IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エモリー ユニバーシティーの特許一覧

特表2024-526918癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用
<>
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図1A
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図1B
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図1C
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図2A
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図2B
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図3
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図4
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図5
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図6
  • 特表-癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】癌の処置におけるBAKアクティベーター、医薬組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240711BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/496
A61K31/5377
A61K31/404
A61K31/166
A61K31/473
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503718
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022037783
(87)【国際公開番号】W WO2023003990
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/224,112
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504391260
【氏名又は名称】エモリー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】デン,シャンミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA36
4C076AA53
4C076CC27
4C076DD21
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD55
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF61
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA35
4C084MA37
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC28
4C086BC73
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA07
4C206GA28
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、癌の処置におけるBakのアクティベーター、医薬組成物および使用に関する。特定の実施態様において、本開示は、処置を必要とするヒト対象体に有効量の本明細書に開示のBakアクティベーターを投与することを含む、癌を処置する方法に関する。特定の実施態様において、本開示は、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)であるBakアクティベーター、その誘導体、エステルまたは塩、および医薬的に許容される添加剤を含む、医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とするヒト対象体に有効量のBakアクティベーターを投与することを含む、癌を処置する方法。
【請求項2】
Bakアクティベーターが、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、エステルまたは塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Bakアクティベーターが、式IまたはII:
【化1】
[式中
Qが、OまたはSであり;
Uが、NまたはCHであり;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10が、それぞれ個別かつ独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、ホルミル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルアミノ、アミノアルキル、(アルキル)2アミノ、ホスフェート、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボシクリル、アリールまたはヘテロシクリルであり、ここでR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10が、1つ以上の同一または異なるR11で置換されていてもよく;
R11が、アルキル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、ホルミル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルアミノ、ホスフェート、アミノアルキル、(アルキル)2アミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボシクリル、アリールまたはヘテロシクリルであり、ここでR11が、1つ以上の同一または異なるR12で置換されていてもよく;
R12が、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アミノ、ホルミル、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アセチル、アセトキシ、2-メトキシエトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、アセチルアミノ、N-メチルカルバモイル、N-エチルカルバモイル、N,N-ジメチルカルバモイル、N,N-ジエチルカルバモイル、N-メチル-N-エチルカルバモイル、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシル、エチルスルホニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、N-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N,N-ジエチルスルファモイル、N-メチル-N-エチルスルファモイル、カルボシクリル、アリールまたはヘテロシクリルである]
で示される化合物、そのエステルまたは塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R1が、水素である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
R2が、アルキルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
R3が、水素である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
R4が、水素である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
R5が、アルキルである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
R6、R7、R8、R9およびR10が、水素である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
Qが、Oである、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
Uが、NHである、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
対象体が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
対象体が、非小細胞肺癌と診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Bakアクティベーターが、更なる化学療法薬と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
化学療法薬が、Bcl-2インヒビターである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
Bcl-2インヒビターが、ベネトクラクス、ナビトクラクス、オバトクラクス、サブトクラクスである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
本明細書に開示のBakアクティベーターまたはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
丸剤、カプセル剤または錠剤の形態である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
等張性または非等張性のpH緩衝水溶液の形態である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
医薬的に許容される添加剤が、単糖類、二糖類、スクロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、多糖類、デンプン、セルロース、結晶セルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、キシリトール、マルチトール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、炭酸マグネシウム、シリカ、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、セリウム、システイン、メチオニン、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、およびそれらの組合せより選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年7月21日出願の米国仮出願第63/224,112号の利益を主張する。この出願の全体は、あらゆる目的のために出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
(連邦政府資金による研究開発の記載)
本発明は、国立衛生研究所による助成CA200905の下、米国政府支援でなされた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
(背景)
肺癌は、多くの場合、非小細胞肺癌または小細胞肺癌に分類される。非小細胞肺癌は、肺癌の大部分を占める。進行性の小細胞肺癌および非小細胞肺癌の標準治療は、放射線および化学療法を含む。肺癌は、世界的な健康問題である。例えば、米国では、肺癌単独で死亡する患者は、前立腺癌、乳癌および結腸癌を合わせた患者数より多い。したがって、改善された治療を特定する必要がある。
【0004】
Iyerらは、BAXではなくBAKによるアポトーシスの強力な自己活性化が、BAKを重要な治療標的として強調していると報告している(Cell Death and Disease, 2020, 11:268)。
【0005】
Kalirajanらは、オキサジン置換9-アニリノアクリジン誘導体ならびにその抗酸化および抗癌活性の評価を報告している(European Journal of Medicinal Chemistry, 2012, 56 217-224)。
【0006】
Gellermanらは、9-アミノアクリジン誘導体を癌処置の潜在的候補として報告している(WO 2011/0519550)。
【0007】
Parkらは、肺癌治療のための小分子Bakアクティベーターの発見を報告している(Theranostics, 2021, 11(17): 8500-8516)。
【0008】
ここで引用した参考文献は、先行技術を認めるものではない。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、癌の処置におけるBakのアクティベーター、医薬組成物および使用に関する。特定の実施態様において、本開示は、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)であるBakアクティベーター、その誘導体、プロドラッグ、エステルまたは塩の有効量を投与することを含む、癌を処置する方法に関する。特定の実施態様において、本開示は、有効量の本明細書に開示のBakアクティベーターを、所望により他の化学療法薬または治療方法と組み合わせて、処置を必要とする対象体に投与することを含む、癌を処置する方法に関する。
【0010】
特定の実施態様において、対象体は、ヒト患者である。
【0011】
特定の実施態様において、癌は、転移性癌、固形癌または血液癌である。特定の実施態様において、対象体は、肺癌、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(NSCLC)と診断されている。特定の実施態様において、対象体は、乳癌、結腸癌、リンパ腫、多発性骨髄腫、膵臓癌(PANC-1)および骨肉腫より選択される癌と診断されている。
【0012】
特定の実施態様において、本明細書に開示のBakアクティベーターは、更なる化学療法薬と組み合わせて投与される。特定の実施態様において、化学療法薬は、Bcl-2インヒビター、例えばベネトクラクス、ナビトクラクス、オバトクラクスまたはサブトクラクスである。特定の実施態様において、化学療法薬は、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド、ペメトレキセド、またはそれらの組合せである。
【0013】
特定の実施態様において、化学療法薬は、シスプラチンまたはカルボプラチンと、エトポシド、パクリタキセルまたはゲムシタビンと、ビノレルビンとの組合せである。
【0014】
特定の実施態様において、本開示は、対象体の試料からBakレベルを測定すること;測定したBakレベルを参照値または正常値と比較すること;測定したレベルが、参照値または正常値より高い場合、有効量のBakアクティベーター、別の化学療法処置、組合せ化学療法処置または積極的化学療法処置を対象体に投与することを含む、癌を有する対象体を診断および処置する方法に関する。
【0015】
特定の実施態様において、対象体は、KRAS変異、例えばKRAS(G12C、G12DおよびG12R)を引き起こす癌と診断されている。
【0016】
特定の実施態様において、本開示は、癌の処置における使用のための、本明細書に開示のBakアクティベーター、例えば1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール、その誘導体、エステル、プロドラッグまたは塩を含む医薬の製造に関する。
【0017】
特定の実施態様において、本開示は、本明細書に開示のBakアクティベーターまたはその医薬的に許容される塩、および医薬的に許容される添加剤を含む医薬組成物に関する。特定の実施態様において、医薬組成物は、丸剤、カプセル剤または錠剤の形態である。特定の実施態様において、医薬組成物は、等張性または非等張性のpH緩衝水溶液の形態である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、化学名1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オールのBakアクティベーター-073(BKA-073)の化学構造を示す。
図1B図1Bは、BKA-073がBakのBH3ドメインを標的とし、肺癌細胞においてミトコンドリアのプライミングおよびアポトーシスを誘導する化合物であることを示すデータを示す。NSCLCおよびSCLC細胞株におけるBakの発現レベルをウェスタンブロットによって分析した。NSCLCおよびSCLC細胞株のパネルを、BKA-073(1μM)で16時間または72時間処理し、その後、動的BH3プロファイリングまたはアポトーシス細胞死を分析した。
図1C図1Cは、BKA-073がミトコンドリアのプライミングおよびアポトーシスを誘導することを示すデータを示す。様々な種類の癌細胞株におけるBakの発現レベルをウェスタンブロットによって分析した。癌細胞株を、BKA-073(1μM)で16時間または72時間処理し、その後、動的BH3プロファイリングまたはアポトーシス細胞死を分析した。
図2A図2A~2Bは、BKA-073がBakに特異的に結合してBakオリゴマー化を誘導することを示すデータを示す。図2Aは、阻害定数(Ki)を測定するために実施した蛍光偏光アッセイからのデータを示す。精製Bakタンパク質または他のBcl2ファミリーメンバー、BKA-073、および蛍光標識BakBH3ペプチドを用いた。
図2B図2Bは、等温滴定熱量測定アッセイによって試験した、WT BakまたはΔBH3 Bak欠失変異タンパク質とBKA-073との結合親和性に関するデータを示す。結合定数(KD)値を、滴定曲線を1部位結合モードに当てはめることによって決定した。
図3図3は、BKA-073がインビボで用量依存的に肺癌増殖を強力に抑制することを示すデータを示す。A549肺癌異種移植片を担持するNu/Nuマウスを、BKA-073の用量を増加させながら(5~15mg/kg/日)、28日間腹腔内処置した。腫瘍体積を2日に1回測定した。処置後、マウスを屠殺し、腫瘍を摘出して分析した。
図4図4は、BKA-073が異種移植片およびPDXモデルにおけるSCLCを抑制することを示すデータを示す。SCLC細胞株DMS114またはSCLC患者(TKO-2またはTKO-5)由来の異種移植片を担持するNu/Nuマウスを、BKA-073(15mg/kg/日)で14日間または28日間腹腔内処置した。腫瘍体積を2日に1回測定した。処置後、マウスを屠殺し、腫瘍を摘出して分析した。
図5図5は、BKA-073が遺伝子操作マウスモデル(GEMM)の生存期間を延長することを示すデータを示す。KRAS G12D LKB1fl/fl(KL)マウスにアデノウイルスCreリコンビナーゼを6週間投与した後、KLマウスを、KRA-073(15mg/kg/日)で48日間腹腔内処置した(n=6マウス/群)。マウスの生存期間は、対照群とBKA-073治療群における安楽死までの最大48日間を示す。
図6図6は、BKA-073がインビトロおよびインビボでSCLCおよびNSCLCに対してBcl-2インヒビターのABT-199(ベネトクラクス)と相乗作用することを示すデータを示す。SCLC DMS53異種移植片またはNSCLC H460異種移植片を担持するNu/Nuマウスを、BKA-073(10mg/kg/日)で腹腔内、ABT-199(60mg/kg/日)経口、またはその組合わせで28日間処置した。腫瘍体積を2日に1回測定した。処置後、マウスを屠殺し、腫瘍を摘出して分析した。
図7図7は、高レベルのBak発現がNSCLC患者の予後不良と関連することを示すデータを示す。NSCLC患者のカプラン・マイヤー生存曲線、n=208。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をより詳細に説明する前に、本開示は記載される実施態様に限定されず、当然、変更され得ることを理解されたい。また、本明細書で用いる用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0020】
他に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料も本発明の実施または試験に使用し得るが、好ましい方法および材料をここで説明する。
【0021】
本明細書で引用するすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用するものに関連する方法および/または材料を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。何れかの刊行物の引用も、出願日前の開示に対するものであり、本開示が先行開示によってそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、実際の公表日と異なる可能性があり、個別に確認する必要がある場合がある。
【0022】
「実施態様」は一例を指し、必ずしもそのような例に限定されるものではない。本開示の実施態様は、他に断らない限り、当該技術分野の技術の範囲内にある医学、有機化学、生化学、分子生物学、薬理学などの技術を使用する。このような技術は、文献で十分に説明されている。
【0023】
この開示を読んだ当業者には明らかなように、本明細書に記載および例示される個々の実施態様の各々は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく他のいくつかの実施態様のいずれかの特徴から容易に分離するか、またはそれらと組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。列挙される任意の方法は、列挙される事象の順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実施し得る。
【0024】
本明細書で示す任意の化学式が1つ以上のキラル中心を含む限りにおいて、式は、すべての安定な立体異性体、エナンチオマーおよびジアステレオマーを包含することが意図される。また、式はすべての互変異性体を包含すると理解される。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈で他に明確に示されない限り、単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、反対の意図が明らかでない限り、下記意味を有すると定義される多くの用語について言及する。
【0026】
「Bak」は、「Bcl-2相同アンタゴニスト/キラー」とも称され、BH3ドメインを含む孔形成アポトーシス促進タンパク質であり、それ故に、BCL-2ファミリータンパク質に分類される。BCL2ファミリーメンバーは、オリゴマーまたはヘテロ二量体を形成し、様々な細胞活動の調節因子として機能する。Bakは、ミトコンドリア内のアポトーシスを活性化すると報告されている。ヒト[ホモ・サピエンス]Bcl-2相同アンタゴニスト/キラーは、NCBI参照配列:NP_001179.1として示される。
【0027】
本明細書で用いる「対象体」は、あらゆる動物、好ましくはヒト患者、家畜または家庭用ペットを指す。
【0028】
本明細書で用いる用語「処置する(treat)」および「処置(treating)」は、対象体(例えばヒト患者)が治癒し、疾患が根絶される場合に限定されない。むしろ、本開示の実施態様は、単に症状を軽減する、および/または疾患の進行を遅延させる処置も企図する。
【0029】
本明細書で用いる用語「との組合せ」は、更なる処置との投与を記載するために用いる場合、薬物が、更なる処置の前、それと同時もしくはその後に、またはそれらの組合せで投与され得ることを意味する。
【0030】
本明細書で用いる「塩」は、親化合物が修飾されてその酸塩または塩基塩を形成する、開示の化合物の誘導体を指す。塩の例としては、アミン、アルキルアミンまたはジアルキルアミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施態様において、塩は、形成される親化合物の第四級アンモニウム塩、および無毒性の無機酸または有機酸を含む、従来の無毒性の医薬的に許容される塩である。
【0031】
本明細書で用いる用語「誘導体」は、同定された類似体の十分な機能的特性を保持する、構造的に類似の化合物を指す。誘導体は、1つ以上の原子を欠いたり、置換されていたり、塩であったり、異なる水和/酸化状態であるため、あるいは分子内の1つ以上の原子が、限定されないが、酸素原子を硫黄原子で置き換えるかまたはアミノ基をヒドロキシル基で置き換えるなど、入れ替わっているため、構造的に類似している場合がある。誘導体は、プロドラッグであり得る。誘導体は、合成または有機化学の教科書に記載されている様々な合成方法または適切な改変法によって製造され得て、例えばMarch's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Wiley, 6th Edition (2007) Michael B. Smith or Domino Reactions in Organic Synthesis, Wiley (2006) Lutz F. Tietzeに示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
用語「置換された」は、少なくとも1つの水素原子が置換基で置き換えられた分子を指す。置換されている場合、基の1つ以上が「置換基」である。分子は、複数置換されていてもよい。オキソ置換基(=O)の場合、2つの水素原子が置換されている。この文脈内の置換基の例は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ニトロ、シアノ、オキソ、カルボシクリル、カルボシクロアルキル、ヘテロカルボシクリル、ヘテロカルボシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、-NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)NRaNRb、-NRaC(=O)ORb、-NRaSO2Rb、-C(=O)Ra、-C(=O)ORa、-C(=O)NRaRb、-OC(=O)NRaRb、-ORa、-SRa、-SORa、-S(=O)2Ra、-OS(=O)2Raおよび-S(=O)2ORaを含み得る。これに関連して、RaおよびRbは、同一または異なり得て、独立して、水素、ハロゲン ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボシクリル、カルボシクロアルキル、ヘテロカルボシクリル、ヘテロカルボシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであり得る。
【0033】
本明細書で用いる用語「プロドラッグ」は、投与後に、薬理学的に活性な薬物に代謝される(すなわち、体内で変換される)化合物を指す。例としては、ヒドロキシル基またはカルボキシル基のアルコキシエステル、例えば酢酸エステル、安息香酸エステル、アルキルエーテル、アミノ酸エステル、グリコール酸エステル、リンゴ酸エステル、アシルオキシアルキルエステル、アルコキシカルボニルオキシアルキルエステル、S-アシルチオアルキルエステル、ヒドロキシルアミンアミド、ホスホニルメトキシエーテル、ホスフェート、ホスホルアミデート、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0034】
プロドラッグはまた、親薬物により改善した医薬組成物中での溶解度を有し得る。プロドラッグは、酵素プロセスおよび代謝加水分解を含む様々なメカニズムによって親薬物に変換され得る。典型的なプロドラッグは、医薬的に許容されるエステルである。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が、活性化合物のプロドラッグが対象体に投与されたときに開裂してそれぞれ遊離ヒドロキシ、遊離アミノまたは遊離メルカプト基を形成する、任意の基に結合している化合物を含む。
【0035】
開示の化合物または該化合物の医薬的に許容される形態が、アルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子を、(C1-C6)(アルカノイルオキシ)メチル、1-((C1-C6)アルカノイルオキシ)エチル、1-メチル-1((C1-C6)アルカノイルオキシ)エチル(C1-C6)(アルコキシカルボニルオキシ)メチル、N-(C1-C6)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C1-C6)アルカノイル、α-アミノ(C1-C4)アルカノイル、アリールアシルおよびα-アミノアシル、またはα-アミノアシル-α-アミノアシルなどの基で置き換えることにより形成され得て、ここで、各α-アミノアシル基は、独立して、天然のL-アミノ酸の-P(O)(OH)2、-P(O)(O(C1-C6)アルキル)2およびグリコシル(炭水化物のヘミアセタール型のヒドロキシル基の除去によって生じるラジカル)より選択される。
【0036】
開示の化合物または該化合物の医薬的に許容される形態が、アミン官能基を含む場合、プロドラッグは、アミン基の水素原子を、R-カルボニル、RO-カルボニル、NRR'-カルボニルなどの基で置き換えることにより形成され得て、ここで、RおよびR'は、各々独立して、(C1-C10)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、ベンジル、天然のα-アミノアシル、-C(OH)C(O)OY1(式中、Y1は、H、(C1-C6)アルキルまたはベンジルである)、-C(OY2)Y3(式中、Y2は、(C1-C4)アルキルであり、Y3は、(C1-C6)アルキル、カルボキシ(C1-C6)アルキル、アミノ(C1-C4)アルキルまたはモノ-Nもしくはジ-N,N-(C1-C6)アルキルアミノアルキルである)、-C(Y4)Y5(式中、Y4は、Hまたはメチルであり、Y5は、モノ-N-またはジ-N,N-(C1-C6)アルキルアミノである)、モルホリノ、ピペリジン-1-イルまたはピロリジン-1-イルであり得る。
【0037】
本明細書で用いる「アルキル」は、非環式の直鎖または分岐鎖の不飽和または飽和の炭化水素であって、例えば1~25個の炭素原子を含むものを意味する。例えば、「C8-C18」は、8~18個の炭素原子を含むアルキルを指す。同様に、「C6-C22」は、6~22個の炭素原子を含むアルキルを指す。代表的な飽和直鎖アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-セプチル、n-オクチル、n-ノニルなどを含み;一方、飽和分岐鎖アルキルは、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチルなどを含む。不飽和アルキルは、隣接する炭素原子間に少なくとも1つの二重または三重結合を含む(それぞれ「アルケニル」または「アルキニル」と称する)。代表的な直鎖および分岐鎖アルケニルは、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニルなどを含み;一方、代表的な直鎖および分岐鎖アルキニルは、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ブチニルなどを含む。
【0038】
非芳香族単環式または多環式アルキルは、本明細書で「炭素環」または「カルボシクリル」基と称する。代表的な飽和炭素環は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含み;一方、不飽和炭素環は、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどを含む。
【0039】
「ヘテロ炭素環」または「ヘテロカルボシクリル」基は、飽和または不飽和の(芳香族ではない)、単環式または多環式であり得る、窒素、酸素および硫黄より選択される1~4個のヘテロ原子を含む炭素環であって、窒素および硫黄ヘテロ原子は所望により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は所望により四級化されていてもよい、炭素環である。ヘテロ炭素環は、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどを含む。
【0040】
用語「アリール」は、好ましくは6~12員を有する、芳香族同素環(すなわち炭化水素)の単環、二環または三環含有基を指し、例えばフェニル、ナフチルおよびビフェニルである。フェニルが、好ましいアリール基である。
【0041】
本明細書で用いる「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」は、窒素、酸素および硫黄より選択される1~4個のヘテロ原子を有し、少なくとも1つの炭素原子を含む、芳香族ヘテロ炭素環を指し、単環式および多環式環系の両方を含む。多環式環系は、環の1つが芳香族である限り、1つ以上の非芳香族環を含んでもよいが、必須ではない。代表的なヘテロアリールは、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、アザインドリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニルおよびキナゾリニルである。用語「ヘテロアリール」の使用は、N-アルキル化誘導体、例えば1-メチルイミダゾール-5-イル置換基を含むことが企図される。
【0042】
本明細書で用いる「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」は、窒素、酸素および硫黄より選択される1~4個のヘテロ原子を有し、少なくとも1つの炭素原子を含む、単環式および多環式環系を指す。単環式および多環式環系は、芳香族環、非芳香族環、または芳香族環と非芳香族環の混合物であり得る。ヘテロ環は、ヘテロ炭素環、ヘテロアリールなどを含む。
【0043】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル基を指す。アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシおよびs-ペントキシを含むがこれらに限定されない。好ましいアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシである。
【0044】
「アルコキシアルキル」は、アルキル架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル基(すなわち、-CH2-O-CH2CH3)を指す。
【0045】
「アルキルアミノ」は、アミノ架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル基を指す。アルキルアミノの例は、メチルアミノ(すなわち、-NH-CH3)である。
【0046】
「アルキルチオ」は、硫黄架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル基を指す。アルキルチオの例は、メチルチオ(すなわち、-S-CH3)である。
【0047】
「アルカノイル」は、カルボニル架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル(すなわち、-(C=O)アルキル)を指す。
【0048】
用語「シクロアルキル」および「シクロアルケニル」は、それぞれが完全に飽和および部分的に不飽和である、炭素原子が3~15個の単、二または三環式同素環基を指す。
【0049】
「アルキルスルホニル」は、スルホニル架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル(すなわち、-S(=O)2アルキル)、例えばメシルなどを指し、「アリールスルホニル」は、スルホニル架橋を介して結合したアリール(すなわち、-S(=O)2アリールを指す)。
【0050】
「アルキルスルファモイル」は、スルファモイル架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル(すなわち、-NHS(=O)2アルキル)を指し、「アリールスルファモイル」はスルファモイル架橋を介して結合したアルキル(すなわち、-NHS(=O)2アリール)を指す。
【0051】
「アルキルスルフィニル」は、スルフィニル架橋を介して結合した、示した数の炭素原子を有する上記で定義したアルキル(すなわち、-S(=O)アルキル)を指す。
【0052】
用語「ハロゲン」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0053】
特定の実施態様において、本開示は、癌の処置における使用のための医薬の製造における本明細書に開示の化合物または組成物を企図する。「癌」は、細胞の増殖を特徴とする悪性新生物を伴う様々な細胞疾患のいずれかを指す。罹患細胞が実際に周囲の組織に浸潤し、新たな身体の部位に転移しなければならないことを意図しない。癌は、身体のあらゆる組織に関与し、身体の各領域で様々な形態をとり得る。特定の実施態様の文脈内で、「癌が軽減した」かどうかは、腫瘍塊のサイズまたは数の減少の観察、あるいは癌細胞のアポトーシスの増加が観察されるかどうか、例えば癌細胞のアポトーシスが、化合物なしの対照と比較して試料化合物について5%超増加するかどうかを含むがこれらに限定されない、当業者に知られている様々な診断方法によって同定され得る。また、前立腺癌の場合はPSA、乳癌の場合はHER2などの関連するバイオマーカーまたは遺伝子発現プロファイルの変化によって特定され得る。
【0054】
本開示の文脈において処置される癌は、あらゆる種類の癌または腫瘍、例えば肺癌、非小細胞肺癌およびNSCLCのサブタイプ、例えば腺癌、扁平上皮細胞癌および大細胞癌、および小細胞肺癌であり得る。結腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部および泌尿生殖器に存在する悪性腫瘍、より具体的には、副腎皮質癌、エイズ関連リンパ腫、エイズ関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂および尿管癌、原発性中枢神経系小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵臓癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆道癌、眼の癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、頭頸部癌、肝細胞癌、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、ホジキン病、腸癌、眼内黒色腫、島細胞癌腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、喉頭癌、口唇癌、マクログロブリン血症、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、潜伏性原発転移性扁平上皮頸部癌、原発転移性扁平上皮頸部癌、転移性扁平上皮頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、副鼻腔および鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、原発不明の転移性扁平上皮頸部癌、頬咽頭癌、悪性線維性組織球腫、骨の悪性線維性骨肉腫/組織球腫、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、パラタンパク質血症、紫斑病、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂および尿管の癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス、肉腫、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、扁平上皮頸部癌、胃癌、松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行細胞癌、腎盂および尿管移行癌、栄養膜腫瘍、腎盂および尿管の細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視神経経路および視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍およびその他の過剰増殖性疾患、ならびに前述の臓器系に存在する新生物が企図される。
【0055】
特定の実施態様において、化合物は、更なる抗癌薬と組み合わせて投与され得る。「化学療法薬(chemotherapy agent)」、「化学治療薬(chemotherapeutic)」、「抗癌薬」などは、癌の処置に役立つと認識されている分子を指す。企図される例は、以下の分子または誘導体、例えば、アベマシクリブ、酢酸アビラテロン、メトトレキサート、パクリタキセル、アドリアマイシン、アカラブルチニブ、ブレンツキシマブベドチン、アドトラスツズマブエムタンシン、アフリベルセプト、アファチニブ、ネツピタント、パロノセトロン、イミキモド、アルデスロイキン、アレクチニブ、ペメトレキセド二ナトリウム、コパンリシブ、メルファラン、ブリガチニブ、クロラムブシル、アミホスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アパルタミド、アプレピタント、パミドロン酸二ナトリウム、エキセメスタン、ネララビン、三酸化ヒ素、オファツムマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、アベルマブ、アキシカブタゲンシロルユーセル、アクシチニブ、アザシチジン、カルムスチン、ベリノスタット、ベンダムスチン、イノツズマブオゾガマイシン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリガチニブ、ブスルファン、イリノテカン、カペシタビン、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、セリチニブ、ダウノルビシン、セツキシマブ、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、クロファラビン、コビメチニブ、カボザンチニブ-S-リンゴ酸、ダクチノマイシン、クリゾチニブ、イホスファミド、ラムシルマブ、シタラビン、ダブラフェニブ、ダカルバジン、デシタビン、ダラツムマブ、ダサチニブ、デフィブロチド、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デキサメタゾン、デクスラゾキサン、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、デュルバルマブ、ラスブリカーゼ、エピルビシン、エロツズマブ、オキサリプラチン、エルトロンボパグオラミン、エナシデニブ、エンザルタミド、エリブリン、ビスモデギブ、エルロチニブ、エトポシド、エベロリムス、ラロキシフェン、トレミフェン、パノビノスタット、フルベストラント、レトロゾール、フィルグラスチム、フルダラビン、フルタミド、プララトレキサート、オビヌツズマブ、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、グルカルピダーゼ、ゴセレリン、プロプラノロール、トラスツマブ、トポテカン、パルボシクリブ、イブリツモマブチウセタン、イブルチニブ、ポナチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イマチニブ、タリモジェネラヘルパレプベク、イピリムマブ、ロミデプシン、イクサベピロン、イキサゾミブ、ルキソリチニブ、カバジタキセル、パリフェルミン、ペムブロリズマブ、リボシクリブ、チサゲンルクルセル、ランレオチド、ラパチニブ、オララツマブ、レナリドミド、レンバチニブ、ロイコボリン、リュープロリド、ロムスチン、トリフルリジン、オラパリブ、ビンクリスチン、プロカルバジン、メクロレタミン、メゲストロール、トラメチニブ、テモゾロミド、メチルナルトレキソン臭化物、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、プレリキサフォル、ビノレルビン、ネシツムマブ、ネラチニブ、ソラフェニブ、ニルタミド、ニロチニブ、ニラパリブ、ニボルマブ、タモキシフェン、ロミプロスチム、ソニデギブ、オマセタキシン、ペガスパルガーゼ、オンダンセトロン、オシメルチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、インターフェロンα-2b、ペルツズマブ、ポマリドミド、メルカプトプリン、レゴラフェニブ、リツキシマブ、ロラピタント、ルカパリブ、シルツキシマブ、スニチニブ、チオグアニン、テムシロリムス、サリドマイド、チオテパ、トラベクテジン、バルルビシン、バンデタニブ、ビンブラスチン、ベムラフェニブ、ボリノスタット、ゾレドロン酸、またはそれらの組合せ、例えばシクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(CMF);ドキソルビシン、シクロホスファミド(AC);ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾロン(MOPP);アドリアマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン(ABVD);シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン(CHOP);リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン(RCHOP);ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン(BEP);エピルビシン、シスプラチン、5-フルオロウラシル(ECF);エピルビシン、シスプラチン、カペシタビン(ECX);メトトレキサート、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シスプラチン(MVAC)を含む。特定の実施態様において、化学療法薬は、抗体、抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA4抗体またはそれらの組合せ、例えば抗CTLA4(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ)、抗PC-L1(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)または抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、ドスターリマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ)である。
【0056】
Bakアクティベーター
本開示の特定の実施態様が特定の機構によって限定されることは意図されないが、本明細書に開示の特定の化合物は、Bakを活性化すると考えられ;それ故に、化合物は、癌を処置するために治療薬として有用である。
【0057】
特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグ、エステルまたは塩である。特定の実施態様において、誘導体は、式IまたはII:
【化1】
[式中、
Qが、OまたはSであり;
Uが、NまたはCHであり;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ個別かつ独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、ホルミル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルアミノ、アミノアルキル、(アルキル)2アミノ、ホスフェート、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボシクリル、アリールまたはヘテロシクリルであり、ここでR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、1つ以上の同一または異なるR11で置換されていてもよく;
R11が、アルキル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、ホルミル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルアミノ、ホスフェート、アミノアルキル、(アルキル)2アミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボシクリル、アリールまたはヘテロシクリルであり、ここでR11は、1つ以上の同一または異なるR12で置換されていてもよく;
R12は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチル、アミノ、ホルミル、カルボキシ、カルバモイル、メルカプト、スルファモイル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アセチル、アセトキシ、2-メトキシエトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メチル-N-エチルアミノ、アセチルアミノ、N-メチルカルバモイル、N-エチルカルバモイル、N,N-ジメチルカルバモイル、N,N-ジエチルカルバモイル、N-メチル-N-エチルカルバモイル、メチルチオ、エチルチオ、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、メシル、エチルスルホニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、N-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N,N-ジエチルスルファモイル、N-メチル-N-エチルスルファモイル、カルボシクリル、アリールまたはヘテロシクリルである]
で示される化合物、その誘導体、プロドラッグ、エステルまたは塩である。
【0058】
特定の実施態様において、R1は、水素である。特定の実施態様において、R2は、アルキルである。特定の実施態様において、R3は、水素である。特定の実施態様において、R4は、水素である。特定の実施態様において、R5は、アルキルまたはメチルである。特定の実施態様において、R6、R7、R8、R9およびR10は、水素である。特定の実施態様において、Qは、Oである。特定の実施態様において、Uは、NHである。
【0059】
医薬組成物
特定の実施態様において、本開示は、本明細書に開示のBakアクティベーターおよび医薬的に許容される添加剤を含む医薬組成物に関する。特定の実施態様において、医薬的に許容される添加剤は、希釈剤、崩壊剤、可溶化剤または滑沢剤より選択される。
【0060】
特定の実施態様において、医薬的に許容される添加剤は、単糖類、二糖類、スクロース、ラクトース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、多糖類、デンプン、セルロース、結晶セルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、キシリトール、マルチトール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、炭酸マグネシウム、シリカ、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、セリウム、システイン、メチオニン、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、およびそれらの組合せより選択される。
【0061】
特定の実施態様において、医薬的に許容される添加剤は、希釈剤である。例としては、結晶セルロースが挙げられ、他の希釈剤は、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸ナトリウム、エリスリトール、エチルセルロース、フルクトース、イヌリン、イソマルト、ラクチトール、ラクトース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、プルラン、シメチコン、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、スクロース、トレハロースおよびキシリトールであり得る。
【0062】
特定の実施態様において、医薬的に許容される添加剤は、崩壊剤である。崩壊剤の例は、例えば、アルギン酸、アルギン酸カルシム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリシン、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよびデンプンであり得る。
【0063】
特定の実施態様において、医薬的に許容される添加剤は、可溶化剤である。可溶化剤の例は、例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム、塩化セチルピリジニウム、シクロデキストリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、フマル酸、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、ヒプロメロース、ラノリンアルコール、レシチン、オレイルアルコール、リン脂質、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシルグリセリド、ポビドン、ピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、トリカプリリン、トリオレインおよびビタミンE ポリエチレングリコールコハク酸であり得る。
【0064】
特定の実施態様において、医薬的に許容される添加剤は、滑沢剤である。滑沢剤の例は、例えば、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、グリセリンのベヘン酸エステルの混合物(例えば、ジベヘン酸グリセリル、トリベヘニンおよびベヘン酸グリセリルの混合物)、ロイシン、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸、パルミチン酸、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、トリベヘニンおよびステアリン酸亜鉛であり得る。
【0065】
特定の実施態様において、医薬的に許容される添加剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、クエン酸トリエチル、デキストロース、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルN-ピロリドン、クロスポビドン、エチルセルロース、ポビドン、メチルおよびエチルアクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、ソルビトールの脂肪酸エステル、ラウリル硫酸、ゼラチン、グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、二酸化ケイ素、二酸化チタン、タルク、コーンスターチ、カルバナワックス、ステアリン酸、ソルビン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ヒマシ油、鉱油、リン酸カルシウム、デンプン、デンプンのカルボキシメチルエーテル、酸化鉄、トリアセチン、アカシアガム、そのエステルまたは塩より選択される。
【0066】
特定の実施態様において、医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、ゲルカプセル剤またはクリーム剤の形態である。特定の実施態様において、医薬組成物は、所望により単糖類または単糖類を含む、pH6~8の無菌pH緩衝化水性塩溶液または生理食塩リン酸緩衝液の形態である。
【0067】
特定の実施態様において、医薬的に許容される形態は、医薬的に許容される塩である。本明細書で用いる用語「医薬的に許容される塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを生じることなく対象体の組織と接触して使用するのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比に見合った塩を指す。医薬的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、Bergeらは、J. Pharmaceutical Sciences (1977) 66:1-19において医薬的に許容される塩を詳細に記載している。本明細書で提供される化合物の医薬的に許容される塩は、無機および有機酸および塩基から誘導される。医薬的に許容される無毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素と、酸または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸と形成される、あるいは当該技術分野で使用される他の方法、例えばイオン交換を用いることによって形成される、アミノ基の塩である。
【0068】
他の医薬的に許容される塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-+フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。いくつかの実施態様において、塩を誘導し得る有機酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などを含む。
【0069】
適切な塩基から誘導される医薬的に許容される塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはN+(C1-4アルキル)4などの第四級アンモニウム塩を含む。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどを含む。更なる医薬的に許容される塩は、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成される無毒性のアンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンを含む。塩を誘導し得る有機塩基は、例えば、第一級、第二級および第三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンを含む。いくつかの実施態様において、医薬的に許容される塩基付加塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩より選択される。
【0070】
特定の実施態様において、本明細書に開示のBakアクティベーターは、「遊離塩基形態」で、もしくは医薬的に許容される塩として、またはそれらの任意の混合物として用いられ得る。一実施態様において、Bakアクティベーターは、遊離塩基形態である。「遊離塩基形態」は、Bakアクティベーターが塩の形態ではない場合を指すと理解される。
【0071】
特定の実施態様において、本開示は、使用説明書と共に本明細書に開示されるBakアクティベーターまたは薬物の組合せを含む、キットまたは医薬包装に関する。特定の実施態様において、個々の薬物は、容器、例えばバイアル、箱、シリンジまたはボトルに包装され得る。特定の実施態様において、説明書は、容器内のパンフレット、または容器の外側もしくは内側にあり得る。
【0072】
使用方法
特定の実施態様において、本開示は、有効量のBakアクティベーターまたはそれを含む医薬組成物を、処置を必要とする対象体に投与することを含む、癌を処置する方法に関する。特定の実施態様において、対象体は、ヒト患者である。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、細胞のアポトーシスを誘導または増加させる、例えば、ミトコンドリアにおけるBakオリゴマーの形成は、シトクロムc(Cyt c)放出を促進してアポトーシスを誘導する。特定の実施態様において、本開示は、癌の処置における使用のための、本明細書に開示されるBakアクティベーターを含む医薬の製造に関する。
【0073】
特定の実施態様において、癌は、転移性癌、固形癌または血液癌である。特定の実施態様において、対象体は、肺癌、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(NSCLC)と診断されている。特定の実施態様において、対象体は、乳癌、結腸癌、リンパ腫、多発性骨髄腫、膵臓癌(PANC-1)および骨肉腫より選択される癌と診断されている。
【0074】
特定の実施態様において、対象体は、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、子宮癌、食道癌、胃癌、子宮頸癌、乳癌、前立腺癌または膀胱癌より選択される癌と診断されている。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0075】
特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、更なる化学療法薬と組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0076】
特定の実施態様において、対象体は、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断されている。特定の実施態様において、悪性細胞は、喀痰細胞診で見られる。特定の実施態様において、腫瘍は、気管支鏡検査または画像検査によって発見し得る。
【0077】
特定の実施態様において、本明細書に開示の治療法は、肺の一部を除去するための手術、例えば肺葉切除術、スリーブ切除術、区域切除術または楔状切除術に加えて導入され得る。
【0078】
特定の実施態様において、本明細書に開示の治療法は、放射線療法に加えて導入され得る。
【0079】
特定の実施態様において、本明細書に開示のBakアクティベーターは、更なる化学療法薬と組み合わせて投与される。
【0080】
特定の実施態様において、化学療法薬は、Bcl-2インヒビター、例えばベネトクラクス、ナビトクラクス、オバトクラクスまたはサブトクラクスである。
【0081】
特定の実施態様において、化学療法薬は、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド、ペメトレキセド、またはそれらの組合せである。
【0082】
特定の実施態様において、化学療法薬は、シスプラチンまたはカルボプラチンと、ゲムシタビンと、ビノレルビンまたはパクリタキセルとの組合せである。
【0083】
特定の実施態様において、本開示は、有効量のBakアクティベーター、例えば1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩を、ベネトクラクスまたは他のBcl-2インヒビターと組み合わせて、処置を必要とする対象体に投与することを含む、白血病を処置する方法に関する。
【0084】
特定の実施態様において、本開示は、有効量のBakアクティベーター、例えば1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩を、リツキシマブおよびベネトクラクスまたは他のBcl-2インヒビターと組み合わせて、処置を必要とする対象体に投与することを含む、白血病を処置する方法に関する。特定の実施態様において、対象体は、慢性リンパ性白血病(CLL)、または再発もしくは難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)と診断されている。特定の実施態様において、対象体は、Bakアクティベーター、例えば1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩を、低メチル化薬、例えばデシタビンおよびアザシチジン、またはシタラビンと組み合わせて用いる処置をするために、急性骨髄性白血病(AML)と診断されている。
【0085】
特定の実施態様において、本明細書に開示の癌は、遺伝子変異、例えばAkt、Mcl-1、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、RET、MET、NTRK遺伝子またはそれらの組合せの変異を有すると診断されている対象体に導入され得る。
【0086】
特定の実施態様において、対象体は、Akt遺伝子変異(例えば、L52R、Q79KおよびD323H)を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、Aktインヒビター、例えばカピバセルチブおよびイパタセルチブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0087】
特定の実施態様において、対象体は、Mcl-1遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、本明細書に開示のMcl-1インヒビターと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0088】
特定の実施態様において、対象体は、ALK遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、ALKインヒビターと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ロルラチニブ、フォレチニブ、アルボチニブ、ベリザチニブ、レポトレクチニブ、エントレクチニブまたはエンサルチニブと組み合わせて投与される。
【0089】
特定の実施態様において、対象体は、EGFR遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、EGFRインヒビターと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、アファチニブ、エルロチニブまたはラパチニブと組み合わせて投与される。
【0090】
特定の実施態様において、対象体は、ROS1遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、クリゾチニブ、エントレクチニブまたはセリチニブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0091】
特定の実施態様において、対象体は、BRAF遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、ダブラフェニブまたはトラメチニブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0092】
特定の実施態様において、対象体は、RET遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、セルペルカチニブまたはプラルセチニブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0093】
特定の実施態様において、対象体は、MET遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、カプマチニブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0094】
特定の実施態様において、対象体は、NTRK遺伝子変異を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、ラロトレクチニブまたはエントレクチニブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0095】
特定の実施態様において、対象体は、PD-L1が正常レベルより高い腫瘍または癌細胞を有すると診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、PD-L1抗体、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、ニボルマブまたはイピリムマブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0096】
特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、癌を処置するためのベバシズマブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【0097】
特定の実施態様において、対象体は、扁平上皮細胞NSCLCと診断されている。特定の実施態様において、対象体は、本明細書に開示のBakアクティベーターを、ネシツムマブと組み合わせて投与される。特定の実施態様において、Bakアクティベーターは、1-((2-((2-メトキシアクリジン-9-イル)アミノ)エチル)アミノ)プロパン-2-オール(BKA-073)、その誘導体、プロドラッグまたは塩である。
【実施例
【0098】
癌治療のためのBakアクティベーター
Bakは、癌細胞におけるプログラムされた細胞死およびアポトーシスの誘導に必要なアポトーシス促進タンパク質である。本明細書で報告される実験は、Bak発現の上昇が、肺癌の予後不良と相関していることを示し、これは、Bakが、肺癌患者における有望な予後指標および潜在的な治療標的であることを示している。ここで、BKA-073は、BakのBH3ドメインを標的とし、Bakのアポトーシス促進機能を活性化し、そして肺癌および他の癌に対して強力な抗腫瘍活性を示す、Bakアクティベーターとして同定された。実験は、BKA-073が、Bakタンパク質に直接結合し、ミトコンドリア内でBakオリゴマー化を誘導し、アポトーシス促進機能の活性化を引き起こすことを示している。実験は、BKA-073が誘導するBakオリゴマー化が、ミトコンドリアでの正味のアポトーシス促進シグナル伝達における初期変化であるミトコンドリアのプライミングおよびCyt c放出を促進することを示している。BKA-073誘導性のミトコンドリアのプライミングとCyt c放出は、肺癌細胞のアポトーシス細胞死を引き起こす。BaxではなくBakのノックアウトは、肺癌細胞および肺癌異種移植片においてBKA-073耐性をもたらし、これは、BKA-073の抗腫瘍活性がBak依存的に起こることを示している。さらに、A549Bakダブルネガティブ細胞において欠失BH3変異体ではなく野生型Bakを外因性発現させると、BKA-073に対する感受性を回復でき、これは、BKA-073のアポトーシス効果が、Bakタンパク質のBH3ドメインへの結合に関与することを示している。本開示の実施態様が特定の機構によって限定されることを意図しないが、実験結果は、癌治療に小分子Bakアクティベーターを用いる機構モデルを示している。
【0099】
アポトーシス細胞死のBax/Bak非依存性機構がいくつか報告されている。本明細書で報告する実験は、Bak-/-細胞およびDKOA549細胞において、小さな割合(約20%)のアポトーシス細胞死が観察されたことを示している。主要なBak依存性アポトーシス機構に加えて、BKA-073は、Bax/Bak非依存性機構を介して小さな割合(約20%)のアポトーシス細胞死を誘導すると考えられる。
【0100】
BKA-073は、肺癌細胞株または患者由来のSCLC腫瘍に由来する異種移植片において、Bak活性化(オリゴマー化)およびアポトーシス細胞死の誘導による、肺癌に対する強力な抗腫瘍活性を示した。5~15mg/kg/日の用量範囲は、体重減少または重大な臓器毒性がなく効果的であった。BKA-073は、難治性SCLC患者2名から採取した患者由来異種移植片(PDX)の増殖を抑制したため、BKA-073はヒト患者に対して臨床的有用性があると考えられる。
【0101】
BakのBH3結合ポケットを標的とする小分子のスクリーニング
BH3デスドメインは、Bakのアポトーシス促進機能に必要とされる。Bak(PDB ID:2YV6)のBH3ドメイン結合ポケット(aa75-88)を、UCSF DOCK 6.1プログラムスイートおよびNCI化学ライブラリー(300,000個の小分子)データベースを用いて小分子をスクリーニングするためのドケッティング部位として選択した。小分子を、エネルギースコアに従てランク付けした。BH3ドメインに対して最も高い親和性を有すると決定された上位500個の化合物を、NCIから入手し、更なるスクリーニングのためにスルホローダミンB(SRB)アッセイによってヒト肺癌細胞(H1299、H460およびA549細胞)における細胞毒性を試験した。これらの小分子のうち、化合物NSC14073は、ヒト肺癌細胞に対して最も強力な活性を有していた。このBakアクティベーター化合物を、BKA-073(C19H24ClN3O2、MW:361.87)と名付けた(図1A)。
【0102】
ミトコンドリアのプライミング(Δ%プライミング)およびアポトーシス細胞死に対するBKA-073の効果を試験するために、ヒト肺癌A549細胞を、BKA-073の濃度を増加させながら(0、0.25、0.5、0.75、1.0μM)処理し、その後、16時間での動的BH3プロファイリング(DBP)および72時間でのアポトーシス細胞死を分析した。DBPは、癌細胞において化学療法薬または標的薬物によって誘導される、ミトコンドリアでの正味のアポトーシス促進シグナル伝達(「プライミング」)の初期変化を測定できる機能的アッセイである。プライミングは、細胞がアポトーシスの閾値にどれだけ近づいているかを示す指標である。結果は、BKA-073が、用量依存的にミトコンドリアのプライミングおよびアポトーシスを誘導することを示した。
【0103】
NSCLCおよびSCLC細胞株のパネルをテストした。BKA-073は、様々なレベルの内因性Bakを発現するNSCLCおよびSCLC細胞株の両方において、ミトコンドリアのプライミングおよびアポトーシスを強力に誘導した(図1B)。比較的高いレベルのBakを発現するNSCLC細胞株(A549、H157およびH1975)およびSCLC細胞株(すなわちDMS53、DMS114、H209およびH526)は、BKA-073に対して感受性がより高かった。対照的に、比較的低いレベルの内因性Bakを発現する肺癌細胞株(NSCLC細胞株:Calu-1、SCLC細胞株:H69、H128およびH146)は、BKA-073に対して感受性がより低かった。したがって、ミトコンドリアのプライミングおよびアポトーシスのBKA-073誘導の感度は、Bak発現レベルに比較的依存する。肺癌細胞株に加えて、BKA-073の有効性は、乳癌(MDA-MB-231およびMCF7)、結腸癌(HCT-116)、リンパ腫(Ramos)、多発性骨髄腫(OPM-1)、膵臓癌(PANC-1)および骨肉腫(U2OS)細胞株を含む他の種類の癌細胞株において評価した。結果は、BKA-073が、様々な種類の癌細胞株においてもミトコンドリアのプライミングおよびアポトーシス細胞死を強力に誘導することを明らかにし(図1C)、これは、BKA-073が様々な種類の癌に効果的であることを示唆している。
【0104】
BKA-073は、Bakタンパク質に直接結合し、Bakオリゴマー化を誘導して、Cyt c放出を引き起こす
BKA-073とBakの結合を確認するために、精製ヒトBakタンパク質、蛍光Bak BH3ドメインペプチドおよびBKA-073を用いて競合蛍光偏光(FP)アッセイを実施した。BKA-073は、高い結合親和性(Ki:72.3±5.96nM)でヒトBakタンパク質に直接結合した。具体的には、BKA-073は、他のBcl2ファミリーメンバーとの結合親和性が極めて低く(図2A)、これは、BKA-073がBakに選択的に結合することを示している。Bakと他のBcl2ファミリーメンバー間で、BH3ドメインに複数のアミノ酸の違いがある。BKA-073は、Bakにのみ結合し、他のBcl2ファミリーメンバー(Bax、Bcl2、Bcl-XL、Bcl-wおよびMcl-1)には結合しないと考えられる。
【0105】
等温滴定熱量測定(ITC)もまた、Bak/BKA-073結合の測定に使用した。ITCは、相互作用するタンパク質と小分子リガンド間の結合親和性を測定する、標識および固定化を必要としない直接的な手法であり、ミリモル濃度およびナノモル濃度範囲の結合定数(Kd)値を分析するのに使用できる。auto-iTC200機器を用いてITC実験を実施して、BKA-073/Bak結合を評価した。結果は、BKA-073が、ナノモル濃度範囲の結合親和性(Kd=88.62±5.73nM)でヒトBakタンパク質に直接結合したことを示している(図2B)。対照的に、BKA-073は、ITCアッセイにおいてBH3欠失ヒトBak変異タンパク質(ΔBH3)に結合せず、これは、BakがBKA-073と相互作用するのにBH3ドメインが関与していることを示唆している。
【0106】
ヒトBak/BKA-073結合に加えて、マウスBak/BKA-073結合を、ITCを用いて測定した。
BKA-073はまた、良好な結合親和性(Kd=93.37±7.91nM)でマウスBakタンパク質に直接結合した。これらの実験は、BKA-073がヒトとマウスの両方のBakタンパク質に結合できることを示している。
【0107】
アポトーシスプロセスにおける一つのステップは、Bakのオリゴマー化である。BKA-073がミトコンドリア膜でオリゴマーを形成するBakの能力に影響を及ぼすかを評価するために、ビス(マレイミド)ヘキサン(BMH)による架橋試験を実施した。A549細胞をBKA-073(1μM)で処理すると、Bak二量体および三量体の形成が促進された。これらの付加物の分子サイズは約28kDaの倍数であると推定され、A549細胞におけるBakホモオリゴマーの形成が示唆された。これらの知見は、BKA-073が、ミトコンドリアにおけるオリゴマー化によってBakを活性化できることを示している。ミトコンドリアにおけるBakオリゴマーの形成は、シトクロムc(Cyt c)の放出を促進してアポトーシスを誘導する。実験は、BKA-073が誘導するBakオリゴマー化がA549細胞においてミトコンドリアからのCyt c放出を促進したことを示している。
【0108】
BKA-073は、Bak依存的なアポトーシスの誘導によってNSCLC異種移植片を強力に抑制する
BKA-073の効力をインビボで試験するために、A549細胞由来の肺癌異種移植片を有するマウスを、BKA-073の用量を増加させながら(0、5、10、15mg/kg/日)、28日間腹腔内処置した。BKA-073は、用量依存的に肺癌増殖を強力に抑制した(図3)。BKA-073が誘導する腫瘍増殖の抑制がインビボでBakの活性化およびアポトーシスによって生じるかを評価するために、採取した腫瘍組織からの代表的な試料を、Bakオリゴマー化のためのBMHとの架橋によって、または活性カスパーゼ3のための免疫組織化学(IHC)によって分析した。BKA-073処置後の腫瘍組織において、用量依存的なBakオリゴマー化およびアポトーシスが観察された。重要なことに、5~15mg/kg/日の用量は腫瘍増殖を強力に抑制しただけでなく、マウスに対して著しい毒性がなく良好な忍容性を示した。5mg/kg~15mg/kgの用量は、肺癌異種移植片を含むインビボ実験におけるBKA-073の最適な治療指数を提供する。
【0109】
BKA-073は、異種移植片およびPDXモデルにおいてSCLCに対して強力な抗腫瘍活性を示す
インビボでのSCLCに対するBKA-073の抗腫瘍活性をさらに評価するために、DMS114細胞株由来のSCLC異種移植片、または難治性SCLC患者2名(TKO-2およびTKO-5)からの患者由来異種移植片(PDX)を移植したマウスを、BKA-073(15mg/kg/d)で2~4週間腹腔内処置した。BKA-073は、アポトーシスの誘導によって生じるDMS114異種移植片およびSCLC PDXの腫瘍増殖を強力に抑制した(図4)。これらの知見は、BKA-073が、SCLC患者に潜在的に効果的であり得ることを示している。
【0110】
BKA-073は、遺伝子組み換えマウスモデル(GEMM)において変異型KRASによる肺癌の増殖を抑制し、生存期間を延長する
KRASは、一般的に変異した癌遺伝子であるが、KRAS変異癌に対する効果的な標的化治療は存在しない。興味深いことに、野生型KRASをバックグラウンドに有するH1944細胞における外因性の構成的に活性なKRAS(G12D)変異体の発現は、Bak発現を著しく増強された。BKA-073は、インビトロおよびインビボでのオリゴマー化の促進を介したBakの活性化によってアポトーシスを誘導できるため、実験を実施して、BKA-073が変異型KRASによる癌の処置に効果的であるかを確認した。
【0111】
KRAS変異体による肺癌におけるBKA-073の効力を評価するために、lox-stop-lox(LSL)-KRAS G12D LKB1fl/fl(すなわちKL)マウスを作製し、飼育した。これらのマウスは、KRAS G12D LSLノックイン対立遺伝子とLKB1のflox対立遺伝子(LKB1fl/fl)を持つ。原発性肺腺癌は、KRAS G12D LKB1fl/fl(KL)マウスにCreリコンビナーゼ(AdeCre)を発現する5×106pfuアデノウイルスの鼻腔内投与後、6週間には早くも検出可能であった。KLマウスの腫瘍組織では、各マウスの各肺葉の代表的な断面の隣接する正常肺組織と比較して、Bak発現の増加が観察された。結果は、KLマウスをBKA-073で処置すると、アポトーシスを介して肺の腫瘍量および増殖が著しく減少することを示した。BKA-073による処置は、KLマウスの生存を著しく延長し、これにより、変異型KRASによる肺癌の処置にBakアゴニストBKA-073を使用する強力な理論的根拠が得られた。
【0112】
変異型KRAS誘発性肺癌の治療としてのBKA-073の可能性をさらに評価するために、BKA-073(15mg/kg/日)またはビヒクルを、AdeCre送達後6週間からKLマウスに腹腔内投与した。48日間の処置後、KLマウスを二酸化炭素窒息により安楽死させた。更なる分析のために、腫瘍のある肺および正常な肺組織を採取した。マウスの腫瘍量および腫瘍多重度を定量するために、HE染色した肺を形態計測ソフトウェアで画像化し、対照群と比較して正常組織とは対照的に腫瘍で構成される表面積を定量した。安楽死の48日前までの計算において、対照群では6匹中4匹のマウスが死亡したのに対して、BKA-073処置群では6匹中2匹のマウスが死亡した(p<0.01)(図5)。
【0113】
Bakは放射線耐性肺癌細胞に蓄積し、BKA-073はインビトロおよびインビボで放射線耐性を逆転させる
Bakが放射線耐性に寄与するかをさらに調べるために、電離放射線耐性を有する3つの肺癌細胞株(すなわち、A549-IRR、H358-IRRおよびH460-IRR)を樹立した。A549-IRR、H358-IRRおよびH460-IRR細胞において、親のA549(A549-P)、H358(H358-P)およびH460(H460-P)細胞と比較して、Bakレベルの上昇が観察された。A549-IRR、H358-IRRおよびH460-IRR細胞は、細胞培養条件下でよく増殖し、これは、Bak分子が通常の成長条件下では不活性型であることを示している。A549-P、H385-PおよびH460-P細胞は、IRに対して感受性を維持したが、A549-IRR、H358-IRRおよびH460-IRRは、IRに対して非感受性になった。親細胞株と放射線耐性細胞株の両方がBKA-073に対して感受性があり、これは、BKA-073が放射線耐性細胞に有効であることを示唆している。
【0114】
これをインビボでさらに試験するために、A549-PおよびA549-IRR細胞株由来のNSCLC異種移植片を、IR(2Gy/曝露、1日おき、合計5回)またはBKA-073(15mg/kg/日)で4週間処置した。A549-IRR細胞由来の肺癌異種移植片は、IR処置に耐性であったが、一方、A549-P由来の異種移植片は、IR処置に感受性であった。BKA-073は、A549-P細胞またはA549-IRR細胞に由来する異種移植片を抑制し、これは、BKA-073が放射線耐性肺癌異種移植片にも有効であることを示している。
【0115】
BKA-073とBcl2インヒビターのベネトクラクス(ABT-199)との組合せは、インビトロおよびインビボで肺癌を相乗的に抑制する
Bakのアポトーシス促進活性の直接活性化をBcl2の抗アポトーシス機能の阻害と組み合わせることで、肺癌治療において相乗効果を達成するかを試験するために、内因性Bcl2およびBakを発現するSCLC細胞株(DMS53)およびNSCLC細胞株(H460)を、ベネトクラクスとBKA-073を組み合わせて、16時間および72時間処理し、その後、それぞれ動的BH3プロファイリングおよびアポトーシスを分析した。BKA-073とベネトクラクスの組合せは、SCLC株とNSCLC株の両方でミトコンドリアのプライミングおよびアポトーシスの誘導において強力な相乗作用を示した。DMS53細胞由来のSCLC異種移植片およびH460細胞由来のNSCLC異種移植片を、BKA-073(10mg/kg/日)で腹腔内、ベネトクラクス(60mg/kg/日)で経口、またはその組合せで4週間処置した。結果は、BKA-073とベネトクラクスの組合せ処置が、インビボでSCLおよびとNSCLCの両方を相乗的に抑制することを示した(図6)。
【0116】
腫瘍組織におけるより高いレベルのBakは、NSCLC患者の予後不良と相関する
様々なヒト肺癌細胞株において、より高いレベルの内因性Bak発現が観察され、これらは、処理なしの細胞培養培地中でアポトーシスを引き起こさなかった。これは、Bakタンパク質が通常の増殖条件下では不活性型であることを示している。NSCLC患者からの腫瘍組織においてBakが上方制御されるかさらに試験するために、Bak発現を、208名のNSCLC患者からの試料において、Bak抗体を用いたIHC染色によって分析した。ホルマリン固定し、パラフィン包埋したヒト組織試料を得た。組織マイクロアレイ(TMA)を、腫瘍および隣接する正常な肺の複製コアを用いて構築した。BakのIHC染色の半定量的評価を、記載されているように、染色細胞の割合および染色強度の両方に基づく「免疫スコア」を用いて実施した。Bakタンパク質の発現は、隣接する正常な肺組織と比較して腫瘍組織で著しく高かった。重要なことに、腫瘍組織におけるBak発現の増加は、NSCLC患者の予後不良と相関しており(図7)、これは、Bakが、NSCLCの潜在的な予後バイオマーカーであることを示している。これらの実験は、Bakアクティベーター(BKA-073)がNSCLC患者および他の癌の転帰を改善する効果的な戦略であることを示している。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】