量の範囲のDMAPを用いて実行される。
【0177】
好ましい実施態様において、αアノマーを合成するために、アシル化工程3は、約30℃の温度で、2.02当量のDMAPを用いて実行される。
【0178】
本明細書において規定される方法により、本明細書中で開示される式1の化合物(式2~12の化合物など)の各実施形態の1つを合成することができる。当業者は、有機化学における一般的な知識に基づいて、使用するための置換基を知るであろう。
【0179】
有利には、本発明はまた、式Xの化合物の合成方法も提供しており、
【化42】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり
は、OHであり、R、R及びRのそれぞれは、C位に-OH置換基を含まず、
下記の工程を含む:
1)炭酸水素ナトリウムの存在下におけるアシルクロリドとの反応による、グルコサミンハイドロクロリドのC2位のアミノ基の選択的アシル化、
2)イミダゾールの存在下におけるtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)との反応により、C位のヒドロキシル基を選択的シリル化によって保護して、前述の実施形態において規定された式1iの中間体を得ること、
3)トリエチルアミン及びN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下におけるアシルクロリドとの反応による、C、C及びC位のヒドロキシル基の完全アシル化、
4)酢酸の存在下におけるエチレンジアミンとの反応による、C位の選択的ジアシル化、
5)トリフラートイミダゾリウムの存在下におけるジベンジルN,N-ジイソプロピルホスファラミダイトとの反応による、C位のヒドロキシル基のリン酸化、その後にメタクロロ過安息香酸を介したホスファイトのホスフェートへの酸化が続くこと、
6)触媒量の水中硫酸の5%溶液の存在を介した、C位のシランからのヒドロキシル基の脱保護、
7)パラジウム炭素(Pd/C)によって触媒される水素化を介して、C位のベンジルからホスフェートを脱保護して、任意にC位の任意の置換基上のベンジルを脱保護すること。
【0180】
本発明の一実施形態によれば、前記R及びRは、いかなる置換基も含まない。
【0181】
本発明はまた、以下の式1の化合物の合成のための、本明細書中で開示される実施形態のいずれか1つにおいて規定される式1iの中間化合物の使用にも関連しており、
【化43】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、C及び適切な原子の間の結合によって連結され得る任意の置換基及び/又はCに結合し得る酸素若しくは窒素原子を有する任意の置換基である。
【0182】
本発明の一実施形態によれば、前記R及びRは、いかなる置換基も含まない。
【0183】
さらに、本発明は、以下の式Xの化合物の合成のための、本明細書中で開示される実施形態のいずれか1つにおいて規定される式1iの中間体の使用に関連しており、
【化44】
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、飽和C-C15アルキル鎖であり、
は、OHであり、R、R及びRのそれぞれは、C位に-OH置換基を含まない。
【0184】
本発明の一実施形態によれば、前記R及びRは、いかなる置換基も含まない。
【0185】
本発明の目的はまた、上記プロセスの工程、及び薬学的に許容されるグレードの6)で得られた前記生成物を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と混合する少なくとも1つの工程を含む、医薬製剤又はワクチン組成物の調製のためのプロセスでもある。
【0186】
本明細書及び特許請求の範囲のいずれの部分においても、「を含む(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」という用語によって置換され得る。
【0187】
イタリア特許法第170条の2に従って、本明細書において以下のことを宣言する:
細胞に関与する全ての実験は、市販の細胞を用いて実行されたこと、
記述されている実験において使用されたモデルマウスに関しては、国内又はEUの規制、及び特に、2001年4月12日付政令第206号の第6項及び2003年7月8日付政令第224号に言及された規定から派生する義務が履行されていること。
【実施例
【0188】
化学
全ての試薬及び溶媒は、商業的供給源から購入され、別段の定めをした場合を除き、さらなる精製なしに使用された。反応は、Silica Gel 60 F254プレート(Merck(登録商標))上で実施された薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターされた。フラッシュクロマトグラフィーの精製は、商業的供給源からのシリカゲル60を60~75μm用いて実施された。
【0189】
1H及び13C NMRスペクトルは、TopSpin(登録商標)ソフトウェアを用いるBruker Advance 400又はVnmrjソフトウェアを用いるNMR Varian 400で記録された。化学シフトは、Me4Siについてppmで表され;結合定数は、Hzで表される。13Cスペクトルの多重度は、APT実験によって差し引かれた。
【0190】
13の合成
【化45】
グルコサミンハイドロクロリド12(Glucosamine hydrochloride 12)(10g,46.5mmol,1eq.)及びNaHCO(10.54g,126mmol,2.7eq.)を水(120ml)に溶解させた。次に、THF(120ml)中の先に溶解したラウロイルクロリド(lauroyl chloride)(11.20g,51.2mmol,1.1eq.)を0℃で溶液に滴加した。反応を5時間撹拌して、その後溶液を濾過した。白色の固体が得られ、これを4℃の水及びTHFで洗浄した。その後、過剰の水を減圧下でトルエンと共蒸発させ、望ましい生成物13を白色粉末として60%の収率で得た(10.10g)。化合物は、さらに精製することなく使用された。
【0191】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ7.68(d,J=8.1Hz,1H),7.52(d,J=7.7Hz,3H),6.46(d,J=6.3Hz,1H),6.37(d,J=4.0Hz,3H),4.97-4.86(m,7H),4.81(d,J=4.7Hz,1H),4.62(d,J=5.0Hz,3H),4.53(t,J=5.7Hz,1H),4.43(dd,J=9.5,4.3Hz,4H),3.73-3.42(m,18H),3.34-3.22(m,2H),3.16-3.09(m,3H),3.04(d,J=14.1Hz,2H),2.13-2.03(m,8H),1.56-1.37(m,9H),1.26(d,J=14.5Hz,67H),0.86(t,J=6.8Hz,13H)。
【0192】
13C NMR(101MHz,DMSO)δ173.31,172.82,96.11,91.05,77.21,74.74,72.49,71.59,71.32,70.83,61.58,57.57,54.73,40.59,40.38,40.17,39.96,39.75,39.54,39.33,36.18,35.74,31.77,29.53,29.49,29.43,29.37,29.23,29.18,29.14,25.78,22.56,14.42。
【0193】
14の合成
【化46】
ジメチルスルホキシド(166ml,0.05M)中の13(3g,8.3mmol,1eq.)及びイミダゾール(850mg,12.4mmol,1.5Eq.)の溶液に、DCM(15ml)中のTBDMSCl(1.4g,9.1mmol,1.1eq.)の溶液を氷浴中、不活性雰囲気下で滴加した。その次に、溶液を室温に戻して、一晩中撹拌した。その後、TLC(DCM/MeOH 9:1)によってモニターされた反応を停止し、溶液を減圧下で濃縮した。その後、AcOEtで希釈し、NHClで3回洗浄した。こうして得られた有機相をNaSOで乾燥し、溶媒をrotavaporで除去した。こうして得られた生の生成物(Raw product)(3.65g)をEtPetに0℃で30分間再懸濁した。それから、懸濁液を真空下で濾過し、望ましい化合物を白色固体として回収した。精製後、白っぽい固体(a whiteish solid)としての3.5gの化合物14を85%の収率で得た。
【0194】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ7.62(d,J=7.9Hz,1H),6.43(d,J=6.4Hz,1H),4.90(t,J=6.5Hz,1H),4.77(t,J=9.1Hz,1H),4.42(t,J=7.0Hz,1H),3.86(d,J=10.8Hz,1H),3.66(dd,J=11.0,4.6Hz,1H),3.30(d,J=7.9Hz,1H),3.14-2.98(m,1H),2.06(t,J=7.4Hz,1H),1.48(s,1H),1.24(s,3H),0.94-0.74(m,2H),0.05(d,J=3.0Hz,1H)。
【0195】
13C NMR(101MHz,DMSO)δ173.21,95.93,77.09,74.83,70.82,63.61,57.54,40.61,40.40,40.20,39.99,39.78,39.57,39.36,36.20,31.78,29.54,29.51,29.45,29.39,29.20,29.14,26.41,25.76,22.57,18.64,14.41,-4.66,-4.67。
【0196】
15の合成
【化47】
化合物14(2.0g,4.2mmol,1eq.)及び4-ジメチルアミノピリジン(26mg,0.2mmol,0.05Eq.)をAr雰囲気下で、無水THF(84ml,0.05M)に溶解させた。トリエチルアミン(2.4ml,17.2mmol,4.1Eq)及びラウロイルクロリド(2.10ml,8.5mmol,2.0eq.)を-20℃で溶液に滴加した。反応を-20℃で2時間撹拌して、その後、TLC(EtPet/AcOEt 6:4)で制御した。その次に、溶液をAcOEtで希釈し、1M HClで洗浄した。こうして得られた有機相をNaSOで乾燥し、溶媒をrotavaporで除去した。こうして得られた生の生成物(4g)をフラッシュカラムクロマトグラフィー(Tol/AcOEt 9:1)を用いて精製した。精製後、2.1gの化合物15を50%の収率で得た。
【0197】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ7.80(d,J=9.5Hz,1H),5.56(d,J=8.9Hz,1H),5.38(d,J=5.9Hz,1H),4.92(dd,J=10.6,8.6Hz,1H),3.83(dd,J=10.4,5.8Hz,2H),3.76-3.70(m,1H),3.38(dd,J=14.3,8.5Hz,2H),2.30-2.14(m,7H),1.94(t,J=7.3Hz,2H),1.44(dd,J=25.9,6.4Hz,10H),1.24(d,J=2.4Hz,75H),0.90-0.81(m,24H),0.07--0.01(m,6H)。
【0198】
13C NMR(101MHz,DMSO)δ174.93,172.72,172.34,171.74,92.49,77.48,75.66,67.73,62.54,52.26,40.65,40.44,40.23,40.02,39.82,39.61,39.40,36.08,34.13,33.94,31.78,31.74,29.59,29.52,29.50,29.44,29.39,29.35,29.30,29.19,29.00,28.93,28.75,26.26,25.70,24.95,24.77,22.55,18.54,14.39,14.36,-4.71,-4.78。
【0199】
16の合成
【化48】
化合物15(2.12g,2.4mmol,1eq.)及びイミダゾールトリフラート(imidazole triflate)(1.4g,5.4mmol,2.25Eq.)を不活性雰囲気下で、DCM(121mL,0.02M)に溶解させた。ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(Dibenzyl N,N-diisopropylphosphoramidite)(1.83g,5.3mmol,2.2eq)を0℃で溶液に添加した。反応をTLC(EtPet/アセトン 9:1)でモニターした;30分後、基質の枯渇が検出された。次に、溶液を-20℃で冷却し、17mlのDCMに溶解したメタクロロ過安息香酸(1.66g,9.7mmol,4Eq)を滴加した。30分後、反応を室温に戻して、一晩中撹拌したままにした。
【0200】
TLC分析後、反応を15mlの飽和NaHCO溶液で急冷し、rotavaporで濃縮した。その後、混合物をAcOEtで希釈し、飽和NaHCO溶液で3回及び1M HCl溶液で3回洗浄した。有機相を回収し、NaSOで乾燥し、溶媒をrotavaporで除去した。
【0201】
こうして得られた粗製物(Crude)をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 9:1)で精製した。2.41gの純粋な化合物16を91%の収率で黄色油として得た。
【0202】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.34-7.25(m,10H),5.61(d,J=8.7Hz,1H),5.44(d,J=9.6Hz,1H),5.16(dd,J=10.8,9.1Hz,1H),5.00(dd,J=8.1,2.8Hz,2H),4.96-4.91(m,2H),4.53(q,J=9.2Hz,1H),4.23(dt,J=10.8,9.5Hz,1H),3.91(dd,J=11.9,1.8Hz,1H),3.78(dd,J=11.9,4.6Hz,1H),3.56(ddd,J=9.6,4.4,1.7Hz,1H),2.31(td,J=7.5,3.5Hz,2H),2.19(t,J=7.7Hz,2H),2.07-2.01(m,2H),1.61-1.37(m,6H),1.33-1.10(m,50H),0.92-0.83(m,19H),0.03--0.03(m,6H)。
【0203】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.43,172.75,172.40,135.52,128.60,128.56,127.88,127.83,92.59,77.31,77.00,76.68,76.23,76.16,72.94,72.89,69.56,69.51,69.46,61.63,52.79,36.76,34.08,33.94,31.89,29.65,29.60,29.49,29.47,29.43,29.37,29.33,29.25,29.11,29.01,25.82,25.58,24.63,24.58,22.66,18.32,14.07,-5.19,-5.32。
【0204】
17の合成
【化49】
化合物16(2.41g,2.4mmol,1Eq)をアセトン(48mL)に溶解させ、HO中のHSOの5%v/v溶液をRTで添加した(480μL,1%v/v)。溶液を8時間撹拌して、TLC(EtPet/アセトン 8:2)でモニターした。反応完了後、溶液をAcOEtで希釈し、飽和NaHCO溶液で3回洗浄した。こうして得られた有機相をNaSOで乾燥し、溶媒をrotavaporで除去した。こうして得られた生の生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 85:15)で精製した。精製後、(2.1g)の化合物17を90%の収率で白色固体として得た。
【0205】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.40-7.27(m,1H),5.63(d,J=8.8Hz,1H),5.45(d,J=9.6Hz,1H),5.18(dd,J=10.7,9.3Hz,1H),5.08-4.91(m,1H),4.54(q,J=9.5Hz,1H),4.26(dd,J=19.9,9.3Hz,1H),3.87-3.74(m,1H),3.47(d,J=9.7Hz,1H),2.40-2.24(m,1H),2.10-1.91(m,1H),1.61-1.46(m,1H),1.46-1.33(m,1H),1.33-1.01(m,5H),0.92-0.83(m,1H)。
【0206】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.11,172.77,172.49,128.94,128.84,128.72,128.66,128.26,127.95,92.61,77.33,77.01,76.69,75.90,75.87,72.46,72.42,72.15,72.10,70.23,70.17,70.10,60.23,52.78,36.71,34.03,33.71,31.90,29.67,29.62,29.49,29.44,29.38,29.34,29.32,29.26,29.23,29.04,29.01,25.56,24.59,24.48,22.66,14.09。
【0207】
1の合成
【化50】
化合物17(50mg,0.05mmol,1Eq)をDCM(2.5mL)及びMeOH(2.5mL)の混合溶媒に溶解させ、Ar雰囲気下に置いた。次に、Pd/C触媒(10mg、20%m/m)を溶液に添加した。その後、続いてH雰囲気下に置いた反応環境でガスを除去した。溶液を2時間撹拌して、その後、Hを除去し、TLC(EtPet/アセトン 8:2)で反応をモニターした。
【0208】
それから、トリエチルアミン(100μL)を反応に添加し、15分間撹拌した。その後に、溶液をGF/0.45μmのNylon付きシリンジフィルターPALL 4549T Acrodisc 25mmで濾過してPd/C触媒を除去し、溶媒をrotavaporで蒸発させた。粗生成物をDCM/MeOH溶液に再懸濁して、IRA 120Hを添加した。30分間の撹拌後、IRA 120Hを濾過し、溶媒をrotavaporで除去し、粗製物をDCM/MeOHに再懸濁し、IRA 120 Naを添加した。30分間の撹拌後、IRA 120 Naを濾過し、溶媒をrotavaporで除去した。
【0209】
(45mg)の1が、定量的収率で白色粉末として得られた。
【0210】
1H NMR(400MHz,cd3od)δ5.75(d,J=8.9Hz,1H),5.28(t,J=9.8Hz,1H),4.28(q,J=9.7Hz,1H),4.06(t,J=9.6Hz,1H),3.89-3.74(m,2H),3.62(t,J=9.2Hz,1H),2.42-2.25(m,5H),2.09(t,J=7.6Hz,2H),1.56(d,J=6.4Hz,7H),1.29(s,53H),0.90(t,J=6.6Hz,9H)。
【0211】
13C NMR(101MHz,MeOD)δ174.69,173.32,172.00,92.16,76.22,76.17,72.81,72.78,72.20,72.14,60.30,52.82,48.23,48.02,47.81,47.59,47.38,47.17,46.96,36.05,33.64,33.55,31.67,31.66,29.45,29.39,29.38,29.35,29.26,29.20,29.19,29.14,29.07,29.05,29.02,28.92,28.74,25.58,24.38,22.31,13.00。
【0212】
18の合成
【化51】
化合物17(2.36g,2.4mmol,1eq.)及びイミダゾールトリフラート(1.4g,5.4mmol,2.25Eq.)を不活性雰囲気下で、DCM(121mL,0.02M)に溶解させた。ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(1.83g,5.3mmol,2.2eq)を0℃で溶液に添加した。反応をTLC(EtPet/アセトン9:1)でモニターした;30分後、基質の枯渇が検出された。次に、溶液を-20℃で冷却し、17mlのDCMに溶解したメタクロロ過安息香酸(1.66g,9.7mmol,4Eq)を滴加した。30分後、反応を室温に戻して、一晩中撹拌したままにした。
【0213】
TLC分析後、反応を15mlの飽和NaHCO溶液で急冷し、rotavaporで濃縮した。その後、混合物をAcOEtで希釈し、飽和NaHCO溶液で3回及び1M HCl溶液で3回洗浄した。有機相を回収し、NaSOで乾燥し、溶媒をrotavaporで除去した。
【0214】
こうして得られた粗製物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 9:1)で精製した。2.41gの純粋な化合物18を91%の収率で黄色油として得た。
【0215】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.33-7.18(m,21H),5.66(d,J=8.8Hz,1H),5.51(d,J=9.5Hz,1H),5.18(dd,J=10.6,9.2Hz,1H),5.02(dd,J=10.8,3.3Hz,4H),5.00-4.95(m,2H),4.94-4.88(m,2H),4.49-4.43(m,1H),4.42-4.36(m,1H),4.25(dd,J=19.8,9.3Hz,1H),4.16(ddd,J=11.8,7.1,5.0Hz,1H),3.74(dd,J=9.5,4.2Hz,1H),2.19(dt,J=15.9,7.0Hz,5H),2.07-2.01(m,2H),1.49(dt,J=14.0,7.1Hz,4H),1.45-1.36(m,2H),1.34-1.11(m,54H),0.88(t,J=6.8Hz,10H)。
【0216】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.22,172.82,172.18,135.79,135.72,135.33,128.62,128.58,128.52,128.05,128.00,127.96,92.44,74.11,72.59,72.39,69.38,65.25,52.68。
【0217】
6の合成
【化52】
化合物18(57mg,0.05mmol,1Eq)をDCM(2.5mL)及びMeOH(2.5mL)の混合溶媒に溶解させ、Ar雰囲気下に置いた。次に、Pd/C触媒(10mg、20%m/m)を溶液に添加した。その後、続いてH雰囲気下に置いた反応環境でガスを除去した。溶液を2時間撹拌して、その後、Hを除去し、反応をTLC(EtPet/アセトン 8:2)でモニターした。
【0218】
トリエチルアミン(100μL)を反応に添加し、15分間撹拌した。溶液をGF/0.45μmのNylon付きシリンジフィルターPALL 4549T Acrodisc 25mmで濾過してPd/C触媒を除去し、溶媒をrotavaporで蒸発させた。粗生成物をDCM/MeOH溶液に再懸濁し、IRA 120 Hを添加した。30分間の撹拌後、IRA 120 Hを濾過し、溶媒をrotavaporで除去し、粗製物をDCM/MeOHに再懸濁し、IRA 120 Naを添加した。30分間の撹拌後、IRA 120 Naを濾過し、溶媒をrotavaporで除去した。
【0219】
(45mg)の6が、定量的収率で白色粉末として得られた。
【0220】
1H NMR(400MHz,cd3od)δ5.77(d,J=8.8Hz,1H),5.32-5.23(m,1H),4.39(dd,J=18.9,9.5Hz,1H),4.21(d,J=9.7Hz,3H),4.10-4.00(m,1H),3.80(d,J=9.2Hz,1H),2.44-2.24(m,6H),2.09(t,J=7.6Hz,2H),1.55(dd,J=13.5,6.9Hz,10H),1.39-1.24(m,79H),0.96-0.82(m,33H)。
【0221】
13C NMR(101MHz,MeOD)δ174.87,173.81,91.22,72.86,72.80,71.25,68.94,68.86,68.80,64.65,64.61,52.10,48.24,48.03,47.82,47.61,47.39,47.18,46.97,36.10,35.63,33.76,33.64,33.55,33.40,31.69,31.63,29.26,29.22,29.18,29.15,29.11,29.06,29.03,28.98,28.84,28.78,25.68,25.62,24.69,24.63,24.38,22.35,22.32,13.06,13.03,7.82。
【0222】
19の合成
【化53】
【0223】
化合物17(100mg,0.1mmol,1eq.)及び酸化銀(I)(140mg,0.6mmol,6Eq.)を不活性雰囲気下で、トルエン(1mL,0.1M)中に溶解させた。アリルブロミド(Allyl bromide)(51μL,0.6mmol,6eq)を溶液にRTで添加した。反応は、一晩中撹拌したままにされた。
【0224】
TLC分析(EtPet/アセトン 8:2)後、反応を停止させ、溶液をセライトパッド(a celite pad)上で濾過した。有機液相を回収し、溶媒をrotavaporで除去した。
【0225】
こうして得られた粗製物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 8:2)で精製した。50mgの純粋な化合物19を50%の収率で黄色油として得た。
【0226】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.38-7.22(m,10H),5.91-5.77(m,1H),5.64(d,J=8.8Hz,1H),5.25-5.07(m,3H),5.04-4.91(m,4H),4.56(q,J=9.3Hz,1H),4.26(dd,J=19.8,9.3Hz,1H),3.99-3.90(m,2H),3.73(dd,J=11.0,1.5Hz,1H),3.69(dd,J=9.6,4.4Hz,1H),3.60(dd,J=11.0,4.4Hz,1H),2.40-2.24(m,2H),2.18(dd,J=16.1,8.4Hz,2H),2.03(dd,J=15.1,7.1Hz,2H),1.62-1.53(m,2H),1.49(dd,J=14.2,7.2Hz,2H),1.41(dt,J=13.2,6.8Hz,2H),1.34-1.10(m,51H),0.88(t,J=6.8Hz,9H)。
【0227】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.33,172.77,172.41,135.48,134.43,128.64,128.59,127.92,117.20,92.70,77.32,77.00,76.68,75.29,75.23,73.21,73.15,72.83,72.47,69.67,69.63,67.81,52.83,36.74,34.05,33.93,31.89,29.65,29.62,29.60,29.49,29.44,29.36,29.33,29.31,29.27,29.23,29.10,29.00,25.55,24.57,24.50,22.65,14.07。
【0228】
21の合成
【化54】
化合物17(100mg,0.1mmol,1eq.)及び化合物20(48mg,0.11mmol,1.1Eq.)を不活性雰囲気下で、DCM(1mL,0.1M)に溶解させた。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(192mg,0.12mmol,1.2eq)及びジメチルN,Nアミノピリジン(DMAP)を0℃で溶液に添加した。反応を室温に戻して、一晩中撹拌したままにした。
【0229】
反応完了後、溶液をAcOEtで希釈し、飽和NaHCO溶液で3回洗浄した。こうして得られた有機相をNaSOで乾燥し、溶媒をrotavaporで除去した。
【0230】
こうして得られた粗製物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 85:15)で精製した。100mgの純粋な化合物21が、白色粉末として65%の収率で得られた。
【0231】
23の合成
【化55】
化合物17(100mg,0.1mmol,1eq.)、化合物22(57mg,0.13mmol,1.25eq.)及び粉末3aの分子篩(50mg)を不活性雰囲気下でトルエン(1mL,0.1M)に溶解させ、1時間撹拌した。次に、酸化銀(I)(46mg,0.2mmol,2Eq.)を溶液にRTで添加し、その後、0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸(4.4μL,0.05mmol,0.5eq.)を添加した。その後、反応を一晩中室温で撹拌したままにした。
【0232】
TLC分析(EtPet/アセトン 8:2)後、反応を停止させ、溶液をセライトパッド上で濾過した。有機液相を回収し、AcOEtで希釈し、NaHCOで3回洗浄した。有機相を回収し、NaSO上で乾燥させ、蒸発させた。
【0233】
こうして得られた粗製物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン/アセトン 85:15)で精製した。化合物23のジアステレオ異性体の混合物50mgを黄色油として40%の収率で得た。
【0234】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.40-7.20(m,38H),5.65(d,J=8.8Hz,1H),5.61(s,1H),5.40(s,1H),5.24-5.18(m,1H),5.14(s,1H),4.91(d,J=11.6Hz,9H),4.69(s,2H),4.62(d,J=2.2Hz,4H),4.57-4.37(m,2H),4.23(s,1H),2.40-2.26(m,3H),2.13(ddd,J=13.7,7.6,4.4Hz,3H),2.05(s,3H),1.57(s,6H),1.47-1.36(m,3H),1.29(s,79H),0.88(t,J=6.8Hz,14H)。
【0235】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.23,172.81,172.43,138.66,138.63,135.24,128.75,128.69,128.67,128.62,128.50,128.40,128.31,128.27,128.20,128.06,127.92,127.88,127.71,127.64,127.56,127.41,127.39,98.55,92.54,80.36,79.72,77.32,77.00,76.68,75.36,74.99,72.76,72.51,71.93,69.72,69.66,69.63,69.58,68.09,64.99,52.74,36.77,34.03,33.89,31.89,30.90,29.66,29.60,29.49,29.46,29.36,29.34,29.22,29.09,29.02,25.59,24.58,24.46,22.66,17.97,14.09。
【0236】
24の合成
【化56】
化合物23(70mg,0.05mmol,1Eq)をDCM(2.5mL)及びMeOH(2.5mL)の混合溶媒に溶解させ、Ar雰囲気下に置いた。次に、Pd/C触媒(10mg、20%m/m)を溶液に添加した。その後、続いてH雰囲気下に置いた反応環境でガスを除去した。溶液を2時間撹拌して、その後、Hを除去し、反応をTLC(EtPet/アセトン 8:2)でモニターした。
【0237】
それから、トリエチルアミン(100μL)を反応に添加し、15分間撹拌した。その後に、溶液をGF/0.45μmのNylon付きシリンジフィルターPALL 4549T Acrodisc 25mmで濾過してPd/C触媒を除去し、溶媒をrotavaporで蒸発させた。粗生成物をDCM/MeOH溶液に再懸濁し、IRA 120 Hを添加した。30分間の撹拌後、IRA 120 Hを濾過し、溶媒をrotavaporで除去し、粗製物をDCM/MeOHに再懸濁し、IRA 120 Naを添加した。30分間の撹拌後、IRA 120 Naを濾過し、溶媒をrotavaporで除去した。
【0238】
(50mg)の24が、ジアステレオ異性体の混合物として、定量的収率で白色粉末として得られた。
【0239】
1H NMR(400MHz,MeOD)δ5.76(dd,J=8.8,4.7Hz,1H),5.29(dd,J=10.5,9.1Hz,1H),4.76(d,J=1.2Hz,1H),4.36(dd,J=18.8,9.4Hz,1H),4.08(ddt,J=19.6,14.2,5.9Hz,4H),3.91(dd,J=3.4,1.6Hz,2H),3.83-3.75(m,2H),3.75-3.62(m,5H),3.44-3.34(m,3H),2.48-2.27(m,7H),2.14-2.08(m,2H),1.60(s,11H),1.40-1.21(m,96H),0.92(t,J=6.8Hz,17H)。
【0240】
13C NMR(101MHz,MeOD)δ174.68,173.39,171.99,101.03,92.10,75.14,72.96,72.66,72.32,70.90,70.57,68.47,65.71,52.71,48.23,48.02,47.81,47.59,47.38,47.17,46.96,36.06,33.66,33.57,31.69,29.39,29.30,29.09,28.95,28.76,28.44,25.59,24.42,22.33,16.62,13.03。
【0241】
29の合成
【化57】
化合物17(100mg,0.11mmol,1eq.)及び化合物28(24mg,0.11mmol,1.1eq.)をAr雰囲気下で、乾燥DCM(1ml,0.1M)に溶解させた。次に、EDC(23mg,0.12mmol,1.2eq.)及びDMAP(0.112mg,0.01mmol,0.1eq.)を0℃で溶液に添加した。その後に、溶液を室温に戻して、一晩中撹拌した。その後、TLC(EtPet/アセトン 8:2)によってモニターされた反応を停止し、溶液を減圧下で濃縮した。それから、AcOEtで希釈し、HClで3回洗浄した。こうして得られた有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒をrotavaporで除去した。こうして得られた生の生成物(550mg)をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 85:15)を用いて精製した。精製後、17mgの化合物29を40%の収率で得た。
【0242】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.43(dd,J=6.8,2.9Hz,1H),7.36-7.19(m,10H),5.60(d,J=8.7Hz,1H),5.45(s,1H),5.36(d,J=9.7Hz,1H),5.15(dd,J=10.7,9.1Hz,1H),4.97(t,J=9.9Hz,1H),4.93-4.80(m,1H),4.67(ddd,J=18.4,12.5,2.3Hz,2H),4.51(q,J=9.3Hz,1H),4.22(td,J=12.5,7.2Hz,1H),3.79(dd,J=9.5,3.1Hz,1H),3.64(d,J=10.2Hz,1H),2.36-2.23(m,1H),2.21-2.09(m,1H),2.09-1.99(m,1H),1.04(s,2H),0.98-0.75(m,5H)。
【0243】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ172.86,134.44,129.73,128.98,128.68,128.27,128.08,127.97,127.89,126.22,126.09,101.61,92.55,77.31,76.99,76.67,73.09,72.47,72.27,69.82,67.34,61.47,52.67,50.48,42.54,36.74,34.02,31.89,29.60,29.44,29.33,28.99,25.57,24.50,22.66,19.14,17.39,14.08。
【0244】
30の合成
【化58】
化合物29(30mg,0.03mmol,1eq.)をAr雰囲気下で、乾燥DCM及び乾燥MeOH(3ml,0.01M)の1:1混合溶媒に溶解させた。次に、不活性雰囲気下でPd/C触媒(6mg,20%m/m)を常時添加した。反応を真空下で数分間放置する。その後、水素を添加し、反応を室温で一晩中撹拌した。その後、TLC(トルエン/アセトン 85:15)によってモニターされた反応を停止した。水素を完全に除去し、Ar雰囲気に戻した。トリエチルアミン(60 l)を溶液に添加して30分間撹拌した。それから、GF/0.45μmのNylon付きシリンジフィルターPALL 4549T Acrodisc 25mmで濾過してPd/C触媒を除去し、溶媒をrotavaporで蒸発させた。原料化合物(Raw compound)を1:1のDCM/MeoHで再懸濁し、IRA 120 Hを溶液に添加した。30分後、酸樹脂を除去し、代わりにソジウム樹脂を添加した。溶液を再び30分間撹拌した;その後、溶媒をrotavaporで除去し、52,9mgの化合物30を>99%の収率で得た。
【0245】
H NMR(400MHz,MeOD)δ5.76(d,J=8.9Hz,1H),5.33-5.24(m,1H),4.54-4.38(m,2H),4.37-4.29(m,1H),4.14-4.05(m,1H),3.89(d,J=7.3Hz,1H),3.78(q,J=9.0Hz,1H),3.67(dd,J=16.4,11.6Hz,4H),3.56(t,J=6.6Hz,1H),2.49-2.27(m,5H),2.23-2.08(m,2H),1.59(d,J=6.4Hz,7H),1.22-1.15(m,3H)。
【0246】
32の合成
【化59】
化合物17(100mg,0.1mmol,1eq.)、化合物31(110mg,0.2mmol,2eq.)及び粉末3aの分子篩(330mg)を不活性雰囲気下でDCM(2mL,0.2M)に溶解させ、1時間撹拌した。次に、NIS(45mg,0.2mmol,2Eq)及びHOFox(8.5mg,0.5mmol,0.5eq.)をRTで溶液に添加した。その後、反応を室温で1.5時間撹拌した。
【0247】
TLC分析(EtPet/アセトン 8:2)後、反応を停止し、溶液を綿パッド上で濾過した。有機液相を回収し、AcOEtで希釈し、NaS2Oで3回洗浄した。有機相を回収し、NaSO上で乾燥させ、蒸発させた。
【0248】
こうして得られた粗製物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 80:20)で精製した。化合物32のジアステレオ異性体の混合物120mgを黄色油として84%の収率で得た。
【0249】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.40-7.20(m,32H),7.11(ddd,J=13.3,6.8,2.7Hz,2H),5.62(dd,J=8.8,3.8Hz,1H),5.34(d,J=9.5Hz,1H),5.27(d,J=9.6Hz,0H),5.13(td,J=10.9,8.9Hz,1H),5.00-4.85(m,6H),4.79(dd,J=10.9,2.5Hz,1H),4.73(d,J=11.0Hz,1H),4.70-4.64(m,2H),4.63-4.54(m,2H),4.53-4.45(m,1H),4.44-4.21(m,4H),3.93(t,J=9.3Hz,1H),3.87-3.75(m,3H),3.70-3.51(m,5H),3.46-3.33(m,1H),2.22(t,J=7.6Hz,1H),2.13(dt,J=17.2,7.7Hz,3H),2.03(q,J=7.3Hz,3H),1.50(s,3H),1.40(p,J=7.1Hz,3H),1.22(d,J=16.1Hz,52H),0.88(t,J=6.7Hz,10H)。
【0250】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.35,172.75,172.22,138.97,138.22,138.03,128.74,128.69,128.67,128.59,128.45,128.35,128.29,128.22,128.12,128.02,127.91,127.89,127.83,127.80,127.73,127.69,127.63,127.48,127.43,103.88,97.27,92.65,92.54,84.49,81.90,79.78,77.61,77.50,77.34,77.02,76.70,75.58,74.95,74.64,73.43,73.33,73.27,72.80,72.71,70.19,69.73,68.41,52.92,36.83,34.03,33.94,31.93,29.69,29.64,29.51,29.47,29.39,29.37,29.33,29.26,29.14,29.04,25.64,24.60,24.53,24.36,22.69,14.12。
【0251】
34の合成
【化60】
化合物17(100mg,0.1mmol,1eq.)、化合物33(110mg,0.2mmol,2eq.)及び粉末3aの分子篩(330mg)を不活性雰囲気下でDCM(2mL,0.2M)に溶解させ、1時間撹拌した。反応を0℃で冷却し、Bi(OTf)(50mg,0.075mmol,0.75Eq)を添加した。次に、反応は、RTで一晩中撹拌したままにされた。
【0252】
TLC分析(EtPet/アセトン 7:3)後、反応を停止し、溶液をセライトパッド上で濾過した。有機液相を回収し、AcOEtで希釈し、NaHCOで3回洗浄した。有機相を回収し、NaSO上で乾燥させ、蒸発させた。
【0253】
こうして得られた粗製物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtPet/アセトン 70:30)で精製し、2つのジアステレオ異性体を分離した。125mgの全化合物(total compound)34(α+β)が、黄色油として94%の収率で得られた。
【0254】
34α
1H NMR(400MHz,CDCl)δ8.75(dt,J=4.6,1.4Hz,1H),8.06(d,J=7.8Hz,1H),7.89(td,J=7.7,1.8Hz,1H),7.47(ddd,J=7.6,4.7,1.2Hz,1H),7.40-7.13(m,30H),5.53(d,J=8.8Hz,1H),5.32(d,J=9.7Hz,1H),5.10(dd,J=10.8,8.9Hz,1H),4.99-4.90(m,5H),4.89(d,J=3.5Hz,1H),4.83(d,J=11.7Hz,1H),4.75(d,J=11.8Hz,1H),4.68(dd,J=11.7,6.1Hz,2H),4.61(d,J=11.4Hz,1H),4.40-4.30(m,2H),4.30-4.25(m,1H),4.16-4.09(m,1H),4.05(dd,J=10.2,2.9Hz,2H),3.98(dd,J=10.1,2.7Hz,1H),3.90(d,J=2.5Hz,1H),3.78(td,J=9.5,5.4Hz,3H),2.26(q,J=7.4Hz,2H),2.15(d,J=7.8Hz,2H),2.06-1.99(m,3H),1.49(q,J=7.4Hz,4H),1.41(p,J=7.3Hz,1H),1.23(d,J=7.7Hz,61H),0.88(qt,J=3.8,1.8Hz,12H)。
【0255】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.24,172.55,172.30,164.62,149.93,147.89,138.46,138.29,137.14,128.66,128.39,128.30,128.07,127.87,127.69,127.63,127.46,126.92,125.40,97.29,92.61,79.00,76.34,75.16,74.57,73.59,73.19,72.81,69.70,68.80,65.18,65.03,52.82,36.82,33.97,31.92,29.64,29.52,29.36,29.30,29.14,29.06,25.63,24.60,22.69,14.11。
【0256】
34β
1H NMR(400MHz,CDCl)δ8.73(dd,J=4.9,1.7Hz,1H),7.95(d,J=7.8Hz,1H),7.78(td,J=7.8,1.8Hz,1H),7.46-7.41(m,1H),7.29(ddddd,J=21.3,16.3,13.5,8.4,4.4Hz,27H),5.63(d,J=8.8Hz,1H),5.36(d,J=9.6Hz,1H),5.12(dd,J=10.8,8.9Hz,1H),4.97(d,J=11.7Hz,1H),4.95-4.86(m,5H),4.81(d,J=11.8Hz,1H),4.71(d,J=11.9Hz,1H),4.65(dd,J=11.2,5.6Hz,2H),4.39(d,J=8.0Hz,1H),4.48-4.34(m,2H),4.34-4.22(m,2H),3.90-3.82(m,3H),3.68(t,J=4.6Hz,1H),3.64(dd,J=9.2,5.7Hz,1H),3.51(dd,J=9.8,2.9Hz,1H),2.19-2.06(m,3H),2.02(t,J=7.7Hz,2H),1.49(t,J=7.3Hz,2H),1.40(p,J=7.2Hz,1H),1.35-1.04(m,55H),0.88(td,J=6.8,2.1Hz,10H)。
【0257】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.24,172.75,172.16,164.53,149.91,147.67,138.78,138.53,138.20,137.00,128.65,128.62,128.51,128.36,128.28,128.25,128.04,127.98,127.62,127.57,127.51,126.90,125.35,104.08,92.54,81.88,79.16,74.41,73.25,72.85,72.11,69.77,68.46,64.19,52.87,36.77,33.89,31.92,29.69,29.63,29.36,29.34,29.22,29.12,28.99,25.59,24.60,24.34,22.69,14.12。
【0258】
35の合成
【化61】
不活性雰囲気下で、DCM/MeOH(5mL,0.1M)の3:1混合溶液中の34(75mg,0.5mmol,0.5eq)の溶液に、Cu(OAc)(15mg,0.75mmol,1.5eq.)をRTで添加した。
【0259】
溶液をおよそ(c.a.)2時間撹拌したままにして、その後、TLC(EtPet/AcOEt 6:4)でモニターした。
【0260】
溶媒をrotavaporで蒸発させ、溶液をフラッシュクロマトグラフィー(EtPet/AcOEt 6:4)でさらなる精製なしに精製する。
【0261】
55mgの化合物35を80%の収率で回収した。
【0262】
1H NMR(400MHz,CDCl)δ7.40-7.22(m,29H),5.62(d,J=8.7Hz,1H),5.38(d,J=9.6Hz,1H),5.12(dd,J=10.8,8.9Hz,1H),4.97-4.88(m,6H),4.80(d,J=11.9Hz,1H),4.71(d,J=11.9Hz,1H),4.65(dd,J=13.1,11.3Hz,2H),4.39-4.36(m,1H),4.35(d,J=5.5Hz,1H),4.33(d,J=7.4Hz,1H),4.27(dt,J=10.8,7.4Hz,1H),3.86-3.80(m,2H),3.72(d,J=3.3Hz,2H),3.72-3.63(m,2H),3.47(dd,J=9.7,2.9Hz,1H),3.39(dd,J=11.5,4.8Hz,1H),3.31(dd,J=7.2,4.9Hz,1H),2.16(dd,J=8.8,7.1Hz,2H),2.09(ddd,J=8.7,7.2,5.1Hz,2H),2.03(t,J=7.7Hz,2H),1.51(q,J=7.3Hz,2H),1.41(dq,J=14.9,7.0Hz,4H),1.33-1.09(m,55H),0.88(td,J=6.9,2.0Hz,10H)。
【0263】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.21,172.80,172.24,138.79,138.52,138.27,135.34,128.72,128.66,128.64,128.53,128.40,128.26,128.10,128.06,127.89,127.64,127.59,127.51,103.82,92.52,82.12,79.15,75.18,75.09,74.94,74.20,73.75,73.69,73.44,73.24,72.79,69.87,69.81,67.94,62.16,52.74,36.77,33.91,33.86,31.93,29.69,29.64,29.51,29.47,29.36,29.33,29.29,29.23,29.11,29.00,25.59,24.59,24.39,22.70,14.12。
【0264】
生物学(Biology)
化合物FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24がTLR4を選択的に活性化する能力は、最初に特定のHEKレポーター細胞株で調査された。HEK-BlueTM hTLR4及びHEK-BlueTM hTLR2(InvivoGen)は、転写因子NF-κB及びAP-1の活性化をモニターすることによって、それぞれヒトTLR4及びTLR2受容体の活性化を研究するために設計された細胞株である。TLR4リガンド(HEK-Blue hTLR4の場合)又はTLR2リガンド(HEK-Blue hTLR2の場合)を用いた刺激は、NF-κB及びAP-1を活性化して、SEAPレポーター遺伝子(分泌胚アルカリ性ホスファターゼ(phosphatase secreted embryonic alkaline))の産生及び細胞外環境への放出を誘導する。レポーター遺伝子の分析は、吸光度が630nmで読み取られる発色産物を生成する、SEAPの基質であるQUANTI-Blue(商標)比色分析(InvivoGen)を用いて実施された。分子のアゴニスト活性は、化合物の濃度を上昇させた状態で(0.1-1-10-25μM)HEK-Blue hTLR4細胞を18時間処理し、MPLA(0.1-1-10μM)及びS-LPS(100ng/mL)をそれぞれ、参照対照及び陽性受容体活性化対照(a reference and positive receptor activation control)として使用することによって試験された。得られた結果は、分子FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24が、用量依存的にTLR4の活性化を誘導することができるということを示す(図1a)。続いて、この受容体の活性化を除外することを目的として、HEK-Blue hTLR2細胞株を用いて分子を試験した。この関連で、HEK-Blue hTLR2細胞は、以前に実施された試験と同じ化合物を用いて、かつ同じ濃度で処理され、化合物PAM2CSK4をTLR2活性化の陽性対照として使用した。予想どおり、PAM2CSK4を用いた刺激は、TLR2の強力な活性化が誘導したが、化合物FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24で処理すると、いかなる活性化も生じなかった(図1b)。
【0265】
HEK細胞を用いたスクリーニング試験から得られた結果に続いて、化合物FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24の生物学的活性をヒト及びマウスのマクロファージ細胞株で調査した。THP-1-X BlueTM細胞株、100ng/mLのPMAで処理した後にマクロファージに分化した単球及びRAW-BlueTMを使用した。HEK-Blue細胞と同様に、THP-1 X-Blue及びRAW-Oxは、転写因子NF-κB及びAP-1の制御下で、SEAPレポーター遺伝子を安定に発現させる。細胞は、前述のように処理された。結果は、全ての化合物が、ヒトマクロファージ(図2a)及びマウスマクロファージ(図2b)の両方で、NF-κBの活性化を誘導するということを示す;FP23化合物は、ヒトマクロファージで唯一統計的に有意でなかった。さらに、RAW-blue株では、化合物は、試験した最低濃度(0.1μm)で活性化するが、THP-1-X-Blueでは、100倍高い濃度(10μm)から有意に活性化する。
【0266】
化合物FP20、FP21、FP22、FP23及びFP24の細胞毒性を評価するため、マクロファージに分化したTHP-1-X-Blue細胞(図3)及びRAW-Blue細胞(図4)を試験化合物(0.1、1、10、25、50μM)の濃度を上昇させた状態で処理した。化合物の毒性は、MTT生存率アッセイ(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)によって評価された。得られた結果は、化合物がTHP-1-X-Blue細胞株に対して無毒性であるということを示すが、試験された最高濃度(50μm)では、FP20及びFP23での処理の後に細胞生存率が低下する(図3)。マウスマクロファージ株の結果は、50μmの濃度で化合物の毒性が増加することを示すが、25μmの濃度で毒性を示したのは化合物FP23だけであった。
【0267】
次に、FP200活性は、前述のヒト単球細胞株THP-1-X-Bluesで評価された。細胞は、濃度を上昇させながら(in increasing concentrations)(0.1、1、10、20μM)化合物FP11、FP112、FP20、FP200、FP21で、MPLA(0.1-1-10μM)及びS-LPS(100ng/mL)をそれぞれ参照対照及び陽性受容体活性化対照として用いて、処理された。結果は、全ての化合物が用量依存的にNF-κBの活性化を誘導することを示す。
【0268】
MPAで機能化された化合物FP207は、ヒトTHP-1-XBlue細胞を用いてインビトロで試験され、NF-κB活性化を評価した。分子は、FP22及びFP23に使用されたものと同じ濃度で試験された。
【0269】
この場合もまた、結果は、化合物FP207がTLR4で活性化して、転写因子の産生を誘導するということを明らかにした。そのアゴニスト活性は、以前の事例のような濃度依存性を有する。驚くべきことに、それは、FP20よりも活性が高く、25μMでLPSにも匹敵する。FP20と比較して、同じ炎症効果を得るために、より少ない量の製品を使用することが可能になるため、これは素晴らしい結果であり、このことは2つの点で有利である:薬理学的には、任意の起こり得る副作用が減少する;一方、経済的には、より良い結果及びより大規模な公開(larger public)を達成するために必要な費用がより少ないということを意味する。
【0270】
この官能基化化合物の毒性を調べるための予備試験が、3重試験(a triplicate)なしで実施された。いかに予備的であろうとも、これらのデータは、分子が1~25mMの濃度範囲では無毒性であるということを示唆している。
【0271】
WO2019/092572において開示された化合物に関するインビトロ及びインビボでのデータを以下に提供する。
【0272】
合成アゴニストによるTLR4活性化
ヒトTLR4を活性化するFP分子の能力は、HEK-Blue hTLR4細胞を用いて評価された。これらは、LPS受容体CD14、TLR4及びMD-2並びに2つのTLR4依存性転写因子(NF-κB及びAP-1)の制御下に置かれたレポーター遺伝子である、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(secreted embryonic alkaline phosphatase)(SEAP)で安定的にトランスフェクトされたHEK293由来の細胞株である。HEK-Blue hTLR4細胞をFP11、FP112及びFP111の濃度を上昇させた状態で(0.1~25μM)18時間にわたって処理した。平らなケモタイプ(smooth chemotype)のLPS(S-LPS)を用いた刺激は、TLR4介在経路の活性化に関するポジティブコントロールとして機能した。
【0273】
分子FP11及びFP112は、濃度依存的に培地中のSEAPレポータータンパク質の放出を誘導し、両化合物がNF-κB及びAP-1を活性化するということを示したが、FP111は不活性であった(図5A)。3種の化合物は、LPS誘発性のSEAP産生を阻害せず、TLR4拮抗作用を欠いているということを示唆した(図5B)。同じSEAPレポーター遺伝子を有するが、LPS受容体を欠いている、HEK-Blue Null細胞で活性を欠くことは、FP11及びFP112が、両方ともTLR4を介して作用するということを確認した(図5C)。TLR2と比較したTLR4に対する選択性を確認するため、分子はまた、ヒトToll様受容体2(hTLR2)を発現させるHEK-Blue細胞でも試験されたが、結果的にアゴニスト活性をもたらさなかった(図5D)。これらのデータは、インビトロでの結合結果と一致しており、FP11及びFP112が、共受容体MD-2と直接相互作用する特異的なTLR4アゴニストであるということを示唆している。
【0274】
FP11及びFP112のアジュバント活性並びにインビボでの毒性:OVA免疫実験
モデル抗原としてニワトリのオボアルブミン(OVA)の免疫があるC57Bl/6マウスにおける抗体産生を評価することによって、インビボでの免疫応答を誘導するためのFP11及びFP112の能力をMPLAと比較した。まず、マウスに10μgのFP11及びFP112を皮下注射するパイロット実験でFPの毒性を評価した。結果は、2つの試験アジュバントが、注射部位での局所反応並びに7日間にわたる動物の体重及び覚醒(alertness)の状態を測定することによって評価されるように、マウスに明らかな悪影響を及ぼさないということを示した(図6A)。次に、試験されたアジュバントをオボアルブミン(OVA)と混合してマウスに免疫を与えた。免疫付与後21日目に抗体の誘導を評価した。その結果、試験アジュバントの免疫があるマウスは、プライム免疫化後、OVA免疫対照と比較してわずかに高いレベルの抗OVA総IgGを示し、MPLA-OVA免疫動物と比較して有意に低いレベルを示した(図6B、プライム免疫化)。対照的に、22日目にブースト免疫化を受けて、14日後にova特異的抗体価を検査された後、FP112免疫マウスのIgGレベルは、FP11免疫群のそれよりも高かった(図6B、ブースター免疫化)。これらのデータは、インビトロ及び細胞内での結果に一致して、FP112が、インビボでFP11よりも効果的なアジュバントであり、MPLAに匹敵するか、あるいはそれよりさらに高い効力を有するということを示している。
【0275】
FP11合成における工程6の不純物1、参考図7
【化62】
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.04(d,J=9.7Hz,1H),5.63(dd,J=9.7,7.3Hz,1H),3.87(dt,J=7.5,3.9Hz,1H),3.77-3.70(m,3H),3.68(dd,J=10.5,4.3Hz,1H),2.36(dd,J=14.7,6.9Hz,2H),2.32-2.26(m,3H),1.67(dt,J=15.3,7.7Hz,2H),1.59(dt,J=20.5,7.1Hz,4H),1.27(d,J=16.5Hz,62H),0.91-0.84(m,20H),0.05(d,J=8.4Hz,7H)。
【0276】
FP11合成における工程6の不純物2、参考図8H NMR)及び9(13C NMR)
【化63】
H NMR(400MHz,CDCl)δ6.01(d,J=9.1Hz,1H),5.40-5.30(m,1H),5.21(t,J=6.7Hz,1H),5.10-4.99(m,2H),4.22(td,J=10.7,3.4Hz,1H),4.04(ddd,J=10.2,4.3,2.0Hz,1H),3.68(d,J=11.7Hz,1H),3.61-3.53(m,1H),2.32-2.19(m,5H),2.18-2.06(m,3H),1.62-1.46(m,8H),1.34-1.18(m,62H),0.87(t,J=6.8Hz,11H)。
【0277】
13C NMR(101MHz,CDCl)δ174.14,173.65,173.12,91.40,77.32,77.01,76.69,70.37,69.67,68.54,61.19,52.49,36.68,34.19,34.13,31.90,29.66,29.63,29.60,29.54,29.52,29.46,29.39,29.34,29.33,29.29,29.27,29.19,29.15,25.60,24.92,23.82,22.66,14.08。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】