(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】界面活性剤として有用である、開裂可能な第4級アンモニウム化合物の混合物
(51)【国際特許分類】
C07C 229/12 20060101AFI20240711BHJP
C07C 227/18 20060101ALI20240711BHJP
C09K 23/18 20220101ALI20240711BHJP
【FI】
C07C229/12 CSP
C07C227/18
C09K23/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503770
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2022069643
(87)【国際公開番号】W WO2023001666
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バック, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ボードマン, クリストファー
【テーマコード(参考)】
4D077
4H006
【Fターム(参考)】
4D077AA05
4D077AB10
4D077BA03
4D077BA07
4D077BA14
4D077CA03
4D077CA04
4D077CA12
4D077CA13
4D077DC14Z
4D077DC32Z
4D077DC42X
4D077DC45Z
4D077DC73Z
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB68
4H006AC41
4H006AC44
4H006AC48
4H006AC52
4H006BA61
4H006BE20
4H006BT12
4H006BU50
(57)【要約】
本発明は、界面活性剤特性及び向上した生分解性を有する第4級アンモニウム化合物の新規な混合物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、C
15又はC
17脂肪族基であり、
Yは、二価のC
1~C
6脂肪族基であり、
同じであるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’は、水素又はC
1~C
4アルキル基であり、
X
n-は、
ハライド(n=1)、
式R
a-O-SO
2-O
-(式中、R
aは、任意選択的にハロゲン化され得るC
1~C
20、好ましくはC
1~C
6ヒドロカルビル基を表す)のヒドロカルビル硫酸アニオン(n=1)、
式R
a-SO
2-O
-(式中、R
aは、任意選択的にハロゲン化され得るC
1~C
20、好ましくはC
1~C
6ヒドロカルビル基を表す)のヒドロカルビルスルホネートアニオン(n=1)、
式SO
4
2-の硫酸アニオン(n=2)、
式HSO
4
-の硫酸水素(すなわち重硫酸)アニオン(n=1)、
式CO
3
2-の炭酸アニオン(n=2)、
式HCO
3
-の炭酸水素(すなわち重炭酸)アニオン(n=1)、
式H
2PO
4
-のリン酸二水素アニオン(n=1)、
式HPO
4
2-のリン酸水素アニオン(n=2)、
式PO
4
3-のリン酸アニオン(n=3)、
式R
a(CO
2
-)
n(式中、R
aは、ヘテロ原子含有基によって任意選択的に置換され得るC
1~C
20、好ましくはC
1~C
6ヒドロカルビル基を表す)の有機カルボン酸アニオン(n=1、2又は3)、及び
これらの混合物
からなる群から選択される対アニオンであり、
nは、前記対アニオンの性質に応じて、1、2又は3に等しい整数である)
の化合物の混合物であって、20~95モル%の、式I(式中、両方のR基は、C
15脂肪族基である)の化合物を含む混合物。
【請求項2】
R基は、C
15又はC
17アルキル基であり、且つ前記混合物は、20~95モル%の、式I(式中、両方のR基は、C
15アルキル基である)の化合物を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
R基は、C
15又はC
17直鎖アルキル基であり、及び前記混合物は、20~95モル%の、式I(式中、両方のR基は、C
15直鎖アルキル基である)の化合物を含む、請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
Yは、メチレン基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
R’、R’’及びR’’’は、メチルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
X
n-は、n=1のハライドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
20~60モル%、好ましくは30~50モル%の、式I(式中、両方のR基は、C
15脂肪族基、好ましくはアルキル基、とりわけ直鎖アルキル基である)の化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
・20~95モル%、好ましくは20~60モル%、より好ましくは30~50モル%の、式I(式中、両方のR基は、C
15直鎖アルキル基である)の化合物、
・4.9~50モル%、好ましくは35~50モル%、より好ましくは41~50モル%の、式I(式中、1つのR基は、C
15直鎖アルキル基であり、及び他のR基は、C
17直鎖アルキル基である)の化合物、及び
・0.1~31モル%、好ましくは5~31モル%、より好ましくは9~20モル%の、式I(式中、両方のR基は、C
17直鎖アルキル基である)の化合物
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
5モル%未満、好ましくは2モル%未満の、式I(式中、各出現において同じであるか又は異なり得る前記R基の少なくとも1つは、C
7~C
13脂肪族基及び/又はC
19~C
21脂肪族基である)の化合物をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の式Iの化合物の混合物を製造する方法であって、脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C
15又はC
17脂肪族基である)の混合物から出発し、及び前記脂肪酸の混合物は、45~98モル%のR-COOH(式中、Rは、C
15脂肪族基である)を含む、方法。
【請求項11】
脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C
15又はC
17直鎖アルキル基である)の混合物から出発し、及び前記脂肪酸の混合物は、45~78モル%、より好ましくは55~71モル%のR-COOH(式中、Rは、C
15直鎖アルキル基である)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下の工程:
a.脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C
15又はC
17脂肪族基である)の混合物であって、RがC
15脂肪族基である、45~98モル%のR-COOHを含む混合物を金属触媒の存在下で脱炭酸ケトン化し、それにより式VI:R-C(=O)-R (VI)(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、上記で定義された通りである)の内部ケトンの混合物を得る工程と、
b.工程a.において得られた前記式VIの内部ケトンの混合物をH
2及び触媒の存在下で水素化し、それにより式V:R-CH(OH)-R (V)(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、上記で定義された通りである)の第2級アルコールの混合物を得る工程と、
c.工程b.において得られた前記式Vの第2級アルコールの混合物を、式IV:
[L-Y-CO
2H]
(t-1)-[U
u+]
(t-1)/u (IV)
(式中、Lは、脱離基であり、
tは、1に等しいか又は2以上である整数であり、
U
u+は、カチオンであり、
uは、前記カチオンの正電荷を固定する整数であり、
Yは、請求項1又は4に記載される通りであり、及び
R基は、前述の通りである)
のカルボン酸試薬でエステル化し、それにより式III:
【化2】
(式中、R
、Y、L、t、U及びuは、前述の通りである)
のモノエステルの混合物を得る工程と、
d.工程c.において得られた前記式IIIのモノエステルの混合物を式R’R’’R’’’N(式中、同じであるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’は、水素又はC
1~C
4アルキル基である)のアミンと縮合させて、式II:
【化3】
(式中、R、R’、R’’、R’’’、Y、L及びtは、前述の通りである)
の化合物の混合物を得る工程と、
e.任意選択的に、工程d.において得られた前記式IIの化合物の混合物を、L
t-がX
n-と異なる場合、X
n-によってL
t-を置換するために、式[U’
u’+]
n/u’X
n-(ここで、X及びnは、請求項1~11のいずれか一項に記載される通りであり、及びU’
u’+は、カチオンであり、u’は、前記カチオンの正電荷を固定する整数である)の塩と接触させることによってアニオン交換する工程と、
f.請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物の混合物を回収する工程と
を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
L
t-は、請求項1又は6に記載されるようなX
n-に等しく、及び式IIの化合物は、式Iの化合物に等しい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アニオン交換の工程e.を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の式Iの化合物の混合物の、界面活性剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニウム化合物、特にそれら自体が脂肪酸又はその誘導体の混合物から得られる、内部ケトンから誘導可能な第4級アンモニウム化合物の混合物、そのような混合物を製造する方法及び単独で又は他の界面活性剤との混合での、界面活性剤としてのこれらの混合物の使用に関する。
【0002】
界面活性剤特性を有し、それぞれの用途に使用することができるアンモニウム化合物は、文献に記載されており、様々な供給業者から様々な異なるタイプで市販されている。
【0003】
日本特許第3563473号公報は、式R1R2R3N+-(CH2)n-COO-(AO)m-CHR4R5(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ1~4個の炭素原子を有するアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R4及びR5は、それぞれ7~35個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基であり、Aは、2~3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルカンジイル基であり、Xは、アニオン基であり、nは、1~6の整数であり、及びmは、アルキレンオキシドの平均モル数を示す0~20の数である)によって表される第4級アンモニウム塩を開示している。R4及びR5は、ペンタデシル、ヘプタデシル又はそれらの混合物であり得る。この界面活性剤は、良好な生分解性を有しながら、繊維に対して柔軟性を付与するために使用可能であると言われている。
【0004】
前記日本国文献に提示されたアルコキシル化第4級アンモニウム塩は、加水分解安定性問題を伴う低性能生成物であり、さらに、そのような生成物の製造は、毒性があり、発癌性であると疑われており、難分解性であり、そのため、強い規制圧力下にあるジオキサンのような副生成物の形成を誘導する。界面活性剤としてのm=0の上記の第4級アンモニウム化合物に関して、本出願人は、一方では界面活性剤特性と、他方では生分解性との良好な組合せを見出すことが困難であることを発見した。生分解性は、近年、より環境に優しい製品を求める顧客の要望のために一層重要となっている。生分解性の向上は、界面活性剤特性に悪影響を及ぼすべきではない。
【0005】
したがって、良好な界面活性剤特性及び優れた生分解性を有する新規な解決策を提供することが本発明の目的であった。
【0006】
この目的は、以下に定義される式Iの化合物の特定の混合物で達成される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の目的は、式I
【化1】
(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、C
15又はC
17脂肪族基であり、
Yは、二価のC
1~C
6脂肪族基であり、
同じであるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’は、水素又はC
1~C
4アルキル基であり、
X
n-は、
ハライド(n=1)、
式R
a-O-SO
2-O
-(式中、R
aは、任意選択的にハロゲン化され得るC
1~C
20、好ましくはC
1~C
6ヒドロカルビル基を表す)のヒドロカルビル硫酸アニオン(n=1)、
式R
a-SO
2-O
-(式中、R
aは、任意選択的にハロゲン化され得るC
1~C
20、好ましくはC
1~C
6ヒドロカルビル基を表す)のヒドロカルビルスルホネートアニオン(n=1)、
式SO
4
2-の硫酸アニオン(n=2)
式HSO
4
-の硫酸水素(すなわち重硫酸)アニン(n=1)、
式CO
3
2-の炭酸アニオン(n=2)、
式HCO
3
-の炭酸水素(すなわち重炭酸)アニオン(n=1)、
式H
2PO
4
-のリン酸二水素アニオン(n=1)、
式HPO
4
2-のリン酸水素アニオン(n=2)、
式PO
4
3-のリン酸アニオン(n=3)、
式R
a(CO
2
-)
n(式中、R
aは、ヘテロ原子含有基によって任意選択的に置換され得るC
1~C
20、好ましくはC
1~C
6ヒドロカルビル基を表す)の有機カルボン酸アニオン(n=1、2又は3)、及び
それらの混合物
からなる群から選択される対アニオンであり、
nは、対アニオンの性質に応じて、1、2又は3に等しい整数である)
を有する、本発明に従った化合物の混合物であって、20~95モル%の、式I(式中、両方のR基は、両方ともC
15脂肪族基である)の化合物を含む混合物である。
【0008】
本発明の別の目的は、上記式Iの化合物の混合物を製造する方法であって、脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C15又はC17脂肪族基である)の混合物から出発し、及び前記脂肪酸の混合物は、45~98モル%のR-COOH(式中、Rは、C15脂肪族基である)を含む、方法である。
【0009】
本発明は、上記式(I)の化合物の混合物の、界面活性剤としての使用にも関する。
【0010】
本発明の全ての好ましい実施形態は、本明細書において以下でも詳述され、特許請求の範囲の全てのカテゴリーに適用される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
脂肪族基Rは、いかなる二重結合及びいかなる三重結合も含まなくてよい。代わりに、脂肪族基Rは、少なくとも1つの-C=C-二重結合及び/又は少なくとも1つの-C≡C-三重結合を含み得る。
【0012】
脂肪族基Rは、有利には、アルキル基、アルケニル基、アルカンジエニル基、アルカントリエニル基及びアルキニル基から選択される。
【0013】
脂肪族基Rは、直鎖又は分岐、好ましくは直鎖であり得る。
【0014】
好ましくは、脂肪族基Rは、アルキル基及びアルケニル基から独立して選択される。
【0015】
より好ましくは、脂肪族基Rは、直鎖アルキル基及びアルケニル基から独立して選択される。
【0016】
R基上の不飽和(R=アルケニル基)は、むしろ生分解性にとって有利である。
【0017】
非環状脂肪族基、より好ましくは直鎖脂肪族基、さらにより好ましくは直鎖アルキル基が置換基Rの好ましい例として挙げられ得る。優れた結果は、Rが直鎖アルキル基である場合に得られた。
【0018】
R’は、好ましくは、H又はC1~C4アルキル基、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはメチルである。同様に、R’’は、好ましくは、H又はC1~C4アルキル基、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはメチルである。さらに同様に、R’’’は、好ましくは、H又はC1~C4アルキル基、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはメチルである。好ましくは、R’、R’’及びR’’’の少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全ては、H又はC1~C4アルキル基、好ましくはメチル又はエチル、最も好ましくはメチルである。
【0019】
Yは、好ましくは、非環状二価のC1~C6脂肪族基、より好ましくは飽和の非環状二価のC1~C6脂肪族基、さらにより好ましくは直鎖アルカンジイル(通称「アルキレン」)C1~C6基である。さらに、Yは、好ましくは、1~4個の炭素原子を有する。例示的なYは、メタンジイル(通称「メチレン」)、エタン-1,2-ジイル(通称「エチレン」)及びエタン1,1-ジイルである。優れた結果は、Yがメチレン基である場合に得られた。
【0020】
好適なXn-は、クロリド、フルオリド、ブロミド又はヨードなどのハライド、硫酸メチル、すなわちメト硫酸アニオン(CH3-OSO3
-)、メタンスルホネートアニオン(CH3-SO3
-)、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン(HSO4
-)、炭酸アニオン、重炭酸アニオン(HCO3
-)、リン酸二水素アニオン(H2PO4
2-)、リン酸水素アニオン(HPO4
2-)、リン酸アニオン又は酢酸、プロピオン酸、安息香酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸若しくはコハク酸アニオンなどの有機カルボン酸アニオンである。
【0021】
対アニオンXn-は、ハライド、硫酸アニオン、炭酸アニオン、重炭酸アニオン(HCO3
-)、硫酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸水素アニオン又はリン酸アニオンのように、その性質において無機である場合、対応する第4級アンモニウム化合物の生分解性挙動を変えない。
【0022】
対アニオンXn-が硫酸メチル、すなわちメト硫酸アニオン(CH3-OSO3
-)、メタンスルホネートアニオン(CH3-SO3
-)又は「短鎖」有機カルボン酸アニオン(Ra(CO2
-)n)、例えば酢酸アニオン(Ra=CH3-、n=1)、プロピオン酸(Ra=CH3-CH2-、n=1)、酒石酸(Ra=-CH(OH)-CH(OH)-、n=2)、クエン酸(Ra=-CH2-C(OH)(-)-CH2-、n=3)、乳酸(Ra=CH3-CH(OH)-、n=1)、マレイン酸(Ra=-CH=CH-、n=2)又はコハク酸(Ra=-CH2-CH2-、n=2)のような有機である場合、アニオンにおける水素及び炭素含有量が全体塩(とりわけポリアニオンに関して)の全水素及び炭素含有量の低い割合を表すため、生分解性が大きく影響を受けることは、予期されない。式Ra(CO2
-)nの有機カルボン酸アニオンに関して、Raは、好ましくは、C1~C6、より好ましくはC1~C4である。また、Raは、好ましくは、直鎖であり、不飽和が生分解性にとって有利であるため、不飽和であり得る。
【0023】
対アニオンXn-の好ましいリストとして、クロリド(Cl-)、フルオリド(F-)、ブロミド(Br-)若しくはヨード(I-)などのハライド、硫酸メチル、すなわちメト硫酸アニオン(CH3-OSO3
-)、メタンスルホネートアニオン(CH3-SO3
-)、硫酸アニオン(SO4
2-)、硫酸水素アニオン(HSO4
-)、炭酸アニオン(CO3
2-)、重炭酸アニオン(HCO3
-)、リン酸二水素アニオン(H2PO4
2-)、リン酸水素アニオン(HPO4
2-)、リン酸アニオン(PO4
3-)又は酢酸アニオン(CH3-COO-)を引用することができる。
【0024】
好ましい一実施形態によれば、Xn-は、n=1のハライド、好ましくはクロリドである。
【0025】
本発明による混合物において、R基がC15又はC17アルキル基であること、及び混合物が、20~95モル%の、式I(式中、両方のR基は、C15アルキル基である)の化合物を含むことが有利である。
【0026】
最良の結果は、本発明による混合物が、R基がC15又はC17直鎖アルキル基であり、及び前記混合物が、20~95モル%の、式I(式中、両方のR基は、C15直鎖アルキル基である)の化合物を含むようなものである場合に得られる。
【0027】
下記の実験の部に示されるように、混合物が20モル%未満の式I(式中、両方のR基は、C15直鎖アルキル基である)を含有する場合、生分解性性能に到達しない。実験は、95%の限界よりも上では、混合物の疎水性が影響を受け、それがある種の用途において界面活性剤としての性能を低下させるであろうことも実証した。生分解性及び界面活性剤性能を両方とも必要とするため、最適バランスは、達成するのが容易ではない。実際に、式I(式中、Rは、C17直鎖アルキル基である)の最低限の化合物を含有しない場合、CMC(臨界ミセル濃度)が高く、用途における性能に達するためにより多い量の界面活性剤を標的配合物に導入することが必要であろう。
【0028】
本発明による混合物において、優れた結果は、混合物が、20~60モル%、好ましくは30~50モル%の、式I(式中、両方のR基は、C15脂肪族基、好ましくはアルキル基、とりわけ直鎖アルキル基である)の化合物を混合物が含む場合に得られる。
【0029】
好ましい実施形態によれば、本発明による混合物は、
・20~95モル%、好ましくは20~60モル%、より好ましくは30~50モル%の、式I(式中、両方のR基は、C15直鎖アルキル基である)の化合物、
・4.9~50モル%、好ましくは35~50モル%、より好ましくは41~50モル%の、式I(式中、1つのR基は、C15直鎖アルキル基であり、及び他のR基は、C17直鎖アルキル基である)の化合物、及び
・0.1~31モル%、好ましくは5~31モル%、より好ましくは9~20モル%の、式I(式中、両方のR基は、C17直鎖アルキル基である)の化合物
を含む。
【0030】
本発明による混合物は、5モル%未満、好ましくは2モル%未満の、式I(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基の少なくとも1つは、C7~C13脂肪族基である)の化合物をさらに含むことができる。それらの生成物は、使用される原材料に由来する副生成物である。実際に、出発原料として使用される脂肪酸カットが、C7~C13脂肪族基をベースとする低い量の1種以上の脂肪酸を含有する場合、カット中に含有される任意の脂肪酸と、C7~C13脂肪族基をベースとするこの1種以上の脂肪酸のいずれかとのカップリングによって得ることができる可能な内部ケトンは、全て脱炭酸ケトン化の工程中にもたらされる。
【0031】
本発明による混合物は、5モル%未満、好ましくは2モル%未満の、式I(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基の少なくとも1つは、C19~C21脂肪族基である)の化合物をさらに含むことができる。それらの生成物は、使用される原材料に由来する副生成物である。前に説明されたように、出発原料として使用される脂肪酸カットが、C19~C21脂肪族基をベースとする低い量の1種以上の脂肪酸を含有する場合、C19~C21脂肪族基をベースとするこの1種以上の脂肪酸のいずれかと、カット中に含有される任意の脂肪酸とのカップリングによって得ることができる可能な内部ケトンは、全て脱炭酸ケトン化の工程中にもたらされる(本説明の下の工程a.を参照されたい)。
【0032】
本発明の特定の実施形態によれば、式Iの化合物の混合物は、式I(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、C15又はC17直鎖アルキル基である)の化合物を本質的に含有する。それは、他の化合物が2モル%未満、好ましくは1モル%未満を表すことを意味する。
【0033】
本発明による上記で定義された混合物は、一側面で良好な界面活性剤特性及び他の側面で良好な生分解性を示す。
【0034】
実験の部において、炭化水素平均鎖長(R-CH-R)の慎重な制御(とりわけ出発脂肪酸の慎重な選択)により、一側面で界面活性剤特性と、他の側面で生分解性との良好なバランスを達成できることが示される。例えば、C16:C18脂肪酸混合物から出発すると、最終化合物に関して易生分解性を達成するために、最低量のC16が出発脂肪酸中に必要である。同時に、最終化合物に関して界面活性剤特性を達成するために、最低量のC18も出発脂肪酸中に必要である。
【0035】
加えて、少なくとも工業利用のために、本発明の混合物の出発原材料は、再生可能な資源、典型的には両方のC16及びC18脂肪酸を含有するヤシ油カットの脂肪酸に由来することを指摘することが重要である。C16及びC18脂肪酸は、互いに単離することが非常に困難である。それは、エネルギー消費が高く、費用がかかり、工業的観点から無意味に終わる。
【0036】
本発明に従った式Iの化合物の混合物は、様々な方法によって得ることができる。本発明の化合物の好ましい製造方法は、式VI:R-C(=O)-R (VI)の内部ケトンの反応を含み、その内部ケトンは、好ましくは、脂肪酸の混合物、脂肪酸誘導体又はそれらの混合物の脱炭酸ケトン化によって得られ得る。この経路に従った内部ケトンの好適な製造方法は、米国特許出願公開第2018/0093936号明細書に開示されており、さらなる詳細のためにそれが言及される。いずれにしても、上記で定義されたような式Iの化合物のそのような混合物は、有利には、脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C15又はC17脂肪族基である)の混合物から出発する方法によって得られ、及び前記脂肪酸の混合物は、45~98モル%のR-COOH(式中、Rは、C15脂肪族基である)を含む。
【0037】
前記方法は、脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C15又はC17直鎖アルキル基である)の混合物から出発し、及び前記脂肪酸の混合物は、45~78モル%、より好ましくは55~71モル%のR-COOH(式中、Rは、C15直鎖アルキル基である)を含むことが特に好ましい。
【0038】
本発明の方法は、1)上記の脂肪酸の混合物のピリア(Piria)ケトン化(すなわち脱炭酸ケトン化)、2)第2級脂肪アルコールの混合物へのケトン水素化、3)とりわけクロロ酢酸(Yがメチレンである場合)でのアルコールエステル化、4)アミンとのモノエステル、とりわけクロロエステルの混合物の縮合、5)任意選択的に、式Iの化合物の所望の第4級アンモニウム混合物を提供するためのアニオン交換を含む方法であり得る。
【0039】
本方法は、ピリアケトン化から出発し、これに水素化及びモノエステルの混合物を得るためのエステル化が続く。エステル化反応工程に、式Iに従うことができる又は式Iに従うためにアニオン交換によってさらに反応させることができる化合物の混合物にモノエステルを変換するためのアミン縮合工程が続く。これは、ピリア技術に結び付けられた多工程プロセスである。それは、アニオン交換の工程が行われない場合に塩を含まず、及び容易に行うことができる化学変換に依拠するという利点を有する。
【0040】
本発明による全体的な方法は、以下の工程:
a.脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C
15又はC
17脂肪族基である)の混合物であって、RがC
15脂肪族基である、45~98モル%のR-COOHを含む混合物を金属触媒の存在下で脱炭酸ケトン化し、それにより式VI:R-C(=O)-R (VI)(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、上記で定義された通りである)の内部ケトンの混合物を得る工程と、
b.工程a.において得られた式VIの内部ケトンの混合物をH
2及び触媒の存在下で水素化し、それにより式V:R-CH(OH)-R (V)(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、上記で定義された通りである)の第2級アルコールの混合物を得る工程と、
c.工程b.において得られた式Vの第2級アルコールの混合物を、式IV:
[L-Y-CO
2H]
(t-1)-[U
u+]
(t-1)/u (IV)
(式中、Lは、脱離基であり、
tは、1に等しいか又は2以上である整数であり、
U
u+は、カチオンであり、
uは、カチオンの正電荷を固定する整数であり、
Yは、請求項1又は4において定義される通りであり、及び
R基は、前述の通りである)
のカルボン酸試薬でエステル化し、それにより式III:
【化2】
(式中、R
、Y、L、t、U及びuは、前述の通りである)
のモノエステルの混合物を得る工程と、
d.工程c.において得られた式IIIのモノエステルの混合物を式R’R’’R’’’N(式中、同じであるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’は、水素又はC
1~C
4アルキル基である)のアミンと縮合させて、式II:
【化3】
(式中、R、R’、R’’、R’’’、Y、L及びtは、前述の通りである)
の化合物の混合物を得る工程と、
e.任意選択的に、工程d.において得られた式IIの化合物の混合物を、L
t-がX
n-と異なる場合、X
n-によってL
t-を置換するために、式[U’
u’+]
n/u’X
n-(ここで、X及びnは、先行する請求項のいずれか一項に記載される通りであり、及びU’
u’+は、カチオンであり、u’は、カチオンの正電荷を固定する整数である)の塩と接触させることによってアニオン交換する工程と、
f.上記で定義されたような式Iの化合物の混合物を回収する工程と
を含むことができる。
【0041】
本方法に関するさらなる詳細は、下記の通りである。
【0042】
式Iの化合物の混合物の合成方法
a.ピリアケトン化
第1の工程における基本反応は、
【化4】
(式中、R基は、上記で定義されたものと同じ意味を有する)
である。
【0043】
この反応は、米国特許第10035746号明細書、国際公開第2018/087179号パンフレット及び国際公開第2018/033607号パンフレットに詳細に記載されており、さらなる詳細に関しては、それらを参照されたい。
【0044】
b.水素化
式VIの内部ケトン混合物は、次いで、水素化反応:
【化5】
に関して当業者に公知の標準条件下で実施することができる水素化に供される。
【0045】
水素化反応は、オートクレーブ反応器中において、15℃~300℃の範囲の温度及び1bar~100barの範囲の水素圧力で式VIの内部ケトン混合物を水素と接触させることによって行われる。反応は、任意選択的な溶媒の存在下で行うことができるが、そのような溶媒の使用は、必須ではなく、反応は、いかなる溶媒も添加せずに行うこともできる。好適な溶媒の例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、THF、メチル-THF、炭化水素、水又はそれらの混合物を挙げることができる。遷移金属をベースとする好適な触媒がこの反応のために用いられるべきである。好適な触媒の例として、例えば担持分散型遷移金属系触媒などの不均一系遷移金属系触媒又は遷移金属の均一系有機金属錯体を挙げることができる。好適な遷移金属の例は、Ni、Cu、Co、Fe、Pd、Rh、Ru、Pt、Irである。好適な触媒の例として、Pd/C、Ru/C、Pd/Al2O3、Pt/C、Pt/Al2O3、ラネーニッケル、ラネーコバルト等を挙げることができる。反応の終わりに、式Vの所望のアルコール混合物を適切なワークアップ後に回収することができる。当業者は、代表的な技法を知っており、したがってさらなる詳細がここで示される必要はない。このプロセス工程の詳細は、例えば、ここで言及される米国特許第10035746号明細書に見出すことができる。
【0046】
当業者は、専門的な経験に基づいて及び合成される具体的なターゲット化合物を考慮して好適な反応条件を選択するであろう。したがって、ここでさらなる詳細が説明される必要はない。
【0047】
c.エステル化
式Vの上で得られたアルコール混合物のエステル化は、その後、前記式Vのアルコール混合物を式IVのカルボン酸試薬と反応させて、式III:
【化6】
のモノエステル化合物の混合物を以下のスキーム:
【化7】
に従って得ることによって達成することができ、ここで、上記の化合物中に存在するときには常に、
Lは、脱離基であり、
tは、1に等しいか又は2以上である整数であり、
U
u+は、カチオンであり、
uは、カチオンの正電荷を固定する整数であり、及び
R及びYは、前述の通りである。
【0048】
エステル化は、式Vのアルコール混合物を、式IV:
[L-Y-CO2H](t-1)-[Uu+](t-1)/u (IV)
(式中、L、Y、t、Uu+及びuは、前述の通りである)
のカルボン酸試薬とを接触させることによって行われる。
【0049】
tが1に等しい場合、カチオンは、存在しない。そうでない場合、エステル化反応は、アルコールを式:
L-Y-CO2H
のカルボン酸と接触させることによって行われる。
【0050】
脱離基Lがカルボン酸試薬において既に負電荷を帯びている場合(これは、(t-1)が1以上である場合、すなわちtが2以上である場合である)、Uu+(uは、好ましくは、1、2又は3、より好ましくは1である)と記されるカチオンは、電気的中性度を保証するために反応体中に存在しなければならない。このカチオンは、いくつかの例を挙げると、例えばH+、アルカリ金属カチオン(例えば、Na+又はK+)、アルカリ土類金属カチオン(例えば、Ca2+)、Al3+及びアンモニウムから選択され得る。
【0051】
脱離基Lの性質は、次の反応工程(すなわち後に詳述するようなアミン縮合)が起こり得ることを条件として特に限定されない。脱離基Lは、有利には、核脱離基である。それは、とりわけ、
- ハロゲン、
- 式Ra-O-SO2-O-(式中、Raは、任意選択的にハロゲン化され得るC1~C20ヒドロカルビル基を表す)の(ヒドロカルビルオキシスルホニル)オキシ基、
- 式Ra-SO2-O-(式中、Raは、任意選択的にハロゲン化され得るC1~C20ヒドロカルビル基を表す)の(ヒドロカルビルスルホニル)オキシ基(例えば、CF3-SO2-O-におけるなどの)、及び
- 式-O-SO2-O-のオキシスルホニルオキシ基(それは、末端酸素原子上に1つの負電荷を既に帯びている脱離基Lである)
から選択することができる。
【0052】
ヒドロカルビル基Raは、ここで前の式にいずれの箇所に存在しようと、とりわけ脂肪族基又はフェニル若しくはp-トリルなどの任意選択的に置換された芳香族基であり得る。脂肪族基Raは、通常、直鎖又は分岐であり得るC1~C6アルキル基であり;それは、多くの場合、メチル、エチル又はn-プロピルなどの直鎖C1~C4アルキルである。
【0053】
脱離基Lは、好ましくは、
- フッ素、塩素、臭素又はヨウ素などのハロゲン、
- CH3-SO3などの式Ra-SO3-(式中、Raは、C1~C20ヒドロカルビル基を表す)の(ヒドロカルビルオキシスルホニル)オキシ基、及び
- 式-O-SO2-O-のオキシスルホニルオキシ基
から選択される。
【0054】
tが1に等しい化合物の例は、2-((メトキシスルホニル)オキシ)酢酸と称することができるCH3-O-SO3-CH2-COOHである。tが1に等しく、したがってカチオンが存在しない化合物のさらなる例として、クロロ酢酸、ブロモ酢酸及び2-クロロプロピオン酸を挙げることができる。クロロ酢酸が式IVの好ましい試薬である。
【0055】
tが2に等しい場合の例は、[L-Y-COOH](t-1)-[Uu+](t-1)/uが[O-SO2-O-CH2-COOH]-[Na+]であるカルボキシメチル硫酸ナトリウムである。
【0056】
エステル化工程c.中に行われる反応は、溶媒の存在下で行うことができる。しかしながら、そのような溶媒の存在は、必須ではなく、反応は、いかなる溶媒も添加せずに行うこともできる。好適な溶媒の例として、トルエン、キシレン、炭化水素、DMSO、Me-THF、THF又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0057】
反応は、有利には、窒素又は希ガス雰囲気などの不活性雰囲気下で行われる。アルゴン雰囲気は、好適な不活性雰囲気の例である。
【0058】
反応は、いかなる触媒の不在下でも行うことができる。触媒は、反応中に用いることもでき、好適な触媒は、ブレンステッド酸触媒又はルイス酸触媒である。触媒の好ましい例として、H2SO4、パラ-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、HCl又はアンバーライト(登録商標)樹脂などの不均一酸性樹脂、AlCl3、FeCl3、SnCl4等を挙げることができる。
【0059】
反応の全過程中に式Vのアルコールと接触される式IVのカルボン酸試薬の総モル数は、有利には、アルコールの総モル数の半分以上であり;それは、好ましくは、アルコールの総モル数と少なくとも同じであり、それは、より好ましくは、アルコールの総モル数の少なくとも2倍である。さらに、反応の全過程中にアルコールと接触されるカルボン酸試薬の総モル数は、有利には、アルコールの総モル数の最大でも10倍である。
【0060】
反応は、有利には、アルコールが溶融状態にある反応器中で行われる。反応は、式IVのカルボン酸試薬が溶融状態にある反応器中で行われることも有利であることが見出されている。好ましくは、反応は、アルコール及びカルボン酸試薬の両方が溶融状態にある反応器中で行われる。
【0061】
エステル化反応は、任意選択的な溶媒の存在下において、一般に約20℃~約200℃の範囲の温度で行うことができる。十分な反応速度を可能にするために、反応は、好ましくは、少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも80℃、さらにより好ましくは少なくとも100℃のものである温度で行われる。一方で、本出願人は、意外にも、高温での反応の実施が脱水副生成物としての内部オレフィンの形成及び色ビルドアップをもたらすことを見出した。したがって、反応は、好ましくは、180℃未満、より好ましくは160℃未満、さらに好ましくは最大でも150℃である温度で行われる。
【0062】
全体反応は、水除去を支援し、且つ平衡を完了に向かわせるために大気圧又は大気圧よりも低い圧力で行うことができる。好ましくは、大気圧又は真空下、すなわち10kPa~大気圧(約1atm=101.325kPa)の圧力で行われる。より好ましくは、それは、大気圧で行われる。
【0063】
反応の終わりに、式IIIのモノエステル化合物の所望の混合物を適切なワークアップ後に回収することができ、当業者は、代表的な技法を知っているため、さらなる詳細をここで述べる必要はない。例えば、適切なワークアップは、過剰のカルボン酸試薬を真空下で蒸留させることからなり得る。代わりに、過剰のカルボン酸試薬は、水溶液での粗有機混合物の簡単な抽出によって除去することができる。
【0064】
d.アミン縮合
式IIIのモノエステル化合物の混合物は、以下の反応スキーム:
【化8】
(式中、R、R’、R’’、R’’’、Y、L、U、t及びuは、ここで前に記載された通りである)
によって式IIの化合物の混合物に変換することができる。
【0065】
アミン縮合反応は、式IIIの中間体モノエステル化合物の混合物をアンモニア又は式NR’R’’R’’(式中、同じであるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’は、水素又はC1~C4アルキル基であり、好ましいR’、R’’及びR’’’は、正確に、式Iのアンモニウム化合物に関連して上記で定義された通りである)のアミンと接触させることによって行われる。
【0066】
反応は、好適な溶媒の存在下において15℃~250℃の範囲の温度で行うことができる。好適な溶媒の例として、THF、Me-THF、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル、DMSO、トルエン、キシレン又はそれらの混合物を挙げることができる。代わりに、反応は、任意の添加溶媒の不在下で行うこともできる。
【0067】
この反応中、モノエステル中のL(t-1)-を置換するアンモニア又はアミンの求核攻撃があり;L(t-1)-は、脱離基の役割を果たす。Lt-は、そのとき、最終的なアンモニウム化合物の対アニオンとなる。脱離基がモノエステル中で既に負電荷を帯びている場合(これは、(t-1)が1以上であるか又はtが2以上である場合である)、反応の副産物として一般化学式[Uu+]t/u[Lt-]の塩の形成もある。
【0068】
e.任意選択的なアニオン交換
好ましい実施形態では、Lt-は、Xn-に等しく(換言すれば、Xは、Lに等しく)、それは、式IIの化合物が式Iの化合物に等しいことを意味する。
【0069】
この場合、式Iの対イオンXn-は、実際に、前の工程の脱離基Lに由来している。これは、とりわけ、Xn-がハライド、硫酸、硫酸水素、メタンスルホネート、メト硫酸、p-トルエンスルホネート、リン酸二水素、リン酸水素、リン酸又は有機カルボキシレートである場合である。
【0070】
別の実施形態では、本発明の方法は、アニオン交換の工程e.を含む。例えば、Xn-が炭酸又は重炭酸である場合、式Iの化合物の混合物は、Lt-をXn-によって置換するために、アニオン交換の追加の工程e.で得られる。
【0071】
リン酸及びカルボン酸アニオンに関して、両方の選択肢が可能である。
【0072】
工程e.中のアニオン交換反応は、置換されるべき工程d.の終わりに得られた式IIの化合物の混合物(それは、基本的に式Iの化合物であるが、アニオンLt-をXn-の代わりに含有する)を、平衡を完了に向かわせるためにアニオン交換反応の生成物の1つ(対アニオンとしてのXn-を有する式Iの新規な化合物又は塩副生成物[U’u’+]t/u’Lt-のいずれか)を沈澱させる適切な溶媒系中で式[U’u’+]n/u’Xn-の塩と接触させることによって行うことができる。U’u’+は、カチオンであり、u’は、カチオンの正電荷を固定する整数である。このカチオンは、例えば、いくつかの例を挙げると、H+、アルカリ金属カチオン(例えば、Na+又はK+)、アルカリ土類金属カチオン(例えば、Ca2+)、Al3+、Ag+及びアンモニウムから選択され得る。
【0073】
溶媒の例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、DMSO、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0074】
f.式Iの化合物の混合物の回収
式Iの化合物の最終混合物は、先行技術において公知の適切なワークアップに従って回収することができる。
【0075】
本発明による特に好ましい方法は、以下の工程:
a.脂肪酸R-COOH(式中、Rは、C
15又はC
17脂肪族基である)の混合物であって、RがC
15脂肪族基である、45~98モル%のR-COOHを含む混合物を金属触媒の存在下で脱炭酸ケトン化し、それにより式VI:R-C(=O)-R (VI)(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、上記で定義された通りである)の内部ケトンの混合物を得る工程と、
b.工程a.において得られた式VIの内部ケトンの混合物をH
2及び触媒の存在下で水素化し、それにより式V:R-CH(OH)-R (V)(式中、各出現において同じであるか又は異なり得るR基は、上記で定義された通りである)の第2級アルコールの混合物を得る工程と、
c.工程b.において得られた式(V)の第2級アルコールの混合物を、クロロ酢酸である式(IV)のカルボン酸試薬でエステル化し、それにより式(III’)
【化9】
(式中、R基は、前述の通りである)
のモノエステルの混合物を得る工程と、
d.工程c.において得られた式(III’)のモノエステルの混合物を式R’R’’R’’’N(式中、同じであるか又は異なり得るR’、R’’及びR’’’は、水素又はC
1~C
4アルキル基である)のアミンと縮合させて、式(I’):
【化10】
(式中、R基は、前述の通りである)
の化合物の混合物を直接得る工程と
を含む方法である。
【0076】
この好ましい方法は、塩を含まず、化学変換を容易に行うことができる。
【0077】
本発明による式Iの化合物の混合物の他の調製方法
式Iの化合物の混合物の代わりの調製方法であって、20~95モル%の、式I(式中、両方のR基は、C15脂肪族基である)の化合物を含む前記混合物は、画定された割合の式Iの第4級アンモニウム化合物の簡単な混合物である、方法である。
【0078】
C15及びC17脂肪族基の画定された割合での、式VI R-C(=O)-R(式中、R基は、上記で定義された通りである)の対称ケトンの混合物から出発し、これに水素化工程(工程bにおいて上で記載されたような)、次いでエステル化工程(工程cにおいて上で記載されたような)及び縮合工程(工程dにおいて上で記載されたような)、任意選択的な工程e並びに工程fが続くことも可能である。
【0079】
同じ理由で、正しい割合での式Vの第2級アルコールの混合物から出発し、次いでエステル化(工程c)、縮合(d)、任意選択的な工程e及び工程fを実施することが可能である。
【0080】
また、正しい割合での上記のような式IIIのモノエステルの混合物から出発し、次いで縮合(d)、任意選択的な工程e及び工程fを実施することも可能である。
【0081】
前に記載された例示的な方法は、好適な方法の例であり、すなわち本発明に従って化合物を合成するための他の好適な方法であり得る。したがって、本明細書で前に記載された方法は、本発明による化合物の製造方法に関する限り、限定されるものではない。
【0082】
式Iの化合物の混合物は、界面活性剤として使用することができる。界面活性剤は、2つの非混和性液体の間、液体と気体との間又は液体と固体との間の表面張力(又は界面張力)を低下させる化合物である。界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤及び分散剤として機能し得る。
【0083】
界面活性剤は、通常、それらが疎水性基(それらの尾部)及び親水性基(それらの頭部)の両方を含有することを意味する、両親媒性である有機化合物である。そのため、界面活性剤は、水不溶性(又は油溶性)構成要素及び水溶性構成要素の両方を含有する。界面活性剤は、水中で拡散し、水が油と混合された場合、空気と水との間の界面又は油と水との間の界面で吸着するであろう。水不溶性の疎水性基は、バルク水相から空気中へ又は油相中へ伸び得、一方、水可溶性の頭部基は、水相に留まり得る。
【0084】
負電荷表面へのカチオン界面活性剤の吸着は、そのような界面活性剤にとって重要な特性である。この特性は、通常、水性媒体中の負に帯電したセルロースナノ結晶(CNC、基準物質として多くの場合使用される)懸濁液の凝集をもたらすために必要とされる界面活性剤の最小濃度と関連している。サイズの連続的な変化は、動的光散乱(DLS)によって監視する及び追跡することができる。
【0085】
E.K.Oikonomou et al.,J.Phys.Chem.B,2017,121(10),2299-307に記載されたプロトコルに従って、アンモニウム化合物の吸着特性は、セルロースナノ結晶の凝集を誘発するために必要とされる、水溶液中の固定[界面活性剤]+[CNC]=0.01重量%で、比X=[界面活性剤]/[CNC]又は質量分率M=[界面活性剤]/([界面活性剤]+[CNC])を監視することによって研究することができる。
【0086】
本発明の化合物の生分解性は、先行技術に記載された、当業者に公知の手順に従って測定することができる。1つのそのような方法、OECD標準301に関する詳細は、本明細書で以下の実験のセクションに記載される。
【0087】
式Iの化合物の混合物は、傑出した界面活性剤特性及び生分解性を示す。
【0088】
それは、界面活性剤特性を示す唯一のアンモニウム化合物として、すなわち界面活性剤特性を示す他のモノアンモニウム化合物及び界面活性剤特性を示すジ以上のアンモニウム化合物がこれらの配合物中に存在せずに様々な水性又はヒドロアルコール性配合物に使用することができる。
【0089】
本出願人は、水性又はヒドロアルコール性配合物において、式Iの化合物の混合物が多層膜小胞など、ラメラの形態で一般に構造化していることを観察した。このラメラ構造は、一般に、同じ配合物よりも実質的に高い粘度を示すがミセルの形態で構造化するアンモニウム界面活性剤に基づく水性又はヒドロアルコール性配合物をもたらした。このより高い粘性は、ある用途には良好に適合するが、いくつかの他の用途向けには幾分より低い粘性が望まれる。
【0090】
下の実施例におけると同様に、この説明の全てにわたって、いかなる展開された式も、適切であれば、全ての潜在的なエナンチオマー及びジアステレオ異性体を含むものとして理解されなければならない。特定の立体化学が対象とされず、具体的な言及がない場合、提示された各キラル分子は、そのラセミ混合物の形態にある。
【0091】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0092】
実施例(比較)1)C16:C18=33.7:65.3重量%のC16~C18脂肪酸混合物(又は換言すればR=C15:R=C17=33.7:65.3重量%のR-COOHの混合物)からの、13モル%の、式I(式中、両方のR基は、C15脂肪族基である)の化合物を有する式Iの混合化合物の合成。
反応は、全て不活性アルゴン雰囲気下で行う。
【0093】
工程a.及びb.:ピリアケトン化及び水素化
2つの最初の工程(ピリア及び水素化)は、公開特許出願国際公開第2020/254337号パンフレットの実施例12に記載されたプロトコルに従って行った。
【0094】
工程c.:クロロ酢酸での第2級アルコールエステル化
磁気撹拌デバイス、ヒーター、温度計プローブ、受器フラスコに接続された蒸留装置を備えた3口の500mL丸底フラスコに、
・50g(0.102モル、1eq.)の第2級アルコールのC31~C35混合物
・39.1gのクロロ酢酸(0.41モル、4eq.)
を添加する。
【0095】
次いで、反応混合物を120℃に加熱し、反応混合物が完全に溶融したら(約105℃)、直ちに撹拌を開始する(900rpm撹拌速度)。
【0096】
次いで、反応混合物を120℃で撹拌するに任せ、反応の進行を1H NMR分光法により追跡する。
【0097】
120℃で1h00撹拌後、NMR分析は、82%の転化レベルを示す。反応中に同時発生する水を効果的に除去するために及び平衡をエステル化完了に向けてずらすために、わずかな真空を反応器に加える(800mbar)。
【0098】
800mbar下において120℃で追加の2h00の撹拌後、反応粗物のNMR分析は、96%の転化レベルを示す。
【0099】
次いで、過剰のクロロ酢酸を留出させるために、反応器圧力を30mbarまで下げ、反応媒体の温度をさらに140℃に上げる。
【0100】
粗物の1H NMR分析によって証明されるようにクロロ酢酸の完全な消失(粗物中に0.3モル%未満の残存クロロ酢酸)まで、140℃、30mbarでの蒸留を実施する。
【0101】
反応の終わりに、圧力を1atm.に復元し、反応媒体を室温まで放冷する。
【0102】
56.7gの生成物を、以下の組成のベージュ色ワックスとして回収する:98.9重量%のクロロ酢酸エステルの混合物、1重量%の脂肪アルコールの出発混合物、0.04重量%の残存クロロ酢酸。
【0103】
純度を考慮に入れたエステル化収率は、97%である。
【0104】
次いで、粗生成物を次の四級化段階に使用する。
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):4.93(quint,J=6.0Hz,1H),4.01(s,2H),1.64-1.46(m,4H),1.45-1.05(m,57H(平均数)),0.86(t,J=6.8Hz,6H).
13C NMR(CDCl3,101MHz)δ(ppm):167.32,77.21,41.37,34.17,32.16,29.93,29.90,29.87,29.79,29.72,29.69,29.60,25.42,22.92,14.33.
【0105】
工程d.:トリメチルアミンでのクロロ酢酸エステル四級化
機械攪拌機(4つの傾斜プラウ付きプロペラ)、温度計プローブ、凝縮器及びそれが接続している、それぞれHClの水溶液(0.1M)及び活性炭を含有する2つの連続トラップを備えた1Lの二重ジャケット付き反応器に、
・56g(0.099モル、1eq.)の工程c.から得られたクロロ酢酸エステルの混合物
・212mL(180.6g、0.397モル、4eq.)のトリメチルアミン/THF溶液(13重量%、約2モル/L)
を添加する。
【0106】
次いで、反応混合物を40℃(700rpm撹拌速度)で撹拌するに任せ、反応の進行を1H NMR分光法により追跡する。
【0107】
40℃で2h00撹拌後、クロロ酢酸エステルの混合物の転化レベルは、約66%である。
【0108】
40℃で4h00撹拌後、転化レベルは85%に上昇した。
【0109】
反応速度を上げるために、反応媒体の温度をさらに55℃に上げ、55℃で追加の2時間の撹拌後、転化レベルは、94%に達した。
【0110】
次いで、反応を完了させるために、反応マスを55℃で追加の6h00の間撹拌するに任せる。
【0111】
この段階で、反応粗物組成は、98モル%の式Iのグリシンベタインエステルの混合物及び0.7モル%のクロロ酢酸エステルの出発混合物である。
【0112】
次いで、反応媒体を室温まで放冷し、揮発性物質を全て真空下で除去して61.41gの粗物質を、以下の組成のベージュ色ワックスとして得る:純度を考慮に入れて97.4%の収率に相当する98.2重量%の式Iのグリシンベタインエステルの混合物、0.9重量%の脂肪第2級アルコールの混合物及び0.8重量%のクロロ酢酸エステルの混合物。
1H NMR(CD3OD,400MHz)δ(ppm):5.02(quint,J=6.0Hz,1H),4.41(s,2H),3.35(s,9H),1.68-1.52(m,4H),1.50-1.05(m,57H(平均数)),0.87(t,J=7.2Hz,6H).
13C NMR(CD3OD,101MHz)δ(ppm):165.46,78.81,63.98,54.43,34.59,32.83,30.56,30.53,30.49,30.44,30.34,30.24,26.07,23.53,14.54.
【0113】
実施例2)C16:C18=60.9:38.2重量%のC16~C18脂肪酸混合物(又は換言すればR=C15:R=C17=60.9:38.2重量%のR-COOHの混合物)からの、41モル%の、式I(式中、両方のR基は、C15脂肪族基である)の化合物を有する式Iの化合物の混合物の合成。
反応は、全て不活性アルゴン雰囲気下で行う。
【0114】
工程a.及びb.:ピリアケトン化及び水素化
2つの最初の工程(ピリア及び水素化)は、公開特許出願国際公開第2020/254337号パンフレットの実施例13に記載されたプロトコルに従って行った。
【0115】
工程c.:クロロ酢酸での第2級アルコールエステル化
磁気撹拌デバイス、ヒーター、温度計プローブ、受器フラスコに接続された蒸留装置を備えた3口の500mL丸底フラスコに、
・82g(0.173モル、1eq.)の第2級アルコールのC31~C35混合物
・66.2gのクロロ酢酸(0.693モル、4eq.)
を添加する。
【0116】
次いで、反応混合物を120℃に加熱し、反応混合物が完全に溶融したら、直ちに撹拌を開始する(1200rpm撹拌速度)。
【0117】
反応によって同時生成する水を除去するために及び平衡をエステル化完了に向けてずらすために、わずかな真空(800mbar)を加える。
【0118】
反応混合物を3h40の間中120℃、800mbarで撹拌するに任せ、反応の進行を1H NMR分光法により追跡する。
【0119】
3h00反応時間後、NMR分析は、96%の転化レベルを示す。
【0120】
次いで、過剰のクロロ酢酸を留出させるために、圧力を10mbarまで下げ、粗物の1H NMR分析によって証明されるようにクロロ酢酸の完全な消失(粗物中に0.3モル%未満の残存クロロ酢酸)まで蒸留を実施する。
【0121】
蒸留の終わりに、圧力を1atm.に復元し、反応媒体を室温まで放冷する。
【0122】
95gの生成物を、以下の組成のベージュ色ワックスとして回収する:98.3重量%のクロロ酢酸エステルの混合物及び1.7重量%の脂肪アルコールの出発混合物。
【0123】
純度を考慮に入れたエステル化収率は、98%である。
【0124】
次いで、粗生成物を次の四級化段階に使用する。
1H NMR(CDCl3,400MHz)δ(ppm):4.93(quint,J=5.6Hz,1H),4.01(s,2H),1.62-1.46(m,4H),1.33-1.16(m,54.8H(平均数)),0.86(t,J=6.8Hz,6H).
【0125】
工程d.:トリメチルアミンでのクロロ酢酸エステル四級化
機械攪拌機(4つの傾斜プラウ付きプロペラ)、温度計プローブ、凝縮器及びそれが接続している、それぞれHClの水溶液(0.1M)及び活性炭を含有する2つの連続トラップを備えた1Lの二重ジャケット付き反応器に、
・95g(98.3重量%純度、0.17モル、1eq.)の工程c.から得られたクロロ酢酸エステルの混合物
・364mL(309g、0.68モル、4eq.)のトリメチルアミン/THF溶液(13重量%、約2モル/L)
を添加する。
【0126】
次いで、反応混合物を55℃(1200rpm撹拌速度)で撹拌するに任せ、反応の進行を1H NMR分光法により追跡する。
【0127】
55℃で3h30撹拌後、クロロ酢酸エステルの混合物の転化レベルは、約87%である。
【0128】
55℃で5h45撹拌後、転化レベルは、97%に上昇した。
【0129】
次いで、反応を完了させるために、反応マスを55℃で追加の6h00の間撹拌するに任せる。
【0130】
この段階で、反応粗物組成は、98モル%の式Iのグリシンベタインエステルの混合物及び0.2モル%のクロロ酢酸エステルの出発混合物である。
【0131】
次いで、反応媒体を室温まで放冷し、揮発性物質を全て真空下で除去して103gの粗物質を、以下の組成のベージュ色ワックスとして得る:98%の収率に相当する98.3重量%の式Iのグリシンベタインエステルの混合物、1.5重量%の脂肪第2級アルコールの混合物及び0.2重量%のクロロ酢酸エステルの混合物。
1H NMR(CD3OD,400MHz)δ(ppm):4.97(quint,J=6.0Hz,1H),4.38(s,2H),3.36(s,9H),1.65-1.46(m,4H),1.45-1.05(m,54.8H(平均数)),0.84(t,J=6.8Hz,6H).
13C NMR(CD3OD,101MHz)δ(ppm):164.81,78.67,63.64,54.28,34.12,32.36,30.11,30.08,30.05,30.02,29.90,29.81,29.78,25.66,23.10,14.38.
【0132】
生分解性アセスメント:
被験物質の易生分解性は、301 F OECDプロトコルに従って測定した。
【0133】
有機炭素の名目上の唯一の供給源として約50~100mg ThOD/l(理論酸素要求量)に達するように既知の濃度の被験物質を含有する、接種済みミネラル培地の測定量を、一定温度(20±2℃)で最大で28日まで密閉フラスコ(oxitop(商標)呼吸測定フラスコ)中で攪拌する。Oxitop(商標)呼吸測定ボトルを、この試験では試験サンプルの生分解性にアクセスするために使用した:密封培養BODフラスコを、28日の間中、20±2℃の温度で使用した。
【0134】
発生した二酸化炭素は、ボトルのヘッドスペースに存在する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのペレットによって吸収される。生分解プロセス(被験物質の生物学的酸化)中に微生物集団によって取り込まれた酸素の量(=mg/l単位で表される酸素消費量)は、ヘッドスペースの圧力(圧力スイッチで測定されるΔP)を減少させ、消費されたmgO2/リットル単位で数学的に換算される。接種原は、DOC(溶存酸素炭素)含量を減少させるためにミネラル培地(ZW培地)中で洗浄され都市活性汚泥に対応する。基準物質である酢酸ナトリウムを含有する対照液及びまた毒性対照液(被験物質+基準物質)を検証目的で使用した。
【0135】
基準物質である、酢酸ナトリウムは、接種原の生存率をチェックするために(100mg ThOD/lに対応する129mg/lの名目濃度で1つの瓶中で試験した。毒性対照は、物質基準と被験物質との混合物に対応し;被験物質が接種原に対して有毒であるかどうかをチェックするであろう(有毒である場合、方法の感度に関連して可能であれば、より低い被験物質濃度で試験をやり直さなければならない)。
【0136】
被験物質は、それらの大部分に関して、水に難溶である(水に可溶である場合、アルキル鎖を含有する加水分解後のそれらの代謝物が、多くの場合、水への溶解度が非常に低い)ため、「エマルジョンプロトコル」と名付けられた特定のプロトコルを使用した。このプロトコルは、不十分に水溶性の物質の生物学的利用能を、接種原を有する水相において向上させることを可能にする。
【0137】
エマルジョンプロトコルは、エマルジョンにされた原液によって瓶中に被験物質を添加することからなる。
【0138】
エマルジョンは、非生分解性界面活性剤含有水溶液(Synperonic PE 105、1g/lでの)に溶解した被験物質の原液の、次いでミネラルシリコーンオイルAR 20(Sigma)と混合された50/50v/v混合物である。
【0139】
非生分解性界面活性剤含有水溶液への被験物質の最初の溶解は、多くの場合、マグネチックスターラー攪拌、それに続く超音波処理を必要とした。
【0140】
溶解させたら直ちに、水溶液をミネラルシリコーンオイルと50/50体積/体積比で混合する。このエマルジョンをマグネチックスターラー攪拌によって維持し、必要な被験物質濃度に達するように対応する瓶への添加のためにサンプリングする。
【0141】
当然のことながら、2つのエマルジョン対照を、エマルジョン原液によって添加された被験物質を含有するエマルジョン瓶由来のそれらの値を取り除くために、試験中並行して実行する。
【0142】
生分解性試験の結果を下の表1にまとめる。
【0143】
【0144】
上の表で見ることができるように、C16:C18=60.9:38.2重量%のC16~C18脂肪酸混合物に由来する式Iの第4級アンモニウム化合物の混合物は、67.5%の最終生分解率を示し、そのため、容易に生分解可能と考えることができる。一方で、C16:C18=33.7:65.3重量%のC16~C18脂肪酸混合物に由来する式Iの第4級アンモニウム化合物の混合物は、50.4%のより低い生分解率を示し、容易に生分解可能と考えることができない。
【0145】
それらの結果は、式Iの化合物の最終混合物における(したがって脂肪酸の出発混合物における)炭化水素鎖長分布が、生分解性に劇的な影響を及ぼすことを明らかに示している。
【0146】
追加の実験
実施例1及び2において得られた前の混合物を2つの異なる比率で混合することによって式Iの第4級アンモニウム化合物の追加の混合物を調製し(1つは、本発明による、他は比較として)、上記と同じ方法に従って生分解性アセスメントを行った。結果を下の表2に示す。
【0147】
【0148】
結論:
式Iの第4級アンモニウム化合物の混合物に関して易生分解(この場合、28日後にBOD>DThOに対して60%を意味する)は、C16~C18脂肪酸混合物原材料に関して45モル%以上の出発脂肪酸材料におけるC16脂肪酸含有量に対応する20モル%以上の炭化水素鎖長分布におけるC31含有量(31モル%以下のC35含有量)に関して得られる。
【0149】
換言すれば、易生分解は、式Iの第4級アンモニウム化合物の混合物における平均炭化水素鎖長≦C33に関して得られる。
【国際調査報告】