(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】線維性疾患を緩和または治療するための薬物組成物またはキットおよびその応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4418 20060101AFI20240711BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240711BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240711BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240711BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240711BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K31/4418
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/496
A61K39/395 M
A61P17/02
C07K14/705 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503776
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CN2022107528
(87)【国際公開番号】W WO2023001305
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110831690.5
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522293490
【氏名又は名称】シャンハイ シンヴィダ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジュンリン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,シュエメイ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ハオリアン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤンジュン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA63
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4C084NA05
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4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZB21
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明が、線維性疾患を緩和または治療するための薬物組成物またはキット、およびその応用を提供する。本発明は、血小板内皮凝集受容体1(Pear1)アゴニストとピルフェニドンまたはニンテダニブを組み合わせた新しい投薬レジメンを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性疾患を緩和または治療するための混合物、薬物組成物またはキットの調製における薬物の組み合わせの応用;ただし、前記薬物の組み合わせは、
(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および
(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ
を含む。
【請求項2】
前記線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、心臓線維症、腎線維症、骨髄線維症、皮膚瘢痕化および/または軟組織瘢痕化を含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質のアゴニストは、Pear1の発現、活性、安定性、および/または有効作用時間を増強する薬剤を含む;好ましくは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアント、Pear1を組換えて発現する発現構築物(発現ベクターを含む)、Pear1の化学アゴニスト、Pear1遺伝子プロモーターの駆動能力を促進する発現アップレギュレーターを含む;より好ましくは、前記Pear1の化学アゴニストは、FcεR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項4】
前記混合物、薬物組成物またはキットは、
線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現を阻害すること;及び/又は
維芽細胞によるコラーゲン合成を阻害すること
にも使用されることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項5】
薬物組成物は、
(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;
(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ;及び
薬学的に許容される担体
を含む線維性疾患を緩和または治療するための薬物組成物。
【請求項6】
混合物は、
(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および
(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ
を含む線維性疾患を緩和または治療するための混合物。
【請求項7】
キットは、容器またはパッケージ、および前記容器またはパッケージ内に分散または混合された(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせを含む;或いは
前記キットは、請求項4に記載の薬物組成物を含む;或いは
前記キットは、請求項5に記載の混合物を含む;
ことを特徴とする線維性疾患を緩和または治療するためのキット。
【請求項8】
(a)は、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアントであることを特徴とする請求項1に記載の応用、請求項5に記載の薬物組成物、請求項6に記載の混合物、あるいは請求項7に記載のキット;ただし、
(a)のPearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のニンテダニブまたはその誘導体の含有量は、質量比で、1:(1~500)であり、好ましくは1:(1~300)、より好ましくは1:(3~200)である;或いは
(a)のPearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のピルフェニドンまたはその誘導体の含有量は、質量比で、1:(5~2000)であり、好ましくは1:(5~1000)、好ましくは1:(5~500)、より好ましくは1:(10~300)である。
【請求項9】
前記アゴニストは、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントである;好ましくは、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される;
好ましくは、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14或いは15に示され、或いは前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24或いは25に示される;
ことを特徴とする請求項1に記載の応用、請求項5に記載の薬物組成物、請求項6に記載の混合物、あるいは請求項7に記載のキット。
【請求項10】
前記混合物、薬物組成物またはキットにおいて、成分、混合物または組成物の剤形は、
物理的形態に応じて、エアゾール剤、ドライパウダー吸入剤、エアロゾル吸入剤などのガス剤、煎じ薬、注射剤、懸濁液などの液剤、凍結乾燥剤、散剤、顆粒剤、丸剤などの固形剤、軟膏、ペースト剤などの半固形剤、またはそれらの組み合わせから選ばれるものを含む;
投与経路に応じて、経気道吸入剤、経胃腸管剤、直腸用製剤、注射剤、皮膚薬物送達製剤、粘膜薬物送達製剤、またはそれらの組み合わせから選ばれるものを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の応用、請求項5に記載の薬物組成物、請求項6に記載の混合物、あるいは請求項7に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月22日に提出された中国出願番号202110831690.5の特許出願に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は生物医薬物分野に属する;より具体的には、本発明は、線維性疾患を緩和または治療するための薬物組成物またはキットおよびその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
いずれか臓器や組織の損傷が、複雑な細胞および分子の反応を引き起し、最終的に、組織の線維化につながる。こんな組織線維化反応は、短期的には、適応的な組織修復特性を持つ可能性があるが、線維化が長期にわたって進行すると、臓器または組織の瘢痕が発生し、最終的に、組織細胞の機能不全や臓器不全につながる。皮膚、肺、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、脾臓、神経系、骨髄などの人間の臓器や組織のほとんどは、既知または未知の理由により線維化を起こし、人間の健康を深刻に危険にさらし、主な病理学的変化は、臓器組織における線維性結合組織の増加と実質細胞の減少で、こんな進行が続くと、臓器の構造的損傷、機能低下、さらには機能不全に至る可能性があり、人間の健康と生命を深刻に脅かす。世界中で、組織線維症は、多くの病気による身体障害や死亡の主な原因であり、さまざまな病気で死亡する患者のほぼ45%が、組織線維増殖性疾患に起因すると考えられる。これらの臓器における線維症の主なメカニズムは、炎症性損傷と組織構造の破壊を伴う、線維芽細胞の増殖と大量の細胞外マトリックスの蓄積を特徴とする。
【0004】
肺線維症は、最も一般的かつ最も重篤な線維性疾患であり、炎症性損傷と組織構造の破壊を伴う、線維芽細胞の増殖と大量の細胞外マトリックスの蓄積を特徴とする、大きなグループの肺疾患の末期変化を指し、正常な肺胞組織が損傷を受けた後に、異常な修復によって生じる構造異常(瘢痕形成)である。肺線維症患者のほとんどは、原因が不明であり、特発性間質性肺炎と呼ばれる。特発性間質性肺炎のうち、肺線維化を主症状とする疾患を、特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis,IPF)といい、進行性の肺機能喪失に至る重篤な間質性肺炎であり、最終的に、呼吸不全による死亡することがある。現在、IPFの治療に希少疾病用医薬品として臨床的に使用されているのは、抗腫瘍薬のピルフェニドンとニンテダニブだけである。ピルフェニドンとニンテダニブは、IPF患者の肺機能指標の低下を遅らせ、疾患の進行をある程度緩和することができるが、呼吸器症状を改善することはできない。
【0005】
したがって、当分野では、肺線維症の進行を効果的に阻害または改善しつつ、元の組織器官の正常な機能を回復できる薬物の開発が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、線維性疾患を緩和または治療するための薬物組成物またはキット、およびその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、線維性疾患を緩和または治療するための混合物、薬物組成物またはキットの調製における薬物の組み合わせの応用を提供する;ただし、前記薬物の組み合わせは、(a)Pear1(血小板内皮凝集受容体1、Platelet Endothelial Aggregation Receptor1)遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0008】
一実施形態では、前記線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、心臓線維症、腎線維症、骨髄線維症、皮膚瘢痕化および/または軟組織瘢痕化を含むが、これらに限定されない。
【0009】
別の実施形態では、前記肺線維症は、特発性肺線維症(IPF)である。好ましくは、前記肺線維症は、さらに肺線維症に関連する拘束性肺疾患も含む。
【0010】
別の実施形態では、前記心臓線維症は、心筋線維症、特に心筋梗塞後の心筋線維症である。
【0011】
別の実施形態では、前記皮膚線維症は、外傷性因子または他の様々な原因によって引き起こされる、皮膚または軟組織内の正常組織細胞が線維芽細胞に置き換わる疾患を含む。
【0012】
別の実施形態では、前記外傷性因子は、外傷、火傷、手術または整形外科手術中に形成された瘢痕、または瘢痕体質の人々の皮膚に形成されたケロイド瘢痕または強皮症を含む。
【0013】
別の実施形態では、前記様々な原因は、感染、外傷、薬物、放射線、異物、および免疫活動亢進のうちの1つまたは複数を含む。
【0014】
別の実施形態では、前記Pearl遺伝子またはそれがコードするタンパク質は、哺乳動物に由来する。
【0015】
別の実施形態では、前記Pearl遺伝子またはそれがコードするタンパク質は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、サル、ラマ、アルパカ、またはそれらの組み合わせに由来する。
【0016】
別の実施形態では、前記Pearl遺伝子またはそれがコードするタンパク質は、ヒト又はマウスに由来する。
【0017】
別の実施形態では、前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質のアゴニストは、Pear1の発現、活性、安定性、および/または有効作用時間を増強する薬剤を含む;好ましくは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアント、Pear1を組換えて発現する発現構築物(発現ベクターを含む)、Pear1の化学アゴニスト、Pear1遺伝子プロモーターの駆動能力を促進する発現アップレギュレーターを含むが、これらに限定されない;より好ましくは、前記Pear1の化学アゴニストは、FcεR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0018】
別の実施形態では、前記発現構築物(発現ベクター)は、ウイルスベクター、非ウイルスベクターを含み、例えば、前記発現ベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターを含む。
【0019】
別の実施形態では、前記混合物、薬物組成物またはキットは、線維芽細胞によるコラーゲン合成を阻害するためにも使用される。
【0020】
別の実施形態では、前記混合物、薬物組成物またはキットは、線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現を阻害するためにも使用される。
【0021】
本発明の別の態様では、線維性疾患を緩和または治療するための薬物組成物を提供し、前記薬物組成物は、(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ;および薬学的に許容される担体;を含む。
【0022】
本発明の別の態様では、線維性疾患を緩和または治療するための混合物を提供し、前記混合物は、(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせからなる。
【0023】
本発明の別の態様では、線維性疾患を緩和または治療するためのキットを提供し、前記キットは、容器またはパッケージ、および前記容器またはパッケージ内に分散または混合された(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ;を含む。
【0024】
本発明の別の態様では、線維性疾患を緩和または治療するためのキットを提供し、前記キットは、前述の薬物組成物を含む。
【0025】
本発明の別の態様では、線維性疾患を緩和または治療するためのキットを提供し、前記キットは、前述の混合物を含む。
【0026】
別の実施形態では、前記誘導体は、薬学的に許容される塩、薬学的前駆体、異性体、および溶媒和物を含む。
【0027】
別の実施形態では、前記キットは、さらに、線維性疾患を緩和または治療するために当該キットの内容物を使用する方法を説明する使用説明書も含む。
【0028】
別の実施形態では、前記(a)Pearl遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、或いはピルフェニドンまたはその誘導体を、同時に、順番に、または交差に投与する。
【0029】
別の実施形態では、前記使用説明書は、Pearl遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニストの投与頻度は1~4週ごとに1回、および/または、前記ニンテダニブまたはその誘導体および/またはピルフェニドンまたはその誘導体は1日ごと1-6回(例えば2、3、4、5回)投与されると記載される。
【0030】
別の実施形態では、前記薬品組成物、混合物またはキットには、さらに、Pear1アゴニストとして、FcγR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、アプタマー、および小分子化合物の1つまたは複数をさらに含む;より好ましくは、FcγR1α、デキストラン硫酸、およびフコイダンを含む。
【0031】
別の実施形態では、(a)は、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアントであり、ただし、(a)のPearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のニンテダニブまたはその誘導体の含有量(混合物、薬物組成物またはキット中の含有量/使用量)は、質量比で、1:(1~500)であり、好ましくは1:(1~300)、より好ましくは1:(3~200)である。
【0032】
別の実施形態では、(a)は、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアントであり、ただし、(a)のPearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のピルフェニドンまたはその誘導体の含有量(混合物、薬物組成物またはキット中の含有量)は、質量比で、1:(5~2000)であり、好ましくは1:(5~1000)、好ましくは1:(5~500)、より好ましくは1:(10~300)である。
【0033】
別の実施形態では、(a)のPearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、及び(b)のニンテダニブまたはその誘導体の含有量は、例えば、1:400、1:350、1:250、1:200、1:150、1:100、1:80、1:60、1:50、1:30、1:25、1:20、1:15、1:10、1:5、1:2などであるが、これらに限定されない。
【0034】
別の実施形態では、(a)のPearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、及び(b)のピルフェニドンまたはその誘導体の含有量は、例えば、1:10、1:20、1:50、1:60、1:120、1:150、1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:500、1:600、1:800、1:1200、1:1800などであるが、これらに限定されない。
【0035】
別の実施形態では、前記アゴニストは、Pearl活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアントである。
【0036】
別の実施形態では、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される。
【0037】
別の実施形態では、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14或いは15に示され、或いは前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24或いは25に示される。
【0038】
別の実施形態では、抗体のバリアントは、前記抗体のCDR配列、FR配列、または全長配列において、1~数個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以内のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換された配列である。
【0039】
別の実施形態では、前記的バリアントは、Pear1を標的にして活性化する活性を有するか、または実質的に有する。
【0040】
別の実施形態では、前記バリアントのHCDR1は、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列の第三位のSからA或いはTへ突然変異し、第六位のGからDへ突然変異し、及び/又は、第八位のPからT或いはYへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR2は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列の第三位のPからS或いはGへ突然変異し、第四位のYからNへ突然変異し、及び/又は、第八位のTからAへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR3は、SEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列の第九位のAからDへ突然変異し、及び/又は、第十位のYからFへ突然変異するものである。
【0041】
別の実施形態では、前記抗体或いはそのバリアントのHCDR1は、SEQ ID NO: 26、31、33、36とSEQ ID NO: 39に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;HCDR2は、SEQ ID NO: 27、30、34、37、とSEQ ID NO: 40-44に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、HCDR3は、SEQ ID NO:28、29、32、35とSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び/又は、前記抗体或いはそのバリアントのLCDR1は、SEQ ID NO: 45、47、49、51とSEQ ID NO: 53に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;LCDR2は、GAT、SAS、DTS、とLVSに示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、LCDR3は、SEQ ID NO:46、48、50、52或いはSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む。
【0042】
別の実施形態では、前記抗体或いはそのバリアントのHFR(重鎖可変領域フレームワーク領域)1は、SEQ ID NO: 55、56とSEQ ID NO: 57に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;HFR2は、SEQ ID NO: 58、59、60、61、62、63、64、65とSEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、HFR3は、SEQ ID NO: 67、68、69、70、71、72、73、74、75とSEQ ID NO:76に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、HFR4は、SEQ ID NO: 77とSEQ ID NO:78に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び/又は、
別の実施形態では、前記抗体或いはそのバリアントのLFR(軽鎖可変領域フレームワーク領域)1は、SEQ ID NO: 79、80、81、82、83とSEQ ID NO: 84に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;LFR2は、SEQ ID NO: 85、86、87、88、89とSEQ ID NO: 90に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及び、LFR3は、SEQ ID NO: 91、92、93、94、95、96、97とSEQ ID NO: 98に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む;及びLFR4は、SEQ ID NO: 99、100、101、102とSEQ ID NO: 103に示されるアミノ酸配列から選ばれるいずれか一つを含む。
【0043】
別の実施形態では、前記の抗体或いはそのバリアントは、それぞれに、以下のアミノ酸配列を含む:
SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO: 45、GAT、SEQ ID NO: 46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 29に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO: 45、GAT、SEQ ID NO: 46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは、
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SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、GAT、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、SAS、SEQ ID NO:54に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは
SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:49、LVS、SEQ ID NO:52に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3;或いは
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SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:28に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、SEQ ID NO:45、GAT、SEQ ID NO:46に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3。
【0044】
別の実施形態では、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 16とSEQ ID NO: 1に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 16とSEQ ID NO: 2に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 17とSEQ ID NO: 3に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 18とSEQ ID NO: 2に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 19とSEQ ID NO: 4に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 20とSEQ ID NO: 5に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 21とSEQ ID NO: 6に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 7に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 8に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 9に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 23とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 24とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 25とSEQ ID NO: 10に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 11に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 12に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 13に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 14に示される;或いは、前記軽鎖可変領域、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれに、SEQ ID NO: 22とSEQ ID NO: 15に示される。
【0045】
別の実施形態では、前記バリアントは、前記抗体のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。
【0046】
別の実施形態では、前記抗体は、全長抗体、Fab、Fab´、F(ab´)2、Fvであり、例えば、scFv、二重特異性抗体、多重特異性抗体、もしくは単一ドメイン抗体であるか、または上記の抗体から調製されたモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体である。
【0047】
別の実施形態では、前記抗体またはそのバリアントは、全長抗体であり、当該全長抗体の重鎖定常領域は、hIgG1、hIgG2、hIgG3、またはhIgG4の重鎖定常領域、またはその誘導体配列から選ばれる。
【0048】
別の実施形態では、前記抗体の軽鎖定常領域は、κ鎖もしくはλ鎖、またはそれらの誘導体配列から選ばれる。
【0049】
別の実施形態では、前記重鎖定常領域の誘導体配列は、前記hIgG1、hIgG2、hIgG3、またはhIgG4の重鎖定常領域の配列において、1~数個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以内のアミノ酸残基が付加、欠失、または置換された配列である。
【0050】
別の実施形態では、前記重鎖定常領域の誘導配列は、hIgG1、hIgG2、hIgG3、またはhIgG4の重鎖定常領域と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する。
【0051】
別の実施形態では、前記全長抗体の重鎖定常領域は、hIgG3もしくはhIgG4の重鎖定常領域、あるいはその誘導体配列である。
【0052】
別の実施形態では、前記誘導配列は、hIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4の重鎖定常領域のアミノ酸配列において、1~2個のアミノ酸が置換された配列である。
【0053】
別の実施形態では、前記誘導配列は、hIgG4 S228P変異である。
【0054】
別の実施形態では、前記軽鎖定常領域は、ヒトκ鎖である。
【0055】
別の実施形態では、前記混合物、薬物組成物またはキットにおいて、成分、混合物または組成物の剤形は、物理的形態に応じて、エアゾール剤、ドライパウダー吸入剤、エアロゾル吸入剤などのガス剤、煎じ薬、注射剤、懸濁液などの液剤、凍結乾燥剤、散剤、顆粒剤、丸剤などの固形剤、軟膏、ペースト剤などの半固形剤、またはそれらの組み合わせから選ばれるものを含む。
【0056】
別の実施形態では、前記混合物、薬物組成物またはキットにおいて、成分、混合物または組成物の剤形は、投与経路に応じて、経気道吸入剤(例えばエアゾール剤、ドライパウダー吸入剤、エアロゾル吸入剤など)、経胃腸管剤(例えば煎じ薬、混合剤、顆粒剤、丸剤、錠剤など)、直腸用製剤(例えば坐剤、浣腸剤など)、注射剤(例えば腔内(非静脈)、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および経穴注射など)、皮膚薬物送達製剤(例えばローション、コーティング剤、軟膏、経皮パッチなど)、粘膜薬物送達製剤(例えば点眼液、経口フィルム、舌下錠、うがい薬など)、またはそれらの組み合わせから選ばれるものを含む。
【0057】
別の実施形態では、前記Pearl活性を特異的に活性化する抗体は、吸入剤、好ましくはエアゾール剤および/またはエアロゾル吸入剤である。
【0058】
別の実施形態では、前記ピルフェニドンおよび/またはニンテダニブは、経口剤、注射剤および/または吸入剤である。
【0059】
別の実施形態では、前記ピルフェニドンおよび/またはニンテダニブは、経口剤および/またはドライパウダー吸入剤である。
【0060】
別の実施形態では、前記混合物、薬物組成物またはキットにおいて、成分、混合物または組成物の投与は、吸入投与、肺噴霧、局所注射、経皮吸収、皮下注射および局所適用を含む。
【0061】
本発明の別の態様では、線維性疾患を緩和または治療する方法を提供し、緩和または治療が必要な対象に薬物組成物を投与することを含み、前記薬物組成物は、(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0062】
別の実施形態では、前記薬物の組み合わせにおいて、(a)と(b)は、同時にまたは別に投与される;好ましくは、(a)と(b)は、別に投与される;より好ましくは、(a)は、経気道吸入によって投与され、(b)は、経胃腸管によって投与される。
【0063】
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴および以下に具体的に記載される技術的特徴(実施例など)を互いに組み合わせて、新しいまたは好ましい技術を形成し、これらの組み合わせた技術案も本発明に含まれることができることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、線維芽細胞におけるコラーゲン分泌に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたLF2抗体の効果を示す。TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、LF2抗体、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ピルフェニドンと組み合わせたLF2抗体、およびニンテダニブと組み合わせたLF2抗体で、48時間処理し、キットで、細胞上清のヒドロキシプロリン含有量を検出した。
【
図2】
図2は、線維芽細胞におけるコラーゲン分泌に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたLF3抗体の効果を示す。TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、LF3抗体、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ピルフェニドンと組み合わせたLF3抗体、およびニンテダニブと組み合わせたLF3抗体で、48時間処理し、キットで、細胞上清のヒドロキシプロリン含有量を検出した。
【
図3】
図3は、線維芽細胞におけるコラーゲン分泌に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたLF7抗体の効果を示す。TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、LF7抗体、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ピルフェニドンと組み合わせたLF7抗体、およびニンテダニブと組み合わせたLF7抗体で、48時間処理し、キットで、細胞上清のヒドロキシプロリン含有量を検出した。
【
図4】
図4は、線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質合成に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたLF11抗体の効果を示す。
図4A-Bは、TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、LF11抗体、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ピルフェニドンと組み合わせたLF11抗体、およびニンテダニブと組み合わせたLF11抗体で、48時間処理し、細胞を収集し、qPCRによって、細胞外マトリックスタンパク質コラーゲン7a1およびマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害酵素の合成に対するそれらの効果を検出することを示す。
【
図5】
図5は、線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質合成に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたLF15抗体の効果を示す。
図5A-Bは、TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、LF15抗体、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ピルフェニドンと組み合わせたLF15抗体、およびニンテダニブと組み合わせたLF15抗体で、48時間処理し、細胞を収集し、qPCRによって、細胞外マトリックスタンパク質コラーゲン7a1およびマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害酵素の合成に対するそれらの効果を検出することを示す。
【
図6】
図6は、線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質合成に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたLF16抗体の効果を示す。
図6A-Bは、TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、LF16抗体、ピルフェニドン、ニンテダニブ、ピルフェニドンと組み合わせたLF16抗体、およびニンテダニブと組み合わせたLF16抗体で、48時間処理し、細胞を収集し、qPCRによって、細胞外マトリックスタンパク質コラーゲン7a1およびマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害酵素の合成に対するそれらの効果を検出することを示す。
【
図7】
図7は、マウスのブレオマイシンで誘導された肺線維症における、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせた抗体の効果を示す。ブレオマイシンで誘導された肺線維症を治療するために、1mg/kgのhLF105抗体とhLF-G56V抗体を、それぞれ、300mg/kgピルフェニドンと60mg/kgニンテダニブと組み合わせて使用した。図では、マウス肺組織の病理切片のマッソン染色の結果を示す。コラーゲンの沈着を、緑色で示す。
【
図8】
図8は、マウスのブレオマイシンで誘導された肺線維症における、低い使用量のピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせた低い使用量のhLF105抗体の効果を示す。ブレオマイシンで誘導された肺線維症を治療するために、0.5mg/kgのhLF105抗体を、それぞれ、150mg/kgピルフェニドンと30mg/kgニンテダニブと組み合わせて使用した。図では、マウス肺組織の病理切片のマッソン染色の結果を示す。コラーゲンの沈着を、緑色で示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明者らは、広範かつ詳細な研究で、結果としては、Pear1遺伝子およびそのタンパク質が線維芽細胞で発現され、かつ線維芽細胞の活性化を著しく低下させることができることを予期せず初めて発見した。さらに、本発明者らは、Pear1アゴニスト(例えば、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、アゴニスト抗体)を、ピルフェニドンやニンテダニブと組み合わせると、線維芽細胞によって分泌される細胞外マトリックスをより顕著に減少させ、かつ呼吸器症状を軽減できること、すなわち、組み合わせる効果が、各薬物単独の効果よりも著しく優れ、同時に、組み合わせた各薬物の使用量が、単一薬物の使用量よりも著しく低いことを見出した。したがって、前記Pear1アゴニストがニンテダニブやピルフェニドンと組み合わせると、より優れた臨床効果を得られ、ニンテダニブとピルフェニドンの毒性および副作用が軽減される。
【0066】
本発明者は、線維性疾患の標的としてPear1を用いて先行特許を出願し、それが、Pear1の活性を増強する抗体を構築し、線維芽細胞の過剰な活性化経路を阻害することで、線維性疾患の治療という目的を達成した。これらの出願は、出願日2020/1/23の中国特許出願202010076729.2および出願日2020/11/3の中国特許出願202011212639.8を含む。上述の中国特許出願の全文が、本出願に引用される。本発明では、調節標的とするPear1に基づく分子と他の薬物との併用レジメンを、さらに提案する。
【0067】
用語
本明細書で使用される場合、「治療」、「処理」および「処置」という用語は、1つまたは複数の活性成分を投与することで、症状または合併症の発症を予防または遅延し、及び病気、状態、または障害の発症を予防または遅延し、および/または、当該病気、状態、または障害を排除または制御し、及び当該病気、状態、または障害に関連する症状または合併症を軽減することを含む。「治療」という用語は、治療(すなわち、治癒的治療および/または緩和的治療)と予防(すなわち、予防的治療)の両方を含む。治療的治療とは、1つ又は複数の急性または慢性形態の前記病気を発症した患者に対する治療を指す。治療的治療は、特定の適応症の症状を緩和するための対症療法であってもよく、またはその適応症の症状を逆転または部分的に逆転させるための、または疾患の進行を予防または遅らせるための原因治療であっても良い。予防的治療(「予防」)とは、疾患が臨床的に発症する前に、リスクを軽減するために、前記状態の1つ以上を発症する前記リスクがある患者の治療を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「含有」という用語は、各成分はともに本発明の混合物または組成物に応用しても良いことを示す。そして、用語「主に・・・からなる」と「・・・からなる」は、用語「含有する」に含まれる。「主に・・・からなる」と「・・・からなる」という用語は、用語「含有する」に含まれる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、本明細書では、合理的な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題や合併症がなく、かつ合理的な利益/リスク比に比例する成分、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0070】
本明細書で使用する場合、「有効量」とは、本発明の薬学的に活性な成分の以下の量を意味し、前記量の本発明の薬学的に活性な成分は、(i)当該特定の疾患または病気を治療または予防するか、(ii)当該特定の疾患または病気の1つまたは複数の症状を軽減、改善または解消するか、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患もしくは病気の1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延する。「有効量」、「安全有効量」、または「治療有効量」という用語は、本明細書では互換的に使用される。当業者(経験豊富な臨床医など)は、対象に応じて、「安全有効量」を調整することができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「増強する」、「促進する」、および「向上する」、「増加する」などの用語は互換的に使用される;好ましくは、それらは統計的に有意な「増強」、「促進」、「向上」、または「増加」であり、例えば、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、50%以上、80%以上、100%以上、200%以上、500%以上の増加である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「低下する」、「減少する」、「弱化する」などの用語は互換的に使用される;好ましくは、それらは統計的に有意な「抑制」、「低下」、「減少」、または「弱化」であり、例えば、2%以下、5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、30%以下、50%以下、80%以下、100%以下、200%以下、500%以下の低下である。
【0073】
本明細書で使用される場合、「活性成分」または「薬学的活性成分」は、Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;ニンテダニブまたはその誘導体;ピルフェニドンまたはその誘導体から選択されるものを含む。
【0074】
本明細書で使用される場合、前記ニンテダニブまたはピルフェニドンの「誘導体」とは、ニンテダニブまたはピルフェニドンの機能を実質的に保持し、それらの化学構造にある変化を有する化合物を指す;好ましくは、前記誘導体とニンテダニブまたはピルフェニドンの母核構造は、同じ、実質的に同じ、または類似する。
【0075】
本明細書で使用される場合、「抗体またはそのバリアント」という用語は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質、抗体断片またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル、多重鎖または単鎖、または完全な免疫グロブリンであり、天然または組換えから由来することができる。特定の実施形態では、本発明の「抗体またはバリアント」は単離され、組換えから由来するものである。
【0076】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」という用語は、(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布を介して)抗原と特異的に相互作用する能力を保持する抗体の少なくとも一部を指す。抗体断片の例としては、Fab、Fab´、F(ab´)2、Fv断片、scFv抗体断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、直鎖状抗体、単一ドメイン抗体、抗体断片(例えば、ヒンジ領域のジスルフィド結合によって結合された2つのFab断片を含む二価断片)から形成される多重特異性抗体、および抗体から単離されたCDRまたは抗体の他のエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されい。抗原結合断片は、単一ドメイン抗体、最大抗体、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、およびキメラ抗体に組み込むこともできる。
【0077】
範囲:本開示全体を通して、本発明のさまざまな態様は範囲形式で存在しても良い。理解すべきことは、範囲形式に対する説明は、単に便宜および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲を不可逆的に限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、範囲に対する説明は、すべての可能な部分範囲およびその範囲内の個々の値を開示しているとみなされるべきである。たとえば、1~6などの範囲に対する説明は、サブ範囲(たとえば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)とその範囲内の個々の値(例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、6など)を具体的に開示するものとみなされる必要がある。別の例として、95~99%の同一性の範囲は、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性の範囲を含み、かつ、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%、および98~99%の同一性のサブ範囲も含む。これは範囲の幅に関係なく適用される。
【0078】
線維性疾患
本明細書で使用される場合、「線維性疾患」とは、正常組織細胞への損傷により組織修復を開始するための組織または器官の線維芽細胞の過剰または異常な活性化を指し、そして、線維芽細胞上皮間葉転換と細胞外マトリックス合成の増加を引き起こし、瘢痕組織が正常組織に置き換わり、正常組織の機能喪失を引き起こす。
【0079】
一般に、線維芽細胞は、様々な正常組織に広く分布しているため、正常組織の細胞が障害されると、線維芽細胞の活性化や過剰・異常な活性化が起こり、例えば肺の炎症後に生じる重大な肺線維症、肝線維症、腎線維症、もう一つの例としては、手術や外傷などによって生じた皮膚、筋肉、結合組織の増殖性瘢痕、及び心筋梗塞後の心筋線維化、骨髄増殖性疾患に伴う骨髄線維症などである。これにより、「線維性疾患」は、体の臓器や組織全体に広がる、正常組織の損傷を修復するための線維芽細胞の過剰または異常な活性化によって引き起こされる「瘢痕」であり、こんな瘢痕は、元の臓器組織の正常な機能を直接制限する。
【0080】
機構的に言えば、線維性疾患は、主に、線維芽細胞(FB)の創傷への遊走および/または増殖、および炎症性損傷や組織構造の破壊を伴う大量の細胞外マトリックスの蓄積を引き起こすことを特徴とし、したがって、線維性疾患の過程において、FBは、非常に重要な直接的な役割を果たす。FBは、結合組織の最も重要な細胞成分であり、胎児期に間葉細胞(mesenchymal cell)から分化し、線維芽細胞は、成熟した休息状態の線維細胞(fibrocyte)の形でも存在し、特定の条件下で、線維芽細胞と線維細胞が、相互に転換することがある。さらに、文献の報告より、線維化の過程で、上皮間葉転換(epithelial-mesenchy-mal transition、EMT)を介して、上皮細胞、マクロファージ、血液単球、内皮細胞などの他の正常細胞からFBが形成され、これらの分化転換プロセスは、線維性疾患の過程におけるFBの重要な産生方法の1つである可能性がある。
【0081】
生理学的条件下では、FBは、細胞外マトリックス(Extracellular matrix、ECM)成分を合成して放出し、組織を形成し、器官の形態と生理学的機能を維持し、組織損傷後の修復に関与する。病理学的条件下では、FBは、異常な増殖で活性化線維芽細胞に転換し、ECMタンパク質を大量に合成して分泌し、結合組織の過剰な形成と臓器の線維化を誘発する。なお、ECMレベルは、その分解酵素であるマトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase、MMP)とマトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMPS)の間のバランスによっても調節される。生理学的条件下では、肺におけるECMの合成と分解は、バランスが取れるが、肺線維症の過程で、MMP/TIMPSシステムのバランスが崩れ、ECMが、過剰に蓄積して、瘢痕構造が形成され、これも線維症発症の重要な要因である。これにより、FBとMMPs/TIMPSのバランスが、線維性疾患において、重要な役割を果たすことがわかった。
【0082】
肺線維症は、最も一般的で最も重篤な線維性疾患であり、肺胞組織損傷の異常な修復が線維芽細胞の異常な活性化と瘢痕形成を引き起こす肺疾患を指す。肺線維症は、人間の呼吸機能に深刻な影響を及ぼし、主に空咳や進行性の呼吸困難として現れ、かつ病気が進行するにつれ、肺の損傷は悪化し、患者の呼吸機能は悪化し続ける。その主な死因は、呼吸機能の急性低下とそれに伴う合併症を含む。
【0083】
肺線維症患者のほとんどは、原因が不明であり、特発性(idiopathic)間質性肺炎と呼ばれる。特発性間質性肺炎のうち、肺線維性病変が主症状となる疾患を、特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis、IPF)といい、IPFの持続性のびまん性肺胞炎と肺胞構造障害は、肺間質性線維症の永久的な瘢痕化と肺機能の不可逆的かつ継続的な低下をもたらし、最終的には、呼吸不全および患者の死につながる。IPFの原因は不明であるが、現在、環境要因や放射線療法、化学療法薬の使用が関係すると考えられるが、急性発作を誘発するウイルス、細菌、真菌、寄生虫などによる繰り返しの感染によって引き起こされる可能性もある。さらに、エリテマトーデスなどの二次性自己免疫疾患も病気の原因の1つである。IPFの予後が不良で、患者の生存期間中央値は2~3年であり、5年生存率は30%未満であるため、「腫瘍様疾患」と呼ばれる。
【0084】
IPFの進行は、予測できないため、治療は非常に困難である。IPFに対する治療は、主に以下に分けられる:禁煙、酸素療法、人工呼吸器、緩和的治療、呼吸リハビリテーショントレーニングを含む非薬物療法;ホルモン療法、制酸薬療法、N-アセチルシステイン療法を含む薬物療法;糖質コルチコイドは、50年以上も肺線維症の治療に使用されたが、糖質コルチコイドの長期かつ大規模な使用は重篤な副作用を引き起こす可能性があるため、最新の研究では。患者の20%にしか効果がないことが確認された。さらに、研究結果のまとめより、N-アセチルシステインの単独療法では、患者の死亡率を低下させることはできず、努力肺活量(FVC)の変化や生活の質を改善することもできないことを示した。
【0085】
肝線維症は、肝損傷の異常な修復と治癒による病理学的過程であり、肝損傷による肝内結合組織星細胞(肝線維芽細胞)の細胞外マトリックスの異常増殖と大量分泌は、その発生の主な原因であり、持続的かつ長期的な肝線維症は、肝硬変、門脈圧亢進症、肝臓がんに発展す。
【0086】
心筋線維症とは、虚血と低酸素により心筋細胞の壊死し、心筋内で線維芽細胞の異常増殖が誘導され、多量の細胞外基質が分泌されて瘢痕が形成されることを指し、心筋線維症が、心臓の硬さと徐々の拡張を引き、不整脈や心不全を引き起こす。
【0087】
腎線維症とは、外傷、感染症、血液循環障害、免疫炎症反応などによる腎細胞の損傷であり、腎結合組織における線維芽細胞の細胞外マトリックス(ECM)の異常な沈着を引き起こし、瘢痕を形成し、腎実質硬化症や機能喪失を引き起こす。
【0088】
骨髄線維症は、骨髄線維組織における細胞外マトリックス(ECM)の異常な沈着に引き起こされる疾患であり、造血機能に重大な影響を与える骨髄増殖性疾患の一種である。
【0089】
皮膚または軟組織における瘢痕形成は、皮膚の結合組織内の線維芽細胞が皮膚または軟組織の損傷部位に移動して、大量の細胞外マトリックスを生成および沈着させることによって引き起こされ、異常な瘢痕形成は、慢性的な創傷不全または線維症を引き起こす可能性がある。一般に、皮膚または軟組織の損傷のいずれかの原因も、異常な瘢痕を引き起こす可能性があり、よく見られるの瘢痕は、手術、外傷、火傷、局所的またはびまん性の炎症(例えば、自己免疫疾患、強皮症など)による皮膚または軟組織の過剰な結合組織を挙げられる。
【0090】
Pear1遺伝子またはそのタンパク質およびそのアゴニスト
Pear1、すなわち血小板内皮凝集受容体1(Platelet Endothelial Aggregation Receptor 1,GeneID:375033)は、150 kDaのI型膜貫通タンパク質であり、多上皮増殖因子様ドメイン受容体ファミリー(Multiple Epidermal Growth Factor-Like Domains Protein,MEGF)タンパク質ファミリーのメンバーである。ヒトPear1は、1037個のアミノ酸(aa)を含み、ただし、20aaのシグナル配列、735aaの細胞外ドメイン(Extracellular domain, ECD)、21aaの膜貫通領域、および261aaの細胞質領域を含む。Pear1は、あらゆる哺乳類に存在し、かつ高い類似性を持ち、例えば、ヒトPear1とマウス Pear1(Gene ID: 73182)の類似性は84%である。
【0091】
本発明者らは、Pear1が、これまでに確認されている血管内皮細胞に加えて、線維芽細胞にも発現し、線維芽細胞の活性化に負の調節作用を及ぼすことを初めて発見した。
【0092】
本発明は、Pear1アゴニストを、ピルフェニドンまたはニンテダニブとそれぞれ組み合わせて使用することにより、線維芽細胞によるコラーゲン合成に対する阻害効果を検出し、結果は、Pear1アゴニストと、ピルフェニドンまたはニンテダニブの組み合わせは、いずれかの薬剤単独よりも、IPF線維芽細胞によるコラーゲン合成に対する阻害効果が著しいことを示した。本発明は、さらに、線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質の発現に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたPear1アゴニストの阻害効果を検出し、結果は、Pear1アゴニストとピルフェニドンまたはニンテダニブの組み合わせは、いずれかの薬剤単独よりも、IPF線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質の発現に対する阻害効果が著しいことを示した。当該結果は、動物実験でも確認された。
【0093】
本明細書で使用される場合、「アゴニスト」、「Pear1アゴニスト」、または「Pear1遺伝子またはそのタンパク質のアゴニスト」という用語は、互換的に使用され、いずれも、Pear1遺伝子またはそのタンパク質の活性を増強し、および/またはPear1タンパク質に結合し、および/またはPear1を促進して線維芽細胞活性化シグナル伝達経路を阻害し、および/または線維芽細胞によるECMの放出を減少させることができる物質を指す。既知のPear1アゴニストに加えて、本発明は、Pear1に特異的に結合するアゴニスト抗体を提供し、それが、本発明の併用投薬レジメンにおける活性成分として使用される。
【0094】
本明細書で使用される場合、「アゴニスト」という用語は、Pear1遺伝子の発現を促進することにより作用する発現アップレギュレーターを含み、前記発現によって、より多くのPear1タンパク質が得られる(多重発現)場合、通常、Pear1活性の増加も意味する。
【0095】
本発明においては、Pear1の活性を向上する、Pear1の安定性を維持する、Pear1の発現を促進する、Pear1の分泌を促進する、Pear1の有効作用時間を延長する、または、Pear1の転写および翻訳を促進することができる任意の物質を使用することができるが、Pear1の機能/活性をアップレギュレートする有効な物質は、すべて「アゴニスト」または「アップレギュレーター」と呼ぶことができる。
【0096】
本発明の一実施形態として、前記Pear1アップレギュレーターは、細胞に導入された後に、Pear1を発現(好ましくは過剰発現)できる発現ベクターまたは発現構築物を含むが、これらに限定されない。通常、前記発現ベクターは、遺伝子カセットを含み、前記遺伝子カセットは、Pear1をコードする遺伝子およびそれに作動可能に連結された発現制御配列を含む。「作動可能に連結された」または「作動可能に連結する」とは、直鎖状DNA配列のある部分が、同じ直鎖状DNA配列の他の部分の活性を調節または制御できる状況を指す。例えば、プロモーターが、配列の転写を制御する場合、当該プロモーターは、コード配列に作動可能に連結されている。
【0097】
本発明において、Pear1ポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクターに挿入されてもよく、そして、それを細胞に導入し、過剰発現させてPear1を産生することができる。宿主内で複製可能で安定している限り、任意のプラスミドとベクターを本発明に使用することができる。発現ベクターの重要な特徴の一つは、通常に、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子、および翻訳制御要素を含むことである。例えば、前記発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクターなどを含む。
【0098】
好ましくは、本発明によって提供されるアゴニストは、Pear1遺伝子またはそのタンパク質に結合して、Pear1の構造を変化させ、それによって、線維芽細胞の活性化を阻害することができるアゴニストである。好ましくは、前記アゴニストは、線維芽細胞が発現するPear1タンパク質を標的とし、かつそれに結合するアゴニストである。
【0099】
好ましい実施例では、本発明の抗体に加えて、本発明のアゴニストは、さらに、Pear1に対する活性化作用を有する他の種類の物質(例えば、FcαR1α(すなわち、IgE受容体IaのFc断片)、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせ)を含んでも良く、Pear1天然アプタマーおよび/または小分子化合物を含んでも良い;より好ましくは、FcαR1α、デキストラン硫酸、とフコイダンを含み、それらが、肺線維芽細胞による細胞外マトリックスの合成を大幅に阻害し、肺機能を改善し、生存率を高めることができる。
【0100】
本発明のPearl標的を利用して、当業者はPear1に対する様々なアゴニストを設計することができ、小分子アゴニスト、抗体またはその活性断片、miRNAなどを含むが、これらに限定されない。本発明において、前記小分子化合物は、天然に存在する、または人工的に開発されたPear1受容体の小分子アゴニストを指す場合もある。
【0101】
本発明において、前記アプタマー(Aptamer)とは、in vitroスクリーニング技術-指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化技術(Systematic evolution of ligands by exponential enrichment,SELEX)を通じて得られる構造化されたオリゴヌクレオチド配列(RNAまたはDNA)を指し、対応する標的分子(タンパク質、ウイルス、細菌、細胞、重金属イオンなど)は、厳密な認識能力と高い親和性を有する。
【0102】
本発明の好ましい実施態様として、Pear1タンパク質に特異的に結合する/標的とする抗体またはそのバリアントを使用し、該抗体またはそのバリアントは、細胞レベルおよび動物レベルで、明確なPear1活性化効果を有することが確認されている。好ましくは、本発明の抗体またはそのバリアントは、マウス由来のモノクローナル抗体であり、または、組換え抗体、ポリクローナル抗体、多重鎖もしくは単鎖、または完全な免疫グロブリンであってもよい。好ましくは、本発明の抗体またはそのバリアントは、ヒト化されたものである。好ましくは、本発明の抗体は、キメラ抗体である。好ましくは、本発明の抗体またはそのバリアントは、表1~4に示される通りである。
【0103】
前記Pear1を標的とする抗体は、全長抗体および抗体断片(例えば、Fab、Fab´、F(ab´)2、scFvなどのFv)を含み、それらを含む二重特異性抗体、多重特異性抗体、単一ドメイン抗体、またはこれらの抗体から調製されるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体も含む。前記抗体のFab断片(抗原結合断片、Fragment of antigen binding)は、抗原結合断片とも呼ばれ、抗原に結合できる抗体構造内の領域である。Fab断片は、完全な軽鎖と重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインで構成される。パパインの作用下では、抗体は、2つのFab断片と1つのFc断片に分解される;ペプシンの作用下では、抗体は、1つの(Fab)2断片とFc断片に分解される。
【0104】
本発明の抗体またはそのバリアントに使用できるFabのFR断片は、特に限定されない;好ましくは、本発明が、ヒトIgG4のFRおよび複数の変異を有するFR配列を用い、その結果としては、FR配列を変更しても、抗原と抗体の結合力はあまり変化しない。これにより、本発明の抗体のCDR断片は、Pear1タンパク質に対して非常に特異的かつ安定した結合機能を有することが分かる。当業者は、本発明のPear1標的およびそれが線維性疾患と相関する教示に基づき、本発明の抗体またはそのバリアントのCDRを利用し、既知の様々なFRを使用して、構成された抗体をスクリーニングし、それによって、得られた本発明の抗体またはバリアントと同じまたは実質的に同じ活性を有する抗体も本発明の保護範囲に含まれる。
【0105】
本発明で使用できる抗体またはそのバリアントの定常領域は、特に限定されない。当業者は、本発明のPear1標的およびそれが線維性疾患と相関する教示に基づき、本発明の抗体またはそのバリアントを含むのに適した定常領域断片をスクリーニングし、それによって、本発明の抗体またはバリアントと同じまたは実質的に同じ活性を有する完全な抗体を得る。
【0106】
ピルフェニドンまたはニンテダニブ
2014年末、米国FDAは、次々に、ピルフェニドンとニンテダニブをIPF治療用の希少疾病用医薬品として承認し、ただし、ピルフェニドンは、抗炎症作用、抗線維化作用、および抗炎症作用を持つ多面発現性ピリジン小分子化合物である。ピルフェニドンは、努力呼気肺活量の低下を大幅に遅らせることができ、ピルフェニドンによる継続的な治療を52週間続けると、FVCや一酸化炭素拡散能力などの患者の肺機能指標の低下を遅らせ、6分間歩行テストの悪化速度を遅らせ、患者の無増悪生存期間を延長し、患者の死亡リスクを減らすことができるが、その副作用としては、光線過敏症、疲労、発疹、胃の不調、食欲不振を含む。
【0107】
ニンテダニブは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)を阻害できる多標的のチロシンキナーゼ小分子阻害剤であり、ニンテダニブは、IPF患者におけるFVC低下の絶対値を大幅に減少させ、疾患の過程をある程度緩和することができる。ニンテダニブとピルフェニドンは、どちらも肺機能の低下速度を低下させ、患者の生活の質を向上させることができるが、ニンテダニブとピルフェニドンは、患者の肺機能の低下を遅らせるのにのみ適し、どちらも呼吸器症状を改善することはできなく、軽度から中等度の肺機能障害のあるIPF患者の使用にのみ適し、重度のIPF患者には使用できず、疾患のエンドポイントを変更することはできない。さらに、ピルフェニドンは、腎機能障害のある患者には使用できなく、かつ、ニンテダニブは、肝機能障害のある患者には使用できないため、これらの2つの薬剤の適用は、さらに制限される。
【0108】
ピルフェニドンの構造式を下の左側に示し、ニンテダニブの構造式を右側に示す:
【0109】
【化1】
本発明では、前記ニンテダニブまたはピルフェニドンは、純粋な形式で存在する化合物、または85%を超える(好ましくは90%を超え、例えば95%、98%、99%を超える)純度を有する化合物であっても良い。化学構造が分かれば、化学合成によって調製できる。前記ニンテダニブまたはピルフェニドンは、市販を通じて入手することもできる。
【0110】
本発明は、さらに、ニンテダニブまたはピルフェニドンの前駆体を含み、前記「前駆体」とは、当該化合物の前駆体が適切な方法により摂取されると、患者の体内で、代謝または化学反応を通じて、活性を有する化合物に変換されるものを指す。
【0111】
本発明は、また、同じまたは基本的に同じ機能を有する限り、前記ニンテダニブまたはピルフェニドンの異性体、溶媒和物、またはそれらの薬学的に許容される塩を含む。上記の「薬学的に許容される塩」とは、化合物を、無機酸、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などに反応して生成した塩を指す。それらの塩は、(1)塩酸、硫酸、硝酸、リン酸のような無機酸と形成した塩;(2)酢酸、蓚酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、アルギニンのような有機酸と形成した塩を含むが、これらに限定されない。他の塩は、エステル、カルバメート、またはその他の一般的な「薬物前駆体」の形式の、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えばナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム)と形成した塩を含む。化合物は、一つと以上の非対称センターを有する。したがって、これらの化合物は、ラセミ混合物、単独のエナンチオマー、単独のジアステレオマー、ジアステレオマー混合物、シスまたはトランス異性体として存在してもよい。
【0112】
「溶剤和物」という用語は、溶剤分子を取り込んでいる化合物を示し、例えば上記の溶剤和物は水和物であってもよい。
【0113】
本発明は、ニンテダニブまたはピルフェニドンの母核構造を主構造として、適切な基を置換することによって形成される誘導体化合物(誘導体)を含む。例えば、ニンテダニブまたはピルフェニドンの母核構造のベンゼン環または多環式環(五員環/六員環)上で水素、ヒドロキシル、C1-C4アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル)、C2-C4アルケニル(少なくとも1つの炭素-炭素二重結合および2~4個の炭素原子(好ましくは2~3個の炭素原子)を含む直鎖および分岐鎖の炭化水素基を含む)、C2-C4アルキニル(少なくとも1つの炭素-炭素三重結合と2~4個の炭素原子(好ましくは2~3個の炭素原子)を含む直鎖および分枝鎖の炭化水素基を含む)、ハロゲン(F、Cl、Br、またはI)およびその他の基の置換が起こり、それによって、ニンテダニブまたはピルフェニドンと同じまたは近い活性を保持する化合物が形成される。このようにして得られる化合物も本発明に含まれる。
【0114】
異なる条件下では、化合物は、異なる結晶形を形成し、本発明には、異なる結晶形の活性化合物も含まれる。
【0115】
本発明は、また、経口、静脈内および吸入剤形を含む、ニンテダニブとピルフェニドンの異なる剤形を含む。
【0116】
Pear1アゴニストとニンテダニブまたはピルフェニドンの組み合わせ使用
ニンテダニブとピルフェニドンは、どちらも肺機能の低下速度を低下させ、患者の生活の質を向上させることができるが、ニンテダニブとピルフェニドンは、患者の肺機能の低下を遅らせるのにのみ適し、どちらも呼吸器症状を改善することはできなく、軽度から中等度の肺機能障害のあるIPF患者の使用にのみ適し、重度のIPF患者には使用できない。さらに、ピルフェニドンは、腎機能障害のある患者には使用できなく、かつ、ニンテダニブは、肝機能障害のある患者には使用できないため、これらの2つの薬剤の適用は、さらに制限される。
【0117】
本発明は、併用投薬方法を提供し、ニンテダニブ(その誘導体を含む)またはピルフェニドン(その誘導体を含む)と組み合わせた、Pear1を標的とするアゴニストの使用を含む。ニンテダニブまたはピルフェニドンの単独使用と比較して、本発明の併用投薬レジメンは、化合物の用量を効果的に減らし、その毒性および副作用を軽減し、治療効果を効果的に改善することができる。
【0118】
本発明の好ましい態様として、前記Pear1を標的とするアゴニストは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体である抗Pear1抗体である。
【0119】
当分野では、ピルフェニドンまたはニンテダニブが、線維性疾患の進行を緩和できることが知られるが、疾患の緩和または治療に対するそれらの効果は、さらに改善される必要がある。広範な研究およびスクリーニングによって、本発明者は、Pear1を標的とするアゴニストと、ピルフェニドンまたはニンテダニブとを組み合わせると、線維性疾患の緩和または治療において、極めて優れた効果を奏することを発見した。本発明者の細胞実験によれば、こんな組み合わせが、ピルフェニドンまたはニンテダニブ単独使用よりも、線維芽細胞の活性化に対して強力な阻害効果を有し、線維芽細胞によるコラーゲン合成をより有効に阻害し、並びに線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現をより有効に阻害することを示す。
【0120】
これに基づいて、本発明は、線維性疾患を緩和または治療するための混合物、薬物組成物またはキットを調製することにおける、Pear1アゴニストとニンテダニブまたはピルフェニドンとの薬物組み合わせの応用を提供する。
【0121】
投与する際に、まず、Pear1を標的とするアゴニストを使用し、Pear1の発現または活性を調節し、次に、ピルフェニドンまたはニンテダニブを投与しても良く、または、これらを同時に行っても良い。様々な投与方式は、本発明に含まれることを理解すべきである。
【0122】
本発明の好ましい態様として、本発明は、Pear1活性を特異的に活性化する抗体とニンテダニブを活性成分として含有する混合物を提供する。好ましくは、前記混合物において、両者の質量比は、1:(1~500)、好ましくは1:(1~300)、より好ましくは1:(3~200)である。
【0123】
本発明の好ましい態様として、本発明は、さらに、Pear1活性を特異的に活性化する抗体とピルフェニドンを活性成分として含有する混合物を提供する。好ましくは、前記混合物において、両者の質量比は、1:(5~2000)、好ましくは1:(5~1000)、好ましくは1:(5~500)、より好ましくは1:(10~300)である。
【0124】
本発明は、さらに、薬物組成物を提供し、(a)有効量のPear1を標的とするアゴニスト;(b)有効量のニンテダニブまたはその誘導体、或いはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ;および(c)薬学的に許容される担体または賦形剤;を含む。一般に、本発明の薬物組成物において、各活性成分は、薬物組成物の総重量の0.01~20%を占め、残りは、薬学的に許容される担体である。本発明の薬物組成物において、前記各活性成分の有効量を、投与方法および治療対象の疾患の重症度に応じて変化しても良い。必要に応じて、他の有効成分や薬剤と組み合わせて投与することもできる。
【0125】
本発明に記載の薬物組成物は、さらに、FcγR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、アプタマー、または他の小分子化合物を含んでもよい。
【0126】
本発明の薬学的に許容される担体は、本発明のアゴニストの構造的及び機能的安定性を維持し、その投与を容易にするために使用することができ、当業者は、必要に応じて選択・配合することができ、このような担体としては、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0127】
本発明のアゴニスト、抗体およびそのバリアント、ならびにそれらを含む薬物および/または薬物組成物は、様々な経路を通じて、所望の対象に適用(投与)することができ、前記適用は、吸入、局所投与、非経口投与、経口投与、および胃腸内投与を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、当業者は、例えば、吸入投与製剤、局所投与製剤、胃腸外投与製剤、またはそれらの組み合わせを含むが、投与経路に従って投与される製剤の種類を決定することができる。前記吸入投与製剤は、噴霧剤、スプレー、点鼻薬、粉末、またはそれらの組み合わせを含む。前記局所投与製剤および/または胃腸外投与製剤は、点滴剤、ゲル剤、乳剤、軟膏、パッチ、フィルム、注射剤、またはそれらの組み合わせを含む。好ましい実施形態では、局所塗布、点滴、血管内注射、局所注射などの様々な経路で投与する。
【0128】
より好ましい実施形態では、前記Pearlアゴニストは、Pearl活性を特異的に活性化する抗体であり、それが、胃腸外投与の方式によって投与され、好ましくは、局所投与によって投与される(例えば、肺線維症を阻害することに用いられる場合、スプレーの形態で投与される);前記ニンテダニブまたはピルフェニドンは、経口、またはドライパウダーや噴霧などの吸入投与方法によって投与される。適切な投与方法の選択および適切な剤形に薬物組成物の調製は、より理想的な薬効を得る、または、身体に対する薬の毒性および副作用を効果的に軽減するのに役立つ。
【0129】
本発明のPear1を含有するアゴニスト、ニンテダニブまたはピルフェニドンは、スプレー、注射または点滴に適した滅菌装置内で、別々に保存、または混合して保存することもできる。
【0130】
本発明の特定の実施形態では、マウスなどの動物に対するいくつかの投与レジメンを提供する。マウスなどの動物の投与量からヒトに適した投与量に換算することは、当業者にとって容易に行うことができ、例えば、Meeh-Rubner公式に基づいて計算することができる:A=k×(W2/3)/10,000。
【0131】
式中、Aは体表面積であり、m2で計算する;Wは体重であり、gで計算する;Kは定数であり、動物の種類によって異なるが、一般的には、マウスとラット9.1、モルモット9.8、ウサギ10.1、猫9.9、犬11.2、猿11.8、人10.6である。薬物および臨床状況によっては、経験的な薬剤師の評価によって、投与量の換算が変化することが理解されるべきである。
【0132】
本発明は、また、腫瘍を治療するキットを提供し、前記キットは、容器1/パッケージ1、及びその中に配置されるPear1のアゴニスト;容器2/パッケージ2、及びその中に配置されるニンテダニブ(その誘導体を含む)またはピルフェニドン(その誘導体を含む)を含む。前記容器/パッケージは、スプレー装置、注射装置、カプセルなどの、投与に適した装置であってもよい。
【0133】
さらに、前記キットは、注射針、噴霧器などの、投与を補助する資材も含んでも良い。
【0134】
さらに、前記キットは、本発明の併用投薬方法を使用して、線維性疾患を阻害する方法を説明する使用説明書を含んでもよい。
【0135】
本発明の技術案には、Pear1のアゴニストを、ニンテダニブまたはピルフェニドンと組み合わせて使用する。臨床では、ニンテダニブまたはピルフェニドンの単独薬物の実際の効果を改善する必要があるが、本発明では、両者の併用が、この分野の当業者/医師の予想を大きく超える優れた治療効果をもたらすことが見出された。
【0136】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の単なる例示であることが理解されるべく。以下の実施例における特定の条件を特定しない実験方法は、通常に、J.Sambrookら、Guide to Molecular Cloningに記載された通常条件に従って実施され、或いはメーカーが推奨する条件に従って実施される。
【0137】
材料と方法
1、抗体の調製
本発明者らは、ヒトPear1細胞外タンパク質を使用してBALB/cマウスを免疫し、標準的なマウス脾細胞およびマウス骨髄腫細胞融合技術を通じて高親和性モノクローナルハイブリドーマ細胞を調製し、標準的な抗体シークエンシング、293S細胞発現、および精製を通じて、抗ヒトPear1モノクローナル抗体LF2などを得た。
【0138】
抗ヒトPear1モノクローナル抗体LF2、LF3、LF7、LF11、LF15、LF16抗体の軽鎖可変領域配列と重鎖可変領域配列を表1に、これらのCDR部分配列を表2に示す。
【0139】
【0140】
【表2】
本発明はまた、CDR移植の方法を採用し、上記抗体をヒト化し、フレームワーク領域内の部位に対して、異なる復帰突然変異を行った。ヒト化抗体hLF101~116、hLF-N55S、hLF-N55D、hLF-N55Q、hLF-G56A、とhLF-G56Vの配列も表3に示す。
【0141】
【表3】
本発明の抗体のCDR配列は、下記の表4のSEQ ID NO:26~55に示され、これらの抗体のCDR配列は、IMGTのナンバリングルールを採用する。
【0142】
【表4】
2、細胞ライン
IPF患者の線維芽細胞は、ATCC細胞バンクから購入した。
【0143】
ピルフェニドンとニンテダニブは、Selleck社から購入した。
【0144】
3、ヒドロキシプロリンの検測
IPF線維芽細胞を培養し、12時間飢餓状態にし、それぞれに、1μg/mL Pear1アゴニスト(抗Pear1抗体LF2、LF3、LF7)、0.3mg/mLピルフェニドン、1μMニンテダニブ、1μg/mLPear1アゴニスト(抗Pear1抗体LF2、LF3、LF7)と0.3mg/mLピルフェニドンの組み合わせ、1μg/mLPear1アゴニスト(抗Pear1抗体LF2、LF3、LF7)と1μMニンテダニブの組み合わせを添加し、細胞を処理し、30分後、10ng/mLのTGFβを添加し、細胞を48時間処理し、細胞上清を回収し、南京建成生物技術有限公司のヒドロキシプロリン検出キットを使用し、説明書に従ってヒドロキシプロリン含有量を検出した。
【0145】
4、定量的リアルタイムPCR
方法2のIPF線維芽細胞を収集し、Trizol法(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を使用して、標準プロトコールに従って、全mRNAを抽出した。相補的DNAを、逆転写酵素(Takara)を使用して合成した。ABI7000リアルタイムPCR装置(life technology)で、遺伝子発現を検出し、PCRプライマー配列を表1に示す。18sRNA遺伝子を内部参照とした。
【0146】
【表5】
5、Pear1ヒト化トランスジェニックマウスの構築
CRISPR/Cas9技術により、ヒトPear1遺伝子ノックインマウスを構築し、マウスPear1遺伝子コード領域のエクソン1-ATGの付近に、標的を設計し、相同組換えテンプレートの存在下では、外来遺伝子ヒトPear1を、部位特異的に標的位置に組み込み、マウスPear1遺伝子配列を置き換えた。
【0147】
6、IPFモデルの用意
Pear1ヒト化トランスジェニックマウスの体重を量り、ペントバルビタールナトリウム(100mg/kg)を腹腔内注射してマウスを麻酔し、マウスの呼吸が安定した後、マイクロ噴霧器を用いて、気管の底に、ブレオマイシン0.8mg/mlを噴霧し、マウスの肺線維症を誘導した。投与後、傷口を速やかに縫合し、マウスをケージに戻し、呼吸を妨げないようにし、赤外線加熱ランプで温めて、マウスが目覚めるのを待った。
【0148】
7、マウス肺機能の測定
ペントバルビタールナトリウム(100mg/kg)の腹腔内注射によって、マウスを麻酔した後、AniRes2005肺機能分析システム(Bestlabバージョン2.0、AniRes2005、中国)のメーカーの説明に従って、各マウスを気管カニューレを介して、コンピュータで制御された小動物用人工呼吸器に接続した。プレチスモグラフィーチャンバー内の圧力変化を、圧力センサーを備えた接続チューブのポートを通じて測定し、努力肺活量(FVC)と0.1秒目の努力呼気量(FEV0.1)を、肺機能の指標として使用した。
【0149】
8、マッソン染色と免疫蛍光染色
マウスの肺を、4%のパラホルムアルデヒドで24時間固定し、OCTに包埋した後、冷凍切片機で切片し、マッソン染色とpdgfraとコラーゲンの免疫蛍光染色を行った。ImageJソフトウェアを使用して、ポジティブ領域の面積を計算した。
【0150】
9、統計的手法
すべてのデータは、Graphpad8.0ソフトウェアを使用して統計的に分析した。2つ群のデータの比較は、t検定を使用して実行した。生存分析には、カプランマイヤー分析を使用した。すべてのデータ比較において、0.033未満のp値は、統計的に有意であるとみなされる。
【実施例1】
【0151】
実施例1、線維芽細胞におけるコラーゲン分泌に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたPear1アゴニストの効果
線維芽細胞は、異常の増殖と活性化線維芽細胞への変化によって、コラーゲン、ペリオスチン、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質を大量に合成して分泌し、肺線維症の発生につながる。ヒドロキシプロリンは、コラーゲンに特有のアミノ酸であるため、Pear1アゴニスト(LF2抗体)単独、ピルフェニドン単独、ニンテダニブ単独、Pear1アゴニスト(LF2抗体)とピルフェニドンの併用、Pear1アゴニスト(LF2抗体)とニンテダニブの併用を使用する実験群と対照群を設定し、TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、48時間処理した。その後、キットで、細胞上清のヒドロキシプロリン含有量を検出し、コラーゲンの分泌を特徴付け、これが線維芽細胞の活性化を反映した。
【0152】
実験結果は、
図1に示すように、Pear1アゴニストとピルフェニドンの併用、Pear1アゴニストとニンテダニブの併用は、いずれかの薬物の単独よりも、IPF線維芽細胞によるコラーゲン分泌に対する阻害効果が著しいことを示す。
【実施例2】
【0153】
実施例2、線維芽細胞におけるコラーゲン分泌に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたPear1アゴニストの効果
実施例1の方法を用いて、Pear1アゴニスト(抗体LF3またはLF7)単独、ピルフェニドン単独、ニンテダニブ単独、Pear1アゴニスト(抗体LF3またはLF7)とピルフェニドンの併用、Pear1アゴニスト(抗体LF3またはLF7)とニンテダニブの併用を使用する実験群と対照群を設定し、IPF線維芽細胞において、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたPear1アゴニスト(抗体LF3またはLF7)のヒドロキシプロリン含有量をそれぞれに検出し、コラーゲンの分泌を特徴付け、線維芽細胞の活性化を反映した。
【0154】
実験結果は、
図2と
図3に示すように、Pear1アゴニストとピルフェニドンの併用、Pear1アゴニストとニンテダニブの併用は、ピルフェニドンまたはニンテダニブ単独よりも、IPF線維芽細胞によるコラーゲン分泌に対する阻害効果が著しいことを示す。
【実施例3】
【0155】
実施例3、線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質合成に対する、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたPear1アゴニストの効果
抗Pear1抗体LF11、LF15、LF16単独、及びそれらとピルフェニドンとの併用またはニンテダニブとの併用の実験群、ピルフェニドン単独、ニンテダニブ単独の実験群、および対照群を設定し、TGFβ誘導IPF線維芽細胞を、それぞれに48時間処理し、細胞を収集し、qPCRによって、細胞外マトリックスタンパク質コラーゲン7a1およびマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害酵素1の合成に対するそれらの効果を検出した(プライマーについては表1を参照)。
【0156】
実験結果は、Pear1アゴニスト(抗体LF11、LF15、LF16)、ピルフェニドン、およびニンテダニブがいずれも、IPF線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質の発現を、ある程度阻害できることを示す。ただし、
図4A-B、
図5A-B、
図6A-Bに示されるように、LF16抗体とピルフェニドンの併用、LF16抗体とニンテダニブの併用には、ピルフェニドンまたはニンテダニブ単独に比べて、IPF線維芽細胞における細胞外マトリックスタンパク質の発現阻害効果が著しい。
【0157】
上記のデータは、Pear1アゴニストとピルフェニドンの併用、Pear1アゴニストとニンテダニブの併用が、ピルフェニドンまたはニンテダニブ単独よりも、線維芽細胞の活性化に対して強力な阻害効果があることを示す。
【実施例4】
【0158】
実施例4、マウスのブレオマイシンで誘導された肺線維症における、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたPear1アゴニストの効果
ヒト化抗体hLF105とhLF-G56Vを、1μg/gの用量で、それぞれに、モデル作成の7日目と14日目に、Pear1ヒト化トランスジェニックマウスの肺に噴霧し、ピルフェニドンを、モデル作成の前日から、300mg/kgを1日1回強制経口投与し、ニンテダニブを、モデル作成の7日目から60mg/kgを1日2回強制経口投与した。次いで、21日目に、マウスの肺機能分析と病理切片染色を実施し、コラーゲンの沈着および線維芽細胞の増殖を統計した。実験の群分けを表6(n=20)に示す。
【0159】
【表6】
結果は、本発明のhLF105とhLF-G56Vをそれぞれに、ピルフェニドンおよびニンテダニブと組み合わせると、単剤の場合よりも、マウスの肺機能の改善が著しく良好であることを示し、単独群と比較して、マウスの病理切片では、線維芽細胞が大幅に少なく、コラーゲンの沈着が大幅に少ないことを示した(
図7)。
【実施例5】
【0160】
実施例5、マウスのブレオマイシンで誘導された肺線維症における、ピルフェニドンまたはニンテダニブと組み合わせたPear1アゴニストの効果
ヒト化抗体hLF105と、ピルフェニドンまたはニンテダニブを選択して、薬物投与量を減らした後の肺線維症の改善(例えばマウスの肺機能分析と病理切片染色を実施し、コラーゲンの沈着および線維芽細胞の増殖を統計する)を確認した。実験の群分けを表7に示す。
【0161】
【表7】
結果は、Pear1アゴニストと、ピルフェニドンまたはニンテダニブの使用量を、同時に減らした場合でも、ポジティブ群の組み合わせ投与と同等の肺機能改善効果を達成できることを示した;しかも、病理切片(
図8)では、線維芽細胞の数が対照群よりも著しく少なく、コラーゲンの沈着がポジティブ群と同等であることを示した。
【0162】
したがって、本発明の組成物の使用量を、適切に減らしても、比較的理想的な治療効果を依然として達成することができ、かつ動物における副作用を大幅に軽減することができる。
【0163】
本出願に言及されている全ての参考文献は、参照として単独に引用されるように、本出願に引用されて、参照になる。理解すべきなのは、本発明の上記の開示に基づき、当業者は、本発明を様々な変更または修正を行っても良い、これらの同等の形態も本出願に添付された請求の範囲に規定される範囲内に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性疾患を緩和または治療するための混合物、薬物組成物またはキットの調製における薬物の組み合わせの応用
であって、前記薬物の組み合わせは、
(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および
(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ
を含む
、応用。
【請求項2】
前記線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、心臓線維症、腎線維症、骨髄線維症、皮膚瘢痕化および/または軟組織瘢痕化を含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質
またはそのアゴニストは、Pear1の発現、活性、安定性、および/または有効作用時間を増強する薬剤を含む;好ましくは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアント、Pear1を組換えて発現する発現構築
物、Pear1の化学アゴニスト、Pear1遺伝子プロモーターの駆動能力を促進する発現アップレギュレーターを含む;より好ましくは、前記Pear1の化学アゴニストは、FcεR1α、デキストラン硫酸、フコイダン、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項4】
前記混合物、薬物組成物またはキットは、
線維芽細胞による細胞外マトリックスタンパク質の発現を阻害すること;及び/又は
線維芽細胞によるコラーゲン合成を阻害すること
にも使用されることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項5】
前記アゴニストは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントである;好ましくは、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される;
より好ましくは、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14或いは15に示され、或いは前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24或いは25に示される;
ことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項6】
(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;
(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ;及び
薬学的に許容される担体
を含む線維性疾患を緩和または治療するための薬物組成物。
【請求項7】
前記アゴニストは、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントである;好ましくは、前記抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2とHCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 26、27と28に示され、或いはSEQ ID NO: 26、27と29に示され、或いはSEQ ID NO: 26、30と28に示され、或いはSEQ ID NO: 31、27と32に示され、或いはSEQ ID NO: 33、34と35に示される;及び/又は前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2とLCDR3アミノ酸配列は、SEQ ID NO: 45、GATとSEQ ID NO:46に示され、或いはSEQ ID NO: 47、SASとSEQ ID NO: 28に示され、或いはSEQ ID NO: 49、DTSとSEQ ID NO: 50に示され、或いはSEQ ID NO:51、GATとSEQ ID NO: 52に示される;
より好ましくは、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14或いは15に示され、或いは前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO: 16、17、18、19、20、22、23、24或いは25に示される;
ことを特徴とする請求項6に記載の薬物組成物。
【請求項8】
HCDR1は、SEQ ID NO: 26、31、33、36とSEQ ID NO: 39から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;HCDR2は、SEQ ID NO: 27、30、34、37、とSEQ ID NO: 40-44から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、HCDR3は、SEQ ID NO:28、29、32、35とSEQ ID NO: 38から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び/又は、LCDR1は、SEQ ID NO: 45、47、49、51とSEQ ID NO: 53から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;LCDR2は、GAT、SAS、DTS、とLVSから選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、LCDR3は、SEQ ID NO:46、48、50、52或いはSEQ ID NO: 54から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;ことを特徴とする請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項9】
前記バリアントのHCDR1は、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列において第三位のSからA或いはTへ突然変異し、第六位のGからDへ突然変異し、及び/又は、第八位のPからT或いはYへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR2は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列において第三位のPからS或いはGへ突然変異し、第四位のYからNへ突然変異し、及び/又は、第八位のTからAへ突然変異するものである;及び/又は、前記バリアントのHCDR3は、SEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列において第九位のAからDへ突然変異し、及び/又は、第十位のYからFへ突然変異するものである;ことを特徴とする請求項7又は8に記載の薬物組成物。
【請求項10】
前記抗体またはそのバリアントにおいて、HFR1は、SEQ ID NO: 55、56とSEQ ID NO: 57から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;HFR2は、SEQ ID NO: 58、59、60、61、62、63、64、65とSEQ ID NO:66から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、HFR3は、SEQ ID NO: 67、68、69、70、71、72、73、74、75とSEQ ID NO:76から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、HFR4は、SEQ ID NO: 77とSEQ ID NO:78から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び/又は、
LFR1は、SEQ ID NO: 79、80、81、82、83とSEQ ID NO: 84から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;LFR2は、SEQ ID NO: 85、86、87、88、89とSEQ ID NO: 90から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及び、LFR3は、SEQ ID NO: 91、92、93、94、95、96、97とSEQ ID NO: 98から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;及びLFR4は、SEQ ID NO: 99、100、101、102とSEQ ID NO: 103から選択されるアミノ酸配列のいずれか一つを含む;
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の薬物組成物。
【請求項11】
(a)のPear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のニンテダニブまたはその誘導体の含有量は、質量比で、1:(1~500)であり、好ましくは1:(1~300)であり、より好ましくは1:(3~200)である;または
(a)のPear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のピルフェニドンまたはその誘導体の含有量は、質量比で、1:(5~2000)であり、好ましくは1:(5~1000)であり、好ましくは1:(5~500)であり、より好ましくは1:(10~300)である;
ことを特徴とする請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項12】
当該薬物組成物の剤形は、
エアゾール剤、ドライパウダー吸入剤、エアロゾル吸入剤などのガス剤、煎じ薬、注射剤、懸濁液などの液剤、凍結乾燥剤、散剤、顆粒剤、丸剤などの固形剤、軟膏、ペースト剤などの半固形剤、またはそれらの組み合わせから選ばれる剤形を含む物理的形態に基づくものである;
経気道吸入剤、経胃腸管剤、直腸用製剤、注射剤、皮膚薬物送達製剤、粘膜薬物送達製剤、またはそれらの組み合わせから選ばれる剤形を含む投与経路に基づくものである;
ことを特徴とする請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項13】
(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および
(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせ
を含む線維性疾患を緩和または治療するための混合物。
【請求項14】
(a)は、Pear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはバリアントであり、
(a)のPear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のニンテダニブまたはその誘導体の含有量は、質量比で、1:(1~500)であり、好ましくは1:(1~300)であり、より好ましくは1:(3~200)である;または
(a)のPear1活性を特異的に活性化する抗体、その抗原結合断片またはそのバリアント、および(b)のピルフェニドンまたはその誘導体の含有量は、質量比で、1:(5~2000)であり、好ましくは1:(5~1000)であり、好ましくは1:(5~500)であり、より好ましくは1:(10~300)である;
ことを特徴とする請求項13に記載の混合物。
【請求項15】
線維性疾患を緩和または治療するためのキットであって、
前記キットは、容器またはパッケージ、および前記容器またはパッケージ内に分散または混合された(a)Pear1遺伝子、それがコードするタンパク質またはそのアゴニスト;および(b)ニンテダニブまたはその誘導体、あるいはピルフェニドンまたはその誘導体、あるいはそれらの組み合わせを含む;或いは
前記キットは、請求項
6に記載の薬物組成物を含む;或いは
前記キットは、請求項
13に記載の混合物を含む;
ことを特徴とす
るキット。
【国際調査報告】