IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベーリンガー・インゲルハイム・インターナショナル・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-526944アルコール性肝疾患の処置および予防
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(54)【発明の名称】アルコール性肝疾患の処置および予防
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240711BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240711BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P1/16
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7088
C07K16/24 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503869
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022070974
(87)【国際公開番号】W WO2023006765
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2110721.4
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2110862.6
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507229331
【氏名又は名称】ベーリンガー・インゲルハイム・インターナショナル・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Binger Strasse 173,55216 Ingelheim Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】エッフェンベルガー,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ティルグ,ヘルベルト
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZC412
4C085AA13
4C085BB11
4C085BB17
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086NA14
4C086ZA75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA72
(57)【要約】
アルコール性肝疾患を処置または予防する方法であって、対象にインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的もしくは予防的に有効な量を投与するステップを含む方法が開示される。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール性肝疾患を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤。
【請求項2】
アルコール性肝疾患を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用。
【請求項3】
アルコール性肝疾患を処置または予防する方法であって、対象にインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的もしくは予防的に有効な量を投与するステップを含む方法。
【請求項4】
前記薬剤が、インターロイキン11(IL-11)の、インターロイキン11の受容体(IL-11R)への結合を阻止または低減することが可能な薬剤である、請求項1に記載の使用のための薬剤、請求項2に記載の使用、または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤が、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)に結合することが可能である、請求項1もしくは請求項4に記載の使用のための薬剤、請求項2もしくは請求項4に記載の使用、または請求項3もしくは請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、抗体もしくはその抗原結合断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは小分子:からなる群から選択される、請求項1、4もしくは5のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、請求項2、4もしくは5のいずれか一項に記載の使用、または請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤が抗体またはその抗原結合断片である、請求項5もしくは請求項6に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項8】
前記薬剤がIL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体またはその抗原結合断片のアンタゴニストである、請求項7に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項9】
前記抗体または抗原結合性断片が:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号34のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号35のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号36のアミノ酸配列を有するHC-CDR3および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号38のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号39のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む、請求項7または8に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項10】
前記抗体または抗原結合性断片が:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号40のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号41のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号42のアミノ酸配列を有するHC-CDR3および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号43のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号44のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号45のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む、請求項7または8に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項11】
前記薬剤が、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11Rα抗体アンタゴニストまたはその抗原結合断片である、請求項7に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項12】
前記抗体または抗原結合性断片が:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号46のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号48のアミノ酸配列を有するHC-CDR3および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号49のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号50のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号51のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む、請求項7または11に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項13】
前記薬剤がデコイ受容体である、請求項5または請求項6に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項14】
前記薬剤がIL-11に対するデコイ受容体である、請求項13に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項15】
IL-11の前記デコイ受容体が:(i)gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列、および(ii)IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項16】
前記薬剤が、IL-11ムテインである、請求項5または請求項6に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項17】
前記IL-11ムテインがW147Aである、請求項16に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項18】
前記薬剤が、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)の前記発現を阻止または低減することが可能である、請求項1に記載の使用のための薬剤、請求項2に記載の使用または請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤が、オリゴヌクレオチドまたは小分子である、請求項18に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項20】
前記薬剤が、IL-11の前記発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項19に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項21】
IL-11の前記発現を阻止または低減することが可能な前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号12、13、14または15の配列を含むIL11を標的にするsiRNAである、請求項20に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項22】
前記薬剤がIL-11Rαの前記発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項19に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項23】
IL-11Rαの前記発現を阻止または低減することが可能な前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号16、17、18または19の配列を含むIL11RAを標的にするsiRNAである、請求項22に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項24】
前記インターロイキン11受容体がIL-11Rαであるかまたはそれを含む、請求項4~23のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、使用または方法。
【請求項25】
前記方法がインターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御される対象に前記薬剤を投与するステップを含む、請求項1もしくは4~24のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、請求項2もしくは4~24のいずれか一項に記載の使用または請求項3~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御されていると決定された対象に前記薬剤を投与するステップを含む、請求項1もしくは4~25のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、請求項2もしくは4~25のいずれか一項に記載の使用または請求項3~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が前記対象において上方制御されるかどうか決定するステップと、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御される対象に前記薬剤を投与するステップとを含む、請求項1もしくは4~26のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、請求項2もしくは4~26のいずれか一項に記載の使用または請求項3~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月26日に出願の英国特許第2110721.4号および2021年7月28日に出願の英国特許第2110862.6号の優先権を主張し、その内容および要素は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、アルコール性肝疾患の診断、処置および予防法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール性肝炎(AH)は、アルコール性肝疾患(ALD)の急性増悪を反映しており、処置の選択肢が極めて限定されているとともに世界的な健康管理負担が増加している。
【0003】
慢性的なアルコール消費は、物理的および精神医学的障害を引き起こし、世界的に毎年およそ3百万人の死亡の一因となっている。全体として、エタノールの濫用は、疾患の世界的な負担の5.1%に関与する[Lancet(2018年)392:1015~1035頁]。アルコール性肝疾患(ALD)は、一般的な肝臓疾患であり、脂肪症、アルコール性肝炎(AH)、線維症、肝硬変および最終的に肝細胞性癌腫をもたらす複雑な炎症誘発性工程である[Asraniら、J Hepatol(2019年)70:151~171頁]。AHは、ALDの急性増悪を特に反映しており、処置の選択肢が極めて限定されているとともに世界的な健康管理負担が増加している。
【0004】
ALD、特にAHの病因は、よく理解されておらず、そのことが、治療的選択肢の少なさおよび患者予後に反映されている。エタノールおよびアセトアルデヒドの直接毒性に加えて、アルコールは、腸内毒素症を引き起こし、それは腸障壁機能の改変および内毒血症をその後惹起する[Avilaら、Gut(2020年)69:764~780頁;Langら、Gut Microbes(2020年)12:1785251頁;Parlesakら、J Hepatol(2000年)32:742~747頁]。この異常調節は、細胞壊死および肝損傷の一因となる様々な炎症誘発性肝臓サイトカインの過剰発現も誘導する[TilgおよびDiehl、N Engl J Med(2000年)343:1467~1476頁]。インターロイキン(IL)-6、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)およびIL-1βは、実験モデルにおいてALDを駆動する[Lopetusoら、Liver.Int J Mol Sci(2018年)19;Schmidt-ArrasおよびRose-John、J Hepatol(2016年)64:1403~1415頁;Barbierら、Front Immunol(2019年)10:2014頁)。
【0005】
IL-11媒介シグナル伝達は、非アルコール性肝疾患の病理に結び付けられるが[Widjajaら、Gastroenterology(2019年)157:777~792頁.e714]、しかしながら、アルコール性肝疾患におけるIL-11媒介シグナル伝達の役割は、不明である。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、本開示は、アルコール性肝疾患を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を提供する。
【0007】
アルコール性肝疾患を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造における、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤も提供される。
【0008】
対象にインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的もしくは予防的に有効な量を投与するステップを含む、アルコール性肝疾患を処置または予防する方法も提供される。
【0009】
一部の実施形態では、薬剤は、インターロイキン11(IL-11)のインターロイキン11の受容体(IL-11R)への結合を阻止または低減することが可能な薬剤である。
【0010】
一部の実施形態では、薬剤は、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)に結合することが可能である。
【0011】
一部の実施形態では、薬剤は:抗体もしくはその抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは小分子からなる群から選択される。
【0012】
一部の実施形態では、薬剤は抗体またはその抗原結合性断片である。
【0013】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニスト、またはその抗原結合性断片である。
【0014】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号34のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号35のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号36のアミノ酸配列を有するHC-CDR3および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号38のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号39のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む。
一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号40のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号41のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号42のアミノ酸配列を有するHC-CDR3および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号43のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号44のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号45のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む。
【0015】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11Rα抗体アンタゴニスト、またはその抗原結合性断片である。
【0016】
一部の実施形態では、抗体または抗原結合性断片は:
(i)以下のCDRを組み込む重鎖可変(VH)領域:
配列番号46のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号48のアミノ酸配列を有するHC-CDR3および
(ii)以下のCDRを組み込む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号49のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号50のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号51のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
を含む。
【0017】
一部の実施形態では、薬剤はデコイ受容体である。
【0018】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11のデコイ受容体である。
【0019】
一部の実施形態では、IL-11のデコイ受容体が:(i)gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列、および(ii)IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含む。
【0020】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11ムテインである。
【0021】
一部の実施形態では、IL-11ムテインは、W147Aである。
【0022】
一部の実施形態では、薬剤は、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)の発現を阻止または低減することが可能である。
【0023】
一部の実施形態では、薬剤は、オリゴヌクレオチドまたは小分子である。
【0024】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11の発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0025】
一部の実施形態では、IL-11の発現を阻止または低減することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号12、13、14または15の配列を含むIL11を標的にするsiRNAである。
【0026】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαの発現を阻止または低減することが可能であるアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0027】
一部の実施形態では、IL-11Rαの発現を阻止または低減することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号16、17、18または19の配列を含むIL11RAを標的にするsiRNAである。
【0028】
一部の実施形態では、インターロイキン11受容体は、IL-11Rαであるかまたはそれを含む。
【0029】
一部の実施形態では、本方法は、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御される対象に薬剤を投与することを含む。
【0030】
一部の実施形態では、本方法は、インターロイキン11(IL-11)またはインターロイキン11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御されていると決定された対象に薬剤を投与するステップを含む。
【0031】
一部の実施形態では、本方法は、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が対象において上方制御されるかどうか決定するステップと、インターロイキン11(IL-11)またはIL-11の受容体(IL-11R)の発現が上方制御される対象に薬剤を投与するステップとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示では、本発明者らは、IL-11媒介シグナル伝達をアルコール性肝疾患(ALD)の病理の駆動体として確立する。IL-11の発現が、ALDモデルのマウスの肝臓において上方制御されることが判明している。IL-11媒介シグナル伝達の抗体アンタゴニストによるALDを有するマウスの処置は、ALDの症状を減少させることが示されている。したがって、本開示は、ALDの治療標的としてIL-11/IL-11受容体シグナル伝達経路を同定し、IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、ALDに対する好適な介入であることを実証する。
【0033】
インターロイキン11およびIL-11の受容体
脂質生成阻害因子としても知られる、インターロイキン11(IL-11)は、多面的なサイトカインであり、IL-6、IL-11、IL-27、IL-31、オンコスタチンM(OSM)、白血病阻害因子(LIF)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびニューロポエチン(NP-1)を含むIL-6ファミリーのサイトカインのメンバーである。
【0034】
インターロイキン11(IL-11)は、様々な間葉性細胞型において発現される。IL-11のゲノム配列は、第19染色体および第7染色体のセントロメア領域上にマッピングされており、細胞からの効率的な分泌を確保する古典的シグナルペプチドと共に転写される。IL-11のアクチベータタンパク質複合体、そのプロモーター配列内に位置するcJun/AP-1は、IL-11の基本的転写調節にとって重要である(DuおよびWilliams.、Blood 1997、Vol 89:3897~3908頁)。未成熟型のヒトIL-11は、199アミノ酸のポリペプチドであるが、成熟型のIL-11は、178アミノ酸残基のタンパク質をコードする(GarbersおよびScheller、Biol.Chem.2013;394(9):1145~1161頁)。ヒトIL-11アミノ酸配列は、UniProt受託番号P20809(P20809.1 GI:124294;配列番号1)の下で入手可能である。組換えヒトIL-11(オプレルベキン)も商業的に入手可能である。マウス、ラット、ブタ、ウシ、いくつかの種の硬骨魚および霊長類などの他の種に由来するIL-11も、クローニングおよび配列決定されている。
【0035】
本明細書では、「IL-11」とは、任意の種に由来するIL-11を指し、任意の種に由来するIL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来する未成熟または成熟IL-11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、IL-11Rα(好ましくは、同じ種に由来する)に結合し、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でシグナル伝達を刺激する能力を特徴としてもよい(例えば、Curtisら、Blood、1997、90(11);またはKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003 9(2):75~80頁に記載されたように)。IL-11の断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟IL-11の長さの少なくとも25%であってもよく、成熟IL-11の長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。IL-11の断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または195アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0036】
IL-11は、遍在的に発現される糖タンパク質130(gp130;糖タンパク質130、IL-6ST、IL-6-ベータまたはCD130としても知られる)のホモ二量体を介してシグナル伝達する。gp130は、IL-6受容体ファミリーとI型サイトカイン受容体の1つのサブユニットを形成する膜貫通タンパク質である。シグナル伝達に直接関与しない個々のインターロイキン11受容体サブユニットアルファ(IL-11Rα)を介して特異性が得られるが、α-受容体への初期のサイトカイン結合事象は、gp130との最終的な複合体形成をもたらす。
【0037】
ヒトgp130(22アミノ酸シグナルペプチドを含む)は、918アミノ酸のタンパク質であり、成熟型は、597アミノ酸の細胞外ドメイン、22アミノ酸の膜貫通ドメイン、および277アミノ酸の細胞内ドメインを含む866アミノ酸である。このタンパク質の細胞外ドメインは、gp130のサイトカイン結合モジュール(CBM)を含む。gp130のCBMは、gp130のIg様ドメインD1、ならびにフィブロネクチンIII型ドメインD2およびD3を含む。ヒトgp130のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P40189-1(配列番号2)の下で入手可能である。
【0038】
ヒトIL-11Rαは、422アミノ酸のポリペプチド(UniProt Q14626;配列番号3)であり、マウスIL-11Rαとの約85%のヌクレオチドおよびアミノ酸配列同一性を有する。細胞質ドメインが異なるIL-11Rαの2つのアイソフォームが報告されている(DuおよびWilliams、上掲)。IL-11受容体α鎖(IL-11Rα)は、IL-6受容体α鎖(IL-6Rα)との多くの構造的および機能的類似性を有する。細胞外ドメインは、特徴的な保存されたTrp-Ser-X-Trp-Ser(WSXWS)モチーフを含む24%のアミノ酸同一性を示す。短い細胞質ドメイン(34アミノ酸)は、JAK/STATシグナル伝達経路の活性化に必要とされるBox1および2領域を欠く。
【0039】
マウスIL-11上の受容体結合部位はマッピングされており、3つの部位(部位I、IIおよびIII)が同定されている。gp130への結合は、部位II領域中の置換および部位III領域中の置換によって低減される。部位III変異体は、検出可能なアゴニスト活性を示さず、IL-11Rαアンタゴニスト活性を有する(Cytokine Inhibitors Chapter 8;Gennaro CilibertoおよびRocco Savino(編)、Marcel Dekker,Inc.2001)。
【0040】
本明細書では、IL-11の受容体(IL-11R)は、IL-11に結合することができるポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11に結合し、その受容体を発現する細胞中でシグナル伝達を誘導することができる。
【0041】
IL-11受容体は、任意の種に由来するものであってよく、任意の種に由来するIL-11受容体のアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログを含む。好ましい実施形態では、種はヒト(ホモ・サピエンス)である。
【0042】
一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11Rαであってもよい。一部の実施形態では、IL-11の受容体は、IL-11Rαを含むポリペプチド複合体であってもよい。一部の実施形態では、IL-11受容体は、IL-11Rαとgp130とを含むポリペプチド複合体であってもよい。一部の実施形態では、IL-11受容体は、gp130またはIL-11が結合するgp130を含む複合体であってもよい。
【0043】
IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、所与の種、例えば、ヒトに由来するIL-11Rαのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のうちの1つのアミノ酸配列同一性を有することを特徴としてもよい。IL-11Rαのアイソフォーム、断片、バリアントまたはホモログは、必要に応じて、IL-11(好ましくは、同じ種に由来する)に結合し、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でシグナル伝達を刺激する能力を特徴としてもよい(例えば、Curtisら、Blood、1997、90(11);またはKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003 9(2):75~80頁に記載されたように)。IL-11受容体の断片は、任意の長さ(アミノ酸の数で)のものであってよいが、必要に応じて、成熟IL-11Rαの長さの少なくとも25%であってよく、成熟IL-11Rαの長さの50%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のうちの1つの最大の長さを有してもよい。IL-11受容体断片の断片は、10アミノ酸の最小の長さ、および15、20、25、30、40、50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、または415アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。
【0044】
IL-11シグナル伝達
IL-11は低親和性でIL-11Rαに結合し(Kd約22nM;Metcalfeら、JBC(2020)原稿RA119.012351、を参照する)、これらの結合パートナー間の相互作用だけでは生物学的シグナルを伝達するには不十分である。シグナル伝達を可能にする高親和性の受容体(約400~800pmol/LのKd)の生成には、IL-11Rαとgp130との同時発現が必要である(Curtisら、Blood 1997;90(11):4403~12頁;Hiltonら、EMBO J 13:4765頁、1994;Nandurkarら、Oncogene 12:585頁、1996)。IL-11の、細胞表面IL-11Rαへの結合は、主に、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)カスケードおよびJanusキナーゼ/シグナル伝達因子および転写(Jak/STAT)経路のアクチベータを介して、gp130のヘテロ二量体化、チロシンリン酸化、活性化ならびに下流のシグナル伝達を誘導する(GarbersおよびScheller、上掲)。
【0045】
原理的には、可溶型IL-11Rαも、IL-11との生物活性可溶型複合体を形成することができ(Pflanzら、1999、FEBS Lett、450、117~122頁)、IL-6と同様、IL-11が一部の例では、細胞表面gp130に結合する前に可溶型IL-11Rαに結合することができる可能性を上昇させる(GarbersおよびScheller、上掲)。Curtisら(Blood 1997 Dec 1;90(11):4403~12頁)は、可溶型マウスIL-11受容体アルファ鎖(sIL-11R)の発現を記載し、gp130を発現する細胞中でのシグナル伝達を検査した。膜貫通型IL-11Rではなく、gp130の存在下で、sIL-11Rは、膜貫通型IL-11Rによるシグナル伝達と同様、M1白血病細胞のIL-11依存的分化およびBa/F3細胞中での増殖ならびにgp130、STAT3およびSHP2のリン酸化を含む初期の細胞内事象を媒介した。可溶型IL-11Rアルファに結合したIL-11による細胞膜結合型gp130を介するシグナル伝達の活性化が、最近証明された(Lokauら、2016、Cell Reports 14、1761~1773頁)。このいわゆるIL-11トランスシグナル伝達は疾患病因にとって重要である可能性があるが、ヒト疾患におけるその役割はまだ研究されていない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「IL-11のtransシグナル伝達」は、IL-11Rαに結合したIL-11の、gp130への結合によって誘発されるシグナル伝達を指す。IL11は、非共有複合体としてIL-11Rαに結合してもよい。gp130は、膜結合型であり、シグナル伝達がIL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合後に起こる細胞によって発現される。一部の実施形態では、IL-11Rαは、可溶型IL-11Rαであってもよい。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶型(分泌型)アイソフォーム(例えば、膜貫通ドメインを欠く)である。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、細胞膜に結合したIL-11Rαの細胞外ドメインのタンパク質分解的切断の遊離産物である。一部の実施形態では、IL-11Rαは、細胞膜結合型であってよく、gp130を介するシグナル伝達は、細胞膜結合型IL-11Rαに結合したIL-11の結合によって誘発され、「IL-11のcisシグナル伝達」と呼ばれる。好ましい実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介シスシグナル伝達を破壊することによって達成される。
【0047】
IL-11媒介シグナル伝達は、造血および血小板新生を刺激し、破骨細胞活性を刺激し、神経形成を刺激し、脂質生成を阻害し、炎症誘発性サイトカイン発現を低減し、細胞外マトリックス(ECM)代謝をモジュレートし、胃腸上皮細胞の正常な増殖制御を媒介することが示されている(DuおよびWilliams、前掲)。
【0048】
インターロイキン11(IL-11)の生理的役割は、不明なままである。IL-11は、造血細胞の活性化と、および血小板生産と最も強く関連付けられている。IL-11は、移植片対宿主疾患、炎症性関節炎および炎症性腸疾患に対する防御を付与することも示されており、IL-11が抗炎症サイトカインと考えられるに至っている(PutoczkiおよびErnst、J Leukoc Biol 2010、88(6):1109~1117頁)。しかし、IL-11は炎症誘発性であると同時に抗炎症性、血管形成促進性であり、新生物にとって重要であることが示唆されている。近年の研究は、IL-11がマウス関節炎モデルおよびがんにおけるウイルス誘導炎症の間に容易に検出可能であることを示し、IL-11の発現を病理学的刺激が誘導することができることを示唆している。IL-11は、新生物性胃腸上皮における腫瘍促進標的遺伝子のStat3依存性活性化に関連付けられてもいる(PutoczkiおよびErnst、前掲)。
【0049】
本明細書で使用されるように、「IL-11シグナル伝達」および「IL-11媒介シグナル伝達」は、IL-11または成熟IL-11分子の機能を有するその断片の、IL-11の受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達を指す。「IL-11シグナル伝達」および「IL-11媒介シグナル伝達」は、IL-11/その機能的断片によって、例えばIL-11の受容体への結合を通して開始されるシグナル伝達を指すことを理解される。「シグナル伝達」は、次に細胞活動を支配するシグナル伝達および他の細胞過程を指す。
【0050】
アルコール性肝疾患
本開示は、アルコール性肝疾患(ALD)の処置および/または予防と関係する。
【0051】
本明細書では、「アルコール性肝疾患」(ALD)とは、正常な(すなわち、健康で、火病的な)肝臓機能および/または形態構造に対するアルコール誘導性の摂動に関連する(例えば、原因になるまたは特徴付けられる)あらゆる疾患/状態のことを指す。ALDは、肝臓に対するアルコール誘導性損傷、肝組織に対するアルコール誘導性損傷および/または1つもしくは複数の肝細胞に対するアルコール誘導性損傷によって特徴付けることができる。
【0052】
ALDは、アルコール性脂肪肝(AFL;アルコール性肝脂肪症としても公知である)、アルコール性肝炎[例えばアルコール性脂肪性肝炎(ASH)を含める]、アルコール誘導性肝臓線維症、アルコール誘導性肝硬変およびアルコール誘導性肝臓がん(肝細胞癌腫など)を包含する。したがって、本明細書に記述される態様および実施形態による一部の実施形態では、アルコール性肝疾患は:アルコール性脂肪肝(AFL)、アルコール性肝炎、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、アルコール誘導性肝臓線維症、アルコール誘導性肝硬変およびアルコール誘導性肝臓がん(例えばアルコール誘導性肝細胞癌腫)から選択される。一部の実施形態では、アルコール性肝疾患は:アルコール性脂肪肝(AFL)、アルコール性肝炎およびアルコール性脂肪性肝炎(ASH)から選択される。
【0053】
ALDは、例えば、Seitzら、Nature Reviews Disease Primers(2018年)4:16頁、Seitzら、J.Clin.Med.(2021年)10:858頁およびOsnaら、Alcohol Res.2017年;38(2):147~161頁に概説されており、その全てが、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。ALDは、(過剰な)アルコール消費の結果として生じ、アルコール関連肝臓疾患(ARLD)と称される場合もある。本開示による過剰なアルコール消費とは、男性対象の場合≧40gエタノール/日の定期的な(例えば3日またはより多くの日/週)消費および女性対象の場合≧20gエタノール/日の定期的な消費のことを指すことができる。
【0054】
慢性の(過度の)アルコール消費は、肝細胞における脂肪(大部分はトリグリセリド、リン脂質およびコレステロールエステルの形態)の蓄積(すなわち、肝細胞脂肪症)をもたらし、AFLをもたらす。
【0055】
AFLは、肝組織の傷害および肝臓炎症(すなわち、肝炎)によって特徴付けられるアルコール性脂肪性肝炎(ASH)に進行する可能性がある。より具体的には、ASHは、肝細胞の傷害(血清トランスアミナーゼ活性の関連する増加)、肝細胞の風船化、肝細胞におけるマロリーデンク体の存在、小葉性炎症、クップファー細胞の活性化および/または肝組織への顆粒球(特に好中球)の浸潤によって特徴付けることができる。
【0056】
ASHは、アルコール誘導性肝臓線維症、アルコール誘導性肝硬変に進行する場合があり、活性化された前線維性肝星状細胞(HSC)による細胞外マトリックス成分の過剰な沈着によって特徴付けられる。初期段階のアルコール性肝臓線維症は、典型的には細胞周囲線維症として現れ、シヌソイドに沿ったおよび肝細胞の小さな群の周囲における細胞外マトリックスの沈着によって特徴付けられる。後期段階の線維症および肝硬変は、広範な線維症、肝脈管構造の狭窄(シヌソイドを含む)、門脈圧高進症、肝細胞死および肝臓機能の有意な機能障害(肝不全)によって特徴付けられる。アルコール誘導性線維症および肝硬変は、肝細胞癌腫(HCC)をさらに引き起こす可能性があり;肝硬変は、実際にHCCの発症に対する最も強力なリスク因子である。
【0057】
アルコール性肝疾患を有する対象は、アルコール性肝疾患の症状/相関を1つまたは複数有すことができる。一部の実施形態では、アルコール性肝疾患を有する対象は:肝細胞脂肪症、肝細胞に対する傷害、肝組織に対する傷害、肝炎、血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇、肝細胞の風船化、マロリーデンク体を含む肝細胞、小葉性炎症、クップファー細胞の活性化、顆粒球(例えば好中球)の浸潤を含む肝組織、肝線維症、HSCの活性化、細胞周囲線維症、肝硬変、肝脈管構造の狭窄、門脈圧高進症、肝細胞死、肝不全および肝細胞癌腫(HCC)のうち1つまたは複数を有することができる。
【0058】
アルコール性肝疾患を有する対象は、アルコール性肝疾患を有すると診断されている場合がある。対象は、アルコール性肝疾患の診断の診断基準を満たす場合がある。アルコール性肝疾患の診断については、例えばTorruellasら、World J Gastroenterol.(2014年)20(33):11684~11699頁に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ALDは、慢性肝臓疾患に関する他の病因が排除された場合、アルコール消費の有意な既往歴がある患者において臨床および検査的特徴だけに基づいて一般に診断されうる。一般に、ALDは、アルコール消費の有意な既往歴があり、異常な血清トランスアミナーゼ(特に血清ASTレベルが血清ALTレベルより高い)、肝腫大、慢性肝臓疾患の臨床的徴候、肝脂肪症の放射線像の証拠もしくは線維症/肝硬変を示す患者、または大滴性脂肪症もしくは肝硬変を示す肝生検を有した患者において疑われるべきである。
【0059】
ALDの遺伝的リスク因子は、ゲノム規模での関連研究によって同定されており、PNPLA3(例えばrs738409-G、M148I)、TM6SF2(例えばrs58542926-T、E167K)、MBOAT7(例えばrs641738-T)、MARC1(例えばrs2642438-C/G/T)およびHNRNPUL1(例えばrs15052-C)の遺伝的バリアントを含む。一部の実施形態では、本開示によるアルコール性肝疾患を有する対象は、以下の対立遺伝子のうちの1つまたは複数の1つもしくは複数のコピーを含むことができる:rs738409-Gを含むPNPLA3、rs58542926-Tを含むTM6SF2、rs641738-Tを含むMBOAT7、rs2642438-C/G/Tを含むMARC1、およびrs15052-Cを含むHNRNPUL1。
【0060】
IL-11の作用を阻害することが可能な薬剤
本発明の態様は、IL-11媒介シグナル伝達の阻害/拮抗を含む。
【0061】
本明細書では、「阻害」は対照条件と比較した低減、低下または減弱を指す。例えば、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤によるIL-11の作用の阻害は、薬剤の不在下、および/または適当な対照薬剤の存在下でのIL-11媒介シグナル伝達の範囲/程度の低減、低下または減弱を指す。
【0062】
阻害は、本明細書では中和または拮抗と呼ぶこともできる。すなわち、IL-11媒介シグナル伝達(例えばIL-11またはIL-11含有複合体によって媒介される相互作用、シグナル伝達または他の活性)を阻害することが可能な薬剤は、関連する機能または過程に関して「中和」または「拮抗」剤であると言うことができる。例えば、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11媒介性シグナル伝達を中和することができる薬剤と呼んでもよく、またはIL-11媒介性シグナル伝達のアンタゴニストと呼んでもよい。
【0063】
IL-11シグナル伝達経路は、IL-11シグナル伝達の阻害のための複数の経路を提供する。IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、例えば、IL-11の受容体を通したシグナル伝達に関与するかまたは必要な1つまたは複数の因子の作用を阻害することを通してそうすることができる。
【0064】
例えば、IL-11シグナル伝達の阻害を、IL-11(またはIL-11含有複合体、例えば、IL-11とIL-11Rαとの複合体)と、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、IL-11Rαを含む受容体複合体、gp130またはIL-11Rαとgp130とを含む受容体複合体)との相互作用を破壊することによって達成することができる。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、例えば、IL-11、IL-11Rαおよびgp130のうちの1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質発現を阻害することによって達成される。
【0065】
IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、IL-11受容体を発現する細胞による下流のシグナル伝達の活性化のために必要とされる多量体(例えば、六量体複合体)を形成するための、IL-11:11受容体複合体(すなわち、IL-11およびIL-11Rα、またはIL-11およびgp130、またはIL-11、IL-11Rαおよびgp130を含む複合体)の間の相互作用を破壊することによって達成することもできる。
【0066】
実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性transシグナル伝達を破壊するのではなく、IL-11媒介性cisシグナル伝達を破壊することによって達成され、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、膜結合型IL-11Rαを含むgp130媒介性cis複合体を阻害することによって達成される。実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性cisシグナル伝達を破壊するのではなく、IL-11媒介性transシグナル伝達を破壊することによって達成され、すなわち、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、可溶型IL-11Rαに結合したIL-11または可溶型IL-6Rに結合したIL-6などのgp130媒介性transシグナル伝達複合体を阻害することによって達成される。実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達の阻害は、IL-11媒介性cisシグナル伝達およびIL-11媒介性transシグナル伝達を破壊することによって達成される。本明細書に記載される任意の薬剤を使用して、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。
【0067】
他の例では、IL-11シグナル伝達の阻害は、IL-11/IL-11Rα/gp130の下流のシグナル伝達経路を破壊することによって達成することができる。すなわち、一部の実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害/拮抗は、IL-11/IL-11受容体複合体を通したシグナル伝達の下流のシグナル伝達経路/過程/因子の阻害を含む。
【0068】
一部の実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害/拮抗は、IL-11/IL-11受容体複合体によって活性化される細胞内シグナル伝達経路を通したシグナル伝達の阻害を含む。一部の実施形態では、IL-11媒介シグナル伝達の阻害/拮抗は、その発現/活性がIL-11/IL-11受容体複合体を通したシグナル伝達の結果として上方制御される1つまたは複数の因子の阻害を含む。
【0069】
一部の実施形態では、本発明の方法は、JAK/STATシグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を利用する。一部の実施形態では、JAK/STATシグナル伝達を阻害することができる薬剤は、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5Bおよび/またはSTAT6の作用を阻害することができる。例えば、薬剤は、JAK/STATタンパク質の活性化を阻害する、JAKもしくはSTATタンパク質と、細胞表面受容体、例えば、IL-11Rαもしくはgp130との相互作用を阻害する、JAKタンパク質とSTATタンパク質との相互作用を阻害する、STATタンパク質のリン酸化を阻害する、STATタンパク質の二量体化を阻害する、STATタンパク質の細胞核への移行を阻害する、STATタンパク質のDNAへの結合を阻害する、ならびに/またはJAKおよび/もしくはSTATタンパク質の分解を促進することができてもよい。一部の実施形態では、JAK/STAT阻害剤は、ルキソリチニブ(Jakafi/Jakavi;Incyte)、トファシチニブ(Xeljanz/Jakvinus;NIH/Pfizer)、オクラシチニブ(Apoquel)、バリシチニブ(Olumiant;Incyte/Eli Lilly)、フィルゴチニブ(G-146034/GLPG-0634;Galapagos NV)、ガンドチニブ(LY-2784544;Eli Lilly)、レスタウルチニブ(CEP-701;Teva)、モメロチニブ(GS-0387/CYT-387;Gilead Sciences)、パクリチニブ(SB1518;CTI)、PF-04965842(Pfizer)、ウパダシチニブ(ABT-494;AbbVie)、ペフィシチニブ(ASP015K/JNJ-54781532;Astellas)、フェドラチニブ(SAR302503;Celgene)、ククルビタシンI(JSI-124)およびCHZ868から選択される。
【0070】
一部の実施形態では、本発明の方法は、MAPK/ERKシグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を用いる。一部の実施形態では、MAPK/ERKシグナル伝達を阻害することができる薬剤は、GRB2の作用を阻害する、RAFキナーゼの作用を阻害する、MEKタンパク質の作用を阻害する、MAP3K/MAP2K/MAPKおよび/もしくはMycの活性化を阻害する、ならびに/またはSTATタンパク質のリン酸化を阻害することができる。一部の実施形態では、ERKシグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、ERK p42/44を阻害することが可能である。一部の実施形態では、ERK阻害剤は、SCH772984、SC1、VX-11e、DEL-22379、ソラフェニブ(Nexavar;Bayer/Onyx)、SB590885、PLX4720、XL281、RAF265(Novartis)、エンコラフェニブ(LGX818/Braftovi;Array BioPharma)、ダブラフェニブ(Tafinlar;GSK)、ベムラフェニブ(Zelboraf;Roche)、コビメチニブ(Cotellic;Roche)、CI-1040、PD0325901、ビニメチニブ(MEK162/MEKTOVI;Array BioPharma)、セルメチニブ(AZD6244;Array/AstraZeneca)、およびトラメチニブ(GSK1120212/Mekinist;Novartis)から選択される。一部の実施形態では、本発明の方法は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達/活性を阻害することが可能な薬剤を用いる。一部の実施形態では、JNKシグナル伝達/活性を阻害することが可能な薬剤は、JNK(例えばJNK1、JNK2)の作用および/またはリン酸化を阻害することが可能である。一部の実施形態では、JNK阻害剤は、SP600125、CEP1347、TCS JNK 6o、c-Junペプチド、SU3327、AEG3482、TCS JNK 5a、BI78D3、IQ3、SR3576、IQ1S、JIP-1(153-163)およびCC401二塩化水素化物から選択される。
【0071】
本実施例では、発明者はNOX4の発現および活性が、IL-11/IL-11Rα/gp130を通したシグナル伝達によって上方制御されることを実証する。NOX4はNADPHオキシダーゼであり、反応性酸素種(ROS)の供給源である。Nox4の発現は肝細胞特異的なIl11発現を有するトランスジェニックマウスで上方制御され、IL11で刺激した一次ヒト肝細胞はNOX4発現を上方制御する。
【0072】
一部の実施形態では、本発明は、NOX4の発現(遺伝子またはタンパク質発現)または機能を阻害することが可能な薬剤を用いる。一部の実施形態では、本発明は、NOX4発現/機能のIL-11媒介上方制御を阻害することが可能な薬剤を用いる。NOX4の発現または機能を阻害することが可能な薬剤は、本明細書ではNOX4阻害剤と呼ぶことができる。例えば、NOX4阻害剤は、NOX4の発現(例えば遺伝子および/またはタンパク質発現)を低減すること、NOX4をコードするRNAのレベルを低減すること、NOX4タンパク質のレベルを低減すること、および/またはNOX4活性のレベルを低減すること(例えば、NOX4媒介NADPHオキシダーゼ活性および/またはNOX4媒介ROS生産を低減すること)が可能である。
【0073】
NOX4阻害剤には、NOX4結合分子およびNOX4発現を低減することが可能な分子が含まれる。NOX4結合阻害剤には、ペプチド/核酸アプタマー、抗体(および抗体断片)、およびNOX4機能のアンタゴニストとしてふるまうNOX4の相互作用パートナーの断片、およびNOX4の小分子阻害剤が含まれる。NOX4発現を低減することが可能な分子には、NOX4へのアンチセンスRNA(例えば、siRNA、shRNA)が含まれる。一部の実施形態では、NOX4阻害剤は、Altenhoferら、Antioxid Redox Signal。(2015)23(5):406~427頁またはAugsburderら、Redox Biol。(2019)26:101272頁、に記載されるNOX4阻害剤、例えばGKT137831から選択される。
【0074】
結合剤
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11に結合してもよい。一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる薬剤は、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合してもよい。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができる。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体、例えば、IL-11Rαおよび/またはgp130に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。薬剤は、IL-11および可溶型IL-11Rαなどのtransシグナル伝達複合体に結合し、gp130媒介性シグナル伝達を阻害することができる。
【0075】
IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、一部の実施形態では、薬剤は、抗体、その抗原結合性断片、ポリペプチド、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは低分子であってもよい。薬剤を、単離もしくは精製された形態で提供するか、または医薬組成物もしくは医薬として製剤化することができる。
【0076】
抗体および抗原結合性断片
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、ポリペプチド、例えばデコイ受容体分子である。一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、アプタマーであってよい。
【0077】
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、抗体またはその抗原結合性断片である。「抗体」は、本明細書で最も広い意味で使用され、それらが関連する標的分子への結合を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ならびに抗体断片を包含する。
【0078】
モノクローナル抗体技術と関連する今日の技術を考慮すると、多くの抗原に対する抗体を調製することができる。抗原結合部分は、抗体の一部(例えば、Fab断片)または合成抗体断片(例えば、一本鎖Fv断片[ScFv])であってもよい。選択された抗原に対するモノクローナル抗体を、公知の技術、例えば、「Monoclonal Antibodies:A manual of techniques」、H Zola(CRC Press、1988)および「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications」、J G R Hurrell(CRC Press、1982)に開示されたものによって調製することができる。キメラ抗体は、Neubergerら(1988、8th International Biotechnology Symposium Part 2、792~799頁)によって考察されている。モノクローナル抗体(mAb)は本発明の方法で特に有益であり、抗原上の単一のエピトープを特異的に標的にする抗体の均一集団である。
【0079】
ポリクローナル抗体も、本発明の方法において有用である。単一特異性ポリクローナル抗体が好ましい。好適なポリクローナル抗体を、当業界で周知の方法を使用して調製することができる。
【0080】
抗体および抗体断片を遺伝子操作することができるため、FabおよびFab2断片などの抗体の抗原結合性断片を使用/提供することもできる。抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインは、抗原認識に関与し、初期プロテアーゼ消化実験によって初めて認識された事実である。さらなる確認は、齧歯類抗体の「ヒト化」によって見出される。得られる抗体が齧歯類親抗体の抗原特異性を保持するように、齧歯類起源の可変ドメインを、ヒト起源の定常ドメインに融合することができる(Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sd.USA 81、6851~6855頁)。
【0081】
本開示による抗体および抗原結合性断片は、関連する標的分子(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体)に結合することができる抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0082】
IL-11への結合が可能な抗体には、例えば、BockhornらNat.Commun.(2013年)4(0):1393頁において例えば使用されているモノクローナルマウス抗ヒトIL-11抗体クローン#22626;カタログ番号MAB218(R&D Systems、MN、米国)、クローン6D9A(Abbiotec)、クローンKT8(Abbiotec)、クローンM3103F11(BioLegend)、クローン1F1(Abnova社)、クローン3C6(Abnova社)、クローンGF1(LifeSpan Biosciences)、クローン13455(Source BioScience)、11h3/19.6.1[Hermannら、Arthritis Rheum.(1998年)41(8):1388~97頁]、AB-218-NA(R&D Systems)、X203[Ngら、Sci Transl Med.(2019年)11(511)pii:eaaw1237]ならびに米国特許出願公開第2009/0202533号A1、WO99/59608号A2、WO2018/109174号A2およびWO2019/238882号A1に開示される抗IL-11抗体がある。
【0083】
特に、抗IL-11抗体クローン22626(MAB218としても知られる)は、例えばSchaeferら、Nature(2017)552(7683):110~115頁において、IL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストであることが示された。モノクローナル抗体11h3/19.6.1は、Hermannら、Arthritis Rheum.(1998)41(8):1388~97頁で中和抗IL-11 IgG1であると開示されている。例えばMcCoyら、BMC Cancer(2013)13:16で使用されるR&D SystemsからのAB-218-NAは、中和抗IL-11抗体の別の例である。WO2018/109174A2およびWO2019/238882A1は、IL-11媒介シグナル伝達のさらなる例示的抗IL-11抗体アンタゴニストを開示する。Ngら、「IL-11 is therapeutic target in idiopathic pulmonary fibrosis。」bioRxiv 336537;doi:https://doi.org/10.1101/336537およびWO2019/238882A1で開示されるX203(Enx203とも呼ばれる)は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニストであり、WO2019/238882A1の配列番号92(本開示の配列番号22)によるVH領域、およびWO2019/238882A1の配列番号94(本開示の配列番号23)によるVL領域を含む。X203のヒト化バージョンがWO2019/238882A1に記載され、例えば、WO2019/238882A1の配列番号117(本開示の配列番号30)によるVH領域、およびWO2019/238882A1の配列番号122(本開示の配列番号31)によるVL領域を含むhEnx203が含まれる。Enx108Aは、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11抗体アンタゴニストのさらなる例であり、WO2019/238882A1の配列番号8(本開示の配列番号26)によるVH領域、およびWO2019/238882A1の配列番号20(本開示の配列番号27)によるVL領域を含む。
【0084】
IL-11Rαに結合することができる抗体には、例えばモノクローナル抗体クローン025(Sino Biological)、クローンEPR5446(Abcam)、クローン473143(R&D Systems)、クローン8E2、8D10および8E4、および米国特許出願公開第2014/0219919号に記載される8E2の親和性成熟バリアント、Blancら(J.Immunol Methods。2000年7月31日;241(1-2);43~59頁)に記載されるモノクローナル抗体、X209(Widjajaら、「IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH。」bioRxiv 470062;doi:https://doi.org/10.1101/470062、としても公開されている、Widjajaら、Gastroenterology(2019)157(3):777~792頁)、WO2014121325A1および米国特許出願公開第2013/0302277号で開示される抗体、ならびに米国特許出願公開第2009/0202533号、WO99/59608A2、WO2018/109170A2およびWO2019/238884A1で開示される抗IL-11Rα抗体が含まれる。
【0085】
特に、抗IL-11Rα抗体クローン473143(MAB1977としても知られる)は、例えばSchaeferら、Nature(2017)552(7683):110~115頁において、IL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストであることが示された。米国特許出願公開第2014/0219919号は、抗ヒトIL-11Rα抗体クローン8E2、8D10および8E4の配列を提供し、IL-11媒介シグナル伝達に拮抗するそれらの能力を開示する-例えば米国特許出願公開第2014/0219919号の[0489]~[0490]を参照する。米国特許出願公開第2014/0219919号は、クローン8E2の追加の62個の親和性成熟バリアントの配列情報をさらに提供し、そのうちの61個はIL-11媒介シグナル伝達に拮抗すると開示されている-米国特許出願公開第2014/0219919号の表3を参照する。WO2018/109170A2およびWO2019/238884A1は、IL-11媒介シグナル伝達のさらなる例示的抗IL-11Rα抗体アンタゴニストを開示する。Widjajaら、「IL-11 neutralising therapies target hepatic stellate cell-induced liver inflammation and fibrosis in NASH。」bioRxiv 470062;doi:https://doi.org/10.1101/470062およびWO2019/238884A1で開示されるX209(Enx209とも呼ばれる)は、IL-11媒介シグナル伝達の抗IL-11Rα抗体アンタゴニストであり、WO2019/238884A1の配列番号7(本開示の配列番号24)によるVH領域、およびWO2019/238884A1の配列番号14(本開示の配列番号25)によるVL領域を含む。X209のヒト化バージョンがWO2019/238884A1に記載され、例えば、WO2019/238884A1の配列番号11(本開示の配列番号32)によるVH領域、およびWO2019/238884A1の配列番号17(本開示の配列番号33)によるVL領域を含むhEnx209が含まれる。
【0086】
当業者は、所定の種/対象での治療使用のために好適な抗体生産技術によく通じている。例えば、ヒトでの治療使用のために好適な抗体生産手順は、ParkおよびSmolen、Advances in Protein Chemistry(2001)56:369~421頁(ここに参照により完全に組み込まれる)に記載される。
【0087】
所定の標的タンパク質(例えば、IL-11またはIL-11Rα)に対する抗体はモデル種(例えば、齧歯動物、ウサギ)で作製し、その後所定の種/対象での治療使用のためのそれらの適性を向上させるために工学操作することができる。例えば、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列により類似している抗体配列に到達するために(それによって抗体で処置したヒト対象で抗外因性抗体免疫応答の可能性を低減する)、モデル種の免疫化によって作製したモノクローナル抗体の1つまたは複数のアミノ酸を置換することができる。抗体可変ドメインでの改変は、抗体パラトープを保存するためにフレームワーク領域に焦点を合わせることができる。抗体ヒト化は抗体技術の分野におけるルーチン慣行の問題であり、例えばAlmagroおよびFransson、Frontiers in Bioscience(2008)13:1619~1633頁、Safdariら、Biotechnology and Genetic Engineering Reviews(2013)29(2):175~186頁およびLoら、Microbiology Spectrum(2014)2(1)でレビューされており、その全てはここに参照により完全に組み込まれる。そのような動物で作製した抗体が完全にヒトであるようにヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックモデル種で所定の標的タンパク質(例えばIL-11またはIL-11Rα)に対する抗体を作製することによって、ヒト化のための要件を回避することができる(例えば、ここに参照により完全に組み込まれる、Bruggemannら、Arch Immunol Ther Exp(Warsz)(2015)63(2):101~108頁に記載される)。
【0088】
所定の標的タンパク質(例えばIL-11またはIL-11Rα)に対する抗体の同定のためにファージディスプレイ技術を用いることもでき、それらは当業者に周知である。例えば、ヒト標的タンパク質に対する完全ヒト抗体の同定のためのファージディスプレイの使用は、例えば、Hoogenboom、Nat.Biotechnol.(2005)23、1105~1116頁およびChanら、International Immunology(2014)26(12):649~657頁でレビューされ、それらはここに参照により完全に組み込まれる。
【0089】
抗体/断片は、IL-11の生物活性を阻害する、または低減させるアンタゴニスト抗体/断片であってもよい。抗体/断片は、IL-11の生物学的効果、例えば、IL-11受容体による産生シグナル伝達を刺激するその能力を中和する、中和抗体であってもよい。中和活性を、T11マウス形質細胞腫細胞系(Nordan,R.P.ら(1987)J.Immunol.139:813頁)においてIL-11誘導性増殖を中和する能力によって測定することができる。
【0090】
IL-11またはIL-11Rα結合性抗体は、例えば、米国特許出願公開第2014/0219919号またはBlancら(J.Immunol Methods.2000年7月31日;241(1~2);43~59頁に記載されるアッセイを使用してIL-11媒介シグナル伝達に拮抗する能力のために評価することができる。簡潔には、IL-11およびIL-11Rα結合性抗体は、適当な種からのIL-11による刺激に応答して、適当な種からのIL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞の増殖を阻害する能力のためにin vitroで評価することができる。あるいは、IL-11およびIL-11Rα結合性抗体は、αSMA発現の評価によって、TGFβ1による線維芽細胞の刺激の後に線維芽細胞から筋線維芽細胞への移行を阻害する能力のためにin vitroで分析することができる(例えば、WO2018/109174A2(実施例6)およびWO2018/109170A2(実施例6)、Ngら、Sci Transl Med.(2019)11(511)pii:eaaw1237およびWidjajaら、Gastroenterology(2019)157(3):777~792に記載されるように)。
【0091】
抗体は一般に、6つのCDRを含む;軽鎖可変領域(VL)中の3つ:LC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3、および重鎖可変領域(VH)中の3つ:HC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む。6つのCDRは一緒になって、標的分子に結合する抗体の部分である、抗体のパラトープを規定する。VH領域およびVL領域は各CDRのいずれかの側のフレームワーク領域(FR)を含み、それはCDRのために足場を提供する。N末端からC末端にかけて、VH領域は以下の構造を含む:N項-[HC-FR1]-[HC-CDR1]-[HC-FR2]-[HC-CDR2]-[HC-FR3]-[HC-CDR3]-[HC-FR4]-C項;VL領域は、以下の構造を含む:N項-[LC-FR1]-[LC-CDR1]-[LC-FR2]-[LC-CDR2]-[LC-FR3]-[LC-CDR3]-[LC-FR4]-C項。
【0092】
Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)、Chothiaら、J.Mol.Biol.196:901~917頁(1987)に記載されたもの、およびRetterら、Nucl.Acids Res.(2005)33(suppl 1):D671~D674頁に記載されたようなVBASE2などの、抗体CDRおよびFRを定義するためのいくつかの異なる慣例がある。本明細書に記載される抗体のVH領域およびVL領域のCDRおよびFRは、カバットシステムによって規定される。
【0093】
一部の実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合性断片は、IL-11に特異的に結合する抗体に由来する(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)。一部の実施形態では、本開示による抗体またはその抗原結合性断片は、IL-11Rαに特異的に結合する抗体に由来する(例えば、Enx209またはhEnx209)。
【0094】
本開示による抗体および抗原結合性断片は、好ましくはIL-11媒介シグナル伝達を阻害する。そのような抗体/抗原結合性断片は、IL-11媒介シグナル伝達のアンタゴニストであると記載することができ、および/またはIL-11媒介シグナル伝達を中和する能力を有すると記載することができる。
【0095】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片はIL-11に結合する抗体のCDRを含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11結合性抗体(例えば、Enx108A、Enx203またはhEnx203)のCDRまたはこのCDRに由来するCDRを含む。
【0096】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVH領域を含む:
(1)
配列番号34のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号35のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号36のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、
または、HC-CDR1、HC-CDR2もしくはHC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVL領域を含む:
(2)
配列番号37のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号38のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号39のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
または、LC-CDR1、LC-CDR2もしくはLC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVH領域を含む:
(3)
配列番号40のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号41のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号42のアミノ酸配列を有するHC-CDR3
または、HC-CDR1、HC-CDR2もしくはHC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVL領域を含む:
(4)
配列番号43のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号44のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号45のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
または、LC-CDR1、LC-CDR2もしくはLC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0097】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、(1)によるCDRを組み込むVH領域、および(2)によるCDRを組み込むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、(3)によるCDRを組み込むVH領域、および(4)によるCDRを組み込むVL領域を含む。
【0098】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、IL-11に結合する抗体のVH領域およびVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11結合性抗体(例えばEnx108A、Enx203またはhEnx203)のVH領域およびVL領域、またはこのVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
【0099】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0100】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0101】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0102】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片はIL-11Rαに結合する抗体のCDRを含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11Rα結合性抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)のCDRまたはこのCDRに由来するCDRを含む。
【0103】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVH領域を含む:
(5)
配列番号46のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
配列番号47のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
配列番号48のアミノ酸配列を有するHC-CDR3
または、HC-CDR1、HC-CDR2もしくはHC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、以下のCDRを組み込むVL領域を含む:
(6)
配列番号49のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
配列番号50のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
配列番号51のアミノ酸配列を有するLC-CDR3
または、LC-CDR1、LC-CDR2もしくはLC-CDR3のうちの1つまたは複数の中の1つもしくは2つもしくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されるそのバリアント。
【0104】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、(5)によるCDRを組み込むVH領域、および(6)によるCDRを組み込むVL領域を含む。
【0105】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、IL-11Rαに結合する抗体のVH領域およびVL領域を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、本明細書に記載されるIL-11Rα結合性抗体(例えば、Enx209またはhEnx209)のVH領域およびVL領域、またはこのVH領域およびVL領域に由来するVH領域およびVL領域を含む。
【0106】
参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載されるCDR配列、VH領域配列またはVL領域配列)の1つまたは複数のアミノ酸が別のアミノ酸で置換される本発明による実施形態では、置換は、例えば以下の表による保存的置換であってよい。一部の実施形態では、中央欄の同じブロック中のアミノ酸が置換される。一部の実施形態では、右端の欄の同じ行のアミノ酸が置換される:
【0107】
【表1】
【0108】
一部の実施形態では、置換(複数可)は機能的に保存的であってよい。すなわち、一部の実施形態では、置換は、同等の非置換分子と比較して置換を含む抗体/断片の1つまたは複数の機能的特性(例えば標的結合性)に影響を及ぼすことができない(または、実質的に影響を及ぼすことができない)。
【0109】
一部の実施形態では、参照VH領域またはVL領域配列と比較した置換(複数可)は、VH領域またはVL領域配列の特定の領域または複数の領域に集中させることができる。例えば、参照VH領域またはVL領域配列からの変化は、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3および/またはFR4)の1つまたは複数に集中させることができる。
【0110】
本開示による抗体および抗原結合性断片を、関連する標的分子に結合することができるモノクローナル抗体(mAb)の配列を使用して設計および調製することができる。一本鎖可変断片(scFv)、FabおよびFab2断片などの抗体の抗原結合領域を使用/提供することもできる。「抗原結合性領域」または「抗原結合性断片」は、所定の抗体が特異的である標的に結合することが可能である抗体の任意の断片である。
【0111】
一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のVLおよびVH領域を含む。抗体の抗原結合領域のVLおよびVH領域は、一緒になってFv領域を構成する。一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のFv領域を含むか、またはそれからなる。Fv領域を、一本鎖として発現させることができるが、VHおよびVL領域は、例えば、可撓性オリゴペプチドによって共有的に連結される。したがって、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のVLおよびVH領域を含むscFvを含んでもよいか、またはそれからなってもよい。
【0112】
抗体の抗原結合領域のVLおよび軽鎖定常(CL)領域、ならびにVH領域および重鎖定常1(CH1)領域は、一緒になってFab領域を構成する。一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗体のFab領域を含むか、またはそれからなる。
【0113】
一部の実施形態では、抗体/断片は、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる全抗体を含むか、またはそれからなる。「全抗体」とは、免疫グロブリン(Ig)の構造と実質的に類似する構造を有する抗体を指す。様々な種類の免疫グロブリンおよびその構造が、例えば、SchroederおよびCavacini J Allergy Clin Immunol.(2010)125(202):S41~S52頁に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。G型の免疫グロブリン(すなわち、IgG)は、2つの重鎖と2つの軽鎖とを含む約150kDaの糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、重鎖は、VH、次いで、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含む重鎖定常領域を含み、同様に軽鎖は、VL、次いで、CLを含む。重鎖に応じて、免疫グロブリンを、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgE、またはIgMと分類することができる。軽鎖は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)であってもよい。
【0114】
一部の実施形態では、本開示の抗体/抗原結合性断片は免疫グロブリン重鎖定常配列を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列はヒト免疫グロブリン重鎖定常配列であってよい。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgEまたはIgM、例えばヒトIgG(例えば、hIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4)、hIgA(例えば、hIgA1、hIgA2)、hIgD、hIgEまたはhIgMの重鎖定常配列であるかまたはそれに由来する。一部では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、ヒトIgG1アロタイプ(例えば、G1m1、G1m2、G1m3またはG1m17)の重鎖定常配列であるかまたはそれに由来する。
【0115】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンG1定常(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、置換K214R、D356EおよびL358Mを含む(すなわち、G1m3アロタイプ)ヒト免疫グロブリンG1定常(IGHG1;UniProt:P01857-1、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。
【0116】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンG4定常(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常配列は、置換S241Pおよび/またはL248Eを含むヒト免疫グロブリンG4定常(IGHG4;UniProt:P01861、v1)の定常領域配列であるかまたはそれに由来する。S241P突然変異はヒンジ安定性であるが、L248E突然変異はIgG4の既に低いADCCエフェクター機能をさらに低減する(DaviesおよびSutton、Immunol Rev.2015年11月;268(1):139~159頁;Angalら、Mol Immunol.1993年1月;30(1):105~8頁)。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。
【0117】
一部の実施形態では、本開示の抗体/抗原結合性断片は免疫グロブリン軽鎖定常配列を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列はヒト免疫グロブリン軽鎖定常配列であってよい。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列は、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖、例えばヒト免疫グロブリンカッパ定常(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2)、またはヒト免疫グロブリンラムダ定常(IGLC;Cλ)、例えばIGLC1(UniProt:P0CG04-1、v1)、IGLC2(UniProt:P0DOY2-1、v1)、IGLC3(UniProt:P0DOY3-1、v1)、IGLC6(UniProt:P0CF74-1、v1)、またはIGLC7(UniProt:A0M8Q6-1、v3)であるかまたはそれに由来する。
【0118】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は免疫グロブリン軽鎖定常配列を含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンカッパ定常(IGKC;Cκ;UniProt:P01834-1、v2;配列番号90)であるかまたはそれに由来する。一部の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖定常配列は、ヒト免疫グロブリンラムダ定常(IGLC;Cλ)、例えばIGLC1、IGLC2、IGLC3、IGLC6またはIGLC7である。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号54のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は、配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含む。
【0119】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は以下を含む:(i)配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド、および(ii)配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド。
【0120】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は以下を含む:(i)配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド、および(ii)配列番号57のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド。
【0121】
一部の実施形態では、抗体/抗原結合性断片は以下を含む:(i)配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド、および(ii)配列番号59のアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性の1つを有するアミノ酸配列を含むかそれからなるポリペプチド。
【0122】
Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体断片を全て、大腸菌(E.coli)中で発現させ、それから分泌させ、かくして、大量の前記断片の容易な産生を可能にすることができる。
【0123】
全抗体、およびF(ab’)2断片は、「二価」である。「二価」とは、前記抗体およびF(ab’)2断片が2つの抗原結合部位を有することを意味する。対照的に、Fab、Fv、ScFvおよびdAb断片は、ただ1つの抗原結合部位を有する一価である。IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる合成抗体を、当業界で周知のファージディスプレイ技術を使用して作製することもできる。
【0124】
抗体を、非改変親抗体と比較して、抗体の抗原に対する親和性が改善された、改変抗体が生成される親和性成熟のプロセスによって産生することができる。親和性成熟抗体を、当業界で公知の手順、例えば、Marksら、Rio/Technology 10:779~783頁(1992);Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809~3813頁(1994);Schierら、Gene 169:147~155頁(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994~2004頁(1995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):331 0-15 9(1995);およびHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896頁(1992)に記載の手順によって産生することができる。
抗体/断片には、例えば2種類の抗原に結合するように2つの異なる抗体の2つの異なる断片で構成される二重特異性抗体が含まれる。二重特異性抗体は、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能である、本明細書に記載される抗体/断片を含む。抗体は、任意の所望の抗原であってもよい、第2の抗原に対する親和性を有する異なる断片を含有してもよい。二重特異性抗体の調製のための技術は、当業界で周知であり、例えば、Mueller,D.ら、(2010 Biodrugs 24(2):89~98頁)、Wozniak-Knopp G.ら、(2010 Protein Eng Des 23(4):289~297頁)、およびBaeuerle,PA.ら、(2009 Cancer Res 69(12):4941~4944頁)を参照されたい。二重特異性抗体および二重特異性抗原結合性断片を、全体が参照により本明細書に組み込まれるKontermann MAbs 2012、4(2):182~197頁に記載された形式などの任意の好適な形式で提供することができる。例えば、二重特異性抗体または二重特異性抗原結合性断片は、二重特異性抗体コンジュゲート(例えば、IgG2、F(ab’)2もしくはCovX-Body)、二重特異性IgGもしくはIgG様分子(例えば、IgG、scFv4-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、2 in 1-IgG、mAb2、もしくはTandemab common LC)、非対称性二重特異性IgGもしくはIgG様分子(例えば、kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、チャージペアもしくはSEED-body)、低分子二重特異性抗体(例えば、ダイアボディ(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAb、タンデムscFv(taFv)、タンデムdAb/VHH、トリプルボディ、トリプルヘッド、Fab-scFv、もしくはF(ab’)2-scFv2)、二重特異性FcおよびCH3融合タンパク質(例えば、taFv-Fc、ジ-ダイアボディ、scDb-CH3、scFv-Fc-scFv、HCAb-VHH、scFv-kih-Fc、もしくはscFv-kih-CH3)、または二重特異性融合タンパク質(例えば、scFv2-アルブミン、scDb-アルブミン、taFv-トキシン、DNL-Fab3、DNL-Fab4-IgG、DNL-Fab4-IgG-サイトカイン2)であってもよい。特に、Kontermann MAbs 2012、4(2):182~19頁の図2を参照されたい。
【0125】
二重特異性抗体を産生するための方法は、例えば、SegalおよびBast、2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1~2.13.16(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたように、抗体または抗体断片を、例えば、還元性ジスルフィドまたは非還元性チオエーテル結合と化学的に架橋するステップを含む。例えば、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオン酸(SPDP)を使用して、例えば、ヒンジ領域SH-基を介してFab断片を化学的に架橋して、ジスルフィド結合した二重特異性F(ab)2ヘテロ二量体を創出することができる。
【0126】
二重特異性抗体を産生するための他の方法は、例えば、D.M.およびBast,B.J.2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1~2.13.16に記載されたように、抗体産生ハイブリドーマを、例えば、ポリエチレングリコールと融合して、二重特異性抗体を分泌することができるクアドローマ細胞を産生するステップを含む。
【0127】
二重特異性抗体および二重特異性抗原結合性断片を、例えば、Antibody Engineering:Methods and Protocols、第2版(Humana Press、2012)、Chapter 40:Production of Bispecific Antibodies:Diabodies and Tandem scFv(Horning and Farber-Schwarz)、またはFrench、How to make bispecific antibodies、Methods Mol.Med.2000;40:333~339頁に記載されたように、例えば、抗原結合分子のためのポリペプチドをコードする核酸構築物からの発現によって、組換え産生することもできる。
【0128】
例えば、2つの抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン(すなわち、IL-11、IL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン、ならびに別の標的タンパク質に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン)をコードし、抗原結合ドメイン間に好適なリンカーまたは二量体化ドメインをコードする配列を含むDNA構築物を、分子クローニング技術によって調製することができる。その後、組換え二重特異性抗体を、好適な宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)中での構築物の発現(例えば、in vitroでの)によって産生させた後、発現された組換え二重特異性抗体を、必要に応じて精製することができる。
【0129】
デコイ受容体
IL-11またはIL-11含有複合体に結合することができるペプチドまたはポリペプチドベースの薬剤は、IL-11受容体、例えば、IL-11受容体のIL-11結合断片に基づくものであってもよい。
【0130】
一部の実施形態では、結合剤は、IL-11Rα鎖のIL-11結合断片を含んでもよく、好ましくは、可溶型であってよい、および/または膜貫通ドメインの1つもしくは複数、または全部を含まなくてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、gp130のIL-11結合断片を含んでもよく、好ましくは、可溶型であってよい、および/または膜貫通ドメインの1つもしくは複数、または全部を含まなくてもよい。そのような分子は、デコイ受容体と記載することができる。そのような薬剤の結合は、IL-11がIL-11の受容体、例えば、IL-11Rαまたはgp130に結合する能力を低減させる/防止することによって、下流のシグナル伝達を阻害することにより、IL-11媒介性cisおよび/またはtransシグナル伝達を阻害することができる。
【0131】
Curtisら(Blood 1997 Dec 1;90(11):4403~12頁)は、可溶型マウスIL-11受容体アルファ鎖(sIL-11R)が、膜貫通型IL-11Rおよびgp130を発現する細胞上で試験した場合、IL-11の活性と拮抗することができたと報告している。彼らは、sIL-11Rによる観察されたIL-11拮抗作用が、膜貫通型IL-11Rを既に発現している細胞上のgp130分子数の限定に依存すると提唱した。
【0132】
シグナル伝達の阻害および治療介入のための基礎としての可溶型デコイ受容体の使用は、他のシグナル伝達分子:受容体対、例えば、VEGFとVEGF受容体についても報告されている(De-Chao Yuら、Molecular Therapy(2012);20 5、938~947頁;KonnerおよびDupont Clin Colorectal Cancer 2004 Oct;4 Suppl 2:S81~5頁)。
【0133】
そのため、一部の実施形態では、結合剤は、デコイ受容体、例えば、IL-11および/またはIL-11含有複合体の可溶型受容体であってもよい。デコイ受容体によって提供されるIL-11および/またはIL-11含有複合体の競合は、IL-11アンタゴニスト作用をもたらすと報告されている(Curtisら、上掲)。デコイIL-11受容体は、WO2017/103108A1およびWO2018/109168A1にも記載されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
デコイIL-11受容体は、好ましくは、IL-11および/またはIL-11含有複合体に結合し、それによって、これらの種が、gp130、IL-11Rαおよび/またはgp130:IL-11Rα受容体に結合できないようにする。そのため、それらは、エタネルセプトがTNFαのデコイ受容体として作用するのとほぼ同じ方法で、IL-11およびIL-11含有複合体のための「デコイ」受容体として作用する。IL-11媒介性シグナル伝達は、デコイ受容体の非存在下でのシグナル伝達のレベルと比較して低減する。
【0135】
デコイIL-11受容体は、好ましくは、1つまたは複数のサイトカイン結合モジュール(CBM)を介してIL-11に結合する。CBMは、天然に存在するIL-11の受容体分子のCBMであるか、またはそれから誘導されるか、またはそれと相同である。例えば、デコイIL-11受容体は、gp130および/またはIL-11RαのCBMに由来する、それから誘導される、またはそれと相同である1つまたは複数のCBMを含むか、またはそれからなってもよい。
【0136】
一部の実施形態では、デコイIL-11受容体は、gp130のサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでもよい、またはそれからなってもよい。一部の実施形態では、デコイIL-11受容体は、IL-11Rαのサイトカイン結合モジュールに対応するアミノ酸配列を含んでもよい。ここで、所与のペプチド/ポリペプチドの参照領域または配列に「対応する」アミノ酸配列は、参照領域/配列のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性のうちの1つを有する。
【0137】
一部の実施形態では、デコイ受容体は、例えば、少なくとも100μM以下、必要に応じて、10μM以下、1μM以下、100nM以下、または約1~100nMのうちの1つの結合親和性で、IL-11に結合することができてもよい。一部の実施形態では、デコイ受容体は、IL-11結合ドメインの全部または一部を含んでもよく、必要に応じて、膜貫通ドメインの全部または一部を欠いてもよい。デコイ受容体を、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域、例えば、IgG Fc領域に融合することができる。
【0138】
阻害剤
本発明は、1つまたは複数のIL-11、複合体を含有するIL-11、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体に結合し、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な阻害剤分子の使用を企図する。
【0139】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11に基づくペプチドまたはポリペプチド系の結合薬剤、例えばIL-11の突然変異体、バリアントまたは結合断片である。好適なペプチドまたはポリペプチドに基づく薬剤は、シグナル伝達の開始へ導かないかまたは最適以下のシグナル伝達をもたらす方法で、IL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)に結合することができる。この種類のIL-11突然変異体は、内因性IL-11の競合阻害剤として作用することができる。
【0140】
例えば、W147Aは、IL-11のいわゆる「部位III」を破壊する、アミノ酸147がトリプトファンからアラニンに突然変異されたIL-11アンタゴニストである。この変異体は、IL-11Rαに結合することができるが、gp130ホモ二量体の咬合が失敗し、IL-11シグナル伝達の効率的な遮断をもたらす(Underhill-Dayら、2003;Endocrinology 2003 Aug;144(8):3406~14頁)。Leeら(Am J respire Cell Mol Biol.2008 Dec;39(6):739~746頁)も、IL-11のIL-11Rαへの結合を特異的に阻害することができるIL-11アンタゴニスト変異体(「変異タンパク質」)の生成を報告している。IL-11変異タンパク質は、WO2009/052588A1にも記載されている。
【0141】
Menkhorstら(Biology of Reproduction May1、2009、vol.80、no.5、920~927頁)は、メスのマウスにおけるIL-11作用を阻害するのに有効である、PEG化されたIL-11アンタゴニスト、PEGIL11A(CSL Limited、Parkvill、Victoria、Australia)を記載している。
【0142】
Pasqualiniら、Cancer(2015)121(14):2411~2421頁は、IL-11Rαに結合することができる、リガンド指向性のペプチド模倣薬、骨転移標的化ペプチド模倣体-11(BMTP-11)を記載している。
【0143】
一部の実施形態では、IL-11の受容体に結合することができる結合剤を、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体のうちの1つの低分子阻害剤の形態で提供することができる。一部の実施形態では、結合剤を、IL-11またはIL-11含有複合体の低分子阻害剤、例えば、Layら、Int.J.Oncol.(2012);41(2):759~764頁(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたIL-11阻害剤の形態で提供することができる。
【0144】
アプタマー
一部の実施形態では、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合することができる薬剤は、アプタマーである。核酸/ペプチドリガンドとも呼ばれるアプタマーは、高い特異性および高い親和性で標的分子に結合する能力を特徴とする核酸またはペプチド分子である。今まで同定されたほぼ全てのアプタマーは、天然には存在しない分子である。
【0145】
所与の標的(例えば、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体)に対するアプタマーを、Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment(SELEX(商標))の方法によって、またはSOMAmers(遅い解離速度の修飾アプタマー)(Gold Lら(2010)PLoS ONE 5(12):e15004)を開発することによって同定および/または産生することができる。アプタマーおよびSELEXは、TuerkおよびGold、Science(1990)249(4968):505~10頁、およびWO91/19813に記載されている。SELEXおよびSOMAmer技術の適用は、例えば、アプタマーの化学的多様性を拡張するためにアミノ酸側鎖を模倣する官能基を付加することを含む。結果として、標的のための高親和性アプタマーを富化し、同定することができる。
【0146】
アプタマーは、DNAまたはRNA分子であってもよく、一本鎖または二本鎖であってもよい。アプタマーは、例えば、糖および/またはリン酸および/または塩基が化学的に修飾された、化学的に修飾された核酸を含んでもよい。そのような修飾は、アプタマーの安定性を改善するか、またはアプタマーを、分解に対してより耐性にしてもよく、リボースの2’位に修飾を含んでもよい。
【0147】
アプタマーを、当業者には周知の方法によって合成することができる。例えば、アプタマーを、例えば、固相支持体上で化学的に合成することができる。固相合成は、ホスホロアミダイト化学を使用してもよい。簡単に述べると、固相支持されたヌクレオチドを脱トリチル化した後、好適に活性化されたヌクレオシドホスホロアミダイトとカップリングさせて、亜リン酸トリエステル結合を形成させる。次いで、キャッピングを行った後、酸化剤、典型的には、ヨウ素を用いた亜リン酸トリエステルの酸化を行うことができる。次いで、サイクルを繰り返して、アプタマーを集合させることができる(例えば、Sinha,N.D.;Biernat,J.;McManus,J.;Koster,H.Nucleic Acids Res.1984、12、4539頁;およびBeaucage,S.L.;Lyer,R.P.(1992).Tetrahedron 48(12):2223頁を参照されたい)。
【0148】
好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオチドのうちの1つの最小の長さを有してもよい。好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80ヌクレオチドのうちの1つの最大の長さを有してもよい。好適な核酸アプタマーは、必要に応じて、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80ヌクレオチドのうちの1つの長さを有してもよい。
【0149】
アプタマーは、特定の標的分子に結合するように選択および操作されたペプチドであってもよい。ペプチドアプタマーならびにその生成および同定のための方法は、Reverdattoら、Curr Top Med Chem.(2015)15(12):1082~101頁に概説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ペプチドアプタマーは、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸のうちの1つの最小の長さを有してもよい。ペプチドアプタマーは、必要に応じて、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50アミノ酸のうちの1つの最大の長さを有してもよい。好適なペプチドアプタマーは、必要に応じて、2~30、2~25、2~20、5~30、5~25または5~20アミノ酸のうちの1つの長さを有してもよい。
【0150】
アプタマーは、nMまたはpM範囲、例えば、500nM、100nM、50nM、10nM、1nM、500pM、100pM未満のうちの1つのKを有してもよい。
【0151】
IL-11結合剤の特性
本発明によるIL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤は、以下の特性の1つまたは複数を示すことができる:
・IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体への特異的結合;
・IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体への10μM以下、好ましくは≦5μM、≦1μM、≦500nM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦100pMのうちの1つのKDによる結合;
・IL-11およびIL-11Rαの間の相互作用の阻害;
・IL-11およびgp130の間の相互作用の阻害;
・IL-11およびIL-11Rα:gp130受容体複合体の間の相互作用の阻害;
・IL-11:IL-11Rα複合体およびgp130の間の相互作用の阻害;ならびに
・IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用の阻害(すなわち、そのような複合体の多量体化)。
【0152】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。
【0153】
例えば、試験抗体/抗原結合性断片がIL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体に結合する能力の分析のための好適な陰性対照は、非標的タンパク質に対する抗体/抗原結合性断片(すなわち、IL-11/IL-11含有複合体/IL-11の受容体に特異的ではない抗体/抗原結合性断片)であってもよい。好適な陽性対照は、既知の、検証された(例えば、市販の)IL-11またはIL-11受容体に結合する抗体であってもよい。対照は、分析される推定IL-11/IL-11含有複合体/IL-11受容体結合抗体/抗原結合性断片と同じアイソタイプのものであってよく、例えば、同じ定常領域を有してもよい。
【0154】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体、またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に特異的に結合することができてもよい。所与の標的分子に特異的に結合する薬剤は、好ましくは、それが他の非標的分子に結合するよりも高い親和性、および/または長い持続期間で標的に結合する。
【0155】
一部の実施形態では、薬剤はIL-6サイトカインファミリー(例えばIL-6、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)およびカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC))の1つまたは複数の他のメンバーへの結合の親和性より大きな親和性で、IL-11またはIL-11含有複合体に結合することができる。一部の実施形態では、薬剤は、IL-6受容体ファミリーの1つまたは複数の他のメンバーに結合する親和性よりも高い親和性でIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130、またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)に結合してもよい。一部の実施形態では、薬剤は、IL-6Rα、白血病抑制因子受容体(LIFR)、オンコスタチンM受容体(OSMR)、毛様体神経栄養因子受容体アルファ(CNTFRα)およびサイトカイン受容体様因子1(CRLF1)の1つまたは複数への結合の親和性より大きな親和性でIL-11Rαに結合することができる。
【0156】
一部の実施形態では、結合剤の非標的への結合の程度は、例えば、ELISA、SPR、バイオレイヤー干渉法(BLI)、マイクロスケール熱泳動法(MST)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、薬剤の標的への結合の約10%未満である。あるいは、結合特異性は、結合剤が、別の非標的分子に対するKよりも少なくとも0.1桁高い(すなわち、0.1x10n(式中、nは桁を表す整数である))Kで、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合する場合、結合親和性を単位として反映されてもよい。これは、必要に応じて、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、または2.0のうちの1つであってもよい。
【0157】
所与の結合剤の、その標的に対する結合親和性は、その解離定数(K)を単位として記載されることが多い。結合親和性は、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、Heartyら、Methods Mol Biol(2012)907:411~442頁;またはRichら、Anal Biochem.2008 Feb 1;373(1):112~20頁を参照されたい)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Ladら(2015)J Biomol Screen 20(4):498~507頁;もしくはConcepcionら、Comb Chem High Throughput Screen.2009 Sep;12(8):791~800頁を参照されたい)、マイクロスケール熱泳動(MST)分析(例えば、Jerabek-Willemsenら、Assay Drug Dev Technol.2011 Aug;9(4):342~353頁を参照されたい)、または放射標識抗原結合アッセイ(RIA)などの、当業界で公知の方法によって測定することができる。
【0158】
一部の実施形態では、薬剤は、50μM以下、好ましくは、10μM以下、5μM以下、4μM以下、3μM以下、2μM以下、1μM、500nM以下、100nM以下、75nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、15nM以下、12.5nM以下、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下のうちの1つのKでIL-11またはIL-11含有複合体、またはIL-11の受容体に結合することができる。
【0159】
一部の実施形態では、薬剤は、EC50=10,000ng/ml以下、好ましくは、5,000ng/ml以下、1000ng/ml以下、900ng/ml以下、800ng/ml以下、700ng/ml以下、600ng/ml以下、500ng/ml以下、400ng/ml以下、300ng/ml以下、200ng/ml以下、100ng/ml以下、90ng/ml以下、80ng/ml以下、70ng/ml以下、60ng/ml以下、50ng/ml以下、40ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、15ng/ml以下、10ng/ml以下、7.5ng/ml以下、5ng/ml以下、2.5ng/ml以下、または1ng/ml以下のうちの1つの結合の親和性(例えば、ELISAによって決定された場合)で、IL-11、IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合する。そのようなELISAを、例えば、Antibody Engineering、vol.1(第2版)、Springer Protocols、Springer(2010)、Part V、657~665頁に記載のように実施することができる。
【0160】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の受容体、例えば、gp130またはIL-11Rαへの結合にとって重要である領域中でIL-11またはIL-11含有複合体に結合することによって、IL-11もしくはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用、および/または受容体を介するシグナル伝達を阻害する。一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体への結合にとって重要である領域中でIL-11の受容体に結合することによって、IL-11もしくはIL-11含有複合体と、IL-11の受容体との相互作用を阻害する、および/または受容体を介するシグナル伝達を阻害する。
【0161】
所与の結合剤(例えば、IL-11/IL-11含有複合体またはIL-11の受容体に結合することができる薬剤)が2つのタンパク質間の相互作用を阻害する能力を、例えば、結合剤の存在下での、または相互作用パートナーの一方もしくは両方の、結合剤とのインキュベーション後の相互作用の分析によって決定することができる。所与の結合剤が2つの相互作用パートナー間の相互作用を阻害することができるかどうかを決定するための好適なアッセイの例は、競合ELISAである。
【0162】
所定の相互作用(例えば、IL-11およびIL-11Rαの間、またはIL-11およびgp130の間、またはIL-11およびIL-11Rα:gp130の間、またはIL-11:IL-11Rαおよびgp130の間、またはIL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間)を阻害することが可能である結合性薬剤は、結合性薬剤の不在下での(または適当な対照結合性薬剤の存在下での)相互作用のレベルと比較した、結合性薬剤の存在下での-またはそれとの相互作用パートナーの片方または両方のインキュベーションの後の-相互作用パートナーの間の相互作用のレベルの低減/低下の観察によって同定される。好適な分析を、例えば、組換え相互作用パートナーを使用して、または相互作用パートナーを発現する細胞を使用して、in vitroで実施することができる。相互作用パートナーを発現する細胞は、内因的にそうするか、または細胞中に導入された核酸からそうしてもよい。そのようなアッセイのために、相互作用パートナーおよび/または結合剤の一方または両方を、相互作用レベルを検出および/または測定するために検出可能な実体で標識するか、またはそれと共に使用することができる。例えば、薬剤を、放射性原子または着色された分子または蛍光分子または任意の他の方法で容易に検出することができる分子で標識することができる。好適な検出可能分子としては、蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、酵素基質、および放射標識が挙げられる。結合剤を、検出可能な標識で直接標識するか、またはそれを間接的に標識することができる。例えば、結合剤は未標識であってもよく、それ自体、標識されている別の結合剤によって検出することができる。あるいは、第2の結合剤は、それにビオチンを結合されていてもよく、標識されたストレプトアビジンのビオチンへの結合を使用して、第1の結合剤を間接的に標識することができる。
【0163】
結合剤が2つの結合パートナー間の相互作用を阻害する能力を、そのような相互作用の下流の機能的結果、例えば、IL-11媒介性シグナル伝達の分析によって決定することもできる。例えば、IL-11とIL-11Rα:gp130の間またはIL-11:IL-11Rαとgp130の間、またはIL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用の下流の機能的結果は、例えばIL-11によって媒介される工程、または例えばコラーゲンもしくはIL-11の遺伝子/タンパク質発現を含んでもよい。
【0164】
IL-11またはIL-11含有複合体およびIL-11の受容体の間の相互作用の阻害は、3Hチミジン組込みおよび/またはBa/F3細胞増殖アッセイ、例えば、例えばCurtisら、Blood、1997、90(11)およびKarpovichら、Mol.Hum.Reprod.2003、9(2):75~80頁に記載のものを使用して分析することができる。Ba/F3細胞は、IL-11Rαおよびgp130を同時発現する。
【0165】
一部の実施形態では、結合性薬剤は、IL-11およびIL-11Rαの間の相互作用を、結合性薬剤の不在下での(または適当な対照結合性薬剤の存在下での)IL-11およびIL-11Rαの間の相互作用のレベルの100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つまで阻害することが可能であってよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rαとの相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rαとの相互作用を阻害することができてもよい。
【0166】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とgp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とgp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0167】
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11とIL-11Rα:gp130との相互作用を阻害することができてもよい。
一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下(または適切な対照結合剤の存在下)でのIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用レベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、結合剤は、結合剤の非存在下でのIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用レベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11:IL-11Rα複合体とgp130との相互作用を阻害することができてもよい。
【0168】
一部の実施形態では、結合性薬剤は、IL-11:IL-11Rα:gp130複合体(すなわち、そのような複合体の多量体化)の間の相互作用を、結合性薬剤の不在下での(または適当な対照結合性薬剤の存在下での)IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用のレベルの100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つまで阻害することが可能であってよい。一部の実施形態では、結合性薬剤は、IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用を、結合性薬剤の不在下でのIL-11:IL-11Rα:gp130複合体の間の相互作用のレベルの1倍未満、例えば≦0.99倍、≦0.95倍、≦0.9倍、≦0.85倍、≦0.8倍、≦0.75倍、≦0.7倍、≦0.65倍、≦0.6倍、≦0.55倍、≦0.5倍、≦0.45倍、≦0.4倍、≦0.35倍、≦0.3倍、≦0.25倍、≦0.2倍、≦0.15倍、≦0.1倍のうちの1つまで阻害することが可能である。
【0169】
IL-11またはIL-11受容体の発現を低減することが可能な薬剤
本発明の態様では、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を阻止または低減することが可能であってよい。
【0170】
発現は遺伝子またはタンパク質の発現であってよく、本明細書に記載されるように、または当業者に周知である当技術分野の方法によって決定することができる。発現は、対象の細胞/組織/臓器/臓器系によるものであってもよい。
【0171】
好適な薬剤は、任意の種類のものであってもよいが、一部の実施形態では、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を防止するか、または低減することができる薬剤は、低分子またはオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0172】
IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数の発現を防止する、または低減することができる薬剤は、例えば、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードする遺伝子の転写を阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの転写後プロセッシングを阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの安定性を低減すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130をコードするRNAの分解を促進すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの翻訳後プロセッシングを阻害すること、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの安定性を低減すること、またはIL-11、IL-11Rαもしくはgp130ポリペプチドの分解を促進することによって、そうしてもよい。
【0173】
Takiら、Clin Exp Immunol(1998)Apr;112(1):133~138頁は、インドメタシン、デキサメタゾンまたはインターフェロン-ガンマ(IFNγ)を用いた処置時のリウマチ滑膜細胞中でのIL-11の発現の低減を報告した。
【0174】
本発明は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止/低減するアンチセンス核酸の使用を企図する。一部の実施形態では、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を阻止または低減することが可能な薬剤は、RNA干渉(RNAi)によって発現の低減を引き起こすことができる。
【0175】
一部の実施形態では、薬剤は、限定されるものではないが、shRNAまたはsiRNAを含む、アンチセンスまたは低分子干渉RNAなどの阻害的核酸であってもよい。
【0176】
一部の実施形態では、阻害性核酸はベクター中で提供される。例えば、一部の実施形態では、薬剤は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130のうちの1つまたは複数のためのshRNAをコードするレンチウイルスベクターであってもよい。
【0177】
オリゴヌクレオチド分子、特に、RNAを用いて、遺伝子発現を調節することができる。これらのものは、オリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAの標的化された分解、転写後遺伝子サイレンシング(PTG)、マイクロRNA(miRNA)によるmRNAの発生調節された配列特異的翻訳抑制、および標的化された転写遺伝子サイレンシングを含む。
【0178】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的オリゴヌクレオチド、例えば、mRNAを相補的配列結合によって標的化し、それに結合する、好ましくは一本鎖のオリゴヌクレオチドである。標的オリゴヌクレオチドがmRNAである場合、アンチセンスのmRNAへの結合は、mRNAの翻訳および遺伝子産物の発現をブロックする。アンチセンスオリゴヌクレオチドを、センスゲノム核酸に結合し、標的ヌクレオチド配列の転写を阻害するように設計することができる。
【0179】
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のための既知の核酸配列(例えば、受託番号BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)を考慮して、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制するか、またはサイレンシングするようにオリゴヌクレオチドを設計することができる。
【0180】
そのようなオリゴヌクレオチドは任意の長さを有することができるが、好ましくは短く、例えば100ヌクレオチド未満、例えば10~40ヌクレオチドまたは20~50ヌクレオチドであってよく、標的オリゴヌクレオチド、例えばIL-11、IL-11Rαまたはgp130のmRNA中の対応する長さのヌクレオチド配列と完全なまたはそれに近い相補性(例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相補性)を有するヌクレオチド配列を含むことができる。ヌクレオチド配列の相補領域は、任意の長さを有してもよいが、好ましくは、少なくとも5、必要に応じて、50以下のヌクレオチド長、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドのうちの1つである。
【0181】
IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制は、好ましくは、細胞/組織/臓器/臓器系/対象によって発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量の減少をもたらすと予想される。例えば、所与の細胞中での、好適な核酸の投与によるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の抑制は、未処理の細胞と比較して、その細胞によって発現されるIL-11、IL-11Rαまたはgp130の量の減少をもたらすと予想される。抑制は、部分的であってもよい。好ましい抑制の程度は、少なくとも50%、より好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、85%または90%のうちの1つである。90%~100%の抑制のレベルは、発現または機能の「サイレンシング」と考えられる。
【0182】
ヘテロクロマチン複合体の標的化および特定の染色体遺伝子座でのエピジェネティックな遺伝子サイレンシングにおけるRNAi機構および低分子RNAの役割は証明されている。RNA干渉(RNAi)としても知られる、二本鎖RNA(dsRNA)依存的転写後サイレンシングは、dsRNA複合体が短期間でサイレンシングのための特定の相同遺伝子を標的化することができる現象である。それは、配列同一性を有するmRNAの分解を促進するためのシグナルとして作用する。20ntのsiRNAは、一般には遺伝子特異的サイレンシングを誘導するには十分に長いが、宿主応答を回避するには十分に短い。標的遺伝子産物の発現の減少は、広範囲に及んでもよく、90%のサイレンシングが少ないsiRNA分子によって誘導される。RNAiに基づく治療剤は、いくつかの適応症のための第I、IIおよびIII相臨床試験に進行している(Nature 2009 Jan 22;457(7228):426~433頁)。
【0183】
当業界では、これらのRNA配列は、その起源に応じて、「短い、または低分子干渉RNA」(siRNA)または「マイクロRNA」(miRNA)と呼ばれる。両方の型の配列を使用して、相補的RNAに結合し、mRNA除去を誘発する(RNAi)またはタンパク質へのmRNA翻訳を停止させることによって、遺伝子発現を下方調節することができる。siRNAは、長い二本鎖RNAのプロセッシングによって誘導され、天然に見出される場合、典型的には、外因性起源のものである。マイクロ干渉RNA(miRNA)は、短いヘアピンのプロセッシングによって誘導される、内因性にコードされた低分子非コードRNAである。siRNAとmiRNAは両方とも、RNAを切断することなく、部分的に相補的な標的配列を担持するmRNAの翻訳を阻害し、完全に相補的な配列を担持するmRNAを分解することができる。
【0184】
siRNAリガンドは、典型的には、二本鎖であり、標的遺伝子の機能のRNA媒介性下方調節の有効性を最適化するためには、siRNA分子の長さは、mRNA標的のsiRNAによる認識を媒介するRISC複合体によるsiRNAの正確な認識を確保するように選択され、したがって、siRNAは宿主応答を低減させるのに十分に短いのが好ましい。
【0185】
miRNAリガンドは、典型的には、一本鎖であり、部分的に相補的であり、リガンドがヘアピンを形成するのを可能にする領域を有する。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列は、miRNAよりも長い。このDNA配列は、miRNA配列および近似逆相補体を含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写される場合、miRNA配列およびその逆相補体は、塩基対を形成して、部分的二本鎖RNAセグメントを形成する。マイクロRNA配列の設計は、Johnら、PLoS Biology、11(2)、1862~1879頁、2004に考察されている。
【0186】
典型的には、siRNAまたはmiRNAの効果を模倣するように意図されたRNAリガンドは、10~40個のリボヌクレオチド(またはその合成アナログ)、より好ましくは、17~30個のリボヌクレオチド、より好ましくは、19~25個のリボヌクレオチド、最も好ましくは、21~23個のリボヌクレオチドを有する。二本鎖siRNAを利用する本発明の一部の実施形態では、分子は、対称性3’突出部、例えば1つまたは2つの(リボ)ヌクレオチド、一般にdTdT 3’突出部のUUを有することができる。本明細書に提供される開示に基づいて、当業者であれば、例えば、Ambion siRNAファインダーなどの資源を使用して、好適なsiRNAおよびmiRNA配列を容易に設計することができる。siRNAおよびmiRNA配列を合成的に産生し、外因的に付加して、遺伝子下方調節を引き起こすか、または発現系(例えば、ベクター)を使用して産生することができる。好ましい実施形態では、siRNAは、合成される。
【0187】
より長い二本鎖RNAを、細胞中でプロセッシングして、siRNAを産生してもよい(例えば、Myers(2003)Nature Biotechnology 21:324~328頁を参照されたい)。より長いdsRNA分子は、例えば、1もしくは2個の(リボ)ヌクレオチドの、対称性3’もしくは5’突出部を有してもよいか、または平滑末端を有してもよい。より長いdsRNA分子は、25ヌクレオチドまたはそれより長くてもよい。好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~30ヌクレオチド長である。より好ましくは、より長いdsRNA分子は、25~27ヌクレオチド長である。最も好ましくは、より長いdsRNA分子は、27ヌクレオチド長である。30ヌクレオチド以上の長さのdsRNAを、ベクターpDECAP(Shinagawaら、Genes and Dev.、17、1340~5頁、2003)を使用して発現させることができる。
【0188】
別の選択肢は、細胞中での短いヘアピンRNA分子(shRNA)の発現である。shRNAは、合成siRNAよりも安定である。shRNAは、小さいループ配列によって隔てられた短い逆方向反復からなる。1つの逆方向反復は、遺伝子標的と相補的である。細胞中で、shRNAはDICERによって、標的遺伝子のmRNAを分解し、発現を抑制するsiRNAにプロセッシングされる。好ましい実施形態では、shRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。ヒトH1もしくは7SKプロモーターなどのRNAポリメラーゼIIIプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIプロモーターの制御下で、shRNA配列をコードするベクターを細胞にトランスフェクトすることによって、shRNAを細胞内で産生させることができる。あるいは、shRNAを、ベクターからの転写によって外因的に(in vitroで)合成することができる。次いで、shRNAを、細胞中に直接導入することができる。好ましくは、shRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含む。好ましくは、shRNA配列は、40~100塩基長、より好ましくは、40~70塩基長である。ヘアピンのステムは、好ましくは、19~30塩基対の長さである。ステムは、ヘアピン構造を安定化するためのG-U対を含有してもよい。
【0189】
siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子を、好ましくは、ベクター内に含有される核酸配列の転写によって組換え的に作製することができる。好ましくは、siRNA分子、より長いdsRNA分子またはmiRNA分子は、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の部分配列を含む。
【0190】
一実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって内因的に(細胞内で)産生される。ベクターは、当業界で公知の任意の方法で細胞中に導入してもよい。必要に応じて、RNA配列の発現を、組織特異的(例えば、肝臓特異的)プロモーターを使用して調節することができる。さらなる実施形態では、siRNA、より長いdsRNAまたはmiRNAは、ベクターからの転写によって外因的(in vitroで)産生される。
【0191】
好適なベクターは、IL-11、IL-11Rαまたはgp130抑制することができるオリゴヌクレオチド剤を発現するように構成されたオリゴヌクレオチドベクターであってもよい。そのようなベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターであってもよい。治療的オリゴヌクレオチドを、ウイルスベクターのゲノム中に組み込み、調節配列、例えば、その発現を駆動するプロモーターに作動可能に連結することができる。用語「作動可能に連結されている」は、選択されたヌクレオチド配列および調節ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を、調節配列の影響または制御下に置くような方法で共有的に連結される状況を含んでもよい。かくして、調節配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部または全部を形成するヌクレオチド配列の転写を行うことができる場合、調節配列は選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0192】
プロモーターにより発現されるsiRNA配列をコードするウイルスベクターは、当業界で公知であり、治療的オリゴヌクレオチドの長期的発現の利益を有する。例としては、レンチウイルス(Nature 2009 Jan 22;457(7228):426~433頁)、アデノウイルス(Shenら、FEBS Lett 2003 Mar 27;539(1~3)111~4頁)およびレトロウイルス(BartonおよびMedzhitov、PNAS November 12、2002、vol.99、no.23、14943~14945頁)が挙げられる。
【0193】
他の実施形態では、ベクターを、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現の抑制が必要とされる部位への治療的オリゴヌクレオチドの送達を補助するように構成することができる。そのようなベクターは、典型的には、オリゴヌクレオチドを、正に荷電したベクター(例えば、カチオン性細胞透過性ペプチド、カチオン性ポリマーおよびデンドリマー、ならびにカチオン性脂質)と複合体化すること;オリゴヌクレオチドを、低分子(例えば、コレステロール、胆汁酸、および脂質)、ポリマー、抗体、およびRNAとコンジュゲートすること;またはオリゴヌクレオチドを、ナノ粒子製剤中に封入すること(Wangら、AAPS J.2010 Dec;12(4):492~503頁)を含む。
【0194】
一実施形態では、RNAとして発現された場合、センスおよびアンチセンスセクションが会合して二本鎖RNAを形成するように、ベクターは、センス配向とアンチセンス配向の両方の核酸配列を含んでもよい。
【0195】
あるいは、siRNA分子を、当業界で公知である標準的な固相または液相合成技術を使用して合成することができる。ヌクレオチド間の連結は、ホスホジエステル結合であってもよく、またはあるいは、例えば、式P(O)S、(チオエート);P(S)S、(ジチオエート);P(O)NR’2;P(O)R’;P(O)OR6;CO;もしくはCONR’2(式中、RはH(もしくは塩)またはアルキル(1~12C)であり、R6はアルキル(1~9C)である)の連結基が、-O-もしくは-S-を介して隣接するヌクレオチドに連結される。
【0196】
修飾ヌクレオチド塩基を、天然に存在する塩基に加えて使用してもよく、それらは、それらを含有するsiRNA分子に対して有利な特性を付与してもよい。
【0197】
例えば、修飾塩基は、siRNA分子の安定性を増大させることによって、サイレンシングにとって必要とされる量を低減することができる。修飾塩基の提供はまた、多かれ少なかれ、非修飾siRNAよりも安定であるsiRNA分子を提供することもできる。
【0198】
用語「修飾ヌクレオチド塩基」は、共有的に修飾された塩基および/または糖を有するヌクレオチドを包含する。例えば、修飾ヌクレオチドは、3’位でヒドロキシル基以外および5’位でリン酸基以外の低分子量有機基に共有的に結合される糖を有するヌクレオチドを含む。かくして、修飾ヌクレオチドはまた、2’-O-メチル-;2’-O-アルキル;2’-O-アリル;2’-S-アルキル;2’-S-アリル;2’-フルオロ-;2’-ハロまたはアジド-リボースなどの2’置換された糖、炭素環式糖アナログ、a-アノマー糖;アラビノース、キシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、およびセドヘプツロースを含んでもよい。
【0199】
修飾ヌクレオチドは、当業界で公知であり、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンおよびピリミジン、ならびに他の複素環を含む。これらのクラスのピリミジンおよびプリンは、当業界で公知であり、シュードイソシトシン、N4,N4-エタノシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデニン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンチル-アデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、D-マンノシルケオシン、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル5-オキシ酢酸、ケオシン、2-チオシトシン、5-プロピルウラシル、5-プロピルシトシン、5-エチルウラシル、5エチルシトシン、5-ブチルウラシル、5-ペンチルウラシル、5-ペンチルシトシン、および2,6ジアミノプリン、メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルシトシンが挙げられる。
【0200】
C.elegans、Drosophila、植物、および哺乳動物において遺伝子をサイレンシングするためのRNAiの使用に関する方法は、当業界で公知である(Fire A.ら、1998 Nature 391:806~811頁;Fire,A.Trends Genet.15、358~363頁(1999);Sharp,P.A.RNA interference 2001、Genes Dev.15、485~490頁(2001);Hammond,S.M.ら、Nature Rev.Genet.2、110~1119頁(2001);Tuschl,T.Chem.Biochem.2、239~245(2001);Hamilton,A.ら、Science 286、950~952頁(1999);Hammond,S.M.ら、Nature 404、293~296(2000);Zamore,P.D.ら、Cell 101、25~33頁(2000);Bernstein,E.ら、Nature 409、363~366頁(2001);Elbashir,S.M.ら、Genes Dev.15、188~200頁(2001);WO0129058;WO9932619、およびElbashir S M.ら、2001、Nature 411:494~498頁)。
【0201】
したがって、本発明は、さもなければIL-11、IL-11Rαまたはgp130を発現する哺乳動物、例えばヒトの細胞の中に適切に導入されるかまたはその中で発現されるときに、RNAiによってIL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制することが可能である核酸を提供する。
【0202】
IL-11、IL-11Rαおよびgp130のための核酸配列(例えば、受託番号BC012506.1 GI:15341754(ヒトIL-11)、BC134354.1 GI:126632002(マウスIL-11)、AF347935.1 GI:13549072(ラットIL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(ヒトIL-11Rα)、NM_001163401.1 GI:254281268(マウスIL-11Rα)、NM_139116.1 GI:20806172(ラットIL-11Rα)、NM_001190981.1 GI:300244534(ヒトgp130)、NM_010560.3 GI:225007624(マウスgp130)、NM_001008725.3 GI:300244570(ラットgp130)の下でGenBankから入手可能な既知のmRNA配列)のオリゴヌクレオチドを、IL-11、IL-11Rαまたはgp130の発現を抑制するか、またはサイレンシングするように設計することができる。
【0203】
核酸は、例えば、GenBank受託番号NM_000641.3 GI:391353405(IL-11)、NM_001142784.2 GI:391353394(IL-11Rα)、NM_0011909891.1 GI:300244534(gp130)に定義された、IL-11、IL-11Rαもしくはgp130 mRNAの一部または前記mRNAに対する相補配列に対する実質的な配列同一性を有してもよい。
【0204】
核酸は、二本鎖siRNAであってもよい(当業者であれば理解できるように、また、以下でさらに説明されるように、siRNA分子は、短い3’DNA配列をも含んでもよい)。
【0205】
あるいは、核酸は、哺乳動物細胞中で転写された場合、相補部分が互いにハイブリダイズする場合にRNAがヘアピンの形態を採るような、スペーサーを介して連結された2つの相補部分を有するRNAをもたらす、DNA(通常は二本鎖DNA)であってもよい。哺乳動物細胞中では、ヘアピン構造は、DICER酵素によって分子から切断され、2つの異なるが、ハイブリダイズしたRNA分子をもたらしてもよい。
【0206】
一部の好ましい実施形態では、核酸は、配列番号4~7(IL-11)の1つまたは配列番号8~11(IL-11Rα)の1つの配列に対して全体として標的化される。
【0207】
mRNA転写物の一本鎖(すなわち、非自己ハイブリダイズ)領域のみが、RNAiのための好適な標的であると予想される。したがって、配列番号4~7または8~11の1つによって表される配列に、IL-11またはIL-11Rα mRNA転写物中の非常に近い他の配列も、RNAiのための好適な標的でありうると提唱される。そのような標的配列は好ましくは長さが17~23ヌクレオチドであり、好ましくは配列番号4~7または8~11のうちの1つが少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または全19ヌクレオチドと重なる(配列番号4~7または8~11のうちの1つのいずれかの末端で)。
【0208】
したがって、本発明は、さもなければIL-11またはIL-11Rαを発現する哺乳動物細胞の中に適切に導入されるかまたはその中で発現されるときに、RNAiによってIL-11またはIL-11Rαの発現を抑制することが可能である核酸を提供し、ここで核酸は一般的に配列番号4~7または8~11のうちの1つの配列を標的にする。
【0209】
「全体として標的化された」核酸は、配列番号4~7または8~11と重複する配列を標的としてもよい。特に、核酸は、配列番号4~7または8~11の1つよりもわずかに長いか、または短いが、その他は配列番号4~7または8~11の1つと同一である、ヒトIL-11またはIL-11RαのmRNA中の配列(好ましくは、17~23ヌクレオチド長)を標的としてもよい。
【0210】
本発明の核酸および標的配列の間の完全な同一性/相補性は好ましいけれども、必須でないと予想される。したがって、本発明の核酸は、IL-11またはIL-11RαのmRNAと比較して単一のミスマッチを含むことができる。しかしながら、単一のミスマッチの存在であっても、効率の低下をもたらす可能性があるため、ミスマッチは存在しないのが好ましいと予想される。存在する場合、3’突出部を、ミスマッチの数の考慮から除外してもよい。
【0211】
用語「相補性」は、天然に存在するリボおよび/またはデオキシリボヌクレオチドからなる核酸間の従来の塩基対形成に限定されないだけでなく、mRNAと、非天然ヌクレオチドを含む本発明の核酸との塩基対形成も含む。
【0212】
一実施形態では、核酸(本明細書では二本鎖siRNAと呼ばれる)は、配列番号12~15に示される二本鎖RNA配列を含む。別の実施形態では、核酸(本明細書では二本鎖siRNAと呼ばれる)は、配列番号16~19に示される二本鎖RNA配列を含む。
【0213】
しかしながら、IL-11またはIL-11Rα mRNAの同じ領域を指向するわずかにより短いか、またはより長い配列も有効であることも予想される。特に、17~23bpの長さの二本鎖配列も有効であると予想される。
【0214】
二本鎖RNAを形成する鎖は、DNAまたはRNAであってもよい、短い3’ジヌクレオチド突出部を有してもよい。3’DNA突出部の使用は、3’RNA突出部と比較してsiRNA活性に対する効果を有しないが、核酸鎖の化学合成の費用を低減する(Elbashirら、2001c)。この理由から、DNAジヌクレオチドが好ましい場合がある。
【0215】
存在する場合、ジヌクレオチド突出部は、互いに対称的であってよいが、これは必須ではない。実際、センス(上)鎖の3’突出部は、mRNAの認識および分解には参画しないため、RNAi活性とは無関係である(Elbashirら、2001a、2001b、2001c)。
【0216】
DrosophilaにおけるRNAi実験は、アンチセンス3’突出部がmRNAの認識および標的化に参画しうることを示すが(Elbashirら、2001c)、3’突出部は哺乳動物細胞中でのsiRNAのRNAi活性にとって必要ではないと考えられる。3’突出部の不正確なアニーリングは、したがって、哺乳動物細胞においてはほとんど効果がないと考えられる(Elbashirら、2001c;Czaudernaら、2003)。
【0217】
したがって、任意のジヌクレオチド突出部を、siRNAのアンチセンス鎖において使用することができる。それにも拘わらず、ジヌクレオチドは、好ましくは、-UUまたは-UG(または突出部がDNAである場合、-TTまたはTG)、より好ましくは、-UU(または-TT)である。-UU(または-TT)ジヌクレオチド突出部は、最も有効であり、転写シグナル(終結シグナルはTTTTTである)のRNAポリメラーゼIII末端と一致する(すなわち、その一部を形成することができる)。したがって、このジヌクレオチドが最も好ましい。ジヌクレオチドAA、CCおよびGGを使用してもよいが、有効性が低く、結果として、あまり好ましくはない。
【0218】
さらに、3’突出部を、siRNAから完全に省略してもよい。
【0219】
本発明はまた、好ましくは、3’突出部を有するが、必要に応じて、有しない、上記二本鎖核酸の一方の成分鎖からそれぞれなる一本鎖核酸(本明細書では、一本鎖siRNAと称する)も提供する。本発明はまた、in vitroで互いにハイブリダイズして、上記二本鎖siRNAを形成した後、細胞中に導入することができるそのような一本鎖核酸の対を含有するキットも提供する。
【0220】
本発明は、哺乳動物細胞で転写させたときに、例えば配列番号12~15または16~19からなる群から選択される配列、または前記配列のいずれか1つと単一の塩基対置換で異なる配列を含む、自己ハイブリダイズして二本鎖モチーフを生成することが可能である2つの相補的部分を有するRNA(本明細書でshRNAとも呼ばれる)を与えるDNAも提供する。
【0221】
相補部分は一般に、2つの相補部分を互いにハイブリダイズさせる好適な長さおよび配列を有するスペーサーによって連結されると予想される。2つの相補(すなわち、センスおよびアンチセンス)部分を、いずれかの順序で5’-3’に連結することができる。スペーサーは、典型的には、約4~12ヌクレオチド、好ましくは、4~9ヌクレオチド、より好ましくは、6~9ヌクレオチドの短い配列と予想される。
【0222】
好ましくは、スペーサーの5’末端(上流の相補部分のすぐ3’側)は、ヌクレオチド-UU-または-UG-、再び好ましくは、-UU-からなる(しかし再度、これらの特定のジヌクレオチドの使用は必須ではない)。OligoEngine(Seattle、Washington、USA)のpSuper系における使用のために推奨される好適なスペーサーは、UUCAAGAGAである。このおよび他の場合では、スペーサーの末端は互いとハイブリダイズすること、例えば配列番号12~15または16~19の正確な配列を越えて二本鎖モチーフを少数(例えば1つまたは2つ)の塩基対分伸長させることができる。
【0223】
同様に、転写されるRNAは、好ましくは、下流の相補部分に由来する3’突出部を含む。再度、これは、好ましくは、-UUまたは-UG、より好ましくは、-UUである。
【0224】
次いで、そのようなshRNA分子を、DICER酵素によって哺乳動物細胞中で切断して、ハイブリダイズしたdsRNAの一方またはそれぞれの鎖が3’突出部を含む、上記の二本鎖siRNAを得ることができる。
【0225】
本発明の核酸の合成のための技術は、勿論、当業界で周知である。
【0226】
当業者であれば、周知の技術および市販の材料を使用して、本発明のDNAのための好適な転写ベクターを構築することができる。特に、DNAを、プロモーターおよび転写終結配列を含む制御配列と結合させる。
【0227】
特に好適なものは、OligoEngine(Seattle、Washington、USA)の市販のpSuperおよびpSuperior系である。これらのものは、ポリメラーゼ-IIIプロモーター(H1)および転写物の3’末端で2個のU残基に寄与するT5転写終結配列を使用する(DICERプロセッシング後、siRNAの一方の鎖の3’UU突出部を提供する)。
【0228】
別のポリメラーゼ-IIIプロモーター(U6)を使用する、別の好適な系は、Shinら(RNA、2009 May;15(5):898~910頁)に記載されている。
【0229】
本発明の二本鎖siRNAは、IL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制するために、下記のように公知の技術を使用して哺乳動物細胞にin vitroまたはin vivoで導入することができる。
【0230】
同様に、本発明のDNAを含有する転写ベクターは、同じくIL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制するために、RNAの一時的または安定した発現のために、下記のように公知の技術を使用して腫瘍細胞にin vitroまたはin vivoで導入することができる。
【0231】
したがって、本発明は、哺乳動物、例えばヒトの細胞で、IL-11またはIL-11の受容体の発現を抑制する方法であって、細胞に本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを投与することを含む方法も提供する。
【0232】
同様に、本発明は、対象に本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを投与するステップを含む、アルコール性肝疾患を処置する方法をさらに提供する。
【0233】
本発明は、処置の方法、好ましくはアルコール性肝疾患を処置する方法で使用するための、本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターをさらに提供する。
【0234】
本発明は、アルコール性肝疾患の処置のための医薬の調製における本発明の二本鎖siRNAおよび本発明の転写ベクターの使用をさらに提供する。
【0235】
本発明は、本発明の二本鎖siRNAまたは本発明の転写ベクターを含む組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体との混合物でさらに提供する。好適な担体は、細胞膜の透過を補助することができる、親油性担体またはベシクルを含む。
【0236】
本発明のsiRNA二重鎖およびDNAベクターの投与にとって好適な材料および方法は、当業界で周知であり、RNAi技術の潜在能力を考慮した、改善された方法が開発中である。
【0237】
一般に、多くの技術が、核酸を哺乳動物細胞中に導入するために利用可能である。技術の選択は、核酸が、in vitroで培養細胞中に、またはin vivoで患者の細胞中に移入されるかどうかに依存すると予想される。in vitroでの核酸の哺乳動物細胞への移入にとって好適な技術としては、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE、デキストランおよびリン酸カルシウム沈降の使用が挙げられる。in vivoでの遺伝子移入技術としては、ウイルス(典型的には、レトロウイルス)ベクターおよびウイルスコートタンパク質-リポソーム媒介性トランスフェクション(Dzauら(2003)Trends in Biotechnology 11、205~210頁)が挙げられる。
【0238】
特に、in vitroとin vivoの両方での本発明の核酸の細胞投与のための好適な技術は、以下の論文に開示されている:
【0239】
一般的概説:Borkhardt,A.2002.Blocking oncogenes in malignant cells by RNA interference-new hope for a highly specific cancer treatment?Cancer Cell.2:167~8頁。Hannon,G.J.2002.RNA interference.Nature.418:244~51頁。McManus,M.T.およびP.A.Sharp.2002.Gene silencing in mammals by small interfering RNAs.Nat Rev Genet.3:737~47頁。Scherr,M.、M.A.Morgan、およびM.Eder.2003b.Gene silencing mediated by small interfering RNAs in mammalian cells.Curr Med Chem.10:245~56頁。Shuey,D.J.、D.E.McCallus、およびT.Giordano.2002.RNAi:gene-silencing in therapeutic intervention.Drug Discov Today.7:1040~6頁。
【0240】
リポソームを使用する全身送達:Lewis,D.L.、J.E.Hagstrom,A.G.Loomis,J.A.Wolff、およびH.Herweijer.2002.Efficient delivery of siRNA for inhibition of gene expression in postnatal mice.Nat Genet.32:107~8頁。Paul,C.P.、P.D.Good、I.Winer、およびD.R.Engelke.2002.Effective expression of small interfering RNA in human cells.Nat Biotechnol.20:505~8頁。Song,E.、S.K.Lee、J.Wang、N.Ince、N.Ouyang、J.Min、J.Chen、P.Shankar、およびJ.Lieberman.2003.RNA interference targeting Fas protects mice from fulminant hepatitis.Nat Med.9:347~51頁。Sorensen,D.R.、M.Leirdal、およびM.Sioud.2003.Gene silencing by systemic delivery of synthetic siRNAs in adult mice.J Mol Biol.327:761~6頁。
【0241】
ウイルス媒介性移入:Abbas-Terki,T.、W.Blanco-Bose、N.Deglon、W.Pralong、およびP.Aebischer.2002.Lentiviral-mediated RNA interference.Hum Gene Ther.13:2197~201頁。Barton,G.M.、およびR.Medzhitov.2002.Retroviral delivery of small interfering RNA into primary cells.Proc Natl Acad Sci USA.99:14943~5頁。Devroe,E.、およびP.A.Silver.2002.Retrovirus-delivered siRNA.BMC Biotechnol.2:15頁。Lori,F.、P.Guallini、L.Galluzzi、およびJ.Lisziewicz.2002.Gene therapy approaches to HIV infection.Am J Pharmacogenomics.2:245~52頁。Matta,H.、B.Hozayev,R.Tomar、P.Chugh、およびP.M.Chaudhary.2003.Use of lentiviral vectors for delivery of small intergering RNA.Cancer Biol Ther.2:206~10頁。Qin,X.F.、D.S.An、I.S.Chen、およびD.Baltimore.2003.Inhibiting HIV-1 infection in human T cells by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA against CCR5.Proc Natl Acad Sci USA.100:183~8頁。Scherr,M.、K.Battmer、A.Ganser、およびM.Eder.2003a.Modulation of gene expression by lentiviral-mediated delivery of small interfering RNA.Cell Cycle.2:251~7頁。Shen,C.、A.K.Buck、X.Liu、M.Winkler、およびS.N.Reske.2003.Gene silencing by adenovirus-delivered siRNA.FEBS Lett.539:111~4頁。
【0242】
ペプチド送達:Morris,M.C.、L.Chaloin、F.Heitz、およびG.Divita.2000.Translocating peptides and proteins and their use for gene delivery.Curr Opin Biotechnol.11:461~6頁。Simeoni,F.、M.C.Morris、F.Heitz、およびG.Divita.2003.Insight into the mechanism of the peptide-based gene delivery system MPG:implications for delivery of siRNA into mammalian cells.Nucleic Acids Res.31:2717~24頁。siRNAの標的細胞への送達にとって好適でありうる他の技術は、米国特許第6,649,192B号および第5,843,509B号に記載されたものなどのナノ粒子またはナノカプセルに基づく。
【0243】
IL-11媒介シグナル伝達の阻害
本発明の実施形態では、IL-11の作用を阻害することが可能な薬剤は、以下の機能的特性のうちの1つまたは複数を有することができる:
・IL-11によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11のIL-11Rα:gp130受容体複合体への結合によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達(すなわち、IL-11トランスシグナル伝達)の阻害;
・IL-11:IL-11Rα:gp130複合体の多量体化によって媒介されるシグナル伝達の阻害;
・IL-11によって媒介される過程の阻害;
・IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現の阻害。
【0244】
これらの特性を、関連薬剤の性能の、好適な対照薬剤との比較を含んでもよい好適なアッセイにおける前記薬剤の分析によって決定することができる。当業者であれば、所与のアッセイに関する適切な対照条件を同定することができる。
【0245】
IL-11媒介性シグナル伝達および/またはIL-11によって媒介されるプロセスは、IL-11の断片およびIL-11またはその断片を含むポリペプチド複合体によって媒介されるシグナル伝達を含む。IL-11媒介性シグナル伝達は、ヒトIL-11および/またはマウスIL-11によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。IL-11によって媒介されるシグナル伝達は、IL-11またはIL-11含有複合体の、IL-11または前記複合体が結合する受容体への結合後に起こってもよい。
【0246】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11またはIL-11含有複合体の生物活性を阻害することができてもよい。
【0247】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む受容体、例えば、IL-11Rα:gp130を介するシグナル伝達によって活性化される1つまたは複数のシグナル伝達経路のアンタゴニストである。一部の実施形態では、薬剤は、IL-11Rαおよび/またはgp130を含む1つまたは複数の免疫受容体複合体、例えば、IL-11Rα:gp130を介するシグナル伝達を阻害することができる。本発明の様々な態様では、本明細書で提供される薬剤は、IL-11媒介のシスおよび/またはトランスシグナル伝達を阻害することが可能である。本発明の様々な態様による一部の実施形態では、本明細書で提供される薬剤はIL-11媒介のシスシグナル伝達を阻害することが可能である。
【0248】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの100%未満、例えば、99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つでIL-11媒介性シグナル伝達を阻害することができてもよい。一部の実施形態では、薬剤は、薬剤の非存在下(または適切な対照薬剤の存在下)でのシグナル伝達のレベルの1倍未満、例えば、0.99倍以下、0.95倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.75倍以下、0.7倍以下、0.65倍以下、0.6倍以下、0.55倍以下、0.5倍以下、0.45倍以下、0.4倍以下、0.35倍以下、0.3倍以下、0.25倍以下、0.2倍以下、0.15倍以下、0.1倍以下のうちの1つでIL-11媒介性シグナル伝達を低減させることができる。
【0249】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11のIL-11Rα:gp130受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。そのようなシグナル伝達を、例えば、IL-11Rαおよびgp130を発現する細胞をIL-11で処理することによって、またはIL-11Rαおよびgp130を発現する細胞中でIL-11産生を刺激することによって分析することができる。
【0250】
IL-11媒介性シグナル伝達の阻害のための薬剤のIC50を、例えば、ヒトIL-11および薬剤の存在下でIL-11Rαおよびgp130を発現するBa/F3細胞を培養すること、ならびにDNA中への3Hチミジンの取込みを測定することによって決定することができる。一部の実施形態では、薬剤は、そのようなアッセイにおいて、10μg/ml以下、好ましくは、5μg/ml以下、4μg/ml以下、3.5μg/ml以下、3μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下、0.9μg/ml以下、0.8μg/ml以下、0.7μg/ml以下、0.6μg/ml以下、または0.5μg/ml以下のうちの1つのIC50を示してもよい。
【0251】
一部の実施形態では、IL-11媒介性シグナル伝達は、IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達であってもよい。一部の実施形態では、IL-11:IL-11Rα複合体は、可溶型の、例えば、IL-11RαとIL-11の細胞外ドメインの複合体、または可溶型IL-11Rαアイソフォーム/断片と、IL-11との複合体であってもよい。一部の実施形態では、可溶型IL-11Rαは、IL-11Rαの可溶型(分泌型)アイソフォームであるか、または細胞膜に結合したIL-11Rαの細胞外ドメインのタンパク質分解的切断の遊離産物である。
【0252】
一部の実施形態では、IL-11:IL-11Rα複合体は、細胞に結合した、例えば、細胞膜に結合したIL-11RαとIL-11との複合体であってもよい。IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達は、gp130を発現する細胞をIL-11:IL-11Rα複合体、例えば、ペプチドリンカーによってIL-11Rαの細胞外ドメイン、例えばハイパーIL-11に連結されるIL-11を含む組換え融合タンパク質で処理することによって分析することができる。ハイパーIL-11は、IL-11Rα(ドメイン1~3からなるアミノ酸残基1~317;UniProtKB:Q14626)およびIL-11(UniProtKB:P20809のアミノ酸残基22~199)の断片を20アミノ酸長のリンカー(配列番号20)と使用して構築された。ハイパーIL-11のアミノ酸配列は、配列番号21に示される。
【0253】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11:IL-11Rα複合体のgp130への結合によって媒介されるシグナル伝達を阻害することができてもよく、また、IL-11のIL-11Rα:gp130受容体への結合によって媒介されるシグナル伝達を阻害することもできる。
【0254】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11によって媒介される過程を阻害することが可能であってよい。
【0255】
一部の実施形態では、薬剤はIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を阻害することが可能であってよい。遺伝子および/またはタンパク質の発現は本明細書に記載される通りに、または当業者に周知となる当技術分野の方法によって測定することができる。
【0256】
一部の実施形態では、薬剤は、IL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質発現を、薬剤の不在下での(または適当な対照薬剤の存在下での)発現のレベルの100%未満、例えば99%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または1%以下のうちの1つまで阻害することが可能であってよい。一部の実施形態では、薬剤はIL-11および/またはIL-11Rαの遺伝子/タンパク質の発現を、薬剤の不在下での(または適当な対照薬剤の存在下での)発現のレベルの1倍未満まで、例えば≦0.99倍、≦0.95倍、≦0.9倍、≦0.85倍、≦0.8倍、≦0.75倍、≦0.7倍、≦0.65倍、≦0.6倍、≦0.55倍、≦0.5倍、≦0.45倍、≦0.4倍、≦0.35倍、≦0.3倍、≦0.25倍、≦0.2倍、≦0.15倍、≦0.1倍のうちの1つまで阻害することが可能である。
【0257】
アルコール性肝疾患の処置/予防
本発明は、アルコール性肝疾患の処置および/または予防のための方法ならびに物品(薬剤および組成物)を提供する。
【0258】
処置は、IL-11を媒介するシグナル伝達の阻害(すなわち、IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用)によって達成される。すなわち、本発明は、例えば細胞、組織/器官/器官系/対象におけるIL-11媒介シグナル伝達の阻害によるアルコール性肝疾患の処置/予防を提供する。一部の実施形態では、本開示によるIL-11媒介シグナル伝達の阻害は、肝臓、肝臓組織および/またはその細胞におけるIL-11媒介シグナル伝達の阻害を含む。一部の実施形態では、本開示によるIL-11媒介シグナル伝達の阻害は、肝星状細胞および/または肝細胞におけるIL-11媒介シグナル伝達の阻害を含む。
【0259】
したがって、本発明は、アルコール性肝疾患を処置または予防する方法で使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を提供する。
【0260】
アルコール性肝疾患を処置または予防する方法で使用するための医薬の製造に使用するための、インターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の使用も提供される。
【0261】
アルコール性肝疾患を処置または予防する方法であって、処置を必要とする対象にインターロイキン11(IL-11)媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の治療的に有効な量を投与するステップを含む方法がさらに提供される。
【0262】
本発明は、アルコール性肝疾患によって引き起こされるまたは悪化する疾患/状態の処置/予防も提供する。一部の実施形態では、本発明は、アルコール性肝疾患が予後不良をもたらす対象における疾患/状態の処置/予防を提供する。
【0263】
一部の実施形態では、アルコール性肝疾患は、例えば、関連する器官/組織/細胞における正常な発現レベル(すなわち、疾患/状態がない場合)と比較して肝臓/肝組織/肝臓細胞におけるIL-11および/またはIL-11Rαの発現(すなわち、遺伝子および/またはタンパク質の発現)の増加によって特徴付けることができる。
【0264】
本開示によるアルコール性肝疾患は、例えば肝細胞(例えば肝星状細胞および/または肝細胞)もしくは肝組織におけるIL-11遺伝子および/もしくはタンパク質発現の上方制御、または細胞外IL-11もしくはIL-11Rαの上方制御に関連しうる。
【0265】
本明細書に開示される様々な態様によると、一部の実施形態では、アルコール性肝疾患は、以下のうち1つまたは複数によって(健康な、非病的な状態と比較して)特徴付けられる:血清ALTレベルの増加;肝臓対体重比の増加;体重の減少;肝臓トリグリセリドレベルの増加;血清IL-11レベルの増加;肝臓におけるIL-11の遺伝子および/またはタンパク質の発現の増加;肝臓における1つもしくは複数の炎症誘発性因子(例えばTNFα、TIMP1、IL-10、CXCL1、IL-1bおよびMIP2から選択される)の遺伝子および/またはタンパク質の発現の増加;肝臓におけるERKの活性化の増加(すなわち、肝組織におけるpERKレベルの増加);肝組織の脂肪症の増加;肝組織への好中球(例えばMPO+好中球)の浸潤の増加;ならびに/または肝組織へのマクロファージ(例えばF4/80+マクロファージ)の浸潤の増加。
【0266】
本明細書に開示される様々な態様によると、一部の実施形態では、アルコール性肝疾患は、疾患がない場合の機能と比較して減少した/悪化した肝臓機能によって特徴付けられる。
【0267】
処置は、アルコール性肝疾患の発症または進行を減少/遅延/予防するのに有効でありうる。処置は、アルコール性肝疾患の1つまたは複数の症状の悪化を低減/遅延/阻止させるのに有効であってよい。処置は、アルコール性肝疾患の1つまたは複数の症状を向上させるのに有効であってよい。処置は、アルコール性肝疾患の1つまたは複数の症状の重症度を低減するのに、および/またはそれを後退させるのに有効であってよい。処置は、アルコール性肝疾患の作用を後退させるのに有効であってよい。
【0268】
予防は、アルコール性肝疾患の発達の予防、および/またはアルコール性肝疾患の悪化の予防、例えば、アルコール性肝疾患の、例えば後の/慢性ステージ(例えば線維症および/または肝硬変)への進行の予防を指すことができる。
【0269】
一部の実施形態では、介入は、アルコール性肝疾患に関連する肝臓機能の機能障害の減速、停止および/または好転を意図してもよい。
【0270】
本発明の様々な態様によると、本開示によるアルコール性肝疾患を処置および/または予防する方法は、アルコール性肝疾患を有する対象の生存を増加させるステップを含んでもよい。
【0271】
本開示の様々な態様によると、(例えばアルコール性肝疾患の処置/予防の文脈において)以下のうちの1つもしくは複数のため、または以下を含む方法が提供される:血清ALTレベルの減少;肝臓対体重比の減少;体重の増加/維持;肝臓トリグリセリドレベルの減少;血清IL-11レベルの減少;肝臓におけるIL-11の遺伝子および/またはタンパク質の発現の減少;肝臓における1つもしくは複数の炎症誘発性因子(例えばTNFα、TIMP1、IL-10、CXCL1、IL-1bおよびMIP2から選択される)の遺伝子および/またはタンパク質の発現の減少;肝臓におけるERKの活性化の減少(すなわち、肝組織におけるpERKレベルの減少);肝組織の脂肪症の減少;肝組織への好中球(例えばMPO+好中球)の浸潤の減少;ならびに/または肝組織へのマクロファージ(例えばF4/80+マクロファージ)の浸潤の減少。
【0272】
そのような方法に使用するための本開示による薬剤、およびそのような方法で使用するための組成物(例えば医薬)の製造における本開示による薬剤も提供される。本方法が、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を対象に投与するステップを含むことが理解される。
【0273】
同様に、本開示による治療または予防的介入後に(例えば、介入前のレベルと比較して)対象において以下のうち1つまたは複数が観察されうる:血清ALTレベルの減少;肝臓対体重比の減少;体重の増加/維持;肝臓トリグリセリドレベルの減少;血清IL-11レベルの減少;肝臓におけるIL-11の遺伝子および/またはタンパク質の発現の減少;肝臓における1つもしくは複数の炎症誘発性因子(例えばTNFα、TIMP1、IL-10、CXCL1、IL-1bおよびMIP2から選択される)の遺伝子および/またはタンパク質の発現の減少;肝臓におけるERKの活性化の減少(すなわち、肝組織におけるpERKレベルの減少);肝組織の脂肪症の減少;肝組織への好中球(例えばMPO+好中球)の浸潤の減少;ならびに/または肝組織へのマクロファージ(例えばF4/80+マクロファージ)の浸潤の減少。
【0274】
一部の実施形態では、本開示による治療的/予防的介入は、先行するパラグラフに記載される効果の1つまたは複数「に関連する」と記載されてもよい。当業者は、当業者に日常的に実施される技術を使用してそのような特性を評価することが容易にできる。
【0275】
一部の実施形態では、本開示による処置は、アルコール性肝疾患の症状の1つまたは複数を好転させるのに有効でありうる。そのような処置は、確立され、進行したまたは重篤な疾患/病理(例えば線維症および/または肝硬変)の場合でさえ、症状を好転させるのに有効でありうる。
【0276】
投与
IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤の投与は、好ましくは「治療的に有効である」かまたは「予防的に有効である」量であり、これは対象への利益を示すのに十分である。
【0277】
投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、疾患の性質および重症度ならびに薬剤の性質に依存すると予想される。処置の処方、例えば、用量に関する決定などは、一般開業医および他の医師の責任の範囲内にあり、典型的には、処置しようとする疾患/状態、個々の対象の状態、送達部位、投与方法および医師にとって公知の他の因子を考慮に入れる。上記の技術およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000、pub.Lippincott,Williams & Wilkinsに見出すことができる。
【0278】
薬剤の複数の用量を提供することができる。用量の1つまたは複数、または各々は、別の治療剤の同時または連続的投与が付随してもよい。
【0279】
複数の用量は所定時間間隔によって分離されてもよく、それは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日間、または1、2、3、4、5もしくは6カ月のうちの1つから選択することができる。例として、用量は7、14、21または28日(プラスマイナス3、2または1日)ごとに1回与えることができる。
【0280】
治療適用では、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、好ましくは、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、フィラー、バッファー、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、着香剤および甘味剤を限定されずに含む、当業者に周知である1つまたは複数の他の薬学的に許容される成分と一緒に医薬または医薬品として製剤化される。
【0281】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、正当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/危険比に見合う、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、問題の対象(例えば、ヒト)の組織との接触における使用にとって好適である、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。それぞれの担体、アジュバント、賦形剤などはまた、製剤の他の成分と適合する意味で「許容される」ものでなければならない。
【0282】
好適な担体、アジュバント、賦形剤などは、標準的な薬学の教科書、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company、Easton,Pa.、1990;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994に見出すことができる。
【0283】
製剤を、製薬業界における周知の任意の方法によって調製することができる。そのような方法は、活性化合物を、1つまたは複数の補助成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性化合物を、担体(例えば、液体担体、微細に分割された固体担体など)と均一かつ密接に会合させること、次いで、必要に応じて、生成物を形状化することによって調製される。
【0284】
製剤は、処置する疾患/状態により好適な投与、例えば、非経口、全身、静脈内、動脈内、筋肉内、クモ膜下、局所、眼内、結膜内、皮下、経口または注射を含むことができる経皮投与経路のために調製することができる。注射用製剤は、選択された薬剤を無菌または等張性の媒体中に含むことができる。製剤および投与様式は、薬剤および処置する疾患により選択することができる。
【0285】
一部の実施形態では、本開示によるIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤は、肝臓、肝組織および/もしくは肝臓細胞(例えば肝星状細胞および/または肝細胞)への送達および/もしくはそれによる取込みを容易にするように処方ならびに/または修飾されてもよい。
【0286】
IL-11およびIL-11の受容体の検出
本発明の一部の態様および実施形態は、対象から得た試料中のIL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/もしくはgp130を含有する複合体)の発現の検出に関する。
【0287】
一部の態様および実施形態では、本発明は、IL-11またはIL-11の受容体(IL-11またはIL-11の受容体のそれぞれをコードするタンパク質またはオリゴヌクレオチドとして)の発現の上方制御(過剰発現)、およびIL-11の作用を阻害することが可能な薬剤による、またはIL-11もしくはIL-11の受容体の発現を阻止もしくは低減することが可能な薬剤による処置への適合性の指標としてのそのような上方制御の検出に関する。
【0288】
上方制御される発現は、所定のタイプの細胞または組織で通常予想されるだろうものより大きいレベルでの発現を含む。上方制御は、細胞または組織中の関連する因子の発現レベルを測定することによって決定することができる。対象からの細胞または組織試料中の発現レベル、および関連因子の発現の参照レベル、例えば同じかまたは対応する細胞または組織タイプのための関連因子の発現の正常レベルを表す値または値の範囲の間で比較することができる。一部の実施形態では、参照レベルは、対照試料で、例えば健康対象からのまたは同じ対象の健康組織からの対応する細胞または組織で、IL-11またはIL-11の受容体の発現を検出することによって決定することができる。一部の実施形態では、参照レベルは標準曲線またはデータセットから得ることができる。発現レベルは絶対比較のために定量化することができるか、または相対比較を行うことができる。
【0289】
一部の実施形態では、IL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)の上方制御は、試験試料中の発現レベルが参照レベルの少なくとも1.1倍であるとき、存在すると考えることができる。より好ましくは、発現レベルは、参照レベルのそれの少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.7、少なくとも2.8、少なくとも2.9、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも5.0、少なくとも6.0、少なくとも7.0、少なくとも8.0、少なくとも9.0または少なくとも10.0倍のうちの1つから選択することができる。
【0290】
発現レベルは、いくつかの公知のin vitroアッセイ技術の1つ、例えばPCRをベースとしたアッセイ、in situハイブリダイゼーションアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、免疫学的または免疫組織化学的アッセイによって決定することができる。
【0291】
例として、好適な技術は、試料をIL-11またはIL-11の受容体に結合することが可能な薬剤と接触させ、薬剤およびIL-11またはIL-11の受容体の複合体の形成を検出することによって試料中のIL-11またはIL-11の受容体のレベルを検出する方法を含む。薬剤は任意の好適な結合性分子、例えば抗体、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、アプタマーまたは小分子であってよく、形成される複合体の検出、例えば可視化を許すために場合により標識されてもよい。それらの検出のための好適な標識および手段は当業者に周知であり、蛍光標識(例えばフルオレセイン、ローダミン、エオシンおよびNDB、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)およびサマリウム(Sm)などの希土類のキレート、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、4-メチルウンベリフェロン、7-アミノ-4-メチルクマリン、Cy3、Cy5)、同位体マーカー、放射性同位体(例えば32P、33P、35S)、化学発光標識(例えばアクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール)、酵素(例えばペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ)、抗体、リガンドおよび受容体が含まれる。検出技術は当業者に周知であり、標識剤に対応するように選択することができる。好適な技術には、オリゴヌクレオチドタグのPCR増幅、質量分析、例えばレポータータンパク質による基質の酵素変換後の蛍光もしくは色の検出、または放射能検出が含まれる。
【0292】
アッセイは、試料中のIL-11またはIL-11の受容体の量を定量化するように構成することができる。試験試料からのIL-11またはIL-11の受容体の定量化された量は参照値と比較することができ、この比較は、選択された程度の統計的有意性まで参照値のそれより高いかまたはより低いIL-11またはIL-11の受容体の量を試験試料が含有するかどうか決定するために使用することができる。
【0293】
検出されたIL-11またはIL-11の受容体の定量化は、IL-11またはIL-11の受容体をコードする遺伝子の上方もしくは下方制御または増幅を決定するために使用することができる。試験試料が線維性細胞を含有する場合、そのような上方制御、下方制御または増幅は、何らかの統計的有意差が存在するかどうか決定するために、参照値と比較することができる。
【0294】
対象から得られる試料は、いかなる種類のものであってよい。生体試料は、任意の組織または体液、例えば血液試料、血液由来の試料、血清試料、リンパ試料、精液試料、唾液試料、滑液試料からとることができる。血液由来の試料は、患者血液の選択された分画、例えば選択された細胞含有分画または血漿もしくは血清分画であってよい。試料は、組織試料または生検;または対象から単離された細胞を含むことができる。試料は、公知の技術、例えば生検または針吸引によって収集することができる。試料は、IL-11発現レベルの以降の決定のために保存および/または処理することができる。
【0295】
試料は、試料がとられた対象におけるIL-11またはIL-11の受容体の上方制御を決定するために使用することができる。
【0296】
一部の好ましい実施形態では、試料は、肝臓/肝組織から採取された組織試料、例えば生検でもよい。試料は、肝臓から得られてもよい。試料は、肝組織または肝臓細胞を含んでもよい。
【0297】
対象は、IL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)の発現の上方制御されたレベルを対象が有するとの決定に基づいて、本発明による療法/予防法のために選択することができる。IL-11またはIL-11の受容体の発現の上方制御は、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置に好適なアルコール性肝疾患のマーカーとして機能しうる。
【0298】
上方制御は、所与の器官(例えば肝臓)、組織(例えば肝組織)または所与の組織(例えば肝細胞、例えば肝星状細胞および/または肝細胞)から選択される細胞にありうる。IL-11またはIL-11の受容体の発現の上方制御は、循環する流体、例えば血液中で、または血液由来の試料で決定することもできる。上方制御は、細胞外IL-11またはIL-11Rαのものであってよい。一部の実施形態では、発現は局所的に、または全身的に上方制御されてもよい。
【0299】
選択の後、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を対象に投与することができる。
【0300】
診断および予後診断
IL-11またはIL-11の受容体(例えば、IL-11Rα、gp130またはIL-11Rαおよび/またはgp130を含有する複合体)の発現の上方制御の検出は、アルコール性肝疾患を診断し、アルコール性肝疾患を起こす危険がある対象を同定する方法で、およびIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置への対象の応答を予後診断または予測する方法で使用することもできる。
【0301】
「発達する」、「発達」および「発達する」の他の形は、障害/疾患の開始、または障害/疾患の継続もしくは進行を指すことができる。
【0302】
一部の実施形態では、対象は、例えば、対象の体または対象の体の選択される細胞/組織(例えば肝臓/肝組織/肝臓細胞)におけるアルコール性肝疾患の指標となる他の症状の存在に基づいて、アルコール性肝疾患を有するまたは患っていると疑われうる。一部の実施形態では、対象は、例えば、遺伝的素因のため、アルコール性肝疾患を発症するリスクがあると見なされうる;例えば、対象は以下の対立遺伝子のうちの1つまたは複数の1つもしくは複数のコピーを含むことができる:rs738409-Gを含むPNPLA3、rs58542926-Tを含むTM6SF2、rs641738-Tを含むMBOAT7、rs2642438-C/G/Tを含むMARC1、およびrs15052-Cを含むHNRNPUL1。一部の実施形態では、対象は、アルコール性肝疾患のリスク因子であることが公知の条件、例えば過剰なアルコール消費(例えば、男性の場合≧40gエタノール/日、女性の場合≧20gエタノール/日の定期的な消費)への曝露のため、アルコール性肝疾患を発症するリスクがあると見なされうる。
【0303】
IL-11またはIL-11の受容体の発現の上方制御の決定は、診断または疑われる診断を確定することができるか、または対象がアルコール性肝疾患を起こす危険があることを確認することができる。この決定は、アルコール性肝疾患または素因を、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置に好適なものであると診断することもできる。
【0304】
このように、アルコール性肝疾患を有するかまたは有することが疑われる対象のために予後診断を提供する方法であって、対象から得られた試料中でIL-11またはIL-11の受容体の発現が上方制御されるかどうか決定すること、および、この決定に基づいてIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による対象の処置のための予後診断を提供することを含む方法を提供することができる。
【0305】
一部の態様では、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置への対象の応答の診断方法またはそれを予後診断もしくは予測する方法は、IL-11またはIL-11の受容体の発現の決定を必要としないが、発現または活性の上方制御を予測する対象中の遺伝因子の決定に基づくことができる。そのような遺伝因子は、IL-11、IL-11Rαおよび/またはgp130における、遺伝子突然変異、一塩基多型(SNP)または遺伝子増幅の決定を含むことができ、それらは発現もしくは活性および/またはIL-11媒介シグナル伝達の上方制御と相関し、および/またはそれを予測する。疾患状態への素因または処置への応答を予測する遺伝因子の使用は当技術分野で公知であり、例えば、Peter Starkel、Gut 2008;57:440~442頁;Wrightら、Mol.Cell.Biol.2010年3月、第30巻6号1411~1420頁、を参照する。
【0306】
遺伝因子は、PCRをベースとしたアッセイ、例えば定量的PCR、競合的PCRを含む当業者に公知である方法によって分析することができる。例えば対象から得られる試料で遺伝因子の存在を決定することによって、診断を確定することができ、および/または本明細書に記載される疾患/状態を起こす危険があると対象を分類することができ、および/またはIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置に好適であると対象を特定することができる。
【0307】
一部の方法は、IL-11の分泌またはアルコール性肝疾患の発達への感受性に関連した1つまたは複数のSNPの存在の決定を含むことができる。SNPは通常二対立遺伝子であり、したがって、当業者に公知であるいくつかの従来のアッセイの1つを使用して容易に決定することができる(例えばAnthony J.Brookes.The essence of SNPs.Gene 第234巻、2号、1999年7月8日、177~186頁;Fanら、Highly Parallel SNP Genotyping.Cold Spring Harb Symp Quant Biol 2003.68:69~78頁;Matsuzakiら、Parallel Genotyping of Over 10,000 SNPs using one-primer assay on high-density oligonucleotide array.Genome Res.2004.14:414~425頁を参照する)。
【0308】
本方法は、どのSNP対立遺伝子が対象から得られた試料中に存在するか決定することを含むことができる。一部の実施形態では、劣性対立遺伝子の存在の決定は、増加したIL-11分泌またはアルコール性肝疾患の発達への感受性に関連していてもよい。
【0309】
したがって、本発明の一態様では、対象をスクリーニングする方法であって、以下を含む方法が提供される:
対象から核酸試料を得ること;
試料中のWO2017/103108A1(本明細書に参照により組み込まれる)の図33図34または図35に掲載されるSNPの1つまたは複数、または掲載されるSNPの1つとr≧0.8で連鎖不均衡にあるSNPの多形性ヌクレオチド位置にどの対立遺伝子が存在するか決定すること。
【0310】
決定するステップは、劣性対立遺伝子が試料中の選択された多形性ヌクレオチド位置に存在するかどうかについて決定することを含むことができる。それは、0、1または2つの劣性対立遺伝子が存在するかについて決定することを含むことができる。
【0311】
スクリーニング方法は、アルコール性肝疾患の発達への対象の感受性を決定するための方法、または本明細書に記載される診断もしくは予後診断の方法であってよいかもしくはその一部を形成することができる。
【0312】
本方法は、例えば対象が多形性ヌクレオチド位置で劣性対立遺伝子を有すると決定される場合、アルコール性肝疾患を起こすことへの感受性またはその危険の増加を有すると対象を特定するステップをさらに含むことができる。本方法は、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置のために対象を選択するステップ、および/または、対象においてアルコール性肝疾患のための処置を提供するために、または対象においてアルコール性肝疾患の発達もしくは進行を阻止するために、IL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤を対象に投与するステップをさらに含むことができる。
【0313】
一部の実施形態では、アルコール性肝疾患を診断し、アルコール性肝疾患を起こす危険がある対象を同定する方法、およびIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置への対象の応答を予後診断または予測する方法は、IL-11またはIL-11の受容体の発現の上方制御の検出でも遺伝因子の検出でもない指標を用いる。
【0314】
一部の実施形態では、アルコール性肝疾患を診断し、アルコール性肝疾患を発症するリスクがある対象を同定する方法、およびIL-11媒介シグナル伝達を阻害することが可能な薬剤による処置に対する対象の応答を予想または予測する方法は、肝機能および/もしくは肝組織/細胞への損傷の指標の1つもしくは複数を検出、測定ならびに/または同定する工程に基づく。
【0315】
診断または予後診断の方法は、対象から得られる試料でin vitroで、または対象から得られる試料のプロセシングに続いて実行することができる。試料が収集されると、診断または予後診断のin vitro方法を実行するために患者の存在は必要でなく、したがって、この方法はヒトの体でも動物の体でも実践されないものであってよい。本明細書で前記のように、対象から得られる試料はいかなる種類のものであってよい。
【0316】
診断もしくは予後診断の精度を増強するために、またはここで記載される試験を使用して得られる結果を確認するために、他の診断または予後診断試験を本明細書で記載されるものと併用することができる。
【0317】
対象
対象は、動物またはヒトであってもよい。対象は、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。対象は、非ヒト哺乳動物であってよいが、より好ましくは、ヒトである。対象は、雄性または雌性であってもよい。対象は、患者であってもよい。
【0318】
患者は、本明細書に記載のアルコール性肝疾患を有してもよい。対象は、アルコール性肝疾患と診断されていてもよく、アルコール性肝疾患を有する疑いがあってもよく、またはアルコール性肝疾患を発症するリスクがあってもよい。
【0319】
本発明による実施形態では、対象は好ましくはヒト対象である。本発明による実施形態では、アルコール性肝疾患のある特定のマーカーのための特徴付けに基づいて、本方法による処置のために対象を選択することができる。
【0320】
配列同一性
2つ以上のアミノ酸または核酸配列間の同一性パーセントを決定するためのペアワイズおよびマルチ配列アラインメントを、例えば、ClustalOmega(Soding,J.2005、Bioinformatics 21、951~960頁)、T-coffee(Notredameら、2000、J.Mol.Biol.(2000)302、205~217頁)、Kalign(LassmannおよびSonnhammer、2005、BMC Bioinformatics、6(298))およびMAFFT(KatohおよびStandley、2013、Molecular Biology
and Evolution、30(4)、772~780頁)ソフトウェアなどの公共的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者には公知の様々な方法で達成することができる。そのようなソフトウェアを使用する場合、好ましくは、例えば、ギャップペナルティおよび伸長ペナルティに関するデフォルトパラメータが使用される。
【0321】
配列
【0322】
【表2-1】
【0323】
【表2-2】
【0324】
【表2-3】
【0325】
【表2-4】
【0326】
本発明は、そのような組合せが、明らかに許容されないまたは明示的に回避される場合を除き、記載される態様と好ましい特徴との組合せを含む。
【0327】
前述の記載、または以下の請求項、または添付図において開示され、それらの特異的形で、または開示される機能を実行するための手段、または開示される結果を得るための方法もしくはプロセスで適宜表される特徴は、別々に、またはそのような特徴の任意の組合せで、本発明をその多様な形で実現するために利用することができる。
【0328】
いかなる疑いも避けるために、本明細書で提供される任意の理論的な説明は、読者の理解を向上させるために提供される。発明者は、これらの理論的説明のいずれによっても縛られることを望まない。
【0329】
本明細書で使用されるいずれのセクション見出しも構成上の目的のためだけであり、記載される対象発明を限定するものと解釈されるべきでない。
【0330】
後続の請求項を含むこの明細書全体で、文脈が別途要求しない限り、単語「含む(comprise)」ならびに「含む(include)」、ならびに「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」および「含んでいる(including)」などの変異形は、明示される整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群が含まれるが、いかなる他の整数もしくはステップも整数もしくはステップの群も排除されないことを意味するものと理解される。
【0331】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、本文が別途明確に記述しない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、一方の特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されると予想される。数値に関する用語「約」は任意選択であり、例えば+/-10%を意味する。
【0332】
本明細書に開示される方法はin vitro、ex vivoまたはin vivoで実行すること、または生成物が存在することができる。用語「in vitro」は、検査室条件または培養での材料、生体物質、細胞および/または組織による実験を包含するものであるが、用語「in vivo」は、インタクトな多細胞生物体による実験および手順を包含するものである。一部の実施形態では、in vivoで実行される方法は、非ヒト動物で実行することができる。「Ex vivo」は生物体の外、例えばヒトまたは動物体の外に存在するか生じ、生物体からとられる組織(例えば器官全体)または細胞の上にあってもよい事物を指す。
【0333】
核酸配列が本明細書で開示される場合、その逆相補体も明白に企図される。
【0334】
標準の分子生物学技術については、Sambrook、J.、Russel、D.W.Molecular Cloning、Laboratory Manual.第3版2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照する。
【0335】
本発明の態様および実施形態は、添付図に関してこれから議論される。さらなる態様および実施形態が、当業者に明らかになる。このテキストで指摘される全ての文書は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本発明は下記の例示的な実施形態と共に記載されているが、この開示を考慮して、多くの同等の修正変更が当業者に明らかになる。したがって、上で示される本発明の例示的な実施形態は、例示的であって限定するものでないと見なされる。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載される実施形態に様々な変更を加えることができる。
【0336】
本発明の原理を例示する実施形態および実験は、添付図に関してこれから議論される。
【図面の簡単な説明】
【0337】
図1A】アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(1A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。EtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」)のいずれかを腹膜内に受けた。(1B)EtOHフィードマウスへの抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照への処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(1C、1D、1E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(1C)肝臓対身体比の減少、(1D)体重減少の低下および(1E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、**p<0.01;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図1B】アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(1A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。EtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」)のいずれかを腹膜内に受けた。(1B)EtOHフィードマウスへの抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照への処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(1C、1D、1E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(1C)肝臓対身体比の減少、(1D)体重減少の低下および(1E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、**p<0.01;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図1C】アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(1A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。EtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」)のいずれかを腹膜内に受けた。(1B)EtOHフィードマウスへの抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照への処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(1C、1D、1E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(1C)肝臓対身体比の減少、(1D)体重減少の低下および(1E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、**p<0.01;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図1D】アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(1A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。EtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」)のいずれかを腹膜内に受けた。(1B)EtOHフィードマウスへの抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照への処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(1C、1D、1E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(1C)肝臓対身体比の減少、(1D)体重減少の低下および(1E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、**p<0.01;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図1E】アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(1A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。EtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」)のいずれかを腹膜内に受けた。(1B)EtOHフィードマウスへの抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照への処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(1C、1D、1E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(1C)肝臓対身体比の減少、(1D)体重減少の低下および(1E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、**p<0.01;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図2A】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2B】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2C】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2D】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2E】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2F】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2G】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2H】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2I】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2J】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2K】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2L】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2M】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2N】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2O】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2P】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2Q】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図2R】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、肝臓においてIL-11タンパク質のレベルを減少させ、アルコール性肝疾患において肝炎症および線維症を改善することを示す画像ならびにバーチャートである。(2A)表示した処置群のマウスから採取し、IL-11に対して染色した肝組織切片の代表的な画像である。(2B)抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較してEtOHフィードマウスの肝臓組織においてIL-11のレベルを減少させた。(2C~2H)抗IL-11RA抗体を投与したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して炎症誘発性サイトカインである(2C)TNFα、(2D)TIMP1、(2E)IL-10、(2F)CXCL1、(2G)IL-1b、および(2H)MIP2の遺伝子発現の減少を示した。(2I)異なる処置群のマウス由来肝臓組織におけるpERKおよびERKの代表的な免疫ブロットである。(2J)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスのグリコーゲンスコアは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較してスコアが増加する傾向があった。(2K~2R)異なる処置群のマウスの肝組織における(2K)Col1A2、(2L)Col3A1、(2M)Col1A1、(2N)CCL5、(2O)MCP1、(2P)PPARαおよび(2Qおよび2R)PPARγの遺伝子発現を示す。(2Q)に、t検定によるデータの分析の結果が示され、(2R)に、ANOVAによるデータの分析の結果が示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、IL-11=インターロイキン11、TIMP1=メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質、IL-10=インターロイキン10、TNFα=腫瘍壊死因子α、CXCL-1=ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1、IL-1b=インターロイキン1b、MIP2=マクロファージ炎症性タンパク質2。
図3A】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、アルコール性肝疾患における組織学的炎症を改善することを示す画像およびバーチャートである。(3Aおよび3B)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片のヘマトキシリンエオジン染色の代表的な(3A)画像および定量化(3B)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により低い肝臓脂肪症スコアを有した。(3Cおよび3D)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるMPO+好中球の代表的な(3C)画像および定量化(3D)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないMPO+好中球を有した。(3Eおよび3F)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるF4/80+マクロファージの代表的な(3E)画像および定量化(3F)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないF4/80+マクロファージを有した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、HPF=高倍率視野、MPO+=ミエロペルオキシダーゼ陽性、F4/80+=F4/80陽性。
図3B】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、アルコール性肝疾患における組織学的炎症を改善することを示す画像およびバーチャートである。(3Aおよび3B)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片のヘマトキシリンエオジン染色の代表的な(3A)画像および定量化(3B)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により低い肝臓脂肪症スコアを有した。(3Cおよび3D)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるMPO+好中球の代表的な(3C)画像および定量化(3D)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないMPO+好中球を有した。(3Eおよび3F)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるF4/80+マクロファージの代表的な(3E)画像および定量化(3F)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないF4/80+マクロファージを有した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、HPF=高倍率視野、MPO+=ミエロペルオキシダーゼ陽性、F4/80+=F4/80陽性。
図3C】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、アルコール性肝疾患における組織学的炎症を改善することを示す画像およびバーチャートである。(3Aおよび3B)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片のヘマトキシリンエオジン染色の代表的な(3A)画像および定量化(3B)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により低い肝臓脂肪症スコアを有した。(3Cおよび3D)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるMPO+好中球の代表的な(3C)画像および定量化(3D)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないMPO+好中球を有した。(3Eおよび3F)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるF4/80+マクロファージの代表的な(3E)画像および定量化(3F)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないF4/80+マクロファージを有した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、HPF=高倍率視野、MPO+=ミエロペルオキシダーゼ陽性、F4/80+=F4/80陽性。
図3D】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、アルコール性肝疾患における組織学的炎症を改善することを示す画像およびバーチャートである。(3Aおよび3B)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片のヘマトキシリンエオジン染色の代表的な(3A)画像および定量化(3B)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により低い肝臓脂肪症スコアを有した。(3Cおよび3D)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるMPO+好中球の代表的な(3C)画像および定量化(3D)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないMPO+好中球を有した。(3Eおよび3F)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるF4/80+マクロファージの代表的な(3E)画像および定量化(3F)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないF4/80+マクロファージを有した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、HPF=高倍率視野、MPO+=ミエロペルオキシダーゼ陽性、F4/80+=F4/80陽性。
図3E】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、アルコール性肝疾患における組織学的炎症を改善することを示す画像およびバーチャートである。(3Aおよび3B)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片のヘマトキシリンエオジン染色の代表的な(3A)画像および定量化(3B)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により低い肝臓脂肪症スコアを有した。(3Cおよび3D)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるMPO+好中球の代表的な(3C)画像および定量化(3D)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないMPO+好中球を有した。(3Eおよび3F)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるF4/80+マクロファージの代表的な(3E)画像および定量化(3F)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないF4/80+マクロファージを有した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、HPF=高倍率視野、MPO+=ミエロペルオキシダーゼ陽性、F4/80+=F4/80陽性。
図3F】IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用が、アルコール性肝疾患における組織学的炎症を改善することを示す画像およびバーチャートである。(3Aおよび3B)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片のヘマトキシリンエオジン染色の代表的な(3A)画像および定量化(3B)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により低い肝臓脂肪症スコアを有した。(3Cおよび3D)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるMPO+好中球の代表的な(3C)画像および定量化(3D)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないMPO+好中球を有した。(3Eおよび3F)表示した処置群のマウスから採取した肝組織切片におけるF4/80+マクロファージの代表的な(3E)画像および定量化(3F)を示す図である。抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与されたEtOHフィードマウスと比較して有意により少ないF4/80+マクロファージを有した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照抗体、HPF=高倍率視野、MPO+=ミエロペルオキシダーゼ陽性、F4/80+=F4/80陽性。
図4A】処置がEtOH傷害後に始められる場合に、アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(4A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。7日目からEtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」または「IgG Ab」)のいずれかを腹膜内に受けた。(4B)EtOHフィードマウスの抗IL-11RA抗体による投与は、IgG対照による処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(4C、4D、4E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(4C)肝臓対身体比の減少、(4D)体重減少の低下および(4E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図4B】処置がEtOH傷害後に始められる場合に、アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(4A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。7日目からEtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」または「IgG Ab」)のいずれかを腹膜内に受けた。(4B)EtOHフィードマウスの抗IL-11RA抗体による投与は、IgG対照による処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(4C、4D、4E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(4C)肝臓対身体比の減少、(4D)体重減少の低下および(4E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図4C】処置がEtOH傷害後に始められる場合に、アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(4A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。7日目からEtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」または「IgG Ab」)のいずれかを腹膜内に受けた。(4B)EtOHフィードマウスの抗IL-11RA抗体による投与は、IgG対照による処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(4C、4D、4E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(4C)肝臓対身体比の減少、(4D)体重減少の低下および(4E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図4D】処置がEtOH傷害後に始められる場合に、アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(4A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。7日目からEtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」または「IgG Ab」)のいずれかを腹膜内に受けた。(4B)EtOHフィードマウスの抗IL-11RA抗体による投与は、IgG対照による処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(4C、4D、4E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(4C)肝臓対身体比の減少、(4D)体重減少の低下および(4E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
図4E】処置がEtOH傷害後に始められる場合に、アルコール性肝疾患のマウスモデルにおいて抗IL-11RA抗体の治療的投与が肝損傷を改善することを示す、模式図、バーチャートおよびグラフである。(4A)手順のタイムラインの模式図。C57BL/6J雌マウスを、15日間同時飼育した(「ペアフィード」)またはEtOHを給餌した。7日目からEtOH群は、抗IL-11RA抗体(「IL-11RA」)またはIgG対照(「IgG」または「IgG Ab」)のいずれかを腹膜内に受けた。(4B)EtOHフィードマウスの抗IL-11RA抗体による投与は、IgG対照による処置と比較して有意に低いレベルのALTをもたらした。(4C、4D、4E)抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスと比較して(4C)肝臓対身体比の減少、(4D)体重減少の低下および(4E)肝トリグリセリド蓄積の減少を見せた。*p<0.05、ns=有意でない;n≧5/群。IL-11RA=抗インターロイキン11受容体α抗体、EtOH=エタノール、IgG=IgGアイソタイプ適合性対照、ALT=アラニントランスフェラーゼ、IL-11=インターロイキン11。
【実施例
【0338】
以下の実施例において、本発明者らは、IL-11媒介シグナル伝達がアルコール関連肝臓疾患を駆動し、IL-11媒介シグナル伝達の阻害がアルコール性肝疾患の症状を改善することを実証する。
【0339】
実施例1:材料および方法
動物研究
実験を開始する前にJacksons Laboratories(Bar Harbor,ME)から購入したC57BL/6マウスを、Medical University of Innsbruckの動物施設において1週間共に飼育した。全てのマウスに、Lieber DeCarliペアフィード食を5日間給餌して、液状食に順応させた。次いで、野生型(wt)雌マウス(7~8週齢)に1~5%(容積)で増加させたエタノール(EtOH)を含有するLieber DeCarli食(BioServ,Flemington,NJ)を15日間、不断に給餌した(EtOHフィード)[Bertolaら、Nat Protoc(2013年)8:627~637頁]。対照食は、等カロリー量のマルトースで補充された(ペアフィード)。ペアフィードマウスは、エタノールフィードマウスとカロリーを合わせた。マウスを、一日おきに秤量した。胃管栄養法の8時間後にマウスを安楽死させた。全てのマウスは、麻酔のためにキシライン5mg/kg体重(Intervet,Vienna,オーストリア)およびケタミン100mg/kg体重(AniMedica,Senden,ドイツ)を受けた。血液ならびに肝臓および腸の組織試料を、その後採取した。血清および組織試料を、-80℃でまたはRNAlater溶液(Qiagen,Hilden,ドイツ)中で、-20℃で貯蔵した。
【0340】
抗IL-11RA抗体のin vivo投与
抗体処置のために、マウスに、20mg/kg 抗IL-11RA抗体X209、または同一量のIgG対照[11E10、Aldevron;1.10E+11細胞(ATCCC,番号RL-1907)から産生される]を腹膜内注射した。X209はマウス抗マウスIL-11RαIgGであり、例えばWidjajaら、Gastroenterology(2019)157(3):777~792頁)に記載される。X209は「Enx209」とも呼ばれ、WO2019/238884A1の配列番号7(本開示の配列番号32)によるVH領域、およびWO2019/238884A1の配列番号14(本開示の配列番号33)によるVL領域を含む。
【0341】
全ての抗IL-11RA実験は、オーストリア法(BMWFWー2020.0.547.764)による倫理原則を厳守し、Medical University of Innsbruckの動物施設で実施された。
【0342】
ALT分析
マウス体重および肝臓重量を測定した。血清ALTレベルを、BQ Kits社(San Diego,CA)の酵素アッセイキットを製造業者の取扱説明書に従って使用して分析した。
【0343】
トリグリセリド測定
肝臓トリグリセリドレベルを評価するために、凍結肝臓試料をPBS中でホモジナイズした。容積を、肝臓組織質量で調整した。その後、試料を60℃で30分間インキュベートし、その後遠心分離(12000g、10分間、室温)した。上清を採取し、トリグリセリドを、無脂肪BSA(Sigma,St Louis,MO)コーティングしたバイアル中に単離した。トリグリセリド濃度を、TG試薬を使用して測定した(Roche,Basel,Switzerland)。
【0344】
組織からのRNA単離
組織RNAを、TRIzol(登録商標)試薬(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)中で試料をホモジナイズして精製した。逆転写系(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して逆転写を達成した。その後、qPCRを、qPCR SybrGreen(Eurogentec,Seraing,ベルギー)およびMx3000 qPCRサイクラ(Stratagene,San Diego,CA)ならびに下表に示すプライマーを使用して実行した。
【0345】
【表3】
【0346】
ウエスタンブロット
肝タンパク質を、HALTプロテイナーゼ阻害剤カクテル(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,米国)で補充したT-PER組織タンパク質抽出試薬を使用して抽出した。タンパク質濃度を、BCA Protein Assay(Pierce,Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,米国)によって測定し、その後SDS-PAGE(Hercules,Bio Rad,CA,米国)によって分離し、Hybond-P PVDF膜(GE Healthcare,Chicago,IL,米国)上へブロットした。SNAP i.d.(登録商標)タンパク質検出システム(Millipore,Burlington,MA,米国)を、ブロッキング、洗浄ならびにERKおよびpERKインキュベーションに使用した。免疫反応性を、Amersham Hyperfilms(GE Healthcare,Chicago,IL,米国)に対して化学発光を使用することによって可視化した。GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)を、参照タンパク質として用いた。ウエスタンブロットシグナルを、Biorad ChemiDoc MP画像化システム(Hercules,CA,米国)で定量化した。
【0347】
組織検査
組織学的分析のために、肝臓切片を、ヘマトキシリンエオジン(H&E)で染色し、またはIL-11、ミエロペルオキシダーゼもしくはF4/80に特異的な抗体で染色した。病理学者は、肝脂肪症、炎症、炎症細胞の浸潤ならびにIL-11、ミエロペルオキシダーゼおよびF4/80陽性細胞に関してH&E-IL-11-、ミエロペルオキシダーゼおよびF4/80で染色した肝臓切片を盲検化様式で分析した。肝脂肪症を、最大脂肪症スコア300で、脂質蓄積を示す細胞のパーセンテージとして定量化した。グリコーゲンを、独立した病理学者によって肝臓組織中の相対的含有量として同様に分析した。
【0348】
IL-11免疫組織化学
ホルマリン固定パラフィン包埋切片を、脱パラフィン化し、再水和した。スライドを、ペルオキシダーゼブロッキングした。一次抗体(抗IL-11、1:200希釈した;R&D systems,Minneapolis,MN)を、4℃で一晩インキュベートした。二次ビオチン化抗体(Vector,DAKO,Santa Clara,CA)を、室温で1時間インキュベートした。抗体インキュベーションステップを、加湿雰囲気のチャンバ内で行った。免疫反応性を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)駆動3,3’-ジアミノベンジジン(DAKO,Santa Clara,CA)で可視化した。染色した切片をスキャンし、専門の病理医が分析した。
【0349】
ミエロペルオキシダーゼ免疫組織化学
マウス肝臓切片を、キシレン中で脱パラフィン化し、エタノール勾配中で脱水した。抗原を、従来通りのスチーマー内で2%クエン酸緩衝液(pH=6;Vector Laboratories,Burlingame,CA)で脱マスクした。内因性ペルオキシダーゼ活性を、ペルオキシダーゼ(Dako,Santa Clara,CA)でブロックし、タンパク質ブロッキングを、すぐに使用できるキット(MP-740,Dako,Santa Clara,CA)を使用して実行した。ウサギ抗ミエロペルオキシダーゼ(Dako,Santa Clara,CA)および二次抗ウサギ抗体(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を、ミエロペルオキシダーゼを可視化するのに用いた。組織試料を、DAB(Dako,Santa Clara,CA)で染色し、ヘマトキシリン(Dako,Santa Clara,CA)で対比染色した。MPO陽性細胞を、盲検化様式で技術者によって10個の無作為に選択した高倍率視野において計数した。
【0350】
F4/80免疫組織化学
特異的抗F4/80ウサギモノクローナル抗体(CellSignaling,Cambridge,英国)および二次抗ウサギ抗体(Vector Laboratories,Burlingame,CA)でF4/80を染色した。免疫反応性を、DABで可視化し、試料を、ヘマトキシリン(Dako,Santa Clara,CA)で対比染色した。F4/80陽性細胞を、盲検化様式で技術者によって10個の無作為に選択した高倍率視野において計数した。
【0351】
データを、平均±平均の標準誤差、または第1四分位数と第3四分位数の中央値として表す。定量的変数を比較するために、必要に応じて、スチューデントt検定またはノンパラメトリックマン-ホイットニーUもしくはウイルコクソン符号付検定もしくはANOVAを使用した。分布の正規性を、コルモゴルフスミルノフ検定によって決定した。相関分析を、スピアマンのp係数を使用して推定した。外れ値を、ROUT方法またはグラブス検定を使用して同定した。p値<0.05を、統計的に有意であると見なした。全ての統計的分析は、SPSS Statistics v.22(IBM,Chicago,IL)およびGraphPad PRISM 5(La Jolla,CA)を使用して実行された。
【0352】
実施例2:結果
IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、実験的ALDから保護する
C57BL/6J雌マウスに、5%エタノールを含有するLieber DeCarli食または等カロリーのペア食を15日間給餌した。この実験的な設定において、図1Aに例示される通り、EtOHフィードマウスは、アンタゴニスト抗IL-11RA抗体X209またはIgG対照を腹膜内に受けた。対照IgG処置EtOHフィードマウスは、抗IL-11RA抗体の投与によって好転した肝損傷の徴候を示した(図1B)。さらに、抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照と比較して肝臓-身体比の減少をもたらし(図1C)、抗IL-11RA抗体は、EtOH誘導性体重減少も阻止した(図1D)。抗IL-11RA抗体による処置は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスにおいて観察される肝トリグリセリドのEtOH誘導性の蓄積も阻害した(図1E)。
【0353】
IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、アルコール誘導性肝臓炎症から保護する
抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスは、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスと比較して肝組織においてIl-11タンパク質の発現が有意により低いことが判明した(図2Aおよび図2B)。本発明者らは、EtOHフィードマウスの肝臓におけるIL-11の発現の上方制御が、他の炎症誘発性メディエータの発現を上方制御するかどうか調査し、TNFα、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害物質(Timp1)、Il10、Cxcl1、Il1βおよびマクロファージ炎症性タンパク質2(Mip2)の肝遺伝子発現が、IgG対照を投与したEtOHフィードマウスにおいて上方制御されることが判明した(図2C図2H)。抗IL-11RA抗体による処置が、これら炎症誘発性メディエータのそれぞれの遺伝子発現を有意に減少させることが判明した。図2J図2Rは、線維症および炎症の他のいくつかのマーカーの分析の結果を示す。
【0354】
抗IL-11RA抗体による処置後の肝臓保護は、マウスにおける非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)のモデルにおける知見[Widjajaら、Gastroenterology(2019年)157:777~792頁.e714]と一致して、pErk活性化の減少と関連し(図2I)、IL-11駆動ERKリン酸化が、肝星状細胞(HSC)の形質転換および線維症に対して中心的に重要であることが判明した。
【0355】
IL-11RA処置は、肝臓への炎症誘発性細胞の浸潤を減少させる
肝臓組織のヘマトキシリンエオジン染色後、20個の高倍率視野(HPF)を分析し、脂肪症スコアを算出した。EtOHフィードマウスの脂肪症スコアは、IgG対照処置動物と比較して抗IL-11RA抗体による処置で有意に減少した(図3Aおよび図3B)。
【0356】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)染色は、抗IL-11RA抗体処置が肝臓組織への好中球の浸潤を強く阻害することを実証し(図3Cおよび図3D)、IgG対照で処置したマウスと比較して有意により少ないF4/80陽性マクロファージが、抗IL-11RA抗体で処置したEtOHフィードマウスの肝組織において観察された(図3Eおよび図3F)。
【0357】
IL-11媒介シグナル伝達の阻害は、治療的モデルにおいて実験的ALDを減少させる
C57BL/6J雌マウスに、5%エタノールを含有するLieber DeCarli食または等カロリーのペア食を15日間給餌した。この実験的な設定において、図4Aに例示される通り7日目から、EtOHフィードマウスは、アンタゴニスト抗IL-11RA抗体X209またはIgG対照を腹膜内に受けた。対照IgG処置EtOHフィードマウスは、抗IL-11RA抗体の投与によって好転した肝損傷の徴候を示した(図4B)。さらに、抗IL-11RA抗体の投与は、IgG対照と比較して肝臓-身体比の減少をもたらし(図4C)、抗IL-11RA抗体は、EtOH誘導性体重減少も減少させた(図4D)。抗IL-11RA抗体による処置は、IgG対照で処置したEtOHフィードマウスにおいて観察される肝トリグリセリドのEtOH誘導性の蓄積も阻害した(図4E)。
【0358】
実施例3:考察
本発明者らは、IL-11が、間質性免疫における炎症誘発性工程において重要な役割を果たす可能性があり、IL-11受容体に対する中和抗体を用いる処置によるIL-11媒介シグナル伝達の阻害が、アルコール性肝疾患における炎症および病理の相関に有益な効果を有する可能性があると仮定した。
【0359】
好中球およびマクロファージの実質性浸潤は、アルコール性肝疾患の顕著な特徴であり、自然免疫のエタノール媒介性活性化ならびに炎症誘発性サイトカインおよびケモカインのその後の誘導のためである可能性が高い[Gaoら、Gastroenterology(2011年)141:1572~1585頁;Mandrekarら、Hepatology(2016年)64:1343~1355頁;Seitzら、Nat Rev Dis Primers(2018年)4:16頁;Louvetら、Nat Rev Gastroenterol Hepatol(2015年)12):231~242頁]。肝細胞は、IL-11受容体を発現し、ライゲーションに応じてトランスフォーミング成長因子β(TGFβ1)などのサイトカインを分泌する。肝細胞のIL-11媒介活性化は、予想外に細胞傷害性であり、アルコール性肝疾患の本モデルにおいて肝細胞におけるIL-11活性の自己分泌および不適応なループが明らかであった。
【0360】
抗IL-11RA抗体の投与が、アルコール性肝疾患において炎症を強力に減少させることが判明した。先に記述される結果は、IL-11媒介シグナル伝達の拮抗作用(例えば、IL-11媒介シグナル伝達の抗体アンタゴニストを使用する)が、アルコール誘導性肝炎、特にアルコール性肝炎の処置/予防に有効なことを実証する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図2O
図2P
図2Q
図2R
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
【配列表】
2024526944000001.xml
【国際調査報告】