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特表2024-526920骨標的療法のための操作された組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】骨標的療法のための操作された組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240711BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240711BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240711BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240711BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P19/08
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K38/05
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K47/64
C07K16/28 ZNA
C07K7/06
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503729
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 US2022073940
(87)【国際公開番号】W WO2023004348
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,875
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン ゼル
(72)【発明者】
【氏名】ユ チェンフェイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC09
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA23
4C084BA32
4C084NA13
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA25
4C085AA26
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA40
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、操作された骨標的化組成物、例えば、抗体又は1つ以上のポリペプチド、例えば、骨ホーミングペプチドを含むように操作された抗体又はポリペプチドを投与することによって、骨がん又はがんの骨転移などの骨疾患を治療するための方法を提供する。更に、骨標的化組成物、例えば、抗体又は1つ以上のポリペプチド、例えば、骨ホーミングペプチドを含むように操作された抗体又はポリペプチドが、本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨ヒドロキシアパタイト(HA)に選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された、骨標的化抗体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの骨ホーミングペプチドが、抗体の許容的な内部部位に挿入されている、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの骨ホーミングペプチドが、抗体の軽鎖(LC)、重鎖(CH1)、及び/又はC末端(CT)に挿入されている、請求項1又は2記載の抗体。
【請求項4】
2つ、3つ、又は4つの骨ホーミングペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
前記骨ホーミングペプチドが、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、又はL-Asp10である、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
前記骨ホーミングペプチドが、L-Aspである、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、単一ドメイン抗体、又はナノボディである、請求項1~6のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
免疫チェックポイント阻害剤である、請求項1~7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
抗HER2抗体、抗CD99抗体、抗IGF-IR抗体、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4抗体、抗Siglec-2抗体、抗Siglec-3抗体、抗Siglec-5抗体、抗Siglec-6抗体、抗Siglec-7抗体、抗Siglec-8抗体、抗Siglec9抗体、抗Siglec-10抗体、抗Siglec-11抗体、抗Siglec-15抗体、抗RANKL抗体、抗EGFR抗体、抗VEGFR抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD52抗体、抗Trop-2抗体、抗CD30抗体、抗CD152抗体、抗IL-6R抗体、抗GD2抗体、又は抗TGFβ抗体である、請求項1~8のいずれか一項記載の抗体。
【請求項10】
抗CD99抗体である、請求項1~8のいずれか一項記載の抗体。
【請求項11】
薬物にコンジュゲートされている、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体。
【請求項12】
前記薬物が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、オゾガマイシン、チウキセタン、ベドチン、パスドトクスtdfx、ベドチン、マフォドチン、カリケアマイシン、メイタンシン、又はデルクステカンである、請求項11記載の抗体。
【請求項13】
前記薬物が、抗有糸分裂薬である、請求項11記載の抗体。
【請求項14】
前記抗有糸分裂薬が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、請求項13記載の抗体。
【請求項15】
抗HER2抗体である、請求項1~9のいずれか一項記載の抗体。
【請求項16】
トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、又はアテゾリズマブである、請求項1~15のいずれか一項記載の抗体。
【請求項17】
トラスツズマブである、請求項1~16のいずれか一項記載の抗体。
【請求項18】
前記トラスツズマブが、MMAEにコンジュゲートされている、請求項17記載の抗体。
【請求項19】
前記骨ホーミングペプチドが、トラスツズマブの残基A153、A165、及び/又はG449に挿入されている、請求項1~17のいずれか一項記載の抗体。
【請求項20】
Tras-LC(SEQ ID NO:3~4)、Tras-CH1(SEQ ID NO:5~6)、Tras-CT(SEQ ID NO:7~8)、Tras-LC/CH1(SEQ ID NO:9~10)、Tras-LC/CT(SEQ ID NO:11~12)、Tras-CH1/CT(SEQ ID NO:13~14)、又はTras-LC/CH1/CT(SEQ ID NO:15~16)に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~19のいずれか一項記載の抗体。
【請求項21】
Tras-LC(SEQ ID NO:3~4)、Tras-CH1(SEQ ID NO:5~6)、Tras-CT(SEQ ID NO:7~8)、Tras-LC/CH1(SEQ ID NO:9~10)、Tras-LC/CT(SEQ ID NO:11~12)、Tras-CH1/CT(SEQ ID NO:13~14)、又はTras-LC/CH1/CT(SEQ ID NO:15~16)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~20のいずれか一項記載の抗体。
【請求項22】
Tras-LC(SEQ ID NO:3~4)、Tras-CH1(SEQ ID NO:5~6)、Tras-CT(SEQ ID NO:7~8)、Tras-LC/CH1(SEQ ID NO:9~10)、Tras-LC/CT(SEQ ID NO:11~12)、Tras-CH1/CT(SEQ ID NO:13~14)、又はTras-LC/CH1/CT(SEQ ID NO:15~16)を含む、請求項1~21のいずれか一項記載の抗体。
【請求項23】
前記骨標的化抗体が、骨ホーミングペプチドを含まない抗体と比較して、HAに対する増加した結合親和性を有する、請求項1~22のいずれか一項記載の抗体。
【請求項24】
前記骨標的化抗体が、骨ホーミングペプチドを含まない抗体と比較して、HAに対する2倍~3倍高い結合親和性を有する、請求項1~23のいずれか一項記載の抗体。
【請求項25】
対象における骨疾患を治療又は予防する方法であって、請求項1~23のいずれか一項記載の骨標的化抗体の有効量を該対象に投与する工程を含む、該方法。
【請求項26】
前記対象が、骨がん又は骨転移を有する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記骨がんが、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記骨転移が、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がんである、請求項25~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記乳がんが、HER2陰性乳がんである、請求項28~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記乳がんが、HER2陽性乳がんである、請求項28~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項311】
前記骨疾患が、骨粗しょう症、骨軟化症、歯周炎、関節リウマチ、代謝性骨疾患、副甲状腺障害、ステロイド誘発性骨粗しょう症、化学療法誘発性骨量減少、閉経前骨量減少、脆弱性及び再発性骨折、腎性骨異栄養症、骨感染症、又はパジェット病である、請求項25~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
前記骨標的化抗体が、骨腫瘍ニッチでの治療用抗体の濃度の増加を結果としてもたらし、骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他の臓器への二次転移を制限する、請求項25~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記骨標的化抗体が、微小転移誘発性溶骨性病変の減少を結果としてもたらす、請求項25~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
追加の抗がん療法を更に施与する工程を含む、請求項25~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記追加の抗がん療法が、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記追加の抗がん療法が、免疫療法又は化学療法を含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
がんを有する対象における骨腫瘍の治療又は予防のための、請求項1~23のいずれか一項記載の骨標的化抗体の使用。
【請求項38】
前記対象が、骨がん又は骨転移を有する、請求項37記載の使用。
【請求項39】
前記骨がんが、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である、請求項38記載の使用。
【請求項40】
前記骨転移が、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである、請求項38記載の使用。
【請求項41】
請求項1~23のいずれか一項記載の骨標的化抗体を操作するための方法であって、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを、該抗体の許容的な内部部位に挿入する工程を含む、該方法。
【請求項42】
前記抗体が、2つ、3つ、又は4つの骨ホーミングペプチドを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記骨ホーミングペプチドが、L-Aspである、請求項41又は43記載の方法。
【請求項44】
骨ヒドロキシアパタイト(HA)に選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された1つ以上のポリペプチドを含む、骨標的化組成物。
【請求項45】
前記少なくとも1つの骨ホーミングペプチドが、ポリペプチドの許容的な内部部位に挿入されている、請求項44記載の抗体。
【請求項46】
前記少なくとも1つの骨ホーミングペプチドが、ポリペプチドのC末端又はN末端に挿入されている、請求項44又は45記載の抗体。
【請求項47】
前記ポリペプチドが、2つ、3つ、又は4つの骨ホーミングペプチドを含む、請求項44~46のいずれか一項記載の抗体。
【請求項48】
前記骨ホーミングペプチドが、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、又はL-Asp10である、請求項44~47のいずれか一項記載の抗体。
【請求項49】
前記骨ホーミングペプチドが、L-Aspである、請求項44~47のいずれか一項記載の抗体。
【請求項50】
前記1つ以上のポリペプチドが、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシス阻害剤、サイトカイン受容体、サイトカイン、サイトトキシン、赤血球生成剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼ阻害剤、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパルテートアンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質分解タンパク質、タンパク質分解タンパク質阻害剤、セマフォリン、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取り込み阻害剤、セロトニン受容体、セルピン、セルピン受容体、又は腫瘍抑制剤を含む、請求項44~49のいずれか一項記載の抗体。
【請求項51】
前記1つ以上のポリペプチドが、サイトカインを含む、請求項44~50のいずれか一項記載の抗体。
【請求項52】
前記サイトカインが、IL-6である、請求項51記載の抗体。
【請求項53】
前記1つ以上のポリペプチドが、薬物にコンジュゲートされている、請求項44~52のいずれか一項記載の抗体。
【請求項54】
前記薬物が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、オゾガマイシン、チウキセタン、ベドチン、パスドトクスtdfx、ベドチン、マフォドチン、カリケアマイシン、メイタンシン、又はデルクステカンである、請求項53記載の抗体。
【請求項55】
前記薬物が、抗有糸分裂薬である、請求項53記載の抗体。
【請求項56】
前記抗有糸分裂薬が、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である、請求項55記載の抗体。
【請求項57】
前記骨標的化組成物が、骨ホーミングペプチドを含まないポリペプチドと比較して、HAに対する増加した結合親和性を有する、請求項44~22のいずれか一項記載の抗体。
【請求項58】
前記骨標的化組成物が、骨ホーミングペプチドを含まないポリペプチドと比較して、HAに対する2倍~3倍高い結合親和性を有する、請求項44~57のいずれか一項記載の抗体。
【請求項59】
対象における骨疾患を治療又は予防する方法であって、請求項44~57のいずれか一項記載の骨標的化組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む、該方法。
【請求項60】
前記対象が、骨がん又は骨転移を有する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
前記骨がんが、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である、請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記骨転移が、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである、請求項60記載の方法。
【請求項63】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がんである、請求項59~62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
前記乳がんが、HER2陰性乳がんである、請求項62~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
前記乳がんが、HER2陽性乳がんである、請求項62~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項651】
前記骨疾患が、骨粗しょう症、骨軟化症、歯周炎、関節リウマチ、代謝性骨疾患、副甲状腺障害、ステロイド誘発性骨粗しょう症、化学療法誘発性骨量減少、閉経前骨量減少、脆弱性及び再発性骨折、腎性骨異栄養症、骨感染症、又はパジェット病である、請求項60記載の方法。
【請求項66】
前記骨標的化組成物が、骨腫瘍ニッチでの治療用ポリペプチドの濃度の増加を結果としてもたらし、骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他の臓器への二次転移を制限する、請求項59~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記骨標的化組成物が、微小転移誘発性溶骨性病変の減少を結果としてもたらす、請求項59~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
追加の抗がん療法を更に施与する工程を含む、請求項59~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
前記追加の抗がん療法が、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記追加の抗がん療法が、免疫療法又は化学療法を含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
がんを有する対象における骨腫瘍の治療又は予防のための、請求項44~57のいずれか一項記載の骨標的化組成物の使用。
【請求項72】
前記対象が、骨がん又は骨転移を有する、請求項71記載の使用。
【請求項73】
前記骨がんが、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である、請求項72記載の使用。
【請求項74】
前記骨転移が、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである、請求項72記載の使用。
【請求項75】
請求項44~57のいずれか一項記載の骨標的化組成物を操作するための方法であって、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを、ポリペプチドの許容的な内部部位に挿入する工程を含む、該方法。
【請求項76】
前記ポリペプチドが、2つ、3つ、又は4つの骨ホーミングペプチドを含む、請求項75記載の方法。
【請求項77】
前記骨ホーミングペプチドが、L-Aspである、請求項75又は77記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年7月20日出願の米国特許仮出願第63/223,875号の優先権の恩典を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の組み入れ
本出願は、電子的に提出されおり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、配列表XMLを含有する。2022年7月18日に作成された前記XML配列表は、RICEP0085WO.xmlという名称であり、サイズが30,327バイトである。
【0003】
1.分野
本開示は、一般に、分子生物学の分野に関する。より具体的には、抗体又はポリペプチドの部位特異的送達の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
2.関連技術
抗体ベースの治療法は、30年超前に臨床現場に入り、悪性腫瘍1,2、感染性疾患3,4、及び移植拒絶反応を有する患者にとって主流の治療選択肢になってきている。これらの生物学的治療薬は、伝統的な化学療法と比較して、腫瘍関連抗原を提示する細胞を優先的に標的とし、治療転帰の改善及び副作用の低減を結果としてもたらす6,7,8,9。腫瘍抗原に対するその高い親和性にかかわらず、脳及び骨における治療用抗体の不十分な腫瘍組織浸透及び不均一な分布により、これらの組織における疾患の治療においてその有効性が有意に限定されている。これらの組織において腫瘍全体にわたって有効な抗体用量を送達できないことは、治療の失敗だけでなく、獲得薬剤耐性の発生ももたらす10。治療に満たない抗体レベルに対する曝露は、抗体媒介性殺傷を回避する腫瘍細胞の能力を促進することが示されている11,12。更に、腫瘍ニッチにおいて抗体の有効濃度を確保する試みは、通常、他の組織において高い濃度をもたらし、治療薬の使用を限定又は排除し得る有害な全身副作用を結果としてもたらす。したがって、全身送達後に特定の組織において抗体の腫瘍浸透及び分布を改善する戦略が、これらの作用物質の臨床的可能性を最適化するために必要とされる。
【0005】
90%よりも高い5年生存率にかかわらず、乳がん生存者の20~40%は、最初の治療の数年後であっても、遠隔臓器への転移を最終的に経験する13。骨は、乳がん転移の最も頻繁な組織である14,15。骨微小環境への投薬は、血管新生の比較的低い密度及び浸透に対する物理的障壁の存在のために、困難であることが判明している。抗体ベースの治療法は、これらの作用物質の大きな分子サイズのために、特別な分布の困難に直面する。したがって、原発性乳腺腫瘍の治療に優れた有効性を示す治療用抗体は、骨転移を有する患者において最適に満たない応答のみを生じる。例えば、原発性乳腫瘍においてヒト上皮成長因子受容体2(HER2)を成功裏に標的とするトラスツズマブ(ハーセプチン)抗体はまた、転移性乳がんを有する患者のための治療選択肢としても評価されている。いくらかの乳がん患者は、これらの治療から恩恵を受けるが、骨転移を有する乳がん患者の多数は、1年以内に更なる腫瘍進行を経験し、わずかな患者しか長期の寛解を達成しない16。したがって、治療用抗体の有効性は、骨転移の症例において、特に限定されているように見える。
【発明の概要】
【0006】
概要
ある特定の実施形態では、本開示は、骨ヒドロキシアパタイト(HA)に選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された、骨標的化ポリペプチド又はタンパク質(例えば、抗体)のための方法を提供する。一実施形態では、本開示は、骨ヒドロキシアパタイト(HA)に選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された、骨標的化抗体のための方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、骨HAに選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された、1つ以上の骨標的化ポリペプチドを提供する。
【0007】
いくつかの態様では、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドは、抗体の許容的な内部部位に挿入されている。ある特定の態様では、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドは、抗体の軽鎖(LC)、重鎖(CH1)、及び/又はC末端(CT)に挿入されている。
【0008】
いくつかの態様では、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドは、1つ以上のポリペプチドのC末端又はN末端に挿入されている。
【0009】
ある特定の態様では、抗体又はポリペプチドは、2つ、3つ、又は4つの骨ホーミングペプチドを含む。特定の態様では、骨ホーミングペプチドは、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、又はL-Asp10である。いくつかの態様では、骨ホーミングペプチドは、少なくとも3個の連続したアスパラギン酸、例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、又は10個のアスパラギン酸を含む。具体的な態様では、骨ホーミングペプチドは、L-Aspである。
【0010】
いくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、単一ドメイン抗体、又はナノボディである。特定の態様では、抗体は、免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの態様では、抗体は、抗HER2抗体、抗CD99抗体、抗IGF-IR抗体、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4抗体、抗Siglec-2抗体、抗Siglec-3抗体、抗Siglec-5抗体、抗Siglec-6抗体、抗Siglec-7抗体、抗Siglec-8抗体、抗Siglec9抗体、抗Siglec-10抗体、抗Siglec-11抗体、抗Siglec-15抗体、抗RANKL抗体、抗EGFR抗体、抗VEGFR抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD52抗体、抗Trop-2抗体、抗CD30抗体、抗CD152抗体、抗IL-6R抗体、抗GD2抗体、又は抗TGFβ抗体である。いくつかの態様では、抗体は、抗CD99抗体である。
【0011】
いくつかの態様では、1つ以上のポリペプチドは、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシス阻害剤、サイトカイン受容体、サイトカイン、サイトトキシン、赤血球生成剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼ阻害剤、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパルテートアンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質分解タンパク質、タンパク質分解タンパク質阻害剤、セマフォリン、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取り込み阻害剤、セロトニン受容体、セルピン、セルピン受容体、又は腫瘍抑制剤を含む。特定の態様では、ポリペプチドは、サイトカインを含む。具体的な態様では、サイトカインは、IL-6である。特定の態様では、IL-6は、C末端に骨ホーミングペプチドを含む。
【0012】
更なる態様では、抗体又はポリペプチドは、薬物にコンジュゲートされている。いくつかの態様では、薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、オゾガマイシン、チウキセタン、ベドチン、パスドトクスtdfx、ベドチン、マフォドチン、カリケアマイシン、メイタンシン、又はデルクステカンである。特定の態様では、薬物は、抗有糸分裂薬、例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。
【0013】
いくつかの態様では、抗体は、抗HER2抗体である。例えば、抗体は、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、又はアテゾリズマブである。特定の態様では、抗体は、トラスツズマブであり、例えば、トラスツズマブは、MMAEにコンジュゲートされている。具体的な態様では、骨ホーミングペプチドは、トラスツズマブの残基A153、A165、及び/又はG449に挿入されている。
【0014】
ある特定の態様では、抗体は、Tras-LC(SEQ ID NO:3~4)、Tras-CH1(SEQ ID NO:5~6)、Tras-CT(SEQ ID NO:7~8)、Tras-LC/CH1(SEQ ID NO:9~10)、Tras-LC/CT(SEQ ID NO:11~12)、Tras-CH1/CT(SEQ ID NO:13~14)、又はTras-LC/CH1/CT(SEQ ID NO:15~16)に対して少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。特定の態様では、抗体は、Tras-LC(SEQ ID NO:3~4)、Tras-CH1(SEQ ID NO:5~6)、Tras-CT(SEQ ID NO:7~8)、Tras-LC/CH1(SEQ ID NO:9~10)、Tras-LC/CT(SEQ ID NO:11~12)、Tras-CH1/CT(SEQ ID NO:13~14)、又はTras-LC/CH1/CT(SEQ ID NO:15~16)を含む。
【0015】
いくつかの態様では、骨標的化抗体又はポリペプチドは、骨ホーミングペプチドを含まない抗体又はポリペプチドと比較して、HAに対する増加した結合親和性を有する。特定の態様では、骨標的化抗体は、骨ホーミングペプチドを含まない抗体又はポリペプチドと比較して、HAに対する2倍~3倍高い結合親和性を有する。
【0016】
更なる実施形態は、対象における骨疾患(例えば、骨腫瘍)を治療又は予防する方法であって、本実施形態及びその態様のいずれかの骨標的化抗体又はポリペプチド(例えば、骨ヒドロキシアパタイト(HA)に選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された、骨標的化抗体又はポリペプチド)の有効量を該対象に投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0017】
いくつかの態様では、対象は、骨がん又は骨転移を有する。ある特定の態様では、骨がんは、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である。特定の態様では、骨転移は、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである。具体的な態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん、HER2陰性乳がん、又はHER2陽性乳がんである。
【0018】
ある特定の態様では、骨疾患は、骨粗しょう症、骨軟化症、歯周炎、関節リウマチ、代謝性骨疾患、副甲状腺障害、ステロイド誘発性骨粗しょう症、化学療法誘発性骨量減少、閉経前骨量減少、脆弱性及び再発性骨折、腎性骨異栄養症、骨感染症、又はパジェット病である。本明細書で提供される方法及び組成物は、皮質骨及び/若しくは海綿骨の減少を低減し、皮質骨及び/若しくは海綿骨のミネラル含有量減少を低減し、骨の生体力学的耐性を改善し、骨形成を増加させ、かつ/又は骨吸収を低減するために使用され得る。
【0019】
ある特定の態様では、骨標的化抗体又はポリペプチドは、骨腫瘍ニッチでの治療用抗体又はポリペプチドの濃度の増加を結果としてもたらし、骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他の臓器への二次転移を制限する。いくつかの態様では、骨標的化抗体又はポリペプチドは、微小転移誘発性溶骨性病変の減少を結果としてもたらす。
【0020】
更なる態様では、方法は、追加の抗がん療法を更に施与する工程を含む。いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む。例えば、追加の抗がん療法は、免疫療法又は化学療法を含む。
【0021】
別の実施形態は、がんを有する対象における骨疾患(例えば、骨腫瘍)の治療又は予防のための、本実施形態及びその態様のいずれかの骨標的化抗体又はポリペプチド(例えば、骨ヒドロキシアパタイト(HA)に選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された、骨標的化抗体)の使用を提供する。
【0022】
いくつかの態様では、対象は、骨がん又は骨転移を有する。ある特定の態様では、骨がんは、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である。特定の態様では、骨転移は、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである。具体的な態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん、HER2陰性乳がん、又はHER2陽性乳がんである。
【0023】
ある特定の態様では、骨疾患は、骨粗しょう症、骨軟化症、歯周炎、関節リウマチ、代謝性骨疾患、副甲状腺障害、ステロイド誘発性骨粗しょう症、化学療法誘発性骨量減少、閉経前骨量減少、脆弱性及び再発性骨折、腎性骨異栄養症、骨感染症、又はパジェット病である。本明細書で提供される方法及び組成物は、皮質骨及び/若しくは海綿骨の減少を低減し、皮質骨及び/若しくは海綿骨のミネラル含有量減少を低減し、骨の生体力学的耐性を改善し、骨形成を増加させ、かつ/又は骨吸収を低減するために使用され得る。
【0024】
ある特定の態様では、骨標的化抗体又はポリペプチドは、骨腫瘍ニッチでの治療用抗体又はポリペプチドの濃度の増加を結果としてもたらし、骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他の臓器への二次転移を制限する。いくつかの態様では、骨標的化抗体は、微小転移誘発性溶骨性病変の減少を結果としてもたらす。
【0025】
更なる態様では、使用は、追加の抗がん療法を更に含む。いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む。例えば、追加の抗がん療法は、免疫療法又は化学療法を含む。
【0026】
別の実施形態は、本実施形態及びその態様のいずれかの骨標的化抗体又はポリペプチド(例えば、骨ヒドロキシアパタイト(HA)に選択的に結合する少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを含むように操作された、骨標的化抗体又はポリペプチド)を操作するための方法であって、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドを、該抗体の許容的な内部部位に、又は該ポリペプチドのC末端若しくはN末端に挿入する工程を含む、前記方法を提供する。
【0027】
いくつかの態様では、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドは、抗体の許容的な内部部位に挿入されている。ある特定の態様では、少なくとも1つの骨ホーミングペプチドは、抗体の軽鎖(LC)、重鎖(CH1)、及び/又はC末端(CT)に挿入されている。
【0028】
ある特定の態様では、抗体又はポリペプチドは、2つ、3つ、又は4つの骨ホーミングペプチドを含む。特定の態様では、骨ホーミングペプチドは、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、L-Asp、又はL-Asp10である。いくつかの態様では、骨ホーミングペプチドは、少なくとも3個の連続したアスパラギン酸、例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、又は10個のアスパラギン酸を含む。具体的な態様では、骨ホーミングペプチドは、L-Aspである。
【0029】
いくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、単一ドメイン抗体、又はナノボディである。特定の態様では、抗体は、免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの態様では、抗体は、抗HER2抗体、抗CD99抗体、抗IGF-IR抗体、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4抗体、抗Siglec-2抗体、抗Siglec-3抗体、抗Siglec-5抗体、抗Siglec-6抗体、抗Siglec-7抗体、抗Siglec-8抗体、抗Siglec9抗体、抗Siglec-10抗体、抗Siglec-11抗体、抗Siglec-15抗体、抗RANKL抗体、抗EGFR抗体、抗VEGFR抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD52抗体、抗Trop-2抗体、抗CD30抗体、抗CD152抗体、抗IL-6R抗体、抗GD2抗体、又は抗TGFβ抗体である。
【0030】
いくつかの態様では、1つ以上のポリペプチドは、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシス阻害剤、サイトカイン受容体、サイトカイン、サイトトキシン、赤血球生成剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼ阻害剤、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパルテートアンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質分解タンパク質、タンパク質分解タンパク質阻害剤、セマフォリン、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取り込み阻害剤、セロトニン受容体、セルピン、セルピン受容体、又は腫瘍抑制剤を含む。特定の態様では、ポリペプチドは、サイトカインを含む。具体的な態様では、サイトカインは、IL-6である。特定の態様では、IL-6は、C末端に骨ホーミングペプチドを含む。
【0031】
更なる態様では、抗体又はポリペプチドは、薬物にコンジュゲートされている。いくつかの態様では、薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、オゾガマイシン、チウキセタン、ベドチン、パスドトクスtdfx、ベドチン、マフォドチン、カリケアマイシン、メイタンシン、又はデルクステカンである。特定の態様では、薬物は、抗有糸分裂薬、例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。
【0032】
いくつかの態様では、抗体は、抗HER2抗体である。例えば、抗体は、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、又はアテゾリズマブである。特定の態様では、抗体は、トラスツズマブであり、例えば、トラスツズマブは、MMAEにコンジュゲートされている。具体的な態様では、骨ホーミングペプチドは、トラスツズマブの残基A153、A165、及び/又はG449に挿入されている。
【0033】
ある特定の態様では、抗体は、Tras-LC(SEQ ID NO:3~4)、Tras-CH1(SEQ ID NO:5~6)、Tras-CT(SEQ ID NO:7~8)、Tras-LC/CH1(SEQ ID NO:9~10)、Tras-LC/CT(SEQ ID NO:11~12)、Tras-CH1/CT(SEQ ID NO:13~14)、又はTras-LC/CH1/CT(SEQ ID NO:15~16)に対して少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。特定の態様では、抗体は、Tras-LC(SEQ ID NO:3~4)、Tras-CH1(SEQ ID NO:5~6)、Tras-CT(SEQ ID NO:7~8)、Tras-LC/CH1(SEQ ID NO:9~10)、Tras-LC/CT(SEQ ID NO:11~12)、Tras-CH1/CT(SEQ ID NO:13~14)、又はTras-LC/CH1/CT(SEQ ID NO:15~16)を含む。
【0034】
本明細書に記載の任意の方法又は組成物は、本明細書に記載の任意の他の方法又は組成物に関して実施できることが企図される。例えば、1つの方法によって合成された化合物は、異なる方法による最終化合物の調製に使用され得る。
【0035】
本開示の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明及び具体的な例は、本開示の具体的な実施形態を示すが、例示としてのみ与えられていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様を更に実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、より良好に理解され得る。
【0037】
図1図1A~1B:(図1A)ヒドロキシアパタイト結合タンパク質のタンパク質配列(SEQ ID NO:25~26)。(図1B)治療用抗体は、骨ヒドロキシアパタイトマトリックスに結合する骨ホーミングペプチド配列を導入することによって、骨に特異的に送達することができる。
図2図2A~2H:骨標的化抗体の調製及び特徴評価。(図2A)骨ホーミングペプチドを、3つの場所:軽鎖(LC)、重鎖(CH1)、及びc末端(CT)に挿入した。(図2B)還元試薬の存在下(左)及び非存在下(右)での骨標的化抗体のSDS-PAGE分析。(図2CC)骨標的化抗体の質量分析法での分析。(図2D)ヒドロキシアパタイト(HA)に対するTras、Tras-CH1、Tras-LC、Tras-CT、Tras-LC/CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの結合動態。(図2E)Tras及び骨標的化コンジュゲートの差次的な骨標的化能力。C57/BL6マウスからの非脱石灰化骨切片を、50μg/mLのTras又は骨標的化コンジュゲートと一晩インキュベートし、続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトIgG及び4μg/mLのキシレノールオレンジ(XO、骨を標識することが知られている)で染色した。スケールバー、200μm。(図2F)SK-BR-3(HER2+++)及びMDA-MB-468(HER2-)細胞に対するTras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT結合のフローサイトメトリープロファイル。(図2G)SK-BR-3及びMDA-MB-468細胞に対するTras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTのインビトロ細胞傷害性。(図2H)Cy7.5標識Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT抗体の後眼窩注射の72時間後又は120時間後の、MDA-MB-361腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスの下肢のエクスビボ蛍光画像。腫瘍細胞を、傍脛骨(para-tibial)注射を介してヌードマウスの右脛骨中に接種した。
図3図3A~3S:骨標的化抗体は、乳がん骨転移を阻害する。(図3A)MDA-MB-361細胞を、ヌードマウスの右後肢中に傍脛骨注射し、続いて、PBS、Tras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT(Trasと同じ)で治療した。腫瘍負荷を、毎週の生物発光撮像によって監視した。(図3B~3C)図3Aに記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の平均発光強度の倍率変化。p値は、二元配置分散分析検定に基づく。(図3D図3Aに記載されるように治療したマウスの、安楽死までの時間のカプラン・マイヤープロット。各個々のマウスについて、全身におけるBLIシグナルが10光子秒-1に到達したことをエンドポイントと見なした。(図3E)経時的な腫瘍担持マウスの体重変化。(図3F)PBS、Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTで治療した群の、仰臥位でのMicroCT走査。(図3G)骨体積(BV)の定量的分析。(図3H)骨表面/骨体積の比(BS/BV)の定量的分析。(図3I)骨体積/組織体積の比(BV/TV)の定量的分析。(図3J)海綿骨の厚さ(trabecular thickness)(Tb.Th)の定量的分析。(図3K)海綿骨ミネラル密度(BMD)の定量的分析。(図3L)各群からの脛骨/大腿骨の代表的な長手方向、正中矢状のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色切片。T:腫瘍;B:骨;BM:骨髄。(図3M)各群からの骨切片のHER2及びTRAP染色の代表的な画像。(図3N)各群における腫瘍-骨界面で計算した、画像当たりの破骨細胞数(図3Kにおけるピンク色の細胞を、破骨細胞陽性細胞と見なした)。(図3O)MDA-MB-361細胞を、ヌードマウスの右後肢中に傍脛骨注射し、続いて、Tras(滅菌PBS中10mg/kgの後眼窩静脈洞、2週間毎2ヶ月間)及びTras-CH1/CT(Trasと同じ)で治療した。腫瘍負荷を、毎週の生物発光撮像によって監視した。(図3P図3Oに記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の平均発光強度の倍率変化。(図3Q)(O)に記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の個々の発光強度の倍率変化。(図3R図3Oに記載されるように治療したマウスの、安楽死までの時間のカプラン・マイヤープロット。各個々のマウスについて、全身におけるBLIシグナルが10光子s-1に到達したことをエンドポイントと見なした。(図3S)経時的な図3Oにおける腫瘍担持マウスの体重変化。****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05、及びn.s.P>0.05。
図4図4A~4C:(図4A)骨病変は、複数の臓器への二次転移をより容易に引き起こす。(図4B)Tras又はTras-CH1/CTで治療したマウスの様々な臓器において観察された二次転移。(図4C)PBS、Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTで治療したマウスからの組織における、エクスビボBLI強度及び転移関与の状態のヒートマップ。各列は個々の動物を表し、各行は組織の種類を表す。転移の存在は、120秒の露光時間下で18カウント/ピクセルを上回るBLIシグナルの存在として定義した。多部位転移は、少なくとも3つの組織の転移関与として定義した。p値は、転移関与の頻度についてはフィッシャーの正確検定によって決定し、一方、転移負荷についてはマン・ホイットニー検定によって決定した。
図5】TrasのESI-MSスペクトル。
図6】Tras-LCのESI-MSスペクトル。
図7】Tras-CH1のESI-MSスペクトル。
図8】Tras-CTのESI-MSスペクトル。
図9】Tras-LC/CH1のESI-MSスペクトル。
図10】Tras-LC/CTのESI-MSスペクトル。
図11】Tras-CH1/CTのESI-MSスペクトル。
図12】Tras-LC/CH1/CTのESI-MSスペクトル。
図13】Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの差次的な海綿骨標的化能力。C57/BL6マウスからの非脱石灰化骨切片を、50μg/mLのTras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、又はTras-LC/CH1/CTと一晩インキュベートし、続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトIgG及び4μg/mLのキシレノールオレンジ(XO、骨を標識することが知られている)で染色した。スケールバー、200μm。
図14】SK-BR-3細胞に対するTras結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTrasとインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図15】SK-BR-3細胞に対するTras-LC結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTras-LCとインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図16】SK-BR-3細胞に対するTras-CT結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTras-CTとインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図17】SK-BR-3細胞に対するTras-CH1結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTras-CH1とインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図18】SK-BR-3細胞に対するTras-LC/CT結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTras-LC/CTとインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図19】SK-BR-3細胞に対するTras-CH1/CT結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTras-CH1/CTとインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図20】SK-BR-3細胞に対するTras-CH1/CT結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTras-CH1/CTとインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図21】SK-BR-3細胞に対するTras-LC/CH1結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTras-LC/CH1とインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図22】SK-BR-3細胞に対するTras-LC/CH1/CT結合。SK-BR-3細胞を、増加する濃度のTrasとインキュベートし、蛍光をフローサイトメーターで測定した。KDを、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
図23】SK-BR-3及びMDA-MB-468細胞に対するTras-CH1、Tras-LC、Tras-LC/CT、及びTras-LC/CH1の細胞表面結合。SK-BR-3(HER2+++)及びMDA-MB-468(HER2-)細胞に対するTras-CH1、Tras-LC、Tras-LC/CT、及びTras-LC/CH1結合のフローサイトメトリープロファイル。
図24】主臓器のエクスビボ蛍光画像。Cy7.5標識Tras、Tras-CT、及びTras-LC/CH1/CTの後眼窩注射の48時間後の、C57/BL6マウスの心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、脳。
図25図25A~25C:Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの生体内分布についてのインビボ及びエクスビボの蛍光画像分析。(図25A)Cy7.5標識Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの後眼窩注射の72時間後又は120時間後。骨及び主臓器(心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、脳)を収集し、分析した。(図25B)様々な組織(心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、脳、及び骨)におけるTras及び骨標的化抗体の分布の定量的分析。(図25C)PBS、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTでの治療後の、H&E染色での心臓の組織学的分析。*P<0.05、及びn.s.P>0.05。
図26図26A~26C:治療中のBLIシグナル強度の倍率変化。MDA-MB-361細胞を、ヌードマウスの右後肢中に傍脛骨注射し、続いて、PBS、Tras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT(Trasと同じ)で治療した。腫瘍負荷を、毎週の生物発光撮像によって監視した。(図26A図3Aに記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の平均発光強度の倍率変化。Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの群を比較する二元配置分散分析。(図26B)Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの群の間で平均発光強度の倍率変化を比較する二元配置分散分析。(図26C)Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの間で個々の発光強度の倍率変化を比較する二元配置分散分析。
図27図27A~27D:BLIシグナル伝達の定量化。(図27A)関心対象の領域において検出された放射輝度によって定量化した、各治療群からのBLI。(図27B)Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの群の間でBLIを比較する二元配置分散分析。(図27C)Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの群の間でBLIを比較する二元配置分散分析。(図27D図27Cに記載されるような様々な治療群の個々の発光強度。**P<0.01。
図28】MicroCTに基づく骨の3Dレンダリング。皮質骨、皮質区画の画像は、対照(Con)、Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-CH1/CL/CTの治療群の皮質骨破壊を示す。海綿骨、皮質区画の画像は、対照、Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-CH1/CL/CTの治療群の海綿骨破壊を示す。
図29】各治療群からの代表的なmicroCTスライス。成長板近傍(下パネル)、成長板の1.25mm遠位(中央パネル、海綿骨と見なす)、及び成長板の3.25mm遠位(中央プレート、皮質骨と見なす)のMicroCTスライス。
図30】各群からの骨切片のHER2染色の代表的な画像。
図31】対照及びTras群からの骨切片のTRAP染色。
図32】Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTからの骨切片のTRAP染色。
図33図33A~33B:MDA-MB-361モデルに対する骨標的化抗体の効果:血清TRACP 5b及びカルシウムレベルの分析。(図33A)PBS、Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTで治療したマウスの血清TRAcP 5bレベル。(図33B)各治療群からのマウスの血清カルシウムレベル。**P<0.01、*P<0.05、及びn.s.P>0.05。
図34図34A~34B:MDA-MB-361細胞株における多臓器転移に対する骨標的化抗体の効果。(図34A)PBS、Tras-CT、又はTras-LC/CH1/CTで治療したマウスの様々な臓器において観察された二次転移。(図34B)PBS、Tras、Tras-CT、及びTras-LC/CH1/CTで治療したマウスからの組織における、エクスビボBLI強度及び転移関与の状態のヒートマップ。各列は個々の動物を表し、各行は組織の種類を表す。転移の存在は、120秒の露光時間下で18カウント/ピクセルを上回るBLIシグナルの存在として定義した。多部位転移は、少なくとも3つの組織の転移関与として定義した。p値は、転移関与の頻度についてはフィッシャーの正確検定によって決定し、一方、転移負荷についてはマン・ホイットニー検定によって決定した。
図35】骨ホーミングペプチドで修飾された抗体-薬物コンジュゲートであるトラスツズマブ-モノメチルアウリスタチンE ADCは、より良好な抗腫瘍活性を実証した。
図36図36A~36E:(図36A)MCF-7細胞を、ヌードマウスの右後肢中に傍脛骨注射し、続いて、Tras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、週2回2ヶ月間)及びTras-CH1/CT(Trasと同じ)で治療した。腫瘍負荷を、毎週の生物発光撮像によって監視した。(図36B図36Aに記載されるように治療したマウスにおける、MCF-7腫瘍の平均発光強度の倍率変化。p値は、二元配置分散分析検定に基づく。(図36C図36Aに記載されるように治療したマウスにおける、MCF-7腫瘍の個々の発光強度の倍率変化。(図36D図36Aに記載されるように治療したマウスの、安楽死までの時間のカプラン・マイヤープロット。各個々のマウスについて、5×10光子s-1に到達する全身におけるBLIシグナルをエンドポイントと見なした。(図36E)経時的な図36Aにおける腫瘍担持マウスの体重変化。****P<0.0001、*P<0.05、及びn.s.P>0.05。
図37図37A~37K:(図37A)骨標的化抗体-薬物コンジュゲートの調製。Tras抗体を、最初に重鎖(CH1)及びc末端(CT)での骨ホーミングペプチドで修飾し、続いて、pClick抗体コンジュゲーション技術を用いてMMAEで修飾した。(図37B)非還元条件下(左)及び還元条件下(右)でのTras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEのSDS-PAGE分析。(図37C、D)SK-BR-3及びMDA-MB-468がん細胞に対する、MMAE、Tras-MMAE、及びTras-CH1/CT-MMAEのインビトロ細胞傷害性。(図37E)Tras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEの差次的な骨標的化能力。C57/BL6マウスからの非脱石灰化骨切片を、50μg/mLのTras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEと一晩インキュベートし、続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトIgG及び4μg/mLのキシレノールオレンジ(XO、骨を標識することが知られている)で染色した。(図37F)MDA-MB-361細胞を、ヌードマウスの右後肢中に傍脛骨注射し、続いて、Tras-MMAE(滅菌PBS中0.5mg/kgの後眼窩静脈洞、毎週2ヶ月間)及びTras-CH1/CT-MMAE(Trasと同じ)で治療した。腫瘍負荷を、毎週の生物発光撮像によって監視した。(図37G図37Fに記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の平均発光強度の倍率変化。(図37H図37Fに記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の個々の発光強度の倍率変化。(図37I)経時的な図37Fにおける腫瘍担持マウスの体重変化。(図37J)腫瘍移植後にTras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEで治療したマウスからの骨のMicro-CT走査。(図37K)Tras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEで治療したマウスからの組織における、エクスビボBLI強度及び転移関与の状態のヒートマップ。各列は個々の動物を表し、各行は組織の種類を表す。転移の存在は、120秒の露光時間下で18カウント/ピクセルを上回るBLIシグナルの存在として定義した。多部位転移は、少なくとも3つの組織の転移関与として定義した。p値は、転移関与の頻度についてはフィッシャーの正確検定によって決定し、転移負荷についてはマン・ホイットニー検定によって決定した。****P<0.0001及びn.s.P>0.05。
図38図38A~38B:Tras及びTras-CH1/CTの安全性評価。(図38A)RAW264.7細胞及び(図38B)MC3T3-E1細胞。
図39図39A~39G:骨部位での腫瘍負荷の分析。(図39A)PBS、Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、Tras-LC/CH1/CT、及びシャムで治療した群の、仰臥位でのMicroCT走査。(図39B)骨体積(BV)の定量的分析。(図39C)骨体積/組織体積の比(BV/TV)の定量的分析。(図39D)海綿骨ミネラル密度(BMD)の定量的分析。(図39E)海綿骨の厚さ(Tb.Th)の定量的分析。(図39F)骨表面/骨体積の比(BS/BV)の定量的分析。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05、及びn.s.P>0.05。(図39G)各群からの脛骨/大腿骨の代表的な長手方向及び正中矢状のH&E染色切片。T:腫瘍;B:骨;BM:骨髄。
図40図40A~40B:Tras-CH1/CTのインビトロ安定性。(図40A)PBS中、4℃で3ヶ月間インキュベートした後のTras-CH1/CTのESI-MSスペクトル。(図40B)PBS中、4℃で3ヶ月間インキュベートした後のTras及びTras-CH1/CTのSDS-PAGE分析。
図41】Tras及びTras-CH1/CTの薬物動態プロファイル。腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウス(手術の3ヶ月後)に、PBS中1mg/kgのTras及びTras-CH1/CTを後眼窩注射した。血清中の抗体濃度を、ELISAキットによって決定した(データは、3つの独立した反復の平均±SDとして提示した)。
図42】高用量の骨標的化抗体は、乳がん骨転移を阻害する。腫瘍負荷を、毎週のBLIによって監視した。
図43図43A~43B:MDA-MB-361治療群における高用量からのBLIシグナル伝達の定量化。(図43A)関心対象の領域において検出された放射輝度によって定量化した、各治療群からのBLI。Tras群とTras-CH1/CT群との間でBLIを比較する、二元配置分散分析。(図43B図3Oに記載されるような様々な治療群の個々の発光強度。****P<0.0001。
図44図44A~44B:MCF-7モデルの治療群からのBLIシグナル伝達の定量化。(図44A)関心対象の領域において検出された放射輝度によって定量化した、各治療群からのBLI。Tras群とTras-CH1/CT群との間でBLIを比較する、二元配置分散分析。(図44B図4A~Cに記載されるような様々な治療群の個々の発光強度。****P<0.0001。
図45図45A~45C:原発腫瘍を有するマウスに対するTras-CH1/CTの治療効果。(図45A)接種の21日後のヌードマウスから外科的に取り出した腫瘍組織。(図45B)接種後の様々な時点で、PBS、Tras、又はTras-CH1/CTで治療したマウスの腫瘍体積。(図45C)接種後の様々な時点で、Tras又はTras-CH1/CTで治療したマウスの腫瘍体積。n.s.P>0.05。
図46図46A~46E:Tras-CH1/CTでの治療後のマウスの免疫応答の評価。(図46A)血液から得たB細胞、単球、好中球、マクロファージ、CD4+T細胞、及びCD8+T細胞の懸濁液を、様々な表面マーカーで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。(図46B)CD4+T、CD8+T、及びB細胞におけるIFNγレベル。(図46C、46D、46E)マウスからの血漿試料のIL2、IL4、及びIFNγの分析。n.s.P>0.05。
図47】Tras及びTras-CH1/CTを注射したマウスにおいて発生した抗トラスツズマブ抗体レベル。Tras及びTras-CH1/CT群:マウスを、Tras及びTras-CH1/CT(5mg/kg)で、週2回1ヶ月間治療した。
図48】Tras-MMAEのESI-MSスペクトル。
図49】Tras-CH1/CT-MMAEのESI-MSスペクトル。
図50】SKBR-3及びMDA-MB-468細胞に対するTras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEの細胞表面結合。細胞を、培地中の30nM Tras-ALNと37℃で30分間インキュベートし、Hoechst核染色(青色蛍光)をした。
図51図51A~51B:Tras-CH1/CT-MMAE治療中のBLIシグナル強度の倍率変化。(図51A図37Fに記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の平均発光強度の倍率変化。Tras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEの群を比較する二元配置分散分析。(図51B)Tras-MMAEとTras-CH1/CT-MMAEとの間で個々の発光強度の倍率変化を比較する二元配置分散分析。****P<0.0001。
図52図52A~52D:Tras-CH1/CT-MMAE治療群からのBLIシグナル伝達の定量化。(図52A)関心対象の領域において検出された放射輝度によって定量化した、各治療群からのBLI。PBS、Tras-MMAE、及びTras-CH1/CTMMAEの群の間でBLIを比較する二元配置分散分析。(図52B)PBS、Tras-MMAE、及びTras-CH1/CT-MMAEの治療群の個々の発光強度。(図52C)Tras-MMAE群とTras-CH1/CT-MMAE群との間でBLIを比較する二元配置分散分析。(図52D)Tras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEの治療群の個々の発光強度。****P<0.0001。
図53】各治療群からの皮質骨及び海綿骨の代表的なmicroCTスライス。
図54図54A~54B:MDA-MB-361モデルに対するTras-CH1/CT-MMAEの効果:BV/TV及びTb.Thの分析。(図54A)骨体積/組織体積の比(BV/TV)の定量的分析。(図54B)海綿骨の厚さ(Tb.Th)の定量的分析。**P<0.01及びn.s.P>0.05。
図55図55A~55B:Tras-CH1/CT-MMAE治療群と他の治療群との比較。(図55A)各群からの脛骨/大腿骨の代表的な長手方向、正中矢状のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色切片。(図55B)各群からの骨切片のHER2染色の代表的な画像。
図56】Tras-MMAE又はTras-CH1/CT-MMAEで治療したマウスの様々な臓器において観察された二次転移。
図57図57A~57D:骨標的化抗体の調製及び特徴評価。(図57A)骨ホーミングペプチドを、3つの場所:軽鎖(LC)、重鎖(CH1)、及びc末端(CT)に挿入した。(図57B)抗体のESI-MS分析。(図57C)ユーイング肉腫及び骨肉腫細胞株に対するαCD99抗体の結合。(図57D)フローサイトメトリーによって検出されたES細胞におけるαCD99抗体により誘発された細胞アポトーシス。
図58図58A~58D:(図58A)ハイドロキシアパタイト(HA)に対するαCD99抗体の結合動態。(図58B)野生型αCD99及び骨標的化αCD99変異体の差次的な骨標的化能力。スケールバー、200μm。(図58C)NIR標識αCD99及びαCD99-CH1/CTの後眼窩注射の7日後又は9日後の、SK-ES-1腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスの下肢のエクスビボ蛍光画像。(図58D~58E)HUVEC細胞及び単球に対するαCD99のインビトロ細胞傷害性。
図59図59A~59D:12E7抗体は異種移植片モデルにおいてユーイング肉腫腫瘍を阻害する。(図59A)SK-ES-1細胞を、ヌードマウスの右後肢中に脛骨内注射し、続いて、PBS及び12E7抗体(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)で治療した。腫瘍負荷を、毎週の生物発光撮像によって監視した。(図59B図59Aに記載されるように治療したマウスにおける、Fluc活性のシグナル進行。p値は、二元配置分散分析検定に基づく。(図59C図59Aに記載されるように治療したマウスの体重。(図59D)SK-ES-1細胞を、ヌードマウスの脛骨に近接して筋肉内注射し、続いて、PBS及び12E7抗体(滅菌PBS中1mg/kgの眼窩後静脈洞、週2回)で治療した。(図59E図59Dに記載されるように治療したマウスにおける、Fluc活性のシグナル進行。p値は、二元配置分散分析検定に基づく。(図59F図59Dに記載されるように治療したマウスの体重。****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05、ns>0.05。
図60】右脚における脛骨内導入骨病変の確立後に、マウスの様々な臓器において観察された肺転移及び骨格転移。
図61図61A~61B:(図61A)IL6-6Dの発現及び精製。(図61B)ヒドロキシアパタイトに対するIL6-6Dの結合動態。
【発明を実施するための形態】
【0038】
例示的な実施形態の説明
治療用抗体は、その臨床的可能性の実現に大いに役立ち、様々な病態の治療に有用となってきた。治療用抗体の急速な進化にもかかわらず、骨腫瘍の治療におけるその臨床的有効性は、これらの大きな高分子の不適当な薬物動態及び不十分な骨組織への接触性によって妨げられてきた。したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、骨転移ニッチにおけるその濃度を向上させ、乳がん骨転移の生存及び進行の有意な低減を結果としてもたらす骨ホーミングペプチド配列を含むように、治療用抗体又はポリペプチドを操作するための方法を提供する。操作された抗体の骨腫瘍標的化能力を向上させるために、様々な数の骨ホーミングペプチドが、抗体の許容的な内部部位に導入され得る。非修飾抗体と比較して、操作された骨標的化抗体は、類似した薬物動態及びインビトロ細胞傷害活性を有することが示されたが、インビボで改善された骨腫瘍分布を示した。これらの結果は、抗体療法への骨特異的標的化の付加が、治療用抗体の骨腫瘍ニッチへの堅牢な送達を結果としてもたらすことを実証している。これは、骨がんの不適当な治療及び治療に対する獲得耐性の発生を克服するための、強力な戦略を提供する。
【0039】
したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、骨ホーミングペプチドを含むための抗体又はポリペプチドの操作を介して、治療用抗体又はポリペプチドの骨への特異的送達を可能にする、革新的な骨標的化技術を提供する。この種類の、治療用抗体又はポリペプチドの骨への特異的送達は、骨関連疾患に対する抗体療法の幅及び効力を両方とも向上させる可能性を有する。
【0040】
I.定義
本明細書で使用される場合、特定の構成成分に関して「本質的に含まない」は、特定の構成成分のいずれも、意図的に組成物へと製剤化されておらず、かつ/又は汚染物質としてのみ存在するか若しくは微量のみ存在することを意味するように本明細書で使用される。したがって、組成物の任意の意図しない汚染物質から生じる特定の構成成分の総量は、0.05%をはるかに下回り、好ましくは0.01%未満である。最も好ましくは、標準的な分析方法では特定の構成成分の量を検出することができない組成物である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、1つ以上を意味し得る。本明細書で特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」という単語とともに使用される場合、単語「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、1つ又は1つ以上を意味し得る。
【0042】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すことが明示的に示されるか、又は選択肢が互いに排他的であることのない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢及び「及び/又は」のみを指す定義を支持する。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の、又はそれ以上を意味し得る。
【0043】
「約」という用語は、一般に、記載の値を測定するための標準的な分析技術を使用して決定される、記載の値の標準偏差内であることを意味する。用語はまた、記載の値のプラス又はマイナス5%を指すことによって使用され得る。
【0044】
「有効量」又は「治療上有効な」という語句は、所望の結果を生じるのに十分な薬物又は薬剤の投薬量を意味する。所望の結果は、投薬のレシピエントにおける主観的若しくは客観的な改善、肺成長の増加、肺修復の増加、組織浮腫の低減、DNA修復の増加、アポトーシスの減少、腫瘍サイズの減少、がん細胞の成長速度の減少、転移の減少、又は上の任意の組み合わせであり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン、特異的結合能力を維持するその誘導体、及び免疫グロブリン結合ドメインに相同であるか又は大部分相同である結合ドメインを有するタンパク質を指す。これらのタンパク質は、天然源に由来してもよいか、又は部分的若しくは完全に合成的に産生されてもよい。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、ヒトクラスのうちのいずれかを含む、任意の免疫グロブリンクラスのメンバー:IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEであり得る。抗体は、二重特異性抗体であり得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用される抗体は、IgGクラスの誘導体である。抗体という用語はまた、抗原結合抗体断片を指す。そのような抗体断片の例としては、限定されないが、Fab、Faby、F(aby)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、及びFd断片が挙げられる。抗体断片は、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、そのままの抗体の断片化によって酵素的若しくは化学的に産生され得、部分抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生され得るか、又は完全に若しくは部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意選択的に、一本鎖抗体断片であり得る。代替的に、断片は、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結される複数の鎖を含み得る。断片はまた、任意選択的に、多分子複合体であり得る。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約10個のアミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含むであろう。
【0046】
「対象」及び「患者」は、霊長類、哺乳類、及び脊椎動物などのヒト又は非ヒトのいずれかを指す。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0047】
本明細書で使用される場合、疾患、障害、又は医学的状態に関して使用される場合、「治療する」、「治療」、「治療すること」、又は「改善」という用語は、状態の療法的治療を指し、その目的が、症状又は状態の進行又は重症度を逆転させること、緩和すること、改善すること、阻害すること、減速させること、又は停止させることである。「治療すること」という用語は、状態の少なくとも1つの有害作用又は症状を低減又は緩和することを含む。1つ以上の症状又は臨床マーカーが低減される場合、治療は、一般に「有効」である。代替的に、状態の進行が低減又は停止される場合、治療は、「有効」である。すなわち、「治療」は、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療の不在下で予想されるであろう症状の進行又は悪化の停止又は少なくとも減速も含む。有益な又は所望の臨床結果としては、限定されないが、1つ以上の症状の緩和、欠損の程度の減少、腫瘍又は悪性腫瘍の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、腫瘍成長及び/又は転移の遅延又は減速、並びに治療の不在下で予想されるものと比較した寿命の増加が挙げられる。
【0048】
II.骨標的化抗体
骨は、主に、カルシウム及びリンの不溶性塩であるヒドロキシアパタイト(HA)結晶から構成されている。骨などの硬組織におけるHAの限られた分布のために、それは、選択的骨標的化のための魅力的な標的になる。自然は、細胞固定のため及び骨ミネラル化プロセスを調節するための部位を提供する、シアロタンパク質及びオステオポンチンを含む様々なHA結合タンパク質を進化させてきた。興味深いことに、配列分析により、これらのタンパク質は、可能性がある骨結合部位を表す酸性アミノ酸の繰り返し配列を有することが明らかになっている(図1A17。アスパラギン酸(Asp)からなる短い骨ホーミングペプチドが、小分子、マイクロRNA、及びナノ粒子の骨ニッチへの特異的送達について試験されてきた18~22。これらの短いペプチドは、より高いレベルの結晶化度を有するHA表面への結合に有利であることが示されている。この表面は、骨吸収表面の存在を特徴とし、溶骨性骨転移ニッチとして知られている23。溶骨性骨病変の形成は、がん細胞、骨芽細胞、及び破骨細胞の間のパラクリンクロストークによって駆動される22~26。具体的には、がん細胞は、核因子κB活性化受容体リガンド(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)(RANKL)及びオステオプロテゲリン(OPG)などの骨芽細胞遺伝子の発現を調節するように作用することによって破骨細胞の形成を直接的に又は間接的に刺激する、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)及びインターロイキン8などの分子を分泌する。その結果としての骨吸収の増加が、腫瘍成長を相互に刺激する成長因子(例えば、IGF1)の放出をもたらす。したがって、治療剤の骨転移ニッチへの選択的送達は、この悪循環の溶骨サイクルを中断する可能性を有する。したがって、骨腫瘍の標的化の向上が可能な抗体を操作するための方法が、本明細書において提供される。骨ホーミングペプチド配列の抗腫瘍抗体中への挿入後に、これらの操作された抗体の有用性が、骨における乳がん転移の治療について実証された(図1B)。
【0049】
ある特定の実施形態では、1つ以上の骨ホーミングペプチドを含むように操作された抗体などの、骨標的化抗体に関する方法及び組成物が、本明細書において提供される。いくつかの態様では、骨ホーミングペプチドは、L-Aspなどの、骨ヒドロキシアパタイト(HA)マトリックスに結合するペプチドである。
【0050】
骨ホーミングペプチドは、ペプチドの挿入が、天然IgGの構造及び機能に対して最小限に破壊的であり、骨マトリックスに対するペプチドの高い親和性の保持を依然として可能にする部位として本明細書で言及される「許容的な内部部位」で、抗体に挿入され得る。許容的な内部部位をスクリーニングするために、フローサイトメトリーを用いて、それが抗体機能を破壊しないことを確認してもよい。骨標的化抗体の結合親和性は、HA結合アッセイを用いて評価することができる。骨ホーミングペプチドは、抗体の軽鎖(LC)、重鎖(CH1)、及び/又はC末端(CT)に挿入され得る。例えば、抗体は、トラスツズマブであり得る。具体的な態様では、抗体は、SEQ ID NO:3~16のタンパク質配列、又はSEQ ID NO:3~16に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するタンパク質配列を含み得る。非修飾及び修飾トラスツズマブの例示的なアミノ酸配列を、骨ホーミングペプチドに下線を引いて、以下に提供する。
【0051】
本抗体は、撮像剤又は診断剤にコンジュゲートされ得る。
【0052】
本明細書で使用される「治療剤」は、疾患又は健康関連状態の治療上の利益を得る目的で対象に投与することができる、任意の薬剤を指す。例えば、治療剤にコンジュゲートされた抗体は、腫瘍のサイズを低減するか、腫瘍の局所侵襲性を低減若しくは阻害するか、又は転移の発生のリスクを低減する目的で、対象に投与され得る。
【0053】
本明細書で使用される「診断剤」又は「撮像剤」(互換的に言及される)は、対象における疾患又は健康関連状態を診断する目的で対象に投与することができる、任意の薬剤を指す。診断は、疾患が存在するかどうか、疾患が進行しているかどうか、又は疾患状態の任意の変化を決定することを含み得る。
【0054】
治療剤又は診断剤は、小分子、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、抗体、抗体断片、DNA、又はRNAであり得る。
【0055】
A.製剤及び投与
本開示は、骨標的化抗体を含む薬学的組成物を提供する。そのような組成物は、予防有効量又は治療有効量の抗体若しくはその断片、又はペプチド免疫原、及び薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおいて使用するために、連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬とともに投与される希釈剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、無菌液体、例えば、水及び油であってもよく、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む。薬学的組成物が静脈内投与される場合、特定の担体は水である。生理食塩水溶液及びデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射用溶液に用いることができる。他の好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0056】
所望な場合、組成物はまた、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。経口製剤は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの医薬グレードの標準的な担体を含み得る。好適な薬学的薬剤の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するのに好適な量の担体と一緒に、好ましくは精製された形態の、予防有効量又は治療有効量の抗体又はその断片を含有するであろう。製剤は、経口、静脈内、動脈内、口腔内、鼻腔内、噴霧、気管支吸入であり得るか、又は機械的換気によって送達され得る投与モードに適合するべきである。
【0057】
開示のもののような抗体が、ポックスウイルス感染のリスクのある対象においてインビボで産生される場合、活性ワクチンも想定される。そのようなワクチンは、非経口投与のために製剤化され得、例えば、皮内、静脈内、筋肉内、皮下、又は更には腹腔内経路を介して注射するために製剤化され得る。皮内経路及び筋肉内経路による投与が企図される。代替的に、ワクチンは、例えば、点鼻、吸入、又はネブライザーによる、粘膜への局所経路によって直接投与され得る。薬学的に許容される塩としては、酸性塩と、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸とで形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基と、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基とから誘導され得る。
【0058】
人工的に獲得した受動免疫として知られている抗体の受動的移行は、一般に、静脈内又は筋肉内注射の使用を伴うであろう。抗体の形態は、静脈内(IVIG)又は筋肉内(IG)使用のためにプールされたヒト免疫グロブリンとしての、免疫化されているか又は疾患から回復中のドナーからの高力価のヒトIVIG又はIGとしての、及びモノクローナル抗体(MAb)としての、ヒト又は動物の血漿又は血清であり得る。そのような免疫は、一般に短期間しか持続せず、過敏症反応、及び特に非ヒト由来のガンマグロブリンからの血清病の潜在的なリスクも存在する。しかしながら、受動的免疫は、即時保護を提供する。抗体は、注射に好適な担体、すなわち、滅菌及び注射可能な担体中に製剤化されるであろう。
【0059】
一般に、本開示の組成物の成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェなどの気密容器内の乾燥した凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として、単位剤形で別々に又は一緒に混合されて供給される。組成物が注入によって投与されるものである場合、医薬グレードの滅菌水又は生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0060】
本開示の組成物は、中性又は塩の形態として製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどのアニオンを用いて形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどのカチオンを用いて形成されるものが挙げられる。
【0061】
B.過剰増殖性疾患
過剰増殖性疾患は、細胞が制御不能に再生し始めることを引き起こす任意の疾患に関連付けられる場合があるが、原型的な例は、がんである。がんの重要な要素のうちの1つは、細胞の正常なアポトーシスサイクルが中断されることであり、したがって、細胞の成長を中断する薬剤は、これらの疾患を治療するための治療剤として重要である。本開示では、骨標的化抗体を使用して、骨がん及び骨に転移するがんなどの様々な種類のがんを治療することができる。
【0062】
本開示の化合物で治療することができるがん細胞としては、限定されないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、膵臓、精巣、舌、子宮頸部、又は子宮からの細胞が挙げられる。加えて、がんは、これらに限定されないが、具体的には、以下の組織学的種類のものであり得る:新生物、悪性;がん;がん、未分化;巨細胞及び紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭状がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛様体がん;移行細胞がん;乳頭状移行細胞がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;複合的な肝細胞がん及び胆管がん;海綿状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープの腺がん;腺がん、家族性多発性大腸腺腫症;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞上皮がん;乳頭状腺がん;嫌色素性細胞がん;好酸性がん;酸親和性腺がん;好塩基球がん;透明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞性腺がん;乳頭状及び濾胞性腺がん;非被包性硬化がん;副腎皮質がん;子宮内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘表皮がん;嚢胞線がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液性嚢胞腺がん;粘液性嚢胞性腺がん;粘液腺がん;印環細胞がん;浸潤性導管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳房;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;莢膜細胞種、悪性;顆粒膜細胞腫瘍、悪性;男性胚腫、悪性;セルトリ細胞がん;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂肪細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;巨大色素性母斑におけるマリグ(malig)メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児型横紋筋肉腫;肺胞性横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎児性がん;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉系軟骨肉腫;骨の巨大細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;グリオーマ、悪性;上衣腫;星細胞腫;原形質星細胞腫;原線維性星細胞腫;星芽腫;膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;並びに有毛細胞白血病。ある特定の態様では、腫瘍は、骨肉腫、血管肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、ユーイング肉腫、膠芽腫、神経芽腫、又は白血病を含み得る。
【0063】
C.治療の方法
特に、対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療に使用され得る組成物が、本明細書に開示される。上記の組成物は、哺乳類(例えば、げっ歯類、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコなど)に、有効量、すなわち、治療される対象において所望の結果を生じることが可能である(例えば、がん性細胞のアポトーシスを引き起こすか、又は細菌細胞を殺傷する)量で投与されることが好ましい。本開示の方法で利用される組成物の毒性及び治療有効性は、標準的な薬学的手順によって決定することができる。医学及び獣医学分野で周知であるように、任意の1匹の動物の投薬量は、対象のサイズ、体表面積、体重、年齢、投与される特定の組成物、投与時間及び投与経路、一般的な健康、感染症又はがんの臨床症状、並びに同時に投与される他の薬物を含む、多くの要因に依存する。本明細書に記載の組成物は、典型的には、がん細胞の成長若しくは増殖の低減を同定することによってアッセイして、がん性細胞の死を誘発する(例えば、がん細胞のアポトーシスを誘発する)投薬量で投与される。
【0064】
本開示の治療方法(予防治療を含む)は、一般に、その必要のある、哺乳類、特にヒトを含む対象に、治療有効量の本明細書に記載の組成物を投与する工程を含む。そのような治療は、疾患、障害、又はその症状に罹患しているか、有するか、感受性があるか、又はそのリスクのある対象、特にヒトに好適に行われるであろう。これらの「リスクのある」対象の決定は、対象又は医療提供者の診断試験又は意見による任意の客観的又は主観的決定(例えば、遺伝子検査、酵素又はタンパク質マーカー、マーカー(本明細書で定義される)、家族歴など)によって行われ得る。
【0065】
一実施形態では、本開示は、治療の進行を監視する方法を提供する。方法は、対象が、治療量の本明細書に記載の組成物を投与されている、がん(例えば、白血病)に関連付けられる障害又はその症状に罹患しているか又は感受性がある対象における、診断マーカー(例えば、限定されないが、CD34、CD38、CD90、及びCD117を含み得る)又は診断測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)として、細胞表面タンパク質を用いる血液学的パラメータ及び/又はがん幹細胞(CSC)分析の変化のレベルを決定するステップを含む。方法で決定されるマーカーのレベルは、対象の疾患状態を確立するために、健康な正常対照又は他の罹患している患者のいずれかにおけるマーカーの既知のレベルと比較され得る。好ましい実施形態では、対象におけるマーカーの第2のレベルは、第1のレベルの決定より後の時点で決定され、2つのレベルを比較して、疾患の経過又は治療の有効性が監視される。ある特定の好ましい実施形態では、対象におけるマーカーの治療前レベルは、本明細書に記載の方法に従って治療を開始する前に決定され、次いで、マーカーのこの治療前レベルを、治療を開始した後の対象におけるマーカーのレベルと比較して、治療の有効性が決定され得る。
【0066】
D.追加の療法
ある特定の実施形態では、本実施形態の組成物及び方法は、第2の又は追加の療法と組み合わせた骨標的化抗体を含む。そのような療法は、骨腫瘍を伴う任意の疾患の治療に適用され得る。例えば、疾患は、骨がん又は骨転移であり得る。
【0067】
ある特定の実施形態では、本実施形態の組成物及び方法は、少なくとも1つの追加の療法と組み合わせた骨標的化抗体を含む。追加の療法は、放射線療法、手術(例えば、腫瘍摘出手術及び乳房切除)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又は前述の組み合わせであり得る。追加の療法は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法の形態であり得る。
【0068】
併用療法を含む方法及び組成物は、治療又は保護効果を向上し、かつ/又は別の抗がん療法若しくは抗過剰増殖療法の治療効果を増加する。治療及び予防の方法及び組成物は、がん細胞の殺傷及び/又は細胞過剰増殖の阻害などの所望の効果を達成するのに有効な組み合わせた量で提供され得る。このプロセスは、細胞を、抗体又は抗体断片、及び第2の療法の両方と接触させることを含み得る。組織、腫瘍、又は細胞を、薬剤(すなわち、抗体若しくは抗体断片、又は抗がん剤)のうちの1つ以上を含む1つ以上の組成物若しくは薬理学的製剤と接触させてもよいか、又は組織、腫瘍、及び/若しくは細胞を、2つ以上の別個の組成物若しくは製剤と接触させることによるものであり得、1つの組成物が、1)抗体若しくは抗体断片、2)抗がん剤、又は3)抗体若しくは抗体断片、及び抗がん剤の両方を提供する。また、そのような併用療法は、化学療法、放射線療法、手術療法、又は免疫療法と同時に使用され得ることが企図される。
【0069】
「接触させる」及び「曝露させる」という用語は、細胞に適用される場合、本明細書では、治療構築物及び化学療法剤又は放射線療法剤が、標的細胞に送達されるか、又は標的細胞と直接並置して配置されるプロセスについて記載するために使用される。細胞殺傷を達成するために、例えば、両方の薬剤は、細胞を殺傷するか、又は細胞が分裂するのを防止するのに有効な組み合わせた量で細胞に送達される。
【0070】
阻害抗体は、抗がん治療と比較して、その前、その間、その後、又は様々な組み合わせで投与され得る。投与は、同時~数分~数日~数週間の範囲の間隔であり得る。抗体又は抗体断片が、抗がん剤とは別々に患者に提供される実施形態では、一般に、2つの化合物が、依然として患者に有利な複合効果を発揮することが可能であるように、各送達時間の間に顕著な期間が過ぎてしまわないことが確認されるであろう。そのような場合、互いに約12~24又は72時間以内、より具体的には、互いに約6~12時間以内に、抗体療法及び抗がん療法が患者に提供され得ることが企図される。いくつかの状況では、治療期間を顕著に延長することが望ましい場合があり、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6、又は7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7、又は8)が経過する。
【0071】
ある特定の実施形態では、治療過程は、1~90日又はそれ以上続くであろう(このそのような範囲は、介在する日数を含む)。1つの薬剤は、1日目~90日目のうちの任意の日(このそのような範囲は、介在する日を含む)又はそれらの任意の組み合わせに投与され得、別の薬剤は、1日目~90日目のうちの任意の日(このそのような範囲は、介在する日を含む)又はそれらの任意の組み合わせに投与されることが企図される。1日(24時間の期間)以内に、患者は、薬剤のうちの1つ又は複数の投与を受ける場合がある。更に、治療過程の後、抗がん治療が投与されない期間が存在することが企図される。この期間は、患者の予後、体力、健康などの状態に応じて、1~7日、及び/又は1~5週間、及び/又は1~12ヶ月若しくはそれ以上続き得る(このそのような範囲は、介在する日数を含む)。治療サイクルは、必要に応じて繰り返されるであろうことが予想される。
【0072】
一部の実施形態では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤又は抗転移剤の投与である。一部の実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、抗吐き気剤などの、治療の副作用の発生及び/又は重症度を軽減することが意図される薬剤)の投与である。一部の実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。一部の実施形態では、追加の療法は、手術である。一部の実施形態では、追加の療法は、放射線療法と手術との組み合わせである。一部の実施形態では、追加の療法は、ガンマ線照射である。一部の実施形態では、追加の療法は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学抗がん剤(chemopreventative agent)である。追加の療法は、当該技術分野で既知の化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。
【0073】
様々な組み合わせが用いられ得る。以下の例では、骨標的化抗体は、「A」であり、抗がん療法は、「B」である:
【0074】
本実施形態の任意の化合物又は療法を患者に投与することは、存在する場合、薬剤の毒性を考慮して、そのような化合物を投与するための一般プロトコルに従うであろう。したがって、一部の実施形態では、併用療法に起因する毒性を監視するステップが存在する。
【0075】
1.化学療法
本実施形態に従って、多種多様な化学療法剤が使用され得る。「化学療法」という用語は、がんを治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がんの治療において投与される化合物又は組成物を意味するために使用される。これらの薬剤又は薬物は、細胞内のそれらの活性モード、例えば、それらが細胞周期に影響を与えるかどうか、及びどの段階で影響を与えるかによって分類される。代替的に、薬剤は、DNAを直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、又は核酸合成に影響を与えることによって染色体異常及び有糸分裂異常を誘発する能力に基づいて、特徴評価され得る。
【0076】
化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロスホスファミド(cyclosphosphamide)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチイレンエチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホマイド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミドなどのナイトロジェンマスタード及びウラシルマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロスレア(nitrosurea);エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガンマlI及びカリケアミシンオメガI1);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連するクロモプロテインエンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オートラルナイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝物質;デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトンなどのアンドロゲン;ミトタン及びトリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSKポリサッカリド複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメトルヒオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、並びに上のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
【0077】
2.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く使用されている他の因子としては、γ線、X線、及び/又は放射性同位体の腫瘍細胞への直接送達として一般的に知られているものが挙げられる。マイクロ波、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号及び同第4,870,287号)、及びUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図される。これらの因子の全てが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製及び修復、並びに染色体の組み立て及び維持に対する広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)にわたって、50~200レントゲンの1日用量から2000~6000レントゲンの単回用量までの範囲である。放射性同位体の線量範囲は広く変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強度及び種類、並びに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0078】
3.免疫療法
当業者は、追加の免疫療法が、実施形態の方法と組み合わせで、又は同時に使用され得ることを理解するであろう。がん治療の文脈において、免疫療法剤は、一般に、がん細胞を標的とし、破壊するために、免疫エフェクター細胞及び分子の使用に依存する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))が、そのような例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体単独は、治療のエフェクターとして機能することができるか、又は実際に細胞殺傷に影響を及ぼすように他の細胞を動員することができる。抗体はまた、薬物又は毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートされ得、標的化剤として機能し得る。代替的に、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的又は間接的に相互作用する表面分子を担持するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞としては、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が挙げられる。
【0079】
抗体-薬物コンジュゲートは、がん治療薬の開発への画期的なアプローチとして浮上している。がんは、世界的に主要な死因のうちの1つである。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞殺傷薬物に共有結合しているモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチは、抗原標的に対するMAbの高い特異性を非常に強力な細胞傷害性薬物と組み合わせ、ペイロード(薬物)を腫瘍細胞に送達する「アーム型」MAbを生じ、抗原のレベルを豊富にする(Carter et al.,2008、Teicher 2014、Leal et al.,2014)。薬物の標的化送達はまた、正常な組織における曝露を最小限に抑え、毒性の減少及び治療指数の改善をもたらす。2011年のADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)及び2013年のKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン又はT-DM1)の2つのADC薬物のFDAによる承認によって、このアプローチが妥当であると認められた。現在、様々な段階の臨床試験中である、がん治療のための30以上のADC薬物候補が存在する(Leal et al.,2014)。抗体操作及びリンカーペイロード最適化がより一層成熟するにつれて、新しいADCの発見及び開発は、このアプローチに好適である新しい標的の同定及び検証、並びに標的化MAbの生成への依存が増加している(Teicher 2009)。ADC標的の2つの基準は、腫瘍細胞における上方制御/高レベルの発現、及び堅牢な内在化である。
【0080】
免疫療法の一態様では、腫瘍細胞は、標的とすることが容易である、すなわち、大部分の他の細胞に存在しない、いくつかのマーカーを担持する必要がある。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのうちのいずれも、本実施形態の文脈における標的化に好適であり得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、CD20、がん胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、及びp155が挙げられる。免疫療法の代替的な態様は、抗がん効果を免疫刺激効果と組み合わせることである。また、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、及びFLT3リガンドなどの成長因子を含む免疫刺激分子が存在する。
【0081】
現在調査中又は使用中の免疫療法の例としては、免疫アジュバント、例えば、Mycobacterium bovis、Plasmodium falciparum、ジニトロクロロベンゼン、及び芳香族化合物(米国特許第5,801,005号及び同第5,739,169号、Hui and Hashimoto,1998、Christodoulides et al.,1998)、サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、及びγ、IL-1、GM-CSF、及びTNF(Bukowski et al.,1998、Davidson et al.,1998、Hellstrand et al.,1998)、遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、及びp53(Qin et al.,1998、Austin-Ward and Villaseca,1998、米国特許第5,830,880号及び同第5,846,945号)、並びにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、及び抗p185(Hollander,2012、Hanibuchi et al.,1998、米国特許第5,824,311号)が挙げられる。1つ以上の抗がん療法が、本明細書に記載の抗体療法とともに用いられ得ることが企図される。
【0082】
一部の実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、又はシグナルを下げるかのいずれかである、免疫系の分子である。免疫チェックポイント遮断によって標的とされ得る阻害チェックポイント分子としては、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276としても知られている)、B及びTリンパ球減衰因子(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、CD152としても知られている)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、並びにT細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)が挙げられる。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸及び/又はCTLA-4を標的とする。
【0083】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子、組換え形態のリガンド若しくは受容体などの薬物であり得るか、又は特にヒト抗体などの抗体であり得る(例えば、両方が参照により本明細書に援用される、国際特許公開第2015/016718号、Pardoll,Nat Rev Cancer,12(4):252-64,2012)。免疫チェックポイントタンパク質又はその類似体の既知の阻害剤が使用され得、特に、抗体のキメラ化、ヒト化、又はヒト形態が使用され得る。当業者であれば分かるように、代替名及び/又は等価名は、本開示で言及される特定の抗体のために使用され得る。そのような代替名及び/又は等価名は、本発明の文脈において互換的である。例えば、ランブロリズマブは、MK-3475及びペムブロリズマブという代替名及び等価名でも知られている。
【0084】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1及び/又はPDL2である。別の実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PDL1結合パートナーは、PD-1及び/又はB7-1である。別の実施形態では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PDL2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、全て参照により本明細書に援用される、米国特許第8735553号、同第8354509号、及び同第8008449号に記載されている。全て参照により本明細書に援用される、米国特許出願第2014/0294898号、同第2014/022021号、及び同第2011/0008369号に記載のものなどの、本明細書で提供される方法で使用するための他のPD-1軸アンタゴニストは、当該技術分野で既知である。
【0085】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びCT-011からなる群から選択される。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPDL1又はPDL2の細胞外部分又はPD-1結合部分を含む、イムノアドヘシン)である。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)としても知られているニボルマブは、WO2006/121168に記載の抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、及びSCH-900475としても知られているペムブロリズマブは、WO2009/114335に記載の抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT又はhBAT-1としても知られ、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られているAMP-224は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載のPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0086】
本明細書で提供される方法において標的とされ得る別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られている細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、Genbank受託番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上に見られ、抗原提示細胞の表面上のCD80又はCD86に結合した場合、「オフ」スイッチとして作用する。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面上に発現され、T細胞に阻害シグナルを伝達する、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28に類似し、両方の分子は、抗原提示細胞上のCD80及びCD86(それぞれ、B7-1及びB7-2とも呼ばれる)に結合する。CTLA4は、T細胞に抑制性シグナルを伝達し、一方、CD28は、刺激性シグナルを伝達する。細胞内CTLA4は、制御性T細胞にも見出され、それらの機能に重要であり得る。T細胞受容体及びCD28を介したT細胞の活性化は、B7分子の抑制性受容体であるCTLA-4の発現の増加をもたらす。
【0087】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドである。
【0088】
本方法における使用に好適な抗ヒトCTLA-4抗体(又は、それに由来するVH及び/又はVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗CTLA-4抗体が使用され得る。例えば、US8,119,129、WO01/14424、WO98/42752;WO00/37504(トレメリムマブ、以前チシリムマブとしても知られているCP675,206)、米国特許第6,207,156号、Hurwitz et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95(17):10067-10071;Camacho et al.(2004)J Clin Oncology 22(145):Abstract No.2505(抗体CP-675206);及びMokyr et al.(1998)Cancer Res 58:5301-5304に開示の抗CTLA-4抗体は、本明細書に開示の方法で使用され得る。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に援用される。これらの技術分野で認識されているCTLA-4への結合に対する抗体のうちのいずれかと競合する抗体も使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、全て参照により本明細書に援用される、国際特許出願第2001/014424号、同第2000/037504号、及び米国特許第8,017,114号に記載されている。
【0089】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、及びYervoy(登録商標)としても知られている)又はその抗原結合断片及びバリアントである(例えば、WOO1/14424を参照されたい)。他の実施形態では、抗体は、イピリムマブの重鎖及び軽鎖のCDR又はVRを含む。したがって、一実施形態では、抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びにイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と同じCTLA-4上のエピトープとの結合に対して競合し、かつ/又はそれに結合する。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%、又は99%の可変領域同一性)を有する。
【0090】
CTLA-4を調節するための他の分子としては、全て参照により本明細書に援用される、米国特許第5844905号、同第5885796号、及び国際特許出願第1995/001994号及び同第1998/042752号に記載のものなどのCTLA-4リガンド及び受容体、並びに参照により本明細書に援用される、米国特許第8329867号に記載のものなどのイムノアドヘシンが挙げられる。
【0091】
4.手術
がんを有する人のおよそ60%は、予防、診断、又は病期分類、治癒、及び緩和手術を含む、何らかの種類の手術を受けるであろう。治癒的手術としては、がん性組織の全部又は一部を物理的に除去、切り取り、かつ/又は破壊する切除が挙げられ、本実施形態の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、及び/又は代替療法などの他の療法と同時に使用され得る。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部分の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療としては、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡によって制御される手術(モーズ手術)が挙げられる。
【0092】
がん性細胞、組織、又は腫瘍の一部分又は全部を切り取ると、身体に空洞が形成され得る。治療は、灌流、直接注射、又は追加の抗がん療法による領域の局所適用によって達成され得る。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、若しくは7日毎、又は1、2、3、4、及び5週間毎、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月毎に繰り返され得る。これらの治療も同様に、変動する投薬量のものであり得る。
【0093】
5.他の薬剤
他の薬剤を本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用して、治療の治療有効性を改善することができることが企図される。これらの追加の薬剤としては、細胞表面受容体及びGAP接合部の上方制御に影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤及び分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘発剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を増加させる薬剤、又は他の生物学的薬剤が挙げられる。GAP接合部の数を上昇させることによる細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖性効果を増加させるであろう。他の実施形態では、細胞増殖抑制剤又は分化剤を本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用して、治療の抗過剰増殖有効性を改善することができる。細胞接着の阻害剤は、本実施形態の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例は、局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。過剰増殖性細胞のアポトーシスに対する感受性を増加させる、抗体c225などの他の薬剤を本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用して、治療有効性を改善することができることが、更に企図される。
【0094】
III.キット
実施形態の様々な態様では、治療剤、並びに/又は他の治療剤及び送達剤を含有する、キットが想定される。一部の実施形態では、本実施形態は、実施形態の抗体組成物を調製及び/又は投与するためのキットを企図する。キットは、本実施形態の薬学的組成物のうちのいずれかを含有する1つ以上の密封バイアルを備え得る。キットは、例えば、本実施形態の構成成分を調製、製剤化、及び/若しくは投与するか、又は本発明の方法の1つ以上のステップを実施するための、操作された抗体、並びに試薬を含み得る。一部の実施形態では、キットはまた、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、又はチューブなどのキットの構成要素と反応しないであろう容器である、好適な容器を備え得る。容器は、プラスチック又はガラスなどの滅菌可能な材料から作製され得る。
【0095】
キットは、本明細書に記載された方法の手順ステップを概説する指示書を更に含み得、本明細書に記載のものと実質的に同じ手順に従うか、又は当業者に既知である。指示書情報は、コンピュータを使用して実行される場合に薬学的有効量の治療剤の送達の実際の又は仮想の手順を表示させる機械可読指示を含有するコンピュータ可読媒体内に存在する場合がある。
【実施例
【0096】
IV.実施例
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示の技術は、本開示の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい態様を構成すると見なすことができることが、当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、依然として本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく類似の又は同様の結果を得ることができることを理解するべきである。
【0097】
実施例1-骨標的化抗体の操作
骨ホーミングペプチドでのトラスツズマブの修飾
骨がん部位への抗体の選択的送達に骨ホーミングペプチドの力を利用するために、免疫グロブリン分子内の様々な部位に骨ホーミングペプチドL-Aspを持つ抗体のライブラリを、最初に操作した。設計の原則は、天然IgGの構造及び機能に対して最小限に破壊的であり、骨マトリックスに対するペプチドの高い親和性の保持を依然として可能にするであろう部位に、骨ホーミング配列を組み込むことであった。IgG1モノクローナル抗体の結晶構造に基づいて、L-Aspペプチドを、トラスツズマブの軽鎖(LC、A153)、重鎖(CH1、A165)、及びC末端(CT、G449)における許容的な内部部位に挿入して、それぞれ、Tras-LC、Tras-CH1、及びTras-CTを得た(図2A)。これらの内部部位は、抗体ペプチド配置ライブラリのスクリーニングによって、ペプチド挿入に対して安定であることが示されている27。操作された抗体の骨腫瘍標的化能力を調節するために、免疫グロブリン分子当たりの骨ホーミングペプチド配列の数もまた変動させ、2つのL-Aspペプチド配列を有するトラスツズマブ種(Tras-LC/CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1)並びに3つのL-Aspペプチド配列を有するトラスツズマブ種(Tras-LC/CH1/CT)のトラスツズマブ種を生成した。結果として生じた7つの構築物を、一過性トランスフェクションによってExpiCHO-S細胞において発現させ、続いて、プロテインGクロマトグラフィーを用いた免疫グロブリンの精製、及びSDS-PAGEによる発現タンパク質の分析を行った。これらの抗体変異体は全て、良好な収率(50~100mg/L)で発現された。SDS-PAGE及びESI-MS分析により、骨ホーミングペプチドの挿入の成功が確認された(図2B、2C、5~12)。抗体バリアントの中で、軽鎖及び重鎖の両方にL-Aspペプチド配列を含有するTras-LC/CH1種は、有意の凝集を示した。したがって、この抗体変異体は、更には研究しなかった。
【0098】
骨標的化抗体のインビトロ評価
骨標的化抗体バリアントを手にして、HA結合アッセイを最初に用いて、ミネラル化骨に対するその結合を調べた。簡潔には、骨標的化抗体種を、変動する長さの時間にわたってHAとインキュベートし、溶液中に残った結合していない抗体を、UV-Vis分光光度計を用いて測定した。図2Dに示されるように、非修飾Trasは、HAに対してわずかな親和性しか示さなかったが、L-Aspペプチド修飾抗体は、時間依存的様式でHAに結合した。複数のL-Aspペプチドを有する抗体、すなわちTras-CH1/CT及びTras-LC/CH1/CTは、最も高いHA結合能力を示し、抗体の80%超が、9時間のインキュベーション後に結合した(表2)。単一のL-Aspペプチドを含有する3つの抗体種に関しては、C末端構築物(Tras-CT)が、最も高いHA結合能力を示した。したがって、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTを用いて、C57BL/6マウスからの非脱石灰化骨切片を染色した。非修飾Trasで処理した切片は、一晩のインキュベーション後に、いかなる蛍光も示さなかった(図2E)。対照的に、3つのL-Aspペプチド含有バリアントで染色した切片全てにおいて、FITCシグナルが観察された。これらのFITC抗体シグナルは、骨からのキシレノールオレンジ(XO)シグナルとよく相関していた(図2E、13)。
【0099】
L-Asp配列の挿入が、Tras抗体の結合及び特異性に対して無視できるほど少ない影響を有することを実証するために、FITC標識Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT抗体を、HER2陽性細胞株及びHER2陰性細胞株に対する結合について試験した。フローサイトメトリーにより、これらの抗体のいずれも、HER2陰性MDA-MB-468細胞に結合しないが、骨標的化抗体の各々は、HER2発現SK-BR-3細胞に、非修飾Trasのものに類似したK(7.09nM)で結合することが明らかになった(図2F、14~23、及び表3)。Tras-CT、Tras-LC、Tras-CH1、Tras-CH1/CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT種は、恐らく、挿入された負に帯電した残基によって媒介される静電反発力の増加のために、Trasよりもわずかに高いK値(それぞれ、14.60nM、19.39nM、12.99nM、19.47nM、19.47nM、及び25.20nM)を有していた(図14~22)。次に、骨標的化抗体のインビトロ細胞傷害性を、HER2陽性細胞株及びHER2陰性細胞株に対して評価した。フローサイトメトリーのデータと一致して、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT抗体は、SK-BR-3細胞を、非修飾Trasのものに類似した効率で殺傷する(それぞれ、5.97±5.64nM、13.07±12.09nM、及び21.10±20.25nMのEC50値(図2G))。対照的に、抗体のいずれも、同じ実験条件下で、HER2陰性MDA-MB-468細胞に対して細胞傷害性を示さない(図2G)。これらの結果は、骨ホーミング配列の抗体中への導入が、その抗腫瘍活性を維持しながら、その骨親和性を有意に向上させたことを示している。骨細胞に対するTras-CH1/CTの潜在的毒性を調べるために、マウス前破骨細胞株RAW264.7及び骨芽細胞株MC3T3-E1を、様々な濃度のTras又はTras-CH1/CTと4日間インキュベートし、細胞生存を評価した。図38に示されるように、TrasもTras-CH1/CTも、有意な毒性を示さなかった。これらの結果は、骨に対する結合の向上にもかかわらず、骨標的化抗体が、骨間質細胞に対して有意な毒性を引き起こす可能性が低いことを示している。
【0100】
骨標的化抗体のインビボ分布
Tras抗体分布に対する骨ホーミングペプチドの効果を、マウス異種移植片モデルにおいて更に調査した。傍脛骨注射を用いて、ホタルルシフェラーゼ及び赤色蛍光タンパク質で標識された2×10個のHER2発現MDA-MB-361乳がん細胞を、最初にヌードマウスの右脚中に導入し、続いて、後眼窩注射を介してスルホ-Cy7.5標識Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、又はTras-LC/CH1/CTを投与した。抗体注入の72時間後及び120時間後に、主臓器を収集し、抗体分布を撮像した。骨間蛍光シグナルの強度は、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CT注射動物において、Tras注射マウスよりも強かった(図2H、24、及び25)。図25に示されるように、定量化した様々な組織からのエクスビボシグナルは、骨標的化抗体の有意により高いシグナルが、骨格組織において観察できたが、他の組織においては観察できなかったことを示唆している(図25B)。更に、本発明者らは、収集された心臓組織の組織学的分析を行って、様々な治療時に心臓組織における明らかな病理学的変動を観察せず、これは、骨標的化抗体の良好な生体適合性を示している(図25C)。更に、恐らく、骨吸収ニッチに対するL-Aspペプチド媒介性標的化のために、左の健康な骨と比較して、より多い量の骨標的化抗体が、腫瘍を担持する右脚の骨に存在した。全体的に、これらの結果は、L-Asp配列の導入が、骨腫瘍部位における治療用抗体の濃度を有意に増加できることを示した。この効果は、同時に全身毒性を減少させながら、腫瘍部位で抗腫瘍活性を向上させる可能性を有する。
【0101】
骨微小転移に対する骨標的化抗体のインビボ治療活性
骨標的化抗体が、骨への乳がん転移の治療用の新規治療実体として機能できるかどうかを判定するために、インビボ抗腫瘍実験を、MDA-MB-361腫瘍を担持するヌードマウスにおいて行った。ホタルルシフェラーゼ及び赤色蛍光タンパク質で標識された2×10個のMDA-MB-361乳がん細胞を、傍脛骨注射を介してヌードマウスの右脚中に接種した。注射の1週間後に、野生型Tras及び骨標的化Tras抗体を、後眼窩注射によって投与した。図3Aに示されるように、1mg/kgの非修飾Trasを受けたマウスは、この治療に良好に応答しなかった。治療の最初の2週間中の初期阻害性効果にもかかわらず、非修飾Trasは、長期の腫瘍成長を制御することができず、対象のマウス生存期間中央値を9.7日だけ延長した(図3B及び3C)。対照的に、腫瘍担持マウスを骨標的化抗体で治療した場合、腫瘍成長は、有意に阻害された。Tras-CT治療群、Tras-CH1/CT治療群、及びTras-LC/CH1/CT治療群は、それぞれ、27.5、35.8、及び18.9日の腫瘍成長の顕著な遅延を示した(図3B及び3C)。図3A、3B、3C、26、27、及び表4は、1日目から80日目までの各治療群の生物発光(BLI)シグナルを示す。PBS治療した対照群においては、経時的なBLIシグナルの漸進性の増加があった。1から80日目までのBLIシグナルは、骨標的化Tras抗体治療群が、Tras治療群と比較して、腫瘍成長の有意な遅延を経験したことを実証した(図3B及び3C)。Tras-CH1/CTで治療したマウスは、腫瘍サイズの最小の増加を示した(Tras-CH1/CT対Tras:9.3±4.2対1562.7±801.6、p<0.0001)。更に、Tras-CH1/CT治療マウスは、62.5%の生存率を経験し、Tras治療マウスにおいて見られたものを上回る有意な改善であった(図3D)。したがって、Tras-CH1/CTでの治療は、Tras治療マウスにおいて見られたものよりも有効な微小転移の進行の阻害を結果としてもたらしたように見られる。骨標的化抗体での治療は、良好な耐容性を示し、明らかな毒性の徴候は、治療群のいずれにおいても観察されなかった。例えば、体重におけるいかなる差も、様々な治療群にわたって観察されなかった(図3E)。
【0102】
実験の終了時(81日目)に、脛骨(腫瘍を担持する脚から)を採取し、マイクロコンピュータ断層撮影(mico-CT)によって走査した。micro CT分析により、PBS治療群及びTras治療群の両方において広範な溶骨性骨破壊が明らかになったが、骨量減少は、骨標的化抗体治療群において有意に低減された(図3F、28、及び29)。PBS治療群及びTras治療群のマウスと比較して、Tras-CH1/CT治療マウスは、より大きな骨体積(BV、図3G)、より大きな骨体積/組織体積の比(BV/TV、図3H)、より大きな骨ミネラル密度(BMD、図3I)、及びより厚い海綿骨(Tb.Th、図3J)を示したが、より小さな骨表面/骨体積の比(BS/BV、図3K及び表5)を示した。これらのパラメータは全て、骨ホーミングペプチドで修飾された抗体による微小転移誘発性骨溶解の有意な遅延を示している。組織学的分析により、更に、Tras治療群における腫瘍細胞の骨マトリックス中及び隣接組織中への浸潤が明らかになった(図3L)。組織学によりまた、BLIの結果によって示されたこれらのマウスにおける脛骨内腫瘍負荷の低減が確認された。Tras-CH1/CT治療マウスからの骨切片により、これらのマウスにおける腫瘍成長の低減及び比較的正常な骨形態が明らかになり、これは、腫瘍浸潤及び骨破壊の有意な阻害と一致していた(図3L)。様々な治療群からの骨試料をまた、骨吸収TRAP(酒石酸耐性酸ホスファターゼ)陽性多核破骨細胞(ピンク色の細胞として示される)及びHER発現がん細胞について分析した(図3M、3N、30~32)。Tras治療と比較して、Tras-CH1/CT治療は、骨ニッチにおける破骨細胞及びHER2陽性細胞の両方の数を有意に低減させ、これは、微小転移の進行を阻害する骨標的化抗体の能力と再び一致していた(図3N)。腫瘍誘発性高カルシウム血症及びTRACP 5bタンパク質が、溶骨性骨破壊の指標であることから、骨標的化抗体治療の効果を評価した。結果は、Tras-CH1/CT治療群が、より良好な治療効果を有していたことを示唆した(図33)。
【0103】
microCT及び組織学的分析と一致して、Tras-CH1/CT治療は、血清中の高カルシウム血症及びTRACP 5bタンパク質レベルによって評価されるように、最低レベルの骨破壊を示した(図33)。インビトロで骨標的化抗体の安定性を評価するために、Tras及びTras-CH1/CT(1mg/mL、100μL)を、PBS中4℃で、3ヶ月間インキュベートした。SDS-PAGE及びESI-MS分析により、骨標的化抗体のいかなる有意な分解又は凝集も観察されなかったことが明らかになった(図40)。一方、Tras及びTras-CH1/CTの両方の血清レベルは、インビボで類似した薬物動態を示し(図41)、これは、骨ホーミングペプチドの付加が抗体の安定性を変えないことを示唆した。次に、骨転移についての骨標的化抗体の有益性を、より高い用量で評価した。MDA-MB-361骨転移を有するヌードマウスを、10mg/kgのTras又はTras-CH1/CTで2週間毎に治療した。注目すべきことに、Tras-CH1/CT治療は、10mg/kgのTrasでの治療と比較して、統計的に有意な成長阻害及び全生存期間の延長を結果としてもたらす(図3O~R、42、43)。更に、いかなる体重減少も、高用量の骨標的化抗体で観察されなかった(図3S)。
【0104】
骨標的化抗体の治療有効性の向上をまた、MCF-7乳がん細胞を用いた二次的骨転移モデルで評価した。MDA-MB-361モデルと一致して、転移負荷の有意な低減及びマウス生存期間の増加が、Tras治療群と比較して、Tras-CH1/CT治療群において観察された(図36A~D、44)。Tras-CH1/CT治療は、動物における追加的な体重変化を変えなかった(図36E)。
【0105】
原発腫瘍の治療においてTras-CH1/CTの有効性を調べるために、MDA-MB-361細胞(1×10個)を乳房脂肪体に注射し、続いて、PBS、Tras(1mg/kg)、又はTras-CH1/CT(1mg/kg)で治療した。図45A~Cに示されるように、Tras及びTras-CH1/CT治療は両方とも、乳房脂肪体における腫瘍成長を有意に減少させたが、2つの治療の間で腫瘍サイズに統計的な差はなかった(図45C)。まとめると、これらのデータは、骨ホーミングペプチドの抗体中への導入が、原発腫瘍におけるその抗腫瘍活性を損なうことなく、乳がん骨転移を有意に阻害できることを示唆している。
【0106】
骨標的化抗体の免疫原性評価
骨標的化抗体の治療が特異的な免疫応答を引き起こすかを理解するために、免疫能を有するC57BL/6Jマウスを、PBS、Tras、又はTras-CH1/CTで週2回、2週間治療した。図S37Aに示されるように、フローサイトメトリーによって決定された免疫プロファイリングは、Tras又はTras-CH1/CTのいずれかで治療したマウスが、CD4+T細胞を除いて類似した免疫組成を有していたことを示唆している。更に、CD4+T細胞のIFNγ染色は、Tras治療マウス及びTras-CH1/CT治療マウスにおいて有意な差を有しておらず、これは、Tras-CH1/CTがCD4+T細胞の機能的活性を有意に変えないことを示している(図46B)。更に、野生型抗体又は骨標的化抗体での治療の間で、INFγ、IL-2、及びIL-4レベルの血清レベルにおいていかなる有意な差もなかった(図46C~E)。結果は、L-Asp6の抗体への付加が、いかなる明らかな余分な免疫応答も引き起こさないことを示した。更に、骨標的化抗体に対するインビボ免疫応答はまた、以前に報告されたように、抗トラスツズマブ抗体ELISAベースのアッセイに基づく免疫原性試験によって、試験することもできる。類似した抗トラスツズマブ抗体レベルが、Tras(5mg/kg)又はTras-CH1/CT(5mg/kg)で治療した動物において観察され、これは、骨標的化ペプチドの付加が、抗体の免疫原性を変えないことを示唆している(図47)。
【0107】
骨標的化抗体は骨病変からの二次転移を阻害する
患者の3分の2超において、乳がん転移は、骨格に制限されず、その後、他の臓器においても起こる28、29、30、31。最近のゲノム分析により、罹患率及び死亡率の主な原因であるこれらの転移は、原発腫瘍に由来するものではなく、他の転移部位から播種されることが示唆されている。がん細胞を後肢骨に選択的に送達する最近開発されたアプローチを利用して、確立された骨病変から複数の他の臓器への頻繁な「転移から転移」の播種が観察されている32~34。したがって、骨標的化抗体が、骨病変に由来するこれらの二次転移を阻害できるかどうかを評価した。傍脛骨注射法を用いると、高度に骨特異的な脛骨担持腫瘍は、発生の早期段階にあった。骨病変が進行するにつれて、生物発光シグナルによってマークされる転移が、他の骨、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、及び脳を含む多くの他の臓器に現れ始めた。このモデルを用いて、2×10個のルシフェラーゼ標識MDA-MB-361細胞を、傍脛骨注射を介してヌードマウスの右後肢中に導入し、続いて、非修飾Tras抗体及び骨標的化Tras抗体で治療した。マウスを、治療の開始の81日後に安楽死させ、エクスビボ生物発光撮像のために臓器を採取した。右後肢骨及び6つの軟部組織臓器を含む7つの臓器を、転移の評価のために単離した。図4A、4B、及び34に示されるように、Tras-CH1/CTでの治療は、対側の後肢(左後肢骨)、心臓、及び肝臓への二次転移の頻度を有意に低減した。原発骨病変からの二次転移のエクスビボBLI強度は、骨標的化抗体で治療した実験群、特にTras-CH1/CT治療群において低減された。非修飾Trasでの治療と比較して、肺及び肝臓からの転移シグナルは、Tras-CH1/CT治療後に有意に減少した(図4B)。まとめると、これらのデータにより、初期骨転移及び骨から他の遠隔臓器への二次転移の両方に対する、骨標的化抗体の治療有効性の向上が明らかになる。
【0108】
骨ホーミングペプチドでの抗体-薬物コンジュゲートの修飾は、インビボで治療有効性の向上を示す
抗体の腫瘍特異性と化学療法薬の高い毒性とを組み合わせる抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、乳がん患者、特に進行性乳がんを有する患者に対する抗がん薬の重要な種類として出現している。HER2陽性乳がんに対するトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)の最初のFDA承認に続いて、トラスツズマブデルクステカンが、切除不能又は転移性のHER2陽性乳がんを有する成人の治療について、最近承認された。骨標的化ADCが、骨転移の治療においてその有効性を更に改善することができるかを試験するために、pClickコンジュゲーション技術を最初に用いて、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を野生型抗体Tras及び骨標的化抗体Tras-CH1/CTの両方に部位特異的に結合させた(図37E)。コンジュゲーションの成功は、SDS-PAGE及びESI-MSによって実証された(図37B、48、49)。毒素のコンジュゲーションが、抗原標的化能力及び特異性を変えなかったことを確認するために、インビトロ結合アッセイを、HER2陽性細胞及びHER2陰性細胞を用いて行った(図50)。Tras-CH1/CT-MMAEは、HER2陽性SK-BR-3細胞に対して高い結合親和性を示したが、HER2陰性MDA-MB-468細胞には示さなかった。次に、これらのADCのインビトロ細胞傷害性を、SK-BR-3及びMDA-MB-468乳がん細胞株において評価した(図37C~D)。Tras-MMAE及びTras-CH1/CT-MMAEは両方とも、SK-BR-3においてのみ高い効力を示し(それぞれ、EC50:0.18±0.82nM及び0.49±0.30nM)、いかなる有意な毒性もMDA-MB-468細胞において観察されなかった。Tras-CH1/CT-MMAEの骨標的化能力をインビトロで試験するために、Tras-CH1/CT-MMAE又はTras-MMAEのいずれかを、非脱石灰化骨切片とインキュベートした。予想されたように、Tras-CH1/CT-MMAEのシグナルのみがXOシグナルとよく相関し、その骨標的化能力が確認された(図37E)。
【0109】
次に、骨標的化ADCの治療有効性を、骨転移の異種移植片モデルにおいて調べた。Tras-CH1/CT-MMAEの毎週の投与は、非修飾Tras-MMAEと比較して、骨における転移性増殖の有意な阻害をもたらした(図37F~H、51、52)。更に、骨標的化ADCは、治療中の様々な群にわたる体重の継続的な増加によって示されるように、明らかな毒性を示さなかった(図37I)。micro-CT分析により、PBS治療群及びTras-MMAE治療群の両方において広範な溶骨性骨破壊が明らかになったが、Tras-CH1/CT-MMAE治療群においてはならなかった(図37J、53)。PBS治療群及びTras-MMAE治療群のマウスと比較して、Tras-CH1/CT-MMAE治療マウスは、より高い骨体積/組織体積の比(BV/TV、図S46A)及びより厚い海綿骨(Tb.Th、図54B)を示した。組織学によりまた、Tras-CH1/CT-MMAEマウスにおける脛骨内腫瘍負荷の低減が確認される(図55)。一貫して、骨標的化ADCはまた、骨病変に由来する二次転移の頻度及びサイズを有意に低減した(図37K、56)。
【0110】
したがって、抗体療法への骨特異性の付加は、他の組織と比べて、骨転移ニッチにおいて抗体濃度の増加をもたらすことが実証された。このアプローチにより、骨転移に対する、及び骨病変からの二次的な多臓器転移播種に対する標的療法が生じる。骨転移の異種移植片モデルを用いて、非修飾トラスツズマブは、不十分な骨組織浸透及び分布を有し、したがって、抗体のその標的に対する接触を低減し、骨微小環境におけるがん細胞に対するその有効性を限定することが見出された。非修飾抗体と比較して、骨ホーミングペプチド配列(L-Asp)で修飾されたトラスツズマブは、骨転移の部位への標的化の向上を示した。これは、骨への乳がん転移に対する、及び骨病変から他の臓器への転移性播種に対する活性の改善を結果としてもたらした。最も重要なことに、中程度の骨結合能力を有する修飾抗体が、インビボで最適な有効性を有していたことが実証された。対照的に、より高い骨結合能力を有する抗体は、骨転移に対して最適に満たない活性を有する。これは、後者の実体の骨マトリックスからの遅い放出、又は負電荷を有するペプチドの数の増加に起因する静電反発力の増加のためであり得る。抗体療法への骨特異性の付加は、これらの作用物質の骨への特異的送達を可能にした。これは、治療有効性の向上だけではなく、薬物の全身分布に伴う有害な副作用の低減も結果としてもたらした。したがって、抗体ベースの治療法を、抗原特異的なものから抗原及び組織の両方に特異的なものへと移行させるため、したがって、抗体療法を臨床トランスレーションに向かって進めるのに有望な新たな道を提供するための新たな戦略が、本明細書において提供される。
【0111】
実施例2-材料及び方法
材料
特に明記されていない限り、使用した化学物質及び溶媒は、分析グレードのものであり、商業的供給源から受け取ったまま使用した。LB寒天は、Fisherに発注した。オリゴヌクレオチドプライマーは、Eurofins Genomicsから購入した(表1)。プラスミドDNAの調製は、GenCatch(商標) Plus Plasmid DNA Miniprep Kit及びGenCatch(商標) Advanced Gel Extraction Kitで実施した。ESI-MS分析前にグリカンを除去するために、PNGase FをNew England Biolabsから購入した。NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gelは、Invitrogenから購入した。SDS-PAGE Sample Loading Buffer[6×]は、BIOSCIENCESから購入した。PM2500 ExcelBand 3-color Regular Range Protein Markerは、SMOBIO から購入した。ExpiCHO Expression Medium、ExpiFectamine CHO Transfection Kit、OptiPRO SFM Complexation Mediumは、Thermofisherから購入した。Hoechst 33342(カタログ番号:H1399)は、Life Technologies(商標)から購入した。3,3-ジオクタデシルオキサカルボシアニン過塩素酸塩 (DiIC18、カタログ番号:M1197)は、Marker Gene Technologies,Inc.から購入した。
【0112】
細胞株
MDA-MB-361、BT474、SK-BR-3、及びMDA-MB-468細胞株を、ATCCの指示に従って培養した。ホタルルシフェラーゼ及びRFP標識MDA-MB-361細胞株を、以前に記載されたように生成した40
【0113】
SDS-PAGE分析
そのままの及び還元した抗体試料を、invitrogen NuPAGE 4-12% Bis-Trisゲルを用いて分析した。20μLの0.2mg/mL抗体試料を、ゲルへのローディング前に、4μLのサンプルローディング色素と混合した。ゲルを、160V下でMES緩衝液において35分間泳動し、クマシーブルー緩衝液を用いて染色した。ゲル画像を、Amersham Imager 600によって撮り、ImageQuanTLソフトウェアによって分析した。
【0114】
ESI-MS分析
抗体を、1260 infinity II Quaternary Pump(Agilent:G7111B)と結合したシングル四重極質量分析計(Agilent:G7129A)を用いて分析した。(カラム:Pursuit 5 Diphenyl 150×2.0mm)。抗体の溶出条件は、以下の通りであった:移動相A=0.1%ギ酸水;移動相B=アセトニトリル中0.1%ギ酸;勾配0~0.1分、10~15%B;0.1~8分、15~50%B;8~8.1分、50~10%B;流速=0.5mL/分。吸光度は、280nmで測定した。自動データ処理を、MassHunter BioConfirmソフトウェア(Agilent)で行って、そのまま及び還元のMSスペクトルを分析した。
【0115】
HA結合アッセイ
簡潔には、1mgのTras又は骨標的化抗体を、Eppendorfチューブ中の0.5mLのPBS(pH7.4)に希釈した。HA(20当量、20mg)は、0.5mLのPBS中の懸濁液であった。次いで、抗体及びHAをボルテックスで混合し、結果として生じた懸濁液を、220rpm、37℃で振盪させた。HAを含まない試料を、対照として使用した。0.25、0.5、1、2、3、6、及び8時間後に、懸濁液を遠心分離し(3000rpm、3分)、280nmでの上清の吸光度を、Nanodropによって測定した。HAに対する結合パーセントを、以下のように計算した。式中、ODは、光学密度を表す。
[(ODHAを含まない-ODHAを含む)/(ODHAを含まない)]×100%
【0116】
Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTのインビトロ細胞傷害性
96ウェルプレート中、2×10細胞/ウェルのBT474及びMDA-MB-468細胞。24時間のインキュベーション後に、細胞を、様々な濃度のTras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTで処理し、次いで4日間インキュベートした。次いで、20μLの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)溶液(5mg/mL)を各ウェルに添加し、更に4時間インキュベートした。培地を吸引し、150μLのDMSOを各ウェルに添加した。生細胞を定量化するために、565nmでの吸光度を、マイクロプレートリーダー(TecanによるInfinite M Plex)によって測定した。
【0117】
フローサイトメトリー
がん細胞(3×10個)を、30μg/mLのTras及び骨標的化抗体と、4℃で30分間インキュベートした。結合していない抗体を洗い流した後、結合した抗体を、フルオレセイン(FITC)AffiniPure Goat Anti-Human IgG(H+L)(コード:109-095-003、Jackson Immunology)を4℃で30分間用いて検出した。蛍光強度を、BD FACSVerse(BD Biosciences)を用いて決定した。
【0118】
値の決定
HER2に対する骨標的化抗体の機能的親和性を、報告されたように決定した41。簡潔には、合計2×10個のSK-BR-3又はMDA-MB-468細胞を、段階的濃度のTras、Tras-LC、Tras-CT、Tras-CH1、Tras-LC/CT、Tras-CH1/CT、Tras-LC/CH1、及びTras-LC/CH1/CTと氷上で4時間インキュベートした。次いで、結合した抗体を、フルオレセイン(FITC)AffiniPure Goat Anti-Human IgG(H+L)(Jackson Immunology)によって検出した。細胞を、ヨウ化プロピジウム(Molecular Probes、Eugene、OR)染色後に、蛍光強度について分析した。飽和曲線の線形部分を使用し、蛍光中央値の逆数を抗体濃度の逆数の関数としてプロットするLineweaver-Burk方法を用いて、解離定数、KDを計算した。KDは、以下のように決定した:1/F=1/Fmax+(K/Fmax)(1/[Ab])、式中、Fは、バックグラウンドを差し引いた蛍光中央値に対応し、Fmaxは、プロットから計算した。
【0119】
骨凍結切片に対する結合
C57BL/6マウスからの非脱石灰化長骨切片を、50μg/mLのTras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、又はTras-LC/CH1/CTとインキュベートし、4℃で一晩コンジュゲートし、続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトIgGで、室温で60分間染色した。PBSで3回洗浄した後、標本を、キシレノールオレンジ(XO)(ストック:2mg/ml、1:500希釈、希釈緩衝液:PH6.5のPBS)と37℃で30分間インキュベートした。PBSでの3回の洗浄後に、標本を、Hoechst33342(ストック10mg/ml、1:2000希釈)で10分間染色した。次いで、スライドを、PBSで洗浄し、空気乾燥させ、(ThermoFisherからの)PROLONG(商標)金退色防止封入剤で密封した。
【0120】
Tras、Tras-CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTのインビボ評価
骨転移を確立するために、ホタルルシフェラーゼ及びRFP標識MDA-MB-361細胞(2×10個)を、傍脛骨注射法を用いて、3~4週齢の雌無胸腺ヌードマウスの脛骨中に接種した。手術の7日後に、マウスを、各群において類似した腫瘍負荷を得るようにランク付け/無作為に分割した。PBS及び抗体(1.0mg/kg)を、週2回の後眼窩注射を介して注射した。動物を、推奨される手順及び製造業者の設定に従って、IVIS Lumina II(Advanced Molecular Vision)を用いて週1回撮像した。マウスの全てを、81日目に、血液を収集した後に安楽死させ、全ての臓器(腫瘍担持脛骨、心臓、肝臓、脾臓、肺、脳、及び腎臓)を、更なる試験のために収集した。
【0121】
エクスビボの転移から転移の分析
エンドポイントで、生きている動物にD-ルシフェリンを与え、直ちに解剖した。組織を、エクスビボBLI撮像によって調べた。全プロセスの臓器収集手順及びエクスビボ撮像プロセスは、各マウスについて15分以内に終了させるべきである。
【0122】
骨組織学及び免疫組織化学
81日目に、マウスを安楽死させて、脛骨を採取し、固定し、次いで、12%のEDTA中で10日間脱石灰化させた。脛骨を、パラフィンに包埋して、切片化した。腫瘍負荷を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)切片で評価した。Acid Phosphatase, Leukocyte(TRAP) Kit(Sigma)で染色した後に、腫瘍内及び骨-腫瘍界面上の破骨細胞を計数した。免疫組織化学分析は、製造業者のプロトコルに従って、HRP/DAB ABC IHC KIT(abcam)を用いて、脱石灰化パラフィン包埋組織切片に対して行った。
【0123】
X線写真分析
脛骨を解剖し、固定して、16.16μm/ピクセルの解像度のマイクロコンピュータ断層撮影(micro-CT、Skyscan1272、Aartselaar,Belgium)によって走査した。未修正画像を、NReconnで再構築し、関心対象の領域(ROI)を用いてCTan(SkyScan、Aartselaar,Belgium)で分析した。分析した骨パラメータは、海綿骨の厚さ(Tb.Th)、骨体積分率(BV/TV)、骨ミネラル密度(BMD)、及び骨表面/骨体積の比(BS/BV)を含んでいた。
【0124】
生体内分布
雌の無胸腺ヌードマウスに、MDA-MB-361細胞(2×10細胞/動物)を傍脛骨注射した。80日後に、Cy7.5標識Tras及び骨標的化抗体を、後眼窩注射によって投与した。注射の72時間後及び120時間後に、マウスを、IVISを用いて撮像した。注射して72時間及び120時間で、マウスを殺傷し、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、肺、及び骨腫瘍組織を含む主臓器を取り出した。臓器及び腫瘍担持脛骨における蛍光強度を、IVISを用いて観察した。
【0125】
野生型マウスについては、Cy7.5標識Tras、Tras-CT、及びTras-LC/CH1/CTを、後眼窩注射を介してC57BL/6マウスに投与した。48時間後に、臓器を解剖して、IVISを用いて撮像した。
【0126】
血清中のTRAP及びカルシウムレベルの定量化
81日目に、血液を、心臓穿刺によって収集し、3,000rpmで15分間遠心分離して、血清を得た。破骨細胞由来TRACP 5bの濃度を、Mouse ACP5/TRAP ELISA Kit(カタログ番号IT5180、GBiosciences)を用いることによって測定した。血清カルシウムレベルを、カルシウム検出キット(カタログ番号DICA-500、Bioassays)を用いて、比色測定的に決定した。
【0127】
統計的方法
データは、平均プラス又はマイナスSEMとして提示し、GraphPad Prismソフトウェアバージョン6(GraphPad software、San Diego,CA)を用いて統計的に分析する。時間経過にわたって収集した全てのデータには、二元配置分散分析、続いてSidakの多重比較を用いた。Micro-CTデータには、一元配置分散分析、続いてTukeyの多重比較を用いた。多臓器転移データには、対応のないスチューデントt検定を用いた。P<0.05は、統計的有意性を表すと見なした。
【0128】
プラスミド構築
pCDNA-Tras-LC:プライマーRG03、RG04、RG07、及びRG08、並びに鋳型としてのpCDNA-Trasを用いたPCRによって、6D遺伝子を、Tras配列のLC鎖(境界残基A153、Q155)中に挿入した。遺伝子断片は、ギブソンアセンブリー法を用いることによってアニールした。
【0129】
pCDNA-Tras-CH1:プライマーRG05、RG06、RG07、及びRG008、並びに鋳型としてのpCDNA-Trasを用いたPCRによって、6D遺伝子を、Tras配列のCH1鎖(境界残基A165、G169)中に挿入した。遺伝子断片は、ギブソンアセンブリー法を用いることによってアニールした。
【0130】
pCDNA-Tras-CT:プライマーRG01、RG02、RG07、及びRG008、並びに鋳型としてのpCDNA-Trasを用いたPCRによって、6D遺伝子を、Tras配列のC末端(境界残基G449)中に挿入した。遺伝子断片は、ギブソンアセンブリー法を用いることによってアニールした。
【0131】
pCDNA-Tras-LCCH1/LCCT/CH1CT/LCCH1CT-6D:上述のプライマー及び鋳型としての構築されたプラスミドを用いることによって、6D遺伝子を、Tras配列中に挿入した。遺伝子断片は、ギブソンアセンブリー法を用いることによってアニールした。
【0132】
(表1)DNAオリゴマー
【0133】
抗体変異体の発現及び精製
Tras及び6D挿入変異体を、ThermofisherのExpiCHO発現プロトコルに従って、ExpiCHO-S細胞によって発現させた。細胞を、80%超の相対湿度及び8%のCOを有する37℃インキュベーターにおいて、オービタルシェーカープラットフォーム(125rpm)上で、培養物が4×10~6×10生存細胞/mLの密度に到達するまで、増殖させ、継代培養した。トランスフェクションの前に、ExpiFectamine CHO/プラスミドDNA複合体を調製して、室温で5分間インキュベートし、次いで、細胞培養物にゆっくり添加した。トランスフェクションの18~22時間後に、ExpiFectamine CHO Enhancer及びExpiCHO Feedを、細胞培養物に添加した。12日の発現後に、分泌された抗体を、9000rpmで30分間の遠心分離によって採取し、製造業者の指示に従ってプロテインG樹脂で精製した。注射の前に、各抗体試料を、PD-10脱塩カラムを介してPBSに緩衝液交換し、濃度を、NanoDrop Lite(Thermofisher)を用いて測定した。全ての抗体試料を、ESI-MS及びSDS-PAGE分析によって特徴評価した。
【0134】
(表2)HAに結合する6D挿入変異体の吸着
抗体(1mg/ml)を、20mg/mlのヒドロキシアパタイトと37℃で9時間インキュベートした。ヒドロキシアパタイト結合画分のパーセンテージを示す(平均±SEM)。
【0135】
(表3)乳がん上皮細胞株に対するTras、Tras-CT、Tras-LC、Tras-CH1、Tras-LC/CH1、Tras-LC/CT、Tras-CH1/CT、及びTras-LC/CH1/CTの効力及び細胞表面反応性
略語:MFI、蛍光強度中央値。結合は、PBS対照に対する蛍光中央値の平均増加倍率として決定した。
【0136】
(表4)複数のアッセイにおける様々な治療群の比較
略語:BLI、生物発光撮像;TRAP、酒石酸耐性酸ホスファターゼ。実験の過程にわたる全身におけるBLIのシグナル強度。治療後のBLIのシグナル強度増加倍率(80日目のBLI/1日目のBLI)。実験の終了時のTRAP染色した脛骨切片からの破骨細胞数測定値。実験の終了時の血清TRACP 5b濃度。実験の終了時の血清カルシウム濃度。実験の過程にわたる体重進行。10超のマウスBLI強度を、エンドポイントに到達したと見なした。a、bは、二元配置反復測定分散分析、続いてSidakの多重比較検定を用いることによって、統計的に分析した。c、d、e、fは、一元配置分散分析、続いてTukeyの多重比較検定を用いることによって分析した。は、ログランク検定を用いることによって分析した。****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05、nsはP>0.05を表す。
【0137】
(表5)様々な治療群からのmicroCTパラメータの比較
略語:BV:骨体積;BV/TV:骨体積/組織体積の比;BS/BV:骨表面/骨体積の比;BMD:骨ミネラル密度;Tb.Th:海綿体の厚さ。データは平均±semとして提示した。microCTデータは、一元配置分散分析、続いてTukeyの多重比較検定を用いることによって分析した。****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.001、*P<0.05、nsはP>0.05を表す。
【0138】
実施例3-骨ホーミングペプチドでのユーイング肉腫用αCD99抗体の操作
ペプチドを用いて、骨標的化のためにαCD99抗体を操作した。ES腫瘍は、正常細胞よりもはるかに高いCD99発現レベルを有する。正常ヒト細胞ではなく、CD99を高発現するES腫瘍の特異的標的化を達成するために、比較的低いCD99親和性を有する全長抗体を最初に発現させた(クローン:12E7、K=10nM、図57)。抗体クローンは、最近臨床試験において使用され、優れた安全性プロファイルを実証している。この精製αCD99抗体は、CD99陽性のRD-ES細胞、SK-ES-1細胞に特異的に結合できるが、CD99陰性のU2-OS骨肉腫細胞には結合できないことが実証された(図57C)。更に、12E7抗体処理は、それぞれ、RD-ES細胞及びSK-ES-1細胞の60%及び70%よりも多くにおいてアポトーシスを誘発した(図57D)。このαCD99抗体のインビボ治療有効性はまた、本発明者らが異種移植片モデルにおいて検証した(図59)。
【0139】
骨吸収ニッチを標的とする抗体を調製するために、骨ホーミングペプチドであるL-Aspペプチドを、αCD99抗体の軽鎖(LC、A153)、重鎖(CH1、A165)、及びC末端(CT、G449)における許容的な内部部位に導入して、骨標的化αCD99抗体を得た(図57A及びB)。これらの内部部位は、抗体ペプチド配置ライブラリをスクリーニングすることによって、追加のペプチド挿入を担うことが示された。1つのL-Aspペプチドを有するαCD99を調製した(αCD99-CT、図57B)。
【0140】
様々な数のL-Aspペプチドを有する抗体を調製し、その骨標的化活性を評価した。L-Aspペプチドを、2つ(CH1及びCT)並びに3つの許容的な内部部位(LC、CH1、及びCT)にクローニングして、それぞれ、2つ及び3つのL-Aspペプチドを有するαCD99抗体変異体を得た。αCD99-CH1/CTの調製の成功は、ESI-MSによって確認した(図57B)。
【0141】
骨親和性の差を、骨標的化抗体の間で評価した。αCD99、αCD99-CT、αCD99-CH1/CT、及びαCD99-LC/CH1/CT抗体を、ヒドロキシアパタイト/天然骨とインキュベートした。L-Asp配列の抗体中への導入は、その骨標的化能力を有意に向上させることができる。図58Aに示されるように、野生型αCD99は、HAとわずかな結合親和性を示したが、L-Aspペプチド配列を含有する抗体の80%~95%は、4時間以内にHAに結合した。一般に、より多くの骨ホーミングペプチドを有する骨標的化抗体は、より良好なHA結合親和性を示す(図58A)。更に、図58Bに示されるように、FITC標識αCD99、αCD99-CT、及びαCD99-CH1/CT変異体を更に用いて、C57BL/6マウスからの非脱石灰化骨切片を染色した。FITCシグナルは、αCD99-CT、αCD99-CH1/CT抗体変異体で染色した切片で観察されたが、野生型αCD99では観察されなかった(図58B)。
【0142】
12E7抗体のいかなる細胞傷害性も、ヒトマクロファージ及び内皮細胞で観察されなかった(図58D及びE)。ESを治療するために骨特異的抗体を使用する実現可能性を調べるために、L-Asp配列で操作されたαCD99抗体の同所モデルへの影響を、確立された細胞株及び患者由来の異種移植片モデルを用いて調べた(図59A~C)。L-Asp配列修飾が、抗体の骨結合親和性を向上できることを実証するために、異種移植片ヌードマウスモデルを確立した。ホタルルシフェラーゼ及び赤色蛍光タンパク質で標識された5×10個のSK-ES-1(CD99+++)ES細胞を、脛骨内注射を介してヌードマウスの右脚中に接種した(図58C)。NIR色素で修飾された野生型αCD99(滅菌PBS中1mg/kg、後眼窩)及びαCD99-CH1/CT(Trasと同じレジメン)を、後眼窩注射を用いて入れた。投与の7日後及び9日後に、主臓器を取り出して、Caliper IVIS Lumina IIインビボ撮像機を用いて分析した。骨組織における蛍光強度は、野生型αCD99よりもL-Aspペプチド配列を有する抗体の方が高かった(図58C)。
【0143】
骨及び軟部組織においてインビボでESの発生を阻害する、骨標的化αCD99の能力を実証するために、異種移植片モデルを確立して、骨におけるES腫瘍に対するαCD99のインビボ治療有効性を研究した。ホタルルシフェラーゼ及び赤色蛍光タンパク質で標識された5×10個のSK-ES-1細胞を、脛骨内注射を介してヌードマウス中に接種した。図59A及び59Bに示されるように、全身生物発光撮像(BLI)シグナルにより、骨標的化αCD99での治療は、野生型αCD99治療マウスにおいて見られたものと比較して、ES腫瘍進行のより有意な阻害を結果としてもたらしたことが示唆された(図59A~C)。
【0144】
非骨ES腫瘍の治療について骨標的化αCD99の有効性を評価するために、筋肉内注射を用いて、5×10個のSK-ES-1細胞を、脛骨に近接して注射した。骨標的化αCD99抗体は、野生型αCD99と比較して、軟部組織に位置するESの治療について優れたかつ類似した有効性を示した(図59A~C)。
【0145】
実施例4-骨標的化IL-6
更に、骨標的化インターロイキン-6(IL6)を、6個のアスパラギン酸をIL-6のC末端に挿入することによって生成した(図61A)。結果として生じた骨標的化IL6(IL6-6D)は、ヒドロキシアパタイト構造に対して向上した結合親和性を示した(図61B)。
【0146】
本明細書において開示され、かつ特許請求される方法の全ては、本開示に照らして、過度の実験を伴わずに作製及び実施することができる。本発明の組成物及び方法が、好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者には、本明細書に記載の方法及び方法のステップ又は一連のステップに、本発明の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、変形例が適用され得ることが明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的の両方で関連するある特定の作用物質が、本明細書に記載の作用物質と置換されてもよく、一方で、同じ又は類似した結果が達成され得ることが明らかであろう。当業者にとって明らかな全てのそのような類似した置換及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨、範囲、及び概念内にあると見なされる。
【0147】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順又は他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
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【配列表】
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【国際調査報告】