(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】形態学的に異なる金属を含む電磁波遮蔽用組成物
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
H05K9/00 X
H05K9/00 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503736
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2022010437
(87)【国際公開番号】W WO2023003297
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0094838
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0087314
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン オ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジウン
【テーマコード(参考)】
5E321
【Fターム(参考)】
5E321BB32
5E321BB34
5E321BB60
5E321CC30
5E321GG05
(57)【要約】
本発明に係る電磁波遮蔽用組成物は、電磁波遮蔽能および屈曲性に優れた電磁波遮蔽フィルムを形成することができる電磁波遮蔽用組成物に関し、詳細には、銅を含有するコアおよび前記コア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造の金属ナノワイヤと、板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択される板状金属粒子と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含有するコアおよび前記コア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造の金属ナノワイヤと、
板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択される板状金属粒子と、を含む、電磁波遮蔽用組成物。
【請求項2】
前記金属ナノワイヤの直径は200~500nmであり、アスペクト比は5~50である、請求項1に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤのコアの直径は、シェルの厚さよりも大きい、請求項2に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項4】
前記金属ナノワイヤのシェルの厚さは20~60nmである、請求項3に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項5】
前記板状金属粒子の面方向の長軸の長さ(D)と厚さ(L)のアスペクト比(D/L)は5~40である、請求項1に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項6】
前記板状金属粒子のアスペクト比(AR1)は、前記金属ナノワイヤのアスペクト比(AR2)に対して式1を満たす、請求項1に記載の電磁波遮蔽用組成物。
(式1)
AR1≦AR2
【請求項7】
前記組成物中で複数の板状金属粒子が異方性配向を有する、請求項1に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項8】
前記金属ナノワイヤは、シェルに含有される銀の(111)結晶面の半値幅(FWHM)がコアに含有される銅の(111)結晶面のFWHMよりも大きい、請求項1に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項9】
前記電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子:金属ナノワイヤの重量比は1:1~15である、請求項1に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項10】
前記電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子:金属ナノワイヤの重量比は1:2~4である、請求項9に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項11】
前記電磁波遮蔽用組成物は、バインダーをさらに含む、請求項1に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項12】
前記バインダーは、有機バインダーまたはセラミックバインダーである、請求項11に記載の電磁波遮蔽用組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の電磁波遮蔽用組成物を用いて製造された電磁波遮蔽フィルム。
【請求項14】
前記電磁波遮蔽フィルムの厚さは20~60μmである、請求項13に記載の電磁波遮蔽フィルム。
【請求項15】
前記電磁波遮蔽フィルムは、26.5GHz~40GHzの周波数範囲で電磁波遮蔽率が50dB以上である、請求項14に記載の電磁波遮蔽フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形態学的に異なる金属を含む電磁波遮蔽用組成物に関し、詳細には、電磁波遮蔽用組成物の中でも形態学的に異なる金属物質により形成されたネットワーク構造に起因する電磁波遮蔽能に優れた電磁波遮蔽用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子部品の使用増加につれ、電子機器の小型化、薄型化、高集積化に伴う電磁波干渉の問題が深刻に浮上しており、ウェアラブル機器の需要も着実に増加している。
【0003】
このような電磁波干渉の問題を解決するために電子機器の回路基板に電磁波遮蔽フィルムが貼り付けられており、一般的に電子機器の回路基板に貼り付けられる電磁波遮蔽フィルムは、電磁波遮蔽用組成物から形成されることができ、電磁波遮蔽用組成物は、高分子樹脂および導電性フィラーを含む構成で提供されている。
【0004】
このように、電磁波遮蔽フィルムは、優れた電磁波遮蔽能はもちろん、ウェアラブル機器に適合するように屈曲のような変形に強い特性も求められており、このために、大韓民国公開特許10-2016-0135512号は、二重構造の金属構造物が含まれた遮蔽層を含む電磁波遮蔽フィルムを提供している。前記特許文献に開示された遮蔽層は、樹脂に二重構造の金属構造物、すなわち第1金属を包む第2金属からなる二重構造でワイヤ状を有する金属構造物が含まれ、屈曲性が向上した電磁波遮蔽フィルムを提供している。
【0005】
しかし、電磁波遮蔽用組成物に導電性フィラーとしてワイヤ状のみが含まれる場合、電子機器の薄型化に伴い、電磁波遮蔽用組成物に含まれる見かけ密度が小さく、多くの体積を占めるワイヤ状の導電性フィラーの量が限定的であるため、一定レベル以上に電磁波遮蔽率を向上させることができないという欠点がある。また、目的とする電磁波遮蔽能を達成するために用いられる導電性フィラーの含量の増加により経済性が低下し得る。
【0006】
そこで、電磁波遮蔽能に優れるとともに屈曲性に優れる薄型化された電磁波遮蔽フィルムを提供できる経済的な電磁波遮蔽用組成物が開発される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2016-0135512号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電磁波遮蔽能に優れるとともに屈曲性に優れる薄型化された電磁波遮蔽フィルムを形成することができる電磁波遮蔽用組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、優れた電磁波遮蔽効率を有し、かつ、経済的な電磁波遮蔽用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る電磁波遮蔽用組成物は、銅を含有するコアおよびコア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造の金属ナノワイヤと、板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択される板状金属粒子と、を含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、金属ナノワイヤの直径は200~500nmであり、アスペクト比は5~50であってもよい。
本発明の一実施形態において、金属ナノワイヤのコアの直径は、シェルの厚さよりも大きくてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、金属ナノワイヤのシェルの厚さは20~60nmであってもよい。
本発明の一実施形態において、板状金属粒子の面方向の長軸の長さ(D)と厚さ(L)のアスペクト比(D/L)は5~40であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、板状金属粒子のアスペクト比(AR1)は、金属ナノワイヤのアスペクト比(AR2)に対して式1を満たしてもよい。
【0014】
(式1)
AR1≦AR2
【0015】
本発明の一実施形態において、電磁波遮蔽用組成物中で複数の板状金属粒子が異方性配向を有してもよい。
本発明の一実施形態において、金属ナノワイヤは、シェルに含有される銀の(111)結晶面の半値幅(FWHM)がコアに含有される銅の(111)結晶面のFWHMよりも大きくてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子:金属ナノワイヤの重量比は1:1~15であってもよい。
本発明の一実施形態において、電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子:金属ナノワイヤの重量比は1:2~4であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、電磁波遮蔽用組成物は、バインダーをさらに含んでもよい。
本発明の一実施形態において、バインダーは、有機バインダーまたはセラミックバインダーであってもよい。
【0018】
本発明は、他の一態様として、前述した電磁波遮蔽用組成物を用いて製造された電磁波遮蔽フィルムを提供する。
本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽フィルムにおいて、電磁波遮蔽フィルムの厚さは20~60μmであってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽フィルムにおいて、電磁波遮蔽フィルムは、26.5GHz~40GHzの周波数範囲で電磁波遮蔽率が50dB以上であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電磁波遮蔽用組成物は、銅を含有するコアおよび前記コア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造の金属ナノワイヤと、板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択される板状金属粒子と、を含むことで、遮蔽用組成物中で金属物質同士が互いに連結されて形成されたネットワーク構造を有することができ、それに起因する電磁波遮蔽能に優れるとともに屈曲性に優れる電磁波遮蔽フィルムの形成が可能な経済的な電磁波遮蔽用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る電磁波遮蔽用組成物に含まれる銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子が混合された異種金属の模式図を示した図である。
【
図2】実施例1~実施例4および比較例1の比抵抗および電磁波遮蔽能の変化をグラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の電磁波遮蔽用組成物を詳細に説明する。以下に紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝わるように例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態で具体化されてもよく、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して示されてもよい。この際、用いられる技術用語および科学用語は、特に定義しない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に曖昧にする恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0023】
また、明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
本明細書および添付された特許請求の範囲において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴または構成要素が存在することを意味し、特に限定しない限り、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0024】
本明細書において、「ナノワイヤ」とは、導電性フィラーとして用いられる、直径がナノメートルの大きさを有し、その形状がワイヤのように長さが長い形状を有するフィラーを意味する。
【0025】
本発明に係る電磁波遮蔽用組成物は、銅を含有するコアおよびコア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造の金属ナノワイヤと、板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択される板状金属粒子と、を含む。
【0026】
従来、ワイヤ状の導電性フィラーのみを含む電磁波遮蔽用組成物から形成された遮蔽層が屈曲性の面で向上した特性を示したが、電磁波遮蔽用組成物に含まれる導電性フィラーとしてワイヤ状のみを含む場合、薄型化された電磁波遮蔽用フィルムを提供する際、電磁波遮蔽用組成物に含まれる見かけ密度が小さく、多くの体積を占めるワイヤ状のみを有する導電性フィラーの含量が限定的であるしかないため、一定レベル以上に電磁波遮蔽率を向上させることができないという欠点がある。
【0027】
これに対し、本発明に係る電磁波遮蔽用組成物は、銅を含有するコアおよびコア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造の金属ナノワイヤだけでなく、板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択される板状金属粒子を含むことで、本発明の電磁波遮蔽用組成物を用いて薄型化された電磁波遮蔽用フィルムを提供するにあたり、コア-シェル構造の金属ナノワイヤにより電気的に連結されるネットワーク構造とともに、電気的に連結されたネットワーク構造と板状金属粒子との接触による追加の電気的連結通路を提供できるという利点がある。
【0028】
このような構造により、本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽用組成物を用いて電磁波遮蔽用フィルムを提供する場合、さらに向上した電気伝導度特性を有することができるため、コア-シェル構造の金属ナノワイヤのネットワーク構造に起因する屈曲性に優れるだけでなく、向上した電気伝導度から電磁波遮蔽能に優れる薄型化された電磁波遮蔽用フィルムを提供することができる。
【0029】
また、電磁波遮蔽用組成物中で形態学的に異なる金属、すなわち、コア-シェル構造の金属ナノワイヤおよび板状金属粒子により形成された電気的に連結されたネットワーク効果が極大化され、従来に比べて導電性フィラーの含量が少なく含まれても、同等以上の電磁波遮蔽率を有することができるため、経済的な電磁波遮蔽用組成物を提供することができる。
【0030】
本発明の一実施形態として、金属ナノワイヤは、銅を含有するコアおよびコア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造であってもよい。
コア-シェル構造の金属ナノワイヤは、コアに銅を含有し、コア上に銀を含有するシェルにより、従来の銅ナノワイヤや銀でコーティングされていない銅球状粒子、銅フレーク状などと比較すると、酸化安定性および熱安定性にさらに優れるという特性を有し、粒子状および/またはフレーク状に比べてアスペクト比が大きく、これにより、電気的に連結されたネットワーク効果で本発明の電磁波遮蔽用組成物を用いて形成された電磁波遮蔽フィルムの面抵抗を低くできる効果および優れた電磁波遮蔽効果を提供できるという利点がある。
また、銀ナノワイヤを用いる場合に比べてコスト節減の効果も有することができる。
【0031】
一具体例において、金属ナノワイヤの直径は100~800nmであってもよく、具体的には200~500nmであってもよく、より具体的には250~400nmであってもよく、金属ナノワイヤのアスペクト比は2~80、好ましくは5~50、より好ましくは10~40であってもよい。この際、金属ナノワイヤのアスペクト比とは、金属ナノワイヤの直径に対する長さの比を意味する。
【0032】
一般的に、電磁波干渉現象の遮断効果は、電気伝導性が高いほど優れた電磁波遮蔽効率を示し、電磁波遮蔽用組成物中で金属ナノワイヤが優れた分散性を有し、かつ、導電性が高く、表面積に対して広い電子の移動経路を有することで向上した電気的特性を有するために、金属ナノワイヤの直径は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0033】
また、金属ナノワイヤのアスペクト比が2未満である場合、金属ナノワイヤ間の接触が限定され、電気的特性の低下により電磁波遮蔽効率も低下し得る。金属ナノワイヤのアスペクト比が80超過である場合、金属ナノワイヤ間の接触は増加し得るが、金属ナノワイヤ間の凝集により電磁波遮蔽用組成物中で分散性が低下し得るため、電磁波遮蔽用組成物を用いて電磁波遮蔽フィルムを形成する際に面抵抗特性が低下し得、金属ナノワイヤの物理的な断線が発生し得る。これにより、電気的連結通路を提供する金属ナノワイヤ間で互いに接触する接触点が確保され、向上した電気的特性を有することができ、電磁波遮蔽用組成物を用いて電磁波遮蔽フィルムを形成する際に金属ナノワイヤ間の凝集を抑制し、かつ、金属ナノワイヤの物理的な断線を防止するために、金属ナノワイヤのアスペクト比は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0034】
一例として、金属ナノワイヤの長さは500nm~50μmであってもよく、好ましくは1~35μmであってもよく、より好ましくは3~20μmであってもよい。
【0035】
一実施形態において、金属ナノワイヤのコアの直径は、シェルの厚さよりも大きくてもよく、一具体例として、金属ナノワイヤのシェルの厚さは10~80nmであってもよく、好ましくは20~60nmであってもよく、より好ましくは25~40nmであってもよい。
【0036】
銀を含有する金属ナノワイヤのシェルが優れた電磁波遮蔽効果および酸化安定性の特性を提供できる範囲内で経済的な面を考慮し、金属ナノワイヤのシェルの厚さは、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0037】
一具体例として、金属ナノワイヤは、シェルに含有される銀の(111)結晶面の半値幅(full width half maximum、FWHM)がコアに含有される銅の(111)結晶面の半値幅(FWHM)よりも大きくてもよい。
【0038】
この際、半値幅とは、X線回折ピークの半値幅を意味し、コア-シェル構造の金属ナノワイヤにおいて、シェルに含有される銀の(111)結晶面の半値幅がコアに含有される銅の(111)結晶面の半値幅よりも大きいことから、銀の結晶の大きさが銅の結晶の大きさに比べて小さいことが分かり、このことから、金属ナノワイヤが優れた酸化安定性を有することができるようになる。
【0039】
前述したように、本発明に係る電磁波遮蔽用組成物は、板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択される板状金属粒子を含む。
ここで、板状金属粒子とは、金属粒子の形状が二次元構造を有し、二次元構造において、厚さ(L)がナノメートルレベルとして板状の金属粒子を意味し得る。
【0040】
一例として、板状金属粒子は、板状の銀粒子および板状の銀コーティングされた銅粒子から選択されてもよく、銀コーティングされた銅粒子の場合、コーティングされた銀の厚さは5~50nmであってもよく、好ましくは10~40nmであってもよく、より好ましくは20~30nmであってもよい。
【0041】
板状金属粒子の面形状が限定されるものではないが、一例として、板状金属粒子の面形状は、円形および多角形から選択される1つ以上の形状を含んでもよい。
【0042】
本発明に係る電磁波遮蔽用組成物は、前述した金属ナノワイヤとともに板状金属粒子を含むことで、金属ナノワイヤ間で互いに接触して電気的に連結されるネットワーク構造と板状金属粒子との接触による追加の電気的連結通路を提供することで、さらに向上した電気伝導度を有することができ、組成物から電磁波遮蔽フィルムに成形する際に電磁波遮蔽フィルムの面方向での密度が高いため、著しく向上した電磁波遮蔽効率を提供することができる。
【0043】
一実施形態において、板状金属粒子の厚さ(L)は100~800nmであってもよく、具体的には200~600nmであってもよく、より具体的には300~500nmであってもよい。
【0044】
一具体例として、板状金属粒子の面方向の長軸の長さ(D)と厚さ(L)のアスペクト比(D/L)は2~70であってもよく、好ましくは5~40、より好ましくは5~30であってもよい。
【0045】
一例として、板状金属粒子の面方向の長軸の長さは0.1~50μmであってもよく、具体的には1~25μmであってもよく、より具体的には3~15μmであってもよい。
【0046】
本発明に係る電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子が前述した範囲の厚さおよびアスペクト比(D/L)を有することで、本発明の電磁波遮蔽用組成物を用いて形成された電磁波遮蔽フィルムは、さらに向上した電気伝導度を有し、著しく向上した電磁波遮蔽効率を提供できるだけでなく、優れた屈曲性を有することができる。
【0047】
本発明の一実施形態として、板状金属粒子のアスペクト比(AR1)は、金属ナノワイヤのアスペクト比(AR2)に対して式1を満たしてもよい。
【0048】
(式1)
AR1≦AR2
【0049】
板状金属粒子のアスペクト比(AR1)が金属ナノワイヤのアスペクト比(AR2)よりも大きい場合、金属ナノワイヤ間の接触または架橋的構造による電気的に連結されたネットワーク効果を低下させ、電磁波遮蔽効率が低下し得るため、電磁波遮蔽用組成物が優れた遮蔽能を提供するために、板状金属粒子のアスペクト比(AR1)は、金属ナノワイヤのアスペクト比(AR2)に対して式1を満たすことが好ましい。
【0050】
本発明に係る電磁波遮蔽用組成物は、複数の板状金属粒子を含んでもよく、組成物中で複数の板状金属粒子が異方性配向を有してもよい。
電磁波遮蔽用組成物に異方性配向を有する板状金属粒子が含まれることで、金属ナノワイヤ間の接触がない部分、すなわち、電気的に連結されていない部分を効果的に連結させ、電磁波遮蔽用組成物が向上した電気伝導度を提供することができ、また、屈曲などの変形にも電気的特性の変化がほぼ発生しないという利点がある。
【0051】
一例として、電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子は、組成物の全重量の1~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~30重量%、さらに好ましくは10~25重量%、さらに好ましくは15~20重量%で含まれてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子:金属ナノワイヤの重量比は1:1~15であってもよく、具体的には1:1.5~10であってもよく、より具体的には1:1.5~5であってもよく、さらに具体的には1:2~4であってもよい。
【0053】
電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子:金属ナノワイヤの重量比が前述した範囲を満たすことで、電気的に連結されたネットワーク効果が極大化され、電磁波遮蔽用組成物に従来に比べて相対的に低い含量の導電性フィラーが含まれるにもかかわらず、電気的パーコレーション(percolation)が起こることができる。
【0054】
ただし、電気的パーコレーションは、導電性フィラー間の直接的な接触だけでなく、5nm以内の離隔した距離で電子のホッピング(hopping)が起こって電気伝導性を示すことができるため、板状金属粒子が30重量%を超えて電磁波遮蔽用組成物に含まれると、電子のホッピングにより現れる電気的特性が減少し、単位重量当たりのパーコレーション閾値(percolation threshold)が高くなり得るため、経済的かつ優れた電気的特性を有し、電磁波遮蔽効率が向上するためには、電磁波遮蔽用組成物に含まれる板状金属粒子が前述した重量%の範囲を満たすように含まれ、上限値が30重量%以下、25重量%以下になるように含まれることがより好ましい。
【0055】
さらに、ワイヤ状の導電性フィラーのみを含む従来とは異なり、電磁波遮蔽用組成物に前述した範囲で含まれる板状金属粒子により薄型化された電磁波遮蔽用フィルムを提供する場合、従来の見かけ密度が小さく、多くの体積を占めるワイヤ状の導電性フィラーにより一定レベル以上に電磁波遮蔽率を向上できないという欠点を克服するのに有利である。
【0056】
一実施形態として、電磁波遮蔽用組成物は、バインダーをさらに含んでもよく、バインダーは、電磁波遮蔽用組成物の全重量の5~30重量%、具体的には10~30重量%で含まれてもよい。
【0057】
一具体例において、バインダーは、有機バインダーまたはセラミックバインダーであってもよく、有機バインダーは、具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素ゴム、ニトリルゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびニトロセルロースなどの有機樹脂から選択される1つ以上であってもよく、エポキシ系樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、ウレタン変性エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上のエポキシ樹脂であってもよいが、これに限定されない。
【0058】
セラミックバインダーは、ケイ素(Si)原子と酸素(O)原子が交互になっているポリシロキサン主鎖を有する高分子であり、一般的に、シリコーンは、それぞれのケイ素原子に通常2個のメチル、エチル、プロピルなどのアルキルまたはフェニル(-C6H5)の有機原子団が結合している構造を有し、本発明に係る電磁波遮蔽用組成物に含まれているセラミックバインダーは、水素、ヒドロキシ基、メチル基、またはフェニル基が結合したものであってもよく、一例として、ジメチルシロキサン繰り返し単位を含むポリジメチルシロキサン系樹脂であってもよく、メチルフェニルシロキサン繰り返し単位、エチルフェニルシロキサン繰り返し単位、またはジフェニルシロキサン繰り返し単位をさらに含むポリシロキサン系樹脂であってもよい。
【0059】
本発明の電磁波遮蔽用組成物は、基板にコーティングまたはキャスティングなどの方法で塗布する場合に均一に塗布することができ、加工性を高めるために、25℃で測定された粘度が50,000~300,000cpsであってもよく、具体的には70,000~250,000cpsであってもよく、前述した範囲の粘度は、電磁波遮蔽用組成物に溶媒をさらに含んで調節されることができる。
【0060】
溶媒は、電磁波遮蔽用組成物の全重量を基準として5~30重量%で含まれてもよいが、これに限定されない。
一具体例として、溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、ブチルカルビトールアセテート、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテル、およびテルピネオールから選択されるいずれか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0061】
本発明は、他の一態様として、本発明の電磁波遮蔽用組成物を基板に塗布して熱処理した後に形成される電磁波遮蔽フィルム(コーティング層)を提供する。
【0062】
具体的に説明すると、前述した電磁波遮蔽用組成物を基板に塗布し、湿潤厚さが50~500μmの厚さ、好ましくは50~300μmの厚さ、より好ましくは50~200μmの厚さを有するように塗布されてもよい。この際、湿潤厚さとは、電磁波遮蔽用組成物を基板に塗布した後に熱処理する前に基板上に形成された厚さを意味する。
【0063】
基板としては、有機または無機材料から製造された基板を用いてもよく、具体的な一例として、プラスチック基板、ガラス基板、または石英基板などであってもよい。前述した基板を構成する物質の例としては、メタクリル樹脂、芳香族ポリエステル、変性ポリフェニレンオキシド(Modified Polyphenylene Oxide:MPPO)、セルロースエステル(Cellulose ester)、セルロースアセテート、石英(quartz)、スチレン-ブタジエン共重合体、シリコンウェハ、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene copolymer、ABS樹脂)、エポキシ樹脂、オレフィンマレイミド共重合体、溶融シリカ、ガラス、再生セルロース(Regenerated cellulose)、トリアセチルセルロース、フェノール樹脂、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート(polymethylacrylate)、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidenfluoride)、ポリビニルアセテート、ポリスルホネート、ポリスルホン(Polysulfone)、ポリスチレン(PS)、ポリシラザン(polysilazane)、ポリシラン(polysilane)、ポリシロキサン(polysiloxane)、ポリアラミド、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(Polyethersulfone、PES)、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalte、PEN)、ポリエチレンスルホン、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephtalate、PET)、ポリエチルメタクリレート(polyethylmetacrylate)、ポリエチルアクリレート(polyethylacrylate)、ポリエポキシド、ポリ塩化ビニル、ポリオキシエチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、ポリカルボシラン(polycarbosilane)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン(PP)、AS樹脂、GaAs、MgO、シリカ、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレートなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0064】
一例として、本発明に係る電磁波遮蔽用組成物を基板上に塗布する前に、基板の表面を選択的にピラニア(Piranha)溶液処理、酸処理、塩基処理、プラズマ処理、常圧プラズマ処理、オゾン処理、UV処理、SAM(self-assembled monolayer)処理、および高分子または単分子コーティング方法のうち少なくとも1つの方法を用いて表面処理をさらに行ってもよいことはもちろんである。
【0065】
本発明の電磁波遮蔽用組成物は、前述した基板上にスプレーコーティング(spray coating)、グラビアコーティング(gravure coating)、マイクログラビアコーティング(microgravurecoating)、バーコーティング(bar-coating)、ナイフコーティング(knife coating)、リバースロールコーティング(reverse roll coating)、ロールコーティング(roll coating)、カレンダーコーティング(calender coating)、カーテンコーティング(curtain coating)、押出コーティング(extrusion coating)、キャストコーティング(cast coating)、ディップコーティング(dip coating)、エアナイフコーティング(air-knifecoating)、フォームコーティング(foam coating)、スリットコーティング(slit coating)などから選択される塗布方法によりコーティングしてもよいが、これに限定されない。
【0066】
前述した塗布方法を用いて基板上に前述した範囲の湿潤厚さでコーティングされた電磁波遮蔽用組成物は、熱処理により電磁波遮蔽フィルム(コーティング層)に形成されることができ、熱処理は、100~300℃で10~60分間行われてもよく、具体的には100~250℃、より具体的には100~200℃で10~60分間行われてもよい。
【0067】
一実施形態として、基板上に塗布された電磁波遮蔽用組成物の熱処理後に形成されたコーティング層の厚さは5~100μmであってもよく、好ましくは10~80μmであってもよく、より好ましくは20~60μmであってもよい。
【0068】
本発明の一実施形態において、電磁波遮蔽フィルム(コーティング層)は、26.5GHz~40GHzの周波数範囲で電磁波遮蔽率が45dB以上、50dB以上、55dB以上、60dB以上、62dB以上、64dB以上、66dB以上、68dB以上、70dB以上、72dB以上、74dB以上、76dB以上、78dB以上、80dB以上であってもよく、電磁波遮蔽率の上限値は限定されるものではないが、100dB以下であってもよい。
【0069】
この際、電磁波遮蔽率は、35~45μmの厚さ範囲の電磁波遮蔽フィルム(コーティング層)に対して導波管(WaveGuide)方式を用いた伝送線路法(Transmission-Line Method)により測定した値であってもよく、電磁波遮蔽フィルム(コーティング層)の厚さに応じて電磁波遮蔽率特性が異なり得ることはもちろんである。
【0070】
前述したように、本発明に係る(銅含有)コア-(銀含有)シェル構造の金属ナノワイヤおよび板状金属粒子を含む電磁波遮蔽用組成物は、電気的に連結されたネットワーク構造の効果が極大化され、薄い厚さのコーティング層を形成するにもかかわらず、著しく優れた電磁波遮蔽効率を有する。
【0071】
以下、実施例により、本発明に係る電磁波遮蔽用組成物についてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明は、これに限定されず、様々な形態で実現されてもよい。
【0072】
また、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本願の説明で用いられる用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0073】
(実施例1)製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ48重量%と5重量%で含まれた電磁波遮蔽組成物
100mlのプラスチック容器にコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ(Bioneer Corporation)、板状の銀粒子(Ag Flake、HP-2020-E、P&Dritech)、エポキシ樹脂(SE-55F、SHIN-A T&C)、硬化剤(XHT-1004、SHIN-A T&C)、テルピネオール(α-terpineol、KANTO)、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate、Samchun Chemicals)を混合して混合物を製造するが、この際、製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ48重量%と5重量%で含まれるようにし、混合物を自転公転型ミキサー(ARE-310、THINKY)で2000rpm、約10分間撹拌した。次に、3ロールミル(3-rollmill、EXAKT 50I)を用いて分散処理を5回行った。分散された混合物を自転公転型ミキサー(ARE-310、THINKY)で2000rpm、約10分間撹拌して電磁波遮蔽用組成物を製造した。この際、銀コーティングされた銅ナノワイヤの平均直径は300.4nmであり、平均長さは5.2μmであり、板状の銀粒子の平均厚さは452.1nmであり、板状の銀粒子の面方向の長軸の長さ(D)は5.4μmであった。
【0074】
電磁波遮蔽用組成物に含まれる銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子が混合された異種金属の模式図を
図1に示した。
実施例1で製造された電磁波遮蔽用組成物の電磁波遮蔽試験のために、100mm×100mmのポリイミドフィルム上に前記電磁波遮蔽組成物10mLをフィルム表面に投与した後、バーコーター(COATMASTER 510、ERICHSEN)を用いて湿潤厚さ100μmでコーティングを行った。コーティング後に形成されたフィルムは、ドライオーブンで2℃/minの昇温速度で150℃まで昇温した後、150℃で30分間熱処理して電磁波遮蔽コーティング層を形成させた。この際、電磁波遮蔽コーティング層の最終的な乾燥厚さは約40μmであった。
【0075】
(実施例2)製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ46重量%と9重量%で含まれた電磁波遮蔽組成物
実施例1の方法で実施するが、組成物中に製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ46重量%と9重量%で含まれるように用いたことを除いては同様に行って遮蔽用組成物を製造した。製造された遮蔽用組成物から電磁波遮蔽フィルムを製造した。
【0076】
(実施例3)製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ42重量%と17重量%で含まれた電磁波遮蔽組成物
実施例1の方法で実施するが、組成物中に製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ42重量%と17重量%で含まれるように用いたことを除いては同様に行って遮蔽用組成物を製造した。製造された遮蔽用組成物から電磁波遮蔽フィルムを製造した。
【0077】
(実施例4)製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ39重量%と23重量%で含まれた電磁波遮蔽組成物
実施例1の方法で実施するが、製造された組成物中に製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子がそれぞれ39重量%と23重量%で含まれるように用いたことを除いては同様に行って遮蔽用組成物を製造した。製造された遮蔽用組成物から電磁波遮蔽フィルムを製造した。
【0078】
(比較例1)製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤが51重量%で含まれた電磁波遮蔽組成物
実施例1の方法で実施するが、板状の銀粒子を含まず、製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤのみを用いて51重量%で含まれたことを除いては同様に行って遮蔽用組成物を製造した。製造された遮蔽用組成物から電磁波遮蔽フィルムを製造した。
【0079】
見かけ密度が小さく、多くの体積を占めるナノワイヤ状の特性上、フィラーを一定レベル以上含有する場合、電磁波遮蔽組成物の粘度が高くなって製造不可である。したがって、比較例1では、銀コーティングされた銅ナノワイヤの含量を遮蔽組成物の製造が可能な最大含量で入れ、これ以上ワイヤ状のフィラーを入れることができなかった。しかし、前記ナノワイヤの含量数値は、フィラーを除いた組成成分の物性比に応じて変更され得る。
【0080】
(比較例2)板状の銀粒子が59重量%で含まれた電磁波遮蔽組成物
本発明の形態学的に異なる導電性フィラーを用いた電磁波遮蔽組成物の優秀性を検証するために、銀コーティングされた銅ナノワイヤを除いた板状の銀粒子のみで電磁波遮蔽組成物を製造した。具体的には、製造された銀コーティングされた銅ナノワイヤを含まず、板状の銀粒子のみで59%重量を含むように用いたことを除いては、実施例1と同様に電磁波遮蔽用組成物を製造した。製造された遮蔽用組成物から電磁波遮蔽フィルムを製造した。
【0081】
(実験例)
それぞれの電磁波遮蔽用組成物を用いて形成された電磁波遮蔽コーティング層の比抵抗、比抵抗変化率、および電磁波遮蔽特性を確認し、その結果を下記表1に示し、実施例1~実施例4および比較例1の比抵抗および電磁波遮蔽能の変化を
図2に示した。
【0082】
この際、電磁波特性は、導波管(WaveGuide)方式を用いて26.5GHz~40GHzの周波数範囲で電磁波遮蔽能を測定し、比抵抗変化率を測定するために、電磁波遮蔽コーティング層が形成されたポリイミドフィルムの中央部を支持させた後、両末端部を上下に同時に3cmずつ移動させて曲げることを1サイクルとして100サイクルの曲げを加えた後に比抵抗値を再び測定した。比抵抗変化率は、初期比抵抗値に対する曲げ試験後に測定された比抵抗値の比を百分率で示した。
【0083】
【0084】
前記表1を参照すると、比較例1の比抵抗は640μΩ・cmであって、板状の銀粒子が含まれた実施例1~実施例4の比抵抗よりも高い数値を示すことが分かる。
また、実施例1の比抵抗は520μΩ・cmと測定され、実施例4の結果から比抵抗が415μΩ・cmまで低くなったことを確認することができた。
【0085】
銀コーティングされた銅ナノワイヤのみを単独で用いて電磁波遮蔽組成物を製造した場合、ナノワイヤの見かけ密度が小さく、バインダーとの混合時に組成物の粘度を上昇させ、組成物を用いたフィルムの製造時に工程が不可能であるため、フィラー量を添加するのに限界があった。すなわち、ナノワイヤ状のフィラーのみを用いる場合、電磁波遮蔽能を向上させるには限界があることを示唆する。
【0086】
これに対し、実施例1~実施例4の結果から分かるように、形態学的に異なる形態を有する板状の銀粒子と銀コーティング銅ナノワイヤを混合して電磁波遮蔽組成物を製造した場合、金属間の電気的パーコレーション効果を増加させることができるため、比抵抗がさらに低い電磁波遮蔽組成物を製造することができた。
【0087】
しかし、実施例3と実施例4を比較すると、比抵抗がそれぞれ420μΩ・cmおよび415μΩ・cmと類似の結果値を示した。これは、板状の銀粒子を実施例3の条件よりも増量しても、比抵抗がこれ以上減少しないことを確認した。また、より少ないフィラーの量でも類似の性能を示すため、実施例4に比べて実施例3の組成比がさらに経済的であるといえる。
【0088】
さらに、比較例2の比抵抗は、500μΩ・cmであって、同一のフィラーの含量である実施例3の比抵抗420μΩ・cmよりも高い数値を示している。これは、板状粒子のみで構成された組成物に比べて、形態学的に異なる金属であるナノワイヤ状と板状粒子が混合された組成物は、電気的パーコレーションが増加し、導電性が向上できることを示す。また、同一のフィラー含有量において銀コーティングされた銅ナノワイヤが板状の銀粒子を一部代替することで、高価の板状の銀粒子を用いなくてもよいため経済的である。
【0089】
電磁波遮蔽能は、実施例1の電磁波遮蔽組成物は57dB程度と測定され、実施例2は62dB程度と測定され、実施例3および実施例4は同一の数値である77dBと測定された。
【0090】
このように、実施例1~実施例4は、いずれも26.5GHz~40GHzの周波数範囲で厚さ40μmのコーティング層の電磁波遮蔽率が57dBから77dBまで測定されたのに対し、銀コーティング銅ナノワイヤのみを用いた比較例1の電磁波遮蔽率は、55dB程度と測定され、限界があることを確認した。
【0091】
このことから、銀コーティングされた銅ナノワイヤと板状の銀粒子が一定の割合で混合された電磁波遮蔽用組成物は、板状の銀粒子が含まれていない組成物に比べて約40%程度向上した優れた遮蔽能を有することを確認した。
【0092】
また、比較例2の板状の銀粒子のみを用いて電磁波遮蔽組成物を製造した場合、電磁波遮蔽能が60dBと測定され、これは、同一のフィラーの含量である実施例3に比べて約20%程度低い性能を示すことを確認した。
【0093】
さらに、板状の銀粒子のみを用いた比較例2の場合は、電磁波フィルムの形成時に表面が粗く形成され、成形性が低下することを確認した。また、曲げ試験後の比抵抗変化率を見ると、初期比抵抗に対して121.1%レベルまで急激に上昇したことが観察されたのに対し、実施例1~実施例4の場合は、いずれも初期比抵抗値とほぼ同一のレベルに維持されることを確認した。このような特性は、電磁波遮蔽フィルム内に存在するフィラーの直接的な接触だけでなく、パーコレーション効果に起因することが分かる。
【0094】
さらに、製造されたそれぞれの組成物を用いて複数の電磁波遮蔽フィルムを再現した結果、実施例1~実施例4の場合は、比抵抗特性および電磁波遮蔽能特性が再現性よく現れることが確認されたが、比較例2の場合は、再現性が著しく低下することが観察された。
【0095】
以上、特定の事項と限定された実施例により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0096】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。
【国際調査報告】